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善悪は知らしめる、その名は

#ヒーローズアース #戦後 #スナークゾーン #ジャスティス・ウォー #『神月円明』

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#『神月円明』


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●ジャスティス・ウォー
 善悪の頂上決戦。
 言葉にすれば、陳腐なことであるように思えたことだろう。少なくとも『クライング・ジェネス』にとってはそうであった。
 彼は無能力者である。
 ユーベルコードを持たぬヴィラン。力強き者の世界ヒーローズアースにおいてユーベルコードを持たぬということは無能であるということに他ならなかった。
 力無き者の言葉ほど虚しいものはない。
 だから、『クライング・ジェネス』は奪ったのだ。肉体にユーベルコードを移植し、混沌めいた力を発露させる。
「偉大なる『ジャスティス・ワン』様がよくまあ!」
「黙れ『クライング・ジェネス』! 理解っているのか、このままでは――!」
「そうら、そんな悠長なことを言っているから『センターオブジアース』から神々の降臨ってな!」

『ジャスティス・ワン』と『クライング・ジェネス』が激突する力の奔流は、『ジャスティスウォー』において一際鮮烈なものであった。
 1999年7月。
 それはヒーローズアースの歴史において類を見ないほどの一大決戦へと発展していく。それに『センターオブジアース』から善神と悪神が降臨し、戦いに加わったのだ。
 苛烈な決戦。
 故に多くのヒーローが死に、多くのヴィランが倒された。
「お前だけは……!」
 愛憎渦巻く一大決戦に多くのヒーローたちがユーベルコードの輝きの中に消えていく。
 ヴィランもまたそうであった。
 スピリットヒーロー『モーニア』のユーベルコードが紫電煌き、変幻自在なる姿を見せる『ヴァンパイアバット』に走る。
 あらゆるものを透過するユーベルコードを持つ『ヴァンパイアバット』は、その一撃を躱しながら嗤うのだ。

「おうおう、そういうのはな。もうちょっとマシな力の使い方をしてから言うもんだぜ! ヒーロー! この期に及んでまだ手加減するかよ!」
「違う! 私は……!」
 スピリットヒーローは強大な力を扱う。それゆえに暴走の危険性を常に抱えている。彼女は、己の力の強大さを知るからこそ力の扱いには過敏であった。
「俺が憎いんだろうが! なあ! おい! まあ、俺はお前の肉親の誰かを殺したのかも知れないが、俺は覚えちゃいないぜ? 俺にとってはその他大勢だからな。大切なのは、俺が殺したか否かだ!」
『ヴァンパイアバット』は嗤う。嘲笑う。どれだけ大切な人間を殺されたのだとしても、彼にとっては他の生命と価値の変わらぬものであった。
 だから、嗤うのだ。
 生命に貴賤はないと言いながら、それでも己の価値基準に則って生命にランクをつける。それが人だ。

「大勢を殺した! だがよぉ、お前のお父さんお母さんの生命も俺にとっては一つの生命だ。復讐に燃えるお前は自分の大切なものだけを選んで怒っているんだぜ? 笑わせるなよ、ヒーロー! 怒るのなら、全部平等に怒らなくっちゃあな――!」

●抒情詩
『スナークゾーン』は過去のヒーローズアースを再現した空間である。
 仮想空間であるが、現実を侵食する可能性のある世界でもある。猟兵たちは見てきた。これまでの『スナークゾーン』での戦いは果たして仮想空間での出来事であったのかと。
 現実に侵食する仮想が、世界に確かな痕を遺している。
 ゆえに『ジャスティスウォー』の時代にあって、猟兵たちは知るだろう。

「お前の言うことは尤もなのだろう。けれど、敢えて言うのなら」
 その言葉は怒気も何もはらんではいなかった。
 静かなる声であったし、笑っていた。強敵と相まみえた時でもなければ、誰かを救った時でもない。けれど、『モーニア』は知っていたのだ。
 彼が笑う時、それはどうしようもない時であるのだと。

「お前もまた憎しみの連鎖の一つの輪にすぎない。解き放つには」
「どうするってんだよ、この似非が――」
 その言葉が最後であった。
 拳が『ヴァンパイアバット』の胸を貫いていた。
 彼女の復讐は、彼女の手ではなく、徒手空拳の青年の手によって為された。彼女は最後までためらっていたのだ。強すぎる力を持つからこそ、振るう力には責任が生じる。
 もしも、『ヴァンパイアバット』に己と同じように大切な者がいたとして。その大切な者は己を憎むだろう。
 あらたな憎しみの連鎖の輪を己は作るだけに過ぎないのではないかと恐れたのだ。
 だから、紫電手繰るユーベルコードを使えなかった。
 それを見透かしたかのように青年は徒手空拳でもって『ヴァンパイアバット』を自身の変わりに殺したのだ。いや、殺させてしまったのだ。
 全ては己の弱さ故に。

「私は……『アズマ』、私は……!」
「いいさ。過去から続く約束をオレは守っただけだ。アンタが気にする必要なんてない。アンタが手を汚す必要なんて無い。憎しみの連鎖はオレが連れて行く。だから、アンタは――」

●スナークゾーン
 グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)であった。
「お集まり頂きありがとうございます。今回の事件はヒーローズアース……『スナークゾーン』によって再現された『ジャスティスウォー』が舞台です」
『ジャスティスウォー』とは、ヒーローズアース史上最大の決戦が行われた時代である。
『ジャスティス・ワン』率いるヒーロー軍団と、『クライング・ジェネス』率いるヴィラン軍団が激突し、多くのヒーローとヴィランが死んだ戦いだ。

 そんな『ジャスティスウォー』を再現した『スナークゾーン』においてオブリビオンは大軍勢と共に現れ、一撃でヨーロッパ全土が吹き飛ぶほどの威力を持つ超・兵器『エベンキ・バタフライ』を起動しようとしている。
「超・兵器『エベンキ・バタフライ』は恐らく高性能の爆弾なのだと思われます。詳細は解っていませんが、これを起動されてしまえば、またたく間に破壊を齎すでしょう」
 ナイアルテの瞳が爛々と薄紅色に輝いている。
 彼女の言葉が真実であるのだとすれば、ヒーローとヴィランとの決戦は一時休戦にしなければならないほどの事態である。

「はい。ヒーローとヴィランは一時的に休戦し、皆さんと共にオブリビオン軍団と戦ってくれるようなのです。もちろん『ジャスティス・ワン』やオブリビオン化していない『クライング・ジェネス』も同様です」
 迫るオブリビオンの軍勢を打倒し、超・兵器『エベンキ・バタフライ』の起動を阻止するべく、オブリビオンの軍勢を率いている『ヴァンパイアバット』を倒して『停止スイッチ』を手に入れれば、超・兵器は停止される。

「ただオブリビオンの『ヴァンパイアバット』が現れる直前に、オブリビオンではない、この時代に生きた『ヴァンパイアバット』が倒されていることから、多少の混乱がヒーロー、ヴィラン側にも起こるかもしれません」
 その混乱にオブリビオンは乗じるのかもしれない。
 兎にも角にも、『エベンキ・バタフライ』を起動させてはならない。ナイアルテはそう告げると猟兵達の転移の準備を進める。
 薄紅色の瞳は爛々と輝き続けている。
 彼女は再び頭を下げ、猟兵達を送り出す。ヒーローズアースに置いて苛烈を極めた決戦、その只中に――。


海鶴
 マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
 今回はヒーローズアースにおいて発生した『スナークゾーン』に存在するオブリビオンたちの目論見を打破するシナリオになります。
 今回の『スナークゾーン』は『ジャスティスウォー』です。

 スナークゾーンのシリーズとして各時代を巡っていくシナリオ群になります。
 過去シナリオは、シナリオタグ『神月円明』から参照できます。

 ※このシナリオは二章で構成されたシナリオになります。

●第一章
 集団戦です。
 オブリビオン軍団はヒーロ軍団、ヴィラン軍団との血栓の中にドコからともなく大軍勢として現れ、一撃でヨーロッパ全土を吹き飛ばすほどの威力を持つ超・兵器『エベンキ・バタフライ』と呼ばれる高性能爆弾を起動させようとしています。
 これにヒーロ軍団とヴィラン軍団は一時休戦し、みなさんとともにオブリビオン軍団に立ち向かってくれます。
『ジャスティス・ワン』は全身を『エナジー化』して様々なものに変身する能力を。『クライング・ジェネス』はオブリビオンではないただの無能力者ですが、肉体に移植した様々なユーベルコードを使って加勢してくれます。

 またスピリットヒーロー『モーニア』は稲妻を。炎のヒーロー『ブラック・サン』は炎を。そして、徒手空拳の青年は拳と蹴撃でもってみなさんと共に戦います。

●第二章
 ボス戦です。
 超・兵器『エベンキ・バタフライ』と呼ばれる巨大な高性能爆弾を前にオブリビオンのボスである『ヴァンパイアバット』との戦いになります。
 すでに『エベンキ・バタフライ』はカウントダウンを始めており、速やかに『ヴァンパイアバット』を倒して『停止スイッチ』を手に入れなければなりません。

 また『ヴァンパイアバット』はオブリビオン軍団が現れる直前に徒手空拳の青年によって倒されているため、ヒーロー側もヴィラン側も困惑しています。
 カウントダウンまで時間はあまり多くはありませんが、これを停止させなければヨーロッパ全土が吹き飛びます。

 それでは、ヒーローズアースにおける『ジャスティスウォー』を再現したスナークゾーンにおける皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
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第1章 集団戦 『オブリビオンソルジャー』

POW   :    バトル・アクション
【準備しておいた集団での連携攻撃作戦】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
SPD   :    デンジャラス・スローイング
【仲間達に全力で投げてもらう】事で【特攻モード】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    サポート・リクエスト
戦闘力のない【情報伝達用撮影ドローン】を召喚する。自身が活躍や苦戦をする度、【後方部隊から届く援助物資】によって武器や防具がパワーアップする。

イラスト:森乃ゴリラ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「なんだぁ!? コイツらは!」
「む――……!?」
『クライング・ジェネス』と『ジャスティス・ワン』は突如として現れた大軍勢を前に戸惑いを隠せないでいた。
 彼らにとって戦いとは善と悪に二分されるものであった。
 突如して現れた『オブリビオンソルジャー』たちはヒーローでもなければヴィランでもなかった。彼らは巨大な球体兵器と共に『ジャスティスウォー』に降り立ち、ヒーローやヴィランなど分別無く襲いかかっていた。
「ヴィランではない……!? ならば、彼らは……!」
「おいおい、ヒーローでもねーっていうのか、コイツらは」
 だが、『クライング・ジェネス』は見た。
 その正体不明の軍勢を率いているのが、己が率いるヴィラン軍団にいた『ヴァンパイアバット』であるのを。物体をすり抜ける能力を持ち、暗殺や破壊工作を得意とするヴィランらしいヴィランであった。
 粗暴かつ短気。プライドだけが高いヴィランであったが、己に牙むくほどの度量があるようには思えなかった。

