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月のけものは

#ダークセイヴァー #月光城 #グリモアエフェクト #月の眼の紋章

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●かつての月光城跡にて
 ダークセイヴァーの地底都市には月光城と呼ばれる城塞が存在する。
 第五の貴族の干渉すら退けあらゆる存在の侵入を拒むとされているその城、けれどそれらの中には遠い昔に破壊されたものも存在している。
 城塞――つまりは外敵を阻むもの。
 ただ月光城の周辺の都市が不要になり放棄する事になったから城も放棄されたのか、或いは恐るべき外敵に強大な力をもつ城主ですら勝利できなかったから、周囲の都市ごと破壊され放棄せざるを得なくなったのか、詳細な理由は明らかになっていない。
 そんな月光城跡地の一つで、かつて城主であった獣が一匹空に向かって鳴いていた。
 羽毛を思わせる毛並みの幼獣がただ、悲しげに、恨むように、求めるように。

 グリモアベース。
「ダークセイヴァーの月光城に纏わる新たな予知が見えたんだ」
 そうシャチのキマイラであるヴィクトル・サリヴァン(星見の術士・f06661)は猟兵達に切り出した。
「月光城っていうのは地底都市に幾つかある城塞で、月の満ち欠けに呼応して輝く奇妙な城だね。そこには紋章を持った強大な力を持つ城主がいて第五の貴族も含めた他の存在の干渉や侵入を遮断しているんだ」
 けどね、とグリモア猟兵は続ける。
「城塞って事はつまり、何らかの外敵がいるってことだよね。過剰戦力にも見える城主なんだけど、そんな月光城でも大昔に陥落させられたところがあるみたいで、今はその周囲の市街地ごと無人の廃墟と化しているみたいなんだ。だからそこを調べてみる事で月光城とか地下世界なのに何故か浮かんでいる月について真実に近づくことができるかもしれない」
 謎を解き明かすために皆の力を貸して欲しいと、ヴィクトルは言った。
「それで今回皆に向かって貰いたい場所はそんな月光城の廃墟の一つだね。結構昔に陥落したみたいで今は無人の廃墟になっている。月光城自体も崩壊してあまり形が残っていないみたいで、ぱっと見では周囲の市街地と区別し辛いかもしれない。高い所も崩壊して殆ど残ってないから地道に探すのがいいかもしれないね」
 崩落以外はオブリビオンとかの危険はないみたいだから時間をかければ必ず見つけられると思うとシャチは言う。
「それで月光城の跡地には……なんだろう、かつてこの月光城の主だったらしいオブリビオンが再び蘇っているみたい。その城主は月の眼の紋章と融合したままだけど普通の月光城の城主みたいな異常な強化はなくて、ただ紋章から棘鞭が飛び出してくる力が付加されてるだけみたいだね。あと、まともな会話とか成立する気配はない感じで……妄執に憑かれたようにこの地に立ち入った者を皆殺しにしようとするみたいだから倒すしかないだろう」
 そうグリモア猟兵は彼の見た予知について語った。
「ちょっと大変な依頼になるけど皆ならきっと大丈夫。何か見つかるとも限らないけど頑張って調査していけば真実に辿り着けると、そう信じてるよ」
 そう締め括り、鍵の形をしたグリモアを手にしたヴィクトルは、地下世界の旧き廃墟へと猟兵達を転送するのであった。


寅杜柳
 オープニングをお読み頂き有難うございます。
 月にはどんな秘密があるんでしょうね。

 第一章は地下の破壊された旧市街地を探索して月光城跡地を目指します。
 放棄された期間が長く、月光城自体の跡地も含め所々崩壊しているようです。
 正確な位置も不明なので根気強く調査する必要があるかもしれません。

 第二章、第三章は月光城跡地での月光城の元主との決戦になります。
 こちらはそれぞれ冒頭に状況説明を追加致しますのでそちらをご確認下さい。

 それでは、皆様のご参加をお待ちしております。
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第1章 冒険 『空虚なる廃都』

POW   :    手当たり次第に怪しい部分がないか探して廻る

SPD   :    自身の磨いてきた技術を駆使して探索

WIZ   :    魔法や呪術の痕跡を探してみる

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ラムダ・ツァオ(サポート)
ラムダよ、よろしく。
内容にもよるけど、行動指針となる確実な情報を得るのが有意義だと思うわ。
着替えるなり変装するなり色仕掛けなり、手段は状況に寄りけりかしら。
それとどんなときも落ち着いて行動ね。
あと、物証とか何かを集める必要があればうまく詰め込んで、
効率よく運びたいわね。

行動指針としては以下の3通りが主。
1.潜入・変装・誘惑等で確実な情報一つの入手を試みる
 (または情報の裏を取る)
2.斥候・探索役として周囲を探り、情報収集を行う。
3.戦闘にて囮役または攻撃補助に徹する。

台詞回しや立ち位置などは無理のない範囲でご随意に。
ユーベルコードは状況に応じて使い分けます。
アドリブ・連携歓迎


ミーシャ・フェイ(サポート)
※連携およびキャラを逸脱しないアドリブ歓迎
※お色気、公序良俗に反する行動、R18やR18GはNG
※口調等はステシ参照ください

通常依頼の場合は、基本はお手伝い/サポート役に徹しますが、状況に応じて対応でも可。判断はお任せします。
サポート優先の場合は、状況に応じます。

基本的には高いステータスのUCを状況に応じて使用します。
他の猟兵に迷惑をかけたり、脚を引っ張る、目的達成に反する行為はしません。

明るく元気な猫耳少女。いろんなことに興味津々な様子を見せます。



 陽の光のない地底都市へと転移した猟兵達は、放棄された旧市街地の探索を開始する。
 石造りの地底都市はどこもかしこも手入れされていない古びた雰囲気で、崩壊した瓦礫は廃墟化してから重ねてきた月日を感じさせている。
 かつてこの地に存在していた月光城――紋章と強大な力を有する城主とその配下達は、この地が廃墟化する程の昔に外敵によって討たれている。
 そのまま外敵が市街地を放棄させるほどに暴れたのかどうかは不明だが、いずれにせよ現在のこの場所は大昔に放棄された廃墟に過ぎない。
 そんな廃墟を軽やかに駆けていくのは猫耳キマイラ、ミーシャ・フェイ(光のマジックナイト(自称)・f36917)。
 猟兵として新米であるけれども気後れなどせず積極的に廃墟のあちこちを探し回っていくのは世界を渡れる猟兵としてのあれこれに興味津々で、好奇心を刺激されているからなのだろう。
 黒づくめの外套を纏うエルフ、ラムダ・ツァオ(影・f00001)はそんな廃墟の中から手掛かりを掴まんと慎重に探索を進めていた。
 シーフの身軽さで建物の間を走りつつ、斥候として事前準備してきた道具でマッピングを進めていく。
 指針となる情報がなければ探索は非効率、未知の場所だからと焦る者もいるがラムダはあくまで冷静に、堅実に磨かれた技術を頼りに探索を進めていく。
「うーん……月光城はまだ遠そうね」
 廃墟の建物の屋根に登りつつ、周囲を見渡すミーシャは猫の尻尾を不機嫌そうに揺らす。
 生物の気配が殆どせず、危険な罠なども見当たらないから
「あ、そこの床、危ないわよ」
 後方からかけられたラムダの声にえ、と反応する間もなくミーシャの足元の床にヒビが入ってがらがら音を立てて崩れていく。
「にゃー!?」
 足場が崩れミーシャ自身も一緒に落下、ついネコ口調が出てしまうくらいに驚いてしまう。
 けれど彼女はすぐさま翔剣士としての身軽さで空中で体勢を立て直し、蒼く透き通った剣に組み込まれた天使核により風を巻き起こして減速。
 見事に着地を決めた彼女が周囲を見ればそこは民家だったようで、時の流れに損なわれたらしい家具が散らばっていた。
 ミーシャがよくよく観察してみるとかつての居住者はかなり慌てて荷物を纏めてこの家から離れたような痕跡が見て取れる。
(「月光城を襲った外敵から逃げようとしたのかしら」)
 幾分大昔の事、事実関係は不明だが間違ってはいないように、彼女の勘には感じられた。
 崩壊した家の戸から外に出て見上げれば、ラムダが他の建屋の屋根に登り小型望遠鏡をのぞき込んでいた。
「……あっちの方、崩壊が激しくてまるで派手に戦ったようにも見えるわ」
 ラウンド型のサングラス越しに遠くを見遣りながら、そう呟いた。
 月光城が外敵に襲われたのであれば、そこで激しい戦闘があったと考えても不自然ではないだろう。
「それじゃそっちを探せばよさそうね!」
 そう元気よくミーシャが言って先行し、あくまで冷静にラムダはその後を地図を見落としなく描きながら進んでいく。
 そんな風にして、二人の猟兵は少しずつ月光城跡地のある領域を絞り込んでいった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

