銀河帝国攻略戦⑯~宇宙に捧げる歌声
●悪しき音楽の力
猟兵達の快進撃に続き、解放軍の宇宙船が前へ前へと進み敵艦隊を押し込んでいく。
そこに、どこからか音楽が聞こえてくる。
不協和音が混ざった、ざわざわと不安を煽る不気味な音色。
「何だこの曲は? 誰が流している、今すぐ止めろ」
「で、できません! 艦内システムを一部掌握され、放送設備の全艦内に放送されています!」
制御系統と比べ、セキュリティの甘い防壁を突破された。
電子戦担当が懸命に対抗するも、その強力な電子攻撃に対抗できない。
「何?! 敵の攻撃だと? だがこんな音楽を流して何の意味が……」
「『クライミングシェル』……黒騎士アンヘルの、クライングシェルだっ!」
それはかつて『伝説の解放軍』を混乱の渦に叩き込んだ、『洗脳音楽』。
艦長が放送設備の指示を出すも、時既に遅く。
敵の宇宙バイク隊により『スピーカー』を直接取りつけられ、直接艦内に音楽が響く。
重苦しいピアノとバイオリンの音は、それでいて心を揺さぶる美しい音色だ。
だがそれは人の心を狂わせる魔性の音楽だ。
「もう……だめだ……銀河帝国には、勝てっこないんだ……」
「か、艦内で暴動発生……! くそっ、何でこんなに、眠――」
聞いてしまった乗員達が次々と倒れる。
ある者は無気力になり、あるものは眠ってしまう。
だがここはマシだ、艦内のあちこちで乗員が暴れ出し、暴動が起こっている。
こんな有様で戦闘など、行えるはずがない。
「馬鹿なッ! これが……こんなものが、音楽の力……だと?」
艦長は拳を操作パネルに叩き込む。
痛みで正気を取り戻すことは敵わず、拳から血が滲む。
「音楽の力が、こんな事に悪用されるなど、あっては、ならない……っ!」
抗おうとする艦長だったが、やがて腰の銃に手を伸ばして自らの頭に突き付け――。
●
「皆様、お集まりいただきありがとうございます」
ソフィーヤ・ユリエヴァ(黒百合の聖女・f10512)がぺこりとお辞儀をする。
凄まじい快進撃により、エンペラーズマインドを攻略した猟兵達は駒を進めた。
「皆様にお願いするのは、『黒騎士』アンヘル直属艦隊。『クライングシェル』艦隊の撃破です」
かつて『伝説の解放軍』を苦しめたという洗脳音楽通信、『クライングシェル』。
それは洗脳音楽により対象の精神を操る兵器。
受けた艦の乗員の精神を狂わせてしてしまう。
「精神攻撃の前に装甲は無意味。解放軍艦隊には、防ぐ術はありません」
電子戦による放送機器のクラッキングと、音波照射による強制介入。
甚大な人的被害は免れないだろう。
「この力に対抗するには、こちらも音楽で挑む必要があります」
『クライングシェル』艦隊が、スペースシップワールド艦隊に多大な被害を与える前に対抗して欲しい。
かつての『伝説』の情報とグリモア猟兵の予知により、芸能船の放送設備を増強されている。
最小限の武装しか持たず、戦闘が得意ではない宇宙船が加わったのも、この時の為だ。
「但し、『クライングシェル』に対抗できるのは猟兵のみ……皆様にしかできないのです」
通常の人間では、『洗脳音楽』に耐えられない。
音楽の力で抗うには、猟兵達が音楽を奏でる必要がある。
「艦内や周囲の味方艦への音楽放送、及び敵艦への逆音楽通信……『ライブ』の準備は整っています」
敵が通信を用る以上、逆探知は容易だ。
味方の洗脳解除と防御、そして敵艦への攻撃を兼ねる『ライブ』に専念して欲しい。
「皆様自身の歌声と音色で、どうか本当の音楽を届けてくださいまし」
ソフィーヤは猟兵達に深くお辞儀をした。
アマガエル
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「銀河帝国攻略戦」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
※現実に存在する楽曲の曲名や歌詞、替え歌等が記載されているプレイングは採用できません。
二つ目の戦争となります、アマガエルと申します。
このシナリオでは、通常の戦闘は発生しません。
代わりに、『音楽』プレイングを掛ける必要があります。
歌詞はオリジナルのものに限ります。
どんな想いを乗せて、どのような雰囲気の曲を奏でるか、皆様の言葉でお願いします。
一部伏字などもプレイングが公開される関係上、採用自体できなくなってしまいます。
歌詞が思いつかない場合は、心情と曲調の雰囲気だけでも大丈夫です。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 冒険
『洗脳音楽通信を撃ち破れ!』
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POW : 激しいビートで、魂を揺さぶり、洗脳音楽通信の影響を撃ち破る。
SPD : 超絶的な技巧で、聴く者を圧倒して、洗脳音楽通信の影響を撃ち破る。
WIZ : 心に響く歌声で、感情を揺り動かして、洗脳音楽通信の影響を撃ち破る。
👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
天道・あや
歌には歌で対抗……うん!ようやくあたしの出番が回ってきた!よーーし!どっかーんとド派手に一曲歌っちゃうんだから!黒騎士だかクライングだか知らないけど、いざ勝負っ!!
