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ムングの蹂躙

作者：にゃあら

●嘲笑うかの如くに投げられたコイン、裏か表か
　世の中はまるで可笑しいと、僕が気付いてしまったのにはわけがある。
　繰り返されてきた悪質な戯れが、この身この心を常に痛めつけてくるからだ。また随分とテンプレないじめ行為か、などと世間は悲しむのだろう。いいや――違うさ。お若いお年頃……それでも赦されてはいけないが……ではないからこそ質が悪い。
　チャイムが響く。ぴんぽん、ぴんぽんと頭に響く。どうして僕は家に帰らなければいけないのか――決まっている、あの人達を喜ばせる為だ。
　帰りが遅いじゃないか、※※。ちょっとそこに座りなさい。嗚呼、やはり僕はあの人達の玩具なんだ。周囲の人々は見て見ぬ演技が大得意なのだろう。じわりと殴られた部分が蒼（そ）まっていく――もう嫌だ、こんなことを続けていたら壊れてしまう。
　いっそ、僕が死んだら良いのだろう、そうすれば僕の世界だけが失せていく。明日だ、明日、始めよう、僕という命を絶ってみせるのだ――。
　声が聞こえる。何者かの、強い、強い、凄まじい意志だ。それを晴らして消えるとしたら如何だ――なんて素敵な、お約束展開じゃないか。
　僕は『それ』を手に取った――！

　――ジャシンドライバー！

●グリモアベース
「あー……はいはい。成程。わかりました。わかりましたよ。まぁた胸糞な予知（やつ）じゃないの。気持ち悪くて吐きそう……ちょっと外してもいいかしら？」
　グリモア猟兵はいつもとは違い、やけに冷えた貌で猟兵（きみ）を見た。目隠しの裏側はおそらく『定まって』いるのだろう。
「アンタ等、今更説明する必要はないと思うけど、UDC-HUMANの類よ。ええ、人が何かしらの感情（マイナス）を受けて怪物化するやつ。原因は『人間を人間と扱わない屑』が関わってるからそれの仕置きも兼ねてね――うん。変異した人を引っこ抜けたら『元に戻せる』可能性が高いわ――そういう事だから、とっとと片付けて帰りましょう……今回のは『親に虐待されてる子供』って感じ、詳しくは現地で調べてよね」
　グリモアが輝いて。

第1章 集団戦 『ジャシンドライバー・戦士形態』

POW   :    ジャシンパンチorジャシンキック 自身の【装着者の血液または生命エネルギー】を代償に、【UDCとしての強大なパワー】を籠めた一撃を放つ。自分にとって装着者の血液または生命エネルギーを失う代償が大きい程、威力は上昇する。 SPD   :    ジャシンネットワーク 【ジャシンドライバー装着者】が自身の元へ多く集まるほど、自身と［ジャシンドライバー装着者］の能力が強化される。さらに意思を統一するほど強化。 WIZ   :    ジャシンメダル 妖怪【またはUDC】の描かれたメダルを対象に貼り付けている間、対象に【なった武器の形状が変化し、特殊能力を得る】効果を与え続ける。 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

　ジャシンドライバー、それは悪しき神の力を宿した、魔道具（アーティファクト）で在る。使用者の負のエネルギーと生命エネルギーを糧（血）として闇黒（やみ）の貌（かたち）を変身（つく）るのだ――冒涜的なメロディと共に量産型（かれら）が吼える――屑どもに制裁を。屑どもに絶望を。屑どもに殲滅を……！
　たとえ血の繋がった存在だとしても、弱い者いじめをする奴は彼等（おれ）が赦さない。邪魔する猟兵（きさま）も同罪だ――！
　undefined――undefined――undefined――！

