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銀河帝国攻略戦⑰ 〜アステロイド・トゥルース〜

#スペースシップワールド #戦争 #銀河帝国攻略戦

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「仕事の時間だ」
 灰色の髪をしたグリモア猟兵――壥・灰色(ゴーストノート・f00067)が、居合わせた猟兵達に説明を始める。
「どうやら戦況に動きがあったらしい。『アゴニーフェイス』だとかいう、精神攻撃兵器を擁する敵艦隊の存在が確認された。アゴニーフェイスというのは……サイキッカーの脳を弾丸として、敵の精神を焼き切るものとのこと。ろくでもない科学者が考えたろくでもない武器だね」
 吐き気がする、と吐き捨てながら灰色は続ける。
「アゴニーフェイス自体には攻撃能力は無い。その周囲を宙間戦闘が可能な敵クローン重装兵が固めている。また、強襲艇もいくらかいるみたいだ。その中にも重装兵がギッチリ。きみ達には、この重装兵を撃破しつつアゴニーフェイスを破壊してもらいたい」
 ルービックキューブ状のグリモアを操作しつつ、状況の説明を続ける。
「現場には多数の小惑星が浮いていて、人型大でなければ戦闘機動が困難な状態だ。敵はこの暗礁空域を隠れ蓑のように利用している。……逆に言えばきみ達は足場には事欠かない、ということでもある。転送後、すぐに戦闘開始となる。そのつもりで臨んでくれ。それと――」
『アゴニーフェイス』がもたらす影響について、灰色は懸念を持って呟く。
「アゴニーフェイスは、きみ達の生存本能に強く働きかける。おそらくは、あれを喰らった猟兵は強制的に『真の姿』を……きみ達がアレをなんと言うかは分からないけど、晒すことになるだろう。おれの予知にも、異形となったきみ達の姿が見えた。……けど、恐れないでくれ。自分を強く持って、真っ直ぐに敵のみを見据え、討ち果たして欲しい。健闘を祈る」

 ルービックキューブが噛み合う。
 現地へ向かう門が、開かれた。



 煙です。
 真の姿で大暴れしましょう。
 執筆は明日から無理なく書ける限りで参りますので、プレイング送信は明日(13日)朝8時半以降に下さると幸甚です。

 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「銀河帝国攻略戦」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
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第1章 集団戦 『クローン重騎兵』

POW   :    インペリアル・フルバースト
【全武装の一斉発射】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD   :    コズミックスナイプ
【味方との相互情報支援】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【狙撃用ビームライフル】で攻撃する。
WIZ   :    サイキッカー拘束用ワイヤー
【アームドフォートから射出した特殊ワイヤー】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●ワン・フォー・ワン・ナイン アゴニーフェイス四〇・四七二連中隊
「アゴニーフェイス、稼働状況は順調。各方面にて純粋に解放軍の軍勢を削っています」
「当然だな、我が隊も続くぞ。そろそろこの暗礁空域に対する警戒も薄らいだ事だろう。突撃艇に燃料を再装填。重騎兵部隊のコマンド・リンクをアクティブに」
「イエス・サー。コマンド・リンク、アクティブ」
「ククク、解放軍のゴミ共が苦悶の表情で喉を掻き毟りながら死ぬところを、早くこの目で確かめたいものだ――」
 アゴニーフェイス四〇・四七二連中隊。
 精神汚染・破壊兵器『アゴニーフェイス』を擁する、クローン重騎兵を主戦力とした連隊だ。その総戦力は約四〇〇に届かんと言うほどである。
 二連中隊長――司令官は、旗艦司令室のカメラを眺める。虎の子の『アゴニーフェイス』が、クローン重騎兵の庇護を受けながら旗艦上に誇らしく飾られている。
 その姿はまさしく、苦痛に喘ぐ人間の顔のような形の金属塊としか形容のしようも無い。そのカートリッジ――弾丸は、サイキッカーの脳を使用している。
「敵を拿捕すれば弾丸が手に入る。これほど効率のいい兵器も他にあるまい。ゴミを自然、再利用出来るというのだからな」
「全くです――ん?」
 満足げな司令官の呟きに応じるオペレーターが、唸るような声を上げた。
「何だ?」
 突如、レーダー上に増える光点。識別信号無し。当然ながら味方ではない。
 光点はジグザグに――おそらくは小惑星間を蹴り渡り、こちらに接敵してくる!
「これは――レーダーに反応! 敵奇襲部隊、来ます!」
「馬鹿な! 何故ここまでの近接を許した?!」
「反応は突然発生しました、先から報告のあります解放軍の特殊部隊と思われます! 数――一〇以上! まだ増えます!」
「クローン重騎兵共を展開、敵を寄せ付けるな!! ――ふん、向こうから来たのなら丁度よかろう! アゴニーフェイスを展開しろ! 敵奇襲部隊を殲滅し、暗礁宙域を抜ける!」
 司令官は勝利を疑っていなかった。
 疑わずして、アゴニーフェイスの発射命令を下した。

 苦悶の表情を浮かべる、歪んだ金属塊が妖しい光を放つ。
 音すら伝播せぬ漆黒の闇を、虹色の波動が走り抜け――
 ――そして、畏れが、目を覚ます。
千桜・エリシャ

嗚呼、よかった
宇宙にも御首はありますのね
絡繰の首はどんな斬り心地がするのかしら
そう、強制的に真の姿へ…いいでしょう
お望みならば、角も髪も桜色に染まった鬼神の姿でお相手致しましょう
ふふ…これは…いつもより抑えが効かないかもしれませんわ
――上手に狩れなかったらごめんなさいね?
己の本能に従って、ただ只管に刀を振るって
その首に紅い花を咲かせましょう
ふふ、絡繰といえど手向けの花くらいは贈って差し上げますわ
私を傷つけようとするのならば、花時雨を開いて防いでみせましょう
嗚呼、これが羅刹の本能なのかしら
血が騒いで滾って――楽しくて愉しくて仕方ありませんわ!
ねぇ、どうか止めないで
私と最期まで踊ってくださいまし



●咲くは血桜、散々乱れ
「嗚呼――、よかった」
 宇宙空間に声は伝播しない。猟兵らが纏う行動を阻害しない宇宙服の内側で、彼女は孤独に呟く。
 通信機能はオープンチャンネル。他の猟兵らの昂ぶった声が聞こえてくる。はあ、と少女は美しい目を伏せ、かそけき声を漏らした。
「宇宙にも御首はありますのね。絡繰の首はどんな斬り心地がするのかしら」
 小惑星間を蹴り渡るのは千桜・エリシャ(春宵・f02565)。見目麗しく風雅な物腰に、剣気纏った言の葉を載せる。
 彼女は極彩色の光が駆け抜けたあとも、足を止めずに走る。
 胸の内側を焦がすような、恋情に似た焦燥……ああ、これが、アゴニーフェイスの影響か。
 エリシャは唇の端を持ち上げ、刀の柄を取る。
「――お望みならば、御覧に入れましょう」
 黒曜石の角が、漆黒の髪が、まるで乱れ咲く桜めいて桃色に染まる。
「ふふ――これは、いつもより抑えが効かないかもしれませんわ。――上手に狩れなかったらごめんなさいね?」
 真の姿を晒したエリシャの速度は、それまでとは別物だ。目指すは敵旗艦に搭載されているアゴニーフェイス。その行く手を、宙間戦闘に長けたクローン重騎兵が幾体も飛び、遮る。
 視線がカチ合う。僅か一瞬。
 クローン重騎兵のビームライフルが光を噴いた。――明後日の方向に。
「ふふ、絡繰といえど手向けの花くらいは贈って差し上げます」
 エリシャは笑う。その手には、既に目にも留まらぬ速度で抜刀された大太刀『墨染』がある。撃たれる前に銃を構えた腕ごと一閃したのだ。返す刀で重騎兵の首を刎ねる。血飛沫、花が如く咲き、腕と首が飛ぶ。死体を蹴り飛ばして次の小惑星へ着地。
 エリシャの速度を見た重騎兵数体がバイザーに文字の羅列を表示、それによる意思疎通後に三体で、距離を取ってのビームライフルの連射を仕掛ける。エリシャは和傘をくるりと回し、花咲かすように開いて、手首を返した。くるり回る桜花の模様の表面をビームが滑り、光弾は曲芸めいて弾かれて逸れる。
 弾幕の間隙を縫い、再びの跳躍。直上の小惑星に反射するようにエリシャは襲いかかった。
 漆黒の弧を描くは墨染。宇宙に溶けてしまいそうなその黒い刀身が、瞬く間に三つの首を刎ね飛ばす。
「嗚呼――嗚呼! 血が騒いで滾って――楽しくて愉しくて仕方ありませんわ!」
 上気する頬に傘持つ左手の甲を宛がい、エリシャは熱に潤んだ目で次の敵を探す。
「ねぇ、どうか止めないで。私と最期まで踊ってくださいまし」
 羅刹は笑う。桃色の髪は、或いは血を吸う桜の色か――

