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魔法の如き拳、その名は

#ヒーローズアース #戦後 #スナークゾーン #魔法使いの時代 #『神月円明』

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●魔法使いの時代
「――というお話だったのさ」
 巡礼の魔法使い『モーニア』はそう言って締めくくる。
 彼女は今はまだ多くはないユーベルコードの使い手であった。稲妻を操るユーベルコードを持ち、巡礼の旅に出ている。
 そんな彼女が何故、野営の焚き火を囲みながらはるか昔の、神々の時代に在りし伝説を語っているのかと言うと、少し事情があった。

 希少なユーベルコードを使う存在であったとしても、万能ではない。
 ともすれば、制御の難しい力でもって暴走の危険性だってあるのだ。その暴走に巻き込まぬために彼女は巡礼の旅に出たのだ。
 彼女は恐るべき武術を極めた『魔王』を打倒する旅に出ている。
『魔王』の名は『スターヴ』――『飢餓王』と呼ばれる存在は、己が屠り去った人間たちの死体を配下にして勢力を強めている。
「ああ、よかった。今回のも中々に。でも、それはひとつの出来事をいろんな視点で見たものなんだろ?」
 少年の声が焚き火の向こう側から聞こえる。
 巡礼の魔法使い『モーニア』が道中に出逢った少年。
 彼女が『スターヴ』配下の死体兵に囲まれていた時に、またたく間に徒手空拳でもって救ってくれた恩人である。

 礼をと思ったがあいにくと旅の道中である。何か差し出すものは持ち合わせていなかった。
 であれば、何か話をしてくれというものだから、神々の時代に在りし伝説を語って聞かせた所、これに興味を持ったのか識っている伝説を全て語ってくれとせがむように同行するようになったのだ。
 薄紅色の瞳が興味津々と輝いている。
「ああ、そのとおりだ。神話の時代、大地は不死の怪物が跋扈していた。これら全てを封じ込めた神々の戦いには、『スターヴ』のような元神もいる。あいにくと、『スターヴ』は『飢餓王』として、魔王として堕した存在であるけれど」
 強大な武術を極めた存在『スターヴ』。
 元は神であるが、いかなる理由からか地上に降り立ち、死を量産し続けている。

 これを『モーニア』は止めなければならない。だが、勝ち目はないだろう。それがはっきりと『モーニア』にはわかってしまっている。
 しかしながら、例え、それが死ぬとわかっている戦いであっても、人は時として立ち向かわねばならないのだ――。

●抒情詩
『スナークゾーン』は過去のヒーローズアース全て……地球丸ごとを再現した空間である。
 仮想空間であるが、現実を侵食しないとは限らない。
 猟書家たちが求めた超生物『スナーク』がそうであったように虚構から生まれ、現実を侵食する可能性だってあるのだ。
「はー、これが魔王城。なんともけったいな感じだな。正直に言って趣味が悪い」
 薄紅色の瞳をした少年が屍の積み上げられた城門を見上げて呟く。
 隣りにいる巡礼の魔法使い『モーニア』もまた同感だとうなずいていた。これは全て魔王である『スターヴ』が屠った人間たちの遺骸だ。
 どれほどの命を奪ったのかわからぬほどである。
「元とは言え、神のしたこととは思えないな……」

 腐臭が鼻を突き刺すようであり、吐き気を催す。
 だが、城門がガタガタと震え、蠢き始める。それは積み上げられた死骸が震えている証であった。
「――!」
『呪法骸操士ネウィとデッドボディバタリオン』。それは巡礼の魔法使い『モーニア』をこれまで散々に追い回し、付け狙ってきた敵だ。
 死体兵たちは何処からでも湧き上がる。
 呪法でもって死体を操り、組み換え、指揮する『ネウィ』と彼女によって生み出される『デッドボディバタリオン』たちは、またたく間に現れ『モーニア』たちを襲う。

 薄紅色の瞳の少年の拳が『デッドボディバタリオン』を打ち砕く。
「みんなやる気満々ってやつだなー。いやー、こういうのも吟遊詩人の歌に謳われることになるんだろうなー?」
「言っている場合か。それは私達がここから生き残って帰ったらの話だ!」
「それもそうだな。死んでしまっては歌を紡ぐ者の耳にも届かない、かー。なら、気張ろーぜー」
 あっけらかんと薄紅色の瞳の少年が笑う。
 徒手空拳ながら、恐るべき速さと重さ。そして鋭さを兼ね備えた拳と蹴撃、さらには投げ技まで駆使して戦う姿は、正しく『モーニア』の語る所に歌われる者の名そのものであった――。

●スナークゾーン
 グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)であった。
「お集まり頂きありがとうございます。今回の事件はヒーローズアース……オウガ・フォーミュラ『ミストレス・バンダースナッチ』の撃破によるものか、世界各地に謎のクライシスゾーン、通称『スナークゾーン』……此度は『魔法使いの時代』が舞台のようです」
 ナイアルテの語る言葉に猟兵たちは頷く。
『スナークゾーン』は『過去のヒーローズアース全て』を再現した超広大な空間であり、仮想世界でもある。
 だが、仮想世界であるからと放置はできない。
 オブリビオンの悪事が現実に如何なる影響を及ぼすかわからないからだ。

「神々の時代から人類が発祥してから近代までの間は、まだヒーローやヴィランの数も少ない時代であり、遍歴の騎士や魔法使い、あるいは邪悪な征服者として彼等は知られるが故に『魔法使いの時代』と呼ばれています」
 そんな時代に現れたオブリビオン『スターヴ』は元神であり、武術を極めた『魔王』として君臨している。
 その名が示す通り『飢餓』に苛まれ、常に守ろうとするものを鏖殺するかのように各地に魔の手を伸ばしているのだという。
 このままでは世界のすべての生命が鏖殺されてしまうだろう。
 だが、それを阻止するべく巡礼の魔法使い……後年に置いてはスピリットヒーローと呼ばれるようになる『モーニア』が『旅の仲間』と共に『スターヴ』に立ち向かおうとしているのだ。

「と言っても、彼女たちは二人組なのです。些か数で劣ると言ってもいいでしょう。巡礼の魔法使い『モーニア』さんは雷を操るユーベルコードを。もう一方の徒手空拳の少年は、武術でもって『スターヴ』の座す魔王城で戦いを繰り広げています」
 彼等と共にオブリビオンの大軍団を蹴散らし、魔王城の玉座に鎮座する『スターヴ』を打倒しなければならない。

「みなさんが『スターヴ』を打倒できれば『スナークゾーン』は消滅します……ですが、先立って解決された『神々の時代』の『スナークゾーン』から地続きであるのか、『スターヴ』は猟兵である皆さんにも執着を見せているようなのです」
『飢餓』の名を冠する元神。
 そのオブリビオンとなった存在が振るう力は強大である。
 だが、仮想が現実を喰い殺すことを許してはならない。

 猟兵達をナイアルテは頭を下げて見送る。
 そして、彼女は頭を上げて振り返る。
 その視線の先には雷光が走り、そして遠雷が響き渡っていた――。


海鶴
 マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
 今回はヒーローズアースにおいて発生した『スナークゾーン』に存在するオブリビオンたちの目論見を打破するシナリオになります。
 今回の『スナークゾーン』は『魔法使いの時代』です。

 スナークゾーンのシリーズとして各時代を巡っていくシナリオ群になります。
 過去シナリオは、シナリオタグ『神月円明』から参照できます。

 ※このシナリオは二章で構成されたシナリオになります。

●第一章
 集団戦です。
 巡礼の魔法使い『モーニア』と徒手空拳の少年が『魔王』でありオブリビオンでもある『スターヴ』の居城を目指しています。
 そんな彼等の前に立ちふさがり、魔王城までの道のりを阻むのが、『呪法骸操士ネウィとデッドボディバタリオン』です。
 膨大な数の死体兵たちが、彼女たちを襲っています。
『旅の仲間』として、みなさんも彼等と協力しながらオブリビオンの大軍団を蹴散らし、『スターヴ』の座す『魔王城』を目指しましょう。

●第二章
 ボス戦です。
 魔王城に突入すると、玉座に鎮座する『スターヴ』との戦いになります。
 元神である『スターヴ』はオブリビオンとなることによって、生前の記憶の中で最も鮮烈であった『神々の時代』における皆さんの戦い振りに執着しているようです。
 殆どの記憶が欠落し、強くなることだけを求めて護る者を殺し、貪ってきた狂える元神。
 その力は強大であり、強ければ強い者ほど力を発揮して襲いかかってくるでしょう。

 これを打倒し、『スナークゾーン』を消滅させましょう。

 それでは、ヒーローズアースにおける『神々の時代』を再現したスナークゾーンにおける皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
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第1章 集団戦 『呪法骸操士ネウィとデッドボディバタリオン』

POW   :    ネクロマンサーズ・カウンターアタック
全身を【呪詛の瘴気】で覆い、自身が敵から受けた【ゾンビ軍団の損害】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
SPD   :    デッド・ストリーム・アタック
【巨人型ゾンビ兵の】突進によって与えたダメージに応じ、対象を後退させる。【他のゾンビ兵達】の協力があれば威力が倍増する。
WIZ   :    サクリファイス・エスケープ
【雑兵ゾンビを捨て駒にして】対象の攻撃を予想し、回避する。

イラスト:つばき

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


『呪法骸操士ネウィとデッドボディバタリオン』たちが魔王城より進軍する。
 彼等は『スターヴ』が殺し、食い散らかした犠牲者たちである。あらゆる守護者達を喰らい、己の力としてきた元神『スターヴ』。
 元来在りし名はとうに摩耗し消え失せた。
 だが、一つだけ残っている記憶がある。
 それは『神々の時代』における戦いの記憶だ。
「鮮烈であった――」
 思い出すだけで震えが走る。
 地を砕き、海を割る。えぐられ、地形を変えるほどの戦いを繰り広げる猟兵たちの姿。
 あの鮮烈さは忘れようもないものである。

「あれほどの力を喰らえば、あれほどの護る者の血肉を喰らえば」
 己はさらなる高みに登ることができるだろう。
 だが、すでに『スターヴ』は忘れてしまっている。
 己が『何に敗れて死した』のかを。どうして己が過去の化身となったのかを忘れ去っている。
 本来であれば、忘れようもない敗北の味。
 けれど、それらは摩耗によって消えていった。今、『スターヴ』に残っているのは、あの鮮烈な力の発露。ユーベルコードの煌きが激突する『神々の時代』における戦いの記憶だけだ。

「あれが、あの力が手に入るのならば、他に何もいらない。世界がどうなったとしても構わない。必ずや喰らおう。奴らよりも――『強く』なるのだ」
 歌は響かずとも、『スターヴ』はあらゆる生命を貪り喰らう『飢餓』の権化となるであろう。
 それはこの『スナークゾーン』において放置すれば、現実世界にも必ずや悪影響を及ぼすに違いない。
 ならばこそ、猟兵たちは『スターヴ』を打倒さんとする巡礼の魔法使い『モーニア』と徒手空拳の少年と共に魔王城を目指し、迫りくる死骸の山の如き大軍団を打ち払わなければならない。

●そして歌は紡がれる
 死体兵である『呪法骸操士ネウィとデッドボディバタリオン』たちの数は尋常ではなかった。
 見渡す限り死体の山。
 それら全てが敵の尖兵となって迫ってくるのだ。
「私だけでは手が足りない……!『アズマ』! 此処は退かなければ……!」
 巡礼の魔法使い『モーニア』の言葉に徒手空拳の少年は薄紅色の瞳を輝かせながら、笑っていた。
「いいや、此処でひいてはアンタの戦いはまた一歩後退してしまうぞー。その一歩の後退がどれだけの生命を失わせることかわからないでもないだろうにー」
 少年はわかっていた。
 自分たちが退いた瞬間、この死体兵の軍勢は、これまで旅の道中で立ち寄ってきた村や街を襲うだろう。
 そうなっては、どうなるか。

「……ッ! わかっているとも!」
 その言葉に奮起する『モーニア』の放つ雷が轟音を轟かせ、死体兵たちを吹き飛ばす。
 雷鳴を聞いて徒手空拳の少年は笑った。
 何がおかしいのかと『モーニア』は憤慨しそうになる。けれど、その笑みの意味を彼女は知る。
 その雷鳴は、いつだって絶体絶命の状況を覆す兆しなのだと――。
魔法戦騎・ブレイジール
 ヒーローマスクに選ばれた、サイボーグのスーパーヒーロー×太陽のエアライダーなのだ!

「そこまでなのだ!」
「太陽の戦士、魔法戦騎ブレイジール!参上なのだ!」(ドーン!と背後で爆発)
 出来るだけ高所から現れて、ヒーローポーズしながらカッコよく名乗って登場なのだ!太陽のエアライダーはどれだけ高い所から飛び降りても平気なのだ!

 バトルになったら、拳や脚に燃え盛る太陽の炎を纏わせてパンチやキックで攻撃するのだ!
「ブレイジール……パァーンチッ!!」
 あとはおまかせするのだ!よろしくなのだ!



