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私がページに、ページが私に

#UDCアース #邪神の仔

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#邪神の仔


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 とある図書館の閉架書庫、眼鏡を掛けた背の低い女性が一人でメモを片手に移動書庫を動かしていた。
「よい、しょ……と。えーと、この棚の……。」
 見習い司書である文車・綾(ふぐるま・あや)は書庫の間へと入り込み、目的の本があるべき場所を指さし探す。
 その棚には革装丁の古そうな本が並んでいた。
「ん……ここのはず、なんだけど。」
 かすれている背表紙をよく見ようと目を凝らし、その背表紙に触れると……かすれた文字が徐々にはっきりと目に浮かんできた。
 目的の本を手に取り、表紙を見れば正しくそのタイトル。
「良かった、これだ。」
 いつからかは解らないが、綾は書かれている文字に触れると元の文字が浮かび上がって見えてくるのだった。
 いくら消えかけていようと、滲んでいようと……とはいえ、それは本に限ったもので、
「こういう時は便利だけど、中々活きる機会はないのよね。あーあ、古文書の修復とかやらせてもらえたらなぁ……っとと、」
 ちょっとした段差でもあったか足を取られ、綾が棚へと手をついた時……はらりと、その手から1枚の紙がはらりとこぼれ落ちる。
 棚に乗っていた物だろうか? と拾ったその紙に目を通すと、書かれていたのは綾の先ほどの呟きだった。
「え、これって……私、の?」
『見つけたぞ……。』
「え? 何、なんなの!?」
 囁くような声ととも一冊の本が棚から浮かび上がり、開いた本からバラバラと離れていくページが綾の周りを浮かぶ。
 それらが一斉に綾に張り付くと、途端に身体から力が抜けていくのを感じた。
『お前の、力……貰い受ける。』
「やめ……う、あ……。」
 ハラハラとページをめくられるような紙の音が閉架書庫に響き……パタンと閉じられた本は、また棚へと戻っていった。

「……というわけで、皆さんには邪神の仔の素質があるUDC、文車・綾さんの保護をお願いしたいと思います。」
 グリモアベースに集まった猟兵たちへと、アトは微笑みを浮かべながら淡々と説明を続けていた。
「彼女はUDCとして発生しながら、自身を人間と認識して生活していました。
 とはいえ、今の彼女の持つ人と違う能力は、本に書かれた物を正しく認識するというモノだけです……しかし、彼女は自覚していませんが、それは正しく全ての書物を理解してしまう力です。
 魔術、邪教、そして邪神の知識に触れてしまったら、彼女は本来のUDCの力に目覚めてしまうかもしれません。
 彼女自身、本来は書物……いわゆる本の一冊です。
 しかし、それは簡単に閉じるページを変えることができるもので、認識した書を自身のものと入れ替え、書き換える事ができます。
 ……ところで、この世界の出来事が過去から未来まで記録されたモノがある、と言ったら信じますか?
 それが書き換えられたら、この世界に住む私たちの未来が、変わってしまうとしたら……。」
 言葉を区切るアトの口に浮かぶのは、変わらぬ薄い笑み。
 冗談、だろ……? という猟兵の呟きに、
「ふふ……冗談だと、良いですね。
 さて、彼女は今、見てもらった閉架書庫の何処かにいます。
 まずは彼女を探してください……本の中に紛れていると思われます、ひたすらに開いていくことになるでしょう。
 そして、彼女を見つけると同時に、彼女を捕らえた魔導書が襲ってくるでしょう。
 ここの図書館は、UDC職員の方々に人払いをしてもらってありますので、いくら暴れても大丈夫ではありますが……できることなら、周りの本は傷つけないでもらえれば幸いです。
 そして……。」
 改めて猟兵たちへと向き直り、アトは優しく言葉を綴る。
「彼女は、自身がUDCである事を知り、深く心が傷ついているかもしれません。
 ……優しく彼女を説得し、UDCであるという記憶と力を抑える処理を受けさせてください。
 処理そのものは、UDC職員の方がやってくれます。
 ただし、皆さんが『彼女は危険だ』と認識したならば……処分、というのも選択の1つです。
 彼女は、まだ力の弱いUDCですから。
 ……よく考えて、結末を考えてくださいね?」


ヨグ
 ヨグです、邪神の仔の物語です。
 文車妖妃のような女性をどうするか、皆さんで考えてください。

 3章については、プレイングに記憶処理か処分のどちらか判断できるように書いてください。
 どちらか読み取れない、判断できない、という意見でも構いませんが、記憶処理で生き残らせたいという意見が多数にならない限り、彼女に下されるのは処分という判断になります。
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第1章 冒険 『〈図書館〉70%〈目星〉35%』

