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レプリカント・エスケープ

#サイバーザナドゥ #アミダインダストリー

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#サイバーザナドゥ
#アミダインダストリー


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「はぁっ、はぁっ、はぁっ……」

 サイバーシティのストリートには、今日も骸の海に汚染された雨が降り注ぐ。
 スクラップのような人間が散らばる通りを、派手なネオンやAR広告が見下している。
 そんなありふれた風景の中を駆けていく、ひとりの少女がいた。

「はぁっ……けほっ、けほっ!」

 人形のように細い手足に、くすみすらない白い肌。
 精巧なる黄金比で整った顔立ちには、苦しげな表情が浮かび、荒い息を吐く。
 およそストリートの住人には似つかわしくない、脆くて儚げな少女だった。

『どこへ逃げる気だ、実験体L913』

 走る少女の背後から聞こえてくるのは、スピーカーで拡大された誰かの冷徹な声。
 ストリート中に響き渡るようなそれを耳にした瞬間、少女の肩がびくりと震えた。

『貴様は我がアミダインダストリーの所有物だ。一切の自由と人権は認められていない』

 この世界を支配する超巨大企業の一角。メガコーポ・アミダインダストリー。
 その恐るべき追跡部隊の魔の手から、少女は必死に逃げている最中であった。

 慣れない肉体活動で筋肉も呼吸器も悲鳴を上げ、人工心肺が過剰駆動を訴える。
 消毒された無菌室の中に比べれば、"外"の空気はあまりにも汚れすぎている。
 "走る"という日常的行為すら、研究所にいた頃はほとんど実行した事がなかった。
 少女の優秀な頭脳は、この逃走の成功率が天文学的確率であると導き出している。

『今すぐ投降し、我が社の管理下に戻れ』
「いや、ですっ……!」

 それでも、少女は立ち止まらなかった。
 ダウンロードした地形情報から逃走ルートを選択し、身を隠せる場所を探す。
 強大なる企業の力に逆らってでも、彼女には捕まる訳にはいかない理由があった。

 ひとつのメガコーポを敵に回しての、勝ち目のない孤独な逃走劇。
 その終着点は果たして絶望か、それとも希望はあるのか――。


「事件発生です。リムは猟兵に出撃を要請します」
 グリモアベースに招かれた猟兵達の前で、グリモア猟兵のリミティア・スカイクラッド(勿忘草の魔女・f08099)は淡々とした口調で語りだした。
「サイバーザナドゥのメガコーポに所属するオブリビオンが、ストリートで騒ぎを起こしているようです」
 この世界を実効支配する巨大企業群(メガコーポ)は、骸の海の汚染によって誕生したオブリビオンを改造生物として使役している。企業の尖兵として様々な悪事に関わる彼らを、猟兵として見過ごすことはできない。

「相手は『アミダインダストリー』社の特殊営業課鎮圧係、通称『アミダ・アーミーズ』です。彼らの目的はアミダ社の研究施設から脱走した、とある実験体の回収のようです」
 さらなる利潤追求や企業間戦争に勝利するため、アミダ社も他のメガコーポの例に漏れず違法な研究・開発を秘密裏に行っている。その過程で誕生した、社外秘の塊とも言える実験体――それが研究所から逃げ出し、ストリートに潜伏しているらしい。
「その実験体とは『L913』と呼称されている、レプリカントの少女です」
 研究所の中で生まれ、外の世界を知らず、名前でなく番号で管理されるアンドロイド。
 それがどうして突如研究所から脱走したのか、アミダインダストリーも把握していないようだ。何者かの手引きがあったのか、それとも本人の意思なのか。

「何にせよ、このまま事態を放置してはおけません。アミダ社は実験体回収のために相当強引な手を使っているようで、ストリートの一般市民にも被害が出ています」
 警察や政府すらも傘下におさめたメガコーポの横暴を止められる法律はなく、わずかに心ある一部の警官が抵抗しているようだが、オブリビオンの前ではあまりに非力である。
「事態を収集するためには、まずは逃走中の実験体をこちらで確保する必要があります」
 レプリカントの少女はうまくアミダ社の追跡を躱しているようだが、研究所で純粋培養されて育った彼女はストリートではどうしても浮いた存在になる。手がかりを集めていけば、必ず発見することができるだろう。

「あちらも警戒していると思いますので、なるべく手荒なことは避けて、敵ではないことを伝えてください」
 たとえメガコーポの陰謀により生み出された存在だとしても、実験体自身に罪はない。
 ストリートの平和を守ると共に、少女の身の安全も守ってほしいとリミティアは語る。
「アミダ社からの追っ手もいずれ実験体の元にたどり着くでしょう。彼らもまたレプリカントであり、有能な軍人の情報を元に製造された戦闘ユニットです」
 彼らは基本的にスリーマンセルで行動し、指揮官型、防御型、強襲型による三位一体の連携で戦場を制圧する。アミダインダストリーの高度な技術力を象徴する、有能なる企業の手駒である。

「優れた練度を誇る『アミダ・アーミーズ』ですが、皆様の実力なら勝てない相手ではありません。ストリートにこれ以上の被害が及ぶ前に、敵を一掃してください」
 アミダインダストリーの私設軍を撃退できれば、今回の事件はひとまず解決となる。
 ただし、逃げてきたレプリカントの少女は、その後どうするのかという問題は残る。

「もし良ければ彼女から脱走の理由を聞いて、必要であれば力になってあげてください」
 オブリビオンの打倒に直接関わることではないが、こうしたケアも猟兵の務めである。
 話を終えたリミティアは手のひらにグリモアを浮かべ、サイバーザナドゥへ道を開く。
「転送準備完了です。リムは武運を祈っています」



 こんにちは、戌です。
 今回の依頼はサイバーザナドゥにて、メガコーポの研究所から脱走した実験体を保護し、追っ手のオブリビオンを撃退する依頼となります。

 1章はサイバーシティのストリートを逃走中の実験体を捜索するシーンです。
 対象はアミダインダストリー社が開発したレプリカントの少女。外見年齢は十代半ばで、肉体的には貧弱ですが優れた頭脳を活かしてアミダ社の追跡を躱しています。
 アミダ社は逃げた実験体を確保するためならストリートがどうなろうとお構いなしなので、このままでは被害が拡大します。早急に敵より先に少女を発見・確保してください。

 2章は実験体を追ってきた『アミダ・アーミーズ』との集団戦です。
 高い練度と連携を誇る、メガコーポの私設戦闘部隊です。行動目的は任務が最優先であり、邪魔をする者には容赦しません。こちらも手加減の必要はないでしょう。

 無事に敵を撃退できれば、3章は実験体の少女にまつわる、ストリートでの日常シーンになります。
 詳細は実際にこの章に到達した後、断章で説明します。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 冒険 『逃げた実験体を追え』

POW   :    ストリートをしらみ潰しで聞き込んだりしながら探す。

SPD   :    パフォーマンスなどで誘き出す。

WIZ   :    監視カメラなどの情報を洗い出し、居場所を見つける。

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ニクロム・チタノ
レプリカントの実験体・・・なんだか他人事のようには思えないね
そして追いかけているのは非道な圧政者ここで動かなくて反抗者は名乗れない!
まずはそのレプリカントの少女を探して保護しないと
姉妹達、同胞を助けるために力を貸して!
向こうからサイレンの音やスピーカーで叫んでいる声が聞こえてる、つまりその反対側に彼女は逃げてるってことだね
みんなでこの辺りをしらみ潰しに探すんだ
見つけたらすぐにボクに知らせて
ボク達と同じ目にあって苦しんでいる同胞をなんとしても助けるよ!
全員捜索開始、チタノどうか彼女のもとに導いて



「レプリカントの実験体……なんだか他人事のようには思えないね」
 雑然としたサイバーストリートに降り立ち、辺りを見回しながらぽつりと呟いたのは、ニクロム・チタノ(反抗者・f32208)。彼女はとある研究所にて実験体にされていた過去を持ち、異世界の事とはいえ今回の事件を放ってはおけなかったようだ。
「そして追いかけているのは非道な圧政者。ここで動かなくて反抗者は名乗れない!」
 今の彼女は守護竜チタノヤタテの加護を受け、圧政を敷く者に立ち向かう反抗の使徒。
 胸の中で燃え盛る使命感に衝き動かされるままに、反抗者は事件解決に乗り出した。

「まずはそのレプリカントの少女を探して保護しないと。姉妹達、同胞を助けるために力を貸して!」
 ニクロムが声を上げると、左頬に数字の刻印された【哀れな姉妹達】が何人も現れる。
 彼女らはニクロムと同じ研究の実験体、通称「2966ナンバーズ」。この広いストリートから人探しをするなら、頭数は1人でも多いほうが良いだろう。
「向こうからサイレンの音やスピーカーで叫んでいる声が聞こえてる」
 さらに耳を澄ませるまでもなく、本日のストリートは騒がしい。どうやらメガコーポの追っ手は秘密裏に行動するつもりは無いようだ。あるいは騒ぎを起こしても揉み消せると思っているのか。何にせよ此方にとっては好都合だった。

「つまりその反対側に彼女は逃げてるってことだね」
 実験体を追うメガコーポの足取りを追うことで、実験体の動きを予測する。ニクロムの判断は的確だった。もともと感情的で慎重さに欠ける所があったが、反抗者として様々な経験を積むことで、今の彼女は考えて行動することもできるようになっている。
「みんなでこの辺りをしらみ潰しに探すんだ。全員捜索開始!」
「「わかったわ(よ)」」
 ニクロムの指示のもと、2966ナンバーズは一斉に行動を開始する。実験体という境遇を共有する彼女らも、企業に追われる少女を助けたい思いは同じだろう。みな真剣な表情でストリートに散っていく。

「見つけたらすぐにボクに知らせて」
 ニクロムも姉妹達とは別にストリートを奔走し、手がかりになりそうな情報を集める。
 メインストリートだけでなく無数にある裏道や路地裏も徹底的に調べる。とにかく体力を惜しまずに足を使う捜索方法だ。
「ボク達と同じ目にあって苦しんでいる同胞をなんとしても助けるよ!」
「「うん!」」
 懸命な捜索の甲斐あって、それらしい人物を見かけたという情報が少しずつ彼女らの元に集まってくる。何やら必死な様子でどこかに走っていくレプリカントの女の子がいた、と――間違いなく件の実験体のことだろう。

「チタノどうか彼女のもとに導いて」
 守護竜への祈りを囁きながら、ニクロムは情報にあった方角へ姉妹達とともに駆ける。
 あとは追っ手よりも先に彼女を保護できるかどうかだ。間に合って――いや、間に合わせるという強い覚悟でストリートを駆ける少女の身体から、蒼い火の粉が舞った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

撒菱・しのぶ
逃亡する儚げレプリカント美少女、迫る追手の撃退、これは…撮れ高の予感!でござる!

情報収集はニンジャの本領…ユーベルコードを使って10人くらいに分身して一気に情報を集めるでござる。
さあ拙者たち、散らばってストリートの人らに聞き込みでござる!
それと聞いた人にはついでに配信チャンネルのアドレスも渡してくるでござる!



「逃亡する儚げレプリカント美少女、迫る追手の撃退、これは……」
 今回の事件のあらましを聞いた撒菱・しのぶ(サイバーニンジャ系ストリーマー・f36565)は、興奮気味にぶるりと身を震わせる。憐れな実験体の境遇やメガコーポの悪行に憤っているようにも見えるが、そうではない。
「撮れ高の予感! でござる!」
 彼女の職業はストリーマー。元々は企業の宣伝用AIでありながら誰にも制御できず、挙句にバーチャルキャラクターとして独立を果たしたフリーダムなヤツである。彼女の優先事項は常に「撮れ高」であり、再生数を稼げそうなホットなネタは決して見逃さない。

「情報収集はニンジャの本領でござる」
 さっそく配信用ドローンを連れてストリートにやって来たしのぶは、ニンジャ系ストリーマーらしく【カゲブンシン・フェノメノン】を発動。実体を有する自分の分身を何人も召喚する。
「今回は10人くらいにしておくでござる」
 あまり増やしすぎても事故った時のダメージが怖いので、ほどほどの人数に留めつつ。
 本人と瓜二つな分身達は、みな配信用のホロドレスに身を包んで、命令を待っている。

「さあ拙者たち、散らばってストリートの人らに聞き込みでござる!」
「「承知!」」
 しのぶの指示で10人の分身はさっと散開し、おのおのが一気に情報収集を開始する。
 彼女らのスペックは1人1人がオリジナルと同等。ニンジャらしい俊敏さでストリートを駆け、道行く人々と丁寧にアイサツを交わし、聞き込みを行っていく。
「失礼。これこれこうした御仁を見かけたことはござらんか?」
「うん? そういえばさっきすれ違ったような……」
 世俗に馴染んでない実験体の少女の風貌は、やはりストリートにおいては目立つのか。
 それらしい娘を見かけたという話はすぐに集まり、情報を統合すれば彼女のおおまかな移動ルートも分かってくる。

「闇雲に追っ手から逃げているというよりは、目的地があるようなルートでござるな」
 集まった情報を分析したしのぶは、ふむと首をかしげる。かの実験体がメガコーポからなぜ逃げ出したのか、その理由は今のところ不明だ。研究所の外に出たことすらなかった彼女が、一体どこを目指しているというのか。
「まあ、そのへんは後回しにしておくでござる!」
 今はとにかく目標を保護するほうが先決。目的地があるなら経路も絞り込めて見つけやすくなるというものだ。ストリーマーの頭脳と勘をフル回転させる彼女の表情は、とても楽しそうな笑顔だった。

「それと聞いた人にはついでに配信チャンネルのアドレスも渡してくるでござる!」
「「勿論でござる!」」
 情報収集の傍ら、しのぶは自分のチャンネルの宣伝も忘れない。企業を辞めてから開設した「ニンニン☆チャンネル」のフォロワー数はまだ凍結された過去のチャンネルには届かず。今は1人でも多くの人の目にとまりたい時期なのだ。
「ここで撮れ高を稼いで一発バズるでござる!」
 そんな野望を胸に秘めつつ、サイバーニンジャ系ストリーマーは今日も鋭意活動中。
 分身達と共に都市を飛び回る姿は、ストリートの注目をそれなりに集めていたとか。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カナ・スズリ
※アドリブ歓迎、共闘可

行動
街中で書道パフォーマンスを行い
衆目を集めてその雑踏の中にレプリカントの少女を探す
(技能「達筆」を使用)

・UC演出
街中の目立つ看板やビルの壁面を選んで手のひらを使って
光る文字のルーンカタカナ『ユウジョウ!』を書き
そのパフォーマンスで人を集め少女を見つけてから
自身の身の上を話してアンタの力に成りたいと伝える
(ユウジョウ:友好的な接触に補正のかかるルーンカタカナ)

・心情
アタシにとって他人事とは思えない事件だね
アタシがかつてセンセイに助けてもらったように
この子の力に成りたい……
それが今のアタシがやりたいことなんだ!



「アタシにとって他人事とは思えない事件だね」
 かつてメガコーポ子飼いのニンジャだったカナ・スズリ(カリグラフィー・f36649)には、企業に飼われる者の境遇がよく分かる。研究所から脱走したというレプリカントの実験体が、これまでどんな扱いを受けてきたのかも。
「追っ手に捕まる前に、早く見つけてやらなきゃ」
 今も逃走中の少女を探しだすために、彼女は人通りの多いメインストリートに立つ。
 そして徐ろに自分の手のひらを噛み切ると、流れた血を使って宙に文字を描き始めた。

「さあ、アタシのショドーをとくとご覧あれ!」
 コーボー・ニンジャクランに属するカナの特技は【ショドー・ジツ】。筆を必要としない「コーボー・ブラシ」のワザを以って、力あるルーンカタカナを書き上げることで、様々な現象を呼び起こすのだ。
「イヤーッ!!」
「おお、なんだなんだ?」
 軽快に街中を飛び跳ねながら、目立つ看板やビルの壁面に手のひらで『ユウジョウ!』と光るルーンカタカナを書く。そのエキゾチックで派手なパフォーマンスに、通行人の目は釘付けとなった。

(アタシがかつてセンセイに助けてもらったように、この子の力に成りたい……)
 一角一角に思いを込めて、カナはルーンカタカナを記す。任務に失敗して死ぬはずだった自分を、拾ってくれた診療所のセンセイ――その人のように誰かを助けるためにジツを使う、この行動はメガコーポに洗脳されたものではない。
「それが今のアタシがやりたいことなんだ!」
 揺るぎない意思の力はルーンカタカナをいっそう輝かせ、さらに多くの衆目を集める。
 そのパフォーマンスに魅せられたのはストリートの住人だけではなかった。眼下に広がる雑踏の中に、1人だけ雰囲気の異なる少女がいるのをカナは見つける。

「ねえ、アンタって……」
「……っ!」
 ビルの壁から飛び降りて声をかけると、その少女はびくりと肩を震わせて後ずさった。
 肌や衣服から微かにただよう薬品の匂い。精巧に作られた人造のボディ。この娘こそが例の脱走した実験体レプリカントだとカナは確信する。
「逃げないで! アタシはアンタの力に成りたいんだ」
「え、え……?」
 初対面の相手にそう言われてすぐに信じるのは難しいだろう。それでもカナは真剣に呼びかける。先ほど綴った『ユウジョウ!』のルーンカタカナには、友好的な接触に補正のかかる効果がある。真心をこめて話せばきっと伝わるはずだ。

「アタシも昔はメガコーポにいたんだ」
 企業の飼い犬だった自分の身の上を話し、似たような境遇ゆえに脱走に協力したい旨を伝えると、警戒は徐々に和らいでいった。カナがそっと手を差し伸べると、少女は表情に乏しい顔でそれに応えた。
「……貴女の文字、綺麗でした。だから、嘘ではないと信じます」
「ありがとう!」
 じきにこのパフォーマンスを知って、メガコーポの追っ手もやって来るかもしれない。
 二人の逃亡者はひとまずこの場から身を隠すことにして、ストリートの雑踏に姿を消すのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

式之・神子
まぁ~たあの会社の連中かぁ、下々に任せっ放しで上は算盤弾き自宅警備員してるから逃げられるンよ

おンやぁ?お困りのドロイドちゃんが一人いるンね
追手が来たら奴らの義眼に【ハッキング】して
スレ民特製プログラム集のリアルタイムレンダリングマップツールで偽の空間を投影して【騙し打ち】するンよ
近場のめちゃ深いドブ川にしめやかに自ら突っ込んでいく様に誘導して...
落ちる瞬間に「ここには何もねーよバーカ!!」ってアスキーアートを面前に出しちゃる
ドロイドちゃんには人工式神装束のスペア着せて、ぱっと見本人と分からない様な衣装スキンに変更するンよ



「まぁ~たあの会社の連中かぁ」
 以前にもアミダインダストリー絡みの依頼を受けたことのある式之・神子(人工無能・f36534)は、呆れた調子で呟いた。世界の支配者を気取るメガコーポも、こうも事件が頻発するとは脇が甘い。
「下々に任せっ放しで上は算盤弾き自宅警備員してるから逃げられるンよ」
 これも巨大になり過ぎた組織の弊害だろうか。まあ同情の余地なんてものは一切ない。
 奔放なる人工式神は装束から「パラライズサイバネケーブル」を伸ばし、ストリートのネットワークに接続。都市に配置されたカメラやマシンを通じて情報収集を行う。

「おンやぁ? お困りのドロイドちゃんが一人いるンね」
 ほどなくして神子が見つけたのは、ストリートの雑踏を逃走中のレプリカントの少女。
 どうやら追っ手に見つかってしまったらしく、後方には物々しいパワードスーツや銃器で武装した兵士の姿もある。見覚えのあるアミダ社の戦闘用レプリカントだ。
『止まれ、実験体L913』
『拒否、しますっ……!』
 兵士からL913と呼ばれた少女は必死に逃げているが、その距離は徐々に縮まっている。
 同じレプリカントでも箱入りと戦闘用ではそもそものスペックが違うのだろう。今までは知恵を使って身を隠していたようだが、単純な追いかけっこになれば分が悪い。

「はいはいお仕事ご苦労様っと」
 ピンチの少女を助けるために、神子は追っ手の奴らにハッキングを仕掛ける。この世界の住人は骸の海の汚染を防ぐため、誰もが肉体を機械化義体(サイバーザナドゥ)に換装している。つまり彼女のようなハッカーがいくらでも悪戯できる環境だ。
「ほい、アクセス成功~」
 あっという間に追っ手の義眼のシステムを乗っ取った神子は、ネット上で常駐している「ポポスレ」の住民が開発した「スレ民特製プログラム集」の中から、リアルタイムレンダリングマップツールを起動。連中の視界に偽の空間を投影させる。

『奴は何処へ行った?』『居たぞ。あそこだ!』
 ニセモノの映像を見せられていると気付かぬまま、メガコーポの兵隊はレプリカントの少女が逃げたのとは別の方向に走っていく。神子はその様子をにんまり笑って眺めつつ、ハッキングによる誘導を続ける。
「近場のめちゃ深いドブ川にしめやかに自ら突っ込んでいく様に誘導して……」
 こうした嫌がらせや弄り倒しは彼女の得意分野だ。真面目に不真面目をモットーとしたスレ民の性格を学習してしまったせいか、人工式神としてのハイスペックな性能は他者の尊厳を踏み躙ることにばかり遺憾なく発揮されていた。

「ここには何もねーよバーカ!!」
『は? なんだこれは……うわぁぁぁぁっ!!?』
 落下の瞬間にメガコーポの追っ手の面前に表示されるアスキーアート。相手を小馬鹿にしくさった表現に鼻白む間もなく、彼らは道だと思っていたドブ川に仲良く沈んでいく。
「こんな簡単な手に引っかかってやンの」
 馬鹿な連中の末路をひとしきり鑑賞してから、神子は再び逃走中のレプリカントの方にカメラを戻す。ひとまず窮地は脱したものの追っ手はまだまだ残っており、このままではまた見つかってしまうだろう。

「ドロイドちゃん、ちょっとお色直しするンよ」
 神子はレプリカントのボディの上から自分が身に着けているのと同じ「人工式神装束」のスペアを着せて、ぱっと見本人と分からない様な衣装スキンに変更する。ストリートの雰囲気となるべく浮かない格好にすれば、追っ手からの発見率も低下するだろう。
「これ、は?」
 急に服装を変えられて少女は驚いたものの、すぐにこれは好都合だと判断したらしい。
 新しいおべべを着て走っていく「ドロイドちゃん」の後ろを、神子はこっそりと追跡を続けるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

堂島・アキラ
メガコーポってやり方の強引さではオレに負けてねえよな。
ま、連中が何を企んでようが興味はねえが、かわい子ちゃんは助けてやらねえとな。

ユーベルコードでストリートに設置された監視カメラに接続。
ここから大元のサーバーまでハッキングしてストリート中の監視映像をのぞき見してやる。

かわい子ちゃん発見! 近くにクソ共もいやがる。急がねえとまずいか。
バイクに乗って急行だ。白馬の王子様ならぬ鉄馬のお姉様がすぐ迎えに行ってやるからな。

ようお嬢ちゃん迎えに来たぜ。捕まりたくなかったらさっさと後ろに乗りな。
かっ飛ばすから振り落とされねえようにオレに掴まってろ!
もっと強く掴まってもいいぞ。もっとギュッとな……ヘヘへ……。



「メガコーポってやり方の強引さではオレに負けてねえよな」
 自他ともに認めるアウトローである堂島・アキラ(Cyber×Kawaii・f36538)は、今回のメガコーポの行動にそんな感想を抱く。裏でいかにもヤバそうな実験をしていた挙句、実験体に逃げられて回収騒ぎ。なまじカネと権力があるだけにやりたい放題だ。
「ま、連中が何を企んでようが興味はねえが、かわい子ちゃんは助けてやらねえとな」
 彼が人助けをする理由なんてものは単純で、遠慮なく暴れられそうな依頼だったこと、そして相手が美少女だという二点に尽きるだろう。なにせ彼は転生願望を拗らせて自分の義体を美少女型に換装するほど、己の欲望に忠実な男だ。

「さあて、まずはメガコーポのクソ共より先に見つけてやらねえとな」
 アキラは【サイバーリンクシステム】でストリートに設置された監視カメラに接続すると、そこから大元のサーバーまでハッキングしてストリート中の監視映像を覗き見する。
 テクノロジーが爆発的に発達したこの社会において、機械の目が届かない場所はないと言ってもいい。逃亡者がどこに隠れ潜んでいても、すぐに突き止められるはずだ。
「かわい子ちゃん発見! 近くにクソ共もいやがる」
 どうやらその条件はメガコーポ側でも同じだったらしく、アキラが路地裏に潜む少女を見つけた時には、追っ手らしきパワードスーツの兵士がすぐ近くの通りまで迫っていた。やはり個人の力だけで強大なメガコーポの追跡から逃れ続けるには限界があったようだ。

「急がねえとまずいか」
 アキラはカメラに繋いでいた有線ケーブルを引き抜くと、ハイスピードバイク『ツルギ -HABAKIRI-』のエンジンをかける。彼専用にピーキーな改良が施された鋼鉄の愛車は、猛獣のような唸り声を上げて走り出した。
「白馬の王子様ならぬ鉄馬のお姉様がすぐ迎えに行ってやるからな」
 そんなジョークを嘯きながら、風を浴びてストリートを爆走する。法定速度なんてものはハナから無視だ。他の車両をガンガン追い越して、通行人を撥ね飛ばしかけながらも、彼は目的地へと急行する。

