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朝は来ない

#ダークセイヴァー #月光城 #グリモアエフェクト #月の眼の紋章

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●光知らぬ瞳
 終わらぬ夜、常闇の世界に月のみが不気味に輝いている。
 月光城とよばれたその城はダークセイヴァーの下層、地下世界に点在していた。
 統治のためではない。吸血鬼が人民を思う事などありはしない。
 城は、何らかの外敵から領土を守るために建てられたようだった。

 はるか昔に陥落した城の床を月明かりが照らす。
 城はもはや月の満ち欠けに呼応する事なく、時を止めていた。
 床に散らばる、壊れ果てたギャラリアの硝子。
 壁面はよく見ない方が身のためだろう。
 城が朽ちたという事は、ギャラリア――人間画廊に飾られた者も、
 運命を共にした事を意味するのだから。

 静けさを保つ城内に、ふいに風の音が舞い込んだ。
 瘴気を纏いて降り立つ黒翼の、月光城のかつての主。
 城主が何も、ヴァンパイアとは限らない。
 オラトリオの少女を『素体』とした、悪辣なる実験の成れの果て。
 彼女は手駒として配され、使い棄てられていったのだ。

 少女を救う術はなく、救う民すらも此処には存在しない。
 それでも。脅威を遠ざけ謎の手がかりを追う事は、
 いつか民を救う手立てとなるやもしれぬ。

 月明かりは銀糸のようにか細く、儚くあなたに降り注ぐ。
「――キ、タイ」
 何事かを呟く少女の喉の奥で。
 悪意に満ちた何者かの眼が、光った。

●闇への反証
 皆が集まり終えた頃、ロジータ・プラウディンは浮かない顔で説明を切り出した。
「……地底世界の奥底に、荒れ果てた、月光の城があります。今回皆様には、その廃城の調査をしていただきたいのです」
 空のない階層世界である、ダークセイヴァー。
 調査が進むたび救いなき現状が明らかになるが、それでも謎は残る。
 謎のひとつが、空なき世界の月。人狼たちの豹変を促す満月は、なぜ地底世界でも輝くのか。
 僅かな手がかりとして見つかったのが、月の満ち欠けに応じて輝く月光城であった。
「月光城の主は紋章で、途轍もない力を手にしますが……無敵では、なかったようです。攻め落とされた城も、存在するのです」
 ヴァンパイアにとっては不運であったが、彼らと外敵の関係性を知る上ではこの廃城も貴重な資料と言えよう。
 月の謎に迫るため、廃城探索の依頼が出されたのだ。

 落城した月光城では、かつての主が蘇り待ち受ける。
 敵の情報を語ろうとしたロジータは、ふと寒気を覚え、身震いをした。
「……説明の途中で、ごめんなさい。あれは……あの敵の元になったのは、オラトリオの少女、です」
 手駒とするため人為的にオブリビオンを生む事も厭わぬ、吸血鬼たち。
 翼を折り、心を折り、目の前で友人や肉親を切り刻む。
 そうして世界への憎しみを植え付け屠られた少女の魂は、死後に自らの亡骸へと舞い戻り、復讐者となった。
 呪詛天使とでも呼ぶべき少女はとうに自我を失い、訪れる者へと無差別に剣を振るう。
 城と同じく時を止めたまま、死後も魂を捕らわれたままなのだ。
「少女を、助けることはできません。せめて、休ませてあげてほしいのです」
 とうとう朝を見る事のなかった少女を安らかに閉ざしてやってほしいと、ロジータは震える声で懇願した。

「今回の予知は、見えない部分も多いです。何か具体的な手がかりがあるかも、倒せばそれで終わるのかも……わかりません」
 月光城はあくまで吸血鬼の城、人民を匿うには不向きだ。
 世界の謎を解き明かしたとて、それが第三層のような――死後の安寧さえも許されない残酷な真実であれば、心も折れよう。
「それでも、もしかしたら。各地の砦や村から救い出した皆さんをどこへお連れすればいいか、ぐらいは分かるかもしれません」
 闇の中で、光を手繰る意味を説く。それはグリモアを手にしたところで易い事でなく、できるのは精々現地へ送り無事を祈るのみ。
 故にロジータは声を振り絞り、あなたたちへと呼びかけた。
「多くの人が、戦っています。希望を信じ立ち上がった方々もいると聞きます。無駄にしたくない……私は、朝なき世界に朝を呼びたいのです」
 ゆっくりと、確かな頷きが返るのを見て。
「いってらっしゃい、お気をつけて。それから、どうかお願いします……ね」
 緑髪のオラトリオは安心したように笑み、旅立つあなたたちを見送った。


晴海悠
 お世話になっております、晴海悠です。
 ダークセイヴァー下層の月光城は強大な力を持つ城主によって護られていましたが、城主も無敵ではなかったようです。
 荒れ果てた城塞跡を探索し、世界の謎につながる手がかりを持ち帰りましょう。

『プレイングの受付』
 各章の冒頭に短い文章を挟み、受付開始の合図とします。最初のみ、3章だけなど、お好きな形でお越し下さい。

『1章 冒険』
 時の止まった、無人の城塞跡の探索。
 城下町などはなく、代わりに奴隷の収容小屋があったようです。
 遺品などが見つかれば、後の予知に役立つかもしれません。
 探したいものや馳せたい想いなど、ご自由に書いてみてください。

『2章 ボス戦』
 呪詛天使の残滓。
 かつての城主は自我を失くし、廃城跡を彷徨っているようです。
 強力なオブリビオンですが、城主が宿す『月の眼の紋章』は供給源を断たれており、「紋章から飛び出す棘鞭」を使えるだけとなっています(66倍の戦闘力強化はなくなっています)。

『3章 ボス戦』
 詳細不明。
 城主の亡骸を食い破り、異形の部位を持つオブリビオンが現れます。
 戦力も不明ですが、先の紋章持ち――万全の城主を打ち破ったと判れば、その強さは言及するまでもないでしょう。

 それではリプレイでお会いしましょう! 晴海悠でした。
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第1章 冒険 『止まった時間』

POW   :    瓦礫の下や、裏を探す。

SPD   :    隠された痕跡を探す。

WIZ   :    朽ちえない思い出を探す。

イラスト:ゆひゃん

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 崩れ果てた城塞跡は、時折聞こえる風の音以外は静かなものだった。
 敷地に足を踏み入れれば、真っ先に映るのは門番の詰め所。
 すぐ後ろには奴隷用の粗末な小屋が、軍勢に轢き潰されたままの姿で残る。

 立地におよそ人を守ろうという発想はなく、逆であろう。
 粗末な武器しか与えられない彼らは精々、
 城主と吸血鬼が襲撃を知るまでの時間稼ぎ――肉の壁にすぎない。
 奴隷たちの末路は、地面に散らばる白いものを見れば判るだろう。
 原型留めぬそれをつぶさに見る、勇気と胆力があれば、だが。

 城内へ足を踏み入れれば、戦いの爪痕が残るほかは
 建築物が往時のまま廃墟となっていた。
 ホールから奥の間へと進む途中、廊下に並ぶ画廊の跡もそのままだ。
 術者が息絶えた事で、人間画廊は役目と機能を放棄した。
 絵画、骨董、瓶詰にはく製――魔術的な力で「生きられるはずのない」姿を
 とっていた彼らは、術者の死と共に美術品として完成した。
 もう、これ以上苦しむ事もないのがせめてもの救いだ。

 城の内外の光景。城主に据えられたという黒翼の少女。
 暗澹たる思いが湧き上がるが、あなたたちは手分けして探索に当たる。
 思念の籠もった遺品、いわくつきの物品。
 当時の状況を知り、未来への足がかりを作るならば、何でも探す価値はある。
 咎めるものは、誰もいない。
 あなたたちの成す事を見守るように、仄かな月明かりだけが射し込んでいた。
冬原・イロハ
月の満ち欠けに呼応し輝く月光城…
廃城となったそれを見上げます
「いきましょう、ラクスくん」
ラクスくんには乗らず、辺りを警戒してもらって
私は携帯ランプを手に調べます

いつだったか、アポカリプスヘルのドレイさんが言っていたのです
日を数えるには月の満ち欠けを見ればいいって
月は最初に死んだ人だとも、死者の国だとも言われる場所があるみたいですね
ここでは月や満ち欠けに何を思ったのかしら…
明日もやってくる果て無き絶望かしら…
今日を終えた安堵…
ランプの光と影に視線を落とし、彼らへ永遠の安らぎが与えられるようにと祈ります
――いえ、この世界がそう在れるように、私たちが頑張らないと…

何か見つかるかしら?(きょろきょろ)


館野・敬輔
【一応SPD】
アドリブ連携大歓迎

…この城には城主以外いないはずなのに
なぜこんなに静かなんだろう?

