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銀河帝国攻略戦⑰~ 理性無き戦い

#スペースシップワールド #戦争 #銀河帝国攻略戦

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「ようこそお越しになりんした」
 りん、と鈴の音が鳴らして、君たちを出迎えたのは妖狐の少女、狗衣宮・藍狐だ。
「スペースシップワールド、銀河帝国攻略戦。こちらで黒騎士アンヘルというお方の麾下、『アゴニーフェイス』艦隊を発見致しんした」
 周囲の風景が宇宙のそれへと切り替わり、頭上に大きな金属の塊が映し出される。それは、まるで苦悶する人面のようであった。
「アゴニーフェイス艦隊……とは申しんしたけれど。本当にそういう艦隊があるわけではありんせん。より正鵠を射た表現をするのであれば、あれは『精神破壊兵器アゴニーフェイスを中心とした戦団』と言った方が伝わりやすいでござんしょうか」
 精神破壊兵器アゴニーフェイス。特殊加工されたサイキッカーの脳を挿入・作動させることでテレパシーによる強力な悲鳴を放ち、人々の精神を破壊するという恐るべき兵器だ。強力な精神破壊能力を持っており、過去に解放軍の艦隊を広範囲に渡って一気に無力化した、という記録すら残っている。
「さて調べによればこの精神破壊兵器、迎撃などの戦闘力は持っておりんせん。戦う前から精神を破壊して回っておりんすから、敵の戦力は護衛と残敵掃討用のミサイルファイターたちで充分、ということでありんすなあ」
 敵の基本戦術は隠密重視だ。隠れ潜み、敵に近づき、アゴニーフェイスを起動して敵を無力化し、そしてミサイルファイターたちが残った敵を撃破して回る。
 サイキッカーの脳という“弾数”の制限がある以上、明確な抵抗手段を持たずとも解放軍の艦隊が全滅することは無いだろうが、放置した時の被害は底知れない。
「――さて、ここまでが敵の情報と、それを相手にした時の解放軍の話。斥候の猟兵がこのアゴニーフェイスの“悲鳴”を受けた時は、すこぉし風情が違うようでござんして……」
 どうやらこのアゴニーフェイスの悲鳴を猟兵が受けた場合、精神が破壊されるのではなく『理性を失わせて強制的に真の姿へと変貌させられる』との報告があった。推測では、猟兵の生存本能が精神破壊効果を凌駕したのではないか、とも言われている。
「普段より晒す真の姿とはまた一風変わった姿を見せる方もいるとかいないとか……。精神破壊の副作用なのか、今のわっちらの姿から大きく姿がかけ離れて人外離れするほどに、戦闘力が上がった、なんていう噂話まで流れておりんすなあ」
 はて、さて。その噂話は嘘か真か。中にはサイキッカーの性質を持つ者がよく狙われた、などの噂話も流れる始末。
「理性を失くしながら、真の姿で戦うこたびの戦さ場。お覚悟召されなんし」
 りん、と鈴が鳴って。手毬のようなグリモアが現れると、君たちは戦場へと転移させられるのだった。


三味なずな
 わぁいシナリオ!なずなシナリオだぁいすき!
 ⑰『アゴニーフェイス』艦隊の戦争シナリオです。
 今回は赤丸が無いのに強制的に真の姿に!いつもの真の姿と違ってもいいですよ!
 そしてなんと、通常の姿(猟兵たちが日常生活を送る方の姿ですね)から大きく姿が変われば変わるほど戦闘力がアップ!!
 なお目的やら大事なことは忘れない程度に理性は失われます。剥き出しの感情って良いよね。
 今回は大胆に変身して大暴れしちゃいましょう!

 なおサイキッカー各位におかれましては脳みそを狙われます。ご注意下さい。

 勝利条件は『アゴニーフェイスの破壊』。
 敵の護衛戦力をある程度排除しながら、アゴニーフェイス破壊を狙いましょう。
 アゴニーフェイスを破壊するとテレパシーの悲鳴が消えて、元の姿に戻って理性が復活します。その後、残敵を掃討……という流れです。

 プレイングには自分がどのような真の姿になるのかの外見情報や、どのような戦術をするかなどをご紹介下さい。
 また、なずなのマスターページにアドリブ度などの便利な記号がございます。よろしければご参考下さい。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております!
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第1章 集団戦 『ミサイルファイター』

POW   :    衝角突撃
【機体前方に装備された対艦衝角】が命中した対象を切断する。
SPD   :    ファイターレーザー
【速射式レーザービーム】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    スターシップキラー
【レーダー波】を向けた対象に、【対艦ミサイル『スターシップキラー』】でダメージを与える。命中率が高い。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ビードット・ワイワイ

見たり見たり見たり、汝らの破滅を見たり。
星を食らいて育ちし異形。
破滅をもたらす汝らの意思。
破滅を望みし我の意思。
合わさりてそ真の姿を今ここに再来せり。
ここにて希望を捨てよ。ここが汝らの破滅なり。

姿はイラストの最新の真の姿

自身の持ちし仮想破滅補助具を全て解き放ち異形の兵に呑まれし破滅を放出せり。それにて敵を呑み込もう。
それにて破滅をもたらそう。それにて破滅を収集しよう。姿に統一性などない。ただの異形なり。

蹂躙せり蹂躙せり蹂躙せり。
世界を侵食せし我が体躯、我が異様、我が力。理性残るならば道を開けよ。そして我が糧となれ。
自身の持ちしあらゆる技能を使いて破滅を招こう。
これが汝らの望みし破滅なり。



