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歌に魅せられ沈み行く先は

#ダークセイヴァー #シリアス

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#ダークセイヴァー
#シリアス


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●届く声
 薄暗い世界に闇満ちる深夜。闇の中に垂れ込めた雲から、雨粒が落ちてきている。
 宵の口から降り始めたそれは次第に風とともに強まり、カタカタカタ……と戸板を揺らす。
「おっとやべぇ……納屋の扉に閂かけるの忘れちまった……」
 自身の家をもぎしぎしと揺らす風音に、男は目覚めた。雨避けを羽織り、家を出る。村の中は闇に包まれ、シン……としていた。当然だ、こんな時間に誰も起きているはずはない。起きていたとしても、雨の中わざわざ外に出るまい。
「これでよし、と……」
 男が納屋にたどり着き、無事に閂を閉めたその時。
 ――ルールルル……。
 歌声が、聞こえた。
「……?」
 こんな雨の日の真夜中に? 男はまさか、と耳を澄ませる。
 ――ルールルル……。
 それでも歌声は、村の裏手の森の方から聞こえてきた。

「……ママ、お歌が聞こえるよ」
「……!!」
 隣で寝ていたはずのわが子の言葉に、母親は大きく体を震わせた。
「き、気のせいよ。きっと風の音が声のように聞こえたのね」
「でも……」
 まだ半分夢の中の子どもに言い聞かせるようにして、ぽんぽんと寝かしつけるように優しく体に触れる。
「おう、た……」
 そのまま眠りに落ちた我が子を見て、母親はほっと胸をなでおろす。
 聞こえていない、聞こえていないのだ。
 歌声など、聞こえていない。
 聞こえたと思ったら、惹かれたら、確かめたいと思ったら、最後なのだ――。

●グリモアベースにて
「……、……」
 グリモアベースに佇む長身の男の背には、ふぁっさーとした黒い翼が広がっている。髪に咲く花も見えることから、オラトリオなのだろう。彼の背後に見えるのは、ダークセイヴァーの景色。
「時間があるなら、聞いていけ」
 ぶっきらぼうな物言いの彼の手には、数枚の羊皮紙。ちなみに特段機嫌が悪いというわけではないようだ。
「ダークセイヴァーの事件の解決を頼みたい」
 グリモア猟兵リーナス・フォルセル(天翔ける黒翼のシュヴァリエ・f11123)は、自らの予知を語り始めた。
「例に漏れずヴァンパイアの支配下にあるとある村での出来事だ。真夜中になると村の裏手の森から、歌声が聞こえるらしい」
 その歌声は子どもか女性の高い声。真夜中な上、ただでさえ見通しの悪い森だ。村側からちらっと森の中を覗いたところで、何も見つけられない。
「その歌声を確かめに、あるいは歌声に惹かれるように森へ入って行った者は、誰一人として帰ってきていない」
 村ではすでに数人、行方不明者が出ている状態だ。
「オブリビオン――ヴァンパイアの関与が疑われるため、早急に歌声の主やその真意、関わっている者達などを突き止め、解決して欲しい」
 リーナスが言うには、村人達が昼間に森の中を虱潰しに探しても、行方不明になった者達はもちろん、歌声の主らしき者も見つからなかったという。
「お前たちならきっと、上手くやれることだろう。期待している」
 終始淡々と述べ、彼は猟兵達を導く準備を始めた。


篁みゆ
 こんにちは、篁みゆ(たかむら・ー)と申します。
 はじめましての方も、すでにお世話になった方も、どうぞよろしくお願いいたします。

 このシナリオの最大の目的は、「黒幕オブリビオンの討伐」です。

 第一章では、いざなうように村へ響く謎の歌声の正体を突き止め、その目的や裏で糸を引いている者の特定などを行って頂く形となります。

 第二章では、黒幕オブリビオンを守る手下オブリビオンたちとの集団戦となります。

 第三章では、黒幕オブリビオンとの直接対決となります。

 ご参加はどの章からでも、何度でも歓迎いたします。

 現地まではグリモア猟兵のリーナスがテレポートしたのち、猟兵のみなさまをお喚びする形となります。

●お願い
 単独ではなく一緒に描写をして欲しい相手がいる場合は、お互いにIDやグループ名など識別できるようなものをプレイングの最初にご記入ください。
 また、ご希望されていない方も、他の方と一緒に描写される場合もございます。

 皆様のプレイングを楽しみにお待ちしております。
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第1章 冒険 『誘う歌声』

POW   :    歌声の主を探し、森をくまなく探索する。広範囲だが何か痕跡が見つかるかも知れない。

SPD   :    聞こえてきた歌声をたどり、森を最短距離で突っ切り探索する。急げ!

WIZ   :    村人への聞き込みや地図、風向きから歌声の正体や位置を割り出す。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

トーア・ローウェン
とりあえず情報収集すっか

手近なバーや喫煙所へ身を寄せ煙草でも吸いつつ、あっちにいる子は可愛いだのと笑い話に花を咲かせようか
『最近きれーな歌声が聞こえてくれるらしーじゃん』
『行方不明になったヤツとかもいんだろ』
『こえーから避けるために大体の場所とか方角教えてほしーんだけど』
ビビリとか腰抜けって笑われたら儲けもん
びびったフリして退散しよ

大体の場所を教えて貰ったら
自分はゆったり向かいつつ
同じ方向に向かう鳥にユーベルコード『常世の瞳』を使用し追跡
ざわつく視覚情報に口元を緩め
『お手並み拝見といこーか』

教えてもらえなかった場合も大体一緒
瞳と己の探す方向を分ける

鳥が見当違いの場所に行ったら使用を解除する



●情報収集
(「とりあえず情報収集すっか」)
 村へと入ったトーア・ローウェン(回帰の門・f14155)が感じる空気は重い。当然だろう、出所不明の歌声に行方不明者が出ているのだから。
 トーアは手近なバーや喫煙所などでの情報収集を考えていたが、ヴァンパイアの支配下にある小さな村にはバーなどというおしゃれなものはおろか、酒場や宿屋もないようだ。生きるのに精一杯ということだろう、嗜好品のたぐいはほぼ流通していないようだ。町くらいの規模ならば、宿屋兼酒場がある可能性は高いのだが。
「お兄さん、旅人さん?」
「ん?」
 さてどうするか、と考えていたトーアの足元から声がした。視線を向けてみれば、小さな少女がトーアの服の裾を引いている。
「この村にはね、お宿はないんだよ。だから、詩人さんや商人さんは村長さんの家に泊めてもらうんだよ」
「へぇ」
「お兄さん、お泊りする? リルが頼んであげる!」
 村長ならば情報は握っているだろう。ただ、旅人に話してくれるかは別として、だ。
「じゃ、頼むぜ」
 トーアはリルという少女に手を引かれ、村長宅へと向かった。

「大したもてなしができず申し訳ない」
「いや、泊めてくれるだけでありがたいぜ」
 宿泊の許可が下り、夕食の席で村長が恐縮して頭を下げた。確かに饗された料理は質素で、心ばかりの酒が添えられていたが、彼らにとってはこれが精一杯なのだろう。
「旅人さんよ、お疲れじゃろう。そんな時は酒を飲んで早く眠ってしまうに限るよ」
(「なるほど、歌声を聞かせたくないんだろーな」)
 偶然訪れた旅人を被害に遭わせたくないのだろうことは感じ取れた、が。さすがにはいそうですかと引き下がるわけにはいかない。
「最近きれーな歌声が聞こえてくれるらしーじゃん」
「……!!」
「行方不明になったヤツとかもいんだろ」
 村長を含め、共に食事をしていたその家族たちが硬直した。けれども。
「こえーから避けるために大体の場所とか方角教えてほしーんだけど」
「そこまでご存知なら、仕方がありませんな……」
 トーアが続けたその言葉に安心したのか、村長は村の裏手の森と、その中でも大体の方角を教えてくれた。

 闇が降りた村。食事を終えて「早く寝るわ」とあてがわれた部屋へとひっこんだトーアは、窓からこっそりと外へと出ていた。そのままゆったりと森へと向かう。歌声が聞こえだす時間よりはまだ早いか。
 バササッ……小さく聞こえた羽音を聞き逃さず、発動させるのは『常世の瞳』。召喚した貴婦人達の瞳にその小鳥を追跡させ、共有した視覚情報を検分してゆく。
「お手並み拝見といこーか」
 だが闇の中、そして森の中だ。視界はけっして良くはない。
 しばらくして、鳥が突然上空へと羽ばたいた。まるでなにかから逃げるように――急速に変化する視覚情報。鳥は森からだんだんと離れていく。トーアは『常世の瞳』を解除し、息をついた。
(「鳥が逃げたってことは、何かあるんじゃねぇの?」)
 そういえば、村の中や森付近で数人の猟兵を見た。情報の共有ができるかもしれない。トーアは用心しつつ、他の猟兵達との合流を目指すことにした。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

ルリ・アイカワ
POWにて森を探索

森で何かを探すのは苦では無い
例え森からコイン一枚を探せと言われても探し続ける自信もある
問題は探し物が機械に反応してくれるかどうか
生物の第六感で見聞きできる物が果たしてセンサーで捉えられるか
ちょっとした自己評価の為に依頼を受けている節があるだろう

生物が移動してるなら足跡があるだろう
ましてや人が歩いているなら解りやすいかもしれない
そのあたりを重点的に見て回ることにする

「あなたが原因ならさぞ簡単な依頼だったろうな」
芋虫をつまんでクネクネさせているのを見て溜息交じりに森を歩き回る



●森を行く
 ザッ、ザッ。
 一定の速度で聞こえる下草を踏みゆく音。その長身の行く手を阻む枝葉を退ける音。ルリ・アイカワ(ウォーマシンのバーバリアン・f05097)は森の中を行く。
(「森で何かを探すのは苦では無い。例え森からコイン一枚を探せと言われても探し続ける自信もある」)
 ウォーマシンの彼女は長いこと戦場にあった。ウォーマシンだから、というより歴戦兵だからという部分が大きいか、それともどちらも併せ持っているからか、同じことを繰り返したり長いこと続けるのは苦にならない。
(「問題は探し物が機械に反応してくれるかどうかだ」)
 それが『物』であれば、彼女に搭載されたセンサーで捉えることが出来るだろう。けれども、今回は『歌』だ。
(「生物の第六感で見聞きできる物が、果たしてセンサーで捉えられるか?」)
 ちょっとした自己評価も兼ねて、この依頼を受けていた。
(「生物が移動しているなら足跡があるだろう」)
 ましてやそれが人間だとしたら、捉えやすい。すでに、ルリはいくつかの足跡を見つけていた。だがそのうちの殆どは二人組以上の複数人のもので、村人達が森の中を虱潰しに探したというその時についたもののように思えた。
「あなたが原因なら、さぞ簡単な依頼だったろうな」
 葉を揺らした際に姿を見せた芋虫をつまむ。身をくねくねさせているその様子を見て、ルリはため息を付きながら歩みを再開した。
 森の、村に近い方から手当たり次第、だが見落とさぬよう、森の端へ辿り着いてはいくらか奥へと進み、また森の端まで進む、を繰り返す。
 どれだけそうして歩いただろうか。ちょうど森の真ん中あたりから奥にかけて、土の質が変わっていることに気がついた。
(「これまでの土よりも、乾燥していて硬いな」)
 ここより奥は足跡が残っている可能性は高くないだろう。それでも何らかの痕跡を見つけるべく再び歩きだそうとしたルリ。
「……!」
 その時センサーが捉えたのは複数の熱源。方角はルリが来た方――村側だ。
(「他の猟兵か。合流したほうが良いだろうか?」)
 考えつつも足を止めない。彼らが何かを見つけて移動すれば、熱源が移動する。つまりセンサーでわかる。
 合流するのはそれからでもいいだろうと判断し、彼女は彼女にしかできぬ方法で森の中を探索し続ける。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

ジルバ・アイト
【WIZ】
【情報収集】使用
昼間のうちに村の各方角で何件かずつ聞き込みをしていき、歌声が聞こえてきた方向を地図に矢印で描き込んでいく
そうすれば各矢印が交差する場所が歌声の発生場所って事になるだろうからな

また村人達には歌声が聞こえてきても絶対に森に入らないように念を押しておく
「歌声の正体は俺達が必ず突き止める。だから安心して待っていて欲しい」

夜になったら歌声が聞こえてくる方向と地図を照らし合わせながら歌声の主の居場所を突き止める
同時に、行方不明者の痕跡や、周囲に怪しい建物がないかの探索も行う

「これ以上犠牲者が出る前に早く解決してやらないとな」

得た情報は仲間達とも共有する
仲間との連携・アドリブ歓迎


蛇塚・レモン
歌は悪用する為にあるんじゃないよっ!
駆け出しアイドルのあたいがズバッと解決しちゃうよっ!

