貴方の詩は響かない
●プロジェクト・ジャバウォック
人間の『黒き悪意』は人の営みに不可欠なものであった。
悪意なき人間は人間ではない。
かつての猟書家『サー・ジャバウォック』は言った。
「『スナーク』は実在するのでは?」
その言葉は疑念でしかなかった。
世界の何処にも『スナーク』は存在していなかった。だからこそ、『スナーク』に相対する者はすべて『スナーク』の不在を証明できない。
一片の真実なきものは、虚構そのもの。
ならば、そこに過ちは存在しない。
「ヒーローやヴィラン、偉大なるジャスティス・ワン、アトランティスの海底人、親愛なる隣人や、道端のしがない靴磨きまで」
「ああ、そして、神々の血からでも。腐臭漂う汚水からでも、少女の涙ひとしずくでも」
オウガ・フォーミュラ『ミストレス・バンンダースナッチ』はつぶやいた。
かつて在りし『サー・ジャバウォック』。
それこそが彼女の存在する意味であった。
彼女は虚構から真実を造ることなどできない。
『サー・ジャバウォック』が求めたのは、そういうものだ。真実があるから虚構が生まれる。その不可逆を行なうことなど彼女には出来なかった。
自分一人ではできなかったし、これ以上己が存在する意味があるとはおもえなかった。
それもこれも『サー・ジャバウォック』が死んだからだ。
いっそのこと、今すぐ消え去ってしまおうかと考えたほどだ。
だが、彼女は億劫だったのだ。
生きるべきか、死ぬべきか。ただそれだけを考えるのも億劫だった。だからこそ、残された時間を無為に潰すことにしたのだ。
彼の、『サー・ジャバウォック』の『続き』でもやろうとしたのだ。
もう二度と彼の詩は紡がれないけれど。
「手は貸そう。だから勝手に生まれればいい」
ただ、ただ無為に。
彼が望んだ戦いの歴史。繰り返される歴史より生まれる『超生物スナーク』の誕生。
「私にはもう、どうでもいいことだから」
だから、過ちは繰り返す――。
●ダストブロンクス
骸の月は沈黙する。
己の頭上にあった骸の月はすでに押し返されている。偽りの月は、『ミストレス・バンンダースナッチ』の居場所を照らす。
うつろなる怪物『スナーク』をばら撒いていた『ミストレス・バンンダースナッチ』は、それさえもどうでもよかった。
「……億劫だな。このままでいいというのに。私にはもう存在する意義すらないというのに」
手にした煙管から吐き出される紫煙がニューヨークの地下に広がる『ダストブロンクス』中に張り巡らされた下水道や通気孔を通じて伸びていく。
それは本質無き怪物を生み出す力であった。
「……本当にどうでもいい。生きるも死ぬも。私にはもうどうでもいいことだ。『サー・ジャバウォック』のいない今を存在する意味すら見いだせない。虚ろだ……だが、『続き』は今も」
彼女の放つ紫煙によって『ダストブロンクス』中の『バイオモンスター』たちが次々と『ザウルスマン』へと変貌していく。
彼等の中にあるのは怒りであった。
本質的な怒りではない。ただ植え付けられた空虚なる怒り。
「オオオオオオオオ――!!!!」
咆哮が轟く。
反響し、膨れ上がっていく。どうしようもない怒り。それを見やる『ミストレス・バンンダースナッチ』は何も感じない空虚なる瞳のまま『ダストブロンクス』を進む。
『スナーク』を生み出し続ける。
いつか必ず本物の『スナーク』に変貌するその時まで、彼女は続ける。
無為に。
この行いの果に何があるわけでもなく。ただ、ただ時間を浪費する――。
●最終決戦
グリモアベースへと集まってきた猟兵達に頭を下げて出迎えるのは、ナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)であった。
「お集まり頂きありがとうございます。ついに骸の月を押し返し、オウガ・フォーミュラである『ミストレス・バンンダースナッチ』の潜伏場所が照らし出されました。今こそ、『スナーク』の無限誕生に終止符を打つ時が来たのです」
虚ろなる怪物『スナーク』。
超生物とも呼ばれた『スナーク』の誕生はこれまで多くの猟兵達によって阻まれてきた。しかし、その『スナーク』を生み出し続ける『ミストレス・バンンダースナッチ』の潜伏場所はわからなかった。
しかし、ナイアルテがグリモアの予知によって見たのはニューヨークの地下に広がる『ダストブロンクス』である。
『ミストレス・バンンダースナッチ』は、その紫煙より『スナーク』を生み出していた。今回『ダストブロンクス』に住まうバイオモンスターたちが紫煙によって彼等を狂わせ、『スナーク』へと変貌させているのだ。
「バイオモンスターの皆さんは、元は善良なる人々です。なるべく……致命傷を与えないような方法でもってこれを倒し、体からスナーク現象が抜けるのを待ってほしいのです」
それでは『ミストレス・バンンダースナッチ』を追い詰めることはできない。
彼女は如何なる力であるのかわからないが、姿を消してしまうのだという。
「この力がどのような力であるのかはわかりませんが、骸の月が沈黙した以上、もはやどのような力であっても予知をかいくぐることはできません」
ナイアルテの瞳が爛々と輝いている。
彼女は転移を維持しているが、『ミストレス・バンダースナッチ』が転移した先をすぐに見破ることができるだろう。
「『ミストレス・バンダースナッチ』はたしかに、そもそもの目的を見失っているオウガ・フォーミュラです。ですが、その力は猟書家『サー・ジャバウォック』に劣るとは言え、強力そのもの。どのような手段を講じてくるかわかりません」
彼女の懸念は尤もであろう。
『書架の王』を除いた猟書家の中で最強であった『サー・ジャバウォック』の元に居た幹部『ミストレス・バンンダースナッチ』の実力は窺い知ることはできない。
だが、ここで彼女を止めなければ『スナーク』の出現は止まらない。
どれだけヒーローズアースが戦いの繰り返しの歴史であるのだとしても、人の営みを『黒き悪意』で染め上げることなどあってはならない。
「どうか、お願いいたします。『ミストレス・バンンダースナッチ』を止め、このはてなき『スナーク』誕生に終止符を打ってください」
ナイアルテは頭を下げる。
これより先にあるのは最終決戦。
ヒーローズアースの未来を決める戦いである――。
海鶴
マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
これは『猟書家最終決戦シナリオ』です。
オウガ・フォーミュラ『ミストレス・バンンダースナッチ』との最終決戦を行い、『スナーク』の無限誕生に終止符を打ちましょう。
●第一章
集団戦です。
ニューヨークの地下に広がる『ダストブロンクス』は、張り巡らされた下水道や通気孔が入り組んだ迷宮じみた広大な空間です。
『ミストレス・バンンダースナッチ』は自らが吐き出した紫煙でもって、『ダストブロンクス』に住まうバイオモンスターたちを狂わせ、『スナーク』化させています。
バイオモンスターたちは皆『ザウルスマン』となっています。
彼等は善良なバイオモンスターですので、なるべく致命傷を与えないような方法を持ってこれを打倒しましょう。
一通り『スナーク』化した『ザウルスマン』を無力化すれば『ミストレス・バンダースナッチ』を追い詰めることができますが、彼女は不思議な力で姿を消してしまいます。
●第二章
ボス戦です。
姿を消した『ミストレス・バンダースナッチ』は、『センターオブジアース』に姿を表します。
そこには地上から人類を一掃することを目論む神『狂智のリースフェスト』がおり、これまで『ミストレス・バンダースナッチ』に協力していました。
しかし、骸の月が沈黙しているため神々の魔術であってもグリモア猟兵の予知をはばむことができなくなっています。
すぐに見つけられたため、『狂智のリースフェスト』は『ミストレス・バンダースナッチ』を転移で逃がすと同時に『スナーク』化し、皆さんを足止めしようとしてきます。
●第三章
ボス戦です。
『ミストレス・バンダースナッチ』はアトランティスの海底ドーム都市に現れます。
彼女の力、紫煙がドーム都市の中を満たし、ドーム内の住人たち全てを『スナーク』化しようとしています。
完全密閉領域であるドーム都市は彼女の力を最大限に発揮させます。
都市に満ちた紫煙の全てから彼女は3つのユーベルコードを複数同時に操作し皆さんに襲いかかります。
また時間経過によってアトランティスの都市の住人たちが次々と『スナーク化』して襲いかかってきます。
この増援に対処し、オウガ・フォーミュラ『ミストレス・バンダースナッチ』を打倒しましょう。
それでは、本質無き怪物『スナーク』の誕生を阻止する皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
第1章 集団戦
『ザウルスマン』
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POW : ザウルスアタック
単純で重い【拳や尻尾】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD : ザウルススライディング
【怒りの感情】を向けた対象に、【スライディングキック】でダメージを与える。命中率が高い。
WIZ : ザウルスアーマー
全身を【爬虫類の鱗】で覆い、自身が敵から受けた【負傷】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
イラスト:ぱぶ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ニューヨークの地下迷宮たる『ダストブロンクス』に満ちる紫煙は、尽く『バイオモンスター』たちを『スナーク』化し、『ザウルスマン』へと変貌させた。
その力は『ミストレス・バンダースナッチ』の煙管から燻らされ、狂うように彼等を『スナーク』として生み出していく。
どれもが偽物で、どれも虚構。
いずれも真実には程遠く、対極にあった。
けれど、『ミストレス・バンダースナッチ』は笑うでもなく、悲しむでもなく、ただ紫煙を狂ったように噴き出し続ける。
「……皮肉だな。全てどうでもいいと思うからこそ、あの人の『続き』を私が望んでいる。生きていることも、死ぬこともどうでもいいが、『続き』だけは私無くとも続いて……」
頭を振る。
それもどうでもいいことだ。
『スナーク』は勝手に生まれればいい。
生まれたからには助ける。
ただそれだけだ。そう、ただそれだけなのだ。今の己の中にあるのは。
「オオオオ――!!!」
狂ったように咆哮する『ザウルスマン』たち。そのどれもが『スナーク』に至る可能性を持っている。
誰も『スナーク』を認識できない。
虚構であるからだ。
一片の真実もないからだ。けれど、彼等の怒りは本物であった。誰もが否定できぬ虚構が上げる怒りの咆哮。
己の存在を疑うことを許さぬ絶え間ない燻り狂う怒りだけが、今此処にある真実であるというように、地下迷宮に響き渡るのだ――。
バルタン・ノーヴェ
POW アドリブ連携歓迎
作戦了解であります!
ヒーローズアースの平穏のために、参戦するであります!
ダストブロンクスに突入し、向かって来るザウルスマンにグレネードランチャーを向けるであります!
狭く限られた空間ゆえに、回避は困難デース!
「六式武装展開、闇の番!」
何が出るかはわからないランダムな特殊弾頭による爆撃を試みマース!
出てきたサムシングの効果で動けなくなっているところを、チェインハンマーやファルシオンで殴りつけて戦闘不能とさせていただきマショー!
HAHAHA!
……スナーク。
存在理由、生きた証を残したい、でありますかな。
……ならば、我輩たちが貴殿たちと戦ったという記憶を胸に刻んで行くであります。
ニューヨークの地下迷宮『ダストブロンクス』に怒りの咆哮が轟く。
それは狂ったような怒りであった。
制御の効かぬ怒りほど恐ろしいものはない。バイオモンスターたちは『ミストレス・バンダースナッチ』の放つ紫煙によって『スナーク』化している。
彼等は元は善良なるバイオモンスターだ。
その異形ゆえに他者からの視線を躱すように暗闇に閉ざされた地下下水道に身を隠していた。
「オオオオ――!!!」
だが、今は違う。
燻り狂うような怒りに身を任せ、破壊の限りを尽くそうとしている。
それが『スナーク』。虚構より生まれた超生物。
あるのは怒りのみ。
ゆえにバルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)は委細承知の上で『ダストブロンクス』の地下へと走り込む。
転移して間もないが、それでもバルタンは作戦を了解していた。
紫煙による『スナーク』化は、時間が立てばバイオモンスターたちの体から抜けていく。消耗させれば、それだけ早く『スナーク』化を解除できるはずだ。
「ヒーローズアースの平穏のために、参戦であります!」
構えたグレネードランチャーを向ける。
「六式武装展開、闇の番!」
きらめくユーベルコードは、暗闇に閉ざされた地下迷宮の中にあるからこそ真価を発揮する。
これだけ狭い地下下水道である。
放たれたグレネードランチャーの一撃は躱すことが難しいだろう。
さらに言えば、彼女の放ったグレネードランチャーは何が出るかわからないランダムな特殊弾頭による爆撃である。
バルタン自身も制御できないグレネードランチャーの弾頭。
その弾頭から飛び出したトリモチのネバネバが『ザウルスマン』たちを絡め取る。
どれだけ尻尾や爪で引き剥がそうとしても、トリモチ弾は粘ついて余計に体に絡みつくだろう。
「HAHAHA! 動けないでしょう! ワタシもトリモチ弾が出るとは思っていなかったデース!」
笑いながらバルタンはチェインハンマーで『ザウルスマン』の頭を揺らし、その意識を刈り取る。
殺しはしない。
彼等は元は善良なバイオモンスターなのだ。
時間が経てば元に戻るというのならば、このトリモチで拘束したまま紫煙が抜けるのを待つまで。
「……『スナーク』。存在理由、生きた証を遺した、でありますかな」
虚構だらけの存在。
誰も見たことのない本質無き怪物。
それが『スナーク』である。一片の真実もない。あるのは嘘に塗れた虚構としての存在のみ。
正しさがないからこそ、誰もが否定できない。
同時に肯定することもできない。
その存在は悲しみだけが連鎖するだけのものであったのかもしれない。ならば、とバルタンは答えを出すのだ。
「……ならば、我輩たちが貴殿たちと戦ったという記憶を胸に刻んで行くであります」
戦うことしか出来ないバトルサイボーグメイド。
それが己であるのならば、そうすることこそが、彼女にとって『スナーク』という虚構の存在に与えられる唯一の意味。
偽りだけの中に一滴の真実を加えることによって『スナーク』は超生物でもなければ、本質無き怪物でもなくなる。
だれの心にも『スナーク』が生まれるというのならば、今こそこの無限にわき続ける虚構に終止符を打つのは、『スナーク』を刈り取るハンターの存在なのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
儀水・芽亜
オウガ・フォーミュラも厄介な。サー・ジャバウォックが討滅されたときに、後追いで自殺でもすればよかったものを。
まあいいでしょう。まずはスナーク狩りです。
地下下水道網という直線が多い状況はむしろ有利。「環境耐性」をしっかりして、戦いに臨みましょう。
「全力魔法」夢の「属性攻撃」「精神攻撃」「蹂躙」「貫通攻撃」でナイトメアランページ。この狭い通路で避けられるものなら避けてご覧なさい。
反撃のスライディングは「受け流し」自分にダメージが来ないように。
それ以前に、前方のスナークを殲滅できればいいのですが。
殲滅が終わったら、「救助活動」で彼らを安全な場所へ運びましょう。
このままでスナーク化は解けるのでしたね。
生きるのに理由が必要であるのならば、死ぬのにも理由がまた必要である。
人の生命は絶えず前に進んでいく。
理由があるからではなく、それは抗いようのない時間の流れに押し流されるから。
しかし、オブリビオンは別である。
停滞した時、不変なる存在。
オブリビオンとは過去の化身であるがゆえに理由によって生かされる。その欲望の動機が根源となって世界の破滅を願う。
だが、オウガ・フォーミュラ『ミストレス・バンダースナッチ』にそれはない。
そもそも彼女の目的は猟書家『サー・ジャバウォック』ありきであった。
彼がいないのならば、彼女に生きる理由はなかった。
「オウガ・フォーミュラも厄介な。『サー・ジャバウォック』が討滅された時に、後追いで自殺でもすればよかったのもを」
儀水・芽亜(共に見る希望の夢・f35644)はそう思った。
生きる理由がないのならば死んでいるように生きているのと同じ。
だから、自分で自分を終わらせればよかったのだ。けれど、生きる理由と死ぬ理由が同じであった時、それを一緒くたに失ったものは進むことも戻ることもできない。
「まあいいでしょう。まずはスナーク狩りです」
ニューヨークの地下迷宮の『ダストブロンクス』。そこに蔓延るのは紫煙。
これがバイオモンスターたちを皆『スナーク』化した『ミストレス・バンダースナッチ』の力である。
善良なるバイオモンスターたちを殺すわけにはいかない。
『ザウルスマン』たちの咆哮が地下下水道に反響して、耳が痛いほどだった。
「オオオ――!!!」
ただの怒りしか感じられない。
虚構そのものなる『スナーク』。その誕生は無限に起こるものである。誰かの心に疑念が湧くだけで、そこに在るのが『スナーク』。
バイオモンスターたちの心に燻り狂う怒りは、その火種に過ぎなかったのだろう。
鱗で覆われた体躯が地下下水道を疾駆する。
「……駆け抜けなさい、ナイトメア!」
悪夢が疾走る。
それは地下下水道の直線上を利用したユーベルコードの煌き。
これだけ狭く、そして直線ばかりで構成されている地下下水道であればこそ、『ザウルスマン』たちは迫る来訪者ナイトメアを躱すことなどできないだろう。
消し飛ぶように『ザウルスマン』たちが吹き飛ばされ、地下下水道の壁面に叩きつけられる。
「……『スナーク』化……通常のオブリビオンよりも強化されているのは間違いないようですね」
芽亜は叩きつけられ意識を失った『ザウルスマン』たちを安全な場所まで運ぶ。
このまま彼等の意識を刈り取り、『スナーク』化をもたらしている紫煙が抜けるまで安置していれば、彼等は元のバイオモンスターに戻る。
これが『ミストレス・バンダースナッチ』の時間稼ぎなのかもしれない。
無辜なる人々を殺害することをためらう猟兵たちへの術策。
そうであったのかもしれないし、そうでなかったのかもしれない。
すでに彼女の目的は失われている。
「生きる理由もなく、さりとて死ぬ理由もない。空虚なる本質。それが『スナーク』であるというのなら、『ミストレス・バンダースナッチ』……」
芽亜は地下下水道を走る。まだ『スナーク』化されたバイオモンスターたちはあちこちから湧き上がっている。
進むことも戻ることもできない過去の化身。
そこに憐れみを覚えることもあるかもしれない。けれど、彼女が振りまく災厄は今という世界を滅ぼすには十分であった。
紫の煙が狂ったように地下下水道に満ちていく。
燻り狂う。
ただそれだけのために、この世界に存在している空っぽの理由が世界を滅ぼすのならば、その詩こそ響かせてはならないのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
勝守・利司郎
ま、虚構の存在って時点では同類か。オレだって、元はゲームキャラだったんだし(キマフュの元バーチャルキャラ)。
だから…スナークのことは忘れねぇよ。足掻いた存在だからな。
ここ、地下水道か…狭いなら、猟兵として未熟なオレでも何とかなる。
『鬱金香の葉』を散らして、式神使いで操って近づけぬように。しかも、UC使用してあるから、当たりゃスナークだけにダメージいくからな。
当たり前だ。バイオモンスターとって、スナークは『呪詛』や『悪意』に類いするものだからな。
闘気でオレの防御は行ってるが。まあ、近づかれたら『鬱金香覇気』で攻防兼ねた動きするか。具体的には、近接でのUC使用な!
