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殲神封神大戦⑲〜一騎当千じゃ物足りない!

#封神武侠界 #殲神封神大戦 #殲神封神大戦⑲ #大賢良師『張角』

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#大賢良師『張角』


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「世は乱れている」
 痩身の男が重々しく言った。
「渾沌氏は私にその事実と、理由を告げた。私はそれに従い成すべきを成した。その果てに死した事に悔いはない」
 男の言葉に淀みはない。それは男の言うことが方便でも自己弁護でもなく、心からの真実である証。
「なれどどうか。漢は滅びれど魏、呉、蜀、そして晋。いずれも世を平和にするにはいたっておらぬではないか! あげく、三皇も今もって骸の海の向こう! これでは世は! 中華は! 永遠の荒廃の中!」
 空々しいほどに綺麗な男の主張。これが偽りなき本心であるこの男は、一体どれほどに純粋に世を憂いているのだろうか。
「なれど、私には今一度機が与えられた。オブリビオン・フォーミュラとなり、異門同胞という全てのオブリビオンを従える力を得た。妲己も、始皇帝も、編笠も、私への忠誠など微塵もなかったことであろう。それでよい。それでも逆らえぬことが、この力が世を治める力であると言う証」
 男は配下に恨まれることを厭わない。己への忠義や愛など求めていないからだ。それは利己ではなく、恐ろしいほどの滅私。
「渾沌氏が私を利用していることなど分かっている。私は狗にも道化にもなろう。カタストロフの先、そこに永遠の安寧があるのなら」
 中華が、封神武侠界が平和になるのなら一切を問わない。それはどこまでも純粋で、そして恐ろしい正義。
「黄天の士よ、世を平和に導こうぞ! 蒼天已死! 黄天當立!」
 男の主張に賛同するように、何万、何十万の黄色の波がうねった。


「こんにちは、殲神封神大戦の依頼です」
 谷保・まどか(バルバロス委員長・f34934)が資料を身ながら猟兵に一礼する。
「今回の敵は張角。封神武侠界のオブリビオン・フォーミュラで今回の戦争のラスボスです」
 この一ヶ月猟兵が目指してきた敵。それがついにお目見えと言うことだ。
「張角は仙界の広大な草原「太平道」に陣を敷き、配下の「黄巾オブリビオン」の軍勢と共に、猟兵達を待ち受けています」
 太平、それは天下統一を目指す者が誰もが旗印に掲げる言葉。たとえその言葉に本心がなかろうと。
「張角の軍勢の数はよくわかりません。大体数十万くらいだそうです」
 何でもないことのように言うまどかだが、猟兵たちはいっきにざわつく。だがまどかはさらに全く表情を変えずに続けた。
「なので、全部倒して来て下さい」
 いくら猟兵としての経験が浅いまどかでも、それが困難過ぎることは分かるはず。だが彼女は一切動揺する様子はない。
「大体一人頭何万かやっつければいけますね。敵になるのはみんなオブリビオンですが、普通の集団型よりさらに弱いみたいです。種類は色々ですが、みんな黄色い頭巾を頭につけています」
 黄巾党の名の由来ともなった彼らの結束の証。それを持つ弱卒を蹴散らし張角への道を開いてほしいという。
「もちろん、彼らとは別に張角とも戦わなければいけません。能力は黄巾力士というロボに乗ったり、二人の弟を呼び出して来たり、配下を応援してパワーアップさせたりします」
 まさに伝承の中の彼が行って来たこと。それをユーベルコードとして用いて来るという。
「彼の目的はカタストロフを起こしてこの世の全てを絶滅させ、オブリビオンとして異門同胞で従えることでこの世から争いをなくし、平和な世界を作ることだそうです。自分が王様になると平和が作れるからそうしたいだけみたいで、自分の欲とか野心とかは全然ないみたいですね」
 彼の目的はどこまでも平和と公益。それは純粋なまでの正義だが、私心を失った存在を果たして人と呼べるだろうか。
「まあとりあえず、やっつけないと戦争に勝てないので皆さんどうかお願いします。それでは、頑張ってください」
 敵の主義主張に関心など持たないとばかりに、まどかは資料を閉じてグリモアを起動し猟兵を黄天の下へ送り出すのであった。


鳴声海矢
 こんにちは、鳴声海矢です。張角の1面ボス感が大好きです。
 今回のプレイングボーナスはこちら。

『プレイングボーナス……黄巾オブリビオンの大軍勢を蹴散らし、張角と戦う(先制攻撃はありません)』

 戦場となる草原『太平道』には数十万の黄巾軍がひしめいています。とにかくこれを蹴散らしながら張角の元へ行き、彼を倒してください。一人数万くらい倒せば行けるか? という感じです。
 黄巾軍一人一人は集団型よりはるかに弱いです。何をしても蹴散らせます。ただし物凄く広く展開しているので、戦場一掃タイプのUCを使ってもまた新しいのが集まってきます。
 張角は先制を行って来ません。さらにいえば並のボス級よりは強いですが、他の有力敵よりも弱いです。ただしここに来る前に数万の軍を相手にしているので相当疲れているでしょうし、戦闘中も黄巾軍はちょっかいをかけてきます(まあ大体は戦闘の余波でふっとんでいくでしょうが)。

 難易度は『やや難』ですが爽快で痛快な無双アクションを展開する依頼になるかと思います。無茶な動きもどんとこい。勿論中華以外のアクションで無双してもOK。
 張角と接敵したらなんなら彼とちょっと話してみるのもいいかもしれません。黄巾軍は空気を読んでムービーシーンには殴り込みませんので。

 それでは、我こそ真の猟兵無双と名乗りをあげるプレイングをお待ちしています。
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第1章 ボス戦 『大賢良師『張角』』

POW   :    戦術宝貝「黄巾力士」
無機物と合体し、自身の身長の2倍のロボに変形する。特に【巨人兵士型宝貝「黄巾力士」】と合体した時に最大の効果を発揮する。
SPD   :    黄巾三巨頭
戦闘用の、自身と同じ強さの【妖術を操る地公将軍『張宝』】と【武芸に長けた人公将軍『張梁』】を召喚する。ただし自身は戦えず、自身が傷を受けると解除。
WIZ   :    黄巾之檄
【「蒼天已死 黄天當立」の檄文】を聞いて共感した対象全ての戦闘力を増強する。

