4
銀河帝国攻略戦⑭~死兵艦隊

#スペースシップワールド #戦争 #銀河帝国攻略戦

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#スペースシップワールド
🔒
#戦争
🔒
#銀河帝国攻略戦


0




「あのエンブレムは……!」
 解放軍スペースシップの一隻、アナン=アデスの艦橋で観測手が悲鳴じみた声をあげた。
 スクリーンに映し出されているのは、かつて伝説の解放軍を苦しめたといわれる『白魔』艦隊。
 その戦法は恐怖をもってスペースシップワールドの人々に伝えられていた。

「死兵だ」
 艦橋の一角に、猟兵のために指揮所が設けられている。同様の設備のある艦はほかにも何隻かあり、猟兵たちはそれらに分乗してこの戦いにあたっているのであった。何人もの猟兵が入れ替わり立ち替わり作戦に向かっては帰還する様は、さながらグリモアベースだ。
「『白魔』艦隊の戦法については既に知っている者も多いと思うが、改めて説明する。
 強力な自爆能力を持つ高速輸送艦に強襲用の兵力を満載。これを特攻させ、相手艦隊内部で輸送艦を自爆させる。その混乱に乗じて、強襲兵力が敵を蹂躙するというものだ」
 強襲兵力に退路はない。『白魔』艦隊の一員としてひとたび輸送艦に乗れば、敵を殺して死ぬか、輸送艦の自爆に巻き込まれて死ぬか以外に選ぶ道はないという。
「オブリビオンゆえ我々とは命の扱いが違うのか――」
 エフェネミラルはかぶりを振った。幾度でも再生できるという点はあれど、これまでに目にしたオブリビオンには意思や痛覚があった。猟兵による死を恐れているような者もいた。
「――いずれにせよ、銀河皇帝にそれほどの忠誠を尽くしているということだ」

 文字通り命を捨てて突撃してくる『白魔』艦隊に、『伝説の解放軍』は辛酸を舐め続けた。
 戦法がわかっていても対応できぬ。優勢に戦っていても、易々と覆されてしまう。『白魔』艦隊への恐怖は、スペースシップワールドの人々にとって、もはや身に染みついたものであった。
「『白魔』の突撃を許すわけにはいかない。突入される前に破壊する」
 エフェネミラルは掌にグリモアを出現させた。天球儀のような球体が回転しながら淡く黄金の光を放ち、転移の準備ができたことを知らせている。
「皆をこれから『白魔』艦隊の輸送艦内に転送する。そこからコアマシンルームに向かい、自爆装置を起動させてほしい。コアマシンルームに直接送りたいところだが、未だ妨害があり、転送の精度が保証できない」
 もちろん、易々とコアマシンルームに辿り着けるわけではない。
「輸送艦には兵力が満載されている。戦闘は避けられぬだろうが、数から考えて全てを撃破することは不可能だ。そこまで戦闘に時間をとられていては、我が方の艦隊への侵入を許してしまう。可能な限り早くコアマシンルームを制圧することを優先してほしい」

 エフェネミラルが話す間に、アナン=アデスの乗員は猟兵たちに小型の通信機を手渡している。
「その通信機はここアナン=アデスの艦橋に繋がるよう設定されている。自爆装置の起動に成功したら即座に連絡を。爆発に巻き込まれる前に送還する」
 いつも危険な任務ですまない、とエフェネミラルは表情を曇らせた。
 戦争をしているのだ。危険でない任務などない。
 エフェネミラルにできることといえば、せめて最適なタイミングで彼らを転移させることだけである。
「爆発の光点はここで見よう。スクリーン越しに」
 言い慣れぬ稚拙な冗談で、エフェネミラルは猟兵を送り出した。


降矢青
=============================
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「銀河帝国攻略戦」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
=============================
 ご覧いただきありがとうございます。
 こちらは【⑭『白魔』艦隊】のシナリオです。
 集団戦で敵を蹴散らしてコアマシンルームに到達・制圧し、内部の自爆装置を起動させてください。
 やることが盛沢山なので、連携希望がなくても勝手に連携させてしまう可能性が高いです。
 ご自身のキャラクターが何を重視して行動するのかを教えていただけると、そのキャラクターらしい描写ができるのではないかと思います。
 よろしくお願いいたします。
31




