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殲神封神大戦⑰〜我は何回再孵化すれば…え? これが初?

#封神武侠界 #殲神封神大戦 #殲神封神大戦⑰ #渾沌氏『鴻鈞道人』 #三皇『神農兀突骨』

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「見事なり渾沌氏、我すら再孵化させるとは。これでは三皇も形無しだな」
 興味深げに自分の体を見る巨躯の異形。その体は上は顔に符を張った陣羽織の男、下半身は人面を持つ鱗の魔獣。
「しかし、流石に全てを完全にとはいかなかったようだ。我がユグドラシルブレイドは必殺の力を失い、藤甲もただの堅牢な鎧と成り果てている。まあ、これぐらいでなくては我らの面目が保てぬというものよ」
 男は自身の剣を眺め言う。
「どうやら我は骸の海に叩き落とされてしまったようだが、早々に帰ってきたらば猟兵たちも腰を抜かそう」
 余裕と威厳をたっぷり含んだ男の声。だが、その裏に妙な焦りが見えるような気もするのは錯覚か。
「まったく渾沌氏も意地が悪い。わざわざその為だけに我を倒れるまで再孵化させぬとは。 ……そうだろう? 我が今まで一度も再孵化していないよう見えるのは渾沌氏の捻くれたどっきり計画のためだろう? 断じて我が不人気とか忘れられていたとかそういうことはあるまい? そうだろう? 頼む兀突骨、そうだと言ってくれ」
 喋れぬ魔獣に懸命に問いかける男に、兀突骨は何も答えてはくれなかった。


「こんにちは、殲神封神大戦の依頼です」
 資料を手にした谷保・まどか(バルバロス委員長・f34934)が集まった猟兵たちに一礼する。
「今日の相手は『神農兀突骨』。三皇という中国の一番偉い神様の一人と、魔獣兀突骨が合体した有力敵です」
 伏羲、女媧と並ぶ中国最高神の一柱、神農。農耕の神であるそれが三國志では南蛮の猛者と伝えられる兀突骨と合体した存在だ。だがその名に猟兵は首をかしげる。彼はほんの一日前、猟兵によって完全に倒されたはずではないか。
「あ、今回は鴻鈞道人の力で再孵化された存在みたいです。私はよく知らないんですが、帝竜っていうのがやってたことらしいですね」
 有力敵の中でも最大の戦力を有し、今も唯一生き残っている鴻鈞道人。彼は帝竜が用いた『再孵化』の力を使い、この殲神封神大戦の有力敵全てを何度でも蘇らせることができる。いわば彼がいる限り、有力敵は一人も減っていないのと同じことなのだ。
「ですが、彼の再孵化は不完全みたいで、触れただけで敵を倒せる『ユグドラシルブレイド』と、物理も魔法も精神攻撃も無効化する『藤甲』はパワーダウンしてるみたいです。今のこれらは物凄く性能のいい武器と防具でしかないみたいですね」
 文字通りの必殺の力をもつ最強の剣と、天地万物を跳ね返す無敵の鎧。まさに矛盾という言葉を体現したそれこそが彼の最大の武器だったが、そこまで再孵化するには至っていないようだ。
「その代わりその両方を同時に使って攻めてくるみたいですね。先制攻撃もできるみたいなので、それを躱してから藤甲をぶち抜いて攻撃しなきゃいけないみたいです」
 極めて鋭い剣の一撃を躱し、極めて固い鎧を抜いて攻撃する。ただただ単純に強い、不完全でなお正統派な強敵たる力が残っているのが彼の恐ろしさだろう。
 小細工無用の強敵相手と会って緊張する猟兵たちの前で、まどかは淡々と資料のページをめくる。
「再孵化は生きてるオブリビオンにも使えますが、この人は本物が倒されてからやっと再孵化されたみたいですね。別にできなかったわけじゃなくて、単にやらなかっただけみたいです。妲己とかは生きてるうちから再孵化されてた気もするんですがなぜでしょうね? 神農もそこについて深く考えているので、余裕があれば彼の考えを聞いてみてもいいかもしれません。私が聞きに行ければよかったのですが……」
 それは傷口を抉ることにならないか……とも思うが、まあ敵だし。ちなみにまどかは本当に理由が分かっておらず聞きたいだけのようだ。純粋というのは恐ろしい。
「殲神封神大戦終了までもう時間がありません。再孵化の敵をやっつければ鴻鈞道人の戦力が減りますので、この敵も急いでやっつける必要があります。それでは、よろしくお願いします」
 資料を閉じつつ、まどかは猟兵を鴻鈞道人が変じた神農の塒へ送り出すのであった。


