天使の名は欺罔か、エースの終末
●喇叭
地獄を見た。
『ライスメキア』は、己の境遇をきっとそう言葉にしただろう。
未だ幼い巨人の娘。
それが『ライスメキア』であった。彼女は尽くを喪ってきた。彼女の生まれは地下帝国『バンブーク第二帝国』。
その皇女が彼女だ。
彼女は全てを喪った。
国を追われる身となった時、彼女をかばってくれた乳母すらも喪った。先代皇帝の遺児である彼女は今『バンブーク第二帝国』を統べる皇帝にとっては邪魔者以外の何者でもなかった。
そして、同時にかつて百年戦争の折に敵対したかつての小国家からは、己は宿敵の残り火として戦火を招く忌み嫌われる存在でもあった。
何処に言っても自分の存在は、行く先々に戦火をもたらしてしまう。
己の道は赫く燃えている。
「憎しみの連鎖が私を取り囲んでいる。父上の死を悲しむことも、悼む事も許されない。これが戦争というもの。これが争い。憎しみ。悲しみ……」
自分は何もしていないとは言えないだろう。
存在しているだけで火種を生むのだから。ならば、己の存在は確かに悪であった。けれど、彼女はどうしても許せなかった。
己の父親を殺し、『バンブーク第二帝国』の皇帝の座を簒奪せし者を。
あの者を取り除かねばならない。
この戦火を生み出す源が、あの者であったのならば、如何にしてもアレを滅ぼさなければならない。
目の前が真っ赤に染まる――。
●運命に出会う
『フュンフ・ラーズグリーズ』は『ライスメキア』に言った。
彼は『フィアレーゲン』という滅びた小国家の残存するレジスタンスを率いていた。彼もまた己と同じ運命を背負っているようであった。
『フュンフ・エイル』と同じ名を持つ人間。
けれど、不思議と憎しみは湧いてこなかった。
「初めてだな、そういう風に『バンブーク第二帝国』の……巨人の人に言われたのは」
「だって、そうでしょう。貴方は『フュンフ・エイル』じゃあない。『フュンフ・ラーズグリーズ』でしょう? ならば、名前が同じだからと憎しみを向けるのは違うのだと思います。あなたの名前はあなただけのもの。なら、憎しみに囚われることもありません」
『フュンフ・ラーズグリーズ』のなんとも言えない表情が印象的であった。
『ライスメキア』はその時、ようやくおかしな人だ、と笑ったのだ。自分の三分の一ほどの身の丈しかないけれど、彼の存在はとても大きいもののように思えた。
巨人である己。
それに加えて、『バンブーク第二帝国』から狙われ続ける厄介者である自身を受け入れてくれた彼。
感謝しかない。
彼のために何かをしたいと思った。護られてばかりで言い訳がない。だからこそ、『バンブーク第二帝国』のキャバリアが小国家『フルーⅦ』に向かう『フィアレーゲン』のレジスタンスを襲撃した時、彼女は力を願った。
「ここまでして! ここまでして私を殺したいのですか! そうまでして、父上の築き上げた平穏なる日常を壊したいというのですか!」
キャバリアさえあれば。
そう願わずにはいられなかった。誰かを守りたいと思う心はあれど、巨人の体躯である己に操縦できるキャバリアは、此処にはない。
『バンブーク第二帝国』のキャバリアはどれもが、その巨人の体躯に合わされて作られている。
特に将軍クラスの専用機は、通常のキャバリアの三倍にも及ぶ。
「ダメだ、『ライスメキア』! 君は逃げるんだ!」
『フュンフ・ラーズグリーズ』の声が聞こえる。
けれど、もはやその優しい声は届かない。彼もまた傷つき打ちのめされても尚、立ち上がってきたのだ。何度も何度も、その心を打ちのめされてきた。
自分では彼を癒やすことなどできない。
けれど、この巨人の体躯であったのならば、彼を護る盾くらいにはなれるだろう。
怒りが体を突き動かす。
「私は此処です!『バンブーク第二帝国』皇女、『ライスメキア』は此処に! 控えなさい! 狼藉目に余る行いです!」
だめだ、と優しい声がまた聞こえる。
でもいいのだ。彼を護って死ねるのならば、これまで煩わしくかなぐり捨てたいと思うほどであった皇女の名も悪くはない。
今のうちに逃げてほしいと思った。けれど、彼女の心を支配する怒りは、膨れ上がっていく。
なぜなら、彼女の視界にあったのはかつての『バンブーク第二帝国』の先代皇帝専用機の姿があったからだ。
あれは己の父親の専用機。
そして、今アレを駆っているのは、己の復讐する相手。父を殺し、国を奪い、己からあらゆるものを奪い去った存在。
「……――ッ!」
怒りが全てを凌駕した瞬間、彼女の眼前に飛来したのは巨人機にして天使の名を持つキャバリアであった――。
●大いなる危機
グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)だった。
「お集まり頂きありがとうございます。今回の事件はクロムキャバリアにおいて将来訪れたであろう『大いなる危機』……これを防ぐために皆さんのお力を貸して頂きたいのです」
そう告げるナイアルテが示すのは、小国家『フルーⅦ』近郊である。
今や、小国家『フルーⅦ』は地底帝国である『バンブーク第二帝国』との戦端を開いている。
その『バンブーク第二帝国』は復活にあたって、皇帝が入れ替わっている。それは正統なる手続きを踏んでの継承ではなく、簒奪という形で行われたものなのだ。
これにより、先代皇帝の遺児である『ライスメキア』皇女が追放され、それを『フィアレーゲン』のレジスタンスを率いていた『フュンフ・ラーズグリーズ』が保護したのだという。
それだけであるのならば、猟兵たちの出番はない。
問題は、『フィアレーゲン』のレジスタンスたちが『フルーⅦ』に亡命するために近郊に向かう途中、『バンブーク第二帝国』は先代皇帝の遺児である『ライスメキア』を抹殺するために追撃の部隊を差し向け、彼女の怒りと怨嗟を膨れ上がらせることによって呼応するように現れたオブリビオンマシンに乗り込んでしまうことである。
「このオブリビオンマシンに乗り込んでしまった『ライスメキア』さんは、復讐心に駆られるままに怨敵のいる戦闘地帯に単身乗り込み、迎撃に出た『フルーⅦ』と『フィアレーゲン』のレジスタンスに甚大な被害を撒き散らしながら彼女もまた討ち取られてしまうのです」
ナイアルテの表情をは暗い。
『ライスメキア』は未だ幼く、全てを喪ったことにより精神的にも不安定である。
しかし、彼女のキャバリア乗りとしての才能は本物だ。
さらに言えば、彼女は巨人である。
もしかしたのならば、『バンブーク第二帝国』と小国家の争いを止める楔になるかもしれない。
「オブリビオンマシンを破壊し、彼女を救出してください。いつか来る大きな戦いの際に力を借りることができるかもしれません。それになりよりも……」
全てを喪った彼女から、これ以上のものを失わせるわけにはいかない。
その言葉を背に猟兵たちは転移していく。
終末の喇叭は吹き鳴らせない。その意志と共に、戦禍へとナイアルテは見送るのであった――。
海鶴
マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
今回はクロムキャバリアにおいて『バンブーク第二帝国』先代皇帝の遺児、皇女『ライスメキア』が復讐心によって乗り込んだオブリビオンマシンの打倒と、彼女の救出を行うシナリオになります。
キャバリアをジョブやアイテムで持っていないキャラクターでも、キャバリアを借りて乗ることができます。ユーベルコードはキャバリアの武器から放つこともできます。
ただし、暴走衛星『殲禍炎剣』が存在しているため、空は自由に行き来できません。
●第一章
ボス戦です。
オブリビオンマシン、人喰い天使『アラクシエル』が、『フルーⅦ』近郊に迫った『バンブーク第二帝国』の部隊に特攻を仕掛けようとしています。
オブリビオンマシンには『ライスメキア』が既に乗り込んでおり、また彼女の種族が巨人であることから、人喰い天使『アラクシエル』は通常のキャバリアの三倍の体躯をおmっています。
彼女はもともと抱えていた復讐心をオブリビオンマシンによって更に肥大化させられており、言葉での説得は通用しません。
それに加えて、キャバリア乗りとしての才能も開花していますが、救出が目的です。オブリビオンマシンだけを破壊することを目指しましょう。
●第二章
冒険です。
破壊したオブリビオンマシンから『ライスメキア』を救出し、その場を離脱しなければなりません。
ですが、彼女を暗殺しようとする『バンブーク第二帝国』のキャバリア部隊が迫っています。
これらの追撃を躱し、『フルーⅦ』へとたどり着かねばなりません。
●第三章
日常です。
『フルーⅦ』の中はひとまずは安全地帯となります。
改めて、オブリビオンマシンに魅入られていた『ライスメキア』と共に過ごし、彼女の憎しみや悲しみを和らげてあげたり、道を示してあげましょう。
それでは、戦乱続く世界、クロムキャバリアにおいて荒れ狂うように荒ぶ恩讐を拭い、新たなる道を示す皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
第1章 ボス戦
『人喰い天使『アクラシエル』』
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POW : 大型貫徹杭『ロンゴミニアド』
自身の【燃料となる人間】を代償に、【空間を歪めるほどの威力】を籠めた一撃を放つ。自分にとって燃料となる人間を失う代償が大きい程、威力は上昇する。
SPD : オブリビオンパルスエンジン『セファーラジエル』
【燃料となる人間を絶えず消費する】事で【周辺地域を汚染する天使の如き形態】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ : 大型光学斬撃兵装『アスカロン』
【燃料となる人間】のチャージ時間に応じ、無限に攻撃対象数が増加する【大出力のレーザーブレード】を放つ。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「ジェイ・ランス」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
巨人の体躯はキャバリアと奇しくもほぼ同じ体高であった。
けれど、『バンブーク第二帝国』、先代皇帝の遺児である皇女『ライスメキア』の目の前に飛来した巨大なるキャバリアはそれ以上であった。
『バンブーク第二帝国』は地底帝国であり、巨人の小国家でもあった。
彼等にとって地底から地上に進出することは悲願であり、また先代皇帝の願いでもあった。
けれど、百年前の戦争から、それは叶っていない。
『フュンフ・エイル』によって全てが阻まれ、計画は水泡に帰した。
それはもはや『ライスメキア』にとっては重要ではなかった。
皇帝の座を簒奪せしめた現『バンブーク第二帝国』の皇帝たる男から追放され、荒野をさまよっていた時に自分を救ってくれたのが小国家『フィアレーゲン』のレジスタンスを率いていた『フュンフ・ラーズグリーズ』であった。
あの優しい人のためならば、己の生命は捨ててもいいとさえ思った。
けれど、それ以上に己の父親を殺し、その専用機を持ち出した皇帝の存在を彼女は許せなかった。
許しておけるわけがなかったのだ。
「父上の機体を……!」
怒りが視界で染まる。
どうしようもないほどに、心と体を支配していく怒り。
もはや、彼女に聞こえは届かない。
「『アラクシエル』! それがあなたの名だというのならば! かの偽りの皇帝に死を! 終末の喇叭はあなたが響かせなさい!」
人喰い天使『アラクシエル』――その通常のキャバリアの三倍にも及ぶ体躯が内蔵されたジェネレーターから出力を上げ、咆哮を上げる。
それは復讐心を膨れ上がらせるための機構にして、パイロットを燃料に力を発露する兆候でもあった。
さらに周囲に汚染をもたらし、赤き翼を羽ばたかせる。
低空を飛び、その周囲に汚染をもたらす粒子。
さらには搭乗者の生命を燃料に、さらなる出力を得ていく機体。
まさに世界に終末をもたらす機体。
それが人喰い天使『アラクシエル』。
その赤き単眼が怪しく輝き、『ライスメキア』の復讐心と怨嗟を代弁するかのように、ジェネレーターが咆哮するのであった――。
ユーリー・ザルティア
そうか、フュンフくんは無事に逃げきれてたか。
よかった…なんだがなぁ。
西に逃げたら戦争。東に逃げても戦争。
知ってはいたけど、この世界って奴は!!
レスヴァント…出るッ!!
復讐心が心を濁らせる!!そのキャバリアがその源なら!!
攻撃を『瞬間思考力』で『見切り』自慢の『操縦』テクニックで回避
幾らデカくても当たらなければ!!
燃料が人間…何度も撃たせるわけにはいかないね。
なら…最大火力でッ
ダークマンティスを『エネルギー充填』で最大出力
さらにユーベルコード:フルインパクト・ギガドライブを発動。
この一撃に賭ける。分の悪い賭けは好きじゃないんだけどねぇ
『レーザー射撃』でアンダーフレームを狙い撃つ。
っと、緊急離脱。
滅亡した小国家『フィアレーゲン』の残存レジスタンスを率いていた『フュンフ・ラーズグリーズ』は、以前偽りの希望の象徴たるキャバリアを駆って猟兵と激闘を繰り広げた。
彼のその後を今まさに知ったユーリー・ザルティア(自称“撃墜女王”(エース)・f29915)は安堵に胸をなでおろす。
「そうか、『フュンフ』くんは無事に逃げ切れてたか」
彼を追う小国家『シーヴァスリー』の追撃部隊はどうやら振り切れているようであった。
残存するレジスタンスたちを小国家『フルーⅦ』の近郊まで率いていることが証拠だ。ユーリーはそれを喜ぶ。
彼は二度のオブリビオンマシンによって心を歪められようとしていた。
幾度も打ちのめされてきただろう。
けれど、今こうやって諦観に足を取られることなく人々を導く姿を見れたことは喜ばしいことであったからだ。
「よかった……なんだがなぁ。西に逃げたら戦争。東に逃げても戦争。知っていたけど、この世界ってやつは!!」
ユーリーは己のキャバリアのコクピットの中で憤る。
それもそのはずである。
このクロムキャバリアという世界は何処まで言っても争いばかりが続く世界なのだ。
その種火を撒き散らすオブリビオンマシンという存在があれど、それはどれだけ排除しても終わることのない戦争という坩堝に人々を捉えて離さないのだ。
「『レスヴァント』……出るッ!!」
白き機体が戦場に走る。
目指すのは人喰い天使『アラクシエル』。
その機体は通常のキャバリアの三倍にも及ぶ体躯を持つ。『バンブーク第二帝国』の種族、巨人たちが扱うキャバリアは皆そうである。
「復讐心が心を濁らせる!! そのキャバリアがその源なら!!」
『レスヴァント』が大地を疾駆し、見上げるほどの巨大なキャバリアが赤き単眼をきらめかせ、その空間をも歪まえせる程の出力を持つ大型貫徹杭の一撃を叩き込む。
「幾らデカくても当たらなければ!!」
既のところで『レスヴァント』が一撃を躱す。
だが、その一撃は空間さえも歪ませるものである。大地が砕け、破片が飛び散る中、『レスヴァント』が大地を蹴って飛ぶ。
「私の心が復讐に囚われているなど! これは正統な応酬! 正統なる行いに過ちなどありはしないのです!」
巨人機たる『アラクシエル』が再び咆哮する。
二撃目を撃たせてはならない。あの攻撃はパイロットである『バンブーク第二帝国』の先代皇帝の遺児である皇女『ライスメキア』の生命を削る。
彼女を救出するためには何度も撃たせるわけにはいかないのだ。
「なら……最大出力でッ」
『レスヴァント』の動力炉が出力を上げていく。
それはともすれば暴走状態と呼んでも差し支えのないものであった。炉心からあふれるエネルギーが背面に背負った超巨大荷電粒子ビーム砲へと伝わる。
炉心から溢れる熱量に機体のフレームが歪んでいくのを感じる。
コクピットのコンソールやモニターにエラーやコーションマークが入り乱れる。けれど、ユーリーは飛び散る破片の中、長物である荷電粒子ビーム砲を背負ったまま飛ぶ。
「諸刃の剣…って理解してるさ。…それでもやらないと言えない時は…在る!!」
長大な砲身が『アラクシエル』へと突きつけられる。
この一撃に賭けるのだ。
だが、分の悪い賭けだ。よしんば打てたとしても、その巨大なエネルギーの砲身は愚か、己の機体のフレームは持たないだろう。
それに『アラクシエル』を撃墜するわけにも行かない。
その一撃はアンダーフレームへと向けられる。狙うのならば、その機体を行動不能にする。
放たれるビームの光条が『アラクシエル』のアンダーフレームに打ち込まれ、そして空間を歪める杭の一撃と激突し、周囲にビーム粒子を撒き散らす。
粒子が飛び散り、周囲の荒野を破壊しながらユーリーは見る。
「私は間違ってなどいません! 彼の者の行いを正すためには! 力でもって示さねばならないのです! 大切なものを護るためには! 時に力を行使してみせんば!」
膨れ上がった復讐心と怨嗟。
それはこの近郊に迫った『バンブーク第二帝国』の部隊。そして、皇帝の座を簒奪した者が迫っているからであろう。
だからこそ、止めなければならない。
砲身が焼けただれながら、ユーリーのはなったフルインパクト・ギガドライブの一撃は『アラクシエル』の鉄杭をオーバーヒートさせ、アンダーフレームに損傷を刻む。
膨大な熱量故に足を止めた『アラクシエル』の咆哮を背にユーリーは己の機体から長大な荷電粒子砲の砲身を捨てる。
「今はまだ……か。っと、緊急離脱しなきゃ……!」
終末の喇叭は未だ吹かず。
されど、今迫る終末は、確実に近づいているのだ――。
大成功
🔵🔵🔵
ガイ・レックウ
【POW】で判定
『お嬢ちゃん!!その機体は憎しみと終末をもたらすものだ!!そんなもんに飲まれちゃなんねぇぜ!!』
【オーラ防御】のオーラを幾重にも纏ったスターインパルスで突撃するぜ。
【フェイント】を織り交ぜながら電磁機関砲での【制圧射撃】とブレードの【鎧砕き】で駆動部を狙い、ユーベルコード【封魔解放『鳴神』】の雷で機体だけ破壊するぜ!!
