長き因縁に終止符を・渦の巻
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頭部全てが脳になった子供というまさに『異形』と呼ぶべき何か。その名はドクター・オロチ。スペースシップワールドで、アックス&ウィザーズで、そして違う名を持ってシルバーレインで、幾度討ち果たされても蘇り続けた生ある者全ての敵。
今、彼はアポカリプスヘルにおいて己が配下を従え、フィールド・オブ・ナインの生存者奪取という目的を持って暗躍していた。
「ムシュ~! 何でこーなるかな!? ちょっと猟兵たち殺意高すぎじゃない~?」
焦っているような、怒っているような、そして楽しんでいるような声。もしこの声が耳に入れば、それこそ彼に殺意を向ける猟兵はごまんといることだろう。
「それだけ恨みを買っているということだろう。叩けばまだ余罪が出そうだな?」
気もなく言うのは彼を囲むレイダーの内の一人。その外見はまさにレイダーとしか言いようがないほどにレイダーであったが、喋る脳味噌を前にしてのその落ち着きは十把一絡げのレイダーにあるまじき堂々としたものであった。
「いやいや毎回色々忘れたり捨てたりせざるを得なかったから、今のボクはむしろ潔白だよ? だから小太郎、そんな哀れなボクを守って頂戴!」
まるで媚びるように小首をかしげて見せるドクター・オロチ。それに対しレイダー……風魔小太郎は全く動じずに答えた。
「どの口がほざくか。いや口などないのは分かっているがな。ともあれいいだろう。今の己はレイダー。その起源であり王であるものを降ろした汝に従うのが道理」
そう言う小太郎の前、彼の半分程度しかないドクター・オロチの背に、暴力という言葉を形にしたかのごときモヒカンの巨漢がその身を聳えさせるのであった。
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「こんにちは、ドクター・オロチとの決戦です」
谷保・まどか(バルバロス委員長・f34934)がいつもより多めの資料を手に猟兵たちにそう告げた。アポカリプス・ランページが終結してからまだ半年ほど。他のオウガ・フォーミュラたちの跳梁している期間と比べれば異例と言えるほどの速さであろう。
「場所は「メンフィス灼熱草原」の中心部にある『影の城』という所だそうです。シルバーレイン出身の方には聞き覚えある場所だそうですね」
影の城、多くの猟兵には耳馴染みない言葉だが、その言葉を聞いた瞬間表情をこわばらせたものも数人いた。だがそれはそれとし、ドクター・オロチは何度倒しても別の世界で復活を遂げており、彼自身それを前提に倒される事すら恐れていないような言動を見せてもいた。此度もまた一時しのぎにしかならないのでは。その危惧は多くの猟兵が抱くところであろう。
「私は見たことないのですが、ドクター・オロチは何回倒してもまたその内どこかの世界に出てくるという話ですね。ですが、この影の城には本体である『コンクリ塊』というものがあって、それを抑えれば復活は止められるらしいです。彼もそれを移動させようと急いでいるみたいですが、どう頑張っても今月いっぱいくらいはかかるみたいです」
今回も逃げる算段は付けているが、一方でそれをついに阻止することもできるということだ。今まで余裕の態度を見せていた相手が本気を出す。それはつまりそれだけ相手を追い詰めているということでもあり、同時に最大級の抵抗をかけてくるということでもある。
「そのお城の前では、レイダーの集団が待ち受けています。これは風魔小太郎さんが分身して変身したものだそうで、【V12エンジン】というのを体に着けてすごく強くなっているみたいです」
それは荒野と化したアポカリプスに君臨する暴力の象徴。ただの体当たりが全てを粉砕する究極の暴力へと変わる、無限に溢れ出す無軌道な力だ。
「小太郎さんをやっつければドクター・オロチの所へ行けます。彼は『魔軍転生』というのを使い『フルスロットル・ヴォーテックス』を憑装しているらしいですね。小柄ですけど物凄いパワーになってるみたいです」
己の暗躍した世界のみならず、サムライエンパイアのフォーミュラ信長、さらにクルセイダーの奥義までもを用いてくるということか。さらにその身にアポカリプス・ランページの核であったレイダーの王まで宿すとは。
さらに別の資料をめくりながらまどかは続ける。
「その影響で髑髏の鎧とオブリビオン・ストームでできた肉体になっているみたいですね。でも性格はそのままみたいです。織田信長さんがやった憑装に近いイメージと思うといいようです」
他のフィールド・オブ・ナインの憑装と違い、その力を十全に振るえる肉体にこそなってはいるが自我には一切影響はないらしい。ドクター・オロチがここばかりは本気を出したのか、あるいは滅びさえ齎せればそれが誰の意思だろうと関係ないというフルスロットル・ヴォーテックスの思想故か。