 ヒーローズアースにおける『スナークゾーン』は過去の地球そのものを再現した仮想世界である。
 仮想が現実を侵食することはない。
 けれど、猟兵たちは知っている。
 虚構から超生物『スナーク』の誕生を願った猟書家たちの目論見があったように、仮想が現実を食い殺す可能性だってあるのだ。
 だからこそ、この仮想世界である『スナークゾーン』におけるオブリビオンの策動は阻止しなければならない。

『魔法使いの時代』と呼ばれるヒーローズアースにおける一時代。
 それは『神々の時代』から人間の発祥から近代における時間を示している。未だユーベルコードを使うことのできる存在が稀有であった頃。
 ユーベルコードという強大な力を操る者は、時に巡礼の騎士や魔法使いとして人々を助けた。
 またある時は征服者として人々に恐れられる『魔王』として君臨した。
『スターヴ』と呼ばれる元神のオブリビオンがまさにそれである。
 死体兵たちが闊歩し、巡礼の魔法使いである『モーニア』と徒手空拳の少年を襲っている。
 稲妻を手繰るユーベルコードと、徒手空拳にて死体兵を吹き飛ばす光景は、ヒーローズアースならではの光景であったかも知れない。

「やはり、数が多い……! 押し切られる……!」
『モーニア』の声に徒手空拳の少年はまだ笑っていた。
「まーそうだよな。でもさ、こういう時って、いつだってあんたの話であれば――」
 少年の言葉が響いた瞬間、戦場に轟く声があった。
「そこまでなのだ!」
 それは幼い声であったが、戦場より高き丘の上から響き渡る。誰もが視線を向けただろう。
 燃え盛る太陽の炎を纏う少女。
 大地を蹴って飛び立つ彼女の体がふわりと浮かび、たなびく炎と共に着地する。
 背後で爆発が起こっているのは如何なる理屈か。

「太陽の戦士、魔法戦騎・ブレイジール(Magica Rider☀️BLAZE ZEAL・f36783)! 参上なのだ!」
 着地した彼女の姿に『モーニア』も徒手空拳の少年も目を丸くしていた。
 ヒーローズアースと言えど、黎明の時代。『魔法使いの時代』であれば、彼女のヒーロー然とした立ち振舞は、あまりにも新しすぎた。
 背後の爆発も、何故起こったのか理解できていない。
 全てはカッコイイ登場シーン故である。

 それに、あれだけ高所から飛び降りて足は大丈夫なのかと心配にもなる。だg,あ心配には及ばないのだ。
 彼女は太陽のエアライダーである。
 どれだけ高いところから飛び降りようと平気――。
「なのだ!」
 ピッ、とブレイジールは指を打ち鳴らし、その瞳をユーベルコードに輝かせる。
 燃え盛る太陽の炎は、彼女の拳へと集まっていく。

『呪法骸操士ネウィとデッドボディバタリオン』 たちは、一斉に新たに現れた猟兵であるブレイジールへと殺到する。
 まるで死体の大波のような大群。
 これでは確かに数で圧殺されてしまうだろう。
 けれど、ブレイジールは恐れない。
 その瞳に勇気の輝きがあるかぎり、彼女の拳は何物をも寄せ付けぬ。
「ブレイジール……」
 ユーベルコードの輝きが、その瞳にやどり、纏う炎が拳に集約されていく。

 死体兵たちの数は多い。
 彼女の構えに隙は多かった。ともすれば、死体兵たちの一撃が致命傷になりかねない。
「危ない……!」
『モーニア』がブレイジールに襲いかかる死体兵たちの様子を見て、声を上げる。けれど、徒手空拳の少年がそれを手で制するのだ。
「いいや、心配なんてない。あれは――かなりやるやつだ」
 そう、ブレイジールの拳に宿った炎は、プロミネンスドライブ。
 炎を圧縮した拳。

「パァーンチッ!!」
 放たれるは紅炎。
 圧縮された炎が太陽の吹き上げる炎となってブレイジールの拳から放たれる。それらは死体兵たちを一撃のもとに吹き飛ばし、大波の如き大群に風穴を開ける。
 急激に温められた空気が膨れ上がり、周囲に集まっていた死体兵たちすらも蹴散らすのだ。
 ごう、と炎が迸る音が響き渡る。
 魔法戦騎は、炎の翼をはばたかせるように、その瞳に輝くユーベルコードで死体兵たちを見据え、魔王城への道を切り開くのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アレクサンドル・バジル
久しぶりのヒロアスだが、スナークゾーンね。ミストレスを倒したのが何らかのトリガーになったんだろうが分かんねえな。まあ、いつも通り虱潰しにしていきゃ、その内解決するだろ。
ってことで、今回は飢餓王?
飢えてる王サマって蔑称なのか尊称なのか分かんねーな。
取りあえず配下の奴等には退場してもらおうか。
(とおもむろに掌を掲げて『闇黒炎雷』を発動。戦場全体に黒い炎と雷を吹き荒ばせます。何故かモーニアと少年を避けながら)

ハロー、助っ人参上だ。



『スナークゾーン』はオウガ・フォーミュラ『ミストレス・バンダースナッチ』の撃破が影響しているのではないかというのが猟兵達共通の見解である。
 超生物『スナーク』の誕生を願った猟書家『ミストレス・バンダースナッチ』の目論見そのものは猟兵達によって打ち砕かれた。
 しかし、彼女の撃破と共に現れた『過去の地球全てを再現した仮想世界』である『スナークゾーン』に謎は未だ残ったままである。
 何故、このようなクライシスゾーンが生まれたのか。
 何故、オブリビオンが蔓延っているのか。
 疑問は尽きないし、またこの仮想世界が現実に如何なる影響を及ぼすのか、詳細が特定できていないのだ。

 現に過去に消滅した『スナークゾーン』と恐らく地続きではないかと思われているこの『魔法使いの時代』の『スナークゾーン』には、猟兵たちが戦った痕がセンターオブジアースに刻まれている。
「久しぶりのヒロアスだが、『スナークゾーン』ね」
 アレクサンドル・バジル(黒炎・f28861)は首を鳴らしながら、『スターヴ』と呼ばれるオブリビオンが『魔王』として鎮座している魔王城への道を阻む死体兵たちを見やる。
 死体をツギハギにして生み出されたオブリビオンたち。
 そのどれもが『飢餓王』と呼ばれるオブリビオン『スターヴ』の犠牲者であることは言うまでもない。

 元神のオブリビオン。
 己の名すら忘れ、敗北の記憶すら喪った怪物。
 その怪物が求めるのは、猟兵との戦いであり、猟兵達を喰らうことである。此処にも『スナークゾーン』での戦いの影響が出ているのだろう。
「まあ、いつもどおりに虱潰しにしていきゃ、そのうち解決するだろ」
 アレクサンドルは、渦中にあるであろう巡礼の魔法使い『モーニア』と徒手空拳の少年が戦う戦場に舞い降りる。
「ハロー、助っ人参上だ」
「今度は何だ!?」
『モーニア』はもうやけになっているようである。先程も炎を噴出させる猟兵が登場しては、その膨大なユーベルコードの力を見たせいもあってか、彼女の常識の範囲を遥かに超えているのだろう。

 ハロー、と前にして徒手空拳の少年が手を上げているのをアレクサンドルは見た。
 むしろ、少年のほうが肝っ玉が座っていると言ってもいいだろう。
「ほら、助っ人って言ってくれてるじゃないか。味方ってやつだよ、なー?」
「ああ、そういうことだ。ま、とりあえず、『飢餓王』? 飢えてる王サマって蔑称なのか尊称なのかわかんねーな」
「違いないなー」
 自分の常識の外側の出来事が起こり続けることに混乱している『モーニア』をよそに徒手空拳の少年はあっけらかんとアレクサンドルの出現を受け入れているようである。

「とりあえず、配下の奴らには退場してもらおうか」
 おもむろにアレクサンドルは掌を天に掲げる。
 それは黒い炎と黒い雷。
 降り落ちる一撃は、闇黒炎雷(クロイホノオトイカズチ)。打ち込まれた雷は死体兵たちを討ち貫き、炎は消えず霧消するまで彼等の肉体を焼き続ける。
「おー! これは派手だな!」
「だろ? あんたらには当たらねーから、安心して突っ込みな」
 アレクサンドルと徒手空拳の少年が拳を打ち合ってから笑い合う。その光景に『モーニア』はひどく混乱したままであるが、現状を正しく認識する。
 このままうまく行けば、魔王城まで辿り着くことができる。

 大波のような大群を見せる死体兵たちであったが、アレクサンドルや先んじて援護してくれた猟兵達の力があれば、なんとかなるのではと希望を見い出すことができる。
「かたじけない……行くぞ、『アズマ』」
「ああ、頼んだぜ!」
 アレクサンドルはその言葉に掌を振りながら、さらにその瞳をユーベルコードの輝かせる。
 ああも真っ直ぐに願われたのであれば、応えないわけには行かない。
「悉くを滅ぼせ、闇黒炎雷」
 戦場を蹂躙するのは黒い炎と雷。
 轟音が轟き、消えぬ炎がまるで魔王城への道を知らしめるように『モーニア』と徒手空拳の少年の行く先を照らし出す――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アスカ・ユークレース
二人に【勇気】を与えるよう振る舞う

初めまして、未来の猟兵です、助太刀に来ました!
私が来るまで良く耐えました、後は任せて回復を!キャバリアを別の場所から操縦しUC使用、私自身は誘導弾の一斉発射で弾幕の範囲攻撃。急所を狙った鎧砕きの砲撃で敵を倒していきます

敵の攻撃は敵を盾にする騙し討ちで対処、あんまり時間も掛けられませんからね、二人の体力を考えると。

回避した先に予め爆撃用の罠を仕掛けておけば、骸骨だけじゃなくて本体も倒せて一石二鳥ですね?

アドリブ絡み歓迎



 神代より発祥した人類がユーベルコードを発現させてから近代に至るまでの時代をヒーローズアースにおいては『魔法使いの時代』と呼ぶ。
 未だユーベルコード使いは希少であり、稀有なる存在であった。
 巡礼の魔法使い――後年においてはスピリットヒーローと分類されるユーベルコード使いである『モーニア』と徒手空拳の少年は数多の死体兵たちに追われていた。
 猟兵たちが切り開いた魔王城への道を進む。
 しかし、大波のように迫るオブリビオンの死体兵たちは、元を返せば『飢餓王』、『スターヴ』によって鏖殺され食い散らかされた成れの果て。
 彼等に意志はない。
 継ぎ接ぎだらけの肉体は、それだけで外法によるものであると知れるだろう。

「まだこれだけの戦力がいるというのか……! どれだけ……どれだけの生命を奪ってきた、『スターヴ』!」
『モーニア』の言葉はきっと届かないだろう。
 そして、答えも返ってこない。わかっていたことだ。元神である『スターヴ』の記憶はオブリビオンである以上、歪み、摩耗している。
 もはや正気の言葉など返ってこようはずもない。
「仕方のないことなのかもなー。力に執着するのなら」
 徒手空拳の少年の拳が鋭く、疾く死体兵たちを貫いて霧消させる。だが、徐々に道を走る彼等の歩みは遅くなっていく。
 これでは次第に囲われて圧殺されるだろう。

 だが、その遥か頭上より飛来するのは5m級の戦術兵器――キャバリア『グレムリン』であった。
 アスカ・ユークレース(電子の射手・f03928)が電子星装:乙女の衣(エトワールギア・モデルユングフラウ)によって制御する鋼鉄の巨人である。
 儚く揺らめく光の雨が洗浄に降り注ぐ。
 それは『モーニア』や徒手空拳の少年の体に染み渡り、その生命力を賦活するのだ。漲る力に『モーニア』は驚愕する。
 乱発していた稲妻のユーベルコードによって疲弊していた体が、活性化していくのだ。
「これは……!」
「はじめまして、未来の猟兵です、助太刀に来ました!」

 アスカの言葉は二人にとっては理解の範疇を超えていただろう。
 鋼鉄の巨人から声が聞こえるのもまた驚きに値するものであった。アスカ自身は別の場所から『グレムリン』を操縦しているのだ。
 まるで巨人と共に旅をする妖精のようにアスカの姿は映ったことだろう。
「私が来るまでよく耐えました、後は任せてください!」
 放たれる誘導弾や、『グレムリン』による打撃。
 どれだけ死体兵の数が多かろうが、アスカと『グレムリン』の攻勢を止めることはできない。

「すごいな、これー。鉄でできているのかー?」 
 徒手空拳の少年は薄紅色の瞳を輝かせて『グレムリン』を見上げている。
 明らかにこの時代にそぐわぬ兵器。
 その姿に思わず少年の心がくすぐられたのかもしれない。
「そういうのは、後でいたしましょう。あんまり時間も掛けられませんからね」
 アスカは二人の体力を考える。
 例え、ユーベルコードのもたらす光の雨によって彼等の生命力が賦活されているのだとしても、無限ではない。
 目指す魔王城への道のりは未だ遠い。
 
 それに魔王たる『飢餓王』、『スターヴ』を打倒するのにもまた体力がいる。
 ならばこそ、アスカは指を鳴らす。
「このままどうぞ、二人は進んでくださいな。殿……ではないですね、この死体兵を操る要たる術士を潰してまいりますから」
 アスカは『グレムリン』と共に迫る死体兵たちを押し止める。
 多勢と戦う時、頭を使うのは当然だ。
『グレムリン』が継ぎ接ぎの巨大な死体兵と組み合って時間を稼ぐ。アスカは、その間に爆撃用の罠を飛翔し仕掛けていく。

 爆導索のように死体兵の背後に回り込むように罠を仕掛け、『グレムリン』に押しやられた死体兵共々術者たちを囲う。
「こんなこともあろうかと!」
 押し込む『グレムリン』の巨体が死体兵たちを投げ放ち、アスカの仕掛けた爆撃用の罠にかかって爆発を巻き起こす。
 それは凄まじい光景であったことだろう。
 未だ現代兵器のない時代にあっては、火球が突如として生まれたようにしか見えない。
「流石にやりすぎてしまいましたかね? でも、これで術者も倒せて一石二鳥ですね――?」

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友

第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん
武器:四天流星

アズマ、ねぇ。名前がかの方と一緒ですがー。まあ、気にしても仕方なし。協力いたしましょう。

あー、少し気を付けてくださいねー。この四天流星の内側には、決して入らぬように。これ、加減が効かないんです。
早業にて四天流星を投擲していき…まあ、弾くでしょうね?
でも、それが命取りですよー。ふふ、囲うように四天流星は存在する…ゆえに、この【四悪霊・雷】はあなた方を穿つのです。

力になりたい、というのは本当ですしー。こういう異変は放っておけませんからねー。
だからこそ…私は戦うのですよー。



 仮想世界である『スナークゾーン』に再現されたのはヒーローズアースにおける『過去の地球全て』である。
 猟兵たちはすでに『神々の時代』の『スナークゾーン』を消滅させている。
 その結果、猟兵たちは地続きであろう『魔法使いの時代』の『スナークゾーン』に変化が生まれていることを知るだろう。
 神代より続くセンターオブジアースには戦いの傷跡が残されている。
 石像が残り、そして本来歌われていたであろう神譜は失われている。響かない。
 本当にあの戦いが仮想世界だけのことであったのか。それとも現実に影響を及ぼすものであったのかを、未だ誰も知ることはできない。

 けれど、オブリビオンが『スナークゾーン』にありて世界を滅ぼすのであれば、その影響が現実世界に何らかの影響を及ぼすことは想像に難くない。
 だからこそ、猟兵たちは『魔法使いの時代』へと飛び込む。
「こっちだ、『アズマ』!」
 稲妻のユーベルコードを手繰る巡礼の魔法使い『モーニア』の言葉と共に徒手空拳の少年が蹴撃で持ってオブリビオンの死体兵を打倒しながら魔王城へと進む。
 猟兵たちが切り開いた道。
 彼女らの体力を温存させるための戦いであり、大波の如く迫るオブリビオンたちを全て打倒するための戦いである。

