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銀河帝国攻略戦⑭~一死報国の星間飛行

#スペースシップワールド #戦争 #銀河帝国攻略戦

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●命を賭しても
 艦内は静寂で包まれていた。
 スクリーンに写る星の海を見つめ、前に進む。
 彼らに与えられた任務は、ただ一つ。
 ――『伝説の解放軍』の中心で華と散れ。
 行けば戻れぬ片道航路。しかし、帝国の悲願の為にも必ず果たさねばならぬ。
 悲愴な覚悟を決め、艦は進む。
 たとえ誰もが、星の海に散ろうとも…。

●先手必勝
「立て続けの作戦で、おつかれのところ申し訳ないっすけど…火急の事態っす」
 作戦会議室にもなっているグリモアベースの一角にて。作戦地図をプロジェクターで投影しながら、レグルス・メネアが呼びかける。
「みんなの頑張りのおかげで、難攻不落の『エンペラーズマインド』を攻略できたっす。目指すは旗艦『インペリウム』ってところなんすけど…」
 タブレットを操作し、痛ましそうな顔をしながら作戦地図の一点を拡大する。そこには、帝国軍側から解放軍に向かう艦隊が表されている。彼我の差は歴然。その艦隊規模で、解放軍の本拠地に挑むのであれば本来は叶わないはずではあるが。
「『白魔』艦隊。とんでもない規模の自爆装置を積んだ、自爆特攻の死兵の艦隊っす。これが解放軍のところまでたどり着いたら、被害甚大、死傷者がでたうえに戦局がひっくりかえされるっす」
 タブレット型のグリモアを操作し、レグルスが皆の前に立つ。
「解放軍にたどり着くまでに、『白魔』艦隊の自爆装置を作動させるのが、アタシらの任務っす。自爆装置があるコアルームに直接みんなを送り届けられればよかったんすけど、不確定要素が多すぎて直接は無理みたいっす」
 輸送船の外観の映像をうつし、船尾の側を指差し付け加える。
「不甲斐なくて申し訳ないんすけど、まずは船尾側に転送させてもらうっす。それで、艦首側のコアルームを目指して貰いたいっす。艦内には当然敵兵が控えてると思うんすけど…強行突破するのか、潜入するかはみんなにまかせるっす」
 帰りは、位置ビーコンを慣らしてくれたら、なにがあってもアタシが迎えにいくっすといい、発信器を皆に配る。
「自爆装置の積まれた敵地への潜入。危険な任務になるっすけど…どうか、みんなの力を貸して欲しいっす。」
 必ず、みんなで生きてもどるっすよ、と頷き、集まった猟兵の手をとった。


八幡の人
 お世話になっております、八幡の人と申します。
 今回は、特殊シナリオになります。

●シナリオについて
 今回は、自爆装置を積んだ艦隊への潜入ミッションです。
 端的に、こちらにたどり着く前に自爆装置を作動させ、自滅させようという作戦です。
 目指すのは、コアマシンに直結した自爆装置があるコアルーム。
 道中は敵軍の兵士が控えています。殲滅が目的ではありませんので、強行突破するか潜入しながら向かうかは猟兵の皆様次第です。
 自爆装置の起動が始まり次第、グリモア猟兵が転送で猟兵の皆様を連れ出します。

●プレイングについて
 どういった方法でコアルームにたどり着く、破壊する、もしくはコアルームに向かう仲間を支援するなど。
 熱い想いやプレイングをぶつけて下さい。
 熱いプレイングを、お待ちしています。
 それではどうぞ、宜しくお願い致します。


 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「銀河帝国攻略戦」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
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第1章 集団戦 『ミサイルファイター』

POW   :    衝角突撃
【機体前方に装備された対艦衝角】が命中した対象を切断する。
SPD   :    ファイターレーザー
【速射式レーザービーム】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    スターシップキラー
【レーダー波】を向けた対象に、【対艦ミサイル『スターシップキラー』】でダメージを与える。命中率が高い。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

