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やさしかったあなたへ

#ダークセイヴァー #月光城 #グリモアエフェクト #月の眼の紋章

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 領主様は、優しい方です。
 でも、ちょっと不思議な方です。
 領主様は、子どもが生まれて7年経つと、子どもをお城へ連れて行きます。反論できるものはいませんが、反論するものはいません。
 子どもが3年経つと帰って来ることを知っているからです。領主様に逆らった方が、子どもの命が危ないから、みんな3年の孤独を我慢します。
 3年経って帰ってきた子どもには、怪我や後遺症の類はありませんでした。“これまでは”。其れがいつしか傷跡をこさえて帰って来るようになって、四肢の何処かを失って帰って来るようになって、最後には帰って来なくなりました。其れが、一月前の事です。
 領主様は変わってしまった。
 村の皆がそう嘆きました。妊婦はこれから襲い来る別れと恐怖に震えていました。
 不思議だったのは――3年の“お勤め”を終えて帰ってきた子どもたちは、四肢を失ってもけろりとしている事です。まるで恐ろしいと思う心をお城においてきたかのようにけろりとしていて、失ったなりに生活をしています。
 私は其れを、何より恐ろしいと思いました。恐ろしいと思わなければ、この世界では生きていけない。森は暗く、獣は恐れるべきもの。恐怖を抱いていなければ、命を大事にできないのが、この世界なのに。
 領主様に何が起きたのでしょう。
 其れとも、これが領主様の本性なのでしょうか。
 判りません。なにも、……なにも、判りません。



「ダークセイヴァーでの話なのだけど」
 佐々・夕辺(凍梅・f00514)が頬に手を当てて言う。
「ちょっと変わり者の領主がいたの。7つになる子どもを村から城に召し上げて、10歳になったら返すという領主がね。其の目的は判らなくて……楽観的に考えるなら、子ども好きの領主だったのかしらね?」
 でも、変わってしまったの。
 夕辺は金色の睫毛を伏せる。
 領主は徐々にだが、子どもたちを害するようになった。帰っては来る。来るけれども、徐々に傷跡が増え、傷も大きくなっていよいよ四肢を失う子どもが出るようになったのだと。
「子どもたちの内面も変わるようになったわ。まるで恐怖というものを失ったかのように、明るい子どもになったんですって。でも、ダークセイヴァーはあらゆるところに危険が潜んでいる。暗い森に明かりもなく入っていって、帰って来なかった子どももいたそうよ。恐怖を失うという事は、あの世界ではそういう事なの。……今はまだ、子どもたちは帰ってきている。でも、子どもたちが帰って来なくなるのも時間の問題でしょう。そうなってしまう前に、城から子どもたちを逃がして、領主を倒してきて」
 夢の中で見た領主は、女性のように見えた。そう夕辺は語るが、……唇に指を当て、いえ、と言葉を濁す。
 其のシルエットは模糊として判りづらかったのだと。其れが領主の能力なのか、或いは領主に“別の姿”があるという事なのかは判らないが――どちらにせよ、村人を害する領主ならば倒さねばならないだろう。
「優しいままなら、或いは捨て置いても良かったのかもしれないけれどね……いいえ、いまこんな事を語っても仕方ないでしょう」
 お願いね、と夕辺はグリモアの門を開き、猟兵を送り出す。

 此処はダークセイヴァーの下層。
 ――だというのに、月が皓々と輝いている。


key
 こんにちは、keyです。
 優しかった領主のお話。

●目的
「城の領主を撃破せよ」

●各章
 城の入り口にグリモアの門は繋がれています。
 第一章では猟兵は其処から侵入し、子どもたちが保管されている部屋へと向かって貰います。部屋には子どもが十数人いますので、領主の手にかかる前に速やかに逃がす必要があります。
 第二章・第三章は戦闘になります。

●プレイング受付
 受付、〆切はタグ・マスターページにて適宜お知らせ致します

●注意事項(マスターページも併せてご覧下さい)
 迷子防止のため、同行者様がいればその方のお名前(ID)、或いは合言葉を添えて下さい。
 また、失効日が同一になるタイミングでプレイングを送って頂ければ、こちらとしては助かります。
 単独行動希望の方も一言添えて下さると嬉しいです。


 此処まで読んで下さりありがとうございました。
 皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 冒険 『遺された花の数』

POW   :    孤児たちに話を聞く

SPD   :    内部に忍び込み手がかりを探す

WIZ   :    施設の職員に話を聞く

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 子どもが好きだった。
 けれど私は子どもを作れない。眷属は子どもとは呼ばないし、この“肉体”で包んだ者もまた子どもとは呼べない。
 だから少しだけ、支配下の村から“借りていた”。3年。3年だけ、我が子のように可愛がらせてほしかった。
 そうして、10歳になった子に祝福を渡して返す。村人は気付かないだろうが、病に苦しまないようまじないをして返していた。

 ――月を見ていた。
 其処にシルエットが差して、何物かと振り返る。
 お前は誰だ? 私に何の用が―― やめろ……やめろ!
 私は……!



