パンク寸前? オロチwithデミウルゴス!
●最終決戦
アポカリプスヘル。荒廃のさらに果てにある終末世界。
ここはかつて、本当に消滅の危機にあった。危機の立役者はフィールド・オブ・ナインと呼ばれる複数のオブリビオン・フォーミュラである。
その危機は、猟兵らとの大戦を経てフィールド・オブ・ナインうち六体が滅ぼされたことにより、一旦は回避された。
だが、そうしてもたらされた平穏を脅かす存在があった。所在不明な残り三体のフィールド・オブ・ナインと、その力を手に入れようとするドクター・オロチ、そしてオロチに協力する風魔小太郎である。
風魔小太郎はその忍者的なスキルを駆使し、アポカリプスヘルのいずこかに眠る三体の探索を進めていたのだが……それが結果を結ぶより先に。
「ドクター・オロチの拠点を発見できた」
そう告げる大宝寺・朱毘(スウィートロッカー・f02172)の声には、闘志というか戦意というか、とにかく剣呑さがある。
「場所は、メンフィス灼熱草原っていう……草原ってより炎の原だ。延々と黒い炎が草みたく燃え続けてる奇妙な地形で、その中に影の城って建造物がある。いわばオロチのリスポーン地点だな」
ここを攻略し、ドクター・オロチが二度と復活できないようにせしめる。今回は、それが狙いの作戦となる。
「この戦い、まず敵になるのが影の城の入り口を守ってる風魔小太郎だ。奴は術でボスオブリビオンに変身しているんだが……デミウルゴス・セルの力を取り込んで、強化されてやがる」
デミウルゴス・セルは、あらゆる攻撃に対して異常に高い耐性を得られる特殊細胞である。打撃、斬撃、毒や炎、果ては原理不明な呪いの類にさえ、その耐性は発揮される。超常なるユーベルコードであっても、だ。
例外として、偽神細胞に由来する攻撃に対してはその耐性を発揮しない。ゆえに、ストームブレイドをジョブとする猟兵か、あるいは偽神細胞液を注射した猟兵の攻撃であれば問題なく通る。
「知ってる人も多いだろうが、偽神細胞液を注入すると激しい拒絶反応……要は、滅茶苦茶な痛みが全身を襲う。それでも、注射ナシだと本気で何やっても通じないって事態になるからな。どうにか我慢してもらうしかない」
そして影の城に入れたならば、今度は大本命、ドクター・オロチとの戦いである。
「元々強敵だったところだが、ここ最近すっかりおなじみな魔軍転生をカマしてやがってね。デミウルゴスを憑装して強化してる。まあ、デミウルゴス由来の『常時頭に流れ込んでくる民衆の声』ってのを制御できずに発狂一歩手前になってるみたいだが……」
一瞬だけ苦笑いを浮かべたが、すぐに真顔に戻って朱毘は続けた。
「制御不充分とはいえ攻撃力はバカみたいに高い。ちょっとの油断が命取りになりかねん強敵だ。ま、こっちサイドも拒絶反応ってハンデありきの戦いだから、油断してる余裕もないかもだが……ともかく、甘い相手じゃないってことは頭に留めておいてくれ。さて」
テーブルの上に、ずらり、とアンプルが並べられる。
「準備のできた人から、言ってくれ」
大神登良
オープニングをご覧いただき、ありがとうございます。大神登良(おおかみとら)です。
これはドクター・オロチとの決着を付ける特殊な「最終決戦シナリオ」です。
オープニングの通り、参戦する猟兵は激烈な拒絶反応を伴う偽神細胞液を注射することになります。激痛に対する何かしらの対策があると、若干有利に働くかもしれません。
また、メイン、サブを問わずジョブが『ストームブレイド』である猟兵はこの注射の必要がなく普段通りのパフォーマンスで戦えるため、比較的有利に戦うことができます。
なお、このシナリオを含めた最終決戦シナリオの成功本数が二十本に達した日(達成日)で、今後の展開が変わります。
5月1日午前中まで:ドクター・オロチを完全撃破し、影の城からオロチが何度でも蘇っていた原因らしき「コンクリ塊」を猟兵が回収、保存。
5月15日午前中まで:フィールド・オブ・ナインを回収される前にドクター・オロチを撃退。オロチはアポカリプスヘルから退却。
それ以降:ドクター・オロチが三体のフィールド・オブ・ナインを発見。そのうち二体を連れ帰り、一体をアポカリプスヘルに残す。
それでは、皆様のご参加を心よりお待ちしております。
第1章 ボス戦
『絡繰金狐城『天狐』』
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POW : 絡繰式金狐忍法・踏身衝蹴
単純で重い【足】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD : 絡繰式金狐忍法・不離刃来
【巨大手裏剣や手刀】が命中した対象を切断する。
WIZ : 絡繰式金狐忍法・労流会徒
自身の【内部に貯蔵している資源】を代償に、1〜12体の【機械兵器】を召喚する。戦闘力は高いが、召喚数に応じた量の代償が必要。
イラスト:8mix
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「シフカ・ヴェルランド」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●城前の城
巨体である。加えて、城塞めいたシルエットも持っている。
それこそ、影の城とはこれのことかと勘違いしかねない。
だが、違う。城は城でも、絡繰金狐城。城一つ分の巨体は、ただの一体のオブリビオンであった。
「……来たな、猟兵」
金色の狐頭がもたげられる。
さらに立ち上がると、シルエットが城めいたそれから人型へと変わった。
「己の信義に懸けて、ここは通さぬ」
それは絡繰金狐城『天狐』であり、同時に風魔小太郎でもある。質量保存の法則もものかわ、重量のある巨人と化したそれは、猟兵を圧殺すべく歩を進めてきた。
四軒屋・綴
やれやれ、注射に苦労する身にもなってほしいものだな。
防具を針の通る身体に一部改造、接種した薬効を本体へとフィードバックさせる。
……慣れないな、手足まで痛むこの状況、あまり無理はできないか。
シンプルな作戦ならば継続は可能、攻防を一体に……
ならば策は一つッ!敵は城と見間違う程の巨体、ならば十二分に『地形』と呼べるッ!!