死之宮・謡
んん?小難しい話は苦手だよ?自爆装置探して破壊とか出来る気しねえしなぁ…折角だし倒せない量の敵を相手に囮として暴れまわるかねぇ?良いねぇ囮って言っても好きなだけ暴れ回って壊しまくって殺し尽くす…私の趣味嗜好とも合致するし問題ないね?
周りはどうせ敵だらけだし、理性ブッ飛ばしても構わないよねぇ?「呪詛」と「生命吸収」を先に掛けといて「怪力」だけ使って殺しまくるかね?本当は「見切り」とか「属性攻撃」とかも使いたいけど…そんな思考が可能だとは思えんシなぁ…
詰まりは此の私は何時も通り好き勝手殺してれば作戦完了ってことで良いかな?
ソレジャア征クヨ…【最終血統装具"狂"】テンカイ…。


ベルベナ・ラウンドディー
ったく、次から次へと!



【迷彩・変装・ダッシュ・逃げ足】
突撃者用の支援を展開
物陰の利用や暗中飛躍などの隠密行動が基本
…変装…は艦内設備の擬装かな?


【情報収集・罠使い・破壊工作・だまし討ち・時間稼ぎ・念動力】
…まず警報装置は殺さないとな
念動力で機器の内部破壊を行い無効化しつつ前進
隔壁装置は無いか?侵入者や火気遮断用とかの。
艦内設備の利用も考慮し、敵の追走や部屋の封鎖なども狙う


止む無い交戦は【串刺し・鎧砕き】で対処
残骸にはリーベルコード…宣告内容は【消滅する】ことで痕跡を消す
…数が多いほど重要なフロアのはずですが…
…念動力でテレパシーって出来ましたっけ?
妨害装置が無いなら連絡が可能かもしれませんね


ラザロ・マリーノ
艦内は敵で一杯か…ひょっとして船の外壁を伝っていけば、一気にコアルームに近づけるんじゃねえか?
問題はコアルームの場所が分からないことだが、まあコアってくらいだから真ん中辺にあるだろ!

転送されたら、手近なハッチを開錠して外に出るぜ<鍵開け>。
構造可変体鱗を外壁の色に変化させたうえで、船の凹凸を利用し外部から見えづらいルートを通って船の中央方面に向かう<迷彩/地形の利用/忍び足>。
中央付近まで来たら、UC「グラウンドクラッシャー」で外壁を壊して内部に侵入。

あとは、走り回ってコアルームを探すだけだな<ダッシュ/聞き耳/情報収集>。


トール・テスカコアトル
「自爆、かぁ」
怖いよね
トール、変身すると寿命が縮むって怖いもん
それだけ大事なものために戦ってるって事なんだ
「……変身!」
ニギ=アラに勇気を誓う
トールは、戦うの怖い
大事なものために戦う人の前に立ちはだかるなんて本当に怖い、けど!
「トールにも、護りたいものはある!」
正面突破だ!賢くは無いかもだけど!全員を!
「ブレイブ・スマーーーッシュ!!」眼前全て薙ぎ払う高エネルギー波
自爆なんて待たずに倒すくらいに!本気で向き合うよ!
「ブレイブ・パーーーンチ!」
あらゆるモノを砕く鉄拳!

トールの勇気は衝角より硬く、ビームより速く、ミサイルよりも強いんだ!
「必殺!ブレイブ・キーーーック!!」
勇気は勝つ!ブイ!



●三々五々のスニーキングミッション
 艦は静寂に包まれていた。それは統率された船員達の普段からの静けさなのか、それとも…死を覚悟した艦の末期の静けさなのか。
 そんな艦の艦尾の一室に、4人の影が降り立つ。周囲を見渡せば、行軍食の入った箱や機器が詰まったコンテナ等が積まれている。資材庫か何かかと、ベルベナがあたりをつける。
「潜入には成功したようですね。しかしまぁ、次は自爆艦ときた。ったく次から次へと…帝国軍は厄介事を運んでくる」
「自爆かぁ…」
 怖いよね、と。翡翠色の髪を、厄介事だとかくベルベナに、おずおずとトールが応える。
「俺達の仕事はコアマシンルームにまずたどり着く事だが…どういく?難しいことはまかせるぜ」
 殴って解決できない仕事は苦手だとラザロがからりと告げれば、謡が同意するように頷きをひとつ。
「難シイ話ハ…苦手。私ハ、囮ニナッテ、暴レマス」
 その間に部屋に向かって下さい、と謡が赤い瞳で皆をみる。
「あ、じゃあ俺も…」
「ラザロさんまでいったら、詰めで人手が足りなくなります。私達と、隠れながらコアルームに向かって下さい」
 謡の提案に自分もと声をあげかけるラザロを、ベルベナが制する。
 艦の機関部であるコアルームには多くの敵軍がいるものと予想される。あまり、人手を分散しすぎるのも良くはない。
「謡さん、危険な役割ですが…任せても大丈夫ですか?」
 ベルベナの問いに、謡はなんとでもないというように頷き一つで返す。
「あの…謡さん。無理は、しないでね?」
 一人で囮をかってでる謡を心配そうにトールがみつめる。
「危険な仕事だけど。自爆とか、捨て鉢じゃなくて。ちゃんと…みんなで、生きて帰ろうね」
 臆病な心に、けれど決意を込めてトールが皆につげる。

