1
銀河帝国攻略戦⑱~情報プールと解析者

#スペースシップワールド #戦争 #銀河帝国攻略戦

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#スペースシップワールド
🔒
#戦争
🔒
#銀河帝国攻略戦


0




 銀河帝国攻略戦の状況がまた一つ進行した。ガルベリオンへの行く手を阻むジャミング装置を破壊したことで、実験戦艦ガルベリオンの所在が判明したのだ。
 しかし、当然その防御はジャミング装置のみに任せられていたわけでは無い。猟兵達の道を、ドクター・オロチの配下であるアマルテア情報艦隊が塞いでいた。

「……ってわけで今回はアマルテア情報艦隊、その中の一隻の破壊を皆に頼みたいの」

 猟兵にそのように話しかけるのはグリモア猟兵の紅月・知夏である。知夏は自作らしきフリップを掲げ、図を示しながら説明をすすめた。

「アマルテア情報艦隊っていうのは、簡単に言うと帝国軍側の作戦立案頭脳みたいな存在なの。リキッドコンピューターっていうネットリした感じの液体でできたコンピューターを搭載してて、メイン業務は工作員から得た情報の蓄積と処理。
 そんな特殊な艦隊が、猟兵の存在が向かってきていることに気づいてコンピューターが強敵の形をとった液体存在を用意しているみたい。
 みんなには、それを迎撃して情報艦隊のうちの一隻を沈めて来てほしいの」

 フリップを2枚目に持ち替える。知夏が猟兵を送り込む艦の情報が簡単な図であらわされている。

「私が予知した場所だと、艦内空間の殆どがリキッドコンピューター用のプールで占められていたわ。
 乗員は情報受け渡し用の工作員とメンテロボット以外ほぼなし。プール空間内の液体が、宇宙船の操作も情報処理もなんでもかんでもやってるわ。
 私は皆をリキッドコンピューター周辺の通路に送り込むから、そこでリキッドコンピューターの用意した液体敵を退治して艦を沈めてきてね。
 と言っても、その敵を倒すのがちょっと厄介なのよね。あくまで液体で再現したものだから、ダメージが通りづらくなると思う」

 フリップ3枚目は、目的艦の再現する敵の情報が描かれている。

「今回の敵になるのは、アナリシスっていう奴の液体再現よ。アナリシス自体がユーベルコードの実験を行うための存在だったみたいで、皆のユーベルコードを真似てくるみたい。
 さっきも言った通り、液体での再現だからダメージが通りづらいことも考えると、あんまり長く相手してると相手の手数だけがどんどん増えるという事態になりかねないわ。
 ……でも、その敵が守る物は艦内にあるリキッドプールだから、相手が抱えている弱点の事も考えて立ち回るといいかもしれないわ」

 そう言ってフリップを降ろし、知夏は猟兵達をまっすぐ見た。

「ちょっと厄介な戦闘になると思うけど、ここを超えたらドクター・オロチのみならず銀河皇帝の本拠地、インペリウムにも手が届くようになるわ。
 なにより、アマルテア情報艦隊を落としておけば銀河皇帝を落とした後の残党の活動にも大きく制限がかかる……戦いを終えた後を、より良くするための一戦よ!みんな、頑張って来てね!」


碧依
 こんにちは、碧依と申します。
 今回も戦争シナリオとなっております。まずはこちらをどうぞ。

 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「銀河帝国攻略戦」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

 というわけで、アマルテア情報艦隊のうちの一隻を落とすシナリオとなっています。
 基本的にはボス戦なので敵と戦っていただくことが必要なのですが、ボス敵以外の部分になんやかんやしたいというのも大いにありです。
 皆様の発想でプレイングを送っていただけると幸いです。
35




第1章 ボス戦 『アナリシス』

POW   :    アナライズ&コードテイカー
【ダメージのない解析ビーム 】が命中した対象に対し、高威力高命中の【対象のユーベルコードを借用した攻撃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    カウンターコード
【近くで使われたユーベルコードを解析する事】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【そのユーベルコードのコピーを使用する事】で攻撃する。
WIZ   :    ミラーフォーム
対象の攻撃を軽減する【対象と鏡映しの姿(ミラーフォーム) 】に変身しつつ、【対象が所持するユーベルコードを借用する事】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠鏡繰・くるるです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

メルノ・ネッケル
・行動
液体による再現、通り一遍の攻撃は効果薄い訳やね。
プールにも同じ事が言えるな。
……なら、熱線で蒸発させたらどうやろ?