城外にある奴隷の収容小屋を探してみるか
原型留めぬ白いものを見る覚悟はあるさ
…故郷壊滅時に遺体なんて山ほど見ているんだ
今さらこの程度で動じるか

轢き潰された痕跡をしっかりと目で観察しながら
奴隷たちの遺品も探してみよう
この痕跡は敵を知るための重要な情報
おそらく城主や吸血鬼以上の強さを誇る、この城を滅ぼした輩
僕の知識で、正体は見当つけられるだろうか?
(世界知識、戦闘知識、失せ物探し)

もし、奴隷たちが使っていた武器が残っていたら持っていくよ
彼らの武器で、肉壁とした城主に、轢き潰した輩に復讐するためにね



 ――キュイ、キュイィ。
 甲高い不安げな鳴き声は、どこまでも続く空の闇へ吸い込まれていく。
「ラクスくん、大丈夫ですよ。私がついてますから」
 相棒の幻獣、グリフォンの毛並みを撫でた冬原・イロハ(戦場のお掃除ねこ・f10327)は、心細い声をあげるのも無理ないと感じた。廃城は既に役目を放棄しているが、満ち欠けに呼応する城はそれ自体が悪しき意思を備えているかのようだ。
 隣に土を踏む音が聞こえ、とっさに身構えるラクスを制する。
「ああ、あんたも猟兵か。構えなくていい……僕も依頼を受けて此処に来た身だ」
 黒の甲冑を身に纏う館野・敬輔(人間の黒騎士・f14505)は、ここでは異邦人のイロハよりも世界に馴染んで見えた。廃墟の黒々とした開口部にも気圧されず、ただ前を見据えて立っている。それが彼の胆力か、はたまた別の決意によるものかはイロハには分からなかった。
「この城には城主以外、誰もいないはずなのに。なぜこんなに静かなんだろうな?」
 廃墟は利用価値のない者にとっては邪魔でしかないが、ねぐらを求める者には格好の居場所だ。夜盗、浮浪者、ときに魔物が棲む事も考えられる以上、いずれも気配が感じ取れないのは確かに妙だ。
「まずは、探してみないと、ですね……いきましょう。ラクスくんと、ええと」
「敬輔、でいいよ。行こう」
 先を行く甲冑の青年に続き、城門より足を踏み入れる。朽ちた踏板が重みを受けてしなり、髑髏のカンテラが頭上で光を失ったまま揺れた。

   ◇    ◇    ◇

 門をくぐってすぐ目に付く、白く小さな破片。
 野ざらしのそれを命だったと認識しても、敬輔が目を逸らす事はない。
(「覚悟はしてるさ。遺体なんてあの時、山ほど見ているんだ」)
 闇に匿われていた故郷が更に濃い闇にのまれたあの日、敬輔の旅は始まった。
 亡骸そのものは死を想起させても、それ以上を雄弁に語る事はない。真に堪え難いのは、動かぬ屍とかつて生きていた姿とが結びつく時――生前をよく知る者達の成れの果てを、この青年は若き日にまざまざと見たのだ。
 自身を復讐へと突き動かしたものの残滓が、心の中でほとぼりを帯びる。様々な事実を見、憎悪ばかりでなくなったといえ、敬輔を旅立たせたのは身を灼く激しい怒りなのだ。
(「……僕は、成すべき事を履き違えない。今さらこの程度で動じるか」)
 乾いた遺骸の布を払い、何か持ち物が遺されていないかを探る。粗末な衣類しか持たぬ彼らから遺品とよべる物を探すのは、実に根気が要りそうだった。

 敬輔と手分けしたイロハは、ラクスに警護を任せて別の箇所を探す。
 夜光石の仄かな明かりは常用には差し支えないが、この闇黒の世界の暗がりの中では心許なくも感じた。
(「いつだったか、アポカリプスヘルのドレイさんが教えてくれたのです。日を数えるには、月の満ち欠けを見ればいいって」)
 それは、日中に天を見上げる事叶わぬ彼らならではの知恵。暦を持たぬ奴隷たちにとり、姿で月日を教えてくれる月は太陽よりも親しき友であった。
 干ばつで作物を枯らす事もない。日射で命を奪う事もない。夜を照らす月はただ『何もしない』事で慈愛を示したのだろう。

 最初に死んだ人、死者の国、罪人の流刑の地。謂れの多さでは太陽にも負けぬ月。この暗黒世界の彼らには、月の慈愛は届いたろうか。
(「ここの皆さんは月に、何を思ったのでしょう……明日もやってくる、果て無き絶望? それとも今日を終えた安堵かしら」)
 揺れるランプは、イロハの心に答えてくれる事はない。ただ務めを放棄せぬよう、小さな腕の先にしがみついている。
 せめて、労苦から解き放たれた彼らが心安らかに眠れるよう――祈りかけ、イロハは思い直す。
(「いえ、この世界が安らぎに満たされるよう、私たちが頑張らないと……あら、これは?」)
 拾い上げたそれと置いてあった場所を見比べ、思案の末に押し黙る。向こうからは丁度、敬輔が戻ってくる頃だった。

 ――恐らく、だが。そう前置きして敬輔は、自身の見立てを述べた。
「骨の破片もまともに残らない、恐ろしい程の力で轢き潰されている。人間型か魔物じみてるかでいえば、後者の方が近いんじゃないか」
 戦い慣れた彼の目には、外敵の辿った軌跡がなんとなく読めた。
 入り口から城内へ踏み入り、躊躇なく肉の壁を屠る。亡骸を顧みる事無く動くものへ襲い掛かり、吸血鬼も例外ではなかったろう。
 程なくして城内へ直進……というより、殺すべき対象が城内にしか居なくなったから入ったと見ていい。それ程に敵の進路は残忍かつ直情的なものだった。
「これは……武器としてはもう、使い物にならないな」
 あわよくば彼らの物で仇をと思っていたが、鍛造技術も衰退した地で奴隷が持てるのは精々石斧程度。敬輔が手にしたのは結局、古びた革のアミュレットだった。
「私は……これを、持っていきます」
「それは、指輪か……珍しいな。どこで?」
 震えるイロハが指差した先、壁に横たわる骸骨があった。何かを奪われまいとするかのように、両手を胸の前で交差させていた。
「……指輪……胸の奥あたりに、ありました。もしかしたら、ですけど……奪われないようにって」
 それきり何も言えなくなったイロハの続きを、敬輔の経験は補った。
 呑んだのだ。命ある限り奪えぬように、と。
 恐らくは思い入れのある、大事な指輪だったのだろう。命と尊厳を賭けて護ろうとした、その尊き意思もろとも。

 襲撃者は、深い闇に鎖してしまったのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

儀水・芽亜
月光城へ直接転移させてくれて助かりました。

私は人間画廊の方を見てきましょう。
制作者は多分、ここの城主を創った吸血鬼。そちらはまだ健在なのでしょうか?

探索の間は、「歌唱」で主に向かいて新しき歌をうたえをアカペラで歌い続けましょう。この廃墟が何か幸運をもたらしてくれますように。
月光城と運命を共にした、人間画廊の犠牲者さん達の慰めになればよいのですが。
これは「審美眼」にかけるまでもなく、無残です。
人間画廊がどう破壊されているかは、外敵の手がかりになります。
一体何がどのようにこの城を襲ったのか。

城主を正面から打ち破った外敵。いまだ彷徨う城主の成れの果てに寄生しているというモノ。事前に情報を得なければ。



 かつりと靴音が廃墟にこだまし、月あかりが萌黄の髪を照らし出す。
 現れた女性は職場から直に駆け付けたような、事務員の着る服を纏っていた。
 理由は主に二つ。一に組織への帰属意識によるものであり、二にわざわざ着替えずともすむ術を持っているからである。
「月光城へ直接転移させてくれて助かりました。同様の事例では暗黒の荒野を駆けろ、なんてのも見かけましたから」
 儀水・芽亜(共に見る希望の夢・f35644)。銀誓館学園のかつての生徒であり、事務職として勤める今でもその心は変わらない。
 芽亜の見立てでは、人間画廊は城主でなく吸血鬼の手によるもの。事実は確かめようもないが、元より自我の揺らいでいそうな黒翼の少女に斯様な趣味があるとも思えず、推測はそう的外れではなかろう。
「……まだ、健在なのでしょうか」
 己が目にしたヴァンパイアとは異なっていても、吸血鬼という言葉の響きは胸を微かにざわつかせた。

 アカペラの澄んだ、けれど深みのある声が廃墟に響く。
 主に向かいて、新しき歌をうたえ。秩序ある音節にフリッカーの魔力が重なり、建造物のあるはずもない『魂』を揺らす。
 蜘蛛の巣は掃われ、扉はひとりでに開き、廃城は意思持つかのように芽亜を招き入れた。
(「月光城と運命を共にした犠牲者さん達の、せめてもの慰めになればよいのですが」)
 壁の眼は笑わない。感謝もしない。埋まるしゃれこうべの落ち窪んだ眼窩が、もはやただの物体であると主張するようにこちらを見下ろす。
 生きたまま建材となった彼らは、もがき苦しんだろうか。僅かな身じろぎすらも封じられたろうか。倒錯的などという言葉を使わずとも、これらが芸術の範疇にない事は言うまでもない。
 こみ上げる思いを堪え、壁に手を触れる。真一文字に刻まれた爪の跡は、髑髏に興味なしとばかりに胴を一薙ぎ、駆け抜けるついでにへし折っていた。
(「少しでも、情報を得なければ。一体何が、どのようにこの城を襲ったのか」)
 目を凝らし、読み取れたのは僅かな糸口。外敵のものと思しき傷跡は、戦いが熾烈さを増すにつれ進む勢いを増していた。
(「負傷して高揚した? それとも、傷を得るたび力が倍増する……? いえ、断じるのは早計ですね」)
 後で情報を整理して明かそうと決め、螺旋を描いて落ちゆく思考に終止符を打つ。
 敵が如何に強力であれ、自分たちにはそれを討つほかないのだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

