●地下都市の調査依頼
「『グリモアエフェクト』が発動した。結果、ダークセイヴァーに『大いなる危機』が起こる前に、先んじて予知することが叶った」
グリモア猟兵のヴォルフラム・ヴンダー(ダンピールの黒騎士・f01774)がそう告げ、集まった猟兵たちを見やる。
「詳細は順を追って話すが……。ダークセイヴァーにおいて、俺たちが地上と信じていた場所は『第4層』。今回お前たちに依頼するのは、地下世界『第5層』に残る『旧市街地』の調査だ」
――地下世界であるはずのダークセイヴァーでも、なぜ『月』は空中に見えているのか。
その謎に迫るうち、『第5層』には「月光城」と称される城塞が点在することが判明した。
「月光城は、『城塞』だ。……つまり、第5層を支配するヴァンパイア達が、『なんらかの外敵』から己の支配領域を防衛すべく作り上げた。――そう、考えられる」
城塞は、どれも「月の満ち欠けに呼応して輝く」という特性がある。
よって今回の調査を進めれば、月光城とダークセイヴァーの『月』にまつわる真実に、さらに近付くことができるかもしれない。
「地下都市の旧市街地は、今は無人の廃墟と化している」
おそらく、『なんらかの外敵』に敗れたのだろう。
そこには、かつての月光城――暴食卿『ヴェルハディス』が支配していた、無残に破壊された城塞が存在する。
――戦闘力が66倍になるという、『月の眼の紋章』の持ち主を倒すほどの存在とは、一体何なのか。
ともあれ。
「目的地である暴食卿の城塞へは、呪術領域を抜けなければたどり着けない」
外敵をふせぐための仕掛け。
敵は出現しないものの、吹きすさぶ風や氷点下の大気に満ちた、迷宮のごとき暗闇の空間が広がる。
対策をせずに飛び込めば、迷宮を歩くがごとく、延々彷徨うことになるだろう。
何らかの方法で城塞の位置を探り、呪術領域を突破できたなら。
「そこから先は、詳しい予知ができなかった。……くれぐれも注意して調査にあたり、情報を持ち帰ってくれ」
そう伝え、男はグリモアを手に掲げ、転送の準備に入った。
西東西
こんにちは、西東西です。
『ダークセイヴァー・第5層』にて。
無人の廃墟と化した地下都市を訪れ、「かつて月光城であった場所」を調査するシナリオです。
●第1章:冒険『凍える夜』
闇の呪術が掛けられた昏闇の領域を進みます。
吹きすさぶ風や氷点下の大気に満ちており、視界はほとんどききません。
『城塞へ向かうための工夫』があれば、プレイングボーナスが発生します。
●第2章:???『???』
●第3章:???『???』
それぞれ断章公開後に、プレイングを募集開始します。
提示されている行動は一例です。
どうぞ思うまま、自由な発想でプレイングください。
※挑戦多数で執筆が追い付かないと判断した場合は、プレイング内容で採用を検討。少数の場合は、サポートのお力を借りて進行予定です。
※執筆状況について連絡事項がある時は、ページ上部のシナリオタグで通知します。
第1章 冒険
『凍える夜』
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POW : 強行突破…気合と共に歩む
SPD : 一刻も早く抜ける為に脇目も振らずに走り抜ける
WIZ : 魔法で暖や光などを取りながら進む
イラスト:仁吉
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●ダークセイヴァー・第5層
転移した先は、荒涼とした土地だった。
あたりには、常にびょうびょうと極寒の風が吹きつけて。
天を仰ごうにも、昏い闇にはばまれ見通すことはできない。
視界全体が薄闇に沈み、どこを見やっても色彩のない風景が続く。
仲間の姿はない。
敵の姿さえも。
――しかし、謎を解明するためにはこの闇の先へ往かねばならない。
己の呼吸音と、足音だけを共に。
猟兵は闇の呪術が掛けられた『昏闇の領域』へと、足を踏み入れる。
儀水・芽亜
未だに全容も知れぬダークセイヴァー。そういえば、月光城の人間画廊には一般人がとらわれていましたっけ。助ける時は、彼らがどこから連れてこられたか気にする余裕がありませんでしたが。
「結界術」「環境耐性」「地形耐性」を乗せたサイコフィールドを展開。基点は神楽鈴『Papagena』に。
これで私の歩みに応じて結界も前進します。吹雪の遮断くらいは出来るでしょう。上手くいけば、冷気も緩和出来るかも。
同行したいという方がいれば、ご自由に。
城塞とは高い位置に築くもの。時々地面にビー玉を転がせて土地の高低を図り、より高い方へ向かいましょう。
その先に月光城の成れの果てがあるはずです。過去、そこで一体何があったのか?
ロラン・ヒュッテンブレナー
○アドリブ絡みOK
うわぁ…、これは、思った以上に大変そうなの…
さすがに、ここを抜けるのにも、この先で戦うのにも、覚悟が必要だね
なら、やるしかないの
UCを発動
魔術陣の首輪と、魔術回路の鎖で縛られた狼の姿に変身なの
桃の精さんから加護【狂気・呪詛耐性】をもらって反動を抑えつつ…
人狼の力の源、満月の魔力
月光城に残ってるだろうその残滓を、鼻と【第六感】で感知を試みるの
時間はかけられないから、遠吠えに乗せてぼくの満月の魔力を放出
同種の魔力同士の共鳴を拾って、そちらに向かって走るの
別の匂いもする…
何がこの先にいるんだろ?
とにかく、急がないとなの
シン・コーエン
(強敵との戦いを歓喜する修羅として)『月の眼の紋章』の持ち主を倒す相手か、きっとすごく強いのだろうなあ。
震えが来そうだが同時にワクワクするなあ。
と、口元に微かな笑みを浮かべて昏闇の領域を進む。
昏闇の領域対策として、極寒の宇宙空間で行動可能とするフィルムスーツを着込み、宇宙バイク”シャドウフレア”を操縦。
視界はほとんどきかないなら、シャドウフレア搭載のレーダーで状況把握し、第六感と瞬間思考力を活かしてベストな進行ルートを見つけて進む。
宇宙空間を踏破する為の装備だ、これくらいの冷気や風はどうってことないさ。
とはいえ、何が起こるか判らないので油断せずに前進する。
●
光を通さぬ闇の真中を、疾風のごとく駆け抜けるものがある。
スペースノイドの青年――シン・コーエン(灼閃・f13886)が駆る、漆黒の宇宙バイク『シャドウフレア』だ。
(「『月の眼の紋章』の持ち主を倒す相手、か。きっとすごく強いのだろうなあ――」)
強敵との戦いを歓喜する修羅の性分が、まだ見ぬ敵の強さを心待ちにする。
その一方で震えも感じながら、シンは口の端を微かにもたげた。
己の視界は利かないものの、バイクに搭載されたレーダーでかろうじて数メートル先の地形に関しては把握することができた。
とはいえ、城塞がどこにあるのかが判然としない。
ひとまずは、第六感と瞬間思考力を活かして進行ルートを決定していたのだが。
そうしている間にも風や冷気が己の体温を奪い始めていることに、シンは気づいていた。
身にまとったフィルムスーツは、極寒の宇宙空間でも行動を可能にするものだったが、敵の侵入を阻むための呪術は、この地に踏み入った者の命を容赦なく脅かす。
「まいったな……。敵の気配がしないとはいえ、ここでは何が起こるか判らないのに」
第六感による進路決定が、仮に正解を選んでいたとしても。
戦場へたどり着く前に体力を切らし、倒れてしまっては、肝心の強敵との戦いにも臨めない。
思考している間にも、呪いが体温を奪っていく。
この状況を打開する方法がないか、周囲へと注意を払った時だ。
――ほぉぉぉぉぉぉぉぉ……ん。
吹きつける風の音に紛れ、狼の遠吠えが耳に届く。
シンは意を決し、遠吠えの聞こえた方角へバイクを走らせた。
転送先の光景を目にした瞬間。
人狼の少年――ロラン・ヒュッテンブレナー(人狼の電脳魔術士・f04258)は、溜息とともに口を開いた。
「うわぁ……。これは、思った以上に大変そうなの……」
吹きつける風の寒さもそうだが、眼前の昏闇からはおぞましい死の気配が感じられる。
――何人たりとも近づけぬという、驚異的な死の呪術。
言い換えれば、月光城の主はそれだけの呪術を駆使してでも、『なんらかの外敵』の戦力を削ぎたかったということだろう。
紫の瞳が揺れ、狼の耳と尾が、ぴんとまっすぐに伸びる。
「さすがに、ここを抜けるのにも、この先で戦うのにも、覚悟が必要だね。――なら、やるしかないの」
この地へ赴くと決めた時から、すでに覚悟はできている。
「夜の灯りを、呼びし遠吠え、大いなる円の下、静寂を尊ぶ」
音狼の加護を展開するべく唱えれば、小柄なロランの身体が狼の姿に変じていく。
――淡い燐光をはなつ魔術陣の首輪と、魔術回路の鎖で縛られ、力を使えば寿命が削られていく。
しかし、呪いに満ちたこの地であれば、この姿の方が動きやすいだろう。
人狼の力の源である、満月の魔力。
その残滓が月光城に残っているであろうことを期待して、狼の鼻と、己の第六感で感知を試みる。
(「時間はかけられないから。遠吠えに乗せて、ぼくの満月の魔力も放出しよう」)
同種の魔力同士で共鳴することがあれば、目的地を定める指針となるかもしれない。
微かな魔力反応を頼りにしては、立ち止まって方向を定め、狼の健脚でぐんぐん駆ける。
しかししだいに、己の手脚が鉛のように重たくなってくる。
狂気と呪詛耐性をもってしても、極寒の地の長時間の探索は猟兵の体力を奪っていく。
(「何がこの先にいるんだろ? とにかく、急がないとなの」)
重たい首をもたげた、その時だ。
機械的な駆動音――バイクの音が響き、それは疾風のようにロランの傍にすべりこんで、停止した。
「ああ、やっぱり! さっきの遠吠えは、きみか」
親し気に声をかけたのは、宇宙バイクから降りたシンだった。
敵ではないとわかり、ロランも喜んで尾を振って応える。
「出会えたのは嬉しいが、実は俺の状況は芳しくない。きみは、月光城の位置について見当はついたか?」
問われ、ロランはうーんと考えた後、こくりと頷いた。
確実な方角かは定かではないが、魔力の残滓を感じることはできる。
時間さえかければ、たどり着くことは可能かもしれない。
『時間さえかければ』。
シンはロランがぶるりと身を震わせたのを見やり、状況を察した。
このままでは、二人そろって凍え倒れかねない。
「……悩んでいても仕方がない。とにかく、先へ進むか」
シンが提案した、その時だ。
(「別の匂い……?」)
ロランはくんと鼻先を伸ばし、続いて両耳をピンと立てて。
嗅ぎつけたにおいと音のする方角へと、一目散に駆けだした。
ちりり、りりと、鈴鳴る音。
時おり、地を擦る足音が混ざり。