排熱する大型貫徹杭が陽炎の向こう側に見える。
人喰い天使『アラクシエル』の単眼が赤くきらめき、その身に内包したパイロットであり、『バンブーク第二帝国』の先代皇帝の遺児である『ライスメキア』の心にある復讐心と怨嗟を膨れ上がらせていく。
それがオブリビオンマシンである『アラクシエル』の術中であるというのならば、それは成功しているといえるであろう。
「私の復讐のためではなく! あの人達を護るためには、力を使わねばなりません。私の体躯がなんのために巨大であるのか。この巨人機が証明しくれるのです。もう護られるばかりの私ではないのです!」
排熱の向こう側で『ライスメキア』の咆哮が轟く。
巨人族であるがゆえの体躯。
けれど、戦う力を持っていなかった彼女にとって、『フィアレーゲン』のレジスタンスを率いていた『フュンフ・ラーズグリーズ』とその仲間たちは己をずっと護ってくれていた。
体躯が違い、種族が違い、国が違えど護ってくれたのだ。
ならばこそ、彼女はその復讐心を抑えることができた。けれど、それは些細なきっかけで決壊するようなか細い希望のようなものでもあったのだ。
「あの者が! あの痴れ者が! 私の父を殺し、皇帝の座を簒奪した者が、父の遺した機体を、キャバリアを使うなど!」
小国家『フルーⅦ』の近郊に迫っている『バンブーク第二帝国』のキャバリア部隊。
それらを率いている機体こそ、彼女の父親である皇帝の専用機。
彼女はそれを見た瞬間、あらゆる希望を吹き飛ばす復讐と怨嗟に飲み込まれてしまったのだ。
「お嬢ちゃん!!」
その排熱の向こう側から一気のキャバリアが飛び込んでくる。
『スターインパルス』、ガイ・レックウ(明日切り開く流浪人・f01997)の駆るキャバリアが正面から突っ込んでくるのだ。
オーラ防御を幾重にも張り巡らせた『スターインパルス』の突撃は奇異なるものであったことだろう。
巨人機である『アラクシエル』とのサイズ差は、おおよそ三倍。
されど、空間を歪めるほどの一撃を放つ大型貫徹杭は未だ健在だ。あの一撃を受けてしまえば、オーラの防御など紙に等しい。
電磁機関砲が放たれ、牽制する。
だが、これほどのサイズ差である。豆鉄砲と呼ばれてもしかたのないものであった。
「その機体は憎しみと終末をもたらすものだ!! そんなもんに飲まれちゃなんねぇぜ!!」
ガイの言葉は届かない。
誰の言葉も届かないだろう。
今の『ライスメキア』にとって、他者の言葉は耳に届かない。無論、心にもだ。
彼女はオブリビオンマシンに乗ることに寄って、その復讐心を増幅させられている。
あれを止めるためには機体を破壊するしか無い。
排熱の間に叩くしか無い。けれど、その巨大な機体は飛び回る『スターインパルス』を振り払うように腕部を叩きつけ、ビーム粒子で砕けた大地をさらに破壊へと導いていく。
「私の復讐は此処に。彼処にあるのです。私が怨敵が! 私が討たねばならぬものが! それを邪魔するというのなら!」
ガイは見ただろう。
あの単眼に煌めく赤い狂気を。
あれは人の心を歪めるものである。ならばこそ、ガイはその瞳をユーベルコードに輝かせる。
荒れ狂う魔神の雷が迸り、そのキャバリアブレードが煌めく。
「さあ、荒れ狂え!百鬼従えし、魔人の雷よ!!悉く粉砕せよ!!」
機体そのものを破壊する。
だが、パイロットは救わねばならない。動きを止め、その分厚い装甲を引上すべく、ユーベルコードの煌きと共に封魔解放『鳴神』(フウマカイホウ・ナルカミ)によって放たれた雷が装甲を焼き切っていく。
「その機体だけ破壊させてもらう! どれだけお嬢ちゃんの心が復讐に満たされていようともな! あんたが帰ってくるのを望んでいる奴らがいるってことを忘れちゃならねえぜ!」
ほとばしる雷が、『アラクシエル』の装甲を焼き切り、大地に失墜させていく。
咆哮する怨嗟も、復讐心も。
どれもが正統なるものであったのかもしれない。
けれど、普段の彼女が、『ライスメキア』が望むものはそれではない。
彼女を守り、彼女が慕う者たちは、きっと今の彼女を望まないだろう。だからこそ、ガイはそんな彼等のためにこそ、ユーベルコードの光がもたらす雷でもって怨嗟を切り裂くのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
全く、『フュンフ』は困った拾い物するからこうなる。
いいでしょ、関わった以上、この手のひらから何も零したりはしない。全て救(掬)いあげてみせる。
『GPD-311迦利』、起動。あなたを出すのは久しぶりね。
その先端を中心に摩利支天九字護身法を施してから、「式神使い」で機体を制御し、人喰い天使に向けて特攻を。
「レーザー射撃」の「弾幕」で「制圧射撃」。
速度はおそらく相手が上。だけど空戦機じゃない。『迦利』、広範囲に無差別攻撃を。それで挙動が乱れたところに。九字護身法で強化した衝角での突貫を頭部へと。
周辺の汚染は「環境耐性」「呪詛耐性」で凌ぐ。
亡国の皇女! 全てを捨てたというなら、その憎しみも捨てなさい!
機体の装甲をはぎ落としていく雷の中で排熱を終えた人喰い天使『アラクシエル』は単眼を燃やすように咆哮し、その通常のキャバリアの三倍はあろうかという巨躯を天使の如き姿へと変貌せしめる。
「私が護らねばならぬもの。それは私の敵にとって奪うべきもの。ならば、決して奪わせはしません!」
復讐心と怨嗟が、その心の中にある大切なものを守らんとする意志すら侵食していく。
巨人が手繰るキャバリア、その巨人機の中で『バンブーク第二帝国』の先代皇帝の遺児たる『ライスメキア』が叫ぶ。
彼女の心の中にあるのは正しいものであったのだろう。
けれど、オブリビオンマシンに乗ったことによって、その心は今や復讐と怨嗟に塗れ、そのまま放置しておけば、小国家『フルーⅦ』の近郊に迫った『バンブーク第二帝国』のキャバリア部隊と激突し、返り討ちにされてしまうだろう。
それは猟兵たちにとって惜しむべきことであったし、何より彼女は救われるべきであった。
何もかもを喪って、生命までも失う。
その無為なる人生の果てにあるのはオブリビオンマシンの望む戦乱の世界だけだ。
「全く、『フュンフ』は困った拾い物をするからこうなる」
村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)は、巨躯たる『アラクシエル』を前に息を吐きだす。
ため息であった。
『フュンフ・ラーズグリーズ』であれば、きっとそうするものであっただろうと理解はできた。
彼が見捨てることのできない者であると知るからこそ、このような困難な事態を招いたことは言うまでもない。
けれど、それが正しくないことではない。
きっと正しいことであろうし、困難で厳しい道であることも承知の上だろう。
打ちのめされ、何度も膝を折ってきた彼であるからこそ辿り着いた答えがある。
「いいでしょ、関わった以上、この手のひらから何も零したりはしない。全て救いあげてみせる」
ゆかりは『GPD-311迦利』の逆三角形の機体を招来し、語りかける。
久しぶりだと。
その衝角の戦端に摩利支天九字護身法(マリシテンクジゴシンホウ)によってオーラの防御を重ねていく。
周囲に汚染を撒き散らしながら低空で飛ぶ巨躯、『アラクシエル』の威容は装甲を喪っても尚、凄まじいものであった。
このまま飛ばし続ければ、近郊であっても『フルーⅦ』への被害は免れないだろう。
ならばこそ、無人機である『迦利』の出番なのだ。
レーザーの牽制が弾幕と成って『アラクシエル』を襲う。
「この程度の光線で止められると! 私の復讐は正統なるもの! この復讐を終えずして、なのための生命でありましょうか!」
汚染物質が光線すらも阻む。
それほどまでに世界を汚染することに特化した『アラクシエル』はその赤い単眼を煌めかせながら、天使の如き威容を持って猟兵達を圧倒する。
凄まじい速度。
だが、空戦機ではない。ゆかりは、その一点に置いてのみ、『迦利』が『アラクシエル』を上回ると信じるのだ。
「亡国の皇女!」
ゆかりは『ライスメキア』に告げる。
彼女の復讐心は、彼女が捨てきれずにいたものである。ここまで逃げ落ち、その胸に新たなる大切なものを得て尚、捨てきれなかったものだ。
誰しも否定できぬものであろう。
だからこそ、『迦利』の衝角に張り巡らされたオーラと共に、その機体へと突撃する。
幾重にも張られたオーラは鋭角に研ぎ澄まされ、『アラクシエル』の防御をつらぬいいて、その頭部の頬を削ぎ落とすようにして飛ぶ。
「全てを捨てたというなら、その憎しみも捨てなさい!」
それができるのが人というものである。
憎しみは力をもたらすが、戦禍ももたらすものである。
ならばこそ、その争いの火種を撒き散らさぬためには、その憎しみをこそ、一片残らずすてなければならない。
今はオブリビオンマシンによって増幅されたものであったのだとしても、その手伝いはできる。
そのためにこそ猟兵として己は手を貸す。
いや、己だけではない『フュンフ・ラーズグリーズ』も『フィアレーゲン』のレジスタンスたちも同様のはずだ。
巨人機の咆哮をゆかりは聞き、『ライスメキア』の名の意味を、『戦いを解きほぐす』と名付けられた彼女の名の意味を今一度問うのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
菫宮・理緒
ちょっといなかった間に、状況が変わってるね。
とはいえ、そこはあとにしよう。
いまは『アクラシエル』と『ライスメキア』さんを止めないと。
【リオ・セレステ】で近づいたら、通信回路に割り込んで強制通信。
「『怒り』も『怨嗟』も理解はできるけど、
復讐も彼女が死ぬことも『フュンフ』さんは望んでいないよ」
って、これで止まるなら、苦労しないよね。
「『希』ちゃん、タイマー120秒でカウントダウン!」
【偽りの丘】に引き込んで、頭を冷やしてもらおう。
『アクラシエル』の攻撃を悉く相殺しつつ、【M.P.M.S】から冷却弾を発射しよう。
「『フュンフ』さんのために戦うというなら、あの人の側にいてあげて」
頭、冷えたかな?
巨人機にしてオブリビオンマシンたる人喰い天使『アラクシエル』の咆哮が轟く。
ジェネレーターから出力される力はとめどなく。
そして、そのパイロットである『ライスメキア』の復讐心と怨嗟は膨れ上がっていくばかりであった。
それがオブリビオンマシンの目論見であった。
彼女は『エース』としての資質を持っている。そんな彼女の生命を使って、オブリビオンマシンは戦禍の火種を撒き散らす。
皇女としての立場が。
巨人としての相違が。
あらゆるものが火種としてくすぶる。このクロムキャバリアにおいて、火種は何でも良かったのだ。
争いさえ引き起こすことが出来たのならば、人は愚かにも戦禍を拡大させていく。
憎悪という名の野火はまたたく間に世界に広がっていくのだから。
「ちょっといなかった間に、状況が変わってるね」
菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)は『リオ・セレステ』、ガンシップと共に巨人機である『アラクシエル』へと飛び込む。
機体のサイズ差は言うまでもない。
けれど、彼女ができることはあるはずだ。例え、己の言葉が届かないのだとしても、それでも言わずには居られない。
どんな状況も、後回しにしなければならない。
あの人喰い天使『アラクシエル』と『ライスメキア』を止めなければ、これ以上の惨劇が引き起こされることは言うまでもない。
「『怒り』も『怨嗟』も理解できるけど、復讐もあなたが死ぬことも『フュンフ』さんは望んでいないよ」
その言葉に『アラクシエル』は反応しない。
『ライスメキア』もそうだ。
目の前が赫く染まっている。あるのはただ復讐の怨嗟のみ。
「煩わしいだけの私の名前も、立場も! 何もかも捨て去っていいのです! あの暴虐の徒を取り除くことができたのならば!」
己のような存在を生み出さぬために。
『ライスメキア』にとって、それだけが今を突き動かす原動力であった。
もはやどんな言葉も届かない。
「……って、これで止まるなら苦労しないよね」
理緒にはわかっていたことだ。
言葉は届かない。ならばこそ、オブリビオンマシンを破壊するほかないのだと。
「『希』ちゃん、タイマー120秒でカウントダウン!」
理緒の瞳がユーベルコードに輝く。
それは己の潜在意識の中から閉ざした決壊として心象風景を放出するユーベルコード。
偽りの丘(イツワリノオカ)に飲み込む。
それは目の前の『アラクシエル』に決定的な隙をさらけ出すおこないそのものであった。
けれど、それでも構わなかった。
大出力のレーザーブレードが『リオ・セレステ』に迫る。
それは極大の一撃。
チャージされた時間は、これまで猟兵たちが彼女を止めようとした時間に比例している。これまでの戦いの中で一度も使わなかった光学兵装。
その極大の一撃が『リオ・セレステ』に迫る。
「偽物が本物に劣るとは限らない」
放たれるは同じく光学兵装。
『アラクシエル』より放たれたのと寸分違わずの出力。
激突するレーザーブレードが火花を散らし、心象風景の結界の中で飛び散る。相殺するユーベルコード。それが理緒の潜在意識より放たれた力である。
「『フュンフ』さんのために戦うというなら、あの人のそばにいてあげて」
もしも、彼に寄り添うことができる者がいるのだとすれば、彼と同じ境遇の者だけであろう。
寄り添うことができるのが人間だ。
其処に巨人であるだとか、立場が違うだとか、そんなことは関係ない。放たれる冷却弾が『アラクシエル』のオーバーヒート寸前の機体を冷やしていく。
過冷却によってフレームが軋む音を理緒は聞いただろう。
「頭、冷えたかな?」
今は復讐心に寄って膨れ上がった熱も、オブリビオンマシンを破壊してしまえば、萎んでいくだろう。
そうした時、彼女の路は本当の意味で始まるのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
フィア・シュヴァルツ
「ハンバーグ二段定食とな!」
『ハンブーグ第二帝国でございます、フィア様!?』
ハンバーグ二段重ねと聞いては放ってはおけんな!
それに巻き込まれているのは、我の名を冠した国の民。つまり我の民!
「そしてゴーレムを駆るは、ライスなんちゃら。
つまりハンバーグ二段重ね定食の主食!」
『いえ、皇女様でございますからね!?』
待っておれよ、ハンバーグ二段重ね定食よ。
我が今、そのゴーレムから助け出してやろう!
「来たれ隕石よ!」
【隕石召喚】によってゴーレムに極大の一撃を食らわせてやろう!
ハンバーグ二段重ね定食のライスを燃料とさせるわけにはいかぬ。
速やかに勝負を決するとしようか!
「そのライスとハンバーグは我のものだっ!」
「ハンバーグ二段定食とな!」
その声はあまりにも空気を読まない声であった。
あまりのことに周囲の空気が一瞬凍りついたような気がしないでもない。けれど、フィア・シュヴァルツ(腹ペコぺったん番長魔女・f31665)はまるで意に介していなかった。
むしろ、食欲を煽る単語に胃袋が黙ってはいなかった。
そんな腹の虫の音を遮るように使い魔の鴉である『フギン』が突っ込む。
もう見慣れた光景であった。
『バンブーク第二帝国でございます、フィア様!?』
「ハンバーグ二弾重ねと聞いては放ってはおけんな!」
聞いていない。
まるで聞いていない。なんなのだろうか。『フギン』はあまりのことにもう突っ込むのをやめたほうがいいのではないかと思うほどに疲弊していた。
オブリビオンマシンと戦う以前の問題であった。
「それに巻き込まれているのは、我の名を冠した国の民。つまり我の民!」
いや、違うからね? そうじゃないからね?