「自分のオブリビオンストームを武器にしたり、体を削って何でも成功させたり、敵一人をたくさんのレイダーにボコボコにさせたりするみたいです。えーと、七の王笏島というところのカルロス・グリードという方にちょっと似た戦法だということですね」
さらに別の資料を開いてそこに目を落としながら説明するまどか。大規模戦争をほとんど経験していない彼女は、自分がどれほどとんでもない連中の名前を並べているのか分かっていないのだろう。
「なんか、ドクター・オロチは物凄く色んな人に恨まれているみたいですね。そう言う人が生きてると余りよくない気がするので、皆さん頑張ってきてください」
そう言ってまどかはグリモアを起動し、猟兵をアポカリプスヘルへと送り出した。
鳴声海矢
こんにちは、鳴声海矢です。彼と10年越しの決着を。
『注意!』
今回は5月1日午前中までの完結を目指し、文字数、参加者少な目でお送りする予定です。プレイングを頂いてもリプレイは短めになります。ご参加の場合ご了承の上プレイングをご送信ください。
第一章では『レイダー』との集団戦。見た目はアポカリプスならどこにでもいるレイダーですが、風魔小太郎が『百面鬼の術』によって化けた存在なのでそこそこ強いです。凶器やバイク、薬物投与による肉体強化など基本に忠実なレイダー戦法を取ってきますが、【V12エンジン】(https://tw6.jp/html/world/441_worldxx_ogre11.htm)搭載のため破壊力がマシマシになっています。
第二章では『ドクター・オロチwithフルスロットル』とのボス戦。彼はフルスロットル・ヴォーテックスを魔軍転生で憑装し、髑髏の鎧とオブリビオン・ストームの体となっていますが、精神は完全に元のドクター・オロチのままです。オブリビオン・ストームを用いた戦法やレイダー召喚を行い、戦闘力はそこそこ高いですが先制攻撃や特殊ギミックはありません。
シナリオが20本完結した時期により展開が異なり、5月1日午前中まででドクター・オロチの本体奪取可能(完全撃破の可能性有)、5月15日午前中まででドクター・オロチは撃破するも本体行方不明(つまりまたどこかで湧いてくる可能性大)、それ以降で生存中のフィールド・オブ・ナインのうち2体をオロチが持ち帰り、残り1体をアポカリプスヘルに置いていくこととなります。
また、時期に関わらず20回倒せば風魔小太郎は完全撃破できます。
以上、時間がない戦いとなりますが、決して倒せない強さではありません。長きにわたる因縁に終止符を打ちましょう。
それでは、よろしくお願いします。
第1章 集団戦
『レイダー』
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POW : レイダーズウェポン
【手に持ったチェーンソーや銃火器】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : レイダーバイク
自身の身長の2倍の【全長を持つ大型武装バイク】を召喚し騎乗する。互いの戦闘力を強化し、生命力を共有する。
WIZ : レイダーズデザイア
【危険薬物によって身体機能】を一時的に増強し、全ての能力を6倍にする。ただし、レベル秒後に1分間の昏睡状態に陥る。
イラスト:あなQ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
星川・杏梨(サポート)
『この剣に、私の誓いを込めて』
人間のスーパーヒーロー×剣豪、女の子です。
普段の口調は「聖なる剣士(私、~さん、なの、よ、なのね、なのよね?)」
時々「落ち着いた感じ(私、~さん、ね、わ、~よ、~の?)」です。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。
性格はクールで凛とした雰囲気です。
常に冷静さを念頭に置く様に努めており、
取り乱さない様に気を付けています。
戦闘は、剣・銃・魔法と一通りこなせます。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
ロラン・ヒュッテンブレナー(サポート)
※絡みアドリブOK
※感情が尻尾や耳によく表れる
※人見知りだが【優しい】性格で育ちのいいお坊ちゃま
※戦闘時は魔術器官と電脳空間の演算力を用いて知略で戦う
※「ぼく」「~なの」「~さん
体のあちこちにつけた魔道具の回路を起動し(【高速詠唱】)、
狼の嗅覚聴覚視覚(【聞き耳】【暗視】)を駆使した【情報収集】と、電脳空間からの【ハッキング】で敵戦力を分析(【学習力】)