虚構によって生み出された怪物。
それが『スナーク』である。彼等に真実は一欠片も存在しない。真実の存在しないものは知覚できない。
けれど、その虚構から生まれるものがある。
バーチャルキャラクターもまたそうであろう。けれど、彼等が生まれるのは常に『誰か』の存在が在るだろう。
意義がある。
存在している意味が。
けれど、『スナーク』にはそれがない。生まれるだけ生まれて、虚構のみで存在する本質無き怪物。
紫煙がニューヨークの地下下水道に満ちてバイオモンスターたちを『スナーク』化していく。
そこにあったのは怒りだけであった。
「オオオオ――!!!」
『ザウルスマン』となったバイオモンスターたちは咆哮を轟かせる。
この下水道において彼等の怒りだけが反響している。
彼等の怒りの矛先は猟兵である。己たちがなぜ存在しているのかもわからぬまま、ただ身を燻り狂うような怒りに翻弄されて走り出す。
その拳、尾の一撃は地下下水道を破壊しながら勝守・利司郎(元側近NPC・f36279)に迫る。
「ま、虚構の存在って時点では同類か」
己もまた元はゲームのキャラであった。
だからこそ、利司郎は彼等のことを忘れないと胸に刻む。
彼等の怒りは、誕生したことに対する虚構の怒りは足掻いた存在であるからだ。己もまたそうであったように。
地下下水道に黄色いチューリップの葉の形をした式神が撒かれる。
それらは壁のように迫る『ザウルスマン』たちの拳を受け止める。
破れるようにして式神たちが砕けていく。
けれど利司郎は慌てなかった。彼の瞳はユーベルコードに輝いている。
「オレのやり方、練り方でいくと…! 当たりゃ『スナーク』だけにダメージがいくんだよ」
それが花蝶神術:灰塵悪(オレリュウカイジンジュツ)であった。
練り上げた気を込められた式神たちに触れた『ザウルスマン』たちを、その黄色いチューリップの葉は引き裂く。
肉体を引き裂くのではなく、その身に宿した『スナーク』という虚構のみを切り裂く。
バイオモンスターたちは善良なる者たちだ。
彼等を殺すわけにはいかない。
「オオオ――!!!」
「怒っているのか。ひとかけらの怒りに身を任せているのか。なぜ己が生まれたのか、どうして己たちが存在しているのか、誰も教えてはくれないから」
『スナーク』は本質無き怪物。
生み出した『ミストレス・バンダースナッチ』ですら、その存在が何を為さしめるのかを示さなかった。
勝手に生まれればいい。
ただそれだけの理由で、無為に時間を潰すためだけに彼女は『スナーク』を生み出し続ける。
『スナーク』たちはゆえに怒る。
燻り狂う怒りだけが、彼等を破壊に走らせるのだ。
利司郎には忠義があった。
ゆえに今こうして己は存在できている。
「わからないから怒っているんだな。自分が存在してはいけないものだと理解できないままに、徒に誰かを傷つけ続けるしかない自分に、怒り狂っている」
ならば、その怒りは尤もなものであったことだろう。
ゆえに利司郎は己の練り上げた気を込めた黄金にも似た黄の輝きでもって『ザウルスマン』たちの体に満ちる『スナーク』化をもたらす紫煙をのみ吹き飛ばしていく。
それは燻り狂う怒りに対する手向けの花。
花弁舞うことはないが、それでも彼の放つユーベルコードの煌きは、花弁と共に舞う。
『ザウルスマン』たちは尽くが倒れ伏す。
一人立つ利司郎は思いを言葉にして告げる。
「だから……『スナーク』のことは忘れねぇよ――」
大成功
🔵🔵🔵
夜刀神・鏡介
真実の受け止め方は人それぞれ、誰かにとっての真実も別の誰かにとっては偽りかもしれない
真実と虚構の境界は何処にあるのやら
まあ、さておき……今はやるべき事をやるとしよう
迷路のような空間だ。不意打ちや、複数の敵から囲まれないように警戒しつつ利剣を抜いて進んでいこう
致命傷を与えずに無力化する必要があるので、敵と戦闘になっても自分からは仕掛けない
敵の攻撃手段は格闘と尻尾。尻尾以外は刀の方が射程は僅かに上。確実に防いで隙を作ったならば、澪式・壱の型【落花】
一発殴って動きを止めた所で更にもう一発。最低限の攻撃で意識を刈り取って倒していこう
だが、この方法で数を倒すには時間がかかる。無視できる所は無視していくぞ
真実はなんであろうか。
その答えを見出すことは人にとって生涯をかけるに相応しいものであったのかもしれない。同時に、それが泡沫のごとく儚い真理であることもまた物事の側面から窺い知れることであったかもしれない。
「真実の受け止め方は人それぞれ。誰かにとっての真実も別の誰かにとっては偽りかもしれない」
夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)は、『スナーク』という虚構だけの存在を考える。
正義もまた不変ではない。
相対するものにとって悪となることもあるだろう。
人はそれゆえに懊悩し続けなければならない。
ニューヨークの地下下水道、迷宮と化した『ダストブロンクス』におりたった鏡介は反響する咆哮を聞く。
それはバイオモンスターが紫煙によって『スナーク』化した『ザウルスマン』の咆哮である。
怒りに満ちた咆哮がこだまのように反響してくる。
「真実と虚構の境界は何処にあるのやら。まあ、さておき……今はやるべきことをしよう」
剣を抜いて鏡介は進む。
敵は善良なるバイオモンスターがへんじた『ザウルスマン』だ。
彼等を傷つけることはできない。
ならばこそ、鏡介は走る。
彼等を傷つけず、またその怒りの咆哮で身を滅ぼさせはしないと走るのだ。
「オオオ――!!!」
暗闇の中から迫る『ザウルスマン』の拳を剣の柄で受けながら、煌めくはユーベルコードの輝き。
閃光のように走り抜ける鏡介の打撃は『ザウルスマン』の顎を打ち、その脳を揺らす。
「止まれ――澪式・壱の型【落花】(レイシキ・イチノカタ・ラッカ)」
迫る尾の一撃を鞘で受けとめ、弾き飛ばす。
ぐるりと体が入れ替わるようにして『ザウルスマン』の正面に入り込めば鏡介の拳が彼等の顎を打つ。
「『スナーク』化か……確かに厄介だな……」
通常ならば一撃で事足りたことだろう。
だが、紫煙に寄って『スナーク』と化した『ザウルスマン』たちの意識を刈り取ることは難しい。
それに尾の一撃こそが鏡介にとっては脅威であった。
刀よりも射程が長く、自在にうねる尾。
それを体の一部として扱う彼等の動きはこの狭い地下下水道においては無類の強さを誇るだろう。
考えられている。
『ミストレス・バンダースナッチ』は、無目的に『スナーク』を生み出してはいるが、『サー・ジャバウォック』の『続き』をしようとしている。
無為なる時間つぶしであったのかもしれないが、それでも世界を脅威に晒そうとしていることには変わりない。
「……多くに構っている時間はないな」
鏡介は闇の底からは現れる『ザウルスマン』たちの眼光を見やり、呟く。
ここで徒に時間を浪費することこそ、『ミストレス・バンダースナッチ』を取り逃がす可能性を大きくする。
ならばこそ、鏡介は彼等を疾く無力化し、先を急がねばならない。
必ず『スナーク』の無限誕生を止める。
虚構が真実を覆い隠す時、人の疑心は必ず『黒き悪意』を膨れ上がらせ世界を覆い隠すであろうから――。
大成功
🔵🔵🔵
ドウジ・ユークレナ
ここがヒーローズアースでありますか。
故郷に似て遠い世界でありますな。
ところで、サー・ジャバウォックとかスナークとかなんでありますか?
(ド新人な蜘蛛童/ぁ)
今一理解ができないでありますが、やればいいことは理解できたのであります。
ザウルスマンvs蜘蛛童
なにこのB級映画感あふれる言霊。
と、とりあえず気にしない方向で行くでありますよ。
イクトミ・クロークを発動であります。
姿と『存在感』を消して、こっそりのっそり密かに近づいて、蜘蛛の糸を射出してザウルスマンを『捕縛』であります。
蜘蛛の糸に捕まってもがいているいるところを、独鈷杵で殴って気絶させて無力化であります。
地下水道で今回も飛空艇使えない悲しみ(涙)
ヒーローズアース、ニューヨークの地下下水道『ダストブロンクス』におりたったドウジ・ユークレナ(風渡り人・f36443)は、その故郷の世界とは似て非なるものを知り、どこか懐かしいものを感じていたかも知れない。
「ここがヒーローズアースでありますか。故郷に似て遠い世界でありますな」
彼の故郷たる世界にもニューヨークは存在している。
地下下水道迷宮『ダストブロンクス』が存在しているかどうかはわからないが、それでも似て非なるものであるという印象を受けた。
しかし、それ以上に彼が気になっているのはグリモアベースで聞いた『サー・ジャバウォック』だとか『スナーク』だとかの単語である。
彼は新人猟兵であったから、これまでの猟兵たちの戦いを追う余裕がなかったのだろう。
『サー・ジャバウォック』とは猟書家と呼ばれる『オブリビオン・フォーミュラ』亡き世界の侵略を狙う存在である。
猟書家を統べていた『書架の王』をのぞけば、最強と呼ばれた猟書家『サー・ジャバウォック』が望んでいたのは本質無き怪物『スナーク』の誕生。
虚構だけで構成されているがゆえに、誰もが疑念を抱く存在。
そして、虚構だけであるがゆえに誰も否定ができない。一片の真実がないものを否定しようがないように、『スナーク』の存在もまた否定しようがないのである。
そんな本質無き怪物の誕生は『ミストレス・バンダースナッチ』に引き継がれた。
「今一理解できないでありますが、やればいいことは理解できたのであります」
むん、とドウジは地下下水道の中を多脚でもって走る。
彼は蜘蛛童である。こんな狭い場所を駆け抜けるには、その体躯がもっとも活かされることだろう。
それに謂わばこの戦いは『ザウルスマンVS蜘蛛童』である。
なんともB級映画感溢れる言霊であろうか。ドウジにとって、それは娯楽の一つに過ぎないのかもしれないが、なんとも言えない気持ちになったのだろう。
気持ちを切り替えて彼は地下下水道を蜘蛛の巣で覆う。
「怪盗の醍醐味の一つはこの潜入の際のドキドキ感であります。一度体験すると病みつきになること間違いなしであります」
イクトミ・クローク。
それが彼のユーベルコードである。
蜘蛛の巣が張り巡らされ、この狭い空間である地下下水道を怒りの咆哮でもって満たす『ザウルスマン』たちは次々に絡め取られていくだろう。
「オオオ――!!!!」
苛立ちもなにもない。あるのは怒りだけ。そんな咆哮を蜘蛛の巣で絡め取る。ドウジにとって、それは容易いことであっただろう。
怒りに塗れた『ザウルスマン』たちに、この暗闇の中にある蜘蛛の巣を認識すること事態が難しい。
さらにこっそりとドウジは彼等の背後に回り込み、蜘蛛の糸をさらに放って抵抗する力を奪って、独鈷杵でもって殴りつけ無力化する。
見事なスニーキングである。
彼にとってこの限定的な空間こそが己の特性を活かす最大の場であったことだろう。
しかし、ドウジの顔はあまり優れない。
見事な戦い方であったが、彼の信条とはどうにもあわないのだ。彼は蜘蛛童であるが、同時に怪盗にも憧れる者でもある。
空の世界に浮かぶ飛空艇。
そこからさっそうと盗みを働いて立ち去る怪盗。
そういったものに彼は憧れているのである。だからこそ、今回のような限定的な空間は、どうにも彼の信条と噛み合わないのだ。
「今回も飛空艇が使えない悲しみ……仕方ないのであります」
こればかりはどうしようもないことだ。
やるべきことはやる。それが猟兵としての役目であり、責務であるのならば、今は己の憧れも信条も隅においておく。
いつの日にか大空を飛空艇で飛び回る。
そんな日を夢見ながら、それを壊そうとする猟書家の企みをはばむのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
大町・詩乃
なげやりな親から生み出された境遇には同情しますが、だからといって人を傷つけて良い道理は有りません。
私の記憶の中で眠りにつきなさいスナーク。
UC:神事起工にて状態異常力:マヒ攻撃強化。
ザウルスマンさん達と遭遇すれば、念動力・範囲攻撃で纏めて捕縛し、UC効果&マヒの属性攻撃・全力魔法・高速詠唱・範囲攻撃で傷つけずに無力化します。
攻撃された場合は結界術・高速詠唱で防御壁を展開したり、オーラ防御を纏った天耀鏡で盾受け&受け流しで勢いをいなします。
無力化したザウルスマンさん達は破魔・浄化で紫煙の影響を消し去ってスナーク化を解除します。
やっと巡ってきた平穏を取り戻す機会を無駄にはしません。
と先に進みます。
『ミストレス・バンダースナッチ』は無目的な猟書家であった。
彼女の存在する理由は『サー・ジャバウォック』ありきであった。彼が存在することが彼女の存在する理由でも在ったのだ。
だからこそ、彼女は投げやりに行動する。
『スナーク』の誕生すら、勝手に生まれればいいとさえ言い放った。
手は貸す。
しかし、その行く末はどうなってもいいのだと言うように散発的に、漫然としたやり場のないものばかりであった。
「なげやりな親から生み出された境遇には同情しますが」
大町・詩乃(阿斯訶備媛・f17458)は、ニューヨークの地下下水道迷宮『ダストブロンクス』を進む。
彼女の視線が暗闇の中で煌めく。
そこにあったのは確かな怒りと悲しみであったのかもしれない。
「だからといって人を傷つけて善い道理はありません」
迫る『ザウルスマン』たちは全て『スナーク』化している。
紫煙によってバイオモンスターたちが変えられている存在だ。彼等は元は善良なるバイオモンスターであればこそ、詩乃の激情は心の中で燃え上がっていく。
どれだけ怒りに満ちた咆哮でおのれの肌を震わせるのだとしても。
虚構から生み出された本質無き怪物であったのだとしても。
それでも彼女は『スナーク』の存在を赦すことはできなかった。
「私の記憶の中で眠りにつきなさ『スナーク』
迫る『ザウルスマン』の拳を交わし、おのれの念動力の発露でもって彼等の動きを止める。
それは彼女自身の神力の発露であり、天地に宿りし力でもあった。
そして、人々の願いと想いでもああった。
神事起工(シンジキコウ)、これより果たすのは神としての務めである。
煌めくユーベルコードが地下下水道の暗闇を照らす。
結界術が展開され、彼女に襲いかかる『ザウルスマン』たちを壁に押し付け動きを止める。
「オオオ――!!!」
彼等の怒りは『スナーク』化することによって、さらなる凶悪化を見せている。
どれだけ彼等が善良なるバイオモンスターであったのだとしても、自分たちが生まれた意味を知るからこそ、怒りは一抹でも存在している。
それを増幅するような『スナーク』の力は、まさしく自然から人々の環境への仕打ちに対する抗議であったのかもしれない。
「けれど、それはあなた達の怒りではないのです」
身を焦がすような怒り。
その咆哮が下水道に満ちる度に詩乃の心には悲しみが満ちるだろう。
彼等の怒りは、彼等の善良なる意志でもって封じ込められていたものだ。誰にも害を為さぬようにと、献身でもって封ぜられていた怒り。
ならばこそ、詩乃は『スナーク』こそが、この怒りの本質を理解しない虚構であると知る。
「やっと巡ってきた平穏を取り戻す機会を無駄にはしません」
煌めくユーベルコードの輝きは、暗闇を照らす。
『ザウルスマン』たち足らしめている『スナーク』は時間が経てば抜けていく。詩乃は結界術でもって壁に抑え込んだ『ザウルスマン』たちに頭を下げ、『ミストレス・バンダースナッチ』を追う。
心苦しさがないわけではない。
けれど、いつだってそうだ。
人を傷つけて良い理由など何処にもない。
誰もが平穏を求めている。しかし、その平穏が誰かの領域を脅かすものと見えてしまうから人は争ってしまう。
ヒーローズアースはいつだって戦いの繰り返しの歴史が紡がれてきた。
それは皆が力を持つからだ。
ヒーローもヴィランも神々ですらそうだ。力あふれる世界であるからこそ、人の心のまばゆさを知る者は、それを示さなければならない。
たとえ、その輝きが暗い影を落とすのだとしても――。
大成功
🔵🔵🔵
ジャスパー・ドゥルジー
めんどくせえ事考えてる女だねぇ
とはいえ女はめんどくせぇくらいが可愛いよな
…なんて本人に言ったら手酷く痛めつけてくれねーかな
あの調子だと無理か
さァて、まずはひと仕事
【ゲヘナの紅】で炎を纏いながら肉弾戦を仕掛ける
致命傷は避けたいが半端に傷つけると強くなっちまうのが厄介だな
最初は弱めの火力で奴らの限界を探りながら倒していこう
こっちの負傷は無敵の【激痛耐性】でスルーよ
もとい快感ですらあるってモンだし
奴らの体力の限界が探れてきたら
残りのスナークは時間をかけず一気に倒していくぜ
可能ならあんま苦しませたくねぇっつーのもあるし
バンダースナッチかァ
やってる事は非道だが
どーも憎みきれねえよな
生きることも、死ぬことも億劫である。
それが『ミストレス・バンダースナッチ』という猟書家である。
それもそうなのかもしれない。彼女の生きる理由とはすなわち『サー・ジャバウォック』であったのだから。
全てであったから、それを失った今、彼女は生きる理由を失っている。
これまでのヒーローズアースにおける猟書家の事件を見ても判る。
『スナーク』の誕生だけを目的としていた。
生まれた後のことは何もしようとしていない。ただ、生み出すためだけに虚構をたぐり、人々の疑心や悪意からのみ『スナーク』を生み出そうとしていた。
生まれる手は貸す。
けれど、その後のことは知らない。
「めんどくせえこと考えてる女だねぇ」
ジャスパー・ドゥルジー("D"RIVE・f20695)は息を吐き出す。『ミストレス・バンダースナッチ』という猟書家の存在は、ただ其処に在るだけだったのだ。
生きるも死ぬも億劫。
だから無為に時間を潰す。無目的だからこそ無軌道に世界を壊す。そんな存在だ。
だが、ジャスパーにとって、それが可愛いと思ってしまうのもまた真実であった。
女はめんどくせぇくらいが可愛いと本人に言ったら、手酷く痛めつけてくれるかもしれない。
「あの調子だとそれも無理かもな」
期待はしている。
痛みを愛し痛みを欲する倒錯者であるからこそ、彼は底抜けに強欲なのである。おのれ以外が傷つくことを許さない。傷があるのならば、尽くを癒やす。
そのために世界を走るのだ。
超高熱が身を覆う。
暗闇の中に響く怒り。燻り狂う咆哮が響き渡る。
それは善良なるバイオモンスターを『スナーク』化することによって生まれた『ザウルスマン』たちの怒りの咆哮であった。
その怒りに本質がないことをジャスパーは理解しただろう。
怒りを増幅させる『スナーク』あれど、その大元になったバイオモンスターたちはすでに怒りを飲み込んでいる。
如何に異形なる体躯を持つのだとしても。
その異形なる生命をこそおのれであると認識していた彼等の怒りを『スナーク』は理解しない。全てが虚構であるから。
「あんたも、あんたもあんたも、全部燃やし尽くしてやる。動くんじゃねえ」
超高熱と覆った肉体のまま『ザウルスマン』たちの鱗を焼く。
殺すことはできない。
致命傷は与えられない。だからこそ、半端に傷をつければ『ザウルスマン』たちは強化されて、その拳をジャスパーに見舞う。
打ち込まれた拳は頬を強く打つ。
痛みが走る。だが、それは彼にとっては愛しき痛みであった。快感であるとさえ言ってもいいだろう。
「オオオ――!!!!」
本質無き燻り狂う怒り。
それを真正面から受け止めながらジャスパーは噴出する超高熱でもって、『ザウルスマン』たちの生命力を吸収していく。
彼等の限界は見えた。
どれだけ途方も無い虚構が目の前に横たわっているのだとしても、ジャスパーは笑う。
怒りを受けて笑う。
今目の前にいるのは強欲な悪魔だ。その怒りも全て飲み干す。痛みも、狂ったような激情も、何もかも飲み干す。
そのために煌めくユーベルコードは地獄の紅に染まる。
煌々と立ち上る炎は『ザウルスマン』たちを飲み込み、地下下水道に沈む。
殺してはいない。ギリギリのところで止めている。周囲に山積した『ザウルスマン』たちを背にジャスパーは歩む。
「『バンダースナッチ』かァ。やってることは非道だが、どーも」
憎みきれねぇよな、と呟く声は地下下水道の暗闇に溶けて消えていく。
愛ゆえに無目的に迷うのならば、己のゲヘナの紅(ゲヘナ・カーマイン)を標にすればいいと、その瞳は輝くのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
…元は善良なバイオモンスターだから穏便に無力化を済ませたいところか…時間経過でスナーク化が解けるのは幸いだね…
…幸いにも分断するには困らない地形だし…頑張るかな…
…戦術構築:奸計領域を使用…遅発連動術式【クロノス】や術式組紐【アリアドネ】、現影投射術式【ファンタズマゴリア】を用いて罠を仕掛けながら戦うとしよう…
…ファンタズマゴリアの幻影を駆使してザウルスマン達を分断…
…【クロノス】で踏んだら昏睡や麻痺する罠や【アリアドネ】で簀巻きにされる罠等々を各地に仕掛けて逃げながらこれらの罠に引っかかるように誘導…無力化するよ…
…あとは放置すればそのうちスナークが抜ける…とは言え大元を断たないと、か…
怒りはいつだって凄まじい力をもたらす。
しかし、それは瞬発的な力であることは言うまでもない。『ザウルスマン』たちの怒りは善良なるバイオモンスターたちが本質的に持っていた怒りの種火が源であった。
なぜ己たちが生まれたのだという怒り。
他者とは違う異形。
それによる起こる迫害。
彼等は確かに善良であった。その怒りを誰かに向けることはなかったのだ。
そして、同時に誰かのためにこそ戦う者達であった。
その善良なる怒りの種火すら燻り狂う怒りが飲み込んでいく。
『スナーク』の紫煙が満ちる『ダストブロンクス』にとって、それは致命的な所業であっったことだろう。
『ミストレス・バンダースナッチ』は無目的な猟書家であったが、彼女の為す所業の全ては『スナーク』誕生のために布石ばかりであったのだ。
時に恐怖で、時に疑心で。
「……時間経過で『スナーク』化が解けるのは幸いだね……」
メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は、『ミストレス・バンダースナッチ』の能力が閉鎖空間でこそ驚異的な力を持つことを知る。
この地下迷宮である地下下水道は完全な密封状態ではない。
もしも、『ミストレス・バンダースナッチ』が完全なる密封空間を得たのならば、『スナーク』化の被害は此の比ではないことは想像に固くはない。
「……幸いに分断するには困らない地形だし……がんばるかな……」
戦術構築:奸計領域(ウェルカム・キルゾーン)によってメンカルは遅発連動術式『クロノス』と術式組紐『アリアドネ』を張り巡らせ、現影投射術式『ファンタズマゴリア』を発動させる。
己の幻影でもって『ザウルスマン』たちを誘導し、次々に数を減らしていく。
「オオオ――!!!」
怒りの咆哮がたちどころに遠ざかっていく。
あの数である。彼等を一度に相手にするには『スナーク』化は強力すぎる力だ。数と質が合わさった時、猟兵であってもこれを止めるには骨が折れる。
だからこそ、メンカルは幻影でもって彼等を分断する。
「……これが効果的か」
遅発連動術式『クロノス』の魔法陣を踏んだ『ザウルスマン』の体が電流が流れたように体をしびれさせる。
ただの術式であったのならば、彼等は構わず進んだだろう。
けれど、メンカルのユーベルコードで通常の三倍にまで効果を跳ね上げた術式は『スナーク』化した『ザウルスマン』であってもしびれさせ、昏睡させる。
それほどまでにこの状況とメンカルのユーベルコードは噛み合っていた。
地形を利用して十全以上の力を発揮するのは『ミストレス・バンダースナッチ』だけではない。