　メタモルフォーゼ、死神（ムング）メダル！
　死が蔓延り、全てを正義（ただ）す。


　曲がり角で出遭ったアイツは正義を銜えていた。
　塗りたくられた加工物の臭いが感染ってきた。

　機械仕掛けの王様（ノーライフキング）の真似事が人類に出来れば幾等か楽だったのだ、神に繰られ、佛に看取られ、真の意味での自分（ひと）を描けるのだろう。少なくとも、生まれた時から不幸だなんて描写（い）われはしない。継ぎ接ぎの獣（オマエ）でも、故に、理解は素早かった――胸クソ悪い話だな――思うところは数（多々）有れども任務に『集中出来る』のは何者かの教育のオカゲなのか。考えずに行動せよ、否、依頼（つ）げられた始末（こと）だけ考えろ。闇と影の狭間で暗殺者（オマエ）は沈黙（しず）む。
　黒（瞳）が定めたのは無尽蔵（わ）き猛る英雄（ばけもの）の群れ、その中心には犠牲者（ターゲット）が存在（い）るのだろう。このまま雑に弾幕（う）ち続けると流れた鉛が這入り込むのか――思考を浸せ、深い、深い、瑞々しい漿液へ。
　若干乱れていた呼吸（いき）を整え『ねらい』を澄ませる、棲み憑いた英雄（フリークス）どもの隙間（ま）に威嚇（撃鉄）か――卑怯者め！　どこにいる。正々堂々勝負しろ――これじゃどっちが悪役（ヴィラン）何だか、傍から覗けば奇天烈だ。ピーカーブーと嗤い給え。
　意識を逸らした一体（やから）の頭部（くび）を落とせ、ぶらりと宙吊りになった世界にすら彼等は気付けない。仮面（マスク）の裏にこそ死神（ムング）が宿るのだ。顔色ひとつ変わらない猟兵（オマエ）が失せている。
　印を結ばない神は在り得ない、骰子の目と同じだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

　絆されていたのだ。
　鼓手（て）の内で弄ばれていたのだ。

　定める事の出来ない悪意（マイナス）に晒され、少年少女は瑞々しい地獄を掴んでいた。無数の地獄（おも）いが一枚のコインと化し、量産（なが）れていく貌（さま）のなんと人間らしい最悪（こと）。おそらく、深淵（アビス）で眠る神は嘲笑（わら）い殺されそうで仕方がない、と、謂うのだろう――退きやがれ――魔道具（アーティファクト）、ジャシンドライバーが齎すのは救いではなく『破滅』だと堂々、猟兵（オマエ）は彼等（ひとびと）に断言（つ）げてやる。それでも『止まれない』から現実、堕ちてしまったのだと『十分』知っている。だから――お前らの愚行、アタシが止めてみせる！
　人機一体（チャージアップバディ・ジャンクションドライブ）――戦禍（うず）を裂くように駆けた猟兵（オマエ）は英雄（ヒーロー）を踏み絞める堕天使（もの）か、或いは子供達を起こすサンタ・クロースの真逆か。躍り混んだ埒外（バケモノ）が正義（ひと）を荒療治（ひきずりこむ）――否、衝撃波！　吹き飛ばした個体（やから）の装甲（ベルト）を熱線（こわ）して廻（ゆ）く――柄じゃあないが。
　恨みも悲しみも何もかも化身（オマエ）の脳髄（こころ）が背負うと吼えた。今回ばっかりは、アタシは、あの子を救う為に「ヒーロー」になってやる。融解（と）けた死神（ユング）メダルを足で掃った。どんなお約束であれ終焉（ハッピーエンド）にしてくれる。複眼（赤々）に注視（み）定められた中、無眼（つら）を真直ぐに。
　三位一体の一欠ける、ふたつで足りると称えたのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

　人の不幸は蜜の味だと、どこぞの娘（じんるい）が宣っていた。のたうつ正義とむさぼる悪意の狭間（すきま）で踊るのは神か佛か、死（ムング）に問うたところで言辞（ロゴス）は聞こえない。嗚呼、よくある話じゃないですか？　受け入れている演技（フリ）して塑の実、少年少女（おもちゃ）を弄ぶ大人の群れ、まさしく人らしい所業じゃあありませんか！　まったく感動的な英雄宣言（おことば）だと地球（ほし）の隅から涌いてくる――踏み躙りがいがありますね。外道非道が相手だと謂うならば、猟兵（官軍）、何したって文句は言われまい――人の世に楽園（エデン）が在るならば教えてくれ、眠り呆けた上位は反応しない。だからこそ人の世なのです。するりと這入り込んだ、オツムの悪い優越性、ジャシンドライバーが餌（しる）を啜ってみせた。
　必殺技（さけ）び声と共に放たれた蹴撃は虚しくも地面（つち）を弄っていた。必殺技（さけ）びと共に放たれた拳（ストレート）は果たして空気を殺せたのか。戦場はダンスに最適です――混沌（カオス）と化した舞台上（ステージ）にかろやかな傷み、ぐじゅぐじゅに失せてしまった体液（エネルギー）は元に戻らない――そのメダル、壊していいですか？　まるで機械人形（マシン）に言の葉を注ぐようだ、頷きもしない、横にも動かせない。見ているクセに見ていない。
　許可を仰ぐだけマシだと思ってくださいね――ふわりと触れた刻印（コア）の光輝（ひか）り、凝縮された生命（もの）の根源から破壊（つぶ）して終え――全て『ひらいて』ほどけば容易な事、オマエには『嫌われ者』がお似合いだ。
　――少年少女の絶望がこぼれる。