適切な魔術(UC)を組み合わせたり【乱れ撃ち】する
防御は【結界術】で作る【オーラ防御】壁や、
小柄な体系と狼の機動力(【ダッシュ】【残像】)を使う
仲間を守り、敵には【勇気】をもって容赦ない作戦・攻撃を行う(【全力魔法】)
メンフィス灼熱草原に聳える影の城。アポカリプスヘルに存在する数多くの悪の居城の例に漏れず、その前には多数のレイダーが番人のように群れ集っていた。
アポカリプスヘルで長く戦い、アポカリプス・ランページすら乗り越えた猟兵にとっては最早見慣れた光景。
だが、それを前にした猟兵たちに油断や余裕の表情はない。
「このにおい……やっぱり、そうだ」
ロラン・ヒュッテンブレナー(人狼の電脳魔術士・f04258)は敵のにおいをかぎ、真剣な表情で言う。
「この剣に、私の誓いを込めて」
その隣では星川・杏梨(聖炎の剣士・f17737)は自らの愛剣『流星の聖剣』を握りしめ、まるで強敵と向かい合うかのように真剣にレイダーの群れと向き合った。
彼らが相手どるのはただの有象無象のレイダーではない。風魔小太郎が分身氏『百面鬼の術』で化けた、いわば上級オブリビオンの大集団とでもいうべき存在なのだ。
ロランの嗅覚や聴覚、さらに電脳空間からかけた相手への情報収集が、目の前にいるのがただの雑兵ではないと彼に告げていた。
「これは良い、馬が要らなくなるな。己が走るよりは遅いが!」
その眼前でレイダーたちは、跨ったバイクをふかし爆音を上げて走り出した。その勢いとエンジン音のすさまじさはバイクの排気量だけではない。レイダー自身に取り付けられた【V12エンジン】がさらなる馬力と加速力を与えているのだ。
もはやただの体当たりの域に留まらないその突進を、二人は一度左右に分かれ転がって躱す。
「何という無法……雑兵という考えは捨てるべきね」
レイダーは猟兵にとってはアポカリプスヘルにおける雑魚の代名詞。そんな先入観は排除すべしと、杏梨はUターンして再度自分に向かってくる強敵を見据える。
相手の勢いは強い。そしてそれを活かすのは直線での突進。なれば、それを利用すべしと杏梨は判断する。
「星々の加護よ、私に力を与えなさい。そして全てを断ち切る力を分け与えよ!」
煌めく星々による聖なる魔力が杏梨に纏われ、その身を輝かせる。そして光は流星の聖剣に集まり、その剣を杏梨は勢いよくなぎ払った。
【コメット・ブレイド】による輝く斬撃波。それは猛スピードで爆進してくるレイダーたちを真正面から捕らえた。
「間に合わ……!」
V12エンジンの突進力に乗っていては流石の風魔小太郎も反応が間に合わず、その勢いのまま自ら斬撃波に突っ込む形になり、その身を両断されていく。さらにそれに合わせるように、ロランの体に空戦用外骨格『アルター・ギア』が纏われた。
「頭部・腕部格納。各種抵抗相殺術式、および、魔術回路励起。オペレーション・スタート」
外見と合わせまるで機械その者になったかのようにロランが言う。その言葉通りアルター・ギアの骨格が組み変わり飛行に適した形状となり、そのままロランは高速で宙を舞った。
「バイクなら、空中戦は出来ないはず……!」
上空から爆撃の様に攻撃魔術を乱れ撃つロラン。それはまるで地上部隊を空中から殲滅する近代戦のように、レイダーたちを手出しできぬところから一方的に殲滅していく。
「ぐっ、おのれ……」
バイクから転がり落ちるレイダー。そこを逃さず、杏梨が冷静に一人ずつ仕留めていく。
「たとえ中身が強者だろうと、戦法を間違えなければ」
「完璧な変身だね……それが仇になってる」
二人は相手を『強いレイダー』として過不足なく見定め、適切な戦法によってそれを排除していくのであった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
魔女・ウィッチ(サポート)
【おまかせプレイング】
「ほう…良いじゃろう。この偉大なる魔女である我が相手になって…話を聞きなさいよ!」
西洋妖怪ウィッチの魔女×レトロウィザードよ。
「この偉大なる魔女の使い魔にしてやるわ。光栄に思いなさい!」
「おばあちゃんが言っていたわ!◯◯だって!」
普段着の魔女装束を着て、魔女箒に乗って空中浮遊しながら使い魔の黒猫をウィッチタクトへ変化させたら準備はバッチリね!
『にゃー♪』
UC「ミゼルコルディア・スパーダ」
魔力溜め全力魔法を使用し、相手を使い魔にするのを目標に行動ね。ドジを踏んで意図せず他の猟兵に迷惑をかける事も有るかもしれないけど、わざとじゃないのよ!?
あとは任せるわ!
ミーヤ・ロロルド(サポート)
『ご飯をくれる人には、悪い人はいないのにゃ!』
楽しいお祭りやイベント、面白そうな所に野生の勘発動させてくるのにゃ!
