罪過を穿つ、その名は
●犯罪者の時代
強者が去った後に来るのは、自称弱者たちである。
彼等は己の力の無さを主張する。こんなにも哀れなで非力なものに大それたことができぬと胸を張る。そのひ弱さの裏で彼等は狡猾に、そして巧妙になっていく。
力とは腕力のことだけを差す言葉ではなくなっていた。
弱者を語る強者こそが、時代の裏で策動することができる。
彼等が集めるのは金である。
世の中のあらゆるものは金で買えるのである。
「『世界大戦』の折、私の夢は破れた。あそこまで組織を強大なものとし、列強国さえ滅ぼすことのできる力を手にしておきながら、それでもまだ足りなかった」
ヴィラン組織『病院』の総統であった『イヴォル・ボス』は歯噛みした。
巨大な人型戦術兵器を持ってしても、世界の覇権を取るという夢は叶わなかったからだ。あの強化人間が己の夢を阻んだのだ。
失敗作であったのに、不完全なユーベルコードしか移植されなかったというのに。
それでも己の夢の前に立ちふさがり、これを砕いたのだ。
ヴィラン組織『病院』は壊滅した。
世界から争いという病巣を取り除くという夢物語のようなお題目はもう必要ない。世界は緩やかな平穏を甘受している。
『世界大戦』においてヒーローもヴィランも兵力として投入され、多くの力強き者たちは倒れた。残ったのは弱い者か半端者ばかりだ。
彼の駒の一つである『ダーティポリス』もその一つだ。
『世界大戦』を生き残った歴戦の兵たち……ではない。
戦争に投入された大型犬の獣人のような体躯を持つ兵士たちの末路だ。彼等は戦争が終わった後、警察機構に組み込まれた。
「諸君らは不遇を強いられているな。わかるとも。戦争の折には祖国のためにと使い捨てにされ、歯車のように消耗されてきた。だが、国は君等をまだ使い捨てにしようとしている。飼い殺しにしたいのだ。もはや、かつてのような凶悪なヴィランはいない」
『イヴォル・ボス』は彼等に告げる。
国から十分な補填など無い。あるのは職という名の隷属の鎖のみ。自由など無い。死ぬまで一生すり潰されることを憂うことさえできないのだ。
「君等は言われるだろう。税金泥棒と。この平和な時代に君たちの居場所はないのだと。だが、君たちは欲している。己の存在意義を。即ち、『敵(ヴィラン)』だ」
脅威があればこそ、彼等の必要性は再び証明されるだろう。
そう、これは『ダーティポリス』たちの存在意義を懸けた戦いなのだ。
「我々は事件を起こそう。諸君らは我等の末端を捉えればいい。我等は金を。諸君らは功績を。共存共栄だよ」
『イヴォル・ボス』の言葉に『ダーティポリス』たちは頷く。
彼等は必要とされたい。
平和な時代に在りても居場所を手に入れたい。その切実なる願いにこそ、オブリビオンは付け入るのだ――。
●抒情詩
『スナークゾーン』は過去のヒーローズアースを再現した空間である。
仮想空間であり、現実とは違う。
けれど、仮想空間でオブリビオンが世界を破滅させた時、その影響が現実世界に及ぶ可能性は未だ捨てきれない。
後に『犯罪者の時代』と呼ばれた時代にあっては、世界を破滅させるほどの組織は生まれなかった。
何故ならば、『世界大戦』によって多くの強者たちは倒れたからだ。
残った弱者たちは、戦乱の後雌伏の時を過ごすしかなかった。
今日も街にはサイレンの音が響き渡る。
街では連日のように銀行強盗や猟奇犯罪が起こっていた。何処かで誰かが涙する。それは日常であった。
「だからといって、その涙を拭う者がいないわけではない」
徒手空拳の女性が薄紅色の瞳を爛々と輝かせながら、今しがた銀行強盗を敢行した車がヴィランを乗せて疾駆する正面に立ちふさがる。
「邪魔だ! 轢き殺せ!」
ヴィランたちの車両が徒手空拳の女性に突っ込む。ひしゃげる音が周囲に響き渡り、街の誰もが目をそむけ、瞑った。
けれど、彼等は恐る恐るまぶたを開けた先にあった光景に絶句する。
徒手空拳の女性の五体は傷ついてすらいなかった。彼女の腕は突っ込んできた車両のグリルに突き立てられ、悠々と車体を持ち上げていたのだから。
「お前、まさか……!」
「あ、ああ……! コイツが!」
強盗犯たちは持ち上げられた車体の中からこちらを見る徒手空拳の女性を見て、思い出す。
この街に数ヶ月前から現れたという『正義の人』。
何か悪事が動けば、稲妻のように現れ事件を解決する存在。雷光と共に現れ、雷鳴と共に去っていく者。
人々は、それを『ヒーロー』と呼び、ヴィランたちはそれを……ある一つの名で呼ぶ。
「――『アズマ』!」
そう、その名で呼ぶのだ――。
●スナークゾーン
グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)であった。
「お集まり頂きありがとうございます。今回の事件はヒーローズアース……『スナークゾーン』によって再現された『犯罪者の時代』が舞台です」
ヒーローズアースにおいて、多くの者が力を失い、強者たちが倒れたのが『世界大戦』であるというのならば、その後に訪れた時代は比較的平穏であったと言えるだろう。
とは言え、それはヒーローズアースの歴史全体を見れば、の話である。
力弱き者たちは犯罪に手を染める。
銀行強盗や猟奇犯罪と言った小さな悪事が急増したのだ。一つ一つが世界を破滅に導くものではなくとも、頻発すれば人心は乱れ、世は荒廃する。
そんあ時代にあっても『悪に立ち向かう正義の人々』が警察や探偵、市民の中から現れ、後にヒーローと呼ばれるようになるのだ。
「此度の『スナークゾーン』は、『世界大戦』の折に壊滅されたヴィラン組織『病院』の総統であった『イヴォル・ボス』がヴィラン達をまとめ上げ、全世界にまたがる巨大な犯罪組織を形成し、世界を破壊する機会を伺っているのです」
『イヴォル・ボス』は組織壊滅によって全てを喪ったが、寄る辺を失くしたヴィランたちをまとめ上げ、密かに巨万の富を築き上げようとしている。
その一つが警察機構との癒着だ。
「彼はこの『犯罪者の時代』において、かつては戦争の戦力として投入されていた異能、異形の者たちを『ダーティポリス』として警察機構に忍ばせ、銀行強盗の捕物というマッチポンプでもって、巨額の金を集めているのです」
その膨大な金でもって再びヴィラン組織を再興し、世界の破滅を狙っているのだという。
猟兵の中にも知る者もいるであろう。
あの巨大な人型兵器が量産されれば、再び世界は混乱に陥れられてしまう。
「ですが、その犯罪組織につながるか細い情報の糸を、『正義の人』と呼ばれる徒手空拳の女性が掴み取ったのです」
ナイアルテは、その彼女がヴィラン組織へと立ち向かおうとしてることを告げる。
だが、オブリビオン軍団と化したヴィラン組織を相手は手に負えないだろう。
仮想空間とは言え、現実世界に影響を大なり小なり及ぼす戦いである。この戦いの結果が同現実に如何なる影響を及ぼすかわからない。
だからこそ、ナイアルテは頭を下げ、猟兵達を転移させる。
その背後で雷光が奔る――。
海鶴
マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
今回はヒーローズアースにおいて発生した『スナークゾーン』に存在するオブリビオンたちの目論見を打破するシナリオになります。
今回の『スナークゾーン』は『犯罪者の時代』です。
スナークゾーンのシリーズとして各時代を巡っていくシナリオ群になります。
過去シナリオは、シナリオタグ『神月円明』から参照できます。
※このシナリオは二章で構成されたシナリオになります。
●第一章
集団戦です。
とある街で銀行強盗と警察の捕物劇が頻発しています。
ですが、それはオブリビオンによって画策された自作自演の事件です。
かつて『世界大戦』の時代に暗躍していたヴィラン組織『病院』の残党たちが密かにヴィラン達をまとめあげ、全世界にまたがる巨大な組織へと変貌を遂げています。彼等がこの事件を引き起こしています。
警察機構と癒着することによって何度でも銀行強盗を起こし、警察機構には功績を、ヴィラン組織には巨額の金をもたらしているのです。
その犯罪組織につながる情報を得た『正義の人』と呼ばれる徒手空拳の女性が、その巨大組織へと乗り込んでいます。
ヴィラン達はともかく、大規模犯罪を実行しているオブリビオン軍団『ダーティポリス』たちは強力な存在です。
これを打倒し、巨大組織のボスを目指しましょう。
●第二章
ボス戦です。
犯罪組織のアジトに突入した皆さんは、最奥にいるオブリビオン『イヴォル・ボス』を打倒すれば、『スナークゾーン』は消滅します。
彼はかつてヴィラン組織『病院』の総統であった男です。
彼の強みはユーベルコード以外にも、小型化に成功した人間サイズの鋼鉄兵をもって皆さんを迎え撃つでしょう。
これを打ち倒せば『スナークゾーン』は消滅します。
それでは、ヒーローズアースにおける『世界大戦』を再現したスナークゾーンにおける皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
第1章 集団戦
『ダーティーポリス』
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POW : 動くな、止まれ
【銃弾】が命中した対象を爆破し、更に互いを【手錠】で繋ぐ。
SPD : 命をかけて全うする
【仲間と共鳴する咆哮により暴走状態】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
WIZ : 我々には覚悟があるのだ
【絶対的な忠誠心】の感情を爆発させる事により、感情の強さに比例して、自身の身体サイズと戦闘能力が増大する。
イラスト:森乃ゴリラ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
その『名』はもはや形骸化している。
徒手空拳の女性は、少なくともそう思っていた。神代より発祥した人類。その傑作足らしめる血脈は、今日に至るまで紡がれている。
当代において最強。
無敗を象る名。
地を砕き、海を割る。
形容されるのならば、そのようなものであった。だが、そのどれもが徒手空拳の女性にとっては無意味なものであった。
『世界大戦』は多くの犠牲を払って集結した。
多くの強者が生命を落とした。
それほどまでに世界を巻き込んだ戦いは苛烈を極めた。
「皮肉なものだ。恐らく歴代の中で私が最も強い。されど、時代に在りし者たちは皆、弱まっていくばかり。私には私の『名』に意味を見いだせない」
彼女はヴィラン達を尽く打倒してきた。
小競り合いのような事件ばかりだ。銀行強盗や猟奇犯罪。そうした小さな事件は数だけは多く、彼女は暇を持て余すことはなかった。けれど、心の何処かで強者との戦いを求めていた。
それは叶わないと知っている。
「動くな! 止まれ!」
今もそうだ。『ダーティポリス』たちが拳銃を向けている。恐れるに足りない。
目の前にあるのはヴィランたちの犯罪組織。世界を跨ぐ巨大な組織へと変貌を遂げたかつてのヴィラン『病院』の残滓。かつてのような強力な兵器を繰り出すこともなく、ただ財を集めることに腐心するだけの組織へと変わり果てた。
そこにあるのは強者ではない。
自称弱者という名の世界を滅ぼす存在だ。
「お、お前が……『アズマ』!」
「動くなと言っている! こっちは銃を持っているんだぞ!」
『ダーティポリス』たちは銃口を向け続けている。彼等にも事情があるのかもしれない。
けれど、彼等の行いはいつだって、本物の弱者たちを虐げるものである。強者から金を巻き上げる義賊であるわけでもなく。ただ、人々の営みに付け入って奪っていくだけだ。
だから、徒手空拳のの女性の薄紅色の瞳は爛々と輝いている。
己の『名』に意味を見出す事ができたのならば、唯一つ――いつかの誰かが流した涙を憂う心が己の中でざわめくことだけ。
「いいや、動くね。俄然」
銃弾が飛び交う中、徒手空拳の女子は疾走る。
どれだけ欠伸の出そうな戦場であっても、構わない。己はただ反射的に拳を振るうだけだ。己の前にヴィランが立ちふさがるから、それを払い除けているだけに過ぎない。
もしかしたのならば、彼等には矜持があるのかもしれない。けれど、どんな矜持があろうと関係ない。
「お前たちが誰かを泣かす。その涙を拭うためにこそ、私は存在している。私でなくても構わない仕事であるが、他の誰もがしないというのならば」
己が誰かの涙を拭う。
徒手空拳の女性を突き動かすのは、唯それだけであった――。
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友
第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん
武器:灰遠雷
んー、この時代の『アズマ』殿は女性ですかー。受け継がれていく名と戦闘スタイルなんですねー。
好感持てますし、此度も援護しますよー。
【四天境地・雷】にて射かけていきましょう。
ま、相手は理性を失くして速く動くものを攻撃するんです…。それって、つまりは発射した矢に向かっちゃうんですよねー。
あの矢、追尾するのでどこまでも飛びますしー。
耐久力あれど、つけておいた生命力吸収には抗えないでしょう?