誰にともなく、つぶやく声がする。
「そういえば、月光城の人間画廊には一般人がとらわれていましたっけ」
かつての事件を振り返りながら歩くのは、人間の娘――儀水・芽亜(共に見る希望の夢・f35644)だった。
あたりは昏く、数メートル先も見通せぬ状態だが、それでも芽亜は落ち着いた様子でマイペースに歩を進める。
「助ける時は、彼らがどこから連れてこられたかまで、気にする余裕がありませんでしたが……」
いまだ全容の知れぬ、ダークセイヴァー。
絶望のはびこる殺風景を見やり、本日何度目かのため息をつく。
呪術領域への対策は、万全だった。
戦場全体にドーム状の結界を発生させるユーベルコード『サイコフィールド』に環境&地形耐性をのせ、さらに常時回復も受けられる。
いまだ体力には余裕があり、おそらく長時間の探索となっても、耐え凌ぐことができるだろう。
しかし。
「さすがに。ビー玉で城塞の位置を見定めるのは、あまりに楽観が過ぎたでしょうか」
――城塞とは、高い位置に築くもの。
そう考え、時々地面にビー玉を転がし土地の高低を図り、より高い方へと向かっていたのだ。
方法としては有効であったかもしれないが、いかんせん、芽亜の足は遅々として進まなかった。
城塞にたどり着いた頃には、他の仲間の手によってすべてが終わっていた。
なんてことにならなければ良いのだがと考えながら、地面に膝をつき、本日何度目かのビー玉を転がした時だ。
低い方へと転がっていく、ビー玉に。
ぴょんと跳躍して飛びかかる者がある。
見れば、灰色の毛並みをもつオオカミ――ロランがビー玉を捕まえ、ぱたぱたと尾を振り芽亜との邂逅を喜んでいる。
続いて現れたのは、バイクにまたがった男性――シンだった。
「突然駆けだしたと思ったら。動物の鼻ってのは便利だな」
同じく猟兵と察した芽亜が、「ごきげんよう」と挨拶を投げる。
手短に用件を聞けば、ふたりは月光城までの手がかりは掴んでいるが、体力が心もとないとのこと。
芽亜にとっては、渡りに船。
どうせ展開しているサイコフィールドは、戦場全体に反映されるのだ。
ともに行動するのであれば、防護と回復を兼ねた結界の恩恵を受けられるだろう。
そして芽亜もまた、確かな目的地へ向けて進むことができる。
「こちらこそ、願ったり叶ったりです。同行したいというのであれば、どうぞご自由に」
シンとロランはもちろん、同行を希望した。
ふたりの体力が回復するまで、しばし休息することに決め。
芽亜は暗闇の先を見据え、ぽつりとつぶやいた。
「この先に、月光城の成れの果てがあるとのことですが。……過去に、ここで一体何があったのでしょうね?」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
肆陸・ミサキ
※絡み苦戦怪我アドリブOK
上も下も、天井知らずな地獄だなここは
まあいいさ、僕がやることに変わりはない
物理的な寒さには強い方だけど、氷点下はさすがにしんどいだろうな
焼却の力を込めた光球で暖と最低限の明かりを確保ってことにしようか
視野は眼鏡のお陰で、人並み以上にはあるとはいえ・・・・・・ここは光球を伴わせたシャリオを先に走らせてみようか
外敵を阻む仕掛けなら、探るなら追い風より向かい風だろう
共有した視界で、凍える夜の先、化け物が怯えて暮らした住処を拝んでやろう
館野・敬輔
【SPD】
アドリブ連携大歓迎
…月の秘密に迫れるのなら
如何なる危険が待っていようと、向かうのみ
上層への道を開くのと同程度に
月の秘密に迫るのも重要だろ?
指定UC発動し高速移動を可能にした上で
まずは「暗視、視力」による観察と四肢に伝わる感覚で地形を把握しよう
凡そ周囲の地形を把握したら
「世界知識、地形の利用」で極力風を防げる道筋を見極めながら進む
凍えるような寒さは毛皮や外套を着こんだ上で「氷結耐性、寒冷適応」で耐え抜くか
月光城は既に破壊されたと言うが
月の満ち欠けに呼応して輝く特性は失われたのだろうか?
もし特性を残っているならそれを頼りに進めばいい
残っていなければ旧市街地の構造から見当つけて走り抜ける
●
(「――月の秘密に迫れるのなら、如何なる危険が待っていようと向かうのみ」)
そう意を決して昏闇の領域を進んでいたのは、黒剣の喰らった魂魄を解放することで高速移動していた館野・敬輔(人間の黒騎士・f14505)だ。
グリモアベースでは、現在ダークセイヴァー上層である『第3層』へ向けた探索の準備が進められている。
上層への道を開くのと同程度に、月の秘密に迫るのも重要と敬輔は考え、この地に赴いたのだ。
しかし、『なんらかの外敵』を阻むために展開されている呪術領域では、毛皮や外套など焼け石に水。
耐性効果は多少は役に立ったが、驚異的な呪いを抑えるには力及ばず。
じわじわと、そして確実に体温を奪っていく冷気に震えながら、敬輔は白い息を吐いた。
おそらく、長くは活動できないが。
体力が尽きるきるぎりぎりまで、可能性を捨てることはしたくない。
(「月光城は、月の満ち欠けに呼応して輝く特性があるという。もし特性が残っているなら、それを頼りに進めばいいと思っていたのだが――」)
あたりをくまなく観察しても、それらしき光は見当たらない。
破壊されたことによって、特性は失われたのだろうか。
そうであるなら、城塞に近づくための方策のひとつは潰えた。
敬輔は光を頼りにすることを諦め、旧市街地の構造から見当をつけるべく、ふたたび高速移動を開始する。
びょうびょうと風吹く地に、微動だにせず佇む人影がある。
「上も下も、天井知らずな地獄だなここは」
つぶやいたのは、極寒の地にありながら手足を惜しげもなく晒したままの少女――肆陸・ミサキ(黒白を弁ぜず・f00415)だった。
フード付きのコートを身にまとってはいるが、前は開けたままの吹きさらしで、見た者の方が震えあがりそうな様相だ。
もっとも、『物理的な寒さには強い方』と証言する本人は、平然としたもので。
「まあいいさ、僕がやることに変わりはない」
ぽつりつぶやくと、己の影にある鍵穴へと手にした鍵を差しこみ、捻る。
「――来い、街路の騎馬!」
呼び声に応え現れたのは、黒い影を纏う大型の重二輪車『Chariot(シャリオ)』だった。
ミサキは視力を失っている。
霊的に視力を補い、取り戻させる眼鏡をかけてはいたが、呪術によって視界を覆われた領域では、その効能も心もとない。
五感を共有することができるシャリオを先行させれば、己の足で彷徨い歩き探索するよりも効率が良いはずだ。
しかし、闇雲に走らせたところで無駄足を踏むかもしれない。
いかに強靭な肉体をもつ身体とはいえ、長時間の探索は疲労を伴う。
そうなれば、ミサキとて凍え倒れてしまうだろう。
力だけでは解決できない。
ならば、頭を使うしかない。
「この領域が、外敵を阻むための仕掛けとして意図的に設置されたなら……。追い風よりは、向かい風にするだろう」
――わざわざ、目的地へ背中を押すように風を吹かす者はいない。
その推察が正解かどうかは、わからないが。
そうして向かい風にそってシャリオを走らせていくと、大型重二輪車の視界に人影が映った。
よくみれば、武骨な金属鎧を身に着けた黒騎士――猟兵であるらしい。
騎士は破壊された建物の残骸に身を潜め風を避けながら、しきりと地面を気にしている。
しばらく観察して、気づいた。
(「『道』の痕跡を探っているのか」)
今となっては生ける者の存在しない無人の廃墟とはいえ、ここは地下都市の旧市街地。
ミサキが、『敵を阻むための風は向かい風』と考えたように。
黒騎士――敬輔は、『都市の道は城に通じる』と考えたらしい。
――すべては確証のない推察。
しかし、結果を待ち、凍え動けなくなるよりは能動的な考えだ。
ミサキはすぐさまシャリオを呼び戻すと、ためらうことなく騎乗した。
「凍える夜の先。化け物が怯えて暮らした住処を、拝んでやろう」
――かつて、この土地で何らかの争いがあったのだろうか。
旧市街地に散乱する瓦礫に身を隠し、敬輔は改めて謎の多い景色を見やる。
風を避けながら調査を行っていた敬輔は、そこでいくつかの『道』の痕跡を見つけた。
冷気に身体を冒されながらの探索ではあったが、根気よく調査を進めた結果、幾筋かの道を見つけることができ。
おそらく、この先に城塞があるだろうと確信を抱いたその時、敬輔のすぐそばを、大型重二輪車に騎乗した少女――ミサキが通り過ぎた。
ほんの、一瞬。
ただ目くばせだけをして。
「先行してやるよ」
小さく手を挙げると、呼びかけた相手の反応を確かめる間もなく、道の先へ駆けていく。
敬輔はすぐさま立ちあがると、携えていた黒剣を掲げ、唱えた。
「喰らった魂を、力に替えて――!」
黒剣がかつて喰らった魂を、その身にまとって。
少女の背を追って、残る体力の限り、全力で走り続けた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
フォルク・リア
「月光城が何なのか。何のために作られたのか。
その真実を知る為にも。先ずはこの先に進まなければ。」
その場の寒さと呪力に呪術領域に入った事を感じ取って。
「なるほど。これが件の呪術領域。
抜けるのは簡単じゃないが。
時間をかけて居れば寒さと疲労で体力を削られる。…此処は。」
古代都市ルベルを発動。
幻獣(獣や鳥、竜)を使って月光城の場所を調査すると共に
光属性魔法で辺りを照らしたり熱属性魔法で寒さを凌ぐ。
自身は都市の建物の上に登って辺りを見渡し月光城の位置を探り
幻獣に探らせた情報と照らし合わせてその位置が割り出せたら
幻獣に乗って急ぎそちらへ向かう。
「これで辿り着く事はできそうだけど。
問題はそれからか。」
リーヴァルディ・カーライル
…私達が百年前に吸血鬼達に奪われ、闇に覆われた空だと思っていた物は天井で、
安息を願い祈りを捧げていた死者達の魂は天の国ではなく第三層に送られていた…
…その上で、今回の『大いなる危機』のような秘密が数多く残っている、と…
…分かっていた事だけど、本当にこの世界は一筋縄ではいかないわね
…まあ、だからと言って諦めるつもりは毛頭無い
"人類に今一度の繁栄を。そして、この世界に救済を…"
…私は私の誓いを果たす。それだけよ
UCを発動し自身に火の精霊を降霊して精霊化の肉体改造を施し、
全身を冷気を遮る炎熱のオーラで防御して環境耐性の強化を行い、
炎化した「血の翼」を広げ空から索敵を行い城塞跡を暗視出来ないか試みる
●
――昏闇に覆われた中空。吹きつける風に逆らうように、燃える鳥が羽ばたいていく。
