●遠くへ出かけて
UDCアースのとある駅から、1つの列車が今まさに出発しようとしている。
1人の男――長月 遼が荷物を抱え、駅を見据えながら誰かへ別れを告げるように小さく呟いた。
「行ってきます。……まあ、ちょっと長い旅になるだけだ」
優しく微笑んだ彼は座席に腰掛けて、そのまま列車が発射するのを待って……しばらくしてから、ゆったりとした旅が始まった。
この旅行は自分探しの旅だ。遼はいつも、自分を探したいと言ってふらっと外に出かけては、ゆっくりと旅を楽しんで帰ってくる。
彼は今日はどんなところを見られるかとワクワクしながら、列車が目的地にたどり着くのを待った。
●駅についた果てに
「んあー……ついたぁ」
大きくあくびをして、体を伸ばしていく遼。少しだけ凝り固まった筋肉がゆっくりとほぐされていく。
さて、あとは駅を降りて色々と回るだけだと列車を降りたその瞬間に彼はふと立ち止まる。
「……ああ、なんでまた……こんな時に」
どうしたものかと遼は前を見据え、奇怪なる駅のホームに頭を抱えた。
いや、そこはもう駅のホームと呼ぶには些かおかしなものだ。まるで、彼を閉じ込めるための迷宮がそこに出来上がっている。
『また』。彼はそう言った。
というのもここ数年、自分の周りで奇妙な出来事が立て続けに起きており、この駅の迷宮化も最近の旅では見慣れたものだ。
ならばあとはいつものように迷宮を攻略し、旅の目的地にたどり着けばいい。……そう考えて、遼は足を進めていたのだが……。
「あれぇ……?? なんか今回の迷宮、めちゃ複雑すぎねぇ……?」
不思議なことに、いつもなら楽勝で乗り越えられる迷宮が複雑すぎて、いつも以上に脱出に時間がかかっている。本来であれば使えるような技法も全く通用せず、むしろ迷宮入りに王手をかけるほどになっていた。
これ、まずいんじゃない? 遼の頭にその台詞が浮かぶと同時に、彼の頭の中に声がかけられる。
『ああ、可哀想に。キミは本来の自分を失っているんだね』
『可哀想。可哀想。ボク達が手を貸してあげようか?』
『キミは本当は人間じゃないのに、どうして人間の世界に戻ろうとしているんだい?』
いくつもの言葉が遼に語りかけられる。中には、信じがたい言葉を言っている声も聞こえた。
――長月 遼は人間じゃない。
そんな言葉が彼の脳裏をくすぐると同時に、迷宮が更に複雑化していく……。
●"彼"は何を選ぶのか
「お疲れさまですの。皆さん、UDCアースの方にお仕事があるので向かっていただけたら嬉しいのです」
手に資料を抱え込みながら、エミーリア・アーベントロート(《夕焼けに佇む殺人鬼[LadyAbendrot]》・f35788)は猟兵達にゆっくりと声をかける。
エミーリア曰く、UDCアースのとある無人駅にて『邪神の仔』の素質を持つ男・長月 遼が迷宮に捕らわれてしまったとのこと。
彼は邪神の仔であることは知らずに普通の人間として育ち、普段どおりの日々を過ごしていた。今日も毎月の趣味の1つでもある、自分探しの旅に出かけようと電車に乗ったのだが……降りた先の駅で怪奇現象による迷宮で立ち往生しているのだとか。
「迷宮の中で何か吹き込まれているのか、彼はその場から動こうとしませんの。下手したら、このまま覚醒してしまうかも……それだけは、絶対に駄目ですの」
遼が邪神として覚醒してしまった場合、駅だけでなく周辺、否、世界そのものが吹き飛ぶ恐れもある。故に彼女は必ず彼の道を安全に導いてあげてほしいと告げた。
現在、遼は既に自分が人間ではないことを吹き込まれてしまい、茫然自失となっていて迷宮から抜け出すことは出来そうにない。
となればすぐに彼を保護し、UDC職員によるケアを受けさせなければならない。そのため猟兵達はまず彼を迷宮から脱出させ、覚醒に至らないようにすることが今回の任務なのだそうだ。
「邪神の仔はかなり危険なのです。ちょっとした刺激で爆発する、表面が脆い爆弾みたいな……でもそれを優しく扱うのが、リア達猟兵なのですの」
「でも、それを爆発させようとしている連中も遼さんのところに向かってます。その連中をぶっ潰して、おほん、倒して遼さんを助けるのを忘れないでくださいね!」
彼の人生は、彼が決めるべきなのだから。
そう告げたエミーリアは協力してくれる者達から手を取り、迷宮化してしまった駅へと送り届けられる。
――幻が見える迷宮へ、ようこそ。
御影イズミ
閲覧ありがとうございます、御影イズミです。
ちょっとしんみりしたシナリオが作りたいなぁと思い、今回のシナリオをご用意しました。
果たして、どんな道が選ばれるのでしょうか?
初めての方はMSページをご確認の上、ご参加ください。
●第一章:冒険シナリオ
邪神の仔である『長月 遼』が降りた駅からのスタートになります。
既に迷宮化されており、無人駅のはずなのに辺りには幻で作られた駅員や一般人がたくさんいます。
駅員や一般人は特に害はありません。遼の居場所を聞くことも可能です。
最終的に遼の下へたどり着くことが目的となります。
ただしこの章では幻による妨害が発生しています。
『今1番夢中になっていたい物事・物品』が見えるようになっているため、それらによって邪魔が入ります。
こちらはプレイングの記載があればそのとおりの反映となります。
●第二章:集団戦シナリオ
集団敵『蜃』との戦いになります。
迷宮化した駅での戦いとなりますので、諸々の制限が入ります。
詳細は断章にて。
●第三章:日常シナリオ
遼が自分のルーツを知りながらも、自分探しの旅のためにネモフィラ畑へと赴きます。
その他詳細は断章にて。
皆様の素敵なプレイング、お待ち致しております。
第1章 冒険
『駅という名の迷宮』
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POW : ひたすら歩き回り、体で道を覚えて目標に近づいていく。
SPD : 警察や駅員、通行人などに道を尋ねつつ、目標を探していく。
WIZ : 地図やアプリを活用しつつ、目標の場所を特定していく。
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ロラン・ヒュッテンブレナー
○連携×
邪心の仔、逢ってみるのは初めてなの
また、人間として暮らせるようになるのかな?
