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桜月夜と金色綿飴

#カクリヨファンタズム #戦後 #山本五郎左衛門

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●月明かりにおいでませ。にゃあ。
 にゃーお。
 猫の鳴く声に寄ってらっしゃい。

 甘くてふわふわなお菓子は如何かにゃあ。
 わたあめ、わたがし、呼び方いろいろ。
 英語ではコットンキャンディ、フランスではバルバパパといいますにゃあ。
 大きなふわふわ。まるで月夜に浮かぶ雲。
 金色に光っているのが綺麗でしょう。
 月の光を集めて、できているんですにゃあ。……にゃあんて。
 嘘かホントか、確かめたくなりましたかにゃ?

 金秘華猫の瞳が細まって、いたずら気な表情になる。
 くるくる。くるくる。機械が回る。
 出来上がるのは、大きな大きな綿菓子。
 もっこもこの超超超ビックサイズ。

 びっくりしましたかにゃ。
 なんだか今宵は、たくさん作ってしまいますのにゃあ。止まらないですにゃあ。
 お月さまみたいに大きな綿飴で世界を覆ってしまいそうです、にゃあ。

 来て来てお客さん。
 いーっぱいおもてなし、させくださいにゃ。

●ところが月が割れてしまいました。にゃあ。
「東方親分さぁ~~ん! たすけてくださいにゃあ! これじゃ綿菓子がつくれませんにゃ!」
 と、骸魂に飲み込まれた妖怪に泣きつかれたのは東方親分こと山本五郎左衛門。
 猟兵が現れる前から、いつ崩壊してもおかしくないこの世界を守ってきた親分衆はこれまでも、心のこもった言葉で妖怪を説得し、骸魂から分離させてきたのである。
「ふむ。月が割れて、綿飴がつくれない? 」
 今も変わらず、妖怪達のために奔走する山本は、綿飴売りの言葉に夜空を見上げた。
 確かに、月は真っ二つに裂けている。
 そしてその隙間から、妖しい光が漏れ出していた。
「なんと。あれはカタストロフの幼生じゃあにゃいか」
 怪しい光が姿を変えて、割れた満月から咲き溢れだす桜の花となっていく。
 まるで巨大な桜の木が月から生え出ているようであった。
 花びらが地上に降り注ぐと、その一帯を淡紅色に染め上げる。
「これは……一大事だにゃ!」

 世界を滅ぼすカタストロフの幼生が生まれてしまわないようにやるべきことは一つ。

「月見と花見の祭りだー!!!」

 ワアッと花吹雪が降りしきる中、集まった妖怪達が騒ぎ出し。
 あれよあれよという間にお祭り会場ができあがるのだった。

●グリモアベース
「――という訳でな、月見に行ってほしいのだ」
 クック・ルウは事の次第を説明するとそう言った。

 妖怪達の世界カクリヨファンタズム。
 そこには一年中真夜中で満月のすすき野が幾つも存在するのだが。
 その内の一つで空に浮かぶ満月が割れて、中からカタストロフの幼生が生まれてしまうらしい。
 放っておけば、もちろん世界は滅ぶ。

「『割れた月を無視して美しい月と思い込みながら宴をする』これが、滅びを止める唯一の手段であることは、知っている者もいよう」

 月見の準備はすでに妖怪たちが整えているらしい。
 屋台が並び、酒や飲み物が用意され、宴会の用意がしてあるそうだ。

「で、だ。この月見を無事終えると、今度は骸魂に憑かれた綿飴売りが世界を滅ぼしそうになる」

 骸魂によってもてなし衝動が暴走した綿菓子売りの化け猫。
 こちらも放ってはおけない。

「戦う必要はないのだ。綿飴を食べて、もてなされたら、それで解決するから」
 綿菓子売りのもてなし衝動が解消されれば、骸魂も消えて屋台の店主も元通りになる。
 なので皆にはたっぷりもてなされてあげてほしい。

「世界の滅びを防ぐため、どうかいっぱい楽しんできてくれないか」


鍵森
 お花見、致しませんか。
 綿菓子もあります。

●構成
 1章:お月見。
 プレイングボーナス:割れた月を無視して月見を楽しむ。
 桜が満開のすすき野で妖怪達とお祭りを楽しみましょう。
 食べ物の屋台に歌や踊りと賑やかです。
 しかしすすき野は広いので、静かに過ごしたい方ものんびり過ごせる場所があるでしょう。

 2章:綿飴。
 プレイングボーナス:屋台グルメを食べまくる(戦わずともダメージを与えられます)。
 猫妖怪『金秘華猫』の作る綿飴を食べてください。
 ボス戦ですが戦う必要はありません。
 屋台グルメを食べてあげれば骸魂は満足して去ります。

●他
 状況を見つつ細々と進行するかと思います。
 よろしくお願いします。
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第1章 日常 『月割れてるけどお月見しよう』

POW   :    全力で月の美しさを褒め称え、「立派な満月」だと思い込む。

SPD   :    賑やかな歌や踊りでお祭り気分を盛り上げる。

WIZ   :    お月見にふさわしいお菓子やお酒を用意する。

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 二つに割れた満月から桜の花びらが舞い散り続けるすすき野の中。
 妖怪達のにぎやかな声が聞こえてくる。
「おお。お越しくださりましたか、これは心強いですにゃ」
 猟兵達を出迎えたのは山本五郎左衛門だ。
 うれしそうな笑みを浮かべて歓迎してくれた彼女は、そのまま奥へと案内してくれる。
「『金秘華猫』は儂が見ておきますから、猟兵さん達はゆっくりお祭りを楽しんでくださいにゃ」

 立ち並んだ屋台からは良い匂いが立ち込めており、美味しそうな食べ物が並んでいる。
『まんじゅう~、桜月見団子はいらんかえ~』
『いちご飴にりんご飴、チョコバナナもありますよー』
『焼きそばにフランクフルト! 焼きたてだよー!』
 そんな調子で現代ではあまり見ないものから、定番の人気メニューまでずらり。
 花より団子だ。と言わんばかりの勢いだけれど。
 賑やかなところから離れれば、静かな場所へも行けるだろう。

