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銀河帝国攻略戦⑭~忠誠の白魔

#スペースシップワールド #戦争 #銀河帝国攻略戦

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●忠誠、爆ぜて花と咲かせん
「銀河帝国の次の手が判ったよ。『白魔』艦隊が動き出す」
 グリモアベースに集まった猟兵達に、ルシル・フューラー(ノーザンエルフ・f03676)はそう話を切り出した。
 遥か昔『伝説の解放軍』を散々に翻弄し苦しめたと伝えられる、高速艦のみで編成された白騎士ディアブロ直属艦隊。
「その戦法はたった1つだ。実にシンプルだよ。全滅覚悟の自爆戦術だ」
 『白魔』艦隊を構成するのは全て、強力な自爆能力を持つ高速輸送艦。
 それに強襲用の兵力を満載して敵艦隊に特攻、敵艦隊内部で輸送艦を自爆させ、その混乱に乗じて敵を強襲兵力で蹂躙する戦術である。
 要は、帰還を考えない特攻艦隊だ。
「そんな部隊にいるくらいだ。『白魔』艦隊は全員、銀河帝国皇帝に絶対の忠誠を尽くしているよ。命を捨てて、攻撃を仕掛けてる連中だ」
 解放軍には、この戦術に対抗する術がない。
「そこでだ。敵輸送艦内に転送するから、先に自爆装置を作動させて貰いたい」
 解放軍到達前の宙域で自爆させれば、被害が出るのは敵のみだ。
「コアルームにある自爆装置を作動させれば、敵輸送艦を自爆させる事が可能だ」
 とは言え、行ってスイッチを入れて帰ってくれば済む――筈もない。
「まずコアルームに直接転移は出来ない。敵艦内部の防衛戦力を撃破しながら、コアルームを目指して貰う事になる。皆に行って貰う艦の防衛戦力は、多数の小型歩行戦車だ」
 帝国が誇る万能性を持つ四足歩行式の小型戦車。
 歩兵の火器程度では破れない防御力を備えた戦力を内部防衛に回している当たり、自爆に対する覚悟が伺える。
「数はかなり多い。見つかれば戦闘は避けられない。時間がかかれば、敵はどんどん集まってくる筈だよ」
 解放軍にダメージを与えないように自爆させる為の作戦だ。
 それが可能となる宙域にも、限界がある。敵艦がそこにいる間に全滅させる事は、いかに猟兵でも不可能だろう。
「まともに全部相手する必要はない。可能な限り素早くコアルームを制圧し、自爆装置を起動させてくれば済む話だよ」
 言うほど簡単でもないだろうが、やるしかない。
 これは――猟兵にしか出来ない作戦だ。


泰月
 泰月(たいげつ)です。
 目を通して頂き、ありがとうございます。

 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「銀河帝国攻略戦」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
 銀河帝国攻略戦⑭、『白魔』艦隊のシナリオとなります。

 自爆特攻艦隊の一艦に転移して、解放軍に到達する前に自爆させちゃいましょう、と言う作戦です。
 所謂、潜入破壊ミッションです。
 フラグメントは集団戦ですが、目的は集団戦の敵を全滅させる事ではありません。
 転移した敵艦のコアルームに向かい、自爆装置を起動する事になります。
 時間をかければ、攻撃に気づいた敵が大挙して押し寄せてくる事でしょう。
 集団戦の敵と戦うのも重要ですが、『コアルームに向かう為のアイデア』も重要になります。

 また、自爆装置起動後の事は、特に考えなくて大丈夫です。
 爆発する船内からは、グリモア猟兵による転移で脱出します。

 なお、現在公開中の他シナリオとの兼ね合い、及び当方の都合で、執筆は2/15(金)夜~16(土)になる予定です。
 15日21時頃までは、確実にプレイングを受け付けられます。
 少し期間ありますので、旅団で打ち合わせなどして頂いてもいいかも知れません。
 (グループで動く場合は、グループ名をお忘れなく)
 勿論、いつも通りに、個々人でやりたいように動いて頂くのも一向に構いません。

 ではでは、よろしければご参加下さい。
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第1章 集団戦 『小型歩行戦車』

POW   :    インペリアルキャノン
【機体上部に装備されたビームキャノン】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD   :    タンクデサント
【完全武装した銀河帝国歩兵部隊】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
WIZ   :    サイキックナパーム
【機体後部から投射する特殊焼夷弾】が命中した対象を燃やす。放たれた【搭乗者の念動力で操作できる】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

