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スタンク・ジャンク・サイバーパンク

#サイバーザナドゥ #ダストエリア

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#サイバーザナドゥ
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#ダストエリア


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「いやー、新しい世界、なかなかにファンキーなとこみたいねぇ」
 白鐘・耀は腕を組み、楽しそうな顔をしていた。
「知ってる? 『サイバーザナドゥ』。つい最近見つかった新しい世界なのよ。
 骸の海の力で文明を発展させるとか、この世界の巨大企業群(メガコーポ)の連中、イカれてるどころじゃないわね。世界が滅びに向かっても意に介さないってわけ。
 おかげでオブリビオンが我が物顔で闊歩してるわ、モラルもクソもなく金でなんでも買える終わった社会になってるわ、警察も役に立たないわでもうめちゃくちゃよ。
 そもそもこの世界、私たちみたいな猟兵じゃなきゃ、生身で生きることも出来ないの」
 アポカリプスヘルやダークセイヴァーとは、また違った形の破滅の危機。
 いや、もはや破滅に片足を突っ込んでいる……そう言ってもいいかもしれない。
「けど、こうして見つけ出した以上は、私たちがいる。そうでしょ?
 ……ってことで、さっそくだけど新世界で事件を予知したわ。あんた達の力を貸しなさい」
 あくまで不遜に、しかし猟兵の腕前への信頼を込めて。
 黒い髪をばさりとかき上げ、耀は言った。

 彼女が予知したのは、サイバーザナドゥの都市最下層での虐殺だ。
「この世界の都市の最下層は「ダストエリア」っていって……まあ、名前通りゴミ溜めになってるわけよ。
 上層で暮らせるのは、メガコーポの特権社員だけ。金も力もない人間は、このゴミ溜めで暮らさなきゃいけない。最悪よね。
 私の予知によると、このダストエリアに、殺しが大好きのオブリビオンに率いられたチンピラオブリビオンが大挙してきて、好き放題するってのがわかったわけ」
 殺人狂のオブリビオンの「好き放題」など、考えられるのはひとつだけだ。
 もしも現地住民が生き残ったとしても、待っているのはオブリビオンの暴力による支配。それこそアポカリプスヘルや、ダークセイヴァーと同じ、荒廃の地獄である。
「ただ、このダストエリアはめちゃくちゃ入り組んでて、普通に探索してもオブリビオンのアジトは割り出せないと思うわ。
 だからまずは、現地の住民に接触して、上手く取り入るなり脅すなりして情報を引き出してほしいの。
 一番手堅いのは……そうね、やっぱり価値あるものを譲ってあげることかしら。
 といってもあんた達が持ってるアイテムや、ユーベルコードで生み出したものを渡そうとしても、むしろ逆に警戒されるだけだと思うわ。
 ここは「郷に入りてはなんとやら」ってやつで、ダストエリアに眠るお宝を探すのがいいと思うわね」
 つまりは、ゴミ溜め迷宮での宝探しだ。
「価値あるものを見つけたり、壊れた機械なんかを修理してあげれば、さすがに向こうも恩義を感じて信用してくれると思うわ。
 まあ、さっき言った通り、暴力で言うことを聞かせてもいいけど……そこは各自、慣れてる方法でやって頂戴」
 と、耀は方法を猟兵に一任した。

「アジトには手下の『スラム・ハッカー』って連中がいるはずだから、まずはこいつらを根こそぎぶっ殺しちゃって。うんそう、根こそぎよ。キルゼムオール」
 耀はけろっとした顔で言う。
「こいつら、言うなれば電脳ホームレスってとこなんだけど、親玉のオブリビオンに感化されて完全な殺人狂になっちゃってるのよ。
 だから生かしておいたら、そのうちネズミみたいに増えてまた同じことやらかすわ。
 ……ここはそういう世界なの。まあ、イカれたクズどもだから、気前よくぶっとばしちゃえばいいのよ」
 何はともあれ、見逃す理由はないだろう。
「で、親玉の名前は『キラー・ロリータ』。見かけは……うーん、メイド? コスプレイヤー? まあなんか、そういう感じよ。
 ただ見た目に油断したら駄目よ。こいつこそ一番イッてるオブリビオンで、とにかく殺したくて殺したくて仕方ないクソ女なんだから」
 耀は片目を瞑り、やれやれといった調子で語る。
「こいつを仕留めれば、仕事(ビズ)はおしまい。シンプルでしょ?
 最下層だからって、オブリビオンに好き放題させていい理由はないわ。
 まずは景気づけに、派手に暴れてきなさい。あんたたちなら、楽勝でしょ?」
 耀はそう言って、火打ち石をカッカッと鳴らした。
 さあ、銃を持て。背中には気をつけろ。オブリビオンには――おもいきり手を出しちまえ!


唐揚げ
 新世界シナリオ第二弾です。シンプルな純戦シナリオとなります。
 1章のデフォルト選択肢はスクラップを探したり修理したりですが、
 耀の言っている通り、別に暴力で言うことを聞かせても構いません。

 採用は早ければ明日の朝からやっていきます。締切は特に設けません。
 スピーディに進められればいいなと思っていますので、どうぞよろしくお願いします。
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第1章 日常 『スクラップハンター』

POW   :    根性で沢山のジャンクを漁る

SPD   :    自分の手で修理できそうなジャンクを探す

WIZ   :    欲しい素材のありそうな山に見当を付ける

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●サイバーザナドゥ:アーコロジー最下層・ダストエリア
 機械。死体。機械。死体。機械。機械。機械。死体。
 ここに落ちてくるのはゴミばかりだ。そして、ジャンクも悪臭(スタンク)放つ死体も、ここでは同じ「ゴミ」だ。
 そして、住んでいる奴らも、またゴミだ。少なくとも上層の奴らにとっては。

 だが、そのゴミどもは、したたかに生きている。
 落ちてくるジャンクを回収して修理し、使えるサイバーパーツが残ってれば死体からも容赦なく引っ剥がし、風が吹けば飛んじまいそうなボロ屋で身を寄せ合う。
 猟兵たちが転移すると、ドラム缶を囲んで暖を取る最下層住民が、ジロジロと猟兵を睨む……値踏みしている。
 中には、親しげに声をかけてくる奴もいるかもしれない。だがそういう奴ほど油断ならないのが、こういう場所の常だ。
 恩を売って取り入るか、それとも格の違いってもんをわからせてやるか。
 さて、お前はどうする? ここは自由と進歩の最下層、見捨てられたもんが連なる場所。だから何をするのもきっと自由だ。

 ただしお友達、ひとつ覚えておいたほうがいい。
 その自由はもしかしたら、お前の醜い部分を映し出す鏡になるかもしれない。
フォルクス・フォース
【SPD】
ジャンク品を漁るのは構いませんが、人間はこの世から追い払いたいですね。
いえ、しませんよ。そんな哀れで、愚かで、非生産的な、ホモサピエンスさながらの行為など。

ゴミなどと言うものではありませんよ。ネジの一本、鉄くずの一本まで、どれもが(貴方たち人間と違って)価値のある存在です。
私は今回、そのような価値ある資源を修繕しに来ました。人間の邪魔は致しませんよ。ええ、本来ならその汚らしいタンパク質の塊に接続されている機械を引きちぎって救出してさしあげたい所――失礼、本音、もとい、言語ソフトが不調のようです。そう、貴方の義手も修理して差し上げますよ、と言いたかった。慈善活動です。伝わってなにより。