ゲニウス・サガレン
遺跡発掘などで当時の人々の痕跡を探るのは好きだ
何千年前の人々が自分たちと異なる文化の中で、同じような暮らしや悲哀と共に過ごしていたことがわかるからね

……だけど、一方的な「絶望」の跡というのは気が重くなる
いや、感情をつぶやくより学者らしい仕事をしようか

アイテム「觅」&「星屑のランタン」
私に「気づき」をくれる

アイテム「C式ガジェット」&UC「ガジェットショータイム」
いつもはタコ型だけど、今回は数匹のカラスと変化して、何かあれば鳴いて知らせてくれ
この場にはカラスがふさわしい

探すべきはこの城や城主の性質を教えてくれるような異物たる遺物だ
さて、皓月千里
この地下の月が照らす先に求めるものがあるかな


ロー・シルバーマン
地下世界の更に地底、そこだけに月に呼応する月光城があるのは奇妙に思えるが…それも調査を進めれば何か分かるかのう。
忌まわしき、狂気に人狼を堕とす月。
それ自体が何らかの邪神であったとしても驚きはせぬが…一つ一つ調べねば。

人間画廊の方を探索。
遺骨や遺体を探し降霊術で霊の意思、或いは残留思念を読み取り思い残す事がないか尋ねる。
明確な意思は読み取れずとも何となくで十分。
随分時間が経っていてもまだ残っている程の想いがあるなら、それを少しでも解消できれば。
死んでは意味がないと言う者もいるかもしれぬが…この世界ではまだ上層にいるやもしれぬ。
生き残り続けている者として頑張らねばならぬから。

※アドリブ絡み等お任せ



 探検家の足取りはいつになく鈍い。未知を見れば駆け出し、既知に出会えば調査に赴く好奇心の持ち主も、この闇深い世界ではそうもいくまい。
「……気が重いな」
 ゲニウス・サガレン(探検家を気取る駆け出し学者・f30902)の口から零れたのは、学者の彼らしからぬ本音だった。
 ゲニウスが遺跡を愛するのは、遺物や遺構が往時の暮らしぶりを雄弁に物語るからだ。戸数、集落の構成、柱穴の数。手がかりから昔人の顔や人となりが浮かぶ時、彼らは隣人としてゲニウスに驚きと興奮、あたたかな歓待をもたらしてくれる。
 それも全て、人がまっとうに暮らしていればの話。
 ここに人と呼べる暮らしの痕跡はない。家畜ですらない――豚や牛とて、死なれて困る以上はまだマシな扱いを受けよう。
 あらゆる尊厳を踏み躙り、死にゆく様を眺める為だけに繋がれた命。ゲニウスは今、己の持つ人類と文化への価値観の根幹を否定された心地だった。
「地下世界の更に地底、そこだけに月光城があるのは奇妙に思えるが……調査を進めれば何か、分かるかのう」
 枯れた声が隣から響き、振り返ると年老いた狼男の眼が、ゲニウスと同じ心許なげな光を湛えて廃墟を見つめていた。
 ロー・シルバーマン(狛犬は一人月に吼え・f26164)、この世界出身だという老いた人狼は、月を視野から遠ざけるように編み笠を深く被っている。満月でないといえ、この世界の月はローにとって心地いいものではないらしい。
「忌まわしき、狂気に人狼を堕とす月。あれ自体が何らかの邪神であったとしても驚きはせぬが」
「邪神、ねぇ。あまり進んで調べたい対象じゃないな」
 いつものようにシニカルに言い捨てる。調子を取り戻してはじめて、ゲニウスは己が暗い気持ちに飲まれかけていたと自覚した。
(「……感情をつぶやくより、学者らしい仕事をしようか」)
 星屑のランタンに銀光が灯り、闇夜に光る羅針盤を照らし出す。己の武器は所詮、探求心。どこまでも調べ、踏み入り、暴く事で道を拓いてきたのだ。

   ◇    ◇    ◇

 闇夜に、それと溶け込む暗い色の羽ばたきが幾重にも重なる。
 ゲニウスが操作するガジェットはタコにばかり化けると思われがちだが、その実、生体を模したそれは姿かたちを自在に変え、半自律的に動ける優れものだった。
「いいぞ、行ってくれ! 何かあれば鳴いて知らせるんだ。この漆黒の舞台にはカラスこそふさわしい」
 遠く機械仕掛けのカラスを見送り、遺留品の捜索へと向かわせる。そうしてゲニウスもまた、己の足で探るべく歩みを進めていく。
 人間画廊へと立ち入ったローは、神楽を舞い霊魂を呼び戻そうと試みる。死した者の魂は『上』へ行ってしまったのか全ては戻らなかったが、僅かに残る思念がかたかたと骸のおとがいを揺らした。
「……少しばかりでいい。わしに、物語ってはくれんかの」
 千切れとんだ魂は、何を見聞きしたか語るには小さすぎる。だが老いた人狼が求めたのは情報でなく、彼らがこの地に遺した遺恨の念だった。
(「随分月日も経ったろう。それでもまだ残る無念があれば、この爺に晴らさせておくれ」)
 残留思念の痕跡を辿り、まだ動ける骸がないか壁に手を当てる人狼の男。突如、微動だにしなかった燭台が崩れ、彼の手に覆い被さる。
「……! これは……」
 燭台ではない。人体より抉り抜かれ蝋で固められた器官だった。頭上では背骨同士を繋ぎ合わせたシャンデリアが苦しげに揺れ、舞い戻った幽霊火が明滅する。
 ――眼が焼ける。声がした。赤子だ。助けねば。
 ――腹を突かれ、繋がれた。熱い、爛れる。苦しい、動けぬ、目に焼き付く。
「オ、アア、カハッ……!」
 フラッシュバックする己のものでない記憶の洪水。おぞましさに咳込み、壁にもたれた所を助け起こされた。
「……い、おい! 大丈夫かね!」
 気付けば、息を荒げる己の額にゲニウスが手を当てていた。
「ああ……心配をかけたのう。少しでも恨みを晴らせればと思ったんじゃが……うまく、いきすぎたようじゃ」
「……降霊の類を試みたのか。まったく、無茶をする」
 気付けば怪現象はなりを潜め、辺りには静まり返った調度品が行儀よく座っている。身を呈した甲斐あって、色濃く残る思念もいくらかは拭えたらしい。
「こちらも、幾らか収穫があってね」
 聞けば、放ったカラスが奇妙なものを見つけたという。
 黒薔薇の花びら、赤く硬質な破片。広範囲にばら撒かれていた事から、城主か外敵のどちらかが多数を巻き込む力を備えているらしい。
 遭遇すればすぐ分かる事だとしても、事前に分かっただけ打つ手は増える。
「さて、詳しい事は道すがらに話そうか。余裕があれば、この地下の月が何を照らすかについても語らいたいものだ」
「うむ。希望ある話はできんかもしれんが、少なくとも歩みを止めんだけ建設的じゃろうて」
 そういって老いた狼は蓄えた頬髭を揺らし、思いを馳せる。
 死すらも救いではなく、更なる『上』へと送られるこの世。生き残った者が足掻かねば、死の螺旋は止められぬのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ロニーニャ・メテオライト
☆連携・アドリブ歓迎。

城内を歩きながら考えましょう。

どうして生命は争うのかしら。昔からずっと考えていたの。
__違う種族だから。考えが根底から違うから。相手に攻撃されたから。__理由は実に沢山あるでしょうね。

でも、それでも私は言うわ。「そんなものはくだらない」と。
争いは結局身を滅ぼす。それは長い長い歴史を見て来たから知っている。幸福とは分かち合うもので、殺し合いでは決してそれは得られない。

ああ、オラトリオの少女が可哀想で仕方がない。ロジータさんもきっと同じ気持ちだったはず。彼女の為にそっと涙を流して、その後上を向くわ。
私が必ず救ってあげる。だから待っていて。



 大半の足音が城の奥の闇に消え、やがて遠くに羽ばたきが聞こえた。
 味方のものだろうか。それとも、敵の。
 けれどもロニーニャ・メテオライト(不老不死の星の子ども・f35195)には、これより刃交える相手を「敵」と呼ぶ事に躊躇いがあった。
(「どうして生命は争うのかしら。昔からずっと、考えていたの」)
 見かけの齢よりも多くを見た瞳は、争い片方が生き残る事の無益さを知る。定命の者なら尚のこと、あえて先細る道を選ぶのが不思議でならないのだ。
 見上げる世界の空は、星々の合間に広がる暗黒より暗い。星光がないだけの宇宙と違って、闇そのものが実体をもって立ち込めている。
 光打ち消すこの闇を、好きになるのは難しそうだ。
(「違う種族だから。考えが根底から違うから。気に入らないから、相手に攻撃されたから。理由は実に沢山あるでしょうね――でも」)
 それで滅びた民や種族がどれだけ居たか、書を紐解くまでもない。やり場のない思いを胸いっぱいの空気に溶かし、一気に吐ききる。
「……そんなものはくだらないわ」
 吐息に混ざる諦観を、甘い星花の香りが中和する。このまま虫の声でも聞こえてくれば気も落ち着きそうだが、城の周りに命の響きはない。
 草を焼き、樹を薙いだ。家畜は元よりいない。囚われの人々も戯れに使い潰し、排除に排除を重ねた吸血鬼たちは別の外敵によって排除された。
 後に何も残らぬ、破滅の道。好んで滅びに向かう、倒錯した過去の澱み。それに与した城主の少女も、元はごく普通に生きたいだけの命だったろうに。

