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謎の恐竜博物館

#UDCアース #グリモアエフェクト

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 UDCアース。西暦2022年。4月某日。日本。S県S市。某所。
 そこは山間に豊富な水量を湛える雄大な湖である。
 山々の稜線は深緑の木々に彩られており、自然に充溢する生命力が多種多様な生物たちを育んでいた。
 季節により千変万化の様相を見せる風光明媚な景色から、観光地としても有名な場所である。
 湖の畔には遠方からの観光客の多くが宿泊するという老舗の温泉旅館があった。
 旅館の駐車場には、宿泊客のものだろう県外ナンバーの乗用車や、旅行会社が所有する観光バスが数多く停められている。
 巨大な鏡のように麗らかな春の日差しを照り返す、静謐な湖面を行き来する遊覧船からは、観光客の弾けるような笑い声が響いていた。
 湖に観光に訪れた多くの旅行客たちにとって、その日は人生を鮮やかに彩る素晴らしい思い出として、記憶に留められる事になる筈である。
 しかし、このまま事態が推移すれば、遠からず人々の精神と記憶には恐怖の二文字が癒えぬ傷跡として刻まれる事になるのであった。
 その惨劇を予知したのは、白毛白面の千年狐狸精の化身であるグリモア猟兵、葛葉・御前(千年狐狸精・f36990)である。
 葛葉御前が予知した未来において、万古の時代の覇者の生態を模した邪神の眷属たちが、湖の観光に訪れている旅行客たちを襲撃していたのだ。
 最大全長は約13メートル。最大体重は約9トン。獣脚類の中では最大の体格を誇る種の一つ。暴君竜を意味する名前に相応しい強壮なる雄姿は、太古の時代の浪漫とともに永遠に歴史に刻まれている。
 それはオブリビオン、ティラノサウルスの襲撃であった。



 葛葉御前は歴戦の猟兵たちを即座にグリモアベースに参集させる。
 九尾の狐の化身たる傾国の美女は、猟兵たちの姿を見回してから形の良い唇を開いた。

「妾は先頃、UDCアースにおいて観光地として有名な湖に訪れておる旅行客を、肉食のオブリビオンが襲撃する未来を予知した。そのオブリビオンの姿まで鮮明に見る事が出来たぞ。こやつじゃ」

 葛葉御前は何処からか調達してきた恐竜図鑑の項を捲る。
 そこに描かれている中生代白亜紀末期に生息していたとされる肉食恐竜の挿絵を前にして、猟兵たちの間に驚愕が広がった。

「千年狐狸精たる妾をしても実物を目にするのは初めての事じゃ。勿論、実体としてはティラノサウルスの姿かたちを模倣しただけのアンディファインド・クリーチャー、つまりは邪神の眷属に過ぎぬのじゃがな」

 何故に邪神の眷属が肉食恐竜の姿を模倣したのか。そしてオブリビオンたちは何処から出現するのかという質問に葛葉御前は淀みなく解答した。

「現場となる湖の近隣に24年前に閉館となった博物館が存在しておる。かつては恐竜の骨格や剥製を展示しておった様子じゃ。訪れる者も居なくなり廃墟となった博物館に邪神の一柱が目を付けたのであろうな。閉館時に捨て置かれた展示物を呪物に改造したらしい。自身の眷属を地上に送り込むための召喚装置としての機能を付与しておるようじゃの」

 召喚装置として使用された呪物と、召喚された場所がともに恐竜という強固な概念によって結び付けられているが故に、眷属の姿も、それに類するものと化しているのだろうと葛葉御前は予想する。

「妾が御主たちを博物館の正面玄関まで転移させてやろう。既に廃墟の内部では召喚された邪神の眷属たちが受肉を果たしておるようじゃ。なかには召喚されたばかりで肉体を構成するのが間に合わずに骨だけの者もおるじゃろう。何れにせよ見過ごせる相手では無い。目に付く端から駆逐してやるが良いぞ。しかし眷属を召喚する呪物も破壊せねば、闘いは何時までも続く筈じゃ。闘いと並行して呪物の探索も怠るで無いぞ」

 葛葉御前は邪神により呪物と変えられた展示物に関しても予知をしていた。

「どうやら24年前。つまりは西暦1998年の閉館の前年に、海外で新種として発見された恐竜の剥製が展示されていたようじゃ。何じゃ? その恐竜の名前じゃと? 妾が知る筈が無かろうが。ティラノサウルスとやらの名前さえ、こうして図鑑で確認するまで知らなかったのじゃからの。妾の予知に見えたのは呪物と化した展示品について何やら解説されておる立札の文面のみじゃ。それだけで何の恐竜かなど特定できよう筈も無い」

 傲然と胸を張る葛葉御前から何とか手掛かりとなりそうな情報を引き出そうと、猟兵たちが質問を重ねる。
 そうして、かろうじて呪物の手掛かりらしき情報の断片を繋ぎ合わせる事が出来た。

 ひとつ。その恐竜の発見は西暦1998年の前年。つまりは西暦1997年である。
 ひとつ。その恐竜は、獣脚類の中型肉食恐竜であった。
 ひとつ。発見された場所はアメリカ合衆国のニューメキシコ州である。
 ひとつ。この恐竜が発見される6年前に、似た名前を持つ架空の恐竜が、日本の映画に登場していた。
 ひとつ。この恐竜の発見者は日本で生まれた考古学者である。
 ひとつ。発見者は、この恐竜の名前に、大好きな日本の怪獣の名前をつけた。
 ひとつ。上記の日本の怪獣は『怪獣王』とも呼ばれている。

