殲神封神大戦⑰〜万物に先立つ渾沌
●渾沌の地
(絶えず時は運び、全ては土に還る)
それは思念であった。
『渾沌の地』に転移した猟兵達全ては、その思念を聞く。
対峙する存在。
己をして『骸の海』そのものであると自称する謎の人物。それが、渾沌氏『鴻鈞道人』である。
あらゆるオブリビオンを『再孵化』によって容易く作り出す力。
途方も無い力である。
『骸の海』そのものであるという言葉もうなずけるほどの圧力を感じながら、それでも猟兵達は戦場に立つ。
(罪深き刃、ユーベルコードを刻まれし者達よ)
告げる言葉は頭の中に直接響く。
在るのは左目だけ。
右目もなければ鼻も、耳も、口も存在しない。多くを制限されているような状態でありながら、手繰る力は悍ましいものであった。
白き天使の翼、白きおぞましき触手、白き無貌の牛頭、白き殺戮する刃が渾沌氏『鴻鈞道人』の肉体を形作る要素のすべてであった。
それは渾沌を象るものであった。
不定形の怪物と呼べばいいのだろうか。
(相争い、私の左目に『炎の破滅』、カタストロフを見せてくれ)
幾度聞いたであろうか。
『世界の破滅』。
オブリビオンが望むもの。
存在するだけで『今』を侵食し、世界に悲鳴を上げる存在。ゆえに、過去の化身。
されど、渾沌氏『鴻鈞道人』はオブリビオンではない。
ゆえに彼単体では『世界の破滅』は起こらないのだろう。ゆえにオブリビオンを持って己が望む未来を導かんとしているのだ――。
●殲神封神大戦
ナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)は告げる。
「あれこそが渾沌氏『鴻鈞道人』。『骸の海』そのものを自称する謎の敵……残念なながら現時点で彼を滅ぼす方法はありません」
猟兵達はその言葉に怖気づくことはなかっただろう。
オブリビオンではない存在。
過去の集積地たる『骸の海』そのものという言葉を信じるのならば、対峙する存在は途方も無い存在である。
滅ぼす方法がないと告げるナイアルテの言葉に頷くことができたかもしれない。
誰も彼もが、殲神封神大戦で傷ついている。
消耗もしている。
けれど、それでも立ち向かうことをやめる者は誰一人としていなかっただろう。
(無駄だ。無意味だ。私は『骸の海』そのもの。わかっているのだろう。滅ぼすことができないのだと。己達自身が、最も理解しているはずだ)
渾沌氏『鴻鈞道人』の思念が猟兵たちの頭に響き渡る。
確かにそのとおりだ。
滅ぼしても、滅ぼしても、渾沌氏『鴻鈞道人』は『渾沌の諸相』を発現させた怪物を取り、猟兵たちを滅ぼさんとする。
「ですが無限ではないはずです。完全に滅ぼすことは出来ないまでも、撤退に追い込むことはできます」
迫る不定形の怪物。
渾沌氏『鴻鈞道人』が手繰るユーベルコードを予知によって知ろうとしたナイアルテは驚愕に瞳を見開く。
其処に在ったのは、絶望であったかもしれない。
グリモアの予知ですら、渾沌氏『鴻鈞道人』のユーベルコードは詳細が判明しないのだ。
こんなことは今までなかった。
どんなオブリビオンであっても、ユーベルコードの力を、その仔細を知る事ができた。だが、今対峙する渾沌氏『鴻鈞道人』のユーベルコードは発動するまで、その詳細を知ることが出来ない。
そして、必ず先制攻撃を仕掛けてくる。
「――……ッ」
ナイアルテは絶句する。
わからない。ユーベルコードの詳細がわからない。混乱しかけた彼女はしかし、その瞳を輝かせ、猟兵達に告げる。
「私の予知は役に立ちません。謝罪の時間すら惜しい故に、端的に」
彼女は猟兵たちにその瞳を向ける。
そこにあったのは絶望の光ではなかった。あるのは未来見えぬ戦いの先。
けれど、それはいつだって同じことだ。
オブリビオンと猟兵の戦いはいつだって死地、窮地に赴くことと同じである。どれだけ敵の詳細がわかっていようが、わかっていまいが、戦わなければならない。
その瞳が告げる。
止まらずに歩み続けなければ未来には届かないのだと。
「渾沌氏『鴻鈞道人』の『詳細不明な先制攻撃』を生き延びてください。躱すだけではなく、反撃の余地を残し、これを打倒しなければなりません」
無茶なことを言っていることは百も承知であった。
ナイアルテ以上に猟兵達の瞳は輝くだろう。
途方も無い存在であったのだとしても、存在するのならば、己たちの刃は届くはずだ。
例え、『罪深き刃』と言われたユーベルコードであっても。
『今』を護るためならば、その刃を猟兵達は躊躇いなく振るうのだから――。
海鶴
マスターの海鶴です。
※これは1章構成の『殲神封神大戦』の戦争シナリオとなります。
仙界の最深部『渾沌の地』に自らを『骸の海』と自称する謎の敵、渾沌氏『鴻鈞道人』との戦いのシナリオになります。
彼はオブリビオンの『再孵化』という能力を持っていますが、今回はそれを使用せず戦いを挑んできます。
自らの肉体を『渾沌の地』と一体化させ、『渾沌の諸相』を無差別に発現させた不定形の怪物に変異しています。
先制攻撃を仕掛けてきますが、渾沌氏『鴻鈞道人』のユーベルコードは『発動するまで詳細が判明しません』。
具体的に言えば、ユーベルコードの詳細にある【undefined】の部分です。
この詳細不明な先制攻撃を生き延びるための対処と、如何にして反撃するかが鍵となっています。
※このシナリオには特別なプレイングボーナスがあります。これに基づく行動をすると有利になります。
プレイングボーナス……鴻鈞道人の「詳細不明な先制攻撃」に対処する。
それでは、迫る渾沌氏『鴻鈞道人』の圧倒的な力を前に果敢に戦う皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
第1章 ボス戦
『渾沌氏『鴻鈞道人』undefined』
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POW : 渾沌災炎 undefined inferno
【undefined】が命中した対象を燃やす。放たれた【undefined】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD : 渾沌解放 undefined infinity
【undefined】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ : 渾沌収束 undefined gravity
レベルm半径内の敵全てを、幾何学模様を描き複雑に飛翔する、レベル×10本の【undefined】で包囲攻撃する。
イラスト:樫か
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
アルトリウス・セレスタイト
終わったものは速やかに退け
状況は『天光』で逐一把握
