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7thKING WAR⑥~教えて、ハートブレイカー先生

#デビルキングワールド #7thKING_WAR

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●これぞワルい授業(のはず)
 キーンコーンカーンコーン――。
「ギャハハハッ!」
「でよー」
 チャイムの音が鳴っても、教室の中が静かになる様子は全くなかった。
 此処は魔界学園。
 筋金入りのワルを競う、悪魔達の学園である。
 何処の教室も、学生は不良だらけ。そんな学園の教師が、普通である筈がない。

 ――バーンッ!

 引き戸を蹴破り黒板消しトラップを無効にしながら入って来たのは、とんがり帽子の魔女ティーチャー、ハートブレイカー先生である。
 ハートブレイカー先生は黙らない学生たちを注意するでもなく無言で教卓に着くと、ダァンッ、と勢い良くその上に何かを置いた。
「お、おい、あれ、見ろよ――」
「あ、あれって……まさか!」
 騒がしくしていた不良悪魔学生達の視線が、教卓に集まる。
 正確には、ハートブレイカー先生が置いた円筒形の『何か』に。
「ふふんっ♪」
 一気に集まった視線を鼻で笑って、ハートブレイカー先生はその『何か』に指をかけた。

 ――プシッ!
 ――ゴッ――ゴッゴッ!

「ぷはぁ~っ」
「「「あれビールだーっ!?」」」
 泡で口周りが真っ白になったハートブレイカー先生の姿に、不良悪魔学生達が騒然となる。
「入って来るなりビール!」
「未成年(?)の前でビール!」
「授業するでもなくビール!」
「な、なんと言うワルっぷり……!」
「ふん。この程度でいちいち騒ぐんじゃないわよ、小僧達!」
 不良悪魔学生達の驚愕を愉悦の表情で受け止めて、ハートブレイカー先生は缶ビール(に見えるもの)を片手に、ドカッと教卓の上に足を乗せた。
 しかも缶ビールを持っていない方の手には、いつの間にか細長い白い筒状のものが指に挟まれている。
「――ふぃ~」
 ハートブレイカー先生はそれを加えると、白い煙と共に大きく息を吐き出した。
「しかも煙草もー!?」
「こんな教室で堂々と!」
「屋上で吸ってる様な俺らとは、ワルのレベルが違ぇ……!」
「だからいちいち騒ぐんじゃないわよ。飲みたきゃ飲め、吸いたきゃ吸いなさい」
 ワナワナ震える不良悪魔学生達に、ハートブレイカー先生は蹴破った扉の辺りを指差した。
 いつの間にかそこには、ビールと煙草(に見えるもの)が、箱単位で置かれているではないか。
「ワルを目指すなら、欲望に正直になんなさい」
「「「ヒャッハァァァァッ!」」」
 教室の騒ぎは収まるところを知らなくなる。
 そうして数十分が経過し、授業の残りが後10分になった頃――。
「はい、それじゃ抜き打ちテスト始めるわよー。だいじょーぶ、魔法少女かヒーローか悪の幹部に魔法で変身させて、色々加速させてあげるから。寿命削るけど。削られたくなかったら、サクサク解きなさい」
「「「何にも教えてねえのにテストとか、ワルさぱねぇっ!?」」」
 唐突に授業っぽい事が始まって、10分後に終わるのだった。

●体に優しいワルだった
「と言う風に、『7thKING WAR』に合わせて悪の教師として魔界学園に現れたオブリビオン――『いたずら魔女ハートブレイカー』が、学生たちをワルに導こうとしてる」
 グリモアベース――ではなく何処かの世界の教室に集まった猟兵達に、ルシル・フューラー(新宿魚苑の鮫魔王・f03676)はさらりと告げた。
「最後の抜き打ちテストは、10分じゃまず解けない難問ばかり」
 背徳の代償は寿命。嫌すぎる。
「そんな悪の授業を妨害し、止めてきて欲しい。何なら学級崩壊までさせてもいいよ。ワルっぷり、イカレっぷり、逆に異常な真面目っぷりを見せつけると、畏怖の対象になるから」
 クラスに乗り込むには、「転校生」もしくは「新任教師」となるのが良いだろう。
 謎の転校生や新任教師が現れるのは、稀に良くある事だ。問題ない。
「ちなみにハートブレイカーが持ち込んだものだけど、ビールに見えるものはそれっぽい色と泡が立つノンアルコール且つローカロリーのドリンク。煙草に見えるものはそれっぽい水蒸気が出るだけのただの紙筒なんだ」
 つまり、健康被害、ほぼゼロ!
 未成年猟兵でも安心して参加できるね。
「ここを制圧すると正体不明の召喚魔王の1体の戦力を減らせるよ。と言うわけで、張り切ってワルの巣窟に行ってらっしゃい」


泰月
 泰月(たいげつ)です。
 何だか、結構お久しぶりになってしまいました。
 2022年もよろしくお願いします、といまさら言うくらい久しぶりです。

 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、『7thKING WAR』の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
 ⑥魔界学園〜悪のセンコーをぶちのめせっス!
 です。

 支援先は「㉔召喚魔王『(正体不明2)』」になります。

 恒例のプレイングボーナスですが、
 今回は『授業を妨害する。/教師よりもワルいことを示す』
 になります。条件2つあるよ。やったね。

 まあOP見たら大体お分かりかと思いますが、ワルさのハードル多分低いです。
 なお、ビールとか煙草とかあると見せかけて、全て未成年OKな色々配慮されたものになってますので、ワルぶるためでもガチもんの持ち込みはご遠慮ください。ほどほどにマイルドになります。
 まあ要するに、これネタシナリオですから。(ぶっちゃけた)

 なおそこまで時間かからない気もしますが、最後の抜き打ちテストは本当に難しい、所謂未解決問題、と呼ばれる難問系が出てたりします。
 多分、ハートブレイカー先生も解けないやつ。

 ではでは、よろしければご参加下さい。
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第1章 ボス戦 『いたずら魔女ハートブレイカー』

POW   :    かわいくなあれ
【魔法をかける】事で【敵が魔法少女、もしくは少年】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
SPD   :    かっこよくなあれ
【魔法をかける】事で【敵がスーパーヒーロー、もしくはヒロイン】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    もっとワルくなあれ
【魔法をかける】事で【敵が悪の組織の幹部】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。

イラスト:のはずく

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠リトルリドル・ブラックモアです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

サイモン・マーチバンク
地元の学校通ってないんですけど、こんな感じなんですねぇ
なんだか新鮮です
えっと、とりあえず暴れましょう

転校生という体で行きましょう
『ムーンストライク』を構えて堂々とドア……は先生が破壊したので、その横の壁を破壊しつつ登校です
おはよーございまーす

ハンマーはすぐにしまってUCを
大量のウサギを引き連れつつ自分の席へ
学校に無許可で大量のペットをつれてくる、これはワルでしょう
ウサギ達には躾とかもさせてないので好き勝手動き回りますよ……!
机や壁をがしがししたり、生徒達のまわりをぴょんぴょんしたりと授業どころではなくなるでしょう
ついでにもふもふして欲望を解放してもいいのですよ……!
これが俺流の学級崩壊術です!



●朝のHR~挨拶は元気にしよう
 キーンコーンカーンコーン――。
 今日もチャイムが鳴り響き、魔界学園の1日が始ま――。
「おはよーございまーす」
 ドゴォンッ!
 朝一で、とある教室の壁が吹っ飛んだ。
「な、なんだぁ!?」
「廊下から挨拶が聞こえたと思ったら、壁が壊れたぞ!」
「他のクラスのカチコミか!?」
「悪魔A! しっかりしろ、悪魔A!」
 騒然となる教室。
「あのー……」
 そこに、壊れた壁の向こうからサイモン・マーチバンク(三月ウサギは月を打つ・f36286)が顔を出した。
「あァ? 誰だテメェ!」
「テメェがやったのかぁぁ?」
「あ、はい。転校生です。遅刻しました」
 悪魔学生たちのメンチを新鮮だなぁ、なんてさらっと流しながら、サイモンは頷く。
「ドアは壊れてたので、壁を壊してみました」
「転校生かぁ……やってくれるじゃねえか」
「舐められねぇように、最初ッから一発かまして来やがったな」
「ワルの素質、持ってるぜオマエ」
 サイモンの口から転校生と聞いた途端、悪魔達の態度が変わる。
 一部はもう、畏怖が混じってそうだ。
「悪魔A、早く立ちなさい。その程度じゃ早退させないわよ。そこの転校生は、早く座りなさい」
「はーい」
 ハートブレイカー先生に促されるまま、サイモンは教室に入っていく。
 宙に浮かんだ、大量のウサギ入りの籠を引き連れて。