「ようお嬢ちゃん迎えに来たぜ」
「あ、あなた、は……?」
 全速力で飛ばした甲斐あって、アキラはメガコーポの追っ手より先に少女の元に到着することができた。突如現れたバイク乗りの美少女(?)に相手は困惑している様子だが、彼は有無を言わせず要点だけを告げる。
「捕まりたくなかったらさっさと後ろに乗りな」
「……っ! わかり、ましたっ」
 こうしている間にも追っ手は近付いてきている。迷っている暇はないと判断したのか、少女は意を決して座席に飛び乗る。その細い腕が自分の腰に回されるのを確認してから、アキラは再びバイクを発進させた。

「かっ飛ばすから振り落とされねえようにオレに掴まってろ!」
「は、はい、っ」
 チューンアップされたエンジンが唸りを上げ、風景が前から後ろにすっ飛んでいく。
 このスピードならメガコーポの連中も簡単には追いついてこれまい。バイクでの移動に慣れていない少女のほうは目を回しかけているが。
「もっと強く掴まってもいいぞ。もっとギュッとな……ヘヘへ……」
「え、あ、はい……?」
 研究所育ちゆえ男の下心を知らない少女は、言われるままギュッとしがみついてくる。
 背中に当たる柔らかさを役得と味わいつつ、アキラはさらにギアを上げるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カビパン・カピパン
レプリカントの少女が今暫しの休息を取っていると、突然軍服の女と警察が凄い形相で何かを言いながらこちらに向かって走ってきていた。
「こら、待ちなさい!」
カビパンは逃走ルート途中にいるレプリカントの少女を抱えて走り出す。見ると、パトカーが自分の進路を塞ぐように前に回りこんできた。
「くっ、パトカーまできたか」
「止まりなさーい!!」

「狗どもめ…」
カビパンとレプリカントの少女は椅子に座って水を飲んでいた。
警察に追われていたのを何とか振り切って少女と逃げて来たのである。同じ逃走者である彼女達は意気投合し、協力することとなる。

少女の優秀な頭脳が改めて計算した逃走の成功率はエラー発生。
その終着点はギャグでは――



「はぁ、はぁ、はぁ……」
 見知らぬ人達の助けを借りながら、メガコーポから逃走を続けるレプリカントの少女。
 どうにか追っ手をまいて路地裏で今暫しの休息を取っていると、突然軍服の女と警察が凄い形相で何かを言いながらこちらに向かって走ってきていた。
「こら、待ちなさい!」
「誰が待つものか!」
「え、えっ……?」
 追われている軍服の女の名はカビパン・カピパン(女教皇 ただし貧乏性・f24111)。一体何をしでかしたのかは知らないが、警察に追われる身となって現在逃走中らしい。無関係な騒ぎに巻き込まれる羽目になった少女は、困惑できょとんと目を丸くする。

「よっこらせ」
「ひゃ、わっ?!」
 カビパンは逃走ルートの途中にいたレプリカントの少女を抱えて、そのまま走り出す。
 何故か抱えられた少女がますます困惑顔で前を見ると、パトカーがこちらの進路を塞ぐように回りこんできた。
「くっ、パトカーまできたか」
「止まりなさーい!!」
 拡声器を使って大声で呼びかけてくる警官に、カビパンが返す答えは舌打ちひとつ。
 塞がれた道を迂回するようにくるりと方向転換して、捕まってたまるかと猛ダッシュ。急いでいるなら置いていけばいいものを、腕の中には少女を抱えたままで。

「あ、あの、おろして、ください」
 そもそも何故自分は抱えられているのかと、少女は訳が分からずにおずおずと話す。
 その願いが叶ったのはカビパンが警官をまいて、近くの公園で休憩する時だった。
「狗どもめ……」
 何とか警察の追っ手を振り切ったカビパンは、公園の椅子に座って水を飲む。少女にも「飲むか?」と聞いてみると、「い、いた、だきます……」と困惑気味の返事があった。
 なんの縁かは分からないが、この2人はどちらも追われる者同士。ここまで連れてきたのには何らかのシンパシーを感じたからかもしれない。何も考えてない可能性もあるが。

「貴方も、大変だったんです、ね」
「あなたこそ」
 休憩がてら話をする内に、少女とカビパンは同じ逃亡者として意気投合しつつあった。
 警察と企業で追ってくる相手は違うが、逃げ切るために協力するのは悪い手ではない。カビパンには謎のギャグ補正が、少女には優秀な頭脳という武器がそれぞれにある。
「私達が協力すれば、逃げ切れる確率は……」
 少女はその頭脳をもって逃走の成功率を改めて計算してみる。【ハリセンで叩かずにはいられない女】の助力を得た今、限りなくゼロに近かった可能性は前提から変化し――。

「――……エラー発生」
 ぷすん。理論では推し量れない存在を計算に組み込んだ結果、少女の頭は煙を吹いた。
 カビパンと付き合いの長い者達であれば分かっていただろう。彼女の言動が何を引き起こすか予測するなんてことは、どだい最初から無理なのだと。
「さあ逃げるぞ!」
 フリーズした少女の手をぐいっと引っ張って、カビパンは再びストリートを走りだす。
 この逃亡劇の終着点は果たして絶望か、それともギャグなのか。希望はまだ見えない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カルマ・ヴィローシャナ
……絶対、助けるから
適当なポータルに尻尾のRTXで接続して
サイバーリンクシステムを起動しハッキング
周辺の監視映像をまるっと掌握しちゃうわ

合わせてXQを飛ばして捜査範囲内を撮影
逃げている女の子を探し出すよ

賢い子ならカメラの視覚やネットワークの無い所にいるかな?
だったらXQの制圧射撃でアミダにちょっかい出して
その範囲から逃げようとする反応を逆探知しよう
騒ぎが少ない所へと逃げ込むだろうからね

で、私はその子が逃げそうな方へ先回りしつつ
STGで欺瞞情報をばら撒いてアミダを攪乱するよ
彼女が見つかればいいけど……衰弱してたら
生命維持装置でもある@LINKSのマスクを貸すわ

安心して、私はあなたを助けに来たの☆



「……絶対、助けるから」
 アミダインダストリーの研究所から脱走した、実験体のレプリカント。その救出依頼にカルマ・ヴィローシャナ(波羅破螺都計・f36625)は並々ならぬ感情を窺わせていた。
「あんな所に、二度と連れ戻させたりしない」
 それは彼女がかつてアミダに拉致され、非人道的改造を施された実験体の1人だから。
 アミダの非道を知り、同じ苦しみを味わった者として、傍観なんてできるわけがない。マスクの下で真剣な表情を浮かべ、彼女は行動を開始する。

「まずはこの辺の監視機器にアクセスしてっと」
 カルマは尻尾の通信ケーブル「エクサリンカーRTX」を適当なポータルに接続すると、【サイバーリンクシステム】を起動してハッキングを開始。ストリート周辺の監視カメラ等に映った映像をまとめて掌握する。
「この辺りは通ってないみたい……じゃあ、あっち」
 過去の記録も遡って参照しつつ、合わせて多機能ドローン「ジェネシスXQ」を飛ばし、捜査範囲内の撮影を行わせる。ストリーマーらしい探し方だが、あちらもカメラの存在には気を付けているのか、逃げている女の子の姿はすぐには見つからない。

「賢い子ならカメラの視覚やネットワークの無い所にいるかな?」
 このネットワーク全盛社会において、そういった盲点と言うべき場所は限られてくる。
 それを逆に絞り込んでいけばいずれは見つかるかもしれないが――それよりもっと早く見つけられそうな手段をカルマは思いついた。
「アミダのやつらは今どこに……いたいた」
 こちらは探し出すまでもなく、ストリートを絶賛お騒がせしているメガコーポの連中。
 逃げた実験体を強硬な手段で追う彼らのことは、もちろん実験体のほうも警戒しているだろう。カルマはそこにちょっかいをかける。

「し、知りませんって、そんな娘なんて!」
「本当か? 隠し立てすれば身の為に……うおッ?!」
 アミダの追っ手がストリートの住人に聞き込みを行っていると、そこに飛んできた一機のドローンが突然機銃を発射する。カルマが遠隔操縦する「ジェネシスXQ」の攻撃だ。
「なんだ、このドローンは?!」「邪魔をするつもりか!」
 業務妨害に怒ったアミダの連中は直ちに武装を構え、市街地だろうとお構いなしに発砲する。たちまち辺りは喧騒に包まれ、逃げる市民や集まる野次馬で大変な騒動になった。

「これでその子は騒ぎが少ない所へと逃げ込むだろうからね」
 狙い通りの展開になったのをカメラで確認しつつ、カルマは騒動の範囲から逃げようとする反応を逆探知する。ほどなくして彼女の監視網が捉えたのは、ストリートの雰囲気から浮世離れした色白の少女だった。
「見つけた!」
 すぐさまカルマは尻尾をポータルから引っこ抜き、少女が逃げそうな方へ先回りする。
 さらに走りながらホロキーボード「エレクトロンSTG」を叩き、ネットワークに撹乱用の欺瞞情報をばら撒く。騒ぎが収まった後もアミダの連中にはまだ踊っていてもらおう。

「はぁ、はぁ……っ、誰っ!?」
 かくして、アミダインダストリーの実験体2人は、ストリートの路地裏にて邂逅する。
 壁にもたれかかって息を整えていた少女は、ふいに近付いてきた足音に警戒を示すが、カルマは生命維持装置でもある「@LINKS」のマスクを外し、にこりを笑顔を見せた。
「安心して、私はあなたを助けに来たの☆」
「助け、に……?」
 ストリーマーとして磨いた明るい表情に、外の世界を知らない少女の心はほだされる。
 今はまだ詳しく話している時間はない。「立てる?」と問いながら差し出された手を「はい」と掴んで、彼女達は再びアミダからの逃亡劇を再開した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リアラ・アリルアンナ
ああ!なんと恐ろしい光景でしょう!
情報によれば、対象市民はさしたる戦闘能力も持たないたった一人の非力な少女とのこと。
いかなる事情があれど、その逮捕にこれほどの破壊活動が必要でしょうか?
市民の幸福を踏みにじる反逆的メガコーポ、許すまじ!!

ともあれ、まずは対象市民の保護が優先事項です!
抵抗する術を持たないのであれば、必然的に監視システムや警察・ヤクザ等の拠点を避けるルートを選択するものと思われます。
となると、貧民街を通過ないし潜伏する確率は高そうです!
その辺りで、見慣れない少女が来なかったか聞いて回る事にいたしましょう!

なお、地図データは(UCの効果で)現地の警官から快く提供していただきました。



「ああ! なんと恐ろしい光景でしょう!」
 演説めいて芝居がかった調子で、誰にともなく語るのはリアラ・アリルアンナ(リアライズユアハピネス・f36743)。世界を超えてあまねく市民の幸福を啓発するために活動する、『自称・あなたの親愛なる友人』である。
「情報によれば、対象市民はさしたる戦闘能力も持たないたった一人の非力な少女とのこと。いかなる事情があれど、その逮捕にこれほどの破壊活動が必要でしょうか?」
 今、彼女の目の前でストリートの平穏は脅かされていた。あくまで実験体の確保を第一とするメガコーポは、その過程で発生する一般人の損害や犠牲をまったく考えていない。このままでは市民の幸福度は下がり続ける一方だ。

「市民の幸福を踏みにじる反逆的メガコーポ、許すまじ!!」
 己の行動理念に基づいて、リアラは今回のメガコーポ・アミダインダストリーを完璧に「反逆者」と認定した。市民には幸福を、反逆には死を。理想的幸福社会の実現を目指す彼女の思想は明快かつ極端である。
「ともあれ、まずは対象市民の保護が優先事項です!」
 今まさにこの都市で最も幸福でない市民を助けるために、親愛なる友人は活動を開始。
 まずはホロドレスの中からストリートの地図データを実体化させ、対象が向かいそうな場所を選定する。

「抵抗する術を持たないのであれば、必然的に監視システムや警察・ヤクザ等の拠点を避けるルートを選択するものと思われます」
 追っ手の目を逃れつつ危険を避けようとすれば必然的にそうなる。だが社会のモラルが低下し、遍くネットワークに覆われた都市において、条件に見合う場所は限られる――。
「となると、貧民街を通過ないし潜伏する確率は高そうです!」
 ストリート内でも管理が行き届かないあの場所なら、一時の潜伏場所としても最適だろう。そこで聞き込みを行えば情報が手に入るはずだと、リアラはさっそく現地に向かう。

「こんにちは、市民! ひとつお尋ねしますが、この辺りに見慣れない少女が来なかったでしょうか!」
「はぁ? それなら今オレの目の前にいるよ」
 ゴミ溜めとスクラップの山を合成したような貧民街では、氏素性の知れない連中が身を寄せ合うように暮らしている。彼らは見知らぬよそ者からの質問にあまり協力的ではなかったが、リアラがくじけずに『汝の隣人を愛せよ』と唱えると態度を一変させた。
「さあ、共に手を取り合いましょう! それはとても幸福なことなのですから!」
「お、おぉ……そうだな! 協力するってサイコーに幸福だよな!」
 リアラのユーベルコードから放たれる渦巻状の波動は、対象を無意識に友好的にする。
 彼女が市民の捜索に使っている地図データも、この効果で現地の警官から「快く提供」していただいたものだ。

「ご協力感謝します! あなた達にさらなる幸福があらんことを!」
 こうして貧民街の住人から情報をゲットしたリアラは、それを元に市民捜索を進める。
 反逆的メガコーポの魔の手からか弱き市民を保護する。使命感に燃える親愛なる友人を止められる者は誰もいなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

新田・にこたま
またアミダですか…最近特に調子に乗っていますね。
しかし、そこまで重要な実験体ならば、この依頼の成功が打倒アミダに繋がる可能性も…いえ、この思考は駄目です。打算的に過ぎます。まずは『彼女』の身の安全を第一に考えましょう。

情報収集に性能を特化させた翁丸ドローン9体をストリートに放ち、少女に繋がりそうな情報を収集させます。尚且つ私のサイバーアイとドローンの視覚情報を無線接続で共有することで私の視点でも少女の痕跡や動きを見切ります。

少女を見つけることができたら警察官としてしっかり保護します。

安心してください。私は打倒メガコーポを掲げた体制へのテロリスト寄り武装警官です。

…安心してください。(2回目)



「またアミダですか……最近特に調子に乗っていますね」
 直近でもアミダインダストリー絡みの事件に何度か関わってきた新田・にこたま(普通の武装警官・f36679)は、懲りないものですねと溜息をつく。メガコーポの横暴は今に始まったことではないが、こうも立て続けに騒ぎを起こされては流石に目に余る。
「しかし、そこまで重要な実験体ならば、この依頼の成功が打倒アミダに繋がる可能性も……いえ、この思考は駄目です。打算的に過ぎます」
 理知的に物事を計算するのも大事だが、過ぎれば『正義』の本質を見失う。彼女が掲げた使命はこの世界の腐敗と退廃を正すことだが、そのために罪なき一般人を利用するような考え方をしてはならない。

「まずは『彼女』の身の安全を第一に考えましょう」
 依然逃走中のレプリカントの少女の保護。それを最優先目的に据えて、にこたまは自身のミニパトから【翁丸ドローン】を発進させる。本人の趣味か古風な名前を付けられてはいるが、中身は電脳無線接続機能付きの最新鋭軍用ドローンである。
「行きなさい! 翁丸ドローン!」
 ストリートに放たれた9体のドローンはそれぞれ分散して少女に繋がりそうな情報を収集し、にこたまは彼らと自分のサイバーアイの視覚情報を共有することで、自らの視点でも少女の痕跡や動きが見えるようにする。

「いましたね」
 ストリート中をくまなく探り、それらしき少女の姿を発見したにこたまは、ミニパトに乗って走りだす。なおミニパトと言っても傍目にはパトランプを取り付けただけの四輪装甲車にしか見えないが、本人はあくまでミニパトと主張する。
「警察官としてしっかり保護しなくては」
 ごつい装甲車が市内を走っていても、さほど気に留められないのはストリートの雑然とした雰囲気ゆえか。道交法を極力遵守しつつドローンの目線から最短ルートを選択して、彼女は保護対象の元に急行する。

「アミダインダストリーから脱走した実験体の方ですね?」
「な、なにを……?」
 横道から突然現れた装甲車と、その運転席から降りてきた警官制服の少女に、実験体の少女は警戒心をもって後ずさる。この世界において警察組織はメガコーポの狗と成り果てており、自分を捕まえに来たアミダの手先だと彼女が考えるのも無理はない。
「安心してください。私は打倒メガコーポを掲げた体制へのテロリスト寄り武装警官です」
 誤解を解くために、にこたまは正直に己の身の上を明かすが、正直すぎて逆に不穏さが隠せない自己紹介となってしまった。見た目はいかにも品行方正な秩序の番人らしい格好なのに、言ってることがヤバい。当然ながら少女のほうも引いている。

「……安心してください」
 にこたま自身も言ってからマズいと思ったのか、念を押すように同じ発言を繰り返す。
 正直、安心できるかと言われればかなり不安だが――少なくともアミダ側の人間ではないと分かっては貰えたようで、少女はこくんと頷く。
「悪い人では、なさそう、ですし」
「良かった。ここからは私達が貴女を保護します」
 他の猟兵達もそれぞれ彼女の捜索・保護のために行動している。メガコーポの追っ手が現れても必ず守り抜いてみせると、にこたまは少女と自分自身の正義に誓って宣言した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルパート・ブラックスミス
初めての来訪だが……サイバーザナドゥ。陰謀と骸の海に塗れた世界、か。

【錬成カミヤドリ】の複製鎧展開。
自分自身も別途行動する以上臨機応変な対応はしてられん。
整列・行進させ警官たちに加勢、抵抗勢力としての規模を広げることでアミダ社の追っ手を【おびき寄せ】『L913』の捜索を妨害。

自身は複製鎧の操作と並行して『L913』を捜索。
肉体的に貧弱だというなら移動は飽く迄『道なり』、ドローンなどの上空からの捜索も警戒するなら尚更ルートは限られる。
周囲を【情報収集】しつつ【追跡】、合流を図る。

要はダークセイヴァーと同じだ。
オブリビオンの脅威に支配された世界で、黒騎士ブラックスミスが無力な民に助太刀しよう。



「初めての来訪だが……サイバーザナドゥ。陰謀と骸の海に塗れた世界、か」
 過剰なまでに発達したテクノロジーが作り上げた巨大都市と、その内側に潜む深い闇。
 繁栄と滅びの兆しが表裏一体となった世界に降り立ったルパート・ブラックスミス(独り歩きする黒騎士の鎧・f10937)は、そこに馴染みの不穏な空気を感じ取った。
「まずはメガコーポとやらに捕まる前に『L913』と合流する事だな」
 思う所は幾つかあれど、為すべきことは明快だ。行動を開始するにあたって彼はまず【錬成カミヤドリ】で自分の本体である黒騎士の鎧を複製し、道路に整列・行進させる。

「さあ行け。権力と陰謀に屈さぬ、心ある者達に加勢せよ」
 複製された120体の騎士鎧の役割は、アミダインダストリーの追っ手を妨害する事だ。
 ストリートの都合など考えもしない彼らは、現地の市民や警官とたびたび衝突を起こしている。ルパートはそこに騎士鎧を加勢させることで、抵抗規模の拡大を図った。
「ですから、これ以上騒ぎを起こすようなら、私達も然るべき対応を……うん?」
「フン。貴様のような下っ端警官がメガコーポに楯突いて、ただで済むと……なんだ?」
 ざっ、ざっ、ざっ、と規則正しい行進の音に振り返った者達は、近付いてくる黒騎士の隊列を見る。何かのイベント用のARホログラムかと思われたが、違う。1体1体が質量を持った本物だ。

「な、なんだコイツらは?!」「貴様らも邪魔をする気……うわぁっ?!」
「よ、よくわからんが……チャンスだ!」
 この世界においてはあまりに異質な黒騎士の軍団は、無言のままメガコーポの兵士達に襲い掛かった。思わぬ援軍を得たストリートの警官は勢いづき、「いいぞ!」「やれ!」と野次馬からは声援が飛ぶ。
(自分自身も別途行動する以上臨機応変な対応はしてられん)
 その騒ぎを遠巻きに耳にしつつ、ルパート本人は実験体を捜索するため別行動を取る。
 片手間での操作になるため複製体の動きは単調だが、追っ手をおびき寄せて捜索の妨げになれば十分。あとは此方のほうが先に対象を見つけ出せばいいだけだ。

(肉体的に貧弱だというなら移動は飽く迄『道なり』、ドローンなどの上空からの捜索も警戒するなら尚更ルートは限られる)
 ルパートは依頼時に伝えられた情報を元に行動パターンを予想し、実験体の行方を追跡する。周囲の通行人を相手に情報収集を行ってみたところ、それらしき少女を見たという話を聞けた。
「ああ、そんな感じの子ならさっき向こうに走っていったけど……」
「感謝する」
 礼を言いつつ走りだするパートの背中を、通行人は「変わった全身義体だな」と眺めていた。猟兵ゆえに過度な違和感を抱かれることはないが、やはりテクノロジー全盛のこの世界において、彼のようなレトロな騎士の風貌をした者は目立つだろう。

「要はダークセイヴァーと同じだ」
 されどルパートの志は新世界においても何ら変わりはなく。黒き鎧に宿した騎士の信念は、青き炎となって今も燃えている。ヴァンパイアからメガコーポに――討つべき"敵"の呼び名が変わったところで、彼が為すべきことは一つ。
「オブリビオンの脅威に支配された世界で、黒騎士ブラックスミスが無力な民に助太刀しよう」
 骸の雨降るサイバーシティを黒騎士の鎧がひた走る。助けを必要とする者はこの先に。
 その足音は力強く、兜の奥に灯った炎の眼差しは、まっすぐに前だけを見つめていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シャルル・メリー
拝人(f36629)と
『レプリカント』の少女ですか…なるほどそれで依頼を引き受けた訳ですね。私と種族が同じと言うだけで…まったく貴方を守る身にもなってください。でもそう言うわがままは嫌いじゃありません。…私だって不遇な目にあってる同族がいるなら心配くらいはしますから。そこで動くなのが拝人なのですよね。

拝人の集めた情報をもとに少女を追跡。
あまり派手にやっては目立ちますからねあくまで何もない風を装いながら。

拝人は胡散臭いかもしれませんが私は同じレプリカントのよしみで信じてくれると嬉しいですが…まぁそう上手くはいかないですよね。
ただ貴方を逃すためにきました。
それは偽りありません。


静寂・拝人
シャルル(f36639)と
脱走しなきゃいけない何があったんだ只事じゃないだろうよ。
それにシャルルと同じ『レプリカント』の少女だそれだけで俺にとっては助ける理由になりえる。
まぁ、俺のわがままだが付き合ってくれよ。

まずはここら辺の監視カメラを【ハッキング】して【情報収集】で少女の居場所を探る。
追跡はシャルルに任せた方がいいか。
多分俺たちのことは胡散臭く感じるだろうから身分の開示を速やかに行う。
カンパニーマンではあるが俺の自由にやらせてもらってる。上にはライバル会社の情報収集って言えば意外と通るんだわ…
って事で俺達は味方だ。
俺は無理でもシャルルは信じてやってくれると助かる。



「脱走しなきゃいけない何があったんだ。只事じゃないだろうよ」
 実験体の少女がなぜ研究所から逃げ出したのか、その理由は分からずとも静寂・拝人(人生ゲーマー・f36629)はかく語る。メガコーポへの叛逆はそれだけ命がけの行為だ、生半可な覚悟でできる事ではないし、個人としてはそれを尊重したいとも思う。
「それにシャルルと同じ『レプリカント』の少女だ。それだけで俺にとっては助ける理由になりえる」
「『レプリカント』の少女ですか……なるほど、それで依頼を引き受けた訳ですね」
 彼の理由を聞いたシャルル・メリー(星に手を伸ばす・f36639)は、少し呆れたように溜息をつく。勝手に相棒認定されてからというもの、この手の彼の行動に振り回されるのは今回が初めてではない。監視・警護役としては頭の痛い話だ。

「私と種族が同じと言うだけで……まったく貴方を守る身にもなってください」
「まぁ、俺のわがままだが付き合ってくれよ」
 辛辣な口調で遠慮のない物言いをする相棒を、しれっと肩をすくめつつなだめる拝人。
 まったく、と腰に手を当てて一通り文句を言ってから、シャルルはふと表情を緩めた。
「でもそう言うわがままは嫌いじゃありません。……私だって不遇な目にあってる同族がいるなら心配くらいはしますから」
 仕事第一のお堅い人物という印象のある彼女だが、本当は自分を抑えているだけで心根は純粋な娘だ。相棒への口の悪さも、それだけ気を許していることや信頼の証でもある。

「そこで動くなのが拝人なのですよね」
「ま、そういう性分ってことさ」
 電子タバコを吸いながらそう答えて、拝人はさっそく少女の捜索に取り掛かる。まずは周辺の監視カメラをハッキングし、映像記録から情報を収集。それらしき人物が映っている場所を見つければ、繋ぎ合わせて移動ルートを推測する。
「追跡はシャルルに任せた方がいいか」
「分かりました。これも仕事ですから」
 集めた情報をもとに少女の足取りを追うのはシャルルの役目だ。スーツ姿でストリートの雑踏に溶け込み、予測ルートを辿りつつ聞き込みを行う。その少し後をキーボードを叩きつつ拝人が追いかける体制だ。

(あまり派手にやっては目立ちますからね)
 アミダ社の追っ手のように、ストリートの住人と揉めて利益になることは一つもない。
 あくまで何もない風を装いながら、シャルルはその辺りにいた通行人に話しかける。
「すみません、人を探しているのですが」
「うん? なんだよ」
 知り合いを探しているような調子で尋ねると、「あぁ、それなら……」と思い出したような答えが返ってくる。ストリートでは目立つ容姿をしているためか、少なくない住人が逃走中の少女を目撃していたようだ。追う側としては好都合な情報ではある。

「こちらですね」
「なるほど、ここなら見つかり辛い」
 そうしてシャルルと拝人がやって来たのは、監視カメラの死角となる路地裏。そこには手術衣のような薄手の服を着た色白の少女が、荒い息を吐いて壁にもたれかかっていた。
「だ……誰です、か……?」
 近付いてくる一組の男女に、少女は警戒心を露わにする。アーバンスーツに身を包んだ人物が目の前に現れたら、企業からの追っ手だと考えるのは彼女の立場では無理もない。

「ああ、警戒しないでくれ。俺達はこういう者だ」
 多分胡散臭く感じられるだろうと予想していた拝人は、身分の開示を速やかに行う。
 とあるメガコーポ傘下のゲーム会社に所属するカンパニーマンとその護衛。それが二人の肩書きである。企業側の人間ではあるが、少女が逃げてきたアミダ社とは所属が違う。
「カンパニーマンではあるが俺の自由にやらせてもらってる。上にはライバル会社の情報収集って言えば意外と通るんだわ……」
 自らの信条に基づいて仕事を選別できるのが特級社員の特権だ。メガコーポ同士の抗争や暗闘なども珍しいものではなく、彼の説明には信用できるだけの情報が含まれていた。

「って事で俺達は味方だ。俺は無理でもシャルルは信じてやってくれると助かる」
「…………」
 拝人の説明を聞いた少女は、無言のままじぃっと彼とシャルルの顔を交互に見つめる。
 やはりまだ警戒されているのか。逆に会ったばかりの相手をそう簡単に信用できるようでは、ここまで逃げることもできなかったのかもしれない。
「拝人は胡散臭いかもしれませんが私は同じレプリカントのよしみで信じてくれると嬉しいですが……まぁそう上手くはいかないですよね」
 ひでぇ言われよう、と肩をすくめる拝人のことはスルーしつつ、シャルルはじっと少女と目を合わせる。その体は機械部品と有機パーツの組み合わせだが、瞳には生身の人間と変わらない情の温かみがあった。

「ただ貴方を逃すためにきました。それは偽りありません」
 淡々とした真剣な口調。下手に飾り立てるよりも、その態度は本心を浮き彫りにする。
 レプリカントの少女はしばらく黙っていたが、やがて緊張を緩めてこくり、と頷いた。
「……お二人のことを、信じます」
 それは提示された情報だけでなく、互いを信頼しあう二人の様子を含めた判断だろう。
 企業側の人間だとしても、この人達はきっと悪い人ではないと、少女は信じたようだ。
 無事に信用を得られたシャルルと拝人も、安堵したようにほっと小さく息を吐いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フォス・オネイロス
【ブラック】

アミダ社から逃亡した少女……これは興味のある案件かな。
何を抱えているのか判らないけど、まずは保護して理由を知りたいな。

ペルセポネさん、この案件どうかな?

