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課外授業に参りましょう!

#シルバーレイン #【Q】 #ナンバード化オブリビオン #榊原葉月の受難

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#シルバーレイン
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#【Q】
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#ナンバード化オブリビオン
#榊原葉月の受難


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 生徒達を見送り、榊原葉月もまた帰路に着いた。
 学生の本分は、勉強。それは、能力者であっても変わらない。
 だが、やはり授業を退屈だと受け止める生徒が多いのも事実。
 だからと言うわけでもないが、葉月は定期的に課外授業を行うことにしていた。
 三ヶ月に一度、休日の土曜日、強要はしない希望者のみの参加。
 それでも、体験型イベントのある場所を選んで行う葉月の課外授業は、生徒たちから受けがよかった。葉月自身がまだ年若く、学生より少し多くのことを知っているお姉さんのような感覚で生徒たちに接していることもあるが。
 つまり、葉月自身もこの課外授業を楽しんでいるし、やり甲斐があると感じていた。
 さあ、次はどこに遊びに――否、学びに行こうか。帰ったら、三ヶ月後の情報を仕入れなければ。
 鼻歌を歌いながらも考えを膨らませながら歩いていたその足が、止まる。
「少々よろしいですか」
 目の前から、年若い青年が歩いてくる。年の頃は葉月よりやや下だろうか。
 顔には穏やかな微笑みを浮かべているが、どこか淡白で、気味が悪かった。
「何でしょう?」
 それでも努めて笑顔を返す葉月。
 だが次の瞬間、その表情が驚愕のそれに変わる。

「――貴女の人生を、私にいただきたいのです」

 愛の告白めいたそれは、しかし、死の宣告に他ならない。
 いつの間にか、男は一人、また一人と同じ顔を増やしている。
 ちらと背後を一瞥したが、こちらも行く手を異形の女に遮られていた。
 葉月は魔導書を取り出したが――次の課外授業は中止かなと、つい苦笑した。

●先生の人生は渡しません!
「急でなんだけど。助けてほしい人がいるんだ」
 南天庵・琥珀(ナイトタイムドリーマー・f36445)が難しい顔で告げる。
「銀誓館学園の教師なんだ。とは言え、俺とはほとんど接点のない、高等部のなんだが。それでも、ナンバードに……いや、ナンバード化オブリビオンに殺されるのを、みすみす許してしまうのは、寝覚めが悪すぎる」
 ――ナンバード化オブリビオン。
 強大な力を得る代わりに胸元に死へのカウントダウンを刻まれたオブリビオン。
 彼らが存えるには、能力者を屠り、その命を喰らうしかない。
 今回狙われた銀誓館学園高等部の女性教師・榊原葉月は、能力者ではあるが争いを好まないゆえに戦闘能力が低い。そのため、標的とされたのだろう。
「榊原先生は、水族館で課外授業を行った帰路で殺される。だから、課外授業に同行して、さり気なく警戒にあたってほしい」
 と言うのも、ナンバード化オブリビオンは、地縛霊化したオブリビオンの群れを配下として従えている。琥珀の予知では葉月の退路を断つために呼び出されていたが、猟兵たちが護衛についているとわかると事前にけしかけてくる可能性が非常に高い。
 水族館で事を荒立てるのを避けるよう警戒しつつ、帰路で配下であるオブリビオンの群れを撃退。然る後に黒幕であるナンバード化オブリビオンを撃破。葉月と課外授業を守るのだ。
「配下のオブリビオンは猫娘と言って、リリス……ああ違うか、地縛霊化したオブリビオンか。どうもこの辺り、まだこんがらがるな」
 ゴーストの分類を細かく学んでいたらしい琥珀、オブリビオン化して分類が曖昧になったことにより、時々混乱するらしい。珍しくどこか気恥しげに咳払いひとつ。
「ともあれ、体術と敵対の意思を奪うことを得意とする相手だ。物理的な攻撃自体はそこまで広範囲には及ばないが、精神攻撃があるからな。連携してその辺りをフォローできると、戦いが楽になるだろうな」
 そして、肝心のナンバード化オブリビオンであるが。
「他の人型オブリビオンより遥かに人間に近いが、本質的には狂ったオブリビオンと変わらない、哲学的ゾンビとも評されるオブリビオンだ。自己強化と分裂による集団戦を仕掛けてくる。ただ……平静を装ってはいるが、内心かなり焦っているはずだ。ここで先生を殺せなければ、程なくして死んでしまうだろうから」
 きっと、カウントダウンが終わる瞬間は、そう遠くないのだ。
 だが、一人の人間の命を奪い、オブリビオンの命を存えさせることは、何としてでも阻止しなければならない。
「とは言え折角だから、課外授業の方も楽しんでほしいな。先生も喜んでくれると思う」
 しっかり楽しんで学びつつ、オブリビオンも撃退して、学園生活を守るのだ。
 よろしく頼むと、ようやく琥珀は少しだけ、微笑んだ。


絵琥れあ
 お世話になっております、絵琥れあと申します。
 新世界も気になりますが、一度やりたかったナンバード。
 ご縁がありましたら、是非お付き合いいただければ幸いです。

 流れと詳細は以下の通りになります。

 第1章:日常『学生の本分は勉強です!』
 第2章:集団戦『猫娘』
 第3章:ボス戦『スワンプマン』

 第1章では、榊原葉月(と、その生徒たち)に同行し、課外授業という名目で水族館を満喫していただければと思います。
 今回はイルカ、ペンギン、カワウソをピックアップさせていただきます。癒やしの空間を是非楽しんできてください。
 もちろん、周囲の警戒もお忘れなく!

 第2章では、ナンバード化オブリビオンによって差し向けられた『猫娘』の群れと戦っていただきます。
 基本的には葉月を優先的に狙いますが、猟兵を放置することに危機感を覚えた場合はその限りではないようです。
 また、前章で楽しみつつも周囲の警戒をしっかり行っていただけた場合、この戦闘が少し有利に働きます(全員にプレイングボーナス)。

 第3章では、ついにナンバード化オブリビオンとなった『スワンプマン』が自ら手を下さんとその姿を現します。
 努めて平静を装っていますが、やはり死への恐怖には抗えないのか、内心の焦燥はかなりのもののようです。
 ここを上手く突き、罠やトリックを仕掛ければ、勝利にぐっと近づくでしょう(対象者にプレイングボーナス)!