WIZ
みんなー!あたしの歌を…想いを聴いて!!
あたしが歌うのは未来への想い!例え過去や今がどんなに苦しくても未来はきっと明るくて楽しい、だから…だから乗り越えよう!一人で乗り越えなくていいんだよ!友達や家族…そう皆と一緒に乗り越えようっ!そんなあたしの想いが乗ったを歌を鍛えた【歌唱】で披露!!
ルベル・ノウフィル
wiz
あまり上手ではないがとても一生懸命に歌う
主におじいちゃんおばあちゃんが、お遊戯会で孫が歌っているのをきいてホンワカしてしまうような、そんなノリを目指す
曲調は明い
子供向け番組とかで流れそうなメロディラインがはっきりして誰でも歌えそうな歌
「皆様、ご一緒に」
と言って一緒に歌うように誘う
(即興)
ワンワンワン、にゃんにゃんにゃん
わんこもにゃんこも
おとうさんもおかあさんも
ぼくたち みんな 生きている
あしたにむかって ワンワンワン
(繰り返し)
手を取り合って あしたへあるこう
みんなおなじ そらのした
いっしょに手を取り あるいていこう
前をみて 隣をみれば みんないっしょに あるいているよ
(繰り返し)
エスペラ・アルベール
艦長の言う通りっ、音楽でみんなの笑顔を奪おうだなんて、絶対に見逃せないっ!
ボクの歌で、本当の音楽の力って物を教えてあげるっ
アップテンポな明るく楽しい歌を、敵の心も揺さぶってやるぐらいの意気込みでっ!『歌唱6』
デストロイマシンに思考を操作されていようとも、歌に感動する心まで奪わせやしないっ!
【シンフォニック・キュア】も使っておいて、艦内の人たちを少しでも癒やしておくよっ
歌詞イメージ:自分の側にいる人へ希望を与え、そして与えられる、一人一人の繋がりが大きな力になる、そんな前向きな歌詞
シャルロット・リシュフォー
【アドリブ大歓迎】
音楽でしたら!このシャルの出番ですの!(ふんす)
「ら、ら、ら!あなたととーもーに。ら、ら、ら!この声にのーせーてー!」
音楽で心を捻じ曲げるなんて、そんなこと絶対許さないですっ!
歌は、音楽は、心に寄り添いそれを癒やすものですぅ
その正しい使い方を、今『聞かせて』差し上げます!
洗脳解除と防御回復を重視した優しい曲調の歌を歌いますね
『大丈夫』『あなたは一人じゃないですよ』『元気を出して』
そんな思いを込めて、声の続く限り歌うです
「それでもー届けたい♪ えいえーんに大切な言葉ー!」
私これでも、良く『済んだ歌声だ』って褒められるんですのよ?
「私は、悪意の歌になんか負けませんよー!」
キケ・トレグローサ
エド)「音楽は心を揺り動かすか・・・中々目の付け所がいいが、闘志に燃える、人の意志の力を、なめるなよ・・・!」
怒りに震えるのは歌い手エド。キケのUCによって具現化した妹ルナとキケ本人とともに音楽を奏でる
キケ)「人の心は脆い、くじけたり、あきらめたり…だけど、それを乗り越える力を、人々は持っている!」
ルナ)「英雄と呼ばれた彼らは決して特別ではなかった。ただ、くじけなかった。信念を貫きそして生きた、たった一人一人の人間だった」
エド)「彼の者らに名はなく、彼の者らに名誉あれ。刃が煌めき、盾は破れぬ。英雄の他に値する名、他になし!」
キケがリュートをルナが竪琴を奏でエドが歌うのは『英雄達の詩』
ヘスティア・イクテュス
さぁ、戦争も佳境ね…次の敵も撃ち抜いて…
って歌!?歌うの!?
