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サイバー・ハッキング

#サイバーザナドゥ #サイバースペース #巨大企業群『アマテラス・カンパニー』

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#サイバースペース
#巨大企業群『アマテラス・カンパニー』


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 アマテラス・ゲームズ。
 サイバーザナドゥに存在するメガコーポ『アマテラス・カンパニー』傘下のゲーム会社であり、これまで数々のネットゲームをヒットさせてきたベンチャー企業である。
 だが、真夜中だというのに、高層ビル街に建つアマテラス・ゲームズのオフィスビルには煌々と明かりがつき闇に包まれた街を照らしていた。耳を澄ませばオフィスの窓から社員たちの叫び声が聞こえてくる。

「おい、誰だ、ここのプログラム書いたやつ! ラスボスに即死アイテムが効くじゃないか!」
「こっちは始まりの村で主人公がレベルマックスになれちゃうバグがありますよ!?」
「ここの井戸からラストダンジョンにワープできるんですが!」

 オフィスでゲームの最終チェックをしているプログラマーたちの表情は揃って蒼白だ。
 明日はアマテラス・ゲームズの新作ゲームの公開日。それなのに、ここにきて大量のバグがみつかったのだ。この大量のバグを明日の朝までに直すのは不可能だ。――アマテラス・ゲームズの社員たちだけでは。

「ええい、このゲームの開発にいくらかかっているかわかってるのか! このゲームが予定通りにリリースできなければ、会社はおしまいだぞ!」
 アマテラス・ゲームズ社長の叫び声がフロア中に響き渡るが、それで事態が好転するはずもない。
 いかに巨大なメガコーポ『アマテラス・カンパニー』といえども――いや、メガコーポだからこそ、不採算であると判断すれば容赦なく子会社の1つや2つ切り捨てるだろう。アマテラス・ゲームズの社長にとっては、このゲームはなんとしても予定通りにリリースする必要があるのだった。
「こうなったら、最後の手段だ――」
「まさか、社長……!?」
 社員が止めようとするが、アマテラス・ゲームズの社長は禁断の扉を開く決断を下す。

「スラムに住む敏腕ハッカーたちを雇ってすぐにバグを直させろ! サイバースペース経由で『アマテラス・カンパニー』のメインサーバーへアクセスすることを許可する!」

 こうして、決して開くことのないはずだった、メガコーポ『アマテラス・カンパニー』のメインサーバーへと繋がる扉が開かれようとしていた――。


「うう、デスマーチ……怖いです……」
 グリモアベースに猟兵たちを集めたアイ・リスパー(f07909)は、ぶつぶつと意味不明な言葉を紡いでいた。だが、猟兵たちが集まったのを見て、こほん、と咳払いをして居住まいを正す。

「皆さん、お集まりいただき、どうもありがとうございます。今回は新しく見つかった新世界、サイバーザナドゥでの任務になります」
 サイバーザナドゥは巨大企業群メガコーポによって支配されたサイバー世界だ。この世界では、もはや国家さえもメガコーポの傘下に降っており、人々は人権を無視して利益のみを追求するメガコーポ各社の奴隷に成り下がっている。
「今回、そのサイバーザナドゥを支配するメガコーポの一社、『アマテラス・カンパニー』のメインサーバーにアクセスできるチャンスが生まれました。皆さんには、メインサーバーにアクセスして、『アマテラス・カンパニー』の犯罪行為の証拠を手に入れてきていただきたいのです」
 『アマテラス・カンパニー』傘下のゲーム会社が、やむにやまれぬ事情により、外部からサイバースペース経由でメインサーバーにアクセスできるようにしてしまったのである。これに便乗する形で猟兵たちもメインサーバーにアクセスし『アマテラス・カンパニー』の悪事の証拠を手に入れてもらいたい。いかに強大な権力を持つメガコーポといえども、多数の動かぬ証拠を集めることができれば、犯罪行為をやめさせることができるかもしれない。

「まず、メインサーバーにアクセスするために、サイバースペースにダイブしてファイアーウォールを突破していただきます」
 サイバースペースとは、サイバーザナドゥに張り巡らされたフルダイブ型の電脳空間だ。サイバースペース内では生身と同じように動くことができ、ユーベルコードさえも使うことが出来る。その代わり、サイバースペース内でダメージを受けたら現実の肉体にもフィードバックがあるので気を抜くことはできない。
「ファイアーウォールは、サイバースペース内では扉のついた強固な『壁』の形をとって存在しています。突破するためには、ハッキングで扉の鍵を破るか、もしくは物理的に『壁』を壊す必要があるでしょう」
 サイバースペース内でメインサーバーに到達するには、多重に張り巡らされたファイアーウォールを突破していく必要がある。ハッキングで突破してもいいし、武器やユーベルコードなどで物理的に『壁』を破壊してもいい。他にも工夫して突破を試みるといいだろう。
「ただし、ファイアーウォールも簡単には突破を許してはくれません。攻性防壁プログラムによる妨害を受けると思われます」
 迷路のようになったサイバースペース内は、ドローンや二足歩行ロボットのような形状をとった侵入者迎撃プログラムが警備している。それらによるレーザーや銃撃による妨害をかいくぐりながら、ファイアーウォールの突破を試みなければならない。

「ファイアーウォールを突破したら、事態に気付いたアマテラス・ゲームズ社が、雇ったハッカーたちを迎撃に向かわせてくるでしょう」
 相手は電脳空間戦に慣れたハッカーたちである。サイバースペース内での能力を向上させたり、戦場自体をハッキングして攻撃してくることが予想される。
 だが、あくまでサイバースペースでの戦いだ。倒したとしても肉体へのフィードバックがあるだけで、命まで奪うことにはならない。全力で倒してしまって問題ないだろう。

「メインサーバーに到達したら、サーバーのメンテナンスプログラムが立ちふさがってきます」
 サイバースペース内で人型に実体化したメンテナンスプログラムは、猟兵たちを排除しようと攻撃してくる。これを撃退しメインサーバーから『アマテラス・カンパニー』の悪事の証拠を入手すれば任務完了だ。

「皆さん、サイバーザナドゥでは、巨大企業は国家にも匹敵する権力をもっています。その悪事を裁くのは簡単ではありません。ですが、小さな証拠を集めていけば、必ずや巨大企業に一矢報いることができるはずです。どうぞよろしくお願いします」
 そう言って一礼すると、アイはサイバーザナドゥへと繋がるゲートを開いたのだった。


高天原御雷
 オープニングをご覧いただき、どうもありがとうございます。高天原御雷です。
 今回は新世界『サイバーザナドゥ』での任務となります。サイバーですね、サイバー。新世界が非常に楽しみです。
 以下、シナリオ詳細です。

●一章:冒険
 サイバースペースにダイブし、迷路のようになっている通路を抜けて、迎撃プログラムの妨害をかいくぐり、ファイアーウォールを突破してください。
 サイバースペース内では現実世界とまったく同じように行動することができます。またユーベルコードもそのまま使用可能です。ただし、ダメージを受けた場合、肉体にもフィードバックがありますのでご注意ください。
 ファイアーウォールは、サイバースペース内では『鍵付きの扉のある壁』の形をとっています。鍵をあけてもいいですし、壁を破壊してもOKです。その他、ユニークな突破方法なども試してみてください。

●二章:集団戦
 雇われたハッカーたちが相手となります。悪事に加担するような悪徳ハッカーたちですので、心置きなく倒してしまってください。今回は悪事やってないような気もしますが、メガコーポに協力するような悪いハッカーたちです。

●三章:ボス戦
 サーバーのメンテナンスプログラムがサイバースペース内で人型をとって立ちふさがります。このプログラムを撃破し、メガコーポの悪事の証拠を手に入れましょう。

●執筆ペースにつきまして
 執筆時間の都合上、ご参加いただく人数によっては再送いただく可能性があります。
 予めご了承いただけますと幸いです。

 それでは、どうぞよろしくお願いいたします。
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第1章 冒険 『アジトの扉を開け』

POW   :    扉や建物の一部を破壊して侵入する

SPD   :    ハッキングしてセキュリティを解除する

WIZ   :    営業マンのフリをして交渉し、受付スタッフに扉を開けてもらう

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●サイバースペース
 猟兵たちが転移したのはサイバーザナドゥのアマテラス・ゲームズ社がある街だ。
 整然と佇むビル街。雑多にジャンク屋が並ぶ裏町。最下層の人々が住まうスラム。
 それら、街のいたるところに、フリーポータルと呼ばれるサイバースペースへのアクセス口が存在していた。
 猟兵たちはフリーポータルを使ってサイバースペースへとダイブしていく――。

 フリーポータルからサイバースペースへとダイブした先は、無機質なポリゴンの壁でできた迷路の中だった。不思議なことにサイバースペース内でも現実空間と同じように身体の感覚があり、現実世界と全く変わらずに動くことができる。またユーベルコードも使用可能だ。その代わり、ここで肉体が傷ついたら、現実世界に戻ったときにも影響が残っているだろうという予感があった。

 迷路内にはドローンやロボット型の迎撃プログラムが徘徊している。それらを排除し、多重に構築されたファイアーウォールを突破して欲しい。
桐嶋・水之江
いきなりメガコーポのメインサーバーに入り込めるチャンスが巡ってくるなんてラッキーね
将来の為に交渉材料をたんまり頂戴しておくわ

ここがサイバースペース…テーマパークに来たみたいね
テンション上がるわ
でもわざわざ迷路を彷徨い歩くのは御免よ
だって疲れるし
サイバーなスペースという事はこの壁ひとつ取ってもプログラムなのよね?
なら蝕む機巧感染の出番よ
ウィルスプログラムを流して壁の衝突判定を無くしちゃいましょう
迎撃プログラムには私を感知対象から外させるわ
一切戦わずして悠々と進むのよ

ファイアウォールだってイチコロ…思ったよりプロテクトが頑丈ね
はぁ…面倒だわ
ワダツミのプログラムコードをロード!水之江キャノン発射!




 サイバーザナドゥの世界に広がる、もう一つの世界――電脳空間サイバースペース。それはポータルからダイブすることでアクセスできる仮想現実世界であり、あらゆるものがデータで構成された空間である。サイバースペースでは現実世界の肉体と同様のアバターが構築され、現実空間と同じように行動することができる。
 このサイバースペースの技術がサイバーザナドゥに繁栄をもたらしたことは間違いない。だが、その一方で、サイバースペースが様々な悪事の温床になっていることも確かである。――その最たるものが、巨大企業群メガコーポの犯罪や陰謀に利用されていることだろう。

 今回、メガコーポの一角たる『アマテラス・カンパニー』の子会社、アマテラス・ゲームズがサイバースペースを通してフリーアクセス可能にしたのは『アマテラス・カンパニー』の悪事の証拠が眠るメインサーバーへと繋がる領域である。そこはサイバースペース内では、侵入者を惑わすために、まるで迷宮のような作りをした区画になっていた。

 サイバースペース内の迷宮区画に天から一条の光が降り注いだかと思うと、紫色の長髪をポニーテールにした女性のアバターが実体化する。ボディスーツに白衣を纏った科学者然としたアバターは、桐嶋・水之江(機巧の魔女・f15226)のものである。
「ここがサイバースペース……。まるでテーマパークに来たみたいでテンション上がるわ」
 無機質なワイヤーフレームの壁で構築された迷路に紫の瞳を向けた水之江の顔には、まるで悪事を企んでいるかのような邪悪な笑みが浮かんでいた。
「ふふふ、いきなりメガコーポのメインサーバーに入り込めるチャンスが巡ってくるなんてラッキーよね。将来の為に交渉材料をたんまりと頂戴しておくわ」

 ――訂正。実際に悪事を企んでいた。

「メガコーポの弱みを握って、量産型キャバリアやスペースシップワールドの兵器を高額で売り込んだら、きっと大儲けができるわね。サイバーザナドゥの技術を提供してもらって他世界の兵器と融合させるのも面白そうね。サイボーグ化したキャバリアパイロットとか需要あるわよね。うふふふ」
 脳内でソロバンを弾きながら、新たな技術に心躍らせる水之江の様子は、まさにマッドサイエンティストである。彼女の野望こそ阻止しなければならないように思うが――気のせいということにしておこう。

「さ、それじゃ、早速お宝を探しにいきましょ」
 そう言って水之江が歩み寄ったのは手近な壁だった。迷宮区画を形作る、何の変哲もないポリゴン製の壁。それを右手で撫でた水之江は、うっすらと口角を上げて微笑んだ。
「わざわざ迷路を彷徨い歩くのは御免よね。だって疲れるじゃない」
 ぶんっ、と片手を振ると、水之江の手の中に杖が実体化する。その杖の先端が展開し、まるで槍のような形状のデバイスを形作ると、周囲の空間に魔法陣のように輝く幾何学的な紋様が描き出されていく。
「サイバースペースということは、この壁ひとつ取ってもプログラムなのよね? なら、蝕む機巧感染の出番よ!」
 刹那、水之江の杖から展開された魔法陣が眩い閃光を放ったかと思うと――周囲に二頭身にデフォルメされたミニ水之江たちが召喚された。
「あら、サイバースペースで使うと、ナノマシンによるウィルスプログラムはこんな可愛らしい姿になるのね?」
 親玉たる水之江の周囲を、ふわりふわりと漂うSD水之江たち。だが、それは見た目通りに凶悪な性質を持つ邪悪なウィルスプログラムなのである。
『みんな、おたからまでまっしぐらよ!』
『おー!』
 目を爛々と輝かせたSD水之江たちがポリゴンの壁に向かって突撃していく。壁に正面衝突した彼女たちが跳ね返されるかと思った瞬間――ポリゴンの壁に波紋が浮かび、SD水之江たちは無抵抗に壁に吸い込まれていった。
「どうやら壁の当たり判定を書き換えることに成功したようね」
 ウィルスプログラムたちを放った水之江も、白衣をバサリと翻しハイヒールの音をコツコツと迷宮に響かせ、悠々と壁の中へと消えていった。

 壁の存在を無視して直進する水之江。こうなっては、もはやこの区画が迷宮化していることは何の妨害にもなっていない。
「このまま真っ直ぐ進めばファイアーウォールにぶつかるはずだけれど……残る問題は迎撃プログラムよね……」
 迷宮区画を巡回するドローンや機械兵の姿をした迎撃プログラム。壁の中から通路に出た瞬間にそれと鉢合わせして攻撃されては、さすがの水之江もたまったものではない。
「……面倒だわ。あなたたち、先行して私を迎撃プログラムの感知対象から外させるようにしてちょうだい」
『このクスリの、でばんのようね』
『げいげきプログラムのセンサー、のっとりかんりょう』
 壁の中から通路へと出たミニ水之江たちが怪しげな薬を散布すると、周囲のドローンや機械兵たちのAIをハッキングしていく。ハッキングされた迎撃プログラムたちは、センサーで水之江の姿を捉えてもそれを認識できない。まるでそこに誰もいないかのように巡回を続けるだけだった。
「仕事が早いウィルスプログラムたちで助かるわね」

 迎撃プログラムによる警戒を誤魔化しながら迷宮をまっすぐに進んでいった水之江。その目の前に現れたのは、広大な広場のようになった空間と、そこを塞ぐ巨大な壁だった。
「なるほど、これが『アマテラス・カンパニー』のメインサーバーへの不正アクセスを防ぐためのファイアーウォールというわけね。ファイアーウォールだけに壁のイメージだなんて安直よね。あなたたち、ちょちょいっと破壊してきなさい!」
『このていどのかべで、わたしたちをとめられるとおもったら、おおまちがいよ』
『みんな、いっきにいくわよ』
 手に手にツルハシやスコップを持ったミニ水之江たちが巨大な壁を破壊しようとその凶器を叩きつける。
 ――かーん!
『かたーい』
『わたしたち、にくたいろうどうは、せんもんじゃないのよね』
 硬い防壁に工具を弾かれたミニ水之江たちは、あっさりと匙を投げ出した。

「まったく、その程度で仕事を放り出すなんて、一体誰に似たのかしら。……はぁ、面倒だわ」
 ウィルスプログラムたちでは埒が明かないと溜め息をついた水之江は、目の前にそびえ立つ壁を改めて観察する。それはまるで鋼鉄のように強固な材質でできていた。先程のミニ水之江たちの工具による反響音からすると厚さも相当のものだろう。――つまり、それだけ強固なプログラムで組まれたファイアーウォールであることを意味している。時間をかければウィルスプログラムで突破することもできるかもしれないが、それでは侵入に気付かれる危険性が高まる。
「こうなったら仕方ないわね。ウィルスプログラムよりも強烈なプログラムを叩き込んであげるわ! ワダツミのプログラムコードをロード!」
 高らかに叫んだ水之江の上空に現れたのは、ワダツミ級強襲揚陸艦。星の海を駆ける巨大な戦艦であった。――正確にはその制御プログラムを元にサイバースペースに再構築したものであるが、ワダツミがここにあることには変わりない。
「いくら厚い鉄の壁だろうと、ワダツミの主砲を耐えることができるかしら? ――水之江キャノン、発射!」
 水之江の頭上に浮かぶ巨大戦艦の艦首から放たれたのは、膨大な熱量を持つ一条の閃光。正式名称ハイパーメガビーム砲。超大口径の拠点攻撃用戦術兵器の一撃だ。
 ビームが直撃した防壁が膨大な熱量によって赤熱していく。融点を超えた金属の壁は、まるでバターが溶けるかのように融解していき――ついには巨大な穴ができていた。