もしそうなら、救ってあげたいの
電車に乗って、ホームに降り立つの
わぁ、ほんとに迷宮化してるの…
まずは、見つける所からだよね?
※生後8か月程度の子狼に変身
ぼくの鼻に掛かれば、人探しは難しくないの
ん?なんだか、探してる人がたくさんいる様な…
※夢中になっていたい事=長月遼探し
匂いに沿って、たくさん立ってる…
桃の香りの闘気が包み込んで【落ち着き】を取り戻すの
ん、撹乱されるなら、もう一手加えるの
『おねえちゃん、手伝って?』
AIたちの力を借りて、迷宮を構成する力に【ハッキング】
幻覚を見せる力を【ジャミング】
これで、大丈夫なの
●救いの手を差し伸べて
ゆっくりと、電車からホームへと降り立ったロラン・ヒュッテンブレナー(人狼の電脳魔術士・f04258)。辺りの雰囲気に惑わされぬように、目当ての人物――長月遼を心に強く思い浮かべながらホームを踏みしめる。
「邪神の仔、逢ってみるのは初めてなの。また、人間として暮らせるようになるのかな?」
自分は人間だと信じ切っていた遼は、今やこの迷宮に閉じ込められて己の正体を知ることになってしまっている。下手に扱えば邪神として蘇るが、何事もなく彼を救うことが出来たら人間として生きれるのではないか。ロランはそれが可能ならば、救ってあげたいと願っていた。
「わぁ……」
顔を上げれば、そこは既に迷宮。まさか本当に迷宮化しているとは思ってもいなかったロランは、ここからどうやって彼を探そうかと考え……ふと、思いつく。匂いならば追いかけることは簡単だと。
そうと決まればと、その姿がゆらりとかき消える。次の瞬間には生後8ヶ月ほどの幼い狼がとてとてとホームを歩いており、ふんすふんすと鼻を鳴らして匂いを追いかけた。
「こっちにいい匂いがするの。きっと、探してる人なの」
ほのかに酸味のある、柔らかな柑橘系の香り。彼が身につけていた香水の香りがロランの鼻を通り抜けては、彼が歩いたであろう道を指し示す。狼の嗅覚というのは侮れないもので、すぐさま遼の下へとたどり着けると彼も信じ切っていた。
「……あれ?? なんだか、探してる人がたくさんいるような……」
その信じ切っていた感覚がかき消えたのは、数分ほど駅の迷宮を走ってから。香水の匂いに沿って遼の姿が見受けられており、その全てが本物のように振る舞っていたためにロランは混乱していた。
ロランは気づいていない。これが、外部からの侵入を妨げるオブリビオンからの妨害であるということには。遼を取り込み、その力を奪おうとする者達が猟兵の侵入を妨げようとしているのだが、ロランには原理が難しかったようで仕組みには気づけない。
だが、邪魔されているということは理解している。そのため、桃の香りの闘気を身にまとって己を落ち着かせてから邪魔となる原因をしっかりと見定めてゆく。
「ん……それなら、もう1手加えるの」
ユーベルコード『シスター・ネットワーク』を繋ぎ、義姉そっくりなAIキャラクターを呼び寄せて迷宮を構成する力にハッキングを仕掛ける。グラリと揺らいだ迷宮の中、奇妙な気配を感じ取ることが出来たため、そこへAIがジャミングを仕掛けて幻覚を晴らしておいた。
揺らぎが消えたその目の前で、耳をふさいで頭を抱える長月遼の姿。
恐怖で震えている彼に、ロランはそっと寄り添ってあげたのだった。
「これで、大丈夫なの」
大成功
🔵🔵🔵
夜刀神・鏡介
連携なし
彼の悩みとは違うだろうけど、俺もかつてはそんな気持ちを抱いていたよ
自分は何者なのかや、何のために生きているのか、とか色々な
さて、迷宮の攻略か。役に立つ技術はないしひたすら歩き回るとしよう。
分かれ道では短刀で傷をつけて目印に……迷宮化しているし、多分元に戻れば消えるだろう。
まあ、なんだな。俺は剣と共に歩むと決めている
だから、こういう物が見えるのは当然の事かもしれないが……刀の幻覚って凄く不自然だろう
流石に騙されんよと、利剣を抜いて幻を切り払って前へ進もう
今でも迷う事はあるが。それでも迷うなりに前を向いて歩いている
出自や生い立ちがどうであっても関係ない。自分は自分だ。誰だって、そうだろう?
●誰が何を言おうとも
「彼の悩みとは違うだろうけど……うん、俺もかつてはそんな気持ちを抱いていたな」
揺れる電車が止まり、目的の駅へとたどり着く。夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)はゆっくりと駅のホームへと降り立ち、軽く周囲を見渡しながら目的の人物である長月遼を探しに迷宮へと入る。
自分は何者なのか、何のために生きているのか。遼とは違うかもしれない悩みを抱えていたことを思い出しながらも、鏡介は先へと進む。
「……かなり、複雑なんだな」
進めば進むほど、入り組んだ駅の構造が感覚をぐらつかせる。真っすぐ進んでいたかと思えば、すぐに分岐路に到達し、また別の分岐路が現れたかと思えば元の道に戻ったりと複雑すぎる迷路が広がっていた。
この迷路を突破する技術は、今の所鏡介には持ち合わせていない。そのため彼は分岐路に到達するごとに短刀で壁に目印の傷を付けながら、遼を探し回っていた。
やがて、長らく歩いたところで……鏡介の目の前が少しずつ霞んでゆく。何者かの妨害が彼を蝕み、先へと進ませないようになんらかの幻覚を生み出しているようだ。
「……これは……」
ゆっくりと、慎重に進みながら歩いた先に出来上がっていたのは……幾千、幾万の刀で作られた迷路。否、これはもはや墓標とも言えるかもしれない。鏡介がこれまでに追って、折って、置いた刀達が全て並んでいる。
こういうものが見えるのかと驚く一方で、鏡介は少しばかり幻滅もしていた。剣とともに歩む者に向けてこの幻覚は至極当然のものだから、見せても意味がないだろうと。
「俺は生涯、剣と共に歩むと決めている。今更こんなものを見せつけられても、騙されないさ」
無銘の鉄刀――否、今や力を身に付けた利剣【清祓】で、刀の墓標を切り裂く鏡介。別の世界で込められた破魔の力は一気に幻から生まれた墓を暴き、その空間を切り裂く。
「ひっ……?!」
その後聞こえてきたのは、小さな悲鳴。目的の人物である長月遼が、鏡介の目の前に姿を表した。……というよりも、たどり着いた先で幻影に捕まっていたというのが正しいのかもしれない。ともあれ、鏡介はすぐに彼を救助しなくてはと、ゆっくりと近づいた。
だが、遼の様子は……決していいものではない。自分が人間ではないと吹き込まれ、自分自身が何者なのか、人ではないという言葉によって己への恐怖が増え続けているようだ。
