11
閃光/Flashback

#サイバーザナドゥ #サイバースペース #アミダインダストリー

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#サイバーザナドゥ
🔒
#サイバースペース
#アミダインダストリー


0




●File.01
 ざあざあと雨が降っている。鬱陶しい酸の雨が。いっそのこと全て溶かしてしまえばいい――そんな叶わぬ願いを胸に、私は端末に手を伸ばした。
『……私だ。ケーキ泥棒は? そうか』
 いつも通り、連中は上手くやってくれている。あれはケーキだ。最早数えるのも億劫な程の生命で焼き上げた特大のケーキ。切り分けてでも持ち帰りたい奴等がごまんといる特製の――だが渡す訳にはいかない。あのケーキは、アミダの罪の記録は本物だから。
『……任せる』
 端末を切り、深々と豪奢な椅子に腰かけて足を伸ばす。これで何度目だろう……釣られて出てくる愚か者達。最早いつからこんな事をしているのかすら思い出せない。いつも、頭の中に出てくる光景は――この音に打たれて血を流す女の姿。あれは誰なのだ?
 ざあざあと雨が降っている。この忌まわしい感情すら溶かせない、酸の雨が。

「ハローワールド! って言うのかね。集まってくれて助かるぜ」
 虻須・志郎(第四の蜘蛛・f00103)は片手を上げて、集った猟兵達に挨拶をした。どうやら新世界の事件の予知を視た――スクリーンに情報を投影し、志郎は説明を続ける。
「今度の世界はサイバーザナドゥ。敵はメガコーポ……アミダインダストリーっつう悪の総合商社みたいな連中だ。そいつらの犯罪の証拠を奪取して欲しい」

 メガコーポ――巨大企業群は新世界【サイバーザナドゥ】の世界を牛耳る敵の総称。オブリビオンを創り出し使役しているという恐ろしい存在だ。そんな奴らから、どうやって証拠を奪取するんだ? と誰かが尋ねる。
「サイバースペース内部にダイブして、証拠データを探しまわるんだ」
 サイバースペースは『まるで生身そのままの様に活動出来る電脳空間』で、サイバーザナドゥのあちこちにあるフリーポータルから誰でも自由にアクセスが可能な電脳世界だ。勿論ユーベルコードもそのまま使える、ある意味世界の中にある世界の様な所だろう。スクリーンには所謂Wi-fiスポットや電話ボックスの様なフリーポータルが映されて。この世界の住人は皆『機械化義体』――サイバーザナドゥに換装しているから、電脳空間の利用は日常茶飯事だという。じゃあその中でどう探すんだ、と別の声が。

「うーん……予知じゃあケーキだ何だって言ってたからな」
 あくまで証拠の情報は電脳空間にあり、それを何らかの形で認識出来るのだろう。それ以上の事は志郎の予知では分からなかった。だが。
「まあ、どんな形だろうが電脳世界だ。ハックしてジャックしてゲットするか」
 形が無ければ作ればいい。見つからなければ荒らせばいい。0と1のデータがまともに可視化されているだけマシだろう。他にも何か眠っているかもしれない、と付け加え。
「そこにある物、いる者に確かめるしかないんじゃねえか?」
 中の自律プログラムが邪魔をしてくる可能性だってある。だがユーベルコードも使える世界だ――理を覆すのは猟兵の日常茶飯事。こちらの流儀を教えてやればいい。

「ちなみに証拠データ奪取後には敵の強襲部隊が攻めてくる。しっかり迎撃も頼むぜ」
 それを早く言ってくれ。だが生身の戦闘ならば十九の世界を渡った我等だ。決して遅れを取る事は無いだろう。
「それじゃあ行こうか、幸運を祈る!」
 手にしたグリモア――蜘蛛の巣状のゲートが展開して、新世界への扉が開く。


ブラツ
 ブラツです。ようこそ新世界。
 今回は電脳世界で機密情報を奪取した後、
 迫る敵を迎撃する事が目的です。

 第1章は冒険です。電脳世界で犯罪の証拠データを探し出して下さい。

 第2章は集団戦です。敵の私兵部隊が相手です。

 第3章はボス戦です。敵の指揮官が相手です。

 電脳世界の内容については断章の投稿をお待ち下さい。
 その他、詳細はオープニングに準じます。

 アドリブや連携希望の方は文頭に●とご記載下さい。
 単独描写を希望の方は文頭に△とご記載下さい。
 同時描写希望時は何がしかの識別子の記載をお願いします。

 プレイングはタグにて募集期間を告知します。
 書けるタイミングで執筆しますので、
 状況によりプレイングを流してしまう場合もありますが、
 締切り前にご再送頂ければ力の続く限り善処します。
 他、募集停止などの追記はタグにて行います。
 何卒、ご了承いただければ幸いです。

 それでは、よろしくお願い致します。
171




第1章 冒険 『サイバーシティの運び屋』

POW   :    邪魔者を力ずくで蹴散らす

SPD   :    最短ルートを選び、疾走する

WIZ   :    囮の運び人や荷物を用意する

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●Mission 1-1-0
 ニューロンを駆け抜ける光の波が最奥へ到達すると共に、猟兵達は転移にも似た衝動に襲われる。僅か1ナノ秒にも満たない刹那の接続は、自身の肉体はそのままに意識と力を電脳世界へダイブさせた。擬似的に構築された――所々虫食いの様なノイズが走る電脳世界は、ざあざあと雨が降りしきる街を模した闇の中だった。
 高々とそびえ立つ高層ビルに工事現場の無数の足場。剥き出しの鉄骨は雨に打たれ所々が腐食している――この雨は酸の雨か。だが電脳世界に適応した猟兵にしてみれば、そんなエフェクトなど何の効果も無い。それに探さねばならぬのは環境を汚染する雨雲じゃない。狙うはアミダインダストリーの犯罪の証拠データのみ。

 街を模した電脳世界には自律活動をするプログラムが、住人を模してそこかしこで闊歩していた。技術がある者ならば直接ハッキングを試みても良い。だがそうでない者は対話で情報を聞き出してもいいだろう。
 他にも現実世界の様に無数のフリーポータルが設置されている。これらを活用する事だって出来る筈だ。だが一歩間違えれば、この電脳世界を管理する防衛プログラムが黙ってはいないだろう。そうなれば――逃げる他道は無い。
 やるべき事は三つ。一つ、データの在処を調べる事。二つ、データを手に入れる事。三つ、データを手に帰還する事。確実に帰還するにはスタート地点へ戻ればいい。無論、それ以外の方法で戻っても問題は無い。

 予知で視えた言葉は『切り分けてでも持ち帰りたい奴等がごまんといる』データである。まとめて全部奪取出来る程、やわな量では無いのだろう。断片でも構わないからそれを確実に手に入れる事。単純だが複雑な工程を孕む面倒なミッションだ。
 幸い肉体は安全なポータルに隔離されている。寂れたサイバー酒場を貸し切り同然で全員ダイブしている。この後の事も考えればそれが一番安全だろう。
 では狩りの時間だ。電脳世界であろうとも猟兵の獲物が無事では済まないという事を、この世界の住人達へ思い知らせるといい。

▽ NEXT:Mission 1-1-1 Are you ready? ▼
デンゾウ・ゴガミ
グフフ……アミダの尻尾の先を、こンな簡単に掴めるたァね。
グリモアってのァたいしたモンだ。今までおれがいくら探りを入れても、これっぽっちも痕跡を掴めなかった奴らだぜ?
つまり、こいつは、チャンスだ。グフフ……アブハチトラズって言葉もある、慎重にやろうじゃねェか。

おれァハッカーじゃねェからな、今回はひとつ、お話をしようじゃねェか。
行き先はノイズが濃いトコだ。ンなとこをうろついてンなら、その影響でどこかイカれてんだろ。てことは、プロテクトも甘いかもしれねェ。
「ドーモ、ゴガミ・デンゾウです」とオジギした上で、アミダの名前を出してカマをかけてみるぜ。

襲われたら?
……グフフ、自己防衛はするさ。多少はな……。


ヘスティア・イクテュス

ケーキ、ケーキね~そのまま食べ物ってオチじゃないわよね?
手をぐるぐる動かしたり軽くジャンプして動作の確認
そんなに違和感は無いけど…アベル現実での動きとの誤差何秒?

ん、じゃあさっさと証拠データを探して海賊らしく頂きましょうか!
こちとら電脳魔術士、そういうのは十八番ってね!


アベルと自身で双方向から『ハッキング』し『情報収集』
アミダインダストリーの犯罪の証拠データ?を探してみるわ
ん~それにしてもきな臭いわね…いくら猟兵がとはいえ探して犯罪の証拠が手に入る?
それに奪取後に現れるっていう強襲部隊も流石に動きが…


考えすぎなら良いんだけど…これってもしかして…
罠?



●Mission 1-1-1
 降りしきる雨が鉄を打つ。ざり、と雨がテクスチャを穿つ度に放たれるノイズはまるで怨嗟の合唱――その中を、巨大な黒い影がゆっくりと動いていた。
「グフフ……アミダの尻尾の先を、こンな簡単に掴めるたァね」
 男――デンゾウ・ゴガミ(ニューディブランチ・f36547)はしたり顔で電脳空間を眺めて思案。全く、グリモアってのァたいしたモンだ。
「今までおれがいくら探りを入れても、これっぽっちも痕跡を掴めなかった奴らだぜ?」
 場慣れした雰囲気で状況を検分するデンゾウ。さながらスモトリめいた巨体を揺らして、ジロリと見回した先――鉄骨が剥き出しの工事現場。
「サイバースペースっても行先はごまんとあるンだ。それを絞り込めるたァ……」
 如何にもな場所だがそれだけでは無い。この場所だけ音が無い。あれほど響いている雨音が、この周囲だけしんと静まり返っている。
「全く、たいしたモンだねェ」
 何かがおかしい……人除けに仰々しく『キケン』『オダイジニ』と極太ゴシック体の赤字で書かれた看板がぶら下がり、その通り誰一人近寄ってはいない。
「トーダイモトクラシ、見つけたぞ」
 これは電脳空間でなければ気付けない可視化されたジャミング。アミダインダストリーの寝首を掻く、千載一遇の突破口だ。
「グフフ……アブハチトラズって言葉もある」
 いつの間にか、べたりとした足音が消えていた。同時に冷たい何かが、デンゾウのアバター体の背筋をゾッと這う。
「慎重にやろうじゃねェか」
 デンゾウは深まる闇の中を進む。その尻尾を逃しはしまいと。

「ケーキ、ケーキねぇ――そのまま食べ物ってオチじゃないわよね?」
『電脳空間での形状は任意です。額面通りでは無いと思いますが』
 ヘスティア・イクテュス(SkyFish団船長・f04572)は普段通りの姿で電脳空間へダイブしていた。傍らにはお供のAI『ティンク・アベル』が羽の生えた執事の姿で飛んでいる。
「そんなに違和感は無いけど……アベル、現実での動きとの誤差何秒?」
 ヘスティアは手をぐるぐる動かしたり、軽くジャンプしてアバターの動作を確認していた。いつもの電脳戦ならばここまでアバターに頼る事も無いのだが、郷に入れば何とやら――まずは自分の力がどこまで通じるのか、正面から試してみたい。
『コンマ1秒未満ですが……同期チューニング完了。これで普段通り』
 好きなだけ暴れられます、と恭しく首を垂れるアベル。
「ん、じゃあさっさと証拠データを探して海賊らしく頂きましょうか!」
 今いる場所は工事現場近くのバス停。傍から見れば女子高生が体操しているように見えるだけ。多分。
「こちとら電脳魔術士、そういうのは十八番ってね!」
 威勢よく啖呵を切ったヘスティアの周囲に無数のホロキーボードが展開される。ここからは海賊の時間だ――文字通り、お宝を奪い切って見せよう。

『ンダァテメェオラァ!?』
『テメブッコロスゾバカヤロウ!』
「ドーモ、ゴガミ・デンゾウです」
 ぼんやりとした明かりの下、浅黒い巨漢が深々とお辞儀をする。それを取り囲むクローンヤクザの群れが、いきりながら嘗め回す様にデンゾウの様子を伺う。やっぱりねェ……先客がいらっしゃったか。ならば。ゆったりとおどけた口調でデンゾウが続けた。
「アミダの、おうちは、ここですか?」
『!!』
『テメェ!?』
 掛かったか。矢張り、アミダの名前でカマを掛ければこの通り――この一帯だけノイズが段違いだ。そして電脳空間の音響補正も通じないプロテクトの甘さに、何かがあるとは踏んでいたが。まさか電脳クローンヤクザの詰所だったとは。
「おっと短気は押さえてくだせェ」
 いや、このヤクザは番兵か。だとしたら本物の執行者がどこかにいる筈。居ないならば余所でお仕事中だったりして…………つまり、こいつは、チャンスだ。
「おれァハッカーじゃねェからな、今回はひとつ、お話をしようじゃねェか」
『スッゾオラゴルァッ!?』
 チャカリボルバーを抜いて威嚇するヤクザ。瞬間、光条がその手を貫いた。
『ガ、ガガ……』
 ノイズをばら撒き消え散るヤクザ。一斉に振り向いた視線の先に、ビームライフルを構える女子高生の姿が。まさかニンジャか? 戦慄がヤクザを構成するプログラムを支配する――否、彼女は海賊。海賊にして電脳の魔術師。
「危ないじゃないの。アベル、翻訳」
『ようこそいらっしゃいました。死ね』
 その言葉に、ヘスティアは一際大きい溜め息を吐いた。

「ドーモ、嬢ちゃんが猟兵かい?」
「え、ええ。おじさんも……でしょ?」
 互いに背中合わせ――即席の陣形を組み、デンゾウはフォトンセイバーを手に、ヘスティアはホロキーボードを展開しながらアベルに指示を出す。電脳空間故、実際に手を動かさなくても思考で操作出来る事は先に分かっていた。そうなれば最早ヘスティアの独壇場――攻性防壁たるクローンヤクザにさえ気を付ければ、ここは切り抜けられる。
「ここが一番仕事し易そうなのよねー。アイツらがいなければ」
「しかもハッカーか。丁度いいねェ」
 アベルの制御するドローンがヤクザの追撃を攪乱し、ヘスティアはデータの深部へハッキングを敢行。プロテクトの甘い空間故、侵入は容易だ。
「助太刀いたそう」
 アンブッシュはデンゾウが難なく躱し、二人はヤクザを蹴散らしながら、工事現場のより深くへと進んでいた。
「アリガト。でもハッカーじゃ無くて、わたしは魔術士よ」
 電脳のね。おどけた様子で言葉を加えてデータを精査するヘスティア。見つけた証拠データらしきファイルは、そのどれもが一般的な名詞で形作られていた。
「どのファイルも、何か気の抜けた名称ばっかりなんですけど!」
「あァそれは符丁だな」
 いわゆる暗号。解除表と照らし合わせれば、そのありふれた言葉の数々の正体が詳らかになる古典的な代物だ。隠した上でどうしてそんな回りくどい事を……訝しむヘスティアにデンゾウがニタリと言葉を続ける。
「表向きに奴らのシノギを隠す為の、な」

「じゃあ、この合唱コンクールのお知らせって」
 一際容量が大きいファイルを名指し展開するヘスティア。空中に無数の書類が柔らかな文体で一斉に表示される。それを見てデンゾウは、初めて表情を固くした。
「……生体演算デバイスの多層レイヤー制御プロトコル、起動試験日程」
 プロトコル起動に当たり必要な素材の確保。並びに運用試験の日程、運用上諸注意、そもそも生体演算デバイスとは――サイバーザナドゥの骸の海を調律し、より廉価なオブリビオンを大量生産する為のシステムの一部。そうだ。これが欲しかった。
「当たりだ嬢ちゃん。ズラかるぜ」
 踵を返し階段を駆けるデンゾウ。それだけの証拠データがあれば十分。
「って、ちょっと! おじさん!」
 その意味の重大さをまだ理解していないヘスティアはデンゾウの後を追って息を切らす。無駄に体力が必要なのは良く出来ているわねと、電脳世界の作り込みに感心して。
「このヤマきな臭過ぎるわ! いくら猟兵がとはいえ探して犯罪の証拠が手に入る?」
 実際手に入れた情報はサイバーザナドゥでのフィクサーたるデンゾウがお墨付きを与えた。そんな危険な情報をあえて流す様な、知らしめる真似を取るとしたら、答えは一つ……アミダには、その情報は決して渡らない保証があるという事だ。
「ガチの情報が、って事かァ?」
「そうよ。それに奪取後に現れるっていう強襲部隊も、流石に動きが……」
 実際、データのみを他所へ転送出来ないか試みたが、ここから外に向けてネットワークを通れない。まるで蠅取り器の様な構造だ。突破口をだらだら探せば攻性防壁に阻まれて、二度と元の世界に戻れない。迂闊に手を出せば――確実に死に至る。
「そいつァ当たりだよ。嬢ちゃんの考え通り、こいつァ罠だ」
 帰った所で肉体ごと始末すれば良い。その為のアミダの鎮圧係――遍く衆生を救済すると宣う、奴らの汚い暴力装置。今まではそれで事が済んでいたのだ。だから。
「まあどっちが獲物かァ、後で分からせりゃあいい」
 これからは違うという事を証明してやる。逆襲の時が来たという事を。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