 月と桜を両方楽しめる夜のこと。
 筵の上に腰掛けた化け狸が酒を飲み、妖狐が歌い、子鬼が月光の下で踊っている。
 この夜をどんな風に楽しむのかは、あなた次第。
レスティア・ヴァーユ
【逃避】
天上を仰ぎ見て状況理解に3秒。…よし
「今日は綺麗な満月だな」
……。親友の説得を開始
「今日は満月」「今日は桜が綺麗な満月」「今日は満月!」
「――返事は!?」
…よし。それでは桜月見へ向かうとしよう

以前、この世界の戦争の折に桜を見たことがある
その時は一人だったがとても美しいものだった
あれとはいささか風情が違うが、このようなものもたまには悪くはない
清酒を飲みつつ、向けられた相手の疑問に身につけ服に収めている見えぬ白銀の懐中時計へ視線を向けた
だが…相手の前で取り出すのは躊躇われた
プレゼントとして渡された無言の想いが…自分には重く、受け取るに足るのかも分からなくて
だから、返す言葉は「…ああ」とだけ


アシュエル・ファラン
【逃避】
…あの月、割れてね?現状を目に思わず素で呟いている自分がいた
「いや、それ以前の問題だろう?!」「いや、桜が綺麗ならいいって問題でもなく!」「いや、どー見ても満月じゃ――」
「……はい」
…押し切られたし…
まあ、そういう依頼だしな。精一杯楽しむとしますかね!

それにしても綺麗な桜だなぁ…。
一人で花見――だが…今回それで俺を誘って来たというのは、少し自惚れてもいいのかね、と。同じ酒を飲みながら少し考えてふと
「…懐中時計、持ってるか?」
問い掛ける…持ってないと言われたら自爆しかないのに何聞いてるんだ、俺…!
でも相手の視線に安堵して
「…そっか」
…出されなくても、今は持っていてくれるだけでも充分だから



 桜吹雪が舞うすすき野に降り立って、二人は妙な違和感に夜空を見上げた。
 濃藍の天上に浮かぶ満月が、ぱっかりと割れているのだ。
 わかってはいたが実際に見ると衝撃的だ。目を瞬くアシュエル・ファラン(盤上に立つ遊戯者・f28877)の横で、わずか三秒で事態を把握したレスティア・ヴァーユ(約束に瞑目する歌声・f16853)は僅かに眉をひそめた。……よし。と動揺を抑え、静かに意を決する。
 しかし、その時アシュエルから出た素の呟きが空気に緊張感を走らせた――。
「……あの月、割れてね?」
「…………」
 そう、まごうことなく月は割れている。
 だがそれを認めたら世界が滅んでしまう事をレスティアはよく心得ていた。
 かくして世界の崩壊を防ぐための説得が開始される。
「アシュエル……」
 レスティアは親友に真剣な眼差しを向けて訴える。
 なにか大事なことを伝えようとする様子に、アシュエルは思わず耳を澄ませた。
 
「今日は綺麗な満月だな」一音一音を丁寧に、言い聞かせるように言う。

「いや、それ以前の問題だろう?!」
 間髪入れずにツッコミが入ったが、レスティアも譲れない。
「今日は桜が綺麗な満月」
「いや、桜が綺麗ならいいって問題でもなく!」
「今日は満月」
「いや、どー見ても満月じゃ――」
「 今 日 は 満 月 ! 」
「……はい」
 同じ言葉を繰り返され押し切られたアシュエルは仕方なく頷いた。
 しかし一度飲み込んでしまえば切り替えも早く、屈託のない調子で笑みを浮かべてみせる。なによりせっかく親友と過ごす時間だ。
「まあ、そういう依頼だしな。精一杯楽しむとしますかね!」
「……よし。それでは桜月見へ向かうとしよう」
「酒とか、つまみとか、なにか見繕って飲むのもいいな」
「ああ、丁度用意もあるようだ」
 打てば響くような会話をしながら、二人は桜に彩られたすすき野を歩いて行く。
 しばらく辺りを散策すれば目当てのものもすぐに手に入り、ささやかな酒宴が始まった。

「それにしても綺麗な桜だなぁ……」
「……そうだな」
 夜風に吹かれ舞い散る花びらは幻想的で、月明かりに照らされた景色はとても美しかった。
 野天に拵えられた席で酒を酌み交わす内、酒気を帯びた二人の頬もほんのりと薄紅色を帯びていっただろうか。
「以前、この世界の戦争の折に桜を見たことがある」
 はらはらと降る花びらを眺めながら、ぽつりとレスティアが呟く。
 もう一年ほど前の事だ。
 記憶にある桜を思い出すような、その表情を見てアシュエルは瞳を細めた。
「その時は一人だったが、とても美しいものだった」
「ふうん」
「あれとはいささか風情が違うが、このようなものもたまには悪くはない」
 ちび、と清酒の入った杯を傾ける。
 酒のせいだろうか。レスティアの口元にはふわりと笑みが漂っていた。
 気を許した相手にしか見せないような姿だろう。
 一人で花見に赴くのも厭わない――そんな彼が今回は自分を誘ってここへ来たというのは、つまり。
(少しは自惚れてもいいのかね)
 酒のせいで緩む思考の中、ふっと小さく笑ってアシュエルは思う。
 普段は聞けないことも今なら言えそうな気がして。
「……懐中時計、持ってるか?」
 不意に問う。
 そして口を滑らせてから、我に返った。後悔は先に立たず。
(持ってないと言われたら自爆しかないのに何聞いてるんだ、俺……!)
 思わぬ質問にレスティアの顔には、一瞬驚いた表情が浮かぶ。
 ゆっくりと視線が落とされ、そのまま一点を見つめるように留まった。
 贈られた白銀の懐中時計は衣服の下に収めて身につけている。
 けれど、相手の前で取り出すのは躊躇われてしまう。
 プレゼントとして渡された無言の想いが……自分には重く、受け取るに足るのかも分からなくて……。
 小さく開いた口が、なにか言葉を探したけれど。
「……ああ」
 結局、返すことが出来たのはそれだけ。
 けれど、それで充分だった。
「……そっか」
 安堵の笑みを浮かべたアシュエルの顔から憂いは消えていて。
 いつも通りの様子で彼は笑う。
 レスティアの視線の先には、時を刻む懐中時計がある。それを感じ取った。
 例え目の前で取り出してくれなくても、今は持っていてくれるだけでも充分だから。
「綺麗だな」
「ああ」
 どちらともなく、夜天に咲く桜を見上げる。
 月光に照らされ咲き誇るそれは、やはり幻想的な美しさがあった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

斑星・夜
メルちゃん(f29929)と!

