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銀河帝国攻略戦⑮~Giant-Killing

#スペースシップワールド #戦争 #銀河帝国攻略戦

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●大物食い
「皆の力を貸して欲しい。それも、超常の力を、だ。厄介な敵が現れやがった」
 スペースシップワールドで巻き起こる戦乱の嵐は、その規模を増して暴力と死をまき散らしていく。
 エンペラーズマインドも破壊して、敵よりも数で勝る解放軍艦隊は猟兵たちの助けを受けて敵の本陣へと逆進行を開始した。
 しかし、解放軍の快進撃を食い止める存在がある。
「その名は『白城』艦隊。帝国宇宙戦艦による大艦隊だ。この艦隊は他の敵よりも練度が高く、正に精鋭といえる強さを誇っているらしい。敵もそろそろ本気を出してきたらしいな」
 『白城』艦隊の恐ろしい点は、解放軍と比肩して圧倒的に上回るその練度と士気である。精鋭揃いのその艦隊が一糸乱れぬ正確な艦隊移動で宇宙の闇に並び、解放軍の攻勢を凌いだ上で的確な反撃まで行うというのだから溜まったものではない。
 このままの流れが続いてしまえば、いかに数で上回る解放軍といえども徐々に敵にペースを握られ、先に崩壊してしまうのは解放軍の側であろうことは疑いようのない事実であった。
「だが、俺は信じている。お前ら猟兵たちの力……超常の力って奴をな」
 だからこそ、この作戦に猟兵を募るのだ。戦線崩壊を防ぎ、更に敵の精鋭部隊を突破して押し返す。そんな無理、無茶、無謀に聞こえる作戦こそ、猟兵たちの腕の見せ所だ。
「これまでの戦いで、帝国軍の優秀な前線指揮官を特定する事には成功している。後は、『白城』艦隊の前線指揮官が登場している艦をぶっ潰してやるだけだ」
 今回の敵は、帝国の制式戦艦のみで構成された精鋭艦隊。宇宙空間を走り、駆け、敵の迎撃と艦砲射撃を掻い潜りながら近づいて、敵の戦艦に直接ダメージを与える必要があるだろう。
 敵の艦に直接乗り込むという事も不可能ではないが、今回の敵艦は相当な練度を誇っている。潜入や乗り込む作戦を用いるならば、何かしらの工夫がなくては厳しいはずだ。だが、腕に覚えがあるのなら試してみるのも悪くない。
「重ねて言うが、今回の敵は精鋭だ。もしも以前に他の艦隊を破壊することに成功した作戦があっても、もう一度練り直した方が良いかもしれねえな。迎撃のための全砲一斉射、他の艦隊より強力な主砲、極めつけに自身の稼働可能時間を犠牲に艦の戦闘力も高めて来やがる。今回の敵は自分自身が動ける上に強い、そんな艦艇だ。油断のないようにな」
 正純はそう言って締めくくると、猟兵たちに頭を下げる。
「厳しい作戦ばかりを指示しちまって申し訳ねえ。だけど、お前らの力があれば叶わない作戦じゃないはずだ。健闘を祈るぜ。見事な番狂わせを見せてやれ」
 作戦が始まる。文字通り、大物食いの作戦が。猟兵たちの、腕の見せ所だ。


ボンジュール太郎
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「銀河帝国攻略戦」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
 そんな感じです、艦隊戦だー! 今回はガチガチに動ける宇宙戦艦とのバトルになりますね。油断せず、敵の精鋭をぶっ潰してカッコよい活躍を見せてやってください。私も、皆さんの活躍をかっこよく書けるように頑張ります。

 【アドリブについて】
 アドリブや絡みを多く書くタイプであることを強く自覚しています。
 アドリブ増し増しを希望の方はプレイングの文頭に「●」を、アドリブ無しを希望の方は「×」を書いていただければその通りに致します。
 無記名の場合はアドリブ普通盛りくらいでお届けします。
222




第1章 ボス戦 『帝国宇宙戦艦』

POW   :    フルバースト・コズミック
【全砲一斉射撃】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD   :    デストロイレーザー
【10秒間のエネルギーチャージ】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【主砲からのレーザー砲撃】で攻撃する。
WIZ   :    インペリアル・マカブル
【自身の稼働可能時間】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【帝国式鏖殺形態】に変化させ、殺傷力を増す。
👑15
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ビードット・ワイワイ

見たり見たり見たり、汝の破滅を見たり。誇りし火力は全てを屠り阻む全てを薙ぎ倒さん。残りし戦場屍山血河。残りし怨念食らいて挑む。我らの覚悟に瞠目せよ。

全仮想破滅補助具の【封印を解く】。その真の破滅、そして命を削る【覚悟】を見るが良い。かつてここにて散り、破滅した解放軍の戦闘機群を放出せり。これらと共に【空中戦】を仕掛けよう。これらの【呪詛】を見るが良い。【捨て身の一撃】食らうがよい。

我も【誘導弾】を【一斉発射】し【援護射撃】兼【範囲攻撃】を行いて一切を【なぎ払い】けり。

我ら汝に破滅させられし亡霊なり。亡霊は口無し、言葉無し。ただ汝に返報しよう。これにて怨みは終わりけり。


アシェラ・ヘリオース
●WIZ
「白城か……流石は最精鋭。水際立った動きだ」
奇妙な満足感を覚え、呟く。
だが帝国の夢は終わっている。
今の帝国が如何に勝利を重ねようが未来はもう来ない。
故に終わらせる。

【黒騎招来】で戦闘兼広範囲偵察ユニットを戦場の各所に配置し、指揮を執る。
「中距離を保て。一斉射撃には後退、チャージには間合いを詰めて対応しろ」
指揮のコツは難しい事を言わない事だ。
黒騎を指揮し白壁に対応する。火力はないが、動きの機微を見せれば他猟兵達ならすぐに模倣・応用する事だろう。

「インペリアブル・マカブルだ。火力は向上するが、攻撃パターンは大差ない。落ち着いて対応しろ」
塵殺形態になれば、自身も赤光の剣を出て前線に出よう。


神羅・アマミ

単身で戦艦落としてこいとか前も無茶言われた気がするが、今回は更にデカい奴とやらされるのか!?
どうかしとるのー。

そして、かつての小細工が再び通用すると思うなと言われると、妾の方も最早あれこれ策を弄するのはやめじゃ、やめ!
正々堂々と真正面から特攻し、派手に散ってやるんじゃよー!
勿論、ただ犬死するためだけにヤケクソ起こしたわけではない。

コード『緞帳』により自らの身体能力を限界まで高め、接近を試みる。
激しい砲火に晒され続けても、殺しきれぬと見れば奴らはやがて【鏖殺形態】の封印を解かずにはおれぬじゃろう。
妾が直接艦を叩くには至らずとも、自ずと活動限界時間を迎えさせれば勝ちという、ここは我慢比べじゃー!


ルベル・ノウフィル
●pow
僕の新しい技を披露するチャンスでございます

ご覧ください、「UC墨染」
後方支援だけのワンコから立派な人狼へと進化を遂げる!

えっお相手は艦隊?
えっと。連携希望です(弱気)

仲間と協力して勝利を掴むのでございますぅ!わぅ

僕は第六感で攻撃を避けつつ味方と連携して攻撃します
遠距離では彩花、接近できたら墨染で斬りつけます

味方が傷を負ったら
回復UC星守の杯で癒しましょう

宇宙に降り注げ、金平糖!

僕は真面目でございますぅ……


才堂・紅葉
【●SPD】
初手で【蒸気王】を召喚し、蒸気バイクごと取り込まれて内部操縦します。
全長15m程の武骨な蒸気ゴーレムで背中にごついブースターがある型式です。

「ったく。弾幕濃いわね。踏み込む隙が中々無いわ」
相手の一斉射撃の間合いの外から、主砲に注意して巨大アサルトライフルで攻撃し、榴弾を重ねる。
ダメージの手応えはあるが相手がでかすぎる。
隙有らばチャージの隙間に突進し、体当たりでの質量攻撃でダメージを稼ぎたい。

塵殺形態に入ればお互い潰し合いだ。味方を庇って盾になりながら、隙を見て装甲をパージして身軽にし、装備のパイルバンカーで艦橋か主砲にUC特攻をかけたい。
無論、激突の直前に蒸気バイクで離脱します。


ネグル・ギュネス
●連携歓迎

期待には応えねばなるまい
征くぞ皆、大逆転、ジャックポットを見せてやろうか!

私の、私達の走りに勝てると思うなよ!
SR・ファントムを駆り、【騎乗】【操縦】で撹乱して見せる
時に【残像】を残す加速で、敵の射撃を欺いていく!

ユーベルコード・【幻影疾走・速型】でさらなる加速をしながら、刀を振り回し、敵を薙ぎ払い、【衝撃波】をも放って蹴散らす!

多少砲撃が掠めても止まらない
ファントムも、俺も、傷付くのは慣れている

命懸けで突っ走って、星のように駆け抜ける!
我らが疾走、誰にも止められぬ!

覚悟しろ、クソッタレ共が!!

宇宙戦艦に向けて、風穴をブチ空けて、味方の血路を開く!


アメリア・イアハッター


宇宙を飛ぶ大きな船
誰かを殺すために作られたのでなければ、とっても素敵なモノなのにな……
壊しましょう、徹底的に

・方針
仲間が敵艦に接近しやすいよう陽動を行う

・行動
宇宙バイクに乗り機動力を確保
まずUC【マジック・ミサイル・ダンス】を仲間がいない方向へ発射し、ミサイルをぶつけ大爆発を起こし敵の目を引く
魔法のミサイルであるため発射軌道を描く発煙は無く、どこから発射されたか宇宙ではわかりづらい筈

その後は届かなくてもいいから敵艦隊に向けてUC使用
ちくちく攻撃し綻びを作ろう

接近のチャンスが来れば、可能なら誰かを乗せて敵艦へ接近
その場合自身は操縦に専念し敵艦の下部や背後から接近・攻撃を回避
攻撃は仲間に任せる!


ユウカ・セレナイト



大きい戦いね、決戦ね!
ということはもちろん、私の歌が必要ね!?
それではリクエストにお応えして、……いえリクエストがなくっても!
歌いましょう、皆のその背を押すために!

【未来を紡ぐ者たちへの譚歌】を奏でて
皆の戦闘力を底上げしていきましょう
アップテンポで、軽快に、賑やかに!
戦う皆の背を【鼓舞】していきましょう!

……でもきっと、此方も狙われてしまうわよね
ええ、戦闘の要を狙うというのは定石だもの
だけれど私だって猟兵の端くれ
出来る限り避けてみせましょう! 気合で。ええ気合で!
倒れるまで、もし倒れたとしても、歌を止めない覚悟でいるわ!
だって、敵も必死なのでしょう
そのくらいの覚悟じゃないと、つりあわないわ!


ミルフィ・リンドブラッド
敵は精鋭…関係ねぇのです。フィー達が負けて戦線が崩れてしまえばこの世界の滅びを進めてしまうです。勝てるかどうかじゃねぇです。絶対に勝つのです

POW
とはいえ練度が高い精鋭の迎撃は近づくのも難しーはずです。それなりの速度がねぇと的になってしまうです。だから、フィーは他の猟兵が動きやすいように敵の攻撃を捌いて味方の負担を減らすことに集中する、です。【禁忌・血流覚醒】を使って速さと力(身体能力)を上げてやるです。

猟兵がいる場所を拠点として定めて攻撃を『武器受け+怪力+オーラ防御+拠点防御』受け止め、味方にあたりやがりそうになったら『かばう』で絶対守ってやるぞ、です。

・アドリブ&他者との絡み歓迎ですー!


メンカル・プルモーサ

ん……練度と士気の高さが厄介……
飛行式箒に乗って…【天翔る突風の馭者】で移動速度を上げてく……
【面影映す虚構の宴】でデコイを作って弾幕や砲撃をかいくぐりつつ接近……
艦隊同士で連絡を取っているなら…通信はしているはず…そこから戦艦にハッキングで干渉……相手もたぶん対策をしてるだろうから慎重に…いざ、勝負……
ハッキングの経路の確立をしても不用意に仕掛けず…仲間の突入や潜入・攻撃にあわせてセンサ・レーダー類、目を優先的に殺す…仕掛けると同時にヤタを走らせて内部情報も攫って仲間に伝える…
…戦艦のすぐそばまで接近出来たら【精霊の騒乱】による地属性の一撃…つまり魔力による重力崩壊を砲に仕掛けて潰す…


サーズデイ・ドラッケン

まず迎撃を掻い潜って敵旗艦を有効射程に捉えます
ソードスウォームを起動、複製した盾を囮と防御に使い、デブリで敵の射線を切りながら旗艦へ接近
味方と同時に接近を試みる事で火線を分散出来ればなお良いです

相手は精鋭部隊の旗艦
まともにやり合っては勝ち目は薄いでしょう
リスクを負ってでも不意を打ちます
主砲のチャージ開始を確認したらデブリ帯へ移動しミサイル以外の武装一斉発射で注意を引きます
砲門がこちらを向いたら発射直前にミサイルポッドを切り離し
デブリに向けてワイヤーガンを射出
ブースト光を見せずウィンチで移動しポッドの爆発で撃破したと誤認させます
その後移動の慣性を利用して敵艦へ接近、再度一斉発射で不意を打ちます


ティオレンシア・シーディア


さーて、どーしよ―かしらねぇ!(割とヤケクソ)
この子(オブシディアン)ビームとかそーゆーフシギ機能なんてついてないんだけど!
拳銃一丁でどーしろってのよもー!
…あー、うん。現実逃避しても仕方ないし、腹くくるしかないわよねぇ、やっぱ。

〇地形の利用しながら〇ダッシュと〇ジャンプで突っこむわぁ。味方の攻撃に紛れられればいいんだけど。
〇第六感と〇情報収集で効きそうなとこ〇見切って〇力溜めからの〇捨て身の一撃。
〇鎧無視攻撃の〇零距離射撃で●滅殺を〇二回攻撃で叩き込むわぁ。

正直あたしがダメージ与える方法、他に思いつかないのよねぇ。
何か新しいダメージソース、考えたほうがいいのかしらねぇ。


メルノ・ネッケル


こっちの火器は拳銃二丁、とてもやないけど戦艦と真正面からはやりあえん。
だったらやることは限られる……そいつは、高速軌道による撹乱と小さめの火器潰し!