POW   :    夜を徹してでも片っ端から読んでいくしかない

SPD   :    まず分類整理して、急がば回れだ

WIZ   :    目星をつけよう、●●年代の資料はこのあたりだ

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

カーバンクル・スカルン
……焚書のふりする程度じゃ慌てて尾っぽを出さねぇよなぁ。まあ、徹夜作業なら任せろー。色々いじってたら朝になってたなんて、何度あったことか。

まずは図書館職員に話を聞いて、文車氏に何の本を取りにいかせたか確認。たぶんその近くに埋まってるでしょ、そこを片っ端からパラパラと眺めていこう。

で、それ以外の本は事前に車輪に繋いだ即席の荷台に放り込んで、バケツリレーよろしく外にどんどん運び出すよ。

流石に本と人両方庇いながら戦闘なんて出来ないからな。本棚や建物がぶっ壊れるのは勘弁してくれ。あとでUDCが再建費用くれるだろうから。



「探す……ってもなぁ……。」
 閉架書庫の移動書棚を見上げながら、頭を掻きながら呟く、カーバンクル・スカルン(クリスタリアンのスクラップビルダー?・f12355)。
 事前に探す対象である文車が何を探していたのか、図書館職員に聞いてみたのだが、
「大体の棚しか解らない、ね。まぁ仕方ないか……失踪する前に探してた本がわかるだけでも御の字、と。」
 ガラガラガラ……と書棚を動かして目的の棚を見上げると、文字がほぼ掠れて読めない背表紙に小さくラベルの貼られた本が詰まっている。
 革や布で装丁された年季の入った本の壁へと手を伸ばし、カーバンクルは取り出した一冊をペラリとめくりながら囁きかけていた。
「……焚書のふりする程度じゃ、慌てて尾っぽを出さねぇよなぁ?」
 顔を上げて見渡すが、書棚からは何一つ音がしない。
 動く気配の無い本の群れに、ため息一つついて、
「……だよな。いざとなりゃ逃げられる本が、わざわざ自分の居場所を知らせないよな。解ってたよ。」
 ひとまず本を戻し、ガラガラと別の書棚を開く。
 事前に用意しておいた荷台を近くに置くと、棚の本を放り込んでいった。
「ったく、ここが邪教の施設で、ヤバい魔導書ばかりだったらこんなことしねぇが。ここにあるのは図書館の資料で、本は人の記録だ。」
 すっかり取り出すと、荷台はカーバンクルの用意した車輪に引きずられて外へと動いていき……少しすると、また別の荷台が転がってきた。
 別の書棚を開き、本を荷台に積み上げるカーバンクルの呟きが続く。
「流石に本と人両方庇いながら戦闘なんて出来ないからな。まぁ……本棚や建物がぶっ壊れるのは勘弁してくれ。あとでUDCが再建費用くれるだろうから。」
 しばらくすると、周囲の本はすっかり外へと運び出されていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ティモシー・レンツ
なるほど、UDCに取り憑かれた女性かぁ(誤解してる)
占いで探すのも手だけど、UCのほうが確実性は高いし……。
という訳で妖精さん、この図書館に居るはずのUDCの場所はわかる?…あ、職員さんじゃなくてクリーチャーね。
(「女性に取り付いたUDCクリーチャー」と間違えつつも案内してもらう)

……本棚に入れるほど、小さい女性?
それとも、UDCの能力でページの間に潜んでる?
(ヒト型存在、とヒトそのもの、を混同しているものの、余計な本棚を押しのけたり1冊だけを空きスペースに確保しようと)



「なるほど、UDCに取り憑かれた女性かぁ。」
 ティモシー・レンツ(ヤドリガミのポンコツ占い師・f15854)の呟きが閉架書庫に響く。
 確かに、UDCアースではその様な事例が多いが、今回の被害者の女性はUDCそのものである。
「こう広いと、占いで探すのも手だけど……、」
 ゆるりと本棚へと目を向けると、周囲に浮かんだ微かな光が集まり……ふわりと浮かぶのは妖精のようなモノ。
「こっちの方が確実性は高いしね。という訳で妖精さん、この図書館に居るはずのUDCの場所はわかる?」
 すぐに頷き、こっちだよと言うかのように閉架書庫の出口へと向かう妖精。
 結果的にティモシーの出した指示は正しいのだが、
「……あ、職員さんじゃなくてクリーチャーね。」
 なんだよー、と言いたげに本棚へと向かっていった。