 こくり、と滴を飲み込むように喉が鳴った。飲みきれなかった光の水滴が下顎を伝い、風に触れてひりつく塩の跡を残す。
 声は上げず、すすり泣く事もせず、雫のみを捧げる。悲しみに堪えかねたからではなく、想う故の涙であるからに。
「私が必ず、救ってあげる。だから、待っていて」
 尖塔の立つ城の奥、何者かが地を揺らがすのを聞き、亜麻の髪の乙女は駆け出した。戦いはもう始まってしまった――ならば己にできるのは、少女を一刻も早く苦しみから解き放つ事だけだ。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 ボス戦 『呪詛天使の残滓』

POW   :    呪詛ノ紅剣ハ命ヲ喰ウ
【自身の身体の崩壊】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【呪詛を纏う紅い剣】に変化させ、殺傷力を増す。
SPD   :    我ガ
自身が装備する【剣】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ   :    黒キ薔薇ハ世界を蝕ム
自身の装備武器を無数の【呪詛を纏った黒い薔薇】の花びらに変え、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。

イラスト:狛蜜ザキ

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はアンナ・フランツウェイです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 黒薔薇が散り、旋風と共に割れる窓ガラスが何者かの飛来を告げた。
 城の深奥にある祈りの間、異端の神を祀る祭壇はいよいよ原型を留めていない。
 翼生やした人型のモノが、見境なく暴れているのだ。

 仄かな月明かりの下では、人型の顔はよく見えない。
 だが伝え聞いた情報から、実験に供された少女の成れの果てだと判るだろう。
 戦力増強の為、吸血鬼どもが行った事。
 奴隷の手足を縛り、手の届きそうな距離で他の者を惨殺する。
 目蓋は閉ざせぬよう縫われ、耳は聞こえのよくなるよう『処置』を施した。
 人為的にオブリビオンを創り出す所業がどれ程のものか、間近に見れば思い知る。

「――キ、タイ」
 自我の壊れた少女は壊れた蓄音機のように、幾つかの音節を繰り返す。
 掠れた、けれども鈴のような声に剣の鍔鳴りが重なり、
 聞き惚れる者を血の海に沈める。
「我ガ、我は、わたし、は――たす、け」
 少女自身を傷付けるのも顧みず、薔薇と剣は無数に舞って無軌道に乱れ飛ぶ。
 庇護欲をそそるその声すらも、吸血鬼の計算の内なのか。
 救いを請うたその眼で、その手で、紅き剣を振るうよう仕込まれている。

 もう、十二分に地獄を見ただろう。
 生前幸せであったかも不確かな少女を、これ以上現世に留めおくのは酷だ。

 だが、忘れてはならない。真に倒すべき敵は、彼女の中にいて。
 とどめを刺した瞬間に食い破り、襲い掛かってくるのだから。
儀水・芽亜
既に廃墟となった場所を更に破壊する。意味も理由も無いのでしょうね。
私達を認識すれば、即座にこちらへ襲ってくるはず。
情けはかけず、油断はせず、確実な討滅を。それだけが、私に出来る救いです。

「結界術」「全力魔法」「範囲攻撃」「オーラ防御」「呪詛耐性」のサイコフィールドを最大規模で展開。

そのようになってから、安らかな眠りに身を委ねたことはありますか?
さあ、今はゆるりと、睡魔を受け入れてください。
もしかしたら、寝るという機能も奪われているのかもしれませんが。

飛び回る剣を裁断鋏で打ち払いながら、彼女に向かって前進します。多少の傷はこの結界が癒やしてくれますしね。
その剣持つ腕を裁断鋏で「切断」しましょう。



 かつりと靴音が響くのと、音の方へ少女天使が刃を放つのは同時だった。
 敵対行動と呼ぶにはあまりに無造作な条件反射。意思なき絡繰り人形の放つ無数の剣を、淡紅の膜が柔らかく弾く。
 戦衣を纏う儀水・芽亜はもはや、少女に挨拶を投げかける事もない。即座に襲来するのを予期し、防ぐ。乱れなき一連の動作が、決意の硬さを物語る。
(「情けも油断も、無用でしょう。確実な討滅を……それだけが、私に出来る唯一の救いですから」)
 夢、うつつ。眠りに落ちねば越えられぬ境も、夢魔の力を駆る能力者には自在に跨げる線に過ぎぬ。鴇色の騎士槍から広がる膜がふたたび猟兵たちを包み、そればかりか少女へも押し寄せた。
 サイコフィールド――敵には眠りを、仲間には癒しをもたらす幻夢のバリア。少女の剣には分が悪いのか一時押し返されそうにもなるが、幾重にも張ったバリアは破られるのを上回る速度で現実を塗り替えていく。
「そのようになってから、安らかな眠りに身を委ねたことはありますか?」
 もしかすれば眠るという機能自体、失われているのかもしれない。瞬きもせぬ瞳にそう思いながらも、少女を幻夢の腕で抱擁する。
 呪詛天使が即座に眠りを受け入れる事はなく、紅の剣閃が再び膜を切り裂いた。絹を裂くような鋭い音がし、少女は勢いを取り戻したかに見える。
 だが華奢な体躯の足元に、僅かふらつく動きがあるのを芽亜は見逃さない。
 飛び回る紅剣の軌道を読み、芽亜は地を蹴る。自分に向かってくる剣だけを裁ち鋏の刃で撃ち払い、そのまま少女の脇へと潜り込む。
「私とて、無闇に痛みを与えたくはありません。今は静かに、睡魔を受け入れてください」
 剣振るう少女の腕へと、鋏を突き出す。ジャキリと交差させた刃が肉を裂き、滴る血のない腕が痛々しく裂けた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ゲニウス・サガレン
先ほど見つけた物体から考えたけど、相手の範囲攻撃をしのぎつつ、本体への一撃といきたい

アイテム「ギアスカラベ」
瓦礫に隠れ、相手の魔力や念力が動いたら知らせるんだ

私が先に牽制し、他の猟兵が攻撃できる隙を作りたい

アイテム「C式ガジェット」&「星屑ロケットランチャー」
後で使う
C式はタコ型のまま通常火薬使用のロケランと隠れてるんだ

UC「水魔アプサラーの召喚」
我が友アプサラーよ! 短時間でいい
周辺の地下水や水蒸気から、相手に向けて君の魔力を込めた豪雨を「ぶつけ」るんだ!
花びらのような軽いものなら豪雨下での細かい操作は困難なはず

相手が隙を見せるか、攻撃を切り替えたらC式よ
別方向からロケランを放て!牽制する


ロー・シルバーマン
アレがこの月光城のかつての主か…何とも痛ましい姿じゃな。
…しかし何か、言葉がおかしいような?
どうあれ苦痛に満ちている事自体は終わらせねば。

周囲の地形確認し身を隠せそうな障害物を探す。
念動力で操る複製の剣の群れを野生の勘や第六感で軌道を見切りダッシュで回避。
荒れた祈りの間じゃが足場に注意しつつ出来るだけ気配を隠せば身を隠せる場もあるじゃろう。
自我の壊れた呪詛天使、他の猟兵に気を取られれば必ずどこかのタイミングで儂から意識が逸れる筈。
その瞬間を見逃さずUC起動しその頭部や眼、或いは機動力の要となる翼や足に浄化・破魔の力を宿した銃弾をうちこむ。
さあ、中から出てくるのは何じゃ…?

