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【サポート優先】幽世の空に竜は哭く

#カクリヨファンタズム #猟書家の侵攻 #猟書家 #三上山の大百足 #竜神

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#竜神


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●嘘から出たまこと
 かつて或る土地の先人達は竜を畏れていたと言う。
 野山に潜み現実的に彼らを脅かす獣達ならいざ知らず、竜などと、彼らとて伝承にしか知らぬ存在だ。だがしかし、それ故畏れたとも言える。畏怖と想像力の赴く儘に、語り、伝え聞く話の中でその存在は何処までも力を増すことが能うのだ。宙を打つ翼の力強きこと、地を裂く爪の威力は無論、その躯や牙の大きさ、何もかもが変幻自在にただ「おそろしい」存在としてその存在感を増してゆく。
 やがてそれらは歯止めが利かないものとなり、伝承は独り歩きを始め、己らが産んだ恐怖を克すべく、人々は想像の中にある竜を討伐する為に或る強力な火器を作った。それが「竜撃大砲」の生まれたいきさつだ。
 無論想像の中の竜など現実にありはしない。少なくともその世界に於いては、そうだった。
 何の因果かその大砲がカクリヨファンタズムたるこの世界へと流れ着きーーそれに目をつけたのは猟書家だ。「竜を倒す」という概念を授けられ、竜の居なかった世界にてそれを歪ませた大砲は、猟書家の手により竜と融合し荒れ狂う。竜のその牙は、爪は、己の意を外れてやがて罪なき命を散らすことになろう。人智を外れた精神力を誇る竜神は、そうしていずれ心が折れた暁に、かの猟書家の格好の餌となる。それこそが猟書家の狙うところだ。

●竜を討伐するものを討て
「古今東西人の世は竜退治の伝承に事欠かぬ。聖剣だの何だのとーーだが、今回はその逆だよ。竜を討つ武器を討ってくれ」
 黒い扇を揺らしながら、黒衣を纏ったグリモア猟兵、ラファエラ・エヴァンジェリスタはグリモアベースに集った猟兵たちへと告げた。傍らに佇む彼女の騎士は白銀の兜の奥より碧い瞳を沈黙のまま彼らへと向けている。
「元凶は猟書家だ。カクリヨの『三上山の大百足』、知っている者もいるのではないだろうか」
 告げられた名に頷いた者も少なくはない。或る古き物語に名を残す大妖怪。伝説よりも弱体化したその存在はかつての力を取り戻すべく、絶望した妖怪を喰らおうとしていると言う。
「奴が目をつけたのが竜神と言う訳だ。何せ強大な存在であるし、それが絶望した暁には飛び切りの馳走になるのであろう」
 淡々と女は語り、そうして話は冒頭へ戻る。
「まずは骸魂と融合させられた竜神を救ってやっておくれ。それが上手く運べば猟書家は向こうから姿を見せるであろうから」
 気をつけて行っておいで、と、女は扇を翻す。黒い扇面より広がった黒き茨のグリモアの向こう、奇妙なまでに冴え渡る幽世の星月夜が広がっていた。


lulu
ご機嫌よう、luluです。
サポート優先シナリオを出してみたくなりました。
こちらはとってもスローペースにて、とっても気まぐれに執筆させて頂きます。
プレイングの受付は可能ながらも、サポートが優先となりますことはご了承くださいませ。

●1章
ボス戦。竜を討つ為の兵器の筈が、この地に至って歪み歪んで。

●2章
猟書家戦。大百足様は空腹にお怒りです。
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第1章 ボス戦 『竜撃大砲』

POW   :    有り余る生命力
自身の【飲み込んだ竜の生命力】を代償に、【大砲から竜の生命力】を籠めた一撃を放つ。自分にとって飲み込んだ竜の生命力を失う代償が大きい程、威力は上昇する。
SPD   :    強靭な肉体
【竜の肉体】を一時的に増強し、全ての能力を6倍にする。ただし、レベル秒後に1分間の昏睡状態に陥る。
WIZ   :    理解が及ばぬ精神
自身の【飲み込んだ竜の精神】を代償に、【理性を失った竜】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【牙や爪】で戦う。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はサフィリア・ラズワルドです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

エリー・マイヤー(サポート)
どうもエリーです。
手が必要そうなので、手を貸しに来ました。
【念動力】で解決できる事なら、お任せください。
遠くから押したり引いたり掴んだりとか、
持ち上げたり回したり投げたりできますよ。
包み込んで動きを封じたり、破裂させて攻撃したりもできます。
微弱な念動力をばら撒けば、ソナー代わりにも使えます。

後はスプーンを曲げに曲げて、コルク抜きにしたりとかですかね?
タネなし手品で子供を喜ばせるとか、朝飯前です。
子供は煙草の臭いで逃げる気もしますが…
まぁ、それはさておき、状況に応じて色々できますよ。

あ、運動は苦手なので、
殴り合いとか派手な運動は期待しないでくださいね。
たぶん息切れして倒れちゃいますよ。



●その異能、紫煙の如くかたちも持たず
 骸魂に融合されて、もはや理性も失くしているのだろう。幽世の空を翔けて吠え猛る竜はそれでもその双眸に敵を映すや、羽根を畳んで空を滑った。
 月を背に、上空からの巨躯の強襲。鋭い爪牙の向く先に佇んでいるのは一人の女であった。
 青い瞳が竜を仰いだ。無表情に、何処か超然としたまでの冷静さにて咥え煙草で紫煙を燻らせる女の名前はエリー・マイヤー(被造物・f29376)。斯様な戦地にありながら堅固に身を鎧うこともない優美な黒いドレスに身を包み、武器のひとつとて携えぬ。竜に理性があったならその違和感より勘付くことも出来ただろうか。ーー物々しい武装など彼女には必要さえもないというその事実に。
「正面からの殴り合いってあんまり好きではないんですよね」
 眼前に迫る鉤爪に、エリーが白く端正な顔に浮かべるのはただただ涼しい無表情である。花唇に咥えていた煙草を細い指先で摘み、伸びた灰を落とす様に軽く揺らした。それが合図ででもあったかの様に爪の軌道が竜の巨体ごと真横に逸れる。その光景を見ていた者があるならば、さながら竜が見えぬ巨大な力によって真横から殴られでもしたかの様に映っただろう。
 自分から念動力を取ったなら何も残らない。常々そう口にするこの女だが、裏を返せば持てる力の全てが、猟兵としての彼女の存在そのものが念動力の権化と言うことに他ならぬ。
 身を捩る様に羽ばたいて、辛うじて地面への衝突を避けて宙へと体制を立て直して見せた竜の、双肩に在る大砲が眩いばかりの白い火を噴いた。その砲撃に命を削られる竜が悲鳴じみた咆哮を上げる。
「なるほど、あっちが元凶なんでしたっけ」
 過たずエリーを狙った筈の砲撃も彼女の白い指先が導く様に宙をなぞれば、およそ物理法則などなきものの様に無軌道に彼女を逸れる。辛うじて届かんとした一撃が地面を広く穿って焼き焦すのを、艶やかな黒いポインテッドトゥは幅の狭い一歩のみを後ずさって躱してみせる。
「ちょっとおいたが過ぎますね」
 携帯灰皿に吸い殻を落とし、オイルライターで新しい煙草に火を点ける。エリーが見つめた先、立ち上る紫煙の向こうで、竜が翼も動かさぬままに中空にて動きを止めていた。辛うじて動く竜の瞳に困惑がある。身じろぎさえも出来ぬのに、墜ちることさえ叶わない。
 【念動グローブ(サイ・グローブ)】。
 エリーの並外れた念能力をそのままユーベルコードとして昇華したその異能は、念能力にて竜を包み込み、彼女の意のままに地面へと叩きつける。さながら見えざる巨大な手が竜のその身を掴み振り回しているかの様に、何度も何度も繰り返す。
「ひと仕事した後の煙草って美味しいですよね」
 硬い鱗を持つ巨躯が叩きつけられた地面が罅割れ、砕けてゆく。苦しげに竜が唸る。そんな光景も何処吹く風と言う顔でエリーは暫しチェーンスモークを楽しむらしい。

