殲神封神大戦⑱〜底抜けの器に注がれるは
●無限の書架
封神武侠界の文化の祖。
その『三皇伏儀の塒』の祠は『無限の書架』と『さまざまな世界の言語や呪文』で満たされている。
それは恐ろしい魔力が充満した状態であり、伏儀の書架に収められた膨大な知識は近づいただけで理性ある存在を『知識中毒』状態に陥らせる。
「あー、うー、あー……」
それは例え、オブリビオンであっても変わりない。
動く石の屍『ストーンキョンシーズ』たちは、僵尸を模した席図のオブリビオンである。彼らもまた理性ある存在であるがゆえに、伏儀の書架に収められた知識でもって脳を破壊されている。
脳の破壊された彼らはユーベルコードを狂乱のままに使い続け、膨大な数でもって『三皇伏儀の塒』にてうごめく。
この地を制圧するには脳を破壊されたオブリビオンを排除せねばならない。
しかし、オブリビオン以上に厄介なのが『知識中毒』である。
これを如何にして躱すか……猟兵たちの手腕が試されている――。
●殲神封神大戦
グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)であった。
「……」
いつもであれば、集まってくれたことに彼女は礼を言う。
しかし、今の彼女は真剣な顔のまま何やら手振り身振りをしている。正直な所、さっぱりわからん。
一体彼女は何を伝えようとしているのだろうか。
「……やはり、私ではうまく皆さんに『言葉と文字』を使わずに情報をお伝えすることができないようです」
残念そうな顔をしているナイアルテに猟兵達は首をかしげるだろう。
一体どういうことなのかと問いかけると、彼女は微笑んで頷くのだ。
「封神武侠界の文化の祖とされる神、三皇『伏儀』の祠――『三皇伏儀の塒』にオブリビオンがうごめいているのですが、これを打倒することはオブリビオン・フォーミュラ『張角』との戦いを有利に進める上で避けては通れぬ道です」
それはよくわかっている。
だが、先程のナイアルテの身振り手振りは一体なんだったのか。
「それはですね、この地には恐ろしい魔力が充満しています。伏儀の祠には『無限の書架』と『さまざまな世界の言語や呪文』が満ちています。しかし、これは近づいただけで理性ある存在を『知識中毒』にし、脳を破壊するのです」
この地にうごめくオブリビオンは、全てが脳を破壊され狂乱のままにユーベルコードを使い、大量に増えてしまっているのだ。
これを打倒したいところであるのだが、この伏儀の書庫は『会話や文字を操る者』を見つけると瞬時に脳を破壊しようとするのだ。
つまり、猟兵達は『言葉と文字』を使うことなく、身振り手振りや無意識の連携のみで、オブリビオンの群れと戦わなければならないのだ。
「……あるいは、『ものすごいバカ』……こほん。もう少し言葉を選べば……ええと、その、底抜けに、えぇと……」
ナイアルテは言葉の選び方を慎重に行っていたが、考えれば考えるほどに『ものすごいバカ』をどう言い換えて良いかわからなくなってしまっているのだ。
ドツボにはまるというやつである。
「……その、あの、すみません。と、兎にも角にも、『ものすごいおバカさん』になれば、その、書庫にロックオンされることもないかもしれません!」
あ、これはだめである。
『お』と『さん』をつければなんとかなると思っている類である。
ナイアルテは恐縮しきりといったふうに顔を赤くしながら、ブンブン手を降っている。
「み、皆さんが『ものすごいおバカさん』になれば、きっと書架の魔力の影響は受けないはずです。頭を空っぽにし、底を抜けば、きっと『ものすごいおバカさん』に慣れると思うのです」
具体的な方法は何も提示されていない。
しかしながら、頭空っぽにしたほうが夢を詰め込めると昔の人は良い歌を作ってくれた。
知性、インテリジェンスの欠片もないように振る舞えば、それはもうすなわち『ものすごいおバカさん』である。
まあ、『言葉と文字』を使わなければいいわけであるが。
しかし、どんな拍子に言葉を紡いでしまうかもわからない。
「私自身も『ものすごいおバカさん』になるのはどうしたらいいのか、皆目見当もつきません……ですが、皆さんならば、きっと『ものすごいおバカさん』になる方法を見出すことができるはずです!」
其処に在ったのは信頼の瞳であった。
これまでどんな難題にも猟兵達は応えてきた。
ならば、今更『ものすごいおバカさん』になることなど容易であるはずだとナイアルテは信じて疑っていない。
無垢なる瞳。
それに見送られ、猟兵達はこの無理難題を御し、如何にしてオブリビオンを打倒するのかに頭を痛めるのであった――。
海鶴
マスターの海鶴です。
※これは1章構成の『殲神封神大戦』の戦争シナリオとなります。
『三皇伏儀の塒』にて広がる『無限の書庫』と『さまざまな世界の言語と呪文』が満ちる危険な書庫にうごめくオブリビオンを打倒するシナリオになります。
この書庫は、理性在る存在の脳を『知識中毒』にして破壊する恐るべき場所です。
オブリビオンは全て脳を破壊されているため、狂乱のままにユーベルコードを使っています。
そのため、ものすごい数へと増えに増えてしまいました。
これに対抗するためには『言葉や文字を使用しない』か、『ものすごいバカになる』かの二択です。
皆さんが戦場に足を運んだ瞬間にロックオンされるので、上記の二択でもってロックオンを躱さねばなりません。
※このシナリオには特別なプレイングボーナスがあります。これに基づく行動をすると有利になります。
プレイングボーナス……「言葉と文字」を使用せず戦う。もしくはものすごいバカになる。
それでは、明日また着てください。見せてあげますよ、本当の『ものすごいバカ』ってやつをってなる皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります。
第1章 集団戦
『動く石の屍『ストーンキョンシーズ』』
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POW : 重石重撃
【重い石の拳】が命中した敵をレベル×10m吹き飛ばす。
SPD : 同族支援
【もう一体の同族】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
WIZ : 石化閃光
【両瞳】から【赤い閃光】を放ち、【石化状態】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
御堂・茜
言葉を使用しなければ良いのですね!!!(クソデカ大声
安いご用でございます
武士は剣で語るのみ
その意気や良しッ…!