猟兵であるメンカルであっても、この地下迷宮の立地は戦術に組み込むのは容易であったのだ。
「……無力化の後は、放置しておけばいい……」
そのうちに『ザウルスマン』の『スナーク』化は抜けて元の善良なるバイオモンスターに戻るだろう。
しかし、大本を絶たないことには、この戦いは終わらない。
「……此処はしばらく保つ……後は『ミストレス・バンダースナッチ』……何処に逃げる……?」
ヒーローズアースを狙う猟書家たちの侵攻こそ止めなければ、『スナーク』の無限誕生は終わらない。
いくら無目的な『ミストレス・バンダースナッチ』であったとしても、これを止めなければ人々の心を蝕むのは疑心と悪意。
人の心にそれが一片とてないとは言わない。
けれど、それを燻り狂わせる『スナーク』の存在は、世界を破壊することに繋がるのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
佐伯・晶
違いは色々あるけれど
UDCアースに似た世界だからね
出来る事があるならやっておきたいね
何もかもが虚構の怪物
結局何がスナークかの定義が無いなら
どうやってスナーク至ったと言えるのかな
というか生きる意味が無いと自分で言うのなら
もう少し周囲に迷惑の無い行動をして欲しかったよ
猟書家もオブビリオンなら
生について問うても意味の無い事なのかもしれないけど
ともあれこの状況は何とかしないといけないし
相手を傷つけずに無力化するというのは
邪神の権能は適しているからね
静寂領域で金縛りにして動けない様にしていくよ
スライディングキックなら近付かないといけないからね
周囲に神気を漂わせて防御に使おう
悪いけど暫くじっとしておいてね
数多ある世界。
UDCアースとヒーローズアースは似て非なる世界であった。
たどった歴史も似通っていたのかも知れないし、文化も似通っていたかもしれない。けれど、それでも違う世界なのだ。
己の世界であったUDCアースとの違いを感じながらも佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は己が走らぬ理由を見つけるほうが困難であると感じたことだろう。
ニューヨークの地下下水道『ダストブロンクス』に満ちる燻り狂う怒り。
善良なるバイオモンスターたちを『スナーク』化させた『ザウルスマン』たち。彼等の怒りは種火でしかなかった。
しかし、彼等の怒りを燃え上がらせるのは『スナーク』化である。
虚構だけの存在。
ひとかけらの真実も存在しない存在。
それを存在と呼ぶことが出来るだろうか。
「何もかもが虚構の怪物。結局何が『スナーク』かの定義がないなら、どうやって『スナーク』に至ったといえるのかな」
迫る『ザウルスマン』たちの咆哮を聞き、晶は静寂領域(サイレント・スフィア)を展開する。
それは戦場を神域に似た環境に変化させ、虚空より森羅万象に停滞をもたらす神気を放つユーベルコード。
この神気に触れたものは全てが停滞する。
『ザウルスマン』たちの燻り狂う怒りも関係ない。
停止した『ザウルスマン』たちを横目に晶は地下下水道を進む。
「というか生きる意味が無いと自分で言うのなら、もう少し周囲に迷惑の無い行動をしてほしかったよ」
そう呟く。
けれど、それが無意味な言葉であることを晶は知っっている。
猟書家もオブリビオンならば生について問うこと事態がナンセンスだ。
彼等は停滞した時間をこそ求める。
それが世界の破滅に繋がるからこそ、己たちが要るのだ。猟兵という世界の破滅を防ぐ存在が。
猟兵とオブリビオンは互いに滅ぼし合う関係でしかない。
『ミストレス・バンダースナッチ』がどれだけ無目的に『スナーク』を誕生させるのだとしても、生きる意味がなく、そして死ぬ理由を探すことすら億劫であったのあとしても。
そこに同情は介在してはならないのかもしれない。
彼女の存在は必ず世界を破滅に導く。
無目的であっても、関係ないのだ。
神気によって固定された『ザウルスマン』たちの燻り狂う怒りもそうだ。
どれだけ怒りをもつのだとしても、種火のような怒りをバイオモンスターたちから汲み取って燃やすのだとしても、世界を壊すには至らない。
至らせてはならないのだ。
「悪いけど、しばらくじっとしておいてね」
『スナーク』化の紫煙は時間が経てばバイオモンスターたちから抜けていくだろう。
そうなれば、彼等は元の善良なるバイオモンスターに戻る。
彼等に破壊をさせてはならない。
晶は地下下水道の暗闇から襲いかかる『ザウルスマン』たちを尽く神気で固定しながら歩み続ける。
「君たちの世界は、君たちがまどろんでいる間に救ってみせるよ」
固定された『ザウルスマン』たちの瞳を見る。
怒り狂う彼等の『スナーク』は燻り狂う存在そのものであったことだろう。
誰もが『スナーク』を否定できない。
けれど、肯定することもまたできないのだ。
本質無き怪物であるがために――。
大成功
🔵🔵🔵
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友
第二『静かなる者』霊力使いの武士
一人称:私 冷静沈着
武器:白雪林
陰海月に騎乗しまして、スライディング対策を。回避は任せましたよ。
さて、とり憑く者のみを…ということですから。私だけが使える破魔を利用したこのUC【四更・林】にて攻撃を。
ここは狭いのですから、この矢の群れは回避困難どころか、不可に近いでしょうからね。
ああ、悪霊は忘れない。あなた方と戦ったことを忘れない。
あなた方は、たしかにここにいたのですよ。
※
陰海月、狭いけれどぷかぷか浮かんでる。ぷきゅー。
ニューヨークの地下下水道『ダストブロンクス』をふよふよと進むのは『陰海月』であった。
その巨大クラゲの巨体の上に乗るのは馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)。四柱たる一柱『静かなる者』であった。
この広大な『ダストブロンクス』において警戒しなければならないのは『スナーク』化した『ザウルスマン』たちであった。
彼等は下水満ちる道から飛び出し、己たちの敵である猟兵を狙うだろう。
それを警戒して『陰海月』の上に騎乗して暗闇の中を進むのだ。
「さて、彼等に取り憑く者のみを……ということですから」
そう、『ザウルスマン』たちは『スナーク』化した善良なるバイオモンスターたちである。
彼等を殺してはならない。
「オオオ――!!!」
汚水の中から飛び出してくる『ザウルスマン』たちの瞳は燻り狂う怒りがあった。
それは確かに種火としてバイオモンスターたちの中にあったものであろう。
なぜ己たちが生まれたのかという命題。
環境の汚染による結果か、それとも度重なる狂気の実験の果か。
そのどれであったとしても、彼等は怒りを抱える者たちである。生命ある者に怒りなき者はいないだろう。
怒りは生きる上で必要不可欠な感情であったのかもしれない。
だからこそ、彼等は善良であったのだ。
誰かを憎むわけでもなく、かといって己の生まれを嘆くでもなく。
それらを抱えたまま生きようとした善良たるバイオモンスターたちであった。だからこそ、殺してはならない。
「我が梓奥武の力よ、ここに」
瞳がユーベルコードに煌めく。
破魔の祈りによって、四更・林(シコウ・リン)は『静かなる者』の瞳を介在し、『ザウルスマン』たちを『スナーク』たらしめる紫煙を捉える。
白い雪のような長弓より放たれる呪詛を弾く霊力の矢が狭い地下下水道に走る。
迫る『ザウルスマン』たちを 貫く。
回避する暇すら与えない霊力矢の雨は、彼等を優しく貫き、その『スナーク』化の紫煙を貫く。
「ああ、悪霊は忘れない。あなた方と戦ったことを忘れない」
彼等の怒りは己たちの存在の意義を問うものであった。
なぜ生まれたのか。
なぜ怒りがあるのか。
生まれた意味を問いかける言葉は、誰も答えを出すことはできない。代わりに答えを用意することは誰にもできないのだ。
自分で見出すしかないのだ。
生まれた意味は。
ならばこそ、『静かなる者』は告げるのだ。
「あなた方は、たしかに此処にいたのですよ」
ただそれだけ。
確かに出せる答えが其処に在る。
生まれた意味を問いかけ続けるのが、生命在る者の命題。ゆえに、『静かなる者』は覚えておくと言ったのだ。
本質無き怪物。
それが『スナーク』である。
誰の隣にも、誰かの涙のひとしずくにも、そして、誰かの怒りの中にも燻り狂う『スナーク』はあるのだと。
ぷかりと浮かぶ『陰海月』の上から『静かなる者』は告げるのだ。
溢れる怒りは、今も燻り狂う。
しかし、忘れられることもない。
此処にあった善良たるバイオモンスターたちの怒りをこそ、知る。
彼等の世界に問いかける言葉こそ、己たちが汲み取らねばならない。『スナーク』、無辜なる怒りを受け止め、むなしき虚構を生み出す『ミストレス・バンダースナッチ』を追う――。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『狂智のリースフェスト』
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POW : 残骸の再利用
全身を【繋ぎ合わせた蠢く死体 】で覆い、自身の【犠牲にした命の数】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD : 簡単な処方
【強力な催眠ガス 】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全対象を眠らせる。また、睡眠中の対象は負傷が回復する。
WIZ : 命への冒涜
自身の創造物に生命を与える。身長・繁殖力・硬度・寿命・筋力・知性のどれか一種を「人間以上」にできる。
イラスト:すねいる
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「ヴィヴ・クロックロック」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「どうやら君が補足されたようだね。私の魔術であっても、彼等は私達を見つけるだろう。すまない。私の力不足だ」
そこはヒーローズアース、『センターオブジアース』。
未だ神ありき場所であり、煌々と燃える神代の不死の怪物ありき地球の核。
『ミストレス・バンダースナッチ』は『ダストブロンクス』から其処に転移していた。
逃げる意味も、生きる意味も、死ぬ意味も彼女にはもはやない。
だが、『続き』をしようという時間つぶしだけは止まらない。止められない。
『スナーク』は生まれ続ける。
誰しもの心に『黒き悪意』がある限り、それは止めようのないことであったからだ。
『スナーク』に形を与えるのは、いつだって他の存在である。
虚構から真実が生まれることはないが、真実から虚構は生まれる。
本質無き怪物『スナーク』は本来であれば、虚構から生み出される無から有を生み出されるもの。
それを為さしめることができたのは唯一『サー・ジャバウォック』のみ。
「いいさ。もとより無為の時間つぶしだ。お前はどうする」
『ミストレス・バンダースナッチ』は『狂智のリースフェスト』に告げる。
彼女は神の一柱にして研究者でもあった。
生命というものを研究し、究極の生物を生み出すためだけに『スナーク』を選んだ。『ミストレス・バンダースナッチ』に協力するのも、そのためだ。
これまで彼女が生み出してきた怪物は、尽くが殺されてきた。
新たな生命を生み出すためには、旧き生命は淘汰されなければならない。
人はこのヒーローズアースにおいて最も栄えた生命であった。
だから滅ぼすと決めたのだ。
人類という失敗作は必要ない。己が求める究極の生命ではなかったからだ。
「……この研究所を捨てるつもりであったが、それもどうやら叶わないようだ。君の『続き』が見れないことを私は残念に思うけれど」
人類の一掃をこれまで歴史の中で幾度となく阻まれてきた。
己の生み出した怪物は尽く人類に殺された。
無為だというのならば、己の行いこそが無為だった。
しかし、『狂智のリースフェスト』は、『スナーク』にこそ究極を見る。
あの燻り狂うかのような生まれ出ることへの渇望。
それこそが彼女の求めた究極の生物であったからだ。
「さあ、行き給え『ミストレス・バンダースナッチ』。君さえいれば、私の研究は成就する。あの『不敗を象る名』を持つ存在であってもいつか必ず排斥できるはずなのだ、『スナーク』は。だから、『続き』は頼んだよ」
「どうでもいいことだ。頼まれたとて、私ができるのはそれだけだからだ。期待はしてくれるな。後は『スナーク』が勝手にやってくれる」
「そこは嘘でもいいから任せておけと言うところだよ」
『狂智のリースフェスト』は苦笑いしながら、転移してくる猟兵たちを見据え、そして背後で『ミストレス・バンダースナッチ』を何処かへ転移させる。
「来たまえ。たとえ、骸の月が沈黙したのだとしても『スナーク』が満ちれば世界は終わる。人類は滅びる。その後にこそ、新たなる生命の跋扈が始まる。私がそれを見れないのは残念だが。まあ、仕方ない。君らの一人をより多く殺す。何、簡単で単純な理由付けさ」
『センターオブジアース』にて狂気の研究者であり、神の一柱そのものたる『狂智のリースフェスト』が己自身をも『スナーク』化させ、猟兵達の行く手をはばむのであった――。
メンカル・プルモーサ
あれは…A&Wの冒険者が一度は言ってみたい台詞No1の「ここは俺に任せて先に行け」じゃないか…なんと羨ま…じゃない…覚悟の決まったことで…
…足止めは良い覚悟だけど…こちらもはいそうですかと付き合うわけには行かない…
…その創造物に生命を与えるUCは厄介だけど…私も似たようなものを知っているからね…【崩壊せし邪悪なる符号】で●命への冒涜で生命を得た創造物を解除…元に戻してしまうよ…
…そして術式組紐【アリアドネ】でリースフェストを拘束…
…術式装填銃【アヌエヌエ】で炸裂弾を放ってダメージを与えよう…
…どこに転移させた…と言うのは聞くだけ無駄だろうね…
…ここは続の猟兵に任せて転移の痕跡を辿るとするか…
「あれは……」
ニューヨークの地下下水道『ダストブロンクス』から消えた『ミストレス・バンダースナッチ』を追った猟兵、メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)が見たのは、彼女を逃がす神の一柱『狂智のリースフェスト』であった。
彼女の言葉にメンカルは驚愕する。
そのセリフはアックス&ウィザーズ世界の冒険者が一度は言ってみたい台詞No1の『ここは俺に任せて先に行け』と同じであった。
メンカルは羨ましかった。
冗談みたいだけれど、羨ましかった。
じゃない。覚悟の決まった『狂智のリースフェスト』のそばから生み出されるのは、彼女が研究し続けた人類に変わる『スナーク』という究極の生物であった。
「……足止めは良い覚悟だけど……こちらもはいそうですかと付き合うわけには行かない……」
「いいや、足止めには付き合ってもらうよ。なにせ、彼女さえ居れば『スナーク』は無限に生まれ出る。そうすれば、いつか必ず本物に至るはずだからね」
ならばこそ、『狂智のリースフェスト』は『ミストレス・バンダースナッチ』に協力するのだろう。
自分が人類に変わる究極の生物を生み出さなくてもいい。
『スナーク』が生み出され、人類を地上から一掃できればよかったのだから。過程はいらない。結果のみが必要だったのだ。
「さあ、行き給え。敵は目の前の猟兵だ」
己自身も『スナーク』化させた『狂智のリースフェスト』がユーベルコードに寄って、これまで己が生み出してきた怪物をけしかける。
人類の歴史上、幾度となく放たれてきた怪物。
人類を鏖殺するためだけに生み出された怪物たち。しかし、その尽くが滅ぼされている。
ただ一人によって。
「……その創造物に生命を与えるユーベルコードは厄介だけど……」
しかし、メンカルは知っている。
同じユーベルコードを。ゆえに、彼女の瞳がユーベルコードに輝く。放たれる魔術は情報を分解する力を有した崩壊せし邪悪なる符号(ユーベルコード・ディスインテグレイト)。
「邪なる力よ、解れ、壊れよ。汝は雲散、汝は霧消。魔女が望むは乱れ散じて潰えし理」
彼女の魔術は、創造された生物を解きほぐすように分解する。
「私の創造物を分解するか……だが! 私自身も『スナーク』化しているのだよ!」
迫る『狂智のリースフェスト』が手にした三節棍でもってメンカルに襲いかかる。
振るう三節棍の一撃はメンカルの頭蓋を割る――はずだった。
振り抜かれた三節棍の一撃はメンカルの放った術式組紐『アリアドネ』の束ねられた糸によって防がれる。
軋む術式。
恐るべきフィジカルと呼ぶに相応しいだろう。だが、これほどの力を持ってしても、彼女は目的を達することはできない。
彼女の前に今いるのは生命の埒外にある存在である。
「……どこに転移させた……というのは聞くだけ無駄だろうね……」
『アリアドネ』の束ねられた術式が三節棍を弾き飛ばす。
絡むように『狂智のリースフェスト』を術式が伸びるが、その尽くが払われる。
「ああ、時間稼ぎが私の目的であるからね。口を割るわけがない。正しい判断だ。君たちは私を倒さなければ、『ミストレス・バンダースナッチ』を追うことすらできない。正しく時間稼ぎさ。この時間稼ぎの中で『スナーク』が真実に至るのならば、それでよし。そうでなくても、貴重な時間は稼げるというわけさ」
メンカルはうなずく。
研究者でありながら、フィジカルに優れる相手を前に……それ以前に覚悟の決まった者に口を割らせる時間ほど無駄なものはない。
己たちができるのは、ここで『狂智のリースフェスト』を打倒し、即座に転移した場所を知ることだ。
「紫煙……あの力が十全に、完全に振るうことができるのは密閉された場所。『ダストブロンクス』では気密が不十分……」
メンカルは術式装填銃より炸裂弾を放ち、『狂智のリースフェスト』を追い込んでいく。
ここで消耗させる。
後続の猟兵に後を託しながら考える。
『ミストレス・バンダースナッチ』を己が転移させるのならば、このヒーローズアースにおいて何処か。
「……『アトランティス』」
メンカルは気がつく。
彼女たちの目的を成就させるために必要なのは、猟兵の撃退。
ならば、『ミストレス・バンダースナッチ』が完全なる力を振るう事ができる場所は、完全に密閉された場所。
すなわち、四大文明の一つ。
海底都市――!
大成功
🔵🔵🔵
勝守・利司郎
ふーん?へー?なら、オレは殺されないけど。
究極って、つまりは『行き止まり』ってことじゃんか。そんなのつまらないぜ?
『鬱金香の葉』を式神使いの要領で操り、周囲に散らすのは続行しつつ。突っ込んでくると良い。
『鬱金香覇気』も開放しておこうか。
ああ、『黄薄絹』で目測誤らせるから、簡単には当たらないし…その時に、葉を纏わりつかせてUC使用。どんなに身を覆っても、これは内部へと威力を伝えるからな。
そのまま苦しむがいい。
不完全だから面白いんだよ、人類は。オレ、元はといえば人類から作られた存在だしな。
「確かに君たち猟兵は生命の埒外にある存在だろうさ。けれどね、それでも『ミストレス・バンダースナッチ』に一人ひとりが敵う存在ではない」
『スナーク』化した『狂智のリースフェスト』は言う。
彼女の言葉は正しい。
猟兵は個としてオブリビオンよりも劣る存在である。
だが、これまでの戦いがそうであったように、個での力が劣るのだとしても、猟兵たちの戦いは常に繋ぎ紡ぐ戦いである。
それがオブリビオンにとっての脅威である。
オブリビオンは己の欲望にしたがって戦う。だからこそ、利害が一致しなければ団結することはない。
ここに『狂智のリースフェスト』と『ミストレス・バンダースナッチ』が協力関係にあること事態がそう多くはない事態なのだ。
「だから、一人でも多くの猟兵を殺す。そうすれば、私が直接、超生物『スナーク』の究極を見なくても、必ず叶うわけさ」
彼女の足元から夥しい数の死体がせり上がってくる。それは彼女がこれまで研究の果に犠牲にした生命の死骸であった。
人類を地上から一掃するために生み出した怪物たち。
その過程で失われた生命は十や百では足りないだろう。その死骸でもって『狂智のリースフェスト』は巨大な肉体を生み出し、勝守・利司郎(元側近NPC・f36279)へと拳を振るう。
「ふん? へー? なら、オレは殺されないけど」
放たれた拳が『センターオブジアース』の大地を砕く。
その一撃の衝撃波が利司郎の頬を打つ。
痛みはない。あったとしても無視しただろう。彼の目の前にあるのは花の葉の形をした式神であった。
周囲に散らす黄色い花の葉は、身にまとった薄絹と共に拳を放つ目測を誤らせる。
「究極の生物。それが『スナーク』だ。人類を全て一掃するために、新しい生命のために旧き生命は淘汰されるべきなのだよ」
放たれる拳が大地を穿っていく。
衝撃波が式神たちを散らす。
練り上げられた覇気すらも容易に吹き飛ばす死骸の主。そこにあったのは燻り狂う狂気だけであった。
『スナーク』化したことによって、尋常ならざる力を擁する『狂智のリースフェスト』は、その拳の打撃だけで大地を割る。
「究極って、つまりは『行き止まり』ってことじゃんか。そんなのつまらないぜ?」
利司郎の言葉に『狂智のリースフェスト』は頭を振る。
「到達点を目指すのが生命というものだよ。一つの究極が終われば、それは新しき探求の始まりでもある。私はね、それを追い続けていたいのだよ」
振るわれる拳を躱し、利司郎は己の気を込めた式神の葉を、その死骸を組み合わせた体に触れさせる。
「完全なるものを求める! 人は失敗だった。性差を分かつこと事態が過ちであった。雌雄など存在しなければ、彼等は完全な生物であっただろうよ。だが、我等を模したことで性差が生まれた。それではな――!」
『狂智のリースフェスト』は巨大な死骸の腕を振るおうとする。しかし、次の瞬間にそれは解けるようにして砕けていく。
利司郎の瞳がユーベルコードに輝いている。
「不完全だから面白いんだよ、人類は」
彼は言う。
不完全であることを愛するのだと。どんなに欠けていても、どんなに足りなくても。
いや、欠けているからこそ人類は何かを求めてきた。
足りないものを、欠けているものを。
それは彼等が不完全でなければなしえないことであった。
己はその不完全から生まれた者である。
バーチャルキャラクター。空想と想像でもって生み出された存在。架空の存在であっても、宿る生命はある。
「オレを、人類を甘く見ないほうがいい」
放たれるは、花蝶神術:内細波(カチョウシンジュツナイサイハ)。
身体透過で送り込まれた気を振動させることによって、彼の拳の一撃は死骸の肉体すらも透過し、『狂智のリースフェスト』へと届く。
轟音が響き渡り、利司郎の拳は振動と共に膨れ上がって死骸の肉体より『狂智のリースフェスト』をはじき出す。
「そのまま苦しむがいい」
これまで奪った生命に贖うために。
生まれた意味を、それら全てをなかったことになどできようはずもない。
それを望む者こそ、利司郎は打ち砕くのだ――。
大成功
🔵🔵🔵
儀水・芽亜
この地の神々の中にも、邪悪な者はいるようですね。
親に会えば親を殺せ、仏に会えば仏を殺せ。迷いなく討滅させていただきます。
「全力魔法」深睡眠の「属性攻撃」「範囲攻撃」「浄化」「精神攻撃」で幻夢クラスター。
ヒュプノスの名の下に、生み出した創造物ごと眠りにつかせましょう。
創造物が逃げ出さないよう、「結界術」を張っておきますか。
リースフェスト神が眠ったら、裁断鋏『Gemeinde』で「切断」か「貫通攻撃」で致命傷の一つや二つ与えたいものです。どうせ神なのですから、それくらいでは死にはしないのでしょう?