あぁ、もうやけっぱちよ!わたしの歌を聴きなさ~い!
歌う歌はそうね…
わたしの船に伝わるわらべ歌よ
内容は
昔、地上で暮らしていたわたし達が
銀河帝国との戦いで星を汚して住めなくなったこと
その星の十二人の王が船を造り
民を連れて住める星を探すために宇宙に旅立ったこと
仲良くしなさい、
自然を大切にしなさい
そして王をたたえなさい…
そんな内容のわらべ歌よ
同じスペースシップワールドの人達なら
似た境遇の歴史の船もあるでしょ?
こんな洗脳音楽に負けずに立ち上がりなさい
わたし達の祖先は昔、銀河帝国を滅ぼしたのよ?
二回目がなによ
また勝つわよ!気をもちなさい!
犬憑・転助
俺のユーベルコードは超嗅覚、キナ臭さだって嗅ぎ分ける
音楽か……久しぶりだな、いっちょやるか!
たすき掛けして着物を動きやすいよいにし
電子だかなんだかのどうやって伝えるか(セッティング)は終わってるんだよな?
デカイ和太鼓を持ってくる
ソイヤっ!
力強く激しい太鼓のリズムを刻むぜ
掛け声はお任せ(ソイヤソイヤ、とか)
さらにイヤホンで敵の洗脳通信聞きつつ、超嗅覚で感知した1番キナ臭いメロディーのタイミングに被せるように、太鼓を激しく超絶技巧で叩く
これならピンポイントで打ち消せるはず
自身も盛り上がって来たらたすきを投げ上半身脱いで全力で太鼓を叩く
他のPCが困ってたら助けるのもOKです
苦労人ポジOK
アドリブ歓迎
カイル・サーヴァント
WIZ
お歌、あんまり歌ったことないけど……精一杯、歌います!
音楽もなにもない、アカペラで歌うボクが、わたしが、そばにいる
そう伝えるための歌
諦めないでと言う歌
大好きな人に歌う歌
「伸ばしたこの手
繋いだ手と手
絶対に離さない!
ボクがいるから!
私がいるよ?
だから恐れず前向いて進もう!
ボクは歌うよ!
私も歌おう!
貴女に届けこの愛(おもい)!
貴女の隣で共にありたい
貴女と一緒に進んでいきたい
まだ見ぬ明日(みらい)まで……」
最初から最後に至るまで力強く
一番最後は消え入るように余韻を残して
歌い終わった後、照れ臭そうな笑みを浮かべて、頭を下げて後ろに下がる
●『寄り添い癒す歌』
芸能船ならば当然存在する劇場。
戦いの為にその広い空間には今、物々しい武装した乗員が詰め込んでいる。
だがその舞台には、大講演レベルの設備が準備されていた。
これから行われる、特別ステージの為に。
重低音の洗脳音楽が、艦内に流れ出す。
このままでは予知の通り、感受性の高く心の弱い者から狂わされていくだろう。
だがここには過去に抗い、未来を変える存在――『猟兵』がいる。
優しいメロディーが流れ、劇場の照明が落とされる。
そして舞台の上に紫髪の少女がスポットライトで照らされる。
同時に宇宙船上に、ホログラムで投射された。
「音楽でしたら! このシャルの出番ですの! 音楽で心を捻じ曲げるなんて、そんなこと絶対許せないですっ!」
ふんすと誇らしげ胸を張るその少女の名はシャルロット・リシュフォー(歌声アステリズム・f00609)。
争いを好まない心優しい少女は、銀河帝国の行いに怒ると共に強い意志を宿す。
音楽で人の心を捻じ曲げるなど、シャルロットは赦せなかった。
歌は、音楽は、心に寄り添いそれを癒すものなのだから。
人を苦しめることなどあってはならない。
「一番手は頂きます! 音楽の力の正しい使い方を、今『聴かせて』差し上げます!