 葉月についてですが、銀誓舘学園高等部在籍の女性教師です。20代後半。
 おっとりしていますが、優しく皆のお姉さんのように接するため、生徒からは概ね好かれています。
 魔弾術士であり書道使いでもありますが、あくまで猟兵ではない能力者のため、自衛で手一杯でしょう。

 第1章開始前に、断章を執筆予定です。
 戦闘パートの地形などの追加情報も、断章での描写という形で公開させていただきます。
 断章公開後、プレイング受付開始日をタグにて告知させていただきますので、ご縁がありましたらどうぞよろしくお願いいたします。
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第1章 日常 『学生の本分は勉強です!』

POW   :    イルカのショーを見学する!

SPD   :    ペンギンの散歩についていく!

WIZ   :    カワウソと戯れる!

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●課外授業のスタートです!
「お待ちしておりました。猟兵の方ですね」
 既に話は聞いている、と葉月は言う。グリモア猟兵が先回りして知らせていたのだろうか。
「皆さんにご足労いただいて、巻き込むことになってしまって、心苦しい限りです。自力で対処できればよかったんですけど、こればかりは皆さんの力を借りるしかないみたいで……」
 綺麗に頭を下げる葉月。猟兵のひとりが顔を上げるよう促すと、彼女は苦笑した。
「お礼と言ってはなんですが、入場料は私の方で持ちますので……! 命に比べれば安いものですから!」
 努めて明るくガッツポーズ。猟兵たちにも心配をかけたくないようだ。
 ともあれ、任務遂行のためにもここはお言葉に甘えて。
「あくまで授業という形ではありますけれど、生徒たちの座学の息抜きになればと始めたことですから。皆さんも何かと大変なことも多いでしょうし、この時間がささやかな命の洗濯になれば嬉しいです」
 そうして笑顔を見せた葉月は、集まってきた生徒たちにも促され、課外授業のスタートを宣言した。
新名・有花
【WIZ】
榊原先生の課外授業の話は
同級生から聞いたことがあるよ。
今まで参加したことはなかったけど、
護衛も兼ねて参加させてもらおうかな。
背中にリュックを背負い、ミィは中に。
リュックに小さく空けた穴から周囲を警戒してもらう。
おかしなとこがあったら小さく歌って報告しておくれね?
……あたしだって並んだり抱えたりして回りたいけど、
流石に他の生徒をぎょっとさせちまうだろ?
デートはまた今度にしようね。

ふふ、カワウソ可愛い……ちっちゃい指がやわらかいねぇ。
先生、自分で払うから餌やりをしても?
よしよし、たくさん食べて大きくおなり。
……懐かしい。ミィもよくこう言ってご飯くれたっけ。



●かわいい子には食べさせよ!
 新名・有花(白愛づる花嫁・f35676)は銀誓館学園の高等部に籍を置く少女だ。
 葉月の課外授業の話も、同級生から聞いていた。実際に参加するのは、これが初めてだが。
「おかしなとこがあったら小さく歌って報告しておくれね?」
 背負ったリュックの隙間から、ちらりと『ミィ』が目の部分だけその姿を覗かせる。
 彼は、今でこそ歌う骸骨の姿をしているが、かつて有花を保護し、育ててくれた青年だ。今の自分があるのはひとえに彼のお陰だと、有花は常々実感している。
(「……あたしだって並んだり抱えたりして回りたいけど」)
 人の目もあることだし、それはまた今度。
 今日はあくまで、護衛も兼ねてということで。
「デートはまた今度にしようね」
 囁くと、リュックの中から『La♪』と短く歌声がする。
 いつか、オブリビオンに邪魔されずにゆっくりと。
 そのためにも、まずは今日を乗り切らねば。

 ――とは言え、警戒をしっかりしていたお陰か今のところは騒ぎが起きる気配もなさそうなので。
「ふふ、カワウソ可愛い……ちっちゃい指がやわらかいねぇ」
 握手ができるそうなので、させてもらった。
 ふわふわのいのちが懸命に有花の指をにぎにぎしている。かわいい。
「先生、自分で払うから餌やりをしても?」
「ええ、大丈夫ですよ。何事も経験ですからね!」
 葉月から許可が出たので、遠慮なく。
 購入した餌をそっと目の前の穴に差し出してやれば、懸命に手を伸ばして掴み。
 懸命に食べる姿に思わずほっこり。
「よしよし、たくさん食べて大きくおなり」
 その姿に、ふと、かつての自分とミィの日常を思い出した。
(「……懐かしい。ミィもよくこう言ってご飯くれたっけ」)
 リュックから、また短く、弾むような声が聴こえた気がした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シホ・エーデルワイス(サポート)
たまにはゆっくりするのも良いですね