いっそ首を落としたいところですけれど、あまり殺意が強いと起こしてしまいますか。
さあ、お遊びはおしまい。
剥がれ落ちるこれまでの研究において殺した生物の死骸。
それは『狂智のリースフェスト』を覆う死骸の肉体であった。巨躯とも言ってよかった肉体は猟兵の攻撃に寄って剥がれ落ちた。
しかし、それでもまだ彼女は生存している。
未だ健在なる力は、剥がれ落ちた死骸を持って怪物を生み出す。
「旧き生命は邪魔なんだ。新たなる生命のために場所を明け渡すどころか抵抗してくるからね。ならば、旧き生命を一掃する生物を作り出すのは当たり前のことだろう」
生み出される生物は、これまで彼女が生み出してきた怪物たちである。
強靭な肉体。
類稀なる膂力。
だが、その尽くがこれまで屠られてきた。
「この地の神々の中にも、邪悪な者はいるようですね」
儀水・芽亜(共に見る希望の夢・f35644)は『センターオブジアース』において『ミストレス・バンダースナッチ』を追って転移してきていた。
神々が住まうという世界の中心。
生命力が溢れる場所にあって、此処だけが死に満ちていた。
言うまでもなく『狂智のリースフェスト』がこれまで研究のために弄んだ生命の死、その残滓であろう。
「君たちから見ればそうであろうよ。別に否定はしないさ。だが、私から見れば君たちもまた邪悪。白と黒は反転するものだ」
その言葉を遮るようにして放たれるは、ユーベルコード。
幻夢クラスター(ゲンムクラスター)の一撃は虹色の炸裂弾となって『狂智のリースフェスト』が生み出した怪物を眠らせていく。
「ヒュプノスの名の下に眠りに付かせましょう」
張り巡らせた結界は、檻だ。
『狂智のリースフェスト』を逃せばまた彼女の言うところの新たな生命を生み出すための冒涜的な研究に寄って生命が無残に散らされる。
炸裂する虹色の中で怪物たちは確かに眠りに落ちた。
けれど、『狂智のリースフェスト』は眠っていない。『スナーク』化しているからだ。
本質無き怪物に至らんとしている彼女にとって、睡眠は必要のないものであったのだろう。
生命維持のために睡眠を必要とする生命など、彼女が求めるところの究極の生物ではない。彼女が求める『スナーク』とは、そのようなものの理外にあるものなのだから。
「いっそ首を落としたいところですけれど」
「やれるものならば、やって見給えよ。遠慮はいらない。私は君たちを一人でも多くこの場に足止めし、殺すことだから」
『スナーク』化したオブリビオンの強力な力は手にした三節棍を必殺の一撃たらしめる。
振るわれる一撃を二振りの軍刀を組み合わせたクロスシザーズで受け止める。
「どうせ神なのですから、それくらいでは死にはしないのでしょう?」
芽亜のクロスシザーズが三節棍を弾き飛ばす。
互いに打ち合う一撃一撃が必殺の威力。
衝撃波が吹き荒ぶ。怪物を無力化してもなお、『狂智のリースフェスト』のフィジカルは凄まじいものであった。
「いいや、神とて殺されるさ。君たち人類というのは、神の殺し方をよく知っているはずだが」
「ならば、親に会えば親を殺せ、仏に会えば仏を殺せ。迷いなく討滅させて頂きます」
芽亜のユーベルコードが再び輝く。
虹色の炸裂弾が眠りに落とすことができないまでも『狂智のリースフェスト』の四視界を染め上げる。
どれだけ知覚に優れるのだとしても視界を塗りつぶされてしまえば斬撃を躱すことなどできようはずもない。
放たれる一撃は『狂智のリースフェスト』の首を切り裂く。
血潮が噴出する。
「さあ、遊びはおしまい」
滴る血潮は『センターオブジアース』の大地に染み込んでいく。
燻り狂う狂気は今日此処で潰える。
それを示すように芽亜はクロスシザーズの切っ先を『狂智のリースフェスト』へと突きつけるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ドウジ・ユークレナ
「そこは嘘でもいいから任せておけと言うところだよ」それ、ヴィラン側が言う台詞じゃないと思うであります。
…というか、リアルで聞くとは思わなかったであります。
まさに猟兵になって良かったと思う瞬間であります。
時間稼ぎとわかっていても、無視できない相手であります。
悪いが速攻でいくであります
『存在感』を付与した『残像』を囮に攻撃を回避であります。
そして蜘蛛の糸を射出して『捕縛』であります。
隙アリであります。
『ダンス』するような、軽快な動きで接近して蜘蛛の足戟をおみまいするのであります。
『ミストレス・バンダースナッチ』と『狂智のリースフェスト』は利害が一致しただけの間柄であった。
『ミストレス・バンダースナッチ』は神代の魔術に寄るグリモアの予知の回避を求めた。『狂智のリースフェスト』は究極生物の誕生を。
どちらも地上にある人類の一掃と言う意味では相通じるものがあったのだろう。
だからこそ、彼女たちは結託した。
「私の研究はいつだって邪魔されるものだ。つくづく嫌になる」
彼女の研究はいつだって死骸の山を積み上げるものであった。
大切なのは過程ではなく結果のみ。
今の人類は失敗作だ。
人の心に信仰はない。あるのは人も神も隔てることのない力である。ヒーローもヴィランも神も海底人もラグランジュポイントに飛来する異星人も全てが隔てるものはない。
神々すら拳で鏖殺する人間がいる。
人智を越えた空の彼方より飛来する未知なるテクノロジーを手繰る者たちがいる。
どれもが神の御業を霞ませるものであった。
「任せておけとは言ったものの、これは骨が折れるな」
「それ、ヴィラン側が言う台詞じゃないと思うであります」
蜘蛛童の体が『センターオブジアース』に走る。
ここは生命力が溢れている。
神代より不死の怪物を封じてきた地球の核。
それが『センターオブジアース』にくべられた炎の正体である。
「……というか、リアルで聞くとは思わなかったであります」
まさに猟兵になってよかったとドウジ・ユークレナ(風渡り人・f36443)は思った。
『狂智のリースフェスト』が今此処で猟兵たちをはばむのは時間稼ぎの足止めでしかない。
判っている。
ここで自分たちが遅れれば遅れるほどに『スナーク』の誕生は続く。
何処からでも、どんな理由からでも、どんな虚構からでも『スナーク』は生まれる。そして、それは必ず世界に災禍をもたらすものである。
「悪いが速攻で行くであります」
「なるほど。君もまた生物というわけか。面白いが、今は眠ってもらおう」
『狂智のリースフェスト』から放たれる催眠ガスがドウジを襲う。
しかし、ドウジは存在感を遺した残像を囮に催眠ガスを躱す。
有効射程はそう広くはない。
ならばこそ、囮を中心に放たれた催眠ガスを躱すこともできるだろう。それに彼女が相手にしているのは常に人型の猟兵である。
その口から放たれる蜘蛛の糸が『狂智のリースフェスト』を捉える。
「――蜘蛛の糸の捕縛……! だが!」
「隙アリであります」
蜘蛛童のような多脚の彼女は存在を想定していない。
彼女は己の肉体すらも強化している『スナーク』化しているからこそ出せる膂力であった。
それに催眠ガスは触れれば、それだけで昏倒してしまう。引きちぎられる蜘蛛の糸。けれど、軽快なステップが刻まれる。
ドウジは迫る催眠ガスを躱し、打撃を与えるには己もまたリズムに乗るしかない。
「タタッタッタタタタタ……Hey!!であります」
それは多脚に寄るタップダンス。
謎のタップダンス。軽快な足さばきと大地を蹴る音が響き渡る。
「奇妙なことばかりをするな、君は!」
「これが、蜘蛛の足戟(クモノアシゲキ)であります!」
放たれる四連撃。
その一撃は三節棍によって防がれたが、残る三撃が『狂智のリースフェスト』の体に叩き込まれ、その体を大きく傾がせるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ジャスパー・ドゥルジー
確かに人間ってェのは目障りだろうな
弱いくせに口はでけえし
自分らより古くからあるもんをぶっ壊して平然としてる
おまけに神に楯突くだけじゃなくて実際に滅ぼすときたもんだ
創造主から見たら失敗作をわざわざ見せつけられてるような気分ってとこか?
そーんな不完全さが、俺は嫌いじゃないんだよな
人も、それから神にしても
なぁジャバウォック
といってもあの大剣の男じゃない
俺と一心同体の大切な相棒さ
相棒の背に乗りながらやつを追いかける
どんなにあんたが速かろうが地獄の果てまで追いかけてやるぜ
雨のように降り注ぐ魔龍の炎と悪魔の刃(驟雨)から
逃れられると思うなよ
悪魔ってのはいつだって
ニンゲンの味方っすからね
大きく体勢を崩した『狂智のリースフェスト』は、大地に手を触れ己の瞳をユーベルコードに輝かせる。
膨れ上がる大地は生命料にあふれていたが、その地に溢れていたのは死骸であった。
これまで彼女の研究によって犠牲になった生命の残骸がユーベルコードに寄って死骸の肉体に繋がり合って組み上がっていく。
その巨躯の内側で彼女は笑う。
確かに猟兵は強い。
しかし、その個としての力はオブリビオンには到底届かない。
個として劣る。
それはすでに証明されたことである。しかしながら、猟兵がなぜ強大な敵に勝ち続けてきたのかを彼女は理解していない。
「目障りであるよ。本当に。どれだけ私が怪物を生み出して人類を一掃しようとしても、その都度に邪魔が入る」
彼女の言葉に黒い炎が立ち上がる。
「確かに人間ってェのは目障りだろうな。弱いくせに口はでけえし、自分らより古くあるもんをぶっ壊して平然としてる」
ジャスパー・ドゥルジー("D"RIVE・f20695)は、そのやせ細った躰から、己の肉を抉り切る。
その肉は黒い魔炎の中に消えていく。
奏でられるは、ジャバウォックの歌(ジャバウォッキー)。
「おまけに神に楯突くだけじゃなくて実際に滅ぼすときたもんだ。創造主から見たら失敗作をわざわざ見せつけられてるような気分ってとこか?」
ジャスパーは燃える己の肉を見る。
それは自傷行為であったが、同時に己がオウガブラッドである証明でも在った。
憑依したオウガ『魔炎龍ジャバウォック』が十字聖痕の煌きの果に現れる。
赤い鱗の龍。
「そーんな不完全さが、俺は嫌いじゃないんだよな。人も、それから神にしても。なぁジャバウォック」
その言葉は違う意味を持っていたことだろう。
猟書家『サー・ジャバウォック』に告げた言葉ではない。己の中に憑依したオウガブラッドたらしめる存在。
己と一心同体の大切な相棒。
その赤き鱗の龍が咆哮する。黒い炎は全てを渾沌と化す力を持つ。
ジャスパーは煌めくユーベルコードの輝きを瞳に宿しながら、『ジャバウォック』の背に乗り、死骸の巨躯となった『狂智のリースフェスト』と相まみえる。
「どんなにあんたが速かろうが、地獄の果てまで追いかけてやるぜ」
逃げられると思うなと、ジャスパーがつぶやいた瞬間、『狂智のリースフェスト』は真っ向から死骸の巨躯と共に襲いかかるように踏み込む。
「私は不完全さを憎むのさ。完全じゃないものに美しさを感じないものでね。君がいうところの不完全さを受け入れる寛容さは、私にはない。私が求めるのは究極なるものだよ」
『スナーク』化した彼女の力は魔炎の力をねじ伏せるように踏み込む。
「過去、私に同じことを言った者がいたよ。人類の不完全さは他者を受け入れる寛容さだと、優しさだと」
『ジャバウォック』と組み合う死骸の巨躯。
黒い炎が死骸を焼き滅ぼすも、その端から死骸が大地より溢れるようにして滅びた箇所を補強していく。
それほどまでに彼女の殺した生命は多いということだ。
「それが嫌いではないからと。滅ぼすには値しないのだと。君も同じか。あの悪魔の如き力を持った存在と!」
振りかぶられる死骸の巨躯の拳。
しかし、その拳が振り下ろされることはなかった。
ジャスパーの瞳が歪に煌めく。
そのとおりだと。己はオウガブラッド。そしてこの聖痕が言うのだ。身に宿した炎が己の胸の内を焦がす。
「そのとおり。悪魔ってのはいつだって」
煌めくは俄か雨の如き金属の刃。神が鍛えた刃でもなければ、不可解な科学技術が鍛え上げ刃でもない。
あるのは悪魔の力。
「ニンゲンの味方っすからね」
降りしきる刃の雨は死骸の巨躯の腕を両断し、その罪過を知らしめる。
欲深い己は全てを癒やす。
あらゆる痛みも傷みも、全て己のモノとする。こんな『 』は全て己のものであるとジャスパーは黒い炎に煌めく刃の刀身に笑うのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
夜刀神・鏡介
もし世界にいるのが善神のみであれば、そもそもこんな事になっていない気はするが
世界の滅びに加担する神がいようとは……なんともはや
神刀の封印を解き、参の秘剣【紫電閃】を発動。紫紺の神気で行動力を強化
放たれた催眠ガスを斬撃波で切り裂いて散らす
多少吸い込んだとしても、神気の加護によって効果を弱めることが出来るから、眠らされるような事はない
後は速度を活かした一撃離脱、不意の反撃を喰らわないように気を付けながらも一気に決めていこう
あんたは何をみて人間は失敗作だと決めたんだ?
人と神の視点では物事の価値観や捉え方は確かに違うだろうが……失敗したかどうかは最後の最後まで分からないだろう
……と言っても、もう遅いか
善悪を分かつものがなんであるのか。
それは言うまでもなく主観者の視界であることは言うまでもなく。
そして、『狂智のリースフェスト』は人類にとっての悪神であることは疑うことはない。
彼女にあるのは人類の一掃という試みだけである。
『スナーク』化した彼女の力は膨れ上がっていく。
撒き散らされる催眠ガスに触れれば、即座に昏倒するだろうことを夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)は理解していた。
「もし世界にいるのが善神のみであれば、そもそもこんなことになっていない気はするが」
「それは君がそちらが側に立っているからだ。神々も一枚岩ではないということさ。人類の滅びを是とする神もいれば、拒む神もいる。ただそれだけのことだ。善神悪神というのは君等側の言葉にすぎないんだよ」
『狂智のリースフェスト』は笑っている。
漲る『スナーク』化による力は彼女が望んだ本質無き怪物『スナーク』が究極の生物であることを示している。
無から有を生み出すように。
虚構から真実がまろび出るように。
燻り狂う生誕への渇望は、ただ世界に破滅をもたらす。
「世界の滅びに加担する神がいようとは……なんともはや」
神刀の封印を解き、振り払う斬撃が催眠ガスを振り払う。
紫紺の神気が鏡介の体にまとわれる。煌めく神刀の刃が己の思考を、その力を引き上げていくのを感じる。
「神の鍛えた刀で神を斬らんとするかい!」
催眠ガスはたしかに触れたら即座に昏倒せしめるものであった。
けれど、それで『狂智のリースフェスト』が生身単身で戦えぬを示すものではない。手にした三節棍でもって鏡介に迫る。
その気迫、その技量、たしかに神と呼ぶに相応しいものであっただろう。
「あんたは何を見て人間は失敗作だと決めたんだ?」
「善悪に物事を分かつことさ。善悪だけじゃない。その心のなかに二面性を持っているからさ。我等神々が善神と悪神に分かたれるようにね。その乖離は必ず滅びをもたらすからさ」
振るわれる三節棍を振り払う。
打撃が衝撃波を生み、『センターオブジアース』に燃える生命力を吹き飛ばしていく。
「人と神の視点では物事の価値観や捉え方は確かに違うだろうが……失敗したかどうかは最後の最後までわからないだろう」
鏡介は人の輝きを知っている。
『狂智のリースフェスト』は人の『黒き悪意』を知っている。
どちらも人間にとって切り離せぬものである。
人の心の輝きがそれらを凌駕することもある。人は個である。全ではない。しかしながら、空でもある。
自分と他者は違う。
神もまたそうであろう。
同じ神などいない。
あるのは他者という存在を受け入れることができるかどうかだ。その不寛容が滅びをもたらす。
「神刀解放。我が刃は刹那にて瞬く――参の秘剣【紫電閃】(サンノヒケン・シデンセン)」
煌めくユーベルコードの斬撃。
その斬撃は瞬く間に九連撃。
刻まれた斬撃は『狂智のリースフェスト』の体から血潮を噴出させる。
「……と言っても、もう遅いか」
決定的に違えている。
互いの未知は交錯すれど平行になることはない。並び立つことが叶わぬのならば、その罪過を正すことはできず。
滅ぼし、滅ぼされる間柄でしかないからこそ、鏡介は己の太刀筋のみを信じるのである――。
大成功
🔵🔵🔵
馬県・義透
引き続き『静かなる者』にて
さて、用があるのはこの先なのですが…。倒さねばいけませんね。
ええ、かつては確かに生きていたものとして、そういう神には抵抗しますよ。
【四天境地・水】にて、場を湖へ。ええ、私は水上歩行できますし、そもそも陰海月に乗ったままなので。
作り出したその生命体も、あなたも。生命力を吸収していきましょう。何を人間以上にしたとて、悪霊からは逃れられませんよ。
そのまま、氷属性の霊力矢を白雪林で射かけ続けましょう。
※
陰海月、まだぷかぷか浮かんでいる。ぷーきゅ!
