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銀河帝国攻略戦⑭~焦眉の急

#スペースシップワールド #戦争 #銀河帝国攻略戦

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●グリモアベースにて
「急ぎお願いしたいのは、潜入破壊ミッションなの」
 開口一番、ホーラ・フギト(ミレナリィドールの精霊術士・f02096)はそう話した。
 現在、解放軍の尽力により、帝国旗艦『インペリウム』めがけて快進撃を続けている。
 だが帝国側も、ぼんやりと待ってくれたりはしない。
「帝国の『白魔』艦隊……特攻艦隊が強襲してくるのよ」
 仕掛けてきた『白魔』艦隊は、かつての解放軍を苦しめたと伝えられる艦隊でもある。
 編成は高速艦のみで、白騎士ディアブロ直属艦隊とのことだが――実態は特攻艦隊だ。
「特攻してくるのは、自爆可能な高速輸送艦よ。それも、強襲用の兵力を満載してる」
 帝国側の戦法は判りやすい。
 高速輸送艦が有する驚異的な破壊力を持つ自爆装置を、こちらの艦隊内部で起動。
 戦場が混乱したところへ強襲兵力を送り込み、解放軍を蹂躙する。
「強襲のため乗せられた兵も、輸送艦も、全滅覚悟なのよ」
 言わば決死の作戦だ。『白魔』艦隊の兵は言葉通り命を捨てて、攻撃を仕掛けてくる。
 そして解放軍には、この作戦への対応策が無い。
「……でも、私たちには転移の術があるわ」
 グリモア猟兵による転移先は、移動中の高速輸送艦の内部。
 輸送艦がスペースシップ艦隊に到達してしまう前に、搭載された自爆装置を起動する。
 それが本作戦の目的だ。
「輸送艦には無数のオブリビオンがいるわ。熾烈な戦いになるはずよ」
 あまりにも数が多いため、敵を殲滅するのは不可能だ。
 また戦闘や艦内移動に時間を割く間にも、次から次へと敵が集まってくる。そうなるとコアルームへ向かうことすら、叶わなくなるだろう。
 そのため、艦内の敵を迅速に撃破しつつ、コアルームへ急ぐ必要がある。
 到着してしまえば、あとはコアマシンと直結された自爆装置を起動するのみだ。
「行き帰りについては任せて。必ず輸送艦へ送り届けるし、必ず連れ戻すわ」
 輸送艦へ転移した後のことだけ考えてほしいと、ホーラは念を押す。
 端的に説明を終えて、ひと息吐くこともせずホーラが微笑んだ。
「転送の準備はできてるわ! どなたから向かっていただけるかしら?」


棟方ろか
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です!
 1フラグメントで完結し、「銀河帝国攻略戦」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
 当シナリオでは『⑭『白魔』艦隊』を攻略します。

 お世話になります、棟方ろかと申します。
 シナリオの主目的は『高速輸送艦に搭載された自爆装置の起動』です。
 時間をかければかけるほど、敵が大挙して押し寄せてきて、装置の起動は疎か、コアルームへの到達も困難になります。
 単に「迅速に倒す」「全速力で急ぐ」のではなく、敵を撃破しながらコアルームへ素早く到達するための具体的な行動やアイディア、ユーベルコードの駆使が重要となります。

 それでは、皆様のプレイングお待ちしております!
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第1章 集団戦 『タイプ・メデューサ』

POW   :    触手の一撃
単純で重い【液状触手】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    強化増殖
自身が戦闘で瀕死になると【(強化版)タイプ・メデューサ】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
WIZ   :    石化粘液
【液状の触手】から【石化粘液】を放ち、【石化】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