R&Bはホルスターにしまって、左手のリボルバーだけで戦闘開始。

そしてご挨拶代わりに敵さんに【先制攻撃】、リボルバーで【2回攻撃】!
効き目は薄いやろうけど……油断誘えりゃ御の字や。

そして残り4発、いかにも苦戦中って感じで後退しながら撃ち込みつつ、9秒数えておくで。

そして撃ち切り、辛そうにリロードすると見せかけて……
本命はこっちや!【クイックドロウ】、右手で素早くR&Bを抜き、「九秒の狐」!
熱線をリキッドプールにぶち込むで!
コピーしても9秒の隙が出る、後はとっとと離脱して隠れる!


蜂蜜院・紫髪
心情:
情報というのは実に厄介な物、残しておけば必ずや禍根が残ろう。
今も儂らについて何か集められておれば適わん。
それに確か予知の中に捕まっている者がいるとの事じゃったな。
位置を知っていそうじゃのぅ…さぁ帝国よ。情報戦じゃ。

戦闘:護衛人形を盾に狐火で戦います。怪我人が出れば【癒しの狐火】で回復
前衛が居れば中衛として隙をサポート
下記条件は無理せず行います
【アナライズ&コードテイカー】護衛人形で【かばう】ことで不発を狙います
【ミラーフォーム】反転した姿である事を【見切り】【カウンター】を狙います
【カウンターコード】護衛人形で【オーラ防御】【武器受け】【かばう】し、【厄受人形】【呪詛返し】を狙います


ルパート・ブラックスミス
火や熱に耐性の無い猟兵は一時下がってくれ。少し無茶をする。

UC【燃ゆる貴き血鉛】発動、敵含めリキッドプールを炎上させる。
好都合だ、敵にも存分に真似てもらうとしよう。
繰り出されたとて普段それで火達磨になっているのだ、その程度の【火炎耐性】はある。

曰く鉛の融点は327.5℃。無論UCだから実際の理屈は違うだろうが
それだけの超高熱を放つ物体を艦は抱えることになる。
さて、自分とリキッドコンピューター、先に音を上げるのはどちらかな。

……しかし無遠慮に放ち続ければ他の猟兵たちが消耗する方が早いだろう。
状況次第で火力は抑制。後は【フェイント】で【挑発】し、相手の注意を分散させ他の猟兵の援護をする。



 アマルテア情報艦隊のうち一隻。戦闘行為を行うための艦ではないそれは、情報の為にある存在だ。
 故に、その頭脳たるリキッドコンピューターは自身が狙われるのであればどこに敵が位置取るかという計算をすでに終えていた。この艦の内部構造であれば、敵が来るのは自身を溜め込む巨大なプールの周辺。上方に渡した足場ではなく、周辺通路であろう――故に、転移した猟兵達の前に、まるで最初からそこに現れることがわかっていたかのように銀と黒で構成された人型のものが立ちふさがったのだ。
 猟兵の一人、メルノ・ネッケルは眼前の敵影を視認したと同時に左手に持つリボルバーで打ち抜く。
 素早い2連射にパシャパシャと当たった個所がはじけるが、事前に聞いた通り液体による再現であるためかすぐにその穴が水が湧き出るようにふさがれていく。

「ほんまに液体なんやね!しかも先読みして圧かけてくるとかけったいな!」

 厄介に感じて居そうな発言をしつつ、下がりながら敵に撃ち込むメルノ。アナリシス越しに情報を得ているリキッドコンピューターがそれをどう判断しているかは不明だが、ともに転送されてきた猟兵達は彼女が片手でのみ対応することに何らかの策を見出していた。

