碎輝との戦い~聞かせてくれ、お前達の話を
「今はデビキンで戦争中っすけど。去年の今頃は、カクリヨで戦争してたんすよね」
グリモアベースで、雨月・雨莉(は何もしない・f03581)がしみじみと語る。そういえばそうだった。大祓百鬼夜行では色々あったなぁ……と、当時を知る猟兵達は各々振り返り、思い出を嚙みしめる。
「で、竜神親分碎輝が目覚めたのも大祓百鬼夜行の時……つまり、去年の今頃だったんすよね! 思い出すなあ……予知で彼の姿を見た時の衝撃を……」
顔が良すぎて、と雨莉はうっとりと両頬に手を当てて目を閉じる。……ああうん。確かに彼が目覚めたのもその頃だったな……ってことはコイツがおかしくなり始めたのもその頃で……いや雨莉が本格的に狂いだしたのは彼が倒されるとショタ化すると知ってからだからもうちょっと後か……? とか遠い目で思い返しつつ、猟兵達は次の言葉を待った。曲がりなりにもグリモア猟兵であるコイツがグリモアベースで話すってことは、とりあえず何かしら用件はあるはずだから。
案の定、割とどうでもいい前置きを終えた彼女は本題を話し出した。
「だからっていうわけでもないんでしょうが……碎輝が、皆さんの話を聞きたがってるみたいっすよ?」
自分達の話? それを聞いた猟兵達は首を捻る。
「……それは、この一年の間の話か? それとも、碎輝が目覚める前の話?」
「ああ、それはどっちでもいいというか……正確には、皆さんのカッコイイ話が聞きたいって。猟兵なら、色んな世界で色んな、カッコイイ活躍してるはずだからって」
なるほど、と得心が行く。カッコイイ談義にはノリノリで応じてくる彼のこと、猟兵達のカッコイイ活躍の話が聞きたい! と思っても不思議ではあるまい。
「カッコイイ活躍の話つっても、話す内容は、割となんでもいいと思うんすよ。戦闘の話はもちろん、血肉沸き踊る冒険の話でも、なんなら日常であったカッコイイ話でも」
要するに、自分がカッコイイと思った内容を話せばいいということだ。
「それこそ、つい最近のデビキンでの戦争であったこととか、それ以外の戦争の時のこと……なんなら一年前の大祓百鬼夜行の時のこととか、それで碎輝と戦った時のことでも、いいと思うんすよ」
そう、あれから一年。一年経ったからこそ、改めてあの時はこうだった、ああだったと、笑いながら話せることも、あるかもしれない。
「碎輝との戦いの時のことについて話すなら、後でまた戦う時、あれから一年経って、成長した俺の力を見せてやる! とかできそうですしね。くぅ~、考えるだけで燃えるシチュエーション……!」
雨莉が拳を握る。そう、最弱の状態から無限に成長してしまう碎輝は、それが原因でカタストロフを起こしてしまう危険性があるため、猟兵達の手で定期的に倒されることで、しばらく成長しない小学生形態になる必要がある。此度の依頼もその一環で、碎輝と語り合った後は彼と戦わねばならない。……まあ特に雨莉は、碎輝が好き過ぎるあまりにこの手の依頼ばかり持ってきてるから、慣れている人にはもはや説明不要なくらいだが。
「もちろん、去年彼と戦った時の話でなくても、例えば強敵とのバトルや、冒険の話した後で、これがその時の技だ! みたいな感じで実演したりすんのもカッコイイかなって思います」
あるいは、話した内容を応用して、その後の碎輝との戦闘に活かすとか。無論、語り合った内容とは全く関係なく、普通に彼と戦っても構わない。
「碎輝は、相手がカッコよかったり正々堂々としていれば、そこまで成長しないはずですからね。カッコイイ活躍の話同様、その後の戦いもカッコよくやりましょう」
あらかたの説明を終えた後で、ところで、と雨莉は声をひそめる。
「……デビキンの戦争で出てきたパラダルクのことなんすけど」
パラダルク。魔王ガチデビルが7thKING WARにおいて、特級契約書で呼び寄せた「異世界の魔王」のうちの一人だ。彼はどうやら、かつて『成長する敵』……『碎輝』に殺された記憶を持つらしく、碎輝を捜していると言っていた。竜神親分である碎輝と同一人物かどうかは分からないが、名前といい、成長するという特徴といい、無関係とも思えない。パラダルクと彼の関係が気になる猟兵も多いだろう。だが――。
「……碎輝にパラダルクのことについて尋ねるのは、まだちょっと、待って欲しいんす」
雨莉がポツリ漏らした。何故? と問うと、
「だって、パラダルクみたいな超強敵が自分を狙ってるって知ったら、碎輝のことだから、立ち向かうために超パワーアップしちゃいそうじゃないっすか? そしたら最悪カタストロフコースっすよ? ……いや、それは俺の考えすぎかもしれないっすけど……。でも、パラダルクのことを聞いた碎輝がどんな反応するか、分からないんで……今はまだ、パラダルクの名前出さない方が、無難かなぁって」
俺も気になりますけど、と雨莉は目を伏せた。推しを無用に刺激しないように、という彼女なりの配慮なのかもしれない。
「……いずれ、彼にパラダルクのことについて尋ねるチャンスが来るかもしれませんが。それまでは……パラダルクのことは、内密でお願いしたいっす」
とりあえずは、いつも通り彼と戦って、ショタもとい小学生形態にしてきてください、と雨莉は猟兵達を送り出した。
ライ麦
ライ麦です。5/22は碎輝登場一周年ですね! というわけで一周年に相応しいシナリオをご用意しました! (つもり)……なんですがパラダルクッ……! なんで碎輝登場一周年を目前にして出てくるんだよ!! 私の完璧な計画が若干狂ったじゃねぇか!
……というわけで、以下重要な注意事項です。
!重要!
7thKING WARにおいて登場した異世界魔王『パラダルク』。彼と碎輝との関係が気になる方も多いと思いますが(私も気になります)、私も第六猟兵におけるパラダルクと碎輝の関係は何も知らないため、当シナリオにおいて碎輝にパラダルクのことについて尋ねるのはどうかご遠慮ください。たとえ訊かれてもお答えできかねます(OPでもっともらしい理由つけてますが、あれは雨莉のただの推測であって、公式の見解ではありません。ただ、私が知らないから訊かれても答えられないってだけです)。
これ以外の注意事項は特にありません。
碎輝が猟兵のカッコイイ活躍の話を聞きたがっているので、よかったら話してあげて、その後はいつも通り彼と戦って勝利しましょうってシナリオです。
碎輝登場一周年なので、一年前に彼と戦った時の話してもいいかもしれませんね! 該当するシナリオがあれば、仰っていただければ参照します。
もちろん、それ以外の話でも大丈夫です。碎輝以外の強敵とのバトルの話でも、胸躍る冒険の話でも、カッコイイ日常の話でも。こちらも該当するシナリオがあれば、仰っていただければ参照します。
あの時より成長した俺の力を見せてやる! とか、これがその時の技だ! とかあるとカッコイイかもしれませんね!(なくても大丈夫です)
それでは、皆さんのプレイングを心よりお待ちしております!
第1章 日常
『百物語れ』
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POW : 強敵とのバトルを語る
SPD : ワクワクする冒険を語る
WIZ : ドキドキの謎解きを語る
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
リック・リック
アドリブ・連携〇
■心情
私たち猟兵のお話が聞きたいのね…そうね、大祓百鬼夜行があった当時は私は出向いて無かったけど。
封神武侠界の戦争について話してあげる
あれは始皇帝の地下迷宮に1人で攻めた話しよ。軍の警備が強固だったけど私は暗殺王家の王女だったから簡単に撹乱できたわ…これでね
そういって私は「カーズフレア・ポーション」を碎輝に見せてアイテムの詳細を伝えるわ
それでこれを軍団の1部に投げつけて撹乱、そうしたら見事にてんわやんわ♪
え?なんでみつからずに始皇帝を仕留めたって?それはね?