鳩麦・灰色
自爆作戦して来たんは、敵が焦ってるんか、それとも単に物量を利用しただけか……
まあどっちでもええわ

悪いけどそれ、ウチらが止めさせてもらうで


基本は【ダッシュ6】【クライミング5】で壁も使って駆け抜ける
更に相手のUCによる地形破壊すら【地形の利用9】で利用し進む

道を塞ぐ敵は【武器改造6】鉄パイプによる【衝撃波6】での【範囲攻撃5】で倒すか【武器落とし5】で触手を叩き落とし通過

敵攻撃には【見切り5】【第六感5】【残像2】【視力2】更にUC利用で回避重視
敵攻撃予兆は可能なら味方にも伝える

もし石化を受けても【呪詛耐性1】で被害軽減させる

「先に行かせてもらうよ!」
「石化は厄介やなー」

アドリブ協力歓迎


遠呂智・景明
アドリブ、他の参加者との連携絡み歓迎

さて、速きこと風の如く。さっさと片付けるか。
転移早々【風林火陰山雷 風の如く】、目に付いた敵に突っ込んで攻撃だ。
そっから先は【2回攻撃】、【鎧無視攻撃】を用いて寄ってくる敵を片っ端攻撃しつつ、【殺気】を放ち敵を怯ませる。弱ってる敵を狙って【傷口をえぐる】攻撃である程度道を付けるか。

敵がUCを使ってきたらその地形破壊を【地形の利用】で活用させてもらう。無闇矢鱈にぶっ壊しゃ、敵も動きにくくなるだろ。
回避しつつ、無事な場所を【見切り】敵を振りきって先を目指す。

こあましん室に着いたら自爆装置を起動。おさらばってな。

ほかの連中と協力も、余裕がありゃ狙ってみるか。


ジロー・フォルスター
俺は大して足も速く無いからな
自分の能力で仲間をコアルームに到達し易くしてみるぜ

他の猟兵に同行
【世界知識・情報収集】で敵が集まる直前を狙って、俺は艦橋を目指してみる
狙いは敵戦力の分散
移動して自爆なら、指揮や操縦に関わる場所も落とされたくない筈だ

「ま、俺一人じゃどうにもならんが、分かってて放置はできんだろう」

敵を【おびき寄せ】るのが目的だから、【地形の利用】で防戦しやすい場所に陣取る
重い攻撃は【見切り】『禍祓陣』
【ロープワーク】で銀の鞭を操り【カウンター・高速詠唱・属性攻撃】で敵の触手を氷漬けにして【鎧砕き】

聖痕の回復力とオーラ防御、各種耐性の継戦能力で耐える

「頼んだぜ。早く本命を落としてくれよ」


玖・珂
命を懸けて目的を達せんとする覚悟には感ずるところがある

私も身命を賭してお相手しよう
片目に咲かせるは藍色の花

艦内に管や突起があれば其処へ早業で糸雨や黒爪を引っ掻け
ジャンプ、クライミングで敵を飛び越す
足元の方が空いておれば体勢低くダッシュですり抜けるぞ

隙間なく敵が詰まっているなら2回攻撃を
高速詠唱で身を通せる範囲だけ敵を凍らせ
黒爪で砕き道を作る

まともに遣り合ってはジリ貧だ
戦闘は極力避けるぞ

コアルームが見えたなら羽雲を放ち
自爆装置を起動させるぞ

既に仲間が先行しているなら道拓く支援をしよう

覚悟をもって解放軍に合流してくれた者達の想いを
裏切る訳にはゆかぬだろう


鵜飼・章
急ぐのは苦手なんだけどそうも言っていられないか
やるだけやってみよう

殲滅が不可能なら敵の動きを鈍らせ
味方が強行突破しやすくしようか
転移後すぐUC【現在完了】を使用
【早業】で虫、特に蜂を大量に呼び
攻撃を命じて艦内中に放つ
屋内なら逃げ場はないだろう
まともに相手をするのは避ける

コアルームまでの道中は
UC【相対性理論】で呼んだ隼に乗り急ぐ
敵や障害は全て突進で弾き飛ばし
攻撃は【見切り】でかわす
止めをさす事には拘らない
鴉には敵の通る経路を探らせ可能なら封鎖していく
麻痺中の敵や死骸を手早く押しこむ
道に迷った時も鴉の偵察を活用