荒谷・ひかる
一応、安全の確保されてる所からアクセスしているとはいえ……身体は無防備に寝てるものと思うと、ちょっとどきどきしますね。
……いえ、精霊さんの存在や身体能力的に、起きてても寝てても変わりないかもしれませんがっ。

探し物という事で【精霊さん捜索隊】を発動
今回は電脳世界ということで雷の精霊さんを主力に
彼らなら電気信号に成り切る事も容易でしょうから、ガードの固いところも見つからずにすり抜けられるはずです
わたし自身は適当な建物内(喫茶店など)で待機し、彼らからの情報を纏めることで他の猟兵を支援しましょう
今回は捜索に特化するので、データの入手とお持ち帰りは他の皆さんにお願いしますね


アモン・スメラギ
ひゅー!マジで漫画みてえな世界だな、サイバーザナドゥ!
さて、アミダインダストリーの事件を調べろ、だったか。
ケーキって何かの隠語か?
サイバースペースにダイブしたら、さっそく情報収集開始だな。
だが、いきなりアミダのデータベースを狙うのは無謀すぎる。
そこで、まずは傘下の企業が関わった非合法活動から洗うぜ。
警察がヘマこいて揉み消し損ねた案件を探して、
自身の「聖王国」でも情報提供を求めるぜ。
元々はアポヘル世界を再生するためのSNSだが
こちらの世界に統合することだってできるだろ。
アルジャーノンエフェクトを使って処理速度を強化、
データ収集を終える。あとは103秒以内に
公衆電話までダッシュして黒服から逃げるぜ



●Mission 1-1-2
「ひゅー! マジで漫画みてえな世界だな、サイバーザナドゥ!」
 アモン・スメラギ(フラスコチャイルドのソーシャルディーヴァ・f24679)は鈍色の電脳世界に感嘆の声を上げ、酸の雨に打たれてステップを踏む。
「……身体は無防備に寝てるものと思うと、ちょっとどきどきしますね」
 一方、荒谷・ひかる(精霊寵姫・f07833)は傘を差して、恐る恐る鈍色の空を見上げていた。
「……いえ、精霊さんの存在や身体能力的に、起きてても寝てても変わりないかもしれませんがっ」
 一応、安全の確保されてる所からアクセスしているとはいえ、精霊さん達は私の身体を守ってくれるだろうから。いつもとは違う雰囲気に多少気圧されながらも、ひかるは自らを精一杯応援して決意を固める。
「さて、アミダインダストリーの事件を調べろ、だったか」
 タン、と華麗に着地をしたアモンが掌からデバイスを起動する。サーバー名『Sacred Kingdom』――この世界の自身の拠点を城塞の様に展開して、降りしきる雨の中で早速作業を開始した。まず調べるべきは提示されたキーワードか。
「ケーキって何かの隠語か?」
「でしたら、わたしはケーキを探しましょう」
 ふんす、と鼻息荒くひかるは拳を握りしめる。正直データベースだのハッキングだのは門外漢。だがケーキならば色々と分かるはずだ。女子だから。
「後は精霊さんが、何とかしてくれる筈です」
 今回は電脳世界、雷の精霊さんがきっと活躍してくれるだろう。紫電がバチリと爆ぜて空に溶け込む。彼らなら電気信号に成り切る事も容易でしょうから、ガードの固いところも見つからずにすり抜けられるはず。そのままひかるは近場の喫茶店へと足を運んだ。
「クールだねえ。それじゃあ俺も始めようか」
 発達した化学は魔術と区別がつかないならば、その奇跡を起こして見せよう――途端、内なる『キー・オブ・キングダム』が光を放ち、世界と世界を繋げるゲートがゆっくりと開かれた。
「聖王国の皆が、何とかしてくれるだろ」
 VR空間を通じたバックドア――アポカリプスヘルの同志達の力を借りて、このヤマを一気に解決だ。

「警察がヘマこいて揉み消し損ねた案件――これか」
 アモンは人海戦術でザナドゥのニュース記事を片っ端から掻き集めさせた。その中からアミダインダストリーに関連する企業の不祥事を抽出し、関連する犯罪データをハッキング。両者を照合し隠された真実の裏を取り続けていた。
「アミダの傘下企業、ライブラ重工の爆発事故」
 いきなりアミダのデータベースを狙うのは無謀すぎる。言う程のメガコーポならばプロテクトも厳重だろうし、自身の超常が発揮出来る103秒で解決出来るか難しい。失敗すれば、恐らくは命が無いだろうから。
「その実体は、新型フォトンセイバー起動実験の失敗」
 故にアミダ本体では無く参加企業の非合法な実態を暴く事で、その正体に近付こうという魂胆だ。そこならば本体よりはプロテクトも多少は緩いだろう。目論見通り、そのデータはあっさりと手に入れる事が出来た。
「その際の死傷者を隠蔽し製品は正式に販売されていると。ハッ!」
 暴発の危険性がある製品をさも安全と偽って売り捌いている。現に安心・安全・安価の三拍子でそのフォトンセイバーは飛ぶ様に売れているらしい。つまり、それだけ沢山の人々が常に命を脅かされているという事……自分が信頼した道具に、裏切られる事によって。
「そうやって私腹を肥やす奴は、どの世界でも変わらねえんだな」
 信頼を利用した悪事――アモンにとって殊更許せない現実がそこにあった。

「うう。何だか難しい言葉がいっぱい……」
 一方、ひかるはカフェでケーキを頬張りながら、雷の精霊さんが送ってくる報告を一つ一つ追いかけていた。流石の精霊さん、どんなプロテクトも簡単に侵入出来ちゃう。だが問題はそこでは無かった。
「アイピー? ポート設定? 何? 何なのよぅ」
 それはこの電脳世界からアミダインダストリーの各拠点へ侵入する為のネットワーク情報。数字を揃えてパスワードを解除すれば、堂々と正面から殴り込みに行けるらしい。だが分からない。殴り込みに行くと言えば、こんな時お姉ちゃんだったらどうするだろう……。
(いい? 筋肉は電気信号で動く。頭脳も筋肉ならば私は電脳)
(つまり電脳世界は筋肉で動かせるの。何も恐れる事は無いわ)
「絶対違う。筋肉は電気信号で動くけど違うそうじゃない」
 姉なる幻視は泣きそうなひかるの表情を更にネコめいたものに変えていく。どうしようも無くなったひかるは雷の精霊さんに頼み、犯罪データをタブロイド状に変換させてアミダインダストリーに関連した事件を一つずつ追っていった。
「あ、これなら分かる! 新興宗教組織に多額の献金!」
 やっと見つけた、ひかるも理解出来る巨悪の臭い。アミダインダストリーがかつて信者を生体実験に利用していた新興宗教組織に多額の献金を支払っていた証拠――その帳簿データが事細かに記載されていた。大きな声で大発見を喜んだのもつかの間、付近の住人を模したプログラムが一斉にひかるの方を向く。
「ご、ゴメンナサイ……」
 流石に迷惑だったかな。というかここははアミダインダストリーの電脳世界だし……もしかして。
「逃げるぞ!」
「タイミング!」
 ガン、とドアをあけ放ちアモンが手招きする。向こうもどうやら作業が終わった様だ。後は逃げる為のポータルへ向かえばいいが――住人の痛い視線を背に受けて、二人は一斉に駆け出した。

「奴ら規模がデカすぎて漁っても漁っても終わらねえ」
「で、探してる途中で逆探知されて、ってなるのね」
 まだ本格的な追手は来ない。だが、こうやって事件を調べている内に居場所を特定されて、電脳世界の処刑人がやって来るのだろう。それはここから出た後も――二重の追撃を躱さなければ、手に入れた情報を届ける事は出来ない。
「ああ。この先は第二ラウンドだ。覚悟は良いか?」
 ひかるが回収した情報と合わせ、アモンは自らが手に入れた情報を厳重にロックした。何故か聖王国に送る事が出来なかったからだ。どうやら外から見る事は出来ても、それをデータとして保存する事は余程の腕が無い限り出来ないらしい。それ故に、ここの情報は撒き餌として十分な役目を果たしているという事か。
「ええ。外の世界なら、決して遅れは取りませんよ」
 アモンの言葉にニヤリと微笑み返すひかる。
 数多の世界を駆け抜けた猟兵が伊達では無い事を、奴らに教えてやろう。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ルナ・シュテル

【WIZ】
犯罪の証拠データの奪取任務、でございますね。承知致しました。

さて、私も【ハッキング】には少々覚えがございますが…
只闇雲に探すだけでは切りが無いでしょう。狙いを絞らねば。

手がかりは「ケーキ」と仰ってましたね。
それも巨大なケーキ…となりますと、その辺の店舗にて扱うような代物ではないでしょう。
ホテルのような大きな建物の中に存在する、と見るのが良さそうです。

それらの建物に出入りする人々のプログラムにハッキングを試みて情報を入手、そこから辿って目的のデータを探してみましょう。
発見次第、可能な限りのデータを取得すると致します。


テン・オクトー

電脳世界か~、ゲームっぽい?理想のボクなアバターとか出来る?ちょっと楽しそう!
でもボクハッキングとか出来ないからね。となると、、囮的な行動するしかないかなあ?UCでまず身代わりを作っておくね。電脳世界怖そうだからワンクッションおけるダミー的な分身ね。そしてケーキな話をさも知ってるかのように発信してとにかく情報収集してみよう。何かひっかかっるといいのだけど。
襲われるような事があればUCで出した身代わりで回避。深追いせずに集めた情報の精査するよ。



●Mission 1-1-3
「電脳世界か~、ゲームっぽい?」
 テン・オクトー(ケットシーのシャーマン・f03824)は降りしきる雨を気にもせず、飛び跳ねたり走ったりして電脳世界を堪能していた。感覚は普段と余り変わらない。強いて言えば雨のエフェクトがちょっと鬱陶しい――飛び跳ねる度に雫がノイズを孕んで、テンの周りに嫌な音を立てて回る。
「でも、理想のボクなアバターとか出来る? ちょっと楽しそう!」
「お気をつけください」
 不意に声が。テンの後ろに色白の女――ルナ・シュテル(Resonate1120・f18044)がゆらりと姿を現わす。
「そんな人から毟り取るのが、こういう世界の実体です」
 アバターのカスタマイズという餌を撒き、重課金、そして廃課金と安定した生活の基盤すら揺るがす、正に電子のドラッグ。そういうマネタイズが巧妙に隠された空間が電脳世界だと続けて。
「私もハッキングには少々覚えがございますが……」
 じろりと空を、赤い瞳で睨むルナ。破断点は目視で確認不能。データの内側に入り込むには矢張り、単純な力技よりバックドアを見つけた方が早そうだ。
「只闇雲に探すだけでは切りが無いでしょう。狙いを絞らねば」
 予知の段階で引き出せたキーワードはたった一つ。あるいはそれすらも、単なるブラフかもしれないが――。
「手がかりは『ケーキ』と仰ってましたね」
 切り分けてでも持ち帰りたい情報の暗喩か、あるいはそれそのものなのか。今の時点では判断が付かない。ならば次のプロセスは判断がつく所まで進む事だ。
「ボクはハッキングとか出来ないからね。どうしよう」
 一方、テンは無邪気にエフェクトと戯れる。明滅する街灯の下で踊る姿は、まるで子猫の妖精みたいだ。だがその子猫は獰猛な牙も隠し持っている。
「そうだ、ボクが囮になるよ!」
 故にテンは恐れない。じゃらりとフレイルを引き出して力強さをアピールしながら、人出の多い街へ向かって駆け出した。
「本当に、お気をつけください」
 それが蛮勇でなければ良いのですが。ここは電脳世界、ユーベルコードという埒外のチートを使いこなすのは、何も猟兵だけでは無い。
「ここはゲームではありませんから」
 実際、道を誤れば電脳世界に魂ごと捕らわれる恐れもある。そんな電脳戦闘の恐ろしさをルナはよく知っていた。
「うん。それじゃあケーキな話をさも知ってるかのように発信するよ」
 遠くでブンブンと手を振って背を向けるテン。瞬間、囮の囮となる分身――『ガジェットショータイム』で生み出した自身の似姿を侍らせて、子猫は狩場へ足を運んだ。
「――お気をつけて」
 しとしとと降る雨が血の様な酸を孕んで、世界を赤く染めていく。双子の子猫の後姿はまるで旧世紀のホラー映画の様だ……どうか、無事でありますように。

 ルナは繁華街のホテルを訪れていた。手がかりが巨大なケーキならば、それに類するオブジェクトにバックドアが仕込まれている可能性が高い。
「成程、場のカラーに合わせた情報という訳ですね」
 ラウンジでゆっくりと人間観察――実際は電脳世界の汎用プログラムだ。それぞれが人間の姿形を取っているが、そのどれもが与えられた仕事をこなす為のシステムの一部に過ぎない。情報を選別、濾過し、運搬して加工――現に観察の一環で、アミダが不正に入手した資金のロンダリングを行う形跡を検知出来た。そして。
「ケーキはケーキでも、イエローケーキ……ウラン燃料ですか」
 お目当ての物かどうか、ケーキはラウンジの中央に堂々と祭り上げられていた。通り過ぎる人々と同じ、盗み見る様にハッキングした結果にアミダインダストリーの暗部が滲む。メガコーポで使用する核燃料の運用スケジュール……表立って言えないような使い道も、そこには堂々と記されている。
「――追手は来ない。あの子か」
 不思議だ。これだけハッキングをしても何のペナルティも起こらない。確かにこれらは大企業の重要機密だが、それで大勢の生命が脅かされたという結果はどこにも無い。もっと恐ろしい何かが……だが、これ以上結果を待つ事は得策では無いと歴戦の勘が囁く。そっとホテルを後にして、ルナは雨中を駆け出した。
「急ぎましょう。恐らく危険です」
 きっとあの子が『囮』として役目を果たし過ぎた。それ以外考えられない。

「わぁー! 何、何なの一体!?」
 テンは道すがらケーキについて聞きまくっていた。それが敵の排除プログラムを呼び起こしたのだろう。この世界で最も危険な、獰猛なハンターの群れが人の波を掻き分けて姿を現わしたのだ。
『侵入者確認。抹殺対象:キルプロセス起動』
 途端、凄まじいモーター音と共に殺人ドロイドが子猫を襲う。六本の腕、四本の脚、無数の銃火器と近接武装。あたかも蟹に人間の胴体をくっつけた様な異形が、一体、二体と交差点を超える度にその数を増やしていく。
「危ないなあ! 危な……」
 甲高い銃声がテンの側を過る。遅れてガシャンと、何かが崩れ落ちる音――ボクの、囮だ――が響いて、爆炎が殺到するドロイドの脚を止める。ガジェットはテンの身代わりになって、主を守るという自らの役目を果たしたのだ。
「ありがとう、ガジェット……ってウワッ!?」
「ここで死ねば本当に終わりです」
 ひょいと小柄な体躯が担がれる。ホテルより急行したルナがテンを小脇に抱えて、向かうはスタート地点――この世界から確実に逃れる扉へと。
『敵増援を確認。脅威判定をCからBへ』
 頭を上げて加速するドロイド。四脚より車輪を生やして、苛烈な銃撃が二人の行く手を阻む。その数を更に増して――これ以上は、流石にまずい。
「そして敵は、無限に湧き出ます」
「じゃあ逃げなきゃ! そういえば何か見つかった?」
 ランタンより蒼炎を放ち牽制するテンに合わせて、ルナが掌より雷撃をドロイドに浴びせる。ここが現実により近い電脳世界ならば、温熱感知を狂わせて奴らの回路をショートさせられる筈……その目論見通り、ドロイド達は僅かに足を鈍らせる。
「少しは、ですが……後は」
 見つけた情報はアミダインダストリーの裏の資金情報に核開発関連。どちらも悪事に繋がる十分な成果だ。そして猟兵は、ルナとテンだけでは無い。
「仲間が上手く、やってくれるでしょう」
 これだけ暴れれば仲間への追撃も減るだろう。二人は暗夜を駆け抜けて、残る希望を仲間達へと託した。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

トリテレイア・ゼロナイン


種族柄こうした空間での活動は得手
ある意味、現実よりも行動の自由が利きます

情報の収奪が騎士の所業かは兎も角、巨悪を討つ剣の材料…データという名の宝探しと参りましょう


瞬間思考力にてプログラミング
ロシナンテⅡを模した処理速度向上プログラムに跨り、天地問わず電子の摩天楼を駆け巡り

アバターよりも単純なアイコンの方がメモリ消費量で優れている、と言う方もおられますが…騎士を志す身としてはこちらの方が嬉しいですね

天地を駆けつつハッキングで情報収集

裏帳簿という物は隠れている物です

UCで所在を見切り虚空に攻性プログラムの馬上槍を投擲
ファイヤーウォールを破壊工作で突破、隠し領域に侵入し機密情報を入手


鏡島・嵐

うーん、イマイチどんな世界なんかよくわかってねえけど、要はすげえ未来のおれらの世界の可能性、って感じか。
んで、ネットワークの中に入って、悪の大企業をとっちめるためのデータを探すと。……映画の撮影じゃねえよな、コレ?