そんな彼に向けて、鏡介は言い切った。――出自や生い立ちがどうであっても、関係ないと。
「関係……ない……」
「そうだ。だって、そうだろう?」
――自分は自分。種族が違えど、それは変わりはないんだから。
大成功
🔵🔵🔵
ヴィルデ・ローゼ
「地図やアプリを活用しつつ、目標の場所を特定していく。(WIZ)」に挑戦します。
とりあえず、迷宮化した駅を地図を見ながらウロウロして、状況を確認していく。
ユーベルコードで影兎を召喚して捜索範囲を広げ、全体をマッピングするようにする。
第一目標は遼の安全なので、退路を確保しておきたい。
「ん?自分探しって、趣味なの?」
どうやら無意識では自分の正体に気づき、自分の居場所とか、自分自身に違和感を覚えているのではないかと思う。
「幻でも食べられるわね。……なんとなく、理解したわ。」
賑やかな人の営みが好きなので、屋台や売店などがあれば回ってみる。遼の居場所を聞き出そうとするが、すぐ世間話に脱線する。
●人の営みの中に紛れた邪神の仔
「んん……今、この場所は……」
迷宮となった駅の構内、その壁に設置された地図を読み解きながらヴィルデ・ローゼ(エルフの戦巫女・f36020)は邪神の仔である長月遼を探し出す。
広く、複雑な迷宮となっている駅の中には誰が見せているのか、幻によって作られた駅員や一般人が並ぶ。彼らはこちらに害することもなければ、ただ、普通に日常を謳歌しているようだ。
「今はこのお店の前だから……うん、こっちに行けばいいかな?」
行き先に目処をつけ、再び歩き出したヴィルデ。さらにはユーベルコード『影兎の召喚』を用いて呼び寄せた影兎に別の場所を探索してもらい、マッピングを続けた。五感を共有するため、視覚で手に入れた情報を細かにメモして退路も確認しておく。
やがて迷宮の中盤に差し掛かった頃、すんすん、とヴィルデの鼻が動く。というのも丁度駅構内にあるフードコートに差し掛かったため、いい匂いが彼女の脳をくすぐっていた。
「ううん、いい匂い。……そうだ、食べるついでに彼のことを聞いてみるのも有りよね」
丁度通りがかった見せに入り、品定め。幻かと思っていたが、どうやら食事類等は本物を拵えているようだ。目の前に届いた食事をするすると食べながら、お店の人に遼のことを聞いてみる。写真等は持ち合わせていないため、こういう人物が来ていなかったかと。
『うぅん、ちょっとわかんないですね。もしかしたら大通りを抜けていったかも』
「そうですか。……あ、これ美味しいですね。お出汁何使ってます?」
食べながら喋っているせいか、いつの間にか話が世間話へと流れ込む。本来の目的は忘れてはいないが、気づけば話は遼の話に戻っては脱線してを繰り返す。食事が終わるまでは、和やかな風景がヴィルデの周囲で広がっていた。
「いけない、いけない。世間話は時間泥棒になっちゃうわね……」
食事を終わらせたヴィルデは遼の居場所へと急ぐ。影兎がマッピング最中に彼を見つけたため、案内をしてもらいながら駆けつけたのだが……彼は頭を抱えて、蹲っていた。
クスクス、クスクス、小さな笑い声が聞こえる。辺りに何かがいるようだが、その姿は見受けられない。ヴィルデは何者かから守るようにすぐに遼に駆け寄ると、ゆっくり、彼の背を擦って落ち着かせる。
「大丈夫? ほら、ゆっくり、深呼吸」
彼が落ち着きを取り戻すまで、子供を慰めるように優しくなでてあげたヴィルデ。そのうち、落ち着きを取り戻した彼といくらかの世間話をしながら、迷宮を歩いて脱出経路を探す。
――その先にオブリビオンが待ち構えていると気づいたのは、彼との長い世間話の途中。
成功
🔵🔵🔴
第2章 集団戦
『蜃』
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POW : きみが望むものを
【充満した幻を生み出す煙】から、戦場全体に「敵味方を識別する【敵対者の最も大切なもの】」を放ち、ダメージと【幻覚と混乱】の状態異常を与える。
SPD : きみの後悔を
自身が装備する【幻を生み出す煙】から【過去・現在・未来で最も恐れる事の幻】を放ち、レベルm半径内の敵全員にダメージと【幻覚と混乱】の状態異常を与える。
WIZ : 永遠はすぐそこに
【蜃気楼による幻】を披露した指定の全対象に【「見ているもの」と永遠に共にいたいという】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
イラスト:おいた
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
「俺は、人間じゃない……」
何者かに己の出自を聞かされた長月遼は、顔を青くしたまま猟兵達に保護された。
彼の覚醒の時が近づいているのか、ぐらりと周囲の風景が揺らいだかと思えば……駅の迷宮がさらに複雑になってゆく。
このままでは本当に、世界の終わりが近い。急いで彼をUDC職員に引き渡し、処理を施さなければ本当に邪神となってしまう。
……だが、それを許さないのが集団で行動するUDC『蜃』。
幼い少年の姿をしたそれは、傍から見れば弱小なUDCだ。少しでも猟兵達が本気を出せばすぐに吹き飛ぶような、とても弱い存在。
だからこそ、目覚めた邪神の力を取り込み己をさらに強化しようと考えている。強くなるためには、自分よりも強い存在を取り込むことが最優先なのだと。
遼が人間ではないことを知ったのも、蜃が彼に吹き込んだためだ。
自分が毎回迷い込む迷宮を作るのは遼が人間ではないから。
毎回違う不思議な現象が起こるのは、自分が邪神の仔だからだと。
幻を作り、猟兵達を惑わせたのは遼への接近を遅らせるため。
迷宮に幻を重ねて複雑化させたのも、彼の暴走を引き起こすため。
長月遼という存在を邪神へと昇華させるために、ありとあらゆる手段を使った。
その結果、世界がどうなろうが蜃の群れには関係ない。
自分達の幻によって全てが支配される世界。それを作りたいだけなのだから。
『ねえねえ、早くおいでよ』
『ボク達がその子をちゃんと、丁寧に、扱うからさ』
『キミがこっちに来てくれたら、ボク達、キレイな世界を作れるんだ』
迷宮内に蜃の声が反響し、猟兵達に、遼に、言葉が届けられる。
我慢の限界だというように、遼は再びその場に座り込んでしまい動けなくなってしまった。
「もう……嫌だ……。俺が邪神の仔とか、人間じゃないとか……!」
