11
陥ちた月光城を調査せよ

#ダークセイヴァー #月光城 #グリモアエフェクト #月の眼の紋章

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#ダークセイヴァー
🔒
#月光城
🔒
#グリモアエフェクト
🔒
#月の眼の紋章


0




「事件発生です。リムは猟兵に出撃を要請します」
 グリモアベースに招かれた猟兵達の前で、グリモア猟兵のリミティア・スカイクラッド(勿忘草の魔女・f08099)は淡々とした口調で語りだした。
「グリモアエフェクトの発動により、ダークセイヴァーの『月光城』について新たな事実を予知することができました」
 月光城とはダークセイヴァー第五層に存在する「月の満ち欠けに呼応して輝く」特性がある城塞で、それぞれに「月光城の主」と呼ばれる強大なオブリビオンが君臨している。
 地下世界でありながら空中に見える「月」の謎にまつわるものとして、常闇の燎原とも並行して調査が進められている案件だった。

「この月光城がいつ造られたかは不明ですが、城塞である以上は『なんらかの外敵』からこの階層のヴァンパイアが自身の支配領域を防衛すべく作り上げたものと推測されます」
 裏を返すとそれは、この階層を支配する『第五の貴族』でさえ警戒せねばならないような外敵が存在する事になる。グリモアエフェクトにより判明したのは、まさにその外敵にまつわる情報だった。
「遠い昔に、既に『外敵』に攻め落とされた月光城の所在を、リムのグリモアは予知しました。ここを調査すれば、月にまつわる真実に近付くことができるかもしれません」
 強大な「月光城の主」すら打倒する外敵がまだこの世界に存在するのなら、それは猟兵にとっても脅威になりうる。謎が謎を呼ぶ月の秘密に、より切り込む必要があるようだ。

「『外敵』との戦いによって、今は無人の廃墟と化した地下都市の旧市街地に、月光城はありました。その周辺は深い森となっていて、簡単に訪れることはできないようです」
 この森には侵入者を迷わせる作用があり、一度入れば暗闇と地形のせいで進むべき方向を見失いやすい。もし遭難すればそのまま二度と森の外には出られず、野垂れ死ぬ可能性すらあるだろう。
「迷わないように何らかの対策は必要でしょう。まずはここを攻略して、問題の旧市街地に向かって下さい」
 遠い昔に放棄されたらしい廃墟の地下都市には、オブリビオンも含めて住人はいない。
 かつて月光城があった場所も、そうと知らねば分からぬほど、激しく破壊されている。

「唯一残っている者がいるとすれば、それはかつてこの地を統べた『月光城の主』です。外敵に敗北したものの、オブリビオンとして再び蘇ったと考えられます」
 かつての主は既に理性を喪失しており、侵入者を見つければ妄執のままに襲い掛かってくる。その性質は「自分が死ぬか、この地に踏み入った者を全員殺すまでひたすら攻撃を行い続ける」というもので、戦って倒す他に退ける手段はない。
「幸いなのは、月光城の主の力の源だった『月の眼の紋章』が、ほぼ力を失っていることでしょう」
 月の眼の紋章は捕らえた人間の数に応じて融合者を超強化する紋章だが、今この廃墟にエネルギー源となる人間はいない。せいぜい「紋章から飛び出す棘鞭」による追加攻撃を行える程度だろう。理性を失っている事も含めて、全盛期の城主ほどの脅威ではない。

「ですが油断しないでください。リムのグリモアはその先にある『大いなる危機』の予感を訴えています」
 かつての城主を倒した後に何が起こるのか、まだ詳細を予知することはできなかった。
 最大限の警戒をもって調査にあたり、何が起こっても全力で対処する事が求められる。
 それだけ危険度の高い依頼ということだが、月の秘密を解き明かすためにはあえて危険に挑む必要があるのだ。ここで調査の手を止めるわけにはいかない。

「くれぐれもご用心を。皆様ならどんな脅威も退けられるとリムは信じています」
 そう言ってリミティアは手のひらにグリモアを浮かべ、ダークセイヴァーへ道を開く。
 果たして月光城とは何なのか、外敵とは一体何者なのか――真実に迫る冒険が始まる。
「転送準備完了です。リムは武運を祈っています」



 こんにちは、戌です。
 今回のシナリオはダークセイヴァーにて、謎の「外敵」の手によって攻め落とされた月光城の調査を行う依頼となります。

 1章は廃墟と化した地下都市に向かう道中の冒険です。
 この辺りは深い森となっており、侵入者を道に迷わせます。行き先を見失わないように対策が必要でしょう。幸いにして魔獣などの脅威はいないようです。

 2章は旧市街地にて、蘇生したかつての「月光城の主」との戦闘です。
 理性を喪失しており、融合した紋章もほぼ力を失っているため、かつてほどの力はありませんが、それでも強敵です。
 侵入者がいなくなるか自分が死ぬまで決して攻撃を止めることはなく、交渉等で情報を引き出す余地はありません。

 3章で何が起こるのかは現段階では不明です。
 実際にこの章まで到達してから、改めて断章で詳細を説明致します。

 グリモアエフェクトの発動が、この世界の新たな真実を暴くのでしょうか。
 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
288




第1章 冒険 『迷い森の夜鳴き』

POW   :    灯りをともして進む。

SPD   :    暗闇をみとおし進む。

WIZ   :    耳をすまして進む。

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ロラン・ヒュッテンブレナー
○アドリブ絡みOK

攻め落とされた月光城…
あれだけの儀礼と月光の力がないと対抗できない相手の調査
”月”の秘密に迫れるなら、こわいけど、【勇気】を出して進むしかないね

森を歩くのは慣れてるんだけど、ちょっと違和感があるね
意識にもやがかかってるような?
桃の精さん、ぼくが迷わないよう、見守っててね?
桃の香りの闘気で【落ち着い】て、人狼の、狼の嗅覚と聴覚【聞き耳】、魔術士としての魔力感知【第六感】で、月光城の満月の魔力の残滓を辿るの

目に見えるものじゃなくて、人狼として月を、魔術師として魔力を手掛かりに森を進むよ



「攻め落とされた月光城……あれだけの儀礼と月光の力がないと対抗できない相手の調査」
 以前に別の月光城を調査し、その城主の力も身を以て体感しているロラン・ヒュッテンブレナー(人狼の電脳魔術士・f04258)は、今回の依頼の重要性をよく理解していた。
「"月"の秘密に迫れるなら、こわいけど、進むしかないね」
 危険は百も承知のうえで、勇気を出して歩きだす。深まる月の謎を解き明かす手がかりがこの先にあると信じて、目指すはかつて月光城があった旧市街地。その最初の関門は、鬱蒼と生い茂る迷いの森だ。

「森を歩くのは慣れてるんだけど、ちょっと違和感があるね。意識にもやがかかってるような?」
 一歩足を踏み入れた時から、ロランはここがただの森林ではないのを感じ取っていた。
 不気味なほどの静けさと暗闇に包まれた森の中には標となる道などなく、どれだけ歩いても先が見えないほど深い。招かれざる者を拒む緑の迷宮だ。
「桃の精さん、ぼくが迷わないよう、見守っててね?」
 慌てて遭難しないように、ロランは【魔符桃香】のサシェの香りで落ち着きを保つ。
 この香袋の中には桃の精から授けられた花びらが入っており、そこから立ち昇る気には浄化と癒しの効能がある。迷いの森の魔力を退ける一助になることだろう。

「よし、行こう」
 頭の中のもやがすっと晴れたのを感じると、ロランは狼の耳をぴこぴこと揺らして辺りの様子を探る。人狼が持つ鋭敏な嗅覚や聴覚を活かして、森の出口を見付けるつもりだ。
「……こっちから、月の魔力を感じるね」
 頼りにするのは五感だけではない。人狼にして魔術士でもある彼は、魔力を感知する力も優れている。特に人狼としての性質上「月」の魔力には敏感で、これを利用した魔術は彼の専門分野の一つでもある。

(目に見えるものじゃなくて、人狼として月を、魔術師として魔力を手掛かりにしよう)
 研ぎ澄まされたロランの第六感は、森の彼方から微かに月の魔力が漂ってきているのを感じていた。破壊された今でも月光城に宿っていた満月の魔力が残留しているようだ。
「これなら迷わずにすみそうだよ」
 彼はその満月の魔力の残滓を辿って進む。相変わらず辺りは自分の足元すら見えないほど暗いが、もう迷う心配はなかった。人狼の鼻は一度嗅ぎつけた目標は決して忘れない。

「うん。魔力が強くなってきた」
 さくりさくりと土を踏む小さな足音が、森の中に木霊する。耳に痛いほどの静寂も今は気にならない。ほのかに香る桃の花が、この方角で間違いないと自信を持たせてくれる。
 人狼魔術士の少年は淀みない足取りで森を攻略し、かつての月光城に向かうのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カビパン・カピパン
道中を歩くカビパンは退屈であった。
(グリモア猟兵のマネしてみよ)

「事件発生だ。猟書家カビパンが出撃を要請する(キリッ」
「INU製作総指揮について新たな発見をした」
「ちなみにこれはアイエヌユー製作総指揮と読む。なので世界の修正力には当てはまらないだろう」
「新発見とはもしかしたら、ZYUTU製作総指揮かもしれないという可能性があるということだ」
「皆にはこの謎を解明してもらいたい。だが気を付けて欲しい」
「真実に近づきすぎると自主規制の名の下に己の存在ごと削除される」
「なぜそうなるかは分からない…だが、何か裏があると確信している。私達の知らない何かが」
「転送準備完了だ。謎を解明するまで帰ってくるなよ」



「ああ、暇だわ」
 破壊された月光城までの道中を歩きながら、カビパン・カピパン(女教皇 ただし貧乏性・f24111)はひどく退屈した様子で呟いた。特にこれといった対策もなく迷いの森に踏み込んだ彼女は、かれこれ長いこと同じ場所を彷徨っていた。
(グリモア猟兵のマネしてみよ)
 適当に歩き続ければいつかは出られると考えているのか、彼女に慌てる様子はない。
 それまでどうやって退屈を紛らわせるか考えた結果、思いついたのは何故かモノマネであった。

「事件発生だ。猟書家カビパンが出撃を要請する」
 瀟洒な軍服姿でキリッとした表情を浮かべ、いかめしい口調で語り始めるカビパン。
 もちろん迷いの森の中でそれを聞いている相手などいやしない。一人芝居ではあるが、彼女はめげる様子もなく、しんと静まり返った森に己の声を響かせる。
「INU製作総指揮について新たな発見をした。ちなみにこれはアイエヌユー製作総指揮と読む。なので世界の修正力には当てはまらないだろう」
 誰だよそれはとツッコミを入れる人間も、残念なことにいない。彼女が主導する映画にたびたび名前の挙がる「製作総指揮」なる謎の人物だが、その正体は謎に包まれていた。

「新発見とはもしかしたら、ZYUTU製作総指揮かもしれないという可能性があるということだ」
 いやだから誰だよとツッコむ人間はやはりいない。謎の人物同士の同一人物説があったところで、それで何が明らかになると言うのだろう。余計混乱するだけではなかろうか。
「皆にはこの謎を解明してもらいたい」
 それでもなおカビパンは至極真面目な顔で無理難題を依頼する。実質なんの手がかりもない状況で解明しろと言われても依頼されたほうも困るだろう。だが彼女にそんなマトモな理屈は通用しないのである。

「だが気を付けて欲しい。真実に近づきすぎると自主規制の名の下に己の存在ごと削除される」
 さらにカビパンは声音をひそめて警告する。だいぶメタメタしいことを言っているが、つまりそれは近付いてはいけないということでは無かろうか。世の中には知らないほうが良いことだってあるのだが――好奇心カビを殺すとことわざにもある。
「なぜそうなるかは分からない……だが、何か裏があると確信している。私達の知らない何かが」
 それでも彼女は諦めない。暗い森で繰り広げられる一人芝居にはいっそう熱がこもり、バシバシとハリセンの音が響き渡る。そっちよりもできれば月光城の謎を優先してほしいと思うのは野暮であろう。

「転送準備完了だ。謎を解明するまで帰ってくるなよ」
 最後にとびきりのパワハラをかまして、カビパンのグリモア猟兵ごっこは終了した。
 森の攻略はまったく進んでいないが、何かをやり遂げたような満足げな顔をしている。
「まあ私、グリモア持ってないから歩くしかないんだけど」
 結果としては【ハリセンで叩かずにはいられない女】の作用で環境がギャグ化したことにより迷いの森の力が薄れ、無事に外に出ることができたのだが。果たしてカビパンは謎をマジメに解く気があるのか、それこそが最大の謎かもしれない――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フォルク・リア
「月光城程の物を築く力を持った者の『外敵』か。
しかも城の主を滅ぼすなら決して侮る事はできない。
……願わくば相討ちになっているかどこかで
朽ち果てていて欲しいが、
それは都合が良すぎるだろうね。」
と思いを巡らせるが答えが出るものでもなく。

アンノウンブレスを発動。
幽霊を呼び出して超感覚を利用して周囲を調査させる。
自身はフレイムテイルの炎で周辺を照らして地形を把握したり
木や岩に傷をつけたり特徴的な地形は記憶して
迷わない様にする。
幽霊が調査をして出口への道のりの目途が付いたら
慎重に地図を書きながらそちらへ向かう。
「城に辿り着くだけでもこれだけ苦労させられるとは。
これからはより注意しないといけないか。」



「月光城程の物を築く力を持った者の『外敵』か。しかも城の主を滅ぼすなら決して侮る事はできない」
 未知なる脅威に強い警戒心を抱くのはフォルク・リア(黄泉への導・f05375)。彼も月光城の探索の過程でその城主の実力を知る者の1人であり、それを倒すのがいかに困難かを知っている。
「……願わくば相討ちになっているかどこかで朽ち果てていて欲しいが、それは都合が良すぎるだろうね」
 と思いを巡らせるが答えが出るものでもなく。全ての真相は現地に向かって確かめる他にない。そのためにはまず、目前に広がる迷いの森を攻略するところから始めなければ。

「地の底に眠る不明なる霊。呪われたる棺の蓋を開きて、その異能を存分に振るい。我に仇なすものを退け、我と共に歩む者を助ける力となれ」
 フォルクが【アンノウンブレス】の呪文を唱えると、地底から禍々しい棺群が現れる。
 その中より膨大な呪詛と共に放たれるは、絶えず様々に姿を変える正体不明の幽霊達。
「さあ、行け」
 死霊術士であるフォルクは彼らを自らの手足のごとく使役し、森の偵察にあたらせる。
 それは生者にない超感覚を備え、こうした不自然な環境の探索にはうってつけだろう。

「随分深い森だね」
 幽霊に周囲を調査させながら、フォルク自身は黒手袋型の魔本「フレイムテイル」から炎を放ち周辺を照らす。暗闇が晴れて明らかとなった森の景色は、どこまでも鬱蒼と生い茂る木々と植物の迷路であった。
「目印を忘れると、引き返す事すらできなくなりそうだ」
 彼は道々の木や岩に傷をつけていき、特徴的な地形は記憶して迷わないように努める。
 どこまで歩いても同じような景色ばかりが続いているように見えるが、よく観察すれば違いは見つかるものだ。今は先を急ぐよりも、道を見失わないことを優先する。

「おや、戻ってきたか」
 そうしてフォルクが先に進むうちに、幽霊達が調査から帰ってくる。テレパシーにより意思疎通を行ったところ、どうやらこの先で古い建物の遺構らしきものを見たらしい。
(かつての市街地の一部が、年月を経て森に呑み込まれたものだろうか)
 恐らくその考えに間違いはない。出口への道のりの目処を付けた彼は、ゆらゆらと揺らめく幽霊達の先導の元、ペンと紙を手に持ち、地図を書きながら慎重にそちらへ向かう。

「城に辿り着くだけでもこれだけ苦労させられるとは。これからはより注意しないといけないか」
 以前にもまして難しい調査になるであろうことを肌で実感しつつ、それでもフォルクは先に進む。月光城にまつわる謎を明らかにするには、ここで引き下がる訳にはいかない。
 知られざる真相を追求せんと、魔術の探求者は1歩ずつ迷いの森の先に進むのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

七那原・望
月光城が城塞であったとして、月光城を攻め滅ぼしうる相手がいるなら……いえ、城塞を作って戦っていた相手がいるなら、月光城と関係のある月って結界のようなものなのでは……?
流石に地底を照らすだけのものとも思えないのですよね……

わたし自身は暗闇には慣れてるのでいつもどおり風や音の反響を聞き耳でを感じ取りながら第六感と野生の勘を駆使して森を抜けましょう。

周囲に外敵がいないのであれば癒竜の大聖炎を光源として用意しましょうか。
わたし自身には意味のないものですけど、120個の内いくつかはアマービレで召喚したねこさん達の視界確保に使えますし、残りは定期的に置いておけば他の猟兵の為の光源や目印になるでしょうから。



「月光城が城塞であったとして、月光城を攻め滅ぼしうる相手がいるなら……いえ、城塞を作って戦っていた相手がいるなら、月光城と関係のある月って結界のようなものなのでは……?」
 今回明らかになった事実をもとに、七那原・望(封印されし果実・f04836)はそんな考察を行っていた。未知の『外敵』なるものが第五の貴族にとって余程の脅威であれば、その侵入を阻む措置が層全体に施されていてもおかしくはない。
「流石に地底を照らすだけのものとも思えないのですよね……」
 ただの照明ならばあれほど精巧に作る必要もないだろう。少し前までは当たり前に空に浮いていると思っていたそれは、この世界で重要な役割を果たしていたのかもしれない。

「ほんとうのところは、まだ分かりませんけど」
 それを知るためにも望は『外敵』に滅ぼされたという地下都市に向かう。道中では暗く深い迷いの森が行く手を阻むが、彼女には他の猟兵と比べてひとつ有利な要素があった。
(わたし自身は暗闇には慣れてるのでいつもどおりです)
 日頃から封印の目隠しにて視覚を封じられている望には、周りが暗かろうと関係ない。
 行動において主に頼りとするのは聴覚。風や音の反響に耳を澄ませて感じ取り、周りの地形を把握する能力に彼女は長けていた。

「動物の気配や足音はしませんね。静かな森なのです」
 鋭い聴覚に加えて第六感や野生の勘なども駆使し、迷いの森の中をてくてくと進む望。
 どうやら周囲に外敵となりうる生物はいないらしい。それならばと彼女は詠唱を行い、【癒竜の大聖炎】を発動する。
「癒しと為り邪悪を祓え」
 祈りに応えて少女の元に現れるのは竜の焔。最愛の人に贈られたこの力は邪悪を祓い、毒を浄化し負傷を治癒する効果を持つが、今回は純粋に松明の代わりとしてのみ用いる。

「わたし自身には意味のないものですけど、ねこさん達の視界確保に使えますし」
 120個に分かれた焔が辺りを照らしたところで、望は白いタクト「共達・アマービレ」に付いた鈴を鳴らし、沢山の魔法猫を呼び寄せる。友であるこの子達の協力が得られれば、森の探索もよりスムーズに進むだろう。
「よろしくお願いしますね」
 望の求めにねこさんはにゃあんと鳴いて散っていき、竜焔の光源の下で目を光らせる。
 1人より2人、2人より10匹。人(猫)海戦術で探索の範囲を広げた少女と猫達は、安全かつ迅速に迷いの森の出口を導きだしていく。

「残りは定期的に置いておけば、他の猟兵の為の光源や目印になるでしょう」
 森の先へと向かう道すがら、望はぽつりぽつりと癒竜の炎を足跡のように残していく。
 暗闇の中にあっても、はっきりと浮かび上がるその灯火は、きっと後続の助けとなる。
 これでよしと小さく微笑みながら、少女は焔と猫と鈴の音を連れて先に進むのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シキ・ジルモント
この世界が闇に包まれているのはいつもの事だ
森の闇にも落ち着いて、ゴーグルの暗視機能を使って視界を確保する

銃の手入れに使うガンオイルを、地面に少量ずつ垂らしながら先へ
機械油の独特の匂いは目立つ、植物ばかりの森の中では特に分かりやすい
匂いから離れるように歩けば先へ進めるし、匂いを追えば迷わず戻ることも出来るだろう
これを道迷いの防止に利用する
獣の特徴を併せ持つ人狼だ、不本意ながらヒトより少しばかり鼻が利くからな

月の秘密にも興味はあるが、強力な外敵とは…
そんなものを放置するのはあまりに危険
いつか月光城だけでなく人の街にまで被害が出るかもしれない
その外敵が人の驚異となり得るのか、早急に確かめる必要がある



「この世界が闇に包まれているのはいつもの事だ」
 ダークセイヴァーでの活動に熟練したシキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)は、森の闇にも落ち着いて、装着しているゴーグルの暗視機能を使って視界を確保する。
 レンズ越しに浮かび上がる景色は、どこまでも続く深い樹海。この先に『外敵』により滅ぼされた月光城と都市があるというが、さてどちらに向かったものか。
「視界が晴れても油断はできないな」
 気を引き締めて五感を研ぎ澄ませ、迷いの森の探索を開始する。ただ闇雲に歩き回っても逆に帰路が分からなくなるだけだろうが、彼はそのための対策と目印を用意していた。