メルちゃんと一緒にお花見だよー
焼きそばもりんご飴も美味しそう
ちょっと端から色々食べちゃおうかな

あっ!メルちゃん一緒に写真撮らない?
【EPワイズマンズユニット『ねむいのちゃん』】で写真を撮ります

「うん、好きだよ~。一つのものを食べるのも良いし、色々食べるのも好き。食べたら食べた分、力が湧いて来る気がするんだよ~」
「小さい頃は普通だった気がするんだけど、よく食べるねって言われて、あっそうなんだって思ったのが十歳くらいかなぁ」(※それ以前からよく食べていますが無自覚)

ありがとー!俺も美味しそうに食べていたり、いっぱい食べてる人を見ると、嬉しくなるよ~
今のメルちゃんもね!


メルメッテ・アインクラング
斑星様(f31041)と

友達の斑星様とお花見の屋台巡りに参りました
どれも珍しい物ばかりで何を選ぶか迷いますが……私は桜月見団子に致します
「写真ですか?ぜひ!」お団子を持ち斑星様と一緒にポーズ!
撮影の後はお花を見ながら「いただきます」お茶も欲しくなりますね

「斑星様は健啖家ですね。お食事はお好きですか?」
「斑星様の力の源でございますね
よく食べられるようになったのはいつ頃から?」
「まあ、その頃から。斑星様が沢山食べられている姿を眺めていると胸が温かくなって参ります」
斑星様は美味しくいっぱい召し上がる事で、普段から無自覚に周囲の方々を幸せにされているのですね

「ふふ。綿飴のお腹も残しておいて下さいませ」



 桜の舞うすすき野に、祭りの屋台が並んでいる。
 提灯の明かりや色とりどりの出店からは食欲を刺激する匂いが立ち上り、賑やかな喧騒の中、行き交う妖怪達の姿は皆楽しげだ。
「賑やかだねメルちゃん」
「ええ、どれも珍しい物ばかりで何を選ぶか迷ってしまいます」
 温和な笑みを浮かべる斑星・夜(星灯・f31041)へ、メルメッテ・アインクラング(Erstelltes Herz・f29929)も微笑み返した。屋台巡りに繰り出そうと訪れた二人は、まずはどこへ向かおうかと相談をしながら歩き出す。
「あのお店は焼きそばみたいですよ」
「向こうはりんご飴かな。どれも美味しそう」
 ちょっと端から色々食べちゃおうかな、と夜は嬉しそうだ。
 こういう機会でもないとお目にかかれない食べ物がたくさんある。
「これとこれと、次は……」
 気になったものを手に入れていけば、夜の腕には一品二品と屋台グルメが抱えられていった。なにしろ古今東西の妖怪達が集まっているのだから、趣も様々な品々が並ぶ屋台は見ているだけで楽しい。『いらっしゃい、いらっしゃい』と客引きの声もあちこちから掛けられて、二人の足は度々立ち止まるのだった。
「ふふ。斑星様、舌が真っ赤になっていますよ」
「ほんと? りんご飴の色がうつったんだ」
 食べ歩きも祭りの醍醐味。
 シャリッと噛み砕いたりんごの甘酸っぱさに頬を緩ませながら、夜は桜の花びらが舞い落ちる空を見上げた。
「綺麗だね」
「はい」
 メルメッテは、風に舞ってひらりと落ちた一枚を手に乗せてみる。淡い桜色は透き通るように美しい。けれど異変が収まれば桜は消える。この光景は一夜限りのものとなるだろう。
「メルちゃんは何食べる?」
「ええと……私はこの桜月見団子に致します」
「あっ、それも美味しそうだね。俺も食べようかなぁ」
 店主から桜色の丸い串団子を受け取り、どこか落ち着いた場所で食べようと赤布掛けの縁台へと腰掛けて。
 屋台料理を並べれば、ちょっとした宴会の準備の出来上がり。
「あっ! メルちゃん一緒に写真撮らない?」
「写真ですか? ぜひ!」
「ねむいのちゃんで撮るから、こっちに来て」
 EPワイズマンズユニットを構えた夜の隣にメルメッテが並ぶ。
 割れた月と桜とすすき野それから屋台が並ぶ不思議な光景を背景に、お団子を持ってポーズ。
『ハイ、撮りますよ』
 パシャッとシャッターを切る音と共に、画面には笑顔の夜とメルメッテの写真が収められた。
「わっ、すごく綺麗に撮れてる」
「これはいい思い出になりましたね」
 撮ったばかりの写真を二人で眺めて笑い合い。
「いただきます」とメルメッテはきちんと手を合わせてから桜月見団子を一口。
 もっちりとした食感と口当たりの良い優しい甘さが口の中に広がり、ふわりと桜もちに似た風味が感じられた。
「うん。美味しいです……お茶も欲しくなりますね」
「そうだね。後で探してみよう」
 綻んだ表情を浮かべるメルメッテの様子に、夜ものんびりと頷く。
 そして屋台で手に入れた料理を次々と食べ始めた。結構な量があったが、ぺろりと平らげられていく。夜がおいしそうに食べる様子に、メルメッテもつい視線を向けた。
「斑星様は健啖家ですね。お食事はお好きですか?」
「うん、好きだよ~」
 少しだけ食べる手を止めて夜は笑う。
「一つのものを食べるのも良いし、色々食べるのも好き。食べたら食べた分、力が湧いて来る気がするんだよ~」
「斑星様の力の源でございますね。……よく食べられるようになったのはいつ頃から?」
 うーん……。夜は少し考えて答えた。
「小さい頃は普通だった気がするんだけど、よく食べるねって言われて、あっそうなんだって思ったのが十歳くらいかなぁ」
「まあ、その頃から」メルメッテは感心したように頷く。
 実際は指摘される以前からよく食べる子だったが、それは本人も自覚していなかったりする。
 しかしなんにせよ幼い頃から変わらぬ彼の一面は、メルメッテにとって微笑ましいものだった。
(斑星様は食事を美味しくいっぱい召し上がる事で、普段から無自覚に周囲の方々を幸せにされているのですね)
 気持ちの良い食べっぷりに釣られるように、メルメッテも団子を口に運ぶ。
「斑星様が沢山食べられている姿を眺めていると胸が温かくなって参ります」
「ありがとー! 俺も美味しそうに食べていたり、いっぱい食べてる人を見ると、嬉しくなるよ~」
 今のメルちゃんもね! と、夜はにっこりと笑った。
 小さな笑みがメルメッテから零れる。
「ふふ。綿飴のお腹も残しておいて下さいませ」
「うん」
 そうして月光と桜吹雪が降り注ぐ中。
 割れた満月が戻るまで、二人は和やかに花月見をして過ごすのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

