神々の雷鳴、その名は
●神々の時代
歌が歌われていると最初に気がついたのは何故だろうか。
常に己の耳に届くのは弱者の声であった。
誰もが救いを願っている。そして、己はそれに『応えるべき』であると思っている。力ある者の責務ではない。
ただ、そうあれかしと願われた者であるから、己はそうするのだ。
「常勝にして不敗。無手にして最強。負けることはなく。その時代に置いて常に最強たる英雄の名」
歌が響く。
神譜奏者『シンフォニック・リリッカーズ』は歌う。
その名を。
時は神代。人の姿はなく、あるのは神々と不死の怪物のみ。その歩みは遅々たるものであった。常に争いだけが満ちる世界。
強き力がなければ生きることはできない。
されど、その名を持つものは否と己の拳を持って示す。
「強くなければ生きてはいけない。だが、優しくなければ生きている資格すらない」
拳は大地を砕き、蹴撃は海を切り裂く。
強き者。神々が求めた不死の怪物すら殺し、神々すら鏖殺せしめる可能性を持つ存在。
その名は『■■■』――。
●抒情詩
『スナークゾーン』は過去のヒーローズアース全て……地球まるごとを再現した空間である。
仮想空間であることには違いはない。
しかし、現実空間にどのような影響を及ぼすのかは未だわからない。そして、オブリビオンは『スナークゾーン』にありて世界を滅ぼすこと目的としている。
「神々の駆逐を為す。ワタシはそのために此処に在る。『不死の怪物』を封じ込めた偉大な神々も、『神話怪物』へと成り果てた『シンフォニック・リリッカーズ』を止めることはできやしないさ」
『アシュラレディ』は雷光煌めく曇天の中で笑う。
此処は神々の時代。
ヒーローズアースの黎明期。
未だ人の姿はなく、あるのは神々と『不死の怪物』だけである。
超古代と呼ぶに相応しい時代である。『アシュラレディ』はこれを滅ぼす。神々が滅びれば生命創造は為し得ない。
世界の中心――センターオブジアースに焚べる『不死の怪物』のユーベルコードを『シンフォニック・リリッカーズ』は吸収し、『神話怪物』へと変貌を遂げる。
『アシュラレディ』の言葉通り、神々は鏖殺されるだろう。
だが、その前に一人の男がが立つ。
薄紅の瞳を爛々と輝かせる。
「なんだ、オマエは。神ではないな。神の作り出した木偶か? 神の力も加護もなしにワタシたちを阻もうというのか」
目の前の男に『アシュラレディ』は何の脅威も感じていなかった。何故ならば、目の前の男は無手であったからだ。
武器らしい武器もなく。
神々の加護もなく。
ただ脆弱な肉体だけで己たちの前に立ちふさがっている。雷光が、男を照らし出した瞬間、『神話怪物』へと成り果てた『シンフォニック・リリッカーズ』が飛びかかる。
だが、次の瞬間、『シンフォニック・リリッカーズ』たちはたちまちの内に霧消する。
何をしたのか『アシュラレディ』にはわからなかった。
「――ッ!?」
「……――戦うことが怖くはないのか」
男は言う。
静かな言葉であった。戦いに際して言う言葉ではなかった。戦いに恐れを感じているのならば、何故この場に立っているのだと『アシュラレディ』は思っただろう。
彼女は戦場の神である。
戦いと殺戮の中でしか存在できない神性である。戦いにあるのは喜びだけだ。恐れがあるのだとすれば己に対峙する者にだけである。だからこそ、『アシュラレディ』は雷鳴の向こうにあるその男の薄紅色の瞳が爛々と輝くのを見た瞬間、悟る。
「コイツだ……! コイツが……!!」
まともに戦ってはならない。『神話怪物』すら素手屠りさる者。真の強者とは、神々の理外の外に在る者であると知らしめる。
――不敗を象る名。
●スナークゾーン
グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)であった。
「お集まり頂きありがとうございます。今回の事件はヒーローズアース……オウガ・フォーミュラ『ミストレス・バンダースナッチ』の撃破によるものか、世界各地に謎のクライシスゾーン、通称『スナークゾーン』が現れたのです」
スナークゾーンの中は『過去のヒーローズアース全て』を再現した超広大な空間になっており、大自然や宇宙の根源的な力を操るスピリットヒーローにも原理が判ってないのだ。
そして、オブリビオンはスナークゾーンの中で『過去のヒーローズアース全てを破壊するレベル』の、つまりはオブリビオン・フォーミュラにも匹敵する悪事を展開しているのだ。
「確かにゾーンの内部は仮想世界です。ですが、現実世界にどのような影響を与えるのかもまだわかっていないのです。そして、仮想世界とは言え、オブリビオンの目論見を成就させることもまた座視できぬことです」
今回のスナークゾーンは『神々の時代』である。
ヒーローズアースのセンターオブジアースが成り立つ時代である。センターオブジアースに不死の怪物を封じ込め、焚べることによって生まれた生命創造の礎。
その時代にオブリビオン『アシュラレディ』は現れ、神々が討伐した怪物のユーベルコードを吸収した『神話怪物オブリビオン軍団』と共に神々を駆逐しようとしているのだ。
「もし、神々が駆逐されれば、生命創造の礎は消え失せ、人間が生まれることもないでしょう。まずは『神話怪物』と変貌した『シンフォニック・リリッカーズ』を打倒しましょう。そして……この戦場には一人の男神がいます。正確には神ではないようですが、『神話怪物』のオブリビオン軍団を相手に孤軍奮闘しています」
彼と協力し、オブリビオンの群れを撃退しなければ、センターオブジアースを制圧している『アシュラレディ』には辿り着けない。
すでに『アシュラレディ』はセンターオブジアースにある『原初の獣』と呼ばれる怪物王のユーベルコードを吸収している。
「これは『自身のユーベルコードの効果範囲を無限に拡大できる』という凄まじい特性を有している事を示しています」
ナイアルテの言葉は、『アシュラレディ』が尋常ならざる敵へと変貌を遂げていることを告げている。
『アシュラレディ』において、距離はすでに意味をなさない。どこの距離からでも攻撃を放ち、襲ってくるということだ。
「『アシュラレディ』を打倒するこができれば、『スナークゾーン』もまた消滅します。現実世界に影響を及ぼすかもしれない『アシュラレディ』の目論見。これをどうか打倒していただきたいのです」
ナイアルテは再び頭を下げ、猟兵達を見送る。
神々の雷鳴。
その雷光が煌めく時、猟兵達は見るだろう。仮想が現実を凌駕する瞬間を――。
海鶴
マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
今回はヒーローズアースにおいて発生した『スナークゾーン』に存在するオブリビオンたちの目論見を打破するシナリオになります。
今回の『スナークゾーン』は『神々の時代』です。
スナークゾーンのシリーズとして各時代を巡っていくシナリオ群になります。
※このシナリオは二章で構成されたシナリオになります。
●第一章
集団戦です。
生命創造の礎である『不死の怪物』たちのユーベルコードを吸収したオブリビオン『シンフォニック・リリッカーズ』が『神話怪物』となり、軍団の如き数でもって神々を駆逐せんと迫っています。
これに立ちふさがる一人の男。
徒手空拳の男神ではないようですが、彼と協力しオブリビオンの群れを撃退しましょう。
●第二章
ボス戦です。
センターオブジアースを制圧していた『アシュラレディ』との戦いになります。
ですが、彼女は世界の中心『センターオブジアース』から『原初の獣』と呼ばれる怪物王のユーベルコードを吸収したことにより『自身のユーベルコードの効果範囲を無限に拡大できる』という凄まじい特性を身につけています。
前章の男も加勢してくれます。
これを撃破すれば男は皆さんに礼を告げるでしょう。
『スナークゾーン』もまた消滅します。
それでは、ヒーローズアースにおける『神々の時代』を再現したスナークゾーンにおける皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
第1章 集団戦
『神譜奏者『シンフォニック・リリッカーズ』』
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POW : 追奏するカノン
【追唱する仲間】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
SPD : 不協和音のディゾナンス
【相手の出だしを挫く先制攻撃】【立て直しを妨げる追撃】【カウンターを許さない追い討ち】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ : 熱唱するサビ
予め【イントロから歌い続ける】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
イラスト:つかさ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
徒手空拳の男の拳が『シンフォニック・リリッカーズ』の体を穿ち、砕く。蹴撃はただの一撃で『神話怪物』と成り果てた彼女たちを寄せ付けない。
「ありえない。こんな神話を私達は知らない」
「知らないはずの譜面を私達は歌えない」
「神々は『まだ』歌っていないはずの歌が此処に奏でられている」
彼女たちは不死の怪物のユーベルコードを吸収し『神話怪物』へと変貌した存在である。
偉大な神々であっても鏖殺できるだけの力を有している。
だというのに、目の前の徒手空拳の男に圧倒される。数という暴力でようやく抑え込んでいる。いや、違う。抑え込むので手一杯なのだ。
「歌などどうでもいい。お前達は恐ろしくはないのだな。戦うことが。その恐ろしさを知らぬからこそ、お前たちは終わる」
男の拳が凄まじい勢いで『シンフォニック・リリッカーズ』たちを打倒していく。
だが、それだけでは何れ男は『原初の獣』のユーベルコードを吸収した『アシュラレディ』に倒されてしまうかもしれない。
不死の怪物のユーベルコードを吸収したオブリビオンすらも打倒する徒手空拳であっても、オブリビオンには勝てない。
ここは過去の地球を再現した空間。
クライシスゾーン。
だが、この空間の結末が現実世界に如何なる影響を及ぼすかは、未だ判明してない。
この戦いの結果としか思えぬ事象が世界に降りかかるのであれば、猟兵たちは戦うだろう。
世界の悲鳴を聞き届ける生命の埒外。
軋む世界の音に呼応する者たちが、『神々の時代』、世界の中心たるセンターオブジアースに降り立つ。
雷光が煌き、雷鳴が轟く。
此処に神話の歌は響かない――。
レナータ・バルダーヌ
えーっと、どういう呼び方が正しいのか……その、神様じゃない方?
