均衡あれば消えゆく、その名は
●均衡の時代
――強いだけの力に価値など無い。その優しさが世界には必要だ。もしも、それが弱さだというの者がいるのだとすれば、その者は本当の強さを知らぬ者である。
いつかの誰かの言葉はが『スナークゾーン』に今も残っているだろうか。
『ジャスティスウォー』が終わった時、多くのヒーローとヴィランの生命が喪われていた。ヒーローズアースにおいて、史上最大の善悪の頂上決戦であったことは広く知られている。
そして、世界は知る。
世界は善悪の二色だけではないことを。
善悪の概念は複雑化していく。ヴィランたちは世界征服よりも個人の義憤や破滅願望を原動力にするようになった。
それは嘗て『ジャスティスウォー』の折に現れた『ヴァンパイアバット』をなぞるようでもあった。
「誰もが忘れゆくものであるから、仕方のないことだ。けれど、今もなお残るものがある」
強化人間である『マーサス』は小さくつぶやいた。
彼は齢はもうすでに高年に差し掛かろうとしていた。だが、強化人間であるがゆえに、外見の年齢は変わらなかった。
彼の妻はすでに鬼籍に入っている。十分に生きたと笑って逝った。
「いつからだろう。どうしても思い出せないことがあることに気がついたのは」
バイオモンスター『ツリーマン』は空を見上げていた。
何か自分にとって大切なことを忘れているような気がしたのだ。もしも、彼に言葉を掛けるものがあったのならば、気にしなくていいことだと肩を叩いたことだろう。
それほどまでに必死になって思い出さなくていいのだと。
「あの日、あの時、俺をヒーロー足らしめてくれていたのは、あの力強い力だった。自分が正しさの中にいることを証明してくれたんだ」
けれど、それがどうしても思い出せなくて炎のヒーロー『ブラック・サン』は己の力でもって邁進していく。
誰かを助けるために。
他がためにこそ己の炎はあるのだと、今日も凶悪なヴィラン達を打倒し、誰一人として犠牲にすることなく人々を救い出す。
「それでも私は、あの悔恨をこそ手放してはならなかったはずなのに」
スピリットヒーロー『モーニア』は失ってしまったものが、そうではないことを知る。すっかり拭い去れられてしまった。
もう悪夢に惑わされることはない。
何もかも雷鳴の向こうにかき消されてしまう。
どうして忘れてしまったのか。あの『名』を――。
●抒情詩
『スナークゾーン』は過去のヒーローズアースを再現した空間である。
仮想空間であるが、現実を侵食する可能性のある世界でも在る。『ジャスティスウォー』の折にオブリビオンによって齎された超・兵器『エベンキ・バタフライ』は今のなお善悪の一大決戦の戦場痕に残されている。
ただし、それは蝶が羽撃くような破壊の痕となって残るばかりであり、肝心要の超・兵器の根幹は完全に破壊されている。
「ヒーローやヴィラン、偉大なる『ジャスティス・ワン』やアトランチスの海底人、親愛なる隣人や、道端のしがない靴磨き」
「人間の中からでも、神々の血からでも。腐臭漂う汚水からでも、少女の涙ひとしくまでも」
彼らは一様に口ずさむようにして、その符丁を呟く。
見た目はビジネス街にいるような仕立ての良いスーツ姿のホワイトカラーのようであった。分け目正しくポマードで固められた整髪は理知的な雰囲気を漂わせ、その手にしたアタッシュケースは何らかの商談の材料が修められているのかも知れない。
しかし、彼らはサラリーマンでありながらそうではない。
彼らはオブリビオン。
『サラリーマン』であるのは、仮の姿である。凡庸さこそ彼らの強み。闇に紛れるのではなく、白昼堂々と善良なる人々の中に紛れることこそが、彼らの本領。
「そのとおりだ。君等の役割はわかっているね? もうすぐ君たちの下にやってくる者たちがいる。彼らはヒーローと呼ばれる強き者たちであるけれど、君たちほどじゃあない」
声の主、『狂智のリースフェスト』は『サラリーマン』たちの耳に装着された器具にささやく。
そう、彼らは『狂智のリースフェスト』に生み出された生物にしてオブリビオンである。彼女の目的である究極の生物の誕生のための副産物にすぎない。
彼女は神性を宿した存在であるが、目的のためならば生命を冒涜することなど厭わぬ狂気の神性。
「もう君等を脅かすような『不敗を象る名』を持つ者は、いない。現れることもない。だから安心したまえよ。突入してくるヒーローたちを撃退するがいい。力を存分に振るうがいい」
『狂智のリースフェスト』は己のアジトでもある研究所から配下である『サラリーマン』たちに支持を告げて深く椅子に沈み込む。
旧き生命は淘汰されなければならない。
力無き者。それを守るために力を発揮する新世代のヒーローたち。彼らの到来は、きっと『狂智のリースフェスト』にとっては好ましくないものである。
なぜなら、彼女が求めた究極の生物とは、個として全なるものであったからだ。この『均衡の時代』のように多種多様なものとは対極にあるものだ。
「神々の作り出した『人間の傑作』――それを超えるものを私は求めている。だから、もう要らぬのだ、旧き生命は――」
●スナークゾーン
グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)であった。
「お集まり頂きありがとうございます。今回の事件はヒーローズアース……『スナークゾーン』によって再現された『均衡の時代』が舞台です」
ここまで『スナークゾーン』において再現されたのは六つの時代。そして、この『均衡の時代』こそがオブリビオンの出現していない過去において最後の時代である。
多種多様化したヴィランたちの在り方。
ヒーローもまた在り方を変えていく時代でもある。『ジャスティスウォー』のように世界規模の戦いに発展することはないが、それでも世界の破滅につながる事件は局所化していく。
「そして、この時代の新しきヒーローたちは一つの『カルト教団』を発見します。彼らは世界の破滅を願う教団であり、巨大企業に扮してしますがこれをヒーローたちが突き止めたのです」
ナイアルテは巨大な企業の入った高層ビルを示す。
この企業内部にどうやら『カルト教団』のアジトがあり、オブリビオンが世界を破滅に導くほどの研究を行っているようなのだ。
しかし、ヒーローたちがこれを突き止めたとは言え、『カルト教団』の内部に巣食うのはオブリビオンばかりだ。
当然彼らでは太刀打ちできない。
「だからこそ、皆さんの出番です。この時代が最後の『スナークゾーン』……これを持って仮想空間が現実を侵食することを防ぎきりましょう」
その瞳は微笑みの形に細められる。
彼女は猟兵たちの力を信じている。仮想空間であろうともより善きに手を伸ばそうとすることを知っている。
だからこそ、この『スナークゾーン』の消滅を持って一つの物語が終焉を迎える。
今回はヒーローたちの手助けはない。
けれど、それでいいのだ。
これは猟兵の戦い。仮想空間と言えど一つの世界。無辜なる怪物を生み出さんとしているオブリビオンの目論見を打倒しなければならない。
雷鳴はもう何処にも響かない。
雷光は疾走らない。
そよ風が猟兵たちの背中をそっと押すのだ――。
海鶴
マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
今回はヒーローズアースにおいて発生した『スナークゾーン』に存在するオブリビオンたちの目論見を打破するシナリオになります。
今回の『スナークゾーン』は『均衡の時代』です。
スナークゾーンのシリーズとして各時代を巡っていくシナリオ群になります。
過去シナリオは、シナリオタグ『神月円明』から参照できます。
※このシナリオは二章で構成されたシナリオになります。
※シリーズシナリオの最終シナリオになります。
●第一章
集団戦です。
ヒーローたちが見つけた『カルト教団』のアジトは、ある巨大企業の高層ビルの地下が実験場となっています。おぞましき生物実験をした痕跡があり、またそれをもって世界の影で陰謀をめぐらし、世界を破滅に導く調製物を生み出さんとしていたのです。
この時代に生まれた新たなるヒーロー世代たちによって、『カルト教団』の目論見とアジトは発見されましたが、彼らでは勝てません。
代わりにみなさんが『カルト教団』に乗り込み、立ちふさがる『サラリーマン』たちを蹴散らさなければなりません。
一見するとただの『サラリーマン』です。アジトである巨大企業の高層ビルには本当に普通の『サラリーマン』もいます。
オブリビオンではない『サラリーマン』を倒してはなりません。
そして、オブリビオンである『サラリーマン』はこれを利用して皆さんを打倒しようとするでしょう。
彼らを看破し、打ち倒さなければなりません。
●第二章
ボス戦です。
高層ビルの地下にある生物実験場に一人のオブリビオン『狂智のリースフェスト』が座しています。
彼女は旧き生命である人類を一掃しようと、歴史の裏で何度も試みていましたが、その都度阻止されてきていました。
今回は、その邪魔をする者がいないが故に慢心してアジトに陣取っていたようです。
これを打倒すれば『スナークゾーン』は消滅します。
この戦いが終わった時、これまでのシナリオでの戦いの結果としか思えないかのような出来事が出現しているかもしれません。
この戦いは仮想空間での出来事。ですが、これまでの戦いは現実だったのか? それとも……。
それでは、ヒーローズアースにおける『均衡の時代』を再現したスナークゾーンにおける皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
第1章 集団戦
『サラリーマン』
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POW : シークレット・ガン
【手に持つアタッシュケースに内蔵された兵器】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : エンシェント・マーシャルアーツ・カラテ
【カラテ】による素早い一撃を放つ。また、【武器を捨て、スーツとネクタイを脱ぐ】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ : 情報解析眼鏡
【スマート・グラスで敵の情報を解析し、】対象の攻撃を予想し、回避する。
イラスト:炭水化物
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
アームドヒーローのヒーローチーム『崩壊戦線』はオーバテクノロジーを扱うヒーローたちである。
彼らもまた世代を重ねている。
受け継がれた超兵器を託された若きヒーローたちは、今日も多くのヴィランたちの悪事を止める。今日もまたその一つであった。
『カルト教団』が巨大企業を隠れ蓑にして、生物実験を行っていると突き止めたのだ。
「師匠たちはまだまだだって言うけれど、俺たちだって出来るってことを見せなきゃな!」
「ああ、『崩壊戦線』の名前を受け継いだんだ。この名前に泥を塗ることはできない」
「とは言え……本当に此処がそうなのか? どう見ても普通の勤め人ばかりな気がするんだが……」
彼らの疑問も尤もであった。
巨大企業の高層ビルに入っていく者たちは皆、無辜なる人々のように思えたのだ。
何処にも怪しげな雰囲気はない。けれど、彼らはこの高層ビルこそが『カルト教団』の生物実験場になっていることを知っている。この高層ビルの地下にそれがあるのだ。
「いや、間違いない。やっぱり反応は此処からだ……――ッ!」
「あれは!」
高層ビルから次々と現れるのは『サラリーマン』たち。
一見すればただの人間に思えるだろう。けれど、それは間違いである。彼らは手にしたアタッシュケースから銃火器を展開し、『崩壊戦線』のヒーローたちへと放つ。
銃弾がばらまかれ、ガラス片が飛び散る。
さらに『サラリーマン』たちは凄まじい速度で踏み込んでくる。ネクタイとスーツを脱ぎ去り、拳を打ち込むのだ。
「くっ……! こいつら普通の人間じゃない!」
なんとかオーバテクノロジーのシールドで受け止めた拳。アームドヒーローたちは防戦一方に追い込まれていく。
「拍子抜けだ。ヒーロー。お前達程度では私達を止めることはできない」
『サラリーマン』の蹴撃がヒーローを吹き飛ばす。
その懸けたメガネはスマートグラス。敵の情報を解析し、その動きを見切るものである。
「この程度の数値で我等に挑もうなどと」
『サラリーマン』たちが一斉にヒーローたちを殲滅せんと迫る。
だが、『崩壊戦線』のヒーローたちは見た。
突如として転移してくる猟兵達を。
かつて在りし日に彼らの先代である『崩壊戦線』のヒーローたちが見たという『世界の外からやってくる』者たちを。
そして、雷鳴は響かない――。
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友
第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん
武器:漆黒風
なるほど、本当に終わりにしてたんですねー、彼…。
寂しいですが、まずはやることやりませんと。
で、サラリーマン…オブリビオンと一般人が見分けがつかないんですねー?
