1
銀河帝国攻略戦⑰~真の姿、とくとご覧あれ

#スペースシップワールド #戦争 #銀河帝国攻略戦

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#スペースシップワールド
🔒
#戦争
🔒
#銀河帝国攻略戦


0




●進め猟兵! 未来のために!
「ちょっと厄介なことになってしまいました」
 ロザリア・ムーンドロップ(薔薇十字と月夜の雫・f00270)は猟兵達に向けて、神妙な面持ちで話す。
「『スペースシップワールド』で繰り広げられている『銀河帝国攻略戦』は、皆さんの活躍のおかげで着々と戦果を挙げています。しかし、銀河帝国はここで精神破壊兵器『アゴニーフェイス』というものを持ち出してきたんです」
 精神破壊兵器『アゴニーフェイス』――それは、特殊加工したサイキッカーの脳を専用カートリッジとして作動する平気で、放たれる強大な『テレパシーの悲鳴』は人間達の精神を破壊するものだという。
「解放軍の艦隊にはこの『テレパシーの悲鳴』を防ぐ方法がないんです。だから、このまま放置してしまうと解放軍に大きな損害が出てしまうことでしょう」
 ただ、黙って放置するしかないのであれば、ロザリアはきっとここには立っていない。
「ですが、対抗策はあるんです。……いえ、厳密に言えばそれは語弊があるんですが……『テレパシーの悲鳴』を猟兵の皆さんが受けた場合、『理性を失わせ、その姿を強制的に真の姿とする』ようです。ですので、真の姿の状態で戦えば、勝機はあるかもしれません」
 この効果は、『アゴニーフェイス』を破壊するか、戦場から撤退するまで続くそうだ。もちろん、作戦の目的からすれば、『アゴニーフェイス』の破壊を目指すのが望ましいと言えよう。
「周りには『アゴニーフェイス』を守るオブリビオンの存在もありますから、その対処も必要になりますね。必要最低限撃破して『アゴニーフェイス』を先に叩くか、周りを全て蹴散らしてから『アゴニーフェイス』破壊に向かうかは皆さんにお任せします」
 『アゴニーフェイス』を破壊した後も敵が残っているようなら、掃討も必要になるだろう、とロザリアは言う。無論、真の姿の状態で全て倒し切ってしまっても構わない。
「きっとまだまだ先は長いですが、ここで負けてはいられません! 危ない兵器は木っ端微塵に破壊しちゃいましょう!」


沙雪海都
 戦争シナリオです。沙雪海都(さゆきかいと)です。
 ちょっと頑張ってみることにしました。よろしくお願い致します。

●シナリオフレームについて
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「銀河帝国攻略戦」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

●このシナリオでやること
 精神破壊兵器『アゴニーフェイス』の破壊及びタイプ・メデューサの掃討。

●注意点
 このシナリオは🔴の取得に関わらず、最初から真の姿プレイングをかけられるシナリオとなります。
 そのため、真の姿で戦うことを明記してください。
(猟兵の襲撃があると敵が『アゴニーフェイス』を作動させるため)

 真の姿イラストがない場合でも、プレイングで真の姿の外観の特徴等を記載いただければ、それに沿って描写致します。
 イラストがある場合でも「ここは特に気にしてほしい」ポイントなどあれば記載頂けると助かります。

 また、真の姿が通常の姿から大きく外れていればいるほど、より強力な戦闘力を発揮する事ができるようです。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
112




第1章 集団戦 『タイプ・メデューサ』

POW   :    触手の一撃
単純で重い【液状触手】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    強化増殖
自身が戦闘で瀕死になると【(強化版)タイプ・メデューサ】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
WIZ   :    石化粘液
【液状の触手】から【石化粘液】を放ち、【石化】により対象の動きを一時的に封じる。

イラスト:透人

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

甲斐・ツカサ
「うぅ……頭がいたい……」(ガクッ

倒れ伏すと同時にその周囲を覆うように風が吹き荒れ、冒険記のページをめくっていく
風が晴れるとそこに立つのは、赤いコートに身を包み、ゴーグルで表情を隠した青年
それはツカサがその背中を追い求める"理想の冒険家"