まずはアイテム魔法の辞典で、この村の地図を取得しよっと
(情報収集+世界知識+地形の利用)
地形から風の流れと森が近くにあるのか確認するよ
あと、念動力で空を飛んで(空中戦)実際に風の向きを体で感じてみようっと
遠くには何があるかな?
(第六感+野生の勘+視力+情報収集)

そして村人に歌声の事を聞いて回るよ
あまり話したがらないだろうから、根気強くお願いしてみるね
(コミュ力+優しさ)

「安心してっ! あたいたちはみんなを助けに来たんだよっ!」
「知ってることがあるなら、何でもいいから教えてほしいなっ!」


アルバ・ファルチェ
《WIZ》
(絡み・アドリブ歓迎)

行方不明者も出てるなら心配だよね…早く探さないと。
これも【救助活動】や【失せ物探し】の一環かな。

【コミュ力】【礼儀作法】を駆使して村人から【情報収集】を。
行方不明になった人についてやその人の家の位置なんかと森の地図があるならそれも貰えると嬉しいな。

情報と地図を手がかりに大まかにでも方向を絞り込めたら
【聞き耳】や【視力】で手がかりを探すよ。
狼姿になれば嗅覚でも何か得られるかな?
異変が起きてるなら森に動物は居なさそうだし【動物と話す】は無理そうかな…。

行方不明者の無事を【祈り】ながら、万が一のことも【覚悟】して【第六感】も交えながら、行けるところまで行ってみよう



●集まりゆく情報
「歌は悪用する為にあるんじゃないよっ!」
 お怒りである。大層お怒りである彼女は蛇塚・レモン(叛逆する蛇神の器の娘・f05152)。『魔法の辞典』を開き、村と森周辺の情報を集めて誌面に浮かび上がらせるのは、この村付近の地図だ。
 この世界の移動は主に馬や馬車で、通信手段はない。吟遊詩人や行商人から他の地域の話題を得ることはあっても、小さな村ではそんなに遠くへ出かけることはほとんどあるまい。ほとんどの村人が、村内やごく近隣で人生を終えるのだろう。となれば、村に地図が存在していない可能性、あったとしても精度に欠ける可能性が高い――だったら自分の目で見て自分で作り出してしまえというわけだ。
「よし。駆け出しアイドルのあたいがズバッと解決しちゃうよっ!」
 次いで念動力で自分の体を宙へと浮かべ、風向きを肌で感じる。
「遠くには何があるかな?」
 森の木々の奥になにかが見える。建物だろうか。
「石、レンガかな? なんだろ、お城? お屋敷?」
 木々に隠れて判然とはしなかったが、それが建物であることはわかった。ゆっくりと地に降りて、地図を更新する。レモンの作業を見ていたのだろう、二人の猟兵が彼女に近づいてきた。
「ねぇキミ、その地図、書き写させてもらえるかな?」
「俺も頼みたい」
 声をかけてきたのはアルバ・ファルチェ(紫蒼の盾・f03401)とジルバ・アイト(落トシ者・f03128)。二人共、聞き込みをするのに地図を利用したいと考えていたのだ。
「おっけー!」
 地図を持ち三人は、それぞれ村の中へと散っていった。

 夜――まだ歌が聞こえてこない時刻。昼間のうちに聞き込みを済ませた三人は、森の手前で合流していた。
「歌声の正体は俺達が必ず突き止める。だから安心して待っていて欲しい」
 村人から歌声が聞こえてきた方角を聞き、それを地図に矢印で書き込みながら、村人達に森へ入らないように念を押して歩いたジルバ。
「行方不明者も出てるなら心配だよね……早く探さないと」
 行方不明になった人の家の位置などの情報を集めたアルバ。行方不明者の家が森に近い場所に多いのは、歌声が聞こえやすいからだろうか?
「僕たちは歌声の正体を突き止めに来たんです」
 真摯に、丁寧に告げれば、村人達から情報を集めることができた。
 森の地図があればとも思ったが、村人達は木や草の種類で森の中を把握しているようで、やはり地図は作っていないようだった。
「安心してっ! あたいたちはみんなを助けに来たんだよっ!」
 村人達はあまり話したがらないだろう――それを見越して根気強くお願いを続けたレモン。
「知ってることがあるなら、何でもいいから教えてほしいなっ!」
 謎の歌声と行方不明者、それに加えて見知らぬ者達(猟兵たちである)が村やその近辺を嗅ぎ回っているようであれば村人達が警戒し、不安に思うのも当然だ。それにはやはり、自分たちの目的を伝え、安心させるのが効くだろう。状況によっては逆効果になる場合もあるが、今回はそれが良い方向へと働く状況だったというわけだ。
「歌声が聞こえてきた方角を記した矢印が交差する場所、森のこのあたりが歌声の発生場所の可能性が高いだろう」
「僕の調べた、行方不明になった人の家の位置と合わせてみても、その方角に間違いはなさそうだね」
 ジルバとアルバが己の手にした地図を見せあい、頷き合う。ただし実際森に入ってみねば、わからぬことが多いのも事実だ。
「あたいは、森の向こうに見えた建物について教えてもらえたよ」
 レモンは自分の地図に記してある謎の建物部分を指して。
「みんなあまり口にしたがらなかったんだよね。聞いたらあーなるほどって思ったんだけどっ」
 建物の位置は、ジルバとアルバの調べてきた方角の森を超えたところにある。
「ここ、領主様のお屋敷――つまり、ヴァンパイアの住処があるんだって!」
「!」
「……なるほど」
 レモンのもたらした情報にふたりとも、多少驚きはしたものの、妙に納得した部分もあった。
「もしかしたら領主様が関わってるかもしれない、って思ってる人はいるかもしれないね」
「言い出せる者はいないだろうがな」
 そんな風にほぼ情報交換を終えたその時、最初にそれを聞き取ったのはアルバだった。
「しっ……」
 口元に指を当てて耳を澄ませる。次第にその旋律は、ジルバやレモンにも聞き取れるようになって。程なく、普通に村内まで見えざるいざないの手を伸ばすほどになった。
「これ以上犠牲者が出る前に早く解決してやらないとな」
 と、ジルバが告げたその言葉は、アルバとレモンの気持ちと同じ。
 三人は他の猟兵達と情報の共有を行ったのち、行方不明者の無事を祈りつつ、警戒しながら森の中へと足を踏み入れた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…ん。吸血鬼が関わっているのなら、私に否は無い。
これ以上、犠牲者が増える前に元凶を叩いてしまおう。

事前に防具を改造し、精霊の存在感を感知する呪詛を自身に付与する。

私は森の入口で【限定解放・血の教義】を応用発動。
精霊石の宝石飾りに魔力を溜めて精霊を誘惑し、
精霊使いの礼儀作法に則り彼らを鼓舞して助力を求める。

…風の精霊、音の精。人を惑わす歌の主の居場所を教えて?

…土の精霊、森の精。摂理を曲げる過去…吸血鬼の元へ導いて。

…闇の精霊、死の精。この森で最も怨念が色濃い地を私に指し示して。

精霊の声を第六感を頼りに聞き分け必要は情報を見切り、
他の猟兵と情報を共有した後、目的地へと向かおう。



●情報精査
(「……ん。ヴァンパイアが関わっているのなら、私に否は無い」)
 ヴァンパイアを狩る、ただそれだけの目的をいだくリーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)にとっては、ヴァンパイアが絡んでいる事件ならば赴かぬ理由はなかった。
(「これ以上、犠牲者が増える前に元凶を叩いてしまおう」)
 事前に改造を施した防具で自身に付与したのは、精霊の存在感を感知する呪詛。森の入口に立ったリーヴァルディは、『限定解放・血の教義』を応用発動させる。精霊使いの礼儀作法に則り、彼らを鼓舞して助力を求めることにした。

「……風の精霊、音の精。人を惑わす歌の主の居場所を教えて?」

「……土の精霊、森の精。摂理を曲げる過去……吸血鬼の元へ導いて」

「……闇の精霊、死の精。この森で最も怨念が色濃い地を私に指し示して」

 精霊の声を己の第六感を頼りにして聞き分けていく。中には無関係の情報もあったり、多弁すぎる精霊もいたが、その中から必要と思える情報を抽出してゆく。
 得た情報をまとめると、『吸血鬼の居場所』は森を越えた向こう。『この森で最も怨念が色濃い地』は森の端、吸血鬼の居場所に近い部分。そして聞こえ始めた『歌声の主』の居場所は、『この森で最も怨念が色濃い地』とほぼ同じ場所。
(「やはり、ヴァンパイアが関わっている……」)
 確信を得たリーヴァルディは、始めと同様に精霊使いの礼儀作法に則り彼らに礼を述べた。そして他の猟兵達と情報を交換・共有してゆくと、自身の情報の精度が裏付けられたように感じて。自信を持って森の中に足を踏み入れた。

成功 🔵​🔵​🔴​

シャルロット・ルイゾン
ジオレット様(f01665)と同行。
【WIZ】

ジオレット様のお手伝いをしながら
わたくしもわたくしなりに調べてみますわね。

わたくしも聞き耳で歌を聞き取りながら
世界知識と学習力に加え、第六感も活用しながら大体の方向や位置を探ってみますわね。
加えて、視力、暗視なども活用して、人が通った痕跡がないかなどの情報収集も行います。
なにか見つけましたらジオレット様にもお知らせいたしますわね。

ああ、お待ちください、ジオレット様。
置いていかないでくださいませ。
……ジオレット様?どうか、致しましたの?
なにやら、思いつめたようなご様子ですわよ。


ジオレット・プラナス
シャルロット(f02543)と一緒に調査。

【聞き耳】をたてて、歌の聞こえて来る方向を探ってみるね



「どこぞの笛吹男の逸話みたい…
歌をこんな風に唱うやつは…気にくわないな…」

距離を詰められるように…
必要なら(シャルロットに纏うトーガをを預けたりして)、
身軽な状態枝から枝へ跳躍したりもして、最短ルートを構築してみるよ

…に、しても…どう言う意味、かしら…この歌

聞こえた歌を反芻するように口に出して口ずさんでみたりも…
只の意味のない『歌詞(ソング)』か…はたまた『呪歌(ガルドル)』か


…っ!(歌に没頭しすぎ、シャルの声にはっと)
思い詰めてなんか…いない…はず…

…いや、少し怪しかった、かも……ありがと(ぽそ



●突入
「聞こえるよ」
「聞こえますわ」
 ジオレット・プラナス(月夜の鎮魂歌・f01665)とシャルロット・ルイゾン(断頭台の白き薔薇・f02543)は共に森へと歩み入る。
「どこぞの笛吹男の逸話みたい……歌をこんな風に唱うやつは……気にくわないな……」
 ぽそり、呟いたジオレット。シンフォニアである彼女としては、当然の気持ちだろう。
「ジオレット様、こちらに人の通った痕跡がございます。先行した猟兵たちかもしれませんわ」
 夜目の効くシャルロットが方向を示して教えてくれる。聞こえてないのかなにかに夢中なのか、ジオレットからの返事はない。けれども、彼女はシャルロットの示した方向へと正しく進んでいた。
 少しでも歌声との距離を詰められるように――身軽なジオレットは跳んで枝を掴み、その上に立つ。
「……に、しても……どう言う意味、かしら……この歌……」
 ふたりに聞こえているのは、女性の高い歌声。歌詞の意味はわからない。彼女の知らぬ言語が使われているのか、はたまた歌詞自体に意味を持たせていないのか。聞こえた歌を反芻するように口ずさみながら、ジオレットは別の枝へと飛び移った。
「只の意味のない『歌詞(ソング)』か……はたまた『呪歌(ガルドル)』か」
 考え込んだままのジオレットが、飛び移る次の枝を探して無意識に顔を動かしたその時。
「ああ、お待ちください、ジオレット様。置いていかないでくださいませ」
「……っ!!」
 歌に没頭しすぎていた――シャルロットの声ではっと我に返ったジオレットは、素早く枝から降りた。シャルロットはようやくひとりで先行するのをやめてくれたジオレットに駆け寄って。
「……ジオレット様? どうか、致しましたの?」
 覗き込んだ彼女の表情がなんだか固くて、心配になる。
「なにやら、おもいつめたようなご様子ですわよ」
「思い詰めてなんか……いない……はず……」
 ジオレットがとっさに返した言葉は、語尾に行くほど自信を失い、力がなくなってゆき。
「……いや、少し怪しかった、かも……ありがと」
 ぽそりと告げられた言葉に、シャルロットは小さく微笑んで。
「共に参りましょう。あちらから、歌声だけではなく、葉擦れの音なども聞こえておりますわ」
「ええ、歌声が消える前に」
 ミレナリィドールの少女たちは、並んで奥へ奥へと森を進んでゆく。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