イラスト:藍

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
物凄い数ですが、やってみますぅ。

如何に消耗を抑えて張角さんの場所に辿り着くか、ですねぇ。
『F●S』各種を展開し『FAS』を使用して飛行、【紘器】を発動し、大量の複製を一気に形成しますぅ。
この状態で『FRS』『FSS』の[砲撃]と『FDS』の[爆撃]、『FBS』の斬撃を重ねた[範囲攻撃]を繰返せば、相当な数でも纏めて叩けますし、効力が『装備複製』である以上、最後まで継続が可能ですぅ。
配下を一掃しつつ張角さんを目指しましょう。

到着後は沢山の『FMS』のバリアを重ねて守り、大量の『FGS』の重力波で『重量の有る巨人型兵器』を抑え、『祭器』の大部分を集中させ一気に叩きますねぇ。


カシム・ディーン
「ご主人サマ!物量で襲ってくる酷い人がいるよ!もうあれの出番だね!」
あの地獄を此処でもやれってのか…!

【情報収集・視力・戦闘知識・集団戦術】
敵軍の状況と張角の位置を把握
更に突破口ルートも分析

竜眼号搭乗
UC発動
之は無双ではない…無双を超えた…蹂躙地獄だ(死んだ目
「「ひゃっはー☆」」

400師団+竜眼号
【念動力・空中戦・属性攻撃・弾幕・砲撃・スナイパー】
上空を埋め尽くす幼女軍と戦艦
念動障壁を展開し主を護衛
音撃弾の弾幕を敵陣に叩き込み激しい音で檄文妨害
更に砲撃で蹂躙
残り
張角と周りの兵に襲い掛かる幼女の群れ(!
【二回攻撃・切断・盗み攻撃・盗み】
容赦なく鎌剣で切り刻み蹂躙し
身包み剥ぎ尽
此処は幼女地獄だった



 仙界の大草原『太平道』。そこは今黄色の軍勢に覆い尽くされていた。
 その集団の名は黄巾党。大賢良師『張角』に呼応し集まった兵たちであり、その望む黄天の世、即ちカタストロフ後のオブリビオンの世界を築かんとする者たちである。
「物凄い数ですが、やってみますぅ」
 視界いっぱいに広がるその大集団を見て、夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)がいつもと変わらぬ調子て呟いた。とはいえもちろんいつもと同じようにやって勝てる状況だとは彼女も思っていない。眼前に広がる大集団、聞くにその数は数十万だという。
「大いなる豊饒の女神、その『祭器』の真実の姿を此処に」
 浮遊しながらるこるは【豊乳女神の加護・紘器】を発動した。張角は強敵である。だが、多数の軍勢を前に置きその後方にいる関係上直接猟兵に先制することは出来ない。それ故、ユーベルコードによって装備を複製し一気に攻めることができる。
 砲台二種の砲撃に爆弾の爆撃、さらには周囲を舞い飛ぶ戦輪の斬撃と、全ての攻撃が雑兵たちを吹き飛ばしていく。その後には草原の地表が見え、それはまるで海をかき分け進んでいくかのようだ。
 だが、これもまた海の様に、かき分けられた波はすぐに周囲から流れ込んで埋められる。水ではなく、人の波が。
「ご主人サマ!物量で襲ってくる酷い人がいるよ!もうあれの出番だね!」
「あの地獄を此処でもやれってのか…!」
 それを見て、カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)は苦々しく、その乗機アバターメルシーは楽しそうに言った。だがカシムも奥に控える張角の位置と最適な突破ルートを選定、その手段を取るための準備を整えていた。
 そして竜眼号に搭乗したカシムは、その中で死んだ目で言う。
「之は無双ではない……無双を超えた……蹂躙地獄だ」
「「ひゃっはー☆」」
 呼び出されるのは上空を埋め尽くす幼女軍と戦艦。それは圧倒的な力で黄巾党たちを殲滅していく。その奥では、たった一人の主を障壁を張って守る幼女たち。
 思想を持った大人の男が、ただ主を偏愛する幼女たちに殺されていく。どこかの深夜アニメによくありそうな状況だが、その破壊力は本物だ。
 カシムが地獄と称したその軍団が黄巾党を切り裂き主を奥へ運んでいく。そうして二つの大群が黄巾党を押し分けて進んだ先に、苦悩を湛えた痩身の男がいた。
「その力は世を平らかにできるものか。私にはとてもそうは思えない。私が一度全てを骸を海に返し、異門同胞の下安寧を齎そう」
 大賢良師『張角』。誰よりも中華を憂えるその男は、自らの身を巨大兵士を模した宝貝と一体化させた。
 首に黄色い布を巻いたそれは黄巾力士。仙界の秘宝であり、封神武侠界におけるまさにロボットというべきもの。頑健とは言い難い痩躯を機械の巨人に変えた張角は、圧倒的力を持って猟兵を迎え撃つ。
 振り上げたこぶしがるこるに向けて叩きつけられた。るこるはそれをバリアを何重にも張って受け止めるが、それでもそのほとんどが押しのけられ、強大な重圧が体にかかってくる。
 だが、重さならこちらも負けていない。
「その巨体なら、これがぁ」
 重力制御装置『FGS』を差し向け、黄巾力士を拘束にかかる。ユーベルコードの力で増殖されたそれは高い力を持つ黄巾力士さえも封じ、戒めていく。
「大きな力の代償とでも言いたいか……だが、真に大きい力は私にはない。太平を望む者たちよ、黄天の下に集え! 蒼天已死、黄天當立!」
 黄巾力士越しに張角が檄文を飛ばす。すると周囲を取り巻いていた黄巾党が一斉に沸き立ち、死をも恐れぬ強兵となって一斉に戦場へなだれ込んできた。
「蒼天已死、黄天當立!」
 口々にそう叫びながら猟兵に襲い掛かるその姿はまさに狂信者。だが、命もいらぬという盲信は時にどんな力よりも強い。その盲信と猛進を食い止めるのは、より恐ろしい盲愛。
 幼女軍団が大量の音撃弾を放ち、張角の檄文が聞こえぬよう遮る。聞くことが条件になるユーベルコードは聞こえぬというそれだけで効果を失い、黄巾党たちは即座に元の弱兵へと戻っていった。そしてなお意気だけは失わぬその弱兵たちに容赦なく降り注ぐ砲撃の雨。オブリビオンではあるものの並の人間とさして変わらぬ強さしかない彼らは、その体を四散させ砕けていく。
 そして生き残った兵、そして張角目掛け、幼女の群れが押し迫っていく。ただ主に捧げるため容赦なく鎌剣で切り刻み蹂躙し、その身包みを剥ぎ尽くさんとする。それはまさに幼女地獄。
「おお……これが……これが今の中華が称える姿か……!」
 その光景に張角は深く嘆く。これを失くしたくて自身は封神台を壊し、オブリビオン・フォーミュラとなったというのに。だが彼は知っているだろうか。己の目の届かぬところで、黄巾を被った者たちが無辜の民に全く同じことをしていたということを。
 現実と折り合いを付けられぬ理想家が膝をついた時、重力の中に立ち上がることはもはやできなかった。その体を完全に地に伏させるかのように、るこるの兵装が全て殺到した。
 打って変わってこちらはただ任を遂行するためだけに振るわれる冷酷な力が、黄巾力士を射ち、刻み、爆破する。
「戦は……戦乱の世は……終わらぬのか……!」
 強欲も無欲も全ては戦乱に通じる。体以上に心を折られながら、張角はその身を黄巾力士諸共地に伏させられるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