であれば、簡単ですー。オブリビオンのみを攻撃できるこのUC使いますねー。
ふふ、この霧にて苦しむことこそ、オブリビオンの証ですからー。そちらに向けて漆黒風投擲ですねー。
ああ、カラテは…見えない状態だと危ないですよー?当たらないように結界で区切りますけどー。
四悪霊は、呪う相手を間違えない。それを思い知れ、ですねー。
『均衡の時代』において、その『名』は存在しない。
その意味を知るのは猟兵だけであったことだろう。過去のヒーローズを再現した『スナークゾーン』において、『均衡の時代』は多種多様な善悪観が姿を顕すものであった。
ヒーローたちでさえ、その大きな力の所在に懊悩する。
ヴィランたちは、世界征服よりも己の願望を叶えることに終始する。そんな時代に強大な力は必要なかったのかも知れない。
このままオブリビオンが現れなければ、そのまま緩やかに善悪は変遷していったのかもしれない。
けれど、オブリビオンの目論見はそれを許さない。
世界の破滅だけを望む彼らにとって、この時代のヒーローは『ジャスティスウォー』の時代よりも多くが喪われたことによって弱体化していた。
「なるほど、本当に終わりにしてたんですねー、彼……」
馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の一柱『疾き者』は、どこか寂しげにつぶやいていた。
彼とは、徒手空拳の青年であろう。
これまで『スナークゾーン』において必ず現れていた存在。
『名』を受け継ぎながら共に戦っていた者を思い出して、寂寞の念を抱く。けれど、今はそれを置いておかねばならない。
すでにアームドヒーローのヒーローチーム『崩壊戦線』の青年たちがオブリビオン『サラリーマン』の放つカラテの一撃によって打ちのめされている。
「ぐあああっ! こいつら、なんだ!? 他のヴィランと違う!」
なんとかオーバテクノロジーのシールドによって一命は取り留めているが『サラリーマン』たちの追撃があれば、必ず生命が奪われてしまうだろう。
巨大企業に偽装した『カルト教団』より現れる『サラリーマン』たちは、一般人と見分けがつかない。
「やるべきことをやりませんと――廻れ廻れ。この霧よ、我らが敵に」
『疾き者』は、その瞳をユーベルコードに輝かせる。
四悪霊・『廻』(シアクリョウ・メグル)。
それは呪詛の塊。
黒き球体。
その正体は呪詛の霧で生み出された、彼ら四柱が生み出してきた呪詛。それはオブリビオンのみを攻撃する霧であった。
例え、この巨大企業の高層ビルに一般人が紛れるのだとしても、オブリビオン以外を呪い殺すことのない呪詛霧は『サラリーマン』だけに影響を及ぼすであろう。
「――……! 何者だ!」
『サラリーマン』たちは視界を覆う黒い霧をスマートグラスでもって解析する。けれど、そのどれもが機能していなかった。
舌打ちした彼らがスーツやネクタイを脱ぎ去り、その身に宿した尋常ならざる力を解き放つ。
卓越したカラテの技量はヒーローであっても殺すことは可能である。
しかし、彼ら気がついていない。
『疾き者』が生み出したユーベルコードに寄る呪詛の霧は彼らの視界だけではなく、速度すら奪い去る。
「動きが……!」
「ふふ、この霧に苦しむことこそ、オブリビオンの証ですからー」
放つ棒手裏剣が『サラリーマン』たちの眉間を貫く。
「どこだ、どこから、がっ――!?」
「こ、これは……!」
『サラリーマン』たちが次々と打倒されていく中、『崩壊戦線』のヒーローたちが呻く。
自分たちが敵わなかった敵が次々と倒されていく様に圧倒されているのだ。
「四悪霊は、呪う相手を間違えない」
『疾き者』は高層ビルの中に進む。
『サラリーマン』たちは次々と、その歩みを止めようと迫ってくる。沸き立つように現れ続ける。
けれど、もう『疾き者』には、それが一般人と見紛うことはなかった。
オブリビオンだけを呪い殺す。
それが四悪霊である。だからこそ、迷うことはない。放たれる棒手裏剣は狙い過たず、『サラリーマン』たちを貫いて霧消させていく。
どれだけ強力な力も、オブリビオンのみを殺す呪詛は蝕んでいく。
「それを思い知れ、ですねー」
時代が変わろうとも、どれだけ善悪観が多種多様になるのだとしても、倒すべき敵を違えない。
猟兵として。
オブリビオンに対する呪詛を持つ『四悪霊』は為すべきこと為すべしと、迫りくる『サラリーマン』たちを打倒し続けるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
さてと、スナークゾーンも終着駅
最後はどんなおもてなしをしてくれるんだろうね
何が出るかな何が出るかなテレレテンテンテレレテン…っと
一般サラリーマンに紛れるってのは厄介この上ないけど、まあどうとでもなるか…
けど面倒な事を!
●
《RE》IncarnationとBlue Birdを抜刀
剣で腕に傷を入れて流血して下準備完了
【断章・焔ノ血】起動
普通のサラリーマンは紅き炎で治癒を付与
オブリビオンは蒼き炎でダメージを
これで視覚的にも分かり易い
後は蒼く燃えているサラリーマンに接近して剣で『なぎ払い』『串刺し』にして1体ずつ確実に潰していこう
一般サラリーマンも治癒を付与してるから、多少の怪我は許してね
すぐ治るから
ヒーローズアースにおける時代は大きく分けて七つ。
『神々の時代』より発祥した人類に歩みはついに『均衡の時代』へと移りゆく。
これが仮想空間『スナークゾーン』における最後の時代。
善悪の価値観が多様化したことによりヴィランは世界を手に入れることよりも、個人の義憤を晴らすべく力を振るうようになった。
『ジャスティスウォー』を経て、多くのヒーローとヴィランが死に絶え、弱体化したこともあったのかもしれない。
けれど、多種多様になるということは複雑化するということもである。
「さてと、『スナークゾーン』も終着駅」
月夜・玲(頂の探究者・f01605)は、最後の再現された過去のヒーローズ、『均衡の時代』に降り立つ。
仮想空間が現実に影響を及ぼすことはこれまでの時代を見てもわかるものである。
そして、この最後の時代において自分たちをもてなすオブリビオンはいかなる存在か。まるでサイコロを振るように玲は心の中でミュージックを流す。
賽の目を見るまでもない。
巨大企業に扮した『カルト教団』。
その生物実験場が地下にある高層ビルの中には一般人に紛れたオブリビオン『サラリーマン』たちがいる。
すでに彼らの悪事を突き止めたヒーローチーム『崩壊戦線』の青年たちが突入しているが、彼らでは『サラリーマン』に返り討ちになるだけであった。
「一般サラリーマンに紛れるってのは厄介この上ないけど、まあどうとでもなるか……けど面倒なことを!」
模造神器を抜き払い、その刀身で己の腕に傷を入れる。
血潮が流れていき、その一滴が地面に落ちる前に蒼き炎が噴出する。それはユーベルコードであった。
彼女の模造神器が到達した一つの形。
疑似邪神によるユーベルコードの開放。
「偽書・焔神起動。断章・焔ノ血読み込み開始」
断章・焔ノ血(フラグメント・ファイアブラッド)は、敵対する者に『蒼き炎』によるダメージを、そして味方する者に『紅き炎』による治癒をもたらす力である。
彼女はそれによって『サラリーマン』たちと一般人を区別するのだ。
「――……なんだ、この蒼い炎は……! 消えない!?」
『サラリーマン』たちは、己たちにまとわりつく『蒼き炎』を振り払いながら、スマートグラスで解析する。
けれど、其れより速く炎がまとわりついて燃やしていく。
「これで視覚的にもわかりやすい」
玲は瞬時に蒼い炎がまとわりつく『サラリーマン』へと肉薄する。
「しまった――!」
「遅いよね、今更!」
躱すことなどできない斬撃。薙ぎ払う一撃が『サラリーマン』の胴を切り裂いて霧消させていく。
さらに背後から迫る敵も逆手に握りしめた模造神器の刀身でもって貫く。
一体ずつ確実に潰していく。
ここが敵の本拠地であるのならば、敵は未だ湧き上がり続けるであろう。戦いは長期戦になる。
「ひっ……!」
一般人たちにとって、この状況は唐突な出来事であったし、動くこともできなかった。戦いに巻き込まれてしまえば、彼らもまた傷を追う。
けれど、それらをサポートするのがヒーローチーム『崩壊戦線』の面々であった。
彼らの姿に見覚えはない。
すでに世代交代した後なのだろう。名だけを受け継いだ青年たちが視覚化された一般人達を抱えて高層ビルから退避していくのだ。
「良い仕事。多少の怪我は許してほしいなって思ってたから、後はこっちの仕事だね」
玲は模造神器を構え、滴り落ちる血潮から炎を噴出させながら迫りくる『サラリーマン』たちを打倒していく。
この地下に生物実験場がある。オブリビオンの脅威は『スナークゾーン』においては振り払わなければならない。
世界を破滅に導く目論見。
それが現実世界に影響を及ぼす。ここで何の実験が行われているかなど、どうせろくでもないことだ。
「何が出るかな何が出るかなテレレテンテンテレレテン……っと」
吹き荒れる蒼き炎。
それらと共に玲は道を切り開く。
ヒーローズアースの歴史が戦いの連続であるのだとしても、それでも戦いは収めなければならない。
『均衡の時代』の後にもまた戦いは続く。
それを愚かであるというのならば、人類は救いがたきものであったかもしれない。けれど、その営みを守らんとしたものがあることを知るからこそ、玲は蒼き炎と共に破滅への扉を開かんとするオブリビオンを打ちのめすのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ロウガ・イスルギ
アドリブ・連携歓迎
区別できねえってんなら……全員ふんじばっておくか!
まあ一般人なのが確定したならそのまま安全な所まで運んでおこう
UC不空羂索使用、目についた奴は拘束
グレイプニルの複製(レプリカ)……名付けるならば『レージング』!
慌てなさんな、コイツは落ち着いて動かなけりゃ
「縛られてる事も気付かない」ほど優しい……だが、
下手に暴れるとキュッ!と行くぜ?例えば「俺に攻撃しよう」と
するとかな!
拘束されながらも歯向かって来る「サラリーマン」へ攻撃開始
カラテは【残像】【カウンター】にて躱す!
その程度の速さじゃ俺の尻尾の影すら踏めねえな!