人柄
物静かで礼儀正しく儚げな雰囲気
姿や形にとらわれず誰にも分け隔てなく接しようとします

印象的な蒼き瞳

ほとんどの思い出が無く
肉親や帰る故郷も無いため
常に世界を跨いで旅をしています
その為
休養する機会は余り無いです


心情
基本、粗なく振舞いますが
好きな物が絡むと年相応に興味を持ちます


好きな事
<動物と話す>で会話をしたり歌を歌ったりして交流します
空を飛ぶのも好きです


探し物
常に自身の過去や異世界同位体の手掛りを探しています
異世界同位体の設定は捏造歓迎です


基本行動
引っ込み思案で主体的に行動するより
静かに楽しんだりくつろいだりするか
仲間に合わせて楽しい一時となる様に気配りします



●楽しむこともお仕事です!
 シホ・エーデルワイス(捧げるもの・f03442)には、肉親や帰る故郷がない。
 そのため、当初と比べれば増えているものの、まだ思い出と呼べるものもあまりなく、常に世界を巡り戦い多忙な日々を送っている身で休息の機会も少ない。
 今日も護衛任務なのだが、場所は生き物の溢れる蒼の世界――水族館。
 そして今、彼女の目の前にいるのは。
「……」
 人懐こく見上げてくるカワウソたちを前に、シホの蒼い瞳が静かにきらきらと輝く。
 その様子を見た葉月が微笑ましげにこちらを見ていることに気づき、思わず咳払いひとつ。
「大変失礼いたしました……」
「いえいえ。寧ろ楽しんでいただけて何よりです」
 そう言って、嬉しそうに巡回に戻る葉月を見送り。
 カワウソたちの前に少し視線を落としてから、周囲の迷惑にならないように、囁く程度の声でカワウソたちに語りかける。
「歌は好きですか?」
 問いかければ、キュウ! と元気な返事がたくさん。
 で、あればと、短く小さく、けれど優しく歌ってみせる。
 キュウキュウ、と拍手に見えなくもない動きをする者、聴き入って寝入ってしまう者など反応は様々だったが、シホの歌は好評だったようだ。
 愛らしい姿に、シホの心も温かくなった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 集団戦 『猫女』

POW   :    キャットスクラッチ
【猫の爪】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD   :    キャットクロー・ナインデス
自身の【猫の瞳】が輝く間、【猫爪でのひっかき攻撃】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ   :    キャットミュージカル
【猫っぽい歌と踊り】を披露した指定の全対象に【敵対したくないという】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。

イラスト:つむら

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●少々おいたが過ぎますよ!
 課外授業も無事に終わり、生徒たちに別れを告げて。
 猟兵たちは本格的に葉月の護衛を始める。
「普段はあまり通らないんですが、近道があるんです」
 そこは都会には珍しい、シャッター通り。
 昼でも薄暗いその通りは、人気がなく通りすがりの者を巻き込む心配はほとんどない。
 だから、進む内に猟兵のひとりがふと気づいた。
 後方から、複数の気配を感じる。明らかに、友好的ではない気配が。
 その気配こそ、葉月を狙う者の尖兵であることは、最早疑いようがない。
 幸い、警戒の甲斐あってか挟撃してくる様子はなさそうだ。猟兵たちは葉月を連れ、よりシャッター通りの奥へと入り込んでゆく。
 頃合いを見計らって振り返れば――愛らしい容貌とは裏腹に、瞳に残忍な光を宿した少女たちの姿が、そこにあった。
「……見た目は……学園の記録にある猫娘にしか見えませんが。でも、あなたたちにしか倒せないのですね」
 葉月に頷き、改めて猟兵たちは周囲を見渡す。
 薄暗いが、暗闇というほどではなく、視界ははっきりしている。
 足場となる道路は崩れている箇所もなく、人の手が入っていない割には綺麗に保たれている。
 猟兵たちにとっても、オブリビオンたちにとっても、お互いの行動を阻害する要素はないようだ。葉月を守りながらではあるが、真っ向勝負になるだろう。
 葉月を見れば、静かに頷いた。必要とあらば、囮も引き受けてくれそうだ。但し彼女が倒されてしまっては本末転倒、頼むのであれば作戦が大事になるだろう。
 フーッ、と猫の威嚇のような声を、人ならざる少女たちが上げている。
 ――いよいよ、戦いが始まる。
新名・有花
アドリブ連携歓迎
「さて、敵さんのおでましだね。
行くよ、イグニッション!」
イグニッションカードを使い
右腕へ赤手を瞬時に装備。
ミィもリュックから出てきて傍らに浮かび上がる。
 猫女の「キャットクロー・ナインデス(SPD)」に対し、
ユーベルコード「痺れ蜘蛛糸鬼絡み」を使って
相手の動きを妨げたところに、赤手で殴りかかる。
商店街だから火は出さないようにしようかね。
先生に攻撃が向かないように気をつけるよ。

 目的は、いち早く敵の群れを殲滅すること。
 その為なら、ある程度のダメージはやむを得ないかね。



●攻撃は最大の防御です!
「さて、敵さんのおでましだね」
 猟兵でもあり、銀誓館学園の能力者でもある新名・有花(白愛づる花嫁・f35676)。
 掲げるのは一枚のカード。戦うべきその時まで、能力者が武装を封じるもの。
 そしてまさに今が――その時!
「――行くよ、イグニッション!」
 イグニッションカードから、光が溢れる。
 右腕には紅蓮の鎧が如く赤手が現れ、その腕を護ると同時に敵を切り裂く武器となる。いつの間にかミィもリュックから飛び出し、有花の傍で見守るように浮かんだ。
 もう一人の『能力者』と認識した猫娘たちの一部は警戒する素振りを見せるも、他の一体がやはり当初の目的は葉月と言わんばかりにその横を突破しようとする!
「させないよ!」
 振り上げようとした猫の爪を、その腕を、赤手から伸びた蜘蛛糸が絡め取る。
 ぎりりと縛り上げ、そのまま懐へと引きずり込み、蜘蛛の爪で一薙ぎすれば、金の視線が交差した。
 有花の瞳に映った金は、驚愕に見開かれていた。
『Lu……!』
 その時、気をつけろ、と言わんばかりに唸るように歌うミィの声。
 今度は四の瞳が、明確に有花を向き爛々と輝いている!
(「元々、ある程度のダメージは覚悟してる……!」)
 迅速な撃破を。多少の無茶は通してでも、葉月に手出しはさせない。
 赤手の大袖部分で片一方の攻撃を受け流しつつ、片一方の動きを封じて仕留める。
 死角からの攻撃は、ミィが歌で知らせてくれる。が、如何せん数が多い。
 続く攻撃は三方向から――どうしても、一方向防ぎきれない!
「――あなたたちの狙いは私でしょう!」
 凛とした声が、猫娘たちの動きを一瞬止めた。
 それはまるで、教師が生徒を叱責するかのような。
「先生!」
 考えるよりも早く、有花の身体は動いていた。
 まずは捕えた一体を仕留め、返す刀ならぬ爪で赤手の向こうのもう一体を薙ぎ払う。そのまま、標的が揺らいだ残る一体の隙をついて、その胴を貫く!
「先生、なんて無茶を……!」
「ごめんなさい……」
 だが、生徒として護りたいと思ってもらえたことは、嬉しかったから。
「ありがとう。でもほんとに大丈夫だからさ、信じて、見守ってて?」
「はい。後はお願いしますね」
 さて、口にした以上は成し遂げなければ。
 決意を新たに、有花は残る敵へと向き直った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

青原・理仁(サポート)
人間
年齢 17歳 男
黒い瞳 金髪
口調 男性的(俺、呼び捨て、だ、だぜ、だな、だよな?)