『アミダインダストリー』も『特殊営業課』が動いているみたいだし、
この少女にはなにかありそうな気がするんだけど。

ペルセポネさんが、映像やデータの痕跡を辿るなら、
わたしは現場で聞き込みかな。

ストリートの人と【親和の眼差し】で仲良くなって、
見慣れない少女を見ていないか、
見たならどちらの方角に行ったか、とかを教えてもらおう。

2人の情報をもとに絞り込んでいけば、
必ず見つけられるよね。

まずは友達に……って。
ペルセポネさん、仕事になると冷静だね。


ペルセポネ・エレウシス
【ブラック】
「アミダインダストリーの実験体。まさしく企業秘密の塊ですね。
それを手に入れられれば、我がブラック・カンパニーはアミダインダストリーとの交渉で優位に立つことができるはずです。
フォスさん、特殊渉外課の業務、開始です」

私は『サイバーブレインチップ』による【電脳制御】により、街角にある監視カメラのデータにアクセス。
その情報を分析し『L913』の足取りを追いましょう。
フォスさんの聞き込みの情報と合わせれば、必ずターゲットを見つけられるはずです。

ターゲットに接触できたら、企業所属であることは隠し一般人の学生のふりをします。仲良くなった演技で油断させつつ、実験体の『価値』を見定めていきましょう。



「アミダ社から逃亡した少女……これは興味のある案件かな」
 グリモア猟兵から依頼された今回の案件を、フォス・オネイロス(『ブラック・カンパニー』特殊渉外課所属、腕力担当・f36684)は評価する。自前の戦闘部隊を派遣してまでアミダ社が躍起になって回収しようとしている実験体、なかなかに興味をそそられる。
「何を抱えているのか判らないけど、まずは保護して理由を知りたいな」
 ただ、案件を受けるかどうかを決めるのは彼の一存でとはいかない。企業エージェントである彼の現在の業務は、所属企業の社長令嬢のパートナー兼護衛。一緒に行動している場合はそちらの意向も重視される。

「ペルセポネさん、この案件どうかな? アミダインダストリーも『特殊営業課』が動いているみたいだし、この少女にはなにかありそうな気がするんだけど」
「アミダインダストリーの実験体。まさしく企業秘密の塊ですね」
 その社長令嬢ことペルセポネ・エレウシス(『ブラック・カンパニー』特殊渉外課所属・f36683)は、フォスの提案に笑顔で応えた。その理由は無論慈善目的ではなく、企業のエリートらしい利害計算が含まれたものである。
「それを手に入れられれば、我がブラック・カンパニーはアミダインダストリーとの交渉で優位に立つことができるはずです」
 彼女の所属する特殊渉外課の主な業務は、手段を選ばず他勢力と『交渉』を行う事だ。
 交渉の成否を左右するのは、有効なカードをどれだけ手札に加えられるか。かの実験体から情報を引き出す事ができれば、企業間外交において大いに役立つことは間違いない。

「フォスさん、特殊渉外課の業務、開始です」
「はい、ペルセポネさん」
 かくして『ブラック・カンパニー』期待の若手エージェント二名は行動を開始する。
 この二人はそれぞれ得意分野が異なり、実験体の捜索も各自異なるアプローチで行う。
「私は監視カメラのデータにアクセスしてみましょう」
 ペルセポネは脳内に埋め込んだ「サイバーブレインチップ」から特殊な電磁波を放ち、街角のポータルからカメラの機能を【電脳制御】で操作する。そこに記録されたデータを解析して『L913』の足取りを追うつもりだ。

「ペルセポネさんが、映像やデータの痕跡を辿るなら、わたしは現場で聞き込みかな」
 一方のフォスはストリートの雑踏にくり出すと、適当な通行人を選んで話しかける。
 その【親和の眼差し】に見つめられた者は、無意識に彼女のことを『友達』と認識し、友好的な行動を行うようになる。特殊渉外課の人間らしいユーベルコードだ。
「すみません、この辺りで見慣れない少女を見ていませんか?」
「ああ、それなら向こうの方に……」
 対象がどちらの方角に行ったかまで進んで教えてくれる『友達』のおかげで、聞き込みはいたってスムーズに進んだ。目立ちやすい風貌なこともあって、それなりに目撃証言も多かったのも追い風である。

「2人の情報をもとに絞り込んでいけば、必ず見つけられるよね」
「ええ。私の分析結果をフォスさんの聞き込みの情報と合わせれば、必ずターゲットを見つけられるはずです」
 かくして情報収集とその統合を行った結果、二人はストリートでも貧民層が多く集う、寂れた区域にやって来ていた。企業の追跡や監視網から逃れるには、なるほど都合の良さそうな場所だ。
「ペルセポネさん、あの子じゃない?」
「ええ、そのようですね」
 そこで二人が見つけたのは、色白で線の細いレプリカントの少女。情報にあった通りの外見といい、世間ずれしていない雰囲気といい、彼女が件の実験体で間違いないだろう。

「まずは友達に……って」
 フォスがまた【親和の眼差し】を使おうとする前に、ペルセポネはすっと『L913』の元に歩み寄る。そして自然体にしか見えない笑顔を浮かべて、優しい口調で話しかけた。
「こんにちは、何かありましたか?」
「……?」
 ふいに声をかけられた少女のほうは、逃亡中ということもあって警戒している様子だ。
 交渉材料として確保するためにも、まずは仲良くなって油断させる。そのための演技も特殊渉外課の人間なら当然のスキルだ。

「すみません、急に話しかけてしまって。お困りのようでしたので、つい」
 企業所属の人間であることは隠し、一般人の学生のふりをして話しかけるペルセポネ。
 何があったのかやんわりと事情を聞くと、少女は迷った末におずおずと口を開いた。
「……道に、迷ってしまって。行きたいところが、あるのです」
「まあ、それは大変。でしたら私達も力になれるかと思います」
 アミダから逃亡してまで『行きたいところ』とは何処なのか。非常に気になる情報だ。
 ペルセポネが協力を申し出ると、少女もそれ以上拒もうとはせず、ぺこりと頭を下げて「ありがとう、ございます」と答えた。

(ペルセポネさん、仕事になると冷静だね)
 社長令嬢の見事な人心掌握スキルを間近で眺めつつ、フォスは二人の後を付いていく。
 ペルセポネは一般人の演技を続けたまま実験体の少女と会話を続け、彼女の『価値』を見定めようとしていた。
(個体としてもなかなか優秀な性能をしているようですね)
 話の端々から感じられるのは少女の知能の高さ。記憶力と演算力に優れ、初めて訪れたこの都市の構造もほとんど把握している。一般社会での実経験が少ないためか世間知らずな面も伺えるが、メガコーポの追跡を躱してこれたのは幸運だけではないのだろう。

(そして、なかなか核心に迫る情報は話さない。危機管理意識もあるようです)
 まだ警戒しているのか、あるいは"一般人"であるこちらを巻き込まないためなのか、少女はあまり自分の情報を話そうとしなかった。目的地についても追っ手を警戒してか、わざと迂回路を使っている様子。
(逆にそうでなければ、こちらが手に入れる秘密の価値もありませんものね)
 情報はじっくりと引き出すことにして、ペルセポネは自分のパートナーに目配せする。
 フォスは無言のままそれに頷き、周囲を警戒。もしアミダの連中が追いついてくれば、その時は「腕力担当」である自分の仕事だ――握り締めた拳は、戦闘準備を整えていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

如月・天里
アドリブ連携歓迎
【POW使用】
逃げだしたレプリカントか、他人事とは思えないや。
なんとしても助けてあげたいな。自由を認めないなんてそれに関係のない人を巻き込むなんて許せない。
ここは地道に聞き込みかな?愛想をよくして女の子を探そう。
それにしてもナンパをしてくる男の人が多いな。僕は男なんだけど。
え?それでもいい?可愛いと言ってくれるのは嬉しいけど今は忙しいんだよね。女の子の事を教えてくれればお礼はしたいけどね。
もし見つけたら敵じゃないことを示すために武器を捨てて根気よく話しかけるよ。僕も逃げ出したレプリカントであることを示すよ。
彼女が自由になる事に協力したいことを伝えるよ。僕の他にも味方がいることも



「逃げだしたレプリカントか、他人事とは思えないや」
 企業の所有物として扱われながらも脱走したレプリカント。それは如月・天里(デュアルプリティーニンジャ・f36660)も同じだった。首輪をかけられ自由を奪われる苦しみを知る者として、立ち上がった猟兵の1人だ。
「なんとしても助けてあげたいな。自由を認めないなんて、それに関係のない人を巻き込むなんて許せない」
 整った顔立ちに静かな怒りの表情を浮かべ、少年レプリカントはストリートに向かう。
 まずは、この広い都市の中から、逃走中の実験体の少女を見つけ出すところからだ。

「ここは地道に聞き込みかな?」
 天里は愛想をよくしてストリートの通行人に声をかけ、情報収集にいそしむ。良い印象を与えやすい話し方や仕草など、人と接する為の手練手管を彼は自然に身に付けている。
「ねえ、ちょっといいかな?」
「おっ? なんかオレに用?」
 彼に話しかけられた相手はみな概ね友好的な反応を返し、質問にも快く応じてくれる。
 ただ、その中で露骨に下心の見え隠れする連中も少なくないのが、少々悩みの種だが。

(それにしてもナンパをしてくる男の人が多いな。僕は男なんだけど)
 元々は女性型の愛玩兼護衛レプリカントとして製作されるはずだったせいか、男性型でありながら天里の容姿は少女と見紛うほど愛らしい。体型を見れば流石に男性だと分かるものの、線の細さから性別を勘違いする人間が出てくるのも無理はなかった。
「マジで男なの?」「全然イケそうなんだけどオレ」
 騙すつもりはないのできちんと男だと説明しても、なお疑う者や若干倒錯した連中などもいたり。ストリートの空気は良くも悪くも自由奔放で、拒絶感を示す者は少なかった。

「え? それでもいい? 可愛いと言ってくれるのは嬉しいけど今は忙しいんだよね」
 天里はひとまず彼らからの好印象を活かすことにしたようで、にっこりと艶のある笑みを浮かべて協力を求める。普段の純真な少年から小悪魔的な表情を見せた彼は、いっそう人を惹きつける魅力を放つ。
「女の子の事を教えてくれればお礼はしたいけどね」
「オッケー。オレの知り合いにも聞いてやるぜ!」
 こうして積極的に協力してくれるようになった有志のお陰で、少女の捜索はスムーズに進んだ。相次いで舞い込んでくる目撃情報に沿って、天里はストリートを駆けていく。

「見つけた。きみがアミダから逃げ出したレプリカントだね」
「っ……あなた、は……?」
 路地裏にて邂逅する2人のレプリカント。警戒気味に後ずさる少女に対して、天里は敵ではないことを示すために武器を捨てて、自分もまた彼女と同じ境遇にあることを示す。
「僕も逃げ出したレプリカントなんだ。きみが自由になる事に協力したい」
「ほんとう、ですか……?」
 嘘じゃないと根気よく話しかけると、少しずつ少女からの疑いも晴れていったようだ。
 差し伸べられた手を小さな手がそっと掴む。生まれや境遇に差異はあれど、企業からの自由を求める気持ちは、どちらも同じだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『アミダ・アーミーズ』

POW   :    サイバネティック・ランページ
自身の【部下】ひとつを用いた行動・攻撃の威力を3分間3倍にする。終了後[部下]は【過労】により破壊される。
SPD   :    アンタッチャブル・アドミニストレータ
状態異常や行動制限を受けると自動的に【強制停止コード】が発動し、その効果を反射する。
WIZ   :    ハイ・アンド・ロー
常識的な行動を囁く【論理AI】と、非常識な行動を囁く【暴走AI】が現れる。[暴走AI]に従うと行動成功率が8倍になる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ストリートの捜索のすえ、無事にレプリカントの少女を保護する事に成功した猟兵達。
 だが安心する暇もなく、執拗なるメガコーポからの追っ手はすぐそこまで迫っていた。

「ようやく見つけたぞ、実験体L913」

 現れたのは「陀」の刻印がされたパワードスーツを装着した、レプリカントの兵士達。
 指揮官機と思しき女性型のユニットが、無機質な視線で少女を睨み、冷たい声を放つ。

「鬼ごっこもここまでだ。無駄な抵抗はやめて研究所に戻れ」
「嫌です……私はもう、あそこには帰りません」

 アミダインダストリー特殊営業課鎮圧係、通称『アミダ・アーミーズ』。
 同社独自の私兵組織として、正規非正規問わず活動するオブリビオン戦闘部隊である。
 その実力は、アミダの研究所にいた少女も知っているだろう。それでも、投降を命じる事実上の最後通告に、彼女はかたくなに首を縦には振らなかった。

「強情な奴だ。帰還したら人格データの初期化が必要だな」

 おとなしく捕まる気がないと判断すれば、アミダ社の兵士達は一斉に戦闘態勢を取る。
 非戦闘用の実験体と軍人をベースにした戦闘用レプリカントとでは実力に圧倒的な差がある。多少手こずらされたものの、ここまで来れば任務完了は目前だろう。

「そこの民間人。そのレプリカントはアミダインダストリーの所有物だ。即刻引き渡せ」

 彼らにとって唯一の誤算は、ここに猟兵達がいたことだ。
 個人の心情や目的は異なれど、ここで少女をアミダ社に渡すつもりは無いという点で、一同の方針はほぼ一致している。でなければここまで来る理由もなかろう。

「今ならばまだ『回収に協力した善意の市民』ということにしてやってもいい。報酬金もくれてやろう。メガコーポの反逆者になるより、どちらが利口な選択かは分かるだろう」

 要はカネと引き換えにこの件からは手を引けというのが、アミダ社からの通告だった。
 高圧的で傲慢な、自分達がこの世界の支配者だと信じて疑わない態度。それは概ねにおいて事実なのだろうが、その枠に収まらない"例外"がここに存在する。

「私は気が長いほうではない。3秒以内に答えを決めろ」

 指揮官機が手を挙げると、部下のレプリカント兵士が銃口を猟兵達に向ける。
 ストリートの外れに漂う一触即発の空気。今回の依頼はここからが正念場だ。
新田・にこたま
3秒くれるなら3秒で切ります。

UCを発動し抜刀。敵部隊をなるべく巻き込めるよう特殊警棒の刀身を伸ばし、纏めてフォトンセイバー化した刃による鎧無視攻撃・範囲攻撃で切断します。

これで全滅させられれば最高なんですが、腐ってもメガコーポ。いえ、腐っているからメガコーポ。流石に全滅はしていないでしょう。
生き残り連中も片付けます。

残った敵集団の攻撃を見切り、ダンスで舞うような動きで躱しながら切り捨てていきます。避けきれない攻撃は盾受け、場合によっては盾で敵を攻撃し隙を作り、その敵も切ります。

私は正義の警察官です。なので命乞いの言葉を言う時間か辞世の句を詠む時間を最後にあげましょう。0.03秒以内にどうぞ。



「3秒くれるなら3秒で切ります」
 傲慢極まるメガコーポからの警告に対して、にこたまの対応は「即断即決」だった。
 敵との距離を見計らい、「正義の特殊警棒」で居合いの構えを取る。ここはまだ剣戟には遠く、一方的に撃たれる間合い。しかし彼女のユーベルコードはその前提を覆す。
「循環系接続……炉心出力上昇……ブレードフィールド展開……炉心出力最大……フォトンジェネレータ起動準備完了、サイバー猫丸! 抜刀!!」
 高らかな宣言と共に隠し機能が起動し、警棒の先からフォトンセイバーの刃が伸びる。
 燦然と輝く正義の刀身は一瞬のうちに十数メートルまで延長し、軌道上にいたアミダ・アーミーズをまとめて薙ぎ払った。

「ぐわッ?!」「き、貴様ッ!!」
 警告を無視しての先制攻撃は、あちらにとって予想外だったらしい。フォトンの刃の前ではパワードスーツも意味はなく、循環液と血飛沫を撒き散らして兵士達が倒れていく。
(これで全滅させられれば最高なんですが、腐ってもメガコーポ。いえ、腐っているからメガコーポ。流石に全滅はしていないでしょう)
 にこたまは甘い見積もりはせず、敵が体勢を立て直す前に【サイバー猫丸】を構え直して距離を詰める。初撃で得た優位を活かし、このまま生き残り連中も片付けるつもりだ。

「歯向かうつもりか、貴様! 公僕風情が調子に乗って!」
 "寛容な"慈悲を無碍にされた指揮官型は怒り、部下の強襲型に【サイバネティック・ランページ】を起動させる。過労による機能停止と引き換えに3分間だけ能力を強化する、完全に使い捨てる前提のユーベルコードだが、文句を言う者はアミダの社員にはいない。
「邪魔者は殺しても構わん! 力尽くで実験体を回収しろ!」
「ハッ!」
 ストリートに銃声が鳴り響き、弾丸の雨が降り注ぐ。しかしにこたまは鋭い洞察力でその攻撃を見切り、ダンスを舞うような軽快な動きで回避する。必殺の射撃を避けられた敵が驚いているうちに、彼女はその懐まで飛び込んでいた。

「遅いです」
「がはッ?!」「な、舐めるなッ!」
 洗練された体術と剣技で、次々に敵を斬り伏せていくにこたま。相手も負けじと弾幕の密度を上げるが、彼女は軽くて頑丈な「機動隊の盾」を構え、避けきれない銃弾を弾く。
「この程度で私は止められません」
「な……おぐぅッ!!?」
 そのまま盾を前にして、敵の指揮官めがけて突進を仕掛ける。仮にもメガコーポの正規兵を相手にしていると言うのに、まるで恐れを知らない戦いぶりに敵が瞠目した直後――硬い盾による衝撃が叩きつけられた。

「私は正義の警察官です。なので命乞いの言葉を言う時間か辞世の句を詠む時間を最後にあげましょう」
 敵の体勢を崩して隙を作ったにこたまは、サイバー猫丸の切っ先を突きつける。悪しき企業の手先に向ける眼差しは冷ややかで、勤勉に慈悲を口にしつつ容赦はまったくない。
「0.03秒以内にどうぞ」
「ま、待――……ぐはぁッ!!」
 指揮官型が何かを言いかける前に光刃は閃き、鋼鉄のボディをばっさりと斬り伏せる。
 悪党にかける情けの時間などこれで十分。まだまだ残っているメガコーポの連中を全員成敗するまで、正義の警察官は休む間もなく戦い続ける――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

撒菱・しのぶ
ニンニン☆チャンネル、今回の放送内容は〜?セイッ!!!(レプリカント兵士に不意打ち)
そう、"ゲリラ"配信でござる!

おや、ウィットに富んだジョークで一笑い起きるはずが、だいぶ怒らせてしまったみたいでござる。
ならば仕方ないでござるな、この子の自由とチャンネル登録者数増加の為に、オヌシらにはできるだけ派手に散ってもらうでござる!喰らうでござる、しのぶ式火遁『紅蓮のマンダラ』!

この模様は、倒されていくオヌシらも含め余すとこ無く空撮ドローンで撮影中…
観念するでござる!



「ニンニン☆チャンネル、今回の放送内容は~? セイッ!!!」
「ぐほぁッ?!!」
 猟兵と実験体の少女に投降を勧告するアミダ・アーミーズ。その背後からテンションの高い掛け声とともに、不意打ちを食らわせたのはしのぶだった。フォトンセイバーで背中から斬りつけられ、レプリカント兵士の1体がばたりと倒れ込む。
「そう、"ゲリラ"配信でござる!」
 予告なしでの配信であり、奇襲・撹乱戦の配信でもあるという二重の意味でのゲリラ。
 上手いことを言ったとばかりに彼女はカメラ目線でドヤ顔するが、それは撮れ高と引き換えに敵の神経を逆撫でする結果となった。

「貴様……フザけた真似を!」
 怒りに染まったレプリカントの思考は【ハイ・アンド・ロー】の論理AIよりも暴走AIの判断を選択し「武力で障害を抹殺し実験体を回収せよ」との決断を下した。猛然と向かってくる強襲型機体を見て、しのぶはおどけた様子で肩をすくめる。
「おや、ウィットに富んだジョークで一笑い起きるはずが、だいぶ怒らせてしまったみたいでござる」
 視聴者からの反応はともかく、不意打ちされた側からすれば笑えるはずもないだろう。
 殺意のこもった銃弾をニンジャ体術でひらりと躱し、彼女は改めて戦いの構えを取る。

「ならば仕方ないでござるな、この子の自由とチャンネル登録者数増加の為に、オヌシらにはできるだけ派手に散ってもらうでござる!」
 大義名分と上昇志向を掲げ、悪しきメガコーポに立ち向かうしのぶ。この配信はさっきアドレスを渡したストリートの人々も見ているだろう。ブザマな姿を見せてチャンネル登録者数を減らうわけにはいかない。
「喰らうでござる、しのぶ式火遁『紅蓮のマンダラ』!」
 ブディズムめいたポーズで印を組むと、派手な爆音とともに勢いよく炎が燃え上がり、複雑な幾何学模様を描きながらアミダ・アーミーズに襲い掛かる。軌道を読まれにくい上に配信映えもするように意識して編み出された、彼女独自のカトン・ジツである。

「こいつ、まさか本物のニンジャだと……!!」「熱ッ、熱ッ!?」
 ただのなりきり系ストリーマーかと思いきや、ガチのニンジュツを使ってきたしのぶに敵は動揺を隠せない。火遁の嵐はまたたく間に彼らを包囲し、外側にいた者から焼き焦がしていく。
「爆殺! でござる!」
「「ぐわぁぁぁぁぁぁっ!!!」」
「す、すごい……」
 最後は火薬でも使ったように派手に爆発四散する兵士達。憎たらしいメガコーポの連中がやられていく様子には、視聴者も惜しみなく「いいね」や投げ銭を飛ばす。後ろのほうでそれを見ていたレプリカントの少女は、びっくりした顔で固まっていたが。

「この模様は、倒されていくオヌシらも含め余すとこ無く空撮ドローンで撮影中……観念するでござる!」
 上空に浮かぶ配信用カメラ付きドローンをびしっと指差して、敵兵を一喝するしのぶ。
 このままではアミダ社の威信も株価もダダ下がりである。アミダ・アーミーズは慌てて銃口をドローンに向けるが――。
「こ、こんな撮影は中止だ!」
「おっと、させないでござるよ!」
 隙ありとばかりに飛び込んだしのぶは、火遁の炎をまとったフォトンセイバーで敵兵を斬り捨てる。閃光と火の粉のエフェクトが舞い散り、ばっさりと両断されたレプリカントが「グワーッ!」と悲鳴を上げて爆散する様は、本日のハイライトのひとつになった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ニクロム・チタノ
メガコーポねぇ、そういう大きな圧政にはボク逆らいたくなるんだよね?
答えなら決まっているよアナタ達に会う前からね
つまり、あっかんべーてことさ反抗の加護あり
自分で戦わずに部下に戦わせるなんてつくづく腐っているね?まあ圧政者に言っても無駄かな
悪いけどこの辺りには重力領域を展開させてもらったよ
どれだけ強化されようとそんな遅い動きじゃ無意味だね?
逃げられないよ蒼焔を張り巡らして退路を断っておいたからね、それに護りの蒼焔はアナタ達のような悪人にしか反応しないからね
さて部下も過労で倒れたみたいだね、これで反抗の雷装をアナタにくらわせられる
散々ヒドイ実験をしてきた報いだよ、少しは弱者の痛みを知ると良いよ!