お話を聞くにどうもお会いした覚えがあるような……。
まあ、行ってみればわかることですか。
歌を力に変える敵が相手なら、こちらも音で対抗します。
両翼の痕からロケットのように炎を噴出させ、【B.H.エアライド】が生む衝撃波とそれに伴うソニックブームで、敵の歌を掻き消しつつ攻撃します。
神様じゃない方の援護は……とりあえず今は必要なさそうですね。
しかしこの空間、スナークという名前が付いている上にオブリビオンが現れるのでしたら、何者かの意図が働いているのは間違いなさそうですね。
わたしたちの行動によって、少しでも謎が解けるといいのですけど……。
神々の時代に雷鳴が轟く。
雷光の瞬きの内に現れるのは、生命の埒外たる存在。その名を猟兵と呼ぶ。
『スナークゾーン』は仮想世界である。
しかし、その仮想が現実を凌駕することを猟兵達は知っている。世界の悲鳴に応える彼等であるからこそ、この『スナークゾーン』を放置することはできない。
例え、それが『過去の地球を再現した空間』であったとしてもだ。
「私達の知らない歌が響いている」
「それは不条理である。正さなければならない」
「譜面は正しく奏でられるからこそ意味があるのだから」
『神話怪物』の力を得た『シンフォニック・リリッカーズ』たちが歌声を紡ぐ。
彼女たちにとって、歌とは己の存在意義でもある。
その歌を奏でることが、彼女たちの力。イントロダクションのごとくフレーズが紡がれていく。
しかし、その端から拳が、蹴撃が霧消させていくのだ。
「……その歌を響かせるわけにはいかない。紡がせてはならない」
徒手空拳の男が『シンフォニック・リリッカーズ』たちを打ち砕いていく。
そのさまをレナータ・バルダーヌ(護望天・f13031)は見ただろう。そして、彼女はその姿をして、徒手空拳の男が己の知る存在と似通っている事を知る。
「えーっと、どういう呼び方が正しいのか……その、神様じゃない方?」
レナータは戸惑っても居た。
神ではない存在。人の肉体を持つ、人ならざる拳を振るう存在。
グリモア猟兵の言葉を聞いた時から既視感のようなものを感じていたのだ。会ったことがあるとさえ思えただろう。
そして、現実に彼の姿を見た時、全てが同じではないにせよ、彼女はあの拳と蹴撃を知っているのだ。
「『名前』は不要。今は為すべきことを為すのみ」
徒手空拳の男は雷鳴の如き轟音を打ち鳴らしながら拳で『シンフォニック・リリッカーズ』たちを打倒している。
レナータはその言葉にうなずく。
今はまだ援護が必要ないと判断したのだ。
「ええ、この空間、スナークという名前が付いている上にオブリビオンが現れているのでしたら、何者かの意図が働いているのは間違いなさそうです」
彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
B.H.エアライド(ブレイズハイパーソニック・エアライド)。
オーラを纏い、炎翼が羽ばたく。
如何に『神話怪物』へと成り果てた『シンフォニック・リリッカーズ』と言えど、歌を力に変えるというのならば、レナータは己の羽撃く炎の翼によって己自身を超音速飛行によって弾丸のように戦場を飛ぶ。
音速を超えた彼女が空気を突き破る度に雷鳴の如き音が吹きすさび、『シンフォニック・リリッカーズ』たちのユーベルコードの起点を圧し潰すのだ。
「――ッ!」
どんな言葉も聞こえない。
この雷鳴の如き轟音はあらゆるものを圧し潰す音。衝撃波が『シンフォニック・リリッカーズ』たちを打ち据え、体制を崩していく。
其処に踏み込む徒手空拳の男の拳が彼女たちを打倒していくのだ。
「援護は必要なさそうですが……連携できるのなら」
レナータは炎の軌跡を描きながら飛ぶ。
歌は響かない。
響かせてはならない。その名を紡ぐことは、たしかにオブリビオンの脅威を取り除くことの助けとなるだろう。
しかし、レナータは知っている。
その名を。故に、レナータは此処が仮想空間であったとしても、炎の翼をはばたかせながら、飛翔する。
「わたしたちの行動によって、少しでも『スナークゾーン』の謎が解けるというのならば……」
レナータは飛ぶだろう。
炎の翼は過去にありて、未来を導く一翼。
ならばこそ、彼女は己の輝く瞳と共に神々の時代を切り開くのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友
第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん
属性:風
んー?あの方、会ったことあるような、歌で聞いたことがあるようなー?
ですが、それは些事と言えましょう。今は共に戦うことですねー。参りましょう。
歌を歌う必要があるようですがー。そんなことする暇があるのなら、散った方が良いですよー?ま、散ったとしても逃がしませんがー。
UC発動。敵にのみ向かうこの矢は、けしてあの方の邪魔はしないのです。呪う相手を間違うわけないでしょう?
それにしてもー…久々にこの世界に来ましたがー。またまあ、謎の多い空間ですねー?
だからこそ、面白くもあるんですがねー。
徒手空拳の男はオブリビオン『シンフォニック・リリッカーズ』を無手にて打ち砕く。『神話怪物』へと変貌していたとしても、彼の拳は狙いを外さず、その尽くを打ち倒す。
その戦いぶりはまさに人外そのものであった。
荒ぶる嵐のように、轟音が響き渡る度に霧消する『シンフォニック・リリッカーズ』たち。
「何故私達の歌が響かない。この歌はなんだ」
「あってはならないことだ」
「歌われてはならぬ歌だ。消えるためだけの歌など」
彼女たちは知らない。
歌とは口伝にて伝わるものである。変わっていくのだ。受け入れなければならない。どんなものも普遍たるものはないのだから。
「んー? あの方、会ったことあるような、歌で聞いたことがあるようなー?」
馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の一柱である『疾き者』は首をかしげる。
転移してきて、耳に馴染むのは歌声であった。
『シンフォニック・リリッカーズ』。
その歌声が紡ぐのは神代の物語。
無手にて地を砕き、海を割る者。その存在を『疾き者』は知っていただろう。そして、それは無手にて『神話怪物』を打倒する男のようでもあった。
「ですが、それは些事と言えましょう」
『疾き者』は弓を引き絞る。雷をまとった矢が放たれる。
四更・雷(シコウ・ライ)。
それれらは疾風のように駆け抜け、『シンフォニック・リリッカーズ』たちを討ち貫いていく。
一瞬であった。
徒手空拳の男を避けて飛ぶ矢。
それらの軌道を見切っていたかのように男は空を舞うように跳躍し、体制を崩した『シンフォニック・リリッカーズ』たちを打ち砕いていく。
「参りましょう」
「心得た」
短い邂逅であったが、『疾き者』は確信する。
己が対峙したことのある存在。しかし、それは己がそう感じたとしても、過去たる地球を再現した『スナークゾーン』においては、向こうにはこちらの姿を認知しているという事実はない。
もしくは、過去に歪んだ存在としか相対したことがないからこそ、互いにわだかまりは存在しないのだろう。
『シンフォニック・リリッカーズ』たちは固まっていては分が悪いと判断して散る。
しかし、『疾き者』は一瞬で矢をつがえ、放つ。
「歌を歌う必要があるから、散ったようですがー。ま、散ったとしても逃しませんがー」
再び雷の矢が疾風のように戦場を駆け抜け、彼女たちを射抜いていく。
「それにしてもー……久々にこの世界に来ましたがー。またまあ、謎の多い空間ですねー?」
『疾き者』にとって、この神代の世界は仮想である。
過去あった時代であることは間違いない。けれど、ここにオブリビオンが介入し、さらには自分たち猟兵もまた転移することができたという事実は、ただの仮想では終わらぬことを意味していた。
「だからこそ、面白くもあるんですがねー」
時に敵として。
時に味方として。
過去と未来が交わることはないはずである。しかし、虚構から生まれるスナークが実態をなそうとしたように、この仮想もまたオブリビオンの手によってよろビテいいはずがない。
疾走る雷が数多迫る『神話怪物』となった『シンフォニック・リリッカーズ』を打倒し、その歌を紡がせることなく撃滅するのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
大町・詩乃
この度の所業、世界を崩壊させたいのであれば有効な手段でしょうが、そんなもの許すわけないでしょう!
男性に加勢します。
似た感じの方と以前お会いしましたが、今回は共に戦えるので心強いです。
歌とは空気の振動。ならばより強い空気の振動にて打ち消しましょう。
風の属性攻撃・全力魔法・高速詠唱・範囲攻撃にて暴風を生み出し、シンフォニック・リリッカーズ達に吹き付ける事で、歌を上空に吹き飛ばし続けます。
そして響月を口に当てて帰幽奉告を使用。
空気の振動に関係無く魂と精神に直接響く音色でシンフォニック・リリッカーズ達を倒します。
男性には「正直言って戦いは怖いです。でも大切なものを護る為なら戦えます。」と答えますよ。
「こんなことがあっていいわけがない。紡がれなければならない歌が」
「この歌が代わりに歌われてはならない」
「我等が歌うは人の拳の歌」
『シンフォニック・リリッカーズ』たちは戸惑っていた。
徒手空拳の男にではない。
猟兵たちの介入にだ。猟兵たちは世界の悲鳴に応える生命の埒外の存在である。彼等がオブリビオンとの戦いに介入する以上、互いに滅ぼすか滅ぼされるかである。
彼女たちは追奏かのように現れる『シンフォニック・リリッカーズ』たちと共に戦場に歌声を響かせる。
歌を世界に満ちさせ、必ずや神代の英雄を次代に伝えなければならないのだ。
そのために己たちの存在が在るのだという自負があった。
けれど、その歌は紡がれない。
「この度の所業、世界を崩壊させたいのであれば有効な手段でしょうが、そんなもの許すわけがないでしょう!」
風の力が暴風となって迸り、『シンフォニック・リリッカーズ』たちの歌声をかき消していく。
大町・詩乃(阿斯訶備媛・f17458)は、その神性とともに神代の世界を再現した『スナークゾーン』へと降り立ち、『神話怪物』へと成り果てたオブリビオンたちを睥睨する。
吹き付ける風は、一瞬で彼女たちの歌声を空高くへと吹き飛ばし続ける。
手にした薙刀の一閃が彼女らの肉体を切り裂き、霧消させ、詩乃は徒手空拳の男の背後に降り立つ。
「あなたと似た感じの方と以前お会いしましたが、今回は共に戦えるので心強いです」
「俺は知らぬが――……戦うのは恐ろしくないのか」
その問いかけもまた同じであった。
詩乃にとっては、数多の戦いの中の一つであったことだろう。
されど、彼女は覚えているのかも知れない。
たとえ、それが過去に歪んだ存在と対峙したことがあったとしても、己の背後を任せる徒手空拳の男は違う存在であるのだとしても、それでも彼女は心強さを感じていた。
その名を知るからこそ。
その問いかけは意味を持つ。
詩乃は龍笛を持って奏でる。それは『シンフォニック・リリッカーズ』の知らぬ音色であったことだろう。
不死の怪物の骨を漆と金で装飾した龍笛が奏でるのは、帰幽奉告(キユウホウコク)の音色。
空気の振動とは関係なく魂と精神に直接響く音色。
それは否応なしに『シンフォニック・リリッカーズ』たちの動きを止めるだろう。
動きを止めたのならば、徒手空拳の男の拳と蹴撃の前にはただの的でしかない。地砕き、海を割る一撃を防ぐ手立てなどありはしないのだ。
「正直言って戦いは怖いです」
詩乃は偽らざる己の心の内を吐露する。
戦いとは即ち傷つくことである。望むと望まざると関係なく、争いは人の心と肉体を傷つける。
癒えぬ傷跡は、じくじくと蝕むだろう。
それを厭わぬ者などいようはずもない。
雷鳴のような轟音が徒手空拳の男の拳から響く。あらゆるものを打ち砕く一撃。あれほどの力を持っているのならば、恐れを抱かぬのかもしれない。
けれど、徒手空拳の男はうなずいていた。
その薄紅色の瞳を輝かせながら、その言葉に同意を示していた。戦いは恐ろしいものだと。
「でも大切なものを護るためなら戦えます」
詩乃は恐れを知って尚、踏み越える。
己の生命が失われるかもしれない。もしかしたのならば、自分の親しいものも生命を奪われるかも知れない。
ならばこそ、戦えるというのだ。
恐れを凌駕するものが存在するのだと彼女は言う。
それを人はなんと呼ぶようになるのかを彼女は知っているのだ。
だから戦えるのだと、詩乃は薄紅色の瞳に告げるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
アルトリウス・セレスタイト
終わった後で尚、蠢くか
オブリビオンとは暇らしいな
状況は『天光』で逐一把握
守りは煌皇にて
纏う十一の原理を無限に廻し害ある全てを無限に破壊、自身から断絶し否定
尚迫るなら自身を無限加速し回避
要らぬ余波は『無現』にて消去
全行程必要魔力は『超克』で骸の海すら超えた“世界の外”から常時供給
破界で掃討
対象は交戦域のオブリビオン及びその全行動
それ以外は「障害」故に無視され影響皆無
原理を廻し高速詠唱を無限に加速、循環
瞬刻で天を覆う数の魔弾を生成、敵勢へ向け斉射
更に射出の瞬間を無限循環し戦域を魔弾の軌跡で埋め尽くす
通過点如きに時間は掛けん
火力と物量で圧殺する
※アドリブ歓迎
オブリビオン『シンフォニック・リリッカーズ』は歌を紡ぐ。
それはヒーローズアースにおける神々の時代より紡がれてきたものであり、同時に偉業を称える歌であった。
しかしながら、当の本人がそれを望むのかと問われれば、正誤を見極めることは困難であったことだろう。
強き者たちが住まう世界。
それがヒーローズアース。
過去にありて変わることのない現実だ。
いつの時代にも争いは蔓延る。
どんな些細な理由にも正義が宿るように、悪もまた光の影に潜むものであるから。
「私達は歌う」
「そうすることで、人の記憶から英雄が摩耗して消えぬように」
「これこそが我等の神譜。だが、変えてはならぬ。消してはならぬ」
『シンフォニック・リリッカーズ』は戸惑っていた。
己たちが知らない歌が聞こえる。『神話怪物』へと変貌したからではない。
ここが仮想世界『スナークゾーン』であるからこそ、現実に与える影響は計り知れない。
此処は仮想。
されど、現実を侵食せぬ仮想があるなどと誰が決めたのだ。
「世界は数多ある。ならば、仮想世界『スナークゾーン』もまた世界の一つであるというのならば」
虚構から生まれた『スナーク』。
実態のないことが実態。言葉遊びから生まれた神話。そして、本来存在したものすら食い物にする存在。決して見えず、されど、何処にでもいる存在。
「終わった後で尚、蠢くか。オブリビオンとは暇らしいな」
アルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)はその蒼き光を灯して『スナークゾーン』に介入する。
あらゆる害意は彼の前では無意味である。
無限に破壊し、自身から断絶し否定する。原理の輝きは己に迫るもの全てを尽く破壊するものである。
無限加速。
そして、世界の外より組み上げる魔力は、常に己の魔力を回し続ける。
「行き止まりだ」
『神話怪物』へと成り果てた『シンフォニック・リリッカーズ』たちを取り囲むのは蒼光の魔弾の群れ。
創世の権能がもたらすは、破界(ハカイ)。
万象を根源から消去する魔弾は、仮想世界にありしオブリビオンたちを次々と撃ち抜いていく。
原理を回し、詠唱を飛び越え、加速していく。
循環する魔力の煌きが『スナークゾーン』の明滅する。
ユーベルコードの煌きこそが、敵を穿つとうのであれば、徒手空拳の男は如何なる拳を持つのか。
「……役割を全うするだけだ」
煌めく光を背に男は拳を振るう。
一撃一撃がひどく重たい。そして、早い。
脆弱な人の身でありながらも、不死の怪物すらも殺しうる力。神々すらも鏖殺する力を可能性として持つ存在は、蒼光の中にありて、地を砕き、海を割る。
「通過点ごときに時間は掛けん」
波のように迫る『シンフォニック・リリッカーズ』たちをアルトリウスは蒼光の魔弾でもって貫き、穿つ。
切り裂かれた大波の如きオブリビオンたちは、霧消していくだろう。
塵一つ残さない。
何一つ現実を侵食などさせはしない。
その蒼光の元でオブリビオンができることは唯一。
そう、滅びることだけなのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
勝守・利司郎
おわ、強い。そういう人(?)がいたんだな、ここには。
だとしたら、オレも元中ボスな武道家として負けられないな!