性格面:
やさぐれ、ぶっきらぼう
積極的な人助けはしないが、見捨てきれずに手を貸してしまう

戦闘:
武器は使わず、殴る・蹴る・投げるなど、技能「グラップル」「怪力」を生かしつつ徒手空拳で戦う
構え方は古武術風

雷属性への適性があり、魔力やら気やらを雷撃に変換し、放出したり徒手空拳の際に纏わせたりします



●人助けなんて柄じゃない! ですが、
(「……あーもう……!」)
 青原・理仁(青天の雷霆・f03611)は聖者である。
 だが、ごく普通の過程で多少の武術を嗜んで生きてきた彼は、聖者など自分の柄ではない! と家を飛び出し――現在絶賛家出中、もとい根無し草生活中の身だ。
 そんな彼は本来、率先して人を守ったり助けたりするタイプではない。
 だが、自分より幼いグリモア猟兵の焦燥具合と、それがどうにも放っておくには寝覚めが悪くて会ってみた女性教師の危うさが、理仁の後ろ髪を引いてきて。
 やるよやればいいんだろ! といった勢いでこの場に残っているのだ。
 自分は聖者などではない。聖人君子のように、見る者全てを救いたいなんて考えたこともない。
 それでも、危機に陥っている者を見捨て切れない。そんな自分に嫌気は差すけれど、やると決めたことはやり通す。
 短く頭を掻いて――構える。
 その身から、金の光が迸る。覇気が稲妻となり、理仁の身体が帯電しているのだ。
「邪魔んなる。下がってな」
「はっ、はい!」
 ぶっきらぼうに、葉月へと吐き捨てる。
 だが、それも理仁なりに葉月の身を案じてのことだ。葉月は嫌な顔ひとつせず、理仁の動きを阻害しない範囲まで距離を取る。
 それを視線だけで見届けて――理仁は地を蹴った。
 葉月へ向かおうとする敵の一体に肉薄。その脚を払い、倒れ込む腹部に雷を纏った拳を叩き込む!
 吹き飛ばされた猫娘の華奢な身体が道に転がる。それを見た他の一体はきっと思った。この男、容赦がない――と。
 すると突如、猫娘たちはにゃあにゃあと歌い出した。踊り出す者もいる。
「……っ!?」
 理仁の頭の中がぐらりと掻き回される錯覚を覚える。敵対の意思を削ごうとしているのだ。
 愛らしい歌声とパフォーマンスは、見るものが見れば更なる追撃を躊躇うほどのものだ。だが。
 ここで手を止めれば――助けると決めた葉月が、死ぬ。
「……俺、に」
 ああ、こんなの柄じゃないなんて思うけれど。

「――指図、するんじゃねえ!!」

 誘惑を拒絶するように、全身から放出される雷の気。
 光の矢が猫娘たちを灼いてゆく。それが、理仁の答えだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

エリカ・グランドール(サポート)
 サイボーグのシャーマン×電脳魔術士のエリカ・グランドールです。
 戦闘はあまり得意ではありませんが、周囲の状況を観察して違和感のある箇所を発見したり、敵の弱点を推測して隙を作り出すといった行動で皆さんをサポートしたいです。

※セリフ例
「今、何か光りました。ここに何かあるのでは……」
「あの敵の動きには規則性があるわ。うまく狙う事が出来れば……」

 冷静沈着と言う程ではありませんが、ビックリする事はあまりありません。
 あと、笑いのツボが良くわかっておらず「今の、どこがおもしろかったのでしょうか?」と、真面目に聞き返す事もあるようです。

 ユーベルコードは、エレクトロレギオンを好んで使います。


深影・アシッドドロップ(サポート)
 貴種ヴァンパイアの霊媒士×妖剣士、12歳の女です。
 普段の口調は「とても冷めてる(わし、呼び捨て、言い捨て)
家族には 冷たい(わし、貴様、言い捨て)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!



●クール×クールに参りましょう!
 敵の数が多く、少しでも多くの人手が欲しい。
 協力要請に応じて呼び出されたのは、二人の少女。
 深影・アシッドドロップ(影に立つ狂信者・f36021)と、エリカ・グランドール(サイボーグのシャーマン・f02103)だった。
 共に冷静沈着な性質で、感情に訴えかける攻撃にも対処しやすい。
 ゆえに、目の前で繰り広げられる猫娘たちの精神に働きかける歌劇にも、相性がよかった。
「歌って踊っている間は、こちらに物理的なダメージを与えてくることはできないようね。今なら……」
「好機か……」
 的確に分析するエリカの隣、おもむろに、それでいて隙のない動きでアシッドドロップは立ち上がる。
 構えるのは、深紅の刀身を鈍く輝かせた名刀、一振り。
 雑念などなかった。ただ、道を阻む敵を斬るのみ。
 駆け出すアシッドドロップの頭の中に、断末魔が響く。しかしそれは、大切な人のために霊媒士の力を行使するに至った彼女にとって、寧ろ己を鼓舞するもの。
 静かに、力が漲る。瞳が赤く煌めいた。
 同時に、アシッドドロップの放った紅の一閃が、歌の主を一瞬の内に捉える!
 無防備なまま一撃を受けた身体はよろめき、たたらを踏む。そこから立て直すことはできず、力なく仰向けに倒れて消えた。
 誘惑のパフォーマンスが効いていない。それを悟った猫娘たちは急ぎ、臨戦態勢を整えようとするも。
「深影さん、あなたの右から二体目! 反応が遅れています」
「心得た……!」
 後方から戦況の分析を続けるエリカのフォローによって、アシッドドロップが脆い点を付き崩してゆく。
 エリカ自身も、小型の戦闘用機械兵器を複数体召喚。フリーになった敵に反撃の機会すら与えぬよう、威嚇射撃で足止めする。
 ひとつひとつはただの一度でも反撃されれば、力を失い消え失せてしまう程度の耐久力しかない。しかし、エリカは敵の動きをよく観察し、それに合わせて機械兵器たちを動かすことにより、少しでも長く援護を続けることができていた。
 いてもたってもいられず、標的を変えてエリカに向かおうとした猫娘は、アシッドドロップに背を向ける形になる。それを彼女がみすみす見逃すわけもなく。
 瞬時に引き抜いたガンナイフから放たれる、霊力を纏った弾丸は、その背を倒れるまで執拗に追い、生者を決して逃しはしない怨霊が如き雑霊弾。
 結局、アシッドドロップにも、エリカにも満足に攻撃すらできた者はおらず。
 二人の少女の噛み合った戦術に、数のみで勝ることは敵わなかった。
「お疲れ様。怪我はない?」
「大丈夫だ……」
 先程まで歌劇が繰り広げられていた場所に、アシッドドロップが納刀しつつ背を向ければ、その身の無事を確認して静かに頷くエリカの姿が正面にある。
 二人が担当した敵は、確かに全て討ち果たした。その証拠に、今この瞬間に二人を襲おうとする者の姿はない。別の場所で護られているらしい葉月の身も、幸いにして無事のようだ。
 しかし、まだ他の猟兵に任された敵が残っている。
「皆、無事だといいのだけれど……」
「……」
 戦いは、まだ続く。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