誰もがそう思っていたが、フィアの勢いに誰もが黙らされている。
「そしてゴーレムを駆るのはライスなんちゃら。つまりハンバーグ二弾重ね定食の主食!」
『いえ、皇女様でございますからね!?』
もうなんでも在りである。
なんでもかんでも食欲に結び付けられてしまうのならば、もう巨人機でありオブリビオンマシンである『アラクシエル』は硬直するしか無い。
流石に天使名までは食欲に結び付けられなかったのだろうか。あらくしえる……ア・ラ・モード。あら炊き。アラビアータ。まあなんでもこじつけられるよね。
しかしながら、今のフィアの舌はもうハンバーグである。ハンバーグをライスでカッコみたいという欲望に胃袋が胃酸うねり、荒ぶる嵐となっているのである。
「待っておれよ、ハンバーグ二弾重ね定食よ。我が今、そのゴーレムから助け出してやろう!」
そんなフィアの宣言の前に『アラクシエル』はその貫徹杭の右腕を掲げる。
その一撃は空間を歪めるほどの一撃を放つのだ。
「ごちゃごちゃと……私の路を阻むというのならば! 私の正当なる復讐は、なさねばならないのです!」
迫る巨人機。
通常のキャバリアの三倍はあろうかという巨大な姿にフィアは恐れ慄くことはなかった。
何故ならば、彼女にとって目の前のゴーレムはただ巨大なだけであったのだから。
「来たれ隕石よ!」
天空より召喚された巨大隕石が出現する。
それはフィアの魔力に寄って加速され、天空より飛来する極大の一撃。『アラクシエル』はその赤き単眼で見たことだろう。
己に迫る巨大な隕石。
空間を歪めるほどの貫徹杭の一撃を放ってなお、巨大隕石が砕けない。
「馬鹿な……何故、砕けないのです!?」
『ライスメキア』が呻く。
それもそのはずである。貫徹杭の一撃は空間すら歪める。だが、目の前に迫っている隕石は、術者の食欲と魔力を掛け合わせてあるものである。
そう、フィアの食欲。
それは前述したとおりである。ならばこそ、その隕石の一撃を止めることは如何に空間を歪めるほどの威力を持っていようとも容易ならざるものであったからだ。
「そのライスとハンバーグは我のものだっ!」
『フギン』はフィアの言葉に、いやそうではないだろうと思ったが、黙っていた。今ツッコミを入れたら押し返されそうであったからだ。
隕石が『アラクシエル』の機体と激突し、周囲に凄まじい衝撃波をもたらす。
その最中、フィアは石焼きハンバーグもいいな、などと考えながら、その爆風荒ぶ中、腹の虫を轟かせるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
カシム・ディーン
フュンフは無事でしたか…まぁ別にどっちでもいいが(こほん
「ほっとしてるくせにー☆」
うっせ
…復讐っつーかそりゃああなるよな
だがそういうのは敗北フラグだ
「つまり折っちゃうって事だね☆」
そういう事だ
【情報収集・視力・戦闘知識】
敵機の動きと武装の性質を捕捉
【属性攻撃・迷彩】
光水属性を機体に付与
光学迷彩で存在を隠し水の障壁で熱源も隠蔽
悪りーな
だが…ただ死のうとしてる奴は止めるのが普通、だろ?
UC発動
ひでー機体ですね
「乗り手を犠牲にするなんて最悪だぞ☆」
【念動力・弾幕・スナイパー・空中戦】
超高速で飛び回りながら念動光弾乱射
【二回攻撃・切断・盗み・盗み攻撃】
超高速で迫り連続斬撃で切り刻み武装強奪
『フュンフ・ラーズグリーズ』の所在を知り、カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)は静かに息を吐きだす。
それは安堵の吐息でもあったことだろう。
「『フュンフ』は無事でしたか……まぁ別にどっちでもいいが」
咳払いをして、カシムはごまかす。
けれど、『メルシー』は、ごまかしている様子にこそ微笑みながら言うのだ。
『ほっとしてるくせにー☆』
そんな言葉にカシムは悪態を突く。
こんな時に、ではないのだ。こんな時だからこそ、既知の『フュンフ』が無事に『フルーⅦ』にまで辿り着いたことを喜ぶべきであった。
彼と戦った後のことまで猟兵たちは介入しきれない。
そこにオブリビオンマシンの影がなければ、猟兵たちは過分に干渉することはないからだ。
だからこそ、カシムはほっとしている。
だが、時としてクロムキャバリアには火種が再燃することもあるだろう。
オブリビオンマシンが撒き散らした火種は世界の何処でも燻り続けている。掘り返し、風を送り、戦火を拡大させていく。
「……復讐っつーか、そりゃああなるよな」
カシムの視線の先にあるのは、巨大隕石を打ち砕きながら機体をきしませる巨人機にしてオブリビオンマシン『アラクシエル』。
その威容は凄まじいものであった。
通常のキャバリアの三倍もの巨躯を持ちながら、その姿は名の如き天使の姿へと変貌していく。
汚染物質を撒き散らしながら、天使の姿と名を持つオブリビオンマシンは赤き単眼を輝かせ、ジェネレーターの咆哮を轟かせるのだ。
「私の復讐は正しいのです。父を奪い、国を奪い、そして、安寧を奪った者にさばきを下すためには!」
低空に飛ぶ『アラクシエル』。
その中で『ライスメキア』が叫ぶ。彼女の叫びは悲痛なものであった。理解できるものでもあった。
けれど。
「そういうのは敗北フラグだ」
『つまり折っちゃうって事だね☆』
メルシーの言葉にカシムはうなずく。低空であれど、高速で飛ぶ『アラクシエル』の速度は凄まじい。
巨人機であることを忘れさせるほどの速度。
だが、神速戦闘機構『速足で駆ける者』(ブーツオブヘルメース)を持つ『メルクリウス』に捉えられぬ敵など存在しない。
光学迷彩により姿を消した『メルクリウス』が駆け抜ける姿は見えど、風の如く戦場を走り抜ける。
汚染物質を撒き散らす『アラクシエル』は即座に止めなければならない。
「ひでー機体ですね」
悪いとは思うのだ。復讐は確かに果たされなければならない。そうしなければ、他の何も始められないことは理解している。
だからこそ、猟兵たちの行いは、そんな彼女の頭に冷水を浴びせかけるものであったことだろう。
だが、それは自暴自棄の果に死することを意味している。
ならば、それを止めるのはふつうのコトなのだとカシムは追いついた『アラクシエル』へと念動光弾を乱射する。
突如として放たれた光弾に『アラクシエル』は反応できない。
『乗り手を犠牲にするなんて最悪だぞ☆』
『メルシー』の言葉とともに『アラクシエル』へと回り込んだ『メルクリウス』より放たれるのは鎌剣の斬撃。
超高速で放たれる斬撃は、主武装である貫徹杭とレーザーブレードを切り裂く。
巨大故に、損失までには至らない。
けれど、機能不全にまでは追い込むことができるだろう。
目の前の復讐に駆られる皇女は、放っておけば死ぬだろう。
勝利するにせよ、復讐を完遂するにせよ。
どちらに転んでも、このままでは機体に食い殺されるか、敵のキャバリア部隊によって撃滅されるかだ。
「だが、それをさせねーっていうんですよ」
オブリビオンマシンの目論見など知れているのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
(試作型術式騎兵【ツィルニトラ】に騎乗)
うーん、右向いても左向いても乱世乱世…
…オブリビオンマシンが戦乱加速させてるよねこれ…
…長引けばそれだけ搭乗者が危険…速攻するのが一番だね…
【空より降りたる静謐の魔剣】を発動…数百の氷剣をアクラシエルへと降らせるよ…
…そのレーザーブレードはチャージ時間に応じて攻撃対象を増やす…
ならばチャージさせる間もなく数で攻めればいい…
…そして命中個所からの凍結で動きを封じて…地面に刺さった氷の剣を拾い上げてコクピットを避けて斬り付けて破壊するよ
……復讐の是非については触れないけれど…それが誰かによって増幅されたものなら話は別……まずは文字通り頭を冷してもらおう…
クロムキャバリアは何処を見ても戦乱ばかりであった。
乱世と呼ぶに相応しいものであったし、それがオブリビオンマシンの目論見でもあった。
当然それは、猟兵にとっては周知の事実。
しかし、オブリビオンマシンかキャバリアかを認識できるのは猟兵しかいない。
人々は、その心にある復讐心を膨れ上がらされ、戦禍を広げていく。
憎しみが憎しみを呼ぶ。
そして、復讐心は燃え果てることはない。
いつまでも怨嗟として世界に残り続ける。
「……オブリビオンマシンが戦乱加速させているよねこれ……」
メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は、クロムキャバリアにおける戦乱の様相を見やり、そう結論づける
言うまでもないことであった。
オブリビオンマシンは、言葉こそ発することはなかったが、確実に世界に破滅をもたらそうと行動している。
今回『バンブーク第二帝国』の先代皇帝の遺児である『ライスメキア』の心の中に存在する復讐心に目をつけたこともそうである。
彼女の復讐心は歪められた形で増幅させられている。
「……長引けばそれだけ搭乗者が危険……速攻するのが一番だね……」
試作型術式騎兵『ツィルニトラ』と共にメンカルは戦場を駆け抜ける。
すでに人喰い天使『アラクシエル』の装甲は引き剥がされ、その機体フレームはきしみをあげている。
だが、パイロットである『ライスメキア』の復讐心を種火として生命力を吸い上げ、その左腕に装備された光学兵装がチャージされていく。
「……その兵装は、チャージ時間に応じて力を増すというのなら……」
問答は無用である。
今の『ライスメキア』に声は届かない。
そうなるように歪められているからだ。復讐に囚われた者はいつだって、あらゆるものを顧みない。
それは己の生命であってもそうなのだ。
「停滞せしの雫よ、集え、降れ。汝は氷雨、汝は凍刃。魔女が望むは数多の牙なる蒼の剣」
空より降りたる静謐の魔剣(ステイシス・レイン)が『アラクシエル』へと迫る。
巨大な体躯。
通常のキャバリアの三倍にも及ぶ巨躯でありながら、凄まじい速度で低空飛行を続ける『アラクシエル』に迫る氷剣。
いわば、それは追尾ミサイルのようでもあり、『ツィルニトラ』もまた迫る。
「私の復讐の邪魔を! ただ父上は国の平穏を臨んでいただけだというのに! 徒に版図を拡大せんとする、その悪意を私は取り除かなければならないのです!」
『ライスメキア』の咆哮に合わせるように『アラクシエル』の赤い単眼が煌めく。
レーザーブレードが唸りを上げた瞬間、メンカルは『ツィルニトラ』と共に大地に突き立てられ、そのアンダーフレームを氷漬けにした氷剣を引き抜きながら肉薄する。
彼我のサイズ差は如何ともし難い。
だからこそ足を止めた。
凍りついた大地とアンダーフレーム。無理に動けば砕けてしまうがために、レーザーブレードでの一閃を選んだのは『ライスメキア』が『エース』としての資質を持つがゆえの判断であったのだろう。
だが、それが一瞬の命取りである。
メンカルの放った氷剣の一閃は『アラクシエル』の振り下ろさんとしたレーザーブレードの兵装を氷漬けにする。
「……復讐の是非については触れないけれど……それが誰かによって増幅されたものなら話は別……まずは、文字通り頭を冷やしてもらおう……」
言葉だけでも届かない。
かといって力だけでねじ伏せるのまた否である。
だからこそ、時間が要る。
人と人とが分かり合うためには。そして、それが歪に増幅されたものであればこそ、その心は一過性のものでしかないのだ。
「……だから、今はその茹だった頭を冷やすしかないんだよ……」
メンカルは凍結していく兵装をよそに、その一閃でもって『アラクシエル』の装甲を砕くのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
望む望まざるに関わらず強さとは周囲を引き寄せるモノ
『フュンフ』様も立派なエースとなられたという事か…
鉄杭の威力は広範囲
ロシナンテⅣでの回避行動は慎重に
されど相手の意表突く大胆さで
大盾を地面に突き立て跳躍
推力移動用いたアクロバット機動にてすれ違う様に躱し
巨人退治は騎士の誉れ
尤も、此度の救出対象は皇女陛下
憎しみ煽る鋼鉄の君側の奸を討ち果たすと致しましょう!
サブアームのライフルで撃ち込むはUC弾頭
関節部よりナノマシン浸食しハッキング破壊工作
駆動用エネルギー経路遮断
二度も打たせはしません
その怒りも嘆きも本来正当なるもの
されど、悪しき意志にて歪められてはならないのです!
御免!