(原作ゲームのある元バーチャルキャラクターな神将)
あの人の邪魔にならないようにだけ立ち回るか。味方の妨害にならないように動くオレのポリシー。
だから、あの人が攻撃してない方向の敵を叩く…【花蝶神術:破砕拳】でな!目の前の敵は闘気纏った拳で殴る。
あとは、どんどんと戦意を向ける相手を変えていけばいいし、撹乱にもなるだろ。そうしたら、あの人も戦いやすくなるだろうし。
まあ、元はゲームキャラでそう『設定されてた』ってのはあるけど。
オレは守りたい人がいるってのは変わってない。いや、改めて決心したかな。
『スナークゾーン』は過去の地球を再現した仮想空間である。
如何なることが原因となって生み出されたのかは定かではない。オウガ・フォーミュラである『ミストレス・バンダースナッチ』が撃破されたことによることかと推察されているが、真実は未だ見えず。
されど、仮想空間と言えど、過去のヒーローズアースの地球が再現されている以上、現実に影響がないとは言い切れない。
仮想が現実を侵食しないという理屈はないのだ。
特にこれまで猟書家たちがそうしてきたように、虚構の存在『スナーク』を誕生させようとしてきたことからも、この『スナークゾーン』で起こった出来事が現実に影響を及ぼすことは可能性として低くはない。
そして、時は神代。
未だ地球には神々と不死の怪物だけが跋扈する時代であった。
神々は不死の怪物を封じ込めることによって世界の中心センターオブジアースに焚べる。その熱が生命創造の礎となるのだ。
「故に私達は歌う」
「紡ぐのだ。神代の寄る辺を」
「如何に石碑に刻もうとも、摩耗する運命であるのならば口伝にて伝えるのみ」
オブリビオン『シンフォニック・リリッカーズ』たちは歌う。
神譜と呼ばれる歌を紡ぎ続ける。されど、その歌は響かない。何故ならば、彼女たちが未だ知らぬ歌が響いているからだ。
「おわ、強い」
勝守・利司郎(元側近NPC・f36279)は、徒手空拳の男が『神話怪物』へと変貌した『シンフォニック・リリッカーズ』たちを拳でもって撃滅する姿を見やり、声を上げた。
此の神代に置いても、あのような人物が居たことが意外であった。
しかし、利司郎と同じである。
仮想世界の元中ボスであり、武道家である。そんな彼が徒手空拳の男に遅れを取るわけにはいかない。
いや、それはいいのだ。
彼にとって、徒手空拳の男にじゃまにならないように立ち回ることの方が、利司郎のポリシーに反しないことであった。
「だから、こうするんだ!」
彼が拳を向けた瞬間、利司郎は一瞬で『シンフォニック・リリッカーズ』たちとの間合いを詰めていた。
まるで瞬間移動したかのような。いや、まさに瞬間移動したのだ。
彼の花蝶神術:破砕拳(カチョウシンジュツハサイケン)は、まさに縮地歩法そのものである。
一瞬のまばたきが致命となるユーベルコード。
その発動条件は二つ。一つは戦意をむける。一つは握り拳を向ける。そのどちらかさえ達成できていたのならば、すでに利司郎において彼我の距離は意味をなさない。
「あなたは大層強いが、オレも負けてはいられないな!」
利司郎の拳が『シンフォニック・リリッカーズ』たちを打ち据える。
しかし、次の瞬間に彼はその場から消えている。
瞬時にユーベルコードが煌き、撹乱するように『シンフォニック・リリッカーズ』たちを翻弄するのだ。
「勝ち負け……そういうものか」
徒手空拳の男の薄紅色の瞳が利司郎を見やる。されど、それは一瞬であった。
意外であるようにも思えたかもしれない。
徒手空拳の男に勝敗はあまり頓着するものではなかったようである。けれど、利司郎はおもったのだ。
あの男は何かを護るために戦う者であると。
それは彼にとって共感を得るに値するものであった。
たとえ、己が元はゲームからであり、そう『設定されていた』ことであったのだとしても。それでも変わらぬものがある。
「オレは守りたい人がいるってのは変わってない」
どれだけ時が移り変わるのだとしても。変わらないものがあるのだと知っているからこそ、利司郎は己の心を知る。
いや、違う。
改めて決心したのだ。その決意に満ちた瞳が煌めく中、眩しいものを見るように徒手空拳の男は互いの死角をカバーするように利司郎と共に拳を振るい、世界を破滅に導こうとする存在を打ち倒すのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
佐伯・晶
この空間がどういうものか分からないけど
オブビリオンを放置する訳にはいかないね
人間が生まれる前というなら
彼は一体何なのか
本来はどんな歴史を辿ったのだろうね
現存する神に聞けばわかるかな
見た感じこの程度の敵に
負ける気はしないけど
数は多いみたいだから
こっちでも減らしていこうか
歌である以上響かないと無意味だろうし
邪神の慈悲を使用して
周囲の空気を停滞させ
力を振えないようにしよう
歌を封じたら次は身体を停滞させて
石の彫像に変えていこうか
本来この時代にいる存在かどうか分からないけど
事件が片付いた後
どこかで古代の石像が発見された
とかなったらどうしよう
まあ、考え過ぎだよね
邪神のいう永遠に思考が引き摺られてるのかなぁ
仮想世界。
それは現実より想像されるものであり、現実を侵すものではない。
されど、現実を侵食する仮想がないわけではない。
現にヒーローズアースには『スナーク』と呼ばれる虚構より生まれる超生物が存在した。時に結社の名として、時にヒーローに擬態したヴィランとして。
あらゆる場所に存在するからこそ、誰も『スナーク』が虚構であると否定できない。
存在しないものを否定できないのだから。
「この空間がどういうものかわからないけど、オブリビオンを放置するわけにはいかないね」
佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は神代の仮想世界『スナークゾーン』へと飛び込む。
戦場と成ったセンターオブジアースは生命力に溢れていた。
不死の怪物を焚べることによって生命創造の礎とした時代。此の時代に人の姿は未だ無い。
神に似せて造られた人間。
それは不死の怪物を全て封じ込めた後に生まれる存在だ。
ならば、あの徒手空拳の男は人ではないのか。
「ありえない。あってはならない」
「此のような歌が響いてはならない」
「私達は『まだ』歌っていないというのに」
『神話怪物』へと変貌した『シンフォニック・リリッカーズ』たちが徒手空拳の男に殺到する。
けれど、徒手空拳の男はたやすくこれを撃滅する。
拳は地を砕き、蹴撃は海を割る。尋常ならざる一撃を繰り出す姿は、人の姿をしていながら、人とは思えなかった。
そう、晶は見ていた。
この神代が人間という種が生まれる前というのならば、徒手空拳の男は人ではない。本来紡がれる歴史はいかなるものであったのか。
現存する神々に聞けば、それが理解できるかも知れない。けれど、今はそれをする時ではないだろう。
「見た感じこの程度の敵に負ける気はしないけど、数は多いみたいだからこっちでも減らしていこうか」
晶の瞳がユーベルコードに輝く。
邪神の慈悲(マーシフル・サイレンス)は此処に。
歌は響かなければ誰の耳朶を打つこともない。響かぬ歌に意味はない。故に、晶のユベルコードは宵闇の衣から万物に停滞をもたらす神気を解き放つ。
周囲の空気を停滞させ、『シンフォニック・リリッカーズ』たちの歌を響かせない。
そして、宵闇の衣から発せられた神気は空気すら固定させ、伝播していく。
「――!」
『シンフォニック・リリッカーズ』たちは己の声が大気を震わせることがなくなってしまったことにたじろぐ。
それは決定的な隙であった。
徒手空拳の男の拳が、彼女たちを打ち砕く。
「速いね……さて、僕もやらないとな」
晶のユーベルコードはあらゆるものを停滞させる。
それは身に宿した邪神の権能であり、その発露を持って敵を石像へと変えていく。永遠をもたらす権能。
この神代が如何に遥か昔の時代であったのだとしても、永遠をもたらすがゆえに、石像はいつまでも摩耗すれど残ることだろう。
ここが仮想世界であったことが幸いである。
「とはいえ、事件が片付いた後、どこかで古代の石像が発見されたとかなったらどうしよう……」
晶はいらぬ心配をしてしまう。
けれど、仮想が現実を侵食しない理屈はない。
「まあ、考えすぎだよね」
晶はいけないことだと頭を振る。
身に宿した邪神に思考が引きずられているのかも知れないと、改めて思うのだ。
だが、晶は知るだろう。
その懸念は、疑念に代わり、そして現実のものになるのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
サージェ・ライト
お呼びとあらば参じましょう
私はクノイチ、胸が大きくて忍べてないとかそんなことないもんっ!