「え、これ?」
 立ち並ぶ本の背、その一部を指さす妖精。
 指示された本を引き抜くが、見たところ古い革装丁の本ということしかわらかない。
「本棚に入れるほど、小さい女性? ……それとも、UDCの能力でページの間に潜んでる?」
 空いた隙間を覗き込んでも、人影は見当たらない。
 手にした本をぱらぱらと開いても、古いインクの匂いとともに歴史を感じる漢字が並んでいる。
「……おや?」
 ふと、開いたページに書かれている文章が目に付く。
『……天降坐而、見立天之御こわいこわいこわい、なにこれ、わたし、わたしは、なに、どうなってるの爾伊邪那岐命詔「……』
 漢文の間に、明らかにひらがなが混ざっている。
「なんだろう、これ?」
 ティモシーが首をひねっていると、妖精がそれだと指さしている。
「これ、なのかぁ……まぁそれよりも、ヒトの居られる場所を作らないと。」
 理解は出来ないが、ひとまず解る場所へと置いておく。
 そのままティモシーは勘違いしたまま、その付近の本棚を押しのけたりして人の居られるスペースを確保していた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】

人間がUDCに?
まさかUDC-HUMANか?
……そっか、少し違うみたいだね。
けれども何かしら、繋がりが無いとも言えないか?
そこも含めて迷子探しかねぇ。

だいぶスペース確保は進んでるみたいだね、それならアタシも助太刀だ。
残った怪しい本の中から、ダメ元で思念の残滓を探ろうとするよ。
力が分散していても、そこに「ある」なら見つけられるはずさ。

さて、探りを入れるだけじゃ終わらないわな。
綾さんの思念を『鼓舞』して誘導し、なるべくひとつのページに纏めようとするよ。
ついでに綾さんへちょっかいを掛けてきた、手癖の悪いラクガキ共から奪った力を取り返せればいいんだけどねぇ!
ま、無理筋か!



「最初はUDCーHUMANの話かと思ったけど、どうも少し違うみたいだね。」
 空きの目立つ本棚を見渡す数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)の呟きが響く。
 他の猟兵たちがより分けた本を一冊手に取ると、微かながら何かしらの思念が漏れ出している。
「人間がUDCに成るんじゃなくて、元々UDCなのか……けれども何かしら、繋がりが無いとも言えないか?」
 なぁ? と本に問いかけながら、微かな思念を読み取っていく。
 本を掴む数宮の手を通して流れてくるのは、困惑と恐怖のものが大半だ。
「……そりゃぁね。いきなり本の中に引きずり込まれて、自分が人間じゃないって思い知らされたんだ。怖くないわけがないさ。」
 目を閉じ、数宮は読み取った思念を辿り、自身の意識を周囲に広げていく。
 それは存在の本質を捉える思念波となり、周囲の本から漏れ出す思念を捉えていった。
「ましてや、バラバラにされてたらね。」
 片目を開けて見渡せば、思念の漏れる数冊の本が浮かび上がって見える。
 どれも革で装丁されたそれなりの厚さの本だが、集めて積み上げるのにそれほど手間はかからなかった。

 数宮は本の山へと手をかざし、恐怖に囚われた思念へと語りかけていく。
「思い出すんだ、文車・綾さん……あなたは司書見習いで、本を読み取るのが得意なんだろ?」
 その声に呼応するように思念は徐々に纏まり、1人の意識へと変わっていく。
 かざされた手の下で纏まり……その本がひとりでに開いた。
「さぁ、出てきなよ。あなたの居場所はそこじゃない。」
 突如、開かれた本のページが半分、ばらりと床に落ちる。
 しかし、紙の束は広がることなく蠢き、くるりと纏まり……徐々に人の姿をとっていった。
「う、ん……?」
 一部が本のページのままだが、それもすぐに人のものへと変わっていく。
 目を開いた時にはすっかり元の人の姿になっていた。
「……え、あ、ここ……は?」
「おかえり、綾さん。」
 安心させるように笑みを向けた数宮だが、彼女の後ろに積まれていた本が浮かび上がるのが見えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『写本・魂喰らいの魔導書』