ああ、もちろん『アズマ』殿には支障なく。あの矢は…獲物を違えぬのでー。
『ダーティポリス』たちにとって、これは仕事の一つであった。
誰しもに二面性があるように、表と裏の顔を持つ。
彼等は戦争で残された火種のようなものであった。燻り続ける火種。けれど、その力の発露はどこにも向けられない。
なぜなら『世界大戦』は終わったのだ。
徒に力を振るう理由など何処にもなくなった。
けれど、己たちの姿は変わらない。
大型犬の顔。
それが己たちの異形と異能の証である。祖国を護るためにと受けた改造手術であったし、誇らしくもあった。
「戦いが終われば用済みなのか! 俺たちは!」
彼等は咆哮する。
戦う場がないからだ。力を持ちながら、力を振るう機会に恵まれないというフラストレーション。されど、己たちの異形の姿は好奇の的だ。
誰もが言うだろう。
もう『世界大戦』は終わったのだと。強すぎる力はいらないのだと。平和は協調と友愛でもってなされるのだと、人々は言う。
けれど、己たちはどうなる。
「俺達は要らないというのか!」
『ダーティポリス』の咆哮が響き渡る。『世界大戦』の時代が終わったというのならば、これからは『犯罪者の時代』だ。
「誰かの涙を流させる理由になっていいわけがない」
徒手空拳の女性が疾走る。咆哮に共鳴した『ダーティポリス』たちが凄まじい速度で動く。
けれど、その彼等を貫くのは雷の矢であった。
「んー、この時代の『アズマ』殿は女性ですかー」
雷の矢を放ったのは、馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の一柱『疾き者』であった。
その矢は分裂し、『ダーティポリス』たちを追尾する。
徒手空拳の女性の薄紅色の瞳がそれを捉えていた。呪詛に黒く染まる強弓。その引き絞った弦が空気を切り裂くように離される度に雷が戦場に駆け抜ける。
「その名を知っているということは、君等が『そう』なのだな。世界の外からやってくる連中というのは」
彼女の言葉に『疾き者』は頷く。
猟兵という存在を認識している。伝え聞く所のものであったのだろうし、脈々と紡がれてきた血脈は、過去のヒーローズアースを再現した『スナークゾーン』にあっても健在であるということだ。
受け継がれていく名と戦闘スタイル。
いずれの時代にあっても徒手空拳でかの『名』を持つ者たちは、戦っていた。
そして、目の前の徒手空拳の女性の言葉に『疾き者』は好感が持てていた。これが先立って行われた『スナークゾーン』の戦いの結果であるかはわからない。
もともとそのような気質があったのかもしれないし、そうでなかったのかもしれない。
けれど、大切なことを『疾き者』は理解している。
徒手空拳の女性は誰かの涙を拭うためにこそ拳を振るうのだ。
「己の我欲のために戦うわけではない。そのような利でもって戦うものは――」
悪霊からは逃げられない。
四天境地・雷(シテンキョウチ・カミナリ)は、強弓に呪詛を込めて黒く染め上げていく。
その弓から放たれる雷の矢は一瞬で分裂し、戦場を駆け抜ける『ダーティポリス』たちを一瞬で貫くのだ。
彼等は咆哮による共鳴で持って凄まじい攻撃力と耐久力を得ている。
だが、理性はない。ただ疾く動くものを追っているのだ。
「理性をなくして疾く動くものを攻撃する……それって、つまりは放たれた矢にも反応しちゃうってことですよねー」
ならば、戦うのは簡単だ。
攻撃が鋭いであるとか、重たいであるとかは関係ない。習性にも似た疾き者を追う『ダーティポリス』たちは、さらに疾く動く矢を追う。
そして、追尾する矢は、悪霊の呪詛によって生命力を吸収していく。
「どれだけ耐久力を底上げしたところで、それには抗えないでしょう?」
雷の矢の一撃に『ダーティポリス』が耐えても、生命力が奪われる。さらに二の矢が放たれれば、足を止めるしか無い。
そうなってしまえば、後は徒手空拳の女性の拳が彼等を叩き伏せるのだ。
「ああ、もちろん『アズマ』殿には支障なく。存分に戦ってくださいねー」
「君等の矢は獲物を違えぬのだろう? ならば、何も心配することはないさ」
徒手空拳の女性が笑う。
よく笑う血族であると『疾き者』は思っただろう。
過去の再現で見た歴代の彼等は、皆よく笑う者たちであった。戦いの最中であっても、笑みを浮かべる。
そこにあるのは恩讐や正義といった感情とは程遠いものばかりであったことだろう。
爽やかささえ感じる風が吹いている。
淀んだヴィランたちの澱のようにたまった感情を何処かへ吹き飛ばすようであった。
『犯罪者の時代』は、此処に来たれり。
「されど、風は吹く。ですか――」
大成功
🔵🔵🔵
アレクサンドル・バジル
おお、今回も『アズマ』がいるのか。流石に興味がわいてきたな。
とりあえず、【闇黒炎雷】によって戦場のダーティーポリスたちを滅ぼすか行動不能にせしめてから当代の『アズマ』にご挨拶。
ハロー、世界の外からお手伝いだ。
これは興味本位なんだが、君は何代目か聞いて良いかい?
(猟書家になったのはいつの時代のアズマなのか。襲名だとすれば現代にもいるのかもしれねーなとか何となく考えながら)
過去の地球のすべてを再現した仮想空間『スナークゾーン』における戦いにおいて、幾度か目にしたことが在るであろう徒手空拳の存在。
その名を知る者にとって、邂逅は何度目であったことだろうか。
これまで確認された彼等は全てが男性であった。
けれど、『犯罪者の時代』にて確認された『名』を持つのは女性。
薄紅色の瞳が輝いている。
振るう拳は性差をまるで感じさせない。
拳は大地を砕き、蹴撃は海を割るだろう。そう思わせるほどの強烈な一撃が『ダーティポリス』たちを吹き飛ばしていく。
『世界大戦』の折に強化された異能であろう彼らを物ともしない。数など無意味であると知らしめるかの如き力。
「おお、今回も『アズマ』がいるのか」
アレクサンドル・バジル(黒炎・f28861)は、そんな彼女の戦いぶりに興味が湧いてきている様子であった。
「悉くを滅ぼせ、闇黒炎雷(クロイホノオトイカズチ)」
掲げた掌から疾走る黒い炎と黒い雷。
それが一瞬で『ダーティポリス』たちを飲み込んでいく。消えぬ炎は、その体躯を焼くであろうし、瞬時に行動を不能に陥らせる。
だが、共鳴する咆哮は止まらない。
彼等にとって、この戦いは存在意義を掛けるものであったからだ。
『世界大戦』の時はよかったのだ。
戦う理由があった。祖国のため、家族のため、正義のため。
あらゆる戦う理由があった。
けれど、『世界大戦』は終わった。終わってしまったのだ。戦うための力は、元の生活には無用の長物だ。
異形の異能を手にした『ダーティポリス』であればなおさらであろう。
「俺達は、まだ戦う理由が要るんだよ! 正義の側に立っていたいんだ。正しい側にいると思いたいんだ!」
「それを邪魔するというのなら!」
彼等は彼等の正義で戦っている。
どれだけ彼等が戦う理由を求めたとしても、それは誰かを泣かせることになることを彼等自身が忘れてしまっている。
「そういうのはよ、独り善がりっていうんだぜ」
アレクサンドルは黒い炎と雷でもって戦場を制圧する。彼等の理屈は全て己の保身在りきである。他者の存在は考慮に入れていない。
自分さえ良ければという思いばかりに駆られている。
それを肯定するオブリビオンがいるからこそ、彼等は誰かを泣かせることになる悪事にだって加担する。
心に生まれた隙は徐々に彼等にとって後戻りできな領域まで引きずり込んでしまうには十分な理由に成長するのだ。
「ハロー、世界の外からお手伝いだ」
アレクサンドルは、そんな『ダーティポリス』たちを行動不能にせしめてから徒手空拳の女性に向き直る。
これまで見てきた徒手空拳の男達と何ら遜色のない存在。
むしろ、アレクサンドルが知る彼等より、明らかに強いと思わしめるほどの重圧がある。
「これは興味本位なんだが、君は何代目か聞いて良いかい?」
「私は9代目だ。重ねた血脈の代替わりに興味があるのか? それは意味のないことだ」
徒手空拳の女性はそう告げる。
銃弾飛び交う戦場にあって、彼女に銃弾は届かない。
軽く手を奮っただけで、その指の間に弾丸が掴まれている。見もせずに、風切り音だけで彼女は己に飛来する弾丸を掴むのだ。
アレクサンドルは頷く。
猟書家という存在のことを考える。あの猟書家は何代目であったのか。襲名であるのか。それならば、ここ『スナークゾーン』の外側、現実世界にも今もまだ存在するのか。
「いいや、興味が湧いただけさ」
恐らく襲名。
けれど、現代にその『名』は続いていない。途絶えたのか。それとも猟書家となったから現代に続いていないのか。
そのどれもに答えが出ない。
ならば戦うのみである。
この仮想空間『スナークゾーン』での出来事は現実世界に影響を及ぼす。ならば、自ずとアレクサンドルの求める答えもまた向こうからやってくることもあるだろう――。
大成功
🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
…ここが仮想空間…殆ど現実と一緒だね…
…だからこそここで改変した事象が現在に影響を及ぼす可能性がある…か
…まあ…まずは彼女に手を貸して警官達を倒すとしようか…
…そういう訳で…アズマ…援護をするよ…
…【彼の身に宿すは失墜の落暉】を術式装填銃【アヌエヌエ】に付与…
…ダーティーポリス達を射撃する事でその強化を反転していこう…
…他に道が無かったのかも知れないけど…職務に反する所業に手を染めたらおしまいだよ…
…アズマが歯ごたえのある敵との戦いを望んでいたなら少し悪いことをしてしまうけど…まあ、本命はまだ出てこないしね…それまで力を温存すると思って貰おう…
過去の地球のすべてを再現した仮想空間。それが『スナークゾーン』である。
言葉にすれば簡単なことであるが、実際に目の当たりにした時、現実とまるで違いがないことを知るだろう。