言葉を発さず、けれど口元に爽やかな笑みを湛えながら、刀じみた蒼い光刃
を手に風のように軽やかに動き、嵐のように激しく斬り裂く
ワイヤーで触手を絡めとり、力強く引き寄せて斬りつける

戦闘が終わる頃には強い一陣の風が吹いて捲れたページを閉じ、その姿は消えて元通りの少年の姿のツカサがそこに倒れている

「うーん…あれ? もう終わってる? よくわかんないけど、みんなお疲れ様!」


竹城・落葉
 ふむ、相手は我ら猟兵を真の姿へ変えてしまうというのか。ふっ、上等では無いか。寧ろ、その方が幾倍も力を発揮できるというもの。その戦法が浅はかであった事を思い知らせてやろう。
 我の真の姿は、全身に緑のオーラを纏わせ、流血し、髪が落武者のようにボサボサになり、人間の冷酷を凝縮させた無表情になるぞ。
 そして、名物竹城を手に『支柱一閃』で切り伏せる。攻撃は【残像】で避け、【早業】と【2回攻撃】で素早く的確に仕留めよう。
 この姿になるという事は、一切の慈悲が無くなるというもの。冷酷に、かつ残虐に殺していってやろうではないか。
 ……あぁ、気持ち良いものだ。敵を蹂躙するというのは。


リリト・オリジシン
聞こえる
悲鳴が、嘆きが、怨嗟が
ならば、それを受け止めるは妾が役目であろう
よい、許す
妾へそれを捧げよ

アゴニーフェイスの破壊は他者へと任じよう
妾はそれへと向かう者達の邪魔とならぬよう、小煩い雑兵共を爪で、牙で、尾で薙ぎ払い、喰い散らかしてやろう
もし、真の姿が解除されるならば得物でとなるが、やることに変わりはないな
勿論、兵器を破壊するに手が足らぬというのであればそちらへと向かおう

○真の姿
身体から滲み出た血のように赤黒い呪いが矮躯を包み、ドラゴンの巨躯へと変じる
ただし、受ける悲鳴の度合いによっては、手足の竜化・角翼尾の生成のみとドラゴニアンレベルの形態変化に留まる
どこまでの変化にするかはアレンジ可


白鳥・深菜
【真の姿で戦う】

その姿は、象を掴み運ぶことすら容易な、巨大な猛禽であり、
その全身は燃えるように輝く白き羽に覆われている。
獅子の爪を構え、彩り豊かに揺らめく尾を伸ばし、
彼女はふわりふわりと泰然として飛んでいる。

しかし、敵らしき、獲物らしき者どもを見て。
ぴゃあ、ぴゃあと囁き羽ばたけば、
風に乗った万物の種子が鉄の大地より乱れ芽吹き、獲物を狩る。
さながら<草>の<異常発生>のごとく、
灰色の大地を緑に染め上げていく。

さて、久々の全力の狩りなのだ。
本命は他の狩人に任せて、
私は只管にこの灰色の獲物を狩り続けるとしよう。
生命を狩り、繋ぐ喜びを感じながら。
ぴゃあ、ぴゃあ。


桜・吹雪
真の姿は記憶にございませんが…
主無き価値無き人形であるこの身
危険な作戦でしたら喜んで身を捧げましょう

真の姿:忘れられた妖怪桜。桜吹雪の化身/桜吹雪が形を為した桜色の大蛇
メデューサの討滅を中心に(人手が足りていれば兵器破壊を
戦場を這い回り、大蛇の口で飲み込み、身体で巻き付き
『一つになること』に執着して敵を追い回します

忘れられた記憶
主に捨てられた一本の桜
―共に居てください、共に居て下さい
―側に居て欲しい、ただ主様に側に居て欲しかった
―捨てないで、捨てないで
―ずっとずっと…一緒に
主を失い『共に』ある事に執着する妖怪桜
桜吹雪で相手を囲い自身の根元に埋める
共に咲いて散る為に
ツカマエテ、ハナシマセンワ


グルクトゥラ・ウォータンク
【真の姿】
ギリギリと歯車が鳴く。ギチギチとケーブルが唄う。ミシミシと鋼が叫ぶ。体躯2m程の細長い人型に詰め込まれた、無数のガジェットと電算機。中央に燃え盛るのは宝石のように結晶化した魂の炎。一呼吸の間に内側へと増殖を繰り返し、潰し、造り、巧緻を増していく。戯れに腕を振るえばボールズや電脳妖精が造り落とされ、地を満たす。この異形こそ、グルクトゥラの真の姿。