成功 🔵​🔵​🔴​

コーディリア・アレキサンダ


脳を弾丸……仕組みには興味があるけれど、使っていいものではないね
破壊させてもらうよ

交代しよう“ベリアル”
後は任せる






久しぶりに俺様の出番というわけだ

格の違いというやつを教えてやろう――なあ、諸侯よ!
我が親愛なる71の友よ!

教えてやろうではないか。我らが悪魔と呼ばれる所以を


本来の姿、力のまま呼び出した、俺様を含め総勢72の悪魔
燃える豹やドラゴン、大鷲やライオン、騎士等による蹂躙を行おう
それが我らが宿主の望みだ、諸侯よ

特に殺戮に長けたバーゲストの活躍が目覚しいだろう
鎧など彼の魔犬の前では紙くずに等しい



【人格を交代しただけなので六枚の黒い天使の羽、黄金色の瞳、不遜な表情以外、外見に変化はありません】



●“レメゲトン”
 虹色の波動が一過したあと、コーディリア・アレキサンダ(亡国の魔女・f00037)は静かに呼吸を二つ。
 急き立つような焦燥感と昂ぶりがある。まるで死を前にした際の防御反応だ。原理も仕組みも不明。しかし、効果ばかりは確からしい。グリモア猟兵の解説は、およそ間違いの無い形で現実となった。
「脳を弾丸に……か。仕組みには興味があるけれど、使っていいものではないね。破壊させてもらうよ」
 コーディリアは赤い、ルビーのような瞳をそっと伏せ、目を閉じる。
「交代しよう“ベリアル”。後は任せる」
 返事が聞こえた気がした。どこか、遠くで。

「はッ、久しぶりに俺様の出番というわけだ」
 コーディリアは、――否、ベリアルは、その金色の瞳を開いて笑った。背に開く三対の黒い天使の翼。不遜な表情は漲る自信に根差すものだろう。爪先を小惑星に着け、重力もないのに「着地」。悪魔に物理法則を問う方がナンセンスだと言わぬばかりだ。
 ベリアルへ向け、十数体のクローン重騎兵が飛ぶ。敵は高出力のブースター及びスラスターを装備。この宙域に於ける機動戦闘能力は想像を絶する。しかし、ベリアルはそれを鼻でせせら笑った。
「雁首揃えてよくもまあ、我楽多が玩具を振り回して粋がるものよ! 格の違いというやつを教えてやろう――なあ、諸侯よ! 我が親愛なる七一の友よ!」
 ベリアルの爪が宇宙空間を裂く。虚空に洞、そこより出でるは――
 燃える豹。竜。大鷲、獅子、騎士、醜き海魔、馬に跨がる王。
 それらは全て、コーディリア・アレキサンダがかつてその身に収蔵した悪魔の軍勢。
「教えてやろうではないか。我らが悪魔と呼ばれる所以を。それが我らが宿主の望みだ、諸侯よ」
 その総数、ベリアルを交え七二。
 ベリアルが手を指揮棒のように振り下ろす。
 蹂躙が始まった。
「ははッ、狩りともなれば足が速いな。バーゲストよ」
 いの一番に、漆黒の弾丸が如く駆けたのは魔犬『バーゲスト』。空を翔る魔犬は空気のないこの宇宙空間すらも容易に飛び翔る。小惑星を反射しながら重騎兵らに襲いかかる。その爪牙の前では、合金製アーマーも、特殊繊維加工クラスXの防弾繊維も意味を成さない。そんな装甲は紙屑同然だ。噛み砕かれ、引き裂かれるのみ。
「足掻けよ、我楽多共。この程度で終わって貰っては、些か拍子抜けが過ぎるからな」
 巻き起こる殺戮。クローン重騎兵を蹴散らしながら、ベリアルは悠然と敵旗艦へ視線を向けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神埜・常盤


真の姿、僕は余り晒さないのだが
それで宇宙の平和が守れるのなら
まァ、いいか!

真の姿はヴァンパイアに似て
眼の隈は綺麗に取れ、背には漆黒の翼
髪は銀に、瞳は深紅に

ははは、怪人が怪物になったか
中々爽快な気分だ
今だけは半端者ではない自分に
高揚と哄笑が抑え切れず

嗚呼、此度の相手は量産型か
溢るる血潮は期待出来ないが
数が多いので良しとしよう
さあ、「私」と踊れ

攻撃は天鼠の輪舞曲にて
相手の懐に飛び込み捨て身の一撃
偶に霊符でフェイントなども試み
その隙を突けば暗殺の技を活かし弱点狙う

至近距離で目が合った敵には
催眠術をかけ同士討ちを命じる
お前の敵は私ではない、そうだろう?

ダメージ募れば吸血で回復を
嗚呼、温い紅が恋しい



●好事家に曰く
 神埜・常盤(宵色ガイヤルド・f04783)は飴色のインバネスを翻し、宙域に舞う小惑星を飛び渡る。
「アゴニーフェイス……ね。僕は余り真の姿を晒すことはないんだが――まァ、いいか!」
 この戦場を駆けることが、平和に繋がるのなら。飄々と生きる彼は、身の振り方一つを決めるのも潔い。
 敵の旗艦より、虹めいた波動が周囲に広がる。まさに光の速度だ。耳の内側を、耳障りな絶叫で引っかかれた心地になる。それと同時に心に芽生える、敵意、焦燥感、昂ぶり。精神がささくれ立つような感覚。
 変化は、一瞬で現れた。
「――ふん」
 声のトーンさえ、刹那の前とは異なる。軽く剽げた口調が、尖る牙の如く変ずる。
 目元の隈が取れ、背に張り出す漆黒の翼。琥珀色の髪は映す光を変えたように銀に染まり、赤茶の瞳がより澄んだ紅へと変わる。
「ははは、怪人が怪物になったか。中々爽快な気分だ」
 ――この瞬間ばかりは、誰にも半端物とは言わせない。真なる夜の王としてその力を振るえる。
 彼は軽く手を握り、視界に瞬く光点――敵を見据えた。既に猟兵らの戦闘は始まっているようだ。
「嗚呼、此度の相手は量産型か。溢るる血潮は期待出来ないが――数は多い、それで良しとしよう。さあ――『私』と踊れ」
 伝承に見るヴァンパイアそのものの容姿となり、常盤は翼で宇宙空間を切り裂き、飛ぶ。
 前方に敵影四。視認、一拍後にビームライフルと腰のビームランチャーによるフルアタックが開始される。
「鈍いな」
 常盤は嗤い、ばさりと『解け』た。
 タネも仕掛けもありはしない。一瞬で常盤の身体は数百ばかりの吸血蝙蝠の群れとして分解され、ビームの弾幕を掻い潜る。
 クローン重騎兵が標的を見失い、バイザーに何かを表示して意思疎通を取り出すのを常盤は見逃さない。一体の背中に蝙蝠を集め、身体を再構成。爪を揃えて貫手。装甲が砕け、肉が抉れ、腕が身体を突き抜ける。早贄めいて痙攣する重騎兵。
 他三体が素早く常盤を向き直り、ビームライフルを構える。しかしそれよりも、常盤が視線を走らせる方が早い。
「お前達の敵は私ではない。そうだろう?」
 紅の魔眼が敵の認識を、強烈な催眠で上書きする。三者が互いに銃を向け合い、発砲し合うのに興味なさげに背を向けながら、常盤は貫いた一体の死体を蹴り放した。爪の先に伝う紅をひと嘗め。
「……嗚呼、温い紅が恋しい」
 顔をしかめる。これでは全く、昨晩淹れた珈琲のようだ。元より期待はしていなかったが。
 手近な小惑星を蹴り、常盤は次なるダンスの相手を求め跳んだ。
 ――遥か銀河の星屑を背に、蝙蝠の群れが舞う。