守りは煌皇にて
纏う十一の原理を無限に廻し害ある全てを一瞬で無限に破壊、自身から断絶し否定
尚迫るなら自身を無限加速し回避
要らぬ余波は『無現』にて消去
全行程必要魔力は『超克』で“世界の外”から常時供給
破界で掃討
対象はオブリビオン及びその全行動
それ以外は「障害」故に無視され影響皆無
高速詠唱を『刻真』『再帰』にて無限に加速・循環
瞬刻で生む星の数ほどの魔弾を全方向へ斉射、それを無限循環
更に『解放』を通じ全力の魔力供給で干渉力を最大化
戦域を魔弾の軌跡で埋め尽くす
無限を踏破せねば入り口ですら無いぞ
過去の残骸如きが届くか否か挑んでくるが良かろう
※アドリブ歓迎
『渾沌の地』と一体化した渾沌氏『鴻鈞道人』の姿は不定形の怪物であった。
白い天使の翼を展開したかと思えば、無貌の牛頭を顕現させる。
かと思えば、うごめく白い触手が大地を這い回り、殺戮の刃が吹き荒れる。其の光景をして渾沌と形容するのならば、『骸の海』そのものであると自称することもうなずけるものであった。
(抵抗は無意味だ。絶えず時は進む。止まらない。止まらぬものを止めようとすることこそ無意味)
思念が響き渡る。
声ではない。
頭に直接響き渡る言葉は、それが理屈ではなく本物であると知るだろう。
「終わったものは速やかに退け」
その思念に応えるようにアルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)は告げる。
迫る詳細不明のユーベルコード。
天を埋め尽くすのは『玉で飾られた矛』であった。
そのどれもが必殺の一撃であることを知る。触れれば渾沌の事象へと飲み込まれる。
それほどの一撃が天を覆う程埋め尽くしている。
放たれる先制攻撃をアルトリウスは纏う十一の原理を無限に回し、己に害あるものを無限に破壊していく。
それが断絶し否定するということ。
尚迫る『玉で飾られた矛』は無限さえも乗り越えるかのように恐るべき速さでアルトリウスを圧殺せんと降り注ぐ。
「行き止まりだ」
それは障害を無視し、万象を根源から消去する創世の権能が顕す蒼光の魔弾。
同じ力。
世界の外から力を組み上げるのはすなわち、『骸の海』そのものの力と同じであったことだろう。
渾沌は万物に先立つものであるのならば。
それは事象の禍鍋。
(其の力は無意味だ。無駄だ。どれだけ無限を飾ろうともあらゆる万物は渾沌ありき)
思念が頭に響き渡る。
煌めくユーベルコードが明滅する。
高速で詠唱され、無限に加速し循環していく力。刹那に生み出される星の数ほどの魔弾でもってしても、展開される『玉で飾られた矛』と相殺するのみであった。
「無限を踏破せねば入り口ですら無いぞ。過去の残骸ごときが届くか否か挑んでくるがよかろう」
(無意味だ。過去なかりせば、現在はなく。現在なくば続く未来もない。お前達が踏みつけてきたものを残骸と呼ぶのであれば、刹那滅こそ己の存在であると知れ)
魔弾と『玉で飾られた矛』が激突し続ける。
戦域を埋め尽くすほどの力と力の激突は、『渾沌の地』を染め上げていく。
渾沌氏『鴻鈞道人』の力は凄まじいものであった。
破界(ハカイ)たる力を持ってしても相殺するのがやっと。
しかし、それでもアルトリウスの蒼光の魔弾は飛ぶ。相殺される光が視界を染めていく。
だが、その先にあるのは絶望ではない。
あるのは未来だけだ。
どれだけ言葉を弄しようとも、『今』は続いている。
絶えることなく、そして終わることなく。
「ならば、そこに『炎の破滅』はない。あるのは歩み止めず続く未来だけだ」
その言葉とともに蒼光が空を染め上げ、万物たる渾沌の力を押し返すのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
儀水・芽亜
undefined.未定義は無限の可能性。しかし、『渾沌氏『鴻鈞道人』』として受肉した以上は、それに縛られます。
こうして顕現したなら、裁ち斬れぬ道理はありません。
渾沌氏の攻撃は、おそらく炎弾に何かの属性を付加したもの。
それなら、「全力魔法」の「結界術」を張り「受け流し」、突破されることを見越して「見切り」「オーラ防御」で我が身を守る。結界はアクティブモード。攻撃されたら「カウンター」で「衝撃波」をお返しです。
それでは私も炎を振りまきましょう。
神楽鈴振り「催眠術」「精神攻撃」で心を縛って、「全力魔法」炎の「属性攻撃」「呪詛」「楽器演奏」で時限発火です。
この炎でその仮初めの体を灼いて差し上げます。
『undefined』――それは定義されぬ不定形。
すなわち未定義。
未定義とは無限の可能性を示すものであると儀水・芽亜(共に見る希望の夢・f35644)は感じる。
かつて銀の雨降る時代を駆け抜けた一線級の能力者。
それが彼女である。衰退した能力であったとしても、彼女が退くことはない。仮初のものであるのだとしても精一杯に『今』を生きるからこそ、得られるものがあると彼女は知っている。
「渾沌氏『鴻鈞道人』として受肉した以上は、それに縛られます。こうして顕現したなら、裁ち斬れぬ道理はありません」
しかし、渾沌氏『鴻鈞道人』のユーベルコードは詳細が知れず。
(無駄だ。無意味だ。その道理を説くこと事態が無意味であると知れ。意味がないことだ、それは)
思念が頭の中に響いた瞬間、渾沌氏『鴻鈞道人』の左目が煌めく。
そこにあったのは『左目の太陽より放たれる視線』であった。己を知覚したと思った瞬間、『万象の根源たる炎』が『渾沌の地に荒ぶ。
芽亜は、おそらく渾沌氏『鴻鈞道人』のユーベルコードは炎の弾を放つものであると推察していた。
けれど、それは視線だけで対象を燃やす炎と成って放たれる。
手にした芯棒に連ねた神楽鈴が軽やかな音を鳴らす。
「やはり炎の力!」
重ねた結界術に炎が防がれる。けれど『万象の根源たる炎』は結界を打ち破る。それを彼女は見越していた。
仮にも『骸の海』を自称する存在である。
自身の結界を打ち破ってくることは容易に予測できたことだ。
「だからこそ、用意しておくものなのです。次善策を!」
彼女はオーラで受け流した炎を己の体に触れさせず、戦場を走る。
敵が先制攻撃してくるというのならば、それを受け流してカウンターを決める。それくらい前のめりでなければ、己よりも強大な存在を打ち倒すことなどできはしない。
ゆえに芽亜は走る。
手にした鈴から音が響き渡る限り、己は今だ負けていない事を知る。
(『万象の根源たる炎』はすべてを燃やし尽くす。如何に『今』がお前にとっての午睡であったのだとしても、すべては灰に変わる。すべては地に還る。例外はない――)
其の思念を受けながら、芽亜の瞳はユーベルコードに輝く。
「鳴り響きなさい、『Papagena』!」
鈴より放たれた炎弾が不定形の怪物、『渾沌の諸相』を見せる渾沌氏『鴻鈞道人』の肉体に触れる。