 黒の中に白があった。
「見たり見たり見たり、汝らの破滅を見たり」
 果てしなく暗い宇宙空間に、ビードット・ワイワイは祝ぐように両腕を広げる。
 絶え間なく発せられる悲鳴の中。彼の姿は本来の重厚な黒鉄の機体から、白く流線的な人型へと変貌させていた。
 その姿は人型にあってなお異形と、余人が見れば評しただろうか。フォルムこそいささかサイボーグじみてはいるが四肢があり、胴があり、頭がある。
 しかしその頭部にあるのは顔ではなく、何もかもを吸い込まんとする黒の空洞。見ようによっては、破滅を嘆く者が喚叫の限りを尽くせば、これほどに大きな口で悲憤する様にも見えようか。
 その頭部の後ろにはニンブスの如き白の輪が三つ重なっていて、光を発さずに自らの聖性を主張しているかのようでもある。
 しかしその主張される聖性を大きく損ない、異形を異形たらしめる最大の要因は――その背にある、大の大人が何人も入れ込めそうなほどに巨大な、胞胚が如き大袋だった。それは、まるで星を喰らって肥え太ったようにも見えるだろうか。
「星を食らいて育ちし異形。破滅をもたらす汝らの意思。破滅を望みし我の意思。合わさりて、その真の姿を今ここに再来せり」
 世界を破滅へと導くオブリビオンたる銀河帝国。そして、世界を破滅させよと命じられたビードット。
 敵も己も破滅を望むというのであれば、最早何を躊躇する理由があるだろうか。
 ただ決定的に違うところがあるとするならば。
 ビードットは破滅の前に幸福を実現させねばならず。銀河帝国にはそれがなかったことだろう。
 同じものを望みながらも、その些細な前提の齟齬こそがビードットと銀河帝国の致命的な対立点となった。
「――ここにて希望を捨てよ。ここが汝らの破滅なり」
 銀河帝国はすでに滅びて滅亡の民と伍した者。であらばこここそが憂いの国であり、自分こそが彼らに永劫の呵責を加えねばならないだろう。
「ロードルーイン」
 ゆえに、彼は破滅を呼び出す。
「星の記録を読み解きし人の傲慢。その再来を望む」
 ニンブスを輝かせ、彼は胞胚を下げたまま、銀河帝国軍のミサイル戦闘機たちへと向かっていく。
 ビードットへと発射されたレーザービームが彼を焼き切り、対艦ミサイルが彼は爆散する――そのはずだった。
 その直前に、ふわりと彼の背負う胞胚から何かが出現した。
「これを製作せし者は全てを一つに集約せんとした」
 それは発展に発展を重ねて理を解明した世界の物品。あらゆるものを一つへと統合したアーティファクト。その世界は全を一へ、一を全へと変え――。
「――かくして彼らは滅んだ」
 ビードットの言葉を合図に、戦闘機たちはその集団を一つに変えた。仮想破滅招来補助具、それに記録された過去の破滅が、今目の前で再現されたのだ。
 複数の戦闘機たちが収斂されて、歪な一つの存在へと成り下がったそれは、すでに滅んでしまっていた。
「いざ、我が解き放つ仮想破滅補助具が、汝らへと破滅をもたらさん。それによって、我は破滅を収集せん」
 ビードットはその胞胚に蓄えこんだ“破滅”を次々に呼び出していく。欺瞞、反乱、病魔、、逆襲、徒労、謀略、混乱、蒙昧、閉鎖、飢餓……。あらゆる世界のあらゆる破滅の要因を招来し、彼は帝国軍へと放っていく。
「蹂躙せり蹂躙せり蹂躙せり。世界を侵食せし我が体躯、我が威容、我が偉力を畏怖せよ。理性残るならば道を開け、しかして我が糧となるがいい」
 破滅をもたらし、破滅された者たちをまるでコレクションのようにその胞胚へと吸収させ、蓄えていく。
 破滅の蒐集者は、宙にてこの世を祝ぐように両腕を広げる。
「――これが汝らの望みし破滅なり」

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒白・鈴凛
【アドリブ・絡み歓迎】
真の姿カ
ワタシの姿を見たからには帰すわけにはいかないアル
…なんてナ