「早く……早く終わってくれよ、こんなの……っ」
限界が近い。もし、彼が一度でも傷つくようなことがあれば……暴走の危険性がある。
もはや、一刻の猶予はない。
急いでこの群れを突破し、遼を救い出さなければ。
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プレイング受付:即時
集団敵『蜃』との戦いです。
場所は複雑迷宮化した駅の構内。
もはやマップが意味を成さないほどに複雑になっており、立体的な迷路になりつつあります。
広さは十分にありますが、天井が低いため飛翔能力等を使用すると身動きが取りづらくなります。
天井が低いためキャバリアの使用は不可能となっております。
また、この章では現在の状況に耐えきれなくなっている長月遼がいます。
彼は戦闘への参加はありません。ただひたすらに逃げ続け、猟兵達に守られます。
蜃は彼を狙ってPCが選択したユーベルコードに対応する能力のユーベルコードを放ってきます。
猟兵達の言葉が届くので彼に自信をつけさせることで幻を突破することが出来ます。
なお、遼は蜃の幻には耐えることは出来ますが、蜃からの一撃、あるいは自傷等の物理的な一撃には耐えきれません。
一撃でも傷が付くと邪神化への一歩を辿り、そのリプレイは失敗となりますのでご注意ください。
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ヴィルデ・ローゼ
「まぁまぁ、落ち着いて。ゆっくり息を吸って……吐いて……。」
どうやら敵はそれほど強くないようなので、攻撃よりも防御、遼を宥めるのを優先する。
落ち着いた声でゆっくり話しかける。彼が力を持っているのは否定しないが、それでも人間であると諭す。
以下台詞
「あなたには特別な力があるのは本当。それで、この子たちはあなたの力が欲しくて意地悪をしているの。」
「この駅が迷路みたいになったのは、あなたの力。でも怖がる必要はないわ。だって、あなたは誰も傷つけていないもの。」
「あなたの世界は人の息遣いが聞こえる。人の営みが息づいている、素晴らしい世界よ。」
「だから、あなたがどんな力を持っていても、あなたは人間よ。」
●あなたは、人間。
辺りに漂う蜃の群れ。それを守るように、ヴィルデは遼の前へと立つ。
恐怖と、狂気と、悲観と、様々な感情が遼の中で織り交ぜられて、ぐちゃぐちゃになって感情が溢れかえっている。そんな彼に向けてヴィルデは優しく、母が子を慰めるように手を添えてあげた。
「まぁまぁ、落ち着いて。さあ、ゆっくり息を吸って……吐いて……」
遼に同調するようにヴィルデの呼吸もゆっくりと深呼吸をして、彼を落ち着かせる。しかしそんな彼の目の光は少々危うい。蜃の幻を見せる煙がゆらりと辺りを包み込んでいる故に、彼が最も怖れる事の幻が見えているようだ。
「あ……ああ……っ! い、いやだ、みんな……俺から、離れないで……っ」
声が震え、身体も震える。遼が何を見せつけられているのかはヴィルデには計り知れないが、彼の台詞から友達に恐れられる事、そして家族にさえ恐れられる事を幻として見せつけられているという情報を得る。
ヴィルデはそれでも、彼を慰め続けた。彼が力を持っていることは否定せず、それでも、これまで彼が歩いてきた道は『人間のものだった』。それを伝えるために、時折遼の手を握り返しながらもヴィルデは諭していった。
「あなたには特別な力があるのは本当よ。それで、この子たちはあなたの力が欲しくて意地悪をしているの」
「い、意地悪……なんて、レベルじゃ……」
「そうね、そんなレベルじゃないわ。でも……この駅が迷路になったのは、あなたの力なの」
「俺の……」
自分の力で駅がぐちゃぐちゃになってしまって、迷路の出口がわからない。きっと自分が見知らぬ誰かを傷つけていたのかもしれないと思うと、遼の身体は更に震えた。
けれど、ヴィルデはそれは断じてやっていないときっぱり言い切った。自分もこの迷路を歩いてきたけれど、むしろ、楽しい事ばかりだったから楽しかったとも。
「あなたの世界は人の息遣いが聞こえる。人の営みが息づいている、素晴らしい世界よ」
「人の……営みが……」
「ええ。その営みをはっきりとこの世界に見せつけることが出来るのは……それこそ、人間として生きてきたからに他ならないの」
ヴィルデは言う。本当に邪神の仔として生きてきたのなら、ここまで素晴らしい人の営みを見せることは出来ないだろうと。人間として生きてきたからこそ、この世界はこんなにも美しいのだと。
蜃の群れはそれを否定しようと、もう一度遼に幻を見せる煙を放つ。
だが、それを排したのは……ヴィルデが呼び寄せた、真夜中に伸びる荊の鞭。
全ての煙を晴らした後に蜃の群れは一気にはたき落とされ、遼の安寧を守る。
「あなたがどんな力を持っていたとしても、あなたは人間。こんなにも素晴らしい世界を作り出すことが出来る、ね」
――柔らかに微笑んだヴィルデの顔に、遼はまたひとつ、救いを得た。
大成功
🔵🔵🔵
七星・桜華(サポート)
『天魔御剣流免許皆伝、だからこそ更なる高みへと。』
『一か八かの勝負?そんな事しなくても私達の勝ちだね!!』
『勝った後は派手に騒ぐんだ!誰一人として倒れないようにね!!』
敵の数が多い場合は敵の強さで一体づつ倒すか複数を纏めて狙うかを第六感や野生の勘と言われる直感で即決する、また見切りの速さも早い。
闘う姿は舞っているかの動きで敵を魅了する、上空の敵が相手でも空中戦もできる。
攻守において残像を使い殺気や覇気が残像にまで残る程の濃密加減。
頑丈な敵が相手でも鎧等を無視した内部破壊系攻撃を当たり前のように使いこなす。
長期戦になっても敵の消耗と自身の回復に生命力を吸収して凌ぐ。
戦闘では先の先、後の先問わず。
虹川・朝霞(サポート)
二つの故郷(UDCアースとカクリヨファンタズム)をふらふらしていた竜神。救援要請あるところに行くように。
自分が電脳魔術士であることをよく忘れます。
基本は慈悲を持って接するため、口調は丁寧です。
怒りを持ったときのみ、『阿賢賀水神』に戻ります(口調『遥かなる水神』)
なお、装備品の鉄下駄はUDC圧縮体のため、超絶重いです。鉄って言い張ってるだけです。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はいたしません。
あとはおまかせします。よろしくおねがいします!