燃える鳥――リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は、ユーベルコードで火の精霊を降霊させ、精霊へと変身。
全身を炎熱のオーラで防御しながら、魔力の双翼をひろげ上空からの探索を行っていた。
呪術による冷気はユーベルコードのオーラで防ぐことができたが、視界を覆う暗闇は、どれだけ目を凝らしても見通すことができない。
「……分かっていた事だけど。本当に、この世界は一筋縄ではいかないわね……」
百年前。
吸血鬼たちに奪われ、闇に覆われた空だと思っていたものは、『天井』で。
安息を願い、祈りを捧げていた死者たちの魂は、天の国ではなく『第3層』に送られていた――。
ここも『第5層』と呼ばれるからには、上昇を続ければ『天井』に行き当たるのだろう。
だが、今は天をあおぐ時ではない。
リーヴァルディは己のまとう炎が照らす範囲だけでもと目を凝らし、できるだけ低空飛行の状態で、探索を続ける。
しかし、行けども行けども、瓦礫となり果てた廃墟が広がっている。
(「……『グリモアエフェクト』を発動させなければ、『大いなる危機』に対して先手を打つことはできなかった。……このような秘密が、あとどれだけ残っているというの……」)
往く先にどれほどの困難が待ち構えていようと、リーヴァルディの決意は変わらない。
己の誓いを諦めるつもりは、毛頭ない。
――人類に今一度の繁栄を。そして、この世界(ダークセイヴァー)に救済を。
(「……私は私の誓いを果たす。それだけよ」)
リーヴァルディはひときわ強く炎の翼で空を打つと、闇を切りひらいて飛び続けた。
転移が完了するなり、ダンピールの死霊術士――フォルク・リア(黄泉への導・f05375)は、被っていた白いフードをさらに目深に引き下ろした。
地下都市の旧市街地。
そこに展開されている呪術領域との境目にも関わらず、圧倒的な冷気と呪力を感じ取ったのだ。
「……なるほど。これが件の領域か」
これまで、多くの時間を魔術の研究に費やしてきた研究者の観点からしても、眼前の呪術がおぞましい力をもっていることがわかる。
「月光城が何なのか。何のために作られたのか。……その真実を知るためにも、先ずはこの先に進まなければね」
この先に未知の術があるというのなら、ためらう道理はひとつもない。
杖を手に領域へと踏み込めば、まずは視界がいちだんと昏さを増し。
歩を進めるごとに、足先から冷気が這い寄り、体力を奪おうとするのがわかった。
時間をかければ、寒さと疲労で体力を削られる。
領域に留まる時間が長ければ長いほど、対象の生命を確実に蝕んでいく。
生半可な対抗措置では、ただ力を奪われていくばかりだ。
「であれば、此処は――」
手にした杖でトンと地を打ち、唱える。
「……歴史の狭間に埋もれし魔導の都。幽谷の門を潜りて今、此処に姿を現し。その深遠なる魔術の神髄を示せ」
風のうなりにかき消えるほどの、微かな声音。
しかし。
呼び声に応え現れたのは、旧市街地を浸食するほど広漠な魔法都市だった。
――ユーベルコード『古代都市ルベル』。
廃墟を塗り替えるように立ちあがっていく滅亡都市は、都市そのものが霊であり、莫大な魔力をフォルクへと供給する。
現に、先ほどまで術士を蝕んでいた冷気は消え失せ、都市の魔力によって生み出された熱魔法によって護られていた。
併せて光魔法をかければ、薄闇に包まれた空間にあって、古代都市は黄金の都のごとく燦然と輝いて見える。
「これで、当面の暖と明かりは安泰と。……さて」
続けて獣や鳥、竜などの幻獣を魔力によって生み出すと、月光城の場所を調査するように命じる。
フォルク自身は鳥の幻獣に騎乗し、手近にあった高い建物の上へ。
幻獣たちに探らせた情報を照らし合わせながら、城塞が存在するであろう方角を割り出していく。
すると、報告に戻った幻獣に紛れて、見知らぬ火の鳥――リーヴァルディが舞い降り、術士へと声を掛けた。
「……まるで、宮殿みたいね……」
ユーベルコードによってもたらされた光は、呪術の闇をことごとく遠ざけて。
飛翔していたリーヴァルディの眼にも、そのまばゆい輝きが届いたのだ。
同じ猟兵と気づき、フォルクが頷く。
「目には目を。都市には都市を、ね。ところで、きみはもう月光城の位置を特定できたか?」
リーヴァルディは「まだ」と短く返し、続ける。
「……でもさっき、他の猟兵たちが進んでいくのを見たわ」
狼の姿をした猟兵一行は、おそらく、何らかの魔力を頼りに進み。
大型の重二輪車に騎乗した猟兵ともうひとりの黒騎士も、ある方角へ確信をもって疾走しているようだった。
リーヴァルディがそれぞれの方位を伝えれば、フォルクが探っていた方角とおおよそ同じだとわかり、互いに確信を深める。
「これで、城塞まで辿り着く事はできそうだけど。問題は、それからか……」
ひとまず、道筋はついたのだ。
フォルクは待機させていた鳥の幻獣へ飛び乗ると、リーヴァルディと共に一路、城塞『月光城』を目指した。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『暴食卿『ヴェルハディス』』
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POW : 血の追跡者
自身の【存在を知覚した者の意志力と生命力】を代償に、【次元すら越えて対象を猛追する異形の餓狼群】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【“腐食”の呪いを帯びた咆哮と牙、爪】で戦う。
SPD : 奈落の王
自身からレベルm半径内の無機物を【あらゆる存在を貪欲に喰い尽くす無数の銀蝗】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。
WIZ : “何人も死より逃れること能わず”
【あらゆる“障害”を接触即時消滅させる魔弾】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【七度その身を貫くまで止まらぬ呪いの弾丸】で攻撃する。
イラスト:らぬき
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「レナ・ヴァレンタイン」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
昏い闇を切りひらき進んで、辿り着いた先。
呪術領域から抜け出しようやく視界がひらけた場所に、猟兵たちは集まっていた。
そこは、巨大な建築物の残骸――かつての城塞『月光城』を臨むように存在する、円形状の広場で。
在りし日は絢爛豪華な装飾が施されていたであろう石畳は、無残にもぼろぼろにはがれ朽ち、今は見る影もない。
そして。
崩れ落ち、原形を留めぬ城門の向こうに。
『おぞましい気配』が存在していることに、猟兵たちは気づいた。
――暴食卿『ヴェルハディス』。
かつてこの地の『月光城の主』であったオブリビオンが、侵入者である猟兵の気配をとらえたのだ。
ひとの姿を成してはいるが、その眼から理性が抜け落ちているのは、誰の眼にも明らかで。
堕ちた狩人――暴食卿は、己の領内に踏み入った獲物を見つけ、狂気的な微笑を浮かべた。
『来たな、侵入者ども。今すぐ全員、狩り殺してやる……!』
掲げた左の手のひらに、眼球と満月を組み合わせた『月の眼の紋章』が描かれており。
狩人は猟兵たちを仕留めるべく、棘鞭の先制攻撃をはなった。
●追加情報
・かつて、この地の『月光城の主』であった暴食卿『ヴェルハディス』が道を阻んでいます。
・敵は既に理性を喪失しており、会話への応答はできません。
自分が死ぬか、敵を殺し尽くすまで、ひたすら攻撃を続けます。
・敵は『月の眼の紋章』とも融合しています。
しかし、紋章にエネルギーを供給する人間が周囲に存在していない為、紋章による戦闘力強化は「紋章から飛び出す棘鞭の攻撃」のみです。
・通常攻撃の他に『棘鞭の攻撃』への対策があれば、プレイングボーナスが発生します。
●プレイングについて
・【3月6日(日)朝8:31以降】に受付を開始します。
受付締切は、プレイングの到着状況をみてページ上部の「シナリオタグ」にてご連絡します。
儀水・芽亜
月光城の主がこのザマですか。一体何に襲われたのか。
っ、問答無用ですね!?
「全力魔法」「結界術」「オーラ防御」「範囲攻撃」深睡眠の「属性攻撃」「浄化」で、サイコフィールド展開。
棘鞭の攻撃、跳ね返します!
“暴食卿”と名乗るからには、この銀蝗があなたの本質と見ました。「審美眼」で見ても、時に機械的ですらある昆虫と金属の相性は非常によい。お土産に一匹持って帰りたいくらいです。
さて、無機物より生まれた銀蝗にサイコフィールドの睡魔が通用するかどうか、乾坤一擲の大博打です!
たとえ眠らせることが出来なくとも、仲間の回復が出来れば、支援としては十分でしょう。
蝗は私が引き受けます。皆さんは“暴食卿”の討滅を!
肆陸・ミサキ
※絡み苦戦怪我アドリブOK
理性があろうと無かろうと、敵は敵以外の何者でもないしね
対話も理解も必要なくただ消すのみ、さ
左手から出てくる鞭に注意か……それなら、鞭の特性上、攻撃の軌道は左手の動きが先に起こるはずだし、薙ぎ払いか直線の突きが攻撃の初動だろう
前動作を察知して回避がベストかな
私にそこまでの運動神経は無いかもだけど
敵のUCは、防御を消して攻撃を七回当てるってやつかな
達成するまで止まらないなら、利き手と両足は守りたいし、避けられない時は左腕を使おうか
今更大事にする身体でもないし
一撃でも当てれば、私のUCが使える
捨て身でもなんでも、それさえ達成すれば、アイツに消えない焦げ痕を刻み付けてやれるさ
館野・敬輔
【SPD】
アドリブ連携大歓迎
…理性を失くした狩人か
哀れにも程がある
今すぐ、骸の海に叩き込んでやろう
紋章のある左掌は「視力、第六感」で挙動そのものに注意を払い
棘鞭が発射されると同時に「見切り、武器受け」で棘鞭そのものを黒剣で斬り捨てるように受け流しながら「ダッシュ」で肉薄
密接したら「2回攻撃、鎧無視攻撃」+指定UC発動(味方斬りなし)し、銃ごと18連撃で斬り刻んでやる
奈落の王で出現した銀蝗は
黒剣に「属性攻撃(炎)」を纏わせてから
炎の「衝撃波」を放ってできるだけ散らそうか
念のため炎の属性を付与した「オーラ防御」も纏っておこう
…これで終わるとは、思えないが
そもそも主は、なぜ理性を失くした?
