長き因縁に終止符を・悪の巻
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頭部全てが脳になった子供というまさに『異形』と呼ぶべき何か。その名はドクター・オロチ。スペースシップワールドで、アックス&ウィザーズで、そして違う名を持ってシルバーレインで、幾度討ち果たされても蘇り続けた生ある者全ての敵。
今、彼はアポカリプスヘルにおいて己が配下を従え、フィールド・オブ・ナインの生存者奪取という目的を持って暗躍していた。
「ムシュシュ全く拙速に過ぎる策を巡らす間もなく適当な肉をいじってあるいはその辺のレイダーブリンガー奴隷その他諸々こねてまぜていたいいたいないてわめいてたぶんいい感じに盾になってくれるあれやそれまあベルセルク化に成功したのはいいけどその驚天動地摩訶不思議不撓不屈でぶすりぐちゅぐちゅあー」
全く息継ぎなくいうその様子はある種彼の異様に相応しいもの。だが一応は定まった形を持っていたはずの彼の姿は、不逞にうねってそこにある暗黒の濁流としてそこにあった。
「つまり、己の手でこのポーシュボス・モンストライズ・フェノメノンを猟兵に打ち込んでポーシュボス化して来いと、そう言いたいのだな」
そう答えるのは眼前に控える白衣の女たち。だが、その声は低くまるで男の様だ。
「やはり風魔忍軍百面鬼風魔小太郎知り難きこと影の如く味良き事小田原蒲鉾の如し奇々怪々なるベルセルクなれど声をしてその性癖図り難く一部業深き悪のみに通じ」
「分かった分かった。『このヤミードクターズが、猟兵たちを必ず『医療』してきて差し上げますわ❤』……これでいいか」
完璧な女声を作って出ていくその『男』……風魔小太郎を、ドクター・オロチは濁流の中に見え隠れする金の目で見送るのであった。
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「ご苦労。久方ぶりに我が依頼を出す」
そう言うのはグリモア猟兵ミルケン・ピーチ(魔法少女ミルケンピーチ・f15261)。だが今回はボディの誰かに憑依しているのではなく、ゴーグルから触手を伸ばした彼女単独の姿での登場だ。彼女がこの姿で依頼を出すのは、半年前のアポカリプス・ランページ以来であろうか。
「今回は「メンフィス灼熱草原」の中心部にある漆黒の『影の城』、そこに乗り込んでもらう。目的はその城の主、ドクター・オロチの討伐だ」
影の城、多くの猟兵には耳馴染みない言葉だが、その言葉を聞いた瞬間表情をこわばらせたものも数人いた。だがそれはそれとし、ドクター・オロチは何度倒しても別の世界で復活を遂げており、彼自身それを前提に倒される事すら恐れていないような言動を見せてもいた。此度もまた一時しのぎにしかならないのでは。その危惧は多くの猟兵が抱くところであろう。
「言いたいことは分かる。今回もどうせ倒しきれぬのでは、そう思っているのだろう。だがこの『影の城』には奴の本体であり復活の源である『コンクリ塊』がある。奴にとっては本気の泣き所らしく、この本体の移送とフィールド・オブ・ナイン発見を死に物狂いで進めているようだ。恐らく、二週間もあれば移送は完了し、さらに一月あれば残りのフィールド・オブ・ナインまで見つけて連れ帰ってしまうだろう」
今回も逃げる算段は付けているが、一方でそれをついに阻止することもできるということだ。今まで余裕の態度を見せていた相手が本気を出す。それはつまりそれだけ相手を追い詰めているということでもあり、同時に最大級の抵抗をかけてくるということでもある。
「城に乗り込めば、まずは『緊急医療チーム『ヤミードクターズ』』という女の医者の集団が待ち受けている。こいつらは風魔小太郎が『百面鬼の術』によって化けたものなのだが、元となったオブリビオンの能力の他に【ポーシュボス・モンストライズ・フェノメノン】……つまり『ポーシュボス化』の能力を持っている。知っている者もいようが、これは発動そのものを封じることは一切できない。ユーベルコードやオーバーロードで心を封じるか、ポーシュボス化を受け入れながら戦うかだ」
どんな些細な善心にでも寄生し、相手を『ポーシュボス』へと変える『現象』。規格外の手段をもってしてでしか防げぬそれは、『現象』でありながらフィールド・オブ・ナインに列せられた恐るべき存在だ。
「ヤミードクターズ……風魔小太郎を倒せばポーシュボス化は止まる。そうなればドクター・オロチとの対決だが、奴は『魔軍転生』にて『邪神ポーシュボス』を憑装している」
己の暗躍した世界のみならず、サムライエンパイアのフォーミュラ信長、さらにクルセイダーの奥義までもを用いてくるということか。さらには邪神と言いつつ実体そのものがない、ポーシュボス・フェノメノンをも憑装とするとは。
「だが、やはり完璧とは言い難い。奴はその姿は暗黒の濁流の如く不定に変じ、またその口調は難解……というより意味不明な言葉を絶え間なく並べる早口に変じている。奴はそれを『ベルセルク化に成功した』などと宣っているが……果たして取り込まれたのはどちらだかな」
アックス&ウィザーズでの彼の同僚であったベルセルクドラゴン。確かに難解な早口を羅列していたが、それはその超高速思考が口から洩れているだけ。言説自体は一貫して筋が通っていた。果たして意味不明な言葉ばかり並べる彼を、それと同じと言っていいものかどうか。
「だがその力は本物。見るだけで狂気に落とす文字をばらまき、ポーシュボス化をこちらに直打ち、さらには黒き触手の群れ『ポーシュボス』を召喚しても来る」
ポーシュボスは心を侵し、体を壊す。その力を振るうその意思は、紛れもないドクター・オロチ本人のものだ。
「奴とは長い付き合いの者も多かろう。我もあの面はそろそろ見飽きた。二度と這い出てこないよう本体諸共叩き潰して来るがいい」