 魔王、『飢餓王』と呼ばれるオブリビオン『スターヴ』。
 これを打倒しなければ、この『スナークゾーン』は消滅しない。猟兵たちと巡礼の魔法使い『モーニア』の目的は合致している。
「助力、感謝する。だが、あなた方も無理はしないでくれ!」
「いやー、此の人らにはそういうのって逆に不要だと思うんだけどなー」
 そんな『アズマ』と呼ばれた少年の薄紅色の瞳が馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)を見ている。
 彼には彼等が四柱の悪霊が束ねられた存在であることを理解しているようであった。
『疾き者』は、その少年の様子に頷く。
「『アズマ』、ねぇ。名前がかの方と一緒ですがー」

 そう、かつて戦った猟書家の名もまた『アズマ』であった。
 そして、先立っての『神々の時代』での戦いもまた『アズマ』の名を持つ徒手空拳の男がいた。
 目の前の少年は薄紅色の瞳こそ同じであったが、異なる人物であるとわかるだろう。
「まあ、気にしても仕方なし。あー、少し気をつけてくださいねー」
『疾き者』の瞳がユーベルコードに輝き、四天流星が大地に打ち込まれる。
 それは己達を打倒せんと迫る死体兵たちをぐるりと囲むように打ち込まれていくのだ。

「おわっ! と、それ危ないやつだよなー?」
「ええ、ですから、決してこの内側には入らぬように。これ、加減が効かないんです」
「だろうなー。ヤバそうってわかる……それじゃあ……」
「ええ、力になりたい、というのは本当ですしー。こういう異変は放ってはおけませんからねー」
 だから、先に行くといいと『疾き者』は『モーニア』たちを送り出す。
 死体兵たちに彼女たちの背を追わせることはしない。手にしたを四天流星投げ放ち、迫る敵を『疾き者』は打倒していく。

 だが、それだけでは数は減らない。
 なにせ、打ち抜かれても死体は継ぎ接ぎのように組み上げられて、再び襲ってくるのだ。
 一瞬で、一撃、広範囲に薙ぎ払わなければならない。
「ええ、でも、そのしぶとさが命取りですよー」
 弾かれた四天流星がふわりと中に浮かぶ。
 ユーベルコードの煌き。
「時は今」
 その声を合図に広範囲を取り囲む四天流星が光をつなげていく。それは円を描くように大波の如き大群の死体兵たちを取り囲む。

 天に煌めくは雷光。
 しかし、稲光の如き白き閃光ではない。
 四悪霊のオブリビオンを呪う呪詛に染まった真黒なる雷。
 四悪霊・雷(シアクリョウ・カミナリ)の一撃が円で囲われた内部にある死体兵たちを一瞬の内に蒸発せしめる。
『疾き者』の言うところの加減ができないとは此のことである。
 極大の雷は、尽くを薙ぎ払う。

 これは必要な戦いだ。仮想が現実を食い破るというのならば。
「だからこそ……私は戦うのですよー」
 ただそれだけで理由は十分であると真黒の雷が塗りつぶす戦場を『疾き者』は駆けるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クック・ルウ
鏖殺され操られた死者か、酷いことをする
あなた達の声は、狂おしく痛ましい

魔王を討つならば仲間は多いほうだろう
私は魔法剣士のクック、手を貸すぞ

ルーンソードを構え
突進するゾンビ兵に【斬撃波】と【カウンター】で応戦
向こうが協力してくる……ならば、こちらも同じ手を使おう
『モーニア』殿の雷に合わせて暁光の魔法を放つ
こうすれば威力が上がるだろうか

そちらの少年は『アズマ』殿というのか
その名は伝え聞いたことがある
ここは過去の世界の再現……そういう事もあるのか
真っ直ぐな好い目をしておられるように見受けられる
なんだか……不思議なものだな



 咆哮が聞こえる。
 それは死体兵であるオブリビオンたちが上げる咆哮であった。
 猟兵たちや巡礼の魔法使い『モーニア』、そして徒手空拳の少年によって打ち倒された死体兵の残骸がパッチワークのように組み上がって、巨大な兵士へと変貌を遂げる。
 怨嗟ではない。
 ただの生理反応が示す口腔奏でる空気の裂音でしかなかった。
 けれど、そこに憐れみを見出すのが人である。
「鏖殺され操られた死者か、酷いことをする」
 クック・ルウ(水音・f04137)は、その巨躯を見上げる。死体兵となったオブリビオンたちを止めるには消滅させるしかない。

 戦場に真黒の雷が落ち、炎が吹き荒れ、まるで神話の戦いを再現するかのような戦いが、『過去の地球全てを再現』した『スナークゾーン』に繰り広げられている。
 この世界が仮想であることは言うまでもない。
 けれど、仮想が現実を食い破らぬと誰が保証できるだろうか。
 現に過去に消滅させた『スナークゾーン』、『神々の時代』での戦いの影響は、地続きであろうこの『魔法使いの時代』の『スナークゾーン』にも痕を遺している。
 ならばこそ、死体兵たちの咆哮もまた何らかの形で残ってしまうかもしれない。
「あなた達の声は、狂おしく痛ましい」
「ああ、それは同感」
 クックの言葉に蹴撃でもって死体兵を打倒した徒手空拳の少年が頷く。

 死して尚、遺体を弄ぶ行いは、人という生命にとっては怒りを買う行為である事は言うまでもない。
「魔王を討つためならば仲間は多いほうがいいだろう。私は魔法剣士のクック、手を貸すぞ」
 手にしたルーンソードが煌き、己に迫る死体兵達を切り裂く。
 あの巨大な死体兵の突撃を許すわけには行かない。あの巨大な死体兵に随伴する死体兵は、こちらへと突進してくるのもまた防がねばならない。
 放たれる衝撃波が死体兵達を吹き飛ばし、さらにクックの背後で巡礼の魔法使い『モーニア』が手繰る雷が迸る。
「そこだ」

 クックの暁光の魔法(ギョウコウノマホウ)が朝焼け色の魔法弾となって雷と共に戦場を走る。
 明滅する視界。
 目がくらむほどの光を放つ雷と魔法弾は突進してくる死体兵たちを霧消させ、さらに巨大な死体兵へと続く道を生み出す。
 駆け出す徒手空拳の少年の薄紅色の瞳が閃光のように走り、巨大な死体兵の体を拳で持って叩き伏せるのだ。
「『アズマ』! 一人で突っ込むな! 助力してくださる意味がない!」
『モーニア』の言葉に徒手空拳の少年は悪びれた様子もなく、死体兵を蹴撃で吹き飛ばす。

「そちらの少年は『アズマ』殿というのか」
 クックは伝え聞いている。その名を。同じ名前を知っているのだ。
 此処は『スナークゾーン』。過去のヒーローズアースの地球全てを再現した世界。
「ああ、そういう名前なんだー。そういうアンタは、音の響きがいいな。跳ねるような、善い名だなー」
『アズマ』と呼ばれた徒手空拳の少年の薄紅色の瞳が輝く。
 戦いのさなかにあってもなお、その拳が鈍ることはない。鋭さを増す蹴撃は、敵を寄せ付けないだろう。

 クックは、そういう事もあるのかと思った。
 猟書家『アズマ』と同じ名前をした同じ業を使う存在。けれど、そこには邪悪さは感じないだろう。
「真っ直ぐな好い目をしておられるように向けられる」
『モーニア』と『アズマ』、そして猟兵達。
 共に背中を預け、道を切り開いて進む。
 魔王城はまだ遠い。敵の数も膨大である。けれど、此処には恐怖から最も程遠いようにさえ思えてしまう。

 敵であった存在の名。
 けれど、今は心強くも感じるであろうし、それが不思議なものであるとクックは思っただろう。
「不思議だよな、負ける気がしねー」
「だから、そういうのは終わってからにしてくれないかな!」
 クックは戦いの中で微笑んでしまうかもしれない。嘗て在ったかもしれない風景。その名が何を示すのかなど些細なこと。
 互いに背を預け、共に戦ったということだけが、クックの中の真実であるのだから――。 

大成功 🔵​🔵​🔵​

サージェ・ライト
お呼びとあらば参じましょう
私はクノイチ、胸が大きくて忍べてないとかそんなことないもんっ!

空気も読まずに言い続けることに意味があるのですっ!
たぶんきっとめいびー!
助力に参上したクノイチです!よろしくお願いしまーす!

ゾンビには火!
というわけで
【VR忍術】火遁防壁の術!!
ええ、オーソドックスに燃やします
しかし全周囲で怖いので炎で包みます

ふはははは、燃えてしまうがいい!!(何故か悪人面)

それはさておき私の火遁防壁を突破してきたゾンビをお願いしますねアズマさん
そんなに数はいないと思うので十分楽しめる余裕はあると思うんですけど

ネウィ本人にも注意しつつ
まぁ【VR忍術】火の玉乱舞の術で
近寄らせませんけどね!



 猟兵たちと合流した巡礼の魔法使い『モーニア』と徒手空拳の少年は一路魔王城を目指す。
 その道を阻むのは 『呪法骸操士ネウィとデッドボディバタリオン』 の大波の如き大群であった。
 彼等は『飢餓王』、『スターヴ』によって鏖殺された人間たちの成れの果てである。食い散らかされるようにして残った遺骸を組み上げて死体兵が作り上げられる。
 その外法によって得られた数は凄まじい。
 どれだけ『スターヴ』によって人々が鏖殺されたのかを知らしめるには十分であった。
「助力があってなお、これか……!」
「キリがないなー」
 あはは、と笑う徒手空拳の少年の楽観的な姿に『モーニア』は頭痛がするようであった。

 こんな絶体絶命の状況にあってなお笑える丹力というものはどこから湧き上がってくるのかと真剣に考えるほどであった。
 だが、それ以上に場に似つかわしい声が上がる。
「お呼びとあらば参じましょう。私はクノイチ、胸が大きくて忍べてないとかそんなことないもんっ!」
 空気読んでない。
 いや、むしろ、読まないことが目的であるかのようにサージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)の前口上が響き渡る。いつものことである。
 しかしながら、空気を読まずに言い続けることに意味がある。
 たぶんきっとめいびー。
 ほんとたぶん。
 そんな彼女の登場に『モーニア』は口をパクパクさせるだけであったし、徒手空拳の少年は、おー、と感心したようであった。
「助力に参上したクノイチです! よろしくおねがいしまーす!」

「ほら、にぎやかになった。なんとかなる」
「限度!」
『モーニア』と徒手空拳の少年が笑っているのがサージェにとっては気になった。だって、こちらは大真面目なのであるから。
 そんなコントみたいなことをやっている暇はない。
 こうしているうちにも迫りくる大波の如き死体兵の大群。それらは強大な突進力で持ってこちらを轢き潰そうとしているのだ。

「ゾンビには火! というわけで! メモリセット! チェックOK! 参ります!」
 サージェの専用メモリからコンソールにインストールされるVR忍術(イメージスルノハカッコイイワタシ)。
 それは火遁防壁の術。
「ええ、オーソドックスに燃やします!」
 生み出される炎の壁が突進してくる死体兵たちを取り囲み、炎の中に閉じ込めてしまう。
 腐敗した肉体であればこそ、火葬こそが正しい。
 燃え尽きていく死体兵たち。けれど、パッチワークのように継ぎ接ぎに組み上げられた巨大な死体兵が迫る。

 炎の壁であっても、燃えながら突っ込んでくるのならば、これを止める手立てはない。
「ふはははは、燃えてしまうがいい!! って、あー!『アズマ』さん、『アズマ』さん、お願いしますー!」
 サージェは悪い顔していたが、思いがけず突破してくる死体兵が多い。
 やばい。
 これはやばいやつである。そんなサージェの叫びに答え、徒手空拳の少年が飛ぶ。
 蹴撃が巨体を切り裂くように霧消させ、振るう拳が胴を穿つ。
 迫りくる巨躯すらなんなく投げ飛ばし、大地に叩きつける姿は少年の体躯ながら神話の体現。

「楽しむ余裕をくれなくたっていいんだぜー?」
「やっている場合じゃないぞ! まだ魔王城へは辿り着いていないんだからな!」
 ぺしんと徒手空拳の少年の頭を叩く『モーニア』と共に猟兵たちが切り開いた道を進む。
「敵は近寄らせませんから、力を温存しておいてくださいね! まだまだ余裕はありますんで!」
「大丈夫かー?」
 サージェは再びメモリからコンソールに忍術をインストールし、火の玉乱舞の術でもって死体兵たちを片付けていく。

 ここが過去の地球全てを再現した『スナークゾーン』であるというのならば、これもまた過去の再現であろう。
 ならば、これだけの数を前にしてもなお、余裕を見せる徒手空拳の少年は一体何者なのか。
「ともあれ! クノイチらしさがでているのではないでしょうか!」
 忍術ぶっぱする自分。サージェは、イメージする自分に鼻がびよーんと長くなりつつ、『モーニア』たちの征く道を助けるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
仮想空間の中でも歴史は続いてるんだね
一体どこに辿り着くんだろう

酷い光景だけど
ここにいるのは神は神でも邪神だからなぁ

何が言いたいのですの

昇天なり浄化なりできるような
神様だったらなあってだけだよ

嫌味言ってても仕方ないし
ガトリングガンで範囲攻撃して
近付かれないようにしよう
まるでゲームみたいだね

戦ってる2人には敵じゃないと声かけつつ
援護射撃を行おう

埒が明きませんの
それにこれ以上遺体を傷つけなくとも良いですの

死体兵は永遠にすべきではないので
凍らせて自然に砕けるに任せますの
術士は石の彫像に変えて永遠を差し上げますの

神話の再現って意味では魔王の注意を引くのに良いのかな?
たぶん神様扱いを望んでるだけだろうけど



 歴史は紡がれるものである。
 積み重ねられ、過去を排出するからこそ時は前に進んでいく。
 躯の海に堆積した過去はにじみ出る。時間が質量を持つからこそである。ならば、仮想世界である『スナークゾーン』は一体なんなのであろうか。
 虚構から生まれた超生物『スナーク』。
 その誕生を願った猟書家たち。
 彼等は『スナーク』を生み出して何をしようとしていたのか。仮想が現実を凌駕することがないと誰が言ったのか。