成功 🔵​🔵​🔴​

　定めを受け入れる事は登場人物（キャラクター）にとっての、ある種の分岐点（はじまり）と謂うべきか。空回った夜鷹（ウィップ・アーウィル）の鳴き声は鎮静化（しず）まり、ただ沈むだけの碑（くろ）を持て囃すのだろう――嗚呼、正義は必ず勝つのだ。幾等逆境（かぜ）に中てられたところで狂人（ひと）は自らに盲目（くら）む他にない――ごきげんよう。苗床培地（ねどこ）に貌（み）を晒したあやしさ全開のオマエ、その糸目（め）が観察（み）るのは肉か心か。悪の根は人の性とは誰の言葉でしたか。まるでソイレント、たった一口齧るだけで満足（ホテップ）して終う――ある意味では最適化された環境かもしれませんが、巻き込まれるニンゲンは迷惑でしょうね。マッシュ・マッシュ・マッシュ、騒がしい。
　いつもの場所（とき）に置かれた珍味（はしら）曰く、もう少し人間（にえ）らしくは出来ないのか。ぱかぱかと遊び始めたのは二枚貝（化物）じみた食材で如何にも醤油（くろ）が合いそうだ――ミスラさんミスラさん、死神（ムング）一点狙いです。剥がす砕くは狼（王様）に委ねると好い。嗚々、と、弧（えん）まみれの不倶戴天（もの）に牙在れ――角から角へ見難い一撃（する）り、あとは本体（ベルト）を叩くのみか。
　破片（にく）を継接（つな）いで盾（かべ）と見做せば軽度（省エネ）キックなど痛くも痒くもない。長物（えもの）と成した偃月（ばーさい）を揮い丁寧々々一（ひとつ）を処理する。反撃（カウンター）気味に無力化すれば、勿論、ヒトの仔にどんな抵抗（すべ）が在るのか――はじけた魔道具（ジャシンドライバー）は骸の海へと散らばっていく。ゆれる脳漿、ぶれた正中（いと）。
　数多の可能性（ダゴン）に粉物（ふわり）在れ、姉妹だろうハイドラが首を長くしていた。具材（み）と認識（な）すには鉱物（せいぶつ）じみて。
　蛹をむしるには絶好の機会だった。

成功 🔵​🔵​🔴​

　グリム・リーパーが悪い人（かぼちゃ）目掛けて飛んできた、因果応報、そう読み解くのが人の『らしさ』と告ぐべきか。されど復讐、鎌を握らせるのは悪魔でしかない――undefined――undefined――undefined――！
　民を大切に思う良き王は人々の嘆きを見て如何に咀嚼（は）むのだろうか。衣に隠された葵（ひかり）が煌々とし、故に憤怒（こころ）は何者にも認知（み）られては成らない。ハリネズミは自らの棘を抜く事が出来たのだ、その代わりに感情（ずい）を露出為せなくなっていく――ただの一人の猟兵（オマエ）が謂える事など限られているのだ、真逆、本当の王様でもあるまいに――！　彼等、彼女等は悪ではない、されど滅ぼす他にないのだ。
　過去（オブリビオン）は還さなければならない。忘却（オブリビオン）は斃さねばならない。当たり前の事だとしても、嗚呼、あの『正義の味方』に磔刑（ばつ）は在り得ないのだ。這わせろ、這わせろ、優しく刃（からだ）を撫でるのだ――刃の囀り月をも酔わす――刻印（つ）かれた誰かへの子守歌（な）り響きか。
　死神（ムング）にも抗えぬ強烈な眠気（やす）らぎが戦禍（わざわ）いを抱いていく。そろそろ収穫の時間だとオマエの覚悟（こころ）が吼えて魅せた――嗚々、介錯。腸をこぼさず痛みなく、彼岸（ねが）いを他者に委ねるよう……。
　汝らの嘆（おも）い、余が受け取った。大天狗正宗（エモノ）が血（いろ）に艶めいて死神（ムング）の印へ汚（振）るう。点、々、てん……。

成功 🔵​🔵​🔴​

第2章 ボス戦 『ジャシンドライバー・死神騎兵形態』

POW   :    ファントム・スラッシュ 【マシン・ザルバルカー】を操縦中、自身と［マシン・ザルバルカー］は地形からの激突ダメージを受けず、攻撃時に敵のあらゆる防護を無視する。 SPD   :    冥兵招聘 レベル×1体の【量産型死神騎兵と化した死霊】を召喚する。［量産型死神騎兵と化した死霊］は【生前の特性に相応しい特殊能力と冥】属性の戦闘能力を持ち、十分な時間があれば城や街を築く。 WIZ   :    スラッシュエンド・レクイエム 【マシン・ザルバルカーによる空中機動】で敵の間合いに踏み込み、【大鎌による斬撃波】を放ちながら4回攻撃する。全て命中すると敵は死ぬ。 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