糸縒・ふうた
アドリブ・絡み等歓迎

最近、歌ってすごく素敵なものだなって思うようになったんだ
うっとりしちゃったり、嬉しくなったり
それって、こんなことに使っていいものじゃないし、使って欲しくない
これ以上悲しい想いをする人が出ないように、行こう

夜の行動になるから昼間の内に寝て
ぱっちりお目目で向かうぜ

まずは森に入って夜行性の動物を探そう
見つかったら【動物と話す】で歌声の話や
最近森に変わったことがないかを聞いてみる

もしかしたらその子の家族も居なくなってるかもしれない
オレたちに任せて
もう誰も居なくならないから

歩きながら普通の森と様子が違うところがないか注意して見つつ
怪しいいきものがいたら【森の忍者】に追跡をお願しよう


鹿忍・由紀
こんな世界で真夜中にわざわざ歌を確かめにいくなんて不用心な人達だね。

【SPD】
技能「聞き耳」「追跡」「暗視」を使って歌が聞こえくる方向を辿るよ。
暗い森の中に何か仕掛けられてる可能性にも警戒しつつ、歌という道標を見失わないように早めに追いたい。
歌声が近くなったら気配を隠しつつ様子を窺おう。
誘い込むための歌声だから近付き過ぎないようにしなくちゃね。
歌に惹かれた被害者もいるってことは歌に誘惑でも乗せてるのかな。

別に一人でもいいけど絡みやアドリブはご自由に。
効率良く進めるなら協力するよ。



●捉えた姿は
(「最近、歌ってすごく素敵なものだなって思うようになったんだ。うっとりしちゃったり、嬉しくなったり」)
 夜間に行動するために昼のうちに寝ておいた糸縒・ふうた(風謳エスペーロ・f09635)は、予定通りお目目ぱっちりである。
(「それって、こんなことに使っていいものじゃないし、使って欲しくない。これ以上悲しい想いをする人が出ないように、行こう」)
 そんな強い思いがあればこそ、きちんと睡眠をとって万全の体制を整えたのだ。
「こんな世界で真夜中にわざわざ歌を確かめにいくなんて不用心な人達だね」
 彼と共に森を行くのは鹿忍・由紀(余計者・f05760)。夜目を効かせて耳を傾けて、歌という道標を見失わぬように早足で行く。
「そうだな。歌が始まる前に動物たちはきちんと逃げたのにな」
 歌が聞こえてくる前に、ふうたは森へ入ってすぐのあたりで動物から話を聞いていた。彼らによれば、その歌声と声の主が怖いので、歌が聞こえてくる頃になると鳥などは森を離れ、離れられない者はあなぐらの中で、茂みの奥で、身を寄せ合うようにして歌が終わるのを震えて待っているのだという。人間よりも敏感な動物だからこそ、何か感じるものがあるのだろう。
「オレたちに任せて。もう誰も居なくならないから」
 さいしょに歌がきこえた日にようすを見に行ったおとうさんがかえってこないの――告げた子ウサギの頭をなでて、ふうたはこの事態の解決を約束したのだった。
(「誘い込むための歌声だから近付き過ぎないようにしなくちゃね」)
 次第に歌声に近づいているのがわかった。だがその歌声は『餌』である。近付づきすぎて捕らわれては意味がない。由紀はふうたを手で制し、気配を消して様子をうかがう。
(「歌に惹かれた被害者もいるってことは歌に誘惑でも乗せてるのかな」)
 その真偽はわからない。動物には恐れられ、人を引きつける歌声の主とは――?
「誰か――何かがいるのはわかるけど、ここからじゃ、まだよく見えないね」
「任せてくれ」
 由紀が小声で告げると、ふうたも小声で答えて胸を叩く。そして彼が発動させたのは『森の忍者』。召喚された番いのモリフクロウと視界を共有し、ふうたは彼らを飛ばす。
 見えたのは。
「女の人だ」
 白銀の長い髪に裾の長い白い服。切り株に腰を掛けて旋律を紡ぐその姿は、美しい――けれど。
「ヴァンパイア、だ」
 ふうたの言葉に、由紀は驚かなかった。むしろやっぱり、と思ったくらいだ。

 その時、突然歌が止まった。


●いざない
「聞こえているのでしょう? 今日はたくさんのお客様ね。それも、村人とは違う――」
 領主の館のある方向を背にし、立ち上がって女性は言葉を紡いだ。誰に、というわけではないだろう。恐らく、全員に、だ。
 協力して、情報を共有して、あるいは己の力でここまで辿り着いたのは、森に入った猟兵全員。
 さすがに女性の姿を見つけて突撃した者はいないようだ。それは女性の言葉からもわかる。
 互いに姿は見えていないかもしれない。けれども、たしかに皆、歌声の主たる女性のもとへ辿り着いているのだ。
「最近、めっきり村人も釣れなくなって困っていたの。けれどもこれだけのお客様を連れて帰れば、ご主人様はお喜びになるはず」
 女性は赤い瞳で周囲を見回す。猟兵たちの姿は見えていないだろう。けれども複数で、歌声の気こる時間に訪れれば、村人ではない者達が行方不明事件の原因排除のためにやってきたであろうことは、彼女にも予想がつく。
「あなた達に拒否権はないわ。村人を釣る歌をやめさせたくば、この先にあるご主人様――『残影卿』の屋敷にいらっしゃい。来なければ、また、毎夜歌を繰り返すだけよ。そして」
 それならここで彼女を倒せば――そう考えた者もいるかもしれない。彼女をはそれを制するように、けれども淡々と言葉を続ける。
「私を殺しても、別の者が歌うだけよ。根絶したければ、屋敷へ来ることね」
 すっ……背を向けた彼女が、滑るように数歩進んだのち、振り返った。
「けれども、私達が、簡単にはご主人様の元へ行かせないわ」
 そう告げて、女性はすうっと森の向こうへと消えていった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第2章 集団戦 『レッサーヴァンパイア』

POW   :    血統暴走
【血に飢えて狂乱した姿】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
SPD   :    ブラッドサッカー
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【レッサーヴァンパイア】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
WIZ   :    サモンブラッドバッド
レベル×5体の、小型の戦闘用【吸血蝙蝠】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●屋敷にて
 領主である『残影卿』とやらの屋敷の扉を開けると、出迎えたのは森で歌を歌っていた女性に似た、複数の女性ヴァンパイアたち。
「私達が、あなたたちがご主人様の望む者であるか確かめさせてもらうわ」
「私達を倒さねば、あなた達にご主人様の元へ行く資格はありません」
 どうやら彼女たちは、自分たちより力の強い『残影卿』に従うヴァンパイアのようだ。似た容貌の彼女達にも個体差が見られるのは、生前が関係しているのだろうか。
 今のそれを猟兵達が知るすべはない。けれども確かなのは、彼女たちとその主人である『残影卿』を倒さねば、悲劇は尽きぬということだ。
ルリ・アイカワ
建造物の破壊は得意ではある
むしろそれを選択すれば簡単に相手を一掃できるだろう
その時は味方も巻き込んでしまうので派手に重火器による射撃戦は出来ない
となれば敵中突破か囮になるのが無難だろうか
近接装備にて、あえて層の厚い所へ向かう
【捨て身の一撃2】【踏みつけ2】で蹴散らせてもらおうか
速度は出ないが装備重量と自重を合わせればただの体当たりでも生半可な物じゃないからな
「うちは確実に望まれぬ者だろう・・・可食部分が無いからな」


鹿忍・由紀
あっさり招き入れてくれたけど、城内で戦ったほうが向こうにとって有利なことがあるのかな。
一応周りにも気を付けながら戦おうか。

この場では他の猟兵と協力して戦ったほうが得策だよね。
おんなじような個体がどれだけ出てくるか分からないから数を削りやすいように戦おう。
ユーベルコード影雨で敵の戦力を削っとくね。
範囲攻撃出来るから増援が来ても対応しやすいと思う。
他の猟兵の動きを見つつ他が立ち回りしやすいように邪魔なとこにいる敵から攻撃していこう。
数が多くて面倒だけど、本体さえ見つけて叩ければ敵の増援も止まるかな。

なるほど。その身体、犠牲者から作られてるんだ。
ご主人様とやらの食べ残しとか?


ロベリア・エカルラート
へぇ……残影卿、ね。
ま、ヴァンパイアはとりあえず叩き潰す。あいつら大嫌いだからね。何時も通りだよ。

ただまあ、目の前のコイツラも歌で人を釣っていい気になってるみたいだし、見逃す理由は無いね。

●戦闘
鋏剣・ロメオジュリエッタで白兵戦
敵を確実に一体一体仕留めていくよ

味方が負傷したら一旦下がって、シンフォニックキュアで回復
負傷者が多いようなら、歌い続けて全体を回復するよ

ユーベルコード発動に使う歌は、壮大なオペラ曲。
許せない相手への怒りを歌うよ。これなら味方の共感も得られると思う

「……さて、舞台の主役はキミたちには勿体無いでしょ?」
「歌なら、私も得意なんだよね」




 レッサーヴァンパイアである彼女たちに招き入れられた屋敷。そこは広めの玄関ホールだった。ルリ・アイカワ(ウォーマシンのバーバリアン・f05097)はセンサーと目視で素早く、可能な限りの空間を把握してゆく。
(「建造物の破壊は得意ではある。むしろそれを選択すれば簡単に相手を一掃できるだろう」)
 相手の数は多い。だが屋内戦だ。効率的に敵を叩くことを考えるのならば、彼女がその結論にたどり着くのは至極当然と言えよう。しかし。
(「それでは、味方も巻き込んでしまうので派手に重火器による射撃戦は出来ない」)
 ならばどうするか、多くの戦場を渡り歩いた歴戦の猛者である彼女は、素早く状況と戦法を模索していく。
(「へぇ……残影卿、ね」)
 心中で呟いたロベリア・エカルラート(花言葉は悪意・f00692)が、左右色の違う瞳に宿すのは憎悪と言うより嫌悪。
「ま、ヴァンパイアはとりあえず叩き潰す。あいつら大嫌いだからね。何時も通りだよ」
 手にした『縁切鋏ロメオジュリエッタ』を遊ぶように操りながら、ロベリアは宣戦布告のように――否、彼女にとってはそれは日常作業に等しいのだから、宣戦布告もなにもないのだ。
「あっさり招き入れてくれたけど、城内で戦ったほうが向こうにとって有利なことがあるのかな」
 呟いたのは鹿忍・由紀(余計者・f05760)。レッサーヴァンパイアたち以外、周囲にも警戒しながら紡がれたそれに、ルリが口を開く。
「逃さぬ為だろう。その自信があるのか、何か仕掛けがあるのかまではわからないが」
「自信がないからホームに引っ張ってきた、ならいいんだけどね」
「どちらにしろ目の前のコイツラも歌で人を釣っていい気になってるみたいだし、見逃す理由も手加減する理由も無いね」
 ロベリアの言葉に何も返さないのは、同意だ。