 現実にかつて在りし『スナークゾーン』での出来事。
 先立って消滅させた『神々の時代』のスナークゾーンでの戦いの結果、センターオブジアースに刻まれた戦いの痕は残っているし、石像もまた数千年の後も残っている。
「仮想空間の中でも歴史は続いているんだね。一体どこに辿り着くんだろう」
 佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は魔王『スターヴ』が鏖殺し、軍勢と変えた死体兵たちの姿を見て、酷いことであると思っただろう。
 個々にあるのは神は神でも元神の魔王と邪神である。

 人々が神に救いを求めるのならば、こんなにも皮肉なことはない。晶はそれを口には出さない。
「何が言いたいのですの」
「昇天なり浄化なりできるような神様だったらなぁってだけだよ」
 晶は身の内に宿した邪神に告げる。
 皮肉嫌味のつもりであったが、それを言ったところで事態が後転することはない。晶はわかっているからこそ、携行ガトリングガンの砲火でもって迫りくる死体兵の大波の如き軍勢を打ち払う。

 近づけさせないために弾幕を張っているのだが、こうしてみるとなにかゲームのようであると思えた。
 といっても、ゲームオーバーは即ち己の死であるわけであるが。
「――っ!? なんだ、何が起こっている!?」
「小さな礫を飛ばしてんだよ。めちゃくちゃ早く。小さな礫であっても、あれだけの速さで打ち出せば人の肉だって貫けるだろうさー」
 巡礼の魔法使い『モーニア』と徒手空拳の少年が晶の扱う火器に驚く。いや、少年の方は放たれる弾丸を視認しているのだろう。冷静である。

「敵じゃないよ」
「わかってるって。さっきから助けに来てくれてる人らとおんなじなんだろー? ありがとなー!」
 少年の方がよほど現実を柔軟に受け入れている。
『モーニア』は目まぐるしく入れ代わり立ち代わり現れる猟兵に混乱しているようでもある。
「埒が明きませんの。それにこれ以上遺体を傷つけなくても良いですの」
 邪神が内側から声を上げる。
 それは彼女の美的感覚からも心情からも承服しかねることであったのだろう。
 晶の瞳がユーベルコードに煌めく。

「さあ、皆様を優しい微睡みにご招待致しますの」
 静寂領域(サイレント・スフィア)が広がる。虚空より降り注ぐ森羅万象に停滞をもたらす神気。
 触れた者すべてに停滞をもたらし、死体兵たちを凍らせ砕く。自然に還ることを邪神は望んでいるようであった。
 死した後も残るもの。
 それは彼女の言うところの美しさからかけ離れていたものであったからだ。永遠とは、美しいままにとどめておくことを是としている。

 ならば、邪神はこれ以上醜くならぬことを望む。
「なるほどなー。変わっていくことが人間の強さであり美しさであるとは思うんだけどー……あんたとは合わないのかもな、俺は」
 徒手空拳の少年の薄紅色の瞳が晶を、いや、その内に宿す邪神を見つめる。
 まるで神話の体現。
 ひりつくような気配が漂い始める。

 けれど、少年はかぶりを振る。少なくとも今は敵ではないと理解しているのだろう。
「魔王城まではよろしくな」
「うん、大丈夫。君の心配するようなことにはならない。そうならないようにするよ」
 晶と少年はうなずき合う。
 今すべきことはそれではないからだ。魔王城に座す元神の『スターヴ』、かの『飢餓王』を打倒すること。
 神ならざる者を消滅させる。
 それこそがこの『スナークゾーン』を消滅させる唯一の手立て。

『スターヴ』が求めるのは強さのみ。
 神より堕したとしても、変わることのないそれが、現実を食い破る牙に変わるまえにこれを打ち倒さなければならない――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月夜・玲
仮想空間か…
これが全部そうというのは、ちょっとびっくりしちゃうよね
神々の時代を体験できるのもいい機会だし不謹慎だけどちょっと楽しみ!
ボスの待つ魔王城までひとっ走り行っちゃおうか


《RE》Incarnationと空の記憶を抜刀
近付いてくる敵に対して『斬撃波』で牽制を掛けながら肉薄されたら『なぎ払い』、『串刺し』にして斬り合って対応
さて、ファンタジーにはファンタジーで対応しよう
【Code:P.D】起動
さしずめ役割としては召喚士かな…まあ近接も出来るけどね
雷龍、12体召喚!
思うがまま暴れ回れ!
『ブレス攻撃』とか色々やりながら、死体兵達を蹂躪してもらおう

あとはモーニア達に話とこ
君達傭兵雇う気はない?



『スナークゾーン』は過去の地球全てを再現した仮想世界である。
 途方も無いことである。
 過去の時代を切り取って再現する力。虚構から生み出されんとしていた超生物『スナーク』。これが、その力の発露の一部であるのならば、猟書家たちが求めた物は、世界の改変そのものであったのかもしれない。
 そして、『スナークゾーン』での出来事は現実世界に影響を及ぼす。

 先立って行われた『神々の時代』の『スナークゾーン』での戦いの爪痕は、センターオブジアースに傷跡を遺し、石化された敵や刀剣が神々の墓標のように残っている。
 本当にあれは仮想であったのか。
 地続きであろう『スナークゾーン』、『魔法使いの時代』で起こった出来事も現実世界に影響を及ぼしているのではないか。
「……これが全部そうというのは、ちょっとびっくりしちゃうよね」
 月夜・玲(頂の探究者・f01605)は目の前に広がるヒーローズアースの『魔法使いの時代』を見て呟く。

 過去の世界を体験できるというのはいい機会だと思ってしまうのは不謹慎であるかもしれないが、技術者として探求者としては、楽しみを否定するのまた間違いであるように思えるのだ。
「ま、ボスの待つ魔王城までひとっ走り行っちゃおうか」
 抜き払った模造神器が蒼く煌めく。
 迫るオブリビオンの死体兵たちを前に玲はためらうことなく斬撃波を放つ。牽制の一撃で死体兵達を吹き飛ばしながら、一直線に走る。

 薙ぎ払い、串刺し、死体兵たちが頑強でないことが幸いであった。
「二刀の剣士……! 助けてくれるのか!」
 巡礼の魔法使い『モーニア』が玲の振るう斬撃を見やり、これまでそうであったように入れ代わり立ち代わり現れる猟兵達と同じであることを感じ取ったのだろう。
 途方も無いほどに迫りくる死体兵たちに疲弊の色を隠せなくなっていたのだ。
 しかし、徒手空拳の少年の薄紅色の瞳が玲を見やり、首をかしげる。
「二刀……? 四刀ではなく?」
「もしや、数を数えられないのか、君は」
 どう見ても二刀流であろうと『モーニア』にたしなめられる少年は首をかしげたままである。

「傭兵雇う気はない?」
「い、今は礼になるようなものはないが……!」
『モーニア』にとっては、それは思いがけない提案であった。だが、礼をできるようなものが用意できない。
 そんな彼女を尻目に少年は勝手に事をすすめる。
「よろしくなー!」
 おい! と『モーニア』が止めに入ろうとするが、もう遅い。玲と少年によって勝手に契約が結ばれているのだ。

「そいじゃ、いっちょファンタジーにはファンタジーで対応しようか。カートリッジロード、プログラム展開。雷龍召喚」
 玲の掌にあるエナジーカートリッジから放出された雷が龍を構成していく。
 それは12体の雷龍。
 戦場を席巻する雷龍たちは死体兵たちを食いちぎり、蹂躙しながら雷のブレスを解き放ち、戦場を焼滅していく。

「さしずめ役割としては召喚士かな……」
「違うだろ、アンタは」
 徒手空拳の少年が笑っている。不敵な笑みであったように思えたかもしれない。玲がまだ三味線を弾いていることを理解しているかのような視線であったし、ともすれば不躾な視線でもあったのかも知れない。
「まあ近接もできるけどね」
 何故かひりついた空気が流れている。強者に相対して笑うのは、いつだって――……。

「いい加減にしろ、『アズマ』。お前の悪い癖だ。すぐにそうやって挑発する。今は」
「わかってるよー。もう」
 玲は笑って召喚した雷龍たちをたぐり、思うがままに暴れまわらせる。
『アズマ』と呼ばれた少年が時折、猟兵を見る目が違うことを彼女は察するだろう。敵意ではない。
 けれど、それはどこか他者の強さを暴きたい、引き上げたいという欲求から来るもの。
 玲の模造神器が二振りでなかく四振りであると言ったように、少年は雷龍走る空を見上げながらも、玲を含めた猟兵たちの方にこそ興味を持っているようであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
此度の『スナークゾーン』の時代は騎士が実際に息づく文化圏…興味を抱かぬと言えば嘘となりますが
…まずは私自身が遍歴の騎士として役目を果たさねばなりませんか

其処のお二方、加勢させて頂きます!

機械妖精引き連れ前線に突撃
ナノマシン鱗粉で二人の疲労を回復させつつ、剣と盾にて軍勢切り伏せ殴り飛ばし

死者を弄んだ挙句に肉盾とは…姑息な真似を

妖精の武器改造で電脳禁忌剣の刀身から巨大エネルギーブレード展開
横一線にて消し飛ばし

逃れた術者を腕部格納銃器で狙撃

(この少年、記憶野に…
いえ、だとしてもこの時代では関係はありませんか)

騎士として助力出来、なによりでした

…いえ、仕込み武器が騎士の得物かと問われると苦しいのですが



 人類の発祥より近代まで。
 それがヒーローズアースにおける『魔法使いの時代』である。
 遍歴の騎士や魔法使いといった者がユーベルコードを使い、悪と戦ってきた時代でもある。悪たる征服者たちもまたユーベルコードを扱い、己の欲望を満たすために他者を虐げる。
 騎士が実際に息づく文化圏。
 それを目の当たりにしてトリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)は己の興味が刺激されぬのかと言われれば否であると応えたことだろう。
 だが、トリテレイアはその興味を廃して進まねばならぬ道がある。
 己の役割を興味でもって損なうわけには行かぬのだ。

 目の前に広がるのはオブリビオンの死体兵たちの大波のような軍勢。
 魔王城が近づいていること証拠なのであろう。ますます持って死体兵の壁は分厚くなっていく。
 巡礼の魔法使い『モーニア』と徒手空拳の少年の道行きは厳しいものであったが、これまで多くの猟兵たちが彼女たちを手助けしていた。
「其処のお二方、加勢させていただきます!」
 トリテレイアは電脳禁忌剣・通常駆動機構:支援兵装『勇気の妖精』(サポートユニット・スティールフェアリーズ)によって制御された機械妖精と共に戦場に割り込む。

 ナノマシンの鱗粉は疲弊した『モーニア』の体を癒やす。
 しかし、徒手空拳の少年は特にモニタリングしたとしても体力の衰えを感じさせるところはなかった。
 これまでの戦いを経て尚、幾ばくも消耗していないことがトリテレイアにはわかっただろう。
 剣で死体兵を切り捨てるのと同じ速度で少年の拳が敵を穿つのだ。
「死者を弄んだ挙げ句に肉盾とは……姑息な真似を」
「壁っていう自覚もないんだろーなー」
 少年はトリテレイアと並び立ちながら、迫る死体兵たちを叩き伏せていく。

「自覚なき悪意だとして許されることではございません……!」
 力振るう者の覚悟と責任。
 それがあるからこそ、力は正しき使い方を持って成果を出すのだ。そこに覚悟と責任がないのであれば、それはただの暴力に過ぎないのだ。
 機械妖精たちが手にした電脳禁忌剣の刀身を開く。
 其処より発露するのは巨大エネルギーの塊。ブレードに形成されたエネルギーが長大な刀身へと変貌し、横薙ぎに奮った一閃が死体兵たちを尽く切り裂き、霧消させる。

 さらに刀身で薙ぎ払えなかった死体兵たちを格納された腕部の銃火器によって討滅していく。
「さっきも見たけど、それ便利だな。便利すぎて戦うことへの嫌悪感が薄れてしまいそうだ」
 徒手空拳の少年はトリテレイアを見上げて言う。
 彼の薄紅色の瞳は、別に非難しているわけではないが、それでもトリテレイアのちからのあり方に興味を持っているようであった。

 トリテレイアは、その少年の姿に己の電脳の記憶野に引っかかるものを感じる。
「『アズマ』、もうすぐ其処だ。敵の術士は倒れた……! 魔王『スターヴ』の居城に飛び込むぞ!」
『モーニア』の言葉に『アズマ』と呼ばれた少年が頷く。
 猟書家に同じ名を持つ者がいた。
 先立って行われた『神々の時代』での戦いでもトリテレイアは類似する事例を見ている。
 今共に戦っただけでも、拳や蹴撃の挙動、そして投げ技は尽くが一致している。
 これが偶然なのか必然7日はわからない。

「貴方も助力感謝する。見慣れぬ甲冑の騎士」
「騎士として助力出来、なによりでした」
『モーニア』は頷き、共に戦ってほしいと礼を尽くす。徒手空拳の少年は未だに格納銃器に興味津々であるようであったが、トリテレイアは騎士として、と考えた時銃火器はふさわしくないであろうと苦しい思いをする。

 しかし、それでも守られた者がある。
「では、参りましょう。魔王を討伐するために」
 これは護るための戦いだ。
 仮想世界であったとしても、現実世界に影響を及ぶ可能性がある。魔王『スターヴ』が打倒されなければ、現実世界に、このような死体兵たちが蔓延ることになるかもしれない。
 ならばトリテレイアは騎士として戦いを続けるだろう。
 それこそが、世界を守るための方法なのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『スターヴ』

POW   :    喰わせろ
戦闘中に食べた【「守る者」の血肉】の量と質に応じて【両手の鉤爪が巨大化し】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD   :    寄越せ
【標的の足元】から【赤き手の群れ】を放ち、【「守ったものの記憶」を奪う事】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ   :    捧げよ
【視線】を向けた対象に、【緑色の稲妻を落とす事】でダメージを与える。命中率が高い。

イラスト:カス

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ネライダ・サマーズです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 元神であり、魔王である『飢餓王』、『スターヴ』は摩耗した記憶の中にある唯一、『神々の時代』において鮮烈なる力の発露を見せた猟兵たちの戦いを反芻する。
 不死の怪物を退け、封じることで精一杯であった神々をして凄まじいと思わせるユーベルコードの煌き。
 あの煌きは今も『スターヴ』の中に刻み込まれている。

