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『石兵の計』と、雷霆竜の群を乗り越えて

#封神武侠界 #戦後

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#戦後


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 ――グリモアベースの片隅で。
「ふむ……これは少し困ったことになりましたかな」
 雀・敏栄(僵尸の雀鬼・f32845)の何気ない其れに気付いた猟兵達が敏栄の方を向く。
 皆に不意に注意を向けられて、内心ヒヤリと冷や汗を垂らしながら、皆さん、と敏栄が呼び掛けた。
「仙界に数十万規模の大軍を擁したオブリビオンの残党が現れました。其の敵は、雷霆竜と言う名の竜達の群れです」
 それを率いるは、1人の女。
 聞けば、その人魚の姿をした人物は。
 嘗て戦国の世で鬼才の軍師としてその名を知らしめ『臥竜』と呼ばれた『諸葛孔明』の妻だと言う。
「妻は自らの夫に献身を捧げ、その夫の死を追う様に亡くなったとか。その献身に目をつけたオブリビオン、韓信によって嘗ての姿から今の姿とされ、オブリビオンとして甦らされた、とのことです。……何とまあ、痛ましい話でございましょうか」
 軽く慨嘆する敏栄がともあれ、と咳払いを1つ。
「それはそれとして、この様なオブリビオンの大群を放置しておくわけにはございません。ですので、皆さんにはかの女の率いる大量のオブリビオンを撃破していただきたく存じ上げます。宜しいでしょうか?」
 敏栄の問いかけに、猟兵達が其々の表情で頷いた。


「さて、先程までの説明は局への導入。本番は此からにございます」
 敏栄が、ペコリとすかさず一礼し。
「まず皆さんには数十万の群れとして仙界を襲う雷霆竜達と戦って頂きます。しかし、此処はかの有名な『諸葛孔明』が用いたとも言われる、名高き罠に恵まれた土地でございます」
 ……その特産物の名は、『石兵』
 厳かにそう告げた後、敏栄が『石兵』とは、と話を続けた。
「彼の地にある兵隊の形をしたその石達の事です。この『石兵』達は人身を惑わせる、と言われております。例えば3体の『石兵』に囲まれたものは感覚を失い、此の地で永久に迷い続ける、と言ったようにでございますね。無論、彼女も其の罠を駆使して来る可能性はございますが……そもそもかの石兵達に、善悪の別はございません」
 ――その意味することは、即ち。
「この石兵達を利用して竜達の連携を阻害し、或いは惑わせて、戦力を分散させた上で各個撃破してしまえば良いのです。連携が瓦解すれば後は皆さんの力で存分に滅し、最大でハコテンまで持ち込むことも出来ましょう。無論、暴れ回り竜達を滅するだけでも黄月水を誘き出すことは出来ますが……」
 その場合彼女は雷霆竜達を統率し、更に『石兵』を利用し、戦いを挑んでくるだろう。
 何よりも『黄月水』は、韓信の配下なのだ。
 つまり……。
「彼女は韓信に特別な神器を与えられております。その神器の名は、水銀の渦。全てを飲み込み皆さんの体を猛毒で蝕みその内臓を破壊する程の痛みを与えつつ、黄月水自身の能力は強化すると言う凄まじい能力でございます。敵の弱体化と、自己及び味方の強化。更に状況によっては更に自身と配下達の回復すら行う脅威のオブリビオンです。何らかの対策をする必要がございますね」
 そこまで告げたところで。
 ですが……と不敵に(見える)笑いを浮かべる敏栄。
「皆さんの知恵と勇気と力がございますれば、必ずやこの難関を乗り越える事が出来ましょう。……それでは、皆さんの武運長久をお祈り申し上げまして……ロン」
 パタン、と周囲に浮かぶ麻雀牌を敏栄が倒すとほぼ同時に。
 猟兵達は、グリモアベースからその姿を消していた。


長野聖夜
 ――雷梃竜の群れを乗り越えて。
 いつも大変お世話になっております。
 長野聖夜です。
 今回は、封神武侠界のシナリオをお送りいたします。
 このシナリオの第1章は下記プレイングを行うことで、ボーナスを得ることが出来ます。
 プレイングボーナス……仙界の『石兵』を利用する。
 使い方の例はオープニングにもございますが、他にも色々な用途があるかも知れません。
 こんな風に使ったら如何だろう等と、様々な使い方を考えてくださいませ。
 内容次第では第1章の集団を殲滅する事も出来るかも知れません。
 第2章のボス、韓信配下『黄月水』は、手持ちユーベルコード以外に下記神器を使用します。
 神器:『水銀の渦』
 効果:戦場全体に水銀の渦を発生させる。水銀の渦が存在する間、敵には内臓破壊ダメージを与え続け、自身は水銀を纏って戦闘力強化。
 詳しくは第2章冒頭で断章を投稿させて頂く予定です。

 プレイング受付期間及び、リプレイ執筆期間は下記の予定です。
 プレイング受付期間:2月21日(火)8時31分以降~2月23日(水)8時30分頃迄。
 リプレイ執筆期間:2月23日(水)10:00頃~2月24日(木)一杯迄。
 変更などございましたらタグ及びマスターページにて、お知らせいたします。

 ――それでは、良き戦いを。
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第1章 集団戦 『雷霆竜』

POW   :    雷霆竜の嘶き
【激しい稲妻】を降らせる事で、戦場全体が【乱気流内】と同じ環境に変化する。[乱気流内]に適応した者の行動成功率が上昇する。
SPD   :    龍燐鋼
自身の【強靭な鱗を頼った戦法】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。
WIZ   :    大回転攻撃
【全身をしならせた大回転攻撃】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。

イラスト:小日向 マキナ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

アトシュ・スカーレット(サポート)
性格
戦うことと悪戯が好きな悪ガキ
根は真面目で常識人なので実は常識の範囲内でしかやらない
目の前で助けられる人がいるなら積極的に救おうとする
口調は「〜だな。」など男性的
女顔がコンプレックスなので女性と間違えられたら殺気が溢れるタイプ。殲滅するのみ

戦闘
【呪詛(腐敗)】を何かしらの形で使用する。昔機械相手にやって痛い目を見たのでその場合は使わない
前衛も後衛もやれる万能型だが、前衛の方が好き
複数の武器を同時に操ることも可能
高速戦闘も力任せの戦闘も状況に応じて使い分ける
(装備していれば)キャバリアにも対応可

非戦闘
聞き耳などを駆使した情報収集を中心とする
化術で動物に化けて偵察することも




「へぇ、此処が仙界で有名な石兵とやらの産地か」
 目前に迫る数十万にも及ぶ雷霆竜達の群を目を眇めて見つめながら、アトシュ・スカーレットが愉快そうに口元を綻ばせる。
 其の手にはすらりと抜いた、2振りの刀剣。
 右手に握りしめるは、桃色にも、赤色にも見える刀身を持つJoyeuse。
 左手に握りしめるは、普通の刀……村正。
 Joyeuseと、村正、其々の刀身を這う様に踊っているのは、漆黒の呪詛。
 何処か影や闇を思わせるその二刀流の剣士の姿を見た故であろうか。
『ぐるぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!』
 雷霆竜が咆哮と共に、アトシュに向かって突進してきた。