 あぶない兎悪魔の軍団――キラーラビットフェスティバル。

 サイモンの籠から飛び出す、兎(の幽霊)の群れ。その数600体以上。躾など全くされていない兎は、籠から飛び出すなり教室を、ぴょんぴょんと自由気ままに駆け回る。
「ちょっと何なのよ、これ!」
「兎です」
 ハートブレイカー先生の注意を、やっぱりさらっと流して、サイモンは空いてる席に着く。
(「学校に無許可で大量のペットをつれてくる、これはワルでしょう!」)
 カリカリカリ、と兎が机を齧る音を聞きながら、サイモンは内心、ほくそ笑んでいた。
 周りを見やれば――。
「何だこの小動物ぁぁぁ!」
「やんのかコラ、やんのかぁ?」
「キュっと潰す……潰……」
「そんなつぶらな瞳で、みるんじゃねぇ!」
 悪魔学生たちは兎に手を出しあぐね、中には心が既に折れている者もいた。
「普段は乱暴でも、小動物には優しい――ワルに一歩近づいたわね、あんた達」
 ハートブレイカー先生も、兎の群れを止める様子はない。むしろなんかサムズアップしている。
 ワルか?
 それワルか?
(「もふもふして欲望を解放してもいいのですよ……!」)
 その様子に、サイモンは隠れて拳を握る。
 思っていたのと少し違うが、HRが終わる気配がないのだ。学級崩壊に一歩近づいた事であろう。

 この日――魔界学園のとある1クラスが、たった1日で学級崩壊を起こす事になる。
 これはその、始まりに過ぎない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

栗花落・澪
煙草やお酒を嗜む仕草は(義理の)姉さん譲り
不良口調は友人譲りでがんばる

変身させたきゃやってみろや、こちとら慣れてるっつーの
つーかさ、寿命の事教えてくれるだけせんせーやさしいよね
真の悪なら問答無用で変身させ、回答効率の加速で期待持たせて全部終わってからのネタバレが一番絶望すると思うけど

どうしてもって言うならテスト受けてやってもいいよ
好きな読書ジャンルは難解な推理小説
友人曰く僕の基礎学力は飛び級レベルの僕です

【誘惑】という名の挑発で乗せて
持ち前の学習能力を駆使して本気で解いてみせます
転校生だからって嘗めてもらっちゃ困るな

生徒に実力行使はいけないと思いまーす
もう一度言うね
反省しろや♪【指定UC】


グレートスカル・キングヘッド
あぁん?ガキのままごとかよ?
俺様としちゃ物足りねえが…流儀にそって『悪のカリスマ』ってやつを見せてやるよ

ネビロ・サーベラスと合体し、下に学ランを着た状態で授業だ
机に足乗せ、けだるげに授業を
あぁん!ビールなんざ子供の飲みもんだ、センコーの言うようにはしゃぐんじゃね~よ
そう言って取り出すのはウイスキーの瓶(中身はソフトドリンク)
そいつの瓶口を切って開け浴びるように一気!
そしてヤク(ラムネ)を取り出しかみ砕く!

くぁ~効くね!!
あぁ、最後にそのテストの問題の答えは…だぜ!
ロボットの頭脳舐めんじゃないぜ、本当の悪ってのはインテリなんだよ
っと出鱈目な回答をな!

本当の悪ってのは口が達者なんだぜギャハハハ!


ニコ・ベルクシュタイン
【ニコうさ】
ダークグレーのスーツに青いネクタイをビシッと合わせ、教師役として登場

乱入を許せ、俺は現国教師のニコ・ベルクシュタインだ
うさみっち共々、今日から皆と勉学に励む故、よろしく頼む
(徹底した真面目路線で攻める!)
さあ、授業を始めよう――紙とペンを!

と、ビシッと決めたつもりがはらりと落ちる一枚の写真……
眼鏡の奥の赤い瞳を見開く真面目シュタイン先生!
そこに写るのは、言い逃れのしようがない程にラブラブしている
俺とうさみの姿!
ええい、いっそ生徒諸君もハートブレイカー先生も刮目せよ!

俺は教師の身で生徒(しかもランドセルのすがた)を見初めた!
うさみも何やかやで俺を愛してくれている……と思う! どうだ!


榎・うさみっち
【ニコうさ】
ランドセル背負って転校生として登場!

よう、お前ら!俺はうさみっちだぜ!宜しくなー!
挨拶を終え、席に向かおうとしたところで
ペラリと落ちる一枚の写真
あっ、それは――!!

そこには、左手薬指に揃いの指輪をはめ
仲睦まじい様子の俺とニコの姿…
そう、実は教師であるニコと俺は付き合っていたのだ…!!

教師と生徒という関係
20歳という年の差
更には男同士、ついでに身長差約158cm
まさに許されざる禁断のLOVE!
こんな究極のワル、並大抵の奴には真似出来まい!

悪魔達から奇異の目で見られても毅然とした態度で言ってやるぜ!
俺たちは遊びなんかじゃねぇ!
将来は豪邸ででっかい犬と一緒に末永く暮らそうと約束したんだ!


ユディト・イェシュア
学校に通うのって実は憧れだったんです
でもここは魔界
一筋縄ではいかなさそうです

転校生として学ランを着ていきましょう
何度も留年してこの年齢までいるってことにすれば
きっとヤバい奴って思われますよね(笑顔

あ、まずは義姉が作ってくれたお弁当を早弁ですね
(ふたを開けるとものすごく可愛いわんこモチーフのデコ弁登場)

不良学生は本当は素直な悪魔なんですよね
頑丈だとは思いますが神の加護と癒しを与えておきましょう

こんな無茶ぶりなテストにはカンニングで対抗です
今はSNSで問題を上げれば誰かが解いてくれる時代みたいです
むしろ誰も解けないようならそれは試験に相応しくないですよね
試験用紙をバラバラに破り捨ててしまいましょう



●1限目:国語1~転校生が多すぎる
「黙って見てりゃあ……ナニほのぼのしてんだ」
 兎塗れのままの教室に、苛立たし気な声が響く。
 教室の隅で声を上げたのは、HR前から教室にいた転校生のグレートスカル・キングヘッド(地獄の告死骨烏・f33125)だ。
「なんだ転校生ィ!」
「学ラン決まってるからって、イイ気になってんじゃねぇぞ!」
「あぁん?」
 隣席の悪魔学生達のメンチに、グレートスカルは机に上げていた足をゆっくり降ろす。
「テメェらこそ……ガキのままごとかよ?」
 立ち上がったグレートスカルは、両目の眼窩に炎を燃やしてメンチを切り返す。
「「……」」
 その迫力に、悪魔学生たちは言葉を失った。
 何と言うか、グレートスカルがでかいのだ。グレートスカルは、ロボットヘッド。学ラン着てるのは、スーパーロボットのネビロ・サーベラスなのだから。
 まあスーパーロボットが教室に入れるのも、ラスボスなんて長身種族がいるこの世界だからである。
 他の世界だったら、下手すりゃ校舎にすら入らないぞ。
「ガガガッ、ガキでワリィかよ!」
「ががが、学生ってのぁガキだろうが!」
「……チッ、物足りねえ」
 震える声と膝で何とか言い返して来た悪魔学生達に、グレートスカルは舌打ち(の様な音)を返して、不満そうに席に着いた。
「まあまあ、でかいの。ここは一杯やって水に流そうや」
 そこに、ラスボス種族っぽい大柄な悪魔が、缶ビール(っぽいもの)を手にやって来た。
 喧嘩の仲裁して存在感アピール作戦、と言った所だろう。
「あぁん!」
 だからグレートスカルは、座ったまま凄んでみせた。
「ビールなんざ子供の飲みもんだ、センコーの言うようにはしゃぐんじゃね~よ」
 そう言いながら学ランの懐から取り出したのは、ウヰスキーと書かれたラベルが貼られた瓶。
 グレートスカルはその瓶口を机に叩きつけて割り砕くと、中の茶色い液体――濃く煮出しただけのただの紅茶――を浴びるように飲み始めた。
「こいつを飲んでから、これ食うとよぉ……決まるぜ?」
 更にポケットから取り出したのは、白い錠剤っぽい――ラムネ。
「くぁ~効くね!!」
「こ、こいつ……」
「ああ、やべえな……」
「貫禄が卒業生並だ……」
 何か危ないものをキメてる感じにラムネをぼりぼり噛み砕くグレートスカルに、悪魔学生達は思わず後ずさっていた。