「おいおいおいおい。まさかてめえ如きが裏切りでもやってくれちゃってんのか? いいじゃねえか! それでこそヴィランってものだ!」
『クライング・ジェネス』は笑う。別段、彼は『ヴァンパイアバット』には恨みは湧き上がらない。むしろ、ここに来ての裏切りは賞賛に値するものであったからだ。
 そして、そんなことは彼にとってはどうでもいいことだった。
 なぜなら、彼にとっての原動力は恨みだけであったから。
 腐った人間社会に対する恨み。
 己の恨みをくらだないと一蹴した恨み。
 無能力者であるがゆえに味わった辛苦すらも、共感しようとした恨み。
 そのどれもが彼の恨みを加速させるものであり、己の体にユーベルコードを移植するという凶行を突き進める原動力であったのだ。だからこそ、ここに来て『ヴァンパイアバット』が裏切ることは恨みに直結することではなかった。

「何を言っていやがる。無能力者風情が。俺はな、お前程度ではどうしようもないほどの力を手に入れたんだよ! 大陸一つぶっ飛ばせる力だ! この力があれば、てめらなんぞ!!」
「ああん? 調子いいじゃねーかよ! なあ、おい!」
「『クライング・ジェネス』、やつの言っていることは本当だ。私が見た限り、あの球体兵器は……!」
『ヴァンパイアバット』が咆哮する。
 彼はオブリビオンである。寸前までヒーローと戦っていたが為に『クライング・ジェネス』も『ジャスティスワン』も気がつけなかった。
 すでにオブリビオンではない『ヴァンパイアバット』は倒されている。
 徒手空拳の青年の拳によって貫かれていたのだ。
 そして、ヒーローとヴィランを率いる二人は確信する。『ヴァンパイアバット』の言葉は虚勢ではないと。

「冥府から蘇ったと言うには、あまりにも早すぎるな。だが、関係ない。もう誰も復讐の連鎖には組み込ませはしない」
 だが、そんな言葉を遮ることがバアル。徒手空拳の青年から放たれる重圧は凄まじいものであった。
 額際から逆立つ一房の金髪。道着であろう着衣から覗く胸の十字傷と右腕に走る傷跡。
 そして、構える徒手空拳の青年の瞳が薄紅色に輝く。
「此処で終わらせる」
 そう、憎しみも、『不敗を象る名』も、ここで断ち切る。争いを未来に残さぬためにも、彼は構えるのだ。
 その意志は強くみなぎっている。
「やってみろや! てめえも何れ過去になる。それはどうしようもないことだって絶望しながら、『エベンキ・バタフライ』で吹っ飛びな!」
『ヴァンパイアバット』と号令と共に『オブリビオンソルジャー』たちが溢れるように飛び出し、ヒーローとヴィランたち双方に襲いかかる。彼らは時間を稼ぐだけでいい。
 すでに超兵器『エベンキ・バタフライ』は発動カウントダウンを始めている。
 迫りくる『オブリビオンソルジャー』たちを退け、『ヴァンパイアバット』が持つ『停止スイッチ』を押さねば、ヨーロッパ全土が滅びてしまう。
 これを止めるべく、ヒーローとヴィランは一時的に休戦し、オブリビオン軍団と激突するだろう。
 そんな最中、猟兵たちは戦場へと降り立つ。
 この『スナークゾーン』は過去の再現。されど、仮想が現実を侵食するのならば、ヨーロッパ全土を吹き飛ばす『エベンキ・バタフライ』は途方も無い影響を現実に与える。
 それだけは阻止なければならないのだ――。
月夜・玲
さて、残る時代は後2つ…
何が待ち構えているのやら…

しかしご本人様登場…じゃなくてオブリビオン化して登場というのは、こう…紛らわしい!
もうちょっと溜めて出てくるとかしないと!
素顔を隠すとかこう…エンタメしようぜエンタメ!
そういう状況じゃない?
だからこそ、だよ


《RE》IncarnationとBlue Birdを抜刀
数が多いなら、此方も数で対抗しよう
【光剣解放】起動
1240本の光の剣でオブリビオンソルジャーに対処
半分の光剣で敵のドローンを撃ち落として、援助物資が届くのを阻害しよう
残り半分の光剣はランダム軌道で敵を『串刺し』にして攻撃
私も『斬撃波』で敵を『吹き飛ばし』て体勢を崩させ近接戦に持ち込もう



 ヒーローズアースにおいて主なる時代は七つ。
 過去の再現たる『スナークゾーン』はこれまで五つ確認され、そのいずれもが消滅してきた。
 しかし、仮想空間であっても現実に影響を及ぼすことが確認されている。
 だからこそ、六つ目の時代である『ジャスティスウォー』は、後年に与える影響が最も大きな時代であった。
 巨大な球体兵器。
 その存在は『ジャスティスウォー』においても確認されていない。 
 善悪の頂上決戦。
「全てふっとばしてやるぜ! もっと、もっと、俺は殺したいんだ! 俺の生命だけじゃあない。全てが無意味だって証明したいのさ!」
『ヴァンパイアバット』はオブリビオンである。直前にオブリビオン化していない『ヴァンパイアバット』が倒されているせいでヒーロー軍団もヴィラン軍団も混乱している。

 けれど、そんなことなどお構いなしに『ヴァンパイアバット』は『オブリビオンソルジャー』と共に二つの軍団に食って掛かるのだ。
「しかしご本人登場……じゃなくてオブリビオン化して登場というのは、こう……紛らわしい!」
 月夜・玲(頂の探究者・f01605)は模造神器を二振り抜き払い、その蒼き残光と共に戦場に飛び込む。
 すでに『オブリビオン・ソルジャー』が撮影用ドローンでもって戦況を逐一確認し、即座に補助アイテムを後方から呼び寄せ装着している。
 戦闘力の上がった『オブリビオンソルジャー』たちは、その力で持ってヒーローやヴィランたちを圧倒するのだ。

「もうちょっと溜めて出てくるとかしないと! 素顔を隠すとかこう……エンタメしようぜエンタメ!」
 玲は自身のサブカルマニアとしての魂が叫ぶようであった。
 こういう時基本、黒幕は顔を隠すべきであったし、直前に倒されているのならば、その立場を十全に利用すべきであると思ったのだ。
 超・兵器『エベンキ・バタフライ』は球体兵器であり、ヨーロッパ全土を吹き飛ばすほどの威力を持っているのならば、なおさらだ。
「そういう状況じゃあないだろう」
 徒手空拳の青年が笑っている。伝え聞く所のままの存在である猟兵たちに笑ったのだ。どうしようもない状況だからこそ、彼は笑う。

「だからこそ、だよ」
 玲もまた同様であった。
 彼女の瞳がユーベルコードに輝く。玲の周囲に展開される千を優に超える光剣たち。敵が膨大な数で来るというのならば、こちらも数で圧倒するのだ。
 半数の光剣が空を走る。
 それは『オブリビオンソルジャー』たちの戦局を知らせ、そして後方からのサポートを為す要であるドローンを撃ち抜く。
「援助物資があるから、敵は底上げされた能力で戦えてる。なら、それを邪魔しないとね。後半数は!」
 玲の瞳が輝く。
 
 光剣解放(セイバー・リリース)によって生み出された剣が戦場を蹂躙していく。ランダムな軌道を描いて飛ぶ剣は、『オブリビオンソルジャー』たちを次々と貫いていく。
「もう遅ぇよ!『エベンキ・バタフライ』はカウントダウンを始めている! 止められるものかよ!」
『ヴァンパイアバット』が抵抗続けるヒーロー軍団とヴィラン軍団を前に嘲笑う。
 けれど、玲は知っている。
 超・兵器のカウントダウンを止める『停止スイッチ』を『ヴァンパイアバット』が持っていることを。だからこそ、猟兵たちがやってきたのだ。
 あの超・兵器を起動させない。
 仮想が現実を侵食させることはさせない。

「『停止スイッチ』なんて用意しているくせに……言うことがいちいち肝っ玉が小さい!」
「いくぞ――!」
 玲の斬撃波が戦場を縦断する。
 放たれた一撃が『オブリビオンソルジャー』たちを切り裂いて吹き飛ばしながら、一瞬で駆け込んでいく。
 徒手空拳の青年の拳が体勢を崩した『オブリビオンソルジャー』を打ち据え、玲の模造神器の刀身が切り崩していく。

『ジャスティスウォー』を含めれば、残された『スナークゾーン』にて再現された時代は二つ。
 何が待ち受けているのか。
 未だ結末は見えない。されど、確実に訪れる。それが終わりというものである。結末の果てに何を見るのか。
 いずれにせよ、玲は蒼き残光と共に戦場を切り裂き、ヒーローズアース史上最大の決戦たる戦場を走るのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友

第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん
武器:灰遠雷

おやまあ、受け継がれてますねー。
しかし、ややこしいことになづてますねー。終わったときに何があるのやらー。
ま、でも…やることはかわらないんですよねー。

はい、ではー。【四天境地・雷】で狙いいきましょうねー。
どう速度を出そうと…この矢からは逃れられません。
当たれば痺れるでしょうねー。生命力吸収もしてますから、動けなくなりますー。
ええ、近接主体でも、問題ないくらいにはねー。

そう、いずれにしろ、過去が未来を食らうことがあってはならないんですから。



 善悪の頂上決戦。
 それが『ジャスティスウォー』である。1999年7月に行われた戦いは、苛烈を極めたことで知られている。
 多くのヒーローが倒れ、多くのヴィランもまた滅びた。
『ジャスティス・ワン』はあらゆるものにエナジー化し変身できる力を持って、『知られざる文明』との往来を塞ぐゲートへと変貌したことで知られている。
 けれど、過去の再現である『スナークゾーン』においては、未だ訪れざる未来でもあるのだ。
「敵の数が多い……!『クライング・ジェネス』との戦いでの消耗が響いているか……だが!」
『ジャスティス・ワン』は迫るオブリビオンの大軍勢を見やる。
 単体では確かに『ジャスティス・ワン』を凌駕するものではない。けれど、『オブリビオンソルジャー』の数は尋常ならざるものであった。
 彼らは味方をつかみ、全力で放り投げることによる弾丸のような高速戦闘でもってヒーロー軍団のみならず、ヴィラン軍団をも圧倒しているのだ。