シホ・エーデルワイス
アドリブ&連携歓迎

可能であれば襲撃前に葉月さんの意向を聞いておきたいです。

一番安全なのは『聖鞄』に匿う事ですが、
もし私達と一緒に肩を並べて戦いたければ、
【献装】で守りながら戦えるようにする事もできます。

葉月さんはこの戦い、どう関わりたいですか?



参戦を望むなら、
【献装】による憑依で強化し鼓舞する。


聖鞄への避難か見届けるなら、
葉月さんを助けたい想いで【盾娘】による強化で庇いながら、
聖銃で幻惑属性攻撃の誘導弾で目潰し。


敵の攻撃は、第六感と聞き耳による読心術で敵の動きを見切り、
距離感を狂わせる残像のオーラ結界で防御。


私、戦って敵を倒すより守る方が得意な方だと思います。

さて、黒幕のお出ましかしら?



●守るために強くなるのです!
「葉月さんはこの戦い、どう関わりたいですか?」
「えっ?」
 シホ・エーデルワイス(捧げるもの・f03442)の問いかけに、葉月はきょとんとした顔を向けた。
 そんな彼女に、シホはトランクを軽く掲げて見せた。中には人を匿えるだけの空間があり、この中にいればひとまずは安全だと言う。
 だが、葉月が共に戦いたい、或いは見届けたいと言うのであれば、支援も強力も惜しまない、ともシホは続けた。
 葉月の、シホたち猟兵を自分の問題に巻き込んでしまっていると考える歯痒さも、けれど足手纏いにもなりたくないという葛藤も、接して感じ取れたから。
 答えを待つ。葉月は少し考えて、口を開いた。
「……私は、隠れています。後のことは、よろしくお願いします」
 深々と、頭を下げる。
 その声音には悔しさが滲んでいて、それを見抜けないシホではなかったけれど、葉月自身がシホたちが万全の状態で戦えるように、前線に出ないことを選んだのだ。
 シホはその意志を汲んで、葉月をトランク――『聖鞄』の中へと誘う。葉月の身体は幻のように消え失せた。
 標的を見失った猫娘たちは、しかしシホが何かしたのだと悟ったのだろう。シホごと聖鞄を引き裂こうと、数体が一斉に飛びかかるも。
「大丈夫……私これでも結構丈夫なのですよ」
 敢えてシホは聖鞄を庇い、その攻撃を一度受けた。
 託してくれた葉月を、守る。その一心で。
 その心こそが、シホに力を与えた。何枚もの爪が食い込んだはずの両腕は――ほぼ無傷。
 猫娘たちが体勢を整える前に、至近距離から二丁の聖銃による目潰しを。幻惑の力がかけられたそれは、敵の動きを確実に鈍らせる。
 後続の攻撃にも的確に対処。残像により距離感を狂わせるオーラの結界で、阻む。
(「聴覚と第六感を研ぎ澄ませれば、敵の動きも、その考えさえも読み取ることは難しくない……」)
 回避とカウンターで、着実に相手側の手数を減らしてゆく。聖鞄の中でシホたち猟兵の無事を祈っているであろう、葉月のことも護りながら。
 これが、シホの戦い方なのだ。
(「私、戦って敵を倒すより守る方が得意なんだと思います」)
 そして、ふと思う。
(「葉月さん、能力者としてのあなたも――」)
 だがその時、思考を邪魔するかのように、耳慣れぬ靴音が響く。
「――さて、黒幕のお出ましかしら?」

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『スワンプマン』

POW   :    抗体覚醒
【生命根絶の使命】に覚醒して【光と闇を放つ異形】に変身し、戦闘能力が爆発的に増大する。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
SPD   :    スワンプマンは誰だ?
自身の【血液】を代償に、1〜12体の【スワンプマン】を召喚する。戦闘力は高いが、召喚数に応じた量の代償が必要。
WIZ   :    ゾンビボール
全身を【人間に擬態していた弱いスワンプマンの群れ】で覆い、自身が敵から受けた【攻撃】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。