 そこに、カッカッと、廊下から規則正しい靴音が近づいてくる。
「全く、何だこの有様は。嘆かわしい」
 教室に入って来たのは、学園ものなら大体1人はいるであろう、融通の利かなそうな堅物眼鏡キャラっぽい感じで登場したニコ・ベルクシュタイン(時計卿・f00324)である。
 ダークグレーのスーツに青いネクタイをビシッと合わせて、堅物感マシマシにしている。
「ハートブレイカー先生、乱入を許せ。俺は現国教師のニコ・ベルクシュタインだ」
「あー、うん。どぞ。出来るもんなら」
 律儀に断りを求めるニコに対し、ハートブレイカー先生は気のない様子で缶ビール(っぽいもの)を片手にひらひらと手を振り返す。
「……では授業を始め――る前に、転校生を紹介する! 入りなさい」
 ぞんざいな扱いにもめげる事無く、ニコは廊下に向かって声をかけた。
「ういーっす!」
 そして入って来たのは――空飛ぶランドセル!
「「「「「「???」」」」」」
「よう、お前ら! 俺はうさみっちだぜ! 宜しくなー!」
 ランドセルの下から元気に顔を出したのは、榎・うさみっち(うさみっちゆたんぽは世界を救う・f01902)だった。
「じ、自分よりでけぇランドセル担いで来ただと……」
「あのちびっこ転校生、やべぇな……」
(「何だこいつら……」)
 何か勝手に勘違いした悪魔学生達がいきなり向けてくる畏怖の視線を浴びて、うさみっちは内心溜息を吐いていた。
 本当はランドセル背負って来たかったうさみっちだが、フェアリーサイズのランドセルが魔界学園になかったのだから、仕方がない。中を空っぽにすれば、ランドセル自体は軽いものだしね。
「うさみっち共々、今日から皆と勉学に励む故、よろしく頼む」
 ニコはうさみっちの内心を薄々察しながらも、あくまで真面目路線を貫こうとする。
「ってか、今日転校生多いわねー。これで5人目じゃない」
「「5人?」」
 そこにハートブレイカー先生が零した呟きに、ニコもうさみっちも揃って首を傾げる。
 兎事件も、グレートスカルのメンチも見ていた。
 けれど――あと2人?
「せんせー、ビールおかわりー」
 教室の後ろで上がった声に、ニコもうさみっちも聞き覚えがあった。
「貰ってくねー」
 ハートブレイカー先生の荷物からビール(っぽいもの)を持ち出し、教卓の前でプシュッと開けて飲み始めた顔も知っている。
(「ニコ、あれって……」)
(「ああ、そうだな」)
「ぷはぁっ……あ? 何見てんの?」
 うさみっちとニコの視線に、ワルぶって返したのは栗花落・澪(泡沫の花・f03165)だった。
 義理の姉やら、素で不良っぽい友人とかを参考に、精一杯ワルぶっている。
 さらに――。
 ふわっと、教室に何か暖かい香りが漂って来た。
「あ、どうぞ授業進めて。俺は弁当食べてますんで」
 まだ一限目だと言うのに早々に早弁決めだしたのは、学ラン姿のユディト・イェシュア(暁天の月・f05453)である。
「おま……転校生だったのか!」
「てっきり教師が学ラン着てんのかと……!」
 ユディトが転校生だと気づいていなかった周りの悪魔学生が、ざわつき出した。
「こ、こいつ何年、留年(ダブ)ってんだ……」
「数えるのを止めました」
 悪魔の漏らした呟きに、ユディトがいい笑顔で返す。適当に決めた設定だから、嘘ではない。
「ヌシだ……ヌシがいる……」
「まごうことなき、ヤバいパイセンだぜ……」
 思った以上にヤバイ奴認定されてる気がするのを放置して、ユディトはスッと立ち上がる。
 そして、スマホを構えた。
 ユディトが先ほど蓋を開けた弁当の中は、ものすごく可愛いわんこモチーフのデコ弁だったのだ。作ってくれたのは義姉である。
 ユディトはそれを、様々な角度からパシャパシャ撮り始めた。
「何してんだ、パイセンは……」
「判んねえけど、きっとすごい事だぜ……」
「時代は、SNSですよ」
 キョトンとする悪魔学生達に、ユディトがさらっと告げる。
「そうか……映えだ! ヌシは映えで舎弟増やそうってんだ!」
(「今回、楽ですね……」)
 一度膨らみ出したら勝手に膨らみ続ける畏怖に、ユディトは胸中で笑みを零しながら、弁当に箸をつけた。

●1限目:国語2~悪魔学生達の恋愛観
「……これは、もうすでに学級崩壊してないか?」
「がんばれ、ニコ」
 この惨状に真面目路線を選んだ事にちょっと後悔を感じるニコの肩を、うさみっちがぽんと叩く。
「俺が最前列の席で見ててやるからよー!」
「ありがとう、うさみよ」
 教卓の真ん前に陣取ったうさみっちに頷き、ニコは気を取り直して顔を上げた。
 ビシッとスーツの襟を正し、クイッと眼鏡を押し上げ、居住まいを正す。
「さあ、授業を始めよう。俺の授業は時間厳守だ。延長など認めん――紙とペンを!」
 ニコが真面目に決めた――と思われたその瞬間、開いた教科書の中から一枚の写真がはらりと落ちた。
「っ!!!!!」
「あっ、それは――!!」
 ニコが思わず眼鏡の奥でカッと目を見開き、気づいたうさみっちも慌てた様に声を上げる。
 写真は狙いすましたかの様に、悪魔学生の一人の机の上に落ちる。
「こ、これは……!」
 それを見た悪魔が、顎が外れそうな程に口を開ける。
 写っているのは、ニコとうさみっちだった。左手薬指に揃いの指輪をはめた、仲睦まじい様子の。
 そしてここにいるのは、悪魔の学生達である。
「おおい、皆! この写真、見てみろ!」
 そんな写真を、見せびらかさない筈がなかった。
「くっ……言い逃れのしようがない程にラブラブしている写真を見られては、仕方がない。ええい、いっそ生徒諸君もハートブレイカー先生も刮目せよ!」
「実は教師であるニコと俺は付き合っていたのだ……!!」
「マジだ! 結婚(マリ)ってやがる!」
「教師と学生でだと……」
「禁断の関係ってやつか……」
 ニコとうさみっちが開き直ったのもあって、あれよあれよと言う間に、教室の間を回される2人の写真。
 ここまで全部、2人の作戦通りなんだけどね。
「俺は教師の身で生徒を! しかもランドセルの姿を見初めた!」
「教師と生徒という関係! 20歳という年の差! 更には男同士、ついでに身長差約158cm! まさに許されざる禁断のLOVE! こんな究極のワル、並大抵の奴には真似出来まい!」
 だからこそ、ニコもうさみっちも、悪魔学生達の『マジか?』って感じの奇異の視線を浴びても、キリッと毅然と言い放つ。ニコが最初に真面目路線で登場したからこそ、ここでギャップが活きて来る。
「うさみも何やかやで俺を愛してくれている……と思う! どうだ!」
「将来は豪邸で、でっかい犬と一緒に末永く暮らそうと約束したんだ!」
 開き直りを言い尽くして、ふとニコとうさみっちが我に返ると、なんか教室の空気がシンとしていた。と言うか、悪魔学生の多くが膝をついたり、机に項垂れたりしている。
「う……羨ましい……」
「ワルだってなぁ……恋はしてえんだ、ちきしょう……」
「略奪愛とかいいよな……」
 思った以上に、そして思わぬ方向に、悪魔学生たちの心に刺さってしまったようだ。
「お、おう……」
「まあ、なんだ。お前達はまだ若い。チャンスはあるぞ、きっとな」
 中にはガチで男泣きしている悪魔学生までいるものだから、うさみっちは何も言えなくなり、ニコは思わずフォローしていた。