「メガコーポねぇ、そういう大きな圧政にはボク逆らいたくなるんだよね?」
 反抗者ニクロムは迷いなくそう言って、レプリカントの少女とアミダ社の追っ手の間に割って入った。この世界を経済力で支配し、人々を苦しめる圧政者の手先に、彼女が従う理由など皆無である。
「答えなら決まっているよアナタ達に会う前からね」
 その態度と手にした「反抗の妖刀」を見れば、彼女の意思は傍目にも明らかであろう。
 仮面に隠されていない右目元に指をあてて、反抗者の少女はおどけた態度で挑発する。

「つまり、あっかんべーてことさ」
「小娘が、身の程を教えてやる」
 こうまで馬鹿にされてはアミダ・アーミーズも黙っていない。指揮官のレプリカントが【サイバネティック・ランページ】を発動すると、部下の1体がボディのリミッターを外してニクロムに襲い掛かってくる。
「やれ! アミダインダストリーの偉大さと忠勤精神を見せつけてやるのだ!」
「自分で戦わずに部下に戦わせるなんてつくづく腐っているね? まあ圧政者に言っても無駄かな」
 あれでは戦闘力は向上しても反動で部下の体もただでは済むまい。ブラック企業そのものなやり口にやれやれと肩をすくめつつ、ニクロムは【貴女に反抗の竜チタノの加護を】を以て対抗する。

「悪いけどこの辺りには重力領域を展開させてもらったよ」
「ぬっ……?!」
 ニクロムに接近した途端、強襲型レプリカントは背中に巨像がのしかかったような重圧を感じる。通常の何倍、いや何十倍にも増大した重力の檻が、圧政者を戒める鎖となる。
「どれだけ強化されようと、そんな遅い動きじゃ無意味だね?」
「チッ、一旦下がれ!」
 異変に気付いた敵は重力異常の起きている領域から離脱しようとする。だがニクロムが刀を足元に突き立てると、切っ先から蒼い焔がほとばしり、領域の外縁部を囲い込んだ。

「逃げられないよ。蒼焔を張り巡らして退路を断っておいたからね」
 これも反抗の竜チタノが彼女に与えた加護のひとつ。防御力を強化する護りの蒼焔は、悪しき者を阻む障壁にもなって、重力の檻から敵を逃がさない。今さら焦りだした連中の表情は実に無様だ。
「それに護りの蒼焔はアナタ達のような悪人にしか反応しないからね」
 護るべき少女は蒼焔の囲いの外側。圧政者を討ち取るための舞台の準備は整った。妖刀の切っ先を突きつけて威嚇するニクロムに、進退窮まったアミダ・アーミーズは我武者羅に攻撃を仕掛けるが――超重力で鈍化した動きでは、とても当たるものではない。

「ぐ……申し訳、ありません……」
 ひらりひらりと身を躱すニクロムを捉えられないまま、ユーベルコード起動から3分が経過した強襲型レプリカント。限界を超えたボディが悲鳴を上げ、糸が切れた人形のようにその場に崩れ落ちる。
「さて部下も過労で倒れたみたいだね、これで反抗の雷装をアナタにくらわせられる」
「ッ――……!」
 ニクロムの狙いは最初から後方にいる指揮官型。反抗心に満ちた眼差しに射抜かれて、敵は慌てて退避しようとするが――彼女の放つ一撃は、そんな機械の脚よりずっと速い。

「散々ヒドイ実験をしてきた報いだよ、少しは弱者の痛みを知ると良いよ!」
「ぐ、ぐわあぁぁぁッ!!!?」
 戦場に一条の閃光を刻んで、雷装の一撃がアミダ・アーミーズの指揮官を打ちのめす。
 ニクロムの怒りは電流となって機械の身体を駆け巡り、精密回路を徹底的に破壊する。
 絶叫を上げてばたりと倒れた、その指揮官型が受けたダメージは明らかに甚大だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

式之・神子
おっとォ!一般ピーポーが居るのに巻き添えは良くないンよ!
これは放送事故予測可能回避不可能なンよ
おい!止めろ!カメラ止めろ!!



<只今電波が乱れております、暫くお待ち下さい>



――ったく、世話かけさせやがって
けっ、このパーツ、鋳造が甘くて脆いンよ、下請けは孫請けまで任せて予算中抜きしたな?
これじゃあジャンク品としてしか売れないンよ、石ころにすらなりゃしな......
...ン?私何もしてないンよ!
画面変わっている間にパラライズマイクロケーブルぶっ刺して電力奪って、コラプトサイバネケーブルで頭をパァにして、テラーマニピュレイトでバラしてサイバースペースのフリマにパーツ売り捌いてなんかいないンよ!



「おっとォ! 一般ピーポーが居るのに巻き添えは良くないンよ!」
 見るからに荒事上等なアミダ・アーミーズの態度に、大袈裟なくらい慌てた態度を取るのは神子。果たして猟兵が"一般人"と呼べるのかは微妙なところだが、ストリートでこれ以上騒ぎを起こせば望まぬ被害が増えそうなのは確かである。
「これは放送事故予測可能回避不可能なンよ。おい! 止めろ! カメラ止めろ!!」
 誰にともなく彼女が叫ぶと、戦場を空撮していたドローンや監視カメラ、その他あらゆる撮影装置の映像が一斉に乱れ、現場の様子の代わりに綺麗な風景とフュージョン音楽を流し始めた。

 <只今電波が乱れております、暫くお待ち下さい>

 観測者達がそのテロップに困惑すること十数分後。ようやくカメラの映像が復帰する。
 そこには、バラバラに解体された多数のレプリカントの残骸と、その上にのしっと座りこんで顔をしかめる神子の姿が映し出されていた。
「――ったく、世話かけさせやがって」
 片手でこめかみをトントンと叩き、舌打ちしながら残骸を漁る様子は、ドン引きされてもおかしくないだろう。某所の某スレで学習してしまった悪いところが出まくっている。

「けっ、このパーツ、鋳造が甘くて脆いンよ、下請けは孫請けまで任せて予算中抜きしたな?」
 どうやら神子は破壊したレプリカント兵から部品を抜き取り、品定めをしている最中のようだ。どうもお眼鏡にかなうものは少なかったらしく、アミダインダストリーの余念なきコストカット精神とブラックな内部事情がうかがえる。
「これじゃあジャンク品としてしか売れないンよ、石ころにすらなりゃしな……ン? 私何もしてないンよ!」
 と、そこで彼女はようやく映像が戻っていたのに気付いたらしく、ケロッと普段の調子とわざとらしい態度で弁解する。ここまで見られた時点でもう色々と手遅れだと思うが、電波が乱れている間に何が起きたのかは皆気になるところだろう。

 ――ここからは、神子が放った干渉遮断コマンドにより引き起こされた【放送事故】の最中、現場で起きた出来事をダイジェストでまとめたものである。

「な、何が起こったんだ?」「なにも見えないぞ!」
 視聴者が放送事故を食らっていた最中、アミダ・アーミーズも同じ影響を被っていた。
 神子の放ったコマンドはレプリカントのサイバーアイにも干渉し視界を狂わせたのだ。目の前に広がる謎の風景と音楽で現実から遮断され、彼らはただただ困惑するばかり。
「いただきなンよ」
「ぐわッ?!」
 その隙に神子は敵の首筋のコネクタに「パラライズサイバネケーブル」を突き刺して電力を奪い、さらに「コラプトマイクロケーブル」で電脳のデータを侵食する。何が起きているかを理解できぬまま、アミダ・アーミーズの頭脳とボディは蹂躙されていく。

「全部バラして私の小遣いになるといいンよ」
 そう言って神子は袖口から「テラーマニュピレイト」を伸ばし、動かなくなったアミダの兵士達を解体処理する。メガコーポが擁する私兵部隊なら、パーツにも値が張るものを採用しているだろうと期待して――まぁ、その結果は前述の通りだったわけだが。
「や、やめ……!」
 生きながらにバラされるレプリカント達の恐怖の悲鳴は届かない。蟹の殻をむくようにボディアーマーを外され、手足も胴体も頭部も電脳も、ことごとく分解されていく――。

「画面変わっている間に電力奪って、頭をパァにして、バラしてサイバースペースのフリマにパーツ売り捌いてなんかいないンよ!」
 ――とまあ、後の顛末も含めた一部始終をまとめれば、当の本人が口を滑らせた通り。
 いくら相手が悪いメガコーポとはいえ、その所業が放映されていれば炎上していたかもしれない。ある意味では企業よりもタチの悪いものの片鱗をうかがわせた神子であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カナ・スズリ
SPD判定

※アドリブ歓迎、共闘可

・行動
相手に啖呵を切ってから少女を後ろに下げ、敵集団の一人をUCで先制攻撃
その後は一旦隠れてからの不意打ちに切り替える

・セリフ
彼女はイヤと言っているぞ
ギを見てせざるはノー・ブレイブ、アタシはこの子を助ける!

(口元をマフラーで覆い)
ドーモ、アミダ・アーミーズ=サン、カリグラフィーです!
ウチクビ・ゴーモン、イヤーッ!

・UC演出
抜き放ったカタナ『ウチクビ』のルーンカタカナをなぞると文字が光を放ち
敵を切りつけるたびに一文字づつ敵の体に文字が刻印されていく
4文字が揃った瞬間に敵の首が飛び相手はしめやかに死ぬ
(技能:忍び足、暗殺、達筆、鎧無視攻撃)



「彼女はイヤと言っているぞ」
 か弱き少女に銃口を向けるメガコーポの尖兵の前に、颯爽と立ちはだかったのはカナ。
 このレプリカントの実験体には個人的な共感もある。悪しき企業に対する怒りもある。
 そしてユウジョウのルーンカタカナと共に刻んだ「力に成りたい」という想いがある。
「ギを見てせざるはノー・ブレイブ、アタシはこの子を助ける!」
「カナ、さん……」
 勇ましく啖呵を切ってから少女を後ろに下げ、レプリカントニンジャは戦場を駆ける。
 滑らかなスリアシ・ステップで敵の間合いに踏み込み「ウチクビ・フォトンカタナ」を抜く。その柄に刻まれた4文字のルーンカタカナをなぞると、煌々と文字が光を放った。

「スゥー、ハーッ、……ウチクビ・ゴーモン!」
「グワッ?!」
 カナのカタナに切りつけられた敵兵のボディに、一文字ずつ文字が刻印されていく。
 見るものに恐怖と死を予感させる、「ウ」「チ」「ク」「ビ」の四文字――その全てが揃った瞬間に相手の首は飛び、しめやかに死を迎える。
「グ、グワーッ!!!」
 刎ね飛ばされた首が上げる断末魔は、他のアミダ・アーミーズにも戦慄を伝播させた。
 誰ともなく口にする「何者だ!」の叫び。それに応えるようにカナは口元をマフラーで覆い、奥ゆかしいアイサツを行った。

「ドーモ、アミダ・アーミーズ=サン、カリグラフィーです!」
「き、貴様ニンジャか……!!」
 文明社会の闇を暗躍する超人、サイバーニンジャ。その卓越した体術とユーベルコードの力は、ひとたび敵対すればメガコーポでさえ手を焼く相手だ。よもやこんなストリートに本物のニンジャが――それも無所属のヌケニンが居るとはアミダも思わなかったろう。
「けったいな技を使うヤツだ……一斉に攻めろ! ヤツを近付けるな!」
「遅い!」
 それでも社命を受けている以上、ここで尻尾を巻いて逃げるわけにもいかない。指揮官の命令に応じて防御型が守りの陣形を敷き、強襲型が一糸乱れぬ連携で銃撃を仕掛ける。
 しかしカナは銃弾の雨が降り注ぐ前に音もなくその場から飛び退き、影に身を隠した。

「ッ、どこへ隠れた……?!」
 先ほどの鮮やかな先制アンブッシュから分かるように、ニンジャの本分は奇襲にある。
 並みの人間やレプリカントを遥かに超えた俊敏さと、物音ひとつ立てぬ隠密性の高さ。この二つを最大限に活かして、カナは敵部隊に不意打ちを仕掛ける。
「ウチクビ・ゴーモン、イヤーッ!」
「グワーッ!」
 決断的シャウトとフォトンカタナの斬撃が放たれるたび、達筆なるウチクビの四文字が敵に刻まれる。断末魔を聞きつけた他の兵士が銃口を向ける頃には、もうカナの姿はそこにはない。ゴーストの如く死角より現れる暗殺者に、彼らは一方的に屠られるばかりだ。

「な、なんてヤツだ!」
「すごい……!」
 まさに「目にも留まらぬ」カナの暗殺戦法は、敵の指揮官には恐怖を、味方の少女には希望を与える。もう何人ものアミダ社員が、たった一人のニンジャに斃されているのだ。
 これが、自らの意思をもってワザを振るうと決めたカナの強さ。誰にも縛られることのないルーンの閃光は、戦場に裁きのカタカナを刻み続ける――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

静寂・拝人
シャルル(f36639)と
手を引けば報奨金をねぇ…その子には報奨金なんか目じゃないくらいの『価値』があるんだろう?それをみすみす手放すほど馬鹿じゃあないさ。
それにその子の人格を初期化するなんて聞いたら尚更だ。 

シャルル、まかせた。
UC【サイバーリンクシステム】発動
シャルルの熱線銃を強化。

部下ってのはなぁ大事に使わないとダメなんだぜ?うちのシャルルは優秀だしな。
【早業】で周囲の敵の整備できていない装備にも接続し【プログラム】で敵攻撃用に切り替え。
ディスクガンによる敵制御装備への【ジャミング】も実行


シャルル・メリー
拝人(f36629)と
拝人とレプリカント少女を【かばう】ように位置どり。
拝人はあんな風に言ってますが…ただ単純に貴女を守りたいだけですから…。
その結果アミダ社の情報が得られれば大儲けって感じです。
まぁ、この世の中結果が全てですからね。
案外うまく行くんですよね…私としてははらはらさせられてばかりですが。

(拝人に声をかけられて頷き)
了解です。
強化された熱線銃でUC【クイックドロウ】を使用。状態異常を感知する前に対処してしまいましょう。
私は優秀ですからね拝人が望むならそれくらいやって見せますよ。
 



「手を引けば報奨金をねぇ……その子には報奨金なんか目じゃないくらいの『価値』があるんだろう? それをみすみす手放すほど馬鹿じゃあないさ」
 アミダ社からの一方的な提案を、拝人はにべもない態度で突っぱねる。あくまで自分と企業の利益追求が目的のような言い草だが、その後で彼はぽつりと小さな声で付け足す。
「それにその子の人格を初期化するなんて聞いたら尚更だ」
 たびたび誤解されやすい態度を取りつつも、意外と内面では人情家。そんな護衛対象の人となりをよく把握しているシャルルは、彼とレプリカントの少女をかばうように位置取り、少女のほうにそっと声をかける。

「拝人はあんな風に言ってますが……ただ単純に貴女を守りたいだけですから……。その結果アミダ社の情報が得られれば大儲けって感じです」
 企業と個人の目的が必ずしも相反するとは限らない。今回のケースであれば、アミダ社の回収作戦を阻止することで損害を与え、自社に相対的な利益と情報を持ち帰ることができれば、少女の扱いについて上もとやかく言ってこないだろう。
「まぁ、この世の中結果が全てですからね。案外うまく行くんですよね……私としてははらはらさせられてばかりですが」
「信頼して、いるのですね」
 億劫そうに肩をすくめるシャルルの仕草に、レプリカントの少女は二人の間にある絆を感じた。口では文句を言いつつも危険な護衛の立ち位置から動こうとしないのが、仕事だからという理由だけでは無いことは、まだ出会って間もない彼女にも分かった。

「貴様ら、ただの民間人ではないな……どこの企業の回し者だ」
「さてね。言うわけないだろう?」
「お答えできるのは、貴方達の敵だということだけです」
 スーツ姿の男女二人を、自社傘下にない企業の人間だと察したアミダ・アーミーズは、にわかに殺気を強くする。しかし拝人もシャルルもそんな威嚇に怯むような軟なキャリアは積んでいない。
「シャルル、まかせた」
「了解です」
 拝人に声をかけられてシャルルは頷き、熱線銃による【クイックドロウ】を仕掛ける。
 目にも留まらぬ早業で抜き撃たれた閃光は、反応すらさせずに敵兵の心臓部を貫いた。

「なっ……!?」
 シャルルの射撃技術もさることながら、敵が驚いたのはその威力。アミダ社で開発されたボディアーマーの装甲はまるで通用せず、熱線を受けた箇所に融解の穴が空いている。
「あのサイズの熱線銃で、我が社の防具が貫通されるなど……ええい! 貴様ら、根性が足りんぞ!」
「「も、申し訳ありませんッ!」」
 危機感を覚えた指揮官の叱咤により、部下のレプリカント兵士は【サイバネティック・ランページ】を起動。過労による自壊も厭わぬ超過駆動をもって、敵性企業を撃破すべく猛攻に打って出た。この崇拝じみた忠勤精神こそがアミダの持ち味なのかもしれない。

「部下ってのはなぁ大事に使わないとダメなんだぜ? うちのシャルルは優秀だしな」
 滅私奉公を地で行くアミダ・アーミーズとは対照的に、拝人は余裕のある態度で語る。
 一見部下任せにしているように見えて、【サイバーリンクシステム】によりシャルルの熱線銃を強化するなど仕事はしている。彼女の武装が敵を一撃で撃破する性能を発揮しているのはこのためで、命中率と処理速度の増加が威力の向上にも繋がっていた。
「無能な上司の下について、不運でしたね」
 強化された熱線銃を慣れた手つきで巧みに操り、シャルルは次々に敵を射貫いていく。
 その早撃ちの技量は、状態異常に対して自動的に強制停止コードを発動させるはずの、アミダ社員の【アンタッチャブル・アドミニストレータ】の反応速度すら上回っていた。

「私は優秀ですからね、拝人が望むならそれくらいやって見せますよ」
「こっ、コイツ、なんて性能だ……!」
 達人的な腕前をこともなげに披露し、護衛対象達の元に敵兵を寄せつけないシャルル。
 超過駆動の限界時間が迫る中でアミダ・アーミーズが攻めあぐねる一方、拝人は隙をみて周囲の敵の整備できていない装備にも有線接続を行い、プログラムを書き換える。
「その優秀な部下をサポートすんのも、上司の役目だよな」
「ぐわッ!?」「銃が勝手に……ッ!!」
 攻撃対象を切り替えられた装備がアミダの兵士に牙を剥き、さらに動揺と焦燥を誘う。
 そこに拝人は「ディスクガン」からレーザー化した破壊プログラムを撃ち込み、敵制御装備へのジャミングも実行する。もはやここに奴らの自由に扱える武装はひとつも無い。

「とっととお引取り願おうか」
「お帰りはあちらです」
 妨害と支援に徹する拝人と、優秀な戦闘技術で敵兵を排除するシャルル。二人の連携はアミダ・アーミーズのそれを凌駕しており、多勢の相手をまるでものともしていない。
「こ、こんなことが……我がアミダの精鋭が……!」
 倒れた部下の山を前にして、真っ青になる指揮官機。ただの民間人だと自分達が舐めてかかった相手が、どれほど厄介な存在だったのか、彼らはようやく理解し始めたようだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ペルセポネ・エレウシス
【ブラック】
「ここは私たちに任せて、あなたはここで隠れていて下さい」

実験体の少女をかばい、アミダインダストリーの兵士の前に立ちはだかりましょう。
この少女からは、我々ブラック・カンパニー特殊渉外課が、じっくりとお話を聞かないといけませんからね。

「無害な一般人の私たちを襲ってくる兵士たち……
返り討ちにしてしまっても正当防衛ですよね?」(くす

アミダの兵士に正体は隠しつつ、フォスさんに迎撃を任せます。

「フォスさん、敵の暴走AIには注意をしてくださいね。
今、秘密兵器を出しますので」

取り出したトランクから射出するのは、フォスさんの義体用の強化パーツです。

「さあ、フォスさん、全力でやってしまってください」


フォス・オネイロス
【ブラック】

「Nein」

相手が言い切る前にダッシュして【飛跳旋蹴】で敵を吹き飛ばすわ。
3秒なんて、隙としては大きすぎね。

そのまま敵が態勢を立て直す前に、義肢のパワーを利用して立体機動。
囲まれないように動きつつ、ひとりひとりを確実に沈めていこう。

数では勝てないから、ここはなるべく乱戦に持ち込んで、
敵同士で動きを妨げるような体捌きで戦うけど、

ただ、やはり相手も特殊偉業部、数の差は厳しく、
徐々に押され始めてしまいますが、

わたしがジャンプした絶妙のタイミングで射出された、
ペルセポネさんの『秘密兵器』と合体。

さらに出力の上がった義肢を、
サブ電脳フル回転でなんとか制御しながら、相手を蹴散らしますね



「貴様ら、本気で歯向かうつもりか? 万が一我々を退けられたとしても、アミダインダストリーは絶対に許しはしないぞ!」
 回収作業の途上で立ちはだかった猟兵達の抵抗を受け、アミダ・アーミーズの指揮官は焦りを含んだ調子で叫ぶ。栄えあるアミダ社の実力部隊である自分らが、よもやここまで苦戦するとは思っていなかったのだろう。
「今ならまだ遅くない。3秒以内に――」
「Nein」
 それでも懲りずに指揮官が降伏勧告を言い切る前に、フォスがダッシュで【飛跳旋蹴】を叩き込む。義足のブースターユニットを使用した疾走は飛翔の域に達し、着地と同時に放たれた超高速の旋風脚は、砲弾のような威力で敵集団を吹き飛ばした。

「3秒なんて、隙としては大きすぎね」
「「ぐはぁッ!!?」」
 ブラック・カンパニー特殊渉外課の腕力担当フォス。その実力は同じメガコーポであるアミダ社の特殊営業課鎮圧係にも引けを取らない。蹴り足の感触を確かめるようにトンとつま先で地面を叩いた彼女は、すぐさま吹き飛ばした敵に追撃を仕掛けていく。
「ここは私たちに任せて、あなたはここで隠れていて下さい」
「は、はいっ」
 前線に飛びこんでいくパートナーの背中を視線で追いつつ、実験体の少女をかばうように立つのはペルセポネ。一般人の学生を名乗っていた彼女らが見せる場慣れした対応に、少女はやや驚いている様子だが、指示にはすぐさま従った。

(この少女からは、我々ブラック・カンパニー特殊渉外課が、じっくりとお話を聞かないといけませんからね)
 ペルセポネが優先するのはあくまで自社の利益。価値を認める限り彼女は対象を守り、敵対企業の妨害があれば武力をもって排除する。これも特殊渉外課の「交渉」の範疇だ。
「無害な一般人の私たちを襲ってくる兵士たち……返り討ちにしてしまっても正当防衛ですよね?」
「抜かせ……!」
 アミダの兵士もこちらがただの一般人でないことは察しているだろうが、正体と所属は隠したまま彼女はくすりと笑う。とぼけた物言いに怒りを覚えた敵兵は銃口を向けるが、そうはさせじと護衛役が駆ける。

「フォスさん、迎撃は任せます」
「はい」
 機械化された右の義足から繰り出されるフォスの蹴りが、ペルセポネを狙う銃を敵兵の手から弾き飛ばす。半身をサイボーグ化した彼女の身体能力は高く、機動性能においては重装備の敵を凌駕していた。
「邪魔をするか!」
「当然よ」
 己の優位点をフルに利用した立体機動で、フォスは敵群に囲まれないように動きつつ、ひとりひとりを確実に沈めていく。初撃の【飛跳旋蹴】で受けた怯みから敵はまだ体勢を立て直しきれておらず、連携も満足にとれずに翻弄させるばかりだ。

