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九十九の怪はカラクリ天女

#カクリヨファンタズム #戦後

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#戦後


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●怨み募って天女と化す
 朱い鳥居の向こう側は神々の坐す処とされている。その神域には小さな社が一つあり、想いを胸に祈りを捧げると、願いが届けられ叶う時が訪れると言われている。それは往々にして主観が混ざるため真偽のほどは不明だが、信心深い妖怪達は御利益にあやかろうと度々訪れているようだ。
 今日は行き交う者達の中に、蝶を舞わせた女性の姿があった。幽世蝶、世界の綻びを感じ取る存在だ。
 彼女は社の前に立つと、両手を組んで胸元に当て、俯き気味に目を閉じて祈る。
(どうか……どうか、我らが怨みが晴れますように……)
 強く祈り、念じる。叶えたい願いを天に捧げ、彼女は再び目を開けた。振り向けば何も知らない妖怪達がいる。彼らは、彼女の成り立ちを考えれば凡そ無関係の者達。しかし殺さねばならない。彼女の中に積もった怨みを彼女自身、もう抑えきれないのだ。
「この怨み……今こそ!」
 果たして晴らすべき時なのか。彼女はオブリビオンの本性を現して、無辜の妖怪達に襲い掛かる。
 幽世蝶の存在は、世界からの救難信号だった。

●カクリヨファンタズム・13thラウンド
「道具は使い続ければいずれ壊れる物ではありますが……できれば長く使っていたいですよね」
 ロザリア・ムーンドロップ(薔薇十字と月夜の雫・f00270)が持つ「ぐりもあのーと」は定期的に新調されている。それは単にノートを使い切ってしまったからであり、人で言えば寿命を全うしたような存在だろう。
 そして今日も真新しい装丁のノートに依頼の情報を書き込んで、グリモアベースに立っている。
「ですが、乱暴に捨てられ忘れられた物、というのがどうしても存在してしまいます。そこに溜まった怨みは幽世の世界へ流れ着いてしまうわけですが、そんな怨みと骸魂と妖怪が合わさって生じた『カラクリ天女』というオブリビオンが出現し、妖怪達を殺してしまう、という悪夢を見てしまいました」
 未来の光景を「依頼」として広く知らせているのはロザリアだが、今回はロザリアより先に世界の危機を感じ取った存在があった。
「カラクリ天女は妖怪を装って『とある神域』を訪れます。そこで祈りを捧げた後、妖怪達を殺戮する――彼女が妖怪を装う限り周りの妖怪達は全く気付かないため、被害が大きくなってしまうんです。しかし、彼女の周りには幽世蝶が舞っており、私達に危機を知らせてくれています。なので皆さんは幽世蝶を頼りに神域にてカラクリ天女を発見し、人気のない場所へ誘導した後、撃破してください。神域の周囲は桜の木々が並ぶ小高い丘のようになっていますので、その辺りに誘い出すのが良さそうな気がしますね」
 その際は不審がられないように、猟兵達も「想いを胸に祈りを捧げに来た者」の振りをしておくとよいだろう。また、この時期は花見の季節だが、神域を訪れる妖怪達は信心深いために周辺の桜の杜へは入ろうとしない。しかしカラクリ天女は信心深いわけではなく「妖怪が集まりやすい」から神域を訪れているのであって、猟兵達が誘い出せば桜の杜にも足を踏み入れるようだ。
「この時期は何かと『桜』に纏わる事件が多いような気がしますね。こういう事件も解決していくことによって平和への道が繋がりますので、頑張っていきましょう!」


沙雪海都
 沙雪海都(さゆきかいと)です。
 とにかく桜を推していきますが今回はメインではないですか。

●フラグメント詳細
 第1章:日常『櫻禍刻ノ神域』
 神社っぽいけど神社じゃないような、なんか不思議な「神域」と呼ばれる場所です。
 祈りを捧げると「願いが届けられ叶う時が訪れる」らしいです。なんというか「そう信じて頑張りなさい」みたいなイメージなのですが妖怪達は熱心に祈っています。
 件のカラクリ天女も祈りを捧げに来ますので、彼女が事を起こす前に(祈り終わったタイミングはギリギリセーフです。もうちょっと待つとヤバイですかね)接触して人気の無い場所に誘い出しましょう。
 カラクリ天女が何処にいるかは幽世蝶を探せばすぐにわかると思います。