夜刀神・鏡介
張角がこの戦い最後の敵だ――と思っていたのだが。まさか数十万の敵を相手にする必要が出てくるとは思わなかったな
だが、どれだけ敵がいてもやることは変わらない。乗り越えるだけだ

神刀の封印を解除し、まずは漆の秘剣【蒼鷹閃】で一発纏めてなぎ払う
新しく湧いてくる訳だが、それには少々の時間差が生まれる筈。そこで傍らに停車した『八咫烏』に騎乗して、先程こじ開けた道へ突貫
神刀を片手に斬撃波で敵を吹き飛ばし、時には直接跳ね飛ばし、急旋回で敵の攻撃を避けつつ張角の元へ辿り着こう

張角相手でも基本は変わらず、バイクの機動力を用いて配下を牽制。張角とはすれ違いざまに斬りつけては一撃離脱を主軸に、少しずつ削っていく



 一度一掃されたとしても、広大な太平道を埋め尽くす黄巾党はすぐにまた猟兵の前に補充される。結局は新たな猟兵が来るたびに、その者は万の敵を蹴散らし道を開かねばならないのだ。
「張角がこの戦い最後の敵だ――と思っていたのだが。まさか数十万の敵を相手にする必要が出てくるとは思わなかったな」
 夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)はこの殲神封神大戦の全ての戦場に赴き、全ての有力敵と見えるという目覚ましい戦果を挙げてきた。そして後残す敵はオブリビオン・フォーミュラである張角のみ……そう思っていた矢先のこの大群である。
 だが、元よりこの大軍は異門同胞という力こそあれど、皆張角の唱える『蒼天已死 黄天當立』の下に集った者たちである。あるいはこの大軍を持って乱を起こすことそれ自体が、張角の力であり彼そのものであると言えるのかもしれない。
 だがそれがどうであれ、今なすべきことは既に決まっている。それを成すため、鏡介は神刀【無仭】を抜き放った。
「神刀解放。刃は流れるが如く――漆の秘剣【蒼鷹閃】」
 封印の解かれた神刀から、淀みなく斬撃と斬撃波が放たれ眼前に群れる黄巾党を一掃していく。初手からのユーベルコードに黄色の有象無象たちはなす術もなく切られ吹き飛び、まるで鏡介の行く道を開けるかのようにその眼前から散った。
 真っ直ぐに開けた張角への道。だがそれはすぐに周囲から集まって来た新たな黄巾党によって塞がれるだろう。なれば、その僅かな時間の間にそこを駆け抜けるのみ。
 鏡介は傍らに停車してあった大型バイク『八咫烏』にまたがると、開けた道を猛スピードで走りだした。
 この世界ならば日に千里駆ける赤き馬が最速の称号だろうが、それさえ置き去りにせんばかりの勢いが黄巾党に群がることを許さず道を駆け抜けていく。
 時に無理に縋ろうとする者は刀で切り、先んじて閉じようとする人の波があればバイクそのもので強引に跳ね飛ばし、それでもなお追い来る馬あれば急旋回して引き離していく。それはまさに遮ることを許さない無双の駿馬。
 そして人の波を吹き飛ばしそれを脱したところにいたのは、首に黄巾を巻いた巨大な立像。
「日にどれほど駆けようとそこは黄天の下。早きに荒れるは虚しきと思わぬか」
 己が天下からは逃れ得ぬと、黄巾力士となった張角が八咫烏の行く手を阻んだ。その黄巾力士に、鏡介は怯むことなくまっすぐに突っ込んでいく。
「……そこだ!」
 そして車体が触れる寸前、急ハンドルを切り僅かに車体をずらして衝突を避け、すれ違いざまに一太刀を黄巾力士へと叩き込んだ。そのまま離脱していき、張角の援護に入ろうとした敵の群れの中に今度は自ら飛び込み牽制していく。
 斬撃を撃って押し返しては旋回し、再び張角へと向かう鏡介。
「征かせぬ。乱を止めるが私の役目」
 黄巾力士は両手を広げ、鏡介を捕らえる構えを見せた。それに対し再度急転しすれ違いの一刀を入れようとするが、黄巾力士はその先に倒れ込むように動きその体にバイクを強引にぶち当てた。
「今の黄巾力士は我が身に同じ。痩せ衰えたこの身でも倒れることくらいは出来る」
「意外と力技にも頼るんだな……!」
 己が目的のためならば張角は手段を選ばない。非力な身を黄巾力士で補ったからには、ぶつかって止めるという荒業も躊躇なく用いることができる。
 だが、如何に黄巾力士が巨大と言えど所詮は3メートルそこそこのもの。あのオブリビオンマシンや魔獣に乗った最高神に比べれば何ほどのものか。
「たどり着けた時点で、お前の負けだ」
 それらを並べることこそが本来の彼の力だ。故に、それを突破した今阻まれる道理などない。
 鏡介は八咫烏のアクセルを開け、全開で黄巾力士を押し返す。
「ぬうぅぅぅっ……!」
 さらにもたれかかるようにし黄巾力士が抑え込みにかかるが、それでも八咫烏は止まらない。
 抑えられたエネルギーを爆発させるように八咫烏が黄巾力士を押しのけ、一気にその場を走り抜けた。そしてそのスピードは、すれ違いの刃に全て載せて放たれる。
「黄巾力士が……!」
 それは黄巾力士の装甲を紙の如く切り裂き、それを張角の体から切り離した。その戦果を後ろに残したまま、鏡介は蒼天の下へ抜けるかの如く走り去っていくのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