　少年は魔道具（ジャシンドライバー）を『覚悟』と共に装着したのだ。それは決して『譲れない』自らの為に、何よりも悪、蔓延り、のたうつ世界を再構築（なお）す為に。生傷たえない現実（リアル）に一矢報いる為に――。
　大量に砕け、溶け、失われた死神（ムング）メダルが奇跡（ひかり）の如く『一枚』と化した。ただのひとつでワイルドハントとでも言いたいのか、少年のドライバーに『鎮魂歌（フルパワー）』が宿っていく――。

　悪魔はひとつ、彼に石炭を渡した。
　神に棄てられ、人に捨てられ、さまよう貌（かたち）。
　咆哮――！
　マシン・ザルバルカーが変身者の誕生に歓喜した！

　陸海空、たとえ宇宙だとしても死神（さかな）は自由に泳ぐのだ。冥く々く々く、故に悪人（ひと）を捌く過去の亡霊――もう止める者はいない。いたとしても『それ』も同罪なだけだ。コインは投げられている。
　パーフェクトフォーム、死神（ムング）！
　死が駆けり、数多を収穫（ただ）す！


　泥船を手に入れた何者かは嬉々として海に出たのだろう、彼或いは彼女の成り果ては想像に易く、膨れに々れた肉の袋が果実（み）と謂えた。嗚呼、とある人間（ひと）は言いました。「幸運である事は必ずしも幸福である事を意味しない」――＝に対して否を叩き付けたならば自ずと破滅（おわり）が視えてくるものだ。底へ々へと墜落した局外者（アウトサイダー）が突如、外法（ちから）を鷲掴む。まるで藁ではないか。ニンゲンを破棄（わす）れた現実（いま）は二度と未来に向かえない――過去の清算「だけ」で貴方は幸せになれますか。これしかない、これ以外に、僕等の救われる道はない――言い聞かせるのが得意に想（み）える、死神（ムング）、死神（ムング）が安らぎを貌（えが）いた。不確定の未来を失くすには早いですよ――ず、る、り、大鎌（えもの）が闇より這（い）でる。
　過去（マシン・ザルバルカー）は駆けた。悪を倒す為、敵を斃す為、邪魔者を殺す為、ただ魚類（サメ）の如く。されど所詮は『地をいく』代物だ、体液（エネルギー）を噴出したところで未来（しゃんたくす）には敵わない――馬鹿にしやがって。憤懣（いか）りを言葉にした刹那、あやしい猟兵（きつね）は『い』なかった。
　ポリプがふよふよと地下（くら）い場所で戯れていればどんなに幸運だったか。ユークリッド幾何学（ことわり）を無碍に扱った谺（おと）が光輝（ひかり）に近づいていく。当てれられるものならどうぞ当ててごらんなさい――屈辱、死神（ムング）を以てしても『あの埒外（バケモノ）』には届かない――牙を剥いた時には抗えないのだ。
　角度（えいり）に疾狗（か）けた王様（もの）は生命（にく）を喰わずに髄（にく）を食んだ。ばきぃ――ジャシンドライバーに罅（きず）が入る。
　今なら取り込まれる前に間に合うでしょう、たぶん。
　――鎮めるには文句が足りていない、溶解液の作り方を違えたのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

死霊が手招きしている。同じ苦しみを味わうべきだと、莫迦げた怨嗟を孕んでいく。オマエだけが如何して愛され、救われると思っていたのか。足元を掬われた結果は妙な因果か『本物』と出会ってしまったらしい。

　駆ける――お互い『立ち止まる』、マイナスな選択肢など忘れてしまった。ヒーローがいなければ己が変身するしかない。正義の味方がいなければ己が手に取る他にない。藁に縋るか埒外（ちから）にふれるか過去（オブリビオン）に唆されたのか――嗚呼、咎めやしねぇよ。猟兵（オマエ）が咎めるべきは、許してならないのは『その邪なマシンとメダル』さ！　純粋な子供の想いを、少年の思いを食い物にする悪魔（バケモノ）の所業、これを無視する事など出来るものか――轟（ゴゥ）、と閃光（ひかり）がはぜた。
　有象無象（貌無し）どもを衝撃（ふ）き飛ばし戦禍（日常）を往く。その貌（すがた）は正しくヒーローか。嗚々、人機が一体（ひとつ）と化したならば高く高く、殺意のない一撃（ユーベルコード）が絶叫（咆哮）する――黄昏砕く脚（クリムゾン・トラッシュ・キック）。着地と同時に爆炎（ほむら）が映える、死神（ムング）は愈々滅ぶべきだ。
　さっきも言ったろう、アタシはこの場ばかりは「ヒーロー」になる。砕かれた仮面（マスク）の裏側で少年は涙を流すと謂うのか――大丈夫。
　キミは、ヒトに助けを願ってもいいんだよ。
　いかれた世の中に浮かんだ、たったひとつの救いの手。