●1限目:国語3~TPO弁えないネタバレ、ダメ
「ここで、抜き打ちテースト!」
 そんな空気を見逃さないのが、ハートブレイカー先生だ。
「折れた心で解けるものなら、解いてみな! 今日も変身で色々加速はしてあげるよ!」
 テスト用紙の束を手に、ここぞとばかりに自身のワルっぷりをアピールして来る。
「変身させたきゃやってみろや!」
 そこに、澪の張り上げた声が響いた。
「こちとら慣れてるっつーの」
 ガタン、と椅子を鳴らして立ち上がり、ハートブレイカー先生を見据えて言い放つ。
「つーかさ、せんせー、ワルぶってるけどやさしいよね」
「は? どこにやさしさが――」
「寿命の事教えてくれてるじゃん」
 澪はハートブレイカー先生をビシッと指差して、そのワルぶりの中の優しさを指摘した。
「真の悪なら問答無用で変身させてさー。回答効率の加速で期待持たせて全部終わってからのネタバレが、一番絶望すると思うけど」
「加速の希望と寿命が削れる焦りを与えてからの、絶望の方が効くわよ!」
 ワルさを語る澪とハートブレイカー先生の視線が、バチバチと見えない火花を散らす。
「ま、どうしてもって言うならテスト受けてやってもいいよ?」
 折れてあげるよ感をアピールしながら、澪は席に着き直す。
 実の所、自信もあった。
 澪は結構読書家だし、友人曰く基礎学力は飛び級レベルだと言う。
 国語のテストなら、何とかなるだろう。
 そう思っていた澪の前に回って来たのは、なんか問題文がちょびーっとだけでやたら空白が多いテスト用紙と、凶器になりそうなほど分厚いハードカバー本。
 タイトルは――魔界学園林間学校殺人事件。

 犯人と動機とトリックを答えよ。(問題時間5分)

(「なんかもうダメな所しかないテストきたよ!?」)
 思わず叫びそうになった声を、澪は何とか呑み込む。
 愛読ジャンルな推理物からの出題を喜べない。本はどう見ても5分で読みきれる厚さではないし、そもそも答えてしまったら最大のネタバレになるやつだ。
「どう? どう? 加速するしかないわよねぇ!」
 ハートブレイカー先生は、ニヤニヤしていた。
「だからさぁ……やってみろつってんの!」
 殴りたいのを抑えて、澪はハートブレイカー先生に言い放つ。
「言ったわね……! かわいく&かっこよく&もっとワルくなあれ」
 何度も言い返す澪にイラっとしてきた様子で、ハートブレイカー先生が変身魔法を乱発した。

 澪が変身させられたのは、悪墜ちした魔法少女だろうか。
 いつもの衣装とは大分雰囲気は異なるが、言った通りに変身し慣れてる澪にとっては、些細な差だ。
 だから澪は変身させられた自分の姿には見向きもせず、凄い勢いで本を捲っていた。
 犯人と、動機と、トリック。
 それを答えれば良いのなら、頭から全部読む必要はない。
 推理小説に於いて、その3つ全てが明かされるのはラストと相場が決まっている。最初から犯人だけは判明しているパターンとか、長編の場合はトリックが都度明かされるパターンもあるが、問題の3つが揃うのは大体最後である。
 そうと判っていれば、加速した上での5分あれば、充分だ。

「ごちそうさまでした」
 米粒一つ残さず早弁を食べ終えたユディトは、どうやら魔法少年に変身させられたらしい。
 しかしユディトも変わった自分の服装は頓着せず、弁当箱をしまうと、配られたハードカバー本をパシャッと撮って、迷わずSNSに上げた。
「今はSNSで問題を上げれば、誰かが解いてくれる時代みたいですからね」
 【求】犯人と動機とトリックと書き込み、【ネタバレOK】のタグつけて。
「堂々とカンニングしてやがる……!」
「しかもネタバレ拡散を恐れずに!」
「やっぱヌシやべぇ……」
 そんなユディトに、ますます畏怖が集まっていた。

「ハッ! 下らねぇ」
 気怠そうに言い放つグレートスカルが変身させられたのは、どうやらスーパーヒーローの様だ。決まっていた学ランが白くなっている。
 グレートスカルはハードカバー本を雑に持ち上げると、バラバラバラ、と高速でページを捲りだした。
 その様子は、テストを諦めている様に見える。
 だが――グレートスカルはロボットヘッドなのだ。ロボなのだ。
 人工頭脳くらい、搭載している。それも高速演算機能付いてるのが。だから高速で捲りながらもページを画像記憶して、犯人と動機とトリックのワードで検索する程度は、出来るのだ。
(「出鱈目な解答するつもりだったんだがな……出来るもんだから、つい解いちまったじゃねえか」)

 ダンッ! ダンッ! ダンッ!
 そしてほぼ同時に、3人は解答用紙をハートブレイカー先生の前に叩きつけていた。
「ん……? え? ……マ? 解いたの?」
 ハートブレイカー先生の目が、さすがに点になる。
「本気で解いてやったよ! 転校生だからって嘗めてもらっちゃ困るな」
「ロボットの頭脳舐めんじゃないぜ! 本当の悪ってのはインテリなんだよ」
「むしろ誰も解けないようなら、それはテストに相応しくないですよね?」
「くっ……!」
 澪とグレートスカルとユディトに畳みかける様に言われ続けて、ハートブレイカー先生が押し黙る。
 もしかしたら先生、読んでなかったのかもしれない。
「そのテストの問題の答えは――」
「あ、こら! 待ちなさい!」
 ネタバレ恐れず、答えをカミングアウトしようとしたグレートスカルに、ハートブレイカー先生は物理的に口を塞ごうと飛び掛か――。
「生徒に実力行使はいけないと思いまーす」
 スパーンッと、澪に足を払われた挙句、背中を容赦なく踏みつけられた。
「え? なにこれ? え? 待って、なにこれ――」
 ハートブレイカー先生から上がる、困惑の声。

 女王の微笑み――テンプ・ドゥ・プレジール。

 誘惑・催眠効果のあるオーラを放ちながら踏みつける澪の業の効果は、覿面の様だ。
「待って待って! 止めて! 何か新しい扉が開いちゃいそうだから!」
「うっさい。反省しろや♪」
 今までのフラストレーションを晴らすかのように、澪はハートブレイカー先生の背中を容赦なく、グリグリと踏み続ける。
「なぁ……ニコ」
「なんだ、うさみよ」
 その様子を、うさみっちとニコが離れて見守っていた。
「澪がこのまま、この教室を牛耳ったとしたらさ……番長? スケバン? どっちだ?」
「難しい問題だな……本人の希望を訊くのが一番だと思うが」
 うさみっちもニコも、真顔である。
 決めておいた方がいいかも知れないのだ。
「うおお……せんこーを踏んでやがる」
「俺達は、とんでもないワルの誕生を見ているのかもしれないな……」
 今この瞬間も、教師を足蹴にしている澪のワルさに対する畏怖は、うなぎのぼりに上昇中。澪の名前は魔界学園の何処かに残ってしまうかもしれないのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

月夜・玲
なんてわるいせんこーだ…
もうおしまいだあ…
よし、授業を妨害しつつワルい事を示すとしようか
生徒の悪い事と言えば当然…早弁!

という訳で色々持ってやってきました教室
コンセント良し
電子レンジとホットプレートをGO!
電子レンジでレトルトのご飯を温めつつ、ホットプレートに油を敷いて焼き肉の準備完了!
教室で早弁!
しかも肉の焼ける良い匂いをさせて他の生徒の授業妨害もしちゃうんだぜ!
良い匂いがするでしょ?
欲しい?欲しい?
授業放り出して食べる??
結構持ってきたからお代わりも良いぞ!

あ、一応先生殴らないと
【Duplicate Myself】起動
分身に剣を渡して適当に殴ってきてもらおう
私ここで食べてるから後よろしく


鐘射寺・大殺
諸君、吾輩は学校が好きだ。
ヤンキーに美少女、ガリ勉に体力バカ、パリピに陰キャ、
実に個性豊かな悪魔が集まる場所だからのう。
この教師もなかなかに個性的な奴よの。

さて、吾輩のターンか。いでよ、砕魂魔王軍!
教室に入りきらんかもしれんが、まあ気にする程でもないか。
取り敢えず今日はこの部屋を借りて…遊ぼう!
プロジェクターを使ってアニメの上映会、
机を片付けてプロレスごっこ、TRPGのセッション(吾輩がGM)、
腹が減ったらバーベキューに鍋パもいいな。
ほれ、ハートブレイカー先生もご一緒に。
では、これよりイカサマ上等のポーカー大会を開始する!
敗北者は先生の魔法によって美少女に変えられるぞ。
フハハハ、これは愉快!