ワタシの真の姿は
三つ編みが解け、肌が白く、手足は獣に
そして、白と黒の鬼の顔が現れる

こうなってしまうと、とても腹が減ってナ
喰っても喰っても満たされない
喰っても喰っても味を感じない

底無しの飢餓を誤魔化すため
ただ食べる

唯一の救いは、何でも喰らうことができるってことアルナ

有機物も無機物も何でも

グルメツールの箸で捉え、手刀で裂き、鬼と共に喰らう

これを食事とは到底呼べまい
ワタシが行うのは、補食ネ



「いつ来ても不便なところアル」
 黒白・鈴凛が宇宙空間に出て抱く感想はそれに尽きる。
 無重力の宇宙において、彼女が得手とする中国武術というものはいかにも使いづらいものだった。足を着ける地があり、重力があることを前提としているため、その前提条件を欠く宇宙空間頼みの綱にできるのは己の膂力と寝技ぐらいのものだろうか。加えて血の巡りにも変化ができるため内功が練りづらいと来るのだから手に負えない。
「さすがに宇宙船の外には笹もないしナ。さっさと終わらせて帰りたいアル」
 タン、と船の外壁を蹴って、独特な浮遊感の中で鈴凛は宇宙空間を進んでいく。
 しばらく進んでいくと、嫌な気配を察知した。非常に強い陰気だ。
 一応の対策をしようと胸元の八卦鏡へ触れて、陽気を集めようとしたその時だった。
「――――ッ!?」
 悲鳴が聞こえて来た。頭の中へと直接打ち込まれたかのような絶叫が頭の中を駆け巡り、何重にも反響する。酷い叫び声だった。凌遅刑に処された者でさえこんな悲鳴は上げないだろう。
 これがアゴニーフェイスの悲鳴か、と気付いて歯を食いしばって耐えるも、脳を満たす叫声に耐えきれずに自分もまた悲鳴を上げてしまえば後は転落するが如く。テレパシーとして打ち込まれて来た悲鳴と自分の悲鳴が合わさり溶けて、その境界線が曖昧になる。
「――――――――ッッ!!!!」
 頭を抑えて苦悶する。長い三つ編みは振り解け、色白だった肌は更に陶磁のように白くなる。気付いた時には、その四肢は熊の如き獣のそれへと成り果てて、太極のような白と黒の鬼の顔が現れていた。
 鬼の獣が血走った目で獲物を見つけようと辺りを睥睨する。遥か先、話に聞いていたミサイルファイターが見えた。
 鬼の口元がニヤリと歪んで、鈴凛は推進した。一直線にミサイルファイターへととんでもない速度で飛んで行く。
 無論それを見逃す敵ではない。レーザービームが放たれて、一拍遅れて対艦用ミサイルが射出される。本来であれば、光線が獣の四肢を貫き、ミサイルの爆発で跡形もなく消し飛ぶ――はずだった。
「あくびが出るヨ」
 文字通りの光の速さで撃ち出された帝国機からのレーザーを、鈴凛は身体を傾けることで躱した。見てからでは到底反応できないようなそれを回避せしめたのは、彼女の野性的な直感によるものか。
 しかし敵の攻撃はそれだけではない。対艦ミサイルが鈴凛のすぐ眼前まで迫っているのだ。その弾頭が鈴凛のすぐ眼の前まで現れたその時、鈴凛がおもむろに手刀を振る。身の丈の半分ほどの太さを持ったミサイルが、宇宙空間上で音もなく切断された。
 鈴凛の手から箸が伸びて、切断されたミサイルが捉えられる。
「いただきます」
 一言添えて。切断されたミサイルだったものが、鬼の口へと放り込まれる。金属塊が、見る間に喉を通って行った。
「足りないアル。食っても食っても満たされないヨ」
 ミサイルの弾頭を噛み千切って嘆息する。獣化していない腹が飢餓を訴えていた。無機物ではダメだ、まるで空腹感は癒えない上に味がしない。
 だから、鈴凛は向こう側に見える新たな獲物へと視線を移す。帝国軍の、戦闘機へと。
 宇宙空間へと散った残骸を足場にして、鈴凛は跳んだ。凄まじい速度でミサイルファイターへと迫り、そのコックピットへと取り付く。
「你好(こんにちは)、 お前うまそうだナ」
 獣の腕がコックピットのガラスを突き破り、帝国兵が引きずり出される。手刀が振るわれ、ぱっと宙に血が散った。切り分けられた帝国兵だった肉塊を鬼の顔と共にばくりと一呑みにしてしまう。
「ああ、やっぱり……」
 まったく味は感じられず、まったく飢餓感は癒やされず。
 ただただ暴食の衝動に衝き動かされるままに彼女は食べる、喰らう。
 調理らしい調理も通さず、ただ狩り、ただ食う。
 一方的に喰らい続けるそれは、最早彼女が本来好む食事ではなく。
 これは獣の捕食に違いなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アリア・ヴェルフォード

ノルナイン(f11355)・オーヴァン(f00487)・ヴィク(f01172)と出撃

「強制的に真の姿にするですか!私がどのような姿になるのかは分からないので少し楽しみですね!」

【POW】
本来の真の姿ではないがこの身が変化して至るのは人型の龍神。
それが【聖邪神龍鎧】によって更に全身鎧を纏い爆発的な攻撃力を得る。
そして聖剣と邪聖剣をそれぞれ右手と左手に収納しその光と闇の魔力をそれぞれの手に纏わせ両手による光と闇の『属性攻撃』を『2回攻撃』で肉弾戦による殴り込みを行う。
相手の大きな攻撃だけは『見切る』で避けるが他は受けてその分敵を殴る。
理性を失ってもルールはあるので敵だけを狙い続けるだろう。


ノルナイン・エストラーシャ

アリアさん(f10811)、オーヴァンさん(f00487)、ヴィクティムさん(f01172)と共に出撃します。
精神破壊兵器の影響下にある宇宙とは……。
けどまあ、この戦場での私は、もう一人の私と実質同じです。問題ないですね。

『此度の私の真の姿は、機械部分が半分ほど露出した魔導兵器だ。
 少々醜い姿だが致し方あるまい。どうせこの戦場においては、まともな姿の者など居はしない。
 私は身体と一体化した狙撃銃と熱線銃を軸に射撃戦で立ち回る。
 味方の援護が出来ればそうするし、出来なければ敵を撃つ。有効なら選択したUCも使う。
 分かりやすい仕事だ……流石に味方は撃たないぞ。理性は無くともルールはあるからな』


スクリプトゥルー・オーヴァン

f01172の【アーセン】f10811の【アリア】f11355の【ノルナイン】と同行

はー……面倒な兵器が出てきたデスね……。
しかも、サイキッカーの脳を使った生体兵器デスか……。
まぁ、とりあえず分解と解析デスね!!(理性の箍が外れている)

真の姿
【virion】のような、いくつもの粒子状のデータで構成された姿
見た目自体はそこまで変わらないが、髪が真っ赤に染まって完全にウィルスになっている

ポケット電脳空間を使って辺り一帯の宇宙空間を電脳化し
【電脳魔術師】や【ハッキング】が最大スペックを発揮できるようにする
電脳化した空間内では対策できないウィルスとなった自身は電脳を貪り尽くす


ヴィクティム・ウィンターミュート

ノルナイン(f11355)・トゥルー(f00487)・アリア(f10811)と出撃

・真の姿
十年後の自分。背は大きく伸びガタイも良くなる。灰色の髪を腰まで伸ばし、目はどこか空虚で、いつもの軽口も叩かないハードボイルド。
未来への希望も、期待も、情熱もなし。"諦めてしまった男"の成れの果て。

ハイクテノロジー相手であれば、Arseneに負ける道理はなし。ユーベルコードで演算能力を獲得、各装備品を【ハッキング】と【毒使い】でウイルスまみれにして無力化していく。【早業】もあるから手際もいい。