●
蘇った『月光城の主』――暴食卿『ヴェルハディス』は、己の領内に踏み入った獲物を見つけ、狂気的な微笑を浮かべた。
『来たな、侵入者ども。今すぐ全員、狩り殺してやる……!』
掲げた左の手のひらには、眼球と満月を組み合わせた『月の眼の紋章』が描かれており。
狩人は猟兵たちを仕留めるべく、棘鞭の先制攻撃をはなった。
「――っ、問答無用ですね!?」
儀水・芽亜(共に見る希望の夢・f35644)は叫びとともに夢の力を開放し、誰よりも早く鴇色の陽炎を纏うドーム状結界『サイコフィールド』を展開させる。
何度鞭が振るわれようとも、結界が攻撃に破られることはなく、跳ね返して。
その合間にも、鴇色の陽炎は味方に対して癒やしをもたらし続けた。
「やっと、『昏闇の領域』を抜けれたのに……!」
肩を落としたハイイロオオカミ――人狼の少年・ロラン(f04258)は、攻撃を回避するべく即座に跳ねた。
中空に身を躍らせ、変身を解除。
着地とともに小柄な少年の身体に戻ると、向けられる敵意と殺気を警戒して素早く後退する。
「あれが、此処の元主か」
「月光城の主が復活していたのは、予想外だけど――」
結界の護りを受け、死霊術士のフォルク(f05375)と黒騎士の娘・リーヴァルディ(f01841)も攻撃を回避。
それぞれ敵を一瞥し、集中砲火を浴びぬようにと広場へ散開する。
仲間たちが初撃を切り抜けたのを見届けると、結界を維持したまま、芽亜は敵へ向け、不敵な笑みを向けた。
「月光城の主ともあろう方がこのザマですか。一体、何に襲われたんです?」
挑発を仕掛けるべく、声を張りあげる。
しかし、暴食卿は応えず、ただクククと嗤うのみ。
煙草の煙をくゆらせながら、悠然と両手を左右に開いた。
『我が城を侵す愚か者ども。この「奈落の王」から、逃げ切れると思うな』
宣言するなり、場の空気がキンと張り詰める。
いぶかった芽亜が視線を巡らせた、次の瞬間。
轟くような羽音とともに、銀蝗の大群が戦場を埋め尽くした。
「……理性を失くした狩人か。哀れにも程がある」
呟いたのは、黒騎士の青年――館野・敬輔(人間の黒騎士・f14505)。
ユーベルコードで闘争心を増幅させれば、右眼が青く輝いて。
「怒りと憎悪、そして闘争心を力に替えて。――貴様を斬り刻む!!」
手にした黒剣に炎を宿すと、鋭く一閃!
向かい来る銀蝗の大群へ炎の衝撃波をはなつと、剣舞を披露するがごとく広場を巡り、次々と焼き尽くしていく。
「理性があろうと無かろうと、敵は敵以外の何者でもないしね」
敬輔の言葉を継ぐように呟いたのは、白髪をなびかせ戦場を駆けていた精霊術士の娘――肆陸・ミサキ(黒白を弁ぜず・f00415)だ。
敵の左手が、薙ぐように動いたのを逃さず察知して。
眼鏡を押し上げながらぐんと身を沈めると、ひび割れた石畳を力強く蹴り、跳ねた。
「――対話も理解も必要なく。ただ消すのみ、さ」
白い長手袋で覆った右腕に得物を顕現させると、振り下ろした大鎌で迫る棘鞭を受け流す。
一方、結界を張り続けていた芽亜は、金の瞳で銀蝗の敵群を見据えながら唇を噛んでいた。
頼みにしていた結界の効果【強力な睡魔】が、すべての銀蝗に効果を成していないことに気づいたのだ。
睡魔を受け、ぼとぼとと足元に落ちていく銀蝗は、おおよそ七割。
すかさず敬輔が駆けつけ、炎の衝撃波をはなっては、残らず駆除していく。
(「たとえ全てを眠らせることができなくとも、仲間の回復が出来れば、支援としては十分でしょう」)
芽亜は胸中でそう告げて、改めて敵へと向きなおった。
「『暴食卿』と名乗るからには、この銀蝗があなたの本質と見ました。私の『審美眼』で見ても、時に機械的ですらある昆虫と、朽ちた装飾との相性は非常によい。お土産に一匹持って帰りたいくらいです。しかし」
そうして、すうと深く息を吸いこんで。
再び、左手を掲げた狩人へと言った。
「――私の世界で。断じて! 勝手はさせません!」
力強く宣言し、夢の力をさらに開放!
周囲の仲間を、より強固な幻夢のバリアで包み込んでいく。
同時に、芽亜へ向け射出された棘鞭へは、挙動を見切った敬輔がすぐさま迫って。
瞬時に斬り払い、仲間を傷つけることを許さない。
「さあ! 蝗は私が引き受けます。皆さんは、『暴食卿』の討滅を……!」
芽亜の言葉が終わるより早く、ミサキは即座に戦場を駆けだしていた。
敵が仕掛け来るのは、視認している対象を【七度貫くまで止まらぬ呪いの弾丸】。
敵の視界に留まれば、むざむざ攻撃を受けることになりかねない。
(「結界の効果で回復してもらえるとはいえ、利き手と両足は守りたいし。避けられない時は、左腕を使おうか」)
そのミサキの意図を汲むかのように、より華々しく立ち回ったのは敬輔だった。
棘鞭を斬り捨てた黒剣でさらに肉薄すると、間髪入れず怒涛の連撃を叩き込む。
「今すぐ、骸の海に叩き込んでやろう」
とどめの一撃を受けた勢いで狩人がのけぞり、たたらを踏んだ先には。
仲間が攻撃する間に死角に踏み込んでいたミサキが、大斧を振りかぶって、立っていた。
捨て身でもなんでも。
それさえ達成すれば、敵に消えない焦げ痕を刻み付けてやれる。
(「一撃でも当てれば、私のUCが使える……!」)
――ド、ォン!
己の背丈をゆうに超える大斧を、渾身の力で石畳に叩きつける!
間一髪、敵は身をよじり直撃を避けたが、刃は腕の一部を削ぎ落した。
瞬間、暴食卿の腕に、発光する印が浮かびあがって。
機を逃さず、ミサキが詠唱を開始する。
「生まれ落ち、幾多の朝を昇り、数多の夜を見送る――」
狩人はくわえていた煙草を吐き捨て、傷を負った手で白髪の娘へとライフルを突きつける。
ミサキは先ほど決めたように、左腕を盾にするべく身構えた。
『何人も、死より逃れること能わず!!』
『障害』を接触即時消滅させる魔弾がはじけ、血飛沫が舞う。
すぐに、芽亜の結界が夢幻の癒しをもたらして。
「重ねた時間を振り返り、今終わりを痛感しろ――」
癒しを受け、さらに呪いの弾丸に左腕を貫かれ続けながらも、ミサキは唱え続けた。
「空を仰げ、地に伏せろ――」
炭化した右腕。
光を無くした瞳。
身体に残した、戦いの傷。
それらは、世界を救う為の軽い代償で。
七度弾丸に貫かれ、血にまみれ、感覚を失っていく左腕を見やりながら、ミサキは思った。
(「今さら、大事にする身体でもないし」)
そして。
顕現した二つの巨大熱球を背に、少女は最後の言葉を紡ぐ。
示した先に在るのは、『印』を付与した暴食卿『ヴェルハディス』。
撃ちきったライフルを手に、その表情が悔し気に歪む。
「――『それ』を、私は灼く!」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
フォルク・リア
「この気配。あれが此処の元主か。」
「既に滅びたこの地に侵入者も守り人もないだろうが。
自分で止まれないなら止めてやるよ。」
攻撃される前にシャイントリガー発動。
敵の視界に捉えられない事を第一に目線には
常に注意し背後か側面から光線を正面向けて発射し
目晦ましによる状態異常を重視。
更に遠距離戦では敵に分があり、
視界も広くなる事から接近戦を挑み。
ファントムレギオンの死霊を放つ事で敵の視界を遮る。
また、月と目の紋章の在処を【見切り】敵に近づく事で、
放たれる棘鞭はその出どころ近くで勢いをつける前に
フレイムテイルで受け止めシャイントリガーの熱線で焼き切る。
「楽に勝てるとは思っていない。
一手ずつ潰させて貰う。」
ロラン・ヒュッテンブレナー
○アドリブ絡みOK
やっと、森を抜けれたの…
変身を解除
すぐに強烈な敵意と殺気に気が付いて警戒するの
あの人が、敗れた主っ!
桃の闘気に魔力を混ぜた【オーラ防御】の【結界術】で防御を整えながら、
相手の力を観察なの【情報収集】
召喚物がメイン…、なら、鞭の使い方は?