成功 🔵​🔵​🔴​

陽殿蘇・燐(サポート)
バーチャルキャラクターの寵姫×国民的スタア?いいえ、これでも(元)ラスボスな悪女NPCよ。
基本は高性能スマホを利用して、配信しつつの行動になるわね。

ユーベルコードは指定した物をどれでも使用するし、多少の怪我は厭わず積極的に行動するの。これでもバーチャルキャラクターだもの。
悪女たるもの、その行為は健全な世界あってこそなのよ。だから他の猟兵に迷惑をかける行為はないわ。
また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしない。配信垢BANされちゃう。
あとはおまかせ。よきに計らいなさい(思い出した悪女ムーブ)


キマフュ出身なので、トンチキでも適応していきます。



●生放送:元悪女が竜退治してみた
 幽世の夜闇を炎を纏ったクロアゲハたちがが茫と照らした。主人にスポットライトを当てるかの様に舞い踊る蝶たちに導かれるまま黒い振袖を揺らしてこの地を踏むのは陽殿蘇・燐(元悪女NPC・f33567)。
 可憐なれども薫り立つ様な闇を纏った威風堂々たるその佇まい。とある仮装世界に君臨していた出自は伊達でなく、いかにも物語の黒幕らしく絵になるその尊容。否、絵にならねばならぬのだ。全ての準備は整って、今、この地の全景は小型ドローンに搭載した彼女の高性能スマホが詳らかに記録していてーー即ち生配信の真っ最中なのである。ラスボス悪女たる燐にしてみれば竜退治など朝飯前だが、己のファンたる視聴者が固唾を呑んで見守る手前、大切なのは分かりきっている結末のめでたしめでたしではなくて、そこに至るまでの経緯だ。即ちいかにエモーショナルに派手な戦闘を魅せるかだ。こう見えて、ファンサは手厚い方なのである。
 先の猟兵に散々に地へと叩きつけられた竜がよろめきながら身を起こし、地鳴りさえ伴うほどに荒々しく地を踏みしめる。高く吼えた竜の双肩の大砲が燐を狙って砲撃を放つ。竜の生命を削り燃やして形を成した、炎を纏う砲弾は、逃げも防ぎもしなかった燐の右の半身を穿って彼方へ消えてーーこの時の配信画面は絶叫にもならぬ文字列が画面を埋め尽くしていたという。それはまさしく阿鼻叫喚。だがそれこそが様式美。彼女のファン達は知っているのだ。故に次に画面を埋めるのは。
<かーらーの?>
「私は結構慈悲深いの。敵にも見せ場をあげるのが悪女のノブレスオブリージュよ」
 ーーそうでなければ、つまらない。
 鮮やかな紅を引く元悪女の唇が妖艶な笑みを形作る。
 宙を舞うクロアゲハがその数と纏う炎の勢いを増していた。燐が己の右の半身を変化させたものである。
「温いわね。それで本気?」
 無論、決して温くなどない。まともに受ければ致命打だ。それでもそれを微塵も思わせぬ、思い出した様な悪女ムーブも燐のファンサービスの一環だ。
 燐が避けもせぬ砲弾がその身を穿ってゆくごとに、舞うクロアゲハが数を増す。竜撃大砲は穿てない、否、この先も穿てまい。砲弾が燐の身に届くその前に、彼女の痩躯は無数の蝶へとほどける様に変化する。果てにその身の全てを蝶の群れへと変えて見せ、今は形を持たぬ笑みにて燐は高笑う。
「炎の熱さを教えてあげる」
 優雅に舞い飛ぶ黒蝶達が、本能で危機を感じて闇雲に爪を振るう竜へと襲い掛かる。爪を掻い潜り行き違うのは刹那であるのに、蝶達が纏う赤き炎は竜の鱗に燃え移り、煉獄の炎もかくやの苛烈さで以て燃え上がる。
 焼き焦がされる竜の悲鳴をその背に、やがて美女の姿を造り直した燐は淑やかに地を踏んだ。そうして完璧に計り尽くされた角度にてカメラ目線で告げるのだ。
「おととい来なさい」

成功 🔵​🔵​🔴​

鳳凰院・ひりょ(サポート)
アドリブ・連携〇

同伴者がいる場合は同伴者を支援するよう行動。
戦い方は遠近両用、接近戦では【破魔】を付与した破魔刀で、遠距離では精霊の護符の【乱れ撃ち】で対応。
同伴者が苦手な方を受け持つ動きを取ります。
単独で戦う場合は相手の苦手とする方での戦い方を主軸に。
護衛対象がいる場合は自分の身を挺して【かばう】事もします。
何より周りの誰かが傷付く事を嫌う為、仲間達に危害を加えるような行動はまず取りません。
誰かを傷付けるくらいならば自分が傷付く方を選ぶ性格です。
仲間を、任務に関わる人達の笑顔を取り戻す為に全力を尽くします。