「此方をじいと見ているようじゃし、今も儂らについて何か集められておれば適わん。奴からの視線は切っておきたいものじゃのう」

 蜂蜜院・紫髪はそういいながら、護衛人形を前に出す。紫髪の護衛人形とともに前衛に踏み出すのはルパート・ブラックスミス。

「少々無茶をする。紫髪殿、補助を頼む」
「よいよい。儂も元より隙を埋める動きの心算、ルパート殿も儂も、己が思うように行こう」

 紫髪はそういいながら継ぎ接ぎの護衛人形の後ろで狐火を浮かせる。視界の端でそれを見たルパートも、鎧の中から溶け出る鉛を青く燃え上がらせた。
 アナリシスの動きは、紫髪への対応から始まった。紫髪の姿を写し取ったアナリシスは、真似た狐火で紫髪の狐火を相殺する。最も多い手数を減らすその動きの先を読み、紫髪は護衛人形に見えぬ力を纏わせてそれを受けさせる。

「同じ手の読みあいか。悪くはないが儂ばかりを見すぎじゃ」

 紫髪はそう言ったが、敵方が紫髪に注目するのはやむを得なかった。ルパートは鉛を即座にあててくる様子はないし、メルノは後方からの拳銃での援護に徹しているように見える。
 猟兵への対応として優先すべきは、アナリシスの行動を制限する狐火だというのが自然な流れであったのだ。 

「当人の戦闘という面での情報は少ないのだろうな……さて、これで十分そうだな。喰らうがいい」

 ルパートが言葉とともに剣を大きく振ると、それを伝って青く燃える鉛が撒き散らされる。
 アナリシスの再現体はそれに当たったところでメルノの銃弾と同様に一瞬はぜてそれからもどるだけだった……が、直後その行動が急に焦りを伴ったものに変わった。
 ルパートの飛ばした、赤く溶ける鉛の一部がリキッドコンピューターのプールに混入したのだ!
 にわかに聞こえだしたボコボコと沸き立つ音を背景に、アナリシスの再現体は紫髪の姿真似を解いてルパートに光線を放ち、液体で再現された血鉛を元凶であるルパートに向ける。

「効かん。もとより自分はこれと共にあるのだ。普段それで火達磨になっているのに一つ二つ増えたところで、痛みなどない」

 燃え上がりながら、真っ向からアナリシスを燃える鉛を纏う大剣で打ち据えるルパート。一瞬爆ぜ、自身もリキッドコンピューター同様に沸騰しながらもそれを抱え込もうとするアナリシス。
 が、その動きはアナリシスに突っ込んできた狐火によって阻止された。一旦とらえたはずの刃が、アナリシスの内部に潜りこもうとする狐火によりはじかれたのだ。

「そのような簒奪を見逃すほど、儂も節穴ではない。それ、も少し燃え上がってもらおうか」

 集まる狐火に、アナリシスの姿が消えた。掻き消えるというよりは溶け落ちるというその様子に、紫髪は少々眉根を寄せる。

「なるほど、液体であればこそか」

 本性は不定形たるその身を利用し、攻撃の集中する地帯を抜けたアナリシスはリキッドコンピューター内に再出現する。そして、ルパートの投げ込んだ鉛と炎をプールの外に弾き出した。

「リキッドコンピューターへのダメージソースを弾き出されたか……だが、そこが戦場になるというのであれば願ったりかなったりだ。そうだろう、紫髪殿、メルノ殿!」

 リキッドコンピューターのプールの外側にある炎を消し、ルパートは再度燃ゆる貴き血鉛を投げ入れんと大剣に鉛をためる。
 ルパートの動きに合わせ、紫髪も残る狐火をリキッドコンピューターに差し向ける。当然、それをアナリシスは身を盾にその炎を取り込み強引に消しまわる。そもそもの攻撃手法との相性の悪さは感じながらも、紫髪は余裕を崩さない。
 リキッドコンピューターも、彼女の動きが決して本命のダメージソースではないことは見切っている。再現敵用の液体で抑え込める狐火以上に、高温且つ個体として残ってしまうルパートの血鉛の様子を中心にうかがっていた。
 やがて、ルパートが燃える大剣を掲げてみせる。対応せんと再び解析光線でルパートを狙うアナリシスだが、そもそも彼はそれで再攻撃するつもりはなかった。
 そう、ルパートも、それどころか紫髪も、一度見せた行動が通用するとは最初から思っていない。情報戦が得意な相手に、同じ手を使ってしまえば対応されることは火を見るより明らか……であれば、彼等が狙うのは見せていない行動!すなわち、リキッドコンピューターもにとって、ルパートと紫髪の後に優先度が下がっていたメルノ!彼女の動きこそが、猟兵達の次なる本命なのだ!