死之宮・謡
さぁ、愉しい愉しい破壊の時間だ…。死兵大いに結構、逃げず恐れず私の命を取りに来い。私は痛みを恐れない、何故なら痛みを伴うレベルの強者との死闘こそが我が望み。私が痛みを覚えるのはむしろウェルカムだ!
ひたすら暴れて壊し尽くす、何時も通りだ。何も問題ない。唯、少し艦内を駆け巡って自爆装置を探してみようかなぁ?嗚呼、自爆装置を壊しに逝く私を止めに来る帝国の死兵達…心躍るねぇ?
「怪力」の「二回攻撃」で「なぎはらい」を…「呪詛」と「生命吸収」は意味無いよね?
ソレジャア最速デ駆ケ抜ケ斬リ壊ス…【鬼神血統装具・真式】展開!全滅シナ!


シュトフテア・ラルカ
自爆特攻…なんとしても止めるのです。

コアルームまでのルートを【ハッキング】【情報収集】し導き出すです。
仲間の猟兵達へ共有できるよう小型の通信機でも用意しておくです。
ルート計算を行ったら、敵が来そうな場所、ルートを急ぐ道中敵が出た場所は隔壁を操作して足止めを行うのです。
これで少しは時間が稼げるはず…。後はスピード勝負ですね。

敵と遭遇したら【クイックドロウ】で【早業】【先制攻撃】。
その際には【スナイパー】で【武器落とし】を狙い攻撃手段を奪い【二回攻撃】で中心を撃ち抜くです。
とにかく早く、確実に。時間をかけてなどいられないのです。
壊すのは自分じゃなくていい、必ず阻止してみせるです。
※アドリブ絡み歓迎


マディソン・マクナマス
自爆特攻艦に自殺同然の潜入任務、いいね。こういうスリルが堪んねぇから安い報酬で命張ってんだ。じゃ、お仕事の時間といきますか。

【猫の毛づくろい】で身体の滑りを良くし、コンテナの隙間や天井のパネル裏などに小さい身体を滑り込ませて隠密行動。物音を立てて敵を【おびき寄せ】たり電気配線の【破壊工作】などで味方の進軍を支援しつつ進む。
発見されたら戦闘は最小限に。通路の角など遮蔽に身を隠して違法改造ブラスターで牽制射撃しつつコアルームへ移動。
タンクデサントの歩兵には戦車の入れない通路にユーベルコード【手軽で便利な殺害方法】のワイヤートラップを【罠使い】で設置し足止め、【時間稼ぎ】を行う。
アドリブ・共闘歓迎


三蔵・迅
*なるべく他の方と行動
逃げ道を探り、出来るだけ戦闘回数を少なくするよう尽力
影を操り船内の偵察を行ってコアルームへの道を探しましょう
多脚の戦車といえど、その足元の影は撃てない筈です
影から影へ渡り、より厳重に守られている場所を探します

自分の他に同様の偵察系UCを使っている方がいれば協力
ルートを探っている間は周辺の索敵などで支援
自分含め、誰かひとりでもコアルームへ辿り着けるように

情報の共有は方法の発案者がいればそちらへ合わせ
もしいない場合は突入の前にインカム等の通信機器を配っておきます(可能なら)
敵の大体の移動範囲を把握できれば無駄な戦闘も回避できるはず


亜儀流野・珠
【ミケタマ】で参加だ!

自爆か…見事な覚悟ではあるが自爆はよろしくないな!
こちらも折れる訳にはいかないからな。ここで止まってもらうぞ!

ミケが呼んだ「まる」に後ろからよじ登って…
天辺(まるの頭上)に着いたら!そこから跳ぶ!
踏んだり蹴ったりして済まないな、「まる」よ!

そして「風渡り」で空中を駆けてコアルームを目指す!
天井の高い低いはあるだろうが、できるだけ高い所を移動していくぞ。狭い場所は普通に走る!
単独での先行は危険ではあるが、今回はスピード勝負だからな!

なるべく戦闘は避けつつ、避けられない場合は薙刀「狐の爪」で【薙ぎ払】い、先を急ぐ!
もし突破が無理そうなら逃げ回りながらの味方の援護に切り替えだ!