成功 🔵​🔵​🔴​

橙樹・千織


先刻から随分と趣味の悪い手法ばかり…
まぁ…あちらも手を選んでいられない、ということの表れならいいのですが


【鎧砕き・マヒ攻撃】でこちらの状況を有利な方へ
あとは【戦闘知識】を活かして【傷口をえぐる】など弱点攻めといきましょう
いざ、参らん!!

敵からの攻撃は【野生の勘・見切り】などで回避
もしくは【武器受け・なぎ払い】で受け流しましょう


あの姿は別に好きでも嫌いでも無い
ただ…遠い過去を思い出す程度

真の姿
丁度いい…【空中戦】も活用して片付ける

見た目はオラトリオのよう
翼は3対
・トビの翼
・白から紅へのグラデーション
・紅から黒へのグラデーション
瞳は深紅
髪は金
白磁の肌には黒い八重桜の紋が至るところに浮き上がる



●椿、斯くも熱く赤く
「先刻から随分と趣味の悪い手法ばかり……気が滅入りますね」
 橙樹・千織(藍櫻を舞唄う面影草・f02428)は密やかに嘆息する。人のトラウマを穿り返す、人の脳で作った精神爆弾で精神を焼き切る――およそ、人道的な戦い方とは言いがたい。
「まぁ……あちらも手を選んでいられない、ということの表れならいいのですが」
 それは、つまりは追い詰められていると言うことだ。千織は小惑星を八艘跳びが如く渡るなかで、彼方にアゴニーフェイスの光を見る。
 千織が眉を聳やした瞬間、宙域を同心円状に駆け抜ける極彩色の波動。――通常の人間であれば、耳の裏を苦悶の絶叫で引っ掻かれるが如き感覚に狂い、廃人同様になるという。
 しかし千織は猟兵。その効果は、敵の想定外の形で現れる。
「――昔を思い出しますわね」
 遠い過去のことだ。刹那、過去に思いを馳せながら、千織は再び敵艦に向き直る。
 進路に複数のクローン重騎兵。銃から放たれる光条を前に、千織はその背に翼を打ち広げた。三対の翼。トビの翼、白から桜を経て紅に染まる翼、紅より出でて漆黒に沈む翼。互い違いにはためかせ、空気もないこの宇宙をまるで猛禽がそうするように飛ぶ。
 物理法則では、猟兵に――千織に枷はかけられない。深紅の瞳を瞬かせ、金に染まった髪を振り乱しながら千織は抜刀。右手に刀、左手に薙刀。急速で敵に向け接近しつつ、その嫋やかな手を伸べ、刀の切っ先を敵に向けた。
「いざ、参らん! 赫奕の剣舞を照覧あれ!」
 袖から覗く手、その白磁の肌に這う八重桜の紋。桜がゆるりと光ったかと思えば、彼女の周りに浮かびあがる椿の枝めいた灼熱の炎。『剣舞・燐椿』。爆発的に伸長し、鋭く伸びた枝先が複数体のクローン重騎兵を串刺しにし、一瞬で装甲と装備を融解・破壊する。
 浮き足だった敵の渦中にそのまま突っ込み、刀を一閃。敵一体を一刀両断、間近から放たれたビーム・スナイパーライフルの光を薙刀を片手で回旋し弾き、その運動エネルギーを殺さぬままに身体を急転、
「はぁっ!!」
 柄側へ持ち手を滑らせリーチを伸ばし、薙ぎ払いで首を狩る。
 苛烈な攻撃に浮き足立ってしまえば、最早敵に勝機は無い。宇宙に咲く燐椿を従え、千織は帯を優雅に揺蕩わせながら舞い跳ぶ。
「続けましょう。これで終わりでは、ないでしょう?」

 ――クローン重騎兵十数体が連絡を絶つまで、ほぼ一瞬。
 次の獲物を探し、面影草は舞唄う。

成功 🔵​🔵​🔴​

御伽・柳
行動:【SPD】
使用UC:【早気】

UDCに侵食されている状態での戦い……今までなら、避けたいと思ったはずだ
でももう大丈夫、過去とは決着をつけたばかりだ
俺はもう……迷いません

人も艇も星も、触れてしまえば俺にとっては全て『たま』だ
【早気】で片っ端から投げつけていきます
それくらいの無茶、今の状態でならば効くはず

俺の中のUDC、俺はお前を信用してない
けれど、今は信頼してやる
だから力を貸せ



●怪物と流星
 虹の波動が――アゴニーフェイスによる精神波が戦場を駆け抜ける。
 御伽・柳(灰色の渇望・f12986)の姿もその効果範囲に在った。
 ――けれども彼は、荒ぶり、猛れと奮う精神とは裏腹に、どこか凪いだ気持ちでいる。
 かつてかれは魔術の才がないと断じられ、その非才に絶望しながらも――なお力を渇望することをやめられず、身体にUDCを受け入れた。言うなれば、UDCが彼の身体に巣喰うことそのものが、彼の非才を証明していた。
 彼の従妹や姉には魔力の才があった。――自分にないものを羨んで、妬み、その心の隙をUDCに喰われ、彼女らを傷つけたこともある。
 向き合わずにひた隠しにして、ずっと今まで避けてきた。忘れることはなかったけれど、蓋をしてきていたその事実。
 ――けれど、
「俺はもう……迷わない」
 柳は顔を上げる。彼の瞳には決然とした色があった。ドクター・オロチによる精神攻撃を乗り越えた彼は、それまでの彼とは違う。過去との決着を経て、力への向き合い方が変わった。
 UDCによる侵食を制御し、感情を荒ぶらせることなく、ただただ、『御伽・柳』として力を振るう。
「――俺はお前を信用してない」
 柳は独り言ちる。それは自分の中に巣喰う力へ向けた言葉だ。
「――けれど、今は信頼してやる」
 烙印めいた非才の証明。けれど、向き合い、受け入れ。制し御することを覚えたのならば、それそのものが柳の才だ。
「力を、貸せ!」
 ぎいん、と刻印『オモイカネ』が光り、彼の四肢を内からUDCが侵食する。

 正面から飛来する複数のクローン重騎兵。ビームライフルによる嵐のような連射を前に、柳は巧みに身を捻り、小惑星に手を着いてユーベルコードを発動する。

 ――流星雨。
 そうとしか形容できない光景。

『早気』。御伽・柳のユーベルコード。
 彼は『たま』――弾体と認識したおよそあらゆる物を、一秒に十八、投擲できる。
 柳は周囲のアステロイドを埋める小惑星、デブリの類を身を捻り投擲、その反作用で次の小惑星に跳ね飛び、またも投擲を繰り返した。反動による回避動作と小惑星投擲による攻撃が一体になった猛撃である。
 弾幕めいた流星雨を前に、命中したクローン重騎兵が次々と吹き飛び、敵陣に穴が空く。追撃しながら、柳は敵艦へ向けて前進を開始した。
 ――今ならば、この力と向き合い、御しながら戦える。そう信じられるから。

