シャブ・バイオレント・アタック
●たった一度で人生は壊れる
「なぁ……頼むよ、もう我慢できないんだ!」
「へへへ……サービスは前回でおしまいだぜ? 今度はきっちり定額貰わねぇとなぁ?」
サイバーザナドゥの薄暗い路地の一角。そこで二人の男が話をしていた。一人は落ちくぼんだ目をせわしなく動かす挙動不審な男。そしてもう一人はいかにもヤクザというオールバックにサングラスの男。ジッサイヤクザ。
「払う、払うよ! だから、アレを……!」
「おいおい分かったって、ここでそんな大声出しちゃいけねぇなぁ。まあ、奥でゆっくりキメてきな」
そう言って後ろの扉を開け、男をその中に押し込むヤクザ。そして扉を閉めたヤクザが再び前を向くと、そこには同じような挙動不審の集団が我先にとヤクザ目がけて詰め寄って来ていた。
「どうしたんだ今日は、千客万来じゃねぇか。どいつもこいつもしょうがねぇ奴らだな全く……そこのアバズレはもう普通じゃいられないって顔してるな。だったらアブリはどうだ? ヤミツキになるぜ。おっと何だよ、お前また来たのか。分かってるよ、お前はこいつが欲しくてたまらねぇんだろ? たっぷり味わってきなこの豚野郎が。ん? お前は初めてか? 俺は新人には優しいんだ。初めてはサービスしてやるぜ?」
詰めかける集団の相手をしながら、纏めて奥へ案内していくヤクザ。一通り人の波が通り過ぎると、ヤクザはタバコを取り出し一服する。
「ふぅ……さて、商売繁盛はありがてぇが最近ウチのシマで勝手に安物流してるバカがいるって話じゃねぇか……ウチは品質第一でやってんだ。余計な事されたらこっちまで客離れを起こしちまう。舐めた真似する奴にはオトシマエってやつをつけて貰わねぇとなぁ……」
そう言って煙草をもみ消し何処かへ歩き出すヤクザ。その姿を、物陰から警官姿の若い男が見つめていた。
「ついに尻尾を出したな……」
●舌が肥えるともう戻せない
「皆様がた、新世界サイバーザナドゥにて事件にござる!」
シャイニー・デュール(シャイニングサムライ・f00386)が勢いよく告げる。新たに発見された世界サイバーザナドゥ。巨大企業群(メガコーポ)が支配し繁栄と虚栄、そして腐敗と頽廃を極めたその世界は、ダークセイヴァーやアポカリプスヘルとはまた違った形で荒廃した世界である。
「今回はそこにてある若きレジスタンスに協力していただきます。彼はこの荒廃した世界でなお清浄なる意思を持った者でして、自らのみならず周囲の人も幸せにせんと務める志ある若者にござる」
サイバーザナドゥにも正義の目はある。それこそが猟兵が手を貸し、守り育てなければならないものだ。
「彼は最近自分の活動に妨害が入っているのを感じ、その調査を行っておりました。この度ついにその手掛かりをつかんだらしく現地へ赴くのですが、それこそがメガコーポ、そしてオブリビオンの罠。彼はそこであえなく腐敗警察の御用となり、命を絶たれてしまいます」
なるほど、それは大変……警察?
「なので、この若きヤクザを守り助けていただきたいと!」
護衛対象そっちかよ!
「彼はこの世界では非常に珍しい安心安全な食料流通ルートを知っており、そこから仕入れたものを良心価格で人々に振舞っております。フロント企業はそれを活かしたしゃぶしゃぶ屋にござる。一方彼らのような存在は拝金主義のメガコーポには目障りなもの、それに対抗するために武装せねばならないのはこの世界では致し方ないことでござるな」
目をつけられているのは分かっているので入口などは分かりづらく偽装し、彼への接触なしでは入店できないようにしているらしい。
「どうやら最近彼の組織がシメる一体にてメガコーポ産の汚染食料が流通し、人々の健康を害している模様。彼はどうにかその出所を突き止め乗り込むのですが、その動きを察知され万全の警備で迎え撃たれてしまうことになるのです」
自分が探られていることには気づけなかった、このあたりはまだまだ彼も甘いということだろうか。
「それ故先んじてそこに乗り込みマーケットを締め上げて欲しいのです。ただ、サイバーザナドゥでは猟兵が活動を始めて日が浅いこともあり、その名は知られておりません。それ故何も言わずいきなり壊滅させるのではなく、まずマーケットの悪事を暴くことで猟兵の存在をヤクザ殿に見せつけ信を得ていただきたい」
荒廃し異能者も多いこの世界では、ただ腕が立つくらいでは信用には能わない。目的を同じくする存在だということを身を持って示す必要があるのだ。
「そうすれば『ニンジャ警官』の群れがヤクザ殿諸共皆様を捕らえに現れます。彼らはオブリビオンであり、メガコーポの手先である悪徳警官なので容赦は無用にござる。大勢いますが様々なジツを使うニンジャでもありますので、油断なさらず」
忍術ではなくあくまでニンジャのジツである。その辺りは間違えないようにとのことだ。
「無事警官とマーケットを壊滅させれば、ヤクザ殿は皆様を上客としてお店に案内してくれ申す。自慢のしゃぶしゃぶの他炙りロースや豚しゃぶも隠れた名物。存分にシャブをキメて盃を交わしてきてくだされ!」
ああ、うん、つまりあの客たちはそういうことなのね。なお初回割とかもあるので懐のさびしい人にも安心らしい。
「お呼びいただければ及ばずながら拙者もご同行いたします。灰汁とり係にでもお使いくだされ。……ミルケン殿? どうやらミストレス・バンダースナッチ追撃で忙しいようですが、それがなにか?」
まあボディの故郷の一大事、肉依頼どころではないのだろう。多分某ボディが自宅で悔しがって転がってるんじゃないかな。
「メガコーポへの大いなる反逆はまだ始まってすらおりませぬ。その為の種まきともなるこの依頼。どうか成し遂げてきてくださいませ」
そう言ってシャイニーはグリモアを起動し、頽廃の世界へと猟兵を送り出すのであった。
鳴声海矢
こんにちは、鳴声海矢です。牛もいいけど豚も好きです。
今回はサイバーザナドゥにて、シャブを取り仕切るヤクザを助けていただきます。
第一章では汚染贖罪を取り扱うマーケットに乗り込み、そこの悪事を大々的に暴いていただきます。ここはあるメガコーポの傘下にある市場ですが、客はそれを知らない一般の人々です。堂々と汚染食材の存在を暴くことで一般人、そしてここにやって来たヤクザに猟兵の存在とメガコーポに対抗する者であるということをアピールできます。
第二章では『ニンジャ警官』との集団戦。一見すれば温和そうな若者ですが、メガコーポの手先の悪徳警官です。冤罪を発生させるようなジツで場の鎮圧を図ろうとしますので、返り討ちにしてしてしまってください。
第三章ではヤクザの案内で彼のお店でしゃぶしゃぶです。この世界では珍しい限りなく天然に近い(純天然とは限らない)お肉を存分にキメてください。ハッパも上物が揃っています。アブリもできるほか、締めには加工した白い粉(うどん)をどうぞ。お呼び出し頂ければシャイニーも来ます。灰汁とりや野菜の取り分けなどにお使いください。
比較的ライトなネタより依頼です。あまり的外れな行動をしたり油断し過ぎなければ大体大丈夫かと。
ヤクザはカシラと呼ばれヤクザウォリアーの能力がある以外は詳しいことは分かりません。少々口が悪く言葉選びに難がありますが、仕事熱心な男の様です。絡み具合はご自由に。
それでは、キマったプレイングをお待ちしています。
第1章 冒険
『汚染食材を追え』
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POW : 潜入して正体を暴く
SPD : ハッタリなどでボロを出させる
WIZ : 分析など科学的に汚染を証明
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
サイバーザナドゥ某所のマーケット。そこでは様々な食料が扱われていた。
それらは信じられないほど安く、しかも味も悪くない。
だが、まるでニスを塗ったようにピカピカの魚や赤身に油(脂に非ず)を人為的に注入した霜降り肉、まるでブドウの如く果実が密集してついた桃などどう見ても不自然極まりない者ばかり。
この世界で100%自然な食料など望むべくもないのだが、それ故に加工の過程は食材の品質を決める重要な部分。それをこのような見た目重視の作り方をしては品質もお察しというものだ。だが、それを察せないのがこの世界の住人である。何しろ『まともな食材』を見た経験がほとんどない者ばかりなのだ。仮に多少質が劣っても、安いのだからと納得してしまうのがこの世界の普通なのだ。
だが、数少ないそれの分かる者から見れば『そういうもの』で済まされないものであることは一目瞭然。
「なんだこりゃあ……揚げ物は廃油の臭いがぷんぷんするし、ハッパはヤク漬けででかいばかりの薬臭さ……なんだこのスカイブルーのサシミは、青魚が青いのは外の話じゃボケェ!」
売られているものを見て憤るサングラスの男。刺青を背負いその懐にはドスとチャカが呑まれたまごうことなきヤクザスタイル。
男は大股でマーケットの奥へと進んでいこうとする。義侠心に駆られたその行動だが、己が挑もうとしている相手が彼が思うよりずっと大きく強かであることを見落とした無謀な行軍である。このマーケットは、それ自体がメガコーポのフロント企業であり粗悪品を流して荒稼ぎせんとする悪の市場なのだ。
幸いにして外の世界を知る猟兵ならば、ここの食料が『サイバーザナドゥだから』で済ませられないレベルのものであることを理解できるし、組織的にそれが流されているのを明らかにすることもできる。
さあ猟兵よ、食材の危険性を白日の下に曝し、侠気に逸るヤクザに猟兵ここにありと見せつけよ!
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎
■行動
これは、余りに酷いですねぇ。
しっかり対処しましょう。
『横流し品』となりますと、製造自体は他所の工場が中心でしょうから、『現物の危険性』を明らかにする方が確実そうですし、必要なのは『証拠』ですねぇ。
【幽測】を発動して『女神の波動』を纏い、まずは隠れて歩き回り『店員』の持つ『記憶や情報』を奪いますぅ。
息の掛かった市場なら『責任者』等『製造過程を知る人物』も居るでしょう。
情報を得たら、裏通り等で解除し改めて回り、客として購入した上で情報を元に『安全性』を指摘しますぅ。
詳細な部分まで図星をさせば、動揺させられるでしょう。
ヤクザさんがその様子を見て『味方』と気づいて頂けましたら。
サイバーザナドゥのとあるマーケット。そこで売られている食材は、工業的に作られた汚染食材だという。そもそもこの世界で天然の食料などほぼ存在せず、合成タンパク質の肉や魚、人工繊維にビタミンを注入した野菜などが常食なのは当然の事なのだが、だからこそその過程で手抜きをすれば食べ物としての最低ラインを下回る食材ができてしまう。
ここで売られているものはまさにその下限を超えた粗悪品であり、食材の質を見ることができないサイバーザナドゥ住民にそれを流して荒稼ぎするメガコーポの悪質な金稼ぎ手段であった。
「これは、余りに酷いですねぇ。しっかり対処しましょう」
夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)はこのマーケットの悪事を暴き、壊滅させるべくこの場へと赴いていた。
「大いなる豊饒の女神、あなたの使徒に『秘匿の加護』をお与え下さいませ」
【豊乳女神の加護・幽測】を用い姿を消し、店のバックヤードから店員の情報を奪って回るるこる。
(上の命令だから売るけど、こんなもん食ったら死んじまうぞ)
(あの作り方見たらいくら安くても絶対食いたくねえな……まあ、食うのは俺じゃねえからいいけど)
(お巡りどもが見張ってやがるからチョロまかしもできねぇし)
どうやら店員たちもこの食材の危険性は知っているが、それでもなお仕事ということで売ることに躊躇はないらしい。
恐らく生産は別の場所で行われているのだろうという予想通り、ここはあくまでどこかから搬送されてきたものを売っているだけの場所のようだ。それを踏まえ、製造過程を知っているらしい売り手からさらに情報を集めるるこる。
(確か機械油とサイバネの有機素材の余りを混ぜて作ってるんだろ? 一回見たことあるが、ひどい匂いで吐きそうになったぜ)
どうやらメガコーポが作っている別製品の余りや副産物を再利用して作っているらしい。それがまともなものなら構わないが、そもそも食用に適さないものを強引に食材に加工しているようだ。これではまともなものができるはずもない。
責任者の情報も得ようとはしたが、どうやらここはあくまでメガコーポの末端マーケットで総責任者のような者はいないらしい。件の悪徳警官がそれこそヤクザの如く警護と仕切り役を兼ねているのだろう。
その情報を得たるこるは一旦人目のない裏通りまで移動、ユーベルコードを解除し件の情報持ちの店へ改めて姿を現した。
「これを頂きたいのですがぁ」
客として、一つ購入するのはブロック肉のようなもの。触った感じは妙にぬるっとしており、さらにオイル臭が鼻を突く。確かにサイバーザナドゥ、特に下層ではこういった食材も珍しくないが、その実態を知った今それでは済まされないことも分かっている。
「ところでこのお肉ですが、工業用の廃油を使っていませんか?」
きちんと金は払った上で、店員の顔をじっと見ていうるこる。店員は最初は訳が分からないという顔をしていたが、突然慌てた様子になって否定しはじめた。
「な、なに言ってんだあんた、言いがかりは……」
「恐らくサイバネ工場ででた廃油で、同じ工場の有機素材を固めたものでしょう。元が食用でないものを食用に転化するのはいかがなものかとぉ。何ならもっと細かいところまで組成を言ってもよろしいのですがぁ」
「な、な、な……」
完全な図星をさされ動揺する店員。何しろこの店員からくみ上げた情報なのだ。正解に決まっている。
突然起こった騒ぎに人目が集まり、買い物客たちも自分が買った食材を取り出し顔を近づけ臭いをかいでいる。
そしてその騒ぎの向こうから、サングラスごしにそれを見る男の姿も。
「あのアマ何やってんだ……? 臭いで出所までわかるとはタダモンじゃなさそうだが……」
自分も食のプロとして食材の質を見る目はあるが、細かい出所までは分かるものではない。わざわざそれを指摘して店に喧嘩を売るとはインテリの強請り集りか、あるいはもっと別の目的があるのか。
その奇異なる来訪者は、まだ猟兵の名を知らぬ男の目にしかと止まったのであった。
大成功
🔵🔵🔵
アスカ・ユークレース
これはひどい。し、この世界で『本物』を知りかつ安定して供給することの出来る彼の手腕がいかに貴重で凄いものかが余計に判りますね……
マーケットの品物を買い付け撮影、視力をこらし成分解析。ネット上の口コミも利用して情報収集。得た情報をまとめ、ネット上に捨て垢も活用して匿名の複数人からの投稿に見せかけて真実を流しつつ彼に接触し協力を持ちかけます
メガコーポの敵対組織関連の構成員、と名乗っておけば共闘は出来るかしら?