 荒れ果てた城が其処にはあった。
 子どもたちの楽しそうな声が不似合いに響いている。
 其の声を辿れば、直ぐに子どもたちが隔離されている部屋は見つかるだろう。けれども君たちは違和感を覚える。
 子どもたちは“楽しそう”なのだ。
「お兄さんお姉さん、だれ?」
「何処から来たの? 領主様に御用?」
 楽し気に侵入者に問う子どもたち。襤褸切れを纏って、其の体は傷だらけ。血を流している者もいる。
 でも誰一人、その子を心配しない。楽しそうに追いかけっこをして、血飛沫を散らしている。
 何処からどうみても、異常だ。
シャルロット・クリスティア
……精神操作の類?あるいは、別の何かか……。
壊れているのを自覚できないのは、幸なのか不幸なのか……。
最低でも、これ以上弄られる前に、片をつけなければなりませんね。

この子たちがこのような状態なら、下手に物騒なことは言わない方がいいでしょう。
えぇ、領主様と、少し大事なお話を。
君たちをおうちに帰してくれるということで、相談に来たんです。

……くらいにしておきましょうか。

君たちは先に帰っていいそうですから、ほら、お行き。
面白そうなことがあっても、ちゃんとまっすぐ帰るんですよ。
何なら、一緒に行ってあげますから。

……せめてこの異常が、治るものだといいんですが。
未来ある命を、こんな形で歪めたままにはできない。




 シャルロット・クリスティア(霞む照星の行方・f00330)は、遺された側だ。
 ダークセイヴァーでは、死は救いにはなりはしない。死したら上層へ昇り、“魂人”としてまた命を弄ばれ続ける日々が始まる。
 其れでも、とシャルロットは抗わずにはいられないのだ。上層で弄ばれるくらいなら、下層で静かに暮らして欲しい。悪霊として、死して尚生きる埒外の猟兵になった意味はきっと其処にあるのだと――己に言い聞かせた夜もあった。

 ――精神操作の類でしょうか。

 おっと、話が逸れてしまった。シャルロットは子どもたちのいる部屋に辿り着くと、子どもたちが珍しがって自らシャルロットの傍へと寄ってきた。
「おねえさん、だれ?」
「りょうしゅさまのおともだち?」
「ええ。領主様と、少し大事なお話をしにきました」
 シャルロットは膝を折って、子どもたちに視線を合わせる。
「君たちをおうちに帰してくれるということで、相談に来たんです」
「かえれるの?」
「まだ3年経ってないよ」
「ぼくも」
「わたしも」
「ばかだなあ、だからおねえさんは相談にきたんだよ。でしょ?」
 ちょっと利口ぶった子が、えっへん、と胸を張って言う。そうですね、とシャルロットは頷いて。
「兎も角、君たちは帰って良いそうですから、ほら、お行き」
「え! いいの?」
「ええ。そのために相談に来たんですから」
「でも……」
 子どもたちは言い淀む。喜んで帰るかと思っていたが、なかなかそうする事はない。
「……あのね」
 シャルロットの服を引っ張って、女の子が其の青い目を見上げる。
「領主様、くるしそうなの」
「……くるしそう?」
「うん。わたしたちと遊んでくれるときも、……苦しそうなの。今までの子はね、領主さまは楽しく遊んでくれたって言ってたの。でも、何年か前から、領主さまは苦しそうにしてるって。私達から“こわい”を取ってくれるけど、でも、苦しそうって」
「待ってください、……“こわい”を取る?」
「うん。だから私達、こわくないの」
 何にも怖くないよ。
 そう言って笑った少女が、どこか恐ろしいもののようにシャルロットには思えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
どんな手段で子供達の精神を歪めているのか
事件が解決して皆元通り、めでたしめでたし…となれば良いのですが
いえ、肉体が欠けていては元通りなど…

…これ以上の悲劇を防ぐ為に赴くのです

私は遍歴の騎士
領主様に御目通り願う為に訪れたのです

(警戒心を喪失して…この状態なら敵に関する情報収集の心理的負担を考慮する必要も薄いでしょう。愉快な話ではないでしょうが)

領主様は皆様と普段、どのように過ごされているのですか?


実は手紙を通じて許可は頂いているので、領主様との話が終わるまで城の外でお待ち頂きたいのです
この妖精が道案内を務めましょう

複数機の機械妖精を遠隔操縦
怪我人の移動を補助しつつ誘導




 どんな手段で、何を用いて子どもたちの精神を歪めているのか?
 事件が解決すれば皆元通り、めでたしめでたし……となれば良いのだが。トリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)はあちこちから血を流しつつ追いかけっこに興じる子どもたちを扉の隙間から垣間見た。
 ――けれど、肉体が欠けていては元通りなどと。
 此れ以上の悲劇を防ぐためにも。