虚構から生まれようとしていた超生物『スナーク』の名残でるのかはわからない。
けれど、この仮想空間での出来事が現実世界に影響を大なり小なり及ぼしていることは確かである。
『神々の時代』には戦いの傷跡と残る敵と剣の石像が。
『魔法使いの時代』には猟兵たちの扱う武器がヴィラン組織の兵器開発を加速させた。
『世界大戦』においては、二人の男女の運命を変えた。
ならば、この『犯罪者の時代』におけるオブリビオンの策動が、もしも叶ったとしら、どうなるのかは言うまでもない。
世界の破滅を願うオブリビオンたちは世界を滅ぼす。
世界を跨ぐほどの犯罪組織を今も維持するオブリビオンたちは金を集める。その集めた金で、きっと大量殺戮兵器や、それに類する悪事を働くだろう。
「……だからこそ、ここで改変した事象が現実に影響を及ぼす可能性がある……か」
メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は、その可能性に思考が至る。
彼女にとって、『スナークゾーン』は興味深い対象であったことだろう。
仮想が現実を侵食する。
まるで超生物『スナーク』が生まれようとした経緯と似通った部分がある。その存在を誰もが見たことがないからこそ、否定できないように。この過去の再現たる仮想空間は、どれもが完璧に再現されているがゆえに、ここで起こったことを偽りであると否定できないのである。
「……まあ……まずは」
メンカルは戦場と成った犯罪組織のアジトへと続く道を阻む『ダーティポリス』たちを見る。
獣人のように異形の異能を『世界大戦』の時代に与えられた者たち。
彼等は皆、一様に己が存在している意義を見いだせないでいた。戦争は終わったが、彼等が身につけた異能は無用の長物となった。
もはや力を振るう正しい理由などない。
けれど、力があるからこそ疎まれるのである。彼等は己たちの存在を否定される。だからこそ、力を振るう理由を求めるのだ。
「俺たちは戦う理由さえあればいい! 報われたいんだ!」
「この行いがどんなに愚かだと言われようと構わない。俺たちにはもうこれしかないのだから!」
咆哮とともに『ダーティポリス』たちの肉体が膨れ上がっていく。
巨大化する肉体。
その巨躯を前にしても徒手空拳の女性は薄紅色の瞳を爛々と輝かせ拳を振るう。その拳の一撃が巨躯を吹き飛ばす。
「理由になっていない」
「……『アズマ』……援護をするよ」
メンカルは徒手空拳の女性と並び立ち、術式装填銃『アヌエヌエ』の銃口を『ダーティポリス』たちに向け、引き金を引く。
彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
その装填された術式は付与反転術式。それは付与された力を反転させるものである。身体能力を強化される力が付与されているのであれば、その強化効果は反転する。
即ち、『ダーティポリス』たちの巨大化した体は巨躯から矮躯へと成り果てる。
「……他に道がなかったのかもしれないけれど……職務に反する所業に手を染めたらおしまいだよ……」
メンカルは、『ダーティポリス』達――彼の身に宿すは失墜の落暉(リバース・エフェクト)を見やりながら言う。
そう、彼等は失墜した。
矮躯となた肉体が、ではない。その心が堕したのだ。
「いつだってそうだ。正しい道は厳しくも険しい道だ。いつだって遠回りの道こそが正しい」
徒手空拳の女性の振るう蹴撃が『ダーティポリス』たちを吹き飛ばしていく。
その瞳にあるのは、戦いに喜ぶ者のそれではなかった。
メンカルはその瞳を見る。
もしかしたのならば、徒手空拳の女性が求めているのは強者との戦いではないかと思ったのだ。
ならば、己がした援護は余計なことであったのかもしれない。
けれど、徒手空拳の女性は笑っていのだ。
「気にするな」
「……まあ、本命はまだ出てこないしね……」
「そういうこともあるが、何、歯ごたえが在るという意味では君の方にこそ私は興味があるな」
悪戯っぽく笑む薄紅色の瞳。
ああ、冗談を言っているのかと判る口調であったことが幸いであったことだろう。
こんなときに冗談を言える丹力があるのならば何も心配することはないなとメンカルは頷く。
「……そういうのは私じゃなく、本命に言ってほしいな」
力を温存するつもりで、と言ったが徒手空拳の女性は気にした様子もなく犯罪組織のアジトの中を進む。
メンカルは、術式装填銃に新たな術式を装填し、迫る『ダーティポリス』達を振り払い、その背中を追うのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ロウガ・イスルギ
犬の、いや『狗』のお巡りさんってか?笑える程笑えねえ冗談だ!
まあヨロシクな、『アズマ』さン
【残像】【カウンター】により敵の攻撃は回避!
止まれと言われて止まるわけねえだろ!ま、止まってても
当たる気はしねえなあ。俺はもうそこには「いない」ぜ
ガンディーヴァの権能プラス【誘導弾】で反転攻勢といくか
どれだけいようが「認識」すれば只の的だぜ!
威力は死なねえ程度にはしといてやる、ベッドで流動食啜りながら
身の振り方考えろ……って、勘違いすんな!
同情じゃねえ、死に損ない共に格の違いってのを教えてんだ!
(と言いつつアズマを援護するために放ったUC絶冥拘縄も
肉体ではなく「意識」を刈り取る事で無力化させてたりする)
いつの時代もそうであるように持て余した力は、無用の長物となる。
いつだって、その力は他者を傷つけるものだ。
『世界大戦』の時代に生まれた異形たる『ダーティポリス』たちがまさにそうである。彼等は確かに祖国のために、親しいものを護るためにと戦っただろう。
そうすることで戦う理由と、力を振るう正当性を得ていたのだから。
けれど、戦いが終わったのならば、彼等の居場所はない。
力の置所がわからなくなってしまったのだ。
「俺達はまだ此処に居ていいはずだ! 力を振るう理由がなければ作り出せばいいんだからな!」
『ダーティポリス』たちは叫ぶ。
構えた銃口の先にあるのは徒手空拳の女性。
彼女の動きはあまりにも早かった。拳はあらゆるものを砕き、蹴撃は衝撃波となって彼等を吹き飛ばす。
「犬の、いや『狗』のお巡りさんってか?」
その声は犯罪組織のアジトの中で響く。『ダーティポリス』たちはオブリビオンの走狗である。
ならば、その言葉は間違いではなかっただろう。
「笑えるほど笑えねえ冗談だ!」
ロウガ・イスルギ(白朧牙虎・f00846)は白虎の如き獣人の姿で戦場と成ったアジトを疾走る。
「こいつ……! 俺達と同じか! 止まれ!」
放たれる銃弾。ロウガはそれを残像を遺して躱し、一気に『ダーティポリス』に肉薄する。
「止まれと言われて止まるわけねえだろ!」
放つ一撃が『ダーティポリス』の顎に叩きつけられる。スマートガンの銃床の一撃は彼等の意識を奪うものであったことだろう。
さらに離れた場所にある『ダーティポリス』たちへと誘導弾が放たれる。その一撃は彼等を捉える。
そんな彼をさらに『ダーティポリス』は取り囲んでいく。
『世界大戦』の時代に彼等が統率の取れた戦術で多くの戦果をもたらしたがゆえである。そうすることによって、彼等は生き延びてきたのだ。
だが、ロウガにとって、それは容易く食い敗れるものであった。
「俺はもうそこには『いない』ぜ。どれだけいようが『認識」すれば只の的だぜ!」
放たれる誘導弾が次々と『ダーティポリス』たちを貫いていく。
徒手空拳の女性もそうであったが、『ダーティポリス』たちをロウガは殺すようなやり方をしていなかった。
誘導弾の威力も押さえられている。
「ベッドで流動食啜りながら、身の振り方考えろ……」
「それは同情しているということか?」
「……って、勘違いすんな!」
ロウガは徒手空拳の女性の言葉に首を振る。獣人ゆえに表情は分かりづらいものであったが、それは図星と言っているようなものであった。
「同情じゃねえ、死にぞこない共に格の違いってのを教えてんだ!」
ロウガのユーベルコードは、絶冥拘縄(ストラングラーフィニッシュ)。それは軽量ワイヤーでありながら、彼等を切断するものではなく、捉えるために使われていた。
肉体を刈り取りのではなく、意識そのものをもって無力化させる。
そのやり方は手加減をしていると捉えられても仕方のないことであったかもしれない。
素直ではない。
そう言い換える事もできたかも知れない。
彼の言葉は、どれもがつっけんどんなものであった。けれど、徒手空拳の女性は笑っていた。
「そういうことにしておいてやる。どの道、彼等は考えるだろう。熱して茹だった頭に冷水を掛けるのもいいだろう」
むやみに命を奪う必要はない。
戦う理由だけが生きるための理由ではない。
ロウガもまたそうであろう。生命があるのならば、違えた道もまた正しき道に戻ることもあるだろう。
その可能性を信じるからこそ、彼は贖罪という機会を与えたのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
うーん時代は巡る
歴史の授業で見るドキュメント映画みたい
そう考えると眠気が…
さておき
『アズマ』の名前も受け継がれていくけど、猟兵の存在を認識してるのは…仮想空間の現実への影響なのかな?
まいっか
しかし犬のおまわりさん…
おまわりさんが困った存在になるのは皮肉なもんだ
●
《RE》IncarnationとBlue Birdを抜刀
で、【Duplicate Myself】起動
装備も無い貧乏な私…かわいそ…
という訳で残り2本の剣を貸してあげよう
さてと、それじゃあ蹴散らしちゃおうか私
戦闘力はそっちのが高いから期待してるよ
私も複製も近くの敵は剣で『2回攻撃』して対処
遠くの敵は『斬撃波』で攻撃!
どっちが本物でしょう!