(機械油の独特の匂いは目立つ、植物ばかりの森の中では特に分かりやすい)
 シキは銃の手入れに使うガンオイルの蓋を開け、地面に少量ずつ垂らしつつ先に進む。
 ぽたりと地面に染みたオイルの匂いは、なるほど自然の匂いとは明らかに異質なもの。彼はこれを道迷いの防止に利用するつもりのようだ。
(匂いから離れるように歩けば先へ進めるし、匂いを追えば迷わず戻ることも出来るだろう)
 草木や土の匂いに紛れたオイルの臭気を、シキの鼻は敏感に嗅ぎ分ける。日頃から使用して嗅ぎ慣れている匂いというのもあるが、何メートルも離れた場所からそれを察知できるのは驚くべき嗅覚だ。

「獣の特徴を併せ持つ人狼だ、不本意ながらヒトより少しばかり鼻が利くからな」
 呪わしい病の特徴ではあるが、こうした冒険では役に立つケースが少なくないのもまた悩ましいところ。今はその特性を存分に活かすことにして、人狼のガンナーは先へ進む。
「方角はこちらで合っているようだな」
 出口を目指すにあたっては、先行する猟兵達が残した痕跡も手がかりになった。足跡や木や岩についた傷、照明の灯りなども手がかりにしていけば、森の攻略は順調に進んだ。

「月の秘密にも興味はあるが、強力な外敵とは……」
 森の道中でシキが考えるのは、やはり今回明らかとなった『外敵』についてだった。
 月光城という砦を複数築き、強力な城主を配置するほどヴァンパイア達が警戒する敵。それでも陥落した城が存在するという事実が、凄まじい脅威を物語っている。
(そんなものを放置するのはあまりに危険。いつか月光城だけでなく人の街にまで被害が出るかもしれない)
 敵の敵は味方などという甘い考えは持つべきではないだろう。最悪、両者の戦いに無辜の人間が巻き込まれる恐れもある。弱き者が怪物の被害にあう危険性を彼は忌んでいた。

(その外敵が人の驚異となり得るのか、早急に確かめる必要がある)
 もし、それが吸血鬼だけでなく人にも仇なす存在だと分かれば、その時は――機械油の匂いを嗅ぎ分けながら、シキはホルスターに収めた拳銃の感触を確かめる。恩人から受け継いだこの銃は、これまでにも数多の怪物を撃ち抜いてきた彼の相棒だ。
「……空気が変わってきたな」
 森の出口が近いのだろう。吹き抜けてくる風を肌で感じると、シキの歩調は速くなる。
 破壊された月光城には『外敵』の手がかりもあるはず。真実を突き止める旅路は佳境に差し掛かっていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鏡島・嵐
ヴァンパイア連中でさえ脅威に感じる外敵、か。敵の敵は味方じゃなくて、もっとおっかねえ敵と来たもんだ。
どんな“敵”が待ち構えてるんか正直想像もしたくねえけど……ともあれ、行って確かめないとな。この世界の真実、その一端ってヤツを。

迷いの森ってやつか。まっとうな地図も無えし、厄介だな。
認識を誤らせる「何か」が見つかれば、他の仲間が通る助けになるかもしれねえし、探してみるか。
UCで〈失せ物探し〉のための〈第六感〉を強化して、正しい道順とか、道に迷う原因とかを探りつつ進んでいく。

それにしても、一体誰を迷わせる目的でこんな森を作ったんだか。
案外、“外敵”ってのを外に出さねえためだったりして、な。



「ヴァンパイア連中でさえ脅威に感じる外敵、か。敵の敵は味方じゃなくて、もっとおっかねえ敵と来たもんだ」
 徐々に明らかとなるダークセイヴァーの恐ろしい真相に、鏡島・嵐(星読みの渡り鳥・f03812)はぶるりと身を震わせて肩をすくめる。日の届かない地下世界の空気が、今は一段と肌寒く感じる。
「どんな"敵"が待ち構えてるんか正直想像もしたくねえけど……ともあれ、行って確かめないとな。この世界の真実、その一端ってヤツを」
 戦うのは怖いが、逃げても何も解決しない。臆病な青年はだからこそ勇気を振り絞り、謎を解き明かすための調査に乗り出す。その最初の関門となるのは、破壊された市街地の周辺一帯を覆う深い森だ。

「迷いの森ってやつか。まっとうな地図も無えし、厄介だな」
 ただ深く暗いだけではない、踏み入った者の方向感覚を惑わせる緑の迷宮。そこに足を踏み入れた嵐は、一体何がこの場所を「迷いの森」たらしめているのかが気にかかった。
「認識を誤らせる『何か』が見つかれば、他の仲間が通る助けになるかもしれねえし、探してみるか」
 【残されし十二番目の贈り物】を発動し、失せ物探しを行うための第六感を強化する。
 暗闇を物ともしない程に研ぎ澄まされていく感覚。これなら道に迷うこともあるまい。

「占いの真似事なんてガラじゃねえけど……茨の迷宮、百歳の夢、其を切り拓く導を此処に!」
 占星術師だった祖母から学んだ知識を元に、嵐はこの森を満たす違和感の正体を突き止めようとする。一見するとごく自然の森林のようだが、ここには間違いなく何かがある。
「……なんか、妙な音がするな」
 よくよく耳を澄ませれば聴こえてくるのは、鳥の夜鳴きのような音。この音が侵入者を道に迷わせる原因だと、彼は直感的に理解した。音源を突き止めようとすると逆に鳴き声は遠ざかっていき、下手をすると余計に道に迷いそうだ。

「森自体に仕掛けられたトラップみたいなもんかな」
 厄介な呪いじみたものだと嵐は眉をひそめつつ、夜鳴きの影響を受けないように意識を集中する。原因を取り除くことはできなくても、理解すれば対処のしようはあるものだ。
「ようは適当に歩いてるだけだと、この音につられて知らず知らずのうちに別の方角に行っちまうんだな」
 そこから逆算すれば出口までの正しい道順もわかる。聴覚と直感を研ぎ澄ませたまま、彼は祖母に手ほどきされた占いの技能を頼りにして、迷いなく森の奥へと進んでいった。

「それにしても、一体誰を迷わせる目的でこんな森を作ったんだか」
 さくさくと土を踏む自分の足音を聞きながら、嵐はぽつりと呟く。ここまでで得た情報や自分の見識と照らし合わせても、この森林はただの自然現象ではない。何らかの意図や悪意をもって人を拒もうとしている。
「案外、"外敵"ってのを外に出さねえためだったりして、な」
 内への侵入を防ぐ防壁ではなく、外からの脱出を阻止するための牢獄――それも十分にあり得る話だ。様々な可能性を考慮に入れつつ、彼は真相を突き止めるために先を急ぐ。生い茂る木々の狭間から、森の出口がうっすらと見えはじめていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…今まで私達が見ていたのは、この世界のほんの一部に過ぎなかった

…ならば、まだまだ解明されていない真実も沢山あるのでしょうね

…だからと言って、諦めて投げ出すつもりは毛頭無いわ
上層であれ、大いなる危機とやらが相手であれ、私の為すべき事に変わりはないもの

…人類に今一度の繁栄を。そして、この世界に救済を…

…今まで通り、誓いを胸に一歩一歩、進んで往くだけよ

UCを発動し「封魂、地縛鎖、破魔、狩人、動物会話」の呪詛を付与
●破魔の魔力を溜めた両眼で幻術等があれば破り、
●動物達の会話に有益な情報が無いか耳を澄ませ、
吉凶を占う●道術を用いて進むべき道を見定め、
●地形の利用を行う●サバイバル技術を駆使し城跡を目指す



「……今まで私達が見ていたのは、この世界のほんの一部に過ぎなかった」
 ヴァンパイアが支配する暗黒の世界。それもダークセイヴァーの一面でしか無かったのだと、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は思い知らされる気分だった。近年この世界に関する秘密や新たな脅威が、続々と明らかになりつつある。
「……ならば、まだまだ解明されていない真実も沢山あるのでしょうね」
 調べれば調べるほどに謎は深まり、一体どこまで進めば真相にたどり着けるのだろう。
 四層に希望の兆しが見える一方で、世界の闇はより広く、深みを増している気がした。

「……だからと言って、諦めて投げ出すつもりは毛頭無いわ。上層であれ、大いなる危機とやらが相手であれ、私の為すべき事に変わりはないもの」
 敵の強大さ、秘密の深淵さをより強く肌で感じた今だからこそ、リーヴァルディは己の誓いを強く心に刻む。それは片時も忘れたことのない、もっとも大切な彼女の行動原理。
「……人類に今一度の繁栄を。そして、この世界に救済を……」
 その為に彼女は今日まで戦い続けてきたし、強大な敵にも立ち向かってきたのだから。
 今はなき大切な者達から受け継いだ誓い。こんな道半ばで朽ちさせる訳にはいかない。

「……今まで通り、誓いを胸に一歩一歩、進んで往くだけよ」
 誓いと覚悟を抱いて歩きだすリーヴァルディの全身が、朧げな呪詛のオーラをまとう。
 【吸血鬼狩りの業・千変の型】にて、現在の環境に最適な術式を瞬時に換装したのだ。
「……迷いの森程度に、私の歩みを止められはしない」
 変身や幻術を打ち破る"破魔の呪詛"を宿した両眼は、侵入者を迷わせようとする森の惑わしを看破し、正しい景色を映しだす。どんなに深くて暗い森だろうと、作為的な幻惑がなければ、この世界の環境に慣れた彼女にとっては恐れるほどのものではない。

「……危険な魔獣はいなくても、まったく動物が棲んでいないわけはないでしょう」
 リーヴァルディは耳を澄ませ、森に住まう動物達の会話に意識を傾ける。"動物会話の呪詛"を付与した今の彼女には、獣の鳴き声が人語をぺらぺらと話すように聴こえていた。
『また、アイツが森の近くまで来てた』
『近づかないようにしよう』
 ほとんどはエサなどに関する他愛のない話だが、中には有益な情報も紛れこんでいる。
 森の生物達が恐れる"アイツ"。それが破壊された旧市街地にいるという脅威のことではないかと考えた彼女は、あえて獣達が近寄らない方角へと足を進める。

「……方位は凶、と。つまりこの方角で正しいようね」
 "封魂の呪詛"の力で吉凶を占う道術を用いてみれば、この先に凶兆ありとの卦が出た。あえて危険に挑もうとしているリーヴァルディからすれば、それは寧ろ吉兆。大地の魔力情報を吸い上げる"地縛鎖の呪詛"も活かして、森の出口までの道のりを導きだす。
「……大いなる脅威とやらが何であれ、人の世に仇なすのなら狩るだけよ」
 険しい自然をものともせずに慣れた足取りで行く、それは"狩人の呪詛"の作用によるもの。使命を果たす為に編みだした様々な術式を駆使して、吸血鬼狩人は前進する――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
危地に踏み入るは騎士の務め
どのような危機と真実が待ち受けようと、打ち祓い解き明かさねばなりません

さて、こうした森林に脚を踏み入れるのも慣れて参りましたね

暗視機能にて視界に支障無し
木々の梢、その先に機械妖精を観測ドローン代わりに飛ばして遠方の旧市街を観測
空の妖精と森の中を進む私自身の位置関係を無線通信にて把握し、電子頭脳の瞬間思考力にてマッピングを行えば迷う事は有りません

……とはいえ、足元には注意が必要ですが
自重の関係でこうした泥濘に嵌ると厄介ですからね……
迂回も手ですが、付近に大木は…

脚部スラスターの推力移動も併用
マルチセンサーや妖精を用い位置を把握した木々の幹を蹴りつけ空中を移動し奥地へ



「危地に踏み入るは騎士の務め」
 この先にいかなる脅威が待ち受けているかを知った上で、トリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)は断言する。御伽噺のように弱きを助け強きを挫く騎士たらんとする者が、ここで退いてなるものか。
「どのような危機と真実が待ち受けようと、打ち祓い解き明かさねばなりません」
 真相の究明、並びに脅威の排除。二つの使命をインプットして機械の騎士は歩きだす。
 目的地である破壊された月光城の旧市街地までの道程には、深い森が横たわっていた。

「さて、こうした森林に脚を踏み入れるのも慣れて参りましたね」
 故郷では見ることの難しかった天然の森を、トリテレイアは暗視機能付きのカメラアイで見回す。視界に支障はなく、足取りもしっかりしたもの。さらに肩部の【自律式妖精型ロボ 格納・コントロールユニット】から観測ドローン代わりに機械妖精を飛ばす。
「御伽噺の騎士に導き手の妖精はつきものです……これは偽物なのですが」
 森の木々よりも高い空域に達した鈍色の妖精達は、望遠視覚にて遠方にある旧市街地を観測する。ここからではまだ精確には見えないが、年月で風化した広大な人工物の痕跡が確かにそこにはあった。観測されたデータは即座に本機たるトリテレイアに送信される。

「これでもはや迷う事は有りません」
 空の妖精と森の中を進む自分自身の位置関係を無線通信にて把握し、電子頭脳の瞬間思考力を活かしてマッピングを行うトリテレイア。この世界の水準を大きく超えたテクノロジーの前では、迷いの森も形無しである。
「……とはいえ、足元には注意が必要ですが」
 上空の視界を機械妖精により手に入れた彼が気にするのは、足元の地面のほうだった。
 人の手が入らない深い森は、それ自体が迷路でありトラップの宝庫でもある。足を取られやすい木の根や、落ち葉に隠された泥溜まりなど、注意すべきものは無数にある。

「自重の関係でこうした泥濘に嵌ると厄介ですからね……迂回も手ですが、付近に大木は……」
 敵と戦う前に泥沼に落ちて脱落など笑い話にもならない。トリテレイアが辺りを見回すと、丁度よい位置に太い樹木がそびえ立っていた。彼は軽く助走をつけて脚部スラスターも起動し、その体躯に見合わぬ大ジャンプを披露する。
「ここは可能な限り、最短ルートを進ませて頂きましょう」
 泥濘を飛び越えた後に木の幹を蹴りつけ、方向転換しつつさらに跳ぶ。向かった先にはまた別の樹木があり、それも足場にしてまた次の木へ。機体に搭載されたマルチセンサーと妖精の知覚により、木々の位置を的確に把握していなければできない芸当だ。

「この調子であれば、目的地まで後三十分程ですね」
 重力を無視したような挙動で障害を乗り越え、森の奥地へと進みながら、トリテレイアは旧市街までの所要時間を計算する。妖精達のナビゲートにも現状で支障は出ていない。
 果たしてそこに待ち受ける脅威は、この程度の障害物とは比較になるまい。警戒を緩めぬよう気を引き締めながら、機械騎士は迷いの森を進撃するのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

館野・敬輔
アドリブ連携大歓迎

第五の貴族ですら警戒するような外敵?
しかも…紋章持ちを撃退する程の力を持つのか?
…とにかく、今は廃墟に向かうしかないか

侵入者を迷わせる、迷いの森か
となると「暗視」のほうが視界を広く確保できて迷わないかもしれない
「視力、暗視」で周囲を見渡しながら「失せ物探し、地形の利用、世界知識」で地面を観察し
隠されたり見えづらい道を慎重に見極めながら進もう
判断に迷ったら指定UCの未来視に頼るけど

魔獣の類はいないと聞いたが
念のため「第六感」で周囲に注意は払っておこう
地下都市が廃墟になっているなら
この森もまた、放置された森のはず
人の手が入らない森にどんな危険が潜んでいるか、予測が難しいからな



「第五の貴族ですら警戒するような外敵? しかも……紋章持ちを撃退する程の力を持つのか?」
 グリモアエフェクトが明らかにした新たな脅威の存在に、館野・敬輔(人間の黒騎士・f14505)は驚きを隠せなかった。この世界で生まれ育ち、黒騎士として長年戦い続けてきた彼でも、未だ知らざる謎がここには山積みだ。
「……とにかく、今は廃墟に向かうしかないか」
 その外敵とやらの力が如何程のものだったのか。まずは現地に赴き確認しなければ何も分からない。だが、破壊された旧市街までの道程には、広大な森が立ちはだかっていた。

「侵入者を迷わせる、迷いの森か。となると暗視のほうが視界を広く確保できて迷わないかもしれない」
 照明を用意することも考えた敬輔だが、彼には暗視能力もあった。夜行性の獣のように森の闇を見通し、周囲を見渡しながら地面の観察を行う。鬱蒼と生い茂る木々の中から、正しい道を探しだすために。
「道なんてあって無いようなものでも、こうした地形には必ず抜け方があるからな」
 隠されたものを見つけ出し、特殊な地形に適応する。どちらも彼の得手とする分野だ。
 また、この世界で生きてきた彼にとっては、こうした深い森も初めて見る物ではない。積み重ねた経験や知識も探索で大いに活用できた。

「足跡がある。他の猟兵のものか」
 先行する味方が残していった痕跡も手がかりにして、迷わないよう慎重に道を見極めながら進む敬輔。今回の依頼は急を要する事態というわけではなし、多少時間はかかっても安全性を重視する判断は正しいだろう。
「ここは……判断に迷うな」
 手がかりが途絶えた場合には【絶望の福音】を使用。僅か10秒とはいえ先を見通せる未来視のユーベルコードは、探索においても有益だった。未来の自分がどの進路を選び、どんな事態に直面するのか。それを"視た"うえで彼は移動を再開する。

(魔獣の類はいないと聞いたが、念のため周囲に注意は払っておこう)
 暗視の力で行く手を見据える一方で、敬輔の第六感は辺りの気配に敏感になっていた。
 今のところ感じられるのは虫や小動物などの気配が主だ。絶望の福音にも自分が襲われる未来は視えない。が、それでも彼が警戒を緩めることはなかった。
(地下都市が廃墟になっているなら、この森もまた、放置された森のはず。人の手が入らない森にどんな危険が潜んでいるか、予測が難しいからな)
 少しでも大きな獣の気配があれば、迂回してでも遭遇を避ける。本命となる廃墟都市に辿り着く前に、道中で体力を消耗するようなことは避けたい。こうした点でも彼の判断は常に冷静であり慎重を期していた。

「そろそろ出口か」
 夜闇と未来を見通す青と赤のオッドアイが、進むべき道へとまっすぐに視線を向ける。
 ここまでは何事もなかったが、この先はそうもいくまい。手に馴染んだ黒剣の柄の感触を確かめながら、敬輔は静かに迷いの森を行く――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

オリヴィア・ローゼンタール
外敵、ですか
異端の神々ならば予知でそうと出そうですが、また違う、と……
傲慢たる吸血鬼、それも紋章を備えた者さえも警戒せざるを得ない相手とはいったい……

【守護霊獣の召喚】で呼び出した黄金の獅子に跨る(騎乗・動物使い)
私自身の闇を見通す目(暗視・視力)、獅子の聴力(聞き耳)で、用心深く(集中力・落ち着き)森を進む

ここに棲む野良犬や猫、鼠に鳥でもいれば【動物と話す】ことで何らかの【情報収集】ができるかもしれませんが……

あとは目印になりそうな木があれば、聖槍で切り傷を付ける
邪悪な力で再生や成長することで消されるかもしれないので、穂先のルーンを焼き付け(属性攻撃・破魔)て、【浄化】の刻印を刻み付ける



「外敵、ですか。異端の神々ならば予知でそうと出そうですが、また違う、と……」
 これまで戦ってきた敵とは異種なる存在の予兆に、オリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)は眉をひそめる。二層に渡ってダークセイヴァーでの戦いを続けてきた猟兵達だが、今回予知されたのはまったく未知の脅威らしい。
「傲慢たる吸血鬼、それも紋章を備えた者さえも警戒せざるを得ない相手とはいったい……」
 警戒を強めながらも、真相を突き止める為に彼女は行く。斯様な脅威がまだ現地に実在するのならば、それが吸血鬼だけでなく人にも仇なす前に戦わなければならないだろう。

「天来せよ、我が守護霊獣!」
 オリヴィアは【守護霊獣の召喚】で呼び出した黄金の獅子に跨り、迷いの森を駆ける。
 頼りとするのは己自身の闇を見通す視力と、鋭敏なる獅子の聴力。不気味な森の暗さや迷路のような複雑な地形に惑わされず、用心深く落ち着いて先に進む。
「見たところは自然の森のようですが、油断はできませんね」
 彼女の金眼には怪しいものは映っていないが、獅子の耳は鳥の鳴き声のような奇妙な音を察知していた。この鳴き声が踏み入るものを道に迷わせる原因なのか――気を引き締めてかからなければ、森歩きに慣れた者でも遭難の恐れはある。