※アドリブ絡み等お任せ



 ぐずぐずと朽ちゆく体は糸がほつれるように解け、血の一滴も滲まない。オブリビオンと化すよりも前、とうに少女の肉体は死していたのだろう。
 魂を肉体に繋ぎ止める、忌まわしき邪法。傀儡と化した姿の痛々しさに、ロー・シルバーマンの眉根には自然と皺が寄っていた。
「アレが月光城のかつての主か……何とも痛ましい姿じゃな。しかし様子が変じゃ。言葉が……何やら、揺らいでおる」
 自我が崩壊した事によるものか、別の要因かは読み取れぬ。だがローの言う通り、呪詛天使の呟くうわ言のような声には、一種の混乱が見て取れた。
「まったく、碌な研究じゃないな」
 ゲニウス・サガレンは緩くかぶりを振り、危難を乗り越えるべく気持ちを切り替える。己の飽くなき探求心はあくまで大自然や人の営みに向けられるもので、悪趣味な事柄には食指が伸びない。
 スカラベを模した黄金色の魔法機械を懐より取り出し、相手の魔力をいつでも感知できるよう瓦礫の中に潜ませる。
「正面切ってやり合うのはどうも苦手でね……私が隙を作る。うまくやってくれるかい」
「うむ。願ってもない事じゃ」
 ローの考えた策も、乾坤一擲を狙うもの。敵の目を惹いてくれるなら渡りに船と、老人狼はゲニウスの頼みを承諾した。

   ◇    ◇    ◇

 風もないのに舞う黒薔薇。やわらかなはずの花は草葉の如き切れ味をみせ、僅かな切り傷からも呪詛を染ませる。
 黒の花吹雪として押し寄せる薔薇を前に、ゲニウスは生体ガジェットへと使命を託す。
 ガジェットは闇夜の鴉から軟体のタコへと姿を変え、発射筒を背負ってするりと瓦礫に身を隠した。
 無事機械たちが潜伏したのを確かめ、ゲニウスは壺を小脇に抱える。
「さぁ、我が友アプサラーよ! 短時間でいい、君の魔力をぶつけるんだ!」
 壺をひと撫ですると同時、魚類にも似た水魔が顔を覗かせ水流を放った。
 水鉄砲は狙いを外して天へと消えたかに見えたが、違う。放たれた魔力は数秒の後に雨を呼び、周囲の水蒸気も巻き込み豪雨となって降り注ぐ。
 花びらが雨に攫われ、無残に地に叩きつけられる。全てを打ち払えたわけでなくとも、敵の狙いを崩すには十分だった。
 強まる雨足に歯が立たぬと見て、少女は花から剣へと手段を変えた。
 矢継ぎ早に襲い来る複製剣の群れを、ローは類稀なる勘で躱す。頭上を紅の剣が掠め飛び、用済みとなった聖堂の支柱が天井部を残して崩れ落ちた。
 如何に念動力で動かせども、剣を飛ばす以上慣性の法則は無視できない。飛び去った剣が舞い戻る前に柱に身を隠し、使い慣れた猟銃に弾を籠める。
(「戦いが激化すれば、儂ばかりを意識してはおれぬ筈じゃ」)
 狙うならば、その時。祈りの間の中央では、今まさにローの期待通りに事が運ぼうとしていた。
 アプサラーの雨が止み、天使の少女がゲニウスめがけて紅の剣を構える。だが剣の転写が終わるよりも早く、探検家の男の鋭い号令が飛んだ。
「放て!」
 星屑が散り、重量ある物体が少女の肩口に食い込んだ。ゲニウスがガジェットに持たせたランチャーの筒が、きらきらと粒子まじりの煙を吐いていた。
 虚ろな目がガジェットの方を向く。けれども条件反射的な少女の動きは、更なる隙を生むだけだった。
 タンッ。乾いた音が、祭壇跡に響く。警戒の外からローの放った銃弾は狙い違わず翼を根元から穿った。
 ばさり、と弾を払うように少女が翼を揺らす。翼は持ち主の意思に背き、いびつに傾いて少女の背に収まる。
「ひとまず撃ち抜いたか。さあ、中から出てくるのは何じゃ……?」
 次第に体を成さなくなる少女の様相に、ローは息を荒く大きく吐く。
 まだ気を緩める事はできなかった。黒天使の命が潰える事は即ち、真に恐るべき外敵の目覚めを意味するのだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ロニーニャ・メテオライト
☆連携・アドリブ歓迎。

残酷ね。猟兵という仕事は時にとても残酷。
あなたを殺すことしかできないなんて。
それでも……それが貴方の救いになることを【祈り】ます。

UCを発動。
星に祈りを。オラトリオとしてあなたを【浄化】するわ。
呪詛を纏った攻撃を【破魔】と【浄化】の篭もったこちらの花びらで撃ち落としながら、ひたすらに祈るわ。

ある程度当たっても構わない。【オーラ防御】で防ぎつつ祈ることを止めない。

相手に隙が出来るタイミングがもしあったなら、駆け寄って抱き締める。
傷付いても構わない。せめてこれからの幸せを願わせて。私の【ありったけ】を込めて彼女を癒しましょう。

今一度の温もりだとしても。それがどれほど大切なのか私は知っているから。


館野・敬輔
【POW】
アドリブ連携大歓迎

…彼女は、生きたいのだろうか
それとも…逝きたい、のか?

いや、もう気にする余地はないな
吸血鬼の所業でオブリビオンと化した以上
もう骸の海に送るしかない
…なら、せめて一息に

指定UC発動
ただし、生やす白刃は左手に1本だけ
右手の黒剣と左手の白刃、それぞれに「属性攻撃(聖)、浄化」で浄化の光を宿した上で
二刀流で一息に葬ろう

身体の崩壊を代償に紅の剣に変化するのを確りと見届け
そのひと振りを「視力、戦闘知識」で軌道予測し「見切り」ながら避け
「カウンター」気味に黒剣と白刃を振るって「2回攻撃、怪力」
力まかせに叩き斬ってやる

少女が斃れても油断はしない
…真の敵は、この後に現れるのだから


冬原・イロハ
ランプは点けたまま
ラクスくんに騎乗し、ルーンソードを手に翔け回ります
少女の目を惹くように飛び回りましょう、ラクスくん

皆さんの攻撃の合間合間に風属性の斬撃を行いながら少女の気を散らします
相手の攻撃には武器受けを
ラクスくんの機動力に私の剣を乗せて、剣戟を鳴らしましょう

あなたの声にたくさんの人の言葉が――想いが、遺言が、つまっている
……そんな気がします
怨嗟もあったであろう中で、あなたの心が削られていくのは当然で…
涙が零れそうになるけれど、ぐっと我慢します
私、あなたの『声』を忘れません

少女の飛ばす黒い薔薇の花びらに対してUCを
光属性を少しのせて
月光に隠されてしまう星のような光を手向けとしましょう



 肉は萎れ、血は枯れ果てて、少女の苦しみを表すものはよろめく足取りのみ。
 呻き声すらも持たぬその身からは、とうに意思や尊厳は奪われていた。
「――キ、タイ」
 繰り返し届く声に館野・敬輔は目を閉じ、声の意味するところへ思いを馳せる。
(「彼女は、生きたいのだろうか。それとも……逝きたいと懇願しているのか?」)
 過去の澱みとなった以上前者は既に叶わぬものとして、自分たちにできる事は。
「……せめて、一息に」
 憤りを噛み殺すように剣の柄を握る。血に塗れた黒剣は光を受けても照らし返す事はないが、実力確かなこの剣でなら痛みも少なく屠ってやれるだろう。
「残酷ね。猟兵という仕事は時にとても残酷。あなたを殺すことでしか救えないなんて」
 数々の戦いを潜り抜けて来た仲間が、剣を握る。その様子を見て猟兵にもできぬ事があると悟り、ロニーニャ・メテオライトは声を震わせる。
 埒外の力持つ者でも、時間を跳び過去を変える術はない。苛む痛みを一時代わってやれたとて、終わらせる為には彼女の嫌う手段しか残されていない。
「……届くかどうかはわからなくても。それが貴女の救いに、なる事を祈るわ」
 胸の前で手を組み、世界の遥か上方に広がるであろう星空に祈る。咲き誇る星の花弁が廃墟に白く明かりを灯し、花園と見まがうばかりの命の輝きで満たした。
 美しく広がる星花の明かりを覆う、黒薔薇の花吹雪。命と死の静寂の境界線では、二つの花が互いを散らしせめぎ合う。
 嵐の前線では幻獣グリフォンが勇ましく駆け、風にもまれながら突き進む。背には冬原・イロハがしがみつき、振り落とされまいと腕に力を籠めている。
「ラクスくん、躱す事に専念してください。私、しっかり捕まっていますから」
 ぐ、とグリフォンの背に顔をうずめ、小さなケットシーは呼びかける。キュイィ、と白き幻獣は短く答え、押し寄せる花びらをものともせず敵へと向かっていった。

   ◇    ◇    ◇

 敬輔の左手に白刃が宿る。腕から直に生やした刃は、強い輝きをもって花びらを切り伏せた。
 呪詛の籠められた花吹雪も、聖なる加護を宿した二振りの前では効力が薄い。時折肌を掠める事はあっても前進は阻めず、剣の射程に収まるのは時間の問題だ。
 更に前を、嵐を掻い潜って進むイロハには烈風の洗礼が降り注ぐ。ロニーニャの祈りが幾らか和らげてくれたが、花びらの全てを防ぐにはまだ足りない。
「風よ、応えてください!」
 剣に描かれたルーン文字が淡く輝き、風の魔力を呼び寄せる。荒ぶる風、一個人が用いるにはあまりに強すぎるそれを瞬間的に吹かせ、イロハは押し寄せる花嵐の威力を的確に削いでいく。
「我ガ、わたしは、いきて、いきたかっ……」
「あなたの声にたくさんの人の言葉が――想いや遺言がつまっている。そんな気が、するのです」
 時に死が耳元で甘く囁く、この大地に生を受け。生前の彼女は、人としての心を保つのもやっとだったろう。
 境遇に思い馳せれば否定する心地にはなれず、藍の瞳にはやり場のない熱い滴がじわりと滲む。それでも流すのは今ではない――憐れみの涙では救えぬのだ。
「私、あなたの『声』を忘れません」
 猛き風に、僅かばかりでもと煌めく光の粒子を乗せる。月明かりにすら霞む星の光こそ、彼女への手向けには相応しい。