「うーん、時代は巡る……」
月夜・玲(頂の探究者・f01605)は『スナークゾーン』における歴史の変遷を垣間見ている。
オブリビオンがヒーローズアースに出現するまでの時代は大きく7つに分類される。
『神々の時代』より人が発祥し『魔法使いの時代』にはユーベルコードを発現するものたちが現れる。
『世界大戦』はそうしたユーベルコードを扱う者たちが戦争の駒として投入された。
強き者たちが争い、潰えてきた。
その時代の繰り返しである。そして、大きな戦いの後には人心は大いに乱れる。
『犯罪者の時代』は多くの犯罪が横行した。
銀行強盗もその一つである。しかし、ここにヴィラン組織と警察機構の癒着があったことは、猟兵たちの知る所である。
「歴史の授業で見るドキュメント映画みたい。そう考えると眠気が……」
玲はまぶたが重たくなる思いであった。
既に知っている歴史であるからこそ、反復にもならぬ知識の再確認は、どうしたって刺激に乏しいものである。
とは言え、今はオブリビオンが世界にまたがる犯罪組織を為したという事実の方が重要である。
咆哮を上げ、迫る『ダーティポリス』たち。
彼等は皆『世界大戦』の折に兵士として異形の異能を持って戦った者たちである。
「力を振るう理由を! 俺たちはまだ無用の長物なんかじゃない!」
「まだ必要なはずだ! この力が!」
彼等は力を持て余している。
力を振るうに値する強者はすでに『世界大戦』で多くが潰えている。だからこそ、この時代に多くの『正義の人』が生まれたのだ。
どれだけ強大な力であっても、徒に振るうのならば、それは暴力である。
「しかし犬のおまわりさん……おまわりさんが困った存在になるのは皮肉なもんだ」
「権力を持てば人は変わる。なまじ己の手で手にしたものでもなければ、形の見えぬ実感できぬ力ならばな」
徒手空拳の女性が玲の傍を駆け抜けていく。
疾風迅雷と呼ぶにふさわしい速度で『ダーティポリス』たちを相手取っている。
「『アズマ』の名前も受け継がれていくけど……」
自分たち猟兵のことを『世界の外から来た』と認識しているのは、仮想空間の現実世界への影響なのか。
ここが『スナークゾーン』だから認識されているのか。
どちらにせよ、玲は己の為すべきことを為すだけだ。
抜刀された模造神器が蒼く煌めく。
「人格エミュレイト…分身生成開始」
彼女のユーベルコードによって己の分身が現れる。漲る重圧は玲以上である。けれど、彼女もまた徒手。
玲という猟兵の代名詞ともいえる模造神器を持たぬ彼女は、オリジナルの彼女より優れたるを持ちながら、財力に劣る。
すかんぴんというやつである。
「装備もない貧乏な私……かわいそ……」
「どうにかできそうであるように私には思えるのだが」
「いやいや、無理無理。残りの二本貸してあげようね」
玲は分身に己の残った模造神器の二振りを貸し与え、戦場を疾走る。
蒼い残光が戦場に煌めく。
分身はオリジナルの玲より戦闘力に優る。その力は言うまでもない。放たれる斬撃波は蒼い光となって『ダーティポリス』たちを吹き飛ばしていく。
彼等もまた高い耐久力を誇る体躯を持っている。けれど、それらを無意味にするかのような斬撃の嵐が分身の玲から放たれるのだ。
「蹴散らそうって思ったけど、これは期待以上かな……」
玲は模造神器を振るう。分身はそれ以上である。いわば、普段の玲よりも戦闘力に振り切った存在であるといえるだろう。
「どっちが本物でしょう!」
偽物が本物を上回ることがないだと誰が言う。
それを証明するように玲の分身は次々と『ダーティポリス』たちをなぎ倒していく。
「どちらも本物のあなただろう。凸と凹の形が違うだけで」
徒手空拳の女性が笑っている。
薄紅色の瞳が見ている。これまで見てきた徒手空拳の存在たち。彼等は皆よく笑う。まるでそうすることが当然のように誰かを救いながら、笑うのだ。
これが『スナークゾーン』におけるがゆえなのかはわからない。
けれど、ただ一つ言えることがある。
「まいっか」
あっけらかんと玲はつぶやく。
答えが出ないのならば考えても無駄だ。ならば、少しでも疾く戦いを終わらせるのみ。それが目の前で戦う徒手空拳の女性と同じ思いであることだけが、唯一確かなこと。
どの時代であってもそうであったように戦うために存在していながら、戦いを厭う心があるのならば、決してその道は違えることはない――。
大成功
🔵🔵🔵
サージェ・ライト
お呼びとあらば参じましょう
私はクノイチ、胸が大きくて忍べてないとかそんなことないもんっ!(お約束
はっ、チョコ肌たゆんアイドルみが強くなった気がします!
いえ、気のせいかもですが
んーまあ事情があるのもわかりますし
名ばかり警察が辛いってのもわかるんですが
そこに犠牲となる一般人がいるなら
見過ごすわけにはいきません
このクノイチ、助力となりましょう!
【かげぶんしんの術】でしゅばばっと増えましたら
あとはいつもの流れでよろしくですー
え?いつもがわかんない?
そうですか怪しいクノイチの噂は伝わってないんですね
もっとクノイチしないと!
では私が敵陣掻き回しますので
乱れたところからアズマさんの拳で
よろしくお願いしまーす
オブリビオンが企むのはいつだって世界を破滅させることだ。
それは仮想空間『スナークゾーン』であっても変わることのない事実である。彼等は、金の力でもって世界を破滅させようとしている。
この『犯罪者の時代』においては、人心が大いに乱れている。
『世界大戦』の時代が終わりを告げたからだ。大きな戦いの後にあって、人の心は荒廃する。人が人で居られなくなるのは、いつだって心の優しさが尽きてしまうからだ。
そうやって、いつだって悪しき者たちは人の心に囁くのだ。
当然のことだと。当たり前のことだ。
人の本質は善悪の二面性。
悪が表層に現れているだけだと。誰もがそれを持つからこそ、その悪しき心を否定できない。
「そうだ、当然のことだ! 他の奴らがやってよくて、俺だけがやってはならないことなんてあるわけがない!」
「力があるのだから、振るわない理由なんて無い! これが俺の力だ。俺が掴み取ったものだ。俺が心のままに欲して何がいけない!」
『ダーティポリス』たちが咆哮する。
感情の発露と共に彼等は体躯を巨大化させる。
そんな悪しき心に染まった者たちを前にして響き渡る前口上があった。
「お呼びとあらば参じましょう。私はクノイチ、胸が大きくて忍べてないとかそんなことないもんっ!」
お約束の前口上。
サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)は、大仰な立ち回りをする。クノイチを名乗る以上、忍ぶものであるが、彼女にはあまり関係ない。忍べてない忍びが居てもいいじゃない。クノイチだもの。
そんな彼女を見やる徒手空拳の女性の視線は若干冷ややかであった。
「なんだあれ……」
薄紅色の瞳が冷たい。かなり怪訝な顔をしている。
「はっ……! そ、そんな目で見ないでくださーい! 私が敵陣をかき回しますので、乱れたところから『アズマ』さんの拳で宜しくお願いしまーす!」
サージェは冷たい視線から逃げるように、かげぶんしんの術(イッパイフエルクノイチ)によって己の分身を作り出し、いっぱい増える。
しゅばばっと増えたのならば、いつもの流れである。
ツーカーの仲ではないから、徒手空拳の女性は首をひねっている。
「え? いつものわかんない?」
「ああ。割と初めて見る。いっぱい増えるな」
「そうですか怪しいクノイチの噂は伝わってないんですね」
ちょっぴり悲しい気持ちになりながらサージェは奮起する。己のクノイチ具合が伝わっていないというのならば、それを広めるためにもっとクノイチしなければならない。
なんだ、クノイチしないとって。
「何をごちゃごちゃと!」
『ダーティポリス』たちが一斉に襲いかかる。
彼等にとってサージェも徒手空拳の女性も打ち倒すべき障害にすぎない。彼等は、彼等の敵を排除しなければならない。
そうしなければ、己たちの存在意義を証明できない。
力を得たのだ。戦うための力を。力を振るう場がなくなり、無用の長物として厄介者扱いされることなど、もう二度とあってはならないのだ。
「んーまあ事情があるのもわかりますし、名ばかりの警察が辛いってのもわかるんですが」
サージェは分身たちと戦場を走り抜ける。
彼等の言うところがわからないでもない。
煙たがられるのもまたわかる。平和な時代にあって力はなくてもいいものだ。そして、力が必要なときに得られた喝采がなくなれば、人はそれをもう一度と求めてしまうものである。
名声も喝采も、それらは恒常的に与えられるものではないのだから。
「そこに犠牲となる一般人がいるなら、見過ごすわけにはいきません」
彼等の欲望を叶えるために人が涙を流すというのならばこそ立ち上がる者たちがいる。
人は『犯罪者の時代』において、そんな者たちを『正義の人』、即ちヒーローと呼ぶようになる。
「このクノイチ、そんな涙を拭う人の助力となりましょう!」
分身たちが手裏剣を放ち、手にしたカタールが『ダーティポリス』たちを次々と打倒していく。
彼等にとっては心身共に打ちのめされることだろう。
けれど、それでいいのだ。
打ちのめされて、全てを失っても尚、人は立ち上がることができる。いつだってそうだ。
「人は負けるようには」
「できていないですよね!」
サージェの言葉に徒手空拳の女性は改めて笑む。そのとおりであると。
ゆえにオブリビオンは打倒しなければならない。
己の欲望のために全てを犠牲にする。世界すら滅ぼして構わぬという野心野望をこそ、打ち砕かねばならぬのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
『めでたしめでたし』の後に騎士の出番は無し
故に、存在意義の消失こそが我が目標である
…この結論に至ったのは私が機械故か、それとも狂ったからなのか
大戦の折に生まれ捨てられしヴィラン達には受け入れ難いでしょう
彼らは生物なのですから
ですが、如何な事情を抱えようと悪事は許されてはなりません
殺しはせずとも突破させて頂きます
そして、異物たるオブリビオンには容赦はいたしません
反射力場纏わせた剣振るい銃弾を武器受け
悉く反射し返り討ち
手錠投げ付けられようと機械の膂力で引き千切り
ブラスター飛び交う宇宙で剣を振るうのです
この程度の技、フォースナイトは全員修めておりますよ
技、いえ、その精神の継承
それが生物の強みなのか…
ヒーローズアースの歴史は戦いの歴史でもある。
強き者たちが台頭し、力を振るう。力は純然たるものである。そこに善悪は存在せず、あるのは力を振るう者の心にのみおいて陰陽分かつものばかり。
ゆえに人は惑うのだ。
揺れるのだ。
己の心にある光と影のように。善と悪が天秤に懸けられたようにゆらめき、傾いた方へと道の舵を取る。
「俺達は、まだ終わってなどいない! 不用品などではないんだ!」
「それを示してみせるんだ。まだ戦いは終わってなどいない!」
『ダーティポリス』たちが咆哮し、それに共鳴するかのように巨躯へと変わる。強靭な肉体と攻撃能力。
異形という異能を得た彼等は『世界大戦』において、その力を正しく使ったことだろう。祖国のために、親しいもののために。
けれど、戦いが終われば彼等の力は無用の長物である。だからといって、それを捨て去ることなどできない。
だから、彼等は求めたのだ。
己の力の振るう場所。即ち戦場を。
あの『世界大戦』の時代を『スナークゾーン』にてトリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)は知る。
今はもう名を捨てたであろう男女の人生は、今も尚困難に直面しているかも知れない。
「『めでたしめでたし』の後に騎士の出番はなし。ゆえに、存在意義の消失こそが我が目標である」
それがトリテレイアの出した己の結論である。
戦機であるがゆえか、それとも狂ったがゆえか。その狂気や矛盾こそが愛おしいと思うのは、彼が感情を獲得しているからに他ならぬ。