UCは、ショータイムの方が使うのが多いのにゃ。でもおやつのUCも使ってみたいのにゃ。
戦いの時は得意のSPDで、ジャンプや早業で、相手を翻弄させる戦い方が好きなのにゃよ。
口調だけど、基本は文末に「にゃ」が多いのにゃ。たまににゃよとか、にゃんねとかを使うのにゃ。
食べるの大好きにゃ! 食べるシナリオなら、大食い使って、沢山食べたいのにゃ♪ でも、極端に辛すぎたり、見るからに虫とかゲテモノは……泣いちゃうのにゃ。
皆と楽しく参加できると嬉しいのにゃ☆
※アドリブ、絡み大歓迎♪ エッチはNGで。
風魔小太郎が変身したレイダーの群れ。その前に臆することなく魔女・ウィッチ(偉大なる魔女のサーガ・f33446)が堂々と立つ。
「ほう……良いじゃろう。この偉大なる魔女である我が相手になって……話を聞きなさいよ!」
堂々としたその名乗りも、レイダーたちがふかしまくるエンジンの爆音にかき消されてまともに聞こえやしない。向こうとしては変身の完成度を高めるためにレイダーらしい行動を心がけているだけなのだが、ウィッチにとってはある意味お約束の放置プレイであった。
そんな荒々しいレイダーたちを、ミーヤ・ロロルド(にゃんにゃん元気っ娘・f13185)もまた緊張感なく見る。
「ご飯をくれる人には、悪い人はいないのにゃ!」
なお目の前の相手はどう見てもくれそうにない。つまりは悪い人である。だからやっつけるべきだと、ミーヤは結論付けた。
「有象無象の雑兵と侮られる……この姿にはそういう使い道もあるようだ」
その姿勢を勝手に深読みし、レイダーたちはエンジンをふかして股も爆走を始める。さらに片手では自分の首筋に注射を打ち、何がしかの薬物を胎内に入れていた。
見る間に筋肉が盛り上がり肌の色まで変わっていくあたりそうとう危険な薬物のようだが、どうせ分身体だしたとえ本物であっても覚悟の決まった忍が身を惜しむはずもない。さらにはそこにV12エンジンの勢いまで乗り、まさに暴力の弾丸と化してレイダーたちは二人に襲い掛かった。
そんな相手に対しミーヤがとった手は。
「でてこいガジェットにゃ!」
【ガジェットショータイム】で出現したガジェット。それは六角柱の砲のようなもので、それは弾丸ではなく小さな粒を近距離にばらまいた。
構わずレイダーたちは突っ込んできたが、それを踏んだ瞬間物凄い勢いでバイク事横転していく。
「撒菱……!」
ミーヤが出したのは、尖った金属片を撒くガジェット。なおばらまかれる小型の撒菱は小さな円錐形で指にはめて爪っぽく使えそうなのは発射装置の形と合わせてミーヤの趣味か。
そうして勢いよく転倒したレイダーに、ウィッチがとどめを掛けに行く。
「無様ね。この偉大なるまじょの前では孔たちなどそうやってはいつくばっているのがお似合い。さあ、あなた達も我が使い魔となりなさい! 必殺! 【欲望具現術「魔女の慈悲」(ウィッチクラフト・スパーダ)】」
長々とした口上から放たれたそれは、レベルm半径内の敵全てを、幾何学模様を描き複雑に飛翔する、レベル×10本の【魔法剣】で包囲攻撃する魔法……要するに【ミゼリコルディア・スパーダ】である。だがそれはパンクしたタイヤをさらに切り裂き二度と走れぬほどの損害を負わせ、さらにはレイダー自身も串刺しにしていく。
「やはり……雑魚と呼ばわれるには理由があるか……!」
レイダーの特徴をそのまま突かれ倒された風魔小太郎。いかに彼自身が強かろうと、やはりレイダーは雑兵枠なのは変わりないのだ。
その姿を見て、ウィッチは高笑いする。
「百面鬼風魔小太郎! 配下にするに不足なし!」
「うわー、みんなやっつけちゃったにゃ」
「……あれ?」
ミーヤの声に笑いが止まる。何しろV12エンジンの勢いのまま転倒して重傷を負っていた所にとどめをかけてしまったのだ。当然そのままレイダーたちはやられて消滅してしまう。こうなれば回収も何もない。
「どーしたにゃ? 勝っても嬉しくないにゃ?」
無邪気に笑うミーヤの横で、またドジったとウィッチは膝をつくのであった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎
■行動
さて、大詰めの様ですねぇ。
【炳輦】を発動し飛行、『結界』に加え『FMS』のバリアと『FGS』による重力の膜を周囲に展開し、相手の『射撃』に備えますぅ。
そして『時空切断の嵐』を放射、戦場全体への[範囲攻撃]を行いますねぇ。
大幅に強化されているとはいえ、相手の攻撃は『物理的な物』、『時空切断の嵐』で射線上の空間を[切断]し、重力の膜で『射線』を歪めてしまえば直撃は防げるでしょう。
余波程度であれば『結界』とバリアの二重の防御で防げるでしょうし、『空中への突進』等は『瞬間移動』で回避すれば良いですぅ。
後は『FRS』『FSS』の[砲撃]と『FDS』の[爆撃]を追加し叩きますねぇ。
ドクター・オロチは魔軍転生を用いフィールド・オブ・ナインを憑装してきたが、その都度降ろした相手に影響され性格や肉体に大きな変化を受けてしまっていた。
だが、この先に控えるフルスロットル・ヴォーテックスを憑装した彼は、肉体こそオブリビオン・ストームの体となってはいるがその人格には全く揺らぎはないという。
