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銀河帝国攻略戦④~守るべき者の為に

#スペースシップワールド #戦争 #銀河帝国攻略戦

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「銀河帝国攻略戦の戦いが進んで新たな局面を迎えようとしているよ」
 北条・優希斗(人間の妖剣士・f02283)が射貫く様な眼差しで猟兵達を見つめている。
「『ヘロドトスの戦い』の結果、銀が皇帝によって封印されていた遺失技術『ワープラドライブ』が復活したことは、皆もよく知っていると思う」
 けれども……と、一つ息をつく優希斗。
「フォースナイトのミディアさんのユーベルコードによって、コアマシンに『ワープドライブ』を装着出来た宇宙船は、スペースシップワールド内でのワープが可能になった」
 結果……スペースシップワールドの全戦力を糾合し、銀河帝国に対抗することが出来る様になり、その結果銀河帝国に対抗する伝説の『解放軍』の再来はなされ始めていた。
「『解放軍』は皆の協力もあって活躍目覚ましく銀河帝国軍と戦えるだけ艦隊を既に終結させていた。けれども……そんな中でも取りこぼし、と言うべきだろうね。各々の事情で銀河帝国側の襲撃や『解放軍』としての行動が遅れてしまったスペースシップが存在するんだ」
 彼等は辺境に存在するスペースシップだった。
 だからこそ、第一戦への参戦叶わず、猟兵を含む全ての勢力の対応が遅れてしまった者達だ。
 そして今、その戦力になり得るべく動き出した辺境から進軍を行っていたかのスペースシップ達を、銀河帝国軍は狙っている。
「ミディアさんも、このスペースシップ艦隊を放置しておく訳にはいかないと彼等に呼びかけワープドライブを装着するべく奔走している。君達にはこの対応が遅れてしまったスペースシップが銀河帝国軍に襲撃され、蹂躙されるのを食い止めて欲しい。……戦力は多いに起こしたことないし、流石に彼等を見捨てるのは寝覚めも悪いからね」
 優希斗の真摯な呟きに、猟兵達は其々の表情で返事を返した。


「さて、銀河帝国軍がどんなやり方で各宇宙船を狙っていたのかは皆ある程度は知っていると思う」
 具体的には、各宇宙船に工作員を潜入させ、猟兵達に合流しようとした宇宙船でテロを恐慌、ミディアによって取り付けられた『コアマシン』を破壊することで、解放軍に加わることを阻止しようとしている。
 あわよくば、『ワープドライブ』を使用でき、『コアマシン』を宇宙船に装備させることが出来るミディアの暗殺も目論んで居るであろう。
「と言うわけで、皆には、ミディアさんを護衛してテロが起きようとしている宇宙船に向かって、このテロ行動を阻止して貰い、ミディアさんとともにコアマシンに『ワープドライブ』を装着、解放軍の戦力として糾合して欲しいんだ」
 残念ながら、潜入してくる工作員相手に戦えるだけの人員は存在しておらず、彼等と対峙し倒すことが出来るのは猟兵達だけだ。
「人によっては既に何度かこの作戦に参加していて、戦うのに慣れている人も居るかも知れない。けれども、油断せずに皆には全力で当たって欲しい」
 尚、今回潜入している工作員は『餓狼無道』と言う名の竜人型オブリビオン。
 決して気を抜くことの出来る相手ではないだろう。
「それでも、皆なら、この『餓狼無道』を撃破し、この宇宙船と『餓狼無道』に狙われるミディアさんの事も守って欲しい。……どうか皆、宜しく頼む」
 優希斗の激励に背を押され、猟兵達は静かにその場を後にした。


長野聖夜
 ――工作員を撃破せよ。
 いつも大変お世話になっております。
 長野聖夜です。
 と言う訳で、戦争シナリオ『銀河帝国攻略戦』の一端を担わせて頂くことになりました。
 何卒、宜しくお願い申し上げます。
 尚、今回の敵は『餓狼無道』一体となります。
 彼の最大の目的は、『コアマシンの破壊』です。
 船上ですが、コアマシンの存在する場所に『餓狼無道』が現れますので、彼と戦いこれを撃破すればシナリオ完了です。
 尚、コアマシンのあるルームの入口で待ち伏せをする形になります+それなりに広い空間になっておりますので戦闘には特に支障の無い場所です。