そう言ってミルケンはグリモアを起動し、猟兵をアポカリプスヘルへと送り出した。
鳴声海矢
こんにちは、鳴声海矢です。彼と10年越しの決着を。
『注意!』
今回は5月1日午前中までの完結を目指し、文字数、参加者少な目でお送りする予定です。プレイングを頂いてもリプレイは短めになります。ご参加の場合ご了承の上プレイングをご送信ください。
第一章では『緊急医療チーム『ヤミードクターズ』』との集団戦。風魔小太郎が『百面鬼の術』によって化けた存在ですが、その高い変装能力できちんと声まで女性化しています。様々な医療技術を駆使し猟兵の体を医療過誤で破壊しようとしてくる他、【ポーシュボス・モンストライズ・フェノメノン】(https://tw6.jp/html/world/441_worldxx_ogre11.htm)でポーシュボス化させてきます。ポーシュボス化への抵抗は、ユーベルコードやオーバーロードで善心を封印、消去することで無効化するか、受け入れながら強引に戦ってください。悪人、サイコパス等設定に書いてあってもそれだけで無効化はできません。
第二章では『ドクター・オロチwithポーシュボス』とのボス戦。彼はポーシュボス・フェノメノンを魔軍転生で憑装し、体が暗黒の濁流のように変異しています。また口調も早口で意味不明な言葉を息継ぎ無しで話し続ける状態になっており、彼自身はこれを『ベルセルク化』と呼んでいます(別に超高速思考ができるわけではありません)。一見すれば彼も狂っているように見えますが、目的は見失っておらず自我も割と明確です。戦闘力はそこそこ高いですが、先制攻撃や特殊ギミックはありません。
シナリオが20本完結した時期により展開が異なり、5月1日午前中まででドクター・オロチの本体奪取可能(完全撃破の可能性有)、5月15日午前中まででドクター・オロチは撃破するも本体行方不明(つまりまたどこかで湧いてくる可能性大)、それ以降で生存中のフィールド・オブ・ナインのうち2体をオロチが持ち帰り、残り1体をアポカリプスヘルに置いていくこととなります。
また、時期に関わらず20回倒せば風魔小太郎は完全撃破できます。
以上、時間がない戦いとなりますが、決して倒せない強さではありません。長きにわたる因縁に終止符を打ちましょう。
それでは、よろしくお願いします。
第1章 集団戦
『緊急医療チーム『ヤミードクターズ』』
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POW : 不屈のドクター・スピリット
装備中のアイテム「【注射クロスボウ】」の効果・威力・射程を3倍に増幅する。
SPD : ドクターの愛
【依存性が高く、幻覚作用のある薬品】が命中した対象を高速治療するが、自身は疲労する。更に疲労すれば、複数同時の高速治療も可能。
WIZ : ドクターのオーバーワーク
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【治療し改造することで神経異常発達強化生物】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
イラスト:サカモトミツキ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ミランダ・モニカ(サポート)
『アタシに任せな!』
煙管(仕込み銃)のヤドリガミ
戦場傭兵×クレリック、68歳の女
口調は「アタシ、呼び捨て、だね、だよ、~かい?」
あらゆる世界に関わり人脈とコネを結ぶ事を目的に突撃猟兵してるよ
傭兵として闘い、シスターとして祈り、義賊としてお宝を奪う
一番大事なのは義理人情さ
悪徳金持ちから華麗に奪い、貯め込んで、弱者救済に当ててるよ
戦闘は徒手空拳メイン
銃で補い、カードで不意打ち
メイスは非殺傷対象を気絶させたい時に使う
UCは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動するよ
他猟兵に迷惑をかける行為はしない
依頼成功のためでも公序良俗に反する行動はしない
後はお任せ
アレンジ連携歓迎
宜しく頼むよ
ドクター・オロチ、それはまさに『異形』であった。見た目だけではない。その思考、精神は全く持って常人には理解し難く、相容れぬ存在として幾度となく『討伐』されてきた。
だが、彼をもってしてまた理解しきれぬ存在はいる。邪神ポーシュボス・フェノメノン、それは間違いなくその一つだろう。あるいはそれは『現象』なのだから、その存在理由や目的を理解しようとすることそれ自体が間違っているのかもしれない。
だが一方、理解を捨て利用価値だけを見てしまえばそれは大いに使い道のあるもの。
クロスボウを携えた白衣の集団『ヤミードクターズ』……それに扮した風魔小太郎は、【ポーシュボス・モンストライズ・フェノメノン】をただ武器として携え背後に聳える『影の城』へ迫る猟兵を迎え撃たんとしていた。
「アタシに任せな!」
その文字通りの『マッド』ドクターの群れに、ミランダ・モニカ(マザーズロザリオ・f05823)は恐れることなく立ち向かう。
「最初の患者さんね、それじゃあ早速『ポーシュボス』をお注射してあげるわ」
注射器のセットされたクロスボウを一斉にミランダに向けるヤミードクターズ。ためらいなく引き金が引かれ一斉に注射器がミランダに襲い掛かるが、ミランダは『アサルトウェポン』を抜き打ちにしその中茶器を撃ち落とした。
いかに通常の弾丸よりは的が大きいとは言え、飛んでくる矢を撃ち落とすその技量はまさに圧巻。だが、元よりヤミードクターズたちは風魔小太郎が分身の上変化したもの。一人二人犠牲になるなど構うことではない。
肉盾になるかのように数人のヤミードクターズがミランダに躍りかかり、その射線を封じる。それも素早く拳銃を連射して打ち倒すが、その合間を縫って何本かの注射器がミランダの体に突き立った。