 呪詛天使の身に押し寄せた突風の圧が、残る黒薔薇を霧散させた。少女は散る花を目でこそ追ったが、手は仕込まれた通りに次の動きをなぞる。
 剣が紅の輝きを帯び、満ちる高濃度の呪詛が周囲の空間を歪める。代償に翼が根元から腐れ落ちるのも顧みず、そのまま瓢風を纏って敬輔へと襲い来る。
「……!」
 声をあげるよりも早く、ロニーニャは星の花を咲かせる事を優先した。足元に満ちる花明かりが黒騎士に癒しを届け、痛みを和らげる。
「……感謝する、が。戦いの最中だ、多少散らしても嘆くなよ」
 斬り結ぶ手前、星の花まで気を配る余裕はない。せめて言葉で気遣いを残し、黒騎士は体躯をひねって二振りの剣閃を打ち出した。
 肉体の崩壊も構わず振るう、紅の剣。ガキンと鈍い音を幾度も散らし、白と黒の剣が幾度もそれを打ち払う。
 できるだけ痛みなく一撃でと考えていたが、それを狙うには空飛ぶ天使の間合いに入らねばならない。双方の剣は勢いを増し、一手間違えば自分の首が刎ねられる状況に汗が伝う。
(「彼の道人の力よ、宿れ……僕に、闇を祓う力を!」)
 敬輔の眼力が紅の剣を捉え、ついに剣閃を読み切った。剣を払うのでなく身を捻って躱し、返す刃で逆袈裟に薙ぐ。
 白刃の後に少女の動きが一瞬止まった。すかさず黒剣が真一文字に駆けた。襤褸の衣服がはだけ、風に千切れた髪が舞い、ここへ来て少女はようやく目を見開き意思ある動きを見せた。
「……わた……し……?」
 開いた胸元から黒々としたもやが溢れ出す。止まっていた時の経過を思い出したように肉体は崩れ、どっと土塊のように足が腐れ落ちた。
 そのまま倒れ伏す動きを、駆け込んだロニーニャの腕がやわらかく抱き止める。
「……何をしてる!」
「わかってるわ、でも……!」
 生前得られなかった命の温もり、気にかける他者の存在。傷つく事も厭わず抱き締めるロニーニャの腕の中で、天使だった少女の目は茫然と地を見つめる。
「聞いて。あなたは還るの。巡り巡って次は安全な場所で生きて、幸せになるの……だから」
「……イキ、テ……」
 死した骸の体には、瞼を閉ざす自由すらも許されていない。うわ言のように繰り返す少女の声が、次第に小さくなり。
「……テ……アナタ、ハ」
 最後の声が、地に落ちて。ロニーニャの腕にしな垂れかかる重みが増し、そして――闇が溢れた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『蹂躙する者』

POW   :    際限無き力の暴走
【攻撃を加えられる度、より強靭な身体】に変身する。変身の度に自身の【攻撃】の数と身長が2倍になり、負傷が回復する。
SPD   :    吸血悪鬼の行進
自身の【身体】から【血液の霧】を放出し、戦場内全ての【敵対対象を無差別に爪で切り裂きつつ、視界】を無力化する。ただし1日にレベル秒以上使用すると死ぬ。
WIZ   :    報復と殺戮の螺旋
全身を【翼】で覆い、自身が敵から受けた【ユーベルコードの威力】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。

イラスト:善知鳥アスカ

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はフィーナ・ステラガーデンです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 瞬時に闇が溢れかえるのを、居合わせた者は感じた。
 抱きかかえられた少女天使の骸の喉の奥、
 くぐもった何者かの声が響くのを猟兵達は聞いた。

 咄嗟に腕を引く者がいたのは幸運だった。
 直後、少女の体は内側から柘榴のように裂け、死を喜ぶ哄笑がけたたましく響く。

 それは少女と同じ黒翼を宿していたが、似つかぬ姿のモノだった。
 吸血鬼にも似ていたが、一致しない。
 背は瘤のように隆起し、異形の角が生え、手には曲がった鋭い爪が覗いていた。
 嗜虐に満ち、耽美を是とする吸血鬼の容貌ではない。
 悪魔だ。嗤っている。
 黒々とした裸身も露わに眼光を光らせ、あらゆる生命の脆弱さを嗤っている。

 別世界にあってはグレーターデーモンの名で呼ばれたであろう、上位なる種。
 それが手を掲げた瞬間、月光の如き光が禍々しく異形を包む。

 腕は裂け、中からはぱくりと内部器官が露出した。
 露出した部位には何もなく見えたが、
 風に舞った花びらがそばを過ぎった瞬間、裂かれて消えた。
 翼は大きく変異し、先端は影の触手とも呼べる程に尖っている。
 腕の見えざる刃と、影の触手。
 狂える月の魔力はよりにもよって、この悪魔に更なる強化を施したのだ。

 矮小な生命をわらう、月のけだもの。
 眼前に繰り広げられる、悪夢の光景。
 どれだけ探索を経ても闇は濃く、世界そのものに嘲笑われているようだ。

 だが、それでも。
 出会った人々を目蓋の裏に描き、各々に武器を取る。

 ――この異形たちの討滅なくして、決して朝は来ないのだ。
儀水・芽亜
子らが、月光城を滅ぼした『外敵』! 早急に討滅しなければ、こちらの身が危うい!
儀水芽亜、推して参ります!

「破魔」の「属性攻撃」を付与した裁断鋏『Gemeinde』を振るって、悪魔に斬りかかります。その身体を「切断」し、「なぎ払い」「傷口をえぐる」。
それで自己強化を施したなら、『Gemeinde』の真の力の出番です。目覚めの時間。変身も攻撃回数の増加も解除させてもらいます。

防御は「オーラ防御」を張った上で、「軽業」を駆使して「見切り」「受け流し」ます。それでも追いつかなければ「武器受け」も使って。

これが何かなど、今は考えている余裕はありません。生き残るためには、この悪魔を確実に討滅しなければ。


冬原・イロハ
灯りを消します
敵を見下ろせる位置までラクスくんに飛んでもらって、そこから私は飛び降りますね
ラクスくんは下がっててください

少しでも仲間の助けとなれるよう、敵の手を知る為に行きましょう

戦斧片手に、自由落下のさなかにUC
初手は闇に紛れていきますよ!
身軽さを活かして全身で斧を振るように一撃入れます
纏う風や衝撃波に触手は揺らぐでしょうか?
敵の動作をよく見て、見えざる刃は出来るだけ見切りと武器受けを
戦斧を盾のようにも振り扱い、戦える限り、流星の如き重力属性をのせた攻撃を狙っていきます

ポケットの中の指輪
いつか朝を見せてあげられたら
少女のことも忘れません
私の中で生きる思い出は皆、未来へと連れていくのです



 静けさが、圧を伴って鼓膜を破らんとしている。
 悪魔が立っている。それだけだ。まだ仕掛けてもいない。
 だのに、彼奴が口から冷たき炎を零してこちらを睥睨する様に全身の毛が粟立つのを止めない。