 ――それでは、良き救出劇を。
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第1章 ボス戦 『餓狼無道』

POW   :    ライクアヒュドラ
自身の身体部位ひとつを【ドラゴン】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。
SPD   :    キリングイカロス
【高速演算による正確な未来予測】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【急所を撃ち抜くレーザー】で攻撃する。
WIZ   :    デウス・エクス・マキナ
見えない【遠隔操作型ナノマシン】を放ち、遠距離の対象を攻撃する。遠隔地の物を掴んで動かしたり、精密に操作する事も可能。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はエクサ・カラーヌドです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

花咲・桜華
SPD
餓狼無道……ここで倒してミディアさんを救わないと!
護衛も防衛も頑張るさ!
他の猟兵と協力して、ミディアさんを守るよ。

竜人型っぽいけど、違う相手だと思わないと危ないね。

【野生の勘】と【地形の利用】を頼りレーザーは回避するよ。
【聞き耳】でレーザーを撃つ予兆が確認できたら【奇跡の破壊者】で止めるよ! おまけのダガーも忘れずに刺すぞ!

【地形の利用】で相手の視界から逃れたら【忍び足】と【暗殺】で背後からザックリやっちゃう!

キリングイカロスをなるべく打たせないように演算の邪魔をしないとね。
考え事ができないようにスピードを活かしたヒット&アウェイで攪乱していくよ!


霧城・ちさ
船もコアマシンもお守りしますわね
入り口で待ち伏せできますしここから先にいかせないのがよさそうですの
足止め目的で攻撃して他の猟兵さんと一緒にタイミングを合わせて連続して攻撃していきたいですわね
うさぎさんを呼び出してコアマシンに近づけないように別々の方向から攻撃させたりしていきますの
守るほうは私がんばりますわねっ
ここから先には通しませんの


オイフェ・アルスター
【WIZ】
他の猟兵がおられましたら、共闘しますわ。

レーザーとナノマシンに注意して、【地形の利用】で隠れつつ攻撃をしかけますわ。
【高速詠唱】と【全力魔法】で【ウィザード・ミサイル】を放ちますわ。
100本も飛んでいく炎の矢は、高速演算でも避け切れないでしょうし、見えなくても実態があるナノマシンもついでに破壊しますの。

撃って撃って撃ちまくりますの。
もちろん、味方に当たらないように他の猟兵の動きも注意して、タイミングを見極めますわ。

ナノマシンで何か投げつけてきたり、落として来たら【怪力】と【属性攻撃】で弾きますわ。
刃物だったら、流石に隠れて障害物を利用しますわ。


ヒビキ・イーンヴァル
まだ合流できていない船も、ちゃんと救助しないとな
助けられるってわかってるんなら、手を伸ばさない理由もない

コアマシンのあるルームの入口で待ち伏せ
敵を発見次第、攻撃をおこなう
ここは初撃で出鼻をくじきたいところ
『先制攻撃』を狙って、『蒼き焔よ響け、天雷の如く』で攻撃だ
少しの間でも構わないんで、敵の動きを封じられれば
隙ができれば、他の猟兵も攻撃しやすくなるだろうし、俺も追撃していこう
さっさとぶち倒すのが一番だからな
よく燃えてくれよ?

敵の攻撃は『見切り』で回避するか、『武器受け』で防御

しかし、テロとか物騒なことで
ここから先は絶対に通さねぇよ


ウィリアム・バークリー
銀河帝国の悪あがき、ここに極まれリですね。コアマシンの破壊、なんとしても阻止しましょう。
ミディアさんは初めまして。しっかり守り抜きますので、コアマシンの方よろしくお願いします。

待ち伏せの時点でトリニティ・エンハンスで攻撃力を上げ、スチームエンジンも装着。
万全の状態で敵を待ち受けます。

初手から遠慮はしませんよ。「高速詠唱」で呪文を唱え、氷の「属性攻撃」「全力魔法」を「鎧無視攻撃」として放ちます。船の中は火気厳禁です。
牽制に氷の「衝撃波」を撒きつつ、「全力魔法」を連打します。