成功 🔵​🔵​🔴​

ユハナ・ハルヴァリ

真の姿:魔物と呼ばれた仔
青年の人型
全身に荊の刻印が這い、衛星のように氷を纏う
鮮やかな青に星屑を散らした瞳、長く伸びた銀髪
意思を籠めた魔力の『声』と氷で攻守を行う

アゴニーフェイス。
早く狙えと言わんばかりに攻めていく
真の姿を晒したなら、
月の名を持つ短刀に氷を纏わせ、身の丈以上の大剣を成す
己の間合いを冷気で覆い
斬り込み、薙いで、削ぎ落とす
ああ、数が多い
…『壊れろ』ッ!
広域に響かせる声は魔術のようなもの
避けられるものか、逃すものか
この声が己の命を喰らおうと構うものか
尽きる前に全部、僕が壊す
『退いて』『邪魔をしないで』
──『殺してあげる』

剥き出しの感情、何処までも追ってくる『声』
それ故、魔物と呼ばれた



●まものとよばれたこども
『それ』がどんなものだか、ユハナ・ハルヴァリ(冱霞・f00855)は聴いていた。
 曰く、人の脳を使用した、苦悶の聲を放つ武器だと。それを聴いたものは、その脳が味わう苦痛を、苦鳴を、強制的に共感させられ死に至るのだと。
 プリズムに依り分けられたかのような虹色の波動が放たれ、死んでいった誰かの絶叫と苦悶を脳に直接聴いたとき、ユハナの中に説明できない感情が溢れた。

 ――ああ、とにかく。いまは、あれをぶっ壊さなきゃ気が済まない。

「あ、あ、あ――」
 虹が走り抜けたあと、聲は低く。
 その全身には絡みつくが如き茨の刻印。背と髪が伸び、凜とした青年の様相を呈する。その周囲を衛星のように氷の砕片が渦巻き、まるでそれは吹雪が人の形を成したかに見えた。星屑の煌めきを帯びる紺青の瞳を尖らせ、彼はあごニーフェイスを乗せた艦を見据える。
 ひゅ、と短刀を抜いた。それは彼が纏う氷を食うようにして伸長し、身の丈以上の大剣を成す。
「『飛べ』」
 かれの言葉は、力ある言葉だ。
 発した音に乗ったかの如く、ユハナの身体は爆発的に加速。小惑星を蹴り、敵の群れへと躍り込む。
「『退いて』、『邪魔をしないで』」
 オープンチャンネルでの無線を傍受していたクローン兵らの動きが、僅かに惑う如く止まる。その一瞬で充分であった。
 躰を回して大剣での薙ぎ払い、クローン重騎兵二体を瞬く間に上下に両断して撃破。放たれるビームライフルの光弾を、翳した手の先に瞬時に構築した氷鏡で弾き飛ばし、そのまま手を振るってチャクラムの如く投擲。首と胴が分かれる頃には既にユハナは次の敵に斬りかかっている。
「『壊れろ』ッ!」
 常のユハナらしからぬ、強い、荒れ狂う感情のままのような聲。故障などあり得ないはずのビームライフルの内側で粒子加速装置が暴走し、次々と重騎兵の手元で爆発、暴発。壊れていく。死んでいく。一瞬で一小隊の十数名が命を絶たれ、ポリマーと合金と蛋白質の集合体になって宇宙に果てる。
 死骸の一つを蹴り飛ばし、ユハナ・ハルヴァリは虚無の虚空を駆け抜ける。
「――そうでないなら、『殺してあげる』」
 剥き出しにした刃の如き感情を、ユハナは聲に乗せて歌う。
 どこまでも敵を追い、襲いかかる『声』。

 故に彼はいつの日か、魔物と呼ばれた。

 ユハナは小惑星を蹴り、次なる敵に襲いかかる。
 アゴニーフェイスを破壊するときまで、彼が止まることはない。

成功 🔵​🔵​🔴​

メア・ソゥムヌュクスス
ちりん、ちりん、鐘が鳴る。
まるで、夜を告げるかのように。
現世を歪め、覆い隠し、塗り潰すが如くに、夢が広がり。
星の煌めく筈の宙に、夜の帳が降りる。

…総てに救いを。
…遍くに安らかな眠りを。
…優しく、甘く、健やかに。
…身を委ね、心を委ね、眠れ、眠れ、果てしなき夢へと。

人形の身体から溢れる睡夢の霧は、汎ゆる全てを呑み込み夢へと閉ざす「揺り籠」と成る。

真の姿『ソゥムヌュクスス』


……
………
Safety System【悪夢の欠片】


違う、違うの、それは「救い」なんかじゃ、ないの。
私は、それだけが「救い」だなんて、思いたくない。



●悪夢の欠片
 当然だが、宇宙空間に音は響かない。
 音を伝播する空気が存在しないからだ。

 しかし、それでも、鐘が鳴る。夢見の羊の鐘が。
 夜を告げるかのように。現世を歪め、覆い隠すように。何もかも塗りつぶすように。
 彼方に瞬く星の輝きさえも、その空間には残らない。ああ、落ちる、帳が落ちる。


“……総てに救いを”
≪Safety System "Flagments of Nightmare", is ready.≫

 メア・ソゥムヌュクスス(夢見の羊・f00334)の身体から、眠りの霧が溢れ出す。
 彼女は「揺り籠」。汎ゆる全てを呑み込み夢へと閉ざす「揺り籠」。
 彼方から、二十数騎のクローン重騎兵が集う。フォーメーションを組み、メアへ向けて高速で突っ込んでくる。
 女は甘やかに眼を細めると、りん、とまたも夢見の鐘を鳴らした。溢れる霧が、濃くなる。
 敵小隊より一斉に放たれた光弾は、霧により減衰し、メアまで届かず消失する。まるで眠りに落ちたように。
 クローン重騎兵の間に走る動揺。刹那の逡巡の後、射線を重ねぬ包囲隊形へシフト。より近距離での高出力攻撃を行うため、彼女の周りに集まってくる。

“……遍くに安らかな眠りを”

 敵の統率の取れた動きにも感慨を示さず、宇宙空間に揺蕩うままに、彼女は夢見の鐘を揺らす。
 音さえ凍えるはずの絶対零度の宇宙空間に、眠りを誘う音色が咲く。
 霧が……星の光を食い、漆黒の空に幕を下ろす。

“……優しく、甘く、健やかに”

 メアは――否、『ソゥムヌュクスス』は、微笑んだ。鐘の音は彼女を通じ霧となり、今、星をも隠す緞帳となる。

“……身を委ね、心を委ね、眠れ、眠れ、果てしなき夢へと”
≪Hypnosis drive implements on, "After Nightmare".≫

 爆発的に広がった霧が、敵小隊を包んだ。
 眠る。ああ、眠る。
 それは死に至る眠り。霧の街で彼女が否定したはずのもの。

        ――ああ、ああ、ああ、違う!

 重騎兵が眠っていく。抵抗すら許されず、呼吸すら忘れ。安らかに甘美に。

        ――違う、違うの、それは「救い」なんかじゃ、ない!