 トリテレイアが扉を開くと、子どもたちの視線がそちらに向いた。
 まず其の巨躯を見て、一番小さな子どもがぱちくりと瞳を瞬かせる。泣かせてしまうかもしれない。そうトリテレイアは思ったが、子どもはきらきらと表情を煌めかせた。
 ――寧ろ、泣いて欲しかったのかも知れない。
 きゃあ、と歓声を上げて群がる子どもたちに、トリテレイアは膝を突く。其れはまるで、姫の前に傅く騎士のようで。
「こんにちは」
「こんにちは、お兄さん!」
「こんにちは!」
「私は遍歴の騎士。……ああ、ええと……旅をしている騎士です。領主様に御目通り願う為に訪れたのです」
「おめどーりって何?」
「お会いするという事ですよ」
「りょうしゅさまに? りょうしゅさまは、一番上のお部屋にいるよ」
「時々此処にきて、一緒に追いかけっことかするの」
「領主様は時折此処に訪れるのですか?」
「うん、でね、ビリの子にはおしおきだー! って、鎌でざくっとするの。この前は僕がビリだったんだよ」
 ほら。
 そう言って腕を見せた少年の手には、辛うじて自然治癒した歪な形の刺し傷があった。……本当に、辛うじて癒えたという感じがする。本来ならば縫って治療すべきところを、誰も手当てせずに放っておいた結果だった。
「……。痛くはなかったのですか?」
「痛かったよ! 痛かったけど、僕はビリだったから仕方ないんだ。他にも、隠れ鬼で見付かった子は逃げられないように脚を切られたりしたよね」
「ねー」
「この前村に帰ったミスティは、それでびっこを引くようになったんだよね」
「あー! 覚えてる! あはは、かっこわるかったよねえ」
「あははは!」
「そうだね!」
 笑いだす子どもたち。笑いの種は、癒えない傷を負った子どもの話。
 モラルを根っこから失ったような子どもたちの談笑に、トリテレイアは何と言うべきか言葉を失った。
 どうにかしてやりたい。けれど、領主を倒す事で果たしてこの異常は解消されるのか?

「……実は手紙を通じて許可は頂いているので、領主様との話が終わるまで城の外でお待ち頂いていいですか? 道案内はこの妖精たちが務めましょう」

 ふわり。
 トリテレイアがそっと手を差し伸べると、其の上に載っていた機械仕掛けの妖精が子どもたちを見上げる。御伽噺さながらにふわりと舞い上がると、子どもたちの周囲をくるりと回った。

「わあ……!! 妖精さんだ! すごい!」
「歩けない子はおられませんか?」
「ミスティみたいな子の事? 今はいないよ」

 ならば、補助をしてやる必要はないだろう。妖精越しに見守りながら、子どもたちを外に送り出せばいい。
 トリテレイアの妖精に、子どもたちが追うようについていく。時折妖精を不躾につつきながら子どもたちが何人か去って行く。何人かまだ頑固な子どもたちが残る部屋を見回すと、絨毯が敷かれた暖かそうな室内には、血の落ちたような跡があった。壁には血の付いた手で付けたような手形。
 ――此れ以上子どもたちが傷付く前に、領主をどうにかせねば。
 トリテレイアは決意を新たに、さっきまで妖精が乗っていた手をぐっと握るのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アリステル・ブルー
アドリブ連携ご自由に

…ここの領主は比較的マシだった、のかな認めたくないけど
だけどこの状況は…ユール君の力を貸して
子供達を外まで導いて

多少の無茶は承知
傷が深い子や逃げる事に支障が出そうな子を中心に傷を癒すよ
出来る限り目線を合わす様に膝をついてね

こうやって怪我や病気を治せるから僕は領主様の様子を見に来たんだ
だけどね領主様は君達に感染る事をとっても心配しているんだ
この青い鳥が君達をお城の外まで案内するよ
安心して
領主様の事は僕に任せて

領主の無事を願うように祈りを捧げて言う
子供達を説得しつつ様子を注意深く観察する
彼らが受けた影響あるいは領主の様子の手掛かりを得るために

大丈夫、この状況はきっと良くなるから




 ――此処の領主は比較的マシだった、のだろうか。
 認めたくないけれども。とアリステル・ブルー(果てなき青を望む・f27826)は思い返す。けれど、其の領主も変わってしまった。子どもたちは傷付き、其の傷に構わず走り回っている。
 ぴぃ、ぴぃろろ。
 ユールと名付けられた青い鳥が子どもたちを導き、アリステルは清浄な風で子どもたちを癒していく。一人一人の傷を確かめながら、視線を合わせて。ありがとう、と笑う子どもの顔に恐怖や不安はなくて、其れが逆に恐ろしい。深い斬り傷を負った子どもでさえ、ユールの羽搏きに嬉しそうに笑うのだ。
「あのね」
 ある程度子どもたちの傷を癒したのち、子どもたちを集めてアリステルは言った。
「こうやって怪我や病気を治せるから、僕は領主様の様子を見に来たんだ」
「りょうしゅさま、ごびょうきなの?」
「見てみない事には判らないけれど、君たちも知っているように……領主様は少し様子がおかしいだろう?」
「様子がおかしいのは、病気だからなの?」
「でも、熱はなさそうだったよね」
「顔色わるいもんね」
 子どもたちが口々に言う。まあまあ、とアリステルは騒ぎ立てる子どもたちを落ち着かせて。
「領主様は君たちにうつらないかってとっても心配しているんだ。だから、一旦お外で待っててくれるかな? 領主様の事は僕に任せて欲しいんだ」
「うん、じゃあ外で待ってる!」
「りょうしゅさま、びょうきなのにぼくたちとあそんでくれてたんだね……」
「やさしいね」
「うん」
「ね、鳥さんとってもえらいね、お外までの道が判るの?」
「そうだよ。この子はユールっていうんだ」
「ユール! 可愛い!」
「ほしいー!」
「駄目だよ、おにいさんのものなんだから」
 口々に喋る子どもたちは、少し聞き分けが良すぎるようにも見えた。
 この年ならもっと我儘を言っても良いはずだが、領主の教育の所為だろうか?
 深い傷にも涙を流さず、にこにこと笑っているばかり。

 子どもたちは――もしや、負の感情を失っているのではないか。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『ゼラの死髪黒衣』