敵の攻撃は「見切り」「武器受け」することで軽減。デウス・エクス・マキナには「念動力」で対応しましょう。

こちら、状況終了です。


彩瑠・姫桜
銀河帝国攻略戦への参加は今回が初めて
この戦争もだけど、戦う事にはやっぱり慣れない
それでも、そういう私だからこそ出来ることはあるはずだから
微力ながら全力を尽くさせてもらうわ

特にミディアさんの護衛を優先
敵である餓狼無道の動きから攻撃や防御の仕方に規則性があるか【情報収集】して
敵が攻撃仕掛けるタイミングは可能な限り【第六感】察知して動くわ
特にミディアさんへ攻撃が向かないかを意識し、
攻撃が向いた時には積極的に前に出て【かばう】わね

敵には、隙を見て【咎力封じ】使用
最初に【拘束ロープ】、次に【手枷】【猿轡】と放つわね
少しでも動きを封じられたら
頭部目掛けてドラゴンランスで【串刺し】にして【傷口をえぐる】わね


荒谷・つかさ
竜人なのか機械なのかよくわからない奴ね。
まあいいわ、生物なら殺すし機械なら壊すだけの話よ。

当初は風迅刀を用いての剣戟戦闘を中心に行い、前衛役を務める。
戦闘中は小まめに風迅刀の「属性攻撃」で小規模の竜巻を発生させ、ナノマシンを掃除しながら敵を抑え込むわ。
敵が十分な隙を見せた、或いは【ライクアヒュドラ】を私に向け発動してきたなら【鬼神爆炎掌】を発動。
前者なら頭狙い、後者なら噛み付こうとしてきた頭部を逆に掴み返すようにして必殺の一撃を叩きこむわよ。
もし噛み付かれても、知った事かとばかりに奴の口内で発動させるわね。
当然だけど、一度掴んだら「怪力」で絶対離さないんだから。




(銀河帝国攻略戦への参加は今回が初めて。この戦争もだけど、戦う事にはやっぱり慣れないわね)
 自分達に与えられた戦場……とある船のコアルームの前で障害物に身を隠す様にしながら、彩瑠・姫桜はそう思う。
 自分以外には、ウィリアム・バークリーも初めての様だが、それ以外の者達には其々に経験がある様だ。
 ――それでも……いや、そういう私だからこそ。
(出来ることはある筈よ)
 ぐっ、と軽く拳を握りしめる姫桜に、大丈夫ですわよっ、と声を掛け、その背を優しく叩いたのは霧城・ちさ。
「皆様の背中を守るのは私が頑張らせてもらいますわっ。姫桜様達も、一人で気負わないで下さいませっ」
 そうですわよねっ、とちらりと隣で仲間達と共に戦場について確認しているオイフェ・アルスターを見やる。
 オイフェもまた、勿論ですわ、と力強く首を縦に振った。
「銀河帝国の悪あがき、ここに極まれりですね。コアマシンの破壊、なんとしても阻止しましょう」
 初めての戦争にも関わらず気負った様子の無く、周囲に愛嬌を振りまくウィリアムと、自分に出来ることがある筈だ、と硬い表情になっている姫桜。
(しかし、テロとか物騒なことで)
 対照的な2人の様子を見ている内にそんな思いを自分の脳裏に過ぎらせながらヒビキ・イーンヴァルはその時が来ることを、今か今かと待ち受けていた。
 ヒビキ達が待ち受けているのは、餓狼無道。
 ――即ち今自分達の居る場所のその奥で、今、正にコアマシンを設置しているであろうミディアの暗殺をあわよくば狙っているその敵を。
(餓狼無道……ここで倒してミディアさんを救わないと! 護衛も防衛も頑張るさ!他の猟兵と協力して、ミディアさんを守る為にもね!)
 気合い十分、花咲・桜華が拳を強く握りしめる。
 いずれにせよ此処で餓狼無道を食い止めねば今までの戦いは水泡に帰してしまう。
 ならばその為に全力を尽くすことなど桜華にとっては造作も無いことだ。