向こうの火力は圧倒的、その上使うもん使えばほぼ全周のカバーが予想されるな。
……【戦闘知識】で導く答えは一つ、兎に角止まらず動き続ける!

キツネビサイクル、頼むでぇ!【騎乗】、騎兵ならぬ狐兵の走り、見せてやろやないか!
戦艦の周囲をアクセル全開で走り続け、9秒を数える!

悪いな、こっちの仕込みはそっちの主砲よりほんのちょっと早いんや……!

9秒!
銃口を戦艦へ向け、「九秒の狐」!副砲辺りを潰させてもらうで!

10秒!主砲の一撃を【見切り】、離脱!後は任せたっ!


ジン・エラー

無理無茶無謀!
サイッコ〜〜〜〜ォじゃねェか!!

出来る出来ないじゃァねェ〜〜よ
オレが、全部救ってやるよ

そンなちゃっちい砲撃如きで
聖者が止まるわきゃねェだろ


ヴィクティム・ウィンターミュート


ハッハー、面白くなってきた。前のは防壁がヘボ過ぎたから、呆気なく侵入できちまった。今回のは、いっぱしのウィザードがいてくれたりするんじゃねーの?力比べしようぜ。ジャイアントキリングのプロ、Arseneとな!!

ユーベルコードで演算能力拡張!
【ハッキング】で奴らご自慢の艦にちょっかいかけまくってやる。
【毒使い】でウイルスをばかすか仕込んで武装の無力化を狙い、エネルギーをオーバーチャージさせて自壊させんのもいいな。
無理やり回線を切ろうとするなら、【罠使い】で仕込んだコマンドトラップが火を噴くぜ

とにかく【時間稼ぎ】できりゃいい。
この俺の頭脳と【早業】、存分に味わっていけよ!

——誰も俺を出し抜けないぜ


セゲル・スヴェアボルグ

あれに穴をぶち明けてしまっても構わんのだろう?
まぁ、まずは近づかなければ始まらんのだがな。
いや、むしろ近づくと一斉射撃の射程範囲なわけか。
……よし、やられる前にやればいいな。
エレクトロレギオンで戦闘機械に囮を任せ、その隙に突っ込むとしよう。
120体もいれば、物量で押し切れるだろう。纏めちまえば、それなりの壁にもなるしな。
そんでもって、艦にたどり着いたら、狂飆の王をぶちかましてやればいい。
多少の敵の攻撃が俺に向かう程度なら構うものか。
いや、味方を巻き込むのは流石に控えるがな。
同じようなことをやろうとしている奴がいるなら……まぁ、好きにするといい。


ヘスティア・イクテュス
「●」

白城艦隊、相手にとって不足はなしね
対艦戦は強くても人間サイズの機動でなら捉えられるかしら!

正面からは主砲の火力もあって近づくのは困難?
船の側面からの突破になるよう遠回りに攻め込んでみるわ…


船の形状…砲塔の位置から敵の火砲の範囲を想定【情報収集】
比較的火砲の集中の少ない範囲、角度から全力飛行で突撃よ!

他に側面から攻め込む猟兵がいるならタイミングを合わせて…
両側面から、火砲が少しでも減ればチャンスは…!

アベルの計算で火砲の間隔を計り当たらないよう掻い潜って接近
近づいたらマイクロミサイルにミスティルテインの【一斉発射】
土手っ腹に火力を集中よ!!


ヴァーリャ・スネシュコヴァ

ギドさん(f00088)と連携

さて、ウォーミングアップも済ませた。準備万端だ!いつでもいけるぞ!

ギドさんの準備が完了するまでは【第六感】による回避に専念し、しばらく待機。
準備が完了したら、ギドさんのぶん回しからの放り投げで主砲まで一直線!ぶっ飛んでいく際に砲撃や攻撃が当たらないよう、【残像】で撹乱。

主砲にたどり着いた瞬間に、【2回攻撃】+『霜の翁の怒り』を発動!全力で強い冷気を2回繰り出し、主砲(可能なら他の砲台も)の完全凍結を狙うぞ!

主砲の完全凍結が完了、または2度の冷気で完全凍結できなかったと判断した場合はすぐその場から離脱。

随分デカいけれど…それでも凍らせてみなければわからない!だ!


ギド・スプートニク

ヴァーリャ嬢と

それは頼もしい限り
では往こうか

一斉射撃が少々厄介
ならば射程外から拷問具の鎖でその辺りの敵艦艇を縛り上げ、力任せに引っ張って指揮官の艦艇へとぶつけてやる

質量に対しては質量
これだけのデカブツであれば弾除けにもよかろう
砲門を幾つか潰せたならばそれで十分

続いてヴァーリャ嬢を同じく鎖で巻き、主砲目掛けハンマー投げの要領で投げ飛ばす

チャージの隙を突き主砲を暴発させる作戦
彼女に危険が及ぶなら魔眼にて敵や砲撃を一時停止させたり、鎖で強制的に引き戻すなど対処

その後は私も近接戦なり魔法による火力支援なり戦線に加わろう

終わりだ、鉄塊
安らかに眠れ
貴殿らの歴史は、とうの昔に終わりを迎えているのだから



●精鋭対猟兵
「解放軍というからどんなものかと思っておったが、なに。烏合の衆と何ら変わらんな。偶然で得た勝利を自分たちの活躍と思って浮足立っておるわ。希望という甘い蜜しか見えず、目の前の危険には気付きもせんとはのう」
 宇宙の闇は、猟兵たちが勝鬨を上げても尚深くある。猟兵のもたらす勝利の光、希望の光が宇宙をひと時煌めかせたとて、銀河帝国の力は宇宙の空を黒く染め上げてしまう。
 この戦場もそうだ。『白城』艦隊と相対する解放軍艦隊は、先ほどまでの勝利の勢いを活かせておらず、オブリビオンの繰る精鋭艦隊に苦戦を強いられている。
「右翼が突出してきたか、喰えるぞよ。あの宙域ならば我らの部隊の功績となるわ。他の艦に通達せよ、攻め手を緩めるな。かつ、気付かれぬよう後退し、敵をおびき出し、後に方位陣形を取れ、とな。ゴミはまとめて掃くに限るわい」
 『白城』艦隊の前線指揮官たちは、個人の戦闘能力だけで言えばそこまでの強さを持っているわけではない。
 しかし、クローン技術によって作り出された彼らの脳には、帝国が今まで行ってきた戦闘の経験が存在している。艦隊戦を行うにあたっては、その知識と経験こそがまさに解放軍の障害となるのだ。
 敵の判断力と指揮ぶりは、まさに熟練の指令そのもの。熟練どころか、老獪といっても良いほどの狡猾さと正確さを持って、敵は解放軍を撃滅せんとしていた。だが、その時である。
「……来たか、我が敵。今新たに出現した敵影をスクリーンに出せ。艦隊運動、N-55方向に。主砲角、適宜修正せよ。解放軍など最早捨て置け。この状態では死んだ駒よ」
 その戦場に新たに転移してきた影がある。それも多数だ。それぞれは戦艦などと比較した時に大きさこそないが、しかし。それらの影の持ち得る力、戦場への影響力は計り知れない。まさに切り札だ。
「猟兵よ。儂の艦に狙いを付けたのは褒めてやろう。もし墜とせたのなら誉れであるぞ。……来よ。どうとでも打って来るが好い。精鋭無比の『白城』艦隊がお相手致す」
 人々を照らす希望の名前、人々を諸共に救済するその名前。その「切り札」の名こそは、猟兵である。今、銀河にまた一つ戦火が刻まれようとしていた。