敵のユーベルコードに対しこちらもユーベルコードを発動ッ!敵の脚から装甲を破り内部に掘り進むッ!!
開通完了ッ!後は関節を砕けば動きは鈍る、メカニックの知識として構造上…えぇい面倒だッ!片端から砕いて回るッ!!
「毛並みは狐、偉容は城、中身は忍び、ややこしいにも程があるッ!!」
●踏破
「金狐忍法、踏身衝蹴!」
城じみた巨体が冗談のように軽やかに舞い、さらに地に向かって飛び蹴り――というか、踏みつけ攻撃を放つ。
それに圧殺されるより先に、四軒屋・綴(大騒動蒸煙活劇・f08164)は蒸気を吹き上げつつ範囲外へと駆けた。
一瞬前まで綴のいた空間を超質量が通過し、地に炸裂した途端に爆圧と飛礫が後を追ってくるが、そんなダメージにもならない物を気に掛けている暇はない。
「毛並みは狐、偉容は城、中身は忍び……ややこしいにも程があるッ!」
「当然である。騙し、欺き、詭道を駆使してこそ忍び。単純明快では務まらぬよ」
絡繰金狐城『天狐』を姿をした風魔小太郎、癇癪を起こした子供の地団駄よろしく幾発もの踏みつけを降り注がせてくる。そんなシンプルなパワフルさが忍者っぽいかどうかはさておき、脅威には違いない。
「むぅ……!」
速度に優れた綴は高速で駆け回って直撃を避け、反撃の隙をうかがう。偽神細胞液の影響により手足に刺すような痛みがある中、戦闘が長引けば長引いただけ綴には不利になる。
だが、暴威にさらされる中にあって、綴の目は冷静に天狐の足を、その城めいた構造物を観察していた。
いかなる地形をも苦にせず踏破する力こそ、四軒屋・綴、即ち勇蒸連結ジョウキングの神髄である。ただしそれは、どんな地形にも柔軟にすり抜けられるといったお優しい類のものではなく、障害物があれば突き破り、悪路であれば真っ平らになるまでならすという、剛直なる突破力をもって成すものである。
それは、城塞同然の堅牢さを誇る天狐の体が対象であろうが変わらない。閉ざされた城門があるなら破ればよいし、そもそもわざわざ門など通らず壁を貫けばよいのである。
「今だッ! 抉・蹟・列・車(エグザートレイン)ッ!」
天狐の足が地を抉った刹那、きびすを切り返した綴の腕には蒸気機関車型のアタッチメントが連結されていた。
特殊な超振動を伴うそれは、踏撃による爆圧を押し退け、飛礫を粉砕し、天狐の足首に激突する。同時、城壁はたちまちに土塊となり、砂と化し、巨穴を穿たれた。
「――馬鹿な!?」
天狐――小太郎が驚愕の声を上げる。あらゆる攻撃に対して無敵の耐性があったはずの己の体があっさりと貫かれたことが、信じられなかったのだろう。
「開通完了ッ! 後は関節を砕けば動きは鈍る。構造上……ここは、ええと……えぇい、面倒だッ! 片ッ端から砕くッ!!」
天狐内部に侵入した綴の猛進はなお止まらず、城の中を縦横に蹂躙していった。
大成功
🔵🔵🔵
サイモン・マーチバンク
偽神細胞液を接種します
痛みは【激痛耐性】で堪えるしかないですが……限度はありますね
歯を食い縛り、しっかり意識を保つことに集中しましょう……!
相手は何やら援軍を呼び出す様子
こちらは痛みで満足に動けません
囲まれたら終わりですね
だからこちらも援軍を呼びます
兎悪魔達には散らばってもらい、機械兵器の破壊をお願いしましょう
彼らは偽神細胞の影響を受けません
だから機敏に動いて数で圧倒できるはず
機械だからケーブルとか切ってやればいいんですよ!
俺は気合いを入れて敵本体を相手します
『ラビットダッシュ』を構え、出来る限り呼吸を整えて
【スナイパー】の技術で致命的な箇所を見定め撃っていきます
城が相手でも負けませんよ……!