「クソが! 鬱陶しいったらないぜ! なあおい!」
『クライング・ジェネス』が悪態を突きながら、胸の砲門から空気を打ち出し、『オブリビオン・ソルジャー』を吹き飛ばす。
 それを『ブラック・サン』と呼ばれるヒーローが炎でもって消し飛ばすのだ。
「このままでは、あの超・兵器が作動してしまう……!」
「立ち止まるな。それは俺達の敗北を意味するぞ」
 徒手空拳の青年の言葉と拳が『オブリビオンソルジャー』を打倒する。その姿を馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の一柱『疾き者』は認め、その『名』が受け継がれていることを知る。

「おやまあ、受け継がれていますねー」
「アンタは……そうか、世界の外からやってくる連中だな。だが、この『名』は、俺の代で終わらせる。気に病むことはない」
『疾き者』は徒手空拳の青年の言葉に首をひねる。
 どうやら、過去の再現であったとしてもややこしいことになっているようである。それもそうだ。『ヴァンパイアバット』率いるオブリビオン軍団のせいで、決戦は一時中断されている。
 しかも、カウントダウンを始めた超・兵器はヨーロッパ全土を吹き飛ばすほどの威力を持っているのだ。

「ま、でも……やることはかわらないんですよねー」
「ああ、そのとおりだ。その時に出来る最大を。わかっているとも!」
『疾き者』の言葉に『ブラック・サン』の炎が迸る。
 彼らの援護を受けられるのならば、オブリビオン軍団も恐れるに足りない。
「はい、ではー」
 構える強弓が呪詛で黒く染まっていく。
 その瞳がユーベルコードに輝く。彼らを束ねる呪詛。それらを弓に込めることによって放たれる矢は、放たれた瞬間に分裂する。

「――ッ!?」
『オブリビオンソルジャー』たちは驚愕しただろう。
『疾き者』のはなった一射は空で分裂し、彼が視認した全ての『オブリビオンソルジャー』へと放たれるのだ。
 だが、彼らは膨大な数の味方によって放り投げられることによって超高速戦闘を可能としている。振り切れるはずだった。
「どう速度を出そうと……この矢からは逃げられません」
 それは放つ矢の速度だけではない。
 猟兵たちに協力するヒーロー軍団やヴィラン軍団たちが『オブリビオンソルジャー』たちの挙動を完全に囲いこんで、コースを限定しているからだ。

 分裂し、追尾する矢。 
 それが、四天境地・雷(シテンキョウチ・カミナリ)である。放つ矢は、空を染め上げる。
 打ち込まれた矢は『オブリビオンソルジャー』の体をしびれさせ、生命力を吸い上げていく。
 陸に打ち上げられた魚のように痙攣するしかない『オブリビオンソルジャー』を『クライング・ジェネス』が踏みつけ霧消させる。
「ギャッハハハ! ザマアねえな! イキるからこうなっちまうんだよ! おい、覚えておけよ、次はてめえらだからなぁ!」

『クライング・ジェネス』の笑い声が響く。
 今は敵ではない。オブリビオン化していない『クライング・ジェネス』は狂犬そのものであるが、今は味方であることに違いはない。
「ええ、ですが問題にはならないでしょうね」
『疾き者』は矢をつがえ、再び放つ。
『オブリビオンソルジャー』の壁は徐々に崩されつつあった。この戦いが終わっても、ヒーローとヴィランは決着をつけるまで戦い続けるだろう。

 その未来を知っている。
 けれど、『疾き者』はそれを止める手立てを持たない。そして、例え凄惨たる戦いの結果が待ち受けるのだとしても、それを変えてはならないと思うのだ。
「そう、いずれにしろ、過去が未来を喰らうことがあってはならないんですから」
 過去は変わらない。
 けれど未来は変わる。
 それが可能性というものである。けれど、此処は未来につながる過去ではない。そして、『今』でもない。
 過去の再現。『スナークゾーン』でしかない。

 だからこそ、仮想が現実を侵食することのないように『疾き者』は再び弓を引き絞るのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

大町・詩乃
「さすがはヴァンパイアを名前の一部にするだけあって、死んだように見えても殺されないしぶとさはあるようですね。
アズマさん、モーニアさん、貴方達が憎しみや復讐の連鎖を背負う必要はありません。私達猟兵で彼を殺しますので、援護だけお願いしますね。」
とアズマさんのヴァンパイアバット殺害はノーカン扱いする。
(二人共、背負い込んで精神的に病まないように言葉を重ねて、不殺だと誘導する。)

オブリビオンソルジャー達のUC(ドローン)は初発之回帰でお引き取り願う。
煌月に光の属性攻撃・神罰を籠めての衝撃波と共に放つなぎ払いや、雷の属性攻撃・神罰・全力魔法・範囲攻撃・高速詠唱での雷を放ったりして倒していきますよ!



 ヴィラン『ヴァンパイアバット』は死んだ。
 確かに見たのだ。けれど、今、正体不明の軍団『オブリビオンソルジャー』と共に戦場になだれ込んできたのは、見紛うことのない存在であった。
 スピリットヒーロー『モーニア』の両親だけではなく、多くの生命を簒奪した存在。『ヴァンパイアバット』。彼はオブリビオンとして蘇ったことを猟兵たちは知っている。
 けれど、この場に居合わせた者たちにとって、それは未だ知られざることである。未だオブリビオンという存在が顕在化していない時代であるがゆえに、目の前の光景は突如として死んだはずの『ヴァンパイアバット』が蘇ったようにしか思えなかったことだろう。
「何故……! まだ生きている、お前が!」
『モーニア』の取り乱し方は顕著であった。
 精神力でもって力を振るうスピリットヒーローにとっては、致命的な心の乱れ。

 それ以前に彼女は己の仇を徒手空拳の青年によって肩代わりする形で失っている。吹き荒れる嵐のように雷鳴が轟き、『モーニア』のちからは暴走寸前であった。
「さすがはヴァンパイアを名前の一部にするだけあって、死んだように見えて殺されないしぶとさはあるようですね」
 大町・詩乃(阿斯訶備媛・f17458)は『モーニア』の肩に手をおきながら、そう伝える。
 彼女にとっては罪悪と後悔の象徴。
 それが『ヴァンパイアバット』である。精神力が力に直結するスピリットヒーローにとって、暴走は許されない。だからこそ、詩乃は彼女の心を安らかなるものにするようにミスリードを誘うのだ。

「『アズマ』さん、『モーニア』さん、あなた達が憎しみや復讐の連鎖を背負う必要はありません」
 詩乃の瞳がユーベルコードに輝く。 
 迫りくるオブリビオン軍団、『オブリビオンソルジャー』たちを見据え、詩乃はいい切る。
 彼らの懊悩は既に知っているものである。
 ここは『スナークゾーン』。過去の再現であるからこそ、彼女は知る。
 彼らが悩み、悔やみ、そして苦しみの中で生きることを。仮想は現実に侵食する。だからこそ、詩乃は彼らの心を救うことをこそ、この戦いの中に見出す。

「私達猟兵で彼を殺します」
 その瞳には決意があった。
 変わらないのが過去だ。不変であるからこそ、オブリビオンは歪みにじみ出る。この『スナークゾーン』での戦いは現実に影響を及ぼすかもしれない。
 けれど、それ以上に心を救いたいと願うのが詩乃の神性であった。
「アンタも気負わなくていい。全部を背負うことは神様にだって出来はしないのだから」
 徒手空拳の青年が笑っていう。
 これまで見てきた歴代の徒手空拳の者たちはよく笑う。けれど、徒手空拳の青年の笑顔は、何処か悲壮感すら感じさせるものであったことを詩乃は知るだろう。

「それでも。歪んだ世界を在るべき姿に戻しましょう」
 きらめくユーベルコードは時間遡及する神力の発露。
 それは、初発之回帰(ハジメノカイキ)。どれだけ『オブリビオンソルジャー』たちが後方から物資を運ばせるのだとしても、詩乃のユーベルコードを時が逆巻くように無力化するのだ。
「……!?」
『オブリビオンソルジャー』たちは補給物資によって強化され、ヒーロー軍団やヴィラン軍団を圧倒していた。
 けれど、それが喪われたのならばどうなるか。

「今までの勢いはどうしたよぉ! おい!」
「敵のサポートが途切れた……今ならば!」
『クライング・ジェネス』と『ジャスティス・ワン』が走る。そのユーベルコードが煌き、『オブリビオンソルジャー』たちオブリビオン軍団を押し返していく。
「『ジャスティスウォー』……戦いは避けられませんが……!」
 詩乃の雷の神罰が迸る。
 拘束詠唱によって生み出される稲妻は、空を駆け巡りサポートを失った『オブリビオンソルジャー』たちを霧消させていく。

 戦いはまだ終わらない。
 例え、このオブリビオン軍団を退けたとしても、きっとヒーローとヴィランたちは決着が着くまで戦い続けるだろう。
 戦いの結末と、その後に続く歴史を知っているからこそ、共通の敵を前にしてヒーローとヴィランと言えども手を取り合うことができるという事実が物悲しくもある。
「されど、咎をあのお二人に背負わせ、心を病ませるわけにはいかなないのです」
 詩乃は『スナークゾーン』という仮想空間にありても、その心に従う。
 誰かを救いたいと願うことを尊いことだと、その心を持って世界に示すのだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
あの青年、たぶんあの人だよね
過去の存在である以上は
過去を模した世界にもいる訳だ

この仮想現実の世界は
一体どんな結末を迎えるのかな

共闘できるような存在でなかった人や故人だった人と
一緒に戦うのは妙な気分だけど
まずは目の前の敵をなんとかしようか

モーニアやブラック・サン
素手の青年達を範囲射撃で制圧したり
近付く敵を使い魔に麻痺させたりして援護しよう

援護するよ、横槍は防ぐから目の前の敵に集中して

敵の連携攻撃はワイヤーガンを使って回避したり
神気を使って防いだりするよ

纏まって向かってきたらUCを使用
一気に数を減らそうか
これだけいれば狙いをつける必要もなさそうだね
ガトリングガンで薙ぎ払っていこう

さあ、一気に進むよ



 風に流れる一房の金髪。
 道着が揺れるように動いた瞬間には、すでに其処に徒手空拳の青年の姿はない。
 あるのは拳と蹴撃によって打ちのめされた『オブリビオンソルジャー』の姿だけであった。
「あの青年、たぶんあの人だよね……」
 その姿を見た佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は己の心に浮かぶ確信めいたものを感じたことだろう。
 此処は『スナークゾーン』。
 過去のヒーローズアースを再現した仮想空間である。ならば、此処にあの存在が板としてもおかしくはない。