 バチリ、バチリ、と雷撃を放出しつつ、全身を鞭の様に撓らせながら仕掛けてくる雷霆竜達。
 まるで独楽の様に回転しながら、数万の竜達が攻めてくるその光景は、正直……。
「圧巻……の一言に尽きるぜ!」
 愉快そうに笑いながら雷霆竜達の攻撃を村正で受け止めるアトシュ。
「まっ……竜退治、だもんな。話が通じる様な相手でもねぇし、精々派手に暴れさせて貰おうか!」
 体当たりと共に発された雷撃がその身を打ちのめす様に全身を痺れさせるが、構わず愉快そうにJoyeuseを竜の鱗に突き立てる。
(「どうせだったらこの辺りの特産品を使って戦っても面白そうだったが……まっ、流石に1人じゃそれどころじゃねぇか」)
 突き立てたJoyeuseを支点にそのまま大地を蹴って軽業師の如く軽快な足取りで空を舞いながら、村正を振るうアトシュ。
 村正の刀身に貼り付く様に蜷局を捲いていた呪詛を撒き散らす様に放出し、周囲の雷霆竜達の鱗を腐らせていくと。
『グルァァァァァァァァッ!』
 其れに気がついた別の雷霆竜がのたうつ竜達を守る様に姿を現し円を描く様に回転しながらその尻尾を撓らせる。
「ぐっ! 流石に仲間は見捨てられないって訳か……上等だぜ!」
 思わぬ強打を脇腹に受け、苦痛と納得の声を漏らすアトシュ。
 だが、突き立てていたJoyeuseから手を放す事は無い。
「支点をやられるわけにはいかないからな。と言う訳で、お返しさせて貰うぜ!」
 その竜に突き立てたJoyeuseの刀身から発された腐食に内臓を腐らせ崩れ落ちる竜の死体を蹴り、更なる高みへと上るアトシュ。
 雷霆竜達がアトシュを食らわんと顎を開き今にも自らを噛み潰そうとしているのに笑いを浮かべたまま、剣と刀を十字に構え。
「行くぜ……呪いの剣よ、立ち塞がる全てを斬り伏せろ!」
 詠唱と同時に、十文字に構えていた双刃をぐい、と前面に突き出した。
 突き出すと同時に現れたのは漆黒の方円。
 其の方円から大地に向かって降り注ぐは、腐敗の呪詛が刀身に練り込まれた、1170本の魔剣。
「行け!」
 アトシュの叫びに応える様に神聖幾何学模様を描き出す様な複雑な軌道と共に、四方八方を包囲する様に放たれる魔剣。
 雷霆竜達の群れの一部の全方位を自らの包囲下に置いた魔剣達が、次々に雷霆竜達に突き立っていく。
 呪詛の魔剣が突き立った傍から腐り落ちていく竜の鱗を穿ち、更に他の竜をも貫き、時に斬り捨てた所で。
「取り敢えずこんな所だな。また会おうぜ、お前等!」
 腐り落ち力尽きた雷霆竜達を見つめて口元に笑みを浮かべ、自らの成果に満足げに頷いたアトシュが、風の様に戦場から姿を消した。

成功 🔵​🔵​🔴​

ウィリアム・バークリー
数十万の戦力か。封神武侠界はスケールが違う。

ここは知り合いの陰陽師から借りた、東洋呪術のアンチョコに頼ろう。

まずは木火土金水の五行と相生相克。太一、両義、四象、八卦。
相手は竜で雷霆を使う。五行では木行に該当。金克木。ここまでは簡単に分かる。十干では、甲辰(きのえたつ)?
対抗するなら金行だ。
戦場の西方にある石兵に鋭い剣を持たせ、金行の要としよう。
これで雷霆竜たちの戦闘力を大いに削げるはず。

為すべきは為した。最後の仕上げだ。雷霆竜との相対。
金生水で、ぼくは戦場の北側で待ち受ける。
水行のDisasterで氷の礫が入った大暴風雨を呼んで、空を飛ぶ雷霆竜たちを翻弄しよう。

はあ、東洋の呪術はややこしいよ。


ユーフィ・バウム
蛮族の出ですが、ただ蛮勇を奮うのみならず
使うべきものは使うのが、戦士というものです

キャバリアに乗り、怪力も駆使して
事前に石兵たちを動かします
3体で囲むような地域を何個も作っておきますね

そして竜たちが現れれば、さぁ向かいますよ
ブライト・ナイト!
自慢のオーラを用いた【衝撃波】【なぎ払い】を
駆使して集団を攻撃しつつ
風の【属性攻撃】を目いっぱいたたきつけ
竜を【吹き飛ばし】、

事前に設置していた石兵たちで囲む地域に叩き込みます
完全に無力化できなくても、石兵たちに囲まれ大きく力を
失うでしょう

他、野生の勘や培った戦闘知識で
石兵を使い有効なことが思いつけば実行しますね

弱ったところを、《翠光の翼》で打ち砕きますッ


館野・敬輔
【SPD】
アドリブ連携大歓迎

確かにこの大群は放置しておけないが
この金と雷の大群、目に優しくない…

それはさておき
善悪の区別をしないなら、石兵の群れに誘い込むのが効果的か
なら、龍燐鋼の特性を逆手に取らせてもらおう

指定UC発動後雷霆竜に投擲ナイフを「投擲」しつつ
黒剣から「属性攻撃(炎)」の「衝撃波」を発射し「挑発」
この程度で強靭な鱗は貫けないだろうけど
それに慢心して俺に突撃してきたら占めたもの
雷霆竜を石兵の群れの間に誘い込むよう「ダッシュ」+高速移動しながら
「戦闘知識、視力」で石兵の隙間を見極め駆け抜けていこう

雷霆竜が分断されたことを確認したら
1体ずつ確実に「2回攻撃、怪力」で斬り飛ばしていこう


森宮・陽太
【WIZ】
アドリブ連携大歓迎

要はこれ、石兵利用して無双しろってことかぁ?
いや、雷霆竜の図体がでかいから
突っ込むのは逆に押し潰されそうでヤベェんだが

取り敢えず「高速詠唱、魔力溜め」から指定UCでスパーダ召喚
スパーダの短剣の半分は雷霆竜を「制圧射撃」するよう断続的に降らせて牽制してやらぁ

短剣は大回転攻撃で吹き飛ばされるだろうが気にしねぇ
むしろ石兵の真っ只中で回転しまくってくれれば好都合
短剣の残り半分に「属性攻撃(炎)」で極炎を纏わせておき
大回転が終わったタイミングを見計らい炎の短剣を一斉に頭上から降らせて「範囲攻撃、蹂躙」してやらあ!!
そらそら、火計(力押し)で一気に焼かれちまえ!!