「どうやら、プログラムの強度は水之江キャノンの方が上だったみたいね」
 巨大戦艦をプログラムコードに戻して消し去った水之江は、ファイアーウォールに空いた穴を悠々と抜けていったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シャルロット・シフファート
ここがサイバーザナドゥ……
恐らくだけど、あのカルロスもいるでしょうね
サクラミラージュにもいたのだもの
アイツのUCを考えると全ての世界に一人ずついてもおかしくないわ

とは言え、まずはアマテラス・ゲームズ……創作者の筆を折るというのは非常に心苦しいけど、これも世界の為
作品案はこちらで何とかするようにしましょうか
そう言って肉体を一時的に機械化する世界体現兵装を両手に展開
そこからサイバースペースにアクセスしてファイアーウォールを解除していくわ
フォーミュラの力を再現したUC、果たしてメガコーポはどれくらいの立ち回りを見せるかしらね?
そう言いながらアリス・オリジンとしての現実改変もハッキングに乗せて解析を




「ここがサイバーザナドゥ……」
 現実世界と同じ金髪縦ロールの髪を右手で払いながら、シャルロット・シフファート(異界展開式現実改変猟兵『アリス・オリジン』・f23708)は周囲に紫の瞳を向けた。そこはフリーポータルからダイブした電脳空間、サイバースペース――その中でも、メガコーポ『アマテラス・カンパニー』のメインサーバーへと繋がる迷宮区画だ。
「このサイバースペースを作り出せるほど進んだ科学力を持った世界――あのカルロスが放っておくはずないでしょうね。なにせ、サクラミラージュにもいたのだもの。アイツのユーベルコードを考えると、すべての世界に一人ずついてもおかしくないわ」
 シャルロットの脳裏に蘇るのは、グリードオーシャンにおける羅針盤戦争で戦った、七大海嘯『王笏』カルロス・グリードのことだった。オブリビオン・フォーミュラたるカルロスの能力は、他の世界の力を具現化するもの。そしてまた、羅針盤戦争後にサクラミラージュに影朧兵器「逢魔弾道弾」をもたらしている。
 それを考えると、このサイバーザナドゥにサイバーカルロスが居る可能性もあるかもしれない。

「とはいえ、まずはアマテラス・ゲームズね……。創作者の筆を折るというのは非常に心苦しいけど、これも世界の為よね。作品案はこちらで何とかするようにしましょうか」
 ポリゴンでできた無機質な迷路へと目を向けたシャルロットは、戦闘の準備を整えるためにユーベルコードを発動する。それは、まさに先程まで考察していた、七大海嘯『王笏』カルロス・グリード――その虚構存在の力を用いたもの。
「我は魔術師にして簒奪者。征服者の王笏を黄泉返りの禁呪を用い、ここにその王権を我が手の中にしよう」
 虚構のカルロスの霊を喚び出すことにより、シャルロットの両手に世界体現兵装が具現化される。世界体現兵装――それこそ、カルロスが持つ全世界の根源へとアクセスする能力によって錬成された変幻自在な万能兵装。ここサイバーザナドゥで使用すれば、シャルロットの両手が一時的に機械化され、まさにサイボーグのような様相となる。

「さあ、コンキスタドールの首領にしてグリードオーシャンのオブリビオン・フォーミュラの力を再現したこのユーベルコード。果たしてメガコーポはどう立ち回ってくれるのかしらね?」
 迷宮区画に向けて、シャルロットは一歩を踏み出す。侵入者を惑わすために作られた複雑な迷路にもかかわらず、一切の迷いを見せずに歩みを進めていく。
「この程度の迷宮、アリス・オリジンとしての現実改変の前には無意味よ。私が正解の道を選んでいるのではないわ。私が選んだ道が正解になるように現実を改変しているのだから」
 その言葉の通り、シャルロットは一切迷うことなく迷路を抜け――その正面に無数のドローンや機械兵たちを捉える。侵入者を排除するための迎撃プログラムがサイバースペース内で実体化したものだ。
「そんな程度のプログラムで、フォーミュラの力を抑えられると思わないことね」
 シャルロットが前方へと両手を向けると、機械化した腕から無数の銃弾が発射される。電脳プログラムによって作成された弾丸は、サイバースペース内においては強力無比だ。爆炎を撒き散らし、轟音を轟かせる砲撃がドローンや機械兵たちをプログラムの残骸へと変えていく。
「あら、もう抵抗は終わりかしら?」
 粉雪のようにポリゴン片の舞い散る迷宮で、シャルロットは不敵に微笑んだ。

「ここがファイアーウォールね」
 迷宮区画を突破し、迎撃プログラムも撃退したシャルロットがたどり着いたのは、鍵のかかった扉がついた、強固な鋼鉄の壁の前だった。生半可な攻撃では破壊できそうもない壁を前に、シャルロットは思案する。
「ここはハッキングで扉を開けるのが一番ね。フォーミュラの能力とアリス・オリジンとしての解析能力。それが合わさったからには、サイバースペースで私を阻めるものがあるはずないわ」
 カルロスの能力で機械化した腕を扉の電子キーに接続すると、そこを介してシャルロットは鍵を解析し、扉を開くことに成功した。

「さあ、メガコーポの悪事の証拠を押さえるわよ」
 ファイアーウォールを突破し、シャルロットはメガコーポのメインサーバーへ向かって歩をすすめるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
電脳魔術師やヴァーチャルキャラクターには及ばずとも、こうしたサイバースペースは種族柄慣れております

ハッキングは兎も角、悪事を挫くは騎士の務め
先ずは現地ネットワークに適応するといたしましょうか

サイバー空間の虚空にワイヤーアンカー伸ばしハッキング・情報収集
UCも併用し「処理速度向上プログラム」の形で機械馬ロシナンテⅡを創出し騎乗

迎撃プログラムの攻勢を躱し、馬上槍型機関砲の電子攻撃乱れ撃ち
防備を沈黙させ電子空間を駆けぬけ

手足備えたアバターより単純なアイコンの方がメモリ節約となるのですが、騎士を志す身としてはこの仕様は嬉しいですね…!

馬上槍の形に攻性プログラム作成
ファイヤーウォールへ投擲
一気に突き破り




 サイバースペースにダイブしたトリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)のアバターを形作るべく、無数のポリゴン片が白銀の甲冑の騎士の姿を構築していく。身の丈程もある3メートル近い大盾と巨大な馬上槍をガシャンと構えたトリテレイアは、兜のスリットに緑色の光を灯す。
「電脳魔術士やヴァーチャルキャラクターの方々には及ばずとも、こうしたサイバースペースには種族柄慣れております」
 電脳空間に響く静かな声音の人工音声は、トリテレイアがサイボーグではなく機械そのもの――ウォーマシンであることを物語っていた。サイバースペースという電脳空間と親和性が高いのも納得だ。
「この世界の人々を苦しめる悪の巨大企業の一角『アマテラス・カンパニー』ですか。為政者の悪事を挫くのも騎士の務め。悪しき企業に動かぬ証拠を突きつけ、正義の鉄槌を下すといたしましょう。鋼の擬似天眼(マルチセンサー・フルアクティブモード)展開です」
 騎士道精神を電子頭脳に宿した機械の騎士は、その両腕から細いワイヤーアンカーを撃ち出した。ワイヤーの先端部にとりつけられた水晶体が光を放ちながら虚空へと溶けて消える。――水晶体はサイバースペースと一体化することで、トリテレイアの電子頭脳を電脳空間と直接接続させた。
「周辺の電子データの流れからファイアーウォールの位置を78パーセントの確率で推定。すべて見通す……とまではいきませんが、目星は付きました」
 電脳空間から情報を引き出したトリテレイアは満足げに告げると、電子頭脳の処理速度向上プログラムを起動する。そのプログラムは電脳空間の情報処理機構に介入し、サイバースペース上に機械の馬のオブジェクトとして実体化した。
「電脳戦だけでしたら単純なアイコンの方がメモリ節約になるのですが、私のメインプログラムや補助プログラムが手足を備えたアバターになるという仕様は、騎士を志す身としては嬉しいものですね。さあ、ロシナンテⅡ。風車ならぬ大企業に挑む騎士に付き合っていただきます」
 愛馬ロシナンテⅡの姿をとった補助プログラムに騎乗したトリテレイアは、大盾と馬上槍を構え、風のように迷宮区画へと疾走していく。

 迷宮区画でトリテレイアを待ち受けていたのは、ドローンや機械兵の姿をした迎撃プログラムたちだ。機械兵たちは全身に内蔵された銃火器をトリテレイアへ向け、一斉に射撃を開始した。
「見た目は物理的な攻撃ですが、ここはサイバースペース。受ければ私のプログラムが侵食されるということですね。――ですが、逆に言えばこちらの攻撃もまた相手のプログラムを破壊できるということ!」
 トリテレイアはロシナンテⅡのサポートを受けた超高速演算により敵の攻撃の軌道を予測。愛馬を跳躍させると射線を飛び越え、機械兵たちの背後へと回り込んだ。ガシャン、という重い音とともに構えられた馬上槍の先端に開いた銃口から、炸裂音とともに無数の銃弾が連続的に吐き出されていく。馬上槍型機関銃から放たれた電子の銃弾は、背後から機械兵の一団を一網打尽に打ち砕いていった。
 だが、トリテレイアの攻撃の隙をつき、ドローンたちが上空からレーザーの雨を降らせる。
「――その攻撃も予測済みです」
 トリテレイアは長大な大盾をかざしてレーザーを防御する。光線兵器を反射するコーティングが施された大盾は、レーザー光線を乱反射させることによって主の身を守りきった。レーザー照射が止まったところに、再び馬上槍型機関砲が吼え、ドローンを撃ち落としていった。
「このような乱戦では騎士としての一騎打ちもできませんが、ご容赦を」
 トリテレイアは再びロシナンテⅡを駆り、迷路を突き進んでいく。

「情報密度の高い構造物を検知……。あれがファイアーウォールですね」
 トリテレイアの眼前にそびえ立つのは、行く手を阻む鋼鉄製の壁だった。これこそが『アマテラス・カンパニー』メインサーバーが存在する区画――現実世界ではプライベートネットワークである――への侵入を阻む防壁だ。
「ロシナンテⅡ、馬上槍を対ファイアーウォール用攻性プログラムに特化。一気に打ち破ります」
 トリテレイアが構える馬上槍に幾何学的な紋様が浮かび上がった。それをトリテレイアが全力で投擲する。鋼鉄の壁に向かって一直線に飛翔した馬上槍は、壁に激突した瞬間、眩い光を放ちながら鋼鉄を貫き穿っていった。
「演算処理をファイアーウォール突破に特化させた電脳の槍です。たとえどんなに強固な壁だろうと打ち砕いてみせましょう」
 瓦礫と化した分厚い鋼鉄の壁の残骸をくぐり抜けながら、トリテレイアは呟いたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

四季凪・アルブス
時間に追われる中でのメンテナンスって、確かに大変だよね…

でも、みんなの自由に繋げるためにも、この「メンテナンス」を成功させないと!

サイバースペースの存在でも
ドローンやロボットなら私の技術が通じるかも…

リペアドローン「リーリー」で偵察しながら
敵のドローンやロボットを見つけたら
M&M's-Operationで命令しながら無力化、またはこちらの命令に従うように「修理・改造」していくよ

抵抗、攻撃されたらこちらも応戦し、動きを止めたら
他に敵がいないなら改造
いるなら引き続き応戦

上手く敵を改造できたら
そっちも操作して他の敵も同様に処理

ファイアウォールは
改造した敵でアクセスしたり
修理道具を使う事で解除を狙うよ




「時間に追われる中でのメンテナンスって、確かに大変だよね……。でも、みんなの自由に繋げるためにも、この『メンテナンス』を成功させないと!」
 強い決意を持ってサイバースペースへとダイブしてきたのは、銀色の髪をした14歳のレプリカントの少女、四季凪・アルブス(白銀のStudent's-Savior・f36546)だ。狐の耳と尻尾を持ったアバターが身にまとうのは、ネイビーブルーのジャケット。それをサイバーザナドゥの人間が見れば、彼女が、学生の自由と個性を守る各校連合組織「アライアンス・オブ・スチューデンツ・セイバーズ」の一員にして「七混学園」の生徒であることがひと目で分かったかもしれない。
「メガコーポの支配から学園や生徒のみんなを守るためにも、私が頑張らないとだよね。サイバースペースの存在でも、ドローンやロボットが相手なら私の技術が通じるかも……」
 メディックにしてメカニックであるアルブスは、肩からかけたスポーツバッグの重みをしっかりと確認すると、青い瞳を迷宮区画へと向け歩を進めていった。

「周囲を偵察しつつ迷宮を抜けないとだよね。リーリー、お願い」
 アルブスはリペアドローンのリーリーをサイバースペースに実体化させると、迷路になっている通路を先行させた。リーリーは機械修理用のドローンであるが、映像を録画してアルブスの元へと届ける機能も有している。これにより迎撃プログラムに奇襲される心配はなくなり、逆にアルブスが先手を取りやすくなったと言えるだろう。
「ドローンとロボットたち、発見だね……」
 リーリーから届けられた映像に映るのは、迎撃プログラムが実体化したドローンや機械兵の一団だ。まだこちらに気付いていないことを確認すると、アルブスは通路の影に隠れながらスポーツバッグの中を漁り始める。
「えっと、これじゃなくて……こっちでもなくて……あった、これだね」
 教科書や筆記用具、果てはメスや応急処置用の包帯などまで雑多に詰め込まれたバッグからアルブスが取り出したのは、機械修理用の工具一式だった。修理工具を持ったアルブスは通路の影から飛び出すと、迎撃プログラムたちに向かって言葉を発する。
「お願い、これから施術するから、抵抗しないで……!」
 だが、侵入者の迎撃が使命であるドローンや機械兵たちが、アルブスの命令に従うはずもない。問答無用でレーザーと機関銃による攻撃が開始される。
「なら、こちらも――パック!」
 対するアルブスは、ガンナードローンであるパックを実体化させ、同様にレーザーと実体弾で応戦させる。迷宮の通路内で繰り広げられる銃撃戦。レーザー同士が正面からぶつかり相殺され、電脳の銃弾が互いに相手の銃撃を押し返す。
 それは一見、現実空間での射撃戦に見えるが、その実、アルブスと迎撃プログラムとの間での高度な情報処理戦が可視化されたものに他ならない。
「――だけど、私は攻性プログラムと同時にメンテナンスプログラムも並列実行可能だよ!」
 ドローンによる攻撃と並行し、アルブスは修理用工具によるメンテナンスプログラムを起動した。通常であれば、迎撃プログラムの改修を短時間で――それも攻性プログラムの実行と同時におこなうのは不可能だろう。だが、先程アルブスが命じた『これから施術するから、抵抗しないで……!』という言葉こそ、ユーベルコードM&M's-Operation(メディック・アンド・メカニックズオペレーション)の発動キーとなる命令だ。この命令を破った相手は状態異常への抵抗力が半減する――すなわち、アルブスのメンテナンスプログラムに対する抵抗力が弱まることを意味する。
「――施術、完了だよ」
 アルブスの言葉と同時に、迎撃プログラムたちの攻撃が停止する。――そこにいたのは、すでに侵入者を排除するための迎撃プログラムではなかった。その使命を『アルブスに従う』ように改変された忠実な仲間であった。

 遭遇した迎撃プログラムたちを次々と従えていきつつ迷宮区画を踏破したアルブスの前に、頑丈そうな鋼鉄製の壁が現れた。これこそメガコーポのメインサーバーへの道を塞ぐファイアーウォールである。
「この壁……情報密度が他とは桁違いに大きいみたいだね。破壊するのは難しいかな……?」
 サイバースペースに実体化した物体の強度は、情報的な攻撃に対する耐久力を現している。サイバースペースで鋼鉄製の強固な壁として実体化しているファイアーウォールは、それだけ外部からの情報攻撃に強いということだ。
「だけど、ファイアーウォールなら、許可のある通信だけは通すはず。どこかにその入口が――あった!」
 アルブスは鋼鉄の壁に付けられた扉を発見した。扉も破壊は難しそうだが電子キーの端末がついていて、ロックを解除すれば開けられそうだ。それならばメカニックであるアルブスの独壇場である。
「私の修理工具の出番だね。みんなもサポートをお願いね」
 電子キー端末を修理工具でメンテナンスしていくアルブス。さらに彼女の周囲から、リペアドローンのリーリーが、ガンナードローンのパックが、迷宮区画で仲間にしたドローンや機械兵たちが、電子キー端末にケーブルを伸ばし、アルブスのメンテナンスの補助をしていく。いかに強固なパスワードによって守られた電子キーといえども、これだけの情報処理能力の前では解錠は時間の問題であり――。

「やった、開いたよっ!」
 ピーという電子音とともに電子ロックが解除され、重厚な扉がアルブスを迎え入れたのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

愛天・真澄
新たな世界、未知の領域。
ですが、恐れることはありません。神の愛は、この地にも確と届くのですから。
(戦車もサイバースペース内に持ち込めましたの意)

戦車に乗り、サイバースペースを進んで参りましょう。
とはいえ、迷路を効率的に抜ける手段は持ち合わせておりませんので…目的地へ向け、戦車の主砲で壁を撃ち抜きながら進んでいくのが一番手っ取り早いですね。
警備プログラムに対しては機銃で攻撃。【属性攻撃】で腐食属性を持たせた弾丸を掃射する【制圧射撃】で一掃を試みます。

堅い敵、或いは堅い壁に行き当たった際は、主砲にて愛の一撃を使用。
神の愛は如何なる障害をも乗り越える力なのです!