癖を見つけたら、そこが隙になるの
高らかにUCを詠い上げるの
闘気の桃の香りが結界内に満ちれば、それを足掛かりに相手の術に【ハッキング】
能力を【ジャミング】しながら【浄化】
暴食卿、その殺意も敵意も、浄化して無効化させるの
詩は重ねて【多重詠唱】
相手の力が掻き消えるまで
鞭がぼくを狙ってくれたら、それが、あなたの最後
その隙は、誰も見逃さないよ
おやすみなの
リーヴァルディ・カーライル
…月光城の主が復活していたのは予想外だけど、
紋章の強化が施されていないのなら問題無い
…また人間画廊のような悪趣味が行われる前に狩らせてもらうわ、暴食卿
過去に戦闘した知識と経験から敵の行動パターンを見切り、
「写し身の呪詛」を乱れ撃ち無数の残像による集団戦術で敵UCを受け流し、
自身は事前に存在感を消す呪詛のオーラで防御して闇に紛れUCを発動
…無駄よ。理性の無い狩人に捉えられる程、私は甘くない
銀蝗に集られそうな分身と敵の位置を入れ替えて自爆させられないか試み、
棘鞭の攻撃を銀蝗に使わせて敵が体勢を崩した瞬間に死角から切り込み、
炎の精霊を降霊して火の魔力を溜めた大鎌を怪力任せに投擲する火属性攻撃を行うわ
●
――太陽のごとき二つの巨大熱球が、暴食卿『ヴェルハディス』を何度も何度も、容赦なく灼きつくす。
術者が効果範囲に居る限り、熱球の攻撃は延々と続いて。
やがて方々に火傷を負った狩人は、ぜいぜいとあえぐように地に膝をついた。
くわえていた煙草は、灰と化してとうに無い。
『ッハハハハア!』
狩人は戦場全体に響き渡るほどの声で哄笑すると、焼け焦げた右手でただれた顔を覆う。
『城を侵す者は、分け隔てなく「狩り殺す」……!』
皮膚は焼け焦げようとも、左手に融合した『月の眼の紋章』はその価値を違わず発揮した。
射出された棘鞭が戦場を走り、猟兵たちへと追いすがる。
芽亜(f35644)は、左腕を負傷したミサキ(f00415)を支え、跳躍。
結界を維持しながらも、仲間の回復を優先すべく一時的に後方へ退避する。
敬輔(f14505)はふたりを護るべく、迫る棘鞭を黒剣で薙ぎ払った。
(「この人が、敗れた主っ!」)
小柄な身体で戦場を駆け抜けるのは、狼の両耳をぴんと立てたロラン・ヒュッテンブレナー(人狼の電脳魔術士・f04258)だ。
間近に伸びる鞭が己のオーラを蹴散らそうとしたのに気づき、反射的に身をよじる。
間一髪、避けきれたのは、仲間たちが戦う合間に敵の動きを注視していたおかげだ。
しかし、回避や防御に徹するばかりでは、らちが明かない。
操る死霊の集合体を目くらましにして、死霊術士のフォルク・リア(黄泉への導・f05375)は果敢に敵の死角に迫った。
「この掌に在りしは、天の日輪放つ撃鉄。降り注ぐは浄戎の炎」
背後からの声に気づいた暴食卿が肩越しに振り返ろうとするも、遅い。
フォルクは炎のラミアを封じた黒手袋『フレイムテイル』で棘鞭を掴むと、構築していた詠唱を完成させる。
「――我に仇為す汝らに、等しく光あれ」
瞬間、薄闇に覆われた地下世界に、太陽のごとき光が閃いた。
まばゆい熱線がはしったかと思うと、ライフルを手にしていた暴食卿の右腕が、肩の根元からぼとりと地に落ちる。
(「できれば、左手を切り落としたかったが」)
寸前に打撃を喰らい、敵がかばい出した逆の腕が落ちた。
しかしこれで、『呪いの弾丸』は使えない。
「楽に勝てるとは思っていない。一手ずつ、潰させて貰う」
焼き切った腕を一瞥するフォルクを睨もうにも、目晦ましを受けては、それもままならない。
それでも。
全身火傷だらけになり、ままならぬ身体で力を振り絞りながら、暴食卿は怯むことなく攻撃を続けた。
『「奈落の王」の前に、跪け……!』
声に応え、戦場に散乱していた瓦礫や朽ちた細工が、次々と銀蝗の敵群へと変じていく。
男の脳裏には、眼前の敵を狩りつくすという、深い憎悪と義憤のみが満ちているように見えて。
(「暴食卿。その殺意も敵意も、浄化して、無効化させてみせるの」)
ロランが胸中で呟いた、ちょうど同じ時。
「……無駄よ。理性の無い狩人に捉えられる程、私は甘くない」
銀の髪をひるがえし、銀蝗の攻撃を次々とかわしていたリーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)もまた、胸の内で呟いていた。
(「紋章の強化が施されていないのなら、問題無い」)
扱う武器が増えただけと考えれば、やりようはある。
リーヴァルディは、『写し身の呪詛』で己の分身を創造。
派手に動き回らせ囮にしている間に、本体である自分自身の存在感を消し去った。
戦力を持たない写し身が、敵に包囲され喰いつくされると思いきや、
「届けこの言葉、響け森の彼方まで。風を越えて寄り添う。あなたの心が返る。讃えよ、互いの存在を」
その頃には、同時に動き始めていたロランの詠唱もまた、完成している。
「――ヒュッテンブレナー式封印結界、唱和!」
祈りの完成とともに、対象を包み込み敵意を和らげ消し去る『非戦の結界』が暴食卿を覆いつくす。
ロランの身にまとう桃の香りの闘気が、その封印結界内に満ちてゆき。
「あなたがぼくらを狩るというのなら。その気持ちが掻き消えるまで、祈るの。何度でも、何度でも……!」
少年の隣人賛歌を受け変化が現れたのは、戦場にあるすべてを喰らいつくさんとしていた、銀蝗の敵群だった。
まとめてうち払おうとしていた猟兵たちの前で、次々と元の無機物へと戻っていく。
ユーベルコードを封じる存在――ロランが、最も厄介であると認識したのだろう。
暴食卿は祈り続ける少年へ向け、左手を差し向けた。
『忌々しい侵入者め! そのまま餌食となれ!!』
棘鞭のはしる先には、多重詠唱を続ける少年の姿。
――祈りで己は止められない。
――異形を狩る役目を手放しはしない。
しかし。
祈りながら己を見据える少年の紫眼は、穏やかに澄んでいて。
「おやすみなの」
静かに目を伏せた、瞬間。
少年が立っていたその場所に、『黒騎士の娘(リーヴァルディ)』が――その写し身が、立っていた。
――ユーベルコード『吸血鬼狩りの業・飛転身の型』。
「自身の残像」と「対象」の位置を交換する転移呪法。
その術で、「自ら囮となったロラン」と「囮として創った写し身」の位置を、入れ替えたのだ。
「……また『人間画廊』のような悪趣味が行われる前に。確実に狩らせてもらうわ、暴食卿」
ぽつり零した、写し身と本体のふたつの声が、重なる。
大きく振りかぶり、力任せに投擲したリーヴァルディの大鎌が、暴食卿『ヴェルハディス』の身体を切り裂いた。
前のめりに体勢を崩した狩人の眼前へ立ったのは、拳にまばゆい炎を宿したフォルクだ。
「既に滅びたこの地に、『侵入者』も『守り人』もないだろうが」
――この地を侵す者を退けんと、月光城の主として立っていた存在。
異形を狩るのだと。
宿業の果てにオブリビオンへと堕ちた狩人へ、
「自分で止まれないなら。俺たちが、止めてやるよ」
――光あれ。
厳かにフォルクが言い放てば、太陽光にも比肩する光線が、憐れな狩人をまっすぐに貫いて。
『オァァオオオオオオオオ!!!!』
かくて男は、地下都市では終ぞ見ることの叶わなかった太陽のごとき光を浴びながら、絶叫の果てにこと切れた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『ヘブンリーセイヴァー』
|
POW : 全てを無に還す原初の楽園
全身を【溶かし原初の闇を広げ、戦場全体を虚無】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
SPD : 終わる世界に現れる最後の救済
小さな【希望を見せ、人類を救える僅かな可能性】に触れた抵抗しない対象を吸い込む。中はユーベルコード製の【天国だが、自ら地獄に堕ちる覚悟を示す事】で、いつでも外に出られる。
WIZ : 荘厳たる死を与える天国への道標
戦場全体に、【『天国』への扉が出口となる、神の光】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
イラスト:烏鷺山
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「ナギ・ヌドゥー」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
――光あれ。
厳かに死霊術士が言い放てば、太陽光にも比肩する光線が、憐れな狩人をまっすぐに貫いて。
『オァァオオオオオオオオ!!!!』
かくて『月光城のかつての主』は、地下都市では終ぞ見ることの叶わなかった太陽のごとき光を浴びながら、絶叫の果てにこと切れた。
ユーベルコードによる光が消えた後、あたりには再び、薄闇がもどり。
猟兵たちは、広場の真中で倒れたままの暴食卿『ヴェルハディス』の亡骸を確かめ、深く息を吐いた。
その時だ。
ふいに、立ち尽くしていた猟兵たちの足元に、色濃い影が伸びる。
そして、気づいたのだ。
二度と動かぬはずの暴食卿の背が、ぱっくりと裂けていて。
そこから、まばゆい光が漏れているのだと。
――先ほど戦場を照らした、太陽のごとき光とは、違う。
――それは煌々と世界に注ぐ、月のごとき輝きだった。
そして猟兵たちは、見たのだ。
繭の中で眠りについていた『何か』が。
今こそ外の世界へ羽ばたかんと目覚め、羽化したかのように。
裂けたオブリビオンの亡骸から、煌々と輝く異形の身体部位――ヒトの姿を無造作に埋め込んだようなモノ――を幾つも生やした巨大な『何か』が現れるのを。
『それ』はぶるりと身を震わせ、鳥か、蝶のごとき身体を大きく広げ、上空へと舞い上がる。
燐光を放ちながら瞬く、『それ』こそが。
月光城と、その周辺都市を襲撃した『外敵』に違いない。
そうであれば、この情報をいち早く持ち帰り、皆にも共有しなければ……!
月のごとく輝かんと中空で静止した『それ』は、やがて猟兵たちの脳裏に、直接呼びかけはじめた。
年齢も性別も感じさせない、誰でもあり、誰でもない声音で。
『全テヲ無ニ還シ、原初ノ楽園ヘ還ロウ』
『尊イ犠牲ノ上ニ、人類ヲ救済シヨウ』
『荘厳タル死ヲ迎エ、天国ヘ至ロウ』
聞けば聞くほど、戦闘意欲が奪われていく。
オブリビオンの身体から生えた虚ろなヒトたちが、猟兵たちを見ている。
応戦しなければ、このまま意識を奪われてしまいかねない。
猟兵たちは強い危機感を覚え、ふたたび戦闘態勢に入った。
●追加情報
・『月光城のかつての主』よりも、さらに強力なオブリビオンです。
・猟兵たちは敵を殲滅するまで、『戦闘意欲を奪う精神攻撃』を受け続けます。
精神攻撃によりどんな影響を受けるか、プレイング内にご記載ください。
・『POW 虚無の楽園/SPD 犠牲の上の救済/WIZ 荘厳たる自死』への誘惑を断ち切る有効なプレイングがあった場合、プレイングボーナスが発生します。
●プレイングについて
【3月11日(金)朝8:31以降】に受付を開始し、
【3月13日(日)朝8:30まで】で受付を終了します。
3章に限り、戦闘プレイングが最低限でも『ユーベルコードが設定されていれば、相応の戦闘行動を行っている』ものとして判定します。
心情プレイングに寄せたい方は、ご活用ください。
儀水・芽亜
これが月光城を襲った『外敵』の正体ですか!? 何という異形……。これは本当にオブリビオンですか?
裁断鋏を持つ手が下がっていく。
「狂気耐性」「呪詛耐性」で意識をつなぎ止めて、「勇気」を振り絞って戦意をかき立てます。
小さな希望、人類を救える僅かな可能性……。尊い犠牲の上に……。
お為ごかしは止めてもらいましょうか。オブリビオンが人類を救うつもりなどあるはずがない!
全てを無に還すという存在が、人を生かしておくつもりなどあるわけがないでしょう。
お返ししますよ。「催眠術」「全力魔法」「歌唱」のアンチウォーヴォイス。
あなたこそ、戦意を失って討滅されるべき存在です。
ユーベルコードを封じることが出来れば!