「ここに棲む野良犬や猫、鼠に鳥でもいれば何らかの情報収集ができるかもしれませんが……」
 森の奥へと進みながらオリヴィアが辺りを見回してみると、木の梢にとまった小鳥や、草むらに隠れた小動物の姿が見つかった。ここには危険な魔獣などは棲息していないとの話だったが、まったく動物がいないわけではないようだ。
「少し聞きたいことがあるのですが」
『ピィッ、なぁに?』
 動物と話す力を使って会話を試みると、森の動物達は比較的友好な反応を返してきた。
 人間がここにやって来るのは久方ぶりゆえ、好奇や物珍しさもあったのかもしれない。

『古い町とかお城とか? それならこっちだよ』
『でも気を付けて。そこにはこわーいのがいるから』
 動物との対話はオリヴィアに幾つかの有益な情報をもたらした。目的地までの正しい方角や、現地を徘徊する脅威について。後者は獣達も噂程度でしか知らないようだったが、かつての月光城周辺に"何か"がいるのは確定らしい。
「ありがとうございました」
『またねー』
 獣達に感謝を伝え、オリヴィアは金獅子と共にまた先へ進む。道が分かったとはいえ、どこまで行っても似た様な風景は容易に方向感覚を失わせる。まだまだ油断はできない。

「この辺りで目印を付けておきましょう」
 オリヴィアは「破邪の聖槍」を取り出すと、近くで一番大きくて目立つ木を選びだす。
 そして穂先のルーンを幹にぐっと押し当てて、浄化の力を帯びた刻印を刻みつけた。
「もし邪悪な力で再生や成長することがあっても、この刻印は消せません」
 道に迷うことがあったとして、この目印があればまた戻ってくることができるだろう。
 要所でひとつひとつ、同様の刻印を焼き付けながら、オリヴィアは着実に目的地に近付いていくのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎

ヴァンパイア共が敷いた防衛網を完膚なきまでに崩す力とはな
またぞろ厄介な物が出てきたものだ

デゼス・ポアを宙に浮かせ、森の中を探索
ダークセイヴァーでの依頼を行いながら、マッキナ・シトロンに集めていたこの世界の各種データを参照して進もう
侵入を惑わすものが森の植物から発せられる幻覚毒のためなのか
あるいは、滅んだ月光城の城主が仕掛けた魔術的な罠の残滓なのか…
幻覚毒の類であれば、人形であるデゼス・ポアに怪しげな草花や樹木を切り落としてもらい
魔術的な罠の場合は、装備銃器で術式を砕く

だが、これではキリがないか…
此処はこいつらに任せるとしよう

UCを発動
ドローンを展開し半数を特殊な高感度カメラやセンサーを搭載した索敵特化の物に
残りの半分をグレネードやチェーンソーと言った破壊工作に特化した物に変える
優れた瞳と鼻で月光城の場所を見破り
鋭い牙で罠を食い破りながら道を拓いていく
やはり、深い森は猟犬達の領分だ

「第五の貴族」すら恐れる「外敵」か…
フン、「敵の敵は味方」という単純な話ならばいいんだがな



「ヴァンパイア共が敷いた防衛網を完膚なきまでに崩す力とはな。またぞろ厄介な物が出てきたものだ」
 紋章持ちに第五の貴族、そして月光城の主――ヴァンパイア達の強大さと勢力の大きさはキリカ・リクサール(人間の戦場傭兵・f03333)もよく理解している。だからこそ、その牙城を打ち崩すほどの『外敵』の存在には、脅威を感じずにはいられなかった。
「存在を知った以上、放置しておく訳にはいかないだろうな」
 月光の謎と外敵の真相を突き止めるために、キリカは破壊された旧市街地へと向かう。
 行く手に待ち受けるのは深き迷いの森。だが、こういった難所を攻略するのも初めてではない。

「これまでに収集してきたデータが役に立つな」
 呪いの人形「デゼス・ポア」を宙に浮かせて、1人と1体で森の中を探索するキリカ。
 その腕部のマシンブレスベルト「マッキナ・シトロン」には、彼女がダークセイヴァーでの依頼を行いながら集めていた、この世界の各種データが表示されていた。
「侵入を惑わすものが森の植物から発せられる幻覚毒のためなのか。あるいは、滅んだ月光城の城主が仕掛けた魔術的な罠の残滓なのか……」
 データを参照して迷いの森の原因を調査し、対抗策を考える。自然由来の理由と人為的な理由、どちらの可能性もありえる以上、疑わしき要素は虱潰しにしていくしかないか。

「デゼス・ポア、そこの草花には毒がある。切り落とせ」
『キャハハッ』
 キリカが指示を出すと人形は楽しそうに笑いながら、体から生やした錆刃で草を刈る。
 彼女自身も機関拳銃"シガールQ1210"を抜き、一見何もない場所に銃口を向けて撃つ。
 乾いた発砲音が響き渡ると、森の中に木霊していた奇妙な鳴き声のような音が、ふっとかき消された。
「あの音が罠の術式なら、これで砕けたはずだが」
 この森に入ってからずっと感じていた違和感は、あの音や毒草の匂いだったのだろう。
 対策の目処は立ったものの、森の中は予想以上に広く、同様の植物や術式はまだ沢山仕掛けられているだろう。

「だが、これではキリがないか……此処はこいつらに任せるとしよう」
 手持ちの弾も無尽蔵ではない。キリカは手間を省くためにサポート用のドローン部隊、【シアン・ド・シャッス】を展開する。招集された122機のドローンにはいずれも、今回の依頼に合わせて探索目的のカスタマイズが施されていた。
「『猟兵』より『猟犬』に告ぐ、速やかに攻略を開始せよ」
 キリカの命令に応じて森に散っていく猟犬達。まずは特殊な高感度カメラやセンサーを搭載した索敵特化のドローン61機が、優れた"瞳"と"鼻"や飛行能力を活かして月光城の場所を見破る。ハイテクな力の前では自然や呪的な幻惑も効果が薄いようだ。

「次だ。お前達の鋭い"牙"で罠を食い破れ」
 目的地までの方角が判明すれば、残る半数のドローンが道を作る。索敵特化の前者に対してこちらはグレネードやチェーンソーと言った破壊工作に特化した装備で固めており、立ちはだかる障害を物理的に排除してルートを開拓していく。
「やはり、深い森は猟犬達の領分だ」
 各機の連携ぶりを満足げな顔で見つつ、キリカはその後をついて歩くだけで良かった。
 爆発音と鎖鋸の唸りが鳴り響き、道なき森に旧市街地までの1本道が築かれていく。

「『第五の貴族』すら恐れる『外敵』か……フン、『敵の敵は味方』という単純な話ならばいいんだがな」
 目的地までの道程を順調に進みながら、この先に待ち構える者について考えるキリカ。
 対吸血鬼の戦いで利用できる可能性もないではないが、甘い期待はし過ぎない方が良いだろう。この世界がいかに残酷で凶悪であるか、彼女もよくよく理解していた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『拒まれし乙女リフィウタータ』

POW   :    封ざれよ、汝が力
【金の鍵】【鎖】【ナイフ】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
SPD   :    切り刻め、暗黒の刃
【金の鍵】が命中した対象に対し、高威力高命中の【暗黒の刃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
WIZ   :    目覚めよ、我が力
【血色の瞳】に覚醒して【暗黒竜】に変身し、戦闘能力が爆発的に増大する。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。

イラスト:高咲あゆ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はアイレキア・ベルフィオーレです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 深い迷いの森を抜けて、猟兵達は無事「月光城」のあった地下都市の廃墟に辿り着く。
 そこで一同が見たものは、長い年月により風化した都市の遺構。かつては相応の規模の市街地があったのだろうが、殆どが原型を留めておらず往時の面影を見るのは難しい。

 これが「外敵」によって攻め落とされた、ヴァンパイアの拠点の有り様だというのか。
 荒廃した遺構をよくよく観察すれば、確かに風化だけでなく人為的に破壊されたような痕跡が見られる。昔ここで大規模な戦闘、あるいは破壊活動があったのは確かなようだ。

「………誰か来たの?」

 猟兵達がさらなる調査のため先に進もうとすると、廃墟の奥から人影がやって来る。
 それはワインレッドのロングヘアを揺らめかせ、黒いドレスに身を包んだ、高貴な出自と思しき女性だった。だが折角のドレスは風雨に打たれてボロボロで、髪も梳らずに振り乱されている。まるで、ずっとこの廃墟を彷徨っていたかのような様相だ。

「敵? ああ、敵だわ。殺す。殺すわ、殺さなきゃ。敵は全て殺さないと」

 その娘は虚ろに濁った血色の瞳で猟兵達を見ると、即座に凄まじい殺気を放ってきた。
 おそらくは彼女こそ予知にあった、かつてこの地を統べていた『月光城の主』。外敵との戦いに敗れてなお、再びオブリビオンとして蘇ったヴァンパイアだ。

 かの者の名はリフィウタータ。何故か同族の間でも忌み嫌われ、故に「拒まれし乙女」の異名を冠したという。なれどその由縁にもはや意味はなく、ここに居る彼女は明らかに正気を失っている。理性的な反応はなく、あるのは「外敵」に対する異常な殺意だけだ。

「消えて、消えて、消えて。私の前から全て消えて」

 狂気に堕ちた月光城の主は、自分が死ぬか、この地に踏み入った者を皆殺しにするまで決して攻撃を止めない。交渉の余地はなく、対話から情報を引き出すのも不可能だろう。
 もはや統べる民も城もここには無いというのに、まだ己の領地を守り続けているのか。光を失った「月の眼の紋章」が、その胸元には未だに寄生していた。

 紋章の加護もほとんど失われたリフィウタータに、全盛期のような圧倒的な力はない。
 この地の調査を進めるためには、まずは彼女を倒さなければ。かつての「月光城の主」に再びの死をもたらさんと、猟兵達は戦闘態勢を取った。
シキ・ジルモント
随分と酷く破壊されたものだ
領主に恨みでもあったか…その元領主がこうなってしまっては知る由もないが
邪魔をするならもう一度、骸の海に還ってもらう

金の鍵と棘鞭には特に注意
ユーベルコードの効果と併せて回避、無理なら撃ち落とす
鍵は放つタイミングを察知する為、繋がっている鎖の動きも常に視界に収めて行動
廃墟となった建物の残骸も遮蔽物としてなら利用出来るかもしれない
危険が迫ればひとまず影に隠れてやり過ごす

隠れた残骸が破壊されたら、合わせて狼の姿に変身
姿勢を低く駆けて崩れた際の破片や土煙に紛れその場を離脱、相手がこちらの姿を見失っている間に死角に回り込み再度人の姿へ
回り込んだ敵の意識外の位置から銃で反撃を試みる



「随分と酷く破壊されたものだ」
 見る影もなく荒れ果てた市街地の廃墟を見渡して、シキはぽつりと呟いた。吸血鬼の力で支配された都市が跡形もなく滅びるのは尋常の事ではない――『外敵』とやらも相当に念を入れてここを攻め落としたと見える。
「領主に恨みでもあったか……その元領主がこうなってしまっては知る由もないが」
 今、彼の目の前にいるのは一人の女――かつて、この都市を統治した『月光城の主』、拒まれし乙女リフィウタータ。『外敵』に敗れてなお骸の海から舞い戻った彼女は、今や妄執の化身と成り果てていた。

「殺す、殺す、殺す、殺す、殺す……」
 それが自分を殺した者であるかに関わらず、リフィウタータは己が領土に侵入する全ての者に敵意を向ける。この吸血鬼を放置したまま廃墟の調査を進めるのは不可能だろう。
「邪魔をするならもう一度、骸の海に還ってもらう」
 粘りつく泥のような殺気にも動じず、シキは愛用のハンドガン・シロガネを抜き放つ。
 敵は腐っても月光城の主、油断など微塵もしない――相手の胸元で『月の眼の紋章』が蠢くのを捉えた瞬間、彼はさっとその場から飛び退いた。

「切れ、切れ、刻め、刻め」
 直前までシキがいた場所を、紋章より放たれた棘鞭がなぎ払う。リフィウタータ本人は長い鎖に繋がれた金の鍵を武器にして、譫言をぶつぶつと呟きながら襲い掛かってくる。
(あの鍵と棘鞭には特に注意だな)
 【ワイルドセンス】により研ぎ澄まされた人狼の五感と直感によって、危険を察知したシキは姿勢を低くして回避行動を取る。女吸血鬼の手より放たれた金の鍵は、棘鞭と同じように間一髪のところで外れ、ピンと立った彼の耳先を掠めていった。

「ああ、死んで、死になさい、死ぬのよ」
 リフィウタータの金鍵の扱いはフレイルに似ている。繋がっている鎖の動きも常に視界に収めるよう気をつければ、攻撃のタイミングを察知するのは難しくない。ひゅうと風を切って放たれる鍵と鞭の猛攻を、シキは巧みに避け続ける。
(廃墟となった建物の残骸も遮蔽物としてなら利用出来るかもしれない)
 避けきれない攻撃は銃弾で撃ち落とし、ひとまず近くの瓦礫の陰に隠れてやり過ごす。
 敵の攻めはだんだん苛烈さを増しており、どこかで攻勢に転じる必要があるだろう。

「死ね、死ね、死ね、死ね」
 シキが隠れた残骸に、何度も鍵と棘鞭を打ち付けるリフィウタータ。所詮はただの風化した瓦礫の盾など、長く保つはずもない。それは退避したシキとて分かっているだろう。
「切り刻め、暗黒の刃」
 金の鍵が刻んだ痕をなぞるように、暗黒の刃が残骸をバラバラに破壊する。その瞬間、シキは狼の姿に変身してさっと物陰から飛び出し、姿勢を低くして飛び散る瓦礫の破片や土煙に紛れて、その場から離脱した。

「あら? あら、あら、あら?」
 壊した残骸の向こうにいたはずの標的の姿はなく、リフィウタータがきょとんと首を傾げる。彼女が標的を見失ったこの瞬間こそ、相手にとってはまたとないチャンスとなる。
「今度はこちらの番だ」
 シキは狼の俊敏さでリフィウタータの死角に回り込み、即座にまた人の姿へと戻ると、素早く銃の狙いを定めてトリガーを引く。いかに強大な敵でも、意識外の位置からの反撃は避けられまい――。

「ぎゃ……ッ!!」
 死角から撃ち込まれたシキの弾丸は見事リフィウタータを捉え、鮮血の華を散らせる。
 悲鳴とともにぽたりぽたりと銃創から滴り落ちる血は、たとえ骸の海から再臨したとはいえ、彼女が不死の存在ではないことを示していた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…万が一、正気を取り戻して再び月光城や人間画廊を築かれても厄介だもの

…今を生きる人々に害を為す前に此処で確実に討たせてもらうわ

一時的な吸血鬼化を行いUCを発動して歪曲オーラの防御結界で自身を覆い、
結界に触れた敵UCの勢いを十分の一に軽減しつつ最小限の早業で回避し、
過去の戦闘知識から棘鞭の軌道を見切り大鎌で受け流しながら切り込み、
勢いを3倍化し残像が生じる超高速で敵を乱れ撃ちにする大鎌のカウンターを行う

…無駄よ。お前にこの結界を抜く事は出来ない。そして…

その紋章の機能はとうに見切っている。今さら不覚を取ったりはしない

…歪曲結界呪法、術式反転。さあ、その眼に焼き付けなさい、吸血鬼狩りの業を



「……万が一、正気を取り戻して再び月光城や人間画廊を築かれても厄介だもの」
 健在なる『月光城の主』達が居城にていかなる横暴を働いてきたか、リーヴァルディは知っている。紋章のエネルギー源として幽閉した者達を展示する人間画廊(ギャラリア)など、彼奴らは第五の貴族と並んで危険な存在だ。
「……今を生きる人々に害を為す前に此処で確実に討たせてもらうわ」
 漆黒の大鎌"過去を刻むもの"を構え、彼女は己の身に流れる血の力を活性化させる。
 忌むべき敵と同じ――一時的な吸血鬼化により行使できる力を以て、狩人は敵を討つ。

「……限定解放。地を這い、己の無力を知るが良い」
 【限定解放・血の骸衣】により、リーヴァルディの全身を球状の力場が覆う。オーラにより形作られたこれは、高位の吸血鬼が身に纏うものと同じ、不可視の防御結界呪法だ。
「切り、刻め、暗黒の刃」
 対するリフィウタータは鎖に繋がれた金の鍵を放つが、球状力場の範囲に入った瞬間、その勢いは十分の一まで減衰する。運動エネルギーを歪曲することで攻撃を弱めるのが、この結界の作用なのだ。

「……鍵に触れなければ、追撃の刃も発動しないようね」
 ゆっくりと飛んでくる金の鍵を、リーヴァルディは最小限の身のこなしで回避する。
 幾度となく吸血鬼との戦いを経験する中で身につけた体術。舞うが如く洗練された早業を敵はまったく捉えきれていない。
「殺す、殺すわ、殺すのよ、殺す殺す殺す……」
「……無駄よ。お前にこの結界を抜く事は出来ない。そして……」
 当たらない攻撃を執念で繰り返すリフィウタータ。その胸にある『月の眼の紋章』から不意に棘の鞭が飛び出してリーヴァルディに襲い掛かる。宿主を強化する紋章の力は失われていても、最低限の攻撃機能は残っていたようだが――。

「……その紋章の機能はとうに見切っている。今さら不覚を取ったりはしない」
 月光城の主とも何度も戦ってきたリーヴァルディには、棘鞭の奇襲も既知の技だった。
 経験をもとに落ち着いて軌道を見切り、大鎌で受け流す。それは振るった刃の軌跡に、棘鞭のほうが飛び込んだようにも見えた。半ばから断ち切られた棘が、地面をのたうつ。
「……歪曲結界呪法、術式反転」
 敵の攻撃を全て捌ききったところで彼女はカウンターに転じる。運動を減衰させる力場の作用を逆転させて、自身の運動エネルギーを3倍まで増幅。残像が生じるほどの超高速で駆け出し、標的の懐まで一気に切り込んだ。

「……さあ、その眼に焼き付けなさい、吸血鬼狩りの業を」
 接近の勢いそのままに放たれる大鎌の乱舞。三日月のような無数の軌跡が、獲物の急所を正確に切り裂く。血の骸衣による加速と研鑽された技術の併せ技を、陥落した城の主に防ぐ術はなかった。
「き、いやあぁぁあぁッ!!?」
 絹を裂くような悲鳴を上げて血飛沫を撒き散らし、黒いドレスと白い肌を等しく深紅に染めていくリフィウタータ。輝きの失われた紋章に、ぴしりと音を立てて亀裂が走った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フォルク・リア
「紋章も力を失っているとはいえ
これだけの相手。油断するわけにはいかない。」

「既に言葉は意味を持たないか。
それでも言わせて貰う。消えるのはお前の方だ。」

敵が暗黒竜になるのを確認すると
敵が複数回発動した場合でも相殺する為に
その特徴をよく観察しつつ暴虐の黒竜王を発動。
自身はそれをデモニックロッドから闇の魔弾を放ち援護し
敵のユーベルコードを相殺させる。
「その姿、命を削る程の力を持つようだけど。
其方の命が尽きるまで付き合う気はない。」

紋章の位置を確認し棘鞭の攻撃を【見切り】
鞭はフレイムテイルの炎で焼き切る。

敵が再度暗黒竜となったら
【全力魔法】で暴虐の黒竜王を使用。
相殺すると同時に黒竜王で仕留める。



「紋章も力を失っているとはいえ、これだけの相手。油断するわけにはいかない」
 見るからに零落した『月光城の主』の姿を前にしても、フォルクは気を緩めなかった。
 まだ十分こちらに届きうる牙を持っているうえ、正気を喪失したが故に殺意も激しい。彼の観察眼は敵の危険性を正確に見抜いていた。
「敵、敵、敵が沢山。敵は殺す、殺さないと――目覚めよ、我が力」
 外敵の排除というたった一つの妄執に駆られて、リフィウタータは血色の瞳を輝かす。
 その全身から沸き立つのは暗黒の魔力。その爆発的な勢いに耐えかねたように、肉体がみしみしと音を立てて変化していく。

「既に言葉は意味を持たないか。それでも言わせて貰う。消えるのはお前の方だ」
 毅然とそう告げるフォルクの前で、拒まれし乙女はおぞましき暗黒の竜に姿を変える。
 可憐な乙女の面影はまるでなく、ただ敵を抹殺するために変身した戦闘力特化の形態。実力のほども虚仮威しではないだろう。
「纏う風は黒。羽撃く翼は烈風。その身に宿すは狂乱。上げる咆哮は冥府の陣鐘。抗う全てを喰らい、その宿せし力の無慈悲なる真価を示せ」
 フォルクはじっくりとそれを観察しながら呪文を唱え、【暴虐の黒竜王】を召喚する。
 出現するのは目前の暗黒竜に勝るとも劣らぬ威容を誇る、巨大な黒竜。それは廃墟全域に響き渡るような咆哮を轟かせて、敵に襲い掛かった。