私達『猟兵』による特別ライブ、公演スタートですの!」
この宇宙船に集った猟兵達による、一夜限りのライブがここに始まった。
「ら、ら、ら♪ あなたととーもに♪ ら、ら、ら♪ この声にのーせーてー♪」
シャルロットの澄んだ歌声が艦内に響き渡る。
それは周辺の宇宙船にも、通信とスピーカーを用いて届けられている。
狂気を宿す洗脳音楽に抗うための、優しい癒しのメロディ。
『大丈夫』『あなたは一人じゃないですよ』『元気を出して』
シャルロットが歌う間も、洗脳音楽は響き続けている。
シャルロットの心をも蝕み、よろめく。
そこに『頑張って』という声援が届く。
『一人じゃない』と歌ったシャルロットを支える聴衆の声。
「私は、悪意の歌になんか負けませんよー! 私だって……一人じゃないですぅ!」
洗脳音楽を振り払うべく力の限り声を振り絞ると、歓声が響く。
シャルロットの力強い声に勇気付けられた聴衆の声援によって、シャルロットの心にも火が灯る。
自分が負けるわけにはいかない。
正しい音楽が、間違った音楽に負けるわけにはいかない。
「それでもー届けたい♪ えいえーんに大切な言葉ー!」
こうして応援してくれる人々がいるのだから。
シャルロットは声の続く限り、ありったけの想いを乗せる。
人々が立ち上がり、力を取り戻していくのを感じた。
●『約束された勝利』
「さぁ、戦争も佳境ね……次の敵も撃ち抜いて……って歌!? 歌うの!?」
ヘスティア・イクテュス(SkyFish団船長(自称)・f04572)は予想外のオーダーに驚く。
敵艦がどこにいるか、補足できていない。
だが音楽は通信によって届けられる。そこに乗せる想いこそが武器。
「あぁ、もうやけっぱちよ! わたしの歌を聴きなさ~い!」
銃弾の代わりに込めるのは想い。放つのは歌声。
ヘスティアが歌うのは、しっとりとしたわらべ歌。
その昔、地上で暮らしていた人々が戦いによって、自らの星を穢して住めなくなった。
その星の十二人の王が船を造り、民を連れて住める星を探す為に宇宙へ旅立った。
悲しい歴史を後世に伝えるための歌。
そして、教訓を伝える歌。
仲良くしなさい、自然を大切にしなさい、そして王を讃えなさい、と。
「こんな洗脳音楽に負けずに立ち上がりなさい」
歌い上げたヘスティアは、マイクコメントとして聞き入る観衆へ語り掛ける。
ヘスティアの船と似たような歴史を辿った宇宙船だってあるだろう。
この歌が示すのは、もう一つある。
「わたし達の祖先は昔、銀河帝国を滅ぼしたのよ?」
それは、銀河帝国に『勝利した』という揺るぎない歴史。
過去が蘇ったからといってなんだというのだ。
「二回目が何よ。また勝つわよ! 気をしっかり持ちなさい! 今度はわたし達がついているんだから!」
ヘスティアは高らかに拳を掲げて、発破を掛ける。
かつて『伝説の解放軍』には、猟兵のような存在は多くなかった。
だが今こうして快進撃を進めていくのは猟兵達の力によるもの。
「あなた達だけでも、わたし達だけでもない……。
皆で掴み取って、銀河皇帝に叩きつけてやるのよ! 完全勝利を!」
ヘスティアは海賊らしい負けん気の強さで宣言する。
その声に賛同した聴衆達が、雄叫びの如き歓声を挙げた。
●『漢達の鼓動』
「久しぶりだな、いっちょやるか」
犬憑・転助(孤狼の侍・f06830)は着物をたすき掛けにし、用意された和太鼓の前に立つ。
宇宙船のスタッフにより、音を拾って伝える準備も万端整っている。
「全く、鼻が曲がっちまいそうなクサい音だ」
転助はイヤホンで敵の洗脳音楽を聞きながら、音を嗅ぎ分ける。
洗脳音楽の影響は強まるが転助は歯を食いしばって耐える。
狂気を振り払うように、深呼吸一つで心を落ち着ける。
「ソイヤっ!」
掛け声と共に、バチを太鼓に叩きつける。
腹の底に響く力強い音を響かせて、激しくバチを振るう。