敵の攻撃を掻い潜りながら護符を敵の周囲へ投擲、UCを発動させて一気に勝負に出ます



●破魔の刃は闇に煌めきて
 夜闇を焔が赤く照らす。業火に巻かれた竜が身を焼き焦がす炎を振り払わんと翼を羽ばたかせれば、火の塊が辺りに降った。
 地上より黒を纏った猟兵の黒い瞳がそれを静かに眺めていた。彼の元へも注ぐ炎を、中空にふわと浮かんだ護符が淡く光って消し止める。
 鳳凰院・ひりょ(天然系精霊術使いの腹ぺこ聖者・f27864)は
 竜撃大砲なるかの骸魂、ひりょには個人的な恨み等ない。然し罪なき竜神が巻き込まれ、それが猟書家の糧となり未来に禍を齎すならば、此処で討つのがひりょの務めだ。その禍の末、たとえ見も知らぬ者であれ誰かの笑顔が失われる様な事態は断じて防がねばならぬ。
「待っててくれ。今助ける」
 ひりょの言葉は竜には届いていないのだろう。嘲る様に、竜が担いだ大砲が竜の命を燃やして成した砲撃を降らす。その苦痛を訴えるかのように狂った様な竜の咆哮が伴った。
 対するひりょは清澄な光纏う護符を宙へと展開し、破魔の結界を張り巡らせる。降り注ぐ砲弾も、爆ぜる様に広がる業火も、視界を埋めんばかりに立ち上る爆煙も、全て透明な壁の向こうのこと。焦れた様に竜撃大砲が苛烈な砲撃を重ねる。やがて結界がぴしりと微かに軋んだ音を立てれども、それを敵に気取られる前にひりょは別の護符を竜へと投げつけていた。精霊の力を纏ったそれが竜の翼を苛みながら戒めて、竜が唸り声を上げる。
 どうせ砲撃ばかりでは膠着状態であろうと判断したのは、竜か、大砲か。それこそひりょの思惑通りと知りもせず。護符に纏わりつかれた翼を畳んで竜はひりょを目掛けて急降下した。
 ひりょは静かに鯉口を切る。そうして竜の瞳を見据え、高らかに告げる言葉は宣誓めいた。
「この一撃に全てを賭ける」
 抜いた刃の纏う光の清らけきこと、対峙する竜さえ瞳を瞠るほどだ。至当であろう。魔を破る為に打たれた細い刀身は祈りを込めた破魔の文字が埋め尽くし、その柄を握るは聖者たる鳳凰院・ひりょなのだ。
 この刃にて斬れぬ邪悪なし。
 痛い程の殺気と共に竜が振るった鉤爪をひりょは躱すことはしなかった。極至近でしか成し得ぬその一閃の太刀筋を過たぬ為なら安い犠牲だ。どうせ限界を超えたその一撃がひりょの身体に齎す負荷に比べれば掠り傷にも過ぎぬのだ。ーー文字通り、肉を斬らせて骨を断て。
【灰燼一閃(カイジンイッセン)】。
 肩口を鋭い爪に抉られながら、噴き出す己の血飛沫さえも切り裂いて奔った銀の閃光は、竜の肩に並び聳えた竜撃大砲の右の砲身を確かに断ち切った。

成功 🔵​🔵​🔴​

ジュジュ・ブランロジエ

竜神さん可哀想…
絶対助けるから待っててね!
猟書家の餌になんて絶対させないよ!
『歪みを正しちゃおう!』
さあ、貴方に素敵なショーをみせてあげる
貴方も巻き込んでね
『世界劇場、開幕!』

理性がない分動きが読みにくいなぁ
でも理性がないからこそとれる戦法もあるよね!

メボンゴの手から光&炎属性衝撃波を出し攻撃
私よりもメボンゴを警戒する様になったら
糸を伸ばしメボンゴを飛ばして囮に
そっちに目が向いてる隙に接近
炎&風属性付与したナイフを突き刺し、ナイフ介して炎の魔法を体の内部に吹き込む

防御はオーラ防御

嗚呼、貴方を傷付けたくはないのに!
それでも私の一手が貴方を救う道に繋がると信じてる!
芝居がかった台詞だけど本心だよ


丸越・梓


ぱ、と刃が刹那月光の煌きを返す
同時、断ってみせるはその縁
翻すは、夜より深い黒の外套

飲み込まれた竜も、飲み込んだ彼らも助ける
竜を討つために生み出されたものとはいえ、無辜を殺める為に生み出されたものではない筈だ
それに飲み込まれた竜神らも放ってはおけない
「ヨル」
己の友たるヒポグリフを素早く喚び、ヨルの機動力を活かして己の剣閃に更なる速度を与え
竜の生命力を糧にした攻撃を放たれる前に、我が刃にて彼らを結びつける縁のみを断ち斬っていく

