0

銀河帝国攻略戦⑯～激闘！騒乱節

作者：数巴トオイ

●敵が来たかとレーダーに問えば
　ドッコイショッ！
　ハッソイヤッサッ！
　ハァッ騒乱騒乱！　イィィイイイヤッハッ！

　大漁を予感させるような、軽快かつ力強い音楽が鳴り響く。
　どこから仕入れたのか三味の音。太鼓の響き。笛のメロディ。
　銀河を揺るがす大爆音。
　これは、オブリビオンの操る宇宙戦艦に備え付けられた巨大スピーカーから流れるものだ。
　当然。意味もなくこんな音楽を響かせているわけではない。
　これは人類解放軍の船へも届いてくるわけで。

「艦長、船員達が！」
「ええい、どうなっているのだ！」
　人類解放軍では阿鼻叫喚の地獄絵図が広がっていた。
　音楽に感化された船員達は、まるで踊り狂うかのように、箱は投げるわ、滅茶苦茶にボタンを叩くわ、ロープがあれば引っ張るわ。捕獲用ネットでデブリを捕まえて「大漁ダー！」と騒ぐわ、もうやりたい放題である。
　確かに、オブリビオンの船から響いてくるリズムは、思わず踊りだしたくなるような気持ちの良いものではあった。しかし、それとこれとは別の問題だ。
　間違いない。あの音楽には、人類を洗脳するような何かがある。このリズムに名前をつけるとしたら――。

●グリモアベースにて
「騒乱節、といったところかしら」
　井筒・大和は嘆息した。
　人類が行動不能になる恐るべき兵器、それこそ音楽。
「並の人間が聞けば、意味もなく踊ってしまう。そして周囲のものを破壊してしまうみたいね。でも、猟兵なら、それに耐えられるみたいよ」
　というわけで。大和が取り出したのは、全員分の法被と鉢巻だった。
　これが、今回の局面で大事な武器になるというが。
「音楽には、音楽で対抗するのよ！　演奏してもいいし、踊ってもいいし。あ、でも雰囲気出すためにこれを着てねん。きっとカッコいいわよぉ～」
　いつの間に用意したというのか。
　法被の背面には「大漁」と記されている。
「敵以上に盛り上がる音楽とパフォーマンスを披露すれば、船員は正気に戻るし、敵は撃破できるし、いいこと尽くめネ♪　あ、鳴子がほしいコは言って頂戴な」
　直接敵戦艦に乗り込んでの戦闘ではない。
　今回は音楽で勝負。
　オブリビオンよ、これが猟兵の騒乱節だ！！　ハァッ、ドッ、コイ、ショッ！！

第1章 冒険 『洗脳音楽通信を撃ち破れ！』

POW   :    激しいビートで、魂を揺さぶり、洗脳音楽通信の影響を撃ち破る。 SPD   :    超絶的な技巧で、聴く者を圧倒して、洗脳音楽通信の影響を撃ち破る。 WIZ   :    心に響く歌声で、感情を揺り動かして、洗脳音楽通信の影響を撃ち破る。 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

●和心三味の音響かん哉
「これでびーととやらを刻めばよいのだな」
「ちょいとそこのを借りるよ！」
　和ビートと聞けば黙っていられない。春日・ひなの（花散らし・f10274）は三味を手に用意された法被を羽織り、意気揚々と甲板へと駆けてゆく。
　同じく、音楽は魂の表現と自負する数宮・多喜（f03004）はオブリビオンの船から流れる音楽に怒り心頭だ。あのような合成で作られた機械音に、本物の音が負けるわけにはいかない。
　戦場を縦横無尽に駆け回る羅刹としてではなく、ギター片手に流離うライダーとしてではなく、今ここにいる二人は、和の心にて三味を持つ魂の奏者だ。
　甲板に出てみれば、確かに、正面に対峙するオブリビオンの戦艦からは騒乱節が聞こえてくる。リズムそのものは、確かに体を揺さぶる軽快さがある。
　しかし。
「それでは、魂が」
「揺さぶられねェんだッ！」
　大漁法被を翻し、二人は三味を構えた。
　合成でもなければ、偽者でもない。真なる和心にて奏でる、熱いSoulのセッションだ！