「セイッ、ハッ! ソイヤソイヤソイヤッ!」
重苦しいだけの洗脳音楽を打ち消す、和太鼓の音が激しいビートを刻む。
洗脳音楽という『精神攻撃』ならば、回避する術はあるはず。
転助の読み通り、キーとなる音がメロディの中に一定のリズムで存在した。
ならばそのリズムに合わせて、ピンポイントに叩き込めばいい。
「ソイヤっ! ソイヤッソイヤッソイヤッ!」
『ソイヤッソイヤッソイヤッ!』
洗脳音楽に抗いながら和太鼓を叩く転助の気合の声に、男達の合いの手が入る。
聴衆との一体感に、転助の口元に笑みが浮かぶ。
敵のリズムを読むためと言えど、それを聞き取り続ける事は洗脳音楽影響を受け続ければ危険だ。
だが聴衆の声援が、転助に力をくれる。
音楽を奏でる者と、聴く者が共に心を奮わせる。この一体感こそ、音楽の力だ。
「俺のリズムについて来い!」
『オオォォォーーッ!!』
転助は着物を脱ぎ捨て上半身を晒し、歓声に答えるように更に力強く叩き込む。
激しく高鳴る心臓の如く刻まれるリズムに、洗脳音楽が弱まり始めるのを感じた。
●『大好きな人に捧ぐ歌』
カイル・サーヴァント(盾の守護獣・f00808)が前へ歩み出る。
流れる伴奏はなく、スポットライトだけがカイルを照らす。
人前であまり歌ったことが無いカイルは、緊張でマイクをぎゅっと握りしめる。
舞台の上で閉じた目をゆっくりと開き、見つめる。
目の前にはカイルの歌を待つ多くの観衆。
洗脳音楽に苦しみながらも、その狂気の影響に耐えて抗っている。
彼らの為に今自分ができることを――。
そう思った瞬間、自然と口が開き、歌声が紡がれていた。
「伸ばした手 繋いだ手と手 絶対に離さない!」
カイルは緊張を誤魔化すように握りしめていた手を、聴衆へと差し伸べる。
その手をぎゅっと握りしめ、胸元にしっかりと抱く。
「ボクがいるから! 私がいるよ? だから恐れず前向いて進もう!」
カイルの少女のような、高いボーイソプラノ。
だがその歌が紡ぐのは儚さではなく、美しくも力強い歌声。
「ボクは歌うよ! 私も歌おう! 貴女に届けこの愛(おもい)!」
ボクが、わたしが、そばにいる。
戦ってるのは独りじゃない、諦めないでと伝える為に精一杯声を張り上げる。
「貴女の隣で共にありたい 貴女と一緒に進んでいきたい まだ見ぬ明日(みらい)まで……」
それは、大好きな人の為に歌う、愛の歌。
一人でなんてさせない。一人で戦わせない。寄り添い前に進む、希望の歌。
消え入るような余韻を残し、カイルは照れ臭そうに笑みを浮かべてお辞儀する。
女性の黄色い歓声が飛ぶと、もう一度カイルは頭を下げた。
顔が赤くなってるのが、自分でも恥ずかしいぐらいにわかっていたから。
●『未来の子供の為に』
「僕はあまり上手ではございませんが……一生懸命歌います」
ルベル・ノウフィル(星守の杖・f05873)の番になり、ぺこりとお辞儀した。
ルベルが両手でマイクを握りしめると、明るい曲が流れ出す。
「ワンワンワン♪ にゃんにゃんにゃん♪」
直立したまま背伸びするように踵でリズムを取りながら、歌い出す。
大人が聴くには幼い、子供向けの曲だ。
「わんこもにゃんこも♪ おとうさんもおかあさんも♪」
だが、だからこそ幼い子供や孫を持つ『親』や『祖父母』は思い出す。
戦わねばならない理由を。負けられない理由を。今ここに立っている理由を。
「ぼくたち みんな 生きている♪」
――生き延びねばならない理由を、思い出す。
ルベルの拙い歌は時折音程を外してしまう。
だがそれが逆に大人達の父性や母性を刺激して、敵の攻撃下にあるというのに空気がホンワカと和み、顔を綻ばす。
「皆様、ご一緒に」
聴衆と共に歌うべく、ルベルは聴衆を誘う。
『ワンワンワン♪ にゃんにゃんにゃん♪』
ゆっくりと染み渡るような繰り返しのメロディ。
心に温もりを灯すように、ルベルの歌声が、聴衆の声とハーモニーを生む。