「ふむ。どうやら何かを閃いた者もおるようじゃの。その恐竜の剥製が、邪神の眷属を召喚する装置と化しておる。御主たちの活躍を期待しておるぞ」

 葛葉御前のグリモアが霊験あらたかな光輝を放つと、猟兵たちをUDCアースへと導く界渡りの扉が開いた。


能登葉月
 能登葉月です。
 よろしく御願い致します。

 宇冠・龍(過去に生きる未亡人・f00173)様。
 山田・二十五郎(人間の探索者・f01591)様。
 ノア・コーウェン(がんばるもふもふ尻尾・f02485)様。
 3名のフラグメントを採用させて頂きました。

 この場を御借りして御礼を申し上げます。
 皆様の御参加を御待ちしております。
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第1章 集団戦 『朽ちた化石竜』

POW   :    骨融合
無機物と合体し、自身の身長の2倍のロボに変形する。特に【仲間も含めた複数の骨】と合体した時に最大の効果を発揮する。
SPD   :    骨化
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【骨の怪物】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
WIZ   :    鉄骨
全身を【超硬度な金属】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ティエル・ティエリエル
むむむー、これが恐竜かー
こんなに大きいとボクなんて一口で食べられちゃいそうだよ!?
でもでも、そんなのはボクが捕まえられたらの話だ☆

背中の翅で羽ばたいて空と飛びつつ、【スカイステッパー】で急激な方向転換も駆使して
ノロマな骨の恐竜の攻撃を避けていっちゃうよ♪

関節の隙間を狙って風を纏わせたレイピアによる「属性攻撃」をどんどんお見舞いしていくよ♪
ふふーん、簡単に骨が外れちゃうね☆
かるしうむが不足してるんじゃないかなー!

※アドリブや他の方との連携も大歓迎です





 猟兵たちの中で先陣を切ったのはティエル・ティエリエル(おてんば妖精姫・f01244)であった。
 小さな体躯に大きな好奇心が満ち溢れている天真爛漫な妖精姫は、世界を渡ると同時に廃墟と化した恐竜博物館に飛び込んでいく。
 博物館の正面扉を潜り抜けると、そこは、かつては大勢の観光客が訪れたであろう玄関ホールであった。
 埃の積もる床に、ティリエルの身体よりも巨大な足跡が幾つも残されている。
 博物館への24年ぶりの来客を出迎えたのは、頭骨のない四足歩行型の恐竜の化石であった。
 もっとも、それは捨て置かれた展示物などではなく、肉のない巨躯に邪神の瘴気を纏わせながら、玄関ホールを気儘に徘徊していた。

「むむむー。これが恐竜かー。大きいなー!」

 ティリエルの素直な感想に反応したかのように、自立歩行する恐竜の化石が、薄い翅を震わせて飛び回る妖精姫へと向き直る。
 化石竜は、そのまま自身よりも遥かに小さな存在であるティリエルを押し潰すかのような勢いで突進してきた。

「うわっ! こっちに来た!? こんなに大きいと、ボクなんか潰されちゃうかも!?」

 ティリエルの足が宙を蹴った。
 比喩ではなく空間を踏み締めて、風に舞う一枚の花弁のような軽やかさで化石竜の突進を回避する。
 妖精姫を捉え損ねたオブリビオンの突進は、代わりに正面玄関の扉に突き刺さった。
 衝撃に降り積もった埃が舞い上がり、砕けた硝子の破片が周囲に散らばる。

「でもでも☆ そんなのはボクを捕まえられたらの話だよ☆」

 ティリエルは、とっておきの悪戯を成功させた子供の無邪気さで笑いながら、妖精の王家に伝わる風鳴りのレイピアを鞘から抜き放った。
 化石竜の巨躯と比べれば余りにも小さな武器は、例えば人間の目から見ても裁縫用の針にも等しいだけの長さしか無い。
 およそ戦闘には向いているとは思えない得物を手にしながらも、ティリエルは、それが正しく振るわれた時の威力を疑ってはいなかった。

「いっくぞー! そこと、ここと、あそこと、ついでにおまけだー!!」

 繊細な剣身が目にも留まらぬ速度で振われた時、廃墟の玄関ホールに柔らかな音楽が奏でられた。
 正しく振るえば旋律が響くとの伝承通りに、ティリエルのレイピアが風を切り、邪神の眷属を葬送する鎮魂歌を奏でていく。
 風鳴りのレイピアの剣身が、オブリビオンの骨だけの肉体を接合している関節部に鋭く突き刺さった。
 剣身に付与された風の属性が、邪神の瘴気に護られた骨の接合部を脆く風化させていく。

「ふふーん。こうすれば簡単に外れちゃうね☆ かるしうむが足りないんじゃないかなー☆」

 廃墟の玄関ホールに、化石竜だったものの骨がばらばらに積み上がった。
 ティリエルは、他にはどんな恐竜が展示されているのだろうという無邪気な好奇心のままに、博物館の奥へと飛んでいったのである。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ゲニウス・サガレン
恐竜かぁ、いや、いくつになっても男の子心をくすぐられる。恐竜の時代の虫とか植物、それが作り出す景観も見てみたいよねぇ