「殺す、殺す、殺す、殺す……」
『グウウゥォォォォォォッ!!』
 怒涛の勢いで正面から激突する暗黒竜と黒竜王。互いの牙が鱗を抉り、爪が肉を裂く。
 竜と竜の壮絶な戦いを、フォルクは後方から「デモニックロッド」を掲げて援護する。
「その姿、命を削る程の力を持つようだけど。其方の命が尽きるまで付き合う気はない」
 呪いの黒杖から放たれた闇の魔弾が、リフィウタータの変じた暗黒竜の目元に当たる。
 竜相手にさしたるダメージは見込めないが、少しでも怯ませられれば十分。生じた隙を見逃さず、黒竜王が暗黒竜の首筋に喰らいついた。

『グウゥゥゥッ!!』
「い、たい、痛い、痛い……!」
 暴虐の黒竜王の真価は、敵のユーベルコードを相殺する能力にある。血肉と共に魔力を喰われたリフィウタータは変身を維持することができず、元の赤髪の乙女の姿に戻った。
「元に戻せればこちらのものだ」
「う、うぅぅ……っ」
 それでも相手は胸の紋章から棘鞭を放って抵抗するが、フォルクは「フレイムテイル」の黒手袋から炎を操りそれを焼き切る。事前の観察で発射点である紋章の位置を確認しておけば、鞭の軌道を見切るのは難しいことではなかった。

「あ、ああぁぁ、目覚めよ、我が力……!」
「そうはさせない」
 窮地に立たされたリフィウタータはもう一度暗黒竜に変身しようとするが、フォルクもすかさず【暴虐の黒竜王】を再発動。ここまでの戦闘で観察する時間を得られたことで、特徴を把握したユーベルコードなど発動すら許されない。
「存分に喰らえ、暴虐の黒竜王よ」
「が、ああぁぁ―――ッ!!?!」
 変身を相殺された乙女の身体に、黒竜王の牙が容赦なく突き立てられる。それは並みの刀剣よりも遥かに鋭く、たやすく肉と骨を引き裂き、吸血鬼の命脈を貪り喰うのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

七那原・望
哀れ、とは思いませんね。
どうあれかつての月光城の主でヴァンパイアであるならば、外道である事に変わりはないのでしょうから。
理性がない時点で相手をしても時間の無駄ですし、手早く排除しましょうか。

果実変性・ウィッシーズダンサーを発動したら第六感と野生の勘で敵の動きや攻撃を見切り、回避しながら素早く接近を。
特に金の鍵は防御するのも危険そうなので触れないように細心の注意を払いましょう。
棘鞭は必要に応じて結界術で防ぎます。
接近に成功したら相手の動きを先読みしながらグラツィオーソで早業の2連撃を叩き込み、早急に相手のユーベルコードを封じましょう。

そうしたらねこさんを複数呼んでみんなの全力魔法で叩みかけます。



「哀れ、とは思いませんね」
 外敵に敗れて自らの城も都市も失い、理性なき有様で廃墟を彷徨う元『月光城の主』。
 それに対して望がかける言葉は冷たく、一切の慈悲を持たぬものだった。かの者たちがいかに強大な吸血鬼であり、邪悪な所業を行ってきたかは彼女も知っている。
「どうあれかつての月光城の主でヴァンパイアであるならば、外道である事に変わりはないのでしょうから」
「殺す、殺さなきゃ、殺すわ、殺すのよ……」
 リフィウタータはそれに応えることもなく、ただ譫言のように殺意の言葉を吐くのみ。
 ただ、その身から発される獣のような殺意は、目隠しがあっても感じ取れる程だった。

「理性がない時点で相手をしても時間の無駄ですし、手早く排除しましょうか」
 そう言って望は翼の装飾が施された2つのチャクラム「艶舞・グラツィオーソ」を両手に構えると、白い翼を羽ばたかせて接近を試みる。対するリフィウタータは鎖に繋がれた金の鍵を振り回し、彼女を撃ち落とさんとする。
「死ね、死ね、死ね死ね死ね死ね……!」
 その金鍵が触れたものを暗黒の刃にて切り刻むのが、拒まれし乙女のユーベルコード。
 しかし目隠しの少女はまるで見えているように攻撃を回避してみせる。突きつけられた殺意にも動じない、涼しげな表情で。

「わたしは望む……ウィッシーズダンサー!」
 青色を基調とした踊り子の衣装に変身した望は、対象の動きを直感で先読みしながら、動きを読まれにくい緩急ある踊りで敵を翻弄する。【果実変性・ウィッシーズダンサー】を発動した彼女に攻撃を当てるのは並大抵のことではない。
(特に金の鍵は防御するのも危険そうなので、触れないよう細心の注意を払いましょう)
 初撃を確実に避けることで追撃を無効にするのが肝心とみた彼女は、徹底した危機意識にて第六感を研ぎ澄ませ、ひらりと優雅に舞い踊る。その挙動は敵に接近するムーブにも連動しており、彼我の距離はみるみる縮まっていった。

「来るな、来ないで、嫌、嫌、いや……!」
 外敵の接近に脅威を覚えたのか、半狂乱になって叫ぶリフィウタータ。それに呼応して胸元に寄生した『月の眼の紋章』から赤い棘の鞭が放たれ、望の翼に絡みつこうとする。
「それも読んでいます」
 望はすかさず結界を張って棘鞭を防ぎ、さらに接近。武器の間合いに入ったところで、グラツィオーソで早業の2連撃を叩き込む。2つのチャクラムが大きく弧の軌道を描き、拒まれし乙女に襲い掛かった。

「きゃあっ!?」
 敵の動きを先読みする第六感は、回避だけでなく攻撃にも活かされる。リフィウタータの移動先に先回りするように飛んできたチャクラムは、鋭き刃にてその身を切り裂いた。
 グラツィオーソには超常の力を吸収する効果があり、被弾した対象はユーベルコードを使えなくなる。これで彼女の攻撃能力は大幅に低下したはずだ。
「今です!」
 望は「共達・アマービレ」をさっと振り、呼び寄せた魔法猫たちと一気に畳み掛ける。
 みんなの力をひとつに合わせて全力魔法。鈴の音色と共に響き渡るねこさんの合唱が、巨大な魔力の波動となって戦場を震わせた。

「―――!!!!」
 異能を封じられたリフィウタータにそれを迎撃する手段はない。大魔法の直撃を受けた彼女は声もなく吹き飛ばされ、かつての自らの領地の瓦礫に叩きつけられたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カビパン・カピパン
興が乗ってきたカビパン。

「謎を解明すると次は十二支の第十一番目製作総指揮と戦闘だ」
「神をも踏み込めぬ領域を持つ、恐ろしいオブリビオンだ。恐らくコレが『消えろ』と思った瞬間、存在そのものを抹消されてしまうだろう」
「情熱撮影愛迷宮物語気品優雅勤勉を兼ね揃えた最強無敵だ、対等に戦えるのは北海道シュークリームくらいだろう。はっきり言って諸君に勝ち目はない…」
怖くて身震いするカビパン。
「そんな戦場に送り込むのは、私としては大変不本意である。なのでこの者に頑張ってもらうことにした」
「ということで十二支の第十一番目製作総指揮を倒して来てください拒まれし乙女リフィウタータさん」
「貴様なら勝てると信じている」



「謎を解明すると次は十二支の第十一番目製作総指揮と戦闘だ」
 何やかんやあって迷いの森を抜けて、廃墟と化した地下都市までやって来たカビパン。
 彼女は相も変わらず周りの様子などガン無視して、グリモア猟兵ごっこを続けていた。どうも興が乗ってきたらしい。
「神をも踏み込めぬ領域を持つ、恐ろしいオブリビオンだ。恐らくコレが『消えろ』と思った瞬間、存在そのものを抹消されてしまうだろう」
 もしそんな敵がいれば、狂った『月光城の主』や、それを倒した『外敵』よりも危険な存在だろう。言うまでもなく実在はしないが、つらつらと淀みない調子で説明されると、うっかり本当のように聞こえてきて怖い。

「情熱撮影愛迷宮物語気品優雅勤勉を兼ね揃えた最強無敵だ、対等に戦えるのは北海道シュークリームくらいだろう。はっきり言って諸君に勝ち目はない……」
 何でも兼ね備えすぎだろうとか、逆にそれと対等な北海道シュークリームって何なんだとか、ツッコミどころが満載の説明を続けるカビパン。深刻そうな表情や、怖くてぶるりと身震いする仕草まで迫真の演技である。
「そんな戦場に送り込むのは、私としては大変不本意である。なのでこの者に頑張ってもらうことにした」
 そう言って彼女が指し示した先にいるのは、赤い髪を振り乱した黒いドレス姿の女性。
 この地の元『月光城の主』にして現在は猟兵と絶賛戦闘中のリフィウタータであった。

「ということで十二支の第十一番目製作総指揮を倒して来てください拒まれし乙女リフィウタータさん」
「倒す? 殺す? ええ殺す、殺すわ、殺さないと」
 突然白羽の矢を立てられたリフィウタータだが、既に正気を失っている彼女にツッコミを入れる知性が残っているわけもなく。カビパンの発言も果たして理解しているのやら、ただただ殺意を撒き散らすばかり。
「貴様なら勝てると信じている」
 それでも彼女に全幅の信頼をおく根拠は何なのだろう。【ハリセンで叩かずにはいられない女】は自信満々にそう言ってのけるが、相手は猟兵ですら無いオブリビオンである。

「目覚めよ、我が力……」
 もちろんリフィウタータがカビパンの要請に応えることはなく、暗黒竜に変身して辺り構わず暴れ散らすのみ。侵入者は誰であれ排除するのが彼女の行動原理であり、そこにはギャグの住人とて遠慮はない。
「いや待てこっちでは……ぐわーっ!」
 どかーんとコミカルに吹っ飛ばされるカビパン。ギャグ世界の法則が適用されるため、たぶんケガはないだろう。次のシーンになったらピンピンして出てくるパターンである。
 果たしてその次のシーンが来るまでにリフィウタータは謎の製作総指揮を倒せるのか。このカオスな一人芝居はいつまで続くのか。それは誰にも分からないことだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

館野・敬輔
【SPD】
アドリブ連携大歓迎

交渉も説得も情報収集も意味をなさず
狂気と殺意を持って俺らを殺めようとするなら
ただ斬り捨てるのみ
…おそらく、情報は斬り捨てた先にありそうだしな

紋章の加護はほぼなさそうだが
それでも棘鞭を撃ち出すだけの力は残っていそうだな
紋章からの不意討ちを「第六感」で警戒しつつ
廃墟に身を隠しながら「地形の利用、ダッシュ」し肉薄
至近距離まで迫ったら「2回攻撃、鎧砕き」+指定UCの18連撃(味方斬りなし)で斬り捨てる

金の鍵と棘鞭は「視力」で発射の瞬間を「見切り」
「残像」を囮にして全力で回避
棘鞭のみ、回避困難な場合は黒剣で「武器受け」し逸らそう

…さて
斬り捨てた先にあるものは?



「交渉も説得も情報収集も意味をなさず、狂気と殺意を持って俺らを殺めようとするなら、ただ斬り捨てるのみ」
 正気を失った『月光城の主』を前にして、敬輔の対応に迷いはなかった。ここに居るのは調査を妨害する害獣のようなもの、であれば早急に排除して先に進むのが正しかろう。
「……おそらく、情報は斬り捨てた先にありそうだしな」
 そんな予感めいたものを感じながら、彼は黒剣を構える。グリモアエフェクトにも予兆された『大いなる危機』とは何か――その答えを知る為にも立ち止まってはいれらない。

「消えて、消えて、消えて、消えて……」
 拒まれし乙女リフィウタータは、敵意と殺意を撒き散らしながら金の鍵を振り回す。
 その胸元に宿るのは『月の眼の紋章』。月光城の主の絶大な力の源と言えるモノだが、今は輝きを失っている。
「紋章の加護はほぼなさそうだが、それでも棘鞭を撃ち出すだけの力は残っていそうだな」
 本体の攻撃だけでなく紋章からの不意打ちも警戒しつつ、敬輔は廃墟に身を隠しながら接近を図る。『外敵』とやらの手で破壊された旧市街地には、幸いにも盾となる遮蔽物は無数にあった。これを利用しない手はないだろう。

「消えろ……」
 ひときわ強い殺意の言葉とともに放たれる金の鍵。その発射の瞬間を視ていた敬輔は、さっと物陰から飛び出すと、生じた残像を囮にして回避する。空を切った鍵の軌跡を暗黒の刃がなぞり、周囲の瓦礫をズタズタに切り刻んでいくのを彼は見た。
「あの攻撃は受けられないな」
 警戒をさらに強めて全力で回避に徹し、物陰から物陰に飛び移るように少しずつ距離を詰めていく。理性のない者の動きは単調だ、目を離さなければ見切れない相手ではない。

「……ここが攻め所か」
 瓦礫を遮蔽物にできるギリギリまで近付くと、敬輔はダッシュで距離を詰めにかかる。
 これまでとは違う動きにリフィウタータは反応できない。代わりに胸元の紋章の方が、棘鞭を放って迎撃しようとするが――。
「読んでいたとも」
 敬輔の第六感はその予兆を読み、黒剣で鞭の軌道を逸らす。そのまま一気に至近距離まで肉薄した彼の右目は、【憎悪と闘争のダンス・マカブル】の効果で爛々と輝いていた。

「怒りと憎悪、そして闘争心を力に替えて……貴様を斬り刻む!!」
 青き異能の瞳で敵を見据え、滾る感情の全てを剣に乗せ、放つは超高速の18連撃。
 異端の血を啜る呪われし刃が、リフィウタータの全身を一瞬のうちに切り刻んだ。
「―――!!!」
 防御はおろか悲鳴を上げる暇も与えられず、拒まれし乙女は鮮血に塗れて地に伏せる。
 その様に一瞥すらくれぬまま、黒騎士は剣を鞘に収めると静かに一歩を踏み出した。

「……さて。斬り捨てた先にあるものは?」
 かつての『月光城の主』などに興味はない。敬輔が見据えているのは既にその先だ。
 拒まれし乙女との戦いが決着に近付くにつれ、彼の感じている予感も強まっていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

オリヴィア・ローゼンタール
言葉が通じない……
だが、異端の神に憑依されたのとはまた違う、か

放たれる投擲武器を【見切り】、聖槍で弾き返す(受け流し)
かつては精妙であったであろう技量も、正気なくば発揮できまい
このまま押し切――(竜変身した姿を見て)――そうか、なるほど、それが本領か

襲い来る暗黒竜の猛攻を【悪路走破】【ダッシュ】で躱す
逃げながら掌中に光の魔力を集め、振り向きざまに全力の【聖天烈煌破】を叩き付ける(全力魔法・破魔・属性攻撃)
狂乱のままに突っ込んで来るならば、【カウンター】の要領で真っ向から直撃してくれる筈
暗黒竜に聖なる光は効果覿面
祝福の力で場に縛り付け、その隙に聖槍で突き穿つ!(串刺し)



「言葉が通じない……だが、異端の神に憑依されたのとはまた違う、か」
 ダークセイヴァーにおいてオブリビオンが正気を失う例といえば、異端の神々に肉体を奪われた『狂えるオブリビオン』が代表的だ。だがオリヴィアが今対峙している相手は、過去に戦ったその手の連中とは違うものを感じる。
「敵は殺す、殺すわ、殺さなきゃ、全て、全て」
 理性を喪失しながらも『外敵の排除』という行動原理は一貫したまま、リフィウタータはこの地を彷徨い続けている。一度は死してなおそれほどの妄執に取り憑かれる理由が、彼女にはあるという事か。

「死んで、死んで、死になさい……」
 無差別な殺意を撒き散らしながら、鎖に繋がれた金の鍵を振り回すリフィウタータ。
 見てくれは絢爛だが用途は投擲武器と同じだ。オリヴィアは即座にその挙動を見切り、聖槍で弾き返す。
「かつては精妙であったであろう技量も、正気なくば発揮できまい」
 これまで戦ってきた『月光城の主』に比べれば、やはり比較にならない実力差がある。
 ただ獣のように暴れまわるしか能が無いのであれば、彼女の敵にはなり得ないだろう。

「このまま押し切――」
「……目覚めよ、我が力」
 だが、一気に攻め掛かろうとしたオリヴィアの前で、リフィウタータはユーベルコードを発動した。瞳の色が紫から血色に染まり、可憐なる乙女は暗黒竜の姿に変身を遂げる。
「――そうか、なるほど、それが本領か」
「オオォォォォォォォッ!!!!」
 咆哮を上げる暗黒竜を見上げ、オリヴィアはひとつ得心がいったと呟く。中身が獣同然ならば、姿形も怪物になってしまったほうが実力を発揮できよう。爆発的に膨れ上がった戦闘力は、ただ"暴れまわる"だけでも脅威たりえる。

「まさに貴様の内面そのものだな」
「コロス、コロス、コロス……!」
 襲い来る暗黒竜の猛攻を、オリヴィアは全速力で躱す。この巨体と膂力で迫られては、爪牙が掠めるだけでも重傷を負いかねない。瓦礫の散らばる廃墟をダッシュで駆け回り、背後から迫る敵の息遣いを感じながら、ひたすら逃げる。
(そうだ、そのまま追ってくるといい)
 無論逃げているだけではない。掌中に光の魔力を集め、反撃のタイミングを見計らう。
 狂乱のままに突っ込んで来るならば、こちらがカウンターの要領で仕掛ければ、真っ向から直撃してくれる筈だ。

「無窮の光よ! 絢爛たる勝利の煌きで天地を照らし、遍く邪悪を滅却せよ!」
 あと一歩で喰い付かれる寸前で、オリヴィアは振り向きざまに掌の魔力を叩きつける。
 超高密度に圧縮した聖なる力を放つ【聖天烈煌破】。持てる全力を込めたその輝きは、闇に包まれた地下都市を夜明けのように照らした。
「グ、ガアアァァァァァァッ!!!!?」
 暗黒の存在に対して聖なる光は効果覿面。瞳を灼かれリフィウタータが絶叫を上げる。
 さらに解き放たれた祝福の力はかの者を大地に縛り付け、一時的に行動を封じ込めた。

「突き穿つ!」
 その隙にオリヴィアは破邪の聖槍を構えると、竜の喉元めがけて渾身の一突きを放つ。
 邪を破り魔を切り裂くと謳われた至高の聖具が、黄金の輝きと共に敵を串刺しにする。
「ギイィィィヤアァァァァァッ!!!!」
 大地が震えるほどの絶叫を上げて、竜から人の姿に戻るリフィウタータ。だが見た目が変わったところで負傷が癒える訳ではなく、無窮の光と破邪の聖槍が与えたダメージは、生々しい火傷の痕として彼女の身に刻み込まれていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カタリナ・エスペランサ
やぁごきげんよう吸血鬼、飛び入りで失礼するよ!
事情がどうあれオブリビオンは狩るもの
ましてグリモアが“作用した上で視通せない”のは
明確な異常と脅威のサインだ。見過ごす訳にはいかないね

攻撃回避は常套手段、
《第六感+戦闘知識》の《見切り》で敵の動きを先読みし立ち回ろう
変則軌道で迫る金鍵、棘鞭の不意打ちが合わされば
或いはアタシにも届く――なんてね。《残像》だ
【架空神権】で操るは事象法則の《ハッキング》に特化した黒風
光の屈折率を変えれば数多の幻影を生み出し、
摩擦係数を改変する事で攻撃を滑らせる
或いは高熱高圧も思いのまま――万理万象我が手の上にってね
手始めに熱量と重力値を改竄した黒風を叩きつけ滅殺しようか


鏡島・嵐
そうなるだろうって一応事前に聞いてたけど、問答無用かよ……!

