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殲神封神大戦⑱〜16番目を乗り越えて

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 タロットカードの大アルカナ16番、塔のカード。正位置では破滅、破壊、崩壊を表し、逆位置では屈辱、不幸、天変地異を表す大アルカナ最悪のカード。
 だがそれは運命を占う22枚のうちの一つとして欠くべからざるものであり、いつ、誰にでも現れ得るものなのだ。
 想像してみて欲しい。もし、今眼前にそのカードが突きつけられたら……。


「こんにちは、殲神封神大戦の依頼です……」
 アレクサンドラ・ヒュンディン(狗孤鈍狼・f25572)が集まった猟兵たちに一礼する。
「今回向かっていただきますのは、三皇伏羲の塒。この祠は「無限の書架」と「さまざまな世界の言語や呪文」で満たされており、恐ろしい魔力が充満しています」
 伏羲は人類創造の神であり、特に文明を人に齎した神だという。その名を冠する場所にあらゆる英知が詰め込まれているのもうなずける話だ。
「ここには伏羲の発明した「陰陽を示す図像」があり、踏み入る者に未来を教えるとされていました。ですが今祠はオブリビオンによって汚染され、結果として図像も歪み、踏み入った者に「あり得るかも知れない破滅の未来」そのものを具現化させて襲わせるという恐ろしい罠に変わってしまっています」
 戦いの中に身を置く猟兵。敗北、破滅は常にそばにある。あるいは出自によっては常に並ならぬリスクを背負いながら生きている者もいるだろう。そしてそれに飲まれぬために努めること。危機回避、リスクマネジメント、生存戦略、様々な言葉で言い表せるそれを誰もが日々行っているはずだ。その甲斐なく破滅に至った未来、それが襲ってくるという。
「破滅の具体的な内容は人によって違います。一番間近に有り得るのは、殲神封神大戦の敗戦、カタストロフでしょうか。他には強敵や宿敵への敗北、持病の悪化、破産、家族や大切な人の惨死など……個人的な事情にも遠慮なく踏み入ってきて破滅を具現化してきます」
 破滅が具体的に何を表すかは個人によって違う。だがそれは、決して無視できない確率を持って未来に潜む可能性だ。
「破滅はすでに起こった状況から始まりますので、カタストロフならもう起こっていますし、敵なら圧倒的な強さで無傷の強敵が目の前にいます。事前に手は打てません。これはただの幻影ではなく、実体を持った絶望。何もしなければ、その破滅に飲まれて命を失います。皆さんには、この破滅の未来に立ち向かっていただきます」
 最も恐れる未来が具現化して襲ってくる。それを心を奮い立たせ、あるいは力尽く、計算尽くで、何なら他人に頼ったっていい。破滅は破滅として受け入れ、その先の再起を想起するのだって乗り越える方法の一つだ。とにかく、破滅に飲まれることなくどうにかしてそれを乗り越えて先へ進まねばならないということだ。
 アレクサンドラは一枚のカードを猟兵たちに見せる。その絵柄は、雷に撃たれて崩れる高き塔。
「タロットカードの16番、塔は破滅的な意味ばかりを持つとても悪いカードです。でも、これは終点のカードではありません」
 そのカードを握るように隠し、また別のカードを出す。そこに描かれているのは、星空の下で大地に水を灌ぐ乙女。
「破滅の先にあるのは17番目のカード、星。その意味は……『希望』。どうか皆様、破滅を乗り越え、希望を」
 そう言ってアレクサンドラはもう一度頭を下げ、猟兵を破滅の中へと送り出すのであった。