だが、炎の力は不定形なる肉体を歪ませるだけで、すぐに消えていく。
それでも芽亜は鈴を振り、渾沌氏『鴻鈞道人』の心を縛る。
しかし、その心を縛る力は、尽くが打ち払われる。
(無意味だ。私に心を求めるなど。私は『骸の海』そのもの。そこに心はあれど、あるのは渾沌。すべてを縛ることなどできない)
しかし、芽亜は己の瞳を絶望に陰ることをしない。
彼女が見据えるのは、いつだって勝利への道筋だ。これまでもそうであってようも、勝利するからこそ未来を勝ち得てきた。
あの死と隣り合わせの青春を送ってきた自分だからこそ分かる。
諦めてはならない。
いつだってそうだったのだ。
諦めこそが足を止める。未来を求める飽くなき心があるからこそ、自分たちは戦い抜いてこれたのだと。
「時限発火(ジゲンハッカ)――この炎でその仮初の体を灼いて差し上げます」
鴇色の炎が鎮火したはずの渾沌氏『鴻鈞道人』の体の内側から噴出する。
一定時間で炸裂する炎が、内側から燃やしていくのだ。
「眠りは死の兄弟。覚悟はよろしくて?」
彼女の手繰る炎が、渾沌すら燃やしていく。
滅ぼすことができずとも。
己の背を追う過去そのものであったのだとしても。振り返ることはあれど、追いつくことはない。
芽亜は己の手繰る炎で持って、『万象の根源たる炎』をかき消すユーベルコードの光を『渾沌の地』に灯すのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
大宝寺・朱毘
敵の先制攻撃は、何かわからんものがこちらを包囲し、袋叩きにすると。
死ななきゃ安いの精神で行こう。
対抗手段は全力魔法。
サウンドソルジャーという性質上、音波――空気の振動を旨とする。これを常識の埒外まで突き詰めれば、空間それ自体に歪みを生み出せる。これを自身の全方位に展開。
何であれ歪な空間を通る際に狙いが逸れるか、せめて威力が落ちるくらいのことは起きるはず。
回避しきれれば万歳だが、恐らくダメージは受けるだろう。そこで【メロディアス・レメディ】で回復。曲目はRPG戦闘曲のメタルアレンジ。
凌げたらば反撃に、顔面目がけ全力魔法の衝撃波。
「そんなに破滅が見たけりゃ、てめぇ自身が滅ぶ様を見やがれ!」
渾沌氏『鴻鈞道人』の告げる言葉はどれもが思念となって猟兵たちの脳内に響き渡る。
己を『骸の海』と称する存在。
それが真実であるのならば、途方も無い存在である。
またそれを裏付けるように『渾沌の地』は渾沌氏『鴻鈞道人』と融合を果たし、『渾沌の諸相』をもって猟兵達に襲いかかるのだ。
無貌なる牛頭は変化し、次の瞬間には白い天使の翼を広げる。
刃と触手が踊るように蠢き、猟兵たちを圧倒する。
「死ななきゃ安いの精神で行こう」
大宝寺・朱毘(スウィートロッカー・f02172)は、その様相を前にしても楽観的とも言える言葉と態度で臨む。
天を覆うほどの数の『玉で飾られた矛』が展開される。
それが渾沌氏『鴻鈞道人』のユーベルコードであることは言うまでもない。圧倒的な数である。
全天のどこを見ても『玉で飾られた矛』の切っ先が己を狙っているのだ。
躱すことはできないだろう。
一つを防ぐ間に別の矛が一撃、二撃と打ち込まれていく。
一斉に放たれるかもしれない。どちらにせよ、朱毘は打倒されてしまう。
(抵抗は無意味と知れ。全ては滅びる。時が絶えず進むように。滅びに向かうことは止められないのだから。遅延を持って『今』を為すというのならば、それは延命以下である。私は『炎の破滅』をこの左目でもって見たいのだから――)
思念が流れ込んでくるのを朱毘は頭を振って振り払う。
「そんなに破滅が見たけりゃ――!」
彼女の歌声が響き渡る。
迫りくる『玉で飾られた矛』。
それらは殺到するように彼女を貫かんと迫るだろう。
だが、彼女はアイドルだ。
そして、生命の埒外にある猟兵でも在る。ならば、彼女の歌声は音波――空気の振動をもって空間自体を歪めるのだ。
音は指向性あれど、全方位に向けられる。
響き渡る歌声はハスキーボイス。
かすれた声であっても、彼女の声は世界を震わせる。音は空間さえ歪め、迫りくる『玉で飾られた矛』の軌道をそらす。
弾き返す事ができたのならばよかったかも知れない。
けれど、それでも彼女は歌うのだ。
打ち込まれた『玉で飾られた矛』は無限にも届こうかという雨の如き包囲攻撃。
グリモア猟兵の予知でも詳細がわからなかった攻撃。天地開闢の力ともいえる矛の雨は、徐々に彼女の歌声さえも切り裂いて進む。
「――ッ!」
痛みが体を走り抜ける。
けれど、歌うことだけはやめられなかった。やめなかったのだ。
止めてしまうことは簡単なことだ。
「てめぇ自身が滅ぶ様を見やがれ!」
朱毘は腹の底から声を絞り出す。痛みが体を貫いて居たのだとしても、己が己自身を折ることを許さない。
例え、どんな敵が相手であっても彼女は折れないのだ。
何故ならば、彼女は――スウィートロッカー。
メロディアス・レメディは彼女の歌声や演奏によってもたらされる癒やし。
メタルアレンジの曲目が奏でられる。
歌声は『渾沌の地』に今だ響き渡っている。
全天を覆う『玉で飾られた矛』であっても彼女を滅ぼすことはできない。彼女の演奏を、歌声を、止めることはできないのだ。
「ガラじゃねーけど……やると決めたんだよ!」
歌声が世界に響く。
奏でる音響が全力の衝撃波となって渾沌氏『鴻鈞道人』に殺到する。
すでに打ち込まれた傷跡は癒えている。
彼女の歌声は世界を護り、癒やす旋律。
ならばこそ、彼女の爪弾くエレキギターの衝撃波は、その鬼面の如く、邪を祓う音。
渾沌氏『鴻鈞道人』の頭部を吹き飛ばし、朱毘は存分に旋律を奏で続ける。
それが己の生きる道、示す音色であるというように――。
大成功
🔵🔵🔵
フィロメーラ・アステール
過去で世界が埋まることによる停止。
それがオブリビオンによる破滅の形のはず。
炎、って何か違うアレなのか?
おっと、敵は包囲攻撃してくるっぽい!
【空中浮遊】して動きまわって包囲されにくくする、さらに【ダッシュ】による【残像】回避で収束点をズラす!
さらに各種耐性のついた【オーラ防御】バリアを展開し、被弾による被害を頑張って抑えよう!
残りは【気合い】で耐えるぞ!
反撃の機会が来たら……やってみる?
『原初の混沌』から『炎の破滅』を創り出す。
もちろん実物ではないけど!
【第六感】を通じて、敵の望みを【盗み】見て【情報収集】し、それを可能な限り再現するぜ!
こんな危険なモノは普通の世界じゃ扱えない!
でもここは渾沌の地、仙界の最深部、骸の海を名乗る敵の居所!
【リミッター解除】してでもやってみる価値はある!
ありったけの【元気】と【全力魔法】パワーを【エネルギー充填】し、世界破壊【属性攻撃】とするぞ!
真の姿(宇宙の卵)に変身、その内側から世界を破壊するほどの劫火を生み出して敵を【焼却】だ!