●2限目:家庭科でいいかな~電力のご利用は計画的に
 何事もなかったかのように、2限目が始まる。
「はーい。なんか、また転校生増えたから。入んなさい」
 背中に靴跡くっきり残ったハートブレイカー先生の、煙草(に見える別もの)片手の雑な紹介に、2人の転校生が入って来る。
「投げやりだぁ……なんてわるいせんこーだ……もうおしまいだあ……」
「諸君、吾輩は学校が好きだ!」
 頭を抱えて入って来た月夜・玲(頂の探究者・f01605)と、のっけから飛ばしてる鐘射寺・大殺(砕魂の魔王・f36145)と言う対照的な組み合わせである。
「おいおい、何言ってんだ」
「むしろこれからだぜ」
「俺達はまだ、ワルの坂を登り出したばかりだ」
 頭を抱えた玲には、一部の悪魔学生が一見優し気に声をかけて来た。
(「こいつら、本当にワルか……?」)
 そんな疑問が玲の胸中を過るが、勿論、純粋な優しさである筈がない。

 ――こいつ気が弱そうだから舎弟に出来るんじゃね?

 という打算に塗れた優しさである。
 それは顔を上げた玲が一目でわかるくらい、悪魔学生達の顔に出まくっていた。
「それもそうだな。よし、私もワルい事をしよっと」
 適当に納得して吹っ切れた風を装って頷き、玲は意識して変えていた表情を普段通りに戻す。
「生徒の悪い事と言えば……早弁!」
「確かに早弁はワルい!」
「けど、それはもうパイセンがやったぜ。一番早弁ってワルは、取られてるぜぇ!」
 悪魔達の声は無視して、玲は素早く視線を巡らせた。
 他にも早弁した猟兵がいるのは、玲も判っている。それでも、勝算があってやるのだ。
「コンセント……よし!」
 壁に細長い穴があるのを確認すると、玲は何やら大きなものを取り出した。
 ドンッ! ドンッ!
「そ、それは……まさか!」
 重たい音を立てて、玲が机に乗せたものに悪魔学生が目を見開く。
「ふっ……電子レンジとホットプレート、GO!」
 ニヤリとした笑みを返し、玲は2つのアダプタをコンセントに差し込んだ。
 ホットプレートに油を敷いて、電子レンジにはレトルトのご飯を入れておく。
「まさか……まさかこいつ……」
「そのまさかだ。私の早弁は――焼肉だ!」
 舎弟に出来そうなんて玲に対する評価は、この瞬間、校舎の外まで吹っ飛んだ。

「学校が好き?」
「舐めてんのか、テメー」
 一方の大殺は、何故かメンチ切られていた。
「ヤンキーに美少女、ガリ勉に体力バカ、パリピに陰キャ、実に個性豊かな悪魔が集まる場所だからのう」
「優等生な答えだなぁ、オイ」
「だったら、ワルも個性だよなぁ!」
 どうも優等生だと思われて、目を付けられたっぽい。
「吾輩に手を出そうというのなら、やめておけ。吾輩の100人の舎弟が黙っとらんからのう?」
 やれやれ、と言った様子で首を振りながら返す大殺に、悪魔学生達の目が釣り上がった。
「100人だぁ? フカシこいてんじゃねえぞ!」
「そんなのどこにいるんだ!」
「ふむ。教室に入りきらんかもしれんと思って呼んでなかったが……まあ気にする程でもないか。いでよ、砕魂魔王軍!」
 悪魔学生達の挑発に、大殺は溜息交じりに返して――指をパチンと1つ鳴らした。
 ドドドドッ。
 大量の足音が重なったような響きが、教室に向かって近づいてくる。
 そして、102体の大殺の配下悪魔が、教室に団子になって飛び込んで来た。
 スーパーロボットもギリギリ入りきるこの世界の教室でなければ、教室がパンクしていた所である。

「うわ、どーすんのこれ。ビール足んないわね」
 教室に肉が焼ける匂いが立ち込め、人数はキャパオーバーになる。
 そんな状況でも、ハートブレイカー先生の心配はなんかずれていた。
「んー。一応、先生殴っといた方がいいのかな」
 その様子に、玲は思案する。一応あれ、オブリビオンだし。倒してもケリは付く筈だ。
 だが、玲は今、忙しい。
 周りには、焼肉待ちの悪魔が集まっていた。
「良い匂いがするでしょ? 欲しい? 欲しい? 授業放り出して食べる??」
「欲しいでぇす!!」
「肉くれたら、何でもするぜぇ!」
 これ幸いと、玲は悪魔達を肉で懐柔していく。
「いいぜ、食え食え! 結構持ってきたからお代わりも良いぞ!」
「流石アネゴだぁ!」
「放課後までついてくぜ!」
 玲の肉の大盤振る舞いに、何かもう下僕になりそうな勢いの悪魔までいる。肉の魅力はすごかった。お陰で益々、手が離せない。
「しゃーないね。人格エミュレイト……分身生成開始」
 Duplicate Myself。
 手が離せないなら、増やせばいい。
 玲は自分の分身を作ると、剣を手渡し告げた。
「私ここで食べてるから後よろしく」
『え、ヤだ』
 しかし、反旗を翻された。
『私も焼肉、食べたい』
 人格エミュレイト――つまり、模倣。分身の人格は玲自身と同じで、戦闘力に優れ財力で劣る。そんな分身にとって、焼肉を食べるチャンスは敵を殴るより優先される。
「仕方ないなぁ……じゃあ、食べてからよろしく。ご飯は自分でレンチンして」
「OK」
 分身との間で話が成立し、玲は焼肉の速度を上げるべく、ホットプレートの温度を上げた。

「皆で、遊ぼう!」
 教室のキャパオーバーを導いておいて、大殺はそんな事を言い出した。
「机を片付けてプロレスごっこ……は、バーベキューの邪魔になるな。よし、プロジェクターを使ってアニメの上映会をしようか!」
 焼肉やってる空気を読んで、大殺は考えていたプランの中から1つを選ぶ。
 腹が減ったら焼肉の相伴に預かれるのだから、ここは劇場版の上映なんか良いかもしれない。
「丁度ここにな、吾輩の砕魂王国の伝手で裏ルートで入手した、秘蔵のアニメがあるのでのう」
 何か凄いイケないものな感じの大殺の物言いだが、そこらのレンタルショップでフツーに表ルートで借りたただの新作アニメである。
「裏ルート!」
「秘蔵!」
「こいつぁ、ワルの匂いがするぜぇ!」
 だが、悪魔学生たちはまんまと釣られていた。
「ほれ、ハートブレイカー先生もご一緒に」
「えー。まあいいか」
(「見終わったら授業の時間ほとんどないね……テストしてやるわ」)
 巻き込もうとする大殺に、ハートブレイカー先生は渋々と言った様子ながら、腹の底では打算塗れで席につく。
 そして大殺は、プレーヤーとプロジェクターをセットして――。
 大殺は、忘れていた。
 恐らくは、ハートブレイカー先生も。
 既に玲がホットプレートと電子レンジと言う、瞬間消費電力の高いものを既に2つも使っている事を。そしてそこにプロジェクターとか増えたら、どうなるか。
 バシンッ!
 そんな音が響いた直後、教室が真っ暗になる。
 ブレーカー落ちたので、2限目、強制終了!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

オネスト・ファッション
学校のワルでオブリビオンに引けをとるわけにはいかないな!気合い入れて行くぜ!

『ヤンキー・スタイル』に[早着替え]

指定UCを発動しながら肩を揺らして廊下を進み
登校時間をとっくに過ぎた3時限目ぐらいに教室に登校してやるぜぇ

おっ転校生さんよぉ…いいもん持ってんじゃねーかよ
ハートブレイカーの持ち込んだ飲食物を横取りして貪り食うぜ
あ?何見てんだよテメェら
ハートブレイカーとついでに周りの生徒にもガンを飛ばして[威圧]だぜぇ(後で謝らないとな!)

テストだ?名前を書いて即提出してやる
文句あんの?名前がありゃ採点ぐらいできんだろうがよぉ!
魔法の効果も使ってハートブレイカーの胸倉を掴んで揺さぶり[精神攻撃]だぜ!


瀬河・辰巳
狂った新任教師を演じ、生徒達を外に出して学級崩壊を狙うかな。

やっほー、何か酒持ち込んでる先生がいるって聞いたけど、先輩のこと?あ、俺は他人の人生をブッ壊すのが好きな新しい倫理担当だよ。
偽物ビールとか弱っ。前の学校にいた時は、隣の担任巻き込んで授業中に賭けダーツ&テキーラショットの毎日だったよ?悪過ぎてクビになったけど。

あ、生徒の皆暇だよね?教室にいるとか良い子すぎるし、皆で猛獣達と遊んでおいで!