 ――その雷光と黄金の輝きを伴う雷霆竜達の大群が空に浮かぶ様子を見上げて。
「一角は他の方が崩してくれた様ですが……それでも、数十万の戦力ですか。『張角』の率いていた軍勢もそうでしたが、やはり封神武侠界はスケールが違います」
 軽く目を眇めて呟くウィリアム・バークリーの其れに、確かに、と館野・敬輔が軽く溜息を漏らしながら首肯する。
「言われてみれば、規模が違うな。まあ、だからといって放置しておく訳には行かないんだが……でもこの金と雷で燦然と輝く大群、目に優しくないよ……」
「まあ、そりゃな。ってか此、要するに石兵利用して無双しろって事だよな?」
 敬輔の其れに同意の意を示しつつ、小首を傾げてみせるのは森宮・陽太。
「使うべきものは使うのが戦士というものですので、その通りだと思いますが……其れがどうかしたのですか、陽太さん?」
 大きなスピーカー音で。
 陽太の頭上から降り注いできたユーフィ・バウムの問いかけに、後ろを振り向いた陽太が思わず目を輝かせる。
「って、ユーフィ!? お前、今回はブライト・ナイトに乗ってきているのかよ!? やっぱ格好良いよなぁ。白く光輝く、太陽の様なロボットって良いよなぁ……」
「……えっ? ああ、陽太さんには哪吒との戦いの時、初めて見たんでしたっけ」
 目を輝かせる陽太の其れに、空の様に青い瞳を瞬かせながらユーフィが応える。
 束の間、先鋭的なフォルムに惚ける陽太だったが、程なくして我に返った様にはっ、とした表情になり慌てて頭を横に振った。
「って、なんで何時の間にかロボット評論家みたいになっているんだ、俺は!? いやいや、そうじゃなくて俺が言いたかったのは雷霆竜って図体でかいじゃん? あんなデカいのを石兵に突っ込むのは逆に押し潰されそうでヤベェんじゃねぇかな、と」
 陽太のその疑問に、ブライト・ナイトのコクピット内から漣の様な笑い声がスピーカーを通して聞こえてきた。
 ユーフィ自身が中でしているのであろう、ポリポリと頬を掻く様なやたら人間臭い仕草をブライト・ナイトにさせながら。
「とは言え、わたしは蛮族の出。だからといって、蛮勇を奮うだけではありませんし。それに大型獣等を捕獲するのにも罠はつきものですから。それと同じだと考えれば良いんじゃ無いでしょうか?」
「……確かにそうだね、ユーフィさん」
 ユーフィの問いかけにそう相槌を打ったのは、敬輔。
 鞘に納めた黒剣の柄に手を置き、今にも迫ってきそうな雷霆竜達の眩しさに、左手で届く光を遮りつつ、頷き1つ。
「僕自身は専門じゃ無いけれど、故郷の恩人に狩猟用の罠の作り方を教わったことがある。その中には確かに、巨大猛獣を捕まえる為の罠の作り方も在った気がするな」
 呟く敬輔の其れに、ふ~む、と考え込む様な表情になる陽太を脇に置き。
「……相手が雷霆竜と言う事は、五行で言う所の、相生・相克の関係を上手く使えば、より楽に討滅出来そうですね」
 ふと告げるウィリアムの其れに、ユーフィとブライト・ナイトが首を傾げた。
「五行、相生相克……聞いた事はありますが、蛮族のわたしにはあまり耳馴染みが無い言葉かも知れません」
 素直にそう応えながら、石兵達を3体で、三角形状に囲い込んだ地域を何箇所か作りながらのユーフィの其れに。
 知り合いの陰陽師から借りてきた東洋呪術のアンチョコを取り出し、パラパラ捲りながら、ウィリアムが続ける。
「五行というのは、東洋呪術の中で、木・火・土・金・水の万物の五元素と呼ばれるものですね。この五行には相性が存在しておりまして、相性が良いものを相生、悪いものを相克と呼ぶんです。太一、両儀、四象、八卦……まあ、他にも様々な卜占がありますので、中々にややこしいのですが」
 アンチョコを眺めながら、淡々と説明する様に呟くウィリアム。
「ええと、相手は竜で雷霆を使う、となると先ず雷霆は、五行だと木行に該当します。此に相克するのは金行なんです。そして、竜は十二支で言う所の辰に該当します。その為、この雷霆竜達を東洋呪術で説明すると、十干の甲……木の兄ですねにして、辰……即ち甲辰(きのえたつ)と呼ぶことになります」
「は、はあ……」
 ウィリアムの説明にパチクリと目を瞬かせるブライト・ナイト=ユーフィ。
 ウィリアムもややこしいよな、と思いつつ何はともあれ、と答えた。
「結果として、戦場の西方にある石兵達に鋭い剣を持たせて、金行の要……まあ平たく言えば避雷針でしょうが……にしてしまえば、大きく其の力を削ぐことが出来る筈なんです。と言う訳で、先程ユーフィさんに配置して貰った西方の石兵達に鋭い剣を持たせておきました。此で一先ずぼくの方の下準備は終わっています。陽太さんや敬輔さんの方は、準備が終わっておりますでしょうか?」
 そのウィリアムの問いかけに。
「ま、まあ取り敢えず準備は出来ているぜ、うん。俺の方もな」
 と何となく目を逸らし告げる陽太に、敬輔も微かに表情を引き攣らせつつ。
「僕も大丈夫だ、ウィリアムさん」
 呟いて黒剣の柄を強く握りしめ、そして懐の投擲ナイフを確認しそう返した刹那。
 ――グルァァァァァァァァッ!
 雷霆竜達の咆哮が轟き、無数の激しい稲妻が眩い光を伴って、戦場に降り注いだ。