いえふざけてないです真面目にクノイチですそんな目で見ないでぇぇぇ!(顔を隠す
おお、私のクノイチパワーに動揺してないそこの人!(薄紅色の瞳の人
いえ、私は怪しい者ですがとりあえず協力しませんか?
目的だけは合致しているようですし!
それでは私が敵陣を崩しましょう!
リリッカーズが先手を打ってくるならそれよりも早く駆け抜ける!
私の【電光石火】、防げますか!
相変わらず突っ込む系の私ですが
まぁユーベルコードを封じられたとて
クノイチ的なカタールでの攻撃でざっくざく斬りますねー!
カタールでざっくざっく斬っていくとしましょう!
「お呼びとあらば参じましょう」
前口上が『スナークゾーン』に響き渡る。
それは仮想世界であろうと現実世界であろうと変わらぬことであった。
サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)にとって、それは大切なことであったからだ。
別の名前で言うのであればお約束というやつでもあった。
「私はクノイチ、胸が大きくて忍べてないとかそんなことないもんっ!」
しかしながら、時と場は選ぶべきであったことだろう。
彼女の前口上を理解してくれるような者たちは、残念ながらヒーローズアースの神代にはちょっといる気配がなかった。
『神話怪物』となった『シンフォニック・リリッカーズ』も、徒手空拳の男も若干こう、あれであった。少し時が止まった気がした。
いや、凍りついただけではないかと思わないでもないが。
「いえふざけてないです真面目にクノイチですそんな目で見ないでぇぇぇ!」
サージェはあまりの空間に思わず顔を覆っていた。
いたたまれねぇ。
しかし、そんな彼女の態度とは裏腹に徒手空拳の男はサージェの前口上で動きを止めた『シンフォニック・リリッカーズ』たちを打倒していく。
なんという胆力。
「おお、私のクノイチパワーに動揺していない其処の人!」
「……俺のことか」
薄紅色の瞳がサージェを見やる。完全に不審者を見る目である。
「ええ、そうです! いえ、私は怪しいものですがとりあえず協力しませんか? 目的だけは合致しているようですし!」
あけすけとはこの事を言うのだろうか。
怪しいものですと自己紹介するクノイチがいるか、と思わないでもなかった。しかしながら、目の前の徒手空拳の男はかすかに笑ったようであった。
「任せた」
短く言葉を紡いだ。
それだけでよかったのだ。戦いの場において即席で連携することなど珍しいことでもない。
「それでは私が敵陣を崩しましょう!」
サージェの瞳がユーベルコードに輝く。
彼女の戦場を駆け抜ける速度は、電光石火(イカズチノゴトキスルドイザンゲキ)のごとく。
一瞬で『シンフォニック・リリッカーズ』たちの声が響く前より速く、サージェは踏み込んでいた。
「私の電光石火、防げますか!」
手にしたカタールの斬撃が『シンフォニック・リリッカーズ』たちを切り裂く。
それはどれだけ『神話怪物』へと変貌していようとも関係のないものであった。サージェはあくまで敵陣をかき乱し、崩すための存在である。
背後から凄まじいプレッシャーと共に徒手空拳の男の拳と蹴撃が『シンフォニック・リリッカーズ』たちを霧消させていく。
武器も加護も使わずにただの拳だけで『神話怪物』を打ち倒す技量。
これが本当に人なのかと思うほどであった。
「次」
短く声が聞こえる。
そっけない。人のコミュニケーションというものがよくわかっていないのだろう。端的であることは単純でいいことである。
サージェはカタールを構え、雷光のように一瞬で『シンフォニック・リリッカーズ』たちを追い込む。
「私達の歌が」
「響かない。どこまでも、届かない」
「本当ならば、響くはずの神譜が、消える」
彼女たちは戸惑っているようであった。自分たちの知らない歌が世界に響いている。これから紡がれるはずだった歌は、猟兵たちの介入によって消えていく。
そして、同時に仮想世界であったとしても、残るものがある。
「動くこと雷霆の如し!」
サージェの一撃が『シンフォニック・リリッカーズ』達を切り裂き、徒手空拳の男の拳と蹴撃が砕く。
その連携は大群の如き『神話怪物』たちを打ち崩し、尽くを霧消させるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!
わぉ!これは超クールだね!
これはボクも負けてられないね神として!
神々の時代?あんまり覚えてないなー
ボクは常に最先端の神さまだからね!
●本物はそこだー!(え、そういう話じゃない?)
増えた!でもそんなんじゃあボクはごまかされないよ!
[ドリルボール]くんたちを敵集団のなかにごろごろごろ突っ込ませて攪乱してる間に…
【第六感】で本物を見ぬき、攻撃をかいくぐり…
本体をUCでドーーーーンッ!!
まあ言葉遊びみたいなものさ!
不死の怪物くんたちだって見方によってこれこの通り死んじゃってるんだから
恐れる必要があるのではなく、恐れを知る必要があるってはやつだね!
……もしかしてちがうの!?
神代。
それはヒーローズアースにおいて、神々と不死の怪物だけが存在する時代である。
神をもして造られた人は未だ存在しない。
何故ならば、世界の中心、センターオブジアースに不死の怪物がくべられていないからである。
不死の怪物を燃やす熱によって生命創造の礎が造られるのだ。
「だからこそ、不可解」
「『まだ』紡がれていない歌が響いている」
「こんなことなどあっていいわけがない」
神譜を歌う存在『シンフォニック・リリッカーズ』にとって、己達を打ち倒す猟兵と徒手空拳の男の存在は、あってはならない存在である。
歌が響かない。
まるで海を割るように徒手空拳の男の勢いは止まらない。
「わぉ! これは超クールだね!」
場違いな声が世界に響く。ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)はセンターオブジアースに降り立ち、徒手空拳の男と『神話怪物』へと成り果てた『シンフォニック・リリッカーズ』たちとの戦いを見やり、そう評した。
「これはボクも負けてられないね神として!」
ロニもまた神性を持つものである。
しかし、彼はあまり神々の時代のことを覚えていない。
何故ならば、彼は最先端の神であるがゆえに。旧きは排出し、前に進む。時がそうするように古い記憶は前に進むための推進剤なのだ。
「とはいえ、ちょっと増えすぎじゃない? 本物はそこだねー!」
一瞬で増える歌う『シンフォニック・リリッカーズ』たち。
彼女たちは分身ではない。どれもが『神話怪物』となったオブリビオンである。実態を持っている。
だからこそ、厄介なのだ。
どれだけ徒手空拳の男が強いのだとしても、これだけの数を前に圧殺されてしまうかもしれないのだ。
けれど、ロニはうなずく。
「でも、そんなんじゃあボクはごまかされないよ!」
手繰る球体が戦場を蹂躙するかのように走り抜ける。数が多いのであれば、こちらも数を用意すればいい。
簡単な話だ。そして、神たる己のユーベルコードは、あらゆるものを破壊する。
神撃(ゴッドブロー)。
神代にありて、己を信仰する者はいない。
されど、それで神威が損なわれることはない。
「……戦うことが恐ろしくはないのだな」
徒手空拳の男のつぶやきをロニは聞いたことだろう。それは迷える子羊ではなかったけれど、単純な疑問であった。
何故、そんな問いかけをするのかをロニは理解しただろうか。
「まあ、言葉遊びみたいなものさ! 不死の怪物くんたちだって見方によってこれこの通り死んじゃってるんだから」
どれだけ『神話怪物』が強大な存在なのだとしても、滅びることに変わりはない。
その拳があらゆる不死すら超越するのだとしても。
「恐れる必要があるのではなく、恐れを知る必要があるってやつだね!」
その言葉に男は特に感じ入る様子はなかった。
ただ、その言葉を受け止めている様子しかなかった。そういう考え方もあるのか、と。正誤で判断するのではなく。
飲み込むように言葉を臓腑に落とすように、うなずくのだ。
そのようにロニは少し焦る。
「……もしかして違うの!?」
「少し違う」
うん、と頷く男。薄紅色の瞳がロニを見ている。けれど、そこに迷いや恐れといった感情はなかった――。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
識っている
あの拳を、あの脚撃を
交戦データの類似例
それ以上に、数多の御伽の騎士の如く謳われたその歌を
されど…
今は、騎士として為すべき事を
悪しき神性の野望挫く為、加勢させて頂きます
機械馬に跨りスラスター全開
全身の格納銃器を展開し乱れ撃ちながら騎馬突撃
騎馬の蹄に怪力で振るう馬上槍と大盾
立ち塞がる敵を蹴散らし蹂躙
敵の注目集め徒手の男が更に大立回りを行える状況創出
ええ、恐ろしいですとも
私はウォーマシン、戦の為の機械
他者の喪失を前提とした存在
御伽の騎士を目指しても剣の血は拭えず
恐れています
血だまりに映る我が姿が、何時か鋼の邪竜となる事を
…されど
悪を挫く志を共に出来る事は、この道を歩むに足る理由ですとも
その歌はまだ響く。
神譜。『シンフォニック・リリッカーズ』たちが嘗て歌った歌を知っている者は『スナークゾーン』には存在しない。
何故ならば、『これから』紡がれるべき歌であったからだ。
けれど、もしも、それを識る者がいるのだとすれば。
「識っている」
トリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)はアイセンサーのゆらめきの先にある徒手空拳の男を識っている。
正確には違う存在なのだろう。
けれど。
「あの拳を、あの蹴撃」
電脳に蓄積された交戦データの類似例。それ以上に、数多の御伽の騎士のごとく謳われたその歌を識っている。
見間違えるはずがない。
怖気が疾走るほどの強さ。『神話怪物』へと成り果てた『シンフォニック・リリッカーズ』すらも物ともせず打ち砕く拳。人の姿をしていながら、人以上の膂力。まさに戦いの申し子と呼ぶに相応しいほどの力。
「されど……」
トリテレイアは戦場を駆け抜ける。
彼は判っているのだ。
「今は騎士として為すべきことを。悪しき神性の野望くじく為、加勢させていただきます」
機械馬と共に格納銃器を展開し、トリテレイアは大波の如き『シンフォニック・リリッカーズ』たちを打倒しながら駆け抜ける。
神話の時代にあって軍馬を用いる神もあっただろう。しかし、トリテレイアのそれは最新の騎馬である。
鋼鉄の蹄が『シンフォニック・リリッカーズ』たちを踏みつけ、馬上槍が蹴散らす。
その威容はまさに鋼鉄の騎士。
「……恐れを抱くことはないのか。そのような戦い方をして」
徒手空拳の男が加勢にきたトリテレイアに薄紅色の瞳を向ける。彼にとって、関心事はそこだけであった。
戦うために生み出された存在同士のシンパシーというものがあったのかもしれない。
大立ち回りを続けるトリテレイアはその言葉に頷く。
「ええ、恐ろしいですとも」
端的であった。
機械騎士の突撃(マシンナイツ・チャージ)は終わらない。大波の如き敵の数を前にしても怯むことはない。