私は指定UCを使って姿を隠して彼の後ろまで忍び寄って「マーダーナイフ 」を彼の首元にそっと突きつける
こういうこと…♪
「私たち猟兵のお話が聞きたいのね……そうね、大祓百鬼夜行があった当時は私は出向いて無かったけど。封神武侠界の戦争について話してあげる」
そう言うと、リック・リック(愛(とげ)のあるオレンジのヒナゲシ・f34577)は語り始めた。
「あれは始皇帝の地下迷宮に1人で攻めた時の話しよ」
――地下宮殿『始皇帝陵』。そこは、始皇帝の亡骸が埋葬された、美しき陵墓であった。しかし、ただ美しいだけではない。皇帝の眠りを妨げる不届き者を殺すため、巨大な迷宮構造を成し、また危険な罠に満ち溢れていた。それでもまだ足りないというのか。その上、巡回する無数の辰砂兵馬俑に守られ、まさに難攻不落の要塞と化していた。しかし、リックは辰砂兵馬俑の動きを逆手にとり、観察、模倣することでこれを回避。罠だらけの迷宮を巡回するのであれば、迷宮の構造を熟知していなければならないだろう――と見抜いてのことだ。
「もちろん、最深部に近付くにつれて、警備もさらに強固になっていったけど……私は暗殺王家の王女だったから、簡単に撹乱できたわ……これでね」
懐から小瓶を取りだし、碎輝に見せるリック。碎輝は首を傾げた。
「なんだ、それ?」
「これは、『カーズフレア・ポーション』。不浄の呪いの毒が入っているポーションよ。これを投げ込めば……その一帯は呪いの炎に包まれるわ」
碎輝は息を飲む。
「それは……カッコイイ、というか……なかなか物騒なアイテムだな……そんなの投げ込まれたら……」
「ええ、見事にてんやわんや♪ その隙に始皇帝の元まで辿り着けたわ。始皇帝は彼が操る水銀の影響で、情緒不安定かつ、あまり頭も回らない状態だったから……見つからずに仕留めるのはわけなかったわね」
クスクス笑いながら暗殺談を語るリックに、ちょっと待て、と碎輝が手を上げた。
「でも、いくら始皇帝が水銀の影響でこう……バカになってたにしても、さすがに敵が近付いてきたら分かるんじゃ? どうやって見つからずに仕留めたんだ?」
「それはね……」
妖艶に微笑んだリックの姿が、刹那にかき消える。碎輝は大きく目を瞬かせた。
「えっ……あれ??」
あの一瞬の間にどこ行ったんだ、と辺りを見回すこと暫し……不意に、首元に冷たく鋭い感触が奔る。
「こういうこと……♪」
いつの間にか背後に回っていたリックに、狂気と妖美を湛えた笑みで突きつけられたマーダーナイフ。碎輝はゴクリと唾を飲み込んだ。
「……なるほど。よく分かった」
「ええ。私の十八番のひとつよ」
ナイフを突きつけたまま、ニコリと笑うリック。かの技は、ユーベルコード、【ステルス・キル】。自身の速度を代償に、完全隠密状態から敵を葬る暗殺術。突きつけられたままのナイフに冷や汗をかきつつも、確かにカッコイイなと、碎輝は称賛のため息を漏らしたのだった。
大成功
🔵🔵🔵
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友
第三『侵す者』武の天才
一人称:わし 豪快古風
月日が経つのは早い。
しかし、雨莉殿の心配も尤もよな。
ふふ、あれから増えた仲間…友というか孫的存在というか。
今回のカッコいいは霹靂関連でな!
ブルーアルカディアで、牧場のある大陸を襲うオブリビオンがおってな。それを撃退したときに組んだのが、当時その牧場にいた霹靂よ。
うむ、空での戦いは、また違った感触だったの。
霹靂という名は、わしらがつけた。陰海月と(風林火山陰雷的な意味で)対になる。
※
陰海月、碎輝さんだー。ぼくのカッコいいお友達紹介するよ!なぷきゅ鳴き。
霹靂、碎輝と直接会うのが初めてなのでお辞儀する。クエ鳴き。照れる。
(「雨莉殿の心配も尤もよな」)
馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)――の第三人格『侵す者』はそう慮る。だからこそ、あえて先日の戦争については触れないことにして。語り出した。
「あれから、もう一年か。月日が経つのは早いものよ。しかし、その中にも忘れ得ぬ出逢いはあるもの……と、いうわけで。ふふ、あれから増えた仲間……友というか孫的存在というか。今回は、霹靂について語らせてもらおうか」
義透が胸を反らす。と、その影から、大きなミズクラゲと、金色混じりの焦げ茶の羽毛が美しいヒポグリフが現れた。見慣れぬ生物に、碎輝は目を輝かせる。
「霹靂! 初めましてだな、かむとけって言うのか? カッコイイなー!」
カクリヨにはいない生き物。興味深そうにしげしげと眺めている碎輝に、霹靂は『クエ』と一声鳴いてお辞儀する。礼儀正しく、しかしカッコイイと誉められたのが照れくさいのか、どこかもじもじした様子で。一方、陰海月の方は『ぼくのカッコいいお友達紹介するよ!』というように、誇らしげにぷきゅ! と触手を霹靂の方に向けている。
「霹靂という名は、わしらがつけた。陰海月と対になるようにな」
腕を組み、頷きながら言う義透。『わしら』というのはもちろん、生前は戦友同士だった、彼の中の四人のことである。戦いの中で縁を深めた、陰海月とヒポグリフが、友として共に在れるよう、願いを込めて。
「そうなのか! カッコイイ名前だよなー! でも、陰海月とどう対になるんだ?」
はしゃぐように、霹靂の翼や嘴をツンツンしながら問う碎輝に、
「ああ、それは風林火山陰雷的な意味でな。金色混じりの羽毛が、稲妻の閃光のように見えて。『雷』相当が二つになるが、まあよいじゃろ……と」
と答える。
「雷! 俺と一緒だな!」
ポンと霹靂の頭に軽く手を置く碎輝。クエ、と照れたように霹靂が鳴いた。雷を操る竜神親分と、雷の名を持つヒポグリフの微笑ましい交流に、義透の口元も緩んで――。
「ところで風林火山陰雷ってどういう意味だ?」
……思わずズッコケそうになった。まあ、相手は最弱の竜神だし。『成長』すれば、教えなくとも知識を得るかもしれない。姿勢と気を取り直し、義透は軽く咳払いをして言った。
「まあ、言葉の意味はおいおい話すとして……本題に入ろうか。霹靂は元々、ブルーアルカディアの牧場におってな。その牧場のある大陸を襲ってきたオブリビオンを撃退した時に組んだのが、霹靂よ」
あの時は世話になったな、と霹靂と、ついでに陰海月の頭を撫でる。クエ、ぷきゅ、と嬉しそうに彼らは鳴いた。
「ブルーアルカディアか~! そんな世界があるのか。本当に、色んな世界の危機を救ってるんだな、猟兵は……」
眩しそうに義透を見る碎輝。ブルーアルカディアは、雲海の中にいくつもの大陸が浮かぶ、空の世界。説明を聞き、空の世界での戦いってどんな感じなんだ? と興味津々に尋ねてくる彼に、
「うむ、空での戦いは、また違った感触だったの」
と義透は頷く。騎乗での戦いには慣れているとはいえ、ヒポグリフを駆り、空を駆ける戦いは、歴戦の武の天才たる『侵す者』にとっても、中々新鮮なものだった。その話を聞いた碎輝はへぇ~! と感嘆の息を漏らし、空を仰ぐ。
「空での戦いかあ。俺も黄金竜になれば飛べるけど……空で思いっきり戦うのも、気持ち良さそうだよな」
空の世界、俺もいつか行けるかな……と、碎輝は空に向かって手を伸ばす。クエ、と肯定するように、霹靂が一声鳴いた。
大成功
🔵🔵🔵
ベルベナ・ラウンドディー
お久しぶりです
…よかった、今日はまともな衣装ですね
今年の難敵の話です
武侠界の鴻鈞道人・デビルキングワールドのラスボス2匹
…パラダルクは名前を出さず軽く触れる程度
逃げられたり滅法頑丈だったり手に負えないのが増えてきて
より一層の成長が求められる
竜神親分に肖りたく挨拶に来たという経緯で話をします
話の終わり際、手土産のユーベルコード
それなりに成果を遂げていることを披露します
真の姿で体から刃を出し、刃の上から更に刃を葉枝のように伸ばし…
…今日は見せるだけ
まだ上手く扱えず、すぐ頭がイカれて使い物にならない
戦争の疲れも残ってるし、体が慣れてから改めて来る、という約束の話
(2章不参加・その辺でバテて寝てます
「お久しぶりです」
礼儀正しく挨拶するベルベナ・ラウンドディー(berbenah·∂・f07708)に、碎輝は相好を崩す。
「ベルベナ! 久しぶりだなー! いつかのメイド喫茶以来だっけ」
「ええ。……よかった、今日はまともな衣装ですね」
碎輝の頭の先からつま先まで眺めて、ベルベナはポツリ漏らした。碎輝は赤くなる。
「あー……あの時はその、よく分かってなかったというか……と、とにかく本題! ベルベナはどんな話持ってきてくれたんだ?」
話を逸らす彼に軽く肩をすくめて、ベルベナは話し出す。
「今年の難敵の話です」
「今年の難敵?」
「はい。封神武侠界で戦った鴻鈞道人と……デビルキングワールドのラスボス2匹ですね」
指折り言うベルベナ。まずは鴻鈞道人から。
「鴻鈞道人……骸の海そのものを自称する、厄介な敵です」
数多の強敵を「再孵化」させ、再孵化を使わない場合でも正体不明のユーベルコードで先制攻撃し、あまつさえ転送を担当したグリモア猟兵と融合して戦う、強大にして危険な敵だった。ベルベナ自身も、融合されたグリモア猟兵と戦ったことがある。ただ、その能力もさることながら、最も厄介なのは。