「なんだい、これは……!」
その部分からミランダの体が黒く染まり、金色の目の浮かぶ異形に変じていく。これこそがポーシュボス化、善心に寄生されその身を邪神へと変える恐るべき『現象』。
傭兵として闘い、シスターとして祈り、義賊としてお宝を奪う。だが一番大事なのは義理人情である彼女は、ポーシュボスにとっては文句のない寄生先であった。
こうなれば後は待つだけと、にやにや笑いを浮かべミランダを取り囲むヤミードクターズたち。
「ったく悪趣味だね、人のお節介にケチ付けて何が楽しいんだい」
その体を叱咤しながら強引に立ち上がるミランダ。片腕はもう宿主になり切っている。だが、足はまだ。
「退がりなア!!」
いやらしく笑うヤミードクターズを、ミランダは肩から【スクワッド・パレヱド】でぶつかって吹き飛ばした。体重まで変えられるのか、存外華奢な女医の体は元が百面鬼であるとは思えぬほどに簡単に吹き飛び、将棋倒しになる。
変身の完璧さ故に虚弱さまで受け継いでしまった風魔小太郎たちはその衝撃だけで消滅していき、それが撃った注射、そして齎したポーシュボスも消える。
生を尊ぶお節介ババアの一喝は、目的などない邪神さえも下がらせたのであった。
成功
🔵🔵🔴
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎
■行動
よりによって、厄介な能力をお持ちですねぇ。
それでは、お相手致しますぅ。
『FAS』を使用し飛行、【闊果】を発動し『天果』を憑依させますねぇ。
『ポーシュボス化』による影響は紛れもなく『損害』ですから、この状態であれば『ポーシュボス化』自体は防げずとも『それによる悪影響』だけならば『置換&先送り』が可能ですぅ。
とは言え、時間を掛ける程『悪影響』は大きく、防ぎきれなくなる可能性も高いですから、大幅に強化された『攻撃力』を集中し『FRS』『FSS』の[砲撃]に『FBS』の斬撃、『FDS』の[爆撃]に『FGS』の重力弾、今回は『FMS』のレーザーまで攻撃に回して一気に叩きますねぇ。
影の城、その前に立つのは無数の女医『ヤミードクターズ』たち。彼女たちは風魔小太郎が変じた存在であるが、元となったオブリビオンも『治療』と称して生体実験や肉体改造を行う狂気の医師集団であった。
そんな存在だから、善心に寄生する【ポーシュボス】を自らの武器として自在に使いこなせるのかもしれない。
「よりによって、厄介な能力をお持ちですねぇ。それでは、お相手致しますぅ」
その相手に対し、夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)は彼女としては珍しいほどに敵を『厄介』と明言していた。
「大いなる豊饒の女神、≪楽園の地≫に在りし木立の恵みを此処に」
その厄介な敵に対抗すべく、【豊乳女神の加護・闊果】を持ってあたるるこる。その身に『天果』を憑依させるが、即座に何か目に見えた変化が起こるわけではない。そのるこるに向け、ヤミードクターズは一斉にクロスボウを撃ちかけた。
その豊かな身に、次々と注射針が突き刺さる。そこから流し込まれるのは毒でも薬でもない。その中に詰められたのは、心に寄生する『現象』だ。
るこるの体が波うち、黒く染まる。それは紛れもないポーシュボス化の兆候。
「その肉なら素敵な触手になるでしょうね」
嘲るような女声。発声しているのは風魔小太郎自身なのだが、主命とあってかしっかり狂った女医術者になり切っているようだ。
いかに変容していくかを余裕の表情で見るヤミードクターズ。だが、その眼前で黒き変化は突如として収束した。
「『ポーシュボス化』自体は防げずとも『それによる悪影響』だけならば……」
ユーベルコードの効果は、損害を解除時の反動に置換するもの。全てを踏み倒すことは出来ないが、一時的にないものにはできるしその間の攻撃強化までもがついてくるというものだ。
彼女もまた、かつてアポカリプス・ランページでポーシュボスと戦った一人である。善心に寄生するその現象の阻みがたさは身をもって知っていた。だからこそ、完全な遮断でなく先送りという手段をあえて挑んだのだ。
容赦なく送り込まれるポーシュボス。それを先に回し、5倍に強化された兵装をるこるは差し向ける。
この攻撃は一度放つごとに生命力を30%失う。割合ダメージ故にそれだけで死ぬことはないが、数度攻撃すればそれはもう瀕死の重傷。そこにポーシュボスが寄生し続けてくるのだ、その影響はいかばかりか。
いつユーベルコードの力をポーシュボスが上回ってもおかしくない。それを分かっているが故に、どうあってもここは速攻を掛けねばならない。
文字通りに命懸けの命を受けた兵装たちが、ヤミードクターズを撃ち、爆破し、切り刻んでいく。主命に命を懸けるのは風魔小太郎もまた同じはずだが、変化の術で弱くなった肉体と、ポーシュボス頼みの戦法はその忍びの捨て身とは相性が悪かった。
砲弾が、刃が、爆炎が、ビームが、ヤミードクターズをなぎ払った。その代償は、程なくるこるに全て襲い掛かるだろう。ポーシュボスまで含めたそれは、ただ太るだけだからいいと言えるものでは到底すむまい。
なれど、今確かにヤミードクターズは、そしてその操るポーシュボスは滅された。それは紛れもなく尊き善心、正義の勝利であった。
大成功
🔵🔵🔵
ロバート・ブレイズ
我が身に宿るのは悉くへの否定で在り、未曾有(すべて)への冒涜だ。貴様が如何に変貌し、同化を望もうとも――世界は隅々まで蒼褪めている、善悪の二元論程度で正気(ただ)そうと振(す)るな
画面(ブルー・スクリーン)に映るのは一切合切宇宙的恐怖(コズミック・ホラー)だ。※※に人の貌(かたち)など無く、ただ混沌(カオス)として塗り潰される――身を委ねるのは貴様の方だ、人間風情が!