 夢見の羊の夢の中へ、堕ちていく。

        ――私は、それだけが「救い」だなんて、思いたくない……

 漆黒の幕が下りた。眠りの霧が全てを終わらせる。
 乱戦の様相を呈する戦場の中で、そこだけが……
 優しく、甘く、そして残酷なまでに昏く、静かだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鳴宮・匡

◆同行:ヴィクティム(f01172)

生きろと言われたから、生きている
その為なら、誰を殺して、何を壊しても構わない

――俺の生存本能は、いつだってそういうものだ
だから、やるべきことは変わらない

目についた敵から狙撃していく
頭か、胴か、一撃で殺せるならば何処でもいい
ああ、いつもより敵が良く見えるな

敵を定める意思は、引き金を引く指は
あらゆる衝動や感情から独立してあるべきだって
ちゃんと覚えてる、大丈夫だ

今日も、明日も、俺は生きてる
あんたの望んだ通りだ

何を殺して、何を壊しても、
それだけは守るから

◆真の姿
五感情報の鋭敏化/広域化
並列演算能力・神経伝達速度の強化

外見変化は皆無
瞳の奥に揺らめくような青が覗くのみ


ヴィクティム・ウィンターミュート
◎【鳴宮・匡と出撃】

・真の姿
10年前の姿。未だ生身だった頃。見窄らしい汚れた服。痩せこけた身体。
武器はナイフ代わりのガラス片。双眸だけが獣のように爛々と輝き、生存意欲の権化のような存在。つまりは、意志の怪物。
かつてのストリートのハイエナと呼ばれた、富める者全ての恐怖の象徴。

ハイエナの戦いは即ち、殺して奪う。ただそれだけ。執拗なまでに【追跡】し、【ダッシュ】で【先制攻撃】。狡猾に素早く、躊躇いなく。

さぁ、富ある敵達から、殺して奪おう。上から見下ろす奴らの、武器を、資産を、名前を、命を!収奪!強奪!略奪!簒奪!!
自由になるための糧を!這い上がる力を!
俺を、弱者と侮る者こそを!
───歓迎してやる。



●凪と衝動
 昔話をしよう。十年前になる。
 まだその頃はこの躰には何も入っちゃいなかった。みすぼらしい汚れた服で、痩せこけた身体を包んで、眼ばっかりギラギラさせてたジューヴさ。
 ウィンターミュートもアイスブレイカーもヒラドリウスもなかった。
 生体ナイフなんて上等なモンはねえ。当然ながらイカしたサイバーデッキもねえ。武器なんてその辺で拾ったガラス片。
 けどそいつは一等トガってた。ただ殺して奪うだけのハイエナの牙。いつも赤黒く汚れた薄片は、どんな奴にだって突き立った。
 そう。
 いつか、俺はそうやって呼ばれてたのさ。
 ストリートのハイエナ。富めるもの全てから何もかもを簒奪する、恐怖の象徴ってな。

 昔話をしよう。いつの頃だったかな。……時期なんて些細か。
 別に、生きる理由なんてものがあったわけじゃない。少なくとも、自分の中にはそんなものはなかった。
 ただ、生きろと言われた。あの人から。
 ――俺の生存本能は、そこから来ている。生きろと言われたから生きている。生きるためなら、誰を殺して、何を壊しても構わない。
 だから今この瞬間も、やるべきことはいつもと一つも変わりがないんだ。
 ……考えが冴えるな。いつもより敵がよく見える。
 ああ――今だったら。
 どこまで遠くだって狙ってやれる。

 ヴィクティム・ウィンターミュート(impulse of Arsene・f01172)は目を爛々と輝かせ、硝子の欠片を握りしめた。彼の姿は常にない、ウェットな――何のサイバーウェアも装備しない子供の姿となっている。データシーフ『Arsene』の秘された過去の一ページ。
 飢えた瞳の煌めきはさながらハイエナのそれである。そして――その戦い方も、また、同じ。
「さぁ、……死にてェヤツはァ、どいつだァ!!」
 ヴィクティムは吼え、小惑星を蹴り飛ばした。ピンボールめいた乱反射。会敵したクローン重騎兵らの銃口が惑う。追いつけない。迂闊に発砲すれば、フレンドリーファイアの可能性がある。
 超近距離、既にヴィクティムの間合いだ。ハイエナの戦いとは『殺して』『奪う』。ただそれだけ。
 逃れようとフォーメーションを崩してまでブースターを噴かし、距離を取ろうとした敵のスラスターに取り付き、ガラス片を首に突き立てる。血が吹き出た。心臓の鼓動に合わせリズミカルに噴血し藻掻く重騎兵。
「さぁ、テメェら、全部出せ。その武器も、金も、命も、全部、全部全部、全部だァ!」
 収奪、強奪、略奪、簒奪。
 奪うのは自由になるためだ。這い上がる力を得るためだ。
 藻掻きながらブースターを噴かす哀れなクローン重騎兵の首を腕でロック。ビームライフルを奪い、ヴィクティムは死に体の重騎兵を盾兼移動手段として巧みに扱いながら、次々と射撃、射撃、射撃。瞬く間にクローン重騎兵が数を減らしていく。
「俺は、俺を、弱者と侮る者こそを! ──歓迎してやる」
 ヴィクティムは謳う。それこそが自らの源衝動であると語るかのように。

 ヴィクティムの速度、相対位置を頭に叩き込む。敵性体総数二八体。また二体ヴィクティムが落とした。二六体。
 ――ああ、楽だな、ここには風がない。今なら片手で撃ったって当たる。
 アンカーにより小惑星に自身の身体を固定した鳴宮・匡(凪の海・f01612)は、瞳の底で水底のような青を揺らめかせ、ユーベルコードを起動する。
 ゼロ・ミリオン。彼を中心とした五七六メートルの球状領域は、最早彼の手の内側にあるのと同然だ。全て見えている。全て掴むことが出来る。
 狙って、撃つのは、手を伸ばして命を摘まむのと殆ど同義になる。
 アサルトライフルを構え、すっと銃口を滑らせた。銃爪を絞る。フルオート射撃。五発目でトリガーから指を離す。銃口の動きを止めないまままた三発、二発。
 なぞるように動かした銃口から放たれた銃弾は一連の射撃で十二発。ファイアレーンの先に、弾けた頭が十二個。
「大丈夫。大丈夫さ。教えて貰ったことは全部覚えてる」
 匡は凪いだ声で言った。
 何が起こったのか。神業めいたバースト狙撃だ。
 銃口でなぞった射界の上に入る敵を、指先で切り取った。
 言葉にするだけなら単純だ。しかし秒間十六発の激発性能を持つアサルトライフルを、フルオートで、しかも指切りで点射。その全てを二〇〇メートル先の機動隊の頭部に、十二発連続で着弾させるなど。――最早、その演算速度と身体操作の精密性はノイマン型コンピュータが裸足で逃げ出す域にある。
 あらゆる衝動、感情、しがらみから解き放たれた彼の指は、マシンの如く精密に敵の命を摘み去っていく。
 無音で吼え続ける銃を抱いたまま、匡は囁くように言う。
 最早帰らない、一番遠い場所にいるあの人に。
「今日も、明日も、俺は生きてる。あんたの望んだ通りだ。――何を殺して、何を壊しても、それだけは守るから」

 銃弾が、ハイエナの牙が、次々と敵を抉り立てる。
 二つの暴虐が去った後には死骸が漂うのみだ。
 何もかもを奪われ、銃弾で貫かれた死骸が。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ユア・アラマート
うーん、あの姿を見せるのは別に嫌じゃないが。少し恥ずかしいんだ
だが状況が状況だ、仕方がない。お前達にも見せてやろう。私の「かみさま」を

(魔術回路が青くなり、肌を突き破った月下美人は硝子の花を胸に咲かせる。髪は白く、目は赤く染まり。いつの間にか握っていた刀を静かに構える)
基本だが、当たらなければそう問題はない
【全力魔法】と【属性攻撃】で風を纏い、足場から足場へと移動して敵を撹乱
隙をついて花片を放ち、銀色の花弁で敵を覆い、切り刻みながら視界を塞いでいるうちに接近
花吹雪が止んだ瞬間、一閃を叩き込み確実に一人ずつ仕留めていく