「貫け」

 由紀が紡ぎ、放ったのはおびただしい数のダガー。魔力をリソースに影で複製したそれは、彼が指定したヴァンパイアたち全てに向かっていく。
(「敵中突破か囮になるのが無難だろう」)
 彼が動くのとほぼ同時に動いていたルリだったが、重装備故に速度が出ないため、影のダガーを追う形でヴァンパイアたちの群れへとその長身を押し込む。
「キャアアアアアア」
 影のダガーが命中したのは狙った半分ほどではあるが、ルリの自重を含めた体当たりが追い打ちとなり、ヴァンパイア達を複数吹き飛ばした。
「……さて、舞台の主役はキミたちには勿体無いでしょ?」
 ロベリアはヴァンパイアたちの負傷具合を的確に見極めて、一番傷の深い相手を狙って『縁切鋏ロメオジュリエッタ』を振るう。斬りつけられたヴァンパイアが灰のように崩れてゆくのを視界の端に捉えて、ロベリアは次の相手へと向かう。
「ああ……あぁ……アァッ……!!」
 傷を受けた数体のヴァンパイアがその形相を変えた。凪いでいた真紅の瞳は燃えるような色に。狂気を宿したそれが由紀を視界におさめたかと思うと、素早く接近しようとする――だが。
 ガッ、ガッ……!
 彼女たちの行く手を阻んだのはルリだ。動きを捉えた狂気に染まった彼女たちを、体当たりで吹き飛ばし、『エクスアンチマテリエルハンマードアックス』を振るって灰燼に帰す。
「あなた、とても強いのね。ご主人様にご満足いただけそうなのに……残念だわ」
「うちは確実に望まれぬ者だろう……可食部分が無いからな」
 ルリを頭から爪先まで眺めて呟いたヴァンパイアに、ルリは言葉を返す。ウォーマシンである彼女には、吸血鬼たちの望む血液は通っていない。
「歌なら、私も得意なんだよね」
 前線にいたロベリアはヴァンパイアたちの暴走を察知して後方へと下がってきていた。そして発動させるのは『シンフォニック・キュア』。壮大なオペラの曲調で歌い上げるのは、許せない相手への怒り。
「あの辺り、かな」
 ロベリアの歌がルリを癒やしているその間に、由紀は戦場と戦況、仲間たちの戦闘方法を頭に入れて再び影のダガーを喚び出す。

「もう一度、貫け」

 先程命中したのは狙った半分程度だった。ならばそれを見越して『当たらなくともこちらに有利になる使い方』をすればいい。
 ルリは敵の層の厚いところで己を活かす。ロベリアは敵の負傷を的確に見抜いて、確実に仕留めることを狙う。だとしたら。
 由紀の放ったおびただしいダガーの群れは、玄関ホールの壁付近にいるヴァンパイアを優先的に『壁側から』狙っていく。そのまま貫くならそれで良し。避けられたとしても、避けたことで敵たちはある程度互いの間隔を詰めざるを得ないはず。
「なるほど。その身体、犠牲者から作られてるんだ。ご主人様とやらの食べ残しとか?」
「確かに私達は先天的なヴァンパイアではない。けれども『食べ残し』とはっ……!!」
 あえて挑発するように紡がれた由紀の言葉に、ヴァンパイアの瞳が狂気に染まる。だが、彼女が由紀に迫ろうとする勢いを殺さないように二人の間に割って入ったロベリア。その剣先が、ヴァンパイア自身の勢いも加わったことでその背から覗き、そして――灰へ。
 それを一瞥して、ロベリアはまだ残るヴァンパイアたちへと向き直った。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

蛇塚・レモン
連携・アドリブ歓迎

村のみんなを助けるためにも領主の『残影卿』って悪い奴を倒すよっ!
そして目の前の歌声の元凶を駆逐しちゃうよっ!

夜なので白き蛇神の眼力(アイテム)を発揮
蛇は暗闇でも視えるんだよっ!(暗視)

蛇神様っ! みんなを守って!
ユーベルコードで猟兵を強化&敵の攻撃を軽減する結界を張ってもらうよ
(先制攻撃+オーラ防御)
うわぁ……蝙蝠だらけで視界が真っ黒っ!
でも、むしろ好都合っ!
あたいの蛇腹剣クサナギを振り回せば、どの敵にも攻撃が当たるよっ!
(範囲攻撃+なぎ払い+衝撃波+ロープワーク+生命力吸収)
隠れてても無駄だよっ!
本体はそこっ!(第六感+野生の勘)
蛇神様も援護お願いっ!(念動力+鎧無視攻撃)


アルバ・ファルチェ
ユエちゃん(f05601)と行動。
他の人との絡みやアドリブ歓迎。

《POW》
早く動くモノを無差別攻撃するっていうのなら狼姿で駆け回れば囮になれるかな?
【存在感】【おびき寄せ】【誘惑】辺りの特技も使用してみるよ。

囮として狙われることが出来たら、狼姿じゃいつもの盾は使えないし【見切り】で出来るだけ避けて、牙や爪での【武器受け】と【オーラ防御】でダメージを軽減させるよ。
もちろんMolti Scudiが使えるようならそちらも使うけど。

超耐久性を得るのなら【鎧無視攻撃】や【鎧砕き】を試みるよ。
とは言え僕の役目は援護だから、無理はしないし護りを疎かにもしないよ。

だから、派手にやっちゃって!


月守・ユエ
アルバ君(f03401)と行動
他の人との絡みやアドリブ歓迎!

君達も歌を歌うんだね…?
じゃあ、僕と一緒だね
僕も歌を歌うの
戦いでも日常でも…
だから…君達のご主人様の元に行くかどうかの資格は歌で示すよ!

――さぁ、月影、出番だよ。
・オルタナティブダブル
攻撃手に全力を尽くす

「キミ達倒せばこの先に行けるんだねぇ?
手加減抜きでいくよ」

出ておいで、蛇竜!
・リザレクトオブリビオン
【呪詛】と【殺気】を織り込み死霊蛇竜を召喚してヴァンパイア達に攻撃させる
【範囲攻撃】でヴァンパイア達を薙ぐ

ある程度のダメージを確認したら
蛇竜を引く
Lunaryを手に取り
・死刻曲を歌う
【傷口をえぐる】
この歌で見葬(おく)ってあげる


トーア・ローウェン
ご主人様の望むもの、なー
ま、少なくてもお前らよりつえー奴をご所望っつー感じ?

★pow
基本はネクロオーブでの攻撃防御
召喚される死霊の腕は暇なく足元から湧き上がる
他のヤツらが動きやしーよーに死霊の攻撃で敵の攻撃の邪魔を
っても、お前らもつえーしこのまんまじゃヤベーか
押され気味なら【血統覚醒】使用
召還する死霊の嘆きの声も一層大きく
目には目を
ヴァンパイアにはヴァンパイアをってな
多少の血ぐらいやってもいーけど
お前らも俺に魂(ごちそう)ちょーだい

絡みアドリブお任せ




「君達も歌を歌うんだね……? じゃあ、僕と一緒だね。僕も歌を歌うの。戦いでも日常でも……」
 問いかけるように、答えるように言葉を紡ぐのは月守・ユエ(月ノ歌葬曲・f05601)。その瞳には、いつもの穏やかさは見えない。
「だから……君達のご主人様の元に行くかどうかの資格は歌で示すよ!」
「ユエちゃん、援護は任せて。派手にやっちゃって!」
 狼へと姿を変えたアルバ・ファルチェ(紫蒼の盾・f03401)の言葉にユエは頷いて。発動させるのは『オルタナティブ・ダブル』。

「――さぁ、月影、出番だよ」

 姿を現したもうひとつの人格『月影』が、ヴァンパイアたちへと迫り、力を振るう。
「キミ達倒せばこの先に行けるんだねぇ? 手加減抜きでいくよ」
 戦狂いの『月影』は、攻撃の手を緩めはしない。
 狼姿のアルバもまた、美しい毛並みを揺らして囮となるべくヴァンパイアたちへと迫った。
(「村のみんなを助けるためにも領主の『残影卿』って悪い奴を倒すよっ!」)
 きゅ、と拳を握った蛇塚・レモン(叛逆する蛇神の器の娘・f05152)は『白き蛇神の眼力』を発揮させる。真紅の左目に宿る力が、レモンを助けてくれるはずだ。
(「そのためにも、歌声の元凶を駆逐しちゃうよっ!」)
 
「蛇神様っ! みんなを守って!」

 発動させた『戦闘召喚使役術式・崇めよ、偉大なる白き大蛇神様を』が、玄関ホールを結界で包み込んだ。その結界はレモン自身だけでなく、仲間たちを強化し、敵の攻撃を軽減する働きを持っている。
「蝙蝠よ、行きなさい!」
 負けじと数体のヴァンパイアが多数の吸血蝙蝠を喚び出し、こちらへと放ってきた。
「数には数を、かね?」
 トーア・ローウェン(回帰の門・f14155)は手にした『ネクロオーブ』から死霊の腕を喚び寄せる。足元から絶え間なく湧きいでる死霊の腕が蝙蝠たちを落としていく。
「うわぁ……蝙蝠だらけで視界が真っ黒っ!」
 いくら蝙蝠それぞれが弱いとはいえ、トーアの死霊の腕だけでは文字通り手が足りない。レモンは『蛇腹剣クサナギ』を手にし、それをなぎ払いの要領で振り回した。
 視界がひらけてみれば、前方ではアルバが敵の意識をひきつけつつ何とか攻撃をかわし、『月影』がアルバへ集中する敵を後ろから屠っている。
「出ておいで、蛇竜!」
 その様子を見てユエが発動させたのは、『リザレクト・オブリビオン』。呪詛と殺気を織り込まれた死霊蛇竜が、呪詛を抱き込んだブレスでヴァンパイア達を蝕むのを見て、『月影』が近くのそれを灰へと帰した。
 しかし死霊蛇竜が顕現している間、ユエ自身は戦うことが出来ない。その上傷を受けると死霊蛇竜は消えてしまう。それを知ってか知らずか、ヴァンパイアたちは無数の蝙蝠をユエへと向けて放った。
「させないっ!」
 しかしヴァンパイアたちの気を引くべく動いていたアルバがそれに気がついた。

「僕の前では誰も傷つけさせないよ」

 発動させた『Molti Scudi』により複製された白銀の盾が、蝙蝠の接近を許さぬという強い意志でユエを取り囲む。レモンが迫りくる蝙蝠たちをなぎ払い、消してゆく。
 だが、アルバが後方のユエへと意識を向けたそれを隙ととったヴァンパイアが、彼を狙っている――それに気づいたトーアは、蝙蝠をレモンへと任せ、『血統覚醒』を発動させる。