Tru'nembra――遅延性の眩暈を奴に伝授してやれ。異常発達した生物の制御(コントロール)を歪ませろ。よろしい、愈々夢(ドリーム・ランド)は無変の地獄と成り果て戯曲の一頁と見做される
俺の願望(あく)は俺自身も含まれる、悦ばしい
ポーシュボスの糧は善の心である。悪なくして善の概念も存在しえない。故に、ポーシュボスは知恵と理性がなければ存在できないとも言える。
ロバート・ブレイズ(冒涜王・f00135)は、そんな邪神を真っ向から否定した。
「我が身に宿るのは悉くへの否定で在り、未曾有(すべて)への冒涜だ。貴様が如何に変貌し、同化を望もうとも――世界は隅々まで蒼褪めている、善悪の二元論程度で正気(ただ)そうと振(す)るな」
世界はそれで割り切れるほど単純ではない。1と100の間にも外にも、それこそ狂うほどに無数にあるのだ。
「ご高説どうも。だけど私たちにとってポーシュボスは道具。あなたを殺す武器になればそれでいいのよ」
ヤミードクターズとしての口調で、風魔小太郎としての言葉を言う。そして道具になればそれでいいのはポーシュボスだけではない。別の猟兵に倒された仲間の……あるいは己の分け身の骸に手を突っ込み、乱雑に中をかき回す。そうすると、それは虚ろな目で起き上がり神経異常発達強化生物としてロバートへ向かい始めた。
そうして迫りくるものは攻めるのはロバートか。否。
画面(ブルー・スクリーン)に映るのは一切合切宇宙的恐怖(コズミック・ホラー)だ。※※に人の貌(かたち)など無く、ただ混沌(カオス)として塗り潰される。【蒼褪めたソラ】に落ちたヤミードクターズたちは、そこで無暗にポーシュボスを撒いた。
出鱈目な現象の散布、だがそれはロバートへさえも浸食を始める。いかに否定しようと、狂気たろうと、彼もまた『ドクター・オロチを倒す依頼に参加した猟兵』、即ち善なるものであることは覆しようもない事実なのだ。
「どう言ったところで、あなたもそう。ポーシュボスからは逃れられない」
離れたところから勝ち誇った様に言うヤミードクターズ。後はここから相手がポーシュボスに飲まれ切るのをゆっくり待てばいい。敵の術中に捕らわれた者はどうせ死体の分身、失ったとて惜しいものではない。
「身を委ねるのは貴様の方だ、人間風情が!」
その余裕を、ロバートが一喝した。冒涜王が命じる。Tru'nembra――遅延性の眩暈を奴に伝授してやれ。異常発達した生物の制御(コントロール)を歪ませろと。宇宙的恐怖の世界の中で、永久的狂気の法則に乗っ取らぬポーシュボスが、ヤミードクターズが、その身から押しのけられて行く。
忘れたか、彼はポーシュボスに寄生されるに足る善人、即ち歴戦の猟兵なのだ。ポーシュボスに耐え、ユーベルコードを持って敵を封じ、殲滅する。数多の猟兵が、数多のオブリビオン相手に行ってきたことを彼もまた行っているのだ。
ユーベルコードの定めるは狂気。それは感覚の鋭敏な神経異常発達強化生物には強すぎる刺激だし、己を持たない『現象』たるポーシュボスには守りようのない法則。
「よろしい、愈々夢(ドリーム・ランド)は無変の地獄と成り果て戯曲の一頁と見做される」
その戯曲に観客はいない。彼も、我も、全てが舞台の上、ブルースクリーンの中なのだから。それはヤミードクターズをも飲み込み、外観に反し冷静な風魔小太郎の行動をも狂わせる。
「俺の願望(あく)は俺自身も含まれる、悦ばしい」
狂気と否定の中に善も悪もある。分かりやすい言葉を用いれば、『ポーシュボス化に耐えて敵を倒しきった』この結果。それはまさに、悦ばしいものであった。
大成功
🔵🔵🔵
田抜・ユウナ
善心を封印
連携・アドリブ歓迎
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先の戦争を最後に使うつもりはなかったけれど、ポーシュボス化の影響を受けた瞬間、手が勝手に《妖刀封じの留め金》を――全〈リミッター解除〉
《悪刀の怨念》が噴出。妖刀に憑かれたことで善性を失う
圧縮した《斬撃波》を無詠唱で、眼前の一体を切断。更に【妖剣解放】の衝撃波と《呪詛》を放射する二段構えで敵の薬品も散り散りに
「カッカカカ!先日のアレっきりでは物足りんからな、今一度遊ばせてもらうぞ!」
『面白そう』ならば他の猟兵を「おい、少し愉しませろ」とか言って襲おうとするが、敵が来れば迎撃優先
「斬りがいもないくせに突っかかるな」
ポーシュボスは善心に寄生する。そしてその善心とは、知恵ある者ならば誰しもが持つもの。無法の荒野で暴力を謳歌するレイダーや、かつて法と平穏が支配していた時代にすら殺人を快楽として憚らなかった者さえポーシュボスに寄生されるに足る善心を持っていた。