紅月・スズ
おーアレが大将……何言ってるか良く分からんケド
じゃあ、行くアルよー

UCを使い風を纏って自己強化して、ドーンと突っ込むね
瞬間思考力と見切り、更に纏った風の起こす「微妙な距離感のズレ」で攻撃は避け、更に闘気を練って柔な攻撃は弾くアル
あ、腕を斬り飛ばされた?なら仙術で雷を起こし操った『掃天雷爪』を腕代わりにするアルよ

殴り、蹴り、時に奪ったリ拾った武器を手に斬り、突き、
隠した暗器を投げつけ、どんどん行くアル
いやー、さすがに数万の相手と闘り合うのは初めてアルね!

あ、そういえば妲己さんに「張角とかいうのは殴っておく」と約束してたアル……という訳で張角は『破邪螺旋穿孔槍』を腕につけて顔面ぶん殴るアルよ


リトルリドル・ブラックモア
あーッオレサマコレ知ってる!
三國を無双するヤツ!
うおー!オレサマが真の猟兵むそ…グワー!!
ザコが…つええ!
さては難易度修羅だな!(自分が弱いだけ)

グググ…オレサマも脱モブしたいぞ
UCでメチャツヨなぶしょーに変身だ!
右手に方天画戟!
左手に青龍偃月刀!
赤兎馬に乗ってトツゲキだぜ
うおー!カッコイイけど…戦いづれー!
悪目立ちしてメチャボコられるし!

パワーアップしたまオーラを放出し
まおーボンバーで敵を爆撃
ザコを吹き飛ばして張角に近づくぜ!

おい!
オレサマよりワルいコトすんじゃねー!
オレサマむずかしいコトわかんねーケド
オマエが超ワルなのはわかる!
だいたい…正義はオレサマの敵だー!
方天画戟でドーンとキメるぞ!