「認識」が済んだらガンディーヴァによる【誘導弾】を
お見舞いしてやろう
巨大企業に扮した『カルト教団』。
それが此度の『スナークゾーン』におけるオブリビオンの為した組織である。全ては旧き生命を排除するために生み出されたものたち。
オブリビオンである『サラリーマン』たちは、傍目にはただの一般人のようにしか見えないだろう。
だが、その体に内包された特異性は言うまでもない。
猟兵たちは、それらを見破ることが難しいと判断していたし、事実、ヒーローチームである『崩壊戦線』が苦戦するのもまた無理なからぬものであった。
「区別できねえってんなら……全員ふんじばっておくか!」
その言葉を聞いたヒーローチームである『崩壊戦線』のメンバーたちは驚いた顔をしている。
なぜなら、そのような乱暴な手法を取ることは彼らの考えの中になかったからである。すでに過去の『スナークゾーン』において存在していたヒーローチーム『崩壊戦線』のメンバーは代替わりしている。
彼らは新しい世代のヒーローチームであった。経験が浅いのもまた当然であったのだ。
「え、ええ!?」
彼らは驚き、ロウガ・イスルギ(白朧牙虎・f00846)のそうした提案もとい、作戦を止めようとした。
けれど、百戦錬磨たる猟兵であるロウガを止めることはできない。
その瞳がユーベルコードに輝いている。
放つはフック付きワイヤー。それらを複製し、念力で全てバラバラに操作するユーベルコードは、巨大企業の高層ビルに存在している『サラリーマン』たちごと一般人たちをワイヤーで絡め取るのだ。
不空羂索(ラウンドアップ・ストラングラーズ)は、『グレイプニル』の複製を作り出すユーベルコードだ。
それらは確かに『サラリーマン』や一般人たちを拘束する。
だが、オブリビオンである『サラリーマン』たちにとって、拘束など無意味であった。彼らはネクタイを緩める。
それによって驚異的なカラテの力を発揮するのだ。
「無駄だ、この程度で我等を拘束しようなどと!」
しかし、その瞬間、拘束を引きちぎろうとした『サラリーマン』たちは一瞬で胴を寸断されていた。
「なに……ッ!? 何故、我等がオブリビオンだと……!」
「いいや、俺にはわからねーよ。けどな、コイツはそうじゃあねえ」
ロウガはユーベルコードに輝く瞳を細めて笑う。
彼のユーベルコードによって複製された『グレイプニル』は縛られていることも気づかないほどに優しいものであった。
それはロウガ自身の弁でもあったし、事実なのだろう。一般人たちは己たちが拘束されているとも思っていなかった。
確かに動きは制限されている。けれど、それはロウガに敵意を向けなければの話だ。
「下手に暴れるとキュッ! と行くんだぜ? 例えば『俺に攻撃しよう』とするとかな!」
ロウガは己に向ける敵意によって『グレイプニル』の複製が作動するように仕掛けていた。
名付けるのならば『レージング』。
優しき鎖は、敵意さえ浮かべなければただの革の鎖そのもの。故にそう名付けたのだ。
だが、己に敵意を向けるオブリビオンには違う。
「ぐぅぅぅ!! こしゃくな!!」
「はっ、その程度の速さじゃ、俺の尻尾の影すら踏めねえな!」
拘束されながらも己に迫る『サラリーマン』たち。それ以外にも地下の生物実験場より、次々と『サラリーマン』たちの増援が湧き上がっているのだろう。
これらを纏めて相手するのはロウガでも骨が折れる。
それに一般人という枷もあるのだ。けれど、此処には猟兵だけではない、ヒーローチームだっているのだ。
例え、オブリビオンに敵わなくても、彼らは彼らの役目を全うする。即ち、人を救い出すことだ。
「とまあ、あとは任せたぜ! 人助けはヒーローの本分だろ!」
「あ、ああ、任せておけ! 彼らは俺たちが守る!」
『崩壊戦線』のメンバーたちがロウガの言葉に一般人たちを抱えて高層ビルから脱出していく。
その姿をロウガは見送り、『サラリーマン』の迫りくる拳を躱しながらスマートガンの銃口を向ける。
「吠えろよ、『ガンディーヴァ』!」
ロウガの瞳が『サラリーマン』たちを見据える。
敵意。悪意。そうしたものを感じ取り、己に向けられるものを全て反射するようにスマートガンから放たれた誘導弾が彼らに打ち込まれる。
敵意は敵意になって返ってくる。
それが戦場で学んだことだろう。故にロウガは彼らを打倒する。オブリビオンが世界に対して破滅を齎すのならば、これを止めなければならない。
ロウガは、そんなことをおくびにも出さない。
そして、そんなつもりもないかもしれない。ただ、オブリビオンのやることが気に食わない。
ただ、それだけで理由としては十分だと言うように、スマートガンの銃口が煌き、その意志を代弁するように『サラリーマン』たちを貫くのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
大町・詩乃
オブリビオンと普通のサラリーマンが混在…これは悩ましいですね💡(ピコンと何か閃く)。
ここはUC:産巣で周囲のコンクリートやアスファルトからデビルキングワールドの悪魔さんを大量発生させ、武装して襲ってくるオブビリオンのサラリーマンは攻撃し、普通のサラリーマンさん達は繊細な心配りを以って避難させましょう。
相手が攻撃予想できても、人海戦術はどうしようも無いですよね~。
詩乃自身は一般人や崩壊戦線メンバーを結界術による防御壁や天耀鏡盾受け等でかばいます。
ですが「悪魔を使役して戦うとんでもないヒーローがいると先輩から聞いて、嘘だと思ったけど本当だったんだ!」という呟きが心にクリーンヒットするのでした💦
時の流れはいつだって止まらぬものである。
過去を排出して時間が前に進んでいくように、それはとめどなく行われるものである。ヒーローズアースは強き者たちの世界だ。
オーバテクノロジーの超兵器を扱うアームドヒーローのヒーローチーム『崩壊戦線』のメンバーは、『侵略者の時代』から代替わりしている。
年若いメンバーたちはまだ経験の浅いヒーローなのだろう。
けれど、彼らはよくやっていると言ってもよかった。
「ようやく、生物実験をしている『カルト教団』のアジトを突き止めたっていうのに……!」
彼らではオブリビオンである『サラリーマン』たちに敵わない。
旧き生命を淘汰せんとする神性が生み出したオブリビオン。
それが『サラリーマン』であり、その膂力は見た目を遥かに凌ぐものであったし、この『カルト教団』が巨大企業に偽装したアジト、高層ビルの中は一般人も多く残されている。
メンバーたちは猟兵と協力して一般人達を避難させているが、未だ『サラリーマン』たちと一般人を判別することができなかった。
「これは悩ましいですね……」
大町・詩乃(阿斯訶備媛・f17458)は、オブリビオンの策動とも言うべき区別のつかぬ様子にうかつに手が出せぬ状況に憂いていた。
猟兵からすればオブリビオンは対峙すれば、そうとわかるものである。
けれど、ヒーローたちはそうはいかない。彼らの犠牲無く、また一般人にも害をなさぬようにとなれば、また戦い方を考えなければならない。
「そうです!」
ぴこん、と詩乃の頭上に豆電球が輝いたような気がした。
「神の理により、此処に生命を創造いたします」
「な、なにを……?」
『崩壊戦線』のメンバーが訝しむ。詩乃の瞳にはユーベルコードが輝き、産巣(ムスヒ)たる力の発露を持って、周囲にある戦いの余波で生まれた瓦礫を変じさせていくのだ。
それは彼らにとって初めて見るものであったが、確かに知識として知っているものであった。
「さあ、デビルキングワールドの悪魔さんたち!」
詩乃が生み出したのは無機物から変じさせたデビルキングワールドの悪魔たちであった。それも大量に発生させていた。
ええええー!?
と『崩壊戦線』のヒーローたちが驚愕する。いや、なんで悪魔? と皆が思ったであろうし、そして同時に彼らは、ハッとした顔をする。
「も、もしかして、あれが噂の……!」
「ああ、悪魔を使役して戦うとんでもないヒーローがいるって先輩から聞いてたけど……!」
「絶対嘘だって思ってた……! 本当だったんだ!!」
彼らのつぶやきは詩乃の心にクリティカルヒットする。会心の一撃。きれいにみぞおちに入るような一撃であった。
「……ッ!!」
詩乃にとってはオブリビオンの猛攻よりも、そちらのほうが応えた。
まじで応えたのである。
彼女は結界術で持ってヒーローたちや一般人達を巻き込まぬように守っていたが、思わぬところから打撃を与えられたようなものであった。
しかし、くじけてはならない。
これは詩乃自身が撒いた種である。芽吹いたのならば、仕方のないことなのだ。多分。
「悪魔さんたち、武装して襲ってくる『サラリーマン』はみんなお仕事を真面目にしているかっこ悪い人たちです」
「そんなやつらはー」
「ぶっとばーす!」
悪魔たちは詩乃の言葉に応えて『サラリーマン』たちをぶっ飛ばしていく。デビルキングワールドの悪魔たちは皆、猟兵並みの強さを持っている。
そんな彼らが大量発生してしまえば『サラリーマン』たちと言えど耐えられるものではない。
「こ、こんな力押しが……!」
『サラリーマン』たちは思わずうめいていた。人海戦術そのものな悪魔たちの進撃は、職務をまっとうしようとする彼らを打ちのめしていく。
だっせー! と悪魔たちが言っていることがまるで理解できない。理不尽さを感じさせる強さでもってすり潰されていくほどであった。
何故ならば、デビルキングワールドは、ワルこそカッコイイのである。
ならば、職務を全うしようとする姿勢は、ダッセーのである。
故に悪魔たちは詩乃の口車に乗って、『サラリーマン』たちを蹴飛ばしながら縦横無尽に駆け抜けるのだ。
「ああ、普通のサラリーマンさんたちは繊細な心配りをお願いしますね」
お願いされれば普通に言うこと聞くのが良い子の種族である悪魔たちである。はーい、とまるで見た目にそぐわぬ態度で詩乃の言葉に従っている。
けれど、詩乃は神性として若干の心にダメージを追う。
とんでもねーヒーロー。
もとい女神。
その評価と『崩壊戦線』のメンバーたちの視線に今は耐えるしかないのだ――。
大成功
🔵🔵🔵
佐伯・晶
正統は途絶えたってとこなのかな
でも残ったものはあるみたいだし
幸いがあると良いね
ガトリングガンは使いにくいから
ワイヤーガンと護身術で戦おう
ヒーロー達には声をかけて共闘を持ち掛けるよ
一般人に紛れ込む事に関しては
抜きんでた力を持つんだろうけど
正面から戦う事になるなら逆に足枷となるね
シークレットガンの隠匿性は凄いけど
あくまで武器の範疇だし
体術も人体の構造を超えたものではないからね
予測するのは難しくないよ
カラテも業という程に何かが籠っているものでもないから
僕の護身術でも対抗できるかな
一撃で倒せなくても体勢を崩したり
武器を落としたりすれば隙をついてくれるヒーロー達もいるしね
ついでに回避のコツを伝えていこう
雷鳴は響かない。
『均衡の時代』の『スナークゾーン』には、これまで幾度となく見てきた徒手空拳の存在がいない。
それを佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は理解した。
正統は途絶えた。
もう二度とあの拳を振るう存在はいない。そして、あのような強大な力を持つ存在も生まれることはない。
けれど、晶は残ったものがあると知る。
アームドヒーローのヒーローチーム『崩壊戦線』は『侵略者の時代』に発足したチームである。
今は代替わりをしているようであるが、彼らの心には正義の心が宿っていた。
それが一つの幸いであることは猟兵たちにとっても同じであった。彼らがいたからこそ、『均衡の時代』においてオブリビオンのアジトが即座にわかったのだ。
もしも、彼らがいなかったのならば、猟兵たちは一からオブリビオンのアジトを探さなければならなかった。
「『カルト教団』か……巨大企業に偽装しているってところが、本当に近代って感じがするね」
『サラリーマン』たちは、ヒーローチームが突入してくると同時に一般人たちに紛れた。
不意をつくためであるし、『崩壊戦線』のメンバーだけであれば、それで十分であった。
事実、ヒーローだけであればオブリビオンは返り討ちにできた。
「あの時の経験が活かせるかも」
晶は庸人の錬磨(ヒューマン・エクスペリエンス)を持ってこれに相対する。
正面から戦うのならば、一般人にまぎれて戦うことは足かせとなる。シークレットガンは確かに不意打ちにもってこいだろう。
けれど、予測はできる。
「一般人に紛れ込んでくるなら――そこだね」
ワイヤーガンが一般人の中へと飛び込み、アタッシュケースを展開しようとしていた『サラリーマン』の腕を貫く。
「ぐっ……! 何故わかった!」