「あの強ささえあれば、他の何も要りはしない。必要ないのだ。強さ、強さのみが」
 全てを解決してくれる。
 耐え難い屈辱も。
 堪え難き焦燥も。
 何もかも強さによって解決されるものである。強さがないからこそ、己は懊悩する。

「他の何者にも侵されることのないたった一つ。それが強さ。ならば、最強を求めるのは当然のこと。常に最強足り得るためには」
 喰らうしかないのだ。
 より強きものを。
 喰らい、食らい付くし、常に天頂に在る。満たされぬことこそが天頂に在り続けるために必要なこと。

『飢餓』――渇望と言い換えてもいい。

 魔王城に到達した巡礼の魔法使い『モーニア』は怖気が走るような思いであった。
 勝てるとは思っていなかった。
 けれど、この戦いがあとに続く者のための礎に成ればいいと思ってさえいたのだ。それが見当違いであると彼女は思い知ってしまった。
 対峙しただけでわかる重圧。気圧され、己がいかに矮小な存在であるかを知る。
「――……」
 つばを飲み込むことすらできない。その瞬間に己は死ぬとわかってしまったからだ。

「強いだけの力に価値なんて無い」
 その隣で重圧も何も感じることがないように徒手空拳の少年が言う。
 薄紅色の瞳を爛々と輝かせながら、『スターヴ』に言い放つ。
「優しさが世界には必要だ」
「それは弱さと言い換えることができる。無意味なものだ」
『スターヴ』の重圧が膨れ上がっていく。今度こそダメだと『モーニア』は思っただろう。けれど、彼女の肩を叩いて徒手空拳の少年は言うのだ。

「それが弱さだというのだとすれば、アンタは本当の強さを知らないんだな」
 だから、負けるのだと少年は構えた。
 膨れ上がる闘気が『スターヴ』より放たれる。
『飢餓』以外の感情が『スターヴ』の心の奥底から発露した瞬間であった。怒気をはらんだ闘気が魔王城に吹き荒れる。
 猟兵たちはこれを打倒しなければならない。

 本来であれば在ってはならない過去の再現。
『スナークゾーン』においての結果は、大なり小なり現実に影響を及ぼす。
 それが良いことなのか悪いことなのかはわからない。
 けれど、世界を滅ぼそうとするオブリビオンの存在は、確実に世界に悪しき影響を及ぼすだろう。
 咆哮する『スターヴ』の拳が今まさに振り下ろされようとしている――。
ガーネット・グレイローズ
ここがスナークゾーン…ヒーローズアースの歴史が再現されるという
特殊空間か。ずいぶんと古い時代に飛ばされたものだな。

あの巨人を斃せばいいのだな、心得た!
【グラビティマスター】を発動し、《仙術》の応用で
空中へと浮かび上がる。敵の攻撃は命中率が高いので、
こちらも回避能力を上げて対応するぞ。

その子の言うとおりだ。ただ強いだけの力には価値などない。
優しさを知らぬ者には誰もついてこない。何も成し遂げられない。

スターヴがこちらへ視線を向けた瞬間、マントの中から
ヴァンパイアバットを放つ。1秒で構わない、奴の視界から消える
《目潰し》になれば。緑色の稲妻を掻い潜り、
クロスグレイブによる《レーザー射撃》を。



『魔法使いの時代』――それは『神々の時代』より人類が発祥してから近代に至るまでの歴史を指して言う。
 未だ神代の名残を残す光景。
『スナークゾーン』は『神々の時代』より続き、今も尚仮想世界を再現している。
 けれど、現実に仮想が侵食しないという事実はない。
 先立って行われた『神々の時代』の『スナークゾーン』においての戦いの傷跡はセンターオブジアースに刻まれ、石化された刀剣や像が今もなお残っている。
 そして、元神である『スターヴ』に唯一残された記憶にも。

「強き者を喰らう。そうして天頂に在り続ける。最強たらしめるために必要な渇望は、『飢餓』にこそ宿るのだ」
『スターヴ』は言う。
 その巨躯を持って、もはや『最強』足り得る事実以外何物も必要ではないというように、凄まじき膂力でもって魔王城の床を打ち砕く。
 徒手空拳の少年は言った。

 強いだけの力に価値はないと。

「まったくもって、その子の言うとおりだ。ただ強いだけの力に価値などない」
 ガーネット・グレイローズ(灰色の薔薇の血族・f01964)は、その瞳をユーベルコードに煌めかせながらグラビティマスターたる所以を示すように空中を飛ぶ。
 拳によって砕かれた床の破片が飛び散ろうともガーネットを捕らえることはできない。
 凄まじい速度で飛ぶ彼女は紅の弾丸のように魔王城の壁面を蹴り、姿勢を変える。
「優しさを知らぬ者には誰も付いてこない。何も成し遂げられない」
「そのような曖昧模糊な言葉で弄されるから、弱いというのだ。強さこそが絶対なのだ。強さなくば、何物も成し遂げられない」
『スターヴ』の視線がガーネットを捉えようとする。
 だが、一瞬でガーネットは翻るマントの中からヴァンパイアバットを解き放つ。

 それはまさに刹那。
 僅かな時間でしかなかった。『スターヴ』の緑色の視線は、それだけで見たものに稲妻を落とす。
 ヴァンパイアバットに緑色の稲妻が落ち、消し炭にする。
 なんたる威力。
 これをガーネットが受けては、身を滅ぼすしかないだろう。だが、一秒で彼女は構わなかった。
『スターヴ』の視界から消えることがガーネットの目論見であったのだから。
「この程度の小細工踏み越えることができなくて、何が最強か」

 目潰し。
 それはただの目潰しであったし、僅かな時間だけのものであった。ガーネットはそれで十分だと思っていたが、彼女に向けられた視線は、想定を超えていた。
「――させるものか!」
 巡礼の魔法使い『モーニア』の稲妻のユーベルコードがガーネットの姿を『スターヴ』より覆い隠す。
 雷光が走り、雷鳴が轟く中、徒手空拳の少年が『スターヴ』へと拳を繰り出す。
「一人で良い格好はさせないぜー。こういうのはさ、繋ぐ、紡ぐから意味があることだと俺は思うんだー」

 少年の薄紅色の瞳が笑っている。
 ただ一人である必要はない。猟兵だってそうだ。繋ぎ、紡ぐからこそ猟兵たちはこれまでも強大な敵を打倒してきた。
 ガーネットはそれをよく知っている。だからこそ、笑って応えるのだ。
「そのとおりだな。ならば、共に征こう」
 ガーネットのユーベルコードが再び煌めく。

 グラビティマスターは封神武侠界で修行したからこそ得た力である。
 体に働く重力を制御することによって再現される仙人の如き飛翔の再現。それをもってガーネットは紅の翼を広げるように魔王城の壁面を跳ね回るように『スターヴ』を翻弄する。
『モーニア』の稲妻が走り、徒手空拳の少年の蹴撃が『スターヴ』を打ちのめす。
「そこだ!」
 ガーネットの手にした巨大な十字架が、その手を離れ『スターヴ』の直上より、その砲身を突きつける。

 携行型ビーム砲塔デバイス。
 それが『クロスグレイヴ』。魔王の時代は終わりを告げる。
 どんな時代も終わりを見せる。
 この一撃がその兆しとなることは言うまでもない。走る光条が『スターヴ』の巨躯を穿ち、ガーネットは知るだろう。
 強さを求めることは過ちではない。
 けれど、忘れてはならない優しさがある。誰かのために命を懸ける者がいる。
 その道行きが、いつだって人の連綿たる歴史を護ってきたのだ。

 ヒーローズアースが強き者たちの世界であるというのならば、やはり……。
「優しさこそが、ただの暴力と成り果てる強さを打ち倒す。その偉業を成し遂げるのが人だ――」

大成功 🔵​🔵​🔵​

クック・ルウ
私も食べた物から力を得る
飢餓王の姿は恐ろしく、だがどこかで理解もしてしまう
食えば強くなる……手っ取り早い方法だ
だが真の強さとは鍛錬を積んでこそ得られるもの
心を失くし欲望のままに振る舞うのは、ただの化け物だ

魔王よ、あなたがこの少年に怒りを覚えたのは
守るべき者も忘れた己への怒りがあるからではないのか
その拳はあなたへ跳ね返してやろう

水鏡の魔法で二人を攻撃から防御する
『モーニア』殿の死を覚悟した勇気が私達をここに呼んだ
食い溜めた力は、強さは、その覚悟に応える為にある

『アズマ』殿、どうかその優しさを忘れずにな
(ここは過去の再現、けれどついそう思わずにはいられない)
さあ、その拳を叩き込んでやれ



 ブラックタールの肉体はあらゆるものを消化する。
 食物に限らず、硝子や土すら飲み込み溶かして糧とする。悪食で大食らい。それがクック・ルウ(水音・f04137)という猟兵であった。
 食べることは生きること。
 生命維持だけでいいのならば、調理の必要はない。
 けれど、クックは料理が好きだという。
 彼女は料理を食べれば、其処に込められた料理人の真心に触れる事ができる。それが好ましく思えるのは、『飢餓王』、『スターヴ』に無く、クックの心にあるものが存在するからだ。

 だからこそクックは『スターヴ』の恐ろしさを、何処か理解できるものであると思えた。
「食えば強くなる……手っ取り早い方法だ」
 咆哮が轟いている。
 魔王城はすでに戦場だ。猟兵と『スターヴ』の力が激突し、光条が巨躯を穿つ。けれど、大地より赤き腕がクックの足元から湧き上がるようにして出現し、彼女の体を捉えようとする。

 巡礼の魔法使い『モーニア』の稲妻がクックに迫る赤い腕を討ち滅ぼす。
 確かに『スターヴ』の行いは力を強大なものとするものであった。強者の肉を喰らい、糧とする。当然のことだ。けれど、クックは知っている。真の強さとは鍛錬を積んでこそえられるもの。
 心を失くし、欲望のままに力を振るうのは、ただの化け物でしか無い。
 クックはそんな風になりたくはない。
「強さこそが全てだ。おまえたちが何をなそうとも、何を思おうとも、何を守ろうとも、強さがあれば全てが無意味に帰す。どんな行いも、どんな感情も、何もかもだ」
 咆哮が轟く。

 それは怒気をはらんだ闘気そのものであった。
『スターヴ』は徒手空拳の少年の言葉に明らかに怒りをにじませている。『飢餓』しか存在しないはずの『スターヴ』の心を揺らしたのだ。
「魔王よ、あなたがこの少年に怒りを覚えたのは、守るべき者も忘れた己への怒りがあるからではないのか」
 クックは告げる。
 そう、摩耗した記憶には、元神である『スターヴ』にもまた守るべきものがあったはずなのだ。何のために力を振るうのか。その理由さえも忘れ去ってしまった悲しき暴力装置。それが『スターヴ』である。

 あらゆる生命を鏖殺し、貪り食う。それでもなお、彼は止まらない。強さという曖昧模糊なるものを己が定義せぬままに求めたが故に、足元すら覚束ない。
 それを強さと呼ぶには、あまりにも遅すぎた。
「なにもない。あるのは強さを求める飢えだけだ。この飢えを満たすには、生命の血潮でなければ満たされることはない。されど――」
「ああ、そうだろうさ。満ちることはない。アンタの杯は底が抜けているのさ。経験も鍛錬も受け止める底がなければ貯まらない。力だけを求めているからそうなる」
 徒手空拳の少年が『スターヴ』と打ち合う。

 衝撃波が荒び、クックは見上げる。
「クックは魔法が好きだ」
 彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
 そう、彼女は魔法を好ましく思っている。自身の身を守り、仲間と共に戦えるからだ。そして、時には自分ではない誰かを護ることができる。
 巡礼の魔法使い『モーニア』が誰かのために己の生命を賭したように。己の生命が誰かの礎になればいいと死を覚悟したように。

 クックもまた己の水鏡の魔法(ミズカガミノマホウ)でもって誰かを護る。
 水の魔力で出来た無数の鏡が生み出される。
「『モーニア』殿の死を覚悟した勇気が私達をここに呼んだ」
 今まで溜め込んだクックの魔力は、強さは、その覚悟に応えるためにこそ使うべきであると彼女は言う。
 これが優しさである。
 強い力に価値をもたらすもの。『スターヴ』にはないもの。
 誰がためにと願う心は、いつだって暖かなものを生み出す。ともすれば、それはクックが料理を振る舞われた時に感じるものと同じであったことだろう。

 美味しいものを食べて欲しい。
 満腹になってほしい。
 たった、それだけなのだ。それだけでクックの魔力は温かいものとなって、『モーニア』へと振るわれた『スターヴ』の拳を黒い鏡が受け止める力となる。
「――、これは……!」
「力が反射される」
『スターヴ』の拳がひしゃげる。クックの黒い鏡は打ち込まれた力を等しく反射する。『スターヴ』の拳は、等しく己の拳に返ってくるのだ。

 そして、透明な鏡が『モーニア』や徒手空拳の少年の前に舞い降りる。
 傷を吸収する鏡は、彼等の疲弊を取り除くだろう。
「強いだけの力に価値はない、か。『アズマ』殿、どうかその優しさを忘れずにな」
 クックは鏡越しに微笑む。
 此処は過去の再現。
 嘗て在りし日の残影に過ぎない。けれど、クックはそう思わずにはいられないのだ。強さだけではない、優しさをも持ち合わせる少年の拳。
 その拳こそが真に強きものであると知るからこそ、クックは彼の背中を押す。

「ああ、任せておいてくれよー!」
 少年の背中をクックは見送る。さあ、と小さく呟く。その拳を叩き込んでやれ、と――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アレクサンドル・バジル
ん? アズマか……なるほど。此処は過去の世界だったな。
そーいうこともあるのか。
まあいいや。さて、強さを求めるスターヴ君だったか。
俗に心技体というが俺の見たところ体しかねーな。
カカカ、心と技ではそこの少年にも劣ってるんじぇねえかな。
神々の時代でも暴れたみてえだが、もっかい出直しな。

『魔力解放』を発動。戦闘能力を増加。
『喰わせろ』により巨大化した鉤爪。巨大化した故にかえって見切りやすい。超音速で掻い潜り、正面から魔力を込めた渾身の一撃を。(貫通攻撃)



『スナークゾーン』はヒーローズアースにおける『過去の地球全てを再現した』仮想空間である。
 過去に在りし日を再現した残影。
 しかし、超生物『スナーク』が虚構から生み出されようとしていたように、この『スナークゾーン』に起こった出来事が現実に影響を及ぼすことが皆無ではない。
 現に過去『神々の時代』を再現した『スナークゾーン』での戦いの傷跡が、この『魔法使いの時代』には残っている。