 何度倒されても、黄巾党は尽きぬほどにいる。だがそれらはすべて人間と同程度のサイズであるが故、事前に高所に上っておけば張角を遠目に確認することくらいは出来た。
「おーアレが大将……何言ってるか良く分からんケド。じゃあ、行くアルよー」
 開戦前、少し離れた丘の上から敵軍を見下ろす猟兵がいた。当然距離的に声は聞こえないし、予知の段階で聞いていた彼の演説の意味も理解できない。紅月・スズ(路上格闘僵尸娘・f32726)は僵尸となった影響か記憶力や理解力に著しい問題を抱えていた。
 だが、それでも今すべきことははっきりと分かっている。それを示すかの如く、彼女の周りには本来の風向きとは違う風が渦巻いていた。
「あーッオレサマコレ知ってる! 三國を無双するヤツ!」
 そしてその隣で大軍勢の方を見ていたのはリトルリドル・ブラックモア(お願いマイヴィラン・f10993)。まさに中華の地で大賢良師『張角』に率いられた黄巾を被った大軍が展開するその光景は、三國志をモチーフとしたゲームの第一ステージお決まりの光景だ。
 そしてそこは第一ステージだけに敵は弱く抑えられており、適当にやっても割と勝ててしまう。そのノリで何の準備もなく丘を駆け下り敵中に突っ込んでいくリトルリドルは。
「うおー! オレサマが真の猟兵むそ……グワー!!」
 割かしあっけなく黄巾党に押し返された。
「ザコが……つええ! さては難易度修羅だな!」
 それは歴史に名を残す英傑たちが名もなき雑兵に2、3回つつかれただけで討ち死にする文字通り修羅の難度。まあ実の所直の殴り合いが不得手なリトルリドルが無策で突っ込んだ故の当然の帰結なのだが、彼はそんなところには気づかない。
 一人で盛り上がるリトルリドルをスルーし、スズはふわりと飛びあがり丘から降りた。
「激風に身を任せどうかする! って奴アル!」
 その宣言通り、【風鱗装】にて纏った風と同化し敵中へ飛び込んでいくスズ。その風の拳は手近な黄巾党から次々と撃ち抜き一発一人をダウンさせていく。さらにそれを掻い潜って振り下ろされた敵の剣は、届くと確信した距離で降ったはずなのにその体に届くことはなかった。風の鎧によって僅かに距離感をずらされ、当たるはずの攻撃を当てられない。彼らの目もまた、どうかされてしまっていたのであった。
 その戦いぶりにリトルリドルも再度奮起する。
「グググ……オレサマも脱モブしたいぞ。UCでメチャツヨなぶしょーに変身だ!」
 そう言って彼が変じたその姿は。
「右手に方天画戟! 左手に青龍偃月刀! 赤兎馬に乗ってトツゲキだぜ」
 三国一早い馬に跨り、その主人である三国最強の二人の武器で二刀流という最強盛り合わせのいいとこどり。その姿に思わず黄巾党たちもたじろいでしまう。
 そのまま後ろにどこから出たのか旗を翻らせ、武器を払って敵兵を切り払っていくリトルリドル。
「うおー! カッコイイけど……戦いづれー! 悪目立ちしてメチャボコられるし!」
 両手持ち用の武器を馬上で二刀流しているのだ、動き辛くて当然である。だがそれでもこれはユーベルコードによる強化。動きづらい上に敵に捕捉されっぱなしという呪縛と引き換えに得たその戦闘力は間違いなく本物。長物の一振りで複数の兵が吹っ飛んでいく様は正に無双。
 その隣で馬に足で並走しながら、スズが殴り、蹴り、時に奪ったリ拾った武器を手に斬り、突き、隠した暗器を投げつけ、どんどん進んでいく。時にふいを撃たれ腕さえ斬り飛ばされても、何でもないことの様に仙術で雷を起こし操った『掃天雷爪』を腕代わりに戦いを続ける。
「いやー、さすがに数万の相手と闘り合うのは初めてアルね!」
 曖昧な記憶を探っても流石に万の敵を相手取った記憶などない。その軍勢を風の体と雷の爪でなぎ払って開いていくその姿に、リトルリドルも滾る。
「ザコを吹き飛ばして張角に近づくぜ!」
 ユーベルコードによる強化を全開にし、馬の後ろから大量の爆弾を撒き散らしながら猛進する。吹き飛ばし、跳ね飛ばし進んでいくその様はまさに最強の馬に乗り雑魚をひき潰しながら一直線する無双者の如し。
 かくして広く、長く開かれた黄巾の海を乗り越え、二人は張角の前へと立った。
「幼きも、愚かも、それそのものは罪に非ず。なれどそれを用い乱を仕立てる者がいるならば、それは太平を阻む恐ろしき武器となる」
 張角は二人の様子を見てそう言うが、そんなことを言われても二人ともが知ったことではない。
「あー、やっぱり何言ってるか分からないね。あ、そう言えば」
 風の鎧を弾けさせ、雷の腕も投げつけ、迫りくる強化黄巾兵を足止めする。そして残った右手に握られるのは。
「妲己さんに「張角とかいうのは殴っておく」と約束してたアル……」
 彼女との約束の証、ドリル型宝貝『破邪螺旋穿孔槍』。それを張角の顔に叩きつけようと迫るスズの前に二人の男が再度立ちはだかる。
「兄者、我らが」
「童とて太平道を阻ませはせぬ」
 地公将軍『張宝』と人公将軍『張梁』。張角の弟であり黄巾党最高幹部。だが、リトルリドルはそんな彼らをガン無視する。長宝には赤兎馬をぶつけ、張梁には青龍偃月刀を投げつけその場から後退って貰う。何しろ彼らは、大抵ムービーすらない下手すれば張曼成より地味なモブ将である。リトルリドルの眼中にないのも致し方なし。
「おい! オレサマよりワルいコトすんじゃねー! オレサマむずかしいコトわかんねーケドオマエが超ワルなのはわかる! だいたい……正義はオレサマの敵だー!」
「見どころある童よ。私が正義という悪であることを見抜くとは。世が平らかなれば、正邪も最早なくなる。その時を待つがよい」
 そんなことを言われたってスズにもリトルリドルにもやっぱりわからない。期せずして張角への妨害はなくなった。その道に真っ直ぐ方天画戟が振り下ろされ張角の頭を殴打し、そうして前のめりになって突き出された顔面に破邪螺旋穿孔槍が抉りこむように叩き込まれた。
「よっしゃー! オレサマたちの勝ちだー!」
「約束忘れなかったアルよ妲己さん!」
 愚直なその心は、最後まで見誤ることなく打つべきを打ち抜いたのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

真宮・奏
大いなる事を成し遂げるには、しっかりとした自分の意志がなければいけません。何か私には情熱が空回りしてるしか見えませんね。危うい理想は崩壊を呼びます。

貴方を阻止させて頂きます。お覚悟を。

同じ強さの敵が三体ですか・・・【オーラ防御】【盾受け】【武器受け】【受け流し】【ジャストガード】で防御を固めてから、彗星の剣を展開。召喚する2体を攻撃します。数撃てば当たる、といった精神で!!

多量の剣の群れに紛れてあわよくば本体の張角に接近して【怪力】【シールドバッシュ】で吹っ飛ばしてやります!!

多くの犠牲の上に成り立つ平和など断じて認めません。究極の分からず屋は骸の海へお帰りを!!



 世界を憂い、平和の為にカタストロフを為さんとする張角。そこに私利私欲は一切なく、純粋に世界が平和であるよう祈る滅私の心が彼を突き動かしていた。
「大いなる事を成し遂げるには、しっかりとした自分の意志がなければいけません。何か私には情熱が空回りしてる風にしか見えませんね。危うい理想は崩壊を呼びます」
 真宮・奏(絢爛の星・f03210)は彼のその真っ直ぐな意思をそう評した。確かに、彼は己の生死すら厭わずただ世界の事だけを思っている。だが、それは一体誰のため、何のための平和なのか。目的のために手段を選ばず、そしてその果てに目的すらも見失ってはいないだろうか。
 少なくとも今自分の眼前に広く展開する万の兵たちは、彼の理想を遂行するため封神武侠界全土を攻め滅ぼすことに何の躊躇もないだろう。その兵たちを剣を持って切り払い、押しのけながら奏は真っ直ぐに張角を目指す。
 切っても切っても湧いてくる黄巾の兵士たち。いつ果てるとも知れないその道の果て、やがて現れる三人の男たち。
「阻むものあらば全て切って道とするか。誰もがその意を持ち、そして成すことで乱となる。意を持てど禁ずればそこに乱はない。その勅命を私が出すことでできるのならばそうあるべきだろう」
 奏の後ろ、累々と積み重なる黄巾党の骸の道に張角はそう言う。だが、彼らに来るものを阻み戦うよう命じたのもまた張角自身なのだ。
「地公将軍『張宝』、兄者の杖とならん」
「人公将軍『張梁』、兄者の剣とならん」
 そして兄を守ろうと、彼の二人の弟が前に出る。
「同じ強さの敵が三体ですか……」
 それに対し、まずは物理、非物理問わず己の持つあらゆる防御手段を持って守りを固める奏。張宝の妖術が岩を落とし竜巻を呼び、張梁の剣が重く、早く打ち込まれるが奏はそれをひたすら守り、耐えた。
 急所を狙うものは的確に弾き、大きすぎるものは全身に力を込めて押し返す。剣で受けられぬものはオーラを張って防壁とし、自分の体に届かせない。
 そうして守りの中で、一歩ずつ前に出て二人へと迫る。そしてその距離が詰まった時。
「かわさないでくださいね? 行きますよ~!!」
 【彗星の剣】ブレイズセイバーが、119本に分裂し張宝と張梁を襲った。各々の技を持ってそれを防ごうとする二人だが、やはりこの数は凌ぎがたく攻め手を止め身を守るのに精一杯だ。
 視界を埋め尽くすほどに雨あられと降り注ぐ剣。張角と同じ強さのある二人にはそれとて容易に致命傷を与えることは出来ないが、数打てば当たるというようにその体に少しずつ傷を刻んでいく。
「おのれ、この程度で我らを……」
「出来なくてもいいです!」
 その声が聞こえたのは二人の後ろ。多量の剣の群れに紛れて二人を抜け、張角へと接近した奏が彼に言いたいことを告げる。
「多くの犠牲の上に成り立つ平和など断じて認めません。究極の分からず屋は骸の海へお帰りを!!」
 平和の為に皆殺し、そんな単純な破綻にすら気づけない頑固者に平和を語る資格などない。その意思を込めた盾の一撃が、張角の顔面を強かに捕らえた。
 張角本人が傷を負ったことで弟二人は消え、張角自身も吹っ飛んで地に転がる。地に伏させられたその理由も、恐らく彼は理解していまい。奏はそう思い地を舐める張角を見下ろすのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ホーク・スターゲイザー
ミラーと行動
アドリブ・絡みOK