●戦火拡大
「単身で戦艦落としてこいとか前も無茶言われた気がするが、今回は更にデカい奴とやらされるのか!? どうかしとるのー」
「今はまだ敵も警戒の段階かしら? アマミさん、突っ込むなら今って感じよ。しっかり掴まっててね」
 才堂・紅葉(お嬢・f08859)と神羅・アマミ(凡テ一太刀ニテ征ク・f00889)は、宇宙空間の闇で強敵に相対しても尚嗤う。
 まるで、方法に悩んでも仕方ないというように。どんな敵が相手だったとしても、きっと彼らは同じように笑って、そして往くのだろう。
 ユーベルコード【蒸気王】を発動した紅葉は、敵の攻撃範囲内に臆することなく全長15m程の武骨な蒸気ゴーレムに搭載されたブースターを用いて突っ込んでいく。アマミは蒸気王に掴まって高速移動にあやかる形だ。
 二人の顔に、突撃することで敵の攻撃範囲内に入る恐れや葛藤はない。そうしなければ勝てないから、そうしたまでだ。
「個人と侮るでないぞ、敵の強さは桁が違うのだ。解放軍の戦艦など、寄り集まっても恐るるに足りん。が、猟兵は別よ。……主砲、良いな? よろしい、撃て。そのまま四度の斉射を行うように。別陣で戦いを行っている友軍に当てるでないぞ」
「……どわあっ紅葉!! 主砲! こっち向いとる! ってーか多分あれ前兆じゃって!」
 敵司令官は彼ら猟兵が主砲圏内に入ったことを確認するや否や、その恐るべきレーザー兵器である主砲を惜しげもなく放つように指示を飛ばす。主砲に10秒間でとんでもない量のエネルギーが集まっていく。そして、静寂は一瞬であった。
 高音、後に轟音。そしてまた高音、同様に轟音。敵戦艦の主砲の発射音が銀河に響き、猟兵たちとオブリビオンとの戦いの始まりを告げていた。
「うっそじゃろアイツら!? この距離なのにぶっ放してきおったぞ!? あっぶなーー! あれ当たったらあかん奴だってすぐ分かるんじゃけど!? このごついロボでも直撃したら完全にやばい感じじゃろあれ!」
「ったく。あの主砲は相当やばいわね。アレがこっちを向いてる間は踏み込む隙が中々無いわ。……でも、再発射には10秒間のリチャージが必要と見た。蒸気王のアサルトライフルの攻撃範囲はもう少し近付いてから……もどかしいわね」
 しかし、敵戦艦の擁する主砲に斉射の前兆があったことをアマミたちは見逃さなかった。僅かに蒸気王のブースターを吹かして移動、主砲の角度から身を逃し、敵への接近を更に続けていく。彼女らにとって10秒間は遅すぎる。それも超長距離射撃ならば、砲塔の角度から予測できる位置からわずかにそれればそれで良いだけのことだ。
 紅葉とアマミは更に距離を伸ばし、そろそろ主砲以外の迎撃兵器のレンジに入るというころ。しかし、どうやら敵も先ほどの砲撃を本気で当てようとは思っていなかったようである。
「至近に寄られる前に試射は済んだのう。想定よりも反応速度が良い。四度共砲塔の動きを読んでおるわ、誰か良い目をしておるな? 主砲砲撃手に通達せよ。「こちらで敵の道を選ばせる」とな。反応速度が良いなら、それを逆手に取ってやるまでのことよ」
 主砲の動きを完全に読みきり回避するなど、猟兵の力がなくてはできない芸当である。だが、今回の敵は百戦錬磨の猟兵にも劣らない強者。
 未だに損害はどちらにも出ていないが、戦いは既にクライマックスへと突入しようとしていた。
「あれに穴をぶち明けてしまっても構わんのだろう? ……と言いたいところだが、まぁ、まずは近づかなければ始まらんか」
「白城か……流石は最精鋭。水際立った動きだ。艦艇移動も見事なもの、敵の司令官も腕が立つと見える。恐らく先ほどの主砲も恐らくは試射だろうな」
「相手は精鋭部隊の旗艦。まともにやり合っては勝ち目は薄いでしょうね。さて、どうしますか?」
 主砲のレンジを駆け、敵艦に接近していく二人と同様、敵に近付いていく猟兵たちの姿がある。
「やられる前にやるとしよう。この距離より近付けば、むしろ敵の一斉射撃の射程範囲だ。別動隊を作って、その隙に突っ込むぞ。突入のタイミングはお前さんに任せる。俺はそれに追従する形だな」
「了解です。セゲル殿もアシェラ殿も、どうやら有効な手札をお持ちの様子。目を惹くのはお二人にお任せ致します。ご武運を」
「ああ、任せてくれ。……帝国の夢は終わっている。今の帝国が如何に勝利を重ねようが未来はもう来ない。故に……終わらせる」
 奇妙な満足感を覚え、突撃前にそう呟くのはアシェラ・ヘリオース(ダークフォースナイト・f13819)。スペースノイドの黒騎士にしてフォースナイトである彼女は、今回の敵、銀河帝国とは因縁浅からぬ関係にある。
 戦場でアシェラが胸に抱いた念は郷愁か、それとも手向けか。それはきっと、彼女以外には分かるはずもないことだった。
 彼女の隣で【エレクトロレギオン】を発動し、120体の戦闘機械に囮を任せるのはセゲル・スヴェアボルグ(豪放磊落・f00533)だ。
 彼が生み出していく戦闘機械の群れは、一撃で消滅してしまう代物。しかし、それは裏を返せば一撃は耐えられる壁でもある。セゲルとアシェラが取った戦法は奇しくも同じであった。
「セゲルさんも私と似た力をお持ちなのか。奇遇だな、私も初手はこれしかあるまいと思っていた。軽薄さまで再現されたAIだが、頼れる部下達だ、よろしく頼む」
「ほう! 数だけでいやあ俺のが多いが、なるほどな。そういうユニットなら、もしかすると今回の敵にはより有効かもしれねえ。足並み揃えていくとするか、お手並み拝見だ」
『お呼びっすか姐さん! ヒャー! 今回の敵は帝国艦じゃないスか! 燃えてきたーッ!』
『しかも今回は他の猟兵サンとの共同作戦っすか?! オラオラ行くぞ戦闘機械共、戦線を張れー! 俺らァ姐さんたちの腕で、壁なんだぜ!』
 120体の戦闘機械の横で生み出されていくのは、アシェラのユーベルコード、【黒騎招来】で呼び出されていく小型の戦闘用兼広範囲偵察用の闇鋼製騎士ユニット。
 総勢95体の彼らは、搭載されたAIのままに軽口を叩きながら戦場の各所へとセゲルの戦闘機械たちもそれぞれ引き連れて移動を開始していく。その配置も見事なもので、全て合わせて215体にもなった彼らは、宇宙の野原に一糸乱れぬ鶴翼の陣を取っていく。指揮を執るアシェラの腕の成果と言えるだろう。
「レーダーに異常な反応、か。アラートを切れ、うるさくて敵わん。猟兵たちの作り出した陣であろうな。……戦闘機械か、フン。無駄弾を打つでないぞ。主砲以外の迎撃武装で対処せよ。……伏兵がおるな? 味な真似をしおるわい」
「中距離を保て。一斉射撃には後退、チャージには間合いを詰めて対応しろ」
「アシェラの指揮は見事なもんだ、この分なら!」
「ええ、私たちも安心して突撃をかけられるというもの。セゲル殿、予定通り迎撃を掻い潜って敵旗艦を有効射程に捉えます」
 指揮のコツは、部下に対して難しい事を言わない事。それを十二分に理解しているアシェラの指揮は、闇鋼製騎士ユニットたちを見事に操って戦火を拡大させていく。
「右翼、後退! 左翼は斉射二回だ!」
『アイアイサー!』
 敵艦からの迎撃射には怯まずに対応し、右翼と左翼から包囲射撃を行っていく。突出した部分へと一斉射撃が行われる前兆を読んだときは、アシェラ自身が優先して指揮を出し、見事に難を逃れていく。
 こちらのユニットは敵艦に比べ火力で劣る。それをよく分かっている指揮の取り方だ。彼女の操る約200の軍勢は敵艦の動きに対応しながら、大きいダメージこそないものの着実に敵の砲火を浴びせていた。
「それでは、そろそろ攻防一体の妙をお見せしましょう。ソードスウォーム、レディ」
 戦闘機械たちが陣を敷き、敵艦と打ち合いを行っているその陰で、飛び立つ一つの影がある。彼の名はサーズデイ・ドラッケン(宇宙を駆ける義賊・f12249)。
 遥か昔に存在し、星の大海で活躍した宇宙義賊、『ドラッケン海賊団』の忘れ形見だ。ウォーマシンである彼の身体は無機物ではあるが、その胸にはかつての仲間たちの矜持がある。
 その胸の熱が、彼を戦乱へと呼び戻した。敵艦と猟兵のユニット間で行われている銃弾の雨嵐の中を、彼は手慣れたようにWMC-ハミングバードを駆って走っていく。
「セゲル殿、こちらは右翼から出撃致しました。デブリで敵の射線を切りながら旗艦へ接近中です」
 サーズデイの動きの妙は、ユーベルコード【ソードスウォーム】を起動した上での宇宙空間における超速移動である。星の揺らぎをさざ波のように乗りこなし、時折来る流れ弾は荒波を乗り越えるように強引に突破する。
 ビーム刃を展開したサーフボード状の乗り物になる大型可変防盾、WMC-ハミングバードを大量に召喚した彼はそれらを囮と防御に使い、自分自身も星のうねりを友にして進む。時にデブリで射線を切りながら進むサーズデイの左肩で、反逆を示す髑髏が星の光で煌めいていた。
「おいアシェラ、ちっと戦闘機械を二小隊ほどもらっていくぜ。俺のエレクトロレギオンで纏めちまえば、それなりの壁にもなるしな。そんでもって、艦にたどり着いたら……後は、お楽しみってヤツだ! 左翼から出るぜ!」
 そしてセゲルもサーズデイとは反対の位置から同時に接近を試みる。すでにこれは打ち合わせ通りの動きだ。首尾よく行けば火線を分散出来ればという狙いもあったが、そうやら覿面である。
 セゲルが引き連れた戦闘機械たちは彼の盾となり、時に囮となりながらもセゲルの前進をサポートしていく。敵の迎撃が彼らの脚を止めるには至らない。不気味なほど、彼らの前進は上手くいっていた。
「……妙だな、敵の攻勢に積極さが見られない……? まさか……!」
「敵主砲の発射の前兆、確認しました。それならば、敵へ向けて武装の一斉射撃を行い、気を惹きます」
「そこのデブリ群に一人。戦闘機械を盾にしながら一人。仕留めるならデブリ群に隠れている敵から、じゃのう。この調子で撃たれ続けていたら面倒でな。——主砲、撃て」
「ッ!? サーズデイッ! 応答しやがれ! ……ヤロウッ!」
 そして、その時が来る。デブリの中を縫うように進み、敵の迎撃武装の射線を切りながら進むサーズデイへ向けて、敵艦の主砲がデブリを消し去りながら発砲されたのだ。
 敵主砲の発射の前兆に併せ、サーズデイは手持ちの火器を殆ど使用した一斉射撃を行った。それは敵艦の砲塔といくらかのセンサーを潰し、確実にダメージを与える。……だが。
 デブリ群の中で、一つ。大きな爆発が起きた。大きく、派手で、主砲のエネルギーの中で弾けた熱。サーズデイの居た場所からである。そして、彼からの声は、もう無線から聞こえることはなかった。
「これで、まずは一人。デブリ群を利用した戦法を用いる敵など、今までの帝国の歴史の中で多くおったわ。他の戦艦の主砲ならともかく、我が艦の主砲を甘く見るでない」
 戦場で、被害が拡大していく。最後に立っているのは猟兵か、オブリビオンか。それは最後の時が来るまでわかることはなかった。

●迫る死
「ん……練度と士気の高さが厄介……。でも、これくらいなら……。ヴィクティム、こっちの準備は終わった。これから接近して直接パスを作る……。スタンドアロンな艦でも、こっちでバックドアを作っちゃえば……。空裂く翼よ、駆けよ、奔れ」
「OKだ、メンカル。こっちもいけるぜ。ハッハー、面白くなってきた。前のは防壁がヘボ過ぎたから、呆気なく侵入できちまったけどよ……。今回のは、いっぱしのウィザードがいてくれたりするんじゃねーの? 力比べしようぜ。ジャイアントキリングのプロ、Arsene達と!! ホットドガーの腕を味わいな!!」
 次いで戦場に現れたのは、メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)とヴィクティム・ウィンターミュート(ストリートランナー・f01172)の二人。