 そして、『スナークゾーン』は仮想空間でありながら、現実に侵食する。
 これまでの戦いの中で晶は見てきただろう。
 己の権能でもって石像化したオブリビオン。刀剣。それらが今も尚『センターオブジアース』に残っていることを。
「この仮想現実の世界は一体どんな結末を迎えるのかな」
 戦場にはヒーローとヴィラン、そしてオブリビオン。さらには猟兵たちが綯い交ぜとなって混沌とした様相を見せていたが、戦いの図式は単純であった。
 ヒーローもヴィランもオブリビオンと戦っている。
 猟兵もまた同様だ。これだけ多種多様な者たちが集ったとしても世界の危機を前にした時、人まとまりになるということは、一つの希望であるように思えたのだ。
「オラオラ、邪魔だ! ギャッハハハ!!」

『クライング・ジェネス』のユーベルコードが胸の砲門の如き孔から噴出し、『オブリビオンソルジャー』たちを吹き飛ばす。
 未だオブリビオン化していた『クライング・ジェネス』。
 晶はオブリビオンとなった『クライング・ジェネス』を知っているからこそ、共闘することなどできないと思っていた。
 けれど、どこか奇妙な気分であった。嬉しいような、悲しいような。
 矛盾をはらんだ感情。
「プロメテウス・バーンッ!!!」
 炎のヒーロー『ブラック・サン』の炎がオブリビオンを薙ぎ払う。晶の瞳に映るヒーローもヴィランも、皆一様に世界を守るために戦っている。

「なら、まずは目の前の敵をなんとかしようか」
 晶の瞳がユーベルコードに輝く。
 携行式ガトリングガンを構える。狙うは己の視界に映る『オブリビオンソルジャー』全てだ。
 彼らを打倒したとしても、ヒーローとヴィランの一大決戦である『ジャスティスウォー』を終わらないだろう。
 どちらかが倒れるまで続く。
 その歴史を知っている。けれど、此処は仮想空間である。この戦いにオブリビオンが介入した以上、これを止めねばならぬのだ。

「アスタラ・ラ・ビスタ、ベイビー、ってね」
 きらめくユーベルコード回転式多銃身機関銃全力稼働(スウィーピング・ファイア)は、ガトリングガンの射撃能力を強化し、一掃する。
「――ッ!!」
『オブリビオンソルジャー』たちが弾丸に倒れていく中、スピリットヒーロー『モーニア』の稲妻が走り、『ブラック・サン』の炎が吹き荒れる。
「協力感謝する!」
「うん、横槍は防ぐから目の前の敵に集中して……来るよ!」
 晶はそう言うと、ワイヤーガンを放ち、迫りくる『オブリビオンソルジャー』の突撃を躱す。
 停滞の神気によって『オブリビオンソルジャー』たちの動きが止められ、そこに駆け込んできた『ジャスティス・ワン』のエナジー化した拳の一撃が叩き込まれる。

「一気に数を減らそうか」
 放つガトリングガンの咆哮が轟き、次々と『オブリビオンソルジャー』たちを霧消させていく。
 打ち込まれた弾丸は神気を帯びて『オブリビオンソルジャー』たちを貫いては、その体を停滞させる。
 弱った敵を打ちのめすヒーローやヴィランたちの一撃が頼もしい。
 晶はオブリビオン軍団の要である超・兵器『エベンキ・バタフライ』を見やる。あの球体兵器は高性能爆弾である。

 あれば爆発してしまえば、ヨーロッパ全土が吹き飛ばされる。カウントダウンは始まり、時間の猶予もない。
「さあ、一気に進むよ。あれを止めるんだ」
 晶は走る。たとえ、この戦いが現実のものでなく仮想であるのだとしても。戦いの結果が現実に影響を及ぼすことを知るからこそ、晶は己の力を奮って道を切り開くのだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

サージェ・ライト
お呼びとあらば参じましょう
私はクノイチ、胸が大きくてアッハイタタカイマス

ちょっとヒーローたちの視線に耐え切れませんでした!
緊急事態ですしね!
大いなる脅威の前には敵同士でも手を組むというのは王道ではありますが……
少し物悲しい気もしますね

気を取り直して、参ります!
稲妻、炎とくれば後は風!
【VR忍術】風遁・大風の術!
なんと、味方には追い風になる仕様です!
これなら炎はより大きく、アズマさんは風に乗って遠くまで飛べる、はず?
まぁこの術自体に決定力が無いのが弱点ですが
これだけヒーローとヴィランが協力体制ならそこは気にしなくてよさそうです
ばんばん、風を吹かせていきますよー
カミカゼ特攻いっきまーす!



 超・兵器である『エベンキ・バタフライ』の起動はすでに行われている。カウントダウンが開始され、『停止ボタン』をオブリビオン『ヴァンパイアバット』から奪わねば、ヨーロッパ全土が吹き飛ばされてしまう。
 それがこの『スナークゾーン』における戦いの要であった。
 ヒーローとヴィランの一大決戦である『ジャスティスウォー』において、介入したオブリビオンの策動は、現実世界に侵食するものであった。

 猟兵たちは次々に転移し、それを阻まんとする。
「お呼びとあらば参じましょう」
 その戦場に木霊する声がある。
 それはいつものような前口上であった。そう、サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)その人だ。

「私はクノイチ、胸が大きくて――」
 サージェはそこでピタリと止まる。戦場の空気が凍りついた気がしたからだ。そういう空気には人一倍敏感であった。
「アッハイタタカイマス」
 じとっとしたヒーローたちの視線。ヴィランからもなんだあいつ的な視線がサージェの褐色肌に突き刺さっていた。
 耐えられない。
 とてもじゃないが、あの視線を受けながら前口上を完遂する勇気はサージェにはなかった。

「緊急事態ですしね! ええ、ほんともう困っちゃうくらいに緊急事態!」
 大いなる脅威の前には敵同士でも手を組むのは王道である。
 けれど、後年の歴史を知っているサージェにとって、それは物悲しいものであった。例え、このオブリビオン軍団を退けたとしても、『ジャスティスウォー』はどちらかの敗北でしか終われないのだ。
 エナジー化し、巨大な拳の一撃を天より叩きつける『ジャスティス・ワン』も、胸の孔から噴出するように肉体を改造し移植したユーベルコードを放つ『クライング・ジェネス』も、この戦いが終われば再び敵同士。相争う運命にある。

「気を取り直して、参ります! 稲妻、炎とくれば後は風!」
 サージェの瞳がユーベルコードに輝く。
 彼女の物悲しい気持ちも、戦いの嵐の前には吹き飛ばされるものであった。迫りくる『オブリビオンソルジャー』たちは、個としての力こそ強大ではないものの、その数と連携で持って迫りくるのだ。
 専用メモリをコンソールにインストールし、サージェは風遁・大風の術でもって戦場に風を巻き起こす。

「VR忍術(イメージスルノハカッコイイワタシ)! さあ、味方には追い風! これなら炎はより大きく、『アズマ』さんは風にのって遠くまで飛べる、はず?」
「なんで疑問形なんだ」
 徒手空拳の青年が笑いながら、その薄紅色の瞳の残光を遺して戦場を駆け抜ける。
 彼の拳と蹴撃は『オブリビオンソルジャー』を寄せ付けぬものであった。
 けれど、彼の笑顔を見ていればわかる。この戦いもまた負けるわけにはいかないのだと。
 どれだけ戦いの結末が決定されているのだとしても、ここが仮想であるのだとしても、それでも止めねばならぬものがある。

「ばんばん、風を吹かせていきますよー!」
 この術事態に決定力はない。
 けれど、これだけのヒーローとヴィランが協力体制にあるというのならば、そこは気にしなくてもいい。
 なぜなら、サージェたちが本当に打倒しなければならない存在は『ヴァンパイアバット』であるからだ。
 超・兵器である『エベンキ・バタフライ』。
 あの兵器を止める『停止スイッチ』を持つ『ヴァンパイアバット』を倒さなければ、この『スナークゾーン』は消滅しない。

 ヒーローとヴィランたちの攻撃が『オブリビオンソルジャー』たちの大群に道を切り開く。
 きっと戦いは終わらない。
 どちらかが滅びるまで。
「だからといって戦わない理由にはなっていないのです。カミカゼ特攻いっきまーす!」
 サージェは疾風のように風遁の術に背中を押されるようにして、切り開かれた道を走り抜け、一直線に『ヴァンパイアバット』へと迫るのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
あの戦場の炎は恐らく『ブラック・サン』
猟書家に敗れ命を落としたと報告書にありましたが

そして、あの徒手空拳の男はまさしく…
かつて相対した『クライング・ジェネシス』との共闘といい、この感情演算をこそ寂寥と人は呼ぶのでしょうか

敵の脅威はその物量、装備の損耗は抑えねばなりません
致し方ありませんが…

剣と盾を背にマウント
両の手に握るはブラスター
マルチセンサーでの情報収集と瞬間思考力にて敵の攻撃や陣形の隙を見切り有利な位置に踏み込み敵を漸減

エネルギーゼロ…ですが、甘い
格闘術も当然、銃の扱いに含まれますとも

残弾0の銃
銃身に即座に持ち替えグリップをハンマーに
両の鈍器で迫る敵一掃
新たな二丁拳銃取り出し戦域を突破



『ジャスティスウォー』の戦場に吹き荒れる炎があった。
 膨大な炎は嵐のように『オブリビオンソルジャー』たちを吹き飛ばし、広範囲に力を及ぼしていた。
 かの炎のヒーローの名を『ブラック・サン』。
 後年において猟書家に破れ、その姿と名を利用されたヒーローである。その顛末を知るからこそ、トリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)は、その嘗て在りし日の勇姿を電脳に刻み込む。

 そして、戦場を駆け抜ける疾風迅雷の如き存在。
 徒手空拳の青年の薄紅色の瞳が残光のように戦場に刻まれていく。
「あの徒手空拳の男はまさしく……」
 彼の電脳にある姿。
 それと同じくするものをトリテレイアは知る。違うのは目元を覆う黒き仮面だけである。
 拳は大地を砕き、蹴撃は海を割る。かの歌に残された譜面の如き活躍を認める。そして『クライング・ジェネス』のかつて在りし姿。
 胸部の砲門より放たれるユーベルコードが『オブリビオンソルジャー』たちを吹き飛ばす。

「かつて相対した『クライング・ジェネス』との共闘といい、この感情演算をこそ寂寥と人は呼ぶのでしょうか」
 炉心は未だ燃えている。
 この「ジャスティスウォー』にありて、超・兵器『エベンキ・バタフライ』とオブリビオンの存在は在ってはならぬものである。
 だからこそ、止めなければならない。
 そして、敵の脅威は物量。大群のように溢れ、『エベンキ・バタフライ』への道は閉ざされたままである。
「敵の数が多いな、ギャッハハハ!! だが、無限てわけじゃあねえんだな、おい!」
『クライング・ジェネス』が盛大に笑い、そのユーベルコードをぶちまける。彼にとって、この戦いは『ジャスティス・ワン』との戦いの前哨戦に過ぎないのかも知れない。