猟兵の名を知ってるならそちらを名乗るのが早いけど……
どちらを使っても嘘は言ってませんし
アドリブ絡み歓迎
俄かに騒がしくなり出した食材マーケット。その一角で、アスカ・ユークレース(電子の射手・f03928)が周囲の様子を見回しながら考える。
「これはひどい。し、この世界で『本物』を知りかつ安定して供給することの出来る彼の手腕がいかに貴重で凄いものかが余計に判りますね……」
買い手の健康を害するような食材のばらまきと、それすら見抜けなくて当然という程のこの世界の食糧事情の悪さ。それは単純に食料が貴重なアポカリプスヘルなどとはまた違った意味の悲惨さだ。そしてそんな世界で食材の質を見極めることのできる目と、『食』を通し安全を周囲に供給する手段を持つという彼のヤクザの手腕。この世界の問題と希望の縮図がまさにここにありと、アスカはこの一件をしかと解決するために動きだす。
まずは現物をということで一品買ってみる。購入したのは人の頭部ほどもある巨大なリンゴだ。それを目を凝らして観察すると、見るからに危険そうな情報が容易に見て取れた。
まず外面はつややかですべすべだが、爪の先でこすってみると白い何かが削れて取れる。よく見てみればそれはワックスだ。確かにリンゴにつやだしでワックスを塗るのは普通の農家でも行われていることだが、それは当然ながら人体に無害なものが使われている。だがこれは明らかに車などに使われる強力なもの。おかげで外面は傷一つなく見える程にぴかぴかだ。
さらに下方を見てみれば、何かを注入したような穴が開いている。そこから断ち割って出てくるのはどろりとした蜜。蜜入りのリンゴは上物と言われるが、これはいくら何でもやりすぎである。しかもこの甘い匂い、糖の甘さではなく乾燥大麻のそれに近い。恐らく単品で売れないほど粗悪なドラッグ類を詰め込んでいるのだろう。これならある意味味や組成など気にならなくなるはずである。
こんなものを売っていてマーケットの評判はどうなのかとネット検索で見てみれば、そこにあったのは『安い』『大きい』など存外好評な意見ばかり。もちろん悪評もあるにはあるが、それは言ってみればネット上どこにでもある意味をなさない罵詈雑言ばかりだ。
流石に不審に思ったアスカは、捨て垢なども駆使し成分分析も交えた悪評を書き込んでみた。
『カーワックスなんて食えるか』
『ヤク入りリンゴなんて初めて見た』
ただの悪口ではなく真実に基づいた書き込みだ。これを携え、アスカは件のヤクザへと接触を図った。
「失礼します。猟兵という存在をご存知でしょうか?」
「あ? 悪いけど今ちょっと忙しいんだ。お使いならよそでやんな」
突然の声掛けに怪訝な顔をしてアスカを追い払おうとするヤクザ。聞いていた通り口は悪いが、このマーケットから離れるよう促しているあたりに彼の本質が見えている。
「メガコーポの敵対組織関連の構成員のようなものです。このリンゴ一つとっても外はカーワックス、中は麻薬とろくでもありません。それを広めようとしたのですが……」
そう言って今しがた行ったネットの書き込みを見せようとするが、それらの書き込みはこの短い間にすべて削除されていた。さらには捨て垢も全てBANされ、再ログインもできなくなっている。
「当り前だ。それで済むなら俺だってそっちでやってらあ」
メガコーポによる情報操作などこの世界では日常の事。だれでもアクセスできる場所には探られて痛くない情報しか残されていないのだ。だがそれは、つまり彼女が『痛い所』を突く情報を流せたということ。
「お前、ただの遊びでそれやったんならさっさと帰った方がいいぜ。それでここのことは忘れろ。二度は言わねぇ、消えな」
偶然真実に感づいてしまう者はしばしばいる。そしてそう言ったものは、往々にして高すぎる代償を払わされるのだ。やはり言葉は乱暴だが、アスカがそうならないよう警告しているのだろう。だが猟兵たるアスカから見れば、むしろ彼の方こそがそうなってしまうことが分かっているのだ。
「まさか、私の身分は既にお伝えしたはずですが?」
本番はここから、帰る気はないと笑顔で伝えるアスカ。
「そうか……どうなっても知らねぇぞ。てめぇのタマはてめぇで守れや」
それは同行を許すという彼なりの表現か。嘘のない情報を伝えたこともあり、少なくともこのマーケットの解体を望む者だということは信じたのだろう。
大股で進むヤクザの隣を、アスカは微笑みながらついていくのであった。
大成功
🔵🔵🔵
雀堂・大夢
SPD
……ここの連中はこんなもんを日頃食べてんのか?
こっち来てまだ日は浅いが、気が知れねぇな
なるべく件のヤクザの目につく売場で吹っ掛けるとするか
標的は魚市場だ
商品を一通り見たら揺さぶり開始だ
お前ら、知ってるか?
魚に含まれる脂には人体が分解消化できない類のものがあるんだとよ
そんなもんを食ったらどうなると思う?
ケツから垂れ流す事になるんだよ、脂をな
聞かせてくれよ、こいつを食って『そうなった』連中は居ないのか?
……なんならお前らがこれを食って感想を言ってみてくれよ
と、こんな感じでところにより【恫喝】も交えて店員を揺さぶってみるか
場を離れる時、偶然を装って件のヤクザに肩でもぶつけておくか
おっと、悪いな
賑わいがそのままざわつきに変わっていくマーケット。その中で、辺りの店で売っているものを見回して眉を顰める男が一人いた。
「……ここの連中はこんなもんを日頃食べてんのか? こっち来てまだ日は浅いが、気が知れねぇな」
男の名は雀堂・大夢(中雀、大空を欲す・f36584)。己の感性ではおおよそ食物のくくりに入らないものが平然と売られているこの状況に、彼は大いに憤慨していた。
確かにここで売られているものはこの世界としても有り得ない、最早毒物と呼んで差し支えないようなものである。だが、それを差し引いてもこの世界の食糧事情は悪い。組成レベルから錬成、成形したものに味や匂いを添付した人工食や、栄養価だけをそのまま固めたようなサプリメントとすら呼べないような代物。それがこの世界の常食であり、ここに暮らす者にとっては疑う余地すらない『常識』なのだ。
そしてその常識を持ってすら危険とされるここの売り物たち。大夢は魚市場となっている一角を主に見回し、そして一つの魚を手に取った。
「お前ら、知ってるか?」
その魚を売っていた店の店員に、思い切り顔を近づけておもむろに言い出す大夢。既に肉や青果のあたりで謎の存在がこの市場で騒ぎを起こし始めていることは漏れ聞こえており、それがここにも来たかと店員は表情を硬くする。
「魚に含まれる脂には人体が分解消化できない類のものがあるんだとよ。そんなもんを食ったらどうなると思う?」
手に持つ魚の光沢。それはまさに蝋の輝き。しかもこれは塗られているのではない。たっぷりと、主成分として中に含まれ完全に身と不可分になっている状態だ。
「し、知らないよ……腹でも壊すんじゃないのか?」
適当に言ったであろうそれは実は半分正解。その店員に、大夢は満点の解答を教えてやる。
「ケツから垂れ流す事になるんだよ、脂をな」
人体に一切吸収されず、そのまま体を素通りしてきた脂は文字通りに垂れ流される。腹痛はあれど便意すらなく、我慢するための意思を動員することもできない。出している自覚すら本人になく、本当に気づいたら出ているそれはまさに人体とは相容れぬ成分。
ただ排出されるだけならばまだいい。当然それを体外に追い出すために体力は浪費されるし、同時に押し流すための大量の水分も一緒に排泄されることになる。そうなれば脱水を起こし下手をすれば命が危ない。さらに尻からだけ出てくれるならそれでいいが、下手をすれば肌から油が染み出て肌を爛れさせる可能性すらあるのだ。
危険性を知る世界では多くの国で販売が規制され、それがなくとも購入時に注意を促されるような魚。
元々そう言った組成を持つ生物として存在し、それに対しての情報があり、その上でなお最上の味の誘惑に抗いきれなかった者が食べるならばそれは全て自己責任、文字通りに自分でケツを拭く話。だが、そんなもの存在しない世界で何も知らぬ者たちに知って売りつけるのなら。
「聞かせてくれよ、こいつを食って『そうなった』連中は居ないのか?」
「し、知るかよ、買った後の話までこっちは」
「おいおい店員さんよ、説明責任って言葉知ってっかぁ? ……なんならお前らがこれを食って感想を言ってみてくれよ」
店員の口元に魚を押し当て迫る大夢の姿はまごうことなきヤクザ。実際彼はヤクザである。ただし、ネットワークの奥深くに存在する古い文献から生まれたバーチャルキャラクター。現実の犯罪組織ではなく、法の外に己の道を持って君臨する『本物の仁義』を探す『架空のヤクザ』。
法で裁けぬ悪を裁く義侠心溢れる『漢』に、木っ端物の店員は完全に圧倒されていた。
「し、知らない! 俺はただ売れと言われただけで……!」
「そうかよ。なら上のモンに話通させてもらおうか。邪魔したな」
恫喝とも呼べるヤクザ式交渉術で上の話を引っ張り出した大夢はさらに奥へと歩き出す。その際、近くにいたサングラスの男と肩がぶつかった。
「おっと、悪いな」
それだけ言って足早に立ち去る大夢。その背に背負う茶色と白色の二羽の雀を見て、その男は呟く。
「なるほど、『ご同業』ってか」
それがいかなる意味か。その答えは『ヤクザ者』にのみ通じるところなのだろう。
大成功
🔵🔵🔵
新田・にこたま
悪徳警官が多すぎて腑煮えくり返る通り越して腑マグマです…必ず全員に裁きを与えましょう。
翁丸ドローンの技能を情報検索に特化。マーケットを一回りさせます。そして私のサイバーアイと接続しドローンからの映像情報を出力。マーケット中の食材の汚染内容を把握します。
そして特に酷い店いくつかに目星をつけ突撃します。
ホールド・アップ!警察です!
この店の責任者を…ゴミ同然の食材を売りつけたクズ罪で現行犯逮捕します!
周囲の人たちにも聞こえるように、どれだけ酷い汚染食材だったのか謳い上げて店主をミニパトに詰めます。義体化がしっかりしていれば首から上を取り外せますよね?
いろんな店から連行できるだけ連行しちゃいましょう。
リーゼロッテ・ローデンヴァルト
【WIZ】
※アドリブ他大歓迎
『シャブ』ってそっち?
先の戦争でも阿片案件あったしさー
ま、アタシの実家も悪徳企業都市だし
この手合を潰すのは歓迎だけどね
後、レジスタンスでも真っ当なヤクザなら
連中とコネを得るのも商売上重要♪
※主に闇医者・フィクサー用
マーケットへ入り次第「この野菜コワイねー」
とか難癖つけて【アーバン・ディスクローズ】起動
『運営元と敵対する別メガコーポ傘下研究所』に
予め私費で頼んだ即時分析の結果受信後
生体電脳でコピーした諸元を巨大ホロで提示
向こうも「捏造無しでイケる証拠」との事
測定値・電子署名…全部ホンモノのお墨付き♪
※予算は【ゴールド・セキュア】で拠出
で、この重金属含有量とph値は何?