【行動】【真の姿で戦闘】
真の姿を解放するのは初めてだが、仔細ない。ボールズや電脳妖精も常より調子が良い。地に満ちよ、空を埋めよ。数多の分け身を造り落とし、敵を狩れ。
戦術は余りにも単純、敵よりも尚早く数を増やし打ち倒すのみ。戦友よ、共に駆けよ。


ヘスティア・イクテュス
サイキッカーの脳を弾薬に…人のことをなんだと……
こんな悪趣味な兵器は絶対潰してやるわ!絶対に!

●真の姿
緑髪の背中から光の6対の羽、ミスティルテインは光の弓に

これが…わたしの真の姿…?
戸惑ってる場合じゃないわね…さぁ、いくわよ…!

光の羽で飛ぶように移動
目標は『アゴニーフェイス』
邪魔な敵は遠くから射抜いて片付ける!

光の弓矢を複数番えて(回数重視)
一気に放って攻撃、広範囲に放って複数を射抜くわ【範囲攻撃】


女王の道を阻む不敬者共には死刑を与え…
…わたし何か言った?理性を失うってこういう?

ギリギリまで近づいたら【力溜め】した光の矢を『アゴニーフェイス』へ
これで終わりね…


夕凪・悠那
猟兵には効果がない欠陥兵器ね
……全員真の姿だと絵面が怪獣大決戦になりそう
(自分では偶に振るう真の姿になると。要するに自分の真の姿を正しく認識していなかった)

普段:体各所にブロックノイズが走る
今回:理性が吹っ飛んで防衛本能が外れ明らかになる本当の真の姿
『白髪化。背に淡く明滅する回路の枝輪を負い、黒い影が内包されたキューブが周囲に漂う。UDC「――」の化身』
「譚・縺溘l」
↑以降通常言語

通常UCとは異なり黒いバグに侵された機械群を召喚
着弾と同時に[衝撃波]を撒き散らす[誘導弾]を[範囲攻撃]化して放つ
石化粘液は[見切り]、真の姿で強化された座標改竄で[カウンター]して敵に返す