「……現時点で、完全に滅ぼす方法がないってことです」
嘆息するベルベナ。碎輝は目を丸くする。
「完全に滅ぼす方法がない? ……ってことは、まだ倒せてないってことか?」
「はい。どうにか、撤退させることには成功しましたが……それに、他にも倒しきれない敵が、デビルキングワールドにもいたんですよね。そいつの目的は阻止しましたが、逃げられまして」
パラダルクのことだ。尤も、グリモア猟兵の懸念のこともあり、名前は出さず軽く触れる程度に留める。
「それが、デビルキングワールドのラスボス2匹?」
「ああ、それとは違いますが……でも倒しきれないっていうのは共通してますね」
ベルベナは遠い目になる。こちらは逃げられたとかではないが、ひたすら頑丈だった。ベルベナなど、そのうちの一体であるスーパーカオスドラゴンと24回も戦ったほどだ(アイスエイジクイーンとも戦った)。にも関わらずまだピンピンしてるってどういうこと? オブリビオンでないだけマシだが、これで敵だったらと思うとゾッとする。
「……そんなこんなで、最近は逃げられたり滅法頑丈だったり、手に負えないのが増えてきて。より一層の成長が求められる。竜神親分に肖りたく挨拶に来たという次第です」
「なるほどなあ……」
碎輝は腕を組む。
「そんなのと戦ってたのか、猟兵も大変だな……でも、いくら倒せなくても、戦った分成長してるんじゃないか?」
ベルベナは目を瞬かせた。碎輝は続ける。
「俺みたいに、短期間で一気に成長するわけじゃないけど……でもこれはこれで、カタストロフ起こしそうになったり大変だしな。ゆっくりでも、昨日より今日、今日より明日、成長できればいいさ」
きっといつか、そいつらにも勝てると碎輝はベルベナの肩に手を置く。
「お前達は、今よりもっと強くなれる。無論、俺よりもずっと……!!」
一年前にも聞いた台詞で激励する碎輝に、
「……そうですね」
とベルベナは頷いた。
「さて、今年の難敵の話だけして帰るのもなんですし。それなりに成果を遂げているところをお見せしましょう」
「おお!? 難敵との戦いでの成長の成果か!」
何を見せてくれるんだ!? とワクワク、期待を込めた瞳で見つめている碎輝の前で、
『――――ッ! ァギャァァァァァァァアアアア――――――ッ!』
ベルベナは突如、地獄の底から響くような絶叫を上げた。
「!!!? えっどうした?」
狼狽える碎輝の前で、ベルベナはさらにマントを脱ぎ捨てる。瞬間、その姿は10歳ほどの竜の手足と角、尻尾を持つ少年に変化し、額の瞳が開く。全身から金属刃が伸び、その刃の先から葉枝のようにさらに刃が伸び……。そこで動きが止まった。
「……今日は見せるだけです」
頭を振って言うベルベナに、碎輝はおあずけをくらった顔になる。
「あれ、戦わないのか?」
せっかく強そうな姿になったのに、と口を尖らす彼に、
「……まだ上手く扱えませんから。すぐ頭がイカれて使い物にならない」
とベルベナは答え、頭を押さえた。しゅん、とその姿が元に戻る。この技は負荷が大きい上に、毎秒理性を喪失する。あまり長時間は持たない。
「そうか~……残念だな、難敵との戦いでの成果を、実際に戦って確かめてみたかったのに」
ため息を吐く碎輝に、
「まだ戦争の疲れも残ってますしね。体が慣れてから改めて来ますよ」
と声をかけた。
「そうか、楽しみだな! 約束だ!」
パッと面を上げる碎輝と、
「……ええ。約束です」
と軽く指切りして。
大成功
🔵🔵🔵
亞東・霧亥
色々あったよな、色々と。
【UC】
過去のアレコレから、まず、初めて相対した時の竜神親分碎輝、次にメイド服姿のショタの王、そして碎輝メイド服小学生形態へと順に変身していく。
変身するたびに、その時の激闘や見所を語りつつ、1周年記念を逆手に様々なポーズでツーショットを撮る。
「画像を添付して、送信・・・完了。」
どこに横流ししたか?
そりゃあ、コレ見て身悶えするヤツだよ。
「あれから一年か。色々あったよな、色々と」
『色々』に何か含みを持たせて呟く亞東・霧亥(峻刻・f05789)に、碎輝は全く気付かない様子で、
「ああ、色々あったよな」
と相槌を打つ。
「そこでだ。今回は、俺のユーベルコード【屍山血河(シザンケツガ)】で、これまでの一年を振り返ってみようと思う。これは、過去の依頼で対峙した強敵に変身できるユーベルコードだからな」
「おっ、いいなそういうの!」
碎輝が身を乗り出す。彼も乗り気なようだ。では早速、と霧亥は時を遡る力に覚醒し――次の瞬間、そこには碎輝が立っていた。
「……あれ!? 俺!?」
目を見開く碎輝に碎輝……正確には碎輝に変身した霧亥が言う。
「これは、初めて相対した時の竜神親分碎輝だ」
「ああ、骸魂と合体してオブリビオン化してた時の俺か! 懐かしいなー! あの時に初めて猟兵に会ったんだよな」
しみじみと頷く碎輝。そう、碎輝と猟兵との初めての出会いは、一年前の大祓百鬼夜行だった。誰からも忘れさられた究極妖怪、大祓骸魂を倒すため、妖怪親分も含めた妖怪達があえて彼女の軍門に降り、猟兵達の前に立ちはだかった。その時に碎輝の封印も解かれたのだ。骸魂と合体した碎輝は、その成長能力も相まって強敵だった……と霧亥は思い出す。
「覚えているか、俺と初めて戦った時のことを」
「ああ、もちろん! 吹き矢……ならぬ吹き槍で攻撃してきたよな。それに、ルールを宣告して破ったらダメージっていうユーベルコード。あれは痛かった……でも、いい作戦だった!」
一年前の健闘を讃え、グッと親指を立てる碎輝。多数の猟兵が入り乱れる中での激闘だったが、二人とも、ちゃんと覚えている。暫し、その戦いについて語り合い……碎輝、に変身した霧亥は槍を手に取った。
「よし、一周年記念にツーショットでも撮るか。碎輝、そこに俺と向かいあう感じで立ってくれ」
「えっ、俺と俺のツーショットか……なんか、変な感じだな」
戸惑い、頭を掻きつつも、言われた通りに槍を構え、霧亥と向き合う碎輝。ここに、碎輝vs碎輝という夢の(?)絵面が完成した。
「……ダブル碎輝か。これはこれで、喜ぶかもな」
撮った写真を眺め、霧亥は呟く。
「? 喜ぶって、誰が?」
「なんでもない。ただの、知り合いの話だ」
彼女が推しに認知されたくないことは知っている。ゆえに名前は伏せた。
「さて、次に行こうか」
「おお!?」
次はどんな強敵が出てくるんだ!? と期待に胸膨らませ、瞳を煌かせる彼の前で、霧亥は再び変身する。メイド服姿のショタの王……書架の王に。碎輝は思いっきりつんのめった。
「……なんでだよっ!!」
ツッコまずにはいられない。書架の王……ブックドミネーターと霧亥は戦ったことがあるから、屍山血河で彼に変身できるのは分かるけど、メイド服どっから出てきた。いつの間に着替えたんだよ。早着替えの技能も持ってないのに。
「いいから黙って――」
(作者の)ツッコミを華麗に黙殺し、前みたいに壁ドンor床ドンを仕掛けようとした霧亥は気付いた。小学生形態じゃない碎輝にこの姿で壁ドンor床ドンするには、身長が、足りなかった。
「……まさか、この姿にこんなデメリットがあるとはな。仕方ない、プランBだ。碎輝、ちょっと俺に壁ドンor床ドンしてくれないか。あいつが逆も受け付けるのか知らないが」
「やらねーよ!!」
ひゅん、と碎輝の槍が空を切った。ショタの王(誰がうまいこと言えと)の身長を活かし、シュッとしゃがんで、真っ赤になった彼の槍を回避した霧亥は、暫しの激闘(話し合い)の末、この姿で会った時同様、二人で(あの時は三人だったが)かき氷食べてるツーショットを撮ることで合意した。
「な、なんか……すごく、疲れた……」
まだ本格的に戦ってもいないのに、膝に手を当ててぜえぜえしてる碎輝に、
「次が、最後の変身だ」
と告げ、霧亥は無慈悲に変身する。碎輝メイド服小学生形態に。碎輝は膝からくずおれた。
「……なんでなんだよ! 小学生形態の俺とは戦ったことないだろ!? 強敵でもないし!」
俺にとってはある意味強敵だけど、と顔を覆いながらツッコむ碎輝に、
「いや、『対峙する』には『向かい合って睨み合う』って意味もあるから、壁ドンした時点で条件は満たしてる(はず)。それに、俺が強敵と思えば強敵だ」
と屁理屈を述べる。言うまでもないことだが、ユーベルコードの効果は戦況に応じて千差万別に変化する。これはあくまで作者の判定であり、他での再現性は保証しないのでよろしくです()。
「さて、この時の見所は」
「もうやめてくれ……」
弱々しく懇願する彼に、さすがに哀れになって、この時の話をするのは取りやめた。気になる人は拙作、『碎輝と語る、最高にカッコいい叶えたい夢について』読んでください(宣伝)。
ただ、ツーショットは諦めず、涙目になってる碎輝と手でハートマーク作って写真を撮る。
「よし、ここまでの画像を添付して、送信……完了」
ピッとどこかに写真を送る霧亥に、
「待って今のどこに送った!?」
と碎輝は叫ぶ。
「どこに横流ししたか? そりゃあ、コレ見て身悶えするヤツだよ」
涼しい顔で霧亥は答えた。
成功
🔵🔵🔴
ウィル・グラマン
●POW
碎輝と会ったのは大祓百鬼夜行でじゃなくて、その後で雨莉が夕焼けに染まった海岸の予知からだったんだよな