イラスト:クラコ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●これが最後の戦いです!
「――失礼。この辺りで黒い髪にスーツの女性を見かけませんでしたか」
 柔らかく、しかし酷く冷たい声音で猟兵たちに問いかける者がいる。痩身の、年若い青年の姿をした、『何か』。
 奴こそが葉月を狙う、ナンバード化オブリビオン。
 沼人とも呼ばれる、哲学より生まれし怪物――スワンプマン。
 人の性質を持ち、しかしその根底にある本質は、人とは明確に異なるモノ。その存在は、人を殺して存えることに、一切の葛藤も、躊躇もない。
「名前は……榊原、と言うのですが」
 続く言葉は疑問の体だが、葉月は間違いなくここにいる。そう、確信して問いかけているようだった。
 答えは、猟兵たちの背後から返ってきた。
「……ここにいますよ」
 隠れていたはずの葉月が、その姿を見せていた。スワンプマンの目が細められる。
 標的とされている自分が身を隠し続けていれば、敵が予期せぬ行動を取る可能性がある。葉月はそう判断したのだろう。
「ああ、ありがとうございます。探す手間が省けました。では、死んでいただきます。私のために」
 スワンプマンの腰から無造作に提げられた刀が抜かれ、鈍色がきらりと光る。
 一瞬の内に葉月を斬り伏せようとしたその刃は、猟兵たちによって阻まれた。その事実にスワンプマンは表情を崩さず、しかし確かに強く舌打ちした。刀を持たぬ片手は、胸元を押さえるように添えられる。
 ――やはり、焦っているのか。
 ならばここで、骸の海へと送り還すまで!
エリカ・グランドール(サポート)
 サイボーグのシャーマン×電脳魔術士のエリカ・グランドールです。
 戦闘はあまり得意ではありませんが、周囲の状況を観察して違和感のある箇所を発見したり、敵の弱点を推測して隙を作り出すといった行動で皆さんをサポートしたいです。

※セリフ例
「今、何か光りました。ここに何かあるのでは……」
「あの敵の動きには規則性があるわ。うまく狙う事が出来れば……」

 冷静沈着と言う程ではありませんが、ビックリする事はあまりありません。
 あと、笑いのツボが良くわかっておらず「今の、どこがおもしろかったのでしょうか?」と、真面目に聞き返す事もあるようです。

 ユーベルコードは、エレクトロレギオンを好んで使います。


蒼月・暦(サポート)
 デッドマンの闇医者×グールドライバー、女の子です。

 普段の口調は「無邪気(私、アナタ、なの、よ、なのね、なのよね?)」
 嘘をつく時は「分かりやすい(ワタシ、アナタ、です、ます、でしょう、でしょうか?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。

無邪気で明るい性格をしていて、一般人や他猟兵に対しても友好的。
可愛い動物とか、珍しい植物が好き。
戦闘では、改造ナノブレード(医療ノコギリ)を使う事が多い。

 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!



●ピンチはチャンスです!
 スワンプマンが、自身の手首にざくりと刃を突き立てる。
 ぼたぼたぼた、と地に滴る赤――それが、沼の泥のようにどろりと粘度を持ちながら、蠢き、起き上がり、七体ほどの同じ顔の男が生み出された。
 更にその内の三体ほどが血を流すスワンプマン本体と融合し、外部からの干渉を自身の力へと還元する血泥の鎧を纏う。
 実質再びの集団戦。しかも相手は、先程の猫娘とは比べ物にならない力を有した存在だ。その上、本体にも迂闊に手出ししにくい状況を作られてしまった。
 だが、蒼月・暦(デッドマンの闇医者・f27221)は逆に、その大きな青玻璃の瞳をきらきらと輝かせていた。
「これは……! 勉強のし甲斐がありそう!」
 闇医者として、日々勉強中の暦。分身を生み出す行為も、彼女にとっては解体可能な存在が増えたに過ぎない。
 幼さゆえの無邪気な向学心は時に頼もしく、同時に危うい。
「無理はしないようにね」
 エリカ・グランドール(サイボーグのシャーマン・f02103)が冷静に諭すと、はーい、と応える可愛らしい返事。
 その間にも、エリカは動揺することなく敵を注視し、観察していた。
(「あくまで強化と回復の範囲は、直接分身を身に纏った本体だけ。なら、最適解はひとつしかない」)
 本体を先に叩いて、強化された攻撃を受けながら分身と戦うよりも、先に。
「分身を先に叩きましょう。サポートします」
「おっけー!」
 頷くや否や、暦の腕が変形した。
 いや、違う。装着されたノコギリに隠れて、本来の腕が見えなくなっただけだ。
「この改造された肉体に、恐れ戦くが良いよ」
 ふふん、と大胆不敵に笑い、愛らしい姿に不釣り合いなノコギリを提げた少女は、しかし危なげなく分身の一体へと肉薄し、その刃を振り上げる!
 敵も実力者、鍔迫り合いになり、火花が散る――が、横合いからもう片方の腕のノコギリで脇腹を薙ぎ、肉を抉った。
「やっぱり胴からすぱーん、とはなかなか上手くいかないね」
 暦は不完全燃焼という顔をしているが、無防備な腹に強烈な一撃を見舞われた分身は、そのまま消滅。
 その背後に、敵の本体からの凶刃が迫る――が、エリカの召喚した機械兵器が割って入った。
 攻撃はせず、ただ身を呈して攻撃を肩代わりする。耐えられるのは一撃が限界だが、それを補って余りある数がある!
「誰にも、手出しはさせません」
「ちっ……」
 スワンプマンの表情が一瞬、微かに、けれど確かに、歪んだ。
「まだまだいくよっ」
 暦は既に、次の分身の解体に取り掛かっている。
 エリカはそんな彼女を、分身の殲滅まで守るべく、機械兵器たちで防御を固め、サポートする。もちろん、自身や葉月の周囲にも、抜かりなく護衛を配置していた。
 そして、暦が最後の分身を倒した瞬間。
「ガードは私が剥がします。それから――」
「私が追撃だね? 任せて!」
 エリカの差し向けた機械兵器の一体が、本体へと飛来。敢えて威力を抑えた攻撃を浴びせることで、強化と回復を最小限に留め。
「――今です!」
「解体、入りまーす! なんてねっ」
 ようやく、暦の振るったノコギリが分身たちの核たる存在を、刻みにかかった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

青原・理仁(サポート)
人間
年齢 17歳 男
黒い瞳 金髪
口調 男性的(俺、呼び捨て、だ、だぜ、だな、だよな?)