成功 🔵​🔵​🔴​

　踏ん張りどころだな――姿見に映っていたのは猟兵（オマエ）ではない、されど『目の色』が似ていると感じたのだ。
　同族に対して嫌悪（マイナス）を抱く事はなかった、代わりに伸べた無意識（やさ）しさは本物で在り、故に、嗚呼、少年に激情（あまた）を齎したのだろう。死神（ムング）は嗤う事も嘆く事もなく、ただ目の前の邪悪（よこしま）を叩きのめせと囁いてくる。解っている。判ってはいるのだ――しかし脳裡（うろ）側にブレーキが浮かばない――君はまだ人を殺めていないのだろう？　まだ戻れる、だから――うるさい、黙ってくれ。たとえ猟兵（オマエ）が武器（エモノ）をしまったところで、少年少女の痛みは忘却（な）くせないのだ。沸騰（に）える死霊（アストラル）の群れが咆哮（な）く、死ね、死んでしまえ、奴等も貴様等も同罪だ――真っ向からの、否定と肯定。
　一筋縄ではいかない『現（こと）』は咀嚼していた。ヒーローもので例えるならば強化フォームのワン・シーン、ド派手なＢＧＭと共に背景（うしろ）が爆ぜて往くのだろう。迫る、迫る、印（死）が迫る。されど悉くを避け、難いは零距離で穿（ぶ）つ他にない。全く――悲しいな。昔の自分（シロ）を思い出す。煩わしい、それは過去（むかし）のオマエのクセに、今の自分（おれ）を救えなきゃあ全部に意味なんて……！
　ばさり――愛を知った少女と愛を知らない少年（ボ―イミーツガール）に甘い々い蜜など要らない。にぶい光を放つかと想った切先（エモノ）は何者も解体（バラ）せてなかった。辛かっただろうな。一人で助けも呼べずに――畜生！　この女（オマエ）、なんのつもりだ。そんなの狡いぞ、ズルいじゃねぇか。心臓に突き刺さったぬくもり。
　玩具のペンダントがゆらり、ゆらり、殺意の狭間をぐじゅぐじゅと弄っていく。長い永い悪夢は終わりを告げ、新たなる生命（ひと）が目覚めるのだ。追い詰められていた獣は飼い犬・飼い猫を止め、自分の為だけに生きていく術を見出した。
　不満そうにマシンがうなる、ブー・ブー・ブー。

大成功 🔵​🔵​🔵​

　たくさんの誉め言葉が冷気（つめ）たさを以て嘔吐（は）かれていく。ご丁寧な大人様が正義ごっこを讃えている。
　勇者が魔王を打破したところで物語は終わってしまうが、果たして続きは如何いった流れか。最早『在り来たり』に腐れ尽くした展開だ、嗚呼、あんな強者（もの）は恐怖（バケモノ）でしかない。理不尽を理不尽で精算した末路だ、埒外で埒外を塗り潰した最悪（ハッピーエンド）だ。真実は隠され、心（ヴェール）は何れ剥がされるのだろう――それが『人』ですから。嗚呼、少年（オマエ）が縋った手段は悪意の種でしかない。嗚呼、少年（オマエ）の掴んだ刻印（ドライバー）は兵器のスイッチでしかない。水掛け論が大好きならば楽園（エデン）か何処かでやってくれ――ここはひとつ、産まれながらの化物に任せてみませんか――死神（ムング）は破損（つら）を晒し超常（オマエ）を認識した。いや、認識（き）いた程度だ。振るうべき大鎌（エモノ）も吼えるべき機械（マシン）も虚空（やみ）を薙いでいる。地獄だ、地獄がやってきた。お迎えだ。ジャック・オー・ランタンが歓喜する。最早石炭（ねつ）でも捉えられない、乳白色の魔性。
　どこからともなく反響（ひび）く音はコキュートスからの警告、数多を裏切り幽閉（とざ）された何者かの悲鳴か。視える、観える、得てしまう。仮面（マスク）と少年（にく）、ふたつの生命（エネルギー）だ。プラスはあかるくマイナスはくらい、これならば、違える事なく解体（サバ）けそうか――何とかしてみましょう。白黒（モノクロ）を塗りたくるかの如く赤黒（やいば）が撫ぜた……ひらり、はらり、虹色の薔薇。
　美しい物には毒があるように甘い蜜には依存性が有った、それでも望むと謂うならば、救えないほどの莫迦なのだろう。ぼろ・ぼろと崩れおちた死神（ムング）が最後の一欠（ちから）を振り絞った――その先はオススメしません。
　業火に焼かれる前に戻るといいですよ。
　血の池の底で毒虫どもが暈なる。