(サイバースペース内で)
……ホントに生身と変わんねえ感覚なんだな。とんでもねえ技術だ。出来過ぎたゲームみてえ。

ともかく、手掛かりを見つけねえとな。
右も左もわかんねえ場所だから、《残されし十二番目の贈り物》で〈失せ物探し〉のための〈第六感〉を強化して怪しそうな場所を当たってみる。
この世界の住人に出会ったら〈コミュ力〉活かして聞き込み。

慣れるまでには時間かかるけど、何事も経験だ。



●Mission 1-1-4
「うーん、イマイチどんな世界なんかよくわかってねえけど、要はすげえ未来のおれらの世界の可能性、って感じか」
「恐らくは。あるいは回避した破滅の一端かもしれませんね」
 鏡島・嵐(星読みの渡り鳥・f03812)はトリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)とサイバーザナドゥという世界について思案する。UDCアースの様な地理ではあるが、発展した科学力はキマイラフューチャーやスペースシップワールドの様であり、過酷な環境はアポカリプスヘルやダークセイヴァーの様である。それらとは違い、ある意味でそれらと近い。数多の世界を駆け巡った二人にしてみれば、この世界もまた一つの可能性――それが如何なる禍福をこれから齎すのだろうか。
「種族柄こうした空間での活動は得手。ある意味、現実よりも行動の自由が利きます」
「だよなあ……今回ばかりは羨ましいぜ」
 本体が電脳であるトリテレイアにしてみれば、自らをデータ化する世界はある意味本来の世界よりも自由が利く。生身の姿そのものの嵐は五体を様々に動かして感覚を確かめるが、何だか身体が軽い様な重い様な、そんな違和感を感じていた。
「ネットワークの中に入って、悪の大企業をとっちめるためのデータを探すと」
 だが、泣き言を言ってる場合では無い。この世界で泣かされる人々を助ける為に、自分達はここに居る。しかしデータを探すと言っても……。
「……映画の撮影じゃねえよな、コレ?」
「ある意味撮影スタジオの様なものです。隔離され閉鎖された環境――」
 感じ取れる空間の広さは現実のそれに近しい。だがマシンたるトリテレイアは既にこの世界の全容を粗方把握していた。果てしなく続く訳では無い電脳の海――だからこそ、自身の力を存分に振るえると拳を握りしめて。
「情報の収奪が騎士の所業かは兎も角、巨悪を討つ剣の材料……データという名の宝探しと参りましょう」
 蒼銀の騎士は頼れる仲間と共に、己が使命を果たすべく電子の戦場にその身を投げ入れた。

「……ホントに生身と変わんねえ感覚なんだな。とんでもねえ技術だ。出来過ぎたゲームみてえ」
「ですが死すら現実に反映する、恐ろしい仮想空間です」
 とぼとぼと道を歩む二人は、時折出くわす電脳世界の住人と軽く挨拶を交わしつつ証拠データの在処を探る。本当に、事前に知らされていなければ少しばかり天気の悪い普通の街並みだ。良く目を凝らせば所々でテクスチャが奇妙なノイズを孕んでいる事も分からない。
「ともかく、手掛かりを見つけねえとな」
「でしたらお乗りください。その方が早い」
 瞬間、トリテレイアの傍らに機械の天馬――『ロシナンテII』を模した処理速度向上プログラムが姿を現わす。二人がその背に跨れば、天馬は大地を蹴って空を駆けた。移動速度の向上はすなわち、情報処理速度の向上に繋がる。数値を可視化したに過ぎなくとも、まるで魔法の様な鮮やかな手並みに嵐は感心する。
「うっわ。ホントに、生身と変わんねえ」
 びゅうと頬を撫でる風の冷たさに嵐は感激の声を上げる。だがその感覚も直に消えて――矢張り、そういう所がこの世界が造り物なのだと嫌が応にも分からせるのだ。それでも、この世界の法則も大分理解してきた。
「慣れるまでには時間かかるけど、何事も経験だ」
 馬上で頷くトリテレイアの肩を叩き、ふと嵐が不思議そうに騎士の背中を見る。
「てかトリテレイア、そんな重そうな格好しなくてもいいんじゃないか?」
 トリテレイアの姿は普段の蒼銀の騎士そのもの。電脳世界を熟知したトリテレイアならば、もう少し動き易い様な姿になっても力は変わらないだろうに……訝しむ嵐に向けて、トリテレイアが胸を張って言葉を返す。
「アバターよりも単純なアイコンの方がメモリ消費量で優れている、と言う方もおられますが……騎士を志す身としてはこちらの方が嬉しいですね」
「そうだな。格好良いもんな」
 うん。格好いい。やっぱり自分が好きな格好をしてるのが一番だ。
「いや、騎士として」
「あ、人がいる。話聞いてみよう」
 真面目に反応するトリテレイアをわざとらしくスルーして、嵐は眼下に見つけた老人を指差す。それは只の思い付きでは無い――『残されし十二番目の贈り物』たる嵐の超常。テクノロジーを超えた嵐の勘が、そこに答えがあると告げたのだ。

「なあ、ここに――」
「お尋ねしたい事があります」
 老人と嵐の間にトリテレイアが割って入る。ゆっくり話を聞いてる時間は無い――老人の額に手を翳し即席のハッキング。防衛プログラムへの通報を防ぎ、直ちに回答を得る為に。
「大丈夫。これで安全に話が出来ます」
「何でもアリだな、本当に」
 溜め息を吐いて嵐は話を続ける。これも電脳世界ならではか……だがやる事は、俺の出来る事はいつもと同じだ。
「……アミダインダストリーの隠している情報、知らないか?」
 柔らかな雰囲気で、ごく普通に世間話の様に問いかける嵐。そのワードに老人は震える腕を上げて、すっと鈍色の空を指差した。
「……上?」
「成程。当たりの情報源を引けましたね、鏡島様」
 いつの間にかトリテレイアの手には長大な馬上槍が。そして超常のセンサーー『鋼の擬似天眼』は、この世界の綻びを、データを隠す破断点を捉えていた。
「裏帳簿とは隠れている物です――この様に」
 ビュン、と風を切り槍が放たれる。その穂先が空に突き刺さって、まるで壁紙が剥がれ落ちる様にバラバラと空の中身が――無数の本が落ちてきた。
「これが、データか……?」
「文書オブジェクト化して保護されていますね。むしろ丁度いい」
 それぞれ表題に『洗脳食材の実験報告』『第62次骸の海サーバ運用計画』『実験棄民収集スケジュール』と物騒な文言が書かれていた。間違いなくアミダインダストリーの犯罪の証拠だろう。二人はそれらを掻き集めて虚空のポータルに仕舞い込む。空間ハッキングの応用で、データを格納する臨時ディレクトリを増設していたのだ。
「それじゃあ後は、逃げるだけだな!」
 必要なものは手に入れた。未だ空を指差す老人には悪いが……いや、アレもプログラムの一部。それでも、何だか切ないな。
「きっと、この世界も平穏を取り戻せば」
 あの方も自分の意思で生きられるでしょう。誰かに与えられた偽りの指令では無く、自らの心に従って。
 早馬と共に二人は本来の世界へと帰還した。
 この世界の人々の自由を阻む、メガコーポを倒す為に。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

夕凪・悠那

分かりやすく悪どいことしてそうだねぇ
まあ何が出てくるのか知らないけど、電脳世界での狩りなら腕の見せ所ってことで
秘密のケーキ、ごっそりいただきますか

フリーポータルから[ハッキング]
防衛プログラムからの発覚を遅らせるよう偽装工作しつつ手早く[情報検索](+時間稼ぎ)
目当てのデータを[盗み]出す

状況を見ながら適当なところで切り上げて帰還
防衛プログラムに見つかったら『Pandora』からウイルスをばら撒き、対処を強要して逃走する
(データ攻撃+破壊工作)

どうせクソみたいな味なんだろうけどね



●Mission 1-1-5
 びゅうと寒風が吹き荒ぶ高層ビルの屋上。酸の雨に打たれる浄化槽の影で、微かに青白い光が漏れていた。
「……分かりやすく悪どいことしてそうだねぇ」
>Markers 1 and 2 Lost--Mission Complete.
>Markers 3 and 4 Lost--Mission Complete.
 明滅する『Virtual Realize』に表示された戦況を流し見て、夕凪・悠那(電脳魔・f08384)はぼそりと呟く。
「まあ何が出てくるのか知らないけど――」
>Marker 5, 6 Engage--Start support. Deployment of deception program.
 二つの青い光点目掛け、赤い光点が続々と集結。ホント、分かりやすい奴……滑らかな手つきで『Pandora』を展開、その周辺に電脳デコイを投影し彼等の脱出の時間を稼ぐ。程無くして青い光点は消失した。ここもクリア。
「電脳世界での狩りなら腕の見せ所ってことで」
>Markers 7 and 8 Lost--Mission Complete.
 これで残るはただ一人……自分のみ。
「秘密のケーキ、ごっそりいただきますか」
 ゆらりと悠那は立ち上がって、高層ビルより眼下へダイブする。
「どうせ――クソみたいな味なんだろうけどね」
 このイカれた電脳世界を、根こそぎ奪い獲る為に。

「――仮想演算領域拡張。それじゃ」
 接続先はフリーポータル。飛び降りて自身が消失したと見せかけて、欺瞞プログラムを展開し別の存在に成り代わる。単純な偽装工作だが、そこいら中で猟兵が暴れたおかげで、矮小な自律プログラムの自死など誰も気に留めやしない。
「ちょっとだけ、本気出すよ」
 これまで展開したプログラムもプロキシノードを通してちゃんと偽装した。故に今の悠那はノーマーク――この世界に溶け込んだ存在しないイレギュラーだ。
「先に隠し場所を二つも見つけられたんだ。お残しはいけないよね」
 フリーポータルから対象地点のディレクトリを参照。自身を防衛プログラムに偽装してクリアリングの振りをする。あったあった……SSRとまではいかないけれど、十分厄いネタって奴だ。
「新型警備ドロイドの性能試験結果、ロストしたダストエリアの真相か」
 試験の為の虐殺を隠蔽したデータ。それだけじゃない。新型警備ドロイドには骸の海から未知の戦闘プログラムをインストールした存在。
「それが何であるか、嫌な予感しかしないよ。全く」
 大体分かった。ファイルを閉じて次の獲物を探す悠那。骸の海を通じて齎される何か――どの世界の何であれ、それがこの世界の埒外と化すのは明白だ。
「そんなにオブリビオンを量産して、メガコーポは何がしたいんだろう?」
 どう考えても過剰過ぎる。その力はメガコーポを躍進させたのだろうが、そこから先は何を目指しているのだろうか。
「力は持ちすぎても意味が無い。コストのかかるユニットばかりじゃデッキは組めないからね……と」
 そのコストがバカ高い案件がもう一つ。オイランドロイドを用いた人類洗脳計画。骸の海を注入し制御ポータルで遠隔操作――こんなモノ、本当に作れるの?
「……こんな所か。まあ奴らも馬鹿じゃないだろうし」
 厄介なのはデータのコピーが不可能である事。差し替え用のダミーを入れる僅かな瞬間、間違いなく奴等にばれる。セカンダリのPandoraを立ち上げて脱出の準備を――。
「! もう来たの? 仕方ない!」
 検知と同時に逆ハック確認/強制切断と同時にデコイプログラム展開/脱出用ポータルの最短経路をクラッキング/後は出たとこ勝負!
「こんな所で死にかけるのは、二度とゴメンなんだからね!」
 人の身を超えた『電脳魔』はその名の通り世界を自在に操る。脱出ポータルに向けて自身の位置情報を転送――そして、光が悠那の意識を包む。

「……逃げ切ったかな」
 顔を起こすとそこは薄暗いサイバー酒場の景色。先に脱出した猟兵達の姿も見える――上手く行ったようだ。
「それじゃあ次は」
 言葉を続けようとした矢先、甲高いサイレン音が割って入る。
 そうだった。ここから先は……鉛弾のショウタイムの時間だ。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『アミダ・アーミーズ』

POW   :    サイバネティック・ランページ
自身の【部下】ひとつを用いた行動・攻撃の威力を3分間3倍にする。終了後[部下]は【過労】により破壊される。
SPD   :    アンタッチャブル・アドミニストレータ
状態異常や行動制限を受けると自動的に【強制停止コード】が発動し、その効果を反射する。
WIZ   :    ハイ・アンド・ロー
常識的な行動を囁く【論理AI】と、非常識な行動を囁く【暴走AI】が現れる。[暴走AI]に従うと行動成功率が8倍になる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●Mission 1-2-0
『オハヨーゴザイマス!』
『『『『オハヨーゴザイマス!!!!』』』』
 荒れた道路を飛ばしてガタガタと揺れる大型バンの中、積載された屈強なレプリカントが一斉に目を覚ます。それぞれが自身の動作をチェックして、騒々しいアクチュエータの駆動音が虫の羽音の様に響く。
『分隊長訓示。傾注』
 ふと、スピーカーから流麗な電子音。それに従う視線の先の小柄な女性型レプリカント――指揮官型J58Gモデルが、きつい視線を連中に投げ掛けた。
「お疲れ様です』
『『『『オツカレサマデース!!!!』』』』
 相変わらず五月蠅い……だが不調の社員は無い様だ。安堵する指揮官は訓示を続ける。とは言っても、基本的には業務内容の説明だ。
『本日の業務はダストエリア近郊のサイバー酒場の違法操業摘発だ」
 指揮官型が業務内容を告げると同時に、各レプリカントの電脳に目標地点とターゲットが表示される。対象は違法ポータルからアミダインダストリーの情報を強奪したという。何というオロカモノ!
『後は言うまでも無いな。総員、誠心誠意営業せよ』
『『『『ハイ! ヨロコンデー!!!!』』』』
 言葉と共にレプリカントの機関が唸り――戦闘モード起動。強襲型V705、防御型P729、総員準備よろし。同時に大型バンが急制動を掛けて――現場に到着した様だ。
『アミダの心は』
『『『『ハハゴコロ!!!!』』』』
『粉骨砕身』
『『『『ゼンリョクゼンシン!!!!』』』』
『総員出撃』
『『『『イッテキマス!!!!』』』』
 五月蠅い……本当に五月蠅い。だがこうしないとこの部隊のレプリカントはセーフティが解除されない。反乱防止とは言えどうにかならないものか……若干顔を引きつらせながら、指揮官型はゆっくりと最後に降車する。
『では挨拶してやろう。盛大に元気よく』
 ガチャリ、と強襲型の重ショットガンに初弾が装填される。
『総員、攻撃開始』
『『『『ゴメンクダサイ!!!!』』』』
 そして爆音が、サイバー酒場を穴あきチーズより酷いオブジェに変えていった。

 一方。
 猟兵達は予知した通りの攻撃を避けるべく、近場のガラクタに身を隠した。
 酒場の主人は『いつもの事だ』とシェルターに閉じこもり、周囲に一般人は存在しない。つまり、アンブッシュも正面突破も思いのまま。
 見せつけてやればいい。
 電脳世界だけでは無い、リアルの猟兵の凄まじさを。
ヘスティア・イクテュス

ふわぁ…(大あくびをしながら手をぐるぐる動かしたり軽くジャンプして動作の確認)んっ、意識も無事戻ってきたわね…
それにしても……酷い目覚ましね、モーニングなら銃声と鉛玉よりスペースクラシックと紅茶…あぁ、後たっぷりたまごサンドが好みなのだけど…


それじゃあ、酷いサービスにはそれなりのチップを払わなきゃね!
強制停止コードね、じゃあこっち(POW)からアベル、『ハッキング』、『データ攻撃』で動きを阻害しつつ
ミスティルテインで撃ち抜くってね!

部下を破壊って海賊よりブラックなのどうかと思うわよ?


デンゾウ・ゴガミ
グフフ……アーミーまで投入するとはコワイねェ
が、おかげでセンパイどもの強さを見れるわけだ
アブハチトラズたァこのことよ。グフフ……

さァテ、相手はアミダの精鋭だ
連中はハッキングやジツを反射するはずだったな、となりゃカラテだ
まずはアンブッシュで、クリアリング中のV705強襲型の首を刎ねて殺す
サイバーニンジャも撃てば死ぬンだぜ、火力は削らないとな……

ドーモ、アミダ社の皆さん。ニューディブランチです
てめェらにゃ"こちら"でいい。カラテしようや、なァ?