鳴声海矢
『注意!』
 鴻鈞道人早期撃破のため、このシナリオはサポートを呼びつつ文字数やや少な目でお送りする予定です。参加の場合は了承の上プレイングをご送信ください。

 こんにちは、鳴声海矢です。だって彼だけ再孵化してなかったんだもん。
 今回のプレイングボーナスはこちら。

『プレイングボーナス……不完全版「ユグドラシルブレイド」の先制攻撃に対処しつつ、藤甲の隙間を狙う』

 彼は再孵化の影響で、オリジナルの持っていた『一撃必殺』と『全攻撃無効』の特性を失っていますが、代わりにユグドラシルブレイドと藤甲の両方を同時に装備しています。行動は神農モードに準じますがそこに兀突骨の防御力が加わっていますので、実質両者を同時に相手にするような状態です。『判定はやや緩いものの両形態のプレイングボーナスを同時に狙う必要がある』と考えるとよいかと。
 難易度は『やや難』、かつ攻撃力と防御力がどちらも高いフィジカルお化けですので、先制攻撃後も油断なく戦う必要があります。

 神農はここまで自分だけ再孵化してないことをちょっと気にしています。いじって上げるといい反応を返すかもしれません。文字数余ったらどうぞ。

 それでは、実りあるプレイングをお待ちしています。
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第1章 ボス戦 『『神農兀突骨』ユグドラシルブレイド態』

POW   :    三皇神農・変幻自在剣
【変形させた必殺剣「ユグドラシルブレイド」】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    三皇神農・無限複製剣
自身が装備する【必殺剣「ユグドラシルブレイド」】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ   :    三皇神農・絶対制御剣
【必殺剣「ユグドラシルブレイド」】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【に生え狂う巨大食肉植物を剣と融合し】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

紫・藍
藍ちゃんくんでっすよー!
みんなの人気者、存在感抜群の藍ちゃんくんなのでっす!
やや、先制攻撃でっすか!?
やっかみなんてみっともないのでっす!
大人げないのでっす!
大人げないと言えば、必殺と無敵だなんてその極致なのでっしてー。
藍ちゃんくん思いまするに、それ、塩試合というのではー?
そんなんだから不人気で忘れられてしまうのでっすよー?

などなどと!
大声で挑発&言いくるめで痛いとこつきつつ時間稼ぎ!
攻撃単調になれば良し!
オーラ防御も合わせて逃げ回るのでっす!
上手くしのげましたら反撃なのです!
おかんむりな相手にはこのUCはとてもよく効くのでっしてー。
藤甲の隙間に染みる、耳を塞ぐことも許さない口撃をプレゼント!