いざ尋常に勝負です!
(説明しよう!
UC絶対正義を発動する事により
ただでさえ乏しい茜の理性と知性はゼロになり
悪っぽいものを全て成敗する狂戦士
すなわちものすごいバカになるのだ!)
あちらにも悪…!
こちらにも悪…!
大変ですわ!悪だらけですわ!
わたくしの溢れる気合で全て一刀両断致します
気合と正義さえあれば何でも可能ッ!
敵の拳が重くとも御堂は気合で耐えますので
何ともございませんわ!
覇気覚悟勇気根性元気情熱…!
つまり…気合い!
それらが暴力的怪力となり
悪は全て御堂の前に散るでしょう!
これにて一件落着!
『三皇伏儀の塒』は、恐るべき魔力に満ちている。
『無限の書架』、『さまざまな世界の言語や呪文』が収められ、その膨大な知識は理性在るものを一瞬で『知識中毒』にしてしまう。
ゆえに言葉や文字を使うことなくうごめくオブリビオンたちを打倒しなければならないのだ。
「あ、あー、うー、あー」
オブリビオンである動く石の屍『ストーンキョンシーズ』たちも、その『知識中毒』によって脳を破壊された存在達である。
彼らはもう言葉を発することはできない。
ものを考えることもできないだろう。意志なき石である。酷い。二重の意味で酷い。
「なるほど言葉を使用しなければ良いのですね!!!」
そんな『三皇伏儀の塒』に響き渡るクソデカ大声。
あれ、グリモア猟兵の説明聞いてた? とこの場に満ちる魔力も思っただろう。
いや、たしかに説明した。しっかり説明した。
言葉を使うと『知識中毒』にされると。この魔力にロックオンされてしまうと。
けれど、クソデカ大声の主である御堂・茜(ジャスティスモンスター・f05315)は、そのふんわりガーリープリンスな雰囲気とは裏腹に、特に何も考えていないかのような態度でもって挑むのだ。
「おやすいごようでございます。武士は剣で語るのみ。その意気や良しッ……! いざ尋常に勝負です!」
あれ、ロックオンされてない。
なんで? となるだろう。わかる。そう、簡単なことなのである。
説明しよう!
茜は絶対正義(ジャスティスモンスター)を発動することにより、ただでさえ乏しい茜の理性と知性はゼロになり、悪っぽいものを全て成敗する狂戦士、すなわちものすごいおバカさんになるのだ!
ナレーションが唐突にカットインしてくる。
あーもーめちゃくちゃだよーってなるくらいに茜には理性などなかった。ついでに緑のフレームがお似合いであるが、大変に今知性ゼロである。
この書庫の魔力が彼女をロックオンしていないことからも、それは確かなのだ。
「あちらにも悪……! こちらにも悪……! 大変ですわ! 悪だらけですわ!」
もうお構いなしである。
此処まで来るとさすがの魔力も効かない。というか、あれはもう理性とか知性とかそういうのを超越した存在である。
茜の瞳はユーベルコードというか、悪っぽいものを全て成敗するバーサーカーそのもの。
目に入る『ストーンキョンシーズ』全てが悪に見える。まあオブリビオンだから、悪って言えば悪であるので間違ってない。
間違ってはいないが、彼女が振るう身の丈ほどの普通の大太刀。
普通とは一体。
その身の丈ほどある大太刀を彼女は古い、衝撃波を生み出し、うごめくオブリビオンたちを一撃のもとに吹き飛ばし、破壊していくのだ。
「気合と正義さえあれば何でも可能ッ!」
「あー、うー!」
『ストーンキョンシーズ』から放たれる拳の一撃もなんのそのである。
茜はなんでも気合で解決するバーサーカーである。
「なんともございませんわ!」
えぇ……。
これには書庫の魔力もドン引きであろう。すさまじい気の高まりを持って茜は大太刀をぶんぶんぶぶんと振り回し、大太刀でもってオブリビオンを霧消させていく。
「覇気覚悟勇気根性元気情熱……!」
ものすごい早口である。そう、全てにおいて茜は、知性を凌駕するものを持っている。
つまり……気合である!