今までと一味違う、己を保った彼の存在。それは数あるドクター・オロチの形態の中でも特別と言えるものだ。
「さて、大詰めの様ですねぇ」
そんな最後を予感させる相手への道に、夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)が臨む。
その最後への道を塞ぐのは、アポカリプスヘルの基本であり始まりの敵とも言えるレイダーの集団。
「大いなる豊饒の女神の象徴せし欠片、その衣を纏いて典礼を捧げましょう」
【豊乳女神の加護・炳輦】を使用し浮き上がるるこる。それに対し、レイダーたちは手にした重火器を滅多撃ちにして撃ち落とそうとする。
「なるほど、弓や手裏剣が要らなくなるのも道理!」
その単純かつ圧倒的な火力は、射撃武器の歴史を大きく塗り替えるもの。その威力の程を認めつつ、まさにレイダーがやるように集団で、しかし雑魚のレイダーでは決してできないような精密な狙いをもって銃を撃ちまくる小太郎。
その銃弾に対し、るこるは時空そのものを切断して妨害にかかった。切り裂かれた空間に銃弾は飲み込まれ、その狙いを出鱈目に変えていく。中には着弾できるコースに残ったものもあったが、それも前に張った『FMS』のバリアに弾かれ、そこから展開しておいた重力空間に嵌って落ちてしまう。
「仕方なし。なればこうよ!」
バイクを大きくふかし、さらには背中のV12エンジンのまで全開にして走りだすレイダー。その凄まじい勢いのまま器用にバイクを操りウィリー走行を始めるその姿は、元がサムライエンパイアの存在とは思えぬほどにこの世界の道具に既に習熟していた。
そのまま適当なとっかかりを使い、チェーンソーを構えバイクごとジャンプしてくるレイダーの集団。V12エンジンの力が乗ったそれはまさにミサイルの如しであり、重力空間さえ突破する圧倒的な力を持っていた。
それの体当たりが全ての守りを破り直撃する、その瞬間、るこるは瞬間移動でそれを外した。
的を失った特攻はそのまま慣性に従い飛んでいき、後方の岩にぶつかって爆発を起こす。
「ぬぅぅ……これが知恵なき力の限界か!」
レイダーとは暴力の世界で暴力を恃みに生きる者である。その出自は、それまでただ暴力的であっただけの一般人である者も少なくない。異能の力に頼らぬそれはフルスロットル・ヴォーテックスの暴力であるV12エンジンはそれとはこの上なく相性はいいが、同時に互いの力が同質すぎて弱点を補えるものでは全くなかった。
それに本来人が持ち得ぬような力で対処されれば、なす術なく地に伏せるのは道理。あるはそれこそが、究極の異能者たる猟兵が現れてからレイダーがただの雑魚に貶められた理由なのかもしれない。
るこるはそのまま地上にいるレイダーたちにそのまま浮遊兵装を差し向け、最後の殲滅をかけていく。
「この世界の象徴、これが容易く敗れる……それが全てを物語るか。主よ! 三千世界の悪と知恵の詰まりし脳髄で、この世界の暴を御されよ!」
暴力頼みの限界を悟りながら、最後の一人が肉片となって爆散した。
アポカリプスヘルにある数多の力と姿を駆使した風魔小太郎はここに倒れた。そしてるこるはその先にある者を見る。そこにあるのは、数多の世界から盗み出した力と死なぬ命を持つ、生命全ての敵……
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『ドクター・オロチwithフルスロットル』
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POW : フルスロットル・ロード
あらゆる行動に成功する。ただし、自身の【オブリビオン・ストーム】を困難さに応じた量だけ代償にできなければ失敗する。
SPD : フルスロットル・ファントム
敵1体を指定する。レベル秒後にレベル×1体の【レイダーの亡霊】が出現し、指定の敵だけを【武装バギーによる轢き潰し】と【火炎放射】で攻撃する。
WIZ : バイオレンス・ストーム
戦場全体に【オブリビオン・ストーム】を発生させる。敵にはダメージを、味方には【オブリビオン・ストームを纏うこと】による攻撃力と防御力の強化を与える。
イラスト:みやこなぎ
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎
■行動
追詰めた、と言って良いでしょうかぁ。
まずは『FMS』のバリアと『FGS』の重力結界で相手の『通常射撃』を遮断しつつ『FRS』『FSS』による[砲撃]と『FDS』による[爆撃]を中心に、多少なりとも消耗させますねぇ。
そして、相手の『エンジン』による突進に合わせ[カウンター]で【翳華】を発動、全身を『ブラックホール』に変換しオロチさんを吸収しますぅ。
『突進の勢い』が付いた状態で『ブラックホールの重力圏』から逃れるとなれば『Oストームの代償』が払いきれるかも判らず、出来たとしても相当な物になるでしょう。
必要に応じ『F●S』や『吸収』による[追撃]を行い、確実に仕留めますねぇ。
「追詰めた、と言って良いでしょうかぁ」