留まることなく混乱が広がるマーケットを、一人の警察官が進んでいく。話に聞くここを取り仕切っているという悪徳警官か。
だが、その目はメガコーポの恩恵にあずかり正義を切り売りする者としては余りにも真っすぐで曇りがない。
「悪徳警官が多すぎて腑煮えくり返る通り越して腑マグマです……必ず全員に裁きを与えましょう」
新田・にこたま(普通の武装警官・f36679)は警官は警官でも、不正とは無縁の正義の警察官であった。法を犯すものであれば如何な存在であろうと許しはしない。悪を一斉摘発するため、正義の名の下ここへ乗り込んだサイバー武装警官だ。
「行きなさい! 翁丸ドローン!」
早速にこたまは情報収集に特化させた【翁丸ドローン】をミニパト(と言う名の四輪装甲車)から発進させる。ドローンたちは上空に散り、マーケット全体の周回と撮影を開始した。
そしてそのドローンたちが集めてくる情報は、にこたまの目に直接投影される。そう、彼女はこのサイバーザナドゥ出身者。当然その肉体は100%の生身ではなく、腕は武骨な機械義手、そして目は機械内蔵のサイバーアイなのだ。
そんな正義に燃える警官が情報収集を行う一方でもう一人。こちらは怒るどころか楽しそうな様子で乗り込んできた者もいる。
「『シャブ』ってそっち? 先の戦争でも阿片案件あったしさー。ま、アタシの実家も悪徳企業都市だしこの手合を潰すのは歓迎だけどね」
リーゼロッテ・ローデンヴァルト(マッド&セクシーなリリー先生・f30386)はクロムキャバリアの企業国家出身である。彼の世界もそれはそれで倫理、秩序が乱立と崩壊を繰り返す混沌極まる世界だ。その企業そのものは出奔した彼女だが、似たような者を叩き潰すのは純粋に面白そうだし、こういった頽廃的な世界で暴れまわるのは単純に楽しい。
「後、レジスタンスでも真っ当なヤクザなら連中とコネを得るのも商売上重要♪」
そしてこれからこの世界で活動していくということは、現在の体制に立ち向かう必要も出てくるということ。悪が社会を支配するこの世界ならば、正義の反社会集団という矛盾も存在し得る。そんなヤクザものならば裏に表に利用価値は大いにあるというものだろう。
既に騒ぎが起きたという青物売り場。そこに行って適当な野菜を一つ取ってみる。
「この野菜コワイねー」
まずは店員に難癖をつけるが、碌に見てもいない状態からのクレームは流石に店員も言い返す。
「ち、この騒ぎに乗っかって適当言ってるだけだろ、さっさと帰れ!」
流石にもう今日はまともな商売もできそうにないし、いくらなんでもまともに見てもいなければ組成が分かろうはずもない。こいつを追い払ってもうずらかるか。そうとでも考えていただろう店員は強気の態度だ。
実際、手にしたものにどんな問題があるかはリーゼロッテ自身まだ分かっていなかった。何しろ、それは『これから送られてくる』のだから。
そしてそのやり取りを上空から見ているドローンが一機。それに導かれるように、いかにも警官然とした、ジッサイ警官がやってくる。
「ホールド・アップ! 警察です! この店の責任者を……ゴミ同然の食材を売りつけたクズ罪で現行犯逮捕します!」
銃を突きつけ叫ぶにこたま。そんな罪があるんかいという罪状だが、ないなら後から作ってしまえばいい。サイバーザナドゥの法律とは強い者の都合で簡単に書きも消しもできるのだ。
「い、いや、まて……お前、ここの管轄の警官じゃないだろ! 越権行為ってやつじゃないのか!?」
ここを仕切っている悪徳警官の顔なら知っているし、そもそも連中はみんな男だ。この世界では警官とは即ちメガコーポの私兵と言っても過言ではない。そんな輩が勝手に他所のシマに手を出せばどうなるか。それこそヤクザのようなその思考は、しかし正義の警官には通じない。
「すでに証拠は上がっています! 重金属汚染水耕栽培レタス60キロ! ここにあるのは分かっています!」
サイバーアイに表示される翁丸ドローンが集めたデータを読み上げるにこたま。その横で、リーゼロッテの生体電脳にもデータが送られてくる。
「あー、きたきた。お巡りさん、こんな情報もあるんだけどー?」
そう言って巨大ホロで提示するのは『運営元と敵対する別メガコーポ傘下研究所』に予め私費で頼んだ即時分析の結果。【Op.NULL:URBAN DISCLOSE】で集めたデータは秘密の暴露と事件解決という絶対の願いを叶える最大の武器。それをうまく使わねば願いはかなわないが、何も使うのは自分でなくたっていいのだ。
「向こうも「捏造無しでイケる証拠」との事。測定値・電子署名…全部ホンモノのお墨付き♪」
このマーケット母体と余裕で渡り合えるメガコーポの署名は信用度抜群。もちろんここはここで相当なことをやっている可能性も高いが、今は敵の敵は味方としておくべきだろう。
「で、この重金属含有量とph値は何?」
おおよそ生物が体内に入れてはいけない数字を見せて突っ込むリーゼロッテ。にこたまもそれを得てさらに一歩相手に近づく。
「情報提供感謝いたします! 確認のため読み上げさせていただきます!」
周囲にも聞こえるよう、自分で調べたものとリーゼロッテから提供した数値を大声で読み上げるにこたま。その数字は多少なりと知識のある者なら十分分かるレベルの危険数値。最早言い逃れは出来まい。
「詳しくは車内で聞きます! 武装解除の上連行します!」
そう言って店員の頭をひっつかみ、その頭部をおもむろに引っこ抜くにこたま。店員の首が胴から離れ、機械に守られた脊髄を尻尾のようにぴちぴち跳ねさせる。
「か、勘弁してくれぇ……」
一見すれば即死して当然のその状態で、気弱な声を上げるばかりの店員。義体化されていれば首が取り外し可能なのだって当たり前にあることだ。そして義体は恐ろしい武器なのだから、使えないよう手放させるのも当然である。
首をミニパトに放り込むと、にこたまはすぐさま運転席に乗り込みエンジンをかける。
「いろんな店から連行できるだけ連行しちゃいましょう」
「お、いいねぇ。お付き合いするよ」
リーゼロッテもちゃっかり助手席に乗ってついていく気満々だ。件のヤクザの横を通り抜け走り出した二人の摘発ドライブは、まだ始まったばかりである。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
宮村・若葉
あらあらまあ…
ヤクザさんのほうが真っ当に商いをしている…ということね
…んー…捨てる様なものをわざと売っちゃう、悪い海賊みたいなことする人たちは…昔に駒として使われてた頃のいろいろを思い出しちゃうので潰しましょう
●やること
こういうのは利益を管理するための、流通や仕入れの帳簿かデータがあるのよねえ
ええ…似たことを、やらされたことがありますもの
他の猟兵やヤクザさんが入り込めば、その手のデータを守るような動きがあるでしょうから…UCで影となり事務所などへ潜入して、忍び足で追跡して、逃げる前に怪力で捕まえましょうか
怪しい方がいましたのでーと、突き出せばあとはなんとかなるでしょう
岩社・サラ
アドリブ歓迎
汚染食品の流通ですか……食品の偽装なら私の出身世界UDCアースでも耳にすることのある案件ですが、企業倫理が崩壊している世界だけあって凄まじいですね。
住民の健康を守るためにも早急に対処しましょう。
まずは証拠を掴みます。
「戦術迷彩装置」を起動しマーケットの従業員エリアに侵入。
従業員エリアでは自身と召喚術で呼び出した岩蜥蜴による情報収集を行い汚染された食品の情報を集めていきます。
十分に情報を集め終わったら客としてマーケットに入り食品を購入。
そしてマーケットを訪れた客の前で汚染された食品の情報を暴露します。
騒ぎが大きくなればこの件の重要人物であるヤクザの方もこちらに気づいてくれるでしょう。
既に騒ぎが相当に拡大したマーケット。他の客たちも店員に詰め寄り問いただし、対応に追われる者や怒鳴り返し逆切れするものなど混沌とした様相を呈してきた。
「あらあらまあ……ヤクザさんのほうが真っ当に商いをしている……ということね」
宮村・若葉(愛に飢えた脳筋お嬢さん・f27457)が笑顔でその様子を見ながら呟く。この事件の発端は汚染食材を売るこの場所を壊滅させるべくヤクザが乗り込み、それがオブリビオン事件として予知にかかったこと。そしてそのヤクザの組織は、独自のルートで仕入れた安全な食材を提供しているとのことだ。正しくどちらがヤクザか分かったものではない状況である。
「……んー……捨てる様なものをわざと売っちゃう、悪い海賊みたいなことする人たちは……昔に駒として使われてた頃のいろいろを思い出しちゃうので潰しましょう」
彼女の出身地であるグリードオーシャンでは、凶悪な犯罪組織である海賊も数多い。そう言った者たちにより凄惨な目にあわされてきた彼女は、己の過去と重ね合わせこういった阿漕な犯罪組織を叩き潰すことに一切の躊躇はなかった。
「汚染食品の流通ですか……食品の偽装なら私の出身世界UDCアースでも耳にすることのある案件ですが、企業倫理が崩壊している世界だけあって凄まじいですね。」
一方岩社・サラ(岩石を操る傭兵・f31741)が思うのは、その罪名と比べての実際行われていることの悪質さの落差。
産地偽装、消費期限改竄などはある程度文明が進んだ世界であれば枚挙に暇がなく、歴史の長い大企業なら叩けばまず一粒ならず埃が出るほどにある種ありふれた犯罪だ。
だが、ここで行われているのはそのような生易しいものではない。毒物どころかそもそも食用ですらないものを平然と売りに出し暴利を得るそれは、虚偽表示や詐欺などの言葉では到底くくれぬ悪質さ。そして恐るべきはそれが平然とまかり通るこの世界の世相と体制だろう。
「住民の健康を守るためにも早急に対処しましょう」
その悪にとどめを刺すため、二人はマーケットの奥へと乗り込んでいく。
「こういうのは利益を管理するための、流通や仕入れの帳簿かデータがあるのよねえ
ええ……似たことを、やらされたことがありますもの」
若葉が狙うのは、食品そのものではなくそれを管理するためのデータ。奇妙な話だが、こういったあくどい商売程そう言ったデータは精密に記録し、管理されていることが多い。巨額の暴利の細部まで出納帳をつけ、日ごと、時間ごとの金や人の流れを記録する。どんぶり勘定の個人商店やアルバイト任せのチェーン店などとは比べ物にならぬほどに精密なそれは、誰も信用できない悪だからこその逆説的な勤勉さか。
そしてそのデータは有事には何を置いても隠匿、あるいは破棄せねばならないもの。既に騒ぎが大きくなっていることもあり、それを目的に動く者がいてもおかしくはない。
「迷彩展開。隠密行動に移行します」
サラは【特殊武装「戦術迷彩装置」】を用い、予備のステルス装置を若葉に取り付け共にバックヤードへと潜入した。このマーケットは外部の者が場を借りて出店しているわけではなく、全体が一つのメガコーポ傘下。つまりは一つの巨大複合店舗と見ることもできる。すでに内部はあわただしく人が出入りしているが、それだけに透明化した二人に気づく気配はない。
「目立たないことには、ちょっと自信あるんですよ? フフ…」
ならば遠慮なくやらせてもらおう。【強化能力:影の追跡者】で自らを影の追跡者へと変え、行きかう者たちの後をついていく若葉。何人かの人間を物色したあと、大きな空き箱を抱えた男に目星をつけそれに密着し後をつけ始めた。