「悪は全て御堂の前に散るでしょう!」
まさに暴力的怪力。
本当に姫なんでござるか? となるほどの絢爛舞刀。否、バーサーク。
彼女の前に『ストーンキョンシーズ』はただの石塊に戻るほかない。彼女がひた走った後には、悪のぺんぺん草も生えない。
「これにて一件落着!」
ではないのだが。
まあ、それでも彼女の座右の銘『世界平和』は、その胸に熱き気合でもって、書庫の魔力を寄せ付けぬ『底抜け』なる熱き姫を知らしめるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
上野・修介
※アドリブ・連携歓迎
元より己の武器は素手喧嘩(ステゴロ)。
鍛えた五体と染み付いた技、あとは多少の意地のみ。
音声認証や詠唱の類も不要。
UCにしても、常に無意識にやっていることに名前を付けたに過ぎないのでわざわざ声に出して『起動』させる必要すらない。
――故にいつもと変わらない
――為すべきを定め、心は水鏡に
調息、脱力、戦場を観据える。
目付は広く、敵の数と配置、周囲の状況を把握
UCは攻撃重視
立ち回りは基本ヒット&ウェイ。
姿勢は低く敵の懐から懐へ渡るように初動から足を止めず常に動き回る、あるいは近くの敵を遮蔽、もしくは殴る・蹴る・ぶん投げる等で投擲物として利用し、包囲と被弾を極力回避しながら殲滅。
『無限の書架』と『さまざまな世界の呪文と言語』に満ちる恐るべき魔力は、理性在るものの脳を破壊する。
それはオブリビオンであっても変わらぬことであった。
『言葉や文字』を扱う者であれば、知性あるとみなされ、魔力にロックオンされ『知識中毒』でもって脳を破壊し、亡者のごときうめき声を上げるだけの存在へと変わり果てる。
動く石の屍『ストーンキョンシーズ』もまたその犠牲者であった。
「ああー、うー、あー、ううー」
彼らもまたオブリビオンであるのだが、そうやってうめき声を上げるだけの存在に堕したことは、同情すべきところであったのかもしれない。
されど、上野・修介(吾が拳に名は要らず・f13887)は頭を振る。
もとより己の武器は素手喧嘩。すなわちステゴロである。そこに知識は必要ない。あるのは侠気のみ。
鍛えた五体、染み付いた技。あとは多少の意地のみ。それが侠気というものである。
音声認証や詠唱の類も不要。
息を深く吐き出す。
喧嘩だ。これはただの喧嘩なのだ。ユーベルコードであるとか、猟兵だとか、オブリビオンだとか。
そういうものは関係ないのだ。
「――……」
息が整う。
喧嘩において必要なのは気圧されないことだ。目の前に広がるオブリビオンの軍勢とも言うべき数。
それを見ても、修介は恐れることはなかった。
リラックスしている。
――故にいつもと変わらない。
――為すべきを定め、心は水鏡に。
輝くのは瞳。ユーベルコードにまで昇華された拳は手を以て放つに非ず(ケンハテヲモッテハナツニアラズ)という意地。
ただそれだけで彼の拳は岩をも砕く頑強なる一撃へと変わるのだ。
「ああー、うー、あー、ううー」
『ストーンキョンシーズ』たちが戦場を走る。
石像となっているが、それでも彼らの動きは重く、そして速かった。
あの石の拳で殴られれば、それこそただではすまないだろう。
だが、修介は躊躇わなかった。
いつものように踏み込む。
振り抜かれる拳の一撃をかわし、懐から懐へと動きを止めずに線上を走り抜ける。
言葉は要らない。
「――ッシ!」
息を吐き出す音だけが連続して響き渡る。打ち込まれた拳が『ストーンキョンシーズ』たちの胴を穿つ。
ただの一撃で持って修介は彼らの胴を拳でぶち抜き、さらに動きを止めずに次々と彼らを砕いていく。
まさに空前絶後である。
拳で岩がぶち抜けるか?
その答えを修介は体現している。これが本当に近所に住んでいた先生たちが教えてくれたものであるのかと誰もが疑うだろう。
武術、格闘技をもって学生時代に明け暮れた『喧嘩』が練磨した結果でしかないと修介は黙して語らず。
されど、その拳は悠然と『ストーンキョンシーズ』たちを打ち砕いていく。
殴る、蹴る、ぶん投げる。
気持ちの良いくらいの素手喧嘩――ステゴロ。
戦場にあるものは全て利用する。あらゆる包囲を撃ち抜く拳。あらゆる防御をこじ開ける蹴撃。敵の体すら砲弾に変える投げ技。
あまりにも理不尽な暴力。
それが修介の拳である。
言葉は要らず。知性も要らず。
吾が拳に名は要らず。
ただあるのは己の拳のみで良いと知らしめるように修介の拳は次々とオブリビオンを打ち砕き、書庫の魔力すら寄せ付けぬ個の暴風となって吹き荒れるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
スキアファール・イリャルギ
(戦場に降り立った瞬間にUC発動、効果により敵の自滅を狙ってみる
自分は存在感をがっつり消して目立たないようにして
攻撃が当たらないように時折避けつつ突っ立ってるだけ)
(――ところで"ものすごいバカ"ってなんだ宇宙怪奇顔をすればいいんですか正直私の力って詠唱とか何もせずに発動するものですから今回やることがもう無いですどうしようぽげーってしとこうかなぁ……)
(ぽげー)
(攻撃が来ないよう安全確認しつつ、自分の影から猫妖精ラトナをよいしょっと両手で抱きかかえる)
(どう思いますかラトナ)
(知らんがな、と言うように宇宙猫顔になるねこさん)
(あ、残ってる敵が居たら霊障でぶっ飛ばしておこう……)
(ぽげー)
石の動く屍『ストーンキョンシーズ』たちは、次々と己の仲間を召喚し、増えていく。
そこに知性はない。彼らは知性や理性ではなく、ただ本能のままに行動している。戦略も戦術もなにもない。
「あー、うーあー、あーあー」
呻くだけである。
それは『三皇伏儀の塒』において満ちる恐るべき魔力によって脳を破壊されたからである。
この場に満ちる魔力は知性、理性、言葉や文字を使う者をロックオンし『知識中毒』にして脳を破壊する。
なんのために?