 ドォォンという轟音が響き渡ったかと思うと、迷宮区画を構築する壁が木っ端微塵に吹き飛んだ。壁の残骸のポリゴン片を乗り越えて噴煙の中から姿を現したのは一台の戦車だ。キュルキュルというキャタピラの音とともに、その場で90度向きを変えた戦車は、もう一発、砲塔から主砲を発射し――その砲弾が迷宮の壁をぶち抜いた。
「新たな世界、未知の領域。ですが恐れることはありません。神の愛は、この地にも確と届くのですから」
 主砲を乱発しながら迷宮を突き進む戦車の中から朗々と響く少女の声。それはアポカリプスヘルのカルト教団『愛天教会』で生まれ、神の愛を広く伝えるために旅をする愛天・真澄(愛神の使徒・f32265)の声だった。彼女が乗る戦車『Throne IV』には生命維持装置が搭載されていて、フラスコチャイルドである真澄でも快適に過ごせる空間になっている。露出度の高いミッション系の愛天学園制服を着た真澄は、金色の長髪と豊かな胸を戦車の振動で揺らしながら、そのまま真っすぐに迷宮を踏破していく。

 だが、それだけ派手に迷宮を突き進んで、警備用の迎撃プログラムに見つからないなどということがあろうか。激しい爆音に釣られて、無数のドローンや機械兵たちが『Throne IV』の元へと殺到してくる。
「あら、わたくしの前に姿を見せるとは――あなた方も神の愛を求めているのですね。いいでしょう、このわたくしが、みなさまに等しく神の愛を届けましょう」
 戦車の操縦席で慈愛に満ちた笑みを浮かべた真澄は、ためらいなく『Throne IV搭載機銃』の引き金を引いた。万人に等しく降り注ぐ弾丸こそ真澄にとっては神の愛そのもの。腐食属性を付与された銃撃でドローンや機械兵たちに深く重い愛を注いでいく。
「ああ、また大勢の信者の身体に神の愛の証を刻んでしまいましたわね。これも神の深い愛が、この地獄のような地にも届いている確たる証拠ですわ」
 腐食し崩れ落ちていくドローンや機械兵たちを見て満足そうに頷いた真澄は、戦車を駆り迷宮の奥へと進んでいった。

 そうして迷宮の壁を神の愛たる戦車砲で強引に吹き飛ばし、出会う迎撃プログラムには機銃による愛を叩き込んで突き進んだ真澄がたどり着いたのは、鋼鉄でできた強固な壁だった。
「なるほど、これがメガコーポのメインサーバーに繋がるファイアーウォールが実体化したものですわね。本来、姿かたちがないものが、こうして実体を持つというのは、サイバースペースとは不思議なものですわ」
 壁から離れた位置で戦車を停止させた真澄は、車内から防塵ガラス越しに鋼鉄の壁を見上げ――その顔に慈母のような笑顔を浮かべて告げる。
「姿かたちを持ったということは、つまり、神の愛を受け入れることができるということ。ああ、なんと幸せなことでしょう」
 真澄は戦車の主砲の砲塔を金属壁に向け、最大の破壊力が出るように仰角を合わせると、その引き金に手をかけ――。
「これが、神の愛です!」
 愛の一撃(ラブ・スマッシャー)によって戦車の主砲『Imperium 88』から放たれた徹甲榴弾は、ファイアーウォールに着弾して運動エネルギーを破壊力に変換しながら壁にめり込んでいく。そこに砲弾内部に仕込まれた炸薬が遅延信管によって爆発。空気を震わす轟音と、大気を熱する高温が周囲を満たし、分厚い鋼鉄の壁は跡形もなく吹き飛んでいった。
「神の愛は如何なる者にも等しく与えられるのですわ。――さあ、メガコーポのメインサーバーにも、わたくしの神の愛を伝えに参りましょう」
 戦車の上部装甲にポリゴン片が降り注ぐ中、真澄は悠々と迷宮区画を突破するのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

菫宮・理緒
なるほど、さすがはサイバーザナドゥ。
思い切りめいっぱい全力でやっちゃっていいってことだね。

バーチャルダイバーの腕が鳴る、ねー♪

さて、サイバースペースにダイブするなら【電脳潜行】は使っておこうかな。

電脳世界……帰ってきた感じがする。落ち着くー♪

とかしてる場合じゃないね。
【Oracle Link】でスキャンをかけながら、
【LVTP-X3rd-van】と【Nappar】を使ってデータを解析して【情報収集】。

サイバースペースってプログラムが可視化しているのはいいんだけど、
形として見えちゃうから、逆に見えなくなるものもあるんだよね。
引っかかるところはプログラムソースから解析させてもらっちゃおう。

なんにもないような普通のところなのに、妙に厳重なセキュリティがかかってるとことか怪しいよね!

『当たり』を引いたら、攻性防壁とかセキュリティプログラムとかくるんだろうけど、
そこはこちらも【ストラクチュアル・イロージョン】で迎撃。

わたし特製のウィルスをくらえー。
ファイアウォールごと融かしてあげちゃうよー!




 黒髪に琥珀色の瞳をした少女、菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)は、メイド服タイプのサイバーウェアを身にまとった姿でサイバーザナドゥへと降り立った。前髪に隠れた右目にゴーグル型デバイスを装着し、腰にスティックデバイスを下げた情報戦用の装備をした理緒は、近くにみつけたポータルに入ると、早速、電脳空間へとダイブをおこなう。
「まずはサイバースペースへのダイブだね。認証クリア……ログ……イン……」
 自身の身体が0と1に変換され、サイバースペース内で再構成されていく感覚。理緒の精神がサイバースペースへのログインに成功した証拠だ。
「電脳世界……帰ってきた感じがして落ち着くー♪ さすがはサイバーザナドゥ、ここまでリアルなサイバースペースが無限に広がってるなんて! 思いっきりめいっぱい全力でやっちゃっていいってことだね。バーチャルダイバーの腕が鳴る、ねー♪」
 サイバースペースにダイブしたバーチャルダイバー、それはまるで水を得た魚のようだ。理緒はわくわくとした好奇心に輝く瞳を周囲に向けると、ポリゴンの壁で区切られた迷宮区画を調査し始めた。

「まずは『Oracle Link』で周囲のスキャン――っと、そっか。サイバースペースだからデバイスがなくてもスキャンできるんだね」
 ゴーグルタイプのウェアラブルコンピュータ『Oracle Link』を使おうとした理緒だが、サイバースペースではゴーグルを装着していなくても、その情報処理能力を十全に使用することができた。それは理緒が使おうとしたタブレット端末『LVTP-X3rd-van』やスティックタイプデバイス『Napper』も同様だ。ゴーグルやタブレット端末、スティックタイプデバイスの代わりに、理緒の周囲に半透明なウィンドウが無数に浮かび上がる。
「なるほど、これがこの空間でのみんなの姿なんだね。それじゃ、みんな、わたしに力を貸して、ねー」
 半透明なウィンドウの上を理緒の白く細い指先が優雅に滑り、まるで楽器を演奏するかのように無数のデバイスを操っていく。フルコーラスの演奏を終える頃には、理緒の正面に大きく広がるウィンドウに迷宮の地図や迎撃プログラムの配置情報が詳細に浮かび上がっていた。
「んー、これがファイアーウォールで、このあたりに迎撃プログラムがいるから、こっちのルートが最短――って、あれ?」
 迷宮の情報を表示しているウィンドウをみつめていた理緒が不思議そうな声を漏らした。その視線は迷宮上の一点、ファイアーウォールに繋がっていないルートを厳重に守る迎撃プログラムの一群を表す光点に注がれている。
「なんにもないような普通のところなのに、妙に厳重に守ってるなんて――怪しいよね!」
 展開したウィンドウを閉じると、理緒は好奇心に溢れた表情で迎撃プログラムが集まる地点へと足を向けた。

 そこはファイアーウォールとは逆方向にある、行き止まりの通路の先にある広場だった。理緒が通路の角からそっと顔を出すと、無数に集まったドローンや機械兵たち――迎撃プログラムが、まるで何かを守るかのように広場の中央に集まっているのが目に入った。
「これは『当たり』かな? よーし、わたし特製のウィルスをくらえー」
 理緒はストラクチュアル・イロージョンによってコンピュータウィルスを放つ。現実空間では実体のないウィルスだが、サイバースペース内ではその効果に見合った形状――『唐辛子の着ぐるみを着たミニ理緒』の姿をとっていた。無数のミニ唐辛子理緒たちが、ドローンや機械兵たちへと向かって飛び出していく。
「って、ちょっとー、わたしのウィルスって、あんな美味しそうな格好なのー?」
 ――えっ?
 どうやら、自他ともに認める辛党で、常に特製辛味セットを持ち歩いている理緒にとっては、辛さとは美味しさに他ならないようだ。だが、迎撃プログラムたちにとってはそうはいかない。ドローンの放つレーザーが、機械兵たちの撃つ銃弾が、ミニ唐辛子理緒たちに降り注ぐが、その攻撃はミニ理緒たちの周囲に漂うわさびパウダーによって阻まれる。
『いっくよー』
『辛味あたーっく!』
 SD理緒たちがドローンや機械兵たちに体当たりをおこなうと、攻撃を受けた迎撃プログラムたちから、突如、激しい炎が立ち上った。
「いやいや、別にわたしの辛味セット、そんな火を吹くほど辛くないから、ねー!?」
 ――理緒の言い訳が事実かどうかはさておき、この場所を守っていた迎撃プログラムたちはSD唐辛子理緒たちによって燃やし尽くされたのだった。

 邪魔者を排除した理緒は、改めて広場の中央――迎撃プログラムたちによって守られていた場所を凝視する。一見すると、そこには何もないかのようだ。
「サイバースペースってプログラムが可視化してるのはいいんだけど、形として見えちゃうから逆に見えなくなるものもあるんだよね。ここはじっくりとプログラムソースから解析させてもらっちゃおう」
 理緒の周囲に展開された半透明のディスプレイに細かい文字の羅列が流れていく。それこそが、このサイバースペースを構築するプログラムのソースコードだ。現実と寸分違わない世界を構成するために、ソースコードは膨大な分量となっていた。常人ではその内容を理解することは不可能だろう。だが、バーチャルダイバーを名乗る理緒は伊達ではなかった。
「プログラミング言語の基本はUDCアースのものに似ているかな。ちょっと読みやすいように変換プログラムをかけてっと。んーと、この辺が不自然だから逆アセンブルして――ビンゴだ、ねー」
 あっという間に解析を終えた理緒は、広場の中央の何もない空間に手を伸ばす。そして、カチャリと鍵を開くような音が響き渡ったかと思うと、広場に扉が姿を現した。
「これがファイアーウォールのバックドア――正面から突破しなくても奥に進むことができる裏口だね」
 バックドアを開いた先に広がるのは、メガコーポのメインサーバーがある区画だ。
「さーて、メインサーバーには何が眠ってるのか、なー」
 理緒はウキウキとした足取りでバックドアを潜り抜けていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『スラム・ハッカー』

POW   :    クラッシュ・プログラム
対象に【肉体暴走プログラム】を憑依させる。対象は攻撃力が5倍になる代わり、攻撃の度に生命力を30%失うようになる。
SPD   :    アクセラレーション・プログラム
自身に【超加速プログラム】をまとい、高速移動と【ショットガンからの散弾】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    クレイジーワールドプログラム
戦場内を【バグまみれのゲーム】世界に交換する。この世界は「【移動はゆっくりとした歩行のみ】の法則」を持ち、違反者は行動成功率が低下する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



「なにっ!? メインサーバーへ繋がるプライベートネットワークへの不正侵入だと!? ええい、誰だ、外部からのアクセスなんぞ許可したのは!」
「いえ、社長のご命令ですが……」
 アマテラス・ゲームズの社長の怒声に、おずおずと社員が答えを返す。ゲームのバグ取りのためにスラムに住む非合法ハッカーたちを雇い、サイバースペース内で作業をさせているのは、他ならぬ社長の命令によるものだ。
「メインサーバーには、我が社のゲームのプログラムだけではなく、グループ会社や親会社の重要機密が保管されているのだぞ! こうなったら、雇ったハッカーたちに侵入者を排除させろ!」
「社長、それではゲームの不具合修正の作業が――」
「ばかもん! もしも情報漏えいなどしたら、我が社だけでなく、親会社の『アマテラス・カンパニー』の根底を揺るがす大問題にもなりかねないのだぞ! 全力で侵入者を排除だ!!」
 こうして、雇われたスラム・ハッカーたちは、侵入者の迎撃に動き出した。

 『アマテラス・カンパニー』のファイアーウォールを突破した猟兵たちは、メインサーバーへと繋がるプライベートネットワークへの侵入を果たした。ここを進めば、メガコーポ『アマテラス・カンパニー』の犯罪の証拠が眠るメインサーバーへたどり着くことができる。
『へぇ、あのファイアーウォールを突破してくるとは、なかなか腕利きじゃねぇか』
『だが、この電脳空間では俺たちの方が先輩だってことを教えてやるぜ』
 猟兵たちの前に立ちふさがったのは、電脳空間での戦いに慣れた非合法のスラム・ハッカーたちだ。彼らはプログラムを用いて、サイバースペース内での攻撃力を高めたり、超加速をおこなったり、バグをばらまいて攻撃してくる。
 サイバースペース内で相手のアバターを撃破しても、本人の命まで奪うことにはならない。非合法のハッカーたちを撃破し、メガコーポのメインサーバーまでの道を切り開こう。
シャルロット・シフファート
成程ね、だけどこちらも教えてあげるわ
私は電脳魔術と精霊魔術を複合した魔術体系を操る魔術師、シャルロット・シフファート
そして『はじまりのアリス』たる『アリス・オリジン』よ

瞬間、私の背後にアウルム・アンティーカを模した変身バンクが具現化
アンタ達に見せてあげるわ、真なるワールドハックと言うモノをね!
『反証(アンプルーフ)』、なんてね?

変身バンクに飲み込まれると同時、砕け散るバンク
アルダワエネミー……フェーズワンと言う所ね
魔導楽器群が音響魔術を具現化し、電脳精霊術がそれを増強
一気に薙ぎ払ってあげるわ……アウルム・アンティーカ!