成功 🔵​🔵​🔴​

　大人の身体も子供の身体も、今回ばかりは『借りたく』なくなった。それだと怪物（ジャシンドライバー）と同じように映ってしまう。大三角に引っ掛かった埒外がおチャラけ『なく』して戦禍（ここ）に啼（噴）いた。
　英雄が英雄たる所以を何者が語れると謂うのか、枝分かれとも解せる、過去現在未来（アーカーシャ）が円盤（ほし）の如くと高速回転（めぐ）ったのか。死神（ムング）が断ち切れるのは命だけ、それは神話（ものがたり）上の設定で在り、覆す術は見当たらない。親との悪縁を切るとかそういう素敵な使い方ができなかったのが残念すね――嗚呼、鏡遭わせの仮面（マスク）、舞踏会に遅れたのは猟兵（オマエ）か死神（ムング）か――駆けろアルタイル、マシン・ザルバルカーを破壊（たた）くのだ。
　天の川に苛まれた少年少女（ボーイミーツガール）のエンディングは憶えている、悲し気な曲（おと）と共に暗転（ブラック・アウト）したのだろう。激突寸前（ギリギリ）で機体（バイク）を傾けた仮面（ヒーロー）、絶対的なハッピー・エンドを砲口（た）めていけ――轟（ごぉ）、魔を融かす流星（きら）めき、呑まれていく、こわれていく。
　少年はくしゃくしゃの顔で横たわった。

　介抱しつつも猟兵（オマエ）は新たなる可能性（みらい）に杞憂（おも）いを垂らす。虐待された子供は親になると『それ』を繰り返すという。あの少年（こ）にはそうなってほしくないっすね――UDC職員に任せたならば糸を再度（ふたた）び手繰ってみせる。
　反対に考えたならば如何だ、彼の両親も昔は虐待されていたのではないか。負の連鎖が次々に発生（う）まれている。さて、芽を潰す時は『今』。

成功 🔵​🔵​🔴​

第3章 日常 『人間の屑に制裁を』

POW   :    殺さない範囲で、ボコボコに殴って、心を折る SPD   :    証拠を集めて警察に逮捕させるなど、社会的な制裁を受けさせる WIZ   :    事件の被害者と同じ苦痛を味合わせる事で、被害者の痛みを理解させ、再犯を防ぐ 👑5 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

　猟兵（オマエ）は虐待していた両親（おや）の居所を突き止めた。回復した少年（あのこ）が全部話してくれたのだろう。家探しで証拠を突き付けるのも埒外（ぼうりょく）で黙らせるのもオマエの自由だ。ただ、ひとつだけ――彼、彼女を『殺してはならない』。まるでジャック・オー・ランタンの量産だと誰かが笑った。
　死神（ムング）の名を継いだのはおそらくオマエ自身だ。悪縁（くさり）を断ち切る大鎌（エモノ）を構えろ――英雄はいつだって側に在るのだから。


　人間と怪物は果たしてどれほど違ってどれほど似ているのか、先ず解体（あば）くべきは口腔で、その蕾の貌（カタチ）を観察（のぞ）かねば成らない。嗚呼、時が進むにつれ、数多が反芻（くりかえ）す中で両者、肥えてしまっている事に変わりは無いのか――それとも輪廻が雑なのか。昨今は魂の取引価格が下落傾向にあるのでなかなか需要が見当たらないのですよねえ――変質改竄はお手の物だが、されど彼等の触肢に適う類とは言えず。件の両親に関しては他の猟兵（かた）にお任せしましょう。夜鷹（ウィップ・アーウィル）が勝手に攫（も）っていくのか。
　英雄に為り損なった少年は安寧（まくらもと）で眠っているのか、数日が経過しても現実（リアル）についていけてない。生きているだけだった誕生から今まで、漸く活きる環境を手に入れたのだ、世の中は驚（やさ）しさの宝庫と言えよう。しかし『この程度』のぬくもりでほどけた心を戻す事は難しい――それならば此度、あやしいきつねは贈りきつねになってもいいのではないか。ごそごそと取り出した※※※※のレアメタル・インゴットその他、ついでに取り分。成人になるまでの資金としては上々だろう。風呂敷を畳むのは『それから』でも十分だ。
　人の闇に触れ、深淵に触れ、悲惨な末路を迎えるかどうかの分水嶺。此処で妥協を許して流れたら『なにもかも』が台無しだ。できるだけ多くの人と関わって沢山考えて自分なりの答えをどうか得られますように――ありがとうございます。息子か娘でもいるのだろうか、中てられた職員一人が洟をすすっている。ああ、それと。これは『ちょっと焦げた』ダゴン焼きです、売り物にならないので皆さんでどうぞ――。