(数では勝てないから、ここはなるべく乱戦に持ち込もう)
 単純な義体のスペックだけでなく、多数の敵を単騎で相手取るための戦い方もフォスは心得ていた。機敏な体捌きであえて敵の密集するポイントに踏み込み、敵同士で動きを妨げるように仕向けるなど、その立ち回りは徹底している。
「フォスさん、敵の暴走AIには注意をしてくださいね。今、秘密兵器を出しますので」
 パートナーの戦いを見守りながら、ペルセポネは持っていたトランクを開けて何か準備をしている。直接的な戦闘力ではフォスに劣る感はあるが、その分サポート能力に長けているのが彼女の持ち味だ。

「味方に構うな! 任務遂行と敵の排除だけを優先しろ!」
 一方でアミダ・アーミーズはペルセポネの危惧した通り、暴走AIの囁きに基く【ハイ・アンド・ロー】の強硬手段に打って出た。論理的思考をかなぐり捨てた彼らは損害が増すのを承知しつつ、社命を果たすために粉骨砕身の精神で挑む。
(やはり相手も特殊営業部、数の差は厳しいですね)
 同士討ちも覚悟のうえで強引に攻め掛かられるほうが、フォスにとっては厄介だった。
 立ち回りでキープしていた優位も徐々に覆され、押され始めた彼女の頬には一筋の汗がつたう――だが、それでも状況を絶望視してはいなかった。

「死ねえッ!」
 兵士の一人が鋼鉄の拳で殴りかかってきた瞬間、フォスはブースターを起動して跳躍。
 それに合わせた絶妙のタイミングで、ペルセポネがトランクから【義体用強化パーツ】を射出する。
「我が社の研究部門が開発した強化パーツです」
 フォス用にカスタマイズされた『秘密兵器』は、空中で彼女の義肢とピタリと合体し、ダメージを回復させると同時に性能を向上させる。これぞブラック・カンパニーの技術力の産物、世界の覇を競うメガコーポの力だ。

「さあ、フォスさん、全力でやってしまってください」
「任せて、ペルセポネさん」
 最高のパートナーからの支援に応え、フォスは着地と同時に再度【飛跳旋蹴】を放つ。
 強化パーツで増幅された旋風脚は最初に放った時よりも絶大な威力をみせ、周囲に居た相手をまとめて蹴散らした。
「邪魔しないで」
「「ぐ、ぐわぁぁぁっ!!!?!」」
 義肢の出力が急激に上がれば、普通は生身とのバランス調整や制御に苦労するだろう。
 しかしフォスは涼しい顔のままサブ電脳をフル回転させ、暴れ馬のような手足をなんとか制御しながら戦ってみせる。全力を期待されたのに、不甲斐ない姿は見せられまい。

「こいつ、なんて強さだ?!」「この義体の性能、やはりただの一般人では……!」
 暴走AIにより逆転したかに見えた戦況はまたもや覆され、アミダ・アーミーズは驚愕を抱きながらなぎ倒されていく。ともに"裏"の業務も担当するメガコーポの特殊部門同士の戦いは、この場はブラック・カンパニーに軍配が上がったようだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

カビパン・カピパン
「了解」
問いに1秒以内に返答し、彼女は進み出た。
「L913…大気汚染の影響により変化しましたが異常なし」
投降したのはカビパン。
「待て」
「なんでしょうか。そこの貴方は胸が大きい童顔の女が好みだという男心をくすぐる女の趣味をしたレプリカントでしたね」

「何でそんな事知ってんだ!」
事前にL913から教えて貰っていた個人情報で公開処刑。アミダ・アーミーズはその口を止める事にした。
「信用していただけないので。そこの貴方は―」

「間違いなくL913だ、タイチョー早く連れて帰りましょう!」
「環境汚染の影響で変化しているがL913だ!」
他人に知られたくない性癖やら黒歴史を暴露される前にカビパンを代わりに回収した。



「くそっ……逆らうなら容赦はしないぞL913。今のうちに降伏するほうが身の……」
「了解」
 窮地に陥ったアミダ・アーミーズの苦し紛れの勧告に、1秒以内で返答する者がいた。
 進み出たのはレプリカントの少女――ではなく、なぜか雪女の格好をしたカビパン。
「L913……大気汚染の影響により変化しましたが異常なし」
「いや、誰だ貴様は」
 どうやら身代わりになるつもりのようだが、彼女とレプリカントは外見的にも特に似ていないし、変化したと言っても限度がある。脱走してからの短時間で別人と見紛うほどに変わっていたら、それはもう明らかに異常ありだろう。

「待て、貴様に用はない。とっとと本物のL913を……」
「なんでしょうか。そこの貴方は胸が大きい童顔の女が好みだという男心をくすぐる女の趣味をしたレプリカントでしたね」
 雑なごまかしに苛立った様子でレプリカント兵が詰め寄ると、カビパンはそいつの顔を見て唐突に訳のわからないことを言い出した。いつものギャグかと思いきや、相手のほうはギョッと目を丸くして驚いた顔になる。
「何でそんな事知ってんだ!」
 どうやら事前にレプリカントの少女から、敵兵の個人情報を教えて貰っていたらしい。
 メガコーポの研究所内にいたとはいえ、そんな社員個人の情報まで把握していたとは、流石の高性能――本人もべつに知りたくはなかったのか、そっと目を逸らしているが。

「信用していただけないので。そこの貴方は――」
 カビパンはさらに近くにいた兵士を指さして、恥ずかしい秘密を暴露しようとする。
 レプリカントはロボットとはいえ、有機パーツも所有している人間に近い機械である。食事、成長、生殖の概念もあれば、当然人間のようなアレな性癖に目覚める者もいよう。
 そして戦闘中とはいえ誰が見ているかも分からないストリートで、このまま公開処刑を続けられれば彼らの社会的ダメージは計り知れない。
「ま、待て! もういい、それ以上はいい!」
 アミダ・アーミーズは任務よりも何よりもまずは、彼女の口を止めることが最優先だと判断した。それは【ハイ・アンド・ロー】の暴走AIにより導き出された行動だったのかもしれないが、人は時として論理よりも優先すべきことがあるのだ。

「間違いなくL913だ、タイチョー早く連れて帰りましょう!」
「は? いや貴様ら、どう見てもこいつは……」
 他人に知られたくない性癖やら黒歴史を暴露される前に、カビパンを代わりに回収しようとする上司に進言するレプリカント達。何を言っているんだこいつらはと指揮官は首を傾げるが、社会的な死を恐れる彼らは必死である。
「環境汚染の影響で変化しているがL913だ!」
「汚染されているのは貴様らの電脳ではないのかバカモノ!」
 噛み合わないやり取りで現場は混乱をきたし、すったもんたの言い争いが起きる始末。
 結局カビパンが回収される前に、この部隊は他の猟兵の手で壊滅することになるのだが――彼女がもたらした動揺が戦局に与えた影響も皆無ではないだろう。たぶん。

大成功 🔵​🔵​🔵​

堂島・アキラ
オレと嬢ちゃんのドライブデートを邪魔するとはイイ度胸だ。
お嬢ちゃんはここで待ってな。それとオレが戻るまで目と耳を塞いどけ。OK?

3秒も待ってくれるとは随分優しいんだな。オレだったら……問答無用だッ!
ユーベルコードで装甲を削って移動力、つまりスピードを5倍に増やす。
もう何やったってお前らじゃオレを捉えられねえぞ!

3分後の自壊なんざ待たねえでマンティスセイバーでサクサク殺るぜ。
どんな強い攻撃も当たらなけりゃ意味がねえんだよ指揮官様よ。
オレの顔に見覚えはねえか? 思い出すのに3秒待ってやる。

待たせたなお嬢ちゃん。おっと目は瞑ったままでいい。
正真正銘のゴミになったアイツらを見たらトラウマになっちまう。



「オレと嬢ちゃんのドライブデートを邪魔するとはイイ度胸だ」
 メガコーポの私兵に警告を突きつけられても、アキラは相変わらず不敵に笑っていた。
 無頼漢を地でいく彼が、企業の言いなりになるはずもない。お楽しみを邪魔するヤツは誰であろうとブッ飛ばすのが平常運転だ。
「お嬢ちゃんはここで待ってな。それとオレが戻るまで目と耳を塞いどけ。OK?」
「は、はい……?」
 よく分からない言いつけに小首を傾げつつも、レプリカントの少女はその通りにする。
 今から起こるものを見せつけるのは、純粋無垢な娘にはちと刺激が強いだろう。少女を置いて戦場に向かっていくアキラの顔は、ゾッとするほど凶暴な形相をしていた。

「3秒も待ってくれるとは随分優しいんだな。オレだったら……問答無用だッ!」
 獣じみた咆哮とともに、【全身武装美少女】は自身の機械化義体(サイバーザナドゥ)を特化形態に変形させる。装甲を削って防御力を半減させる代わりに、浮いたリソースを移動力に傾注。これにより彼のスピードは飛躍的に強化される。
「もう何やったってお前らじゃオレを捉えられねえぞ!」
 だんっと力強く地面を蹴った瞬間、彼の姿は視界から消える。影すら捉えられぬ程の速さに、アミダ・アーミーズがはっと息を呑む――そんな間も連中には与えられなかった。

「は、速いッ?!」「狼狽えるな! 粉骨砕身の心意気さえあれば――」
 【サイバネティック・ランページ】を発動しようとしたレプリカント兵士の首を、死角から刃が刈り取る。噴水のように吹き出した鮮血が、付近にいた同僚の顔に降りかかる。
「――は?」
「3分後の自壊なんざ待たねえぞ」
 両腕から展開した一対のブレード、マンティスセイバー『MuramasaⅩ』を振るって、アキラは目についた敵からサクサクと仕留めていく。足を止めずに移動しながら斬りつければ、速度はそのまま斬撃の威力になる。強固なパワードスーツの装甲を紙のように切り裂く様は、蟷螂よりも死神の鎌を連想させた。

「ダメです隊長、敵の動きが見えません!」「ええい撃て、撃ちまくれ!」
 あまりのスピードに対応できないアミダ・アーミーズは、闇雲に弾幕を張ることで少しでも動きを制限しようとするが――そんな小細工などアキラには通用しない。銃弾の雨をするりと潜り抜け、馬鹿な獲物の喉笛を掻っ切る。
「どんな強い攻撃も当たらなけりゃ意味がねえんだよ指揮官様よ」
「なッ……!!?」
 気がつけばものの1分も経たぬうちに周囲の部下は全滅。残された指揮官レプリカントは首筋に刃を突きつけられていた。圧倒的なスピードだけではない、研ぎ澄まされた殺意も敵に対する容赦のなさも、"お行儀のいい"企業の兵士とはまるでレベルが違う。

「オレの顔に見覚えはねえか? 思い出すのに3秒待ってやる」
「き、貴様は……堂島・アキラ!」
 企業からかけられた賞金首リストの中に、そのにやけた笑みが入っていたのか。はっと何かに気付いた様子で指揮官が声を上げた直後――その声帯はブレードに切り裂かれた。
「正解だ」
 どうと倒れた首なしボディから、上がる血飛沫をシャワーのように浴びて。特化形態を解除したアキラは超速駆動による余熱を蒸気として吹き出しながら、少女の元に戻った。

「待たせたなお嬢ちゃん。おっと目は瞑ったままでいい」
「わ、わかりまし、た」
 僅かな時間でどれほど凄惨な殺戮劇が起きたのか、少女は見ていないしアキラも見せるつもりはない。目も耳も塞いでいた少女も、むせ返るような血の匂いだけは感じていた。
(正真正銘のゴミになったアイツらを見たらトラウマになっちまう)
 好みの相手にはそういった気配りもできる一方、敵に対しては徹底的に無慈悲に殺す。
 美少女義体の中に秘められた彼の本質の恐ろしさは、そうした二面性が同居する所にもあるのかもしれない――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リアラ・アリルアンナ
ハァ…ハァ…リアラが反逆者…?
取り消しなさい、今の言葉…!

…おっと!
リアラとした事が、安っぽい挑発にまんまと乗ってしまう所でした!
この市民はあなた方に従う事を幸福ではないと考えています!
その意思を無視するどころか、無関係の市民の幸福まで侵害したあなた方こそ反逆者であると知りなさい!

市民をかばいつつ、UCによる稲妻の鎖で反逆者を攻撃します
この鎖に打たれた者は、リアラの指導に従い無私の奉仕を行わずにはいられない

あなた方が撃つのはリアラ達ではありません
なぜなら本当に撃つべき相手がすぐ傍にいるからです!

そう言って、リアラの支配を受けた反逆者が同士討ちをするように仕向けます
生き残りはZAPガンでトドメ☆



「ハァ……ハァ……リアラが反逆者……?」
 任務を妨害する猟兵に、アミダの指揮官が口にした脅し文句。本人としては深い意味は無かったであろう言葉選びが、たまたま逆鱗に触れた猟兵がいた。彼女――市民の幸福を啓蒙する親愛なる友人を自認するリアラにとって、それはこの上ない侮辱発言だった。
「取り消しなさい、今の言葉……!」
「な、なんだコイツは……?!」
 愛らしい容姿に浮かんだ烈火の如き怒りの剣幕に、アミダの兵士達も思わずたじろぐ。
 脅しに怯むならまだしも逆になぜ怒りだしたのか、理解できない反応は戸惑いを生む。アミダ社が誇る特殊営業課も、こんな相手に遭遇したのは稀有なケースだろう。

「……おっと! リアラとした事が、安っぽい挑発にまんまと乗ってしまう所でした!」
 一瞬我を忘れかけたリアラだが、どうにか落ち着きを取り戻していつもの笑顔になる。
 逆にその切り替えの速さも敵にとっては不気味だが、さておき。彼女はレプリカントの少女の前にかばうように立って、反逆的メガコーポの尖兵に言い放つ。
「この市民はあなた方に従う事を幸福ではないと考えています! その意思を無視するどころか、無関係の市民の幸福まで侵害したあなた方こそ反逆者であると知りなさい!」
「幸福だと? 我が社の下で管理されることが"ソレ"にとっては最大の幸福なのだ。何故ならソレは我が社の役に立つために生まれてきたのだからな!」
 市民の幸福を優先するリアラと、自社の利益を至上とするアミダ社の意見は平行線だ。
 しかしお互い"反逆者"に容赦する気は微塵もない、という点においては一致している。兵士達が銃口を向けるのと、リアラがユーベルコードを起動するのは同時だった。

「総員、攻撃開始! アミダインダストリーの敵を殲滅せよ!」
「市民の幸福の為、強制的に奉仕していただきます!」
 鳴り響く銃声と、轟く雷鳴。標的を捉えるのが僅かに速かったのは、リアラの仕掛けた【緊急奉仕令】だった。彼女の指先から伸びた稲妻の鎖は、反逆的メガコーポの兵士達に触れた瞬間炸裂し、激しい衝撃と火花を散らす。
「ぐわッ?! な、なんだ、電脳にエラーが……」
 見た目ほどのダメージは無いものの、このユーベルコードの真価は対象の行動を操れることにある。この鎖に打たれた者は、リアラの指導に従い無私の奉仕を行わずにはいられなくなるのだ。

「あなた方が撃つのはリアラ達ではありません。なぜなら本当に撃つべき相手がすぐ傍にいるからです!」
 "指導"という名の強制コードを電子頭脳に流されたレプリカント達は、おもむろに銃口の向ける先を変える。肩を並べて戦うはずの同僚や、自分達の上司でもある指揮官に。
「なっ、貴様ら気でも狂ったか?!」
「「申し訳ありません。ですが反逆者は処刑しなければならない」」
 再び響く銃声。感情の消えた無機質な態度で、同士討ちを始めるアミダ・アーミーズ。
 リアラの支配を受けた彼らは、反逆者である同胞を自らの手で殺すことが、市民の幸福に貢献する奉仕だと判断したようだ。

「くそッ、洗脳だと! なんと卑劣な真似を!」
 自分らの悪行を棚に上げて指揮官レプリカントが悪態を吐くも、それでリアラの指導が解除されるわけもない。ものの十数秒間の同士討ちで、アミダ・アーミーズは甚大な被害を被っていた。
「おや、まだ生きている反逆者がいますね? これでトドメ☆」
「ギャッ!?!」
 幸運にも難を逃れた輩にはリアラ自らが「ZAPガン」で引導を渡す。独特な発射音と共に放たれた破壊光線が照射され――愚かな反逆者はチリひとつ残さず消滅するのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

如月・天里
おでましって訳だね。彼女を渡す訳にはいかないな。
彼女を後ろに隠して安心させよう。
人格の初期化だって?彼女の心を消すって事だろう?許さないぞ。
君達もレプリカントだろう?見逃してくれないか?
ん、僕の事を知っているみたいだね。名が売れているのは光栄だね。
外見だけが取り柄のレプリカント?戦いよりもベッドで奉仕する方が得意だろうって?
酷い言われようだな。……まあ半分は事実だから仕方がないけどね。
それなら顔だけじゃないって事を見せてあげるよ。カゲブンシン・フェノメノンを発動。ふふふ、君達が誉めてくれた顔を存分に見るといい。
フォトンセイバーで攻撃するよ。華麗に踊るように動きながら切り刻もう。



「おでましって訳だね。彼女を渡す訳にはいかないな」
 メガコーポからの追っ手が現れてすぐに、天里はレプリカントの少女を安心させるよう後ろに隠した。女性と見紛うような整った顔立ちにも、今は怒りと敵意が浮かんでいる。
「人格の初期化だって? 彼女の心を消すって事だろう? 許さないぞ」
 自分の後ろにいる少女がかすかに震えているのを、彼は見逃さなかった。もしも脱走が失敗すれば自分がどんな目にあうのか、彼女が分かっていなかったはずがない。恐怖に耐えながら逃げ続けていたのだろう――同じレプリカントとして、奴らの非道は許せない。

「君達もレプリカントだろう? 見逃してくれないか?」
「フン。貴様のようなモノと一緒にするな」
 銃口を突きつけるアミダ・アーミーズの兵士の視線からは、敵意と軽蔑が感じられる。
 同族のよしみでの訴えが断られるのは予想通りとして、まるで初見ではないかのような口ぶりだ。
「ん、僕の事を知っているみたいだね。名が売れているのは光栄だね」
「ああ知っているぞ。某社で開発された愛玩用レプリカントだろう」
 天里自身、あるいはその同系機の情報を把握していたのか、アミダの兵士ははっきりと嘲りをこめて言う。純粋な戦闘用として開発された彼らから見れば、愛玩用レプリカントなど軟弱なお人形としか思えないのだろう。

「外見だけが取り柄のレプリカントだ」「戦いよりもベッドで奉仕する方が得意だろう」
 口々に発せられる嘲笑と侮辱。そんななよなよしたボディで本気で戦えるつもりかと、アミダ・アーミーズは天里のことを完全に侮っていた。特殊な身の上ゆえこれまでも色々な偏見に触れる機会はあっただろうが、こうも明け透けにバカにされるのは逆に珍しい。
「酷い言われようだな。……まあ半分は事実だから仕方がないけどね」
 とはいえ面白いはずもなく、このまま黙っているつもりもない。愛でられるために設計された美貌の裏で、彼が企業でどんな訓練を受けてきたか、連中はまだ知らないようだ。

「それなら顔だけじゃないって事を見せてあげるよ」
 言うやいなや天里は【カゲブンシン・フェノメノン】を発動し、己の分身を作りだす。
 ただのデコイやホログラムの類ではない、実体を持ち本物と同等のスペックを有する、サイバーニンジャのユーベルコードだ。
「ふふふ、君達が誉めてくれた顔を存分に見るといい」
「なっ?!」「なんだとぉッ!?」
 あっという間に分身に囲まれたアミダ・アーミーズの表情は、それまでのにやけ面から一変する。戦闘力のない愛玩用レプリカントに、よもやこんな機能が搭載されているとは予想できなかっただろう。その動揺から生じた隙を天里は逃さない。

「これでもまだ、見た目だけが取り柄って言えるかな?」
 光り輝くフォトンセイバーを手に、分身とともに斬りかかる天里。軽やかであり鋭い、華麗で踊るような動きは、生命を奪うために最適化された結果。護衛用として仕込まれた彼の戦闘技術は、アミダ社の私兵部隊にも決して劣るものではない。
「こ、こんな愛玩人形如きに、我々が……ぐわぁッ!!?」
 最後まで評価をアップデートできずに、次々に斬り倒されていくアミダ・アーミーズ。
 返り血を浴びながら涼やかに戦場を駆ける天里の姿は、畏怖を覚える程に美しかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カルマ・ヴィローシャナ
……仕方ない。カラテするか
ちょっと待っててね。今カイシャクしてくるから
マスクを少女に貸してる手前、余り派手に動きたくないけど
背に腹は代えられない――少女を下がらせて自身は前に出る
ドーモ、アミダの皆さん。カルマちゃんです
さっきアンブッシュしたので、まずは丁寧に挨拶で存在感を示す

そのパフォーマンスを囮にして早業でドミネーションを上空に放ち
続けてジェネシスの制圧射撃でアーミーズを牽制
狙いは強襲型が突っ込んでくる瞬間
上空のドミネーションをフォトン・カラテで変形し
光の槍に変えて奴らをまとめてブチ抜いてやる!

アミダ許すまじ、慈悲は無い
そのまま功夫で防御型をブッ飛ばし
届くならば指揮官型の首を狙う!
イヤーッ!



「……仕方ない。カラテするか」
 アミダ社の戦闘部隊に追いつかれ、これ以上は逃げられないと悟ったカルマは、やむを得まいといった様子で戦いを決意する。同じメガコーポの元・実験体仲間として、ここでレプリカントの少女を見捨てて逃げる選択肢は最初からない。
「ちょっと待っててね。今カイシャクしてくるから」
「き、気を付けて、ください。あの人達は……」
「わかってる」
 大丈夫だからと笑いかけ、少女を下がらせて自身は前に出る。アミダインダストリーの特殊営業課鎮圧係、その名を彼女も知らないはずが無かろう。企業のためなら粉骨砕身の覚悟で任務に臨む連中を黙らせるには、軽くお灸を据える程度では足りない。

(マスクを貸してる手前、余り派手に動きたくないけど、背に腹は代えられない――)
 改造の影響で不安定な自分の体を気にしつつ、堂々たる佇まいで敵と対峙するカルマ。
 さっきはドローンによるアンブッシュだったが、今回は正面きっての戦闘。まずは丁寧に挨拶して自分の存在感を示す。
「ドーモ、アミダの皆さん。カルマちゃんです」
「カルマ……? その名前、どこかで聞き覚えが……」
 かつて脱走した実験体のことを知っている者もいたのか、一部の兵士が反応を見せる。
 だが――それでカルマに注意を向けたのは誤りだった。ニンジャ的なパフォーマンスを囮にして、彼女はフォトンセイバー「カルマドミネーション」を上空に投げ放つ。

「覚悟しろ!」
 布石を打った直後にカルマはジェネシスXQを起動、内蔵火器による制圧射撃で敵を牽制する。つい先ほども同型機による攻撃を受けたアミダ・アーミーズは、その攻撃に怒りを露わにした。
「そうか……先ほどから我々の任務を妨害していたのは貴様らか!」
 即座に防御型レプリカントが前に出て、指揮官と強襲型の盾になる。ドローンに搭載可能な火力ではパワードスーツの分厚い装甲は撃ち抜けない。それはお互いに想定済みだ。

「怯むな! 生命にかえてでも実験体を回収するのだ!」「ヨロコンデー!」
 指揮官が起動した【サイバネティック・ランページ】により、義体のリミッターを解除された強襲型が突撃する。その後で過労により倒れても構わないという社命第一の覚悟が生むパワー。それは脱走者であるカルマには持ちえないものだ。
「欲しいとも思わないけどね」
 強襲型が突っ込んでくる瞬間を狙って、カルマは上空のドミネーションを変形させる。
 周囲の原子や分子構造を書き換え、光の粒子を操作する。アミダインダストリーの改造によって得たこの力を、彼女は「フォトン・カラテ」と名付けた。

「まとめてブチ抜いてやる!」
「「グワーッ!!?!」」
 光の槍に変わったカルマドミネーションが、流星の如く敵部隊めがけて突き刺さる。
 特に、前に飛び出したタイミングを狙われた強襲型は重傷だ。三位一体の連携を強みとするアミダ・アーミーズだが、それは一角でも落ちれば戦力が激減する弱点でもある。
「アミダ許すまじ、慈悲は無い」
 敵の連携が乱れた隙にカルマはダッシュで距離を詰め、拳にカラテの力を収束させる。
 叩き込まれた一撃は体格で勝るはずの防御型のボディをブッ飛ばし、指揮官までの道をこじ開ける。遠近両用のフォトン・カラテにおいて、ここはもう彼女の間合いだ。

「そして時は動く、終末に向けて……イヤーッ!!」
「ま、待て……グワーッ!!」
 制止の言葉も聞かずに放たれた【業斗終焉拳】は、狙い過たず指揮官型の首に届いた。
 その一撃はカルマの体を流れる骸の海を流し込み、対象をしめやかに爆発四散させる。
「ば、馬鹿な……アミダの精鋭である、この私が――ッ!!!」
 その断末魔が彼女の辞世の句となり、爆ぜ飛んだ血飛沫とパーツの破片が辺りを汚す。
 自分達が改造した実験体に牙を剥かれ、与えた力により滅ぼされる、まさに因果応報の結末であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルパート・ブラックスミス
L913の目前、自分の剣が映らないよう彼女の視界をマントで覆いながら仁王立ち。