「成程、電脳空間の先輩、ね……」
『貴様、何がおかしい!?』
 金髪にアメジストの瞳を持ったシャルロット・シフファート(異界展開式現実改変猟兵『アリス・オリジン』・f23708)が浮かべた余裕の笑みを見て、スラム・ハッカーたちが殺気立つ。
『お前、その豪華な衣装に上品な立ち居振る舞い……それと高性能な電脳デバイス……。さては、どこかのメガコーポのお嬢様か?』
 スラム・ハッカーたちが勘違いするのも無理はない。このサイバーザナドゥでは大多数の住民はスラム街で暮らすような貧民たちであり、豪華な生活ができるのはメガコーポ関係者などのごく一部だ。さらに、シャルロットは実際に貴族の令嬢であり、その生まれと育ちからくる高貴なオーラは隠しきれるものではない。彼女の持つグリモアであるタブレット型の電脳端末『ダークブルー』は生まれとは関係のないものだが、どの世界に存在する電脳端末よりも高性能なものだ。スラム街――ダストエリアのゴミの中から拾い集めたジャンクパーツを使っているスラム・ハッカーたちの目から見たら、メガコーポが作った最新型電脳端末の試作機に見えたことだろう。
「あら、別に馬鹿にしたわけではないのだけど、そう見えたのなら失礼したわ。けれど、電脳空間を自在に操れるのはアンタたちだけではないのよ」
『テメェ、それはどういう意味だ!』
「私は電脳魔術と精霊魔術を複合した魔術体系を操る魔術師、シャルロット・シフファート。そして『はじまりのアリス』たる『アリス・オリジン』よ。――その力、教えてあげるわ」
 直後、シャルロットの持つ電脳端末が眩い光を放ち、電脳空間を書き換えていく。周囲に広がる無機質なポリゴン製の壁に蒸気が吹き出す金属パイプが走り、風景が蒸気迷宮へと変貌していく。それこそ、まさにアルダワ世界の地下に広がる、大魔王を封じるために作られた巨大な地下迷宮の姿だった。
『チッ、なんだかわからんが、その程度のプログラム、俺たちのハッキングの前では意味がないぜ!』
 スラム・ハッカーたちが腕に取り付けたキーボードを叩くと、サイバースペースをハッキングするプログラム――クレイジーワールドプログラムが実行される。それはサイバースペースをバグまみれのゲーム世界に変化させ、ゆっくりとした歩行でしか移動できない空間へと変貌させた。
『どうだ、動けなくなったところを、じわじわとなぶり殺してやろう』
「ふぅん、この程度でハッキングのつもり? アンタたちに見せてあげるわ、真なるワールドハックというモノをね! ――『反証(アンプルーフ)』、なんてね?」
 シャルロットが発動するのは、『蒸気の最果てに、我が希望は反証者の力を体現する(ホーププルヴァー・ウィズ・アルダワアークエネミー)』という能力だ。彼女の背後に現れるは、アルダワの大魔王の第一形態であるアウルム・アンティーカの姿。パイプオルガンのような配管を全身に張り巡らせた鋼鉄の魔王だ。その魔王がシャルロットを包み込むと、シャルロットのアバターを構築するポリゴンと融合していく。
『馬鹿な!? 空間をハッキングしてエネミーを召喚し……さらにそれと融合しただとっ!?』
「どうかしら、これがアルダワエネミー……フェーズワンというところね」
 驚愕するスラム・ハッカーたちに向かってシャルロット――否、アウルム・アンティーカが余裕の口調で告げると、その全身の魔導楽器群が音響魔術を奏でだす。魔王から放たれた音響魔術は電脳精霊術で増強されて、一気にスラム・ハッカーたちを薙ぎ払った。
『馬鹿な……、電脳空間で俺たちが負けるはずが……』
「相手が悪かったわね。私たち猟兵はアンタたちなんかに負けることはないわ」
 一歩も動くことなくスラム・ハッカーたちを撃破したシャルロットは、元の姿に戻ると、悠然とメインサーバーへと向かって歩き去っていったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

桐嶋・水之江
随分なお出迎えね
雇われハッカーかしら?
私としては別に戦いに来たわけじゃないのよね
この会社のメインサーバーをちょっと見せて貰いたいだけなのよ
だからここはひとつ、お互い出会わなかった事にしましょう
嫌?それは残念
でもその様子だと、あなた達ってどうせ薄給でコキ使われてるんでしょう?
休憩時間すら殆ど無いんじゃない?
毎日終電まで残業してもう何日も家に帰れてなかったりしない?
それどころか朝起きた瞬間から家に帰りたいなんて思ってたりするわよね?
可哀想に…その願いを叶えてあげる
はい強制送還波動で全員ニコニコ定時退社
やれやれ、末端の社員がこんな調子じゃ管理職の程度が知れるわね
私がこの会社の働き方を改革してあげるわ


愛天・真澄
撃破しても絶命に至らない、となりますれば。
…思う存分愛を捧げて差し上げられる、ということですわね!

というわけで搭載機銃より【制圧射撃】を繰り出し、今度は電磁波の【属性攻撃】による【継続ダメージ】を与えて参りましょう。
動きを止めた敵には主砲の【砲撃】にて全力の愛をお届け致します。

敵のユーベルコードが発動すれば、戦車での移動は不可能となりますが。
元より生身の敵相手に戦車が動く必要も無いのです。神の愛は全てを受け入れるのですから。
もし戦車の射角の外より近づいてくる敵がいれば、神への【祈り】を以て浄化の神雷を発動、雷を以て浄化致しましょう。


菫宮・理緒
『電脳空間では俺たちの方が先輩』?
舐めんな? 引きこもり舐めんな?(にっこり)

電脳空間で過ごした密度は、簡単には負けない自信があるよ。
それに、漏洩まではしないけど、情報の覗き見も趣味だったしね!(どやぁ

ま、そこで競ってもしかたない。
とはいえ、電脳空間を悪用するクラッカーまがいに負ける気はしないかな。

でも、またウイルスも芸がないから、今度はどうしようかな……?

そだ。今回はめんどくさい人がきたとき向けのこれだね!

あなたがこの世界にいるにはアバターが必要。
そのアバターを消去したらどうなるでしょう!

と、【等価具現】で相手のアバターを消し去るね。

正解は、電脳世界からの強制排除、でした!
さよなら、だよー。




 ファイアーウォールを突破した先は、サイバースペースのプライベートネットワーク領域――メガコーポ『アマテラス・カンパニー』のメインサーバーへと通じる領域だ。迷宮区画よりは広い通路を一台の戦車『Throne IV』がキュラキュラとキャタピラ音を鳴らしながら進んでいく。『愛天教会』の神の愛を広めるべく、愛天・真澄(愛神の使徒・f32265)が操縦している戦車である。
 そして、その戦車の上部装甲の上には、二つの人影が乗っていた。
「メインサーバーまで歩いて行くのかとウンザリしてたとこに、ちょうど戦車が通りかかって助かったわ」
「わたしも同感だ、ねー。この電脳空間、現実世界と同じくらいリアルなのは凄いけど、歩いたら疲れるところまで再現しなくてもいいのに。最近のゲームだったら、次のイベントシーンまで移動スキップできるのが普通なのにねー」
「あの、お二方? わたくしの戦車は乗り合いバスではないのですが……。まあ、これも神の愛ですわ。求めるのでしたら、神の名に於いて愛を与えましょう」
 真澄の戦車の上でのんびりと揺られているのは、桐嶋・水之江(機巧の魔女・f15226)と菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)の二人だった。ファイアーウォールを抜けて、てくてくとサイバースペースを歩いていた二人だが、インドア派の水之江と理緒が長距離の徒歩移動に文句を付けないはずがあろうか。サイバースペースをハッキングしてワープゲートでも作ったほうが楽なのでは、と意見が一致した時、偶然通りかかったのが真澄の戦車なのだった。
「そうね。捨てる神あれば拾う神あり、というやつよね。まあ神は私だけど」
「けどほんと、助かった、ねー。もうちょっとでサイバースペースにブラックホールを作り出すところだったよー」
「……やはり、神の愛は偉大ですわね。早くもこのサイバースペースを滅びの危機から救ってしまいましたわ」
 軽くサイバースペース崩壊の危機を乗り越えた3人の猟兵たち。だが、彼女たちを待ち受けていたのは、無数のスラム・ハッカーたちだった。

『ヒュー。このサイバースペースに戦車を実体化させてるヤツがいるぜ?』
『まさか本物の戦車をダイブさせたわけじゃねぇだろうから、戦車型の攻性プログラム持ちだろうが……こいつはレアなプログラムだよな』
『戦車の上に乗ってる女たちのデバイスも上物だ。クライアントからは侵入者の所有物については何も言われてねえよな。身ぐるみ剥いでいただいちまおうぜ』
 スラム・ハッカー。身体にジャンク品のデバイスを取り付けて無理やり電脳改造したダストエリアの住人たちは、猟兵たちをまるで狩りの獲物のように品定めしてくる。サイバースペースで倒した相手から装備やプログラムを奪うこと、それが彼らが地獄のようなサイバーザナドゥを生き残るために選んだ生き方なのだ。だが、悪しきメガコーポに雇われた彼らを看過することはできない。

「あら、随分なお出迎えね? メガコーポに雇われたハッカーかしら? けど、私としては別に戦いに来たわけじゃないのよね」
『ああん? サイバースペースのこんな奥まで攻性プログラムの戦車で乗り込んできて、戦うつもりはない、だとぅ?』
 水之江の言葉に、スラム・ハッカーが怪訝そうな声を上げる。
「あ、これはただの乗り合いバスよ。歩くのは疲れるから乗せてもらってきたの」
「ですから、わたくしの『Throne IV』は乗り合いバスではありませんですわ」
「私はこの会社のメインサーバーをちょっと見せて貰いたいだけなのよ。だから、ここはひとつ、お互い出会わなかった事にしましょう? そうすれば痛い目を見なくて済むわよ?」
 真澄の抗議の声をさらりと流した水之江に、スラム・ハッカーが電脳ゴーグルを向けながら舌なめずりする。その視線が向けられているのは、水之江が身につけたボディラインがはっきりと出る『ライダードレス』――キャバリア操縦補助用のスーツにしてサイバースペースでの演算補助にも利用できる強化服だった。
『へっ、その戦車のことを差し引いても、アンタのそのサイバーウェアを構築するプログラムは高値で売れそうだ。タダで返してやる義理はねぇな』
「あら、これに目を付けるとはお目が高いわね。今ならお安く提供するわよ。――けどまあ、あなたたちって、その様子だとどうせ薄給でコキ使われてるんでしょう? そのお給金じゃ、手が出ないお値段だと思うけれど。そうねえ、ちょっと人体実験――じゃなかった、新兵器の実験に協力してくれるのなら、特別価格で譲ってあげてもいいけれどね?」
『ちぃっ、言わせておけば――! 電脳空間では俺達の方が先輩だってことを思い知らせてやるぜ!』
 水之江の言葉に熱くなったスラム・ハッカーたちが腕のキーボードデバイスに指を伸ばした瞬間――。思いも寄らない方向から抗議の言葉が響いた。

「かっちーん。『電脳空間では俺たちの方が先輩』? 舐めんな? 引きこもり舐めんな?」
「あ、あの、菫宮さん、一体なにが? お悩み事がありましたら、わたくしが神の愛でお聞きしますわ」
 スラム・ハッカーの言葉が何か地雷を踏んでしまったのか、突如として理緒が仏のような笑顔で毒を吐き始めた。これには思わず真澄も神の愛を説きたくなってしまうほどだ。だが、理緒はドヤ顔でスラム・ハッカーたちに薄い胸を張って告げる。
「引きこもりだったころに電脳空間で過ごした時間と密度は、簡単には負けない自信があるよ。それに漏洩まではしないけど、情報の覗き見も趣味だったしね! 今だって、あんなとこやこんなとこに隠しカメラ仕掛けてあるしね!」
『ふん、その年齢で俺たちよりも電脳空間慣れしてる自信があるってのか!? ハッタリはよせ!』
『いや、待て。あのアバターの電脳ログイン時間を見てみろ……!』  
『なん……だと……!? 俺たちをはるかに超える合計ダイブ時間……!? 電脳空間の女神か!?』
「ふっふーん、ようやく、わたしの凄さがわかったみたいだね! けどま、そこで競っても仕方ないかな。電脳空間を悪用するクラッカーまがいには、電脳空間の先輩としてお仕置きしちゃう、よー」
「菫宮さん、『電脳空間の先輩』という言葉がよっぽど許せなかったのですわね……」

『ちぃっ、あれは触れちゃいけない存在だ……! 先に戦車タイプの攻性プログラムからやるぞっ!』
『おうっ! さっきから聞いてりゃ、あの戦車に乗ってる女、どうやらお優しい性格みたいだぜ。神の愛とやら、ダストエリアに住む俺たちにも等しく与えてくれるんだろうなあ!?』
 水之江と理緒を怒らせたら危険な人種と判断したスラム・ハッカーたちは、先程から温和な声でツッコミを入れているおとなしそうな少女、真澄へとターゲットを変えた。その腕部に装着しているキーボード型デバイスを操り、『クレイジーワールドプログラム』によるバグによって、真澄の戦車の移動速度を低下させてくる。――だが、ハッカーたちは気付いていなかった。戦車は攻撃するために移動する必要などないことに。
「みなさまがサイバースペースへのダイブに用いているのは電脳アバター。すなわち、撃破しても絶命には至らないということですわね。そういうことでしたら、思う存分、神の愛を捧げて差し上げられるということ。ええ、ダストエリアに住まおうと、悪しき企業に手を貸していようと、わたくしの神の愛は分け隔てなく注がれるのですわ」
 『Throne IV』の操縦席に座ったまま、真澄は戦車に搭載された機銃のトリガーに指をかけ、にっこりと天使のような微笑みを浮かべ――スラム・ハッカーたちに向かって容赦なく12.7mm弾の雨をバラ撒いた。まるで一方的な虐殺をおこなうかのような暴力的な制圧射撃により、スラム・ハッカーのアバターがポリゴン片を撒き散らしながら粉々に砕け散っていく。
『ちょっと待てーい!? いくらアバターだっていっても電脳と直結していて、痛みもあるんだぞ! 現実空間の肉体に後遺症が残ったらどうするつもり……』
「あら、神の愛を避けたら、めっ、ですわよ?」
 粉々に砕け散った仲間のアバターに駆け寄ったハッカーへと、真澄は戦車に搭載されたテーザーガンを放つ。戦車から伸びたワイヤーから高圧電流を流されたハッカーは身体を痺れさせて、その場に倒れ込んだ。
「まあ、神の愛を受け入れるつもりになったのですわね! なんて喜ばしい!」
『いや……待て……身体が痺れて……』
 倒れ伏し、身動きができないハッカーに対して、真澄は戦車の主砲『Imperium 88』を向ける。そして無慈悲に――真澄によれば慈悲深く――戦車砲という全力の愛を叩き込んだ。轟音と共に、スラム・ハッカーの電脳アバターは木っ端微塵に吹き飛んでいった。

 その光景を呆然と眺めていた、その他大勢のスラム・ハッカーたちは、ようやく事態を認識した。
『『『この三人、全員やべぇ!』』』

「あら、この天使のような私に向かって、ヤバいってどういうことかしら? 休憩時間すらなく、毎日終電まで働かされて、ちょっと目が悪くなっちゃったのかしらね? それとも何日も会社に泊まり込みでデスマーチさせられて、私がお迎えに来た天使に見えちゃったのかしら?」
「電脳空間の先輩に向かってその口の利き方。やっぱり、ちょっとどっちが立場が上か、教えてあげないとだ、ねー。でも、またウィルスも芸がないからどうしようかな……?」
「あら、まだ神の愛を受けていない方々がこんなにたくさん。慌てなくても全員に等しく神の愛を注ぎますから、安心してくださいね」
 水之江、理緒、真澄は、三者三様の笑顔をスラム・ハッカーたちに向ける。――真澄は戦車に乗っているので顔は見えないが、口調とオーラからどんな顔をしているかは容易に想像がついた。

「あなたたち、お仕事がつらくて、もう朝起きた瞬間から家に帰りたいなんて思ってたりするわよね?」
『え、いや、別にそこまでじゃあ……』
「――するわよね? 可哀想に……その願い、叶えてあげるわ」
『この女、人の話を聞いてねえ!?』
 水之江は手に持った杖状のデバイスを頭上に掲げた。槍のように展開したデバイスからは周囲に波動が放たれていく。
『な、なんだ、この見るからにヤバそうな波動はっ!?』
「はい強制送還波動で全員ニコニコ定時退社よ。大人しく帰るか、それとも桐嶋技研でキリキリ働くか、どちらを選ぶことね」
『ふん、その程度の脅しで、俺達が尻尾を巻いて逃げ帰ると思ったら大間違いだぜ?』
 自信満々に答えるハッカーたちだが、水之江が放ったのは強制送還波動(ワープドライブウェーブ)だ。その波動を受けたスラム・ハッカーたちは、ダストエリアにある棲家へ転移させられるか、もしくは桐嶋技研で地獄のような強制労働をさせられる未来図を見せられることになる。桐嶋技研での強制労働、それは筆舌に尽くしがたいほどの阿鼻叫喚の地獄絵図であり、その未来図を見せられたハッカーたちは心に深い傷を負っていく。
『こ、こんなところで働くことなんかできるかーっ!』
 心を折られたハッカーたちは、強制送還波動でダストエリアへと逃げ帰っていった。
「やれやれ、末端の社員がこんな調子じゃ、管理職の程度が知れるわね。私がこの会社の働き方を改革してあげるわ。サイボーグやレプリカントなら24時間働けるのだから、まずは労働時間を24時間にするところから着手かしらね。そうすれば、あら不思議。人件費は変わらないのに生産性2倍ね!」
 邪悪な笑みを浮かべる水之江であった。

 一方、別のハッカー集団には理緒がにっこりとした笑みを向けていた。
「そだ、電脳空間の後輩のみんなに、先輩のわたしが手品をみせてあげる、ねー。電脳空間にダイブするにはアバターが必要だよね。さて、ここで問題です。そのアバターを消去したらどうなるでしょう?」
 にっこりと先輩顔をした理緒が、周囲に0と1からなる高密度の電脳魔術を展開する。それは等価具現によって生成された、スラム・ハッカーたちのアバターと対消滅するように組まれたプログラムだ。
『えーと、センパイ……まさか、そのプログラムを……?』
「ピンポーン。これで実験してみよっか!」
『それ、手品じゃないしーっ!』
 理緒によって無造作に放たれた等価具現の電脳プログラムは、スラム・ハッカーたちのアバターに触れると、それをソースコードレベルで分解し電脳空間から消滅させた。
「とゆーわけで、正解は電脳世界からの強制排除、でした! ふふーん、先輩の偉大さ、わかったか、なー?」
 電脳空間でアバターを消滅させられたスラム・ハッカーたちもまた、ダストエリアへと強制送還されたのだった。