舞音・ミケ
珠と【ミケタマ】で参加するよ。

白魔艦隊…みんな頑張ってるんだから、邪魔しちゃだめ。

「まんまる猫は転がり上手」…まる、来て。
敵の前にどーんと座って壁になってもらう。
珠の発射台も兼ねるよ。いってらっしゃい、珠。

珠が飛んだらまるは転がって敵を潰しちゃって。
敵は硬そうだからゴリゴリしそうだけど我慢して…ごめんね。
私はたまに敵を踏み付けたりしながら敵の頭上をぴょんぴょん跳んで、短剣「ネコノツメ」での【早業】で脚とか手?の斬れそうな部分を斬る。
斬れなかったら蹴飛ばしたり押し倒したりして妨害。
敵を無力化しつつ先に進む。珠は追わせないよ。


リーゼ・レイトフレーズ
リュカ(人間の探索者・f02586)と同行

誰かと一緒に戦場へ行くのは初めてだけど
何とも心強いものだね
それに、少し楽しい

作戦としては
可能な限りやり過ごし
倒す時は迅速に、だ
コアルームへは「敵の警戒が厚い方向」を目指して進む
どうしてもと言う時は私の第六感で道を選ぼう
昔から直感だけは優れてるんだ

私には隠密に長けた技術はないから
そこはリュカを頼りにするよ
戦闘では両手に持ったアサルトウェポンと
SHOOTING STARで鎧無視攻撃の銃弾の雨をお見舞いしよう
もしも戦闘が長引いて敵が集まってきたら
Sphere blazarで身体能力を強化して強引に突破

少年とはいえ男の子
その意思は尊重するよ
アドリブ歓迎


リュカ・エンキアンサス
※アドリブ歓迎
リーゼ(f00755)お姉さんと一緒に潜入する

まず、大事なものは大事に守っているだろうってことで警戒の厚い方向を目指して進む
進みながらも、なるべく地形を判断したり話している人がいれば耳を済ませたり、大事なところに行くようなら追跡を試みたり。情報収集も欠かさずに
急ぎながらも慎重に急ぐ
そして、最後に悩んだときはお姉さんのカンに任せるよ
後、戦闘が必要になった場合はなるべく騒がれないように手早く始末する
逃げられないと判断したときは、俺が囮になってお姉さんを先に進ませる
別に二人で成功する必要はない。結果が良ければそれでいい

……心強いと思う反面
守らないとと思う
あんな感じだけど、優しい人だから


クーナ・セラフィン
豪快に戦力を使ってくるね、銀河帝国。
戦力に余裕があるからこその戦術なんだろうけども、
付き合わされる此方は堪ったものじゃない。
潜入して自滅させる、うん。頑張ろうかにゃー(帽子目深に被り)

狭い道や天井裏、配管や換気ダクトを通りつつコアルームへと向かう。
移動の際スカイステッパー利用し足をつける回数極力減らし隠密行動。
船内図等あれば目的地の位置を確認、なければ敵兵の来る方向から守りを固めてる場所を推測し其方へ。
見つかった場合は風花は舞い散りで一撃加え惑わしてる内に横や頭上通り抜けていく。
振り切れそうにないなら自爆装置は仲間に託し、派手に暴れて敵兵を私の方に惹きつけ援護としようか。