(変身後は喋らず攻撃のみ)
渾沌氏『鴻鈞道人』の語る『炎の破滅』、それは本来オブリビオンが齎すカタストロフとは違うものであるのか。
「過去で世界が埋まることによる停止。それがオブリビオンによる破滅の形のはず」
フィロメーラ・アステール(SSR妖精:流れ星フィロ・f07828)は、『渾沌の地』にありながら、その小さな妖精の体を持って空を飛ぶ。
すでに先行した猟兵と渾沌氏『鴻鈞道人』との戦いは始まっていた。
天を仰ぎ見れば、そこにあるのは星々を覆い隠すほどに煌めく『玉で飾られた矛』。
それこが渾沌氏『鴻鈞道人』の持つユーベルコードであり、グリモア猟兵の予知ですら詳細知ることのできぬ力であった。
天を埋め尽くすほどの『玉で飾られた矛』は、その切っ先一撃であっても猟兵には致命傷である。
他の猟兵から比べるとさらに小さき体のフィロメーラにとっては掠るだけで消滅してしまうだろう。
「炎、って何か違うアレなのか?」
フィロメーラは気になっていたのだ。
オブリビオンが臨むのは『世界の破滅』。けれど、渾沌氏『鴻鈞道人』は敢えて『炎の破滅』と語ったのだ。
その言葉の意味するところをフィロメーラも、他の猟兵も知ることはできなかった。
迫る『玉で飾られた矛』を飛び回り、フィロメーラは躱す。
残像を用いて切っ先が集中することを避けた。
だが、躱すにはあまりにも数が多いすぎる。全天を覆う『玉で飾られた矛』は、絶え間ない雨のように打ち込まれ続ける。
(私はこの左目でみたいだけだ。『炎の破滅』を。残酷なまでに美しい世界を見たのだから)
思念が流れ込んでくる。
それが渾沌氏『鴻鈞道人』の告げる言葉である。しかし、フィロメーラにはそれ以上考えている余裕はなかった。
「このっ、きあいで!」
迫る『玉で飾られた矛』の一撃をオーラでバリアを張り巡らし、衝撃を殺す。しかし、強大な一撃はフィロメーラの体を揺らし、その体を打つだろう。
小さな体であったとしても躱しきれぬ膨大な数の『玉で飾られた矛』。
それらを躱し、時に衝撃を相殺しながらフィロメーラは、己の瞳に超克のかがやきを灯す。
世界が陰陽に分化する前の根源。
それが渾沌である。原初の渾沌は己の主成分。ならば、あまねく森羅万象を創造せしめる。
(無駄だ。無意味だ。それは仮初のもの)
「こんな危険なモノは普通の世界じゃ扱えない! でもここは『渾沌の地』、仙界の最深部、『骸の海』を名乗る敵の居場所!」
ならばやってみる価値はあるのだと、オーバーロードにいたりしフィロメーラが『炎の破滅』を生み出さんとする。
それは彼女には今だ知らぬものであったがゆえに、生み出すこてゃできなかっただろう。
けれど、その根源たる力は、フィロメーラの活力と全力魔法の力を溜め込むことに寄って、劫火へと変貌していく。
界の指先(ツクリダス)は彩る。
真の姿。
宇宙の卵の如き姿へと変貌したフィロメーラから放たれるのは、内側から世界を破壊するほどの劫火をもって放たれる。
言葉はもはやない。
あるのは意志のみ。
目の前の『骸の海』を自称する存在、渾沌氏『鴻鈞道人』を滅ぼす劫火を生み出す天地開闢より生まれし者。
放たれる劫火は、渾沌氏『鴻鈞道人』を飲み込んでいく。
全天に溢れていた『玉で飾られた矛』すら吹き飛ばし、吹き荒れる劫火はその体を焼く。
強大な力は、いつだってより強大なものに滅ぼされる。
フィロメーラは宇宙の卵へと変わった己の姿をして、それを知らしめる。世界の外にあるのが『骸の海』。ならば、世界そのものたる姿に変容する己は如何なる存在か。
生命の埒外に在る者。
それが猟兵である。真の姿をさらけ出して尚、フィロメーラは、己の在り処を己で決める。
人の形を保たなくとも、そこにある意志が渾沌氏『鴻鈞道人』の存在を許さないのだ――。
大成功
🔵🔵🔵
シズホ・トヒソズマ
いくらか技の一部が掴めてるだけ上等ですからね
後は現地のこちらがカバーするだけ!
からくり人形は◆早業で◆操縦
マインドテンタクルで複数同時操作
まずは地中からの攻撃を警戒し飛行形態のライダに◆騎乗し飛行
追尾性の攻撃や召喚物に備えてデザイアキメラの◆オーラ防御とマジェスの喰盾を張ります
なんてしてたら防御貫通とか毒呪いがあり得ますからね
クロノにより攻撃か召喚物に遅延効果の竜巻を放ち低速化し
それをクロスリベルによる反応と移動力強化した私の操縦テクでのライダで回避
これぞ人形遣いの全力対応!
UCを使いクロノの加速竜巻を纏ったライダの全力突撃
防御しようと粉砕
シュヴァルツヴィアイスの過去喰らいの偽三呪剣で斬ります
詳細知れぬユーベルコードを手繰る渾沌氏『鴻鈞道人』の力は強大であると言わざるを得なかった。
(無駄だ。無意味だ。お前達は死を踏み生きている。夙に滅びていることも知らず。滅びが必定であることを拒絶するか)
その思念は拒絶できなかった。
どんな猟兵の頭にも走り抜け、渾沌氏『鴻鈞道人』の思念を伝える。
そして、その思念がシズホ・トヒソズマ(因果応報マスクドM・f04564)の脳を焼く。
いくらかユーベルコードの詳細が掴めているとは言え、それでもシズホは現地の己がカバーするだけだと思っていた。
彼女は地中からの攻撃を警戒し、『さまよえる舵輪』の力を宿した人形を騎乗形態へと変形させ、空を飛ぶ。
さらに追尾性の攻撃や召喚物に備えてデザイアキメラの防御能力を使い、無機物を吸収強化するマジェスを手繰る。
それら全てが彼女の思念による糸によって操作されるのだ。
だが、それ以上に防御貫通や毒、呪いといった可能性を捨てきれなかったシズホは時間質量理論搭載竜巻豪腕人形『クロノ』を使用し、竜巻を発生させ、時間の遅延でもって防ごうとしていた。
しかし、『拒絶できぬ思念』を受けたシズホは、これがヒーローマスクであり、どうじにからくり人形を手繰る己に対してあまりにも不利なユーベルコードであると知る。
「思念で私の頭を焼き切るつもりなのですね……!」
(無駄だ。無意味だ。滅びは必定。絶えず時は運び、滅びる。過去の集積地たる私『骸の海』へと流れ込む。それは変わらない)
延々とシズホの脳内に流れ込む思念に、からくり人形を手繰る指が止まる。
思念で持ってマインドテンタクルで同時操作していた人形たちもまた止まるのだ。
「だからといっても人形遣いが止まるとでも!」
シズホの瞳がユーベルコードに輝く。
思念が頭の中に響き続けている。
頭が割れそうなほどの痛みを感じながら、シズホはマインドテンタクルを手繰る。
「人形繰りを究めれば、いかなる防御すらも無駄になると知りなさい!」
手繰るコマンドは、全開人形・防御貫通(ドールブースト・ペネトレイト)。
敵のあらゆる防護を無視する力を纏った人形たちがシズホの思念でもって、渾沌氏『鴻鈞道人』へと突撃する。
『クロノ』の加速竜巻をまとった『ライダ』が全力の突撃で持って渾沌氏『鴻鈞道人』の『渾沌の諸相』を持つ不定形の肉体を穿つ。
だが、それは不定形の肉体を変形させただけに過ぎない。
シズホもまたそれがわかっている。
流れ込む思念は拒絶できぬがゆえに、渾沌氏『鴻鈞道人』の思考を読むことができる。
彼女の持つからくり人形は複数。
そして、その全てが異なる機能を持つのだ。
操作者にも伝達可能の予測演算装置と、過去を弱める偽三呪剣を持つ騎士人形たる『シュバルツヴァイス』が穿たれた渾沌氏『鴻鈞道人』の不定形の肉体を切りつけ、引き裂く。
「例え、どんな防御があるのだとしても、過去であることに変わりはない。ならば、『シュバルツヴァイス』の偽三呪剣が通じる!」
放たれる剣閃が渾沌氏『鴻鈞道人』の肉体を引き裂き、その無貌なる牛頭を消滅させる。
白き翼も、触手も、刃も。
尽く切り裂き、霧消させる。無意味だと、無駄だというのだとしても、消耗させることはできると知る。
殺すことができないわけではない。
どれだけ限りがないのだとしても、存在しているのならば殺すことができる。
シズホは頭を占める『拒絶できぬ思念』を振り切り、手繰るからくり人形でもって渾沌氏『鴻鈞道人』を切り刻むのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
大町・詩乃
栄枯盛衰、諸行無常、色即是空、それらは真理。
だから貴方が無理矢理に破滅を起こす必要などありません。
その醜い欲望を断ち斬ります!