 水之江と理緒によって多数のスラム・ハッカーたちがサイバースペースから強制送還されていった。そして残されたスラム・ハッカーたちに向けられるのは、戦車に乗った真澄の温和な笑顔だ。
『あいつら、最後に死ぬほどの恐怖を感じて消えていったな……』
『……だが、俺たちよりはマシな最後かもしれないぞ』
「あら、この場に残ったのは、あなたがただけですか? 仕方がありません。せめてあなたがただけにでも、全力の神の愛を捧げましょう」
 スラム・ハッカーたちに、死刑宣告にも等しい真澄の声が降りかかる。ミッション系の学生服を着た真澄は、豊満な胸の前で両手を組むと、戦車『Throne IV』の中で神への祈りを捧げ始めた。
「神よ、かの悪心をお浄めくださいませ。――全ては神の愛で浄化されるのです」
 戦車の防塵ガラス越しに真澄の視線がスラム・ハッカーたちを捉える。それは浄化の神雷(ステンレス・ライトニング)という神の奇跡。電脳空間であるというのに上空に黒雲が生じ、そこから激しい轟音とともに稲光が降り注いでいく。
『ぎゃああああああっ!』
 落雷の直撃を受けたスラム・ハッカーたちは、全身に装着した電脳デバイスを経由して現実世界の肉体の神経をも高圧電流に灼かれた。そのままアバターをぴくぴくと痙攣させながら、電脳空間から消えていったのだった。
「ふう、これで彼らも神の愛を忘れないことでしょう」
「うーん、私が言うのもあれだけれど、愛天さんって、あれよね……」
「うん、あれだよ、ねー」
 いい笑顔を浮かべる真澄に対し、水之江と理緒が五十歩百歩のツッコミを入れるのだった。

 こうして、戦車に乗った3人の旅は続く。

「いえ、わたくしの戦車は乗り合いバスではないのですけれど?」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
ネットワークへの不法侵入
騎士を志す身としては、少々肩身が狭い心持ちもいたしますが…
伏魔殿たる『アマテラス・カンパニー』攻略の為、押し通らせて頂きます

電脳空間での戦闘は此方も覚えがありますとも
簡単に捉えられると思わぬ事です

瞬間思考力にて相手の次の挙動や攻撃の射線を見切り、脚部スラスターの推力移動も併用しつつ攻撃を回避
振るう剣や盾にて当たるを幸い薙ぎ倒し

…直接戦闘では勝てぬとクラッキングを仕掛けてきましたか

相手の憑依UCに対しUCで反撃
不正ハッキングをトレース
電気信号を逆流させ相手の思考中枢を「焼き切り」

其方の脳まで灼く積もりは御座いません
身代わり防壁までで済ませましたが…次はありませんよ




 迷宮と迎撃プログラム、そしてファイアーウォールによって強固に守られた領域を機械の白馬『ロシナンテⅡ』に跨って踏破したのは、ウォーマシンにして白銀の騎士たるトリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)だ。サイバースペースを照らすライトを鋼の身体で反射させた騎士は、馬上で大盾と槍を構えながら『アマテラス・カンパニー』のメインサーバーを目指してプライベートネットワーク区画を疾走していく。
「騎士を志す身でプライベートネットワークへの不法侵入とは、少々肩身が狭い心持ちがいたしますね……。電子頭脳を持つ身としてはネットワークへの不法侵入は他人の心の中を覗いているも同じ行為……。ですが、その身の中に悪鬼を住まわせる伏魔殿たる『アマテラス・カンパニー』の悪事を見逃すわけには参りません。このまま押し通り、『アマテラス・カンパニー』の頭脳ともいえるメインサーバーから動かぬ証拠を手に入れてみせましょう」
 自身も機械の身体と電子の頭脳を持つトリテレイア。彼にとって、この電脳空間は『アマテラス・カンパニー』という巨大な生命体の脳内にも感じられるのかもしれない。ましてや、正々堂々を是とする騎士としては、サイバースペースへの不法侵入は心苦しいものがあるに違いなかった。しかし、その一方で世界を混乱に陥れている巨大企業群の一角『アマテラス・カンパニー』を放っておいたら、サイバーザナドゥの多くの人々が苦しめられることは想像に難くない。それを看過することもまた、騎士としてはできないことなのだ。
 矛盾した思考の衝突により電子頭脳に複雑なノイズを走らせるトリテレイア。その目の前に立ちふさがったのは、全身にジャンクパーツを装着したアバター姿のスラム・ハッカーたちだった。
『ヒュー、あの全身武装したサイボーグ、デスブリンガーかねぇ?』
『へっ、現実世界でデスブリンガーなんかに出会った日にゃ、全財産置いてトンズラするとこだが……ここは俺たちのフィールド、サイバースペースだぜ。ここじゃ俺たちの方が強いってことを見せてやろうじゃねぇか』
「……おや、私の外見で誤解を与えてしまいましたか」
 スラム・ハッカーたちは、腕に装着したキーボードを叩くと、自身のアバターのリミッターを解除し電脳空間での稼働限界を突破させた。アバターの腕部が肥大化し、巨大な拳がハンマーのように次々とトリテレイアに振り下ろされる。
『おらぁ、スクラップになっちまいなぁっ!』
「……成程。確かに人間の情報処理能力の限界近い一撃ですが――私の電子頭脳の演算能力を持ってすれば軌道を見切るのは造作も無いことです」
 スラム・ハッカーたちが次々と繰り出してくる限界超えの一撃を前に、ロシナンテⅡから降りたトリテレイアは脚部スラスターを全開にした。瞬間的に吹き出した推進剤の推力により、激しい轟音と爆煙が電脳空間に巻き起こる。トリテレイアの身体を捉えるかに見えたハッカーたちの攻撃は、一瞬で姿をかき消したトリテレイアに掠りもしなかった。
『なんだ、今の爆発!?』
『っていうか、ヤツはどこに消えた! ウスノロのデスブリンガーじゃなかったのかっ!?』
 周囲を見回しながら混乱するスラム・ハッカーたちを横目に見ながら電脳空間を疾駆するトリテレイアは合成音声でつぶやく。
「私も電脳空間での戦闘には覚えがあることをお見せしましょう」
 サイバースペースをまるで飛ぶように駆けていたトリテレイアは、脚部に内蔵されたパイルを地面へと撃ち出した。勢いよく飛び出した杭はポリゴンの地面に突き刺さり、トリテレイアの右足を地面に縫い付ける。そのままスラスターの噴射を続けると、トリテレイアの身体は右脚を軸に回転し――スラム・ハッカーたちの方向を向いていく。そしてその瞬間、右足を固定していたパイルが抜かれ、機械の身体はスラム・ハッカーの集団へと向かって弾丸のように飛んでいった。
「これが騎士の機動戦術です!」
『なっ、なんだっ、このスピードっ!』
『あんな重装備で急ターンとか……バケモノかっ!?』
 トリテレイアが振るう大盾や剣によって、スラム・ハッカーたちは次々と吹き飛ばされていく。反撃で振るう拳も、縦横無尽なスラスター機動をおこなうトリテレイアには当たらない。
『くそっ、こうなったら奥の手だっ!』
『おうっ! 自分の力で自滅するんだなっ!』
 接近戦では敵わないと悟ったスラム・ハッカーたちはトリテレイアから大きく距離を取り、全方位から包囲するような陣形をとる。これならば突撃されて一気に殲滅させられる恐れはない。そして全身のジャンクパーツをスパークさせながらサイバースペースに介入する。――電脳アクセスによりトリテレイアをクラッキングし、クラッシュ・プログラムをウィルスとして利用する戦法だ。
『このプログラムは肉体を暴走させる。せいぜい3回攻撃できるかどうかってとこだな』
『ああ、それ以上動けば、てめえは死ぬぜぇ!』
「……直接戦闘では勝てぬとクラッキングを仕掛けてきましたか。そちらがそのような手段を取るのでしたら、私も容赦はいたしません。上級攻性防壁、起動!」
 スラム・ハッカーたちがサイバースペースを介してトリテレイアの電脳へ侵入しようと迫りくる。だが、トリテレイアが起動したのは、銀河帝国護衛用ウォーマシン・上級攻性防壁(ファイヤウォール)。ハッキングによる不正アクセスを逆に辿り、侵入者の脳を焼き切る攻性プログラムだ。
『ぐわああああっ!』
『ぎゃあああっ!』
 トリテレイアの電脳をクラッキングしようとしたスラム・ハッカーたちが、脳内を灼かれるような痛みに頭を抱えて地面を転がりのたうち回る。そのまま放置すれば、アバターの脳だけではなく、現実世界の本人たちの脳までも焼き尽くされることだろう。
「私の生まれた星の海では、電脳同士の電子戦も日常茶飯事でした。相手の電脳に踏み込んでいいのは、自分もまた電脳を灼き切られる覚悟のある者だけ――。まあ、此度は脳まで灼く積りは御座いません。身代わり防壁までで済ませましたが……次はありませんよ」
 攻性防壁プログラムを解除したトリテレイアは、倒れ伏すスラム・ハッカーたちを一瞥するとロシナンテⅡに跨り、『アマテラス・カンパニー』のメインサーバーへと向かうのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

四季凪・アルブス
できるだけ急ぎたい所だけど
ハッキングはあちらの方が上手だから、慎重にいかないと…

ハッキングされて、色んな意味でわからさせられたくはないしね…

リーリーとパックを稼働させながら
利用できそうなら先の迷路で改造したドローンやロボットも戦闘に参加させ
フリーに動ける相手を出さないように攻撃させるよ

(改造ドローンとロボットが利用できない場合は私とリーリーとパックで敵を各個撃破していくよ)

私もMF-119カスタムで攻撃しながら
こちらの被害をできるだけ抑えられるように
みんなをアンプルバレットシュートで治療、強化していくよ
対ハッキング用プログラムも入れた修理、改造用ナノマシンのアンプル弾が通用するといいんだけど…




 ファイアーウォールを突破した先に広がるプライベートネットワーク領域のサイバースペースを、無数のドローンや機械兵たちを引き連れた少女が歩いていた。身につけたネイビーブルーの特徴的なジャケット『セイバーズテックウェア』はメガコーポに対する反抗の象徴であり、学生の自由と個性を守る『アライアンス・オブ・ステューデンツ・セイバーズ』の一員である証。
「できるだけ急ぎたいところだけど、慎重にいかないと……」
 真面目そうな表情で周囲を見回す銀色の髪の少女は、メディックにしてメカニックたる四季凪・アルブス(白銀のStudent's-Savior・f36546)であった。ここはもう敵地深く。いつ敵の襲撃があってもおかしくない――そう緊張するアルブスの肩に、機械のアームが触れた。
「ひゃああっ!?」
 思わず悲鳴を上げながら飛び上がったアルブス。唯一人間の姿と異なる部分である狐の耳と尻尾の毛が逆立つほどの驚きようだ。――だが、その機械アームが自身の相棒たるリペアドローンのリーリーと、ガンナードローンのパックのものだと気づき、ほっと胸をなでおろした。
「そっか、二人とも、私のことを心配してくれたんだね」
 まだ驚きでドキドキしている心臓の鼓動を感じ、きっと現実世界の身体も同じようにドキドキしているのだろうと考えながら、機械の仲間を引き連れた少女は通路を進んでいく。

 だが、サイバースペースを進むアルブスの前に、全身をジャンクパーツで拡張したようなアバターのスラム・ハッカーたちが立ちふさがった。アルブスを見つめる瞳は、まるで獲物を見つけた肉食獣のよう。スラム・ハッカーたちは、舌なめずりをするようにアルブスに言葉を告げる。
『ひゃははは、見ろよ、あの服。どうやら『セイバーズ』の一員みたいだぜ?』
『いつも、メガコーポから受けたハッキングの仕事の邪魔をしてくるアイツらの一味か……』
『けど、今回は小娘一人だ。ハッキングして分からせてやろうぜぇ。色々な意味でなぁ』
 スラム・ハッカーたちはハッキングプログラムを起動しようと、腕に取り付けたキーボードへと指を伸ばしていく。だが、アルブスもこのまま黙ってハッキングを受けて分からされるつもりはない。
「たとえハッキングではあなたたちの方が上だとしても、みんなを守り救うために『アマテラス・カンパニー』の悪事は許さないよ。お願い、みんな……!」
 アルブスは、相棒のリーリーとパック、そしてさらに迷宮区画で仲間にしたドローンやロボットたちに命令を下す。機械の兵団はレーザーを放ち、電脳の銃弾を撃ち、スラム・ハッカーたちにハッキングの隙を与えまいとする。
『ちぃっ、コイツら、ここの迎撃プログラムたちか!』
『『セイバーズ』のお嬢様が、俺たちハッカーの真似事とは生意気なっ!?』
 いかにハッキング能力が高いハッカーたちといえど、多数のドローンやロボット、さらに高性能ドローンのリーリーとパックたちに一斉攻撃されては、防戦に徹さざるを得ない。
「今だよ、みんなっ、相手が自由に動けないように包囲して、一気に倒しちゃうよっ!」
 アルブスの指示でドローンやロボットたちがスラム・ハッカーを包囲するために動こうとし――。スラム・ハッカーたちが、にやりと笑みを浮かべた。

『へっ、さすがはお嬢様。セオリー通りの戦術だな』
『だが、こういうバグ技を食らったらどうかなっ!?』
 ハッカーたちの全身に装着されたジャンクパーツで増幅されたプログラムが、サイバースペースそのものを浸食し書き換えていく。それは、サイバースペースをバグまみれのゲーム世界に変化させるクレイジーワールドプログラムだ。電脳空間の各所にノイズじみたバグが生まれていく。
「きゃあっ……」
 アルブスの左手と右足がノイズまみれの空間に包まれる。さらにドローンやロボットたちも、ノイズの中に飲まれていってしまった。
『へっへっへ、観念するんだな。それは俺たちがハッキングでバラ撒いた行動阻害のバグだ』
『どうだ? ゆっくりと歩くくらいしかできねぇだろう。お前の頼みの綱の迎撃プログラムたちも、バグに飲まれて動けなくなってるぜ』
「そんな……」
 アルブスが身体を動かそうとしても、左手と右足はまるでノイズまみれの空間に固定されたかのようだ。強引に空間ごと動くことは可能だが、ハッカーたちが言うようにゆっくりと歩くくらいの速度が限界だ。仲間のドローンやロボットたちも同様の状況のようで、アルブスの元へ駆けつけようとしても、ゆっくりと動くことしかできていなかった。
『それじゃあ電脳空間の先輩である俺たちが、お嬢ちゃんをハッキングしてやろうか』
『なぁに、ちょっとその脳の中の記憶を隅々まで覗かせてもらうだけさ。その後は俺たちの従順な手下っていう記憶を植え付けてやるから安心しな』
 下卑た笑みを浮かべながら、じりじりとアルブスへと近づいてくるハッカーたち。彼らは相手の脳をハッキングするための有機ケーブルを手に持ってアルブスへと伸ばしてきて――。
 それをアルブスが決意のこもった瞳で見つめ返した。

「けど、私は負けないよっ!」
 アルブスは自由に動く右手でハンドガン『MF-119カスタム』を引き抜くと――その銃口を仲間のドローンやロボットたちに向けて引き金を引いた。
『へっ、どこを狙ってやがる。驚かせやがって……』
「いえ、狙い通りだよ。それはアンプルバレットシュート――対ハッキング用プログラムが入った弾丸なんだよ」
 アルブスが放ったアンプル弾は、ドローンやロボットたちに命中すると、対ハッキングの効力によってノイズまみれのバグ空間を無効化。さらにナノマシンによって仲間を修理、強化改造していく。ハッキングによるバグがなくなれば、ドローンやロボットたちに敵はない。
『ぐ、ぐわぁあああっ』
『ぎゃあああっ』
 強化されたレーザーや銃弾によって、スラム・ハッカーたちのアバターがバラバラのポリゴン片へと変わっていき、アバターを消滅させられたハッカーたちが続々と強制ログアウトさせられていく。
『おい、このままじゃまずいぜ!』
『ちくしょう、こうなったら、命令を出してるお前を強制ハッキングしてやるぜ!』
 アルブスを強引にハッキングしようと手を伸ばしてくるハッカーたち。だが、その腕は機械のアームにがっしりと掴まれアルブスに届くことはなかった。――それは、アルブスの相棒のドローンであるリーリーとパックの内蔵アームだ。
「リーリー、それにパックも……!」
 主を危険に晒したハッカーたちを許すつもりはないとばかりに、リペアドローンのリーリーは修理用の小型ドリルや高振動カッターでハッカーのアバターを修理(はかい)する。ガンナードローンのパックに至っては、装着された実体弾とレーザーを射撃してハッカーのアバターを塵に返した。
「ありがとう、リーリー、パック、それにみんな……」
 仲間たちに笑顔を向けたアルブスは、邪魔するハッカーたちがいなくなった区画を抜け、メインサーバーへと向かったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『ガランド・クレメンテ』