幻影の子達に少し申し訳ないと思いつつも、グラウンドへ誘導するように走り回ってもらう。

そうそう、女顔の俺をこんなイケメンにしてくれるなんて、「良い人」なんだね、先輩。あとあの話……全部嘘だから(にっこり)


エドゥアルト・ルーデル
妨害しつつワルさを見せつければいいんでござるな

ハァイ注目ー拙者は最近赴任した教師でござる
今日は皆さんに、ちょっと殺し合いをしてもらいますぞ

だって真面目にテスト受けようとしてんだもん、全員不良なのでは???貴様らは…腐ったミカンだ!
ついでになんで周りも腐るかというと腐った果実からは成熟を促すエチレンガスが多量に出るので熟成と腐敗が進むからなんでござるね
ここテストに出…ませんぞ!馬鹿野郎教えた事が出る訳ないだろ!

拙者からの問題はこれ!C3H6N6O6とは何という名前でしょうか!
正解はトリメチレントリニトロアミンでござる!この【大型爆弾】の主成分でござるよ
なので爆破だ!学級崩壊ならぬ教室崩壊でした!



●3限目:理科と社会かな~高まる威厳、損なわれる威厳
 やっと電力が戻った3限目。
 授業はもう始まっていると言うのに、オネスト・ファッション(見せ掛け以上・f31551)は悪びれもせずに肩を揺らして廊下を歩いていた。
「ちーっす。魔武断(マブダチ)学園からの転校生だ」
 そして悪びれもせず、半壊に近い有様になってる教室に踏み込んで行く。
「何だ……あいつ!」
「あんな恰好……見た事ねぇ」
「何かすげぇ……すげえとしか言えねえ」
 オネストを見た悪魔学生達が、語彙力を失っていた。

 ジ・オンリー・プレイス!

 魔武断学園生徒会副会長にしてファッションリーダーとして、オネストが影で密かにしていた流行りのワルの研究成果をここぞとばかりに注ぎ込んで作ったヤンキースタイル。そこに髪から指先に至るまでに洗練された衣装を着こなす為の業が加わっているのだ。
 悪魔学生達の半数近くが、オネストを見ただけで畏怖の念を覚えていた。
「おっ、せんこーよぉ……いいもん持ってんじゃねーかよ」
 そんな視線を浴びながら、オネストは更にワルぶろうと、ハートブレイカー先生に近づいていく。
「あ、ちょっと……!」
「貰うぜ」
 そして、ハートブレイカー先生の手から、今まさに蓋を開けようとしていたビール(っぽいもの)を奪い取ると、ゴクゴクと喉を鳴らして飲み始めた。
「やった……やりやがったあいつ」
「教師からビールを奪っただと……!」
 その行為に、また強くなる悪魔学生達の畏怖。
「あ? 何見てんだよテメェら」
 その視線に、オネストはガン飛ばす事で応えてみせた。後で謝ろう――と内心で思いながら。

「返しなさいよね!」
「やっほー」
 缶を取られてハートブレイカー先生が地団駄踏んでるそこに、気さくな様子で誰かが入って来た。
「何か酒持ち込んでる先生がいるって聞いたけど、先輩のこと?」
 ハートブレイカー先生の後輩みたいな顔で入って来たのは、瀬河・辰巳(宵闇に還る者・f05619)だ。
「学生にビール取られるなんて、弱っ。あ、しかもこれ偽物ビールじゃん。弱っ」
「わー! わー! わー!」
 ズカズカと無遠慮に距離を詰めて、しかも秘密を暴露して来る辰巳を遮るように、ハートブレイカー先生が慌てて声を上げる。
 既に色々あって、威厳が大分損なわれているハートブレイカー先生にとって、ビールがノンアルと判明するのは致命傷になりかねない。
「え、なに。テメェ、魔女せんこーのダチ?」
「そうだよ。他人の人生をブッ壊すのが好きな新しい倫理担当」
 勘違いしてくれた悪魔学生に、辰巳は笑顔でやべえ自己紹介を言い放つ。
「前の学校にいた時は、隣の担任巻き込んで授業中に賭けダーツ&テキーラショットの毎日だったよ? 悪過ぎてクビになったけど」
「クビ……つまり、退学か!」
「ワルに取っては最高のご褒美の1つじゃねえか!」
「すげーワルだな!」
 辰巳の適当な言い分を頭から信じて、悪魔学生達は羨望の眼差しを向けて来た。

●3限目:理科と社会かな~化学は爆発するもの
(「こうなったら、また抜き打ちテストで……!」)
「はい! 抜き打ちテストよ!」
 色々取り戻そうとテスト用紙の束を手にハートブレイカー先生が前に出るのを見て、悪魔学生達がまたか、と頭を抱える。
「ハァイ注目ー」
 そこに、教室の後ろから新たな声と手を叩く音が響いた。
「拙者は今日、赴任した教師、黒ヒゲ先生でござる」
 声と音で注目を集めて、更に更に増えた新たな教師を名乗ったのは、エドゥアルト・ルーデル(黒ヒゲ・f10354)だ。
「今日は皆さんに、ちょっと殺し合いをしてもらいますぞ」
「うわ……」
「今日一やばそうの来た……」
 しれっと物騒な事を言い放ちながら教室を縦断するエドゥアルトに、悪魔学生達もドン引きである。
「だって貴様ら、真面目にテスト受けようとしてんだもん」
 バンバンと教卓を鳴らして、エドゥアルトは悪魔学生達を見回す。
「不良なのはどこ行った! 貴様らは……腐ったミカンだ!」
 エドゥアルトの言葉に、悪魔学生達は一様に驚いた様子で息を呑んだ。
 それもそうだ。
 何だかんだ言いつつも一人残らず素直にテストを受ける不良と言うのも、うん。
「ついでに、なんでミカンがひとつ腐ると周りも腐るかというと、腐った果実からは成熟を促すエチレンガスが多量に出るので熟成と腐敗が進むからなんでござるね」
 カカカカッ――カカッコンッ!
 何故か腐敗の説明をしながら、エドゥアルトはチョークで素早く黒板にイメージ図を描く。
 化学のティーチャーでしたか。
「ここテストに出……ませんぞ!」
「出ないのかよ!」
「馬鹿野郎!」
 出る――と言いそうになって訂正したっぽいエドゥアルトに悪魔学生がツッコミを入れれば、チョーク投げが返って来た。
「教えた事が出る訳ないだろ!」
(「――俺達は何を教わっているんだ……」)
 知らん。
「と言うわけで、拙者からの問題はこれ!」
「あ、ちょっとこら! 勝手にテストを出すな――!」
 ハートブレイカー先生のお株を奪う、黒ヒゲ先生からのテスト出題。
 余りにも準備が良い。恐らくエドゥアルトは、最初からこのつもりで問題用紙を用意していたのだろう。
 そして、その問題は。

 ――C3H6N6O6の化学式が表すものの名前を答えよ。

 ガチの化学問題だった。
「本当に教わってねえのが出て来た!」
「こいつも同類だったか!」
「せんこーなんて、こんなもんだチクショウ!」
 実は教えた事が出る――と淡い期待を抱いてしまった悪魔学生もいたようで、教室の一部から非難の声が立て続けに上がる。
「うるせえぞ、テメェら!」
 真ん中の席に座っていたオネストが、それを一喝して黙らせる。
「ワルのテストってもんを、見せてやる」
 言うなり解答用紙に何かを書き込むと、オネストは椅子を鳴らして席を立った。
「終わったぜ」
「どれどれ……って、白紙じゃない!」
 オネストが突き付けた解答用紙を見たハートブレイカー先生は、目を丸くして声を上げる。
 名前欄に、オネスト、としか書かれてない。
「こんなの零点よ、零て――」
「何? 文句あんの? 名前がありゃ採点ぐらいできんだろうがよぉ!」
 突き返そうとしたハートブレイカー先生の胸倉を逆に掴んで、オネストはガクガク揺さぶり脅しをかける。
「教師を……脅してる!」
「アイツ、マジか……!」
「やっぱすげえ、すげえよ……!」
 オネストのその姿に、また語彙力を失う悪魔学生達。
「答えがないのに、採点出来るわけないわよ!」
「へえ。じゃあ、先輩は正解知ってるんだよね?」
「え……?」
 オネストに反論を試みるハートブレイカー先生だが、辰巳がしれっと突っ込んできた横槍がいい感じに致命的で、答えに窮してしまう。
 先生、答えを知らないテストで突っ込むと自爆するのは1限目にもあったパターンだよ。気づいて。
「仕方ないでござるなぁ」
 溜息交じりに、エドゥアルトが何かを持ち上げる。
 まあ、出題者だ。そりゃあ正解を知っているに決まって――。
「正解はトリメチレントリニトロアミンでござる! この【大型爆弾】の主成分でござるよ」
 ――ん?
「はい?」
 突然の爆弾に、揃って首を傾げるハートブレイカー先生と学生一同。危ない気配を感じて、オネストと辰巳はそそくさと廊下に避難した。
「なので爆破だ!」
 ――なんでだ!
 というツッコミの声は、爆音にかき消された。
 光と音と爆炎。
 半分密閉空間みたいな教室に、エドゥアルトが振り下ろした爆弾の起こした現象が重なって炸裂する。
 壁破壊やら、スーパーロボットの重量やら、100人増えたキャパオーバーやら、色々と傷んでいた教室にとってその爆発は、最早致命的だった。
 壁が吹っ飛び、床が抜け落ちる。