天を埋め尽くす『玉で飾られた矛』の先制攻撃は躱せませんね…。
矛盾という言葉が有りますが、最強の矛同士がぶつかればどうなるか。
念動力・範囲攻撃や衝撃波で矛の軌道を纏めてずらす事でぶつかり合いを誘発。
更に結界術で薄い◇型の防御結界を作って受け流す。
天耀鏡の盾受けとオーラ防御は最終手段。
UC:産巣で玉を生み出せし地(無機物な要素もある筈)より龍・ドラゴン・悪魔・騎士を無尽蔵に生み出して鴻鈞道人を蹂躙攻撃。
これが生命の力です!
たとえ滅んでも続くものがあれば終わりではありません。
「栄枯盛衰。諸行無常。色即是空。それらは真理」
大町・詩乃(阿斯訶備媛・f17458)は、渾沌氏『鴻鈞道人』と対峙する。
その左目が見る世界は、かくも美しいものであっただろう。
けれど、それを滅ぼさんとしているのが、渾沌氏『鴻鈞道人』であった。何故、とは問うまい。
理解することはできない。
目の前の渾沌氏『鴻鈞道人』は『骸の海』を自称している。
世界の外に存在する過去の集積地たる『骸の海』そのものであるというのならば、その言葉を理解できるものではない。
(ならば何故抵抗する。無意味であると知りながら、何故私の左目に『炎の破滅』を見せぬとする)
天を覆うのは膨大な数の『玉で飾られた矛』であった。
(嗚呼、流れる血の色も子遠の音も。全てが滅びに向かうものである)
「だから、貴方が無理矢理に破滅を起こす必要などありません。その醜い欲望を断ち斬ります!」
迫る『玉で飾られた矛』を躱すことは無理であると詩乃は悟る。
膨大な数と表現したのは、途方も無い数だからだ。
どうあがいても、どう躱しても『玉で飾られた矛』の切っ先は己を貫くだろう。
ならばこそ、彼女は諦めない。
「矛盾という言葉がありますが、最強の矛同士がぶつかればどうなるか」
彼女は念動力や振るう薙刀の衝撃波でもって『玉で飾られた矛』の軌道を纏めてずらすことで、膨大な数で持って迫る攻撃をぶつけ合うことを誘発させる。
さらに結界術で覆い受け流す。
しかし、『玉で飾られた矛』は彼女の結界を容易く砕く。ぶつかり合うことを誘発された『玉で飾られた矛』は破壊されていくが、それでも詩乃を目指す攻撃は止まらない。
次々と打ち込まれる切っ先に結界は砕ける。
「最終手段ですが!」
天耀鏡とオーラによる防御をして、詩乃は吹き飛ばされる。
空中でさらに己に迫る『玉で飾られた矛』を見ただろう。だが、彼女の瞳に絶望はない。
確かに生命は滅びる。
それは止めようのないことだ。
時が止まらないのと同じように。どうあっても世界は前に進んでいく。『過去』を排出しながら。
それが必定であり、理である。
ならばこそ、彼女の瞳は輝く。
「たとえ、滅んでも続くものがあれば終わりではありません」
永遠とは変わらぬことであるのならば、『過去』はまさに永遠の体現者であったことだろう。
ゆえに詩乃は変わりゆくことを受け入れる。
「これが生命の力です!」
産巣(ムスヒ)。
それは神の理により創造されし生命。
無尽蔵に生み出される数多の生命。それは詩乃がこれまで見てきたものであったかもしれない。
己の想像を超えるものは生まれない。
けれど、後に続く者がいるのならば、きっと己の想像を越えていくだろう。
それを阻むことはしない。
(然うして今があるなら。それこそがお前達が踏みつけにしてきた轍である)
思念を振り払い、詩乃は生み出す生命でもって渾沌氏『鴻鈞道人』を蹂躙する。
踏みつけて前に進むというのならば、いつか己もまた踏みつけにされる側になるだろう。
そこに哀しみはない。
あるのは先往く者たちの安寧を願うものばかりである。
だからこそ、詩乃は己の力を以て、『今』を蝕む存在を打倒するのだ――。
大成功
🔵🔵🔵
ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード
何かを食べなきゃ生きていけないからって、
物を食べることが無意味だとか絶望だとか思うかい?
アンタも、オブリビオンも、あたしにとっちゃその程度のものだよ。
さて、当たったら燃える何かねえ。
形がある物なら軌道を見切って避ければいいし、
避けきれないなら斧と外骨格で防ごうか。
形が無いものなら斧を振った衝撃波で吹き飛ばす。
多少当たったところで火には耐性があるからそう簡単に倒れはしないしね。
先制攻撃を防いだら【耐性進化】で攻撃に耐性をつけて、
真っ直ぐ近づいて拳でぶん殴るよ。
アンタが誰であろうと何であろうと何回出てこようと、
あたしの前を塞ぐなら、何度でも踏み越えていくだけだよ。
渾沌氏『鴻鈞道人』の思念が渦巻く。
その声は絶えず猟兵たちの頭に流れ込んできただろう。
全てを無為。無意味であるという彼の言葉は、猟兵たちにとって受け入れがたいものであった。
「何かを食べなきゃ生きていけないからって、物を食べることが無意味だとか絶望だとか思うかい?」
ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード(混沌獣・f07620)にとって、渾沌氏『鴻鈞道人』の思念は頷くに値するものではなかった。
「アンタも、オブリビオンも、あたしにとっちゃその程度のものだよ」
(朽ちゆく願いに陽が射すというのならば、私は影である。この残酷なまでに美しい世界に『炎の破滅』を私は見たい)
ふせられた渾沌氏『鴻鈞道人』の左目がユーベルコードに輝く。
其処に在りし輝きは太陽そのもの。
『左目の太陽より放たれる視線』がペトニアロトゥシカを襲う。
それは不可避なる炎であった。
『万象の根源たる炎』は荒ぶように『渾沌の地』を舐めるようにしてペトニアロトゥカを飲み込んでいく。
彼女は理解していた。
これまで先行した猟兵たちの戦いから、渾沌氏『鴻鈞道人』の左目が視線を向けた対象を燃やす力を有していることを。
見ただけで対象を燃やす『万象の根源たる炎』は、たしかに形があるが、見切ることなどできようはずもない。
さりとて、避けられぬと斧と外骨格で防ぐことも難しい。
形が無いもの――すなわち『視線』であったのならば、己の斧を振るう。
「見ただけで燃やすというのなら! 遮ればいい!」
放つ一撃が『渾沌の地』を砕いて大地をめくれ上がらせる。
ペトニアロトゥシカの体を炎が包み込むが、それは中断される。多少の炎であったのならば、耐性があるがゆえに強引に振り払い、疾駆する。
簡単に倒れたりはしない。
倒れるわけにはいかない。この先制攻撃をしのいだのならば、まっすぐに近づくだけだ。
自分にできることはそう多くはない。
けれど、その多くはないことをこそ、己は得手としているのならば、ペトニアロトゥシカは拳を握りしめる。
肉体の性質と形状を自在に変形させることができる。
如何に『万象の根源たる炎』が身を焼き焦がすのだとしても、彼女の瞳はユーベルコードに輝く。
「それはもう効かないよ」
耐性進化(イミュニティ・アルター)。
それは彼女のユーベルコードである。渾沌氏『鴻鈞道人』の向けた視線。炎がペトニアロトゥシカを飲み込むが、炎は彼女の体を侵食しない。
燃やせなく成っている。
敢えて一撃を受けることに寄って恐るべき速度でもってペトニアロトゥシカは耐性を身につけたのだ。
「アンタが誰であろうと何であろうと何回出てこようと」
握りしめた拳が固く変質していく。
そう、やることは変わらない。そう難しいことではないのだ。
「あたしの前を塞ぐなら、何度でも踏み越えていくだけだよ」
(何もかもその手で壊すというのか)
思念が迸る。
されど、ペトニアロトゥシカは拳を振り抜いて、渾沌氏『鴻鈞道人』を吹き飛ばす。
『渾沌の諸相』も関係など無い。
目の前に在るのは己の障害そのもの。ならばこそ、今までと同じように。これからも同じように己で切り拓くのだとペトニアロトゥシカは漲るユーベルコードの輝きを瞳に湛えながら、『過去』を踏みしめるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
董・白
さすがかの伝説の鴻鈞道人様。
ユーベルコードが不明なんて…想定外にもほどがあります。
ですが、私たちは猟兵…。かならず乗り越えて見せます。
未来のために…!!