確かオレが疑似ベアキャットになって、夕陽をバックに殴り合ったんだっけ
碎輝との思い出話は色々あるけど、強敵との戦いとなりゃ…真っ先に出てくるのはアイツだよな
誰とは言わねぇけど、熱の入ったおままごとで刺してきたり、メイド服を着せられたアイツ
廃病院で撮られた写真は雨莉のスマホにも送られてるんだろうなー(溜息
辛気臭くなったし話題を変えるか
実はさ、マザー・コンピュータの決戦で碎輝を再現してみたんだぜ
あん時のデータはもう無ぇけど、きっちり映像は保管してるぜ
電脳空間を展開するから立体映像を堪能しようぜ
「碎輝と会ったのは大祓百鬼夜行でじゃなくて、その後、夕焼けに染まった海岸でだったな」
ウィル・グラマン(電脳モンスターテイマー・f30811)が彼との出会いを思い返し、呟く。
「ああ、あの時が最初だったか。あの時は、カッコいい談義に付き合ってくれてありがとうな」
頷き、礼を言う碎輝に、どういたしまして、と返して。
「カッコいい談義だけじゃなくて、その後戦ったんだよな。確かオレが疑似ベアキャットになって、夕陽をバックに殴り合ったんだっけ」
としみじみ。
「ああ、自分で言うのもなんだけど、あれはカッコよかったな……! 青春って感じで」
碎輝もまた、腕を組んでうんうんと頷く。夕陽が照らす中、拳で語り合って友情を深める。ひと昔前の青春モノによくありそうな光景を、二人は実際にやってみせたのだ。その後も二人の友情は続き、碎輝とウィルはその後も何度か会い、語り合い、戦っている。様々な思い出を懐かしく振り返りつつ、ウィルは口を開いた。
「碎輝との思い出話は色々あるけど、強敵との戦いとなりゃ……真っ先に出てくるのはアイツだよな」
「アイツ?」
首を傾げる碎輝に、
「ほら、誰とは言わねぇけど、熱の入ったおままごとで刺してきたり、メイド服を着せてきたりしたアイツ」
と苦々しく答える。
「ああ……あの子か」
碎輝も一気に渋い顔になった。確かにある意味強敵だ。彼女がいるだけで、一気に場がカオスと化す。本来倒されるべきの碎輝と組み、二人で彼女を倒すという驚愕の展開になったこともある。彼女もまた猟兵であり、一応味方ではあるのだが、『遊び』好きな彼女の行動はどうにも読みづらく、二人とも割と散々な目に遭ってきた。年明け早々、メイド服を着せられて撮影会されたのは忘れられない。
「廃ホテルで撮られた写真は雨莉のスマホにも送られてるんだろうなー」
ため息をつくウィルに、
「……ああ」
と碎輝も暗い顔で頷いた。さっきの霧亥に引き続き、トラウマを抉られてしまった。どんよりしてきた空気に、ウィルは頭を振って言う。
「辛気臭くなったし話題を変えるか。実はさ、マザー・コンピュータの決戦で碎輝を再現してみたんだぜ」
「マザー・コンピュータ?」
「ああ、アポカリプスヘルのオブリビオン・フォーミュラの一人でさ。あらゆる物質・概念を『機械化』するチート能力持ちなんだよ」
解説するウィル。オブリビオン・フォーミュラの一角に相応しい、強大な力だった。その力でもって生み出した増殖無限戦闘機械都市に、転移を担当したグリモア猟兵も一緒に閉じ込めて襲ってきたのだが、ウィル達猟兵は協力してこれを撃退。その時活躍したのが。
「なぜかそこにあった、碎輝のフィギュアのガワをスキャンして、データをミニコンに落とし込んでできたゲームアバターだ」
ウィルは胸を張る。
「……? なんで俺のフィギュアがそこに……それに、それがどう役に立ったんだ?」
怪訝な顔をする碎輝に、
「大活躍だよ。『バトルキャラクターズ』でそれを合体させて、雷電で都市機能を麻痺させたんだ。機械に雷は大敵だからな!」
と得意げに鼻の下を擦る。
「そうか、俺によく似たゲームアバターがそんなことを……俺自身じゃないとはいえ、なんかこそばゆいな」
照れたように頬を掻く碎輝に、ウィルは言った。
「あん時のデータはもう無ぇけど、きっちり映像は保管してるぜ。電脳空間を展開するから立体映像を堪能しようぜ」
カッコいい碎輝アバターの戦いの鑑賞会といこうじゃないか、とウィルは電脳ゴーグルを被り、そこに電脳世界を展開。あの時の戦いをそこに投影する。
「俺によく似たゲームアバターが戦ってるって、不思議な感じだな……」
呟きつつ、碎輝は自身によく似たゲームアバターの戦いに見入っていた。
大成功
🔵🔵🔵
剣未・エト
「人とは異なる在り方だけど僕達とは違ってちゃんと生命…妖怪、これがこの世界の住人。本当に異世界なんだなぁ」
銀誓館の制服姿で体から伸びる鎖を鳴らしながら興味深げに辺りを見回す初異世界体験中のエト
初対面の碎輝には礼儀正しく挨拶、家族である肩の上のミニ視肉のくーちゃんも紹介する
「実を言えば僕は最近故郷から出てきたばかりで、貴方に語れるような大きな戦働きもまだ無いんだ」
その代わり彼等の事を語らせて欲しい、と鎖を地面に繋げてオペラ劇場風の特殊空間を展開UCの独唱として十数年前に戦った銀誓館学園の物語を歌う
「生命と死が争う宿命の中で、彼らは何かを選び別の何かを零れ落す事を否として、あらゆるを掬わんと選ばない事を選び続け、遂には人と魔が共に存える世界を目指したんだ!」
内容に嘘は無いが生まれる前の話でかつ憧れの相手ゆえにかなり盛ってる
歌は続き、エトが幼い時に出会い守られた金色の剣士との思い出に
こちらは実体験だけど滅茶苦茶憧れなのでやっぱり盛りまくり
「僕もあの人の様に牙無き者の剣に…未だ至らずとも必ず」
体から伸びる鎖を鳴らしながら、剣未・エト(黄金に至らんと輝く星・f37134)は初のカクリヨファンタズムを見て回っていた。見た目は銀誓館学園の制服を纏った中学生くらいの少女、されどそれは新世代ゴーストの特徴によるもので、実際はもっと幼い。そのこともあってか、初の異世界は見るもの全てが新鮮で。目に映るものを興味深く眺めていた。カクリヨファンタズムは、現代地球で失われた「過去の遺物」で組み上げられた世界。現代地球のシルバーレイン出身の彼女にとって、見慣れないものばかりだ。見慣れないはずなのにどこか懐かしい感じのする、駄菓子屋や肉屋、魚屋、八百屋などが建ち並ぶ商店街。かと思えば、突如立体迷路のような、廃墟が折り重なった建造物が出現したり、路地の裏手に小さな神社があったり、巨大な植物が生えていたり。無秩序な街の様相は、見ていて飽きない。カクリヨのオブリビオンは、周辺を「迷宮化」するという。そのためだろうか。どこか弾むような足取りで、くるくる回りながら街を眺めているエトに、幾人かの住人が親しげに猟兵さーん、と手を振っている。妖怪達の姿は千差万別だ。中にはゴーストと見まごうような容姿のものもいる。しかし、そこにはゴーストにはない、確かな体温と温もりがあって。「生命」の脈動が感じられた。
「人とは異なる在り方だけど僕達とは違ってちゃんと生命……妖怪、これがこの世界の住人。本当に異世界なんだなぁ」
驚きと感嘆のため息を漏らしながら、街を歩くエト。やがて、槍を携え、大岩に腰かけている金髪の青年の姿が見えてきた。金色の竜の角、背から伸びる尾。彼が竜神親分碎輝に間違いないだろう。エトの姿に気付き、よっと岩から飛び降りてくる彼に、エトは礼儀正しく、腰を折って挨拶する。
「初めまして、僕は剣未・エト。こっちはミニ視肉のくーちゃん。僕の家族」
指差す肩の上のくーちゃんも、真似してお辞儀をした。
「エトにくーちゃんか。俺は碎輝、よろしくな! それで早速なんだが、エトはどんな話を持ってきてくれたんだ?」
視線を合わせるように屈み、期待にどこか瞳を煌めかせている碎輝に、申し訳ないけれど、とエトは目を伏せた。
「実を言えば僕は最近故郷から出てきたばかりで、貴方に語れるような大きな戦働きもまだ無いんだ」
「あれ、そうなのか?」
「その代わり、」
エトはシャンと鎖を鳴らして背筋を伸ばす。
「彼等の事を語らせて欲しい」
「彼等?」
「かつてシルバーレイン世界を救った英雄……銀誓館学園の能力者達のことさ」
そう述べると、エトは自身の鎖を地面に打ち込む。すると、繋げた箇所からぶわっと、金色に光り輝く、絢爛豪華なオペラ劇場風の特殊空間が出現し、辺りを包み込んだ。碎輝は目を見張る。
「うおっなんだこりゃ……すっげーなぁ……」
「僕の父は、オペラ座の怪人を自称する地縛霊だからね」
この特殊空間は父譲りのものだ。すぅっと息を吸い込むと、エトは歌い出した。十数年前に戦った、銀誓館学園の物語を。
『其れは銀の雨降る時代。死と隣り合わせの青春を駆け抜けた勇猛無比なる生命使い達が放つ、無限の輝き、生命の賛歌!』
オペラ劇場のような広い空間に、歌い手が一人でも朗々と響き渡る歌声は、日々の鍛錬の賜物。歌は銀誓館学園の創立からゴーストとの戦い、来訪者との邂逅、秘宝メガリスを巡る冒険から、生命根絶を目的とする『異形』との決戦へと、学園と能力者達の歴史をなぞっていく。
「……そこで彼らは、迫りくる光の巨人の猛攻をものともせず、軽々と内部に飛び込むと、次々に現れる無数の『宇宙』をなぎ倒し――!」
歌いながらエトは拳を握りしめる。銀誓館学園の戦いの記録が、荘厳なオペラ会場に見合うような、壮大な一大スペクトルとして展開されていく。内容はおおむね合ってはいる、だが何しろ彼女が生まれる前の話であり、かつ憧れの相手だ。この話も割と盛られてはいる(そんなに楽勝だったわけでもない)。だが知らない碎輝はおおーと息を呑み、目を輝かせていた。