 ――刹那。

「kill、kill、kill……!」
 それは機械音だろうか。それとも、その存在の叫び声なのか。
(優希斗さんは竜人って言っていたけれど。実物は、竜人なのか機械なのかよくわからない奴ね)
 荒谷・つかさはそう思う。
 しかし、今、確かに分かっていることが1つある。
 それは……今、姿を現した餓狼無道が、自分達の脅威として目前に現れたこと。
 だから……まあ、いいわ。
「生物なら殺すし、機械なら壊すだけの話よ」
 つかさの呟きが合図となり、ヒビキが戦場へと飛び出した。


「ここから先は絶対に通さねぇよ」
 そう呼びかけたヒビキが餓狼無道の死角……即ち、戦艦の天井の裏から矢の如き速さで飛び出し八相に構えていた愛用の蒼剣『星喰の蒼剣』を袈裟懸けに振るう。
『其は荒れ狂う蒼き焔、我が意を妨げるもの全てを阻め』
 蒼剣に封じ込められている忌まわしき呪いの一部を解放し、その剣先から蒼く燃え盛る焔を作成。
(まだ合流できていない船も、ちゃんと救助しないとな。助けられるってわかってるんなら、手を伸ばさない理由もない!)
 その想いを胸に、ヒビキが蒼焔を放つ。
 それは、蜷局を巻いた蒼き蛇の様に、餓狼無道の周囲を覆い尽くした。
 天井からの思わぬ奇襲に餓狼無道の反応が遅れ、気がつけば餓狼無道の周囲を覆っていた蒼焔は、蜷局を巻く蛇から蒼き円柱型の結界となり、その身を包む。
「今だぜ、皆!」
『星喰の蒼剣』を一撫でしたヒビキの呼びかけに応じて、オイフェが神への祈りを捧げながら十字を切った。
 更に炎、水、風……三大精霊の力を借りて自らの魔力を増幅させたウィリアムが天と地を指さした両手で円軌道を描いて空中に魔法陣を形成しながら、高速でその術を詠唱する。
『神の裁きを』
『……Freeze!』
 詠唱の完成と共に、天空から驟雨の如くオイフェが100本の炎の魔力の矢を降り注がせ、ウィリアムが魔法陣から解き放った氷の竜が餓狼無道を喰らわんと襲いかかる。
「kill、kill、kill……!」
 天空より降り注ぐ100本の炎の矢を高速演算で読み取り、周囲の地形を利用して回避しようとするが、炎の矢と矢の隙間を拭う様に走る氷の竜の蠢きが、ヒビキの結界によって完全に出鼻を挫かれた形になった餓狼無道に避けきれる筈も無く、次々に炎の矢が突き刺さり、更に氷竜にその身を喰われる。
(こんなにあっさり……倒れるわけ無いよね……!)
 出鼻を挫かれ、動揺している様にも見える餓狼無道のその隙を見逃さず、つかさが戦場を疾駆。
 そうしながら、光を歪曲させ不可視状態と化していた風迅刀を召喚し小型の竜巻を風の精霊達に呼びかけ召喚。
 まるで、そこに在るのが分かっていたかの様に。
 目に見えぬ何かと風の精霊達がぶつかり合い、幾つかのそれが地面に落ちる音を立てるが、けれども全てを撃ち落とせる訳でもなく、それらの遠隔操作型ナノマシンが後方にいるオイフェ達を狙う。
 けれども……。
「背中を守るのは頑張らせて頂きますっ、と申し上げましたわっ」
 ちさがたおやかに告げて両手を天空へと掲げる。
『私のうさぎさん、一緒に戦ってほしいですの。みなさまをお守りしますわっ』
 そう諳んじると同時に両手を地面に付けると、白と黒の魔法陣が地面に描き出され、其々の魔法陣から、白と黒のウサギが一体ずつ姿を現した。
「白うさぎさん、黒うさぎさん、お願いしますわっ」