 トリテレイアは剣と盾を背にマウントし、両手にブラスターを構える。
 マルチセンサーが次々と『オブリビオンソルジャー』の姿を捉え、録音する。一対多を制する達人の動作を己の電脳からパッケージを解凍し、インストールする。
 手にしたブラスターは熱線銃。
 その一撃はこの『ジャスティスウォー』の時代にありて、驚異的な威力を発揮することだろう。
 一瞬の思考。
 如何にして引き金を引き、如何にして的を絞るか。
「故郷で一番普及しているとはいえ…やはりこの武装に頼るのは些か抵抗を覚えますね」
 鋼の双銃演舞(ブラスターガンナーマスター・イミテイト)が戦場に熱戦の一撃をもって開演とされる。

 敵の陣形はヒーローやヴィランを多数で取り囲む戦術。
 これに押される者も多いだろう。けれど、トリテレイアは、多数との戦いに長けている。敵の戦術がそれであるというのならば、その構造をかいくぐるための挙動をこそ、インストールしているのだ。
 引き金を引く度に熱線が走り、『オブリビオンソルジャー』たちを貫いていく。
 激しい戦いの最中であるがゆえに、ブラスターのエネルギー残量も瞬く間に喪われていく。
「エネルギーゼロ……ですが、甘い」

 そう、トリテレイアにとってはこれよりが本領発揮である。
 熱線のエネルギーが切れることなど多数との戦いに在っては当然考慮されているべきものである。
 だが、その手に武装はエネルギーの切れたブラスターのみ。
 ならば、どうするか。
 トリテレイアはブラスターのグリップから手を離し、銃身を握りしめ、鈍器とするのだ。
「格闘術も当然、銃の扱いに含まれますとも」
 放つ一撃は『オブリビオンソルジャー』の脳天を砕き、霧消させる。
「おいおい、乱暴なやつじゃねーか! ギャッハハハ、おもしれぇ!」
『クライング・ジェネス』がトリテレイアの行動を見て、腹を抱えるようにして笑う。しかし、トリテレイアにとっては当然の行いである。

「敵陣を突破するのはお任せを」
 慇懃無礼なる態度は崩さず、トリテレイアは戦場を疾駆する。ひしゃげたブラスターを放り投げ、新たなる熱線銃を手に大波のごとく迫る『オブリビオンソルジャー』を駆逐し、かの超・兵器の『停止スイッチ』を持つ『ヴァンパイアバット』へと飛び込むのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『ヴァンパイアバット』

POW   :    ブラッディ・トレイター
【衝動に身を任せた暴走状態 】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
SPD   :    ヴァンプ・シザーズ
【鋭い爪 】による素早い一撃を放つ。また、【六枚の羽で飛翔する】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ   :    ゴーストナイト・ボディ
自身の身体部位ひとつを【不可視かつ不可触のエネルギー 】に変異させ、その特性を活かした様々な行動が可能となる。

イラスト:純志

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はクロゥ・クガタチです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「あーあー、これまた参ったもんだな……ヒーローとヴィランが手を取るのかよ」
 オブリビオン『ヴァンパイアバット』は呆れたように巨大な高性能爆弾、『エベンキ・バタフライ』の球体の上から戦場を睥睨していた。
 見下ろす先にあるのは何処を見てもオブリビオンとヒーロー、ヴィランとの戦いである。
 この『ジャスティスウォー』は善悪を決する戦いだ。
 どちらかが滅びるまで続く。
 第三勢力が現れた程度で団結するとは思っていなかったのだ。彼が求めていたのは混沌からの破壊である。

 戦場に混沌と混乱をもたらし、あまねく全てを破壊する。
 それが『ヴァンパイアバット』の破滅的な願望であったのだ。
「生命は須らく平等だろうよ。だから、俺の生命も、お前らの生命も平等に無価値じゃあなければ、我慢がならねぇ。そうは思わねえかよ、ヒーロー」
『ヴァンパイアバット』が『エベンキ・バタフライ』の巨大な球状の上で振り返る。

 そこにあったのは徒手空拳の青年の薄紅色の瞳が爛々と輝く様であった。
「思わない」
「だろうな、そういうと思ったよ。だがなあ、強さがなければ、それも戯言だ。俺は今、力を持っている。大陸一つぶっ飛ばせるだけの力がな。この力を持っていないお前らがどれだけ俺にご説教を垂れようと、意味ねーんだよ。強い力だけが全てを凌駕する! そうだろうが、お前も!」
 その言葉に徒手空拳の青年は頭を振る。

 そこに笑顔ははなかった。
 ただ爛々と輝く瞳だけがった。
「強いだけの力に価値など無い。優しさが世界には必要だ。もしも、それが弱さだというのだとすれば、お前は本当の強さを知らぬ者だ」
 その言葉はいつかの誰かの言葉だ。
 徒手空拳の青年は構える。そして、己が一人ではないことを知っている。かのオブリビオンの軍勢を蹴散らし、迫る者達がいる。

「だからお前は敗れる。より強き力ではなく、優しさによって敗れるんだよ」
『世界の外よりやってくる』者たち。
 猟兵たちが雷光のように、雷鳴のように、雷電のように、オブリビオンの仮想を消し去らんと巨大な超・兵器『エベンキ・バタフライ』の球状の上へと降り立つ――。
馬県・義透
引き続き『疾き者』にて
武器:漆黒風

共闘を想像できない。それがあなたの限界ですねー。
ですから、ここで足を掬われるんですよ。

さて…どういきますかー、と考えたんですがー。こうしますねー。
【四悪霊・戒】(状態異常力)にて。陰海月と霹靂が『馬県』認識してますしね。
そして…私が風属性攻撃も利用して、素早く動けばいい。

まあねー、攻撃食らっても治りますし。生命力吸収もしますし…何より、状態異常『脆弱』と『毒』を与えますのでねー。
どれだけ耐久力あれども、いつかはこちらが上回る。

そのときが、皆の攻撃チャンスということでー。
…あ、内部三人から「無理しすぎ」と訴えが。そうですかねー?(無意識自己犠牲)



「『世界の外からやってくる』連中だと? 猟兵がしゃらくせえんだよ!」
 オブリビオン『ヴァンパイアバット』は、その身に宿した破壊の衝動のままに己の力を発露させる。
 そこに理性はなかった。
 あるのは破壊への衝動。あらゆる生命を鏖殺するための力の波動そのものであった。彼にとって生命は平等である。だからこそ、己の生命が無意味であったのならば、他の生命もまた平等に無意味で無価値でなければならないと言う。

 それが傲慢であると言うことは言うまでもない。
「ヒーローもヴィランもクソ喰らえってんだよ!」
 超攻撃力と超耐久力を得た『ヴァンパイアバット』が超・兵器『エベンキ・バタフライ』の球体の上を奔る。
 振るわれる爪の一撃が空を引き裂く。
 徒手空拳の青年が、爪を蹴り上げる。だが、次なる斬撃じみた一撃が迫る。その一撃を阻んだのは、馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の一柱『疾き者』であった。

 彼の体は認識補助術式によって己の体を再構築している。
 生み出し封じてきた呪詛が『疾き者』の体を強化していく。振るわれる斬撃の如き爪の一撃を受け止め続ける。
 その度に『四悪霊』としての総意と術式が働く。
 己を己足らしめるのは他者の視線である。それは影から飛び出した『陰海月』が担っている。そして、徒手空拳の男やヒーローやヴィラン達がいる。
「共闘を想像できない。それがあなたの限界ですねー」
『疾き者』にとって、いや馬県・義透という猟兵にとって、それは自然なことであったのだ。

 四柱の悪霊から成る複合型悪霊。
 それが彼らだ。常に複数で戦っているのと同義。ゆえに、たった一人で戦う『ヴァンパイアバット』には理解できぬものであった。
「うるせんだよ!! 悪霊風情が、吹っ飛んじまえよ!」
「四悪霊は滅びず」
 嵐のような猛攻を前にしても、四悪霊・『戒』(シアクリョウ・イマシメ)はかき消されることはなかった。
 斬撃を受ける度に認識補助術式が働き、『疾き者』の体を再構築していく。それが彼らの存在が生まれた時から積み重ねられたオブリビオンに対する呪詛。
 その呪詛があるからこそ、彼らは潰えない。

「やりすぎだ、アンタは。自覚がないのかもしれないが」
 徒手空拳の青年が拳をふるって『ヴァンパイアバット』を引き剥がす。素早く動くものを狙う『ヴァンパイアバット』のユーベルコードは、ともすれば『疾き者』一人に消耗を強いるものであった。
 だからこそ、それは無理を押し通すものであった。
 内部の三柱たちの声に『疾き者』は首をかしげる。
「そうですかねー?」
 自覚はない。自覚なき自己犠牲。それをただ無為に見ていることができないのが他の三柱の優しさであろう。

 ゆえに、『疾き者』はまだ戦えるのだ。
 どれだけ敵が強大であろうとも立ち向かうことをやめられない。
「他の三人から訴えがありますけれどー……ですが、敵がどれだけ耐久力があれど、いつかはこちらが上回る。ならば、少しでも削るが必須、でしょー?」
 嵐のような斬撃に対するは疾風の如き呪詛の迸り。
 それらは身を削る戦いであった。敵がどれだけ強化されているのだしても、早く動く者を狙うのならば、『疾き者』は後に続く戦いを続けるのだ。

 これが自己犠牲。
 己の身一つでオブリビオンを打倒できるのならば、易いものであると考えるのだろう。
「けれど、アンタの中にある三人は、そうじゃない。他が為に戦うということに自分が含まれていないのは、危ういことだが」
 それでもアンタは戦うんだろうな、と徒手空拳の青年が笑う。
 自分もそうだと。
 だからこそ、『疾き者』の負担を減らすべく徒手空拳の青年は拳を握るのだ。これまた他がための戦い。

「ええ、内部の皆には後から多分お説教されるのかもしれませんが……まずは、この超・兵器を止めることが先決。さあ、いきますよー」
 二人は嵐のような斬撃をかい潜りながら、時にかばい、時に助け、共に戦う。
 呪詛の一撃が『ヴァンパイアバット』を捉え、そこに拳が叩きつけられる。
「ぐはっ――!?」
「そんなですから、ここで足を掬われるんですよー」
 悪霊は悪霊のままに。
 されど、呪詛を向ける者を違えない。振るわれる呪詛の一撃が『ヴァンパイアバット』を球体の超兵器の壁面に叩きつけるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロウガ・イスルギ
アドリブ・連携歓迎
出遅れちまった分気合は入れていくとする、か
……言っとくが優しさには自信ねえぞ

随分とまあデカい口叩いてくれる蝙蝠野郎だ、ちょいとつついて
気を引かせてもらおうか

強さ、ね。俺としちゃあ借りモンの「力」でそこまでイキれるお前さんが
心底羨ましいがな。蝙蝠ってえのは身だけでなく脳味噌も軽いのか?