「生命と死が争う宿命の中で、彼らは何かを選び別の何かを零れ落す事を否として、あらゆるを掬わんと選ばない事を選び続け、遂には人と魔が共に存える世界を目指したんだ!」
歌い上げるエトの声に熱がこもる。人魔共存――成し遂げたとはいえ、最初からそうだったわけではない。能力者達の中にも様々な考え方があり、道のりは決して平坦ではなかった。最初に出会った来訪者、土蜘蛛とは、まだ学園側の知識が足りなかったこともあり、女王と分かりあえぬまま戦うしかなかったし、逆に銀誓館学園が魔の方へ歩み寄っていく中で、袂を分かつしかなかった人もいる。それでも。大きな決断を経て、かつて対立していた大陸妖狐と手を結び、人魔共存を唱えるゴースト、悪路王と協力し。学園が少しずつ道を切り開いていったのは事実だ。初めは人に害なすゴーストと戦うだけだった組織が、やがてエトの歌うようにあらゆるものを救わんと欲し、救うものを『選ばないこと』を選び続けた。その道筋の結果が、エトのような新世代ゴーストの誕生に繋がった。歌いながらその歴史に思いを馳せ、じん、と胸が熱くなるような思いに駆られる。暫し胸を押さえ、湧き上がる興奮と息を鎮めると、エトは再び面を上げた。物語は、学園の物語から彼女の物語へと移ってゆく。
「その人は、凛と在った――……」
エトは目を閉じる。瞼の下には、あの時助けてくれた金色の剣士の姿が、今でもありありと映し出されている。
「金色の髪を靡かせ、僕の命の危機に颯爽と現れた剣士は、バッサバッサと迫る脅威を斬り払って――……人も魔も境無く助ける、その姿勢はまさしく、銀誓館学園の歩んできた道のりそのもの! 彼女の背に、学園の歴史が詰まっている――!」
本人が聞いたら、大げさだと赤くなるだろうか。しかし、エトにとってはそれが真実。やっぱり盛り気味な思い出を歌い終え、エトは革命剣を握りしめた。
「僕もあの人の様に牙無き者の剣に……未だ至らずとも必ず」
すっと未来を見据えるエトの視線と、銀の雨降る時代の英雄達の物語に、碎輝は惜しみない拍手を送った。
「銀誓館学園……噂では聞いたことあったけど、そんなすごい組織だったんだな! 流石だぜ……でも、その気持ちを忘れなければ、エトもきっとなれる! 牙無き者の剣に……昨日より今日、今日より明日……。エトは、もっと強くなれるはずだからな!」
頑張れと、碎輝は力強く彼女の肩を叩いたのだった。
大成功
🔵🔵🔵
豊水・晶
あ~、碎輝さんと初めてお会いしたのって冬にアイス食べまくったときなんですよねぇ。なんだか寒くないのに震えが…。我慢比べといえば最近暑くなってきて、雨莉ちゃんの炬燵を見ると少し嫌な予感がしないでもないですが今は置いといて。
私のかっこいいお話というと…そうですねぇ。ダークセイバーで愛を語る吸血鬼と戦ったことでしょうか。
過去の存在であるからこそ、未来を望める生者を愛する。歪んではいましたけど共感できる部分もある。そんな敵でした。決して相いれずとも、彼女は強く美しかったと今でも思います。そして、護るためには必ず力がいることを再認識させてくれました。力がなければただ蹂躙されるだけ、そんな経験もう二度とごめんです。だから、鍛錬に付き合ってくださいね。
武器を抜きながら構える。
これから戦いは更に激化していくでしょう。そんなときに後悔しないためにも、今、鍛えておいて損はありません。格好良く世界を救うためにも、ね!
「あ~、碎輝さんと初めてお会いしたのって冬にアイス食べまくったときなんですよねぇ」
豊水・晶(流れ揺蕩う水晶・f31057)はどこか遠い目になる。今は季節的に寒くないはずなのに何故だろう、思い返すと今でも寒気で体が震えた。
「あ~、あの時は……寒いところで涼しい顔して冷たいものを食べるのがカッコいいと思ったんだ……トレーニングにもなると思ったし……付き合わせてほんとごめんな!」
碎輝は顔の前で手を合わせて平謝りする。晶は肩をすくめた。
「まあ、行くことを決めたのは私ですし……。我慢比べはある意味鍛錬とも呼べるかもしれませんし? しかし、我慢比べといえば……最近暑くなってきて、雨莉ちゃんの炬燵を見ると少し嫌な予感がしないでもないですね……」
虚空を見上げ、晶は呟く。だが、その彼女もどうやら最近、こたつを脱ぎ捨てるユーベルコードを開発したようだ。さすがにこの時期にこたつは、引きこもり(クーラーつけっぱ)の彼女にとっても暑いんだろう。これで彼女が暑い中熱いものを食べる我慢大会依頼を持ってくる可能性は……。
「炬燵……熱中我慢大会か……すごく(暑さに)強くなれそうだな……」
碎輝が顎に手を当てて何やら考え込んでいた。ヤバいのがいた。思わず距離をとった晶に、彼は慌てて手を振る。
「いや、冗談冗談! さすがにもう無茶な我慢大会はしないって! そ、それより晶は? どんなカッコいい話してくれるんだ?」
どうにか軌道修正した彼に、晶は頬に指を当てて考え込む。
「私? 私のかっこいいお話というと……そうですねぇ。ダークセイヴァーで、愛を語る吸血鬼と戦ったことでしょうか」
目を閉じて思い出す。領主だった彼女は、領民を『愛して』いた。愛しているからこそ、愛するものの全てを欲するのだと云った。喜びも、苦しみも、欲望も、絶望も、弱さも強さも愚かさも賢さも……その輝き全てを。自らが『人の輝き』と呼ぶそれを求め、わざと自身が支配する領民達に反乱を唆し、猟兵達を呼び寄せた。常人であれば理解しがたいその思考回路を、しかし竜神として村を守り、人々を慈しんできた彼女は、少しだけ理解ってしまった。だから、彼女のことを嫌いにはなれなかった。長き間人の営みを眺めてきた分、人間が持つ魂の美しさも醜さも、全てを飲み込んだ上で、晶もまた人間を愛していたから。過去の存在に思いを馳せながら、晶は再び口を開いた。
「過去の存在であるからこそ、未来を望める生者を愛する――歪んではいましたけど、共感できる部分もある、そんな敵でした」
決して相いれずとも、彼女は強く美しかったと今でも思う。晶の一閃で身体を真っ二つに切断されながらも、彼女は彼女の愛を諦めなかった。その精神は、歪んではいるがどこか眩しい。美しきかの吸血姫が、理不尽として立ちはだかってしまったことを惜しいと思うほどに。そして。
「……護るためには必ず力がいることを再認識させてくれました」
ポツリと雫を零すように、言の葉が落ちる。それは、彼女が唆し仕立て上げた反乱軍が、猟兵達が来るまでは尽く潰されてしまっていた現実を見聞きしたから。思い出してしまった。邪神に二度も襲撃され、守り切れなかった故郷のことを。立ち向かっても、力がなければただ蹂躙されるだけ――それを、改めて思い知らされて。あんな経験は、もう二度とごめんだ。だから。
「だから、鍛錬に付き合ってくださいね」
晶はスラリと、自身の角を削って作り出した二振りの剣を抜く。その刀身は水纏う水晶のよう。美しき切っ先を突き付け、晶は言う。
「これから戦いは更に激化していくでしょう。そんなときに後悔しないためにも、今、鍛えておいて損はありません。格好良く世界を救うためにも、ね!」
「その通りだ! 望むところだぜ!」
力強く頷き、碎輝もまた、雷纏う槍を構えた。戦いの火蓋が、切って落とされようとしていた。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『竜神親分『碎輝』成長電流形態』
|
POW : 成長電流
【黄金竜】に変身し、レベル×100km/hで飛翔しながら、戦場の敵全てに弱い【状態から次第に強くなっていく電流】を放ち続ける。
SPD : 黄金竜神
【体に雷を纏う】事で【無限に成長を続ける黄金竜の姿】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ : 超電竜撃滅衝
自身が装備する【槍】から【無限に成長する巨竜型の雷電】を放ち、レベルm半径内の敵全員にダメージと【麻痺】の状態異常を与える。
イラスト:108
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「お前達のカッコいい話、しかと聞かせてもらった! 見事だった……流石はカクリヨの危機を救った猟兵だな!」
自身の槍で猟兵達を指しながら、碎輝は眩しいほどの笑みを浮かべた。実際眩しかった。彼の纏う電流のせいで。パチパチと音を立てて弾け、次第に膨れ上がるそれが、彼の強さの源であり、世界を滅ぼすと恐れられる所以でもあった。その電流は、彼を無限に成長させる――しかし、一年前既に、猟兵達はそれを乗り越えている。その時はいなかったものでも、きっと超えられるはずだ。様々な苦難を超えて、今この場に立っているのだから。碎輝は意気揚々と言い放つ。
「お前達の話も、経験も、全てを飲み込んで俺は強くなる――! さあ、お前達も俺と戦い、俺を超えてくれ!」
お前達はもっと強く、カッコよくなれるはずだからと碎輝は槍を携え、真っすぐに猟兵達に向かってきた。
※マスターより
これまでのカッコいい話を胸に碎輝と戦う第二章、開幕です!