 周りには桜の杜がありますよーいいところですね。人気も無さそうですし。

 第2章:ボス戦『カラクリ天女』
 連れ出したカラクリ天女もいずれそれが猟兵達の罠であることに気付きます。
 なので倒しましょう。
 ちなみに桜の杜には妖怪は来ません。信心深いので。カラクリ天女は信心深くないので大丈夫です。桜の杜便利ですね。
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第1章 日常 『櫻禍刻ノ神域』

POW   :    焦がれるような強い想いを抱く

SPD   :    楽しく嬉しい想いを抱く

WIZ   :    優しくあたたかな想いを抱く

イラスト:朝梟

👑5
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ニクロム・チタノ
物を粗末にするのは確かに悪いことだけど流石にそれの八つ当たりで襲われたら妖怪達もたまったものじゃないね・・・
ボクはそもそも捨てるほど物を持っていないけど
さてあれが幽世蝶だね、あれの後を追えば・・・見つけたよあの人が天女だね
ボクがカラクリ天女の気を引くから姉妹達はさりげなく妖怪と天女の間に入って天女と妖怪達を引き剥がすんだ、後はボクがやるから
どうもこんにちは、今日は桜が綺麗ですね
そういえばあっちの桜の丘に捨てられた物を祀る社があるみたいですよ
物を粗末にするなんて許せないですね、一緒に捨てられた道具達の為にお祈りしませんか?
(よし、上手く引っ掛かったね?少し可哀想だけど仕方ないこれも世界の為だ)


サカマキ・ダブルナイン
【WIZ】
カラクリ天女か……ある意味仲間、じゃな。捨て置く訳にはいかぬのぅ。

天女に近づくには祈りを捧げに来た者のふりをすれば良いとのことじゃな。
わらわの場合、機械の真似事とはいえ神職。
祈りに来た者兼、ここの案内役として天女に接触するのも良いかもじゃ。

まずは幽世蝶を追いかけ、天女を見つけたら話しかけよう。
「熱心じゃな、よほど信心深いと見える……それとも、秘める願いの強さかのう?」
「ならばわらわがとっておきの場所に案内しよう。そこで祈れば、きっと願いは叶う。なに、後で他の妖怪も集まって来るじゃろう」
桜の社を多くの妖怪が集まる……つまり殺められる場所と偽れば、奴がついて来る可能性も上がるじゃろう。