第1章 集団戦 『小型歩行戦車』

POW   :    インペリアルキャノン
【機体上部に装備されたビームキャノン】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD   :    タンクデサント
【完全武装した銀河帝国歩兵部隊】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
WIZ   :    サイキックナパーム
【機体後部から投射する特殊焼夷弾】が命中した対象を燃やす。放たれた【搭乗者の念動力で操作できる】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

バラバ・バルディ
【WIZ】
ほぉほぉ!なるほどつまり、パッと行ってパパーッと帰ってこいということじゃな!承知承知!
となればじゃ、わしはなるべく多くの敵を抑え、仲間のためコアマシンルームまでの道を作るが良かろうな。わしは機械には疎いからのう、やつらにどれほど通じるかは分からんが『存在感』と大声で敵をこちらに『おびき寄せ』、仲間の道を作る。わしは『逃げ足』で避けつつからくり人形で『敵を盾にする』ゆえ、心配無用じゃ!……しかし、道を阻むものがあれば優先的に仲間の方を『かばう』ぞ。なに、目的に達すれば戦いも短く済むからのう!ぬぁははっ!

万一囲まれたときは敵の骸を拝借し、UCで切り抜けるとしよう。あまり好まぬ策じゃがな。


峰谷・恵
「昔はオブリビオンじゃないころにこの特攻部隊使ってたって指令出す方も頭のネジ飛んでる気がする」

他の猟兵と連携を取る。
突入直後に全射撃武器によるフルバースト・マキシマム(一斉発射、鎧無視攻撃、鎧砕き、誘導弾、2回攻撃)で可能な限り敵を撃破。
コアマシンルームに進む猟兵が居るなら派手に暴れて敵を引きつける。コアマシンルームに向かう者が居なければユーベルコード発射の爆煙に紛れてコアマシンルームへ突破を図る(迷彩、忍び足、ダッシュ)。
敵の攻撃は回避。避けきれないものはダークミストシールド(盾受け)とマント、空間活動用改造ナノマシン、コード【神を穿つもの】、喰精紋の4重防具(オーラ防御)で防ぐ


ヘスティア・イクテュス
正にカミカゼといった感じかしら?
死んで来るよう命じる皇帝にも、それを大人しく受け入れる兵にも理解はできないけど…
その忠義だけには敵ながらお見事。と贈らせてもらおうわ…

ティターニアで空を飛んで
ミスティルテインは威力重視…ビームで装甲ごと撃ち抜くわ【鎧無視】
攻撃は最低限、こちらを狙う敵を撃ち抜いて進路を確保ね

自爆装置の起動のためコアマシンへの到達を重視して行動よ
機動力には自信があるわ
味方が敵を掃討、片づけてる間に全力飛行!【ダッシュ】

ガーディアンによるバリア【オーラ防御】で防ぎながら
念のためホログラムで分身【残像】で攻撃の集中を防いで

もし自身が突破できそうになければ味方の【援護射撃】に切り替えね



 転送されたのは機関室のようだった。
 いきなり敵陣の真ん中に転送される可能性も考え、猟兵たちはそれぞれに武器を構え警戒態勢をとっていたが、幸いあたりに敵影はない。

 ヘスティア・イクテュスは視線を上げた。急な階段の上に出口が見える。
 狭い中に機械が押し込められたこの部屋は無人のようだが、ハッチ一枚隔てた向こうは敵兵がひしめいていることだろう。
「機動力には自信があるわ。全力でコアマシンルームに向かうから、援護をお願い」
「わかった。道はボクが作ろう」
 ヘスティアの言葉に頷いたのは峰谷恵だ。
「敵はわしが引き受けよう。パッと行ってパパーッと帰るが吉じゃ!」
 バラバ・バルディが派手な飾りを揺らし、ハッチに手をかけた。
「よいか、行くぞ!」