……閑話休題

さて、まずは骨のお相手とのこと
骨だけのモンスターは、どんなに強靱でもそのつなぎ目、本来は骨を補佐し、守る筋肉や腱がなかったり、乏しい。そこにつけ込めそうだね。

アイテム「星屑ロケットランチャー」&「フライングシュリンプ」

私の指揮下の有翅エビ、フライングシュリンプの突進で、骨格のつなぎ目の弱い所を狙い、隙を見てロケランで骨盤まわりの、壊れたら動けなそう部分を狙う。

UC「眠れる力を呼び起こせ!」
有翅エビ達を応援!
数匹ずつ群れを作り、四方八方から攻撃をかけるんだ!撹乱せよ!





「恐竜かぁ。幾つになっても男の子心を擽られるね。いつか恐竜時代の虫とか植物も見てみたいよね」

 ゲニウス・サガレン(探検家を気取る駆け出し学者・f30902)は博物館の展示物を前に、太古の浪漫に思いを馳せながら呟く。
 24年前に廃館となった博物館だ。
 当然のように展示されている資料の内容は最新のものではなく、現在では科学的に否定されている学説も数多い。
 しかし、ゲニウスの胸には落胆ではなく懐旧の念が去来していた。
 今年、31歳になったゲニウスが、7歳の頃に信じられていた学説を展示したまま、この博物館は時の歩みを忘れ去っている。
 子供の頃に夢中で図鑑を捲っていた自分の姿を、微笑ましさと共に思い出すことができた。
 それに、現代の考古学が解明した太古の浪漫。最新の学説と24年前の学説とを改めて照らし合わせる事で、恐竜についての新しい魅力を発見できたような思いがある。
 しかしゲニウスの浪漫を探求する鑑賞の時は唐突に終わりを告げた。
 行く手を阻むように、巨大な化石竜が通路の奥から姿を現したのである。
 それは頭部の無い骨竜だ。
 四足歩行で、背中に骨質の板が互い違いに立ち並んでいる。

「ステゴサウルスかなぁ。ジュラ紀後期の剣竜類の中では大型の種類で、7メートルから9メートルくらいだったと思うけど。こいつは大物だなぁ。どう見ても15メートルはあるよ。他の奴と、くっついちゃったのか」

 ゲニウスは化石竜の巨体を前にしても、冷静に自身の知識と現状とを照らし合わせて、邪神の眷属への対策を練った。

「骨。骨だけか。当然、筋肉や腱は無いよね。無いのに、どうして自立できるんだろう? まぁ、これはオブリビオン相手には言っても仕方の無い事かな」

 ゲニウスは星屑を推進機構に利用する特性のロケットランチャーを構えると、フライング・シュリンプたちを空中で整列させる。

「基本だけど骨格の繋ぎ目が狙い目かな。無理矢理に他の骨を取り込んでいるみたいだから。あそことか脆そうだよ。頑張って!」

 ゲニウスを主人と仰ぐ、世にも珍しい有翅エビの大群が、命令に従って一斉に化石竜へと襲い掛かった。
 化石竜も巨体を暴れさせるが、フライング・シュリンプたちは数匹毎に小規模の集団を作成して、攪乱、陽動、強襲と、四方八方からの一糸乱れぬ連携をもってオブリビオンを翻弄する。
 ゲニウスのユーベルコードにより能力を強化された有翅エビたちの連携は、着実に化石竜の巨躯を砕いていった。

「今だ! 皆、散開して!」

 ゲニウスの号令を合図にフライング・シュリンプたちが安全圏に退避する。
 同時にロケットランチャーから発射された弾丸が、隙を晒した化石竜の骨盤に直撃した。
 博物館の通路に火薬が炸裂する轟音と衝撃が響き渡り、巨大なオブリビオンは黒煙の中に崩れ落ちていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ラスカル・ノース
おおー…怖。
化石が動いてるぜ…

大昔は、アポカリプスヘルにも、コイツラがいたって考えると、毛が逆立つ感じだぜ…
アライグマ程度は、狼やクマ、ピューマやアリゲーターなどの餌でしかねぇって考えると萎縮してしまうが…恐竜…怖ぇー!!

丸呑みじゃねぇか…しかし、コイツ、化石が動いてるのって不思議だぜ。
まぁ、やられる前に、カラメルマシーン2号で遠距離で迎え撃ってやるぜ!

まぁ、換装させてキャノン砲装着、化石を迎え撃つぜ!!

おらぁっ!!来る前に砕けろ!!

しかし、怪獣王??
…あ。
この話題、別の意味で危険じゃねぇかよ!!
オレっち、アライグマだから関係ねぇけどさ!