灰神楽・綾
【不死蝶】
お花見や夏祭りシーズンでもないのに
お祭りに行けるなんて嬉しいなぁ
せっかくだから浴衣に着替えてくれば良かったな
ウキウキとした足取りで色んな屋台を眺める

気になったのはお饅頭とお団子の店
桜月見団子? 初めて聞いた
花見団子と月見団子を合体した感じかな
春と秋のコラボレーションだね
それじゃあまず桜月見団子とー…
他にも魅力的なメニューがいっぱいあって悩むなぁ
よし、全種類くださーい

たくさんのお饅頭とお団子を抱えて座れる場所へ
桜月見団子を早速ぱくり
もちもちで優しい味わいでとっても美味しい
あとでおかわり買いに行こうっと

見張りをしているであろう山本親分に会いに行って
おひとつどうぞと差し入れしよう


乱獅子・梓
【不死蝶】
カタストロフの幼生って久々に聞いたぞ…
まだ完全に居なくなったわけじゃないんだなアレ
一応世界の危機なわけだが、相変わらず全然そんな雰囲気しないな…
綾もすっかりお祭りモードだし

綾、そんなに悩まなくてもサクッと直感で決めれば…
全種類だと!?
お前、そんなに注文して財布は…アッ、ニコニコこっち見てやがる
こいつ、最初から俺に奢らせる気満々だったな…!
あとで覚えてろよと思いながら支払うのだった

大量の饅頭と団子に横に、買ってきた酒もドンと置く
酒でも飲まないとやってられないってやつだ
団子も酒も美味くて、綾に奢らされた不満も和らいでいく

おー、山本親分も一杯どうだ?
流石に仕事中に酔っ払うのは厳禁か?



 夜空に浮かぶ月は二つに割れて、白いすすきの穂が揺れる野に桜の花びらが舞い落ちる。
 季節もちぐはぐな奇妙で幻想的な光景に、乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f258510)は瞳を瞬いた。
「カタストロフの幼生って久々に聞いたぞ……まだ完全に居なくなったわけじゃないんだなアレ」
「うーん、そうみたいだね」
「一応世界の危機なわけだが、相変わらず全然そんな雰囲気しないな……」
 提灯の明かりが灯った屋台通りは妖怪達で賑わう。
 あちこちから聞こえる酒盛りの声と、美味しそうな食べ物の匂い。
 客を呼び込む声は元気よく張り上げられて、文字通りのお祭り騒ぎだ。 
「お花見や夏祭りシーズンでもないのに、お祭りに行けるなんて嬉しいなぁ」
 楽しげな祭りの様子に灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)は心躍らせているようだった。
 口元に笑みを浮かべながら、きょろきょろと辺りを見回している。
「せっかくだから浴衣に着替えてくれば良かったな」
「すっかりお祭りモードだなお前」
「だって月をもとに戻すためにも楽しまないと、でしょ?」
「それはそうだが……」
「わあ、あの屋台面白そう」
「あっ、待て、はぐれるなよ」
 ウキウキとした足取りで歩いて行く綾の後を梓は慌てて追いかけた。
 焼きそば、たこ焼き、かき氷など定番のものから、見たことのない珍しい物まで様々な屋台が立っている。
 中でも綾の目に止まったのは、饅頭と団子を売る和菓子の屋台だ。
「桜月見団子? 初めて聞いた」
 花見団子と月見団子を合体した感じかな、と考えながら並んだ和菓子を覗き込む。
 桜色の丸い団子を串に刺したものがそれらしい、他にも月や桜にちなんだ和菓子が用意されているようだ。
「春と秋のコラボレーションだね。魅力的なメニューがいっぱいあって悩むなぁ」
『どれもできたてホヤホヤ。団子は玉兎がぺったんぺったんと拵えたものでございます』と屋台の妖怪が言う。
「そうなの?」
 きょとんとする綾に妖怪は、くすりと笑ってみせた。悪戯っぽく輝く瞳に綾もつられて笑った。
「綾、そんなに悩まなくてもサクッと直感で決めれば……」
「よし、全種類くださーい」
「全種類だと!?」
 ちょっと待て! と梓が止める間もなく。
 『毎度ありぃ!』威勢の良い返事と共に手際よく商品が袋に詰められていく。
「お前、そんなに注文して財布は……アッ」
 視線を向ければニコニコした綾の顔があった。つまり、そういうことだ。
(こいつ、最初から俺に奢らせる気満々だったな……!)
 さすが理解が早い。もはや以心伝心である。
(あとで覚えてろよ)
 そう思いながらも声には出さず、財布を取り出す優しい梓。
 大量の団子と饅頭の包みを抱えて綾はホクホクしていた。