「「どうぞ、良き終息を」」
(吐き出す声は、二重にブレて、女たちは静かに笑う)



●Stray dance
「あの姿を見せるのは少し恥ずかしいんだが――まったく、そういう話を聞くような連中じゃないのが不幸だな」
 ユア・アラマート(ブルームケージ・f00261)は胸元の刺青を指先で叩く。抵抗しようがどうしようが、アゴニーフェイスの波動は万事を遍く通り抜ける。
「嗚呼、不幸だ。お互いに」
 ユアは眼を細めた。彼女の胸の月下美人が、反転するように青く染まる。膚を突き破り浮かび上がる、青く凍えた硝子の花。胸に咲いた美しい花を指先であやし、彼女は艶然と笑った。
「見せてやろう。私の『かみさま』を」
 ユアの髪から色が抜け落ち、白く染まる。瞳は紅く、ただただ紅く。音もなく現れたるは二尺三寸の刀。
 ユアはそのまま声も無く、無限の真空の中、小惑星を蹴って跳躍した。同時に彼女の身体を風が巻く。真空中に巻き起こる風が、高性能なスラスターのように彼女が飛ぶ軌道を制御する。
 進路上にいるクローン重騎兵部隊がユアに向けてビームライフルを放つ。スマートリンク照準によるセミオート射撃、それが二小隊分。殆ど嵐のような連射。
 しかしユアは嘲笑うように、風の精の如くジグザグに動きながら突っ込んだ。難なく光条を回避してのける。光の嵐を以てしても、その残像すら捉えるに能わない。スマートリンクによる照準補正が追いついていないのだ。彼らのデータベースには、その速度で鋭角な方向転換を行う敵性体のデータが存在しない。
「裂いて、咲いて、乱れ舞え。『花片』」
 刀がしゃらりと先端から崩れ、無数の銀の花弁に姿を変える。ビームライフルの光を照り返して美しく煌めく銀の花弁は、その一つ一つが薄鋼の鬼刃。腕の振り一つで敵の群れへ殺到する。
『花片』の白刃は敵のエネルギー伝達チューブ、或いは関節部、装備のジョイントを切り刻み、行動を阻害しつつ視界を塞ぐ。ビームライフルのトリガーが引かれるが、照準は散漫となる。当然ながらユアに光が注ぐことはない。
「「見えるだろう? お前達にも」」
 ユアは、――或いは彼女の『かみさま』は笑った。声は二重にぶれ、ユアだけのものではなくなっていた。
 女は既に、己が殺界の射程に敵全てを捉えている。
「「『幻哭華烈』」」
 銀の嵐めいた刃風が一瞬で彼女の刀の柄に飛び戻り――再び刀身を成した瞬間。妖刀が閃く。
 白刃の煌めきが遥か星を照り返し、十数条。刃鞭の如く唸り飛び。
 首が飛び、腕が飛び、脚が飛び、血が飛沫き。
 けれども女は不浄を寄せ付けず、風を纏って揺蕩う。
「「どうぞ、良き終息を」」

 艶やかに唱う声だけが、十数の死への手向けであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

明智・珠稀
ふ、ふふ。
かしこまりました、思う存分に大暴れさせていただきましょう…!

■真の姿
…おや、既に真の姿に変身しているようですね、ふふ。
(背中に天使のような真っ白な羽が生えたのを確認。
何度か変身済み。
優雅な笑みと共に妖刀を構え、敵を見据え)
あなたには、私が天使に見えますか?
それとも、悪魔でしょうか?
(恍惚に頬を染めながら周りの敵に飛びかかる)

■戦闘
【殺気】を放ち【恐怖を与える】
「さぁ、かかってらしてください、く、ふふ…!」
狂気的な笑みで妖刀を振るい斬りまくり
「あぁ、もっと愛して差し上げましょう…!」
UC【青薔薇吐息】で範囲攻撃を。
華麗に舞い動きつつ、容赦なく敵へ攻撃を加える

※アドリブ、絡み大歓迎です!



●死地に青薔薇の咲く
 宇宙空間に白き羽根が舞う。
 明智・珠稀(和吸血鬼、妖刀添え・f00992)は伸びやかに翼を伸ばし、大きく羽撃いた。幾度かこの姿になったことはあるが、その時と同じように力が溢れ出るのを感じる。
「ふふ、かしこまりました……思う存分に大暴れさせていただきましょう……!」
 抜き身の妖刀を手に提げていた。紫にぬらりと煌めく刀身、その峰を指で恋しげに撫で、細面を恍惚に緩めて笑う。その様は女性と見紛う細面のおかげで、妖艶とすら見えた。
 彼方にちかりと瞬くビームライフルの光を見て、珠稀は身を廻す。バレルロールめいた回避で光条を回避すると、もう一度大きく羽撃く。天使の如き翼が、真空たる宇宙空間を掻き、物理法則を越えた推進力で彼の身体を前へと飛ばす。
 ぐんぐんと、敵の小隊が近づく。
 フォーメーションを組んだ敵から次々と放たれるビームを回避しながら、珠稀は敵編隊の上を取るように位置取り、停止。
 両翼にデルタフォーメーション、二。中央にダイアモンドフォーメーション、一。敵機数一〇。
「あなた達には、私が天使に見えますか? ――それとも、悪魔でしょうか? そのいずれでもすることは変わらないわけですが」
 問いかけを一つ。クローン兵らは当然の如く答えない。
 散開の挙動を見せる彼らの初動に、珠稀はそれよりも早く切り込む。
 落ちるが如く飛び込んだ珠稀の妖刀『閃天紫花』が、一刀のもとにダイアモンド編成後尾の一体を切り裂いた。リアクターが暴走、爆発。爆炎が珠稀の頬を照らし、紫水晶の目を妖しく煌めかせる。
「さぁ、さぁ、愛して差し上げます! かかってらしてください、くふ、くふふふふふ……!」」
 殺気か、狂気か。異様さえ感ずる珠稀の威圧感を前に、散開した敵小隊が即座に珠稀を包囲。光弾を次々と浴びせかける。
 閃天紫花の斬閃きらり、珠稀が翻す刀身が火線を撫で流し、切り裂き、弾き飛ばす。身体一回しの舞うが如き剣舞。翼を打ち振り高度を上げ、Z軸をずらして続く光弾を回避する。
 ゆるりと慰撫するように閃天紫花の刀身を撫でれば、はらりはんなり崩れるように、紫の妖刀より花弁が零れ、それは切り裂く渦となる。
「さあ、私の青薔薇に愛されて果てなさい!」
 珠稀を中心として青き嵐が起きた。花弁は美しくも鋭く、瞬く間にその場にいた敵機全てを巻き込み、反撃すら許さずに切り刻む。
 次々と噴血し、爆発し、罷る重騎兵らの命を味わうように、珠稀は形の良い唇を湿す程度に舐め、恍惚の息を吐く。
「私の愛はこの程度では尽きませんよ。さあ……次はどなたです?」
 男は青薔薇を刀へと戻し、次なる敵部隊をその眼で射竦める。

成功 🔵​🔵​🔴​

アイン・ローレンス
【SPD】
真の姿:
瞳と毛先が真っ赤に染まる
目付きが鋭くなり、攻撃的に

この姿じゃなければまだ優しい相手だったろうに、バカね
うふふふ、遊んであげるわ

「友の友」でまいたけ軍を召喚
ツーマンセルで行動し、一体ずつ確実に葬ってあげなさい
【属性・マヒ・範囲攻撃】で雷を纏わせた左右の鞭を振り回し、周りの敵を【吹き飛ばす】
ビームライフルは【第六感・聞き耳】で予測し、
【見切り】避けたり、鞭で引き寄せた【敵を盾にする】
そのまま投げ返してあげるわ
近づいてきた敵は風を纏わせた「護りの短剣」で装甲の薄い部分を一突き
そのまま風が切り刻むわよ。接近戦なら行けると思った?