 ラスカル・ノース(アライグマの機械技師・f37198)が埃が積もる博物館の通路を駆けていた。
 40センチメートルほどの身体を柱や展示物の物陰に隠しながら、化石竜が徘徊する廃墟の内部を、奥へ奥へと進んでいった。

「おおー……怖……」

 化石竜の一体が何かの気配を感じ取ったかのように展示物の前で足を止めた。
 ラスカルは息を殺して、高鳴る動悸を押さえ付けて、化石竜から死角となる位置で気配を消していた。
 やがて化石竜は気のせいだと思い直したのか、ラスカルが隠れ潜む展示物から離れていった。
 ラスカルは冷や汗をかきながらも、展示物の物陰から姿を現した。

「まったく。大昔はアポカリプスヘルにもアイツらがいたって考えると毛が逆立つぜ。アライグマも食物連鎖だと下の方にいるけどよ。アイツらに比べたら狼とか熊も餌でしかねぇのか……やっべー。おっかねー……!」

 ラスカルは、ふさふさとした毛並みを可愛らしく震わせながら、慌ててカラメルマシーン2号の起動準備に取り掛かった。
 それはラスカルが自らの学習の成果として開発した、ロボット工学の粋を結集した秘密兵器だった。

「ああいうデカブツと、まともに遣り合っても丸呑みにされちまうっつーの。何が骨だけだ。アライグマのか弱さ、なめんなよ。オレはココで勝負だぜ!」

 ラスカルは自身の頭を指差すと、短い手足を器用に駆使しながら、ロボット兵器の起動と搭載兵装の準備を終えた。
 ノーマルフレームから遠距離砲撃用のフレームへと換装した。

「しゃあっ! 準備完了! どこからでも来やがれ! 地の利をとった! 玄関にあった博物館の内部図によれば、このフロアーへの出入り口は正面の通路だけ! つまり! この場所に陣取って火砲を正面に向けておけば、オレは無傷で一方的に敵を殲滅できるってスンポーさ!」

 ラスカルが全ての準備を終えて、気を大きくした途端に、フロアへと繋がる正面の通路から化石竜が姿を見せた。
 大きな足音を立てながら、カラメルマシーン2号の砲塔の前に無警戒に巨躯を晒した。

「おらぁ! 叩き込め! 来る前に砕けろ!」

 轟音と連続で発射される砲火が着弾し、オブリビオンの巨躯は砲声と衝撃の前に木端も同然に砕け散った。

「よーっし! 計算どぉーり! ……しかし恐竜を呼び出している装置を破壊しないと何時までもイタチごっこだな。どこにあるんだよ。召喚装置は。確かグリモア猟兵は怪獣王がどうと、か……?」

 博物館の何処かに存在するという召喚装置の正体に思いを馳せたラスカルが何事かを閃きかけて、その顔色を蒼白にした。

「……あれ? この話題、別の意味で危険じゃねーか? ……ま、まぁ。オレ、アライグマだし! カンケーないよな! 一応、アイツは実在の恐竜の筈だし! 世の中には、シネミス・ガメラっていうカメも存在するしな! これも絶滅してるけど!」

 何がとは言わないが、きっと大丈夫だろう。ラスカルは、そう自分に言い聞かせた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルイズ・ペレンナ(サポート)
『お代は結構ですわよ。けれど懐には注意なさいませね?』
ブラックタールのシーフ × スターライダー
特徴 金目の物が好き 錠前マニア グルメ 快楽主義者 実は恋をしていた
口調 貴婦人(わたくし、あなた、~さん、ですわ、ますの、ですわね、ですの?)
敵には 高慢(わたくし、あなた、呼び捨て、ですわ、ますの、ですわね、ですの?)

・金目の物をお宝と認識し獲得するのが行動理念
 直接の機会でなくても獲得出来るかも知れないと思えば動きます

・愛情や人助けのような金銭にならない価値は興味ないですが
 それを大事にする人を貶めもしません。趣味の相違

・利害が一致すれば他人との共闘やサポートはむしろ積極的です





「皆様、随分と騒々しくなさっているのですわね」

 化石竜との戦闘の余波で振動する博物館の中を優雅な足取りで進むのは黒いタール状の肉体を有する淑女である。
 ルイズ・ペレンナ(怪盗淑女・f06141)の道行きを阻む様に化石竜が立ち塞がっていた。
 怪盗を生業とする淑女の目には、たとえ、それが太古の浪漫の化身であったとしても、その正体が邪神の手による贋作とあれば価値のない土塊(つちくれ)としか思えなかった。

「せめて本物でしたら、宇宙には、それを欲しがる好事家が幾人もおりますのに」

 地球という小さな惑星の中でさえ、とある恐竜の全身骨格が33億円もの大金で競り落とされたという実例もあるのだ。
 星々の海を渡り歩くルイズの伝手を辿れば、骨のひとかけらでも金の延べ棒に替える事は容易いだろう。
 しかし、それも、真作であればの話だ。
 ルイズの目には目前で声なき彷徨を上げる化石竜は、醜悪な戯画(カリカチュア)と何らも変わるところがない。

「生憎と、わたくしの博物館(ミュージアム)には贋作の置き場所は御座いませんのよ」

 ルイズの腕に握られた無造作に短剣が振るわれた。
 僅かの動作。風を斬る音さえもない。
 ただ黒い影が走り抜けたとしか傍目には見えぬ斬撃は、化石竜の関節の接合部を正確無比な技量で解体していた。
 ルイズは、通路に積み重なるオブリビオンの残骸には一瞥もくれずに、颯爽とした足取りで歩き去っていく。

「一応、博物館だとお聞きしましたから足を運んでは見ましたけれども。わたくしが頂戴するのに相応しい獲物が、ここには、ありますかしらね?」

 ルイズの諦観の入り混じる呟きに、解答する者はいなかった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 冒険 『自動召喚儀式を破壊せよ』