月を背に戦場を見下ろし
瞬間思考力にて状況判断、緊急性の高い箇所から迅速に対応

竜神のその爪を、その大砲を、
その誇りを、決して汚させはしない
何度だって俺が立ちはだかってみせよう



●幽世を舞台に役者は躍る
「竜人さん可哀想……」
 満身創痍の竜の姿に痛ましげな呟きを零す者がある。ここに至るまでの猟兵たちの猛攻により竜は血を流し、その身を焦がされ、元は双肩に負っていた大砲の一つはその砲身を断ち切られている。
 白兎頭のフランス人形・メボンゴを片腕に抱きしめながら、ジュジュ・ブランロジエ(白薔薇の人形遣い・f01079)はまだあどけなさの残るその顔を翳らせていた。根が心優しいこの少女の翠の瞳には、歪んだ兵器に取り込まれ猟書家の餌にされようとするかの竜は何処までも被害者であると映るのだ。その竜が背負う大砲から轟音と共に砲撃が迸り、彼女を狙うとしても、だ。
「絶対に助けるから待っててね!」
 ジュジュが軽やかに跳び退り、彼女が先まで居た場所を砲弾が大きく抉る。明確な殺意を向けられながらも、それが竜神の意思によるものではないとわかるから、ジュジュは励ましの言葉さえ向けるのだ。
『歪みは正しちゃおう!』
「そうだね!」
 メボンゴの言葉にジュジュは頷く。掲げた白いもう片手は何も持たぬのに、大きく指を広げればその掌中より手品の様に、鮮やかな魔法の紙吹雪が湧き出でて一度空へと舞い上がる。それが遍くこの戦場へと降り注ぐ時ーー彼女の舞台は幕を開ける。
「世界劇場、開幕!」
 【世界劇場(オンステージ)】。ジュジュに言わせればこの世は全て劇場で、全ての人は役者である。誰もが本当は知っているのに、忘れ、思い出せずにいるのならこの紙吹雪で知らしめよう。此処は舞台で、貴方も私も主人公。ーー此処より先、この戦場では舞台に立つ身としての振る舞いに長けた者が力を得る。
 本能からか紙吹雪に警戒を見せるも、それが害を成すものではないと理解した竜は苛立たしげに唸りを上げて、まるで脈絡もなく叩きつける様に尾を振るう。身を翻してそれを躱すジュジュだが、戦い難い、とは思う。敵が理性持つ存在であるならばこちらとの間合いを計るなり、急所を狙う一撃の機を伺うなりするものだ。それなのに、この竜が向けて来るものはまるで理性のない殺意。此方に理性があるだけに次の動きが読み取れぬ。
 だが、本能に任せた相手であればこそ取れる戦法もあるものだ。即ち動かれる前に此方が動かしてやれば良い。そうと断じた瞬間に、メボンゴの手から放たれたのは炎を纏う衝撃波。先の猟兵との戦いより、炎には過敏になっていたらしい竜が身を躱しながらも嫌気を見せる。当たらずとも良い。二度三度と繰り返す内、兎頭の人形をこそ脅威と感じたらしい竜の注意がそちらに向いた。その人形がジュジュの手を離れ、長く伸びた操り糸の先で竜の注意を引く内にーー竜の傍らに忍び寄ったジュジュがその厚い鱗をナイフで穿つのだ。
「嗚呼、貴方を傷付けたくはないのに!」
 朗々と紡ぐ芝居がかった台詞はこの「舞台」の恩恵を最大限に享受する為のものである。強化を受けた魔力にて、竜の身の内に埋まる刃を介して炎が燃え上がる。
「それでも私の一手が貴方を救う道に繋がると信じてる!」
 断末魔じみた咆哮を上げて竜がのたうつ。こんな攻め苦の何が救いか、言葉を持つならそんな抗議もあっただろうか。苦し紛れに振り回した竜の鉤爪が至近よりジュジュを襲うのをーー目にも止まらぬ俊撃にて、月光を返す刃がその前脚ごと断ち切った。
 それはまるで一陣の黒き風のよう。意表を突かれた竜にも、その身を救われた筈のジュジュにも、何が起きたのか解らない。竜の前脚が落ちて地に転がる。断面から血が迸る。それさえ何処か他人事の様に、風の吹き抜けた筈の先をただ呆然と敵と味方の二対の瞳が見詰めれば。
「ーー無事か」
 翼を広げたヒポグリフもその騎手も、幽世の満月を背に影絵の様にそこに在る。逆光にその表情も面差しも伺えず、けれども真黒き輪郭だけでもそうと知れる程、その存在の超然とした在り様たるや。
「貴方はーー!」
 芝居がかった台詞をジュジュが敢えて投げるのはほんのご愛嬌。たとえそれがなかったとして、何とこの「舞台」に映える登場であるだろう。此処にも主役がもう一人。ヒーローはいつも遅れてやって来るーーそれが生粋のヒーローでなく、ダークヒーローであったとしても。
 丸越・梓(零の魔王・f31127)はヒポグリフの騎上にて手にした日本刀を振るい、刃を濡らした血を払う。
 本来、斬るつもりなどなかったのだ。ただ、少女の危機を見て取って反射的に刀を抜いていた。己の目の届く範囲では決して誰も傷つかせない。それが梓の信条ゆえに、歪な兵器に飲み込まれた竜は勿論、飲み込んだ側の兵器さえ助けるつもりで梓は今この場所に居る。
 竜撃大砲。伝承の竜を討つそれは、如何な想いで創り出されたものだろう。見も知らぬ、居るとも知れぬ竜を討つーーその本来の目的は民を護る為のものではなかったか。その世界に竜の不在ゆえに存在価値を失くして歪んだ存在と言え、その砲口を無辜の民へと向けるのはその作り手も本来のこの兵器自身も望むまい。それは己が価値を見出されずとも、誰に認められることがなくとも、健気にヒトの為の兵器さながらに戦い続けて来た梓だからこそ抱いた感慨やもしれぬ。
 だが、そんな感慨や同情をよそにして、眼下より忌まわしげに見上げる竜が此方を目掛けて羽搏くのも、その片肩に残る大砲が此方を向いていることも、此処が戦場である以上何の不思議もないことだ。
「ヨル」
 梓は短く友の名を呼ぶ。応える様に翼を広げたヒポグリフは、まるで竜を迎え撃つかの様に宙を滑って降下する。黒衣の裾が翻る。竜の肩へと一門だけを残した竜撃大砲が竜の命を代償とした一撃を放つより早く、梓の手にした日本刀がその砲身を過ぎてゆく。
 砲身は斬れぬ。健在だ。なのに砲撃は成されない。
 【君影(キミカゲ)】。梓の刃は物理で斬らぬ。断ち切るは悪しき縁のみ。竜と兵器を繋ぐ因果を断てば、その砲口より竜の命を生贄とした暴威はもはや放たれぬ。兵器と歪みの因果を断てば、その存在は正されよう。
 竜撃大砲の残る一門が砕ける様に崩れ落ちてゆく。憑き物が落ちたかの様な竜が静かに地を踏んで、礼を述べるかの如くして低く頭を垂れる頃、軽快な拍手が梓へと向けられる。
「ありがとう!最高の舞台だったよ!」
『ハッピーエンドだね!ナイスぅ!』
 ジュジュと、今はいつも通りにその腕の内に収まるメボンゴである。梓は微笑み、小さく頷きのみを返す。
 だがしかし、ハッピーエンドは真だろうか?
「おのれ、猟兵!それは我が糧であると言うのに!」
 この戦いを、その巨躯を何処に潜めて見て居ただろう。今、猟兵達の前へと姿を現したのは、地をも揺るがすばかりの大百足。
「致し方ないーー竜の代わりに貴様らを喰ろうて我は力を取り戻す……!」
 夜闇に赤く光る瞳に血濡れた牙ーー猟書家、三上山の大百足のおでましだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『三上山の大百足』

POW   :    全て潰えよ
単純で重い【自身の体】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    竜よ、溶け落ちろ
【竜の鱗さえ溶かす溶解液】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    我が呪いを受けるがいい
【敵対者への呪詛を纏った自身の体】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はルイス・グリッドです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

徳川・家光(サポート)
『将軍なんだから、戦わなきゃね』
『この家光、悪は決して許せぬ!』
『一か八か……嫌いな言葉じゃありません!』
 サムライエンパイアの将軍ですが、普通の猟兵として描写していただけるとありがたいです。ユーベルコードは指定した物をどれでも使いますが、全般的な特徴として「悪事を許せない」直情的な傾向と、「負傷を厭わない」捨て身の戦法を得意とします。
 嫁が何百人もいるので色仕掛けには反応しません。また、エンパイアの偉い人には会いません(話がややこしくなるので)。
よく使う武器は「大天狗正宗」「千子村正権現」「鎚曇斬剣」です。
普段の一人称は「僕」、真剣な時は「余」です。
あとはおまかせ。よろしくです!