「これまでの戦いで培った経験から、かな……似たような敵もいたしね」
不意を撃つのならば、必ずこちらの視界の外から。
ならば、己の死角を理解していれば、その方角へと打ち込めばいい。ワイヤーガンを巻取り、『サラリーマン』の体が宙に跳ね上がるようにして浮く。
そこに『崩壊戦線』の武器が叩き込まれる。
「これなら……!」
「そう、その調子。敵は無手でも向かってくるよ。武器を壊したからって油断しないで」
晶はそう伝える。
『サラリーマン』たちはオブリビオンである。ただ一般人に擬態するだけではないことを伝えるのだ。
これで彼らも晶と戦いの知識を共有できる。
「わかりました! こちらは僕らに任せてください!」
一般人達をヒーローたちが守りながら誘導していく。晶は迫りくる地下よりの増援『サラリーマン』たちを見据え、ワイヤーガンを放つ。
壁や柱を利用して立体的に動く晶に追いすがる『サラリーマン』たち。
彼らはすでにスーツやネクタイを緩め、そのカラテの技でもって晶を打ち据えんとする。
けれど、晶はその拳をいなす。
「カラテも業という程に何かが籠もっているものでもないなら……僕でも対抗できる」
拳をいなすと同時に関節を決めながら、空中から地面に叩きつける。
これまで見てきた徒手空拳の存在は、その拳や蹴撃にどれも業が乗るものであった。それが彼らの強みでもあったし、同時に弱さでもあった。
「ぐはあっ!」
「なら、君たちでは僕を止められないよ。それにフォローしてくれるヒーローたちもいるしね」
紡がれたのは、血統だけではなかった。
時代の中で少しづつ、より良い未来を掴むために人々は手を伸ばしてきた。
その結実が、この『均衡の時代』であろう。
未だヴィランは存在する。けれど、それは仕方のないことだ。人の心は単一ではない。黒と白があり、光と闇が内在している。
ならば、複雑化した心は、善悪二分するものではない。灰色のように綯い交ぜに成ったものだ。
けれど、それを否定することはない。
「誰かがより善きを目指すから、時代は紡がれていく。『崩壊戦線』の彼らが代替わりしても、以前、正義の心を燃やすように、ね」
晶は『サラリーマン』たちを霧消させながら、地下にあるであろう生物実験場を目指す。
未だ灯火は潰えない。
その美しさを見るからこそ、晶は、猟兵たちは駆けつけるのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
善悪問わぬ多様性が生み出す均衡…
成程、確かにこれ迄と比べると事件の規模が局地的な物と言えます
されど流るる涙の多寡に関わらず、騎士として為すべきは変わり無し
首魁の元へ往くといたしましょう
人々に隠れ潜むなら此方も相応の手を使うまで
ステルス性能に優れた機械妖精放ち周囲の企業人達を監視
“敵”の攻撃挙動を妖精用いた情報収集能力と瞬間思考力にて見切り
アタッシュケースの強奪や破壊、眼鏡の損壊等で出鼻挫き
…企業戦士、とはそのような意味ではありませんよ
距離詰めての近接攻撃や格納銃器で攻撃させる間もなく制圧
失礼、ヒーローです
一般人の方々は直ぐに退避を
あの“拳”の有無に関わらず、騎士として為すべきは変わり無いのです
人の心は元より善悪が二分されたものではない。
相容れぬものが内在するがゆえに人は懊悩する。それを矛盾と呼ぶこともあるだろう。
ならば、ウォーマシンとして矛盾を抱えるトリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)はどうであったことだろうか。
ヒーローズアースにおける『均衡の時代』はまさに善悪問わぬ多様性が生み出す均衡そのものであった。
「成程、確かにこれ迄と比べると事件の規模が局地的な物と言えます」
これまでの時代はどれもが世界を巻き込むものであった。
ともすれば、即座に世界の破滅につながる事件ばかりであったことだろう。
けれど、今回は違う。
ヴィランたちの目的が義憤の発露であったり、破滅願望であったりと個人に集約されていく。
「されど、流るる涙の多寡に関わらず、騎士として為すべきは変わり無し」
そう己は騎士であると定めた者。
ならば、戦いの大小など関係ない。己の剣を持って、人に涙流させる者を討ち果たすのみである。
「自律・遠隔制御選択式破壊工作用妖精型ロボ(スティールフェアリーズ・タイプ・グレムリン)を使いましょう。さあ、お行きなさい」
トリテレイアは静粛性能に長けた妖精型ロボを解き放ち、『カルト教団』が偽装した巨大企業の高層ビルへと侵入させる。
セキュリティがあれど、この時代のそれを銀河の海を征く時代に生み出された妖精型ロボを捉えることはできない。
機械妖精たちは、次々と高層ビルの内部にある人々を監視する。
すでにヒーローチーム『崩壊戦線』が突入しているが、一般人に擬態した『サラリーマン』たちに苦戦しているようであった。
敵。それは言うまでもなく猟兵たちにとってはオブリビオンである。
ならば、彼らの動きは一定である。そして、トリテレイアはウォーマシンである。彼らが不意打ちに使うアタッシュケースを即座に機械妖精たちが奪い、破壊するのだ。
「――っ!? なんだ、何が……!」
「なるほど、この程度の偽装で我が機械妖精の目を謀ることができると思われていたのですね」
トリテレイアのアイセンサーが煌き、一瞬で『サラリーマン』たちの持つ武装を破壊し、さらにはスマートグラスさえも破壊させるのだ。
出鼻をくじかれた『サラリーマン』たちが動揺する時間は短い。
何故ならば、彼らには武装を破壊されても、その肉体を武器とすることができるからだ。
「だが、この程度のヒーローたちならば!」
「こ、こいつら! 強い……! 生身で!」
『崩壊戦線』のヒーローたちに襲いかかるオブリビオン『サラリーマン』たち。彼らの肉体は鋼のようであり、人の膂力を超えるものであった。
オーバーテクノロジーのシールドが在るおかげで吹き飛ばされてもヒーローたちは致命傷ではなかったが、歯が立たない。
そこにトリテレイアは駆け込む。
距離を詰めることが肝要。敵が己の正体を明かす瞬間こそが、彼らの敗北の契機である。
「……企業戦士、とはそのような意味ではありませんよ。しからば、御免!」
放つ斬撃が『サラリーマン』たちを捉え、その肉体を霧消させる。
間一髪であった。
機械騎士であるトリテレイアの挙動は『崩壊戦線』のヒーローたちにとっては、強大そのものに見えたことだろう。
「た、助かりました……あ、あなたは……」
「失礼、ヒーローです。一般人の方々は直ぐに退避を。そして、それを守ること、託されてくださいますか」
トリテレイアはヒーローたちにそう告げる。
彼の存在は未だこの『スナークゾーン』においては認知されているものではない。けれど、『崩壊戦線』のヒーローたちは『侵略者の時代』から続くチームだ。
代替わりしたとしても、受け継がれるものがある。
世界の外からやってくる者たち。
彼らの先代ヒーローたちからも伝え聞いた存在を目の当たりにして彼らは頷く。
「任せておいてください! 人々は俺たちが!」
そういって『崩壊戦線』のヒーローたちが駆け出していく。
確かに善悪は複雑多様化した。
けれど、変わらぬものもあることをトリテレイアは知る。彼らの心には灯火のように託された正義の心がある。
それを為したのはきっと。
「あの“拳”の有無に関わらず、騎士として為すべきは変わり無いのです。ええ、それだけがわかるのならば」
己が惑う必要など何一つ無い。
あの灯火を消してはならぬと、トリテレイアはアイセンサーを迸らせながら、地下へと向かうのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!
懲りないなー彼女
愛おしいよ!
また冴えた顔で「またやり直せばいい」とか言うんだろうな
でもそのとき少しだけ…ほんのちょっとだけ歪んだ顔がまたいいんだ
●みすまっちんぐ?
これさーコンセプト倒れじゃない?
地下でわらっと待ち伏せてるとかさー
こう、人ごみにまぎれるとかさーなんかやりようあるじゃん!
[球体]くんたちでガードしながらゴリゴリ近づいていってUCでドーーーンッ!!
傑作かー
彼…いや彼ら?ってそういうのだったんだ
それに比べれれば確かにこの子たちはちょっと見劣りするかな?
でも誤差じゃない?個性の範囲っていうか…キミたちはすぐ細かいことにこだわるんだから
んもー
『均衡の時代』にありて、オブリビオンの策動は続く。
仮想空間『スナークゾーン』は過去のヒーローズアースを再現したものである。オブリビオンは、この仮想空間に在りて現実を侵食する。
彼らが『スナークゾーン』にありて世界を滅ぼすのならば、それは現実世界に影響を及ぼす。
その時、世界がどうなるのかは最悪を想定した場合、これを止めなければならないと思うには十分な理由であったことだろう。
「懲りないなー彼女。愛おしいよ!」
ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)は、あの冴えない顔を思い出す。
『狂智のリースフェスト』。
究極の生物を生み出すために研究を重ねてきた神性。
彼女が願うのは旧き生命の淘汰と新しき生命の誕生だ。
「今回が失敗しても、『またやり直せばいい』とか言うんだろうな」
人とは違い、神性であるオブリビオン『狂智のリースフェスト』には時間は無限である。ならばこそ、彼女は一度や二度の失敗では諦めないしへこたれないだろうとロニは理解していた。
でも、と彼は思う。
けれど、その時少しだけ……。
「ほんのちょっとだけ歪んだ顔がまたいいんだ」
だからロニは戦うのだろう。
球体たちと共に『カルト教団』が偽装した巨大企業の高層ビルへと突入し、地下より湧き上がるオブリビオン『サラリーマン』たちでもって彼らの猛攻をガードしながら近づく。
「これさー、コンセプト倒れじゃない? 地下でわらっと待ち伏せてるとかさー」
振るう拳は神撃(ゴッドブロー)の一撃。
信心無き者にも神々しさを感じさせる拳であり、その一撃は容易に周囲の建造物を破壊せしめる。
破壊の崩落に巻き込まれる人々を『崩壊戦線』のメンバーたちが救い出しているのを見やりながらロニはナイスフォローと褒めるのだ。
「いや、めちゃくちゃなんですけど!?」
「どうなってんだあれ……!」
彼らはロニの猛然たる一撃に目を丸くしている。
けれどそれ以上に驚愕に見開かれているのは、地下より増援として現れた『サラリーマン』たちであった。
「馬鹿な……! 何故、これだけの力が! なんだあれは……!」
『サラリーマン』たちはオブリビオンである。
生み出され、人間以上の力を得ている。けれど、それでもなお超えられぬものがあることを知らしめられるかのような神の一撃。
「どうあがいても、彼……いや、彼ら? には届かないねー。ちょっと見劣りするかな?」
ロニは『サラリーマン』たちを球体から見下ろしながら、そう評する。
確かに人間以上。
けれど、これまでの『スナークゾーン』に存在した徒手空拳の存在は、これらを上回る。
「でも誤差じゃない? 個性の範囲っていうか……」
「我等を見縊るな!」
『サラリーマン』たちが一斉にロニへと飛びかかる。
その姿をロニは見上げながら、んもー、と頬をふくらませる。
いつだってそうだと、ロニは神の視点から告げる。それが傲慢のように見えるのならば、それは人の観点故であろう。
見上げることしか出来ない者達は、自分たちの礎となったものを見ようとしない。視点がいつだって上を剥いているから躓くのだ。
「キミたちはすぐ細かいことにこだわるんだから」
それは神の視点ゆえ。
ロニは球体を蹴って、『サラリーマン』たちよりもさらに高く飛び上がる。
彼の瞳がユーベルコードに輝き、その拳が唸りをあげる。
あらゆるものを破壊させる神々しさ。
破壊を齎すのはいつだって神の力である。ならばこそ、その拳は高層ビルの床面をぶち抜き、その衝撃のままに地下の生物実験場へと落ちるようにしてロニは飛び込むのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
サージェ・ライト
お呼びとあらば参じましょう
私はクノイチ、胸が大きくて忍べてないとかそんなことないもんっ!(お約束)
むぅ…もうアズマさんは現れないのですね
前回最後まで行けなかったのが悔やまれる……
しかし世界は残っています
ならば猟兵?クノイチ?的にはがんばりましょー!
とりあえずクノイチ的に【かげぶんしんの術】です!
ふっ、人海戦術、数の暴力を思い知るがいい!
簡単に言うと回避する前に普通に囲んで距離を詰めて捕まえます
サラリーマン1人にたいして10人くらいで当たります
後はフルボッコです!