鈍った巨体を剣にて斬り刻み
巨大な体躯を持つ巨人機でありオブリビオンマシンでもある人喰い天使『アラクシエル』の咆哮が轟き、左腕のレーザーブレードを発する光学兵装が凍結する。
無理に動かせば、左腕を失うだろう。
だが、それでも迫る猟兵達を前にして『アラクシエル』が、いや、『ライスメキア』が選んだのは左腕の自切であった。
「この程度で私が止まるとでも! かの悪逆なる皇帝は、必ずや私が! 私が取り除かなければならないのです!」
その言葉と共に『ライスメキア』の生命力に呼応するように貫徹杭が力を増していく。
空間を歪めるほどの一撃。
それを放つために失われる生命は言うまでもない。
「望むと望まざるに関わらず強さとは周囲を引きtけるモノ。『フュンフ』様も立派なエースになられたという事か……」
トリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)は『ロシナンテⅣ』を駆り、巨躯を誇る『アラクシエル』へと対峙する。
手にした盾ではあの貫徹杭の一撃を防ぐにはあまりにも心許ないものであった。
同時に、『アラクシエル』のパイロットである『ライスメキア』を救出しなければならない。
彼女が巨人であるがゆえに、そのオブリビオンマシンのサイズは三倍にも及ぶ。
あまりにも不利であったが、それでも為さねばならぬことがあるのだ。
振り抜かれた一撃は空間すら歪める。
歪曲した空間から発せられる衝撃波は凄まじいものであり、『ロシナンテⅣ』の機体すら傾ぐだろう。
だが、その手にした大盾を地面に突き立て、機体が大きく跳躍する。
スラスターを噴出させ、アクロバットな軌道でもって貫徹杭の一撃を躱す。すれ違いざまの回避。
「巨人退治は騎士の誉れ。憎しみ煽る鋼鉄の君側の奸を討ち果たすといたしましょう!」
その言葉と共に『ロシナンテⅣ』のアイセンサーが煌めく。
サブアームのライフルから放たれた弾丸は、特殊弾頭。
それらが装甲を廃された『アラクシエル』のフレームにはたやすくめり込む。
ただ、機体フレームを砕くためならば、特殊弾頭は必要なかっただろう。だが、トリテレイアは、コクピットの中から打ち込んだ特殊弾頭が入り込むナノマシンから得られる情報を元にハッキングする。
「如何に巨大な機体であろうとも、機体制御をしているエネルギー経路……即ち、皇女殿下とのバイパスさせ断ち切ってしまえれば!」
そう、二度もパイロットの生命力を消費して放つ貫徹杭の一撃は放たせはしない。
「私の怒りを、私の怨嗟を、私の復讐を妨げるのなら!」
だが、逆流するように『ライスメキア』の憎しみが『アラクシエル』を凌駕する。切断されたバイパスを繋ぐのは、彼女の意志だ。
歪められ、憎悪に駆り立てられた激情が『アラクシエル』の機体をさらなる凶行に走らせるのだ。
「その怒りも嘆きも本来正当なるもの」
トリテレイアは逆流してくる激情にうなずく。
理解できることであった。
それは確かに正当なる行いであったことだろう。
けれど、彼女が駆る機体はオブリビオンマシンであるのだ。人を歪め、人の心にある悪しきものを増幅させる。
「されど、悪しき意志にて歪められてはならないのです! 御免!」
トリテレイアは『ロシナンテⅣ』の手にした剣でもって『アラクシエル』を切り裂く。
巨体を傾がせるほどの一撃は、悪しき巨躯を打ち倒す。
オブリビオンマシンの策動は在ってはならぬもの。
なればこそ、トリテレイアは騎士として、悪しき巨人を打ち負かすのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
うーんデカい…
通常の3倍…ロボット関連3倍多過ぎ問題
そうでもないか…
しかしまあ、火種が沢山あって火薬庫状態だね
●
《RE》IncarnationとBlue Birdを抜刀
これだけ大きいと斬り甲斐があるけど、その分余波も大きくてめんどー…
『オーラ防御』でシールドを貼り、余波をカット
…巨人って事は結構頑丈だろうし、きっと頑丈だろうし!ちょっと乱暴にしても良いかな
【Code:T.S】起動
雷刃…まあ程々サイズで起動
ま、近付きすぎない程度の長さで展開
貫通杭の射程に入らないよう距離を取りながら、機体を斬り裂いていこう
時折長さを調節して射程を変え、翻弄しながら攻撃していこう
まー、頭を冷やしなよお姫様
打ち倒されながらも、立ち上がるのは巨人機にしてオブリビオンマシン、人喰い天使『アラクシエル』。
その機体は巨大であった。
通常のキャバリアの三倍はあろうかという巨躯。
それは巨人が乗り込むキャバリアであるからこそであった。『バンブーク第二帝国』の将軍クラスが駆るキャバリアは皆、通常の三倍を誇る。
巨人が5mの体高を持つが故であったし、そうでなくてもロボット界隈というものは通常の三倍という謳い文句が横行しているものであった。
それはサブカルマニアという側面を持つ、月夜・玲(頂の探究者・f01605)の知識と照らし合わせてみても、例を見ないものではなかったのだ。
「うーんデカい……」
彼女からしてみれば15m級の機動兵器と生身で対峙しているようなものである。
見上げるほどの巨躯。
その頭部は猟兵の一撃で持って半壊してはいるものの、それでも睥睨する単眼は赤く煌めいている。
「通常の三倍……ロボット関連三倍多すぎ問題。いや、そうでもないか……」
結構あるな、と彼女はサブカルチャー由来の知識にうなずく。
悠長にうなずいている暇はないのであるが、それでも振り抜いた蒼き刀身煌めかせる模造神器が赤き単眼と交錯する。
「これだけ大きいと斬り甲斐があるけど、その分余波も大きくてめんどー……」
生身単身でキャバリアに立ち向かうだけでも驚異的である。
だというのに、そのキャバリアをして三倍以上の体躯を持つ『アラクシエル』へと立ち向かう玲の姿はまさに人外そのものであった。
「生身単身で私を止めようなどと!」
パイロットである『ライスメキア』は、増幅された復讐心で満たされている。
もはや、彼女に言葉届かない。
己の生命を捧げようとも、己の復讐の敵を穿つためにこそ、その貫徹杭が唸りを上げる。空間を歪めるほどの一撃。
その一撃を真っ向から打ち据えるのは、雷の刃であった。
玲の瞳がユーベルコードに煌めいている。
「Code:T.S(コード・サンダーソード)――出力上昇、雷刃形成」
更に巨大化していく雷刃。
それは真っ向から激突した貫徹杭の一撃を溶断せしめるほどの出力であった。火花を散らし、その余波が『アラクシエル』の巨躯へと降り落ちる。
玲の身にもそれらは降りかかるのだが、それらはオーラでもって防ぎながら、押し込んでいく。
これまで猟兵たちが紡いできた戦いの傷跡は、『アラクシエル』にとって浅からぬものばかりであった。
軋むフレーム。
剥げ落ちた装甲。
凍結し、砕けた左腕。あらゆる傷跡が雷刃を押し返すことを許さなかった。
「こんな……これでも届かないなんて……! 私は! なんのために……!」
復讐が全てであったのならば、それを為し得ぬことは生きていた価値をなくしたようなものであった。
誰かの盾になることもできず。
父の仇を討つこともできない。
刺し違えようとも、かの悪逆たる存在を討ち果たそうとして、それさえも阻まれている。
心が打ちのめされたと言ってもいいだろう。
これまで辛いことばかりの人生であった。『ライスメキア』にとって、それは己の名――即ち、『戦いを解きほぐす』という意味を失墜させるには十分すぎるほどの挫折であった。
「まー、頭を冷やしなよお姫様」
玲のあっけらかんとした声が響く。
雷刃が『アラクシエル』を切り裂き、その巨躯を大地に失墜させる。
単眼から赤き光が消え失せ、その巨体はもう二度と動くことはないだろう。切り裂かれたコクピットハッチの先にあるのは、皇女『ライスメキア』は見ただろう。
生身単身のまま、こちらを見下ろし、手を差し出す姿を。
そして、その打ちのめされて尚立ち上がるという気概を『フュンフ・ラーズグリーズ』が持ち得ることを。
「気にしなさんなよ。できることできないこと、色々あるけどさ」
生きているのならば、いつだってそこは自分のスタートラインなのだと告げるように、玲は巨人の皇女に笑いかけるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 冒険
『狙撃されている!』
|
POW : ●『己が囮になる』:自分が躍り出ることで敵の射撃を引き付ける。
SPD : ●『相手を仕留める』:敵の元へ急行したり、カウンタースナイプを決めたりする。
WIZ : ●『居場所を突き止める』:レーダーや魔法などで、狙撃手の位置を突き止める。
|
種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
オブリビオンマシンは猟兵たちの手によってくだされた。
コクピットハッチから這い出した『バンブーク第二帝国』の先代皇帝の遺児、『ライスメキア』は巨人である。
その体高は通常の人の三倍はあろうかという巨躯。
キャバリアと同じサイズであるがゆえに、彼女は巨人機より降りてなお、猟兵たちにとって守り難き存在であった。
「『ライスメキア』!」
その言葉に彼女は反応する。彼女の視線の先にあったのは『フィアレーゲン』のレジスタンスたちを率いていた『フュンフ・ラーズグリーズ』の駆る量産型のキャバリア。
レジスタンスたちと共に彼女を救出しに来たのだろう。
けれど、同時にそれは『フルーⅦ』に迫っていた『バンブーク第二帝国』の部隊の介入の口実にされてしまう。
敵対の意志あり。
彼等の行動はそう第三者から映ったことだろう。
「なぜ、私を……見捨ててくださらなかったのですか。私など、貴方達のお荷物でしかなかったというのに」
『ライスメキア』にとって、己が盾となることで彼等を護るつもりであったのだろう。
結果として、それは果たせなかった。
けれど、それを許していたのならば彼女の生命はなかっただろう。
そして、猟兵たちは知っている。
この戦域に迫る『バンブーク第二帝国』のキャバリアはどれも無人機であり、同時に『ライスメキア』暗殺を目論む存在であることを。
巨人である彼女を守りながら、『フルーⅦ』まで向かうことは困難であろう。
「それでも、君は僕たちの仲間だ。皇女だからとか、巨人だからとか、そんなことは些細なことだ。君は守らなければならないただの女の子だろう!」
『フュンフ・ラーズグリーズ』の言葉が戦場に響く。
迫るキャバリア部隊は待ってはくれない。
猟兵たちは急ぎ、『ライスメキア』と『フィアレーゲン』の残存レジスタンスを守りながら、『バンブーク第二帝国』の追撃を振り払わねばならないのだ――。
村崎・ゆかり
世の中には意外とお人好しが多いものよ、『ライスメキア』。少しは行為を受け取りなさいな。
追っ手は無人機か。それなら遠慮はいらないわね。
『迦利』を符に戻して、黒鴉の式を打つ。全体の状態を見通さなきゃ。
「地形の利用」で敵機の移動コースを推定。相手が侵入してくるまで、「目立たない」よう匍匐体勢で待ちの時間。
来たわね。
「結界術」「全力魔法」酸の「属性攻撃」「範囲攻撃」「仙術」「道術」で紅水陣!
――このサイズになると、さすがに効きが悪いか。でも、装甲はかなり腐食するはず。あたしはここで、削れるだけ削りましょう。いくらかは脱落も見こんで。
突破していった機体は、他の皆が引き受けてくれるはず。後は任せたわ。
人の世はいつだって残酷なものである。
復讐と怨嗟が渦巻くように、世界には憎悪と悲哀が満ちている。
けれど、それらがあるのならば対になるものも存在するはずである。その可能性を信じられないからこそ、人は争う。
人と人との距離が離れれば、離れるほどに他者を信じられなくなる。
しかして、近いからと言って信じられるかと言われれば、それもまた否である。どこまでいっても人と人とは理解できぬもの。
理解できぬ者が隣り合う時、できることは争いだけであろうか。
小国家間の争い。
人と巨人。
異なる要因が同じ空間にあれば、違いを認識するからこそ不理解と不寛容が争いを生む。
ならば、村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)が見ている光景は、違うものであった。
「世の中には意外とお人好しが多いものよ、『ライスメキア』。少しは厚意を受け取りなさいな」
彼女の言葉に『ライスメキア』は驚くことだろう。
これまでそうであったように。小国家間の事情は一度置いておくかなければならない。
そして、種族の間に横たわる溝もまた、目の前の『フィアレーゲン』のレジスタンスたちにとっては意味のないことだった。
彼等はもう、その溝を乗り越えてきている。
ならば、『ライスメキア』がすべきことは唯一であったことだろう。
「私は手を伸ばしてもよいのですか」
その言葉にゆかりは笑っていうのだ。
「相手が手を差し伸べているのだから、そんな問答に意味はないわ。あなたの心に従いなさい。その心の整理をつけるだけの時間は稼いであげるから」
ゆかりは、その二つの種族の間にある溝を今乗り越えようとする『ライスメキア』の姿を背に式神を飛ばす。
黒鴉たちが飛び立ち、こちらに迫る『バンブーク第二帝国』のキャバリア部隊を見下ろす。
見た処、無人機のキャバリアばかりである。
『バンブーク第二帝国』は、巨人の小国家である。将軍クラスが駆るキャバリアは巨人サイズにリサイズされているが、それらの雑兵は通常のサイズのキャバリアである。
それに加えて無人機であるというのならば、ゆかりには容赦する理由はなかった。
『フルーⅦ』の近郊は荒野である。
見通しがいいこともあるし、敵の移動コースもはっきりと判る。
「なら、話は簡単よね。古の絶陣の一を、我ここに呼び覚まさん。魂魄までも溶かし尽くす赤き世界よ、我が呼びかけに応え、世界を真紅に塗り替えよ。疾っ!」
ゆかりの瞳がユーベルコードに煌き、紅水陣(コウスイジン)を展開する。
真っ赤な血のような全てを蝕む強酸性の雨が降り注ぎ、戦場全体をあらゆるものを腐食させる赤い靄の中に包み込む。
「――このサイズとなると、流石に効きが悪いか」
ゆかりは機動兵器である5m級のキャバリアたちの装甲を腐食させるにとどまったことを見やる。
決して彼女のユーベルコードの威力が低いわけではない。
ただ、敵が巨大なだけであった。
装甲を腐食され、フレームがむき出しになった機体が膝をつく。
この靄の中では、適応した者以外は極端に進軍速度が落ちるだろう。無人キャバリア部隊にとって、この靄は適応しようとしてしきれるものではない。
「削れるだけ削りましょう。いくらかは脱落もしてくれるでしょうし……」
それに、とゆかりは赤い靄の中で呟く。
この靄を見やり、後続の部隊は迂回するだろう。
『ライスメキア』や『フィアレーゲン』のレジスタンスたちが『フルーⅦ』に至る時間は稼げるはずだ。
足止めを引き受けたゆかりは、己の絶陣に陣取り、迫りくる無人キャバリア部隊を腐食の雨の中で失墜させる。
「迂回していった機体は、他のみんなが引き受けてくれるはず。後は任せたわ、『フュンフ』――」
大成功
🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
…フュンフ…ライスメキアと撤退のほうはお願いね…
私は今からちょっとキャバリア部隊の足止めしてくるから…
相手が無人機なら遠慮は要らないね…
現影投射術式【ファンタズマゴリア】でジャミング機能を持った霧を出現させて索敵を妨害しよう…
…まずは【我が身転ずる電子の精】で腕と目を粒子化…霧から出て追ってくる無人機に接近…
…粒子化した腕で無人機のシステムに介入・改竄…通信機能を介して敵味方の識別を改竄して同士討ちさせるウイルスをばらまくように変更するよ…
…そしてこれに感染した他の機体も同じ様に同士討ちウイルスをばらまくと…
…これでここら一帯の追撃は防げる…ライスメキアは…フュンフが上手くやってくれるかな…
赤い靄が戦場を包んでいく。
こちらに突っ込んできていた『バンブーク第二帝国』のキャバリア部隊の一部は、靄の中から出てくることはなかった。
その異常を察知した後続の部隊が靄を浮かし始めた頃、メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は戦場の状況を理解し、『ツィルニトラ』と共に駆け出す。
「……『フュンフ』……『ライスメキア』と撤退の方はお願いね……」
「あなたはどうするっていうんです、あの数ですよ!」
『フュンフ』が止めるのも無理なからぬことであった。
『バンブーク第二帝国』のキャバリア部隊は無人機と言えど、その数は多い。確実に先代皇帝の遺児である『ライスメキア』を抹殺しようとしているのだ。
如何に猟兵であるメンカルの力が優れていようと、あの数は如何ともし難いと理解しているのだ。
「私は今からちょっとキャバリア部隊の足止めしてくるから……」
メンカルはそう言って『ツィルニトラ』と共に走り出す。
何も全てを打倒する必要はないのだ。
それに無人機だと判っている相手なのだから、遠慮はいらない。試作型術式騎兵である『ツィルニトラ』は、メンカルの術式をキャバリアサイズまで拡大する。
そのためのキャバリアでもあるのだ。
展開される現影投射術式『ファンタズマゴリア』がジャミング機能を持った霧を出現させ、赤い靄を迂回した部隊の索敵を妨害する。
「我が身転ずる電子の精(コンバート・テクノマンサー)――我が体よ、変われ、集え。我は掌握、我は電霊。魔女が望むは電網手繰る陽陰」
メンカルの瞳がユーベルコードに煌き、己の腕と眼を粒子化し、霧を抜けたキャバリア部隊へと接近する。
彼女の腕と眼が変じた粒子は、データや信号に直接干渉する力を持つ。
即ち、彼女の粒子化した腕に触れた機体は、そのシステムに介入され、データを改ざんされるのだ。
さらに通信機能を介して敵味方の識別を改変していく。
後続との連絡は取りつつ、互いに敵機であると認識させるのだ。
「下手に無人機を使うからこうなる……『バンブーク第二帝国』の人的資源の底が知れるね……」
将軍クラス以外は通常サイズの無人キャバリアを使っている。
それは巨人の体躯であること以上に、パイロットとして戦える人材が少ないことを示している。
だが、地底帝国のキャバリアは地上を汚染するための装甲を持っていることも知られている。数で劣るのならば、質で勝る。そうすることによって、彼等は地上に版図を広げようとしているのだ。
そのためには小国家が一枚岩になる必要がある。
先代皇帝を殺害して皇帝の座を簒奪したのならば、遺児である『ライスメキア』は最も邪魔な存在なのだろう。
これを抹殺しようという狙いもわからないでもない。
「さらに、同士討ちさせるウィルスをばらまくように変更しよう……こうすれば、他の機体にも同じように同士討ちのウィルスがばらまける……けど……」
これは一時しのぎに過ぎないだろう。
メンカルは、後続の部隊がこちらの一手に対応してくるであろうことを予測する。
だからこそ、メンカルはこの一帯の追撃を防ぐのだ。
この間にも『フュンフ』が『ライスメキア』をうまく説得し、『フルーⅦ』へと逃げ込んでくれるであろうとわかっているのだ。
「……これが成長というものなのかな……うまくやってよ、『フュンフ』」
それは信頼の証でもあったのかもしれない。
これまで幾度となく打ちのめされてきた彼であるからこそ、導くことのできる未来があるのかもしれない。
メンカルは、その希望の芽の如きか細い光を護るためにこそ、こうして戦うのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
ユーリー・ザルティア
いやー、フュンフくんもカッコイ事いうじゃないか。
………ボクもそんなこと言ってくれるナイトに出会いたいものだよ。
…うん、出会いほすい……。
うん、レスヴァントはちょっと無理かけすぎたか。わかってはいたのだけど。
ARIACを使って無人運転で先に離脱、替わりにパールバーティで再出撃だね。
動けないモノを護るときは、あえて討って出るのも手よ!
オーバーブースト・ラストスパート!
地表スレスレを飛翔し、【操縦】テクニックで華麗に目標を捉えて【砲撃】で撃破していくよ。
悪いけど、ここから先はすすませないよ!!
『バンブーク第二帝国』の先代皇帝の遺児、『ライスメキア』に告げた『フュンフ・ラーズグリーズ』の言葉はユーリー・ザルティア(自称“撃墜女王”(エース)・f29915)にとって、ともすれば憧れのようなものであったことだろう。
彼女もまた女性である。
であるのならば、そうしたシチュエーションを望むこともあるだろう。
「いやー、『フュンフ』くんもカッコイイ事いうじゃないか」
うんうんとユーリーは『レスヴァント』のコクピットの中でうなずく。
機体の状況は芳しくない。
学習型AI『ARICA』に『レスヴァント』の操縦を任せ、機体を乗り換える。近づいてきた『パールバーティ』に飛び乗ってユーリーは独りごちる。
「……ボクもあんなことを言ってくれるナイトに出逢いたいものだよ」
それは偽らざるユーリーの望みであったことだろう。
こうした戦乱の世界にあって、出会いとは即ち敵として相対することばかりである。しかしながら、ユーリーもまた年頃の乙女である。
正直なところを言えば、出会いがほしいと思ってしまう。
『レスヴァント』に無理をさせすぎたことは過ぎてしまったことだ。それに判っていたことでもある。
無人機として先に離脱させ、『パールバーティ』のコクピットの中でユーリーは息を吐き出す。
未だ戦いは続いている。
他の猟兵達が赤い靄や現影によって『ライスメキア』の暗殺を狙う『バンブーク第二帝国』の追撃部隊を凌いでいる。
戦場の地形から察するに、『フルーⅦ』まで『ライスメキア』を救出すれば、敵もうかつには手を出してはこれないだろう。
けれど、未だ『ライスメキア』は救出されたばかりだ。
すぐに動くことは出来ない。
「動けないものを護るときは、あえて討って出るのも手よ!」
ユーリーの瞳がユーベルコードに輝く。
オーバーブースト・ラストスパート。
それは彼女の機体を『殲禍炎剣』に感知されな特殊な粒子で覆い、飛行する力である。特殊粒子をまとった『パールバーティ』が飛ぶ。
このクロムキャバリアにおいて空を飛ぶということは、即ち暴走衛生からの砲撃に寄って滅びるということを意味している。
だが、ユーリーのユーベルコードはそれを可能とする。
感知されぬ飛行物体は、地上に侵攻する『バンブーク第二帝国』の無人キャバリア部隊を蹂躙する。
地表スレスレを飛翔しながら、彼女の卓越した操縦手にクニックは無人キャバリアを尽く撃墜していく。
「悪いけど、此処から先は進ませないよ!!」
巨人と人。
『ライスメキア』と『フュンフ・ラーズグリーズ』は、種族こそ違えど心が通じ合っているように思えた。
ユーリーの乙女フィルターがそう見せるのかもしれないけれど。それでも、彼等の邂逅は決して新たな火種にはさせない。
それは人の恋路を邪魔するものではなく、このクロムキャバリアの世界を平穏に導く小さな一歩だ。
決定的に異なる他者が手を取り合う。
それは理解と寛容である。
ならばこそ、その希望の芽を摘ませるわけにはいかないのだ。
奔る砲撃が『パールバーティ』から放たれる。超高速で飛翔を続ける機体を『バンブーク第二帝国』のキャバリアたちが捉えることなどできようはずもない。
砲撃の雨と共にユーリーは、その特殊粒子を撒き散らしながら、二人に迫る敵を撃破し続けるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
菫宮・理緒
脱出確認……とはいえ、安全なところに着くまで気は抜けないね。
『フュンフ』さん、『ライスメキア』さんは任せた、よー
ライスメキアさんが無事なら、あとは追撃を防ぐだけだね。
相手は無人機だし、遠慮はいらないかな。
『希』ちゃん、【M.P.M.S】榴弾モードでスタンバイ!