大盾で防ぎ、叩きつけ、槍が貫く。
どれだけの時間を費やしてきただろう。何度同じ光景を見ただろう。幾度戦場を超えてきても尚、機械の体に宿る恐怖は払拭できない。
「私はウォーマシン、戦のための機械。他者の喪失を前提とした存在」
戦う限り、失われる生命がある。
それがどちらのものであるかはわからない。目の前にある敵か。それとも己のものか。
そして、それ以上に彼の炉心に宿る御伽の如き騎士を目指しても、清廉潔白であることを示すことはできない。
己の剣はすでに血にまみれている。拭うことは許されない。
「だから、恐れるのだ。恐怖を知らぬ者に、意味はない問いかけだ」
徒手空拳の男は拳を振るう。
同じ恐怖が互いに宿る。
「恐れています。血溜まりに映る我が姿が、何時か鋼の邪竜になる事を」
願われた想いは、果たして正しいのか。そしてそれを汲み取ることができているのか。その過ちの道に足を踏み入れることを恐れいている。
何より恐れているのだ。
「……されど」
トリテレイアは告げるのだ。
どれだけ己の道が血に塗れているのだとしても。血路を征くがごとくであったとしても。
「悪を挫く志を共にできることをは、この道を歩むに足る理由ですとも」
ただそれだけでいい。
正しさの中に己があることを確信できればいい。
恐怖を拭うことも、消し去ることもできないのであれば、踏み越えていくしかないのだ――。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『アシュラレディ』
|
POW : 阿修羅旋風
予め【六本の腕に持った刃物を振り回す】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
SPD : ブレイドストーム
自身が装備する【愛用の刃物たち】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ : シックス・ディフェンス
対象のユーベルコードに対し【六本の刃物による連続斬撃】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
イラスト:otomo
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
神々の時代、センターオブジアースにおいて不死の怪物は神々にとって敵でしかなかった。
滅ぼさなければならない存在でありながら、不死であるがゆえに殺すことができない。神々は世界の中心に不死の怪物たちを封じ込め、そのユーベルコードの煌きによって生命創造の礎にした
『アシュラレディ』は、その炉心の如きユーベルコードに手をのばす。
あのままでは己は徒手空拳の男に敗れるだろう。
あの雷光の如き煌きと、雷鳴の如き轟音。
「アイツだったのだ……! アイツこそが……!」
脂汗が吹き出す。
戦いのさなかにあって『アシュラレディ』は喜びを見出す。
戦い、殺す。
勝利に酔いしれるだけではない。対峙する者の恐怖そのものが己の心に満たすものがあると教えてくれたのだ。
けれど、今は違う。
己は与える者だ。与えられるものではない。
手を伸ばした不死の怪物のユーベルコード。その力が『アシュラレディ』の中に入り込んで暴れ狂う。神々でも殺しきれない怪物王。その力が十全に満ちていくのだ。
「この力さえあれば! 何処にいようと関係ない。オマエたちが届かぬ場所から一方的に嬲り殺すのみ!」
彼女のユーベルコードは今此処に天頂に至る。
『原初の獣』――怪物王のユーベルコードは『効果範囲を無限に拡大』する。
そう、『アシュラレディ』の本領は、その六本腕に寄る刀剣の乱舞の如き斬撃である。しかし、その効果範囲はあくまで近接の範囲。
されど、今は違う。
彼女のユーベルコードの全ては例え、世界の裏側にあったとしても狙い過たず敵へと迫ることができる。
「ああ、たしかにオマエたちのほうが強いだろうさ。だがね、ワタシは戦勝神! 敗けることなどあってはならないんだよ!」
拡大されたユーベルコードが煌めく。
『スナークゾーン』は、仮想世界でありながら過去の地球を再現している。『アシュラレディ』は猟兵たちから距離を取りながら、己のユーベルコードによって一方的に攻撃を加えてくるだろう。
「『不敗を象る名』は、ワタシが貰う。決して、消し去ることなどあってはならないんだよ――!」
勝守・利司郎
ふーん、あれがここのボスってわけか。戦勝神っても、中々に手強い相手だよなぁ。
しかも、間合い無限って。まあ、関係ないさ。
UCを使う。これをどうやって相殺するのかね?これを使った時点で、あなたの行動成功率は下がってるってのに。
『間合い無限』の『刃物』。無限が飛び道具に引っ掛かりそうだし、刃物は言わずもがな。
そんでもって…こっちの武器は拳なんだ。強制的に、超近接戦に持ち込ませてもらう!
闘気を拳保護のためだけに纏い、功夫によって懐へ。ま、腕の数はあっちが上だから、押さえ込まれても…足元、がら空きだ。
足払いからの蹴りとか、かかと落としでの攻撃もあるんだよ!
戦勝神とは即ち終戦神である。
『アシュラレディ』は存在するだけで勝利をもたらす神。
しかし、その身に宿した性質は戦いを求め続ける。平和を勝ち取るための戦いであったとしても、どれだけ苦難に満ちた戦いであろうと、彼女は戦いそのものを願うのだ。
「それがワタシという神性。そして、戦いを終わらせることは許さない。世界には戦いが満ちなければならない。戦って、戦って、戦い続けるのさ!」
『アシュラレディ』の瞳がユーベルコードに輝く。
彼女は勝つ。
勝利し続ける。
だが、例外がある。彼女が如何に勝利を呼ぶ戦勝神であろうと、彼女を脅かす例外が在る。
薄紅色の瞳が向けられる。
『不敗を象る名』。
その名を持つが故に、勝利を呼び込む神であろうと勝利することはできない。そして、生命の埒外たる猟兵たちは、その理を脅かす存在である。
「ふーん、如何に戦勝神ってもさ、これをあなたはどうするっていうのだろうね」
勝守・利司郎(元側近NPC・f36279)の瞳がユーベルコードに輝いていた。
『スナークゾーン』は仮想世界である。しかし、過去の地球全てを再現した世界でもある。
そして、利司郎のユーベルコードは世界を交換する力である。
中ボスであるからこそ、為し得る力。
テリトリーを生み出すことは、いわばゲームキャラにとっては必須であったことだろう。ストーリーが進むにつれて敵は手強くなっていく。
中ボスとも在るのならば、なおさらである。
此処は既に側近『花蝶神術拳士・トーシロー』の間(イワユルチュウボスセンノバショ)である。
「なんだ、この光景は……世界を、切り取って交換したのか!」
即座に『アシュラレディ』が動く。
手にした六本腕の刀剣が煌めく。此のユーベルコード事態を切り裂こうとしているのだ。
だが、利司郎はこの小さき世界にルールを課す。
それは飛び道具と刃物の使用禁止。
それを破った瞬間、『アシュラレディ』の刀剣は世界を切り裂く力を発露できない。
「――……! 斬れない……!?」
「オレの場なんだから、当たり前だろ? どれだけ間合い無限っていってもさ、世界を縮めてしまえば、どんなに距離を離したって意味のないことなのさ」
それに、と利司郎は笑う。
このユーベルコードに引きずり込まれた瞬間に『アシュラレディ』は多くを制限される。
例え、ユーベルコードを相殺できる力を持っていたとしても、刃物を使うことを前提としている以上、為し得ることではない。
「そんでもって……こっちの武器は拳なんだ」
強制的に距離を詰められる。
この場にありて中ボスなのは利司郎のみ。そして、この世界に取り込んだのは『アシュラレディ』だけではない。
薄紅色の瞳が閃光のように戦場と成った利司郎の生み出した世界に疾走る。
和室の畳を踏みしめる音を互いに聞いたことだろう。
「腕は任せろ」
徒手空拳の男が告げる。刀剣を使えぬのだとしても、あの六本腕はそれだけで脅威だ。
彼の拳が瞬時に六本腕のガードをこじ開けるように打ち込まれる。
「こんな、こんな小さな世界で、ワタシが……!」
「足元、がら空きだ」
利司郎の足払いが『アシュラレディ』の足を弾き飛ばし、その体勢を崩させる。一瞬であった。
けれど、それで十分だった。
六本腕のガードはこじ開けられている。そして、ガードは間に合わない。足払いによって逃げることもできない。
徒手空拳の男と利司郎は踏み込む。
拳が『アシュラレディ』へと叩き込まれ、利司郎が頭上より飛びかかる。
「拳だけじゃあない。こういう技もあるんだよ!」
放つは踵落としの一撃。
痛烈なる一撃は、『アシュラレディ』の脳天を捉え、その体を和室の畳に叩きつけられ、砕けるように世界が散っていく。
それは利司郎のユーベルコードが解除された証。
されど、彼の一撃は『アシュラレディ』を確実に捉え、その力を削ぎ落とす一撃であったのだ――。
大成功
🔵🔵🔵
アルトリウス・セレスタイト
では退場しろ
状況は『天光』で逐一把握
守りは煌皇にて
纏う十一の原理を無限に廻し害ある全てを無限に破壊、自身から断絶し否定
尚迫るなら自身を無限加速し回避
要らぬ余波は『無現』にて消去
全行程必要魔力は『超克』で骸の海すら超えた“世界の外”から常時供給
無限加速にて敵前へ姿を晒し行動
破界で掃討
対象はオブリビオン及びその全行動
それ以外は「障害」故に無視され影響皆無
原理を廻し高速詠唱を無限に加速、循環
瞬刻で天を覆う数の魔弾を生成、斉射
且つ一連の工程を無限循環し戦域を魔弾の軌跡で埋め尽くす
その六腕で斬ってみるか
お前の存在が俺に届いていれば不可能ではあるまい
叶うとは言わんが
火力と物量で圧殺する
※アドリブ歓迎
仮想現実を切り取るユーベルコードの中から辛うじて脱出した『アシュラレディ』は大地へと叩きつけられる。
徒手空拳の男の一撃と猟兵の踵落としの一撃が彼女の脳天を揺らし、その額から血を噴出させる。
痛みにぐらつく視界。
血色の染まる世界を見た時『アシュラレディ』の中にあったのは充足であった。
満ち足りている。
何故ならば、彼女にとって『不死の怪物』との戦いは圧倒するばかりであったからだ。
戦勝神であるがゆえに常勝が当然。
故に彼女は飽き飽きしていたのかもしれない。敗北の味を知らぬ勝利は無味無臭と同じであるがゆえに。
「これこそワタシの求めた戦いというものだよ。猟兵!」
笑う『アシュラレディ』の六本腕に刀剣が握られ、その力が発露する。
『不死の怪物』、『原初の獣』と呼ばれる怪物王のユーベルコードの一端を手に入れた彼女のユーベルコードの効果は今まさに無限大へと至る。
この『スナークゾーン』は過去の地球全てを再現している。彼女の剣は例え、地球の反対側にいたとしても猟兵に届くだろう。
「では退場しろ」
それは短い言葉であった。
戦況はすでに把握している。纏う十一の原理は無限に廻る。
あらゆる害意は無限に破壊される。無限を手にするのが『アシュラレディ』だけではないことを示すのは、アルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)であった。
蒼光は原理の輝き。