アイサツ終了と同時にP729防御型めがけぶちかましだ
おれのスピードと質量、耐えられるかい?
耐えたンならそのまま投げ殺す。オスモウ・カラテのヒサツ・ワザさ……


荒谷・ひかる
(あんまりにも豪快な襲撃に一瞬唖然)
いきなり武力行使からって中々に物騒ですね!?
文明レベルは高いのに何とも末期な……ああいえ、そういう世界なんでしたっけ。
ともかく、そういうことでしたら容赦しませんよっ!

物陰に隠れたまま【本気の闇の精霊さん】発動
相手がレプリカントなら、身体の構成物質の大半は無機物のはず
ということで一万倍の重力で捉えて圧し潰してしまいましょう
ですがワンチャンこのまま真上を取られると敵の重量でわたしが潰されてしまいますので、わたしを中心とした半径50cmエリアの直上だけは重力1%化するようにします
そうそうタネは割れないと思いますが、一応用心しておきましょう



●Mission 1-2-1
 闇の中、瓦礫を踏みしめる駆動音が響く。彼方では火の手が上がり、赤と黒に支配された世界――その中を黒い巨大な影がぬらりと動いていた。
「グフフ……アーミーまで投入するとはコワイねェ」
 デンゾウ・ゴガミ(ニューディブランチ・f36547)は身を潜めながら、アイセンサを光らせてくまなく『営業』するレプリカント達をじろりと睨む。相手はアミダの精鋭、圧倒的な戦力差だ。が、おかげでセンパイどもの強さを見れるわけだ。
「アブハチトラズたァこのことよ。グフフ……」
 アミダの情報に猟兵という異分子の力。まとめて貰ってやろうじゃないか。
『――!?』
 瞬間、風が動いた。ガランと何かが転げ落ちる音の後ろ、デンゾウがニヤリとほくそ笑む。
「サイバーニンジャも撃てば死ぬンだぜ、火力は削らないとな……」
 見事なアンブッシュ。クリアリング中の強襲型の首が刎ねられ、すかさずデンゾウを囲む様にレプリカントが散開。その様を見て巨漢はゆっくりと立ち上がり、諸手を合わせて深々とオジギした。
「ドーモ、アミダ社の皆さん。ニューディブランチです」
 てめェらにゃ“こちら”でいい――微笑を湛え、眼光鋭く面を上げるデンゾウ。
『ドーモ、ニューディブランチ=サン。アミダインダストリー、デス』
 合わせてレプリカント達も深々とお辞儀する。アイサツは実際重要。これを破ればメガコーポの精鋭だろうとならず者の烙印を押され、今後の株価に影響するからだ。レプリカントが銃口を向け、じわりと近寄った刹那――デンゾウの姿が消えた。
「カラテしようや、なァ?」
『マサカ……ニンジャ!?』
 コンマ秒の攻防。卓越した足運びで懐に入り込み、ぶちかましと共に強烈な掌打が防御型を吹き飛ばす。
「グフ、おれのテッポウも大したモンだろ」
『タイチョー! タイチョー!?』
 おれのスピードと質量、耐えられるかい? 構えを解かずに辺りを見渡すデンゾウ。突如現れたニンジャめいた巨漢の襲撃にレプリカントは恐怖――その危機を脱すべく指揮官型へと指示を乞い、女の声が返される。だが。
「……騒いだって誰も来ないわよ」
 返されたのは憐れみを含んだ、少女の呆れた声音だけだった。

「それにしても……酷い目覚ましね」
 ヘスティア・イクテュス(SkyFish団船長・f04572)はビームライフル『ミスティルティン』を担いで、空いた腕をぐるぐると回す。身体も意識もちゃんと戻ってきた様だ。そのまま舐める様に辺りを見渡し――目の合ったデンゾウに軽く会釈をする。
「ドーモ、また会ったな」
「ドーモ。こっちでも同じ姿なのね」
 お互い様だなァ。ニヤリと挨拶を交わした二人――ヘスティアの後ろに、もう一人、唖然とする小柄な少女が姿を現わした。
「い、いきなり武力行使からって中々に物騒ですね!?」
『肯定。脅威度はアポカリプスヘル相当』
 キョロキョロと戦場を見回す荒谷・ひかる(精霊寵姫・f07833)にヘスティアのサポートAI『アベル』が返す。一見場違いな雰囲気のひかるだが、これでも潜り抜けた修羅場の数は実際ヤバイ。
「文明レベルは高いのに何とも末期な……ああいえ、そういう世界なんでしたっけ」
 その言葉で即座に状況を把握して手にした杖を構えるひかる。アポヘル相当ならやり様もあるし、やり方も大体分かっている。
「文明的なモーニングなら銃声と鉛弾よりスペースクラシックと紅茶……あぁ、後たっぷりたまごサンドが好みなのだけど……」
「余裕だな、嬢ちゃん」
 替わっておどけるヘスティアにデンゾウが砕けた口調で続ける。既に精強なレプリカント達に包囲されているというのに、この少女達は全く動じていない。
「こういう手合いは宇宙で散々やりあったから」
「そういうことでしたら容赦しませんよっ!」
 慣れているからと気炎を吐いて武器を構える少女達――戦端が再び開かれる。

「それじゃあ、酷いサービスにはそれなりのチップを払わなきゃね!」
『了解。コード割込み継続、ループコマンド強制実行』
 先に布石は打っていた。デンゾウのアンブッシュに合わせてアベルのハッキングがレプリカントの伝達系を掌握。連携が取れぬ様に異常スパゲッティコードをずるずると流し続けていたのだ。これを解くのは容易ではなく、戦闘中にそんなリソースは無い。
『ガガ……エラー、アドミニストレーション実行不可』
『ジリツモード、ヨロコンデー!』
 止むを得ず連携を解除し、各自の判断で活動する自律モードを起動するレプリカント達。だが本来の強みである精強な連携が崩れたのだ――その隙を猟兵は逃さない。ギラリと、ひかるの杖が瞬いて。
『ガ……ガガ……』
 突如として周囲のレプリカント達が呻き声をあげる。見た目は変わらない。だがその動きは精強な精鋭から、まるで重労働を強いられるマケグミめいた鈍重なものとなっていた。耳をすませばレプリカントの装甲や骨格がミシミシと歪められ、ありえない形状に圧し曲げられている事が分かる。不可視の攻撃の正体――それは。
「――相手がレプリカントなら、身体の構成物質の大半は無機物のはず」
「サンキューひかる! 実際狙いやすいわ!」
「ほォ、グラビティ・ジツか。おっかねえなァ」
 ひかるの『本気の闇の精霊さん』が、周囲の無機物の重力を1万倍まで引き上げたのだ。これにより限り無く動きの鈍ったレプリカントは射的の的が如し。ヘスティアのミスティルティンの光条が一つ、二つとレプリカントを爆散せしめて、闇の中に爆炎の華が咲く。しかし。
『ヤバレカバレ!!』
『ナセバナル!!』
 防御型が正面に立ち、その後ろで強襲型がその身を自ら破壊して、さながら砲台めいた異形へと変化する。暴走したAIが生み出した狂気の回答――それは。
「奴さん、カクシタをカタパルトにして飛ばすつもりかァ?」
「って、部下を破壊って海賊よりブラックなのどうかと思うわよ!?」
 重力異常を逃れる為に味方を危険地帯から逃す。その為の変形に文字通り身を尽くす姿はレプリカントならではの荒業。途端、爆発音と共に射出された強襲型が頭を突き出しひかるの下へ飛び込む!
「いけない、こっちに来られたら!」
 自身の周囲は重力異常が無い。しかしここで1万倍の重力を発生させれば、流石の猟兵も身動きが取れなくなる。万事休すか――否!
「イヤーッ!」
『アイエエエ!?』
 頭から飛び込んだ強襲型の首を捕らえ、デンゾウの豪快な投げ放ちがレプリカントを瓦礫に突き刺す。手刀を切ると共に轟音が、崩れた瓦礫がレプリカントを埋めて爆発四散――勝負あった。動くモノは、最早無い。
「と、飛んじゃった……」
「オスモウ・カラテのヒサツ・ワザさ……」
 ニヤリと口端を歪めるデンゾウ。カラテの冴えと埒外の超常、これさえあれば奴等に引導を渡すのも、そう遠くは無いだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

テン・オクトー

一般人も退避済みのようだし気兼ねなく攻めれるね。どんなタイプの強襲部隊が来るか分からないけど遅れを取るつもりはないよ。
POW
UCを使い相手の攻撃を受け耐えるね。こちらかも使える技能使って反撃。UCデメリット分は(衝撃波)(範囲攻撃)等でカバーして蹴散らすよ。
先の調査でとんでもない事をやっていた形跡があったようだけど、この部隊からそれの手がかりはつかめるかな?指揮官クラスでないとダメかな?


鏡島・嵐

無茶苦茶だろ! アポカリプスヘル並み……いや、曲がりなりにも大企業がやってる分あそこ以上にタチ悪ィ!
こういう野蛮な圧力ってのはどうにも怖くて堪んねえけど、ここは踏ん張るしかねえよな……!

連中がどんな攻撃してくるか想像もつかねえけど、ともかく〈第六感〉だけはしっかり働かせておいて繰り出される攻撃をなるべく〈見切り〉、対応できるようにしていく。
手の内があらかた見通せたら反撃開始。〈援護射撃〉や〈マヒ攻撃〉を駆使して、喚んでおいた《錫の兵隊》に遠距離から急所を狙撃させて黙らせていく。
チャンスがあれば〈鎧無視攻撃〉を撃って大ダメージを狙う。

近くに他の仲間が居るんなら、適宜〈援護射撃〉でサポート。


アモン・スメラギ
出てきたな、あいつらがアミダの戦闘員か。それにしてもうるせ~!

敵は数が多いからな、ここは俺も仲間を呼ぶぜ。ウイングキャット、カモン!キー・オブ・キングダムで、ミュータント猫の群れを呼び出すぜ。猫は天使の羽を生やしてふよふよ飛び回り、仲間に光のバリアを貼って《オーラ防御》の準備を。俺はその間に蝶型ドローンを飛ばして、敵のデータをアナライズするぜ。基本的に後衛に控えて、弱点に応じて《薬品調合》した殲術試薬を投擲したり、ソーシャルレーザーを状況に応じてモード切り替えしながら《クイックドロウ》《乱れ撃ち》で攻撃だ。そして現場を仕切る性格のキツそうな女指揮官には、ネコチャンが肉球でパンチを食らわせるぜ。



●Mission 1-2-2
「出てきたな、あいつらがアミダの戦闘員か――」
 ざり、ざりと歩調を合わせて闊歩するレプリカント軍団。アーミーズの大部隊が炎と瓦礫に塗れた跡を闊歩する。その様を見やりアモン・スメラギ(フラスコチャイルドのソーシャルディーヴァ・f24679)は軽く舌を打ち、蝶型ドローンを飛ばして敵の動きを探った。
『ショウメン、ヨシ!』
『ミギソクホウ、ヨシ!』
『ヨシ! ヨシ!』
「それにしてもうるせ~! てか最後の一人何もしてねえだろ!」
 大仰な指差し呼称を繰り返すレプリカントを煽る様に、アモンが堂々と前に出る。
『テキハッケン、ヨシ!』
『ハッポウジュンビ、ヨシ! カマエ!』
 掛かってこい。俺が時間を稼げばそれだけ、仲間が仕事をしやすくなる。ドローンのアナライズ通りなら優勢状態で無茶はやらかさない筈――銃が何だ、マシンが何だ。そんな地獄はこれまでずっとブチ壊してきた。
「撃ってみろ三下。ホンモノの地獄って奴を教えてやるよ……!」
 そうさ、鉄火場の心得があるのは、お前達だけじゃない。

「無茶苦茶だろ! アポカリプスヘル並み……いや、曲がりなりにも大企業がやってる分あそこ以上にタチ悪ィ!」
 アモンが前に出た最中、鏡島・嵐(星読みの渡り鳥・f03812)は瓦礫に身を隠し反撃の機会を窺っていた。電脳世界からの帰還から程無くしての強襲。奴らはいつもそうやって関係者を消していたのか……だとしたら。
「でも、一般人も退避済みのようだし気兼ねなく攻めれるね」
 ひょっこりと顔を出したテン・オクトー(ケットシーのシャーマン・f03824)が告げる。その通り、一般人すら巻き込んでこんな事をしていた。そんな奴ら――。
「ああ。こういう野蛮な圧力ってのはどうにも怖くて堪んねえけど、ここは踏ん張るしかねえよな……!」
 許せる訳が無い。さあ『二十五番目の錫の兵隊』よ、この怒りをアンタに預ける。だから……やってやれ!
『! シンキゴライテン!』
 放たれた超常は歴戦の兵士を象って、兵士が放った稲妻が咄嗟に反応したレプリカントを黒焦げにする。アモンに気を取られ奇襲を許したアーミーズはすかさず散開。だがその行く手を阻む疾風が、彼等の自由を許さない。
「うん。ボクも……踏ん張るよ!」
 放たれた奇跡はランタンの超常。衝撃が大地を引き剥がす様に瓦礫の津波と化して、散らばったレプリカントを尽く飲み込んだ。
「動きを止めるな! 奴ら連携して、立て直して来るぞ!」
 叫ぶアモン。敵が統制の取れたマシンならば故郷のモヒカンとは訳が違う。徒党を組んだレイダーの厄介さは何より自身がよく知っていた。だから。
「敵は数が多いからな、ここは俺も仲間を呼ぶぜ――」
 数に対抗するには数だ――懐のデバイス『キー・オブ・キングダム』をガチャリと起動し、アモンは遥か彼方の同志達をこの世界に顕現する。
「ウイングキャット、カモン!」
 鍵の形をしたデバイスをくるくると回せば、次元を超えて同志達が姿を現わす。密やかに姿を曝したそれらは、翼を生やした猫のミュータント――ウイングキャットの軍勢。これで準備は整った。

「この部隊から事件の手がかりはつかめるかな? 指揮官クラスでないとダメかな?」
 猫と稲妻が乱舞する戦場。合流した三人は瓦礫を盾に、暴れ狂うアーミーズをつぶさに観察していた。テンの提案は至極真っ当だが、相手が悪かった。
「難しいね。こいつら只の兵隊だし、指揮官って言っても――」
 奥に座する小柄な女性型レプリカント――戦況を一向に覆せない部下に歯噛みする彼女を見やり、アモンは溜め息を吐いた。
「多分、アレは何も知らない。じゃなきゃ」
「こんなダラダラと戦う訳無いってか」
 ブランクのあるテンとは異なり、ずっと第一線で戦い続けた嵐と、地獄を冠する世界より出でしアモンは、この戦いの黒幕がここには居ない事を肌で感じていた。
「まあ、居ないんだったら……引きずり出すまでだ!」
 怖いけどな! スリングショットを放ち前へ出た嵐。自身が呼び出した兵士の霊と連携し戦線を押し上げる為に。
「そういう事。黙って防衛戦に徹するつもりはないよ!」
 続けて飛び出すアモン。その手には対機械用の殲術試薬――兵士の稲妻の導電性を上げる特製――の擲弾を抱え、背負ったソーシャル・レーザーでレプリカントを蹴散らし進む。
「ああ……もう!」
 そうだ。隠れてる場合じゃないし、世界はそんなに都合よくない。UDCアースでも、アリスラビリンスでも――真実は泥沼の先に潜んでいるものだ。
「もっと……吹き飛ばすよ!」
 旋風が、再び瓦礫の津波が舞い上がる。ここは戦場、思索は全てが片付いてからでいい。殿を守るテンは雄々しく吼えて、翼猫の戦列にその身を加えた。

『何故だ! たかが違法就労者の摘発にどうしてこんなに時間が掛かる!?』
『ハイ! ゲンゴモードキリカエマス!』
 苛立つ指揮官型に合わせて直掩の防御型がモードを切り替える。より柔軟な言語体系をサポートする事により快適なソリューションを提供するアミダインダストリー謹製のカスタマーエクスペリエンスだ。尚、戦闘力は低下する。
『敵部隊は想定より数も火力も尋常では無く、我が方は押されています』
『つまり敵はニンジャという訳か!』
 それはサイバーザナドゥで最も恐れるべき戦闘集団。相手がニンジャならばこのクエンも納得がいく。だがこの辺りにニンジャがいるという報告は受けていない。訝しむ指揮官型に防御型が言葉を続けた――瞬間。
『いいえ、恐らくニンジャではありません。あれは――』
 最後の言葉を言い切る前に防御型の頭部が吹き飛ぶ。一撃必殺、嵐のスリングショットが無音の重爆を容赦無く叩き付けたのだ。
「猟兵だ。道を開けて貰うッ!」
 主戦場は兵士の霊に任せ、自らは敵陣の中枢へ。そして。
「どうやら狩られるのは慣れてないみたいだね、お姉さん?」
 ふわりと羽根が舞い――空飛ぶ猛獣の痛烈な『肉球』が指揮官型を張り倒す。
『な……フニャッ!?』
 痛い! いや痛くない! カワイイナンデ!?
 アモンが連れ出したウイングキャットの急襲。大軍勢で攻め立てた自分の所に敵は来ないという慢心――そんなモノ、猟兵に通じる訳が無い。
『ぼ、防御陣形ッ!』
『『『『ヨロコンデー!!』』』』
 叫ぶアーミーズの声に合わせて、苛烈な火線が嵐をアモンを襲う。しかしそれらは光のバリアに阻まれて――返す刃のスリングショットとソーシャルレーザーが容赦なくレプリカントを一つ、二つと地に沈めていった。
「逃げたって事は、どちらにせよアレが中枢だね」
「ああ。それが分かれば十分だ……!」
 アモンの言葉に頷く嵐。何故ならば猟兵もこれだけではない。
 マシンハントはまだ、終わってなどいないのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

六識・戦

『ケーキ』のご入刀は済んだようで。
ならば『お呼びでないご来賓を排除』するまで。

強制停止コード使いなら単純にアナログめいた『出力』でお相手しよう。
兵器は、『電脳戦以外も出来なければ成り立たない』。

【カゲブンシン・フェメノン】だ。
物量には物量でお応えしよう。
【ハッキング】で一時的に足場を精製したりしながら相手の考えなし弾幕を【見切り】【空中機動】で間合いを詰める。
視認されていなければ【忍び足】併用。とかく数を出す以上スマートに。
【早業】【鎧無視攻撃】で片っ端からしばき倒しながら
指揮官周りの護衛を削いで行こう。

絡め手も真正面の『物理交渉』も出来るのが『兵器』だ。
――お前らに評価は求めないがな?