都藤・穂
❖連携・アドリブ歓迎。
「脳みそ頭に恨みはないけどぉ、ストームブレイドとしてのやくめをー、果たさせてもらうねぇ」
まずはぁ、機械の狐さんかぁ。
いつも通り、お腹減らないようにぃ、【イボメディックス】は口に入れとくよぉ。
さてと、じゃあ勝負だねぇ。
機械ならぁ、大抵は硫酸で溶けるはずだよぉ。
UCで硫酸雨を降らせてぇ、召喚される機械兵器もろとも酸化させるよぅ。
いい感じになったらぁ、【フォークとナイフ】でバラバラに【解体】。
巨大なお城は流石に全部は無理かもだけどぉ、機械兵器ならこれで突破出来るかなぁ。
他の人たちが苦しんでる分、たまには頑張ってあげないとねぇ。
●雨、雪崩
「うぐ……ぎぎっ」
サイモン・マーチバンク(三月ウサギは月を打つ・f36286)の噛みしめた奥歯が、軋んだ音を立てる。
偽神細胞液を注入したことによってもたらされる激痛は凄まじい。痛みに対しての耐性は人一倍優れているサイモンであったが、それでも普段通りに戦えるかといえば、否だ。体は満足に動かない――というより、いざという時のために体力を温存するため、今はあまり動かずにいなければならないといった方が正しいだろうか。
そんなサイモンの元へ、絡繰金狐城『天狐』の腹辺りから吐き出された小型の機械群が近寄ってくる。
いや、小型に見えたのは天狐と比べるからそうと思えただけで、一つ一つの体長はざっと二メートル強の、二足歩行の狐めいたロボット兵であった。数えてみれば十二体、めいめいが鉤爪やら忍者刀やら、あるいは身の丈ほどもある十字手裏剣やら、物騒なものを装備している。
動きの鈍いサイモン、囲まれて押し包まれればひとたまりもない。
――が。
「他の人が辛い分、僕が頑張ってあげないとねぇ」
ゆるりとサイモンにをかばうように、都藤・穂(何でも食べる蟇、又は食欲旺盛な蝙蝠・f36681)が現れた。
穂はサイコブレイカーであり、同時にストームブレイドでもある。つまり、元より偽神細胞を有した戦士であって、この戦場において拒絶反応にさいなまれることなく戦う資質を持つ。
常は気怠げな彼だが――いやまあ、現時点でも充分にそれらしき気配を纏ってはいるが――今回はやる気である。
「機械ならぁ、大体は硫酸で溶けるよねぇ……さぁ、君らの歯車の隙間まで染み入る、酸性雨だよぉ」
穂が天に手を掲げる。
同時、どっ! と、猟兵のいるゾーンを除いた周囲一帯、ドーナツ状に【胃酸逆流ぱんでみっく(イサンギャクリュウパンデミック)】が降り注ぐ。酸性雨……などと称するのは生温すぎる、濃硫酸のシャワーだ。
猟兵らを押し包もうとしていた狐ロボ兵らがそれに叩かれ、金属の融解する異臭が毒ガス弾めいて立ちこめた。流石に超常存在オブリビオン由来の機械兵たちだけあって、一瞬で溶かされ蒸発するということまでは起きないものの、溶解した自身の体が関節部に流れ込むなどしているのだろうか、挙動が一気に鈍り、ギギギ、と異音が響いてくる。
ただし、鈍りはしても止まるわけでない。鈍化しながらも凶器を振り上げ、なおも押し包もうとしてくる。
とはいえ、鈍りきった狐ロボ兵に捉えられるほど、サイモンや穂は温い戦士ではない。
「――援軍を呼びます」
しゃがみ込み、精神を集中させるサイモン。
一秒半ほどの間を置いて、彼をぐるりと囲むように蛇身の巨龍が召喚された。ただ、目を惹くのは龍ではなく、その背中にびっしりと隙間もないほどに立ち並んでいる兎たちだ。
ファンシーな光景――ではない。兎たちはことごとく、いかにも凶悪げな牙と、剣呑な輝きを放つ短剣とを備えている。
血にも似た赤い目をくわっと輝かせるなり、数十、いや数百は数えようかという兎の群れは一斉に龍の背から跳躍し、狐ロボ兵らを逆に包囲し返していった。
「――!」
「――――!」
獣と機械。
言語を超越した怒号や絶叫、そして刃と殺意が交錯した騒音とが重奏を紡ぎ上げ、戦場に満ちあふれる。
狐ロボ兵は体格と膂力で勝り、対して兎らは物量とスピードで圧倒していた。
狐ロボ兵が忍者刀を一薙ぎすると兎の三、四が纏めて蹴散らされるものの、同じ間に十弱の兎が狐ロボ兵に纏わり付くようにしつつ刃を突き立てていく。硫酸の雨によって融解した装甲の穴は格好のウィークポイントになっており、内部にある謎のケーブルやら何やらを効率的に斬り刻んでいく結果となる。
畢竟、本来精強を誇るはずの狐ロボ兵らはごく短時間の間に無力化していった。
「ぬうぅ……!」
天狐のてっぺん、金色の狐頭から悔しげな唸り声が発される。
穂がもたらした強酸性の雨は当然、巨躯を誇る絡繰金狐城も叩いている。致命的なダメージには至っていないにせよ、全身の装甲に火傷めいた融解が起きている。
「……あれを狙えば」
サイモンがアサルトライフルを構える。ラビットダッシュに装填される弾丸はただの貫通弾のみではなく、サイモンが注ぎ込む魔力に応じて爆発属性、雷撃属性など、いかにも機械的な存在が傷口に放り込まれるのを嫌がりそうな属性を付与することもできる。
「やらせは、せん!」
軋む腕を振り上げた天狐が、観覧車ほどもある巨大十字手裏剣を投げ付けようとする。
しかしそれが手を離れるよりも先に、穂が駆けていた。己が降らせた劇毒の豪雨の中、何でもないかのように疾走し、跳躍し――そして、両の手それぞれに握りしめた大刀ほどもあるフォークとナイフを奔らせる。
「脳みそ頭に恨みはないけどぉ……ストームブレイドだからねー、僕ぅ」
へらりとした笑みを浮かべつつも、穂に心中には猟兵の矜持がある。オブリビオンの企てを粉砕すべしという、使命感が。
「お、のれ――!」
交錯は刹那。
その刹那で天狐の手首から先がバラバラに解体される。
さらに刹那の後、装甲が剥がれかけていた狐頭の頭部にサイモンの撃った魔弾が炸裂し、牡丹の花めいた大輪の爆発が起きた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ヴィヴィ・ジーヴ(サポート)
キマイラの力持ち×精霊術士、15歳の女。
名前はヴィヴィ、一人称は自分の名前でビビ。表記はどちらでも。
服の下はフクロウ。
腕はハーピー(鳥の羽)、器用な作業は少しだけ苦手。
「あまりお手手は見ないでね、女の子の秘密よ。」
《力持ち》
素早いの、苦手。お目目くらくらする。一撃ドーン、が得意よ。
《精霊術士》
困った時は精霊さんに聞く!
《好き》
美味しいもの、食べる事、大好き!