 天空より降り注ぐ無限の雷が五行、相生相克の結果、避雷針と化した西の石兵達に降り注ぎ吸収される姿を認めながら。
「ブライト・ナイト! 蛮族の戦士、ユーフィ参りますっ!」
 勇ましい雄叫びをあげ、背のディアボロスに取り付けたエンジンを起動、風の魔力をコクピット内に吹き付けるユーフィ。
 合わせてブライト・ナイトの背に蒼穹に光り輝く一対の翼が生まれ、ブライト・ナイトがバサリ、と羽ばたかせて天空に飛翔する。
 続けて両拳に籠めた蒼穹のオーラ力を朝凪の衝撃に変えて雷霆竜達に解き放った。
「よし、折角ユーフィが用意してくれたんだ! こっちも火計(力押し)で一気に焼き払ってやるぜ!」
 そのブライト・ナイトの勇姿を援護するべく、懐から拳銃型のダイモン・デバイスを引き抜き其の銃口を天に向ける陽太。
 銃口の先に現れた魔法陣に捻れたふたつの角を持つ漆黒と紅の悪魔が描き出され。
「我が呼びかけに応え顕現せよ、紅き剣を司りし悪魔の剣士スパーダ!」
 陽太が引金を引き、弾丸を潜り抜けさせるや否やその地に顕現したのは、先程魔法陣内に描き出された悪魔の剣士『スパーダ』
『こおおおおおおおおっ!』
 咆哮と共に、其の周囲に1140本の刀身に複雑な幾何学紋様の描かれた紅き短剣が出現、その全てが赤熱させ。
「焼き尽くして、蹂躙してやれ、スパーダ!」
 下方から怒濤の矢雨の如く無数の紅の短剣を解放すると雷霆竜達がグルグルと渦巻き状に回転しながら其れに応じる。
 だが……。
「皆、力を借りるよ。それから、貴様達の其の鱗の特性、利用させて貰う」
 其の時には敬輔が全身に薄い白き靄の様な何かを纏い、更に抜剣した黒剣の刀身を赤黒く光り輝かせていた。
 其の状況下で素早く先程確かめた投擲ナイフを鱗に投げつけながら、『彼女』達の具現でもある白き靄に焔を纏わせ放射する。
 1140本の短剣が複雑に戦場全体を包囲する様に動き次々に雷霆竜達に突き立ち、続けざまに放たれた敬輔のナイフが竜の鱗に突き立つ。
 続けざまに敬輔が放射した焔の刃が、雷霆竜達を焼き払った。
『グルァァァァァァァァッ!』
 自らの鱗に短剣を突き立てられ、炎で燻られたのが文字通り『逆鱗』に触れたか、雷霆竜達が怒号と共に独楽の様に回転して体当たり。
 数十万体の内の7割近くが敬輔と陽太に迫る、その間に。
「敬輔さん、陽太さん、そいつらを西側の石兵達の基へ!」
 すかさず叫んだウィリアムが、ルーンソード『スプラッシュ』を抜剣し、天に突きつけ魔法陣を描き始めた。
(「とは言え、この技は制御がやや難しい。だから、影朧エンジン起動……!」)
 胸中で呟き『スプラッシュ』に搭載された影朧エンジンを起動、精霊力の更なる収束を開始するウィリアム。
「Elemental Power Critical……」
 金相水の関係にある氷の精霊の収束を、金の力を借り魔法陣で加速するその間に。
「させませんっ!」
 ユーフィがブライト・ナイトに向けて雷撃を撒き散らし、独楽の様に回転し突進してくる雷霆竜達の頭上に機体をバク転させ。
 そうして雷霆竜達の上を取った上で、一対の光の翼を羽ばたかせ。
「いきますっ!」
 叫んで掌底を解き放ち、そこから大空を思わせる突風の如き衝撃波を叩き付けた。
 周囲の乱気流をブライト・ナイトの光の翼に取り込んで逆用し、渦の様な拳の乱打を叩き付け、雷霆竜達を地上に墜落させる。
 地面に激突し、のたうち苦しみ回る雷霆竜達が起き上がり、自分達を叩き落としたユーフィに向けて雷撃を放とうとするが。
「俺達を無視しても、良いのかな?」
 其の呟きと共に、敬輔が赤黒く光り輝く刀身を大地に擦過させた。
 三日月型の焔を纏った斬撃波が立ち上がった雷霆竜達を纏めて屠り、残された一部の雷霆竜達が敬輔に向かって突進するが。
「掛かったな」
 其処に展開されていたのは、善悪の区別無く、自らの力を発動する石兵達。
 事前準備で、ユーフィの手で巨大な三角形の形に配置されていた、石兵達の群れ。
 3体の石兵が瞳を輝かせると、その場から跡形もなく雷霆竜達が姿を消した。
 其の数は、全体の凡そ2割程。
 忽然と消えた味方に驚き戸惑い、少しでも状況を見定めようと、残された8割の内、6割の竜が周囲を確認した、丁度其の時。
「ウィリアム! こっちの追い込みは完了したぜ!」
 陽太が呼び出した獄炎を纏ったスパーダの短剣を突き立て、その鱗を焼きながら、ウィリアムが用意した石兵達の所に誘導を完了し。
「……Liberate……Disaster!!」
 ウィリアムが詠唱を完成させ、『スプラッシュ』の剣先の魔法陣を解放する。
 青と、金と、緑の3色が綯い交ぜになり、氷と、金と、風の精霊達がその詠唱に合わせて乗って戦場で歌う様に荒れ狂う。
 それが氷の礫の綯い交ぜになった大暴風雨と化し、陽太のスパーダの断続的な炎の短剣の嵐で追い込んだ雷霆竜達を飲み込んだ。
 荒れ狂う風中で踊る氷の礫に全身を貫かれてズタズタにされ、次々にその場に崩れ落ち、消失していく雷霆竜達。
 残存戦力の内の7割に及ぶ大被害を齎すその攻撃に存分に翻弄され、次々に力尽きていく雷霆竜達。
 ……そこに。
「今ですね。ブライト・ナイト! 一気に行きますよっ!」
 ユーフィの乗るブライト・ナイトが上空から青い流星の様に降り注ぎ、強烈な体当たりを生き残りの雷霆竜達に叩き込んだ。
 そのブライト・ナイトの突撃が、辛うじて生き残っていた筈の霆竜達を軒並み巻き添えにして、在る場所へと叩き付けられる。
 ――そう。
 3体の石兵達で作った、巨大な三角形の檻の中に。
 残存の雷霆竜達が、檻を形成する石兵達の光の輝きに飲み込まれて消失していく。
「これで……終わりか」
 ――ヒュン、と。
 剣についた返り血を拭う様に黒剣を振り抜いた敬輔の呟きに。
『……どうやら私は、少し貴方方猟兵達の力を見くびっていたようですね』
 鈴の鳴る様な涼やかな声が響き、1人の女がゆっくりと姿を現したのだった。  

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『🌗智邪仙・黄月水』

POW   :    計略:木牛・流馬の計
戦場の地形や壁、元から置かれた物品や建造物を利用して戦うと、【大量に創造した木牛・流馬達による蹂躙 】の威力と攻撃回数が3倍になる。
SPD   :    符術・策謀看破の計
【敵の機先を制する策を秘めた陰陽五行符 】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    水計・水銀の渦
戦場全体に【水銀の渦 】を発生させる。レベル分後まで、敵は【内臓を破裂させるダメージを与える程】の攻撃を、味方は【水銀を纏い、自己戦闘力が強化される程】の回復を受け続ける。

イラスト:すずや

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠雀・敏栄です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 鈴の鳴る様な、涼やかな声。
 その声を聞いて反射的に其方を振り向いた猟兵達に敬意を表するかの様に。
『彼女』は、カーテシーの様に軽く身を引き一礼した。
『改めまして、初めまして猟兵の皆様。先ずは皆様の事を甘く見ていた点、深くお詫び申し上げさせて頂きます。私の名前は黄月水。韓信様により、あの御方の死に捧げた命に英雄の素質を見出され、再び新たな生を与えられた者です』
 ――あの御方、その者の名は、『諸葛孔明』
 後に『臥龍』と呼ばれる程の鬼才の妻であり、当時では『黄夫人』としか呼ばれていなかったであろう彼女が粛々と言の葉を紡ぐ。
『此度は韓信様の命により数十万の竜を率いてこの地を制圧せんとしましたが……やはり、少し私の策の練りが甘かった様ですね。中々、あの方の様には参りませんわ』
 ――然れど。
『このままおめおめとこの地を放棄する訳にも参りません。韓信様に望まぬ仮初めの命を与えられたとは言え、私があの方にお仕えしている事実は変わらないのですから。ですので、攻めて一矢報いさせて頂くと致しましょう』
 ――その言の葉と、ほぼ同時に。
 不意に『黄月水』の周りを覆う様に、滝の如く水銀が姿を現した。
 それが巨大な渦と化して、彼女の周囲を取り囲んでいく。
『我が主、韓信様より与えられし神器にして計略が1つ、『水銀の渦』。この力と、私の知略を以て、あなた方に戦いを申し込ませて頂くと致しましょう。それでは……参ります』
『黄月水』の、淑女然とした言葉と共に。
 水銀の渦が竜巻の様な唸り音を上げ、猟兵達にその猛毒の牙を向けた。