●Look at the reality.
ふらふらと、重い足取りで遼は前へ進もうと試みる。先立って、手を差し伸べてくれた猟兵が彼を人間だと教えてくれたこともあって、彼の心はほんの少しだけ軽くなっていた。
「俺は……人間で、いいのかな……」
よろり、よろり、遼の足取りはおぼつかない。自分が何者であろうと、自分は自分だと教えてくれたことで少しだけ気丈に振る舞えるようにはなった。
けれど……陶器作りで粘土が固まるまで触れてはならないのと同じように、諸々の感情が乾かないままというのは危険なものである。心が乾ききる前に彼が歩き出したせいで、蜃はまたも彼を幻の海へと閉じ込めようとしていた。
『そう、キミはここから逃げられない』
『人間としての自分を忘れてしまえばいいんだよ』
『大丈夫、人間だった頃よりもとても楽しくなれるから!』
蜃の群れは彼を邪神へと昇華させるため、幻に溶け込んで周囲を取り囲んでいた。
「――そうはさせない!!」
刹那、遼の周囲を取り囲む蜃の群れをユーベルコード『フルオーラバースト』で吹き飛ばした七星・桜華(深紅の天魔流免許皆伝・f00653)は複雑怪奇な迷路の奥から現れ、遼を守り切る。一撃でも彼に肉体的なダメージが与えられれば世界は危機に瀕するとのことだったので、蜃のみをうまく蹴散らした。
「大丈夫か!? ……うん、大丈夫そうだな!」
「は、え、え??」
何が起こっているんだ? 一歩下がって考えようとしたのもつかの間、後ろにいた虹川・朝霞(梅のくゆり・f30992)とぶつかった遼は振り返って彼と目を合わせていた。
「桜華さん、ナイスタイミングでの一撃です。彼への幻の対処はこちらでなんとかしますので、周囲の敵はお願いします」
「任せて。余波は来ないようにするけど、出来るだけ遠くに逃げてほしい!」
「はい、わかりました。……失礼、遼さんはこちらへ」
「え? え? あ、はい」
朝霞は遼を連れて桜華と距離を取り、桜華は蜃の群れへの対処を取る。蜃の群れはそのまま遼を連れて行かれると判断しているのか、辺りの幻を調節して遼のみならず桜華や朝霞の最も大切なものを映し出そうと試みた。
だが、「私より強いやつに会いに行く!」を信念とする桜華にはその手の幻は有効性が無く、もともと幻覚作用を操ることが出来る朝霞にもほとんど無意味なものとなってしまっていた。故に、この幻は遼にだけ働いているようで、彼は目の前に現れた大切なもの――すなわち、友人たちの名前を呼んでいた。
「――……みんな……なんで、ここに……」
1歩、前に出ようと足を踏み出した遼。友人たちと出会えたという喜びが表情に現れていたのだが、2歩目を前に出した瞬間に彼は辺りをきょろきょろと見渡して、目的を失ってしまったかのように慌てていた。
遼の周辺に漂うのは、薄紅梅色の霞。朝霞のユーベルコード『幻霞』によって彼の身体が一部幻覚作用のある霞へと変貌し、蜃の作り出した幻を上塗りするかのように彼の視覚情報を無理矢理に切り替えていた。
ここにある幻は本物ではない。幻に溺れることは、人間である遼にとっては危険なものであり、世界にとっても危険なものなのだと教えるように。
そんなことはないと叫ぶ遼は、その場にうずくまる。幻でも友人たちに会えたのは嬉しい、自分探しの旅で毎回彼らのことを考えてしまうのだと苦しそうな声で叫んでいた。
そんな彼に向けて声をかけたのは、蜃の群れと戦っている桜華だ。水の中に溺れそうな彼の心を掬うように、彼女は手を差し伸べる。
「遼って言ったっけ! 楽しい思いをして世界を壊すのと、怖い思いをして日常に戻るの、どっちがいいか決めるんだ!」
「そ、れは……それは……!!」
遼だって、桜華だって、朝霞だってその問の答えはわかっている。世界は壊したくはないけど、怖い思いはしたくないというのは。だからこそ自分達が守りに来たのだと、朝霞と桜華は遼に向けて言葉をつなげた。
「現実を見るんだ、遼! 今ここで、君の心が折れたらその友達も皆いなくなるぞ!」
「生きて、生き延びて……自分探しの旅が終わったら、大切な人達のもとへ帰りましょう?」
桜華と朝霞の言葉は、幻に溺れてしまった遼の心を掬い上げる。
まだまだ乾ききらない彼の心は、もう少し支えられていた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
夜刀神・鏡介
ロラン(f04258)と合流
幻覚を見せる敵か。普段ならどうという事はないが、今は厄介な相手だな……
だが、ロランも此処に来ていたのか。合流できたのは幸いだ
神刀を抜き、黎の型【纏耀】を発動。真の姿に変身、神気によって幻覚と混乱を無効化
了解、彼の事はに任せた。とロランに応えて手近な所にいる敵を切り倒していく
ロランの準備が整ったなら攻守交代。長月の元へ戻ろう
本当は人ではなかった、か。まあ、確かに少々ハードな事実だが。それがどうした
出自や生い立ちがどうであっても関係ない。これまでの人生が変わる訳じゃない
そして、これから先の生き方を選べるのは自分だけだ
……ま、邪神として生きるのはあまりお勧めできないけどな
ロラン・ヒュッテンブレナー
鏡介おにいさん(f28122)と合流
来る、たくさん来るよ
遼さん、しっかりして!
だめ、一回落ち着いてもらわなきゃ…
鏡介おにいさん、時間を稼いで?
桃の精さん、その香りで遼さんを助けてあげて?
煙と香りで相殺しながら、天狼の魔剣【ルプス】を大剣形態で作成
遼さんを庇う位置に突きたてて、結界で守るの
落ち着いて、あそこに見えるのは、ほんとに遼さんの大事な人?