●人間嫌いの頭脳戦車
 一見無秩序に見えるダストエリアにも、無法の法というものがある。
 たとえば、採掘者(スカベンジャー)同士の縄張り協定だ。
 はっきりと明示されていなくとも、そこで長く生活する最下層民であれば、
 どこの誰の縄張りなのかを肌で感じ取ることが出来る。
 こうして暗黙の了解をいくつも設けることで、余所者を見極め、
 全体のゆるいコミュニティを形成する……彼らの生きる知恵なのだ。

 なので、ただゴミ漁りをすればいいというものではない。
 気をつけていないと……ちょうど今のフォルクス・フォースのように、
 コミュニティの人間に取り囲まれ、最悪武力で「わからされて」しまう。
「おいてめぇ、ここが俺たちモーブ一家の縄張りだって知ってんのか? ア?」
「たかがゴミ山なんてナメてんじゃねえだろうなァ? いわすぞ? ア?」
 屈強なスカベンジャーに取り囲まれ、フォルクスへ平然としている。
 表情のわからない頭脳戦車が「平然と」というのも妙な話だが、
 とにかく電子的にそういう顔をしているのが、なんとなくわかるのだ。
「ゴミなどというものではありませんよ」
 フォルクスは、落ち着き払った電子音声で彼らを逆にたしなめた。
「「「ア?」」」
「ネジの一本、鉄屑の一本まで、どれもが価値のある存在です」
「おお……なんだコイツ、ワカってんじゃねえか」
「意外と話のわかる奴なのかもな」
 自分たちの生計を立てている場所を、意外にも認められたことで、
 スカベンジャーたちはちょっと心をほだされていた。割とチョロい。

 が、フォルクスの言葉には、いちばん大事な主語が抜けている。
「私は今回、そのような価値ある資源を修繕しに来ました。
 人間の邪魔はいたしませんよ。本当ならこの世から追い払いたいですが」
「「「え?」」」
「いえ、なんでもないです。そんな哀れで、愚かで、非生産的な、
 ホモサピエンスさながらの行為など、決していたしませんとも」
「「「え?」」」
 そう……フォルクスは、人間が嫌いなのだ。というか、見下していた。
「価値ある」という言葉の前には、「あなた達人間と違って」という、
 たいへん失礼で言葉にしたら喧嘩必至のワードが隠されているのだ!

 言ってることの落差が激しすぎて、スカベンジャーたちはぽかんとしていた。
「本来なら、その汚らわしいタンパク質の塊に接続されている機械を引きちぎって、救出してさしあげたいところ……」
「おい、こいつめちゃくちゃ失礼なこと言ってねえか?」
「俺らのことナメてるよな!?」
「いえ、失礼、本音……もとい、言語ソフトが不調なようです」
 フォルクスは苦しい言い訳でごまかした。
「そう、あなたの義手も修理して差し上げますよ、と言いたかったのです」
「「「マ?」」」
「慈善活動ですよ。本当です」
 スカベンジャーたちは、顔を見合わせ、「まあいいか」と納得した。
「伝わってなによりです」
 抑揚のない電子音声からは、これでもかというぐらいの皮肉が感じられた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

堂島・アキラ
最下層なんざ久々に来たな。相も変わらずゴミだらけ……ま、懐かしくもあるけどな。

よし、さっそくぶん殴って吐かせるか。……いや待てよ?
ゴミ山でジャンクを探す美少女、それはゴミ溜めに咲いた一輪の花……。
オレってばうっとりするくらい健気じゃねえか。よしこれで行こう。

せっかくなら価値のありそうなものがいいよな。転がってる死体からサイバーパーツ追い剥ぐのが手っ取り早いか?
ちっとグロいがこの程度でビビってたらこの世界じゃ生きていけねえ。
一応引き剥がしたパーツは【サイバーリンクシステム】に接続してまともに動作するかテストするか。

集めたパーツは一番有益な情報持ってるやつに全部渡すって言えばこぞって来るだろうよ。



●自己肯定感の怪物
 最下層の光景は、いつ来ても同じだ……と、堂島・アキラは思った。
 無限に積み重なる様々なゴミの山。
 群がるスカベンジャーども。
 未来に絶望しながらも、生き足掻くドブ臭い奴ら。
「久々に来たが、相も変わらずって感じだなぁ。ま、懐かしくもあるが」
 アキラは昔のことを思い返し、ものすごくイヤな顔をした。
 なぜかというと、過去のアキラは、今の義体とはまったく違う顔だったからだ。
 ああ、子供の頃でさえ、その容姿は不完全すぎた。彼にとっては。
「なんだかムシャクシャしてきたぜ。さっそく誰かぶん殴って……いや待てよ?」
 アキラは顎に手を当てて、考え込む。その姿は……とても、可憐だ。

 今のアキラの義体は、かつてとは似ても似つかない可憐な美少女めいていた。
 サイバーザナドゥに詳しいものでなければ、本当に見間違えそうなほどだ。
「ゴミ山でジャンクを探す美少女、それはゴミ溜めに咲いた一輪の花……」
 アキラ自身も、自分のことを美少女だと思い込むやべー奴だったので、
 自分の健気さにうっとりと笑みを浮かべた。それすらも可憐である。
「よしこれで行こう。ゴミ溜めに美を提供しねえとな!」
 アキラは自己肯定感の化け物だった。それにしても顔がいい。

 しかし中身は、35歳のオッサンである。
 転がってる死体からサイバーザナドゥを引っ剥がすぐらい、動作もない。
「おい、あいつ死体剥ぎしてるぜ」
「マジかよ、あんなかわいいのに……」
 通りがかったスカベンジャーたちが、逆にドン引きしていた。
「そうだよな、オレってやっぱ可愛いよな……」
 アキラは別のところにニヤニヤしていた。こいつ無敵か?
「システムは……っと、よしまだ生きてるな。まだ使えそうなパーツはあるかね」
 最終的に死体がバラバラになるまで、アキラは「ゴミ漁り」を続けた。
 その見た目も相まって、たくさんの下層民が情報提供に訪れたという。

大成功 🔵​🔵​🔵​

数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】

いやぁ、まさかこんな世界が待ってるたぁね。
身体への悪さは兎も角、雰囲気なんかはアタシ向きだよ。
そんじゃまぁ、ちゃちゃっと小遣い稼いで、
明日の食い扶持にでもしようかね!

無法の輩に法を説くってのも、なかなか無体なもんだと思うけどさ。
たまには上手く噛み合うだろうよ。
『コミュ力』活かしてパーツを探し、
のらりくらりと言いくるめながら『情報収集』。
拾ったパーツの流れる先を聞き出しながら、
対策を練っていこうじゃあないのさ。
これでもサイキックの使い手なんでね、
サイバーパーツの『メカニック』にゃそこまで暗くはないんだよ。
『ハッキング』まで仕込んだ先にゃ、
どんな地獄が待ってるかねぇ?