歴史は繰り返す、じゃないけど
故郷の地球の戦争の話を思い出すな
偉い人をおしおきしないとね



●転移
「俺は艦橋を目指してみる」
 ジロー・フォルスター(現実主義者の聖者・f02140)の発言に、猟兵たちは耳を疑った。
 彼いわく、狙いは敵戦力の分散だという。もちろんジローも、闇雲に目的地を艦橋としたわけではない。
 察した玖・珂(モノトーン・f07438)が、口を開く。
「……操縦周りか」
「ああ、それに指揮系統も集まってるはずだ。落とされたくないだろうな」
 作戦に変更は無くとも、上から連絡を受ける可能性もある場所だ。
 そこへ侵入者が向かっていると知れれば、護りのため艦内の敵も戦力を割かざるを得ない。
 彼が派手に動けば動くほど、他の猟兵たちは、逸早くコアルームへの到達が叶う。
「ま、俺一人じゃどうにもならんが、分かってて放置はできんだろう」
「……恐れ入った」
 遠呂智・景明(さむらいおろち・f00220)が応える。ジローに集う視線には受容が認められ、ジローは飄々とした眼差しを返す。
「まあ無茶だけはしないように」
 鳩麦・灰色(音使いおおかみ・f04170)が淡々と告げてもジローの態度は揺らがず、意志の強さが見て取れる。
 あとは頼んだと片手を振り、ジローは彼らへ背を向け走り出した。
 コアルームまで突破する難度が、少しでも軽減するように。
 そう考えるのは鵜飼・章(シュレディンガーの鵺・f03255)も同じだ。まもなく彼が招いたのは無数の蜂。
「議論は、既に終わっている」
 柔らかく告げた声に、余分な音は無い。
 そうして呼ばれた蜂たちの羽音が、通路に充満する。章はかれらへ攻撃を命じた。痺れをもたらす蜂の群れが、彼の命令に沿って艦内を飛び回る。
「急ぐのは苦手なんだけど」
 そうも言っていられないか、と章は肩を竦めたのち、音なき音で口笛を吹く。
 何処からともなく現れたのは、全長が章の二倍ほどある黒い隼だ。広げた双翼で羽ばたけば、艦内の塵埃を跡形もなく飛ばしてしまいそうで。
 続けて、章が友として常にゆく鴉たちを呼び集める。
 飼い馴らされた鴉たちが、章の指示を受け先導をはじめた。分かれ道の先も、敵が潜みそうな区画も、鴉が報せてくれるはずだ。
「僕はこれで行こう」
 先駆ける蜂を追い、隼と章は通路を風のように突っ切っていく。
 さて、と喉を震わせたのは景明だ。行くべき道は定まっている。
「さっさと片づけるか」
 仲間と顔を見合わせ、走り出した。
 すでに巡回中だったオブリビオンの群れが、侵入者を消そうと押し寄せている。それでも、広い通路を埋め尽くすほどではなく、隙間を縫っていくことが叶った。
