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バレンタイン2022・冷やかせ! 不思議の国!

#アリスラビリンス #お祭り2022 #バレンタイン #小さなダイヤと大きなクラブ

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#バレンタイン
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●たとえ地獄の中でも
 アリスラビリンスは過酷な世界である。だが、中にはオウガの侵略を逃れ、文字通りの絵本のような不思議な国の体裁を保てている場所も僅かながら存在した。
 この国もその一つ。風はそよぎ小川は流れ、喋る回転木馬に飲んだ後は乗って回れるティーカップで遊び、安心安全の料理を供するレストランで食事をして、暖かいベッドで休むこともできる。
 ただその材質は全てチョコレート菓子。水も、木も、大地も雲も、川を泳ぐ魚でさえチョコレート製。ここまでチョコ尽くしではかえって胸焼けしそうと思いきやさにあらず。漂う香りは甘くも心地よい程度、チョコは触っても溶けることなく、口に放り込んで初めて蕩けて広がるというご都合主義全開のまさに不思議のチョコ世界。
 運よくそこにたどり着けたアリスはきっとこの世界でしばらく体を休めることができるだろう。そしてそんな平和な国ならば、この日がきっと一年で一番特別な日。
「あ、今日って、バレンタイン、なんだ……」
「みたい、だな……」
 訪れたアリスを、愉快な仲間たちが祭りの主賓として盛大に歓迎していた。

●たまには地獄を作る側に
「ハッピーバレンタイン。あなたのメルでございます」
 メル・メドレイサ(蕩けるウサメイド・f25476)が集まった猟兵たちに配った皿に乗っているのは……爆弾!?
 驚く猟兵の前でメルは爆弾にホットチョコレートをかけていく。どうやら外側の黒いものはチョコレートらしく、それが溶けて中から冷えたアイスが出てきた。
「本日はバレンタインですので、戦いの依頼はなしでございます。その代わり一つお願いしたいことがありまして」
 ハロウィンやクリスマスでもあらゆる世界で祝祭が行われていた。バレンタインもその例に漏れぬということのようだ。
「アリスラビリンスのハロウィンの国は覚えてらっしゃいますでしょうか。この度それのバレンタイン版のような国が発見されまして。ここはどうやらオウガの襲撃も今のところないようで平和な国なのです。そしてこの国に住む愉快な仲間達は、「恋人達の幸せを手助けすること」が何より大好き! というわけで、彼らの演出する素敵なデートコースを歩きながら、夢のようなひとときを過ごし……」
 なるほど、デートをしてくればいいのかと、一部の猟兵は面映ゆいような表情をし、また一部の猟兵が歯噛みしていると。
「ているカップルを思いっきり冷やかしてきてください」
 猟兵の表情が逆転する一言をメルが放った。
「ちょうど男女二人組のアリスがこの国を訪れており、愉快な仲間たちから歓待を受けています。皆様も愉快な仲間たちと一緒に、彼らのデートを応援してあげてください。花火みたいなの挙げて空一杯に応援の文字を書くとか、バックにオーケストラ出してムード全開のクラシック演奏するとか、チンピラに扮して因縁をつけて格好悪く撃退されるとか……猟兵ならそのくらい出来ますよね? え? 自分たちもデートしたい? 似たような国は他にもあるみたいなんで、別のグリモア猟兵さんが予知出してくれてんじゃないですか? 多分」
 真っ当な意見を他人に丸投げしてざっくり切り捨てつつメルは続ける。
「どうもこのアリスさんたち、付き合いは長いのですがそれ故にお互いへの感情を拗らせてしまっているというか、両想い越えて共依存気味になっているのでちょっとその辺りを健全化させてほしいというか……まあそんな感じで」
 考えながら言っているあたりこじつけっぽく聞こえなくもない。もしかしたらメルの配ったアイス入りチョコ爆弾が全てを物語っているのかもしれない。
「ここの愉快な仲間はとっても善良な方ばかりなので、協力すると言えば疑いもせず受け入れてくれます。また出来ることがあれば私にもお声がけください。微力ながらお手伝いさせていただきます」
 グリモア猟兵は呼ばれなければ現地に行けない。こいつの封印を解くかどうかは猟兵次第である。ちなみに愉快な仲間たちは本当に善意で過剰演出をしまくっているようだ。
「ああそれと、平和ならいっそここに住ませてしまえば……というのは通じません。アリスラビリンスに完全に安全なところなどありません。この国だっていつ襲われるか分からないし、アリスたちは脱出を目指しています。あくまで一時の息抜きとお考え下さいませ」
 少しだけ真剣な声色を混ぜて言い、メルはグリモアを起動する。
「それでは皆様、素敵なデートプランを提供してきてあげてくださいませ」
 満面の笑顔でそう言って、メルは猟兵たちを送り出すのであった。