 一番遅れて再孵化した神農兀突骨。倒されてすぐ封神武侠界に舞い戻ってきた彼の前に、突如底抜けに明るい大声が響き渡った。
「藍ちゃんくんでっすよー! みんなの人気者、存在感抜群の藍ちゃんくんなのでっす!」
 紫・藍(変革を歌い、終焉に笑え、愚か姫・f01052)の突然の自己紹介。その中のワンフレーズに、神農はぴくりと震えた。
「ほう、人気者とな……?」
 まるで逆鱗に触れられたが如く、手にした必殺剣「ユグドラシルブレイド」を振り上げる神農。その動きに藍はさらに重ねるように言う。
「やや、先制攻撃でっすか!? やっかみなんてみっともないのでっす! 大人げないのでっす!」
 上級オブリビオン全部を敵に回しそうな発言……だがまあ基本的に元から全部敵なので問題ないだろう。だがそこから続けるのは神農自身にピンポイントに刺さる言葉。
「大人げないと言えば、必殺と無敵だなんてその極致なのでっしてー」
「な、わ、我がユグドラシルブレイドと藤甲を否定するか!?」
 まあ実際触っただけで死とか何も効かない鎧とかぼくのかんがえたの基本にして究極である。まさに大人になれなかったぼくたちが自慢気に見せつけるものだろう。
「藍ちゃんくん思いまするに、それ、塩試合というのではー? そんなんだから不人気で忘れられてしまうのでっすよー?」
「ふ、不人気だと……許さぬ! 神農の裁きを受けるがいい!」
 究極の地雷ワードに怒りに任せて剣を振り下ろす神農。その一撃を、藍は余裕の表情でひらりと避けた。
 藍はただ遊びで相手を馬鹿にしていたわけではない。言いくるめと挑発で相手の心を突き、その太刀筋を思い切り乱していたのだ。
 弱体化してなおフィジカル面では圧倒的な力を持つ神農兀突骨。なれば物理でない所を攻めればいい。丁度いいことに藤甲の精神耐性は失われている。正面が強い相手に馬鹿正直に真正面から当たる必要などどこにもないのだ。
 外れた剣から食肉植物が生え神農兀突骨の力になるが、結局振り回す神農が怒り狂っていればその攻撃は単調。避けるには問題ない。
「そんな不人気さんの為に特別ライブをあげましょう! 貴方の為に歌いまっす! というやつでっすよー! 永遠にアンコーッルなのでっすよー!」
 愛用マイクを取り出して【藍ちゃんくんワンマンショー!】をおっぱじめる。それを聞いた神農の感想はもちろん『こいつうるせええ!』だ。
 そしてその感情こそが起爆剤。
「おかんむりな相手にはこのUCはとてもよく効くのでっしてー。藤甲の隙間に染みる、耳を塞ぐことも許さない口撃をプレゼント!」
 『地味』『不人気』『人気投票圏外』『誰だっけ?』等々の言葉が藤甲の隙間から染み入ってくる。
「あああうるさい! い、いかん! 藤甲が邪魔で耳も塞げん! やめろ! 我を愚弄するな!」
 ユーベルコードのダメージ以上に心に色んな傷を負っている気がする神農。そのままがっくりとうなだれ言われるがままになる神農の姿には、最高神の威厳など微塵も残ってはいないのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

バルタン・ノーヴェ
POW アドリブ連携歓迎!

大人気で元旦の予兆にも出た編笠、最初の有力的であった始皇帝、クロムキャバリア勢の想いを一身に受けた哪吒に、心優しく美しき妲己殿。
王翦大将軍とアナタは、まー、うん。
……挑みマスヨ、兀突骨! 南蛮の勇の力、見せてもらいマース!

一撃必殺でないなら遅るるに足らず!
高威力とはいえ変幻自在のユグドラシルブレイドの動きを見切り、ファルシオンで受け流して懐へ飛び込みマース!

藤甲に回していた防御力を半端に攻撃に回した分、劣ったパワー…純然たるパワーで押し通る!
「骸式兵装展開、岩の番!」
岩翼で神農を抑え、岩腕で藤甲の隙間に指をかけて……!
引き、裂き、マースッ!
そして、中身を、殴打ッ!