 *下記第2章のルールです。
 1.第1章の判定結果、配下の雷霆竜が全滅しました。その為、第2章は、智邪仙・黄月水単独との戦いとなります。
 2. 『黄月水』は韓信配下の為、下記神器を所持しております。これはユーベルコードと一緒に使用する特殊能力です。その為、ユーベルコードと此の両方への対策が必要です。
 神器名:『水銀の渦』
 効果:戦場全体に水銀の渦を発生させる。水銀の渦が存在する間、敵には内臓破壊ダメージを与え続け、自身は水銀を纏って戦闘力強化。
 3.WIZを選択した場合、上記効果に加えてユーベルコードに記載されている能力が上乗せされます。その為『水銀の渦』の効果にある内臓破壊ダメージだけで無く、純粋な負傷を受ける一方、『黄月水』自体は傷の自動回復も得ます。
 4.石兵により永遠に迷い込ませることは『黄月水』には不可能です。逆に此を利用して猟兵達を分断させ、各個撃破に持ち込む可能性すらあります。

 ――それでは、良き戦いを。
七星・龍厳(サポート)
『俺に挑むには10年早いな。』
 羅刹の剣豪×マジックナイトの男です。
 普段の口調は「男性的(俺、呼び捨て、だ、だぜ、だな、だよな?)」、仲間には「フレンドリー(俺、呼び捨て、言い捨て)」

行動の基準は戦闘が楽しめるか又は興味を持った事柄に積極的に関わる。
戦闘は戦場で敵の技術を盗み自身が扱えるものに昇華させるため戦場を探してる竜殺し。
戦場では弱肉強食、故に弱者に手を差し伸べる者への優しさと敬意は無くしていない。
猟兵の妻と二人の娘がいる。
 ユーベルコードはどれでも使用、怪我は厭わず行動します。迷惑をかけません。
例え依頼の成功のためでも公序良俗に反する行動はしません。
 あとはおまかせ。よろしく!


久遠寺・遥翔(サポート)
UCでフレアライザーや派生形態に変身するか
イグニシオンに【騎乗】して戦う
死角を突いたりといった戦法に躊躇はない
戦いでは取れる手を全力でとる
ただ人質を取ったりなんて義にもとる真似はしないけどな
救助対象がいる場合それ優先で動くぜ

変身・騎乗どちらの場合でも基本的に【空中戦】を仕掛ける
飛行系UCの速度やワイヤーを使った【地形の利用】【ダッシュ】による高速機動戦闘だ
相手の攻撃は【第六感】【視力】を駆使した心眼で【見切り】ながら【残像】でかわし
避けきれない攻撃を【オーラ防御】や【各種耐性】で受け流しながら【カウンター】の
【生命力吸収】する黒焔で対象を【焼却】する【2回攻撃】を叩き込む戦術になる




「へっ、あの御方の『妻』か」
 涼しげなカーテシーをする娘の姿を見つめながら。
 七星・龍厳が口元に厳ついた笑みを浮かべて呟く。
 其の脳裏をちらりと宿るのは、猟兵の妻と2人の娘。
「計略だか策だが知らねぇが、俺達に挑むには10年早いな」
 そう力強く呟く龍厳の、其れに。
 同時に転送されてきた青年、久遠寺・遥翔が小さく首肯を1つ。
 遥翔の目は先程まで数十万の雷霆竜達と戦い、気息を整え振り返り、此方にやってくる猟兵達に向けられている。
「そうだな。とは言え、彼等も直ぐに来れる訳では無さそうだ。先ずは俺達が君の足止めをしよう。それがこの世界を守る為になるんだからな」
『然様でございますか』
 自らの周囲を覆う様に。
 一礼と共に、さっ、と其の手を挙げた黄月水がたおやかな声でそう返す。
『それでは、私もお相手を致しましょう。貴方達に一矢報いる其の為に』
 其の言の葉と、ほぼ同時に。
 すっ、と龍厳と遥翔に向けて黄月水が指を突きつけるや否や。
 戦場全体に水銀の渦が竜巻の様に迸り、龍厳達を飲み込まんと荒れ狂った。


「ぐっ……!」
 水銀の中に含まれる、大量の猛毒を吸い込んで。
 口元に獰猛な笑みを浮かべた龍厳が、内臓を食らわれる様な痛みと共に血を吐き捨てて竜喰剣・バルムンクを構える。
「少しは楽しませて貰えそうだな! 行くぜ!」
「この程度の猛毒で俺達猟兵は君達に屈しない! ……天焔解放(オーバーフロウ)――フレアライザー・ヘヴンッ!」
 内臓を押し潰される様な痛みを堪え、其れを巻き起こす水銀の渦を焼き払わんとイグニスより黒焔を迸らせる遥翔。
 骸魂イグニスを内包する焔黒剣から迸る漆黒の焔の中に黄金の炎が入り交じり、それが遥翔の全身を覆い尽くす。
「行くぜ、オブリビオン!」
 全身に漆黒と黄金の焔を纏った遥翔が焔で作り出した二対の翼で羽ばたき上空から肉薄、黒焔剣イグニスを振り下ろす。
 その動きに合わせて両手遣いに構えた竜喰剣・バルムンクを龍厳もまた、黄月水に突き出した。
「猛毒か! 俺のバルムンクの牙にも猛毒が混ざっているが、てめぇが此に耐えきれるか!?」
『水銀の猛毒を乗り越えての波状攻撃。その動きは称賛に値しますが……其れで早々に止められる程、私も弱くはございませぬ』
 遥翔の斬撃を袈裟に受け焔で体を焼かれ。
 龍厳の強烈な刺突を左腕で受け止め、左腕を壊死させながらも、尚。
 黄月水が何かを歌の様に口ずさみながら右手を上げる。
 振り上げられた右手の先から姿を現したのは、大量の木牛、流馬。
 ――嘗て『臥龍』が兵糧不足を解消する為に、創造したとされる移動車両。
 その移動車両達を周囲に撒き散らされている石兵達の傍に向かわせて。
 石兵に体当たりを行わせ、遥翔と龍厳を石兵で囲い込もうと、自由な移動を妨害。
 更に3体の石兵達の転移を利用して……。
「ぐあっ?!」
 気が付けば龍厳は、背後から大量の木牛達に体当たりを受け、毒で弱っていた内臓が破裂せんばかりの衝撃を受けた。
「周囲の石兵達を利用した不意打ちに猛毒とは、派手にやってくれたものだぜ!」
 思わぬ不意打ちを食らい、毒の影響もあり喀血しつつ叫ぶ龍厳。
 その一方で。
(「くっ……下か!」)
 その目を瞑り、黄月水の策の真意を心眼で悟った空中の遥翔の死角……下方から突き上げる様に流馬達が飛び出してくる。
 下方から黄金と漆黒の焔を纏った両足に、木製のその体が次々に飛び掛かり、遥翔の纏う炎に触れて焼き尽くされる。
 ――そう。巨大な種火として。
「此方の攻撃を利用して、熱量を上げて俺を蒸し焼きにするか……! 上等だ!」
 外側は暴走した焔によって激しい火傷を負い。
 内臓は水銀の猛毒に蝕まれ、口元から大量に喀血させた遥翔が笑う。
 ――そして。
「こいつはお礼だ! とっときな!」
「君を少しでも焼き尽くし、仲間達に繋ぐ!」
 龍厳がバルムンクを大上段から唐竹割に振り下ろし、遥翔がイグニスの内包する黒焔を黄金の焔と共に完全解放。
 大気を断ち割らんばかりの勢いの龍厳の一太刀が黄月水の右肩を斬り砕き。
 遥翔の眩い黄金の混ざった黒焔が、黄月水を守る水銀の渦を潜り抜ける様に焼き払い、その体の表面に確かな火傷を与えた。
 ――そんなところで。
「……ちっ。流石に体にガタが来てやがるな。……此処迄か」
 ガボッ、と掻き乱された内臓から込み上げてきた血を吐き捨てながら龍厳が呻き。
「後は、もう直ぐ此処に来る仲間達に全てを託す! 引くぞ、龍厳」
 限界が来たか指示を出す遥翔の其れに頷いて、龍厳は遥翔と共に撤退した。
 ――また会おうぜ。
 そんな台詞を、その場に置いて。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ウィリアム・バークリー
初めまして、黄夫人。不躾ですが、あなたの奥の手をまず封じさせてもらいます。