「酒でも飲まないとやってられないってやつだ」
 買ってきた酒瓶を抱えて、恨み言のように呟く。
 こうなればとことん酔う! ……とまでいかずとも、少しぐらい羽目を外しても許されるに違いない。
 買い込んだ菓子や酒を落ち着いた場所でじっくり楽しもうと二人は場所を移動した。
 すすきに囲まれた道を辿れば、月見のために設けられた席があるようだった。
「ん? あそこにいるのって……」
 綾が見覚えのある姿に目を留めて呟く。
 縁台に腰掛けた猫又の少女――山本五郎左衛門。その傍には金色の猫又も居る。
 あの金色の猫は、どうやら綿飴売りの妖怪らしい。
 しょんぼりと『おもてなしがしたいにゃあ』とぼやくのを、山本親分がなだめている。
『まあまあ、月が戻るまで待つにゃ』
 そう言って猫じゃらしを振り、金色の猫又をあやす姿は子供のお守りをする保護者のようだった。
 二人が近づくと、向こうもこちらに気がついて顔を上げる。
『おや、猟兵さんにゃ』
「おー、山本親分も一杯どうだ?」
「ごくろうさま。差し入れ持ってきたよー」
『これはかたじけない』
 山本親分は嬉しそうな表情を浮かべて、近くの席に座るよう促す。
 せっかくだから一緒に桜と月を眺めるのもいいだろう。
 たくさん買った饅頭と団子を周りに広げて、梓と綾も向かいの縁台に腰掛けた。
「桜月見団子とっても美味しい、もちもちで優しい味がする。饅頭の方は……あっ、桜餡だ」
 早速ぱくりと団子と饅頭を食べ、綾は人心地つく。
「あとでおかわり買いに行こうっと」
「まだ食べるのか……って思ったが、確かに美味いなこの団子」
 一升瓶をドンッと横に置き、梓も団子を一つ頬張り。
 (おもてなし衝動により)金色の猫又がお酌をしたがったので、酒を注いでもらって杯を傾ける。スッキリした味わいは、和菓子の甘さにも合う飲み口だ。甘味と酒を楽しむうちに、梓の不満も和らいでいく。
「山本親分は、流石に仕事中に酔っ払うのは厳禁か?」
『お気遣いありがとですにゃ。それでは一杯だけ頂きますにゃあ』

 朗らかに酒が酌み交わされ、並んだ甘味に舌鼓をうつ。
 月を見上げて、桜の花びらを愛で、楽しいひと時が過ぎていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『金秘華猫』

POW   :    にゃーんにゃん♪
攻撃が命中した対象に【徐々に体が猫化する呪詛】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【金秘華猫に好意を寄せてしまう呪詛】による追加攻撃を与え続ける。
SPD   :    月を食らう猫
戦闘中に食べた【月の光】の量と質に応じて【更に妖艶な姿になり、一時的に無敵になって】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
WIZ   :    化け猫の悪戯
【面をかぶることで、周囲の猟兵や妖怪の姿】に変身し、武器「【不意打ちの爪や牙】」の威力増強と、【バレた時は猫の逃げ足】によるレベル×5km/hの飛翔能力を得る。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はナミル・タグイールです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 祭りが盛り上がり、なにもかも上手くいった夜空には元通り、まあるくなった月が輝いている。
「皆さんのおかげで月が元通りになりましたにゃ! ありがとうございますにゃ!」
 嬉しそうに綿飴売りの金秘華猫が屋台の前であなたを手招く。
 ふわふわと甘い香りが漂って、おおきな綿菓子がつくりだされていくのが見えるだろう。
「さあさあ、どうぞいーっぱい食べてくださいにゃー!」

 月夜に浮かぶ雲、と喩えられたように。
 それは光を帯びた、不思議な綿飴。
 一口食べれば、甘く溶ける舌触りに、体も軽くなるという。
 月光を集めて作ったというのは、本当だろうか。
 一つ確かなのは。
 この『金秘華猫』は、月の光を食べて化け猫になった妖怪だということ。

 ところで、どうやらこの店主、悪戯好きな面もあるのだそうで。
 綿飴を食べた者は、時折『猫化してしまう』のだそうな。
 それは店主の持つユーベルコードが関係しているのかもしれない。
 戦うわけではないから、無害ないたずら程度の効果のようだが。

 耳や尻尾が生えたり、にゃあにゃあと鳴いてしまったり。してしまうかもしれない。
 なにしろ妖怪の屋台だから。
 ちょっと化かされた、そんな事もあるだろう。

●この章のプレイングボーナス
 屋台グルメを食べまくる(戦わずともダメージを与えられます)。
サティ・フェーニエンス
綿菓子という甘味、食べて、救いとなる…?
そんな楽園が……?

ありました
い、いえ、決して食べたかったから来たわけでは
猟兵として、妖怪さんを救う為です

わ、店主さんの手つき、とても鮮やかです
綿菓子、実物を見たのは初めてで
(シュルシュルリと糸を紡ぐようにして最後は雲になる様子を、真顔の中で瞳輝かせて凝視)

店主さん、僕にも御一つ。ありがとうございます
…ふぁっ…(一口食べてその感触にすこぶる感動
(以降黙々と食し、勧められればいくらでもおかわり。耳と尻尾が生えても気付かない程夢中)

※誰が見ているか分からない為、子供っぽさはひた隠す日々の隠れ甘味好き。
 性格は老成気味だが甘味の前では外見年齢相応な態度が顔を出す



 大きくて真ん丸なお月様が輝く夜。
 カクリヨのすすき野に現れた金平糖売りがせっせと金平糖を作っている。
 にゃんにゃん。と機嫌のいい鼻歌を歌いながら、金色の猫又はお客をもてなせる嬉しさに胸を弾ませていた。
 平和にも見える光景だが、実はこのままこれを放っておくと世界が滅んでしまうかもしれないのである。
「……ええ?」
 事態を知ったサティ・フェーニエンス(知の海に溺れる迷走っコ・f30798)は思わず瞳を瞬いた。
 なんとですね。骸魂と合体しオブリビオンとなってしまった屋台の店主を救出するためには、彼女の作る屋台料理をたくさん食べてあげなくてはならない訳なんですよ。
 という事はつまり。と小さく呟いた声には仄かに期待の響きがふくまれた。
「綿菓子という甘味を、食べて、救いとなる……? そんな楽園が……?」