新田・にこたま
出遅れてしまいました…急がなくては!

ミニパトに乗って全速力で運転し敵集団に突撃します。勇気があれば問題なく敢行できます。
そして何体か吹き飛ばすなり踏み潰すなりしたら颯爽と降り立ち、盾を構えながら、盾にアタッチメントで取り付けた警察手帳を見せつけ大声で叫びます。

ホールドアップ!総員動くな!警察です!
あなたたちには命乞いをする権利と辞世の句を詠む権利があります!大人しく投降しなさい!

と、義手で持った軽機関銃を自動射撃で敵の口元や喉元を狙って撃ち続けながら勧告します。
…命乞いも辞世の句も投降の意思も確認できませんね。
私の正義の心は伝わらなかったようです…悲しいことですが、殲滅するしかありませんね。



●Mission 1-2-3
「そこのアーミー! 速やかに止まりなさい」
 出遅れた分は取り戻すと、警察車両――改造RVめいた装甲車が赤色灯を唸らせて爆走する。進路上のアーミーズを蹴散らし、バンと鈍い音が辺りに響いて。
『マッポ! マッポナンデ!?』
『落ち着け。大方通報だろうが許可証は発行されている』
 猟兵の追撃を躱した先にこんな伏兵が。だが問題は無いと冷静に周囲を諫める指揮官型は、陣を整えて暴走車両と対峙――その中より現れた小柄な女警官に堂々とアミダ印の営業許可証を提示する。
『お勤めご苦労ポリスガール。我々は許可を貰って営業活動を――』
「ホールドアップ! 総員動くな! 警察です!」
 盾を構えて銃を携え、新田・にこたま(普通の武装警官・f36679)は苛烈な口調で指揮官型へと詰め寄った。金の瞳は悪を許さぬ正義の印――罪無き民を恐怖に陥れる奴らを、決して逃さない。
『分かっている。だからこの営業許可証を――』
「あなたたちには命乞いをする権利と辞世の句を詠む権利があります! 大人しく投降しなさい!」
『話聞けよ!!』
 許可証に対抗する様に警察手帳を掲げ、一歩ずつ接近するにこたま。その威容に周囲のアーミーズ達は訳も無くたじろいだ。否――。

   ホールドアップ
『! 強制捜査執行権か……!』
 大声で叫ぶにこたまに舌打ちする指揮官型。アレはただの警察手帳ではない。精神に、制御系に直接影響を与える超常の類。こちらの許可証を文字通り紙切れ同然に無力化する、正義という名の宣戦布告。
「――『ケーキ』のご入刀は済んだようで」
 そしてもう一人、赤い洞の様なアイセンサを滾らせた男――六識・戦(殲術兵器六式EXA・f36627)が静かに姿を現わした。その手に巨大な鎌『裁識』を携えて、獰猛な獣の瞳でアーミーズを見据える戦。
「ならば『お呼びでないご来賓を排除』するまで」
『何者だ、貴様』
 警察の強制執行にアンノウンの出現――話に聞いてた他の世界の『猟兵』ではない、地元の厄介なならず者か。指揮官型を守る様に陣を組む防御型を見やり、戦はニヤリと口端を歪めて宣う。
「通りすがりの『兵器』さ」
 警官と兵器、危ない二人の強制捜査が始まる。

「……命乞いも辞世の句も投降の意思も確認できませんね」
「ああ。残念だがな」
 悲し気に俯くにこたまに冷たく返す戦。最早ここは戦場だ。交渉のテーブルは引っくり返り、必要なのは誠意を尽くした言葉では無く鉛弾と暴力のみ。故に。
「私の正義の心は伝わらなかったようです……悲しいことですが、殲滅するしかありませんね」
「どうしてそうなる!?」
 そう……全てを解決するには、暴力しかない。確かにそうだが、余りにも苛烈なにこたまの意志に戦が一瞬たじろぐ。兵器よりヤバいんじゃないかこの子……。
『たかが二人だ、数で押せ! 総員突撃!』
「誰が二人だけだって……なあ?」
 残る強襲型が一斉に発砲を再開。瓦礫を蹴散らし迫る悪意に二人は分かれ、反撃を開始する。既ににこたまの超常が奴らの動きを制している――ならば、リスクを伴う自身の技も気兼ねなく披露出来る訳だ!
「物量には物量でお応えしよう」
『分身……貴様、ニンジャ兵器か!?』
 瞬間、戦自身の数が二つ、四つと倍々に増えていく。空を駆けるニンジャの群れ――『カゲブンシン・フェノメノン』がアーミーズを圧倒して、全方位から仕込み暗器『瞬識』の返す刃が強襲型を続々と制圧する。
「銃身が焼き付くまで撃ちまくります!」
 同時ににこたまが吼える。鉄の獣が猛然と炎を吐いて、鉛弾の洗礼が防御型の陣形をチーズの様に削っていく。手にした『サイバー軽機関銃』は軽量な見た目ながら、その名の通り対装甲目標の凶悪な武装だ。反動を気合で制し、自動射撃の精緻な一撃が続々と防御型を打ち倒していった。
『アイエエエ!?』
『この、馬鹿みたいな火力――!』
 あり得ない。戦況は瞬く間に激変した。精鋭たるアーミーズが一分も経たずに制圧されかけるとは――当然だ。この世界にのさばる悪を、二人は決して許さないのだ。
「絡め手も真正面の『物理交渉』も出来るのが『兵器』だ」
 兵器は『電脳戦以外も出来なければ成り立たない』――お前らに評価は求めないがな? 強制停止コード使いなら単純にアナログめいた『出力』で叩けば済む。
「これが正義の執行実包!」
 硝煙が辺りに充満する頃、周囲にはアーミーズの残骸が転がるだけ。
 敵の戦力は残り僅か……終幕まで、あと少し。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
さて、不正アクセスをしたのは此方側
あちらの言い分に対して強く反論できぬのが困りものです

尤も、法と秩序を定める側が悪であるならば、遍歴の騎士として己が騎士道に従うといたしましょう

この体躯では屋内は不利
戦場を外へ移す為に脚部スラスター起動
推力移動併用しての突撃シールドバッシュにて突破
大盾で銃弾を防ぎつつ敵集団へと接近

頭脳戦車……でしたか?
私を抑えたくば、少なくともその程度の戦力は用意する事です

UCにて出力向上した怪力にて振るう剣や大盾の一撃で前衛レプリカントを粉砕
そのまま破片や吹き飛ばした四肢を質量弾として後衛や指揮車両へと飛ばして攻撃

さあ、次はどなたからお相手いたしましょうか?


ルナ・シュテル
流石にあれだけ派手に動けば感づかれますね。
では、確と迎撃させて頂きましょう。

手近なジャンクで遮蔽を取り、Anti-Aresの【レーザー射撃】にて射撃戦を挑みます。
グレネード等を持ち出してくる可能性もありますので、他にも何か所か遮蔽として使える場所を確保致しましょう。

これだけでは本格的な武装を有する敵を相手に力不足ではありましょうが、これはあくまで本命の為の布石。
充分な数の敵を引き付けた処にて能天使の光嵐を発動、頭上から特攻兵器群を落として一掃を試みます。
後は、残った敵にレーザー射撃での止めを刺して回りましょう。


夕凪・悠那
随分なアイサツだね
社員教育がなってないんじゃないの?
っていうかほんとに五月蠅い……!

【バトルキャラクターズ】
召喚するのは強化外骨格を纏った傭兵
更に10体ずつ合体させ、能力を強化するとともに部隊運用し易くする
部隊構成はアーミーズと似た感じ
盾と矛、火力特化の強襲型と守護特化の防御型
解答を即座に出し続けて優位になるよう部隊を運用(瞬間思考力+戦闘知識)
[集団戦術]を意識して立ち回り、防御型を盾に重ショットガンで敵強襲型をブチ抜く
手札の消耗は厭わず、捨て駒にすべき時はする
――そういう時のためにこの手の札には何かしら仕込むようにしてるんだ
今回はね――(爆破)

これで少しは静かになった



●Mission 1-2-4
『損耗率は! 残存戦力を掻き集めろ!』
 叫ぶ指揮官型の下へ集結するアーミーズ。形勢は既に逆転した。噂に聞いた猟兵などというならず者の戦力がこれ程とは……歯噛みする指揮官型の耳に、不意に聞き慣れぬ足音が近寄って。
「……随分なアイサツだね。社員教育がなってないんじゃないの?」
 ノールックで応射/煙を噴く銃口の先には、三つの影。
「流石に……あれだけ派手に動けば感づかれますね」
「不正アクセスをしたのは此方側。あちらの言い分に対して強く反論できぬのが困りものです」
 気だるげな夕凪・悠那(電脳魔・f08384)の小柄な影に連れ添って、ルナ・シュテル(Resonate1120・f18044)とトリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)が言葉を続ける。遥か彼方の異邦からの精鋭三人。追い込んだ手負いのアーミーズに引導を渡す最後の札。
『コウゲキジュウテン!』
『ゼンリョクゼンカイ!』
「っていうかほんとに五月蠅い……!」
 叫びながら弾をばら撒くアーミーズに苛立つ悠那が、トリテレイアを盾にして下がる/同時に『Pandora』を立ち上げて、クライマックスに相応しいゲームを開始した。Now Loading――現れたるは、銃と盾で武装した壮健な超常の兵士達。
「尤も、法と秩序を定める側が悪であるならば、遍歴の騎士として己が騎士道に従うといたしましょう」
「では、私も確と迎撃させて頂きましょう」
 続くトリテレイアとルナ。互いに武装を構えて、最後のゴングが鳴り響いた。

「失礼。少々手狭だったもので」
 最初に飛び出したのはトリテレイア。スラスターを噴かして自らを重爆と化したウォーマシンは、隊列を組んだレプリカントごと吹き飛ばし開けた地形に躍り出る。こうなれば周囲を囲まれ形勢不利――では無い。トリテレイアは鎮圧用のマシンとは違う、宇宙世界の超兵器。かような戦の作法は十全に心得ている。
「続くよ。キャラクターセレクト、レベル10!」
 ヴン、と電子音が響いて、強化外骨格を纏った総勢十体の兵隊がトリテレイアを囲む様に姿を現わした。悠那の『バトルキャラクターズ』――盾と矛、火力特化の強襲型と守護特化の防御型の精鋭は、一際大きいトリテレイアを中心に見事な陣を組む。
「これで即席の騎士団だ」
「悪くないですね」
 通信機越しに言葉を交わす二人/途端、蕾が花開く様に無数の弾幕がアーミーズを続々と穿っていく。キャラクターズの猛攻とトリテレイアの追撃。レプリカントの反撃は防御型キャラクターズが受け止めて、さながら動くトーチカめいた超常の騎士団は攻防一体の遊撃部隊。見事な集団戦術――一群そのものが鋼の猛獣めいて、アーミーズの陣形を喰い散らかす。
「――空を見上げられませ」
 余りにも圧倒的な火力に撤退を試みるアーミーズ――その先にはもう一人の伏兵、ルナが両手を広げて立ち塞がる。
「貴方に捧ぐは、唯、其処に」
 祝詞の様に超常の言葉を紡ぎながら、十指より放たれる赤い光が――『Anti-Ares』の光線が足元を貫いて、アーミーズの撤退を阻む。ルナは只の奉仕型バイオロイドでは無い。人類の為に生み出された、その身を賭して事を成す埒外の一つ。
「――ショウタイム」
 そこに釘付け出来れば十分。瞬間、天より飛来した無数の流星――『能天使の光嵐』が一斉にアーミーズの頭蓋を続々と貫く。迎撃をしようにも想定外のトップアタック、更には複雑な軌道を描く超常の流星は高性能対戦車兵器さながら、弾雨を掻い潜り確実に目標を仕留めるのだ。
「それでは、ごきげんよう」
 カーテシー/一礼するルナの瞳には、赤々と燃ゆる炎が揺らめいていた。

「頭脳戦車……でしたか?」
 片手でレプリカントの頭を掴み上げて放り投げるトリテレイア――『機械騎士の蛮力』は一切の容赦無く、立ち塞がった全ての猛威を退けた。目線の先には瓦礫を背にたじろぐ指揮官型の姿が。こんな敵は、想定外だ。
「私を抑えたくば、少なくともその程度の戦力は用意する事です」
 冗談じゃない。頭脳戦車で足りるものか……あのマシンは、これまで対峙したどれよりも恐ろしい。残存戦力は騎士の一群に尽く敗れ、退路は既に断たれた。
「さあ、次はどなたからお相手いたしましょうか?」
 最早、この局面を切り抜けるには――成果を、己を捨てる他無い。
『……コードゼロ。総員、特攻』
『『『『ヨロコンデー!』』』』
 無慈悲なAIの判断――指揮官型のコールと共に、ヴン、と羽音の様な電子音が一斉に響く。違う……電子音では無い。
「その意気や良し、と言いたい所ですが……会社員のやる事では無いですね」
 この音はマシンの自分ならば分かる。限界以上に加圧されたアクチュエータの駆動音――指揮官型は残るレプリカント全てに『自爆コード』を送信したのだ。
「――そういう時のために」
 呆れた口調で悠那がのそりと顔を出す。鮮やかな手つきで端末を操作して、途端、キャラクターズの双眸が赤く点灯した。
「この手の札には何かしら仕込むようにしてるんだ」
 やられる前にやる。カウンターの手札はいつでも開ける様に――最後の牙を突き立てんと猛進するレプリカントに組み付いて、先んじてキャラクターズが一斉に爆発した。手札の消耗は厭わず、捨て駒にすべき時はする。最後まで相手を侮った判断の差――成すべき事を成せぬまま、アーミーズは一瞬で鉄屑と化した。
「これで少しは静かになった」
 爆風が瓦礫を舞い上げて、ガラガラと響いた大音が引いた潮の様に沈黙に変わる。残された敵は指揮官型のみ。鎮圧部隊は跡形も無く猟兵達に制圧された。

「制圧完了。これより尋問を開始し――」
 一歩前に出たルナ/目の前の指揮官型の頭部が爆ぜる。戦域外からの狙撃――すかさず全周警戒を再開するトリテレイアに、端末から周辺状況の走査を開始する悠那。面を上げたルナの視線の先――そこに軍服めいたスーツを纏った女が一人、崩れそうな鉄塔の上に立っていた。
『……残業は許さんと言ったはずだが』
 この女が今回の黒幕か。冷徹な視線を眼下の猟兵に、朽ち果てたアーミーズに投げる女が、忌々し気に言葉を続ける。
『You're Fired――クビだよ、貴様らは』

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『オブリビオン・カンパニーマン』

POW   :    キャリアアップ・プログラム
自身の【メガコーポ社内での出世】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。
SPD   :    メガコーポ式交渉術
対象にひとつ要求する。対象が要求を否定しなければ【論理的思考力】、否定したら【冷静な判断力】、理解不能なら【オブリビオンへの注目度】を奪う。
WIZ   :    メガコーポ・アーティラリー
【砲撃部隊への通信】を合図に、予め仕掛けておいた複数の【発信機】で囲まれた内部に【メガコーポ私設軍による砲撃】を落とし、極大ダメージを与える。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●Mission 1-3-0
 ざあざあと雨が降っていた。
 雨は血を流し、私は徐々に薄れる意識に微睡み――そうか、私は敗れたのか。
『……無様、だな』
 ターゲットはアミダインダストリーの犯罪の証拠データ。電脳世界にダイブし目標を手に入れたまでは良かった。その後の追撃も織り込み済み。デコイでダイブ地点を欺瞞し追手を分散させた迄は良かった。
『……そうか、お前が』
 手に入れたデータにあるアミダの刺客。通常義体に紛れて市井の人々を洗脳するという悪魔。まさかそのものが、目の前に現れるとは。
『……ここまでか』
 意識が、沈む。深い海の底――深淵の彼方、骸の海、人体実験。
 全て、繋がった。

『――忌々しい、連中め』
 ナノ秒の逡巡。脳裏を過るは誰かの記憶。
 アミダに仇為す不届き者――これまで何度も首を取ってきた相手。
 今回も同じだ。鎮圧42係の総出は初めてだが、臆する事は無い。
『この営業妨害、高くつくぞ』
 かつての***の様に、地の底を這いつくばれ、猟兵。
ヘスティア・イクテュス

鉄塔、高いとこからなんてまるで悪役ね
営業妨害って言うならそもそも甘いケーキじゃなくてイミテーションでも置いときなさいよ…海賊と女の子は美味しいものとお宝に目がないのよ?