 当然、黙って見過ごす敵ではない。放たれた触手は真っ直ぐ宙を滑り、景明の足を狙う。
 しかし景明の揮う剣術に比べれば、触手はあまりにも遅い。
「手緩いな」
 端的な一言を景明が発した頃には、触手は数個の塊に分割されていた。
「――速きこと風の如く」
 そして景明の真正面。触手を扇状に広げ行く手を妨げるオブリビオンに、短く息を吐いた。
 斬り捨てるは大蛇でなくとも、彼にとって阻む者に変わりなく。だから景明は懐へ飛び込む。
「一瞬だ」
 彼の名を冠する大蛇切が、一閃。邪なる過去を、目にも留まらぬ速さで斬り伏せた。
 間合いを詰めた敵へ連続で斬撃を喰らわせる。表情無く淡々と熟した景明は、斬り捨てた身が朽ちゆく末期さえ見届けない。先刻まで阻んだ存在を後背に置き、先を急いだ。
 そのすぐ傍では。
 ――命を懸けて目的を達せんとする覚悟には、感ずるところがある。
 壁や天井を構成する管へしなやかな鋼糸を通し、珂は物思いながらも、群れの頭上を颯爽と抜けた。
 着地に合わせて触手を伸ばしてくる個体を横目に、再び彼女の身はジャンプする。そのまま壁から突き出た信号機械へ黒爪を引っかけ、壁を蹴る。背丈のある敵だが、壁や天井を利用すれば、悠々と飛び越せた。
「……私も、身命を賭してお相手しよう」
 彼女の片目には、藍色の花が咲いている。美麗な花だ。花は彼女自身を養分とするも、速やかな移動と糸雨による攻撃を可能とする。だからこそ、敵陣を飛び越した彼女の足を止められるものは居ない。
 そしてナビゲートする機器などが無くとも、先行く仲間の――章と隼の痕跡がある。珂はそれを辿っていく。
 灰色の動きは俊敏だ。得意とする走りは触手を振り払い、武器の先を壁の突起物へ引っかけて、壁伝いに駆けていく。
 飛び込んできた触手による強打も、退くのではなく脇へ跳ねて避けた。単純ながらも重い打撃に、今し方まで灰色の居た床が抉れる。窪みは敵にとっても避けたいらしく、迂回して灰色へしがみつこうとした。
 だから彼女は、それを肘で突く。
「まだ甘いね」
 不敵さを口の端に乗せて、灰色は肘を引き戻しながら敵を蹴った。正確には、蹴りながら敵の頭上へ飛んだ。
 脚を絡めとり床へ引き摺り落とそうとする触手が、何本も伸びてくる。
 しかし灰色の表情は平時と変わらず、動きも揺らがない。なぜなら。
「掻い潜れ、三番!」
 発した音は灰色の意志に沿って、音波を打ち出す。目に見えぬ音波は彼女の盾となり、センサーとなり、連なり襲い来る触手の波を察知し、避けていく。
 だから彼女は捕まらない。