【フレーム・アドバンス】で足を止めて、榴弾砲で弾幕を張って、さらなる足止めと殲滅を狙っていくけど……
遠慮なく全部破壊しちゃってもいいんだけど、
ここは被害の少ない機体を1~2機、鹵獲していきたいな。
もし『ライスメキア』さんが、
これからも『フュンフ』さんと戦ってくれるなら、機体は必要だと思うからね。
パーツをげっとして、組み上げちゃうよ!
人喰い天使『アラクシエル』の撃破は成った。
その残骸は通常の三倍の巨躯を誇るがゆえに周囲のキャバリアをして瓦礫の山のように映ることだろう。
貫徹杭や光学兵装。
どれもが規格外であり、同時に周囲に汚染を撒き散らす仕様になっていたことは、オブリビオンマシンが世界に戦乱の火種を撒き散らすことのみを目的としていたことが見て取れる。
猟兵たちは、その悪辣なる罠を踏破し、今此処にある。
『バンブーク第二帝国』の先代皇帝の遺児、『ライスメキア』が猟兵に寄って救出されたことを菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)は確認し、息を吐き出す。
「脱出確認……とはいえ、安全なところに着くまでは気は抜けないね」
彼女の言う通りであった。
如何にオブリビオンマシンの驚異を排除できたのだとしても、『ライスメキア』を狙う暗殺部隊は此処に迫っている。
『バンブーク第二帝国』の無人キャバリア部隊である。
かの部隊は『ライスメキア』の抹殺のみを目的としている。彼女が小国家『フルーⅦ』に辿り着けば、おいそれ手を出せないだろう。
「『フュンフ』さん、『ライスメキア』さんは任せた、よー」
理緒は『リオ・セレステ』と共に飛び上がる。
すでに猟兵たちが迫る無人キャバリア部隊の足止めをしている。『フュンフ・ラーズグリーズ』と『ライスメキア』には時間が必要だ。
それに今後のことを考える。
オブリビオンマシンの策動はこれからも続くだろう。
「『希』ちゃん、榴弾モードでスタンバイ!」
理緒の瞳がユーベルコードに輝く。
自身のコンピュータにキャプチャした無人キャバリア部隊の画像。それをトリミングし、電脳魔術による同期プログラムを放ち、現実と同期させることにより、敵部隊の足を止めるのだ。
「こうなっては的だよね!」
ミサイルランチャーから放たれる榴弾が爆撃のように無人キャバリア部隊を撃破していく。
爆発が巻き起こり、キャバリアたちが破壊され、その残骸が大地に落ちる。それを理緒は見る。
遠慮なく全てを破壊してもいい。
けれど、被害の少ない機体を鹵獲しておきたいと思ったのだ。
「もし、『ライスメキア』さんが、これらかも『フュンフ』さんと戦ってくれるなら……」
そう、彼女とてエースの資質を持つ存在だ。
人と巨人というサイズ差はあるだろう。けれど、『フュンフ・ラーズグリーズ』が告げたようにそんなことは些細なことなのだ。
彼女が戦えるのなら。
彼女が戦うと望むのならば。
理緒は、その時のために機体が必要だと考えたのだ。敵の無人キャバリアは通常のサイズ。
『バンブーク第二帝国』の将軍クラスでなければ、巨人機はでてこない。
彼女の体格に合わせたキャバリアを用意することは骨が折れそうであった。けれど、理緒は構わなかったことだろう。
「パーツゲットしておけば、足りないのはまた足せばいいだけだものね」
理緒はミサイルランチャーの爆撃を免れながらも機能停止したキャバリアを見繕いながら、そう遠くない未来を夢想する。
『フュンフ・ラーズグリーズ』と『ライスメキア』が並び立つ。
そんな光景がこの先にあるのならば。
きっと欺瞞に満ちた世界であっても、希望の光を照らしてくれるだろう。
その芽を摘ませぬためにこそ、理緒は猟兵として戦う。
そして、何よりもメカニックとしての心が踊るのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
ガイ・レックウ
【SPD】で判定
『さて、追っ手は引き受けた…来い!天龍!』
【拠点防御】スキルで退路で無人機に立ちはだかり、ユーベルコード【特式脳波コントロールシステム】で機動戦艦『天龍』を呼び寄せ、無人機に対するミサイルと砲撃を叩き込んでいくぜ!!
同時に電磁機関砲での【制圧射撃】とハイペリオンランチャーの砲撃で数を減らすぜ!!
『バンブーク第二帝国』は巨人の小国家であり、地底国家でもある。
百年戦争の折に『グリプ5』の前身となった小国家と争い、再び地底に追いやられた国でもあった。
先代皇帝は、地底での平穏を求めた。
けれど、先代皇帝は暗殺され、皇帝の座は簒奪された。
その遺児である『ライスメキア』こそが火種そのものであったし、現皇帝にとって『ライスメキア』は邪魔者でしかなかった。
彼女の存在があればこそ、『バンブーク第二帝国』は一枚岩になれない。
抹殺しなければ、先代皇帝の派閥を一掃することはできないし、万が一にも旗印として彼女が立てば、どうなるかなど明白であった。
「さて、追っては引受させてもらう」
ガイ・レックウ(明日切り開く流浪人・f01997)は、『フュンフ・ラーズグリーズ』と『ライスメキア』に告げる。
彼等は逃げなければならない。
ここが小国家『フルーⅦ』の近郊であったことは幸いであった。
無人キャバリア部隊は『ライスメキア』の暗殺を目論んでいる。けれど、巨人である『ライスメキア』は匿うことが難しい。
同時にそれは、彼女の存在を公に抹殺することが難しいということを示している。『バンブーク第二帝国』ではない、第三者の国である『フルーⅦ』に逃げ込めば、おいそれ手が出せなくなる。
だからこそ、猟兵たちは彼女を逃がす。
戦場には猟兵たちが時間を稼ぐために無人キャバリアとの交戦を通dけている。
「……来い! 天龍!」
ガイはキャバリアを介した脳波コントロールによって、己のキャバリアを支援する戦艦『天龍』を遠隔操作する。
特式脳波コントロールシステム(トクシキノウハコントロールシステム)は『スターインパルス』を駆るガイにしかできぬことであった。
支援戦艦は低空を飛行する。
無人機キャバリアたちにとって、突如として現れた機動戦艦の姿は驚異的であっただろう。
対空砲火など、この空を塞がれたクロムキャバリアにおいては用意されているはずがない。
どれだけ突如として現れた戦艦が大きな的であったのだとしても届くものではない。
「システム起動!遠隔操作…開始!!」
ガイは『スターインパルス』と共に地上を疾駆する。
『天龍』より放たれるミサイルの雨をかいくぐりながら、無人キャバリアを打倒していく。
電磁機関砲から放たれる弾丸が迫るキャバリアを打ち抜き、ハイペリオンランチャーの砲撃が無人キャバリアたちを爆発の中に巻き込んでいく。
「これで時間は稼げるか……!」
ガイは戦場の中を疾駆する。
爆風が荒ぶ。
これが戦乱だけの世界。クロムキャバリア。
どこかしこに戦乱の火種はくすぶっている。人の理解がなく、寛容さを失われたがゆえに、相互理解には程遠い。
それを嘆くにはまだ速すぎる。
彼の目に映るのは、巨人と人が手を取り合う未来の芽。
『フュンフ・ラーズグリーズ』と『ライスメキア』が手を取り合う光景が、今も焼き付いている。
ならばこそ、今を戦うことに躊躇いはない。
今はまだわだかまりに包まれるのだとしても、あの光景を見るのならば、わだかまりも解ける未来もあるのだと、その可能性を信じることができるのだ――。
大成功
🔵🔵🔵
フィア・シュヴァルツ
「ふははは、ライスよ!
そこのチーズフォンデュの言うとおりだ!」
『フォンデュ……もしや、フュンフ様のことでございますか?』
「ライスよ、我が名を冠する民に保護された以上、お前はすでに我のもの。
高級米だからとか、大盛りだとか、そんなことは些細なことだ。……いや、結構重要だが!
ともかく、お前は守られなければならない大事なライスなのだ!
このままフルーツまで向かうとしよう!」
さて、追ってくるハンバーグ二段重ね定食のゴーレムは冷凍保存しておくとしようか。
あんなにたくさんあっても、一度には食べ切れぬしな!
「我の冷凍庫で凍結保存されるがいい!」
『フィア様、氷系統最強魔術を冷凍庫扱いしないでいただけますか!?』
フィア・シュヴァルツ(腹ペコぺったん番長魔女・f31665)はいつもどおりであった。
どんなシリアスな空気も、どんな淀んだ空気も、悲嘆に暮れる空気も、全て消し飛ばす明るさがあった。
それは他の誰にもできるものではなかったように思えた。
「ふははは、ライスよ! そこのチーズフォンデュの言う通りだ!」
ぜんぶわからん。
一体全体フィアが何をいいたのか、『フュンフ・ラーズグリーズ』も『ライスメキア』も理解できていなかった。
目が点になっていたのも無理なからぬことであった。
説明不足を補うように鴉の使い魔である『フギン』が申し訳無さそうに言う。
『……おそらく、フォンデュが『フュンフ』様で、ライスが、『ライスメキア』様のことかと思われます……』
気苦労が知れるコメントである。ん? 今、米って言った?
「ライスよ、我が名を冠する民に保護された以上、お前は既に我のもの。最高米だからとか、大盛りだとか、そんなことは些細なことだ」
一から十まで言っていることがわからない。
けれど、『フュンフ・ラーズグリーズ』も『ライスメキア』もフィアの雰囲気に何故か気圧される。
食欲の権化だからね。仕方ないね。
「……いや、結構重要だが! ともかく、お前は守られなければならない大事なライスなのだ! ここままフルーツまで向かうとしよう!」
フルーツってもしかして『フルーⅦ』のこと言ってる?
フィアの乗りと勢いは凄まじいものであった。
「え、えと……はい……?」
『ライスメキア』が思わずうなずくほどであった。さっきまでの悲壮な決意やら、歪められた復讐心など、どこかに吹き飛ばされるほどの明るさが何処か漂っていた。
ときには、こんなことも必要なのだろう。
傍から見たら茶番である。けれど、その茶番で勇気づけられる者だっているのだ。フィアにとっては、茶番ではなく、本番である。いや、マジである。だからこそ、際立つのだ。
人の心を覆う暗澹たる思いも、大抵のことは美味しいご飯を食べれば解決するのだと。
「けれど、敵が……」
「任せておくが良い、フォンデュよ! 追ってくるハンバーグ二段重ね定食のゴーレムは冷凍保存しておくとしようか。あんなにたくさんあっても、一度には食べ切れぬしな!」
食べるつもりなのか、あの無人キャバリアを。
食欲の権化とはげに恐ろしきものである。理性とかないんか?
そんなフィアは威風堂々と立ちふさがる。背には、『フルーⅦ』へと移動を開始した二人。
巨人と人。
その手を取り合う姿は、体格差など関係ないかのようであった。わだかまりも、不理解も、何もかも吹き飛ばされていた。
今は生きることに必死であればいい。
その路を開くのは、フィアである。
「我の冷凍庫で保存されるがいい!」
フィアの瞳がユーベルコードに煌めく。
極大の魔術が戦場に展開する。氷壁が立ち上り、迫る『バンブーク第二帝国』の無人キャバリア部隊が閉じ込められていく。
これが極寒地獄(コキュートス)である。
内部に閉じ込められた者は、徐々に凍りつき、凍結するだろう。迷宮たるユーベルコードの氷壁は破壊しようとしても、破壊できるものではない。
『フィア様、氷系最強魔術を冷凍庫扱いしないでいただけますか!?』
『フギン』の声が響く。
けれど、そんなものはフィアには届かない。今の彼女の頭の中はハンバーグとライスの唾が溢れる光景だけであったのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
サージェ・ライト
お呼びとあらば参じましょう!
私はクノイチ、完全に出遅れたとかそんなことないもんっ!
ええ、このタイミングを狙っていたのです!(うそ
ツッコミを入れる暇を与えず
かもんっ!『ファントムシリカ』!
相手は無人機、動きもそんなに大したことない
しかもここは1機たりとも通してはいけないシーン
つまり、特攻が有効でぎにゃぁぁぁぁぁぁ!?
し、シリカ、そろそろ遠距離広範囲装備をですね……(がくっ
とかコントしている暇は無さそうです(復活
ミニシリカ!ルベライトビットを!
【百花繚乱】で掻き回していきますよ
ビットの操作はミニシリカに
崩れたところを私がファントムシリカで仕留めていきます!
コンビネーションでいきますよー!
『バンブーク第二帝国』の追撃は激しいものであった。
無人キャバリアであれど、彼等の物量は確かなものである。本来、『バンブーク第二帝国』は巨人の国である。
人間の体躯の三倍にも及ぶ巨大な種族。
彼等のサイズに合わせたキャバリアを建造すれば、当然通常のキャバリアの三倍にも及ぶ体高となるだろう。そうなったとき、そのキャバリアを建造するための費用というのはかさむものである。
自然と、高性能な機体による一点突破が主流となる。現実に、将軍クラスでなければ『バンブーク第二帝国』はキャバリアに乗ることを許されない。
殆どが通常サイズの無人キャバリアで構成されている。
資源は豊富であっても、人的資源の枯渇が問題であったのだ。
「お呼びとあらば参じましょう! 私はクノイチ、完全に出遅れたとかそんなことないもんっ!」
恐らく言わなければ、誰も気が付かなかったことをサージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)は自白しながら、己の乗機である『ファントムシリカ』と共に降り立つ。
彼女が降り立ったのは、『バンブーク第二帝国』の無人キャバリア部隊と抹殺対象である『ライスメキア』との間であった。
ちょうど、彼女たちをかばうような立ち位置になったことは偶然にしてはできすぎであった。
「ええ、このタイミングを狙っていたのです!」
まあ、ウソである。
しかしながら、ツッコミを入れさせる暇を与えないのがクノイチ流である。そして、相手は無人機。そこに有人機のようなゆらぎや機微は存在しない。
あるのはアルゴリズムによる一定の動作だけだ。
「そして、ここは一機たりとも通してはいけないシーン。つまり、特攻が有効でぎにゃぁぁぁぁ!?」
で、でーたー!『シリカ』による、ばりぃ。
それはそうである。何が悲しくてあの大群に突っ込まなければならないのか。自殺行為である。
『ライスメキア』がオブリビオンマシンでしようとしていたこととまさに同じである。
その二の轍を踏むようなことをすることは、当然許容されるものではないのだ。
「し、シリカ、そろそろ遠距離広範囲装備をですね……」
どうにか調達してはもらえないだろうかというサージェの心の叫び。
しかし、ないものはないのである。
そんでもってコントしている場合でもなければ、暇もないのである。
「ミニシリカ! ルベライトビットを!」
「最初からそう言ってお姉ちゃん」
にべにもないシリカの言葉。
いやまあ、そうなのであるが。しかし、こうもう少し、手心というか……そういうものはないのでござろうかと思わないでもいられない。
サージェの脳波とミニシリカによってコントロールされるルベライトビットが百花繚乱(アサルトアサシン)の如く戦場に舞い散る。
真紅のスフィアビットからビームが放たれ、迫る無人キャバリアたちを撃ち抜いていく。
「あさるとこんびねーしょんっ!!」
『ファントムシリカ』が戦場を切り裂くように駆け抜けていく。これまで多くの猟兵たちがそうしたように、逃げる『ライスメキア』と『フュンフ・ラーズグリーズ』の背中を追わせることをしない。
彼等が逃げ延びることこそが、より良い未来を連れてくると知っているからである。
舞い散る火線と爆風。
弾丸と破片が荒び、その中を『ファントムシリカ』の白と紫を基調とした機体が飛ぶ。
敵の戦線は崩され、散り散りになっていく。
「これだけ崩せれば……! 後は『フルーⅦ』に逃げ込んでもらうだけですね! さあ、シリカ、もう一度とっこ……って、爪はやめてください! 爪は、ってあああああ!!」
サージェの悲痛な叫びが再び戦場に木霊する。
けれど、それは未来への礎となる悲鳴であり、必要な痛みであったのだと、きっとたぶんめいびー言える、と思う、のかもしれなかった――。
大成功
🔵🔵🔵
カシム・ディーン
やれやれ…フュンフの奴…イケメンじゃねーですか
「ねぇねぇご主人サマ!怖いキャバリア軍団が迫ってくるよ!もうあれだよね☆」
あー…くそ(嘆息
よぉフュンフ…久しぶりですね
これはあれです…此処は僕に任せて先に逃げなさい
僕らが彼奴らを足止めしますから
【情報収集・視力・戦闘知識】
レジスタンスの状況と敵軍の進軍と陣形
フュンフ達の効率的な逃走経路分析
レジスタンスに情報提供
はぁ…無人機ならもういいか
UC発動
「「ひゃっはー☆」」
【砲撃】
本体は竜眼号に退避
オートで援護砲撃
【集団戦術・弾幕・属性攻撃・切断・二回攻撃・盗み攻撃・盗み】
敵軍に襲い掛かる幼女大軍団
機体を切断し資源と金目の物強奪
更に第二帝国の情報収集開始!