 ありました。

 それがこちらです。とばかりに導かれたサティは、件の屋台へとやって来たのだった。
 金平糖を作る機械からなにか甘い香りが漂い、涼しい夜風に乗って食欲を刺激する。
(い、いえ、決して綿飴を食べたかったから来たわけでは……そう、これはあくまで猟兵として、妖怪さんを救う為です)
 心の中で自分に言い聞かせると、サティは表情を引き締めて、幼い子供のようにはしゃがないよう律した。
 古書のヤドリガミであるサティはこの世に生まれて百年以上を経た身……であると同時に幼い少年の姿をしていた。見た目で子供扱いされやすい事も多く、その事に理解を示しつつも、自分の振る舞いは常に大人らしくいるようにと心がけているのである。
『いらっしゃいませですにゃあ』
 屋台店主の金秘華猫が、サティに気がついてニコニコと笑いかけてくる。
「こんばんは」落ち着いた声で挨拶をしながら、サティは控えめな仕草で視線を向けて綿飴づくりを眺めた。
 大きな鍋のような装置の中心にある吹き出し口へ、金秘華猫が長くて細い棒を近づけて、くるくると回転させた。すると棒に細糸のような飴が絡まって、ふんわりと大きくなっていく。
「わ、店主さんの手つき、とても鮮やかです」
 シュルシュルリと糸を紡いでいるようだ。繊細で丁寧な手付きはとても器用で、思わず見入ってしまう。サティは初めて見る綿飴づくりの光景に、真顔のまま澄んだ青色の瞳を輝かせた。
『にゃふふふん』と金秘華猫はサティの様子に気がついて、嬉しそうに尻尾をくねらせた。
『お客さん、綿飴はお好きですかにゃ?』
「いえ、知識としては知っていたのですが、実物を見るのも食べるのも今夜が初めてです」
『にゃんと! それは綿飴売りとして、張り切ってしまいますにゃ!』
 金秘華猫は意気込んで、またシュルリと糸を紡ぐような動作を続けた。もくもくと雲のように膨らんでいく綿飴は、月光にも似た金色の輝きを纏っている。
「金色の綿飴……きれいですね」
『ぴかぴかのお月様がないと、この綿飴はできないのですにゃあ』
「そうなんですね」
 不思議な話ではあったけれど、ここが妖怪の世界ならば、そんなこともあるのだろう。
 サティは表情を少しゆるめて微笑んだ。
 ふわふわとした丸い綿飴は、とても美味しそうだ。
「店主さん、僕にも御一つ」
『はいですにゃ』
 金秘華猫は完成した綿飴の出来栄えを満足そうに確かめてから、サティの手に綿飴を渡した。
「ありがとうございます」
 見た目の大きさに反して、重さはなく、とても軽い。
 触れたら消えてしまいそうな綿飴を、サティはそうっと口へ運んだ。
「……ふぁっ……」
 舌に触れた瞬間、優しい甘みが広がって、思わず小声が出てしまう。
 しゅるりと溶けるような柔らかさ、初めて知る不思議な口当たり。
 黙々と夢中で綿飴を食べるサティの顔にあどけない笑みが広がっていく。普段は隠している甘味好きが溢れ出して、感動しているのが見ている者にも伝わってくるようだった。
 綿飴を食べる内に生えた猫の耳と尻尾にも気づかないほど、サティは甘味を心ゆくまで楽しむ。
 金秘華猫も幸せそうにその様子を見て、たくさんおかわりを勧めるだろう。

 にゃあ。と返事をするように鳴いたのが誰だったのか。
 それはきっと月だけが知れば良いこと。

大成功 🔵​🔵​🔵​

斑星・夜
メルちゃんと!(f29929)

わー!綺麗でふわっふわしてて、この綿飴かわいいねぇ
それではさっそく一口食べてみようっと!

「これ妹に食べさせてあげたいなぁ」
「うん、真昼って言うんだよ~。あ、写真見る?」

と言いながら『EPワイズマンズユニット『ねむいのちゃん』』に保存してある、妹の写真をメルちゃんに見せます
(猫耳型ヘッドホンをつけた中学生の妹)

「猫耳?あっメルちゃんも生えてるにゃ!?……にゃ?」
自分の耳を触ってみる
わあ、ふわふわする!

「あっ写真!うん、撮ろう撮ろう!」
メルちゃんの声に合わせてポーズして『ねむいのちゃん』で写真を一枚
「そっか、ふふ。ありがとうメルちゃん。嬉しいな、きっと真昼も喜ぶよ!」


メルメッテ・アインクラング
斑星様(f31041)と

光る綿飴なんて初めて。口の中でも甘く煌めくかのような美味しさです

「妹。斑星様のご家族の方でございますね?」
お写真を見せて頂きました。髪や目の色が斑星様似で、頭部に装着された猫耳型ヘッドホンが特徴的。猫がお好きなのでしょうか?
「まあ。どことなく面影が」
素敵な物を共有したい方がすぐに思い浮かぶ、斑星様のその精神も素敵だと思……?
「斑星様に、その、猫の御耳が……」わ、私にも?生えていま……した!