中村・裕美(サポート)
副人格・シルヴァーナ
『さてと、よろしくお願いいたしますわ』
多重人格者の殺人鬼× 竜騎士
外見 赤の瞳 白の髪
口調 (わたくし、~さん、ですわ、ますの、ですわね、ですの?)

裕美のもう一つの人格で社交性と近接戦闘特化。柔らかな物腰や【優雅なるご令嬢】で対人系は得意な方。楽しいこと大好き。
【情報収集】も得意です。基本的にお嬢様然とし態度は崩しません
探索系であれば、ドラゴンランスを竜形態に変えて偵察に出したりなども可能。
シルヴァーナは電脳魔術が使えないので裕美のハッキング能力等が必要な場合は【オルタナティブ・ダブル】で呼び出します。裕美は頼れていじりがいのある妹みたいな存在

あと、虫が苦手



 探索を続ける二人から離れた場所で、黒い小型の竜が廃墟と化した旧市街地の上を飛行していた。
 その黒竜はひとしきり周囲をぐるりと旋回すると、地上にいた白髪の猟兵の元へと降下する。
 ユーベルコード【優雅なるご令嬢】により副人格のシルヴァーナが表出している中村・裕美(捻じくれクラッカー・f01705)はその赤瞳を細めつつ、周囲を偵察させていた『覇空竜スカイフォール』と言う名の黒竜を黒槍に変身させる。
「あちらに何かあるみたいですわね」
 空より偵察した小型黒竜が何かあると示した方角に向かって裕美は歩き出す。
 普段のネガティブな雰囲気はどこへやら、おっとりとしたお嬢様のような雰囲気を纏う彼女は電脳魔術こそ使えないが、近接戦闘を得意とするだけあり荒れた廃墟でも何の苦も無く優雅に進んでいく。
 その間も何か月光城に関する手掛かりがないか注意深く確認していくが、これといった収穫は見当たらなかった。
 やがて彼女の視界に、まるで大嵐でもあったように破壊された市街地の廃墟の光景が突然飛び込んでくる。
「これが外敵の仕業……ですの?」
 何となく違和感を感じて首を傾げるシルヴァーナ。月光城を陥落させたという外敵が暴れ回ったと考えれば納得はできるが、それにしてはここまでの道程で見てきた廃墟に比べ極端に破損が酷くなっている。
 もし月光城とその周囲の市街地を外敵が破壊しようとしたのならば、旧市街地全体にもっと酷い破壊の痕跡が残っているようにも思える。
「……この先に答えはあるのかしら」
 考えていても仕方がない。戦闘があったのが月光城であるなら破壊の痕跡が酷くなっているだけその跡地へ近づいているとも考えられる。
 そこに何があるのか――シルヴァーナは少しばかり高揚しつつ、黒竜と共に破壊の酷い方角に向かって優雅に探索を続けていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

把繰理乃・えんら
目標、月光城跡地の探索。
猟兵成り立ての身ですが探索ならば可能と判断しました。

UCを使用し私の一部を分裂し9人の分身を呼び出します。
指定する技能は【情報収集】としておきましょう。
それでは皆さん、足元注意で各々気になるものを探してください。
厳しそうなら【失せ物探し】への変更も考慮します。
本体である私も能力的にまだ当てにはならないでしょうが集中力を切らさないよう探索を行います。

私はバグですが科学世界の住人です。
私やその分身が違和感を持ったり理解出来ないものならばそれは何らかの魔術的な要素を持つものかもしれません。
他の猟兵の方に魔法に長けた方がいらっしゃるなら手がかりを示してお話を伺ってみましょう。



 黒竜を伴ったお嬢様が探索を続ける一方、メイド服を纏う少々変わった少女の猟兵が廃墟を進んでいた。
 変わった点、と言うのは彼女の着ているメイド服、そして彼女自身の体。実体であるにも拘らず、時折ブレるかのように揺らいでいる。
 彼女、把繰理乃・えんら(嫌われ者のバーチャルメイド・f36793)は科学世界の住人である電脳精霊。
 その身を構成するバグやエラーを抱えたプログラムが時折このように悪さをしているのだが、探索には別に問題ないと思われる。
 ただ、この市街地の廃墟は酷く広大で調べ回るにはとても時間がかかる。特に一人では酷く効率が悪い。
 ――だから彼女はユーベルコードを起動する。
「お呼びでしょうか「お呼びでしょう「お呼びでしょ「お呼びで「お呼び「お呼「お「…「」」」」」」」」」
「……騒々しいですね」
 彼女の体を構成するバグデータの一部を分離して彼女と同じ姿のバーチャルメイドを9人召喚するユーベルコード【特化型増殖バグ】。
 そしてそのバーチャルメイド達はえんら自身の有する技能を一つ、高精度で扱えるという特性を持っていて、今回は情報収集能力に非常に優れたメイド達となっている。
「それでは皆さん、足元注意で各々気になるものを探してください」
 そうえんらが告げれば、バーチャルメイド達は一斉に散開し周囲の探索を開始する。
「さて、私も集中力を切らさないようにしませんと」
 自分自身の力は当てにならないとやや悲観的に考える彼女、けれど慎重に丁寧に、持ち前の几帳面さで廃墟探索を行っていく。
 彼女が捜索の基準として定めたものはこの廃墟をみて感じ取れる違和感。
 バグとはいえ科学世界の住人である彼女、違和感を覚えたり理解できないものがあるのであれば、それは科学とは別の魔術的な要素を持つものかもしれないと。
 劣化して崩壊しそうな場所を注意深く避けつつ探索するえんら、そんな彼女の元に分身の一人が急いで戻ってくる。
 何か発見したのか――えんらが分身に導かれるままについていくと、そこはかなり古びた白骨化した遺体があった。
 恐らくはここの住人のものなのだろうそれはありふれたもののよう、けれどえんらはその遺体に奇妙な痕跡を発見する。
「これは……雷に撃たれたのでしょうか?」
 その衣服は肩口から足元まで明らかに焦げていて、まるで空からの雷に貫かれたかのようだ。
 天災によるものなのかもしれないが、どうにも違和感は拭えない。
 魔術に詳しいものならもっとはっきり言える人がいるのかもしれないが、古すぎて何も得られない可能性の方が高いようにも思われる。
 とりあえず、えんらはその痕跡だけを覚えておくこととして分身達と廃墟探索を再開するのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

フィーナ・ステラガーデン
【アリシアと参加】
月光城である!言いたかっただけよ!
あー。なんか探し物らしいけど今回は探し物の奥の手を用意したわ!
アリシア!変身よ!!