 彼女たち二人はそれぞれ別の術式、別のプログラムを用いるが、しかし行うことは同じであった。ズバリ、敵艦のハッキングである。
「艦隊同士で連絡を取っているなら……通信はしているはず……そこから戦艦にハッキングで干渉……相手もたぶん対策をしてるだろうから慎重に……いざ、勝負……我が記憶よ、戯れ、演じよ」
「副砲、迎撃射撃。まだ本気で当てに行くないぞ、誘いこむのだ。……が……デコイとは味な真似をしおるわい。仕方ない、対宙射撃全砲開始せよ。仕留めると思うなよ、当てるだけでよい。デコイは消しておかんと面倒よな」
 メンカルは彼女の身の丈ほどある大きい愛用の杖、シルバームーンに乗って宙を駆ける。その速さは他を圧倒するほど早い。杖の先端に施された月の装飾が宙で瞬くたびに、彼女は敵の迎撃を躱して距離を詰めていく。
 宇宙の中でメンカルが踊るように奔り、駆けていく。その機動を補佐するのが彼女の生み出したデコイたちだ。宇宙の闇を箒で斬り裂いて空を飛ぶのは、なにもメンカルただ一人ではない。彼女の記憶を元にした、敵の五感を騙す幻影たちも、大量に宇宙の闇に溶けては敵のレーダーとオペレーターに負担をかけていた。
 デコイを作り、相手の情報網をかく乱しつつ弾幕や砲撃をかいくぐりつつ接近していくメンカル。そして彼女がハッキング圏内に到着し、ハンドヘルドコンピュータ【マルチヴァク】でハッキング経路を確立しようとしたとき、敵の司令官は不敵に嗤うのだった。
「……味方との通信網に微細なノイズ。ハッキングの形跡じゃな。ふは、来たわ。来おったわい。アレが『魔法』たちじゃな? 全員に通達じゃ、あの者たちを優先的に狙え。動きで怪しいと思ったが、二人おるぞ。近くに一人、遠くに一人。他のものはそれからでも間に合うわ。『歌』はまだファイアレンジにおらんがの。先の敗因は、奴ら後衛を放置しすぎたことよ。先に狙うべきはあ奴らの方じゃて」
 ジンとアマミへと向けられていた主砲が、ヴィクティムの方へと向いた。敵の主砲の射程範囲は計り知れない。宇宙空間でレーザー攻撃が減衰したとしても、それでもヴィクティム一人を消し去るには十分すぎるほどの威力だ。敵の司令官は、猟兵たちの動きから彼にアタリを付けたのである。
 そして、それと同時にメンカルに向けて主砲以外の全ての砲塔が彼女を捉えた。既に先ほどまでのバラまくだけの弾幕はそこにない。彼女の接近を待ったのも、デコイと思しき影を重点的に消していったのも、全てはこの時のため。メンカルを至近に捉えて、一斉射で彼女を殺しつくすためである。
「オイオイ、嘘だろ……ッ! こんな早く見付けてくるかよ! やべェ、敵の直接攻撃に対しての対策は取ってきてねェ……ッ!」
「……これは……まずい……。逃げ道、が……」
「主砲、先ほどの試射を活かせよ。副砲から対宙砲、全て用いよ。インペリアル・マカブルの準備はできておるな? 鏖殺形態の封印を解け。最初から全力で行くのだ。火力の逐次投入など、上手くいった試しがないからの。戦いに序盤も終盤もないわ」
 そして、敵はその牙を剥く。【インペリアル・マカブル】。敵は戦闘開始の直後にその全力を出してきたのである。猟兵たちの後衛組を完全に、確実にその戦力で押しつぶすため、敵は全力を出してきたのだ。
 遠方からのハッキングを狙っていたヴィクティムを、敵の主砲が完全に捉えた。ハッキングの経路を作り出そうとしていたメンカルが、無限にあるとさえ感じる程大量の敵の砲塔に囲まれる。
「これで、三人。ほほ、ハッキングなぞ対策を取るでもない。ハッキングをさせる暇を与えなければそれでよいのじゃ」
 主砲がエネルギーチャージを終えて白く輝く。無数の砲塔から発砲音がとどろき、生命を押しつぶそうとしている。認めなければなるまい。ここまでの流れはおおむね敵の思い通りに進んでいることを。敵は紛れもない精鋭だ。
 だが、これからは違う。これ以上、戦闘の流れを敵の思い通りにはさせないと奮闘する影がそこにあった。星のように輝く、希望と救済の影が。
「踏み込む隙は無かったけど、こうして誰かの盾にはなれたわね。大丈夫、メンカルさん? 敵の攻撃は私たちに任せて」
「危ないとこだったのー、いやーしかし、この砲塔の数は……ひえー、やばいのー。だがの、ここで怯む妾ではないわ! 正々堂々と真正面から特攻し、派手に散ってやるんじゃよー!」
「紅葉……それに、アマミも……。分かった、お願い……。もう少しで、パスを作れる……」
 敵の戦艦からほど近い場所、メンカルへ向けて放たれた迎撃射撃を止める二つの影。それは先ほど踏み込んでいたアマミと紅葉の二人組だ。
 アマミは自分の装備する第肆歩"目録"を構え、時に開いて敵の攻撃を受け止めたかと思うと、次の瞬間には折りたたんだそれを用いて前方で敵の砲撃をはじき返していく。敵の攻撃を自ら受け止めに行く特攻の姿勢を見せるのは、彼女のユーベルコード【緞帳】を発動するためだ。
 わざと目立ち、迎撃射撃が自分を狙うように仕向けるような動きをアマミが見せていくのは、盾キャラとして特攻せずにはいられない性格の為に敢えて不利な行動をするため。この状態にある彼女は、強い。
「かつての小細工が再び通用すると思うなと言われると、妾の方も最早あれこれ策を弄するのはやめじゃ、やめ!」
「へえ、アマミさんも随分やるみたいね。じゃ、こっちも。ゴッドにもデモンにもなれる魔導蒸気文明の申し子の力、敵に見せてやりましょうか」
 紅葉はアマミとは対照的に、必要最低限な動きを取りながらメンカルを蒸気王の厚い装甲で守りつつ、時折自分の装備している巨大化したアサルトライフルを用いて敵の砲塔を潰していく。
 敵の射撃を防ぎ、一方的に攻撃を重ねていく彼女と蒸気王の動きは、正に神か悪魔かといったところ。
「もう敵にこちらのハックはバレてる……なら、侵入経路を変えて、多数用意……センサ・レーダー類を殺して、目を潰す……。来た。あとはヤタを走らせて同時に権限掌握を行う……」
「ほう? 至近の魔法使いは粘るか。よい、捨て置け。今だけじゃ。いくら猟兵の守りが堅牢であっても、このまま押し切れば良いだけのこと。セキュリティの比較的軽い副砲やいくつかのセンサーが盗まれたとて、大した影響はないわ。武装を全て掌握されれば話は別だがの……そんな時間も、奴らには残されておらんよ」
 メンカルは二人が活躍している裏で敵艦をハッキングするためのパスを次々に作成していく。アルダワ・A&W・スペースシップワールドの三世界の技術を統合してオリジナルの術式としている彼女ならではのハッキングだ。
 彼女の活躍もあり、敵艦へのハッキングパスは出来た。すでにその情報はこの戦域にいる猟兵たちに全て伝わっている。敵の主砲の向き、副砲の可動域、迎撃を行ってくる砲塔の数、位置、等々敵の武装に関するすべての情報が、だ。
 しかし、敵の攻撃はその情報を開示されても何の問題も無いと言わんばかりに、メンカルと周りの二人を狙って包囲射撃を行っていく。インペリアル・マカブルも相まって、敵の制圧力、殲滅力は相当なものとなっている。その力は暴れていたアマミと紅葉を押し返し、メンカルを含めた三人を完全に包囲してしまった。
「これは……! ちょーーっと、アマミちゃんピーーンチって奴かもしれんの……! 敵の攻撃多すぎるんじゃけど!」
「攻撃しようにも、これじゃ榴弾を出す隙すらない、か……。ここは耐えるしか……! でも、こう守ってばかりじゃ、さすがに……!」
「……敵武装の全ての情報を掌握。……でも、攻撃が厚すぎる……このままじゃ……」
 三人に危機が訪れていた。敵の制圧射撃は更にその苛烈さを増し、彼女らを今にも押しつぶさんとしている。そして、危機は別のところにも迫っていた。 
「ミルフィに……ジン?! バカやろッ、いくらお前らでも主砲を止めるなんざ……! 無茶だ! 危険すぎるだろうが!」
「敵は精鋭……関係ねぇのです。フィー達が負けて戦線が崩れてしまえばこの世界の滅びを進めてしまうです。勝てるかどうかじゃねぇです。絶対に勝つのです。そのためなら……主砲だって、止めて見せます。……ヴィクティム、何秒持たせれば良いですか?」
「お前ら……。……10……、いや、9秒で良い。見たとこ、敵主砲の放射時間は長いからな……それだけ時間をくれりゃ良い。メンカルのおかげでバックドアはある。カウボーイの腕の見せ所だ……!」
「ブバハハハハハ!!! 面白ェ! 無理無茶無謀! サイッコ〜〜〜〜ォじゃねェか!! ここで俺らがあの主砲を9秒受け止めりゃ良ンだろォ? 見てな、ヴィクティム。やンぜ、ミルフィ。出来る出来ないじゃァねェ〜〜よ。オレらが、全部救ってやるよ」
 照射を間近に控えた主砲とヴィクティムの間、常であればデッドラインを意味する射線上に立ちふさがったのは、ミルフィ・リンドブラッド(ちみっこい力持ち・f07740)とジン・エラー(救いあり・f08098)の二人。
 彼らは、この戦場に攻撃策を持ち込んではいない。ミルフィもジンも、ただただこの場所へ味方を守りに、味方を救済するために。そのためだけにここへ来たのだ。だが、主砲発射を目前に防御の構えを取って現れた新たな猟兵たちの存在すらも、敵司令官は読んでいた。
「読み通りよ。どうせそう来ると思ったわい。猟兵という輩は甘ちゃんが多いというのは本当のことのようだのう。こうして無防備なものを狙えば、それを見捨てられぬ者ごと一網打尽にできるのは読んでおったわ。砲手、道は選んでやった。外すでないぞ。——撃て」
 そして、主砲が発射された。
 高音の砲撃音の後に宇宙に生まれたのは、白く、巨大なエネルギーの塊。光と熱の決戦兵器が、ヴィクティムと彼を守る二人に向かって放たれる。
 無常にも、敵の主砲がその狙いを違うことはない。ミルフィが他の二人と共に高速移動を行って敵の攻撃の狙いを捌こうとしたが、巨大な主砲相手では分が悪かった。しかも、は既に試射を完了して猟兵の反応速度を確かめた上でのそれだ。圧倒的な光と熱が、ミルフィとジンを包んでいく。
「……く、うううううっ! 思っていた以上に、主砲の力が……強い……!」
「コイツは、相当な熱量じゃねェか! とことん面白ェ……!!」
「3秒……。全デバイス、コアクロック同期開始……! バックドアはもう終わってんだ、ウィンターミュートの処理をオーバークロックさせてやりゃァ、間に合わねえ話じゃねェ……!」
 防衛に回った猟兵二人を、圧倒的なエネルギーが焼いていく。オーラで守られたミルフィの竜の鎧が焦げ、彼女の怪力で構えた天竜砕きも同じく焼かれていく。そばにいるジンも同様だ。救済箱もなにもかも、その全てを用いて主砲の発射に対抗してはいるものの、いかんせんダメージの方がやはり大きい。
「6秒……! ……ッ、今の即席で作られた防壁ICEか! チッ、一瞬でバズオフさせてやる……ッ! Arseneの本気を見てやがれッ!」
「無駄なあがきよな、主砲の直撃に耐えられるわけがなかろうて。いくら猟兵の力が優れていても、奇跡が起こらん限りあやつらは詰みじゃて」
 ジンとミルフィは良くやってくれている。幾ら彼らでも主砲を真正面から受け止める対策は取っていなかったはずなのに、それでも二人は仲間を守るため、かばうため、救うためにその全力をかけている。ヴィクティムもそれが分かっているからこそ、更に集中してハッキングに挑んでいく。だが、もはや遅かった。ジンとミルフィに蓄積したダメージは果てしなく重い。
 常であれば、三人はこのままレーザーに焼かれて死ぬ。フラットラインだ。そして、メンカルたちも迎撃射撃の量に押しつぶされて死ぬ。それが常だ。
 だが、これは「常」の話ではない。「超常」の力を持つ、猟兵たちの、奇跡の話だ。奇跡がないならば起こせばいい。今が不利な状態なら、それを力で覆せばよい。
 癒しの奇跡を、救済の奇跡を、電脳の奇跡を、それぞれ彼ら猟兵は持っている。それはすなわち、戦場の状況を変化させうる力だ。