「……うちがやるって、信じてくれてありがとな。さーて、九秒きっかり!撃ち抜くで!」

 リキッドコンピューターに仕込みを読まれる危険を避けて小さな声でカウントを行っていたメルノが、何も持たずにいた右手に愛用の熱線銃R&Bを一瞬で構え、最大級の出力で放つ!
 その狙いは当然リキッドコンピューター!アナリシスの出現していない方向に向けた銃口から、宇宙空間でも通用する減衰の少ない熱線が視認できるほどの光と熱を伴い射出される!

『ア゛アァアアアアアーーーーー!!!』

 粘液の中を通り、ため込んだ情報をとともにそれを蒸発させてゆく熱線!リキッドコンピューターの痛みを代弁するかのように再現アナリシスが絶叫を響かせる!

「……あんた喋れたんやね」
『……―――解析完了。ワン、ツー、スリー……』
「!よっし、攻撃やめやめー!逃げるで!」

 アナリシスはメルノの九秒の狐を解析し、返さんとする。が、そこは使う本人の方が上であった。メルノは紫髪とルパートの腕を強く引き逃げ出す。

「うちの技をマネてるなら、奴は視認してるやつにしか攻撃を届けられんはずや!」
「了解した。ならば別の攻撃で上書きしてやる必要は無いな」
「当然、儂らが奴に付き合う必要もないのう」

 メルノの示した扉に駆け込む猟兵達。カウントを終えたアナリシスが銃撃の代わりとして放った水圧は、猟兵の誰にも届くことなく彼らの消えた扉に穴をあけるにとどまった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

荒谷・ひかる
(先ほどまでの戦闘データを見て)
なるほど、本当に流体で、高温を受けると蒸発もするんだねっ。
じゃあ、こんどは凍らしたらどうなるかなっ?

予め寒さ対策に厚着をしておいて、と。
【エレメンタル・ファンタジア】を発動、風の精霊さんと氷の精霊さんにお願いして「氷の暴風」を周辺エリアにまとめて吹かせるよ!
絶対零度、とまではいかないけどっ、氷点下の行けるところまでっ!
もしコピーされても、そのまま使わせるよ。
だって、私の使ったコードは「周辺を寒くしただけ」だからねっ。
自分で自分を凍らせて、自滅すると良いんだよっ!

もちろん、リキッドコンピューターの本体も同じように凍らせる狙いだよっ。
凍らせたら……あとはどうしよう?


メンカル・プルモーサ
……なるほど、ユーベルコードを真似する…が、それだけ……
…機動力を上げるために飛行式箒【リントブルム】に乗って戦う……
【愚者の黄金】で黄金の柵を再現…上から『落とす』ことでリキッドコンピューターに突き刺す……
当然、これだけでは液体のコンピューターには痛痒を与えられないかも知れない…けど、黄金の柵に【尽きる事なき暴食の大火】をぶつけ…
…熱伝導率の良い黄金の柵を通してリキッドコンピューター全体を加熱させる…
…狙いはコンピュータの熱暴走…
動きが鈍くなったところでコンピュータにアナリシス諸共【精霊の騒乱】による雷の嵐を叩き込む……
……動きもユーベルコードも…「真似」だけでは…本家には勝てない…


フォルク・リア
「液体のコンピューター、何とも妙な感じがするね。
興味はあるけど、流石に仕組みを理解するのは無理か。」
「それでも。壊す分には関係ないか。」
此方を真似る敵も、厄介だけど倒せない敵じゃない。

出来る限りプールに近い所で戦う。
攻撃は真羅天掌で広範囲を巻き込んだ
炎の嵐を発生させ、敵を攻撃するとともに周辺を破壊。
敵がそれを真似て来たら
【オーラ防御】で身を守りつつ周辺を破壊させ
自分はプールやプールの外壁を破壊する事で
内部の液体を流出させ
破壊させた所へも流す事でより拡散させる。

(液体が纏まっているならそれを
拡散させればその機能も停止するか低下する筈)
その隙を突き【全力魔法】で真羅天掌を使用。
「これで終わりだ。」



 アナリシスの攻撃が終了した直後、次なる猟兵達が転移してきた。
 偶然グリモアベースで居合わせ、ともに行動することとなった3名の猟兵。その内の一人、メンカル・プルモーサは箒に横乗りでふわりと浮く。