しかも力を失って尚この強さか……! 全盛期がどんだけ強かったかなんて、想像もしたくねえな。
いやまあ、今も十分怖いけどさ。

《我が涅槃に到れ獣》起動。クゥ、力を貸してくれ。
金の鍵のリーチがどれくらい届くんかわかんねえから、〈第六感〉で軌道を〈見切り〉ながら、〈騎乗〉で底上げした〈ジャンプ〉〈逃げ足〉を活かして振り切る。
付かず離れずの間合いを保ち、〈武器落とし〉や〈目潰し〉〈フェイント〉を仕掛けて隙を伺いつつ、一瞬のチャンスを逃さないように〈スナイパー〉ばりの一射を撃ち込む。

もし他の仲間が近くに居るなら、様子を見て〈援護射撃〉でサポート。



「そうなるだろうって一応事前に聞いてたけど、問答無用かよ……!」
 話しかける余地すらなく、殺意全開でこちらに向かってくるリフィウタータに、厭そうに顔をしかめたのは嵐。話し合いでどうにかなるという甘い考えは持っていなかったが、こうも極端な相手だと流石に怯む。
「しかも力を失って尚この強さか……! 全盛期がどんだけ強かったかなんて、想像もしたくねえな」
 いやまあ、今も十分怖いけどさ――とぼやきつつ、お手製スリングショットを構える。
 どれだけ猟兵として場数を踏んでも、殺し合いの空気に彼が慣れることは無いだろう。それでも決して退かず、諦めずに立ち向かうのが彼の強さだ。

「やぁごきげんよう吸血鬼、飛び入りで失礼するよ!」
 嵐が狂える『月光城の主』と対峙するその時、援軍は空から風とともにやって来た。
 カタリナ・エスペランサ(閃風の舞手(ナフティ・フェザー)・f21100)。これまでにない『大いなる危機』の予兆を聞きつけ、至急駆けつけた猟兵だ。
「事情がどうあれオブリビオンは狩るもの。ましてグリモアが"作用した上で視通せない"のは明確な異常と脅威のサインだ。見過ごす訳にはいかないね」
 万が一にも放置すれば手遅れになっていたという可能性もあり得る。脅威の芽は早めに摘んでおくものだと、彼女は上空から敵を見下しながら言う。まずはあのオブリビオンを斃した後、調査を進めるとしよう。

「敵、敵、敵、敵……全て、殺す」
 新たに2人の猟兵と対峙することになっても、リフィウタータの反応に変化は無い。
 妄執の籠もった瞳で外敵を睨みつけ、手にした鎖をぶんぶんと振り回す。その先端部に取り付けられた金の鍵が、ひょうと風を切って2人に襲い掛かった。
「クゥ、力を貸してくれ」
「ここは常套手段で立ち回ろうか」
 それを見た嵐は【我が涅槃に到れ獣】で成獣化させた黄金のライオン「クゥ」に跨り、カタリナは自慢の双翼を羽ばたかせて高度を上げる。2人ともまずは攻撃を回避することに徹し、隙をみて反撃に転じる戦法のようだ。

「リーチがどれくらい届くんかわかんねえから、注意しねえとな」
 大きく円弧を描いて飛んでくる金の鍵の軌道を、嵐は第六感を研ぎ澄ませて予測する。
 その上で金獅子に騎乗することで底上げした逃げ足とジャンプ力を活かし、全ての攻撃を振り切る。金の鍵も暗黒の刃による追撃も、彼らの俊足には追いつけない。
「初撃に当たると追撃も来るとなると、気は抜けないね」
 一方のカタリナも持ち前の第六感や戦闘経験を活かし、敵の動きを先読みする立ち回りを見せていた。風とともに舞うような軌道で身を翻し、金の鍵を避けるさまは優雅だが、表情は油断していないのが見てとれる。

(変則軌道で迫る金鍵、棘鞭の不意打ちが合わされば、或いはアタシにも届く)
 カタリナが危惧した通り、リフィウタータの攻撃手段は一辺倒ではない。胸元に寄生する『月の眼の紋章』から不意に棘鞭が飛び出し、鍵を避けた直後の標的を刺し貫く――。
「――なんてね。残像だ」
「……?!」
 捉えたはずの像はかき消え、別の方角から声が聞こえてくる。はっとリフィウタータが振り返ると、そこには何人ものカタリナの姿が。ただの残像と言うよりも、これはもはや分身の術だ。

「さぁて、少しばかり書き換えるよ?」
 カタリナが発動した【架空神権 ― domination ―】は、事象法則を書き換える黒い風を起こす権能。これで空気の屈折率を変えることで、空に数多の幻影を生み出したのだ。
「殺す、殺す、殺さなきゃ……!」
 幻と本体を見分ける術のないリフィウタータは、その全てを切り刻もうと鍵を振るう。
 が、上空にばかり意識を向け過ぎるのは悪手だった。音もなく放たれた一粒の弾丸が、びしりと彼女の目元に当たる。

「ッ、ア……!?」
「隙あり、ってな」
 その弾丸を放った嵐は、目を抑えて苦悶するリフィウタータをじっと見据えつつ、すぐさま次弾をスリングにセットする。さほど大きくはない一発の威力を、チャンスを逃さない観察力とスナイピング能力で補うのが彼の戦法だ。
「ウ、あァ……!」
 思わぬ痛手を受けたリフィウタータは闇雲に鎖と鍵を振り回すが、嵐は付かず離れずで敵の攻撃が届かない絶妙の間合いを保っている。さらに飛んでくる鍵を弾で撃ち落とし、時にはフェイントも交えて巧みに敵を翻弄していく。

「死なない、なぜ死なない、どうして……!」
 空中からは無数の幻影、地上からはスナイパーの牽制。2人の猟兵の術中に嵌められ、リフィウタータの対応は後手に回り続ける。逆襲を仕掛けるなら今がチャンスだろう。
「そろそろ終わりにしようか」
 先に動いたのはカタリナ。黒風の権能にて熱量と重力値を改竄すれば、幻影だけでなく高温高圧を生み出すのも思いのまま――灼熱を帯びた風が廃墟都市の上空に吹き荒れる。

「万理万象我が手の上にってね」
「あ、アぁ……!」
 高まる熱量に危機感を覚えたリフィウタータは、金の鍵と紋章の棘鞭を同時に放つ。
 だが、その投擲は改変された大気の摩擦係数によってするりと滑らされ、カタリナの元には届かない。逆に武器を手元から放し、大きな隙を晒すことになった。
「そこだ……!」
 機を見るに敏な嵐が、金獅子の背から狙い澄ました一射を撃ち込む。ただの石ころでも的確に急所に当たれば、怪物を撃ち倒す魔弾となる――「ギゥっ!?」と獣のような悲鳴が吸血鬼の口から漏れ、たたらを踏むようによろめいた。

「決めてくれ」
「ああ、感謝するよ!」
 嵐の狙撃兼援護射撃に合わせて、カタリナが完成した超高温の黒風塊を叩きつける。
 魔神の権能が作り出したそれは地上に落下すると同時に爆発的な衝撃と熱波を解放し、リフィウタータを吹き飛ばした。
「き、いやああぁぁぁ―――ッ!!!」
 拒まれし乙女の悲鳴が廃墟都市に響き渡り、瓦礫と血飛沫が木の葉のように宙を舞う。
 暴風が収まり大地に叩きつけられた時、その身はもはや痛々しい程に満身創痍だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アリス・フォーサイス
いったいここで何があったんだろう。

へーんしん!ヴァルキリーモードで、魔法の槍を構えるよ。
昔、ここであっただろう戦いを再現すれば、少しは思い出すかな?

暗黒刃の動きを良く見て、受け流すよ。

キミに見えている敵はどんなのかな?
隙を見ての突き、大上段からの払い、気配を消してまわりこんでからの背後からの奇襲。
いろいろな攻め手をしてみて、反応を観察するよ。



「いったいここで何があったんだろう」
 徹底的に破壊された旧市街地の廃墟を見回して、アリス・フォーサイス(好奇心豊かな情報妖精・f01022)は興味深そうに呟いた。遠い昔にあったという、『月光城の主』と『外敵』の戦い。いったいどんな事件だったのか好奇心を刺激される物語だ。
「殺す、殺す、殺す……」
 残念なことに真実を知るであろう唯一の当事者は、完全に正気を失ってしまっている。
 拒まれし乙女リフィウタータ。かつての領土に侵入する者を無差別に排除せんとする、かのヴァンパイアから得られる情報はあるだろうか。

「へーんしん!」
 アリスは【性質変化】にて戦闘力が増加する戦乙女(ヴァルキリー)モードに変身し、魔法の槍を身構える。話し合いの余地などないのは見れば分かるが、彼女はまだ情報収集を諦めていなかった。
(昔、ここであっただろう戦いを再現すれば、少しは思い出すかな?)
 一度死んでもまた蘇るほどの妄執なら、あるいは無意識が覚えているのかもしれない。
 言葉ではなく行動から相手の過去を読み取ろうと、情報妖精は観察力を研ぎ澄ませる。

「切り刻め、暗黒の刃」
 相手の思惑がどうあれ、リフィウタータの思考はただ目の前の敵を殺し尽くすだけだ。
 投げ放たれる金の鍵と、付随する暗黒の刃。様子見などと余裕を与えない本気の殺意が迫ってくる。
「それだけ敵への恨みが強いってことかな」
 アリスは暗黒刃の動きをよく見て、戦乙女の槍で受け流す。柄を通して伝わってきたのは重く鋭い衝撃。『月の眼の紋章』の加護は失われていても、これだけの力があるのか。

「キミに見えている敵はどんなのかな?」
 初手を凌いだアリスは攻めに転じ、攻撃後の隙を見ての突きをリフィウタータに放つ。
 魔法の槍が脇腹を抉り、敵が表情をしかめる――が、大きく反応に変化は見られない。彼女の「外敵」の戦い方はこうではなかったのだろうか。
「だったらこれはどうかな」
 続いてアリスが放ったのは大上段からの払い。それを避けようとリフィウタータが仰け反れば、気配を消して回り込み、こちらを見失ったところで背後からの奇襲を仕掛ける。

「あ、ぐぅッ!?」
 次々と型を変えるアリスの攻撃に翻弄され、リフィウタータは苦悶の叫びを上げる。
 対するアリスはいろいろな攻め手を試してみては、相手の反応を観察し続けていた。
(目線の動きが違う、それに上からの攻撃に対する反応が鋭いね)
 この『月光城の主』が戦った外敵は、並外れた巨体か空を飛んでいたのかもしれない。
 些細な変化もけっして見逃さずに、アリスは朧げに彼女が見ている敵の姿を推測する。
 かつてこの地を襲った災いが、どれだけ強大で危険な存在だったのか。"答え合わせ"の時は果たして来るだろうか――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
如何な事情を抱えていたのか知る術も無し
ならば、せめて鎮めるのが騎士の務め…参ります

竜に変じましたか…!

爪牙は大盾と剣で捌けども、やはり飛行能力は厄介ですね
ならば、撃ち落とす他ありません!

電脳禁忌剣を一振り
電脳空間より機械弓取り出し矢の先に電脳魔法陣を展開
矢を引き絞り乱れ撃ち

矢の迎撃の為の棘鞭は全身の格納銃器のスナイパー射撃にて排除
力を失った紋章由来、本体の鱗より硬い事は無いでしょう
複数本の矢の軌道を瞬間思考力にて制御
空中を自在に飛翔させ竜の翼膜を引き裂き

バランスを崩せば力の源泉たる竜の瞳に矢を突入

名すら失った竜の乙女よ、ご容赦を!

最後は自己ハッキングで怪力限界突破
落下する竜の紋章を矢で射貫き



「如何な事情を抱えていたのか知る術も無し」
 無惨に荒れ果てた都市の廃墟と、狂い果てたかつての領主の姿を見て、トリテレイアは独り言ちる。往時の彼女がいかなる人物だったのか、何故『拒まれし乙女』の異名を冠していたのか。全ては月光城の陥落とともに忘却の彼方である。
「ならば、せめて鎮めるのが騎士の務め……参ります」
「敵……殺すわ、殺すの、全て、全て、殺さなきゃ」
 信念を込めた宣言に対しても、リフィウタータは譫言のように殺意を振りまくばかり。
 紫の瞳は血色に染まり、肉体は人としてのカタチを失い――その殺意にふさわしき姿、禍々しき暗黒竜に変貌を遂げる。

「竜に変じましたか……!」
「オオォォォォォォォッ!!!」
 咆哮で大気をビリビリと震わせながら、翼を羽ばたかせて突撃するリフィウタータ。
 トリテレイアはその初撃をどうにか防ぐものの、得物を通じて衝撃が伝わってくる。
「爪牙は大盾と剣で捌けども、やはり飛行能力は厄介ですね」
 あちらは自由にこちらの頭上から攻撃を仕掛けられるのに対して、こちらの反撃の手段と機会は限られる。単純な戦闘力の増大だけでなく、翼ある者となき者の格差は大きい。地下都市の上空を悠々と翔ける威容からは、かつての城主としての面影を感じられた。

「ならば、撃ち落とす他ありません!」
 トリテレイアは「電脳禁忌剣アレクシア」を一振りして、電脳空間の中から「機械騎士の剛魔弓」を取り出す。それは人間には引く事はおろか構える事すらできないであろう、ウォーマシン用に開発された巨大な弓であった。
「弓も騎士の嗜みなれば。悉く射貫いて差し上げましょう」
 戦機の剛力にて弦をぐっと引き絞ると、番えられた矢の先に電脳魔法陣が展開される。
 そのまま上空を飛び回る敵に狙い定め、移動予測と軌道計算を行い――発射。放たれた矢は魔法陣をくぐり、砲弾のような勢いで飛んでいった。

「グウウゥゥゥ……ッ?!」
 地上からの射撃に気付いたリフィウタータは回避行動を取るが、矢は彼女が避けた方向に合わせて追尾する。電脳魔術により軌道変更術式を付与された矢は、射手の意思で軌道を曲げることが可能なのだ。
「逃がしはしません」
「ウ、アァ……ッ!」
 矢継ぎ早に乱れ撃ちを行い、複数の矢の軌道を同時に制御し、空中を自在に飛翔させるトリテレイア。マシンの瞬間思考力を活用した攻勢に、敵はたちまち追い込まれていく。
 避け切れないのなら迎え撃つしかないと、『月の眼の紋章』から棘の鞭を放つが――。

「力を失った紋章由来、本体の鱗より硬い事は無いでしょう」
 トリテレイアは全身に格納していた銃器を展開し、棘鞭による迎撃を即座に排除する。
 直後、身を守る武器を失った暗黒竜の翼膜に、速度を落とさぬまま矢が突き刺さった。
「ギッャアアアァァァァァァァッ!!!?」
 竜の身体でもっとも脆い部位を引き裂かれたリフィウタータは、揚力を失ってバランスを崩す。騎士はすかさず他の矢の軌道を操作し、今度は墜落する目標の瞳に突入させた。

「ぎ、う、ああぁぁぁ――……っ!!!」
 暗黒竜の力の源泉たる瞳を射抜かれたリフィウタータは、それ以上変身を維持することができず、人の姿になって墜ちていく。完全に無防備な体勢となった彼女にトドメの一撃を見舞うべく、トリテレイアは自己ハッキングにより出力のリミッターを外し――。
「名すら失った竜の乙女よ、ご容赦を!」
 限界を超えた膂力で引き絞られた剛弓から放つ渾身の一矢。それは対戦車砲ですら比較にならないほどの威力をもって、かつての城主の証たる『月の眼の紋章』を射貫いた。

「―――……ッ!!!!!」
 胸と瞳に矢を突き刺され、言葉にならぬ絶叫を上げて地面に墜落するリフィウタータ。
 その傷は見るからに深手であろう。地に這いつくばったまますぐに立ち上がれない有様を見て、トリテレイアは決着が近いことを察した――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロラン・ヒュッテンブレナー
○アドリブ絡みOK

あの人が、この都市の、月光城の主?
すごく暴れてるね…
それに、この気配はもしかして?

あなたもドラゴンに変身する吸血鬼だったんだね
姉の母親の姿を思い出すの
街を失って、理性も失って、ただ暴れるしかできないあなたを、解放してあげるの

UC発動
魔術陣の首輪を形成、そこから伸びる魔術回路の鎖で縛られた狼へ変身なの

満月の【オーラ防御】に桃の闘気を混ぜて鉄壁の【結界術】で守りを固めるの

ここは満月の力が強いね
それを集めて、咆哮に乗せて相手を浸食・変化させる事で消滅へ導く人狼魔術で対抗なの

あなたの様な人も、ぼくは救われていいと思ってるの
過去から解き放ってあげたい
あなたの仇も、きっと討ってあげるから



「あの人が、この都市の、月光城の主?」
 明らかに正気ではない様子の赤髪のオブリビオンを見て、ぽつりと呟いたのはロラン。
 ヴァンパイアらしい高貴さも、かつての城主としての威厳もなく、妄執のままに外敵を排除するだけの有様はまるで獣のようだ。
「すごく暴れてるね……それに、この気配はもしかして?」
「う……うぅぅぅぅゥアアァァァ……!!!」
 少年が様子を窺っていると、起き上がった敵は天に咆哮し、巨大な竜へと姿を変える。
 もはや"獣のよう"ではない。瞳を赤く血走らせ、月光の下で暴れ狂う姿は、まさに魔獣そのものだった。

「あなたもドラゴンに変身する吸血鬼だったんだね」
 変貌を遂げたリフィウタータに、ロランは憐れむような眼差しを向けて語りかける。
 これと似たような姿の吸血鬼と、以前彼は戦ったことがある。それは腹違いの姉の母親――狂気と恍惚に取り憑かれた『第五の貴族』の1人だった。
「街を失って、理性も失って、ただ暴れるしかできないあなたを、解放してあげるの」
 このまま永久にかつての領土を彷徨うくらいなら、せめてここで終焉をもたらそう。
 慈悲の言葉をかけて彼は【静寂を慈しむ音狼の加護】を発動し、魔術陣の首輪を形成。そこから伸びる魔術回路の鎖で縛られながら、ハイイロオオカミの姿に変身を遂げる。

「ほぉぉぉぉぉぉぉぉ……ん」
 満月のオーラを身に纏い、遠吠えの音を響かせる人狼ロラン。咆哮は魔術を紡ぐための触媒となり、懐に忍ばせた「魔符桃香」の香気と混ざりあって鉄壁の結界を作り上げた。
「コロス、コロス、コロスッ!!」
 上空から竜が襲い掛かってくるが、その爪も牙も彼の結界を突き破ることはできない。
 桃の浄化の力を結界と合わせたのも良かったのだろうが、満月を力の源とするロランの魔術が、ここでは普段以上の効力を発揮している。

「ここは満月の力が強いね」
 陥落したとはいえ『月光城』のあった都市だ、影響がまだ残っていても不思議はない。
 ロランは廃墟に満ちる力の残滓を集め、咆哮に乗せて放つ。慈しむような満月の光が、暗黒竜と化したリフィウタータに浴びせられた。
「ウ、アアァァぁぁぁ……っ!?」
 満月の咆哮に照らされた竜の姿はほどけるように消え、本来の乙女の姿に戻っていく。
 これは対象を侵蝕・変化させることで消滅へと導く人狼魔術。狂乱には静寂を、妄執には解放を――痛みはなく"終わり"を与える、ロランの慈悲の想いが形となった魔術だ。

「あなたの様な人も、ぼくは救われていいと思ってるの」
 過去から解き放ってあげたい――それがロランの偽らざる本心だった。どんなに邪悪な『月光城の主』だったとしても、妄執に囚われたまま己を見失い、ただ『外敵』を排除するだけの怪物であり続けるのは、あまりにも酷だから。
「あなたの仇も、きっと討ってあげるから」
 小さく、弱々しくうずくまるリフィウタータに向けて、ロランはひとつ約束を交わす。
 高貴なる城主を妄執の獣に変えた元凶。いずれ猟兵として立ち向かうべき敵だろうと、覚悟をその胸に抱きしめて。

大成功 🔵​🔵​🔵​

キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎

完全に正気を失っているが…
まるで何かに追い詰められているような焦燥感を感じるな

ナガクニを腰に差しシルコン・シジョンを装備
距離を取りつつフルオートで一斉発射
紋章から飛び出す棘鞭に注意して立ち回ろう

力を失ったとは言え、流石はかつての領主か
ほんの少しでも気は抜けんな

此方に向かってくる棘鞭はナガクニで切り落とし、金のカギが放たれたら軌道を見切りスナイパーと早業を使い、シルコン・シジョンで撃ち落とす
強力ではあるが、正気を失った状態では命中精度も多少は落ちてるだろう
UCも発動し、密かにナガクニの封印も外していく

金の鍵が再度投げつけられたら、打刀へと変わったナガクニで武器受け
同時に空へと放り投げる
こうすれば、奴の暗黒の刃はナガクニに向けられて撃つだろう
その隙にシルコン・シジョンで奴の紋章を狙って撃ち抜く
さらに、吹き飛んだナガクニを念動力で手元に手繰り寄せ、更に封印を解いて強化
そのまま叩き切る

敵は殺す、か…その意見にだけは賛成だな
お前も、そうなってまでこの世界で生きていたくはないだろう?