幾度となくドクター・オロチと戦い、その全ての憑装を破って来た夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)。その最後の形態であるフルスロットル・ヴォーテックスを降ろした彼と相対した今は、まさに最後の大詰めというに相応しい状態であった。
「ムシュシュ、これは参った、確かに追い詰められちゃったかな~? しょうがない、今度もお土産なしで帰るかなぁ。みんな怒るだろうな~」
まるで危機感を感じさせない口調で言うドクター・オロチ。巨大な脳味噌という頭部の下にはオブリビオン・ストームでできた体に髑髏の鎧を纏うという、この世界の悪と破滅を形にしたような異形の体。
その彼を前に、るこるは答えることなくバリアと重力で二重の壁を張り相手の攻撃に備える。
「ちょっとくらい構ってよ、せっかくまた会えたんだからさぁ!」
そう言って手にした水晶剣を投げつけるドクター・オロチ。だがそれは張られた壁の前に容易く弾かれ地に落ちた。
また会えた、というのも実の所ただのハッタリ。たしかにるこるは数多くのドクター・オロチとこのアポカリプスヘルで見えていたが、実はアックス&ウィザーズやスペースシップワールド、そしてもちろんシルバーレインでも交戦経験はない。そもそもドクター・オロチの性格からして戦った相手の顔など一々覚えているわけもないのだ。
そんな安い手の繰り返しが何よりも相手が追い込まれている証拠と、今度は攻撃用兵装を差し向け砲撃と爆撃でその体を削る。
「つれない人だなぁ。それじゃ、こっちもちょっと本気を出しちゃうよ! これが、オブリビオン・ストームの力さ!」
鎧の内側で、ドクター・オロチの体を構成するオブリビオン・ストームがはじけ飛ぶ。それに合わせるように鎧の髑髏が爆音を上げ、まるで排気筒になったかのごとく煙を吐き出した。
そしてそこから、一気に超高速で突進をかけるドクター・オロチ。それは兵装による守りも、押し返しのための攻撃も容易く弾き飛ばし一直線にるこるに向けて猛進してきた。
オブリビオン・ストームを捧げたことによる絶対成功。その前にはどんな攻めも守りも無意味。もちろん相手を直接殺すような願いはいくらドクター・オロチとはいえ代償を払いきれるものではないだろう。そう考えれば願ったのは相手の装備の無効化と言ったところだろうか。
そしてるこるも、それをこそ待っていた。
「大いなる豊饒の女神、その象徴せし欠片の一つを我が身へ」
相手の突進を受け止めるように、【豊乳女神の加護・翳華】を発動する。その効果は、自身の体のブラックホールへの変化。
「ムシュ!? なにこれ、ブラックホール!?」
その変化に、ドクター・オロチは驚いたような声を上げる。恐らくこれは演義などではなく本気の声。スペースシップワールドにいた経験のある彼はこれがどういうものかは当然知っていよう。あるいは、それ以上にさえ。
それは兵装以上の超重力の檻となり、自らそこに突っ込んできたドクター・オロチを捕らえる。
「ムシュ~……なら、ここからの脱出を……!」
オブリビオン・ストームを破壊し、そこから脱出しようとするドクター・オロチ。だが、それは成せない。オブリビオン・ストームは彼の体を構成している。それを代償として捧げるというのは、即ち彼自身の生命力を捧げるということ。それができないということは、この戒めが彼の全力を上回っているということか。
「こ、こうなったら……さっきの願い取り消し! オブリビオン・ストーム返して!」
兵装の無効化を解除し、それに捧げたものを回収しようとするドクター・オロチ。だが、そうすれば待っていたとばかりに兵装たちがドクター・オロチに攻勢をかけ始める。
「ムシュ~!? 何で!? 何でこいつらだけ自由に動けるの!?」
ブラックホール自体るこるの体なのだから、その辺りが自由になるのはある種何の不思議もない。だが、都合のいい好き勝手は自分の特権とばかりに奢るドクター・オロチはオブリビオン・ストームの体を兵装によって破壊されていく。
「確実に仕留めますねぇ」
お前の勝手はもう永遠に終わりだ。その強い意志を込めた宇宙の力が、命なき暗黒の使者を無の世界に吸収していくのであった。
大成功
🔵🔵🔵
藍原・蒼夜(サポート)
人間の學徒兵×力持ち、20歳の女です。
普段の口調は「おっとり系(私、あなた、~さん、なの、よ、なのね、なのよね?)」
偉い人には「敬語(私、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」です。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。
のんびり、おっとりした性格で、多少天然ボケな面もあります。
武器は主に退魔刀を使用して戦います。
好きな物は、可愛いぬいぐるみ、綺麗な花、静かな場所。
趣味は小説等の読書。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
ラム・クリッパー(サポート)
力持ちな魔獣解体士、人族の女の子
口調は「子分チック(アタシ、アンタ、~っす、っすよ、っすか?)」
アタシは搦め手が好きじゃないっすから、正面切って前線に出るっす!