「目には目を、ヴァンパイアにはヴァンパイアをってな」

 真紅の瞳のヴァンパイアに覚醒したトーア。彼自身の力も増しているが、それは彼の操る死霊も同じ。死霊の嘆きが深くなったのも、力に比例したからか。
 死霊の腕でアルバを狙っていたヴァンパイアに対抗すれば、彼女たちは瞳に狂気を宿して死霊を狙おうとする。だが意識をこちらへ戻した狼姿のアルバの動きのほうが早い。自然、我を忘れた彼女たちは執拗にアルバを追いかけ回すことになった。
 かわせそうな攻撃はできるだけ避けて、どうしてもかわせそうになければ爪や牙で受けた。それでも全てをかわし、爪や牙で受けることはできず、傷は増えていく。けれども高まっているはずのヴァンパイアたちの攻撃にしては傷が浅く感じられるのは、レモンが展開してくれた結界のおかげだろう。
「蛇神様も援護お願いっ!」
 蝙蝠を排除し終えたレモンは、白き蛇神様の力で狂気を宿したヴァンパイアを屠っていく。アルバが気を引いてくれているおかげで、彼女たちには死角が増えていた。
「ご主人様の望むもの、なー」
 まだ正気のヴァンパイアへ死霊の腕を放ちつつ、トーアは声を掛ける。
「ま、少なくてもお前らよりつえー奴をご所望っつー感じ?」
 冗談っぽく告げた彼に、ヴァンパイアの一体が口元を綻ばせる。
「ふふ、頭の回る者がいたようね。あなたにその資格があるかはわからないけどね?」
「甘く見られたもんだな」
 くす、と嗤ったヴァンパイアに、トーアは素早く接敵する。ヴァンパイア姿の彼の動きは、常よりも機敏。
 振り下ろした剣を、ヴァンパイアはなんとかその青白い腕で受けた。だが防がれるのは想定内。
「多少の血ぐらいやってもいーけど。お前らも俺に魂(ごちそう)ちょーだい」
 トーアの足元から湧き上がった死霊の腕が、これでもかとヴァンパイアに絡みついて。
 ぐももった悲鳴を上げながら、そのヴァンパイアは灰となって消えていく――。

 戦況を確認して、ユエは死霊蛇竜を引いた。そして取り出したのは『Lunary』。

「この歌で見葬(おく)ってあげる」

 紡ぐのは『死刻曲』。死を創造する唄は黒いオーラを纏った音の刃を喚び、目の前のヴァンパイア達を容赦なく斬り刻んでいった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

糸縒・ふうた
アドリブ・絡み・改変等歓迎

きれいな人たちだけど、この人たちはもう普通じゃないんだね
オレたちはこの館の主人を倒さなくちゃいけない
だから、退いてもらうよ

ほんとはあんまり使いたくないんだけど
【怨気満腹】で、彼女たちに夢をみていてもらおう

出来るなら手下の蝙蝠を速く動く物――チーターや、隼に見立てて
場合によっては互いをそう思い込ませよう

仲間の誰かがヴァンパイアに操られそうになったら
その人にもおまじないをかけて

そのときはお餅に足が埋まって動けないとか
もふもふに囲まれて眠っちゃうとか
幸せな夢を見てじっとしていて貰おう

あの仔のお父さんは、どこにいるんだろう
もう……、なんて、考えたくないな


ジェイ・バグショット
女と言えどヴァンパイア、非力なわけねぇな。
気だるげな様子で敵を観察し、
他の猟兵に合わせる形で攻撃。
ダメージの多い敵に対して【傷口を抉る】

連携を取るつもりは無いがリスクは減らしたい主義。
持病持ちの虚弱体質故に危機管理能力は人一倍。

接近戦はサバイバルナイフによる死角からの斬撃。静かで素早い戦闘が得意

敵の血統暴走を警戒、兆候が見られる時は視界に入らないよう立ち回る。

気づいたら死んでる。それが理想だろ?

首輪のような輪に棘がぐるっと刺さっている拷問器具を複数使用。自動で敵を追尾し、捕らえると同時に棘が突き刺さりダメージを与える。

んー、ちと痛いかもしれんが
まだ生きてる証拠だ。良かったな。
ニッコリ笑いかけ




(「女と言えどヴァンパイア、非力なわけねぇな」)
 気だるげな様子で後方からヴァンパイア達を観察していたのは、ジェイ・バグショット(幕引き・f01070)。レッサーヴァンパイアとはいえヴァンパイアであることには変わりなく、その力はすでに他の猟兵たちと対峙している彼女たちから感じ取れた。
(「さて、どうするかね」)
 連携を取るつもりはさらさら無いがリスクは減らしたい。持病持ちで虚弱体質のジェイは、高い危機管理能力を持っていた。
「きれいな人たちだけど、この人たちはもう普通じゃないんだね」
 その近くで悲しそうに、あるいは寂しそうに言葉を零したのは糸縒・ふうた(風謳エスペーロ・f09635)だ。
「オレたちはこの館の主人を倒さなくちゃいけない。だから、退いてもらうよ」
 その、強い決意の言葉の裏に浮かぶのは、子ウサギの姿とその言葉。
(「あの仔のお父さんは、どこにいるんだろう」)
 なんとなく予感している最悪の事態。考えたくない、考えたくないけれど――頭を振ってふうたは『怨気満腹』を発動させる。

「聲が、聞こえる」

 喚び出されたのは殲滅させられた先祖の霊。猟兵たちの攻撃に対抗するべく狂気を宿したヴァンパイアに迫ったその霊は、彼女に白昼夢を見せる。
(「ほんとはあんまり使いたくないんだけど……」)
 それでも、必要だと思ったから。
 霊に攻撃された狂気のヴァンパイアは、何故か他の仲間が喚んだ蝙蝠を追いかけ、そして攻撃してゆく。彼女にはその蝙蝠が、隼に見えているのだ。
(「なるほどな」)
 仲間の喚び出した眷属を攻撃する仲間。ヴァンパイアたちの一部に動揺が走ったのをジェイは見逃さない。何が起こっているのかをおおかた理解した彼は、音を立てずにその場から消えた。

「気づいたら死んでる。それが理想だろ?」

 狂気を宿した彼女の死角に出現したジェイは、呟いて斬撃を見舞う。彼の扱う拷問具は、棘でぐるりと覆われた首輪のような円環。自動で追尾した相手を捕らえると同時に、棘が刺さる。
「ギャァァァァァァァァッ!!」
 刺さる棘はじわじわと、じりじりと、生命力を零させる。
「んー、ちと痛いかもしれんが、まだ生きてる証拠だ。良かったな」
 円環を外そうとする手にも棘は容赦なく突き刺さるのだ。痛みと狂気の狭間で躍るような彼女に、ジェイはニッコリと笑いかけた。

 そんな彼を正気のヴァンパイアが狙っている――それに気づいたふうたは霊に白昼夢での攻撃を命じる。だが、円環で苦しむ彼女を敵として見せることは難しかったようで。ふうたは深追いはせず、対象を変えさせた。他の、狂気を宿したヴァンパイアのうち一体がジェイを狙うヴァンパイアを敵だと思わされ、鋭い爪で襲いかかった。
「いまのうちに!」
 狙われていることに気づいてはいたジェイだが、ふうたの行動によって生まれた敵の隙を利用して後方へと戻り、棘の円環をその二体へと放った。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

シャルロット・ルイゾン
ジオレット様(f01665)と同行
アドリブ歓迎

ええ、お任せください。

血統暴走への対策に、動きはなるべくゆっくりと
相手の攻撃はよく見て学習しておきます
からくり人形達を操ってフェイントを仕掛けて相手を撹乱しながら
第六感も駆使して見切りやミレナリオ・リフレクションでの相殺を試みますわね
隙を見てカウンターから反撃を

Vierge de Ferで串刺しにし、さらに傷口を抉る2回攻撃を
彼女の棘の吸血からわたくしは生命力吸収して消耗を補いますわ

ジオレット様の様子は常に気に掛けておきます
あまりにも危ういご様子ならかばいに入りますわね

大丈夫ですわよ、ジオレット様。
もう利用される歌は終わりになるのでございますから。


ジオレット・プラナス
シャルロット(f02543)と引き続き参加。

「やれやれ……とんだお出迎えだ。」
残影卿とやらが何を望んで、歌で人を集めたのか。
「シャルロット…少し私は…頭に来ているらしい。
だから…少し手助けしてくれると、助かる」
ダガーを構えて…レッサー達へ、突撃するよ。

このレッサーも、かつて歌に魅了され、
吸血された…慣れの果てなのだろうか。
「ああ、そうだ、これは…嫌悪感だ。
…どうしようもない、同族嫌悪だ。」
歌で相手を魅了する自分(昔の私)、
魅了した相手を…殺める自分(昔の私)だ
だからこそ…
「もう、人を殺す歌は…謡うな、人形」(押し殺すような声で…呟き)

(シャルロットに助けられたら)
「助かった…この借りは必ず。」




「やれやれ……とんだお迎えだ」
 ため息混じりに言葉を紡いだジオレット・プラナス(月夜の鎮魂歌・f01665)には、残影卿とやらが何を望んで歌で人を集めたのかはわからない。けれどもこの名状しがたい気持ちは。無意識に震える手は。
「シャルロット……少し私は……頭に来ているらしい」
 そうだ、ひとつは怒りだ。ジオレットは震える手に力を込めて『ミセリコルデ』の柄を握りしめる。
「だから……少し手助けしてくれると、助かる」
「ええ、お任せください」
 応えたシャルロット・ルイゾン(断頭台の白き薔薇・f02543)の言葉に安堵して、ジオレットはヴァンパイア達との距離を詰める。『シーブズ・ギャンビット』による素早い一撃で、他の猟兵からの傷を負っていたヴァンパイアは灰となって散った。脆く、脆く零れゆく彼女たち。次に近いヴァンパイアに斬りつけながら、ジオレットは思う。
(「このレッサーヴァンパイアも、かつて歌に魅了され、吸血された……慣れの果てなのだろうか」)
 真実はわからない。けれども、けれども。残影卿とやらがそうでなくとも、彼女たちが歌に魅了された者達に害をなしていたのは事実。手は彼女たちを斬りつけながら、深く沈みゆく思考。あと少しで、何かがわかる気がした。

(「ジオレット様……」)
 怒りを抱き、かつ何か思うところのあるようなジオレット。シャルロットは彼女の動きや様子に気を配りつつ、彼女に近付こうとするヴァンパイアへと迫る。
 躍るようにからくり人形を操る優雅なその動きはフェイント。引っかかったヴァンパイアの死角から『Vierge de Fer』の棘で刺して、刺して、刺して傷口を抉った。棘が吸い上げる血は、シャルロットの生命力となってゆく。
(「まるでわたくしが吸血鬼になったようですわ」)
 一瞬、そんな思いを抱いたシャルロットに、ヴァンパイアが多数の蝙蝠を放ってきた。シャルロットは素早く『ミレナリオ・リフレクション』を発動させる。既に他の猟兵相手に放たれていたそれをきちんと見ていたからか、敵の放った蝙蝠とシャルロットの放った蝙蝠がぶつかり合い――そして霧のようにかき消えた。

「ああ、そうだ、これは……嫌悪感だ」
 ヴァンパイアたちに刃を突き立て、灰に帰す彼らを見つめ続けるうちに、ジオレットは自身が抱いていた名状しがたい感情への答えを得ていた。
「……どうしようもない、同族嫌悪だ」
 歌で相手を魅了する彼女たちは、かつての自分。
 魅了した相手を殺める彼女たちも……かつての自分。
 だからこそ、だからこそ。鈍い光を放ち、けれども鋭い刃をヴァンパイアへと突き立てる。
 それは同時に、過去の自分へも刃を突き立てるようで――。
「もう、人を殺す歌は……謡うな、人形」
 ザシュッ、ザシュッ、ザシュッ……無心で幾度も突き立てる刃。押し殺した声で紡がれた呟き。
 その背を狙う鋭い爪を、更に背後から突き刺し、シャルロットはジオレットの傍らへと膝をついた。
「大丈夫ですわよ、ジオレット様」
 背後で灰が、舞う。
「もう利用される歌は終わりになるのでございますから」
 告げて刃持つ彼女の手にそっと触れる。深いところから引き上げられて、ジオレットはその双眸でシャルロットの金の瞳を見つめた。
 刃の刺していたモノが灰となり、戦闘で巻き起こる風に乗って散ってゆく。手応えが、無くなった。
「助かった……この借りは必ず」
 我に返れども、それを忘れることはないだろう。
 ふたりは、残り少なくなったヴァンパイアたちに向き直った。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

リーヴァルディ・カーライル
…ん。確かめる必要なんて無い。
お前達もお前達の主も諸共に狩るだけ…。
吸血鬼。今まで行ってきた悪逆の代償を支払う時よ…。

事前に改造した防具の呪詛を変更。
第六感を強化し敵の攻撃の気配や存在感を感知する魔力を付与。
【吸血鬼狩りの業】を駆使して敵の攻撃を見切り、
カウンターで怪力任せに大鎌で攻撃し生命力を吸収する。