鳴声海矢
 こんにちは、鳴声海矢です。某白金女の子説。
 今回のプレイングボーナスはこちら。

『プレイングボーナス……あなたの「破滅」の予感を描写し、絶望を乗り越える』

 シナリオ開始と同時に、『あり得るかも知れない破滅の未来』が具現化して猟兵を襲います。破滅の内容は参加者様にお任せ。殲神封神大戦の敗戦や宿敵、強敵への敗北、その他個人的な破滅など何でも構いません。
 ただし『破滅』ですので簡単にリカバリーが効くような失敗にはなりません。一見すれば詰み、ゲームオーバーの状態からどうにかして突破、再起を図ってください。
 また『あり得るかもしれない破滅』なので、極端に荒唐無稽な設定(全世界のフォーミュラが徒党を組んで襲ってくるとか)もなしにしてください。また世間的には破滅だけど個人的には何でもない状況(衣食住元々いらないし欲しくもないのに破産したとか)もなしです。一応シリアス、熱い系想定の依頼です。悩んだらカタストロフしとけばいいと思います。

 乗り越え方は原因をぶっ飛ばす、破滅の中でなお自分を支えてくれるものに縋る、破滅を受け入れたうえ前向きに再起を図るなどご自由に。合わせ技ももちろんOK。徹底的に破滅し、そして乗り越えてください。

 それでは、破滅を破滅させるプレイングをお待ちしています。
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第1章 冒険 『八卦天命陣』

POW   :    腕力、もしくは胆力で破滅の未来を捻じ伏せる。

SPD   :    恐るべき絶望に耐えながら、一瞬の勝機を探す。

WIZ   :    破滅の予感すら布石にして、望む未来をその先に描く。

👑7
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
『有り得るかもしれない破滅』ですかぁ。
頑張ってみますが、さて?

成程、『カタストロフの接近や「難敵の扱う陣」等の影響で「女神様の御力」が届かなくなった』ですかぁ。
『特殊な空間遮断』等で『路』が断たれたような状態でしょうねぇ。
この状態では『女神様の力』に基づく『祭器』も【UC】も使えず、殆どの能力が封じられた状態で難敵に挑む必要が有る、と。

それでも『女神様に捨てられたわけでは無い』以上、切り抜ければまた『御声』を聴くことが出来るでしょう。
『霊刀』の代わりに『普通の刀』を使用、普段は『隠し玉』として使うことの多い『剣豪』としての技術を用い、『揺らがぬ信仰』を軸に挑みますねぇ。