 ちさの指示に従って白うさぎは遠隔操作型ナノマシンから仲間達を守る様にその身を挺して攻撃を受け、黒うさぎが白うさぎが受ける攻撃から、それらのナノマシンの位置を特定、自慢の膂力で蹴り上げてナノマシンを破壊していく。
『kill、kill、kill……!』
 驚愕にも、悔しげにも聞こえるそれを上げながら、餓狼無道が次の攻撃について高速演算で最適解を弾き出し、遠隔操作型ナノマシンを誘導し、その上で全方位……下手をしたらこの部屋全体を覆い尽くすであろう程のレーザー光線を放とうとするが……。
『ボクの本気を見せてあげるよ!!』
 餓狼無道の懐に軽やかなステップで潜り込み、その脇腹を、オブシディアンキラーで貫いた桜華が聞き耳を立てながら素早くその場を離脱し、声を張り上げた。
 瞬間、桜華の全身から目が眩まんばかりに眩しい(それなのに、共闘する猟兵達には何故か効かない)【閃光】が迸った。
 その眩い輝きに餓狼無道は一瞬、目を眩ませられて先程までの高速演算を一時的に中断されてしまう。
「まだまだこの位じゃ終わらないよ!」
 桜華がその手に巻いていた【鎖】を解き放って餓狼無道が振り上げようとしていた手を締め上げて追撃を封じ、その【鎖】を通じて【雷】を流しこむ。
 流し込まれた雷が怒濤の様に餓狼無道の全身を這い回り凄まじい痺れが全身を巡った。
『kill、kill……?!』
 竜人(或いはそれに近い何か)である餓狼無道が何を言わんことを欲しているのかそれははっきり分からないが。
 今の餓狼無道の感情を猟兵達の言葉で表すとしたら、それはこの一言に集束されるだろう。
 それは……驚愕。
「頼んだよ、姫桜!」
「ええ、これなら……!」
 まだ、自らのユーベルコードを使うべきでは無い。
 そう判断した姫桜が拷問道具を解き放つよりも先に、schwarzとWeißの二槍を構えて戦場を疾駆。
 つかさもまた、その動きに合わせる様に大地を蹴って飛び上がり、餓狼無道の頭部目掛けて突進した。
『慄け咎人、今宵はお前が串刺しよ!』
 叫びと共にschwarzとWeißで餓狼無道の両足を串刺しにする姫桜。
 鋭く研ぎ澄まされた二槍が餓狼無道の鱗を易々と貫いてその身を大地に縫い止める間に、つかさの拳が餓狼無道の頭部に向けて広げた右手を突き出した。
『私のこの手が砕いて燃やす……』
 詠唱と共にその手に爆発的なまでの量の炎の精霊を収束させるつかさ。
 或いは明鏡止水の心……彼女の奥に眠る尽きる事なき闘志を全て爆炎へと還元しているのか。
 ――真偽の程は如何なものであれ、桜華のユーベルコード、奇跡の破壊者と姫桜の串刺しによる連続攻撃を受けその場から身動きできない餓狼無道が、つかさの掌に頭部を掴まれるのを拒む術は無い。
 ガッチリとアイアンクローを餓狼無道に決めたつかさが、そのまま魂を籠めた叫びを告げる。
『悪を滅ぼせと唸りを上げるッ!』
 ――瞬間。
 つかさの掌に集まっていた凄まじいまでの爆気が臨界点を越え、餓狼無道の頭部で凄まじいまでの爆発を起こす。
『~!!!』
 絶叫とも取れる餓狼無道の叫びを掌の中で聞いたつかさが素早くその手を離してその胸を蹴って離脱し、地面に着地。
 残心したままに、餓狼無道の様子を伺う。
(案の定、ね)
 頭部を凄まじい爆発で吹き飛ばされたにも関わらず、尚もその動きを緩めぬ餓狼無道の様子を見て、これからが本番だ、と猟兵達の間に緊張が走った。