鳴声海矢
 ハッピーバレンタイン、鳴声海矢です。『この国に住む愉快な仲間達は、「恋人達の幸せを手助けすること」が何より大好き!』がそうとしか読めなかったもので。

 まず大きな注意事項として、『グリモアエフェクトの都合上、なるべく「15日後朝8:30」までの完結を目指します』。目安としては日付が変わるくらいまでのプレイング受付とします。詳細はタグにてお知らせします。

 このシナリオではアリスラビリンスの『チョコレートの国』にて愉快な仲間たちにデートさせられているアリス二人を全力で応援(意味深)していただきます。
 この国の全てはチョコレート製ですが、食べない限り溶けたり汚れになったりしないスーパーご都合チョコレートです。種類も色々、味も最上級。

 応援方法はお任せします。メルが挙げたのはほんの一例。自由な発想と猟兵の力で最高のデートを演出してあげてください。愉快な仲間たちも協力は惜しみません。お声がけ頂ければメルも手伝いに参ります。好きなようお使いください。

 一応ギャグ展開&応援の体裁なので、ガチすぎる嫌がらせやあまりに公序良俗に反する方法はNGとさせていただきます。地上波で流せるレベルにしてください。本気の応援は別にOKです。
 また自分たちもどうしてもここでデートしたい! というなら止めはしません。他の猟兵や愉快な仲間たちに何をされても責任は持ちませんが。

 以下、デート中のアリス詳細。

 赤石・大弥(14) アリス適合者の王子様×探索者。背が低く体力はないものの、頭が良く計算高い考えもできる(ただし所詮は一般人レベル)。
 クララ・ブラックウッド(15) アリス適合者の力持ち×スーパーヒーロー。大柄巨乳の筋肉質で、体力があり力は強い。やや指示待ち気質。
 二人で役割分担し今まで生き抜いてきたため、一般人としては割と強い。双方お互いの事を大切に思ってはいるが、極限状態で作られた関係なので普通の恋愛感情とは違う共依存状態。二人とも何度か猟兵に助けられており、猟兵がやったことなら……と大抵のことは多分許してくれると思われる。

 二人の過去について詳しくは『#小さなダイヤと大きなクラブ』タグをご覧ください。

 それでは、最高の演出を見せるプレイングをお待ちしています。
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第1章 日常 『アリスラビリンスのバレンタイン』

POW   :    不思議で美味しいお菓子を食べる

SPD   :    沢山のお花を摘み集める

WIZ   :    愛を伝える詩やお手紙を書く

👑5
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「今日は年に一度のバレンタインデー! さあお二人様、最高の一日をお過ごしください!」
 熊のぬいぐるみのような愉快な仲間が、大袈裟な動作で声を張り上げる。その前にいるのは、小柄な少年と大柄な少女の二人連れのアリス。
「え、あ……もう二月なんだ……もう一年以上、ここにいるんだな……」
「だ、だね……」
 バレンタインという言葉をわざとらしく避けて月にのみ言及する少年と、彼をちらちら見ながら頷く少女。
 その間にも後ろから忍び寄った小動物型の小柄な仲間が少女の手にチョコ菓子のレシピや材料を押し込もうとし、頭が本になった仲間が少年の前に現れてはお勧めデートスポットなどとかかれたページをこれ見よがしに開いて見せつけてくる。
 いたたまれなくなってその場から立ち去るが、体に染みついた癖でどうしても二人離れないように行動してしまう。そうなれば道すがらではバイオリンを持ったキリギリスがずらり並んで愛の歌を大演奏しているし、手の生えた看板が強引な客引きの如く絶景や遊園地のある方向を指しながら前に出てくる。
 だが拉致されるように連れていかれた先は、自慢するだけあり確かに絶景。優しく甘い香りを放つチョコレートの大河を見下ろす丘なんてよそではちょっとお目にかかれないだろう。
 そうなればどうしたって隣にいる、互いに命を預け合ったパートナーを気になってしまうのは致し方なし。
 さあ猟兵よ、この甘い世界を回らされる少年少女を全力を持って冷やかしもとい応援してやるのだ!
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
おや、あのお二方ですかぁ。
それではお手伝い致しますぅ。