それを考えるだけで知性ありきとみなされるのであるから、たまったものではない。
しかし、この地を攻略し制圧することは殲神封神大戦に勝利するために必要なことであり、避けては通れぬ道だ。だからこそ、猟兵達は『言葉や文字を使わず』または『ものすごいバカ』になることによってこの難局を乗り切らんとしている。
スキアファール・イリャルギ(抹月批風・f23882)もまたその一人であった。
彼は戦場に転移し、降り立った瞬間に乾闥婆城の騒霊(ガブルラケット)としての己を誇示するでもなく、存在感をガッツリ消して目立たないように突っ立っていた。
もう此処まで来ると、なんというか、ただの棒人間になっているような気さえしてくる。
(――ところで“ものすごいバカ”ってなんだ宇宙怪奇顔をすればいいんですか正直私の力って詠唱とか何もせずに発動するものですから今回やることがもうないですどうしようぽげーってしとこうかなぁ……)
スキアファールは、ぽげーっとしていた。
いや、まじで何もしていない。
していないのだが、彼のユーベルコードは彼の周囲にある存在に突如としてポルターガイスト現象でもって、様々な怪奇現象に寄る『不快』と『不運』を与え続ける。
彼がこの場に在り続けるだけで、『ストーンキョンシーズ』達は勝手に自滅していく。
召喚した仲間たち同士でごっつんこしたり、そのごっつんこしただけで互いになんかイラッとして小突いたりの小競り合いというか同士討ちが始まる。
正直見ていられない光景である。
もう、昭和の喧嘩のアレのドカポカしている様子でしかない。
それをスキアファールは無心で見ていた。
猫妖精『ラトナ』を抱え、ぽげーって、その昭和の喧嘩コントみたいな様相を呈してきた『ストーンキョンシーズ』たちの自滅を見ている。
多分、背景紙は宇宙。
それくらいにスキアファールはやることがなかった。
抱えた宇宙猫ならぬ悪夢喰らいの猫妖精『ラトナ』もまた同じようにぽげーっとしている。
神モフである体はやわっこいが、なんかもうやる気も感じられない。
何をしていればいいんだろう。
強いて言えば、何もしないことをする、である。
いや、もうこれ逆に脳破壊されてないかなって思わないでもないくらいのスキアファールの瞳にあるのは、濁った色ではなく、銀河色である。
なんだ銀河色って。
わかわからんなってスキアファールは思った。同意を求めるように『ラトナ』に視線をくべるが、『ラトナ』は知らんがなって顔で見上げている。
お互い言葉は交わさないまでも、互いの言わんとしていることがわかるから不思議である。
底が抜けてしまえば、人は大体こんなもんであると言わんばかりである。
あ、とスキアファールは気が付きかけたが、ぽげーっとしているので、特に何もアクションは起こさない。
というか、霊障のたぐいはスキアファールがなにかしようとしなくても勝手に発動するので、後はぽげーって『ストーンキョンシーズ』たちの自滅を見ているだけでいい。
宇宙とは、銀河とは、生命とは。
そんな高尚なことは考えなくてもいい。もふもふ神もふ。ぽげらった。もふもふ。
ぽげらったて何。
そんなふうにスキアファールは、壁のシミならぬ、戦場の影となりて、ただただ己の齎すポルターガイスト現象による不運によって消滅していく『ストーンキョンシーズ』たちの自滅を、ぽげーっと見続けるのだった。
(え、これで終わりなんです?)
(せやで)
一人と一匹は、背景紙を宇宙にして、そのまま戦場に突っ立ち続けるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
紫・藍
(なるほどなのでっす!
言葉と文字を使わず戦う!
つまり!
割とよくある藍ちゃんくんではー?
藍ちゃんくん、歌だけではないのでっすよー?
演奏は言わずもがな、音に頼らずともダンスにパフォーマンス、演技と表現方法はばっちりなのでっす!
無声映画さながらなのでっす!
そもそもでっすねー、藍ちゃんくん。
な、なんと!
黙ってるとブラックホールが発生しちゃうのでっしてー。
というわけで!
増えてく先からしまっちゃおうなのでっす!
相手もお馬鹿さんな以上吸い込み放題いれぐいなのでっしてー!
飛び回り逃げ回り片っ端からお掃除なのでっす!
以上、黙っていてもうるさいと評判な!
でもでもだまり続けると死んじゃう藍ちゃんくんでっしたー!)