(アリシア変身中に誰かに向かってナレーション語り)
説明するわ!アリシアがベルトに謎のキーをぶっ刺すことによってアリシアは妖精の力を借りたヘカテーアーマーへとフォームチェンジするわ!この力により闇の中でも進むべき道がわかるのである!のよ!(ナレーション終了)

というわけでアリシアgo!なんかすごい力で情報を探すのよ!
私は後ろからついて行くわ!
後は適当に道が通れなかったら爆破でもして最短ルートを進むによ!私たちの進む
道に邪魔は無しよ!

(アレンジアドリブ大歓迎!) 


アリシア・マクリントック
【フィーナさんと】
常夜の世界での探しものなら闇と月の妖精さんから頂いたこのキーがぴったりですね。変身!ヘカテーアーマー!
このランタンで進むべき道を照らしてみせましょう!(杖に吊るされたランタンが小さく揺れて光を放つ)
……あちらですね!何があるかまではわかりませんけど。

廃墟だからでしょうか……光が示すのは道なき道ですね。どうしましょう。
フィーナさんの真っ直ぐなところはこういう時に頼りになりますね。さて、ヘカテーの力が示しているのはこのあたりのはずですけど……



 分身して探索を進めるバーチャルメイド達の少し先の方に、二人の猟兵は歩みを進めていた。
「月光城である!」
 比較的高い廃屋の屋根に立って、夜色の外套纏うフィーナ・ステラガーデン(月をも焦がす・f03500)というダンピールが何故か堂々と叫んだ。
 廃墟と化した旧市街地にその声が響くが、特に帰ってくる反応もなく声が僅かにこだまするばかり。
 灰の毛並みの狼を一頭伴って歩くアリシア・マクリントック(旅するお嬢様・f01607)はそんな魔同志の奇行を微笑みながら普通に見上げている。
 この位は日常茶飯事であるかのように。
「言いたかっただけよ!」
 何の反響もない事にちょっとばかり頬を染めつつ、フィーナが先に進む。
 今回は月光場跡地を探さねばならないが、こんな時の奥の手をフィーナは知っている。
 この陽の光の差さない常夜の地底世界、そんな場所での探し物のうってつけの能力をアリシアは有していた。
「アリシア! 変身よ!!」
 フィーナの言葉にアリシアが腰に装着したベルトの機構を開放、パラレルホルダーより闇と月の妖精から頂いたキーを取り出してベルトの開いた箇所に斜めに差し込み、水平角度までスライドさせる。
 そして差し込んだ鍵ごと開いた部分を横から押し閉じて、
「変身! ヘカテーアーマー!」
 そうアリシアがポーズを決めるとやわらかな光が彼女を包み込みながらアーマーが装着されていく。
「説明するわ!」
 と、突然フィーナがカメラ目線で説明を開始する。
「アリシアがベルトに謎のキーをぶっ刺すことによって妖精の力を借りたヘカテーアーマーへとフォームチェンジするわ!」
 見れば確かに光に包まれながらそれらしき鎧の姿に変身しているようにも見える。
「この力により闇の中でも進むべき道がわかるのである! のよ!」
 早口ながら聞き取り易いナレーションをフィーナが終えたのと同時、アリシアを包み込む光が収束していって変身が完了する。
 アリシアの姿は闇と月の力を得た魔術師ような色合いの戦士の装い、手にした杖の先端にはぼんやりと輝くランタンが吊るされている。
「というわけでアリシアGO! なんかすごい力で情報を探すのよ!」
「このランタンで進むべき道を照らしてみせましょう!」
 フィーナの剣幕にアリシアも負けじと力強く言って、ユーベルコードを起動する。
「月が闇夜を照らすがごとく……」
 言葉と共に杖の先端のランタンの光が一方向に指向性を持ち始め、暗闇に光る道を浮かび上がらせた。
「……あちらですね! 何があるかまではわかりませんけど」
 それでも何もとっかかりもないままに探索を行うよりは何かがあるとわかる方角に向かう方がいいだろう。
 アリシアとフィーナ、そして狼のマリアは月明りに導かれるように廃墟を進んでいく。
 足元は廃墟だから瓦礫やらで普通の道を歩くよりは難しいが、猟兵二人と狼には大して苦も無く進んでいく。
 そして、
「……光はこの先を示していますね」
「この先に月光城の跡地があるのかしら」
 二人と一頭が足を止めて、眼前の障害物を見上げる。
 ランタンの灯りが照らし出すのは崩壊した城壁のような建造物と崩れ果てた瓦礫の山。殆どは崩壊しているが、瓦礫が積み重なって壁のようになっている。
 高さは普通の家屋の二、三階と言った所か、左右を見回してみてもかなり広範囲に瓦礫の山は広がっている。
 どうしましょう、と呟くアリシアに、フィーナがずいと前に出る。
「下がっていなさい」
 そして花のような杖の先端に取り付けた宝石にたっぷりと魔力を込めてユーベルコードを起動。
 とんがり帽子も相まって彼女の姿は神秘的な魔法使いのようにも見える。
「消し飛べえええええええええ!!」
 神秘的、とは無縁な物騒な叫びと同時、彼女の全力を込めた魔法の火力によって正面の瓦礫の山が大爆発によって吹き飛ばされた。
 彼女の進む道に邪魔は無し。進むべき最短ルートを邪魔するものがもしあるなら吹き飛ばすまでと、清々しいまでのごーいんぐまいうぇい思考。
「さあ、先に進むわよ!」
 自信満々に進み始めるフィーナにアリシアはくすりと微笑み、
「フィーナさんの真っ直ぐなところはこういう時に頼りになりますね」
 マリアが肯定するように一声吠えて再び歩み始める。

 そして崩れ果てた城壁の跡を越えて、二人と一頭は拓けた広場のような場所へと到達する。
「さて、ヘカテーの力が示しているのはこのあたりのはずですけど……」
 周囲を見遣るアリシア、周囲の景色はこれまでの市街地の廃墟とは何か違うように思える。
 こここそが月光城の跡地――静まり返るその廃墟で、がらりと瓦礫を崩して音を響かせて何かが起き上がった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『天魔の幼獣』

POW   :    白の嵐
自身の装備武器を無数の【羽毛を思わせる光属性】の花びらに変え、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD   :    白の裁き
【視線】を向けた対象に、【天からの雷光】でダメージを与える。命中率が高い。
WIZ   :    天候操作
「属性」と「自然現象」を合成した現象を発動する。氷の津波、炎の竜巻など。制御が難しく暴走しやすい。
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は宇冠・由です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●滅びた月の城に幼獣は哭く
 月光城跡地へとやってきた猟兵達を迎えるように現れたのは、一匹の白き獣であった。
 翼のような耳にふわふわとした毛並みは、尋常の生物であるなら庇護欲を刺激するものなのだろう。
 だが、猟兵達はその額に浮かび上がっている『月の眼の紋章』を見て瞬時に理解する。
 ――この幼獣こそがかつての月光城の主であったことを。
 獣が可愛らしく哭くと地底世界の空に雷雲がかかってきて、更に額の月の眼の紋章から棘鞭が飛び出して周囲を薙ぎ払う。
 そして青瞳を細めて猟兵達を睨みつけ、恐ろしい殺気を向けてきた。
 だが、その身に宿す力は月光城が崩壊しているからか、紋章による異常なまでの強化はされていないようだ。
 このかつての月光城の主を倒すために、猟兵達は一斉に行動を開始した。
虚偽・うつろぎ(サポート)
世界問わず大歓迎
世界を超えて自爆活動さ
アドリブ連携等ご自由に

登場即自爆
自爆できれば台詞も活躍もいらぬ!
速攻で自爆することが最優先
1歩も動かず即自爆
そう、自爆だ
僕に自爆をさせるんだ!
僕もろとも鏖殺だ
これぞ鏖殺領域なり