POW   :    其方の魂を喰らってやろう
【複製された古代の魔術師】の霊を召喚する。これは【触れた者の絶望の記憶を呼び起こす影】や【見た者の精神を揺さぶる揺らめく光】で攻撃する能力を持つ。
SPD   :    その喉で鳴いてみせよ
【思わず絶叫をせずにはいられないような幻覚】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    魂の味、これぞ愉悦
自身の肉体を【触れる者の魂を吸い脱力させる黒い粘液】に変え、レベルmまで伸びる強い伸縮性と、任意の速度で戻る弾力性を付与する。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「私……本の、中に……。」
 助け出された女性、文車・綾は自身の手へと目を向ける。
 今までと同じ、自分の手……しかし、右手首からぺらりと1枚、ページが捲れるように紙が広がった。
 その下にはびっしりと文字の書かれたページがあり、すぐに人の肌へと変わった。
「私……人、じゃ、なかった、の……?」
『そう、だ。』
 声に振り向けば、浮かび上がる革装丁の本の数々。
 ちらりと目を通しただけで分かる、魔導書と呼ばれている物の写本たち。
『其方が人なものか……むしろ、我らに近い。』
『だが、其方は力を持っている……其方の力を持ってすれば、世界も書き換えられるのだぞ。』
「なん、で? そんな力知らない、私に何が出来……ひぃ!?」
 言い返そうとした文車の目の前に、過去の魔道士と見られるモノが呼び出される。
 黒いタールで出来たそれはドロリと名状し難い動きで履い近づき、
「う……ぁ……。」
『知らぬなら、それで良い。』
『そのまま、我らのモノとなるが良い。』
カーバンクル・スカルン
ようやく尾っぽを出したな、逃がさんぞ!

黒い人型を吐いている本へ勢いよく鎖を投擲して巻き付け、【心慌意乱】を発動! 何が見えたかは知らんが、一瞬でも人型が引っ込んで文車氏がフリーになればOK!

今ので気絶したであろう文車氏が車輪に繋がれて遠くで待機しているUDC職員の元へデリバリーされている間に私は鎖を巻き上げて本を回収して、メラメラと炎をあげる黒炎の盾にポーイ、っと。焚書の時間だオラー!

文車氏をUDCに一瞬でも預けていいのかって? 勝手に殺さないよう念押しはしてるから多分大丈夫でしょ。


数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】

おおっと、そこまでだよラクガキ共。
確かに綾さんは人ならざる力を持ってるかもしれないよ。
そこを否定する気はさらさらない。
けどなぁ、この世界ってのはもっと不思議なもんでね。
ただの人がそういう力を持ってたりもするんだ。
……こんな風になっ!

綾さんを『かばう』様に魔導書たちの前に立ちはだかり、
サイキックの『オーラ防御』フィールドを広げる。
粘液に変わっているならもっと好都合、
そのまま【闇払う旋風】を巻き起こして奴らを近寄らせない。