POW   :    囚われの慟哭
【憑依された少女の悲痛な慟哭】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD   :    小さな十字架(ベル・クロス)
【呪われた大鎌】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
WIZ   :    眷族召喚
レベル×5体の、小型の戦闘用【眷族】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。

イラスト:花土竜

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は吾唐木・貫二です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 私は元々、魔術師に創られた黒衣だった。
 人間ですらなく、年頃の娘を見付けては憑依して其の肉体で動くだけの存在だった。
 やがて主は姿を消し、私だけがこの城に残された。私は娘の肉体をなんとか保持しながら、支配下にあるらしい村を見下ろしては人間の営みを見下ろしていた。
 この腕で、赤子を抱いた事はなく。
 そして未来にも、この腕で赤子を抱く事はないだろう。
 涙を流して誰かを看取った事もなく。
 そして未来にも、誰かを看取り涙する事はないのだ。

 何故だろうか。
 其れはとても“寂しい”事に私には思えて仕方なかったのだ。

 いつからだっただろう。
 私は支配下にあるのを良い事に、子どもたちを“借り受ける”ようになっていた。

 だケレどモ。
 いツカらだロう? 傷付けたイという欲望が、私の思考を支配スル。
 何かガ、誰カが、私に傷付ケろと、人間を害セヨと囁きカケテくる。
 ドウシテ? 何故、そのヨウナ事をしなけレバならないノか?
 お前ハ誰だ? 少女の念? 違ウ。お前は一体、誰ナのだ?

 衝動に従ッテ今日も子どもタチのもとへ行ク。
 今日はかくレンぼをシヨウ。見付かッタ子は、ウデをキッテアゲヨウネ。
 最後マデ隠レキッた子は、脚ヲ斬ッテアゲヨウネ。
 斬る。斬る。傷付ける。斬る。斬る。キル。

 マッテテネ。
 あともう少シデ、孵るカラ。

 ――開イタ子ドモ部屋ノ扉、其ノ向コウニハ、誰モイナカッタ。
トリテレイア・ゼロナイン
『ゼラの死髪黒衣』…!
猟兵としてこの世界を訪れ始めた時期に幾度か交戦経験あれど、この地の領主がそれだったとは…

豹変は憑依の影響…いえ、それにしては領主であるべき少女の年齢が不自然…

…真相を追求する前に、騎士として為すべきを為さねばなりませんか!

大盾にて慟哭の直撃を避けつつ、剣の間合いへと接近

少女が既に息絶えている仮定なら、選択肢は幾らでも
されど騎士である以上、救出に尽力しますとも…!

鎌を躱して剣を振るい
少女の肌に傷一つつけず、黒衣のみを切っ先にて断ち切る…

ええ、出来ますとも

それを可能とする我が精密動作性と戦闘経験は御伽の騎士に劣らず
故に…

意志持つ黒衣よ、これ以上の幼子への狼藉はご遠慮いただく!




「ゼラの死髪黒衣……!」
 トリテレイアは咄嗟に大盾を構える。

 ナゼ。
 ドウシテ子ドモタチがイナイノ!
 ドコヘ連レテ行ッタノ!

「アアアアアアア!!!」

 間髪を入れず、少女の慟哭が衝撃波となって大盾を揺らす。
「く……!」
 トリテレイアが先手を取れたのは、数度交戦した経験があるからだ。
 彼女が領主だったとは。慟哭を盾で凌ぎながらトリテレイアはもう片手で剣を抜き放つ。

 ――豹変は憑依の影響?
 ――いえ、其れにしては依り代となった少女の年齢が不自然。ここ数年で豹変したという事は、何か別の要因があるのか……
 ――いえ。
 ――深層を追及する前に、騎士として為すべきを為さねばなりませんか!

「ワタシノコドモタチ!! 何処ヘヤッタノ!!」
「子どもたちは避難させました……! 意志持つ黒衣よ! 此れ以上の幼子への狼藉はご遠慮いただく!」
「ウアアアア!! ウルサイ、ウルサイ、ウルサイ……!!」
 どうやら話を聞く気も、話をする気もないようだ。
 跳躍した少女の肉体。振り翳した大鎌がトリテレイアの命を刈り取らんとする。其の様は我が子を失った母にも見えるが、これまでの幼子たちへの行いを考えても余りにも不自然だった。自ら傷付けてきた子どもたちを、今更奪われて激昂するだろうか?

 ――……鎌を躱し。剣を振るい。
 ――少女の肌に傷を付けずに、黒衣のみを斬る。其れが出来るでしょうか。

 少女が死しているならば、選択肢は幾らでもある。少女ごと真っ二つにしたって良い。
 けれども其れをトリテレイアは自分に許さなかった。例え死していても、黒衣の呪縛から罪なき彼女を解放してやりたかった。
 だから、騎士は心中の己に返す。

 ――ええ、出来ますとも!