●願いが叶うとはうますぎる話
 神域に集う妖怪達は、まさか自分達が信心深いが故に命を落とすなどとは思っていない。その時が刻一刻と近づいていることは神域に於いてニクロム・チタノ(反抗者・f32208)とサカマキ・ダブルナイン(ロボ巫女きつねのお通りじゃ!!!・f31088)の二名が知るところであるが。
「物を粗末にするのは確かに悪いことだけど……流石にそれの八つ当たりで襲われたら、妖怪達もたまったものじゃないね」
「じゃな……して、カラクリ天女とは、ある意味仲間じゃ。捨て置くわけにはいかぬのぅ」
 怨みに呑まれた妖怪の変わり果てた姿は己に通じるものがある。身を堕とす前に正さねば、とのサカマキの意志は強い。
 妖怪達は入れ替わり立ち替わりで神域を訪れていて、その波に紛れ込まれれば見つけ出すのは容易ではないが――ニクロム、サカマキ両名、カラクリ天女を見つけ出す術は心得ている。
「……あ。あれじゃないかな、幽世蝶ってやつ」
 ニクロムが見つけたのは蛍光塗料のように発光している蝶の群れだ。渦を巻くようにある妖怪の周囲を待っている。見分けがつきやすく、しかし当の本人が気付いていないのだから不思議で仕方ない。
「ならばあやつがカラクリ天女じゃな。策は伝えた通り……天女を桜の杜まで誘き出す。手筈通りにゆくぞよ」
「わかった。――姉妹達、おいで」
 ニクロムは一旦サカマキと別行動、神域内に「2966ナンバーズ」を召喚し妖怪達の中に散らしていく。彼女達は往来の邪魔にならぬよう注意を払い、さりげない動きで他の妖怪達に気取られることなくカラクリ天女との間を遮る。そうして自然と出来上がったサカマキとカラクリ天女の二人の空間。接触するにはこの上ない状況だ。
 カラクリ天女は凛として社と向き合い、力強く両手を組み合わせる。所作の一つ一つに祈りの強さが現れているようであり――。
「熱心じゃな、よほど信心深いと見える……それとも、秘める願いの強さかのう?」
「……あなたは?」
 祈りを捧げようとしていたカラクリ天女は不意に声を掛けられ尋ね返す。サカマキの風貌は妖怪に近しいものでありながら、カラクリ天女に覚えは無いという様子。
「神の御許には世話役の一人も必要じゃろうて。……ところで、おぬしにはどうしても叶えねばならぬ願いがある……違うかえ?」
「……その、通りです」
 図星のカラクリ天女はやや驚いた風がありつつも素直に答えた。会話を挟み、ニクロム登場のタイミングが近い。サカマキがニクロムの位置確認を兼ねてゆっくりと弧を描くように歩き出すと、カラクリ天女の視線がそれについてきた。サカマキに興味を示している証だ。
「ならばわらわがとっておきの場所に案内しよう。そこで祈れば、きっと願いは叶う。なに、後で他の妖怪も集まって来るじゃろう」
「そのような場所が……」
 サカマキの話は半信半疑だが魅力的にも映る。目的を果たすのに何一つ不自由がなく、より効率的であるとも思えてカラクリ天女は返事を保留していた。そこへ詰めの一押しにと。
「あぁ、あっちの桜の丘にある社のことですね? 何でも、捨てられた物が祀られているとか」
「ほぅ、よく知っておるのぅ。さてはおぬしもこの神域に相当通じておるな?」
 カラクリ天女の後ろから会話に入ってきたニクロムの援護射撃。サカマキも口裏合わせて応じる。するとカラクリ天女はしばし思案の後、覚悟を決めたように頷いて、
「……でしたら是非、そちらの社へ……ご案内頂けますか?」
 二人の話を信じて乗ってきた。ニクロムとサカマキは一瞬だけ視線を合わせて作戦の成功を確信したが、カラクリ天女を桜の杜まで導いて戦場を整えるまでが作戦、と努めて冷静に振舞う。
「よかろう、ついて参れ」
「運がいいですね。ボクも一緒にお祈りしますよ」
 サカマキの先導、ニクロムの付き添いでカラクリ天女は神域を離れ、桜の杜へと入っていく。
(よし、上手く引っ掛かった……。少し可哀想だけど、これも世界のためだから仕方ないよね……)
 騙して討ち取る――世界を救うための選択に違いなかったが、骸魂に呑まれた妖怪の身を思うとニクロムにはカラクリ天女が不憫で仕方なかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『カラクリ天女』

POW   :    我らが積年の怨みを
【棄てられた道具達の怨念 】【強力な妖力】【九十九神の力】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
SPD   :    さあ今こそ報復の時
戦闘用の、自身と同じ強さの【物ノ怪 】と【棄てられた道具達】を召喚する。ただし自身は戦えず、自身が傷を受けると解除。
WIZ   :    九十九神「瀬戸大将」
骸魂【瀬戸大将 】と合体し、一時的にオブリビオン化する。強力だが毎秒自身の【妖力】を消費し、無くなると眠る。