アタシもこんな力が何故あったのかは知らないけれど、
こうしてあるがままに受け入れ、使い方を考えるのもひとつさ。
『範囲攻撃』しながら綾さんにそう伝えるよ。



「ひっ……ぁ。」
「おおっと、そこまでだよラクガキ共。」
『貴様……邪魔を、するか。』
 間に立った数宮に黒いタールの身体を弾かれ、元となる魔導書から苛立ちの思念が叩きつけられる。
 恐怖にぺたりと座り込んだ文車は、ただただその様を見上げる事しかできないようだった。
『其奴は、我らのモノ、ぞ。』
「何が我らのモノだ。確かに綾さんは人ならざる力を持ってるけどな、」
「お前らに渡す気は無ぇんだよ!」
『ぐっ、貴様……っ!?』
 背後からカーバンクルが投げつけた鎖が魔導書に勢いよく絡まり、黒い人型の動きが止められる。
 そのまま鎖を引き寄せるカーバンクルへと人型が向き直るが、その顔が恐怖に染まっていた。
『き、貴様っ……やめろ、炎は……!』
「やっぱり炎か。所詮は紙の束なんだよ、お前らは!」
 しかし、その視線の先にあるのは鎖をたぐり寄せるカーバンクルの姿だけ……魔導書が見ているのは、巻き付いた鎖が見せる幻影だった。
「燃え……てる……?」
「……見えるのかい?」
 背後から聞こえた呟きに数宮が問いかけると、文車はこくりと頷く。
「あの本……人の手で掴まれて、燃えてる火の中に……怖い、助けてって叫んでるのが、なんとなく。」
「つまり、この本が見てる内容を読み取ったって事か?」
 鎖で巻かれた本を手にしたカーバンクルの言葉に頷く文車。
「多分、そう……です。」
「なるほどね。ま、初めて能力を自覚したんだ、そりゃ戸惑うだろうさ。」
「……あなたの、その鎖も、ですか?」
「そういうこと。」
『巫山戯るな、猟兵共め!』
「ひっ!?」
 叫びのような思念と共に、別の魔導書が黒いタールの人型へと変わって文車へと襲いかかってくる。
『我らは、其奴の力を……貴様ぁ!』
「……え?」
 戸惑いのような思念に文車が驚きに閉じていた目を開けると、腕を広げた数宮の背が見えた。
 その前に張られたのは、サイキックオーラの壁。
「この世界ってのは不思議なもんでね。ただの人が、そういう力を持ってたりもするんだ。」
「あなた、も?」
「……ただの人のはず、だったんだけどね。アタシも、こんな力が何故あったのかは知らないけれど、」
『くっ、貴様も我らの邪魔を……ぐあっ!?』
 数宮が手に力を込めると、オーラの壁はサイキックエナジーの嵐へと変わり、タール状の人型を散り散りに吹き飛ばす。
 その黒い滴となったタールは本のページへと変わり、その場に舞い上がっていた。
「こうしてあるがままに受け入れ、使い方を考えるのもひとつさ。」
「そう……なんだ。」
 振り向き、笑みを向ける数宮に、文車はゆっくりと頷いていた。
 その時、ガランと鉄の板が転がる音が響く。
「焚書の時間だオラー!」
『や、やめ……!』
 そちらを見れば、床に置かれた黒鉄の盾から炎が吹き上がり……カーバンクルが鎖で捕らえた本やページを焼べていた。
「あ、あの、それ……。」
「……わるいけど、あいつらは諦めてほしい。」
『貴様ら……我らの邪魔を……!』
 憤怒の思念に目を向ければ、新たな魔導書が浮かび上がっている。
「放っておくと、あぁやって人を襲うからね。」
「……そう、ですね。」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

バルタン・ノーヴェ(サポート)
「バトルの時間デース!」
雇われメイド、バルタン! 参上デース!
アドリブ連携歓迎デース!

普段の口調:片言口調(ワタシor我輩、アナタ&~殿、デス、マス、デショーカ? デース!)
得意な技能:【一斉発射・焼却・武器受け・残像・カウンター・受け流し】デスネ!

遠距離ならば、銃火器類の一斉発射や各種UCによる攻撃が有効デース!
近距離戦闘なら、ファルシオンで白兵戦を挑みマース!
敵の数が多いor護衛対象がいるならば、バルタンズをお勧めしマース! 数の有利は得られるデショー!

状況に応じて行動して、他の猟兵のサポートに回っても大丈夫デス!
迎撃、防衛、襲撃、撤退戦。どのような戦場でも参戦OKデース!

頑張りマース!



 正面の本から浮かぶ、魔術師の幻影。
 彼らが文車・綾へと視線を移した時、突如ニヤリと笑みを浮かべる。
「なに……きゃっ!?」
『……捕らえたぞ。』
 音も無く浮かび、背後に回っていた別の魔導書から現われた幻影が、文車の身体を捕らえていた。
 影で出来た腕にがっちりと掴まれ、恐怖と共に突き放そうとしてもびくともしていない。
『其方の力、貰い受ける。』
「やめ……やだ、もう本になんて入りたくない!」
 ずるずると引きずられ、開かれた魔導書のページへと文車の脚が押し当てられ……抵抗なくページの中へと呑み込まれていく。
『諦めよ……その力を持って生まれた、其方自身を恨むがいい。』
 勝ち誇る声と共に、膝までもが本の中へ……その時、投げつけられた巨大な鉄球が魔導書の端を捉え、床にめり込ませていた。
『ぐあっ!?』
「え、何……ひあぁ!?」
 衝撃に影の腕の力が緩んだ瞬間、文車の身体は別の手によって本から引き出されていた。
 横から現われたバルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)は、左腕で簡単に文車の身体を抱えて跳び退いていく。
『ぐぬ、貴様……!』
「ふぅ、間に合ったようで良かったデース!」
「あ、ありがとう……えっと、」
「あーっと、話してる暇は有りまセーン! 雇われメイド、バルタンの戦い、そこで見ていてくだサーイ!」
 部屋の隅へと文車を立たせ、追いかけて来た魔導師の幻影へと振り向いたバルタンが右腕を軽く振るう。
 同時に、その右手のあるべき場所に引き込まれていく鎖……。
『其奴を渡せくはっ!?』
「油断しないで下サーイ!」
 鎖に引かれ、背後から跳んできた巨大鉄球に幻影は弾かれ……その勢いのまま、短くした鎖でグルグルと回しながら、バルタンは巨大鉄球を魔導書へと叩きつけていた。
「バルタンは決して弱くはないデース!」
『ぐ……無念……。』
 床にめり込んだ魔導書からは、邪な意識は消え去っていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