「完全に正気を失っているが……まるで何かに追い詰められているような焦燥感を感じるな」
 暴れ狂うかつての『月光城の主』に、キリカが抱いたのはそんな印象だった。外敵との戦いは遠い昔のことだと言うのに、今だ妄執に取り憑かれ、目についた侵入者全てに攻撃を仕掛ける様は、確かに「焦っている」とも「恐れている」とも取れる。
「その焦燥の訳を知るためにも、負けられんか」
 黒革拵えの短刀"ナガクニ"を腰に差し、手には神聖式自動小銃"シルコン・シジョン"を装備したスタイルで、彼女は『拒まれし乙女』に挑む。トリガーをぐっと引き絞れば、タタタッとリズミカルな発砲音とともに、フルオートの一斉発射が敵に浴びせられた。

「敵……敵は殺すの、殺さねば、殺すわ、全て全て全て」
 譫言のようにリフィウタータが呟くと、ヒビ割れた胸元の『月の眼の紋章』から棘鞭が飛び出し、目にも留まらぬ速さで銃弾の雨を払い落とす。一発一発に聖書の箴言を込めた退魔の弾丸だが、きっちりと対処する術は持ち得ているようだ。
「力を失ったとは言え、流石はかつての領主か。ほんの少しでも気は抜けんな」
 そのまま此方に向かってくる棘鞭に注意して、距離を取りつつ立ち回るキリカ。片手でトリガーを引き続けながらナガクニを抜き放ち、敵に圧をかけたまま棘鞭を切り落とす。こちらも強敵相手に揺らぎのない戦いぶりを見せる。

「死ね、死んで、死になさい……切り刻め、暗黒の刃」
 鞭だけでは手数が足りぬと判断したか、リフィウタータはさらに金の鍵を投げつける。
 狙いはこの鍵に付随する暗黒の刃による追撃。本体が満身創痍となった今でも、黄金の煌めきは不気味な魔力を発していた。
「強力ではあるが、正気を失った状態では命中精度も多少は落ちてるだろう」
 キリカはその軌道を瞬時に見切り、シルコン・シジョンの銃撃で金の鍵を撃ち落とす。
 スナイパーとしても卓越した技能を誇る彼女だからこそ可能な早業。初撃さえ封じれば追撃も発動しないのは既に確認済みだ。

「死ね、死ね、殺す、殺すわ、殺すのよ……!」
 リフィウタータはさらに狂乱の度を深めながら金の鍵を投げつけ、暗黒の刃で敵を抹殺せんとする。だが、その動きを読んでいたかのようにキリカはナガクニを振るい――その瞬間、短刀は一振りの太刀へと姿を変えた。
「忌まわしき邪龍の牙よ、呪われたその力で目の前の獲物を討ち、存分に喰らうがいい……」
 攻防の最中で彼女は密かに【影打・國喰】を発動し、ナガクニに施された封印を外していたのだ。この短刀の素材に使われているのは、かつて邪龍と呼ばれるまでに堕ちた悪しき竜神の骨――その封をひとたび解き放てば、恐るべき破壊と殺戮の力が溢れ出す。

「こいつの呪いと貴様の暗黒、どちらが強いかな」
 キリカは打刀へと変わったナガクニで金の鍵を受け止め、同時に空へと放り投げる。
 こうすれば、リフィウタータの暗黒の刃はキリカではなくナガクニに向けて放たれる。その間に生じる隙を彼女は見逃さない。
「切り刻―――ッ!!」
 暗黒の刃が邪龍の太刀を吹き飛ばした直後、リフィウタータの紋章を銃弾が撃ち抜く。
 今度は鞭で迎撃する暇もなかった。聖句の力に身を焼かれ、悪しき吸血鬼はよろめく。

「敵は殺す、か……その意見にだけは賛成だな」
 相手に体勢を立て直される前に、キリカは銃を下ろすと一気に至近まで距離を詰める。
 同時に吹き飛ばされたナガクニを念動力で手元に手繰り寄せ、力の封印をさらに解く。暴走寸前まで解き放たれた龍の邪気は、刀身より禍々しく立ち上り――。
「お前も、そうなってまでこの世界で生きていたくはないだろう?」
 一閃。闇よりもなお黒い斬撃の軌跡を描き、その刃は拒まれし乙女に叩きつけられた。
 國喰らいと畏れられた名に違わぬ切れ味を以て、肉を断ち、骨を斬り、心の臓を抉り。真っ赤な鮮血の華が戦場に散る。

「ぁ――……これ、で、終わる、のね」

 囁くような声で、最期の言葉を紡ぎ。糸の切れた人形のように乙女は地に崩れ落ちる。
 外敵に滅ぼされた『月光城の主』リフィウタータは、ここに二度目の死を迎えた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『天魔の幼獣』

POW   :    白の嵐
自身の装備武器を無数の【羽毛を思わせる光属性】の花びらに変え、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD   :    白の裁き
【視線】を向けた対象に、【天からの雷光】でダメージを与える。命中率が高い。
WIZ   :    天候操作
「属性」と「自然現象」を合成した現象を発動する。氷の津波、炎の竜巻など。制御が難しく暴走しやすい。

イラスト:月代サラ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は宇冠・由です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 猟兵との激戦の末、かつてこの地の『月光城の主』であったリフィウタータは斃れた。
 しかし、戦いを終えて一息つく間もなく、さらなる異変が起きたのはその直後だった。

「ぐ、ぅっ。げ、が、あぁぁぁぁっ」

 確かに絶命したはずのリフィウタータの亡骸がびくんと跳ね、痙攣のように震えだす。
 明らかに意識はない状態なのに、身悶えして地をのたうつ様は、まるで体の中で何かが暴れまわっているようだ。

「ぎ、ぐぅ、ぁ、がああぁぁぁぁ―――」

 身構える一同の前で、羽化する蛹のように背中を突き破って、"それ"は姿を現した。
 綿雲のような白い羽毛に包まれた小さな獣。『天魔の幼獣』と呼ばれる魔物の一種だ。
 天候を操るとされ、嵐などの天災を引き起こし、長い年月を経ればより強大な力を持つ成体になると言われている。

「グルルルルルル……ッ」

 だが、ここにいる天魔の幼獣には、他の個体とは明らかに異なる特徴があった。
 腕、脚、翼、尾――生物構造的にありえない箇所から異形の身体部位を幾つも生やし、その全身は月の如く煌々と輝く。悍ましくありながら、どこか神々しささえ感じさせる。
 この異形のオブリビオンこそが、かつて月光城とその周辺都市を破壊した『外敵』なのだろう。先ほど戦ったリフィウタータを遥かに超える力を、猟兵達は本能的に察する。

「グウウオオオオオオォォォォッ!!!!」

 産声の如き咆哮を上げて、異形なる天魔の幼獣はこちらに明確な殺意を向けてくる。
 意思疎通の余地もなさそうだが、どうあれ襲い掛かってくるオブリビオンに応戦しないわけにもいかない。猟兵達はすぐさま臨戦態勢を整える。

 月の謎に迫る冒険のすえ、ついに姿を現した未知なる『外敵』。
 その力が如何程のものであれ、真実に迫らんとすれば討ち倒すほかに道はない――。
フォルク・リア
「……確かに奴は死んだ筈だ。
しかし、現れたこれは…。」
「別の姿になったのではなく明らかに別のもの。
この力は一刻も早く倒さなければ。」
此方の被害もそうだが。
万一逃げられた事を考えれば
余裕のある状況とは言えない。

自然を操る姿を見て
「厄介な。
距離を取ればいいと言うものではなさそうだ。ならば。」
生命を喰らう漆黒の息吹を発動。
敵の攻撃には【見切り】、【残像】を発生させた回避と
【オーラ防御】でのダメージ軽減で対応しながら
起こされる自然現象には鳳仙花の花びらでその
生命を喰らう事で効果を減衰。
常に敵に高密度で花びらをぶつける隙を窺い
敵と距離が詰まったタイミングで花びらを纏って接近、
花びらの旋風で削る様に攻撃。


七那原・望
この気配、なんだかとても恐ろしい物のような……
それにヴァンパイアの中から出て来たという事は寄生していたのですか?
だから先のヴァンパイアに理性はなかった?

急いでアマービレでねこさんを大量に呼び、わたしの周囲に集め、第六感と野生の勘で敵の光属性に有効な属性を見切り、その属性の結界を全員で協力して多重詠唱全力魔法で展開し、なんとか花びらを防ぎましょう。
可能なら他の猟兵達も結界で包みます。

攻撃を凌いでいる間にユニゾンに限界を超えて魔力を溜め、十分に充填し終えたら敵の攻撃が止んだ瞬間にねこさん達の多重詠唱全力魔法で動きを止めつつ、威力重視の全力魔法クイックドロウLux desireを叩き込みましょう。



「……確かに奴は死んだ筈だ。しかし、現れたこれは……」
「この気配、なんだかとても恐ろしい物のような……」
 リフィウィータの体内から食い破るように出現した『天魔の幼獣』に、フォルクと望は警戒して身構える。通常のオブリビオンとも、第五の貴族や月光城の主とも違う、強大にして異質な存在――これが、かつてこの地を滅ぼした『外敵』なのか。
「それにヴァンパイアの中から出て来たという事は寄生していたのですか? だから先のヴァンパイアに理性はなかった?」
 あのリフィウィータは外敵に敗れてなお蘇ったのではなく、外敵が寄生する苗床として利用されていたのかもしれない。もしも望の推測が正しければ、この外敵は当初の予想を超えて悍ましい存在だ。しかし、それ以上の考察をする時間を敵は与えてくれなかった。

「グウウォォォォォォ―――!!!」
 天魔の幼獣が一声叫ぶと、羽毛を思わせる白い光の花びらが全身から撒き散らされる。
 その【白の嵐】に触れたものは瓦礫も地面も全てが削り取られて消滅する。意思の疎通は測れないが、どうやら向こうはこちらを皆殺しにするつもりのようだ。
「危険です。こっちに」
「すまない、助かる」
 望は急いでアマービレを振って魔法猫を大量に呼び集め、協力して自分達とフォルクを守る結界を張る。多重詠唱により高められた魔力は闇色の帳となって彼女らを包み込み、光の花びらをシャットアウトした。

「なんとか防げましたけど、すごい力なのです」
 望と魔法猫たちの全力、それも光に有効だと直感的に推測して展開した闇属性の結界をもってして、ようやく止められるほどの破壊力。これまでに彼女が戦った数々の強敵に、勝るとも劣らない力をあの『外敵』は持っているようだ。
「別の姿になったのではなく明らかに別のもの。この力は一刻も早く倒さなければ」
 その力と危険性を目の当たりにしたフォルクも、結界に庇われながら危機感を強める。
 此方の被害もそうだが、万一逃げられた事を考えれば、余裕のある状況とは言えない。
 しかも天魔の幼獣はまだ攻撃の手を緩めず、さらなるユーベルコードを仕掛けてきた。

「オォォォォ―――ッ!!!」
 天に轟く幼獣の咆哮は、戦場に嵐と稲妻を呼び寄せる。意のままに【天候操作】を行い攻撃手段として利用する敵の姿を見て、フォルクはフードの下でますます顔をしかめる。
「厄介な。距離を取ればいいと言うものではなさそうだ。ならば」
 望の結界が破られる前にと、彼は【生命を喰らう漆黒の息吹】を発動。自身の装備品を無数の黒い鳳仙花の花びらに変えて放ち、敵のユーベルコードの効果の減衰を図った。

「ウゥゥゥ……?」
 結界ごと獲物を吹き飛ばすはずだった自然の猛威は、黒い鳳仙花に触れた途端に勢いを失い、暴風は微風に、雷雨は俄か雨となる。冥界より召喚されたこの華は、触れるもの全てから生命やエネルギーを奪い取るのだ。
(今のうちです)
 フォルクの鳳仙花が敵の攻撃を凌いでいる内に、望は結界を張ったまま残された魔力を手に持っていた黄金の林檎――「真核・ユニゾン」に送り込む。願望に応じ、数多の奇跡を引き起こすと謳われた勝利の果実は、魔力の蓄積に応じてその輝きを増していく。

「グルルルゥゥゥ……ッ」
 いかに強大な外敵とて、永遠に攻勢を継続できる訳ではないらしい。白い嵐も天候操作も阻まれた天魔の幼獣は、悔しげな唸り声を上げつつ攻撃を緩める。息を整えてもう一度襲い掛かるまでに生じる僅かな隙を、二人の猟兵は見逃さなかった。
「攻撃が止みました。今です」
「ああ。仕掛けるとしよう」
 望が結界を解くのと同時にフォルクは走りだし、全速力で敵との距離を詰めにかかる。
 獲物が近付いてくるのを見た天魔の幼獣は、全身から生えた異形の身体部位で迎え撃とうとするが――そこに「にゃあ!」と高らかな猫の鳴き声がした。

「ねこさん達、お願いします」
 望に付き従う魔法猫達の多重詠唱が、多数の魔法の矢となって天魔の幼獣の降り注ぐ。
 大したダメージにはならないだろうが、少しでも動きを止めて妨害になればよかった。
「グルゥッ?!」
 不意打ちをうけた天魔の幼獣は驚きの声を上げ、迎撃の動作が鈍る。乱雑に振るわれた四肢をフォルクは残像が生じるほどの速度で躱し、あるいはオーラの守りで受け流して、鳳仙花の花びらを纏いながら敵の懐まで飛び込んだ。

「よく見ておけ。これが、お前の命を刈り取る手向けの花だ」
 フォルクが仕掛けるのは、攻撃用に高密度に集束させた冥界の鳳仙花による一斉放射。
 至近距離で吹き荒れる花びらの旋風が、天魔の幼獣から羽毛や部位を削り取っていく。
「グ、ガアアァッ!?」
 幼獣が初めて発した苦痛の悲鳴。未知の外敵にも届きうる武器を猟兵達は持っている。
 それを証明するように、後方で待機していた望から追撃のユーベルコードが放たれた。

「全ての望みを束ねて……!」
 限界以上に魔力を充填したユニゾンから、目も眩むほどの膨大な光の奔流が溢れ出す。
 このユーベルコードの名は【Lux desire】。無数の願望から生み出されたエネルギーを一気に解き放つ大魔法だ。
「ガアアァァァァッッ?!」
 敵を倒すという願いに応じて叩き込まれた閃光は、外敵にも十分通用する威力を誇る。
 朽ち果てた廃墟に天魔の幼獣の絶叫が響き渡り、血に濡れた羽毛が辺りに飛び散った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

カビパン・カピパン
「リフィウタータの活躍によってINU製作総指揮の謎が一部解明、恐るべし好奇心カビを殺す計画も阻止された」
「その活躍に敬意を表し、幼獣の誕生を心よりお祝い申し上げる」
「続々と祝電、祝文が届いている。まずは世界三大映画祭で受賞した経歴のある、至高の戍製作総指揮からのお言葉だ」
(戊製作総指揮の祝文が入ります)
「次にゴールデンラズベリー賞を毎回総なめの究極の戊製作総指揮からビデオレターだ」
(戊製作総指揮のビデオレターが再生されます)

「だが、未だINU製作総指揮が謎に包まれたままに変わりはない。しかしその時も必ずや敵がこの謎を解明してくれると信じている」

「じっちゃんの名にかけて、真実はいつも一つ!!」



「リフィウタータの活躍によって製作総指揮の謎が一部解明、恐るべし好奇心カビを殺す計画も阻止された」
 いよいよ謎の根幹たる『外敵』が姿を現しても、カビパンは変わらず平常運転だった。
 表情だけはキリッと真面目そうだが、言っている事は本人以外の誰にも理解できない。
 好奇心カビを殺す計画とは何なのか、恐ろしさの詳細が明らかになる事はないだろう。
「その活躍に敬意を表し、幼獣の誕生を心よりお祝い申し上げる」
「グルルル……?」
 理解不能のカビパン劇場に、今回巻き込まれる羽目になる不憫な被害者は天魔の幼獣。
 敬意だのお祝いだのと言われても、まったく活躍に見に覚えのないそれは、困惑気味に唸り声を上げた。

「続々と祝電、祝文が届いている。まずは世界三大映画祭で受賞した経歴のある、至高の製作総指揮からのお言葉だ」
 相手に言葉が通じていようがいまいがカビパンの話は止まらない。いったい何時の間に受け取っていたのかも不明だが、ポケットから丁寧に折りたたまれた書状を取り出して、代読を始める。
「"えー、此の度は誠に……"」
 内容については長いので割愛するが、まあまあ当たり障りのないお言葉だったらしい。
 いつの間にか回りに配置されていた【寒風にも負けぬモノ】の観客ロボットが、代読の終わりに合わせて拍手を送った。

「次にゴールデンラズベリー賞を毎回総なめの究極の製作総指揮からビデオレターだ」
 今度はどこからともなくモニターと再生機を用意するカビパン。こんな廃墟では電波も届かないのにどうやって送られたのかますます分からないが、たぶん考えても仕方ない。
「グルルルルッ……???」
 目の前で垂れ流される謎の人物と謎の映像に、天魔の幼獣もただただ困惑するばかり。
 合間合間で挟まれる観客ロボット達の笑い声や拍手だけが、虚しく戦場に響き渡った。

「祝辞は以上だ」
 有意義という言葉から対極に位置するような時間が過ぎ去り、カビパンは満足げに祝文をしまう。天魔の幼獣といえばその頃にはすっかり飽きていて、勝手に他の猟兵のところに向かっていた。
「だが、未だ製作総指揮が謎に包まれたままに変わりはない。しかしその時も必ずや敵がこの謎を解明してくれると信じている」
 ロボットしか見守る者のいなくなった劇場で、カビパンは真剣な顔のまま語り続ける。
 自分の力で解明する気はないのかという疑問は愚問だろう。もし1ミリでもその気があったなら、依頼中の最初から最後までずっとこんなことはしていないだろうから。

「じっちゃんの名にかけて、真実はいつも一つ!!」
 最後に決め台詞と決めポーズをカメラ目線で取って、カビパンは本日の撮影を終える。
 これまでで一番大きなロボ達の拍手と笑い声が、他に誰も居ない廃墟に木霊した――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シキ・ジルモント
外敵がどこから来たのか、目的は何なのか
知りたい事はあるが話の出来る相手ではなさそうだ
しかし少なくとも奴の危険性は直接対峙して理解した
当初の予定通り、この場で殲滅する

十分に警戒し最初からユーベルコードを発動、増大した速度で常に動き続ける事で雷の直撃を防ぎたい
掠っただけでもダメージは大きいがとにかく動く、止まれば終わりだ
銃弾は無暗に撃たず温存して走り、隙を見てハンドグレネードを投擲する
これ程の力を持つ相手にダメージが入るかは分からないがそれでいい
派手な爆発で気を引いて、奴の視線がこちらを向かない瞬間を作りたい

視線が他所を向いている間だけなら雷は止まるだろう
その瞬間に、温存した弾をありったけ叩き込む



「外敵がどこから来たのか、目的は何なのか。知りたい事はあるが話の出来る相手ではなさそうだ」
 意思疎通どころか人語を解するかも怪しい、異形の特徴を持つ『天魔の幼獣』を見て、シキはそう判断した。情報を引き出そうと下手に近づいても、あの凶暴さでは蹂躙されるのが関の山だろう。
「しかし少なくとも奴の危険性は直接対峙して理解した」
 未知なる『外敵』の脅威をこの目で認識できた。それが現状最大の収穫かもしれない。
 もし、この怪物が廃墟ではなく人間の住む都市に現れれば、被害は甚大になるだろう。

「当初の予定通り、この場で殲滅する」
 敵の実力を十分に警戒し、シキは最初から【イクシードリミット】を発動。普段は抑えている人狼の獣性を解放することで、肉体のリミッターを外し高速戦闘モードへと移行する。
「グルルルゥゥゥッ!!」
 闇の中で光る人狼の瞳を見た天魔の幼獣は、威嚇の咆哮とともに【天候操作】を行う。
 夜空は俄に曇りだし、暗雲からゴロゴロと雷鳴が轟く。その中から稲光が閃いた瞬間、シキはさっとその場から駆けだした。

(直撃だけは避ける)
 寸前までシキの立っていた場所に、極大の落雷が降り注ぐ。ユーベルコードにより増大したスピードと反応速度がなければ危うかっただろう。そのまま常に動き続けることで、なおも降り続ける雷を回避する。
(とにかく動く、止まれば終わりだ)
 掠めただけでもダメージは大きい。電流で体が痺れるが、彼はぐっと歯を食いしばって走る。手に持った愛用のハンドガンはまだ撃たず――弾を温存してここぞというチャンスを待っている。

「グルゥ……ッ」
 何度攻撃しても避けられるうちに、相手も焦れてきたのだろう。天魔の幼獣が苛立ちを示すように地面を引っかきだすと、落雷の照準が甘くなる。天候操作は強力なぶん制御の難しいユーベルコードであり、心の乱れがコントロールに如実に現れている。
(好機が来たな)
 その隙を逃さずにシキは懐からハンドグレネードを取り出し、天魔の幼獣に投擲する。
 小型ながらも高い破壊力と携帯性を両立させた武器だが、それでもコレほどの力を持つ相手にダメージが入るかは分からない――だが、それでいい。

「ガウッ?!」
 至近距離で炸裂したグレネードの派手な爆発に、天魔の幼獣の耳と目は釘付けになる。
 警戒心の強い獣が、獲物から視線を逸らす瞬間――それを作るのがシキの目的だった。
(視線が他所を向いている間だけなら雷は止まるだろう)
 雷雲が鳴り止んだその瞬間に銃を構え、温存していた弾をありったけ標的に叩き込む。
 卓越した技量と速度が生み出す銃弾の嵐が、落雷に代わって天魔の幼獣に降り注いだ。

「全弾くれてやる」
「グ、ギャアァァァッ!!!?」
 全身に銃弾を浴びた天魔の幼獣は悲鳴を上げ、血飛沫を撒き散らしながら地に伏せた。
 いかな強大な外敵とて、弾が効くなら殺せない相手ではない――ひとつの情報を新たに手に入れて、シキは弾切れになった銃をホルスターに収めた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アリス・フォーサイス
これが月光城とその周辺都市を破壊した『外敵』。上空からの攻撃への反応が大きかったのは、空を飛ぶ敵だったからか。
キミはどこから来たのかな。