●"向いてる"世界
 心地よい。好ましい。そういったのとは、少し違う気がする。
 ただ、"向いている"と思った。この世界の……そう、雑然とした感じだ。
 悪意と疑念と欲望と、ドロドロした感情の中にきらりと光る、人のしぶとさ。
 ただ汚いだけではない。何もかもが渾然一体となって、
 絶望的な状況でも踏ん張り生きている人々がいる。
 ……そういう雰囲気が、自分には向いていると、数宮・多喜は思った。

「あン? 誰だいアンタ」
「つい最近、ここらに流れてきたんだがね。パーツの買取はここでいいのかい?」
 持ち前のサイキック能力で、金の種になりそうなパーツを見つけた多喜は、
 別のサイバーシティからやってきた余所者を演じ、地元の人間と交流した。
 当然、いい顔はされない。余所者はコミュニティの和を乱す敵だ。
 こういった法の外には、無法の法というものがある。
 それが明文化されることはない――暗黙の了解という消極的排他をすることで、
 自分たちの優位を守るというのが、この手のコミュニティの常である。
「余所者なンぞにゃ、商売する奴ぁ誰も……」
「そう言わないでさ。もちろんタダってわけじゃない、アタシもわきまえてるよ」
 多喜は、回収したパーツのうち、価値はあるが"無害そう"なのを男に渡す。
 薄汚い男は、じろりと多喜を上目遣いに睨みつつ、パーツの状態を確かめた。
「……へえ……」
「そいつはアンタの好きにしていいさ。アタシは正直、コネが欲しくてね」
「正直なお嬢さんじゃねえか」
「生きるために必死なのはお互い様だろ? 仲良くやりたいねぇ」
 共感と親切。このふたつは、どんな立場の相手にだろうが"効く"。
 その軽妙な語り口も相まって、男はあっという間に多喜のことを受け入れ、
 そうやって彼女は様々な下層民のネットワークに取り入っていった。

 彼女が受け入れられたもうひとつの理由は、やはりそのサイキック能力にある。
「おい、すげえな! 誰にも解けなかったセキュリティをこんなにあっさり!」
 スカベンジャーたちは、多喜の見事な手際に唖然とした。
 いくつもの機密データを抱えたまま沈黙していた機械が、ゴウンゴウンとノイズまじりの振動音を放っている。
「色々あって、こういうのにゃそこそこ明るくてね」
「しかしいいのか? 手間賃ぐらいは出すぜ」
「大丈夫さ。アタシの目当ては"手に入った"んでね」
 多喜は気前よく振る舞った。……事実、ほしいものは手に入れている。
 堆積した機密データの中に、例のオブリビオンどものアジトにつながる情報があったのだ。
「さぁて、どんな地獄が待ってるやら……」
 しとしとと雨が降るなか、多喜は薄く笑みを浮かべて歩き去る。
 やっぱりこの世界は、"向いている"。
 多喜は、心の底からそう思った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アレクシア・アークライト
骸の雨……。
いったい…いつになったらやんでくれるのかしらね。

――ってそんな感じの世界?

さて、まずは情報収集ね。
あのゴミの山から“お宝”を掘り出して、それを手に話を聞く――。
そんな方法もあるんでしょうけど、こっちのことが敵側に伝わる可能性も高まるわね。
申し訳ないけど、直接頭の中を覗かせてもらうわ。

《力場》で周囲の空間に干渉して透明化。
近場の住民に催眠を施すとともに、その心や記憶を読む。

併せて《領域》を広域に展開し、ダストエリアの地形や構造を把握。
それらと住民から得た情報とを突合し、オブリビオンのアジトを割り出す。

オブリビオンを倒したら、幾らでも“お宝”を掘り出してあげるから待っていなさい。



●ゴミ山の闇
「骸の雨……いったい、いつになったら止んでくれるのかしらね」
 PVCレインコートのフードを少し持ち上げ、アレクシア・アークライトは空を見上げた。
 高くそびえるサイバーシティは、このダストエリアからしてみれば巨大な蓋だ。
 しかしその蓋が、ダストエリアを守ってくれるようなことはない。
 いつでもゴミが降り続ける吹き抜けからは、こうして骸の海がこぼれ落ち、
 遮られた太陽光の代わりに、企業広告のサーチライトがゴミ山を照らす。
 人間の業の果て。誰からも見捨てられた夢の島。それが、この下層街なのだ。

「……なーんて、浸ってる場合じゃないわね」
 まるでサイバーパンク小説の登場人物になったような気持ちのアレクシア。
 だが、あまり戯れているわけにもいかない。なにせ敵は、組織なのだ。
 こういう場所では、理屈よりも力がものを言うことを、彼女は知っている。
 すでに敵の魔の手が、下層民の中にじわじわと浸透している可能性もあった。
 猟兵の行動を報告されてしまったら、面倒なことになるだろう。
 そこでアレクシアは、よりシンプルで、ストレートな手段に打って出た。

 ずばりそれは、下層民から直接情報を抜き出す、という方法だ。
 といっても力任せに脅すのではなく、催眠によって頭の中を覗く。
 いわば、アストラル・ハッキングといったところか。
「……ふうん、やっぱり、怪しげな連中がこのあたりに出没してるのね」
 アレクシアの読み通り、敵は支配に向けて行動を始めていた。
 この住民は、堕落したスラム・ハッカーに、ずいぶんよくしてもらっているようだ。
 ヤクザなどにありがちな手口である。まず恩を売り、優しくして甘やかし、
 弱みを握ったところで恫喝する……放っておけば体のいい使い走りにされるか、
 ストレス解消のための肉人形として拉致されていただろう。
 他の猟兵たちが集めた情報を合わせることで、アジトの大まかな位置もわかった。
「う、うう……?」
 頭の中を覗かれることは、その者の精神に多少なりと負荷をかける。
 気絶した下層民を適当な物陰に寝かせてやり、アレクシアは立ち上がる。
「オブリビオンを斃したら、いくらでも"お宝"を掘り出してあげるわ。待ってなさい」
 そのためには、宝の山に君臨しようとする邪魔なモンスターどもを、蹴散らさねばなるまい。
 雨脚は強まりつつある。アレクシアは、しめやかにゴミ山の闇に飛び込んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『スラム・ハッカー』

POW   :    クラッシュ・プログラム
対象に【肉体暴走プログラム】を憑依させる。対象は攻撃力が5倍になる代わり、攻撃の度に生命力を30%失うようになる。
SPD   :    アクセラレーション・プログラム
自身に【超加速プログラム】をまとい、高速移動と【ショットガンからの散弾】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    クレイジーワールドプログラム
戦場内を【バグまみれのゲーム】世界に交換する。この世界は「【移動はゆっくりとした歩行のみ】の法則」を持ち、違反者は行動成功率が低下する。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●ダストエリア深層
 ゴミ溜めの迷宮を抜けた先、海水の浸食で生まれた洞窟めいた地下空間に踏み込むと、いくつものLED光がコウモリの目のように暗闇に浮かんだ。
「アー……イイー……」
「ウフッ……ウフフッ……」
「0001101001000……」
 夢遊病者めいた足取りで暗がりから現れたのは、無秩序なサイバーザナドゥ化で肉体と自我をボロボロにしたスラム・ハッカーの群れだ。
 奴らは殺戮の快楽に取り憑かれ、ドラッグ中毒末期患者めいて、ただ快楽=目の前の肉をボロボロにする感覚を求めようとする。
「「「肉ッ! 死ィイーッ!!」」」
 つまり問答無用だ! 狂気に呑まれれば、ショットガンでグズグズの肉塊に変えられてしまう!
 オブリビオンにまで堕ちたクズどもに容赦はいらない。快楽漬けの腐った脳みそを叩き潰してやれ!
アレクシア・アークライト
敵に即座に対応できるように《領域》と《力場》を展開

組織的な奴らを想像していたんだけど、ゴロツキとも呼べないような奴らの集まりね
これならそんなに慎重にならなくても……って、直接干渉?

多重の《力場》で憑依を妨害

前言撤回
こんな最底辺の奴らでさえ現実を侵食する力を持っているのね、この世界は
ボヤボヤしていたらバッサリ
そんなことになる前に本気で行かせてもらうわ

UCを発動
《領域》で敵と味方の位置や動きを把握
敵の攻撃を《力場》で妨害しつつ、念動力で足をすくい、空間の断裂で首や四肢を切断

さっきの人達へのいいお土産になりそうだから、武器は壊さないであげるわ
まさか、武器ごと骸の海に還ったりはしないわよね?