第一章の内容を踏まえても構いませんし、踏まえなくても構いません。
また、第二章からの飛び込み参加も歓迎します。二章から参加してくださる方がいらっしゃった場合、一章で語りそびれたカッコいい話を叫びながら殴るとかもいいかなと思います。第一章の内容と第二章の内容をいっぺんにやる感じですね(せわしないわ)。
もちろん何も語らず、普通に彼とバトルしてもOKです。
それでは、皆様のプレイングを心よりお待ちしております!
リック・リック
アドリブ・連携〇
複数UC有り(不可能なら判定UCのみを採用)
■心情
本当にかっこいいお話が好きなのね。
じゃあ次は隠密とは全く反対な戦い方を見せてあげるわね?
■行動
私は普段抑えている殺戮衝動を解放して「狂気の殺意」を纏わせて相手を殺すことと、気持ちを高まらせて心拍数を上げて指定UCを発動。
私は碎輝を獲物として仕留める気持ちで黄金竜の碎輝の周りを走り回りながら撹乱していく雷や爪などの攻撃はスピードと反応速度を上げているとはいえ向こうもおなじなので死角を常に立ち回りながら走る。そして相手にUC【パニック・アタック】で少しだけ正気を削ぐわ。
使用技能:闇に紛れる、暗殺
アイテム:狂気の殺意、肉切り包丁
「本当にかっこいいお話が好きなのね」
クスリと笑ったリック・リック(愛(とげ)のあるオレンジのヒナゲシ・f34577)を、
「……ああ」
碎輝は生返事しながら、彼の一挙手一投足を見逃すまいとじっと見つめていた。先ほど見せられた暗殺技、あれでこられたら回避のしようがないと危機感を露にして。リックの風に遊ぶ髪や毛肌の一本一本すら見落とさないほどに、息を詰めて目を凝らしていた――だからこそ。
「じゃあ、次は隠密とは全く反対な戦い方を見せてあげるわね?」
狂乱の笑みを浮かべ、異常なほどに赤い鮮血のオーラを纏ったリックが、肉切り包丁を手に真っ直ぐこちらに向かってきたことに、かえって虚を衝かれた。
「……!! しまった、さっきの技はブラフだったか!」
咄嗟に雷を纏い、黄金竜の姿に変身するものの、既に遅い。
「はぁ、はぁ、はぁ……!」
獲物を狩る興奮と狂喜に目を爛々と輝かせ、頬を紅潮させたリックは、既に碎輝の懐に入っている。ユーベルコード、【殺狐の狂乱(キラーフォックスクレイジー)】。これは先ほどの技とは反対に、普段抑えている殺戮衝動を解放し、心拍数を上げることで、自身の速さと反応速度を爆発的に上昇させる。尤も、速さと反応速度が上がっているのは向こうも同じ。だから、瞬間的に振り下ろされた爪を――スッと飛び込んだ碎輝の影に溶け込んでやり過ごす。
「な!?」
またもリックの姿が見えなくなったことに碎輝は狼狽える。毛の一本一本すら見落とさないほどの緊張と集中力など、そう長続きするものではない。速度が上がっている状態であればなおのこと。暗殺を得意とするリックが一旦死角に入ってしまえば、彼の目を掻い潜ることなど容易い。どこに行ったのか、と血眼になって探している碎輝を嘲笑うかのように、リックは彼の死角から死角へと駆け回り、撹乱する。
「くそ、ちょこまかと……!」
苛立つ碎輝がめくらめっぽうに放つ雷や爪、尾による攻撃は、彼を捉えるには至らない。昂る殺意(想い)にリックは思わず舌なめずりする。これは狩りだ。自身は獲物を狩る獣、獲物は黄金の竜。
「逃がさないわ……」
妖しく光る彼の瞳が、リックを探して右往左往するあまりに無防備になっている碎輝の背中を捉える。
「アハハハッ!」
狂ったような笑い声を上げ、リックは肉切り包丁を手にかの背中に躍りかかる。鮮血が、周囲に飛び散った。
成功
🔵🔵🔴
亞東・霧亥
じゃあ、死合開始だな。
とりあえず、引き抜いた野太刀で腹を2、3回突き刺す。
ふむ、まだ瀕死じゃないのか。
仮初の体に瀕死があるのか解らないが、そうなったら勝手に顕現するだろう。
小細工無しの真正面から碎輝へ目掛けて駆け出す。
電流など御構い無し、むしろ好都合だと言わんばかりに突っ切る。
碎輝に突き立てる『捨て身の一撃』は俺がその場にしがみつくための布石。
【UC】
本命はこちら。
記憶に残る王の幻影とは俺と共に器物に宿る、赤髪隻眼の竜殺しにして七代皇帝。
竜の鱗など紙に等しい。
「俺より絶対強い(断言)ので、多分一振りで逝けるぞ。頑張れ竜神。」
「じゃあ、死合開始だな」
スラリと野太刀を引き抜く亞東・霧亥(峻刻・f05789)を、碎輝はああ、と警戒の目で見ていた。リックとは違う意味で。次は何が出てくるのか……油断なく睨みつける碎輝の前で、霧亥はためらいなく引き抜いた野太刀を……己の腹に突き立てた。
「な!?」
何やってんだと慌てふためく碎輝に構わず、霧亥はさらに2度3度と自身の腹を突き刺す。ごぼっと赤黒い血を吐き出し、引き抜いた刃に臓物が付着しようとも手を緩めない彼に、碎輝は慌てて駆け寄った。
「何バカなことやってんだ! 死ぬぞ!! さっき恥ずかしい写真撮ったことなら許すから!!」
太刀を握る霧亥の手を掴み、必死に呼びかける碎輝を尻目に、霧亥は自身の傷口に目をやった。
「……ふむ、まだ瀕死じゃないのか」
「何言って、」
戸惑う彼の手を払い、よろよろと立ち上がった霧亥は、切っ先を今度は碎輝に向ける。
「俺はヤドリガミ、これぐらいじゃ死なない。それより今は死合中だ、全力でかかってこい」
そう、霧亥は幾星霜を経た懐中時計のヤドリガミ、この身体は仮初のもの。いくら肉体が傷付こうと、本体の器物が無事である限り、いずれ再生する。霧亥の言葉を聞いた碎輝は、まだ何か言いたげなのをグッとこらえるように頷いた。
「分かった、だが……死ぬなよ!」
そう言い残し、駆け出した碎輝はその身を黄金竜へと変じさせ、宙に飛び立つ。半ば身体を引きずるように、しかしその目に闘志と執念をみなぎらせて、霧亥もまたその後を追った。空より雨のように成長する電流が降り注ぐ。それは深手を負っている彼を容赦なく苛んだ。まばゆい電流に目がくらみ、打たれた身体に激痛が走る。霞む視界に思わず膝を着きそうになる、だが――むしろ好都合。密かに口角を上げ、霧亥は黄金竜へとひた走る。そして、大岩に野太刀を突き立て、よじ登ると……力を振り絞り、空翔ける碎輝に向かって跳躍した。捨て身の一撃、跳躍の勢いも加わったそれは、確かに竜の足を貫く。激烈な痛みに思わず苦悶の声を上げ、咄嗟に彼を蹴る碎輝。大きくバランスを崩したものの、一際強く翼をはためかせて宙に踏みとどまると、訝しげに霧亥の方を見た。確かに今の一撃は効いた、だが、自傷して深手を負った挙句、成長する電流の雨を突っ切ってきた彼が、その身を犠牲にして放つ一撃にしては、あまりに釣り合いがとれていない。まだ何かあるのか――果たして、蹴りをものともせず、野太刀で突き刺したその足にしがみついた霧亥は、瀕死の体でニヤリと笑ってみせた。
「本命は、こっちだ」
瞬間、そこに赤髪隻眼の威風堂々たる男性が現れる。これは、霧亥と共に器物に宿る、記憶に遺る王の幻影。竜殺しにして七代皇帝。ユーベルコード、【夢幻の剣聖(ムゲンノケンセイ)】。高い戦闘力を持つ彼を召喚するには、戦闘で瀕死になることが条件だった。碎輝は息を呑む。開幕早々、自分で自分の腹を突き刺したりしていたのはこのためだったのか――気付いた時にはもう遅い。かの竜殺しは雄叫びを上げ、剣を振り上げる。
「俺より絶対強いから、多分一振りで逝けるぞ。頑張れ竜神」
断言する霧亥。死ぬなよ、の言葉をそのままお返しするように。振り抜かれた剣が、天翔ける竜を地に叩き落した。
成功
🔵🔵🔴
豊水・晶
さて、これからに向けての鍛錬とするのですから、今まであまりやってこなかったことをしてみましょうか。(三種の水型を弓形態へ。水の神気で弦を作り水晶で形成した矢をつがえる。)
とある弓使いの英雄譚を元に思いついた新たなユーベルコード。一条の流星のようにどこまでもどこまでも飛び続け、ついには戦争を終結へと導いた伝説の一射。