※アドリブ連携等お任せ



●潜入
 ガシャン、ガシャン、ガシャン、ガシャン。
 金属の床を金属の脚が歩く、人によっては耳障りともなりそうな音が響いている。
 その音を聞きながら、三蔵・迅(遠き夕の灯・f04775)は絵巻物を広げていた。
「行ってらっしゃい、小さな童。私の代わりに見ておいで」
 飛び出した影の小人が、あっと言う間に見えなくなる。それは、音を立てていた4足の機械――巡回中の歩行戦車の下に潜り込んでいた。
(「多脚の戦車といえど、その足元の影は撃てない筈――思った通りですね」)
 共有し伝わってくる小人の五感――視覚を地獄可させた両眼で受け取りながら、迅は戦車の動きを計る。
「今です」
 そして迅の合図で、ほとんど音もなく、数人の猟兵が歩行戦車にが忍び寄った。
 並みの火器を弾く装甲が、幾つもの刃に切り裂かれて沈黙する。
「確カニ、中々硬イ……ダケド、斬レナイ程ジャアナイ」
 装甲を砕いて搭乗者すら屠った黒壊槍――大薙刀を、死之宮・謡(狂い果てし王・情緒不安定の狂戦士・f13193)が引き抜くと、戦車が崩れ落ちる。
「さてと。情報いただくですよ」
 その装甲の割れ目に、シュトフテア・ラルカ(伽藍洞の機械人形・f02512)がてんとう虫型のハッキングデバイスを取り付けた。
「艦の見取り図はないですね……」
 おそらく無意識に眉間を寄せて、シュトフテアが呟く。
 まあ、自爆特攻の艦だ。万が一、残骸が残らないとも限らない。情報は少なくしておいてもおかしくはない。
「大事なモノは、大事に守っているだろう」
「敵の警戒が厚い方、判る?」
 リュカ・エンキアンサス(人間の探索者・f02586)とリーゼ・レイトフレーズ(Existenz・f00755)に、ちょっと待つです、と返してシュトフテアは情報を抜いていく。
「巡回情報からすると、警戒が厚いのは、艦橋か艦底なのです」
「――カンだけど。下だと思う」
 シュトフテアの言葉から殆ど間を置かずにリーゼが上げた一言に、視線が集まった。
「昔から直感だけは優れてるんだ」
「俺はお姉さんのカンに任せるよ。とりあえず進んでみて、足りない情報を途中で集めて確かめればいい」
 リーゼの援護に回ったリュカの一言も尤もだ。
 今ある手札だけで確定出来ないのなら、議論は結論に辿り着かない。
 先ずは進むべき。

 誰かがコアルームに辿り着けばいい。
 それぞれに別れて猟兵達は白魔の敵艦の中へと進んでいく――。

●猫の道
「この艦を自爆に使おうっての? 豪快に戦力を使ってくるね、銀河帝国」
 狭く薄暗い空間に、クーナ・セラフィン(雪華の騎士猫・f10280)の感心と呆れとが混ざった声が響く。
 その声に、返す者は誰もいない。
 クーナが1人進んでいるのは、所謂天井裏だった。
 歩行戦車を避けて行くなら、最適なルートの1つだろう。
 とは言え、行けども行けどもゴールが見える気がしないのだが。
(「このくらいを使い潰せる余裕があるからこその戦術なんだろうけど」)
「頑張らないとにゃー」
 しかし呟いた言葉とは裏腹に、クーナの前には壁が立ちはだかった。
 周りには、何の為のものか良く判らないパイプが走っており、その向こうはまた別の壁がずっと続いている。
 こうなると、道は戻るか下に出るしかない。
「飛び降りたら敵のど真ん中……なんてことにならないといいんだけどね」
 呟いて、クーナは床――どこかの天井を蹴破る準備を始めた。

●スリル
「へっ。そう来たか」
 誰もいない通路に、酒焼けした声が響く。
 マディソン・マクナマス(アイリッシュソルジャー・f05244)の前には、乱雑に積み上げられたコンテナが道を塞いでいた。
 使っているのは輸送艦と言う話だった。
 こう言うものがあるのは、マディソンにとっては予想の範囲だ。
「隙間は僅か……迂闊に動かしゃ崩れ兼ねない……良く考えてるじゃねえか」
 独り言を呟きながら、ぼさぼさの毛並みをペロペロと舐めていた。
 ひとしきり舐め終わると、マディソンはぐびっと酒を煽って――コンテナの隙間に、音もなくするりと入り込んだ。
 極限まで摩擦を減らし僅かな隙間もするりと抜けていく。
 毛並みを舐めたのは、その為だ。身嗜みではない。
(「ま、こうやって調子よく抜けても、その先に敵がいたら、俺1人で何とかしなきゃならんわけだが――そういうスリルが堪んねぇから、安い報酬で命張ってんだ」)
 胸中で呟くマディソンの口元が、ニヤリと釣りあがり――すぐに解けていった。
「……誰もいねぇのかよ。まあ、その方がいいんだが」
 ガランとした通路に出たマディソンは、拍子抜けしたように言いながら、警戒を緩めずに先へと進んでいった。