●逆転
「大きい戦いね、決戦ね! ということはもちろん、私の歌が必要ね!? それではリクエストにお応えして、……いえリクエストがなくっても! 歌いましょう、皆のその背を押すために! さあ語り讃えましょう、猟兵たちの、そのみちゆきを!」
「杯を逆さに、高虚より降り注ぐは夢の星粒……。宇宙に降り注げ、金平糖! 違うんです、これは回復で……僕は真面目でございますぅ……」
「ッ、出たか……! 『歌』じゃ! 『癒し』もおるぞ! 捜せ、狙え、墜とせ! 奴らに好き勝手されてはこちらの戦術が立ち行かん! ……何ィ!? 奴ら……! それぞれ、前線におるじゃとッ!?」
 最早ダメかと思ったその時である。宙に響く声と、宙に輝く光が、傷付いていた猟兵たちの体を癒し、その力を高めていく。宇宙に音が存在しなくとも、彼女の声は届く。宇宙の星に手が届かずとも、彼の生み出した輝きが猟兵を照らす。
 ルベル・ノウフィル(星守の杖・f05873)が繰り出す【星守の杯】の癒しの奇跡が。ユウカ・セレナイト(すべての夢見る者たちへの賛歌・f13797)が唄う【未来を紡ぐ者たちへの譚歌】の歌声が。猟兵たちの力と活力の源となっていく。
 二人のいる場所は、なんとそれぞれの猟兵たちがピンチに陥っている正にその場所。ルベルは主砲を受け止めている二人を癒すため、ユウカは無数の砲塔に囲まれた三人を鼓舞するため、自分から敵の懐に突っ込んだのだ。
「……クッ、ククッ……ブバハハハハハハハ!!! オイオイ、そいつは予想してなかったぜェ! 『俺が救われる』とはなァ! 負けてらんねェ! ミルフィ、お前行きな。こっちの守りは俺一人で良い。前線を救ってやれ。ヴィクティムはオレが救ってやるよ」
「ジン……分かりました、フィーも前線に上がります。ルベルはどうします?」
「是非お供させてください、僕の新しい技を披露するチャンスでございます。僕も仲間と協力して勝利を掴むのでございますぅ! わぅ」
 主砲照射をその身で受け止めているジンとミルフィの傷が、ルベルのユーベルコードによって癒されていく。それに負けじと、ジンもいよいよその力の全てを発揮すべくユーベルコードを発動する。この癒しがあるならば、彼がユーベルコードを発動する時間も十分にある。
 ジンが用いる超常の力は、【オレの救い】。敵の放つ光の中で、ジンの全てを救うという傲慢・驕傲・不遜が聖者の輝きへと昇華されていく。自身の体から放出するその光は、宇宙の闇にあって、敵のレーザーの光の中にあって、なお眩しく、そして暖かい。
 彼の救いの光はどこまでも煌々と輝き、銀河を包むかのよう。彼が本気を出したなら、敵の主砲が相手でも関係ない。彼は聖者で、彼は救いのために行動しているのだから。敵のレーザーがなんだ。主砲が何だ。そんなもの、全く関係のない話だ。彼は虚空へ片手を差し出して見せると、腕一本で主砲を受け止めて見せる。
「……ヘッ。そンなちゃっちい砲撃如きで聖者が止まるわきゃねェだろ? これが、『救い』だ」
 宣言通りに一人でヴィクティムを救うジンの隣で、ルベルとミルフィも飛び立っていく。二つの光を浴びて宇宙を駆ける二人は、まるで流星のよう。前線を救うべく走り出した、奇跡の星だ。
「主砲を防がれた……! マズい! ということは、ハッキングが間に合う芽が出てきたということ……!」
「——もう遅い。こっちは仕掛けると同時に内部情報も攫って仲間に伝えてある……私は役目を果たした。主砲以外の迎撃兵器の掌握は半分がせいぜいだったけど、そこまでやれば、あとは……」
「——9秒だ。ジン、助かったぜ、お前の救い。助けられちまったな。それに、イカしたバックドアをキメたメンカルも、だ。ありがとうよ。9秒あれば、俺達ウィザード級には十分なのさ」
 【Extend Code『Wintermute』】。メンカルの作り出した敵艦への多数のバックドアを通じて、ヴィクティムが敵主砲のコントロールを掌握した。ルベルの癒しとジンの救いが生み出した9秒が、彼のハッキングを完了させたのだ。恐るべきは彼らの戦闘能力と、そしてハッキング能力。彼らは見事敵の主砲に耐え、スタンドアロン型の敵艦艇の電子制御を、一時的にとはいえ見事に手中に収めてみせたのだ。もうジンに向けて放たれるレーザーは止まっている。
 ヴィクティムが自身の寿命を引き換えに、究極の演算能力を持つリミッター解除状態となっていなければ。ルベルが自身の疲労を代償に、猟兵たちを癒していなければ。ジンが主砲に耐えきっていなければ、メンカルのバックドアが完了していなければ。彼ら全ての活躍があってこそ成し得た超常の芸当である。
「ホット・エルズィ喰らった時はどうしたもんかと思ったが……ここまで来たら決まってる。電子戦は俺達の勝ちなのさ。どうあがいたってそっからは逆転できねえよ。ACE OF SPADESだ。ウィザード相手にババ引いたことを恨みな、Noob」
 そう、既に電子戦を行わせてしまった時点で勝負は付いている。9秒は短い時間だが、パスがあり、既に情報が抜かれているならば、ヴィクティムにとっては敵の兵器の掌握に充分な時間だった。
 彼の仕掛けたウイルスは既に敵艦の至る所を走り、主砲と敵の防衛システムの半分を沈黙させていく。メンカルが黙らせた半分と合わせ、これで敵の反撃の手は全てなくなった。電子の海と星の海。その両方にあって、二重の意味で敵は一瞬沈黙せざるを得なかった。その時だけ、戦場を凍える静寂が支配する。
「防衛システムのコントロールを全て手動に切り替えよッ! 主砲の指揮権を、迎撃兵器のコントロールを! 自壊させられる前に、何としてでも奪い返すのだ! ……ッ!? システムが落ちたじゃとォ!? 再起動せんかァ! まずは敵の接近している右舷から急げッッッ!! 主砲は後回しにして良いッ!」
 敵が防衛システムを取り戻した時にはもう遅い。ヴィクティムがその早業で仕掛けたトラップは、敵の手動切り替えを邪魔するかのように至る所でシステムを一時的に落とし、大量の時間を稼いでいた。万金を積んでも買えない、値千金の好機を彼らは生み出して見せたのだ。
 そして前線で戦う猟兵たちにとっては、例え一瞬であってもそれで充分だった。敵の迎撃が止んだのなら、もはや彼らを止めるものは何もない。
「……ヴィクティムから報告。……敵の防衛システムの掌握に成功したみたい。実際にこちらでも確認した」
「マジか! マジじゃな! だって敵の反撃止まっとるもん! よっしゃあ大チャーーンス!」
「ええ、そう言うことなら遠慮なく暴れさせてもらおうかしら。攻めに回った蒸気王の力、今こそ発揮するときね」
「右舷コントロール良し! 撃ち方始めよ! 近付かれ過ぎておる故主砲は放てん! 現場の判断で猟兵を駆逐せよ!」
 後方援護のおかげで、前方の三人を取り巻く砲火が一瞬落ち着く。その一瞬の最中で、彼女たちは体勢を立て直す。それが出来るのが猟兵という生き物だ。宇宙空間の中であっても、アマミは自分の戦闘スタイルを見失うことはない。
 敵の弾幕が薄くなったところへと単身突っ込む彼女は、艦の砲塔を片端からその和傘で破壊しつくしていく。特殊な合金で製造された和傘は、まるで戦艦の砲塔を砂糖菓子のように簡単に割っていく。時折コントロールを奪い返したのであろう砲塔が彼女を狙うが、研ぎ澄まされた彼女の五感はその攻撃を許さない。
「ひとーつ! いつーつ、やっつ、とーう! えーいもう数えるのも面倒じゃなこれッ! 全宇宙最強の矛たる妾が今こそ貴様ら悪鬼羅刹を討ち滅ぼし、無垢なる者たちを守護する盾の証としてくれようぞ! 死ねーッッ!! どわははははーーッ!」
 彼女は自分の感覚に身を任せるまま、艦に張り付いては至近から必殺の一撃を繰り返していく。敵が戦艦であれば大きく振りかぶっても避けられる心配はない。右腕で思い切りブン回した和傘をアマミは宇宙空間を裂きながら薙ぎ、突き、振り下ろしては上体を半回転させてもう一度薙ぐ。敵の攻撃は左手の籠手で軽く小突いて弾いてやるだけだ。
 アマミの聴覚はもはや砲塔が僅かに射角を変えたそのきしむ音でさえつかみ、そして掴んだ情報を基に即座に行動に移しては敵の動きを無効化していく。右手の攻撃の邪魔にならぬように最低限の動きに留めた左腕が、左右から襲い掛かる弾丸を一つ残らず叩き落す。が、上下から発砲される弾丸は些か反応が遅れてしまった。
「チッ、面倒じゃのーッ! まあ良い、もう一度装備で薙ぎ払って……」
「——その必要は無いのです。アマミは攻撃に集中するのです。ここの攻撃は全て……フィーが請け負った、のです」
「っほォー! 面白い! では守りは任せるぞ! おりゃおりゃおりゃおりゃーーッ! 良い曲もかかっとることじゃし、まだまだぶっ壊させてもらうわーーッ!」
 アマミが攻撃の手を一度止めて身を守ろうとしたその瞬間、彼女に向かって放たれた弾幕が全て消え失せる。ミルフィの武器が、オーラが、アマミに向かって飛び交う弾丸から彼女を守ったのだ。
 超常の力である【禁忌・血流覚醒】を使用しているミルフィは、圧倒的な加速と機動力、そして爆発的に向上した身体能力を有していた。竜と吸血鬼の力を寿命と引き換えに操る彼女にとって、主砲ならともかくただの砲塔からの攻撃など意味を成さない。
「遅い、です。こちらの動きに付いてこれないなら……! 置いていってやる、です!」
「アマミちゃん大暴れッてなもんじゃーーッ! 手ぬるい、甘い、スッとろい! 全部ぶっ壊してやるから覚悟しとくんじゃなッ!」
 ミルフィが飛び、迎撃の意識を一手に惹きつけながら銀河を縦横無尽に移動して敵の攻撃を捌く。時に減速して敵の攻撃を引き付ける動きを取ったかと思うと、次の瞬間には残像を残すほどの速さで宇宙の闇を自由に操っては伸ばし、高速で敵のかく乱を行っていく。
 その横で、アマミはもはや自身の防御も考えずに敵艦への攻撃を繰り返す。和傘を敵艦の装甲にブッ刺して、そのまま籠手で内部をブン殴っては、そこに通っている導線などを引きちぎってその周辺をまとめて無力化していく。二連の星が敵艦の周りを駆けずり回っては敵の迎撃を無に帰していく姿は圧巻であった。
 即興ながらも彼女たちが見事に連携を成し得るのは、偏に彼女たちが自分の強みを互いに活かしているが故。強力なスタンドプレーから生まれる無二のチームワークが、今オブリビオンの戦力を確かに削いでいく。
「……チィ……。もう良いわ、過ぎたことよ。一度の失態は一度の活躍にて取り返せばよいのだ。主砲の範囲にはおらんが、副砲のコントロール権を取り戻したならばすぐさま至近の敵に放て。このペースならまだ立て直しは利くわ……!」
「皆、行くわよ! どこまでもアップテンポで、軽快に、賑やかにいくから! 私に戦う皆の背を鼓舞させて!」
 ミルフィとアマミがここまで活躍で来ているのは、勿論彼女たちの身体能力と、強化された力のおかげもある。だが、そこにさらにユウカの声が上乗せされているからこそ、彼女たちは常よりも更に良く動けているのだ。
 無論、敵もそれに気が付いていない訳ではない。先の戦いのデータから歌を唄う敵を最優先で狙うという事を学んでいる彼らは、ミルフィ達には最低限の迎撃のみ残してユウカに向けて一斉射撃を放った。
「……邪魔な『歌』めがッ! 迎撃砲塔、使えるものだけで良い、全て右辺に向け! 小生意気に戦場で歌なぞと、いつまでもやらせておくでないわ! 副砲の準備まだかァッ!」