あとね、ビビ、空中浮遊でふよふよするの好きよ。
◆ボス
ぼす。ビビに倒せるかな。心配。
一緒に行ける人がいたら、ビビ連携とるよ。囮もやる。
難しい事苦手なの。作戦、教えてくださいな。
空中を飛び急降下落下。怪力載せた鹿の足で着地、地面を割る、など。
●飛梟
「頭、くらくらする……」
眉間にしわを寄せながら、ヴィヴィ・ジーヴ(いつも誰かのお手伝い・f22502)はぼやいた。
偽神細胞液によって、ヴィヴィの全身はひりつくような痛みに隈なく覆われている。ただ立って歩くだけでも目眩がするほど。
それでも、戦えないほどではない――というより、戦えないなどと弱音を吐いていられる状況ではない。
眼前には和風の城めいた意匠の体を持つ巨人がそびえている。度重なる戦闘でずたぼろになってはいるが、まだまだ絡繰金狐城『天狐』は健在である。
「ち……己をこうまで追い詰めるか、猟兵……」
天狐が身を震わせ、風魔小太郎の声で呪詛めいた声を吐き出す。
「だが、まだだ。このまま己を討てるなどと思うな!」
ぼろぼろと屋根瓦めいた装甲をこぼしつつ、天狐が跳躍する。ヴィヴィを圧殺しようというつもりだろう。
「……っ!」
対し、ヴィヴィもまた鹿の脚で跳躍し、さらに両腕の翼で空を叩いて飛翔する。足の裏でヴィヴィを潰そうとしていた天狐だが、ヴィヴィはその足下からすり抜け、天狐の胸前まで至る。
「ぬ、ぉ――!」
天狐はとっさに平手打ちを振るってヴィヴィを払い落とそうと試みるが、ヴィヴィは鋭く旋回してそれをかいくぐる。
ヴィヴィは高速飛行が得手なわけではない上、全身激痛に苛まれている今は本調子でもない――が、それでも空中機動の巧みさは、弱った天狐の挙動では追随できない。
すり抜けつつなお上昇したヴィヴィの両足が、天狐の頭を挟む。
「やぁ――!」
プロレスで呼ばれるところの、フランケンシュタイナー。
「むぉ!?」
本来、いくら怪力をもって鳴らすヴィヴィとはいえ、流石に城ほどもある巨体の全重量を支えて振り回せるほどではない――が、そうでなければ首を引っこ抜きねないほどの負荷を掛けており、天狐にしてみれば自ら投げられに行かなければ『終わる』。
ゆえに、コンパクトな縦向き旋風に巻き込まれるような格好で投げ飛ばされた天狐は、その高速の猛威そのままに地面に体を炸裂させた。
成功
🔵🔵🔴
橘・焔
※緋奈森・鈴音(f03767)と共に行動
○心情
何だか分からないけど私の頭の中で誰かが叫ぶ声が聞こえる
「奴だけは絶対に逃してはならない」っと叫ぶ声が…
○行動
愛機・インフェルノに跨り、緋奈森さんとタイミングを合わせて仕掛ける
「ヒャッハー、脳みそクマさん滅ぶべし!これは絶対不変の真理なり!」
後方からの炎の援護を受け、熱気と砂塵を纏って縦横無尽に荒野を駆ける
大振りな相手の隙を突いて一気に接敵、愛用のアタッシュケースから自身の血を混ぜた“槍”を創造し、全力の突撃をお見舞いする
「我が槍に貫けぬモノは無し!気合一閃、貫けーーッ!!」
○戦後
おぶさる緋奈森さんを担いだまま
「はいはい、まだ次がありますからね~」
緋奈森・鈴音
橘・焔(f01608)と一緒に行くー。
2人とも偽神細胞液を使用。
痛いのは嫌だけど今回はそうも言ってられないしー。
天狐の名前は同じ狐としては見逃せないしー。
「背中は任せてねー。本命さんの代理だろーけど?」
炎の魔力を最大に使い攻撃力を強化して周囲を火の海に包み込むわー。
熱の揺らぎや陽炎でおねーさん達の位置や場所を相手の認識からずらし攻撃が見当違いの所に向くように仕向けるわ。
地形が崩されても良いよう空中浮遊して、動きを阻害できるよう手裏剣や彼岸花で関節部を攻撃して少しずつおねーさんの本当の位置に相手が気付くように調整。
相手が攻撃してくるなら……焔、後は任せたわよー。
「疲れたー(背中におぶさろうと)」
●煉獄
橘・焔(転生のオデュッセイア・f01608)は頭痛を覚えていた。
偽神細胞液を注射したことで起きる拒絶反応による痛みかもしれない。だが、それだけではない何かを感じる。
有り体にいえば、それは絶叫だった。ドクター・オロチを絶対に逃がしてはいけない、といったような。
無論、オブリビオンに対する敵愾心は、猟兵には本能レベルで備わっているものではあるが、単純にそれだけでは説明できないほどの、激しい衝動である。
焔はその衝動に抗うのではなく、寄り添うことにする。
結果、流線形の二輪車はフルスロットルで爆走する。拒絶反応の痛みは頭のみならず全身に伝播し、愛機の操作は常ほど容易ではなく、その挙動は粗雑極まる。それでも、自分の足で走り回るよりはずっと楽だし、マシな動きはできる。
「ヒャッハー、脳みそクマさん滅ぶべし!」
「……わけのわからんことを……!」
謎のテンションに従い大声でわめき散らかしつつ地面を駆け巡る焔を、しかし、天狐は捕捉できずにいる。
単純にバイクが生み出す速度だけの問題ではない。
周囲は幻朧めいた炎に包まれ、焔の姿をすっぽりと包み隠していたのである。
その光景は、緋奈森・鈴音(火に願う華・f03767)が【トリニティ・エンハンス】の魔力で生み出したものである。
「本命さんの代理だろーけど、任されたからにはしっかり背中は守るわよー?」
微笑する鈴音自身もまた炎の海に包まれ、隠れている。
時折、炎の隙間からこぼれ出るようにたっぷりした黒髪、黒尻尾の影が覗き見えるが。
「――ずぁっ!」
天狐が鋭く踏撃を放ち、黒影を貫いて地面に轟爆とクレーターとを造り出す。だが、それは鈴音のいる場所とはまるで異なる場所だ。
天狐の目に映った黒影は、鈴音が炎を使って生み出した蜃気楼である。
「ぐ……この己が、この程度のまやかしに……」
天狐――というか、風魔小太郎がうめく。
あるいは小太郎自身の能力を十全に発揮できる体であれば、あるいは体調が万全であれば、鈴音の幻惑を看破することもできたかもしれない。