「……私は、来る前に言った通りにやるから」
「わかりました!メンカルさんもおきをつけて!」

 荒谷・ひかるの激励を受けながら、メンカルはリキッドコンピューターのプールを上から見下ろす位置へと舞い上がる。
 アナリシスがメンカルに警戒を向けるのを阻止するかのように、直後に別方向から声が上がった。

「ひかるは俺の後ろに」
「はい、よろしくお願いしますフォルクさん」
「最初は、俺の相手をしてもらう!――大海の渦。天空の槌。琥珀の轟き。平原の騒響。宵闇の灯。人の世に在りし万象尽く、十指に集いて道行きを拓く一杖となれ……真羅天掌!!」

 フォルク・リアはひかるをその背でかばうようにしながら、プールの壁を壊すように炎の嵐を発生させる!
 暴虐的なまでのその特殊な現象は、プールを削り、リキッドコンピューターの表面積を増やして行く。元々の量がバカにならないということもあり、それだけではリキッドコンピューター内の電気信号を阻害するには至らない……が、飛沫として巻き上げ、それを熱し蒸発させることで確実にリキッドコンピューターを削り取ってゆく!

『――大海ノ渦。天空ノ槌。琥珀ノ轟キ。平原ノ騒響。宵闇ノ灯。人ノ世ニ在リシ万象尽ク、十指ニ集イテ道行キヲ拓ク一杖トナレ』

 アナリシスはフォルクの姿を映しとり、彼のユーベルコードを真似て炎の突風をフォルクとひかるに向ける。が、フォルクのオーラがその熱と光を防ぎ、背に隠すひかると自身を守ってみせる!

「大丈夫ですか?!」
「問題ない。引きつけることができたならこっちの物だ」

 フォルクは炎の嵐を維持しながら、プールの上側に視線を向ける。
 味方の炎も避けきる機動力でプールの状況を確認し終えたメンカルが、ユーベルコードで作成した金の柵を作り上げていた。そして彼女は、作成した広範囲に広がる柵をプールに落とす。
 それを受けてもアナリシスの攻撃対象がいまだフォルクである事が、その行動はリキッドコンピューターにとって何の効果も無いことを示している。

「液体のコンピューターには痛痒を与えられないのは予測済み……だから、ここから」

 彼女の黄金の柵の目当ては、金の熱伝導によるコンピューターの熱暴走である。
 フォルクの炎の嵐が暴走寸前まで範囲を広げ、メンカルの用意した黄金の柵を溶かさんばかりに熱する!メンカル自身も白い炎を作り、リキッドコンピューターの内部に熱を増やしてゆく!
 ……が、熱による攻撃、それは既に先ほどリキッドコンピューターが経験したものでもあった。
 先ほどは原因排除に動いたが……アナリシスによるユーベルコードのコピーでは猟兵の排除が難しそうだと判断したのか、艦の元々の機構をリキッドコンピューターは動かし始めた。

「フォルクさん!メンカルさん!天井から水っぽいのが出て来てます!!」

 リキッドプールの中に小さな滝のように液体が追加されてゆく。環境調整用の溶媒を追加することで、熱の分散を狙っているのだろう。
 メンカルはアナリシスの攻撃を避けつつ、フォルクとひかるの元へと接近する。

「……ちょっと作戦変更……この液体、全部持ってこさせよう」
「えぇっ!?」

 メンカルの眠たげな表情から出た言葉に、ひかるが驚きを示す。フォルクはオーラ防御を維持しつつ、メンカルに同意した。

「俺は賛成する。液体の追加はどの状況でも厄介になるだろうし、そもそもあの敵を作る液体はリキッドコンピューター用のものを流用していると考えた方が自然だ……対応してくるのを利用して、ここで液体資材を使い切らせてしまおう。ひかる、それまで体力と精神を保っていてくれ」
「わ、わかりました……私の出番が来るまでは、メンカルさんとフォルクさんにお任せします!」
「うん……じゃ、私はまた上から熱してくる……動きが変わったら、次の行動にうつる」