 なぜか最後まで再孵化しなかった神農兀突骨。その理由をバルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)が分析する。
「大人気で元旦の予兆にも出た編笠、最初の有力的であった始皇帝、クロムキャバリア勢の想いを一身に受けた哪吒に、心優しく美しき妲己殿。王翦大将軍とアナタは、まー、うん」
 先に再孵化した者たちにはそれ相応の理由がある。外見や内面のインパクト、早期登場で競合者がいないというアドバンテージなど、冷静に考えてみれば思い当たる節は色々とあるのだ。
「そうか……ならば王翦と我は何が違う! 奴は確か本人がまだ余裕で生きているうちから再孵化していたぞ!」
「あー……女の子だし、あとアタックのトップでしたね」
 嫌がおうにも毎日見ざるを得ない場所にいた王翦大将軍。対して神農兀突骨はどのコーナーにも顔を出していない。そう、忘れられるには明確すぎる理由があったのだ。
 まあ実のところそれ以上に忘れられる理由がありそれにはバルタンも一枚……厳密には執筆時で91分の1枚噛んでいたりはするのだが、これは仕方ない。詳しくは言えないが三皇より偉い所からツッコミ来たくらいだし。
 まあとにかく、そんなんでもすさまじく強いのは変わりない。ユグドラシルブレイドが先制ですさまじい勢いを持ってバルタンに振り下ろされた。
「……挑みマスヨ、兀突骨! 南蛮の勇の力、見せてもらいマース!」
 明確な威力を持ったその剣。だが、それは早く、重く、鋭い。ただそれだけ。
 バルタンは『ファルシオン』を掲げ、その重い一撃を剣全体に重さを分散、逃がしながら滑らせ受け止めた。
「一撃必殺でないなら遅るるに足らず!」
 そう、本来ユグドラシルブレイドは『触れた』だけで相手を殺す。即ち掠るどころか受ける、止めると言った回避方すら不可能なのだ。だが、今は違う。
 その強すぎる力を逆用し、自分を押すようにして神農兀突骨の下半身……兀突骨の前に滑り込むバルタン。
 手をかけるのは、これまた『ただ固い』だけと化した藤甲の隙間。
「藤甲に回していた防御力を半端に攻撃に回した分、劣ったパワー……純然たるパワーで押し通る!」
 向こうでないなら力比べができる。両方使えるようになった代わりに計り知れる力となったのだ。挑む価値は十二分にある。
「骸式兵装展開、岩の番! ……あなたは背景になっててくだサーイ!」
 大天使ブラキエルを模した岩の翼で神農を抑え込み、兀突骨と力比べをするバルタン。兀突骨もまた大力の相手との勝負に興奮し震えているようにも見える。
「まさか! 兀突骨、お前まで我を裏切るのか!」
 自分を差し置いて注目を浴びる魔獣に驚愕する神農だが、バルタンはそれに構っている暇などない。全力で藤甲を押し広げ。
「引き、裂き、マースッ!」
 ついに、兀突骨を包む堅牢な鎧が開かれた。その奥にあるのは柔らかそうな身。
「そして、中身を、殴打ッ!」
 外角が固い生物ほど中身は柔らかい。その理を示すが如く、兀突骨は大きく吹き飛び転がった。当然くっついている神農も一緒に転がっていくがそれはおまけ。
 かくして神農は色んな意味で思いもよらぬ相手に負けを喫したのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

荒珠・檬果
そういえば、見てませんでしたね。
しかし、ごっさん(兀突骨)に問うたとて…。

というわけで、先制は…避けるよりかは竜脈使いで強化し厚くした結界に当てる方がいいですね。見切っていきますよ。

えーと、再孵化…まあ、最近まであなたは本物(?)いましたし。
妲己はほぼ落ちると同日にだった気もしますので?
私としては、試したいこと試せるので関係ないっちゃ関係ないんですが。ええ、待望の再戦ですが?

で、試したいことって隙間に関してなんですよ。
…このUC、風なんですよ。相手にとっては思いっきり強い向かい風になるんです。
隙間あったら、入り込みますよね?つまりは刺さる。