龍が天を駆ける様に、その軌跡は長く尾を引き宙に線を描き出す。龍の速さに追いつけるのは龍だけです。さあ、いくらでも逃げてください。必ず咬みついてあげるので。
UC発動。
竜脈使いで力を汲み上げ、見切りで逃げ道を塞いでいきます。そして、軌跡を足場に肉薄し双剣形態で追撃。
アドリブ、絡み◎
「さて、これからに向けての鍛錬とするのですから、今まであまりやってこなかったことをしてみましょうか」
豊水・晶(流れ揺蕩う水晶・f31057)は己の武器を改良して成した、三種の水型を弓形態へと変化させる。三種の水型とは水の三形態のこと。水の如く、自在に形を変えるそれに、水の神気で作った弦をピンと張り、水晶で形成した矢をつがえる。透き通る美しき弓矢を凛と構え、晶は言った。
「龍の速さに追いつけるのは龍だけです。さあ、いくらでも逃げてください。必ず咬みついてあげるので」
「なるほど、追いかけっこか! なら自信あるぜ!」
ニヤリと笑い、碎輝は雷を纏う。黄金竜へと変じた彼はバサリと翼をはためかせ、得意げに吠えた。
「俺は無限に成長する! 俺の速度もな! さあ、俺のスピードについてこられるか!?」
瞬間、碎輝はまるで弾丸の如く空へと飛び出した。ユーベルコードの力で爆発的に増大したスピード、その上無限に成長を続ける黄金竜は、時間経過と共にますますその速度を増す。常人であればまず目で捉えることも不可能だろう。それこそ――同じ竜神でもなければ。既に空の彼方に遠く煌いているだけに見える彼の姿に向けて、晶は弓を引き絞った。これだけ離れていても、攻撃を可能とする奇跡がこちらにはある。ユーベルコード、【彗閃 天翔龍軌跡(スイセン・アマカケルリュウノキセキ)】。晶がとある弓使いの英雄譚を元に編み出した、新たな技だ。伝説では、その矢は一条の流星のようにどこまでもどこまでも飛び続け、ついには戦争を終結へと導いたという。その伝説をなぞるかのように。引き絞った弓から、秀麗なる一射が放たれる。龍が天を駆ける様に、その軌跡は長く尾を引き宙に線を描き出す。その速度、実にマッハ5.0以上。音速を遥かに超える、極超音速流。無限に成長するとはいえ、未だ碎輝はその領域までには至っていない(いずれその域にも達するかもしれないが、そこまで成長したらたぶんカクリヨは滅ぶだろう)。ゆえに、放たれた矢は彼のスピードも、これまでに開いた距離もものともせず、瞬時に黄金竜に突き刺さり、彼までの光の道を作り出す。驚愕と痛みに思わず動きを止める碎輝に、晶は竜脈使いで力を汲み上げ、その軌跡を辿って近づいた。
「逃がしませんよ」
「クッ……」
さすがにマッハ5.0には届かない、だがスピードと反応速度は上昇している。一瞬の逡巡の後、碎輝は電光石火で方向を変え――。
「無駄です」
先んじて行き先に水晶の矢を射る。彼の動きは見切っている、彼が方向転換するたびに矢を放ち、逃げ道を奪う。右往左往する黄金竜。晶は好機と、煌く光の筋を蹴った。
「言ったでしょう、必ず咬みついてあげると」
弓の形を成していた三種の水型が解けて二つに分かれ、晶の両手に収まる。それが形作るのは双剣。二つの水流のような双剣をクロスさせ、晶は碎輝に続けざまに斬りかかった。
大成功
🔵🔵🔵
馬県・義透
引き続き『侵す者』にて
さて、戦いの時間であるの。碎輝とは、一年ぶりになるか…!
わしの武器は黒燭炎。故に、わしの間合いは槍となるが…ああ、炎よ燃えたぎれ。
そうして、わしに集中させよう。絶縁結界が保つ範囲で、になるが。
侵掠すること火のごとく、知りがたきこと陰のごとく、動くこと雷霆のごとし。わしと陰海月、それに霹靂ではこうなる。
ということで、いきなりの指定UCである。
まあ此度の場合…知りがたいというより、予想しろなのだがな…。ま、戦いであるし、二匹の友情の強さであるよ。
※
陰海月は、いきなり前に出てきて光ります。ピカーッ!ぷきゅーっ!
霹靂、友は今日も元気に光っていると悟りの境地。
「さて、戦いの時間であるの。碎輝とは、一年ぶりになるか……!」
馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)こと『侵す者』馬舘・景雅は黒燭炎を手に、碎輝の前に立つ。その黒き槍を一瞥し、碎輝は呟いた。
「その槍……なんか見覚えあるな」
「気付いたか。そう、これはあの時、お主が一撃で砕いた、あの槍よ」
黒燭炎を握る手に力を込める。槍が纏う炎が燃え上がる。一度は砕け散ったかの槍は、成長電流の影響を受け、成長する炎を纏う槍として復活した。碎輝とは浅からぬ因縁を持つ武器だ。己の電流同様、眺めている間にも勢いを増す炎を見て何か察したのか。碎輝はニヤリと口角を上げた。
「成長する炎と槍か……面白いじゃないか! 俺の電流とその炎と……どっちが強いか、勝負と行こうぜ!」
黄金竜へと変じ、空へと舞い上がる碎輝。間髪入れず、飛翔する彼から幾つもの電流が放たれる。しかし、景雅の絶縁結界はそれを通さない。降り注ぐ電流を結界で凌ぎつつ、景雅は静かに呟いた。
「……ああ、炎よ燃えたぎれ」
その言葉に呼応するように。炎はますます熱く激しく燃え盛り、碎輝の視線を釘付けにする。尤も、景雅の武器は槍だ。いくら長尺武器とはいえ、飛翔する相手には届かない。その上、次第に強さを増す電流に、さしもの絶縁結界もピシピシと悲鳴を上げ始める。
「おらおら、どうした!? お前の力は、そんなもんじゃないはずだろ!」
さらに苛烈に電流を放ち、景雅を攻め立てる碎輝。だが……狙い通りだ。景雅は厳かに口を開く。
「……今だ、行け」
「ぷきゅーっ!」
勢いよくその影から巨大なミズクラゲが飛び出す。景雅と炎に気を取られていた碎輝が驚く暇さえ与えず、陰海月はピカーッ! と極彩色の光を放った。その色、実に1680万色。鮮やかすぎる光に、碎輝の目は眩む。
「うおっ眩し……!」
思わず目を瞑り、腕をかざす碎輝。その隙に霹靂はクエ、と一声鳴くが早いか、地を蹴り飛び立った。突然の光にも、友は今日も元気に光っていると悟りの境地。動じることなく空を翔け、黄金竜に肉薄する。空はヒポグリフの領域。その名の通り、霹靂は稲妻の如く素早い爪の一撃を放つ! 避けられようはずもない。真正面から霹靂の爪をくらった碎輝は落下し、地面に激突する。弾みで人型に戻った彼に、景雅は告げた。
「侵掠すること火のごとく、知りがたきこと陰のごとく、動くこと雷霆のごとし。わしと陰海月、それに霹靂ではこうなる。……まあ此度の場合……知りがたいというより、予想しろなのだがな……」
「いやこんなの予想できねーよ!」
地に這いつくばったまま呻く碎輝。景雅は肩をすくめた。
「ま、戦いであるし、二匹の友情の強さであるよ」
そう言いつつ、景雅は陰海月と霹靂を見やる。二匹はお互いの健闘を讃えるように、クエ、ぷきゅ、と翼と触手を合わせていた。この技はどうも仲良し二人で考え、密かに練習したようだ。友情パワーの勝利である。まあ、『どうしてこうなった』というのも、四悪霊の総意なのだが。
成功
🔵🔵🔴
ウィル・グラマン
●SPD
にひひ、いいぜ
オレだって、あん時夕陽の中で殴り合った時よりも強くなってんだ
お互い切磋琢磨して強くなろうぜ、碎輝!
狩りゲーのドラゴンハンター、略してドラハンのセーブデータをミニコンポケットから『サイバー・インストレーション』でロード展開
電脳空間を展開すりゃ、【電撃耐性】の装備で身を固めた如何にもファンタジーな魔法使いに早変わりだ
ドラハンだと風属性が雷属性に威力が倍増すっけど、そこまでは再現できねぇな
だけど、再現した電脳空間だから郷に入らば郷に従えじゃね?
杖から真空の刃を放って、黄金竜の姿になった碎輝の体に纏った雷を払って元の姿に戻してやるよ
戻ったらゲージMAXの大魔法ソニックブラストだ!