 三皇伏羲の塒。そこは文明を人に授けたという伏羲の英知全てが修められた、いわば無限の書庫。そこにはあらゆる言語と情報が修められ、あらゆる理論、計算の解法が存在する。そしてそれはまた、伏羲自身の知恵でもあるのだ。
 その英知を集約して伏羲が作った陰陽の図像。それは彼にしか解けぬ法則によって未来を見通し、この塒に踏み入った者に未来を教えることができた。
 その時点である種『悪魔』を連想させる発明だが、今は悪意にゆがめられ、見せるのはその者に起こりうる破滅の未来。しかもそれはただの予言ではない。実体を持って襲い掛かり、本当に見たものを破滅させんと襲い来る悪しき罠なのだ。
 その破滅の塒に、猟兵たちが踏み込んでいく。
「『有り得るかもしれない破滅』ですかぁ。頑張ってみますが、さて?」
 一番手として乗り込んだ夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)の眼前で、呪文が散り書庫が変容していく。そして彼女の前に現れたのは、焦土となった洛陽の都。辺りには無数のオブリビオンが闊歩し、形の残った建物があれば破壊し隠れ潜む人間を見つければ引きずり出して八つ裂きにしている。そしてそこかしこに翻るのは長い漢詩や今年の干支である甲寅と書かれた黄色い旗。
 間違いない、これはいま最も眼前に迫る破滅、殲神封神大戦の敗戦後の世界であり、カタストロフした封神武侠界だ。
 あまりの惨状に、流石のるこるもしばし呆然となる。
「おい、こいつ、猟兵じゃないか?」
 それを現実に引き戻したのは男の声。見れば黄色い頭巾を被った兵士のようだが、そのまま武器となった腕や虎のような牙を持つ、明らかに異形の存在。
「まだ生き残りがいたとはな。張角様にこいつの首を献上するとしよう」
 相手が猟兵だと知ってかかってくる。つまりこの世界ではもはや猟兵などまるで恐れるに足りない存在となったということか。
 だが、相手はどうやら集団型。しかもこの場にいる数は数えきれる程。これならば急ぎ片付けてしまえば良いとるこるは浮遊兵装たちを差し向けようとする。
 だが、脳波に連動して動くはずのそれらは動くどころか出現することすらなかった。今までに経験のないことに、るこるは珍しく焦る。
「そんな……ならば大いなる豊饒の女神……」
 ならばユーベルコードで迎え撃とうと仕える女神に祈りを捧げるが、それはただ言葉が口から出てくるだけ、何の力もその身に齎されることはなかった。
「なんだこいつ、遊んでいるのか?」
「張角様の済民要術の世界で猟兵如きが何かできると思ってるのか? こいつはとんだ大間抜けだな!」
「そんな、そういう……」
 この封神武侠界はカタストロフと張角の術によって完全に異世界と隔離された。つまり異世界を源流とする女神の力は一切使えず、そこと繋がるための『路』もない。能力のほとんどがそれ由来であるるこるは、その力の全てを封じられたと言っても過言ではなかった。
 ただ力を奪われただけではなく、存在の核となるものと隔絶された絶望。この状態で覇権を取った敵と戦えと言うのか。
 まさに破滅の世界。あと五日で鴻鈞道人、そして張角を倒せなければこれが現実のものとなるのだ。その破滅に背を押されたかの如く、オブリビオンたちの爪牙がるこるを切り刻む……
「ぐおっ!?」
 だが、その得物は逆にへし折られ、切り飛ばされた。それを成したのは、るこるの構える刀。
 確かに女神と隔絶された。同胞の巫女の協力やグリモア猟兵からの支援も、ここで得られることはないだろう。
「それでも『女神様に捨てられたわけでは無い』以上、切り抜ければまた『御声』を聴くことが出来るでしょう」
 なればこそ、己の力でここを抜け、女神の使徒の力を明かさねば。女神の力を持って戦う身なれど、『力』そのものではない。女神の力を失えど、『バーチャルキャラクターの鎧装騎兵 × 剣豪 夢ヶ枝・るこる』は消えはしないのだ。
 普段は隠し玉としてしか使わない剣豪の技と、力失いし霊刀の代わりに刃となる何の変哲もない刀。それを振るうは『揺らがぬ信仰』を軸にした豊かなる体。
 黄天への信仰などなくただ勝ち馬に乗っているだけのオブリビオンに、己が信仰が負けるはずもなし。その思いを胸に振られた刀が敵の一人を両断する。【剣刃一閃】、例え基礎的なユーベルコードだろうと、最高レベルの猟兵が放った一撃を集団型が捌けるわけがない。
 刀を握り、るこるはカタストロフの世界に立つ。この破滅の黄天を断ち割り、あるべき神の元へと帰るために。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ベアトリス・ミラー
ホークと行動
アドリブ・絡みOK

アリスラビリンスに落ちた時と同じく再び独りに。
どれだけの時間が経過したかも分らない程に感じていた。
猟兵の力もなくなり皆いなくなった。独りだけ生き残った。
へたり込んだ先に落ちていたナイフに虚ろな目を向ける。
「これで……楽に」
目を閉じて胸に突き立てようとしたが止まる、止められる。
「ここで倒れるべきではありませんよ」
優しい男の声に目を開ければそこには白銀の翼を生やし白いヴェール状の頭巾を被った白いローブ姿の男がいた。
「この破滅を避けるためにあなたの力が必要になります」
脳裏に戦うホークが映る。
「生きてる?」
「はい、しかし彼も危険です。行きましょう」
「あの、あなたは?」
「ルシフェルとお呼びください」
合流後は共闘。瞬間思考力などでアシストする。
「放っておけないもので」
多く行動をしてきたからなのかつい口に出す。