 多くの敵が再孵化し、その上本物と入り交じる戦場ではどの敵がどれだけいるのか瞬時に把握するのは難しい。だが、特定の相手だけに絞って考えてみれば意外と分かってくるもので。
「そういえば、見てませんでしたね。
しかし、ごっさん(兀突骨)に問うたとて……」
 荒珠・檬果(アーケードに突っ伏す鳥・f02802)はそう言えば彼の再孵化依頼が一つも登場していなかったことを思い出す。そして彼が戦前に喋れぬはずの兀突骨に必死に語りかけていたことも。
「仕方あるまい。今の我には兀突骨しか話し掛ける相手がおらぬのだ」
 不人気な上に話し相手がペット(?)しかいないぼっちとか……とは思っても言わないのが優しさ。初めての舌戦を仕掛けてこない相手に、神農も心安らかに先制攻撃を繰り出した。
「先制は……避けるよりかは竜脈使いで強化し厚くした結界に当てる方がいいですね。見切っていきますよ」
 この地は鴻鈞道人が変じたものとはいえ、他ならぬ神農自身の力に満ちた生命力溢れる場所である。そこに満ちる竜脈もまた力強く、その力を得た結界は正面からユグドラシルブレイドを受け止めるに至った。
「見事よ……よもや力の喪失がここまで響こうとはな!」
 触れたもの万物を殺すユグドラシルブレイド。本来なら受け止めて防ぐということはできず、そしてかわしたとてその剣からは神農を強化する食肉植物が繁茂する。当たれば死、避ければ苦戦の二択を迫るその技は、本来想定する必要もなかった『受ける』という手段によって封殺されていた。
 剣と結界で鍔迫り合いをしながら、檬果は神農兀突骨をここに立たせる再孵化について思う。
「えーと、再孵化……まあ、最近まであなたは本物(?)いましたし。妲己はほぼ落ちると同日にだった気もしますので?」
 再孵化の順番にはオリジナルが倒される順番も関係しているのではと考える檬果。確かに殲神封神大戦全体を考えれば、再孵化したものなら誰でもいい鴻鈞道人と当然ながら本人を倒さねば戦力は減らせない本物ならどちらを優先すべきかは明らかだ。
「私としては、試したいこと試せるので関係ないっちゃ関係ないんですが。ええ、待望の再戦ですが?」
 そして、考えていた対策があっても相手が倒れてしまえば試す機会は永遠に訪れない。再孵化にてあり得なかったはずのそれを得られたことは檬果にとってはまさに望外の喜びであった。
「ほほう……死してなお我に見えたかったと! よかろう、その策、我に通じるか試してみよ!」
 まさか自分を望んでいたものがいたとは。予想もしていなかったことに神農の声も心なしか弾んで聞こえる。
「では遠慮なく。えーと、応用だそうです」
 【風気秘術、絶えたとて】、圧縮した風が矢となって神農にせまる。それは確かに突き立てられるが、正面から行ったのではさすがに藤甲を貫くにはいたらない。
「待ち望んだところ残念であったが……どうやらそなたの策は失策であったようだな」
 本来はこういう性格なのだろう、余裕を滲ませ神農がいう。
「いえいえまだです……このUC、風なんですよ。相手にとっては思いっきり強い向かい風になるんです」
 その言葉どおり、神農兀突骨に打ち付ける風はどんどん強くなっていく。
「隙間あったら、入り込みますよね?つまりは刺さる」
 その言葉と同時に、藤甲に守られた神農兀突骨の体から大量の血が噴き出した。兀突骨も苦悶の表情をうかべ、神農も傷を抑え蹲る。
「なるほど……真なる藤甲の力あれび風そのものをなきものとできたであろうに……さすがは、我が再孵化を望んだ者よ……!」
 溌剌たる命を収穫することこそ喜びとする農耕神に、強者との死合いを望む荒ぶる獣。敗れはすれどこれぞ本分よと、
神農兀突骨は己に挑みし者に言うのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
人数が多い分、個々人の出番は減りますよねぇ。

『FAS』を使用し飛行、回避行動を開始すると共に『FMS』のバリアと『FSS』のシールド、『FXS』の結界と『FGS』の重力結界を重ねて展開しましょう。
『一撃必殺』で無い以上は『戦闘継続可能な程度』へ軽減し【UC】発動に繋げられれば十分ですぅ。

【厖拵】を発動し巨大化、負傷を回復すると共に、強力な『斬撃耐性』を得られる『祭器の衣』を纏いますねぇ。
同時に各『祭器』の数も増えますから、『FRS』の[砲撃]と『FDS』の[爆撃]を隠れ蓑に、『FBS』による[切断]で『鎧の隙間』から[部位破壊]し剥しましょう。
剥した『藤甲』は戦利品に。