イラスト:ひろしお

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はククルス・ラピスラズリです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●うますぎる話の落とし穴
 花吹雪の舞う中を歩き続ける。社があるとの話であったが、件の社は一向に見えてくる気配無く、桜の杜が際限なく広がるばかり。代わり映えの無い景色では、後続の妖怪達はどうやって社に辿り着くのか――不信感は少しずつ募る。
 そうして疑念が確信に変わった頃にはもう遅い。最早何処とも分からぬ桜の杜の中に居て、同伴せしは――猟兵だ。
「……謀られた、ということですね?」
 カラクリ天女の声色は自らを納得させる向きもあり、カラクリ天女は即座に猟兵より距離を置き戦闘態勢を取るのだった。
ニクロム・チタノ
騙してごめんね、でもこのままじゃアナタは暴走して罪も無い妖怪達が迷惑するんだ
せめてボクがアナタを止めてあげるよ!
ボクの真の名紅明日香の名を以てチタノヤタテを降臨させる
蒼焔の盾を展開して敵の攻撃を防御するよ、強力な力だけど強い力には相応のリスクがあるハズ
守りを堅めて様子を見るよ
どうやら焦っているみたいだね、やっぱりその姿は消耗が激しいみたい
疲弊して攻撃が弱まってる、今だ八つの重力槍を展開、発射
全弾直撃して元の姿に戻ったところに反抗の妖刀で斬りかかるよ!
捨てられた道具達の魂よ、どうか安らかに



●安らぎの裏返し
 いくらオブリビオンが相手でも後ろめたい気持ちが無いわけではなかった。
「騙してごめんね、でもこのままじゃアナタは暴走して罪も無い妖怪達が迷惑するんだ」
「戯言を……! 我らが存在がまさしく罪の証だと何故気付かない! 最早聞く耳など持たぬのであれば――九十九神『瀬戸大将』よ、ここに!」
 ニクロムの釈明に耳を貸さぬ己を棚に上げ、新たなる骸魂を呑み込んだカラクリ天女が変じるは、皿を鎧に、茶碗を兜にして全身武装した瀬戸物の九十九神、瀬戸大将。刀は連結した湯飲み、足を踏み出せばがちゃがちゃと洗い場でひしめくような音がする。だが嵩張る外見に似合わずカラクリ天女は剛速球のように迫ってきた。
「ボクの名、紅明日香の名を以て!」
 ニクロムが叫び終わるのとカラクリ天女が湯飲み刀を振り上げるのはほぼ同時で、蒼焔の盾が展開されたのは湯飲み刀が空間を通過する寸前。がぃん、と凡そ瀬戸物らしからぬ鈍い金属音で蒼焔の盾と衝突した湯飲み刀は宙に弾かれ返っていったが、八つにて一つの大盾を成す蒼焔の盾もまた上ずる。
「小癪な!」
 紙一重の防御が芸にでも見えたのか、カラクリ天女は込み上げる怒りを燃料にして湯飲み刀をしならせ猛攻を仕掛けた。絵筆でぐじゃぐじゃと塗り潰すかのように乱雑で乱暴な斬撃に蒼焔の盾は何度も大きく振動し、その度にニクロムの背筋を寒気が襲う。
(耐えるんだ……チャンスは必ず……!)
 防戦一方のニクロム。意識的な立ち回りではあるものの、斬撃の圧にじりじりと後退させられる。蒼焔の盾を支える両腕には絶え間なく激震が走って感覚が麻痺し始めており、ついには。
「――ぅぐうっ!」
 袈裟の薙ぎ下ろしはハンマーのような重い一撃で、無理矢理な圧力を受けた両腕が悲鳴を上げた。蒼焔の盾は真っ二つに分裂してしまいこれ以上の受けは利かない状態。万事休す――かに見えた。
 だが落とされた盾の向こう側にあったカラクリ天女の表情は険しく、色も薄い。消耗の激しさは仕掛けた側も同様で、それは強大な力を得た代償でもあった。
 これを逃して次は無い。危機の中に垣間見た好機を掴んでニクロムは八槍を放つ。誘導ミサイルかの如く飛翔した槍は至近でもあってカラクリ天女は防御が間に合わず、瀬戸物の鎧を潰し割って四肢と胴体に突き刺さった。
「…………!!」
 砕かれ朽ちる。瀬戸大将の骸魂が分離して後方にバランスを崩していくカラクリ天女へ、ニクロムが握る一振りは力の伝わりが頼りなくも今放つことのできる最善の一閃。
「うあああぁぁぁ!!」
 魂の滾りで真一文字、駆け抜けて振り抜いた妖刀が捌く。腰の装具を斬り開かれて現れたカラクリ天女の断面に肉の質感は無く、ただ肌と同じ色が延々と続くだけ。
「ぐぅっ!? なんて、こと……!!」
 カラクリを晒す羽目になったカラクリ天女。憎悪を上塗りしたその面は、まるで般若のようであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