黒崎、レヴェリーと共に途中から蒼色になっている少しウェーブのかかった長い銀髪に少し切れ長の目に黒いヴェールに露出度の高く際どい恰好の女が現れる。
「誰だ?」
レヴァリス、双子の姉と黒崎が話す。
レヴェリーの姉がいるのは初耳な上になぜか怒っている。
「本を汚された上に隠していたらしい」
黒崎は弁護を頼まれたと溜息を吐く。黒なのは間違いないと付け足す。
逆らってはいけないと思いつつ戦闘を始める。
「メギド」
レヴァリスは宙に浮かび魔力の光球を作り出しては爆撃による範囲攻撃を行う。
黒崎は軽業によるトリッキーな動きで翻弄、拳銃や刀、敵を盾にしたりする。
レヴェリーは属性攻撃となぎ払いによる範囲攻撃による範囲攻撃を行う。
タワー、ムーンを呼び出しさらに追撃を仕掛ける。
張角と対峙したらレヴァリスは表情を変えることなく話す。
「何もない空間を安寧と呼ぶとすればそれは愚考」
レヴァリスは空間を開き、無数の巨岩を降り注がせ黒崎が軌道を読みながら接近して刀で斬りつける。
「面白いわね、彼」


ベアトリス・ミラー
ホークと行動
アドリブ・絡みOK

「また増えましたねえ」
レヴァリスを見つつ先の鴻鈞道人との戦いを思い返す。
お任せを、そういってメルの治療を始め今どうなってるか分からない状況に色々な感情が渦巻く。
「先の戦いは知っている。今できることに集中して」
レヴァリスからの言葉を受けて気を入れ直す。
「絶対に勝ちましょう」
数で攻めてくる相手には数と戦乙女と四本の腕にハルバートや剣、槍やレイピアを持つ女騎士を創り出す。
騎士は結界術による防御やエネルギー光弾の雨を降らせての爆撃じみた範囲攻撃を行う。
「大部分はこちらで対処します」
「問題ない。自分たちの事を考えていろ」
黒崎自身は死んだ身故に疲労とは無縁。
張角との戦闘に備えろと言われる。
ロボと対峙する時は同じサイズの巨人をぶつける。
「心の具象化、興味深い」
レヴァリスから興味があると伝えられる。
「気にせずお願いします。私の心が揺らげば弱まってしまいますが」
諸共攻撃しろと伝える。