『三皇伏儀の塒』にある『無限の書庫』と『さまざまな世界の言語と呪文』は、恐るべき魔力で持って知性ある存在の脳を破壊する。
『知識中毒』。
ただ一言で表すのならば、まさにそのような言葉が適当であったことだろう。
『言葉と文字』を扱うことが知性と理性を顕すのならば、この書庫の魔力は、その存在に流れ込み、脳を破壊し、呻くだけの存在ヘと陥れる。
そう、今まさに呻くことしか出来ぬ存在となった動く石の屍『ストーンキョンシーズ』たちのように。
「あー、あー……」
「う、あーあ、あーうー」
彼らは皆、一様に書庫の魔力に寄って脳を破壊されたオブリビオンたちだ。
既に狂乱のままにユーベルコードを使い、次々と仲間を呼び込んでは脳を破壊されていく。
こうして書庫にうごめくオブリビオンは憐れな存在へとなりながら、次々と増えていったのだ。
(なるほどなのですっす! 言葉と文字を使わず戦う! つまり!)
刮目し、口を噤むのは紫・藍(変革を歌い、終焉に笑え、愚か姫・f01052)であった。
いつものハイテンションスピーチは無い。
けれど、それは藍にとってよくあることなのだ。歌うだけではない。演奏は言わずもがな、音に頼らずともダンスにパフォーマンス、演技と表現方法はばっちり体得しているのだ。
謂わば無声映画。
サイレントキネマ。
なのだが、そもそも藍が黙るとなんと、ブラックホールが発生してしまう。
なんて?
(藍ちゃんくんが黙るだなんて世界の終焉なのでは!?(ワールドエンド・サアイレンス)――)
どういうことなの。
誰もが理解できなかっただろう。
黙ることによって世界に生じた虚を藍は纏い、沈黙の特異点から生じる疑似ブラックホールを放射する。
マジでどういうことなのだろう。
しかし、藍の体は現に『ストーンキョンシーズ』たちの間隙を縫うようにして飛び、ブラックホールを放射し続けている。
それらはまさにブラックホールと同じように次々と彼らを飲み込んでいく。
(吸い込み放題いれぐいなのでっしてー!)
これは楽しい。
次々とまるで掃除機のように『ストーンキョンシーズ』たちがブラックホールに吸い込まれていく。
片っ端から掃除をするゆに藍はオブリビオンたちを始末していく。
しかしながら、黙っていてもうるさいと評判な藍は、長くこの場にはいられない。
だまり続けてしまうと死んじゃうから。
いや、ユーベルコードの効果とは別の意味で死んでしまいそうなのだろう。
それが示すように藍はオブリビオン掃除はそこそこに『三皇伏儀の塒』から飛び立っていく。
これ以上は自分の寿命を縮めてしまう。
黙っていられない。
誰かとおしゃべりしたい。
そんな気持ちのほうが強くなってしまう。オブリビオンの掃除は大方済んでいる。後は他の猟兵に任せてもいいだろう。
そのまま口を噤んだまま飛び立ち、新たなるステージへと舞い降りるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友
第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん
転移直後にUC使用。すると、そこにいるのは『極彩色に輝くデカいクラゲ』だけになる、と。
まあこのUC、心の声が詠唱になってますからねー…表に出ない。
で、これ以降。『私たち』がするのは四天霊障(極彩色化)で陰海月を守ることのみでしてー。
あとは陰海月のお好きなようにー。
赤い閃光が来ても、霊障で弾いて守る…というか極彩色な光に勝てるんでしょうかねー?
※
陰海月、極彩色になりながらダンスして光珠をぽいぽい飛ばす。鳴かないもん!
影の中で霹靂は『友達、元気に輝いてるなー』って思ってる。
1680万色に輝く四悪霊の呪詛纏いし、巨大海月がゆらゆらと揺れている。
まぶしっ。
『三皇伏儀の塒』は今やゲーミングカラーに照らされて、騒々しい様相となっていた。
動く石の屍『ストーンキョンシーズ』たちは、その光景にあっけにとられることなく、ただただ脳を破壊されたがために呻くしかできていなかった。
「あー、うー、あー」
「う、あー」
しかし、彼らもオブリビオンである。
如何に恐るべき魔力に寄って『知識中毒』になり脳を破壊されているのだとしても、滅ぼすべき相手、すなわち猟兵がいるのならば、その瞳を赤く輝かせる。
その赤い閃光は石化させ、得物を破壊するユーベルコードであった。
しかし、それはゲーミングカラーに輝く巨大海月『陰海月』から放たれる霊障でもって弾かれる。
(……極彩色な光に勝てるわけないのですよねー)
馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)たちは、転移直後にユーベルコードによって『陰海月』と合体し、そのゲーミングカラーくらげへと姿を換えていた。
四悪霊・『虹』(ゲーミングカゲクラゲノツヨサヲミヨ)というユーベルコードである。
その力のお陰で彼らは石化を齎す赤い閃光を霊障で打ち消し、さらには言葉や文字によるコミュニケーションをせずに敵を屠っているのだ。
正直言って、『極彩色に輝くでかいクラゲ』というのは、目を引くものである。
というか、なんだ『極彩色に輝くでかいクラゲ』とは。
どう考えてもおかしい。
しかしながら、その光景に冷静にツッコミを入れる事ができる存在は、此処には居ない。
なにせ、『知識中毒』によってオブリビオンは脳を破壊され、猟兵は『ものすごいバカ』になっているか、そもそも言葉を発してはならないと知っているからだ。
(ゲーミングカラーが強い…!)