ティターニアで『空中機動』、ミスティルテインによる『乱れ撃ち』&『援護射撃』による牽制と味方の援護
相手の通信は、アベル。『ハッキング』で妨害頼んだわ

防ぐ、もしくは発信機の位置をズラして攻撃を回避したら
それじゃあお返しねと、コード:Υ自身を増やす分身殺法を…

ニンジャじゃなくてサイバーマジシャンよ、イッツイリュージョンってね?
ホログラムで惑わして自身は光学『迷彩』による接近、E.O.Sの斬撃で



●Mission 1-3-1
 吹き荒ぶ風にコートを靡かせる女が、眼光鋭く廃墟と化した戦場を見下ろして。忌々し気に息を吐く姿は修羅の如く――されど、臆する事無い澄んだ声が虚空に響く。
「鉄塔、高いとこからなんてまるで悪役ね」
 スラスターの青白い炎が昏い空を照らす。風と共に現れたシルエット――ヘスティア・イクテュス(SkyFish団船長・f04572)が呆れ混じりの声音で言葉を続ける。
「営業妨害って言うならそもそも甘いケーキじゃなくてイミテーションでも置いときなさいよ」
 全く、落とし甲斐の無い獲物だこと。手にしたビームライフル『ミスティルティン』を大仰に掲げるジェスチャーで女を――鎮圧42係のカンパニーマンを挑発する。犯罪の証拠データは奪取され、追手は全て返り討ち。こんな情けない相手の頭は如何程のモノかと覗き込む様な仕草で空を翔ぶヘスティアに、カンパニーマンがジロリと視線を上げて。
「……海賊と女の子は美味しいものとお宝に目がないのよ?」
『お引き取り願おうか。不正なカスタマーに温情は無い』
 燻らせた葉巻を投げ捨て――それを合図に、周囲に隠れたアミダの刺客が一斉に投光器をヘスティアに照射する。
『総員、おもてなしの時間だ』
「あら、招待状なんて貰ったかしら?」
 闇に紛れて見えなかった作りかけの高層ビル、打ち捨てられた集合住宅、光に当てられた歪なシルエットが巨獣の様にその姿を現わして、ポインターの赤いラインがヘスティアの全身に無数の点を打つ。それは『お前はもう逃がさない』という制圧の印。
『存分に受け取れ……そして、さらばだ』
 口端を歪め、カンパニーマンが片手を上げる――だが。
『どうした。時間厳守だぞ』
 怒気を孕んだカンパニーマンの声。煌々とヘスティアを照らす照明――その光の中で、少女はおどけて舌を出す。銃声も砲声も爆音も何もかも、未だ戦場には響かない。この現実が示す答えはただ一つ。
『……ハッキングか、この短時間で』
「お生憎様。ぜーんぶ熨斗つけて叩き返したわよ」
 電子制御されたレプリカント兵や火砲など、ヘスティアにとってこれ以上にやりやすい相手は早々いない。宇宙の海を駆け抜けた電脳の魔術師にしてみれば、幾ら技術が発達したサイバーザナドゥだとしても、星間大戦を日常としてきた自分達がテクノロジーで劣る訳など無いのだから。
「アベル、コード:Υ。こっちから盛大にもてなしてやりなさい!」
『イエス、マム。原始人どもに見せつけてやりましょう』
 雄々しく宣言するヘスティアに合わせ、サポートAIのアベルが宣戦を布告する。途端、閃光が戦場を白く塗り潰し――光が晴れると同時に、無数のヘスティアが空中を乱舞した。
『分身! ニンジャか、貴様!?』
「いいえ、ニンジャじゃなくてサイバーマジシャンよ――」
 それが電王魔術『N:Υ MP』の神髄。リアルタイム投影されたヘスティアのホログラムが全域を幻惑。破れかぶれで放たれたマニュアル操作の砲火を掻い潜り、幻のヘスティア達から光条とミサイルが一斉に放たれて。爆発と閃光が漆黒を彩り、闇を裂く投光器の白が紅蓮の炎に塗り潰される。
「イッツイリュージョンってね?」
 戦闘ドローン『フェアリー』をホログラムで偽装して、あたかもヘスティア自身の攻撃に見せかける。データは多重ホロレイヤーで加工して電子的探知を欺き、本人は――。
「ドーモ、って言うんでしょ?」
『! いつの間に!?』
 光学迷彩で自身を闇に溶かし込み、ミサイルの爆炎に紛れたヘスティアがカンパニーマンの背後から一閃/光剣『E.O.S』が闇ごと悪しきを切り裂いて、カンパニーマンは大地へ急降下――ズシンと、土煙を立てて大地が揺れる。
「フォースが足りないわね。カラテだっけ?」
『似た様なモノです、多分』
 悪戯めいた二人のやり取りに言葉は返ってこない。
 疾風の如き海賊の一撃は、見事にメガコーポの出端を挫いたのだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

新田・にこたま


何故、私がこのビズに途中参加だったのか分かりますか?
予め迎撃場所付近の情報収集と検索をするためです。

お陰で薄汚い伏兵が潜んでいる場所の大体の当たりはついています。

砲撃が来るであろう方角、その上空に翁丸9機を飛ばしておきます。特化する技能は衝撃波。砲撃が来たら上空で9機に衝撃波をフルパワーで放たせ、砲撃を上空で爆破させます。

撃ち込まれたら部隊の位置も分かります。
まだ動ける翁丸を部隊の下に向かわせ敵を殲滅します。
今日はアミダの部隊ひとつを潰せる良い日です。

敵ボスは私自ら軽機関銃で死刑執行します。

勝者こそが正義、それはメガコーポが証明している不愉快な現実…。
ならば私は負けません。故に私は正義です。



●Mission 1-3-2
 瓦礫から身を起こし辺りを見渡す。両脚部アクチュエータ損耗軽微、右腕部骨格に断裂発生――修復用ナノマシン緊急稼働。回復まで三十秒――しばらく肩が上がらないが作戦続行に支障は殆ど無い。だからこそ。
「何故、私がこのビズに途中参加だったのか分かりますか?」
 眼前の敵を如何に排除するか――ゆらりと、軽機関銃を手にした少女がカンパニーマンの前に現れる。
『警察の小娘が。いつも出遅れる貴様らの事など知るか』
 可憐ながらギラついた双眸は金色の闘志を放ち、少女――新田・にこたま(普通の武装警官・f36679)は気を吐いてカンパニーマンへと詰め寄った。
「確かに、警察の仕事は対処療法にならざるを得ない……ですが」
 疑わしきを辺り構わず罰してしまえば、それは官憲の横暴……メガコーポのやり口と何も変わらない。故に汚職に手を染めて、世は事も無しとやり過ごす悪徳警官が後を絶たないのだ。だが、にこたまは違う。
「やるならば根治するまで徹底的に、です」
 生まれ育った家族を悪と断罪し、ひたすらに正義の道を邁進するにこたまに不正は無い。そしてやるからには……如何に後手に回ろうと最善を尽くし、悪を殲滅するのだ。胸の正義の心臓が燃え続ける限り――。
「予め迎撃場所付近の情報収集と検索は済みました。お陰で薄汚い伏兵が潜んでいる場所の大体の当たりはついています」
『……まさか』
 先のハッキングのクリーニングは完了した筈。だが部下からの支援が一向に来ない。この少女の言が正しければ、配置した部下は既に……。
「今日は良い日です――」
 自身の回復に気を取られ、部下からの通信が途絶している事に気が付かなかった。それだけでは無い。義眼の望遠モードで確認すれば、いつの間にか部下を配置した各所から赤々と火の手が上がっている。
「アミダの部隊ひとつを潰せるのですから。では」
 先の戦闘は殆どがダミーの攪乱。第一の矢はやり過ごせた……だがにこたまの放った第二の矢『翁丸ドローン』の放つ軍用制圧衝撃波が、砲火を弾き返して上空で爆破――九つの砲撃陣地が見るも無残な、まるで空爆を受けた蛸壺の如き残骸と化したのだ。これでは支援の期待はもう出来ない。
「強制執行を開始します。お覚悟を」
 鈍い光を放つサイバー軽機関銃がその咢をカンパニーマンに向け――頃合いか。カンパニーマンの頭蓋に響く電子音は回復完了を、戦いの再開を告げる合図。
『たかが警察如きが私一人をどうにかしようと、大勢は変わらん』
 トリガーを引くにこたまに合わせ、ノーモーションのワンハンドショット――左腕サイバネ筋肉がハンドガンの衝撃を受けて丸太の様に太くなる。
「ええ。勝者こそが正義、それはメガコーポが証明している不愉快な現実……」
 狙いは軽機関銃の銃口。互いの弾丸が正面からぶつかって、対装甲目標用の強烈な威力が火花を散らす――しかしカンパニーマンのハンドガンはアミダの特製。ダブルカラムの厳ついグリップは未だ機炎を吐き続け、精確なフルオートが互いの弾を空に散らす。それでも。
「ならば、私は負けません」
 弾の撃ち合いだけが力じゃない。片手で盾を前に出し、にこたまは徐々に間合いを詰める。接近すれば銃よりも早く奴を制圧出来る――だが。
『何だ……かくれんぼしながら殴るつもりか? 甘いッ』
 それはカンパニーマンも同じ。回復した右腕で腰に佩いた大型フォトン・タチを引き抜いてにこたまを盾ごと横一文字に両断。爆音と共にバチリと紫電が空に爆ぜ、真っ二つに立たれた盾の奥――にこたまの姿は無い。
『! 奴は……!?』
 瞬間、特殊警棒を大上段に振りかぶったにこたまが頭上目掛けて急降下――盾の中に自身の小柄な姿を隠し、斬撃の瞬間にバンカーヒールの爆圧で飛翔/奴にチェストを極めるべく必殺の機会を窺っていた!
「故に私は、正義です――!」
 メガコーポ滅ぶべし。正義の一撃はカンパニーマンを大地に叩き付け、地割れと共にその悪を飲み込んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

六識・戦

指揮官がわざわざ前に出てくる以上、裏方が控えていると見るのが正しい。
なら、此方に都合のいい領域を張るまで――
【ワールドハッキングプログラム】だ。
この改竄に載せ、【ハッキング】【データ攻撃】を織り交ぜる。
致命的な失敗を手繰り寄せる為の、な。

ところで。
致命的な災害は、一つの石ころのような『ひずみ』から始まるらしい。
通信内容の混線。発信座標のズレ。そして機械であるなら『誤動作』。
何より。人間同士である以上、ヒューマンエラーが無いとは言い切れない。
そうやって、致命的な『失敗』(ファンブル)は現出するんだ。

……砲撃? まさに飛び道具じゃないか。
肝心な手綱を自分で握らなかった分、『自滅』でもしてくれよ。



●Mission 1-3-3
 地割れに飲まれ地下に落ちたカンパニーマンは思案する――制御系を司る頭部に甚大なダメージを受けた故、ここで迂闊に表へ出る訳にはいかない。しかし退く事は鎮圧係として許されない。奪われた証拠データごと全てを抹消するまで……だが。
「ところで――」
 それは相手も同じ。割れた道を辿って現れたのは六識・戦(殲術兵器六式EXA・f36627)――説法じみた、あるいは脅す様な口調で戦は言葉を続ける。
「致命的な災害は、一つの石ころのような『ひずみ』から始まるらしい」
 片手で担いだ大鎌を弄び、眼前のカンパニーマンを睨む戦。その言葉に容赦はない――否、言葉そのものが力の発露。紡がれた力が戦の内で蛇の様にとぐろを巻いて、目の前の敵に牙を突き立てる時を伺っている。
「通信内容の混線。発信座標のズレ。そして機械であるなら『誤動作』」
 指揮官がわざわざ前に出てくる以上、裏方が控えていると見るのが正しい。なら、此方に都合のいい領域を張るまで――張り巡らされた超常の威力は、既に目には映らぬ脅威となってカンパニーマンを取り囲んでいた。
「何より。人間同士である以上、ヒューマンエラーが無いとは言い切れない」
『……貴様らの様なマケグミの事か?』
 片手で頭を押さえ必死に修復を――気取られる訳にはいかない。時間を稼ぎ、反撃の機会を窺うカンパニーマンの頬を汗が伝う。マケグミ……不意に口を出た自身の言葉が、ぞわりと身体を締め付ける感覚に陥る。この悪寒は一体何だ?
「間違っている。そもそも俺は『負けていない』」
 超常の改竄に載せ『躙識』――織り交ぜたハッキングとデータ攻撃はどうやら効いているらしい。暗がりに吹いた冷たい風の所為では無い。『虚識』が捉えた奴のステータスは『焦り』――ここまで来れば、後は容易い。
                ファンブル
「そんな思い違いから、致命的な『失敗』は現出するんだ」
『遺言は終わりか? では速やかにご退場願おう』
 お喋りな奴が相手で良かった。通信機能は完全に回復し、生き残った部下達は続々と砲撃支援の準備を整えている。緊急周波数を使い一斉に支援を指示――この地下だ。奴はどこから砲撃が飛んで来るか見る事も叶わないだろう。
 カンパニーマンはゆっくりと口端を歪める。その思い違いが自らを滅ぼしかねないと気付く事も無いままに。

「……砲撃か? まさに飛び道具じゃないか」
『な……どうした! 一射も届いていないぞ!』
 両腕で肩に掛けた大鎌を弄ぶ戦。顔色一つ変えずに放たれた真実――『ワールドハッキングプログラム』は一帯の飛び道具をとっくに無効化していた。今頃カンパニーマンの部下達は無数に吐き出されるエラーに頭を抱えている筈だ。
『……貴様』
「肝心な手綱を自分で握らなかった分、『自滅』でもしてくれよ」
 刹那、闇を縫う様に間合いを詰めた戦の逆袈裟斬りが、カンパニーマンをボロボロの天井に叩き付ける。崩れ落ちる瓦礫ごと吹き飛ばされた女を目で追って、戦の『歩識』が大地を揺らす。瞬間、爆圧が戦の身体をより高くへと翔ばして。
『これ程迄か、猟兵というのは――!』
「違うな。これは俺の力だ」
 追い付いた戦の『瞬識』が瞬いて、鋭利に伸びた刃先がカンパニーマンの首筋を狙う。
『させ……るか……!』
 これほどの絶体絶命、初めてでは無い。そう――あの悪寒、あの日の自分。
「ほう。上長は伊達では無いと」
 強化された五指で手刀を組んで、なだらかな刃じみた暗器のマフラーを真っ二つに裂く。そのままカンパニーマンは落下し、瓦礫の中へ再び姿を消した。
「……それで、逃げられると思うな」
 猟兵の時間は終わらない。続けて悪夢を見るがいいさ――何度でも。

成功 🔵​🔵​🔴​

アモン・スメラギ

うおお、今度はまた性格キツそうなおば…お姉さんが来たぜ。
あの人がこのチームのリーダーか?

【戦闘】
基本はソーシャル・レーザーの射撃と殲術試薬の投擲、
それと杖による《高速詠唱》による魔法攻撃いった、後衛からの攻撃。
それと並行して蝶のドローンを飛ばしての《情報収集》。
マルチタスクに対応して《集中力》と《瞬間思考力》を
フル活用だ。さて、お仲間の砲撃部隊はどこかなっと…
データを解析できたら、【リインカネーション・モーニング】を
発動。《プログラミング》《データ攻撃》で
現実をも侵食するウイルスを作成、砲撃部隊への通信機に攻撃を
かける!敵がモタついてる間に、先手を打って総攻撃をかけようぜ!