優しく声を掛ける様にゆっくり詠唱
蜃たちを振り返って、姉や大好きな友だちの幻覚を見る
ぼくに幻覚は効かないよ
みんなは、ここ(胸を指さし)に居るから
遼さんも、そうでしょ?
それに、きっと、待っててくれてるはずなの
『月光結界、発光』
迷宮を隅々まで、全力で照らすの
●月光を背に、"人"は立つ
「幻覚を見せる敵か。普段ならどうということはないが……今は厄介な相手だな……」
あたりを包む幻を前に鏡介は刀の柄に手をかけ、遼を前に立ちはだかる。普段の戦いであれば自身への幻は関係ないが、今回は守るべき人物がいるためどう動こうかと悩んでいた。ロランが来てくれたことにより、多少の無理は利かせる事が出来るため、少し戦略を考える。
「来る……たくさん来るよ!」
気配を感じて駆けつけたロランは遼の隣に寄り添い、幻を生み出す煙を手で振り払うが……むなしくも遼には既に幻が見えている。最も大切なもの、すなわち彼の友人たちが離れて行こうとする幻が。
幻によって苦しむ遼を、ロランは優しく慰める。彼は『友人に捨てられる』という幻を見せつけられて錯乱状態に陥りかけているのか、ガチガチと歯を震わせていた。
「ロラン、準備は?」
「ごめんなさい、まだ……だから鏡介おにいさん、時間を稼いで?」
「ああ。彼のそばにいてあげてくれ。準備が終わったら交代だ」
「わかった。できるだけ早く準備するよ」
蜃が幻の煙をばらまく間に、鏡介とロランは作戦を立てて素早い行動に移す。
「――幽冥を越えて暁へと至る」
小さく、呼吸を整えた鏡介はその姿を真の姿へと変貌させ、神刀【無仭】の刃を引き抜きユーベルコード『黎の型【纏耀】』を発動させる。辺りに漂う煙から受ける幻覚と混乱を寄せ付けず、的確に、迅速に手近な蜃を倒しては煙を晴らしていく。
数は多いが、一撃を与えるだけで蜃はすぐに霧散する。そのおかげか無理のない連続攻撃で複数の群れを倒すことが出来ているが、増殖速度があまりにも早いせいですべてを殲滅するのは難しいようだ。
「……本当は人ではなかった、か。まあ、確かに少々ハードな事実だな」
切り結びながらも、ちらりと遼の姿を伺う。まだまだ幻の影響は強く、彼は床に伏せて苦しんでいた。人間ではないという突飛な事実を受け入れたくないのに、幻で聞こえてくる言葉が遼の心の中に突き進んでくるものだから、自分が何者なのかと苦しみ続けている。
蜃はそんな彼に向けて、煙の中から囁き続ける。彼らにとっては鏡介とロランを倒すよりも先に目の前にいる邪神さえ覚醒させれば勝利となるため、鏡介の一撃を受けて消滅しながらも遼の心の中へとグイグイ張り込んできていた。
「あ、ああ、いやだ……みんな、いかないで……」
遼に見えているのは……5人の友人が彼を見下し、人でなかったことを蔑む幻。自分が人間ではないという言葉の刃はじわじわと遼の精神を蝕み、ゆっくりと彼の本来の姿を引きずり出そうとしている。
それを食い止めるように、ロランは優しく遼の背をぽんぽんとリズムよく叩いて落ち着かせる。しかしそれでも遼の恐怖は広がりを見せていたため、ロランはユーベルコード『月光結界【Culla della luna】』を発動。懐から魔符桃香を取り出して中に込められた桃の香りを辺りに解き放って煙を相殺しつつ、天狼の魔剣【ルプス】の形成を急いだ。
「落ち着いて、遼さん。あなたが見ているのは幻。ぼくには、あなたのお友達は見えてないよ」
ゆっくりと蜃へと振り返ったロランの目に映るのは……遼とはまた違う風景。姉と大好きな友達が自分に向けて、あり得ない目線を向けているというあり得ない風景。はっきりとそれが幻だとわかるのは、ロランが彼女たちを信頼しているからでもあった。
「ぼくに幻覚は効かないよ。だって、みんなはここにいるからね」
そう言ってロランは胸をトントンと指差し、心の奥にいることを指し示す。その後展開させておいた天狼の魔剣【ルプス】が大剣へと変貌したことを確認すると、1つだけ彼は遼に問いかけた。
「ねえ、遼さんの心の奥には、お友達はいないの?」
「心の、奥に……」
「うん。こんなのは違うって言い張れる、お友達」
「……」
ロランの言葉に揺さぶりを受けた遼は、静かに目を閉じて友人たちの顔を思い浮かべる。思い浮かんだ友人たちの名前を呟いた彼は、少しずつ深呼吸で己の心を落ち着けてゆく。辺りに漂う桃の香りが効率よく遼の精神も落ち着かせているのか、良い調子で彼は元のとおりに戻り始めていた。
蜃達は焦り始めていた。邪神として復活させるはずの存在が、また人の世に戻ろうとしている状況に。鏡介とロランという2人の壁によって阻まれてしまい、あと少しで出来上がるはずの邪神の姿がかき消えていくという状態に。
そんなことは絶対に嫌だと叫ぶように、辺りの煙の強度を強くしていくが……鏡介の一撃とロランの月光結界がそれを晴らしてゆく。
「ロラン、交代だ」
「うん。――月光結界、発光」
ある程度の蜃を蹴散らし終えた鏡介はロランの術の展開が終わったことを確認し、遼のもとへと下がる。代わりにロランが前に出て、迷宮全体に月の光によって生み出された光の珠を解き放ち、蜃の群れを包み込みダメージを与えていく。
隅々まで届いた光はやがて蜃の群れをも蹴散らし、遼に勇気を与える。
立ち上がった彼の顔には、自分の道は自分で決めるという決意が満ちていたことを鏡介とロランは見逃さなかった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 日常
『『瑠璃と濃藍と、満月と――』』
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POW : 藍の世界を逍遥する
SPD : ネモフィラを愛でる
WIZ : 流星に願いを乗せる
イラスト:オオミズアオ
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
遼は猟兵達のおかげで立ち直し、蜃の幻を退けることに成功した。
彼が作り出した迷宮は自信をつけたことで迷宮化する理由を無くしたため、徐々にその姿を元に戻して小さな駅へと姿を変える。
後は遼をUDC組織に引き渡し保護してもらうだけ。……そう思っていたのだが、遼はちょっと待ってほしいと猟兵達に言う。
今回の目的は自分探しの旅であり、まだ、目的を達成していないからだと。
そうして彼はゆっくりと駅を出ては地図を見て、ある場所へと急ぐ。