●死之宮・謡(狂い果てし王・情緒不安定の狂戦士・f13193)
「ソレデハ、先ニイク」
 そういって、私は仲間に手を振り資材庫の扉をあけ廊下をかけ始める。
 小難しい話とか苦手だよ。自爆装置探して破壊とかできるきもしないし、するきもないしね。私は別に破壊願望があるわけじゃない。
 廊下を目立つように駆け抜ければ、程なくして監視カメラが私の姿を捉える。見つかるように走ってるしね。
 艦内に鳴り響くサイレン。程なくして空気を裂くような音と共に、宙を駆ける機械兵の団体が現れる。
 ミサイルファイターとかっていったけ。あの先端での突撃は威力がありそうだ。
 でも、まだ少ない。『殺戮』を楽しむには、まだまだ数が足りやしない。
 つかず離れず、敵の突撃とレーザーをかいくぐり私は敵を引きつける。いなして駆ける。数分も逃げ回った頃に、広い部屋へとたどり着く。
 格納庫かね?数もそこそこ集まってきたし、ここなら…存分に殺し尽くせそうだね。
 振り返れば敵の数は二十程。さすがに艦内全部の敵は喰いついてくれなかったけど、まあ悪くない。
 コアルームに向かうのは残りの三人にまかせて…好きなだけ暴れ回って、壊しまくって殺し尽くす。
 私の趣味嗜好とも合致するこのシチュエーションは悪くない。周りには味方は誰もいやしない。孤立無援、孤軍奮闘。
 つまりは、いつも通り気にせず好き勝手殺してれば作戦完了ってことだ。周りを気にしなくて良いのは楽で良い。
 黒塗りの大薙刀を構えれば、私の身体を中心に、じわりじわりと空間が呪詛に浸食され始める。体中の装備に刻んだ呪文呪言が世界を苛むように悲鳴をあげる。
 ――ただただ。壊して、殺し尽くせと。
 私の身に宿る熾火を、殺戮衝動にかえて燃やし始める。炎が強さを増す毎に、意識が殺戮の朱に染まっていく。
 理性的な思考ガだんだんトハがれおちていく。暴レるジュン備はととのッタ。
「ソレジャア征クヨ…【最終血統装具”狂”】テンカイ…」
 目ノ前ニ敵ガセマル。敵ノ名前ハナンダッタカモウドウデモイイ。私ノ目ノ前ニキタ。
 動クナラ敵ダ。コノ空間デ生キテイル者ハミンナ敵ダ。
 ダカラ、大薙刀ヲフルイ、壊シタ。
 ――コワスコワス、コワシテコワシテコロスコロスコロスコロスコロスコロスシツクス
 ツンザクヨウナ金属音ニ破砕音。格納庫ニ機械ノ悲鳴ガ響キ渡ル。
 ――ココチヨイ
 死闘ハマダ、始マッタバカリ。