放つ言葉は抑揚なく
アド歓



●精神破壊兵器『アゴニーフェイス』を破壊せよ
 無人の通路を猟兵達はひた走る。隊列など組んでいる暇はない。今は一刻も早く、精神破壊兵器『アゴニーフェイス』を破壊しなければならないのだ。
 通路の先に光が見えた。円形の広間、敵陣中枢。件の兵器が鎮座し、その周囲を護衛のオブリビオン、『タイプ・メデューサ』が徘徊する。
「サイキッカーの脳を弾薬に……人のことをなんだと……こんな悪趣味な兵器は絶対潰してやるわ! 絶対に!」
 ヘスティア・イクテュス(SkyFish団船長(自称)・f04572)が威勢よく飛び出して、
「あの兵器こそ我ら猟兵を真の姿へ変えてしまうもの……ふっ、上等では無いか」
「わたくし、真の姿は記憶にございませんが……主無き価値無き人形であるこの身、危険な作戦でしたら喜んで身を捧げましょう」
 竹城・落葉(一般的な剣客……の筈だった・f00809)と桜・吹雪(主を求めて三千世界・f09844)は共に恐れず突き進む。
 さらに他の猟兵達も広間へ駆け込んできたところへ、『アゴニーフェイス』が起動された。
 サイキッカーの脳を弾丸とし射出される『テレパシーの悲鳴』。猟兵達が受ければ真の姿を晒すことになるのだが――それは、通常の人間と同じように、作用した結果に他ならない。
 故に、
「うぅ……頭がいたい……」
 甲斐・ツカサ(宵空翔ける冒険家・f04788)はテレパシーの悲鳴を受けてすぐ膝を折り、その場に崩れ落ちていた。
 脳の奥底から表層へと突くような痛み。ズキン、ズキンと規則的に、次第に増していく。そして内に秘められたものが檻を突き破った時、ツカサの意識は決壊した痛みに呑み込まれた。
 冷たい床に倒れ伏すツカサ。その際に取り落とした冒険記が、不意に風に煽られた。バラバラとめくれるページの数字が上がるのと同調するかのように風は吹き荒れ嵐となって、ツカサの周囲を取り巻いた。
 嵐の中に、ゆらりと立ち上がる影が浮かぶ。やがて冒険記が終わりを告げ、パタンと閉じられ嵐が消えた時、赤いコートに身を包み、ゴーグルで表情を隠した青年が佇む。
 ツカサが思い描き、追い求めた『理想の冒険家』がそこにはあった。
 他の猟兵達も、脳内に直接作用する悲鳴に抗うように、真の姿へと変貌する。
「聞こ……えるっ……」
 悲鳴と称されてはいるが、確かな音として存在しているかは定かではない。だが、リリト・オリジシン(夜陰の娘・f11035)の耳に、脳に、それは確かに届いていた。
 意識が攪拌され多重に歪む視界の中、繋ぎとめるかのように頭を押さえながら、リリトは『声』に応える。
「悲鳴が、嘆きが、怨嗟がっ……。ならば、それを受け止めるは、妾が役目であろう……。よい、許す……妾へそれを捧げよ……っ!」
 ドクン、と高鳴る心臓。ドロリと頭から流れ視界を染めるのは――血のように赤く、そして己が抱えた咎人の罪のように黒き呪い。年端も行かぬ少女の矮躯を包み込んだ赤黒の繭が鳴動し、生まれ出づるは巨躯のドラゴン。
 空へ自由を得たリリトは窮屈そうに畳まれていた翼を広げ、飛び立った。
 角は山羊、翼は黒斑を持つ白梟、蛇の尾を持つ白鳥・深菜(知る人ぞ知るエレファン芸人・f04881)は膝をつき、翼で体を覆うようにして耐えていた。翼に触れた腕が徐々に同化し、黒斑は輝きの中に溶けて消える。キマイラとは異種の生物の特徴を併せ持った人種ではあるが――切れ長の瞳が凛々しい少女は、いつしか巨大な猛禽へと姿を変えていた。
 象をも容易く掴み運ぶ爪は正に獅子。優雅に舞い上がった深菜の、白き羽の光彩を浴びて尾は彩り豊かに揺らめく。黒くくすんだ護衛の群れを眼下に、泰然と空に漂い、深菜はぴゃあと一度鳴いた。
 真の姿の解放。それは時に異質な進化を遂げる。豊かな髭を蓄え、屈強な体格のドワーフ、グルクトゥラ・ウォータンク(サイバー×スチーム×ファンタジー・f07586)の体の中で、ギリギリと歯車が鳴き、ギチギチとケーブルが唄っていた。肉は鋼に締め上げられて倍ほどの長さに伸び、痩躯に宿るは無数のガジェットと電算機。その核として収まる魂の炎は結晶化して尚燃え盛り、息衝く様が刻一刻と、呼吸の合間にも内へ内へと広がる増殖に見て取れる。