近づいてきたら、怪力触手パンチする勢い。
刻まれた斬撃が『狂智のリースフェスト』の体から迸る。
その赤き血潮を溢れさせながらもなお、『スナーク』化した『狂智のリースフェスト』は立つ。
手にした三節棍を支えにして、溢れる血潮を持って己のこれまで生み出してきた怪物を出現せしめる。
人以上を求めた。
人以上の完璧さを求めた。
究極というものが如何なるものであるのかを彼女は知りたいと願ったのだ。生まれでた怪物のいずれもが尽くたった一人の人間によって鏖殺された。
「私の研究が間違っているはずがない。人は不完全だ。失敗なんだ。世界すら滅ぼす愛を持っているからこそ、彼は地上から一掃しなければならないんだよ」
彼女の言葉と共に生み出された怪物たちが咆哮する。
それは燻り狂う渇望であった。
生まれた以上意味がある。無意味に殺されることなどあってはならないと怪物たちは『センターオブジアース』に溢れる生命力を食い散らかしながら『ミストレス・バンダースナッチ』を追う猟兵たちの前に立ちふさがる。
「さて、用があるのはこの先なのですが……倒さねばいけませんね」
馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の一柱である『静かなる者』の瞳がユーベルコードに輝く。
「六出の血にて、これをなしましょう」
四天境地・水(シテンキョウチ・ミズ)、己の白い弓より放たれた氷の矢が『センターオブジアース』の揺らめく炎を雪解け水の湖へと変化させる。
その上に波紋を生みながら『静かなる者』は立つ。
巨大クラゲの『陰海月』と共に『狂智のリースフェスト』と対峙する。
「ええ、かつては確かに生きていた者として、そういう神には抵抗しますよ」
「君たちは自覚があるようだね。死してなお、この世にとどまるのは未練ではないね。怨念だ。人の『黒き悪意』というのは、何も悪逆であることだけを示すわけではないよ」
怪物たちが『狂智のリースフェスト』と共に『静かなる者』へと迫る。
だが、その足取りが湖の中にあって重く沈んでいく。
生命吸収のちからを持つ湖に立ち、力が高まっていくのは『静かなる者』だけである。
『狂智のリースフェスト』や怪物たちは力を失っていくばかりなのだ。
「何を人間以上にしたとて、悪霊からは逃れられませんよ」
放たれる氷の矢が怪物たちを穿ち、沈黙させる。
湖の中に解けるように消えていく怪物たち。どんなに強化されても、どんな研究の成果であったとしても、歪なる生命は潰える運命でしかない。
それはこれまでも、これからも変わることはないのだ。
たとえ、怪物たちが『静かなる者』に辿り着いたのだとしても『陰海月』の触手が叩き伏せる。
『ぷーきゅ!』
湖に沈む怪物の死骸。
生み出された生命は潰える。歪な倫理観が生み出した怪物たちを終わらせることだけが救いであったことだろう。
射掛けられた氷の矢を全身に受けながら『狂智のリースフェスト』は未だ立っている。
「げに恐ろしきは、やはり君たちのような人間だよ」
「ええ、そうでしょうね。人の悪意は同じ人間にも向けられる。神が私達を作り出したのだとしても、神は人の営みに介入しなくていい。見守るだけでいい」
だからこそ、『狂智のリースフェスト』は滅ぼされる。
人を一掃しようとし、己の価値観だけで滅ぼそうとするのならば、それは世界の悲鳴となる。
その世界の悲鳴を聞き届ける猟兵がいるかぎり、彼女の願望は決して叶うことはないのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
大町・詩乃
人類の一掃なんて私が許すわけないでしょう。
種全体が邪悪な存在に成り果てたならともかく、人には悪性に負けない善性が宿っています。
そしてスナークと化した以上、滅ぼされるのは貴女です。
決着をつけましょう!と、UC:神力発現で強化。
せめて同じ神として真っ向から戦って引導を渡しましょう。
煌月に光の属性攻撃・神罰を宿し、衝撃波を放ちつつの鎧無視攻撃・なぎ払い・範囲攻撃でリースフェルトを創造物ごと斬り裂きます。
相手の攻撃は第六感で予測して、UCによる飛行能力・空中戦・見切りで空を自在に舞って躱したり、オーラ防御を纏った天耀鏡の盾受けで防いだり、結界術・高速詠唱で防御壁を展開したりで対応。
これでさよならです。
霊力の矢を全身に受けながらも『狂智のリースフェスト』は未だ立っていた。
漲る『スナーク』化のちからに寄って受けた矢を砕きながら、彼女は猟兵に迫る。
それは『ミストレス・バンダースナッチ』を逃がすためだけに今戦っている。彼女を逃せば、それだけ『スナーク』の誕生は進む。
究極の生物に全てが至るわけではないかもしれない。
失敗に終わるかもしれない。
けれど、生きる意味も、死ぬ意味も見いだせなくとも。
それでも『続き』をする限り、必ず届くということでもあるのだ。
いつだってそうだけれど、続けることこそが成功へと至る唯一つの道である。
「そうさ、私が望んだ人類の一掃は果たされる。あんな失敗作が世にはびこっていることこっそ、許されざる現実ってやつさ」
漲る力と共に再び怪物たちが生み出されていく。
しかし、その怪物たちを一閃が穿つ。
神罰の一撃。
衝撃波が怪物たちを吹き飛ばしていく。
「人類の一掃なんて私が赦すわけないでしょう」
大町・詩乃(阿斯訶備媛・f17458)は、神力発現(シンリョクハツゲン)によって戦巫女の姿へと変身し、己の手にしたオリハルコンの刃を持つ薙刀の切っ先を『狂智のリースフェスト』へと向ける。
「種全体が邪悪な存在に成り果てたのならともかく、人には悪性に負けない善性が宿っています」
「それが問題だと言っているんだよ。なぜ、『スナーク』の誕生が止まらないのかを君は考えないのかい? 虚構がなぜ真実から生まれるのか。人の二面性が『スナーク』の誕生を助けているからだ」
『狂智のリースフェスト』が手にした三節棍をふるって詩乃と激突する。
『スナーク』化した彼女の膂力は凄まじいものがあった。
神力を発露させた詩乃と彼女の間に差はない。
これまで猟兵との戦いで消耗してもなお、『スナーク』化した彼女の力は凄まじい。
切り裂く斬撃は怪物に寄って阻まれる。
空を舞う詩乃は見下ろす。
「スナーク化した以上、滅ぼされるのは貴女です。虚構が真実を凌駕することなどないのです。たとえ、人の心に悪性があるのだとしても。悪性があるからこそ善性もまた輝くのです」
振り抜く薙刀の衝撃波が怪物たちを吹き飛ばす。
『センターオブジアース』――神々が座す世界の中心。
生命力溢れた場所。
かつて不死の怪物をくべた地球の核。
その場にあって詩乃は引導を渡すべく刃を振るう。
「ならば、人の善性を見せてみろ。彼等は神を救わない。己たちが救われても、神を救いはしないんだよ。君もそれはわかっているだろう。信仰なき神は神ではないと彼等は言うだろうさ」
かち合う三節棍と薙刀。
そしてい互いに神なる身。
譲れない。譲ってはならないのだ。
たとえ己が忘れ去られ、信仰を失ったのだとしても、人から捨てられるのだとしても。
忘れ去られるのだとしても。
人の営みに神は介在しない。
見守るだけでいい。人は人の善性でもって悪性を乗り越えると詩乃は知るからこそ、『狂智のリースフェスト』の言葉を飲み込む。
「これでさよならです」
人の営みが紡がれる世界をこそ己は守らねばならない。
神の手に寄って生み出されたからと言って、神の手で滅ぼしていい理由など詩乃には持ち合わせていない。
放たれる斬撃が『狂智のリースフェスト』の体を切り裂く。
互いの信念と信条。
どちらが正しいかは、この後の世界の行く末が決めることだ――。
大成功
🔵🔵🔵
バルタン・ノーヴェ
POW アドリブ歓迎!
滅びマセン、終わりマセーン!
この世界は我輩たち猟兵が、そして多くのヒーローのエブリワンが守りマース!
スナークの増殖を防ぐためにも、バンダースナッチを撃破せねばなりマセン!
リースフェスト! たとえアナタが神であろうとも、打ち倒して先に進みマース!
……これほどの方々の命を……。犠牲となった皆様の仇を討ちマース!
どれほど速度を上げようと、視認できなければ問題ありマセーン!
「六式武装展開、煙の番!」
辺り一面を煙幕で覆い、身を隠しマース!
滑走靴で飛翔するリースフェストに近づき、パイルバンカーによる一撃を叩き込むであります!
ワタシの動きを察知するならば素早く残像で背後に回りマショー!
斬撃は『狂智のリースフェスト』から血潮を奪い続ける。
身を血に染めてなお、彼女は傷みを感じていないようであった。神たる身。彼女にとって血潮はさして重要なものではなかったのかもしれない。
地に満ちるは、彼女がこれまで研究と称して生み出してきては奪ってきた生命の死骸である。
山のように積み上げられたそれが死骸の巨躯へと変わって行く。
その力はこれまで奪ってきた生命に比例する。
死骸の主たる『狂智のリースフェスト』は、その巨躯の中で言う。
「人類は滅ぼす。滅びなければならい。新たなる生命に大地を明け渡すためにね。その土壌にしてやろうというんだ。何を嘆くことがある。何を拒む必要がある」
彼女にとって、それだけが正しさであった。
『ミストレス・バンダースナッチ』の言うところの『続き』とは『スナーク』という究極生物蔓延る世界の滅びである。
世界という枠組みすら破壊する。神も人もない。あるのは純然たる力だけだ。
「滅びマセン、終わりマセーン!」
バルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)は、目の前の死骸の巨躯を見やる。
『狂智のリースフェスト』がこれまでどれほどの生命を弄んできたのかを示すような山。
しかし、それを前にして彼女は怯むことはなかった。
死骸の巨躯は、その巨躯に似合わず凄まじい速度と飛翔能力を持っている。
振るわれる拳の一撃は大地を割る。
「この世界は我輩たち猟兵が、そして多くのヒーローのエブリワンが守りマース! 六式武装展開、煙の番!」
煙が噴出する。
バルタンの瞳が煙幕の向こう側で煌めく。
それはユーベルコードの煌き。
手にするは、粉塵纏・破城槌(ヴァニッシング・バトリングラム)。
バルタンの心にあるのは仇討ちの心。これまで『狂智のリースフェスト』に奪われたきた生命。
その代価を必ずや『狂智のリースフェスト』に払わせなければならない。
ゆえに彼女は煙幕の中を走る。
「小細工をする!」
死骸の巨躯によって振るわれた拳の一撃が煙幕を吹き飛ばす。
叩きつけられた一撃がバルタンを襲うが、そこにあったのはユーベルコードの斬子うだけであった。
滑走靴がバルタンの体を加速させる。
『スナーク』の増殖はさせてはならない。どうあがいても『ミストレス・バンダースナッチ』は倒さねばならないのだ。
無限に生み出される虚構からの本質無き怪物の来訪。
それは人の営みに涙を生み出すだけの存在であると知るからである。
ヒーローだとかヴィランだとか、人であるとか、神であるとかはもはや関係ない。
世界に多くの悲しみが満ちることをこそ悲しむのであれば、バルタンは己の手にしたパイルバンカーを握りしめる。
「リースフェスト! たとえアナタが神であろうとも!」
打倒して進む。
死骸の巨躯にバルタンは駆け上がるように飛びかかる。手にした力はいつだって敵を屠るものであった。
そこに過ちがなかったとは言わない。
生命を奪う行いは、いつだって誰かの生命を繋ぐためのものであったからだ。
どれだけ煙幕を振り払うのだとしても、バルタンは駆け抜ける。
彼女が目指す道の先にあるのは、いつだって悲しみの連鎖が繋ぐ世界の破滅だけだ。
その破滅を為さしめぬためにこそバルタンはパイルバンカーを振るう。
凄まじい排気音が響き渡り、パイルバンカーの杭打ち機構が作動する。打ち込まれた杭が巨躯の死骸すら貫いて『狂智のリースフェスト』へと迫る。
「打倒して先に進みマース!」
その一撃は『狂智のリースフェスト』の左目を貫き、絶叫をほとばしらせるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
漸く追い付きました…!
己が信念の為に身を擲つ覚悟は良し
ですが無為に生み出される『スナーク』がどれ程の涙を生み出したか
騎士としてその元凶を討つ為、突破させて頂きます
肉の鎧…貴女のこれ迄の成果、打倒できねば未来は無いと?
飛翔しての攻撃を剣の腹と盾で捌きつつ
ならばこの身を以て証明いたしましょう
先達がこれまでの歴史を紡いだように!
相手の攻撃によって生じる隙を瞬間思考力にて見切り
怪力大盾殴打の反撃にて殴り飛ばし
剣と盾を宙に放り
電脳空間よりUCの鉄球取り出しジェット起動
推力移動の速度乗せた鉄球ぶつけ起爆
肉の鎧吹き飛ばし、拘束鉄爪で狂智の神を捕獲
そのまま引き摺り出しつつ、落下した剣を確保
剣の一閃にて勝負決め
『狂智のリースフェスト』の左目が穿たれ、血潮が溢れ出す。
これまで数多の斬撃や打撃を受けてなお、苦悶一つ上げることのなかった彼女が初めて絶叫する。
その瞳に在ったのは怒りでも絶望でもなかった。
燻り狂うような生命の探求だけであった。
「私が見たいと願ったものは、究極の生物の誕生だ。人は何一つそれに届かない。もろく、弱く、粗悪な存在でしか無い。だから一掃しようと言うのだ。だというのに!」
これまでもそうであった。
過去、人類の歴史を顧みた時、幾度なく人類を地上から一掃する機会はあったのだ。
その都度彼女は怪物を地上に送り込んだ。
人類を抹殺するために。鏖殺するために。しかし、そのどれもが一度たりとてかなったことはなかった。
「『不敗を象る名』など、今の人類には必要ないものだ!」
咆哮し、『狂智のリースフェスト』を覆っていく、数多の死骸。組み上がり、巨躯へと姿を変えていく。
それこそが彼女がこれまでの研究に寄って奪ってきた生命の残骸。
数多の命を弄んだ結果であった。
「己が信念の為に身を擲つ覚悟は良し。ですが、無為に生み出される『スナーク』がどれほどの涙を流したか。騎士としてその元凶を討つ為、突破させて頂きます」
トリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)は『センターオブジアース』に降り立ち、脚部のスラスターを噴出させながら『狂智のリースフェスト』を覆う死骸の巨躯へと立ち向かう。
謂わばそれは肉の鎧であった。
「涙がどれほどの価値を持つ。究極の生物の前には些細なものだ。君は、君こそがそれを知らねばならない。涙に意味はないよ。どれだけ生命が奪われようとも、涙のひとしずくにだって価値はもたらされない!」
振るわれる巨躯の拳。
その一撃を飛翔し、躱しながらトリテレイアは斬撃を見舞う。
「ならばこの身を以て証明いたしましょう」
そう、先達がこれまでの歴史を紡いだように。
トリテレイアが初めてではない。『狂智のリースフェスト』の前に立ちふさがったのは。神の名において人類を一掃しようという試み。
その前に立ち、阻んできたのは彼が初めてではない。その連綿たる積み重ねがあったからこそ、今がある。
打ち込まれた拳の一撃を大盾で殴り飛ばす。
ガードをこじ開け、トリテレイアは剣と盾を空中に投げ放つ。
何を、と思っただろう。己の武装を手放した。けれど、トリテレイアのアイセンサーがユーベルコードに煌めく。
「些か蛮族じみてはいますが!」
手にしたのは、拘束鉄爪内蔵式対装甲破砕鉄球(ワイヤード・ジェット・モーニングスター)。
電脳空間より取り出した武装は、ジェットを起動し凄まじい速度で持って回転しながら死骸の巨躯へと叩きつけられる。
頑強なる鉄球より飛び出した鉤爪が、その巨躯へと食い込み、爆破される。
「――ッ! また私の試みをはばむのか!」
砕けた死骸の残骸から『狂智のリースフェスト』が片目を失いながらも咆哮する。
それは苛立ちに満ちていたことだろう。
何度、幾度でも彼女は阻まれてきた。人類の抹殺を、それらを全て。
目の前にある機械騎士もまたそうであるというのだろう。
認められない。
神たる己がなぜ、人の生み出したものに阻まれなければならないのか。
目の前の猟兵は機械騎士に過ぎない。
己の研究、究極の生物を生み出す力の前には障害でしかないはずだ。なのに。
「貴女を打倒できねば未来が無いというのならば!」
押し通らせてもらう。
空中より落ちてきた剣を手にトリテレイアのアイセンサーが煌めく。
そう、此処にあるのは人の歴史が紡いだ終着点。
星の海を征く世界に生まれた騎士がその斬撃で持って、人の歴史をはばむ神をも切り裂く一撃を叩き込むのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!
ドーンッ!と[球体]くんでぶち抜き登場!
下水道を抜けたらそこはセンターオブジアース!
新き世界は旧き世界の灰の下から生まれる云々テンプレート!
まったくごきげんだね!
あのあんにゅいれでぃのどこがいいの?もしかして好きだった?
ぇー?いいじゃん恋したって!世界観の違いかなー?
●うめつくす
でっかく早いなら、埋め尽くす!
【第六感】に任せ彼女の進行先尽くに[影]からおーーっきな[球体]くんたちをぼこぼこ出していって空間を埋め尽くしそのパワーとスピードを活かせないようにしてもらうよ!
そしてUCでドーーンッ!!
なんでそんなに人類にこだわるかなー?
見てて楽しいんだしほっとけばいいじゃん!
砕かれ、爆砕され、切り裂かれた死骸の巨躯が再び貼り合わされていく。
それはこれまで『狂智のリースフェスト』が積み上げてきた生命の残骸であった。
研究というお題目の下、全てが許された存在。
それが『狂智のリースフェスト』という神であった。己の研究のために、己が求める究極の生物のためにこそ人類は礎にならねばならない。
『スナーク』がそうなのだ。
あれこそが地上を満たすに相応しい究極の生物。
究極という虚構そのもの。
だからこそ、彼女は己が存在しなくても、その結末を、結実を望まなければならない。
隻眼と成りはて、身を傷にやつしながらも。
「私は――!」
その言葉を詐欺ったのは『センターオブジアース』を揺るがす球体の一撃であった。
「ドーンッ! 下水道を抜けたらそこは『センターオブジアース』!」
ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)は地球の中心であり、不死の怪物をくべる『センターオブジアース』に転移しながら球体でもって、そこを埋め尽くす。
敵の動きは巨躯でありながら素早い。
ならば、その行動を妨げるように球体でもって埋め尽くせばいいのだと、己の影より数多の球体たちを呼び寄せ『狂智のリースフェスト』の動きを阻害するのだ。
「でっかく早いなら、埋め尽くす!」
簡単だよね、とロニは己もまた球体を足場にして飛ぶ。
「邪魔立てをする! 行かせはしないさ。君たちの一人でも多く、ここに縫い止める。それが私の研究の最果てであるからね」
「そういうのってテンプレートっていうんだよね。新しき世界は旧き世界の灰の下から生まれる云々。まったくごきげんだね!」
ロニにとって、それはあまり興味の唆られないものであったことだろう。
確かに『スナーク』は新たな人類と成り得るだろう。
けれど、それはこだわりというものであったことだろう。
ロニにとって人類は見ていて楽しいものであった。
人の営みは神の営みとは違う。
だからこそ、違って楽しいものである。争いもあるだろう。同時に争いを止める平穏もあるだろう。
善悪が綯い交ぜになった渾沌そのものな様相でもあった。
その白にも黒にも、そして灰色にも成り得ぬ刹那の煌きが生命であるというのならば、その万華鏡の如き虹色をこそ貴ぶべきであったのあ。
「あのあんにゅいれでぃのどこがいいの? もしかして好きだった?」
「利害の一致さ。それ以上の意味などないよ。君はそういうものに価値を見出す神性であるようだが」
「ぇー? いいじゃん恋いしたって! 世界観の違いかなー?」
あくまでロニは笑っている。
彼女の目的も、『ミストレス・バンダースナッチ』の行いもロニには関係ない。
人の営みに介在する理由もない。
だからこそ、その瞳はユーベルコードに輝く。
「見てて楽しんだし、ほっとけばいいじゃん!」
放たれるは、神撃(ゴッドブロー)の一撃。
打ち込まれた拳は死骸の巨躯を全て引き剥がし、その衝撃波でもって『センターオブジアース』の大地を割る。
生命力に溢れた世界の中心。
未だ神々が座す場にありて、その一撃は『狂智のリースフェスト』の肉の鎧すらも穿ち、破壊をもたらす。
信心無き者にも神々しさを感じさせる拳の一撃はユーベルコードに煌き、その爆煙の如き威力の凄まじさを様々と見せつけるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
佐伯・晶
人類とは相容れない研究だね
神といえど黙って受け入れる訳にはいかないかな
まあオブビリオンになってるという事は
過去の存在なんだろうけど
オブビリオンの捨て身って
どういう位置づけか測りかねる所もあるんだけれど
覚悟を持って相対してくるのなら
警戒して戦う必要があるね
相手は過去の研究の産物でも
呼び出して戦わせるのかな
悍ましい怪物なのかもしれないけど
本人に比べればどうしても劣るね
邪神の慈悲で石に変えてしまおうか
ひょっとしたら怪物自体も
実験の犠牲者なのかもしれないし
怪物達を石に変えたら
リースフェストの相手をしよう
接近戦で攻撃してくるのなら
神気で動きを停めて
そのまま石化させていこう
時間稼ぎにつき合う義理もないしね
その一撃は大地を割る。
爆煙が立ち上り、その威力の凄まじさを知らしめるものであったが『狂智のリースフェスト』は、その爆心地の如き場所に未だ立っていた。
隻眼と成り、身を斬撃と打撃で痛めつけられてもなお。
その瞳にあるのは、やはり信念であった。
「人類は滅ぼさなければならない。究極の生命に大地を明け渡さなければならない。それを『スナーク』が為すというのなら、私はそこに私自身の研究の果を見ているのだから」
己自身もまた『スナーク』足らしめ、その圧倒的な戦闘力で持って猟兵たちを追い詰めてきた。
けれど、今やその体は満身創痍である。
溢れる血潮が大地に池のように満ちていく。
その血潮から生まれるのは怪物たち。
『狂智のリースフェスト』が生み出した怪物たちであり、これまで幾度となく人類を一掃しようと放った存在であった。
その都度、一人の人間によって討滅されてきた存在でも在る。
「……人類とは相容れない研究だね」
佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は『センターオブジアース』に降り立ち、溢れる怪物たちを見つめる。
『狂智のリースフェスト』が掲げる研究、究極の生物の誕生は、今の人類たちにとって己たちを滅ぼすものであった。
晶もまた邪神を宿す身であるが、それを到底受け入れることはできなかった。
神と言えど黙って受け入れるわけには行かない。
だが、オブリビオンになるということは、過去の化身と成り果てること。
オブリビオンは骸の海より滲み出た者である。
その存在は常に異なるもの。姿形が同じであっても、その性質は差異が見いだせる。ならばこそ、この捨て身の時間稼ぎは覚悟を持つ者の所業であると言えた。
「……おぞましい怪物なのかもしれないけど」
本人に比べれば劣るものであった。『スナーク』化していない怪物など、どれだけ彼女の研究の結果によって生み出された存在であっても晶には恐ろしいとは思えなかった。
ただ、生まれた存在をただ鏖殺することは気が引けた。
言えば、それは邪神の慈悲(マーシフル・サイレンス)であったのかもしれない。
ひょっとしたのならば、怪物だって実験の犠牲者ともいえるはずだからだ。
良い闇の衣をまとった晶から放たれた万物に停滞をもたらす神気は、生み出された怪物たちを石像へと変える。
晶の手にしたガトリングガンが、その石像をくだいて霧消させる。
「……行かせはしないさ……これは、私の研究でも在るのだから」
手にした三節棍が晶へと放たれる。
だが、邪神の権能、停滞の権能をもつ神気を前にしては『スナーク』化していたとしても、消耗激しい彼女の一撃は届かない。
「悪いけれど、時間稼ぎに付き合う義理もない」
神気が『狂智のリースフェスト』の足元から石像へと変えていく。
音を立てるような石化。
石化と同時に砕けていっているのだとわかる。虚構から生まれ、燻り狂うような生誕への渇望は、『スナーク』の本質であったのかもしれない。
停滞すること事態が『スナーク』にとって滅びであるというのならば、晶の神気は本質無き怪物に固定でもって本質を与えるのかもしれない。
その場にいて、その場にいない。
何処にでも居て、何処にも居ない。
ゆえに、それを『スナーク』と呼ぶのならば。
「永遠こそが本質無き虚構を砕くものなのかもしれないね」
『狂智のリースフェスト』の肉体が石化とともに砕けていくのを晶は見やり、『ミストレス・バンダースナッチ』の転移した先、『アトランティス』へと向かう。
戦いに決着をつける。
永遠ではなく、虚構の果てという結末でもって『スナーク』に終焉をもたらすために――。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『ミストレス・バンダースナッチ』
|
POW : 紫煙の狙撃手
自身の装備武器を【紫煙のバレットXM500(対物狙撃銃)】に変え、【あらゆる障害物を貫く狙撃】能力と【紫煙に触れている対象の位置を捕捉する】能力を追加する。ただし強すぎる追加能力は寿命を削る。
SPD : 紫煙の格闘家
自身のオリキャラ「【紫煙の格闘家】」を具現化する。設定通りの能力を持つが、強さは自身の【周囲の戦場に満ちる紫煙の量】に比例する。
WIZ : 紫煙のスナークシールド
自身の【煙草】から【紫煙のスナークシールド】を放出し、戦場内全ての【敵が行う攻撃】を無力化する。ただし1日にレベル秒以上使用すると死ぬ。
イラスト:machi
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
『ミストレス・バンダースナッチ』が転移した先は海底都市であった。
ヒーローズアースには知られざる文明が存在していた。
一つはニューヨーク地下の下水道迷宮『ダストブロンクス』。
そして神々が住まう地球の中心たる『センターオブジアース』。
大気圏外に存在する『ラグランジュポイント』。
転移した『ミストレス・バンダースナッチ』が今存在する海洋文明『アトランティス』である。
ここはその海底都市。
完全に密封されたドーム都市は、紫煙を手繰る『ミストレス・バンダースナッチ』の能力を完全に、そして十全にする環境そのものであった。
彼女の力はこれまでの比ではない。
逃げる必要もないと感じさせるほどの重圧。海底都市に住まう人々は紫煙によって次々と『スナーク』化されている。
猟兵達は転移したものの、彼等を傷つけることなく無力化しなければならない。
「無為なことだ……すべてがどうでもいいと思っているのに、私は『続き』を諦めきれないでいる。あの人の詩が響くのを待っている。ああ、どうしたって……」
その瞳に在るのは諦めではなかった。
無目的な『ミストレス・バンダースナッチ』であったが、その紫煙は今も放たれ、この海底都市に満ちている。
『スナーク』を生み出し続けている。
真実を虚構で塗りつぶすことしかできない。『サー・ジャバウォック』のように虚構から真実を生み出す力もない。
されど、彼女は己の紫煙で持って真実を虚構で塗りつぶし続ける。
構えたアンチマテリアルライフルのスコープが狙うのは猟兵。
「『不敗を象る名』でなく、『常勝を司る名』……行くがいい『イズミ』」
『紫煙の格闘家』が『スナーク』化した海底都市の住民たちの中に立つ。
彼女が具現化した『紫煙の格闘家』は構える。
そこにあったのは凄まじき重圧。周囲に満ちる紫煙の濃さに比例するように、その力は猟兵たちを圧倒する。
そして、『ミストレス・バンダースナッチ』の周囲に展開した『スナークシールド』が猟兵たちの攻撃をはばむだろう。
無為なはずの行い。
生きることも。
死ぬことすら億劫であったはずなのに、今もなお『ミストレス・バンダースナッチ』は『続き』を求めている。
己の存在意義を失ってなお、彼女は目の前に迫る猟兵と言うなの己の敵を滅ぼさずには居られない。
「これが私の本質なのだとしても……全てがどうでもいいとさえ思えてなお、私には在る。ああ、これが」
『復讐』という『黒き悪意』の連鎖である。
そうして、『ミストレス・バンダースナッチ』は諦観を越えた先にある強烈なる感情に引きずられるようにして引き金を引くのであった――。
儀水・芽亜
よくもまあ、逃げ回ってくれたものです。これで詰みですよ、ミストレス・バンダースナッチ!