●ラザロ・マリーノ(竜派ドラゴニアンのバーバリアン・f10809)
 遠くで戦闘音が鳴り響いている。謡が上手いこと囮やってくれてるみたいだな。
 さて、これからは俺達がコアルームに向かう番だが…。
 周囲を見渡せば、有事に艦外に出るためのハッチが目にとまる。
「謡が囮になってるとはいえ、艦内は敵で一杯…ひょっとして、艦の外壁を伝っていけば、一気にコアルームに近づけるんじゃないか?」
 これこそ天才的な閃きだと自画自賛したいところ。
「待って下さいラザロさん、高速で移動している艦ですよ。艦外での移動は、振り落とされたら戻れなくなるから危険ですって」
 慌ててベルベナが俺を止めるが、問題無い。そのところの対策もばっちりだ。
「大丈夫だ。ようは飛ばされなければいいんだろう?俺の鍛え上げられた筋肉なら問題無い」
 呵呵と笑う俺とは対照的に、ベルベナは眉間に指をあてている。どうした、悪いものでも食べたか?
「それじゃあ二手にわかれるか。俺は外から、二人は中からだ。どっちかがたどり着けば、最悪なんとかなるだろ!それじゃあ行ってくるぜ!」
「ちょっと、待っ…っせめて命綱を…っ」
 別れ際にベルベナが何かいっていた気もするが、ハッチをあければ聞こえるジェット音で聞き取れなかった。
 ハッチの開けっぱなしはまずいから、速攻で外にでてハッチを閉める。
 見渡せば高速で流れる星の海。艦から置いていかれそうになる身体を、自慢の腕と脚で支える。
 なんだ特等席じゃないか。とはいえ、眺めているばかりにもいかない。
 身体の竜鱗を変化させ、艦の模様にあわせて偽装する。これなら、ぱっと見、監視カメラとかでもわかんねえだろ!
 身体を賦活し歩み始めれば、流れに逆らい前へと進む。
 さあ、それじゃあ素晴らしい肉体と筋肉を愚直に活かしたミッション。略してスニーキングミッションを始めようぜ。
「鍛え上げられた肉体があれば、だいたいのことは解決するってな!」

●ベルベナ・ラウンドディー(ドラゴニアンのバイク乗り・f07708)
 颯爽と艦外へ飛び出していくラザロさんを止める間もなく、私が伸ばした手が空をきる。
「ラザロさん…いっちゃったね…」
 バーバリアン的思考に眉間を指先をあてていると、トールさんがぽつりと言葉を漏らす。
 行ってしまったものは仕方ない。二人でコアルームまでたどり着いて、念動力で位置情報をラザロさんに適宜送るようにしましょうか。
「トールさんは、潜入とかは得意なほうですか?」
 謡さんが囮になってくれてるとはいえ、艦内の敵は多数。二人で難局を乗り越えなければいけないこの状況、お互いにできることを確認しておくべきでしょう。
 同じドラゴニアン同士、多少の気安さを感じて問えば、おずおずとトールさんがこちらを見上げて応える。
「ええと…トールは、勇気を出して、戦うのが…得意?」
 前衛思考のバーバリアンが多すぎる!頭を抱える私を誰が責められよう。
 とはいえ、悩んでいる時間もない。コアルームまでの道は、私がなんとかしようと腹を決める。
「ったく。道中の障害は、私がなんとかします。トールさんは一緒についてきてください」
「うー、うん。頑張ってついていくから…宜しくね」
 せめて素直な子なのが救いですかね。
 不安そうにしている様子がみてとれる。自爆特攻してくる連中に囲まれた艦内だから、不安を覚えるのも仕方ないですかね。
「トールさんには、コアルームについたら頑張ってもらいますから。トールさんの『勇気』、頼りにしてますよ」
 励ますように背中をぽんと叩けば、こくりとトールさんが頷く。
 それを確認して、謡さんがでていった所と別の扉をあけ、静かに通路へと歩み出す。
 変わらずサイレンは五月蠅いぐらいに鳴りっぱなし。今の間に、先へ進みましょう。
 自爆装置を積んでいるとはいえ、本来は輸送艦。通路もそこそこのスペースが確保されている。
 それは見渡しがいいのと同義。通路の角を物陰からみれば、警報装置と監視カメラを兼ねた機械がみえる。
 わかってはいましたけど、科学力が高い世界は厄介ですね。
「まずは、厄介な警報装置を無力化しないと」
「どうするの?」
 意識を集中して、警報装置の内部を想像する。機械は精密であればあるほど派手に壊す必要は無い。
 内部の基盤に的を絞り、念動力を解放し音も無く部品をねじ曲げる。装置のランプが消えた事を確認し、トールさんを連れて物陰から躍り出る。
 同じように何度か警報装置を無力化し、私達がたどってきた道から敵がこないように隔壁を見つけては降ろし蓋とする。
「おお…ベルベナさん、凄いね」
 トールさんが感嘆の声をあげているのを横目にみながら周囲の状況を探っていると、廊下の角からせまる駆動音を耳にする。
 後ろに逃げ場はない、くそっこれは鉢合わせる。覚悟を決めて私は直刀を抜刀する。避けられないなら、気づかれる前に仕留めるしかない。
 突然駆けだした私にトールさんが驚くけれど、今は構っていられない。タイミングをはかり、刀を突き出せば空をかける哨戒機が飛び出してくる。
 だから、突き入れ、刻みつける。高速で刀を振り抜き、竜言語で綴られた竜紋を刻みつける。
 遺骸を残すわけにはいかない。だから…宣告する、貴方は今から。
「『消滅』する」
 駆動部をやられ、力を無くした哨戒機が何も存在しなかったかのように消滅する。潜入はこれだからめんどうだな。
「お待たせしました。それじゃあ、先に進みましょう」