 無機質な生命は淘汰と創造を繰り返し、より巧緻、高次な存在へと昇っていく。新たに構築された腕を一度振るえば、電子妖精が躍り、グルクトゥラのガジェット、ボールズが造り落とされ、地を満たしていく。
 真の姿――猟兵は様々な冒険へ赴く中で、その変化を体験することもある。夕凪・悠那(電脳魔・f08384)も他の猟兵と世界を渡り、時に真の姿を見せていた。
 真の姿への変貌を経験している猟兵も中には居よう。それが今回はたまたま、敵が用意していた兵器の作用で強制力を持った。ただそれだけのこと。
「猟兵には効果がない欠陥兵器ね。……全員真の姿だと絵面が怪獣大決戦になりそ、う……?」
 どこか軽く構えていた悠那に生じる異変。悲鳴は不協和音として悠那の中に入り込み、精神を汚染する。そのまま悠那の思うままの姿となるのであれば、体の各部位へとノイズが走っていくのだが。
「うあ……あぁぁァァァァ!!」
 何かが違う――そう悟る前に理性が飛んだ。黒髪は色が抜け落ち真白に変わり、電脳魔術士として操る回路が剥き出しとなる。絡み合いながら構築された回路の枝輪は色調淡くネオンのように明滅し、黒い影が内包されたキューブが周回、反転を繰り返しながら悠那の周囲を漂っていた。
 これが悠那の真なる『真の姿』。UDC『――』の化身。その名は、未だ判明していない。
 落葉の体から湧き上がる緑のオーラ。そこに一点、じわりと滲んだ紅が侵食を始めた。流れ出る血に染まり、黒髪は艶を失い乱れ果てる。瞳の輝きは徐々に鈍り、しかしその中央の一点はしかと前を見据えるも、湛えているのは人という種が持つ冷酷さのみ。一切の感情を捨てた顔はただじっと不可思議な動きを見せるタイプ・メデューサに向くが、最早落葉にとってはただ切り捨てるだけのモノに過ぎない。
 真の姿を知らぬ身に、背負いし名は何の因果か。吹雪の体は足元から春の風に舞う桜へと変じ、紅玉の如き眼の大蛇が目覚めた。桜色の鱗は滑らかに、その身をゆったりともたげていく。
 人の記憶より失われし妖怪桜。仮初の体にさえも残滓すら残ることなく。その姿を顕現させた糧。根底にあった願い。一つになりたい、一つでありたい――そう想い、想い続けて。
 愚直な想いは執着となって、忘れられて尚、妖怪桜の存在を世に縛り付けている。
 ヘスティアの透き通る空のような青髪は、根元から先へ染め上げるように明るく、爽やかな緑へと変わる。背には光の羽が生え、花開くようにピンと伸びていく。計六対、存分に広げた様は太陽の如き大輪の輝きを見せた。妖精の羽を象ったジェットパック『ティターニア』も、ヘスティアの真の羽の前には存在感が霞んでしまう。
「これが……わたしの真の姿……?」
 人型を保ったままのヘスティア。軽く触れた髪の色、身をねじって振り返れば、そこには光の羽がある。ヘスティアの身体変化に合わせ、『ミスティルテイン』は光の弓へと形を変えていた。
「真の姿を解放するのは初めてだが……仔細ない」
 変化が収まり、グルクトゥラも体の感覚を確かめる。腕、足、頭と順に動かすが、視点が異なるくらいで特に不自然な箇所はなく、視界の差も直に慣れることだろう。
 たとえ大きく変化しようが、別の体に乗り移ったわけではない。翼は己が手のように。銃身の変化や元の姿になかった部位も、まるで自分が元からそうであったかのように扱える。
 現にリリトと深菜は、それぞれの翼で宙に留まる。
 『テレパシーの悲鳴』を浴びて真の姿となった猟兵達を前に、表情には現れずともタイプ・メデューサの動きがにわかに慌ただしくなった。必中必殺の攻撃が果たして効いたのか、判断がつかないのだ。
 だが、侵入者であることには変わりない。体から枝分かれした複数の触手を持ち上げ、電波のような奇声を上げながら護衛の大群は猟兵達に襲い掛かっていった。
「何が起こるかは聞いていたんだもの……戸惑ってる場合じゃないわね……さぁ、いくわよ……!」
 ヘスティアの声を皮切りに、猟兵達はタイプ・メデューサと衝突した。
 敵は数こそ勝っているが、空中に利は存在しない。