 少女の鎌がトリテレイアの大盾の上を、がりがりと音を立てながら滑る。トリテレイアが力を込めて振り切れば鎌ごと少女の身体がふら付く。
 御伽の騎士に劣りはしない。機械であるゆえに精密に。くぐってきた戦場の数は知れず。トリテレイアは少女に傷をつけることなく、其の黒衣のみを切り裂いて見せた。

「……?」

 トリテレイアはふと気付く。
 少女の背が、丸い。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シャルロット・クリスティア
この黒衣……様子がおかしいですね。
子供たちが言ってた通り、望んでやっている様子とも、少し違う……?
何らかの外的影響を受けているようですが、いずれにせよやるしかないですか……。

眷属の召喚、単純な物量は壁になる。
正直に接近するのは容易ではない。遠距離戦で対応してもいいですが……いえ、ここは切り込みましょう。

まずは極力、眷属を引き寄せ、本体から離れさせる。
しかる後、眷属の隙間を縫い、本体目掛けてダガーを投擲。これは当てる必要はない。
可能な限り近くまで飛ばしたうえで、朧影によりその座標に転移。そのままダガーで衣を断つ。

……さて。文字通りの黒幕は、果たして誰でしょうね。




「(この黒衣……)」
 シャルロットは斬りかかって来る黒衣の鎌をナイフで細かくいなしながら、其の動作と言動を確認する。
「ワタシノ!! 子ドモタチ!! カワイイ……!」
 言っている事はまるで母のようだが、違和感があるのだ。そう、違和感としか言えないが……この違和感は確かなものだと、シャルロットは確信していた。
 このオブリビオンは、何らかの外的影響を受けている。
 子どもたちが言っていた通り、何らかの理由で“変わってしまった”のだろうか。
「……いずれにせよ、やるしかないですか……」
 大きくシャルロットは跳躍して後退する。
「逃ガサナイ! 脚ヲ切リ裂イテアゲヨウネ!」
 其れを追うように、小さな蝙蝠の使い魔が黒衣から生まれて群れを成す。まるで黒い霧にも似た其の攻撃を引き寄せながら、シャルロットはダガーを投擲した。小さな蝙蝠の間を縫ってあるじを狙った其の攻撃だが、黒衣はいとも簡単に其のダガーを叩き落としてしまう。
「モウ少シ……モウ少シデ、好キ放題ニ遊ベルノニ……! 子ドモタチヲ斬ッテ! オ前モ斬ッて!」
「――貴方に斬られるほど、私は弱くはないですよ」
 叩き落としたダガーに、効かぬと黒衣が顔を上げた其の時だった。
 まるで手品か魔法のように、ふわり、と中空にシャルロットが現れる。蝙蝠たちは一瞬のうちに消えたシャルロットを見失い、ぶわりとヴェールのように広がる。
「……!!!」
 見上げる黒衣に、一撃を見舞う。
 着地ざまの袈裟懸けは黒衣を切り裂いて、青黒い血を灰に変えた。ギイ、とまるで蝙蝠のように黒衣が悲鳴を上げる。

「ヤメロ……! モウ少シデ、孵ルンダ……!」
「かえる?」

 還る? 帰る?
 ―― 一体何処へ。一体何が、“かえる”というのでしょう?

大成功 🔵​🔵​🔵​

月影・左京(サポート)
アドリブ・連携・苦戦描写・UC詠唱改変・その他OK!

「はわっ!?……大丈夫。私も手伝うから♪」

一人称:私
口調:女性的でラフ(〜よね、なの?、あら〜等)
口癖:はわっ!?
性格:おっとりのんびり。「わぁ!頼りにな……る、の?(笑)」な感じ

基本戦法:【忍び足】で敵の死角に入りメイスによる【気絶攻撃/2回攻撃】。【鎧砕き】も狙うわ!

敵の攻撃は【聞き耳/第六感】をフル活用して【見切り】ます。
※不意打ちを受けた時など、「はわーっ!?」と叫ぶ傾向あり。

状況に合わせ、UCを何でも使用。

但し負傷した猟兵がいれば戦況次第で攻撃より【祈り】の力と【医術】及び【救助活動】で治療。

後はお任せ!
よろしくお願いします☆




「優しい……というより、珍しいオブリビオンだったのね」
 月影・左京(夫婦ゲーマーのはわっ担当・f06388)は首を傾げる。ダークセイヴァー下層の吸血鬼たちは、様々な形で民を虐げるものだと思っていたから。
「其れとも、結局はこうして傷付けるためだったのかしら。だとしたら、私は貴方を許すわけにはいかないわ」
「ア……アア……!」
 ぐらぐらと黒衣の領主、其の首が揺れている。明らかに様子がおかしいが、何故おかしいのかが判らない。判らなければ、癒しようもない。
「アアアアア!!!」
 黒衣の黒い部分からにじみ出るように、無数の眷属が溢れ出る。
「はわーっ!?」
 小さな蝙蝠の翼は鋭い。慌てて左右に避ける左京の服を、膚を、ちりちりと切り裂いていく。
 だが――これはチャンスだ。果たして相手に敵の動向を見極める、なんて事が出来るのかは判らないが、黒色の眷属に紛れれば或いは。左京は足音を殺して、がくがくと背を丸めている黒衣の死角へと忍び込んだ。
「眷属さんは、まとめて! なんでやねーん!」

 ――いや、ボケてへんやないかい!