サカマキ・ダブルナイン
うむ、すまぬがその通りよ。おぬし、放っておけばあそこで暴れたじゃろう?

……道具は持ち主を選べぬ。
お主の受けた仕打ちはわからぬし、その怒りは正当かもしれぬ。
じゃが、ぶつける相手が違うじゃろう。

わらわもまた使命を帯びた道具……無辜の者の命を守る、というな。
その恨みはここで終わりじゃ。嫌だと言うなら、力ずくで押し通ってみせい!

……「炎熱狐」起動、感情プログラム停止。
敵対存在の増加を確認……分析終了、本体と同等の戦闘力と判断。

『99式未来予測』発動……演算開始。
敵対存在を撃破及び回避後、本体への攻撃可能ルートを算出。
「射管狐」、「狐雷球」への通電を開始。両武装による突破、及び本体への攻撃を実行します。



●道具の矜持
「謀られた……うむ、すまぬがその通りよ。おぬし、放っておけばあそこで暴れたじゃろう?」
「……く、初めから、掌の上の道化だったと……!」
 今更隠し立てもしない。サカマキの態度にカラクリ天女は僅かでも他者の言葉を信じようとしてしまった己を悔いた。目論見が割れているなら祈りを捧げる真似事などせず本懐を果たしていたものを――しかし後の祭りだ。
 戦う他に道は無し。その認識はサカマキも持ち合わせている。ただ、カラクリ天女が対話に耐え得る意志を持っているならば、サカマキには言わねばならぬことがある。
「……道具は持ち主を選べぬ」
 それは世の道理であり物の宿命。生まれながらに役を持つ道具としての生は誇らしくもあれば悲しくもある。淡々とした語り口は双方を知ってこその凪だった。
「おぬしの受けた仕打ちはわからぬし、その怒りは正当かもしれぬ。じゃが、ぶつける相手が違うじゃろう」
 サカマキには知る由も無く、怒りの善悪を量りはしない。だが、矛先が向けられるべきではない者達へ向いている、それだけは分かる。分かったからには立たねばならない。それがサカマキの持つ役であり果たすべき使命。そう在れと願った者がいた――存在理由はそれだけで足りている。
「わらわもまた使命を帯びた道具……無辜の者の命を守る、というな。おぬしの恨みはここで終わりじゃ。嫌だと言うなら、力ずくで押し通ってみせい!」
「いいでしょう――今こそ報復の時!」
 而して時は来る。力とは数、とカラクリ天女が召喚するのは、錆びた鉄屑や擦り切れた衣服、剥げた皮革に砕けた材木が一緒くたになって得体の知れなくなった山のような物の怪と、端が僅かに欠けただけの食器、底がほんの一部減った靴、一世代型遅れした家電製品といった、未だ現役を主張する道具達。怨みは根深く山は蠢き、道具達が飛来してくるのをサカマキは見つめるが、人格の介在しなくなった眼差しには憐憫も無ければ同情も無い。
「『炎熱狐』起動、感情プログラム停止。敵対存在の増加を確認……分析終了、本体と同等の戦闘力と判断。『99式未来予測』発動……演算開始」
 全ての事象はサカマキの中で数値に置き換えられており、物の怪と道具達は三次元座標の集合体でしかなくなっていた。その運動は数式によって導かれ、サカマキの目には演算の結果現れる座標領域――即ち時間を変数とする座標解が見えている。