アレクシア・アークライト
邪神の仔。
今のところ私達が彼女に与えられる選択肢は、記憶操作か処分の二つだけ。
今ここで現実を受け入れられても困るわね。
少し目を瞑っておいてもらうわよ。

《精神干渉》を用いて綾を眠らせる。
併せて、《神秘干渉》で敵の綾に対する干渉を阻害。

さて。
相手は魔導書や古代の魔術師――の複製ね。
まったく、複製風情が随分と好き勝手やってくれたようね。
全部まとめて相手をしてあげる。

周囲に展開した《領域》で敵の位置と動きを把握し、攻撃を《防壁》で防御。
《神秘干渉》の力を込めた念動力で霊を引き裂き、《温度干渉》で発現させた炎で魔導書を焼いていく。

私達猟兵を相手にするんだったら、原書や魔術師本人を連れてくることね。



『其方……何故、我らに身を任せぬ?』
「……え?」
 魔術師の幻影から突然投げかけられた言葉に、文車・綾は思わずそちらへと耳を向けていた。
「何、で……?」
『其方は、我らに近しい。現に……書へと入り、また外へと現われたではないか。』
「そんなの……あなたの魔法じゃ?」
『我らに、そこまでの力は無い。あれは、其方の力だ。書を解し、書を書き換え、そして』
「……そこまでよ。」
 幻影の言葉を遮り、間に割って入ったのはアレクシア・アークライト(UDCエージェント・f11308)。
「あなた、は?」
「その質問も後で……悪いけど、少し目を瞑っておいてもらうわよ。」
「あ……。」
 目の前に突き出されたアレクシアの指へと文車の視線が移り、その揺れる動きと共に文車の意識は夢の中へと堕ちていく。
 そのまま崩れ落ちるのを念動力でゆっくりと床に寝かせ、アレクシアは幻影へと振り返った。
「さて。……あなた達は魔導書や古代の魔術師――の複製ね。」
『如何にも。』
「まったく、複製風情が随分と好き勝手やってくれたようね。全部まとめて相手をしてあげる。」
『……その言葉、後悔するぞ?』
 怒りの篭もる幻影の声と共にその姿が薄れ、アレクシアの周囲を覆うように影が伸びていく。
 対し、目を閉じたアレクシアが一つ息を吸い……ゆるりと横へ手を向け、素早く爪で引き裂くように動かす。
『ぐあああああ!?』
 途端に影に溶け込んでいた魔術師の幻影が引き裂かれ、影は霧散していく。
 アレクシアの周囲に張り巡らされていた《領域》に入り込み、《神秘干渉》を篭めた念動力にその身を斬り裂かれて。
「まったく……私達猟兵を相手にするんだったら、原書や魔術師本人を連れてくることね。」
 床に落ちた本をアレクシアが一瞥すると、それだけで本が燃え上がり……灰も残さず消えていった。

 ……ふと視線を移せば、床で文車が静かな寝息を立てている。
「邪神の仔ね……今のところ、私達が彼女に与えられる選択肢は、記憶操作か処分の二つだけ、か。」
 静かになった閉架書庫に、アレクシアの言葉が響いていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『夕日を眺めて』

POW   :    夕日に向かって叫んでみる

SPD   :    電柱の上など更に高所に登り、そこから夕日を眺める

WIZ   :    オレンジに染まった景色を眺める

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 眠る文車・綾を抱えて外に出てみれば、西の空に夕日が沈もうとしている。
 さて、どうするか……と考えていると、近くに控えていたUDC職員が1人近づいてきた。
「皆さん、先ほどの戦い、ありがとうございました。
 彼女、文車さんも無傷で何よりです。
 それでその、彼女についてなのですが……。」
 職員は猟兵たちを伺うように視線を向け、言葉を続ける。
「皆さんから見て、彼女はどう映ったでしょうか?
 彼女の性質を見た上で、どうするか……皆さんの判断に任せようと考えています。
 後の処置については、私たちの組織で行うことになると思います。
 では……しばらく私は離れていますので、後でお知らせ下さい。」
 そう言って職員が離れていき……しばらくして、文車が目を覚ました。
カーバンクル・スカルン
職員さんちょい待ち。少なくとも見える範囲にはいてくれや。