ただ自爆するためだけに現れる存在
何かいきなり自爆する怪奇現象
もはや災害である

技能:捨て身の一撃を用いての
メッサツモードによる高威力な広範囲無差別自爆

射程範囲内に敵が1体でもいれば速攻で自爆
自爆することが最重要
なので敵がいなくても自爆するよ
大事なのは自爆までのスピード
有無言わせぬスピードで自爆する
これ最重要だね

捨て身の一撃なので自爆は1回のみ
1回限りの大爆発
自爆後は爆発四散して戦闘不能



 数百メートル程離れた位置から殺気を飛ばす天魔の幼獣に向かって真っ先に飛び出していったのは漆黒の『文字』としかいいようのない猟兵であった。
 虚偽・うつろぎ(名状しやすきもの・f01139)という名のブラックタールは不安や恐怖などないかのように一直線にそのタールの体をぐにゃぐにゃと変形させながら加速していく。
 神速で距離を詰める彼の狙い、もとい願望はただ一つ。
「僕に自爆をさせるんだ!」
 それが可能であるならばスピード重視の自爆を所望する彼が全く動く必要はなかったのだが、何分距離が遠すぎて近づかなければならない。
 幼獣の額の紋章から棘鞭が飛び出し黒き『う』の文字を突き刺さんとするが、うつろぎは体を『つ』の文字に変形させてその刺突を回避しつつ更に加速。
 苛立たし気に獣が睨みつけて空からの雷光が一筋落ちてきて、駆ける彼を撃ち抜いた。
「痺れるねぇ! けどぬるい!」
 だがうつろぎは止まらない。全身全霊を賭けた捨て身はそんな一撃で止まる程やわではないのだから。
 『ろ』の字に変形した彼とオブリビオンの距離は気づけば百メートルちょっと。鏖殺領域の範囲内だ。
「うつろぎ式・切宮殺戮術『一爆鏖殺』――これが僕の鏖殺領域さ」
 『ぎ』の文字に変形したうつろぎの体がユーベルコードによって盛大に自爆し爆発四散した。
 彼の周囲は全身全霊の自爆によって見事吹き飛んで、当然その射程内に捉えられていた天魔の幼獣も少なくないダメージを負う。
 天災を引き起こすとされる天魔の妖獣だが、この災害――或いは怪奇現象の如き猟兵の所業にはには流石に面食らった様子。
 その盛大な爆発を起点に後続の猟兵達も一斉に仕掛け始めた。

成功 🔵​🔵​🔴​

夜鳥・藍(サポート)
生まれも育ちもサクラミラージュ。誰かの願いで転生した元影朧。そのため影朧には同情しがち。
それなりの良家の出で言葉遣いは丁寧。だが両親とは違う種族で生まれたのを悩み高等部(高校短大相当)卒業を機に家を出ている。現在は帝都で占い師。

もふもふ大好き。
実家ではいろいろ我慢してたのもあって、飼えなくとも一人暮らし&猟兵となったことで爆発しがち。
猟兵になっていろいろ経験し悩みを乗り越えた。

ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭いません。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動は絶対にしません。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!



 現状に混乱している風な妖獣に向かって、盛大な爆発により舞い上がった粉塵や煙を抜けて飛び込んでいくクリスタリアンの猟兵が一人。
「なんてもふもふなんでしょう……!」
 夜鳥・藍(宙の瞳・f32891)という彼女的に、この実にもふもふとしたオブリビオンの姿形はストライクゾーンではある。
 だが、妖獣は接近してくる猟兵という脅威に怒りの鳴き声を上げて額の紋章より棘鞭を伸ばし真上から叩きつけんとする。
 その棘鞭の叩きつけを藍は仄かに青白い月光を放つ打刀『青月』で受けて体を捻って流しつつ、速度を落とさずにやり過ごす。
 可愛らしい見た目ではあるがそれは災厄を齎す存在、ましてやこの月光城をかつて支配していた城主である。
 決して気を抜けないと、ユーベルコードを起動し神器を1230本に複製。
「轟け!」
 彼女の号令に従って複製された無数の神器は天魔の妖獣を切り裂かんと幾何学模様を描きながら飛翔する。
 対するオブリビオンは空を見上げ一声可愛らしく鳴くと、その周囲に雷を帯びた竜巻が生じ始める。
 あらゆるものを飲み込み吹き飛ばさんとする恐るべき竜巻――けれど、複製された神器はそれぞれが幼獣を包囲するように複雑に飛翔していく。
 如何に生じた竜巻と言えど全てを食い止める事は叶わず、その一つが幼獣の毛並みを切り裂いた。
 その痛みに制御を誤ったか竜巻は消失、そこに複製神器が一斉に襲い掛かっていく。
 天魔の幼獣は翼のような耳を広げ回避しつつ棘鞭で薙ぎ払い弾き飛ばすが、すべては防ぎきれずその毛並みは血に染まっていく。
 だが幼獣は倒れない。猟兵達への憎悪をその目に燃え滾らせながら、次なる攻撃を迎撃せんとしていく。

成功 🔵​🔵​🔴​

フィーナ・ステラガーデン
【アリシアと参加】
・毛を毟って枕に詰め込んだら具合良さそうなオブリビオンとの戦闘開始後は後方に隠れアリシアには囮になってもらう
・闇に隠れてUCによる詠唱を開始
・UC説明文にある「次に放つUC」は特に希望無し。適当に選んで頂くなりしてもらって大丈夫です。
・アリシアがピンチになる。もしくは一撃で消し飛ばせると判断するほど詠唱が完了すれば容赦なく放ちます。
・台詞内容などなどお任せ致します。
・心境:さっさと仕事終わらせてご飯にしたい。
そういえば無駄に毛が多いけどよく燃えるんじゃないあのオブリビオン。
焼いたら食べる所案外少なそう。
等、どうでもいいこと考えてます。


アリシア・マクリントック
【フィーナさんと】
なにやら可愛らしい見た目ですが……油断はしませんよ!いざ!(杖の石突についた刃で斬りかかる)
こう見えても狩りは慣れているんですよ!(足音のリズムでマリアに指示を送り敵の動きを制限していく)
さすがは月光城の主ですね……ですが!月の加護を受けているのは貴方だけではありません。ここに辿り着いたのも、この戦いも月の導き。貴方がそこに立つこともわかっていました!……フィーナさん!
敵を追い込みつつ、自分はギリギリ巻き込まれない位置まで『見える』とは……この姿はこの世界との相性がいいようですね。



 神器を操る猟兵が仕掛ける中、最初の自爆を回避する為に二人の猟兵は距離を取っていた。
「毛を毟って枕に詰め込んだら具合良さそうね」
 白くふわふわした月光城元城主の外見に、フィーナ・ステラガーデン(月をも焦がす・f03500)はそんな事を考えていた。
 どうすればさっさとあのオブリビオンを撃破できるか、そしてその後ご飯をどうしようかと戦いの後の事を考えるぐらいに余裕はあるのだけれども、見る限り中々しぶとそうだ。
 これは相当強力な一撃を叩き込む必要があるだろう、と彼女は考えて、隣にいたアリシア・マクリントック(旅するお嬢様・f01607)に軽く作戦を伝えて天魔の幼獣へと距離を詰めていく。
 そして程々の距離でフィーナは止まって。
「少しの間任せるわよ!」
 そうアリシアに信頼に満ちた言葉を託し、駆ける彼女の背を見つつ瞳を閉じてユーベルコードを起動した。