男の戦いは作業。ただ盤上の駒を進めるが如く、何の感慨も無し。
そこに悦楽も、歓喜も無く。
──システムのように、無慈悲



「精神破壊兵器の影響下にある宇宙空間……ですか」
 ノルナイン・エストラーシャが少しばかり難しそうな表情になる。元より機械人形の身であるからして宇宙空間自体に否やは無いが、精神破壊兵器によって無理矢理に真の姿を晒されるというのが、問題はないにしてもやや気がかりではあった。
「自分がどのような姿になるのかはわからないので、少し楽しみですね!」
 仮にも精神破壊兵器の攻撃を受ける前だと言うのに、脳天気な様子なのはアリア・ヴェルフォードだ。あるいはその余裕も、最近このスペースシップワールドにて猟兵たちへと案内したり依頼を受けることも多いがゆえにだろうか。
「私はサイキッカーの脳を使ったアゴニーフェイスの方が俄然気になるデスね。面倒な兵器デスが、それだけ分解と解析のし甲斐もあるって物デスよ」
 スクリプトゥルー・オーヴァンがくるくるとドライバーを手の内で回しながら、まだ見ぬアゴニーフェイスへと思いを馳せる。
「アーセンもアゴニーフェイスの中身は気になるデスよね?」
「俺はパス。ハッキングでの電脳死なら俺の領分だが、精神破壊はドクの領分だろ。カテゴリー・エラーだ」
 スクリプトゥルーが呼び掛けると、アーセン――ヴィクティム・ウィンターミュートは肩を竦める。彼もウィルスを使って非電脳接続者の脳機能や内臓を破壊することはできるが、それはあくまで死者を作っているのであって、廃人を作るアゴニーフェイスとは似て非なるものなのだ。
「とはいっても、ハイテクノロジー相手ならこのArseneが負ける道理はねえさ。準備は良いな?」
 ヴィクティムの言葉に三人が頷きを返す。この戦場に来た時点で、覚悟も準備もできていた。
 四人が精神破壊兵器の射程圏内へと突入すると、波が押し寄せて来るように彼らの頭へ“悲鳴”が襲い掛かって来た。あるいは悲しい竜の咆哮、あるいは犯罪者に殺される無辜の民の断末魔、あるいはブルースクリーンのビープ音、そしてまたあるいは――無惨に殺されるストリート・チルドレンたちの悲鳴。聞く人々によって違う絶叫は、しかし彼らの脳を等しく揺さぶり、精神を打ち壊さんとしていた。
「電脳空間を――展開するデス――」
 スタッタリングが起きたように身体をチラチラと明滅させながら、スクリプトゥルーが手にしたポケット電脳空間を展開する。0と1の波が走って、戦場の一角が電脳へと書き換えられていく。
 展開されていく端から、スクリプトゥルーは泳ぐように電脳化空間を飛び始めた。その髪は赤く染まり、その身体はよく見ればまるでビリオン――ウィルスのような粒子状のデータで構築されたものへと変わっていた。
「……コピー。ハッキングを開始する」
 乾いた声が返答する。
「全デバイス、コアクロック同期中。ウィンターミュート、出力オーバーロード。――演算能力拡張完了。仕事の時間だ」
 大脳に埋め込まれたデバイスが過剰稼働され始めて情報処理能力が格段に向上するのを、ヴィクティムは無表情に受け入れた。
 急激に身長の伸びた身体を折り曲げて、彼は電脳化された宇宙空間上でのランニング・ハックを開始した。腰ほどまで垂らされた灰色の髪が宇宙空間に揺れる。
「ICE突破。クラック……完了。敵のレーザー兵器が沈黙」
 あるいは普段の彼であればクラッキングの成功を喜びながら、使ったウィルス“バレンタインチョコ”になぞらえて「遅めのハッピーバレンタインデーだ」などと言ったのだろうが。今の彼は流れて来るデータに合わせて、まるでチェス・プロブレムを解くように何の感慨もなく攻性プログラムという駒を動かす“作業”を遂行する。
「トゥルー、敵後方の電脳空間にバックドアを張ってある。任せた」
「合点承知デス!」
 完全に電脳空間上のウイルスそのものと化したスクリプトゥルーが身を翻すと姿を消し、ミサイルファイターたちのすぐ背後に出現する。
「さぁ、キミも私に食われるデスよ!」
 レーザー兵器を封じられたミサイルファイターは即応できず、スクリプトゥルーというウイルスによって感染し機能停止に追い込まれる。そこから更に新しいスクリプトゥルーの分体が発生し、次のミサイルファイターへとそれぞれ襲いかかっていく。喰らっては増え、喰らっては増え、スクリプトゥルーはネズミ講式に増えていく。
 戦場の一角はそれによって一気に壊滅した。しかし戦場、特に宇宙空間というものはとにかく広いものだ。
「なんともわかりやすい仕事だな」
 ヴァリアブル・ビームブラスターとロングレンジライフルの二丁の銃を両腕と一体化させたノルナインがニヤリと笑う。両目をそれぞれのスコープに当てて、別々の獲物を次々に撃ち抜いていく。
「ああ、まったく。こうして表に出てきてみれば、醜い姿を晒さねばならないとは。私もヤキが回ったものだ」
 身体の機械部位の大半を露出した魔導兵器となり、もう一つの人格へと交代したノルナインは嘆くように溜め息をつく。
「まったく、これが処刑方法だったとしたらそいつのことまで殺してやりたいぐらいだ。せっかくの娑婆をこんな宇宙空間で、機械部位を晒しながら、銃を腕に同化した状態で敵を目の前に過ごさなければならないなんて!」
 狙撃銃がミサイルファイターのエンジンを貫き、熱線銃がコクピット内の搭乗者を撃ち抜く。
「……まあ、この戦場にまともな姿の者などいない以上気にかけてるだけ無駄か」
 特にあいつなんかは、とノルナインがスコープを向ける先には、竜人がいた。
「行きます! うおおおお!!」
 竜人の正体は、アリアだ。彼女はその身体に秘めた龍神の因子によってその身体を竜化させていた。更にはその因子の放つ力を防具へと転換し、全身鎧を装着してさえもいる。
 白と黒の手袋に収納された聖剣と邪聖剣の力が、アリアの両拳へと光と闇の力を与える。敵のレーザーを紙一重で躱し切って、アリアはその両拳をミサイルファイターの機体へ当てる。
「浄めよ聖光、喰らえよ暗黒! これが、私の格闘戦です!!」
 聖剣の光と邪聖剣の暗黒の力を機体へと流し込むと、敵機が相反する力の内包と衝突によって爆散する。
 それぞれが真の姿を解き放ち、それぞれの手段で敵を殲滅していく
 ヴィクティムが敵を妨害し、スクリプトゥルーが広域殲滅し、ノルナインが援護して、アリアが迫って敵を撃滅する。
 後の記録によれば、彼らの連携によってその戦場の一角は、戦後敵兵は一人も残らなかったと言う――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