それでもまだ数が余るクノイチです
さて、この戦い
スナークゾーンの先に何があるのか
見届けるとしましょう(唐突にシリアス
善悪の一大決戦『ジャスティスウォー』は多くのヒーローやヴィランたちを失うことで決着された。
その戦いの激しさは言うに及ばず。
この過去のヒーローズアースを再現した『スナークゾーン』においても変わりないことであった。
盛者必衰。栄枯盛衰。
それらの言葉が示すように強者は何れ台頭する者たちによって淘汰される。
ならばこそ、巨大企業に偽装した『カルト教団』は新しき生命を求める。旧き生命、即ち人類は淘汰されなければならない。
旧きものは新たなるものの肥やしそのもの。
だからこそ、オブリビオンは世界を滅ぼさんとする。
「お呼びとあらば参じましょう。私はクノイチ、胸が大きくてしのべてないとかそんなことないもんっ!」
お約束であった。
こんな状況であってもお約束の前口上だけは忘れないのが、サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)の真骨頂であったことだろう。
先立って行われた『ジャスティスウォー』の『スナークゾーン』での戦い。
それに最後まで参戦できなかったことを彼女は悔やんでいた。
もう徒手空拳の存在は現れない。この『均衡の時代』において、その『名』はもう無いのだ。
けれど、サージェは前を向く。
「しかし世界は残っています。ならば、猟兵? クノイチ? 的にはがんばりましょー! というわけで、しゃどーふぉーむっ! しゅばばばっ!」
サージェの瞳がユーベルコードに輝き、かげぶんしんの術(イッパイフエルクノイチ)によって己の分身達を展開し、一斉に『サラリーマン』たちへと襲いかかるのだ。
「ふっ、人海戦術、数の暴力を思い知るがいい!」
それは完全に悪役のセリフであろう。
けれど、クノイチなのでセーフ。セーフか? 言うほど? と思いながらもサージェを見る『崩壊戦線』のヒーローたちは首を傾げた。
まあ、どちらにせよ、あのクノイチはこちらの味方である。ならば、彼らはサージェを援護するべく……と思いながら、それができないことを知る。
何故ならば、いっぱい増えるクノイチは、彼らの想像の上を行くものであったからだ。
「よーするに、フルボッコです!」
『サラリーマン』一人に対して、サージェ十人で取り囲んでボッコボコにするのだ。普通に囲んで普通にボコして、普通に倒す。
なんとも味気ない。
いや、味気ないと言うか、完全に食傷気味である。サージェはそれでもまだ数が余るクノイチたちと共に『サラリーマン』を冗談みたいな人海戦術でもって打ちのめしながら数の暴力で押し流していく。
「こんな――!」
こんなことがあっていいのかと叫ぶ『サラリーマン』たちの哀愁。
これが勤め人の運命なのか。
あまりにもあんまりなサージェの侵攻についに彼らはこらえきれなくなり、ついには地下への侵攻を許す。
すでに猟兵達によって多くが喪われていたこともあるが、それ以上に穿たれた床面は、地下の生物実験場を白日の元に晒すものであった。
「さて、この戦い。『スナークゾーン』の先に何があるのか見届けるとしましょう」
「唐突にどうしたんです……?」
「なんか急にシリアスになってるんですけど……」
『崩壊戦線』のヒーローたちが一般人を避難誘導させながら訝しむ。
サージェはちょっぴり先程までのテンションとは打って変わった唐突なる己のシリアスに耳を赤くしながら、ごまかすように地下へと飛び込んでいく。
「最後までシリアスできないんですけど!?」
クノイチのシリアスは秒で壊れる定め。
いや、それもどうなのかと思わないでもないが、サージェはいつものサージェらしく、この戦いの行く末を見るべく、地下にて待ち受けるオブリビオンの元へと降り立つのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『狂智のリースフェスト』
|
POW : 残骸の再利用
全身を【繋ぎ合わせた蠢く死体 】で覆い、自身の【犠牲にした命の数】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD : 簡単な処方
【強力な催眠ガス 】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全対象を眠らせる。また、睡眠中の対象は負傷が回復する。
WIZ : 命への冒涜
自身の創造物に生命を与える。身長・繁殖力・硬度・寿命・筋力・知性のどれか一種を「人間以上」にできる。
イラスト:すねいる
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「ヴィヴ・クロックロック」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
凄まじい衝撃が『狂智のリースフェスト』の頭上から響き渡る。
此処は『カルト教団』の擁する地下の生物実験場である。ここで彼女は生命の研究に没頭していた。
これまで『神々の時代』からずっと研究を続けていたのだ。
生命在りき。
ゆえに天頂はあるのだと彼女は理解していた。
人類の発祥において『人間の傑作』とも言われた、あの徒手空拳の存在の血脈は途絶えた。
『ジャスティスウォー』は多くの力ある者を喪わせた。
あの『人間の傑作』たる『不敗を象る名』すらも喪われる戦い。それを彼女は惜しいと思うことはなかった。
むしろ、彼女とって事態が好転したともいえるだろう。
「これまで12回……そう、12回に渡って私は旧き生命、即ち人類の排除を敢行した。けれど、その全てが阻まれてきた。あの忌々しい『名』を持つ存在によって」
『狂智のリースフェスト』はけれど、頭を振る。
彼女はオブリビオンである。
時間はいくらでもあるが、ヒーローやヴィランはそうではない。彼らは有限なる時を生きている。
ならば、彼らが滅び、弱体化するまで待てばいいのだ。
簡単なことだ。
「そう、私の邪魔をする者はもういない。そのはずだったのだが……」
彼女の顔が歪む。
地上より天井を突き破り現れる者たち。
もう雷鳴は轟かないというのに、それでもなお、己の行いを断ずる者達がやってくる。
「……小賢しいものだな。猟兵。お前達が最後に私の前にやってくる……だが、私は見たんだよ。究極の生物の雛形とも言うべき存在を。如何にお前たちが生命の埒外であろうとも、あれは滅ぼしきれるものではない!」
『狂智のリースフェスト』は嗤った。
そう、すでに彼女の研究は結実している。
究極の生命。
超生物。
誰もが否定出来ぬ存在。虚構より生まれし怪物。
その名を猟兵たちはすでに知るだろう。ここが過去の再現たる仮想空間。その『名』が冠されている。
「もう誰にも止められない。この『名』はあらゆる場所から生まれでて、全てを否定することは出来ない。なぜなら、『アレ』は何処からでも何度でも誕生するからだ」
その名は。
「『スナーク』! さあ、生れ出るがいい! 何度滅ぼそうが、何度消し去ろうが、決して消えぬ『名』を私に示してくれ。そのために私は私の戦いをしよう!」
『狂智のリースフェスト』は笑いながら、その瞳をユーベルコードに輝かせる。
旧き生命即ち人類の排斥。
それを望む13度目の戦いが今幕を開ける――。
大町・詩乃
彼女では秘密結社スナーク等で噂を上書きする対抗策を知り得ないですよね~(可哀想な子を見る視線で)。
創造された生物に対し、「悪魔さん達なら楽勝ですが…クリティカルなツッコミは心臓に悪いですし💦、最後くらいはシリアスに決めないと。」と本音漏らしつつ、初発之回帰で生物発生前に戻す。
彼女の攻撃はオーラ防御を纏った天耀鏡の盾受けで防ぎ、念動力・捕縛で彼女の動きを止める。
崩壊戦線の皆さんと連携しながら、多重詠唱による光と雷の属性攻撃・神罰・全力魔法・高速詠唱で生み出した極大の雷を、スナイパー・貫通攻撃にて撃ち込みます。
アズマさんの血脈はある人に、意志は私達に継承されました。
故に貴女に勝利は有り得ません!
『狂智のリースフェスト』は究極の生命を望む。
人類は旧き生命であり、彼女にとっては最早伸び代のない存在でしか無い。だからこそ、新しき生命を作り出すための土壌でしか、人類はないのだ。
「これまでも試みたことがある。けれど、それらは尽くが阻まれてきた。忌々しいことだと何度思ったことだろう。だがな、私は見たのだ。知ったのだ」
彼女が知るのは超生物『スナーク』。
虚構より生まれるがゆえに、否定出来ぬ存在。
何処からでも生まれ、何度でも蘇る怪物。
それが『スナーク』である。
しかし、それを知るのは彼女だけではない。
猟兵もまたその名を知っている。そして、存在しないからこそ否定できないように、如何ようにも塗り替えることができる。
「オブリビオンであるあなたには知り得ぬことでしょうが」
大町・詩乃(阿斯訶備媛・f17458)は『カルト教団』の地下生物実験場へと降り立ち、そう告げる。
彼女は知らない。
これまでもそうであったようにヒーローズアースにおいて『スナーク』の名は怪物の名ではなく、猟兵たちが塗りつぶしてきた。
時に恐怖ではなく希望の象徴として。
同じ神性でありながら詩乃の『狂智のリースフェスト』に向ける視線は憐れみを含んでいた。
知らぬからこそ、その超生物の脆弱性に気が付けない。
「何を言おうとも私は止まらぬさ、『アシカビヒメ』」
『狂智のリースフェスト』は告げる。
生み出されるユーベルコードの怪物。
それは膨れ上がる肉塊であった。超生物を求めた彼女がこれまで犠牲にしてきた数多の生命の対価によって生み出された存在だ。
その咆哮を聞き、詩乃は一瞬ためらう。
デビルキングワールドの悪魔たちを呼び出せば、あの怪物も簡単であろう。
けれど、彼女は未だ『崩壊戦線』のヒーローたちの言葉を引きずっていた。心臓によろしくない。それに最後くらいはという思いも在ったのだ。
「歪んだ世界をあるべき姿に戻しましょう。リースフェスト。あなたの存在は、すでに過去のもの。過去が『今』に侵食してはならない。どれだけあなたが言葉を弄するのだとしても」
すでに過去の化身と成った神性は、かつて在りし存在ではない。
彼女は阻まれたと言った。
それはきっと徒手空拳の存在が、彼女の目論見を現実世界でも阻んできたのだろう。
「だからどうした。私には時間がある。おまえたちには有限であっても、私には無限に時間があるのだよ!」
怪物が『狂智のリースフェスと』の言葉に応えるよに跳ねる。
けれど、詩乃はそれを見下ろす。
輝く瞳のユーベルコードは、初発之回帰(ハジメノカイキ)。
ユーベルコードで生み出された存在であるのならば、発動前の状態に時間遡及する神力でもって相殺するだけだ。
「打ち消すか、だが……!」
迫る『狂智のリースフェスト』が三節棍を振るう。
その一撃を詩乃は天耀鏡でもって受け止める。オーラが砕けるが、それでもなお、その一撃を受け止めた。
「力で私に勝てるとでも思ったか!」
彼女の一撃は重たいものであった。詩乃の体は壁面に叩きつけられるが、オーラの力によって無事だ。
そこにさらなる三節棍の打撃が襲う。
「させはしない!」
『崩壊戦線』のヒーローたちがオーバーテクノロジーのシールドで持って詩乃を守る。それも長くはもたない。
打撃で砕けるシールド。吹き飛ばされる破片の中に詩乃は己の力を集約する。
指先に迸るは稲妻。
「もうあの『不敗を象る名』は存在しない! お前たちがどれだけ悪足掻きをするのだとしても、私を止めるものはいないんだよ!」
その言葉を詩乃は頭を振って否定する。
血脈は続く。
そして、意志は託される。
この過去の再現たる『スナークゾーン』において、忘れ去られた『名』。
けれど、誰も彼もの心に宿るものがある。
「意志は私達に継承されました。ゆえに」
詩乃の瞳が輝く。
雷鳴は響かない。けれど、その雷鳴を覚えている者がいるのならば。
向けた指先から迸る稲妻が、呼び水のように極大の雷を『狂智のリースフェスト』へと放つ。
膨れ上がった稲妻が彼女の体を穿つ。
「あなたに勝利は有り得ません!」
そう、例え『■■■』の名が喪われていたとしても。
それでも人の心には灯火が宿る。熾火のように絶えず燃え盛る正義の心が――。
大成功
🔵🔵🔵
馬県・義透
引き続き『疾き者』にて
そういえば、何度『スナーク』を名乗りましたかねー、私たち?
そして、その『名』は『私たち』が覚えてるのですよねー。
【四更・雷】。雷に加えて風属性と生命力吸収をつけておきました。
どれを強化しようが、それは四悪霊に吸収されると思いなさいなー。
それに、四天霊障での攻性結界張ってますからねー。ええ、具体的には…砕かれたら、すぐに重量押し潰し攻撃がいくのですよー。
制御してたものを砕いたのです、暴走してもおかしくはないでしょう?