しかし、体格に比例した膂力と装甲を得ているとはいえ五感その他は大味なものとなり、さらに度重なる戦闘によるダメージの蓄積も相まって、小太郎の眼力は衰えていた。
それでも。
「だが……それなら、この炎の海の全てを踏み消してしまえばいいだけこと」
どどどどど! と、巨躯から繰り出されるにしてはあまりにスピーディな蹴りの爆撃が放たれる。
ボスクラスのオブリビオン、しかも中身は風魔小太郎という別格のそれが放つ連打は、一撃一撃が必殺の威力を持つ。地面がえぐれ、爆圧が炎を押し退け、戦場から幻影を駆逐していく。
「あら、まあ……」
鈴音の声色はのんびりしたものではあったが、胸中にはそれなりに焦りもあった。できる限り炎の魔力を展開させ続けてはいるものの、やはり元々の地力の差によるものか、炎の海が蹴散らされる方が速い。鈴音や焔の居所について誤魔化しが効かなくなるまで、あといくらも間はあるまい。
だが、その間――天狐が精度のない攻撃に勤しんでいる間に仕掛けることはできる。
「はっ!」
苦無型の手裏剣数本を投げる。
猟兵の手によるそれは、見目からは想像もできないほどの威力はある――が、天狐からすれば爪楊枝を投げ付けられた程度のようなものだろう。
しかも、攻撃の方向から鈴音の居場所は割れる。
「――そこか!」
すねに微かな傷を刻まれた天狐が、今度こそ狙い過たず鈴音の実体を捕捉し、踏撃を放った。
その一撃を。
万全でない速度でしかないそれを、鈴音はただ真っ当に回避した。
「残念」
いたずらっぽい笑みを浮かべた鈴音は天狐の足とすれ違い様、己の身丈ほどもある手甲を転がすように振るう。
瞬き一つ、毒花の花弁よろしく広げられた黒爪が天狐の膝をつかみ取る。瞬き二つ、蓄積された戦闘と酷使のダメージによってとっくに限界だった膝が、粉微塵に砕け散る。
「――!?」
「焔、後は任せたわよー」
刹那、踏撃の地団駄によって生じたもうもうたる土煙を突き破って流線形が飛翔する。天狐の顔面目がけ、冗談のように真っ直ぐに。
「気合一閃、貫けーーッ!!」
流線形――バイクと一体化するようにまたがった焔の手には、鮮血のごとき真紅色の、巨大なドリルめいた大槍が握られている。
片足を失って大きくバランスを崩して倒れかかる天狐は、その様を目に捉えていながら、何をする暇もない。
次の刹那、猛炎の闘気を纏ってそれ自体一個の巨槍となった焔とインフェルノによって、天狐の頭部は消し飛ばされた。
「疲れたー」
インフェルノの後部荷台に座り込んだ鈴音は、液状化した猫よろしくべったりした姿勢になって、焔へとへばりついていた。疲れているのは事実で、動くのも辛い痛みが全身を覆っているのも事実だろうが、何やら邪な念めいた気配があるのは気のせいだろうか。
一方、焔は特に鈴音の様に頓着する素振りもなく、へばりつかれるがままに愛機を転がしていた。
「はいはい、まだ次がありますからね~」
真紅のバイクが進む先は、影の城。
堅牢なる天狐を撃退したといって、戦況としてはようやく門を突破したばかりなのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『ドクター・オロチwithデミウルゴス』
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POW : 偽神水晶剣
任意の部位から最大レベル枚の【偽神水晶剣(偽神細胞と融合した水晶剣)】を生やして攻撃する。枚数を増やすと攻撃対象数、減らすと威力が増加。
SPD : クルーエル・セイント
状態異常や行動制限を受けると自動的に【聖なる光のオーラ】が発動し、その効果を反射する。
WIZ : デミウルゴス・ポリューション
【指先】で触れた敵に、【強毒化した偽神細胞の侵食】による内部破壊ダメージを与える。
イラスト:みやこなぎ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●狂気を招く声
「あ、が、あ、あ、ぎ、ぐ、あ――ッ!」
今すぐにでも両手を頭に突っ込んでかき回したいという衝動、狂気に、ドクター・オロチは必死に抗っていた。
デミウルゴスの頭に常に響いていた、民衆の慟哭、哀願、悲憤、慨嘆――絶望そのものが声の形を取ったモノが、今やオロチの脳を苛んでいた。
魔軍転生による強化なくして、今の猟兵と渡り合うことは不可能。
そう断じたオロチはフィールド・オブ・ナインの一柱たるデミウルゴスを憑装した。それは間違いなくオロチの力になってはいるはずだが、想定していた制御はできていない。強化の恩恵以上に、延々とオロチの脳を蝕む呪詛は深刻であるといえた。
しかし、だからといってデミウルゴスの力を手放せば、それこそ猟兵に殺されて、終わる。優れた計算力ゆえにそれが理解できてしまっているオロチは、結局、狂気に対して絶望的な反抗を続けつつその力にしがみつくしかない。
「う、ぎぃ――ッ!!」
死ぬほどの狂気を死ねないまま味わいつつ、オロチは猟兵を待ち受けていた。
サイモン・マーチバンク
勝つために偽神細胞を取り込んでる俺が言うのもなんですが……
なんというか悲しいですね
デミウルゴスだって散々苦しんでいたというのに
……終わらせましょう、全部
相手のオーラは厄介です
下手な搦め手を使うよりは出来ることをやった方がいいでしょうね
【激痛耐性】で拒絶反応に抵抗しつつ『ムーンストライク』を構えましょう
接近しないと話にならない
肺に空気を送ることを意識しつつ進んでいきますよ
殴る時は【怪力】を乗せたUCで全力で
追撃も忘れずに叩き込む
この追撃自体には行動を制限する能力はありません
ひたすら殴るのみ、です
一発殴る度に意識が飛びそうになる
でも最後まで諦めずに
お互い痛くて苦しいですから