まだ終わりじゃないでしょ?
さあさあもっと楽しみましょう!



●哀切、今は無く
 それが常の彼女ならば、そこまで苛烈な戦場にはならなかったろう。
 或いはそれは、アゴニーフェイスなどという非道で冒涜的な兵器を用いた帝国軍に対する報いだったのかも知れない。

 ――第六感的な察知。
 彼女は、敵から放たれたビームの軌道を一瞬で見切り、短剣に纏わせた風により、自身の身体を横にスライドして回避。
 初弾を外そうが、敵の群れは即座に彼女に向かってくる。十数体。仔細は数えなくてもいいだろう。
 どうせ、すぐに皆いなくなるのだ。
「この姿じゃなければまだ優しくしてあげられたのに――バカね」
 息を漏らすように笑うのは、アイン・ローレンス(気の向くままに・f01107)。
 常は小柄で、ウェービィな銀髪に可愛らしい面差しのエルフだ。――しかし、今の姿はいつもとは少々異なる。柔和なはずの表情は、今は攻撃的な笑みに彩られ、目は鋭く敵を睨み据える。青と緑の輝けるオッド・アイは、今は血に染まるが如くただ赤い。銀髪の末端も、鮮血を帯びたが如く朱に染まる。
「遊んであげるわ。いらっしゃい、貴方たち。ツーマンセルで、一騎残らず葬るのよ」
 アインが腕を振るえば、光と共に現る二十二体のイタチの群れ。鎖鎌を携えた彼らは招来された瞬間に二体一組を組み、一斉に鎖分銅を投擲した。
 暗黒たる宇宙に漆黒の鎖分銅だ。視認性が極めて悪い。命中した鎖により雁字搦めになり、次々と動きを封ぜられる重騎兵ら。そのうち二機が逃れてアインへと接近してくる。近接格闘用のヒートナイフを構えて突っ込んでくる重騎兵を前に、アインはせせら笑うようにナイフを逆手に持ち換えた。
 風を起こす。身体を回す。身体を折り、紙一重でヒートナイフを回避、柄尻から風を噴出。バックハンドブローめいて、逆手に握ったナイフを胸部装甲の間隙部分に捻り込む。防弾繊維を風の魔力が噛み千切り、体内で荒れ狂った風の魔力は重要臓器を完全に破壊。
 力の失せる敵からナイフを抜き去りながら、迫る次なる敵手を鞭により捉え、首を締め上げながら引き寄せる。鎌鼬らによる拘束を受けながらも放たれる敵からのビームの雨を、捕らえた敵を盾にしてやり過ごす。
 ――ビームが止めば、アインは盾代わりの重騎兵を突き放した。宙域には首を鎌で裂かれた敵部隊の亡骸と、盾代わりに使われた重騎兵「だったもの」が哀れに漂う。
「こんなもの? まだまだ終わりじゃないでしょ? さあさあ、もっと楽しみましょう!」
 赤い瞳を輝かせ、アインは次なる獲物を探す。侍る二十二体の鎌鼬らも、その瞳を暗澹たる宇宙に煌めかせた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

サビエラ・ナヴァツカ
真の姿は大鷲の翼を持つ鹿のケンタウロス。
この姿になると、普段より好戦的になってしまう所があるから…全力でいく。

ユーベルコードによって、自分のルーツである神様たちの力を降ろして戦うよ。
鹿の機動力で前に出て、文字通り敵を蹴散らしていく。
身に余る力だから毒を飲んだように苦しいと思うけど、気にしない。
やれるだけ戦う。

もう前に出られないくらい消耗したら、翼を広げて仲間を庇うとか、援護射撃でサポートする。

アドリブ、連携も歓迎だよ。



●神使は翔る
 その姿は、まさしく『キマイラ』と呼称すべきものだったのではないか。
 真の姿を露わにしたサビエラ・ナヴァツカ(獲物を狩る鹿・f03523)は、背中に大鷲の翼を広げた半人半鹿の異形の姿を晒しながら、敵陣へと真っ向突っ込む。
「父なる牡鹿、母なる大鷲、そして森の神々を統べる女神よ! 器たるこの身にその怒りと憂いを注げ!」
 サビエラは朗々と歌い上げ、その身に神々の権能を降ろす。
 真の姿と化すことで得た四足に依る、真なる意味での鹿の突撃力。それをユーベルコード『神の代行者』によりさらに強化。代償として毒を飲んだが如く、臓腑の爛れるような苦悶がサビエラを襲う。しかして彼が足を止めることは、決してない。
 普段より昂ぶった心が、前へ進めと彼を急き立てる。
「――逃がさない。お前らは、ここで仕留める」
 サビエラもまた、放たれたあの虹色の波動を、アゴニーフェイスの光を見た。
 ――あの時、彼の、大きな鹿の耳の裏側に、空気もないのに叫びが伝播した。苦悶の声だった。助けてくれと、何故こんな非道をと、解放してくれと――ああ、あの声がこびりついて離れない。
 サビエラはかつて野山で、動物たちと共に生きた。もし仮に、あの叫びが共に生きた動物らのものであったとするならば。脳髄を毟り取られ、無為に、兵器として消費されるだけの存在にされてしまったとするのなら。
 いや、動物たちでなかったとしても、今日の彼が言葉を交わす『猫の尻尾』の誰かが、そうされたとするのであれば。
 許せようものか。許せるはずがない。
「……俺が今からするのは狩りだ。隠れても、必ず射貫いてやる」
 小惑星が無数に漂うアステロイドベルトは、今やサビエラが跳び回る舞台に過ぎなかった。岩の狭間に隠れてビームライフルを構える敵のその眉間を、鷲羽根の矢がメットごと貫き、ただの一矢で絶命させる。
 さりとて正面から、小隊が搭載火器をフルオープンにし乱射を仕掛けたところで、サビエラは大鷲の羽根を開き羽撃く事で急上昇、軸をずらして弾幕を回避しながら雨霰と矢を連射する。
 黒い尾羽根が溶けるように、鏃の銀閃を残し敵の身体に吸い込まれる。突き立つたびに命が潰え、一人また一人と死んでいく。下方へ急降下するように翼を打つサビエラ。残敵が照準補正をする前に、鹿の両足が二体の頭部を、身体にめり込むほどに踏み潰す。
「はあっ、」
 毒に息が上がり、臓腑が焼け落ちそうに痛もうが、サビエラは止まらない。

 この身体が動く限り、戦い続けてやる。
 その決意は、放たれた矢の軌道めいて鋭い。

成功 🔵​🔵​🔴​

メドラ・メメポルド
◎(真の姿描写もご自由に追加OKです)


ああ。ごはんの時間ね。
ええ、あなたたちのお陰で、とても調子がいいわ。
わたし、たくさんがんばれる。

【POW:ブラッドガイスト】
ほんとうの、わたし。
たいして姿なんて変わらないわ。わたしはわたしだもの。
でも、今のわたしは真実しかないわ。

右肩の月へ、わたしの血を。
くらげの腕には毒をいくつか。
細胞ひとつに至るまで喰らうことに特化させるの。
毒の味など気にはしないわ。
あますことなく平らげてしまいましょう。

だって、おなかがすいてるもの。
だれも満たしてくれないもの。
だからねえ、あなたたちを詰め込ませて。
栄養なんてなくていいわ。
少しはこの感覚がましになるんなら、それでいいの。