不理解と不寛容を吹き飛ばすゆな若人の言葉は、誰の心にも届いたことだろう。
それを如何なるものとして捉えるかは余人の知るところではない。
けれど、カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)にとって、その言葉は『フュンフ・ラーズグリーズ』の成長を知るものであった。
打ちのめされてきた『エース』が、喪ってもなおその手に有り余るものを手にした瞬間を彼は見たのだ。
「やれやれ……『フュンフ』の奴……イケメンじゃねーですか」
誂うような言葉になってしまったのは、カシムの素直ではない正確のせいであろうか。
けれど、どちらにせよ喜ばしいことであることに違いはない。
『ねぇねぇご主人サマ!怖いキャバリア軍団が追ってくるよ! もうあれだよね☆』
『メルシー』の言葉にカシムは頭を抱える。
正直、何がいいたのか判ってしまっているからである。何かに付けて『エルシーー』は対軍撃滅機構『戦争と死の神』(メルシーハルノヨウジョマツリ)を使いたがる。
自身が戦えなくなることがデメリットであるが、あの光景をまた見るというのが彼にとっては頭の痛いところであった。
「あー……くそ」
でかいため息である。仕方のないこと。数には数を。そういうことである。
『メルクリウス』でもってカシムは『フルーⅦ』に逃げる『ライスメキア』と『フュンフ・ラーズグリーズ』に追いつく。
「よぉ『フュンフ』……久しぶりですね」
「その機体……カシムさん」
互いに一度は刃を交えた者である。オブリビオンマシンが間に入っていたとは言え、それは忘れがたきものである。
だが、そんなわだかまりは、今は必要ない。お互いにわかっていることだ。
「これはあれです……」
「此処は任せて先に行け、ってことですね」
その言葉にカシムはうなずく。先取りされてしまうとは、と思わないでもなかった。けれど、その言葉で互いにあったわだかまりは解れたように思えただろう。もう何も心配することはないのだt。
ならばこそ、カシムの瞳はユーベルコードに煌めく。
「ええ、僕らが彼奴らを足止めしますから」
だから、何も心配することはない。そう云うようにカシムの瞳の輝きから生まれるのは、幼女軍団であった。
凄まじい勢いで生み出される幼女『メルシー』たち。
彼女たちは小型化されたキャバリア武装を手に、一斉に戦場へと飛び出す。迫る無人キャバリアなど相手にはならない。
まるで小さな津波そのものであった。
鋼鉄の巨人たちが次々と幼女達によって機体を切断され、装甲を剥ぎ取られ、エネルギーインゴットを抜き取られていく。
その光景はいわば、追い剥ぎと変わらぬものであった。
「あー、もー……本当にこれは……」
カシム自身は大型戦艦の艦橋にありて、その光景を目の当たりにする。
いくら無人キャバリアだとは言え、やりすぎな気がしないでもない。けれど、『バンブーク第二帝国』の軍容というのは、これが基本なのだろう。
無人キャバリアは通常のキャバリアと同じサイズだ。
けれど、はるか後方で指揮しているキャバリアは巨人機……つまり、巨人の国である『バンブーク第二帝国』の巨人に合わせたサイズである。
通常の人間の三倍の体躯を持つ巨人。
それに合わせれば、キャバリアのサイズもまた三倍になる。『アラクシエル』がそうであったように、その建造にはコストがかかりすぎる。そして、戦うための人的資源もまた『バンブーク第二帝国』には乏しいようであった。
「無人キャバリアはそのための雑兵ってわけですね……そして、あれが……」
先代皇帝専用機。
三倍の体躯。後方に位置しているがゆえに武装までは判別できない。けれど、あれがいずれ己たちの前に立ちふさがることは容易に想像できる。
カシムは無人機キャバリアへの蹂躙を続ける幼女たちを尻目に、また一つ息を吐き出す。
希望の芽は未だ摘み取られていない。
ならば、それをこそ今は喜ぶべきなのであろうから――。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
『フュンフ』様、『ライスメキア』様は保護できておりますね?
この状況では彼女への長距離狙撃が最優先の警戒対象
皇女に手を差し伸べたならば、それ相応の覚悟が必要です
私達を心配する暇はありませんよ?
一方的に後ろから撃たれるのは宜しくありません
しばし戦場を中世に戻すといたしましょうか
ロシナンテⅣの背部コンテナからハンドランチャー取り出しUC発射
無人機同士の通信を遮断
射撃兵装の照準も妨害
数の優位活かしきれぬこの状況…存分に活用させて貰いましょう
敵勢に白兵戦にて強襲仕掛け出血強要
長距離砲備えた敵機を優先的に撃破
頃合いを見、背部コンテナからスモークグレネード射出
煙幕に乗じ離脱
レジスタンスと合流を目指しましょう
キャバリアと一人の巨人が荒野を駆ける。
その姿は一瞬目にしたのならば、寸尺を疑うものであったことだろう。けれど、それは現実である。
巨人である『ライスメキア』と『フュンフ・ラーズグリーズ』が駆るキャバリアが、彼女の護衛として付いている。
小国家『フルーⅦ』まで辿り着けば『バンブーク第二帝国』の追撃部隊は手を出せなくなる。ただ、その道程が困難であった。
『フルーⅦ』近郊は荒野である。
何も遮るものがないからこそ、無人キャバリアは長距離射撃を仕掛けることができる。
『ライスメキア』は『バンブーク第二帝国』の現皇帝にとって、もっとも邪魔な存在である。簒奪した座であるからこそ、先代皇帝の遺児はどうしても邪魔にになるのだ。国家を一枚岩にするためには、派閥は生み出してはならない。
そのために彼女を排除しようとしているのだろう。
「『フュンフ』様、『ライスメキア』様は、保護できておりますね?」
トリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)は『フュンフ・ラーズグリーズ』の駆るキャバリアに通信を入れる。
「はい、ですが……このままでは」
「ええ、彼女への長距離狙撃が最優先の警戒対象」
二人の懸念は同様であった。
何より、この無人キャバリア部隊を指揮しているであろう後方にある現皇帝の駆るキャバリアが出張ってこないことが、それを示唆している。
「皇女に手を差し伸べたならば、それ相応の覚悟が必要です」
「わかっています。けれど、貴方達も……」
「私達を心配する暇なありませんよ?」
トリテレイアは言葉を遮って、己の駆る『ロシナンテⅣ』の背部コンテナからハンドランチャーを取り出し、銀河帝国強襲白兵戦用妨害粒子散布弾頭(クローズコンバットミスト)を放つ。
それは戦場全体に散布されるナノマシンの霧であった。
一方的に背後から撃たれるという状況はよろしくない。ならばこそ、キャバリア戦闘という近代兵器での戦いは、センサーの感度が物を言う。
「しばし戦場を中世に戻すといたしましょうか」
ナノマシンの霧は、通信や照準といったセンサーの類を妨害する。それが無人キャバリアであれば殊更に効いてくるだろう。
後方で指揮しているであろう将軍クラスのキャバリアと無人キャバリアの連携を立てば、後方からの長距離射撃を行うこともできないだろう。
「数の優位活かしきれぬこの状況……存分に活用させてもらいましょう」
トリテレイアは『ロシナンテⅣ』と共に戦場を駆け抜ける。
敵機は連携が取れない。
無人キャバリアの強み、連携と数だ。
けれど、通信障害を受けた彼等はもはや棒立ちの的でしかない。放たれる剣の一撃が、次々とキャバリア部隊を殲滅し、その消耗の度合を深めていく。
「やはり、『バンブーク第二帝国』はパイロットという人的資源が枯渇している様子……だからこそ、雑兵として無人キャバリアを押し出してきますか……」
物的資源は豊富であっても、それらを手繰る者、人が少ないのだ。だからこそ、『バンブーク第二帝国』は巨人の体躯という強みを活かしきれない。
将軍クラスという巨大な体高を持つキャバリアと、それが指揮する通常サイズの無人キャバリア。
それによって、数の不利を覆す戦術を主に取っているのだろう。
「これ以上の時間稼ぎは無意味。なれば……」
背部コンテナからスモークグレネードが放たれ、戦場を煙に包み込む。
すでに彼の背後では『フルーⅦ』に到達したであろう二人の姿がある。あとは『フィアレーゲン』の残存レジスタンスたちと合流し、彼等を送り届ければいい。
『バンブーク第二帝国』もまた一枚岩ではない。
その事実は、この戦乱の奥で糸を引く黒幕の如き存在に楔を打ち込むものであったことだろう。
トリテレイアは、策動と火種渦巻くクロムキャバリアの未来を案じ、巨人と人。二人が見せた未来へのか細い希望の芽を護るために多くの力を送り届けるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 日常
『機体整備』
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POW : 破損した装甲を修理する
SPD : 武装を整備し、動作不良を予防する
WIZ : 新たな兵装やAIを組み込み、更なる強化を目指す
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
亡国の『フィアレーゲン』残存レジスタンスと『バンブーク第二帝国』の先代皇帝の遺児『ライスメキア』は小国家『フィアレーゲン』に辿り着く。
彼女たちの存在は火種そのものだ。
『フルーⅦ』で公に保護したとなれば、小国家『シーヴァスリー』と『バンブーク第二帝国』を敵に回してしまう。
加えて、未だ『フルーⅦ』と『グリプ5』は緊張状態にある。
そこに『グリプ5』から出奔した『フュンフ・ラーズグリーズ』が加われば、『フルーⅦ』の存在事態が大きな火種に変わることは明白であった。
少しでも突けば弾けるような。そんな火種へと変わり果てる。
この戦乱だけの世界にあって、それは人々が受け入れがたきものとなるだろう。誰もが己の平穏を願っている。誰もが平和を思っている。
けれど、クロムキャバリアにおいて平和とは有名無名そのものであった。名を知っていても意味のないものであったからだ。
「だからこそ、我々が示さねばならない。どれだけ困難な道があろうとも、それが正しい道なのだと。誰もが苦しみを持っている。誰かが肩代わりしてほしいと願っている。けれど、皆の肩に重くのしかかるものを、隣人に背負わせて何の気兼ねもなく過ごせるものは、我が『フルーⅦ』には居ないだろう」
かつて『エース』として戦っていた『アジン』少将ならばこそ、その言葉は響かせることのできるものであったことだろう。
彼はもう『エース』ではない。
けれど、この『フルーⅦ』の動乱を経て、元首として辣腕を振るう姿は、『エース』だけでは出来ぬことを背負う者の姿であった。
「憎しみも、わだかまりもあるだろう。しかし、人と巨人は手を取り合うことができる。今まさにそれを証明することができる。かつての敵国『バンブーク第二帝国』の皇女『ライスメキア』とエースの再来たる『フュンフ・ラーズグリーズ』。彼等は手を取った。ならば、我等もまたそれに続かねばならない。それが平和への礎となる私の願いだ」
その言葉と共に完全ではないが、人々は『フィアレーゲン』の残存レジスタンスと『ライスメキア』を受け入れる。
日常が訪れる。
何物にも変えがたき日常が。
猟兵たちは、傷ついた者たちの心に触れるだろう。そして、何ができるであろうか。慰撫すること、鼓舞すること、いずれにしても、彼等の明日を切り開くのは、他ならぬ彼等自身。
新たなる戦いに備えて、キャバリアの整備が始まる。
『ライスメキア』は巨人の体躯を活かして、キャバリアの整備場でひたむきに働いている。それは彼女にとっての贖罪でもあったであろうし、なにか体を動かしていないと気が紛れぬことも示していた。
己のこと。他者のこと。
そして、これから何を為し、何を行うべきなのか。
迷いの中にあれど、ときは待ってはくれない。だからこそ、猟兵たちは示さねばならないのだ。
どんなに険しく厳しい道があるのだとしても、その先にこそ求めるものがあるのだと――。
村崎・ゆかり
やっと安心出来るところまで着いたわね。
『フュンフ』、『グリプ5』に帰らなくていいの? 『レジン』少将からきっと連絡が行くわよ。
さて、たまには自分の手で『迦利』をいじってみましょうか。
『迦利』はあくまで呪術で動いてるけど、これまでに強化した部分は普通のパーツ多いしね。
ついでに笑鬼召喚。あなたたち、この拠点の整備でもしてきなさい。一宿一飯の恩義は返さなきゃ。
『ライスメキア』は、お姫様の身で亡命おつかれさま。ここで上手くやっていけそう?