POW   :    『シゅウり ヲ かイし シまス』
自身の【修理した機械兵の大軍】ひとつを用いた行動・攻撃の威力を3分間3倍にする。終了後[修理した機械兵の大軍]は【自動発動する自爆装置】により破壊される。
SPD   :    『わタし ハ しュうリ を スるダけ デす』
対象にひとつ要求する。対象が要求を否定しなければ【心身の自由と思考力・判断力】、否定したら【逃走手段と戦闘手段】、理解不能なら【理性と正気】を奪う。
WIZ   :    『シゅウりヲしュうリをシゅウりヲしュうリを――』
【この世界の何処かにある廃棄場のひとつ】に封じた【様々な材料・廃棄された機械兵等】と合体し、あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になる。ただし解除時にダメージを全て受ける。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は穂積・直哉です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 ついに『アマテラス・カンパニー』のメインサーバーへと到達した猟兵たち。そこは高層ビルの最上階にある大きな部屋だった。社長室を模した部屋の、一面ガラス張りになった窓の向こうには、高層ビルから見下ろすサイバースペースの風景が広がっている。メインサーバーが社長室のような形状として実体化しているのは、ここにそれだけ重要な情報が収められていることを意味していた。
『しンにュうシゃ ヲ はッけンしマしタ』
 社長室として電脳空間に実体化したメインサーバーに待ち受けていたのは、機械人形の姿をとったメンテナンスプログラムのオブリビオン、『ガランド・クレメンテ』。空中に浮かび上がらせたホロディスプレイに警告文を表示しながら、メンテナンス――すなわち、不正アクセスをおこなっている猟兵たちを排除しようとしてくる。

 猟兵たちの目的は、メインサーバーである電脳空間の社長室から『アマテラス・カンパニー』の悪事の証拠を入手することだ。また、上手く探せば巨大企業の犯罪データ以外にも、別の情報が見つけられるかもしれない。
 メインサーバーを守る『ガランド・クレメンテ』と戦いながら、社長室に隠された情報を手に入れて欲しい。

●情報の入手について
 この章をクリアすると自動的にグリモア猟兵に依頼された犯罪データを入手できたことになります。
 また、それ以外に、一人につき一箇所で追加の情報を探すことができます。(特に指定がなければ、犯罪データをその分多く入手できたこととします)

 社長室を模しているだけあり、このメインサーバーには『アマテラス・カンパニー』の様々なデータが転がっています。闇取引のデータのような簡単な情報ならば、そのあたりに散乱する書類を調べることで入手可能です。一方、メガコーポでも最高機密にあたるCEO(最高責任者)の個人情報などは見つけることはほぼ不可能でしょう。
 ・探す情報(重要度が低ければ見つけやすく、機密情報ほど見つけにくい。また、具体的な情報を探す方が情報入手の成功率が上がります)
 ・探す場所(情報と合致した場所を探すと情報入手の成功率が上がります。社長室にありそうな場所や物はだいたいあります)
 ・『ガランド・クレメンテ』との戦闘内容(情報収集に役立つ戦い方だと情報入手の成功率が上がります)
 を総合して難易度を設定し、ダイス判定で情報を手に入れられたかを決定します。

 なお、特に重要な情報を見つけることに成功した場合には、今後のサイバーザナドゥの公式展開に影響を与える可能性があります。
桐嶋・水之江
これが最後の障害…使い古されてるわね

機械を取り込んで自己再生するのね
なら予め取り込む機械に機巧感染を仕込んでおくわ
流すプログラムは機能掌握よ
UC発動中は動けない…でも解除したらウィルスに乗っ取られる…さあどうする?
掌握に成功したら情報を全部抜き出すわよ

私の方は社長さんの机の捜索をしましょうか
狙う情報はお金の入出記録よ
資金の流れを見て組織間の繋がりや人間関係を探るのよ
この会社の役員との交渉材料にもなるでしょうからね
身内が身内に対して不正をしてる場合もあるんじゃない?
それと上層組織への上納金を少なくする為売上を低く見せ掛けてるとか
お金絡みとなれば握られると面倒なネタなんて幾らでも出てくるわよ




 サイバースペースに屹立する巨大なタワービル。メガコーポ『アマテラス・カンパニー』の本社ビルを模した仮想の建造物の最上階にたどり着いた桐嶋・水之江(機巧の魔女・f15226)は、一面がガラス張りになった室内に足を踏み入れた。広い窓ガラスからは、広大なサイバースペースが地平線の彼方まで見渡せる。
「ふぅん、さっすがは社長室だけあって、まさに悪徳企業のトップが地上を見下ろしながら『見ろ、人がゴミのようだ』とか言っていそうな悪趣味な部屋よね。まあ私が社長の椅子を奪ったら真っ先にそれやるけれど」
 現実空間であれば社長室に相当するその場所こそ、サイバースペースにおける『アマテラス・カンパニー』の最重要施設であるメインサーバーが実体化したものだ。社長の机と椅子や、応接セット、様々な装飾品などが置かれながらも、かなりの広さを誇る広大な部屋だ。――十分に戦闘がおこなえるほどに。

 だが、当然ながらそれだけの重要施設が無防備であるはずがない。
『しンにュうシゃ ヲ はッけンしマしタ』
 水之江の前に立ちふさがったのは、ホロディスプレイに警告文を浮かび上がらせた継ぎ接ぎだらけの機械人形『ガランド・クレメンテ』。メインサーバーのメンテナンスをおこなう『アマテラス・カンパニー』のオブリビオンである。
「なるほど、これが最後の障害というわけね……。随分と使い古されているようだけれど」
『しンにュうシゃ ハ はイじョ しマす』
 ホロディスプレイに赤い文字を表示する『ガランド・クレメンテ』は、サイバースペースに無数の機械兵器を実体化させ始める。それらはサイバーザナドゥにある廃棄場からサイバースペースにダイブさせた、スクラップの機械兵たちだ。
『シゅウりヲしュうリをシゅウりヲしュうリを――』
 そう表示しながら、『ガランド・クレメンテ』は機械兵器たちと融合し、自己の機械の身体を再生強化していく。まるで鋼鉄の鎧を着込んだかのような今の『ガランド・クレメンテ』が相手では、生半可な攻撃ではその本体までダメージが通らないだろう。

 しかし、その様子を見る水之江の顔には不敵な笑みが浮かんでいた。
「機械を取り込んで自己修復、自己進化するのね。けど残念だったわね。この周辺にはすでに私の『蝕む機巧感染』のナノマシンを散布済みよ。――そんな中でスクラップを取り込んだらどうなるかしらね?」
『あラーと。 いブつ ノ しンにュう ヲ けンち。 キんきュう モーど キどウ』
 スクラップの機械兵器と同時に水之江が散布していたナノマシンを体内に取り込んでしまったことに気付いた『ガランド・クレメンテ』は、とっさに自身のメインシステムへの侵入経路に防壁を展開する。だが、水之江のナノマシンは、すでにウィルスとして『ガランド・クレメンテ』の全身を浸食しつつあった。
「あなたが取り込んだナノマシンに仕込んでおいたのは、機能掌握プログラム。――これに感染したら最後、生かすも殺すも私次第よ。すでにあなたの身体の9割は掌握させてもらったわ」
 あらゆる攻撃に対してほぼ無敵になる『ガランド・クレメンテ』の機械融合能力だが、それは直接的な攻撃に対しての話だ。サイバースペースに実体化させて融合したスクラップ機械だけでなく、今や『ガランド・クレメンテ』本体はほとんど水之江によって支配されていた。ぎりぎり首より上の電子頭脳部分だけはウィルスの侵入を防いでいる状況だ。
「どうかしら、指一本動かせないでしょう? それでは、ゆっくりとその電子頭脳に記録されている情報を抜き出させてもらおうかしら♪」
 マッドな笑顔を浮かべた水之江が、両手をわきわきわせながら『ガランド・クレメンテ』へと歩み寄り、その頭にケーブル付きの電極をぶっ刺していく。ケーブルの反対側は水之江の首筋に有機接続されており、脳に埋め込まれた超小型量子コンピュータ『ラジエル』に繋がっている。電子的介入に特化した『ラジエル』は『ガランド・クレメンテ』の電子頭脳にアクセスすると、その脳内情報を高速スキャンしていった。
「うーん、見た目と同じで電子頭脳もかなり古いみたいねぇ。メモリがところどころで破損していて読めない領域が多いし――それにメンテナンスプログラムだけあって、特に機密情報なんかは知らなそうねぇ。――ま、オブリビオンの思考データというだけでも大収穫よね♪」
 水之江が脳内スキャンを終えると同時に、『ガランド・クレメンテ』のスクラップ機械兵器たちとの融合が解除される。ポリゴン片に砕け散り、現実世界へ送還されていくスクラップ機械兵器たち。光を反射し輝くポリゴンの欠片に照らされながら、『ガランド・クレメンテ』は一時的にサイバースペースから姿を消したのだった。

「さーて、あとはゆっくりと情報の捜索ね。こういう時は社長さんの机とかが怪しいわよね」
 邪魔なオブリビオンを排除した水之江は、窓際に置かれたアンティーク調の木製の机に悠々と近づくと、黒い革張りの椅子に腰を下ろし脚を組んで座る。それはまさに遣り手の女社長といったような雰囲気であり――。
「狙う情報はお金の入出記録よ。資金の流れを見て、組織間の繋がりや人間関係を探るのよ。それが分かれば、この会社の役員との交渉材料にもなるでしょうからね。ふふ、いつかこの世界の本物の社長の椅子に座って、私の開発した兵器を闇で売りまくってやるわよ」
 不穏な言葉をつぶやく水之江だった。

 ――なお、水之江が捜索した結果、メインサーバーのデータベースから『アマテラス・カンパニー』内での贈収賄のデータや、子会社の不正行為の証拠がざっくざっくと出てきたという。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シャルロット・シフファート
さて、見せてあげますか
究極の現実改変――『アリス・オリジン』の力を!
瞬間、私の体がアリス適合者として『はじまりのアリス』となり、電脳空間を改竄していく

私が探すのはこの世界のアサイラム……こんな世界だもの、多くあると見積もるのは皮算用じゃない
そこに接続して酷使されている社員の雇用状態から逆算し、アマテラス・カンパニーの雇用形態に関する情報を引き出していくわ

敵オブリビオンについては廃棄の対概念……リサイクルの概念を宿す不思議の国を流出して機械兵を浄化して押し流していくわ
更に強化された電脳精霊術も併せてハッキングと戦闘に応用
サイバースペースにて縦横無尽に振る舞うわ




『にンむ サいカい ダいブ かンりョう』
 猟兵の攻撃によって一時的にサイバースペースから退避していたメンテナンスプログラムが、再び電脳空間にダイブしてくる。継ぎ接ぎだらけのロボットの姿をしたオブリビオン『ガランド・クレメンテ』が実体化したのは、『アマテラス・カンパニー』のメインサーバー。社長室を模したそこは、メガコーポの頭脳にして心臓部ともいうべき場所だ。

 『ガランド・クレメンテ』が守る社長室へと、金髪縦ロールの少女、シャルロット・シフファート(異界展開式現実改変猟兵『アリス・オリジン』・f23708)が悠然とした足取りで踏み入ってきた。貴族の令嬢であり、猟兵になってからは世界を股にかけたエレクトロ系魔術結社を率いるシャルロットにとって、このような社長室は慣れたものだ。周囲を見回し、ばさりと金髪を払うと同時に右手を『ガランド・クレメンテ』へと突きつける。
「ここに『アマテラス・カンパニー』が集めた情報があるわけね。その情報、いただくわよ」
『しンにュうシゃ ハ はイじョ しマす』
 シャルロットの言葉を受け、彼女を排除対象と認識した『ガランド・クレメンテ』がメンテナンスを開始する。メンテナンス、それはすなわち侵入者であるシャルロットの強制排除だ。現実空間にある廃棄場から、スクラップになった機械兵たちをサイバースペースに実体化させると、『ガランド・クレメンテ』はそれらと融合し巨大な機械の武装を身に着けたような姿へと変化する。
「なるほど、それがアンタの現実改変というわけね。ならば見せてあげますか、私の究極の現実改変――『アリス・オリジン』の力を!」
 シャルロットが解放するのは、『不思議の国の果て、我らは原初の弾劾者に至る(ビヨンド・ザ・アリス・オリジン)』の力。究極のアリス適合者である『アリス・オリジン』に変身し、『はじまり』に到達したアリス適合者の異能を増強させ、さらに多種多様な不思議の国の展開をおこなう力だ。
「不条理に、理不尽に、この世界へと呼ばれて彷徨う果てに我らは今、原初に至る。我らこそ究極至高の弾劾者、遍く不条理と理不尽を今裁こう」
 詠唱とともに、シャルロットが『アリス・オリジン』へと変じていく。そして実体化させるはリサイクルの概念を持った不思議の国だ。周囲の光景が、リサイクルの国のそれへと変わっていく。
「どうかしら、アンタが持つ廃棄の概念の対概念――リサイクルの概念世界は。この世界では、アンタのその機械兵たちも無力よ」
 シャルロットの言葉の通り、『ガランド・クレメンテ』に融合した機械兵たちはリサイクルされ、浄化されていく。残されたのは強化が解除された『ガランド・クレメンテ』だけだ。
「さあ、強化された電脳精霊術を受けてもらうわよ」
 電脳精霊術を放ち、『ガランド・クレメンテ』を攻撃するシャルロット。だが、それだけではない。攻撃にハッキングによるサイバー攻撃も織り交ぜることで、『ガランド・クレメンテ』を着実に追い詰めていき――。
『エらー はッせイ いチじ タいきャく シまス』
 サイバースペースを縦横無尽に駆け回るシャルロットの猛攻に耐えかねた『ガランド・クレメンテ』は、サイバースペースからの撤退を余儀なくされ、その姿を消したのだった。

「さて、これでようやく探しものができるわね。私が探すのは、この世界のアサイラム……こんな世界だもの、多くあると見積もるのは皮算用じゃない。酷使されている社員の雇用状態がわかれば逆算可能なはず……」
 シャルロットは、メインサーバーから『アマテラス・カンパニー』の雇用形態に関する情報を引き出して記録していく。数々の非人道的な雇用形態と業務内容の一覧を手にしたシャルロット。そこから彼女が望む情報を引き当てられるかは、今後の解析が鍵となることだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
火事場泥棒…いえ、巨人の住処より宝を手に入れると考えましょう
法と秩序を敷くものが悪ならば、正道では為せぬ事もあるのです

全身の格納銃器を展開
近い敵は剣と盾
軍団に対して単騎性能を以て蹂躙しつつUCを放ち密かに解析し情報収集

自爆機構のトリガーを解析できれば此方の物です

敵陣に潜り込んだステルス妖精の破壊工作で逐次投入された端から自爆機構を暴発
私と妖精、前と後ろから敵軍を漸減です

さて、妖精の一機に卓上カレンダーを調査させましょう
上層部のスケジュール…その中で優先度が極めて高い取引相手こそ『アマテラス・カンパニー』の屋台骨や世界の暗部に近い筈
相応のプロテクトでしょうが…

最後は機械人形に一太刀浴びせ離脱です




 ガシャリ、と金属質な足音が廊下に響く。ウォーマシンにして白銀の装甲を身にまとった機械騎士、トリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)は、まるでダンジョンを探索する騎士であるかのように慎重に高層ビルを調査していた。そこはサイバースペースに建てられた摩天楼。巨大企業『アマテラス・カンパニー』の本社ビルを模した巨大迷宮にも匹敵する建造物だ。トリテレイアは、かつて読んだ騎士道物語やお伽噺に登場する騎士たちの武勇譚を思い描きながら、『アマテラス・カンパニー』本社ビルの一階を進んでいく。
「これだけ広大なビル……いえ、ここは敢えて『塔』とでも表現いたしましょうか。おそらく、警備やトラップも生半可なものではないでしょう。ですが、その困難を乗り越えて、塔の最上階にたどり着いた時こそ、悪しき巨人に囚われた姫を救出することができるのです。そう、これこそ、まさに騎士道と言わずして何と言いましょうか」
 やがて、塔を探索するトリテレイアの目の前に硬質な金属でできた扉が現れた。そこには鍵穴はおろか、取っ手すら付いていない。あるのは扉の横に取り付けられた『△』の形をしたボタンだけだ。そのボタンをじっと見つめ、トリテレイアは無言でボタンを押し込んだ。
 ボタンが光を放ち『▲』のようになったのを、静かに見守るトリテレイア。
 周囲に静寂が満ち――しばらくすると、ポーンという電子音とともに静かに扉が左右にスライドして開く。
 扉の内部は行き止まりの小部屋だった。トリテレイアが小部屋に入ると同時、入ってきた扉が閉じてしまった。周囲を見回すも、あるのはドアの横のパネルに並んだ多数のボタンだけだ。
 トリテレイアの指がパネルの一番上のボタンを押すと、突如、トリテレイアの全身のセンサーが異常を知らせる信号を発し始めた。それは、まるで突然、トリテレイアの体重が増加したかのような現象だった。しかし、歴戦の猟兵であるトリテレイアは、その程度では動揺しない。やがて、体重異常が徐々に消失していったかと思うと、再び、ポーンという電子音とともに小部屋の扉が勝手に左右に開いた。
 小部屋から慎重に足を踏み出したトリテレイアを出迎えたのは、塔――いや、このビルの最上階にある『社長室』と書かれたドアだった。
「――ふむ、やはり騎士が挑む巨人の住まう塔とは違い、近代ビルのエレベーターは便利ですね」
 階段を登らなくて済んだと安堵しながら、トリテレイアは社長室――それを模したメインサーバーへと足を踏み入れていった。