顔を合わせた回数が多い分、隠れても見つかる率が高そうですので、堂々と正面からお会いしますねぇ。
表向きは『偶然立ち寄った』ということで。

そして「折角ですし、着飾ってみては?」とクララさんをお誘いしますねぇ。
場所は『ブティック』の様になって居る一角で、お呼びしたメルさんに「彼が意識しそうな服(お任せ)」を選んで頂きますぅ。
私も一緒に着替えるとすれば、比較的容易に可能でしょう。
……服のサイズ、という問題は有りますが。

また、「着替え中」であれば、多少お二方を離せますので、クララさんに「バレンタインチョコ」について尋ねますぅ。



 チョコレートの国。その名の通り全てがチョコレートでできているこの国の住人は、他人の恋を応援することが何より大好き。そんな国だからバレンタインはクリスマスやハロウィン以上の最大のお祭りの日だし、そんな日に互いを意識し合う男女が来ればそれはもう主賓、国賓として盛大にもてなされること疑いなしだろう。
 そんな哀れなる生贄……もとい幸運なゲストに選ばれたのは二人のアリス。
「何か……色々違い過ぎてちょっとな……」
「う、うん……」
 小柄な少年赤石・大弥と大柄な少女クララ・ブラックウッド。不本意にも一年以上アリスラビリンスに閉じ込められた二人は、この世界の恐ろしさを身をもって知っている。いつどこから理不尽な死が襲ってくるか分からないこの世界で、こちらをはやし立てるような程の歓待などは当然経験したことなど無かった。
 さらに不幸もとい幸運なのはそんな彼らの状況をグリモアを使ってかぎつけた者がいたこと。二人が強い信をおく猟兵たちを仕掛け人に仕立て上げ、二人の仲を進展もしくは弄り回してくれようとするグリモア猟兵が賛同者を募り愉快な仲間たちに火星に訪れていた。
「おや、あのお二方ですかぁ。それではお手伝い致しますぅ」
 夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)もその賛同者の一人。彼女は二人がアリスラビリンスに捕らわれた直後、初めて猟兵と出会った事件から幾度となく二人を助けており、最も彼らと関わった猟兵と言っても過言ではなかった。
 それ故自分の顔がはっきりと覚えられていること……ついでに体系的に隠密行動にも向かないことを自覚しており、どうせやるならと最初から堂々と二人の前に姿を現す。
「あら、これは奇遇ですねぇ」
 表向きは偶然を装いつつの登場に、二人は驚くとともに緊張した表情になる。
「あ、お久しぶり、です……」
「久しぶり、す……もしかして、あなたが来たってことは……」
 猟兵はいつも恐ろしい相手を倒しに現れる。ということはやはりここも見た目通りの平和な場所ではないのか。地獄の世界を彷徨い続けた故のその発想にるこるは首を横に振ってこたえる。
「いいえ、今回は戦いの用事ではありません。詳しくは言えませんが数少ない平和な国で遊ぶのもお仕事のうちでして」
「あ、なるほど……そうなんだ……」
 ここが平和な場所であること、偶然ここで出会うのがありえない確率ではないことなどをほのめかす言葉を選べば、一般人としては頭の回転の速い大弥がその辺りを読み取ってくれる。
「ですので、せっかくですのでこちらのお仕事を手伝っていただけませんか?」
 そう尋ねれば、彼女に恩のある二人に断る理由はない。
「え、まあ、俺たちでできるなら……そっちは?」
 頷きながら大弥が見るのは、るこるに呼ばれて来たグリモア猟兵であり今回の首謀者でもあるメル・メドレイサ。
「うふふ、直接お会いするのはそう言えば初めてですね。まあ、おまけと思ってくだされば」
「は、はあ……」
 二人の関わる予知は大体彼女が出しているため一方的にはよく知っている。当然それを二人が理解できるわけでもなく、とりあえず無害な同行者という体で一同はチョコレートの国を歩き始めた。
 やがて街中を通り、辿り着くのはブティックのような店。
「折角ですし、着飾ってみては?」
 ふと立ち止まり、思いついたようにるこるがいう。もちろん本当は最初からここを目指して歩いてきたのだが、その辺りは秘密にしておくに限る。
 確かに、二人も服は大弥はフード付きパーカー、クララはサロペットとお祭りに合うようには見えない。
「え、でも……」