そのくせ判断は遅い、ときたモンだ。とっとと炸裂させりゃ済むのに
時限式なのは口上かます方便かい?笑えねえほど笑わせやがるなあ!

挑発に乗り襲い掛かってきたら【カウンター】【残像】【早業】で
対応
【武器落とし】【ロープワーク】でのスイッチ奪取、又はUC魔狼縛縄による拘束を狙う。グレイプニルよ、我に応えよ!



 巨大な球体の兵器、『エベンキ・バタフライ』の直上から叩きつけられるオブリビオン『ヴァンパイアバット』の体。
 その体は『エベンキ・バタフライ』の装甲をひしゃげさせながら、跳ねるようにして飛び立つ。
 六枚の翼が羽撃く。
 急上昇からのすさまじい速度での来襲。
 その爪の一撃は鋭く、スピリットヒーロー『モーニア』の腕を切り裂く。
「あっ――……!」
「ああ、本当にしゃらくせえぜ、ヒーロー! ここまで追いかけてきて、なんだそのザマはよぉ!!」
 続く爪の一撃が『モーニア』に振るわれんとした時、そこにロウガ・イスルギ(白朧牙虎・f00846)のはなったフック付きワイヤーが中断させるように飛ぶ。

 その一撃を躱しながら『ヴァンパイアバット』が怒りを滲ませた表情で叫ぶ。
「邪魔すんじゃねぇ!」
「随分とデカい口叩いてくれる蝙蝠野郎だ……言っとくが優しさには自信ねえぞ」
 ロウガはそのひとみにユーベルコードを輝かせながら『ヴァンパイアバット』と対峙する。
 六枚羽で以って飛翔する『ヴァンパイアバット』は厄介であった。けれど、ロウガは、『ヴァンパイアバット』が短気で粗暴な性格であることを見抜いていた。
「強さ、ね。俺としちゃあ借りモンの『力』でそこまでイキれるお前さんが心底羨ましいがな。蝙蝠ってえのは身だけでなく脳みそも軽いのか?」
 その言葉は挑発の言葉であった。
 易い挑発。

 けれど、『ヴァンパイアバット』にとって、それは聞き捨てならない言葉であったのだ。
 オブリビオンとなった己の力を誇ることすれあれ、己の力を過小評価することは許しがたいことであったのだ。
「んだと? この――!」
 振るう爪。
 その爪は確かに鋭い。けれど、ロウガはためらうことはなかった。
 判断が遅い。
『エベンキ・バタフライ』が高性能爆弾であるというのならば、迷わず炸裂させればいいのだ。
 けれど時限式なのは一体どういうことであるのか。
 答えは簡単だ。

 ヨーロッパ全土を一撃で吹き飛ばすほどの威力を持つ『エベンキ・バタフライ』は臨界までに時間を有する。
 だからこそのカウントダウン。
 そして、カウントダウンということは、必ずその炸裂の瞬間に逃げる必要があるのだ。全てを透過する力を持つ『ヴァンパイアバット』であるのならば、爆発の一撃をいなすこともできるだろう。
「ようは、自分だけが助かろうってハラなんだろうが。なんだかんだいいながらな。笑えねえほど笑わせやがるなあ!」
 それは図星であったことだろう。

 ロウガの口上に『ヴァンパイアバット』は負けたのだ。
 全てが平等で無価値といいながら、己の生命は大事にしたいという身勝手。己以外の何もにも価値がないと言っていることと同じであった。
 ならば、それは否定されるものである。
 生命に貴賤はない。
 それは真実であろう。いつだって御為ごかしを使うものは、自分だけは特別であると言う。その理由も根拠もなく、ただ己の保身のために言葉を弄する。
「てめえもそういう奴の一人ってわけだよ、くだらねえな!」
「――!!」
 迫る『ヴァンパイアバット』の爪。

 その一撃を残像を残すロウガの獣人の速度で躱す。
 輝くユーベルコードは、魔狼縛縄(カラミティストラングラー)。その一撃はフック付きワイヤーが宙を走り、『ヴァンパイアバット』の持つ『停止スイッチ』を狙う。
 奪取できればいい。
 できないまでも、その手元から『停止スイッチ』を遠ざける。
 放つ一撃が『停止スイッチ』を空へと飛ばす。この期に及んで。そういうのが当然であったことだろう。
『ヴァンパイアバット』は『停止スイッチ』に手を伸ばす。

「やっぱりな。てめえは、とんだ蝙蝠野郎だ。底が知れたぜ!」
 ロウガは巻きつけたワイヤーを拳に握り込み、その一撃で持って『ヴァンパイアバット』へと叩き込む。
「グレイプニルよ、我に応えよ!」
 その一撃が打ち込まれ解けたワイヤーが『ヴァンパイアバット』の肉体を縛り上げる。
 拳の一撃は『ヴァンパイアバット』の真芯を捉え、血反吐を撒き散らせる。
 我が身可愛さ。
 それが『ヴァンパイアバット』の全てのヒーローとヴィランに劣るただ一点であった。
 それ故に敗れるのだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

大町・詩乃
ヴァンパイアバット(以後バット)のUCについては第六感で危険性を察知し、結界術・高速詠唱で自分や共に戦う仲間を防御します。
その特性を把握した後は初発之回帰で無効化。これを繰り返します。

ヴァンパイアバットは徒手空拳の青年に”似非が”と言った。
確かに彼は今までのアズマさんとは雰囲気が違う。

「貴方は優しすぎてアズマを受け継がなかったのですか?
それで良いのです。
人には血脈による継承と意志の継承の両方があります。
貴方がアズマを継がずにここで途絶えても、また誰かが新たな名の元に意志を受け継ぎますよ。
だからこの戦いの後は安心して幸せに暮らしていって下さいね。」と優しく笑い掛けます。

UCを抑えたバットに対しては、第六感で動きを予測して、オーラ防御を纏った天耀鏡の盾受けで防御します。
そして念動力と催眠術で動かないよう捕縛し、煌月に多重詠唱による雷と光の属性攻撃・神罰・破魔・浄化を籠めての衝撃波を伴うなぎ払い・鎧無視攻撃にて、自分が止めを刺すべく全力で振るう!

徒手空拳の青年とモーニアさんの幸せを祈りますよ。



 ワイヤーによって拘束された『ヴァンパイアバット』の瞳がユーベルコードに輝く。
 未だ『停止スイッチ』は喪われておらず、己の手の内にある。
 そして猟兵たちは、この『停止スイッチ』を求めている。ならば、彼は嗤うのだ。まだ勝機はあると。
 そのユーベルコードは不可視にして不可触。
 透過させる力によってワイヤーの拘束を逃れ、『ヴァンパイアバット』は飛ぶ。
「詰めが甘えな! ヒーローどもがよ!『エベンキ・バタフライ』は止まらねぇし、止めさせねぇ!」
 揺らめくように姿を消していく『ヴァンパイアバット』。

 不可視にして不可触なるユーベルコード。
 それを手繰る彼を捉えることはヒーローやヴィランたちにとっては難しいことであった。触れ得ざるのならばユーベルコードは届かず。見えぬ敵を穿つ術を持つ者はいなかった。
 けれど、それを覆すのが猟兵達である。
「歪んだ世界をあるべき姿に戻しましょう」
 時間遡及する神力が戦場に迸る。
 それは、『ヴァンパイアバット』のユーベルコードを打ち消すものであった。
 歪むようにして『ヴァンパイアバット』の姿が現れる。突如として打ち消されたユーベルコードに彼は呻くようにたじろいだ。

「どういうことだ――! なぜ、俺のユーベルコードが打ち消される……いや、違う、これは!」
「ええ、そのとおりです。発動前の状態に戻す。あなたのユーベルコードは私が無効化します」
 大町・詩乃(阿斯訶備媛・f17458)が、その瞳をユーベルコードに輝かせながら言う。
 彼女は多くを守っていた。
 結界術を用い、オブリビオンと戦うヒーローやヴィランたちに防御の力を宿しながら、不可視不可触のユーベルコードで逃亡を図る『ヴァンパイアバット』を逃さぬようにと目を光らせるのだ。

「あなたは“似非が”と言った。あの肩にそう言いましたね」
「そうだろうが! 守護者気取りのお坊ちゃんがよ! あいつはな、『アズマ』でありながら、ずっと敵に情けを掛けるような人間だぞ! 許せるわけがねえ、俺を見下しやがって!!」
『ヴァンパイアバット』が咆哮する。
 逃亡の術が封じられたことよりも、徒手空拳の青年について言及されたことのほうに怒りを覚えているのかも知れない。
 ただの人間でありながら、ヴィランの力を持つ己を超える力。
 いや、人間以上の力を持ちながら、全てを持ちながら、業を持ちながら、それらを払拭するためだけに力を振るう姿に怒りすら覚えたのだ。

 詩乃は確かに徒手空拳の青年がこれまで見てきた多くの『アズマ』と雰囲気が違うと理解していた。
 だからこそ、詩乃は告げるのだ。
 わかっているのだ。彼が言ったのだ。世界には優しさが必要なのだと。
「それで良いのです」
 例え、優しすぎるのだとしても。その『名』を受け継ぎながら、否定する言葉を紡ぐことも。
 それが世界に必要な優しさであるというのならば、何一つ無駄になることなどない。

「人には血脈による継承と意志の継承の両方があります。貴方が『アズマ』を継がずに此処で途絶えても、また誰かが新たな名の元に意志を受け継ぎますよ」
 だから、と詩乃は願わずに入られない。
 徒手空拳の青年は困ったように笑っていた。その笑顔を詩乃は覚えていることだろう。もう二度と、あんなふうに彼が笑うことはない。
 故に願わずにはいられないのだ。
 この戦いの後に安心して幸せになってほしい。

 それはこの場にいるヒーローやヴィランにとっても同じことであっただろう。
 後年の歴史を知るからこそ、詩乃はうつむいた顔を上げる。
 炎のヒーロー『ブラック・サン』は猟書家に殺される。スピリットヒーロー『モーニア』は恩讐と懊悩に悩まされ続ける。
 判っている。
 ここは仮想の世界。だから、現実とは違う。どれだけ願っても変わらないものがあるかもしれない。

 けれど。
「それでも、願わずには居られないのです」
 振るわれる爪の一撃wお受け止めながら、オーラでもって吹き飛ばし『ヴァンパイアバット』を詩乃は追い込む。
「何をだよ! まさか他人の幸せとは言わねえだろうな! そんな身勝手な、手前勝手な理屈で!!」
『ヴァンパイアバット』が吠える。
 怒りだった。どうして自分がそうでないのかという怒り。それを受け止めながら詩乃は言うのだ。
「誰かの幸せを願うと、心が暖かくなりませんか。誰かが幸せな笑顔を浮かべているのを見た時、自分も笑顔になりませんか。その心が人に誰しもあるはずなのです。ヒーローだとかヴィランだとか、そういうことではないのです」