『龍脈使い』の『道術』で『情報収集』し飛来してくる【undefined】を解析し、先制攻撃に対応し、『結界術』と『オーラ防御』の二重バリアで受けて止めた瞬間を狙い風の『属性攻撃』で『吹き飛ばし』ます。
何とかしのぎました。
今度は私達の番です。
宝貝「五火神焔扇」を発動します。
風と炎の宝貝に『破魔』の『仙術』をかけて撃ち込みます。
渾沌氏…御覚悟を!!
『渾沌の地』と一体化した渾沌氏『鴻鈞道人』は数多の猟兵達の攻撃を受けてなお、『渾沌の諸相』を発露する。
白き天使の翼、白き無貌の牛頭。
変幻自在に変わっていく姿。その力の一端を垣間見ても尚、その力が途方もないものであると知るだろう。
董・白(尸解仙・f33242)は目の前の存在が名乗るとおりの存在であることを理解していた。
「さすがかの伝説の鴻鈞道人様。ユーベルコードが不明なんて……」
それは想定外のことであった。
これまで猟兵達は予知によってオブリビオンの目的や、ユーベルコードの詳細を知り、戦いに挑んでいた。
それが不明な存在と初めて相対するのだ。
戸惑いがあるのも無理なからぬことであった。
しかし、その戸惑いすら許さぬのが渾沌氏『鴻鈞道人』であった。
彼の力が全天を覆う『玉で飾られた矛』となって発現する。空を仰ぎ見れば、『玉で飾られた矛』の切っ先が白を狙っていた。
針のむしろなど生ぬるい光景。
「天地開闢の矛……! 陰陽分かつ矛……!」
白は、龍脈より伝わる力の奔流におぞけ走る思いであった。
結界を張り巡らせ、オーラでもって迫る矛の切っ先を受け止める。しかし、結界が砕け、オーラが引き裂かれる。
それもそのはずだ。
あの切っ先に触れればどんなものも引き裂かれる。
天地開闢の力とは天と地を引き離すもの。分かたれる前の渾沌すら万物に分化させるもの。
ゆえに触れてはならぬと白は二重の障壁が砕けた瞬間、風を巻き起こし、『玉で飾られた矛』をそらす。
さらに襲い来る『玉で飾られた矛』たち。
それを凌ぎながら、白は瞳をユーベルコードに輝かせる。
(無駄だ。罪深き刃を持つ者よ。お前達は滅びる。必定なれば。絶えず時が進むように。お前達の存在もまた過去になる。その抵抗は無意味だ)
思念が頭の中をかき回す。
けれど、白は前を向くのだ。
「ですが、私達は猟兵……必ず乗り越えて見せます」
なんのために。
僵尸となった己にあるのか。
それが、と自問自答の如き問いかけが頭の中で反芻する。すでに終わったもの。けれど、それでも己は成長している。
死した体であれど、未来を見ることが出来る。
ならばこそ、白は応えるのだ。
「未来のために……!!」
白の手にあるのは、宝貝「五火神焔扇」(パオペエゴカシンエンセン)。
無機物全てを塵に返すほどの猛火と狂風が吹き荒れる。
それは破魔の戦術に寄って強化され、迫る『玉で飾られた矛』すら吹き飛ばしていく。
(私という影は消えるだけだ。滅びるわけではない)
「渾沌氏……御覚悟を!!」
白は走る。手にした宝貝とともに吹き荒れる狂風と猛火でもって、全天を覆う『玉で飾られた矛』全てを打ち払い、その払った全てを力に変えて、天を衝く猛火でもって渾沌氏『鴻鈞道人』を飲み込み、未来を妨げる障害を打ち倒すのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ルクレツィア・アストリュード
前に進むこと。未来を斬り開くこと。
この身の動く限り、諦めはしない。
判明している限り、敵のユーベルコードは無数の何かを飛ばして包囲攻撃を仕掛けてくるものらしい。
なら、鴻鈞道人へと【ダッシュ】で接近しつつ、飛び交うものが何であるか、その性質を見て分かる範囲で推察。
此方へ向かって飛んでくるタイミングを【瞬間思考力】で【見切り】、前方へ飛び込むように回避。
前方から迫る攻撃は得物で斬り払うか、【念動力】で斥力場を形成して逸らす形で躱す。
凌いだらUC発動。
残る飛翔物体ともども鴻鈞道人を攻撃、電磁力で加速した刃の一閃で追撃。
混沌であれど、未来妨げるものは斬り開いてみせる。それが『答え』だから。
(見上げた昏い星が夙に滅びていることも知らず。それでも、その無意味を為すか)
渾沌氏『鴻鈞道人』の思念が頭の中に吹き荒れる。
滅びは必定。
そして、時が絶えず進むのならば、『今』もまた『過去』になるのだと、無意味を説く存在。
己を『骸の海』そのものと称する存在は、その力が真実であることを示すように全天を『玉で飾られた矛』でもって覆う。
それは全てが天地開闢の如き力を持つ切っ先であった。
あれに触れてしまえば、己という存在は分かたれてしまうことをルクレツィア・アストリュード(終極フラガラッハ・f30398)は理解した。
けれど、その理解があるからと言って彼女は退くことはしなかった。
「前に進むこと。未来を斬り拓くこと。この身が動く限り、諦めはしない」
そう、時が前に進むのと同じように。
猟兵は諦めない。
どれだけ詳細の知れぬユーベルコードであろうとも、迫る『玉で飾られた矛』へと彼女は走る。
(無意味だ。如何に流れる血の色も鼓動の音も、生きるお前を彩る生命を紡ぐものであったとしても)
放たれる『玉で飾られた矛』は触れるだけで己を引き裂くだろう。
天地開闢の力とはすなわち万物に先立つ渾沌すら分かつ力である。直感的にルクレツィアは理解していたのだ。
あれに触れてはならないと。
しかし、全天を覆うほどの数の『玉で飾られた矛』を刀で受ければ、刀事態が分化されてしまうだろう。
「なら!」
念動力を集中させる。斥力でもって迫る『玉で飾られた矛』をそらす。
そらす度に己の頭が焼けるような痛みに襲われるだろう。
捻出した念動力が己の体に掛ける負荷は凄まじいものであった。
到底耐えられるものではない。
絶え間なく放たれる『玉で飾られた矛』は一瞬でも気を抜けば、それだけで己の生命を奪うものであると知る。
だからこそ、ルクレツィアは一瞬も緩むことを許されなかった。
「邪魔は、させない」
人々が生きる道を。