……早く終わらせましょう
●その苦しみを長引かせないために
「ぎ、ぐ――うぐ、ぐ、ぎぃ――!」
頭部が丸ごと脳で、顔に該当する部分さえ脳が露出した形になっているドクター・オロチは、表情から感情を察するのが難しい。
それでも、デミウルゴスの憑装に由来する不具合で尋常でない苦しみの中にいるのはわかる。
敵ではあるのだが、その様はサイモン・マーチバンク(三月ウサギは月を打つ・f36286)に哀れみの念を呼び起こすのに充分だった。
いえば、サイモンを含めこの戦いに臨む猟兵にしても、勝つために激痛に苛まれるのを覚悟で偽神細胞液を取り込んでいるわけだから、やっていることの性質はオロチと大差ないといえば大差ない。
とはいえ、限度がある。かつてアポカリプスヘルでのデミウルゴスの苦しみぶりを知っている者の感覚からすれば、代償として受け取るにしては大きすぎると思うのが自然だった。
「……終わらせましょう」
鈍い銀色の巨槌を振りかぶり、サイモンは独りごちるようにつぶやいた。
肺に走る痛みを押し退けるように、大きく吸気――から、真っ直ぐ前に疾走する。
オロチと目鼻先の位置まで一瞬にして詰め寄ったところで、オロチの体を光のオーラが包む。【クルーエル・セイント】の防護のオーラ。
だが、サイモンは構わずに槌を振り下ろした。オーラの性質上、状態異常等を伴わない単純な打撃攻撃に対してはさしたる効果を発揮しないはずだった。
果たして、軌道に沿った三日月状の衝撃波を纏った一撃がオロチの肩口に叩きつけられ、床まで突き抜ける破壊力によってオロチをくずおれさせる。
「ム、ムシュ――!」
「まだまだ……」
【月のスタンプ(ステップ・スタンプ)】により、三日月状の衝撃波は空間に残る。
それを脱兎の勢いで駆け上ったサイモンは、落差を利用した威力のある追撃を放つ。
ごっ! と。
ギリギリ紙一重で回避されたそれは床に炸裂し、広域に巨大な蜘蛛の巣状の亀裂が生まれた。
外れた槌を振りかぶり直すサイモン――それだけの動作をするにも、体中から悲鳴が上がる。
「お互いのために、早く終わらせませんか?」
「……!」
どんよりとした双眸でオロチを見据えつつ、サイモンは告げる。しかし、オロチは何も答えずに、水晶のレイピアを鋭く突き出してくる。
戦いはまだ始まったばかりである。
大成功
🔵🔵🔵
都藤・穂
❖連携・アドリブ歓迎。
狂気ねぇ、狂気は辛いよねー。それだけ大きな脳みそならァ、聞こえてくる声もより酷かったりするのかなぁ。
んじゃあ、せめて僕が助けてあげないとねぇ。大人しく過去に還りなよ。
数の暴力ぅ。UC発動で落とし子たちに一斉攻撃してもらうよぉ。
__ンガァ・クトゥン・ユフ__
犠牲は出るかもしれないけどぉ、本気でやらないとねぇ。
僕も【ΣOCM】でドーピングして、【ナイフとフォーク】で解体。直接触られないように、落とし子たちに盾になってもらうよぉ。
うーん、こいつは食べても美味しくなさそうだなぁ。
●もっと食べたい
「狂気は辛いよねー。それだけ大きな脳みそならァ、聞こえてくる声もより酷かったりするのかなぁ?」
「ムシュ……うる、さい――!」
うるさいというのは『どちらの声』に対して言ったのか。
何にせよ、ドクター・オロチは土留め色に染まった爪を振り上げてデタラメに振り回しつつ都藤・穂(何でも食べる蟇、又は食欲旺盛な蝙蝠・f36681)に襲いかかった。
わずかに引っかかれただけでも恐らく致命傷になり得る、超常の猛毒の爪撃。それに対して穂は長剣ほどもあるフォークを薙ぎ払うようにして迎撃する――が、交錯と同時に弾き返された。
「っげ……!」
次いでの振り回しが穂に迫るが、それは間一髪で後方に跳んでかわす。
威力はともかく精度はそうでもない。まあ、オロチの身に起きていることを思えばそれも当然だが。
ならば、と穂が選んだ戦術は、数による圧倒。
「ぽいぽいっと~」
クラシックの指揮者よろしく、穂は両手のナイフとフォークとを振った。
途端、凪から時化に変わった海面のように、空間がざわりとたわむ。
波立ったような歪な空間の隙間から、次から次に醜悪で奇っ怪な肉塊がこぼれ出てくる。強いて似たものを挙げるなら、どす黒い蛭だろうか。何かの言い訳のように蝙蝠の翼めいたものが生えてはいるが、物理に従えばそれで空を飛べるわけがないという形状であるのに、それらはバサバサと音を立てつつ容赦なく滞空していた。
【闇に囁くもの(ンガァ・クトゥン・ユフ)】によって生み出された、無形の落とし子ら。
それら一つ一つは、ざっと見積もって一キロ程度だろうか? 大した大きさもない。攻撃力もさほどではなく、例えばオロチの爪に対峙する存在としては脆弱に過ぎるといっていい。
しかしその小ささゆえに、かえって狙って叩こうと思えば動作の精密さが要求される。鉄をも断つ利剣といえど、蠅を狙って斬るのは至難であるのは道理。そんな精密さは、今のオロチには望むべくもないものである。
「む、シュ――ぎいぃっ!」
纏わり付いてくる肉塊の大群に、オロチは爪を縦横に叩きつけた。肉の密集するところを薙ぎ払えば、たとえ精妙でないにしてもいくらかはちぎり飛ばすことはできるものの、それで押し返せるほどのものではない。
「ぐ、がぁぁぁぁぁっッ!!」
「うーん、食べても美味しくなさそうだけど……」
どす黒くへばりつく肉の群れによって、オロチはわずかずつながら、確実に身を削られていった。
大成功
🔵🔵🔵
緋奈森・鈴音
これからが本番ね。
橘・焔(f01608)に乗せてもらったまま行くわ。
回避運動は任せて迎撃に専念するわね……楽で素敵ー。
隙を見て夜刀神の手裏剣を投げ続けてオロチの力を奪い、おねーさんと焔を強化していくわ。
防御されても貫通するから水晶剣で防ぐこともできない筈よ。
刺さる程、回避もどんどん難しくなっていくから攻めていってあげる!