POW   :    力尽くで怪しげな家具や床、調度品等を破壊する

SPD   :    絨毯の下や壁紙の裏など、怪しげな場所を調査する

WIZ   :    霊視や魔力感知によって、儀式の核となっている座標を探す

👑7
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ゲニウス・サガレン
わざわざ博物館で恐竜の形で召喚しているんだ
呪物や儀式の場も恐竜関連だろうか
化石か地層か
はたまたジオラマが擬似的な環境の触媒にでもなっているのだろうか

いずれにせよ、範囲が博物館に限定されている以上、目は多い方が話が早い

アイテム「フライングシュリンプ」&「ギアスカラベ」

有翅エビたちは私の指揮に従い、怪しいものがあれば翅音で知らせてくれる
スカラベは魔力やその痕跡探査専用の魔法機械だ
彼らが力になってくれるだろう

UC「眠れる力を呼び起こせ!」
私は彼らを応援し、後方から指揮に徹しよう
学者として、私もフィールドに出たいけど、今回は一刻を争うからね





 ゲニウス・サガレン(探検家を気取る駆け出し学者・f30902)は化石竜の撃退に成功した後、丹念に博物館の内部を調査していた。
 展示物のひとつひとつに対して怪しい箇所はないか、見落としていることがないかなどを、地道に検証していく。
 忍耐が問われる作業ではあるが、ゲニウスは、この報われるかどうかも分からない地味な仕事が嫌いでは無かった。
 彼が専攻する博物学や地理学では華やかな功績は、言わば海面に突き出た氷山の一角に過ぎない。
 ただ、ひたすらに地道な努力を、誠実さをもって積み重ねていくことこそが、学術の探求の徒の本分であると弁えているからだ。
「わざわざ博物館で、恐竜の姿で眷属を召喚しているんだ。場所と存在に関連性が確認できるのであれば、これは偶然ではなく必然と見るべきなんだと思う。推察するに呪具の正体も、何らかの恐竜に関係が深いものじゃあないかな」
 ゲニウスの言葉に、世にも珍しい有翅エビたちが高い翅音を響かせる。
 その足元では探検家特性の魔法機械、ギアスカラベが忙しく走り回って、博物館の内部に残された魔力の痕跡を探っている。
「化石……地層……あるいはジオラマそのものを召喚の儀式法陣と見立てているのかな。博物館という風に場所が限定されているのは良いのだけれど、疑わしいものが多すぎるのは困りものだね」
 これは、まだまだ時間がかかりそうだ。
 兎にも角にも目が多いほうが、捜査が捗るのは間違いがないだろう。
 ゲニウスは相棒のフライングシュリンプたちを散開させることを決めた。
 用心のために翅音での連絡を密にするように言い聞かせて、更にはギアスカラベも同行させる。
「頼むよ。私はもう一度、見落としがないかを調べているからね」
 ゲニウスの言葉を了解した有翅エビたちが、博物館中に散っていく。

 ――やがて。

 彼らは、ひとつの恐竜の剥製へと辿り着いた。
 間違いは無いと断言できる。
 この博物館に邪神の眷属を召喚している呪具の正体は、この剥製だと。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ラスカル・ノース
自動召喚だぁ?
こんなモン、放置できるわけねぇじゃん!
たく、猛獣放置する人間なんているわきゃあねぇのに。
恐竜パニック映画は御免被るぜ!

こうなりゃ、サーチ&デストロイだぜ!

小型メカ大量起動!
見つけ次第報告しろよ!
そしたら、オレっちが駆けつけて壊すぜ!





 ラスカル・ノース(アライグマの機械技師・f37198)も、また博物館の中を自動召喚装置を探して彷徨っていた。
「たく。猛獣を放置するとかありえないぜ。オレっちは恐竜パニック映画は御免被るぜ!」
 かつては森の、大自然の厳しい掟の中で生活していたアライグマの身だ。食物連鎖の無慈悲なること、そして、その調和が如何に大切なものであるかは骨身に染みている。
 少なくとも現代の地球においては恐竜は実在して良い生物ではない。
「また、この博物館、無駄に広いんだよな。こうなりゃサーチ&デストロイだぜ! 小型メカ大量起動! お前たちなら、まだ館内をうろついている奴らにも見つからねーだろ」
 体長、およそ四〇センチメートル強のラスカル基準での小型ガジェット群である。
 恐竜という形態をとるオブリビオンからすれば微生物にも等しい。
「よし行け! 怪しいのを見つけたら報告しろよ。オレっちが直ぐに駆け付けるからな!」
 ラスカル特性のガジェット群が四方八方に散っていく。
 ほどなくして、賢いアライグマの機械技師のもとに、目当てのものを見つけたという報告が届いた。
 場所は恐竜博物館で一番の目玉を展示する大ホールである。
 その中央に鎮座する恐竜の剥製。
 怪獣王の名前を冠する、その恐竜の名前は――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