ま、たしかに血脈に受け継がれる力ってのはありますよー?(自身が鬼封じの血脈なのでわかる『疾き者』)
ですけどね、受け継がれる意志というのもあるのですよー。
『スナーク』。
それは超生物『スナーク』の名前である。虚構から生まれる怪物。存在しないからこそ、誰も否定できない存在。
それが『スナーク』であり、この過去の再現たる『スナークゾーン』の名に冠されたものである。
稲妻が『狂智のリースフェスト』を打ち据える。
極大なる雷は彼女の体を貫く。けれど、それでも彼女は雷を振り払いながら、彼女の生み出す肉塊の如き怪物を猟兵たちにけしかける。
「『スナーク』は何度でも生まれる。何度でもだ。猟兵、お前たちであっても滅ぼしきれぬ存在。それが私の求めた究極の生命だ」
彼女の言葉と共に、これまで究極の生命を生み出そうとしてきた業の如き怪物が走る。
明らかに強化された肉体。
それはバウンドした瞬間、その肉塊から迸るように触腕を撃ち放つ。
「逃がさぬ。悪霊が逃がさぬと言ったからには…絶えよ」
四更・雷(シコウ・ライ)。
それは千を超える雷と風の矢であった。走る肉塊に打ち込まれた矢は、その雨のような矢でもって怪物の生命力を吸い上げる。
「……! 一瞬で生命力を吸い上げる……悪霊の類か!」
『狂智のリースフェスト』が呻く。
彼女の視線の先にあるのは、雷と風を織り交ぜた矢を放つ馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の一柱『疾き者』の姿。
『疾き者』は見据える。
ユーベルコードによって生み出された風雷の矢は『狂智のリースフェスト』を狙って放たれる。
しかし、その一撃は彼女が生み出した怪物によって阻まれる。
「『スナーク』の誕生を阻むか、猟兵!」
「何度『スナーク』を名乗りましたかねー、私達?」
『疾き者』たちは何度も『スナーク』を恐怖の象徴とせぬために『スナーク』の名を名乗り、希望の象徴となさしめてきた。
一つ一つが小さな積み重ねであった。けれど、その積み重ねは結実すると知る。ゆえに、『狂智のリースフェスト』の目論見は、仮想空間であろうと現実世界であろうと実現することはない。
「そして、その『名』は『私たち』が覚えているのですよねー」
『不敗を象る名』。
それが例え消え去って行くものであったとしても、『疾き者』たち四悪霊の中には残っている。覚えている。
だからこそ、こうして『均衡の時代』の『スナークゾーン』にまで縁が紡がれている。
オブリビオンの策動を許すなと叫ぶものがある。
灯火に導かれるようにして『疾き者』は戦場を駆け抜ける。
そこへ再び『狂智のリースフェスト』が放った怪物に寄る打撃が迫る。さらに彼女自身の手にした三節棍の打撃が結界を砕く。
「覚えているから何になる。何の意味がある。『アレ』はもう二度と現れない。おまえたちがどれだけ生命の埒外であろうとも!」
砕ける結界の中、迸る呪詛がある。
それは身を守るためのものではない。その結界は、彼らの中にある呪詛を封じ込めていたものであった。
吹き荒れる呪詛が怪物ごと『狂智のリースフェスト』を吹き飛ばす。
嵐のような呪詛。
「制御していたものを砕いたのです、暴走してもおかしくはないでしょう?」
内側からこみ上げてくる呪詛。
止めどないもの。
オブリビオンに対する呪詛は尽きることはない。嵐のような呪詛が戦場に吹き荒れ、怪物を圧倒していく。
「ま、確かに血脈に受け継がれる力ってのはありますよー?」
己自身がそうであるように。
鬼封じの血脈。それが『疾き者』である。けれど、悪霊と成り果てたが故に、血脈は途絶えた。
されど。
そう、されどと人は言うのだ。
血の繋がりは確かに水よりも濃いものであろう。だが、見るがいい。『侵略者の時代』にありしヒーローチーム『崩壊戦線』が代替わりを経たように、紡がれていくものが在るのだ。
力の有無など関係ない。
重要なのは意志だ。より善きを求め、人の安寧を守らんとする意志だ。
「人類は愚かだ。血脈を織りなしていくことで成長していく。けれど、相争い、それを途絶えさせてしまう。『人間の傑作』であった『■■■』でさえ、潰えた。ならば――」
「ですけどね、受け継がれる意志というものがあるのですよー」
『疾き者』は迫る『狂智のリースフェスト』を真正面から風雷の矢でもって迎える。
彼女の言葉は確かに真実であったことだろう。
またそれも一つの事実。事実は一つではない。人の心に陰陽があるように。
「『スナーク』が何処からでも生まれ、何度でも生まれてくるというのならば、受け継がれた意志もそうでしょう。何度でも燃え上がり、人の心に紡がれていく。そういうもなのですよー」
それを見失った『狂智のリースフェスト』に勝機などないと知らしめるように風雷の矢は彼女の身を穿つのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
佐伯・晶
神々の時代から幾星霜
多くの物が喪われ変わったけれど
受け継がれ続けるものもある
スナークを消し去る事は難しくても
いつの時代もきっと誰かが阻止するさ
人類の繁栄が永遠不変とはいかないだろうけど
きっとまだまだ大丈夫なはずだよ
という訳で
ここが仮想空間とはいえ
人類の排除なんて看過できないから
ここで終わりを迎えて貰おうか
ガトリングガンの範囲攻撃で
研究施設ごとリースフェストを攻撃
彼女が創造物を使役するなら
そいつらもまとめて巻き込もう
敵の攻撃は神気で防いだり
ワイヤーガンを使って回避したりするよ
ヒーロー達と連携して
創造物達を一纏めにしたら
ミサイルで一網打尽を狙おう
爆風を有効に使うのに
シールドを利用したりできないかな
その『名』が冠するはいかなるものであったことだろうか。
時代を重ねてもなお、変わらぬものであったか。
『神々の時代』から幾星霜。
多くのものが喪われ、変わった。
佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)の内に封じられた邪神は、それをこそ愛おしく思い美しいままに不変たるものへと変貌させようと願った。
変わらぬこと。
停滞と固定の権能。それを宿す晶の考えは邪神のものに染まりつつあれど、変わらぬものもまたあったのだ。
「受け継がれ続けるものもある」
それがなんであるかを『狂智のリースフェスト』は問うだろう。
彼女がこれまで犠牲にしてきた生命の数は膨大である。数えることもできないほどの生命が彼女の研究のために費やされてきた。
生み出された怪物がそうであったように。
「そんなものなどあるものか。人は愚かだ。自分たちが血脈によって進化していくことを忘れ、相争い、滅びていく。そんな滅びゆく生命を守る価値などあるものか」
『狂智のリースフェスト』が放つ怪物が咆哮し、その哀切にも似た感情を発露させる。
人に訴えるものであったが、それはただの化学反応にしかすぎない。
そのように聞こえるのは人に感情があるからだ。
「『スナーク』こそが私の求めた究極。変わりながら、その本質は変わらない。虚構のままに真実を侵食する。それこそが!」
確かに『スナーク』を消し去ることは難しい。
けれど、晶は知っている。
「いつの時代もきっと誰かが阻止するさ。人類の繁栄が永遠不変とはいかないだろうけど、きっとまだまだ大丈夫なはずだよ」
晶は迫りくる怪物へと携行ガトリングガンの銃口を向け、弾丸をばらまく。巻き込むように放たれた弾丸は地下生物実験場の施設をも破壊しながら、怪物を押し止める。
しかし、その弾丸の軌跡を見切るように怪物は跳躍し、さらには『狂智のリースフェスト』も三節棍をもって晶へと迫るのだ。
「小賢しいと言った。その保証は何処に在る。お前の言う所の大丈夫は、何を担保にして言っているのだ!」
振るわれる三節棍の打撃を晶は固定の神気でもって受け止め、跳躍から己を押しつぶさんと迫る怪物からワイヤーガンでもって飛翔して躱す。
何も保証などない。
未来など誰も見通すことができない。
わかっていることだ。不確定であるからこそ、未来は可能性に満ちている。滅びの可能性もあるだろう。
けれど、そうではない未来がある可能性だってあるのだ。
「ここが仮想空間とはいえ、現実に影響を及ぼすことがあるのなら!」
人類の排除なんて看過できるものではない。
だからこそ、晶は瞳をユーベルコードに輝かせる。
「頼んだよ、ヒーロー!」
晶の言葉とともに『崩壊戦線』のヒーローたちが一様にオーバーテクノロジーのシールドを持って、怪物と『狂智のリースフェスト』を囲む。
シールドで囲っただけだ。
けれど、晶の瞳はユーベルコードに輝いている。何をするつもりだと『狂智のリースフェスト』が見上げた先にあったのは、地上より飛翔した試製火力支援無人航空機(ファイアサポート・ドローン)であった。
それらは幾何学模様を描くように複雑に飛び、無数の小型ミサイルを放つ。
人の叡智が生み出した機械。
例え、肉体的に人間が劣るのだとしても、人は道具を作り、加工し、練磨し、人の手の届かない領域にまで手を伸ばすことができる。
「この可能性を見ないで、ただ生命の価値だけを問い続けるから、そうなる!」
晶はミサイルの爆炎の中に消えていく怪物を見た。
例え、どれだけ生命を弄ぼうとも、『狂智のリースフェスト』が到達できない領域。
人が、人だけが地球上で手にした武器。
道具を使う動物はあれど、道具を加工し発展させるのは人類のみ。故に晶は、その人類の生み出した炎でもって『狂智のリースフェスト』を『崩壊戦線』のヒーローたちが囲い込むシールドの中で逃さぬように攻め立てる。
「爆風を……押し込めるつもりか……!」
「これが人の智慧というやつだよ。ただ研究のためだけに自分の欲のためだけに、それを使うお前では決して届かない力だ」
晶は炎の中に消えゆく『狂智のリースフェスト』を『崩壊戦線』のヒーローたちと共に逃さない。
それは人が己の手で未来を勝ち取る瞬間であり、同時に神の庇護からの完全なる脱却を意味するのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ロウガ・イスルギ
アドリブ・連携歓迎
気に入らねえ!腑に落ちねえ!筋が通らねえッ!
命を冒涜し!蹂躙し!嘲笑する!
「無限」の時を生きてきて出した答えがそれなのかい!
ならばお前さんには「無間」の闇こそ相応しい!
何よりも!グレイプニルが認めねえ、赦さねえ、逃さねえッ!
UC天羅地網発動
複製ではない、全てが真なるグレイプニル!
鉤をもて皮を剥ぎ
刃と成りて肉を断ち
槍と化して骨を穿つ
その威を味わうがいい!
そして……嫌って程お前さんを「認識」した!
この世界で背負ったモン全てぶつけてやらあッ!
唸れ!轟け!吠えやがれガンディーヴァ!
ここが「戦場」だというならば
傭兵(オレ)は!猟兵(オレ達)は!
諦めない!屈しない!だから「敗けない」ッ!
爆炎の炎が『狂智のリースフェスト』と彼女が生み出した怪物を飲み込んでいく。
しかし、膨れ上がるようにして怪物の肉塊の如き体が膨れ上がり、彼女らを取り囲んでいた『崩壊戦線』の扱うオーバーテクノロジーのシールドを吹き飛ばしながら脱出する。
「忌々しい上に小賢しい。これが人類の可能性だと? この程度のことが? バカバカしい! 私が求めるのはこの程度ではない! 究極の生命とはな、このような小手先の外にあることを言うのだ!」
彼女が求めた究極の生命。
それが『スナーク』であるというのならば、皮肉である。
虚構から生まれる怪物。
どこにも存在しないからこそ、誰もが否定できないもの。
それを生命として、究極と定めたのが『狂智のリースフェスト』である。彼女は求める。その究極の生命こそが、第二の人類であると。
故に旧き生命は淘汰されなければならない。
「気に入らねえ! 腑に落ちねえ! 筋が通らねえッ!」
ロウガ・イスルギ(白朧牙虎・f00846)は、その言葉に激高する。
白虎の獣人たる姿で戦場に飛び込むロウガに『狂智のリースフェスト』は嗤う。彼女は、きっと多くの生命を犠牲にしてきた。
いじくりまわし、弄んできた。
その中には犬頭の獣人たちもあっただろう。『世界大戦』の時代においては、国家の裏にありて、彼らを人体実験に陥れた。
それは彼女にとっては手慰み程度のものであったのかもしれない。
けれど、ロウガはその様にこそ怒る。
「生命を冒涜し! 蹂躙し! 嘲笑する!『無限』の時を生きてきて出した答えがそれなのかい!」
「そのとおりだ。私にとって生命とは研究対象でしかない。『人間の傑作』ですら滅びるのならば、永遠不変を求める私にとって、人類など!」
振るわれる三節棍の打撃がロウガの身を撃つ。
凄まじい一撃がロウガの頭部を揺する。血潮が吹き出し、視界が真赤に染まる。けれど、その瞳はユーベルコードに輝く。
「ならばお前さんには『無間』の闇こそ相応しい!」
奔るは『グレイプニル』。
そのワイヤーが複雑に飛翔する。位相空間転移集合させた『グレイプニル』が『狂智のリースフェスト』へと迸るように飛ぶ。
それを防ぐように彼女の生み出した怪物が盾となる。
「何よりも!『グレイプニル』が認めねえ、赦さねえ、逃さねえッ!」
天羅地網(ストラングラーマニフォールド)は、天網恢恢疎にして漏らさず。
鈎が怪物の皮をはぎ、刃となりて肉を断ち切る。
槍となっては骨を穿ち、その威を知らしめる。
どれだけ生命として強化された怪物であったとしても、その一撃は決して防げるものではない。
ぐるりと駆け抜けるワイヤー。
それが『狂智のリースフェスト』を取り囲む。逃げ場など無い。逃がすわけがないと言うようにロウガの瞳が見据える。
「無駄だ。どれだけ私を『今』滅ぼそうとしても、無駄だ。私はオブリビオンだ。また再び蘇る。おまえたちと違い、私は無限の時を得ているのだ」
「ああ、そうだろうよ。そのとおりだろうよ」
だがな、とロウガは己の手にしたスマートガンの銃口を、ワイヤーが迸る檻の中に閉じ込めた『狂智のリースフェスト』に向ける。
彼は認識した。
嫌というほどに『認識』したのだ。ロウガはこれまでヒーローズアースの過去を再現した『スナークゾーン』で多くを見てきた。
背負ってきたのだ。
戦いばかりの世界であった。
それがこの世界の宿命であるというのならば、甘んじて受け入れる。
けれど、人の営みを歪ませ、涙で満ちさせようとするものが居るのならば話は別だ。
「唸れ! 轟け! 吠えやがれ『ガンディーヴァ』!」
銃口から放たれる弾丸は一直線に『狂智のリースフェスト』へと奔る。
けれど、その弾丸は三節棍によって弾かれる。彼女は嗤っていた。この程度かと。
弾かれた弾丸が弧を描く。
「――弧を描く?」
彼女は気がついたのだ。確かに弾丸は弾いた。軌道を変えた。けれど、何故弧を描くのかと。
そう、スマートガンから放たれた弾丸はロウガの意志を受けて曲がり、必ず命中する。そして、貫くのだ。
まるで獣のように。狙った獲物へと必ず牙を届かせるように。
此処は『戦場』だ。
ロウガにとって変わらないことだ。いつだって、そうだ。
「傭兵(オレ)は! 猟兵(オレ達)は!」
どんな時だって変わらぬ信念を宿している。
それは時として生命の埒外たる所以を示すことであったことだろう。究極の生命を生み出さんとする狂気。それを貫くのは、いつだって人の願いと世界に悲鳴が呼び寄せる存在の牙である。
「諦めない! 屈指ない! だから『敗けない』ッ!」
弧を描いた弾丸が『狂智のリースフェスト』を背後から貫いた――。
大成功
🔵🔵🔵
ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!