『Woooooo……!』
(これ……不味いわね……!)
 チリチリ、と首筋に走った嫌な痒みに何かを感じ取った姫桜が、schwarzとWeißを引き抜き、咄嗟にバックステップ。
 それと同時に、彼女の眼前を駆けたのは……。
(竜の……頭部……!)
 そう、貫かれた筈のその足をドラゴンの頭部へと変形させ、姫桜を喰わんと襲いかかってきたのだ。
『Grrrrrrrrrr……!』
 唸りを上げながらもう片方の足をもドラゴンの頭部へと変形させて襲いかかってくる餓狼無道。
 咄嗟に【猿轡】を投擲してまるで地獄門の様に禍々しく広がっていた口に噛ませるが、その数瞬の間に、餓狼無道は高速演算を行っている。
「やらせないよ!」
「さっさとぶち倒すぜ!」
 何かを行っているのを感じ取った桜華が地面の中でも少し浮いている場所を蹴り上げて一気に加速して餓狼無道の懐に潜り込んでその胸を貫き、ヒビキが星喰の蒼剣に蒼炎を纏わせて脇腹から右肩に掛けてを一気に斬り上げ。
「その隙を見逃せる筈がありませんわ。……燃やし尽くされなさい」
「Freeze! ……炎と氷のダンスであなたを倒します……!」
 オイフェが100本の炎の矢を詠唱で準備して維持する間に、ウィリアムが再び描き出した魔法陣から氷の礫を解き放つ。
 解き放たれた氷の礫にその身を凍てつかせられた所にオイフェの100本の炎の矢が飛来してその身を射貫き、更に……。
「黒うさぎさん、お願いしますのっ」
 ちさの命令に応じてワイルドでかっこいい黒うさぎさんがちさから預かった魔法のピコピコハンマーで餓狼無道に殴りかかっている。
 けれども高速演算は止まらない。
 先程までとは異なり、ドラゴンの頭部が2つに増えているだけ、思考の幅が広がっているからだ。
『Woooooo……!』
 雄叫びと共に、眩いレーザーが部屋全体を覆う程の光の矢となって猟兵達に襲いかかった。
 それは……ちさ達の背後にある、その先にミディアがいるコアルームを守る扉にも向かっている。
「やらせませんわっ」
 ちさがやさしくかわいい白うさぎさんに命じて素早く扉の前の盾にするが、レーザーは確実に白うさぎさんの急所を撃ち抜いていた。
 傷だらけになった白うさぎさんが体を保つのが難しくなったか、崩れ落ちそうになるのをちさが立て直すべくもう一度召喚を行おうとしたその時、レーザーによって破壊されて瓦礫となり崩れ落ちた天井の破片の内、鋭い棘の様に尖ったそれがちさを貫くべく狙い澄ました様に放たれた。
「きゃっ?!」
 小さな悲鳴を上げながらちさがそれを何とか避けるが、急所を狙って放たれたレーザーと同時に放たれたそれを、躱しきれる筈も無い。
 致命傷は免れるも、肩を貫かれる事で、白うさぎさんと黒うさぎさんが消滅する。
「これは……厄介ですわね」
 地面の凸凹に身を隠しながら炎の魔力の籠められた100本の矢を解き放ち、我武者羅に見えてその実計算して投げられているそれらの破片を撃ち落としながら、オイフェが思わずポツリと呟きを一つ。
「ですが、負けるわけには行きませんよ」
 ウィリアムが氷の精霊達に呼びかけて無数の氷の礫を作成し、今度は扇状に広げて解き放つ。
 それは、破片を器用に操る遠隔操作型ナノマシンと破片そのものを打ち砕くが、その全てを撃ち落としきれるはずも無い。
『私のうさぎさん、一緒に戦ってほしいですの。みなさまをお守りしますわっ』
 ちさが再び優しく可愛い白うさぎさんとワイルドで格好良い黒うさぎさんを呼び出すが、その時には遠隔操作型ナノマシンがちさに直接傷を与えるべく体当たりを放っている。
(……わたくしが傷を受ければうさぎさん達が消えてしまうのに気付かれてしまいましたわねっ……)
 これでは守り切れない……そうちさが思ったその時、ちさと破片の間に一つの影が割り込んだ。
 それは……二槍を十文字に構えた、姫桜。
「戦争は初めてでも……いや、初めてだからこそやれる戦い方が私にもある筈よ……!」
 自らに活を入れるように怒声を張り上げた姫桜がWeißを振りかぶってひょう、と投擲する。
 投擲されたWeißが、餓狼無道のドラゴンの頭部の一つを貫き、その思考を微かに鈍らせる。
「今よ!」
 すかさず【拘束ロープ】を放ってその頭部を締め上げながら叫ぶ姫桜に頷き、それまで急所を貫くべく放たれたレーザーの執拗な追撃を軌道を見切って躱しきった桜華にヒビキ、そしてつかさが頷いた。
「もう一度、『ボクの本気を見せてあげるよ!!』」
 叫び全身から【閃光】を放ってその視界を桜華が奪い、ヒビキが星喰の蒼剣の呪いの一部を解放。
「今度は簡単には逃がさないぜ! 『其は荒れ狂う蒼き焔、我が意を妨げるもの全てを阻め』!」
 ヒビキの命に応じた星喰の蒼剣が、名に違わぬまるで蒼き星々の如き輝きを迸らせながら、蒼く燃え盛る焔を解放する。
 その焔の様は、まるで、星を喰らう獣の様に獰猛で。
 星を喰らう蒼き焔の獣は再び餓狼無道を竜巻型の炎の結界でその身を締め上げた。
 つかさも又、桜華達と共に接近しながら、風迅刀を通じて風の精霊達に呼びかけ、これ以上被害を増やさせないために、小型の竜巻を室内全体に複数召喚、遠隔操作型ナノマシンを切り裂いている。
(後、1~2発あれを決めれば倒しきれる。ただ……今のままじゃ一撃目を外す可能性があるわね)
 だからこそ、桜華達が確実に攻撃を決められる隙を作り上げる。
 それが、つかさにとっての最善手。
 そのまま、つかさのアイコンタクトを受けたヒビキと桜華が其々に目線を躱し合い、桜華が【鎖】を一旦しまい、忍び足で周囲に溶け込む様に姿を消す。
 そしてヒビキは……。
「ウィリアム!」
「行きます……Freeze!」
 呼びかけに応じたウィリアムが高速詠唱しながらマインドエンハンスで自らの身体能力を強化した体を酷使して空中に幾重にも描き出した青色の魔法陣の中心に人差し指を突きつける。
 ウィリアムの掛け声と共に魔法陣から放たれた複数の氷柱がヒビキの炎の結界でその動きを止めた餓狼無道の全身を射貫き、その身をビキビキと凍てつかせ。
「オイフェさん……!」
「準備は出来ておりますわ。……神の名の下に裁きを受けて下さいませ」
 薄らと口元に神への狂信的な笑みを浮かべたオイフェが両手を掌底を放つ様に前方へと突き出す。
 オイフェの動作と共に100本の炎の魔力の矢が獲物を求めて大気中の水分と空気を焼き尽くさんばかりの勢いで駆け抜け、その全てが餓狼無道の全身を射貫く。
 ただそれは、今までの炎の魔力の矢とは少しだけ異なっていた。
 何故ならその100本の魔力の矢の全てが餓狼無道に突き刺さった時、今までに背負いし業……罪をも焼き尽くさんばかりに激しく燃えさかったからだ。
 