文車氏を気絶している間に本になっても逃げられないよう厳重に車輪に拘束。そして倒したら当たるように黒炎の盾をスタンバイ。あとは自白薬を飲ませて……はい、起きろ。尋問の時間だ。

本を焼き払った炎を前に名前とか職業とかやりたいこととか聞いていく。自白剤のおかげで嘘はつけないぞー。

ここであのインク野郎に精神汚染されていて、世界を揺るがすようなことをほざいたら車輪を蹴り倒して盾とサンドイッチ。

職員さんがSTOPをかけたら解放して去る。アフターケアは他の人に任せるさ。だって暴走した時に過激な悪役がいると知っていたら抑止力に少しはなるでしょ?



 立ち去ろうとした職員だが、カーバンクルに呼び止められていた。
「ちょい待ち。職員さん、少なくとも見える範囲にはいてくれや。」
「え? あ、はい、問題なければそれでも構いませんが……。」
 当のカーバンクルは、まだ眠りの中にいる文車を車輪にくくりつけていた。
 その前には、魔導書を焼くために使っていた黒炎を放つ盾が転がっている。
「あの……まさか。」
「返答次第だな。……はい、起きろ。」
「う……ぁれ? ……んぅう!?」
 揺さぶられて意識を取り戻した文車だったが、半開きになっていた口に何かを入れられ、塞がれていた。
 身じろぎも出来ない程に縛られていることに気がつき、目の前には黒い炎が揺らめいて……。
「んぐ……んぅ……。」
 恐怖に身を竦ませ、口に入れられた錠剤のような物……カーバンクル特製の自白剤を飲み込んでしまう。
「のんだな。じゃあ、尋問の時間だ。」
「ぷは……な、何なんです、か。私、隠すような、こと」
「悪いが、聞くのは私だ。まず、お前さんの名前を言え。」
「文車、綾……です。」
「そうだったな。じゃあ文車、お前さんの職業はなんだ?」
「図書館で、司書の、見習いを……。」
 鋭く投げかけられるカーバンクルの質問に、文車は少しぼうっとした様子で素直に答えていく。
 考えさせる時間を与えず、矢継ぎ早に投げつけられる質問に浮かぶ言葉を口にさせる……その答えには、魔導書による精神汚染の影響などは感じられなかった。
「で、お前さんの住んでる所は?」
「○○市、の……コーポ、××……○ごう、し……つ……。」
 その答えを最後に、文車の意識は夢の中へと沈んでいったようだった。
「ふむ、問題はなさそうだな。」
「いや、あの……文車さん、大丈夫なんですか?」
 さすがに気になったか、職員も心配そうにぐったりした文車を見下ろしている。
「命に関わるもんは使ってないさ。まぁ、ちょっと夢見は悪いかも知れねえけどな。」
 車輪に拘束していた縄を解きながら呟くカーバンクルに、職員が恐る恐る問いかけていた。
「そこまでやる必要は、ありましたか……?」
「あのインク野郎に精神汚染されてるなら、生かしておく訳にはいかないからな。それに、そういう事をしようとしたらどうなるか刷り込んでおけば、抑止力にはなる。」
「まぁ……確かに。」
「アフターケアは、他の人に任せるよ。そんな目に合わせる奴が優しくしちゃったら、意味ないからね。」
 そう言い残し、カーバンクルは立ち去っていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

数宮・多喜
【アドリブ改変・絡み大歓迎】
【記憶処理希望】

よっ、綾さん。
目が覚めたかい?
大丈夫、怪物はアタシらが退治したよ。
しかしアンタも災難だったねぇ、人違いされるなんて。
邪神の仔だー、なんてさ。
ちょっと不思議なチカラを持った人、だろうにさ?

そんな感じで綾さんに『コミュ力』で優しく話しかけ、
緊張をほぐしつつ思念の腕でも抱擁する。
そうして綾さんの人間としての思い出をしっかり守りつつ、
慎重に『催眠術』を掛けていくよ。

アタシが仕込もうとするのは大した暗示じゃない。
「人であろうとする思い」と、
「超常の力への前向きな理解」の補強さ。
アタシも人として、綾さんと歩んでいきたいからね。
能力解放のバックドアは残しておくよ。


アレクシア・アークライト
記憶操作か、処分か

当然、前者ね
そうじゃなければ、さっきわざわざ守ったりなんかしない
それは他の人達も同じよね?