●タイプ・メデューサ
 巨大な隼に乗って通路を飛翔する章は、端に置かれたコンテナを羽や風で払い、阻む敵には体当たりを続けた。とどめを刺す目的は念頭になく、ただ蜂が向かう先へ先へと道を切り開く。
 だが、オブリビオンも黙って通過を許しはしない。
 蜂の群れに刺されながらも液状の触手を伸ばし、別の一体は触手から粘液を放つ。
 隙間を縫うように飛ぶ隼は、その巨大な翼を触手で弾かれ、均衡を損ねる。ぐらりと傾きながらも飛行を続け、しかし翼を粘液に侵された隼の動きは鈍り、通路を曲がり切れずに壁へぶつかる。
 隼が衝突から庇うように章を放ったため、章はすんでのところで床へ転げ、事なきを得た。だが隼は全身を強く打ち、床へ崩れ落ちてしまう。
 オブリビオンの狙いは、章よりも隼へ注がれた。素早く移動できる種だと、敵も理解しているのだろう。足枷のように触手で隼を絡め、翼にかぶさり重しとなる。
 命を共有するゆえに、隼が受けた傷は章のものとなった。章は胸を押さえながら立ち上がり、隼の状況を見遣る。蜂が追撃しているが、騒ぎを聞きつけ、部屋らしき区画や別の通路から敵が集まってきた――ひとり頭上高くから先行していたため、対応が追い付かない。
「っ、く……!」
 傷ついていくのは隼だが、蝕まれているのは章の生命力だ。
 蜂の麻痺毒で痺れさせつつ、章も得物で隼の救助を試みる。
 そのとき。
「大丈夫か!?」
 声が届いた。よろめいた敵の頭部と足のつなぎ目へ、声の主――景明が刀を突き刺している。章の蜂が痺れさせた個体を貫いた刃は違わず黒い塊を断ち、振り抜けば完全に命尽きる。
「客人の邪魔は罷り成らねぇよ」
 刀身にこびりついた液体を払い、景明は再び床を蹴った。
 続けて灰色が、振り回した鉄パイプによる衝撃波で、奇妙な頭を叩き割る。砕けた液状の塊が転がる中を進んでも、すぐに別の個体が道を阻んでくる。幅が広い通路ゆえに駆け回ることで回避しながらも、蛇行は限りある時間を消費した。
 もったいない、と灰色は微かに唇を尖らす。
 急ぎ壁際へ寄り、攻めてくる触手は叩き落した。相手は無数の触手を持つ敵だ。休まず次の触手が伸び、武器を振るうだけでも時間は過ぎていく。
 ――にしても、自爆作戦して来たんは、敵が焦ってるんか、それとも。
 疾駆する身に降りかかるオブリビオンの一撃を弾き、時には見切っていく。
 考えを巡らせようにも、灰色へ攻撃を仕掛けてくる敵は、瞬く暇さえ許さない。
「……まあ、なんでもええわ」
 ぽつりと零したのは独り言。誰に聞かれるでもない言葉は、当然、敵にも聞かせない。
 三番を冠するユーベルコードで異形の動きを予測し、歩数を増やしながらも先へ向かう。
「奥に行かせてもらうよ!」
 言葉に違わぬ速さで、彼女は紫の髪をなびかせ颯爽と駆ける。
 巨体ではあるがぶら下がっている幾つもの足は細めだ。低く構えた姿勢で珂が突っ切った。
 すると今までいたところよりも、細い通路に出た。喩えるなら、大通りではなく脇道といったところだろう。
 敵の目を避けて選んだ分岐だが、既に侵入を覚られた後だ。警戒のため動きだしたオブリビオンが忙しなく動き回っており、猟兵たちが走る細めの通路も例外ではなかった。
 おかげで膨らんだ頭部が、みっちりと通路に詰まっている。艶めく物体が蠢いて映り、猟兵たちは不快そうに眉をひそめた。
 隼ともども僥倖を得た章は、傷ついた隼を撫でる。
 そこへ、偵察のため飛ばしていた鴉が、漸く章の元へ戻ってきた。
「この先の三叉路、右経由が一番近道みたいだよ」
 優しげな物言いは失わぬまま、章が告げる。
 少し先で仲間たちが頷くのを確認してから、彼は隼へと声をかける。
「……それでも、やるだけやってみるよ。だよね」
 問い掛けてみれば、キュイィ、と力強く隼が鳴いた。まだまでやれると言わんばかりに、瞳も輝きを宿している。
 章は隼に跨り、再び宙をゆく。仲間が向かう先へ行くため、蜂の群れを連れて。
 片目に咲いた藍の花が枯れぬ裡に、珂は糸雨を放射し障害を削いでいく。放たれたしなやかな鋼糸は、連撃により異形の足を引っかけ、大きな頭部をどかすように傾けさせる。
 すぐさま珂の唇が紡ぐのは、測り難き氷の常。理に沿い、素早い詠唱で編み出した術式が異形を凍らせる。
 ――まともに遣り合ってはジリ貧だ。
 凍てついた敵は、五指を覆う黒爪で砕く。珂はそうして、仲間と自身の身が通せる幅を作った。
 新雪を思わせる色に染まった羽織を靡かせて、景明は仲間が開いた先へゆく。
 奔る真白は、敵の眼にも鮮烈に映るのだろう。彼めがけて触手が伸びた。行かせまいと叩きつけてくる触手は、その細身から想像もつかない威力で、景明の足元を叩く。すんでのところで跳ねて避けた景明は、強打により崩れた床板を、つま先に引っかける。
 ――無闇矢鱈にぶっ壊しゃ、動きにくいだろ。
 口の端に笑みを湛え、彼は外れた床板を蹴り上げる。
 眼下から飛び掛かってきた鋭い硬さに、液状をより集めたかのような敵は大きくのけぞり、その隙間を景明が駆け抜ける。