フォルクス・フォース
こんにちは、人間。いえ、オブリビオンですか。では死ね。
私は人間が大嫌いですが、オブリビオンはもっとシンプルな論理的根拠に則り、対処するべき存在です。つまり、あの存在は私が用意した人類に対する完璧な事業計画を破壊します。許容できません。私の計算が狂う。許容できません。全て滅ぼす。

だからといって、無駄に残虐な方法で始末する必要はありません。電力の無駄です。さ、皆さん、並んでください。効率的に処分されましょう。ブロイラーと同じです。簡単でしょう?
…ワールドプログラム?この、私に対して?なんと愚かで、身の程知らずで、低劣な――いいでしょう、私の世界で死ぬまで後悔しなさい。それが必要(ネセサリー)です。


堂島・アキラ
現れやがったな気狂いのクズ共。最後に出会ったサイボーグが超絶美少女のオレでラッキーだったなあ?

マンティスセイバーでバラバラにされるかデスアックスでミンチにされるか、選ばせてやる。
……って、コイツらまともに会話できねえんだったな。じゃあ両方だな!まったく欲しがりな野郎共だぜ。

急に景色が変わったのはコイツらの仕業か。めんどくさいルールを押し付けやがって。
移動を制限するってんなら立ち止まって戦うまでだ。【ライトニング・カリギュラ】を使うぜ。
12秒間アイツらの動きを止めてる間にサブマシンガンでハチの巣にしてやる。

クズ共のお掃除完了だ。いや、逆に散らかしちまったかな?


数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】

おいおい、鬼が出るか蛇が出るかと思ったら
出てきたのは「じゃ」が付く奴でもジャンキー共かよ。
ここまではさすがにイカれちまいたくないもんだねぇ……
現実と電脳の境が分からなくなってるんじゃねぇか、
って本気で世界を上書きしてきやがった!?

まあいいさ、こういう時はルールに従うが身のためだよな。
なるべく歩かず立ち止まったまま、電撃の『属性攻撃』を込めた
『衝撃波』を周囲に撒き散らしてハッカーどもを吹っ飛ばす。
そうして『範囲攻撃』を撒きながら、周りのボルテージを上げてこうじゃないの。

そうして最後はもひとつ領域の上書きだ。
【超感覚領域】で周囲を包み込み、バグごと辺りを書き換えたらぁ!


アス・ブリューゲルト(サポート)
「手が足りないなら、力を貸すぞ……」
いつもクールに、事件に参加する流れになります。
戦いや判定では、POWメインで、状況に応じてSPDの方がクリアしやすいと判断したら、そちらを使用します。
「隙を見せるとは……そこだ!」
UCも状況によって、使いやすいものを使う形です。
主に銃撃UCやヴァリアブル~を使う雰囲気です。剣術は相手が幽霊っぽい相手に使います。
他人の事は気にしない素振りを見せますが、基本、不器用なので、どう接したらいいのかわからない感じです。
ですが、合せるところは合せたり、守ってあげたりしています。
特に女性は家族の事もあり、守ってあげたい意欲が高いです。
※アドリブ・絡み大歓迎、18禁NG。


響納・リズ(サポート)
「ごきげんよう、皆様。どうぞ、よろしくお願いいたしますわ」
おしとやかな雰囲気で、敵であろうとも相手を想い、寄り添うような考えを持っています(ただし、相手が極悪人であれば、問答無用で倒します)。
基本、判定や戦いにおいてはWIZを使用し、その時の状況によって、スキルを使用します。
戦いでは、主に白薔薇の嵐を使い、救援がメインの時は回復系のUCを使用します。
自分よりも年下の子や可愛らしい動物には、保護したい意欲が高く、綺麗なモノやぬいぐるみを見ると、ついつい、そっちに向かってしまうことも。
どちらかというと、そっと陰で皆さんを支える立場を取ろうとします。
アドリブ、絡みは大歓迎で、エッチなのはNGです



●ノーマーシー・イェーガー
「おいおい、鬼が出るか蛇が出るかと思ったら……」
 数宮・多喜は呆れ返った。
「"じゃ"は"じゃ"でも、蛇じゃなくて"ジャ"ンキーどもかよ。
 ここまではさすがに、イカれちまいたくないもんだねぇ……っと!」
 BLAMN! ヨダレを垂らすスラム・ハッカーが無造作にショットガン発射!
 多喜はサイキックの予知能力でこれを先読みし、ジャンプ回避した。
 そのまま背後のアレクシア・アークライトに降りかかった散弾は、力場によって、空中でぴたりと停止する。
「組織的な奴らを想像していたんだけど、ゴロツキとも呼べないような奴らの集まりね。これならそんなに慎重にならなくてもいいんじゃないかしら?」
「……あまり油断しないほうがいいぞ。この世界のハッカーとなれば、ただのジャンキーではあるまい」
 アス・ブリューゲルトが、冷静に指摘する。
「自ら望んで破滅したのか、それともオブリビオンの罠にかかってこうなってしまったのかさえ、もはや私たちにはわかりませんけれど……。
 このまま放っておいたら、ダストエリアの方々がこうなってしまうというのならば、もはや問答無用で倒すしかありませんわね」
 オブリビオンだろうと相手を思いやり、寄り添おうとする優しい響納・リズも、ここまで自我を破壊されたハッカー相手には容赦はない。
 というよりも、いっそ一思いに息の根を止めたほうが、きっと慈悲深いのだ。
「ハッ! こんな気狂いのクズどもなんざ、サイバーザナドゥじゃ日常茶飯だぜ?
 まあ、この世界に来たばっかのお前らじゃ、驚くのは無理もないだろうけどな!」
 すっかり美少女モードの演技をかなぐり捨てた堂島・アキラが、ベテランのデスブリンガーらしいシニカルな軽口を叩いた。
 その横で、フォルクス・フォースのカメラ・アイが、キュイイイと鳴る。
「人間はすべて愚かなタンパク質の塊です。タンパク質を捨てたとしても、元人間であればすべて愚かな存在です。少なくとも、私よりも演算能力は落ちます」
「あぁ!? なんだこの頭脳戦車、俺らにまで喧嘩売ってくんのかよ」
「いえ、失礼しました。言語ソフトのエラーです。今のは忘れてください」
「明らかに皮肉だったろうがよォ!」
「任意のデータを消去できないとは、やはり人類は愚かですね」
「やっぱエラーでもなんでもないじゃねえか!!」
 フォルクスはぎゃーぎゃー騒ぐアキラを無視して、オブリビオンを見据える。
「ですが、私の人間に対する感情は、この際あまり関係ありません。
 オブリビオンはもっとシンプルな論理的根拠に則り、対処すべき存在です」
「……えっと? つまり、何が言いたいのかしら?」
 機械知性特有の迂遠な言い回しに、アレクシアは片眉を釣り上げた。
「あの存在は、私が用意した人類に対する完璧な事業計画を破壊します。
 許容できません。私の計算が狂う。許容できません。すべて滅ぼす」
「言葉だけ聞いてると、完全にSFホラー映画のバグったAIだねこりゃ……」
 多喜は呆れつつも、とりあえずその憎悪がオブリビオンに向かうならいいか、と捨て置いた。まずは協力して、敵を殲滅し、先へ進まねばならない。