 ツッコミそのものが突っ込まれそうだが、巨大ハンマーがぴこーん! と落ちて来て眷属たちを消滅せしめる。
「そして、貴方にはこちらです!」
 左京はメイスを振りかぶり、黒衣へと殴りかかった。この一撃を避けられたら、あちらへ動いて。そう考えていたのに、すんなりと領主の頭を殴り抜いたメイスに、左京は思わず目を白黒させた。
「え?」
「ア……ア……」
 ぼた、と青黒い血の雫が落ちる。
 左京を見上げた少女のかんばせは……右目は天を、左目は地に向けられて、左京を見てなどいなかった。

成功 🔵​🔵​🔴​

アウル・トールフォレスト(サポート)
(基本好きにお任せします)
「今日はどんなところに行けるのかな?」

楽観的で感情豊か、夢見る乙女な性格の少女
年相応に無邪気であり、根本が人でない故に残酷

神出鬼没に出現し、気まぐれに歩き回り、楽しげに爪を振るう
猟兵の役割は理解し依頼も一応遵守しようとするが、それはそれとして楽しそう、面白そうで物事を判断し、それを優先して行動する

バイオモンスターの特徴として、肉体は植物の性質を持つ

戦闘では怪力の発揮や身体の巨大化、鋭い爪での引き裂き、捕食等の野性味溢れる攻撃スタイル
理力の扱いも得意で、体表で自生する蔓や苔植物を操り、防御や隠密に罠等サポートも行わせる


ニケ・ブレジニィ(サポート)
技能を、フル活用します。

仲間を守りつつサポートし、敵を倒すという戦闘スタイルです。

また、このシナリオ内で戦闘不能になったオブリビオンの肉体と魂を、ユーベルコードの『桜の癒やし』で鎮め、転生できるように祈ります。

「…もう鎮まりたまえ、あなたの名を忘れないように私は憶えておいてあげるから…」

リプレイのために、このキャラクターを自由に扱っていただいて、全く問題ありません。




「あのオブリビオン、変な感じがする」
 アウル・トールフォレスト(高き森の怪物・f16860)の言葉に、ニケ・ブレジニィ(桜の精の王子様・f34154)は首を傾げる。
「変な感じ? どの辺りが?」
「判らない」
 アウルは頭を振る。けれど、と唇が紡ぐ。
「あれは多分、見た目通りのオブリビオンじゃない……んだと思う。何が出て来るか、ちょっと楽しみかも」
 わくわくしてきた、と笑みを見せるアウルに、ニケは苦く笑った。しかし、援護に長けたニケはアウルと相性が良い。
「蜉ゥ縺代※」
 最早オブリビオンの紡ぐ言葉は、意味を成さない。
「菴輔°縺?k」
 けれどオブリビオンは止まらない。呼び出した無数の黒い眷属が、アウルとニケへと迫った。
「わたしが前に出るよ!」
 アウルが獣のように飛び出す。小さな一匹一匹を、楽しむ用にひっかいて掻き消して、握り潰して掻き消す。
 ニケも援護の手を差し伸べる。掌に浮かんだ小さな桜の花びらが、瞬く間に桜吹雪と変じて己とアウルを囲む。眷属たちは優しい春に切り刻まれて、青黒い灰となって飛散する。
「何がいるのかな? ねえ、中に何がいるの?」
「……」
「生き物かな。其れとも同じオブリビオン?」
「……」
 アウルの言葉に、領主は答えない。答えないならいいよ、もう! アウルは飛び出し、其の瞳を赫色に燃え立たせる。炎を纏った爪で領主を切り裂いて、代わりに己が眷属に切り裂かれる。
「余り前に出ては駄目! フォローが出来なくなる!」
「大丈夫だよ、これくらい! ほら、あと少しで敵が斃れそう!」
 ニケがアウルの言葉に相手オブリビオンを見ると、其の背はすっかりと丸くなって、“膨れていた”。明らかに中に何かいる。ごくり、と唾を呑み込むニケとは裏腹に、アウルは楽しそうに笑った。
「隠れてないで、でっておー、いで!」
 ざくん。
 背中を切り裂いたアウルの爪。其れがきっかけとなったのか。

「遘√?縲∝ュ舌←繧ゅ◆縺。」

 つう、と一筋の赤い涙が黒衣の少女の頬を伝う。
 ばり、ばり、ばりばりばり、ばり。
 だらりと前傾姿勢にくずおれた少女の背から現れたのは――

「にゃおん」

 ほら。孵ったよ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『強欲魔猫グリーディア』

POW   :    貴方の
【生命力、技能、記憶を奪う腕】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD   :    全てが
【武器を奪う腕】【防具と衣服を奪う腕】【対象の選択したユーベルコードを奪う腕】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ   :    欲しい
【 七本の腕の中】から【心を奪う腕】を放ち、【対象の最も大きい感情を奪うこと】により対象の動きを一時的に封じる。

イラスト:FMI

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は須藤・莉亜です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 其れは、猫である。
 其れは、強欲を司る。
 尾のように揺らめく七本の腕は、オブリビオンの少女の背を開き、本体を引き出して、抜け殻を投げ捨てた。

「にゃおん」

 猫は鳴く。
 欲しい。
 欲しい。
 全てが欲しい。
 お前の持つ全てを寄越せ。お前の持たないものまでも寄越せ。
 命、技、記憶を寄越せ。武器を、衣服を、技さえも寄越せ。
 心を、感情を寄越せ。

 ――このオブリビオンの“優しさ”は、甘いけれど其れだけだった。
 お前達はどうだ? どんな味がするのだろう?
 想像するだけで心が躍る。だから、さあ、早く早く寄越せ!
トリテレイア・ゼロナイン
……手遅れでしたか
されど、別のオブリビオンが寄生していたケースは初めてではなし
務めを果たすといたしましょう

掴まんとする腕を剣と盾にて叩き落としつつ一旦後退
マルチセンサーでの情報収集で相手の可動域を把握

戦場に身を置く以上、報われる事が無き事も儘あることです
されど、思う所がない訳でもなし
其方が強欲の化生としての姿見せるなら、私も取り繕うのを止めるといたしましょう