　がらがら、がらら、いほうんでーの影、凍結した時空間（うろ）の中で死神（ムング）が嘆いている。一枚（メダル）の齎す埒外（もの）、現は未だ、誰も。

成功 🔵​🔵​🔴​

　少年の未来はとある誰かさん――つまりは他猟兵（きつね）――の寄付によって守られた。虐待していた親元に返す、帰る選択肢はなくなり、組織（UDC）は救いの手を決して引っ込めないだろう。猟兵（オマエ）の心配は杞憂になりあとは『心置きなく』粛清に向かえると言うもの。嗚呼――まだ幼い少年の心を傷つけたんだ、このままお話だけしてハイ終わりで済ますほどシロは優しくはないぞ――変わらない顔色の裏側で沸々とめぐる憤懣、ぐるりと裏返って冷静にもなってくる。やる事は暗殺者の基本、怪しまれないよう動く術か。
　あぁ、全く。そのクズはどんなやつなんだか。脳裡に蠢くのは笑顔（ペンキ）まみれの大人様だろう、否、貌が見えない、貌が愈々塗り潰されて、判別も難しくなっていく。まぁ、少なくともロクでもないやつなのは確かだな――まだ邪神とやらの方がわかり易い、奴等はきっと悪意を『隠さない』のだから――チャイム、チャイム、チャイム。
　がちゃり。宅配業者（へんそう）は上手くいった貌（よう）だ、玄関から顔を出したのは母親。ちらりと向こう側を覗けば山とつまれたダンボール。成程、通信販売大好きなご様子。そのお金が手元にあれば『あの少年』に美味しいものを食べさせられただろうに――ぐらぐらと煮える脳が拳を硬くさせた。合図は『家の玄関のドアが閉まって』からだ。シロが『逃げ道を塞いで』からだ……バタ、ン。
　お前ら虐待してるだろう――役者が揃ったところで本題だ。ひくりと攣った表情（つら）で母親……いや、女（クズ）が猟兵（オマエ）を見た。刹那、側頭部に強烈な衝撃（げんこつ）――当然、加減はしている。されど『この怒りはシロだけのもの』だ。少年のいたみには届かない。少年の絶望には届かない。膨れ上がる殺気、嗚々、これを一般人が受けてしまえば跪く他ないではないか――お前にとって子供とは何だ？　返答次第じゃ腕を……。
　壁際、追い詰められた女（クズ）は嘔吐（は）くように泣いた。そんなの決まってるじゃない、私達のかわいい※※よ。わかってるわ。わかってるけど――止められないのよ！　そうよ、※※がいなくなって数※。あなたなら、あなたなら何か、※※の居場所が……！　ぐるりとオマエは踵を返した。「これで十分だろう」
　もう手遅れだ、蒼々と茫々（ひろ）がる。

成功 🔵​🔵​🔴​

　英雄（ヒーロー）が死神（ムング）をやっつけた。猟兵（ヒーロー）が過去（オブリビオン）を骸の海に還した。悪夢と呼ばれる酩酊は失せ、名残惜しそうな仮面は消えたのだろう。怪奇譚と英雄譚がエンディングを迎えたならば、嗚呼、此処から先は人間道に違いない。地獄の内のひとつを白昼堂々、住民（おなじもの）として暴くのだ。アタシは人の世での制裁をしようじゃないのさ――因果応報、その四文字を嘘偽りでは騙せない。
　ああ、お母さん。あなたが虐待をしているのは知っています。お子さんはもう保護していますからね。養護施設の職員――つまりは変装した猟兵――の一言を聞いて女はひどく動揺した。いや、薄々わかってはいたのだ、数時間前に『殴られた』頭部がズキズキと訴えてくる。教えてください。教えてください。あの子はどこに居ますか。※※はどこに居ますか。私はちゃんと愛しているんです――何故それを知りたいんですか、お母さん。自分の手で『また』※※君を傷つけたいのですか――違う。違うんです。あれは……あれは私なりの躾だったんです、いえ、もしかしたら愛し方だったのかもしれません。ですが、もう、もう二度とこのような事は――少年が『少年』と称せるまで『こうだった』のだ、最早贖罪の術がない事は絶対的。茶色の、慈悲の無い養護施設の職員が女を凝視（み）る。そうは問屋が卸さないよ。
　連ねた言の葉は訳を赦さない、懇切丁寧な『もの』だった。ふるふると首を振っていた女は拳を握り感情に流され職員（オマエ）を殴る――あなたに※※君を育てる事は難しい……いえ、無理だとわかりました。大丈夫です、※※君が成人するまでは此方で面倒を見ますので。それでは――慟哭は外まで響いている。
　――面会の機会すら与えられないだろう。