鏡島・嵐
主君や幕府の代わりに、勤める企業に奉公するサムライってトコか。同僚だったら頼りになったんだろうけど、敵に回したらただただ怖ぇだけだ。

街ン中でも砲撃してくるとか、なんつー卓袱台返しだ! アミダの連中は負けそうになったらゲーム盤ごとひっくり返すガキしか居ねえのかよ!
一発目は砲撃がどこに落ちるかを〈第六感〉で察知しつつ、〈地形の利用〉や〈オーラ防御〉を駆使してなんとか直撃喰らわねえようにする。
二撃目以降は《逆転結界・魔鏡幻像》で相殺して、〈限界突破〉した〈スナイパー〉ばりの射撃を敵の親玉に撃ち込んでダメージを狙う。

近くに他の味方が居るなら、状況に応じ〈鼓舞〉で警告したり、〈援護射撃〉でサポート。


テン・オクトー

指揮官型が、、、!ほんとこういうのってないよ。慣れない。ボク大嫌いなんだ。
使える技能を使い切って戦う。でも防御系は不要かな。無謀かもしれないけど自分の怪我は気にせずとにかく相手をたたきのめす事に力を注ごう。
このヒトを葬ったところで何も変わらないかもしれないけど、トカゲのしっぽ切りで終わっちゃうかもしれないけど、本当ムカついて仕方がない。



●Mission 1-3-4
「指揮官型が……! ほんとこういうのってないよ」
「街ン中でも砲撃してくるとか、なんつー卓袱台返しだ! アミダの連中は負けそうになったらゲーム盤ごとひっくり返すガキしか居ねえのかよ!」
 最初の交戦より僅か前、唐突に頭を吹き飛ばされた指揮官型レプリカントの最後――その様にテン・オクトー(ケットシーのシャーマン・f03824)は憤り、鏡島・嵐(星読みの渡り鳥・f03812)はアミダの傍若無人ぶりに怒りを隠さない。発達した技術は人間性を奪い、このような地獄を生み出したというのか……だとしたら、この世界が目指す所とは、更なる苛烈な地獄だとでも言うのだろうか。
「うおお、今度はまた性格キツそうなおば……お姉さんが来たぜ」
 ただ一人、アポカリプスヘルからの使者たるアモン・スメラギ(フラスコチャイルドのソーシャルディーヴァ・f24679)は、容赦の無いカンパニーマンの姿にわざとらしく声を上げる。
「あの人がこのチームのリーダーか? 重役出勤って奴だよなぁコレ」
 アモンの故郷はこんな小綺麗な地獄では無い――あちらならリーダーは筋肉ダルマかパラノイアかサイコパスが関の山。見目だけは麗しいカンパニーマンの立ち振舞いに呆れこそすれ、煮え滾る様な怒りは無い。それは昔日に乾いて、朽ちた。
「で、主君や幕府の代わりに、勤める企業に奉公するサムライってトコか」
 ある意味原初のサムライらしさを振り撒く女に、嵐は底知れぬ恐怖を感じる。武士道などというお題目の無い原初のサムライ――武士は、棟梁の下であらゆる暴力を用い敵対勢力と鎬を削り合ったと言う。テクノロジーは最先端でも精神性はむしろ退化した、奴らは正に暴力装置そのもの。
「同僚だったら頼りになったんだろうけど、敵に回したらただただ怖ぇだけだ」
 そんな輩にこれ以上の好き放題をさせるものか――スリングの柄を握る手に力を込め、嵐は恐怖を押し殺して一歩前に出る。
「だね……さて、お仲間の砲撃部隊はどこかなっと」
 続いてアモンが、シャリンと『叡智の杖』を打ち鳴らす。既に『Sacred Kingdom』――内蔵サーバを経由して周辺の情報は掌握した。仲間達の先制打が既にカンパニーマンの出端を挫いている。やるならば今しかない。
「敵がモタついてる間に、先手を打って総攻撃をかけようぜ!」
「乗った! 怖えけど、やるしかねえ!」
 そして小さな猛獣が、内なる漆黒の闘志を発露して――その手にはじゃらりと伸びた獰猛な相棒の姿が。最早容赦など不用。数多の邪神を打ち倒したこの力を以て――。
「……うん、やろう」
 オクトーは静かに吼える。全ての悪しきに正しき罰を齎す為に。

 瓦礫から身を起こしたカンパニーマンは自身のステータスを更新――全て正常。死んだ振りなどと言う姑息な手段を使ってまでも元に戻したこの身体。自分にはやるべき事がある故に――だが。
「許さないよ、絶対に」
 指揮官型を、あんな姿に……声を震わせ立ち塞がったオクトーに、カンパニーマンは怒りを込めて静かに言葉を返す。
『社の備品をどう使おうが私の勝手だ。部外者が方針に口を挟むな』
「……それでも!」
 瞬間、ブンと暴風が――猛々しいフレイルの一撃が大地を砕いて、破片の礫がカンパニーマンを襲った。
『そんな分かりやすい動きで……!』
 飛び退いたカンパニーマンの手から反撃の刃――大型フォトン・タチの一閃がオクトーの足元を抉る。鎖を伸ばしてようやく対等の間合い。互いを一触即発のひりついた感覚が襲い、あたかも時間の流れがスローモーションになった様――高速演算で退路を塞ぐ猛烈な攻めをオクトーの野生の勘が覆し、のたうつフレイルの猛襲がカンパニーマンとの間に止めどない必死の攻防を描く。
「落ち着け! それじゃあ奴の思う壺だ!」
 一瞬――割って入った嵐の声。手にしたスリングの礫がカンパニーマンの自由を奪い、たたらを踏んだ刹那にフレイルの一撃が迫り来る。これで終わり――否。
「そうやって追い込んで――来た!」
『気付いたか? だがもう遅い』
 飛び込んだオクトーと足を止めた嵐、それらを同時に屠るタクティクスこそカンパニーマンの真の狙い。不意に風が破裂する音が響いて――『メガコーポ・アーティラリー』たる、一糸乱れぬ統制された砲撃が二人を襲う。
「止まる、ものか」
「それに遅く……無え!」
 その身を曝け出し砲火に立ち向かうオクトーに、ニヤリと口端を歪める嵐。確かに見えない敵からの砲撃は怖え。だが仕掛けが分かればこっちだって――途端、無数の砲声がまるで山彦の様に、砲火の出ずる下へと轟いた。それらは虚空より出でし嵐の超常――『逆転結界・魔鏡幻像』の力。敵の力をそっくりそのまま返して放つ奇跡の鏡にして、我が身を賭し放つ決死の技。
『砲撃だと……どこから支援が!?』
「いやーそういう訳じゃあ無いけどね」
 きらりと、嵐の背後の鏡が煌く。その影よりひょっこりと顔を出したアモンがニヤリと微笑んで。
「――よっと。終わったぜ。これで」
 ひらひらと舞う瑠璃色の蝶――アモンのドローンが敵部隊の掌握を無言で告げる。嵐のユーベルコードで配置を晒されてしまえば、物理的にも電子的にも蹂躙は容易。最早カンパニーマンを助ける者は無くなった。

「花火は二度と上がらない」
 声と共に雪崩れ込むエラーとアラートの洪水。電脳を侵食する無数の無意味なデータの羅列がカンパニーマンの身体を蝕み――そして。
『!? 多重ハック、一体どこから』
「過去と、未来かな? うん」
 無限大のデータの奔流――『リインカネーション・モーニング』に紛れ込ませたアモン特製の侵蝕ウイルスは時空を超えて、カンパニーマンと砲撃部隊の存在を脅かす。膝を突き頭を抱え、獣じみた眼でアモンを睨む女――それを見下して、少年は輝ける武装を解き放つ。
『この……!?』
「まだ――これだけじゃ、無ぇ!!」
 光の渦が大地を裂いて、舞い上がる爆炎を越えて届いたモノ――嵐の必殺の礫がカンパニーマンの眉間を貫く。嵐の強烈な一撃にカンパニーマンが仰け反った刹那、漆黒は遂に悪に届いた。
「大嫌いなんだ、仲間を大事にしないの」
 じゃら……怒り狂う蛇の様に鉄球が乱舞する。一つ、二つ、裂けた大地にクレバスめいた亀裂が走り、カンパニーマンは再び地の底へと沈んだ。
「本当に――」
 どす黒い感情の発散がオクトーを、テンをあるべき姿へと戻して。
「ああ。許せねえよな」
 嵐が続く。テンの心を代弁するかの様に。
「だから天罰、って奴さ。これがね」
 不敵に笑うアモンの声。この世界を正す裁定は下された。
 いつも通りに、どの世界でも、猟兵は邪悪を決して許さない。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

ルナ・シュテル
何か大切なことを思い出されそうになったようですが。
何れにせよ、この場で排除させて頂きます。

Anti-Aresでの【レーザー射撃】にて主に攻撃して参りますが、これはあくまで牽制。
並行してBloodyTearsを稼働させ周辺状況を【情報収集】、何らかの共通の信号を放つ装置を探し、敵のユーベルコードの下準備行動の看破を狙います。

ある程度発信機を見つけましたら、空想幻想衰色世界を発動。
敵の意識を『己の思惑通りに相手を追い詰めることに成功した世界』へ飛ばし、ユーベルコードの誤爆を誘います。
敵自身に命中するよう仕向けられれば最良ですね。

そうして生じた隙を突き、Lethebolgで斬り倒しに参ります。



●Mission 1-3-5
 ざあざあと雨が降る。濡れた身体が冷え込んで――義体と言えど、熱が無ければ生身の部分は死んでしまう。つまり、私はもうじき私で無くなるのだろう。
 アミダのやり口は知っている。使える物は敵であろうとゴミであろうと擦り切れる迄使い倒す。これだけの事をやってしまったのだ……自分も只では済むまい。
「嫌……だ……」
 こんな事の為に、私はこのビズを進めた訳じゃあ無い。
「誰、か……」
 嫌だ。一人で、こんな冷たくて、暗い所に……。

「何か大切なことを思い出されそうになったようですが」
 女の声が聞こえた。それと、フラッシュバック――***の記憶。それが私を、カンパニーマンの身体を震わせる。
「何れにせよ、この場で排除させて頂きます」
 視界に映るは瀟洒な従者めいた姿――ルナ・シュテル(Resonate1120・f18044)のたおやかな仕草。こんな戦場で、どうして。
『悪いが酒場で酔いつぶれた事は無いんだ』
 がらり、と瓦礫を払って立ち上がるカンパニーマン。既にその手には特製のハンドガンが握られて。
「いえ、席の占領は立派な営業妨害です」
『それはお前達だろう……!』
 バン、と鉄が爆ぜる音――鉛弾の洗礼を軽やかに躱して、ルナは返礼の光条を四方へとばら撒いた。
『ミラーボールのつもりか? 踊りたければ一人で踊れッ!』
「生憎、チップも無いのにお手を掴む訳には参りません」
 悪態を吐きながら間合いを広げるカンパニーマン。ここで撃ち合いをしてもジリ貧だ。叩き潰すには……幸い発信機は正常稼働。大気に混ぜ込んだナノマシン制圧システムは未だ私と敵の位置情報を部下達へと送り続けている。
「……どなたかと、待ち合わせでしょうか?」
『ああ。もう直ぐだ』
 もう直ぐ、終わりだ。緊急周波数で自身と敵の位置を通知――瞬間、轟音が天井を貫いて瓦礫の雨を一面に降らせる。
『! どこを狙っている!?』
 瓦礫は、カンパニーマンの前だけに降り注いだ。あのメイドじみた女はくるくると舞う様に飛散した礫を躱して、手首から長大な光の剣を颯爽と抜き放つ。
「まるで、血の涙ですね」
 ふと、女が溢した言葉にカンパニーマンは自らの顔を撫でる。飛散した瓦礫が頬を裂いていたのだ――その筋に沿って流れるどす黒いオイルが、血化粧の様に赤黒く己を染めて。
『まさか、貴様……!』
 既に賽は投げられていた。ルナの『空想幻想衰色世界』は互いの位置情報を欺瞞し交換――正確な砲撃はカンパニーマンのみを狙って、猛烈な砲火が止めど無く主の生命を脅かす。
「それでは、お開きにしましょう」
 咄嗟に砲撃停止のコマンドを流した刹那、瞬く間に距離を詰めたルナの一閃がカンパニーマンを袈裟懸けに斬り裂いた。
『させ……るか……!』
 身体が熱い。まだ、私は生きている――足裏のスラスターを噴かして急速離脱。ここで死ぬわけにはいかないと、カンパニーマンは闇にその身を紛らせ、消えた。
「……良い終末を」
 ブン、と光剣を仕舞い闇を一瞥するルナ。
 せめて終わる事の無い悪夢が、晴れますようにと願って。

成功 🔵​🔵​🔴​

荒谷・ひかる
コレ、もしかしなくても包囲されてますよね?
さっきのレプリカント部隊も、この仕込みのための囮だったんでしょうか……
ともあれ、なんとかしないとっ。

【本気の雷の精霊さん】発動
わたし達の周りに雷の精霊さん達を召喚
シンクロして強烈な磁気嵐を放ってもらい、通信妨害及び通信機・発信機の故障による攻撃阻止・弱化を試みます
敵本体も恐らくはサイボーグである以上、精密機械パーツを磁気嵐で狂わせれば行動の妨害は可能なはず
反撃は精霊銃で高圧雷撃弾を撃ち込み感電と回路のショートを狙います

周辺のサイバー環境にも多大なる影響を及ぼすでしょうけれど、物理的に焦土と化すよりマシなはずですっ!
やっちゃってくださーいっ!


トリテレイア・ゼロナイン


業務妨害が騎士の務めかと問われると苦しいものがありますが
民草を救うには貴女が与するメガコーポの打倒が急務
押し通らせて頂きます

全身の格納銃器を展開
牽制として乱れ撃ち
距離を詰めて剣と盾振るい、攻防を繰り返し

要求にはお応えできませんね
ご容赦を

そして、私の電脳へのクラッキングの対価を支払って頂きますよ

要求と同時の干渉を攻勢防壁で盾受けしトレース
ハッキングし返し情報収集

……貴女は!?

怪力で抑え込みワイヤーアンカー有線接続
メガコーポの記憶処理を破壊工作で蹂躙
同時に己の戦闘記録流し込み

貴女が立ち向かった巨悪
最期までその走狗であり続ける事は無いと思ったのです

私達の様な異邦の風が、この世界を変えると約束します



●Mission 1-3-6
「コレ、もしかしなくても包囲されてますよね?」
「ええ。厄介な事に攻撃地点が分散・流動しています。一点突破でどうにか出来る状況ではありません……流石メガコーポ、と言った所でしょうか」
 何処から止めどなく放たれる砲火に、荒谷・ひかる(精霊寵姫・f07833)とトリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)は舌を巻く。この世界では市街でこんな戦いが日夜繰り広げられているのだろうか。これまでも危険な世界は幾らでもあったが、市井の人々が生活する空間がここまで大規模な戦場になる事は余り無い。ましてや、日常が戦場である訳でもないと言うのに――。
「さっきのレプリカント部隊も、この仕込みのための囮だったんでしょうか……」
「いや、恐らくは二段構え。先発が失敗しても後続で完全に殲滅する為の、途方も無い包囲殲滅戦です」
 これは業務の皮を被った軍事行動に他ならない。ここまで徹底した抵抗勢力への殲滅行為は、ダークセイヴァーとは違う意味での生存競争の苛烈さを物語る。
「ともあれ、なんとかしないとっ」
「はい。業務妨害が騎士の務めかと問われると苦しいものがありますが、民草を救うには貴女が与するメガコーポの打倒が急務――」
 虚空に杖を振るうひかるの周囲に紫電が迸る。バチリ、と力あるヴィジョンと化した『本気の雷の精霊さん』――紫電は白光に、稲妻があたかもひかる達を守る盾と化して降り注ぐ砲火を空中で爆ぜさせる。その爆風に身を隠して、トリテレイアは前進――青白いスラスターの噴射炎を伸ばし、蒼銀の騎士は鋼の弾丸と化す。
「押し通らせて頂きます」
「さあ行こう! 雷の精霊さん!」
 戦場に轟く爆音を越えて、二人の猟兵は最後の戦いに躍り出た。