 詩乃の神力が発露し、衝撃波となって『ヴァンパイアバット』を吹き飛ばす。
「アンタは、そうやって戦うんだな。誰かのために。他がために。そのためにアンタは笑うんだな」
 徒手空拳の青年は神力を発露する詩乃の姿を見上げる。
 空に在りし善神。
 その力は月光のようにきらめく薙刀の刀身を戦場に輝かせる。一閃が詩乃の全力を持って振るわれ、『ヴァンパイアバット』の体を切り裂く。

 それは理知円満の境地に居たりしものであったことだろう。
「自分さえも幸せを祈ることができないというのなら、私はそんな人達のために祈るのです」
 詩乃は薙刀の刀身が煌き円を描く様を見ただろう。
 その輝く月を見よ。
 月のように澄み切った心を見よ。

 これが人の営みを映し出す鏡。どれだけ汚濁の中を進むのだとしても、そこに心が在る限り、煌めくのは月。
 詩乃は他が為に祈るからこそ、到達した境地にて『ヴァンパイアバット』を打ち据えるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月夜・玲
呉越同舟なんてよくある事じゃん
善も悪も、命あっての何とやら
破滅は誰も望んでないって事だよ
その辺を想定していないのはまあ…残念だったねとしか…

あと、過去が生命の価値を測るんじゃあないよ
それを決めるのは生者だよ
死人はさっさと成仏しなって
南無南無…

さて、死人に容赦は無し
超克…オーバーロード!
外装全展開、模造神器全抜刀
危ない玩具は取り上げさせて貰おうかな
停止スイッチ持ってるんでしょ、ほらジャンプしてチャリチャリいわせてよ
はい、ジャンプジャンプ!
ま、冗談はさておき
爆弾ごとぶった斬れれば楽なんだけど、そうはいかないし…
時間もおしてるし、スピード勝負といこうか
【Code:C.S】起動
時間加速開始、最大出力で行こう
加速してヴァンパイアバットへ一気に接近
飛翔される前に…まずはその翼をいただき!
『天候操作』してダウンバーストを発生させてで少しでも飛行能力を落とす!
そして体勢を崩させて『なぎ払い』で翼を『部位破壊』!
飛ばれるとまた頑張ってジャンプしないといけないからね、地に落ちて貰うよ!
後は4剣で連続で刻む!



 月光の輝きと共に叩きつけられた『ヴァンパイアバット』は呻くようにして超・兵器『エベンキ・バタフライ』の上に立ち上がる。
 その身に叩きつけられた斬撃の重さは言うまでもない。
 血潮を滴らせながらも、なおも立ち上がるのは怒りに突き動かされているからだ。どうして己は彼らのようにならなかったのか。
 彼も奪われ続ける人生でしかなかった。だから奪ったのだ。奪い続けたのだ。
 奪われないために、奪い続けてきたのだ。
「それの何が悪いってんだよ! だから滅ぼしてやりてえんだよ! 平等平等! そんなもんを歌いながら、善悪にワケたがるクソみてえな人間ども全部をよ!!」
 それがヴィランであろうと、『ヴァンパイアバット』は咆哮するのだ。

 ともすれば、それは新たなる時代の複雑化した善悪観であったのかもしれない。
「呉越同舟なんてよくあることじゃん。善も悪も、生命あってのなんとやら。破滅は誰も望んでないって事だよ」
 月夜・玲(頂の探究者・f01605)は『エベンキ・バタフライ』の球体の装甲の上に立ち、『ヴァンパイアバット』と向き合う。
「そのへんを想定していないのは、まあ……残念だったねとしか……」
 ヒーローもヴィランも、オブリビオンという共通の敵を前にして一時休戦とは言え、手を取った。
 本来なら混沌とした戦場となるはずだった。
 その目論見は『ヴァンパイアバット』にとっては打破されたようなものであった。

「知るかよ。どの道全部ぶっ飛ばすつもりだったんだからな。先か後かになっただけの話だろうが!!」
 咆哮と共に『ヴァンパイアバット』が迫る。
 六枚羽の翼による飛翔。身に刻まれた斬撃の後すらも物ともせずに突き進む加速を玲は見ただろう。
「封印解除、時間加速開始」
 その瞳がユーベルコードに輝く。

 どんな理屈をこねようが、どんな理念を持っていようが、死人であるオブリビオン、『ヴァンパイアバット』に容赦する必要など無い。
 彼女の背後から外装副腕が転送され、蒼き刀身を持つ模造神器が抜刀される。
「危ない玩具は取り上げさせて貰おうかな。『停止スイッチ』持ってるんでしょ、ほらジャンプしてチャリチャリ言わせてよ。はい、ジャンプジャンプ!」
 迫る爪を前にしても玲の瞳は落ち着き払った色しかなかった。
 眼前に迫る切っ先。

 されど、『ヴァンパイアバット』は己の爪が玲の眼球をえぐることがないことを悟ってしまった。
「超克……オーバーロードかよ……! てめえ!」
 だが、それだけでない。
 天頂に至る力。神を模し、神すら超克する力。玲の発露するユーベルコードは、Code:C.S(コード・クロノシール)。時間加速の封印が解かれた模造神器の本領が発揮される。
 迫る爪先を躱し、玲は蒼き残光と共に『ヴァンパイアバット』の横を駆け抜け、背後の頭上から斬撃を振るう。

「背後から……!」
 それでも『ヴァンパイアバット』は身をねじる。敵の狙いは己の翼と『停止スイッチ』であるのならば、敵は精確にそこを狙ってくる。
 ならば、それに対処することも出来ただろう。
 けれど、玲はそれを上回る。飛翔させない。逃げさせない。彼女の模造神器が煌めく。天候操作によるダウンバースト。直上から爆発的な気流が『ヴァンパイアバット』の体を押しつぶさんと迫るのだ。

「時間がおしてるしね。ちょろちょろさせないってば」
 それに、と玲は告げる。
 彼女の瞳が『ヴァンパイアバット』を捉えている。彼は言ったのだ。生命の価値を語ったのだ。
 全てが平等に不平等であれと。
 生命の価値など己と同じく無価値であると。確かに、そう断ずることもできるかもしれない。

 けれど。
「過去が生命の価値を測るんじゃあないよ。それを決めるのは生者だよ」
 そう、今を生きる者だけが、生命の値打ちを決めることが出来る。
 過去たるオブリビオンにそれを決める術はない。決められることもない。だからこそ、玲は模造神器を輝かせる。
 時間加速の封印を解かれた模造神器は彼女の寿命を吸い上げていく。
 けれど、この時間が加速された空間の中にあっては、『エベンキ・バタフライ』の刻むカウントダウンも遠い。

 だからこそ、玲は斬撃を振るうのだ。
 躊躇いなどない。どれだけ過去を積み重ねるのだとしても『今』は時と共に前に進んでいる。
 にじみ出る過去が停滞することなど値しない。
「死人はさっさと成仏しなって」
 未来への足かせにはさせない。振るう模造神器の蒼い刀身が『ヴァンパイアバット』の六枚羽を切り裂く。
「ぐあっ……このっ、てめえ!!」
 振るう爪を玲は躱す。

 爪先は彼女には届かない。
「また飛ばれると厄介だからね……地に落ちて貰うよ! そのまま這いつくばって――!」
 死人は死人に。過去は過去に。
 振るわれる模造神器の四振りが斬撃を『ヴァンパイアバット』に刻む。
 打ち込まれた斬撃は、その身から血潮を噴出させる。
 二度と『ヴァンパイアバット』は飛翔させない。その体が飛び立つことを許さない。

 なぜなら、彼は過去であるからだ。
 例え、ここが再現された過去のヒーローズアースであろうとも、その手前勝手な怒りによって世界が滅ぼされることなどあってはならない。
「それじゃあね。南無南無……」
 玲は超克に輝く瞳と共に斬撃を『ヴァンパイアバット』に叩き込むのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
善悪の一大決戦たるこの戦
されど善と悪の戦いは終わる事はありません
街角に、裏路地に、人の営みに、そして心の中に
さながら光と影の如く不可分であるが故に

ですが骸の海の化身が名乗った渾沌の如く
貴方の動機は虚無に過ぎる

譲れぬ理由の為に私達は戦い、貴方を倒す為に手を取るのです
善も悪も顧みる優しさ持てぬ者に、勝機はありません!

剣盾の護りで暴走を凌ぎ、緩やかな挙動で攻撃を誘導
無秩序な挙動に秩序あるパターンを持たせれば、見切るは容易き事

永劫たる善悪の対立
戦の歴史の結実たる我が身がその証左

されどこの拳が、この剣が不要となるように…
御伽の如き見果てぬ夢の為、私達は戦うのです!

徒手空拳の男と挟み撃ちにて勝負決め



 無数の斬撃が『ヴァンパイアバット』へと叩き込まれる。
 その一撃一撃が彼の怒りを切り裂くようであり、抱えた混沌させも霧消させるものであった。
「くそが……! こんな所で……! 俺が!! 終わる……!!」
『ヴァンパイアバット』は咆哮する。
 在ってはならないことだ。
 己の中にある衝動。破壊への衝動こそが、殺戮への原動力。怒りに身を任せ、その傷だらけの体躯で『エベンキ・バタフライ』の上を奔る。

 未だ臨界には遠い。
 けれど、必ず為さねばならぬと彼は思っていたのだ。全てを破壊する。生命など平等に無価値であると知らしめるために世界を破壊する一撃を必ずや見舞わねばならぬとユーベルコードの輝きに満ちた狂乱の瞳と共に徒手空拳の青年へと躍りかかる。
「終わる。ああ、そのとおりだ。アンタも俺も。この『名』は紡がせない。この業は必ず、俺が終わらせてみせる」
 放つ拳と爪が激突し、力の奔流となって迸る。

 善悪の一大決戦。
 それが『ジャスティスウォー』である。だが、善と悪の戦いが終わることはない。
 トリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)は理解していたのだ。
 街角に、裏路地に、人の営みに、そして心の中に、さながら光と影の如く不可分であるがゆえに争いは終わらない。
 ヒーローとヴィランが手を取り合ってオブリビオンの軍団と戦うことがあれど、それが終われば再び戦いに戻るであろう。
 だが、トリテレイアは『ヴァンパイアバット』を放置してはならぬと知っている。
「貴方は――骸の海の化身が名乗った混沌の如く。貴方の動機は虚無に過ぎる」
 全てが無意味で無価値。
 だからこそ、自身がそうであるように、他者にもそれを求める。