●銃火
 敵の警戒が厚い方に進むという事は、敵に見つかるリスクが高いと言う事でもある。
 十字路や角では脚を止め、不意の遭遇に警戒し、目立たぬように進んでも、避けられない敵も当然出てくる。
「一体だけか。此処は突破するしかないね」
 両手に2丁の銃を構えてリーゼの提案に、リュカが無言で頷く。
 そして、2人は緑瞳と青瞳で同じ敵を見据えて、同時に飛び出した。
『っ――侵入者だと!?』
 反応した戦車が、機体上部のキャノンを慌てて向ける。
 ――ターンッ!
 だが、そこに甲高い銃声が響いて、機体後部に伸びたキャノンのアームが壁に跳ね返ってきた弾丸に撃ち抜かれた。
 地形を利用した兆弾を放ったリュカが、まだ硝煙を上げている『灯り木』の銃口を無言で下ろす。
 その隙を逃さず、リーゼが戦車に間合いを詰めて左右の銃口を向ける。
 ズドンッ!
 至近距離で放たれた弾丸は、戦車の装甲の強度を無視して撃ち抜いていた。

●猫の橋
「いるな」
「いるね」
 亜儀流野・珠(狐の恩返し・f01686)と舞音・ミケ(キマイラのサイキッカー・f01267)が見下ろす先には、巡回中の戦車は1台。
 2人は出来るだけ天井に近いところにある、おそらく整備用の細い通路を見つけてそれを進んでいた。
 だが、通路は一旦途切れて、しばらく先にまた現れている。
「俺は跳べるけど……ミケいけるか?」
「珠みたいに跳ぶのは無理。でも、まるなら届く……来て」
 ずしんっ。
 ミケの召喚した巨大な猫の霊が、歩行戦車を足で潰していた。
『な、何だこの化け物……未知の宇宙怪獣か!?』
「失敬な」
「ほっとけ。行くぞ、ミケ」
 踏まれたまま、じたばたともがく戦車を尻目に、珠とミケはまるの背中を悠々と渡って行った。

●目指す場所
『侵入者発見!』
『狙いはコアルームの模様!』
 敵艦の中を飛び交う通信。
(「聞かせてもらってるですよ」)
 それらは、ハッキングによってシュトフテアに筒抜けになっていた。
「コアルームに伝えるのを止めるのは、間に合わないですね」
 その後ろでは、迅が先行させた小人からの視覚情報を伝える。
 情報を探り、偵察を重視し、出来るだけ戦わない道を探す――不要な戦闘を避けるというのは大半の猟兵が考えていた事だが、2人は特にだった。
 自然、2人は即興で組んで動いていた。
『念の為だ。コアルームまでの隔壁を閉じろ』
『そ、それが……隔壁が反応しません』
『なにぃ!?』
「隔壁はこっちで押さえたです……コアルームの位置も判ったのです」
 シュトフテアがコントロールを奪った隔壁は、敵がコアルームまでの通路を塞ごうとしたもの。つまり、それこそが道だ。
 シュトフテアが逆探知を回避する為に、壁から『こくしねるくん』を取り外す――と同時に、赤い警告灯が艦内のあちこちで明滅し始めた。
「三蔵です。コアルームの位置が判りました。艦底の――」
 迅の口が、少し早口でその報告を他の猟兵達に通信した。

●真紅の鬼神
 居並ぶ歩行戦車達。
 機体上部の砲口が幾つも向けられ、光が放たれる。
「ソウダ! モット撃ッテ来イ! 私ニ痛ミヲ感ジサセテミセロ!」
 光が放たれると同時に、謡が床を蹴って飛び出した。
 避けきれず掠めた光が肩を焼くのも構わず、痛みを怖れず敵の攻撃を掻い潜り、謡は歩行戦車群の前に踏み込んで、大薙刀を振るう。
 機体の装甲と刃がぶつかり、絶叫のような甲高い音を鳴らして火花を散らす。
「ッ!」
 刃が弾かれた刹那、謡の腕に、力が篭る。発揮した怪力で刃を押し戻し、一撃目で削った傷の上から突き刺して、貫いた。
『くそっ――歩兵部隊、出ろ!』
『警報を鳴らせ! 数で押さえ込め!』
 完全武装の歩兵部隊が現れ――さらにその直後、通路に赤い光が瞬き出した。
 その光は、艦内の至る所も警告の赤で照らしていた。
『――コアルームの位置が判りました。艦底の――』
(「本命は任せるか」)
 その通信を聞いて、謡は嗤っていた。こうなれば、やることは一つだ。
(「ひたすら暴れて壊し尽くす。私は何時も通りやるだけだ――心躍るねぇ?」)
 謡がこれまでやって来た事――唯一出来る事。
「我ガ身ニ宿リシ魔ヨ――吼エヨ――鬼神血統装具・真式、展開!」
 謡が鎧の様に纏うは、紅。魔の溶け込んだ血。
(「自爆装置を探してる振りもしておくかなぁ?」)
「ソレジャア、最速デ駆ケ抜ケ斬リ壊ス……コノ艦ノ自爆装置諸共、全滅シナ!」
 告げて、床を陥没させる勢いで飛び出す。
 謡が振るった双つの刃が、今度は先ほどよりも易々と戦車の装甲を切り裂き、放たれた血の刃が歩兵部隊を蹴散らした。
「死兵、大いに結構。私の命を取りに来い。愉しい愉しい破壊の時間だ」
 狂気が高まり、饒舌になった謡がニィと笑う。
 その姿は、正に真紅の鬼神だった。