　テンテン
　　テンテケテテン
　テケテンテテテンテン

　続け続け　勝ち名乗り上げ
　歌え歌え　武勇をその手に
　待つは祝の酒か肴か
　待つは家族の笑みか宴か
　さあ　戦場で舞え　どっこいしょ！

　ひなのの歌が、多喜の奏でる三味に乗って響き渡る。
　スピーカーによって増幅されたそれらの音が、生の音楽が、銀河を揺るがしてゆく。
　敵艦のスピーカーから火花が散るのが見えた。効いている！
「純和製ジャズ、舐めんなよ！」
　三味からバチに持ち替えた多喜が、今度は和太鼓を力強く響かせる。
　その響きに合わせて、ひなのが三味を奏でる。
　戦いだ。大漁だ。それ、はっ、どっこいしょ！
「うぉぉおおおどっこいっしょー！」
「騒乱騒乱！！」
「ソイヤソイヤソイヤッ！！」
　すると。
　戸が開かれ、甲板に躍り出てきた者達がいた。
　船内にて敵の洗脳を受け、好き放題暴れていた乗組員達だ。

　ドンドンテケテン
　ドドテンッ
　テケテンドドドン
　ドンテテテン

　鼓の打つ響きに三味の流れ。
　それに合わせて踊る船員。
　彼らの一部は、ひなのと多喜の魂を込めた演奏によって正気を取り戻したのだ。
　甲板を覆う熱狂の渦。
　そうだ。これだ。これこそが人類の持つ魂のメロディだ。
　よく聞けオブリビオン！　これぞ何者にも負けぬ猟兵の、人類の力だ！　ハッドッコイショッ！！

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

●わくわくアニマル騒乱節
　猟兵の第一陣が掃けた後、甲板には無人のままドラムの音が響く。
　それは、次なる猟兵の登場を期待させるものだった。

　ドンッドンッドドンッ
　ドンッドドンッ
　にゃーっ！
　ドンッドンッドドンッ
　ドンッドドンッ
　そいやっ！

　ここからギター、そしてヴィオラの音が流れ出す。
　甲板が左右に開いたかと思うと、地面が競り上がり、下から猟兵の姿が覗いた。
　メンバーを紹介しよう！

　口と前足にスティックを持ち、器用にそして力強くドラムを叩く白狼！
「ァオーーーンっ！」
　ドドンッドンッダダダダッ。

　ギターを抱え、熱く、そして熱く！　掻き鳴らすのは雷獣護理雷！
「うほっ」
　ヴィイインッグィゥォオオォンッ。

　ヴィオラを抱え、愛らしく、そして精一杯に音を響かせるケットシー、ロアー・アレグリアス（f02956）！
「さあ、我の準備は万全だぞ！」
　キュゥゥウウウンッビロロフォーンッ。

　最後はピアノとボーカルの妖狐。ベール・ヌイ（f07989）！
（歌は苦手だけど……やってみる……）
　ポロン。タラララン。

　ここに、狼、ゴリラ、猫、狐とそろった。
　聞け、オブリビオンよ！　これがアニマル騒乱節だ！！

　大漁法被を羽織った白狼が、護理雷が、ロアーが、激しく情熱的に楽器を鳴らす。
　幼く舌足らずなベールの声が、メロディに乗る。
　曲調はロック。騒乱ロックだ！
　甲板の動物園。見る人が見れば癒されること請け合いのアニマルロック。
　演奏が乗れば乗るほど、敵艦のスピーカーに火花が散る。
　しかし、白狼と護理雷はベールの召還した獣。
　ロアーはそこに即興で混ざるような形だ。
　だが、このケットシーと妖狐は相性が良かったのだろうか。

　にゃー！　にゃー！
（にゃー、にゃー）
　どっこいにゃー！　どっこいにゃー！
（どっこいにゃ、どっこいにゃ）
　騒乱！　騒乱！
（そうらん、そうらん）

　その場でリズムも歌詞も合わせ、二人と二匹のセッションが魔法のように溶け合っていく。
　すると。彼らの背後でも甲板が開き、下から何かが上がってくる。
　それは、またも洗脳から解放された、乗組員の皆さんだった。
「解放軍よ、今一度立ち上がり、そして我ら猟兵と共に躍り戦え！」
　ユーベルコード【トリニティ・エンハンス】で自らに炎を纏ったロアーが檄を飛ばす。
　するといくつもの応の声。