 張角の下に集った黄巾党は数十万。ここまで幾度となく猟兵に蹴散らされてなお、敵は多い。戦争に置いて数は力。かつての黄巾の乱でも、この殲神封神大戦でも、張角はその力を持って天下に己が太平を築かんとしていた。
 だが人数の利を持っての戦いを得手とするのは彼だけではない。
「また増えましたねえ」
 ベアトリス・ミラー(クリエイター・f30743)の前にいるのはレインコートの男とレオタードの女、そして途中から蒼色になっている少しウェーブのかかった長い銀髪に少し切れ長の目に黒いヴェールに露出度の高く際どい恰好の女。先二人は見たことのある顔だが、新顔である三人目をみて特にそう呟いた。だがそれはどこか興味のなさげな、何か他の事を考えているような調子でもある。
「誰だ?」
 そしてその疑問を抱くのは、彼女を【守護者召現】で召喚した当人であるはずのホーク・スターゲイザー(六天道子・f32751)。召喚を多用する彼だが、時に自分の知らない者、制御しきれぬ者を呼んでしまうこともある。
「レヴァリス、レヴェリーの双子の姉貴だよ」
 レインコートの男、黒崎がレオタードの女、レヴェリーの姉だと告げた。
「姉がいるなど初耳だな……それに、なぜ彼女は怒っている?」
「本を汚された上に隠していたらしい」
 いわゆる姉妹喧嘩中なのか、黒崎は弁護を頼まれたと溜息を吐く。黒なのは間違いないとも。
 それには反応せず、レヴァリスはベアトリスの方を向いて声をかけた。
「先の戦いは知っている。今できることに集中して」
 その言葉に、ベアトリスの意識は戻ってくる。直近に鴻鈞道人と融合した顔見知りのグリモア猟兵と戦い、命は助かったものの重傷。それに備え控えていた者はお任せをと治療を請け負ったが、結果を見届けることなくここに来てしまったため今どうなっているかは分からない。
 ずっとそのことばかりを考えていたが、今眼前にいるのはかつてないほどの大群と、この戦い最後の敵。そこを指摘され、ベアトリスも気を入れ直した。
「絶対に勝ちましょう」
 敵は数で押して来る。なればこちらも数で対抗だ。
「これが私の力です」
 得意の【神世創造】で呼び出したのは、普段から多く呼び出す戦乙女と新顔の四本の腕にハルバートや剣、槍やレイピアを持つ女騎士。
 戦乙女は敵の群れに突っ込んでいき、まさに一騎当千の主人公と言わんばかりに多数の弱卒を相手取る。女騎士の方はその後方で、エネルギー光弾の雨を降らせての爆撃じみた範囲攻撃を行っていく。たまにそれを逃れたものが彼女のところまでたどり着いても、結界を張って自分の身に触れることを許さない。
 その圧巻の戦いに送れじと、ホークに呼び出された者たちも次々と戦列に加わった。
「メギド」
 レヴァリスが宙に浮かび魔力の光球を作り出しては爆撃による範囲攻撃を行う。それはまるで女騎士の爆撃の向こうを張るかのようであり、どちらがより広く、多く雑魚を蹴散らせるか競っている風にも見える。
 その間に、黒崎は軽やかな動きで敵中に飛び込み、トリッキーに動き敵を翻弄する。だが何かを間違えたか、敵が多く集まる真っ只中に飛び込んですぐに孤立状態となってしまった。
「愚か者め、取った!」
 一斉に突き立てられる雑兵たちの武器。だがそれが刺し貫いたのは。
「おいおい、仲間をやっちまうとはいけねぇなぁ」
 黒崎に捕らえられ盾にされた黄巾兵たち。動揺した周囲の兵を即座に刈り取っていくその姿は、まさに悪の面目躍如といったところだろう。
 その横ではレヴェリーがリボンを鞭の様に使い、広範囲を一気になぎ払う。武器でないものを武器として使い、それで群がる弱兵を一薙ぎにするさまはまさに一騎当千のアクション。
「お前たちも頼むぞ」
 さらに魔術師が幻影を巻いて敵を右往左往させ、塔の如き石の巨人が拳の一撃で複数の兵を叩き潰す。それらを操るホークは、まさに無双の武人を切り替え操るプレイヤーといったところか。
 そうしてプレイヤーの操作の元無双の者たちが兵をかき分ければ、現れるのは名のある大物。
「如何程の乱をその身に宿すか。力を得るごとにその身は安寧から遠ざかると理解しているのか?」
 多くのものを操作しているのがホークだと理解しているのだろう、張角は自身にかかろうとする大勢の者たちを無視し、彼に向けてそう言った。
「何もない空間を安寧と呼ぶとすればそれは愚考」
 それにはホークではなくレヴァリスが答える。
「無とは安寧の極致なり」
「変化なき停滞も終わらぬ戦乱よりはずっと良かろう」
 そしてそれに反論するは張角の弟、張宝と張梁。
 最早語る言葉もなし。レヴァリスは空間を開き無数の巨岩を降り注がせ、黒崎が敵の動きを読みながら接近して切りつける。それを張宝の呼んだ大風が押し返し、張梁が自らの剣で受け止めた。
 呼ばれた者同士の戦い、その横で、張角は自らの体をロボット兵黄巾力士へと変化させる。
「大部分はこちらで対処します」
「問題ない。自分たちの事を考えていろ」
 そちらの相手は任せるというレヴァリスと黒崎からの言葉。それに対し、ベアトリスは新たに巨人を創造することで応えた。
「哪吒太子にも並ぶ体躯。それを戦のみに使うとはあまりにも勿体なし」
 まさにその哪吒にぶつけた力だと知っているのだろうか。黄巾力士は巨人と四つに組合力比べをする。
「心の具象化、興味深い」
 【アリスナイト・イマジネイション】型の召喚にレヴァリスは興味深いと横眼に見つつ告げるが、ベアトリスはそちらを見ずに応える。
「気にせずお願いします。私の心が揺らげば弱まってしまいますが」
 無敵を誇るが僅かな心の揺らぎで一気に力を失う創造物。思いもよらぬところからそこを突かれ窮地に陥ったこともある。幸いにして張角は太平を齎すという意思のみに邁進し、過剰に言を弄し相手を幻惑、否定することはない。ならばあとは味方の猛攻に巻き込まれてなおの力を信じ切れれば。
「分かった。文句は言うなよ」
 承知した、とばかりにレヴァリスは一気に力の範囲を広げた。それは張宝の術を押し返し、張梁やそれと戦う者たち、そして黄巾力士と巨人までも巻き込み破壊の嵐を齎した。
「なんと……味方諸共……!」
 味方に死を恐れぬ盲信を齎すことはあれど、自ら手にかけることはしない張角はその手段に対応が遅れ巻き込まれる。そのダメージにより張宝と張梁は消え、そして残ったのは。
「面白いわね、彼」
「俺はつまらねぇよ」
 ホークに呼ばれた者たちはめいめいに避け、あるいは耐えなんとかその場に踏みとどまっていた。そしてベアトリスの呼んだものは無傷。
「信じる力は強いもの……この人が一番よく分かっていそうですが」
 やはり傷ついた黄巾力士を前に、ベアトリスは『信』の強さ、危うさを思うのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

高天原・光明
 張角め、随分と人望が厚いようじゃないか。この数を集め統べるとは、全く根性がある。乱戦、混戦、合戦、大いに結構。ここまで来たんだ、存分に付き合ってやる。

 黄巾軍に吶喊、霊力で身体能力を強化し、武器を総動員して突き進む。〈貫通攻撃〉で纏めて射貫き、〈早業〉で武器を切り替えながら戦おう。張角と相対する頃にはボロボロだろうが構わないさ。

 ようやく会えたな、張角。貴様が未来の世を平和に導く為に戦うならば、俺は今の世を生きる者達の為に貴様を射貫こう。それが、猟兵というものだ。既に俺は満身創痍かもしれないが、だが貴様を止めるには十分だ。俺は過去には屈しない、この世界もだ。さぁ、勝負といこう!