「撃ってきた……でも! 出来る限り避けてみせましょう! 気合で。ええ気合で! だって、敵も必死なのでしょう? そのくらいの覚悟じゃないと、つりあわないわ!」
 自分に砲塔のほぼ全てが向いて、それが放たれたとしても、ユウカは歌うことを止めはしない。それは彼女もまた、猟兵の端くれとしての意地があるからこそだ。
 敵の攻撃が及ぶ前線に出たのも、敵に対する、そして味方に対する彼女なりの思いがあったればこそ。ユウカはもとより今回、自分が狙われるだろうことを承知していた。
 でも、だからこそ。彼女は歌うのを止めない。それは戦うものに勇気を与える唄。英雄たちの活躍を願い、讃える魂のバラード。ユウカは文字通り自身が倒れるまで、いや、もし倒れたとしても、歌を止めない覚悟でいるのだ。
「狙いも悪くないし、考えてることも分かる。でも、甘い。その動きなら読めるわ。ここが正念場ね……。蒸気王の装甲をパージするわ」
「お相手は艦艇です。正直恐ろしくもありますが……良い歌です、ユウカ殿の歌は。聞くだけで、僕も力がみなぎるような気がいたします。戦う理由は、それだけで、きっと……。合わせます、紅葉殿。僕たちの力、存分に敵に喰らわせてやりましょう」
 自己犠牲に近い覚悟を持つユウカへの攻撃を受け止めるのは、蒸気王の厚い装甲であった。そう、『装甲』だけである。紅葉は蒸気王の装甲をパージすると、自身は身軽になりながら、パージした装甲を用いてユウカへの攻撃を止めて見せたのだ。
 それでも装甲でカバーしきれない弾丸は、ルベルが振るう墨染の一閃のもとに立ち消えていく。宇宙の闇に溶けあうようなその刀身が奔るたび、弾丸は切り刻まれて宇宙のチリへとその姿を変えた。
「二人とも……! ありがとう! 私も、負けていられない……!」
 ユウカの歌声は、また一段とその美麗さを増して宇宙空間に響いていく。彼女は胸に有り続けた旋律を、そこに込められた願いと祈りを、未来に届けるために生きている。
 それは過去の遺物であるオブリビオンにとって、唾棄すべきものだ。すべての夢見る者たちへの賛歌を歌う彼女の声がある限り、猟兵たちの力は無尽蔵に高まっていく。
「蒸気王の武装を、全部出す……! 弾丸に装甲、榴弾、ついでにコイツも……! ありったけくれてやるわッ!」
 ユウカの歌声で送られる二人。紅葉は蒸気王の武装である、巨大なアサルトライフルとリボルバーの弾を全て撃ち放ちながら戦艦へと突撃を敢行する。狙いは砲塔が集まっていて装甲が薄い個所。多くの砲塔が彼女の放つ弾丸の前に無残に散り、装甲にダメージを与えていく。先ほどは隙が無かったために使えなかった榴弾も、今回はありったけ、文字通りあるだけ全て用いて敵に攻撃を仕掛けていく。
 極め付きは、蒸気王そのものの「体当たり」だ。そこら中で爆発が起きている敵の戦艦に飛びついた紅葉は、蒸気王の装甲で敵の装甲にヒビを入れると、そこに向けて蒸気王の近接武装、パイルバンカーを繰り出した。無論、紅葉自体は激突の前に自前の試験用宇宙バイクで脱出を完了している。
 重い、どこまでも重い轟音。そして、巨大な杭打機がその動作を完了した時、戦艦の右辺にはぽっかりと大きな穴が開いていた。紅葉の全武装が生み出した、敵戦艦への大きなダメージである。
「インペリアブル・マカブルに臆するなよ。火力は向上するが、攻撃パターンは大差ない。落ち着いて対応しろ。私も前線に出る。セゲルさんの後に追撃を行った後、離脱する」
「多少の敵の攻撃が俺に向かう程度なら構うものかよ。無理も通れば道理になる。その土手っ腹に風穴を開けてやろう! いやこれは悪かった、もう開いていたんだったなァ! それならその風穴、広げさせてもらうッ!」
 そして、装甲を切り開いた場所に到着する二人の影がある。迎撃が一瞬静まった隙を見逃さず突出してきた、アシェラとセゲルだ。戦闘機械の指揮権はすでにアシェラの部下である黒騎たちに移譲させてある。
 彼ら二人の足取りもまた、もはや止まることは無いのだ。セゲルが繰り出す力は、【狂飆の王】。紅葉が生み出した装甲の穴に向かって、セゲルは大きく、肺腑の空気をすべて吐き出すように息を吐きだしながらその全力を打ちだした。
 無骨で、むしろ槌に近い彼の武装が、敵の装甲に向けて振り下ろされる。彼の構えるバトルアックス、錨斧【イースヴィーグ】は彼の手の中にあってその膂力を惜しみなく装甲の穴へと伝えていくのに何の不自由もない構造をしている。力。圧倒的で、暴れ狂う、ただ一つの機構。セゲルが放つのはそれだ。
 つまり、驚嘆するほどの威力と宇宙に巻き起こるはずのない暴風を伴った、『単純な暴力』である。敵艦の右装甲に空いた穴へとさらにヒビを入れた彼の次に構えるのは、二人の剣士。
「……墨染、存分に哭きなさい。宇宙の闇にあってなお暗い僕の妖刀よ。今こそ、ここに威を示せ」
「焦る必要はない。出来る事だけをやろう。力加減は苦手でな……悪いが、斬り崩す事しかできそうにないぞ」
 その大きく空いた穴、セゲルが見事に装甲を打ち破ったそこに、ルベルとアシェラが追い打ちをかけていく。
 ルベルの技の名は、【墨染】。ただ一振りのその刃は、至近に迫った装甲を、穴が開いた箇所をさらに広げるような形で切り口を幾度となく付けていく。アシェラも同様にダークフォースソードをその手に携え、赤光にもたらす死の剣をその手首の中で高速で繰る。
 彼が一度だけ刀を振り、妖刀がそれに答えた。彼女が無数の斬撃を敵にもたらして、サイキックエナジーの光が瞬いた。これ以上は必要ないと言いたげな二人が納刀を行うと、鍔鳴り音が二つ宇宙に響き、そして猟兵が斬り結んだ部分の装甲は見事に戦艦から剥ぎ取られていく。すでに敵戦艦の右辺の装甲は機能していないと言っても良い。
 紅葉が穴をあけ、セゲルが続き、ルベルとアシェラが切り開いた。見事なやり口である。
「…………右辺は捨てる。そうせざるを得まい。猟兵の強さ、侮っておるわけではなかったが……いやなに、まだ勝負を捨てるわけにはいくまいて。わしらが負けても猟兵どもを潰せれば、それで意向には沿う。副砲、そろコントロール良いな。射角を最大限に利用せよ。右辺の装甲が余波で消えても構わん。もはや諸共よな。取り付いておる敵を一掃するのじゃ。コントロールを手動に切り替えた後、すぐさま放て」
「……ヴィクティムからの指示は、そろそろ……。ヤタの情報も、それを裏付けている……来た」
 だが、敵の司令官もさるもの。彼は武装のコントロール権を全て最速で取り返させると、自分が操る艦に及ぼす被害を飲み込んだうえで、右辺に存在する猟兵たちを一挙に殲滅するやり方を取った。
 主砲ほどの威力は無いが、多くの猟兵たちに向けて副砲が動く。そして、前線で戦う彼ら、彼女らを捉えていく。今まさに副砲からレーザーが発射される、というその時。嗤うのは、オブリビオンではなく猟兵の方であった。
「来ると思ったぜ、司令官殿。アンタはどうやらハッカーとしては三流も良いとこだが、司令官としては超一流らしいからな。まさにチル・ワークだったぜ。『副砲のコントロールを即座に手動に切り替えて、そしてそのまま撃ってくる』……俺の狙い通りだ。いや、俺達の、かな。タイミングはドンピシャ。後はメンカルに任せるとするか」
「司令官殿ォ、悪いな。これが俺の救いなのさ。これが、猟兵なンだよ。俺が誰かを救えば、その分ソイツが別の奴を救うのさ。テメェは『歌』だけが救い手だと思ってたらしいが……。『救い手』は、言っちまやァ……俺ら全員が、『そう』なンだよ」
 遠くのヴィクティムが、そしてジンが笑う。一人の猟兵が誰かを助ければ、助けられた猟兵がまた誰かを救う。当人たちにその意識がなくとも、猟兵という圧倒的な力を有する彼らの行動は、戦場において間違いなく相互に作用を及ぼし合っている。
 前線で戦う猟兵も、後方支援を行う猟兵も、そこに上下などあるはずもない。猟兵は、いわば一つの群体だ。そしてヴィクティムという個体が行った行動は今、前線の猟兵たちを救い、更に攻撃のチャンスを生み出そうとしていた。
「何の……ッ! 何の冗談だッ! 何故ッ! 『手動で操作を行っているはずの主砲が作動しているッ!?』 これでは副砲へ回すだけのエネルギーが確保できん……ッ! ウィザードめ、わしらがこのタイミングで副砲を用いることを『読んで』いたとでもいうのか……ッ!?」
 そう、ヴィクティムは先ほどの主砲のコントロール権を掌握した際に、あらかじめ手動に切り替えられることすら読んでいた。
 それ故、あらかじめメンカルから送られてきていた敵艦の電子情報から副砲のコントロール権を敵が取り返すであろう時間と再発射にかかるまでの時間を読み解き、そのタイミングに合わせて主砲の発射命令をあらかじめ出しておいたのだ。
 副砲に回されるはずだったエネルギーたちが、主砲に優先的に回されることで副砲の発射が遅れていく。それを見逃すメンカルではない。
「——世の理よ、騒げ、暴れろ」
「——誰も俺を、俺達を出し抜けないぜ」
「猟兵たちに、してやられたとでも言うのか……ッ!! このわしがァッ!」
「——汝は天変、汝は動地。魔女が望むは安寧破る元素の乱」
 副砲の動きが止まっている間にメンカルが放つのは、彼女のユーベルコード、【精霊の騒乱】による地属性の一撃。魔力による重力崩壊を砲に仕掛けた彼女の攻撃は、確かに主砲を捉え、内部のエネルギーごと潰して甚大なダメージを与えていく。
 そして、そこにもう一枚の刃が到着した。
「そこに、一枚噛ませていただきましょう。不意を打ち、敵を出し抜くには絶好のタイミングと見ました。……通信がフレアで一時的に遮断されていたようで、心配をおかけ致しました」
「~~~~ッッ!? あ奴はッ! デブリ群諸共焼き払ったはずでは?! 爆発も確認した、それなのに、どういう……ッ!」
 最後の刃は、敵の不意を突くためにやられた振りをしていたサーズデイである。彼は主砲が自身を捉えた瞬間ミサイルポッドを切り離し、自身はデブリに向けてワイヤーガンを射出。
 そしてそのままブースト光などの痕跡を見せずウィンチで静かに宇宙空間を移動しながら消息を絶つことで、切り離したミサイルポッドの爆発が、サーズデイ撃破の爆発であったとこの場所にいる全員に誤認させたのだ。
「お前さん生きてやがったのかァ! ハッハッハ! 心配させるンじゃねェや!」
「XAF-レイヴン、スタンバイ。味方に心配をかけてしまったのなら、その分活躍することで返す。全力で行かせて頂こう」
 サーズデイは武装に表示される全てのアラートとエラーメッセージを無視し、彼の持ち得る全ての武装、そのありったけを敵の主砲に向けて放っていく。
 残り弾数、熱量による武装への大幅な過負荷、姿勢制御への影響。全て、知ったことか。メンカルがダメージを与えた主砲に向けて、大型レールガン、ミサイルポッド、BAC-ウッドペッカーの一斉射をサブアームも用いて放つ。
 猟兵たちの見事な連携が、役割分担が。敵の鼻を明かし、確実に敵艦にダメージを与えていく。見たところ主砲はまだ動くが、それも限界だ。もって後二発か三発かといったところ。
 彼らの活躍が、この宇宙への勝利へと手を伸ばした瞬間であった。だが、まだだ。彼らの攻撃は、まだ終わったわけではない。