その男は一室に入ると、自分の義体を直接コンピュータに接続、何がしかの通信を始めつつ箱の中にいくつもの書類を乱雑に放り込んでいく。この世界でわざわざ紙媒体も残しているのは、まさに『何かの時のための保険』だろう。場合によってはこれを使って個人、あるいはマーケット全体への切り捨てに対抗するつもりなのかもしれない。
だが、そのような保険も彼らのまだ知らぬ規格外の強者……猟兵の前では無意味である。自分へのデータ転送が終わったのか義体との接続を切ったところで、影から若葉が立ち上がる。
「はい、捕まえました」
突如現れた少女の見かけによらぬ怪力で、男はあっけなくその場に組み伏せられた。
そうして若葉が人と情報を確保している間、サラは使い魔『岩蜥蜴』を周囲に放っていた。目的はさらなる情報の確保。値段の付け方、一品当たりの儲け、食材の汚染具合。バックヤードからならより包括的な情報を得ることができる。
そうして分かったのは、基本的にはここの汚染食材は廃棄品の再利用や、食品として利用可能な基準値を大きく下回る粗悪品が主を占めているということ。意図的に毒物を流して大量殺人などを企てているわけではなく、まさにゴミに値札をつけて売っているような悪質な金儲けが目的ということだ。
後は行われているのが組織的であり、表向きは複数の店が軒を連ねているが実体は一つのメガコーポの下部組織だということの証拠。それはここに卸されている食品のデータと。
「怪しい人、捕まえましたよー」
若葉が連れてきたデータ入りサイボーグで事足りるだろう。
「では、買い物に行きましょうか」
入ってきたのと同じ手段で表に出て、騒がしいマーケットでまだ開店中の形をとっている店へ向かう二人。
サラは店先にあった大きなパウンドケーキを手に取る。
「これを頂きましょうか」
この状況で平然と買い物するその姿に、恐らく店を閉め忘れていただけであろう店員は困惑の表情を浮かべる。
「素晴らしいですね。3Dプリンターで作ったケーキですか。流石はメガコーポ製品」
この世界では食品を作れる3Dプリンターなど珍しくもないし、真っ当な食材だってそれで作られたものがいくらでも出回っている。
「ですが、工業用のプリンターを転用するのはどうかと。本物の『スポンジ』ケーキなどジョークの世界だけの話にしていただきたい」
「製菓部門は見た目も自然風にしなくていいから手もかからず利益も大きいみたいですね」
そしてその危なすぎる組成を調査結果を参考に突きつけるサラに、その『データ元』を突き出しながら若葉が言い添える。
「い、一体……なんなんだよ、お前たちは!?」
突然起こったマーケット崩壊と、それを引き起こした謎の集団。猟兵の名など知らない相手にどういったものかとサラと若葉が顔を見合わせると、二人を乗り越えて一人の男が顔を出す。
「こういうモンだよ」
はだけた上着の下はサラシの撒かれた逞しい裸体。そこに挟まれるのはマグナム級チャカと高振動ドス。そしてその背には彼の誇りたる煮えたぎる熱湯の中から飛び出す雄々しき黒毛和牛の刺青が。
「お前らも誘ってやがったんだろ? 何が目的か知らねぇが、俺の邪魔にならないなら勝手にさせてやる」
派手にやれば例のヤクザも気づくだろう。そのサラの予想は辺り、彼は各地で不正を暴く猟兵たちの存在をはっきりと認識したようだ。そして彼のヤクザ語を訳せば『一緒にこのマーケットを完全に潰そう』と言っているのだろう。
準備は整った。誰もがそう確信した時、突如としてマーケット全体に警報が鳴り響く……!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『ニンジャ警官』
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POW : サイバーステルス・ジツ
自身と武装を【サイバーステルス・ジツ】で覆い、視聴嗅覚での感知を不可能にする。また、[サイバーステルス・ジツ]に触れた敵からは【意識】を奪う。
SPD : エンザイタイホ・ジツ
指定した対象を【犯罪者】にする。対象が[犯罪者]でないならば、死角から【捏造した証拠品】を召喚して対象に粘着させる。
WIZ : デンノーヒョーイ・ジツ
【サイバー忍術】で【電子データ状態】になる。肉体は脆弱だが透明になり、任意の対象に憑依して【仮面】を生やし、操作あるいは強化できる。
イラスト:ちー
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
すでに収集などつかないほどに混乱を極めた汚染食材マーケット。そこに突然警報が鳴り響き、同時に全ての出入り口が地面からせり出してきた高い防壁によって封鎖される。
「マーケット内で暴力事件発生! 容疑者は集団で各店舗への恫喝、暴行を働いている模様! 至急鎮圧せよ!」
聞こえよがしに鳴り響くアナウンス。それと同時にマーケット中から現れるのは、警官服を着た若い男たち。
「諸君らは完全に包囲されている! 大人しく全武装を放棄し投降せよ!」
警察官たちの囲む中心には、いかにもと言った格好のヤクザの男。
「中心人物は暴力団関係者、マーケットへの不当要求と偽情報流布による業務妨害が主目的と予想されます!」
無線に向かって、だがその実周囲にいる無関係の者たちによく聞こえるよう大声で言う警官。
「よく言うぜこのクソポリ公が。てめぇらここのゴミ流してる連中からいくらハネてるよ。その上着のポケット、随分あったかそうじゃねぇか、ああ?」
全く怖じることなく言い返すヤクザ。多くの者たちの協力によって、彼らこそがこのマーケットの利益を最初に吸い上げる集団だということは分かっているのだ。だが、警官たちも全く動じる様子はない。
「対象は警告を無視。大規模な抵抗による被害の拡大が予想されます。現場の判断にて交戦、やむを得ない場合は射殺します!」
恐らく最初からそのつもりだったのだろう、騒ぎの大元を始末して事態の鎮静化を図るようだ。周囲には野次馬と化した……ここから出られない故にそうならざるを得ない一般客たちもいるが、もしここで見たことで余計なことを言うようなら『大規模な抵抗による被害』にあって貰うまでということだろう。
「上等だ。こっちも最初からそのつもりで来てんだよ。ウチのシマの連中に臭い飯食わせたケジメ、きっちりつけて貰おうか!」
ドスとチャカを抜くヤクザ。その背に負う猛牛は彼の不退転の決意と煮えたぎる怒りの証にも見える。
そして彼と共に囲まれた猟兵たちにももう逃げ場などはないし、元よりその必要もないだろう。さあ、この悪法の番人を正義の無法者と共にいてこましてやれ!
新田・にこたま
あなたたちには自身の罪を悔やみ自害する権利があります。速やかに自分の電脳を撃ち抜きなさい。
言うだけ言ってUCを発動したミニパトで警官集団に突撃し轢殺します。逃げても轢きます。
仮に敵が見えなくなろうがミニパトに轢かれないであろう位置やミニパトの死角を狙って軽機関銃で弾幕を張ればミニパトの車線上に出ざるを得ませんよね?
タイミングを見切り、轢きます。
私が犯罪者?何を言っているんですか?
ミニパトで悪を跳ね飛ばす音、ミニパトで悪に乗り上げて車体が跳ね上がる感触…これが正義でなければなんだと言うんです?
今、この場で、私が最も正義です。
さっき捕まえて後部座席に放り込んでいる店主さんたちもそう思いますよね?
マーケットの中、警報と共に現れたのは大量の警察官。その目的はもちろん、この場で起きた騒動を収めるためである。
だが、それは治安維持や犯罪抑止が目的ではない。そもそもこのマーケット自体が汚染食材を売り捌き不当に利益を得ている犯罪の温床だ。そして彼らは、そこの利益を吸い上げる腐敗警官たちである。
「あなたたちには自身の罪を悔やみ自害する権利があります。速やかに自分の電脳を撃ち抜きなさい」
その場で相手に向かってそう言うのは囲んでいる方ではなく囲まれている方……そしてその服装もまた、警察官のそれであった。
新田・にこたま(普通の武装警官・f36679)の発言もそれはそれで警官としてどうなんだという感じではあるが、その発言の根底にあるのは全くの正義。そして同じ警察官でありながら悪に与する相手を許さぬという、恐ろしいまでに曇りない使命感であった。
「公務執行妨害で逮捕、ジツにて鎮圧します! イヤーッ!」
そのにこたまを、そちらこそが犯罪者だと決めつけ躍りかかろうとする警官たち。ニンジャめいた掛け声を上げる彼らはジッサイニンジャ。だが、そんな息巻いている間ににこたまは既に行動を始めていた。
「これが正義の極みです!」
飛び掛かったニンジャ警官が華麗に逆方向に吹っ飛んでいく。言うだけ言ったにこたまは相手の返答を待つことなくさっさとミニパト(重量級装甲車)に乗り込み、【正義の轢殺】を図っていた。ミニパトはそのまま吹き飛んだ警官に躊躇なく乗り上げ、一人目の轢殺を完了する。
「容疑を殺人に切り替えて鎮圧する! 証拠品ももはや不要! 現行犯だ!」
相手を犯罪者に仕立て上げるエンザイタイホ・ジツを得意とするニンジャ警官たち。もし相手が犯罪者でなければ証拠を捏造してでも犯罪者扱いする恐るべきジツだが、まさか目の前で堂々と殺害して開き直るという驚異の対処法があったとはだれも予想だにしていなかったろう。
「発砲許可は出ている! 撃て、撃てーっ!」
そもそも許可など関係なくそうするつもりではあったが、警官の装備としてはいささか大仰過ぎる軽機関銃をぶっぱなすニンジャ警官たち。だが、銃の射程とは基本的に直線。つまりはミニパトの前に立たざるを得ないわけで。
「私が犯罪者? 何を言っているんですか?」
にこたまが曇りのない目でアクセルを踏み込み、分厚い装甲で銃弾を弾きながら前に立った警官をまた一人轢殺する。
「ミニパトで悪を跳ね飛ばす音、ミニパトで悪に乗り上げて車体が跳ね上がる感触……これが正義でなければなんだと言うんです?」
皮肉でも何でもない。これは純粋なる心からの言葉。その電脳に一切の乱れなく、にこたまは愛車を駆って『正義』を執行し続ける。
「サイコパスとかシリアルキアイエエエ!?」
「今、この場で、私が最も正義です」
口答えしようとした警官がまた一人『正義』された。タイヤから伝わるその感触を踏みしめながら、にこたまはミラー越しに後部座席を顧みる。
「店主さんたちもそう思いますよね?」
そこにはにこたまが逮捕した、このマーケットで汚染食材を売っていた店主たち……の首や脳などの生存に必要なメイン部分。それ以外を全て取り上げられた彼らはある者は動くだけ首を縦に振り、ある者は意思疎通用のモニターに表示可能最大サイズでYESと表示させ、文字通り死ぬ思いでにこたまの『正義』を肯定するのであった。
大成功
🔵🔵🔵
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎
■行動
悪徳警官の見本の様な方々ですねぇ。
ヤクザさんに助太刀致しますぅ。
『FMS』のバリアで私とヤクザさんを纏めて囲い、押し広げる様に拡大、彼我の間合いを広げ『ジツ』への接触を防ぎますねぇ。
先に隠れても『ジツ』は触覚は防げませんし、バリアを広げる際に当たれば場所は判りますから、そこに『FBS』の斬撃を放ちますぅ。
更に【酷郭】を発動し『裁域』を形成、戦場全体に『律』を流し込めば、此方も視聴嗅覚とは異なる『抵抗の差』で位置が掴めますので、その周囲の大気の爆破と『F●S』各種を併せ仕留めましょう。
周囲の大気を圧縮し盾とし、野次馬への流れ弾を防げば、ヤクザさんも射撃し易いでしょうかぁ?