どんなに石化を齎す赤い閃光がほとばしっても、それらを霊障のこもったゲーミングカラーが打ち消してしまうのだ。
色数で勝てるわけがない。
というか、非常にやかましい。いや、音がではない。
この様相がである。
次々と光の色が変わり、『三皇伏儀の塒』を染め上げていく。
もう、どうしようもないほどに陽気な雰囲気が流れているし、ともすれば一体今何をしているのかさえ忘れかけてしまう。
オブリビオンを打倒することであるのだが、『陰海月』はご機嫌でゲーミングカラーに輝く光珠でもって『ストーンキョンシーズ』たちを打ちのめしている。
言ってみれば、STG。
シューティングゲーム的なあれな感じ成っている。ティウンティウン。
何だ今のサウンドエフェクト。
そんな非常に頭のゆるいというか、非常におバカさんな雰囲気になりながら『陰海月』はぽいぽいと光珠を飛ばす。
いつもなら鳴き声が聞こえてくるところであるが、今回は黙っているから余計にシューティングゲームの自機感が半端ない。
それでもゲーミングカラーに輝く巨大海月はオブリビオンの蹂躙に余念がない。
これらを打倒し、封神武侠界に平和を齎すために必要なことであるからだ。
影の中で『霹靂』は声に出さずとも応援している。
四悪霊たちは、なんとも言い難い光景に絶句しながら、流れるようにオブリビオンをシューティングしていく『陰海月』とともに『三皇伏儀の塒』を突き進む。
ゲームクリアというか、まあ、なんていうか。
殲神封神大戦も終盤。
目指すはオブリビオンフォーミュラのみだ――!
大成功
🔵🔵🔵
フィア・シュヴァルツ
(くっ、理性ある存在の脳を『知識中毒』にして破壊するだと……!?
理知的な美少女魔女たる我、ピンチ!)
(『いえ、フィア様ほど安心安全なお方はおられないかと』)
フギンが何か言いたそうにしているな?
安心しろ、使い魔であるお前とは心で繋がっておる。
そうかそうか、お前も主人の我を心配してくれるか。
(『フィア様……。あの顔はわたくしの考えが全然伝わっていない顔でございますね。
そして書庫の番人、僵尸が現れたようでございます』)
む、あれは……石焼餃子用の石!
よし、ちょうどいい大きさに砕いて持ち帰るとしよう!
(『フィア様!?
ここで呪文の詠唱は厳禁で……
って、無詠唱で強大な【竜滅陣】の魔術を発動されました!?』)
『無限の書架』に集められた『さまざまな世界の言語や呪文』は恐るべき魔力と成って『三皇伏儀の塒』に満ちる。
それは理性在る存在を目ざとく見つけ、その脳を破壊せしめる『知識中毒』でもって傀儡へと陥れる。
オブリビオンであっても、理性ある存在であれば脳は破壊され、ただ呻き狂乱のままにユーベルコードを手繰る存在になってしまう。
動く石の屍『ストーンキョンシーズ』たちがそうである。
うごめくままに増えていった彼らは如何に農を破壊されても猟兵を見れば、これを滅ぼさずにはいられない
「あー、あーうー、あー」
呻く声が虚しく響き渡る。
魔力に寄って破壊された脳は最早戻らないだろう。
それ故に転移した猟兵達は『言葉や文字』を使わないことで、この魔力に対処する。
(くっ、理性ある存在の脳を『知識中毒』にして破壊するだと……!? 理知的な美少女魔女たる我、ピンチ!)
フィア・シュヴァルツ(腹ペコぺったん番長魔女・f31665)は一人で勝手にピンチに陥っていた。
普段の行いを見ている限り、彼女が自認するところの理知的な意味合いは、少々疑わしいところである。
使い魔の鴉、『フギン』もまた同じ思いであったことだろう。
(いえ、フィア様ほど安心安全なお方はおられないかと)
そんな『フギン』の思念は伝わらない。残念ながら。
なんか言いたそうな顔しているなーくらいには伝わっているところがさらに惜しいと言わざるを得ない。
フィアはサムズアップしてにこりと微笑む。
うーん、顔だけなら美少女なんだけどなーって思わないでもない。
(安心しろ、使い魔であるお前とは心でつながっておる)
残念つながってないし、つたわってない。
しかし、フィアは頷く。何一つ伝わっていないのだが、『フギン』はなんか妙に自信満々なフィアに、えぇ……という顔をする。
(そうかそうか、お前も主人の我を心配してくれるか)
(フィア様……)
使い魔である『フギン』は理解した。
あの顔は絶対こちらの考えが伝わってない顔である。そんでもって、この書庫の魔力に当てられた僵尸……『ストーンキョンシーズ』たちがワラワラと現れ、フィアに迫る。
この要所を突破しなければ殲神封神大戦を戦い抜くことは難しいだろう。
だからこそ、このオブリビオンは排除しなければならない。しかし、フィアのユーベルコードはどれもが詠唱を必要とする魔術。
だからこそ、この書庫の魔力は天敵と言えるものだろう。
しかし、フィアは違う。
(む、あれは……石焼餃子用の石! よし、ちょうどいい大きさに砕いて持ち帰るとしよう!)