「力を奪っていってあげる。石のように体が動かなくなっていく時間をゆっくり味わうと良いの」
相手の動きが鈍っていったら、止めを刺せるチャンスかしら?
「(彼岸花を振りかぶって)それじゃあ、粉々に砕けちゃえ!」
石化して封じられて粉砕される……何かのトラウマを思い出したりしちゃうかしら?
橘・焔
※緋奈森・鈴音(f03767)と共に行動
○心情
私は最後まで思い出せませんでしたが、確信は得ました
貴方はここで倒されるのです、“いつかのあの時”と同じように…
○行動
前回に引き続き愛機に跨り、緋奈森さんを乗せたまま走行
回避運動に専念しつつ接敵、射程距離に入ったら大宝寺さんから頂いたアンプルを使用
「う~ん、大丈夫かなぁコレ?…まぁ、しっかり掴まっていて下さいね!」
全身の痛みに耐えつつ愛機の操縦に注力し、僅かな隙を見つけて術式を展開、全方位からの飽和攻撃で相手を物量で押し切ります
「…ッ、思ったよりキツ……でも!『罪深キ者達ニ断罪ト福音ヲ、美シキ者達ニ祝福ヲ!【時よ止まれ、汝はいかにも美しい】!!』」
四軒屋・綴
……もはや語ることもあるまい。
哀れみも不要だろう、ならば付け込むまで。
ユーベルコード発動、装備を組み合わせ光刃の発生機、すなわち刀身のない大剣の長柄と鍔を作り出す。
後は待たねば充分な威力を発揮できないが…逆に威力さえ気にしなければやりようはある。
敵の攻撃に併せこちらも突撃、光刃の発生機を棒術に用い水晶 剣を打ち砕く。
払い、反らし、柄突きで砕き、開けた片手でバリアを展開し更に防ぐ、思考が乱されていれば威力は有れど攻めは単調、いなして反らすのは【グラップル】の領分だろう。
充分な時間を確保しチャージ完了と共にバックステップ、光刃を伸ばし一気に切り捨てる。
●異形への餞別
四軒屋・綴(大騒動蒸煙活劇・f08164)が、すりこぎめいた金属製の棍を剣のように振り回しつつ、両手の五指に偽神水晶の大爪を生やしたドクター・オロチと打ち合っている。
全身装甲の綴の繰り出す武技は、性質としては剣術というより格闘術と呼ぶべきものだろう。棍のみならず左手の甲に展開したバリアを利用したり、隙を捉えた足払いを仕掛けるなどした細々としたテクニックで、オロチの剣撃をいなし、受け流す。
一方、オロチのそれは戦闘技能と呼べるような上品なものではなく、肉食獣が本能のままに暴れる様に似る。手に届く範囲にある敵目がけて、何も考えず力任せに殺戮衝動を叩きつけるような。
どれほど力があろうが、そんな粗雑な動きでは猟兵の脅威になどならない――普通であれば。だが、オブリビオン中でも別格の速度と膂力を持つオロチの猛攻となれば、事情が変わる。真正面から防いだところで防げる威力の攻撃ではなく、回避や受け流しにせよわずかでも最適化しそこねた所作では身を削られる。
「ぬ、う……!」
綴りがうめく。本来であれば【捨礼列車(ストレイトレイン)】の刃をチャージしつつ戦いたいところなのだが、正直、そんな余裕は欠片もない。
「一旦、退いて~」
どこからともなく。
そんな声を伴いつつ、幾本かの棒手裏剣が烈風を喰らいつつ飛来する。
ライフル弾並みの速度のそれがオロチの頭を貫く寸前、オロチはいらついたように水晶の爪を振るってそれらを叩き落とした。
一拍遅れ、タンデムシートに緋奈森・鈴音(火に願う華・f03767)を乗せた橘・焔(転生のオデュッセイア・f01608)が、真紅のバイクでオロチに突撃をかましてくる。
「――!?」
それまで狂ったように攻め続けていたオロチだったが、これは流石にまずいと思ったらしく、後方に大きく跳躍して回避した。
焔には確信がある。ドクター・オロチは、ここで倒される。『いつかのあの時』と同じように。
(……まあ、あの時っていうのがどの時なのかわかんないんだけど)
根拠のない自分の思考に自分で疑問を持つ。何か思い出すべき記憶が己の奥底にあるような気はするのだが、気がするだけで何も思い出せない。
だがまあ、その記憶が何であれ、今戦うにあたり気にするほどの価値はなかろう。
引き続き背中に鈴音をへばりつかせたまま、愛機インフェルノを操る。
オロチは衛星状に己の周囲をぐるぐると回る二人乗りバイクに、目――ではないが、露出した脳の内でそれに該当するだろう何か――を向けつつ、ブツブツと唸り声を上げている。
「う、るさ……さ、い……うる……うるさ、い……」
「本当に戦える状態なのかしら?」
自身も拒絶反応による激痛によって大して動けずにいる鈴音が、首を傾げつつつぶやく。
憑装したデミウルゴスの影響で発狂寸前になっているという前情報はあったが、それにしても思っていた以上の自失ぶりだった。この分では、魔軍転生に頼らず自力のみで猟兵と対峙した方がマシだったのではないかと思えるほど。
「まあ、動けないなら好都合だわ――汝に毒を、我らに力を」
鈴音の手の中に五本ほどの棒手裏剣が出現する。
次の刹那、埃でも払うような軽い動作により、それらの棒手裏剣が神速を与えられる。