 バラバがハッチを押し開けた瞬間、通路にひしめいていた歩行戦車のセンサーが一斉にこちらを向いた。中には人がいるはずだが、声が聞こえぬせいか、それは酷く無機質なものに思われた。
 歩行戦車の脚部が動くのも待たず、灼熱を帯びた砲撃が歩行戦車を貫く。
 恵のユーベルコード《フルバースト・マキシマム》だ。
 耳を劈く轟音が断続的に響く。発射される弾丸の雨はまるで破壊の概念が形を得たかのようだ。それは歩行戦車を次々と薙ぎ倒して、進むべき道を拓いていく。
「昔はオブリビオンじゃないころにこの特攻部隊使ってたって指令出す方も頭のネジ飛んでる気がする」
 MCフォートを中心に構成された射撃武器の全てが前方を向き、銃口から細く煙を吐いていた。
 直撃を受けた戦車はひとたまりもない。邪悪なまでに容赦のない熱量は、戦車の装甲を乗員ごと溶かしてしまっていた。

「死んで来るよう命じる皇帝にも、それを大人しく受け入れる兵にも理解はできないけど……」
 焦げ臭さに目を眇めながらも、ヘスティアはティターニアを展開した。
 恵の《フルバースト・マキシマム》により前方に直線の道が開けた。この期を逃す手はない。
「正にカミカゼといった感じかしら。その忠義だけには敵ながらお見事、と贈らせてもらうわ」
 言い終えるが早いか、ヘスティアは強く床を蹴った。妖精の翼を象ったジェットパック・ティターニアが推進力を与え、ヘスティアは低く鋭く飛ぶ。敵戦車の残骸の上すれすれを飛ぶその姿をこそ、神の風と謳うべきであろう。
 恵の爆風に煽られて転倒していた戦車が態勢を立て直し、ビームキャノンがヘスティアを向いてエネルギーの充填を始める。青白い光が目を刺した。
「撃たれるわけにはいかないわ――そこよ!」
 ヘスティアのビームライフル・ミストルティンが唸る。わずかにティターニアの翼が傾いたかに見えたのも束の間、ヘスティアは歩行戦車の一台に肉薄し、至近距離から高威力のエネルギー照射を叩き込んだ。
 ヘスティアの周囲には小さな球体ドローンが付き従い、歩行戦車の攻撃を防いでいる。
 しかし、自動防御だけで防ぎきれるほど帝国の戦車は甘くはない。かといっていちいちミストルティンで潰していては時間が足りぬ。

「帝国兵ども、どこを見ておるか!」
 ヘスティアと戦車の間にバラバが割り込む。南国の鳥のごとき極彩は、無彩色に満ちた艦内にひどく鮮やかだ。
 高速で飛ぶヘスティアよりも、先にバラバを片付けるほうが効率がよい――戦車の乗員たちはそう考えたのかもしれぬ。戦車後部からナパームが発射され、バラバを包み込んだ。橙の炎があがり、バラバの羽飾りを焦がす。
 骨まで溶けるかと思わせる炎であったが、その熱がバラバの身体を襲うことはなかった。

 恵に撃ち抜かれた歩行戦車の残骸の中からゆらりと人影が立ち上がる。
「まさか、死んだはずでは――?」
 帝国兵のひとりが戦車の中で呟いた。仲間の死は想定の内だ。何せ、これから皆同じ道を往くのであるから。
 しかしそれでも、帝国兵に僅かな希望が点ったのは事実である。味方が生きていれば、戦車が無くとも携行した銃で一矢をくれてやることができるやもしれぬ。
 だが、その希望はあっさりと打ち砕かれることになる。
 影は人に非ず――バラバと同じ奇妙な頭部とたてがみのある、シャーマンズゴーストの姿をしていた。
「あまり好まぬ策じゃが、しかたがないのう」
 それは、バラバの《ゴースト・リボーン》によって操られた帝国兵の屍であった。シャーマンズゴーストに姿を変えた彼らは、バラバを炎から守るように取り囲む。
 バラバに代わって炎にその身を焦がす彼らを、バラバがどのように見つめていたのか。その瞳には火の粉が反射し、表情を読み取ることはできなかった。