 再び浮かぶメンカルにアナリシスからの炎の突風が襲い掛かるが、彼女はそれを悠々と躱して再びプールの上へと移動していった。

 ――耐久戦を決定して数分。ひかるは炎の嵐を維持するフォルクと、上空から炎を落とすメンカルの負担をやわらげられないことにやきもきしながら、かれらを激励しつつその時を待っていた。
 そして、彼女の狙いを……今この場では、猟兵3名ともの狙いを達するときがきた。溶媒のストックが尽きたのか、投げ込まれる液体の流れが止まった。それに呼応するように、アナリシスも再びフォルクの鏡像を作ったまま彼の詠唱を再現しだしたのだ。

『――大海ノ渦。天空ノ槌。琥珀ノ轟キ……』
「ひかる、頼む!」
「はい!精霊さん達!」

 フォルクは炎の嵐を止め、ひかるは彼女に力を貸す精霊達に呼び掛ける。炎が止まったことで、上空側のメンカルも次の動きに入った。

「ようやくか。耐久戦ってのは疲れるね……世の理よ、騒げ、暴れろ。汝は天変、汝は動地。魔女が望むは安寧破る元素の乱」

 アナリシスが発生させたのは熱を抑える氷の霧。ひかるが発生させたのは、周辺一帯を凍らせんばかりの氷の暴風。2種の冷気により、先ほどまで暑かった周囲の気温ががくりとおち、それどころかリキッドコンピューターの表層に至っては既に氷が張りだしている!
 その張った氷から頭が出ている黄金の柵を狙い、メンカルが放ったのは雷の嵐!導電率の良い黄金の柵が固定されたのを幸いとばかりに、そこからリキッドコンピューター内に強烈な電気を通す!
 一瞬電気信号が乱れたのか、形が揺らぐアナリシス。ユーベルコードの再現が裏目に出たためか、直接フォルクの守るひかるを狙おうとする……が、当然それはフォルクが封じる!氷が混じりだし、動きの硬くなってきたアナリシスの動きを薙ぎ払って止める!

「風の精霊さん、氷の精霊さん!このまま、凍らせて!」

 アナリシスの周辺に、氷の突風が一時的に集中する!バキバキと、音を立てながら一気にアナリシスが凍り付いてゆく!
 氷の突風はアナリシスを容赦なく突き刺し……そしてその機能を停止させきった。

「……っ!や、やりました!よかった……!」

 アナリシスを形作るための液体は、狙い通り使い切らせることに成功していた。ひかるとフォルクは、新たなアナリシスが出現しないことを周囲を見渡して確認する。
 考えられるとしたらリキッドコンピューターの中から出てくるぐらいだが……それもメンカルがリキッドコンピューターを乱している現状では難しいだろう。

「倒せた……んですよね?」
「そうだな。あとは、あっちの方にとどめを刺すだけだ」

 ビュウビュウと荒ぶ氷の突風は、まだ周辺一帯を冷やし続けている。
 ひかるとフォルクのそばに再度降り立ったメンカルが、彼らに呼び掛けた。

「……電撃も内部でアースもどき作って対応してるみたい。全員で全部凍らせよう」
「そんな事までできたんですね」
「……宇宙空間は、電磁波とか放射線の海……だから、メイン設備のリキッドコンピューターに一通り対応策があっても、おかしくない」
「それだけの事ができるとなると興味はあるが、流石に仕組みを理解するのは無理か。……そもそも、壊す分には関係ないか」

 話しながらも、全員が粘液だった氷の塊に意識を向ける。

「これで終わりだ」

 フォルクの全力の魔法による、氷の滝が落ちて表面を砕く。
 メンカルの高速の詠唱による、風の波が中に潜んでいた液体部分を掻きだし舞い上げる。
 そしてひかるの激励が、精霊達の力を高めて露出したリキッドコンピューターを凍らせ尽くした。

『リキッドコンピューター の 損失 を 確認しました この艦 は 機密保持 のため 自壊 します』

 リキッドコンピューターが全て凍り付いて数分。そのような自動音声が流た頃には、猟兵達は既に船の中から姿を消していた。
 そうして道連れを得られぬまま、宇宙空間に閃光を放って情報の船が一つ消えて行った。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年02月16日


挿絵イラスト