「範囲攻撃」深睡眠の「属性攻撃」「結界術」「浄化」でサイコフィールドを展開。
スナーク達にはこれで眠ってもらいましょう。
ミストレスもまぶたが重くなってきたでしょう? 遠慮なく眠ってくださいな。
この格闘家スナークは、眠っているからといって鎧を剥いで元に戻せる手合いではないようですね。
となると、ミストレスから片付けるが得策。
手駒を前に後ろから狙撃するのが身上のご様子。しかし前衛は無力しました。
裁断鋏『Gemeinde』で「切断」攻撃や「貫通攻撃」を繰り出します。
まずは、その危険な煙管から切り落としてくれましょう。
海洋文明『アトランティス』の海底都市はドーム状に密閉されている。
これまで『ミストレス・バンダースナッチ』が潜伏していたのは、地下下水道迷宮のような半密閉の場所であった。
それは紫煙を手繰る事によって『スナーク』を生み出し、災禍を振りまいていた彼女の能力を十全に発揮できるものではなかった。
今ここに着て『ミストレス・バンダースナッチ』は強力な紫煙の力を発露させる。
紫煙は密閉された場所に満ちて、ドーム都市に住まう人々の全てを『スナーク』化させる。
わらわらと現れる『スナーク』化した住人たちは、猟兵にとって脅威であったことだろう。
彼等は無辜の人々である。
傷つけ、殺すことは猟兵にとって本意ではない。
だからこそ、儀水・芽亜(共に見る希望の夢・f35644)の瞳はユーベルコードに輝く。
「私の世界で勝手はさせません」
鴇色の陽炎を纏ったドーム状の結界、サイコフィールドが展開され、『スナーク化』した住人たちを睡魔でもって眠りに落として行く。
しかし、『紫煙の格闘家』は眠りに落ちない。
凄まじい踏み込みでもって芽亜に迫る。
そもそも『紫煙のの格闘家』は生物ではないのだろう。空想という名の虚構。真実からまろび出た虚構が『ミストレス・バンダースナッチ』によって形作られただけの存在でしかないからだ。
迫る拳の一撃をクロスシザーズで芽亜は受け止める。
この場に満ちる紫煙の濃さによって『紫煙の格闘家』の力は極限にまで高められている。
吹き飛ばされる体がきしみ上げる。
痛みが意識を覚醒させる。
目の前に迫る蹴撃を芽亜は躱して走る。
「この格闘家は……! 出しっぱなしというわけですか!」
となると『ミストレス・バンダースナッチ』から片付けなければならない。
「よくもまあ、逃げ回ってくれたものです。これで――」
詰み。
追い詰めたということである。しかし、その頬を掠めるのは弾丸の衝撃波。
『紫煙の格闘家』を前衛にして『ミストレス・バンダースナッチ』はアンチマテリアルライフルの弾丸を放り込んでくるのだ。
打ち込まれる拳と蹴撃。
身が軋む。
けれど、此処は芽亜の世界である。
サイコフィールドに満ちる鴇色の陽炎は夢幻のもたらす癒やしによって彼女の負傷を回復させていく。
結局の所、走るしかないのだ。
『紫煙の格闘家』を振り切って、放たれる弾丸すらもいとわずに前に進むしか無い。
「――あなたもまぶたが重くなってきたでしょう?『紫煙の格闘家』には通じなくても、あなたには通じる。だから、狙いが甘くなる」
「睡魔がなんだというんだ。私のこの胸にあるのはお前たちへの恩讐のみ。引き金を引くのに、必要なのはそれだけでいい」
睡魔に寄って『ミストレス・バンダースナッチ』の銃撃は精彩を欠いている。
だが、それでも当たれば十分に芽亜の体を吹き飛ばす威力がある。
踏み込む。
いつだって勝利を掴むためには傷を厭わぬ前進しかない。
放たれる弾丸をクロスシザーズが弾き、芽亜は『ミストレス・バンダースナッチ』へと軍刀をあわせたかのようなクロスシザーズの斬撃を振り下ろす。
紫煙を切り裂く斬撃は『ミストレス・バンダースナッチ』の体へと吸い込まれるようにして打ち込まれ、その血潮でもって鴇色の陽炎を濡らす。
彼女の瞳を見た。
其処に在ったのは諦観ではなかった。
無目的な無為なる時間つぶし。
それが『スナーク』の無限誕生。
しかし、たしかに己たち猟兵を見る彼女の瞳は復讐に塗れ、『黒き悪意』でもって芽亜を射抜いていた。
その『黒き悪意』をこそ芽亜は切り裂く。
人が進むために必要な感情はそれではないのだと知らしめるように――。
大成功
🔵🔵🔵
ドウジ・ユークレナ
ここであったが初めまして。
やっと追いついたのであります。
ミストレス・バンダースナッチ覚悟であります!!
やっぱりまだ事情が呑み込めないけどッ(ぁ)
今度は格闘家vs巨大蜘蛛でありますか…B級感全開でありますよ今日。
これ以上強くなられては困るので、『残像』の『存在感』で格闘家が見失った隙に、粘り蜘蛛糸鬼絡みで蜘蛛の糸をバンダースナッチのタバコを持つ腕に射出して『捕縛』し引き寄せたら、煙草を『盗み攻撃』でいただきであります。
直ぐに踏んで火を消すのでありますよ。
これで紫煙はこれ以上広がらないであります。
さあ、覚悟であります。
独鈷杵でぶん殴りであります。
斬撃が『ミストレス・バンダースナッチ』の体に傷を刻む。
赤い血潮が噴き出し、傷を負わせるのだ。
しかし、決定打ではないことをドウジ・ユークレナ(風渡り人・f36443)は知る。
未だ彼女を追い詰めたとは言えぬ状況。
海洋文明『アトランティス』の海底都市はドーム都市であり、完全に密閉されている。
『ミストレス・バンダースナッチ』の能力を完全に発揮させるには、このような完全密閉状況が必要であった。
これまで『ダストブロンクス』のような半密閉空間はあれど、この海底都市のような密閉空間はなかった。
能力の起点が紫煙である以上、彼女の紫煙が色濃く残り続けるこの場所こそが『ミストレス・バンダースナッチ』のホームでもあったのだ。
紫煙が次々と海底都市の住人たちを『スナーク』化させていく。
猟兵たちにとって時間が経てば経つほどに不利に立たされている状況でも在った。
「ここであったがはじめまして。やっと追いついたのであります」
ドウジはやっぱりまだ事情が飲み込めていなかった。
けれど、対峙する『ミストレス・バンダースナッチ』が打倒すべき存在であることは理解できている。
どんなに言葉で取り繕うのだとしても、目の前の存在は世界を滅ぼす存在である。
その瞳に復讐の色を見たのだとしても、ドウジには打倒しない理由がなかったのだ。
「――……」
紫煙満ちる海底都市にあって無言のまま打ち込まれる蹴撃。
その一撃は海底都市の地面を割る程の一撃。目の前にあるのは『紫煙の格闘家』であった。
『ミストレス・バンダースナッチ』が紫煙によって生み出し、紫煙の濃さによって力が増減する存在。
その一撃をまともに受けずとも、衝撃波が掠っただけでドウジは己の肉体が軋むのを感じた。
「今度は格闘家VS巨大蜘蛛でありますか……B級感全開でありますよ今日」
でも、それがいいのだろう。
その名前の並びならば、巨大蜘蛛は打倒される立ち位置であるが、そんなことを気にしていられる余裕はドウジにはなかった。
残像残す多脚の軌道によってドウジは『紫煙の格闘家』の拳や蹴撃を躱す。
けれど、己の速度が『紫煙の格闘家』を上回ることはなかった。次々と残像が打ち抜かれ、蹴撃に切り裂かれる。
さらには『ミストレス・バンダースナッチ』のアンチマテリアルライフルの銃弾が打ち込まれてくる。
未だ先行した猟兵のユーベルコードによって睡魔が抜けていないのだろう。その精度が精彩を欠いているのが僥倖であった。
「……今であります!」
ドウジは、その体躯より放たれた粘り蜘蛛糸鬼絡みによって、遠方より狙撃している『ミストレス・バンダースナッチ』が座す場所まで一気に自分の体を引き寄せさせるようにして飛ぶ。
前衛である『紫煙の格闘家』を打倒する暇はない。
今こうしている間にも『スナーク』化した人々が増えてきているのだ。これ以上は敵の思うつぼであった。
「『ミストレス・バンダースナッチ』、覚悟であります!!」
蜘蛛糸が放たれる。
その瞬間にドウジを狙うアンチマテリアルライフルの銃口の煌き。
「この距離なら外さないよ」
撃たれる。
そう思った瞬間、ドウジが行ったのは回避行動でもなければ、自分の身を護る行動でもなかった。
彼の多脚が独鈷杵を投げ放ち、『ミストレス・バンダースナッチ』の加えていた煙管を叩き落とすのだ。
最も厄介なのは、紫煙による『スナークシールド』である。それを発生させる煙管こそ今彼女の手から落とすべきだと判断したのだ。
銃声が響き渡りドウジの体を掠める銃弾が彼を吹き飛ばす。だが、即座に蜘蛛糸を吐き出し、『ミストレス・バンダースナッチ』との距離を詰める。
「これで紫煙はこれ以上広がらないであります。さあ、覚悟であります!」
独鈷杵を拾い上げ、その多脚で持って飛ぶ。
装填させる暇など与えない。
己の体躯がこのような姿形をしているのは、疾く駆け抜けるためである。
放たれた独鈷杵の一撃が『ミストレス・バンダースナッチ』の頭部に叩きつけられ、その体を傾がせる。
体の痛みは忘れればいい。
けれど、人の心に刻まれた痛みは消えない。だから、ドウジは如何なる事情があるのだとしても、それを許さぬと己の渾身を以て示すのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
馬県・義透
引き続き『静かなる者』で、陰海月に騎乗
追い付きましたよ。しかし、最後は密閉空間ですか…。
ええ、それはこちらとしても好都合でして。
UC発動。これはオブリビオンのみを攻撃する…つまりはミストレス・バンダースナッチ、あなただけを。
さらに、私は射かけ続けますけれど…さて、痛覚も麻痺している今、把握できるのかどうか。
格闘家の攻撃は、陰海月が見切ってカウンターしたいようなので、任せますね。
…ここで潰えるがいい。あなたの望む続きはもう、ないのですから。
※
陰海月、しゅしゅっと怪力カウンターする気満々。
「ぷきゅっ!」(煙たい!)
ぐらりと視界が揺らぐのを『ミストレス・バンダースナッチ』は感じただろう。
猟兵の一撃が己の頭部を捉えた。
血に視界がにじむ。
けれど、それでも彼女は今此処に在る。
ただそれだけで十分であった。構えるアンチマテリアルライフルの銃口は未だ迫る猟兵を見据えている。
「追いつきましたよ。しかし、最後は密閉空間ですか……」
そのスコープの先にある猟兵、馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の一柱『静かなる者』は呟く。
ここは海洋文明『アトランティス』の海底都市の一つ。
ドーム状の都市は完全に密閉されているからこそ、紫煙によって能力を行使する『ミストレス・バンダースナッチ』の能力は十全にして完全なるものとなっていた。
『紫煙の格闘家』は、彼女のユーベルコードに寄って生み出されている。
その素早さ、力強さは言うまでもない。
さらに悪いことには紫煙が海底都市の住民たちを『スナーク化』しているということだ。
時間が経てば、この海底都市の住人全てが『スナーク』となって猟兵達に襲いかかるだろう。
彼等を打倒することはできない。
「ええ、それはこちらとしても好都合でして」
迫る弾丸を呪詛振りまく黒い球体によって阻まれる。
それは、四悪霊・『廻』(シアクリョウ・メグル)によって生み出されたもの。
「廻れ廻れ。この霧よ、我らが敵に」
溢れる呪詛の霧は視界を塞ぎ、銃弾の射線をはばむ。
「ちっ――……こちらの動きを封じるつもりか。だが、『イズミ』!」
その言葉に反応するようにして『紫煙の格闘家』が奔る。『静かなる者』に迫る拳。
しかし、その一撃を受け止めたのは『陰海月』であった。
『ぷきゅっ!』
鳴く声と共に触手が拳のように『紫煙の格闘家』と打撃を交わす。
衝撃波が紫煙と呪詛の霧を吹き飛ばしながら、技の応酬が続く。『静かなる者』は『陰海月』が『紫煙の格闘家』の攻撃を見切ることを信じた。
拳、蹴撃。
そのどれもが鋭く重たいものであったけれど、それにカウンターを合わせる『陰海月』の触手は人のそれよりも多いものである。
たとえ、力で押し返されても数で押し返すことができる。
『ぷっきゅ!』
放たれた触手が『紫煙の格闘家』を押し返す。
「この霧……私だけを狙い撃ちにしているか」
「ええ、そのとおりです。あなただけを攻撃する呪詛。オブリビオンのみに有効な霧……痛覚が麻痺していますよね」
放たれる霊力の矢が『ミストレス・バンダースナッチ』に襲いかかる。
それらは雨のように彼女の瞳に宿った復讐の炎を濡らす。
消し切ることができないのは判っている。
けれど、それでも霊力の矢は『ミストレス・バンダースナッチ』を貫くだろう。どれだけ復讐に燃えるのだとしても、それは必ず潰えるのだ。
復讐が果たされようとも、果たされずとも。
どうあっても時の流れに薄まり、消えていく。
だからこそ、それは常にくべなければならない。己たちもそうである。オブリビオンに対する呪詛。
それを四人分束ねて存在する悪霊であるからこそ、何処までもどれだけ因果が廻ろうとも己達はオブリビオンを追い続けるのだ。
「……ここで潰えるがいい。あなたの望む『続き』はもう、ないのですから」
『スナーク』が見せる虚構を塗りつぶす真実。
そのどれもが泡沫のように消えていく定め。
定着することは何一つ無い。『スナーク』の名が残るのだとしても、それは『ミストレス・バンダースナッチ』や『サー・ジャバウォック』が望んだ形ではない。
これまでの戦いがそうであったように、『スナーク』の名の意味を変える。
猟兵たちの戦いはそういうものであると『静かなる者』は己の霊力を込めた矢でもって『ミストレス・バンダースナッチ』の体を射抜くのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
火土金水・明
「やっと、真打の登場ですね。この世界の平和を取り戻すために倒させてもらいます。」「念のため、同じ戦場で戦う味方に少しばかり回復を。それから、紫煙も浄化しましょう。」
【SPD】で攻撃です。
攻撃は、【鎧無視攻撃】と【貫通攻撃】を付け【フェイント】を絡めた【巷に金色の雨の降るごとく】を【範囲攻撃】にして、『ミストレス・バンダースナッチ』達を纏めて【2回攻撃】します。相手の攻撃に関しては【残像】【オーラ防御】で、ダメージの軽減を試みます。
「(攻撃を回避できたら)残念、それは残像です。」「私の役目は少しでもダメージを与えて次の方に繋げる事です。」
アドリブや他の方との絡み等は、お任せします。
『ミストレス・バンダースナッチ』にとって生きるも死ぬも等価値であった。
もしも、『サー・ジャバウォック』が存在していたのならば、それは等価値ではなかっただろう。
彼の望みを叶えるために彼のために働いただろう。
けれど、今や『サー・ジャバウォック』は存在していない。
彼だけが己の存在意義であったのだから。
「だから、私はきっとお前たちが憎いのだろうな。きっとこの感情はそういうものだ」
無目的に『スナーク』を生み出し続け、『続き』のために無為に時間を費やした。
きっと、猟兵の尽くを鏖殺せしめたところで、この復讐は終わらないだろうし、摩耗することもなかっただろう。
けれど、それが何の理由になるだろうか。
猟兵に潜伏場所を割り出された時、彼女は転移して逃げた。
己を逃した協力者の神すらも己を逃した。利害が一致したからであろうし、そこに打算以外の何物も介在してないかっただろう。
「だがな、私はきっと『スナーク』をこれからも生み出し続けるだろうよ。おまえたちに勝利しようとも。どうでもいい。死ぬも生きるも同じでも、きっと変わらない」
海底都市に満ちる紫煙から『紫煙の格闘家』が生み出され走る。
「やっと真打の登場ですね。この世界の平和を取り戻すために倒させてもらいます」
火土金水・明(夜闇のウィザード・f01561)の瞳がユーベルコードに輝く。
戦場に金色の雨が降り注ぎ、虹色の雷が『紫煙の格闘家』ごと『ミストレス・バンダースナッチ』を撃つ。
しかし、この紫煙満ちる完全密封状態のドーム都市にあって『ミストレス・バンダースナッチ』の力は十全以上のものを発揮する。
スナークシールドが虹色の稲妻を防ぐ。
「どうでもいいことだ。この世界が平和であったことなど僅かな時しか存在していない。戦いの繰り返し。それがこのヒーローズアースの本質だ。平和を勝ち取るための戦いがあった直後に新たなる争いが勃発する。そういう世界だからこそ」
己達は選んだのだとアンチマテリアルライフルの引き金を『ミストレス・バンダースナッチ』は引く。
放たれた弾丸が明を襲う。
残像を遺しながら明は戦場をかける。
「残念、それは残像です」
降り注ぐ虹色の稲妻と優しい雨は、『スナーク』化した住人たちには影響を及ぼさない。
纏めて攻撃することもできたかもしれないが、それをすれば海底都市の住人たちを傷つけることになる。
さらに其処に踏み込んでくる『紫煙の格闘家』の拳も厄介であった。
波状攻撃のように明をはばむ『ミストレス・バンダースナッチ』のユーベルコード。
迂闊に近づけない。
打ち込まれた『紫煙の格闘家』の拳がオーラ防御を砕く。
「私の役目は少しでもダメージを与えて次の方につなげることです」
どれだけ『ミストレス・バンダースナッチ』が十全な力を紫煙によって力を増しているのだとしても、それでも猟兵の戦いはいつだって繋ぐ戦いだ。
ここで彼女を消耗させることこそ明の戦いでもあった。
再び放たれる虹色の稲妻が『ミストレス・バンダースナッチ』と『紫煙の格闘家』に降り注ぐ。
この紫煙を振り払うことはできない。
けれど、それでも打ち込む虹色の稲妻は迸る。
己の限界を超えるまで、巷に金色の雨の降るごとく(ゴールドレイン)、明の瞳はユーベルコードに輝き続ける。
強大な敵を前にしても退くことはない。
どれだけ戦いが繰り返される世界であったのだとしても。
それがつかの間の泡沫の如き平和であったのだとしても。
望む人々が要る限り、世界は悲鳴を上げ続ける。
その悲鳴に応えるのが猟兵であるからこそ明は、その瞳を翳らせることはなかったのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
勝守・利司郎
追い付いたぁ。…何人かの猟兵仲間が先行ってんなぁ。
ま、それでも…オレも最後まで関わるんだけど。
続きねぇ。オレはあなたが求める者は知らねぇけど。だからと言って、力を抜く理由にはならない。
だって、オレも猟兵だからな。
さて、UC使用。式神使いで『鬱金香の葉』を動かして…攻撃していこう。
ああ、そっちの運気は下がりに下がってるからな…紫煙の格闘家の攻撃は避けるって。オレも拳士だしな。
んで、ミストレス・バンダースナッチへの攻撃は、その『鬱金香の葉』でやる。
ここは密閉空間なんだろ?なら…逃げきれるわけがないんだよ。ヒラヒラ舞うその葉は、敵を逃さないんだよ。
海洋文明『アトランティス』の海底都市は海底にあるが故に完全密閉されたドーム状の都市である。
その完全密閉が『ミストレス・バンダースナッチ』の力を十全以上のものにしていたことは猟兵たちにとって不利に働くものであった。
彼女の手繰るユーベルコードは3つ。
紫煙で生み出したアンチマテリアルライフルと『紫煙の格闘家』による前衛と後衛に別れた波状攻撃。
さらにはスナークシールドによる攻撃の無効化。
そして、紫煙による海底都市の住人たちの『スナーク化』である。
時間が経てば経つほどに猟兵達に不利になっていく。
すでに先行した猟兵たちが『ミストレス・バンダースナッチ』に打撃を与えているものの、それでも未だ彼女は健在であった。
勝守・利司郎(元側近NPC・f36279)は己の足元に打ち込まれたアンチマテリアルライフルの弾丸の衝撃波でもって彼女の力が未だ削がれていないことを知る。
「……何人かの猟兵仲間が先に行ってんなぁ……そう思っていたけど、これは」
強すぎる。
そう感じる。これが無目的に『スナーク』を生み出し続けた『ミストレス・バンダースナッチ』の気迫なのだろうかとさえ思えた。
見据える彼女の瞳にあるのは諦観ではなかった。
あったのは復讐の瞳だけであった。己の目的を、存在意義を打倒した猟兵達に対する、その激烈なる感情が利司郎を射抜く。
「ま、それでも……オレも最後まで関わるんだけど」
打ち込まれた弾丸を躱すも、踏み込んでくる『紫煙の格闘家』の拳を花の葉をもした式神でもって防ぐ。
拳は凄まじい威力でもって結界すらもぶち抜いてくるのだ。
まともに戦っては勝ち目がないと思わせるほどの力量。
されど、利司郎は己が何者であるかを知っている。
そう、彼は中ボスである。何の、とは言わずもがなである。彼自身が仕えるは、とあるゲームの悪女。その側近であった彼は中ボスと言っても差し支えなかった。
己の忠義こそが己の本質。
そういう意味では『ミストレス・バンダースナッチ』の抱える復讐の炎は、彼にも理解できるものであったのかもしれない。
「私の求める『続き』のために。そして、私の存在意義を奪ったお前達に復讐するために。私はきっと止まらないのだ」
「『続き』ねぇ。オレはあなたが求める者を知らねぇけど。だからと言って――」
力を抜く理由にはなっていないと利司郎は言う。
そう、己は確かに中ボスである。
しかし、同時に己は猟兵であると知る。
花の葉が渦巻くようにして利司郎を包み込んでいく。その向こう側に彼の瞳がユーベルコードに輝いている。
「あなたから退いてくれると、楽なんだけど……そっか。そうだよな。そういう選択肢はないよな」
迫る『紫煙の格闘家』と利司郎は正面から打ち合う。
拳と拳が激突し、その間に挟まれた葉の式神のちからを得て利司郎は己の力を開放する。
逃走封じ。
それこそが中ボス、側近『花蝶神術拳士・トーシロー』(チュウボスカラハニゲラレナイ)の力。
あらゆる逃走に必要な運気を奪い取る。
『紫煙の格闘家』の拳がひび割れ、砕ける。
そう、彼は奪った幸運の総量に応じた力を得ていく。
どれだけ力量差があるのだとしても、それを埋める力が彼には在るのだ。
「お前たちと私は滅ぼし滅ぼされるだけの間柄だ。逃げるという選択肢を選び続けてきた私が……そもそも私らしくなかったのだ。逃げたのは、隠れたのは、お前たちに終わらされたくなかったから。あの人の詩の『続き』は必ず響かせる……!」
アンチマテリアルライフルから放たれた弾丸を式神の葉が幾重にも重なり合って防ぐ。
衝撃波が花の葉を吹き飛ばす。
けれど、その葉は密閉空間に舞い散るばかりである。
「オレは猟兵だからな。だから、あなたを滅ぼす。逃さない。そういう力なんでね、これが」
『紫煙の格闘家』が放った一撃をひらり舞うように利司郎は躱し、己の式神に命ずる。
この密閉空間はたしかに『ミストレス・バンダースナッチ』のちからを底上げするだろう。
けれど、同時にそれは逃げ場がないということでもある。
彼の手繰る式神たちは一斉に『ミストレス・バンダースナッチ』を狙う。
逃さない。
ただそれだけが利司郎の能力。
ゆえに、彼が為さしめると決めた以上『ミストレス・バンダースナッチ』は逃さない。
ここで滅ぼす。
これ以上無為なる『スナーク』を生み出さぬために。
放たれた式神の一撃が『ミストレス・バンダースナッチ』に襲いかかり、その紫煙を吹き飛ばすのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ジャスパー・ドゥルジー
深めに自分の腕を食いちぎり【ジャバウォックの詩】
全身から炎を噴出させて強引に住人達やイズミを突破
折角あっちがやる気になってくれてンだ、ここで時間かけて逃がすわけにゃいかねえ
負った傷は炎で強引に塞ぎながらとにかく距離を詰める
狙撃中に紫煙の盾、遠距離じゃこっちが圧倒的不利だ
奇遇だねェ
俺のオウガもジャバウォックってのよ
あんたの敬愛する男ほど強かねェだろうが、そんでも
積み重ねりゃあんたを斃す事くらいは出来るぜ
炎纏ったナイフ(驟雨)の斬撃をひたすら繰り返す
奴の防御の隙を縫うようにフェイント交え
虚無も、諦念も、からっぽの器も
全部燃やし尽くしてやるぜ
いつまでも逢えねえのは、辛いだろ?