「折角ですのでこのまま再びお写真を撮りましょう!」はい、ポーズ!
「急に申し訳ありません。ただ、妹さんに今の御姿をお見せしたらきっと喜ばれるのではないかと」
ぜひ、お土産話にして下さいませ



 元に戻った満月の下を、二人は楽しげに肩を並べてそぞろ歩いた。
 桜が消えても夜風に揺れるすすき野原には、無数の提灯やらランプやらが飾られていて、祭りの賑わいに華を添えていた。
 わー! と朗らかな歓声をあげて、斑星・夜(星灯・f31041)は手に持った綿飴を眺めた。
 屋台で渡された夜の綿飴はサイズが大きめで、顔が隠れるぐらいほどのボリュームがある。
「綺麗でふわっふわしてて、この綿飴かわいいねぇ」
 金色の月光を浴びたように輝く特製の綿飴は、まるで小さな雲のようだった。
「光る綿飴なんて初めてです」
 メルメッテ・アインクラング(Erstelltes Herz・f29929)も珍しそうに自分の綿飴を見つめている。
 満月じゃないと作れない、と妖怪の店主が言うぐらいだから、なにか不思議な作り方がされているのだろうか。
「それではさっそく」
「ええ、いただきます」
 夜とメルメッテは同時に綿飴を口へ入れた。
「わあ」
「これは……」
 柔らかく溶けて口の中で広がる甘さは、蜜のようでもあり、しかし初めて口にするような味わいがする。
 とても綺麗なものを飲み込むような、そんな気持ちのいい心地が滑り込んでくるようだった。
「甘く煌めくかのような美味しさです」
 目を閉じて味わった後、メルメッテは滑らかな声でそう言った。
 うん。と、夜も同意するように頷く。そしてどこか物思いに耽るような表情になった。
 また一口を食べてから、ぽつりと呟く。
「これ妹に食べさせてあげたいなぁ」
 その言葉にメルメッテは首を傾げた。
「妹。斑星様のご家族の方でございますね?」
「うん、真昼って言うんだよ~。あ、写真見る?」
 へにゃ、と緩い笑顔を浮かべて、EPワイズマンズユニットを取り出した。
 夜がねむいのちゃんに呼びかけるとすぐに保存された写真が表示される。
 何時撮ったものだろうか、画面の中で猫耳型のヘッドホンを付けた少女が、こちらに向かって微笑んでいた。
「まあ。どことなく面影が」
 メルメッテは画面に表示された写真を見て呟いた。
 中学生なのだという彼女は、髪や目の色が夜と似ていた。頭部に装着した猫耳型が特徴的だけれど、猫がお好きなのでしょうか? そんな印象を受けて、可愛らしいと思う。
「斑星様は妹さんの事を大事に思っていらっしゃるのですね」
 美味しいものを分け合って食べたいと思えるような関係であるのだから。
「素敵だと思った物を共有したい、そんな方がすぐに思い浮かぶ。斑星様のその精神も素敵だと思……?」
 画面から顔を上げた途端、言葉が止まる。メルメッテは驚いた表情で夜を凝視した。
 夜の頭から、柔らかな毛に覆われた猫耳が生えている。視線をゆっくり移すと、背後からは長く伸びた猫の尻尾が見えた。
「え? どうしたのメルちゃん?」
 メルメッテの様子に夜が不思議そうに首を傾げると、一緒に猫耳もぴょんっと跳ねる。
 大きな瞳をゆっくり瞬いて、メルメッテは言葉を紡いだ。
「斑星様に、その、猫の御耳が……」
「……猫耳? あっメルちゃんも生えてるにゃ!? ……にゃ?」
「わ、私にも? 生えていま……――した!」
 それぞれ自分の頭をさわって確認してみると、確かに猫耳がある。
「わあ、ふわふわする!」ちょっと嬉しそうに夜が言った。
「な……何故? あ、この綿飴のせいでしょうか?」
「あはは! こんなことってあるんだね」
 さすが妖怪のつくった綿飴だなぁ、なんて夜はのんびり笑う。
 その姿を見て、メルメッテは思いついたように、するりとした仕草で素早く夜の隣に立った。
「斑星様、折角ですのでこのまま再びお写真を撮りましょう!」
「あっ写真! うん、撮ろう撮ろう!」
「はい、ポーズ!」
 メルメッテの声に合わせて二人がポーズをとると、ねむいのちゃんがカシャリと画像を保存する。
 猫耳と尻尾を生やした二人の姿はとても可愛いものだった。
「急に申し訳ありません」
 撮った写真を確認して、メルメッテは言った。
「ただ、妹さんに今の御姿をお見せしたらきっと喜ばれるのではないかと」
 きっと猫がお好きな御方なのだろう。と思ったものですから。
 メルメッテの気遣いや思いを知って、夜はあたたかい笑みを浮かべた。
「そっか、ふふ。ありがとうメルちゃん。嬉しいな、きっと真昼も喜ぶよ!」
「ぜひ、お土産話にして下さいませ」
「そうするよ」
 二人はしばらく顔を見合わせて微笑み合うと、また歩き出した。
 月光を浴びながら歩くその背中を提灯の明かりが照らすと、二匹の大きな猫のような影が、すすき野に降りて、仲良く楽しげに耳や尻尾を揺らすのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

灰神楽・綾
【不死蝶】
わ、すごい、綿飴が光ってるよ
これは映えるねーとスマホ取り出しカシャカシャ撮影
骸魂が去っていったら、もうこの光る綿飴は作れなくなるのかな?
それもなんだか勿体ない気がする

写真撮って満足したら、いただきまーす
とろけるような柔らかな口触りでとっても美味しい
普通の綿飴って甘さが強いから沢山食べにくいんだけど
不思議とこの綿飴はいくらでも食べられそうな気がする
あれ?梓は食べないの?

わぁ、この猫、焔と零なの?
これはこれで可愛いね~
今のうちにもふもふ感を堪能しておこうっと
撫でたり抱っこしたりして可愛がる

ん?どうしたの梓?
※自分に猫耳と尻尾が生えたことに気付いていない
ちょっ、いたたっ(猫耳引っ張られ


乱獅子・梓
【不死蝶】
確かに、祭りの名物にでも出来そうな綿飴だな

いや……俺はあとで食べよう
よく分からないが、なんとなーく嫌な予感がする
まずは綾が食べる様子を眺める

ん?お前達も食べてみるか?
目をキラキラ輝かせている焔と零に綿飴を差し出せば
元気よくむしゃむしゃとかぶりついた
はは、そんなに勢い良く食うと顔が砂糖でベタベタになるぞ

…んん!?
ふと気付いたら、そこに居たのは二匹の猫
もしかして、焔と零か!?
軽くパニックになりかけたが、言われてみれば確かに可愛い
もふもふな焔と零も良いな…
すぐに順応して愛でたり写真を撮ったりしまくる