『しンにュうシゃ ハ はイじョ しマす』
 電脳空間で社長室の形で実体化しているメインサーバーへと侵入したトリテレイアを待ち受けていたのは、メンテナンスプログラムにして、侵入者を排除する役割も担う機械人形『ガランド・クレメンテ』だ。
「ええ、こうして侵入して情報を持ち帰ろうなどとは、まさしく火事場泥棒のようで騎士としてあるまじき行為なのですが……いえ、これは巨人の住処である塔から宝を手に入れる行為と考えましょう」
 対するトリテレイアも騎士らしく剣と盾を構え、剣を縦に構えて騎士としての礼を取る。
 ホロディスプレイを展開する機械人形と、剣と盾を構える機械騎士が対峙し――。先に動いたのは機械人形だった。
『シゅウり ヲ かイし シまス』
 『ガランド・クレメンテ』は機械兵の大軍を電脳空間に実体化させると、トリテレイアへとけしかけた。
「騎士の決闘に横槍とは、無粋な――!」
 次々と迫ってくる機械兵の軍団に、トリテレイアは卓越した剣技で対応していく。大盾で機械兵の攻撃を防ぎ、いなし、動きを止めたところを剣で貫く。
『シゅウり ヲ かイし シまス』
 だが、トリテレイアが破壊した機械兵を『ガランド・クレメンテ』がホロディスプレイを操作して修理していく。本来、現実空間では時間のかかる修理も電脳空間なら一瞬だ。距離すら関係なく『ガランド・クレメンテ』は遠く離れた機械兵を修理し――さらにその出力を強化する。
「成程、修理能力に加えて強化能力ですか、厄介ですね」
 強化された機械兵たちと切り結ぶトリテレイア。トリテレイアの剣と機械兵たちのドリルアームが激突を繰り返し、甲高い音を上げ、激しい火花を散らす。だが、いくら強化された機械兵といえども、所詮は烏合の衆。一騎当千のトリテレイアにかなうはずもない。徐々にトリテレイアが優勢になってきたところで――機械兵たちが一斉に自爆した。
「これはっ!?」
 至近距離からの自爆を、トリテレイアはとっさに盾で防ぎ切る。だが、その爆発でトリテレイアの大盾は焼け焦げ、トリテレイアの身体もところどころに焦げ目がついていた。
『シゅウり シまス』
 そこに、さらに他の修理した機械兵――自爆装置付きが迫る。いかに歴戦の騎士のトリテレイアでも、自爆特攻戦術の前には成す術はない。

「これは、さすがに勝ち目がないですね――とでも言うと思いましたか? その自爆装置の仕組みは、今の攻防で解析させていただきました。ここから反撃の時間とさせていただきましょう」
 トリテレイアが密かに放っていたのは、肩部装甲収納スペースに格納されていた、掌サイズの『自律・遠隔制御選択式破壊工作用妖精型ロボ(スティールフェアリーズ・タイプ・グレムリン)』たちだ。妖精ロボたちは、ステルス機能で身を隠しながら、機械兵たちの自爆機構の解析を完了させたのである。
「自爆機構のトリガーさえ解析できれば、こちらのものです!」
 自爆特攻しようと迫りくる機械兵たちに、トリテレイアは両腕、両肩、頭部を向ける。そこから現れたのは、トリテレイアの体内に仕込まれた隠蔽型の銃火器だ。腕部ガトリングガンが火を吹き、肩部マシンガンが銃弾を放ち、口内機銃が機械兵へと発射される。それらは機械兵の自爆ユニットを正確に射抜くと、その体内の爆弾を暴発させていった。
 さらに、トリテレイアの妖精ロボたちもステルスモードで機械兵たちの後方へと回り込み、自爆機構を起動させていく。トリテレイアにたどり着く前に次々と爆発四散していく機械兵たち。大軍で密集していたことも災いし、近くの機械兵の爆弾に誘爆し、連鎖的に爆散していく。

『シゅウり……』
「そうはさせません、お覚悟!」
 トリテレイアは、護衛がいなくなった隙をついて『ガランド・クレメンテ』に剣による一撃を与えると、そのまま社長室の窓へ向かって駆け出していく。
「すでに情報はいただきました。この場に用はありません。さらばです、とうっ!」
 両腕をクロスさせ、一面ガラス張りの窓に向かってジャンプしたトリテレイアは、ガラスを割るガシャンという激しい音とともに屋外へと身を躍らせた。そこは高層ビルの最上階だ。重力に従って落下していくトリテレイア。ぐんぐんと地面が近づいてくる中、トリテレイアは大きく叫んだ。
「ロシナンテⅡ!」
 直後、高空より飛来した愛馬がトリテレイアをその背に乗せ、脚部スラスターを全開にさせた。人馬一体となって空を駆ける機械の騎士は、諸悪の根源たる巨大企業のビルを背にし呟いた。
「法と秩序を敷くものが悪ならば、正道では為せぬ事もあるのです。忘れぬことです、私は騎士として、その風車ならぬ巨大ビルに何度でも挑むということを――」

 風を切って駆ける騎士の肩から、一体の妖精が姿をあらわし、トリテレイアの電子頭脳へと情報を転送してくる。それは、先の戦いの最中に卓上カレンダーを調査させた結果であった。
「上層部のスケジュールの情報を得られましたね。その中でも優先度が極めて高い取引相手こそ『アマテラス・カンパニー』の屋台骨や世界の暗部に近い筈。プロテクトを解除し解析を急がねば……」
 巨大企業に立ち向かう騎士の戦いは始まったばかりであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

愛天・真澄
修理が必要なのは貴女のようにお見受け致しますが…
…つまりは神の愛が必要ということですわね!
ええ、ええ、わたくしにお任せくださいませ!

あ、戦車からは降りております。流石に社長室に持ち込むのは無理がありました。
ですが、神の愛は変わらずわたくしを守って下さいます(【結界術】)ので問題はございません。

愛の鉄鎚を振るい、愛(という名の【暴力】)を叩き込んで差し上げましょう。
さあ、躊躇わず愛を受け取ってくださいませ!

って、ユーベルコードで守りを固めてしまわれましたね。
どうか拒まず受け入れてくださいませ、ほら、神はここにおわします――
(UC発動)

決着の後は、闇取引のデータを回収して帰還致しましょう。




『ワたシ の ヤくメ は シゅウり……』
 巨大企業『アマテラス・カンパニー』のメインサーバーが実体化した社長室で、ホロディスプレイに文字を表示しながら、メンテナンスを担うオブリビオン『ガランド・クレメンテ』が戦闘で荒らされたメインサーバーを修復していく。まるでスクラップのような全身ツギハギだらけの機械人形である管理者は、その指でホロキーボードを叩いた。すると、まるで時間が巻き戻るかのように、戦闘で荒れ果てた社長室の風景が元に戻っていく。
『しュうリ かンりョう』
 埃一つ落ちていない空間に戻ったことを確認し『ガランド・クレメンテ』は満足げにうなずく。猟兵によって破壊された壁一面に広がる窓ガラスも、ヒビ一つない状態に復元されていた。『アマテラス・カンパニー』の本社ビルを模した高層ビルの最上階に位置する社長室からは、サイバースペースの様子が一望できる。

「なるほど、それがあなたの能力なのですわね。けれど、わたくしには修理が必要なのは貴女のように見受けられますが……」
 淑やかに社長室へと足を踏み入れた金髪の少女、愛天・真澄(愛神の使徒・f32265)が、優しげな微笑みを浮かべながら『ガランド・クレメンテ』に語りかける。環境汚染に対する耐性を持つフラスコチャイルドである真澄だが、その能力の代償として清浄な環境では生命維持装置を必要とする。生命維持装置としての機能は、彼女が乗っていた戦車『Throne IV』が担っていたのだが、今、真澄は生身で社長室に立っていた。今、真澄の豊満な胸を持った身体を包むのは、ミッション系の学園制服『愛天学園制服』だけだ。
 ここまでの戦いでは戦車に乗っていたため真澄の服装を描写できなかったので、改めてきちんと描写しておこう。黒を基調としたミニスカートの制服には、腰元まで伸びる深いスリットが入っており、真澄の瑞々しい太ももを際どいところまであらわにしている。ミニスカートの下は膝上までの白いハイニーソックスによって覆われ、完全なる絶対領域を形成していた。さらに特筆すべきはその胸元だろう。黒いリボンで飾られた上着では、真澄の胸に実る爆乳を完全に覆うことができず、その胸の下部が制服のボタンの隙間から覗いていた。
「さすがに戦車をビル内に持ち込むことはできませんでしたので、戦車は外に置いてまいりました。ですがご安心ください。どのような環境であろうとも神の愛は変わらずわたくしを守って下さいますので、問題はございません」
 腰まで伸びた絹のように美しい金髪に光を反射させながら、真澄が青い瞳でにっこりと微笑んだ。それはまさに神に遣わされた天使のような笑みである。

 一方『ガランド・クレメンテ』は、真澄と同様の黒系統の服装に身を包んでいるが、その身体は正反対であった。露出した手足は、故障した部分を機械に置き換えて動かすのが精一杯という状況。さらにメインサーバーのメンテナンスに不要な――場合によっては情報漏えいの元にもなりかねない音声出力機能はカットされており、口に相当する部分は黒いマスクで覆われていた。
『ワたシ の ヤくメ は シゅウり ダけ……』
 真澄に対して答える『ガランド・クレメンテ』の言葉は、あくまでホロディスプレイに表示される文字にすぎない。不要な機能は極限まで削り取る。結果や利益しか目にないメガコーポらしいやり方だといえるだろう。

「まあ、音声を出力する機能まで壊れてらっしゃるのですわね。これはやはり神の愛が必要ということですわ。ご安心ください、その身に不幸をお持ちの方には、神はその分、多大な愛を注いでくださいますわ。ええ、ええ、わたくしにお任せくださいませ!」
 慈母のような笑顔を浮かべたまま真澄が振り上げたのは――特大のハンマーだった。その巨大で重そうな鉄塊を、14歳の真澄が細腕で軽々と持ち上げているのが不思議でならない。それも神の愛による奇跡なのだろうか。
「この『愛の鉄槌』は、わたくしの神への愛の高まりに比例し、無限に神の愛を宿してくれるのですわ」
 真澄が軽く素振りをするだけで、ブオンブオンという風切り音が聞こえてくる。音から判断するだけでも、これは当たったらやべえやつである。それを大きく振りかぶった真澄が『ガランド・クレメンテ』へと柔らかな声音で告げる。
「さあ、躊躇わず神の愛を受け入れるのですわ。そうすれば貴女も我が神の偉大さを感じ取ることができるでしょう」
『シゅウりヲしュうリをシゅウりヲしュうリを――』
 真澄のハンマーが振り下ろされるのを見た『ガランド・クレメンテ』は、かつてないほどの最速のスピードでホロキーボードに指を走らせた。それは現実世界にある廃棄場からスクラップとして破棄された材料や機械兵などをサイバースペースにダイブさせるコマンドだ。電脳空間に実体化したパーツが『ガランド・クレメンテ』の両腕と融合合体し、強固な盾を形成する。
 振り下ろされた真澄のハンマーと、『ガランド・クレメンテ』の盾とが激しく激突し火花を散らした。『ガランド・クレメンテ』の足元の床にヒビが入り社長室が振動する。部屋を飾り立てている絵画や花瓶などが床に落ちて砕け散った。――だが、『ガランド・クレメンテ』の両腕に融合したスクラップの盾は砕けない。

「あら、どうやら神への信仰心を閉ざされてしまわれたようですね。いけません、それはいけませんわ。どうか拒まず受け入れてくださいませ。ほら、神はここにおわします――さあ、共に神を讃え、無限の愛に満たされましょう。――神は此処に在り」
 真澄の言葉と共に、空中に光り輝く『何か』――名状しがたいものが呼び出された。それを目にした『ガランド・クレメンテ』の表情に激しい変化が生じる。まるで見てはいけないものを見てしまったかのような表情を浮かべ、正気を失ったかのような衝撃を受けた『ガランド・クレメンテ』は、精神的ショックにより、両腕に融合させたスクラップを電脳空間に繋ぎ止めておくことができなくなった。召喚プログラムが解除され、スクラップたちがポリゴン片に分解され現実世界に戻っていく。
「どうやら神のお姿を見て、お心変わりしてくださったようですわね。さあ、今度こそ、神の愛を拒まずに受けていただきますわ」
 『ガランド・クレメンテ』は、ハンマーを振り上げた真澄から逃げるように、ジリジリと後退していく。やがて、その背中は壁一面ガラス張りの窓へとぶつかり、それ以上は下がることができなくなった。絶望的な表情で後方――窓の外を見た『ガランド・クレメンテ』は、さらに驚愕に表情を浮かべ、ホロディスプレイに文字を表示した。
『マどニ まドに……!』

 直後、窓ガラスを破って外から飛び込んできた戦車砲弾――真澄の戦車『Throne IV』の主砲『Imperium 88』の砲弾が、『ガランド・クレメンテ』のアバターを吹き飛ばし、サイバースペースから強制ログアウトさせた。
「ほら、先程申し上げましたでしょう? 戦車は外に置いてきた、と。いかがでしたか、神の愛は? ――あら、どちらに行かれたのでしょうか?」
 姿を消した『ガランド・クレメンテ』の行方をいぶかしみ、首をかしげる真澄。社長室を砲撃できる位置に待機していた『Throne IV』の主砲からは、砲撃直後の高熱が放出されていたのだった。

「先程の方は、きっと神の愛を広めるための旅に出たのですわね。そうです、そうにちがいありませんわ」
 うんうんと納得した真澄は、社長室内を調べて『アマテラス・カンパニー』の闇取引のデータを入手した。それは人身売買や非合法な薬物、軍事機器などを取引している関係者の名簿だった。
「それでは、このリストに載っている方々にも、ぜひ神の愛を受け入れていただいて敬虔な神の信徒になっていただきましょう。神の愛は等しく注がれるのですわ」

 ――しばらくして。『アマテラス・カンパニー』の闇取引を片っ端から潰して回る謎の人物が現れるという噂が流れた。被害者は口を揃えてこう言ったという。「神に誓って、もう悪いことはしない――」と。

大成功 🔵​🔵​🔵​

四季凪・アルブス
いよいよメインサーバー…
流石に管理する相手もすごい性能みたい…
それでも何とか突破して、情報を手に入れないと!

リーリーとパックに
改造ドローン&ロボット達と引き続き戦闘をしていくよ

私もMF-119カスタムに加え
破蝕式爆薬も使って応戦するよ!

敵からの要求はできるだけ返答を遅らせつつ
近付いてきた所に
破蝕式爆薬を至近距離で起爆させながらお断りするよ!

無事倒せたらリーリーにサポートしてもらいながら
調度品の裏や中や下を中心に探し
情報を引き出すよ
大丈夫そうなら、他のみんなにも手分けして協力してもらおう

表には出せない取引先や取引した物の記録も残ってるはずっ

特に未成年に関わる物があったら
しっかり暴いていくよ…!