これを献身と呼ぶのならばクソくらえである。
『ミストレス・バンダースナッチ』にとって、それは存在意義でしかない。
己が在るための理由。
それが『サー・ジャバウォック』であったのだから。
だから、これは無為なる行いであると知っている。紫煙満ちる海底都市はたしかに己の力を十全に発揮させる。
「虚のような体であっても、貴方の詩は響かない」
生きることも。
死ぬことも。
どうでもいい。どうでもよかったのだ。だが、相対する猟兵たちを前にして、それはもはやどうでもいいとは言えぬものであった。
アンチマテリアルライフルを構える。
スナークシールドが展開され、己を護る。
『紫煙の格闘家』が大地を蹴って迫りくる猟兵に拳を繰り出す。そのさなかにありながら『ミストレス・バンダースナッチ』の瞳は冷静であった。
「あの人の、『サー・ジャバウォック』の詩を、貴様ごときが歌うな――!」
響くは、ジャバウォックの詩(ジャバウォッキー)。
煌めくユーベルコードは紫煙の中にあってもなお輝く。
ジャスパー・ドゥルジー("D"RIVE・f20695)は己の腕を食いちぎり、前進から炎を噴出させながら紫煙を吹き飛ばし、燃やし、あらゆる障害を排除する。
『スナーク』化した住人たちを吹き飛ばしながら『紫煙の格闘家』すらも排除しながら彼は一直線に走る。
オウガの封印を開放し、黒い炎が紫煙を埋め尽くしていく。
「奇遇だねェ。俺のオウガもジャバウォックってのよ」
ジャスパーは笑う。
黒い炎をまといながら走る姿は、何処か自虐的でもあったことだろう。
己の血肉を捧げることに寄って身に宿したオウガの封印を解く。響くはジャバウォックの詩。
けれど、その詩は『ミストレス・バンダースナッチ』の知るものとは違う。
違うのだ。
「あんたの敬愛する男ほど強かねェだろうが、そんでも積み重ねりゃあんたを斃すことくらいはできるぜ」
「勝ち負けなど私にはどうでもいいことだ。『私』にはな」
放たれるアンチマテリアルライフルの弾丸がジャスパーを穿つ。
だが、炎まとったナイフの斬撃が弾丸を切り裂く。いや、激突し、火花を散らしながら砕けていく。
ナイフの刀身はひしゃげ、炎の中に消えていく。
次の瞬間にジャスパーは別の刃物を手にとっていた。俄か雨の如き鋭利な金属の応酬。
「だが、あの人は『サー・ジャバウォック』の詩は」
「虚無も諦念も、からっぽの器も」
「私の中に響かない! 貴様が、貴様たちが私から奪ったからだ」
「全部燃やし尽くしてやるぜ」
弾丸がジャスパーの身を穿つ。
黒い炎が傷跡を埋めていく。どれだけ痛みを得たとしても、止まらぬことこそが猟兵の本分であるというのならば、それは強引そのものであったことだろう。
「イカれてるな、貴様は」
「――イカれてる? 上等だ」
ジャスパーの血肉が深々と食いちぎられる。それは己の中にあるオウガの本能であったのかもしれない。
黒いの炎が巨大な腕のように振りかぶられる。手にしているのは束ねられたナイフの束。
一撃で倒せぬというのならば、さらに打撃を打ち込む。
スナークシールドが束ねたナイフの切っ先を受け止めた瞬間消失する。さらに黒い炎が渦を巻くようにして『ミストレス・バンダースナッチ』を包み込んでいく。
己の存在意義たる者を失った者は何もかも見失う。
憎悪の、復讐の炎だけが無目的為る者の寄る辺と為るだろう。けれど、それはあまりにも悲哀に満ちている。
だからこそ、ジャスパーは己の炎でもって送る。
「いつまでも逢えねえのは、辛いだろ――」
大成功
🔵🔵🔵
大町・詩乃
さあ、決着をつけましょう。
密閉されたドーム都市でも、水分があれば雨は降らせます。
と天候操作で紫煙を雨で洗い流して各種能力を弱体化。
空中浮遊と自身への念動力で宙に浮き、ミストレスを捕捉してUC:煌月舞照で包囲攻撃。
ミストレスの狙撃は第六感で予測して、空中戦・見切りで華麗に宙を舞って回避。
イズミの攻撃は上記回避に加えて、オーラ防御を纏った天耀鏡の盾受けで防いだり、化勁(見切り・功夫・受け流し)でいなしたりで対応。
スナークさん達はマヒ属性攻撃・全力魔法・高速詠唱・範囲攻撃で傷つけずに無力化します。
愛する相手を滅ぼされた復讐という気持ちは判らなくは無いですが、被害は出させません。骸の海で再会しなさい。
黒い炎が渦巻く海底都市にあって紫煙は未だ消えない。
満ちる紫煙は『ミストレス・バンダースナッチ』の力の源である。密閉空間でこそ、紫煙は立ち消えることなく残り続ける。
海底都市の住人たちを『スナーク』化し、さらには『紫煙の格闘家』の力を底上げしていく。
どうしようもないほどに鮮烈なる力である。
しかし、『ミストレス・バンダースナッチ』にとって、それはどうでもいいことであったのだ。
彼女にとって『サー・ジャバウォック』とは存在意義そのものであった。
彼がいなければ存在している意味すら見いだせない。さりとて死ぬも生きるも億劫になってしまう。
存在意義を失った者は、無目的に為る。
無為なる行いしかできない。時間つぶしだと彼女は言った。その意味を大町・詩乃(阿斯訶備媛・f17458)は知っている。
己だってそうであろう。
信仰無き神は神性を失う。存在意義を失うのと同義であった。
だからこそ。
「さあ、決着をつけましょう」
詩乃の神性は、海底都市に雨を降らせる。空気が存在している以上、水分は必然。ならばこそ、神としての力を持ってドーム都市に雨を降らせ、紫煙を押し流していく。
だが、それを完全にさせてくれるほど『紫煙の格闘家』は甘くはない。
踏み込み、その拳を詩乃に見舞う。それを彼女は空中浮遊で持って宙に浮かぶ。もしも、『紫煙の格闘家』が生み出された者でなければ、大地すら蹴って己に迫ってきたことだろう。
「……『ミストレス・バンダースナッチ』の想像から生み出された存在。ですが!」
蹴撃の衝撃波が空中にある詩乃を襲う。
それをオーラでいなしながら、迫る弾丸を躱す。
隙がない。波状攻撃を仕掛けてくる。『紫煙の格闘家』を躱せなければ、『ミストレス・バンダースナッチ』の弾丸が飛んでくる。
さらに『スナーク』化した住人たちが詩乃を襲うだろう。空中こそが彼女の戦場であった。
「愛する相手を滅ぼされた復讐という気持ちは分からないでもないですが」
「愛? これが愛だと。私は、私の存在する意味を奪った貴様たちが許せないだけだ。ああ、そうさ。私の無為なる時間つぶしはこのためにあったのだといえるほどにはな」
アンチマテリアルライフルの銃口が詩乃を狙う。
放たれる弾丸が詩乃眉間を狙う。
打ち込まれた弾丸は凄まじい勢いで彼女を射殺さんとしている。躱せない。地上からは『紫煙の格闘家』の放つ衝撃波が。
オーラでは防げない。
「煌く月よ、空を舞って世界を照らし、清浄なる光と刃で悪しき存在を無に帰しなさい」
その瞳がユーベルコードに輝く。
煌月舞照(コウゲツブショウ)。詩乃の神力で創造した薙刀が弾丸を防ぐ。オリハルコンの刀身が砕けて煌めく。
弾丸の威力は『ミストレス・バンダースナッチ』の抱く恩讐の強さ故であろう。
だが、それで十分だった。
詩乃の頬を掠める弾丸。
軌道さえずらせればいい。己は走るしかないのだ。どれだけ目の前の敵に復讐の念を向けられるのだとしても。
それでも詩乃には為さねばならぬことがある。
『今』を生きる者たちを『スナーク』という虚構に落とさせてはならない。
詩乃は煌めく薙刀の群れと共に『ミストレス・バンダースナッチ』に迫る。スナークシールドが展開され、薙刀と激突して消滅していく。
「被害は出させません。骸の海で再会しなさい」
生きる意味がなく、死ぬ意味もない。
けれど、その滅びこそが彼女の求めたものであるのならば、と詩乃は万感の思いを込めて手にした薙刀の一撃を『ミストレス・バンダースナッチ』に叩き込むのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
バルタン・ノーヴェ
POW アドリブ歓迎!
バンダースナッチ。
アナタの想いが何であれ、この世界の皆様を苦しめ、その生活を脅かすならば。
ワタシはアナタの前に立ちふさがり、打ち倒しマース!
勝負デース!
狙撃銃の貫通力もさることながら、紫煙の捕捉能力もスナークにされた住民の方々も、厄介であります。
しかし、煙には良く効くものがあります!
「六式武装展開、風の番!」
見えざる風の手によって煙を払い、スナークを押しのけて進みマース!
……アンチマテリアルライフル。
まっすぐ飛んでくるというのなら、その銃口から射線を見極め、ファルシオンを斜めに構えて弾丸を受け流すであります!
次弾装填の隙をつき、風の手で彼奴を捕らえ、斬りかかるであります!
叩き込まれた薙刀の一撃が『ミストレス・バンダースナッチ』の胴を深く貫いていた。
血潮が溢れる。
紫煙が満ちる海底都市にあって、その紫煙は霧消することなく穿たれた胴を塞いでいく。
手にしたアンチマテリアルライフルを杖のように使いながら彼女は未だ立っていた。
生きる意味も、死ぬ意味も見いだせぬ無為なる時間つぶしであったのならば、もう終わってもいいはずだった。
しかし、彼女の足を止めぬのは、その胸にいだいた復讐だけのためであった。
どれだけ後ろ向きな感情であったのだとしても、彼女は止まらない。止められるわけがない。
「私は、『続き』をする。どれだけ世界に逆らうのだとしてもだ。『スナーク』はこれからも生まれ続ける。あの人の、詩が響くその時までは」
紫煙が噴出する。
それが『ミストレス・バンダースナッチ』の本領であったのかもしれない。
密閉空間であるドーム都市には紫煙が再び満ちていく。『スナーク』化した住人たちが走り出す。
虚構の怪物。
その力は一般人であったとしても、怪物と呼ぶに相応しい力となって猟兵たちを苦しめるだろう。
「六式武装展開、風の番!」
響く声がある
それはバルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)の声であった。
紫煙の向こう側にバルタンの瞳がユーベルコードに輝く。
圧縮された空気で作られた手が戦場を走り抜ける。否、その手が扇ぐように紫煙を振り払っていく。『スナーク』化した住人たちを押しのけバルタンは走る。
「バンダースナッチ。アナタの想いが何であれ、この世界の皆様を苦しめ、その生活を脅かすならば」
「私がいなくともこのヒーローズアースは戦いの繰り返しの歴史だ。私を止めても、また新たな戦いが始まるだろうさ。それがこの連綿と紡がれてきたこの世界の宿命なんだよ」
互いの視線が絡まる。
その言葉は真実なのだろう。神々の戦いが人々の戦いに移り変わり、ヒーローとヴィランの戦いへと変わる。そして、地球と異星人との戦いに変わって行く。
ならば、たしかに戦いは終わらないのかもしれない。
「つかの間の平和にしかならぬのだとしても、ワタシはアナタの前に立ちふさがり、打倒しマース!」
アンチマテリアルライフルの銃口が己を狙っているとバルタンは理解していた。
しかし、弾丸である以上進むは直線。
目の前に『紫煙の格闘家』が迫る。圧縮された空気で作られた手が拳を受け止める。放たれた拳の衝撃を利用してバルタンは飛ぶ。
高く飛ぶ。
『ミストレス・バンダースナッチ』が狙っている。
だが、その弾丸は銃口よりはなたれ直線で進む。
告風楼(コンプレスド・エアー・アームド)はもはや吹き荒ぶことはない。
ならば、己を護るものはない。
放たれる弾丸をバルタンは見ただろう。手にしたファルシオンの刀身が弾丸を弾く。いや弾けていない。刀身が砕けた。斜めにして受け流してもなお、この威力。衝撃波がバルタンの身を撃つ。
しかし、それでも止まらないのだ。
「止まらないか、これでも」
「勝負デース!」
初撃を防いだ。ならば、風の手が伸びる。逃しはしないとバルタンは『ミストレス・バンダースナッチ』の体を拘束し、砕けたファルシオンの刀身を振るう。
渾身の一撃は『ミストレス・バンダースナッチ』の身に袈裟懸けの傷を刻む。
たとえ、戦いが繰り返す歴史なのだとしても、バルタンはこの世界の人々が強い者たちであると知る。
ヒーローが生まれ、ヴィランが生まれ、綯い交ぜになった時ヴィジランテが生まれたように。
人の心は常に前進しているのだ。
たとえ遠回りであったとしても、そこに進む意志があるかぎり決して人の歴史は途絶えることがないのだと己の一撃にバルタンは込めるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
夜刀神・鏡介
流石にオウガ・フォーミュラだけあってその能力は強力無比
此処まできても、追い詰めたとは言えない状況だ
だが、勝つさ。それが為すべきことなのだから
神刀を手に、弐の型【朧月】の構え。神気を纏う事で身体能力を強化しつつ、周辺の紫煙を浄化していく
住民のスナーク化を考えればあまり長い時間はかけられないが、対処すべき事柄は多い
落ち着いて冷静に敵の動きを見極め、受け流していこう
住民たちへは峰打ちや素手の打撃で気絶させる
格闘家には加減をする必要もないのできっちり斬撃を叩き込み
狙撃銃の攻撃は斬撃波で迎撃。但しシールドによる攻撃無力化を警戒して同時に回避
一手ずつ確実に追い詰めて、最後は一気に切り込んでいこう
斬撃の一撃が『ミストレス・バンダースナッチ』を切り裂く。
穿たれた胴を塞ぐ紫煙が傷跡に満ちていく。
この密閉された空間にあって『ミストレス・バンダースナッチ』の力は凄まじいものへと昇華されていた。
だが、本当にそれだけであったのだろうか。
夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)は感じていたかもしれない。
目的を見失い、無為に時間つぶしに存在し続けるだけであった『ミストレス・バンダースナッチ』。
本当にそうであったのならば、すでに倒れているはずである。
生きる意味も、死ぬ意味も見いだせぬまま、無為に消滅していたはずである。
けれど、彼女は未だ立っている。どれだけ猟兵たちの攻撃にさらされ、致命傷に近い一撃を受けてなお、その身は崩れず紫煙を噴出させ続けているのだ。
「私は、どうでもよかったんだ。本当なんだ。あの人が居ない今に意味はないから」
しかし、その瞳は諦観ではなく憎悪に塗れている。
『サー・ジャバウォック』を殺した猟兵達に対する憎悪に燃えている。
紫煙が『紫煙の格闘家』を作り出し、海底都市の住人たちを『スナーク』化させていく。
それを鏡介は神刀を手に対峙する。
「此処まで来ても、追い詰めたとは言えない状況だ。だが、勝つさ。それが為すべきことなのだから」
煌めくはユーベルコード。
開放された神刀の神気が紫煙を浄化していく。
だが、時間はかけられない。海底都市の住人たちが『スナーク』化させられている以上、時間が経つにつれて猟兵達は追い詰められていく。
手がつけられぬことになる前に勝負を決めなければならない。
焦ることはできない。
時間がないのだとしても、冷静さを失っては負ける。そういう戦いであると鏡介は『スナーク』化した住人たちを峰打ちと素手による打撃で気絶させながら紫煙くすぶる戦場を走る。
『紫煙の格闘家』が迫る。
放たれる拳は只者ではないことを示している。衝撃波が頬を撫でる。見切り。それが今の鏡介の最大の武器であった。
彼の拳は武器で受ければ、恐らく砕かれる。
ならばこそ、見切り躱し、その上で斬撃を見舞う。
「――狙撃!」
「外した……!」
鏡介は冴え渡る感覚でもって銃撃を躱す。先行した猟兵たちの打撃がなければ、今の狙撃で終わりだっただろう。
けれど、猟兵の戦いは常に繋ぐ戦いだ。
いつだってそうだ。猟兵の個としての力はオブリビオンに及ばない。それでも強大極まりない相手を己たちは打倒してきた。
その理由は一つだ。
繋ぐ戦いをしてきたからだ。ただ一人で勝てなくとも、後に繋ぐからこそ、強大な敵を打倒してきた。
「一手ずつ確実に、だ。『ミストレス・バンダースナッチ』。これが猟兵の戦い。お前の言うところの『サー・ジャバウォック』が最強たり得ても、届かなかった力だ」
煌めくは、弐の型【朧月】(ニノカタ・オボロヅキ)。
鏡介は見た。
己に銃口を向ける『ミストレス・バンダースナッチ』の瞳に燃える炎を。
それが紫煙ではなく、燻り狂うような怒りであることを。
虚の中にあった『ミストレス・バンダースナッチ』の瞳が揺らめいている。怒りは確かに力を増す。
けれど、揺らぎを生み出すものである。
だからこそ、鏡介は駆け抜ける。引き金を引くよりも早く駆け抜け、その神刀の刀身を届かせるのだ。
すでに鏡介の前に敵はいない。
その背にこそ敵を背負う。
斬撃の一撃が血風を呼ぶように迸る血潮を『ミストレス・バンダースナッチ』から噴出させるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
バーン・マーディ
機神搭乗
奴がオウガフォーミュラ
諦念を気取りながらも尚諦めきれず抗うか
良い
我は貴様の敵だがその叛逆を祝福しよう
だが…貴様の叛逆が世界とヴィランを滅ぼすのであれば
それを見逃すことはできぬ
故に…骸の海へと還さん
我はバーン・マーディ
ヴィランである
【戦闘知識】
周辺の紫煙の状況と敵の動きと癖を把握
【オーラ防御・属性攻撃】
炎のオーラを展開して周囲の紫煙を可能な限り焼き払う
UC発動
破壊のオーラを纏い飛び回りながら紫煙も破壊
【砲撃】
破壊の力を込めた弾丸を乱射しスナーク化した住民を迎撃(殺さない程度に加減
【武器受け・カウンター】
格闘家は反撃で迎撃
【二回攻撃・怪力・鎧無視攻撃】
軍神の剣でオーラを込め連続斬撃
破城神機『マーズ』が海底都市に降り立つ。
それは万物を分解する破壊のオーラを纏いて威容を知らしめるものであった。
城壁の破壊者(ソード・オブ・アレース)。
異名足り得るユーベルコードにまで昇華された力。煌めくアイセンサーが紫煙くすぶる海底都市の空気を切り裂く。
「奴がオウガ・フォーミュラ。諦念を気取りながら尚諦めきれず抗うか」
バーン・マーディ(ヴィランのリバースクルセイダー・f16517)は『マーズ』のコクピットから『ミストレス・バンダースナッチ』を見下ろす。
先行した猟兵たちの打撃によって、その体は傷つている。
死ぬ意味も生きる意味も見いだせぬ虚の如き瞳。
されど、その瞳に宿る炎の色をバーンは知る。あれは復讐者の瞳である。どれだけ口にした言葉が本当なのだとしても、その瞳に宿る炎だけが真実であったのだ。
どうしようもないほどに燃え上がる復讐の炎。
「良い。我は貴様の敵だが、その叛逆を祝福しよう」
「戯言を。私の前に立つ猟兵は、邪魔なだけだ。どれだけ私の生きる意味がないのだとしてもだ」
紫煙によって生み出された『紫煙の格闘家』が『マーズ』に迫る。
炎のオーラが迫る『紫煙の格闘家』を吹き飛ばす。
同時に『スナーク』化された住人たちをも吹き飛ばして飛翔する。
万物を分解するオーラを放つ『マーズ』にとって紫煙は焼き払うものであった。この紫煙が『スナーク』の無限誕生をなしているのならば、それを焼き払うことこそ、このユーベルコードにまで昇華した力の本領であった。
「貴様の叛逆は世界とヴィランを滅ぼすもの。それを見逃すことはできぬ」
ヴィランとして生きる存在。
ヒーローではなく。
世界を救うのは、いつだってヒーローの本分であったかもしれない。
けれど、バーンにとってはそうではない。
悪には悪の正義があると彼は言う。
「故に……骸の海へと還さん。我はバーン・マーディ。ヴィランである」
『マーズ』が『紫煙の格闘家』をその有り余る破壊のオーラと巨躯でもって叩き伏せる。
迫る弾丸を万物を分解する破壊のオーラでもって消失させる。
目の前にあるのは破壊の体現者である。
どれだけあらゆる物質を破壊する弾丸であろうとも、万物を破壊するオーラの前には霧消するしかない。
「私にはどうでもいいことだ。お前がヒーローであろうが、ヴィランであろうが」
そう、どうでもいいことなのだ。
正義も悪もない。
彼女にとって唯一にして絶対であったのが『サー・ジャバウォック』であったのだから。それを失われた今、彼女にあるのは虚無でしかなかたのかもしれない。
けれど、それは違うのだとバーンは機神の剣を振り上げる。
万物を破壊するオーラは猛攻となって『ミストレス・バンダースナッチ』を襲う。
「マーズよ、破壊の神としての力を見せるが良い。今ここに叛逆の刃を突き立てん!!」
軍神の剣が振るわれる。
圧倒的な力の奔流と共にスナークシールドを砕きながら、無効化されぬ剣の一撃が『ミストレス・バンダースナッチ』を吹き飛ばす。
その恩讐を否定はしないだろう。
彼女に在ったのは、それだけが今に在る意味であり、意義であったのだから。
故にバーンは言うのだ。
「これが我の祝福だ――」
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
海底都市の住人を…!