…んん!?(二回目
綾にも猫耳と尻尾がついてる!?
本物なのだろうかと思わず猫耳をギュッ



 煌々と輝く満月の下、祭りが続くすすき野はまだまだ賑やかだった。
『お客さんがいっぱいで嬉しいですにゃあ!』
 張り切る金秘華猫が装置を使って綿飴を作りだし、ふわふわの雲のような大きな綿飴が出来上がる。満月がないと作れないという不思議な綿飴は、月の光を受けて金色に輝いていた。
「わ、すごい、綿飴が光ってるよ」
「へえ……確かに、祭りの名物にでも出来そうな綿飴だな」
 二人が感心すると、金秘華猫は嬉しそうに綿飴を手渡した。尻尾を揺らすその姿はどこか誇らしげだった。

 屋台を後にして、すすき野をゆっくり歩きながら。これは映えるねー、と灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)は綿飴にスマホを向けて撮影し始める。その横で乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)も綿飴をしげしげと眺めた。何かを確かめるように丹念に見つめ、首を傾げる。
「……骸魂が去っていったら、もうこの光る綿飴は作れなくなるのかな?」
「まあ、そうかもしれないな」
「それもなんだか勿体ない気がする」
 一夜限りのものなら、なおさら綺麗な写真を残してあげたい。なんて思いが過る。
 何枚か撮ってやがて満足げに頷くと、綾は「いただきまーす」と綿飴を口に含んだ。とろけるような甘さが口の中に広がる。やわらかな綿菓子独特の食感も楽しい。舌の上で溶けていく綿飴を味わいながら、綾は幸せそうに微笑んだ。
「うん、とっても美味しい」
「よかったな」
 そう言いつつ、梓は綿飴を食べることを躊躇していた。
 なぜだろう。なんとなーく嫌な予感がするのだ。
「あれ? 梓は食べないの?」
「うん、いや……俺はあとで食べよう」
 言葉を濁しつつ、そっと綾の様子を眺める。そんな彼の視線に気づいているのかいないのか、綾はもう一口ぱくりと綿飴を食べていた。いつもながら美味そうに食う奴……しみじみと思う。
「普通の綿飴って甘さが強いから沢山食べにくいんだけど、この綿飴は不思議と食べられる気がする。月の光ってこんな味なのかな」
 だったら面白いよね。と綾は笑う。
 ここまで聞けばどんな味か気になってくる梓だったが、それ以上に興味をもったものが居たようだ。
 『キュー?』『ガウウ』と二匹の仔竜が声を上げた。(なにそれ? おいしいもの?)そう尋ねるようにキラキラしたつぶらな瞳が梓と綿飴を交互に行き来する。
「ん? お前達も食べてみるか?」
 『キュ!』『ガウ』嬉しそうに答える焔と零に綿飴を差し出せば、飛びつくように元気よくむしゃむしゃとかぶりつく。大きな綿飴を楽しむ二匹はまるで雲と戯れているような様子だった。
「はは、そんなに勢い良く食うと顔が砂糖でベタベタになるぞ」
 微笑ましく見守る梓が空いた方の手で、仔竜を落ち着かせようと撫でた。しかしいつもの滑々とした鱗の手触りではなく、ふわっ……とやわらかい感触がする。
「……んん!?」
 なんということでしょう。
 そこにいたのは赤い仔猫と青い仔猫。見間違いかと頭を振ったが、何度見ても仔猫がいる。
「もしかして、焔と零か!?」
 『キュニャニャ』『ガニャーウ』鳴き声まで猫だ。
 これはさっき飲んだ酒のせいだろうか。いやでもそこまで酔ってないはずだ。パニックになる綾だったが、そんな様子を気にする事なく仔猫が甘えてくる。喉をゴロゴロ鳴らし、はやく撫でろと言わんばかりに頬を擦り付けたりしてくるのだ。
「わぁ、この猫、焔と零なの?」
 仔竜の変化に気がついた梓も、その様子を覗き込んだ。
 指を伸ばすと、仔猫は鼻先でチョンと触れてくる。猫のご挨拶をしてから、うりうりと喉下をくすぐってやり、もふもふした感触を楽しんでから、そのまま抱っこすると小さなお手々が腕をふみふみして、肉球の感触が伝わってきた。
「あはは、本当に猫だ。これはこれで可愛いね~」
 可愛い。言われてみれば確かに可愛い。
「もふもふな焔と零も良いな……」
 そうだ。二匹が可愛い事には変わりない。
 最初の驚きこそ大きかったが、すぐさま状況を受け入れ順応した梓は素早くスマホを取り出し、写真を取り始めた。このウキウキした感じが酒のせいか、それとも平常運転なのかは本人のみぞ知る。
「お、焔と零で毛の長さとかも違うんだな。よしよし、ここが好きか? そうかそうか」
 焔と零を撫で、肩に乗られ、頭に乗られ。
 もう一本手が欲しいと思うぐらい二匹を可愛いがり、夢中になっていた梓は不意に相棒の異変に気がついた。
 腕に焔を抱いた綾の頭に見慣れないものがある。
「……んん!?」
 二度見。再びのビフォーアフターに気づいた梓のサングラスが光る。
 あれは猫の耳……! 更には背中の後ろから長くて綺麗な尻尾が覗いていた。
「いつのまにか綾にも猫耳と尻尾がついてる!?」
 あまりにも自然に生えていたそれは、綾によく似合っていた。
 のほほんとした様子で仔猫とじゃれ合う姿はまるで大きな黒猫のようだ。
「ん? どうしたの梓?」
「本物なのかこれ」
「ちょっ、いたたっ……」
 梓が思わずギュッと掴んでしまった綾の猫耳は、とてもふわふわしていた。

 さて。
 梓がこのあと金色綿飴を食べたのかどうか。
 それは、赤と青と黒の猫だけが知るのだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​


●おしまい
 満月に照らされたすすき野は祭りの余韻を残して静まり返る。
 にゃあ。と猫の声がした。
 楽しげに、嬉しげに、金色の猫が月に導かれるように去っていく。

最終結果:成功

完成日:2022年05月19日


挿絵イラスト