●3限目:理科と社会かな~そろそろ科目の意味がない気がしてきた
「イテテテ……」
「なんてヤベーせんこうだ、あのヒゲ……」
 そんな爆発を浴びても、悪魔学生達は瓦礫の中から元気に立ち上がって来た。
「皆、無事だね。流石、ワルを目指す生徒達だ」
 そこにしれっと戻って来る、辰巳。
「これなら、俺からのテストも答えて貰えそうだね」
 そう言えば、辰巳先生はまだテストしてなかった。
「さっきから見てたけど、皆良い子すぎるし、皆で猛獣達と遊んでおいで!」
 辰巳が言うと、教室の中に大きな影がどこからともなく現れた。
 イノシシ、オオカミ、サル、クマ――森のお助け部隊の獣たちの中でも、猛獣と分類される獣達。
「何でクマ出てくんだよぉ……」
「わけわかんねぇ……」
「なんなんだこのワル……ワルなのか……?」
 どの猛獣も幻影なのだが、爆発にやられた直後の混乱もあるのか、悪魔学生が猛獣たちに向ける視線は恐怖の色しかない。
「一緒に外に行っておいで」
 幻影の子達にそんな視線を浴びせてしまうのを少し申し訳ないと思いつつ、辰巳は悪魔学生とハートブレイカー先生にも猛獣たちを嗾ける。
「ど・こ・が! 倫理よ! かわいく&かっこよく&もっとワルくなあれ」
 慌ててハートブレイカー先生が放った魔法は手が滑ったのか、悪魔学生達だけでなく、辰巳にも届く。
 避けずに受けてみれば、どうやらスーパーヒーロー化の魔法だったようで、辰巳が鏡を見てみると、自分とは思えない凛々しい顔がそこにいた。
「そうそう、女顔の俺をこんなイケメンにしてくれるなんて、『良い人』なんだね、先輩」
「なんでよぉぉぉ!?」
 にっこりイイ笑顔で辰巳が嗾けたクマの幻影に追われ、ハートブレイカー先生は悪魔学生達と共に、グラウンドに追いやられていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シャーロット・キャロル
どうも新任教師のマイティガールです!担当はスーパーヒロイン!
ここの先生が魔法でスーパーヒロインにすると聞いてやってきましたよ!

まずはハートブレイカー先生の魔法を見物。女生徒達がスーパーヒロインに……

……違う、違います!なんですかこの適当にマント付けただけの姿は!あれですかマント付ければスーパーヒロインとでも言う気なんですか!
いけませんこれはいけませんよスーパーヒロインというものを教えなくては!

一同を席に座らせて授業です!ガタガタ言うのは私のマキシマムマイティパワーで黙らせますよ!
スーパーヒロインたるものマントも大事ですがコスチュームも大事なんです個性的でなおかつ魅力溢れる(長いので以下省略)


御堂・茜
起立!礼!着席!!
なんですのこの風紀の乱れは!
正義の使者として許せませぬ!

わたくしは学園の風紀を正すべく
私立戦国学園から派遣された
正義の熱血教師・御堂茜ッ!
熱血教師らしく赤ジャージと竹刀で武装し
不良の皆様を更生へ導くべく
熱血指導を致します!
無論煙草とビールは没収ですわ!

早速ですが本日の一時間目は体育!
二時間目も体育!
五時間目まで全て体育ッ!
UCで各分野の専門講師をお呼びしましたわ!
体を鍛えれば気合いでT大合格も可能ッ!
覇気覚悟勇気根性元気情熱を身につけ
正義に目覚めるのです!
まずは校庭100周
ハートブレイカー先生もご一緒に!

良い汗をかいた所で普段の姿に戻り攻撃
スーパーヒーロー教師御堂参上ですッ!


夜久・灯火
授業を妨害すれば良いんだね?
それなら、謎の新任教師として行かせてもらうよ。

まずは相手の魔法対策という目的で「魔法を無効化するスーツ」を創造して着用しよう。
後、攻撃が飛んできたらシールドドローンの【オーラ防御】で防ぐよ。
そして給食配膳ワゴンを押しながら教室に乱入。

はいどーも、黒猫先生の登場だよー。
抜き打ちテストよりも早給食を食べないかな?
今日の給食はカレーだよ。

って感じに配膳ワゴンに【料理】して用意したカレーの鍋を開けて辺りにカレーの匂いを漂わせるよ。
後は【言いくるめ】に【催眠術】を乗せてカレーの方に誘導して授業を妨害しちゃおう。

欲望に正直にって言うなら、抜き打ちテストよりも美味しいご飯でしょ?



●4限目:体育(含むスーパーヒロイン)と給食~1日が終わ……らない
 色々あって教室が物理的に崩壊したが、グラウンドはまだ残っている。
 学べる場所があって、教師がいるのなら、授業は終わらない。
「待っていましたわ!」
 って言うか、ここに来てまだ新たな教師が悪魔学生達を待ち構えていた。
「少し前から見ていましたが、なんですのこの風紀の乱れは! 誰ですか教室を爆破したのは! 正義の使者として許せませぬ!」
 赤ジャージ姿で竹刀を構えた、如何にも体育教師然とした御堂・茜(ジャスティスモンスター・f05315)は、しれっと一部猟兵が行った悪事を擦り付ける。
「次から次へと……今度はなに!」
「わたくしは学園の風紀を正すべく、私立戦国学園から派遣された正義の熱血教師、御堂茜ッ!」
 大分お疲れの様子のハートブレイカー先生に、茜は毅然と言い放つ。
「無論、煙草とビールは没収ですわ!」
「あ、ちょっと! やめて! かーえーしーてー!」
 爆発に巻き込まれ、猛獣に追われながらもハートブレイカー先生が死守していたビールと煙草(どっちも偽物)が入った鞄が、茜に容赦なく没収される。
「お、おい、あれって……」
「ああ、間違いない……」
 その姿に、言動に。
 そして茜の腕に巻かれた腕章の『風紀』の2文字に。
 悪魔学生達は、かつてない戦慄を感じていた。
「あの黒ヒゲが、今日一やべえと思ってたが……」
「もっとやべえの来たな……」
「この魔界学園に、風紀委員なんていないんじゃなかったのかよ!」
 委員じゃなくて教師なのだが、そこは些細な問題であろう。
 なにせ風紀と不良は、天敵の間柄なのだ。
 そういうものである。
「次は不良の皆様です! 更生へ導くべく熱血指導を致します!」
「ほら来たぁ!」
「更生なんか、されてたまるか!」
 正義と風紀に燃える茜の視線に、悪魔学生達はくるりと背を向け逃げにかかる。
「かわいく&かっこよく&もっとワルくなあれ」
 その逃走を助けようと言うのか、ハートブレイカー先生が、本日何度目かの変身魔法を乱発した。

「ちょっと待ってください!!!!!!!!」

 そこに響く、新たな声。
「どうも新任教師のマイティガールです!」
 ツインテールと赤いマントを翻し、グラウンドに飛び込んで来た新たな教師はシャーロット・キャロル(マイティガール・f16392)こと、マイティガール。
「担当はスーパーヒロインです!」
 えっと……それ科目なにかな?
 体育で良いかな?
「ここの先生が、魔法で学生をスーパーヒロインにすると聞いてやってきたのですが……違う、違います! 魔法少女と悪の女幹部は専門外ですが、駄目ッ! 全然、駄目ですッ!」
 魔法少女化もヒロイン化も悪の女幹部化もひっくるめて、女性もの衣装に変身させられた悪魔学生達に、シャーロットの力強いダメ出しが告げられる。
「え?」
「いや、そんなこと言われても……」
 唐突な乱入からの力強いシャーロットの言葉に、悪魔学生達は逃げるタイミングを逸してしまう。
「特になんですか! スーパーヒロインのこの適当にマント付けただけの姿は! あれですか! マント付ければスーパーヒロインとでも言う気なんですか! いけませんこれはいけませんよ!」
 その間も、シャーロットの熱弁は続いていた。
 さて。
 ここにいるもう1人の教師ってのが、茜である。サムライエンパイアの武家の姫でありながら猟兵になり、UDCアースで『特撮』『スポ根』『勧善懲悪』、辺りの文化に触れて感銘を受けた挙句サイボーグ化に踏み切ってしまった茜である。
「素晴らしいですわッ!!!」
 この展開に、茜の心が震えない筈がなかった。
「ヒロインは衣装も大事! 全くその通りだと思います!」
「わかっていただけますか!」
 ガシッ!
 茜とシャーロットの間で、熱い握手が交わされる。
「スーパーヒロインというものを教えなくてはと思うのです! ガタガタ言うのは、私のマキシマムマイティパワーで黙らせてでも!」
 マキシマムマイティパワーと言うのは、シャーロットが先の爆発でグラウンドに吹っ飛んだままになっていた壁の残骸(結構大きい)を、片手でひょいと持ち上げてみせた超強化された怪力の事である。
 これでぷちっとやられたら、さすがに悪魔学生でも病院送りになるかもしれない。
「心の教育は御任せしますわ! わたくしは、身体に正義を叩き込みますので!」
 だからと言って、茜はストッパーになりそうにない。