「子らが、月光城を滅ぼした『外敵』……!」
 悪魔という、種へ向けて叫ぶ。
 似た姿のゴーストを見た事はあれど、純然たる悪魔との遭遇は初めてかもしれない。立つだけで周囲を侵食しそうな邪悪の化身に、儀水・芽亜は愛用の裁断鋏を低く構えた。
 どう出る。あの爪で引き裂くか。踏み出すのはどちらの足か、それとも飛ぶか――未知を前にしてはいくらシミュレートしても意味がない事に気付き、芽亜は打って出る覚悟を決める。
「儀水芽亜、推して参ります……!」
 剪定鋏よりも短い片手鋏を袈裟に振り、悪魔の恐ろしき容貌へ一歩踏み込む。
 空を切る、乾いた音。躱された。尚も追い縋るように手首を返し、低く屈めた姿勢から敵の姿も見ずに斬り上げの一撃を抜き放つ。
 僅か、嗤うように頭上で吐息が漏れた。斬った手応えはあったが、見れば分厚い脛を掠めた程度。くすぐったさに身を捩るのと同じ、申し訳程度に飛び上がった先で、赤く光る目がこちらを見下ろしていた。
 空飛ぶ悪魔の背が瘤のように隆起し、与えた傷の分の中身がはみ出たように触手が伸びた。身長は増大、見た目通りに手数が増し、影の触手が芽亜へと降り注ぐ。
「っ……!」
 速い、との感想を漏らす間もない。咄嗟に受け止めはしたが、オーラの護りを張らねば武器が突き破られていた。
 覆い被さり押し潰そうとする悪魔の、夜色の天蓋が頭上に開く。
 やれ、闇ばかりだ――眼を見開き、敵の動きを見切ろうとした芽亜は、闇の中に紛れているものの姿に気付く。
「……お覚悟!」
 烈風を纏った奇襲。竜巻のように回転して斬り込む冬原・イロハの、三日月刃の戦斧が敵の肩に深々と突き立った。
 バシュン。空気の抜けるようなそれは衝撃波が貫いた音だ。小さな体を遠心力を生む独楽の軸とし、闇に紛れ込んでの不意打ちは流石に避けられぬ。
 ――否。避ける必要がなかった、というべきか。
「あっ……!?」
 即座に撒かれる血色の霧。イロハの目が血飛沫に遮られ、後ろに退避していたグリフォンのラクスが甲高い警戒の声を発した。
 咄嗟に飛びずさり、ラクスの背を借りて地に降り立ったイロハは、急ぎ袖で血霧を拭い視界を取り戻す。
「私の攻撃、効いてましたか? よく見えなかったのです」
「ええ、効いてました。……それすらも利用されただけで」
 芽亜、イロハ。同じ拠点で顔を合わす事も多い二人で連携をとったが、流石は格上。容易く組み伏せる事は叶わないようだ。
「イロハさん。先ほどの攻撃、もう一度見舞えますか? 私に、考えがあります」
「はいっ、何度でも。ここで敵の手も見ておかなきゃ、後に託せないのですっ」
 再びラクスに跨り飛び立つイロハを見送り、芽亜は裁断鋏を構え直す。
 先ほどは様子見で用いなかった奥の手、鋏に秘められた『夢の帳を裂く力』を、魔力を注いで呼び覚ます。
(「敵は傷つくほどに自己強化を施し、手に負えなくなるものと見ました」)
 真実なら、長引かせるほどに不利になってしまう。だが、際限なく思える敵であっても打ち破る手は皆無ではない。
(「これが何かなど、考えている余裕はありません。生き残るため……ここで確実に、傷を与えねば」)
 今度は敵が先に動いた。立っている芽亜を枯れ木を薙ぐように無造作に、へし折ろうとして巨大化した腕を振るう。
 後方へ、バックステップ。同時に鋏の先端で切り傷を与える。
 かすり傷だ。致命傷となり得ぬ。なり得ぬ筈の一撃が、巨大化した悪魔の肉体に亀裂を入れる。
「……肥え太る敵など見飽きました。せめて本来の姿に戻りなさい」
 あらゆる加護を剥奪する鋏に刻まれ、悪魔は開戦当初の姿で身を晒した。
 がらんどうだ。二度も想定外の目に遭っては、さしもの悪魔にも隙が生まれよう。
(「指輪の人も女の子も、忘れません。いつか朝を見せてあげられたら……」)
 戦斧は舞い、くるくると風にもまれて唸りを上げる。描く軌道の突き立つ位置は、角と瘤のない箇所――脆い急所、首根っこ。
「皆、未来へと連れていくのです……!」
 鈍い衝撃が全身を伝い、ギャオオ、と悪鬼の醜い悲鳴がこだました。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ゲニウス・サガレン
素直に強い!
生き物としての作りが違う、そんな雰囲気を感じる

格上との戦い方の基本は、相手の思い通りにさせないこと

アイテム「海蛍閃光弾」&「陸生珊瑚の浮遊卵」&「ギアスカラベ」
先制は閃光弾
無数の浮遊卵を浮かべて、相手の視界を遮って必死に逃げる!
こちらの視界も遮られるが、そもそもよく見て戦える相手だとは思っていない

スカラベよ!
魔力の解析・吸収は進んだかな
この子が解析したのは、どちらかと言えば、今の相手より、先ほどの天使少女の魔力
だが、それも一興
スカラベは解析した魔力を攻撃に転化し、鈍化も添加する

UC「スカラベの輝き」
君が弄んだものの力を受けよ!

後は神様に祈って、一つでも相手の攻撃がかわせますように!


ロー・シルバーマン
悪魔というよりも邪神にすら見える…何とも恐ろしい。
されど震え殺されるのを待つばかりではここで犠牲になった者も浮かばれぬ。
悪夢の夜を終わらせる為に…往くか。

UC発動し生存本能と破壊衝動の赴くままにアサルトライフルでばらまくように銃弾放ち牽制。
野生の勘と暗視で敵の位置と攻撃把握・予測し攻撃回避。
血霧を放ってきたら破魔の力纏わせた結界展開、少しでも霧を遠ざけつつ爪や触手での攻撃の察知を試みる。
…集中力切らさねば銃弾を弾く音でも物体の位置の把握は出来るかのう。
攻撃の隙を見出したら間髪入れず破魔の力込めた銃弾を猟銃で発砲、狙撃。
怯んだ所にありったけの銃弾ぶち込み確実に消滅させよう。

※アドリブ絡み等お任せ



 闇の中煌々と光る目は、人界にない輝きを放つ。
 下等種と見下す者の目だ。殺戮の是非はおろか、手慰みとすら思ってはいまい。
 鋭い斧の一撃を受けても、太い首はへし折れずに頭蓋の高さを保っている。
 じゃれた稚児の、当たり所が偶々悪かった。悪魔にはその程度の認識であろう。
「強い! まるで生き物としての作りが違う。あんなものがこの地には跋扈してるのか」
 学者たるゲニウス・サガレンの目が見開かれる。これまでの見聞と照らし合わせど、あれに一致する獣はいない。
 高い知性を侵略の為だけに用いる種など居ようものか。肉食獣や人間ですら生態系を壊さぬ程度に分をわきまえるが、この悪魔にはそれがない。
「来おったか。悪魔というより邪神にすら見える……何とも恐ろしい」
 二度、故郷の壊滅を生き延びてきたロー・シルバーマンも、此度は相手が悪いかと背に冷たいものが走る。倒し、骸の海へと退けぬ限り、あれは地の底まで追ってきそうに思えた。
 ――否。この世界こそが、上も下も見果てぬ地の底やも知れぬ。
 カチカチと噛み鳴らす、顎。小刻みに乱れる白息を深く吐いて鎮め、ローの口端は自覚なく引き攣るような笑みを浮かべた。
(「むざむざ殺されるまいて……震え殺されるのを待つばかりでは、犠牲になった者も浮かばれぬ」)
 網膜に焼きつく血走る模様。惨たらしく生きる道を閉ざされた人の、今わの際を見た今となっては。
 影の触手が舞った。闇刃がローの胸を貫き、鮮血をまき散らす筈だった。
 老いを見せぬ猛き獣が、月夜に舞う。生き残ってしまった者の使命は所詮、生きて生きて生き延びるほかにない。

   ◇    ◇    ◇

 散発的に響く跳弾の音。それが肉の弾ける音に変わった瞬間、銃弾は雨となって注ぎ、触手と入れ違いに互いの骨身を削る。
 暗色の血飛沫を散らす悪魔は未だ悠然と迎え撃つ側だ。ローが如何に手練れとて、これでは戦いの趨勢は到底読めぬ。
(「格上との戦い方の基本は、相手の思い通りにさせないことだ」)
 震える拳を鞄に突っ込み、黙らせる。手にしたのは仄かに光るボトルと、卵の入った試験管。
(「やれるか? いや……やるんだ!」)
 ローが物陰に隠れたのを見計らって軋む木床を踏み込み、敵の眼前へボトルの中身を勢いよくぶちまける。
 瓶に閉じ込めた海蛍の一生分の輝きは、悪魔の目にも無数に走る光の糸を残した。続いて足元に陸生珊瑚の卵が転がり、血霧を吸ってぶくぶくと膨れ上がる。
 爪を跳ね返す卵と、閃光の邪魔立て。悪魔は一瞬動きを止めたが、ゲニウスの目もまともに見えてはいまい。僅かでも時を稼ぐべく、狭い聖堂跡を逃げ回る。
 悪魔の爪がローの守護結界を貫いた。寸前に感知し避けたのだから、結界は十分役を果たしたと言えよう。
 銃の硝煙、音の反響、襲撃を知る手立ては何一つ取りこぼさぬ研ぎ澄まされた意思。秩序なきこの世界、敵を殺さねば生き残れぬとローの魂は識っていた。
 口惜しや。この場はアサルトライフルでは足りぬ。弾を急所に食い込ますには、猟銃を手に取る暇がほしい。
 ギチリ。奥歯が鈍い音を立て噛み合わった瞬間、男の声が響いた。
「スカラベよ! 魔力の解析はそこまででいい!」
 持ち主以外は忘れていただろう、黄金色の甲虫型機械。光を蓄えた虫は輝きを帯び、瓦礫の下で号令を待っていた。
「君が弄んだものの力を受けよ!」
 地に満ちる、眩い星。幾つもに分かたれた光弾は悪魔を追尾し、執拗に足元に纏わりつく。
 赤銅色の光は誰かを思わすと、ローは感じた。親しき誰かでなく今しがた見たばかりの――ああ、黒翼の少女の剣そっくりではないか。
「……生き延びた先に何があるかも判らぬ。じゃが、力づくでこじ開けねば闇夜は晴れるまいて」
 もうずっと旅路と共にした猟銃に弾を込め、弾道を読む。老いた片目では凝らさねばならぬが、動きの鈍る今なら狙いも定められよう。
「悪夢の夜……終わらせねばわしも眠れぬのでな」
 破魔の力宿す弾は光を帯び、螺旋の条痕を宙に残した。そのまま吸い込まれるように首へと撃ち込まれ、べきりと骨の砕ける音を響かせた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ロニーニャ・メテオライト
☆連携・アドリブ歓迎。

ねぇ、悪魔さん。貴方はこの世界で本物の月を見たことがあるかしら?
一面に光り輝く美しい星空を眺めたことは?