 暗器の如き皿や器、靴の数々。直線的に飛んでくるそれらはサカマキを焦点としていた。一度でも受けようものならたちまち密度に圧し潰される。サカマキの選択は回避であり、直線には直線、物の怪目掛けての最短突破で飛来物を後方へ置き去りにする。
 テレビ、冷蔵庫、洗濯機等々、重量級の家電製品は砲弾の如き放物線で襲い掛かる。着弾の衝撃は計算尽くでも移動速度を上回られると判断したサカマキは腕力による対空攻撃を敢行。頭の高さから肉球の拳が斜めに打ち下ろされた。
 ごづん、と。双方強度が高いために衝突は重い。跳ね返った家電製品は宙に激しく回転しながらサカマキの進路より遠ざかっていく。テンポは不定だが右へ左へと打ち払って凌ぎ、ついに物の怪の山へと到達する。
 腕のように材木が山の中腹から突き出てきた。家屋を支える柱のように芯が太く、砕けて出来た棘の山脈は鋭い。掠めることすら許されないであろう刺突に対しサカマキは跳んだ。
 目指すは山越え。材木はサカマキの足下を僅かに遅く突き抜けて地面にずむと刺さる。サカマキはその上へ降り立つと速度を落とすことなく駆け上がり、物の怪の蠢く様を間近に見ながら再度跳躍。鉄屑の噴火を蹴り飛ばして、物の怪の背面に貼り付いた皮革の上を受け身で転がり着地した。
 物の怪はサカマキに追い縋るように衣服の縄を飛ばしてくる。足を狙ってのものであり刈り取る軌道は円弧を描いた。だが巨体故の鈍さに呪われサカマキの居た空虚を掬うに留まったことで、カラクリ天女はサカマキに対する一切の抵抗力を失った。
「『射管狐』、『狐雷球』への通電を開始――」
 雷を帯びた符が肉球の中に並ぶ。放てば直進する管狐の電磁弾。それを水平に薙ぎ払って発射しカラクリ天女が逃れる可能性を潰す。サカマキのように跳ねる曲芸も暇を与えない電磁弾の速度には間に合わず。
「――ぃゃああっ!!」
 カラクリ天女は地上にて雷に打たれ、管狐の歯形のような焦げ跡が全身に焼き付いたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ククルス・ラピスラズリ
あらあら喧騒に誘われてやって来たら面白いことしてるわね、私も交ぜて貰えるかしら?
そんなに怨念を発しなくても大丈夫よ、美しき歌を
ここは「捨てられた道具達」に説得して妖力を抑えてもらいましょう、まぁ幻覚だけどね🎵
こういう怨みで狂ってる子には搦め手で行くのが上策だと思うけど、さてさて?
うん、良い感じで狼狽してるみたいね怨念と妖力が不安定になっているみたい
さて今なら超圧縮空間に捕らえることが出来そうね
さあ後は緑雷で跡形無く消し飛ばしてあげるわね
せめて怨みは忘れて安らかに眠りなさい?


火土金水・明
「妖怪さん達をあなたに殺させる訳にはいきません。ここで邪魔をさせてもらいます。」「攻撃しつつ、少しでも味方のダメージを回復させていきましょうか。」
【SPD】で攻撃です。
攻撃は、【継続ダメージ】と【鎧無視攻撃】と【貫通攻撃】を付け【フェイント】を絡めた【巷に金色の雨が降るごとく】を【範囲攻撃】にして、『カラクリ天女』と召喚された者達を纏めて【2回攻撃】します。相手の攻撃には【残像】【オーラ防御】で、ダメージの軽減を試みます。
「(攻撃を回避したら)残念、それは残像です。」「私の役目は少しでもダメージを与えて次の方に繋げることです。」
アドリブや他の方との絡み等は、お任せします。