●トール・テスカコアトル(ブレイブトール・f13707)
 一緒にコアルームに向かうベルベナさんの手際の良さに、目を丸くする。
 みんな凄いなぁ…。謡さんも、ラザロさんも。それぞれができることを頑張ってる。
 敵ばかりの戦場で、どうしてみんな平気でいられるんだろう。
 助けてくれる仲間の少ない場所に、不安にかられそうになるトールを、ベルベナさんが手をとるように誘導してくれる。
 ものすごく永く感じる潜入を続けているうちに、厳重にロックのされた扉の前にたどり着く。
 時間を確認すると、実際には10分もたっていなかった。
「ラザロさんに位置を送っておきましたが、多分ここがコアルームですね。謡さんのほうは、思念を送っても手応えがありませんでしたが…」
 敵の本拠地。この先に、敵がいる。緊張に、トールは両手をあわせて握りしめる。
「先程も言いましたけど。中の様子次第では、私一人で押し切れるかどうかわかりません。頼りにしてますよ、トールさん」
 いきますよ、と告げるベルベナさんが、扉のロックを斬り壊し扉が開かれる。
 中を見渡せば、広いコアルームにひしめく兵士と機械兵の群れ。
 悲愴な覚悟をきめて自爆装置を護る視線に、身体がすくむ。
 …怖いよ。
 トール、変身すると寿命が少しずつ失われるって…怖いもん。
 ここにいる人達はみんな。そんな怖さを抱えて、ここにいる。
 それは、命に替えてでも成し遂げたい、大事なものの為に戦っているって事。そんな人達と、戦いたくはない。
 でも…と。ベルトに納められた石を握りしめる。
 怖い。大事なものの為に戦う人達と対峙するなんて…本当は怖い。
 でも…!
「トールにも、護りたいものはある!」
 トールの、精一杯の勇気を。時間も世界も越える…ありったけの勇気を!
 握りしめたニギ=アラが赤く赤く輝く。それはきっと、トールの勇気の色。
「…変身!」
 トールの声と勇気に応えるように、ニギ=アラの光がトールを包む。手には無骨な巨大な斧。服は勇気を力に変える鎧へと変わる。
 力がわいてくる。意思を貫く力が、身体に冴え渡る。
 ありったけの勇気を振り絞るしかできない。賢くはないかもしれないけれど。それでも、みんなを守る為に、やりとげる!
「正面突破だ!ブレイブトール!」

●ベルベナ・ラウンドディー
 さっきまでおどおどしていた少女が、勇ましく敵陣に突っ込んでいく。
 あれがヒーローってやつですかね。ああくそ、格好良いじゃないか。
 ここに来るまでは潜入に小細工に気をまわしてましたが、ここぞって時の特攻は嫌いじゃない。
 馬鹿みたいに敵の数がいますけど、仲間が意思を押し通すというのであれば。
「しょうがない、やってやりますよ!」
 直刀を片手に敵陣へと切り込んでいく。全てを相手にする必要はない。どちらかがコアマシーンを破壊するか、自爆装置のスイッチを起動し、自滅を促せば良い。
 赤く燃えるトールさんに降り注ぐレーザーとミサイルを、刀ひとつで斬り捨てる。一つ、二つ、三つ…くっそ、数が多いな!
 ビームで敵をなぎ払うトールさんも頑張ってはいるけれど、コアマシーンまであと一歩が足りない。
 その時…マシンルームの天井が轟音と共に破砕され…人影が落ちてきた。
「は?!」