 深菜は空より敵を見下ろした。生命の息吹が感じられぬ灰色の大地に敵の姿はヘドロのように、ぐにゃりぐにゃりと蠢いていた。深菜の姿を認めると、タイプ・メデューサは触手の先端を溶かして液状にし、黒い粘液を空に撒いた。汚染作用は触れた相手を石に変えてしまうが、深菜は滑空しながら飛沫さえも見切り、粘液を一切寄せ付けない。
「ぴゃあ、ぴゃあ」
 二つ囁き、深菜は羽ばたき風を起こした。風に乗った生命の輝きが地上に降り注ぐと、一瞬にして芽吹いた新緑がタイプ・メデューサの足を絡め捕った。それだけに留まらず、異常発生した植物は津波のように飲み込んで、全身に絡み締め上げ千切っていく。
 捕らわれの大群へ、リリトは爪を立て強襲した。絡みつく植物諸共タイプ・メデューサの軟体を裂き、さらに尾を振り回して薙ぎ払っていく。通り道は根こそぎ刈り取られ、尾の一撃にタイプ・メデューサ達は彗星の如く宙を流れて壁に激突。弾け跳んで跡形もなく消滅した。
 空からの脅威に別のタイプ・メデューサが群がり触手の重い一撃を叩き込もうとするも、リリトは巨躯に似合わぬ俊敏な動きを見せ、伸びた触手を爪で斬り飛ばし、その上で叩き潰し蹂躙した。
 二人の空からの襲撃が敵陣を大きくかき乱したところに残りの猟兵達が雪崩れ込む。
 悠那が召喚した機械兵器は真の姿へと変じた故に黒いバグに侵されていた。手を離れた機械群は不規則に飛びながらタイプ・メデューサの群れを目指す。迫り来る侵略者を迎撃するため、タイプ・メデューサは触手を軟化、液状へと変えて石化粘液の砲弾を放ったが、不規則な飛行が的を絞らせない。いくつか悠那へ降ったものには、
「ユダン、タイテキ」
 機械のように抑揚なく、悠那は淡々と言葉を述べ、降り注ぐ粘液を【座標改竄】により次々に敵頭上へと転移させた。力の性質は変えず、自らの力で滅ぶように仕向け、己の手は汚さない。
 石化粘液の被弾を避けた機械兵器は群れに降り掛かり、次々に着弾していった。傘のような形をした胴体に、雨粒の如く機械兵器が落下したかと思うと、衝突の衝撃を波動に変えて周囲のタイプ・メデューサも巻き込んでいく。凹んだ体は弾性を失いぐちゃりと抉れて体力を削る。
 次々と伝播して、潰れたゼリー生物が辺りに溢れた。
 広範囲に消耗した群れへさらに、グルクトゥラが戦闘用のコマンダーボールズと、三倍の小隊ボールズを召喚、投げ込んでいく。数には数で押す。側面装甲に数字が刻印された球形の戦闘部隊が動きの封じられたタイプ・メデューサの触手をぶちり、ぶちりともぎ取って、行動能を失わせた。
 反撃に出たいタイプ・メデューサだが、文字通り手が出ない。そこで自らと同じ形状の強化版タイプ・メデューサの周りに召喚し、ボールズ軍にけしかける。見た目は同じにも関わらず触手は俊敏に動き、ボールズ軍を打ち払おうとしていた。
「……敵よりも尚早く数を増やし、打ち倒すのみ」
 グルクトゥラは両腕を掲げ、ボールズをひたすら召喚する。戦場に現れたボールズは小隊ごとにタイプ・メデューサとの戦闘を繰り広げる。触手が十を相手にするなら二十、三十で攻めればよい。強化個体も四方から攻められれば敵わず、千切れた触手が空を飛んだ。
 数の優位を保ち戦場を支配するグルクトゥラの戦略に強化体は圧倒されていく。
 そして詰めの一押し。一陣の風となったツカサが『AZ-Light(アズライト)』を振りかざし、強化体の背後を斬った。深く鋭く、青い閃光が迸り、体と足を完全に切り離して絶命させた。
 新緑が揺れる。風が草原を吹き抜けるように、ツカサは軽やかに戦場を駆け抜ける。冴え渡る光刃は一切の抵抗なく触手を断ち、胴体部に深々と裂け目を入れた。
 タイプ・メデューサが召喚された強化体で応戦しようにも、植物に足を取られ、さらに自在に動き回るツカサの速度に追いつけず、振るう触手は空を切る。
 それを隙と見て、ツカサは矢印型のフックを持つワイヤー『未知標(みちしるべ)』で触手を巻き取り、それごと敵を引き寄せた。伸びた触手に引きずられて草むらから引っこ抜かれたタイプ・メデューサに光刃を合わせ、振り抜く。まるでバターを切るかのように通り抜けて、ツカサの背後に黒光りした切り口を晒した『敵だったもの』がべちゃりと落下した。