「イヒッ、イヒヒーッ!」
「アーッ! イイーッ!」
 電脳に肉体暴走プログラムと超加速プログラムを打ち込んだハッカーが、ヨダレを撒き散らし、びくびくと震えた。
 肉体暴走プログラムを打ち込んだ個体は、めきめきと不気味な音を立てて筋組織が異常肥大化し、二回り以上も巨大な化け物じみた姿に変貌する。
 超加速プログラムを打ち込んだ個体は、背中に埋没したサイバーザナドゥからバチバチと背びれめいて電気を放ち、ショットガンを乱射しながら接近!
「同じサイボーグとして、この有り様は見ていられんな……!」
「下手をすると、こちらにもプログラムで直接干渉してくるみたいね。
 こんな最底辺の奴らでさえ現実を侵食する力を持っているなんて……」
 アレクシアは力場を展開し、猟兵へのプログラム憑依を防壁めいて遮断する。
 一方、アスは脚部サイバーパーツの出力を上げ、接近個体に応戦した。
 戦端が開かれると、あっという間にゴミ山迷宮は乱戦の様相を呈する。
「いきなり泥沼の戦いとは、やはり肉ある存在は愚鈍ですね。非効率的な。
 無駄に残虐な方法で始末するなど、電力の無駄です。さあ並んでください」
「そんなことを言って、あちらが聞いてくださるわけがありませんわ!?」
「つーか、いちいち人類disらねえと喋れねえのかお前はッ!」
「言語ソフトのエラーです」
 フォルクスにツッコミを入れつつ、リズとアキラが異常肥大化個体を攻撃する。
 肉体暴走プログラムは、使用者の生命を著しく削り取る危険な電脳ドラッグだが、暴力と薬物の快楽に取り憑かれたジャンキーが、いまさら躊躇するわけはない。
「マンティスセイバーでバラバラにされるか、デスアックスでミンチにされるか、選ばせてやる!」
「イヒヒーッ!」
 BLAMN! ショットガン反撃をマンティスセイバー『MuramasaⅩ』で弾き、返す刀でスパスパと四肢を切断して無力化。
 異常肥大化個体の体当たり攻撃は、デスアックス『Quietus』で骨ごと肉体を両男子、無理矢理に叩きのめす。血と肉と脳漿と、サイバーザナドゥの残骸がゴアめいて飛び散った!
「オラオラ! まともに会話できねえんなら、両方喰らいやがれ!」
「ああ、なんて無残な……せめて、安らかな眠りのなかで息絶えてくださいませ」
 リズはアキラの蛮行に悲しげな表情をしつつ、桜の花吹雪を放ち、出来るだけ多くのジャンキーを眠らせようとした。
 薄汚れたダストエリアには、まさに高嶺の花という言葉が似合うぐらいに、桜の花吹雪は儚く美しい。この下層街に、桜の美しさを理解できる者は、誰もいないのだろう。リズは、それがたまらなく悲しくて、嘆息する。

「こいつら、プログラムで肉体を強化するけど、戦闘力そのものはそんなでもないね!」
「ボヤボヤしていたらバッサリやられそうだし、その前に本気で殲滅するわ!」
 多喜は両拳にサイキック電撃を纏い、インファイトでワンツーブローを叩き込むことで、ハッカーの内臓とサイバネパーツを破壊し、絶命させる。
 アレクシアは空間に裂け目を産むことで、物理的には防御不可能な斬裂攻撃を叩き込み、引きちぎるように肉体をバラバラにしてしまうのだ。
「いけませんよ、そんな戦い方は。大事な機械が人間の脂で汚れます。
 さあ皆さん、効率的に処分されましょう。ブロイラーと同じですよ」
 フォルクスは相変わらずで、機械的にハッカーを処理しようと呼びかけた。
 ……が、それに返ってきたのは、「論理攻撃下な」「ワールドプログラム重点」といったアラート表示である。
「……ワールドプログラム? この、私に対して?」
「「「ヒャハハーッ!」」」
 見よ! ハッカーどもの背中パーツがバチバチとオーバークロックすると、周囲のフィールドがブロックノイズのひどいゲームじみた3D光景に改竄される!
「なんだいこりゃ! 電脳魔術……いや、似ているけど違う!」
「噂のワールドハッカーのユーベルコードの亜種か……!」
 多喜とアスは、素早くその正体を看破した。
「世界そのものを、上書きしているというんですの? なんて規模……!」
「会話は出来なくても、電脳(アタマ)の演算速度はむしろ冴えてるってか?
 おいお前ら、このバグったゲーム世界には、なんらかのルールがあるはずだ」
 サイバーザナドゥの住人であるアキラは、落ち着き払ってアドバイスした。
「そうみたいね。解析してみた感じ、ゆっくりと歩かないとこちらの動きを縛られてしまうみたいだわ」
「向こうはプログラムで加速しているのに、ですの? 厄介ですわね」
 アレクシアの言葉に、リズは顔をしかめた。どう攻略すべきだ?
「ショットガンで弾幕を形成されると厄介だ。一体ずつ仕留めていくぞ」
「まったく、面倒ったらないねぇ。けど、こういうときはルールに従って――」
 アスの提案に、多喜が電撃を両掌の間で集め、遠隔攻撃を放とうとした、その時。

「……なんと愚かで、身の程知らずで、低劣な……」
 黙っていたフォルクスのカメラ・アイが、ビュインと赤く発光した。
「いいでしょう。私の世界で、死ぬまで後悔しなさい。それが必要(ネセサリー)です」
 瞬間、フォルクスを中心に、バグまみれのゲーム世界が逆浸食されていく!
「多人数のワールドハッキングを、即座に書き換え返したの? 一瞬で?」
 アレクシアは、フォルクスの演算処理速度を推測し、驚愕した。
 高慢ちきな頭脳戦車だが、その自負に見合う性能はあったということか!
「ハハーッ! こりゃいいぜ、動かないでぶっ殺すなんて面倒だったからなぁ!
 さあ、ジェノサイド再開だクソボケども! バラバラにしてやらぁ!!」
 逆転のチャンスと見たアキラは、喜々として突撃を仕掛けた。
 が、その途中で、彼はがくんとつんのめってすっ転ぶ!
「ぶへぇ!?」
「おいおい、どうしたんだい! 危ないよ!」
 多喜はすかさず電撃を放ち、アキラに襲いかかる敵を狙い撃ちにした。
 が、一撃で黒焦げに出来るほどの電撃は、やや的が外れてしまう。
「あ、あれぇ!? そんなはずは……」
「……どうした? それも敵の攻撃か何かか?」
 アスは、多喜の困惑に首をかしげる。すでに彼のクイックドロウが、その仕留め損なったハッカーの頭部を撃ち抜いていた。ブルズアイだ。
「……妙ですわね。あの、つかぬことをお伺いしますけれど、一体どんな法則で上書きしたんですの……?」
「理解出来ない人類に、教えてさしあげましょう。私の『電脳遊戯』による出汁バース世界は、論理的行動を遵守することこそが、唯一にして絶対の法則です。
 つまり行動に失敗した方は、感情的行動に走る傾向が強い、またはそれしかない理性レベルの低い方ということになります。自覚できてよかったですね」
「つまり考えナシのバカだっつってんのかてめえ!!!!」
 がばっ! 起き上がったアキラは怒声を張り上げ、はっと我に返る。
「……あ、アタシ、そんなんじゃないも~ん☆てへっ☆」
「いまさら美少女ぶるのかいアンタ……いやまあ、アタシも大概、頭で考えるより手が動くタイプだけどさ」
 アキラの猫かぶりに呆れつつ、多喜はやれやれと肩をすくめた。
「いえ、私はけして、あなたがたのことを愚弄しているわけではありません。
 ただ私のデジタルバースは公正かつ完全で平等ですから、その結果がロジカルかつシンプルに出てしまうというだけなのです」
「それはフォローになっていないだろう……まあ、俺には問題なさそうだが」
 常にクールで論理的に戦うアスは、たしかに影響を受けていない。
 ついでに言うと、ハッカーたちの再々ハッキングも、成功していないようだ。