●ラザロ・マリーノ
 敵の監視をかいくぐり。艦の外壁を伝い、艦の中央あたりにたどり着く。コアルームっていうぐらいだから、だいたい真ん中ら辺にあるだろ!
 何かないかと周囲を見渡していると、ベルベナの声が脳裏に響く。うぉ、テレパシーとかってやつか?
 二人はもうコアルームにたどり着いたみたいだな。もらった位置情報を確認すれば、今俺がいるところのだいたい真下。
 ならば取るべき道はひとつ。手甲をはめた拳をがつんとあわせ、飛び上がり艦橋に逆さまに脚をつく。
 右腕を構え、推進力をためるために脚を曲げる。俺の鍛えあげた身体がみしりと音を立てる。敵がいるなら殴るまで。問題があるなら殴るまで。
「壁があるなら…殴り壊すまで!!」
 極限まで力を溜めた脚で艦橋を蹴り込み、艦の外壁へと飛びこむ。
 壁がある。だから、砕いた。
 防壁を1枚抜き通路がみえるが、止まらない。勢いそのままに、2枚3枚と、文字通り全力で壁をぶち破る。
 ひときわ分厚い4枚目の壁をぶち抜いた時に、驚くベルベナの顔がみえた。
「一番良いときに間に合ったみたいだな!」
 そのまま敵陣の真ん中に拳を振り下ろせば、機械兵が四方へ吹き飛ばされる。道はあけた、ならば後は任せれば良い。
「やっちまえ、ヒーロー!」

●トール・テスカコアトル
 突然のラザロさんの突入に驚いたけど、これで道が拓いた。
 謡さん、ベルベナさん、ラザロさん、みんな有り難う!
 チャンスは絶対に無駄にしない!拳にありったけの勇気をこめて、走り出す。
「トールのパンチは…あらゆるものを砕く、鉄拳!!」
 すがる敵兵を振り払い、コアマシーンにたどり着く。みんなを守る為に…絶対に、打ち砕く!
「ブレイブ…パーーーーンチ!!」


●スニーキングミッションコンプリート
 赤く輝く拳がコアマシーンにたたき込まれ、激音が響き渡る。
 コアマシーンは火の手をあげ、艦を支える主機能が停止した。それに伴い…。
『コアマシーンが破壊されました。敵戦力排除の為、自爆装置を起動します。起動まで、あと300秒…』
 自爆装置の起動を確認し、位置情報を知らせるビーコンをそれぞれ取り出す。
「作戦は完了しました、もどりますよ!」
 巻き込まれる前に逃げるぞ、というベルベナの指示にビーコンを押せば、三人の身体が艦からかき消え転送される。

 グリモアベースに戻り、三人が安堵の息を吐く。が、すぐに人数がたりないことに気づく。
「う、謡さんがまだ…?!」
「自爆装置の起動は聞こえてたはずだが…ビーコンを押せない状況になってるのか?」
 緊迫した状況に、トールが焦りの声をあげる。
「助けにもどるにしても、カウント開始で既に5分をきってるぜ。戻っても間に合うかどうかすらわかんねえしな」
 頭をかくベルベナに視線が集中する。
「…だああ、もう!」
 三人の決断は早かった。