 散々ネタにされているように、神農兀突骨の再孵化は一番遅かった。だが実のところ、他の面々だってそれほど頻繁に再孵化されているわけではない。
「人数が多い分、個々人の出番は減りますよねぇ」
 そのため夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)のこの指摘も、決して的外れなものではないのだ。
 だが、一は百倍すれば百になるがゼロは何倍したってゼロである。一とゼロの間には埋めがたい隔たりがあるわけで。
「その出番そのものが危うくなくなりかけたのだ……この苦しみ、分かるまい!」
 実際これ書いてる途中に張角出てきちゃったからね。一日遅れてたら危なかったね。てか昨日あんなに鴻鈞道人の戦力消えるとは思わなかったよ!
 だが事実として、神農兀突骨は間に合った。しからば務めを果たすのみ。るこるに向けてユグドラシルブレイドを振り上げる神農。
 それに対し、るこるは宙に浮きながら前方にバリアに盾を配置、さらにそれ全体を囲むように結界を張りその外には重力波と多重の防御を敷いて待ち受ける。
「これが神農の剣よ!」
 圧巻の威力をもって振り下ろされるそれは、重力を振り切り、結界を突き破り、盾を跳ね飛ばし、バリアを切り裂き、その長大なる刀身をもって上空のるこるにまでその刃を届かせた。これだけの防御を張ってなおその威力は凄まじく、身を深く切られるこるは浅からぬダメージを負う。
 この被害、決して無視できるものではない。だが、それで良い。
「倒れなければ……」
 ユグドラシルブレイドは必殺の刃。本来なら体、下手をすれば盾あたりが斬られた時点で死が確定していた。だが、特異な必殺ではなく極限の鋭さとなった今の剣なら、考えうる通常の手段で軽減しうる。
 もちろんそれでも神農の攻撃力は最上級。並の守りではその生命力、いわゆるHPを一気にゼロまで削り取られてしまうだろう。
 そうされぬための全力の防御、そしてHPが一でも残れば。
「大いなる豊饒の女神、その至大なる力と恵みをお与えくださいませ」
 るこるは【豊乳女神の加護・厖拵】を使用、自身の乳と装備を倍加し、一だったHPを一気に回復させた。元の必殺剣が相手では決して取り得ない手段。そう、『一とゼロの間には埋めがたい隔たりがある』のだ。
 そして守りが終われば、今度は攻撃兵器の出番。爆撃、砲撃が神農に襲い掛かり、一気にその視界を塞いでいく。
「ぬうう、やってくれる!」
 ユグドラシルブレイドは必殺。つまり神農は一撃を当てた相手への止めやニの太刀には慣れてはおらず、追撃が遅れたのも反転攻勢を許した理由か。
「なれど、この程度の攻撃虫に刺されたにも等しい! 無敵を失えど我が藤甲、我が兀突骨は堅牢なり!」
 宣言の通り藤甲の防御力もまた至上。いかに増やそうと数頼み……もしかしたら質頼みですらそれを貫くことはできないかもしれない。
 そして、るこるもそれを当てにしていたわけではない。
「ならば、私のFBSもぉ」
 爆撃と砲撃の幕の下。明確に見極めた藤甲の隙を、鋭く飛んだ戦輪がすり抜けた。それは奥にある兀突骨の体を切り裂き、その強靭な体、神農兀突骨の下半身を破壊した。兵装たちの連携が、最強と無敵のコンビネーションを破ったのだ。
「してやられたか……そなたもまた従えるものを信じ、恃む者! 肥沃の身は伊達ではないと……!」
 るこるの体に称賛を送りながら下半身を崩れさせる神農兀突骨。表現はあれだがセクハラの意思は一切ない。
 農耕と医療の神を切り裂いた豊饒の祭器。まるで大義を成した勇者の如く、戦輪が藤甲の一部を削り取りながらるこるの元へと戻るのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーゼロッテ・ローデンヴァルト
【WIZ】
※アドリブ歓迎
※【ナインス・ライン】搭乗