ホーク・スターゲイザー
ミラーと行動
アドリブ・絡みOK

黒いレインコートの男と対峙するが圧倒的劣勢であった。
(あの時とは比べ物にならんか)
黒いレインコートの男、黒崎徹。
表の顔は警視庁のヒーローと言える刑事、裏の顔は偽装殺人や暗殺、誘拐などを行う裏社会の便利屋。
普通の人間でありながらその身体・戦闘能力は異常でホークもギリギリ辛勝できた程であった。それが更に高まっている。
黒い羽に峰部分が黒、刀身から柄まで紅い刀を持ち追いかけてくる中、廃墟の中を逃げる。
隙が無い相手に挑むのは無謀な賭け。さらには勝率もゼロに等しい。
挑んで勝てる相手でもない。だが魂を奮い立たせる。
集中力で相手の動きを読み隙を狙うが強烈な蹴りを受ける。
(ここまでか)
諦めかけた時、ミラーが現れる。
「オレはまだやれる」
口から血を流す重傷を負ってなお立ち、明宵の明星を構える。
勝負は一撃、お互いにダッシュで一気に詰め猛撃を繰り出し合いそして。
「生きてるのか?」
意識を取り戻せば抱きしめられ胸に顔を埋める形になる。
「…汚れるぞ」
ミラーに𠮟られながらもどこか嬉しそうに



 破滅、それは未来からのみ来るものではない。過去が追いすがり、今を破滅させることとてあるのだ。ベアトリス・ミラー(クリエイター・f30743)はまさに今、過去から追いかけてきた破滅に捕らわれていた。
 周囲は頭の痛くなるような不思議の国。封神武侠界ではない。ここはアリスラビリンス。昼夜の概念もあいまいで時間を測るものもない。そのような場所にたった一人。
 これは今もまさにアリスラビリンスで多くのアリス達が追い込まれている破滅の光景だ。だが、猟兵ならば自ら望んでここに飛び込んでいくことなど日常茶飯事だろう。それにいまさら何を怯えることがあるのか。
「あ、ああ……ここは……」
 しかしベアトリスの表情は恐怖と絶望に侵され切っていた。当然である。今の……この世界にいた時の彼女は、猟兵でなどなかったのだ。そしてこの世界に再び囚われた時から、今の力さえ失った。
「だれか……だれも……」
 何の力もなく、ただ独り歩き回るベアトリス。二度と思い出したくもなかった恐怖が心を染め、冷静さを失わせていく。
 そこの木の陰に何が潜んでいるか。今草葉を揺らしたのは何者か。些細なこと、取るに足りないことが全て死の恐怖となってその心にのしかかる。いや、ただの死ならまだましだ。死すら許されぬまま体を引き裂かれ、腹を抉られ、脳を食い荒らされる。それが容易に起こるのがこの世界なのだ。そうされた者の犠牲の上にただ独り生き残ったのだからよく知っている。
 周囲の全てが敵に見える恐怖と疲労。それによって最早歩く気力もなくなりへたり込むベアトリス。
 地に下ろされたその視線の先、そこにはまるで恐怖に苛まれる彼女を誘うかのように、一本のナイフが置かれていた。
 普通なら怪しむべき状況。だが、今の彼女にはまるでこれが天からの救いのようにさえ見えてしまった。奪い取るようにそれを拾い上げるベアトリス。
「これで……楽に」
 目を閉じて胸に突き立てようとする。その時。
「ここで倒れるべきではありませんよ」
 ベアトリスを止める声がした。それと同時に彼女の脳裏に映るものは。