「俺はいいよ、行ってきな」
 明らかに女性服専門店であるそこにクララがパートナーを見て迷うが、大弥は気にしないよう言う。何度も助けてくれた猟兵と言う絶大な信頼を置ける相手がいるからこそ、大切なパートナーの手を安心して放せるのだろう。
 そうして店の中に入れば、待ってましたとばかりに店員が出迎える。
「まあいらっしゃいませ! どうぞお好きなものをお召しになってくださいな!」
 そうして次々と持ってこられる服の山。それを一つ一つ吟味しながら、るこるとメルがクララに合う服を考える。
「どう思われますかぁ?」
「そうですねぇ、普段が作業着的なものですので、多少装飾過多かつ女性的で実用性は薄そうなものを……」
 選定基準は『大弥が意識しそうなもの』。もちろんそれは口には出さず、淡いピンク色のドレスを選ぶメル。
 クララが気後れしないようにるこるも自分で似たようなものを選びいざ試着だが、ここで一つ問題が。
「は、入らない……」
 何しろクララもるこるも色々と規格外サイズ。るこるの場合は胸だけで大抵の服ははちきれてしまうし、クララについても身長が高い上脱がせてみてわかったが腕や脚も筋肉でかなり太い。
 そこに颯爽と現れたのは鋏とヘラという謎の組み合わせの道具を持った店員。
「サイズが合いませんか? お直しもお任せあれ」
 そう言うと二人が選んだドレスと似たような布を鋏で切り、その切断面を合わせてヘラで押しあて成形してしまった。そう、このドレスもまたチョコ製であり、チョコの特性の都合のいい部分だけを抜き出して使えるのはこの国の特権なのだ。
 そうして無事にサイズの合うドレスに着替えた二人はお披露目のため店の外へと出る。
「ど、どうかな……」
「あ、うん……いいと、思う……すごく……」
 ふわりと膨らんだスカートに腰回りを飾る大きなリボン、肩回りは露出し大きすぎる胸は半分ほどしか隠れていないが、決して下品ではない。初めて見るパートナーの姿に、大弥は何ともテンプレ通りな初々しい反応だ。
 そんな彼の前で、クララも着替え中にるこるに言われた一言を思い出して赤くなっている。
『バレンタインチョコはどうするおつもりで?』
 そもそもバレンタインだと気づいたのがこの国に来てからなので当然用意などないが、ことあるごとに愉快な仲間たちがそれに関わるものを押し付けようとしてくる。その気になれば今から最高級や規格外のものを用意することだって容易いだろう。
 それに悩む姿を見ながら、るこるは【豊乳女神の加護・霊結】の薬をこっそり服用する。
「それ、効果あるのですかね?」
「さあ?」
 次の行動の成功率を高める薬だが行動するのはクララだし、こういうことに使った経験はもちろんるこるもない。古来よりお医者様でも草津の湯でもと言われるそれをユーベルコードが何とか出来るのか、その答えは女神さまのみぞ知るといったところであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ベアトリス・ミラー
ホークと行動
アドリブ・絡みOK

「メルさん、身体の方は?」
まずはそちらから聞いておかないとですね。
異常はなさそうですが、念のために聞いておきましょう。
「まあ冷やかしでも応援でもどちらでも」
からかうのも面白そうですが背を押すのもいいかもですね。
「お二人はもう長く一緒であるなら恋人も同然では?」
あとは出方を伺い押すかからかうか決めながらいきましょう。
メルさんにも協力してもらいつつで。


ホーク・スターゲイザー
ミラーと行動
アドリブ・絡みOK

馬車の後部が開きデュークが現れる。
「お待ちしておりましたよ」
いつもと変わらぬ口調で接する。
「ああ申し遅れを、デュークと申します。いかがです?武器、弾薬、回復薬、その他なんでもお譲りしますよ」
一通り自己紹介を終えて話をする。
「ん?」
ミラーに指摘されるまで気づかなかったが、炎の元素で出来たナイフを指先で遊ばせていた。
「考え事をしている内にやってたのか」
癖、何度もしてきたような感覚になるが隅に置く。
「お互い大事なのは分かるが、胸の内を話す事も必要だ。言わなければ伝わらない」
その雰囲気は二人に戦い方を教えた人物に似て、再び道を示さんともしているようで。