 ならば、世界を破滅に導くほどの戦いを引き起こすオブリビオンが『スナークゾーン』において、実際にそれを成し遂げてしまったのならば、どのような影響が現実世界に及ぶかを検証する余裕はないだろう。
 そして、アレクサンドル・バジル(黒炎・f28861)は巡礼の魔法使い『モーニア』が徒手空拳の少年を『アズマ』と呼ぶ事に気がついた。
 己の知る『アズマ』とは異なる風体。
 だが、その拳、蹴撃、技はまったく同じであったことだろう。
「……なるほど」
 過去全てを再現するのが『スナークゾーン』であるというのならば、仮想空間に生きる者もまた忠実に再現されているというわけである。

 過去の世界。
 アレクサンドルは、そういうこともあるかと簡素な感想を抱きながら、それはどうでもいいことだと捨てる。
 戦うことに代わりはない。
 そして、オブリビオンであり魔王である『スターヴ』を打倒する。ただ、それだけのために己は転移してきたのだから。
「さて、強さを求める『スターヴ』だったか」
 アレクサンドルは鏡によって反射された己の打撃でひしゃげた腕を強引に元の形に戻し、咆哮するオブリビオン『スターヴ』を見やる。

 魔王と呼ぶにふさわしい強大な力の発露。
「強さだけが飢えを満たしてくれる。それだけが全てを薙ぎ払ってくれる。前に立ちふさがるもの全てを。おまえたちの戦いを知っている。あの鮮烈さ。あの強烈さ。その全てを知っている」
『神々の時代』における猟兵の戦いは、まさに鮮烈にして苛烈であったことだろう。
 目がくらむほどのユーベルコードの煌き。
 その煌きに『スターヴ』は、かつての元神は目を奪われた。
 強さに憧れ、強さを求め、強さを見失ったものが此処に立つ。

「俗に心技体というが」
 アレクサンドルは首をかしげる。その隣で徒手空拳の少年が頷く。
「見た所、体しかねーな」
「だよなー」
 二人してうなずき合う。こういうところは気が合うようである。少年は薄紅色の瞳を爛々と輝かせながら、迫る『スターヴ』の拳をいなし続けている。
 それは余裕があるとかないとかではない。
『スターヴ』の全力、その限界値を超える強さを引き出そうとさえしている。

 戦いにおいてすることではない。
 けれど、それが彼の『名』の業であると示すように巨大化した爪を躱す。アレクサンドルもまた同様である。
 黄金に輝く魔力で自身の身を多い、絶大な魔力によって増強された戦闘力が発露する。むしろ、巨大化したが故に見切りやすい。
「カカカ、心と技では、そこの少年にも劣ってるんじゃねえかな」
「ほざけ。この力は、そのような曖昧なものなど一蹴するものだ」
『スターヴ』はあくまで認めない。
 認められるわけがない。力とは純然たるものだ。だが、人が扱うのであれば、力だけでは成り立たない。

 徒手空拳の少年が告げた言葉の意味を半分も理解出来ぬからこそ、『スターヴ』は理解不能なる者を見るように憤怒の念に飲まれた。
 振るわれ続ける巨大な爪が魔王城の床や壁を砕きながら、破片を飛ばす。
「神々の時代でも暴れたみてえだが、もっかい出直しな」
 アレクサンドルの瞳がユーベルコードに輝く。
 魔力解放(スーパーパワー)によってもたらされた黄金の魔力が拳に宿る。

 超音速の戦い。
 アレクサンドルと徒手空拳の少年の踏み込みの速度は、言葉にするのならば、そのような言葉でしか現せなかった。
 彼等二人の体が動く度に大気の壁を突き破る雷鳴の如き音が響き渡る。
『モーニア』はそれを見つめることしかできなかっただろう。
 神話の再現の如き戦い。
 雷鳴が轟くようにアレクサンドルと徒手空拳の少年の拳が『スターヴ』を打ち据える。

「喰わせろ、それを――!」
 咆哮が轟く。
 しかし、それは叶わない。アレクサンドルは『スターヴ』の巨躯が少年の一撃で浮かび上がるのを見逃さなかった。
「いいや、無理だね、どだいな無理な話だ。それはな!」
 アレクサンドルの拳が轟音を響かせながら『スターヴ』の胸を貫く。
 それは『スターヴ』を追い詰める一撃。
 そして、彼の求めるものが、これより先一片たりとも得られることがないことを示していた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

大町・詩乃
『ざんねんないきもの辞典』行きがまた一つ…。

「単体の戦闘能力の強さを求めましたか。
ですが強さとは多様なもの。
知力も、人を惹きつける魅力も、人と人を繋ぐ優しさも、強さとなりえます。それを証明してみせましょう!」

煌月舞照で1200本ほどの煌月の複製を作り、200本ほどは詩乃の頭上から地面に至る幾つかのラインに分けて配置(要は避雷針)。
残り1000本は光の属性攻撃・神罰を纏わせ、スターヴを包囲する様に貫通攻撃。

天耀鏡を大型化。
オーラ防御を纏わせてモーニアさんとアズマさんの頭上に配置し、稲妻を盾受けでかばう。

最後に「モーニアさんとアズマさんが幸せに真っ直ぐに生きていける事を祈っていますね♪」と笑顔で。



『魔法使いの時代』においてユーベルコードを扱う者は未だ稀有なる存在。
 巡礼の魔法使い『モーニア』もまたその一人であった。
 しかし、彼女のユーベルコードは稲妻を操るものであり、暴走の危険性を持つものであった。周囲を巻き込まぬために巡礼の旅へと出た彼女は徒手空拳の少年と出逢い、魔王たる『飢餓王』、『スターヴ』との戦いに赴く。

 勝てる見込みはなかった。
 それほどまでに『スターヴ』の力は強大であったからだ。
 けれど、それでも『モーニア』はよかったのだ。己の戦いがあとに続く者の礎になるのならば。
 制御しきれぬ力は、徒に周囲を傷つけるだけであると知っていたからだ。
「――『アズマ』! 踏み込みすぎだ!」
 彼女の言葉を受けながら徒手空拳の少年は『スターヴ』と打ち合う。
 猟兵の拳を胸に受けて『スターヴ』は血を噴出させながらも、その緑色の瞳を向ける度に稲妻を走らせる。
 その稲妻と『モーニア』の放つ力が激突する。完全に相殺はできない。けれど、それでも何もしないよりはマシであった。

「無駄だ。稲妻は奔る。強さこそが全て。あらゆる障害も何もかも滅ぼして、高みに登る。天頂に在り続けるのだ」
『スターヴ』の咆哮とともに雷鳴が轟く。
 だが、稲妻は『モーニア』たちに届くことはなかった。
 煌めく月の如き薙刀が宙を走る。それは避雷針のように空中を走る稲妻を受け止めて砕けていく。

「単体の戦闘能力の強さを求めましたか。ですが、強さとは多様なもの」
『スナークゾーン』に舞い降りた大町・詩乃(阿斯訶備媛・f17458)は、その瞳にユーベルコードの輝きを宿す。
 神力によって創造した薙刀の複製がずらりと並ぶ。
 千を超える複製は、空を埋める。その威容を見上げて尚、『スターヴ』は怯むことはなかった。
 包囲するように、煌月舞照(コウゲツブショウ)の如き斬撃が飛ぶ。
 拳が、蹴撃が薙刀をへし折り、砕き、しかし数に押されて貫かれていく。

「数など無意味。単一の力こそが全て」
 迸る血潮。
 けれど、『スターヴ』は止まらない。その姿を見やる詩乃。神が堕した姿は、彼女にとって見るに耐えぬものであったことだろう。
『神々の時代』は終わりを告げ、人の世に時代は移ろう。
 人は神の手を離れている。
 このヒーローズアースにおいてもそうだ。神から離れた人々は力弱く存在であろう。けれど、それでも詩乃は知っているのだ。
 これから数多の時代が巡ることを。
 絶えず紡がれていくことを。

「知力も、人を惹きつける魅力も、人と人を繋ぐ優しさも、強さとなりえます」
 迸る緑色の稲妻を大型化させた鏡でもって詩乃は受け止める。
 己と『モーニア』、徒手空拳の少年を狙った極大の稲妻を受け止めたのだ。
 火花を散らせるようにユーベルコードの稲妻が盾とした鏡の上で弾けていく。凄まじい威力。
 けれど、詩乃は証明しなければならない。
 力の強さだけが全てではないと。
 戦う力だけが力ではないのだと、彼女は知らしめる。己がかばう二人を見れば、わかる。

「『モーニア』さんと『アズマ』さんが幸せに真っ直ぐに生きていけることを、そんな未来を私は守ります、祈ります!」
 それは笑顔で告げられた言葉であった。
 おおよそ戦場に似つかわしい言葉と表情であったことだろう。けれど、それが神性宿す詩乃にとっての、偽らざる願いであった。
 どれだけ時が過ぎても変わることのない、詩乃の願いであった。

 誰かを思う時、人は力を発露させる。
 それを弱さとは言わせない。そして強さとも違うものである。
「煌く月よ、空を舞って世界を照らし、清浄なる光と刃で悪しき存在を無に帰しなさい」
 答えはまだ出ない。
 だからこそ、その答えが出るまでの時間を詩乃は護るのだ。
 魔王城の天井を砕きながら、千を超える薙刀が一斉に『スターヴ』に襲いかかる。斬撃は千を超える。
 砕き、霧消しながらも『スターヴ』の肉体を矢の如く貫く煌きは、仮想世界であったとしても、現実の未来を照らす月光のように輝くのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
ああ、あなたがでますかー。わかりましたー。

人格交代
第四『不動なる者』まとめ&盾役武士
一人称:わし 質実剛健古風
武器:黒曜山

わりと短絡的な考えに至った相手よな?それで得た強さは、己のものではないのに。

守る場を有利にするのも、わしの範囲内でな。
先制攻撃の早業、二回攻撃によるUCを地面へ。出来れば…わしや二人のおる付近をな。

ふふ、命中率が高いということは、狙いが分かりやすいということよ。
この黒曜石の地面あるかぎり、その攻撃も無駄であるがな?
安全地帯を作りつつの突撃である…黒曜山は未来を写すゆえ、動きは見切った。
わしで斬りつけたり、『アズマ』殿が殴打したりするであろうよ。

守るものを、わしは間違えぬよ。



『魔法使いの時代』における魔王、『飢餓王』、『スターヴ』は咆哮する。
 千を超える斬撃が彼の体を貫き、切り裂く。
 血潮が噴出し、響くは痛みにあえぐ声ではなかった。あったのは飢餓以外の感情、それは憤怒である。
「許されるわけがない。強さを超えるものがあるなどと。そのような世迷い言で惑うものか。強さとは揺るぎないものである。たった一つあるだけで全てを吹き飛ばすものだ。純然たる力こそが、強さそのもの」
 その緑色の瞳が煌めいた瞬間、稲妻が走る。
 ユーベルコードの稲妻。
 雷光が世界を染め上げる。緑色の稲妻は、尽くを滅ぼすだろう。これまでもそうしてきたのだ。

 これからもそうであるはずだったのだ。
 けれど、巡礼の魔法使い『モーニア』も徒手空拳の少年も未だ『スターヴ』は滅ぼせていない。殺せていない。圧倒できていないのだ。
「わりと短絡的な考えに至った相手よな?」
 その声と共に魔王城に広がるのは、黒曜石であった。
 瞬時に打ち込まれた馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の手にした漆黒の剣が、四更・山(シコウ・ザン)によって周囲を変容せしめたのだ。
 四柱の一柱『不動なる者』が『疾き者』より表出させる人格を変え、『モーニア』と徒手空拳の少年を護る。
 稲妻を無効化する黒曜石は、彼等に攻撃を届かせないだろう。

「喰らう。喰らう。喰らいつくして、強さを。最上なる強さを得るのだ。おまえたちの強さをよこせ――!」
 鮮烈なる記憶。
『神々の時代』に見たあの苛烈なる戦いを寄す処に『スターヴ』は強さを求めた。それは足元の覚束ない歩みであったことだろう。
 己で定義せぬ強さなど見上げるばかりで、揺らぐばかりのものであるから。
「それで得た強さは、己のものではないのに」
『不動なる者』はその名の通り、揺らぐことはない。
 どれだけ飢餓の咆哮を聞こうとも、強大な力の発露を見ようとも、その心は揺らがない。揺れぬということは、大山の如きこと。

「なら、それは強さってことだなー」
 徒手空拳の少年が黒曜石の地面を蹴って進む。
 緑色の稲妻が走ろうとも、大地に覆われた黒曜石を蹴撃で砕いて盾としながら走るのだ。戦いのセンスが違う。
『不動なる者』もまた走る。
 黒曜石の破片は未来を写すものである。
 それが彼の手にした剣の力だ。そして、『スターヴ』の放つユーベルコードはどれも単調なものだ。
「力の強大さに飲まれたが故に、発露もまた単純明快。すでに見切った」

 稲妻はもう二人には届かないだろう。
「何故、届かない。天頂にあるはずだ。これまでもそうだったのだ。これからもそうであるはずだ。天頂は此処である以上、これ以上はないはずだ。この身こそが最強であるはずだ」
 その言葉は何処か頼りないものであった。
 揺らいでいるのだ。
『スターヴ』自身が揺らいでいる。
 猟兵たちに打撃を受けて、その強さを支えるものが折れそうになっている。

 どれだけ稲妻を迸らせようとも、『不動なる者』には届かない。徒手空拳の少年にも至ることはない。
 黒曜石の破片が煌めく度に、あらゆる力が無効化されるのだ。
「アンタのそれは、そんなにも揺らいでいる。あの人のように揺らがぬことを知らないからだ。荒れ狂うことばかりをしているからそうなる」
『不動なる者』は、徒手空拳の少年の言葉に然りと頷くだろう。

 そう、二度と『不動なる者』は違えない。
 何を、と『スターヴ』は問うだろう。それは、既に『スターヴ』が摩耗して喪ったものであり、捨て去ったものである。
 もう二度と手に入らないものであるからこそ、『不動なる者』はユーベルコードに煌めく剣を振るう。
 漆黒の煌きを見せる剣の閃き。
 その一閃を防御しようとしても遅い。徒手空拳の少年の蹴撃がガードをこじ開ける。
「守るものを、わしは間違えぬよ」
 それこそが『不動なる者』を不動足らしめる軸。

 剣閃は、強さ以外の何物をも切り捨てた者を切り裂く――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

サージェ・ライト
(なんか難しい話してるなーって顔で後方待機なクノイチ)
あ、お話終わりましたか?
えへへ、ちょっと現実逃避してました(てへぺろ)
強い弱いはともかく、最後に立っていた方が勝利者だー!