 サイバースペースにそびえ立つ巨大なビル。現実世界の『アマテラス・カンパニー』本社ビルを模したポリゴン製の建物の最上階にあるのが、巨大企業の社長室にして、この電脳空間での頭脳とも言うべき『アマテラス・カンパニー』のメインサーバーだった。
『シゅウり カんリょウ めンてナんス さイかイ しマす』
 猟兵の攻撃によって一時退去させられていたメンテナンスプログラム『ガランド・クレメンテ』だが、その身体を自己修復してメインサーバーである社長室へと舞い戻ってきた。猟兵たちとの激闘の傷跡を完全に消し去ることは不可能で、元から継ぎ接ぎだらけだった機械のボディは応急処置により見るも無残な状態に成り果てている。だが、それでもサイバースペースにおける『ガランド・クレメンテ』の脅威は健在だ。『ガランド・クレメンテ』はホロキーボードを操作して、荒れ果てた社長室を整然とした状態に修復していった。

 まるで大地震の後のように散乱していた社長室――メインサーバーがあっという間に元に戻っていくのを目にして、『アライアンス・オブ・スチューデンツ・セイバーズ』の一員にして『七混学園』の生徒である銀髪の少女、四季凪・アルブス(白銀のStudent's-Savior・f36546)が決意に満ちた視線を『ガランド・クレメンテ』へと向けた。
「いよいよメインサーバー……。流石に管理する相手もすごい性能みたい……。それでも何とか突破して情報を手に入れないと! 行くよ、リーリー、パック、それにみんな!」
 アルブスが声をかけるのは、相棒のリペアドローンの『リーリー』、ガンナードローンの『パック』、それに電脳空間で仲間にした迎撃プログラムである改造ドローンやロボットたちだ。強い絆でアルブスと結ばれたドローンやロボットたちは、指示に従って『ガランド・クレメンテ』を包囲するような陣形を組んでいく。さらにアルブス本人もハンドガン『MF-119カスタム』を構えてメンテナンスプログラムへの攻撃準備を整えた。

「攻撃……開始だよっ!」
 『ガランド・クレメンテ』に向かってパックがレーザーと実体弾を連射し、リーリーも小型メスを射出する。さらに改造ドローンとロボットたちが一斉に銃火器で攻勢をかける。まるで社長室内に嵐が吹き荒れるように、銃弾が調度品を砕き、レーザーが壁を焦がしていく。
 だが、それは全て目くらましだ。本命であるアルブスがハンドガンの引き金を引くと、対プログラム用特殊弾頭が『ガランド・クレメンテ』へと撃ち出された。あらゆるプログラムをハッキングする浸食弾頭が『ガランド・クレメンテ』の右腕に命中し、その身体を蝕んでいく。
「やったよ、これで動けなくなるのも時間の問題――」
 勝利を確信したアルブスだったが、その表情が凍りつく。あろうことか『ガランド・クレメンテ』は浸食弾頭に侵された右腕を左手で掴むと、その右腕を根本から引きちぎったのだ。遠くに放り投げられた右腕は、硬い床にカランと転がると同時に浸食弾頭によって漆黒に染まり粉々に砕け散った。

「そんな、躊躇なく腕を捨てるなんて――」
 アルブスはメディックにしてメカニックであり、人や機械を治す立場にある。そのため彼女は、腕を使い捨ての道具のように切り捨てる『ガランド・クレメンテ』を見て困惑の表情を浮かべざるを得なかった。『ガランド・クレメンテ』も修理を自身の役割とするという点はアルブスと同様だ。だが、『ガランド・クレメンテ』にとって最重要なのは、このサーバールームをメンテナンスすること。そのためには自身の身体など修理の効く道具でしかない。

『わタし ハ しュうリ を スるダけ デす ジゃマ を スるモの ハ たイきョ しテくダさイ』
 『ガランド・クレメンテ』の目の前のホロディスプレイに、要求が表示された。それはメンテナンスプログラムとしての権能のひとつ。対象に要求をおこない、相手が否定しなければ心身の自由と思考力・判断力を奪い、否定したら逃走手段と戦闘手段を奪い、要求を理解できない場合には理性と正気を奪うというものだ。退去せよ、という要求を突きつけられたアルブスは、このままではいずれかの窮地に追いやられることになる。
「ここは、なんとか返答を遅らせて……」
 アルブスはとっさに即断を避けるという手段を選んだ。すなわち、返答自体をしないという戦術だ。――だが、要求を肯定していない分効き目は弱いものの、否定してもいないため、アルブスの心身の自由と思考力・判断力が徐々に鈍ってきている感覚がある。敵と戦おうと愛用のカバンに手を入れるも、一体何を取り出そうとしていたのか、思考がまとまらない。

 その時、アルブスの前にリーリーやパックを始めとしたドローンとロボットたちが立ちはだかった。
「みんな、何を!?」
 ドローンとロボットたちに遮られて、『ガランド・クレメンテ』のホロディスプレイに映る要求が見えなくなる。それにより、アルブスは一時的に『ガランド・クレメンテ』の能力の支配下から抜け出した。考えていた作戦を鮮明に思い出す。
 ――だが、その代償として、『ガランド・クレメンテ』の要求を否定したドローンとロボットたちは、その逃走手段と戦闘手段を奪われ、その場に無防備に浮遊したり、立ち尽くしたりするだけとなった。

『ジゃマ な キかイ たチ…… すクらッぷ ニ しテ あゲる』
 『ガランド・クレメンテ』は、ゆっくりとした足取りでリーリー、パックやドローン、ロボットたちの元へと歩み寄ってきた。そして、邪魔な虫を払うかのように強靭な力を持つ左腕を振り上げる。
「――みんなはやらせないよっ! 今度は私がみんなを守る番だから!」
 『ガランド・クレメンテ』の左手が振り下ろされる直前。ドローンたちの影からアルブスが飛び出した。だが、再び『退去せよ』という要求がアルブスの視界に映り込む。
「もう、思考力を奪わせはしないっ! ――私の返答はこれだよ!」
 アルブスが愛用のスポーツバッグから取り出したのは『破蝕式爆薬(アシッドフレイムボム)』。腐食作用を含んだ爆薬だ。アルブスはそれを『ガランド・クレメンテ』の至近距離で起爆する。それこそがアルブスの返答であり、要求の完全な否定であった。
「とっておきの「戦闘用」の薬……遠慮なく、受け取れっ!」
 それは、メディックにしてメカニックたるアルブスが振るう破壊のための禁忌の薬。こうすることでしか仲間を助けられない時のための最後の切り札。『ガランド・クレメンテ』の眼前で爆発した爆薬は、『ガランド・クレメンテ』のみを包み込む炎となって、その身体を腐食させていき――。
『お ノ れ……』
 『ガランド・クレメンテ』は、その身を0と1のプログラムへと変換し、メインサーバーから退却していった。

「なんとか追い払えたね。みんな、大丈夫?」
 アルブスが心配そうに仲間たちを見やるが、『ガランド・クレメンテ』が退却したことで、ドローンやロボットたちも自由を取り戻していた。自在に空中を飛んだり、ガシャガシャと動き回ったりすることで、アルブスに無事を伝えている。
「よーし、それじゃあ、みんなで一緒に情報を探すよっ! きっと表には出せない取引先や取引したものの記録も残ってるはずっ!」
 社長室を飾る調度品の周辺を調べていくアルブスたち。すると、リーリーが一枚の絵画の裏にある隠し金庫を発見した。
「お手柄だね、リーリー! それじゃあ鍵は修理道具で開けてみるよっ!」
 電子式の錠を、プログラムをメンテナンスする要領で解除していくアルブス。やがてカチリという音と共に金庫の鍵が開くと、そこには期待通りに『アマテラス・カンパニー』の取引の記録が収められていた。

「――特にこの中に、未成年に関わるものがあったら、しっかり暴いてこれ以上の被害が広がらないようにしていくよ……!」
 『アライアンス・オブ・スチューデンツ・セイバーズ』の一員として、学生たちが巻き込まれるような事件を未然に防いでいこうと誓いながら、アルブスは情報を持ち帰るのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

菫宮・理緒
ここがメインサーバーか。
悪事のデータは手に入れるとしても、
そのほかにどんな情報が転がってるのかなー♪

っと、さすがにタダでは見せてくれないか。
それじゃ、とっておきをあげちゃおう。

メンテナンスプログラムに、指向性を調整した【E.C.M】を照射して、ノイズまみれにしてプログラムを崩壊させちゃおう。
どんなに合体してきたって、フリーズしちゃえば問題ないよね。

動きが止まったら【虚実置換】でお掃除かな。

邪魔者がいなくなったらサーバーにも【E.C.M】を照射して、セキュリティをクラックしたら、ここからはお楽しみの時間。
ゲーム会社のサーバーとか久しぶりに覗くね!

とんでもない超過勤務と、サービス残業。それにゲーム内での確率操作か。
お約束っていうか、どこにでもある感じだなー。

もひとつ押しがほしいよね……っと、これは?

最新ゲーム、アイデア自体は盗作なんだ。
発案者は『処理済み』、ね。

それとこれは……。
リアルさの追求のための、モーションキャプチャ?
スラムの人を集めて『実戦』させたってことか。

これはかなり大きいかな。




 サイバースペースに建つ巨大建造物。それはメガコーポたる『アマテラス・カンパニー』の本社ビルを仮想空間に再現したかのような威容を誇っていた。そのビルの中でも最重要区画である最上階――現実世界では社長室にあたる場所こそ、サイバースペースでメインサーバーがある場所だ。
「わー、壁一面ガラス張りとか、豪華な部屋だ、ねー。地上を見下ろしながら、バルスとか言いたくなっちゃうよー」
 社長室に入るなり、ガラス窓から一望できる広大なサイバースペースへと目を向けた菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)が怪しげな微笑みを浮かべながらつぶやいた。ちょっと目が笑っていないような気もするが、きっと気のせいだろう。理緒は身につけた電子戦用装備であるメイド服型のサイバーウェアを翻し、社長室内へと素早く視線を走らせる。それだけで理緒と電脳的に接続された情報処理機器『ワークステーション-RFTRD』が室内の状況を解析していく。
「なるほど、社長室に見えているけれど、サイバースペースでメインサーバーが実体を取ったのがこの部屋ということだ、ねー。この部屋の中には悪事のデータの他にどんな情報が転がってるのかなー♪」
 未知の情報にアクセスできるということでハッカー魂に火がついた理緒が、テンションアップ状態で、わきわきと両手を動かす。彼女の周囲にホロディスプレイが展開され、メインサーバーへとアクセス。その白く細い指がディスプレイをなめらかにタッチしていく。
「わたしの経験と勘が告げてるよー。重要な情報は、このへんとか、このへんとか、このへんのデータ領域にあることが多いと!」
 理緒はメインサーバーのデータを小型のスティックタイプデバイスへとダウンロードさせようとエンターキーを叩き――。

 直後、理緒が展開しているコンソールに『ふセい アくセす ヲ けンち シまシた ジょキょ ヲ かイし シまス』というメッセージが表示された。それとともに、メンテナンスプログラムである『ガランド・クレメンテ』がサイバースペースに姿をあらわす。――だが、『ガランド・クレメンテ』の姿は全身継ぎ接ぎだらけのボロボロなボディになっており、周囲に浮かぶホロディスプレイもノイズ混じりの不完全なものだ。ここまでの猟兵たちとの死闘によるダメージが積み重なっているのだった。

 メインサーバーの守護者が姿をあらわしたことで、理緒も周囲にホロディスプレイを展開しながら電子戦の構えを取ると、『ガランド・クレメンテ』へと油断のない視線を向ける。
「っと、さすがにタダではデータを見せてくれないか。それじゃとっておきをあげちゃおう」
 先手必勝とばかりに理緒の右手が閃く。神速のタッチで入力されたのは、虚実置換プログラムの起動コマンドだ。コンソールに打ち込まれた『ガランド・クレメンテ』の形状データ。それをサイバースペースから消去するプログラムが電脳空間に広がっていく。
「これで、消えちゃえー!」
 虚実置換。それは理緒が作った対象を虚構と置換するプログラムだが、今、理緒がおこなったのは、『ガランド・クレメンテ』が存在する座標のあらゆるプログラムを虚無と置換し消滅させるというもの。それを受けたら、いくら『ガランド・クレメンテ』といえども無事では済まないという荒業だ。だが――。
『シゅウりヲしュうリをシゅウりヲしュうリを――』
 『ガランド・クレメンテ』は、現実世界の廃棄場から様々な材料や廃棄された機械兵たちを電脳空間にダイブさせ、それと融合していく。虚実置換によって消滅した身体を、取り込んだ廃棄材料を構成するデータで瞬時に修復していく。
「そんなっ、身体を構成するプログラムが消滅する端から、別のプログラムを取り込んで修復してるのっ!? けど、そんなことをしたら、もはやプログラムとしてのアイデンティティが――」
 自身の身体を構成する要素が全部入れ替わってしまったとき、それは果たして同一人物と言えるのか――現実空間の哲学で語られる問題が、いままさに理緒の目の前で展開されていた。『ガランド・クレメンテ』を構築していたプログラムは、すでにすべて消滅し、代わりに廃棄物から再構成された『ガランド・クレメンテ』が理緒の目の前に立っている。それは果たして、先程までの『ガランド・クレメンテ』と同一の個体なのか。
『シゅウりヲしュうリをシゅウりヲしュうリを――』
 しかし、メインサーバーのメンテナンスプログラムである『ガランド・クレメンテ』にとっては、自己を構成するプログラムの同一性など問題ではない。重要なのはメインサーバーのメンテナンスができることと――メインサーバーへの侵入者を排除することだけだ。
『しンにュうシゃ ハ はイじョ はイじョ はイじョ……』
「このプログラム、すでに崩壊が始まって――!?」
 『ガランド・クレメンテ』は、侵入者である理緒を排除しようと機械の腕を振り上げて突進する。その電脳――この世界においては命に等しい――をすり減らしながらも、『ガランド・クレメンテ』は自らの任務を全うしようと全力で挑みかかる。
「けど、こっちもやられるわけにはいかないんだよっ!」
 『ガランド・クレメンテ』の突進を側転してギリギリ回避した理緒が、空中に指を走らせた。起動された電脳プログラムはE.C.M――ノイズジャミングを放つプログラムだ。ホロディスプレイに一見すると無意味な記号の羅列が走ったかと思うと指向性を持ったノイズジャミングが『ガランド・クレメンテ』へと放たれる。
『はイじョ……はイじョ……はイじョ……』
 E.C.Mによるノイズジャミングを受けた『ガランド・クレメンテ』。すでに崩壊しかけていた身体を構成するプログラムがノイズジャミングの影響で崩壊を加速され、サイバースペースでの身体がノイズにまみれていく。それは、『ガランド・クレメンテ』の最期を意味していた。

『シゅウりヲしュうリをシゅウりヲしュうリを――』
「――うん、もう貴女がメンテナンスしなくてもいいように、メインサーバーも壊してあげるね」
 身体がノイズに呑まれて消滅しかかっていても、まだメインサーバーのメンテナンスを続けようとする『ガランド・クレメンテ』。その姿に優しげな視線を向け、理緒が社長室全体に向けてE.C.Mを放つ。それはまるでハリケーンのように社長室内に吹き荒れ、机を、椅子を、調度品を、窓ガラスを、粉々に粉砕していった。
『にンむ……カんリょウ……』
 メインサーバーの崩壊を目にした『ガランド・クレメンテ』は、ようやく安心したように機械の瞳を閉じ――ノイズに溶けて消えていった。

 ――直後。サイバースペースにそびえ立つ巨大ビルが鳴動をはじめた。ゴゴゴ……という音を響かせながら震える本社ビルからポリゴンの外壁が剥がれ落ち、地上へと落下していく。中核となるメインサーバーを失ったため、本社ビルを模した建造物も役目を終え崩壊を始めたのだ。
「あわわっ、ビルも自壊するとか、ちょっと予想外だよーっ!?」
 崩落の中心である社長室にいる理緒が悲鳴を上げる。崩れてきた天井に押しつぶされないように、慌ててその場を飛び退くと、一瞬前まで理緒が立っていた場所は瓦礫の山と化していた。電脳空間のアバターは肉体と深く結びついている。ここで瓦礫に押しつぶされたら、本体はどうなってしまうのか――想像したくもないことだけは確かだ。
「こうなったら――リオ・セレステ!」
 理緒が実体化させたのは、宙間戦闘艦『RI-21A リオ・セレステ type-W.E.A-』だ。社長室に残された電子データを回収すると、理緒はリオ・セレステに乗り込み、社長室の窓から中空へと飛び出した。リオ・セレステは、戦闘艦の推進用ブースターを垂直方向に向けると、VTOLによりゆっくりと地上へと降下していく。
 その背後で、巨大なビル型建造物は跡形もなく崩壊し、ポリゴンの光をサイバースペースに散らしたのだった。

「アマテラス・ゲームズ社の情報は、かなり回収できたかな。ゲーム会社のサーバーは久しぶりに覗いたけど、これはかなり大きい情報だ、ねー」
 リオ・セレステのコックピットでデータを解析していた理緒は、楽しげな笑みを浮かべていた。


 『アマテラス・カンパニー』傘下のゲーム企業アマテラス・ゲームズでは、社長が蒼白な顔で部下たちに喚き散らしていた。
「『アマテラス・カンパニー』のメインサーバーに不正アクセスを許した上、ハッカーたちにサーバーをクラッシュさせられただと!? わ、我が社がアクセス権限を変更したことが原因だとバレたら、すぐに親会社に潰されるぞ! ええい、なんとかしてハッカーたちのせいにするのだ! 幸い、メインサーバーがクラッシュしたから、我々の操作ログも残っていないはずっ!」
「社長! テレビを見て下さい……! こ、これは……!」
 社員がホロディスプレイに表示させたニュース映像は、アマテラス・ゲームズの過酷な労働体制とゲーム内確率の不正操作、そしてゲームアイディアの盗作疑惑を伝えていた。ゲームのリアリティを追求するためにおこなった、スラムの人を使った実戦によるモーションキャプチャーの動画も流れている。

「馬鹿な……! この情報は抹消済みのはず……!」
「社長、今、匿名の差出人からのメールが!」
 社員が慌てて示した電子メールには、『アマテラス・カンパニー』への上納金を少なくするための売上操作や身内への不正の証拠が添付されていた。さらに、未成年者をゲームを通して洗脳し『アマテラス・カンパニー』の尖兵へと変えるプランの計画書など、最重要機密に属する資料も添えられている。
「こ、ここまでの情報が流出しただと……!? ハッカーたちの正体は一体何者なのだ……! とにかく、メールの送信元を辿れ! これが親会社にバレる前に暗殺者を使って口を封じるんだ!」
「そ、それが、社長……。この情報、すでにサイバーネットワーク上に拡散されていまして……。すでに親会社の『アマテラス・カンパニー』の諜報部には筒抜けかと……」

 その言葉を聞いた社長は、絶望した表情を浮かべて、がっくりと膝から崩れ落ちた。メガコーポの一角たる『アマテラス・カンパニー』にとっては、ゲーム部門の一つくらい、簡単に切り捨てることができる。今回明るみに出た不正も、すべてアマテラス・ゲームズが勝手にやったこととして処理されることだろう。

 だが、猟兵たちは『アマテラス・カンパニー』のメインサーバーにアクセスすることで、『アマテラス・カンパニー』が悪事の根源である確証を得た。今はまだ『アマテラス・カンパニー』に直接手出しはできなくとも、そのための第一歩を踏み出すことはできたといえる。
 ――サイバーザナドゥを支配する巨悪との戦いは、まさにこれからが本番だ。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年03月26日


挿絵イラスト