●決着の時
 そして――猟兵達の道行きと、その結果が収束する。

 ガンッ! ガン、ガンッ、ガンッ――ガゴンッ!
 中から蹴破られた天板が甲高い音を立てて、床に落ちてきた。
「よっと」
 騎士然とした羽根付き帽子を押さえ、灰色の毛並みを揺らしながら、クーナが空中を蹴って勢いを殺しながらふわりと降り立つ。
 大量の歩兵戦車の目の前に。
「やれやれ――仕方ない。派手に暴れるとするかねぇ」
 その向こうに扉を認めて、帽子を目深に被り直す。
 逡巡はなく、クーナが白雪と白百合の銀槍を構える。
「さて。挨拶は抜きだ――こんな趣向はどうだい?」
 突いた槍から放たれる、雪混じりの花吹雪。冷気が機体を凍らせ、舞う花弁が搭乗者を幻惑させる。
 ヴァン・フルール――その銘の通りの花風の一撃が、戦車の動きを封じる。
『ナパームを撃て! 巻き込んでも構わん!』
「自爆なんて考える連中が、犠牲を惜しむ筈もないか……本当に、付き合わされる此方は堪ったものじゃない」
 小さな溜息混じりに呟いて、クーナが放つ第二撃。
 だが、歩兵戦車はまだまだいる。全てを凍らせ封じるには、圧倒的に手が足りない。
 そこに迸った光が、別の歩行戦車の足を撃ち抜いた。
「自爆特攻は必ず阻止してみせるのです」
 ふぉこんくんを構えたシュトフテアが、そこに駆け寄ってきた。
 機体後部を向けさせないよう、シュトフテアは立て続けの早撃ちで、戦車の足を熱線で撃ち抜いていく。
「やれやれ。肉体労働は苦手なんですよ」
 呟いて、迅は手を使わずにサイキックで鉄剣を振り回す。切れ味のなく重たい剣で、ガゴン、ガゴンと足を撃たれた戦車を叩いてバランスを崩していく。
『くそ、歩兵を足せ! タンクデサントを呼べ!』
 歩兵戦車の数体が、そんな指示を飛ばした。
 寡兵と見て、数で押し潰す気だろう。
 細い通路から、完全武装の歩兵が現れ――猫と狐と猫も、現れた。
「邪魔」
「追いついたぜ」
 ミケがピョンピョンと敵の頭を踏みながら。珠は完全に頭上を跳び越えて。
「新手はお呼びじゃねぇんだよ」
 敵歩兵の隙間を抜けて来たマディソンは、すり抜けるその間に大量のトリップワイヤーを歩兵達に仕掛けていた。
「――KABOOM!」
 マディソンが問答無用で引っ張ったワイヤーに連動して、歩兵達に取り付けた簡易爆弾が一斉に爆発した。爆炎がマディソンのサングラスを照らす。
「……まる、来て」
 再び、どーんと降り立つ巨大な猫の霊『まる』。
「じゃ、いってらっしゃい」
 そうミケが珠を促した所を、戦車のナパームが『まる』に撃ち込まれた。
 『まる』は平然としているが、これでは登れない。
「でかいのが増えやがったか!」
 またスリルを感じているのか。少し声の調子を弾ませるマディソンの視線の先で、ガシャンガシャンと向かってくる歩行戦車達。
「――もう敵が集まり出してるか。強引に止めるしかないね」
「別に俺達が、コアルームに行く必要はない」
 丁度その間に、リーゼとリュカが飛び降りてきた。
「ところで……楽しい? 笑ってる様に、見える。少しだけ」
 降り立った所でリュカに尋ねられ、リーゼが少しだけ目を丸くする。
 確かに、少し楽しいと感じていた。
 誰かと一緒に戦場へ行くのは初めてだったから。
「なに。心強いものだな、と。君は私にはない技術があるし」
「……それは俺もだ」