大豪傑・麗刃(サポート)
一人称は『わたし』『麗ちゃん』

まじめなこと『だけ』はやりたくないのだ!
いかなるシリアスな場面でも最低一か所はネタを挟みたい。ダジャレ、奇怪な言動、一発ギャグ、パロ、メタ(一番好き)等何でもよい。一応状況をちゃんと前進させる意思はあるので、状況が悪化する行為はさすがにやらない。一見悪化するけどネタとして許されるならむしろやりたい。場合によってはギャグを『変態的衝動』に繋げて身体能力を強化し無理やり状況の改善を狙う事も。

あまりに超どシリアスな雰囲気のためギャグなんか絶対に許さないとMSが判断するのなら、シリアスオンリーも一応可能だが、その時は頭痛が痛くなるのだ(強調表現としての二重表現肯定派)。





 大豪傑・麗刃(24歳児・f01156)は閉館した恐竜博物館の、かつては目玉であった精巧な恐竜の剥製の前にいた。
 この恐竜こそが、邪神の眷属を召喚する装置と化しているのは疑いの余地はない。
「このわたしごときの目も欺けぬとはな。ゴジラサウルス。そう。ゴジラ。怪獣王ゴジラ。きみが自動召喚装置だね」
 一九九七年。ケネス・カーペンター博士によりニューメキシコ州クワイ群で発掘された新種の恐竜だ。
 件の博士は日本生まれの怪獣マニアであり、幼少期にゴジラの映画を見た事が恐竜学へ進んだきっかけであるという。
「麗ちゃんもゴジラVSキングギドラくらい知っているのだな。一九九一年。東宝映画だ。あっちはゴジラ『ザ』ウルスだったけど」
 恐らくは当時の映画のスタッフも、のちに発掘された恐竜に怪獣王の名を付ける博士の存在は予見できなったことだろう。
「思えば、この事件のタイトルも『謎の恐竜博物館』か。ウルトラマンの『謎の恐竜基地』のパロディーだな。あれも確か怪獣にゴジラのぬいぐるみが流用されていた。こんなところにもヒントがあったわけだ」
 第四の壁を容易く突破して、果たして、誰が気が付くのかという点を指摘する、ある意味で最強のダメ人間。
 色々なものが台無しになっている気がしないでもない。
「わたしをサポート参加と侮ったのが運の尽き。採用したきみの浅はかさを呪うが良いよ。そして。本当の台無しはこれからなのだね」
 麗刃は懐から髑髏マークの刻まれた如何にも危なげなボタンを取り出すと、それを、ポチっとなと言わんばかりに躊躇なく押し込んだ。
 大ホールに鎮座するゴジラサウルスの剥製が、ダメ人間もろともに閃光に包まれる。

 ――衝撃。そして大爆発!

 ゴジラサウルスの剥製が爆発に巻き込まれて崩壊する。
 それは一切合切を自分ごと、容赦なく消し飛ばすオヤクソクの自爆装置である。
「はははは! このわたしごときには、でっかい恐竜を破壊するのか些か骨なのでね! さぁ。これで自動召喚装置は破壊したぞ! あとはきみたちの健闘を期待する!」
 自爆した筈なのに元気よく笑いながら退場していく麗刃。嵐のように現れて、爆発の中に消えていく。

 ――さらば! 大豪傑麗刃!

 またの参加(おこし)をお待ちしております。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 集団戦 『暴れまわるティラノサウルス』

POW   :    がぶがぶ
【噛みつき】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD   :    びたーん
【尻尾】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
WIZ   :    がおー
【大きな鳴き声】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ラスカル・ノース
出てくるの、ティラノサウルスかよ…
T−REXの大安売りかよ!!
コイツが出るだけでも、マズイじゃん!!
こうなりゃ、カラメルマシーン2号でUC起動して遠距離からドバドバ撃って鎮めるしかねぇよ!!

UDCって、空気読めない奴らじゃねぇのかよ!!





 巨大な獣の咆哮が、老朽化した博物館全体を震わせた。
 重重しい足音を響かせながら、身の丈は一〇メートルを容易く超えるであろう巨大な肉食の恐竜が通路の奥から姿を現した。
 振り回される強靭な尾の一撃は、博物館の展示品や柱を容易く薙ぎ倒し、建物それ自体に深刻な損害を刻んでいく。
 ティラノサウルス。おそらくは世界でもっとも有名な大型の肉食恐竜の姿を模した邪神の眷属が、建物を破壊しながら猟兵たちに襲い掛かってきた。

「オイオイ……出てくるのティラノサウルスかよ……T-REXの大安売りかよ!」

 ラスカル・ノース(アライグマの機械技師・f37198)は、自身が開発したカラメルマシーンよりも巨大な獣脚類の威容に声を上げた。
 体長だけで論じるならば、猟兵たちがクロムキャバリアと呼称する世界の人型起動兵器のゆうに倍の巨大さを誇っている。

「こいつが出てくるだけでマズい……! 絶対に外に出すわけにはいかねーな! オレっちも覚悟を決めるぜ!」

 ラスカルが己の技術の粋を注ぎ込んだ鋼の機体へと搭乗する。

「ギャァァァァオゥゥゥゥッ!!」

 ティラノサウルスが大気を震わせる咆哮をあげながら、アライグマの機械技師が搭乗するカラメルマシーン2号へと接近してきた。

「オレっちのロボット工学を甘く見るなよ! 技術と知識は食物連鎖の掟も凌駕するぜ! フレーム換装! 遠距離砲撃フレーム! いくぜ!」

 カラメルマシーン2号の上半身が砲撃戦主体のフレームに換装された。
 一歩ごとに博物館の床を砕きながら迫りくるティラノサウルスから距離をとるように、鋼の機体が、砲塔の照準を恐竜に合わせたまま後退する。

 ――ドォン! ドォン! ドォン!