 弟二人を召喚しようとする張角へ向け退魔刀を〈投擲〉、奴の意識と視線が俺から逸れた隙に【UC:虚より飛翔せし魔弾】(SPD)を発動だ。矢筒に残った最後の一矢に、〈破魔〉の霊力を籠めて放とう。貴様の為に、とっておきを残しておいたんだ。受け取れ、張角!

(アドリブ連携負傷等々全て大歓迎)



 数十万。途方もないその数も、無限でないからにはいつかは終わりが訪れる。その数は残り数万。普通ならそれでも十分大軍と呼ぶに値する数だが、それは猟兵の前では最早残り滓と呼んでも差し支えないほどの小勢。
 それは彼らの側とて分かっているはずである。だが、彼らは一切引く様子はない。
「蒼天已死、黄天當立!」
 蒼天すでに死す、黄天まさに立つべし。その言葉の下に彼らは一丸となり、自らの命を捨てることさえ厭わないのだ。
「張角め、随分と人望が厚いようじゃないか」
 その決死の軍団を前に、高天原・光明(彼方より禍を射貫くもの・f29734)は彼を一廉以上の首領として見て取る。
「この数を集め統べるとは、全く根性がある。乱戦、混戦、合戦、大いに結構。ここまで来たんだ、存分に付き合ってやる」
 彼の時代に軍を率い乱を起こした者の第一人者、三国時代の幕開けを告げた男。古の王や伝説の神仙まで動員したこの戦の、最後に立ちはだかるのがその最初の軍団とは面白い。
 その軍団に、光明は吶喊した。その体に霊力を滾らせ、持てる武器を全て動員して進む。
 鍵付きロープで纏めて絡め、退魔の刀でそのオブリビオンとしての生を終わらせる。遠くから挑みかかってくる者は彼らの知らぬであろう拳銃と小銃で押し返し、飛び道具と看破して捨て身の接近戦を挑む者も無慈悲に解体ナイフで命を刈る。
 だがやはり、最も恃むのは『六尺和弓』。それは広大なる太平道の果て、人の波の向こうから同じように弓を引いていた弓兵をただの一矢で撃ち抜いた。
 かつて故郷ではたった一人で影朧の群れと戦い抜いたことさえあるのだ。それに比べれば雑兵オブリビオンなど物の数ではない。
 なればと敵は命を捨てた死兵を先頭に立て、縦列に並ぶことで後方の兵の安全を確保した。
 だが、その程度の策が光明に通じるはずもない。霊力を込めて放った矢は盾役の先頭、そしてその後ろに連なる者たちも次々と射抜き、たった一つの矢で縦に並んだ敵兵全てを貫き通すに至った。
 次々と武器を切り替え、一つの動作で五人、十人と倒す光明。だがそれならば十五人、二十人でかかれば良い。仲間のほとんどを捨て石にして辿り着いた一人が一太刀浴びせ、そして即座に切り返されて倒れる。おおよそ割に合わない命の浪費。だが、それでも万人分繰り返せばそれは猟兵の体すら削る鉋となる。
 射られ、切られ、撃たれ、幾万の屍を光明が抜ける時、その体には幾筋もの傷が刻まれていた。
 それは万の軍を全て相手取ったとしては軽すぎる、しかし個人が負うには十分に重い負傷。さらに有限である矢は最早一本しか残ってもいない。体はボロボロ、最も得意とする武器もほぼ死に体。だが、光明はそれに一向に構わない。
「ようやく会えたな、張角」
 道の果て、ようやくたどり着いた最後の敵に光明は笑む。
「貴様が未来の世を平和に導く為に戦うならば、俺は今の世を生きる者達の為に貴様を射貫こう。それが、猟兵というものだ」
「生きる者がいるから乱がおこる。私は未来がため、今の全てを一度骸の海へ送ろう。そのために、私はオブリビオン・フォーミュラとなった」
 真っ向からぶつかる二人の思想。そこに妥協や共存の余地などないと、それは互いに分かり切っていること。
「苦しかろう。己が目指すところのため乱に生き、既に矢付き傷を負った。英雄よ、そなたを救おう。過去となりて安寧の時を待て」
「既に俺は満身創痍かもしれないが、だが貴様を止めるには十分だ。俺は過去には屈しない、この世界もだ。さぁ、勝負といこう!」
 これが交渉決裂の証だ。退魔刀を、光明は張角へ向けて投げつけた。弓の名手がわざわざ剣を投げる、その意外な動作に張角のユーベルコードの発動が一瞬遅れた。そして勝負はこの一瞬。
「隙だらけだな」
 その逸れた視界を射抜くかの如く、最後に一本残った矢に最後に一握り残った霊力を込め、【虚より飛翔せし魔弾】と成して張角に放った。
「黄巾の士よ……弟よ!」
 すぐさま張角が視線を前に戻し、召喚をかける。空間が揺らぎ、二人の弟が張角の傍らに現れる。
「貴様の為に、とっておきを残しておいたんだ。受け取れ、張角!」
 この矢が貫くべきは他の誰でもない。この戦いの終着点、オブリビオン・フォーミュラ張角ただ一人。
 張宝と張梁が身を挺して兄を庇わんと前に踏み出す。その体が重なる直前、その僅かな隙間。その隙間を一矢はくぐり、張角の眉間に正確に突き立った。
 張角の傷、それにより張宝と張梁は消えていく。そして、張角の命もまた。
「私は……またも、世を救えなんだか……黄天、今まさに死す……」
 ゆっくりと仰向けに倒れていく張角。それはかつての乱の幕引きの再来か。
「誰でも……何でもよい……どうか、世を平らかに……どうか……どうか……!」
 最後まで世を憂いながら、 大賢良師は骸の海へ還った。百年前、その死が天を三つに分かつ大乱の始まりであったことを考えれば、その最期の願いは余りにも虚しく聞こえた。
「敵将、大賢良師張角、討ち取ったり!」
 高天原・光明が太平道全てに聞こえよとばかりに高々と宣言した。その姿はまさに天下に双つ無き者。
 彼だけではない。猟兵の力は、思いは、その全てが千差万別。同じ猟兵は二人としていない。
 己が力と意志を持つ猟兵全て。それこそが、真の猟兵無双なのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年02月03日


挿絵イラスト