そんなわけで隠れず臆せず【威風堂々】とクノイチまいりまーす!
ふっ、そんな雷に打たれたところで
あばばばばーーー?!
ぐふ……女の子が出しちゃいけない悲鳴をあげた気がします(ぽて)
ですがこの程度シリカのひっかきに比べたら!(がばっ)
あなたにあげるものは何ひとつありません!
クノイチらしくダッシュと残像を残すくらいの高速移動で翻弄しましょう
懐まで飛び込んだら
カタールでちぇすとー!!
怯ませたところで、あとはアズマさんお願いしまーす!



 黒曜石の破片が舞い散る中、放たれた剣閃は『スターヴ』の巨躯を切り裂く。
 血潮が噴出する。
 失われると『スターヴ』は思った。
 己の血肉が失われるということは、これまで食らってきたものを失うことと同義であった。そして、その食らったものは全て己が鏖殺してきたものである。
 だからこそ、彼は咆哮する。
 己から奪うもの全てを呪う。
「奪うばかりでは得られぬものが在ると知れ。『スターヴ』! 私はもう恐れない!」
 巡礼の魔法使い『モーニア』が叫ぶ。

 彼女は恐れていた。かの『飢餓王』の強大な力の前に己が死ぬことを、何も為し得ぬままに死ぬことを恐れていた。
 後に続くものの礎になればいいと思って居た己を恥じたのだ。
 死を覚悟したものとと、死を受容するものとでは、結果が同じ死であったとしても、その道程で得るものは雲泥の差がある。
「お前たち巨悪が人の生命を、人の営みを阻むというのなら!」
「無駄だ。正義だ悪だとのたまう全ては強さの前に霞む。消え失せる。最強こそがこの世の全て真理。だから喰わせろ。お前達強き者を、守る者を。そうすることで高みに登ることができる」

 緑色の稲妻が走る。
「あ、お話終わりましたか?」
 なんとも緊張感のない声が聞こえる。サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)はこれまで忍んでいた……わけではなく、なんか難しい話をしているなーって顔で後方待機していたのだ。
 え、今の難しい話だった!? と『モーニア』が驚愕しているが、徒手空拳の少年は変わらず笑っていた。
「えへへ、ちょっと現実逃避してました」
 てへぺろではないが!? と『モーニア』が生真面目にツッコミを入れているのはどういうことなのか。そういうコントかな?

「強い弱いはともかく、最後に立っていた方が勝利者だー!」
 サージェにはむつかしいことはよくわからぬ。しかし、クノイチである。こういう勝利の臭いには敏感なのである。
 そんでもって、クノイチであるが威風堂々(シノベテナイクノイチ)としていることでももっぱら有名である。
 クノイチなのに忍べてないのはいいのかなって誰もが思ったかも知れないが、まあ、いいじゃんって思っているのは徒手空拳の少年であった。
 そう、強さ弱さなど、どうでもいいことだと。

「って、あばばばば――?!」
 ぴしゃーっ! と緑色の稲妻がサージェを撃つ。うわぁっ、と徒手空拳の少年が目を覆わんばかりの悲鳴。女の子が出していい悲鳴ではなかった。
 しかし、サージェは、これくらいのばりぃ! をよく食らっている身である。がばりんちょ。
「しぶといなー」
「シリカのひっかきに比べたら!」
 比較対象がどうにもおかしい気がしないでもない。けれど、それでもサージェは今も立つ。
 クノイチなのに全然忍べてないことにより、彼女の瞳はユーベルコードに煌めく。
 逃げも隠れもしない。
 ただ、それだけのことでサージェの力が膨れ上がっていく。続けて放たれる稲妻を躱す。

 躱せるんだったら、さっきの直撃はなんだったのかというほどに華麗にサージェは躱す。ユーベルコードが拮抗している。
 残像を生み出すほどの高速移動で『スターヴ』を翻弄する。あの稲妻のユーベルコードは視線をむけなければならない。
 ならば、サージェにかかりきりになっていれば、『モーニア』や徒手空拳の少年への注意が散漫になる。
「ちぇすとー!!」
 カタールの斬撃が『スターヴ』を刻む。

 しかし、浅い。
 ここまで懐に入り込んでも尚、『スターヴ』の肉体は強靭であった。けれど、それでもいい。サージェは『スターヴ』をひるませればいい。ガードをこじ開ければいい。
 こちらに注意を払っているからこそ、サージェの背後から飛び出す稲妻と徒手空拳の少年には対処が遅れる。
「『アズマ』さんお願いしまーす!」
「あいよー」
『スターヴ』の巨躯の頭上より放たれる踵落としの一撃。それは落雷の如き轟音を轟かせ、脳天を打ち据え『スターヴ』を始めて大地に叩き伏せるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アスカ・ユークレース
どうやら少年の正体に気づいている者もいるようだけど。私はそもそも未来の彼と面識はないのでその辺の事情は関係ありませんね?さて。
虚しい人ね、飢餓王。目的の無い強さ程虚しいものは無いというのにね。

UCで援護射撃。射程武器の強みを活かした中遠距離からの仲間の援護を行う。

最大122分割の弾幕で足止めし
機動力を削ぎつつ【観察】して相手が慣れ油断してきた頃を見計らい威力重視の弾幕をフェイントをつけて交え騙し討ち

なるほど、少し戦っただけですけど良く判りましたよ。何故貴方が勝てなかったのか、ね。
アドリブ絡み歓迎



 徒手空拳の少年。
 彼の存在は『魔法使いの時代』においても異彩を放つものであったかもしれない。ユーベルコードにまで昇華した徒手空拳を手繰るとは言え、その強さは群を抜いていたことだろう。
 そして、巡礼の魔法使い『モーニア』が呼ぶ名前。
 その名前に猟兵たちは聞き覚えがあっただろう。けれど、ここが過去の地球の再現仮想世界であったとして、この過去より未来に続く先に存在していた男と同一存在であるという確証はない。
 何より『スナークゾーン』に存在していた『神々の時代』に居た男と背格好が違う。
 類似しているのは、その技のみである。

「どうやら少年の正体に気づいている者もいるようだけど」
 そもそもアスカ・ユークレース(電子の射手・f03928)は過去も未来も関係ない。面識がないからであるし、それに今は戦いの最中である。
 今の少年だけがアスカにとって見るべき存在である。
 そして、『飢餓王』、『スターヴ』が大地に叩き伏せられる。砕けた大地から立ち上がり、咆哮する『スターヴ』。
「この強さが欲しい。この鮮烈なる強さが。これさえあったのならば、他の何も必要はない」
 その咆哮は空虚であった。
 例え、望む強さを手に入れたとしても、何処にも向かうことはできない。何も為し得ない。ただ強さという概念だけが残る存在となって、ただ時に流されていくだけだ。

「虚しい人ね、『飢餓王』。目的のない強さ程虚しいものはないと言うのにね」
 電子星装:獅子の衣(エトワールギア・モデルレオ)が翻る。
 装着携行式固定砲台がアスカの兵装から生み出される。その訪問は百を超える。光弾が魔王城へと打ち込まれる。
 その軌跡は雨のように。
 降り注ぐ光弾が『スターヴ』の巨躯を穿つ。けれど、巨大化した爪が光弾を振り払い、アスカへと踏み出す。
 砕ける大地。
 地鳴りのように一歩が響き渡る。
 アスカは知っただろう。あれが『スターヴ』の強さへの執着である。強さのみを求め、強き者を喰らい、その血肉で持って己が天頂に足るべき存在であると信じているオブリビオンである。

 到達点はない。
 天頂に在り続けることだけが目的の存在に可能性という未来は見えない。強さも弱さもなにかも過去になってしまう。
 一過性のものであると言われれば、それまでである。けれど、アスカは頭を振る。
「なるほど、少し戦っただけですけどよく分かりましたよ」
 何を、と『スターヴ』は叫ばない。
 あるのは飢餓のみ。他者を喰らい続けてきたからこそ、他者の言葉に耳を貸すことはない。

「その強さをよこせ。喰らわせろ!」
 伸びる巨大な爪。巨躯が振るう一撃は巡礼の魔法使い『モーニア』の稲妻のユーベルコードによってアスカに迫る前に叩き落される。
 落とされた腕へと叩き込まれる徒手空拳の少年の打撃からの投げ技。あの巨躯を空中に放り投げる尋常ならざる膂力。
 ああ、とアスカはため息を吐き出すようにそのさまを見ていた。
 理解できたのだ。
 過去にあっても、今にあっても、『スターヴ』が何故滅びたのか。
「そして、何故貴方が勝てなかったのか、ね」

 光弾の弾幕が空中に投げられた『スターヴ』へと迫る。
 しかし、その弾幕を尽く防ぎながら『スターヴ』は緑色の瞳をアスカに向ける。その強さを求め、ただそれだけを貪らんとする存在の咆哮が降り注ぐ。
 アスカは恐れない。
 その咆哮は空虚そのものであったから。
「獅子の如く……強く、美しく……煌めけ!」
 砲門に光が集約され、放つ光条の一撃が『スターヴ』の胴を貫いた。

 他者に求めるばかりのものは、己の中から何も生み出せない。
 だから、『スターヴ』は敗北し続けるのだと光条の軌跡にアスカは呟くのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
強さが全て、ね
時代や世界によっては
間違いと言い切れないのかもしれないけれど
そうは思いたくないね

そして神が強いという事と
人間が神に敵わないという事は同義ではないよ

まあ、頼もしい

言い返している時間もないし
適度な距離を心掛けつつ
ガトリングガンの射撃で攻撃
二人を援護しながら戦おう

相手はオブビリオンだからね
類似の敵と言うか別のスターヴと戦った事もあるよ
その時の経験を元に敵の攻撃を予測して回避
相手の間合いや動作について
二人に助言しながら戦おう

力に飢えているというのであれば
自身が撃ち倒される程の強さを
腹一杯堪能していくと良いさ

オブビリオンである以上変わる事は無いかもしれないけど
別の強さがある事を見せてやろう



 光条が『スターヴ』の胴を貫く。
 巨躯に大穴を開けて血潮を噴出させながらも『スターヴ』は立つ。瓦礫となった魔王城に立つ。
 そこだけが己の場所であるというように『スターヴ』は、咆哮する。
 喪った血潮は己の強さの証明である。
 これまで食らってきた者全てである。喰らい続けることによって『スターヴ』は天頂に在り続けた者である。
 あらやる勇者が立ち向かい、この血肉となった。
 巡礼の魔法使い『モーニア』もまた同様であったことだろう。けれど、そうはならない。此処が過去の再現であるからではない。
「強さ。強さこそが全てを解決する。全て、全て、全てだ!」

「強さが全て、ね」
 たしかにそれは時代によっては間違いだといい切れないものがあっただろう。
 強くなければ人は生きてはいけない。
 そういうものだ。弱者は淘汰されるものであるから。強さとは前提条件であったのかも知れない。けれど、それ以外もあると知るからこそ、そうとは思いたくはないのだ。
 少なくとも、佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)はそうであったのだ。
 元神たる『スターヴ』は言うまでもなく強者だ。
 生まれながらの強者であるからこそ、弱者の持つ力を知らない。知ることができるわけがない。

「そして神が強いということと、人間が神に敵わないということは同義ではないよ」
 晶は知っている。
 神ならざる身であったとしても、神に打ち勝つことができるのだと。
 神話の時代からそうであるように。
「まあ、頼もしい」
 内なる邪神が茶化すような物言いをするが、晶は問答する暇はないとガトリングガンの砲身を向ける。
 放つ弾丸は弾幕にもなからないだろう。あれだけの巨躯である。
 猟兵たちの打撃で消耗していたとしても、関係ない。『スターヴ』の意志が己の向いた瞬間、自身の背後から赤い腕が湧き上がるようにして生まれ、晶を襲う。

 だが、晶は知っている。
『スターヴ』という類似した存在を。
 過去の化身。オブリビオンであるからこそ、同一の存在であるとは言えないかもしれない。けれど、その戦いを経験した晶は、それを活かすことができる。
「庸人の錬磨(ヒューマン・エクスペリエンス)……これが人間の力だよ」
 ユーベルコードが瞳に宿る。
 これまでの戦いの経験と、そして類似した敵との戦いに共通点を見出す瞳。
 赤い腕は地面から生える。
 空中に追いすがることはできても、何処までも追うことができるわけではない。

 ワイヤーガンから放たれた鉄線が魔王城の瓦礫に張り巡らされ、その上を晶を走る。
 地面に接地していないのであれば、赤い腕の軌跡は丸見えだ。脅威ですらない。
「なるほどなー。空中に足場を作ればいいってわけかー」
 徒手空拳の少年が巡礼の魔法使い『モーニア』を抱えて鉄線の上を走る。
「私も君等とひとくくりにしないでもらえるかな!?」
 簡単なように言っているが、簡単にできるものではないと『モーニア』は抗議しているが、晶たちはそれを無視した。ちょっと余裕がないからだ。

「どこまでも、どこまでも先を征く。その強さが、この目に刻まれて離れない。鮮烈なる強さ。苛烈なる強さ。それをよこせ――!」
『スターヴ』が迫る。
 その瞳は空虚そのものであった。強さという到達点を見ているようで見ていない。いや、見えていないのだ。
 なぜなら、『スターヴ』が求める強さとは、強さだけで出来ているものではないからだ。

「力に飢えているというのであれば、自身が打ち倒されるほどの強さを腹いっぱい堪能していくと良いさ」
 晶はガトリングガンの砲身を向ける。
 打ち倒される度に強くなるのが人だ。どれだけ時間をかけても克服していく。『モーニア』がそうしようとしていたように、礎となって後に続く者に託す。
 そうして連綿と紡がれてきた戦いの軌跡が、いつか銀河の海にすら到達することを知っている。

 オブリビオンである以上、変わることのない存在となった『スターヴ』にはわからないことだろう。
 けれど。
「別の強さがある。強さとは力だけで成り立つものではない。それを見せてやろう」
 晶はワイヤーを飛び、張り巡らされたそれを切断する。張り巡らされたそれは、かかっていたテンションのままに跳ね回り、鞭のように『スターヴ』を打ち据える。
 さらに打ち込まれる弾丸が『スターヴ』の手数を圧倒し、晶が言ったように満腹になるまで叩き込むのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
オブリビオンとは歪んだ『過去』の再現
同一個体との再戦も珍しくもなし

ですが、此度の魔王との戦いは必然だったのやも…
いえ、詰まらぬ繰り言です

『アズマ』様、ですね?
『モーニア』様の護りはお任せを
貴方は自由に動かれる方がやり易いでしょう

鉤爪を剣と盾にて捌き反撃で消耗強い、魔法使いかばう立ち回り

勝利のみ追い求め、住まう星全て滅ぼす愚行に至ったのが我が故郷
次代を護り育む意志など無い強さなど認める訳には行かぬのです

魔王の意識を己と少年に釘付けにしてゆき…

強きのみを求めるが故に、貴方は彼女の勇気を見落とすのです

魔法使いの雷光を直撃させ転機に乗じ一転攻勢

『アズマ』様、合わせます!