少女よ、俺に意識を向けるな。己を隠す天幕程度に思っていろ。

UC【映す心断ち割る呪剣】による【範囲攻撃】。
視界に映すほどでなくとも、何かしらの此方の剣を認識すればこのUCの効果範囲。そのパワードスーツの知覚性能は如何ほどかな。

考えるべきは敵UCでの暴走、自分を知覚しないでの反撃となれば無差別射撃辺りか。
敵攻撃から【かばう】為にL913を抱えつつ、青く燃える鉛の翼を展開。
狙い定めぬ銃撃なら高速【空中機動】による直撃回避や剣による【武器受け】は可能の筈。

無差別射撃では同士討ちで統率もとれまい。
UCや【斬撃波】で追撃しよう。



「少女よ、俺に意識を向けるな。己を隠す天幕程度に思っていろ」
 敵の銃口から庇うように、ルパートはレプリカントの少女の目前に仁王立ちして言う。
 その立ち位置は、自分の剣が彼女の目に映らないようにするためだ。これより仕掛ける"呪い"に巻き込まないために、鉛で形成された蒼いマントで視界を覆う。
「すぐに終わらせる」
「は……はいっ」
 意図を測りかねながらも素直に言われた通りにする少女。彼女がこちらを見ていないのを確認した上で、黒騎士は【映す心断ち割る呪剣】を発動し、敵陣に斬り込んでいった。

「そのパワードスーツの知覚性能は如何ほどかな」
 青々と燃え盛る炎をまとった刃を、横一閃に振るうルパート。敵は当然それを避けようとするが、ふいに電脳の思考システムにエラーが生じ、強制的にシャットダウンされる。
「な、に……?!」「い、意識が、遠く……」
 この呪剣は血肉ではなく心魂を断ち斬る。仮に視界に映すほどでなくとも、回避のために彼の剣を認識すれば、それだけでユーベルコードの効果範囲に含まれる。なまじ精密なセンサーを搭載していれば、その分呪いに掛かりやすくなるという罠めいた攻撃だった。

「な、なにが起きている……?」
 斬撃は避けたはずなのに、次の瞬間にはバタバタと昏倒していくアミダ・アーミーズ。
 "呪い"というオカルトに馴染みのない世界の住人に、この攻撃の正体を見極めることは困難だろう。電脳に積まれた論理AIはなんら有効な対抗策を導けない。
「ええい、狼狽えるな! 撃って撃って撃ちまくれ!」
 代わりに答えを出したのは、セットで実装された暴走AIのほうだった。攻撃の正体が分からなくても、とにかく無差別に反撃しまくる。非常識かつ不合理な行動だが、この場においては最も正解に近かった。

「やはり、そう来たか」
 敵の【ハイ・アンド・ロー】による暴走、並びに無差別射撃による反撃は、ルパートも考えていた事だ。自分一人ならばどうとでもなるが、少女の方は流れ弾を避けられまい。
「しっかり掴まっていろ」
「え? わ、わっ!」
 敵の攻撃からかばうために、ルパートは少女を抱えてマントを「青く燃える鉛の翼」に展開。凶弾の射線を避けるように舞い上がり、鳥よりも俊敏にストリートの空を翔ける。

(狙い定めぬ銃撃なら直撃回避や武器受けは可能の筈)
 闇雲にばら撒かれる弾丸の雨を、素早い空中機動で躱し、呪剣にて弾き返すルパート。
 彼が少女と共に空中を飛び回る一方、地上では凄惨な地獄絵図が繰り広げられていた。
「ぐわぁッ?!」「ぎゃぁッ!!」
 部隊全体が暴走しながら無差別射撃を行えば、同士討ちが起こるのは自明の理。指揮を執るべき機体も失われた今、アミダ・アーミーズはまったく統率を取れなくなっていた。巻き添えを喰うのを回避さえすれば、あとは勝手に自滅していく烏合の衆だ。

「終わりだな」
 錯乱する兵士達に引導を渡すべく、ルパートは再び【映す心断ち割る呪剣】を振るう。
 呪いを帯びた青い炎の斬撃波が、地上を舐めるようになぎ払い――心魂と肉体を同時に灼かれた敵から、断末魔の悲鳴が上がる。

「「ぎゃぁぁぁぁぁ―――ッ!!!!」」

 猛火が収まった後、そこに在るのは焦げてバラバラになったレプリカントの残骸のみ。
 メガコーポが誇る戦闘部隊、アミダ・アーミーズはここに完敗を喫することとなった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『知の神殿跡にて』

POW   :    片っ端から読み漁って目的の本を探す

SPD   :    散らかった本たちを整頓する所から始めよう

WIZ   :    探索範囲を絞っていく事で効率よく探せるさ

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「助けていただき、本当にありがとうございました」

 ストリートを荒らしていた『アミダ・アーミーズ』の部隊を、無事に撃破した猟兵達。
 彼らに追われていたレプリカントの少女、実験体『L913』は深々と頭を下げて感謝を伝える。

 これで今回の事件は一件落着だが、まだ疑問がひとつ残っている。
 少女はなぜアミダ社の研究所を脱走し、何のためにストリートを逃げ回っていたのか。

「この近くに、わたしの行きたかった場所があります」

 そう言って少女は歩きだす。その足取りはどこか期待が籠もっているように見える。
 興味を持った猟兵が付いていけば、果たして辿り着いた先にあったのは、古びた一棟の建物だった。

「ここは、かつて『図書館』と呼ばれていました」

 とうに閉館されて久しいらしく、中に入れば人の気配はなく、埃を被った本と棚だけがずらりと並んでいる。UDCアースなどではよくある造りの図書館だが、あらゆる分野において電子化と機械化が進んだこの世界では、ここは時代に取り残された場所のようだ。

「わたしはアミダインダストリーの実験体として作られ、ずっとそれに疑問を抱かずに生きてきました」

 何かを探すように本棚の間を歩きながら、少女はぽつりと自分の身の上を語りだした。
 誕生の瞬間から決められていた存在意義。外界から隔離された研究所の無菌室の中で、自分は一生を終えるのだろうと思っていた。

「ですが、ある日。わたしは一作の小説に出会いました」

 研究所の職員の戯れだろうか。少女がアクセス可能なデータ領域の中に、偶然にもそれは紛れ込んでいたという。今よりずっと昔に書かれた、若者向けの通俗小説の一作品だ。
 ストーリーもありきたりで、主人公の若者がヒロインと出会い、様々な冒険を繰り広げるというもの。それでも、外の世界を知らない少女は、たちまち物語に夢中になった。

「……けれど。研究所にあったデータには、その物語の結末が残されていませんでした」

 ヒロインが敵の城に監禁され、主人公が救出に向かうところで、物語は途切れていた。
 果たして主人公とヒロインはどうなったのか、物語はどんなエンディングを迎えたのか――答えは"ここ"にはなかった。

「わたしはネットワーク中を調べて、この都市に閉館した図書館があること……そこに、わたしが読んだ小説が、紙の『本』として収蔵されていたことを知りました」

 物語の結末を知りたい。それが、少女がアミダインダストリーから脱走した理由。
 たったそれだけのためにメガコーポを敵に回し、勝ち目の薄い逃亡を続けてきたのか。
 捕まれば酷い目にあうと分かっているのに、外の世界にどんな危険が待ち受けているかも分からないのに、それでも――。

「それでも、知りたい、という気持ちは止められませんでした」

 そして今、実験体の少女はここに辿り着いた。たったひとつのエンディングを求めて。
 まだここに望みの小説が残っているかの保証はない。それでも懸命に探し回っている。

 猟兵達は、そんな少女の本探しを手伝ってもいいし、このまま立ち去ってもいい。
 あるいは、メガコーポも把握していなかったこの図書館には、他に価値のある紙の文献資料が残されている可能性もある。気になるならそちらを探してみるのも良いだろう。

 世界から忘れ去られつつある紙の迷宮で、少女と猟兵達が過ごすひととき。
 それが、このストリートで繰り広げられた物語の幕を引くエンディングとなる。
リアラ・アリルアンナ
そのお話が、命を懸けて求めるあなたの幸福というわけですね!
ならばそれを手助けするのもリアラの役目!喜んでお手伝いしますよ!

ネット検索で一発で探せないのは不便ですが、
幸い蔵書は内容によってある程度並べる場所が決まっているようです
普通に考えると「文学」のコーナーにある確率が高いのではないでしょうか?
返却棚などにある未整理の本も怪しいですね!
目星をつけた範囲に、聞き出したタイトルや作者の名前がないか注意深く確認していきましょう。

ところで市民、管理番号が名前というのもちょっと寂しいですね!
こう呼ばれたいというのはありますか?
なければ今探しているお話の登場人物から拝借するのもいいかもしれません!



「そのお話が、命を懸けて求めるあなたの幸福というわけですね!」
 元・実験体の少女市民の願い――幸福のカタチを知ったリアラは、素晴らしい事ですとにっこりと笑った。反逆的メガコーポに歯向かいながらも自分の幸福を追い求め続けた、彼女はまさに"義務"に忠実な模範的市民と言える。
「ならばそれを手助けするのもリアラの役目! 喜んでお手伝いしますよ!」
「ありがとう、ございます」
 "親愛なる友人"の申し出を断る理由も少女にはなく、感謝の言葉と共に頭を下げる。
 だが、この世間から忘れ去られた図書館のどこかにある、たった一冊の本を探すのは、なかなか大変な作業になりそうだ。

「ネット検索で一発で探せないのは不便ですが、幸い蔵書は内容によってある程度並べる場所が決まっているようです」
 リアラは館内の様子を軽く見回して、まずはどこから探すべきかを考える。長い間放置されてきたせいで荒れてはいるが、蔵書と本棚の列にはまだ一定の規則性を認められる。
「普通に考えると『文学』のコーナーにある確率が高いのではないでしょうか? 返却棚などにある未整理の本も怪しいですね!」
 コーナーの手がかりになるのは朽ちかけた案内図や、本棚に張られた剥がれかけのラベル等。そこから捜索範囲の目星をつけて、目当ての書籍はないか注意深く確認していく。

「お探しの本のタイトルはなんでしょう? 作者のお名前も分かると良いのですが」
「表題は『アルター・フロンティア』。残念ながら作者名は記録されていませんでした」
 研究所で少女が読んだというアーカイブの文章は、結末以外にも幾つかの欠落があったらしい。それでも聞き出した情報は元の本を探すうえで大いに有用だったし、リアラには【『汝の隣人を愛せよ』】がある。
「図書館の管理者がもうおられないのでしたら、図書館そのものにお伺いしましょう!」
 生命体に限らず無機物にも働くユーベルコードの力で、彼女は付近にある物を手当たり次第協力者に変えていく。散らばっていた本はひとりでに整頓され、倒れていた棚は立ち上がり、積もった埃までもが床に矢印を描いてそれらしい本の所在に導いてくれる。

「ところで市民、管理番号が名前というのもちょっと寂しいですね!」
 少し快適になった図書館で本探しを続けながら、リアラはふと思い出したように言う。
 アミダインダストリーが付けた『L913』という呼び名は記号に過ぎない。企業の所有物ではなく一個人として生きていくのなら、きちんとした名前が必要だろう。
「こう呼ばれたいというのはありますか?」
「名前、ですか。あまり考えたことは、ありませんでした」
 製造時点から番号で呼ばれていた少女には、あまり自分の名前への頓着がないらしい。
 特に希望はない様子で首をかしげる彼女に、リアラはそれならばと笑顔で提案する。

「なければ今探しているお話の登場人物から拝借するのもいいかもしれません!」
「お話の……」
 少女にとっての"幸福"であり、『L913』としての自分から脱却する契機となった物語から新たな名を得るのは、とてもよいアイデアだと感じられた。少女は少し考えてから、ぽつりと口を開く。
「……あの物語のヒロインは、リエルという名前でした」
「では、あなたはこれからリエルさん、ですね!」
 晴れやかな笑顔を見せるリアラに、レプリカントの少女――リエルも控えめな微笑みを返す。番号ではない『個』の名前で呼ばれるのは、意外に心地よいものだということを、彼女は初めて知るのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カビパン・カピパン
どうして僕はココにいるのだろうか
一歩前さえも確認できぬ闇の中。
はたして生きていると言えるのだろうか
僕は何者で、何をするつもりだったのか、
僕はどうして生まれてしまったのだろうか
風の音に掻き消されてしまいそうな声で誰かに名を呼ばれた。
ああ…それは僕の名前なんだ。なら、返事しなくちゃダメだよな。

けど、僕を呼ぶ声は誰なんだ
どうして、僕を知っているのだろう
ならここは知ってる場所だ。知ってる場所に、僕を知る声。

ああ、僕は彼を知っている。
僕は――

魔王だ。

その瞬間、魔王は自身を貫く閃光によってその生涯を閉じるのであった。

ヒロインと主人公が寄り添う姿は魔王が最後の戦いの前に闇の中で垣間見た、未来の光景であった。



「この棚には、ないみたいですね……」
 夢中になった物語の結末を求めて、朽ち果てた図書館を探し回るレプリカントの少女。
 しかし、これだけの規模の建造物からたった一冊の本を探すのは簡単なことではない。
 お目当てが見つからずにふうと溜息を吐くと、ふいに後ろから誰かが声をかけてきた。
「あなたが探している本って、これじゃない?」
 そう言って一冊の薄い本を差し出してきたのは、カビパンだった。つい先程までカオスを巻き起こしていた人物とは思えないくらい落ち着いた様子に、少女は思わず面食らう。しかし渡された本のタイトルは、確かに彼女が探していたものと同じだった。

「これは……」
 期待のこもった指先で少女はページを捲る。ずっと憧れてきた主人公やヒロイン達は、一体どんなエンディングを迎えたのか、想像するしかできなかった答え合わせのために。
 そこには丁寧な筆致で、登場人物の一人称によるモノローグから文章が始まっていた。


 どうして僕はココにいるのだろうか
 一歩前さえも確認できぬ闇の中。
 はたして生きていると言えるのだろうか

 僕は何者で、何をするつもりだったのか、
 僕はどうして生まれてしまったのだろうか
 風の音に掻き消されてしまいそうな声で誰かに名を呼ばれた。

 ああ……それは僕の名前なんだ。なら、返事しなくちゃダメだよな。


「これは……」
 闇の中で孤独にたたずむ"僕"が誰なのか、少女には分からなかった。結末以外の内容は一句残らず覚えるくらい読み返したはずなのに、該当する人物の心当たりがなかった。
 意外な展開に驚きながら捲った次のページに、その疑問に対する答え合わせがあった。


 けど、僕を呼ぶ声は誰なんだ
 どうして、僕を知っているのだろう
 ならここは知ってる場所だ。知ってる場所に、僕を知る声。

 ああ、僕は彼を知っている。
 僕は――

 魔王だ。

 その瞬間、魔王は自身を貫く閃光によってその生涯を閉じるのであった。


「…………」
 ヒロインと主人公が寄り添う姿は、魔王が最後の戦いの前に闇の中で垣間見た、未来の光景であった――文章の最後はそう締めくくられていた。ヒロインを閉じ込めた敵である魔王の視点で、物語を俯瞰しながら綴られたエピローグ。
「……これは、わたしが探していたのとは違います。別の誰かが書いた本です」
「あ、バレました?」
 内容を吟味するように暫し沈黙してから、少女は確信のこもった調子でそう口にした。
 するとカビパンはあっさりとそれを肯定する。どうやらこの本は彼女がどこかから適当に持ってきたものか、あるいは彼女自身が書いたものだったらしい。

「まず文体が違いますし、内容もこれまで読んだものから飛躍がみられます。あの小説の世界観はファンタジーでしたけど、主人公達の敵は魔王とは呼ばれてなかったですし」
 流石に元の小説を読み込んだ少女の目は欺けず、偽書だということはすぐにバレてしまった。しかし、原作との違いを指摘しつつも、少女の表情に騙されたという怒りはない。
「……でも、これはこれで良いお話でした。魔王の気持ちとか、主人公達との関係とか、考えさせられる要素も多いですし」
 それはカビパンが渡した小説の内容が、決して適当に書き殴ったようなものではなく、これはこれで真剣に書かれたと伝わるものだったからだろう。敢えて多くを説明しない結末も、読み手に解釈の余地を残すための仕掛けと感じられる。

「ここには、こんな本がまだ沢山あるのですね」
 少女の人生観を変えたあの一冊さえ、外の世界では無数にある本のひとつに過ぎない。
 己の目の前に広がる数多の本、数多の可能性を感じた彼女は、胸が高鳴るのを感じた。
 果たして、それがカビパンの目的だったのかは分からないが――珍しくギャグに走らなかった彼女の表情は、いつになく穏やかで落ち着いた微笑であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カナ・スズリ
※アドリブ歓迎

・行動
『少女の探し物を手伝う』

まずルーンカタカナ『カゲブンシン』の力で分身を作って人手を増やす
自身に資料整理や捜索の技能は無いので
少女に指示してもらいながら本の整理と捜索を手伝っていく。

・セリフ
そうなんだ、じゃあ一緒に探そう
図書館の事は分からないけど手伝いならできるから
続きが見つかったらどんな話だったのかアタシにも教えてね!

(手伝いの最中に気が散って)
はっ、これは失われたエンシェント漢字のカケジク・スクロール!



「そうなんだ、じゃあ一緒に探そう」
 レプリカントの少女の目的を知ったカナは、迷わず即決でそう言った。まるで手を貸すのが当然のことのように。戦いが終わっても何故まだ付き合うのか、その理由は彼女には答えるまでもないことだろう。
「図書館の事は分からないけど、手伝いならできるから」
「ありがとう、ございます」
 重ね重ねの助けに少女が心からの感謝を伝えると、カナは「気にしないで」と笑って、宙に『カゲブンシン』のルーンカタカナを刻む。すると【カゲブンシン・フェノメノン】が発動し、本体そっくりの分身が何十人と姿を現した。

「これで人手は足りるかな?」
「助かります。ではまず、あちらの棚から整理していきましょう」
 分身を増やしたカナは少女に指示してもらいながら、本の整理と捜索を手伝っていく。
 彼女自身に資料整理や物探しに役立つ技能はないが、人数の多さは単純な利点になる。広い図書館での探索作業などはまさにうってつけだろう。
「よいしょっと。すごく埃かぶってるね」
 長年放置されていた書架の砂埃を払い、古びた本を棚に並べ直す。ふっと鼻をつく紙の匂いに、ショドー・ジツの使い手として思う所はあるだろうか。今や筆さえ必要ないとはいえ、かつて書道とは紙と硯で己を表現する術だったのだから。

「この辺りの本棚には、ないようですね」
「じゃあ、次の場所を探そう」
 少女とカナ達による本探しは長く地道な作業になった。途中で適時休憩を挟みながら、ふたりは言葉を交わしつつゆったりと捜索を続ける。焦る必要はない――少女を追う者はもういないのだから。
「続きが見つかったら、どんな話だったのかアタシにも教えてね!」
「はい、もちろんです。最初の主人公とヒロインの出会いのシーンが素敵で……」
 焦がれるほどに少女が憧れた物語はどんなものだったのかと、期待と興味を抱くカナ。
 自分の好きなものに興味を持ってもらえて嬉しいのか、少女は自分がこれまでに読んだ場所までの内容をかいつまんで話してくれる。その表情は穏やかな笑顔だった。

「ん……これは?」
 そうして館内の捜索を続けるうちに、カナはふと本の山から気になるものを見つける。
 それは、この図書館に収蔵されている文献の中でも明らかに古く、冊子ではなく巻物の形をしていた。妙に惹かれるものを感じた彼女がそれを広げてみると――。
「はっ、これは失われたエンシェント漢字のカケジク・スクロール!」
 驚くべきことに、そこにはルーンカタカナよりもさらに古い、いにしえの漢字が力強い筆致で記されていた。時経てもなお文字から感じられるコトダマ・パワー。こんな貴重な書物がまだ現存していたとは。

「あっ、もしかしてこっちは……!?」
 思わぬ掘り出し物に目を輝かせたカナは、近くにある古い書物を次々に漁っていく。
 探しものをしている途中で、別のものに気が散ってしまうのはよくあること。そして、レプリカントの少女にもそれを咎める気はなかった。
(良い物が見つかったみたいで、よかったです)
 忘れられてもここは図書館。誰もが自分の読みたい本との出会いを求めて訪れる場所。
 ただ手伝いのつもりでやって来たカナにも、イチゴ・イチエの出会いがあったようだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

式之・神子
物語の話だけ聞くと、どこにでもある王道の話なンよ
タイトルとか作者名とか出版された年月日とかも分からないン?
そんな時は一人で悩まず集合知の出番よぉ
てなわけで特定班!検証スレを立てろォ!
このドロイドちゃんが求めている話の書籍の特定、ヨロ
ポポスレには悪戯と弄りが大好きな暇人ばかりじゃないンよ
特定する事に命を懸ける変人も居るンよ

あ、そうだ
特定班~ついでにこの世界の骸の海ビジネスをおっ始めた創設者?てか提案者?に関するビジネス書とかもあったら見つけてくれね?
多分相当昔の人物だろうに。
メガコーポ運営の教団といい、なーんか古典的でオカルト染みていて胡散臭いンよね~周りは最新鋭なのに
そう思わね?



「物語の話だけ聞くと、どこにでもある王道の話なンよ。タイトルとか作者名とか出版された年月日とかも分からないン?」
 調べものをするにはまず対象について知る必要があると、神子はレプリカントの少女が探している本について尋ねた。どんな些細なものであれ、情報がひとつでも多ければ多いほどやり易くなる。
「作者と出版年月の情報は失われていましたが、タイトルは分かります……『アルター・フロンティア』です」
 少女のいた研究所に残されていたのは不完全なアーカイブ。だが、そこにあった全てを彼女は一字一句漏らさず記憶していた。それでも、広大な図書館の廃墟に残された膨大な資料の中から、元の本を探す作業は難航しているようだ。

「そんな時は一人で悩まず集合知の出番よぉ」
 いつだって神子にはネットで繋がった頼れる仲間がいる。たまーにちょっとだけヘンな奴らだったり、おふざけが過ぎたりもするが、一度火がついた時の爆発力は折り紙付き。電子の海にはそういう連中が結構多い。
「てなわけで特定班! 検証スレを立てろォ!」
『お、ワイの出番か?』『今来た、三行で説明してくれ』
 少女から聞き出した情報をポポスレにて公開すると、すぐに反応するスレ民が現れた。
 スレッドのタイトルは「【検証】この小説知ってる奴いる?」。投下されたネタに飢えた住人がすぐさま飛びつき、あっという間にレスの番号が伸びていく。

「このドロイドちゃんが求めている話の書籍の特定、ヨロ」
『おk』
 特定班と呼ばれる者達と本好きな連中が中心となって、各々が持つ知識や調査の結果を取りまとめ、リストアップしていく。情報収集において重要なのは"何を"よりも"誰を"知っているかが重要だとも言われるが、このスレはまさにその要件を満たしていた。
「ポポスレには悪戯と弄りが大好きな暇人ばかりじゃないンよ。特定する事に命を懸ける変人も居るンよ」
「どちらにしても、変わった人たちですね……」
 彼らの熱意については少女にはよく分からなかったが、神子に見せてもらったスレッドに情報がどんどん集まってくるのには驚いた。もちろん彼女もネットの扱いは心得ているが、ここの住人の、興味を惹かれたものに対するリサーチ能力はそれ以上だ。

「あ、そうだ。特定班~ついでにこの世界の骸の海ビジネスをおっ始めた創設者? てか提案者? に関するビジネス書とかもあったら見つけてくれね?」
 書籍の特定が順調に進んでいるところで、神子はふと思いついた様子で【ポポスレ検証スレッド】にもう一つネタを投下する。それは、このサイバーザナドゥという世界が現在の姿になった原因そのものの特定とも言えるものだった。
「多分相当昔の人物だろうに。メガコーポ運営の教団といい、なーんか古典的でオカルト染みていて胡散臭いンよね~周りは最新鋭なのに」
 今回戦うことになったアミダインダストリー然り、メガコーポ各社には宗教的な要素が少なからず見え隠れすることが多い。単にそれは人心を掌握するツールとして有益だからなのか、あるいはもっと深い理由があるのか。

「そう思わね?」
『確かに』『気になるな』
 おそらく一朝一夕で突き止められる事ではないが、だからこそ神子のネタは特定班の心を燃え上がらせた。あるいは書籍を特定する時以上のスピードでスレッドが伸びていく。
『とりまアミダインダストリーについて調べてみた。起源は日本の北陸地方の薬売りで、地方の宗教組織や重工業を取り込む事でデカくなったんだと』
「ほうほう。そりゃますます怪しいンよ」
 心底楽しそうでワルそうな笑みを浮かべながら、スレ民との会話で盛り上がる神子。
 その内容はだんだんと専門的になっていき、少女には分からない単語が飛び交うが――(邪魔したら悪いかな)と考えた彼女は、貰った情報を手に本探しを再開するのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