『推進剤が尽きたか……だが』
 緊急離脱したカンパニーマンが内蔵カートリッジを輩出し瓦礫に身を隠す。先の追手は撒いたが、砲火が尽きぬ所を見ると敵はまだこの近くにいるらしい。
『いるんだろう。出てこい』
 声を張り上げて続く敵の姿を探る。隠れても無駄なのは先刻承知――最早こちらから打って出る他無いならば、やって見せるしかあるまい。
『……出てこいと言っている!』
「――要求にはお応えできませんね」
 右手に大型フォトン・タチを、左手に特製ハンドガンを。返された言葉に――音声の包囲に巨大な機械の移動を感知。演算モードを切り替えて、カンパニーマンは接近する敵影にカウンターを試みる。
「ご容赦を」
 声が再び。すかさず斉射したハンドガンに続いて、片手で光剣を振り被り一気に駆け上がる。正面には盾を構え、全身から無数の銃器を剥き出しにした人型兵器――上等な頭脳戦車の類か――が、精緻な射撃でカンパニーマンに応戦する。
『容赦など……するものか!』
 対象を確認。コール――強制接続、ナノマシン経由型電脳掌握式起動。口端を歪ませ、怯んだトリテレイアへと距離を詰めるカンパニーマン。
(深刻な演算負荷……これが、メガコーポの交渉術……!)
 騒々しいデータの奔流はさながらブルートフォースアタックじみた負荷をトリテレイアの電脳に掛ける。動けない事は無い。だが運動回路そのものに掛かる過負荷は物理的にも影響を及ぼして――対峙した蒼銀の動きが鈍くなる時を見計らい、カンパニーマンは止めの号令を虚空に投げ掛ける。
『届いたぞ。総員砲撃用意!』
「させません!」
 だが、猟兵は一人では無い。声よりも早くひかるの――稲妻の洗礼が砲撃開始地点を急襲。同時に稲妻は空間を歪めて、巻き上がる瓦礫と共に強烈な磁気嵐と化す。
『何だ、この磁気異常は……!?』
 夥しい数の鋼の骸が散らばっているのだ。それらを全て、精霊の力で変質させると共に、未だ生きている機械の類をまとめて動作不良に――さながら壊れた機械が亡者の手の様に、正常な機械すら巻き込んで。
「あなたが機械なら、よく効くでしょう!」
 叫ぶひかるの声と共に、精霊の威がより力を増して――白光と黒嵐が戦場を地獄めいたツートーンに彩り、その渦中を蒼銀の騎士が堂々と駆ける。
『!?』
「私の電脳へのクラッキングの対価を支払って頂きますよ」
 恐るべき磁気嵐だ。宇宙線対策が厳重に施されたウォーマシンでなければ切り抜ける事は叶わなかっただろう――零距離、遂にトリテレイアの反撃の牙がカンパニーマンへと突き立てられた。

『アミダの犯罪の証拠データがこれ程の物とはな……』
 雨の中、女は手に入れたデータを流し見て戦慄する。人身売買、人体実験、不正な食糧生産……どれ一つとっても碌なものでは無い。そして不幸な事に、これらは全て事実だった。後は……。
『!?』
 不意に針の様なデバイスが首筋に撃たれる。この暗い雨の中で正確な狙撃――それだけじゃない。同時に意識が、電脳ごと書き換えられるような気味の悪い感触が全身を駆け巡る。
『馬鹿な、この場所が何故……』
 膝を落とし、ずぶ濡れの地面に横たわる。運動野がモザイクじみたエラーマップを当機はこれよりアミダインダストリーの制圧作戦に中々有能な検体の様だ何痛みは一瞬この悪事?これから君が行う全てだ予行演習は済んだろうつまり私はアミダに踊らされてこのビズに巻き込まれ――。
『止めろ……止め』
 私は、私のままでいたかった。

「……貴女は!?」
『見た、なァァァァッ!!!!』
 カンパニーマンの咆哮。振るわれた光剣を辛うじて切り結び/放たれた雷の弾丸がカンパニーマンを貫く。精霊の加護を受けたひかるの一撃。物理法則を超えた世界の理が、歪められた女の矜持を貫いて。
「私だって、銃くらい使えるんです!」
 バチバチと逆立つ髪を優雅に見せつけて、ひかるは奮わせた精霊の権能を辺り一面に開放する。これほどの威力だ。下手したらサイバー空間ごと影響を与えかねないが、物理的に焦土と化すよりマシなはず!
「こっちは任せて、やっちゃってくださーいっ!」
 高々と杖を掲げるひかるはさながら雷の化身――その威光を背に受けて、トリテレイアは接続した電脳に情報を流し込む。先に見えたヴィジョンがもし、彼女の記憶の残影だとしたら。
『これ、は……』
 その対価を知らしめる事が騎士としての矜持だろう。

「貴女が立ち向かった巨悪――」
 巨悪。蒼銀の騎士が示したヴィジョン。悪辣な黄金の皇帝、恐るべき白と黒の騎士、蠢く邪悪なる神々、地下に封ぜられし魔王、驚異の権化たる竜――。
「最期までその走狗であり続ける事は無いと思ったのです」
 その尽くを剣と叡智で下す騎士の物語。最後に映りし少女、白銀の巨烈なドラゴン――マシンと人の織り成す冒険譚。そのどれもが凄まじく、美しい。故に。
「私達の様な異邦の風が、この世界を変えると約束します」
『だと、しても……』
 私のしてきた事が、道半ばに座したとしても、それを受け継ぐ者達がいる。それだけで――。
<<Danger. Forced recovery code activation>>
<<Leave the battle zone immediately>>
 明滅するヴィジョンに赤黒い文字列が差し込まれる。スラスターが死んだ今、体内の反応炉を暴走させてでもこの窮地を脱する――副電脳が齎した無慈悲な回答は、自身の五体を爆ぜさせて雷に紛れ姿を隠すという自己犠牲。
「爆発! トリテレイアさん!?」
「大丈夫です。ですが――」
 僅かでもいい。今際の際に、せめてもの救いがあれば。
 雷が晴れた静謐な戦場に残るのは、哀しき女の記憶だけ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

夕凪・悠那
やあ、上司のお出ましかな
残念だけど今日限りで鎮圧42係は解体だよ

登場タイミングが完璧だし、どこからか見てたんだろうね
それならボクが後衛ってこともバレてるかな?
それなら直接狙ってくるよね

――直接戦闘、できないわけじゃないんだ(騙し討ち)
【Tool-Assisted Speedrun】
目標設定:対象者の撃破

ボクの思考力や判断力を奪っても、
ク リ ア
目標達成まで止まらない
そういうコードだよ
一応奪われないようにプロテクトはかけてはいるけど
『黄金瞳』励起
情報を逐一フィードバックして精度向上(情報収集+学習力)
『Virtual Realize』起動
最適な武装を仮想具現化

証拠データは有効に使わせてもらうよ



●Mission 1-3-7
 爆破された義体から予備の義体へデータを転送――程無くして、女は再び戦場へ舞い戻る。一部のデータは消失したが作戦遂行に影響は無い。高級な義体を使い潰すのは経費がかさむ故、最後の手段だった……それに部隊はほぼ全損に近い。だが、この最後の義体さえあれば敵を追い込む事は可能――。
「まだ、生きてたんだ」
 闇の中、気だるげな少女の声が響く。端末を弄び、まるでどこかへ遊びに行く様な――夕凪・悠那(電脳魔・f08384)の輪郭が、カンパニーマンの主映像にじっくりと映り込んだ。
「残念だけど今日限りで鎮圧42係は解体だよ」
 だろうな。これ程の損害を出した今、残された戦力は自分自身と忠義のみ。
「登場タイミングが完璧だった、どこからか見てたんだろうね」
 散布したナノマシンで全てを把握していた。筈なのに、この猟兵とやらは何処からともなく“転移”して来た。これを読み切ることは不可能だが、幸いにも敵は全て同個体。
「それならボクが後衛ってこともバレてるかな? なら――」
 ならば、役割が同じならば、蓄積したデータから対応する事は可能。光剣を抜刀し、音を殺して奴に近付く――相手は一人。それも直接戦闘型では無い。
『……降伏しろ』
「直接狙ってくるよね。でも」
 切先を首筋に突き付けて降伏勧告。このサンプルの回収で――途方も無い戦力だ。解析出来ればアミダの更なる切り札に変わるだろう。これで失敗は帳消しだ。
「――直接戦闘、できないわけじゃないんだ」
 ニヤリと口を歪ませて光剣を高々と掲げる。大丈夫、痛みは一瞬――多少首と胴体が離れても、回収までは持つだろう。

「何かしてるんだろうけど」
 振り下ろした光剣は虚空を薙いだだけ。何故だ、何故奴は動ける? この『メガコーポ式交渉術』はナノマシンを介して電脳を、ひいては生体そのものの活動を掌握する術式だ。否定も肯定も理解不能も須らく私の意のままとなる筈だ……なのに。
                  ク リ ア
「ボクの思考力や判断力を奪っても、目標達成まで止まらない」
 あの少女が自らに掛けた超常――こちらより早く、対象を掌握した自動戦闘プログラムの類か。つまり、私は術式を掛ける相手を見誤ったという事――。
「……そういうコードだよ。だから」
 自らの肉体そのものを囮として振舞った。その覚悟は、私には無かった。私? アミダの精鋭たる特殊営業課の――それ以前、フリーのハッカーであった私が最後にしくじったのは、その覚悟が無かったから。そうか。
「証拠データは有効に使わせてもらう」
 やれるものならば、やってもらおうか。私が出来なかった分まで――。
 意識が再び昏く、落ちていく。

(想像以上に面倒な相手だな。でも)
 まさか爆散した直後に同型、それも恐らくは本人自身のバックアップが出てくるなんて。悠那は溜め息を吐いて『Tool-Assisted Speedrun』を即座に起動する。

> Target Setting:***** Do you want to allow it to run? <Y/N>

 どこで見られているかも分からない。念の為のプロテクトを展開し、マスクされた本名をなぞりながら、悠那はすうと息を吸う。
「自動迎撃は余り面白くないけど、そうも言ってられないよね」
 プリセットに『黄金瞳』『Virtual Realize』を設定。選択ルーチンは最適行動。多少のラグはあっても、これで逃げ切る事は可能だろう。
「――直接戦闘、できないわけじゃないんだ」
 選択はイエス。意識が飛ぶ感覚……浮遊して、全てを見下ろす様な、超越の感覚が自身を支配する。電脳化って常時こんな感じだったら無駄なリソース多すぎじゃない? などと胡乱な思考を押し込んで、悠那は自身の肉体が動く様をゆったりと見下ろす。ああ……そうなるよね。ショットガンを顕現させた自身が迎撃の弾幕を張り、飛散した瓦礫に塗れて戦域を離脱する。流石に正面切って戦うには分が悪いし、何より伏兵が――同型がまた出てくるとも限らない。
「……証拠データは有効に使わせてもらうよ」
 声が重なる。意識が肉体に戻った――矢張り、この方が落ち着く。
 目標は達成した。残されたクエストは、この物語の幕引きのみ。

成功 🔵​🔵​🔴​

デンゾウ・ゴガミ
オイオイ、カンパニーマンのお出ましかい
グフフ……猟兵ってのァ、味方ながら恐ろしいモンだ
ここが気張りどころだな。出し惜しみなしでいくぜ……

(ニンジャ装束がカラテ生成され、肥満巨体を一瞬にして覆う。ウミウシめいた毒々しい色合いの装束と、クロームのメンポ。そして、ギラリと鋭い眼光!)
「ドーモ、アミダの狗の皆さん。ニューディブランチです」
アイサツ終了と同時にスプリントで接近だ
そしてインファイトのカラテ合戦に持ち込みたいところだが……相手はあのアミダのカンパニーマンだ。それが身体能力を増大させるとなりゃ、いよいよ油断ならねェだろう

こォいうときにゃ、ベーシック・メソッドが重要になる。ヤツが隙を見せたら、オスモウ・カラテの暗黒奥義バックハンド【チョップ】を連続で叩き込むぜ!
なァに、タフさなら自信がある。カラテしようやアミダ=サン! イヤーッ!



●Mission 1-3-8
「オイオイ、まァたカンパニーマンのお出ましかい……」
 まるで亡者の様にその身を震わせて、カンパニーマンはゆっくりと面を上げる。一体目は先の戦いで完膚なきまでに葬られたというのに直にバックアップが起動とは……矢張りメガコーポの財力、技術力、搾取力は侮れない。
(グフフ……しかし猟兵ってのァ、味方ながら恐ろしいモンだ)
 それでも、これまでまともにやり合う事すら不可能だった相手を一時間も掛からずに完封せしめたのだ。この力ならば、あるいは――思索は止まらない。だが今は先に奴を止めなければ、折角の答え合わせも虚しいソーマト・リコールになる。そんな事は、させない。
「ここが気張りどころだな。出し惜しみなしでいくぜ……」
 印を組み、男の双眸が見開いて――デンゾウ・ゴガミ(ニューディブランチ・f36547)は黒き疾風と共に己の全てを解き放つ。この戦のケジメをつける為に。

『! このカラテ反応は……』
 舞い散る瓦礫の中に映る巨大な影……サイバーアイに映し出されたステータスは《キケン》《キケン》《トニカクキケン》!!
「ドーモ、アミダの狗の皆さん。ニューディブランチです」
 影を吹き飛ばした風が巨漢の姿を曝す。ウミウシめいた毒々しい色合いの装束と、クロームのメンポ。そして、ギラリと鋭い眼光――間違いない。あれはニンジャ!
『……ブランチ? 枝葉のサンシタに用は無――』
「言ってくれるじゃアねえか、負け犬が」
 その巨漢は実際速かった。アンブッシュ無くともアイサツを交わせばそこは死線の上――スプリントで縮地した巨漢が砲丸めいて突進! 影を残す程の加速が突き出した肘鉄を一触即爆の凶器へ変える。
『ほう、それなりに動けるか――』
 刹那の交錯、外套をあたかも闘牛士の如く翻したカンパニーマンがフォトン・タチの光粒子切羽で肘鉄を押さえ込み、そのまま切先をデンゾウの首筋に食い込ませる。
(! カラテ合戦に持ち込みたいところだが……)
 流石……アミダの精鋭! そのまま回し受けで刃筋を躱し、デンゾウは吹き出た血飛沫をカラテで押さえ込む。呼吸を整え一足一刀の間合い、得物がある分奴の方が幾何か有利。ケンドー三倍段とはこの事か!
『最早、進退窮まった――』
 いよいよ油断ならねェ。奴の身体能力はカチグミ・ロードを代償に更に増大……感じるカラテの圧が変わった――来る!
『最終的に全員殺せば業務終了!』
「アミダはウシミツ残業推奨か? マッポーだなァ!」
 大上段に構えたカンパニーマンが猿叫を上げて突進! 風より早い打ち込みがデンゾウのクロームのメンポをかち割らんと迫る!
(……こォいうときにゃ、ベーシック・メソッドが重要になる)
 それでも動きは単調。一の太刀さえ躱せば勝機は我にあり! すかさず竜巻じみた動きで連続後方転回/目線は外さず奴の突進の切れ目を探る/止まらないカンパニーマンは大地を蹴り上げ、砂塵を散らして前へ! 前へ!
『いい運動になったろう――』
 全くだ。チャクラム・フィットネスならボスラッシュでもパーフェクトで勝利出来る程。だが、奴は足を止めた――つまり。
『ここらでカイシャクしようか、サンシタ・ニンジャ?』
「なァに、タフさなら自信がある――」
 タフネスもフィットネスも俺の完勝ってェ訳だ。正面を向き、金剛力士めいた形を取るデンゾウ。これこそオスモウ・カラテの必勝フォーム。
「息上がってンのはアンタだろう、マケグミ・サラリマン?」
『どうやらオヒガンに行きたいらしいな……』
 あの形はジゲン流。空間、そして次元すら断ち切るというダークサイドに踏み込んだ苛烈なる剣術。ならばこちらも暗黒奥義で迎え撃たん!
「だからよ……カラテしようやアミダ=サン!」
『…………』
 沈黙が荒涼たる戦場を支配する。次の踏み込みで全てが決まる事を両者は知っているからだ。その機先を制する者が、勝利者となる事を知っているからだ。
 そして、風が吹いた。

『……キィエアアァァァ!!!!』
「イヤーッ!」
 雲耀の太刀を潜り抜け、刹那を超えた1プランク――隙ならざる隙に一点のカラテが、デンゾウのバックハンド・チョップが炸裂する!
「イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ!」
 デンゾウはフォトン・タチが真正面に振り下ろされるとほぼ同時、自らの身を回転――軸を僅かにずらしてカンパニーマンの動揺を誘う。その1プランクの動揺を突いて、鋭く伸ばした手刀がカンパニーマンの剥き出しのチェストに直撃! そのまま蒸気機関車の如き猛進で只管に手刀を叩き込み続ける!
「イヤーッ!」
『グワーッ!』
 叩き込まれる必殺の連撃はカンパニーマンの上体を合成ウドン生地の様に伸ばしていく。最早そこにはアミダインダストリーの精鋭の姿は無い――反応炉と神経ケーブルを剥き出しにして、さながら葬式用の巨大な造花めいたオブジェクトに変貌したカンパニーマンは遂に膝を突き、その場に崩れ落ちた。
「これでサヨナラッ!」
『ア、アバーッ!?』
 そしてデンゾウの凄まじき四股が地響きを起こして、カンパニーマンは崩れた瓦礫と共に大地に身を沈める。もう二度とその力をメガコーポに悪用されない様に、デンゾウからのせめてもの手向けだ。
「戦果に勝利、アブハチトラズたァこの事よ……」
 手刀を切り黙祷。それはカンパニーマン、あるいは逝った仲間達への哀悼か。
 だが戦いはこれで終わりでは無い。
 ニューディブランチの、猟兵達の戦いはここに始まったばかりなのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年03月22日


挿絵イラスト