●囮
 黒がゆく。聖者の本質を秘めた黒が。
 輸送艦の中は、冷たい白と銀色で壁や床が構成されているものの、ジローの姿が浮くことはない。兵力として搭載されたオブリビオンの群れが、つやつやと黒く蠢いているからだ。
 敵を通路に集わせたのは、他ならぬジローだ。道すがら彼が発見したのは、艦内連絡用のパネル。敵の目を盗んでそれを操作し、彼は艦内の配備を大まかに把握した。
 さすがに許容量があるため、すべてを誘き寄せる無茶はしない。
 だが、仲間の方角へ進もうとしていた敵の前に姿を晒し、引き付けることには成功している。
 そして機材が入ったコンテナを積み、通路を狭めたおかげで、ジローを付け狙う敵の群れは渋滞を起こしていた。
 ――大して足も速く無いからな、俺は。
 ジローは艦橋が間近にある区画を選んだ。帰還の転移も叶う距離、そして何よりコアルームからは遠い場所。
 彼の思惑通り、艦橋を奪われるのをよしとしないオブリビオンの群れが、釣られて襲ってきた。
 殲滅は不可能とされるほど、夥しい数の敵が搭乗している高速輸送艦だ。
 しかしジローは、仲間たちの元へ敵が多く流れるのを避けた――無謀にも思える彼の行動は、功を奏した。
 壁を背に、しかしダクトという区画からの脱出経路を確保しながらも、細い通路を抜けて来ようとする敵は、彼自身が押し返す。
 直後、液状の触手が振りかぶられた。
「やらせるかよ」
 一度目を見切り、空ぶって床を叩いた触手はジローの銀の鞭が絡めとる。ひんやりと鞭から伝う温度が、触手を凍らせていく。パキパキと音を立てて凍てつく魔の力が触手を這い、本体へ届いた。
 すかさず、氷に閉ざされた敵の身を砕く。破砕した氷と液状だった敵の身が重なり、さらにジローの元への到達を困難にさせる。
 そして彼はすぐに聖痕の力を解放し、禍祓陣を展開した。守りは固められるが、身動きが取れなくなる。だからこそジローはこの区画を選んだ。
「……頼んだぜ」
 他の猟兵たちがいるであろう方角へ言葉を放る。
「本命を落としてくれよ。早めにな」
 皮肉めいた物言いを常とするジローも、聞き届ける相手が居ない今だけは、真っ直ぐに紡ぐだけだ。