やあ、ゴツゴツさん♪…違う?
ごめんね、難読名の上に合体状態で影が薄くてさ♡
兎に角、ユグブレや藤甲の諸々を頂くよっ♪

◆先制
【瞬間思考力】で状況解析
命中前に【セレス】で緊急転移
回避しつつ距離&高度を取る

◆攻撃
オペ103番【カノニエ・ルヴナン】開始
【クリュザンテーメ】を変形させ滞空&回避
【ホークス・ビーク】のEN徹甲弾を簒奪性質へ変調

【スターゲイザー】&【瞬間思考力】&生体電脳で
命脈点(概念的弱点)を解析

後は【アダマンタイト】の出力と
環状ビット6基で増強したEN徹甲弾が
鎧の隙間から本体の命脈点を貫きパワー吸収
ついでにユグブレ・藤甲のパワーや試料を採取



 神の上半身に魔獣丸ごとの下半身を持つ神農兀突骨はかなりの巨躯を誇る。だが、それに匹敵する巨体が彼の前に現れた。
「やあ、ゴツゴツさん♪……違う?」
「神農兀突骨だ! あだ名をつけるな! 我一応最高神ぞ!」
 愛機『ナインス・ライン』に乗ったリーゼロッテ・ローデンヴァルト(マッド&セクシーなリリー先生・f30386)のスピーカー越しの気さくな挨拶に思いっきりつっこむ神農兀突骨。相手が機械っぽくても気にしないのは哪吒を見たことがあるからかそれとも色々それどころではないからか。
「ごめんね、難読名の上に合体状態で影が薄くてさ♡ 兎に角、ユグブレや藤甲の諸々を頂くよっ♪」
 さらに挑発を交えつつ、相手の一撃を待ち構えるセレス。それに神農兀突骨はユグドラシルブレイドを振り下ろし答えた。
「しばしばそう考える簒奪者は来る。そして皆我が剣の前に散っていったわ! あと面倒なのは兀突骨だけで我は割と読みやすい方ぞ!」
 神の威厳を出したり引っ込めたりしつつの先制。まあ、王翦とか哪吒は本人のネームバリューで読めているだけで何も知らなければかなり難読漢字だよね。
 その恐るべき剣の一撃を、リーゼロッテは狂気の域にまで高まった思考力で一瞬のうちに読む。
 その一撃の通り過ぎる場所、特殊スラスター『セレス』を用いての極短距離瞬間移動でそこだけから機体を離脱させる。攻撃の速さと機体の大きさを考えれば、とにかく一撃を受けない場所に動くのが精一杯。そして外れた剣は地に突き立ち、そこから食肉植物を絨毯のように広げていく。
「面白い。我らと同じ高さを持つ者との戦はそうない。来るがいい!」
 その植物の上に立つ神農兀突骨に、リーゼロッテは相手の間合いから逃れるよう高く、遠くへ飛び去っていく。
「来いと言われて行くバカはいないよ」
 必殺の剣が無くても神農兀突骨の戦士としての実力は最上級。それを強化しているフィールドの上で組み合ってやる気などさらさらない。
「オペ103番【カノニエ・ルヴナン】開始」
 はるか上空から、冷たく告げるリーゼロッテ。これから行うのは戦士の戦いではない。機械的な『処置』であり、欲しいものの『回収』だ。
「【クリュザンテーメ】を変形させ滞空&回避。【ホークス・ビーク】のEN徹甲弾を簒奪性質へ変調」
 必要な装備を素早く展開、解放し神農兀突骨へ狙いを定める。
「我が空に手を出せぬと? 甘いな。跳べ、兀突骨!」
 逞しい四肢をバネの様に使い、神農兀突骨の巨体が飛ぶ。重さをまるで感じさせぬほどに力強くも軽やかな跳躍が迫る。だが。
「お、読み通りの所に来たねえ。じゃ、吸わせてもらおうか♪」
 宙に逃げれば追って来れない、そんな甘い相手ではないことはリーゼロッテも分かっていた。サブジェネレーター『アダマンタイト』をフル稼働させ、環状ビット6基で増強したEN徹甲弾で滅多打ちにする。狙うは自身が宙を舞ってから相手が飛んでくるまで、その短い間で何とか考え抜いた藤甲の隙間の場所。
「ぬるい!」
 剣による防御と藤甲が徹甲弾を弾き返していく。やはり全弾着弾させるなど不可能か。だからこそ、隙間のさらに奥までリーゼロッテは見通そうと思考を回転させていた。
「狙うは命脈点……この世界のお約束だろ?」
 万物には中心、核がある。点穴、チャクラ、それらの考えは封神武侠界では様々な分野に取り入れられている。そこをたった一発貫けば倒し能うと、リーゼロッテはその点に向けての射撃を本命としていた。
「ぐっ……!」
 そしてついに一発、隙間を徹甲弾が貫いた。宙に舞ったことで食肉植物の強化は消えている。空中戦ができないわけでなくとも増えてであることは間違いないのだ。その一発を受けきれず、神農兀突骨は力を吸われるに至った。
「せっかく簒奪を成したところ申し訳ないが、これは不完全な品でな……それで良ければ持っていくがいい。ところでだ」
 押し返され、上昇の止まる神農兀突骨。
「そなたの言ったあの仇名……あれ我の名前入ってないな!? おのれぇぇぇ……」
 敗北以上にそちらに屈辱を滲ませつつ、声を後引かせながら神農兀突骨は地に落ちていくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鵜飼・章
あっユグドラシルブレイドさんだ
後ろに誰か見えるけど…渾沌氏だっけ
僕かっこいいと思うけどな
ユグドラシルブレイド…
皆必殺剣の魅力をわかってないよね