【七赤金星・夜刀神】により超常の貫通力を得たそれは、先の手裏剣のように叩き落とそうとすれば、逆に手に穴を穿つだろう。
が、それがオロチを貫くかと思われた刹那、オロチの姿がふっとかき消える。
「――!?」
見失った、と思ったのは束の間。
雷撃のような速度とジグザグの軌道で手裏剣を回避したオロチは、偽神水晶の長剣を
跳びかかってきた。
「いっ!?」
焔は慌ててハンドルを切りつつ体重を傾ける。
刹那、横転寸前まで傾いだバイクはオロチの足下に滑り込んだ。焔と鈴音の首を刈り取る軌跡を描いていた水晶爪はその寸前で彼女らの頭上を通過し、置き去りにされた頭髪を幾房か散らすに留まった。
「っ、ぢぃ――!」
猟兵らを跳び越す格好になったオロチはすぐさま急角度で身を翻し、今度は全身に水晶剣を生やしたハリネズミめいたフォルムとなって突進してくる。
「うぇえっ!」
殺戮のミキサーに追いつかれる前に、焔は愛機を爆発的加速で突き動かす。
が。
「……やっぱり、一人の時より動きが鈍い……」
「えー? おねーさんが重いからって言いたいわけ?」
「そういうわけではなく」
ジト目をさらにじっとりさせつつ、焔がぼやく。
重量の問題もなくはないだろうが、二人乗りであるからには振り落とさないように気を遣っているからだろう。最高速度そのものは大差ないはずだが、切り返しの角度や意表を突いた加減速など、戦闘用機動に必須な『えげつなさ』が足りていない。
必然、このままお行儀のいい挙動を続けていればいずれオロチの攻勢を凌げなくなり、焔も鈴音も死ぬことになるだろう。
焔は腹を決めた。先にグリモアベースで受け取っていたアンプルを追加接種し、痛みに比例した集中力と膂力とを得る。
「――少し乱暴に動きます。振り落とされないで!」
「はーい」
鈴音が応じるより前に、焔はスピードを上げつつハンドルを暴れさせた。
運転する焔自身にさえどこにすっ飛んでいくかわからない、己の反射神経を信頼したデタラメな挙動。
瞬間の連続で判断、動作、何か一つを少しでも誤れば大事故必至という状況で、焔は技量と勘と幸運とで正答を出し続ける。
また、運転しながらオロチの攻撃を回避しながらオロチの位置を把握しながら精神を研ぎ澄ませながらユーベルコードの発動を試みながら――いくつもの『ながら』に発狂しかけつつ。
「ッ、思ったよりキツ……でも! 罪深キ者達ニ断罪ト福音ヲ、美シキ者達ニ祝福ヲ!」
怒鳴るような焔の声に応じ、焔の疾走した痕跡をなぞるように何十、何百にもなろうかという十字の光が発生した。
暴れ狂うバイクを制御しつつそれら十字架の弾幕を操り、オロチを押し包むように叩きつけにいく。上下左右、どこへも逃げ場のない全方位攻撃。
「ムシュ――しュがぁアァ!」
足を止めざるを得なかったオロチは、その場で独楽のようにスピンする。
全方位攻撃に対抗する全方位攻撃。全身に生えた水晶剣は網のごとき隙なき軌道の斬撃を生み出し、襲い来る十字架の弾幕の九割方を弾き散らかした。
それで充分だった。
足が止まったからには、すかさずして放たれた鈴音の手裏剣が、今度こそ命中するからである。
光の十字架に紛れるようにして飛来した棒手裏剣はオロチの繰り出す刃を貫き、オロチの両足にドスドスと突き刺さった。
さらに、突き刺さった途端に手裏剣に宿っていた呪いがなりを変え、石化をもたらす毒となってオロチを侵食していく。
「!?」
「石のように体が動かなくなっていく……何かのトラウマを思い出しちゃうかしら?」
鈴音は身動きができなくなったオロチに嘲笑うような声を投げ付け、さらにインフェルノのタンデムを足場に跳躍した。黒鋼の手甲に覆われた指を貫手の形に整え、弓を引くがごとくに振りかぶる。
「それじゃあ、粉々に――」
「――ダマレ!」
鈴音が貫手を放つのと同時、怒号を上げたオロチの頭部(というか脳部)から一本角よろしく偽神水晶剣が飛び出た。それまでオロチの体から生えていたものとは段違いの、馬上槍ほどもある長大な円錐形。
「――っ!?」
あまりに綺麗なカウンター。目を剥いた鈴音は致命の間際に身を捻るが、完全には回避できずに肩口を刺し貫かれる。
死を免れたのは一瞬。わずかにでも切り返されればそのまま胸を抉られるだろう。
しかし。
「待たせたッ!」
その間一髪に白刃が割り込んだ。
焔や鈴音が十二分な時間を稼いでいる間に綴が育てた、光の大剣である。
オロチが生み出した渾身の水晶剣と同等か、あるいはそれ以上の長大さを持った光の巨大剣は真正面からオロチの脳を捉え、一指弾の間の手応えを経てあっさりと両断した。
「……語ることも、哀れみも……不要だろうッ!」
綴の言葉が終わるより先に、両断されたオロチの脳とそれに付随する石の体は、ざらりと黒灰と化し、そして消えてなくなった。
大成功
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