 『共に』ある――ただそれだけに執着を見せる吹雪は戦場に群れるタイプ・メデューサへと牙を剥く。

 共に居たかった。側に居てほしかった。捨てられたくなかった。
 想い続け、そして破れた。かつて共にあった主が捨てた一本の桜。それが吹雪の真の姿の礎。
 彼女は想い続けていた――否、想い続けることしかできなかった。
 引き留めることができなかった。自ら寄り添うことができなかった。共にありたいと想いながらも、そうあるためにできることは何もなく、ただ待つしかなかった。
 捨てられようと、忘れ去られようと、待つしかなかったのだ。

 追い立てるように這い回り、大口を開けて迫る。タイプ・メデューサは触手を振り上げ、吹雪目掛けて伸ばしてくる。
 それは明確な攻撃意思なのだが、吹雪の目に映るのは、腕を伸ばすその姿。

 待つ必要はない。共に居たいと思えば、飛び込めばいい。離したくないと思えば、捕まえればいい。その時を永遠にしたいのなら――自分と一つになればいい。

 触手の一撃を見舞おうとしたタイプ・メデューサは暗闇に呑まれ、大蛇の中に消えた。さらに離れた個体は長い胴を器用に回して巻き付き、締め付けていく。

 ――ずっとずっと……一緒に。

 想いが執着へと変わる過程で、その対象が思考から外されてしまっていた。『それが誰か』は必要とせず、吹雪はただただ、共にある存在を求め、タイプ・メデューサを追う。時折巻き起こる桜吹雪が標的を捉えて。