無限加速によって『アシュラレディ』との距離を詰める。
だが、『アシュラレディ』の斬撃はそれを見越したように放たれる。剣閃が煌めく。空に刻まれるは、原初の戦いである。
誰もそれを見ることはない。
神譜に残ることもない。ともそれば、それはそれをこそ目的とした戦いであったのかも知れない。
「行き止まりだ」
破界(ハカイ)が発露する。放たれる創世の権能が顕す蒼光の魔弾が宙を埋めていく。
無限に加速するのと同じように展開される魔弾は、膨大な魔力を世界の外より汲み上げる事によって実現する。
「無限加速。無尽蔵に汲み上げる魔力かい! だがね!」
斉射される魔弾の嵐を『アシュラレディ』は、六本腕の手にした刀剣によって切り裂く。
「お前の存在が俺に届いていれば不可能ではあるまい」
アルトリウスはその光景を見やり呟く。
己の魔弾に対処できぬオブリビオンばかりではないことはわかっている。だが、それでも尚、世界の外から汲み上げる魔力によって埋め尽くされた空は、蒼光に輝いている。
「叶うとは言わんが」
膨大な魔力をもって圧砕するかのように魔弾が煌めく。
どれだけ六本腕が膨大なユーベルコードの魔弾を切り裂くのだとしても、天を覆う魔弾を総て切り裂くことなどできはしないのだ。
無限は無限に至るからこそ、その先を見ることができる。
無より限り無き、その最果ての光こそ無限光であるのならば、『アシュラレディ』は過去の化身であるがゆえに未来の可能性という光によて押しつぶされる。
「圧殺する」
空にあるのは、空の青より蒼き魔弾の輝き――。
大成功
🔵🔵🔵
馬県・義透
引き続き『疾き者』にて
武器:漆黒風
ほう、間合いを無限に…ですかー。ならば、悪霊らしく利用いたしましょう。
UC(攻撃力強化)使いましてー。『馬県』の認識は、影にいる二匹に任せましてー。
ええ、そちらの攻撃は、私に必ず当たるのでしょうが。それが致命的に。
避けることは考えず、ただ近接間合いへと。どうせ、傷はなくなるのですから。
ふふ、近接からの漆黒風投擲…に見せかけて四天霊障での地形破壊レベルの押し潰しですよー。
悪霊ってのは、時に相手の攻撃すら利用しますからねー?間合いの差だけで勝てると思わないことですー。
空を埋め尽くす魔弾の光が『アシュラレディ』を打つ。
神代にありて、戦いは常なるものである。不死の怪物との戦いは神々にとって日常である。
殺し切ることのできぬ怪物たちを世界の中心、センターオブジアースに焚べるからこそ生命創造の礎は為し得る。
そうして人間が生まれるのだ。
ヒーローズアースにおける時代の黎明。
それが神々の時代である。
「『原初の獣』のユーベルコードを得たワタシが負けるわけないんだよ。そうでなくてもワタシは戦勝神。敗北の二字など不要!」
六本の腕が振り回される。
それは嵐を呼ぶかのように周囲に凄まじい突風を生み出す。荒ぶ風は猟兵達を阻むだろう。
そして『原初の獣』のユーベルコードを得た『アシュラレディ』の間合いは無限である。例え、地球の反対側に居たとしても猟兵たちに彼女は攻撃を届かせるだろう。「ほう、間合いは無限に……ですかー」
ならば、と馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の瞳がユーベルコードに輝く。
刹那に放たれる『アシュラレディ』の刀剣の衝撃波が『疾き者』の肉体を切り裂く。
その肉体は再構成される。
彼等は四柱の悪霊だ。攻撃を受ける度に四悪霊の総意と『馬県・義透』という認識補助術式により肉体が再構築される。
そして、その身に生み出され封じてきた呪詛がほとばしる。
「四悪霊・『戒』(シアクリョウ・イマシメ)――悪霊は滅びず」
そう、滅びることはない。
己達の中かわ湧き上がるオブリビオンに対する呪詛。それが戦いの螺旋の源であるというのならば、徒手空拳の男は、その有様にこそ恐れを抱く。
確かに強者の拳はあらゆるものを破壊するだろう。
しかし、敗北した者は、誰かにとっての大切な者であったり、大事な者であったりするだろう。そうした時に憎しみは生まれる。
呪詛は湧き上がり、恩讐の鎖となって身を捕らえるだろう。
「攻撃が当たっているはずだ……何故、死なない!?」
『アシュラレディ』はたしかに己の刀剣が『疾き者』を切り裂いた手応えを感じていただろう。
けれど、『疾き者』は、いや――『馬県・義透』という四悪霊を束ねる術式は滅びを許さない。
オブリビオンが存在する限り枯れ果てることのない呪詛によって突き動かされるのだ。
「それが致命的でしてー。我等に傷など無意味。どうせなくなるものですから。ならば、傷を厭う理由などなくー」
悪霊が疾走る。
風よりも疾く。
疾風のように『アシュラレディ』へと迫る。どれだけ斬撃を放っても、無限の射程から打ち込まれる一撃であっても、四悪霊を殺しきれない。
攻撃が当たる度に再構築される体。
封じてきた呪詛が開放される。
これが奪うということの代価である。奪ったものは、追い詰められる。呪詛があるかぎり、何処へ逃げようと必ず追いつく。
復讐とは即ちそういうことだ。
滅ぼす者がいて、滅ぼされる者がいる。ただのそれだけで、恐ろしきモノが生まれる。
それを『疾き者』――四悪霊は体現する。
奪われたからこそ、奪う。
ただ、その呪詛が世界にほとばしる。
「死にぞこないの怨霊風情が、戦勝神に――!」
「ええ、その呪詛に押しつぶされるのです、あなたはー」
放たれる剣閃をまともに受けて尚、『疾き者』の瞳はユーベルコードに煌めく。
膨れ上がる呪詛。
それを抑える霊障がさらに跳ね上がり、『アシュラレディ』を圧し潰す。
大地が砕ける。まるで巨岩が頭上より降り落ちてきたかのような光景。『アシュラレディ』は見ただろう。
これが四悪霊の呪詛である。
悪霊は敵の攻撃すら利用する。間合いの差だけでは埋めることのできない怨念が『アシュラレディ』を圧し潰すのだ。
「恩讐こそが我等を束ねるもの。呪詛は生まれ、膨れ上がっていく。奪われたのならば、奪い返せばいいわけではない。人の生命とは、そういうものなのですからー」
『疾き者』は煌めくユーベルコードを宿した瞳でもって睥睨する。
その呪詛は人の薄昏き本能であった。
けれど、それもまた側面の一つ。誰しもが抱え、陰陽の如く存在するものだ。だから、恐れることはあれど知らぬと見て見ぬ振りだけはしてはならない。
徒手空拳の男の薄紅色の瞳が見ている。
人とはかく在る者であると四悪霊は示したのだ――。
大成功
🔵🔵🔵
大町・詩乃
結界術・高速詠唱で自分と男性の周囲に広く靄を発生させて視界を悪化。
アシュラレディに「貴女には千里眼も、なんやかんやで絶対命中させる能力も無いでしょう。それでは効果範囲を無限に拡大しても…『ざんねんないきもの事典』行きは確定ですね~。」と挑発。
飛んでくる攻撃は第六感で予測し、オーラ防御を纏った天耀鏡で受けたり、見切りで躱したり。
挑発に乗った相手が見える範囲に来たなら、「仕掛けますので、よろしくお願いしますね♪」と男性に話しかける。
UC:初発之回帰を発動して怪物王のユーベルコードを相殺。
雷の属性攻撃・全力魔法・神罰・高速詠唱による雷でスナイパー・貫通攻撃にて相手を撃ち抜き、男性の攻撃に繋げます。
霊障が『アシュラレディ』を圧し潰す。
圧倒的な呪詛が戦勝神すら圧倒する。その大地を抉るほどの衝撃を受けて尚、『アシュラレディ』は立つ。
その身に宿した『原初の獣』のユーベルコードは恐るべきことに効果範囲を無限にまで引き伸ばす力を有する。
事実上、この『スナークゾーン』において彼女の斬撃から逃げる術はない。
「このアタシから逃げられるわけがないだろう。アタシは手に入れるんだ、『不敗を象る名』を!」
彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
だが、その輝きを覆い隠すように靄が生み出されていく。
徒手空拳の男を隠すように、生み出された靄の主は、大町・詩乃(阿斯訶備媛・f17458)であった。
「貴女には千里眼も、なんやかんやで絶対命中させる能力も無いでしょう」
詩乃の言葉は常ならざるものであった。
どこか挑発的な物言いであったし、事実彼女は挑発している。『アシュラレディ』のユーベルコードは効果範囲を無限に変えている。
それは地球の裏側にいたとしても斬撃を敵に届かせることができることを意味していた。だが、詩乃はそんな強大な力を前にしても見縊るような口調で告げるのだ。
「それでは効果範囲を無限に拡大しても……『ざんねんないきもの辞典』行きは確定ですね~」
それはあまりにもあんまりな言い草であった。
戦勝神であり終戦神である『アシュラレディ』にとっては侮辱以外の何物でもなかった。それに加えて、彼女は『原初の獣』のユーベルコードを手に入れているのだ。
神々ですら殺すことができずに封じるしかなかった不死の怪物。
その絶対的な力を手にしてなお、詩乃は残念な、と形容したのだ。どこかで何かがちぎれるような音がしたのは気のせいであっただろうか。
一瞬で剣閃が煌めく。
それは遥か彼方から飛んでくる斬撃。
「上等だ! オマエの神性がどれほどのものか知らないが!」
無数の剣閃。
それは六本腕全てが駆動することによって得られる凄まじき斬撃の嵐であった。
詩乃は靄の中で飛び交う斬撃を躱し、オーラをまとった鏡でもって受け止める。敵の攻撃は確かに鋭く速い。
そして、そのどれもがこちらからは視認できないほどの距離から打ち込まれている。
「ですが、重くはありません」
詩乃はさらりと言ってのける。
軋む鏡の音を聞く。それは言葉通りの意味ではなかったが、それでも耐えられないわけではない。
詩乃は敵を挑発する。
こちらを仕留められず、靄によって阻害されているからこそこちらを視認するために近づいてくる。
「仕掛けますので、よろしくお願いしますね♪」
詩乃は徒手空拳の男に話しかける。
「委細承知した」
薄紅色の瞳が詩乃に向けられる。彼は詩乃意図を汲み取ったようであった。
「この程度でワタシを挑発したこと後悔してもらおうか!」
迫る『アシュラレディ』の斬撃。
こちらを仕留めるために確実に近づいてきている。それを詩乃も徒手空拳の男も理解していたことだろう。
勝負は一瞬であった。
放たれた斬撃。近づく『アシュラレディ』。その刹那、詩乃の瞳がユーベルコードに輝く。
それは初発之回帰(ハジメノカイキ)。
詩乃に斬撃の剣閃が当たる瞬間に発露した力が、その斬撃が発動する前の状態に時間遡及する神力となって輝く。
もう何度も見た斬撃であればこそ、詩乃はその『原初の獣』のユーベルコードを相殺する。
「その驕りが貴女に敗北をもたらすのです!」
雷がほとばしる。詩乃の神性が発露し、六本腕を撃ち貫く。明滅の合間に打ち込まれた雷。
その雷光の影に疾走る拳がある。
徒手空拳の男の拳が『アシュラレディ』の胴に打ち込まれ、彼女はゴムまりのように大地を飛ぶ。
「これが神罰というものです。荒ぶる神性。世界に仇をなす神性。それらを私は討ちましょう――」
大成功
🔵🔵🔵
レナータ・バルダーヌ
確かに、不死の怪物の力は恐るべきに違いありません。
それでも世界を護るためなら、何が相手でも立ち止まりませんよ!