成功 🔵​🔵​🔴​

　父親が帰宅し錯乱した母親を発見（み）つけてから半刻ほどが経った。今まで起きた悲劇――彼女にとっては『そう』なのだろう――を聞いた男もまた困惑を隠しきれていない。勿論、両者とも『いつかは起きるだろう』と解っていた筈だ。それにしては早過ぎないか、嗚呼、この世に神は居ないのか。居たとしたら私・俺達、地獄行き……。それも悪くはないな。※※と会えるなら何処でだって――不意に響いたのは天使の喇叭だったのか。
　奇跡的な再会だった。きっと親子の『愛』が神に響いたのだろう。傷の跡も何もかも寸分違わぬ※※。ああ、※※、今日は※※の大好きな――よ。良く戻ってきたな、夕飯のあとでお父さんとゲームをしよう。嗚々、美しき哉、親子の絆。まるで鎖のようだ。まるで手枷のようだ――ザシュ、リ。数秒、全ての幸せは無に帰した。
　父母の双眸に映ったのは死神（ムング）だった。白い装甲（マスク）にユレル足元、構えて『いた』のは大鎌（エモノ）に違いない――ころころ、と、愛おしかった球体（もの）が視線（まんなか）で止まった。「お前達の行い、その果てがこれだ」――死神（ムング）は決して嗤わない。嘆きもしない。ただ骸（シカバネ）の如くに紡ぐ。
　少年もこうなることを望んでいた。このまま生きていても今度は彼が『繰り返して』しまうだろう。終いはないのだ。故に、不幸の連鎖はここで断った――ぐじゅぐじゅと死神（ムング）が蒸発（う）せ、少年の死骸（ちにく）だけが残る。いやだ、うそよ、そんな※※が死んだなんて――彼女、彼は気付けただろうか。もっと別の愛し方があった筈だと。

　再びの慟哭――背で塩辛さを聞きつつ猟兵（オマエ）は思った。彼らも少年と同じような幼少期を迎えていたなら、その過去を救ってやれなかった無力感は募る――仮面（マスク）に閉ざされた表情（もの）を証明（し）る人はない。

成功 🔵​🔵​🔴​

　目には目を歯には歯を。何処かの誰かがそんな事を謂っていた。塵は塵に灰は灰に。何処かの何かがそんな事を書いていた。因果応報などと仏や神は告ぐのだろうが――そんな手加減する必要あります？　人は神と違って何も見ない。人は佛と違って何も聞かない。人は怪物と違って何も触れない。そして何よりも人は反省しないのだ。同じ過ちを繰り返すだけです――たとえば厭の珍妙な、渾沌とやらに近いのだろう。自分の尻尾を追い回して噛み付いて一生懸命な演技（フリ）してハァハァいう。徹底的に心折らなければ『どうしようもない』のだ。莫迦につける薬はない。人間に与える慈悲（くすり）などない。精々がアルコール、或いは阿片（くすり）の類なのだろう。もう、嗤えてくる。
　男と女が死体――他猟兵の作り出した少年（ぶんしん）――の前で泣きじゃくっている頃、猟兵（オマエ）は堂々正面玄関から破壊（おじゃま）した。ぶち破られた扉が胴体を巻き込んで廊下の奥へ――こんにちは！　強烈なインパクトを与えて一石二鳥、お掃除の手間が省けて三鳥だったかもしれない。それは兎も角。
　なんだ、死神の次は天使か？　あ、あなた、連れて往ってもらいましょうよ。この際誰だって構わない。『あの子のいる場所に連れてってくれるなら、天使でも死神でも大歓迎』だ。まさか、そんな生易しいもんじゃありませんよ。臭い物に蓋をした者の末路だ。ああ、これじゃあ「毒を吐く」必要もなさそうですね。悪い事ぜんぶ『出てる』じゃないですか。始まるのは『死んだ方がマシな恐怖』、煉獄ですら楽園なこの世の無間。
　痛みは分裂し、膨張し、破裂し、再生する。皮等を傷めつつ臓腑を残す貌（さま）はまるで虐待（ごうもん）の数倍だ。大丈夫、化け物の目についただけ。あの世で※※君も泣いて喜んでますよ――アイツらと一緒にならなくてよかった。あっちでも報いを受けてるなら俺も満足だ――てね。生地獄に落とされただけ。針の筵とは現の事だ。
　よくある喜劇が公開されている。総ての後悔と痛みをのせて、ただ無観客なだけの――そう、喜劇（エンディング）ですよ。
　人間ドラマのお約束だ、スタッフ・ロールと共に。

成功 🔵​🔵​🔴​

最終結果：成功 完成日:2022年02月13日