 チョコレートの国で愉快な仲間たちのみならず、猟兵からまで応援と歓待を受けた二人のアリス。その二人が再度当て所もなく……実はこっそり色々誘導されて歩く先に、また新たな猟兵が待ち構えていた。
「メルさん、身体の方は?」
 本来の目的の前にまずはそちらから聞いておかないとと、ベアトリス・ミラー(クリエイター・f30743)がこちらにも同行したグリモア猟兵メルに尋ねる。
 殲神封神大戦の折、メルは渾沌氏に体を乗っ取られ猟兵の敵となった。その際彼女と戦い、その後の治療まで受け持ったのがベアトリスであった。
「はい、お陰様でもうすっかり。その際はありがとうございました」
 渾沌氏の力によって強化され、他の有力敵と同等クラスまで強化されていたメルを倒すばかりでなくその後の救援まで行ってくれた仲間たち。それに深く感謝を捧げつつも、いつもの調子は変えずに礼を言うメル。予知を出すなどしているので異常はなさそうだが、念のためにと聞いたベアトリスもその答えに一安心する。
 そしてそこの確認を終えて考えるのは今回の本来の目的だ。
「まあ冷やかしでも応援でもどちらでも」
 思いっきりからかってこいとメルは言ったが、ベアトリス自身今回のターゲットとは面識があるので嫉妬のような感情はない。一方で興味深いものや面白いものに手を出したがる性分なのはベアトリスも変わらないので、それで状況が悪くならないならその話に乗ってもいいとも考えており、とりあえずは本人たちの様子を見てから考えようとその時を待っていた。
 そうしている所に件のアリス達、赤石・大弥とクララ・ブラックウッドがやってくる。
「え、あ……あれ?」
「うふふ、ちょっとだけぶりです」
 ついさっき別れたばかりのメルがまたいることに二人が驚くが、その周囲にいる者たちの顔を見てまた少しうれしそうになる。
「あ、お久しぶりです……」
「無事だったんですね……良かった、す……」
 以前は別の不思議な国で、クララが大弥を守るため猟書家に立ち向かった際彼女を救援したのがベアトリス、そしてここまで黙って二人を待ち続けていたホーク・スターゲイザー(六天道子・f32751)。その戦いの際、ホークは自爆技のような大技を使い行方知れずとなっていた。ベアトリスの側からすればすぐに見つかったのだが、それ以降彼と会っていない二人からすれば今までずっと生死不明だったのと同じだろう。そしてもう一つ、その際はまだ出会って日が浅かったこともあり、ベアトリスとホークは少々険悪な間柄だった。メルがいるとはいえ他の見知った同行者なしというのは彼らにとっては少々不安があるのかもしれない。
 それを払拭するかのように、ホークはベアトリスに目配せし同時に道を開ける。そこに現れたのは、ある種この世界に相応しいとも言える大きな馬車。その馬車の後部扉が開き、一人の男が颯爽と降りてきた。
「お待ちしておりましたよ」
 優雅さすら感じさせる所作で降りてきたのは黒人の男。まるで顔見知りかのようなその態度に二人があっけに取られていると、男はこれまたわざとらしく軽く首を振る。
「ああ申し遅れを、デュークと申します。いかがです? 武器、弾薬、回復薬、その他なんでもお譲りしますよ」
 自分が降りてきた馬車の中を見せれば、そこには彼の言った通りのものが多種多様に、何でも揃っていた。中には普通の感覚では武器、防具とは思えない種類のものまで揃えている。
「え、こ、これ……」
「ああ、お代は気にしなくて結構。きちんと取るべき所からいただきますから」
 恐らく聞きたいのはそこではないのだろうが、デュークもまた分かっていてそう言ったのだろう。その取るべき所とやらがどこなのか、それは彼を呼んだホークにすら計り知れぬものでもあるのだが。
 そうは言った所であくまで宿った力、その場にあるものを振り回し猟兵に助けられ何とか生き延びてきた二人には武器の知識などない。そしてまた、普段はあまり自己主張しないクララがおずおずと声を上げる。
「あの……服って、あります? 男物の……」
 彼女はチョコレート製ドレスを着ているが、大弥は普段通りの格好のままだ。自分だけというところを気にしていたのか彼女がそう言うと、デュークはにこやかにほほ笑んだ。