●善戦
「白城艦隊、相手にとって不足はなしね。もう他のみんなの活躍で片側の装甲は破られてるけど……、どうするの? アメリア」
「壊しましょう、徹底的に。幸い、こっちにはそれができそうな味方が大勢いるんだもん! ね、ネグルくん!」
「これは買いかぶられたものだな。だが……やってみよう。やって出来ないことではないはずだ」
 敵艦の左辺で突撃のための方針を軽く打ち合わせているのは、ネグル・ギュネス(ロスト・オブ・パストデイズ・f00099)を筆頭とした、宇宙バイクなどの移動手段をそれぞれ有する者たちだ。
 アメリア・イアハッター(想空流・f01896)とヘスティア・イクテュス(SkyFish団船長(自称)・f04572)の二人も、それぞれ自分が信頼を置く機動力を持っている。どうやら猟兵たちは敵艦を完全に攻略した上で勝鬨を上げる心づもりらしかった。
 更にそこにもう二人、敵の攻略に自信を持つ人物が現れる。
「さーて、どーしよ―かしらねぇ! この子、ビームとかそーゆーフシギ機能なんてついてないんだけど! 拳銃一丁でどーしろってのよもー! ……あー、うん。現実逃避しても仕方ないし、腹くくるしかないわよねぇ、やっぱ。誰か、もし良かったらバイクに乗せてくれるかしらぁ?」
「それならエアハートに乗っていって、ティオレンシアちゃん! 私、元々誰かに攻撃はお任せするつもりだったんだ!」
「何や、似た武器の人もおるんやな! こっちの火器は拳銃二丁、とてもやないけど戦艦と真正面からはやりあえん。だったらうちらがやることは限られる……そいつは、高速軌道による撹乱と小さめの火器潰し! 先駆けはうちらに任せてや! 後はまかすで、ヘスティアちゃん、ネグルくん!」
「そう言われてしまっては、尚更期待には応えねばなるまいな。征くぞ皆、大逆転、ジャックポットを見せてやろうか! 狙うは総取りだ!」
 メルノ・ネッケル(火器狐・f09332)とティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)。似たような武器を持つ二人も加えて、猟兵たちは敵艦の左辺攻略に乗り出すのであった。
「右辺は既に壊滅的状況にある、主砲の損害も甚大……まずい状況、いや、もうすでに……。じゃが、ここで拳を解くわけにはいかん。どれだけ少なくとも、猟兵たちの魂も連れて行かねばなるまいて。左辺より来る猟兵たちに向け全力を注げ。主砲は確実なその時が来るまでは撃つでないぞ。こうなっては、我らの命よりも大事な虎の子よ。猟兵を殺すには、その武装に頼らねば確実性に欠けるでな。戦闘移動はまだいけるな?」
 敵艦の破壊状態から言って、既に大局的なこの戦場における勝敗は決定している。この戦場に残っているのは、オブリビオンの悪あがきだけだ。
 あとは猟兵を何人道連れにできるか。オブリビオンの意識は既にそちらへと移っている。彼らの操る戦艦は、半壊状態に陥ってもなおその速度を緩めず、むしろ加速して猟兵たちと相対する。
 彼らの駆る戦艦は艦載機などに頼ることなく迎撃と戦闘を行うことができる、まさに純戦闘型戦艦。傷付いた右辺を隠すように上下と左右に旋回を行いながら、未だ無事な左辺で猟兵に向き直り迎撃を行うその姿からは、執念じみたものすら感じる。何としてでも、猟兵たちを殺す。そんなオブリビオンのどす黒い情念が染み出しているかのようだ。
「宇宙を飛ぶ大きな船……。誰かを殺すために作られたのでなければ、とっても素敵なモノなのにな……。メルノちゃん、こちらアメリア! 所定のポジションに着いたよ!」
「こっちもOKや、それじゃあ同時に攻め込んで敵の火線を分散させるで! 向こうの火力は圧倒的、その上使うもん使えばほぼ全周のカバーが予想されるな。……戦闘知識で導く答えは一つ、兎に角止まらず動き続ける!」
 高速起動組の中で一足早く宇宙の闇へと漕ぎ出したのは、仲間が敵艦に接近しやすいよう陽動を行うアメリアとその愛機、エアハートに同乗しているティオレンシアだ。
「まずは、敵の目を惹くために……! 踊らせてあげる!」
「分かりやすい陽動じゃ、派手な攻撃で良く目立つ。発射源の特定と伏兵の存在に目を向けよ。……チ、魔法によるもの、か……。では構わん! 高速で動くあ奴らを計器ではもはや追えんと思え! 目視と偏差射撃で捉えるのだ!」
 突撃しながらアメリアが放っていくのは、ユーベルコード【マジック・ミサイル・ダンス】。あらかじめ進軍ルートを味方と軽く打ち合わせていた彼女は、自分の練り上げた魔力を仲間がいない方向へ向けて発射し、宇宙を揺蕩うデブリや戦艦の破片などにミサイルをぶつけて大爆発を起こしていく。
 彼女がエアハートの運転の片手間に放っていく魔法のミサイルは、発射軌道を描く発煙はどこにも無い。故にどこから発射されたか宇宙では把握ができないという効果を敵にもたらしていた。しかし、敵もさすがというべきか。この攻撃の主な目的が陽動と攪乱であることを即座に見抜くと、信頼できる部下たちの経験を頼ってセンサではなく彼らの感覚で捜索を行わせていく。
「…………見付けたかッ! 確認は良い、宇宙バイクであるな? では、迎撃射撃用意! 副砲も用いよ、まずは敵の足を止めるのだ!」
「うわ、もう撃ってきた……! でも、それなら陽動としては充分ハマってる形よね! ティオレンシアちゃん、ここからはもうちょっと飛ばすよ! しっかり掴まってて!」
「もちろん構わないわぁ。バイクに乗せてもらってるのはこっちなんだもの! 気にせず全力でやっちゃって!」
 後部座席に乗っているティオレンシアに一言許可をもらったアメリアは、エアハートのハンドルをしっかと握りこんでいく。彼女の表情は明るい。
 ここは宇宙で、彼女の好きな空ではない。だが、敵の迎撃を避ける程度。彼女がエアハートに乗っているならば、避けきれないはずがない。
 エアハートのアクセルを思い切り踏み込みながら、アメリアは宇宙の星々の中で輝き、滑るように飛んでいく。敵艦に向けてマジックミサイルを先ほどと同様に、今度は更に敵艦の至近で爆発させることで敵の視界を遮ると同時に砲塔も潰していく。目くらましと陽動、意識の惹きつけを同時に行える良い手だ。
「アメリアちゃん、4時方向にデブリ! 今の主砲の角度じゃこっちのデブリ群までは撃てないはず! 目立って敵に一斉射喰らった今は耐えることが先決よぉ」
「そうね、ありがとうティオレンシアちゃん! あの中で踊らせてもらいましょっか! 後はメルノちゃんが敵に綻びを作ってくれるまでとことん走る……! 頑張ってね、エアハート!」
「全ての火器をFQ-24方面のデブリ群に向けよ! 主砲角はそのままでよい、この角度からではどうあがいても当たらん! 下手に艦を動かせば、右辺を敵に晒すこととなる……!」
 ティオレンシアの地形利用の知識も手伝って、アメリアはエアハートを時に巧みにハンドル操作で的確に操り、時に急加減速を行いながら敵の弾幕を騙し騙し凌いでいく。
「10時方向から敵の迎撃射撃! 目の前のデブリを跳び越えて! ジャンプするみたいに!」
「OK! 移動は任せて、飛び跳ねるのなら慣れっこだから!」
「同じ方向から更に誘導迎撃ミサイル……?! 弾幕厚いのよぉ、参るわねぇ……! 避けきれないのだけは撃ち落とすから、このまま行きなさい! あたしを信じて!」
「だいじょーぶ! 迎撃も、ティオレンシアちゃんを信じてるから! エアハート、ダッシュするよ! いっ……けええええええ!」
 避けきれない量の弾幕に襲われた時は、後部を直接目視で確認するティオレンシアからのアドバイスを受けてアメリアがエアハートを滑らせていく。
 ジグザグに、そして縦横無尽に。敵艦からの攻撃をデブリの群れの中でアメリアたちは避け、躱し、いなして進む。エアハートはアメリアの意思をそのままダイレクトに反映し、時に走って時に跳び、旋回しながらエッジを利かせてデブリすれすれを駆けていく。
 それでも彼女たちに追いすがる敵の攻撃は、ティオレンシアの愛用のシングルアクション式6連装リボルバー、オブシディアンが射止めていく。
 天地無用、上下左右も頻繁に入れ替わる宇宙での高速起動の只中にありながら、彼女の放つ鉄の弾丸は宇宙の闇を切り裂いて飛び、過たず敵の放ったミサイルに命中していく。見事な操縦の腕、見事な射撃の腕。二つの才能が合わさったからこそできる、巧みな戦闘だ。
「アメリアちゃんたちは相当持たせてくれてる……! キツネビサイクル、頼むでぇ! 騎乗、騎兵ならぬ狐兵の走り、見せてやろやないか! フルスピードや!」
「更に高速で接近する敵影じゃと?! そちらは主砲で対処せよ! 旋回機動の周期と加速からタイミングを割り出せ! チャージ開始!」
 アメリアたちが敵の迎撃を一手に引き留めるのは、味方を信じているからこそ。彼女たちが攻撃を引き留めるだけ、メルノの目の前に障害は少なくなっていく。
「一、二、三秒。まだや、まだいける……! キツネビサイクル、まだや……もっと飛ばせっ!」
 黒々とした宙に浮かぶは青白い狐火。ぼう、と浮かんでは消え、星の瞬きより尚儚げににその身を散らしては揺れて見えなくなっていく。メルノの駆るキツネビサイクルは、それを動力にしてひた走る呪法改造宇宙二輪だ。
 狐色の車体に真っ赤なファイアパターン、タイヤからは青白い火花をチラつかせて、彼女はアクセルをただただ踏む。加速、加速、加速、加速。愚直なまでのその加速は、それだけで充分脅威だ。
 敵が来ると分かっていても、メルノに攻撃を当てるにはもはや横方向からの射撃では至難の技。故に迎撃するには、向き直って正面切った射線を整えるしかないのだから。
「四、五、六秒。お狐様のお通りや! その道開けんと火傷するで……!」
「艦艇旋回、急げ! 猟兵を……! これ以上近付けさせるでないわッ! あと四秒……! 間に合えばこちらの主砲が先に貴様を焼き尽くす!」
 遅い。いや、メルノが速いのだろうか。敵艦が高速で艦首をメルノに向けようとする。すでに主砲のチャージは彼女の接近と同時に行われている。
 敵艦の主砲、そのエネルギーのチャージが早いか、メルノの接近が早いか。勝負はそこだ。そこで決まる。キツネビサイクルは既にフルスロットル、エンジンはもう2000回転を優にオーバーしている。
「あと一秒……間に合えば、せめて一人は道連れにできるわァ!」
「七、八、——九秒や。悪いな、こっちの仕込みはそっちの主砲よりほんのちょっと早いんや。……九秒きっかり、撃ち抜くで!」
 そしてそのときが来た。メルノのカウントは九秒きっかり。【九秒の狐】に必要な、9秒間のカウントは既にクリアした。赤と黒に光る彼女の熱線銃、R&Bが銃身を鈍く光らせてエネルギーを放つ。
 狙いは敵の副砲、その発射口への狙撃である。この段階で完全な状態で残っており、敵の自由に動かせるのはもはやそれだけ。だからこそ、彼女の狙いはそこなのだ。引き金に手をかけ、ゆっくりとそれを引く。
 一瞬メルノの周りに赤い火が灯り、周囲を青白い狐火が舞い始めたかと思うと、それらはすべて熱線に集約されて宇宙を奔った。フォックスファイアはショットの合図。
「ッ、副砲を?!」
「十秒! こちらメルノ、打ち合わせ通り副砲はブッ飛ばしたで! これから離脱! 後は任せたっ!」
 そして戦場を熱と光、爆発が支配する。主砲が急加速して離脱していくメルノの横すれすれを通り過ぎ、そして副砲が落ちた故だ。彼女は見事敵艦の副砲を落として見せた。
 アメリアたちの陽動と、メルノ自身の思い切った行動の賜物である。そして、猟兵の攻撃は続く。
「接近のチャンス……! 今から敵艦へ接近するわ! 覚悟、出来てる? 敵の下に潜り込んで浮上するよ!」
「ええ、もちろん。急加速、でしょぉ? 存分にやっちゃって良いわぁ、攻撃は任せちゃって!」
 メルノがやり遂げたのなら次は私たちだと言わんばかりに、アメリアとティオレンシアはデブリ群から抜け出してエアハートのスピードを上げていく。
 狙いは当然、至近からの敵艦への直接攻撃だ。アメリアはもう自分の魔力を操ることはせず、ただただ操縦に専念している。攻撃は後ろに座ったマスターにしてバーテンダーの彼女がやってくれるだろうと信じて、彼女たちは即興のバトル・セッションを奏でていく。
「潜り込まれただと!? 確か目視で捉えたあのユニットの装備は、魔法に拳銃……! 拳銃はともかくとして、魔法とは厄介な……! 副砲……ック、いや、艦艇を45度旋回! 方向はーーッ」
「来たよ、ティオレンシア……ううん、ティオちゃん! 存分にやっちゃって!」
「あたしの攻撃なら、安心……とでも、思ったかしらぁ? ちょぉっと甘いんじゃないかしらねぇ?」
 アメリアは敵の迎撃を危なげなく避け続ける。当然だ。操縦に専念した一猟兵が来る超高速の宇宙バイクは、そう簡単に捉えられるような代物ではない。たとえ相手が精鋭の乗る艦であっても、すでに迎撃の手札を抜かれているのなら。互角以上の勝負に持ち込めるのは道理というものだ。
 そして、ティオレンシアのオブシディアンが唸る。轟音は一度。しかして攻撃は二度だ。彼女が放つ必殺の力、【滅殺】は30cm以内の敵にしか通用しない技。だが、その分威力は折り紙付きだ。敵艦の背後や下側などの弾幕が薄そうな箇所を通って左辺にたどり着いた二人は、敵の装甲に多大なダメージを与えていく。
「あたしの感じゃ、この辺りが怪しいと思うのよねぇ……。どうかしらぁ?」
「やるぅティオちゃん! すごい、すごーーい! 装甲にヒビ、バッチリ入ったね!」
 オブシディアンから放たれた二度の超常の力は、まさに必殺、必中。至近距離で撃ち込まれた二発の弾丸は、敵の装甲の全く同じ個所へとアプローチを受けて突き刺さる。
 スポット・バースト・ショット。以前の艦隊戦でも見せたティオレンシアの技は、高速の宇宙バイクに乗っていたとしても健在だ。装甲にハッキリと入ったヒビを見て、しかし彼女は少しだけ不満げに口をとがらせる。
「んー、でもヒビだけかぁ。正直あたしがダメージ与える方法、これ以外他に思いつかないのよねぇ。何か新しいダメージソース、考えたほうがいいのかしらねぇ……。まぁ、あとは他の猟兵に任せましょうかぁ」
「ええ! ここまでやれば、あとは二人がやってくれる!」
「アメリアさんたちが上手くやったようだ。私たちも行こうか、ヘスティアさん。こちらは既に所定のポジションに付いている」
「こちらも同じく、よ。さあて、敵の戦艦にもう一泡吹かせに行きましょうか!」
 宇宙にもう二つの光が現れる。ネグルは黒塗りの装甲に身を包んだ改造宇宙バイク、SR・ファントムに載って宙を走る。時に鋭角に進入角度を強引に変えては敵の視界からその姿を消し、時に迎撃射撃を最小限の動きで避けて更に加速を続ける。
 既にネグルとSR・ファントムには、敵の砲撃がかすめた痕跡がある。彼の肌は飛び交う弾丸を間近で受けた熱を反映してわずかに赤く染まり、彼の愛機にはいくつかの弾痕が顔をのぞかせている。それでも彼は止まらない。止まってたまるか。そんな感情が、彼の突撃からは見え隠れしていた。
『多少の被弾を確認。これ以上の接近は更に危険度が高いことが予想されます。速度を緩めますか?』
「冗談だろう? 俺もお前も、傷付くのは慣れているはずだ……! 速度を上げろ、ファントム! 今よりも、さらにだ!」
『聞いてみただけです、そう言うと思っておりました。既に速度は上げておりますが、代わりに戦闘終了後のメンテを要求します』
「ああ、無事に帰ったらオーバーホールの後に特級のオイルでもくれてやる! だから今は走れ! 命懸けで突っ走って、星のように駆け抜けるぞ!」
「イエス・マスター。その意のままに、銀河の宙をお駆け下さいまし」
 SR・ファントムには、女性型のAIが搭載されている。ネグルと『彼女』は、比喩表現ではなく唯一無二の相棒なのだ。
 ここに帝国を相手取って進む一流の騎手がおり、そして宇宙を駆ける一流の鉄馬がここにいる。彼らに手を出すなどとは、精鋭の艦艇であろうとも過ぎたことであったのかもしれない。
「私の、私達の走りに勝てると思うなよ!」
 ネグルは残像を残すほどの急加速を行いながら敵の砲塔を欺き、時に避けきれない弾があれば宇宙空間を自在に愛機を操って躱していく。半円状の旋回を行ったかと思うと180度のフリップターン、そして運動エネルギーを最大限に活かした疾走を魅せつける。宇宙だからこそ、そしてネグルの操縦の腕があるからこそでき得た動きである。
「やるわね、ネグルも……! わたしだって! 対艦戦は強くても人間サイズの機動でなら捉えられるかしら!」
 だが、ヘスティアも負けてはいない。主砲の火力を警戒する彼女は正面からの突撃を避け、敵の船の側面からの突破になるよう、敵艦を揺さぶるように遠回りに攻め込んでいく。
 既に右辺を完全に破壊されている敵艦からすれば、ヘスティアの動きはたまったものではない。彼女の動向が一度右辺に繋がるようであれば、敵艦もすかさずそれに合わせて向きを転換していく。その結果彼女の行動が与えたのは、敵の過剰な緊張だ。
「……ック、あの猟兵の動き……! まさか、既に右辺の状況を掴んでおるのか……!? この僅かな戦闘時間で、そこまで情報を掴んでおるとすれば、もはや猟兵全体に右辺が使えないことはバレ……!? いや、いかん! だとしても、我らが目指すべき行動はこの武装状態では左辺の猟兵の殲滅以外にあり得ない! あり得ない、はずじゃ……ッッ!」
 実際にヘスティアはもう他の猟兵たちから情報を受け取って右辺の状況を知っている。だからこそ、自身の行動が相手にとって単なる情報収集以上の威嚇効果を発揮することを彼女は十二分に理解していた。
 敵艦の艦艇運動によって右辺への攻撃は難しい状態にあるのだが、ヘスティアはそれすらも割り切っている。
「情報収集、完了ね。船の形状……砲塔の位置……。それらから敵の火砲の範囲を想定。比較的火砲の集中の少ない……範囲、角度は……見付けた! 全力飛行で……突撃っ!」
 彼女が走るラインは、ネグルと鏡合わせのもの。元々他に側面から攻め込む猟兵がいるならタイミングを合わせて突撃しようと考えていた彼女の思惑に、ネグルが合わせてくれた形になる。
「両側面から、火砲が少しでも減ればチャンスは……! アベル、計算して! 想定はこの速度、この角度での高速飛行! 敵火砲の間隔が当たらない場所はどこかしら!?」
『そうでしたらお嬢様、52通りの作戦案をご用意しております。順に説明いたしましょうか? まず一つ目はーー、』
「わーーっ、もう! 想定追加! ここから最短距離を通る作戦案で!」
『諒解致しました。であれば、ネグル様の狙いに合わせるのがよろしいかと。ティオレンシア様が打ち込んだ敵艦左辺の装甲、ヒビが入った箇所へと向かっておられるようです。無事にご帰還くださいませ。お嬢様がいなくなってしまっては、誰が備蓄にある紅茶を消費するのです?』
「分かった、ありがとう! ちゃんと帰るから大丈夫よ! この作戦の後に飲む紅茶はきっと美味しいでしょうねっ!」
 ヘスティアも、ネグルと同様にサポートAIを有している。彼女が様々な場面で頼っているこのAIこそ、執事的な話し方を行うティンク・アベルだ。
 彼女は信頼できる『執事』の助けを借りながら、妖精の羽を象ったジェットパック、ティターニアで宇宙を羽ばたいていく。上下二対の推進器が彼女の運動エネルギーを底上げし、姿勢制御も行ってくれている。
 だからこそ、ヘスティアは高速戦闘下においても安定して両腕を自由に使えるのだ。ティンク・アベルが指し示したルートを通りながら、彼女は進路の邪魔になる弾丸を構えたビームセイバーで一刀両断していく。その加速は留まることを知らない。
「至近に二名の猟兵を、こうも、易々と……ッ! こんなことが、……ッ!!」
「接近完了! アベル、オペレーティング終了して良いわ! ここで……! 全エネルギーを使い果たすから!」
『かしこまりました。では、早いご帰還をお待ちしております。ご武運を、我が主』
「ミストルティン射角ロック! 姿勢制御バーニア起動! エネルギー回路接続完了! ……ミストルティン、ミサイル、全弾発射! 土手っ腹に火力を集中よ!」
 至近距離、ティオレンシアが打ち込んだ装甲へのヒビ。その中心である弾痕に向けて、ヘスティアは自身の持つ武装を全て使い果たしていく。
 125発のマイクロミサイルに、ティターニアとコードで繋がっている可変式ミスティルテインの一斉発射。それは確実に敵装甲の最も脆い部分を的確に突き、ヒビを広げていく。
 それだけにはとどまらず、彼女が放った火力の前に左辺の砲塔の大部分も破壊されていく。マイクロミサイルの爆発が、敵装甲の内部にある導線を焼き焦がしていったためだろう。
 つまり、もはや左辺も猟兵によって壊滅的状況にある、という事だ。残っているのは、その装甲だけ。
「アクセス、ユーベルコード起動。───行こうか、相棒。我らが疾走、誰にも止められぬさ。大きく言ってしまった手前、責任は取らないといけないしな」
『ご髄に。救われるのではなく、救う側である貴方だからこそ。銀河を覆う闇を、どうか切り払い下さいますよう』
 アメリアが攪乱し、メルノが繋いだ。ティオレンシアが装甲に楔を撃って、ヘスティアがそこんい火力を降り注いだ。なら、あとは斬って捨てるだけ。既に戦場の活躍は正にワイドエリア・プログレッシブと言って良い状態。
 つまりは、誰が最後に敵の装甲を突き崩すか、だ。猟兵たちの活躍は一つ一つのようで、その全ては確実につながっている。一人で流れる星が、宙に集まって流星群となるように。彼らは一つのうねり、一つの力、一つの救いなのだから。
「征こうか、相棒! 俺の愛機! 我らが疾走、誰にも止められぬとも! 覚悟しろ、クソッタレ共が!!」
「わしの艦が……ッ! 貴様ら、ごとき、にィ……ッッッッ!」
 ネグルはユーベルコード【幻影疾走・速型】でさらなる加速を行いながら、愛刀桜花幻影を抜き放つ。桜の花弁で彩られた鞘から抜き放たれた刀身が、星の光を吸い込んで煌めく。
 幻影も断ち切るというその太刀に、崩壊寸前の装甲が斬れない道理などあるはずもなかった。ネグルが腰元から愛刀を一度、二度と振り回して一つ呼吸を吐く。そしてそのまま手首を返して左右に薙ぎ払いを重ねていく。流麗な太刀筋が衝撃波を伴って装甲を刻んでいくのが分かる。
「そら。——ジャックポットだ」
『お美事です』
 シャリン。彼の刀が鞘に収まり、柄に付いた鈴が宇宙で鳴った。その瞬間、敵の宇宙戦艦に大きな風穴が開く。
 これで猟兵たちは敵艦の装甲全てを破壊した。後のタスクで残っているのは、もはや止めだけだ。飛び切り鮮烈な止めだけ。