フォルク・リア
「あれがここを滅ぼした外敵。
それが何故オブリビオンの体内に在ったのか。
何の為に月光城を滅ぼしたのか。
気になる事は山ほどあるが。
これだけ強力な敵を相手にそれを追求する余裕ばない。」
戦闘態勢を取りつつも敵の声を聞き
「……死を恐れるな。苦痛に満ちた怠惰な生きるを貪るよりも
荘厳な死を受け入れ天国へ。」
声に惑わされフレイムテイルに火を灯し自らの喉を
焼き切ろうとするが、すんでの所で正気を保って
そのまま自らの顔を殴り。
「いいや違う。」
ナイトメアフォースを発動。
自らに悪夢と言う名の現実、
この世界で吸血鬼が人々の命を不条理に弄ぶ様を
吸血鬼がなくとも厳しい世界の現実を敢えて見せて。
「この世界に天国はない。
あったとしても俺の居場所はこの夜の闇。
たとえそれが地獄の闇でも此処に朝を取り戻すまでは。」
世界の現実を見る事、
敵の攻撃により乱された精神を悪夢で蝕む事で正気を取り戻し
「お前が天国への道を示すと言うのなら俺はそれを否定する。」
ナイトメアフォースにより呼び起こされた
冥府の闇で神の光の破壊と敵への攻撃を試みる。
シン・コーエン
全てを無にした挙句の楽園などに何の意味が有る。
戦いという形ではあるが、より良き未来に繋げる手助けとなるのが俺の生き方だ。
故に全力でお前という存在を叩き潰す!
戦人であり、強敵との戦いに歓喜する修羅であるシンにとって、戦闘意欲を奪う精神攻撃はシンの全てを否定するに等しい為、闘志を燃やし全身全霊で立ち向かう。
相手が戦場全体に原初の闇を広げた虚無になったのなら、光を持って断ち斬ろう!
灼星剣に光の属性攻撃を籠めてUC:万物両断を発動。
限界突破した速度で縦横の2回攻撃(軌道は+になる形)を行って、鎧無視攻撃効果を持つ斬撃波を放ち、戦場全体を光の斬撃によって斬り裂く!
貴様ごときに否定しきれる俺ではない。
肆陸・ミサキ
※絡み苦戦怪我アドリブOK
こういうの、経験が無い訳じゃない
いつもは、昔、住んでた村の人からの罵倒だとか、腫れ物扱いを思い出させられたり
私の表にしたくない感情を逆撫でされたりだけど
ああ、いや、今回は効く
この醜悪に成り下がった身体で、悲しませる人がいるってことが、重い
解ってて見ないことにしてた、罪悪感みたいなのが、前に進もうとする足を退かせてる
これ以上、傷付きたく無いって、我慢出来なくなりそうだ……
でも駄目だ、認めない
この世界を救うと決めた、自分自身を裏切る事だけは、出来ない
苦しむのも後悔するのも、終わった後でいい
動かないだけで無敵だというなら
動いた瞬間に塵も残さず灰になるよう
今、ここで焼いておく
リーヴァルディ・カーライル
※狂信者の導師だった母に洗脳されて名も無き異端の神の生贄にされ、
左眼に契約の聖痕「代行者の羈束」を刻まれた幼少期の過去を想起する
…っ。この感覚は、私の精神を操ろうと…
…尊い犠牲。荘厳なる死。そして、大いなる神と、一つに…
…母様がそう、言うなら…きっと、それが正しいこと…
…なんて、ふざけないで。私の心は、私のものよ
それを操り踏みにじろうとするならば、たとえ誰であっても容赦はしない
…そして何より、救世を誓うこの私の前で偽りの救済を掲げた罪は万死に値するわ
…お前がどんな存在で、如何なる理由があろうが関係ない
…私の怒りに触れた報いを受けて、滅び去りなさい
怒りを糧に気合いで精神干渉を振り切りUCを発動
ロラン・ヒュッテンブレナー
○アドリブ絡みOK
・精神攻撃
威圧感と膨大な魔力の気配、
自身のあと20年余りの寿命についての絶望
ぼくは、ダークセイヴァーの解放も、大事な人たちの幸せな未来も創れないの?
その絶望は、余計に見せられる希望に手を伸ばさせてーー
ここは?
ぼくが夢見た、太陽の照らす第4層
穏やかな町の風景
ぼくを呼ぶ大事な人たち…
なにより、人狼病の根治の方法が…
伸ばす手が、獣のそれに気が付くの
人にも、狼にもなれない手
まだ、こういう未来を掴めるチャンスが、あるってことだよね?
なら、ここで負けるわけにはいかないの
桃の精さん、力を貸して!
きっと、自力でここに辿り着くから
だから、今はさよなら
ぼくは苦しくてもみんなの待つ地獄に戻るの!
館野・敬輔
【SPD】
アドリブ連携大歓迎
…何だ、これは!?
これが、月光城の主を滅ぼした外敵なのか!?
ここで倒さねば…!?
『尊イ犠牲ノ上ニ、人類ヲ救済シヨウ』
その声は
俺ひとりだけの犠牲で全てを救えると錯覚させ
戦意を奪い死への誘惑を植え付け
自ら命を絶つよう誘導してくる
…俺がここで死ねば
この世界の救世主になれるのか
その呟きに違和感を覚え
黒剣を抜き太ももに突き立て
痛みで意識を覚醒させ抵抗
俺はこの黒剣に封じられているオブリビオンの魂と共にある騎士
魂たちは自らの意で俺と在りたいとついてきている
生憎だが、俺は…ひとりじゃないんだ
そもそも
俺がいかに人類の救済を謳おうとも
吸血鬼とオブリビオンを殺している事実は変わらない
オブリビオンを憎む魂たちと共に在り
オブリビオンへの憎悪を持って敵を排除している以上
俺は…全てが終わったら地獄に堕ちるしかない
地獄へ向かう覚悟は十二分にある
貴様に誘導されるまでもない!!
「2回攻撃、属性攻撃(闇)」+指定UCの18連撃(味方斬りなし)で誘惑を断ち切り一息で屠ってやる!!
ここで、沈め…っ!
●月のけだもの
立ち尽くしていた猟兵たちの足元に、色濃い影が伸びる。
暴食卿の亡骸の背がぱっくりと裂け、まばゆい光が漏れて。
繭から羽化するかのように、煌々と輝く異形の身体部位――ヒトの姿を無造作に埋め込んだようなモノ――を幾つも生やした巨大な『何か』が現れていく。
『それ』はぶるりと身を震わせ、鳥か、蝶のごとき身体を大きく広げると、空をかき乱しながら上空へと舞い上がった。
燐光を放ちながら瞬く、『それ』こそが。
月光城と、その周辺都市を襲撃した『外敵』に違いないと、その場にいた猟兵のだれもが悟った。
「……何だ、これは。これが、月光城の主を滅ぼした……『外敵』なのか!?」
逆巻く風の中、驚愕の表情を浮かべ館野・敬輔(人間の黒騎士・f14505)が叫ぶ。
誰かに答えを求めたわけではない。
理解不能な存在を前にした時、声に出して、自らに問い直さずにはいられなかったのだ。
砂煙が舞う。
鶯色の髪が突風にかき乱される。
「これが……月光城を襲った『外敵』の、正体……?」
儀水・芽亜(共に見る希望の夢・f35644)は、中空で静止した『それ』を仰ぎ見て。
あまりの異様に圧倒され、武器を構えることすらできない。
――これまでに対峙した、どんなオブリビオンとも、違う。
超越的な存在を前に、裁断鋏『Gemeinde』を握りしめる指が震え、無意識に後退る。
「何という異形……。これは、本当に……『オブリビオン』ですか?」
芽亜の声をそばで聞きながら、フォルク・リア(黄泉への導・f05375)もまた、胸中で呟く。
(「何故、『あれ』がオブリビオンの体内に在ったのか。何の為に、月光城を滅ぼしたのか――」)
気になる事、確かめたい事は山のようにある。
しかし、対峙しただけで戦慄する存在を前に、謎を追求している余裕はない。
月のごとく輝かんと中空で静止した『それ』は、やがて猟兵たちの脳裏に直接呼びかけはじめた。
年齢も性別も感じさせない、誰でもあり、誰でもない声音で。
オブリビオンの身体から生えた虚ろなヒトたちが、猟兵たちへ手を伸べる。
――もう、戦わずとも良いのだ、と。
●
『尊イ犠牲ノ上ニ、人類ヲ救済シヨウ』
オブリビオンの声は、連戦による疲労がのしかかる心身に染み入るように入り込み。
戦意を喪失しかけていた芽亜(f35644)を、『天国』のごとき術中へと陥れた。
そこは、すべてが白一色の空間。
『最後の救済』と称された『希望の夢』が、映画を観るかのように次々と映像として浮かびあがっていく。
神々に捧げられた赤子。
憤りを一身に受けた聖女。
英雄から逆賊と罵られた青年。
礎となった老人たち。
――いくらかの犠牲のもとに、確実な『救済』がおとずれる未来。
聖別された犠牲に目をつぶれば、この世界は救われると、繰り返す。
「小さな希望、人類を救える僅かな可能性……。尊い犠牲の上に――」
芽亜の意識が、完全に呑まれかけた、瞬間。
ふいに、握りしめていた裁断鋏『Gemeinde』の確かさが、芽亜の意識を呼び戻した。
(「――全てを無に還すという存在が、人を生かしておくつもりなど、あるわけがない」)
芽亜はだん!と革靴で白い床を踏みしめると、姿の見えない敵へ向け、挑発するように声を張り上げた。
「いいえ、いいえ! お為ごかしは止めてもらいましょうか! オブリビオンが人類を救うつもりなど、あるはずがない……!」
仲間たちの姿は見えない。
自分はただ一人、この場にいる。
しかし、絶望はしない。
己の成すべきことは、はっきりとわかっている。
耳元のインカムを確かめる。
胸元には、首掛け式の蒸気機関式スピーカー。
すうと息を吸い込み、宣言する。
「あなたこそ! 戦意を失って、討滅されるべき存在です!!」
芽亜は両手を広げ、そして――。
●
『全テヲ無ニ還シ、原初ノ楽園ヘ還ロウ』
意識外へ追いやろうにも染み入る声に、スペースノイドの青年――シン・コーエン(灼閃・f13886)は耐えきれず地に膝をついた。
「くッ……!」
見あげた異形の全身から原初の闇が広がり、戦場全体を虚無へと塗り替えていく。
周囲に佇んでいたミサキ(f00415)、リーヴァルディ(f01841)、ロラン(f04258)の3人も、次々とうなだれていくのを最後に、視界から消えていく。
だが、仲間を気にかけるだけの余力はない。
一瞬でも気を抜けば、声は己の意識を否応なく侵食する。
戦闘意欲を根こそぎ奪う。
――戦人たる、己の。強敵との戦いに歓喜する『修羅』の、『存在意義』そのものを。
(「喪う……? 俺自身の『すべて』を?」)
まっくら闇に、ただひとり。
己を否定する存在だけが、月のごとく煌々と輝いている。
『全テヲ無ニ還シ、原初ノ楽園ヘ還ロウ』
ふたたび猟兵の意識をこじ開けようとする異形を睨みつけ、シンは叫んだ。
「全てを無にした挙句の『楽園』などに、何の意味が有る……!」
叫ぶことで、『己』の意識を自覚する。
己の『在り様』を、確かめる。
月の輝きとは、違う。
青い瞳の奥に、『灼閃』の光を宿して。
「『戦い』という形ではあるが、より良き未来に繋げる手助けとなる。それが、俺の生き方だ!」
深紅に輝くサイキックエナジーの剣――己の分身でもある『灼星剣』を、顕現させる。
握りしめた柄の確かさが、今は揺るぎない『よすが』だ。
「灼光の刃よ……!」
声に応じ光が集束するのに合わせ、眼にも留まらぬ速さで一閃、二閃!