 幾何学的に飛翔する神器の猛攻が途切れた瞬間、飛び込んできたのは闇と月の力を纏いしアリシア。
「なにやら可愛らしい見た目ですが……油断はしませんよ!」
 いざ! と気合十分に杖をくるりと持ち替えて石突側の刃で毛並みを血に染めた幼獣に切りつける。
 幼獣は耳と一体化したような翼を羽ばたかせその刃を躱し、視線を向けて雷光をアリシアへと降り注がせようとする。
 だが既にアリシアもユーベルコードを発動中、月明りに導かれるかのようにステップを踏んで空からの雷撃を回避しつつ次の斬撃へと繋げる。
 空へと飛翔し回避しようとする幼獣、だがその背から一頭の狼――アリシアの親友たるマリアが飛びかかりその回避を妨害する。
「こう見えても狩りは慣れているんですよ!」
 アリシアのステップは回避と同時にマリアへの指示も兼ねている。言葉なく意思疎通を可能にするのは共に過ごした時間の長さ。
 斬撃を受けた天魔の幼獣は憤怒に目を細めつつ高速で回転しマリアを振り払うと、アリシアに月の眼の紋章の棘鞭を放ちつつ距離を取って着地する。
 鞭の一撃をギリギリのところで杖で受け止めるアリシア。月光城の加護こそ崩壊しているから受けてはいないがその月の眼の紋章の威力健在で、やはり月光城の主であっただけあり実力は相当なものだ。
「……ですが! 月の加護を受けているのは貴方だけではありません」
 この月光城跡へと辿り着いたのも、そしてこの戦いを行う事も月の導きによるもの。
(「……この姿はこの世界との相性がいいようですね」) 
 そして月灯りはその先の未来をも『見せて』いて。
「貴方がそこに立つこともわかっていました! ……フィーナさん!」
 そう、後方のフィーナに呼びかけるアリシア。
 囮のアリシアとマリアが切り結ぶ間に闇に身を隠したフィーナは目を閉じ只管無言で魔力集中を行っていた。
 ユーベルコードによるそれは集中している間は動く事ができないが、魔力の高まりに応じ攻撃力や防御力が跳ね上がっていく。
 その集中を終えたフィーナが、今準備を終えて魔術を放たんとしているのだ。
 彼女の術はシンプルに魔力を籠めた大爆発。ただし魔力集中のユーベルコードにより破壊力は先程の比ではない。
 咄嗟に幼獣は無数の羽毛を思わせる光属性の花弁を周囲に舞わせ迎撃せんとするが、ここまでフィーナを食い止める程の威力はない。
「消し飛べえええええええええ!!」
 その全力を解き放つフィーナの言葉と同時、魔力の大爆発が獣を飲み込んだ。
「やりましたか!?」
 爆発範囲のギリギリ外にいたアリシアが駆け寄ってくるが、フィーナは渋い顔のまま。
「……逃げられたわ」
 彼女が睨む先には、額の月の眼の紋章から棘鞭を放ち、爆発範囲の外にあった瓦礫に巻き付け自身の体を強引に離脱させた幼獣の姿。
 だが完全に逃げ切る事は出来なかったらしく、その綺麗な毛並みは半分以上が焦げて嵩が半分に減ってしまっている。
「そういえば無駄に毛が多いけど、よく燃えるんじゃない」
 食べる所は案外少なそうねとどうでもいい事を呟くフィーナに、怒りに満ちた鳴き声と共に羽毛の如き光の花弁が襲い掛かる。
 咄嗟に距離を取る二人。ダメージは随分重なっているが、もう一押しが必要そうだ。
 光の花弁と空からの雷光を回避しつつ、フィーナとアリシアの二人は爆心地の如き様相となった月光城跡地を駆けるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

把繰理乃・えんら
兎……なんでしょうかあれは?
うさ耳持ちの歪んだ存在同士ですが仲良くできそうにはありませんね。

先程発見した遺体はあれにやられたものと判断。
見られてはまずい気がしますので目立たないように小さく伏せてUCを使用。
共に地の底に沈みます。ここに雷が届かないことを期待しましょう。
それに視界が悪いここなら視認されることも少ないはずです。

後は泳ぎながらバグッテルシューターからレーザーを撃ちつつ隙を見て接近、バグルケインで毛の鎧を無視した貫通攻撃を行いちまちまと削らせていただきます。
……武器の名前がダサいのは仕様です、私のせいではありません。

85分あります、こちらは無理せずゆっくり攻めさせていただきましょう。



 月光城元城主と猟兵達の戦闘の趨勢を、把繰理乃・えんら(嫌われ者のバーチャルメイド・f36793)はやや離れた所から身を伏せて観察していた。
「兎……なんでしょうかあれは?」
 顔立ちや毛並みは兎のようにも見えるが、角が生えていたり耳には羽根が生えていて翼のようにしていたりとはっきり断言はできない。
 ただ、その戦闘の様相は兎とは全く思えぬ程激しく、この月光城跡地に侵入した者への強烈な殺意をこの距離からでもひしひしと感じる。
「うさ耳持ちの歪んだ存在同士ですが仲良くできそうにはありませんね」
 幼獣の攻撃を見るに、彼女がこの月光城跡地に来るまでに発見していた白骨化した遺体の衣服に残っていた焼け焦げは恐らく空からの雷撃によるもので、ここに来るまでの荒れ果てた廃墟は天候操作――竜巻によるものと思われる。
 視線を向けた位置に雷撃を降らせているため、こちらを見ないように目立たないように伏せつつ距離を詰めている。
 やがて、猟兵が生じさせた大爆発が幼獣を捕えその身の半分を焼き焦がした。怒り狂ったオブリビオンは彼女達に向けて光の花弁と雷光を放っていく。
 チャンスだ、そう判断したえんらはユーベルコード【オール貫通落下バグフィールド】を起動する。
「もうやることムチャクチャですが……さぁ、落ちましょう皆様」
 その言葉を合図に瓦礫の上で攻撃を続けていたオブリビオンの体が突如地面に沈み込んだ。
 地面自体の当たり判定が消失したかのような異常空間――突然の事態にオブリビオンは雷撃を降らせるが、雷は異常空間をそのまま貫通してかなり下の方の地面を砕くだけで状況の改善には至らない。
 そもそも視界自体が回り全て地面になっていて、敵を視認する事も非常に難しくなっている。
 そんな異常空間をえんらは水中であるかのように泳ぎ移動し、バグッテルシューターという名の光線銃からバグデータのレーザーを幼獣に発射していく。
 光線に穿たれた幼獣は其方を向いて雷撃を空から落とすが、えんらはそれを回避し距離を詰めてランダムに変色する光の粒子の刃で焼け焦げた毛並みを刺し貫いた。
 シューターと合わせて剣の方もバグルケイン、ネーミングが少々個性的なのはあくまで仕様である。彼女自身のせいではない。
 一撃加えて即離脱、距離を取って次なる攻撃を狙おうとするえんら。
 この異常空間は85分継続する――その間敵は精神力と体力を消耗し、対する猟兵は異常空間からの癒しを受け続ける。
「無理せずゆっくり攻めさせていただきましょう」
 そう言って、再びレーザー光線を天魔の幼獣へと放っていく。

 そして数度の交錯の後、光の刃に刺し貫かれた天魔の幼獣の動きが停止する。
 異常空間を解除して地上へと戻るえんらだが、突如嫌な予感を感じて光の剣を振るってオブリビオンを遠くへと投げ飛ばす。
 数度バウンドして地面に落ちた幼獣、しかしそこから漂う邪気は消えるどころかさらに濃度を増していて。
 何かがあの中にいる――そんな感覚を猟兵達は抱かずにはいられなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『天魔の獣』