「だから、俺達は求めているんだ! 戦場を! 力を振るう理由を!」
『ダーティポリス』は言う。
生物として至極まっとうなことを言っている。
『世界大戦』にて生み出され、捨てられ、ヴィランへと変わった彼等。彼等は生きている。生物なのだ。
機械である己とは違う。生きて、生きて、死ぬからこそ、彼等は尊いものだ。どうしようもなく愛おしいものだ。
「理由になっていない」
徒手空拳の女性が疾風迅雷のように走り抜ける。
彼女の薄紅色の瞳が残光のように『ダーティポリス』たちを打倒していく。トリテレイアは、彼女の言葉に応える。
「そのとおりです。如何なる事情を抱えようと悪事は許されません。ゆえに、殺さずとも突破させていただきます」
そして、この際奥に座すであろうオブリビオンには容赦はない。
人の営みに付け入って、誰かの涙を流させるような事を為す者をトリテレイアは猟兵以前に騎士として許すことは出来なかった。
放たれる弾丸を個人携帯用偏向反射力場発生装置 (リフレクション・シールド・ジェネレータ)によって反射重力をまとわせた剣でもって受け流す……のではなく、正確に打ち返す。
放たれた弾丸は狙い過たず『ダーティポリス』たちの構えた拳銃の銃口に打ち込まれ、爆発して彼等の動きを止める。
「面白いな。だが、その業ならば、すでに知っている」
徒手空拳の女性が笑う。
彼女の拳が開かれ、放たれた弾丸を掴むのをトリテレイアのアイセンサーは見ただろう。つかみ、そのままに指で弾き飛ばす。
『魔法使いの時代』において猟兵が扱った銃火器を見て、すでに対策を取る技を得ているのだ。
「――……なるほど」
「厳密にはあなたの使うものとは違うのだろうがな。やれないことはないのさ。しかし、面白いな、それは」
徒手空拳の女性はこれまで見てきた過去の時代の徒手空拳の者たちと同じようによく笑う。
戦いを楽しんでいるのではないようであるということだけが判る。戦いを厭い、憂いながら拳を振るう力があるだけの存在。
「ブラスター飛び交う宇宙で剣を振るうのです。この程度の技、フォースナイトは全員修めておりますよ」
『ダーティポリス』たちの放つ弾丸をかいくぐりながらトリテレイアは進む。
アジトの奥に座すオブリビオンは、『ダーティポリス』たちのように放置はできない。世界を滅ぼすほどの企てを立ち上げるものだ。放置すれば、また世界を危機に晒すことだろう。
後の歴史を知る者にとって、それがまた一つの杞憂であることは事実。
けれど、徒手空拳の女性が言ったように、誰かが涙を流すのならば拭わねばならない。
かの『名』は技を継承するだけに非ず。それをトリテレイア理解するのだ。
「これが生物の強みなのか……」
途絶えることなく連綿と紡がれてきたからこそ、人はいつか星の海にすら漕ぎ出す。トリテレイアは、その歴史の最端を征くものであるからこそ、強さというものを知るのだ――。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『イヴィル・ボス』
|
POW : 富
【自身の財】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【忠実なヤクザ】に変化させ、殺傷力を増す。
SPD : 名声
【振る舞い】から【威厳】を放ち、【カリスマ】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ : 力
【暴力で解決するのが一番という真理】に覚醒して【マッチョ】に変身し、戦闘能力が爆発的に増大する。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
イラスト:V-7
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠トール・テスカコアトル」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
『ダーティポリス』たちが次々と打倒されていく。
彼等は戦争の被害者だ。それが加害者に回っただけの話である。虐げられた者が、次なる虐げる者に変わる。
「流転するように。当たり前のことだ。強き者たちが衰退すれば、弱き者たちが次なる強き者に成り代わる。これまでのちからの在り方が変わるだけの話だ」
オブリビオン『イヴォル・ボス』は、己の両隣からずらりと並び立つ人間サイズの鋼鉄兵たちを起動させる。
彼は己が弱者であることを自覚している。
かつての『世界大戦』の時代にありし、ヒーローやヴィランのような強力な力などもっていなかった。
けれど、彼は上り詰めたのだ。
一度は。
ヴィラン組織『病院』を生み出し、世界の覇権に手をかけた。もう一歩だったのだ。強化人間は彼にとって良い金づるでもあった。
「人は力を求める。どれだけ最初は高尚な理由であっても、汚れていくのだよ。堕落していくのと同じようにな。だというのに……」
『イヴォル・ボス』は見た。
あのユーベルコードの輝きを。
不完全な失敗作と罵った強化人間が己の夢を砕くのを。完璧なユーベルコードを移植した強化人間すらも打倒し、己の全てを砕いたのだ。
「人の心を持ちながら堕すことのない輝きを持つ者がいる。それが私は許せない。どんな貴人も、どんな賢人も、金の力の前には屈するはずだ。金! 金! 金! 金だけが私の夢を叶えてくれるものだ!」
『イヴォル・ボス』は鋼鉄兵たちに命じる。
これより迫る者達を鏖殺せよと。
かつて鋼鉄巨人『ゴーワンダー』と呼ばれた巨大兵器をダウンサイジングした人間サイズの鋼鉄兵たち。
それこそが『イヴォル・ボス』が世界にまたがり金を集め、生み出した力だ。
世界の覇権はかつて叶わなかった。けれど、これならば届く。
「この力で全てを手に入れる! これが人の夢だ! 全てを手に入れることこそが、人の際限なき欲望の結実! あと一歩だ、ワタシの夢は人の夢そのもの。この実現こそが人の求めたものだ! だからこそ、邪魔などさせん!」
その高笑いはアジトに響き渡る。
鋼鉄兵たちの眼光が煌き、迫りくる猟兵達を待ち受けるのだった――。
馬県・義透
引き続き『疾き者』にて
属性:風
ま、その大層な夢は、ここで終わりですよー。許すものですかー。
【四更・雷】…鋼鉄兵は、つまり電気と押しやすいですよねー?対策あったとしても、風もありますし、生命力吸収つけますので、当たるだけでも致命的ですー。
それは、あなたも同様。戦闘力を増したとして、それは長くは続かない…寿命を削るとは、そういうことだ。似たようなの使えますしね、私(削るのが『疾き者』の寿命だけなため、他三人に怒られるまでがお約束)
ま、直接の暴力は…四天霊障での結界を割れたら、の話です。結界にも、生命力吸収つけてますので、それに触れれば、ねぇ?
輝きとは、簡単には曇らないものですよー?
鋼鉄兵たちの眼光が輝く。
それは剣呑なる輝きであり、同時に破壊の力を齎す輝きでもあった。かつて『世界大戦』の時代にあって、生み出されたのが体高18mにも及ぶ鋼鉄巨人『ゴーワンダー』であった。
そのダウンサイジング版とも言うべき鋼鉄兵たちは、膨大な資金によって開発された『イヴォル・ボス』の私兵であった。
『ダーティポリス』たちのように懊悩の果にヴィランに堕したわけでもない。はじめからそう在るべきとして生み出された尖兵である。
世界の覇権を願う者はいつの時代にも尽きない。
何故ならば、人の欲望はすべてを手に入れることにこそ向かうからである。
「ワタシの夢は人類の夢そのものだ。全てを手に入れる。全てを手に入れられるのが一人だけだというのならば、ワタシがそれになるのだ!」
己の夢を人類の夢と置き換える『イヴォル・ボス』は、鋼鉄兵たちを猟兵に差し向ける。
「ま、その大層な夢はここで終わりですよー。許すものですかー」
のんびりとした声色であったが、その言葉は確かに否定していた。
人の欲望が全てを欲するものであったのだとしても、他者をないがしろにするものに全ては手に入らない。
指をかけることすらできぬことであることを歴史がこれまで証明してきている。
「そのとおりだ。お前の夢は意味のないものだ。全てなど人の手には余るものだ。お前は誰も幸せにしない。誰もかもを不幸せにするものだ」
徒手空拳の女性と共に馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の一柱『疾き者』が疾風迅雷のように駆け抜ける。
雷の矢が戦場に疾走る。
鋼鉄である限り、その躯体には電撃に対する耐性もあるだろう。しかし、『疾き者』の持つ四悪霊としての力は風である。
そして、その動力源を生命力に見立てて奪うのだ。
「逃がさぬ。悪霊が逃がさぬと言ったからには…絶えよ」
四更・雷(シコウ・ライ)の力は、ユーベルコードの輝きを持って鋼鉄兵たちを貫いていく。
徒手空拳の女性の拳や蹴撃が鋼鉄兵など紙切れのように吹き飛ばしていく。如何に鋼鉄の体を持つのだとしても、彼等を止めることはできない。
「ふざける、な……ふざけるな!! どれだけの時間と金を費やしたと思っている! ワタシは全てを手に入れるのだ! これまでもそうであったように、世界の全てはワタシの手の中にあるべきものなのだ!」
膨れ上がる『イヴォル・ボス』の肉体。
どこまでも馬鹿にされているようなものであった。金と地位、名声、あらゆる人脈を駆使して生み出した鋼鉄兵たちが、まるで意味をなさないかのように『疾き者』のユーベルコードの輝きによって打ち倒されていく。
さらには徒手空拳の女性の無手が鋼鉄を引き裂く。非現実的な光景に『イヴォル・ボス』は怒り狂う。
何処まで行っても、己を邪魔する者たちへの怒りが頂点に達した時、彼は理解する。
「やはり暴力……! まだるっこしいことは、意味がない。おまえたちは、ワタシが排除する!!」
咆哮とともに『イヴォル・ボス』の肉体が変容していく。
まるで生物としての枠組みを超えるかのような膂力の発露。
「どれだけ力を増したとしても、長くは続かない……寿命を削るとは、そういうことだ」
それに、と『疾き者』は言う。
似たような力を使えるのもまた『疾き者』である。削るのは己の寿命のみ。だから、他の三柱は怒る。誰かのために怒ることができることは幸いであったし、誰からか怒られるということは得難きものを得ていることになる。
けれど、『イヴォル・ボス』にはそれがない。
「誰も止めないか。誰も苦言を呈さないか。それはお前がこれまで誰からの言葉にも耳を傾けなかったからだ」
徒手空拳の女性の一撃が更迭兵を吹き飛ばす。
『イヴォル・ボス』の膨れ上がった体躯がさらけ出される。その眼前に疾走るのは雷の矢。疾風の力を得て押し出された矢の一撃が『イヴォル・ボス』を貫く。
「この輝きがワタシの夢を阻む。くらませる! 何故だ! どんな人間も金や名声の前には膝をつくだろう! 当然のことだ! 人はそれを求める! 欲望のままに! だというのに!」
何故、かつて己の夢を砕いた輝きは曇らずに今も尚、燦然と『イヴォル・ボス』の視界にあるのか。
それを理解できぬからこそのオブリビオン。
過去の化身。
歪み、停滞した者の末路。
ゆえに『疾き者』は告げる。
「輝きとは、簡単には曇らないものですよー? 曇ったように見えるのは、輝きと相対するあなたの眼が曇っているからですよー?」
放たれた雷の矢が膨れ上がった『イヴォル・ボス』の体躯を走り抜ける。疾風の力が、その体躯をしぼませ、力を奪う。
貫く矢の一撃は、『イヴォル・ボス』の夢を砕く楔と成るのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
大町・詩乃
前回の依頼でシリアス成分が枯渇したので出遅れました💦
今代のアズマさんは女性なのですね、よろしくお願いします(一礼)。
…ナイアルテさん、今度、道着コスプレしてくれないかなあ~。
ド派手に行くぜ路線で負けたから、小さなことからコツコツと路線に切り替えましたか。
執念は認めますが、いずれにせよ許せません!