…レッサーヴァンパイア。吸血鬼の成り損ない。

吸血鬼狩りの業を見せてあげる…。

【限定解放・血の魔剣】を二重発動(2回攻撃)
吸血鬼化した自身の生命力を吸収して魔力を溜め、
巨大化した黒炎の大剣をなぎ払い、傷口を抉るように消滅させる

…再生も復活も許す気はない。
過去は過去に。この世界から消え去りなさい。




「……ん。確かめる必要なんて無い。お前達もお前達の主も諸共に狩るだけ……」
 リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は屋敷へ入る前に、防具に付与していた呪詛を変更していた。彼女には、森で姿を見せた『それ』が何なのか、的確にわかっていたからだ。
 第六感を強化し、敵の攻撃の気配や存在感を感知する魔力を付与した防具と『吸血鬼狩りの業』の効果で、リーヴァルディは彼女たちの攻撃をことごとく回避していた。そして繰り出す怪力任せの『過去を刻むもの』により、彼女たちに次々と傷つけていく。

「……レッサーヴァンパイア。吸血鬼の成り損ない」

 要因こそ様々だが、彼女たちに共通しているのは後天的にヴァンパイアになったということ。個体差はあるだろうが、生前の記憶はあるようだ。だが人間性が既に無いことは、知れていた。

「吸血鬼狩りの業を見せてあげる……」

 自分より強い相手に奉仕し、人間の血を啜ることを悦びとするその存在。見方によっては憐れな存在に見えるかもしれない。けれども。
 ヴァンパイアを狩る、それだけを己に課したリーヴァルディにとって、見逃す理由などカケラもないモノ。

「……限定解放。顕現せよ、血の魔剣……!」

 発動させたのは『限定解放・血の魔剣』。二重発動させたそれは、一瞬だけ吸血鬼化したリーヴァルディの生命力を吸収して魔力を溜めた黒炎の剣。二重発動により常より巨大化した、大剣と呼ぶべきそれは、過去を世界の外側に排出する黒い炎で出来ている。

「……再生も復活も許す気はない」

 黒炎の大剣を手にしたリーヴァルディは、残ったレッサーヴァンパイア達へ鋭い視線を向けて。

「過去は過去に。この世界から消え去りなさい」

 黒衣翻して薙ぎ払うように振るわれたその大剣は、残っていたレッサーヴァンパイアたちの傷口をえぐり、そして全てを灰にして。
 灰は世界の外へと、導かれてゆく――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『残影卿・アシェリーラ』

POW   :    我が終生の敵手の力を見よ
【刀身に封じられた『太陽の炎』を纏った剣 】が命中した対象を燃やす。放たれた【吸血鬼を浄化する太陽の力を秘めた】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD   :    我は既に死者である故に
【オブリビオンとして復活させた自分の分身 】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
WIZ   :    我が闘争の果に
【オブリビオンとなる前からの戦闘経験により】対象の攻撃を予想し、回避する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はランゼ・アルヴィンです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●強者を望む男
 コツ、コツ、コツ……靴音を響かせて、その男は姿を現した。銀色の髪に黒のマントを纏った美貌の男性は、玄関ホールの奥の階段上で足を止めた。
「素晴らしい」
 パンパンパンパン……玄関ホールに響く拍手の音。多数の猟兵たちがその場にいるというのに、彼は動じた様子を見せない。それどころか。
「私がこの屋敷の主、アシェリーラ。『残影卿』と呼ぶ者もいますが」
 自ら名乗りを上げて、階段を一段一段降り来る。
「彼女たちを屠るような強者を待っていました」
 その手には剣が携えられていて。
「どうか私と戦ってくださいませんか?」
 敬意こそ感じられるその物言いは、なんだか秘めた狂気を感じさせた。

「そして――あなた方の血を、いただきたく」

 そう告げて残影卿・アシェリーラは己の剣を構えた。
ジェイ・バグショット
ダンピが吸血鬼に血を吸われるなんて冗談じゃねぇな。
やれやれと言った風で悪態ついて

接近戦は拷問具による死角からの斬撃
仲間の攻撃に合わせ追撃【傷口を抉る】
SPDによる静かで素早い戦闘が得意

【咎力封じ】は効果を最大限発揮させる為タイミングを見計らう。回避率の高い序盤での使用は避け、足の鈍りを待つ。

急いては事を仕損じる、UDCアースの言葉だったか?

首輪のような輪に棘がぐるっと刺さっている拷問器具を複数使用。自動で敵を追尾し、捕らえると同時に棘が突き刺さりダメージを与える。動きを鈍らせるためさりげなく足を狙う

持病持ちのためパワーにやや難アリ
緊急時やどうにも行かない時は【捨て身の一撃】
ハァ…早く死ねよ…。


トーア・ローウェン
ひひっ、俺らはお前が強さを得るための餌かよ

ダンピールとは言え、敵の繰り出してくる炎は正直がっつり喰らいたくねー代物
だってぜってーイテーじゃん
俺の繊細な皮膚がびりびりしそーじゃん
武器受けで攻撃を流したり
激痛耐性、呪詛耐性、オーラ防御で効果で多少は効果が薄れるか

攻撃は【贖罪の手】を使用
俺はグーかパーかっっつったらパーが好き
避けられたら攻撃力の高まったネクロオーブで追い死霊
パーの方がいっぱい魂集められんじゃん
無数の手たちは次々絡むと敵を抱きしめる
お前こそ、俺らが強くなるための餌になれよ

絡みアドリブお任せ


鹿忍・由紀
随分自信がおありのようで。
なのにわざわざ女性にご飯を集めてもらってたの?

行動方針は【SPD】
「見切り」「第六感」で出来る限り敵の攻撃を避けながらダガーでの斬撃を。
分身は厄介だな。さすがに一対二では全ての攻撃を避けるのは難しい。
けど、それならその状況を利用させてもらおう。
戦況が大きく不利になりそうなダメージは避け、耐えられそうな攻撃を受けよう。
「激痛耐性」もあるから致命傷を食らわなければ大丈夫。
自分がある程度出血すれば、ユーベルコード虚空への献身が使えるからね。
杭の放射で本体も分身もまとめて片付けてやる。
ヴァンパイア退治に杭を使うのはベターだろ。
本当はあんまり使いたくないんだけどね、…痛いし。




「随分自信がおありのようで」
 玄関ホールまで下りてきたアシェリーラに視線を投げて、鹿忍・由紀(余計者・f05760)は気だるげに口を開く。
「なのにわざわざ女性にご飯を集めてもらってたの?」
「弱者には微塵も興味が無いもので」
 由紀の挑発的な発言にも、アシェリーラは態度を崩さない。それは猟兵たちを『強敵』とみなしているからだろう。
「真夜中に歌声につられて森へと足を踏み入れるなど、よほどの愚か者か、腕に自信のある者だと思いましてね」
 その口ぶりから推測するに、歌に惹かれただけの――彼のいう愚か者や、歌声の主を確かめようと深夜の森へと入った勇気、または腕に自信のある者は、彼女たちによってふるいにかけられたのだろう。そして彼女たちに勝てなければ『強者』として認められず、彼女たちの食事となったわけだ。
 日を追うごとに歌による行方不明者は増え、村人達の心には恐怖が焼き付けられる。自然、ふるいにかけられた状態となるのだ。そして今、こうして現れた猟兵たちは、アシェリーラにとっては格好の餌にしか見えぬのだろう。
「ひひっ、俺らはお前が強さを得るための餌かよ」
 鋭い視線をアシェリーラに向けてそう吐き出したのはトーア・ローウェン(回帰の門・f14155)。
「よくご理解いただけているようで。倒した強者の血を飲めば、私はまた強くなれるのです」
 相好を崩し、アシェリーラは剣をもっていない方の手をトーアへと差し出した。
「よろしければご一緒に、いかがですか?」
「はっ、笑えねぇ冗談だな」
 だがその提案をトーアが飲むことはない。残念ですね、呟いてアシェリーラは表情を戻した。
「ダンピが吸血鬼に血を吸われるなんて冗談じゃねぇな」
 後方でやり取りを見ていたジェイ・バグショット(幕引き・f01070)は、やれやれと悪態をついて。けれども状況の推移はしっかりと見据えるつもりだ。
「話してもわかりあえねーだろうし、わかり合うつもりもねぇ。とっとと始めっか」
 告げてトーアが発動させるのは『贖罪の手』。

「俺とお前らは同等だ。お前らが満足するまで使ってやろーじゃねーか」

 喚び出されたのは、罪深き怨霊の手。開いたその手はアシェリーラにかわされてしまったけれど。
「俺はグーかパーかっっつったらパーが好き」
 かわされることも想定に入れていたトーアは、手にしたネクロオーブを光らせて、喚んだ死霊を追加でけしかける。
「パーの方がいっぱい魂集められんじゃん」
 アシェリーラの意識はトーアの死霊へと向いている。そう判断したジェイは、音も立てずに先程まで居た場所から消えた――否、素早い動きでアシェリーラの死角へと入り込んでいたのだ。

「それで裏をかいたつもりか?」

 死霊の手一本に片足をへと絡みつかれながら、視認せずにアシェリーラは剣を操った。口調と共にその双眸は鋭い光を宿すものへと変化していて。彼を死角から狙ったはずのジェイの円環が、剣で止められる。だが。
(「生憎と、手はこれだけじゃないんでね」)
 攻撃を止められ、反撃を避けるために距離をとった……ように見えたことだろう。だが、ジェイは後方に跳んで距離をとりつつ、円環を投擲していた。
 この円環、『荊棘の王』は獲物を捕らえるまで自動で追尾するのだ。
「……!?」
 さすがにこれは予想できなかったのか、死霊に絡みつかれたアシェリーラの足を円環が捕らえた。棘が容赦なく突き刺さり、抉るように食い込んでいく。
「……ほう」
 感心したように呟いたアシェリーラ。ダガーを手に迫った由紀に視線を向けずに剣を振るう。しかし由紀もまた、それを半ば予測していたために反射的に後ずさってその間合いから逃れた。

「退屈ではないが、まだ足りぬか」

 呟いたアシェリーラの傍らに出現したのは、もうひとりのアシェリーラ。

「追い詰めたほうが、力が出るだろう?」

 背筋が凍りそうなほど冷たく、表情を無くしたふたりの彼は、由紀に迫りそれぞれ剣を操る。
(「分身は厄介だな」)
 さすがに二人を相手にしてすべての攻撃を避けるのは難しい。ならば、と由紀はあえていくつかの攻撃を受けた。もちろん、明らかに危険を感じるものは、出来る限り避けて。
 ある程度の痛みには慣れている。けれども流れる血は正直だ。致命傷は避けているが、これならば。
「本当はあんまり使いたくないんだけどね、……痛いし」
 血の量は十分だ。その血をもって発動させたのは『虚空への献身』。血と影で形成された複数の杭が、由紀の周囲に浮かび上がる。
(「急いては事を仕損じる、UDCアースの言葉だったか? だが」)
 由紀の動きを見て、ジェイはとっさの機転で『咎力封じ』を発動させた。今ならばいける、そう判断したのだ。足に傷を負っていない分身のアシェリーラを狙ったそれは、二つ命中してアシェリーラの力を削る。

「ヴァンパイア退治に杭を使うのはベターだろ」

 告げて杭を放射する由紀。複数の杭で本体と分身、両方共狙ってゆく。
「っ……」
 仲間猟兵たちの攻撃のおかげで動きが制限されているからか、全てとはいかなかったがいくつかの杭がアシェリーラたちの身体を穿った。好機とばかりにトーアが再び死霊の手を放つ。

「お前こそ、俺らが強くなるための餌になれよ」

 無数の手に足元から抱きしめられるアシェリーラたちを見て、トーアはにやりと笑みを浮かべた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

月守・ユエ
アルバくん(e03401)と行動
他の人との絡みとアドリブ可

ふふ、アルバくんらしい考え方だなぁ
うん…女の子を使って自分は奥で待ってるだなんて
とんでもない臆病な主さんなんだね?
そんなに戦いたいなら、お相手してあげる
ただし、勝てるとは思うなよ?