●大戦果
「……フッ、クックック……、フハハハハハ! こうまでされては……完敗だのう!」
 敵の艦の中で、司令官の笑い声だけが響く。もはやこの艦の命運は尽きている。墜ちるのも時間の問題だろう。既に起動する砲塔はなく、副砲も大破している。
 主砲は辛うじて撃てる状態にあるが、それだけだ。だが、敵の司令官は笑う。長い歴史でこんなことは味わったことが無かったと言いたげに、どこまでも笑うのだった。
「さァて! ここまで来れば最後の戦闘機動よな! どうあってもわしらの黄泉路に付き合ってもらうぞ猟兵! 艦艇運動を再開せよ! 機関部とコアマシンのみ動いておればよい! まだ向かってくる猟兵に向けて艦首を向けよ! 『体当たり』じゃ!」
 敵は既に万策尽きたと言っても良い状態。それでも猟兵に対して敵の姿勢を崩さず、なおも攻撃の姿勢を取り続けるのは彼らの精鋭部隊としての意地だろう。
 敵の意地に付き合うように、猟兵たちもまたこの状態の敵艦を放置するようなことはしない。強敵を越えるのだ、最後までが戦いである。攻撃手段も、意地も、覚悟も、その全てを乗り越えてこそだろう?
「さて、ウォーミングアップも済ませた。準備万端だ! ギドさん、いつでもいけるぞ!」
「それは頼もしい限り、では往こうか、ヴァーリャ嬢。この馬鹿騒ぎもそろそろ終盤だ。幕を閉じるとしよう」
 戦場に降り立つヴァーリャ・スネシュコヴァ(一片氷心・f01757)とギド・スプートニク(意志無き者の王・f00088)の二人組。
 宇宙の光が彼らの味方。銀河の希望が彼らの力だ。既に迎撃と呼べるような敵の兵器はない。あるとすれば一つだけ。歪んでしまった主砲だけである。放つだけで自壊の可能性すら浮上している、最後の虎の子だ。
「確か主砲の大きな損害は重力によるものじゃったな? であれば、上下にズレることがあろうと左右にはそこまで影響はないじゃろうて。猟兵よ、わしらの最後の悪あがきに付き合ってもらうぞ! 放てィ!」
 だが、敵はその手法を惜しげもなくヴァーリャとギドに向かって放っていく。それも、連射だ。一度の放射の後にキッカリ10秒間のラグを置いて、一定間隔で猟兵たちを主砲の光が襲う。更に恐ろしいのは、徐々に歪んでいるはずの主砲の照準が正確になりつつある、という事である。
 彼らにとって、もはや自分の命は無いも同然。それが故に開き直ったと見える。追い詰められた獣を前にして、それでも猟兵たちは行く。
「フン。どうやらあの二人組は何やら準備しておるようじゃな……。射程外にいる方は良い、その手前にいるあやつを狙え! 主砲角調整よいか! そろそろ当てに行くぞい!」
「くっ……! あの主砲、もう撃てないわけじゃないのか……! このままは、まずい……! ギドさん、準備どうだろうか?!」
「すまない、もう少しかかる。あと一つ、何かこちらに手があれば……」
 ヴァーリャに向けて何度も放たれていくその閃光は、徐々にその彼女との距離を縮めていく。もはや捨て身となった敵の攻勢は、いくら第六感に優れたヴァーリャといえども永遠に避け続けられているわけではない。
 敵は既にヴァーリャの避け方、その回避までを想定に入れた上で主砲を照射してくる。ギドが行っている準備が完了するまであとわずかという所で、彼女たちはピンチに陥ってしまった。恐るべきは敵の覚悟というべきだろうか。
 その時、彼方から闇を切り裂いて飛ぶ影があった。オブリビオンに与するものではない。つまりは、猟兵の増援だ。
「見たり見たり見たり、汝の破滅を見たり。誇りし火力は全てを屠り阻む全てを薙ぎ倒さん。残りし戦場屍山血河。残りし怨念食らいて挑む。我らの覚悟に瞠目せよ」
「あれは……! 前見たことがあるぞ! ビードットだ!」
「むっ、小癪な! ここに来て新手か……血沸くのう! どこからでも来るが好い、猟兵よ! わしらは独りで死なん、一人でも多く貴様らを連れて逝くわ!」
 現れたのはビードット・ワイワイ(根源的破滅招来者・f02622)。彼は敵の正面に立ちふさがるように現れると、彼の用いる全ての装備、全仮想破滅補助具の封印を解いた。
 そうしてこの宇宙にて顕現に至るのは、破滅の記憶。命を削る覚悟。破滅の覚悟。呪詛の記録。破滅の記録。即ち彼は、かつてこの宇宙にて散り、破滅した解放軍の戦闘機群、その破滅の残滓を放出したのである。
 夥しい、うじゃうじゃと湧き出る黒々としたそれらは、ビードットの手元を離れて敵戦艦の主砲付近に纏わりついていく。いや、特攻を仕掛けているのだろうか。
「ロードルーイン。星の記録を読み解きし人の傲慢。その再来を望む。かくして彼らは滅んだ」
「これは……ッ!? 面白い、わしが! わしらが殺してきた解放軍の機体ではないか! おお、わしらの滅びの前にこうしてまた相まみえるとは! ……だがッ! 貴様等に滅ぼされるわけにはいかんのだ! わしらが今相手取っているのは、死んだ亡霊ではない! 生きて血の通った好敵手なのだからッ!」
 破滅をもたらすビードットのユーベルコード、【実行仮想破滅・救われなかった記録】を受けても、しかし敵艦は止まらない。敵艦目がけて空中戦を挑んでいく過去の破滅の記憶達を歪んだ主砲で薙ぎ払いながら、敵の艦艇は猟兵たちに向けて決死の一撃を喰らわせようと必死だ。
 だが、ビードットが敵艦の主砲を幾度となく止めたのは事実。であれば、動き出す戦術がある。どうしても欲しかったその一瞬は既につかんだ。勝負の準備はできた。後は、賽を投げるだけ。
「少々てこずったが、これで良し。これだけのデカブツであれば弾除けにもよかろう」
「勿論だ! チャンスはビードットが敵を止めてくれた今をおいて他にない! やろう、ギドさん!」
 ギドがあえて主砲の射程外から準備していたもの。それは、彼の拷問具の鎖によるいわゆる「弾込め」だ。
 普段は彼の血液として体内に収納されているギドの鎖は、なんと他宙域からの敵艦艇を縛り上げ、力任せに引っ張ってきた。圧倒的な質量を手に入れた上で、ギドはその鎖を十全に振るっていく。
 そして、なんと彼は縛り上げた敵艦艇をそのまま何度か振り回して敵艦に向けてほおり投げて見せたのだ。巨大な弾丸、質量兵器、かつ弾避けである。
「質量に対しては質量。砲門を幾つか潰せたならばそれで十分と思っていたが……どうやらもう主砲以外に潰せる武装もないらしい。ヴァーリャ嬢、上手く盾にしてくれれば助かる」
「ああ、任せてくれ! 遠慮なくやっちゃってくれ、ギドさん! 後の回避は上手いことやってみせるぞ!」
 そして、ギドが投げるのは捕らえた敵艦艇だけではない。ヴァーリャもだ。同じ要領で彼女を鎖で巻いたギドは、主砲目掛けハンマー投げの要領で勢いを付けた後に彼女を思い切り投げ飛ばして見せる。
 圧倒的な加速の恩恵を受けながら、ヴァーリャは敵の主砲目がけてまっしぐらに飛んでいく。文字通り、一直線に残像を残すような速さで飛んでいるのだ。宇宙空間にあって彼女の推力は全く衰えることなく、異常な速度で敵艦への接近を可能にしていく。
「なっ……!? ふはっ、猟兵の戦法は面白いものよな! 敵の艦艇をそのまま弾丸に用いるなど、わしも思いつかなんだ! 艦を後退させよ、この状態ならばまずあの質量を撃ち落としてからじゃ! 主砲で撃ち落とせィ! 過去の破滅の残滓も、今の猟兵の工夫も、諸共に打ち砕け! わしらの全力を見せるはこの場所ぞ! 悔いを残して死ぬなどまっぴらごめん! 後退しつつ主砲、二連射用意!」
 だが、敵もそれに対して何も対処を取らない訳がない。先ほどまでは猟兵たちに対して体当たりを行うべくその推力を前進に回していた彼らであったが、今はその推力の全てを持って後退を選択した。少しでも猟兵に被害を与えるため、彼らもまた死の際にあって全力である。
 既に敵は弾避けとして用いられた艦艇を主砲で破壊し、もう一度その暴力を今度は猟兵に浴びせようとしている。後退はそのための時間稼ぎだ。
 しかし、敵が一つ行動を起こしている間に猟兵もまた行動を起こす。戦場であれば、それが常である。既にビードットが放っていた記録された過去の破滅たちは、敵艦隊の背部まで包囲を完了し、彼らの後退を水際で押しとどめていた。
「そのあがきも破滅である。我が破滅の記録は全ての破滅に対処可能。既に我が放てし破滅は汝らを包囲した。つまり、破滅である」
「……そうか、既に一時の後退も許されんか……。ならば、それもよしじゃのう。主砲、チャージ開始。これが最後になるであろう。抜かるでないぞ」
「間に合え! ……ダメかッ!? もう少しで敵の主砲に手が届くのに……!」
 そう、ヴァーリャとギドが取った作戦は敵の主砲を暴発させる、というもの。そのためにはヴァーリャの冷気による主砲の完全凍結が必要不可欠なのだ。
 だが、彼女の手は未だ敵艦より離れた場所にある。このままでは、彼女も弾避けにした艦艇のように主砲で薙ぎ払われてしまう。あくまで、このままではの話であるが。
「悪あがきも終わりだ、鉄塊。私が貴様を拒むのではない。世界が貴様を拒むのだ。過去の遺物、過去の残滓よ」
 ヴァーリャの危機を救うのは、ギドの放つ邪視。彼の持つ魔眼は空間を支配する。生物ではなく、空間を支配する眼。生者に効くのが魅了の魔眼だとすれば、彼の放つ金色の光はその真反対の性質を持つ。
 視えざるものを視る魔眼。『意志無き』者の王。ギドの視線は無機物である主砲の機構を全て支配し、その発動を遅らせた。そして、その手が届く。
「ギドさん! ビードット! ありがとう、すごい助かったぞ! 見ていろオブリビオン! 随分デカいけれど……それでも凍らせてみなければわからない! だ!」
 ヴァーリャは敵艦の主砲、その至近距離まで辿りつくや否や、自身のユーベルコード【霜の翁の怒り】を発動していく。瞬時に霜が降り、生物が凍結するほどの冷気は主砲を覆い、完全に凍らせて再起不能に至らせようとする。
「まだだ! まだッ! 全部凍ってしまえ……! これ、で……どう、だァッ!」
 しかし、彼女の冷気を一度浴びせられただけでは主砲も完全に凍結するまでには至らない。だからこそ、ヴァーリャはもう一度その身体の魔力を全て用いて冷気の再放出を行っていく。
 この短時間で全力で強い冷気を二度も放つことができたのは、ヴァーリャの覚悟があったればこそ。そしてもちろん、それ以上に他の猟兵たちの積み重ね、手助けによる部分が大きい。猟兵たちは一人ではない。連なって闇を切り裂く連星だ。
「見事な力だ、ヴァーリャ嬢。これで幕切れだな。離脱するとしよう」
「これこそ終の破滅。一切合切を薙ぎ払うこの力、この暴虐こそが破滅と知れ」
 そしてダメ押しと言わんばかりに距離を詰めていたギドが振るうのは、氷狼の魔力を封じ込めた妖刀。銘を『玲瓏』というその剣杖が一度抜かれ、そして主砲を撫でたその時、主砲の完全冷凍は完了した。
 ビードットも凍てついた主砲に向けて誘導弾を一斉に発射し、その周辺にある一切を彼の持つ火力の全てを駆使してなぎ払っていく。
 過去の産物であるオブリビオン、そして彼らが駆る戦艦は、最後に冷気と破滅の記録によって大打撃を受けたのだ。
「どうだ、オブリビオン! 言っただろう、凍らせてみなければ分からない、ってな!」
「……フハハハハハ! 楽しい戦であったわい! 勝つか負けるか、最後になるまでわからんかった勝負などいつ振りであったことか! わしらは帝国の兵士。されど、好敵手の善戦には敬意を表したい! ……見事。大儀であったぞ、猟兵よ」
 そして、ギドは主砲を縛っていた支配を解く。発射寸前でダメージを蓄積され、発射口も完全に凍結させられたそれは、エネルギーを外に逃がすことも出来ずに内部で暴発させていく。
 敵艦は、主砲の暴発という形で遂に撃沈しようとしていた。
「我ら汝に破滅させられし亡霊なり。亡霊は口無し、言葉無し。ただ汝に返報しよう。これにて怨みは終わりけり」
「安らかに眠れ。貴殿らの歴史は、とうの昔に終わりを迎えているのだから」
 かくして猟兵たちは精鋭部隊、『白城』艦隊の一端を突き崩すことに成功した。解放軍の戦線崩壊を、確実に一歩防いで見せたのだ。
 この結果は猟兵たちが自分たちの活躍で手に入れた結果。誇ることのできる、紛れもない戦果である。
 見事な、見事な戦いであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月17日


挿絵イラスト