だとしたら、ポーシュボスの寄生そのものを跳ね返すことは出来ないのだろうか。
答えは否である。
先に上げたような者すら児戯と笑える、それほどの悪ならばポーシュボスの前にその身を曝け出し、なお己のままでいられよう。
田抜・ユウナ(狸っていうな・f05049)は今まさに、『それ』となっていた。
先の戦争以来二度と使うつもりのなかったそれが、ポーシュボスが彼女の全身に取り付いた瞬間『解放』されていた。手が勝手に《妖刀封じの留め金》を――全リミッターを解除してしまっていたのだ。
それは留め金が外れただけ。剣そのものは鞘に収まったままだ。それでも、その隙間から漏れ出した《悪刀の怨念》は、ユウナから善性を消し去りポーシュボスをそこから容易く追い出してしまった。
「カッカカカ! 先日のアレっきりでは物足りんからな、今一度遊ばせてもらうぞ!」
高らかに笑う『それ』は、圧縮した《斬撃波》を無詠唱で放ち、目の前にいたヤミードクターズの一人を両断した。
「妖刀、魔剣、その類……ならば私より、己に分かりやすい」
口調を己本来の者に戻し、風魔小太郎はそれを見定める。そう、ユウナの使った……使ってしまったユーベルコードは【妖剣解放】。妖剣士ならまず覚える基本的なユーベルコードだ。
しかし、その妖剣が危険なら、それはそのまま技の危険性となって表れる。
ユウナの手が人薙ぎされるごとに、大業物を振り回したかのごとくにヤミードクターズの体が両断され、薬を打とうと組みつきに行けば目にも止まらぬ高速でそこから離脱していく。
それでも何人かが切り捨てられるのを覚悟で囲みにかかり、ようやく薬を打つことに成功した。そこからユウナの体と心にポーシュボスが流し込まれる。
その直後、組み付いていたヤミードクターズたちは露でも払われるかのように切り飛ばされた。そして後に残るユウナの体には、ポーシュボス化の兆候は欠片も見られなかった。
ポーシュボスは善の心が僅かでもあればそこに寄生する。かつてユウナはポーシュボスと相対した時、ほんの一秒刀のリミッターを外し体を明け渡すことで見事それに抵抗してのけた。そして今、今度は覚悟も決めぬまま、無意識のうちに同じことをしてしまったのだ。
同じように、当然ポーシュボスの付け入る隙などそこには無い。さらにはそれなりには戦えるポーシュボス化した者たちが相手だったその時と違い、今は己の肉体派虚弱なヤミードクターズが相手。最初こそ楽しんでいた『それ』だったが、すぐにそれにも飽きが来る。
「斬りがいもないくせに突っかかるな」
呪詛を撒き、薬諸共散り散りにされたヤミードクターズ。風魔小太郎本人が相手であればまだ戦えたろうそれは、しかしその変身の完璧さ故塵のように払われて行った。
ポーシュボスは倒れた。だが、あの時と違いユウナはまだ『それ』を抑え込めない。
そう言えば面白そうな連中がいた。力づくで跳ね返した者、先に延ばし踏み倒そうとした者、そして悪と違う狂気に満ちた者。奴ら相手に遊んでみるか、あるいはもっと別の玩具を。
目の前に立つ影の城を見る『それ』の中に、ユウナはまだ帰ってきてはいなかった。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『ドクター・オロチwithポーシュボス』
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POW : ポーシュボス・ペネトレイト・フェノメノン
【生物をポーシュボス化する現象】を込めた武器で対象を貫く。対象が何らかの強化を得ていた場合、追加で【急速ポーシュボス化】の状態異常を与える。
SPD : ポーシュボス・レギオン・フェノメノン
X体の【ポーシュボス・フェノメノン】を召喚する。[ポーシュボス・フェノメノン]は自身と同じ能力を持つが、生命力を共有し、X倍多くダメージを受ける。
WIZ : ポーシュボス・メッセンジャー・フェノメノン
レベル×10m内のどこかに【解読不能の25文字】を召喚する。[解読不能の25文字]を見た敵は全て、【魂を侵蝕する狂気】によるダメージを受ける。
イラスト:みやこなぎ
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
燈夜・偽葉(サポート)
★これはお任せプレイングです★
『ぶった斬ってあげます!』
妖狐の剣豪 × スカイダンサー
年齢 13歳 女
外見 黄昏色の瞳 白い髪
特徴 長髪 とんでもない甘党 柔和な表情 いつも笑顔 胸が大きい
口調 元気な少女妖狐(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、でしょうか?)