たどり着いたのは、視界一面を埋め尽くすネモフィラの花畑。
既に時間が夜に近いためか、上空には月が浮かんでいる。
柔らかな風が散っていくネモフィラの花びらを舞わせ、遼と猟兵達の身体を包み込んでいた。
「……ああ、やっぱり綺麗だなあここは。本当に、綺麗だ」
「俺が……人間じゃないって知った時はこの光景を見ることも出来なくなるのかと思ったけど、そんなことなかったな」
猟兵達に笑いかけた遼。今この場に猟兵達がいなかったら、この光景を見ることが出来ずに終わっていたからと改めて礼を述べる。
けれど……やはり、彼の心に受けたダメージは大きい。
本当に自分はこの場所に、否、この世界にいていいのかとさえ悩んでいると彼は呟いてしまうほどに。
「ああ、本当に……自分探しの旅だなんて言ってるけど、結局はどっちつかずなんだよなぁ」
ため息を付いて、やがて彼は決心した。
――猟兵達に自分の処遇を任せたい、と。
心に受けたダメージを取り戻した後、その処遇については遼は口を出さずに従うという。
猟兵達が遼をそのままUDC職員に引き渡して記憶処理を施して日常に戻れと言うのならばそれに従う。
逆に封印を施すべきだとそのまま封印され、彼は二度と表舞台に立つことはない。
それどころか、処分するべきだという意見が多いならそのまま処分されると。
――猟兵達の意見や如何に。
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プレイング受付:即時
遼の心に受けたダメージを、ネモフィラ畑を眺めながら会話して癒やしていくシナリオです。
会話の内容についてはお好きにして構いません。彼は色々と話してくれます。
ただし、遼は猟兵達の意見の中で最も多い意見を取り入れてエンディングを迎えます。
彼が日常に戻れというのならば戻りますし、処分されろと言われれば処分されます。
全てはプレイング次第となります。
心ゆくまで、ネモフィラ畑の邪神の仔との対話をお楽しみください。
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ヴィルデ・ローゼ
例えば、包丁で人は殺せるけど、料理人は人殺しじゃない。
猟兵だって大きな力を持っているのだし、力の由来が邪神だったというだけ。
力を制御できるようになれば、後はその使い方を誤らなければ大丈夫だと思う。
迷宮を探索中に買ったおにぎりを取り出して、分けて食べる。
「あんまり美味しそうだから、全部回ってたら遅れちゃったよ。ごめんね。」
「たくさんお店があったけど、いろんなところを旅してきたんだね。」
「その旅の数だけ、あなたは苦しんできたんだね。」
「無意識の中ですら、あなたの世界はあんなにも豊かに人が生活してる。」
「あの世界が作れるあなたなら、この花畑が綺麗だと思うあなたなら、大丈夫だよ。」
●絶対に、大丈夫。
「……なあ、アンタはどう思う?」
ネモフィラの広がる花畑を眺めた後、遼はヴィルデに向き直る。邪神の仔という存在がこの世界に存在していていいのかどうか、それを彼女に問う。
唐突に振り向かれて少々驚いたヴィルデだったが、ふむ、と軽く考えた後……おにぎりを取り出し、1つ、ぱくりと口にする。どこで買ったものなのだろうと遼が首を傾げた後、ヴィルデは優しく笑いかけてあの迷宮で購入したものだと告げて遼にも分けてあげた。
「あんまり美味しそうだから、全部回ってたら遅れちゃって。ごめんね」
「ああ、いやいいんだよ。……そっか、俺が作った迷宮で買ったのか」
「うん。沢山お店があって、楽しかったよ。いろんなところを旅してきたんだね」
「まあね。……だから、」
――だから、今回と同じように迷い続けていたんだ。
その言葉を飲み込み、おにぎりを口にする遼。ほのかに塩が利いていて、逃げ回ったあとだからか更に美味しく感じる。出てきそうな言葉を、涙を、すべて飲み込むように彼はおにぎりを頬張った。
そんな彼に向けて、ヴィルデは遼の力のことを語る。生まれ持って手に入れてしまったものはどうしようもないものだから、今度はその力とどう向き合うかが重要だと。
「例えば、包丁は人を殺せるよね? ちょっとだけ力を加えると、すぐに人の体を傷つけてしまう」
「ああ」
「でも……料理人は人殺しじゃあない。要は持ってしまった力をどう扱うかは、その人次第になるということ。力を制御できるようになって、後は使い方を誤らなければ大丈夫だと思うよ」
「……俺に、出来るかな」
不安そうな表情を浮かべた遼に向けて、ヴィルデは優しく微笑む。今回、彼女が迷い込んだ迷宮は彼が作り出したものだが、危険なものは1つもなかった。自分が怪我をしていないこと、おいしい食べ物に巡り会えたことに感謝を告げると、彼女は遼にむけて『大丈夫』の一言を言い切る。
「無意識の中ですら、あなたの世界はあんなにも豊かに人が生活している。このおにぎりだって、とても優しい味に仕上がっている。これって、凄いことなのよ?」
「そう……なのか」
「ええ、そう。そんな素晴らしい世界を作り出せるあなたなら……いいえ」
ふと、ヴィルデはネモフィラの花畑に目を向ける。淡くも力強く咲いているネモフィラに向けて、彼はなんて言っていたか。それを思い起こし、最後のひと押しに遼へ言葉を渡した。
「この花畑が綺麗だと思うあなたなら、絶対に大丈夫だよ」
大成功
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夜刀神・鏡介
ロラン(f04258)と
お疲れ様。どうにか落ち着いたみたいだな
ネモフィラの花を見ながら一息
一面の花畑には、心を動かされるものだ
俺は自分の道は自分で選ぶべきだと思うけれど
もし悩んでいる理由が、自分が邪神の仔である事
それで世界に害をなす可能性を考えているのなら。それは無用な心配だと言っておこう
何かあっても、俺達がまた助けるからな
――かつてロランがそうなりかけた時と同じく、な
僅かでも戻りたいという気持ちがあるのなら、俺はそうするべきだと思う
それでどうしても駄目だったら、その時は改めて立ち止まれば良い
今、この時点で結論を出してしまうのは性急だと思うよ
それでも最後まで選べないなら、日常に戻るように言おう
ロラン・ヒュッテンブレナー
鏡介おにいさん(f28122)と一緒に、遼さんとお話するよ
ここが、遼さんがいつも見に来るところなの?