常温で液体である水銀の凝固点は、とある世界での表現では、摂氏マイナス38度。この温度は、決して実現が難しいものではありません。
「全力魔法」氷の「属性攻撃」「範囲攻撃」でPermafrost。猛吹雪と凍土化した地表からの冷気で、『水銀の渦』の一切を凍結させてもらいます!

ぼく自身は「氷結耐性」で行動の自由を確保。
吹雪の中で「目立たない」ように動きながら黄夫人に接近し、『スプラッシュ』で「貫通攻撃」「串刺し」にします。

水銀は、ぼくの相手をするには、あまりにも相性が悪かったですね。
これ以上世界を傷つけぬよう、お休みください。


ユーフィ・バウム
敵将相手はキャバリアから降り己が拳にて
迅速な決着を狙いましょう
さぁ、参ります!

戦場全体を覆う水銀の渦は
風の【属性攻撃】を纏う武器でのなぎ払いを一閃、
衝撃波もめいっぱい吹かせて自分が吸い込む水銀を最低限に
ダッシュを駆使し迅速に寄り、
功夫、そして怪力を生かした打撃で押しますよ!

陰陽五行符は出来る限り水銀を吹き飛ばすのに合わせ
符を吹き飛ばし、技を封じられないようにしますが
仮に封じられた場合苦戦は必至でしょうか――

いえ
私は蛮人。相手の策を培った肉体と心で越えるものです
至れ、オーバーロード!《真の姿》を解放!
さらに屈強になった肉体で、【グラップル】で組み付き
超至近距離からの【鎧無視攻撃】の打撃で押していきますっ

共に戦う仲間がいれば、組み付き投げることで
攻撃の隙を作りだしましょう

戦いが長引けば内臓のダメージも重なりますが
私の勇気も気合いも尽きることはありませんわ
限界突破し、動きを止めませんともっ!

相手の消耗が分かれば、
組み付いてからの必殺の投げで決着を――
UCが使える場合は《蒼翼天翔》で決めますわ!


館野・敬輔
【SPD】
アドリブ連携大歓迎

蘇ることがあなた自身の望みでなかったとしても
今のあなたは人仙を全て封印しようとしている韓信大将軍の配下だ
…だから、ここで討つ

神器の効果は神器を破壊すれば解除できる?
とはいえ、俺は液体を吹き散らす術を持ってない
渦を生み出している核がないか「視力、戦闘知識」で見極め
なけなしの「衝撃波」で核を砕けないか挑みながら
「オーラ防御、激痛耐性」で渦そのものとダメージに耐え続けよう

渦を凌いだら指定UC発動
吸血コウモリを黄月水に群がらせ「吸血、生命力吸収」した上で
「ダッシュ」で接近し「早業、2回攻撃」で一息に斬り捨てる
策謀看破の計は「見切り、なぎ払い」で符を斬り刻み阻止できれば


森宮・陽太
【SPD】
アドリブ連携大歓迎

…あの軍師の妻まで利用するってか
韓信とやら、なりふり構ってねえな

水銀の渦、生身の人間が巻き込まれたら死にかねねえぞ!?
それだけえげつねえ効果の神器を用いるなら
俺もえげつねえ悪魔を持ち出してやらぁ
内臓破壊ダメージを「激痛耐性」で耐えながら
「高速詠唱、魔力溜め」+指定UCで最近契約したマルバス召喚
マルバスに命じ戦場全体に黄水晶の雨雲を発生させ
味方を黄水晶の雨で癒しながら
黄月水を黄水晶の雲で覆って水銀の強化を剥ぎ取ってやらあ
何、えげつないのはお互い様だろ?