基本、皆の支援に回る
・狩猟女神ノ戦歌
Lunaryを構えて歌う
力強く勝利を「祈り」と「鼓舞」を込める
頭上に月の幻影が顕現
月明かりが皆を強くする

皆の体力が半分つきそうになったら
・月灯ノ抱擁を歌う
「背中は任せて
僕の歌で皆を護る」
「優しさ」と「祈り」が月明りの月光を慈愛に溢れた輝きにする

僕がいる限り
皆は倒れないんだからね


蛇塚・レモン
共闘歓迎

私欲のために無関係な村人たちを巻き込んでおいて、まったく謝罪も何も言及しないなんて許せないっ!
残影卿! あたい達が差し出すのは血じゃないっ!
骸の海への片道切符だよっ!

ユーベルコードであたいは透明化(迷彩+目立たない)
念動力で宙を舞って足音を消すよ(念動力+空中戦)
会話も厳禁
呼吸音で気付かれないように細心の注意を払う
ミニ蛇神様(全長1m)を狙われてる猟兵や負傷した猟兵に巻き付けて姿を隠して助けるよっ!

幾ら戦闘経験が豊富でも視えなければ回避は困難っ!
超霊力オーラガンを連射
弾幕の面制圧力で回避を防ぐよっ!
(先制攻撃+だまし討ち+スナイパー+クイックドロウ+援護射撃+誘導弾+念動力+衝撃波)


糸縒・ふうた
アドリブ・絡み・改変等歓迎

人も、動物も、血も
お前にやれるものなんてひとつもない

村の人たちが安心して夜に出歩けるように
歌がすてきなものだって思えるように
お前が在るべきところに帰ってもらうぞ

【疾風】と一緒に戦うぜ

頭数を増やされたら厄介だ
手下の数が多そうならそっちを優先に
懐に踏み込む隙があれば、積極的に飛び込んで行くぜ

敵の攻撃は【野生の勘】と疾風のスピードで回避

剣の一撃は剣先がかするだけでも燃やされそうだから
避けられなさそうなら【オーラ防御】で防ごう

戦いが終わったら、あの仔のお父さんを探してみよう

無事ならそれでいいし
そうじゃないなら他の犠牲になった人たちと一緒に
ごめんねとさよならを告げよう


アルバ・ファルチェ
ユエちゃん(f05601)と一緒に行動。
他の人との絡みやアドリブ歓迎。

《WIZ》

ヴァンパイアだったけどさ、女の子達を利用して駒として扱ってって言うのは気に入らないな。

女の子はね、守るべき対象なんだよ。
だから、僕は守ってみせる。

【かばう】【盾/武器受け】【見切り】で防衛と、怪我をしたら即ユーベルコードでの回復を。

戦闘経験が豊富なら、僕の事防御の要だと認識するよね…実際いつもはそうだし。

けど、今回はユエちゃんに…仲間に背中を任せた!

仲間の大技のため【時間かせぎ】してるように見せてから、コルノの本体での【串刺し】を狙う。

ヴァンパイアは杭で刺されて消滅するのがお似合いだ…永い眠りにつくといいよ。




「私欲のために無関係な村人たちを巻き込んでおいて、まったく謝罪も何も言及しないなんて許せないっ!」
 怒り心頭に発している様子の蛇塚・レモン(叛逆する蛇神の器の娘・f05152)。けれども彼女はあくまで冷静だった。冷静に、自分のできることをと『戦闘召喚使役術式・巻き付け、深海の中の大蛇よ』を発動させて、ミニ蛇神様と自身を透明化させた。ミニといっても全長1メートルはあるので、蛇神様は巻き付いた相手の姿を透明化することも出来る。
 アシェリーラに言いたいことはたくさんある。けれども物音や体温は消せぬ故に、今はぐっと我慢して口をつぐむ。呼吸音にも細心の注意を払い、戦況をうかがうことにした。

「ヴァンパイアだったけどさ、女の子達を利用して駒として扱ってって言うのは気に入らないな」
「ふふ、アルバくんらしい考え方だなぁ」
 アルバ・ファルチェ(紫蒼の盾・f03401)の揺らがぬ信念を感じて、月守・ユエ(月ノ歌葬曲・f05601)は軽く笑む。
「うん……女の子を使って自分は奥で待ってるだなんて、とんでもない臆病な主さんなんだね?」
「臆病? そう評されるのは心外だ」
 ユエの言葉にピクリ、アシェリーラが反応した。そしてそう呟き、分身と共にユエへと向かってくる。
「そんなに戦いたいなら、お相手してあげる。ただし、勝てるとは思うなよ?」
 告げた彼女は『Lunary』を手にし、歌うのは『狩猟女神ノ戦歌』。

「嘆きの大地に、戦場に降り立つ我らに、勝利の光を」

 仲間たちを鼓舞する歌声が響き渡る。ユエの頭上に顕現した月の幻影。勝利と祈りと鼓舞の心が込められた、力強い歌声に導かれて現れたその明かりが、仲間たちを強くする。けれどもアシェリーラたちは躊躇いもせずそのまま距離を詰めて――。

 ガガッ!

 二振りの剣を止めたのは、白銀の盾だ。ユエの前に滑り込んだアルバが片膝を付いて掲げた『Scudo di Orgoglio』に、アシェリーラの剣はどちらとも受け止められた。重い一撃を二人分。けれども盾の騎士たるアルバは揺らがない。
「女の子はね、守るべき対象なんだよ。だから、僕は守ってみせる」
「ほう? それならば、壊れるまで続けて、『守りの強者』の血を貰い受けるのみ」
 容赦なく振り下ろされる炎の剣。太陽の炎を纏ったそれは、じわじわとアルバを攻め立てていった。

「人も、動物も、血も、お前にやれるものなんてひとつもない」
 怒り――元気で純真ないつもの糸縒・ふうた(風謳エスペーロ・f09635)からは想像できぬ静かなそれ。
「村の人たちが安心して夜に出歩けるように、歌がすてきなものだって思えるように、お前が在るべきところに帰ってもらうぞ」
 戦場に響くのは、剣と盾のぶつかりあう音。目前には、一方的にアルバを攻め立てるふたりのアシェリーラ。キッ、とアシェリーラたちを見据えて、ふうたは『疾風』を喚び出す。影から生まれた狼である彼は、3メートルを超える体長を持ってふうたに寄り添って。身をかがめた彼に飛び乗り、駆ける。
 それこそ風のようにふたりが迫ったのは、分身のアシェリーラ。しかし分身は、横から懐に飛び込もうとするふたりの速度に反応し、剣を薙ぐように振るった。
「っ……!」
 間一髪でふうたはそれを避けた――と思った。だが分身の剣の切っ先が、疾風の足先をかすった。間を置かずに詰め寄られ、振り上げられたそれの炎は、オーラで軽減することは出来たが、刃は疾風ごと、ふうたの身体を斬り裂いた。
 分身の剣についた血が、飛沫となって戦場を飛ぶ。焼け付くような痛みが、ふうたに襲いかかる。けれども。

「大丈夫、僕の歌で皆を護る」

 ユエの紡ぐ旋律が変わった。傷つく者の痛みを癒やしたい――その気持を『月灯ノ抱擁』に乗せて歌う。
「!?」
 ほぼ同時にふうたの姿が消えた。ふうたに近づいていたレモンが、彼に蛇神様を巻き付けて姿を隠したのだ。一瞬表情を変えた分身の小さな隙を見て、疾風は分身から距離を取る。
(「幾ら戦闘経験が豊富でも視えなければ回避は困難っ!」)
 分身に近づいた状態のまま、レモンは『超霊力オーラガン』を構える。分身にも本体にも、レモンの姿はまだ見えていないはずだ。

「残影卿! あたい達が差し出すのは血じゃないっ! 骸の海への片道切符だよっ!」

 持てる技能をフル動員して撃ち出すそれは、霊力の弾幕。

「まずは分身からっ!」

 容赦なく撃ち出されるそれに、分身のアシェリーラは回避を試みることすら出来ない。
「疾風、もう一度行くよ」
 ユエの歌で傷を癒やされ、レモンの蛇神様で透明化されられたふうたは、疾風にそっと囁いた。その時。

 こわいよ。こわいよ。きっときょうこそはころされるんだ。

 聞こえたそれにふうたは視線を動かす。その声が聞こえたのは、アシェリーラが降りてきた階段の裏手。
(「動物の声……もしかして、あの子のお父さん!?」)
 どうしてそこにいるのかはわからない。もしかしたら、屋敷に連れてこられたが上手く逃げ出して、なんとか身を隠していたのかもしれない。それが、いつもと違う気配を感じて、様子を見に来たのかもしれない。
(「無事だったんだ!」)
 本当のことはわからない。けれども生きているならそんな事どうでもいい。ふうたの心に力がみなぎる。お父さんウサギを連れて帰ってやるんだ、強い思いを抱き『春告ぐ』を手に疾風と駆ける。
 レモンの攻撃で分身の視界は不自由になっているだろう。だがそれでも彼の振るう剣の太刀筋がしっかりしているのは、積み重ねた戦闘経験をも、模しているからか。
(「諦めない――!」)
 振るわれる剣。一度受けたそれを恐れずに、ふうたは疾風と共に分身の懐に入り込む。だって。

 僕がいる限り、皆は倒れないんだからね。

 ユエの歌からは、そんな強い心が感じ取れたから。狙いを定めず振るわれる剣で再び傷つけられても、大丈夫。疾風が分身の脇腹に噛み付くと同時に、ふうたは『春告ぐ』を貼り付けるように、分身の胸へと掌底を叩き込んだ。
「ぐっ……」
 ふらり、分身がその体を揺らす。
「!」
 それまでアルバと一対一の攻防を続けていた本体のアシェリーラの気が、一瞬分身へと向いたのをアルバは見逃さなかった。アシェリーラの剣先を盾でいなし、するりと抜けて分身の背後へと迫り――。

 ズシャッ!

 手にした『Corno di Lancia』を突き出した。ズブリ、分身の胸元から切先が覗いたのがレモンやふうたにも見える。

「ヴァンパイアは杭で刺されて消滅するのがお似合いだ」
「う……ぁ……」
 分身は、小さな呻きをあげて膝をついた。つま先から、指先から灰になって崩れ落ちていく。

 ヒュッ……!