●愛を力に世直しを
 この身が将軍であるがゆえ。
 今、怒り狂う大百足を前にこの地へと立つ理由を、燃える様な赤髪の羅刹はその一言で片付ける。将軍という地位にあればこそ治める国にて絶対的な権力を持つ反面で、天下泰平の義務を負う。故にそれを乱す者があるならば、己こそ先陣切って戦わねばならぬ。それは一人の猟兵でもある彼にとっては国を離れたこの地でも変わらぬ信条であるらしい。
「カクリヨの猟書家、噂には聞いていましたがーー」
 徳川・家光(江戸幕府将軍・f04430)の赤き瞳は、見上げるばかりの大百足を見据える。伝説によるならば三上山なる名の山を七巻き半するほどと言われるその威容、伝説よりは多少弱体化していようとも、禍々しさも相俟って圧巻の一言だ。その姿を目にしては、腰に佩いた複数の刃の内より家光の指先が「其れ」を選ぶに躊躇いはない。
 「大天狗正宗」。持ち主の覚悟に応じて成長するその刃、この場に斯くも相応しい武器もなかろう。
 無数の脚持つ長い尾を大百足が叩きつけるのを黒の着流しの裾先ひとつ乱さずに軽やかに跳び退り、家光は躱してみせる。首元に巻いた白揃えが夜闇に白くたなびいた。その先で立ち登る土煙の太さ高さがユーベルコードですらもないその一撃の威力を告げている。
「成る程、これは僕ひとりには少々荷が重い」
 有能な為政者は己を過大に見積もることなど決してせぬものだ。家光自身がそれを意識するとせざるとに関わらず、しかし幸いなる哉、彼が治める国は安泰だろう。
 家光の言葉と共に、彼の傍らに寄り添う様に浮かぶのは嫁鏡と称される大型の映像デバイスだ。映し出すは百花繚乱、大奥の光景である。
『上様、また何と危険な場所に……!』
『どうか無事のご帰還をーー』
『とっておきの伽羅を焚いてお帰りをお待ち申しております』
 鏡の向こうで叫ぶ女御は彼の数多いる妻の内果たして誰であっただろうか。大百足からの追撃を躱しながらも、家光は常と変わらぬ笑顔を彼女らへと向けるのだ。
「日付が変わるまでには帰ります!」
 ーーだから、力を貸してください。
 彼の言葉に応える様に鏡の彼方より祈る妻達の声がある。【大奥の叫び(ラブ・コール)】。家光の覚悟と妻達の愛に応え、一層に冴え返る大天狗正宗の煌めきを見咎めて、大百足は圧し掛からんばかりに家光に襲いかかる。
「面妖な技を……!」
 拮抗、は、刹那のことだ。
 家光の白刃を受け止めた大百足の脚が断たれる。刹那の敵の動揺を見逃さず家光が刃を返す様にして振るうもう一閃は胴へと向いた。
 その巨躯の厚い甲殻はまるで鎧の様、事実さぞかし硬かろう。だが、いかな鎧にも隙はある。その隙間を過たず家光が振るう刃は撫ぜるのだ。その太刀筋は何ら気負わず、力みも見せず、宛ら流れる水が如し。
「この家光、決して悪は許せぬ!」
「おのれーー……ッ!」
 竜の慟哭を塗り替えて、その身を深く斬りつけられた大百足の苦悶の声がある。

成功 🔵​🔵​🔴​

鳶沢・成美(サポート)
『え、これが魔導書? まあどうしよう?』
『まあどうでもいいや、オブリビオンなら倒すだけですよ』

故郷UDCアースの下町の古書店でたまたま見つけた魔導書を読んで覚醒した自称なんちゃって陰陽師

昨今でいう陽キャラ? みたいな行動は正直よくわからないのでマイペースに行動
でも集団での行動も嫌いじゃないですよ
元ボランティア同好会でつい気合い入れて掃除しちゃったりしなかったり
一応木工好きでゲートボール好きキャラのはず……たぶん