やっぱり兀突骨がマニアックだったんじゃない
もっと三国志ファンが盛り上がる人選してよ
呂布とか趙雲とか…色々いたでしょ
読心術で彼の心情を汲みつつ相槌を打とう

そんな貴重な理解者たる僕を
迂闊に必殺していいのだろうか
言いくるめとコミュ力で攻撃を躊躇させ
その間に鎧の隙間を探すよ

気づかれないようにUC発動
隙間から虫を潜り込ませ
徐々に攻撃力と動きを鈍らせていく
攻撃の威力が弱まれば
武器の投擲で剣を叩き落とせるかな

可哀想に…
きみは眠るようにおやすみ
隙間から鉈を通し解体するね



 倒されてすぐ再孵化した神農兀突骨。だが、その新たな体さえ猟兵によって攻められ既に風前の灯火となっていた。
「あっユグドラシルブレイドさんだ。後ろに誰か見えるけど……渾沌氏だっけ」
 その後ろにいる者さえもを見透かし、鵜飼・章(シュレディンガーの鵺・f03255)が彼の前に現れる。
「そなたも我を」
「僕かっこいいと思うけどな」
 名前を武器名で呼ばれたことに突っ込もうとした矢先、まさかの褒め言葉に神農の手が止まる。
「ユグドラシルブレイド……皆必殺剣の魅力をわかってないよね」
「うむ、まさに三皇たる我にのみ許される必殺の剣よ。まあそれ故に渾沌氏も再生しきれなかったのが難点ではあるがな」
 再孵化して初めての褒め殺しにすっかり気を良くする神農。三皇の威厳一切なしである。
 もちろん章とて遊んでいるわけではない。読心術で彼の調子を見つつ、彼が次に抱いている『なぜ自分は不人気なのか』という疑問を読み取って検証に入る。
「やっぱり兀突骨がマニアックだったんじゃない? もっと三国志ファンが盛り上がる人選してよ」
「ほう、というと?」
「呂布とか趙雲とか……色々いたでしょ」
 著名な人物を適当に例に上げてみたところで、神農は大きくかぶりを振った。
「ああ、いかんいかん! 呂布など下半身にしてみろ、餌の匂いのする方に走った挙句こちらに噛みついてくる! あの曹操ですら手下にするのを拒んだ男だぞ! 趙雲は本人は悪くはないが、あれはどうも主と噛み合わぬことが多い。巡り合わせというものに見放された男よ。やはり我が身を預けるは、兀突骨より他になし」
 たとえマイナーであっても自身が選び抜いた相棒ということか、兀突骨への信頼は厚いらしい。不人気嘆く時に必死に語り掛けていたくらいだしね。
 それからも色々と相槌を打っては時間を稼ぎつつ先制の発動を遅らせ、有利な状況を探す章。
「そんな貴重な理解者たる僕を、迂闊に必殺していいのだろうか」
「名残惜しいが、せざるを得ぬ。これも定めよ」
 やはりそこは割り切っているのか、神農は話はここで終わりだとばかりに周囲に無数のユグドラシルブレイドを展開させ、それを章へと差し向けた。
 レベルの数だけ複製されたユグドラシルブレイドの数は、一目に数え切れぬほどに多い。稼いだ時間とその間に築いた仮初の友好、それでできた僅かな隙間に身を入れ、章はどうにか直撃だけは躱し剣の雨を避け切った。
「議論は既に終わっている。≪現在完了≫」
 そこに潜りながら、小声で【現在完了】の虫たちを放つ章。向かわせるはやはり会話の間に探した藤甲の隙間。小さな毒虫を大剣の雨操る巨体に差し向け、その隙間に潜り込ませる。
「……ぐっ!?」
 小さな隙間からの一刺しに動きを止められる神農兀突骨。それと同時に、無数に動いていた剣が一斉に消え失せる。
「医療と農耕を司る我が毒虫の一刺しに敗れるか……皮肉よ」
 世界に伝わる不死の英雄がたった一刺しで命を奪われる話。それを神農は知っていたのか。
 体が動かず、視界も狭まる。ユーベルコードの猛毒は、神と魔獣の身さえ蝕んでいった。
「どうやら鴻鈞道人も引いたようだ。これで本当に我らの出番も終わり。だが思いの他構われて嬉しかったぞ? 兀突骨もそう震えている。我としては収穫し持ち帰れなかったのは残念だったがな……」
 敗れはしたが猟兵が強い事それそのものを喜ぶような様子を見せる神農兀突骨。強者との戦いを良しとするところで、両者の意思は一致しているのだろう。
「ところで猟兵たちよ、たしかそなたら誰も我の名前は呼んでな」
「可哀想に……きみは眠るようにおやすみ」
 ちょっと気づいちゃいけない所に気づきかけた神農兀突骨の言葉を遮り、章は彼にとどめをかけた。
 かくして、一番最後に再孵化された大いなる神は、予想以上に早く、多く殺到した猟兵たちによって再び骸の海へ帰されたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年01月29日


挿絵イラスト