 ――正しくこれこそが、神の裁き。
「ちささん」
「姫桜様が守って下さいましたから、準備万端ですのっ。私のうさぎさん、お願いしますのっ」
 オイフェの呼びかけに応じたちさが再召喚を完了させたやさしくかわいい白うさぎさんと、ワイルドでかっこいい黒うさぎさんに命じる。
 命じられた2兎はその膂力を生かして大地を蹴って加速、餓狼無道の両翼から容赦なく痛打を浴びせかける。
 全身を神の裁きの炎に焼かれながらも尚、その攻撃を高速演算でその攻撃の軌跡を算出し、殴り返そうとする餓狼無道だったが、その両手を何処からともなく現れた【手枷】によって拘束された。
「これなら……避けられないでしょ……?!」
 ゼー、ゼーと両肩で荒い息をつきながら全身に破片が刺さり、体中に刺し傷と打撲傷を作っていた姫桜が強気に笑う。
 予言通り、ちさに命じられた白うさぎと黒うさぎに分け与えられた魔法のピコピコハンマーが容赦なく餓狼無道を殴打した。
『Gaaaaaaaaa……!』
 全身を兎達に殴打され体中に打撲傷を作りながらも、餓狼無道は諦めること無くまだ残っている腕をドラゴンの頭部に変形させて、それまで周囲の遠隔操作型ナノマシンの破壊に従事していたつかさへと標的を定めて襲いかかる。
「つかささん!」
 ウィリアムの呼びかけにハタ、とまるで今気がついたかの様な表情をしたつかさが、真正面からそのドラゴンの頭部の一撃を受けた。
「! つかささん!」
 姫桜もハッ、とした表情になるが、周囲の驚きとは裏腹につかさは思わず、と言った様子で笑む。
「……こうも上手く引っかかってくれるなんてね。これでもう、逃げられないわよ」
 自慢の怪力で突進してきた餓狼無道の変形したドラゴンの頭部を左脇腹と左腕でガッチリと抑え込み、そして右の掌をそのドラゴンの頭部に叩き付けた。
『私のこの手が砕いて燃やす……悪を滅ぼせと唸りを上げるッ!』
 そのまま、右手の指をゆっくりと折り曲げてその頭部を掴み上げそして、そのユーベルコードを詠唱する。
 それは、先程仲間達との連携により生じた隙を狙って解き放ったユーベルコード。