鋼鉄兵達はUC:自然回帰で動きを止めます。
イヴィル・ボスのカリスマですが…お金起因のカリスマで私を封じる事などできませんよ。
私は(UCの神意具象を使えば)黄金など、いくらでも生み出せますし。
やりませんけど。
ではボスにお仕置きいきますね。
右手に光の属性攻撃と神罰を籠めて、衝撃波を放ちつつビンタします。
オブリビオン『イヴォル・ボス』は確かにヒーローズアースにおいて、ヴィランとしてのカリスマ性を有した存在であったことだろう。
金とは即ち力である。
汚く、目がくらむようなまばゆさを持ちながら、金さえあれば大抵のことはどうにかなるのだ。
だからこそ、『イヴォル・ボス』は金にこだわった。
世界を手に入れるために彼がしたことは金を集めること。何をするにしても金が前提条件に成る。
『世界大戦』の時代から生き残り、その無用の長物となった力を持て余した『ダーティポリス』たちを買収するのにも金が有効であった。
何より今、彼を護るようにアジトに展開する鋼鉄兵たち。
赤き瞳輝かせ、迫りくる猟兵達を迎え撃つ鋼鉄兵は、かつて『世界大戦』の時代に在った鋼鉄巨人『ゴーワンダー』のダウンサイジングされた兵器である。
金がなければ、人間大にまでサイズを抑えるという技術の発展はなかった。
「だからこそ、ワタシは全てを手に入れるのだ! あらゆるものを! 金で!」
『イヴォル・ボス』の言葉に徒手空拳の女性は拳で持って応えた。迫る鋼鉄兵たちを叩きのめし、彼へと迫るのだ。
「他者の涙以上に価値があるようには思えない」
徒手空拳の女性は、誰かの涙を拭うためだけに拳を奮っている。
「今代の『アズマ』さんは女性なのですね。よろしくおねがいします」
一礼するように戦場に舞い降りる大町・詩乃(阿斯訶備媛・f17458)を徒手空拳の女性は見上げる。
詩乃は徒手空拳の女性を見て、グリモア猟兵が道着コスプレをしてくれないかと思う。きっと似合うと思っているのだろう。
その思いの彼女が応えるかどうかはわからない。けれど、徒手空拳の女性はそんな詩乃の視線に気がついたのか、朗らかに笑う。
「そんな物欲しそうな目をしたってだめだ」
薄紅色の瞳が輝き、迫る鋼鉄兵を叩きのめす。その姿に詩乃も心を入れ替える。今は戦場。如何に今の彼女がシリアス成分を枯渇させているのだとしてもオブリビオンを打倒することをやめてはならない。
「そうですね。いくらド派手に行くぜ路線で負けたから、小さなことからコツコツと路線に切り替えたとしても、その野望を為さしめることは阻まねばなりません」
『イヴォル・ボス』の執念はたしかに認められるべきものであたかも知れない。
己の目標に向かって邁進する。
それだけ見れば、確かに褒められたものであったからである。
けれど、オブリビオンである以上世界の破滅を願うことは許せるわけもなし。
「自然の営みによらずして生み出されし全ての悪しき存在よ、アシカビヒメの名において動きを止め、本来あるがままの状態に帰りなさい」
詩乃の瞳がユーベルコードに煌き、若草色の神気が解き放たれる。
それはあらゆる装甲や障壁を突破する自然回帰(シゼンカイキ)の力。機械のシステム停止と電源をオフにする力によって鋼鉄兵たちは尽く動きを止める。
「何故だ……!? 何故動きを止める……! システムは完璧だったはずだ。耐電圧試験もクリアしている……だというのにこれは!」
『イヴォル・ボス』はうろたえる。
鋼鉄兵はあの『ゴーワンダー』をリサイズした兵器である。
人間サイズにまで落とし込んだからこそ、鋼鉄兵は社会に溶け込み、あらゆる破壊工作を行うことができた。
けれど、それらの全てを無に帰すように詩乃は疾走る。
「お金が全てではありません」
「お前のような口さがない者がいつも言うのだ。金で買えないものあると。それは事実かもしれないが、金でどうにかできないものをどうにかできるもの、それを金でどうにかできるのだよ!」
そこにカリスマはあれど、詩乃には響かない。
どれだけ金が価値を持つものであったとしても、詩乃は神性である。
「黄金などいくらでも生み出せます。やりませんけど。あなたの言う所の言葉は確かに正しいのでしょう。けれど、それでも、今あなたは私を金でどうにもできないでしょう!」
詩乃の瞳は今もユーベルコードに輝いている。
徒手空拳の女性は詩乃が何をするのかを理解しているようでも在った。聞き分けのない子供に折檻するかのように詩乃の右手に光が集まっていく。
それは神罰の光。
「ばかな……! まさか、神だとでもいうのか、お前は!」
「そのまさかですよ。さあ、お仕置きの時間です!」
放たれるは神罰を込めた衝撃波伴う平手打ち。即ちビンタ。
拳ではない。
スナップを効かせた鞭打の如き一撃は、男性の『イヴォル・ボス』の中にある沽券といったものを一方的に打ち砕くには十分なものであった。
頬を叩く乾いた音。
それは肉や骨を穿つよりも強烈なる一撃となって『イヴォル・ボス』の頬を張るのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
アレクサンドル・バジル
夢は大きく世界征服か。良いねえ。
(パチパチパチと拍手)
大きい夢には大きい壁が立ちはだかるもんだ。
取りあえずは俺。という事で、ガンバレ。
『魔神降臨』にて上位魔神形態に。
変身と同時に周囲を衝撃波(×範囲攻撃)で吹き飛ばし、その後、ボスに魔神の鉄槌(拳)を。(怪力×功夫×貫通攻撃)
そーいや、一つ聞きたかったんだが……
病院なのに何で総統なの? 院長とか理事長じゃね?
張り手の音が響き渡る。
かつてはヴィラン組織『病院』の総統であった『イヴォル・ボス』の頬を猟兵の平手が張り倒した音であった。
神罰の雷鳴の如き響き渡る音に徒手空拳の女性は笑った。
「実に面白いな。あなた達は」
見ていて飽きないと彼女は笑う。快活に笑う姿は幾つもの時代に在りし徒手空拳の存在たちと同じであった。
彼等がそうであったように、彼女もまたよく笑う。
「ワタシを笑うか! 世界に手を懸けたワタシを!」
怒りに震える『イヴォル・ボス』は指を打ち鳴らす。再び鋼鉄兵たちが動き出し、彼がこれまで溜め込んだ財を変化させていく。
金とは力である。
蓄えれば蓄えるほどに力の意味を変えていく。
何かを得るために知ら払う代価から、世界すらも牛耳れる力へと変貌を遂げるだろう。
これが彼の願いであり、欲望でもあった。
世界を手中におさめる。ただそれだけのために多くを巻き込み、世界すらまたがるヴィラン組織を作り出した。
かつては『病院』と名付けた組織であったが、今は違う。
「夢は大きく世界征服か。良いねえ」
乾いた手を打つ音が響き渡る。
拍手の音であった。
「大きい夢には大きい壁が立ちはだかるもんだ。とりあえずは、俺。ということで」
アレクサンドル・バジル(黒炎・f28861)の瞳がユーベルコードに輝く。
魔神降臨(グレーターデーモン)たる姿は、上位魔神。
翼が広げられ、漲る力が迸る。奮った拳の衝撃波だけで鋼鉄兵たちが藻屑のように吹き飛ばされていく。
「――ガンバレ」
その言葉には何処にも激励の意味などなかった。
徒手空拳の女性は相変わらず笑っている。
「めちゃくちゃ言うな。そのような姿を晒しておいて」
彼女の言葉は尤もであろう。
上位魔神たる姿をさらけ出したアレクサンドルの戦闘力は凄まじい。迫る鋼鉄兵たちなど相手にはならない。
二倍の体躯へと変貌したアレクサンドルの咆哮が轟く。
生命としての本能的な恐怖を煽る咆哮は、意志無き鋼鉄兵たちには意味などなかったかもしれない。
けれど、それらを壁にした『イヴォル・ボス』にとっては違う。
オブリビオンであっても理解しただろう。あれが猟兵。生命の埒外たる存在。
その力の発露が己を滅ぼすために向いているなど、『イヴォル・ボス』にとっては恐怖以外の何物でもなかったからだ。
「悪夢だ……! こんなことがあっていいわけがない! ワタシは、間違えてなどいないはずだ!」
「いいや、間違えてるさ」
壁のように立ちふさがる鋼鉄兵たちをアレクサンドルは吹き飛ばしながら、魔神の拳を握りしめる。
振るい上げる拳は鉄槌そのもの。
尋常ならざる膂力でもって放たれる一撃は『イヴォル・ボス』の脳天をかち割るかのように叩きつけられ、地面を砕き、彼の体を沈める。
「そーいや、一つ効きたかったんだが……」
アレクサンドルは叩き伏せた『イヴォル・ボス』を睥睨する。
単純な疑問であった。
「『病院』なのになんで総統なの? 院長とか理事長じゃね?」
その疑問は尤もであったし、無意味な質問でもあっただろう。ヴィラン組織『病院』は確かに、その名の通りであった。
ならば、その組織の長はアレクサンドルの言う通り院長であるとか理事長という役職で呼ばれるべきであったはずだ。
けれど、『イヴォル・ボス』を総統と呼ぶ。
ならば。
「『知られざる文明』があるからだよ。やつは、その総統。世界の外から来たのならば、わかっているだろう」
徒手空拳の女性が言う。
アレクサンドルは知るだろう。
『犯罪者の時代』が過ぎ去れば、何がヒーローズアースに訪れるかを――。
大成功
🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
なんだかんだ言ってるけど…結局欲に飲まれてるじゃないか…
…欲は否定しないけど…コントロール出来ないなら身を滅ぼすだけだよ…
…【災禍を移す水鏡】を発動…ついでに言うと…立ち振る舞いはお金だけじゃどうにもね…
反射に加えての実家で叩き込まれた立ち振る舞いで威厳をブーストして動きを封じるよ…
…あ、ゴーワンダーはハッキングで制御権を奪ってるからもう動かないよ…
…お前の言うとおりお金で全てが手に入るとして…ならば何故『失敗』したのか…そこを考えずに同じ事をやっても同じ結果にしかならない…
…ヒーローとか…貴人や賢人も金よりも大事な物があるからね…
…さて…動けないイヴォル・ボスに光の槍を叩き込むとしようか
オブリビオン『イヴォル・ボス』の言う通り、金はあらゆるものを屈服させる力であろう。
誰もが金を求める。
生きるために必要であるからだ。
けれど、金だけで生きない者もいる。そうした者達を従わせるには金ではない別のなにかで従わせるものである。
時にそれはカリスマであったり、名声であったりするだろう。
『イヴォル・ボス』はかつてヴィラン組織『病院』を率いた。そのカリスマ性は確かにあったのだろう。
けれど、彼は今や金の亡者だ。
世界の覇権に手をかけて失敗したからこそ、二度目の失敗は彼の心をへし折るものであったからだ。ゆえに失敗は許されない。失敗したのならば、彼は二度と立ち上がることはできないであろう。
「どこまで行こうとも、金は金でしかない。力たり得ない」
徒手空拳の女性が言う。
金は積み重ねれば重ねるほどに高みに人を昇らせるだろう。けれど、その金に意味を持たせるのはいつだって人なのだ。
だからこそ、叩き伏せられた大地から『イヴォル・ボス』が立ち上がったのならば、それは金の力ではない。彼自身の世界を手にしたいという欲そのものであったからだ。
一種のカリスマすら感じさせる立ち振舞い。
「だからなんだ。力を屈服させるものは、金でどうにかできるものだ。ワタシはそれを証明するのだ。世界を手にし、世界を一つにし、あらゆる力をコントロールしてこそ、人はまとまり在るものになる。そうでなければ、人類は滅びるのだから!」
メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)はその言葉を聞き、なるほどなと思ったことだろう。
此処は仮想空間『スナークゾーン』。過去の地球を再現した空間だ。
そして、今は『犯罪者の時代』。
世界の外からやってくる猟兵であり、この先の時代を知る者にとって、この後に訪れる時代をメンカルたちは知っている。
『知られざる文明』。
地底や地球外から訪れる文明によってヒーローズアースの地球は再び戦いと混乱の時代を迎える。
『イヴォル・ボス』の言うことはあながち間違いではない。
けれど。
「なんだかんだ言ってるけど……結局欲に飲まれてるじゃないか……」
どれだけ最初の理念が崇高なものであったのだとしても、『イヴォル・ボス』は金に目がくらんだ。
世界をまとめると、争いを取り除くといいながら、己の我欲を発露させたのだ。
「……欲は否定しないけど……コントロール出来ないなら身を滅ぼすだけだよ……」
「黙れ! お前たちは何も知らぬから、そう言っていられるのだ! 世界が誰かのモノになるなど許せるものではない。神より簒奪した人の時代。それを永続させるためには!」
鋼鉄兵たちが『イヴォル・ボス』の命令を受けて疾走る。
確かにカリスマはある。理念もある。
けれど、それは全て過去のことだ。過去に成ったものにメンカルは左右されない。
「破魔なる鏡よ、映せ、移せ。汝は転照、汝は魔祓。魔女が望むは悪因還す八尺鏡」
メンカルの瞳はユーベルコードの輝きに満ちる。
それは災禍を映す水鏡(ディザスター・リフレクション)。彼女に迫る『イヴォル・ボス』のカリスマも理念も何もかも彼女には届かない。
彼女にとって、それは当然のことであった。
ガジェット研究者の一族として名高いプルモーサ家。その次女たる彼女の立ち振舞は、エレガントと言うにふさわしいものであった。
生まれながらにしてのセレブリティ。
メンカルにとって、それは至極当然のことだ。造作もない。身につけたものと、身に染み込んだものとの差を『イヴォル・ボス』は知るだろう。
鋼鉄兵たちが動きを止める。
「……お前の言う通り、お金で全てが手に入るとして……ならば何故『失敗』したのか……そこを考えずに同じことやっても同じ結果にしかならない……」
「どうした! 何故、動かない! 鋼鉄兵!」
メンカルのハッキングによって鋼鉄兵たちは動きを止める。制御権を奪い取ったメンカルによって、彼等は木偶に成り果てる。そんな鋼鉄兵を粉々に破壊する徒手空拳の女性。
『イヴォル・ボス』はうろたえる。
頼みにしていたものが尽く封じられるからだ。金でどうしようもないモノが今目の前にある。
「……ヒーローとか……貴人や賢人も金よりも大事なものがあるからね……」
メンカルの掌に光の槍が生み出される。
金に執着し、金に溺れ、金に沈む。
それがオブリビオン『イヴォル・ボス』の末路であるというのならば皮肉そのものであった。
放たれた光の槍が動けぬ鋼鉄兵を巻き込みながら『イヴォル・ボス』の体を貫くのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ロウガ・イスルギ
俺も金のために傭兵しちゃあいるがな、筋が通らねえ仕事は
蹴って来たぜ?お前さんには俺はどう見えるんだろうな!