「相手は凶悪犯だ、生死は問わない!」
予想外の抵抗にあい、ニンジャ警官たちはより明確な攻撃態勢を取る。元より相手を生かして返すつもりはあまりなかったが、生け捕りにして情報を吐かせるなどの使い道も一応は考えていた。だが敵の強さは想定以上。このままでは自分たちの身も危ないと、相手を殲滅する意思を露にする警官たち。
「悪徳警官の見本の様な方々ですねぇ。ヤクザさんに助太刀致しますぅ」
夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)は分かりやすすぎる相手の姿勢にある種の感心すら覚えながらも、それ故に分かりやすい対応をすればよいと武装を広げる。
その隣にいるのは、背中に刺青を背負ったサングラスの男。どの角度から見てもヤクザにしか見えないその男は実際にヤクザなのだが、警官が悪であるこの場においては彼の方こそ正義のヤクザ。
「そりゃどうもよ。あのお巡りどもに一発かましたるかい!」
右手にチャカ、左手にドスの臨戦態勢のヤクザだが、その前で警官たちの姿が消えていく。
「なんだこりゃあ……出てきやがれコラァ!!」
消えた辺りにチャカを滅多打ちにするヤクザ。轟音と共にマグナム弾が発射されるが、それは何にも当たることなく無人となった後ろの店に残された汚染食材を砕くに終わった。
「ち……どこ消えやがった!」
怒るヤクザの周囲に、光の壁が広がっていく。それはるこるの兵装『FMS』であり、自分とヤクザを囲むようバリアを張っているのだ。
広がっていくバリアの勢いが少し鈍ったと思うと、何かが叩きつけられるような音がする。そこに戦輪『FBS』が飛び掛かると、斬撃音と共に何かの液体が噴きあがりそこに血に染まった警官が現れた。
警官の姿を消す【サイバーステルス・ジツ】は感知は不可能になるが存在そのものを消せるわけではない。故にバリアを探知機代わりに円状に広げていけば、いずれは逃げ場がなくなりぶつかるはず。ましてやジツを最大限生かすためには相手はこちらに近づいてこなければならないのだ。
「大いなる豊饒の女神の象徴せし欠片、その刑場の理をここに」
さらにそこに【豊乳女神の加護・酷郭】を重ね、波動による操作をかけるるこる。もちろん相手は抵抗するが、抵抗そのものが自分がそこにいることを教えるのを同じ状態。その辺りを広範囲に爆破すれば、隠密に注力しているニンジャ警官たちは回避することもできず吹き飛ばされていく。
「グワーッ!!」
悲鳴が上がり、空中から落ちてくる警官たち。だが、一部は隠密を止めて姿を現し、攻撃手段を銃撃に切り替えた。隠密からのステルスキルを諦め、命ごと意識を刈り取ってしまおうということだろう。それに対しては大気を爆破、圧縮してある程度弾道を逸らし、るこるが第一射を防ぐ。
「ヤクザさん、どうぞぉ」
「見えてりゃ外さねぇよ」
マグナムチャカを連射するヤクザ。荒っぽい打ち方ながらその狙いは精密で、サングラスに何かの文字や表示が浮いているあたり彼もまたそういう義体を装備しているのだろう。
マグナムの名に違わず、当たった場所の周囲を丸ごと吹き飛ばされ体を半壊させ消えていくニンジャ警官。彼が最初の一射以降あてずっぽうの乱れ打ちをしなかったのは、この威力の流れ弾で関係ない者を傷つけるのを防ぐためか。
そしてそのまま周囲に球が飛ばないように爆破と大気で壁を作りつつ、その中で警官を撃たせていくるこる。接近戦と遠距離戦、使い分けは出来ても併用は出来ないサンシタニンジャ警官たちは押し返しと爆破の壁、そして大口径拳銃の連射によりどっちつかずの状態を余儀なくされ吹き飛ばされて行くのであった。
大成功
🔵🔵🔵
宮村・若葉
リリー先生(f30386)と合流
●心情
あらあら、リリー先生もいらしてたんですね
メンテナンスいつもありがとうございますー
ところで、賑やかですねぇ
穏便に済みそうにもないですし、やりましょうかー
●戦闘
えーい、と怪力で戦いつつ…相手が電子データになったらこちらはUCで電流を放ちます
いい感じに電磁界を発生させ光を曲げるので、リリー先生の援護にもなりそうです
折角ですし、すこーし意趣返しも
汚染食材を食べて『あらゆる毒や薬品を濾過して溜め込む臓器』へ毒物や薬物を蓄積させた後、唾液として分泌して敵のひとりに口吻する形で流し込みましょう
あなたのボスにお伝え下さいね。今後も手を出す様なら次はあなたの番ですよ、と
リーゼロッテ・ローデンヴァルト
【SPD】
※アドリブ他大歓迎
お?若葉さん(f27457)も居た
そだね、この際存分にヤッちゃおう
アタシはモテるの歓迎だけどね♪
冤罪?残念だけどアタシはこの手にも強くてね
若葉さんの即席光学迷彩に紛れ【アンルーリー・プロジェクト】起動
実は敵対メガコーポ経由で広く配信中
マーケット造成時に顔役と結託した地上げ等
予め抑えたヤバい機密情報付
この手合は暗部がバレるのを嫌う
『市場を牛耳った悪徳警官隊』に責任を擦り付ける筈
即時懲戒解雇となれば皆の冤罪も有耶無耶♪
直後にメガコーポの情報統制…でも超法規的にヤれる勝機
《瞬間思考力》と生体電脳経由でヤクザ&若葉さん達の能力を超強化
※代償(呪縛)兼用、自身からは攻撃し辛い
マーケットの中、ニンジャ警官によって包囲された猟兵たち。自然と集まる形になった彼らは、別々に行動していた者もある程度接近することとなる。そうなれば、知った顔がそこにあれば当然気づきやすくもなる。
「お? 若葉さんも居た」
「あらあら、リリー先生もいらしてたんですね、メンテナンスいつもありがとうございますー」
宮村・若葉(愛に飢えた脳筋お嬢さん・f27457)とリーゼロッテ・ローデンヴァルト(マッド&セクシーなリリー先生・f30386)。顔見知りである二人は元々は別々にこのマーケットに来て行動していたが、囲まれたことでお互いを発見することとなった。そしてこの状況で知己を発見したのだから、自然と互いに協力する流れになる。
「ところで、賑やかですねぇ。穏便に済みそうにもないですし、やりましょうかー」
「そだね、この際存分にヤッちゃおう。アタシはモテるの歓迎だけどね♪」
ここで起きた騒動を対象を沈黙させ、冤罪と共に解決を図ろうとするニンジャ警官たち。それに対し、まずは若葉がえーいとばかりに拳を振り上げ攻勢に出る。傍目にはただの軽いパンチなそれは、だが身をかわした警官のいた場所に当たるとそこを大きく粉砕し、その怪力の程を視覚的に分かりやすく相手に伝えた。
「デンノーヒョーイ・ジツにて鎮圧を図ります!」
これに殴られれば一たまりもないのは見てわかる。なれば殴っても意味のない体になれば良いと、恐るべきジツにて自身の体をデータ化、そのまま若葉の顔に取り付きその仮面となって相手を操作しようとする警官たち。
このまま好きに操作してしまえば自白も証拠も捏造し放題。データだから殴っても壊せない故に解除も困難……と一見すれば無敵の状態。だが、ニンジャたちは自分の体が何になったか本当に分かっているのか。
「ちょっとした隠し芸です♪」
操作される寸前、若葉は【強化能力:生体発電】の電流を周囲に巻いた。それはニンジャたちのデータの体を取り巻き、強力な電磁界を発生させる。
「グワーッ!!」
そうなれば、当然データになった体はぐちゃぐちゃにかき回され、破損とバグの塊となってしまう。サイバーザナドゥのデータ保存媒体なら磁力対策など本来万全だろうが、今の彼らは剥き出しのデータそのもの。物理に無敵でもそれ以外のパワーには無防備極まりない体だ。
そしてその電磁界は、データ相手にはいい感じに周囲への認識も阻害する。
「冤罪? 残念だけどアタシはこの手にも強くてね。社会戦だね? 上等、フィクサーらしくヤッてやろうか♪」
相手の的から外れたリーゼロッテがその間行っていたこと。それは【Op.NULL:UNRULY PROJECT】による能力強化だ。ただしこれで強化される能力は戦闘用ではない。
この汚染食材市場はメガコーポ傘下だが、この世界のメガコーポは一つではない。そしてそれらは、商売敵として敵対関係にある場合も多い。相手の商売を邪魔できるとなれば、他者への協力は惜しまないことも往々にしてある。マーケット造成時に顔役と結託した地上げ等、予め抑えたヤバい機密情報を渡せばそれを快く全方位に向けて配信もしれくれることだろう。これら社会的戦闘力の強化。それがこの技の真価である。
さらにニンジャ警官たちはこのマーケットの利益を吸い上げているが、それは所詮メガコーポの犬として恩恵にあずかっているにすぎない。また大勢いても明確なリーダーがいないことから分かる通り、彼らはただの小悪党の群れに過ぎない。所詮は末端の頭に座っているだけの彼らは、事が起これば即座に切り捨てられる。『市場を牛耳った悪徳警官隊』として全ての責任を押し付けられこの場で懲戒解雇だって十分にあり得ることなのだ。そうなれば、冤罪そのものにも意味はなくなるだろう。
それを理解しているニンジャ警官たちは、データの体から戻り直接の攻撃での解決を図った。幸い今ばらまかれた情報は即座に遮断、統制された。ここで納めればまだチャンスはあるということだ。それに対しては、若葉とヤクザがそれぞれの武器を構え応戦する。
「セコい手使い過ぎてカチコミの仕方も忘れたか!?」
振動ブレードの刃を持つドスで相手の体を突き打ち倒すヤクザに、ガントレットを己の形に変え相手を両断する若葉。後ろでは過剰な情報処理による呪詛の如き反動で動けなくなっているリーゼロッテがいるが、その情報を送り可能な限り二人が戦えるようにするバックアップも欠かさない。
そして目の前で動くニンジャ警官が最後の一人になった時、なぜだか若葉がレタスを齧りだす。
「折角ですし、すこーし意趣返しも」
そう言って彼を抱き寄せ、何とその口に自分の口を重ねてしまった。だがその直後、警官は痙攣して苦しみ出す。
今食べたのはリーゼロッテが先に調べ上げた重金属レタス。それをラスボス部位の『あらゆる毒や薬品を濾過して溜め込む臓器』で毒を蓄積させ、唾液に混ぜて相手に流し込んだのだ。
「あなたのボスにお伝え下さいね。今後も手を出す様なら次はあなたの番ですよ、と」
どうせこのような警官隊を飼っているのだから所属する警察署自体も腐敗し切っているだろうし、その上にはやはりメガコーポがある。口を離した途端仰向けに倒れ痙攣するその警官が上にそれを言葉で伝えられるかどうかは甚だ疑問だが、その無様な姿がそれ以上に雄弁に語ってくれるところであるだろう。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
岩社・サラ
アドリブ共闘歓迎
なるほど、強者には逆らわず自分の利益だけを追求する警官ですか。
世界が変わっても堕落した警官というものに変わりはないのですね。早急に排除しましょう。
透明化した敵に動き回られては厄介なのでUCでマーケットの店舗などを岩石化して敵を包囲しつつ押しつぶしていきましょう。
所で、無機物のみを岩石化するUCでマーケットにあった食品として置かれていた物も岩石に変化したように見えるのは……まあ、この際良いでしょう。
ついでです、そういった物は敵の頭の上まで移動させてからUCを解除。元の形に戻し落としてしまいましょう。
汚染された食品というのは偽の情報なのか、自分たちで味わってみては行かかでしょうか?
アスカ・ユークレース
成る程アウェー戦ですねこれは。燃えてきました。大丈夫ですよヤクザさん、これでも私結構強いので。
UCで糸を目立たないように隅々まで張り巡らせる
主な目的は足止めだけど、実は他にも狙いが。多分向こうが消えた時に分かるわね
足止めされた敵をスナイパーのクイックドロウで狙撃
消えた敵も同じ感じで対応
種明かし
あの技は隠れるだけ、透過する訳じゃない。物には触れる。先程の糸は見えない敵を感知するレーダーの役目もしてたのよ。
あとは卓越した視力と情報収集、瞬間思考の合わせ技で糸の僅かな振動を捉えてそこに向けて攻撃するだけ
糸を切る?そんなことしたらそれこそ目立ってしまうでしょうね?
アドリブ絡み歓迎
ニンジャ警官たちはこのマーケットを実質支配し、その利益を吸い上げている。だが、その全てが自分の懐に入っているわけではなく、相応の割合で『上』に納めさせられているのだろう。そうすることで、彼らはここの支配権を上から与えられているにすぎないのだ。
「なるほど、強者には逆らわず自分の利益だけを追求する警官ですか。世界が変わっても堕落した警官というものに変わりはないのですね。早急に排除しましょう」
岩社・サラ(岩石を操る傭兵・f31741)はどこにでもある公権力の腐敗と多層構造をいささかうんざりしたような心持で見るが、それ故に理解はしやすいしすべきことも見失わない。それをすべきと構える目の前で、ニンジャ警官たちはあくまで集団での包囲は解こうとしない。
「どうあっても正面からカチこむ気はねぇってか。サツの癖に腰抜けだな」
ただ戦い鎮圧するだけでなく、経緯や結果さえ都合のいい形で収めさせるためにジツを駆使するニンジャ警官。そうやって己の身と利益を守ってきただろう彼らにとっては、相手を逃げ場のない状態に追い込むことは当然の手段なのだろう。
「成る程アウェー戦ですねこれは。燃えてきました。大丈夫ですよヤクザさん、これでも私結構強いので」
だが、その状況でもアスカ・ユークレース(電子の射手・f03928)はおじけづく様子など見せない。ここに乗り込んできた以上この状況は予想できていたし、隣にいるヤクザの男がこうして命を取られるのを防ぐために共に戦うことにしたのだ。
「抜かすじゃねぇか。言った以上は責任取ってもらうからな」
つまりは頼りにしているということだろう。その意思を汲み、アスカはピストル式機械弩『フェイルノート』を警官にむけて放った。