効果範囲の無限拡大……でしたら、近づくための時間を作るまでです。
敵の攻撃をサイキック【オーラで防御】し、必要に応じて神様じゃない方を【かばい】ながら彼我の距離を詰めます。
全て防ぎきれなくても、彼の拳が届くまで【痛みに耐え】るくらいやってみせます。
とはいえ、こちらもやられっぱなしでは終わりません。
【A.B.エンパシー】で【カウンター】の一撃を放ちます。
敵が動きを止めた隙を突くのは、彼にお任せしましょう。
知っている方と同一人物なら、その正鵠を射た一撃はわたしが耐えられなかったほどですから。
雷と拳が『アシュラレディ』を穿つ。
大地に打ち付けられ、跳ねるようにしながら空中で『アシュラレディ』は体勢を整える。
額は割れ、流血している。
六本の腕は打ち据えられながらも、未だ健在。
そして『原初の獣』のユーベルコードを得た『アシュラレディ』の力は事実上効果範囲が無限である。何処に居ても彼女の斬撃は標的に届く。
端的に言えば、地球の裏側に居たとしても彼女の斬撃は届くことだろう。
「ええい……! 此処までしても届かないというのか、ワタシは! そんなことなどあるはずがない!」
彼女の激高は尤もなことであっただろう。
手にしたのは不死の怪物、その怪物王たる『原初の獣』のユーベルコードである。
神々ですら殺すことができずに封じるしかなかった力。
それを手にして尚、届かぬものがあると思えるはずもなかった。
「確かに、不死の怪物の力は恐るべきに違いありません。それでも」
レナータ・バルダーヌ(護望天・f13031)は言う。
それでもと。目の前の敵、オブリビオンの力がどれだけ強大で恐ろしいものであったのだとしても。
それでも、彼女は前を向く。
紫の瞳が煌めく限り、そこに絶望の陰りは一片もない。
「世界を護るためなら、何が相手でも立ち止まりませんよ!」
放たれる『アシュラレディ』の斬撃。
六本腕から放たれる剣閃は、凄まじい速度でレナータを襲うだろう。防御に回したサイキックがひしゃげる音が聞こえる。
彼女が斬撃を受け止めた傍を轟音を立てる速度で以て走り抜ける影があった。
言うまでもない。
あの徒手空拳の男だ。
レナータは当初、彼を護ることも想定していた。だが、その必要はないようであった。彼我の距離を詰めるため、レナータは共に走り出す。
「あの人が、あの人の拳が届くまでは!」
サイキックを全開にし、レナータは徒手空拳の男に迫る斬撃の悉くを受け止め続ける。サイキックも無限ではない。
けれど、それでも守れるものがある。
最速最短で迫るためには、どうしたって傷は負うものである。傷を厭うのであれば、こんなやり方、認められるわけがない。
けれど、レナータにとって傷は厭うものではない。
傷口が開く。
血がにじむ。
痛みが己の体の中に走り抜ける。骨が軋んでいる。どうしようもない痛みに涙腺が刺激される。
それでも、と彼女は前に進む。
何のために、と誰かが問うだろう。その答えはレナータにとってひどく単純なものであった。
「誰が為に」
ただそれだけでいいのだ。
「自身のために戦えぬ者には! ただ散っていくしかない花と同じ! 実を取らぬことを美徳とするのなら、それは偽りだと知れ!」
『アシュラレディ』の斬撃が束ねられ、徒手空拳の男に振り下ろされる。
だが、そこにレナータは割り込みサイキックの障壁で受け止める。砕ける障壁、軋む骨。切り裂かれる肉。
激痛が疾走る。
紫の瞳がユーベルコードに輝く。
「この力は、誰かを護るために……」
A.B.エンパシー(アゴニーブランド・エンパシー)。
それはレナータが負った傷の苦痛を転写するユーベルコード。彼女の痛みは、彼女の敵対者への痛みでもある。
鏡合わせのような痛みに『アシュラレディ』は傷を負わずとも己の脳が錯覚を起こしたことにより、その外傷が生まれる。
血潮が噴出し、レナータの視界を赤が染める。
しかし、その赤を切り裂く雷光の如き煌きを彼女は見た。
「ええ、私が識っている方と同一人物なら、その正鵠を射た一撃は」
レナータは識っている。
あの拳を。
これまでどんな攻撃にも耐えてきた彼女であっても耐えきれなかった拳。
徒手空拳の男が雷鳴の如き轟音と共に拳を振るう。赤を切り裂く真白の閃光。
その拳が『アシュラレディ』を捉え、振り抜く。
レナータは識っている。
その名を。
「わたしが耐えられなかった拳」
されど、彼女が乗り越えてきた拳でもあるのだ――。
大成功
🔵🔵🔵
佐伯・晶
なんというか小物っぽさが増えてるような
戦神アシュラじゃないからなのかな
ともあれ厄介な力を持ってるのは事実だから
油断せずに戦おうか
射程は無限でも認識してない相手を狙うのは
流石に難しいだろうし
まずは目立たない様に近付こうか
探索向きの能力はなさそうだしね
ガトリングガンの射程まで近付いたら攻撃
神気で身を守りつつ戦おう
相手が刃物を飛ばし始めたら
こちらもUCを使用
刃物を停滞させる事で相殺するよ
そして刃物の数は有限だけど
こちらは範囲内なら対象に限りはないからね
徐々にでも石化させて動きを奪おうか
昔ならここまで権能を使えば
体が石になってたとこだけど
成長したのか慣れたのか
体が邪神に馴染んできたとは
思いたくないなぁ
ただの拳が神性を打ち砕く。
その音は雷鳴。雷光が空を切り裂くようにして奔れば、拳が『アシュラレディ』の体を打つのだ。
脆弱なる人の肉体。
神々にとは到底及ばぬ剛性でありながら、神々の体を砕くのだ。
「その名は本来ワタシのモノだ! 戦勝神だ、ワタシは!『不敗を象る名』はワタシの――!」
その叫びとともに『アシュラレディ』の瞳がユーベルコードに煌めく。
空を埋め尽くすのは、刀剣。
本来であれば目視できる距離でなければ、使うことのないユーベルコード。しかし、不死の怪物、怪物王たる『原初の獣』のユーベルコードを得た『アシュラレディ』には効果範囲を無限に変えることができる。
刀剣の嵐は猟兵を取り囲み、徒手空拳の男を抹殺せんとしている。
「なんというか小物っぽさが増えているような。戦神アシュラじゃないからなのかな」
佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は『アシュラレディ』が分身であることを識っている。
本体が滅びた後も、こうして『アシュラレディ』がオブリビオンとして復活していることからもそれは真実であった。
だが、それでも効果範囲の無限化は厄介な力であることは事実である。
油断は許されない。
空を埋め尽くす刀剣の切っ先がこちらを狙っている。
「こっちを認識していなくても、無差別に攻撃できる手段が在り、なおかつ射程は無限か……でもね」
晶の瞳がユーベルコードに輝く。
静寂領域(サイレント・スフィア)。それは神域の名である。
虚空より現れるのは森羅万象に停滞をもたらす神気。
あらゆるものを認識した瞬間、それらを停滞させる神気は、空を埋め尽くす刀剣全てに及ぶ。
「動かない……! どういうことだ!」
「簡単なことだよ。停滞をもたらしただけ……そして、君の刀剣の数は有限だけど、この神気は石化させてしまうものだから」
晶は空を埋め尽くす刀剣の尽くが石化し、大地に落ちる姿を見るだろう。
「だとしても、ワタシがオマエに負ける理由など……!」
『アシュラレディ』が疾走る。
停滞の権能に抗うように彼女は手にした刀剣で斬撃を放つ。
しかし、万物に停滞をもたらす神気は斬撃にすら停滞をもたらす。
「昔ならここまで権能を使えば、体が石になってたとこだけど」
晶は己の身に宿した邪神の権能を行使する。
代償は伴うものであった。己の体の彫像化。
しかし、今は違う。此処が神代であるからか、それとも己の成長したからか慣れたのか。
どんな要因であろうとも、彼女の体は石化の兆しはない。
「体が邪神に馴染んできたとは思いたくないなぁ」
手にした携行ガトリングガンから弾丸がばらまかれる。
それらが『アシュラレディ』の体を穿つ。停滞した時の中で自由に動くことができるのは、晶が敵と認識していない者だけだ。
この場において『アシュラレディ』はどれだけ疾く動くことができるのだとしても、どれだけ効果範囲を無限にすることができるのだとしても、無駄なのだ。
「どんな鋭い切っ先も届かなければ意味がない。どんな強大な力だってそうだよ」
晶は己の身に宿した邪神の権能を識る。
正しく知り、そして正しく使う。
扱いなれてきたことが何を示すのかを晶は恐れる。
力に恐れぬ者に力の全容を正しく識ることなどできようはずもない。だからこそ、晶は慣れという背後より忍び寄る気配にこそ敏感で恐れるのだ。
道を違えてはならない。
違えたのならば、己もまた永遠をもたらす権能に飲み込まれるのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
戦神アシュラの分霊が戦勝神を名乗りますか
オリジナルを越えんとするその意気や良し
されど、かの女神と同じくただ殺戮を是とするその刃
騎士として、断たせて頂きます!
間合い無限の六剣
飛び道具での応戦が常道でありますが…
徒手で戦う貴方の前でああも啖呵を切ったのです
騎士らしく真正面より挑みましょう
ええ、私がそう望んだのです
六剣がこの身を断ち切るか、間合いを詰め切るか…勝負!
連続斬を盾と剣の技量、機械の膂力と反応速度にて捌き
脚部スラスターの推力移動も併用し男と共に疾走
名とは授けられ、呼ばれ、自負と共に名乗るモノ
奪うモノではないのです…!
限界迎えた大盾を投棄
間合い詰め六剣全て弾き飛ばし
返す剣を両手にて振り下ろし
戦勝神にして終戦神。
それが戦神アシュラの神性である。そして、その分身である『アシュラレディ』もまたそれに準じる。
戦いの中でしか存在できない神性。
そのヴィランとしての姿が『アシュラレディ』であるというのならば、『不敗を象る名』を求めるのもまた自然なことであったのかもしれない。
停滞した時の中から、六本腕が握る刀剣によって切り裂くようにして脱出した『アシュラレディ』は吠える。
「ワタシにこそ、『不敗を象る名』は相応しいんだ! それに相応しい力も手に入れた! だというのに!」
まだ届かない。
あの人智を超えたかのような拳に彼女は届かない。
「その意気や良し」
トリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)は、『アシュラレディ』のオリジナルである『戦神アシュラ』を越えようとする気概にこそ共感を示す。
だが、そのオリジナルと同じようにただ殺戮をもたらすだけの刃を機械じかけの騎士は許すことはない。
「騎士として、断たせて頂きます!」
「騎士風情が!」
迫る『アシュラレディ』の剣閃。それは完全に刀剣の間合いから逸脱するものであった。
無限の効果範囲を手に入れた『アシュラレディ』の力。
それは不死の怪物、怪物王たる『原初の獣』のユーベルコードである。さらに六本腕から放たれる斬撃は瞬時にトリテレイアを襲うだろう。
さらに徒手空拳の男にもまた同様である。
これほどの斬撃を前にしては、飛び道具で戦うのが常道であったことだろう。普段ならばそうしたはずだ。
だが、トリテレイアは騎士として徒手空拳の男に言ったのだ。
啖呵を切ったのだ。
ならばこそ、彼は己の剣を掲げる。それは宣誓であった。
「騎士らしく真正面より挑みましょう」
トリテレイアは戦場を疾駆する。
斬撃が彼の盾に激突して火花を散らす。さらに横殴りに斬撃が見舞われる。それを防いでも第二撃、第三撃と襲い来る。刃の波状攻撃である。
「馬鹿正直に来るからそうなる!」
「ええ、私がそう望んだのです」
トリテレイアは後悔してない。此の選択に後悔はない。何故ならば、彼は騎士であるからだ。
宣誓したからには、生命をとしてそれを実行する。
それが彼の炉心に燃える騎士道精神であるから。
「この身を断ち切るか、間合いを詰め切るか……勝負!」
脚部スラスターが噴射し、一瞬で『アシュラレディ』へと迫る。
その速度に追従する踏み込みを見せる徒手空拳の男。
斬撃は六閃。
しかし、その反芻は徒手空拳の男に向けられている。猟兵に並ぶほどに脅威として『アシュラレディ』は認識しているのだ。
「その名はワタシのモノだ! オマエのモノでは!」
神々すら鏖殺する可能性を秘めた存在。己たちが生み出していながら、己達を超える存在。
それに抱いた感情を『アシュラレディ』は識っているだろう。
それが恐怖であると。
「名とは授けられ、呼ばれ、自負と共に名乗るモノ。奪うモノではないのです……!」
電子頭脳が告げる。
理論的にはじき出した確実な行動など、電脳が見せるゆらぎの前には些細なことであった。
騎士で在りたいと願う欲求。
それがトリテレイアを突き動かす。此の戦い方は消耗するだけの戦いだ。大盾が斬撃を受けて弾き飛ぶ。
もうトリテレイアを護るモノはない。
けれど、最期の一閃を前に飛び出したのは徒手空拳の男であった。
彼が両腕を交差させるように拳を振るい、最期の一閃を打ち砕く。
騎士ならば。
そう、騎士ならば、その献身に必ずや応えなければならない。
「ゆえに貴女にその名はふさわしくはない」
両手に握り直した剣の一撃が『アシュラレディ』に刻まれる。
その一閃こそが、機械騎士の狂想曲(マシンナイツ・カプリッチオ)を超えた先にある序曲。
それはこれから響くのだ。
神話に紡がれた歌としてではなく――。
大成功
🔵🔵🔵
ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!