 ――やっべぇの増えたぁ……。

 勢いで意気投合してしまったシャーロットと茜に、悪魔学生達の心はなんやかんやで1つになっていた。

 ガラガラガラ。
 そこに、台車を押している様な小さ目で硬い車輪の音が近づいてくる。
「はいどーも、黒猫先生の登場だよー」
 黒猫先生を名乗ってそこに現れたのは、スーツ姿の夜久・灯火(キマイラの電脳魔術士・f04331)だった。ガラガラと言う音の正体は、押していた給食配膳のワゴンだ。
「抜き打ちテスト続きで疲れたんじゃない? そろそろ、早給食を食べたくないかな?」
「早給食!」
「そうか、まだ4限目だったな……!」
「色々あって……あり過ぎて忘れてたけど」
「今食べれば、早給食ってワルが出来るぜぇ!」
 灯火の言葉に、悪魔学生達は自分達が目指していたものを再認識する。
 そうだよ。ワルを目指す不良だよな、君達は。
「ねえ、どうだろう。スーパーヒロインも正義も良いと思うけど、先に給食にしても?」
「良いですよ。スーパーヒロインもご飯は大事です」
「腹が減っては戦は出来ぬと申します」
 問いかけにシャーロットも茜も頷いたので、灯火はワゴンの中で最も存在感を放つ寸胴鍋の蓋を開ける。
 瞬間、食欲をそそる香辛料の効いた香りがグラウンドに広がった。

 ぐぅぅぅぅっ×沢山。

 その香りに、悪魔学生達の腹の虫が大いに刺激される。
「今日の給食はカレーだよ」
 灯火の一言に、悪魔学生達もわあっと湧き上がった。
 カレー。
 それは食べ物であり、飲み物でもある料理。ライスにもパンにも合うし、肉も野菜も一皿で摂れるし、香辛料も少なからず使っているので疲れた体にも効く。
「大盛りで頼んます!」
「俺も、大盛り!」
「はいはい、並んで並んで」
 カレーに誘われ無警戒に殺到してきた悪魔学生達に苦笑しつつ、灯火はカレーをよそいだす。
「ちょっとあなた。遅いわよ!」
「……はい?」
 そんな灯火の背中に、ハートブレイカー先生が何か言って来た。
「加速してきびきびと配膳しないと。お腹好かせたワルっ子が暴動起こしたらどうするの――って事で、かっこよくしてあげるから、がんばりなさい!」
 ハートブレイカー先生の悪あがき、もとい、要らないおせっかい。
 パァンッ!
「……へ?」
 しかし灯火に放ったハートブレイカー先生の変身魔法は、大半が弾かれた。
「ああ……魔法を使って来るのはわかってたから『魔法を無効化するスーツ』を創造しておいたんだ」
 灯火が給食担当の先生なのにスーツ姿だった理由がそれである。
 先生っぽさを出す為ではなかった。
「ふ、ふん。けれどその無効化……不完全みたいね! 見てみなさい! 尻尾を!」
 そう。灯火が創造したのは、スーツ。その外から出ているふさふさの尻尾だけは、ハートブレイカー先生の変身魔法を浴びて、星型の飾りがちょっとついていた。
「少しでもスーパーヒロイン化してるなら、加速も少しはしてる筈よ。さっさと配膳して――」
「その程度でスーパーヒロイン化ですと……?」
 ちょっと勝ち誇ったハートブレイカー先生だったが、その言葉は、シャーロットのスーパーヒロイン熱に更なる油を注ぐ事にもなっていた。
 その結果――。
「良いですか! スーパーヒロインたるもの、マントも大事ですがコスチュームも大事なんです! 個性的でなおかつ魅力溢れるコスチュームでなければいけません! それにはまず――」
 給食の終わりを待てなくなったシャーロットのスーパーヒロイン講座が、給食と同時進行する事になったのである。

 それから――1時間以上が過ぎていた。
「……以上が、スーパーヒロインと言うものです! 判りましたね!」
 何故かシャーロットがスーパーヒロインに至る経緯にまで話が及んだスーパーヒロイン講座が、やっと終わりを迎えたのは。
「や、やっと終わった……」
「スーパーヒロイン化……無理……こわい……」
「なんでこの私まで……!」
 給食の時間どころか昼休みまで食い込んで続いたものだから、悪魔学生達も巻き込まれたハートブレイカー先生も疲れ果てている。
 だが――まだ教師が1人、残っている。
「起立! 礼!」
 休み時間もなしに、茜が声を張り上げ竹刀を打ち鳴らした。
「早速ですが本日の1限目は体育! 2限目も体育!」
「「「ちょっと待ったぁ!」」」
 何かがおかしい茜の言葉に、さすがに複数の悪魔学生から声が上がる。
「いやいや待て待て、本当なら今、昼休み」
「次は5限目」
「アンダスタン?」
 そう。もうお昼過ぎている。なのに今更――1限目?
「時計はそうですね。ですが、わたくしはまだ授業をしておりません」
 茜は竹刀を逆さに構えて柄頭に手を置いたまま、目を閉じて告げる。
「わたくしが授業を始める時。それが1限目なのですッ!」
「え……怖……」
 茜理論に、悪魔学生達は宇宙を背負ってそうな顔になり、ハートブレイカー先生もドン引きである。
「……うん?」
 黒猫先生な灯火に視線が集まったのも、当然のことかもしれない。
「ボクは給食担当だから。皆、頑張ってね」
 それを笑顔で受け流して、灯火は軽くなった配膳ワゴンを押して去って行った。
「それにもう、我が藩一の飛脚の飛右衛門殿や、我が藩一の相撲取りの五輪須殿など、各分野の専門講師をお呼びしてますわ! だから5限目まで全て体育でございます!」
 それを見送った茜が、再び力強く言い放つ。
 ――百万一心。
 一芸に秀でた家臣や領民を呼び寄せる、マイナーと言えど大名家の姫と言う身分をフル活用した召喚術。
 茜はもう、5人の補佐役を呼び寄せてしまっていた。
「体を鍛えれば、気合いで有名大合格も可能ッ! 覇気覚悟勇気根性元気情熱を身につけ、今こそ正義に目覚めるのです! まずは校庭100周! さあ、ハートブレイカー先生もご一緒に!」
「だから何で私までー!?」
 容赦のない茜の体育指導に、ハートブレイカー先生も巻き込まれていた。

 いつしか、空はとっぷりと暗くなっていた。
 夕陽はもう、一部破損した校舎の向こうに沈みかけている。
「も……ダメ……無理……」
 色々燃え尽きた様子のハートブレイカー先生が、ぐったりと力なく倒れている。
 100周ランの間に、バテて転んだところを背中から踏まれまくったりもしていた。1限目でやられた催眠が完全には抜け切ってなかった背中を。
 文字通り、精魂尽き果てたハートブレイカー先生が消えていくのも時間の問題だろう。
「あらまぁ……まだスーパーヒーロー教師御堂が参上する6限目が残ってますのに」
「私も、まだ語ってないスーパーヒロインポイントがあったのに」
 茜もシャーロットも残念そうだが、そこまで着いて行けるのは、悪魔学生達にもいないだろう。

 後日――このクラスの悪魔学生の大半が、自主退学したそうである。
 不良は無理、別のワルの道を探すと言って。

 以上が、魔界学園のとある1クラスが、たった1日で物理的にも精神的にも教室崩壊を起こした記録の、一部始終である。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年05月06日


挿絵イラスト