高速で鋭い矢が発射されるが、しかしそれは何かに当たることはなく当たりの壁や地面に突き刺さるばかり。アスカはそれでも構わずに今度は広範囲に連射、さらには自分の近くにまで矢を放つも、結局それは敵に当たることなく辺りを穿つばかりであった。
「ち……何やってんだこの下手くそが!」
焦れたようにヤクザがチャカを撃とうとするが、手を出してアスカはそれを制する。
「敵の腕は大したことはない……ステスル・ジツで確実を期す!」
警官たちの姿が掻き消え、視聴覚での感知は不可能になる。ヤクザも機械仕掛けらしいサングラスにデータを浮かべて相手を探知しようとするが、やはりそれでもとらえきれないらしく銃口をあちこちに向けている。
このままでは見えない状況からやられてしまう……そう思った瞬間、アスカは抜き打ちに一射を放った。
「グワーッ!!」
その矢は一瞬空中で止まったかと思うと、悲鳴と共に警官の姿が現れその場に倒れ込んだ。さらに続けてアスカは次々と矢を放ち、今度はそれは全て見えないはずの警官に当たりその姿を露にさせていく。
「なんだこりゃあ……どうなってる?」
「種明かししますと、あの技は隠れるだけ、透過する訳じゃない。物には触れる。先程の糸は見えない敵を感知するレーダーの役目もしてたのです」
存在そのものを消す技でないならば、障害物を無視することは出来ない。そして外れた矢同士の間は、【via lattea】の見えづらい糸でつながれていた。
それに引っかかったニンジャ警官たちは体制を整えようと一旦下がる。が、少し下がった所でその背は何かにぶつかり止められた。
「透明化した敵に動き回られては厄介なのでUCでマーケットの店舗などを岩石化して敵を包囲しつつ押しつぶしていきましょう」
既に無人化した店舗を、サラが【土魔法「岩石の支配者」】で岩石群に変え周囲を囲ませていた。それはニンジャ警官たちが進軍している間に包囲を狭め、相手の逃げ道と行動範囲を塞いでいく。
「所で、無機物のみを岩石化するUCでマーケットにあった食品として置かれていた物も岩石に変化したように見えるのは……まあ、この際良いでしょう」
店にあるものを対象に取ったつもりだが、どうやらその中にあった本来生鮮食品、有機物であるはずのものが岩石に変わってしまった。恐らく中に含まれている汚染物質の量が多すぎて無機物と見なされてしまったのだろうが、これを食べ物として売ろうとしていたとはつくづく恐ろしい話である。
「仕方ない、体をデータに切り替えデンノーヒョーイせよ!」
最早行く道は前にしかない。ならばと体を透明なだけではなく、今度は電子データに変えデンノーヒョーイ・ジツを試みる警官たち。これならば張り巡らされた糸も通り抜け、直接相手に接触することができる。
「機械はそちらの専売特許ではありません」
その消えた辺りを、サラはフルフェイスマスクのバイザー越しに見た。ただのヘルメットではなく視野内の機械へのハッキングを補助できるそのマスクの視界には、データの異常値としてニンジャ警官たちの動きがはっきりと見える。仮面となって憑依しようとしても、データそのものがプロテクトもなく張り付いてくればこちらからもアクセスし放題だ。
それを警戒して元に戻れば、今度はまた張り巡らされた糸で居場所がばれる。
「糸を切る? そんなことしたらそれこそ目立ってしまうでしょうね?」
意図が大きく張ったのを感じ、切ろうとしているのを察したアスカがまたそこに一射。
もはやアンブッシュはならぬと、姿を現した警官たち。だが、それを待っていたとばかりにその頭上から巨大ななにかが降って来た。
それはサラが操作した岩石……ではなく、それを元に戻した巨大リンゴ。恐らく外のワックスが無機物扱いだったのだろう。
「うげっ、ぶ、ぶふぇっ!?」
頭に直撃し砕け散ったそれは、甘い匂いのする蜜を警官の頭にぶちまける。
「汚染された食品というのは偽の情報なのか、自分たちで味わってみては行かかでしょうか?」
「私の書き込みは消されちゃいましたので」
その蜜が口や鼻から入り、徐々に目の焦点が合わなくなっていく警官。
「おーおー気持ちよさそうじゃねぇか。大したもんだ」
その姿を見て、馬鹿にしたようにヤクザが言う。矢、岩、チャカ、そして汚染食材。どれを味わうかの選択を迫りつつ、三人は警官たちを掃討していくのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
雀堂・大夢
カタギが居ようとお構いなしってわけか
ヤクザもんにしたって見下げた連中だな
さぁ、お楽しみの時間だ
この世界の連中にはよく効くと思って編み出した技がある、試させてもらおうか
ニンジャ警官や猟兵、件のヤクザが入り乱れている所目掛けてUCを叩
ニンジャとかいうくらいだ、身のこなしや小道具なんかを使うんだろうが……これが当たりゃ、どちらも台無しだろう
麻痺で足が止まった警官なら件のヤクザでも相手は余裕のはずだ
こんなもんはただの喧嘩さ、大した騒ぎじゃねぇ……なら、お前も楽しまなきゃ損だぜ
件のヤクザの肩を叩いて、俺も【グラップル】やドスでの【切断】を駆使して喧嘩に参加する
荒事は考える事が楽だな
アドリブ連携歓迎
ニンジャ警官に取り囲まれた猟兵たち。仮にその囲みを突破したとしても、簡単にはこのマーケットから出ることは出来ないだろう。なぜなら、この場の出入り口は既に高い壁によって物理的に封鎖されてしまっているからだ。
もちろん猟兵であれば様々な手段でそれを破壊、解除することもできよう。だが、閉じ込められたのはそのような力を持つ者だけではない。
「カタギが居ようとお構いなしってわけか。ヤクザもんにしたって見下げた連中だな」
雀堂・大夢(中雀、大空を欲す・f36584)の言う通りに、ここには買い物に来た一般客も大勢いるのだ。当然彼らは閉鎖されている限りここから自力で脱出することなどできない。そしてニンジャ警官たちも、彼らを巻き込むことなど厭わずに大規模戦闘を開始した。何しろ事が収まりさえすれば話などいくらでももみ消し、改竄できるのだ。仮に犠牲が出たところで、全て『犯罪者』のせいにしてしまえばよい。
ヤクザとして最低限のルールである『カタギを巻き込まない』ということさえ守らない彼らに、『本物の仁義』を探す任侠である大夢の怒りは燃え上がる。
「敵はヤクザ、犯罪者である!」
相手がヤクザ者と見て、警官たちも嵩に懸かる。だが彼らのような悪の警官がいるのと同じように、この世界には正義のヤクザもまた存在するのだ。
「てめぇらの決めた法律なんざクソ喰らえだ、どうせ明日になりゃ都合よく変わってる紙っぺらだろうが!」
相手を犯罪者と決めつける警官の態度に、犯罪上等と一人のヤクザが答える。法をギリギリ侵さぬ恫喝ではなく法の外で正義を掲げるその姿は、まさに大夢と同じ任侠の男。ドスで躊躇なく警官たちの腹を突くその男を支えるかのように、大夢は両手をそちらに向けた。
「さぁ、お楽しみの時間だ。この世界の連中にはよく効くと思って編み出した技がある、試させてもらおうか」
両手から【閻魔・雷神掌】の稲妻が迸り、戦場全体を駆け巡った。
「グワーッ!?」
「イヤーッ!?」
それは次々とニンジャ警官たちに着弾し、その動きを止めていく。一部の警官は服や人工皮膚が焼けて剥がれその下の義体が露になるが、そこからは明らかに機械にとっては良くない黒い煙が立ち上っていた。
「おのれ、ならそちらから射さアイエエエ!?」
銃を抜いて後ろの大夢を撃とうとする警官もいるが、そこを狙って稲妻が落ち拳銃を弾けさせた。一見すればニューナンブのようなそれも、ずれた継ぎ目から煙が上がり配線のようなものが見えるあたり高度な機械技術で作られたものなのだろう。
「ニンジャとかいうくらいだ、身のこなしや小道具なんかを使うんだろうが……これが当たりゃ、どちらも台無しだろう」
機会に過剰な通電を施せばその内部は簡単に焼き切れる。もちろん体すら機械化するのが当然のこの世界なら誰しもその対策はしてあろうが、ユーベルコードという反則技を持ち込まれればそれも形無しである。
そして敵味方を識別できる稲妻が唯一堕ちなかったヤクザの肩を、大夢がぽんとたたく。
「こんなもんはただの喧嘩さ、大した騒ぎじゃねぇ……なら、お前も楽しまなきゃ損だぜ」
警官の姿をしているが、結局は相手もメガコーポというヤクザな組織の飼い犬であり汚い仕事で金を稼ぐごろつきなのだ。それと小さな組織の野良ヤクザが喧嘩をした……ただそれだけの話。上が一々出張ることもないし、いつまでも尾を引くような後腐れもない。
「なるほど、そういうことかよ。そりゃあ楽しまなきゃソンだよなぁ」
ヤクザが分かったような顔をし、よろよろと立ち上がりかけた一人の警官の頭を掴んで強引に引き起こしてその顔面にストレートパンチを決めた。
「ヤクザの喧嘩だ、わかってんだろ?」
別の警官に、大夢がドスの一撃を決める。それは鋼鉄の義体もろとも相手の体を切り裂く力強い一撃だ。
「誰にもの言ってやがる。お前どこの組のモンだ? こいつはうちの事務所で話聞かなきゃならねぇな」
同じようにヤクザも警官をドスで突くが、ブレードの振動はあえて切ってある。つまりは義体の壊れた相手に同じ条件で喧嘩してやる、ヤクザ流の仁義なのだろう。
「お手柔らかに頼むぜ」
恐らくは猟兵と言う存在についてじっくり聞きたいのだろうと察した大夢も、彼に倣いこれ以上の異能は使わずドスと拳だけで勝負をつけていく。
喧嘩の中心に荒れ狂う二羽の雀と一匹の猛牛。その前に汚い餌に慣れ切った飼い犬たちは全て叩き伏せられ、何の嘘も弁明も言えぬまま消えていくのであった。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 日常
『癒しの一杯』
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POW : 好きなドリンクでまずは乾杯
SPD : 安いがうまいと評判の料理を食べてみる
WIZ : 店主や他の客との会話を楽しむ
イラスト:鹿人
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
猟兵たちの活躍により、全て倒されたニンジャ警官たち。バックヤードなどを回りいくつかのコンピューターをヤクザが弄り回せば、マーケット事態の封鎖も簡単に解かれた。
「ここは今日で店じまいだ! 分かったらさっさと帰れ! ここで買ったもんは全部置いてきやがれ!」
ヤクザが上空に向けてチャカを撃ちながら叫ぶと、買い物客たちは一斉に買ったものを捨てその場から逃げ出した。
「おう、世話になったな。だがお前らにゃしてやらなきゃならねぇ礼がある。ツラかしな」
そのまま有無を言わせず猟兵たちを何処かへ案内するヤクザ。辿り着いたのは、林立するビルの間の薄暗い一角。
その奥で雑多に置かれたものの後ろに隠された扉を開け、ヤクザは猟兵たちを中へと誘う。扉をくぐって見れば、そこは暗めの照明が木目風に作られた壁を照らし、いくつかのテーブルが並ぶ空間……飲食店だ。
「俺だ! 帰ったぞ!」
ヤクザが奥に向けて怒鳴ると、そこから何人かの男が走って出てきた。
「お帰りなさいませ、カシラ!」
そう言って頭を下げる男たちはパンチパーマやスキンヘッドの、これまたいかにもチンピラといった感じの男たち。
「連中は潰してきた。上はまだ見えねぇが、捨てにかかるだろう」
何人かの猟兵が想像していた通り、あのニンジャ警官たちはただの末端、失敗すればすべての責任をかぶせられ切り捨てに会うだけ。当面これ以上の報復を恐れる必要はないだろう。
「お疲れ様でした! で、そちらは……」
そう言ってチンピラたちが、ヤクザの後ろにいる猟兵を見る。
「おう、俺もよく分からねぇがな、どうやらメガコーポに喧嘩を売りたがる組のモンらしい。どういうルートか知らねぇがウチ以上に情報があるみたいだ。こいつは盃交わしといて損はねぇだろ」
「へい!」
彼の物言いに慣れているのか、それだけで全てを察しチンピラたちは店の奥へと駆けて行った。しばらくして戻ってきた彼らが手にしていたのは大きな鍋。それをテーブルにのせ、手際よく火をつけていく。
「お前ら、シャブはキメたことがあるか? ウチは品質が自慢でな。吸引だけでブッ飛ぶぜ。粉を打つのが好きならそいつもある。豚野郎や雌豚も歓迎だ。液ものもあるが、こいつはやりすぎるとラリっちまうからな」
匂いだけで上物と分かる、と言いたいのだろう。実際にチンピラが次々運んでくる肉や野菜は色合いも良く、かといって妙な大きさもない、他の世界で出されても違和感のないものばかりだ。豚肉やうどんも用意され、飲めるのならば酒も出してくれるということだろう。
もちろんサイバーザナドゥである以上100%天然というわけではあるまいが、少なくとも味と組成に問題があるものでないのは確かだ。あるいはこれを紹介したグリモア猟兵も機械の体を持つ故、彼女を呼べばもう少し細かい説明をしてくれるかもしれない。
この世界にも確かに存在する食の楽しみ。それを体に流し込み、ハッピーな気分をキメるといい。
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎
■行動
あの様な市場とは、比較するのも失礼な程素晴らしい品質ですねぇ。
お邪魔させて頂きますぅ。
私が普段の基準で頂いてしまいますと、色々と問題が有りますからねぇ。
【豊饒宿霊】で[グルメ知識]を強化、素材等の僅かな違いを感じつつ、所謂「常識的な量」の範囲で味わうことに致しましょう。
「お肉」や「お饂飩」を中心に、シャイニーさんをお呼びして「素材」の情報を確認しつつ、「素材を活かした新メニュー」を検討しても面白そうですぅ。
それと、申し訳有りませんが。
料金はきちんとお支払いしますので、「御土産」を購入させて頂いても?