「にひひ、いいぜ。オレだって、あん時夕陽の中で殴り合った時よりも強くなってんだ。お互い切磋琢磨して強くなろうぜ、碎輝!」
笑うウィル・グラマン(電脳モンスターテイマー・f30811)に、碎輝も「ああ!」と強く拳を握って頷く。気持ちいい男の友情だ。
「そんじゃ、行くか」
ウィルはミニコンポケットから狩りゲーのドラゴンハンター、略してドラハンのセーブデータを【サイバー・インストレーション】でロードし、電脳空間を展開する。するとそこには、如何にもファンタジーな魔法使いな姿のウィルが立っていた。
「おっ変身か! いいな! じゃあ俺も!」
碎輝もまたノリノリで雷を纏う。強い閃光が迸った次の瞬間、如何にもゲームに出てきそうな金色の竜が咆哮を上げていた。翼を一振りし、碎輝は言う。
「さあ、俺のスピードについてこられるか!?」
瞬時に移動した碎輝から、彼の纏う雷の一撃が放たれる。ヒュン、ヒュンと目まぐるしく位置を変えながら、碎輝はウィルの周りから雷を放ち続けた。しかし、ウィルとてただ遊びのために魔法使い姿になったのではない。その実、この装備は全て電撃耐性のもの。それで雷を耐えつつ、ウィルはひとりごちた。
「ドラハンだと風属性が雷属性に威力が倍増すっけど、そこまでは再現できねぇな」
けど、と杖を握り、前を見据える。
「再現した電脳空間だから郷に入らば郷に従えじゃね?」
そう、これはドラゴンハンターの世界を再現した電脳空間。今のウィルはドラゴンを狩るハンター。増大したスピードで動き回る碎輝を、集中力を駆使して目で追い、どうにか大まかな輪郭を捉える。目に映る黄金竜の姿は速すぎておぼろげだが、当たりさえすればこっちのもの。杖を構え、ウィルは言った。
「さあ、一狩りいくとしようか!」
構えた杖から、真空の刃が放たれる。いくら速度が上がっていようと、真空という見えざる刃には反応できない。知らぬ間に鱗を斬られ、驚きに足を止める碎輝に、さらに真空の刃が襲いかかる。その身に纏う雷を払うように。見えざる刃に斬り裂かれ、竜の形を失う彼に、ウィルは高々と杖を掲げた。
「これで、トドメだ!」
ゲージMAXの大魔法、ソニックブラストが炸裂し、人型に戻った碎輝に膝をつかせる。ゲーム同様、ウィルのドラゴン狩りは上手くいったようだった。
成功
🔵🔵🔴
剣未・エト
「ぐっ、く…」
高速飛翔し雷撃を放つ竜に、翼持たないエトは苦戦する、圧倒的不利
「けれど、あの人達は…翼持たずとも宇宙(ソラ)すら駆けてたんだ!」
こちらに向かってくるタイミングに合わせて地縛霊の鎖を飛ばす、どこでもいい、どこかに引っかかれば後はもう絶対に離れない!
「異世界の竜の神よ、お見せしよう、これなるは詠唱銀、僕達の世界の、神秘だっ!」
持ち込んだ全ての瓶を天に放り投げる雷雲を斬り裂いて銀の流星雨がエトの手に振り剣型詠唱兵器へ
「詠唱銀は意思に反応して神秘を呼び起こす、つまり、僕の意思(ちから)が強ければ、君の黄金の鱗だって貫けるはずだ!」
振り落とそうとする起動を利用して、鎖を伸び縮みさせて遠心力で接近して斬りつける
例え折れたとて、嵐の王の力で何度でも、砕けた詠唱銀を束ねて剣にして挑む。
決して諦めるものか
『彼ら』は、惑星(ほし)を踏み潰す程の相手にすら諦めず立ち向かい、勝利したんだから
『彼ら』の頂にはこの剣が未だ至らずとも、星(エトワール)は輝くことを諦めない
(一撃通るまでやめない)
「ぐっ、く……」
空より降り注ぐ雷撃に、剣未・エト(黄金に至らんと輝く星・f37134)は思わず膝を着きそうになる。見上げる空には、黄金の竜が神速で飛び回っていた。まるで天を裂く稲妻のように。高速で飛翔する相手に対し、こちらは翼を持たない。おまけにかの竜神は時間をかければかけるほど成長する。これまでの戦いで彼とて疲弊しているはずだが、飛べない分こちらが圧倒的不利だ。けれど、とエトは掌を強く握りしめた。
「あの人達は……翼持たずとも宇宙(ソラ)すら駆けてたんだ!」
先ほど碎輝に語ったことを思い出す。銀誓館学園の能力者達は、地を駆け海を駆け天を駆け戦い、ついには宇宙にすら辿り着いた。当時来訪者ですら翼を持たなかったにも関わらず。なら自分にだってできるはず。そうでなければ、憧れに追いつくことなど到底できはしない。エトの瞳に不屈の光が宿る。その光は、眩い電流を放ちながらこちらに向かってくる碎輝を真っ直ぐに捉える。速さを活かし、至近距離から電流を浴びせて離脱しようとする彼に向かって、エトは地縛霊の鎖を飛ばした。鎖は本来、地縛霊をその名の通り地に縛り付けるもの。しかし、新世代のゴーストたるエトはもはや鎖に縛られることはない。その鎖は、むしろ空に向かうための道具にもなり得る。あの空翔ける竜のどこでもいい、どこかに引っ掛かってくれれば……エトの願いと狙い通り、それは彼の足の爪に引っ掛かった。電流をくらわせ、再び上昇する碎輝に引きずられるように、エトもまた空に舞い上がる。気付いた碎輝が足を振り、落とそうとするが無駄だ。鎖はエトに直接繋がっている、後はもう絶対に離れない! エトは腰のポーチから取り出した小瓶を握った。
「異世界の竜の神よ、お見せしよう、これなるは詠唱銀、僕達の世界の、神秘だっ!」
持ち込んだ全ての瓶を天に放り投げる。碎輝が咄嗟に放った電流に割れた瓶から、銀に煌めく中身が零れる。それは雷雲を斬り裂き、銀の流星雨となってエトの手に降り注いだ。エトの手の中で流星雨は細身の長剣の形を成し、星の如く輝く。驚きに目を見開く碎輝に向け、エトは切っ先を突きつけた。
「詠唱銀は意思に反応して神秘を呼び起こす、つまり、僕の意思(ちから)が強ければ、君の黄金の鱗だって貫けるはずだ!」
「意思に反応して神秘を呼び起こす……か。面白い! 見せてみろ、お前の意思の強さを!」
驚いたのは一瞬、碎輝は口角を上げ、こうしている間にも『成長』したスピードでさらに上空へと舞い上がる。その勢いでエトを振り落とそうとするも、逆にその動きすら利用し、鎖を伸び縮みさせ、遠心力でかの黄金竜へと接近する。
「はあぁぁ!」
柄を握る手に力を込め、黄金の鱗に向かって斬りつけた剣は……弾かれ、折れて銀色の粒子となって砕け散った。
「そんな!?」
折れた剣に息を呑むエト。碎輝は勝ち誇ったように笑う。
「残念だったな! 確かに面白い力だったが、俺の成長の方が上回ったみたいだ。諦めて――」
「……諦めない!」
エトはぎゅっと、折れた剣の柄を握りしめる。すると折れた部分が光り輝き、砕け散った銀の粒子が集まって、再び剣を形作った。今度は碎輝が息を吞む番だ、呆然と再生した剣を眺めている。
「……マジかよ」
これが神秘の、詠唱銀の力だと、言わずとも実感しただろう。エトはストームブリンガー、嵐の王。シルバーレインそのものを支配する者。この力があれば、何度だって詠唱銀を束にして挑めるはず。エトは再度細身の長剣を振るう、たとえ硬い鱗に負けて折れても、彼の鋭い爪に刃を折られても。何度も、何度でも。小さな体はその度に傷つき、疲弊してはあはあと息を上げる。それでも、その瞳と剣は、決して光を失うことはない。幾度となく向かってくる彼女に、碎輝も戸惑いの表情を見せる。
「お、おい、ガッツは認めるが、もうボロボロじゃないか……いいかげん諦めた方が身のためだぜ?」
「いいや、決して諦めるものか!」
荒い息を吐きつつも、輝く長剣を手に、エトは黄金竜を見据える。『彼ら』は、惑星(ほし)を踏み潰す程の相手にすら諦めず立ち向かい、勝利したんだから。こんなところで立ち止まるわけにはいかない。『彼ら』の頂にはこの剣が未だ至らずとも、星(エトワール)は輝くことを諦めない! エトは宙を蹴り、鎖の反動を利用して碎輝に肉薄する。彼は無限に成長する者、しかし成長するのは碎輝だけではない。エトとて、ただ闇雲に剣を振るっていたわけではない。彼女が打ち合いを繰り返す中で見出だした、腹部の鱗と鱗の隙間。少しでも柔い部分に向かってエトは切っ先を突き立てる。碎輝は全身を硬直させ、咆哮を上げた。その身から力が抜け、地に落下していく。もはや竜の姿をとどめることはできない。落ちていく影は次第に縮み、人の形に――いや、もっと幼い姿へと変化した。無論、エトの鎖を引っかけていた部分も消失し、彼女もまた地に向かって墜ちてゆく。しかし地面に叩きつけられる前に、エトは鎖を伸ばして操り、先んじて出会った時に彼が腰かけていた大岩へと突き立てる。そして手を伸ばし、落ちていく碎輝の手を掴んだ。鎖をうまく縮ませれば、もう地に激突することはない。空中で体勢を立て直し、小学生形態となった碎輝と共に着地する。
「大丈夫?」
息を弾ませながら尋ねるエトに、ああ、と首肯して、幼い姿の彼は笑った。
「やっぱり、すごいな! 詠唱銀……ってヤツだけじゃない、それを操る力も、何より――決して諦めないエトの意思の強さも」
完敗だ、と碎輝はエトに向かって拳を突き出す。
「諦めないお前ならいつかきっと辿り着けるぜ、『彼ら』の頂に」
「そうかな、遠すぎてまだ……実感はわかないけど、でも」
その日まで輝くことをやめない、とエトも握った拳を軽く合わせたのだった。
大成功
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