(あの時とは比べ物にならんか)
 ホーク・スターゲイザー(六天道子・f32751)は黒いレインコートの男と対峙していた。
 その男の名は黒崎徹。表の顔は警視庁のヒーローと言える刑事、裏の顔は偽装殺人や暗殺、誘拐などを行う裏社会の便利屋。
 これがただの汚職警官ならばよかったが、彼は普通の人間でありながらその身体、戦闘能力は異常。極限までの研鑽で通常の能力をユーベルコードの域にまで高めたヴィジランテのようなものか、あるいは彼もまた何がしかの異能の才を秘めているのか。かつてでもホークがギリギリ辛勝できた程であったが、今はそれが更に高まっている。
 ホーク自身とて過去から比べれば飛躍的に成長しているはずなのに、それをもってしても圧倒的劣勢。
 今は正面から戦うべきではない。そう判断したホークは一瞬の隙を突き戦略的撤退を選んだ。
 廃墟の中を駆け抜け、飛び回り逃げるホーク。だが黒崎はその動きにも遅れることなく平気でついてくる。その手には、黒い羽に峰部分が黒、刀身から柄まで紅い刀。
 壁を駆けあがり、天上を掴んで飛ぶなどの常人ではできぬ動きをしても相手は平然と追ってくる。まるで弄ばれているかのようにすら思えてくるその動き。あるいはこれでもまだ全力には程遠く、その気になれば一瞬で自分を組み伏せられるのでは。
(……仕方ない)
 もしそうだとするなら、相手がまだ遊んでいる今がチャンス。隙が無い相手に挑むのは無謀な賭け。さらには勝率もゼロに等しい。だがまともに挑んで勝てる相手でもないのはもう分かってしまったのだ。
 逃げながらも敵の動きを集中して読み、一瞬の隙を突き反転、乾坤一擲の一撃を仕掛けた。
 だが、相手はまるですべて見通していたとでもいう風にそれをあっさりと躱し、がら空きとなった体に反撃の蹴りを見舞った。
 強かに衝撃を受け、その場に倒れるホーク。
(ここまでか)

「この破滅を避けるためにあなたの力が必要になります」
 ここまでの光景をベアトリスに見せていたのは、彼女の元に現れた白銀の翼を生やし白いヴェール状の頭巾を被った白いローブ姿の男。
「生きてる?」
「はい、しかし彼も危険です。行きましょう」
「あの、あなたは?」
「ルシフェルとお呼びください」
 天使の長か、悪魔の王か。だがどちらでもいい。ホークの状況を見せたこの者がいること、それ自体が彼の無事の証左なのだ。彼が自分にすら扱いきれぬ者を呼ぶことをは知っている。
 そして思い出した。ここはアリスラビリンスなどではない。封神武侠界、三皇伏羲の塒。そしてここに乗り込んできたのは、一人ではない。

 ホークを仕留めんと黒崎が迫る。だがその横面を、大ぶりな金貨が張り飛ばした。
「邪神竜の金貨……?」
 その持ち主は知っている。そうだ、思い出した。ここは封神武侠界。いくら黒崎が常人の域を脱しているとはいえここにいるはずはない。これは陰陽の図像が見せた、適わぬ強敵が再訪するという破滅の未来。
 そうだ、確かに合わぬ間に敵が強くなっている可能性は大いにある。男子三日合わざれば刮目して見るべしとはまさにこの世界の英傑の言葉だが、それは己も同じこと。そしてなにより、一日休めば取り戻すのに三日という言葉だってあるのだ。合わない間怠けている可能性だって同じようにあるはずだ。
「オレはまだやれる」
 破滅の幻影と分かれば恐れるに足りない。なにより、今はもう一人ではないのだ。
 口から血を流す重傷を負いながら立ち上がり、『明宵の明星』を構える。
 勝負は一撃。お互いに駆け寄り、交差の瞬間全力の猛撃を互いに撃ち合う。そして。

「生きてるのか?」
 目が覚めたその場所は当たりを埋め尽くす無限の書架。そして目の前には、知った顔の女が。
 ベアトリスは安心したように、血だらけのホークを胸に抱く。
「……汚れるぞ」
「あなたが無茶したせいです」
 叱るように言うが、隠しきれぬ喜びがあふれていた。
 強き体を持つ者でも、心の傷を抉る過去は抗しきれない。無敵の外被を持つ者も内側の棘に容易く命を奪われる。
 だが、己にとっては破滅の過去でも他者にとっては文字通りの他人事だ。破滅を交換し手を貸し合えば、それは互いを先に進ませる力となる。
 己の内なる闇を解せず一蹴する頼もしき他人。それを『仲間』と呼ぶ。
 既に元に戻った三皇伏羲の塒の先。その先で、まさに最後の戦いが始まろうとしている。
 二人は、そして猟兵は先へ進む。破滅の未来を今破壊するために。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年01月28日


挿絵イラスト