己が答えを示す道を。
それを遮るもの全てをルクレツィアは許さない。
瞳に輝くユーベルコードは、破邪雷光(ヴァジュラ)の如く煌めく。
掲げた刀より稲妻の嵐が吹き荒れ、周囲を電磁場によって満たす。構えは一瞬であった。
吹き荒れる電磁場が『玉で飾られた矛』を吹き飛ばし、道を拓く。
「渾沌であれど、未来妨げるものは斬り開いて見せる」
それが、とルクレツィアは小さくつぶやいた。
渾沌氏『鴻鈞道人』の無貌なる顔には、如何なる感情もなかった。
あるのは『炎の破滅』を望むものだけ。
ならばこそ、それは未来における障害だけだ。
ゆえに彼女は己の剣を抜刀する。
放つ剣閃は電磁加速で持って渾沌氏『鴻鈞道人』の首を落とす。
「それが『答え』だから」
無意味であっても、無駄であっても、無為であっても。
進む道が定まるものを止めることができるわけがない。すでに『答え』は得た。ならば、それを示すだけである。
世界に。
この世を滅ぼす愛で。
その愛が求める『炎の破滅』を未来という数多の生命が望む可能性を以て斬り拓くのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
数多の修羅場を駆けました
マルチセンサーでの情報収集と瞬間思考力で飛来する攻撃の性質を看破
格納銃器で撃ち落とし、剣と盾にて弾き
躱す必要あらば脚部スラスターの推力移動で疾走し
創造主を殺し壊され、数多の同型機のように“過去”とならず猟兵として蘇り…
『罪深き刃』…その言の真意は兎も角
成程、この剣を握る私に相応しい
眼前の脅威故か
申請待たずに機能が全開放された電脳禁忌剣構え
されど、未来の為に剣を執るのが騎士なれば!
人が願いし未来を此処に!
UCにて再現するは故郷にて観測されし『ガンマ線バースト』
剣属性の膨大なエネルギーを剣先から放ち振り下ろし
此度は……いいえ、何度でも退いて頂きます、渾沌よ!
数多の戦場を往く。
それはどれもが修羅場であったことをトリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)知る。
容易いものは何一つとしてなかった。
在ったのは、生命を弄ぶオブリビオンとの対決ばかり。
戦場を駆け抜ける。
己を狙って飛来する『玉で飾られた矛』はセンサーで全て把握することができぬほどの物量。
全天を覆うほどの力の奔流。
それが『骸の海』を自称する存在、渾沌氏『鴻鈞道人』の放つ詳細不明のユーベルコードの発露であった。
「創造主を殺し、壊され、数多の同型機のように“過去”とならず猟兵として蘇り……『罪深き刃』……その言の真意は兎も角」
トリテレイアは内蔵された重火器でもって迫る『玉で飾られた矛』を打ち落とし続ける。
あれに触れてはならない。
天地開闢の力である『玉で飾られた矛』は、触れただけであらゆるものを分かつ分化の力である。
切っ先の鋭さは言うまでもない。
だからこそ、トリテレイアはやむなく受けた己の盾が分解され分かたれていくさまを詳細に見た。
(無駄だ。この世を滅ぼす愛あればこそ、私は『炎の破滅』を見たいと思うのだ)
その思念はウォーマシンであるトリテレイアの電脳にさえ刻まれる。
(0と1の狭間に鎖された現実に堕ちるがいい。過去という死を踏み生きる猟兵よ)
はなたれ続ける『玉で飾られた矛』は間断なく。
スラスターを噴射させ、大地を疾駆するトリテレイアは、己の手にした電脳禁忌剣を振るう。
申請をまたなければ使用できないはずの剣が機能を開放されている。
それは驚くべきことであったが、トリテレイアにとってはうなずけるものであった。
「成程、この剣を握る私にふさわしい」
だが、彼のアイセンサーが煌めく。
ユーベルコード、『罪深き刃』と言わしめた力であれど、未来を拓くための力があるのならば。
「されど、未来の為に剣を執るのが騎士なれば!」
如何に無駄と、無意味と謗られようとも。トリテレイアは止まることはない。止まれない。止まれるわけがない。
何故ならば、己は託されたからだ。
多くを取りこぼし、多くを背負ってきた。
咎も罪もあるだろう。
だからこそ、そのアイセンサーはユーベルコードに煌めく。
「人が願いし未来を此処に!」
銀河帝国未配備A式天災再現兵装(アレクシアウェポン・ディザスター)が生み出すのは彼の故郷でも在るスペースシップワールドにて観測された『ガンマ線バースト』。
剣の剣先から膨大なエネルギーを放出する。
それらは光度の高さゆえに、『渾沌の地』を染め上げる。
どれだけ世界を滅ぼす愛でもって『炎の破滅』を望むのだとしても、トリテレイアは未来を望む人々の願いを受けて剣を振るう騎士である。
(それが無意味であると知りながら振るうか。その身が壊れど歌うか)
その光の放出を渾沌氏『鴻鈞道人』は見ただろう。
これが人の望む未来であると。
剣をふるい、迫る天地開闢の矛すら薙ぎ払い、トリテレイアはその体を切り裂く。
「此度は……いいえ、何度でも退いて頂きます、渾沌よ!」
未来を妨げる障害であるというのならば、未来望む人々のためにこそ騎士は剣を執るのだと宣言するように、トリテレイアは極大の光を持って、『渾沌の地』を引き裂くのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!
なるほどー
つまり手をこまねいていては必敗!ということだね!
ならボクはその渾沌のなかにもーーっと渾沌を!蓋然性を焚べよう!
●対抗
彼の攻撃に対して【影】の中から無作為に、無数に、小さくはビー玉、大きくは100m以上、色も黄色にピンク、虹色に暗黒、赤青緑の、[球体]くんたちをばばーっとぶちまける!
完全ノーコン!彼らの意志任せのスタンピードで渾沌の地を平らにする勢いで埋め尽くす!
その球体くんたちがごろんごろんする中をボクは【第六感】で安全なルートを見出して何でもない風に歩いていったらかっこよくないかな!
そしてーー…ばっちり近付いたところでUCでドーーーーーンッ!!!