んもー
ちがうちがうちがーう!
熟慮は腐るにも似るというのは本当だね
永延と粘土をこねくりまわしただけの塊を「これは最高傑作になるかもしれない可能性があるから最高傑作だ」なんて…
それはボクからすれば妥協じゃないかなー?って思うよ
んもー
●不出来なものたちすべてに
量には量と[球体]くんたちにお出ましお願いしよう
そして…そのごっちゃごちゃの間を【第六感】任せに駆け抜けて…
UCでドーーーンッ!!
系譜…未来への進化を断ち切られることがあるのもしょうがないさ
それでも残るものがないわけじゃあない
それで満足することは…キミは永遠にないんだろうね
いいさ、また遊ぼう!愛しいキミとそのときは
弧を描いた弾丸の一撃が背後から『狂智のリースフェスト』の体を貫いた。
弾丸を弾いたと思った彼女にとって、それは完全に虚をつかれた形となったことだろう。しかし、彼女の肉体を覆うのは、これまで彼女が弄んだ生命の残骸である。
パッチワークのように巨躯へと変貌した外装の如き姿となり、『狂智のリースフェスト』は怒りに震える声でもって咆哮するのだ。
「何処までも私の道を阻む。私の目的を、崇高なる使命を! 何度も邪魔をする! 鬱陶しい小蝿のように何処からでも現れる! 猟兵!!」
その咆哮と共に放たれる拳の一撃は地下生物実験場を叩き割り、地鳴りのような音を地上にまで届かせる。
なんたることであろうか。
彼女がこれまで弄んできた生命は、人類の発祥からおおよそ想像を絶するほどの数となっていた。
故に彼女は、その弄んだ生命の数だけ強大な力を得て拳を振るう。
「んもーちがうちがうちがーう! 熟慮は腐るにも似るというのは本当だね」
ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)は地上から地下に飛び込みながら叫ぶ。
彼にとって『狂智のリースフェスト』の言葉はあまりにも陳腐であった。
永遠と粘土をこねくり回しただけの塊を『これは最高傑作に成るかも知れない可能性があるから最高傑作だ』と言っていることと同義であったからだ。
けれど、ロニに言わせればそれは。
「妥協じゃないかなー?」
そう、人の可能性は無限のように広がっていくものだ。
裾野すら見えぬ可能性の原野。それが人である。
ならばこそ、ロニは不出来なもの達全てを愛するだろう。球体たちと共に奔る。
その球体を『狂智のリースフェスト』はパッチワークのように組み上げられた死骸の巨躯でもって振りほどき、叩きつけ、弾き飛ばす。
なんたる膂力であったことだろうか。
凄まじい力の奔流。
これが彼女がこれまで弄んできた生命の数の証明でもあったのだ。
「邪魔を――!」
「するよ! 悪いけれどね! ごっちゃごちゃにして!」
球体たちが跳ねるようにして『狂智のリースフェスト』に群がる。跳ね飛ばされても何度でも群がり、その視界を染め上げていく。
「系譜……未来への進化を断ち切られることが在るのもしょうがないさ」
だって、人はそういうものであるから、とロニは言う。
球体とパッチワークの巨躯が混沌めいた戦況を生み出しながらもロニは、第六感でもって駆け抜けていく。
彼にとっては、それは迷路を解くのと同じ。
なんら問題にはなっていないのだ。
「それでも残るものがないわけじゃあない」
「そんなあやふやなものに掛ける時間など無駄だ。新たに一から生み出した方が早い。なのに何故抗う。あの『■■■』も。何故抗う!」
振るわれる拳の一撃をロニは正面から受け止める。
衝撃波が地下生物実験場に吹き荒れ、あらゆる瓦礫を吹き飛ばしていくだろう。
戦いは破壊を生み出す。
けれど、何も生み出さないわけではない。破壊のあとに再生があるように。再生の後には破壊がやってくる。
そうして積み上げられたものがあるからこそ、人の歴史は紡がれてきたのだ。
どうしようもないほどの現実が押し寄せてきたのだとしても、それでも懸命に生きてきたのだ。
それを美しいと思わないのかとロニは拳を握りしめる。
「それで満足することは……キミには永遠にないんだろうね」
ロニは瞳をユーベルコードに輝かせる。
その一撃は、神撃(ゴッドブロー)。
狂った神性に送る最後の一撃。
「いいさ、また遊ぼう! 愛しいキミとはそのときは」
分かり合うこともできるかもしれない。
永劫にも似た時間。
それが赦されるのが神性である。故にロニの一撃がパッチワークの鎧をまとった『狂智のリースフェスト』を吹き飛ばし、その鎧う意志すらも砕く。
いつだってそうだ。
最後の一撃は切なさすら感じさせる。
けれど、生命の意味を問、生命を進化させようとした彼女には伝わらない事かもしれないが。
「いつだって風は吹いているんだよ。手を伸ばしてご覧よ。その時感じることができるかもしれない」
爽やかささえ感じさせる、生命の息吹という名の風を――。
大成功
🔵🔵🔵
サージェ・ライト
スナークさん大人気
いえ、この研究があったからこそ
サー・ジャバウォックもそれを利用しようとしたのかもしれませんね
後、どうにもこの研究に私の(違います)チョコ肌たゆんアイドルの気配を感じるのですが……うーん?
ま、いっか
サージェ、いっきまーす!
残骸の再利用とは非道にも程がありますね
せめてもの情け
【乾坤一擲】で素早くすべからくあの世に還してあげましょう!
って空飛ぶな―!?
えーい、空を飛んだところで攻撃手段はそのヌンチャク
つまり射程内にくるタイミングが必ずあります
攻撃に対してジャストガード(ヌンチャク掴む)&
ジャンプで間合いを詰めて
「この一撃に賭けます! くろすっいんぱくとーっ!」
【乾坤一擲】だー!
『スナーク』――その名は、ヒーローズアースにおいていかなる意味を持つ名であったことだろうか。
時に恐怖の象徴として、時に希望の象徴として。
はたまた結社の名として。
正義の名の下に、もしくは悪の名の下に。
虚構から生まれた名であるがゆえに、それは誰がも知り得ぬと同時に誰もが語る事のできる『名』である。
そして、その虚構から生まれた怪物は、超生物と呼ばれる。
それを成そうとしたのがかつての猟書家『サー・ジャバウォック』であった。しかし、それは猟兵達によって防がれた。
この過去の再現たる仮想空間『スナークゾーン』もまた、その『名』が冠されていることは無関係ではないだろう。
「『スナーク』さん大人気。いえ、この研究があったからこそ、『サー・ジャバウォック』もそれを利用しようとしたのかもしれませんね」
サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)は、『狂智のリースフェスト』の体を再び覆っていく死骸のパッチワークの如き巨躯を見上げて頷く。
悠長にうなずいている暇などないのかもしれない。
けれど、彼女はどうにも気がかりであったのだ。
「私のチョコ肌たゆんアイドルの気配を感じるのですが……うーん?」
気がかりってそれ? と誰もが首を傾げたく成るものであったことだろう。けれど、彼女にとっては、それは一大事であったのかもしれない。
そんなことないと思うけどなーとサージェは、まあいいやと一人納得する。
「サージェ、いっきまーす!」
『狂智のリースフェスト』がこれまで弄んできた生命の残骸。
それが彼女の肉体を鎧う力の源である。
新たな生命を生み出そうとする行い。それは確かに神の視点から見れば、造作もないことであり、同時に咎められるべきものでもなかったのかもしれない。
けれど、それを非道と呼ぶものがいる。
世界を滅ぼしかねない行いであると糾弾するものがいる。
それが猟兵である。
「小蝿のように私に群がる! 邪魔をするな。私は!」
生命を生み出したいだけだと『狂智のリースフェスト』は巨躯へと成り果てた残骸の拳を振るう。
その一撃は凄まじいものであった。
衝撃波が吹きすさび、サージェの体が吹き飛ばされる。けれど、そんな彼女を受け止めるのはオーバーテクノロジーのシールドを手にした『崩壊戦線』のヒーローたちであった。
数人がかりでサージェを受け止め、彼女の背を押す。
「頼みます! あれは僕らでは倒せない!」
「だから! 背中のことは俺たちが!」
その言葉にサージェは押される。確かに『■■■』の名は喪われてしまったのかも知れない。
もう二度と現れることのない『名』であったのかもしれない。
けれど、『崩壊戦線』のヒーローチームが代替わりをしてもなお、その志を継いだように。
正義の心は灯火と成っって燃え盛る。
熾火のように、盛え、そしてまた次へと託される。それをしるからこそ、サージェは己の瞳をユーベルコードに輝かせる。
飛翔しようとする『狂智のリースフェスト』を『崩壊戦線』のメンバーたちが引きずり落とす。
「小癪な……猟兵でもないヒーローどもが……!」
「せめてもの情け! 素早くすべからくあの世に還してあげましょう!」
引きずり落とされた『狂智のリースフェスト』へとサージェは、ユーベルコードに輝く瞳で見据える。
カタールを構える。
息を吐き出す。
その反復動作が全てであった。
引きずり落とされた『狂智のリースフェスト』を鎧う死骸の塊は強固であったかもしれない。
けれど、引きずり落とされるタイミングと彼女の乾坤一擲(ヒッサツノイチゲキ)の一撃が噛み合えばどうなるか。
そう、誰もが一人では戦いきれるものではない。
猟兵であっても同様だ。
誰もが願う未来がある。それは平穏なる日常であろう。
「この一撃に賭けます! くろすっ! いんぱくとーっ!!」
カタールの一撃が死骸の鎧を貫く。
穿つ一撃は巨大なる衝撃と成って『狂智のリースフェスト』を吹き飛ばすだろう。
『崩壊戦線』に脈々と紡がれてきた正義の心。
その正義の心が開いた未来を穿つは、サージェの一撃。決して倒し得ぬほどの命を弄んだ力。
それをサージェは砕くべく、カタールを打ち出す。
ひび割れるように死骸の鎧が砕け散り、『狂智のリースフェスト』は見ただろう。彼女が見ることも、知ることもできなかった敗北の要因。
それがなんであるかを。
力も、心も、何もかもが摩耗した時、最後の残った武器がなんであるかを。
「人はそれを勇気と呼ぶのです!」
サージェは鎧を引き剥がされた『狂智のリースフェスト』へと彼女自身の一撃を叩き込むのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
決して滅ぼされず、何度でも蘇る…
成程、『かの名』を選んだ貴女の眼は正しい
ですが、少々着眼点が物質的に過ぎるのです
死の巨躯の猛攻に怪力で応じ、剣と盾にて攻めを捌き
かの拳を見た者が、称える歌を口ずさむように
かの脚に救われた者が、その気高きに続かんとするように
名すら失われても、人々に宿り、そして受け継がれゆく…これを不滅と言わずに何と呼びべきか!
UC起動
駆動速度を向上させ相手を翻弄
攻撃躱し剣で肉を切り刻み中身を露出
狂智の科学者引き摺り出し勝負決める一撃を
私に宿るは「御伽の騎士」
されど、数多のヒーローや民草に宿るは別の名として
「スナーク」の如く名も形も変え、受け継がれしそれこそが…未来を築くのです!