戦い方は直接殴るより術をとばす方が好みです
範囲攻撃とかロマンですよね
例え好みの容姿だろうと、事情があろうと敵ならスパッと倒すだけですよ

アドリブ・絡み・可


ジュジュ・ブランロジエ

お前なんかに食べられてあげないよ!
『逆にお前を食べちゃうかもね!』
それはちょっとどうかな…

遠距離から風属性纏わせた矢を放つ
狙うのは体の節
切断はできなくても動きを阻害できれば

中〜近距離戦になったら動き回りながら
浄化と破魔の力をこめた炎属性衝撃波をメボンゴの手から放つ
『毒虫は消毒だー!』

溶解液は魔法の鏡で受け止め反射
自分が溶かされる気分はどう?
あっ、食べたりはしないよ
『お腹壊しそうだもんね』
うーん、それ以前の問題だね

事前に大百足以外の全員にオーラ防御を展開しておく
流れ弾ならぬ流れ液防止の為に

溶けて柔らかくなった部位を雷属性付与した矢で攻撃
さっきより刺さり易くなってるかも
『追加でビリビリ攻撃〜!』



●喰らうもの、喰らわれるもの
 冴えた太刀筋が刻んだ傷より体液を撒き散らしながらも、大百足は退きはせぬ。
「猟兵め……!斯くなる上は貴様らで構わぬ、我が糧となり力となれ!」
 煮え滾る様な怒りと牙を向ける先はまた別の猟兵である。
「お前なんかに食べられてあげないよ!」
 月の光に透く様な繊細な茶の髪と、軽やかなサーキュラースカートの裾を夜気に靡かせながら人形を腕に抱えた少女の佇まいはいかにも斯様に不毛な戦地には似合わずに、大百足の瞳にはさぞ喰らい易い獲物と映っていたのであろう。だがしかし、ジュジュ・ブランロジエ(白薔薇の人形遣い・f01079)が凛と大百足を見据えたままに怯えも見せぬかんばせの、花の唇が紡ぐのは果断なまでの拒否である。が。
『逆に食べちゃうかもね!』
「いや、それはちょっと……どうかな……」
 彼女の腕の中の白い兎が、がおー、と肉食獣めいた仕草と吠え声を勇ましく真似てみせるのを微妙な面差しで見下ろしながら、若干気勢を削がれた気配がないでもない。彼女の相方たるこの白兎頭のフランス人形・メボンゴは、腹話術でジュジュが喋らせている筈でありながら、偶に勝手に彼女の深層心理を口にしたりする。するものの、今回ばかりはそうではないと願いたいものである。
「ふざけた茶番を……!」
 計画を邪魔だてされてただでさえ機嫌の悪い大百足は苛立ちを隠しもせずにジュジュへと襲いかかろうと牙を剥き、しかし間合いの遠く彼方でその身が壁にでも阻まれた様に動きを止める。軋む様に首を巡らせた大百足の視界の端、淡く光を纏った霊符が展開されてこの場に結界を成していた。
「陰陽師か。忌まわしい……」
「害虫駆除のボランティアがあるって聞いたんだ」
 新書片手に颯爽と大百足の前に姿を現したのはその術者、鳶沢・成美(探索者の陰陽師・f03142)である。狩衣も烏帽子も身に着けず、いかにもUDCアースの今どきの若者と言った出で立ちながら、その陰陽術の実力は今大百足が身をもって知る通り。
『ナイスアシスト!』
 ジュジュの肩へとよじ登ったメボンゴが歓声を上げる傍らで、ジュジュは大百足が動きを妨げられたこの機を逃すことはなく、風の力を纏った矢を射掛けた。その矢じりがまるで計った様に的確に大百足の体節を射抜いて行く中で、大百足の赤い眼が弓使いの少女の姿に重ねるものは生前に己を討った英雄である。あの矢の何と忌まわしきこと。
「嗚呼、またも我を邪魔するか!忌々しい弓使いめ!」
 怨嗟と怒気をに任せて暴れた大百足が結界に罅を走らせる。幾百の光の欠片と散った結界は叩きつける様な巨躯をもはや防げない。迫る大百足の影の下それを見上げていた成美は軽やかに身を躍らせて影より逃れ、直後、地響きと共に元居た地面が原型さえも留めぬ程に抉れひび割れた様を目にして、小さく溜息をつく。
「害虫にも程がある……まあどうでもいいや、オブリビオンなら倒すだけですね」
 慣れた手つきで開く書物はごくシンプルな装丁に、タイトルもシンプルに『陰陽師入門』。キャッチーなコメント付きの本の帯など似合うだろうか。そこらの書店にありそうな新書風のその本が禁書にも等しく強大な魔力を宿す魔導書であることなどは、そうと教えられねば誰にもわかるまい。
「竜が大好きなんだっけ?」
 手も触れぬのにぱらぱらと捲れて行く魔導書の、とある頁が自然に開く。
「『舞え、氷の竜よ。アイストルネード……なんちゃって』」
 開かれた頁より吹き荒れるのは凍てつく様な冷気である。【氷雪竜巻(アイストルネード)】の名は伊達でない。不可視であった冷気が大気中の水分を凍らせ、無数の氷の粒を成して荒れ狂う時、そこにはまさしく月明かりに煌めく氷雪の竜が舞い降りた。
「おのれ、竜め……!」
 それは魂に刻み込まれた衝動か、大百足が絡みつく様に氷雪の竜に躍りかかる。竜の身を成す氷は細かいものでありながら硬く鋭く、大百足の外骨格に傷を刻んで、徐々にそれを深めてゆく。
「竜よ、溶け落ちろ!」
大百足が衝動と痛みへの苛立ちをそのまま具現化させたかの様に放った溶解液は氷雪の竜とその術者の身とを狙うもの。だがしかし、いずこからともなく中空に顕現した華美な金縁の鏡がそれを受け止めて、次の瞬間、頭より溶解液を浴びたのは大百足のほうである。
「何……!?」
 竜の鱗さえ溶け落ちる程の強酸は大百足の身とて易く蝕む。溶け爛れ始めた大百足の身に尚も鏡より放たれた溶解液が降り注ぐ。【鏡の魔法(ワンダーミラー)】、まさしく鏡の如くに敵の異能を跳ね返す御業であった。
「自分が溶かされる気分はどう?あっ、食べたりはしないよ」
『お腹壊しそうだもんね』
「うーん、それ以前の問題だね」
 鏡の彼方、相変わらずの掛け合いを披露する人形遣いの少女と相方の白兎に、己の身を溶かされる大百足は今はもう罵倒の一つ向ける余裕もありはしない。
『じゃあ、美味しくなさそうだから?』
「メボンゴにはあれが食べ物に見えてるの……?」
 真相は闇の中である。ジュジュが今、溶け爛れて脆さを見せた大百足の外骨格の綻びを狙って放つ矢は稲妻の様に夜闇を翔けて、雷に打たれたが如き雷撃をその身へと見舞うのだ。
『追加でビリビリ攻撃~!』
 大百足の呻き声と、白兎の楽しげな声が響いた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

丸越・梓


「思い通りにはさせない」
凛と、彼の前に立ちはだかる

俺は、彼を…大百足を『悪』だと言うつもりはない
この世の何者にも、簡単に言うつもりはない
正義も悪も同じものは一つとしてないだろうと、俺自身が思うからだ
ただ一つ、『悪』だと強いて言うならば、…この俺の存在だ
生まれてきたことそのもの自体が『罪』だと
全てを助けられなかったこの手は『悪』だと
解っている。けれど、絶対に逃げない
この手は、この命は、俺が生きている限り罪も悪も重ね続けるのだろう。今も、ほら
その事実から目を背けない
全部背負っていく
「恨むなら、俺を恨め」
その憎悪を全て吐き出していけ
そして願うは安息の眠りを

「──おやすみ」



●正義と悪と罪と罰
「何故貴様たちは邪魔をする」
 強酸の溶解液にその身を爛れさせながらも、大百足の敵意は露ほども衰えぬ。低く呻く様に問うた言葉を、睨む様な赤い眼を微動だにせず受け止めたのは黒を纏って佇む魔王であった。よく鍛え抜かれた長身は人の身にしては大柄だ。だが、三上山の大百足のその巨躯に比べたならば所詮は矮小とも言うべき人の身である。それでありながら、今、大百足をして目の前に立ちはだかるだなどと言う言葉を想起せしめるほどの存在感と威厳は果たして何処から来るものか。
「お前を悪だと言うつもりはない。だが、思い通りにはさせない」
丸越・梓(零の魔王・f31127)の言葉は何処までも静謐に紡がれた。幽世の夜風に短い黒髪を撫でられながら、真っ直ぐに向けた面差しに敵意や害意の類は見て取れぬ。しかし敵は猟書家、それを忖度する程に生易しい相手であろう筈もない。
「善も悪もない、我が計画を邪魔するならば葬るのみ!」
 梓が愛刀を抜くのは決して敵を切り伏せる為ならぬ。彼とはまるで対照的に此方は明確な敵意と共に襲い来る大百足の牙がある。それを防ぎ、受け流す為に梓の白刃は振るわれる。
 善も悪もない。大百足の言葉に梓は内心で同意する。相手がたとえ何者であれ、相手を悪だと断じるつもりなど梓には端からありはしない。たとえそれがこの世界を脅かす猟書家という、梓たち猟兵からしてみれば絶対的な敵たる存在であったところで変わらない。
 善も悪も、正義も悪も、この世には同じ形のものは何一つとしてありはせぬ。誰かが悪と呼ぶものがいかに他者を苦しめ虐げる非道や悪逆の類であれど、それを為す当人とてまた誰よりも深く傷つき、苦しんでいることもある。刑事として、猟兵としての仕事の中で幾度も目にして救えなかったそんな彼らを悪と断じて片付ける程に梓は無慈悲にも傲慢にもなり得ない。
「どうした、防いでばかりではないか」
「そうだな」
 反撃がないことが逆に不気味と映るのだろう。焦れた様に挑発を寄越した大百足に短く返し、圧し掛かる様な巨躯を、絡みつく様な無数の脚を梓は躱して機を伺う。この存在は放っておけば確かにこの世に仇をなす。ゆえに猟兵たちが討たねばならぬ存在であり、梓が討たずとも誰かが討とう。
「正義の味方気取りで出てきておきながら……!」
 正義など、梓に言わせればそれほど己に程遠い言葉が他にあるであろうか。
 悪。他の誰にも向けることのないその言葉に梓が唯一当てはめるものがあるとするならば、それは己に他ならぬ。生まれて来たことそのものが罪である。せめてその罪を償う為にと生きていながら、結局全てを救うことなど能わずに、今だってそうだ。今もまた救うことが出来ずに罪を重ねるこの身が、この手が、悪ならずして何であろうか。
 己を断罪することで全てを終わらせることは容易い。だがしかし、梓はその道を選ばない。全ての罪を背負って生きると決めている。
「恨むなら、俺を恨め」
 梓の愛刀が大百足の牙を防いだその刹那、空気が張り詰めた気配に何かを察し、抗う様に先に動いたのは大百足の方である。なりふり構わぬ様に体当たる巨躯に纏った呪詛は、己の命を削りながらも梓の異能を封じ込む。
「させぬ!貴様も道連れだ!」
「もう良い。――おやすみ」
 呪詛の全てを受け止めて、猛り狂った大百足の牙にその身を穿たれながら、黒き魔王は一歩も退かぬ。やがて根負けたかの様に呪縛が途切れた時、大百足へと梓が伸ばす手は刀も持たず、労わる様にただ触れたのみである。
 【君影(キミカゲ)】。この存在をオブリビオンたらしめる根源のみを断つその慈悲に、崩れる様に力を失くした大百足の体が地響きを立てて地に沈む。
 だが、猟書家たるこの存在は、願われた安息をそのまま受け取ることを拒んだ。
「猟兵ごときが生意気な……」
 やがて赤い眼になお一層の憎悪を滾らせ、大百足は再び首を擡げる。