性格:
天真爛漫年下系ムードメーカー(あざとい)
武器:
刀9本
黄昏の太刀(サムライブレイド)を手に持ち
場合によっては念動力で残り8本を同時に操る
ユーベルコードはどれでもいい感じで使います
敵の動きは見切りや第六感を生かして回避
避けられなければ武器受けで対処します
多彩な技能を持っていて、問題に対していい感じで組み合わせて対処します
風魔小太郎変じたヤミードクターズの群れを抜けた先、そこには不定の形をした黒く蠢く『何か』がいた。
「なんと敗れた風魔小太郎しかしてこのドクター・オロチ今はポーシュボスなれば最早敵なしポーシュボスだからすでにオロチ的には負けてるかもしれないけど憑装解けばってあれそれだと割とまあいいやなんとか」
息継ぎもなく喋るその声がどこから出ているのかさえ定かではない。ポーシュボスを憑装した結果、まるでそれに浸食されたかの如き黒き濁流と化したドクター・オロチ。そかし、その目的は失われてはいない。それ故に、猟兵は彼を討たんとその前に立つ。
「ぶった斬ってあげます!」
燈夜・偽葉(黄昏は偽らない・f01006)は勇ましく、その狂えるドクター・オロチに剣を向けた。それに対しドクター・オロチは自らの体を波打たせて答える。
「僕は今わりとポーシュボスだけどまあそこそこポーシュボスでポーシュボスがこれって僕的にはあれとあれをそれすればまあ無理っぽいしポーシュボスでいいや」
その波形から出現するのは、金の目を持つ黒き触手。即ち『ポーシュボス・フェノメノン』。触手を波打たせ接近するそれは、それぞれに訳の分からないうわごとを言いながら偽葉を自らの中へと取り込もうとする。
「邪魔よ、これくらい!」
その触手の群れを、一撃で切り裂く偽葉。召喚されたものであり誰かの変化したものではないポーシュボスは簡単にポーシュボス化を起こせない。だが、それであってもこの数に攻められればどうなるか。
偽葉は自分の体が内側から歪んでいくのを感じる。弱いとはいえ決してその力を持っていないわけではないらしい。悠長にやっていてはこちらが不利なのは変わらない。
一刀では到底足りまい。ならば。
「増やしましょうか」
偽葉のスタイルは一刀流に非ず。手にした一刀と念動力で操る八刀、合わせて九の刀を同時に操るのが本来の戦い方だ。さらにそこに【剣よ、影を重ねて】を命じれば、その刀がいくつにも分かれ自在に宙を舞う。
無数に現れたポーシュボスの群れすら相手取るに足る数となったその刀は、次々にその黒き触手、金の目を刻み、貫いていく。
「あれがやられこっちがきられそれがしんでぼくはむきずだけどああああいたいやばいきつい」
剣の中にポーシュボスが消えるたび、他のポーシュボス、さらにはドクター・オロチである黒き奔流までがのたうち苦しむ。
このポーシュボスたちは全てドクター・オロチと同じ力を持つが、一方で生命力は全員で共有。数が増えれば増える程、攻撃を受ける面積も増え急速にそれが減らされて行くのだ。
「あああやっぱ他人なんて頼るもんじゃないいやこれ全部僕なんだけどていうか僕も割と元があれで具体的に剣とかオロチとがあれこれ喋ってる場合じゃああああああああ」
黒き濁流が激しくぶれる。それは間違いなくドクター・オロチ自身に深いダメージが入っている証であり、彼が倒せぬ、御せぬ存在ではないことの証左でもあった。
成功
🔵🔵🔴
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎
■行動
『反動』で相当大変な状態ですが、やってみましょう。
【曝潭】を発動、武器全てを強化しますねぇ。
追加能力は『FXS』に『反動の一時解除&先送り』、『FMS』に『ポーシュボス化の『反動』置換』、残る品全てに『火力強化』を付与しましょう。
これで『反動』を一時解除し交戦出来る上、『ポーシュボス化現象』全てを『反動』に置換して先送り可能になりますぅ。
後は、維持出来る間に『FRS』『FSS』の[砲撃]と『FDS』の[爆撃]、『FBS』の斬撃と『FGS』の重力弾を集中、可能な限り叩きますねぇ。
『元の先送り分+強力な能力付与+今回の分』ですから、解除時の『反動』は酷い事になるでしょうが。
熊フードの脳髄という元々異常な見た目だったドクター・オロチだが、暗黒の濁流の如き不定形となった今は最早物質かどうかさえ怪しいほどの見た目となっていた。
だが、異様な外観を持つのは彼だけではない。
「『反動』で相当大変な状態ですが、やってみましょう」
夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)の肉体は丸々と巨大化し、どこがどこの肉か判然としないほど。普段からこうなることは多い彼女だが、今回は増えた肉が呼吸器や内臓を圧迫するような形。冗談では済まされない太り方だ。
だがそれでも、さらにそこに肉を追加するような能力の仕様を彼女はためらわなかった。
「大いなる豊饒の女神の使徒の名に於いて、恩賜の密やかなる真を此処に」
【豊乳女神の加護・曝潭】を発動するるこる。これは端的に言えば装備品を超強化しながらその場に応じて好きな能力を追加できる技。しかもベースとなったユーベルコードにある寿命消費すら自分にとっては本来さほど痛くない別の影響に置換するという効果付きのもの。字面だけ見れば反則級の能力だ。
だが、それにも限度はある。先に似たような方法で置換した結果増えた肉が今彼女の体を蝕んでいるのだ。もし、ここで強すぎる能力を肉に変えてしまえばどうなるか。今二つの兵装に追加した反動の解除や先送り、敵の攻撃の反動の書き換えという一時的とはいえ無効化する能力は、強すぎると表すに十分な力だろう。
もちろんすべては承知の上。戦後にどれほどの反動が来るかは彼女自身想像もつかないし、それを甘く見てもいない。
ただ、彼女はフィールド・オブ・ナインの中でポーシュボスを最も己と相性が悪く、手強い相手と判断していた。それ故、如何な手段をもってしても勝利を目指さねばならない。あるいはそれはポーシュボス化をただ受け入れるよりもずっと壮絶な覚悟。
その覚悟を持って、るこるは残る攻撃用兵装たちに攻撃を命じる。地の果てまで届こうかという砲弾、次元すら破壊せんほどの爆炎、空間すら断たんばかりの斬撃、時間をも押し止めんかの如き重力、それが無数にドクター・オロチに襲い掛かる。
「まさに必殺技一つでフェイタリティこれ何回も入れる意味あるのいや死んでないし意味あるんだろうけど割と死にそうっていうか多分部位的には死んでいやそもそも命自体が僕的には無い方がいいって言うかバグというかまあ死にたくはないけど」