雨乃宮・いづな

◆心情
理性飛ぶのかあ。
――殺すだけで良いのは楽だけど、同士討ちだけは避けないとね。

◆真の姿について
目の色が赤黒く変色。所持する刀剣類も同じ色合いに染まる
全体的に口数が減り断定的な口調になる。感嘆符や疑問符を使わなくなる

◆行動
「先制攻撃」で敵陣に突っ込み、そのまま護衛戦力に向けて「鎧無視攻撃」を乗せたユーベルコード『雷霆万鈞』を発動
消耗を気にせずそのまま「2回攻撃」で二発目を放ち纏めて制圧するよ。味方を巻き込んでも嫌だし、味方から距離を取る努力はするね
相手攻撃は「見切り」で予測して衝撃波で迎撃。叩き落とすね
後は目に付くものを壊していけば目標にたどり着くかな。全部壊すよ



 理性が飛ぶ、と聞いて雨乃宮・いづなが思い浮かべたのは、稼業の折に会ったとある傭兵だ。彼はとびきり臆病者で傭兵らしくない彼は、薬の力で理性を蒸発させることで戦場を駆ける狂戦士として名高かった。
「殺すだけで良いのは楽なんだけどね」
 呟きながら、とんと跳ねるようにいづなは飛んで行く。
 無論、ひととき限りだが彼は名を馳せはしたものの、じきに敵の罠に嵌って彼は討ち死にした。非理性的な戦場において理性を失うことはすぐさま死へと直結する。
 自分が自分でいない間に死んでしまうかもしれないという危険性を、いづなはよく理解していた。
「……とにかく、同士討ちだけは避けないと」
 敵機目指して向かう先は猟兵たちが比較的少ない方向。
 そろそろかな、と予感した瞬間に、アゴニーフェイスの“悲鳴”が来た。戦死した戦友を前にした兵士の慟哭。腸を零しながらもなお生きる戦士の苦悶の声。いづなが傭兵として戦場で聞いてきたあらゆる“悲鳴”が合わさったようなそれが、彼女の頭を激しく揺さぶる。
「っぐ、あぁぁぁああ……!」
 耐えられないと判断したのは一瞬。次の瞬間には、彼女の青色の瞳は赤黒く変色していた。
 酷く頭痛のする中、血走った目で敵を再捕捉する。腰に佩いた刀へと手を伸ばすと、柄がバチリと雷電を発する。それにも構わずに、彼女は柄を握り締める。
 有効射程範囲に入ったと見るや否や、ミサイルファイターたちがレーザービームでもっていづなを迎え撃とうとする。
「――射程に入った」
 右腕に紫電を纏いながら、いづなは鞘より刀を走らせ抜き放つ。本来ならば到底刃の届かぬ距離。本来ならば宙を斬るだけに留まる距離。だが、ミサイルファイターたちの有効射程範囲はいづなの有効射程でもあった。
 振られる黒い刃に赤みが差したかと思うと、そこから赤黒い稲妻が放たれた。白いレーザーへと、赤黒い無数の稲妻たちが襲いかかるように衝突し、喰らい切ってなお進む。逃げようとミサイルファイターたちが反転しようとした時と、稲妻たちが彼らをも食らったのはほぼ同時だった。
 返す刀で更に二刀目。右腕に纏う雷の力は衰え、それを生み出す妖力は大きく消耗すれども、それがどうしたと言わんばかりに刃へと妖力を注ぎ込み、紫電を散らす。
 無数の稲妻が宇宙空間を一直線に駆けて、雷撃が敵機を焼き切る。その様はまるで、餌に群がる餓鬼のようですらあった。あれにひとたび当たってしまえば、機体の機能停止はもちろん、パイロットの死亡も確認するまでもないだろう。
「一角の制圧が完了した。……目標へ向かう」
 小さいとはいえ、戦場の一角となる場を瞬時に制圧したいづなは、敵の破片を利用しながら、アゴニーフェイス付近の敵を狙って飛ぶのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ティオレンシア・シーディア


真の姿、かぁ。あたしあのカッコ嫌いなのよねぇ。
…ま、しょうがないか。
(テンガロンハットにダスターコート、スキニージーンズにガンベルトの西部劇スタイル
ただし左半面は焼け焦げてボロボロ・左腰から右脇腹まで引き裂かれたような傷跡
常の微笑みは消え、世界の全てがどうでもいいような濁った瞳)

〇地形の利用しながら〇ダッシュと〇ジャンプで敵陣に突撃。
〇クイックドロウから〇先制攻撃の●鏖殺を〇鎧無視攻撃で派手にバラまくわ。
敵の攻撃は〇第六感で見切って〇範囲攻撃を〇一斉発射。
数だけはいるみたいだし、当たるを幸いなぎ倒すわよ。

普段なら協力とか少しは考えるんだけど。…どうでもいいか。
コイツらブッ殺せばいいんでしょ?