故郷では見られない景色は、やっぱり惹かれるの
遼さん、ぼくは、どう見える?
ぼくは、ヒト?それ以外?
ぼくだって、満月の夜には強い狂気に襲われるの
家族を傷つけた事も、仲間に襲い掛かった事も…
でも、一人ではどうしようもなかったの
色んな人と出会って、大事な人たちができて、ぼくは、ヒトでありたいと思えるようになったから
だから、負けないの
それでも、万が一の時は、ぼくを止めてくれる人たちがいる
遼さんのそう言う人に、ぼくたちがなって上げるから
だから、同じ悩みを持つ仲間として、ぼくは遼さんに人生を楽しんでほしいの
●見た目は違っても皆同じ"ヒト"
「お疲れ様、どうやら落ち着いたみたいだな」
「すごいね。ここ、遼さんがいつも見に来るところなの?」
「ん、いやいや、たまたま調べて見つけた場所なんだ。行ってみたいって思っても仕事でなかなか来れなくて……やっと休みが取れて、ここまで来たんだ」
ネモフィラの花畑を眺めつつ、鏡介とロランは遼の隣へと歩み寄る。淡い青色の絨毯は遠く、広く、地平線の果てまで続いているのがよく分かる。ここに来るまでに起きた戦いのことを忘れさせるような風景がそこにはあった。
しかし突如風に揺られ、花びらが空を舞うその瞬間。遼は薄青の風を背景に、2人に振り向いて問いかける。邪神の仔たる自分はこの世界に存在しても良いのか、と。
その問いかけに対しロランと鏡介は顔を見合わせ、同時に頷いて……ある問いかけを1つ、遼に投げた。なんてことはない、ロランの姿に対しての質問だ。
「ねえ、遼さん。遼さんからぼくは、どう見える?」
「えっ……?」
「ぼくは、ヒト? それとも、それ以外?」
「それは……」
ロランの姿を見つめる遼は、少々困惑していた。猟兵の姿はその世界の住民にとっては違和感のないように認識を変えられているが、改めて言われるとロランの姿は人間のそれとは言い難い。人狼という種族故に、彼の持つ耳はヒトとは全く違うのだから。
「ぼくだって、満月の夜には強い狂気に襲われるの。家族を傷つけたことも、仲間に襲いかかったことも……思い出したくないことがいっぱいあるよ」
「でも、アンタは……」
「うん。今、ここにこうして立ててる。1人ではどうしようもなかったことだったけれど……色んな人に出会って、大事な人たちができて、ぼくは……"ヒト"でありたいと思えるようになったの」
「ヒトでありたいと……」
今、遼が悩むのは『自分が人間ではない』という点も含まれている。だからこそ"ヒト"でありたいと考えを持ったロランの言葉が心に突き刺さって、離れない。自分は人間であっていいのか、自分を"ヒト"と定義していいのか、まだ悩みは尽きることはなかった。
だが、それを後押ししたのは鏡介。自分の道は自分で選ぶべきだという彼の考えに基づいて、彼は更に言葉を繋げていく。
「もし、悩んでいる理由が他にも……例えば、自分が邪神の仔であることで世界に害をなす可能性を考えているのなら、それは無用な心配だと言っておこう」
「……根拠は?」
「当然、俺たちがまた助けるからだ」
腰に下げた神刀【無仭】の柄を軽く叩きながら、実力は見せただろう? と自信満々な表情を見せる鏡介。先程の戦いで見せた力だけが鏡介とロランの力ではないのだと見せつけるように、軽く笑ってみせた。
その後、ちらりと鏡介の視線がロランへと向けられる。遼はその視線の行き先に首を傾げたが、2人の間では視線が交わっている。過去、暴走仕掛けたことを思い出してしまったロランは、遼の手をぎゅっと握りしめて彼の心に寄り添うように声をかけた。
「遼さん、もし、もし、暴走しちゃっても、だいじょうぶ。万が一の時は、ぼくを止めてくれる人が、ぼくたちを止めてくれる人がいるよ」
「止めてくれる、人が……」
「うん。遼さんが暴走しちゃったら、鏡介おにいさんもそうだし、ぼくもまた遼さんを助けにいく。遼さんのそういう人に、ぼくたちがなってあげるから」
「っ――……」
優しく握りしめた手のぬくもりに、遼の声は震える。こうして、助けに来てくれると言われるとは思ってもいなかったようで、それから先の言葉が出てこない。
言葉が出ない遼に対して鏡介もアドバイスを付け加える。戻りたいと願うのならば、まだここで立ち止まらずに戻ってみるのも良いんじゃないかと。
「それで、どうしても駄目だとなってしまったら……その時はまた改めて立ち止まって、振り向いてみればいい。これまで見つけてきた道を思い返して、考えをまとめるのも大事だからな」
「考えをまとめるのも……」
「そう。今、この時点で結論を出してしまうの性急だと思うよ。これからも"ヒト"として生きるのだから」
「…………」
その最後の一言に、何かが突き崩された遼の顔が……少し、晴れやかになった。
何度も何度も思い悩んでいた様子の遼だったが、鏡介とロランの言葉を受けて考えを改めていく。
――邪神の仔として悩むのは、もう終わりだと。
●"ヒト"としてのこれから。
「んん~~……。話してたら、こんな時間かぁ。ありがとな、付き合ってくれて」
ネモフィラ畑に訪れてから、約2時間ほど。遼は猟兵達と会話をしてスッキリしたのか、思いっきり背伸びをして空気を目一杯吸い込む。
今日の旅行はこれでおしまいだと言わんばかりの背伸びは、長月遼という自分を見つけることが出来たと言いたげだ。
「俺は俺。うん、それは変わりなし」
「……ま、ここで消えてなくなったらアイツらが色々とうるさそうだからなぁ」
喉の奥で笑った彼の脳裏に浮かぶのは、幻で見せつけられた友人たち。
彼らにも話せない秘密を抱えて生きるのも悪くはないなと、悪い笑顔を浮かべていた。
けれど、彼の記憶には今回の事件の顛末は残らない。
UDC職員へと引き渡された後、彼に残るのは『自分が旅行して誰かと話した事』と『自分という存在は生きていてもいい事』だけ。
邪神の仔として悩んでいた長月遼は、綺麗サッパリいなくなる。
これからUDCアースに残されるのは……"ヒト"としての、長月遼だけ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