全身の格納銃器を展開し牽制として乱れ撃ちながらUC起動
躯体の各部から触手の如くワイヤーアンカー伸ばし操縦
熱と振動による切断武装として腕や指を悉く斬り落とし、そのまま相手に肉薄
大盾で殴り飛ばし宙に浮かせ、剣とワイヤーでの連続斬撃




「……手遅れでしたか」
 部屋の床に打ち捨てられて、青黒い灰に変わりゆく黒衣の姿を見ながらトリテレイアは呟いた。だが、こういった事例に出くわすのは初めてではない。オブリビオンがオブリビオンに寄生するという奇妙な話は、何も今回だけではないのだ。
 だから、トリテレイアは務めを果たす。黒衣の為ではなく、子どもたちの為に。この強欲に何かを奪われたのであろう子どもたちのために、トリテレイアは剣と盾を構える。

 ――寄越せ

 ぶわっ、と猫の背後から白い腕が伸びて、幾つもの関節を曲げながらトリテレイアへ迫る。
 一つを盾で叩き落とし、一つを剣で薙ぐ。痛みを感じるのか、まるで弾かれたように斬られた腕は動きを止める。
 一歩、二歩、三歩。トリテレイアは後退し、マルチセンサーを稼働させた。関節の数は十にも及ぶだろうか。可動域は――恐らくこの部屋よりも広い。部屋の中での戦闘は、寧ろトリテレイアたちへの助けとなるかもしれない。

「……」

 子どもたちへのおもちゃに混じって、倒れている黒衣。
 猟兵とオブリビオン。戦場に身を置く以上、報われる事が無い、そういう事は儘ある事だ。嘆いても帰って来ない。喚いても救われない。そんな事は、“よくある事”なのだ。
「……されど、思う所がない訳ではなし」
 貴方が強欲の化生として孵ったなら。私も取り繕うのはもう終わりにしましょう。

 がこん、と脚前部が開いて銃器が現れる。
 御伽噺に出てくるような騎士としてのトリテレイアではない。戦闘機器としてのトリテレイアが其処にあった。同じく肩部からも銃器を出し、弾幕を張る。

「……!」

 オブリビオンは咄嗟に、長く太い其の腕で本体であろう黒猫を守る。盾となった腕の肉に、骨に銃弾が突き刺さり、青黒い血が噴き出した。
「想定通りです」
 躯体の各部から、ひゅるり、とワイヤーアンカーが伸びる。其れは皮肉にも、相手取っているオブリビオンと似ている。違うものがあるとすれば――トリテレイアが奪うと決めたのはたった一つ、というところだろうか。
 高熱を帯び、微振動を繰り返すワイヤーアンカーは躍り、弾幕を縫って其れでも伸びて来る強欲の腕を“さっぱり”と斬り飛ばす。研ぎ澄ました包丁で斬るかのような一瞬の早業。
 巨躯がオブリビオンに迫るのは一瞬だった。守る腕ごと盾で殴り飛ばして宙に浮かせ、ワイヤーで指を斬り飛ばし、剣で腕を切り刻む。
 ――だが。
「……! これは」
 後退したのはトリテレイアの方だった。
 斬り飛ばされたオブリビオンの腕の断面から、芋虫のように指が生えているのを見たからだ。
「成る程、……取り換えが利くとなると、少々面倒ですね……」
 ずるり、と粘液のようなものを纏いながら、腕が再生する。だが其れは酷くゆっくりとした再生だ。畳み掛ければ、或いは。
 猫は嘲笑うようににゃおん、と鳴いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レイン・ファリエル(サポート)
『さぁ、貴方の本気を見せて下さい』
 人間のサイキッカー×ダークヒーローの女の子です。
 普段の口調は「クールで丁寧(私、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」、機嫌が悪いと「無口(私、アナタ、ね、よ、なの、かしら?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。

性格は落ち着いてクールな感じのミステリアスな少女です。
人と話すのも好きなので、様々なアドリブ会話描写も歓迎です。

 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!




「吸血鬼に寄生していたのでしょうか」
 其れとも一種の進化かしら。いえ、だとしても形状が違いすぎる。

 にゃおん。

 レイン・ファリエル(クールビューティー・f17014)が考えても、猫は応えずに泣くばかり。めきめきと尻尾のように生える腕が、寄越せ、寄越せと訴えてレインへと伸びる。
 紫色の貴婦人に伸ばされる無粋な腕。しかしレインは、
「残念ですが、当たりませんよ」
 一歩斜め前に出た。一本目の腕が空を切る。
 するり、と横に一歩。二本目の腕が空を掴む。
 そうして三歩目、手袋からシールドを発動して――避けるのではなく、腕を断ち切った。其れはまるで“未来を見てきたかのよう”で。
「進化、寄生、どのようなカタチであろうとも。貴方の存在を許す訳にはいきません」
 少なくとも貴方が彼女の中にいたことで、傷付いたいのちがあるのです。散ったいのちがあるのです。ですから、貴方を此れ以上野放しにする訳にはいかない。
 レインが再び手を振るう。薄緑のエネルギー障壁が猫を狙い、猫は慌てて横へ跳ぶ。すぱん、すぱん。腕が二本、根元から障壁によって切り分けられた。
「再生するのなら、根元を切れば良い。そうすれば、再び生やすまでに時間を要するでしょう?」

成功 🔵​🔵​🔴​

驚堂院・クリル(サポート)
 神の国民的スタア×レトロウィザード、11歳の女です。
 普段の口調は「わらわ、おぬし、じゃ、のう、かえ」、真剣な時は「無口(わたし、あなた、呼び捨て、ね、わ、~よ、~の?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!