何を言っているのかは分からないが、間違いなくそこに積み重なるダメージは甚大。なれどドクター・オロチもやられっぱなしではない。手なのかすら分からぬ濁流に持った水晶の剣にポーシュボスを纏わせ、それを一気に突き出した。防御用兵装すら攻撃に回しているためその剣は膨れ上がった肉に深々と突き刺さり、急速にポーシュボス化を流し込んでいく。
なれど、るこるの身に変化は起きない。ポーシュボス化は既に変換、先送りされているのだ。今この場ですぐどうなるということは決してない。
「解除時の『反動』は酷い事になるでしょうが」
全てはその時にくる。だから、その時までは絶えず攻勢をかけ続けられるのだ。
抵抗など無意味とばかりに放たれる圧巻の攻撃。あるいはその強さの源は、他ならぬ覚悟の強さそのものか。
何度でも蘇ることができる故覚悟とは無縁。そしてその大元に手を掛けられて初めて焦りだしたドクター・オロチ。例え狂気の邪神の力を憑装しようと、それに並ぶことなど出来ようはずもない。
間もなく時間が来る。なれば、その時間まで攻め続ける。先のことは、帰還してから然るべき手段を取ればよい。
可能な限り叩かんと、るこるはただ今は攻勢をかけ続けるのであった。
大成功
🔵🔵🔵
田抜・ユウナ
邪悪化継続
「カッカカカ!どうしてどうして、面白いことになっているなぁ!」
外に解き放ってみようか、などと画策するも、襲ってくれば迎撃優先
…25文字を”見る”ことがなければダメージはないが、ああいう手合いは目を閉じたところで瞼の裏に召喚させるからなぁ
「ならば、”こう”か」
と、一分の迷いもなく爪で己の目を掻き潰し(なに、生命の埒外たる猟兵ならすぐ治るさ)、視覚をなくした上で【封刃縛妖術】
《妖刀封じの刀緒『斬鎖』》を蜘蛛の巣のように展開
触れた者を問答無用で捕縛する、猟兵でも構わないから注意
●戦後
破魔の宝貝など装備品が妖刀の邪気を削り
「…なるほど、このくらいが限界か」と妖刀封じに抑え込まれて邪悪化解除
自分の力とするために『魔軍転生』で憑装したポーシュボスに引きずられ、意味不明な言葉を羅列する黒き濁流と化したドクター・オロチ。異形、あるいは異常と言えるその姿を見て、田抜・ユウナ(狸っていうな・f05049)は可笑しそうに笑った。
「カッカカカ! どうしてどうして、面白いことになっているなぁ!」
そう笑う彼女は今は自分の意思などない。自らの持つ恐るべき妖剣に乗っ取られ、ポーシュボスすら寄せ付けぬ悪と化してしまった存在なのだ。
『それ』はこのドクター・オロチを戯れに外に解き放ってみようかなどと考えるが、その間もなくドクター・オロチは新たな来訪者を見て自ら動きだす。
「なんかわかんないけどまあ分かる必要もないというか敵で敵の敵だけど敵だから僕的に適当に乾坤一擲悠々自適」
うねうねと動き出したドクター・オロチの先端が地面をなぞり、何かを書き始める。大体同じ大きさで狭い感覚を開けて並べられるそれは恐らく文字。ただそれは世界のどこにも、それ以上にどこの世界にもない解読不能な文字。それから目を逸らしながらユウナは考える。
「……25文字を”見る”ことがなければダメージはないが、ああいう手合いは目を閉じたところで瞼の裏に召喚させるからなぁ」
そう、これはただの難解な文字ではない。理解どころか目にしただけで魂を狂気で浸蝕する文字。今はとりあえず普通に地面に書いているが、その気になれば有効範囲内の文字通りに『どこでも』書くことができる。おまけにこの狂気はポーシュボスそのものとは違い、対象の善悪など関係ない。例え善心の欠片もなかろうとも、正気と知恵があれば狂気に落とすことは可能なのだ。
背けようと閉じようと、眼に書かれてしまえば見ざるを得ない。自分ならそうすると、邪悪なるその存在は相手の取るだろう手段を容易に看破した。
そしてその対策も。
「ならば、”こう”か」
大したことでもないかのように取ったそれは、一分の迷いもなく爪で己の目を掻き潰した。ユウナの愛らしい目が潰れ、鮮血が溢れ出しその視界を赤と闇に染める。
(なに、生命の埒外たる猟兵ならすぐ治るさ)
己を封印し続けてきた存在への、ある種の奇妙な信頼。そうして見えぬ目のまま、ユウナは刀を……己を封じている呪具の中から『妖刀封じの刀緒『斬鎖』』を引っ張り出す。
「まあ見えぬが、どうせあれも避ける気はあるまい」
そのまま鎖が伸び動き、周囲を蜘蛛の巣のように覆う。見えない故に正確に狙って撃つことは出来ない。ならば全方位を包んでしまえと言うある種単純な発想だ。当然そこに他の誰かがいたらなどという気遣いは一切ない。削れる寿命も、所詮はユウナの肉体のものなのだから知ったことではない。
「あれちょっとやめてよ字書けないじゃないいや別に紙ペンインクいらないんだけど見られないものかいても意味ないって言うか虚しいだけ自分で読み返すのもいややるけど25文字でボケてとかちょっと無理あるって言うか」
相変わらず訳が分からないが、解読不能な25文字を書けなくなっているのは間違いない。
それを黙らせるように、一撃踏みつける。さてこのままどうしてくれようか。そう考えたところで、突如体の自由が利かなくなる。
ユウナの妖刀を抑えるあらゆる装備や、殲滅封神対戦の折に作った破魔の宝貝までもが妖刀の邪気を削っている。何があっても抜かれぬ妖刀、一段、二段封印が解かれた時にも備えはあったということか。
「……なるほど、このくらいが限界か」
それを察し、少なくとも表面上は大人しく体を引くユウナ。その体から目に見える程に邪悪が抜けていく。
「……あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
暗闇と激痛に、顔を抑えて蹲るユウナ。その痛々しい絶叫が、彼女の帰還を高らかに告げたのであった。
大成功
🔵🔵🔵
ロバート・ブレイズ
俺を――ロバート・ブレイズを同化(おか)すとは、成程、やはり貴様は暗黒(にく)らしい。少々地獄に憑き遭って『もらう』のも悪くはないか。違うな、貴様ほどに貴様自身への『悪』を俺は知らぬ
超克(オーバーロード)だ。成すべき罪は此処に実り、グロテスクな柘榴を食むのは俺だけで好い。嗚呼、貴様は確かに脳髄だったが、悉くは無くなるのだよ。連中は俺を光だと認識していた、忌々しい事に
闇堕ち(ダークネス・ロクロクロク)、奴が無尽蔵に増殖するならば無差別として吶喊すべきだ。恐怖を与える――? いいや、遍くは殺意だ。ただ我等は鏖殺の徒に過ぎない
真の姿を晒せと世界が嗤う。故に俺は脳を膨らませ、肉を枯らし、貴様への否定・冒涜と為そう
先程も告げたが人間風情よ、如何にか俺を抱くと好い。呑み込めばおそらく俺と謂う泥は浄められるのだろう。しかし貴様、簡単に化身が斃れると想うのか。クカカッ――!