 猟兵としての真の姿を己の一部とするならば、あるいは自己嫌悪と呼べるだろうか。
 ティオレンシア・シーディアは自分の真の姿の、特に格好が嫌いだった。
 今の彼女の服装は、普段のギャルソン制服ではない。スキニージーンズとダスターコートの間からは重厚なガンベルトが見えていて、その左半分はまるで火事に遭ったかのように焼け焦げている。左腰から右脇腹へと胴体を横断する傷跡からは、火傷とはまた別種の生々しい痛みを見る者に想起させるだろうか。それでいながら、彼女は痛みで顔をしかめるでもなく、テンガロンハットのつば覗かせる表情は酷く無気力で澱んだものだった。
 今更西部劇風だとか。生々しい火傷痕と傷跡だとか。生気の無い無表情だとか。理由は色々とありはするが、こんな格好になった上でそれら全てに対して「どうでもいい」と関心を失ってしまうのを含めて嫌だった。
 救いがあるとするならば、それはこの姿であっても「早く終わらせてしまおう」という意思だけは変わらないことだろう。
「連携とか援護は……」
 普段の彼女の癖として、ティオレンシアはぐるりと辺りを見回す。真の姿をそれぞれ解放して戦う猟兵たち。それに対抗する多数の敵機。さて危なっかしい味方や突き崩せそうな状況は無いかと探してみるが、すぐにやめた。
「……どうでもいいか」
 ホルスターからリボルバーを出す。要するに、敵を全部倒してしまえばそれで良いのだ。そのためだけに連携だ協力だとあれこれ考えるのはあまりにも面倒だった。
 最低限、フレンドリーファイアだけには気を付けて。向かう方向は味方の少ない敵集団。その反対方向へとリボルバーで数発撃った反動を使って、そちらへと推進していく。
 複数の敵機が瞬く。レーザービームだ。瞬く間に迫るそれらを銃撃の反動を利用し、身を捩って躱す。
「曲芸射撃は柄じゃないのだけれど」
 それでも障害物のない宇宙空間において開けた場所での遠距離戦となれば、必要となるものだった。
「でも、ロクに当てられない銃を撃ち続けるよりはマシね」
 少なくとも、あのミサイルファイターたちよりは。
 リロードにかける時間は1秒もいらない。ハンマーへと左手を添えたファニングショット。敵機が打ち放とうとしたミサイルが虚空の上で銃弾に貫かれて爆裂する。
「敵へ贈る言葉で、『祈れ。そして棺桶を用意しろ』なんて昔のガンマンは言ったみたいだけれど」
 間を開けずにリロードした直後に別の方角へとファニングショット。特殊弾丸でもって正確に敵機のコックピットを割り貫いてパイロットへと命中する。
「ここは良い世界ね。棺桶に乗っているのだから、後は祈るだけで良いわ」
 もっとも、神様を信じていればの話だけどね、とティオレンシアは呟く。
 それならあとは、一言だけ掛ければ充分だろう。
「さようなら」
 リボルバーから弾が発射され、ミサイルファイターたちの弾頭を、燃料タンクを貫いて。
 戦場で、無音の花がいくつも咲いた――。

成功 🔵​🔵​🔴​

アリス・ラトウィッジ
●◎
なにこの悲鳴……
ねぇ?三月兎さん
……あれ?どこに行ったの?
帽子屋さん?
眠り兎さん?
ねぇ……?


真の姿(変質)
武器が自動的にアリスを攻撃
血液によって変質
狂う帽子屋、走り惑う三月兎、眠り死ぬ兎
それら三匹を貪り喰って変質する

皆私を一人にするの?
なんで?
どウして?
一人ボッちは……いヤ


スートの刻まれた複数の色の違う瞳を持ち
複数の「アリス」を内包した製造炉
彼女の本質は「蜘蛛」に他ならない
アリスファクトリーの完成だ

ミレナリィドールは製造過程が不明
だからアリスはアリスを複製する

蜘蛛の子を散らす様に増殖する「アリス」によって捕食する
人語とはかけ離れた奇怪な声を挙げて鳴き狂う


ねェ
私ト一緒にヒトつにナりましょう?



 なんだか寂しい場所だった。
 なぜだか不気味な所だった。
 アリス・ラトウィッジは暗い宇宙空間の上で、不安げに辺りを見回していた。
「なに、この悲鳴……」
 アリスは呟きながら、いつも連れている人形たちを探す。
「ねえ、三月兎さん」
 返事はない。いつもその小さな手に握って引きずり回していた三月兎はどこにもいなかった。
「……どこに行ったの?」
 不安げな声で呼び掛けながら、辺りを見回しても見つからない。
「帽子屋さん……眠り兎さん……ねえ、返事してよ……?」
 呼気が段々と荒くなってくる。
「みんな私を一人にするの?」
 胸がどんどん苦しくなってくる。
「なんで? どウして?」
 頭の中が、悲痛な悲鳴でいっぱいになってくる。

「一人ボッちは……いヤなのに……ッ!」

 目をつむり、力の限りに叫んだ後に目を開けて見上げると、そこには三体の人形がいた。
「帽子屋さん、三月兎サん、眠り兎さン!」
 アリスがほっと安心したように、喜びの声を上げる。
 眼の前の三体の人形は、どれも頭から血液を被ったように赤く彩られていて。
 見下ろせば、自分の身体は傷口と血で赤く染まっていた。
 イカレ帽子屋(マッドハッター)が笑い狂う。三月兎(マーチヘア)は走り惑う。眠り兎(ドーマウス)は眠り死んだ。
「もう、一人ぼッチじゃなイ……」
 それら三体の人形を、アリスは貪り食うことで変質する。
 赤の中に青があり、青の中に赤があったあの綺麗な瞳は、スートの刻まれた多色の瞳へと変わる。
「私がたクサんイレば、みんなが一緒になれば、寂シクなイよ」
 ひび割れた声でアリスは呟く。

 ――ミレナリィドールは製造が極めて困難で、往々にしてその製造過程は謎に包まれていることが多い。
 けれど、このアリスに限って言うのであれば、その製造は極めて限定的ではあるが、極めて容易だと言われている。
 何せあのアリスは、アリスを複製することで増殖するのだから。