●積年の果てに永遠となれ
 火事場の一つでも潜り抜けてきたかのようにカラクリ天女の体は焼け焦げている。ざくりと水平に割れた胴体も宙ぶらりんで不安定。
 落ちぶれたものだ。そんな彼女に吉報が一つ、凶報が一つ。彼女を追いかけてきた者達が現れたのだ――ただし猟兵だが。
「あらあら、喧騒に誘われてやって来たら面白いことしてるわね、私も交ぜて貰えるかしら?」
 さも偶然であるかのように装って登場したククルス・ラピスラズリ(反抗を謳う者・f32432)。カラクリ天女との間に唯一無二の因果を持つククルスだが、彼女自身は気にするそぶりを全く見せずに戦場に立つ。
「妖怪さん達をあなたに殺させる訳にはいきません。ここで邪魔をさせてもらいます」
 火土金水・明(夜闇のウィザード・f01561)は時折、風にでも誘われたかのように戦場へ赴くことがある。自ら脇役に徹する献身的な姿勢は多くの戦場で他の猟兵達を支えており、決して輝いていないわけではない。
「邪魔立てなど……させて、なるものですか……! 我らが積年の怨み……思い知れ!!」
 カラクリ天女は天女の皮を捨てて九十九の鬼と化した。爆発的に高まった妖力を送り込まれて召喚された物の怪は天に聳え、動物を模した文鎮達は鉄砲玉のように飛んでくる。
「短気は――損気よっ♪」
 鉛色の流星、高速で向かってくる像が何の動物を模したものかもわからぬ中だがククルスは左右に体を振って跳ぶ。立体的な隙間を稲妻のように駆け抜けていき、するすると文鎮を躱しつつ声の調子を整えていた。ククルスの後ろにつく明は文鎮を認識してから回避するまでの猶予が短いが、残像を生じさせる足の捌きで本体の影は踏ませない。文鎮はいくつも明の体を突き抜けていて、穴が開く度に霧散する。
「ここまでの巨体なら、雨を避けることは叶わないでしょう。ここは金色の雨降る世界――」
 塞ぐことのない心だが、人知れず雨降ることもある。明の心の写し鏡となった世界にはスコールの如き金色の雨が降った。叩きつけ打ち据える。聳えた物の怪はまるで火の化身であるかのように身悶え拒絶反応を示す。
 いよいよ耐えられなくなった物の怪は丸太のような腕を伸ばして突撃してきた。接近していたククルス目掛けての大振りの拳はそれ一つで竜巻を起こしてしまいそうな程。
「~~~~♪」
 歌声は雨音の中に響いたか。竜巻の腕は突如進路を変えてククルスの頭上に逸れていく。物の怪は両腕となってククルスになお襲い掛かるが、それでも空を切り続け、まるで幻に囚われているようだった。
 物の怪が萎んでいく。そして唐突に消え去ったのは明がカラクリ天女を射程に捉えたから。金色の雨はカラクリ天女の根源に染みついてその存在を腐らせる。
「あとはご自由に」
「あら、じゃあ遠慮なく。金色の雨に緑雷のハーモニー、なんて素敵なの?」
 ククルスは両腕を広げて一身に金色の雨を浴びる。明が降らせる雨は仲間にとって癒しの力。ククルスは艶めくほどに金色を浴びた後、空を指し、カラクリ天女の待つ地へ落とす。
「ぃやあああああああ!!!」
 指先の動きに合わせてベリルの雷撃がカラクリ天女を直撃した。閃光の中で黒化した影から滲み出た骸魂はぼろぼろ崩れ落ちていき、指先ほどの欠片になってもまだ際限なく砕け散る。
「せめて怨みは忘れて安らかに眠りなさい?」
 カラクリ天女は忘却の彼方へ。ククルスに因果を断ち切られ、骸の海からも完全に忘れ去られるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年04月13日
宿敵 『カラクリ天女』 を撃破!


挿絵イラスト