大成功 🔵​🔵​🔵​

音駆螺・鬱詐偽(サポート)
世界に蔓延る悪を懲らしめるネガティブアイドル鬱詐偽さん
ただいま参上。
・・・って、どうしてこんな恥ずかしいセリフを言わないといけないのよ。
うう、これも番組の為なのね。



自身の命綱である番組の為、多少の苦難や困難は仕方なく行います。
むしろ持ち前の不運によりおいしい場面を呼び込んでくれるかと思います。
ただし、ネガティブとはいえアイドルですのでマイナスイメージとなる仕事はすべて却下でお願いします。
ユーベルコードや技能はご自由に使わせてください。
どうぞ、当番組のネガティブアイドルをお役立てください。
                      プロデューサーより



●ネガティブアイドルの憂鬱
「世界に蔓延る悪を懲らしめるネガティブアイドル鬱詐偽さん、ただいま参上」
 いかにも愛くるしいポーズを決めながら言わされ感満載の決め台詞を音駆螺・鬱詐偽(帰ってきたネガティブアイドル・f25431)が口にしたのは、控えめに言って最悪の場所とタイミングだった。
先の猟兵との闘いで無数の傷を負い、一度はその身を地に伏す屈辱に怒りを滾らせながら今また起き上がらんとする大百足が目の前に居る。憎悪を宿した赤い眼が睨めつける様に彼女のことを見つめていた。
「……。」
「えっ……何かリアクションをお願いしたいわ、ちょっと辛い……!」
 正直なところあの台詞、鬱詐偽本人としても結構恥を忍んで言っている。
 『鬱るな!鬱詐偽さん』の収録の一環で送り込まれたこの戦場、今日のテーマは大百足退治だ。登場時の決め台詞からしてスルーされてしまうこの不遇、流石はネガティブアイドルの不幸体質と言うべきか。まるでやらせではないかという程に番組的には割と美味しい。早くも心の折れそうな鬱詐偽と裏腹にプロデューサーとファンはさぞかし喜ぶに違いない。
「出来れば何か悪役っぽい台詞とか、こう……私、一人で喋るのとか実況とかってあんまり得意な方じゃなくて……」
 鋭い牙に追われて逃げ回りつつ、相変わらずの無言の敵意と攻撃に鬱詐偽は若干涙目だった。
「プロデューサーさん!どうしよう、間が持たない……!」
 もはや涙声の彼女の言葉に戦場の何処か安全なあたりから「そのまま続けてください」というカンニングペーパーが提示されたとかされなったとか。
「無理……!何とかして、プロデューサーさん……!」
「さっきから何の話をしている。我が呪いを受けるがいい」
「あ、やっと喋って――」
 鬱詐偽がほっとしたのは一瞬だ。今、大百足が身に纏う呪詛は黒く禍々しきものとして顕現し、まるで質量でも持ちそうなほど。のみならず、血濡れの牙も、鬱詐偽に巻き付こうとするその巨躯も、よく見れば邪悪そのものだ。
 アイドルとして番組のことばかり気にしていたものの、正気に返ると普通に怖い。よく考えたらとんでもない相手と戦っていたのかもしれない。よく考えてみなくたって相手は猟書家だ。
 うん、無理かも。
 あっさりと鬱詐偽の心が音を立てて折れた瞬間、その恐怖が具現化する様に湧き出でるのは百をゆうに超すバロックレギオンたちである。
【リアライズ・バロック】。鬱詐偽の恐怖心が喚び出した無数の歪んだ存在たちは大百足に群がる様に殺到し、彼女に恐怖を与えたその存在を攻撃し始める。
「もう無理……おうちに帰りたい……」
 果敢に攻撃し続けるバロックレギオンたちとそれを振り払わんとして猛り、咆哮する大百足の戦いを背に、鬱詐偽は震えながら呟いた。他方、プロデューサーはきっとご機嫌に違いない。今日の撮れ高はなかなか悪くなさそうだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

バジル・サラザール(サポート)
『毒を盛って毒で制す、なんてね』
『大丈夫!?』
『あまり無理はしないでね』

年齢 32歳 女 7月25日生まれ
外見 167.6cm 青い瞳 緑髪 普通の肌
特徴 手足が長い 長髪 面倒見がいい 爬虫類が好き 胸が小さい
口調 女性的 私、相手の名前+ちゃん、ね、よ、なの、かしら?

下半身が蛇とのキマイラな闇医者×UDCエージェント
いわゆるラミア
バジリスク型UDCを宿しているらしい
表の顔は薬剤師、本人曰く薬剤師が本業
その割には大抵変な薬を作っている
毒の扱いに長け、毒を扱う戦闘を得意とする
医術の心得で簡単な治療も可能
マッドサイエンティストだが、怪我した人をほおっておけない一面も

アドリブ、連携歓迎


子犬丸・陽菜(サポート)
 ダンピールの咎人殺し×聖者、15歳の女です。
「いっしょに苦しんであげるよ」
「臓物がはみ出したくらいで動けなくなると思った?」
「はらわたを搔き回される苦しみはどう?」

 宝珠による臓物を掻き回しを多用し、知られざる枷を使います。怪我は厭わず積極的に行動、臓器の負傷でユーベルコードの威力が上がるので負傷は状況によりわざと受けたりもします。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
 潜在的なマゾヒストなのでユーベルコードの苦痛になにか感じる場面もあるかも?
 負傷重症描写歓迎むしろ希望、内臓が出るくらいやっていただいて全く構いません!
よろしくおねがいします!