……用途申請、非戦闘員の保護及び脅威の排除
電脳禁忌剣、万象の素粒子を蹂躙する権能解放
剣を一振り
紫煙を構成する素粒子を只の水分の霧に変換
索敵機能を無力化
スナーク達の足元を泥濘に変換し動き封じ
霧から飛び出し狙撃手へ接近
嘗ての大戦、私は『サー・ジャバウォック』と相対しました
故に騎士として、その銃口と私は向き合わねばなりません
されど…
センサーの情報収集と瞬間思考力にて見切るは銃口と引き金に掛ける指の動き
発射タイミングに合わせ剣で武器受け
素粒子干渉で弾丸を花びらに変換
無力化し斬り払い
如何なる理由あろうと、無辜の民を脅かすなら
邪悪なる虚偽の怪物として討ち果たすのみ!
返す一刀にて斬り捨て
『ミストレス・バンダースナッチ』の放つ紫煙は『スナーク』を誕生させるものである。触れたが最後、海洋文明『アトランティス』の海底都市の住人たちは『スナーク』へと変貌する。
全ては虚構が真実を塗りつぶすかのごとく。
『ミストレス・バンダースナッチ』が望むのは『スナーク』の誕生であるが、それは無為なる時間つぶしに過ぎない。
彼女にとって今意味のないことである。
『サー・ジャバウォック』があればこそ、彼女は己の存在意義を見出しただろう。
しかし、それは既に失われたものである。
猟兵たちの打撃は確かに彼女に致命傷と呼べる傷を刻み込んでいる。本当に彼女に生きる意味も死ぬ意味も見いだせぬという諦観だけがあるのならば、すでに消滅していたことだろう。
「……用途申請、非戦闘員の保護及び脅威の排除」
電脳禁忌剣に告げる言葉は短かった。
猟兵達に残された時間は多くはない。
この密閉された空間に在って『ミストレス・バンダースナッチ』の力は十全以上のものとなっている。
満ちる紫煙は海底都市の人々を『スナーク』化し、作り出した武装と『紫煙の格闘家』の力は凄まじいものとなっている。
トリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)はそれを承知の上で電脳禁忌剣の機能を開放する。
「銀河帝国未配備A式形相操作兵装(アレクシアウェポン・パーティカルドミネーション)……素粒子への干渉を此処に」
剣を振りかぶった瞬間、万象の素粒子を蹂躙する権能を開放する。
アイセンサーが煌き紫煙が『スナーク』化をもたらすのならば、海底都市の住人たちをこそ己は救わねばならないとトリテレイアは己が狙われることを厭わずに紫煙を振り払う。
それが決定的な隙になったことは言うまでもない。
紫煙を構成する素粒子を只の水分の霧に変換し、己の位置を探る機能を無力化する。
だが、その煌きこそがトリテレイアの所在を知らせるものであったことだろう。
霧の向こう側からアンチマテリアルライフルの銃口が煌めくのをトリテレイアは見た。
半たれた弾丸が己の頭部の左を吹き飛ばす。
電脳にエラーが走る。
だが、アイセンサーは未だ生きている。突き立てた電脳禁忌剣が海底都市の地面を泥濘に変えて『スナーク』化した住人たちの動きを封じ霧から飛び出す。
半壊した頭部は火花を散らしている。
「嘗ての大戦、私は『サー・ジャバウォック』と相対しました。故に騎士として、その銃口と私は向き合わねばなりません」
打ち込まれる弾丸をトリテレイアはアイセンサーで捉えながら戦場を疾駆する。
己の敵が誰かの愛する者であるという可能性を考えなかったわけではない。
誰かの大切なものが己の敵になる。
それは戦いの常であろ。それが戦いの歴史を紡ぐということでもあったのだ。連鎖は続く。誰かを打ち倒せば、誰かが泣く。
「どうでもいいことだ。そんなことは。貴様が騎士として私の前に立ちふさがるのだとしても」
『ミストレス・バンダースナッチ』の銃口が煌めく。
その瞳を真正面からトリテレイアは捉えただろう。諦観でもなければ、虚無でもない。あるのは復讐の炎。
激情の如き昏き炎。
引き金を引く瞬間、トリテレイアはひとりごちる。
されど、と。
されど己はこの道を往かねばならぬと。
騎士として、と言うのであればこそ逃げることはできない。振るわれた剣が弾丸を切り裂く。
刀身が砕けようとした瞬間、素粒子干渉によって弾丸が花びらに変換される。刀身は再構築され、その煌きでもって花びら舞い散る中を疾駆する。
「いかなる理由があろうと、無辜の民を脅かすなら」
「理由など無いさ。これはただの時間つぶしだからな。私が死ぬまでの間の、ただの戯れだ。だが――」
これは復讐でもあるのだ。
はっきりとしていることだ。どうでもいいことなどこの世の全てであったが、どうでもよくないことが唯一だけあった。
『サー・ジャバウォック』を屠った猟兵を許せないというその一念がアンチマテリアルライフルの銃口をトリテレイアに向ける。
「邪悪なる虚無の怪物として討ち果たすのみ!」
放たれた剣がアンチマテリアルライフルの銃身を切り裂き、返す刃で『ミストレス・バンダースナッチ』の体を引き裂く。
血潮が躯体を濡らす。
だが、それでもトリテレイアは進まねばならない。
一度血に塗れたのならば、それを濯ぐにはより多くを救わねばならないのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!
んもー
やることが多い!
広がれ拡がれボクの[影]
都市内に十分に広げたら[餓鬼球]くんたちを解き放って…すぅーーっ!と紫煙を吸ってもらう
まあ全部は無理でもボクへの追跡を振り切れるくらい吸ってもらえば十分!
後は【第六感】に任せて格闘家くんも射線も躱していって彼女に接近して…UCでドーーンッ!!
とその瞬間前に、広げておいたボクの[影]に一帯の紫煙云々を収納!これは攻撃じゃないよね!ないことにする!
キミのなかに真実一つ…
そう…好きだったんだね?
ぇー…ダメ?そういうことにしとこうよ!恋ってそういうもの!
そう…虚構や虚無から真実(ほんとう)が産まれることだってある
ボクは祝福するよ!
海洋文明『アトランティス』の海底都市に広がるのは紫煙ばかりではない。
何処からか溢れ出す影に『ミストレス・バンダースナッチ』は傷口を紫煙で覆いながら気がついた。
「……なんだ、この影は」
彼女にとって生死は意味のないことであった。
すでに生きる目的は失われているし、かといって死ぬ理由も見つけられない。
どこにも彼女の存在意義はなかったのだ。
あるのだとすれば虚無。
しかし、それすらも虚構である。このまま消えるまでの時間を無為に潰す。それが『スナーク』を無限誕生させる理由でも在ったのだ。
「んもーやることが多い!」
ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)は喚くようんしながら広げた影より球体たちを解き放ち、その口裂より紫煙を吸い上げていく。
全てを吸い上げることはできないだろう。
けれど、わずかでもいい。
己への追跡をそらすことができたらいいとロニは思っていたのだ。
「猟兵……相変わらず何処からでも湧き出してくる……貴様たちのそういう戦いにこそ『サー・ジャバウォック』は敗れたのだろうな」
『ミストレス・バンダースナッチ』の瞳にあるのは復讐の炎だけだ。
それ以外は必要ない。
狙いつけるスコープに覗くロニに襲いかかる『スナーク』化した住人たちや『紫煙の格闘家』が決定的な隙を生み出すまでそう時間はかからなかった。
だが、それを覆すように神撃(ゴッドブロー)の拳が叩きつけられる。
信心無き者にも神々しさを感じさせる拳の一撃は、広げていた己の影に紫煙の尽くを抑え込む。
この紫煙が『ミストレス・バンダースナッチ』のちからを高めるものであるというのならば、これを減らす。
もしくはなかったことにする。
「私の紫煙を、このドーム状の都市から減らすことが目的か……だがな」
放たれる弾丸がロニを狙う。
穿たれた一撃は球体によって防がれたが、それすらも貫通してロニの肩を穿つ。
痛みが走るだろう。
けれど、ロニは笑って言うのだ。
「キミの中に真実一つ……そう……好きなんだよね?」
誰が何をとは言わないだろう。
言外に伝えることが彼には在ったのだろう。だが、それは『ミストレス・バンダースナッチ』にとってもはやどうでもいいことであった。
燻り狂うような愛があるのだとしても、それは第三者、余人の預かり知らぬことである。
故に彼女の瞳は冷徹そのものであったし、返答の弾丸はロニの足を穿つ。
「ぇー……ダメ? そういうことにしとこうよ! 恋ってそういうもの! そう……虚構や虚無から真実(ほんとう)が産まれることだってある」
踏み出す。
『紫煙の格闘家』を躱し、『スナーク』化した住人を押しのけ、ロニは一直線に『ミストレス・バンダースナッチ』へと迫る。
その言葉に真実があるなしにせよ、目の前の「『ミストレス・バンダースナッチ』の瞳にあるのは諦観でも虚無でもなかった。
恩讐に燃える炎。
ただそれだけ。
「ボクは祝福するよ!」
偽りであっても、虚構であっても。
そこに一片の真実が在るのならば『スナーク』は否定できる。どれだけ理由を並べへつらえたのだとしても、己の放つ拳がそれを証明してみせると、ロニは『ミストレス・バンダースナッチ』へと拳を叩きつける。
一切合切の否定を許さぬ拳はユーベルコードに煌き、周囲の大地を砕いて恩讐の炎ではなく、愛という虚構によって真実にするのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
(飛行式箒【リンドブルム】に騎乗)
…なるほど…改めてみると紫煙を使うにはうってつけの場所だね…
それでも…その能力の根幹である紫煙を見せすぎてる…
浄化復元術式【ハラエド】により紫煙に特化した浄化の力を付与した【尽きる事なき暴食の大火】を発動…
…紫煙のみに延焼する白い炎を周囲に展開…そのまま炎を広げて都市に漂う紫煙を燃やしていこう…
…これで紫煙が触れないので正確な場所が判らないし格闘家の強さも減少する…
…そしてスナークも紫煙の影響を燃やすことで元の住人に戻してしまおう…
…都市の地形と現影投射術式【ファンタズマゴリア】による自分のデコイを合わせて回避…撃たれた方向から位置を捕捉…
…ミストレスへ急行して紫煙を燃料として大きくなった暴食の大火をぶつけよう…
…シールドを張って無力化しても炎は維持出来るからね…死ぬまでそれを張るか解除して撃たれるか…だからここで終わりだよ…
海洋文明『アトランティス』は言うまでもなく海底に都市を構える文明である。
ドーム状の都市は完全に気密が保たれているし、充満する紫煙は逃げ場無く海底都市に満ちていた。
住まう人々の尽くが『スナーク』化し、『ミストレス・バンダースナッチ』の手勢となる。
そして、満ちる紫煙は彼女の力を十全以上に発揮させる。
紫煙によって作られたアンチマテリアルライフルと『紫煙の格闘家』の力は凄まじい。
一人で前衛と後衛を為し、さらには手勢すら生み出す手腕。
数多の猟兵たちが刻んだ傷跡は紫煙によって塞がれ、未だ彼女が存在していることを示している。
「どうでもいい。私の生き死になど。どうでもいい。心底な。だが」
『ミストレス・バンダースナッチ』は唯一つだけ呟く。
己の生死はもはや無意味にして無目的。だが、それでも彼女の瞳に輝くのは復讐の炎であった。
『サー・ジャバウォック』を屠った猟兵達。
それを己が殺さねばならぬという意志だけが彼女を突き動かすのだ。
致命傷に至る傷も、だからどうしたのだというように彼女はスコープを覗く。そこにあったのは、飛行式箒『リンドブルム』にまたがるメンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)であった。
引き金を引く。
だが、それは瞬時に彼女の手の内にある白い炎に吸い込まれていく。
「……なるほど……改めて見ると紫煙を使うにはうってつけの場所だね……」
白色の炎はメンカルの掌の中でさらに勢いを強くしていく。
彼女の瞳はユーベルコードに輝いていた。
確かに『ミストレス・バンダースナッチ』は強大な猟書家であった。猟書家たちの中にあって『書架の王』を除けば最強と言われた『サー・ジャバウォック』の腹心足り得る力の持ち主だ。
だが、紫煙を見せすぎているのだ。
能力の根幹。それが彼女の紫煙である。全てが紫煙によって強化され、生み出される。
『スナーク化』であってもそうなのだ。
ならばこそ、彼女は尽きる事なき暴食の大火(グラトニー・フレイム)でもって、これを喰らい尽くす。
如何なる存在も燃料にする白色の炎は、周囲に展開し、紫煙を飲み込んでいく。
能力の起点が紫煙である以上、この紫煙を失えば『ミストレス・バンダースナッチ』の能力は減退されていく。
「――……紫煙を喰らっているのか、あの白い炎……」
傷口を覆っていた紫煙すら燃えていき、『ミストレス・バンダースナッチ』の腹部と体に刻まれた傷跡から血が噴出し始める。
地にまみれて尚、彼女の瞳にあったのは迫る死への安堵ではなかった。
生きるも死ぬもどうでもいい。
だが、ただ一つだけ。
この復讐の炎だけは食らい付くされてはならぬと彼女は顔を上げ、メンカルをねめつける。
『スナーク』化した住人たちも紫煙を取り除かれては壁にすることもできない。
「……見つけた」
メンカルはデコイを放ってアンチマテリアルライフルの銃撃の射線から『ミストレス・バンダースナッチ』の位置を特定する。
「……見つけられたか。だが」
アンチマテリアルライフルを構える『ミストレス・バンダースナッチ』をメンカルは空より見下ろす。
周囲に展開していた白色の炎が彼女の掌に集まっていく。
放たれた弾丸さえも貪り食いながら白色の炎が極大にまで膨れ上がっていく。
燻り狂う愛すらも、その暴食の大火の前には消えるだろう。
それを初めて『ミストレス・バンダースナッチ』は惜しいと思ったのだ。消えてしまう。己もまた消えてしまう。『サー・ジャバウォック』の詩はもう響かない。
「ああ、それはとても……」
悲しいことだと『ミストレス・バンダースナッチ』は血を失いすぎて青くなった顔のまま微笑む。
どうしようもない。
絶対無効化のスナークシールドすら張り巡らせる余裕がない。
紫煙が満ちていた海底都市はもうない。
猟兵達による紡ぐ戦いと、今目の前に迫る白色の大火こそが己を焼き尽くす。膨大な大きさとなった白色の炎を止められない。
「貪欲なる炎よ、灯れ、喰らえ。汝は焦熱、汝は劫火。魔女が望むは灼熱をも焼く終なる焔」
『黒き悪意』を飲み込むのは白色。
黒が色濃くなるのなば、白もまた強くなる。
わかっていたことだ。
このヒーローズアースにやってきたときから理解していたことだ。この世界が戦いが繰り返される力強き者たちの世界である以上、己たちが生み出そうとしてた『スナーク』もまた、飲み込まれる運命にあったのだ。
本質無き怪物。
その名を恐怖の象徴とすることも。
その怪物の名を持って排斥すべき力も。
あらゆるものが流転する。ならば、己もまた、と望まずにはいられないのだ。
「……私は此処で終わりだな。紫煙を食いつぶされた時点で」
「……そうだね。ここで終わりだよ……」
メンカルは白色の大火を放つ。
暴食の大火。
それはユーベルコードの煌きと、そして紫煙生み出す『ミストレス・バンダースナッチ』の復讐心すらも飲み込んで彼女の体を燃やす。
恩讐の彼方に再びの邂逅があるのかはわからない。
けれど、それでも此処に『スナーク』は潰える。
「……貴方の詩は響かない、か……」
メンカルは燃え尽きている『ミストレス・バンダースナッチ』を炎の向こう側に見送る。
ジャバウォックの詩も、スナーク狩りも、あらゆることが意味をなさないからこそ、紡がれる詩である。
故に、彼女の……いや、彼等の目的は最初から為し得ぬことであった。
響かない詩は誰にも届かない。
届かせてはならない。
たとえ、その最後の『スナーク』が別の恐ろしくもおぞましい何かだったのだとしても。
「ブー――」
決して響かぬ消失だけが、世界の何処かで溶けて消えていくのだ――。
大成功
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