申し訳ないけど、今の私達には貴方の力を制御する力も技術もない
でもいつか、そう遠くない未来にそういう日が来ると思っている

だから、完全に消してしまうんじゃない
それまでの間、ちょっと忘れていてるだけ
いつかきっと貴方が貴方として生きられる日が来るわ

ところで、これは思い付きなんだけど

処分――この世界から抹消するという選択肢も有りだとは思うのよ
例えば少しの間、神様が店先でハンバーガーを食べているような世界に留学するとかね
それなら邪神の影響を受けたり、追われたりすることもないんじゃない?

ねぇ、アト?



 少しうなされている文車・綾を見下ろしていたアレクシアは、隣にいた数宮へと視線を向けた。
「一応、確認しておきたいのだけど。」
「ん?」
「あなたは、この人の記憶操作か処分か……どちらの判断を?」
「あぁ、それか……アタシは記憶処理で済ませてもらいたいな。」
 アレクシアの静かな問いかけに対し、数宮は軽く笑みを浮かべて返していた。
「そういうアンタは?」
「当然、前者ね。処分する気なら、さっきわざわざ守ったりなんかしない。」
「はは、そりゃそうだ。」
「う……ん……。」
 そんなやりとりをしている2人の足元で、身動ぎした文車の目が開く。
 それに気付き、視線の合った数宮は安心させるように笑みを浮かべていた。
「よっ、綾さん。目が覚めたかい?」
「え、あ……ここ、は?」
「図書館の外さ。あの怪物たちはアタシらが倒したけど、その片付けがあるからね。」
「そっか……。」
 落ち着かせるように、緊張をほぐすように……文車の思念を読みながら、数宮は優しく言葉をかけていく。
 しかし、自分の手を見下ろした文車は寂しげに呟いていた。
「夢じゃ、ないんですね。」
「ええ、その通り。残念だけどね。」
「……私がすり切れた本の背表紙とかを見て、簡単に読めるのも。」
「それが、貴方の力よ。」
「そう、なんだ。」
 淡々と事実を告げるアレクシア。
 その言葉にゆっくりと頷き、顔を上げた文車の表情は、どこか落ち着いた物だった。
「……おかしいな、とは思ってたんです。なんで、他の人はこれが読めないんだろうって。」
「便利よね。滲んでても消えかけてても、そこに書いてある物が読めるんだから。」
「でもさ、そんな不思議なチカラを持った人だって、この世にはいるのはわかっただろ? アタシらもそういう人だからさ。」
「そう、なんですね。」
 目を合わせて、慎重に掛けられていく数宮の催眠術……『超常の力への前向きな理解』の暗示。
「とはいえ、貴方がその力を意識して使い続けると、いずれは他の人にその力が知れる事になる。」
「そうなるとねぇ、さすがに生き辛い訳。アタシもさ、人の意識が読めるって知られたら気持ち悪がられてね。」
「あぁ……なるほど。」
「やっぱり、綾さんには人として幸せになってほしいんだ。」
 そして、『人であろうとする思い』の補強。
 それを横目に見つつ、アレクシアはUDC職員として言葉を続ける。
「ただ……申し訳ないけど、今の私達には貴方の力を制御する力も技術もない。でもいつか、そう遠くない未来にそういう日が来ると思っている。」
「あ……。」
「だから、完全に消してしまうんじゃない。それまでの間、ちょっと忘れていてるだけ。」
「安心しなって。今日のことはしばらく消えるかもしれないけど、今まで通りの生活は出来るからさ。」
「そう……そうなんですね。」
「いつかきっと、貴方が貴方として生きられる日が来るわ。」
「アタシも人として、綾さんと歩んでいきたいからね。」
「……分かりました。私もいつか、私として生きていきたいから。」
 UDC職員の元へ案内され、2人へと振り返った文車は、晴れやかな笑みで手を振っていた。
「皆さんとまた会えるのを、楽しみにしています!」

「いやぁ、良かった良かった。一件落着だな。」
「ええ……ところで、これは思い付きなんだけど。」
「ん?」
 グリモアベースへと帰るゲートの前で、アレクシアが言葉を続けていた。
「処分――この世界から抹消するという選択肢も、有りだとは思うのよ。例えば少しの間、神様が店先でハンバーガーを食べているような世界に留学するとかね。それなら邪神の影響を受けたり、追われたりすることもないんじゃない?」
「……あぁ、確かに。」
「でしょう。ねぇ、そう思わない? ……アトも。」
 その問いには答えはなかったが……グリモア猟兵の口元には、笑みが浮かんでいた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年07月06日


挿絵イラスト