フィアはいつもどおりであった。
なんか今日は違うのかなって思ったが、特に変わりなどなかった。食欲に直結した考え故に、彼女は『ストーンキョンシーズ』たちをかち割っていい具合の石焼の器にするつもりなのだ。
マジで大丈夫なのか、それは。
倫理観とか。
そういうやつは大丈夫なのか。しかし、フィアはおかまいなしである。
(フィア様?! ここで呪文の詠唱は厳禁で……)
しかし、『フギン』の心配を他所にフィアは無詠唱でユーベルコード、竜滅陣(ドラゴン・スレイヤー)を発動する。
え、そういうのって可能なの? となる『フギン』であったが、魔力を込めてしまえばどうとでもなるのかもしれない。
ドラゴンすら消し飛ばす大規模破壊魔法は、極大の魔力とともにフィアの食欲を示すように放たれる。
『フギン』は、もはや突っ込む気もなかった。
石焼餃子がどうとか、無詠唱がどうとか、もうそんなことはどうだっていい。
放たれる極大破壊魔法の一撃がオブリビオンを霧消させていく。
それは書架すら巻き込んで吹き荒れる暴風そのもの。
それに巻き込まれまいとするだけで精一杯であったのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
アイ・ブラックウィドー
婚約者のシスカさんと
「なるほど、理性ある存在の脳を破壊する罠ですか。
それは電脳魔術士である私にとって致命的な罠ですね。
……ですが、私とシスカさんの絆で、その程度の障害はクリアしてみせますっ」
そう、シスカさんとは心が繋がっているので、シスカさんが何を考えているか程度、口に出さなくてもわかります。
「(わかりました、シスカさん、あれをやるんですねっ)」
シスカさんのアイコンタクトを受けて、私は【ドジっ娘メイド】を発動します。
これはネコ耳メイド服に着替えて技能が向上するもの!
……って、え、ここで着替えるんですかっ!?
「(きゃ、きゃあああっ、見ないでくださいー!)」(グラップル、範囲攻撃100Lv)
シスカ・ブラックウィドー
婚約者のアイさんと
「言葉が使えないのか......厄介なオブリビオンだね。でも、ボクとアイさんの前には無力だよ。
アイさんとボクは心が通じ合っているから、見つめ合うだけでお互いの心が分かるんだ!」
(アイさん、あれをやろう! 合体ユーベルコードだ!)
アイに熱い視線を送る。
「え!? アイさん!?」
突然のアイさんの生着替えに困惑&赤面。
「アイさん、つ、強い......!」
なんか思ってたのと違うけど、グラップラーに覚醒したアイさんに合わせ、チャイナドレスでユーベルコードを使用。伸びるドラゴンパペットを駆使して敵を焼き払う。
婚約者。
それは思いが通じ合った者同士が至る一つの場所であったのかもしれない。
心を通わせ、共に生きていきたいと願うからこそアイ・ブラックウィドー(電脳の天使・f28910)とシスカ・ブラックウィドー(魔貌の毒蜘蛛・f13611)は共に『三皇伏儀の塒』に降り立つ。
この場所では『言葉や文字』は使えない。
何故ならば、この場に満ちる恐るべき魔力が理性ある者をロックオンし、『知識中毒』でもって脳を破壊するからだ。
その恐ろしさはオブリビオンである動く石の屍『ストーンキョンシーズ』たちを見ればわかる。
「あー、あー、うあーあーあー」
彼らはもはや呻くだけの存在であり、狂乱のままにユーベルコードを振るう。
しかし、猟兵がいるのならば、話は別である。脳が破壊されたままに、ただ本能的に襲いかからんとしている。
彼らは次々とユーベルコードに寄って仲間たちを呼び込み、うごめく。
そんな彼らを見て、シスカとアイは、この状況の厄介さに頭を悩ませて……はいなかった。
確かにアイにとっては致命的な罠である。
電脳魔術士である彼女にとっては致命的な罠である。
シスカにとっても同じであったことだろう。二人で戦う時に言葉に寄る連携は必要である。
しかし、二人は目と目を示し合わせてうなずき合う。
そう、二人は婚約者である。
言葉でも、文字でもなく、心でつながっている。
(アイさんとボクはこころが通じ合っているから、見つめ合うだけでお互いの心がわかるんだ! アイさん、あれをやろう! 合体ユーベルコードだ!)
シスカの熱い視線がアイに送られる。
アイはそんなシスカの視線に力強く頷く。
(わかりました、シスカさん、あれをやるんですねっ)
二人は特別な関係であるがゆえに、アイコンタクトだけで全てを理解していた。
シスカは手にドラゴン頭のパペット人形を装着する。
双竜焔撃(エルマー・アンド・パフ)。それはパペット人形と言えど、凄まじい噛みつきと炎のブレスでもって敵を薙ぎ払うユーベルコードである。
さらにここにアイのユーベルコードが加われば――。
そんなアイはドジっ娘メイド(メイド・コスチューム)になる。
――なんで?
そんな疑問にシスカも答えてはくれない。
猫耳メイド服に着替えることによりアイは凄まじい技能を手にするのだ。
しかし、着替えないといけない。
うん。
うん?
(え!? アイさん!?)
これにはシスカもびっくりである。彼女の目の前で始まったのは謎の生着替えである。どういうことなの。
アイもまた困惑していた。
ここで着替えるとは思っていなかったんだけど、シスカの視線を受けて、そういうことだと理解したのだろう。いや、そうはならんでしょ。
しかしながら心通わせた婚約者の視線である。着替えぬわけにはいかぬ。
「あー、うーあー、あー」
ほらー、『ストーンキョンシーズ』たちも見てるしー。
そんな視線に気がついたアイはこころの中で悲鳴を上げる。
(きゃ、きゃあああっ、見ないでくださいー!)