「ギャァァァオォォォッ……!」

 砲塔から発射される弾丸が炸裂し、肉食恐竜の巨体が、爆発の衝撃にぐらりと揺らいだ。
 強靭な皮膚は大きく抉り取られて、夥しい量の出血が、ティラノサウルスの身体を朱色に彩っている。

「よっしゃあ! 効果ありだぜ! 次弾装填! このまま畳み掛けるぜ! オレっちのカラメルマシーンはティラノサウルスにも通用するぜ!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

ゲニウス・サガレン
おお!レックスか!
恐竜と言えば、やはりこの種だろう
その特徴は短く小さな前脚と対照的に凶暴そうな顔
爪で切りかかるというより、噛みつき主体の攻撃をする体形だ

アイテム「海蛍閃光弾」&「スティングレイ短針銃」
短針銃で牽制しつつ、隙を見て閃光弾を投擲する
なにせ、レックスにとびかかられたら、まあ終わってしまうだろうからね

目くらましが効いているうちにやろう!

UC「水魔アプサラー召喚」

我が友アプサラーは水流を操る
さあ、アプサラーよ、かつて大地を闊歩した王に挑もうじゃないか
付近の地下水を集めて、レックスの足元に奔流として叩きつけ転倒させる

そこに「星屑ロケットランチャー」
せっかくの恐竜、もったいないな……





「おお! レックスか! 恐竜といえば、やはりこの種だろう!」

 ゲニウス・サガレン(探検家を気取る駆け出し学者・f30902)はティラノサウルスの巨体を目の当たりにして、その瞳を学術的好奇心に輝かせていた。
 たとえ邪神の眷属が姿を模しただけの贋作に過ぎないとしても、図鑑の挿絵そのままの姿は、見る者の心を太古の浪漫へと誘ってくれた。
 折角、生きて動いている恐竜と遭遇できたというのに、これと戦わねばならないというのは、学者としても、探検家としても、哀切の極みであると言えた。
 もっともゲニウスの内心の葛藤を、ティラノサウルスが忖度してくれる筈もない。

「ギャァァァオオオオウウゥゥゥ!」

 博物館を揺らす咆哮をあげながら、探検家へと襲い掛かってくる。

「おっと! 流石に、その巨体に飛び掛かられたら、私のほうが終わってしまうな!」

 ゲニウスは特性の海蛍閃光弾を投擲すると、自身は、その閃光から逃れるために物影へと隠れた。
 ウミホタルの発光成分であるウミホタル・ルシフェリンを濃縮して作成した、特性の閃光弾は、深海の暗闇さえも真昼のごとくに照らし上げる。
 突如として眼前で炸裂した青い閃光をまともに浴びたティラノサウルスの巨体が、地響きを立てながら博物館の床の上をのた打ち回る。

「よし、いまだ! アプサラー! 君の力を、今、ここに!」

 ゲニウスの声に応じて、飼育壺の中から水魔アプサラーが現れた。
 流水の術を操る悪魔は、盟友たる学者の要請に応えて、白亜紀の大地を闊歩した支配者たる種に挑戦する。
 ひび割れた博物館の床から、間欠泉の如き勢いで地下水が噴出した。

「ギャァァァァオォォォォッ……!!」

 閃光に視界を閉ざされて、水圧に動きを封じられて、もがき苦しむ恐竜に、ゲニウスは星屑を推進装置とする手製のロケットランチャーの照準を合わせた。

「せっかくの恐竜なのに勿体ないが……私は、私の使命を優先しよう。それと、ありがとう。たとえ仮初めだとしても。ティラノサウルスの雄姿を、この目で見ることができた。学者冥利に尽きるというものだ!」

 その言葉とともに放たれた砲弾が、オブリビオンの肉体に着弾した。
 爆発の衝撃と轟音が、恐竜の咆哮さえ飲み込んで、黒煙の中に掻き消していく。
 かくして太古の王者の姿をかたどった邪神の眷属は、再び、骸の海へと還されたのである。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アドレイド・イグルフ
かなり出遅れてしまったが、被害はまだ館内だけかな? 拡大を防ぐ為にも迅速に動こうじゃあないか
だが焦りはしないさ。高所から観察してみるが……咬合力がハンパなくて引っ掻く力もあり。集団行動は圧倒的だなア

そういえばティラノサウルスって、図体がデカいから神経伝達が鈍く、例えば尻尾にナイフを突き立てたとしても痛みを感じるのは結構後なんだっけか?
その常識が通ずるかはさておき、狙うは胴。一撃に足らずブッ倒れるまで矢を放とう

足元を掬われないように地形破壊には備えておく。この場合気を付けるのは噛みつきではなく、尻尾のリーチだ
接近戦に持ち込まれそうになったら散弾銃で牽制を。狩人の意地ってヤツを比べようじゃあないか





 アドレイド・イグルフ(ファサネイトシンフォニックアーチャー・f19117)は博物館の天井裏に息を潜めながら身を隠していた。
 窮屈そうに館内を徘徊する肉食恐竜の様子を観察しながら、その対抗策を検討する。