 それを聞いたリュカは、表情を変えずに頷く。
「だから援護は任せて。お姉さんのやりたい様に」
 リュカの言葉に頷き返して、リーゼが目を閉じ息を吸い込んだ。
「焦熱を喰らえ、
 星光を穿て、
 黒き愛憎を飲み干せ」
 響く詠唱――そうはさせじと敵の歩兵と戦車が向けた砲口、その全てが、リュカが放った弾丸に撃ち抜かれた。
(「守らないと。あんな感じだけど、優しい人だから」)
 心強さを感じる半面、リュカの胸に去来していたのはそんな想い。その意思が、常を超えた先読みを発揮した上での援護射撃。
 少年なりの矜持とも言えるようなその意思を、リーゼも感じていたから、目を閉じて背中を預けたのだ。
「尊き輝きを見せてみろ―――Sphere blazar」
 そして、術式が完成する。
 炎、星、黒。
 異なる3種の魔力を纏ったリーゼが、敵戦車に向かって駆け出す。至近距離から『SHOOTING STAR』を自動装填に任せて撃ちまくって、弾丸を雨と浴びせていく。
「今の内だな」
 今度こそ、『まる』のもっふもふの背中をよじ登って、珠がその頭上に到達した。
「踏んだり蹴ったりして済まないな、『まる』よ! 跳ぶぞ!」
『んなぉ~』
 まるがやる気なさそうに鳴き返すと同時に、珠はその額を蹴って飛び出す。
 そして、何もない空中をまるで足場があるように何度も蹴って、驚く敵兵の頭上を跳び越えて行く。
『う、撃て! コアルームに行かせるな』
「……みんなも頑張ってるんだから、邪魔しちゃだめ。まる、転がって」
 珠を撃ち落とそうと遅れて敵が構えるが、そこにミケが一言告げた。
『なぁおーん!』
 一声鳴いて、巨大猫がごろーん。
 さらに、ごろんごろーん。
 歩行戦車よりも大きくまん丸な巨体が、ごろんごろんと敵をもみくちゃにする。これが公園だったら、気持ちいいんだろうなぁって感じの転がりだ。
「珠は追わせないよ」
 ひっくり返った戦車が立てないよう、その足にミケがネコノツメを突き立てる。
(「6――5――」)
 空中を蹴れる数にも限界がある。コアルームに飛び込んだ珠は、その残数を胸中で探りながら視線を巡らせていた。
『一番奥にある赤いスイッチが自爆装置です』
 耳の奥に届く、迅の声。小さな影が、奥で手を振っている。
(「4――3――」)
『く、来るな!』
 その前に、僅かな歩兵が立ち塞がる。
「見事な覚悟ではあるが、解放軍を巻き込んでの自爆はよろしくないな。ここで止まって貰うぞ!」
 そんな彼らを跳び越えて、珠が伸ばした薙刀の石突が、赤いスイッチを押した。

 ビー! ビー! ビー!

 艦内に、耳をつんざく警報音が響き出す。
『自爆シーケンス、開始。キャンセルハ受ケ付ケズ――白魔、任務ヲ果タセ』
 淡々と告げる機械音声。
 呆然とする敵兵を尻目に、猟兵達は撤退を始め――ズガゴォンッ!
 突如、派手な音と共に、天井が崩落してきた。
 落ちてきたのはボロボロになった歩行戦車の残骸と――真紅の鬼神。
「終わったんだろう? 登った方が、近いぞ?」
 嗤う謡が立つ残骸を、猟兵達は登っていく。通路を駆け抜け、来た道を戻り、転移でグリモアガードへ――。

 それから十数秒後、白魔艦隊の一艦が宇宙に散った。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年02月17日


挿絵イラスト