一応、解体士の端くれなんで、敵の壊せたり、解体できそうなところは狙うっすよ。
なので、武器はフーリガンツール(解体工具)を持ってるっす。
UCは指定されたものは、どれでも使用するっす。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしないっす。
公序良俗に反した行動はしないっす。
後は、お任せしますっす。
ソフィア・エーデルシュタイン(サポート)
わたくしは愛され望まれたからこそ生まれてきましたのよ
だからこそ、わたくしはこの世の全てが愛しいのですわ
狂気的な博愛精神の持ち主
命あるものは救われるべき
蘇った過去はあるべき場所に還るべき
果たすためならば手を下すことに躊躇う必要などないと胸を張る
主に【煌矢】を使用し、牽制や攻撃を行います
勿論、他のユーベルコードも必要があれば使いますわ
わたくしの愛するきょうだいである水晶髑髏は、盾にも刃にもなってくれますのよ
怪我など恐れる必要はありませんわ
わたくしが役に立てるのであればこの身が砕かれようとも構いませぬ
他の方の迷惑や公序良俗に反する事は致しません
それは、わたくしを愛してくれる人達への裏切りですもの
ミスティ・ストレルカ(サポート)
基本方針は専守防衛・他者フォローです
サポート故、連携重視のお任せ
知らない人にはどうにも気後れしてしまうけど
それでも他の人が怪我するのも嫌なので押すところは押すのですよ
主にサモン・シープ等攻撃系のUCで他者行動の隙を消す様に立ち回るのです
中遠距離をとり全体を掴む感じですね
防御系の技能で時間稼ぎも行けますので
生まれながらの光での前線維持、魔力性防御障壁の囮役も…ちょっと怖いけど
でもでも、みんなの居場所を守るのですよー
そうそう、えっちなのはいけないと思います。
興味がない…訳ではないですがひつじさんが怖い雰囲気纏って凄い勢いで止めにツッコんでくるのです
年齢制限がどうとか、らしいです
オブリビオン・ストームに髑髏の鎧を纏うという異様な体となったドクター・オロチ。
「あーあ、これは今回も失敗かなぁ……もうボクも諦めるからさ、みんなもちゃちゃっと帰ってよ?」
だが、異様なのはその体だけ。口調は常のドクター・オロチと変わらぬ相手を玩弄するような、無邪気さを装いながら底なしの悪意をこめたもの。他のフィールド・オブ・ナインを憑装した時はその性格に引っ張られていた彼だったが、今だけは完璧に己を保ったままであった。
そしてそれ故わかるのは、彼の言葉に真実はないということ。何度でも蘇る己を猟兵、そしてかつての能力者が目の敵にしていることを知っている彼は、今回の討伐も徒労だということで相手の怒りを煽ろうとしていた。
だが、実の所もう彼の復活の種は割れており、それに対しても手はかけられているのだ。
「さすがにアタシも騙されないっす、その本体ごとぶっ壊してやるっすよ!」
ラム・クリッパー(力自慢の少女解体屋・f34847)が勢いよく前に出ながらそう言い切った。彼女は知らないことではあるが、危険な状況になれば相手に利益を持たせつつ、肝心な部分は全て守り通す交渉は彼が過去シルバーレインで得意とした所。耳を傾けるだけで危険な彼の話を真正面から粉砕するのは、実の所極めて正しい判断だったのだ。
「ふふっ、私の出番かしら?」
話す余地はなし。ただ切るのみとあれば剣士たる己の出番と、藍原・蒼夜(蒼き宝刀・f23131)も剣を携え前に出る。
「いや、別に呼んでないし、ほら、ボクなんか倒してもいい事ないよ~? もっとヤバい相手とかいろんなところにいるんじゃない? 悪いことは言わない、そっちに向かった方がいい」
元々彼にくだらないプライドなどはない。危険となれば矛先を逸らすための命乞いとて簡単に行うのだ。そしてそれを見透かされていることも承知の上で、さらにまだカードがあるような口ぶりを続けるドクター・オロチ。
「それが引く理由にはなりません。全て、わたくしへの愛ゆえに」
ソフィア・エーデルシュタイン(煌珠・f14358)は穏やかに、何でもないことであるかのように言い切った。命あるものは救われるべき、蘇った過去はあるべき場所に還るべき、果たすためならば手を下すことに躊躇う必要などないと胸を張る彼女にとって、全ての命の敵たる彼はその愛が故に討ち果たさねばならない敵。どこまでも純粋に、愛が為に倒すべきを倒すとソフィアは言う。