●コアルームへ
 粘液が灰色にかかる。直撃は免れたが飛沫が掛かり、足首から先が石と化した。
 突如として重みを増した足は、彼女自身が想像した以上に動きにくい。
「や、厄介やなー」
 けれど一部で済んだのが幸いだった。片方を軸にどうにか振り上げた脚で、覆いかぶさろうとする巨体を蹴り飛ばす。
 一方、疾走する勢い侭に踏み込んだ景明は、逆袈裟で一体を断ち切り、身を翻して今度は別の個体へ横一文字に斬りつける。破竹の勢いで繰り出される術に、迷いも躊躇いも無い。
 ぶよぶよと揺らぐオブリビオンの胴体が割け、合間から見えるのは通路の先。そこにもまた同じ姿かたちをした敵が攻め寄せている。
 ――どんだけ居んだか。
 強襲のための戦力を載せた船とはいえ、まるで分裂していったかのように止め処ない。
 けれど、考える間も景明が脚を止めなかった。
 刺突してきた触手を見切って、脇をすり抜ける。先にゆく章と隼の弾いた敵が転がってこようものなら、景明の刀の錆と化した。
 戦闘を避けて走る珂の身にも、横道や部屋から次々と敵が湧いた。強襲のため、兵力をどのぐらい用意していたのか知れて、珂は目を細める。
 ――覚悟をもって解放軍に合流してくれた者達がいる。
 掴みかかろうとする触手を糸雨で斬り落とし、珂は通路を進む。
 相手も状況を理解しているのか、移動の要となる脚部を狙ってきた。
 行く先々に、石化の能力を秘めた粘液が飛散される。
 珂もまた、壁や天井を伸びる管へ鋼糸をひっかけて飛び跳ね、粘液を避けていく。
 ――その想いを、裏切る訳にはゆかぬだろう。
 珂の黒き眼に、通ってきた際に見たものとは異なるドアが映る。円形の外枠は緩やかに回転を続け、内枠が固く閉ざされている。だが内枠を成している硝子のような素材から、ドアの向こう――室内が透けて見えた。
 鮮烈な印象を残すコアマシンと、そこへ繋がれた爆破装置。
「見えた……!」
 声を張り報せた灰色も、同じ景色を目の当たりにしていた。
 猟兵たちの目的地――コアルームがいよいよ姿を現したのだ。
 灰色が、遮る液状の触手めがけて鉄パイプを振り回す。
「悪いけど」
 ぶん、と風を切る音と共に生じた衝撃波が、群れを一瞬だけ狼狽えさせた。
「ウチらが止めさせてもらう」
 宣言を響かせた灰色に、周囲の敵の眼が向く。
 その間、コアルームへ続くドアのロックを、隼に乗って先に飛んでいた章が発見していた。通路を駆け抜ける速さはそのままに、章は隼から飛び降り操作パネルに触れる。難しく考えずとも手を滑らせるだけで、解除は叶った。
 そして敵の一体を長杖で弾き返した珂が、その杖を投げる。物体に突き刺さる勢いで、長杖が通路を駆けた。
「――羽雲」
 彼女の紡いだ名に応じ、飛翔する長杖が白く輝く猛禽へと姿を変えた。
 ドアが完全に開くよりも早く、眩い軌跡の尾を引きながら、白の猛禽がコアルームへ飛び込む。一刻の猶予もない状況、駆ける鳥は猟兵たちの足が室内を踏むより一瞬早く、ひときわ目立つスイッチに触れた。
 ビィィィィッ――!
 けたたましい警報音が鳴りわたると同時に、艦内の照明が真っ赤に明滅し始める。
「爆破装置が作動しました。速やかに作戦区域へ移動してください」
 艦内に警報アナウンスが響く。
「なるほど、作戦区域への移動、な」
 文言の意味を察して、景明が唸る。
 自爆強襲作戦のため用意された輸送艦に、安全と避難の文字はインプットされていないらしい。
「此方も急ぎ向かわねばなるまい」
「ああ、この船ともおさらばってな」
 白の猛禽を呼び寄せた珂が告げ、景明が応じる。そうして猟兵たちはコアルームから離れていく。目指すは転移が叶う地点。
 高速輸送艦の自爆による解放軍の危機がまたひとつ、猟兵たちの行動により免れた。
「歴史は繰り返す、じゃないけど」
 閉じれば瞼の裏に蘇る、章がいつか耳にした戦争の話。
 故郷で起きたという戦の光景をありありと思い浮かべたところで、章は眉根も寄らず、溜息も零さない。ただ、歴史に刻まれた戦が何をもたらし、何を失ったのかを知識として理解はしている。彼にとって、戦とはそういうものだった。
 滾らす情も流涕も無く、けれど章の喉を抜けた想いは、確かな言葉となる。
「偉い人におしおき……しないとね」
 奔りながら零す章の言葉に、猟兵たちも顔を見合わせ、頷いた。

 やがて猟兵たちの身は船を脱する。
 そして解放軍がいる宙域よりも遥か先で、自爆の機能を備えた高速輸送艦は宇宙の塵芥となった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月17日


挿絵イラスト