死骸の鎧が砕かれ、引き剥がされ、剥き身となった『狂智のリースフェスト』へと叩き込まれた一撃は深々と彼女へと傷を穿つ。
血潮が流れ、神性でありながらオブリビオンへと堕した存在は忌々しげに血反吐を吐き出して猟兵達をねめつける。
「忌々しい。鬱陶しい。何度も何度も私を追い詰める……これだから、猟兵とは……!」
彼女はこれまで12度に渡る旧き生命、即ち人類の排除を試みてきた。
『スナークゾーン』における戦いもまた、彼女が裏から手を引くものであったのだろう。
けれど、その都度全てが砕かれてきた。
「決して滅ぼされず、何度でも蘇る……成程、『かの名』を選んだ貴女の眼は正しい。ですが」
トリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)は、そのアイセンサーを揺らめかせながら一歩を踏み出す。
『スナーク』。
これまでヒーローズアースに置いて何度も聞いてきた名である。
時に結社の名として。時に調製物の名として。
そして、その都度猟兵たちが意味を、名を塗り替えてきたものでもある。
恐怖の象徴としてではなく、希望の象徴。それが『スナーク』の名となるように猟兵たちは戦い続けてきた。
「少々、着眼点が物質的に過ぎるのです」
「それが全てだ。生命とは物質を纏うものだ。まさか、魂などというものに、お前のような機械が語るのか!」
『狂智のリースフェスト』が咆哮すると同時に、彼女の肉体を覆う死骸の鎧。
再びまとわれた死骸の鎧は、未だ強大そのものであった。それが彼女の弄んできた生命の多さを物語っているようであった。
放つ拳の一撃は凄まじく重い。
そして、間合いを詰める速度だって、空を駆けるようでもあったのだ。
大盾と剣で、その一撃を受け止め切りながらトリテレイアはそのとおりであると頷く。
例え、己の身が機械であろうとも、この炉心に燃える騎士道精神に偽りなどない。
「かの拳を見た者が、称える歌を口ずさむように。かの脚に救われた者が、その気高きに続かんとするように」
きしむ機体のフレーム。
けれど、トリテレイアのアイセンサーはユーベルコードに輝く。
どれだけ言葉を弄されようとも、謗られようとも、紡がれ、影響された炉心に宿るものは汚されることはないのだ。
「名すら失われても、人々に宿り、そして受け継がれゆく……」
「その名は途絶えたと言っただろう! あの『人間の傑作』ですら滅びるのだ! 機械のお前にもわかることだろうに!」
叩きつけられる一撃。
その一撃を受けてしまえば、トリテレイアの躯体すらもひしゃげる勢いであった。けれど、その一撃がトリテレイアを捉えることはなかった。
これより訪れるのは、戦機の時間(ウォーマシン・タイム)。
白煙を上げる駆動部。
揺らめく中にかき消えるトリテレイアの躯体。振るわれた拳の衝撃波が、それすらも吹き飛ばす。
されど、そこに彼の姿はない。
「――ッ、速い……! 私が捉えられないだと!?」
『狂智のリースフェスト』は目を剥く。
己の拳は確かに限界速度を超えたいたはずだ。生物の範疇では躱すことなどできないはずだ。
だというのに。
今己の拳は空を切った。
何故ならば、トリテレイア・ゼロナインはウォーマシンである。
極限まで向上させた反応速度は、電子頭脳に多大なる負荷を与え、そして駆動部もまた摩耗していくほどの熱を生み出す。
だが、それを代償にして得られる力はすでに生命の範疇を超えている。
これが人の可能性の至りし極地。最先端。
「……それを不滅と言わずに何と呼ぶべきか!」
トリテレイアは知っている。
己が機械の身であろうとも、人は己を生み出した。頭脳が、ではない。連綿と紡がれてきた悠久の時。
その時間の中で託し、託されてきたものが積み上げたものがある。
その極北たるものが己であるという自負が在る。
離れた剣の斬撃を『狂智のリースフェスト』は捉えられなかっただろう。白き装甲が赤熱するほどの駆動熱を生み出しながら白煙の中、トリテレイアは斬撃を見舞う。
死骸の鎧は引き剥がされ、その中心たる『狂智のリースフェスト』が露出する。
「馬鹿な……! 生命でもない、ただの無機物が……! 魂などという不確定なものが宿るだけで……!」
ありえないと咆哮する『狂智のリースフェスト』の三節棍の一撃がトリテレイアのフェイスガードを砕く。
やはり、そこにあるのは機械だ。
アイセンサーが揺らめいている。だが、それに何の意味がある。
矛盾を抱え、それを是正しながらも、過ちすら抱えて存在し続ける。それを人はなんと呼ぶか。名をなんとするか。
「私に宿るは『御伽の騎士』。されど、数多のヒーローや民草に宿るは別の名として」
『■■■』は失われている。
けれど、残ったものが在るのだ。
「『スナーク』の如く名も形も買え、受け継がれしそれこそが……未来を築くのです!」
放つ斬撃は袈裟懸けに振るわれる。
剣閃は煌めく。
迸り血潮すら美しさを感じさせるものであったことだろう。
トリテレイアは、己の中にあるものが魂と呼ぶに値するものであるかを理解していないかもしれない。
されど、かつて願われた『御伽の騎士』は託されたものをこそ全うすべく、その意志を持って世界を滅ぼす者をこそ切り伏せるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
勝手に人類の伸び代を否定して自分のエゴを押し付ける奴じゃん
うーん、最後の最後でめちゃダサ野郎…野郎じゃないか…
前の蝙蝠マンといい、既に過去の存在になった奴が今を生きる人間を否定するんじゃないよ
それに例え私達が来なくても、こそこそ自分の都合が良いタイミングになるまで待ってるような負け犬根性丸出しの奴にヒーロー達が負ける訳ないじゃん
大事なのは名前じゃあない、その本質なんだからね
ま、今回はおせっかいやくけどさ
さてと、覚悟は良いかな?
超克、オーバーロード
外装展開、模造神器全抜刀
【雷鳴・解放】起動
高速移動で一気に接近
催眠ガスは先に『斬撃波』を放っておいて『吹き飛ばし』て少しでも薄くしよう
こちらの間合いに入ったら、4剣での連続攻撃
私の手持ちの剣で『なぎ払い』、外装の剣で『串刺し』にしよう
三節棍…もなかなかに厄介そうだろうけど、3より4の方が数は多いから勝ったね!
何事も、多い方が勝つ!
高速移動による撹乱と連続攻撃を繰り返してタイミングを計って…
さて、私からの最後のプレゼント
稲妻の斬撃をぶち込もう
「まだ、だ……まだ……! 今回は、確かにお前達の勝ちだ、猟兵……! だがな!」
ひしゃげた死骸の鎧から這い出すように『狂智のリースフェスト』は袈裟懸けに刻まれた傷跡から流れる血潮の中に手を伸ばす。
未だ霧消しない体。
それは彼女の執念の為せるものであったのかもしれない。
彼女は究極の生命を生み出さんとする。故にこれまで数多の生命を弄んできた。そこに後悔や慚愧はない。
あるのは、己の求めるものを手に入れることのできない悔恨ばかりであった。
故に、彼女は今この場を離れることを優先する。
噴出する催眠ガス。それは生命であれば全てを昏倒させるほどのガスであった。
猟兵が生命の埒外であれど、その骨子が生命であるのならば、必ずや昏倒させこの場から逃げおおせることができるはずであった。
はずであった、というのは言うまでもない。
そんな彼女を決して逃さぬ輝きがあった。
全てに超克する輝き。蒼き残光が噴出するガスを切り裂き、吹き飛ばしていた。
「勝手に人類の伸び代を否定して自分のエゴを押し付けるヤツじゃん」
最後の最後にこれかーと月夜・玲(頂の探究者・f01605)は呆れ果てたようにつぶやきながら、転送されてきた外装の副腕から抜き払った模造神器の刀身を輝かせながら、催眠ガスを尽く地上へと舞い上げ、霧散させた。
「――……! どこまでも、私の邪魔をする……! 旧き生命は淘汰されるべきだろう。おまえたちは、その旧き生命を守るというのか!」
その言葉に玲は頭を振る。
オーバーロードに至りし彼女の瞳は超克の輝きに満ちている。
四振りの模造神器の刀身。その煌きは蒼。そこに過去は届かない。
「すでに過去の存在になったやつが今を生きる人間を否定するんじゃないよ」
これまで見てきた過去の再現『スナークゾーン』での戦い。
『ジャスティスウォー』においてもそうであった。
過去の化身は『今』を停滞に引きずり込む。そうすることで自身の欲望を叶えようとする。
どんな結末があるのかと思えば、似たりよったりの願望を持った者しか現れなかった。
そして何よりも玲が落胆したのは、『狂智のリースフェスト』がこれまで12度、今回も合わせれば都合13度に渡る人類の排除を試みたことであった。
「そのどれもが、こそこそ自分の都合が良いタイミングに成ってる間で待ってるような負け犬根性丸出しのやつだってことだよね……そんな奴にヒーローたちが負ける訳無いじゃん」
煌めくユーベルコードが『狂智のリースフェスト』の神代より続く欲望を否定する。
「大事なのは名前じゃあない、その本質なんだからね」
玲は知る。
彼女もまた天頂に手を掛けた者。彼女が目指すのは再現。されど、彼女は知っている。名前に意味があれど、それが決定的な要因ではないことを。
『■■■』の名が失われても脈々と紡がれたものがあるように。ヒーローチーム『崩壊戦線』が代替わりしようとも、その正義の心が途絶えなかったように。
本質を知ることこそが要。
人の営みは止まらない。
絶え間ない時間が全てを過去にしていくのだとしても、それでも『今』は前に進み続ける。
「黙れ――! もう二度と雷鳴は轟かない。雷光は疾走らない。あの『名』は――!」
紡がれない。
『狂智のリースフェスト』は血潮を吹き出しながら、三節棍を構える。
だが、彼女は見ただろう。
もう二度と雷は迸ることがないと知りながらも、目の前に現れたる力の根源を。
「雷の疑似UDC解放。我が身よ、稲妻となれ!」
雷鳴・解放(ライトニング・リリース)。
疑似UDCの力をまとい、四振りの模造神器を振るう玲の姿が、雷鳴のような轟音を響かせた瞬間、己に迫る。雷光は瞬きすら許してはくれない。
斬撃波が残留していた催眠ガスを吹き飛ばす。
「何故だ、何故、雷鳴が聞こえる!『アレ』はもう、いないはずだ!!」
「だから、言ったじゃん。大事なのは名前じゃあないってさ!」
三節棍が振るわれる。けれど、それらを切り払う模造神器の刀身。
三つと四振り。
単純なことだ。誰だってわかる。数が多いほうが勝つ。何事もそういうことなのだ。
稲妻の如き速さでもって玲が三節棍を切り裂き、ガードを跳ね上げる。
回り込み、その斬撃が『狂智のリースフェスト』を切り裂き、その身に癒えぬ傷を与える。
血潮が地面に落ちるよりも速く、玲は十字に副腕が振るわれる斬撃の後を見ただろう。
「ま、今回はお節介かもだけどさ」
自分たちでなくても、ヒーローはきっと『狂智のリースフェスト』の目論見を打破しただろう。例え、もう二度と現れることのない存在がなくても。
「さてと、覚悟は良いかな?」
「お前も、天頂を目指すものだろう! ならば、私の為すべきことがなんであったのかをわかるはずだ! 理解できるはずだ!」
この期に及んで、告げる言葉に玲は目を細める。
刹那に満たぬ言葉。
されど、玲は取り合うことはない。
如何に彼女がUDCの疑似再現を限定的に為し得ることを求めているのだとしても。
「私とお前が手を取れば、超えられるはずだ! 星辰揃わずとも、あの頂へ至ることができる……! だから……!」
その言葉に意味がない。
玲にとって、それは手段でしかない。故に、迸る四振りの模造神器から放たれるは稲妻。
「そういうのってめちゃダサなんだよね。さて、私から最後のプレゼント」
これまで幾度となく彼女の道を阻んできたもの。
それこそが『狂智のリースフェスト』が最期に見る光景。
天網恢恢疎にして漏らさず。
その雷光が稲妻の斬撃と成って奔り、これまで『スナークゾーン』の背後で糸引く彼女を完全なる消滅へと導くのであった――。
●いつかのあなた
『均衡の時代』は終わりを告げる。
均衡あれば消えゆく、その名は『■■■』。
誰もが忘れる。誰もが失う。それは避けようのないことであっただろう。
されど、人の営みは続いていく。
これよりは『過去』が『今』に滲み出す時代。多くの戦いがあるだろう。何度も人々は試されるだろう。
求め、縋るものがあるだろう。
『名』は形を変えていく。内包する意味を変えずに。
仮想も現実も関係などない。いつかは掠れゆくものであるから。
誰もがもう思い出すことのない『名』。
いつかの誰かが言う。
「これでいいんだ。人は強くなければ生きていけない。けれど、優しくなければ生きる資格すらない。それを弱さだという者もいるだろう。人は殺されてしまうかも知れないが、負けるようには出来ていないから」
だから、何も心配することはない。
雷は風の向こうに溶けていく。
『スナークゾーン』は消滅し、仮想は現実に影響を及ぼす。
猟兵たちは知るだろう。
世界に『■■■』の名を知る者がいないことを。
あの仮想空間での戦いは、確かに現実ではなかった。けれど、あの戦いが全てなかったことにはならなかった。
より善き未来を求める人の心が導いた、いつだって可能性を掴み取ることができる力。
その名は――。
大成功
🔵🔵🔵