　にゃー！　にゃー！
（にゃーッ！　にゃーッ！！）
　どっこいにゃー！　どっこいにゃー！
（どっこいにゃーッ！　どっこいにゃーッ！！）

　いつからか、ボーカルとコーラスが入れ替わった気がする。
　だが、見るが良い、オブリビオンよ。聞くが良い、オブリビオンよ。
　これがアニマルロック騒乱節だ！！

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

●舞い踊れ！　感動のフィナーレへ
　合成音楽では、やはり生演奏には敵わないということだったようだ。
　銀河帝国軍の抱える洗脳音楽を垂れ流す戦艦はそこかしこから火花を散らし、最早虫の息といったところだ。
　これにトドメを刺すべく甲板へ上がった三人の猟兵を紹介しよう。
「たまにはパーッと派手にやらせていただきましょうか！」
　ツインネックギターを手に、ディスターブ・オフィディアン（f00053）は最高のパフォーマンスを披露せんと意気込む。
　黒き外套を身に纏い、弦を掻き鳴らすその姿は見る者聞く者を戦慄させ、同時に魅了するに違いない。
「フハハハ！　ダークでテクノな我の演奏を見よ！」
　己が武器である武装収容棺「ヘカトンケイル」を即興で電子オルガンに改造したシャレム・アルカード（f09897）の奏でるメロディは、不協和音を敢えて取り込んだ邪教のソレだ。
　ディスターブと並んで演奏する姿は、一見デスメタルライブのようでもある。
　そして。【D.D.D～魅惑のダンディ】と【Peace】でバンドメンバーとコーラス体を召喚したフローライト・ルチレイテッド（f02666）が甲板に立つ。
「塗り潰せ、絶望を！　そして塗り替えろ、この世界を！」
　三人の猟兵（＋特別ゲストメンバー）が繰り広げるライブ。
　あぁ、一つ訂正せねばならない。これはデスメタルではなく、ハードロックだ。え、違いが分からない？　音楽って難しいね。
　一人は全身黒で固めた猟兵、一人は明らかなダンピール、そしてもう一人はツノのあるキマイラ。
　偶然とはいえ突き抜けた方向性がマッチした三人。
　耳をつんざくような、それでいて驚異的な中毒性を秘めた響きが銀河に木霊する。
「音楽は視覚やライブ感もあってこそ。ここからは、私のステージです」
　即興で曲調を合わせていた彼らだが、途中、ディスターブが一歩抜き出るように甲板の前へ。
　他のメンバーも一瞬にして彼の行動を理解したか、それぞれが楽器の音を落とす。
　そこからツインネックギターが唸りを上げるように、ハイテンションなソロパートへと入った。
「なるほど、悪くない。だが、正面から打ち破るのは我の好むところだ！」
　続いてシャレムが音を上げる。
　バンドのライブにおいてギターバトルが行われることはあるものの、ギターと電子オルガンのバトルはかなり新鮮だ。
　ディスターブが音を上げた次には、シャレムの電子オルガンが派手に旋律を響かせる。
　交互に広がる音の応酬。
　その度、オブリビオン戦艦の火花が激しく散ってゆく。
　最早敵方は洗脳音楽を流すための装置まで壊れてしまったらしく、この一帯の音といえば、彼ら猟兵達のハードロックだけとなっていた。

　星々の悲鳴が　響き消えたこの世界に
　蘇る悪意が　またしても迫る
　荒れ狂った滅びから生き延びて　暗闇の宇宙を貫いて
　希望を　未来を　護り抜け！

　そこにフローライトの歌声が乗れば、乗組員が続々と甲板に上がってくる。
「歌おうぜ、俺達は世界を塗り替えていく！」
　それは、仲間へ向けたメッセージか、それとも歌詞か。
　いずれにせよ、それは人類解放軍にとって最も心強い言葉だったに違いない。
　さぁ。新世界への扉は目の前だ。
「「「Evolution New World！」」」

●騒乱収束
　全員の声が重なり、一つの節を放った時。
　正面に対峙していた銀河帝国軍の戦艦が大爆発の果てに消えた。
　歌で繋いだ絆。音で開いた道。
　それが、人類の見る新たな世界へと繋がっているに違いない。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

最終結果：成功 完成日:2019年02月17日