天辺に昇り詰めようが、支えがなけりゃ落ちるだけ、さ
鋼鉄兵の排除は引き続きガンディーヴァによる【誘導弾】
威力はイヴィル・ボスへの感情のためかダーティーポリス戦より
明らかにマシマシ
怒りはしてねえが……ムカつきは最大級だ!
魔狼縛縄にてイヴィル・ボスの拘束とUC封じ及びアズマに
仕留めを任せるのを最終目標とする
只のワイヤーと思うなよ?俺が「命(銘)じ」たらコイツは
神話の武器になる……『グレイプニル』ッ!!
魔狼縛縄!カラミティストラングラーッ!!グレイプニルの名が伊達か、
その身でとくと味わいな!
光の槍が『イヴォル・ボス』の体を貫く。
彼が本来の人間であったというのならば、それで終わりであったことだろう。
けれど、今の彼はオブリビオンである。過去の化身。かつて在りし世界の覇権に手をかけた存在の残影。
ゆえに彼は己の執念のみにおいて猟兵たちの前に立ちふさがるのだ。
「ワタシはこれで終わらない。終わるモノか。必ず、必ず、必ず、ワタシは世界を手に入れる……そのために!」
動きを止めていた鋼鉄兵たちが動き出す。
徒手空拳の女性に砕かれ、猟兵達によって蹴散らされた鋼鉄兵たちは次々と無事な部位を合わせて損傷なき躯体を生み出して、『イヴォル・ボス』を守るために駆け出す。
赤い残光は、その瞳。
「俺も金のために傭兵しちゃいるがな、筋の通らねえ仕事は蹴ってきたぜ?」
スマートガンから放たれる誘導弾が鋼鉄兵たちを貫く。
ロウガ・イスルギ(白朧牙虎・f00846)は崩れ落ちる鋼鉄兵を蹴り飛ばし、『イヴォル・ボス』に迫る。
傭兵として生きるからには、金銭は切っても切り離せぬものであろう。
金次第で仕事をすることもあるだろう。
汚れ仕事もあるだろう。
けれど、ロウガは己の信条に従うのだ。それが筋である。通さねばならぬものが道理で阻むのならば、無理でこじ開けねばならない。
例え、それが世界の覇権に手をかけた者であったとしてもだ。
「天辺に上り詰めようが、支えがなけりゃ落ちるだけ、さ」
誘導弾が宙を疾走る。
それは明らかに『ダーティポリス』たちに放った弾丸よりも威力が上がっている世に思えたことだろう。
これは怒りではないとロウガは言うだろう。
けれど、金で人の人生を左右しようとした『イヴォル・ボス』への苛立ちは本物であろう。
だからこそ、彼のスマートガンの威力は上がるのだ。
「支え? 支えなどは必要ない! ワタシには礎がある。土台というものが違うのだよ、傭兵風情が!」
鋼鉄兵たちが組み上がって『イヴォル・ボス』を守る盾になる。
けれど、ロウガの瞳がユーベルコードに輝く。
「その傭兵風情に追い込まれてるヤツが言うことかよ!」
放たれるワイヤーが鋼鉄兵ごと『イヴォル・ボス』を捉える。ロウガは徒手空拳の女性に目配せする。
仕留めることは任せたと。
視線を交わすだけで十分であった。戦場に煌めくのはユーベルコードの輝き。
「この程度のワイヤーが……!」
「只のワイヤーだと思うなよ? 俺が命じ――『銘じ』たらコイツは、神話の武器になる……」
魔狼縛縄(カラミティストラングラー)。
それは神話に置いて魔狼を封じた魔法の枷。
ゆえに『グレイプニル』。
巨大に膨れ上がった欲望の権化たる『イヴォル・ボス』を捉えるに値する枷であった。
「グレイプニルの名が伊達か、その身でとくと味わいな!」
ロウガは決して解けぬ枷によって『イヴォル・ボス』の動きを封じる。
どれだけ世界を手にしようという欲望が巨大なものであったとしても、人の望みがそれを阻む。
これまでもそうであったように。
過去の再現たる『スナークゾーン』ではなく、現実の世界であっても、阻まれたように。
決して叶うことのない欲望は、砕かれる。
「ワタシは世界の覇権を後もう少しで……! あと僅かだったのだぞ!」
「だから何だって言うんだ。お前さんは、お前さんを支えるものを切り捨てた。使い捨てにしようとした。それが、たった一つの敗因だよ」
ロウガは徒手空拳の女性の放った拳が『イヴォル・ボス』を吹き飛ばすのを見ただろう。
かつてそうであったように、いつだって悪は栄えない。巨悪は必ず砕かれる。
その光景をロウガは見るのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
金……即物的な力こそ万人が求める夢である
ええ、否定はしません
人の闘争の代行者にしてその権化
その欲望こそが我が種族のルーツなのですから
されど、それは世に数多ある理の一つに過ぎず
力の有無こそが正義である…否
それを否定する為に、騎士として私は剣を振るうのです
今代の『アズマ』様、お付き合い願います!
UCにて機械妖精放ち鱗粉を散布
剣と盾構え、脚部スラスターの推力移動も併用し突撃
ハッキングナノマシンで動きが鈍った鋼鉄兵達を薙ぎ倒し
マルチセンサーに死角無し
後方から迫る敵は肩部格納銃器を背後に旋回させ排除
総統の元へ
我が力は己が為に非ず、力無き者の為に
お覚悟を!
アズマと挟み撃ちにて追い込み
剣で斬り捨て
魔法の如き枷に鋼鉄兵ごと絡め取られた『イヴォル・ボス』へと叩き込まれる徒手空拳の女性の拳。
その一撃はこれまで重ねられた猟兵たちの一撃と合わせて彼に痛恨なる一撃となって身に刻まれた。
血反吐が撒き散らされる。
吐瀉物と共に『イヴォル・ボス』はうめき声を上げる。
痛みと称するには、あまりにも痛烈なる一撃。
痛みにあえぐことすらできない。彼の心を占めるのは怒りだけであった。世界の覇権に手をかけた。
けれど、その尽くが阻まれた。
二度目の失敗は彼の心を折るには十分であった。
「金の力を持ってしても……! 此処まで来ても、まだダメなのか! ワタシは世界を手に入れる! ただそれだけのために……!」
『イヴォル・ボス』は怒りから憎しみに変えた瞳で猟兵達をねめつける。
自身の夢、人類の夢。
それは言い換えただけであり、すり替えただけである。だからこそ、否定されるものであったが、トリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)はそれを否定しなかった。
「金……即物的な力こそ万人が求める夢である。ええ、否定はしません」
己が戦機であるという事実。
人は常に争いの中にありながら、争いから遠ざかろうとしてきた。棍棒が投石に代わり、投石が弓矢に変わり、弓矢が銃に変わる。
そして、銃はミサイルに変わり、そしてついには人は人同士での争いすら忌避するようになる。その結実たる人類の最端が己である。
「人の闘争の代行者にしてその権化。その欲望こそが我が種族のルーツなのですから」
だが、誤解してはならない。
トリテレイアは、己を世に数多ある理の一つに過ぎないのだと言う。
力の有無こそが正義であるというのならば、力なきものは正義ではないのか。
「それを否定するために、騎士として私は剣を振るうのです」
そう、否。
否なのである。力ある者は、その力の責任の所在たりえなければならない。
「騎士など時代遅れなものを掲げてワタシの夢を阻むな!!」
ユーベルコードに煌き、『イヴォル・ボス』は己の財の全てを鋼鉄兵に変える。これまで砕かれてきた鋼鉄兵たちとは比較にならぬほどの津波の如き赤い眼光が戦場に疾走る。
だが、トリテレイアは飛び交う機械妖精たちから散布される特殊な鱗粉を持って、一歩を踏み出す。
「今代の『アズマ』様、お付き合い願います!」
「無論」
徒手空拳の女性と共にトリテレイアは鋼鉄兵迫る鋼の妖精圏(フェアリーランド・オブ・スティール)を疾走る。
この機械妖精が放つ鱗粉は触れるだけで敵の制御権を奪う力である。
スラスターが噴射し、一気にトリテレイアは鋼鉄兵との距離を詰める。動きを鈍らされた鋼鉄兵たちは戦うために生み出されたトリテレイアを止めることなどできようはずもなかった。
剣の一閃が鋼鉄の体を切り捨てる。徒手空拳の女性の拳が容赦なく吹き飛ばす。
それは『イヴォル・ボス』にとっては悪夢そのものであったことだろう。信じられない光景でも在ったはずだ。
「何故だ、何故ワタシの夢が、否定される! このままでは、世界が一つにならなければ、また争いの病巣が『やってくる』!」
マルチセンサーでトリテレイアは己に迫るもの全てを格納銃器でもって撃ち落としながら迫る。
『イヴォル・ボス』には何が見えているのか。
トリテレイア、猟兵たちは知っているだろう。ヒーローズアースにおいて『犯罪者の時代』の次に訪れるには『知られざる文明である。
地底から、海底から、宇宙から。
あらゆる場所から『知られざる文明』が訪れる『侵略者の時代』。『イヴォル・ボス』はそれを予見していたからこそ、世界を我がものにしようとしていた。
けれど、それが我欲にすり替わったときにこそ、彼は欲望の権化として堕したのだ。
「ワタシの世界が! 奪われようとしているのだぞ!!」
『イヴォル・ボス』が叫ぶ。
彼にとって夢の喪失は生命を失うことと同義であった。ゆえに彼は己の身を守るように鋼鉄兵でもって囲う。
けれど、それらの全ては徒手空拳の女性によって打ち砕かれる。
「世界は一つではない。我欲で世界を求めるものには決して止められぬよ」
徒手空拳の女性の拳があらゆるものを砕く。それが鋼鉄であっても。如何なる強大な力であっても、尽く砕く。
その横合いからトリテレイアが迫る。
アイセンサーがきらめいている。それは、彼がこれまで得てきた数多の経験があればこその結論。
騎士とは如何なる存在か。
「我が力は己が為に非ず、力無き者の為に――お覚悟を!」
疾走る剣閃が答えを出す。
振るう太刀筋に躊躇いはない。騎士として如何なる存在であるべきかを示す一撃は、混迷を極める時代にありても、道を照らし知らしめるのだ――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
金!