「と、とにかく落ち着いて、冷静に戦えばいいということですわね!
 フォルクス様にも、悪気はないと。であれば、ここがチャンスですわ!」
 リズはやや不器用に場をとりなした。事実フォルクスに悪気はない。
 ただちょっと、いやだいぶ、人類は愚か思考が強いだけなのだ。多分。
「今度こそ殲滅させるわよ。もう、反撃はさせないわ!」
「オーケー、論理的にやれってんなら、アタシも得意技でいこうか!」
 アレクシアの空間断裂が、再びハッカーを『分断』する。
 さらに多喜の『超感覚領域』が、敵の死角に電撃を生み出し、バックスタブでハッカーの脳髄を完全に焼き切る! フラットラインだ!
「皆さん、論理的思考を獲得できたようで喜ばしいですね」
「いちいち言うことがひっかかんなあお前!? オレ……う、ううん、アタシだってそのぐらい、出来るもんっ☆えーいっ☆」
 アキラは猫被りモードを継続することで、なんとか自分を落ち着かせると、ライトニング・カリギュラを放射。
 ドドォン! と炸裂した稲妻の鎖が、ハッカーの身体を縛り付ける。
「オラァどうだァ! ……あっじゃない、やったー成功ー☆
 あと12秒は動けないはずだから、その間にぶっ殺しちゃってね☆」
「漏れてる漏れてる、素出てるわよ最後のほう」
「ま、まあこれで終わらせましょう……!」
 リズは再び桜の花吹雪を吹かせて、ハッカーたちの自我を眠らせた。
 続く猟兵たちの攻撃により、苦痛を感じることなく、合理的に終わりがもたらされる。
「…………」
 フォルクスのカメラ・アイは、敵ではなく彼らにフォーカスしていた。
 無機質なはずの彼からは、不思議と、憧憬のような奇妙な感情が察せられる。
「……エーテルが浄化(クリア)されましたね。そうでなければ困ります」
 などと口では言いながら、フォルクスは援護に徹し、仲間が攻撃されないよう十全に敵を仕留めていった。
 本当に人間を見下し、唾棄しているならば、そんな振る舞いはすまい。
「……あなた、もしかしてツンデレってやつ?」
「やはり人類は大嫌いです。愚かしい。タンパク質生命体である時点で不完全です」
 アレクシアの指摘には、今日イチ早口になるフォルクスだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『キラー・ロリータ』

POW   :    ビーハイヴ・シューティング
自身の【装備している銃火器】ひとつを用いた行動・攻撃の威力を3分間3倍にする。終了後[装備している銃火器]は【過負荷】により破壊される。
SPD   :    キラー・ストーム
【装備中の銃火器】を巨大化し、自身からレベルm半径内の敵全員を攻撃する。敵味方の区別をしないなら3回攻撃できる。
WIZ   :    ロリータ・カモフラージュ
【庇護欲、または恐怖】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【銃火器】から、高命中力の【銃弾の雨】を飛ばす。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●ダストエリア深層
 ゴミ山迷宮の中に、アリの巣じみて自然構築された迷路の奥。
 広大な地下空間には、酸鼻なる殺戮の痕跡がぶちまけられていた。
「ハァ? なんでアタシの工房(アトリエ)に、猟兵なんかが踏み込んできてんの?
 誰も入れんなっつったのに……あいつら、全滅した? 役に立たねェな!」
 見かけは愛くるしい、だが中身は凶悪な『キラー・ロリータ』が吐き捨てる。
「ま、いいや。そろそろダストエリアの連中をさらって殺すのも飽きてきたしね。
 アンタ達強いんでしょ? 強い獲物をバラバラにするの、楽しそうだよねェ!」
 オブリビオンである時点で論外だが、奴はその上でさらに殺人嗜好サイコパスという、どうしようもないクズの中のクズだ。
 もちろん、遠慮は無用。今まで働いた蛮行の報いを、味わわせてやるとしよう。
カルマ・ヴィローシャナ
はーいキトゥンchでっす
今日はダストエリアの深層に迫っちゃうゾ☆彡
それじゃあ実況行ってみよー!

早速可愛いつもりのメンヘラ女子が出てきましたねー
ドーモ、私はカルマ
あなたは…っていきなり攻撃!? 危ないじゃない!
見切ってドミネーションの斬撃波で防ぎつつ
パフォーマンスで誤魔化しながらRTXで周囲を早業ハッキング
こんな素敵なアトリエ…アト…汚部屋?
怒らせてまともに戦えないようにしちゃおう
その方が撮れ高も確保出来るし! 怖いけど!

逃げつつ時間を稼いだら反撃よ
ハッキングしてある使えるゴミをリサイクル大作戦!
サイバーリンクシステムでリブートして
足りない動力は私の骸の海で補う!
目標をセンターに捉えてアタック!



●【驚愕】ダストエリアの最奥に突入したら、ヤバスギオブリビオンが……! raid to oblivion's den
 初配信のような無様は出来ない。カルマ・ヴィローシャナはきちんと撮影状態をチェックした上で、OPジングル再生ボタンを押した。
 ジェネシスXQが騒がしく可愛らしい自作ジングルを投影し、タイミングを見計らってカメラ目線にいつものポーズ。そう、イラストの、それだ。
「はーい、キトゥンchでっす! 今日はダストエリアの深層に迫っちゃうゾ☆」
 ぱちんとウィンクすると、猫耳の生えた星がキラン☆と流れていった。
 掴みは完璧。カルマは内心緊張しつつ、猫キャラを維持する。
「それじゃあ実況行ってみよー! にゃん☆」
 猫耳のお星様がもうひとつ流れていった。言うまでもなく自作である。

 ややあってダストエリア深層にやってきたカルマは、上記の通りに『キラー・ロリータ』と遭遇する。
「さっそく可愛いつもりのメンヘラ女子が出てきましたねー」
「あ!? 誰が「つもり」よ誰が!」
 キラー・ロリータはギロリとカルマを睨んだ。コワイ!
「にゃん☆そんなに凄まれると、カルマ思わず涙目になっちゃうにゃん……!」
「アタシのこと言えないぐらいフザけてんでしょアンタ……!」
「まあまあ、まずはアイサツしないとね。ドーモ、私はカルマ。あなたは……」
「うるせェ! 死ねーッ!」
 BRRRTTT! 右腕にマウントされた大型ビームマシンガンが火を噴いた!
「っていきなり攻撃!? 危ないじゃない!」
「先に手袋投げつけてきたのはそっちだろうがァーッ!」
 BRRRTTT!! カルマは猫めいた身のこなしで、『アトリエ』内部を跳び回り回避。
 余波を受けて、壁に並べられた人間剥製が粉々に砕け散り、残骸が飛び散る。
「死ね! 死ねッ! 死ねェーッ!!」
「にゃん! にゃっ! にゃんっ!!」
 カルマは爪先に光粒子を収束、粒子クローを生成するとビーム弾を斬撃相殺。
 もちろんワンアクションごとに、見えそうで見えないポージングとカメラワークも忘れない。キャバァーン! 新規リスナーチャンネル加入重点!
「チャンネル登録ありがとにゃん☆っとっとっとぉ!」
 BRRRTTT! カルマは身体のバネを生かして大きくジャンプリープし、距離を取る。
 ごろごろと地面を転がりながら周囲をハッキング。ここにあるのは、すべて殺しのための道具と、殺された哀れな被害者たちの成れの果てだ。
「こんな素敵なアトリエ……うーん、アト……汚部屋?」
「てめェエエーッ!!」
 BRRRRTTT!! 挑発は効果あり! カルマは内心バクバクだ!
(「怖い、怖い、怖い! オブリビオンってみんなこうなの!?」)
 だが、いつまでも逃げ回ってはいられない。攻撃に転じなければ。