性格面:
やさぐれ、ぶっきらぼう
積極的な人助けはしないが、見捨てきれずに手を貸してしまう

戦闘:
武器は使わず、殴る・蹴る・投げるなど、技能「グラップル」「怪力」を生かしつつ徒手空拳で戦う
構え方は古武術風

雷属性への適性があり、魔力やら気やらを雷撃に変換し、放出したり徒手空拳の際に纏わせたりします



●やると決めたら最後まで!
「……こいつがこんな面倒事起こした元凶か」
 泥の鎧を纏う男を睨めつけながら、青原・理仁(青天の雷霆・f03611)は再び短く頭を掻いた。
 奴の死期が近いだとか、標的を殺せば生き存えることができるだとか、そんなことはこの際どうでもいいのだ、理仁にとっては。
 ただ、ここで奴を仕留めさえすれば、ひとまず葉月は助かる。そうなればしばらくは、彼女や彼女を救ってほしいと懇願してきたグリモア猟兵の存在に引きずられることもなくなる。
 ここで、終わらせるのだ。
「辿り着かせるかよ」
 ぼそり、呟く。
 再び、敵が葉月に肉薄する前に――悪意を閉じ込める、金色の迷宮を展開する!
 立ちはだかる壁は注視すれば、雷電の塊であることが解るものだ。
 理解する――と同時に、雷の槍が泥の鎧を貫き、砕く!
「これは……!」
 敵もさる者、この迷宮の仕組みをすぐに看破した。
 迷宮の主である理仁は、ここにはいない。だが、展開された雷の陣は、迷い込んだ者を外に出さぬよう、常に攻撃を続けるのだ。
 立ち止まっていれば、標的に辿り着かぬ内に深手を負う。そう、判断してからは早かった。
 一刻も早く、この迷宮を抜ける。出口は、恐らく理仁のいた場所にあるはずだと。
 雷撃を浴び、時には躱しながらも出口に辿り着くが――当然、そこには理仁が待ち構えている!
「言っただろ、辿り着かせるかってよ!」
 渾身の、速く重い拳の一撃を、その細い体躯を折らんばかりに叩き込む!
 かは、と空気を吐いて後退するスワンプマン。
 そう、この迷宮が形を成している内は、理仁を突破しなければ、外に出ることは叶わない。
「小癪な真似を……!」
「戦い苦手な女一人に大勢ぞろぞろ引き連れて、死ぬまで逃げられねぇようにしようとした奴の言えたことかよ」
 理仁は聖人君子などではない。少なくとも彼自身は、そう思っている。
 だが、弱い者いじめのような真似を見過ごせないのは、何も慈悲深い者だけではない!
「逃がすわけねぇだろ」
 もう一撃。今度は、その痩身を吹き飛ばさん勢いで。
 確実に、止める。抜かせるわけにはいかない!

成功 🔵​🔵​🔴​

アス・ブリューゲルト(サポート)
「手が足りないなら、力を貸すぞ……」
いつもクールに、事件に参加する流れになります。
戦いや判定では、POWメインで、状況に応じてSPDの方がクリアしやすいと判断したら、そちらを使用します。
「隙を見せるとは……そこだ!」
UCも状況によって、使いやすいものを使う形です。
主に銃撃UCやヴァリアブル~を使う雰囲気です。剣術は相手が幽霊っぽい相手に使います。
他人の事は気にしない素振りを見せますが、基本、不器用なので、どう接したらいいのかわからない感じです。
ですが、合せるところは合せたり、守ってあげたりしています。
特に女性は家族の事もあり、守ってあげたい意欲が高いです。
※アドリブ・絡み大歓迎、18禁NG。



●言葉よりも行動です!
(「……ふむ」)
 アス・ブリューゲルト(蒼銀の騎士・f13168)は敵の攻撃を防ぎつつ、背後の葉月を一瞥した。
 年は自分より上らしいと聞いている。ふと、生き別れた姉のことを思い出した。
 彼女はどうしているだろうか。妹と共に、無事にどこかで生きていてほしい。辛い目になど、遭っていてほしくない。
 だからだろうか。何としてでも守り抜かねば、と思う。姉や妹に年頃の近い女性が悲惨な目に遭うことは、何としてでも阻止したかった。
 だが、彼は多くを語らない。
 代わりに、行動で示すのみ。
 両手に宇宙の青藍の色を携えて。二丁の熱線銃は、使い込まれただけアスの手によく馴染んだ代物だ。
 ユーベルコードの恩恵で強化された、相棒とも呼べるそれを手に、増え続ける同じ顔を的確に撃ち抜いた。
 分身を増やし続ける敵の本体、その手首からはおびただしい量の血が溢れている。
(「向こうも必死、というわけか。だが、抜かせるわけには――、!」)
 蒼の弾を逃れた分身の一体が、再び葉月へと迫っている!
 葉月は咄嗟に身構えているが、力の差がありすぎる。到底防ぎきれるものではない!
「く――」
 断りを入れる暇はなかった。
 アスは小柄な葉月の上半身を、屈ませるように背中から押し込む。その上に守るようにして覆い被さると、迫る影のその額に、零距離からの一撃を見舞う!
 パァン、と甲高い破裂音。額に開いた風穴から、ひび割れるようにして泥の身体が消えてゆく。
 安堵に溜息ひとつ吐き――アスは、葉月の存在を思い出した。
「……すまない」
「あ、いえいえ! ありがとうございます!」
 葉月は気分を害した様子もなく、アスの意図も確かに理解していた。そのことに再びアスは安堵する。
 だが、戦いはまだ終わっていない。
「……俺を抜かねば、目的は果たせぬと思え」
 短く言い放ち、その銃口で討ち果たすべき敵の姿を捉える。
 これ以上の言葉はいらない。ただ、守ると決めたものを、最後まで守り抜くだけだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

新名・有花
アドリブ連携歓迎

榊原先生を庇うような立ち位置に。
「あんたの、一度終わった命のために、
榊原先生を殺させやしないよ」

人の命を喰らいかねない種(蜘蛛童)だったけれど、
死した運命を捻じ曲げて還ってきた男と居るけれど、
オブリビオンに人を殺させるわけにはいかない。
それが人(ミィ)に愛され、銀誓館で学ぶ、あたしの矜持だ。

「消えて、無くなれっ!」
増えたスワンプマンに向け、白燐蟲の群れを解き放つ。
焦っているところに視界を奪われちゃ、剣の動きも
雑になるだろう。ましてや運気も奪っている。
相手は不幸にも狙った相手に攻撃を当てられず、
あたしが振るった赤手は幸運にも蟲には当たらず
相手だけを傷付ける、となってほしいね。


シホ・エーデルワイス
アドリブ&連携歓迎

葉月さんの意思を尊重しますが
できれば『聖鞄』へ避難させ
敵に

彼女の命が欲しければ私を倒してみなさい

と挑発し引きつける


避難しないなら
身を盾にオーラ防御で葉月さんを庇いながら
残像を伴わせた【華霞】の花弁をフェイントで舞わせ目潰し属性攻撃


スワンプマン…
元の人は既に死んで
でも
新しく生まれた方は社会で変わりなく気付かれず生活…

私も一度死に異世界の私達から知識を受け継ぎ蘇ったけど
志に限って言えば
前世の私と今の私は同じシホと言えるかしら?