「私も、大事な人がいるから……」
そしてミスティ・ストレルカ(白羽に願う・f10486)も、僅か10歳でありながら身も心も全て捧げた相手がいる故、その命の営みをすべて否定するドクター・オロチは排さねばならないと戦う姿勢を取る。
ドクター・オロチにとってはある種慣れ切った、自身に敵威を向ける大勢の相手に囲まれる状態。
「あー、もう、じゃあしょうがない。とりあえずこれで、みんな消えといてよ!」
その状態からドクター・オロチは体に纏うオブリビオン・ストームを巨大化させ、戦場全てを包みんだ。それはその中にある者すべての命を少しずつ、だが確実に削り、一方で命と対極にある者にはその力をいかんなく貸し与える。
「私の中に眠る力よ、進化せよ!」
その嵐の中で、蒼夜『特製骨付き肉』を一齧りした。食べる、という生命の根源にある行動が滅びに巻かれた中で力となり、蒼夜の能力を飛躍的に跳ね上げる。
その勢いのままドクター・オロチに詰め寄り、オブリビオン・ストームの守りを抜いて素早い斬撃を連続で叩き込む蒼夜。
「ああ、もう、さっさと遠くに行って……」
自らの手にストームを移し、それで蒼夜を殴りつけるドクター・オロチ。その滅びそのものを纏った一撃に一瞬蒼夜が下がるが、それと入れ替わるように放たれた電撃がそれ以上の追撃を許さなかった。
「おいで、ひつじさん」
ミスティが【サモン・シープ】で召喚したデフォルメ調の白羊の姿たちが、電気の幕を張って相手の進撃を防ぐ。前を張る仲間はそれだけ敵の反撃を受けやすい。ならば少し離れた位置から敵の様子を見て、その行動を妨害するのが役目とミスティは羊たちに相手の行動制限を指示していた。
そうして揺らいだ体に、さらに押し返すかのようにきらめく矢が突き刺さる。
「届きなさい、穿ちなさい、貫きなさい」
ソフィアの放つ【煌矢】がドクター・オロチに突き刺さった。さらに一本では足りぬとばかりに、氷でできた青玉髄の楔が次々とドクター・オロチを串刺しにしていく。
お前はそこから動いてはならぬ、電撃と氷それぞれの戒めがドクター・オロチを世界にあることを許さぬかのごとくにその動きを阻んでいく。
「あー、もう、しょうがない……君ら全員ここから撤退して! 死ななくてもいいから!」
ドクター・オロチが叫ぶのは、ただの癇癪ではない。その言葉と同時に彼の体を構成するオブリビオン・ストームが壊れていき、その願いを叶える力となっていく。
距離も、手段も問わない。とにかく相手がこの場から去ればいい。つける条件を緩くして成功のハードルを下げたその願いが、オブリビオン・ストームを代償に叶えられようとしている。
「壊れきる前に……全力の一振りで壊す!」
その体の最後の一つを、ラムが【全力全開!フルスイング】とばかりに巨大工具を振り回し、願いの糧とされる前に自ら砕いた。それは願いのため他のオブリビオン・ストームを失っていた体の心臓部を砕いたような状態になり、結果としてドクター・オロチの体を構成するものは全て消え失せてしまった。
「え、あ、あれ? こ、こんな簡単に!? 本体、あれば……え、えぇ!?」
髑髏の上に浮く脳髄が、本気で焦ったような声を出す。
「こんな、こんなの、ボクの役目じゃない。ボクは、足掻くやつらを笑って、遊んで、恨まれて……それがボクの役なのに! 違う! こんな、こんなのは!」
必死に否定するドクター・オロチ。これでも彼の成してきた悪行の報いとしてはあまりに軽すぎよう。だが、彼の罪を償わせるなど最早永劫の時をもってしてもできはしまい。
「待って、待ってよ、お願い、もう一度だけ……!」
喚く脳髄にそんなものはない、とばかりに電撃、矢、剣、工具が一度に叩きつけられた。それに抗しきれず脳髄はぐしゃりと潰れ飛び散り、大地を汚す。
そして程なく戦場を覆っていたオブリビオン・ストームも消え、そこにはただ黒い荒野だけが残されていた。
世界を渡り、繰り返し生命を玩弄し続けてきたドクター・オロチ。その最期は、行きがけの駄賃を取りに来た末その場に集った猟兵に倒されるという何も残さない惨めな、そして彼に相応しいものであった。
成功
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