如月・天里
アドリブ連携歓迎。

紙の本か…そういえば僕も読んだ事はないような気がする。その本を読むために君は脱走したのか。凄い勇気だな。僕はなぜ脱走したのかだって?
僕の場合は色々あるけど自由になりたかったからだよ。君に比べるとぼやっとした理由かもしれないけど。
よし、その本を探そう。他の猟兵達も協力してくれるだろう。ここは【カゲブンシン・フェノメノン】で人数を増やして整理整頓をしながら探すとしよう。この技が戦闘意外で使えるなんてね。
僕も本の結末を知りたいよ。ハッピーエンドであればいいんだけどね。
それに何か面白い本でも見つかれば嬉しいしね。
結果がどうなろうと彼女にこれからどうするか尋ねるよ。



「紙の本か……そういえば僕も読んだ事はないような気がする」
 電子書籍が一般的となったこの世界において、紙の本はある種の高級品やマニア向けの趣味のアイテムに近いだろう。それが山のように収められた図書館を物珍しそうに見回しながら、天里はぽつりと呟いた。
「その本を読むために君は脱走したのか。凄い勇気だな」
「大したことじゃ、ないです。ただ、夢中だっただけで」
 レプリカントの少女は恥ずかしそうにそう言うが、ただ「本を読みたい」という理由で命懸けの逃亡を決行できる人間はなかなか居ない。危険を理解しながらメガコーポという大敵に歯向かった彼女の強さを、天里は心から称賛する。

「あなたは、どうしてメガコーポの元から今の立場に?」
「僕はなぜ脱走したのかだって?」
 境遇の似ているレプリカントとして、少女は天里が脱走に至った経緯を気にしていた。
 言いたくなければ答えなくてもいいですと彼女は言ったが、天里は特に気分を悪くしたふうもなく、朗らかな笑顔を変えぬまま語りだした。
「僕の場合は色々あるけど自由になりたかったからだよ。君に比べるとぼやっとした理由かもしれないけど」
 何が切っ掛けだったのかはっきりとした事は言わない。ただ、製作時から決められていた飼い犬としての人生に、抗いたいと思うのは自然なことだろう。それを実行してみせた彼の意思と力もまた、讃えるに値するものだ。

「如月さんも、凄いです」
「それほどでもないよ。よし、じゃあ君の本を探そう」
 お互いについて知ることで少し親睦を深めたふたりは、朽ちた図書館で本を探索する。
 他の猟兵達も協力してくれるだろうが、もちろん天里も気持ちは同じだ。人数を増やすためにも、ここは【カゲブンシン・フェノメノン】を使うことにする。
「この技が戦闘意外で使えるなんてね」
 先程はメガコーポの兵士と華麗な戦いを繰り広げた分身達が、散らばった書籍や資料の整理整頓をしながら目的の小説を探す。ニンジャの力をこんな平和な目的で使う時がくるなんて、昔なら考えもしなかった。そして、今はそれを悪くないとも感じている。

「僕も本の結末を知りたいよ。ハッピーエンドであればいいんだけどね」
「はい。わたしも、そう思います」
 ずっと憧れてきた主人公達の物語は、できれば幸せな結末であってほしい。答えを探す少女の横顔は真剣で、天里もぜひとも見つけてあげたいと思う。勇気を振り絞って企業から脱走してきたのだ、報われてほしいと思うのもまた自然な感情だろう。
(それに何か面白い本でも見つかれば嬉しいしね)
 電子化もされていないような古い時代の文献が、この場所にはまだ沢山残されていた。
 天里はそこで気になった本を幾つか見繕うと分身に回収させる。時間のある時にゆっくりと読めば、新しい知見や刺激を得られるかもしれない。

「そういえば、君はこれからどうするの?」
 まだ探索の結果は出ていないが、ふと気になったことを天里は尋ねる。メガコーポの管理下から逃れた以上、これからは自分の力で生きていかなければならない。外界での経験に乏しい少女に当てはあるのだろうか。
「しばらくはこのストリートで身の振り方を考えようと思います。幸いここは風雨を凌ぐ場所としても良さそうですし」
 少女も先のことを何も考えていなかった訳ではなく、自分の能力を活かした生活手段の確保について語る。この図書館を突き止めた情報収集力や、メガコーポの追っ手から逃走を続けたスキル等は、ストリートでも大いに役立つだろう。

「まずは、もう少し体力をつけるべきだと考えていますが……」
「そっか。しっかり考えているみたいだね」
 これなら自分が世話を焼く必要もなさそうだと、天里は安心したように微笑みかける。
 メガコーポの支配から自由になった少女の人生は、少女自身のものだ。彼女のこれからの人生に幸運があらんことを、少年は心から願うのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

撒菱・しのぶ
〜廃墟探訪〜
"図書館"に行ってみた

あらゆるコンテンツはデータ化され、本が消えた時代…今回は、まだ現存する図書館からお送りするでござる。

(図書館内を散策)
これはもう、歩くだけで撮れ高。素晴らしいでござる。おや?
(何かの本を熱心に読んでいる少女を見つけ)
うーん図書館で本を読む儚げ少女…これは絵になるでござる。今回のサムネイルに使わせてもらうでござる。
まあ拙者もそこそこ?いやかなり?の美少女ではござるが、儚げとかそういう雰囲気とはちょっと違うでござるからなー…ん?ちょリスナー達?笑うとこじゃないでござるよ!



「ニンニン! でござる。皆、見てくれているでござるか?」
 古びた図書館の内装を背景にして、カメラ付きドローンの前でキメ顔を見せるしのぶ。
 お騒がせなメガコーポの連中を返り討ちにした後で、彼女がやる事はもちろん決まっている。配信である。
「あらゆるコンテンツはデータ化され、本が消えた時代……今回は、まだ現存する図書館からお送りするでござる」
 彼女の映像は「ニンニン☆チャンネル」を見ている世界中のリスナーの元に届けられ、コメント欄から『図書館って初めて見た』『紙の本とか不便そうだけど実際どうなの?』など、様々な反応が返ってくる。掴みはまず上々のようだ。

「これはもう、歩くだけで撮れ高。素晴らしいでござる」
 周りの様子がよく映るようにドローンを動かしながら、しのぶは図書館内を散策する。
 時代の流れから取り残されたノスタルジックな雰囲気。静かに朽ちていくものが魅せる哀愁と寂寥感。都市では味わえない魅力に満ちた空間を、たっぷり撮影するつもりだ。
「おや?」
 そこで彼女が見つけたのは、何かの本を熱心に読んでいるレプリカントの少女。目当ての小説があったのだろうか、それとも別の気になる本があったのだろうか。なんにせよ、集中している様子でページを捲る少女の横顔は、とても美しかった。

「うーん図書館で本を読む儚げ少女……これは絵になるでござる」
 しのぶにカメラを向けられても、少女は気付いていない様子。黙々と本を読み進める姿には図書館の雰囲気とも合わさって、人の目を引き付けるものがあった。コメント欄のほうも『さっきのレプリカントの子だ』『すっげぇ綺麗じゃん』と盛り上がっている。
「今回のサムネイルに使わせてもらうでござる」
 冷静に考えると盗み撮りのような気もするが、危ない所を救った恩人でもあるし嫌とは言われないだろう。もちろん後でちゃんと許可を貰うつもりではある。配信活動におけるサムネイルとは動画の「顔」であり、この出来次第で再生数が激変しうるのである。

「まあ拙者もそこそこ? いやかなり? の美少女ではござるが、儚げとかそういう雰囲気とはちょっと違うでござるからなー……」
『草』『このドヤ顔よ』『儚さじゃ勝てませんわ』『図太く生きていけ』
 自信に満ちみちた表情でしのぶがそんな事をふと口にすれば、リスナーからはツッコミの嵐。ここで少女が登場した時よりもコメント欄が加速する辺り、このチャンネルの空気と彼女の普段の扱いがよく分かる。
「ん? ちょリスナー達? 笑うとこじゃないでござるよ!」
『顔がいいのは認める』『でも草』『ここ切り抜かれるな』『初見ですが笑いました』
 あっという間に大草原と化したコメントに文句を言っても、余計に草が生えるばかり。
 だが、このやり取りは一種のプロレスのようなもの。企業時代のフォロワー数には今だ届かずとも、以前よりぐっと近しい距離感で、バーチャルストリーマーとしてのしのぶは人気を伸ばし続けているのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カルマ・ヴィローシャナ
WIZ
うん、分かった
そういう事ならカルマちゃん全力で手伝っちゃうよ!
早速ジェネシスXQを展開して図書館内を探索
背表紙から手に入れた情報よりジャンルの配置状況を整理し
探しつつ図書館を一緒に歩こう
L913……エルちゃんでいい? 良くない?
それじゃあ教えて、エルちゃんの知っている事

そのお話のどんな所が面白かった?
もしかしたら私も読んだことあるかもね
アミダは嫌な事ばっかりだったけど
思い出はそれだけじゃ無いから
そんな事を、私も思い出しちゃった

見つけたら一杯読んで
あそこで何されてたかなんて忘れちゃおう
他に面白い本だってあるかもよ?
あなたの物語は、これからあなたが作るのよ
何だったら幾らでも手伝ってあげるから



「うん、分かった。そういう事ならカルマちゃん全力で手伝っちゃうよ!」
 レプリカントの少女から、これまでの経緯と目的を聞いたカルマは、元気一杯の笑顔でそう言った。アミダインダストリーを敵に回した理由がたった一冊の小説のエンディングを知るためだなんて、なかなかロマンチックな話ではないか。協力しない理由はない。
「L913……エルちゃんでいい? 良くない?」
「はい。好きに呼んでいただいて構いません」
 このまま番号で呼ぶのも味気ないので愛称を提案してみると、少女はこくんと頷いた。
 もう彼女はアミダに管理される実験体ではない。人らしい名前で呼ばれることを、彼女自身も嫌ってはいないようだ。

「探している小説のヒロインの名前が、リエルと言うんです。エルという呼称はそれにもかかっていて、気に入りました」
「そっか。それじゃあ教えて、エルちゃんの知っている事」
 実験体『L913』改め文学少女のエルに、カルマは探している本の内容について尋ねる。これだけ広い図書館から目的のものを見つけるには、少しでも多くの手がかりが欲しい。
「そのお話のどんな所が面白かった? もしかしたら私も読んだことあるかもね」
「……あなたも、昔あの場所にいたのですね」
 属する研究所や部門は別だったかもしれないが、ともに同じメガコーポの実験体同士。
 たまたま同じアーカイブを読む機会があったかもしれないし、カルマはそれよりもっと以前、まだ普通の人間だった頃に読んでいたかもしれない。

「アミダは嫌な事ばっかりだったけど、思い出はそれだけじゃ無いから」
 カルマ・ヴィローシャナという個人を構成する『過去』は、アミダインダストリーに与えられたものが全てではない。暗い夜空にまたたく星のように、心を照らす光もそこにはあった。どんなにささやかで小さなことでも、今の自分を支える大切な記憶だ。
「そんな事を、私も思い出しちゃった」
「そう、ですか。わたしも、あなたのような思い出を、たくさん作りたいです」
 生まれながらの実験体としての運命を享受してきたエルには、まだ思い出に残る体験は少ない。だが外の世界に飛び出して、猟兵と出会った今日の経験もいずれ思い出となり、未来の彼女を形作っていくことだろう。

「あっと、話が逸れちゃったね。今はエルちゃんの本の話から聞かせて」
「ん、はい。小説のタイトルは『アルター・フロンティア』といって……」
 エルが語りだした本の内容は、ごくありふれたファンタジー小説といった感じだった。
 恵まれない境遇にあった主人公の少年と、ヒロインの少女。二人は冒険者となって世界を旅しつつ、様々な事件に巻き込まれていく。新たな出会いと別れ、強大な敵との死闘、拡大していく物語のスケール――それらを通して成長する二人。
「助け合いながら困難を乗り越える二人の絆は、とても美しいものでした。だからこそ、最後に二人がどうなるかをどうしても知りたくて……」
 小説について語る時の彼女はこれまでよりも饒舌で、本当にその話が好きだと分かる。
 大人びて落ち着いていた少女が見せる年相応な仕草に、カルマの表情も自然と綻んだ。そして手に入れた情報を元に「ジェネシスXQ」を展開し、館内の探索に飛び回らせる。

「見つけたら一杯読んで、あそこで何されてたかなんて忘れちゃおう。他に面白い本だってあるかもよ?」
「はい。とても、楽しみです」
 ここには探していた小説以外にも沢山の本がある。少女が読んだ最初の一冊にも劣らぬ出会いが待っているかもしれない。エルもその期待は少なからずある様子で、目を輝かせながら本棚を見回していた。
「あなたの物語は、これからあなたが作るのよ」
 カルマは微笑みながら彼女に告げる。これから出会う全てを糧にして、エルという少女の人生は輝いていくだろう。そのエンディングは白紙のまま――だが、自分次第でどんなハッピーエンドだって描ける可能性がある。

「何だったら幾らでも手伝ってあげるから」
「ありがとう、ございます。良ければ今度は、一緒に本を読みませんか?」
 つたなげに誘いをかけるエルに、「もちろん!」と晴れやかに応えるカルマ。すっかり友人となった二人は一緒に本を探す。ドローンの偵察でジャンルの配置状況は整理済み、この分ならじきに求めていた一冊も見つかるだろう。
「カルマさんの好きな本も、教えて下さい」
「そうだね、私は……」
 他愛のないやり取りをしつつ並んで図書館を歩く二人。アミダインダストリーの支配から脱したこの二人の前には、物語と同じように、どこまでも無限の未来が広がっていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

静寂・拝人
シャルル(f36639)と
ハハッ、本の続きが読みたかった。ねぇ…
いいじゃないか、その為に企業を抜け出すなんてなかなか出来るもんじゃない。

読みたかった本。あるといいな。
俺も手伝ってやるタイトルは?
…紙の本か…俺も流石に読んだことはないが不思議な感じだな。
なんだ複雑そうだな。
あの子が逃げられたのはいいがこちらの利益が〜ってとこか?
利益ねぇ、まぁ、紙の本もある意味貴重だしそんな物が大事に残されてる場所にはなんらかの大事なデータが残されている…なんてのは希望的観測だけどな。
それっぽいのにアクセスしようにもかなり古いハードだかなぁ上手くか…
とにかく今はシャルルも紙の本もを楽しめ。
ある意味貴重な体験だぞ?


シャルル・メリー
拝人(f36629)と
脱走した理由が物語の続きを読みたい…と言うものだったのには驚ましたが。その実行力には素直にすごいと思いましたね。
本を探すのに協力は惜しみませんが…結局我が社の…拝人の利益には繋がりそうもありませんね。

彼女がアミダ社の機密を知っているならそれは知りたいですが。無理じいはできませんし。

あぁ、でも確かに紙の本にそれを保存する図書館。それは確かに貴重でしょうからそれは価値はありますね。…星の本でも探してみましょうか…



「ハハッ、本の続きが読みたかった。ねぇ……」
 口にしてみれば他愛ないとすら感じる目的を聞いて、拝人は思わず笑ってしまった。
 別にバカにする意図はない。むしろ逆だ。彼の表情は感心した様子で少女を見ている。
「いいじゃないか、その為に企業を抜け出すなんてなかなか出来るもんじゃない」
「それほどでも、ないです」
 照れたように視線を逸らすレプリカントの少女。こんな儚げな娘がたった一冊の本のためにメガコーポから脱走してきたのだ。所属は異なれどカンパニーマンである拝人には、それが並大抵の覚悟でできることでは無いと分かっている。
「脱走した理由が物語の続きを読みたい……と言うものだったのには驚ましたが。その実行力には素直にすごいと思いましたね」
 シャルルの感想も拝人とおおむね同じだったようで、猟兵の助けもあったとはいえ脱走を成し遂げた少女のことを素直に讃える。色々と苦労はあっただろうが、ここまで来れば目的達成まであと少しだろう。

「読みたかった本。あるといいな。俺も手伝ってやる、タイトルは?」
「あ、ありがとうございます。題名は『アルター・フロンティア』といいます」
 拝人が気さくに協力を名乗り出ると、少女はお礼を言いつつ小説のタイトルを伝える。
 聞くところによると内容は若者向けのファンタジー小説らしい。同じジャンルの作品が多いだけに探すのも苦労しそうだが、人手と時間をかければいずれ見つかるだろう。
「小説ならあっちの棚かね。行こうぜシャルル」
「はい」
 探索のために拝人が歩きだすと、シャルルは言葉少なめに応じて後に続く。二人の前に広がるのは放棄された膨大な書物と書架の迷路。時代に取り残された知識の保管庫だ。

「……紙の本か……俺も流石に読んだことはないが不思議な感じだな」
 朽ちた建物特有の雰囲気を感じつつ、適当な本を手にとってみる拝人。古い紙とインクの匂い、指先に触れるページの感触。普通の電子書籍では味わえない趣がそれにはある。
「………」
「なんだ不満そうだな」
 彼が楽しみつつ本探しをする一方で、シャルルは黙ったままだった。あからさまに態度に出ている訳ではないが、付き合いの長い人間には分かってしまう程度の不満。相棒である彼に見抜けないわけがなかった。

「あの子が逃げられたのはいいがこちらの利益が~ってとこか?」
「本を探すのに協力は惜しみませんが……結局我が社の……拝人の利益には繋がりそうもありませんね」
 あっさりと内心を拝人に言い当てられると、シャルルは不満――というよりも残念そうに口を開く。アミダ社の戦闘部隊を撃破したことで敵対企業に打撃を与えられたが、自社に直接的なメリットはない。これで拝人の評価がどこまで上がるかは微妙な所だろう。
「彼女がアミダ社の機密を知っているなら、それは知りたいですが。無理じいはできませんし」
「利益ねぇ、まぁ、紙の本もある意味貴重だし、そんな物が大事に残されてる場所にはなんらかの大事なデータが残されている……なんてのは希望的観測だけどな」
 拝人自身はそれほど気にしてなさそうな様子だが、敢えてここで利益を出そうと考えるなら、企業的に有益な資料を持ち帰ることだろう。本を本棚に戻した彼は、近くにあった館内案内用の機械に目を向ける。

「それっぽいのにアクセスしようにもかなり古いハードだからなぁ。上手くいくか……」
 元は来館者のためのガイドや蔵書の検索等が行えたマシンのようだが、もう何年放置されていたのかも分からず、完全に埃を被っている。もし動かせれば有益なデータも得られそうだが、拝人の技術でもなかなか苦戦しそうである。
「とにかく今はシャルルも紙の本を楽しめ。ある意味貴重な体験だぞ?」
 一応やってみるかと腕まくりしつつ、彼はシャルルにもっと肩の力を抜くよう伝える。
 本来の依頼自体はもう完了しているのだから、無理に利益を出そうと気負う事はない。それよりも今この体験を思う存分味わうほうが"有益"というものだろう。

「あぁ、でも確かに紙の本にそれを保存する図書館。それは確かに貴重でしょうからそれは価値はありますね」
 拝人に言われて思い直したらしく、シャルルは改めて館内を見回す。基本的に仕事人間である彼女は娯楽のための本はあまり読まないのだろうか、並んでいる書籍のタイトルは古いこともあって覚えのないものばかりだ。
「……星の本でも探してみましょうか……」
 ぽつりとそう呟きながら、背表紙の題や書架ごとのジャンル分けを頼りに気になる本を探す。電子リストも検索システムもない不便な行程、けれど不思議とその手間は嫌なものではなかった。

「面白そうなデータが見つかったぞ。そっちはどうだ?」
「こちらも、気になる本がありました」
 やがて、拝人が復旧させた機械から貴重なデータを抜き取るのに成功した頃、シャルルの腕には一冊の本が抱えられていた。日焼けして色あせた表紙には、美しい星空の写真が貼り付けられている。
 誰からも顧みられることなく、時の流れに埋もれていた図書館。だが、そこに残されていた記録はこの二人の猟兵にとっても、確かな価値のあるものだったようだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ルパート・ブラックスミス
L913の本探しを手伝おう。
肉体的に貧弱となると埃に塗れた空間や高所の棚を漁るのは難儀だろう。
青火を抱えている本体だとおっかなびっくりだ、【指定UC】による仮初の身体を出す。

L913本人が話す気があるようならその小説の詳しい話を聞きたいし、首尾よくこの図書館で「続き」が見つかれば……横合いから覗き込むのも不躾だ、後であらすじを聞こうか。ネタバレも今回は許容だ。

ところで。奴らから逃げ出した以上その「L913」というのも意味を成すまい。
他に呼び名が無いならば、その小説のヒロインの名でも名乗ったらどうだ。
ただの番号よりは貴殿にとって意味もあろう。



「自分も本探しを手伝おう」
 戦いを終えたルパートは、黒騎士の鎧から人間の青年の姿になり、レプリカントの少女に淡々と話しかける。愛想はないが口調や態度に相手を拒むような雰囲気はなく、騎士の装いをしておらずとも実直で真面目な気質を感じさせる。
「貴殿の肉体では埃に塗れた空間や高所の棚を漁るのは難儀だろう」
「あ、ありがとう、ございます」
 外見の変化には驚いたものの、身体の貧弱さを気遣った申し出に少女は感謝を伝える。
 ただの本探しでもこれだけ規模の大きな図書館でとなればそれなりの重労働だ。五体の毅さを活かして人々の助けになるのも騎士の務めである。

「青火を抱えている本体だとおっかなびっくりだ」
 より安全に作業できる人間体で、図書館の探索を始めるルパート。この姿は正確には変身したのではなく、【縁が紡ぎし身製】により出現させた仮初の身体――非戦闘行動向けの予備ボディのようなものだ。
「この辺りにはなさそうだな」
「では、あちらの棚を見てもらえますか?」
 仮初めとはいえ五感はあり、本体と意識・感覚も共有しているので作業に支障はない。
 そのまま彼は少女の求めに応じて黙々と手と足を動かす。体力的には問題ないものの、代わり映えのない単純労働なため少々退屈感はあった。

「そういえば、貴殿の探している小説はどんな話なのだろうか」
「ん。興味、ありますか?」
 気分転換を兼ねてルパートが質問してみると、少女はぱっと目を輝かせて顔を上げた。
 自分の好きなものを人に教えるのが楽しいのは、レプリカントも同じらしい。話す気があるようならと改めて尋ねるまでもなく、彼女は嬉しそうに説明を始めた。
「主人公はスラム出身の男の子で、ヒロインは貴族の女の子。生まれも育ちも違うふたりは、ある日偶然町で出会うんです」
 このふたりには夢があった。「冒険者になって、自由な世界を旅したい」という夢が。
 ふたりは協力して自分達を取り巻くしがらみから抜け出し、夢を叶えて冒険者になる。そして旅をしながら様々な冒険を繰り広げるのが、この小説のメインストーリーだ。

「旅先に出てくる町や文化の描写がとても素敵なんです。モンスターとの戦いも手に汗握ります。わたしが特に好きなシーンは……」
 一度話しだすと少女は夢中になるタイプだったらしい。ルパートは手を動かしつつ彼女の話に耳を傾け、時折相槌を打つ。本人が楽しそうなところに水を差すつもりもないし、ネタバレも今回は許容だ。
「愛読書なのだな」
「ええ、すごく」
 そうでなければエンディングを知るためだけに、メガコーポからの脱走など企てまい。
 彼女にとってその小説との出会いは、人生を変えてしまうほどの衝撃だったのだろう。

「ところで。奴らから逃げ出した以上その『L913』というのも意味を成すまい」
 少女の思いの丈を知ったルパートは、ひとつ思いついた様子で提案する。メガコーポの手から離れて、外の世界で生きていくには、管理番号ではない名前があったほうがいい。
「他に呼び名が無いならば、その小説のヒロインの名でも名乗ったらどうだ。ただの番号よりは貴殿にとって意味もあろう」
「……ん。それは良い案です。あの物語のヒロインは、リエルという名前でした」
 彼の提案を少女も気に入ったようで、リエル、リエルと何度か小さく呟く。それが自分の新しい名前だと口に馴染ませるように。実験体『L913』としての過去はここで終わり、これからは『リエル』という1人の少女の物語が始まるのだ。

「気に入ったようで何よりだ……うむ?」
 少女――リエルの反応を穏やかな様子で見守りつつ、ルパートが作業を続けていると、書架に収まる一冊の本に目が留まる。その背表紙に書かれていたタイトルは『アルター・フロンティア』。まさにたった今、少女から話に聞いた小説と同じではなかったか。
「貴殿の探していたものは、これではないか?」
「……! そう、それです!」
 埃を軽く払ってから差し出すと、リエルはひったくるような勢いでそれを手に取った。
 おそるおそる表紙を開いて中身を確認する。ページを捲る指先が微かに震えているのがルパートには見えた。

「この内容は読んだことがあります。ちょうど小説の真ん中あたりの巻です」
「最終巻ではなかったか。だが、その本がここにあったという事は……」
 他の巻も近くにある可能性は高い。この図書館にリエルの探していた小説があるという情報は正しかったようだ。ルパートは早速近くの書架を調べるために立ち上がりながら、愛書を抱える少女に話しかける。
「貴殿はそれを読んで少し休憩するといい。一度読んだ小説でも、紙の本ではまた異なる味わいもあるだろう」
「あ……はいっ。感謝しますっ」
 電子データではない、実体のある書物を嬉しそうに捲りだす少女を見てから、その場を離れるルパート。横合いから覗き込むのも不躾だ、首尾よく「続き」も見つかってから、後であらすじを聞くとしよう。きっと、仔細かつ明快に語ってくれることだろう――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ペルセポネ・エレウシス
【ブラック】
「礼には及びません。
私たちブラックカンパニー特殊渉外課としては、貴女からアミダの研究所の情報をお教えいただければ十分です」

くすり、と笑いながら改めて【名刺交換】しましょう。
何なら、我が社で保護しても良いのですよ。

「まずは、フォスさんはそれらしい本を探して下さい。
内容は私がチェックしていきます」

小説のコーナーはフォスさんに任せ、私は閲覧禁止の本のコーナーへ。

まさか紙媒体で情報が残っているとは……
この中に我が社の得になる情報が眠っているといいのですが……

「その物語のラストは私も気になりますね。
ヒロインは敵の組織に就職していた、とかどうでしょう?」

守られるばかりが少女ではないのです。


フォス・オネイロス
【ブラック】

そういう理由だったんだ。

ペルセポネさん、この件『特殊渉外課』としての実績としてはあまりないけど、
最後まで彼女に協力してもいいかな?