身体を量子化して回避。相手の背後で体を再構築して、高速詠唱で魔法の矢を確実に当てるよ。

さすがに頑丈だね。でも、こういう奇襲は有効みたいだ。
こちらの魔力がつきるまで、何度も繰り返すよ。



「これが月光城とその周辺都市を破壊した『外敵』。上空からの攻撃への反応が大きかったのは、空を飛ぶ敵だったからか」
 リフィウィータとの戦いから得た手がかりの"答え合わせ"とも言える相手の姿を見て、アリスはなるほどねと呟いた。物語としては満を持しての登場となる外敵――異形の部位を生やした天魔の幼獣は、月光の如き輝きを放ちながら空を舞っている。
「キミはどこから来たのかな」
「グウゥゥゥゥゥ……ッ!」
 その質問に相手が応えることはなく、ただ殺意に満ちた視線と唸り声を向けるばかり。
 幼獣の意思に応えるように廃墟都市の天候は荒れはじめ、上空には稲光が閃きだした。

「ウォゥッ!!」
 天魔の幼獣の高らかな雄叫びと共に、天より発動する【白の裁き】。超音速で放たれる雷光の矢はまっすぐに少女めがけて落ちてきており、回避は不可能かのように思われた。
「それは残像だよ」
「――グゥッ?!」
 だが、アリスは【ファデエフ・ポポフゴースト】により自身の身体を量子化し、さらに情報分析により落雷の軌道とタイミングを予想して回避する。幻影のように現実空間から消え去った彼女は、その直後に相手の背後で身体を再構成した。

「まずは確実に当てるよ」
「ギャンッ!!」
 実質的な瞬間移動により敵の背後を取り、素早く呪文を唱えて魔法の矢を放つアリス。
 死角かつ至近距離からの不意打ちとなれば、いかな強者とて回避は間に合うまい。矢が突き刺さった天魔の幼獣が、犬のような悲鳴を上げた。
「さすがに頑丈だね。でも、こういう奇襲は有効みたいだ」
 仕留められはしなかったもののダメージはあるとみたアリスは、再度呪文を唱えだす。
 一発で足りなければ何十発でも撃ち込む。相手が倒れるか、自分の魔力が尽きるまで。

「グオォォッ!!」
 天魔の幼獣はすぐさま振り返って【白の裁き】を仕掛けようとするが、その視界に入る直前にアリスはまた【フェアデフ・ポポフゴースト】を発動。量子化により姿を消して、またもや背後に回り込む。
「こっちだよ」
「ギャウッ?!」
 そして放たれる魔法の矢。痛みで敵が振り向けばすぐさま量子化――と、アリスは徹底してこの戦い方を繰り返す。一撃の破壊力と耐久力では遥かに勝るはずの天魔の幼獣は、彼女の戦法に完全に翻弄されていた。

「ぼくの魔力がつきるか、キミが倒れるか、どちらが先かな」
「グ、グウゥゥゥゥッ!!」
 まさに妖精らしく捉え所のないアリスに、天魔の幼獣の怒りと苛立ちはつのっていく。
 その怒りは行動を荒くさせ、ますます術中に嵌まるだけとも分からずに――既に何本も突き刺さった魔法の矢は、かの者の生命力を着実に削りつつあった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

オリヴィア・ローゼンタール
まるで話に聞く羽化登仙……いや、違う、寄生されていた……?
第五の貴族が、別の吸血鬼に変貌した現象に似ている、か……?

ともあれその力は先の暗黒竜をも越えて甚大
白き翼の姿に変身して迎え撃つ

光の花びらを、縦横無尽に宙を翔けて躱し(空中戦)、炎の魔力を纏う(オーラ防御)ことで身を護る
掴みかかって来る異形の身体部位を、飛翔の勢いを乗せた聖槍の斬撃で斬り飛ばす
文字通り手数が多い……! 大火力で一気にカタを付ける!

聖槍に炎の魔力を圧縮、【極煌灼滅剣】を形成(属性攻撃・全力魔法・破魔)
全霊の力で【なぎ払い】、炎の【斬撃波】で無数の花びらごと焼き払う(焼却・衝撃波)
焼き尽くす――!



「まるで話に聞く羽化登仙……いや、違う、寄生されていた……?」
 オブリビオンの体内から別種のオブリビオンが現れるという奇怪な光景を、オリヴィアは冷静に分析する。かつて敗北した『月光城の主』の中に、勝利した『外敵』が潜んでいた事実からも、寄生という表現は近いように思えた。
「第五の貴族が、別の吸血鬼に変貌した現象に似ている、か……?」
 あるいは、どちらかが敵の現象を模倣した可能性も考えられるか。なにぶん情報が少なく、現状では推測を重ねるしかない。だが少しずつでも真相に迫りつつあるのを感じる。

「ともあれその力は先の暗黒竜をも越えて甚大」
 ここで確実に倒さなければならない相手だと、オリヴィアは背中に白き翼を生やした、天使の如き姿に変身して迎え撃つ。月光の如き輝きを放ち、天候すら操る魔獣と相対するには相応しい形態だろう。
「ウォォォォォ―――ンッ!!」
 天魔の幼獣が遠吠えすると、羽毛を思わせる光の花びらが辺りに舞い散り、【白の嵐】を巻き起こす。何千枚、何万枚あるかも分からぬ白光の全てに込められた殺意が、目前の天使目掛けて殺到した。

「これが外敵とやらの力か……!」
 オリヴィアは白翼を羽ばたかせて縦横無尽に宙を翔け、押し寄せる光の花びらを躱す。
 しかし一度避けただけでは攻撃の勢いは止まらない。なおも追ってくる白の嵐を見て、彼女は全身に炎の魔力を纏った。
「グルルルゥゥゥゥッ!」
 炎のオーラに焼き消されていく白い花びら。だが、その中から今度は天魔の幼獣本体が襲い掛かってくる。その全身から生やした異形の身体部位がただの飾りではないことは、動きを一目見れば分かった。

「文字通り手数が多い……!」
 掴みかかってくる幾つもの"手"に対し、オリヴィアは聖槍を振るう動作に飛翔の勢いを乗せてなぎ払う。破邪の力を帯びた黄金の穂先が、異形なる魔獣の部位を斬り飛ばした。
 今はどうにか凌げているが、このまま身を護るだけでは押し切られるのは明白だった。かといって半端な反撃でどうにかなるほど甘い相手ではない。
「大火力で一気にカタを付ける!」
 活路があるとすればそれしかない。覚悟を決めたオリヴィアは身に纏った炎の魔力を、今度は聖槍に付与する。超高密度に圧縮された魔力は灼熱とともに穂先から吹き上がり、炎の刀身を持つ大剣――【極煌灼滅剣】を形成した。

「神世を焼き尽くせし炎の剣よ! 遍く邪悪を灼滅せよ!」
 異界に謳われし神話を再現した炎剣を、オリヴィアは全身全霊の力を込めてなぎ払う。
 このユーベルコードを放てるのは一度きり。使用後は形成した大剣が霧散してしまう。だからこそ、その一撃には炎剣の持つ全ての火力が、万象を滅ぼす力が宿っている。
「焼き尽くす――!」
「―――ッ?!」
 放たれた灼熱の炎の斬撃波は、舞い散る無数の花びらごと、天魔の幼獣を焼き払った。
 余りの熱量に大気が膨張し、辺りに暴風が吹き荒れる。その中から焼き斬られた幼獣の絶叫が響き渡った。

「グギャアァァァァァッ!!!!?」
 極煌灼滅剣の斬撃を受けた天魔の幼獣の全身は焼け爛れ、異形の部位も何本かは完全に炭化している。息の根があるだけ大したものだが、それでも相当な深手に違いあるまい。
 月光は地に墜ち、天に煌めくは破邪の黄金。相手が未知の外敵であろうと、その矛先に破れぬ邪悪はいなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鏡島・嵐
幼体でこの強さとか、嘘だろ……!?
「上には上がいる」とは言うけど、天井知らずの強さなんて冗談じゃねえ!

(恐怖で蒼褪めながら、止まらない震えを無理やり抑えつけて)

自然現象を操るんか……強敵が増えるようなもんだし、放ってはおけねえよな。
向こうが何の属性の、どんな自然現象を操るんに長けてるんかを〈第六感〉を活かして観察しつつ、こっちも《幻想虚構・星霊顕現》で対抗。なんとか起こそうとしてる現象を抑制するなり、別の属性で防ぐなりして、コントロールを妨害する。
暴走を誘発できれば、奴さんだって隙を見せるはずだ。そこを〈スナイパー〉ばりに精度を引き上げた〈限界突破〉の〈鎧無視攻撃〉で撃ち抜けられれば……!



「幼体でこの強さとか、嘘だろ……!?」
 月光城の主すら凌駕する『天魔の幼獣』の力を目の当たりにして、嵐は驚愕を隠しきれなかった。今ですら手に余りかねないほどの強さだと言うのに、これから更に成長すればどうなってしまうのか。
「『上には上がいる』とは言うけど、天井知らずの強さなんて冗談じゃねえ!」
 恐怖で青褪めながら、止まらない震えを無理やり抑えつける。本音を言えば今からでも逃げ出したいくらいだが、責任感や使命感、逃げて後悔だけはしたくないという思いが、彼をこの場に留まらせていた。

「グウゥゥオオォォォォッ!!」
 天魔の幼獣が空に向かって吠えると雷雲が現れ、廃墟と化した地下都市に旋風が吹く。
 本来は制御が難しい【天候操作】のユーベルコードを、かの魔獣は自在に操っていた。
「自然現象を操るんか……強敵が増えるようなもんだし、放ってはおけねえよな」
 恐ろしい相手だからこそ、ここで食い止めなければ大変な事態になる。もしもこの幼獣が成体となって人間を襲うような事件が起きれば、悔やんでも悔やみきれないだろう――だから、戦う。嵐は結希を振り絞ってスリングショットを構える。

「オォォッ!!!」
 天魔の幼獣がさらに一声鳴けば、雷雲の中から稲光やゴロゴロと雷鳴が聞こえてくる。
 どうやら、この魔獣は天候の中でも雷を操ることに長けているようだ。目視と第六感を活かした観察により、その予兆を察した嵐は【幻想虚構・星霊顕現】を発動する。
「Linking to the Material, generate archetype code:X……!」
 属性と自然現象の操作は彼奴の専売特許ではない。今ではない時、此処ではない場所、遙かな異界の冒険譚を源として、敵の起こす現象に対抗する現象を呼び起こす。高らかな詠唱に応じて彼の周囲に現れるのは、眩い黄金の輝きであった。

「これならどうだ……!」
「ウオォォォンッ!!」
 両者のユーベルコードが起動するのは同時。天魔の幼獣が起こした雷電の渦に対して、嵐が呼んだのは――黄金の雨。キラキラと輝く雨粒が、雷光を反射しながら降り注いだ。
「見た目だけじゃねえ。一滴一滴が本物の黄金の雨粒だ」
「グオ……ッ!?」
 通電性の高い黄金は大気中に無数の電気の通り道を作り、雷をバラバラに拡散させる。
 また、東洋の五行思想において風や雷は木行に属し、金行とは金克木の関係性にある。嵐の狙いはこれで敵の雷を抑制し、さらにコントロールを妨害することにあった。

「グ、グルル……ッ?!」
 黄金の雨によって雷の渦は天魔の幼獣の制御を外れ、自然法則のままに暴走を始める。
 予期していなかった事態に幼獣は慌てた様子をみせ、コントロールを取り戻そうと躍起になるが――それは目の前の相手から意識を逸らすことにもなる。
(暴走を誘発できれば、奴さんだって隙を見せるはずだ。そこを撃ち抜けられれば……!)
 待ち望んでいたチャンスを見逃さず、嵐は全神経を集中してスリングの紐を引き絞る。
 全てをこの一発に賭けるという覚悟と集中力は、彼に己の限界を突破させ、狙撃の精度を極限まで引き上げた。

「そこだ……!」
「グ、ギャウッ!!?!」
 神業めいた精密さで放たれた弾丸が、天魔の幼獣の羽毛を突き破り、急所を撃ち抜く。
 防御の余地もない完璧な狙撃に幼獣は悲鳴をあげて地面に転倒する。同時に上空では、力を失った雷の渦が黄金の雨とともに霧散し、頭上を覆う暗雲が晴れていった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
擬態か寄生か、転生か
何れにせよ、この危地を乗り越えねば何も判らず仕舞い

ええ、為すべきは決まっております
合成獣……怪物退治は騎士の務めですとも……!

大量の花吹雪を全身の格納銃器を展開し迎撃

手数も威力も不足というなら!

UC起動
剣と盾の表面に展開した電脳魔法陣にて花弁の嵐を盾受けし反射
天魔の獣への攻撃に転用すると同時、攻め込む進路を切り拓き
如何に跳ね返そうとあの物量
防御しきれぬ以上、末端から我が身が削り切られる前の短期決戦が最善

脚部スラスターの推力移動で肉薄すると同時、花弁の一つの軌道を見切って反射角を調整
相手の視界塞ぐ一片にて好機生み出し

荒ぶる獣よ、討ち取らせて頂きます!

金の幼角に剣振り下ろし



「擬態か寄生か、転生か。何れにせよ、この危地を乗り越えねば何も判らず仕舞い」
 目の前で起きた怪異な現象に対して、トリテレイアの動揺は少なかった。いかなる理由で過去の『外敵』がかつての『月光城の主』の中から出てきたのかは不明だが、その考察や調査を行うのは後でもよい。
「ええ、為すべきは決まっております。合成獣……怪物退治は騎士の務めですとも……!」
「グルルゥゥゥゥッ!」
 使命を果たさんと勇敢に進み出る機械仕掛けの騎士に、天魔の幼獣は全身の毛を逆立てて威嚇する。その毛は無数の光の花びらになって辺りに撒き散らされ、激しい【白の嵐】を巻き起こした。

「銃器展開、迎撃開始」
 トリテレイアは全身に格納した銃器をフルオープンにして、大量の花吹雪を迎え撃つ。
 展開された銃弾の雨は花びらを次々に撃ち落としていくが、敵の攻撃はそれ以上の物量をもって押し寄せ、光の奔流に彼を呑み込まんとする。
「オオオォォォッ!!」
 かつて『月光城の主』を滅ぼした外敵の力は伊達ではなく、その花びらが一枚触れるだけでもダメージは大きいだろう。聖獣の如き外見とは裏腹に攻撃は苛烈そのものであり、このままでは騎士の弾薬が尽きるほうが早いだろう。

「手数も威力も不足というなら!」
 不利を覆すべくトリテレイアは【銀河帝国未配備A式反射防衛機構】を起動。剣と盾の表面に回路図めいて複雑な電脳魔法陣を展開し、それで【白の嵐】を受け止めんとする。
 いかに強固な盾であれ、ただの金属板であれば物量で削り切られるのが関の山だろう。しかし、この魔法陣には防御した攻撃を無力化・反射する効果があった。
「そっくりそのまま……いいえ、それ以上の悪意の報いを受けて頂きます」
「ウオゥッ?!」
 剣や盾に当たった花びらが自分のほうに跳ね返ってくるのを見て、天魔の幼獣が驚きの声を上げる。なおも押し寄せる花と反射された花がぶつかり合い、戦場に吹き荒れる嵐はより激しくも無秩序なものと化した。

(如何に跳ね返そうとあの物量、全て対処することはできませんが)
 うまく敵の攻撃を反撃に転用したトリテレイアだが、防御から漏れた花びらは末端から彼のボディを傷つけていた。今はまだ装甲が削れた程度だが、この傷が本体のフレームに達するまで猶予はない。
(防御しきれぬ以上、我が身が削り切られる前の短期決戦が最善)
 この拮抗状態が維持できている間に決着をつける覚悟で、彼は脚部スラスターを点火。
 花びら同士の激突で切り拓かれた進路を全速力で攻め込み、天魔の幼獣に急接近する。

「グオ……ッ?!」
 天魔の幼獣は異形の身体部位で迎撃しようとするが、トリテレイアは肉薄すると同時に近くを舞う花びらの一つの軌道を計算し、反射角を調整して大盾の電脳魔法陣を当てる。直接攻撃するのではなく、相手の視線を遮る目眩ましとなるように。
(勝敗を決する要因は、ただ一枚で十分)
 一片の花びらが敵の視界を塞ぐ、刹那の好機を生み出した騎士はさらに一歩踏み込み。
 突撃の速度を落とさぬまま、蒼銀に煌めく電脳禁忌剣を掲げ――全力で振り下ろした。

「荒ぶる獣よ、討ち取らせて頂きます!」
 トリテレイアの放った斬撃は狙い通り、天魔の幼獣の頭部にある金の幼角に命中する。
 鋭き電脳の刃が根本より角を切り落とした瞬間、幼獣は喉が裂けんばかりに絶叫した。
「グ……ギャアァッ!!!?」
 その角が幼獣にとって何らかの急所だったのか、定かではないが深手には間違いない。
 のたうち回る幼獣の姿から、出現した当初のような威圧感は徐々に弱まりつつあった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

館野・敬輔
【SPD】
アドリブ連携大歓迎

こいつ、月光城の主を乗っ取っていたのか!?
でも、意志疎通ができそうにないか…
とにかく、今は倒すしかない!

指定UC発動、白い靄を全身に纏う
視線を向けられぬ様「地形の利用、ダッシュ」+UC効果の高速移動で外敵の周囲を走り回りながら撹乱しよう

完全に死角を取ったら即座に接近
「2回攻撃、属性攻撃(炎)、串刺し」+UC効果の刺突衝撃波で黒剣を突き出すと同時に炎の衝撃波発射
外敵の肉体を内側から焼き尽くし吹き飛ばしてやる
もし視線を向けられ雷光を落とされたら「オーラ防御、電撃耐性、激痛耐性」で耐え抜こう

貴様らが何処から来たかは何れわかる
もし人類に仇なすのであれば骸の海に還れ!!