策謀看破の符は投擲する瞬間を「見切り」
二槍伸長「ランスチャージ」で黄月水ごと貫いてやらあ
…骸の海で、夫と仲良くしろよ




 ――ストン。
 ブライト・ナイトのコクピットから猫の様にしなやかな身のこなしで飛び降り、大地に着地する、ユーフィ・バウム。
 その手は流れる様に腰に帯びた親友から貰った勇気の実へと伸び、其れを掴んで1つ摘まんでいる。
「どうやら他の猟兵の方々が応援に来て下さった様ですね。お陰様で態勢を立て直すことが出来ました」
 ルーンソード『スプラッシュ』を納剣、応援に来た猟兵達と黄月水の戦いを観察しながら肉薄するウィリアム・バークリーのその言葉に。
「……ああ、そうだな」
 森宮・陽太が微かに上の空と言った様子で、反射的にそう返す。
「如何したんだ、陽太さん?」
 そんな陽太を見た館野・敬輔がさりげなく続きを促すと、先程聞こえた口上を思い出した陽太がいや……と軽く頭を横に振った。
「……あの軍師の妻まで利用してるんだよな、韓信って野郎は」
「ええ、そうですね。黄夫人の言葉通りであればその通りでしょう。……実際、予知でもそう言う話でしたし」
 陽太の其れに、小走りに駆けつつ空中に薄水色と白の綯い交ぜになった魔法陣を描き出しながらのウィリアムの答え。
 自分に湧いた勇気が全身を駆け巡り、其れが自らの力となるのを感じつつ。
「そうですね」
 と微かに俯き加減になりながら、ユーフィがそう応えた時。
『――ですが。それもまた、私の宿命だったと言う事でしょう』
 壊死した左腕を再生し。
 表面の火傷を水晶を剥離させるかの様に、自身に水銀の渦を纏わせながら。
 透き通る水の様に涼やかな声音で優しく諭す様に呟く黄月水に、ウィリアムが軽く目礼を一つ。
「初めまして、黄夫人。不躾ですが、あなたの奥の手を先ずは封じさせて貰います」
 ウィリアムが一礼し、目前の魔法陣を起動するよりも一足早く。
『然様でございますか。ですが……既に戦いは始まっておりますよ?』
 たおやかな微笑みと共に黄月水が愛らしく小首を傾げた、其の刹那。
 ――轟々!
「ちっ……いきなりかよ……ってか、ゲホッ!?」
 不意に戦場全体を包み込む様な水銀の渦が至る所に発生、思わぬ其れに息を止める間もなく、陽太が水銀を吸い込み咳き込んだ。
「くっ……! ですが、この程度で負けるわけにはいきませんっ! 蛮人、ユーフィ・バウム……参りますっ!」
 ――ビュウッ!
 咄嗟に背中のディアボロスを抜き放ち横薙ぎに一閃、突風を巻き起こすユーフィ。
 吹き荒れる風の竜巻が戦場全体を支配する水銀の渦の一部とぶつかり合い、その勢いを少し弱めるが……。
(「……ぐっ。肺に少し入りましたかっ……!」)
 水銀が肺を潰していくような苦痛を覚え、ゲホッ、とユーフィが血を吐き捨てる。
「ですが……こんな事で挫けてなどいられませんからっ! ゴホッ! ゲホッ!」
 血の混じった咳を続けながらも、ディアボロスを力任せに左右に振り、薙いで。
 自らの周りに迫る水銀の渦を撒き散らす様にして、ディアボロスエンジンを点火。
 そうして前傾姿勢で黄月水に肉薄しようとするユーフィに連携する様に。
「ああ、そうだな。例え蘇ることがあなた自身の望みで無かったとしても、今のあなたは人仙を全て封印しようとする韓信大将軍の配下。ならば俺達が此処で止める!」
 口元を血に濡らしながら敬輔もまた、目を鋭く細めて黒剣を抜剣した。
 抜剣されるや否や、外気に晒された赤黒く光り輝く刀身で凪の様な衝撃を起こし、これ以上の水銀の内蔵への侵入を抑えるが。
(「……くっ。流石に僕達の中に水銀の全てが入らない様には出来ないか……!」)
 水銀は液状にして、風に巻かれるが故に、大気中への侵食を広げていく。
 その様なものを全て吹き散らし、蹴散らす事など、出来る筈も無い。
 瞬く間に自らの内臓に水銀が入り込み、胃が食い荒らされる様な苦痛に藻掻きながら、敬輔が漆黒の結界を展開。
「ってか、この渦、生身の人間が巻き込まれたら死にかねねぇぞ!? なんつー、えげつねぇ効果の神器を用いてきやがる!?」
 肺が腐っていくかの様な苦痛に表情を青ざめさせ、何とか地面に膝立ちになりたくなるのを堪えながらの陽太の呟き。
 毒の苦痛に喘ぎ、両手を震わせながらも辛うじて握りしめた濃紺のアリスランスと淡紅のアリスグレイヴを十文字に交差させ。
「病疫を、司りし、獅子の、悪魔よ……」
 苦痛から催される吐き気と目眩を堪えながら詠唱を開始する、陽太。
 一方で。
(「常温で液体である水銀の凝固点は、とある世界の表現では、凡そ摂氏マイナス39度」)
 ――故に、それは。
「決して実現の難しいものではありません……ゲホッ、ゲホッ、ゲホッ! だから……この水銀の渦の一切を凍結させて貰います! ――Permaf……」
 ウィリアムが体に入った水銀に喘ぎつつもその詠唱を完成させようとした、刹那。
『残念ですが……読み通りです』
 ――パチン。
 まるで其れが分かっていたかの様に、黄月水が右指を鳴らした。
 その瞬間、水銀の渦達の一部が竜巻の如く、風に押されて動き出し……。
「……って、やべぇ!? ウィリアム、一度下がれ!」
 その水銀の渦の動きの意味を横目に捉えた陽太が思わず、と言った様に呼びかけつつ、左手のアリスランスを咄嗟に伸長。
 陽太の言葉通り、呪を完成させるよりも一足先にウィリアムが後退し、その前を陽太の伸長させた濃紺の槍が過ぎり……。
 ――パリン!
 と言う甲高い音と共に、水銀の渦の竜巻に誘導されてウィリアムの右脇に移動していた石兵を砕いていた。
(「くっそ、黄月水の奴、俺達の牽制の先の先を読んで、ウィリアムをこの戦場で永遠の迷子にしようとしやがった!」)
 思わず内心で陽太が忌ま忌ましさと称賛を籠めて舌打ちを打つその間に、かっ、と自らの周囲に符を展開する黄月水。
 赤・青・茶・緑・黄の5つの色とりどりの紋様の刻み込まれた陰陽五行符が、円の様に回転し、黄月水の周りを回っている。
 それを黄月水が陽太とウィリアムに向かって投擲する様に念動で移動させようとした、其の刹那。
「ゲホ、ゲホ……それでも、やらせるわけには、参りませんっ!」
 ユーフィが苦しげに咳き込み吐血した血で地面を汚しながらもディアボロスを持たぬ左手で黄月水に掌底を叩き込み。
「させるかよ、これ以上は……!」
 同じく胃から逆流して、今度は食道を侵食して腐らせていく凄まじい其の痛みを堪えながら、敬輔が符に向かって黒剣を一閃。
 ユーフィの放った掌底を受け止めんと水銀の渦を流砂の様に空中で回転させ仮初めの結界とし其の勢いを弱める黄月水。
 だが……それでも、ユーフィの万力を籠めた踏み込みの方が僅かに勝り、火傷を負った黄月水の鳩尾に衝撃が叩き付けられた。
『ぐっ……!』
 思わぬ攻撃に軽く吐血し、其の返り血をユーフィに浴びせながら辛うじて動くまでに再生した左腕を振るう黄月水。
 振るわれた左手を隠す様に覆われた着物の裾から不意を打って陰陽五行符が飛び、それがユーフィに貼り付いた時。
「きゃあっ!?」
 ユーフィの体を痺れる様な激痛が襲った。