「手を取り合って あしたへあるこう♪」
歌の巧拙など関係ない。
美しいだけの洗脳音楽など、ルベルの歌の前には無意味だ。
「みんなおなじ そらのした♪ いっしょに手を取り あるいていこう♪」
ルベルの表情から緊張の色が消えていく。
だってルベルの歌声を聴いて、皆、とても楽しそうだから。
自分の歌声が、想いが、彼らの心に届いているのだ。
「前をみて 隣をみれば♪ みんないっしょに あるいているよ♪」
『ワンワンワン♪ にゃんにゃんにゃん♪』
ルベル自身の胸の中も優しい気持ちで暖かくなっていった。
いつも大人びた表情のルベルは、歓声を挙げる聴衆達にお礼するように。
歳相応の無垢な笑顔を聴衆に投げかけるのだった。
●『英雄達の詩』
「音楽は心を揺り動かすか……中々目の付け所は良いが、闘志に燃える人の意志の力を、舐めるなよ……!」
キケ・トレグローサ(たった一人の流浪の楽団・f00665)の宿すもう一つの人格、『エド』が怒りに震える。
三兄弟の『流浪の楽団』の歌い手として、音楽の力を悪用など到底許せるものではない。
舞台の上に、三人が立つ。
キケがリュートを、ルナが竪琴を、音色を重ねて奏でる。
疾走感溢れるメロディは、轟くような英雄譚。
その音色に乗せてエドが歌うのは、『英雄達の詩』。
「人の心を脆い。挫けたり、諦めたり……だけど、それを乗り越える力を、人々は持っている!」
リュートを奏でながら、キケは語り掛ける。
人の心は弱いものだ。どんなに強大な力を持とうと、その心が挫ければ戦えない。
だが己の弱さを知る者は、弱さに打ち勝つ強さを持つのだとリュートの音色に想いを乗せる。
「英雄と呼ばれた彼らは決して特別ではなかった。ただ、挫けなかった。信念を貫き、そして生きた、たった一人一人の人間だった」
竪琴を奏でながら、ルナは語り掛ける。
この歌の『英雄』とは、キケを始めルナやエド、猟兵のような奇跡の体現たる特別な存在ではない。
力を持つが故に、その責を負い戦う者達ではない。
力を持たずとも、守るべき者達を守る為に立ち上がった者。
ルナは『貴方達こそ英雄』だと、優しく微笑み謳う。
「彼の者らに名はなく、彼の者らに名誉あれ。刃が煌めき、盾は破れぬ。英雄の他に値する名、他になし!」
力強い歌声に代わり、エドは語り掛ける。
名を残す誉れなど要らず。その行いを持って、名も無き英雄たれと、強く謡う。
「お前達は最初から持っているんだ。悪しき音楽に打ち勝つ強さを。この世界の為に立ち上がったのだから!」
『英雄達の詩』を歌い上げたエドが拳を突き上げ、聴衆を高らかに鼓舞する
この世界の為立ち上がった彼らが、こんな場所で屈する訳は無い。
聴衆から万雷の喝采を浴びながら、『流浪の楽団』の三人は恭しくお辞儀した。
●『未来に希望を』
「歌には歌で対抗……うん! ようやくあたしの出番が回ってきた!」
ラストを飾る事になった天道・あや(駆け出し猟兵・f12190)はマイクを握りしめる。
アイドルを志す少女にとって、歌の力を示す絶好の機会だ。
「よーーし! どっかーんとド派手に一曲歌っちゃうんだから! 黒騎士だかクライングだか知らないけど、いざ勝負っ!」
アイドル衣装を纏ったあやが部隊へ躍り出る。
この放送は、『クライングシェル』搭載艦の元へ届いている。
ならば――。
「みんなー! あたしの歌を……想いを聴いて!!」
あやは未来への想いを歌う。
戦いとは無縁な現代地球に生まれたあやは、猟兵としての戦いに慣れたとは言い難い。
だが歌だけは、アイドルとして負けるわけにはいかない。
「例え過去や今が、どんなに苦しくても――♪」
あや自身、アイドルへの道へ進む途中、何の因果か猟兵として導かれてしまった。
アイドルになれなかった。
その事実は苦しくて辛くて、絶望に打ちひしがれていた。
それでも――。
「未来はきっと明るくて、楽しい♪」