言ったでしょ!そーいうのは言葉遊びだって
不死の怪物くんたちがここで実質死んでるようなもののようにね!
常勝無敗を謳ったキミも土の味を知ることだってあるのさ
●距離を埋める
効果範囲は無限になっても、無限に距離を取れるわけじゃあないってのがミソだね!
降れ触れもっと降れー!とおーーっきな[球体]くんたちをセンターオブジアースにどっかんどっかん降り注がせて距離を取ろうとするのをジャマしてからのー…
そのなかを【第六感】で斬撃をかいくぐりながらUCでドーーーンッ!!
フフン、わかってないなー
勝負ってのはさ勝ったり負けたり怪我したりするから楽しいのさ!
まあ最後にはボクが当然勝つけどね!
斬撃が『アシュラレディ』の体に刻まれる。
その一撃が血潮を噴出させる。戦勝神たる彼女の体に刻まれた傷。それは本来なら在りえぬものであったはずだからだ。
さらに言えば、不死の怪物、怪物王たる『原初の獣』のユーベルコードを手にした彼女にとっては、もっとも遠き事実であったはずだ。
「ありえない! こんなことがあっていいはずがない! ワタシは手に入れたはずだ! 不死の怪物の力を!」
理解を超えている。
脆弱な肉の体しか持たぬ徒手空拳の男の拳が、己の刀剣を砕いたように。
猟兵という生命の埒外たる存在が、ここまで介入してくる。
「言ったでしょ! そーいうのは言葉遊びだって」
ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)は手繰る球体たちをセンターオブジアースに降らせるように落とし続ける。
どれだけ『アシュラレディ』のユーベルコードが効果範囲を無限に変えることができるのだとしても、此方との距離を無限に取れるわけではないのだ。
ならば、その距離を埋めるために『アシュラレディ』の逃げ道を塞いでいく。
球体たちはまるで雨のように降り注ぐ。
「不死の怪物くんたちが、ここで実質死んでいるようなもののようにね! 常勝無敗を謳ったキミも土の味を知ることだってあるのさ」
さあ、とロニは球体たちが降り注ぐセンターオブジアースに歩みをすすめる。
「知る必要などあるものか! オマエも神性の一つであろうが!」
凄まじい勢いで振るわれる六本腕の斬撃が球体達を薙ぎ払っていく。
その鋭い斬撃は何処に居ても届くだろう。言ってしまえば、地球の裏側にいたとしても、彼女の斬撃は届く。
逃げ場など無い。
けれど、斬撃である以上、直線的なものである。
その直上から姿を消せばいい。
第六感を働かせる。
単純な力だ。複雑さとは程遠い。単純な事は明快であるということだ。ロニの手繰る力も同じだ。
単純ゆえに小細工など必要ない。
小細工など弱者のすることだ。それが人という生命が編み出した技術であるというのならば、否定することはできないだろう。
「フフン、わかってないなー」
ロニは疾走る。
その瞳をユーベルコードに煌めかせる。
神々の時代は必ず終わりを迎える。
神の似姿たる人がこれから紡ぐ歴史は、単純明快なことなど何一つ無い。折り重なり、編み上げられ、複雑怪奇な模様を描く。
それが途方も無い時間の果てに描かれるものであることを識っている。そして、それが美しいことも。
「勝負ってのはさ、勝ったり負けたり怪我したりするから楽しいのさ! まあ、最期にはボクが当然勝つけどね!」
放たれる神撃(ゴッドブロー)が『アシュラレディ』を打ち据える。
戦い続ける限り敗北は訪れる。
終わりがあるように。
不敗の神話も打ち砕かれる運命にあるのだ。その名が終わりを告げる時にこそ、嘗て望まれたものが訪れる。
忘れ去られ、消えゆくのならば礎に。
「ワタシは――!」
「往生際が、わるーい!」
ロニの一撃が大地を穿つ。
砕け散る破片と共に『アシュラレディ』は吹き飛び、神話の時代に終わりを告げるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
サージェ・ライト
あやー世界のどこに居ても斬られるとか無茶苦茶ですねー
さてどーしましょーそこの人
…ってよく見たらその瞳の色見たことありますね?
あれ?もしかしてチョコ肌たゆんアイドル(未遂)の親戚筋ですか?
え?チョコ肌たゆんアイドル知らない?
そうですか残念です……
ま、ともかく
私のカタールにしてもあなたの拳にしても
近くに行かないとどうしようもないですよね
というわけでいきましょう
どうするかっていうとこうです!
かもんっ!『ファントムシリカ』!!
さぁファントムシリカの手に乗ってください!
エンジェライトスラスターで一気に距離を詰めますよ!
的が大きくなった分当たりやすいですけど
ファントムシリカの装甲なら弾き返せるはずっ!
あとでばりぃされそうですけど(涙)
それは……耐えます、うっうっう……
真っ直ぐアシュラレディまで突っ込んだら
コックピットから飛び降りつつ
必殺のー!【乾坤一擲】だーっ!
さぁ今がチャンスです!
必殺の拳の一撃、叩き込んでくださいっ!
センターオブジアースの大地が砕け、破片が飛び散る。
その最中を吹き飛ばされながら、『アシュラレディ』が血反吐を撒き散らす。その体は五体満足でありながらも、満身創痍であった。
どれもが深き傷跡を刻まれるものであった。
しかし、その六本腕から刀剣が離されることはなかった。
何処まで行っても彼女は戦いの神である。
刀剣を手放すということは、己の神性を否定することである。彼女は戦いの中でこそ、己を見出す。
「だから、ワタシは戦い続けるのさ。予言してやるさ! どんなに時代が移ろうのだとしても、神々が人から忘れ去られようと、戦いは決してなくならない! 大なり小なり、姿を変えても、この世界から争いは終わらない。ワタシが消えないようにね!」
放たれる六閃の斬撃が世界を分断するように迸る。
「あやー世界のどこに居ても斬られるとか無茶苦茶ですねー」
サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)は斬撃疾走る世界を見やり、首をひねる。
不死の怪物、怪物王『原初の獣』のユーベルコードを得た『アシュラレディ』の斬撃は無限の射程を得ている。
斬撃を振るうだけで世界の端までたやすく届くだろう。
つまり、此方は距離を詰める必要があっても、あちらにそれはない。
圧倒的なアドバンテージだ。
「さてどーしましょーそこの人」
サージェは斬撃疾走る中で徒手空拳の男を見る。
薄紅色の瞳。
その瞳の色をサージェは識っていた。グリモア猟兵の瞳と同じ色をしている。まったく同じ色をしている。
だから、ちょっと気になったのだ。
「あのー、もしかしてチョコ肌たゆんアイドルの親戚筋ですか?」
いきなり何を言っているのだと思われるかもしれない。いや、絶対思われた。というか、チョコ肌たゆんアイドルってなんだそれって感じであろう。
首を振る徒手空拳の男。
「よくわからない」
「そうですか残念です……」
え、何が? むしろ、捏造してないかなって誰かが心配しそうなことをサージェはのたまう。
しかしながら、この剣閃舞う状況をどうにかしないといけないことには変わりない。
「ま、ともかく!」
斬撃を躱しながらサージェと徒手空拳の男が疾走る。
考えていることは同じだ。自身のカタールも、男の拳も、近くに行かないとどうしようもない。
「とにかくいきましょう。どうするかっていうと、こうです! かもんっ!『ファントムシリカ』!!」
虚空より現れる白と紫を基調としたサイキックキャバリアが戦場を疾走る。
その手に徒手空拳の男を乗せる。
「しっかり掴まっていてくださいよ! 一気に距離を詰めますよ!」
『ファントムシリカ』の背面に一対の羽のように展開されたスラスターが天使の輪のような光帯を発生させる。
その光輪が世界を照らした瞬間、機体が走り抜ける。
斬撃が『ファントムシリカ』を襲うだろう。5m級の戦術兵器であるのだからしかたない。機体を掠める斬撃が装甲を引き裂く。
だが、フレームにまでは到達していない。
「あとでこれ絶対ばりぃってされるやつです!」
あー! とサージェは思わずコクピットの中で叫びそうになる。いや、絶対やられるやつである。
しかし、それは耐えればいいのである。
いや、それでもやだなぁって思えるところがサージェの良い処であったのかも知れない。どんな局面も笑いを絶やさぬということは、敵に打ち勝つよりも難しいことであったのだから。
「ただ巨大化しただけでワタシを止められると思うな! ワタシは、この神代で――!」
『アシュラレディ』の一撃が『ファントムシリカ』の装甲をひしゃげさせる。
だが、それでも止まらない。
止められるわけがないのだ。
例え、『不敗を象る名』が争いの渦中に在るモノであったのだとしても。
これが『スナークゾーン』という仮想世界での出来事だったのだとしても。
砕ける装甲片と共にサージェは『ファントムシリカ』のコクピットから飛び出す。
徒手空拳の男が、それより疾く飛び出していた。
「さぁ、今がチャンスです! 必殺の拳の一撃、叩き込んで――」
徒手空拳の男の拳が『アシュラレディ』の顔面を捉えていた。
振り抜かれる拳は轟音を響かせる。
まるで雷鳴のような拳であった。そして、背後から飛ぶサージェの前でくるりと後転するように己の足裏を足場にして、彼女を加速させる。
サージェの体が凄まじい加速を持って『アシュラレディ』に迫る。
血潮溢れる『アシュラレディ』は朱に染まる視界でみただろう。己に終わりをもたらす、乾坤一擲(ヒッサツノイチゲキ)の一撃を。
カタールの切っ先が『アシュラレディ』を貫く。
「くろすっ!」
点で貫かれたカタールが十字に振り抜かれる。
「いんぱくとーっ!!」
それは十字架。
戦いの中でしか生きられぬ神性が終わりを得る瞬間――。
●後年
神々の時代は終わりを告げる。
『スナークゾーン』においてもそれは変わりないことであった。
不死の怪物は神々によって封ぜられ、生命創造の礎となる。生命力が溢れるセンターオブジアースから、神々は己の荷姿たる人間を生み出す。
今はまだ原始的な生活ばかりであろう。
徐々に文明が築かれていく。
人の営みは続く。されど、センターオブジアースに刻まれた傷跡は山河となるだろう。
そして、残された『シンフォニック・リリッカーズ』や『アシュラレディ』の刀剣は石化されたままセンターオブジアースに残り続けるだろう。
それが神々の時代に在りし戦いの証拠であると後年の人々は知る。
「――という伝説なのさ」
巡礼の魔法使い『モーニア』は焚き火を挟んで座る少年に告げる。
少年は興味深げにうなずき笑った。面白かった、と。
「さあ、もう寝る時間だ」
火の番は己がしているからと、微笑み『モーニア』は少年に眠るように告げる。時間が来たら起こしてあげるから、と。
「おやすみ――『アズマ』」
大成功
🔵🔵🔵