 刃が風を切る音。だがアルバはそちらに視線を向けずに盾だけを差し出す。元々機会を伺っていたアルバだ。本体をフリーにした以上、相手が自分を守りの要と認識している以上、動いてくるのは予想できた。
 ガッ……盾にぶつかった剣の持ち主――アシェリーラ本体にゆっくりと視線を向けて。

「今度はそっちの番だ……永い眠りにつくといいよ」

 告げた傍で、分身は全て灰へと転じていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ロベリア・エカルラート
生憎とヴァンパイアにくれてやる血は一滴も無いんだよね

まあ、素直に戦おうって気概は有り難いよ。お礼に全力で叩き潰してあげる

●戦闘
敵も一対一でやり合おうってワケじゃないだろうし、素直に数の利を活かそうか

私は咎力封じで敵の動きと能力を封じるように戦う
味方の乱戦の隙きを突いてユーベルコードを使って、少しでも命中率を上げられないか試行錯誤しようかな

「生憎と、アンタの好きに暴れさせるつもりは無いよ」

「吸血鬼殺しか……。全く、こんな時まであの男の血ってのは足を引っ張ってくれるね……」


ルリ・アイカワ
POWにて対抗

彼我の戦力差を見ても堂々と現れる辺り、腕に自身が有るのだろう
負ける気がしないのか、無謀なだけか見極めなければこちらが危ういかもしれない
【戦闘知識2】で相手の力量を計りながらけん制をする
隙あらば本命を入れていきたいが簡単にはいかないんだろうな
腕の二・三本は覚悟しておくか・・・修繕費的な意味で


リーヴァルディ・カーライル
…ん。吸血鬼殺しの剣を持つ吸血鬼。
普通に闘えば相性の悪い相手だけど…。
事前に存在が知れていれば、対処法はある…。

事前に改造した防具の呪いを変更し、闇夜の呪詛を付与。
触れれば傷口を抉る太陽の炎のダメージを軽減する。
第六感と【吸血鬼狩りの業】を頼りに攻撃の気配や存在感を見切り、
最小限の動作で回避、大鎌をなぎ払いカウンターを試みる。

…口の軽い部下を持った己の不運を呪いなさい。

吸血鬼化した怪力を跳躍力に変え後方に離脱しながら、
【限定解放・血の獄鳥】を二重発動(2回攻撃)
生命力を吸収する黒炎の獄鳥に、
魔法陣を二重に纏わせ呪力を溜め突撃させる。

…吸血鬼の力では分が悪い。
なら、それ以外の力を使えば良い…。




(「彼我の戦力差を見ても堂々と現れる辺り、腕に自身が有るのだろう」)
 あくまでも冷静にアシェリーラを見据え、分析するのはルリ・アイカワ(ウォーマシンのバーバリアン・f05097)。
(「負ける気がしないのか、無謀なだけか見極めなければこちらが危ういかもしれない」)
 それは多くの戦場を渡り歩いてきた彼女が、今もこうして戦士たりえている所以だろう。敵を見極めることが出来なければ、己の命が宙に浮く。

「生憎とヴァンパイアにくれてやる血は一滴も無いんだよね」
 やや高慢に、嫌悪感を込めて紡がれた言葉はロベリア・エカルラート(花言葉は悪意・f00692)のもの。
「まあ、素直に戦おうって気概は有り難いよ。お礼に全力で叩き潰してあげる」
 ヴァンパイアを目の前にした彼女の選択肢は、それ以外ないのだ。

(「……ん。吸血鬼殺しの剣を持つ吸血鬼。普通に闘えば相性の悪い相手だけど……」)
 黒衣の奥の紫の瞳をアシェリーラの剣に向けて、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)はそれを良く見る。
(「事前に存在が知れていれば、対処法はある……」)
 そして自分のやや前方に立つルリとロベリアに声をかけた。
「少し、時間が欲しい」
 けっして大きな声ではない。すでにアシェリーラへと向かった他の猟兵たちの声や剣戟の音には負ける。けれども近くのふたりの耳には、その声は届いた。
「時間を稼ごう」
「わかった。いいよ」
 告げてまずはルリが駆け出す。その手には『エクスアンチマテリエルハンマードアックス』が。長身と、明らかに重量感のある得物からは想像できぬ速度でアシェリーラへと迫っていく。
「……!」
 それを察知したアシェリーラは、後方へと飛び退り、よく間合いを見てルリの斧を避けた。大きな武器はえてして動作が大きくなり、見切られやすくなる。
 だがルリはそれを、武器の改修と己の戦闘経験、そしてこれまで培った技量でカバーしている。初撃は彼の力量を見定めるために振り下ろしたに過ぎぬ。すぐさま距離を詰め、再び振るうその動作は素早い。
 ガッ、ガッ……!
(「ほう……」)
 続けて二度振り下ろしたそれを、アシェリーラは剣でもって受けた。
(「これは、腕の二・三本は覚悟しておくか……修繕費的な意味で」)
 重い攻撃を受け止めたアシェリーラは、今度は間合いを詰めてきた。ルリの得物は長い柄の斧。ならば間合いを詰めてしまえば脅威にならぬ、そう判断したのだろう。
 ガゴッ……!
 太陽の炎纏ったその剣が、ルリの腕に振り下ろされる。その一撃は重く的確で、関節部分あたりがいかれたか。

「ああ、残念だ。強者のオーラは感じるのに、お前からは血の匂いがしない」

 レッサーヴァンパイアもそうだったが、血を欲する彼らにとって、ウォーマシンであるルリには旨味がないのかもしれない。けれども、だからといって他の猟兵たちを狙われるのは困る。

「それでも、うちの相手をしてもらおう」

 片腕の関節を破壊された。だがルリはそれに構わず斧を振るい、アシェリーラの気を逸らさぬように攻め立てる。
 戦場に響き渡る金属音、剣戟の音が、これまでよりも増して大きくなった。ルリが執拗に攻め立てるものだから、アシェリーラは対応せざるを得ない。
(「今なら」)
 戦況を見据えていたロベリアだったが、自らの持つ戦闘知識がここだ、と告げたタイミングで『咎力封じ』を発動させる。

「生憎と、アンタの好きに暴れさせるつもりは無いよ」
「っ……!?」

 隙を突いたそれは、見事にアシェリーラを捕らえた。ロベリアは一気に彼我の距離を詰めて『縁切鋏ロメオジュリエッタ』を繰り出す。だが、それでもなお彼は、身体全体を使うことで剣先を動かし、ロベリアの柔肌を斬りつけた。
 彼が持つのは『吸血鬼殺しの剣』。他の者にとって浅い傷でも、吸血鬼の血をその身に宿すロベリアには痛手だ。
「吸血鬼殺しか……。全く、こんな時まであの男の血ってのは足を引っ張ってくれるね……」
 流れた自身の血を指先に絡め、ロベリアは忌々しい、と口の端を歪めた。その時。

「……口の軽い部下を持った己の不運を呪いなさい」

 静かな声が、不思議と戦場に響いた。貰った時間で防具に闇夜の呪詛を付与し終えたリーヴァルディが、いつの間にか迫り来て、『過去を刻むもの』を振るっていた。アシェリーラも対抗して剣を操るが、吸血鬼の血を宿すリーヴァルディに深手を与えることは出来ない。防具に付与した呪詛が、彼の剣の持つ特殊能力を軽減しているのだ。

「……吸血鬼の力では分が悪い。なら、それ以外の力を使えば良い……」

 発動させていた『吸血鬼狩りの業』と自身の勘により、ある程度アシェリーラの動きを読むことが出来たリーヴァルディだが、あえて一撃を受けたのには理由がある。
 攻撃を避けられれば焦りが生じるだろう。けれども動きを鈍らされたアシェリーラにとって、攻撃が命中した安堵のほうがより大きな心の隙になりやすい、そう判断したからだ。戦闘経験豊富な彼ならば、自身の置かれている現状は、誰よりも把握しているだろうからして。
 ゆえに、リーヴァルディが間を置かず、常ならざる跳躍力で後方に跳んだのは、彼にとっては予想外だったに違いない。
 着地したその場で二重発動させた『限定解放・血の獄鳥』により、出現した黒炎の獄鳥と血の魔法陣。二重に呪いを増幅させられた獄鳥が、アシェリーラへと飛ぶ。
 獄鳥を斬り伏せようと剣を動かそうとするアシェリーラ。させぬ、とルリとロベリアは、彼の剣を押さえるように自身の武器を振り下ろす。

 黒炎が、容赦なくアシェリーラを飲み込んでいった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ジオレット・プラナス
シャルロット(f02543)と参加。

元々、歌う機能は…私にとっての誇りだから。
「『私はあいつを裁きたい。』歌を利用したのが許せなくて、歌を楽しむことを人から奪ったから」

「歌をあいつから…人に、取り返す。
力を…貸して。シャルロット」

刃を構え、足場になりそうな所を蹴って跳躍
空中戦を仕掛けつつも…
『~~♪』
口から紡ぐのは、攻撃でもなんでもない、シャルロットに、戦う仲間に届けるためのシンフォニック・キュア。
相手のUコードを受けようと、誰かのための歌唱だけは絶対に…止めない!
「(願わくば…この歌が、シャルロットにも『温かく』…伝わりますように)」


村の人にも…伝えるんだ。
もう歌は、怖くない、と。


シャルロット・ルイゾン
ジオレット様(f01665)と同行
アドリブ歓迎

ジオレット様が『裁き』をお望みなのでしたら、わたくし以上の適任などございませんわ。
お任せください、あなた様の下した判決は、わたくしに託されました。

からくり人形を操ってフェイントでわたくしの動きの狙いを隠しましょう。
相手の攻撃は他者へのものであれ、よく見て、学習いたします。
第六感と合わせなるべく見切り
ミレナリオ・リフレクションでの相殺を試みますわ。
隙があればカウンターから
生命力吸収しながら人形たちの棘や毒霧で鎧無視の属性攻撃と傷口を抉る串刺しで二回攻撃

優しい歌が、聞こえますか。
それなら、あなた様の罪は美しく断たれましょう。




(「元々、歌う機能は……私にとっての誇りだから」)
 二色の瞳でアシェリーラを見据えるジオレット・プラナス(月夜の鎮魂歌・f01665)の心には、彼への怒りが座している。
「『私はあいつを裁きたい』。歌を利用したのが許せなくて、歌を楽しむことを人から奪ったから」
 瞳を彼から逸らさぬまま、隣に立つシャルロット・ルイゾン(断頭台の白き薔薇・f02543)へと告げる。

「歌をあいつから……人に、取り返す。力を……貸して。シャルロット」

 請われたシャルロットは、小さく頷いて。

「ジオレット様が『裁き』をお望みなのでしたら、わたくし以上の適任などございませんわ」

 優しい声色で告げる受諾。

「お任せください、あなた様の下した判決は、わたくしに託されました」

 告げるが早いか、シャルロットはからくり人形を手にアシェリーラへと迫る。仲間の攻撃と蓄積された傷により、彼の動きは鈍っている。それでも注意は怠らず、これまで見た他の猟兵への彼の攻撃を脳内で分析しながらからくり人形をけしかけてゆく。

「忌々しい……我が負ける――弱者へ成り下がるだと……?」

 整った顔を歪める彼には、最初の頃にあった、強者に敬意を払う余裕がない。自身が、これまで虐げ、侮蔑してきた弱者と同等になるという恐怖が、彼の心に焦りを生じさせている。
「……!」
 いつの間にか最初にアシェリーラが降りてきた階段へ到達していたジオレットは、それを思い切り蹴った。彼に向けて宙をゆきながら紡ぐのは、歌。

「~~♪」

 それは攻撃を目的としたものではない。戦う仲間たちに、誰よりシャルロットに届けるための『シンフォニック・キュア』だ。歌いながら跳ぶ白い彼女のさまは、まるで――天使のよう。
 ザシュッ!
 重力に従い地に降りると同時に、手にした『ミセリコルデ』をアシェリーラの肩口から胸元へと突き立てる。
「ぐっ……このままで済まされると思うな!」
 彼の刃をその身に受けて、ジオレットの華奢な体は後方へと飛ばされる。それでも、彼女は歌うのをやめない。
(「誰かのための歌唱だけは絶対に……止めない!」)
 痛みを堪え、強い意志で旋律を紡ぎ続ける。

「優しい歌が、聞こえますか」

 黒い裾を揺らして、からくり人形と共に舞うように繰り出されるシャルロットの攻撃。刺した棘から注入され、霧となって呼吸するごとに体内へと入り込む毒。

(「願わくば……この歌が、シャルロットにも『温かく』……伝わりますように」)

 ジオレットの優しい歌声が、シャルロットの耳を打つ。言葉にされていない彼女の想いが、ゆっくりと染み込むようだ。

「我は、我は――」

 シャルロットの操る毒は、苦しみを与えるものではない。だから、目の前の彼は、己が毒されていることに気がついていないのだろう。微睡みのように穏やかに侵蝕されているが故に、自身がすでに膝をついていることすら――気がついていないのだろう。

「それなら、あなた様の罪は美しく断たれましょう」

 最早言葉の続きを紡ぐことが出来ぬといった様子のアシェリーラを見下ろして、シャルロットは彼に『最期』を与える。
 ジオレットのつけた傷を抉るように二度、深く深く突き刺して。
 それで、おしまい。



 残影卿は灰となり、領主館に棲むヴァンパイアはもういない。
 お父さんウサギを連れて、猟兵たちは館を出る。
(「村の人にも……伝えるんだ。もう歌は、怖くない、と」)
 ジオレットが心中で結んだ決意を察したのか、彼女の手をそっと握ったのはシャルロット。
 その微笑みに頷いて見上げた空には、薄い月が浮かんでいた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年03月03日


挿絵イラスト