●百足退治の幕引き
「小賢しい猟兵どもめ……」
 執拗に攻撃を繰り返すバロックレギオンの群れを振り払い、大百足が歯噛みする様に吐き捨てる。その様を一対の円らな黒い瞳が映していた。
「ずいぶんと苦しそうだね」
 子犬丸・陽菜(倒錯の聖女・f24580)は満身創痍の大百足へと微笑みかける。無垢で愛くるしいその笑顔を向けられたなら、ヒトの身であり男であれば頬を染めでもしたであろうか。だが無論、種も異なれば猟兵の天敵でもある猟書家の大百足が左様な反応を見せる筈もなく、彼女の向けたその余裕さえ今は憎悪の対象だ。
「我に同情でも向けたつもりか、小娘が」
「一緒に苦しんであげるよ」
 苛立ちを見せた大百足へと鈴を振る様な声で答えて、陽菜は依代の宝珠へと念を込める。彼女の言葉がただの揶揄でも何の比喩でもないことを大百足はやがて理解する。呪物にも等しい宝珠はその念を受け、敵ならぬ、持ち主である陽菜のはらわたをかき回す。
 何の外傷がある訳ではない。だが傍目にも、大百足から見てもわかる変化はあった。血の気の失せた彼女の顔色と、口の端からひとすじ流れ落ちた血は、彼女が受ける苦痛の程を物語る。目に見える変化はもう一つ、陽菜が手にした漆黒の拷問剣が目に見えてその刃渡りと禍々しさを増したことである。
その事態の異質さは大百足さえ僅かにたじろぎを見せる程。
「奇妙な真似を……!」
 怯みを誤魔化す様にして牙を鳴らして襲い掛かる大百足を陽菜は漆黒の剣で迎え撃つ。圧し掛かる様な巨躯を躱して、鋭い爪にも似る無数の脚を躱して、だが、躱し損ねたその牙が深々と陽菜の腹に食い込み、力任せに食い破る。
「ん、ぐぅ……っ!」
 鋭い牙に引っかかり長く引きずり出された臓腑の端が足元の地へと落ち、血だまりが湿った音を立てるのを、陽菜は辛うじて倒れぬ様に踏みとどまりながら耳にした。
「死ね、猟兵!」
 勢いづいたかの様に、とどめを刺さんと再び迫る大百足の牙を、しかし此度は黒曜の如き刃が受け止め、横薙ぐ様に打ち砕く。他者の血に濡れたその口蓋を追撃で深々と抉り裂かれて、今は己の血をその口に満たしながら濁った絶叫を上げる大百足は何が起きたかわからない。
「臓物がはみだしたくらいで動けなくなると思った?」
 大百足の目には反撃などは到底出来ぬであろうと映った陽菜が、今や鉄塊とも呼ぶべき威容に至った巨大な拷問剣を携えて微笑んでいた。彼女の苦痛に比例してその剣はその大きさも威力も増す。今や紙でも裂く様に大百足の外骨格さえも切り裂いて、その足をも撫で斬りにする。とは言え陽菜が流した血も多く、彼女が足元を微かにふらつかせた刹那、白い光が辺りを俄かに薄明るく照らし出す。陽菜の背中に、背後より、白蛇の形をした光の鎖が繋がっていた。その光に包み込まれる様に、受けた傷が癒えてゆく。
「流石にちょっと無茶しすぎじゃないかしら……?!」
 鎖の先より焦った様な声をかけるのは艶やかな翠の髪をした妙齢の女であった。長い白衣の下、人間であれば本来はあるべき二本の脚の代わりに、蛇の下半身が長く伸びている。
「千切れてはないから大丈夫」
「程ほどに治しておくわ」
 蛇の半身を持った女、バジル・サラザール(猛毒系女史・f01544)は笑顔を見せる陽菜へと溜息混じりに告げながら、鎖を通じて魔力で治癒を施す。【白蛇の鎖(サーペントチェイン)】、自身の疲労と引き換えに対象を治療する異能であった。
 薬剤師である彼女はかの大百足の異能のひとつ、竜の鱗をも溶かす程の溶解液に興味を持って、まずは遠巻きにそれを観察しようとしていたのだ。強い薬は使い方を誤れば毒にもなるが、それは逆もまた然り。故にあの溶解液も何かの研究の材料にでもならぬかと興味を持ってその発動を待って眺めていたところ、現れたのが陽菜である。無茶とも映る戦い方は彼女の力を引き出す類のものであろうとバジルは当たりをつけながらも、凄絶なまでの流血を目にしては、彼女自身の元来の面倒見の良い性格もあり、流石に見かねて治癒を施すことを決めたのだった。余人に言わせればマッドサイエンティストと呼ばれる類の人種でもあるバジルだが、それ以上に薬剤師であり、医療に従事する身でもある。目の前に傷ついた者があるならば放っておけよう筈もない。
「あまり無理はしないでね」
「うん、ありがとう」
 傷を治せば治すほど、引き換えの様にバジルの身には疲労が蓄積して行く。この僅かな時間にて涼やかな目元に薄らと隈を刻みながらも、己の疲弊は気取られぬ様に微笑んで見せてバジルは告げた。剣を振るいながら陽菜は笑顔で頷くものの、この手合いはおそらく言っても聞かぬのであろうとバジルは経験則から知っている。
「援護くらいは一応出来るわ」
 故に、せめて無理の行きすぎぬよう、お目付けがてらに陽菜を援護することに決めた。愛用の銃を構えてトリガーを引く。何の変哲もない銃と見せかけて、装填されているのは彼女が調合した毒をたっぷり仕込んだ弾丸だ。身を穿たれた大百足は、徐々に回ってゆく毒にその身の自由を奪われながら、その身を以てその毒薬の威力を噛み占める。
「貴様だけでも道連れに――!」
 矛先を向けたのは近い距離にいた陽菜である。爆ぜる様に溢れた大百足の呪詛が空気を張り詰めさせて、だがしかし、次の瞬間に苦悶の叫びを上げたのは大百足の方である。
「あたしの苦痛の一端、味わえた?」
 【知られざる枷(シラレザルカセ)】。内臓を搔き回される苦痛を齎すその異能の発動は、陽菜の視線ひとつで事足りる。
 巨体をのたうち回らせてもがき苦しむ大百足の眉間を、バジルが放った弾丸が慈悲とばかりに撃ち抜いた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2022年05月23日


挿絵イラスト