POW   :    天魔の災害
自身に【「光」と「闇」の嵐】をまとい、高速移動と【空を飛びながら嵐】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
SPD   :    白黒の裁断
【意識】を向けた対象に、【空間から迸る多数の「光」と「闇」の雷】でダメージを与える。命中率が高い。
WIZ   :    天変地異
「属性」と「自然現象」を合成した現象を発動する。氷の津波、炎の竜巻など。制御が難しく暴走しやすい。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は宇冠・由です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●月の獣は再誕す
 爆発に抉れた月光城跡に漂う嫌な気配は、元城主である天魔の幼獣が動きを止めてなお濃くなる一方であった。
 緊張を解かず起き上がらぬオブリビオンを注視する猟兵達、その眼前で奇妙な変化が生じる。
 元はふわふわな毛並みだったその背中に亀裂が走り、それが大きく裂けて開いた。
 質量を無視して幼獣の中から一頭の魔獣が羽化するようにして姿を現す。
 その纏う雰囲気自体は幼獣をそのまま成体にしたように見えるが、違いとして全身が月の如く煌々と輝いている。
 それに加え異形の翼を二対、両肩から硬質な鞭の如き触手を生やしている。
 明らかに不自然なオブリビオンーーこれこそがこの月光城と周辺都市を破壊した外敵であると、この場の猟兵全てが認識する。
 月光の如く輝く天魔の獣が低くなった声で空に吼えれば、天候は先程の幼獣の時よりも更に酷い周囲を破壊する嵐が吹き荒れ始める。
 恐るべき敵意を向けるオブリビオンに対し、猟兵達は応戦を開始した。
ラムダ・ツァオ(サポート)
ラムダよ、よろしく。
相手が強いのなら、削れる機会は逃さず、相手に隙は見せず、
長期戦を覚悟して着実に狙うのがいいわね。
勿論、隙があれば見逃したくないけど。
見切ったり足には自信があるけど、過信せずに落ち着いて戦況を見極めるわ。

行動指針としては以下の3通りが主。
1.囮役としてボスの注意を引き付け、味方の攻撃を当てやすくする。
2.ボスの移動手段→攻撃手段の優先順で奪っていく。
3.仕留められそうな場合は積極的に仕留めに行く。
 (他に仕留めたい人がいればその手助け)

台詞回しや立ち位置などは無理のない範囲でご随意に。
ユーベルコードは状況に応じて使い分けます。
アドリブ・連携歓迎


ラム・クリッパー(サポート)
力持ちな魔獣解体士、人族の女の子
口調は「子分チック(アタシ、アンタ、~っす、っすよ、っすか?)」

アタシは搦め手が好きじゃないっすから、正面切って前線に出るっす!

一応、解体士の端くれなんで、敵の壊せたり、解体できそうなところは狙うっすよ。
なので、武器はフーリガンツール(解体工具)を持ってるっす。

UCは指定されたものは、どれでも使用するっす。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしないっす。
公序良俗に反した行動はしないっす。
後は、お任せしますっす。



 災厄の獣の攻撃に先んじて、二人の猟兵が一息に距離を詰めていく。
 廃墟を探索しながらこの月光城跡地へと辿り着いたエルフのラムダ・ツァオ(影・f00001)へと天魔の獣が意識を彼女の方に向けると、周囲の空間から多数の雷が迸り彼女を焼かんとする。
(「速いわね」)
 月光の如く輝く獣の攻撃はその予備動作が必要ない分発動までの時間が短く、おまけに雷の速度も相まって回避行動を取る為の間がほぼなく躱す事は困難。
 しかしラムダは自慢の脚で意識が完全に向く前に方向転換、加速、停止を繰り返して光闇の雷の領域に捕らわれないように立ち回りつつ、天魔の獣の隙を伺っていく。
 月光城を落とした侵略者――生半可な攻撃ではそう簡単には倒し切れるものではないだろう。
 必然的に長期戦となる可能性が高く、更には破壊力も相当なもの。
 一手間違えればあっさりとひっくり返されてしまうだろうから、冷静に一つ一つ行動を読むように丁寧に追い詰めると神経を尖らせて敵の攻撃の回避と観察に集中するラムダ。
 一方のラム・クリッパー(力自慢の少女解体屋・f34847)という少女は真っ向勝負を挑む為に雷をよけつつ真っすぐに突っ込んでいく。
(「アタシは搦め手が好きじゃないっすからね」)
 恐ろしい勢いで突撃してくる猟兵に、天魔の獣は低く吠えてその身に光と闇の嵐を纏い空へと飛翔する。
 ラムの振るったフーリガンツールは空を切り、飛翔した獣は空から嵐を周囲に放射して地上の猟兵達へと攻撃を仕掛ける。
「うわっと! 危ないっすね!?」
 空から降り注ぐ嵐の風と雷を何とか躱しつつ、空の獣をラムが睨むようにして見上げる。
 連続で放つ嵐、けれど猟兵達はそれらを上手く回避していてどうにも致命打はならない。それを悟ったのか獣は嵐を纏ったまま睨み上げる噛みつかんと大口を広げラムへと一直線に急降下してくる。
 だがそれはラムとしても望んだ事。
 向こうから手が届く距離に降りてくるのならば魔獣解体士でもある彼女の腕の振るいどころだ。
「目標確認! 突撃開始!!」
 ユーベルコードを起動し、嵐纏い空から突撃してくる天魔の獣に向かって全力で突撃で返す。
 全力同士の速度で交錯する瞬間、牙を解体工具で受け流しつつ、肩口に生やした異形の触手と翼を切断するように切り刻む。
 すれ違い、触手を落とされた苦痛に顔を僅かに歪める天魔の獣。そこに回避に専念していたラムダが方向転換して一気に天魔の獣へと飛び込んでいく。
 月光の獣は即座に意識を彼女に向けて雷で撃たんとするも、その直前にラムダのユーベルコードが発動。
 卓越した早着替えの技量で身に纏う黒衣を脱ぎ捨て手にしたダガーを手にさらに加速し、迸る雷を置き去りにして。
 そしてその翼を狙い、諸刃の黒いダガーを素早く一閃、片翼を斬り落とす事に成功したのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

フィーナ・ステラガーデン
【アリシアと参加】
うわ!脱皮したわ!え、なに?
鳥か獣かよく分からないとかおもっていたら爬虫類とか両生類とかそういう系統なのあいつ!こうなると味も断然気になってくるわね!
いやまあだいたいそういう食べたことの無いお肉の味って「鳥肉に似ている」って言われるものだけど!

あ、そういうわけで戦闘ね!
なんか天変地異を軽い気持ちで起こしてくるなら
こっちもUCで竜巻をぶつけて対抗するとするわ!
そこで力比べしている所でアリシアに合図して横合いから攻撃を任せるとするわ!
羽毛とか落ちてたら回収してクッションに詰め込みたいわね!
(アレンジアドリブ大歓迎!)


アリシア・マクリントック
【フィーナさんと】
え?もふもふなのにそういう変化の仕方なんですか……?常識が通用する相手と思っていたわけでもないですけど……
さておき。これほどの相手となればヘカテーの力では無理そうですね。まずはマリアはアーチャーモードへ変身を。マリアのガトリングを片方借りて一緒に牽制射撃しながら相手の能力を見極めます。
……ふむ。大体わかりました。光と闇の双極……奇しくも私も同じ力を持っているのです。変身!マーナガルムアーマー!
フィーナさんの合図に合わせて双剣で斬りかかります。これが私の牙です!さぁ、あるべきところへと還りなさい!