 ――鬼神爆炎掌。

 轟音と共に放たれる掌からの爆炎。
 それは、まるで灼熱が弾けたかの様……。
 でも……。
「分かっているわ」
 全てのドラゴンの頭部を焼き尽くされ、破壊されたとしても。
 餓狼無道は、まだ生きて自分達を倒すか、ミディアを暗殺するべく最後の一計を案じるであろう事を。

 ――だから。

「ミディアさんは、ボク達が絶対に守り切るよ」
『それ』は、餓狼無道のローブを、背中の皮を突き破り。
 そして餓狼無道の心臓を貫き……その胸から踊る様に飛び出した。
「これで……サヨナラだね」
 餓狼無道の胸から突き出したもの、それは……。
 桜華が餓狼無道を暗殺するべく放った黒曜石で打たれ、更に魔力で強化された漆黒の短剣……オブシディアンキラー。

 ――餓狼無道、暗殺、完了。


「これで、状況終了ですね」
「ええ……そうね」
 ウィリアムの呟きに姫桜がschwarzを支えに何とかその場に立ちながら頷く。
 勝手に槍形態を解いた蛇の様な外見のホワイトドラゴンWeißが、主を心配しているのかチロチロと舌で姫桜を舐めていた。
「……そういうことは、schwarzにやって欲しいわね」
 あの時、ペチペチと足を叩いてきたこと、忘れないわよという風に目を細める姫桜の肩をユーベルコードを解いたちさが支えた。
「お守りするつもりだったのに、私が逆に守って頂くことになるなんて……申し訳なかったですわっ。でも……ありがとうございますっ」
「良いのよ、ちさがあのうさぎ達を召喚して背中を守ってくれてなければ、もっと大変なことになっていたのは間違いないし。……べ、別に心配されて嬉しいなんて思ってないからねっ」
 気恥ずかしくなったか頬を赤らめて目を逸らす姫桜に微笑むちさ。
「私、これでも医術の心得がございますのっ。先程のお礼もございますし、手当位はさせて頂きますわっ」
「じゃあ、姫桜は私が抱えるわね」
 ちさの言葉に一つ頷き、つかさがちさの代わりに姫桜に肩を貸す。
 それに真っ赤になる姫桜に微笑するウィリアム達の様子を見ながら、桜華がほっ、と嬉しそうに息を一つ。
「これでミディアさんは守れたんだよね」
「ああ、勿論だ。そして、守れる船を守ることも出来た。俺達の完勝、だな」
 桜華に満足げに頷くヒビキにそうですわね、とオイフェも微笑みを一つ。
「神もきっと、私達の聖戦に祝福を授けて下さるでしょう。……Amen」
 一人そう呟き、オイフェは静かにその場で十字を切る。

 ――かくて勝利の女神は、猟兵達に接吻を与えたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月16日
宿敵 『餓狼無道』 を撃破!


挿絵イラスト