「ウフフフフ!」「アハハハハ!」「キャハハハハ!」
 三体の人形を素材にして、一人のアリスから三人のアリスが生まれ出る。
 三人のアリスは泳ぐように宇宙を駆けて、ミサイルファイター機に取り付くとそれを頭から齧って食べる。
「My mother has killed me,(お母さんは私を殺したの) My father is eating me(お父さんは私を食べたの)♪」
 齧って食べた素材を使って、アリスがまた新たなアリスを生み出していく。
 新たに生み出されたアリスはまた、獲物を見つけて捕食に向かう。
「My brothers and sisters sit under the table, Picking up bury them under the cold marble stones(テーブルの下で兄弟姉妹が私の骨を拾ったら、冷たい大理石の下へ埋めてくれたの)♪」
 食べては増えて、食べては殖えて。
 戦場の一角を巣とするならば、そこに掛かった獲物を食んで、造って、勢力を拡大していくその様子は、まるで蜘蛛のようだった。
「ねェ、私ト一緒に、ヒトつにナりましょう?」
 ミレナリィドール(完成された人形)にしてドールファクトリー(人形製造炉)。
 ひび割れた声は、しばらくもすれば到底人語としては聞き取れないような奇怪な声へと変わり果て。
 鳴き狂うアリスたちに、その戦場の一角は満たされた。

成功 🔵​🔵​🔴​

バレーナ・クレールドリュンヌ
【真の姿】
(だれかたすけて!)耳障りね。(好きでこんな姿になったんじゃない!)知ってるわ。(あぁ!何が違うというの?ガラスに隔たれた世界の人たちと!)それは……(わたしは……)恋に生きる人魚姫ではないというのに。
『人魚の尾が人間の脚へと変わる』

【戦闘】
鬱陶しいカトンボね。
あなた達は邪魔なの、わたしが終わりにしたいのは、あの悪趣味な機械。
迎撃兵装を持たない以上、誰かが接敵して破壊すれば終わり、
だからあなた達はそこで微睡んでいるといいわ。

UCを使用して、敵群を足止めして、突破口を開くことを優先しましょう。
お生憎さま、この宇宙では、わたしの声はどこまで響くわ。

●アドリブ絡みOK



 ――だれかたすけて!
「……耳障りね」
 バレーナ・クレールドリュンヌは己の内から騒ぎ立てる声に対して、不快感を隠そうともせずに顔をしかめる。
 今も聞こえて来るあのアゴニーフェイスの悲鳴も、そしてその取り巻きとなるカトンボたちも、バレーナからしてみれば耳障り極まりない。
 ――好きでこんな姿になったんじゃない!
「知ってるわ」
 内側からの声へと、涼やかに返答する。
 普段は人魚のキマイラとして振る舞うバレーナは、アゴニーフェイスの“悲鳴”によってその人魚の尾を人の脚へと変えていた。
 ――あぁ! 何が違うというの? ガラスに隔たれた世界の人たちと!
「それは――」
 ――わたしは、

「――恋に生きる人魚姫ではないということ」



 童話では、人間の王子に恋をした人魚姫は魔法使いによって脚を与えられた代わりに声を失った。
 そしてこの宇宙の海では、戦いに赴いたバレーナが真の姿へとその身を変じさせられることで、その人格が別のものへと切り替わった。
「……ああ、本当に鬱陶しい」
 忌々しげに、バレーナはアゴニーフェイスの護衛についたミサイルファイターたちを睨み付ける。アゴニーフェイスに迎撃兵装が無い以上、誰かがあそこへ到達して破壊するだけで事は済む。だが、どうしてもあのミサイルファイターたちが邪魔だった。
「それなら、良いわ」
 この暗い宇宙空間が、暗い新月の夜の海と同じなら。
「――あなたたちはそこで微睡んでいなさいな」
 バレーナが蜜のように甘い歌声で歌い始める。本来ならば宇宙空間上では音は伝達しないはずだが、ユーベルコードにまで昇華された彼女の歌声ばかりはその限りではない。まるで水面に落ちた一滴の雫のように、空間上に波紋としてさざめくように広がっていく。
 アゴニーフェイスの周囲まで、“悲鳴”の合間に歌声が響くとあからさまにその周辺のミサイルファイター機たちの動きが鈍くなった。
 歌声は、甘すぎるほどの甘さと、そして、物足りない渇きを人々へ与え、それら全てを抗いがたいほどの安寧によって包んで閉じられる。
「――おやすみなさい。王子様のキスで目覚められれば良いわね」

成功 🔵​🔵​🔴​

アルトリウス・セレスタイト

リシェリア(f01197)と協働
多少話した程度だが臆すこともなさそうだ
宜しく頼む

破壊すれば良いのなら何時も通りか
脳が欲しくば取ってみせるが良い

臆せず踏み込む
出てきた個体を見切って心中に捉え魔眼・封絶で拘束
邪魔も減るだろう

以後は相手の軌道を見切り稼動中のものから魔眼で拘束
手近に動く個体がなければいそうな方へ
障害物が邪魔であれば破天で敵諸共爆撃して排除

リシェリアに当てない程度には狙いを絞る

目標破壊後は残敵掃討
真の姿については言及もせず
連携は意識して何時も通りに

※真の姿は淡青色の光の粒子で構成された人型。近付くほど実体を失う
理性が薄れると人間的思考が減る分、機能が独り歩きしている状態に近付く


リシェリア・エスフィリア
◎【アルトリウス(f01410)と行動】

少し話した事もある彼に声を
「今回は一緒の戦場みたい、よろしく、ね。長居には適さない戦場。お互い、注意していこう」
振る舞いも強さも、両方ある男性、私が心配することもないだろうが