ペルセポネさん、図書館なら司書室の奥とかに、
持ち出し禁止や閲覧禁止の本もあるんじゃないかな?

小説はわたしが探すから、
ペルセポネさんはそっちを調べてみるのはどう?

と、こっそり耳打ち。


『図書館』についたら、さっそく本探し。

紙の本ではあるけど、集められてるってことは、
分類されてるってことになるよね。

うーん……こういうのの解析は、ペルセポネさん、お願い!

『小説』のありそうなエリアを探してもらって、
わたしはそこで本を探していこう。

なんとか見つかるといいんだけどな。



「礼には及びません。私たちブラックカンパニー特殊渉外課としては、貴女からアミダの研究所の情報をお教えいただければ十分です」
 アミダ・アーミーズとの戦いを終えたペルセポネは、上品な振る舞いでくすり、と笑いながら、レプリカントの少女と改めて【名刺交換】を行った。差し出された名刺に記された肩書きを見て、少女はようやく彼女達の素性を知ることになる。
「他社のメガコーポの方でしたか。それなら、納得です。わたしが知っている限りの事でよければ、お話します」
 相手が何者であれ少女には助けられた恩義があり、脱走したアミダに義理立てする理由もない。メガコーポの人間だと分かっても敵意を抱いた様子はなく、「交渉」はスムーズに取りまとめられる事となった。

「何なら、我が社で保護しても良いのですよ」
「いえ。そこまでお世話になるわけには」
 悪いようにはしないというペルセポネの提案には、少女は丁重に断りを入れた。信用の問題というよりは本人の気持ちの問題だろう。メガコーポの元から逃れてすぐに、また別の企業の庇護下になるつもりはないようだ。
「しばらくはここを拠点にして、ストリートで暮らしていくつもりです」
 そう言って少女はかつて図書館と呼ばれた建物を見回す。もともと知識欲や好奇心の強い彼女には、ここは居心地のいい場所らしい。その知識を生計を立てる能力に活かせば、ストリートでの生活も何とかやっていけるだろう。

「そういう理由だったんだ」
 一方のフォスは、少女が研究所から逃げ出した目的に少なからず興味を示していた。
 大切な本の続きが読みたい。メガコーポと敵対するには随分ロマンチックな理由だが、企業人ではなく個人としては嫌いではない。
「ペルセポネさん、この件『特殊渉外課』としての実績としてはあまりないけど、最後まで彼女に協力してもいいかな?」
「そうですね……」
 相棒からの頼みを聞いたペルセポネは、頬に手を当てて考える素振りをする。アミダ社の情報を得たことで特殊渉外課としては本件に関する最低限のリターンは得た。このまま速やかに撤収しても構わないのだが――。

(ペルセポネさん、図書館なら司書室の奥とかに、持ち出し禁止や閲覧禁止の本もあるんじゃないかな?)
 令嬢の耳元でフォスはこっそりと耳打ちする。長年に渡って放置され、他のメガコーポの手も及んでないこの場所なら、思わぬ「掘り出し物」がまだ眠っているかもしれない。
(小説はわたしが探すから、ペルセポネさんはそっちを調べてみるのはどう?)
(いいでしょう。では、そういうことで)
 ペルセポネも声高に反対していた訳ではないが、企業人としての「落とし所」はその辺りが妥当だろう。少女に連れ添って図書館に入ったふたりは、さっそく本探しを始めた。

「紙の本ではあるけど、集められてるってことは、分類されてるってことになるよね」
 迷路のように本棚がずらりと並んだ館内の様子を見て、フォスはまずどこから探したらいいのかを考える。この図書館がまだ運営されていた頃には来館者をサポートする体制も整えられていたのだろうが、今は自分の手と足で手がかりを見つけなければならない。
「うーん……こういうのの解析は、ペルセポネさん、お願い!」
「分かりました。幸い、人為的に荒らされた形跡はありませんし……」
 早々に音を上げたフォスにかわり、ペルセポネが『小説』の集められたエリアを探す。
 朽ちた案内板や剥がれかけのラベルなど、かつての名残とも言える情報を集めて目的地を絞り込むのは、彼女にとってそう難しいことではなかった。

「まずは、フォスさんはそれらしい本を探して下さい。内容は私がチェックしていきます」
「うん。ありがとう、ペルセポネさん」
 無事に目的のコーナーを見つけると、フォスは腕まくりをして埃かぶった本棚を漁る。
 小説を探すのは彼女に任せることにして、ペルセポネは別のコーナー――一般の来館者には閲覧が禁止されていた本のある場所に向かう。
「まさか紙媒体で情報が残っているとは……」
 立入禁止の看板をどけて、錆びついた扉を押し開けると、そこには表向きのスペースとは異なる雰囲気の書庫が広がっている。電子化されていない情報の山が、これだけ状態の良いまま保管されれていたのは驚きだった。

「この中に我が社の得になる情報が眠っているといいのですが……」
 一口に閲覧禁止といっても歴史的に貴重だったり、保存上の問題であったり、一般の目には触れさせられない内容だったりと様々だ。ペルセポネはコーナーの中でさらに細かく区切られた分類を頼りに、自分が求める情報を探す。
「こちらの古文書は……骨董的価値はありそうですが、我が社の求めるものではないですね。あら? こちらは……」
 サイバー的な手段に頼れない旧時代的な資料探し。それでも社長令嬢自ら汗を流す価値はあったようだ。有益そうな資料を見つけると、彼女はそれをトランクにそっとしまう。

「なんとか見つかるといいんだけどな……ん、これは?」
 小説コーナーを調べるフォスのほうも、本棚の中からそれらしい書籍を見つけていた。
 背表紙に『アルター・フロンティア』と書かれた本を抜き出して、彼女はレプリカントの少女を呼ぶ。
「ねえ、あなたが探していた小説って、これであってる?」
「……! 見せてくださいっ」
 一目見るなり明らかに興奮した様子で、少女はフォスの手からその小説を受け取った。
 果たしてそこに求めていた結末は書かれているのか。微かに震える手でページを捲り、食い入るような眼差しで活字を追っていく。

「一体どんな結末なのかな」
「その物語のラストは私も気になりますね」
 読書に没頭する少女を見守るフォス。そこに資料を回収したペルセポネも戻ってきた。
 この手の娯楽小説で期待されるのはハッピーエンドだが、読者の意表をつくような結末も面白い。敵に連れ去られたヒロインの運命も気になるところだ。
「ヒロインは敵の組織に就職していた、とかどうでしょう?」
「わたしたちみたいに?」
 守られるばかりが少女ではないのです、と自信たっぷりに語るペルセポネに、フォスが「ペルセポネさんらしいね」とくすりと笑う。現代社会を支配するメガコーポ、その最前線で働くカンパニーマンとはいえ、こうしたひと時の語らいは年相応らしいものだった。
 果たしてエンディングは期待した通りのものなのか。それは、間もなく分かるだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

新田・にこたま
あなたを探した時にも使った翁丸ドローンを使って本を探索しましょう。
紙の図書館とはいえ、検索データベースが残っていれば楽なのですが…それは望み薄ですか。

ドローンを失せ物探しに使用する時のように探索に特化させ図書館中を地道に探索させます。

見つかって読んだ結果、エンディングにがっかりすることもあるかもしれません。そもそも見つからないかもしれません。
それでも、それだって人生です。少なくとも、今この瞬間あなたは自由です。そして、ここには沢山の本があります…本の数だけ、新たな『知りたい』という希望がありますよ。

すみません…探してた本の結末がつまらなかった前提で話していました。

結末に…納得は、できましたか?



「では、私も本の探索をお手伝いしましょう」
 レプリカントの少女の事情を聞いたにこたまは、警官として迷わず協力を名乗り出た。
 悪人に裁きを下し、市民の安全を守るのは重要だが、警察の仕事はそれだけではない。誰かの助けになることを進んで行うのも正義の務めだ。
「こちらは、あなたを探した時にも使った翁丸ドローンです」
「最新鋭の機体ですね。すごいです」
 ミニパトから発進させた9機のドローンを使って、彼女は図書館で本の探索を始める。
 この機体の用途が戦闘のみに限らないことは既に実証済み。広い館内を縦横に飛び回るドローンを、レプリカントの少女は感心したように見上げていた。

「紙の図書館とはいえ、検索データベースが残っていれば楽なのですが……それは望み薄ですか」
 にこたまが確認してみたところ、この図書館の電子的なシステムは大半が死んでいた。
 元は蔵書の検索やガイド機能もあったようだが、長い間点検もされずに放置されていたのでは壊れるのも致し方ないだろう。復旧もすぐには難しそうである。
「ここは地道に探すしかありませんね」
「はい。がんばりましょう」
 彼女は失せ物探しに使用する時のように【翁丸ドローン】を探索モードに特化させる。
 用途に応じて特定の技能を強化できるのが、このドローンの便利な点である。無線にて送られてきた映像をもとに小説のありそうなエリアが見つかれば、重点的に調査を行う。

「見つかって読んだ結果、エンディングにがっかりすることもあるかもしれません。そもそも見つからないかもしれません」
 ドローンを飛ばす傍ら、にこたまは自分の手と足でも本棚を調べつつ、一緒にいる少女に話しかける。ここまで来て考えたくない事ではあるが、探索の結果が期待したものではない可能性も十分に考えられることだった。
「それでも、それだって人生です。少なくとも、今この瞬間あなたは自由です」
 にこたまが敢えてそれを口にしたのは、少女に落ち込んで欲しくなかったからだろう。
 がっかりするなと言うのは無理かもしれない。だが、ここまでの過程に意味が無かったとは思ってほしくない。彼女が踏み出した"自由"への一歩の先には、まだ無限の可能性が続いているのだから。

「そして、ここには沢山の本があります……本の数だけ、新たな『知りたい』という希望がありますよ」
 本棚の中から気になった本を抜き出して、にこたまは少女に差し出してみる。これだけ数え切れないほどの本があれば、研究所で読んだ「最初の一冊」の他にも、心揺さぶられる出会いがきっとあるはず。知識欲の強い少女には宝の山だろう。
「……ん、そうですね。外の世界に出て、この場所に来れて、たくさん『知りたい』ことが増えました……感謝しています」
 本を受け取った少女はにこりと微笑むと、にこたま達猟兵に改めてお礼を言う。自分が今希望を持ち続けていられるのも、助けてくれた人達がいたからこそ。悲観することなど何もないと言うように、とても晴れやかな表情をしていた。

「すみません……探してた本の結末がつまらなかった前提で話していました」
「いえ、ありがとうございます……あれ、これって」
 にこたまと話をしていた少女は、ふと後ろの本棚にあった一冊の本に手を伸ばす。
 もしやそれが探していた小説だったのか――食い入るように内容を読み始めた少女に、にこたまはおそるおそる声をかける。
「結末に……納得は、できましたか?」
 少女は無言だった。だが、顔を上げた彼女の表情を見れば、その答えは明らかだった。
 メガコーポからの逃亡から始まった彼女の"希望"は、無事に叶えられたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

堂島・アキラ
なんつーかロマンってやつだな。気に入ったぜ。
お嬢ちゃんは頭がいいからオレの手助けは必要ねえだろうが、もう少し付き合ってやるよ。

小説の棚は……こっちか。
お嬢ちゃんこれからどうするつもりだ。行く当てなんざねえんだろ?
自由ってのは楽しいが辛い事もたくさんあるぜ。
クソみてえな外の世界より鳥籠の方がマシかもしれねえ。――それでも、か。

お、あったぞ。たぶんコイツじゃねえか?
よし、向こうのイスに座って読んできな。オレは出口で待ってるからよ。
フッ、嬉しそうにしちゃってカワイイじゃねえの。
あんな純真な女の子に抱きつかれて鼻の下伸ばすクズ野郎がいるって?おー嫌らしい。

そんじゃ、お嬢ちゃんが夢中になってる間にオレは帰るぜ。
別れの挨拶なんて湿っぽい事はしたくねえ。
それにオレみたいな野郎はお嬢ちゃんの近くにいない方がいいんだ。
だがそうだな、ここなら紙とペンはあるよな。

『困った時にはいつでもどこでも、バイクに乗って駆けつけるぜ。 美少女Aより』

さあて、次に最優先でぶっ潰すメガコーポは決まったな。面白くなってきたぜ。



「なんつーかロマンってやつだな。気に入ったぜ」
 大義とか理想なんてものではない、自分だけのちっぽけな望み。そのためにメガコーポに喧嘩を売ったレプリカントの少女に、アキラは改めて好感を持った。儚げでカワイイ見た目の割に、なかなか大胆なことをするものだ。
「お嬢ちゃんは頭がいいからオレの手助けは必要ねえだろうが、もう少し付き合ってやるよ」
「ありがとう、ございます。助かります」
 そう言ってにいっと笑う彼に、少女はぺこりと頭を下げる。司書も案内もいない廃れた図書館で、たった一冊の探しものをするなら、人手はどれだけあっても困らないだろう。

「小説の棚は……こっちか」
 それらしい本がありそうなスペースに当たりをつけて、がさがさと本棚を漁るアキラ。
 聞いたタイトルはないか背表紙を確認しながら、ふと気になったことをレプリカントの少女に尋ねてみる。
「お嬢ちゃんこれからどうするつもりだ。行く当てなんざねえんだろ?」
「ん。しばらくはこの図書館を拠点にして、ストリートでの身の振り方を考えます」
 メガコーポで製造され研究所で育った少女には、当然ながら身寄りなどは存在しない。
 何とか一人で生活する手段を考えていく方針のようだが、ストリートでの活動歴も長いアキラからすれば、まだ見通しが甘いようにも感じられた。

「自由ってのは楽しいが辛い事もたくさんあるぜ」
 誰にも縛られないということは、全ての責任を自分で負わねばならないことでもある。
 カネや社会的地位を持たぬ者に都市の生活は過酷だ。弱みを見せれば付け込んでくる、ハイエナのような奴らも大勢いる。どだい"安全"という言葉から程遠いのは確かだ。
「クソみてえな外の世界より鳥籠の方がマシかもしれねえ。――それでも、か」
「それでも、です」
 始まりは一冊の小説だったとはいえ、一度手にした自由を捨てるつもりはないようだ。
 少女の瞳は澄んでいて、眼差しは純粋に未来を見据えている。それを見てしまっては、これ以上何かを言うのは無粋だろう。アキラはただ「そうかい」と笑うのみだった。

「お、あったぞ。たぶんコイツじゃねえか?」
「……!」
 それから暫く捜索を続けたのち、アキラと少女は本棚から『アルター・フロンティア』と題された本を見つけだす。話によればこれが少女の探していた小説の題だったはずだ。
「たぶん、これだと思います」
「よし、向こうのイスに座って読んできな。オレは出口で待ってるからよ」
 元は読書用のスペースだった所をアキラが指差すと、少女は「はいっ」と笑顔で応えて走っていく。子供のようにキラキラと目を輝かせて、はやく読みたいという気持ちが全身から伝わってくる。それも当然か、彼女からすれば人生を賭けて求めた一冊なのだから。

「フッ、嬉しそうにしちゃってカワイイじゃねえの」
 夢中になってページをめくる少女の横顔を、アキラは含みのない笑顔で見守っていた。
 あれだけ真剣に読書しているところに邪魔をするのも忍びない。待望の一冊との出会いに茶々を入れるのはモテない奴のすることである。
「あんな純真な女の子に抱きつかれて鼻の下伸ばすクズ野郎がいるって? おー嫌らしい」
 はてさて一体誰のことなのか、独り言でとぼけつつ、彼はしばらく少女の読書の様子を眺めていたが、やがて満足したのかくるりと踵を返す。ここまで付き合ったならもう自分にできることはやったし、あちらが夢中になっている間に帰るとしよう。

(別れの挨拶なんて湿っぽい事はしたくねえ。それにオレみたいな野郎はお嬢ちゃんの近くにいない方がいいんだ)
 言葉にしなかったその独白は、あるいはアキラの本音だったのかもしれない。荒事を好み、荒事から寄ってくる人となりをしている彼の傍にいれば、無用な争いに巻き込まれる羽目になるだろう。少女の平穏を考えるならここで別れておくべきだ。
(だがそうだな、ここなら紙とペンはあるよな)
 図書館ならあるだろうと探してみれば、埃かぶったものがすぐに見つかった。インクが出るか確かめてから、さらさらと走り書きする内容は、本好きな少女に宛てた置き手紙。

『困った時にはいつでもどこでも、バイクに乗って駆けつけるぜ。 美少女Aより』

 これを読んだ時少女は何を思うだろうか、図書館の外に出たアキラはいつもと変わらぬ笑みを浮かべると、相棒の『ツルギ -HABAKIRI-』にひらりと跨り、エンジンをかける。
「さあて、次に最優先でぶっ潰すメガコーポは決まったな。面白くなってきたぜ」
 札付きのアウトローである彼に目をつけられた、アミダインダストリーは不幸である。
 純粋無垢な少女を実験体にしていた罪の重さと報いを思い知らせてやろうと、アキラはこの日ひとつの決意を抱いたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ニクロム・チタノ
成る程ねボクも昔研究所の部屋に押し込められてたことがあったからなんとなくその気持ちわかるよ
キミはその結末を知るために自分の状況に反抗したんだね、キミの物語の結末をボクも知りたくなったよ
よし、妹達姉様方もう一度力を貸してこの子にお話の続きを見せてあげたいの
妹達は床に散らばっている本を整頓してその中に目当ての本がないか調べてみて
姉様方は本棚にある本を探してください
たぶん冒険ものがある段を探したら見つけ易いかも
ボクは彼女と一緒に背の届く下の段を探しますから
なかなか見つからないね、あっちの方を探して見ようか大丈夫諦めないでチタノがきっとボク達を導いてくれるから
この本かな?見てごらん、主人公の少年がヒロインの女の子と一緒になって旅や冒険をしていろんな所で物語を体験して敵に捕まったヒロインを主人公の少年が助けに行く物語だね
その続きは主人公が敵をやっつけてヒロインのところに向かうけど敵の城が崩れてそれでも二人は一緒にいる、少しほろ苦いお話だねでもとても一途で美しい
キミはこれからどうする、キミの物語は?



「成る程ね。ボクも昔研究所の部屋に押し込められてたことがあったからなんとなくその気持ちわかるよ」
 まだ反抗の竜に選ばれる以前、実験体ナンバー2966と呼ばれていた頃を思い出して、ニクロムはレプリカントの少女の想いに共感する。鳥籠の中の支配よりも、自由と憧れを追い求める意志は尊重したい。
「キミはその結末を知るために自分の状況に反抗したんだね、キミの物語の結末をボクも知りたくなったよ」
「わたしの、物語……」
 たった一冊の小説のために、メガコーポの研究所から抜け出した少女(ヒロイン)。
 最後に彼女が迎えるエンディングは、小説のラストと同じようにまだ分かっていない。
 レプリカントの少女は、その言葉を噛みしめるように反芻して、胸に手を当てていた。

「よし、妹達姉様方もう一度力を貸して。この子にお話の続きを見せてあげたいの」
 ニクロムの願いに応じて再び現れた【哀れな姉妹達】は、手分けして本探しを始める。
 どんなに広い図書館でも、百人を超える姉妹の連携プレーが活かせば、きっと捜し物も見つかるだろう。
「妹達は床に散らばっている本を整頓してその中に目当ての本がないか調べてみて。姉様方は本棚にある本を探してください」
「「わかったわ(よ)」」
 てきぱきとした動きで書籍の整理を行う2966ナンバーズ。ニクロムとレプリカントの少女も一緒になって捜索を行う。これだけ多くの人で賑わっているのは、恐らくこの図書館が閉館して以来のことだろう。

「たぶん冒険ものがある段を探したら見つけ易いかも。ボクは彼女と一緒に背の届く下の段を探しますから」
 ニクロムの指示は的確で、すぐに件の小説がありそうなエリアに当たりをつけていく。
 とはいえ長年放置されてきたために館内はかなり荒れており、整理整頓も並行して行わないといけないためペースは早いとはいえない。
「なかなか見つからないね、あっちの方を探して見ようか」
「はい……」
 ひとつの本棚が調べ終わったらまた次の本棚へと、ニクロム達は地道な捜索を続ける。
 流石に少女のほうも単純作業の連続による疲労がみられ、表情に陰が差し始めていた。

「もしかしたら情報が古くて、ここにはもう探している本はないのかも……」
「大丈夫諦めないで。チタノがきっとボク達を導いてくれるから」
 弱気になりかけたレプリカントの少女を、優しく励ますニクロム。ハッピーエンドな結末はきっと、諦めない者にこそ訪れる。反抗の竜の加護を信じる彼女に憂いはなかった。
 その前向きな姿勢に感化されて、少女ももう少し頑張ってみようと顔を上げる。姉妹達も一生懸命にサポートを続け、他の猟兵達とも協力して館内を隅々まで調べ――。
「この本かな?」
「あっ、これは……」
 外では太陽が傾き始めた頃、少女とニクロムはついに目的の小説らしき本を見つけた。
 埃を被った表紙には、イラストと一緒に『アルター・フロンティア』と記されている。聞いていた通りのタイトルだ。

「見てごらん、主人公の少年がヒロインの女の子と一緒になって旅や冒険をしていろんな所で物語を体験して、敵に捕まったヒロインを主人公の少年が助けに行く物語だね」
 ニクロムが確認してみた内容は、まさしく少女が話していた小説のものと同じだった。
 少女は「これです……っ!」と興奮気味に本を受け取ると、読書用のスペースに座る。果たして物語の続きはどうなったのか、ニクロムも期待を込めて様子を見守る。
「主人公は敵の城に乗り込んで……激しい戦いのすえ、ついに勝利を収めます」
 宿敵を見事倒した少年は、囚われていたヒロインの所に向かうが、主を失った敵の城は崩れ始めていた。ふたりが再会した時には、もう脱出までの時間は残されておらず――。

「れでも二人は一緒にいる、少しほろ苦いお話だね。でもとても一途で美しい」
「はい……あ、でも待ってください。こちらの本は……」
 絆の尊さを感じさせながらも、幸いとは言いがたい旅の終焉。しかし少女はそこで別の本を取り出す。彼女が猟兵達と一緒に探して見つけだした本は、一冊ではなかったのだ。
「知らなかったですけど、この小説は何度か版が上がっていて、内容が加筆されているんです。こちらの版だとこの戦いの後、主人公とヒロインは無事に城を脱出できています」
 そしてふたりは自分達の見つけた新天地(フロンティア)で、これからも旅を続けていく――結末が書き直されたのは読者からの要望か、作者の気持ちの変化か。いずれにせよ悲劇的だったビターエンドは、人の"想い"によってハッピーエンドに変えられたのだ。

「最初の終わり方も物語として美しいですが……わたしは、こちらも好きです」
 ようやく知ることのできた結末を、少女は噛みしめるようにぎゅっと本を抱きしめる。
 それは焦がれて膨らんだ期待に、十分に応えるエンディングだった。そしてメガコーポへの叛逆から始まった少女の物語も、ひとつの区切りを迎えた事になる。
「キミはこれからどうする、キミの物語は?」
「ひとまずは、ここで生きるための基盤を整えて……お金が溜まったら、この本の主人公たちのように、旅に出るのもいいかもしれませんね」
 ニクロムの問いかけに返ってきたのは、花咲くような笑顔と希望に満ちた答えだった。
 少女にとって外の世界はまだまだ未知に溢れている。まだ知らない本や人との出会いを通しての体験が、実験体『L913』ではなく『リエル』としての成長を促すだろう。彼女の物語はまだまだ始まったばかりだ。

「いつかは、わたしも本を書いてみたいです……この小説のように、誰かに憧れや希望を与えられる本を」

 胸に宿った夢を語って、少女――リエルは改めて猟兵達に「ありがとう」と伝える。
 多くの人に助けられ、成し遂げた逃避行の先にあったのは、かつての少女には想像すらできなかった未来の可能性。どんな金銭にもかえられない宝物を一同は守り抜いたのだ。



 その後、サイバーザナドゥのネット上にとある小説が投稿され、密かな話題を呼んだ。
 それは世界を支配する強大な敵に、異能の力と不屈の心で立ち向かうヒーローの物語。
 この小説に感化された読者の中には、過酷な現実を生きる勇気を貰った者もいたというが――それはまた別の物語。どこまでも綴られていく、無限の物語の1ページである。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年04月02日


挿絵イラスト