 バラバの横をすり抜けるように恵が走る。
 恵はまっすぐにヘスティアを追い、彼女を狙う歩行戦車を一台一台撃ち抜いていった。
 恵自身にも砲撃が降り注ぐが、帝国兵にも焦りがあるのか、命中しない。かする程度の攻撃であれば、恵は、幾重にも備えられた防御機構で凌ぐことが可能であった。
 コアマシンルームの扉が目前に迫ると、恵はヘスティアに呼びかける。
「右に避けて。扉を壊す!」
 コアマシンルームの扉は何らかの暗号で施錠されているようであったが、解錠に時間をかけている暇はない。
 恵は施錠部分を狙って熱線銃を撃った。高速輸送艦というだけあって、内部の構造は戦艦ほど頑丈ではないらしい。
 扉はあっさりと開き、恵はヘスティアとともにコアマシンルームに雪崩れ込んだ。

 コアマシンルームには数名の帝国兵の姿が見えたが、歩行戦車に搭乗してはいない。制圧は容易だ。
 問題は自爆装置の起動にどれほど時間がかかるかである。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
コアマシンルームを占拠するこの作戦
全員コアマシンルームに乗り込む必要はありませんね。迎撃してくる兵力を足止めしてコアマシンルームに向かう仲間を「かばい」援護します

主な敵は歩行戦車ですか
脚部スラスターを使って移動、攻撃を「見切って」回避したり、「武器受け」「盾受け」で防御しつつ接近します
随伴歩兵は「怪力」での「なぎ払い」で排除

戦車のキャノンは構造上、真下に潜り込まれると攻撃できない欠点があります。「スライディング」で滑り込んで、隠し腕の電流で動作不良を起こして差し上げましょう。その後は格納銃で蜂の巣です

コアマシンルーム制圧までの時間稼ぎ、兵力差から苦しい戦いになるでしょうが持ちこたえてみせます



 トリテレイア・ゼロナインはその様子を確認して、コアマシンルームに自らが乗り込む必要はないと判断した。
「バラバ様も中へ! ここはお任せください!」
 けして広いとはいえぬ通路にトリテレイアが立ちはだかると、それはまさに壁だ。
 次々とやってくる増援を通路上で迎撃するのは愚の骨頂。コアマシンルームに立て篭もる形で、唯一の出入り口を死守すべきであろう。トリテレイアはそのように判断したのである。
 バラバを襲った炎が未だ周辺に渦巻いてる。トリテレイアはその上をスラスターで滑るように移動し、敵に肉薄した。炎がトリテレイアの脚部を舐めたが、彼にとって熱さとはセンサーで感知する数字でしかない。勢いをゆるめず、次々と帝国兵をなぎ払っていく。
「戦車のキャノンは構造上、真下に潜り込まれると攻撃できない欠点があります」
 トリテレイアの巨躯が沈んだかと思うと、彼は脚部スラスターの勢いをそのままに、歩行戦車の下部に滑り込んでいた。
 真下には攻撃できないというトリテレイアの読みは当たっていた。搭乗兵は戦車の脚を上下させトリテレイアを踏み潰そうとするが、トリテレイアが掌を戦車底部に押し付け、やや持ち上げるようなかたちになってしまったので、それもかなわなかった。
「その行動パターン、封じさせてもらいましょう」
 トリテレイアの腰部が開いた。内蔵された隠し腕が伸び、戦車の脚を掴む。
 その瞬間、歩行戦車の間接部でバチンと火花が飛んだ。トリテレイアの隠し腕から特殊電流が放たれたのである。
 戦車は沈黙した。駆動系が損傷したと思われた。
 帝国の戦車はやわではない。このまま放っておけば、数分後には自動修復がなされるであろう。
 しかし、戦車は修復されても、もはや戦車として動き出すことはないことをトリテレイアは知っていた。
 歩行戦車のコクピットが搭乗員の電気椅子となったことを、かすかに聞こえた短い断末魔が知らせていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