渾沌氏『鴻鈞道人』の『左目の太陽より放たれる視線』が世界をあまねく照らす。
『渾沌の地』と一体化した彼は『渾沌の諸相』をもって猟兵たちを圧倒する。
その力は『骸の海』そのものであるという言葉を裏付けする力であったことだろう。
ユーベルコードを叩き込み、消耗させて尚、有り余る力。
(無駄だ。無意味だ。万物に先立つのが渾沌であれば、そこに法則性はない。あるのは滅びだけだ。必定のみ。この開闢の後に見える必定たる『炎の破滅』を私は見たい)
その左目が煌めいた瞬間、ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)は悟るのだ。
「なるほどーつまり手をこまねいていては必敗! ということだね!」
迫る炎。
それは『万象の根源たる炎』であった。
渾沌氏『鴻鈞道人』の放つ『左目の太陽より放たれる視線』がロニを捉えた瞬間、彼の体を『万象の根源たる炎』が燃やす。
影から無作為、無数に多くの球体たちをぶちまける。
視線は遮られた。
けれど、ロニを認識した視線は、それより早く彼の体を燃やすだろう。
炎が肌を焼き、ロニは痛みを覚えるかも知れない。
影より飛び出した球体達は彼のコントロールを離れ、球体の意志任せの暴走状態で『渾沌の地』全てを平らげるかのような勢いで埋め尽くしていくのだ。
(お前達は過去を踏み生きている。継ぎ接ぎの羽をもがれて、絶望の海に沈め。その醜い醜い姿は)
『万象の根源たる炎』が球体を燃やす。
視線を向けただけで炎が噴出する。
その恐るべき力を前にしてもロニは戦場を往く。
燃え盛りながら球体たちが『渾沌の地』を蠢き、彼はその間隙を縫うようにして渾沌氏『鴻鈞道人』の視線を避け、飛び出すのだ。
なんでも無いふうに歩く。
こうしたらかっこよくないかな、とロニはあくまで散歩のついでというように『渾沌の地』を往く。
(この世を滅ぼす愛で。この身が壊れど歌うのみ)
炎が世界を染め上げていく。
『渾沌の地』にありて、渾沌氏『鴻鈞道人』の放つ『渾沌の諸相』はいよいよもって不定形の怪物じみていた。
それはこれまで猟兵達が紡いできた戦いが無駄ではなかったことを示していた。
滅ぼすことができずとも殺すことができる。
ならば、ロニはその瞳をユーベルコードに輝かせ、渾沌氏『鴻鈞道人』へと己の拳を掲げるのだ。
「ド―――――ッ!!!」
それは神撃(ゴッドブロー)。
信心無き者にも神々しさを感じさせる拳。
如何に渾沌氏『鴻鈞道人』が『渾沌の地』と融合したのだとしても、『骸の海』そのものであったのだとしても、ロニは神としての己を変えることはない。
どんなに途方も無い存在であっても、己の拳で殴ることができるのならば、為すべきことは変わらないと、その瞳をユーベルコードに輝かせ、その力を発露させる。
放たれた拳は『渾沌の諸相』を吹き飛ばし、不定形の怪物としての渾沌氏『鴻鈞道人』を大地に叩きつけ、その『渾沌の地』をえぐるのほどの一撃を叩き込むのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
御形・菘
はっはっは、相手の出方が分からずとも前向きに考えればよい!
ようやく互角か、此度はむしろ程よいハンデを与えてやるとゆーぐらいにな!
先制攻撃は炎ダメージの軽減に集中しよう
妾も同系統の技を使えるのでな、このクラスの強者なら同様に回避不能の理不尽な方法で命中から着火までしてくるであろう!
邪神オーラを纏った左腕で頭部をガード
酸欠だとか精神支配、行動阻害を付与するする系統さえ防げれば、炎上の方はとにかく耐える!
妾もお礼に花を添えてやろう、文字通りにな!
はーっはっはっは! 燃え上がる花々もまたエモくて素晴らしい!
そして! アガって攻撃力MAX、しかも炎を纏った左腕にボコられ、ド派手にブッ飛ぶがよい!
「はっはっは、相手の出方がわからずとも前向きに考えればよい!」
詳細不明のユーベルコード。
『渾沌の諸相』を放ち、『渾沌の地』と一体化した渾沌氏『鴻鈞道人』の思念を遮るように御形・菘(邪神様のお通りだ・f12350)は、いつもと変わらぬテンションであった。
どんな敵も、どんな事態も彼女には関係なかった。
今も絶賛配信中である。
「ようやく互角か、此度はむしろ程よいハンデを与えてやるとゆーぐらいにな!」
無論、それもまた演出の一環である。
(無意味だ。その言葉も、その囃し立てる言葉も。何もかも。時が絶えず止まらぬように、全てが地に還る。終わるのだ)
渾沌氏『鴻鈞道人』の左目が開かれる。
じわりと力が伝達するのではなく、それは一瞬であった。
『左目の太陽から放たれる視線』が菘を捉えた。
瞬間、彼女の体が燃える。
『万象の根源たる炎』は彼女の体を燃やす。とっさに頭をガードした。邪神のオーラをまとった左腕だからこそ、とっさのガードが間に合ったと言うべきだろう。
「やはりな! このクラスの強者なら同様に回避不能の理不尽な命中から着火までしてくるであろう!」
菘もまた同じ系統の力を使える。
だからこそ、わかったのだ。目の前の存在、渾沌氏『鴻鈞道人』はこれまで亮平達が対峙してきた存在とは一線を画す者であると。
理不尽そのもの。
視線を向けられただけで炎を齎すユーベルコード。
さらには、それが『万象の根源たる炎』であるというのならば躱すことなどほぼ不可能だ。
ならばこそ、菘は単純に燃やすだけであることに気がつく。
もしも、これが酸欠であるとか精神支配などのものが付与されているのならば、彼女は此処で終わりであっただろう。
「『万象の根源たる炎』ならば、何もかも燃やすのだろう! ならば、兎にも角にも耐えれば良い!」
彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
システム・フラワーズの力を一時的に借りて『渾沌の地』を花々が咲き乱れるエモい空間に変える。
「妾もお礼に花を添えてやろう、文字通りにな!」
花々は『渾沌の地』に満ちる。
花弁が風にそよぎ、炎によって燃えていく。
その光景は画角を抑えることによって、得も言われぬ光景となっただろう。
(残酷なまでに美しい世界を見た。私は見た)
それを滅ぼさんとしている。
まさに『炎の破滅』を渾沌氏『鴻鈞道人』は望んでいる。ならばこそ、菘は落花狼藉・散華世界(イキナリクライマックスバトル)に在りて、己の演出の素晴らしさに感動する。
「はーっはっはっは! 燃え上がる花々もまたエモくて素晴らしい!」
アガりにアガってしまう。
心が高揚する。どうしようもないほどに衝動が心のなかより溢れてくる。
目の前の敵が途方も無い存在なのだとしても関係ない。あるのは、派手にぶっ飛ばすという意志のみ。
燃え上がる炎が左腕にまとわりつき、満ちる。
「ド派手にブッ飛ぶがよい!」
菘にとって、この演出だけが全てだ。
派手にぶっ飛ばす。
ただそれだけのためにユーベルコードを展開する。それは如何に『渾沌の地』と一体化していたとしても、彼女の世界を染め上げる炎が意味を為さないことと同義である。
(朽ちゆく願いに陽が刺して。私という影は消えるだけ、か―――)
「この世を滅ぼす愛など、この世を愛するものに比べればな! 斯様に脆きもの!」
放たれる拳が渾沌氏『鴻鈞道人』を打ち据え、菘は己の世界への愛を拳に込める。
戦う理由など、それでいいのだ。
誰かが望んだ未来がある。
それを護るというのはおこがましいのかもしれない。
けれど、菘はそれでも己の拳が捉えた渾沌氏『鴻鈞道人』を滅ぼすだろう。
ユーベルコードが『罪深き刃』であるのならば、その罪ごと抱えていく。そうすることが己自身の望みであると言うように、菘は、己が世界を愛する想いをほとばしらせ、渾沌氏『鴻鈞道人』を打倒するのであった――。
大成功
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