●死之宮・謡
 目の前には、壊れて潰れた機械兵の屑の山。こいつらが生き物だったら、文字通り血河ができてたわね。
 理性を失ってからどれだけの機械兵を潰してきたか数えてもいない。
 理性も怪我も一切省みず、ただ殺戮のみに集中して潰してきた。思った以上に艦内中から集まってくるもんだから、楽しくなっちまったな。
 仲間の三人が寡兵でコアマシーンを破壊できたのは、謡の奮闘によるものが大きかった。
 しかしながら、満身創痍。血統装具も、連戦につぐ連戦に悲鳴を上げはじめている。理性が戻ってきたのも、そのためかね。
 周りを見渡せば、自爆装置が起動したというのにまだまだ囲まれるぐらいに敵がいる。どうせ死ぬのに、猟兵の一人も逃がさないってことかね?使命に忠実なことで。
 しかしまぁ…しくじったね。理性とばして激戦してたせいで、ビーコンが壊れちまってる。あの三人はもう戻ってるだろうし…。
 自力でなんとかしたいところだけど…仕方ねぇ。最後の最後まで、殺戮を楽しもう。
 重たくなった身体に渇をいれ、大薙刀を振るう。私自身の血も吸った呪具が、歓喜とも狂気ともつかない呪詛を零す。
 危機的な状況でも、この殺戮が楽しいと思う。
 私は、これしか知らないのだから。
 楽しみながら、殺し殺されよう、と私は笑みを零す。
 自爆装置のカウントが60秒を切った時に…しかし、それは聞こえてきた。

●手を取り合って
「振り落とされないように、しっかりつかまってろよ!あと、謡さんと飛ぶためのビーコン、絶対に離すなよ!」
 ベルベナの空色のカウルの大型宇宙バイクが、輸送艦の通路を風の様な速度で駆け抜ける。後ろには、トールがしがみつくように騎乗。
「謡さん、囮になってくれたから、きっと反対の艦尾のほうにいる、はず!はやく、はやく!」
「はずかよ!見落とさねーようにしっかりみてろよ!」
 ベルベナの操作でV-RAXXが唸りを上げる。Gを感じるほどのコーナーリングに、しかし二人はうめき声ももらさず謡を捜し続ける。
「いたよ!あっち、格納庫!」
 機械兵の残骸をたどり走れば、格納庫で機械兵と激戦を繰り広げている謡の姿が目に入る。
 しかし、謡を囲む機械兵の数は多く、厚い。
「このまま突っ込むぞ!」
 スロットルを全開にすれば、響きわたるイグゾースト音に機械兵の数機が二人をみる。
 バイクの上から、ベルベナが直刀で敵を斬り伏せ、トールがブレイブビームで敵を蹴散らしていく。
『自爆装置起動まで、あと20秒』
 辿り着けない距離ではないはずなのに、時間がないのがもどかしい。
 と…格納庫の側壁が轟音を立ててぶち破られる。格納庫の中の空気が無重力空間に流れ込む勢いに、機械兵の多数が飲み込まれ、艦外に吹き飛ばされていく。
「またかよ!」
「ははは、慣れた!!」
 先程と同じく、外壁を急ぎ伝いショートカットしてきたラザロが親指を立てる。
 しかし、これで道は開けた。だから、バイクの上から飛び出した。
 絶対に、仲間を見捨てないという決意に、トールの勇気が奮い立つ。
 ――トールの勇気は衝角より堅く、ビームよりも速いんだ!!
「必殺!ブレイブ・キーーーーーック!!」
 赤い閃光が敵陣を跳ね飛ばし、突き抜ける。
 とうとう抜けた先に、謡の驚いた顔がみえる。
『あと、10秒。9,8,7、6…』
「謡さん!!つかまって!」
 その手をとるように、謡が赤く染まった手を伸ばす。
 手が触れあう瞬間に。謡が笑っているような顔が、トールには見えた気がした
『4、3,2、1…』
「飛ばせ!!」

●死之宮・謡
 それは、生き残った事への安堵の笑みだったのか、また死に損なった事への苦笑なのか。
 それとも…助けにきた仲間達の必死な姿に、何故か笑みがこぼれたのか。
 朧気な意識の中で私には判別はつかなかったけれど。
 きっとそれは、悪い思いでは、なかった、はず。

●ミッションコンプリート
 輸送艦の爆発に、新星の誕生とも錯覚するような光が星の海を包み込む。艦も帝国兵も欠片も残さず吹き飛ばし。
 後に残ったのは、静寂のみ。
 たったの4人で任務をこなし、全員が生きて戻ってきた。
 『みんなで、生きて帰る』という約束を守り。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月17日


挿絵イラスト