『フェアレーゼン』の崩壊にはあたしも一役買ってるんだ。だからレジスタンスの人たちから憎まれてもおかしくないんだけど、気にしてないみたい。
本当、お人好しが多いわ。
歴史は紡がれていくものである。
積み重なっていく姿にも形容できるかもしれないが、人の歴史は連綿と紡ぐものだ。積み重ねたものは瓦解するものであるから、人は記憶と口伝から過去を知らしめる。
伝える言葉が失われても、形を変え、時には文字になり、人の記憶に残っていく。
クロムキャバリアにおいても戦火は常にあらゆるものを破壊に導くだろう。
失われてしまったものの方が多いはずだ。
小国家『フルーⅦ』もまた同様である。
「やっと安心できるところまで着いたわね」
村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)は『フィアレーゲン』の残存レジスタンスが使用していたキャバリアから降りてきた『フュンフ・ラーズグリーズ』に手をふる。
それに応えるように『フュンフ・ラーズグリーズ』は頭を下げる。
「『フュンフ』、『グリプ5』には還らなくていいの?」
きっと『アジン』が連絡するかもしれないと思ったのだが、クロムキャバリアの小国家間の通信手段はない。
伝わるにしても、今は緊張状態にあるために『フュンフ・ラーズグリーズ』の情報は『グリプ5』に届くにはまだ時間が掛かりそうである。
「いえ、まだ帰れません」
『フュンフ・ラーズグリーズ』の瞳に在るのは戸惑いではなかった。
自分が為さしめなければならないことを理解しているからこそ、『グリプ5』に戻るのではなく、『フルーⅦ』に身を寄せたのだろう。
それが『ライスメキア』の存在が理由であったのだとしても、それが『フュンフ・ラーズグリーズ』の決めたことならばゆかりはとやかく言うつもりはなかった。
「そ、なら、あたしは整備でもしているわ」
笑鬼召喚(ショウキショウカン)によって呼び出された子鬼たちが馬鹿笑いしながら、一斉にゆかりの式神であり無人キャバリアを整備していく。
あくまで呪術で動くキャバリアであるが、これまでに強化した部分は普通のパーツが多いようであった。
それに自分のキャバリアを整備するだけではなく、一宿一飯の恩義は返さなければならないと彼女は感じていた。
「さ、あなたたち。この拠点の整備でもしてきなさい」
そう告げると式神たちは盛大に笑いながら駆け出していく。その背中を見送りながら、同時に小さな子鬼たちの走る姿に巨人の『ライスメキア』は驚いたように足を上げている姿が見える。
「あら、『ライスメキア』。お姫様の身で亡命おつかれさま。ここでうまくやっていけそう?」
「はい……まだ、不慣れなところもありますが」
『ライスメキア』は巨人の巨躯を活かして、人の手では到底運び込めないであろう資材を抱えている。
確かに彼女の巨躯であれば、人のサイズ似合わせてある居住区は使えないだろう。
キャバリアと同じサイズであるから、こうした格納庫のほうがよほどスペースがあるように思える。
どうやら、ゆかりの心配は杞憂であったようだ。
彼女は彼女なりに考えている。
ならば、とゆかりは過干渉になりすぎないように『フィアレーゲン』のレジスタンスの様子も見やる。
彼等は『フィアレーゲン』の崩壊に一役買ったおのれたちに悪感情を持っていないようであった。
「恨み言の一つでも受け止めるつもりだったんだけれど……」
どうやら気にしてない様子。
ゆかりは自分が意識していただけであることになんとなく苦笑いを浮かべるしかない。時が変われば人も変わる。
場所が変われば、人も変わる。その言葉を信じるわけじゃない。
誰もが今日という困難な日を生きている。
どうしようもないことだって多々あるだろう。
「けれど、それでも生きていくしか無いんです。どれだけ恨まれていると思っていたとしても、皆さんは、それを理解し、寛容な心で受け止めてくださる……少なくとも私はそう感じました」
そう告げる『ライスメキア』の微笑みを見上げ、ゆかりはため息とともに告げるのだ。
「本当、お人好しが多いわ――」
大成功
🔵🔵🔵
ユーリー・ザルティア
ふう、ようやく一息つけそうね。
ああ、アジン少将お久しぶり。
しかし、レスヴァントのダメージが酷いわねぇ。
ほぼ自爆だけど…
はぁ、壁ノ工房に修理を頼むしかないわね。
彼らの【メンテナンス】と【武器改造】能力は素晴らしいのよ。
え?何親方…ご、ごめんなさーい(機体のダメージに鉄拳制裁中)
はあ、酷い目にあったよ。
いや、確かにレスヴァントを大破させたのは確かだけど、パイロットのボクは生きてるんだから、少しは勘弁してもいいじゃない、ねえライスメキアちゃん。
失敗しても、キャバリアを壊しても、人は生きているなら、やり直すことができる。生きている限り…ここの人達は生きてる限り何度でも立ち上がるんだろうねぇ。
「ふう、ようやく一息つけそうね」
ユーリー・ザルティア(自称“撃墜女王”(エース)・f29915)は『パールバーティ』と共に『フルーⅦ』のキャバリア格納庫に降り立つ。
息を吐き出す。
戦場から舞い戻ったこの瞬間こそが、息を吐き出すことのできる唯一の時間であった。戦いの最中は息をつく暇もない。
その一瞬こそが生死を分けることをユーリーは知っているからだ。
学習型AIによる自動操縦によって、一足先に格納庫に到着していた『レスヴァント』の機体状況は芳しくない。
いつだってユーリーの超絶なる操縦テクニックに限界を超えて応えてきた証でもあった。
それにオブリビオンマシンはますます強力なものになっている。
ほぼ自爆であったのは仕方のないことであった。
すでに格納庫には壁ノ工房出張サービス(ヘキノコウボウシュッチョウサービス)が出張ってきている。
ユーリーはいつもお世話になっている。
整備クルーとメンテナンス用トレーラーが入り込み、スタッフが忙しく整備の準備を始めている。
時折、怒号が響き渡るのは、工房の親方のものであろう。
「あー……正直、降りたくないわね……」
きっと、どやされる。
けれど、降りないわけにはいかない。
『パールバーティ』の機体の下に『フルーⅦ』の元首となった『アジン』がいるからだ。
「ああ、『アジン』少将お久しぶり」
かつて戦った『エース』。オブリビオンマシンに狂わされたパイロットである『アジン』はユーリーの言葉に苦笑いを浮かべていた。
「もう少将ではないのだよ、若き『エース』。私はもうパイロット業をやるわけには行かない立場になってしまったものでね」
僅かに羨ましさをにじませているのは、彼が生粋のパイロットであるからだろう。
「此度の協力に感謝する。代表として礼を言わせてもらう……そして、どうやら及びのようだぞ」
そんな『アジン』の背後から怒声が聞こえる。
ああ、とユーリーは天を仰ぐ。
「……ご、ごめんなさーい。やめて、その拳骨本当に痛いんだから! ボクの頭が凹んじゃうよ!」
ユーリーは工房の親方から逃げ回る。
こんなに派手に壊しやがってとどやされ、追い回されてユーリーは這々の体で逃げ切って、ようやく格納庫の片隅でため息を吐き出す。
「はあ、酷い目にあったよ」
まあ、たしかに『レスヴァント』を大破させたのは自分である。けれど、パイロットの自分が生きているのだから、少しは勘弁してほしいものである。
そんなユーリーを見つけた『ライスメキア』が微笑んでいる。工房の親方とのやり取りを見ていたのだろう。
「それだけ御身のことを心配してくださっていたのですよ。あれだけの損耗、パイロットにも負傷があるかもしれないと思うには十分なものでしたから」
「そうだけどさー」
『ライスメキア』はつなぎを来ている。おおよそ皇女らしからぬ格好であるが、巨人の体躯であるからこそ、人間にはできないことができるというものなのだろう。
今も資材を抱えている。
落ち込んでいる暇はないというように、精力的だ。
その姿にユーリーは思うのだ。
「失敗しても、キャバリアを壊しても、人は生きているなら、やり直すことができる。生きている限り……」
「ええ、そう思います。私も、そう思うことにしました。ありがとうございます。ユーリーさん。助けて頂いて、止めて頂いて……」
一度は打ちのめされたであろう皇女。
おのれの中にある復讐心を自覚し、そして、それを歪められても尚、立ち向かう気概が彼女の中にはある。
「『フィアレーゲン』の人たちも、『ライスメキア』ちゃん、君も。そして、『フュンフ』くんも生きている限り何度でも立ち上がるだろうねぇ」
それを好ましくユーリーは思うだろう。
彼等は彼等の地獄を見た。
けれど、それは他者からは見えぬ地獄である。
相対し、乗り越えるしかない。ユーリーにもまた目の前にある、他者には見えぬ地獄があるだろう。
それを避けて飛ぼうとは彼女もまた思わないだろう。
ユーリーは立ち上がる。どうせ立ち向かうことになるのならば、これからもおのれの意志は曲げず。
そうすれば、自ずと路は開けるのだろうから――。
大成功
🔵🔵🔵
ガイ・レックウ
【POW】で判定
『フュンフの奴もいい方向に変わってきたじゃねぇか…いい眼をしてやがるぜ!!』
フュンフの様子を見ながら、笑みを見せるぜ。天龍とスターインパルスの整備をしながらだがな。
『だが、こっちはこっちで考えることも増えたな』
【武器改造】のスキルで機体を弄りながらつぶやくぜ。いつか来るであろうグリプ5周辺戦いの絵図を描いた黒幕との戦い…それに思いをはせながら
人は成長する生き物である。
それが善きにつけ悪しきにつけ、変化として訪れる。
『フュンフ・ラーズグリーズ』は、これまで幾度となく打ちのめされてきた。
戦乱だけが渦巻く世界になって平和を求めた。
言葉しか知らず、意味を知ることのなかった平和。それさえあったのならば、人が人として生きるために必要なものは他に何もいらなかったのかもしれない。
多くを喪ってきた。
おのれの存在が憎しみを集めるのならばこそ、おのれの大切な者を傷つけぬためにこそ出奔した。
小国家『グリプ5』にはまだ戻れない。
戻るわけにはいかないのかもしれない。それはこの絵図を描いた黒幕の存在があるからだ。『フュンフ・ラーズグリーズ』を追い込むためだけに策動が満ちている。
『バンブーク第二帝国』の先代皇帝の遺児である『ライスメキア』もまた、その策動の中の一つであったのかもしれない。
けれど、そんなことはどうでもいいことであると彼は言った。
どれだけ張り巡らされた罠がおのれを取り囲み、おのれの大切なものを傷つけるのだとしても。
「『フュンフ』の奴もいい方向に変わってきたじゃねぇか……いい眼をしてやがるぜ!!」
ガイ・レックウ(明日切り開く流浪人・f01997)は『フルーⅦ』まで『ライスメキア』と共に逃げ延びた『フュンフ・ラーズグリーズ』の表情を見て笑みを浮かべる。
彼に迷いはない。
これまでの戦いを見ていればわかる。
多くを喪って尚、道を歩むのならば、轍は人を成長させるだろう。
ガイは『フルーⅦ』のキャバリア格納庫の中で『天龍』と『スターインパルス』の整備を始める。
戦いは終わった。
けれど、戦いの終わりは、新たな戦いの始まりでもあった。
これから始まるのは『グリプ5』周辺の小国家を巻き込んだ戦いだ。綿密な計算の上で張り巡らされた策動が精緻な絵図を描いていく。
『フルーⅦ』は『グリプ5』と緊張状態にあり、連携することができないでいる。
そして、地底より舞い戻った『バンブーク第二帝国』は地上に版図を広げようと胎動する。
『ファン・リィウ共和国』は、不気味な沈黙を続け、新興国家『シーヴァスリー』は着々と『フィアレーゲン』、『八咫神国』を滅ぼし、プラントを手に入れ勢力を増していく。
「だが、こっちはこっちで考えることも増えたな」
小国家は生まれては滅びる泡沫のようなものだ。
クロムキャバリアにおいては、そういうものなのだ。プラントを奪い合い、戦い、無為に命を散らしていく。
その営みは人の歴史を紡ぐものではない。
ただ、滅びゆくための歩みをたどるだけのものだ。
ガイは、それをさせぬと猟兵として戦う。
この絵図を描いた黒幕とは必ずや戦うことになるだろう。
そのことに思いを馳せる。
戦いは起こってしまうだろう。どんなに拒み、遠ざけたとしても、戦火は伸びてくる。
「その時に、あいつらはどんな顔をしているだろうか」
『エース』の再来、『フュンフ・ラーズグリーズ』。
巨人の皇女、『ライスメキア』。
彼等二人が導く未来は、果たして明るいものであるだろうか。ガイは、その未来に思いを馳せる。
きっと正しい行いこそが、その明るい未来を手繰り寄せるだろう。そう信じて、手を動かし続けるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
フィア・シュヴァルツ
「どんなに険しく厳しい道があるのだとしても、その先にこそ求めるものがあるのだ。
すなわち、ライス大盛りハンバーグ二段重ね定食チーズフォンデュ乗せに、グレープジュース。
アジの開きと一緒のフルーツは……ちょっとどうかと思うが!」
『グリプ5やアジン少将も無理やり入れてきたでございますね!?』
ふっ、まあ待て、フギンよ。
これこそ漆黒の魔女の二つ名で呼ばれる我の戦略眼。
つまり、ハンバーグ二段重ね定食やグレープジュース、フルーツは手を取ることができるのだ。すべて食べ物ゆえに!
「我はこの策をハンバーグフルコース定食の計と名付けよう。
この策、用いるも用いないも、チーズフォンデュやライス、アジの開き次第よ」
人が歩む道はいつだって幾つかの選択肢が現れるものである。
一つは楽な道。
もう一つは険しい道。
それを選ぶのは人だ。誰もが決定権を持っている。その先にあるのものが正解か誤りかも含めて人は選び、取って生きていく。
そういうものなのだ。
選んだからには戻れない。けれど、過ちだと思ったことは正すことだってできるだろう。
「どんな険しく厳しい道があるのだとしても、その先にこそ求めるものがあるのだ。即ち――」
フィア・シュヴァルツ(腹ペコぺったん番長魔女・f31665)は大仰にうなずいた。
ああ、これは嫌な予感がするなと使い魔である鴉の『フギン』は諦観の念に襲われる。仕方のないことであったけれど。
「――ライス大盛りハンバーグ二段重ね定食チーズフォンデュのせに、グレープジュース。アジの開きと一緒のフルーツは……ちょっとどうかと思うが!」
何言ってるのだろう。
割とマジで。
しかしながら、こんにゃくほんやくするならば、あれである。
えーと、『ライスメキア』と『バンブーク第二帝国』とチーズ……チーズ? はまあ、置いておくとして『フュンフ』に『グリプ5』で、『アジン』に『フルーⅦ』であろうか。
いくらなんでも食欲変換がすぎるのではないかと思わないでもない。
フィアの言いたいことはきっと、周囲にミリ単位も通じていないであろうけれど。
『『グリプ5』や『アジン』少将も無理やり入れてきたでございますね!?』
『フギン』はおのれの主の言葉に驚愕する。
いや、そこで驚愕してもなぁ、という気がしないでもない。
「ふっ、まあ待て、『フギン』よ」
大物感出しても今更な気がしないでもないし、ついでにいうと褒めてないからね、と『フギン』は思わないでもなかったが黙っていた。余計なこと言うとこじれるのがフィアという猟兵であるからして。
「これこそ漆黒の魔女の二つ名で呼ばれる我の戦略眼。つまり、ハンバーグ二段重ね定食やグレープジュース、フルーツは手を取ることができるのだ。すべて食べ物ゆえに!」
くわっ。
くわっ、ではないのだが。大丈夫か、舌が子供そのものである。アジの開きはちょっと早かったかなーとかそんなこんな。
だがまあ、フィアの言葉にうなずける箇所がないわけではない。本当にござるか?
「我はこの策をハンバーグフルコース定食の計と名付けよう」
どういうこと?
周囲の人々はまるでわからんという顔をしている。『ライスメキア』だけがなるほど、とうなずいている。わかんの!?
「同じプレートに乗れば、それは即ち一心同体。食い合わせも何もかも飲み込んでしまえば一緒ということですね」
そうなの!?
『ライスメキア』の頷きに、みんな驚愕している。そうなのか? 本当に?
「ふっ……」
大物感出している場合じゃない。
フィアもフィアでなにか言えばいいのに、なんか一介の軍師みたいな顔をしている。
「この策、用いるも用いないのも、チーズフォンデュやライス、アジの開き次第よ」
いや、食べ物で例えられても。
しかしながら、食べ物の名前連呼していたフィアの腹の虫がもう限界である。
ものすごい音が周囲に響き渡る。
それは周囲の人々に笑みを引き起こすだろう。フィアにとってはよきせぬことであったが、都合よく解釈してくれる者たちがいるのならば、せっかくであるしとご馳走してくれることだろう。
優しい世界である。
しかし、その後、フィアの大食漢ぶりに周囲がドン引きするのもまた無理なからぬ話なのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
…ひとまずのところは安心かな…
…まあ大変なのはこれからなのだけど…
…キャバリアの整備は【歌い働く小人の夜】によって呼び出した小型ガジェットに任せるとしよう…
…そしてどこか適当なスペースを借りて『タロット占いやります』の看板を設置…
…上のほうがまとまりそうでも悩みやわだかまり持ってる人それなりいそうだからね…
…特にこういう融和ムードだと逆に納得いってない人は一人で抱え込んじゃうし…
…そういう人のために占いにかこつけて相談に乗って少しでも心を解きほぐすとしよう…
…小さいほころびも馬鹿にならないからね…
フュンフやライスメキアが来た場合も相談に乗ってアドバイスをするか…
歌い働く小人の夜(リトル・マイスターズ)の如く、『フルーⅦ』のキャバリア整備の格納庫に小型の修理・改造用ガジェットがせわしなく動き回っている。
小国家『フルーⅦ』に辿り着くまでに損耗した『フィアレーゲン』残存レジスタンスたちの機体をメンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)の呼び出したガジェットたちが修理しているのだ。
「……すみません。僕たちの機体まで……」
『フュンフ・ラーズグリーズ』がメンカルへと礼を告げる。
機体を失い、量産機でこれまでレジスタンスを率いてきた彼の消耗も激しいものであった。
「……ひとまずのところは安心かな……まあ大変なのはこれからなのだけど……」
「ええ、でも。それでも希望は繋がりましたから」
彼の言葉にメンカルもうなずく。
確かに希望はつながった。けれど、メンカルの言うところの大変なことは、これから起こる。
国家元首である『アジン』の演説によって『フルーⅦ』は『フィアレーゲン』の残存レジスタンスと『バンブーク第二帝国』の先代皇帝の遺児『ライスメキア』を受け入れることを表面上は受け入れた。
けれど、その内面は、内情はそうではない。
周囲の同調するのが人だ。
それに表立って言葉を発することのできる者は多くはない。心の奥底にわだかまりを未だ溶けずに抱えている者の方が圧倒的に多いのだ。
「……それが不理解、不寛容。なら……」
それを解きほぐさねばならない。
メンカルは『フルーⅦ』の町並みの一角に『タロット占いやります』と看板を設置して人々の往来を眺める。
最初は暇だった。
むしろ、『占い』という文字に惹かれてくるほど今の『フルーⅦ』に余裕はない。友好国であった『グリプ5』とは平和式典の折から緊張状態が続いている。
それに新興国家である『シーヴァスリー』はまたたく間に勢力を拡大させている。周辺の国家も、二つが滅びている。
不安がわだかまりを膨れ上がらせる。そして、わだかまりは澱のように人の心を重たくさせるのだ。
「……小さいほころびも馬鹿にならないからね……」
そうしていると、また一人、また一人とメンカルの占いを受けにやってくる。最初はとりとめもないものであったし、冷やかし半分のものもいただろう。
けれど、人の不安を解きほぐすためには、未来の指針を知らしめることも時には必要である。明確な答えがほしいのだ。
先が見えぬ不透明さ。
暗闇しか見えぬ未来。
それは常に同じことなのだと知っているのに、それでも未来を見通したいと思う。それは不安を払拭したいがためだ。
「……ありがとうございました」
「……うん、またなにか不安なことがたあったら来るといい。それに、一人じゃない。誰かと話すことも必要だよ……」
メンカルが占いに来た人々を見送ると、彼女の体を覆う影がある。見上げれば、そこには皇女らしからぬつなぎに身を包んだ『ライスメキア』の姿があった。
この小国家に巨人は彼女一人しかいない。
どんな格好をしていても目立つものは目立つのだ。その隣に『フュンフ・ラーズグリーズ』がいる。
「メンカルさんが占いをしているって聞いて……その、彼女も占いが好きみたいで」
「お忙しいとは思ったのですが、ご迷惑でなければ……」
どうにも『ライスメキア』は恐縮しっぱなしであるようだ。
彼女の姿は目立つ。
それに、彼女もまた皇女であり、巨人である前に一人の女性なのだろう。こういう類のものに興味が惹かれるのもまた自然なことだ。
「……いいよ。それで何を占ってほしいのかな……」
メンカルは二人が連れ立って訪れた意味を知るだろう。さとい彼女のことである。きっと二人が巨人と人との架け橋になることを理解している。
相性占いでもする? と冗談の一つでも言おうか、言うまいか、そんなことをメンカルは思いながら、二人の『エース』の姿に明るいものを見るのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
手を取り合うエースと亡命皇女…『アジン』様も手慣れておりますね
こうしたパフォーマンスは『フュンフ』様にはこそばゆいやもしれませんね
それとも、もう慣れましたか?