「こいつ、月光城の主を乗っ取っていたのか!?」
 倒したばかりのリフィウィータの体内より現れた新種の敵。滅ぼした『月光城の主』を苗床にしていたとも取れる異様な現象を目にして、敬輔は驚きの声を抑えられなかった。
「でも、意志疎通ができそうにないか……とにかく、今は倒すしかない!」
 情報を引き出すことは早々に割り切り、黒剣を構え直す。この地下都市を廃墟に変えた張本人が出てきたとあっては、他のことを考えている余裕はない。疑問の答えを掴み取るためにも、敵は斬り捨てるのみだ。

「喰らった魂を、力に替えて」
 敬輔は【魂魄解放】を発動し、黒剣がかつて喰らった魂をまとう。その全身は白い靄に覆われ、彼の寿命と引き換えに戦闘能力――特に移動速度を大幅に引き上げる。此度の敵に対しては、そのスピードこそが重要だった。
「グルルルル……ッ!」
 対する天魔の幼獣は獰猛に唸りながら獲物を睨み付け、【白の裁き】を下さんとする。
 このユーベルコードは視線を向けた対象に高命中の雷を放つ、天候操作能力の応用だ。
 天からの雷光を避けるのは難しい。だが、その前に敵の視線から逃れることはできる。

「この場所なら遮蔽物には事欠かないな」
 視線を向けられぬように猛スピードで廃墟を走り回り、朽ちた建物の残骸や瓦礫に身を隠す敬輔。術が発動する前に視界から外れれば、裁きの雷光は彼の元には降ってこない。
「グ、グルルゥ……ッ!」
 天魔の幼獣は苛立った様子で遮蔽物に向かって雷光を落とすが、その時にはもう敬輔は別の場所に移動している。巧みに地形を利用しつつグルグルと周囲を駆ける彼の動きに、敵はまんまと撹乱されていた。

「力は強大でも、生まれたての獣には変わりないか」
 高速移動で完全に敵の死角を取った敬輔は、即座に進路を変えて急接近する。その手に握った黒剣には紅蓮の炎が宿り、魂魄を薪として燃え盛るそれは刃を赤々と赤熱させる。
「捉えたぞ」
「ギャウッ?! グルウゥッ!!」
 速度を落とさぬまま突き出された剣は、反応する間も与えず敵の肉体を深々と貫いた。
 肉を抉られると同時に炎で焼かれる痛みに、天魔の幼獣は悲鳴を上げて振り返る。その瞳は激しい怒りに染まっており――直後、轟音とともに天から雷光が放たれる。

「……この程度か」
 自分から近付く以上、一度は雷光を落とされるのは想定していた。魂魄のオーラで身を守り、持ち前の耐性で電撃の激痛に耐えた敬輔は、静かなる闘志を双眸に燃やして叫ぶ。
「貴様らが何処から来たかは何れわかる。もし人類に仇なすのであれば骸の海に還れ!!」
 その瞬間、突き刺さったままの黒剣から炎の衝撃波が発射され、外敵の肉体を内側から襲った。どれほど頑丈な毛皮を纏った魔獣でも、体内を直接攻撃されては堪らない――。

「グ、ギャオオォォォォッ!!!?!」
 爆発的な勢いで膨れ上がる熱と衝撃に、天魔の幼獣は為す術なく体内を焼き焦がされ、吹き飛ばされた。どうと音を立てて地面を転がると、純白の体躯が血と泥に塗れていく。
 人の脅威たるオブリビオンは必ず滅する。未知の外敵であろうと、敬輔の冷たき決意の前では同じことであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カタリナ・エスペランサ
寄生の類か、或いは作り変えようとでもしていたのかしら
いずれにせよ趣味の悪い事ね

例によって《第六感+戦闘知識》を組み合わせ敵の動きを先読み、
《空中戦》で有利な間合いを維持して臨みましょう
敵UCのトリガーになる視線がどの部位から向けられる可能性も考慮、
雷光は僅かな予兆を《見切り》
【空覇絶閃】の《早業+先制攻撃+カウンター》で迎撃。

ベースになった幼獣の姿には見覚えがあるわね
外敵とは言ってもオブリビオンの大枠には収まる存在なのか……
異様に変異した姿、その大枠からさえ逸脱しようとしているのか
まぁ分析は研究者組に任せるとしましょう
《学習力》で見切りを補正し攻勢を強め、概念をも断つ斬撃で幼獣を寸断するわ



「寄生の類か、或いは作り変えようとでもしていたのかしら。いずれにせよ趣味の悪い事ね」
 吸血鬼の肉体を食い破るかのようにして現れた『外敵』に、カタリナは眉をひそめる。
 いかに敵とはいえ惨い所業。同時に、これがもし吸血鬼やオブリビオン以外の対象にも"寄生"できるとしたら、危険性はより高まる。
「ベースになった幼獣の姿には見覚えがあるわね」
 白い毛並みに包まれた、一見すれば聖獣の如き美しい獣。それが月光の如き光を纏っているのは神々しさすらあるが、全身から生える異形の身体部位がその印象を歪めていた。

「オオォォォォォ―――!!!」
 異形なる『天魔の幼獣』が獲物を睨みながら咆哮すると、天より眩き雷光が降り注ぐ。
 それが視線を向けた対象を射抜く【白の裁き】だと知っていたカタリナは、過去の経験と第六感に基いて僅かな予兆を見切り、雷が落ちる前に敵の視界から飛び退いた。
「まったくの未知とそうでないのでは、大分違いがあるわね」
 地面に突き刺さった雷光が大地を砕く様を見れば、それが通常種のユーベルコードよりも遥かに強力なのは明らか。しかし術自体の性質に変化がなければ対策のしようはある。
 例によって彼女は敵の動きを先読みし、空中で有利な間合いを維持する戦法を取った。

「グルルル……ッ!」
 次こそ外すまいと上空の獲物をぎろりと凝視し、再び【白の裁き】を放つ天魔の幼獣。
 先ほどよりも正確な精度で雷が落ちてくるが、カタリナはひらりと自慢の翼を翻しつつダガーから【空覇絶閃】を放つ。
「森羅万象、我が刃の前にこそ等しく。天命を知れ」
 発射と同時に概念さえ断ち切る斬撃が、超音速の雷光を迎撃する。魔神の権能ではなくカタリナ自身の技巧をユーベルコードの域まで昇華させた、目にも留まらぬ神業である。

(頭に付いてる目以外からも、視線を向けられる可能性はありそうね) 
 降りしきる落雷を矢継ぎ早に切り払いながら、敵の動向を注視するカタリナ。あの幼獣の生やした身体部位はただの飾りではあるまい。追加の眼球等もユーベルコードの起点になる恐れを考慮し、全ての目を警戒する。
「ガウッ! グルルゥッ!!」
 そうして徹底的に動きを学習された結果、天魔の幼獣の攻撃は完全に見切られていた。
 雷光は切り落とされ、視線からは逃げられる。俊敏なる"閃風の舞手"はここぞとばかりに攻勢に転じ、幼獣の本体へと刃を向けた。

「外敵とは言ってもオブリビオンの大枠には収まる存在なのか……異様に変異した姿、その大枠からさえ逸脱しようとしているのか。まぁ分析は研究者組に任せるとしましょう」
 今、考えるべきは唯斬るのみ。稲妻よりも速く閃いた斬撃が、空間に刃の軌跡を描く。
 その直後、天魔の幼獣の体は距離や空間という概念もろとも、バラバラに寸断された。
「――……?! グギャアァァァァァッ!!?」
 一瞬何が起こったのか分からず、切り落とされた自身の部位を見て絶叫を上げる幼獣。
 余りにも滑らかな切断面から吹き出す鮮血が、その身と廃墟の大地を赤く染めていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎

滅びた街の城主の内に埋め込まれた外敵か
月の謎は順調に厄介な方へと進んでいそうだな…まったく

シルコン・シジョンとナガクニを装備し、デゼス・ポアを宙に浮かせる
デゼス・ポアと二手に分かれてシルコン・シジョンを撃ち込みながら幼獣の注意を此方に向ける
顔面周辺にライフル弾の雨を喰らえば、奴も視線を向ける前に目を閉じるだろう
その隙に、デゼス・ポアによる死角からの斬撃でさらに攻撃だ
異形の身体部位が攻撃を始めたら周囲の瓦礫を遮蔽物代わりにしながらダッシュで動き回り、攻撃を控えて回避に徹する
幼獣とは言え、奴の攻撃力は高い
一撃をもらわないように注意して行動をしよう

生まれたばかりだというのに全く可愛げがないな…
これでは子守をするにも一苦労だ

敵の攻撃が激しさを増したらUCを発動
ヴェートマ・ノクテルトのリミッターを全解除
天からの雷光が落ちるよりも早く動きシルコン・シジョンの全弾を撃ち込む
最後に武器をナガクニへと持ち替え高速移動で接近し斬撃を叩きこむ

赤ん坊はもう寝る時間だ
子守歌代わりに受け取るがいい


ロラン・ヒュッテンブレナー
○アドリブ絡みOK

これが、月光城を滅ぼした相手?
月を、乗っ取ってるの?
感じるこの力は…、さすがに、こわいね
でも、負けないの

どこかの世界の魔獣?
天候を操ってる?
仲間たちが戦闘してる所をじっと隠れて、
マジックヴィジョン(【第六感】)も使って【情報収集】なの
動きはかなり無邪気?
なら、一撃、決定打を入れる隙を作りだすの

わずかながら、相手が取り込んだ月光城の、満月の魔力を感じるの
なら、ぼくの満月の魔力と相手の内側ので、その能力を一瞬止めるの

桃の香りの闘気で人狼の狂気を抑えながら、
距離とタイミングを伺って…、ここ!
【全力魔術】でUC発動

反撃開始の咆哮、相手に届け!
みんな、今なの!



「これが、月光城を滅ぼした相手? 月を、乗っ取ってるの?」
 出現した『外敵』が放つ月光の如き輝きを見て、ロランは驚いたように目を見張った。
 敵対していたはずの『月光城の主』の中から、力を奪い取ったとでも言うのだろうか。その存在は彼の目にはひどく歪で禍々しいものとして映る。
「感じるこの力は……、さすがに、こわいね。でも、負けないの」
 敵の強大さをひしひしと実感しながらも、少年に逃げるつもりはない。朽ち果てた都市の瓦礫に身を潜め、仲間達が戦う様子をじっと見て、勝つ方法を模索しようとしていた。

「滅びた街の城主の内に埋め込まれた外敵か」
 一方で、キリカは『月光城の主』と戦った時と同様、シルコン・シジョンとナガクニを装備して『外敵』に対峙する。傍らに浮かぶのは呪いの人形デゼス・ポア。異形の怪物を睨みつける、その表情は険しい。
「月の謎は順調に厄介な方へと進んでいそうだな……まったく」
 この怪物を倒した先に待つ秘密も、おそらくは禄でもないだろう。それでも、知らないままでは現状を変えることもできない。真実と向き合う覚悟を抱いて、彼女は敵に挑む。

「行くぞ、デゼス・ポア」
「キャハハハハハッ」
 キリカとデゼス・ポアは二手に分かれて、天魔の幼獣を挟み撃ちにする作戦をとった。
 まずはキリカがシルコン・シジョンで銃撃を仕掛け、敵の注意を引き付けようとする。
(顔面周辺にライフル弾の雨を喰らえば、奴も視線を向ける前に目を閉じるだろう)
 狙い通り、頭に弾丸を浴びせられた幼獣は「グオッ?!」と悲鳴を上げて顔を背ける。
 その隙に、死角から回り込んだデゼス・ポアが、錆びついた刃による追撃を仕掛けた。

「ヒヒヒヒヒッ」
「ギャウッ!」
 関節をなぞるように錆刃が抉り、一段と甲高い悲鳴をあげる天魔の幼獣。だが、仮にも月光城を滅ぼした怪物がこれしきで終わる筈がない。飛び回る人形を視線で追いながら、【白の裁き】と【天候操作】による雷光の嵐を降らせてきた。
「ウオオォォォォォッ!!!!」
 天の逆鱗に触れたが如く、大気を震わす轟音とともに無数の雷霆が地上の者達を襲う。
 さらには幼獣自身も全身に生やした異形の部位を武器にして、人形やキリカに掴みかかってくる。もし捕まればどうなるのか、そんなものは考えるまでもないだろう。

「生まれたばかりだというのに全く可愛げがないな……これでは子守をするにも一苦労だ」
 幼獣とは言え敵の攻撃力は高く、一撃を貰わないように注意して行動する必要がある。
 相手が反撃に転じた時点でキリカは攻撃を控え、周囲の瓦礫を遮蔽物代わりにしながらダッシュで駆け回って回避に徹する。降りしきる雷光から逃れるだけで、今は手一杯だ。
(どこかの世界の魔獣? 天候を操ってる?)
 その戦いの模様を隠れて見ていたロランも、相手の凄まじい実力のほどを再認識する。
 天魔の名に違わず、天候を自在に制御しているのは確かに驚くべきユーベルコードだ。
 だが付け入る隙は皆無ではない。霊的な知覚力――マジックヴィジョンも用いた観察の結果、少年は敵の挙動にいくつかの粗を見つけていた。

「動きはかなり無邪気? なら、一撃、決定打を入れる隙を作りだすの」
 どれだけ強大でも本質がまだ幼い獣なら、一度のほころびがきっと致命的な隙になる。
 そう考えたロランは桃花のサシェをぎゅっと握りしめて、内なる魔力を解放していく。
(わずかながら、相手が取り込んだ月光城の、満月の魔力を感じるの。なら、ぼくの満月の魔力と相手の内側ので、その能力を一瞬止めるの)
 この力の行使は本物の満月と同様に人狼の狂気を刺激し、人狼病の浸食を加速させる。
 内側から湧き上がる獣の衝動に呑み込まれぬよう、桃の香りで心を落ち着かせ、狂気を抑え込むロラン。その顔に集まった魔力は、魔術文字による隈取を浮かび上がらせた。

「ウウゥォオォオォオォォゥッ!!」
 天魔の幼獣はなおも戦場に雷光の嵐を起こし、猟兵達にしきりに攻撃を仕掛けている。
 あちらも手負いゆえ必死なのだろう。だが、奴の体力も魔力も決して無尽蔵ではない。消耗からくる僅かな制御の乱れを、ロランは見逃さなかった。
(距離とタイミングを伺って……、ここ!)
 唯一の好機に全身全霊を賭けて、彼は吠えた。【超常を貪る人狼の咆哮】は対象の術を満月の魔力により浸食・変化させ、相殺するユーベルコード。十分な観察を経て、幼獣が持つ同種の力に波長を合わせて放たれたそれは、これ以上ないほどの効果を発揮した。

「うぉぉぉおおおおおおぉぉぉぉぉぉん!」

 雷鳴さえもかき消すほどに、ロランの咆哮は戦場から地底都市の全域にまで響き渡る。
 放たれた満月の魔力に雷雲は吹き飛び、荒れ狂う雷光は嘘のようにぱったりと止んだ。
「ウ、ウオォ……?!」
 いきなり全てのユーベルコードを相殺された天魔の幼獣は、困惑した様子で天を仰ぐ。
 若き人狼が放った反撃開始の咆哮は相手に届き、最高のチャンスを作り出したのだ。

「みんな、今なの!」
「ああ、ここしかないな」
 狼の隈取に覆われた顔でロランが呼びかけると、呼応してキリカが遮蔽から飛び出す。
 仲間が全力で作った好機を、無駄にする訳にはいかない。彼女は装着中のバトルスーツ「ヴェートマ・ノクテルト」の襟元に手を当て、制限解放のコマンドを叫ぶ。
「コード【épique:La Chanson de Roland】承認。リミッター全解除……起動しろ! 【デュランダル】!」
 本来は装着者の保護とサポートを目的とした戦闘服は、この瞬間から装着者の力を限界以上に引き出すための強化服に変わる。狼狽える幼獣に向けて小銃のトリガーを引けば、念動力により加速された銃弾が嵐の如く放たれた。

「全弾持っていけ」
「グギャウッ?!」
 天魔の幼獣が再び雷を落とすよりも速く、キリカの銃弾はターゲットに撃ち込まれた。
 聖なる箴言を込めた弾丸を、高層ビルすら圧潰させる程の念動力で加速して放てばどうなるか。異形なる魔獣の部位が爆ぜ、鮮血が勢いよく辺りに飛び散った。
「そのまま!」
「一気にいく」
 背後からのロランの声援に応え、キリカは大地を蹴る。【デュランダル】の機能により強化された肉体は、絶大な負荷と引き換えに人間の限界を超えた高速移動を可能にする。その刹那、疾走する彼女を目で捉えられた者は誰もいなかった。

「赤ん坊はもう寝る時間だ。子守歌代わりに受け取るがいい」
「ギ―――ギャアァァァッ!?!!」
 接近と同時にキリカは一瞬の早業で銃をナガクニに持ち替え、渾身の斬撃を叩き込む。
 かつての『月光城の主』を屠った邪龍の短刀は、変わらぬ切れ味で『外敵』を切り裂き――命脈を断つ手応えと共に、耳をつんざく幼獣の絶叫が、朽ちた地底都市に木霊した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…見た目は奇怪だけど、ベースは普通のオブリビオンと変わらないようね

…後は、他の敵と何が違うのか確かめるだけ。その力、見極めさせて貰うわ

肉体改造術式により強化した第六感で自身への殺気や魔力の流れを捉え、
敵の未来の行動を残像として暗視し攻撃を先読みして見切り、
対応する属性の「精霊結晶」を銃撃する早業のカウンターで威力を相殺しつつ、
防具改造を施し対属性に特化した「怪力の呪詛」のオーラで防御して受け流し回避する

…成る程。確かに威力も範囲も速度も目を見張る物がある
…どれも並の魔獣の比ではないわ。だけど、それだけ

…無闇に力を振り回すだけでは私には届かない。攻撃とは、こうするものよ

十分に戦闘知識を蓄えたら敵の雷撃を利用して槍状に武器改造を行いUCを発動
雷速の空中機動で離脱と突撃を繰り返し敵を乱れ撃ちにして体勢を崩し超克、
限界突破した雷の魔力を溜めた雷槍を投擲する雷属性攻撃を放つ

…もっとも、今の言葉を活かす機会なんてお前には訪れないけどね

…この世界にお前が存在できる場所なんて無い。消えなさい、永遠に…。



「……見た目は奇怪だけど、ベースは普通のオブリビオンと変わらないようね」
 特異な出現にも異形な外見にも驚かず、リーヴァルディは冷静に敵の本質を見定める。
 どれだけ底上げされていようとも、過去に確認されたオブリビオンと同じ能力を使うのであれば、対処のしようはある。
「……後は、他の敵と何が違うのか確かめるだけ。その力、見極めさせて貰うわ」
「グ、ルルルゥゥゥゥ……ッ!」
 射抜くような鋭い眼差しに、満身創痍の天魔の幼獣は低い声で唸り、羽毛を逆立てる。
 かつて『月光城の主』を倒し、地底都市を廃墟に変えた未知の『外敵』。されど猟兵達の奮戦の前では、その力の底も見え始めていた。

「グルルルルゥゥゥオオォォォォォッ!!!!」
 残された力を振り絞って天魔の幼獣が咆哮すると、空がにわかにかき曇り、烈風が戦場を吹きすさぶ。そして落雷、竜巻、雹害、豪雨――【天候操作】によって引き起こされた多種多彩な災害が、猟兵を討ち滅ぼさんと襲い掛かる。
「……成る程。確かに威力も範囲も速度も目を見張る物がある」
 一個体のユーベルコードとしては凄まじい規模の攻撃を、リーヴァルディは落ち着いて観測していた。全盛時の『月光城の主』を倒したという情報もこれならば頷ける。半端な実力ではこの災害を前にして、立っている事すらできないだろう。

「……どれも並の魔獣の比ではないわ。だけど、それだけ」
 肉体改造術式によって強化されたリーヴァルディの第六感は、自身に向けられた殺気や気象変化を起こす魔力の流れを捉え、限定的ながらも敵の行動の未来視さえ可能にする。
 残像のように網膜に浮かぶ未来に合わせて「吸血鬼狩りの銃・改」から「精霊結晶」の弾丸を撃ち出す。色とりどりに輝く魔力の結晶は、それぞれ敵の攻撃に対応したものだ。
「……自然と属性にはそれぞれ相殺される関係があるわ」
 天候と接触した瞬間に結晶は弾け、解放された精霊力がそれぞれの現象を引き起こす。
 落雷は石礫に遮られ、雹雨は炎に溶かされ、竜巻は逆風に押し返される。完全に威力を殺し切ることは流石にできず、数割まで減衰した余波が彼女のもとに降りかかるが――。

「……無闇に力を振り回すだけでは私には届かない」
 全身を「怪力の呪詛」のオーラで覆ったリーヴァルディの体には傷ひとつない。幾重に重ねられた魔力はただでさえ板金鎧並みの防御力を発揮するが、今回はそれを属性攻撃に対する防御に特化させたことで、天災の威力を完全に受け流したのだ。
「グ、グルルッ……?!」
 渾身の魔力で放った【天候操作】を回避され、天魔の幼獣は動揺を隠せない。本能的な怯えに後ずさりつつ、今のは何かの間違いだと、もう一度落雷を放つが――頭上から閃く稲光に合わせて、吸血鬼狩人の少女は"過去を刻むもの"を掲げた。

「……攻撃とは、こうするものよ」
 リーヴァルディがそう呟くと同時に大鎌は槍に変形し、その穂先が避雷針のように雷撃を受け止める。敵の戦闘力について十分な知識を蓄えた今なら、そんな事をせずとも回避できただろうに、敢えて攻撃を貰いにいったのには当然理由がある。
「……もっとも、今の言葉を活かす機会なんてお前には訪れないけどね」
 【吸血鬼狩りの業・雷槍の型】――雷撃と合体することで自身の肉体を雷化し、戦闘力を強化する呪式奥義が発動する。雷光に包まれた少女は重力の軛を解かれてふわりと宙に浮かび上がり、槍を構えて敵に突撃した。

「……雷の舞、見切れると思うな」
「グギャォォッ!!?」
 落雷と同等のスピードで空を翔けるリーヴァルディの突撃は、もはや肉眼で追いきれるものではない。雷の魔槍が標的を貫き、天魔の幼獣が悲鳴を上げた直後にはもう、彼女は反撃が届かぬ距離まで突き抜けている。
「……まだ終わりではないわよ」
「ギッ、ギャッ、グ、ガァッ!?!」
 そのまま足を止める事なく離脱と突撃を繰り返し、四方八方から敵を乱れ撃ちにする。
 超高速にして正確無比な猛攻を浴びせられ、ついに天魔の幼獣が体勢を崩した瞬間――リーヴァルディは超克(オーバーロード)に至り、真なる己の力を解き放つ。

「……この世界にお前が存在できる場所なんて無い。消えなさい、永遠に……」
 限界を超えて高まる魔力が、雷の魔槍に集束されていき。それが臨界へ到達した瞬間、リーヴァルディは終焉を告げると共に投擲を放った。紅く染まった瞳に導かれるように、槍は自然の雷以上の速度で戦場を翔けていき――。

「ガッ……ギィヤアアァアァァァァッッ―――!!!!」

 異形なる『外敵』の心臓を串刺しにし、雷光と雷熱をもってその身を焼き焦がす。
 天魔の幼獣が上げた断末魔の絶叫は雷鳴よりも大きく、地底都市の廃墟に響き渡る。
 そして絶叫が止んだ後、かの者がいた場所に残るのは、僅かな塵と灰だけであった。



 ――かくして、猟兵達は探索と激闘のすえ、『外敵』という未知なる脅威に勝利した。
 残された廃墟都市と『月光城』の跡地を調査すれば、外敵や月光に関するさらなる情報の入手が期待できるだろう。それにはまた多少の時間がかかるだろうが、確かな前進だ。
 地下世界に浮かぶ月の謎が明かされた時、その先にあるのはさらなる謎か、それとも。この物語の続きは、いずれ別の依頼にて語られることになるだろう――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年03月30日


挿絵イラスト