違うかな
そもそも比較のしようがないし
今の私の志はコピーというより
継承したものだと思うから


戦後
葉月さんに課外授業のお礼を伝える

カワウソさん達かわいかったです



●私たちが守ります!
「あんたの、一度終わった命のために、榊原先生を殺させやしないよ」
「彼女の命が欲しければ、私を倒してみなさい」
 新名・有花(白愛づる花嫁・f35676)とシホ・エーデルワイス(捧げるもの・f03442)。可憐な女性である彼女たちは今、凛として自らの武器を手に、人を、世界を脅かす脅威をまっすぐに見据えていた。
 彼女たちの背後には、トランクがひとつ。だが、この中には彼女たちが守ると決めた、葉月が皆の生還を信じて待っている。
 渡すわけには――殺させるわけには、いかない。
「戯言を……」
 既に他の猟兵たちの攻撃を受け、満身創痍の身体を抱えて、今こそスワンプマンは芯から忌々しげに、その表情を歪めている。
 スワンプマン――沼男、沼人。
 死した人間と全く同じ身体、人格、記憶を持って沼の泥から生まれた存在は、果たして同一人物たり得るか。
 思考実験から生まれた怪物が、今まさに、現実となって現れている。
(「あたしは蜘蛛童。人の命を喰らいかねない種だったけれど、死した運命を捻じ曲げて還ってきた男と居るけれど――」)
(「志に限って言えば、前世の私と今の私は同じシホと言えるかしら?」)
 ミィと――御井と出会えていなければ、自分もまた、怪物と呼ばれていたかも知れない有花も。
 一度死に、異世界の自分たちから知識を受け継ぎ蘇った存在であるシホも。
 思うところはある――けれど、それ以上に確かなことがある。
(「温かい想い出があるから、今こうしてここにいられる。そのきっかけを作ってくれたミィが守ろうとしたものを、あたしも守りたい」)
(「違うかな。そもそも比較のしようがないし……今の私の志はコピーというより、継承したものだと思うから」)
 確固たる意思があるから。
 迷いなど、あるわけがなかった。
「オブリビオンに人を殺させるわけにはいかない。それが人に――ミィに愛され、銀誓館で学ぶ、あたしの矜持だ」
「私は私の志を、貫かせていただきます。あなたには誰も殺させない。私も、彼女も――葉月さんも」
「ああ、ああ、煩わしい……! 揃いも揃って私の邪魔を……!」
 苛立っている。
 罵詈雑言を吐きながらも血を流し、分身を生み出し、泥を纏おうとするが、数も厚みも明らかに減っている。
 ゆえに、目の前の敵は今、苛立ちを有花やシホにぶつけることと、葉月を殺すこと、どちらにも思考を割かれて、冷静な判断ができずにいる。
 ――今が、好機だ!
「消えて、無くなれっ!」
「!」
 本体も分身も全て巻き込んで、有花の内に巣食った白燐蟲たちが、煌めきながら纏わりつく。
「く……!」
 視界を奪われたスワンプマンたちは、無闇矢鱈に剣を振り回すも。
「咲き誇って、私のエーデルワイス! 穢れに負けぬほどに清く――!」
 残像を伴い動くシホが、聖剣の一閃を銀色に輝く花弁に変えて、更にその感覚と心を惑わせて。
「くそ……ッ、あの女だ、あの女さえ斬れれば、それだけでいいのに……!!」
 容易いこと、のはずだった。
 彼女たちが、現れさえしなければ。

「そのようなこと、私たちが――」
「あたしたちが、許さない!!」

 はっきりと、朗々と、芯を持って響く拒絶の言葉。
 燃え盛る紅蓮の爪と、魔を祓う白銀の銃弾が。
 白燐蟲たちを避けながらも、確かに倒すべき敵の身体を、捉えて――討ち滅ぼした。

「先生! 終わったよ、無事でよかった」
 有花の手を借りて、葉月が聖鞄の中から姿を現す。
 だが、安堵したのか彼女はその場でへたり込んでしまった。
 そんな彼女の前に、シホはかがみ込んで。
「カワウソさん達、かわいかったです。連れて行ってくださって、ありがとうございました」
 だから、課外授業、ぜひ続けてくださいと。
 その言葉に葉月は、笑顔で頷いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​


●これにて一件落着です!
「ありがとうございました。皆さんのお陰で課外授業、続けられそうです」
 葉月の表情は、晴れ晴れとしていた。
 トラウマが残った様子もない辺りは、猟兵ではなくとも流石に能力者、といったところか。
「……本当に、ありがとうございます。来てくださったのが、皆さんで本当によかった」
 続く言葉からも、感謝の念が伝わってくる。
 ちょっと、いやかなりお人好しで、危なっかしい面もあるものの、真面目ないい教師なのだろうと、その人柄が伝わってきた。
「あ、もしまた近くに来る機会があったら、お勧めの観光スポットとかお教えしますので、よければ連絡してくださいね。猟兵ではないので、皆さんと一緒に戦うことはできませんが……何か役に立てたら、嬉しいので」
 そう言って笑う葉月。
 猟兵たちはその姿に、守れたのだ、と実感する。
 これからも葉月は、その言葉通り課外授業を続けるのだろう。
 その未来を、猟兵たちは確かに、守ったのだ。

最終結果:成功

完成日:2022年03月20日


挿絵イラスト