金があれば何でも出来る!
…ってやつ?
何ていうか…恥ずかしくないの?
いや何ていうかこう…もっと大きな夢を持とう?
まあお金は私も好きだけどね!
現金風呂とか入ってみたいし!
でもそれはそれ、これはこれ!
ま、それに…滲み出た過去がお金持ってたってしょうがないでしょ
さてと毎度お馴染み超克…オーバーロード
分身君はさようならっと
外装転送…今度は四刀流でお相手しようかな
鋼鉄兵が地味に邪魔だなあ…
数が多いのは面倒だね
数には数でお相手しようかな
【断章・不死鳥召喚〈超越進化〉】起動
へい、増援123体おまち!
ってね
召喚した不死鳥のうち100体は鋼鉄兵達に突撃させよう
翼で鋼鉄兵達を斬り裂きながら、イヴィル・ボスの壁を削っていこう
残りは待機
隙が出来てきたら、私も残りの不死鳥達と一緒にイヴィル・ボスに殴りかかりに行こう
鋼鉄兵の壁の薄い部分に『斬撃波』を飛ばして『吹き飛ばし』て突撃!
何かマッチョになってる?
まあ、殴り合うには丁度良いや!
接近して不死鳥の突撃と剣による『なぎ払い』や『串刺し』攻撃でガンガン攻めていこっと
金は全てを解決することができると『イヴォル・ボス』は信じていた。
世の中金ではないという者がいたとしても、彼等もまた金の前に膝を折るしかなかった。そうした連中を従えて『イヴォル・ボス』は世界の覇権に手をかけた。
あと一歩。
そう、あと一歩であったのだ。
鋼鉄兵たちもそうだ。一度は阻まれた道であっても、未だ絶えてはいなかったのだ。信じていれば、いつかは到達できる頂きであると思っていたのだ。
だが、それもまた砕かれる。
あの拳が、あの煌きが、己の全てを阻む。
「金! 金があれば何でも出来る! ……ってやつ?」
その言葉は、思いがけない方向から『イヴォル・ボス』に届いた。彼の背後から、その言葉は届けられ、振り返る。
剣閃の一撃により、その体には裂傷が走っている。血潮がこぼれながら、『イヴォル・ボス』は見ただろう。
虚空より転送されてくる副腕。
その超克の輝きを。世界の外よりやってくる生命の埒外たる存在たちは、その輝きをしてオーバーロードと呼ぶ。
「何ていうか……恥ずかしくないの?」
月夜・玲(頂の探究者・f01605)にとって、金とは好きなものであっても、己の目的に近づくための手段でしか無い。
世界の覇権という壮大な夢は目の前の我欲に塗れて失墜する。人とは常にそういうものだ。遠くを見ているようであれば、近くの石につまずく。近くを見過ぎれば、遠くを見ることは出来ず、迷い惑う。
皮肉なものだ。
『イヴォル・ボス』はそのどちらも経験してきた。
今まさに金という近くにあるものを拾い続けたあまり、己が如何なる理念によって生きてきたのかを見失う。
「何を、何を恥じることがあるか! ワタシは!」
「まあ、お金は私も好きだけどね! 現金風呂とか入ってみたいし!」
札束のシャワーって素敵じゃない? と玲は笑う。
『イヴォル・ボス』の戸惑う顔も尤もであろう。目の前の女性は何を言っているのか理解できなかったからだ。
己の夢がそのような低俗なものと同じとくくられたことに怒りを覚えたのかも知れない。
だが、同じことだ。
低俗高尚と宣うことこそ同じ。ゆえに玲は分身から手渡された模造神器を副腕で受け取り、その蒼き刀身を煌めかせる。
「でもそれはそれ、これはこれ! ま、それに……」
滲み出た過去。過去の化身。オブリビオンが金を持っていたところでしようのない話である。
意味があるとは思えない。
「お金っていうのは、生きてる人間が使って回してこそでしょ!」
迫る鋼鉄兵たちを蒼炎で構成された不死鳥達が焼き払う。全てを切り裂く蒼炎の翼が羽撃く度に、鋼鉄兵たちが霧消していく。
「へい、増援123体おまち!」
断章・不死鳥召喚〈超越進化〉(フラグメント・フェニックスドライブ・エクステンド)は玲のユーベルコードである。
凄まじい数の蒼炎の翼の乱舞は『イヴォル・ボス』にとって、暴力の権化そのものであったことだろう。
「――これが」
「お前の至ることのできなかった力の権化というやつだ。言っただろう、金だけでは力には至らないのだと」
徒手空拳の女性が蒼炎羽撃く最中、鋼鉄兵を吹き飛ばし告げる。
『イヴォル・ボス』はわなわなと震えるようであった。
巨大な兵器の力は、人の意思によって砕かれた。
膨大な金の力は、目の前の理不尽極まりない力の奔流に飲み込まれた。
ようやく至ったのだ。
『イヴォル・ボス』は己の過ちに。
「お前たちはワタシを邪魔する。だというのならば! ワタシは!」
力こそが全てである。
金であるとか兵器であるとか、そんなまだるっこしい事をしていたからこそ『イヴォル・ボス』は破れた。
人の意思を軽んじていたからだ。
玲は笑った。
「なんかマッチョになってる?」
最初からそうしていればよかったのに、と玲は蒼炎の羽ばたきと共に残る鋼鉄兵たちを燃やし尽くす。
模造神器から放たれる斬撃波を『イヴォル・ボス』は膨れ上がった体躯で受け止める。
「この程度で……! ワタシの野望を、夢を、止められると思うな!」
拳で斬撃波を砕く『イヴォル・ボス』。
けれど、そこへ叩き込まれる徒手空拳の女性の拳がガードをこじ開ける。跳ね飛ばされるようにして『イヴォル・ボス』は両手を掲げるように胴のガードを開けてしまっていた。
「殴り合いって言えば、ノーガードだよね!」
蒼炎の不死鳥が羽ばたき、その膨れ上がった体躯を切り裂く。
噴出する血潮すら蒼炎の前に蒸発して消えていく。玲は副腕を振るう。蒼光の斬撃が『イヴォル・ボス』の肉体に十字の傷を刻み込む。
「――、ワタシの夢が……! 人類の夢が……!」
「だから、それはすり替えだってば。もっと大きな夢持とう?」
主語を大きくすれば、何物も大きなものに見えるというのならば、それほど陳腐なものはない。
玲はその手にした模造神器の一撃でもって『イヴォル・ボス』の体躯を一刀のもとに両断する。
霧消するオブリビオンの影。
それは仮想空間において世界を滅ぼしかねない企てを断ち切る一撃。
かつて在りし世界の覇権に手をかけかけたと言えど、決して触れることのできぬものがあると知らしめる――。
●後年
『犯罪者の時代』は終わりを告げる。
『スナークゾーン』において、それは当然の末路であった。強者が潰え、弱者が台頭する。弱者は強者に成り代わり、そしてまた時代が移ろっていく。
止めることの出来ない時の奔流は残酷なまでにあらゆるものを淘汰していく。
発展は常に犠牲を強いるものである。
時に人を。時に自然を。
人類はそうして切り開いてきたのだ。それが良しにつけ悪しにつけても。
そうやって過ちと是正をもって繰り返してきた。それが人の歴史の連綿たる所以。変わらぬ営みであった。
ヴィラン組織『病院』は完全に潰えた。
もはや再起する力もなく、異形たる異能を得た者たちは、緩やかに日常に消えていく。名も知られぬ兵士たちは、ようやくにして己たちの力と向き合う。
無用の長物となった力は、捨てることができるのだと気がついたのだ。
けれど、時が移ろえば営みも変わっていく。
それが例え『知られざる文明』であったとしても変わることはなかった。
ニューヨークの地下に広がる広大な下水迷宮『ダストブロンクス』にありて、樹皮の如き体皮を持つバイオモンスターが生まれる。
「どうして僕は生まれてしまったんだろう。僕の生まれた意味なんて、誰が知っているのだろう」
樹皮の如き体皮を持つバイオモンスター『ツリーマン』は首を傾げた。
未だ幼い精神性。
けれど、体躯は人のそれを凌駕する。膂力も、頑強さも、人以上。されど、その精神性は幼い侭のアンバランスさ。
「何のために生まれたのだろう。何をすればいいのだろう。それが僕にはわからない。でも、生きていたいと思う」
『ツリーマン』は頷く。
地下下水迷宮は人類の生きる環境ではなかった。劣悪な環境。あらゆる汚物が流れ込み、捨て去られていく。
それは過去を排出して時間が進むように、過去の集積地そのものであった。
『ツリーマン』は見た。
汚水の中を流れていく、蠢くような鋼鉄を。それは胎動するようなものであった。けれど、彼にはそれが何であるか理解できなかった。
幼い精神性で理解できたことはたった一つ。
『あれ』は触れてはならないものである。もしも、彼の精神がもう少し育まれていたのならば、きっとそれを破壊していただろう。
けれど、そうはならなかったのだ。
だからこそ、『ツリーマン』は後悔することになる。あの日、あの時、己が『あれ』を破壊していたのならば、見過ごすことがなければ、と。
「勇気と無謀を履き違えてはならない。君の行いを誰が咎められるだろう。君は君の生きる意味を見つければいい。そのために、この『名』がある――」
大成功
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