「かなり出遅れてしまったが……まだ被害は館内だけのようだね。不幸中の幸いか。しかし時間の問題だな。慎重に、かつ迅速に動かなくては」

 こうしてティラノサウルスの特徴を詳細に観察していると、なるほど、かつて地上に覇を唱えただけの性能を誇っているなと敵ながらに感心してしまう。
 トリケラトプスの首を筋肉を食い千切っていたという咬合力は言うに及ばず、その鋭い爪も下手な刃物よりも厄介な凶器として機能する。
 一個体でも脅威と呼ぶに相応しい相手だ。
 これの集団を相手にする愚は避けた方が賢明だろう。

「そういえばティラノサウルスは神経伝達が鈍いという説があったな。尻尾に傷を負っても痛みを感じるまで時間がかかるとか。仕留めるならば、やはり胴体を狙いたいから……もしも、神経伝達が鈍いという説が通用するのであれば……いけるか?」

 賭けてみる価値はあるかも知れない。
 アドレイドは方針を決すると、オブリビオンを討伐するために行動を開始した。

 物陰に隠れながらティラノサウルスの背後へと回り、その振り回せば武器となる強靭な尾に狙いを定めて、ロングボウに番えた矢を射ち放つ。
 鋭い鏃が恐竜の尾の肉を抉り穿つのを確認すると同時に、身を翻して、柱の陰へと忍んだ。
 一瞬の後。

「ギャァァァァオォォォォッ……!」

 突如として感じた激痛に咆哮を上げて、ティラノサウルスが背後を振り返る。
 しかし、そこにアドレイドの姿は既にない。
 背後を振り返ったことで、無防備に腹部を晒したティラノサウルスへと、本命の二射目を放つ。
 十分に時間をかけて狙いを定めて、力の限りに弦を引き絞られた必殺の矢弾が、ティラノサウルスの胸骨の隙間を貫通して、その心臓を貫いた。

「ギャァオオオォォゥッ……!?」

 ティラノサウルスの巨体がぐらりと揺れて、地響きを立てながら崩れ落ちた。
 ヒュゥと、軽やかな口笛の音色が響く。

「キミのハートは頂いたよ! その矢はワタシのサインいりだ。あの世で仲間に自慢しておくれ! Good bye!」

 黒衣を華麗に翻して去っていくアドレイドの後ろ姿を、光を失ったティラノサウルスの瞳が何時までも見詰めていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

キャロライン・メイ(サポート)
ダークセイヴァーの貧民街の生まれ。生きるため、悪事に手を染めてきた。ある日商人から一振りの剣を盗み出す。剣は呪われており、その邪悪な魔力によって、呪われし黒騎士へとその身を堕とす。その冷酷な様を人々はアイスドールと呼ぶ。

自身の半生に強いコンプレックスを持ち、心の中では常に自己を否定し続けている。死に場所を探しているかのような言動をとることがある。

ダーインスレイヴ~漆黒の魔剣による強力な一撃。
ライフドレイン~魔剣の血塗られた鉄鎖が無数の棘に変形し敵に突き刺さる。


※エロやグロNG
※5人以上まとめたリプレイNG





「力ある者が生と死を支配する。世界を越えても理(ことわり)は変わらないのだな」

 キャロライン・メイ(アイスドール・f23360)は、漆黒の大剣を構えて、博物館の内部を我が物顔で歩き回るティラノサウルスたちと対峙していた。
 光なき闇黒の世界に生まれ、生きるために悪徳を盟友として修羅さながらに生き抜いてきた黒騎士の瞳には、UDCアースの景色は、お伽話の中にのみ存在を許された楽園の景色のようにも写る。
 とはいえ、その景色にも瑕疵が無いわけではない。

「ギャァァァオォォォウ!」

 とりわけ、目前で威嚇の彷徨を巨大な蜥蜴の群れだ。
 キャロラインとしては人肉を喰らう巨大な獣など、幼い頃より飽きるほどに見てきた存在だ。
 殊更に珍しいものとも思えないが、かといって捨て置くわけにもいかないだろう。
 何より相手の側が、涎を垂らしながら、キャロラインの姿を美味そうに見詰めているのだ。
 キャロラインの手に握られた魔剣が音叉のごとき響きを奏でた。
 漆黒の魔剣の声なき声が波紋のように空間に広がっていく。

「血が欲しくなったか。いいだろう。アレはお前が喰っても構わないものだ。ダーインスレイヴ。残すなよ」

 漆黒の魔剣が、音もなく一閃された。
 恐竜たちの咆哮を、斬(ザン)という音が巻き起こす剣風が吹き散らす。
 鮮血が博物館の床と壁と天井を深紅に染め上げた。
 両断されたティラノサウルスたちの骸が積み重なる通路を、キャロラインは詰まらなさそうに一瞥する。
 表情ひとつ変えず、息ひとつ乱さずに肉食恐竜の群れを鏖殺したキャロラインの手の中で、漆黒の魔剣が震える。

「――不味い? 文句を言うな。喰いたいといったのはお前なんだからな」

 動くもののいなくなった博物館を、キャロラインは後にする。
 邪神の眷属たちは、かくして、猟兵たちの奮戦により討伐された。

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2022年05月20日


挿絵イラスト