把繰理乃・えんら
華蘭お嬢様(f30198)と参加
私では手に余ると判断、救援に来ていただきました。

先程以上に気づかれるのは危険なようですね。
お嬢様が術で気を惹いてくださりますので化け狸の隙間を縫うようにバグッテルシューターでレーザー攻撃を行います。
今度は近づきません、なるべく目立たないよう狸に隠してもらいながら一撃を与える隙を窺い、背後を取れるとうじわりと移動してきます。

お嬢様に気を取られたときがチャンスです。
狸達に道を空けてもらってからUC使用、背後からだまし討ちの捨て身体当たりで攻撃します。
この速度なら意識を向ける暇も無いでしょう、毛の鎧も貫通できれば上々です。

あなたの城はもう無いのです、お眠りください。


隠神・華蘭
えんら(f36793)と参加
おぉ~いいですねぇそのお嬢様って呼び方!
……と、冗談はさておきわたくしがザナドゥで助けたえんらの救援要請です、頑張っちゃいますよぉ!

はぁ天候使いですか、これは厄介……でもないです。
我々八百八狸も天候を操るの得意ですので。
UC使用、あちらの現象をわたくしの天候操作で上書きします。
今日の天気は月が映える静かな快晴、おっかない自然現象は起こりません。

天候操作と同時に化け狸を最大数召喚、わたくしとえんらの姿に半数ずつ化けさせ囮とします。
わたくしも鉈で斬りつけたりなどしながらこっちですよぉと挑発、えんらから気を逸らします。
初任務ですし〆はあの子にしてもらいたいですからねぇ。



 少し時を遡り、二人の猟兵が天魔の獣に仕掛けたその直前。
「うわ! 脱皮したわ!」
「え? もふもふなのにそういう変化の仕方なんですか……?」
 月光城の主も今の姿もどちらも獣の姿、なのに昆虫のように背を割って姿を現した侵略者の姿にフィーナ・ステラガーデン(月をも焦がす・f03500)とアリシア・マクリントック(旅するお嬢様・f01607)の二人はやや離れた位置から戸惑いを隠せずにいた。
「……鳥か獣かよく分からないとか思っていたら爬虫類とか両生類とかそういう系統なのあいつ!?」
「いえ、常識が通用する相手と思っていたわけでもないですけど……」
 ふわふわの柔毛に鳥のような翼、そして脱皮するように背を割り出でるオブリビオン――この侵略者に敗北した月光城跡地の天魔の獣だけで他はそうでもないのだろうけれども何となく騙されたようで憤慨するフィーナ、そして隣で唸るマリアをアリシアは制しつつ思考する。
 外見は似ているが、寧ろ元の姿の面影がある分余計に異常さが際立っているようにも見える。
 そんな二人の横にはバーチャルキャラクターと東方妖怪の二人の猟兵。
「……先程以上に気づかれるのは危険なようですね。お嬢様」
 把繰理乃・えんら(嫌われ者のバーチャルメイド・f36793)が近くの東方妖怪の猟兵隠神・華蘭(八百八の末席・f30198)に丁寧な口調で言う。
「おぉ~いいですねぇそのお嬢様って呼び方!」
 そして眼前に異常な強敵がいるにも拘らず、えんらの言葉に喜びを隠さぬ華蘭。
 ――サイバーザナドゥの世界で助けた彼女が一人前に戦い、そして自分だけでは手に余ると自分に仲間として救援要請をしてくれている。
 意外と面倒見のいい化狸の彼女はその事実に胸躍るのだ。
 先に二人が仕掛け周囲が嵐に破壊されていく中、四人の猟兵は距離を取りつつ攻めるタイミングを伺う。
「……こうなると味も断然気になってくるわね!」
 と、そんな上機嫌な華蘭の近くでフィーナがそんな事を言い始める。
 先程まで依頼完了後の事を考えていたからか、そちらの方向に思考が移ったようだ。
「……鶏肉っぽい、でしょうか?」
「どっちかと言えば獣肉、ですかねぇ」
「いやまあだいたいそういう食べたことの無いお肉の味って『鳥肉に似ている』って言われるものだけど!」
 首を傾げるえんらと華蘭にフィーナがツッコんで、アリシアがくすりと笑い、少しばかり猟兵達の緊張が解れていく。
 ――確かにあのオブリビオンは強力だ。
 しかし、力を合わせれば倒せない存在ではないのだろう。
 交戦している異形の月光の獣へと向け、華蘭が竹伐狸の妖力が込められた鉈を構える。
「……と、冗談はさておき頑張っちゃいますよぉ!」
 丁度そのタイミング、先行した猟兵二人によって触手と翼一枚を斬り落とされた月光の色に輝く天魔の獣は怒りを込め空に吼える。
 獣の怒りに従うかのように風が強まり渦巻き、雷を帯びた竜巻を次々に形成していく。
「なんか気軽に天変地異を起こしてくるわね……」
 軽く吼えただけで巻き起こる竜巻にフィーナが呟く。先程の幼獣も相当な力を持っていたが純粋な力量はこちらが上だとまざまざと見せつけてくる。
「はぁ天候使いですか」
 一方で、華蘭はこの天変地異の様子を見ながらあまり恐れる様子はない。。
「これは厄介……でもないです」
 何故ならばかつて伊予国の総帥の元に集いし八百八狸は天候を操る事を得意としているのだから。
 魔獣と妖怪、どちらがより現象を上手く操れるかの勝負に、華蘭は負けるつもりもない。
「この怪異、狐だけが出来るわけではないのですよぉ」
 ふふふと微笑み化狸がユーベルコードを発動すれば、彼女の周囲に和風の整った装いの化け狸の群れが召喚される。
 嫁入り行列を構成している彼らに戦闘能力はないが、化け狸達は華蘭と同じく天候を操る事に長けていて、力を合わせれば対抗する事も可能だろう。
 そしてその化け狸達が一斉に華蘭とえんらの姿に化術で変化し、一斉に月光城跡地の殺風景な広場に散開。
 囮である彼らに対し、苛立ちを隠さず獣は吼えて周囲に雷の大嵐を引き起こしつつ、自身は嵐を纏い空へと飛翔していく。
 そして空から獣が地上に見える華蘭やえんら"達"に光と闇の雷の嵐を迸らせるが、それはいずれも本物の彼女達を撃つ事叶わず雷の隙間から化術を解いた狸達が逃げていくばかり。
「……お話はさておき、これほどの相手となればヘカテーの力では無理そうですね」
 光と闇の嵐を纏い翼を広げ空を飛ぶ天魔の獣、吹き荒れる嵐に対抗するにはもっと別の力が必要だとアリシアは判断。
 空の獣が放射する嵐に飲み込まれぬようにしながらオオカミのマリアに足音で指示を出してアーチャーモードへ変身させて、そのガトリングを片方借りて空に向けて牽制射撃。
 更にえんら達の間から奇怪なレーザー光線が照射される。囮の化け狸達の間に隠れつつ本物のえんらが確実に狙撃する戦法だ。
(「今度は近づきません」)
 少なくとも今は。先程までよりも力を増している上に異形化した部位による攻撃も危険、そう判断して慎重に空の天魔の獣へと銃弾や光線を放っていく。
 飛翔する天魔の獣は纏う嵐で地上からの射撃を逸らして、えんらや華蘭に化けた狸達の中で一人姿が違い目立つアリシアへと加速しつつ急降下する。
 マリアとアリシアが迎撃の対空射撃を行うが勢いは止まらず、咄嗟にアリシアは飛び退いて直撃を回避する。
 瓦礫や土を吹き飛ばしつつすぐさま月光色の獣は追撃にかかる。速度は最高速度から落ちているがその凶悪な嵐と異形の部位は猟兵を引き裂くには十分。
 しかしその時、同じ姿の囮たちの中から飛び出した華蘭が天魔の獣の背に鉈を叩きつけた。