アリウム・ウォーグレイヴ
アドリブ歓迎

コアマシンルームまでは他の猟兵のサポートに徹しましょう。
私達が通ってきた道から敵が来ないように魔法で塞げないか試してみます。
私の魔法で氷の壁、氷の道を幾重にも作り、少しでも『時間稼ぎ』ができれば良いのですが。
所詮氷の壁。破られるのは承知の上です。必要であれば殿を務め、『範囲攻撃』等で敵の足止めも行います。
敵の炎とは相性が悪いですが、『火炎耐性』を用いて少しでも釘付けにできればこちらのものです

それにしても死兵とは厄介な存在ですね。
オブリビオンとはいえ、その執念には感服です。
しかし死兵は死兵。未来を、前を向いていない彼等に負ける道理はありません。
彼らの望むまま過去に埋葬してあげましょう



 トリテレイアはコアマシンルームに背を向けて徐々に後退し、コアマシンルームの扉を自らの体で塞ごうとしている。
 どこかで扉の開く音がして、帝国兵――おそらく精鋭であろう――が通路に走りこんでくる。

 アリウム・ウォーグレイヴは殿をつとめ、敵兵の向かってくる通路に向かって氷の魔法を放った。氷は歩行戦車の残骸を包み込んで大きく成長し、通路に尖った氷山をいくつも作り出す。
「させるか! おい、俺を踏み台にしろ!」
「奴等はただの逆賊だ! 陛下に仇なす不届き者、死して仲間の先触れとなれ!」
「進め! 進め! 進め! 進め!!」
 氷に手足を封じられ、味方に踏まれてもなお戦意をこめてこちらを睨みつける帝国兵に、アリウムの瞳は憂いの色を深くした。
「死兵とは厄介な存在ですね」
 戦車がナパームを放ち、アリウムの氷を溶かす。アリウムはすかさず魔法を放ち、再び氷を厚くしていく。相性が悪いのは承知の上だ。時間さえ稼げればよい。
 どれほどの間、氷の壁を挟んでの攻防を続けていたであろうか。
 とうとう氷に穴が開いた。間髪を入れず、炎が噴射される。アリウムは即座に上体を後ろに引いた。
 炎が髪を焦がし、頬を灼く。一瞬遅れていれば首ごと炎に呑まれていたやもしれぬ。左目を覆うモノクルが熱に耐えかねて割れ、アリウムは反射的に目を瞑った。
 歩行戦車は次から次へと湧いてくる。本当に積載容量のぎりぎりまで、この艦に詰め込まれているのだ。
 確定した死を前にしてなおこの執念。感服に値するといってもよい。
「しかし死兵は死兵。前を向いていない彼らに負ける道理はありません。彼らの望むまま過去に埋葬してあげましょう」
 アリウムは体勢を立て直し、片手で左目を押さえながらも《ホワイトパス》を放った。
 一度は全て溶かされた氷がふたたび冷気をまとい、結晶となって成長していく。アリウムの放った魔法は空気中の酸素を極低温まで冷やし、僅かに青みを帯びた大波となって、帝国兵に襲いかかった。

「起爆はどうじゃ、嬢ちゃん!」
 コアマシンルームの敵兵を制圧し、バラバがヘスティアに向かって叫ぶ。
「そう急かさないで――これね!」
 パネルを操作するヘスティアの指が、確信をもって一箇所を押す。
 次の瞬間、艦内に甲高いブザーが鳴り響いた。明らかに警告音であるそれは、自爆のカウントダウンが開始したことを知らせていた。
 恵が通信機を手に取る。
「アナン=アデス、応答せよ。自爆装置の起動に成功」

 転送は即座に行われた。
 アナン=アデスの乗員たちが安堵の表情で猟兵たちを迎える。衛生兵がアリウムに駆け寄り、火傷の状態を確認しはじめた。
 乗員たちの間でどよめきが起こる。その声に導かれるように、トリテレイアは大スクリーンを見上げた。
 スクリーンには、先ほどまで自分達が戦っていた輸送艦が最後の輝きを放って四散していく様子が映し出されていた。
 爆発の光点は、数多の人員が搭乗していることを思わせぬほど美しく輝き、あっさりと消えていった。



 了

苦戦 🔵​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年02月16日


挿絵イラスト