 黄月水も代償に口から血を滴らせるが、過去の残滓であるオブリビオンたる彼女の命が削れるまでにどれ程の時間が掛かろうか。
 それどころか水銀の渦は勢いを増し、それが黄月水が受けた傷を片端から癒やし、更に彼女の動きを滑らかにしている。
 ――だが。
「でも今なら、活路を見いだせる。感謝するぜ、ユーフィ! ……マルバス! 此の地に疾病と癒しを齎す黄水晶の雨雲を呼び起こせ!」
 毒に蝕まれ己が身を苛む激痛を吹き飛ばさんと血の混じった叫びを上げる陽太。
 其の叫びと共に、陽太の目前に描き出された中央に強壮なライオンの悪魔の描かれた魔法陣を淡紅と濃紺の光が突き抜けて。
 其の魔法陣に描き出されていた強壮なライオンの悪魔マルバスが。
「グルォォォォォォォォォォォッ!」
 天にも届け、とばかりに咆哮すると、空中全体を黄水晶の雨雲が覆い尽くし。
「ゲホッ。少し遅れましたが、今度こそ――Permafrost!」
 更に一度中断された詠唱を完成させたウィリアムが目に微かに飛び込んだ水銀に片目をやられつつ術式を完成させる。
 ――刹那。
 戦場全体を覆い尽くさんばかりの猛吹雪が吹き荒れた。
 無限にも等しく量産された水銀の渦……液状の其れの凝固点を超えた幾つかの渦が吹雪に覆い尽くされて見る見る内に凍り付いていく。
『流石に、簡単に一矢報いさせてくれる様な相手では無いと言うことですか……』
 自らの周囲に張り巡らした水銀が凍てついていく様子を眺めながら驚いた様子も無く冷静に呟く黄月水。
 そのまま臆する様子も無く、元々は足であったのであろう尾をビタン! と撥ね上げる様に振り上げた。
「っ!」
 下方からの思わぬ強襲がユーフィの脇腹を殴打し、其れが貫通して内臓器官を揺さぶり水銀による毒の巡りを加速させるが。
「ですが……わたしは蛮人っ! 今までに培ってきた肉体と心で、相手の策を越えていくものですっ!」
 鍛え上げてきた筋肉で血管を強引に収縮させて、体中に毒が巡る速度を鈍らせながら正拳突きを叩き込む。
 口からだけでは無く、毒の影響からか毛細血管が破裂し、瞳から血の涙が滴り落ちるが、それでもユーフィの拳は止まらない。
 それは、ウィリアムの吹雪によって凍てついた水銀の氷塊を叩き割り、黄月水の心臓を激しく強打した。
『ぐっ……!』
 短く苦痛の声を上げ、ぽっかりと穴が空いた胸の傷を凍てついた水銀で埋めていき、その傷を癒やそうとする黄月水。
「今だ! 降り注がせろマルバス!」
 その隙を見逃さず陽太が命じるや否や、マルバスが再び咆哮し、天を満たした黄水晶の雨雲から、黄水晶の雨を降り注がせた。
 怒濤の如く戦場全体に降り注ぐ黄水晶の雨が、傷を塞ぐべく使用した凍てついた水銀と、その周囲の渦を溶かし。
 一方で、毛細血管を破裂させたユーフィや、何かを願う様に黒剣を両手遣いに構えて自らの胸の前に翳す敬輔の傷を雨は癒やしていく。
『……くっ! 最初に其の力を封じておくべきでしたか……! ですが、其の策謀も私の予測から外れたものではございません……!』
 そんな黄月水の言の葉を裏付ける様に。
 ――ゾクリ、と陽太の背筋を嫌な悪寒が駆け抜けていった。
(「不味い……! しくじったか……?!」)
 咄嗟に淡紅のアリスグレイブを左手側に、濃紺のアリスランスを右手側に交差させて伸長させる陽太。
 伸長したグレイブの柄の刃が石兵を1体叩き斬り、濃紺の光を纏った槍が、もう1体の石兵を貫き砕く。
 だが……此処は、その石兵達の産地。
 故に数多の石兵達が現れて陽太を囲い込み、この地の永遠の迷い子に落とし込もうとした、其の刹那。
 ――キキキキキーッ!!
 突如として、鋭い蝙蝠の鳴き声が戦場に響き渡った。
 ――其れは。
「群がれ、我が身に宿りし吸血鬼の力を内包せし、輩達よ! 黄月水の血潮を食らい、かの者の策を止めよ!」
 その瞳を真紅に変え。
 犬歯を鋭く伸長して。
 全身を黒ずくめの外装で覆い、その上から漆黒の結界を張り巡らした吸血鬼と化した、敬輔の命に従いし吸血蝙蝠達。
 ――更に。
「此処が……好機! 至れ、オーバーロード! 封じられし私の力を、今此処に具現化致しませ!」
 鋭く大気を切り裂く様な、勇ましき叫びと共に。
『抗魔』の上に着込んでいた『強力』が弾け飛び。
 最小限の部位だけを覆う様に編み上げられた『抗魔』が、紅から青に染まり。
 編んでいたポニーテールが弾け、腰まで届く程の長さになった銀髪が、瞬く間に青のショートカットへと変貌し。
 色黒の肌が見る見る内に生まれたままの頃の姿の様に美しい色白に変わっていく。
 ――けれども、其の鋭気と勇気の揺蕩う青き瞳の色は変わらず。
 否……寧ろ猛禽の様により剛き蒼き光を称える瞳と化した。
 ――それは、その姿は。
「私は、蛮人にして己が限界を越えし者……『蒼き鷹』ユーフィ・バウム! あなた様を戦いの宿業より解き放つため、いざ……参りますわ!」
 それは、鞭の様に鋭く黄月水を打ち据える声。
 自らを蛮人――今は『蒼き鷹』と名乗りしユーフィが、黄水晶の雨の癒やしを受け、『蒼き鷹』と化す事で、水銀の猛毒と自らを拮抗させて。
「行きますわよっ!」
 がっしりと鷲掴みせんばかりの勢いで吸血蝙蝠に群がられる黄月水にラリアットの強烈な一撃を叩き込んだ。
 ――バァァァァンッ!
『……っ?!』
 強烈なユーフィのその殴打は、黄月水の目を強かに打ち据え、一瞬、彼女の目から火花を飛び散らせ、其の頭を空白にさせる。
「皆様が攻撃できる隙を作らせて頂く其の為にも、逃がすわけには参りませんわ!」
 愚直なまでに真っ直ぐな一撃程、策を巡らす者の采配を狂わせる事は無い。
 一瞬、思考と意識が飛んだ様子の黄月水を、ユーフィが蒼き結界で覆い込む様に取り囲み、その全身を締め上げる様に組み付いて。
「今ですわよ、皆様!」
 そう叫んだ、その刹那。
「斬り刻む……!」
 もう1つの可能性……吸血鬼と化した敬輔がぐるりと側面に回り込む様にして、赤黒く光り輝く黒剣を唐竹割りに振り下ろし。
「……骸の海で、夫と仲良くしろよ」
 敬輔の側面からの唐竹割りに左肩を切り裂かれ、血飛沫を迸らせた黄月水に向けて、陽太が二槍を伸長させる。
 螺旋状の渦を描いて放たれた、淡紅と濃紺の光と化した二槍が、ユーフィに鷲掴みにされた黄月水の右胸を貫き、左脇腹を穿ち。
「……此で終わりです。これ以上世界を傷つけぬよう、お休み下さい」
 氷の様に冷たく、粛然とした手向けの祈りの言葉を紡ぎながら。
 ガボッ、と血泡を吹く黄月水の心臓に、猛吹雪に紛れて姿を消していたウィリアムが、背後から『スプラッシュ』を突き立てた。
 背中の皮膚を破り、骨を貫き心臓を貫いた『スプラッシュ』の先端が、黄月水の左胸から飛び出した時。
『……見事……です』
 喘ぐ様に小さく呟いた黄月水の肢体がビクリ、ビクリと痙攣し、ユーフィの腕の中で光と化して、消失した。
 ――こうして。
 1つの戦いの終わりの鐘が、鎮魂曲の様に、猟兵達の胸中に鳴り響いたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年02月27日


挿絵イラスト