貴人たる『ライスメキア』様も当然了解しているでしょうが、事情を鑑みると心的負担も相応な物の筈
皇女の肩書を降ろして会話出来る相手がいれば良いのですが
(チラ
…はい、ご理解頂けているようで何よりです
私達が訪れている間くらいは、貴方の休息にもお付き合いいたしますよ
ああ、そういえば
私の経験譚から一つアドバイスを
目線の高さを合わせると長話でお互いの首の負担を気にする必要が無くなるのですよ
…丁度良い足場が『ライスメキア』様の傍にありますね?
かつての『エース』、『アジン』少将はすでに国家元首である。
その辣腕は演説にも現れているようにトリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)は思っただろう。
巨人の皇女『ライスメキア』とエースの再来『フュンフ・ラーズグリーズ』。
二人を国民に対する判断材料としてではなく、人と巨人の和平の象徴とすること。それがどんなに困難なものかを誰もが理解している。
けれど、それが無理難題ではないことを人々に知らしめ、希望を瞳に宿させる。
「こうしたパフォーマンスは『フュンフ』様にはこそばゆいやもしれませんね」
それとも、もう慣れましたか、とトリテレイアは要人警護のウォーマシンらしからぬ言葉を『フュンフ・ラーズグリーズ』に告げる。
『アジン』の演説が終わると共に壇上から降りてきた彼はトリテレイアの言葉に頭を振る。
「何回こなしても、多分慣れないですよ……」
苦笑いでも笑みが溢れるように成ったのは良い兆候でろう。
トリテレイアはいつも彼が余裕ないことを知っていた。幾度打ちのめされ、失意の底に叩きつけられてきた道のりを知っているからこそ、どれだけ余裕がなく今日まで生き抜いてきたかを慮るのだ。
「貴人たる『ライスメキア』様も当然了解しているでしょうが、事情を鑑みると心的負担も相当な物の筈」
「ええ、わかっています。彼女は……」
『ライスメキア』――『バンブーク第二帝国』の先代皇帝の遺児。
これがかの巨人の地底帝国にもたらす意味は大きい。
そして、その意味が大きければ大きいほどに、その両方に乗るものは計り知れないものとなるだろう。
「皇女の肩書をおろして会話できる相手がいればよいのですが」
ちらりとトリテレイアのアイセンサーが揺らめく。
『フュンフ・ラーズグリーズ』を見ている。それは他の誰でもできることではない。立場が人を縛る。それは時として心を蝕むものであろう。一人では筈せぬ枷でもあるかもしれない。
ならばこそ、トリテレイアは望むのだ。
それが、期待というのならば『フュンフ・ラーズグリーズ』は何と言うだろうか。
「別にやれと言われたからやるわけじゃないです。僕がそうしたいと思ったから。それだけです。もったいぶった仕方をしなくたって。もう子供じゃないんですよ、僕は」
憤慨してみせる姿こそ、まだ子供らしいものであるとトリテレイアは思っただろうが、言葉にはしなかった。
一足飛びに大人になれるものなどいないのだから。
「……はい、ご理解いただけているようで何よりです。それに私達が訪れている間くらいは、貴方の急速にもお付き合いいたしますよ」
トリテレイアはアイセンサーを揺らめかせる。
それがもしも表情があるのだとすれば、微笑みの形であったのかもしれない。
「ああ、そういえば。私の経験譚から一つアドバイスを」
「――なんです?」
トリテレイアは語る。
おのれ自身も経験したことであるし、何よりもこれからの二人には必要な知識である。知識のアップデートはされなければならない。
それは簡単なことだ。
互いに思いやれば、いつだって簡単にできること。
トリテレイアは見ただろう。幾ばくかの休息の時に巨人と人――『ライスメキア』と『フュンフ・ラーズグリーズ』が目線を合わせている姿を。
高さが足りないのならば、高さを合わせればいい。
互いの視線の高さに立ってこそ見えるものがある。
足場の上で『ライスメキア』と談笑する『フュンフ・ラーズグリーズ』は、トリテレイアの求めるものであったことだろう。
「いつだって簡単なことなのです。そのかんたんなことを人は忘れる。忘れてしまう。忘れてしまったことすら自覚できなくなってしまう」
だからこそ、トリテレイアは覚えているのだ。
忘れられない電脳だからこそ。
その刻まれたことを伝えるのだ。互いを思いやる心。同じ目線で見つめること。
たったそれだけで、か細い希望の光は、撚り合わされ太く煌めく物に変わっていくと信じるに値する光景であったのだ――。
大成功
🔵🔵🔵
サージェ・ライト
思えばフルーⅦにかかわる事件もたくさんありましたねー
戦乱と平和はまったく相入れないものですが
でもこの平穏は皆さんが戦ってきた結果で得たものですよね
悲しいことですが
まだ戦いはあるでしょう
そのためにもキャバリアのメンテは重要…
あの、シリカさん?
ファントムシリカの装甲より私の肌の方が数が多いのは何故??
すっごい引っ掻き傷なんですけども?
しくしくしくしく
シリカー真面目にちょっと装備を考える時に来ていると思うんですよ
空飛ぶ機体も増えてるし遠距離戦を強いられるシーンも多いんですよね
高機動近接型のコンセプトを崩さずになんかないですかね?
瞬間移動とか
あ、ありませんかはい
クノイチっぽい遠距離攻撃うーむ
え?違う?
クロムキャバリアにおいて戦乱は常である。
平穏な時は僅かしかない。それが悲しいことだと思える心があること自体が幸せなことであったのかもしれない。
平穏を幸せだと思えることは確かに必要なものである。
けれど、その平穏が続かぬ事を知って、当然と切って捨てることは人の心にささくれを生み出すものであったから。
それはどうしようもなく。
だからこそ、人は戦うのだ。他者から奪うのではなく、皆にもたらすために。
奪うばかりでは立ち行かない。
「思えば『フルーⅦ』にかかわる事件もたくさんありましたねー」
戦乱と平和はまったく相容れないものであるが、この僅かな時の平穏は皆が戦ってきた証であるとサージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)はうなずく。
悲しいことであるが、まだ戦いは続く。
どうしたって戦乱は待ってくれないし、どうしようもないものである。
「そのためにキャバリアのメンテは重要……」
しかし、サージェはおのれのキャバリアである『ファントムシリカ』を見上げ首をかしげる。
傷が少ない。
装甲の傷も僅かなものばかりだ。
「あの、シリカさん?『ファントムシリカ』より私の肌の方が傷跡多いのは何故??」
ものすごく引っかき傷が刻まれているサージェの肌。
痛々しい。
これも戦いの常ってやつなんだと言えたのならば格好良かったのだろうけれど。残念ながら、彼女の傷跡は『シリカ』のばりぃ!ってやつである。
どうにもこうにも特攻グセの抜けないお姉ちゃんが悪いのである。
「しくしくしくしく」
口で言った。
泣き真似ではなく、それはサージェの本音であろうけれど。彼女のそういうとこやぞっていう気持ちがないわけでもない。
でもでもサージェにも言い分ってものがあるのである。
「シリカー、真面目にちょっと装備を考える時が来ていると思うんですよ」
サージェはうなずく。
そう、クロムキャバリアにおいてキャバリアの開発闘争は激化をたどるばかりである。これまでにないほどに強力な機体が現れ始めている。
それに『バンブーク第二帝国』の将軍級のキャバリアはどれもが、その体高が三倍以上もある巨躯。
そんな敵に苦戦を強いられることもあるだろう。
何よりも近接戦闘に特化した機体であるがゆえに、遠距離からの砲撃に苦戦することもある。
高機動近接型がコンセプトであるが、ここは一つ崩さずに遠距離に対応できる武装をとサージェは考えているのだ。
「……確かに。でも具体的に案はあるんです?」
一理ある。
けれど、サージェの出した案は突拍子もないものであった。
「瞬間移動とか」
はーい、ばりぃのお時間でーす。
ぎにゃぁぁぁと叫ぶ声がキャバリア格納庫に響き渡る。そんな二人のやり取りを苦笑いでみているのは『ライスメキア』と『フュンフ・ラーズグリーズ』であった。
微笑ましいと思っているのか、特に止めに入らないところが、こう、あれである。
しかし、サージェもばりばりばりぃされながら考えるのである。
「クノイチっぽい遠距離攻撃」
うーむ。
瞬間移動、とてもよい案だと思ったのだが。どうにもシリカの琴線には触れなかったようである。
くのいち。といえば、あれである。湯けむり入浴シーン。ならば、こう、あれだ。装甲をパージして、ギリギリを攻めるとか……って、あー! 困ります! ばりぃは困ります!!
「違いますよねぇ……」
サージェはうんうんと悩みながら、おのれの機体を見上げる。彼女の褐色装甲は傷だらけである来たるべき戦いに向けて、日々のお手入れを欠かさぬようにしなければならない。
いや、そうではないのだけどなぁとシリカは根本的な解決を先送りにするのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
菫宮・理緒
ここで整備させてくれるのは嬉しいな。
チャンスは最大限に生かさないとだし、
さっそく『ライスメキア』さんの機体を組んでみることにしよう。
【Greasemonkey】でサポートしてくれる妖精を召還。
さっき戦ったバンブークの機体の残骸から、
使えそうなパーツをゲットしてきてもらって、使うことにするね。
パーツが揃うまでにわたしはキャバリアの設計図、書いておこう。
いきなり巨人サイズでもいいんだけど、
ここはまず、通常サイズのキャバリアで試作していこうかな。
パーツが揃ったら、妖精さんには引き続き【メカニック】として手伝ってもらうね。
パーツが足りない分は、ここにあるのを流用させてもらうか、
部品の在庫が少なければ【偽装連金】で作っちゃってもいいかな。
試作が完成したら、『フュンフ』さんや『ライスメキア』さんにも見せて、感想とかパイロットしてのリクエストとか聞きたいな。
もしよかったら、このまま『ライスメキア』さんサイズの機体を作っちゃってもいいんだけど、
それが無理でも、設計図と試作機はおいていくことにしよう。
小国家『フルーⅦ』は百年戦争の折には未だ小国家と呼ぶに値する体裁を持っていない弱小の国家であった。
しかし、『グリプ5』の前身である『憂国学徒兵』たちと連携することで多くの小国家を撃退してきた。その際に『フュンフ・エイル』の駆る『熾盛』の機能を9つの機体に分散させた猟兵以外使いこなせなかったキャバリア『レーギャルン』を擁する国家でもある。
そのキャバリアの開発整備に関わる施設は菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)にとってありがたいものであったし、メカニックとして関わる以上、これ以上無い経験になったことだろう。
「このチャンスは最大限に活かさないとだね」
彼女は巨人である『ライスメキア』のためのキャバリアの機体を組み上げようと画策していた。
しかし、いきなり巨人機を作り出すには資材も時間も足りない。
それにこれからも『バンブーク第二帝国』は先代皇帝の遺児である『ライスメキア』を狙うだろう。
如何に彼女が『エース』としての資質を持っているのだとしても、機体が扱えぬのであれば、敵の襲撃を防ぐことはできないだろう。
「さっき戦った『バンブーク第二帝国』の機体の残骸から使えそうなパーツはゲットしてきているんだよね!」
Greasemonkey(グリースモンキー)――電子の妖精を呼び出した理緒は、おのれのキャバリア開発のサポートを行わせる。
ゲットしてきた無人キャバリアの残骸は、ある程度は使える。エネルギーインゴットは無駄にはならないし、フレームの鋼材は使い回すことができる。
それに『フルーⅦ』のプラントの生産機能を使わせてもらえるのならば、ある程度の装甲もまた用意できる。
「うーん……どうしたものかなぁ」
理緒は悩んでいた。
確かに一口に言って巨人機と言えど、ただサイズを大きくしただけでは意味がない。
キャバリアの設計図を走らせる。
『ライスメキア』の『アラクシエル』での戦い方は簡潔なものであった。
高機動、高出力の光学兵器。そしてエネルギーチャージからの必殺の一撃を放つ兵装。
レーザーブレードであれ、貫徹杭であれ、扱いが難しいものばかりであった。けれど、そのどれもを彼女は扱えていたのだ。
「いきなり巨人サイズでもいいんだけど、まずはモックアップ機を造ることにしよう」
理緒は試験的に通常のサイズのキャバリアを試作していく。
電子妖精たちが引っ張ってきた資材を見やる。
どうやら、オーバーフレームとアンダーフレームは、以前の戦いで破損した『レーギャルン』の一機が残っていたので、それを使えばいい。『フルーⅦ』の代表である『アジン』の許可は既に取れている。
この『レーギャルン』を基礎にしてモックアップ機を試作する。
そうすれば、後はサイズと各所の調整を行えば『ライスメキア』専用機が作り出せるはずであった。
「これで流用パーツは揃ったかな……『レーギャルン』……今まで猟兵以外に扱えないほどの大出力を誇るスーパーロボット、かぁ……」
その機体の力は言うまでもない。
ユーベルコードの出力に絶えうるフレーム。この機体は内側から破損しているようであったが、内部のパーツを流用すれば組み替え直すことが容易であった。
これがキャバリアという戦術兵器の強みであった。
コクピットブロックを挟み込むようにオーバーフレームとアンダーフレームを換装できるということは、コクピットブロックを入れ替えてオーバーフレームとアンダーフレームを装着することもできるということだ。
「あとは武装だよね。これだけの高出力機なら、大掛かりな武装であっても振り回せるはず」
貫徹杭は再現が難しい。
けれど、取り回しの難しい大型突撃槍と光学兵装を組み合わせた複合武器を扱うには十分な出力の確保ができている。
「うん、それじゃ、パイロットのお二人にご意見を募ろうかな。どう、かなー?」
理緒の言葉にモックアップ機の前に来た『フュンフ・ラーズグリーズ』と『ライスメキア』は顔を見合わせる。
彼等二人の間には独特の空気が流れているように理緒は思えただろう。
巨人と人のサイズ差を埋めるように『フュンフ・ラーズグリーズ』は足場を利用している。目線を合わせているのd。
「良い機体だと思います。武装が大型化していることは、他の機体と連携することを前提としているのでしょうか? 攻撃力に特化しすぎているような気がしないでもないです……」
「近衛の機体を用意する必要もあるかもしれないね。随伴の機体……左右をガードするような、そういう機体があれば運用も難しくないと思う」
それぞれの意見は悪くないものであった。
残るのは防御面での不安だけのようだ。これを解決するアイデアはあるようであるが、このモックアップ機がそのままサイズを大きくするのであれば、どうあっても旗印として運用する以上、攻撃が集中してしまうだろう。
「なるほど、ねー……ふむ」
理緒はいくらか考えを巡らせる。このままリサイズして『ライスメキア』のサイズの機体を作り上げてもいいと思っていたのだ。
けれど、改善の余地はあるようである。
『フュンフ・ラーズグリーズ』は随伴機があれば、運用の仕方次第では旗印になると言った。
『ライスメキア』は、他者を護るための機構がほしいと願っている。
ただ一人で戦うわけではないという前提の意見。
たった一機で戦局を変える機体を彼等は欲していない。誰かを護るために、その一点だけが彼等の共通認識であった。
「わかったよ。それじゃあ、設計図と試作機はおいていくよ。改修プランはこっちに、ねー」
理緒は二人の意見を纏め、改善点とプランニングを行っていく。
彼女は二人が『エース』でありながら、他者を必要としない、そんな考えがないことに安堵する。それは独りよがりな考え方だ。誰にも頼ることができないものは孤独だ。
けれど、理緒が今見る二人は違う。
立場が、種族が違えど互いに手を取り合って助け合うことを目的としているのならば、ただ一人で立ち、擦り切れるまで走ることもない。
それを今は喜ばしく思うのであった――。
大成功
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