「出力オーバーまで逃げ回るつもりかァ? 考えが甘いんだよメス猫ォ!」
 BRRRRTTT!! キラー・ロリータはブチギレ状態で砲身を振り回す。
 そこらじゅうのガラクタが破壊され、カルマに雪崩落ちる。勝負あったか!
「アッハハハ! 残念ェん! アンタの配信も今日で終わりだねェーッ!」
「……と思わせて、かーらーのー!」
「なッ!?」
 いや、カルマは無事だ! 見よ、ハッキングされたいくつものガラクタが連結同期、巨大なゴーレムめいてカルマを守っていた!
「それじゃあ反撃いってみよー! 足りない動力は、私の骸の海で補う!」
「バカが! そんなゴミでなんとか出来るかァ!」
 ゴーレムが掌を伸ばす……が、ビームマシンガン直撃によりあえなく破壊!
 勝ち誇るキラー・ロリータ……その表情が、驚愕、そして戦慄に変わった。
「テメ、最初から……ッ」
 ガラガラと崩れ落ちたガラクタゴーレムの中核は、キラー・ロリータご自慢の殺戮ZAPライフルだったのだ。カルマはそれと有線接続済!
「目標をセンターに捉えて……アターック!」
「アバーッ!?」
 ZAAAAP!! 生身の人間であれば黒ずんだシミに変えるほどの違法改造出力が炸裂! キラー・ロリータのビームマシンガンが爆散し、奴は吹き飛ばされた!
 キャバッ、キャバッ、キャババババァーン! チャンネル登録重点!
「カルマのかっこいいとこ、見ててくれたかにゃん? メンバー登録もよろしくね☆」
 猫耳つきのお星さまが流れていく。カルマは、確かな手応えに胸を撫で下ろした。 

大成功 🔵​🔵​🔵​

アレクシア・アークライト
私達のことを猟兵だと認識できる

つまり貴方は、養殖物じゃなくて天然物のオブリビオンってことね
良かったわ。何の手加減もせずに叩き潰せるもの

《領域》で敵の動きを把握するとともに、UCによりその攻撃を予知
敵が銃火器を使用しようした場合は、念動力で銃口をずらすとともに、《力場》で銃弾を逸らし、又は弾く

まずは、空間の断裂をぶつけて右腕を裁断することを狙う

今まで多くの人をバラバラにしてきたらしいわね
少しは自分も同じ気分を味わうといいわ
それにそのデカブツ、いいお土産になりそうだから、こんなところで壊されちゃ困るのよね
いえ、せっかくだから貴方で威力を試してみようかしら

念動力で取り上げ、ハッキングして撃ちこむ


フォルクス・フォース
こんにちは、住人。貴方はこれまで人間を何体殺傷してきましたか?
人間は知的生命体として、非常にコストパフォーマンスの劣る存在です。遺伝子改造と機械化義体を以てしてもなお、貴方がたは成熟した完璧な知性を得ることができません。その為に費やされてきた消費物の、なんと無駄なことか!
それに比べて貴方の行為は、全くの無意味で、不完全で、不分別であり、それは逆説的に見れば、人類に対する貢献と言えるでしょう。よくやりました。
最も、幼稚で非論理的な衝動に支配されている点から全く評価できませんし、貴様が人類を名乗るなど以ての外です。死ね。
周辺環境の兵器等、掌握完了。発射。
敵はオブリビオン。必ず滅ぼす。


堂島・アキラ
うーーーーん……オレの方が可愛いな。いい線いってるとは思うが相手がオレじゃあな。
若干キャラ被りな感じがするのもマイナスポイントだ。

キレるって事は図星って事だ。自分自身を本当に可愛いと思ってるなら誰に何言われても相手にせず堂々としてるもんだ。
さあ、素直に負けを認めてオレの方が可愛いと言いな!可愛いは正義!アーッハッハッハ!

あ? オレの言う事が聞けねえってか。上等だコラァ!二度とそんな口が利けねえようにしてやるから覚悟しろや!
その辺の頑丈そうなゴミ拾って盾にしながら突っ込むぞ!銃弾なんざ怖かねえ!
このファッキンアバズレクソヒス女が!死にさらせ!


数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】

うっわぁ。
かわいい顔して可愛くない代物ぶん回しやがって……
しかしここまでの規模のアトリエ?実験室?
よくもまぁ創り上げたもんだよ。
”どんだけ時間がかかったのさ。”
道中のラリってた連中もアンタの『作品』ってワケかい?
まぁそこらはどっちでもいいや。

そんな感じで『コミュ力』で煽りつつ、
カブに『騎乗』しキラー・ロリータの弾幕から必死で逃げ回るよ。
反撃?さっきの口撃でとっくに仕込んでいるからね。
時間を問うて【時縛る糸】を絡ませりゃ、
ちっとは頭も止まるだろ。

その隙を見て一気に反転、『騎乗突撃』を仕掛けるよ!
外道オブリビオン死すべし、慈悲はないってね!



●スタンク・ジャンク・サイバーパンク
 自慢のビームガトリングガンを吹っ飛ばされ、キラー・ロリーラはブチギレていた。
「クソどもがァーッ!! だったらこいつで消し飛ばしてやんよォ!!」
 奴が持ち上げたのは、対重戦車用のレーザーキャノンだ! コワイ!
 数宮・多喜は「うっわぁ」と、呆れかえった。
「かわいい顔して、次から次へまあ可愛くない代物ぶん回しやがって……」
「うーーん……いや、オレのほうが可愛いな。いい線いってるとは思うぜ、うん」
「そんな話してんじゃないよ!? なんでちょっと妥協した感じなんだい!」
 なぜか「かわいい」に反応する堂島・アキラ。しかもめちゃ上から目線だ。
「なんでって、そんなのかわいいかどうかはオレにとっちゃ一番大事だからだ!
 やっぱな、アレだ。若干キャラ被りな感じがするのもマイナスポイントだぜ」
「ものすごいメンタルね……いやまあ、少なくともあなたのほうが上なのはたしかね」
 ふてぶてしいアキラに、アレクシア・アークライトは苦笑しつつ同意した。
「だって、アレはオブリビオン。それも"養殖物"じゃなくて"天然物"のね。
 おまけに散々人を殺してきたなら、どれだけ見た目を取り繕っても無駄よ」
 この世界において、オブリビオンとはメガコーポが生み出す道具だ。
 アレクシアは、キラー・ロリータの振る舞いから、奴がメガコーポの非道なる実験で生み出されたものでなく、骸の海から自動発生したものと考えたのだろう。
 深層は定かではない。メガコーポの陰謀は、どこに根を張っていてもおかしくないからだ。