「おっと、これは気づきませんで。失礼いたしました。それではこちらへ」
 大弥が何かを言う前に馬車に引っ張り込み、さっさと着替えさせてしまう。それは『万一の為に』とメルがこっそり用意していたチョコレート製のタキシード。クララのドレスとも釣り合うデザインだし、今日が終われば食料にもなる。
 そうして再び商品を見始める二人に、ベアトリスが声をかけた。
「ショッピングはデートの定番ですからね」
「デ、デート!?」
「い、いや、ここに来てから周りが勝手にやってるだけで、別に……」
 慌てて否定しだす二人だが、そもそもその態度が肯定しているのと同じこと。
「お二人はもう長く一緒であるなら恋人も同然では?」
 押してみると顔を赤くしてそのまま黙ってしまう二人。どうやらある程度自覚はしているが、そう言った言葉を使うのをどうしても避けているようだ。
 メルが言うにはこの二人は互いを思い合ってはいるが、ここまでの経緯から些か拗れた感情になってしまっているらしい。狂気と恐怖の支配する世界で普通を保つのは難しい。だがだからこそ、普通の感情を持ち続けて欲しいとこの世界の恐怖を知るベアトリスは思う。
「ほら、あなたも何か言ったらどうです? そんなものいじってばかりいないで」
 そしてホークにもそれを催促する。それはまるでかつての戦いで彼に参戦するよう言った時の様でもあるが、あの時と違いそこには明確な信頼と好意が込められていた。
 そう言われた、初めてホークは炎の元素で出来たナイフを指先で遊ばせていたことに気づく。
「考え事をしている内にやってたのか」
 それは意識しないうちについやってしまう手癖の様で。だが、今までそんなことをしたことは一度もなかったはず。それを何度もしてきたような気になるが今はそれは脇に置いておくべきことと気にしないことにし、ホークもまた二人に言葉をかける。
「お互い大事なのは分かるが、胸の内を話す事も必要だ。言わなければ伝わらない」
 思い合っていれば目と目で通じ合える、何てものは都合のいい幻想。戦場でそれができる者がいるのは、その誰もが戦いに習熟し自分と相手が為すべきは何かを一致させて判断できるから。例え一年生き延びてきたとは言え、あくまで望んで戦っているわけではない二人には到底できるものではないだろう。
 そしてそれは、もっと身近な人間関係においても同じ。
「例えばだ。お前は指示を出すとき声を出すだろう。そっちは分からない点があれば聞き返すはず。まずはその延長だ」
 そうして教える様は、二人に戦い方を教えた人物に似て、再び道を示さんともしているようで。
「そっか……そうだな……師匠もそんな感じに……」
「うん……」
 その人物はもういない……少なくとも、二人はそう思っている。その男を思い出しながら、今改めて生きる術を見直すときかと互いに見つめ合う二人。
「冷やかしはお断り、と言うべきでしょうか?」
 デュークはそう言って肩をすくめ軽く首を振るが、その言葉は誰に向かって言ったものか。
「うーん、計画は失敗ですかね? まあこれはこれで」
「私は元よりどちらでも良かったので」
 すっかり甘い空気になってしまったのでからかってこいというメルの指令は失敗にも思えるが、それはつまり猟兵がそれだけ彼らに真剣に向き合ってくれたということ。そう考えれば想像を超える大成功とも言える。
「何をするにも装備はいるだろう。遠慮なく選んでおけ」
 ホークはそう言って二人を再び商品の方へ向かせる。この時が終われば二人はまた地獄の中へ旅立たねばならないのだ。
「アリスクロスはもうお召しですので、革命剣、フック付きワイヤー、パワーフード、ヒーローズマントなどお勧めです」
 デュークが二人のジョブに合ったものを提案する。そう高レベルのものは使いこなせないから単純な、自身のスタイルに合ったものを選ぶことになるだろう。それでも、何もないよりずっといいはず。
 関係も、力も、一歩踏み出せたはず。今日はそんなバレンタインだと、二人を見守る猟兵たちは思うのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年02月20日


挿絵イラスト