斬撃で動き封じ、盾殴打で叩き伏せ



 オブリビオンとは過去の化身。
 躯の海へと排出され、堆積した過去が滲み出た存在である。大地が圧縮され岩石と成り果てるように、歪み果てるものである。故に名が同じであったとしても、厳密には同一であるとは言えないのである。
「今更、再戦も珍しくもなし」
 トリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)はしかして、知っている。
『スターヴ』という名のオブリビオンを。
 その存在を。
 これが偶然であると言うことは簡単なことだ。

 過去を再現した仮想空間。
 それが『スナークゾーン』である。だが、トリテレイアは因縁めいたものを感じていたことだろう。
「此度の魔王との戦いは必然だったのやも……」
「どういうことだ?」
 巡礼の魔法使い『モーニア』が首をかしげる。それもそうだろう。彼女たちにとっては、『今』である。
 未来を知り、過去へと立ち返った猟兵たちに知ることができたとしても、彼女たちには知る由もないことである。
「いえ、詰まらぬ操り言です――『アズマ』様、ですね?」

 トリテレイアは、その名を告げる。
 かの『名』は神代より紡がれている。未だ消えることのない名前。それをトリテレイアは呟く。かつては敵の名。今は……。
「『モーニア』様の護りはお任せを。貴方は自由に動かれる方がやりやすいでしょう」
「たしかに。ちょこっと重いって思っていた所ー」
 おい! と『モーニア』が抱えられていた少年の腕から暴れて降りる。徒手空拳の少年は薄紅色の瞳を笑みに形を変えながら、それじゃあ、というように『スターヴ』へと走り出す。

 同一の存在ではない。
 過去に在りし『神々の時代』の徒手空拳の男とも違う。けれど、その業は同一。紡がれているのだ。
「『モーニア』様は、私の背後に。決して攻撃は届かせますまい」
「ああ、頼のんだ。騎士殿」
 その言葉を受けてトリテレイアは疾駆する。戦場にありて、先駆けを譲ったものであるが、それでも戦いの場において共に戦う者がいるということは心強いものである。
 猟兵の戦いはいつだって一人ではない。

 これが弱さの発露であるというのならば、それは孤独を知らぬ者である。
「強さ。強さ。強さ。その強さをよこせ。おまえたちの戦いは、狂わせる。天頂ではないことを知らしめる。それがどうにも許せぬ」
『スターヴ』が咆哮する。
 胴を穿たれ、満身創痍になりながらも巨躯を震わせ、その力を発露させる。巨大化された鉤爪の如き巨腕が振るわれる。
 熟練戦闘技巧(バトルアーツ)は、その巨腕すらも受け止めてみせる。本来であれば、機体スペック的に巨腕に押しつぶされても仕方ないものである。

 けれど、トリテレイアのユーベルコードにまで昇華された技量は、性能差を埋める戦闘技量でもって『スターヴ』の判断ミスを誘発させる。
 迸る雷光。
 それは『モーニア』のユーベルコードであった。
『スターヴ』が警戒していたのは、徒手空拳の少年とトリテレイアばかりであった。彼等の一撃は『スターヴ』を打ちのめすのに十分な威力を持っていたからだ。
 けれど、それは判断ミスである。
「勝利のみを追い求め、住まう星全て滅ぼす愚行に至ったのが我が故郷。時代を護り育む意志など無い強さなど認める訳には行かぬのです」

 ただ、己だけが存在すればいい。
 たったそれだけのために失われる生命がどれほどのものになるのかを強者は知らない。故に滅びるのだ。
 どんな時代であってもそうだ。強者は、さらなる強者に打倒される。だが、それだけでは人の連綿たる歴史は紡がれない。
「強さのみを求めるが故に、貴方は彼女の勇気を見落としたのです」
『モーニア』の雷光は、たしかにか弱いものであっただろう。『スターヴ』にとっては、そうだ。
 けれど、その雷光が導くのは騎士の一閃である。

 剣が閃き、『スターヴ』の腕を切り落とす。
「『アズマ』様、合わせます!」
 徒手空拳の少年が飛び込む。巨躯など意味のないことであると知らしめるように、その小さな体から放たれる蹴撃の一撃が『スターヴ』の体をガードごとへし折る。
 だが、それだけでは足りない。
 トリテレイアは反対側から盾の殴打を加える。
 挟み込むような一撃は、『スターヴ』の体を軋ませ、骨という骨を砕く。

「これが人の強さ。貴方が追い求めたものではない。純然たる力だけではないもの。いつのときもそうでありましょう。綯い交ぜになって、織り込まれ、そして様々な色を見せるように。強さの定義は千差万別なれど、ただの力に及ばぬものなど何一つないのです――」

大成功 🔵​🔵​🔵​

月夜・玲
期待されたなら応えてあげるのがエンターテイナー
いや別にエンターテイナーじゃないけど
ご期待通り、四刀流でお相手しようかな
さあ、超克の時間だ
オーバーロード、外装展開
模造神器…全抜刀
さあ、始めようか

強ささえあれば何も要らない…確かにそれもまた一つの真理ではあるね
優しさがどうこうだなんて、私は言わないよ
強い者が多くを得るのも、また事実なんだしね
だけどね、君みたいに強さが目的の人生なんて…つまんないじゃない
強さは…最強はあくまで手段
何かを成すための道に過ぎないって思う
だから私は、君に負ける訳にはいかない


【Code:F.G】起動
宙に浮き、足元からくる手の群れを宙に逃れて回避しつつ手の群れに対して超重力を放ち大地に釘付けにする
そして上空から一気にスターヴに対して加速降下して勢いを乗せた四刀同時『串刺し』で攻撃
そして至近距離から『斬撃波』を放って『吹き飛ばし』て更に再度接近して『なぎ払い』、連続攻撃を仕掛けていこう
手の群れは常時重力で押しつぶして捕まらないよう注意だね

さあ、最後に立つのはどっちだろうね



 蹴撃と盾の殴打によって骨がきしみ、砕ける音が響く。
『飢餓王』と呼ばれた『スターヴ』の両腕がだらりと垂れ下がる。
 それは猟兵たちと徒手空拳の少年、そして巡礼の魔法使い『モーニア』が彼を追い込んでいる証拠でもあった。
 穿たれた胴。
 無数に打ち込まれた弾丸。
 斬撃の痕。
 どれもが満身創痍へと『スターヴ』を追い込んだ証である。
 失われた血潮は、まるでこれまで『スターヴ』が貪り、食らってきた者たちへの弔いのように流れ続けている。
「失われていく。強さが。食らってきた強さが、流れていく」
『スターヴ』にとって、強さとは奪い、喰らうものであった。

 強者を喰らう度に己の力は天頂を維持する。
 果てなど無い。あるわけがない。彼は満ち足りる事を知らない。底の抜けた杯に血潮を注ぎ込んでも満たされることがないように。
「だめだ。だめだ。だめだ。あの強さを、あの鮮烈なる強さを、追い求めてきた結果がこれなど」
 あってはならないと、己の今を否定する咆哮が轟く。
「――……だから、だよ。そんな強さに価値なんてない」
 徒手空拳の少年が呟く。
 其処に在ったのは悲しみでもなければ、憐憫でもない。淡々とした瞳であった。そして、少年は見やる。
 その薄紅色の瞳で、蒼き輝きを発露させる剣士を。

「期待されたなら応えてあげるのがエンターテイナー。いや別にエンターテイナーじゃないけど」
 月夜・玲(頂の探究者・f01605)は、薄紅色の瞳を前にひらりと手をふる。
「ご期待通り、四刀流でお相手しようかな」
 模造神器は四振り。
 人の手は一対。なれば、振るうことができるのは二振りのみ。されど、此処にあるのは剣士にあらず。そして召喚士ですらない。

 虚空より転送される外装副腕。
 これが人の叡智が至る到達点。巨腕が玲の背後に現れる。ただの道を征くだけでは得られぬ力。
 克己のさらに先。超克によって得られる力の発露。
 それをオーバーロードと呼ぶ。蒼光の稲妻が弾けるようにして世界を染め上げていく。
「模造神器……全抜刀。さあ、始めようか」
 リミッターは全て解除されている。
 ふわりと浮かび上がる体。超能力ではない。重力を制御することによって得られる力。
 Code:F.G(コード・フル・グラビティ)は周囲空間の重力を掌握することによって初めて扱う事のできるユーベルコードである。
 大地より溢れるようにして襲う赤い腕も、重力操作によって飛ぶ玲を捕らえることはできない。
 凄まじい速度で飛翔する玲は、その尽くを四振りの斬撃より放たれる超重力によって大地に釘付けにする。
 周囲に吹き荒れる超重力の嵐。
『スターヴ』の呻く声が聞こえる。けれど、その超重力の境目を飛ぶのは徒手空拳の少年であった。
 付いてきている、と玲は笑った。

「強ささえあれば何も要らない……確かにそれもまた一つの真理ではあるね」
「そうだ。強さこそが真理。おまえたちの強さこそが、それだ。真理だ。求めるに値するものだ」
「けれど、それだけでは足りないんだよ。わかっているんだろう、アンタも」
 少年の言葉が響く。
 徒手空拳の少年は強いだけの力に価値はないと言った。優しさが必要であると。
 けれど、玲は頭を振る。
「優しさがどうこうだなんて、私は言わないよ。強い者が多くを得るのも、また事実なんだしね」
 いつだってそうだ。
 強さを持つことが前提条件である。優しさというのは弱さ似合ったところで欺瞞にしかなりえない。それはいつしか誰かを傷つける嘘になってしまうものであるのだから。

「だけどね、君みたいに強さが目的の人生なんて……つまんないじゃない」
 振るう斬撃が『スターヴ』の振るわれた拳を真正面から切り裂く。
 さらに横合いから奮った一撃が両断する。
「強さは……最強はあくまで手段。何かを成すための道に過ぎないって思う」
 力持つ者が優しさを兼ね備えるのならば、それは何物にも負けてはならないのだ。そして、元神である『スターヴ』には理解できていたはずのことだ。
 神の似姿として創造された人間。
 
 その人間たちは、いつだって殺されてしまうかもしれないが、負けるようには造られていなかった。
 多くの血肉を食らってきた『スターヴ』にそれが理解できなかったらこその空虚。天頂にありて、その空虚さを埋めることのできなかった唯一の要因。
 神が持たず、人が持つもの。
「だから私は、君に負ける訳にはいかない」
 玲が踏み込む。
 瞳にあるのは超克の輝き。
 オーバーロードの先にあるのは、いつだって彼女が求める頂。
 至近距離からの斬撃が『スターヴ』の巨躯を吹き飛ばし、さらに踏み込む。もっと、先へ。さらなる先へ。
 見果てぬものを追い求めるのだとしても、見失うことのない光を玲は見ている。

 最後に立つのはどちらか。

 言うまでもない。
「ああ、人は大丈夫だよ。ずっと前からわかっていたことだけどさー。俺はその先が見てみたいと思ったから、付いてきているだけに過ぎないんだ」
 徒手空拳の少年は、薄紅色の瞳を爛々と輝かせながら、その蒼光の軌跡を見やる。
 玲の振るう模造神器の四振りが『スターヴ』の巨躯を切り裂く。
 最後の一撃は、いつだって玲の胸に何かを去来させる。
 得るものはあったのか。
 喪ったものはあったのか。

 問いかけは終わらない。故に飢餓の先に満たされぬを知る者を、蒼光の斬撃は切り裂き、霧消させるのであった。
 失われた今までと、紡がれていくこれから。その可能性へこそ玲は駆けていくのだから――。

●後年
 魔法使いの時代は終わりを告げる。
『スナークゾーン』においても、変わらぬことであった。時代は紡がれていくものであるからこそ。
 人の営みは続いていく。
 例え、神代の名残があるのだとしても。人は人の歴史を紡いでいく。たとえ、それが戦いの連続であるのだとしても、人の強さは神々の得られぬものであったから。
「それじゃあ、ここでお別れだ、『アズマ』」
「ああ、楽しかったよ。得難いものを得たように思える。アンタそうだろう?」

 徒手空拳の少年が巡礼の魔法使い『モーニア』と向き合っている。
 魔王『スターヴ』は打ち倒された。旅は此処で終わり。彼女と彼の間には、別れを惜しむような気配はなかった。
 さっぱりとしたものだったし、清々しさすら感じさせるものであった。
「困ったことが在ったのなら、呼んでくれよ。暇だし」
「そうならないようにするのが私の役目だ。けれど、そうだな……もしも、だけれど。もしも、私の子孫が困っているようだったら、助けてやってほしい。私の子孫じゃなくてもだ、というのは欲張りかもしれないが」

 その言葉に少年は笑った。
 よく笑う少年だったと、後年『モーニア』は語る。
 近代まで脈々と続くスピリットヒーローの家系の太祖は、かつての旅を子孫に語って聞かせた。
 その中に徒手空拳だけではなく、共に魔王を討伐するために戦ってくれた猟兵たちの名もまた紡がれる。

 そして、時は世界を分かつ。
『魔法使いの時代』に確認された力がある。弾丸を打ち込む兵器。鋼鉄の巨人。それらは急速に人の力と変わっていく。そして、野望はいつの時代も煌々と立ち上るのだ。
 力が力を呼ぶように。

「手助けはいるかな? あの娘を助けたいんだろう、『マーサス』――」

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年04月08日


挿絵イラスト