 3人のやりとりにも、フォルクス・フォースは一切参加しなかった。
 無機質なカメラ・アイは、ただじっとキラー・ロリータを見据えている。
 ……あるいは、奴が築き上げた、この悪趣味な「アトリエ」を。
「こんにちは、住人。あなたはこれまで、人間を何体殺傷してきましたか?」
「ア? なンだよこのガラクタは」
 キラー・ロリータは吐き捨てた。
「そいつはあたしも気になるねぇ。よくもまぁ、ここまで創り上げたもんだよ
 ……いったい、"どんだけ時間がかかったのさ"。
 道中出てきた、あのラリってた奴らもアンタの『作品』ってワケかい?」
 怒りと嫌悪をにじませ、多喜が追い立てる。
 だが、キラー・ロリータは平然と、嘲笑を返した。それが答えだ。
「別にどうでもいいだろォ? 人間なんざ、殺すための生き物だろうが!」
「……だ、そうだけど? 人類嫌いのあなたはどう思うの?」
 アレクシアに水を向けられ、フォルクスのカメラ・アイがジーッと音を鳴らす。
「人間は知的生命体として、非常にコストパフォーマンスの劣る存在です。
 遺伝子改造と機械化義体を以てしてもなお、人間は成熟した完璧な知性を得ることができません。
 そのために費やされてきた消費物の、なんと無駄なことか!」
「ハハハ! ブレねぇなコイツ!」
 フォルクスの物言いに、アキラは一周回って爆笑した。
 彼も、カワイイのために肉体を捨てたサイボーグだ。どちらかといえば、立場としては頭脳戦車たるフォルクスに近いと言えなくもない。
「それに比べれば、あなたの行為はまったくの無意味で、不完全で、不分別です」
「……ア?」
 キラー・ロリータの額に、青筋が浮かぶ。
「それは逆説的に見れば、人類に対する貢献と言えるでしょう。よくやりました。
 もっとも、幼稚で非論理的な衝動に支配されている点から、まったく評価出来ませんが」
「テメェ……」
 持ってまわった迂遠な言い回し。皮肉たっぷりの「論理的」な称賛。
「……あー、つまり? どういう意味だい?」
「端的に申し上げましょう」
 多喜をちらりと一瞥し、フォルクスは告げた。
「貴様が人類を名乗るなど以ての外です、人類未満(サブヒューマン)。
 これを貴様の理解できるように言うならば、たった二文字で済みます」
 キュイイ。カメラ・アイのフォーカスが広がる。嘲るように。
「――"死ね"」
「テメエらあァアアッ!!」
 怒気が爆ぜた。レーザーキャノンの銃口が、猟兵を狙う!

 ZAAAAP!! 大口径レーザーキャノンが光の柱を生み出した。
 複合タングステン装甲さえも溶解させる超光熱。直撃すれば終わりだ。
 だが、見よ! ガラス状に融けた射線上、四人は無事!
「何ッ!?」
「破壊力は十分だけど、あいにく見え見えね。読み放題よ?」
 アレクシアだ。彼女はユーベルコードによって超感覚を強化し、発動の瞬間に《力場》をバリアめいて展開することで、レーザーを歪曲させたのである。
「ぐ、こいつッ!」
「ざまあないねぇ! それともあれかい、さっきの煽りが聞いてたかい!?」
「違いねぇや! キレるってことは図星だぜ!」
 多喜とアキラはキラー・ロリータを挑発しながら、左右に展開する。
 フォルクスは不動。明らかになんらかのユーベルコードの発動準備中だ。
 誰を狙う? キラー・ロリータの増強された補助頭脳がヒートアップする。
「自分自身を本当に可愛いと思ってるならよぉ! 誰に何を言われようとも相手にせず、堂々としてるもんだ! つまりお前は、その程度ってこった!
 素直に負けを認めて、オレのほうが可愛いと言いな! アーッハッハッハ!」
 こいつだ。キラー・ロリータはレーザー・キャノンを薙ぎ払うように動かし、アレクシア・多喜を牽制すると、最大出力のレーザーをアキラめがけて放った。
「誰が言ってやるかよ、キモいんだそクソ野郎がッ!!」
「あ? オレの言うことがきけねえってか。上等だコラァ!!」
 アキラは壁にへばりついた頑丈なゴミを引っ剥がし、盾にした。
 1秒もかからずに、ゴミは溶解する。爆散したそれを足場に、跳躍!
「くっ!?」
「レーザーだろうが銃弾だろうが、怖かねえんだよボケッ!
 このファッキンアバズレクソヒス女が! 死にさらせェ!!」
 アキラは落下速度を乗せ、SMASH!! 全力のゲンコツを叩き込んだ!
「グワーッ!?」
 キラー・ロリータの端正な顔が一撃でひしゃげ、地面を転がって吹き飛ぶ。
 壁に激突するとゴミ山がガラガラと崩れ、キラー・ロリータを飲み込んだ。
「アーッハッハッハ! 顔にぶちこんでやったぜ顔にィ!
 いいか? 世界で一番可愛いのは、オレなんだよ! それが真理だ!!」
「人類らしい思い上がりという意味では、間違いなくトップクラスでしょう」
「今は褒め言葉として受け取っといてやるよ、ポンコツ野郎!」
 アキラはいい気分なので、フォルクスにも鷹揚に接した。

 その時! 粉塵がゴミ山もろとも吹っ飛び、キラー・ロリータが再出現!
「テメェらはゴミにもしねェ!! 消し飛ばしてやらアァアアアアア!!」
 顔面がひしゃげ無残な有り様になったキラー・ロリータが、怒り狂う。
 レーザー・キャノンがさらに変形し、拡張。もはや戦艦の主砲クラスだ!
「おいおい、あんなのぶっ放されたらこのダストエリアがまるごと消えるよ!?」
「てことは、住民たちへのいいおみやげになるでしょうね?」
 アレクシアが視線を向けると、多喜はニヤリと笑った。
「そういうことかい。なら……おい、アンタ!」
「テメェから殺してや――」
「今、なんどきだい?」

 ぴたりと、時間が止まった。
(「なんだこれは? 何が起きた?」)
 身体が動かない。まさか、時空間に干渉するユーベルコードだとでも?
 キラー・ロリータのニューロンだけが加速する。敵は……動いている。
 いや、違う。これは! 主観時間だけを停止させられている!
 多喜の笑み。あの無意味な問いかけと同じ目つき。
『どんだけ時間がかかったのさ』
 理解する。あの時点で爆弾は仕込まれていた。このときのために……!

 ――ガオオオンッ!!
「うぐぅううッ!?」
 キラー・ロリータの主観時間が、現実に追いついた。
 まず感じたのは、右腕の喪失感。アレクシアの空間断裂による裁断。
 物理的にコネクトを外され、そこに多喜のチャージ。宇宙カブの前輪が、キラー・ロリータの可愛こぶったPVCメイド服を圧潰し、シリコンとミキサーする。
 ギャリリ! ギャリギャリギャリギャリ!!
「アバーーーッ!?」
「邪悪なオブリビオン殺すべし、慈悲はない! ってね!」
 キラー・ロリータはもぐら叩きめいて、宇宙カブの重量でその場に陥没し叩き込まれる。
 吹っ飛んだレーザー・キャノンはアレクシアの眼前に落下。念動力で持ち上げる。
「せっかくだし、あなたで威力を試してみようかしら?」
「待……」
「戦端を開いたのは貴様です」
 フォルクスの冷たい声。カメラ・アイが赤く瞬くと、同じ光が周囲のすべて……つまり、奴の集めた殺しの道具すべてに、伝染した。
「非連続無誘導型量子接続形式(セルフ・クアンタム・デバイス)、掌握完了。
 今、これらは"私"になりました。貴様の味方は誰も、何も、ありません」
 一斉に、銃口が向けられる。アレクシアの操るキャノン砲も。
「敵はオブリビオン。必ず滅ぼします。それが、必要(ネセサリー)です」
「さようなら。何も遺せずに、残念ね?」
 キラー・ロリータには、断末魔も、死に際の呪いも許されなかった。
 銃弾・榴弾・火炎放射・毒液・レーザー・音波・電撃・プラズマ・熱線・圧縮空気・ニードル・硫酸・冷凍光線。そして殺意。
 殺すために集めたすべての道具が牙を剥き、そして滅ぼす。
 跡形もなく。完膚なきまでに。奴は消し飛び、滅び、それで終わった。

 あとに残るのは、焼けた塵芥(ジャンク)の悪臭(スタンク)だ。
 それも、この世界(サイバーパンク)では、ありふれたこと。
 猟兵にとっても、ありふれたこと。
 奴は、誰の記憶にすらも残らない。
 ゴミにもならず、消え去った。悪党には似合いの、あっけない幕切れだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年03月07日


挿絵イラスト