事情が有って来ることが出来ず、とても残念そうにされていた方がおりまして。
マーケットを潰したヤクザに案内されてやってきたのは、彼の組が主なシノギとしているしゃぶしゃぶ屋。色々と誤解を招く件のヤクザの物言いを一瞬で理解する彼の部下たちが用意したのは、まさにしゃぶしゃぶ用の薄切り肉とたくさんの野菜だ。それは一見何の変哲もない普通の食材だが、その普通さが何よりの価値であることをこの世界に訪れた猟兵は知っている。
「あの様な市場とは、比較するのも失礼な程素晴らしい品質ですねぇ。お邪魔させて頂きますぅ」
特に食にこだわりのある夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)は、直前にマーケットで見た汚染食材とは比べるべくもないその真っ当さに感心しつつ、それを頂くこととする。
「おう、ああいうのが出回っちゃウチまで巻き添え食いかねねぇからな。それに比べりゃ安いもんだ。好きなだけやれ」
ヤクザはそう言うが、その心遣いは嬉しく思いつつもるこるは自制を心がける。
「私が普段の基準で頂いてしまいますと、色々と問題が有りますからねぇ」
何しろその気になればほぼ無限に食べられるのだ。当然ながら彼がそんなもの想定しているとは思えないし、そう言った形で迷惑をかけるのは本意ではない。
「大いなる豊饒の女神、古の使徒よりの豊かなる恵みをお貸しくださいませ」
そこでるこるは【豊乳女神の加護・豊饒宿霊】を発動、グルメについての知識を強化し、質の面からこのしゃぶしゃぶを味わうこととした。
素材の僅かな違いをも察知できる味覚と知識を動員してそれを食べてみれば、ある意味当然ながらそれはまごうことなきしゃぶしゃぶだ。当たり前の話だが、変な薬物などは一切混入されていない。
ただ、この世界においてはその『普通であること』が『あり得ないくらい珍しいこと』でもあるのだ。その秘密については、ある意味でこのサイバーザナドゥと似通った部分のあるスペースシップワールド出身者であり、全身が機械でできているような者に聞いてみるのが早い。
その要請を受けこの依頼を紹介したグリモア猟兵であるシャイニー・デュールが同じ席に着き、その目に内蔵された高性能カメラで出された食材を検分していた。
「ふむ、組成については完全に通常の肉、野菜と同じでござるな。含まれる栄養についても過不足は見られませぬ。恐らく、どこかで作っているにしても『肉の材料を使って肉を作る』といった工程で作られているのではないかと。饂飩につきましても、組成は間違いなく小麦粉でその中にも余計な薬剤は含まれておりませぬ。その材料の出所や栽培法までは分かりませぬが……そこはヤクザ殿を信用してよい部分かと」
どんな物体だろうと極限までばらせば原子の集合体である。それを適切に組み合わせれば理論上どんな物質も作れるし、そこまで行かなくとも化学的な組成が分かっていればそれを錬成してほぼ同等の物質を作ることもできる。これ自体はサイバーザナドゥでは食品だけでなく義体や医療、その他嗜好品などあらゆるジャンルで行われていることだ。それを粗悪な代替品や余剰品で行っていたのが件の汚染食材であり、限りなく本物に近い素材を厳選し行っているのがここで出される食材たちということなのだろう。
「細けえこと気にする奴らだな。お前らみたいな客がいるから手が抜けねぇんだよ」
どこか嬉しそうに言うヤクザの声は、この世界ではめったにない『食へのこだわり』が見られたことへの喜びか。
「それでしたら、今度は『冷しゃぶ』など如何でしょう。一度しゃぶしゃぶした豚肉を冷やし、お野菜と一緒に頂く料理なのですが」
組成が普通の肉と同じなら、他の料理法も通じるはず。るこるは豚肉はあれど冷しゃぶがないのを見てそれを提案してみる。
「あ? せっかく風呂に沈めたのをまたアイス決めさせるってか? まあ、お前が言うんだ、その内試してみるか」
その辺りの探求心や好奇心もあるのだろう、やはり彼らしい表現で好意的な返事をするヤクザ。その代わりと言ってはなんだが、るこるはもう一つ頼みごとをしてみる。
「それと、申し訳有りませんが。料金はきちんとお支払いしますので、「御土産」を購入させて頂いても? 事情が有って来ることが出来ず、とても残念そうにされていた方がおりまして」
おみやの注文。誰に持っていくのかはっきりとは言わないが、出発前のブリーフィングを思い返せば大体想像はつく。なお同席している同僚のはずのウォーマシンは分かっていないようである。
「あ? 構わねぇが、ハコにぶち込んできっちりヤキは入れとけよ。ほったらかして何が起きても俺は知らねぇぞ」
つまりきちんと保管し、熱を通して食えということだろう。生肉を扱うのだから当たり前と言えばそうなのだが、一カ月放置して腐らないような肉を少し前に見てきたのだからその当り前が素晴らしく見えてしまうのも致し方なし。
その後も、るこるはいたって健全な『普通の』しゃぶしゃぶを、常識的な量でおいしくいただくのであった。
大成功
🔵🔵🔵
岩社・サラ
spd
アドリブ等歓迎
あれだけの騒ぎですしあのマーケットでの活動はもはやできないでしょう。
作戦は終了しましたが、お礼と言うことですので食事をいただきましょう。
しかし、諸々の名称が特殊ですね……この世界での言い方ということではなさそうですし、職業的な事情というものでしょうか?
まあ、言い方がどうであれ内容が真っ当ならば問題はないです。
とくに今日は度を越した汚染食品を目の当たりにしましたからね。普通に食すことのできる食品という物へのありがたみを感じながら食事をしましょう。
折角ですしグリモア猟兵のシャイニーさんから細かい説明を聞いたり会話を楽しみながら食事をするというのも良いかもしれませんね。
新田・にこたま
メガコーポにとっては目障りな商売かもですが、特に違法営業をやっているというわけではないのなら業界用語を変に使わなくてもいいのでは…『薬局』のシノギをしていると誤解されますよ。
それが許せないという私のような警官もゼロではないのですから、この商売を長く続けたいんなら余計な諍いの種は潰しておくべきです。
…などとぐだぐだ言いながらもしゃぶしゃぶは食べます。育ち盛りなので。そして久しぶりに天然物に近い食事ができるので。
こういう時は店主のオススメを食べるとハズレはないものです。
ヤクザのアドバイスに従いながら食事を進めましょう。
グリモア猟兵さんも一緒に食べましょう。
ヤクザさん、この人が一番の功労者ですよ。
ヤクザが自分の店に猟兵たちを招いた理由、それは彼の汚染食材マーケットへのカチコミを猟兵が手伝ったからであった。その方法もそれぞれの手段で売られているものの危険性を大々的に公表し、さらにその場を封鎖して鎮圧に現れた警官たちも正面からなぎ倒すというものだ。
「あれだけの騒ぎですしあのマーケットでの活動はもはやできないでしょう」
元々そこを潰し、それ以上の汚染食材の流通を止めるのが目的。注目を集めるのはむしろ望むところだし、直接目にした客たちも今後は『食材の安全性』というものについて考えるようにもなるだろう。岩社・サラ(岩石を操る傭兵・f31741)の言う通り、同じ場所で同じようなことはもう出来ないと言っていいだろう。
望む以上の結果をもたらしたのだ。ヤクザの側としても礼をするのが筋というものだし、それを拒む理由もあるまい。
「作戦は終了しましたが、お礼と言うことですので食事をいただきましょう」
彼の所属組織が経営するしゃぶしゃぶ屋に案内され、その食事を提供された猟兵たち。汚染食材に怒りを見せるだけあり、その品質は比べ物にならないほどに上等だ。
「どうだ? 混ぜモンなしの上物だ。一度キメたら癖になるぜ」
実際常連客が着くのも納得の味わいなのだが、それ以上に気になることが一つ。
「しかし、諸々の名称が特殊ですね……この世界での言い方ということではなさそうですし、職業的な事情というものでしょうか?」
とにかくこのヤクザ、誤解を招く表現が多い。依頼の始め、予知の段階では彼の方が討伐対象だと勘違いした猟兵もいたかもしれないほどだ。
「メガコーポにとっては目障りな商売かもですが、特に違法営業をやっているというわけではないのなら業界用語を変に使わなくてもいいのでは……『薬局』のシノギをしていると誤解されますよ」
新田・にこたま(普通の武装警官・f36679)が警告する通り、無用の誤解はいらないトラブルを生む。確かにヤクザ者に隠語は付き物だが、彼の商売自体はこの上なく健全そのものなのだ。
「そのメガコーポどもに目障りだってのが面倒くせぇんだよ。連中が撒くヤクは白にされるが、こっちのシャブはでっちあげでも黒にされる」
ニンジャ警官たちがまさにそうだったように、この世界の警察は『法の番人』であってもその法自体に公正さの欠片もないのだ。
それでも、付け入られる隙は無くしておくべき。
「それが許せないという私のような警官もゼロではないのですから、この商売を長く続けたいんなら余計な諍いの種は潰しておくべきです」
まさににこたま自身が、疑わしきときは『正義』の光で全てを照らす警察官である。悪徳警官に慣れ切ったヤクザには逆に信じがたいかもしれないが、正義に燃える警官だってこの世界には僅かながら存在するのだ。
「まあ、言い方がどうであれ内容が真っ当ならば問題はないです」
最も結局は名より実。サラもその辺の疑問は適当に脇に置いて食事を楽しんでいるし、当のにこたま自身もぐだぐだとヤクザに説教してはいるがその育ち盛りの体に久しぶりの天然物の食事を遺憾なく摂取している。
「とくに今日は度を越した汚染食品を目の当たりにしましたからね。普通に食すことのできる食品という物へのありがたみを感じながら食事をしましょう」
「こういう時は店主のオススメを食べるとハズレはないものです。いいものをお願いします」
普通であることが既に上質の証。さらにそれを何種類も取り揃えている彼のオススメとあれば、かなりの期待が持てるというものだろう。
「口じゃ色々言っててても体は正直ってやつか? そうだな、こいつは赤と白の配合具合がかなり細かく計算されてる。その分手間がかかって値も張るが……忘れられなくなるぜ」
そうして出して来るのは霜降りロース。その皿を受け取り、サラはまず同席させたグリモア猟兵シャイニーに検分させてみる。
「これは赤身と脂身の合成率がかなり緻密に作られていますな。別々に作って合成とか後から注入ではなく、予めこうなるようしっかり調整されております。高コストですがそれに相応しいものではあるかと」
どうやらかなり入念な製造法が取られているらしく、その手間は天然の霜降り牛を育てるのと実質変わらないレベル。実際それをしゃぶしゃぶして食べてみれば、溶けだす脂と赤身のバランスが程よく肉の旨味が染み出して来る。
「さっきもいたが、このデカい女は何なんだ? 頭脳戦車にしちゃ人型すぎるしよ」
流石のサイバーザナドゥも科学技術ではスペースシップワールドには一歩劣る。99%機械の人間はいても、命と自我を持った機械はフィクションの世界と思っている彼にはウォーマシンはいささか理解しがたいものらしい。
「グリモア猟兵さんも一緒に食べましょう。ヤクザさん、この人が一番の功労者ですよ」
「いえ、拙者は紹介するばかり。実際に危険を冒し、正義を成してくださる皆様こそが一番の兵(つわもの)にござる」
説明ばかりではなく彼女にもと肉を差し出すにこたま。それを受け取りながら、シャイニーは二人に改めて頭を下げる。
「よくは分からねぇが、情報屋みたいなもんか? ま、そっちもワケありの業界ってことだろ。深くは聞かねぇよ」
どんな業種であれ企業秘密はあるし、情報ルートというものは生命線だ。例え協力関係にあっても深掘りしない方がいい場所というのがあるというその考えは、まさにヤクザである彼だからこその発想だろう。
「なら、もっと色々お話ししましょう。その方が食事もよりおいしくなります」
サラが会話をしながら食事を楽しもうと言い、一同もそれに乗る。そこから時に難解な専門用語や誤解を招く表現が飛び交いながらも、一同は美味しく食事を勧めていくのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
雀堂・大夢
いつもならひとりで飲むのが趣味なんだが…まあ、せっかくだしな
日本酒やウイスキーも良いが、こういうとこならビールが良いな
あのマーケットの食材には面食らったもんだが、こっちは良い場所のようだ
とはいえ、こっちの食材にはまだ詳しくねぇ…あのでかいグリモア猟兵のお嬢ちゃんに聞けばわかるだろうか?