刃は確実に敵を捉えた。
しかし、
『スベテ、全テヲ無ニ還シ、原初ノ楽園ヘ還ロウ』
原初の闇はシンの攻撃をものともせず、なおも声による浸食を続ける。
シンの『存在意義』を奪おうと、虚ろが次々と手を伸べる。
『無ニ還シ、楽園ヘ、楽園ヘ、楽園ヘ――還ロウ』
一撃でだめなら、二撃。
二撃でだめなら、三撃。
三撃でも倒れぬのなら、この身が果てるまで、何度でも。
シンは灼星剣を構え直し、意識の続く限り、叫んだ。
「――俺は! 全力で、お前という存在を叩き潰す!!」
●
『尊イ犠牲ノ上ニ、人類ヲ救済シヨウ』
頭の中に、無理やりひとの手が入るような、不快感。
「……っ。この感覚は、私の精神を操ろうと……!」
月のごとく輝く虚ろなヒトたちの声が、手が、退こうとするリーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)を掴んで逃がさない。
あたり一面、真っ白な部屋。
この場所を、『彼ら』は『天国』と呼んだ。
髪を振り乱しうなだれたところで、耳元に懐かしく甘い声が響く。
『怖いことはなにもないわ、リーヴァ。あなたが贄となり、神とひとつになる。それは人々を救うしるべとなるために、必要なこと。――とても正しいことなのよ』
覗き込む虚ろなヒトの無貌は、狂信者の導師だった母とは、似ても似つかない。
しかし今は、眼前にあの頃の母が居て、己を諭しているように思えて。
幼少期の己が、そうしたように。
少女は虚ろなヒトにされるがまま、呟いていた。
「……尊い犠牲。荘厳なる死。そして、大いなる神と、……一つに。……母様がそう、言うなら……きっと、それが正しいこ、と――」
けれど。
ふいによぎった違和が、リーヴァルディの意識を、現実へと引き戻す。
リーヴァルディは、もう知っている。
――聖痕『代行者の羈束(きそく)』。
『あの時』に名も無き神と結んだ契約の証は、今も己の左眼に刻まれていて。
力を得た代償として、精神を汚染し続けていることを。
そして何より。
己に苦痛を強いた母は、もう何年も前に、己の手で骸の海へ還したことを。
(「……あの時のことは、苦難は。忘れられようはずもない」)
だからこそ、この『声』は母のものではないと、断言することができる。
しかし、冴え冴えと光り輝く無貌のヒトは、なおも手を伸べて言うのだ。
『リーヴァ、いい子ね。もう暫く、いい子にしているのよ』
「……ふざけないで! 私の心は、私のものよ!」
その腕を振り払い、リーヴァルディは澄んだ紫眼で睨み返した。
――『時間王の瞳』。
忌まわしい記憶の代わりに手に入れた、聖痕が宿る瞳。
それは、『過去の存在』を視線で呪縛する呪宝珠。
ダークネスを一瞥したなら、それだけで戒めとなる呪物。
「私の心を操り、踏みにじろうとするならば、たとえ誰であっても容赦はしない。そして何より――」
湧きあがる怒りがある限り。
もう二度と、惑わない。
「救世を誓うこの私の前で。偽りの救済を掲げた罪は、万死に値するわ」
リーヴァルディは、己の内の幼子に別れを告げて。
一面の白い空間へ向け、左眼の聖痕の力を解放した。
●
気が付けば、周りには誰もいない。
ただ、真っ白なだけの空間に佇んでいて。
傍には、煌々と月のように輝く異形が、その身に埋め込まれた虚ろなヒトたちがいる。
『尊イ犠牲ノ上ニ、人類ヲ救済シヨウ』
その声は、館野・敬輔(人間の黒騎士・f14505)には、すこしばかり違ったように響いていた。
『人類は救済される。お前ひとりだけの犠牲で、全てを救うことができる』
ゆえに、黒剣をとり、己の首を刎ねよ、と。
光をはなつ白磁のごとき手腕が、次々と敬輔の腕に伸び、誘う。
『お前は死ぬが、多くが救われる』
敬輔は、ただ呆然と立ち尽くしていた。
(「頭が、思うように働かない――」)
しかし、虚ろのヒトたちは言っているではないか。
これまでのように、あくせく戦わずとも。
己の命ひとつで解決するのなら、そうするべきなのだ、と。
人類の再建のために、この身が礎として役立つのだ。
それは、何よりも喜ばしいことなのではないか……?
「……俺がここで死ねば、この世界の救世主になれるのか」
うわごとのように呟いた言葉に、異形が応える。
『そうだ。お前は死ぬが、永遠に語り継がれる』
『人々が、救世主を待ち望んでいる』
その答えに。
ふと、違和感を覚えて。
「――『人々』って、だれだ?」
瞬間、敬輔は虚ろなヒトたちが制止する間もなく、黒剣を抜き太ももに突き立てた。
痛みに激痛が走り、白い床に跪く。
傷口から染み出した赤の色が、一面の白い世界を、汚していく。
これまで何度も戦場で経験してきた、その感覚が。
己の意識を、何よりも研ぎ澄ましてくれる。
――何よりも信用できる、感覚。
敬輔は痛みをこらえ、剣を支えに立ちあがった。
「……俺は、この黒剣に封じられているオブリビオンの魂と共にある騎士。魂たちは、自らの意で俺と在りたいとついてきてくれている」
両親と妹。
そして、己と意を同じくする少女達等の魂。
『彼ら』は、いつだって敬輔の愛用の黒剣の中にいて、時に同調しながら、共に戦ってくれる。
――顔も知らない『人々』では、ない。
「生憎だが、俺は……ひとりじゃないんだ」
そう口にすると、胸中にもあたたかな気持ちが広がって。
虚ろなヒトたちの言葉は誤りであると。
今なら、確信を持って見抜けた。
「そもそも。俺がいかに人類の救済を謳おうとも、吸血鬼とオブリビオンを殺している事実は変わらない」
己は、オブリビオンを憎む魂たちと、共に在り。
オブリビオンへの憎悪を持って、敵を排除している。
そんなことは、初めから百も承知だったのだと口の端をもたげ、言った。
「だから、俺は。全てが終わったら、地獄に堕ちるしかない」
そうして、手にしていた黒剣を構えると。
『天国』を称する、白い空間ごと。
ためらうことなく、虚ろなヒトたちを斬り捨てた。
●
『荘厳タル死ヲ迎エ、天国ヘ至ロウ』
声が響くなり、フォルク・リア(黄泉への導・f05375)の視界全体に、まばゆい白光が満ち満ちて。
天井から降り注ぐ光の迷宮が出現し、フォルクをその場に留め置く。
先ほどまで周囲にいた仲間たちの姿は、どこにもない。
前も後ろも、右も左も。
光の道の先へ進めども、石畳の戦場へ至る様子は一向にみられない。
『荘厳タル死ヲ迎エ、天国ヘ、天国ノ扉ヘ至ロウ』
声とともに、虚ろなヒトたちの無貌が迷宮上空に現れる。
光輪を背負った『彼ら』はまるで、神の視点から箱庭を覗き込むかのよう。
彷徨い続けるフォルクを見下ろして、『天の御使い』さながらに、聞き心地の良い言葉をふりそそぐ。
――死は、すなわち救済である。
――逝き着く先は、天上の国。
――つまり、『天国』である。
ゆえに、自らの手で『天国の扉』を開けよ、と。
はじめは杖を手に戦闘体勢をとっていたフォルクだったが、脳裏に直接響く声を防ぐ手立てはなく。
迷宮を彷徨いながらも、しだいに精神を蝕まれていった。
立ち止まり、杖にすがるようにして両の膝をつく。
「……死を恐れるな」
つぶやきと共に、魔力を宿した黒手袋に火を灯して。
己の喉に、その火を近づける。
「苦痛に満ちた、怠惰な生を貪るよりも……、荘厳な死を受け入れ、『天国へ』――」
オブリビオンでさえ焼き尽くす炎が、己の肌を焼こうとした、その時。
脳裏に、これまでにみた悲壮な光景がいくつも蘇った。
その、わずかの正気が。
術士であると同時に、研究者であるフォルクの冷静さを引き戻した。
「いいや、違う……!」
手のひらを固く握りしめ、炎を握り潰した拳で己の顔を殴りつける。
唇が切れ、口の中に鉄の味がひろがる。
――まだ死んではいない。
――生きている。
「その眼で、よく、視るがいい」
呼びかけたのは、己か、敵へか。
フォルクが唱えると同時に、光の迷宮に冥界の闇がひろがっていく。
闇はあたりを黒一色に塗り替え、フォルク自身と虚ろなヒトたちに、『悪夢という名の現実』をつきつけ、精神を蝕んだ。
この世界では、吸血鬼が人々の命を不条理に弄ぶ。
そして吸血鬼がいなくとも、世界は困難に満ちていて。
決して、やさしくはない。
――厳しい世界。
けれど、それが『現実』。
フォルクがその眼でつぶさに見てきた、この世界のありのままの姿だ。
辿ってきた道程が、冒険の記憶が次々と蘇り、フォルクの意識をよりはっきりと覚醒させていく。
フォルクの展開させた『冥府の闇』が、虚ろなヒトたちごと、神の光を蝕んでいく。
「この世界に『天国』はない。あったとしても、俺の居場所は、この夜の闇の中だ」
『悪夢』が、現実を取り戻していく。
言葉に、力強さが戻っていく。
決意を新たに、フォルクは宣言した。
「たとえそれが、地獄の闇であっても。――此処に、『朝』を取り戻すまでは」
●
『尊イ犠牲ノ上ニ、人類ヲ救済シヨウ』
声に聞き入っていれば、ロラン・ヒュッテンブレナー(人狼の電脳魔術士・f04258)はいつの間にか一面の白い空間にいた。
眼前の中空には、暴食卿から羽化した謎のオブリビオンが浮かんでいる。
煌々と輝く異形の身体部位――虚ろなヒトたちが、うずくまるように膝をついた少年に、次々と手を伸べる。
『人狼病に蝕まれるおまえの命は、残り少ない』
『おまえの願いは叶わない』
白い空間に、光を放つ存在。
一般的に考えれば、『神』を想起さえる存在ではあったが。
感じるのは、威圧感と膨大な魔力の気配。
それこそ、ロランの存在など、今にも消し飛ばしてしまいそうな――。
「そんな……。ぼくは、ダークセイヴァーの解放も、大事な人たちの幸せな未来も、創れない……の?」
眼前の、超越的な存在も。
『それ』が語る言葉さえも、受け入れがたくて。
ロランは肩を落としてうなだれた。
『そう、だから』
『トウトイ、尊イ犠牲ノ上ニ、人類ヲ救済シヨウ』