貴様の情報は収集出来ていた、何よりも粉砕が悦ばしい
嗚々、僅かでも時に従い給えよ、オブリビオン
ドクター・オロチは今は自らの形を失くし、黒き濁流と成り果てている。それ故に、攻撃が効いているのか、どれほど深手を負っているのか外見には分かりづらい。そして分かりづらいのは外見だけではない。
「切れて潰れてところでこれは一体まあとりあえず半分は持ったしでもやばげっていうかあれちょっとそろそろでもやっとけば最悪なんか前向きに弄れてまあこれで」
何を言いたいのか、そもそも言いたいことがあるのかもわからないその言葉。だがその濁流を分化させてポーシュボスを生み出す姿からは、少なくとも未だ猟兵に対し抵抗するその意志だけは残っているように見えた。
そのポーシュボスを差し向け侵さんとする先は、己と同じにして異なる狂気の存在ロバート・ブレイズ(冒涜王・f00135)。
「俺を――ロバート・ブレイズを同化(おか)すとは、成程、やはり貴様は暗黒(にく)らしい。少々地獄に憑き遭って『もらう』のも悪くはないか。違うな、貴様ほどに貴様自身への『悪』を俺は知らぬ」
冒涜の王たる彼を他の存在と同じようにただポーシュボスに染め上げんとするその姿勢は、彼にとってはこの上なく挑戦的といえるもの。ならば染め返すか、否、相手がいかに悪か相手以上に知らぬのにそれをするのは愚弄である。
ならば見せるべきは相手が決してなし得ぬこれよ。
「超克(オーバーロード)だ。成すべき罪は此処に実り、グロテスクな柘榴を食むのは俺だけで好い」
アポカリプス・ランページが、フィールド・オブ・ナインが猟兵に齎した、埒外をさらに外へ押し出す反則を超えた反則。
「ムシュシュそっち貰えば良かったかああでも魔軍転生も捨てがたくそうだどっちも取ればいいと思ったけどそもそもこれ自体妥協の産物で文句言うなよ小太郎くん」
それの存在をドクター・オロチは果たして知っていたのか。あるいは知っていても己が手を出せぬものと諦めていたのか。
ともあれ、ロバートは超克した。それが越えたは悪か、狂気か。
「嗚呼、貴様は確かに脳髄だったが、悉くは無くなるのだよ。連中は俺を光だと認識していた、忌々しい事に」
憑装に引きずられ、異形たる己すらなくした哀れなる蕩け脳味噌。それが成り果てた黒き濁流を飲み込むのだから、あるいは忌々しきその光なる呼称は実に都合が良かったのかもしれない。
その光なるものが用いるは、しかして【闇堕ち(ダークネス・ロクロクロク)】。
奴が無尽蔵に増殖するならば無差別として吶喊すべきだ。一のポーシュボスを滅すればそれは全ての傷となる。数がそのまま弱みになるレギオンは鏖殺の領域に放り込まれてしまえば単なる餌。
「これはちょっとやばいひどい危ないきつい多分ケツまくるべきだけどケツってどこっていうかもう逃げてもタイムアップだしあれこれつんでないかな」
意味不明な言葉が危機に瀕して動揺、あるいは恐怖に一本化され見通しがつけやすくなってくる。この見極めをロバートは狙ったのか。否。
「いいや、遍くは殺意だ。ただ我等は鏖殺の徒に過ぎない」
光あれと神は言った。なら殺意あれと冒涜王は言った。真の姿を晒せと世界が嗤う。故に俺は脳を膨らませ、肉を枯らし、貴様への否定・冒涜と為そう。そういうロバートは、既に脳の収まる部位が丸々膨れた『何か』となっていた。
そこから湧き出る殺気は、119メートル内にある全てを殺す。その中に納まっていたポーシュボスが殺され殺され、最早ドクター・オロチに抵抗の余地はない。
「先程も告げたが人間風情よ、如何にか俺を抱くと好い。呑み込めばおそらく俺と謂う泥は浄められるのだろう。しかし貴様、簡単に化身が斃れると想うのか」
ドクター・オロチは人間ではない。むしろそれと対極にある存在として10年前に自己紹介した。だが人間の定義とは。死して骸の海に出戻りを繰り返すのならば、彼もまた所詮は死する定めを持つ生なのでは。
クカカッ――! 嗤い声。
それを合図に、悪も狂気も現象もそこから姿を消す。後に残るのは消えゆく影の城と、スーツで決めた上品な壮年紳士。
「貴様の情報は収集出来ていた、何よりも粉砕が悦ばしい。嗚々、僅かでも時に従い給えよ、オブリビオン」
荘厳に言うその言葉と居住まいは、直前までここに満ちていたものが夢幻であったかと錯覚させる。されど、あの脳髄がいなくなっている。それがあの狂気と混沌が全て実であったと告げる何よりの証であった。
大成功
🔵🔵🔵