悪いが誰か、どれが何の肉か教えてくれ
野菜は…まあ、適当で良いだろう
そういや、マーケットで俺がどこの組の者か聞かれたな
俺の居た組は、こっちには無いも同然だ…と言う事はつまり、俺はカタギも同然ってワケだな
いや、笑い事じゃなくてだな…
こういう自分の場所があるってのは良いもんだな
俺もどこか、こういう場所を見つけたいもんだ
アスカ・ユークレース
ふむ。ここがヤクザさんのシノギですか。
さっそくキメてみるとみましょう、私結構味にはうるさいですよ……うっま。
霜降りの柔らかいブツから噛めば噛むほど溢れる汁、気分で変えられるタレ……天然物とほぼ遜色ないくらいの味と品質……悪くないわね……
王道に飽きてきたら、ハッパ(サンチュ)に巻いてみるのも中々乙なものですね……
合法なのにこんなに中毒性があるなんてある意味危険……(モグモグ)体型的な意味で……すみませんおかわりを…
〆は粉と液……ウドンとお酒を一杯いただきましょうか。
アドリブ絡み歓迎
ヤクザに案内された店の中は、やや抑え気味の照明が木目調の壁を照らしているという落ち着いた内装であった。それはまさに映画でヤクザが密談しているような怪しい料理店を彷彿とさせるものでもあったが、元をただせばそれはそれなりにいい食事をするための雰囲気出しのためのもの。
そしてその店で、ヤクザがヤクザに歓待を受けていた。
「いつもならひとりで飲むのが趣味なんだが……まあ、せっかくだしな。日本酒やウイスキーも良いが、こういうとこならビールが良いな」
「おう、任せときな。さあ、やってくれ」
雀堂・大夢(中雀、大空を欲す・f36584)の注文に、案内したヤクザが瓶からグラスにビールを注ぐ。わざわざ瓶を回しラベルを上にしてから注いでいるあたり、その辺の作法は弁えている……あるいはそれも雰囲気を作る要素として勉強しているのだろう。
そして卓の中心では、大きな鍋が湯気を立てていた。その中には既に多くの野菜が入れられており、さらに鍋の周りには薄切りの肉が並べられた皿が置かれている。
その肉を一枚、アスカ・ユークレース(電子の射手・f03928)が箸で取って鍋に入れる。
「ふむ。ここがヤクザさんのシノギですか。さっそくキメてみるとみましょう、私結構味にはうるさいですよ……」
そうして鍋の中で数回振って、タレに着けて一口。
「うっま」
即時陥落であった。
「霜降りの柔らかいブツから噛めば噛むほど溢れる汁、気分で変えられるタレ……天然物とほぼ遜色ないくらいの味と品質……悪くないわね……」
その姿をヤクザがどこか得意げに見る。一度味わったら止められないという言葉がただのうぬぼれではないことを示すその姿に、大夢もそれを味わってみようとする。
「とはいえ、こっちの食材にはまだ詳しくねぇ……あのでかいグリモア猟兵のお嬢ちゃんに聞けばわかるだろうか? 悪いが誰か、どれが何の肉か教えてくれ」
お呼びとあらばと移動してきたグリモア猟兵シャイニー・デュール。別の宅でもそうしてきた通り、彼女はカメラアイで肉を確認しその組成を説明する。
「簡単に言いますれば、この赤身の強い方が牛肉で淡い桃色の方が豚肉でござる」
「肉は赤けりゃいいってもんじゃねぇ。合成タンパク質を赤く染めて肉と言い張る奴もいるが、俺から言わせりゃそんなもん外道よ」
基本的には他の世界と同じように、色や味、食感、脂の入り方で判別すればいい。だがそういう『普通の判別法』が通じるということは、製造手段はともかくとしてこれが紛れもない『食肉』だということの証でもある。
「野菜は……まあ、適当で良いだろう」
鍋の中から雑多に野菜を掴む大夢。だが、そこを適当で済まさせないのがアスカの方だ。
「王道に飽きてきたら、ハッパ(サンチュ)に巻いてみるのも中々乙なものですね……」
こちらは熱々のしゃぶしゃぶを薄い葉物野菜で食べるという食べ方。サンチュは別名を包菜というだけあり、まさにそうすることに適した大きさや柔らかさを持つハッパだ。
「お、いいキメ方知ってるじゃねぇか。じゃあこいつも分かるだろ。そいつはアブリでやると特にキマるぜ」
配下のチンピラに指示し、小さな鉄板を用意させてその上でロース肉を炙り焼きにするヤクザ。それをアスカがサンチュで包み食べてみれば、肉の濃さとサンチュのさっぱり感がうまく取り持ち合って濃さと爽やかさが同時に味わえる一品に。
「合法なのにこんなに中毒性があるなんてある意味危険……体型的な意味で……すみませんおかわりを……」
モグモグと口を動かしながら要求するアスカの姿は、すっかりやめられなくなってしまった者のそれ。その声に応え、即座に配下たちが新しい皿を持ってくる。
そんなハッピーな食事中だが、そう言えばヤクザはそもそもこちらの素性を良く知らないのだったと大夢は思い出した。
「そういや、マーケットで俺がどこの組の者か聞かれたな。俺の居た組は、こっちには無いも同然だ……と言う事はつまり、俺はカタギも同然ってワケだな」
当然ながら、どんな組織だろうと世界をまたいで活動しているものなどない。例えばこの世界を支配するメガコーポ群だって、他の世界では存在を知られてすらいない。猟兵や一部のオブリビオンが特殊過ぎる例外なだけなのだ。大夢の組もまたそうだと答えれば、ヤクザは笑う。
「なるほど、あくまで組織は関係ない、野良犬の独断ってわけか。忠義モンだな」
「いや、笑い事じゃなくてだな……」
万一敵組織に捕まる、あるいは殺されることがあっても全ては自分の責任にする。その覚悟が決まっているのだとヤクザは取ったのだろう。あるいは彼自身今回のカチコミでしくじったらそうするつもりだったのかもしれない。
その組への忠義、そしてこの『シノギ』への命を懸けた誇りこそが、彼の『仁義』なのだろうと、大夢は改めて思う。
「こういう自分の場所があるってのは良いもんだな。俺もどこか、こういう場所を見つけたいもんだ」
その言葉は心の中だけで。きっとその場所に、自分の探す『本物の仁義』もある。
「〆は粉と液……ウドンとお酒を一杯いただきましょうか」
その仁義が齎すものは、白い粉の塊と意識を乱す液体をキメたアスカのほんのり染まった笑顔が何よりも雄弁に物語っている。
「おう。粉はその肉をつけたタレで流しな。そっちから溶けた奴がもう一度入ってきてフラッシュバックするからよ」
肉をつけた汁を捨てるのは余りにも勿体ない。溶けだした旨味を絡めた上でいただくのがシメの醍醐味と、アスカはいい感じに薄まったタレと一緒に饂飩をすすり、最後に一杯飲んで締めとする。
ここに交わされた盃は、きっといい縁となる。それを確信させる席であった。
大成功
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宮村・若葉
リリー先生(f30386)と
●心情
嫌いなタイプの相手をたおしてすっきりしました
なるほどぉ、独特な表現は把握できました。鍋物と、お酒、ですねぇ
私はまだ未成年なのでお酒は遠慮します
んー…せっかくのお祝いですし、もっと上の最上級品を…私達の方で用意してみましょうか?
今後、またご縁があった時もよろしくおねがいしますね、の意味も込めて…とリリー先生と目配せ
あとは、ニコニコとマイペースに食べて過ごします
●持ち込み
…というわけで、持ち込める範囲で別の世界の肉や野菜を持ち込んで『友好の証』としてふるまいましょうか
入手ルートは…内緒ですよぉ…
これで、またお会いした時はより『お願い』がしやすくなると良いですねぇ
リーゼロッテ・ローデンヴァルト
※アドリブ絡み歓迎
若葉さん(f27457)とシャブ堪能
アタシはアラサーだし酒も程々に頂こうか
お、スゴい…確かにここらじゃ中々味わえない上物♪
あ、カシラさん。ケガはない?診せて
アタシは闇医者でね、ヤクザでも全然大丈夫さ
そういや、アンタや組の名前って何?
(物怖じせず診察、ユベコ由来の《医術》活用)
どこのモン?メガコーポみたく気に入らない奴を
一発シメたいヨタモノの集団…それが猟兵さ
総じてクセが強いけど、腕は御覧の通り
そして情報以外に物資もソコソコ潤沢でね
お近づきの印にどう?(若葉さんの持込品を示す)
また何かあったら首突っ込むけど大丈夫?
勿論シマは荒らさないさ…おいし♪
(〆のうどんを啜りつつ筋を通す)
思い思いに上物を楽しむ猟兵たち。だが、その中にはまだ何もキメないう力笑顔の者もいた。
「嫌いなタイプの相手をたおしてすっきりしました」
宮村・若葉(愛に飢えた脳筋お嬢さん・f27457)はそもそもは己の経験から、汚染食材マーケットのような犯罪組織が許しておけない故の依頼参加であった。その組織、そしてそこを仕切っていた悪徳警官にその罪の報いをしっかり受けさせたうえで壊滅させたとあって、この時点で十分に気分は晴れやかとなっていた。
もちろんそれはそれとして、礼を貰えるなら貰わねば損。現地で偶然合流した知り合いであるリーゼロッテ・ローデンヴァルト(マッド&セクシーなリリー先生・f30386)と共に、シャブを堪能するつもりであった。
「なるほどぉ、独特な表現は把握できました。鍋物と、お酒、ですねぇ。私はまだ未成年なのでお酒は遠慮します」
彼の表現はかなり独特で誤解を与えるものが多いが、目の前に出された者と照らし合わせれば何のことを言っているのかはわかる。そうなれば別の法律で規制されているものは別として、問題なく合法的に頂いても何も問題はないものばかりだ。
「アタシはアラサーだし酒も程々に頂こうか。お、スゴい……確かにここらじゃ中々味わえない上物♪」
そしてその規制もないリーゼロッテは、そちらの『液体』の方も存分に堪能していた。やはりこの世界、純粋なアルコールに色を付けただけのものや下手をすれば『メ』の方を出されかねない(そしてそれを飲んでも義体によって問題ない)場合もあるのだが、こちらはやはり一般的な製法で作られた『酒』である。
「あ、カシラさん。ケガはない? 診せて。アタシは闇医者でね、ヤクザでも全然大丈夫さ」
そうして手元不確かにならない程度に飲んでから、何ら物怖じなくヤクザの診察を始めるリーゼロッテ。ヤクザは元々肌を曝すような服装をしている上、あのニンジャ警官たちもサンシタとはいえオブリビオンのニンジャ、それと正面から殴り合ったとあってはそれ相応に傷も入っているというもの。
「そいつは有り難いな。何しろこの業界、医者に行くだけでも一苦労なもんでな」
保険証がない、という話ではなく、この世界では医者はサイバネ技師も兼ねている。当然それ相応に金はとられるし、さらには警察同様病院だってそれなりの規模のものは大抵メガコーポと通じている。そこと敵対している彼のような者にとっては医者に行ったら怪我が増えたという事態にすらなりかねないのだ。
そんな彼にとってはリーゼロッテの『闇医者』と言う肩書はある種の信頼感すらおけるもの。もちろんクロムキャバリア出身のリーゼロッテの事、義体の修理だって通常の医療行為と同じ感覚で行える。
「大変だねぇ。アンタの未来に平穏のあらん事を。んじゃ、イキますかっ♡」
言いながら【Op.NULL:REMAIN CALM】の力で、外の傷のみならず義体をハックしその中のプログラムまでしっかり調整しておく。サイバーザナドゥの高度、難解なプログラムでもその瞬間思考力の前にはスパゲティどころか一本饂飩も同然だ。
その技術はまさに最上。だが、技術がそうであるように食事、食材にも上には上がある。
「んー……せっかくのお祝いですし、もっと上の最上級品を……私達の方で用意してみましょうか?」
実は若葉はそんなことを事前にリーゼロッテと話し合っていた。確かにヤクザの用意する肉は丹精込めて作られた上物。だが、彼自身ここの出身である以上は100%の本物を味わったことはないだろう。彼がそれを知れば、己の目指すべき場所がより明確化するのでは。
その糸を確認するよう若葉とリーゼロッテは視線を躱しつつ、診察がてらリーゼロッテが話をそちら側へ誘導していく。
「どこのモン? メガコーポみたく気に入らない奴を一発シメたいヨタモノの集団……それが猟兵さ。総じてクセが強いけど、腕は御覧の通り」
ヤクザも猟兵と言う言葉はちらと聞いたが、それが何を意味するのか分かってはいない。そんな相手に骸の海の正体や36の世界などいきなり話しても理解は出来なかろうとして、必要な情報を彼に理解できる言葉で纏めて説明する。そして、その猟兵なる集団が如何な力を持っているか。それはあのマーケットでの出来事と、前以上に綺麗になった己の体が物語っているだろう。
「ああ、よく分かったぜ。とんでもねぇクセ者揃いだってこともな」
理解の及ばぬ力、理解できても追いつけないような力。それを存分に見せられたのだ。それを否定するほど彼の頭は固くない。
「そして情報以外に物資もソコソコ潤沢でね。お近づきの印にどう?」
そしてここが本題。リーゼロッテの示す方を見れば、ニコニコと食事を楽しんでいた若葉の手元にいつの間にか大きめの箱が。
「開けてもいいか? ……な、なんだこりゃあ!?」
そこに入っていたのは可能な範囲で持ち込んだ他世界の肉や野菜。その色や形、質などは見ればわかる……あるいは見ても信じられないくらいの上物だ。
「『友好の証』です。入手ルートは……内緒ですよぉ……」
笑顔を崩さぬまま言う若葉だが、その変わらぬ笑顔もこの状況ではちょっとした交渉術にもなる。
「当り前だ……こんなもん仕入れられると外に知れたら戦争だ……」
彼の感覚では、メガコーポでも持っていないだろう最上級の食料製造技術を想像しているのだろう。あるいは時間と労力を惜しまず手をかけた畜産と酪農……それこそがこの世界では忘れ去られた最高の製造法なのかもしれない。
「また何かあったら首突っ込むけど大丈夫? 勿論シマは荒らさないさ……おいし♪」
〆のうどんを啜りつつその辺りの筋は通しながらも、恩は売り、自分の力も見せつける。まさにヤクザ者同士の、穏やかな中に剣呑さ、一種のマウントの取り合いも含めた友好協定。
「これで、またお会いした時はより『お願い』がしやすくなると良いですねぇ」
若葉の笑顔も、そう聞けばまさにそう見えてくるし、それだからこそヤクザも彼女たちに改めて一目置くことになるだろう。
最後までおいしくいただき、宴会も無事お開き。だが、ここで一つリーゼロッテが効き忘れていることがあるのに気が付いた。
「そういや、アンタや組の名前って何?」
彼はここに来るまで単独で動いていたこともあり、組織の名を出していなかった。それに気づき、ヤクザは改めて居住まいを正す。
「おっと、これは失礼してたな。当方『食鮮組』若頭、以後よろしくお願いしやす!」
大股を開き頭を下げるヤクザ。ここに、猟兵とヤクザ者の協定が結ばれたのであった。
大成功
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