 その刃は咄嗟に反応した触手に阻まれるけれども、そこにえんらの放った光線が直撃して獣の被毛を焼き焦がす。
「こっちですよぉ」
 アリシアが距離を取る時間を稼ぐように囮に紛れ挑発する華蘭、そんな彼女の活躍に合わせて囮となっている化け狸達が天候操作に干渉し、徐々に周囲の嵐が弱まっていく。
 獣が再び吼え、巨大な雷の竜巻を発生させる。
 しかしその雷竜巻に対抗する為にフィーナが術を紡ぐ。
「ならばこっちも竜巻で対抗するわ!」
 ユーベルコード【荒レ狂ウ火炎流】を起動、火炎の属性を付与された巨大な竜巻が彼女の眼前に発生する。
 言葉と同時、火炎竜巻は天魔の獣の雷の竜巻にぶつかっていく。
 竜巻と竜巻の衝突により周囲に雷と火炎がはじけ飛び周囲を明るく染め上げていく。
 同じ性質のユーベルコードだからか、火炎竜巻と雷竜巻はぶつかり合って硬直状態、前進も後退もせぬままにぶつかり合ったまま一定の位置で静止している。
「……やるわねっ!」
 普段から自身に満ち溢れたフィーナの顔に一筋の汗が伝い落ちる。
 紅と黒の魔法陣で魔力を高め整えてユーベルコードの術式を維持しているが圧力が酷く押し切れない。
 しかしその稼いだ時間に仲間達は体勢を整えていく。
「……ふむ。大体わかりました。」
 天魔の獣の纏う嵐の性質とこの雷竜巻の性質がやや異なる事にアリシアは気付く。
 先の交戦を見ていたからある程度は予測できていたのだが、獣が纏う嵐は光と闇の両極端な属性を併せ持ち、生やした触手や異形の翼での防御も相まって攻撃が非常に通り辛くなっている。
 しかしその力は奇しくも彼女の持つ変身の一つと同系統の力でもある。
 その変身を行う為にパラレルホルダーよりキーを一本選び取り出して、ベルトより排出したキーと入れ替える形でセット。
「変身! マーナガルムアーマー!」
 掛け声と共に彼女の姿が魔女をモチーフにした姿から双剣を持つ左右非対称なカラーリングの鎧姿へと変身。
「光も闇も全て飲み込んで力へと変えてみせましょう!」
 右半身に光、左半身に闇の力を宿したこのマーナガルムアーマーは、相反する力を強制的に統合する負担の大きさから装着を長時間維持できない。
 だから短時間で決着をつけなければ。
「思いっきり押し込むわよっ! その間にアリシアお願い!」
 フィーナの合図と同時に火炎竜巻が大きさと圧力を増して、その横を回り込むようにアリシアが斬りかかる。
 竜巻をぶつけ合っている中で迫りくる猟兵を厭うた月光色の獣は、その身に闇と光の嵐を纏い弾き飛ばす為それを放出せんとする。
 だが、纏うべき嵐は最初のそれと比較にならぬ程に弱まっていて、放つ嵐も弱まってしまっている。
「今日の天気は月が映える静かな快晴、おっかない自然現象は起こりません」
 静かに告げる華蘭。彼女の言葉通りに嵐は弱まり止んで、廃墟上空は雲一つ存在していない状態に変えられていた。
 それを為した化け狸達の天候操作の助けを借りた彼女もアリシアの逆側から月光色の獣に向かって化け狸達と共に走り出す。
 彼女の武器防具は化け狸達の天候操作の力によって強化されている。先程頑丈な触手に阻まれた竹伐ノ鉈の一撃も、今ならば両断できる程に。
 更に放たれた嵐の隙間を抜くようにマリアのガトリングの弾丸が発射され天魔の獣の飛翔を妨げている。
 雷の竜巻は火炎竜巻に押し込まれるように阻まれ動かせず、互いに相殺し合い天魔の獣の周囲には無風の空間がぽっかりと開いている。獣は数を恐れたか、華蘭に意識を向けて空間を塗りつぶすような雷で食い止めようとするも、その彼女は嫁入り行列の狸が化けた偽物。
 本物は既に獣に肉薄、鋭き鉈で残りの硬き触手を斬り飛ばすと、そこにアリシアが月光色の天魔の獣へと距離を詰めて、
「これが私の牙です!」
 牙を突き立てるように双剣を振るい、その頚を深々と切り裂いた。
 明らかに致命傷の血が周囲に飛び散る。だが、獣は唸り再び嵐を纏い周囲に嵐を放出しながら空へ距離を取らんとする。
 けれど、既に詰みだ。
 華蘭が合図と同時に月光の獣の背後にいた囮の化け狸達が一斉に左右に分かれ道を作る。
 その道の先にいるのはバグったメイド服を纏う本物のえんら。仲間としてこの地に呼んでくれたえんらの為に華蘭が作り出した隙、それを活かして気取られぬよう天魔の獣の背後に忍び寄っていたのだ。
 今が仕掛けるべき時、そう判断してえんらはユーベルコードを起動。
「気をつけてください、私の動きは私自身にも読めません」
 呟き、次の瞬間に天魔の獣の背を強烈な衝撃が襲った。
 ――タネはシンプル、超高速の体当たりをえんらが喰らわせ跳ね飛ばしただけだ。
 ただし音速の五倍を超える速度の物理法則を無視した一撃、おまけに軌道上には奇妙なバグ空間が残っている。
 完全に不意討ちで速度に反応もできぬ間に跳ね飛ばされ落下し、えんらの残したバグ空間へと入った天魔の獣は空間の作用で斜め上方に脈絡なく吹き飛ばされる。
 しかもそれで終わりではない。
「捻じ切れなさいよ!!」
 天魔の獣による天候制御が緩み弱まった雷の竜巻、それをフィーナの火炎竜巻が押し切って天魔の獣の全身をあまさず紅蓮に包んでいく。
 豊かな月光色の毛並みも焦がされ月光の色も薄れたように見える天魔の獣が墜落していく。
 そして地面に落ちる寸前、再びのえんらの体当たりが獣を残っていたバグ空間へと弾き飛ばす。
 超速の体当たりで押し込まれた空間の作用でランダムに吹き飛ばされた先にはアリシア、
「さぁ、あるべきところへと還りなさい!」
 光闇の力宿す鎧の戦士の刃は、既に抵抗するだけの力もなくした天魔の獣に深々と突き立てられた。
「……あなたの城はもう無いのです、お眠りください」
 城主であろうと侵略者であろうと、既に原型も留めぬ程に崩壊したこの地はとうに治めるべき城などではなく。
 えんらの呟いたその言葉を聞き取れたかどうかもわからぬままに、侵略者である月光色のけだものは朱に染まり崩れ落ち、そのまま空気に溶け込むように消滅したのであった。

「うーん……碌なものが残ってないわね!」
 オブリビオンの消滅した跡を確認するフィーナの手には、焼け焦げた獣毛とちょっとばかりの羽毛。
 クッション等の材料にするには心許ない量のものしかなく、少々がっかりである。
 それからも手分けをして周囲を確認してみるがめぼしい成果は得られなかった。
 陥落した月光城の跡地になぜこのような奇妙なオブリビオンが存在しているのか、今はまだ何もわからない。
 だが、このまま調査を続けていけばきっとなにか得られるものがあるだろうと、灯火を翳しながらアリシアは思った。
「それでは帰還しましょうか、華蘭お嬢様」
「いいですよぉ。帰ったらお祝いに美味しいものでも頂きましょうかぁ」
 普段通りの様子に見えるえんらと、上機嫌な華蘭がそんな風に話せば、フィーナの方も戦いの最中に考えていた事を思い出していつもの調子に戻っていく。
 アリシアもマリアを連れて話に加わりつつ、四人は更地となった月光城跡地を後にした。

 こうして月光城の廃墟で奇妙なオブリビオンとの戦いを終えた猟兵達は、グリモアベースへと帰還したのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年05月17日


挿絵イラスト