 ――ツカマエテ、ハナシマセンワ。

 吹雪は『一つになること』を求め続けた。

 タイプ・メデューサにとって『辻斬り』に類する存在はツカサの他にもあった。落葉が手にした『名物竹城』は鋭い切れ味でタイプ・メデューサを両断していく。
 真の姿となった落葉に慈悲はない。悲鳴が上がろうが、命乞いをしてこようが、一切の加減なく、斬り伏せる。
 同時にヘスティアが間合いを取りつつ光の矢を射かけていた。正確な所作で放たれた一矢が寸分の狂いもなく伸びる触手の先端を穿ち、タイプ・メデューサの接近を許さない。
 黒き触手の壁は、初め幾重にも続いていたが、他の猟兵達が一つ、また一つと取り払い、ついにヘスティアの眼は鈍色の兵器を捕まえた。直後、ヘスティアは満を持して光の羽を広げ、地の束縛を振り払い空へ上がる。
 広間の端、壁と一体化するように兵器は鎮座する。敵の群れは疎らなれど、ヘスティアの羽を、矢を警戒し、後退の様相を見せながら兵器を固めるように集まろうとしていた。
 それは脱兎の如し。だが、落葉は彼らを逃がしはしない。低く体勢を保ちながら一跳びで膨れた胴体の下へ潜り、露を払うように名物竹城を振り上げた。飛沫は黒く、致命傷となった個体はわずかな悲鳴も上げることなく。
 彼らに落葉の太刀筋は見切れない。わずかな反撃も、彼らが捉えたのは落葉の残像に過ぎず、届いたと儚い夢を見るころには落葉が触手と胴体を寸断していた。
(……あぁ、気持ち良いものだ。敵を蹂躙するというのは)
 落葉が力を存分に振るう中、ヘスティアは群れを仲間達に任せ、兵器へと迫る。
 群れの奥にはまだ落葉の手の届かぬ個体。その触手が宙のヘスティアの足を掴もうとしたが、豪速球と化して飛んできた球体が寸前で弾き飛ばした。散弾となって奥地に放り込まれた無数の球体は空中で繋がり、強化された体で触手を押し潰していく。
「戦友よ、往け」
 グルクトゥラの声は特段張っていたわけではないが、ヘスティアは確かに受け取った。背中を押され、なお前へ。
 兵器の周囲の最後の護衛達。数はさほど多くはないが、兵器を優先するには目障りな存在。
「女王の道を阻む不敬者共には死刑を与え――」
 不意に言葉が口を衝いて出たが、ヘスティアに自覚はない。矢を番え、引き絞る。一度に複数本を手に収め、放射状に放つと同時にひどく鮮明な感覚が戻ってきた。
(……わたし何か言った?)
 声が紛れもなく自分自身。今し方発した言葉は、何故か靄がかかって理解できずにいた。
 ヘスティアの理性の外から放たれていた矢は胴を支える柱の触手、そのど真ん中に矢が突き刺さり、タイプ・メデューサはびくびくと痙攣を始める。痛手を受けていたかに見えたが、鞭のように触手をしならせると、床を叩き、勢いをつけて、幾度目かにヘスティアに向けて振り上げる。
 水面上の虫を狩ろうとした魚は、空より飛来した猛禽に喰われた。
 高く伸ばされた触手の先を嘴で挟み、深菜は敵を釣り上げ、空に連れ去る。
 彼女にとって、それはただの獲物に過ぎない。垂直に上昇しながら高く放り投げ、ぴゃあぴゃあ鳴いてぶよぶよした黒体を思うがまま啄んでいた。
 護衛達は攫われ、残すは身動ぎ一つ見せない兵器のみ。未だ動作は続けているらしく、長く近づいていたヘスティアには耳鳴りのような音が頭に響いてきていた。
 一本の矢に意志の力を込めて。狙いを妨げる物はない。貫く――それだけを求め放たれた一条の光は、表面の金属を破っていった。
 電撃が飛び散り兵器の表皮を駆け巡る。内部から爆破音が二度、次第に開いた口から煙が漏れ出している。
 ヘスティアの体が揺れた。『アゴニーフェイス』の機能の一部に障害が発生し、真の姿へと変化させる悲鳴に揺らぎが現れたのだ。光の羽が一対薄れたことで、一瞬バランスを失いかけた。
 まだ破壊には至らない。ならばもう一矢――というところに、高高度から降りる影があった。人型ではあるが、手足は竜の鱗で覆われ、背に翼、頭に角、腰辺りから尾を伸ばした竜人。
 悲鳴の影響が弱まったことで、飛翔体から人と竜の中間体となったリリトが言の葉を並べる。
『その身に宿した罪咎、妾が喰ろうてやろうぞ』
 鈍い輝きを放つ血染めの流星が兵器の真上に降り注いだ。さらに、血と呪いで形成された竜の顎が喰らい付き、厚い表皮を破り、精密、繊細な中身を豪快に噛み千切った。断たれた導線が宙を彷徨い火花を散らす。立ち込める煙はなお黒く、勢いを増す。
 物理的に破壊された兵器の中へ、悠那のバグが流し込まれた、小型の機械兵器は開いた穴から内部へと侵入し、対抗策を持たぬ機械へ破壊の限りを尽くしていく。衝撃波が内部構造を破壊し、ボコボコとこぶのように表皮を歪に隆起させていた。
 兵器の寿命も残りわずかであることは、それぞれが体の変化の度合いから感じ取っていた。ヘスティアは羽を巧みに操って空中でバランスを取り、弓を構え、最後の光の筋を放つ。
「これで、終わりね……」
 光は軽やかに宙を走り、兵器の核を撃ち抜いて、その機能を完全に停止させた。

 やがて各々、平時の姿と意識を取り戻していく。空にあった者は真の姿の消失と共に地上に降り、巨躯を持った者は構成要素が分解されて最後に残るは元の形。
 流れる風は冒険記の終わりを告げて、閉じられた書の傍らにあったのは理想から現実へと引き戻されたツカサだった。姿だけでなく全ての時が巻き戻ったかのように、風の中に倒れていた。
「お怪我は、ございませんか……?」
 その身を案じ、吹雪がそっと声を掛けると、目覚めたツカサは徐に頭に手を当てた。
「うーん……あれ? もう終わってる?」
「そのようだ。我らの姿も、この通り」
 見渡せば、共にここへ乗り込んだ時の猟兵達がいた。
 『アゴニーフェイス』は破壊され、タイプ・メデューサはその討伐を主としていた猟兵が複数いたために、全てが終わる前に駆逐され尽していた。
「汝はこの戦の記憶が朧げであるか?」
「なんか……そうみたい」
 リリトの問いかけに答えながら、ツカサは落ちていた冒険記を拾い上げる。その拍子に目を向けると、手元にひゅうと小さな風が吹いた。
「よくわかんないけど、なんとかなったのかな。……みんな、お疲れ様!」
 ツカサの元気な声に触発されて、猟兵達の顔には安堵の笑みがこぼれていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月16日


挿絵イラスト