光をはなつ手が、次々とロランを抱きしめ、幾重にも重なって。
やがてそれは、繭のように少年をやさしく包み込んだ。
ふたたびロランが眼を開くと、そこは、目を刺すようなまばゆい光にあふれていた。
「……っ! ここは!?」
問いかけずとも、ロランにはわかる。
ここは、夢にまでみた『太陽の照らす第4層』。
永遠の夜などどこにもなく、太陽が昇り、人々は陽光の恵みの元に暮らしている。
立っていた丘から見える町へ向かう。
植物は青々と茂り、動物たちものびのびと駆けまわっている。
何より、オブリビオンの気配がどこにもない。
「本当に……。こんな世界があったんだ……」
『ロラン!』
呼び声に振り返れば、『大事な人たち』が、手を振っている。
ロランは大きく手を振り返し、駆けだした。
もう誰も、傷つくこともない。
もう誰も、死におびえることもない。
ここは、だれもが穏やかに暮らし、自分らしく生きていける世界だ。
「みんな……!」
小さな希望の先に、『天国』を垣間見て。
そして。
『大事な人たち』へ向けて伸べた自分の手に、気づく。
――人にも、狼にもなれない手。
駆けていた足が、止まって。
ロランは眼前の者たちに飛びつきたい想いをこらえて、じっと、己の獣の手を見た。
「……そう、そうだよね」
『大事な人たち』だと思っていた存在に眼を向ければ、それは虚ろなヒトの形となり、
『ドウシタノ、ろらん』
『コッチヘオイデ』
記憶とはまるで異なる偽りの姿で、少年を手招く。
「ここは本当に、『天国』みたいで。……だけどまだ、僕たちが頑張れば、こういう未来を掴めるチャンスだって、あるよね?」
現実と向き合い続けるには、寂しいことも、苦しいこともあるけれど。
けれど。
――きっと、自力で。『ここ』に辿り着くから。
「ぼくは、ここで負けるわけにはいかないの。――だから桃の精さん、力を貸して!」
少年の声に応えるように、桃の香りが身を包む。
ロランは胸に満ち溢れる想いをそのまま歌いあげるべく、息を吸い込んだ――。
●
『全テヲ無ニ還シ、原初ノ楽園ヘ還ロウ』
告げる声が、じわりじわりと肆陸・ミサキ(黒白を弁ぜず・f00415)の心身を侵していく。
全身から力を奪っていく。
敵が全身を溶かし、原初の闇を広げる前に、抗おうとしていたシン(f13886)と目が合った。
――が、その気配もすぐに消えてしまった。
あたりは真っ暗で、なにもない。
霊的に補った視界であっても、何も捉えることができない。
先ほどまで敵が羽ばたいていたことによる、風も、その音も。
在るのはただ、月光のごとく中空に佇む『それ』の声と、気配だけで。
虚ろなヒトたちの手が、ミサキへ向かって、幾重にも伸びる。
『スベテ、全テヲ無ニ還シ、原初ノ楽園ヘ、カカカ還ロウ』
知っている者の声にも、知らない声にも聞こえる。
しだいに全身が気だるくなり、立っていられなくなる。
膝をつき、両手をついて、やっとの思いで身体を支える。
(「……こういうの。経験が無い訳じゃ、ない」)
脳裏をよぎるのは、昔、住んでいた村での出来事。
村の人からの罵倒や、腫れ物扱いされたこと。
表にしたくない感情を、逆撫でされたりしたこともあった。
しかし。
(「ああ、いや。……今回は、効く」)
『それ』の誘いは、あまりにも蠱惑的で。
ミサキは、傷だらけの己の身体をかき抱いた。
――独りで生き、独りで逝く。
――すべて、己だけで終わらせる。
そのために、代償を払って。
そうやって何もかも、遠ざけていたはずなのに。
炭化した右腕。
(「この醜悪に成り下がった身体で……、悲しませる人がいるってことが、……重い」)
解っていて、見ないことにしていた。
『罪悪感』のような、感覚。
それが、前に進もうとする足を、意思を、退かせる。
もういやだ。
我慢したくない。
投げだしたい。
(「これ以上。傷付きたく、ない」)
うずくまって、体を丸めて。
『あれ』がそうしていたように、繭に包まれて、そして。
――すべて、終わりにしたい。
月のごとく輝く異形が、虚ろなヒトたちが微笑んでいる。
優しく髪をなでてくれる。
原初の闇に、まどろみに身をゆだねれば、きっと楽になれる。
ぜんぶ終わる。
全てを手放してしまおうと、ミサキがまぶたを閉ざした時だ。
はるか、意識の果てから。
聞こえてきたのだ。
こころを揺さぶる、その声が――。
●地上のいのち
『かつての月光城の主』の亡骸から羽化した『それ』は、ただ石畳の戦場に浮かんでいた。
猟兵たちは『声』の浸食を受け、それぞれの異空間に囚われたままだ。
このまま、城塞跡は静寂に包まれすべてが終わる。
そう思われた矢先、
「お返ししますよ! ひとの心を揺さぶるお手本を、見せてあげます!」
声がするなり、異空間を打ち破った芽亜(f35644)が姿を現して。
ふたたびまみえた『それ』を金の眼で射抜き、『希望の夢』をこめて絶唱する。
「さあ、爪牙を収めましょう。刃は鞘の中、銃砲は蔵の中。偃武の心で、平和を築くのです……!」
紡ぎあげるのは、反戦の魂を込めた歌声。
聴く者の精神を揺るがし、戦いに対する疑問と戦意の喪失をもたらし、平和の喜びを歌い上げる歌だ。
――狙うは、敵ユーベルコードの封印。
同じ時。
「ぼくは苦しくても、みんなの待つ地獄に戻るの! ――だから、今はさよなら」
叫び異空間から戻ったのは、桃のオーラを身にまとい、堂々と佇むロラン(f04258)だ。
「届けこの言葉、響け森の彼方まで。風を越えて寄り添う。あなたの心が返る。讃えよ、互いの存在を。 ――ヒュッテンブレナー式封印結界、唱和!」
敵意を和らげ消し去る、非戦の結界。
魔力障壁と詠唱が共鳴して生まれる魔力の波動を、歌声にのせ『それ』へと叩きつける。
芽亜とロランのユーベルコードが共鳴し、『それ』の精神攻撃を封じ込めるべく弱体化させていく。
そのほころびが、また別の場所にほころびを生んだ。
「灼光の刃よ、全てを両断せよ!」
自らの光をもって闇を斬らんと攻撃を繰り返し続けていたシン(f13886)の一撃が、ついに異空間を打ち破ったのだ。
歌い続ける仲間の姿が見える。
そして、中空で輝き続ける『それ』の姿も。
シンはもう一度灼星剣を構え、十字の二連撃で戦場全体を斬り裂いた。
「覚えておくがいい! 貴様ごときに、否定しきれる俺ではない!!」
その頃には、フォルク(f05375)もまた神光の迷宮を逆侵食し、現実の戦場へと戻っている。
シンの刃に切り裂かれた異形の姿を見やり、厳かに告げる。
「お前が『天国への道』を示すと言うのなら、俺はそれを否定する」
黄泉への導は、死霊術士たる己の専売特許なのだから。
『フレイムテイル』をはめた手を掲げ、精神を蝕む冥界の闇を展開する。
そうして、恭しく言った。
「『月のけだもの』よ。ようこそ、悪夢(ゆめ)の世界へ――」
その瞬間、猟兵たちの力が『それ』を上回った。
ユーベルコードの封印が成り、『それ』に埋め込まれた虚ろなヒトたちが蠢き、苦しむような動きを見せる。
――先ほどまで猟兵たちを蝕んでいた声は、もう、聞こえない。
純白の『天国』から抜け出したリーヴァルディ(f01841)と敬輔(f14505)もまた、仲間たちと共にならび立って。
「……お前がどんな存在で、如何なる理由があろうが関係ない」
リーヴァルディが怒りの眼差しで睨みつければ、その一瞥はより強固な戒めとなって、敵を呪縛する。
いかに正体不明のオブリビオンといえど、打ち破ることはできない。
「私の怒りに触れた報いを受けて、……滅び去りなさい」
敬輔はその隙を逃さず、黒剣を手に踏み込んだ。
「『地獄』へ向かう覚悟は十二分にある! 貴様に誘導されるまでもない!」
右の眼が、青く輝く。
想いをのせた一撃を、畳みかけるように繰り返し叩き込んだ。
「ここで、沈め……っ!!」
闇の空間に歌声が響き、ミサキ(f00415)を囲っていた異空間が崩壊していく。
虚ろなヒトたちが、もがき苦しみながら消えていく。
何事かと立ちあがれば、周囲は現実の戦場に戻っていて。
そこでミサキが見たのは、なにひとつ投げ出さず、傷つきながらも懸命に戦い続ける、仲間たちの姿だった。
(「ああ、そうだ。あんな『声』は、決して認めない」)
唇を噛みしめ、かぶりを振る。
(「この世界を救うと決めた。自分自身を裏切る事だけは、出来ない」)
もう二度と、すべてを投げ出そうなんて、思わない。
苦しむのも後悔するのも、全部、終わった後でいい。
ミサキは右手を握りしめ、あらためて仲間たちと並び立つと、石畳を蹴ってひときわ高く飛びあがった。
月のごとく燦然と輝く、異形のけだものへ。
渾身の力をこめて。
固めた右腕で、殴りかかる。
――今、ここで焼いておく。
「くれてやる。遠慮なく、受け取ってよ……!」
覚悟と、決意。
そして、己自身の右腕を代償にして。
敵を焼き焦がす圧倒的な光が、戦場に炸裂した。
利き腕をうしなったミサキが、意識を失う前に見たのは。
異形のはなつ光が徐々にうしなわれ、地に堕ちていく姿だった。
●
謎のオブリビオンの骸は、殲滅後には崩壊し、跡形も残らなかった。
しかし、対峙した猟兵たちの脳裏には、その異様はしかと焼き付いている。
――『かつての月光城の主』の骸から、羽化するように現れたこと。
――その身には、『月の如く煌々と輝く、異形の身体部位を幾つも生やしていた』こと。
『ダークセイヴァー』は、いまだ、底知れぬ謎に満ちている。
しかし、ひとまずは驚異を退けることができたのだ。
今はこの情報を持ち帰り、次の探索へ繋げるしかないだろう。
満身創痍の猟兵たちが見あげる、『第5層』の空には。
今もなお、月が煌々と輝いている。
大成功
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