__なんでこんなことを聞くのか、貴方は分からないでしょうね。私、怒っているの。

あの子を、そして他の人々を苦しめた罰、受けてもらうわ。

真の姿を解放。
【破魔】と【祈り】の力を込めた【星の花】の花びらを飛ばして攻撃。
私にとっての神さまは星々だから、彼等からの【神罰】、食らいなさい!

UCを発動。太陽よ、闇を切り開いて。
月よ、あの悪魔の魔力を打ち消して。

私の背後に太陽、悪魔の背後に月を召喚。
さぁ、見なさい!これが太陽よ。
あなたの邪悪を打ち消し、灼き滅ぼすわ。

そして見なさい。背後にあるのが月よ。これも本物ではないけれど、貴方の歪な光よりはずっと美しいわ。

浄化の炎と祈りの光に蝕まれて消えなさい!

__ねぇ、呪詛天使さん。まだ見えるかしら。この美しい光景を手向けに送るわ。


館野・敬輔
【POW】
アドリブ連携大歓迎
真の姿解放

…言わんこっちゃない!
今まで探索した月光城でも
主を食い破って別のモノが現れたから
今回も現れるとは思っていた!

こいつが人々を轢き殺し
そして少女を殺めてなり替わっていたのか
少女や人々のいのちを、尊厳ごと嘲笑いながら踏み躙った悪魔め
ここで果てろ!

攻撃の度強靭な身体に変身するなら
一撃で両断し決めるのが最適解か
だが見えざる刃と触手のせいで隙が見いだせない

刃と触手の動きを少しでも把握すべく
意識的に漆黒の「オーラ防御」を広範囲に展開
これだと悪魔と俺、双方の視界が漆黒に閉ざされかねないが
俺自身は「視力、暗視」で闇を見通せる

刃と触手を吹き飛ばされるオーラの動きを頼りに「第六感、見切り」で避けつつ
「闇に紛れる、地形の利用、ダッシュ」でオーラに紛れ悪魔の背後を取るように接近
至近距離に迫ったら「ジャンプ、2回攻撃、怪力」+指定UCで悪魔の頭から力まかせに両断だ!
もし反撃あるようなら「武器受け」で逸らそう

このアミュレットの持ち主も
少しは浮かばれれば…
今だけは感傷に浸らせてくれ



 首。頭脳と四肢を繋ぐ、肉体の要。
 折られて動ける生命はいまい。いては困る。
 祈るように眺める猟兵たちの前、悪魔は確かに一度動きを止めた……だが。
 ――カアアァァッ。
 吐き捨てるような笑いと共に、太い腕でおもむろに自身の頭を引っ掴む。
 ゴキリと響く、鈍い音。無理矢理接いだ肉体に満ちる月の魔力、悪魔の背は隆起し膂力はまたも増していく。
「言わんこっちゃない……際限なしの化け物か!」
 救世を願い、これまでも同様の城を探索していた館野・敬輔は、かつて同様に魔物が這い出す光景を目にしていた。予期した事は現実となったが、策を講じてどうなるものでもない。
「こいつが人々を轢き殺し、少女を殺めてなり替わっていたのか」
 心に満ちる畏怖を上回る憎悪で塗り替える。そうして保たねば、戦いは乗り切れそうもない。
「ねぇ、悪魔さん」
 震える声、まっすぐ射抜く瞳。ロニーニャ・メテオライトの目元には月明かりが雫の形に反射している。
「貴方はこの世界で本物の月を見たことがあるかしら? 一面に光り輝く、美しい星空を眺めたことは?」
 恐ろしい風貌の敵を前に、気丈にも悲しげな笑みすら浮かべている。
「なんでこんなことを聞くのか、貴方は分からないでしょうね。私、怒っているの」
 言い終えた刹那。星屑のヴェールが拡散し、少女の背に幾条もの後光が射す。星を神と謳い、星となる事を願った魂の行き着く先。少女の心は既に、あまねく星辰の力を宿していた。
 人智を越えた力の発露を目にし、敬輔もまた力の使い処だと判断を下す。
 超克の力は波及し、黒々とした甲冑に赤と黒の蔦模様が絡む。節々から血の棘を生やす様は、死した人々の無念をこの場に引き連れたかのようだった。
「あの子を、そして他の人々を苦しめた罰。受けてもらうわ」
 ロニーニャの声が最後の開戦を告げる。居合わせた者だけで力を尽くす以上、ここで仕留めねばならぬのだ。

   ◇    ◇    ◇

 飛び立つ有翼の影、追い縋る足音。
 敬輔は肉薄せんと試みていたが、襲い来る触手と見えざる刃が行く手を阻む。
(「傷を受ける度に手に負えなくなるなら、一撃で両断するのが最適解だろうが……厄介だな」)
 間合いを読みづらくする不可視の刃は、接近戦を旨とする敬輔には分が悪い。僅かでも感知の幅を広げようと、黒剣に宿された呪詛から闇色のオーラを展開する。
(「こちらの視界も闇に閉ざされるが……俺は幸い闇を見通せる」)
 紅に染まった双眸を凝らせば、不可視の刃が闇を裂くのが見えた。
 腕だ。手首から腕に沿うように生える、形状はさながらアームブレード。これまで見えなかった刃の形を読み切り、バックステップを踏んで飛び躱す。
 敵の更なる追撃は星の花に阻まれた。いや、阻むばかりか星の花は神罰のように、悪魔を花嵐に包んでいく。
「この星々は私にとっての神さま、それは太陽も月もおんなじよ。見える? 私たちのこの、怒りが」
 さざ波のように広がる、静寂の闇。ダークセイヴァーの瘴気とは異なる星間の静謐、宇宙空間の闇が彼我の間にひらいていく。
「さあ、見なさい! これが月と太陽よ!」
 ロニーニャの後方、灼熱の塊が生まれた。核反応を繰り返す夜空のあから星、太陽を模した光球が悪魔の身を灼く。
 堪らず後ずさる足を、別なる光が音もなく焼いた。陽光を受け大地を見守る本来の月が、悪魔の魔力を奪い去る。
 太陽と月、母なる地球を見守る二つの天体がゆっくりと公転の軌道を描き出す。
「私の力で本物は呼べないけれど、貴方の歪な光よりはずっと美しいわ。このまま炎と光に蝕まれて消えなさい!」
 中心に据えられた悪魔には、逃れる事も能わず。炎と凍てつく荘厳な光に包まれ、身を守ろうとした翼ごと焼き焦がされていく。
 冷たい炎を吐き、悪魔は嗤った。己を上回る存在など、絶対者たらんとする彼奴は認めまい。
「……貴様が何を考え足掻こうが関係ない」
 闇を裂き、高々と跳躍する影。黒騎士の一度目の刃を凌ぎ、悪魔は即座に彼へと振り向いた。
 その振り向く間こそが命取りだ。触手を即座に後ろに放てば仕留める事もできたであろう。敬輔は既に、後方へ宙返りしながら二度目の跳躍を決めていた。
 紅の右目から鋭い光が奔る。大上段からの一撃を防ぐなら、上回る質量で叩き斬ればよい。剣の切先を真下に向けて悪魔の頭蓋へ突き入れる。
 ぐしゃりと潰れる手応えがあった。激しい苦悶が背中から聞こえた。尚も反撃を見舞おうとする肉体ごと、遠心力で剣を振り抜き両断する。
「命と尊厳を嘲笑い踏み躙る悪魔め。ここで果てろ……!」
 刃に沿い、分かたれた頭部が宙を舞った。これまで傷を受けた頸椎は癒しきれぬまま、首はついぞ胴体に戻る事はなかった。

●かすかな手がかり
 悪魔は滅びる刹那、分かたれたままの唇で笑い声をあげた。
 ――ク、クハハハハ!
 不気味なその声が今も耳元に張りついている。
 己れを殺しても次がいるぞと、宣告するかの如く――地を覆う闇が骸の海に還っても、残される世界もまた闇なのだ。

「ねぇ、呪詛天使さん。せめてもの手向け、見えたかしら……?」
 月と太陽の眺めを贈ったロニーニャに、ローが背中から声を呼びかける。
「きっと見えたであろうよ。生きている内に救いなどなくとも、少しは浮かばれるじゃろうて」
 実際に問うたわけではなく、死者は何も物語らない。ローの眼差しは天でなくロニーニャへと注がれる――弔いは生きて残される者にこそ必要なのだ。
「このアミュレットの持ち主も少しは浮かばれれば……」
 敬輔の握る古びた革のお守りは、誰のものとも分からない。目を閉じる彼に倣い、イロハもまたポケットから指輪を取り出して祈る。
「いつか、この地にも人々の営みは生まれるんだろうか。そうであって欲しい……そうなるよう動くほかないがね」
 ゲニウスの表情は未だ晴れぬが、これで月光城の探索をまた一つ終えた。情報を持ち帰り精査する事で、世界の成り立ちや真実にも迫れるだろう。
「……風が冷たくなってきました。戻りましょう」
 これ以上、皆の心が冷えぬよう。帰還を促す芽亜の声が、命なき大地に転がった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年05月08日


挿絵イラスト