「だからどうした! 意味在るものなんて何一つねえんだよ! わかるだろうが! お前も、俺も、存在する意味なんてねーんだよ!」
 振るう爪が打ち据えられる。
 トリテレイアはその一撃を盾で受け止め、戦術モードを戦場全域の連続予測に最適なものへと変えていく。
 敵の行動を緩やかな挙動で誘う。
 それは、機械騎士の戦闘舞踏(マシンナイツ・バトルワルツ)。

 敵に先手を譲る後手の先。
 全てはカウンターで返され、己は最小限の挙動によって反撃を為し得るもの。
 それは人の歴史が積み上げ、紡いできた軌跡の到達点と呼ぶにふさわしいものであったことだろう。
「なんで攻撃が当たらねぇ!!」
「譲れぬ理由のために私達は戦い、貴方を倒す為に手を取るのです。善も悪も省みる優しさ持てぬものに、勝機はありません!」
 大盾が爪の切っ先をなめらかに受け流し、剣の殴打が『ヴァンパイアバット』を打ちすえる。
 どれだけ速くなるのだとしても、『ヴァンパイアバット』の理性なき暴走の果に至る力があらゆる予測を可能とした電脳の演算速度を上回ることなど何一つ無いのだ。

 此処にあるのは永劫たる善悪の対立。
 戦の歴史の結実たるトリテレイアの身こそが、その証左である。
 歴史の最先端に居る己。
「だが、この拳が」
「この剣が」
 トリテレイアと徒手空拳の青年の言葉が重なる。戦いの果に見るものが、異なる光景であろうとも。
 それでも彼らは心を同じくとする。

「――不要となるように……御伽の如き見果てぬ夢の為、私達は戦うのです!」
 振るう剣と拳。
 その一閃と一撃が『ヴァンパイアバット』の体を捉える。
 打ち込まれた互いの一撃は身を貫く激痛と成って『ヴァンパイアバット』へと奔るだろう。

 今、トリテレイアの心とも言うべき炉心に満ちるのは、理知円満たる境地。
 己の不足を知るからこそ、埋めるものを手にすることができるように。
 矛盾を抱えながらもがき苦しみ、歩み重くとも弛まず進むことを選択した結果が、ここに紡がれていく。
 そう、『名』はすでに不要である。
 例え、どれだけの善悪が浮かんでは埋没していくのだとしても。

 人は人のまま歩むことができる。
 トリテレイアは己の剣の重さを知るだろう。彼の双肩には人類の叡智が背負われている。
 なにゆえに戦うのか。
 その見果てぬ問いかけと、答えをトリテレイアは炉心に燃やし、アイセンサーの見つめる未来へと走るのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
この世界の主だった面々と協力して戦うよ
この共闘がほんの少しでも
後の時代にプラスになれば良いんだけど

ガトリングガンで範囲攻撃
速く動くなら面で攻撃しよう
爪の攻撃は神気で麻痺させたり
ガトリングガンの砲身で防いだりして凌ぐよ
障害物の無いのはきついけど
他の面々と連携して補おう

ここに集う力が優しさに満ちているとは言い切れないけど
強い力だけで出来る事が限られるのは事実かな

ついでに僕達に限って言えば時間稼ぎは無駄だよ

という訳で戦っている間
分霊に爆弾のカウントを停滞させて貰ってるよ
苦しい時の神頼み
立ってる者は邪神でも使えって、ね

都合の良い事言ってますの
でも、この世界の多くが喪われるのを
見過ごす訳にもいけませんの



 ヒーローもヴィランも、互いに戦うことなく手を取った結果。
 それが今の戦場の全てであった。
 オブリビオンの軍勢と戦うヒーローとヴィラン。炎が吹き荒れ、紫電が走る。恨みを原動力にして放つ狂気が飲み込み、エナジー化された拳が叩きつけられる。
 それらが切り開いたのは、仮想空間であれど未来であった。
 誰もがよりよい未来を求めている。
 過去の化身、オブリビオン『ヴァンパイアバット』にはわからなかったことだろう。

 彼の中にあるのは怒り。
 己の生命が無価値であるのならば、生命に貴賤はないと告げる者たちの生命もまた無価値であると知らしめたかったのだ。
 故に全てを破壊する。
 吹き飛ばし、その無意味さを証明したかった。
「だから、俺ぁな……!! 全部ぶっ壊す、ぶっ飛ばすんだよ!!」
 超・兵器『エベンキ・バタフライ』はそのための力だった。
 ヨーロッパ全土を吹き飛ばす威力。その力を持ってすれば、ヒーローもヴィランも関係なかった筈なのだ。

 けれど、猟兵が来た。
「ここに集う力が優しさに満ちているとは言い切れないけど、強い力だけで出来ることが限られるのは事実だよ」
 佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は告げる。
 ガトリングガンの斉射が周囲のオブリビオンを蹴散らしながら、『ヴァンパイアバット』へと走る。
 その弾丸を『ヴァンパイアバット』は爪で弾き飛ばしながら晶へと迫るのだ。
 彼女は知っている。
 此処が仮想空間であり、現実ではないことを。善悪の頂上決戦。それが『ジャスティスウォー』であり、その結末を知っている。

 だから、此処にある力が全てそうであるとは言えない。
 けれど、結果としてヒーローとヴィランは手を取り合っている。ならば、この共闘が少しでも後の時代にプラスになればいいと願うのだ。
 放つ弾丸から神気が走り、『ヴァンパイアバット』の動きを阻害する。
「この程度で……!」
 叩きつけられる爪の一撃を晶はガトリングガンの砲身で防ぎながら凌ぐ。『エベンキ・バタフライ』は球体の巨大兵器だ。
 その上で戦うということは遮蔽物がないということ。

「だが、てめえらも終わるんだよ!『エベンキ・バタフライ』のカウントダウンは止まらねぇ! もう手遅れだ!!」
『ヴァンパイアバット』はこれまで時間を引き伸ばしていた。
 ヨーロッパ全土を吹き飛ばすほどの高性能爆弾。その欠点は臨界までの時間があるということ。
 そして、『停止スイッチ』は彼の手の中にある。
 止められない。
 そう、止められようがないのだ。そして、『ヴァンパイアバット』は時間稼ぎに成功していたのだ。

 多大な傷を打ち込まれながらも、それでもなお、生き延び、全てを破壊に導かんとしていた。
 だが。
「僕に限って言えば、時間稼ぎは無駄だよ」
「――達、と付けてくださいまし」
 その言葉に『ヴァンパイアバット』は訝しむ。何を言っていると、その瞳が歪む。
 そう、彼は何故未だに『エベンキ・バタフライ』は炸裂しないのかを訝しんでいた。もう爆発が起こっていてもおかしくないはずだ。

 なのに、爆発しない、一体、何故、と彼は周囲を見回した瞬間現れたのは、邪神の恩返し(ガッデス・リペイメント)によって別行動を取っていた晶の体の中にある邪神の分霊の姿であった。
「苦しい時の神頼み。立っている者は邪神でも使えって、ね」
「都合の善いこと言ってますの」
 そう、邪神の分霊の停滞の権能により、カウントダウンを停滞させていたのだ。これではいつまで経っても『エベンキ・バタフライ』は炸裂しない。
「でも、この世界の多くが喪われるのを見過ごす訳にもいきませんの」
 にこりと微笑む邪神の分霊に『ヴァンパイアバット』の表情が歪む。それは怒りと悲嘆の綯い交ぜに成った表情であった。

「こんな……! こんな、ことが……! 俺の怒りは、俺の、怒りはどうなる……!!!」
 晶は引き金を引く。
 これまで蓄積した猟兵たちの打撃はどれもが『ヴァンパイアバット』にとって致命傷であった。
 けれど、彼を支えていたのは己の怒りだけだ。
 その怒りが今、『エベンキ・バタフライ』の不発と共に折れたのだ。怒りすらおられた『ヴァンパイアバット』に存在を維持するだけの熱量はない。
 その弾丸が『ヴァンパイアバット』を貫き、肉体を霧消させる。終わりだった。

 オブリビオンの介入は終わりを告げ、再び『ジャスティスウォー』は最後の結末まで突き進む。
 ヒーローとヴィラン。
 多くが喪われ、死する。そして、残された『エベンキ・バタフライ』はいつかの時代に利用されるかも知れない。
 けれど、それが起こらないことを猟兵たちは知るだろう。

 大地を砕く拳、海を割る蹴撃、雷電の如き業。
 それが『エベンキ・バタフライ』を残骸へと変える。それを為したのが徒手空拳の青年だ。
 砕ける超・兵器は再起することなどないだろう。
 その臨界を迎えようとしていた炉心を砕いた閃光の中に徒手空拳の青年は消えゆく。
 これでいいのだと。
「いつだって空には月がある。偽りの月ではなく、月のように澄み切った心が照らす円明の如きアンタたちのような存在が世界を見てくれている。だから、何も心配することなんてない」
 徒手空拳の青年は猟兵たちに薄紅色の瞳を向け笑う。
 その笑みが閃光の中に消えゆくとしても――。

●後年
『ジャスティスウォー』は決着する。
 ヒーローとヴィランは多くが喪われた。
『スナークゾーン』においても、変わらぬことであった。時代が移ろい、多くの価値観が変容するように。
 世界を巻き込む戦いは終わりを告げる。
 善と悪という二つは、多種多様に枝分かれしていく。

 強大な力には、大きな責任があるように。常に破壊と救済が表裏一体であることを人々は知るだろう。
「これだけの時間をかけても、まだ究極たる『超生物』は生まれない。どうしてだ? 何故生まれない?」
 ある神性は『神々の時代』から研究に没頭していた。
 世界がどれだけ争いに満ちても介入することなく、生命の研究に没頭し続けていたのだ。

 その神性が求めるは『人間の傑作』たる『不敗を象る名』を超える『超生物』の誕生である。
 だが、どうしても為し得なかった。数多の生命を消費してもなお、到達しえなかった。何故だと呟く声が響く。
「それは私が答えよう。それは存在するからであると」
 甘やかな声であった。何処にでもあるようでいて、何処にもいない。そんな甘やかな声。
 その声の主は微笑むようでもあったのだ。

「どういうことだ?」
「何、簡単なことだよ。存在するから否定できる。では、否定できぬものとは?」
「存在してないこと。存在していないからこそ、誰も否定できない。そうか、そうか! それが!!」
「ええ、それこそが『超生物』。名付けよう。『スナーク』と」

 それは何処にも存在しないものであった。
 ヒーローやヴィラン、偉大なるジャスティス・ワンやアトランティスの海底人、親愛なる隣人や、道端のしがない靴磨きまで。
 そして、人間の中からでも、神々の血からでも。腐臭漂う汚水からでも、少女の涙ひとしずくまでも。
 あらゆる場所から本質の存在しないうつろなる怪物は生まれる。

「生まれるがいい。『スナーク』――」

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年04月27日


挿絵イラスト