その拳は大地穿つ拳となって『ストーンキョンシーズ』たちを吹き飛ばしていく。
(アイさん、つ、強い……!)
シスカはシスカでなんか思ってたのと違うって思ったが、彼女もまたユーベルコードの炎を放ち、伸びるドラゴン人形パペットを使い、オブリビオンを薙ぎ払っていく。
確かに強い。
強いんだけど、こう、あれである。
これでいいのかな。いいんだろうか。そう思わざるを得ない中々に強烈な戦いぶりを見せる二人。
片やネコミミメイド。
片やチャイナドレス。
よくばりセットかなってなるほどの光景をもたらしながら、アイとシスカは若干ズレたアイコンタクトのままオブリビオンを一掃するのだ。
いいのだ。
これでいーのだ――!
大成功
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夜刀神・鏡介
無限の書家、ね。俺の知り合いは喜びそうだが……調べるには少々危険そうだな
まあ、此処を片付ければいずれ安全に調べる機会も作れるだろうし、その辺りの為にも頑張ってみるか
さて、バカになりきれみたいな事を言われたが。この場合、その為に頭を使っては本末転倒な気もするしな
ならば、剣の道が目指す果て、無念無想の境地――には未だ至らぬ身であるが。やるだけやってみるとしよう
利剣を抜いて、弐の型【朧月】の構え。本来はどう防ぎ、どのように反撃するかを細かく考えながら立ち回る必要があるのだが……今回は相手が残念な事になっているからな
反射と直感を頼りに思考を止めて、攻撃を機械的に受け流しからカウンターで切り倒していこう
馬鹿と天才は紙一重とはよく言ったものである。
ここ『三皇伏儀の塒』において、理性や知性を持つものは、恐るべき魔力に寄って『知識中毒』にさせられ、脳を破壊されてしまう。
オブリビオンであっても例外ではない。
動く石の屍『ストーンキョンシーズ』たちがそうであったように、『言葉と文字』を手繰る知性ある者は、須らく『知識中毒』にさせられてしまう。
「あ、あー、あー、うー、あー」
それがこの結果である。
『ストーンキョンシーズ』たちも僵尸とは言え、本来は知性を有していたあろう。
だが、今は見る影もなく、ただただ呻き狂乱のままにユーベルコードを使い、仲間を増やしていくだけの存在となっていた。
これを防ぐためには『文字と言葉を使わぬ』か『ものすごいバカ』にあるしかないのだ!
しかし、この『三皇伏儀の塒』の見るべきところは其処だけではない。
『無限の書架』には『さまざまな世界の言語や呪文』が収めれているのだという。それを聞いた時、夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)は己の知り合いが喜びそうだと思ったものである。
(調べるには少々危険そうだな)
とは言え、ここを押さえれば封神武侠界をめぐる『殲神封神大戦』も最終局面を迎えるだろう。
そうなれば、此処を安全に調べる機会も作れるであろうから、そのために頑張ってみようと鏡介は思ったのだ。
(さて、バカになりきれみたいなことを言われたが……)
そう、そのために逆に頭を使ってしまったのならば、それは知性在りきということになる。
まさに本末転倒であろう。
だからこそ、鏡介は己の剣を構える。
剣の道とはすなわち無念無想の境地。
今だ其処へと至ることのできぬ至らぬ身であると鏡介は自覚していた。
だが、至らぬからといってやらぬということではない。如何に届かぬものであっても、その高みを目指すことこそが極地へと至る愚直なる方法なのだから。
(やるだけやってみるとしよう)
もしも、脳が破壊されたのならば、それはそれまでということである。
鋭き剣を抜いて弐の型【朧月】(ニノカタ・オボロヅキ)を構える。
迫る『ストーンキョンシーズ』たちは皆、呻くばかりである。そこに知性の欠片はない。
ただ猟兵であるというだけで己を襲う存在。
そこに恐ろしさはない。
本来ならどう防ぎ、どのように反撃するかを細かく考えながら立ち回る必要がある。だが、『ストーンキョンシーズ』たちは知性なき存在。
反射でしか動かぬというのならば、己もまた反射と直感で剣を振るうのみ。
己は一体何であるか。
無念無想。
無我。
そこまで至らぬのならば、己は機械となろう。
それが鏡介の出した答えであった。雑念が入るのならば、それを捨てる。己は剣を振るう機械、ただの一振りであるというのならば、そこに知性は必要なく。
迫りくる『ストーンキョンシーズ』たちを、ただ反射のままに切り捨てる。
手本は目の前にある。
脳を破壊され呻くだけで反射でしか行動できないオブリビオン。
『ストーンキョンシーズ』達がまさにそれである。
鏡介は己から動くことはしない。
迫る『ストーンキョンシーズ』たちの攻撃の手が疾走る度に後の先によって剣をふるい、その石像の如き体を切り裂く。
それは一瞬の剣閃。
己が何をしたかということすら自覚なき剣。
今の心にあるのは水鏡。
敵の攻撃は一滴の雨だれである。
波紋描くは剣閃。
ある意味で境地であったことだろう。心は凪、されど剣閃は鋭く。
無念無想。その境地に至るか、もしくは近づくか。
その答えは、鏡介の中にこそ宿るだろう――。
大成功
🔵🔵🔵