館野・敬輔(サポート)
※アドリブ、他者連携、派手な負傷描写OK
※NG:恋愛、性的要素、敵との交渉を行う依頼

『吸血鬼をこの世界から駆逐する。例外なく骸の海に還れ!』

ダークセイヴァー出身の、青赤オッドアイの青年黒騎士です。
吸血鬼に家族と故郷を奪われたため、吸血鬼やオブリビオンに強い憎悪を抱いており、憎悪を以て敵を冷酷に斬り捨てます。

直情な性格ですので、黒剣1本だけで真正面から叩き潰す戦術を好みます。
ボス戦では積極的に他猟兵を庇ったり、衝撃波や投擲用ナイフで牽制したり、他者連携を意識した戦い方もします。

ユーベルコードは指定されたものをどれでも使用。
迷惑行為や公序良俗に反する行動は、依頼成功のためであっても行いません。


禍沼・黒絵(サポート)
『クロエと遊んでくれる?』
 人間の人形遣い×ビーストマスター、13歳の女の子です。
 普段の口調は「無感情(自分の愛称、アナタ、ね、よ、なの、かしら?)」、独り言は「ちょっと病んでる(自分の愛称、アナタ、ね、わ、~よ、~の?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。

一人称はクロエ、人からクロエと呼ばれると喜ぶ。
ちょっと暗い感じの無表情なキャラ
武器は装備している物を自由に使って構いません。

 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!




「成る程?」
 驚堂院・クリル(アイドルグループ【九姉妹神】メンバー・f33676)が小首を傾げる。
「寄生だか進化だか知らぬが、オブリビオンも一枚岩ではないようじゃの。寄生する者と寄生された者。領主の変貌はこの猫の強欲が元凶か」
「……子どもたちの腕を切ったのは、趣味?」
 禍沼・黒絵(災禍の輩・f19241)が首を傾げる。さあて、とクリルは頭を振り。
「其処までは判らぬが、このオブリビオンの攻撃性が濃く出た結果だと推測するのは難くない」
「此処で滅する物だ、其処まで分析しなくてもいいだろう。――吸血鬼は敵だ。例外なく骸の海に還す、其れだけだ」
 館野・敬輔(人間の黒騎士・f14505)が黒剣を構える。今でも吸血鬼を前にすると蘇る。楽しかった日々。失った日々。いなくなった家族と、失った故郷。許せない、という黒い炎が敬輔の心に灯る。押さえきれない怒りと憎悪。辛うじて己を猟兵として繋ぎ留めるのは、隣に立つ仲間たちの存在だった。

 ――クリルが、歌う。

 のびやかな旋律はくるりと螺旋を画く。其の旋律に猫の耳がぴくり、と動いた。

“欲しい”

 猫の興味を引くという事は、其の欲望を喚起するという事だ。クリルの喉笛が欲しい。其の美しい声が欲しい、と、手が伸ばされる。
「……クロエがいるよ」
 だが、そう、黒絵がいるのだ。クリルの前に立ち、猫の腕を無防備に受ける。其の細い両肩を掴まれて、頭を掴まれる。少女でもいい、そのまま奪ってしまおうとオブリビオンが腕に力を込めた時、異変は起こった。

「――クローム」

 ぽつり、黒絵が呟くと。
 抱いていた愛らしい熊のぬいぐるみから、“伸ばされたものと全く同じ三本の手”がオブリビオンへと伸ばされる!

「!」

 オブリビオンは黒絵から手を離し、己を追って来る手を蹴り宙へと跳び昇る。其れを追う影があった。――敬輔だ。
「逃げられると思うなッ!」
 吸血鬼は逃がさない。絶対に、何があっても。
 同じように黒絵がコピーした相手の腕(ユーベルコード)を踏み台に、猫を追って空へと跳ぶ。そのまま黒剣を振り切ると、まずはオブリビオンの後ろ足を斬り飛ばした。
 ――バランスを崩し、落下するオブリビオン。其れでも耳は歌い続けるクリルの方を向いている。意識をクリルに奪われて、脚を敬輔に奪われて。そして、黒絵に――いや、違う!
「まだだよ。クローム」
 黒絵は十指を操る。クマのぬいぐるみが全身から暗器の刃をむき出しにして、オブリビオンの逃げ道を塞ぐ。オブリビオンはたまらず腕を大地に伸ばして、床を掴むようにして無理矢理に着地した。
「――もう終わりだ。お前は此処で生まれて、此処で絶える」
 其処には敬輔が待っていた。完全に逃げ場を塞がれて、オブリビオンは其れでもと腕を伸ばそうとする。生きる事に強欲な獣型オブリビオンは、腕を正面から斬り飛ばされて、力量で押しつぶされるかのように、最後には其の頸を斬り飛ばされた。

 ――欲しい

 ――欲しい

 ――……欲しかった

 ――誰かを喪って泣く涙の日が

 ――生まれた子を抱いて涙ぐむ日が

「うるさい」
 敬輔が唸る。
「寄生したお前が、人間を騙るな」

 ――………

 思念さえも消え絶えて。
 強欲のオブリビオンは、ついに青黒い灰となって消え去ったのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2022年05月07日


挿絵イラスト