敵陣に飛び込み、【魔法使いの記憶】を発動。
迎撃用に放たれるミサイルは発生させた氷片にて迎撃

何時まで理性は保てていたのだろう
いつの間にか、真の姿である魔剣そのものへと変じる

何時も「リシェリア・エスフィリア。14歳。人間、だよ」
そう自己紹介していた存在の真の姿がこれ
周囲を舞う氷の破片は、全て運命を喰らう魔剣の刃へと変わる

戦場を終わらせるまで、彼女は止まらない
彼女はそのための魔剣なのだから



 戦場において、多少話した程度の相手と急に共闘することはそう珍しい話でもない。
「今回の戦場では一緒みたい。よろしく、ね」
 とはいえそれはあくまで一般論での頻度の話であり。人見知りの気があるリシェリア・エスフィリアとしては、出撃前の挨拶でもいささか緊張してしまう。
「ああ、よろしく頼む」
 対するアルトリウス・セレスタイトは泰然自若とした様子で返答する。
「うん、長居には適さない戦場、だろうから。お互い、注意していこう」
 言ってから、リシェリアは少しだけ後悔した。アルトリウスは振る舞いも落ち着いていて、聞き及ぶ限りでは実力も相当に高い猟兵だ。それを自分が注意喚起するまでもないだろう。
「ああ。短く、的確に済ませよう。敵の数が多い以上、長期戦はこちらが不利だ」
 行くぞ、と端的に告げて。アルトリウスは敵陣、アゴニーフェイスの勢力圏へと飛び立つ。
「……頑張らなきゃ」
 小さく呟き、リシェリアも彼へと続いた。
 敵陣に近付くにつれて、最初は気のせいだと思っていた程度に小さく頭の奥で響いていた声が段々と大きくなってきた。敵の姿が辛うじて肉眼で捉えられるまでになると、それははっきりと悲鳴だと認識できた。
「援護を頼む」
 言い残し、アルトリウスは臆した様子もなく敵陣奥深くへと斬り込む。
 ミサイルファイターたちがアルトリウスを認めるや、その対艦用であるはずの衝角を利用した機動攻撃を仕掛けてくる。ビームやミサイルを使わないのは、恐らくサイキッカーであるアルトリウスの脳を狙っているのだと見て間違いなかった。
「…………っ」
 頭の奥で燻るような悲鳴を感じながら、リシェリアは見えないアゴニーフェイスの勢力圏へと入るのを躊躇った。ここに入れば、この悲鳴が大きくなって真の姿を晒さずにはいられなくなってしまうのだ。
「行ける」
 気合を入れるように小さく一言。リシェリアもまた、アゴニーフェイスの勢力圏へと侵入する。
「――――凍りついて」
 宇宙空間を飛びながらリシェリアが短く呟くと、彼女の手にした蒼銀色の杭がほどけるように白い氷細工の花びらへと変化し、アルトリウスへと迫るミサイルファイターたちを迎撃する。氷細工の花びらが一枚当たるたびに、ミサイルファイターの機体が凍りついていく。
 宇宙空間において質量の変化というものはその運動に対して大きな変化を見せる。機動戦を仕掛けるはずだったミサイルファイター機は、リシェリアの援護によって鈍足化したことで容易にアルトリウスによって避けられてしまった。
「淀め」
 呟く彼の声は常と変わらず、しかし彼の使う原理の力と同じような淡い青色の光の粒子がその姿を人ではなく人型の何かに変えていた。
 原理の魔眼が不可視の力を振るい、アルトリウスの周囲の敵機を全て止める。
「俺の脳が欲しいのならば、取りに来てみせるが良い」
 淡々と、しかし挑発的にアルトリウスはミサイルファイターたちへ向けて言い放つ。敵の誘引は、彼の役目だった。
 そして、それのペアとなるトドメの役回りは、リシェリアだ。
「――――――」
 氷細工の花びらを操り、アルトリウスの原理の力によって封ぜられたミサイルファイターたちを次々に氷の巨像へと変えていく。
 いつの間にやら、花びらを操るリシェリアの手が上がらなくなっていた。悲鳴は彼女の頭を確実に蝕み、その姿をアルトリウスと同様に真の姿へと強制的に変更させる。
 気付けば、リシェリアは深い蒼色の一本の長剣へとその姿を変えていた。
 それと同時に、長剣の周囲で渦巻く氷細工の花びらが魔剣の刃へと変身する。
「――――――」
 声無き声で「行って」と命じると、魔剣の刃たちは女王の命に忠実に従う兵士たちのように敵の集団へと向かい、凍りつかせ、あるいは斬り殺しにかかる。
 青白い粒子の集合体へと変わったアルトリウスが、ちらりとこちらを見た気がした。「14歳の人間」だなどと、自己紹介のたびに自分に言い聞かせるように名乗っていたのに。こんな姿を見られて失望させてしまったかもしれないと思うと、胸が苦しくなる。
「残り数体。弾幕展開」
 淡々とアルトリウスが告げて、原理の力を振るう。元々どこか機械的な印象さえ与える彼だが、今ばかりは人間的な思考が封ぜられて、機能だけを駆使する姿はまるで本当の機械のようですらあった。
 青く輝く弾丸が、彼の目の前に無数に生成されたかと思うとそれらが一斉に射出される。
「――リシェリア」
 アルトリウスが呼び掛ける。感情に乏しいその声音から、意図を理解することは難しかったが。それでも自分が今何をするべきなのかはわかっていた。
 己は魔剣。戦場が終結するまで止まらない存在。そして、戦場に幕を引くための存在だ。
 魔剣の己が身をもたげ、アルトリウスが放った魔弾の弾幕の後に続く。
 魔弾の持つ死の原理で存在根源を砕かれ、ミサイルファイターたちの護衛の壁が崩れ去り。
 刃の先にあったものは――精神破壊兵器、アゴニーフェイス。
 今なお悲鳴を発し続けるそれへと、魔剣の刃を突き立てて。
 金属が割れ砕け、戦場を満たしていた悲鳴は――泣き止んだ。

 それから。悲鳴の影響がなくなって、真の姿から元の姿へと戻った猟兵たちは残敵を掃討する。
 事前に倒していた数が多かったこともあり、討ち漏らしもなく戦闘は終結し。結果としてみれば、数字上の犠牲を出さずに敵を殲滅するという大戦果でもって、この戦場は幕を引いたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月17日


挿絵イラスト