●いつか星さえ呑む海月

 今のわたしは、真実しかないわ。

 メドラ・メメポルド(フロウ・f00731)は、アゴニーフェイスの波動に晒されてなお、何も変わらないかに見えた。
 空腹を覚えたように、彼女は腹をさする。
 遠くから、急き立てるように飛び来る強襲艇。上部が開き、数十体とクローン重騎兵が射出され、即座に戦闘機動を開始する。狙撃用ビームライフルが即座に光弾を発し、数十からなる光の嵐がメドラに向けて襲いかかる。
 その腕を、脚を、髪と並びリボンめいて伸びた触腕を、次々とビームが焼く。一発受けるたび、彼女の身体は半ば蒸発するように欠損する。
「うばうばかりなのね。いつもそう。誰も満たしてくれないもの。わたしはこんなに乾いて、からっぽなのに」
 メドラはまるで、うみのそこに漂うくらげそのもののような、或いは深海に似たこの寒い宇宙で漂う自身そのもののような、空虚な声で言った。
「だから詰め込ませて。埋めたいの。いいえ、詰め込むわ。栄養なんていらないの。なくていいわ。ねえ、だってからっぽって寒くてつめたいの。いやなの。ね、だからわたし、」
 右肩の月へ、血を注ぐ。
 ぼう、
 霞んだエメラルドの瞳が、幽玄の輝きを帯びる。
 一対の光が、光弾を放ち続ける重騎兵らの内、一体を捕らえた。
「少しはこの感覚がましになるんなら、それでいいの」
 ど、と、衝撃。
 不意に伸びたメドラの触手が、伝わる音も無く一体のクローン重騎兵を貫いた。命中したのは脇腹。致命の部位ではない。
 すぐにダメージコントロールを行えばなんとかなる負傷だ。周りの重騎兵らはそう認識した。しかし刺された本人は認識できなかった。既に絶命していたためだ。
 ずる、
 吸い上げられる。もぬけの空になったパワード・アーマーが、主無くして浮かび流れた。
 触腕は毒を帯び、細胞は喰らうことに特化する。
 メドラは失われた触腕と腕、脚を、喰らった血肉でずるりと再生し、虚ろな緑光を放つ瞳を曳光させながら言う。
「わたしのごはんになってくれる?」
 ぞる、り、
 触腕は肥大化し、伸長し、八方へ伸びた。貫かれれば、刹那の内に毒で殺され、有機質を吸い上げられ、消化され、『食われる』。攻撃を当て、欠損させようとも、食った養分が彼女を再生する。
 ――結局、数秒と保たず、そこで動いていたものは皆食われてしまった。
 でも、瞳の光は収まるどころか増して強まる。
 空腹を覚えたように、くらげは腹をさする。
 ……遠くに、次の強襲艇が見えた。

 おかわりね、と。
 無表情に、メドラはささやいた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

街風・杏花


うふ、うふ、うふふ! 宇宙、宇宙にいるなんて!
月は、ないのですね。地球から遠いのだと、実感してしまいます。

けれど、ああ、なんて心地良い叫び!
月がなくとも、本性を曝け出してしまいます!
兵士の皆様、遊んで――遊んで下さいます?
私、刀を振るしか脳がありませんけれど。あとは、掴んで引き千切るくらいしか、出来ませんけれど。
虚空を蹴って駆けっこするくらいは、出来ると思うのです。

ええ、ええ、それではごきげんよう、さようなら。そして貴方も、ごきげんよう!

――ああ、けれど
命を犠牲にする兵器は、美しくありません
少々残念ですけれど、チャンスがあればとっとと壊してしまいましょう

真の姿はイラスト通り
白炎纏う人狼交じり



●まことの月は無けれども
「うふ、うふ、うふふ! 宇宙、宇宙にいるなんて! 月は、ないのですね。地球から遠いのだと、実感してしまいます……!」
 とおん、とおん、と街風・杏花(月下狂瀾・f06212)はアステロイドを飛び渡る。
 小惑星を、まるで川に渡された飛び石の如き気軽さで次から次へと飛び継ぎながら、スペースシップワールドの宙間を見回す。
 遠くまで見通しても、月の光は見て取れず。それはおろか、恒星の類すら見えぬ。
 ここは地球から遥か彼方に離れた、宇宙を放浪する人々が流れ着いたそらなのだ。

 杏花は、アゴニーフェイスの波動を浴びて以後、月がなければ晒すことも無かったはずの本性を晒していた。頭には狼の耳が、見事な金髪は濡れ羽色に染まり、純白の翼までもが漆黒に転じる。
「あの様な叫びを聞かされたら――私、昂ぶってしまいます!」
 頬を紅潮させ、杏花は甘やかに笑う。
 彼女の進路。阻む重騎兵が二〇から。
 ・・・・・
 血で汚れた頬を拭わぬままに、杏花は左手に持っていた「首」をボールめいて先頭の一体に投擲した。
「ああ、兵士の皆様、遊んで――遊んで下さいます?」
 先程引き千切ったクローン重騎兵の首が、先頭のクローン重騎兵の顔面をガツンとノックした刹那――
「私、刀を振るしか能がありませんけれど。あとは、掴んで引き千切るくらいしか、出来ませんけれど」
 縮地。
 一瞬で距離を詰め、蠱惑的な笑みを接吻するほどに近づけて、しかして見舞うは袈裟懸けの居合一閃。
「虚空を蹴って駆けっこするくらいは、出来ると思うのです」
 杏花は満面の笑みを浮かべた。
 ――返事をするように、斬られた重騎兵は真っ二つに裂けた。斬られたことに気付かぬように二拍、左右半身互い違いに蠢いて、死んだ。
「さあさあ、始めましょう、御然らばです、御然らばです! ええ、ええ、それではごきげんよう、さようなら。そして貴方も、ごきげんよう!」
 剣風、推し徹る。
 杏花は羽撃き、虚空を蹴り渡り、刀にて無数の斬月を描いた。
 縮地、縮地、縮地。彼女が一歩を踏むたびに、彼女が一刀振るうたびに! 腕が身体が首が胴が薙がれ斬られて屍山血河に血風荒れて、敵陣深く切り込んだ彼女が最後に斬るのは、旗艦の上。
 苦痛に歪んだ人の顔をした、その金属塊。
「ああ、心地よい叫びでした。けれど」
 甘い笑みのままに、杏花は打刀を翻す。
「命を犠牲にする兵器は、美しくありません。死合い打ち合うて始めて、叫びと命は熱を持つ」

 ――斬。
 何の変哲も無い打刀が、帝国軍の技術の粋を集めた殺戮兵器を両断する。

「これにて、お仕舞い」

 刀を納める鍔鳴りの音さえ、無空の間には響かない。

大成功 🔵​🔵​🔵​


●ワン・フォー・トゥー・エイト アゴニーフェイス四〇・四七二連中隊
「莫迦な」
 およそ一〇分前。
 司令官は勝利を疑っていなかった。
 疑わずして、アゴニーフェイスの発射命令を下した。

 レーダーの光点が増え続けている。
 見方を示す青のマーカーが、まるで湯に入れた氷のように次々と潰えていく。

「莫迦な」

 アゴニーフェイスは、死んだように応答しない。
 いや、そもそもアレは、敵特殊部隊に有効だったのか?
 確かに放ったはずだ。
 敵はそれだけで狂い死ぬ筈だったのに。
 なぜ、

「莫迦なああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

 なぜ、
 艦首に奴らが取り付いているのだろうか。

 
 
・戦況報告
 一四二八時、状況終了。
 アゴニーフェイス四〇・四七二連中隊、旗艦の大破を持って潰走。
 猟兵、損害ゼロ。銀河帝国攻略戦に於ける、『裁き』とも言える一戦であった。

最終結果:成功

完成日:2019年02月17日


挿絵イラスト