それでも、今あやはこうして、歌の力で皆を励ますことができる。
この歌で、絶望する誰かに希望の光を灯すことができる。
「だから……だから乗り越えよう♪ 一人で乗り越えなくていいんだよ♪」
歌いながらあやは微笑み、手を差し伸べる。
この歌が、聞く者全ての心に届くように。
この手が、苦しむ人々の手を取って救い上げられるように。
「友達や家族……そう、皆と一緒に乗り越えようっ♪」
あやはありったけの想いを歌に込める。
歌だけでなくパフォーマンスを織り交ぜ、ステージを盛り上げる。
「みんな! 応援ありがとー♪」
歓声に包まれスポットライトに照らされ、あやの頬に汗が伝う。
心地よい疲労感、達成感。何より、観客の笑顔。
「歌と踊りで、皆を勇気付けられる……これが音楽の力……これがアイドルなんだっ!」
かつてアイドルを志すきっかけとなった憧れの人に近づけたような気がして、あやは満面の笑みを浮かべるのだった。
●『心奮わすもの』
「艦長の言う通りっ、音楽でみんなの笑顔を奪おうだなんて、絶対に見逃せないっ!」
エスペラ・アルベール(元気爆発笑顔の少女・f00095)は強く拳を握りしめる。
エスペラは歌で誰かに笑顔をできる事を知っている。
自分の歌で誰かを笑顔にできた喜びを知っている。
その力を利用するなど、断じて許せない。
「ボクの歌で、本当の音楽の力って物を教えてあげるっ」
エスペラはアップテンポで明るく楽しい曲調で、希望を歌う。
それは、猟兵持つ全ての人を照らすような強大な光ではない。
自分の傍にいる者へ与え、そして与えられる小さな希望の光。
だからこそ、誰しも一人一人が持つことができる。
そして希望を与えられた者が更に誰かに希望を与え、繋がっていくことで強大な光となる。
誰しもが全ての人を救えるほど、強くなくていい。
手を伸ばせる場所にいる人を守る。
皆がそうすることで、『繋がり』が生まれる。
「銀河帝国の人達! キミ達にだって歌に感動する心はあるよね!」
この放送は、味方の宇宙船だけでなく敵艦にも届けられている。
洗脳音楽を聴く内に、エスペラは理解した。
この音楽は、心無い者が奏でられるものではない。
心を揺さぶる音楽を奏でられるのは、やはり心持つ者だけなのだ。
「だからっ! ボクがそれを思い出させてあげる! ボクのこの歌でッ!」
エスペラは敵の心を揺さぶり返すように、想いを込めて歌う。
想いが力になるなら、エスペラは銀河帝国の音楽に負けるはずがない。
エスペラが歌い終えると、歓声が轟いた。
「届いたかな、ボクの想い」
エスペラは見上げ、想う。敵艦の姿を捉えることはできていない。
だが洗脳音楽が途切れ途切れになっていくのが、きっと届いた証明だ。
●新たな伝説
スピーカーから爆音が響く。それはこの宇宙船のものではない。
洗脳音楽を鳴らし続けていた、スピーカー越しのもの。
猟兵達の奏で歌う音楽……想いの力が逆流し、洗脳音楽兵器『クライングシェル』が破壊されたのだ。
猟兵達の勝利、そして見事なライブに、乗員達は勝鬨と歓声が轟き、喜び合う。
「かつて『伝説の解放軍』を苦しめた洗脳音楽を、『当世の解放軍』が……
いいや、『猟兵』達が音楽の力を持って打ち破るか……」
その様子をブリッジのモニターで見ていた船長が呟く。
乗員達によって囲まれた猟兵達が、万の言葉を尽くしてもなお足りないほどに讃えられていた。
「これは過去の悪夢の再来でも、伝説の再演などでもない。伝説を塗り返す……新たな伝説なのだな」
芸能船の一つを治める船長は音楽の力で敵を討ち破った猟兵を誇らしく見つめる。
この宇宙船の船長として直接礼をするべく、立ち上がった。
もう一つ、彼ら彼女らの素晴らしい歌と音楽に、『アンコール』と言うために。
大成功
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